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【Q】ハロウィン・レッドローズ

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン

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●孤独な竜と兎たちと
「やあやあみんな! ちょっとお願いがあるんだけどさ!」
 ふわふわと袖を揺らして、ジェニファー・リェン(アンサーヒューマンのサイキックキャバリア・f30007)が猟兵たちに笑いかける。
「向かってもらいたいのはアリスラビリンスって世界なんだけど、以前にあなたたちが救ったんだって? すごいねえ!」
 クロムキャバリア以外の世界を知らない彼女にとって、それはとても興味深いことのようだった。
「オウガ・オリジンは、そのすっごい「現実改変ユーベルコード」でいくつもの不思議の国を生み出したり、改変したりしていたんだって? それでね、今回、オウガ・オリジンによって「ハロウィンの国」に改変された国がたくさん見つかったんだ」
 たくさんの国があるのはクロムキャバリアみたいだねえ、と首を傾げる。
 見つかったのは、しゃべる南瓜ランタンや、コスプレ衣装の飛び出す森、食材が完備されたキッチン、「なんかめちゃくちゃ長い行列をするためだけに作られた道」など、そこはまさにハロウィンパーティにうってつけの国ばかり。
 それは、聞くだけならとても楽しそうな話だ。
 起源や歴史はさておき、ハロウィンは賑やかに楽しむもの。だからきっと、ハロウィンの国はとても楽しいはず。
「でも、オウガ・オリジンの作った国は「悲劇を作る」ためのものなんだってね。だからオリジンから直接力を与えられた「凶悪なオウガ」たちが潜んでいて、ハロウィンの国の力を利用して襲いかかってくるの。だからこれを倒し、ハロウィンの国をゲットしましょう! なのだ!」
 ひらひらと袖を揺らすジェニファーの表情は楽しげだ。多分、本当に楽しそうだと思っているのだろう。
「で、その凶悪なオウガって?」
「バニーガールさ!」
 手を上げて袖を頭の横にあて、垂れ耳のようにして見せる。
「バニーガール……」
「ちょーっと戦闘能力が高くて素早くて跳躍力も秀でていて重い蹴りを放ってきて人を殺すのに一切の躊躇がないバニーガール軍団さ!」
 あ、普通に凶悪だ。
「しかも、コスプレ衣装の森から飛び出してきたコスプレ衣装でパワーアップしているんだって。だからこちらも、森から飛び出してきたコスプレ衣装を身につければパワーアップするんだ」
「お、おう……」
「森から飛んでくるコスプレ衣装の種類はランダムだから、まあひょっとしたらひょっとして、ちょっと抵抗がある衣装が飛んでくるかもしれないのよ」
 そして、そこはオウガ・オリジンの「悲劇を作る」国。やはりひねくれている。
 あまり着たくないような衣装を嫌々ながら着ると、戦闘に有利になるのだ。
 なかなか複雑な条件である。
 この国の主は紅き竜『レディ・ローズ』。
 愛した者を喪い悲しみの果てに狂気に陥ってしまった悲しき竜がまとう薔薇の花は、触れた者の失った記憶を蘇らせるという。
 その彼女を護るのが、バニーガール軍団というわけだ。
「でもね、レディ・ローズはハロウィンの国の法則によってほぼ無敵となっているんだ。そう、『ほぼ』。完全ではない。つまり倒せるのよ」
 倒す方法はただひとつ、「美味しい料理を食べさせること」。
 なにか聞いたことあるぞといった表情の猟兵に、グリモア猟兵はこっくり頷く。
「レディ・ローズの苛烈な攻撃に耐えながら、キッチンで美味しい料理を作ってね。美味しくなくても気持ちのこもった料理でも大丈夫みたいだから、料理が苦手でも大丈夫」
 それが完成すると、ボスはこの国の法則により、抵抗できずに食べてしまう。そしておいしさについて事細かに批評、称賛してくれる。それに加えて、段々と眠くなっていく。
 料理を食べさせ続けて完全に眠らせれば無敵状態は解除され、一撃で倒せるようになるのだ。
「だから、取りうる行動は料理を作ることか、攻撃を耐え忍ぶことのどちらかとなるわ。どちらにしても攻撃をどうにかしなければならないから、それだけは気をつけて。料理の最中に攻撃してこない、なんて優しいことはないからね」
 攻撃を耐えるか防ぎつつ料理を作る。……コスプレで?
「ね、簡単でしょ?」
「簡単に言ってくれるなあ」
 ニコニコしているグリモア猟兵と対象的に渋い顔の猟兵たち。
 うふふっと笑って、ジェニファーは袖を振り上げた。
「さ、頑張ってね! 猟兵さん!」


鈴木リョウジ
 こんにちは、鈴木です。
 今回お届けするのは、バニーガールと竜とハロウィン。
 このシナリオは2章構成で、10/31までに成功したシナリオの本数に応じて、ハロウィンパーティ当日、そして「アリスラビリンスでの猟書家戦」に何らかの影響があるかもしれません。

 第1章【集団戦】サーバントバニーとの戦闘です。コスプレして倒してください。
 第2章【ボス戦】紅き竜『レディ・ローズ』との戦闘です。苛烈な攻撃に耐えながらキッチンで料理を作って食べさせ、弱体化させて倒してください。

●コスプレ衣装とキッチンバトル
 サーバントバニーはコスプレ衣装の森から飛び出してきたコスプレ衣装でパワーアップしているので、こちらも森から飛び出してきた衣装を身につければパワーアップします。
 森から飛んでくる衣装の種類はランダムなので、本人が全く望まない衣装が飛んでくるかもしれません。
 それを「本当はイヤだけど、勝つためにしょうがなく着るんだからねっ!」といった感じで着て戦うとプレイングボーナスがつきます。
 そのため、プレイングの最初に以下のどちらかの数字と服装を書いてください。
 服装の詳細を記載する必要はありませんが、文字数に余裕があれば書いても構いません。

 1:着たくないけど仕方ないから着る衣装(指定しても「突然飛んできた」という扱いになります。おまかせ可)
 2:絶対に着たくない衣装(おまかせ相当。但し指定された系統の衣装は除外します)

 レディ・ローズは「ハロウィンの国」の法則によって「ほぼ無敵」となっていますが、「美味しい料理を食べさせること」で弱体化させることができるので、攻撃に耐えながらキッチンで美味しい料理を作ってください。
 美味しくなくても気持ちのこもった料理でも大丈夫ですが、明らかに問題がある場合は判定の減点対象となります。
 過程や詳細を記載する必要はありませんが、攻撃への対策がない場合、邪魔される可能性があります。

●お願い
 全章通してえっちな描写はありません。
 一緒に行動される方がいる場合【○○(ID)と一緒】と分かるようにお願いします。お名前は呼び方で構いません。
 グループでの場合はグループ名をお願いします。
 複数名で行動される場合、リプレイ執筆のタイミングがずれてしまうのを避けるために、プレイングの送信タイミングを可能な限り同日中に揃えてください。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『サーバントバニー』

POW   :    ウサキ~~ック!
単純で重い【高く跳んでからのジャンプキック 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ウサキッス
【投げキッスをする事で放つ衝撃波 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【にハート型のマークを刻み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    ウサウサスカイジャンプ
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが訪れた森のなかで、きゃっきゃと賑やかな声が聞こえる。
 声の主たちは、ゆるふわウェーブの髪に、ぴょこんと立ったウサ耳カチューシャ。
 ブローチで留められた瀟洒なタイの下は豊かに揺れる双丘で、ボディラインにジャストフィットのバニーコートからスラリと伸びる美脚を覆う網タイツを支えるピンヒール。
 そしてバニーコートの裾を指先で直す手元にはカフス。
 どう見てもバニーガールです、本当にバニーガール。
 が、しかし。その上から蝶の翅のようなマントをつけていたり、兎の紋が入った袴を着ていたりと、ちょっとコスプレ要素も混ざっていた。
 なかにはバニーガールの名残がウサ耳カチューシャくらいしかないくらいにしっかり着込んでいるのもいる。
 着ていないなと思っていたら、茂みのなかから突然飛び出してきたコスプレ衣装がぺしっと当たって、なぜか何の疑問もなく着はじめる。
「なるほどこれはコスプレ衣装が飛び出す森」
 どないやねん。
 口にした猟兵へツッコミを入れるように、コスプレ衣装が飛び出してきた。
 さて、その衣装とは……?
大崎・玉恵
ふむ、この周りから出る服にて着飾ればより力を得られるのじゃな。
なに、少しばかり昔は【誘惑】し精を喰らうが生業じゃった。その道に於いて神とも呼ばれた故、いかなる衣も纏ってみせよう。
着飾った姿を見せたい愛しい者はここにはおらぬが、良さそうならば彼の者の為に似た衣を探してもよいのう。

兎共の攻撃は力こそ強そうではあるが、衝撃波に飛び蹴り。いささか単調じゃ。
【偽・太陽鏡】を用いて攻撃を返してやれば、その力を活用して自滅させられるじゃろう。
鏡が警戒されたならば、こちらから【薙刀】の【衝撃波】【2回攻撃】で地形の強化を削りつつ攻撃したり、【霊符】に【破魔】【焼却】の【呪詛】を込め【呪殺弾】とし葬ろう。



 楽しそうなバニーガールたちの様子を伺いながら、大崎・玉恵(白面金毛・艶美空狐・f18343)は周囲に目をやった。
 茂みのなかから飛び出してきたコスプレ衣装がどのような効果を持っているのか知っているようで、サーバントバニーは微妙な表情をしつつも着る。
 よく見ると、ごくまれに着ていないものもいた。その手にしている衣装を見ると、それは仕方ないね……といった感じのものだ。
「ふむ、この周りから出る服にて着飾ればより力を得られるのじゃな」
 サーバントバニーたちが着なかったらしく、そこここに置かれたり吊るされている衣装は、魔女や悪魔、メイドにセーラー服等々。
 ハロウィンにあまり関係がなさそうなモチーフも結構あり、どうやって着るのか想像できないような衣装を手に取って眺めた。
「なに、少しばかり昔は誘惑し精を喰らうが生業じゃった。その道に於いて神とも呼ばれた故、いかなる衣も纏ってみせよう」
 着飾った姿を見せたい愛しい者はここにはおらぬが、良さそうならば彼の者の為に似た衣を探してもよいのう。
 甘い想いを抱いて衣装を探せばそれらしいものも見つかり、体に当てて洒落てみる。
 そうしていると知ればどう思うだろう? かすかにはにかむ。
 だが今は、まずはオブリビオンの討伐だ。
(「兎共の攻撃は力こそ強そうではあるが、衝撃波に飛び蹴り。いささか単調じゃ」)
 であるなら、対策は取れようというもの。
 闖入者に気づいたサーバントバニーの一体が、何もない空中をトトトトトンッと素早く蹴り上がる。
「猟兵死すべし、慈悲はないぞー!」
 叫びながら高い位置で攻撃体勢に入る敵へ向け、玉恵がすっと掲げた手の先に鏡が現れた。
「己が力、その身を以て味わうがよい」
 曇りない鏡に襲撃するオブリビオンの姿が写り、ちらり光を返したと思ったその時、繰り出された攻撃がそのまま自身へと射ち出された。
 高高度からの一撃は威力を増して猟兵を打ちのめすはずで、しかし現実にはオブリビオン自身に向かう。
「んにゃーん!」
 自滅する形でもろに食らい、バニーなのに猫みたいな悲鳴があがった。
 どうと倒れた仲間を気遣う様子もなく、サーバントバニーたちは警戒しながらかしましくきゃあきゃあ騒ぐ。
「あの鏡ヤバいね」
「こわいね!」
 ひそひそと言葉をかわし、それならこうしようと攻撃を仕掛けるのは複数がかり。
 ユーベルコードを射ち返されぬよう注意深く猟兵の動きをうかがいながら少しずつタイミングをずらして襲いかかるオブリビオンに、玉恵は艶めいた笑みを浮かべて薙刀を構えた。
 美しい軌跡を描いてその切っ先を滑らせ生じた衝撃波で討ち払い、閃かせた刃が連撃を繰り出す。
 それだけで優位に立つことはできないが、しかし脅威を与えるに充分だ。
「んもー、さっさとケリをつけるよ! 蹴りだけに!」
 苛立たしげに放たれた蹴撃を薙刀で受け止め、素早く霊符をうち放つ。
 呪殺弾と為した霊符に込められた呪詛は破魔と焼却。サーバントバニーたちは焼けて灼け、甲高い悲鳴が響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャスパー・ジャンブルジョルト
1 小学校の制服(ランドセル&通学帽付き)

フッ……どんな衣装でもどんと来いだぜ。
クールかつダンディーな俺様にカッコよく着こなせない衣装なんてないのさ。

(飛んできた衣装をキッチャして)はい、来たー! 五秒で着替えて、決めポーズ! どうだ、めちゃくちゃカッコいいだろう? ……って、なんじゃこりゃぁーっ!? めちゃくちゃカッコわりぃー!
(でも、小柄な種族なのであまり違和感はない)

えーい、着ちまったからにはしょうがねえ。この衣装を活かして戦うぜ。
縦笛サーベル!
給食袋ハンマー!
……って、やってられるかぁーっ!
(モチベがガタ落ちしたので、戦闘は空戦鼠たちに一任)

※煮るな焼くなとご自由に扱ってください



「フッ……どんな衣装でもどんと来いだぜ」
 猟兵たちと対峙するサーバントバニーたちの着ているコスプレ衣装を一瞥し、ジャスパー・ジャンブルジョルト(JJ・f08532)は余裕の表情を見せた。
 タフな男はどんな時でもうろたえない。どんな格好でも。
「クールかつダンディーな俺様にカッコよく着こなせない衣装なんてないのさ」
 キリッとキメ顔で断言する彼に向かってさっそく衣装が飛んでくる。
 飛んできた衣装をキャッチ! そして装着!
「はい、来たー! 五秒で着替えて、決めポーズ! どうだ、めちゃくちゃカッコいいだろう? ……って、なんじゃこりゃぁーっ!? めちゃくちゃカッコわりぃー!」
 ビシッとポーズをキメたジャスパーが着てしまったのは、小学校のものらしい制服。しかもランドセル付き。
 ダブルボタン風の紺のジャケットに、グレーチェックの半ズボン。マロンブラウンの通学帽もセットだ。
 ちょっといいところの制服っぽいが、34歳男性が着るにはいろいろと問題のある服装ではないだろうか。
 でも、小柄な種族なのであまり違和感はない。
 カッコよいかはともかく、確かに着こなせてはいた。
 えー……。と呆然としていると、また何か飛んでくる。
「あいたっ! ……って、こっちはセーラー服じゃねーか!」
 生地やデザインから察するに、同じ学校(という設定)のもののようだ。
 一応とりあえず試しに体に当ててみると、きっちり採寸したようにピッタリのサイズだった。いや、着ないけども。
 向けられるサーバントバニーたちの視線と表情が、心なしか微笑ましく思える。
「えーい、着ちまったからにはしょうがねえ。この衣装を活かして戦うぜ」
 どうやら、この衣装専用の武器も用意されているようだ。
 小学生の武器と言えば!
 縦笛サーベル!
 給食袋ハンマー!
 隠し装備に、鳥さん型防犯ブザーと名札スピア(※背面の安全ピン使用)もあるぞ!
「……って、やってられるかぁーっ!」
 スパァンッ!!
 勢いよく地面にランドセルを叩きつける。
 6年間の酷使に耐えられるよう丈夫に作られたランドセルは、ばいんと軽く跳ね上がった。
「かわいいのにーっ?」
「かわいいのが駄目!」
「体操服もあるよー?」
「誰が着るかぁーっ!」
「私が着てるよー!?」
 ジャスパーの抗議に、体操着とブルマ姿のサーバントバニーが言い返す。バニーガール要素がすでにない。
 などとやり取りをしている間にも、オブリビオンたちは学生系のコスプレ衣装を手にじりじりと距離を詰めてくる。
 なかには飛び上がって上空から隙を狙い、力技でワンピースタイプの制服を着せようとするものもいる。どういう戦いなのかこれは。
「空戦チーム、集合!」
 なかばやけっぱちに空へ向かって叫ぶと、頭部にドリル、尻尾に二重反転プロペラのついた空戦鼠たちが現れた。
 どうにかして彼にスク水やらジャージやらを着せようとしていたサーバントバニーたちは、不意をつかれて大慌てで戦闘態勢を取る。
 モチベがガタ落ちしたので、戦闘は空戦鼠たちに一任したジャスパーは、いささか混乱気味のオブリビオンと空戦鼠たちを後目に、ふう。と溜息をついたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

殺風景・静穂
1:動きづらいもの、着心地の良くないもの

あらっ、もう始まっているのね
私も混ぜて頂戴

お衣裳は何でも良いわ
普段着る機会のないものが着られそうで楽しみね
だけど、あんまり動きづらいのは嫌よ……?
さ、出てらっしゃい

私も猟兵の端くれだけれど、
他の子のように、
武器や格闘技で戦うのは得意じゃないの
だから、ちょっと「ズル」をさせて貰うわね

朧二重で、手近な無機物を私そっくりに変えてしまうの
たとえば、岩を私に似せて変えれば、
それを蹴ったり叩いたりして自滅してくれるでしょう?
そうそう、水も無機物よね
池や川があるなら、その水を私そっくりに変えてみたいわ
どう? 面白い光景が見られると思わない?



 空戦鼠たちに追い回されるサーバントバニーたちの様子に、殺風景・静穂(計算ずくの混沌・f27447)はそっと目を細めた。
「あらっ、もう始まっているのね。私も混ぜて頂戴」
 声をかけるが、オブリビオンたちは彼女と対峙しようとしない。
 積極的に攻撃を仕掛けてくるタイプに見えないこともあって、警戒する程度に留まっていた。
(「普段着る機会のないものが着られそうで楽しみね。だけど、あんまり動きづらいのは嫌よ……?」)
「さ、出てらっしゃい」
 少しばかりドキドキしながら、どこへともなく呼びかける彼女の目の前に飛び出してきたのは着物の束。
 どうやって着るのかしらと眺めていると、やや離れていたサーバントバニーたちもなにこれと寄ってきて、一緒になって広げたり着方を相談したり。
 混ぜて頂戴と言ったからか、仮装の手伝いをしてくれるようだ。
 着る側も着させる側も慣れない衣装に四苦八苦しながらなんとか仕上げたその衣装はというと。
「……十二単、ね?」
 しっかり織られた生地が重い。幾重にも重なった衣のせいで動きづらい。
 着込んでいるのは衣装だけだが、静穂の黒髪がそっと背に広がるさまは大垂髪(おすべらかし)のようだ。
「動きづらいのは嫌と言ったのだけれど……」
 衣擦れの音をさせながらゆるゆると身じろいで、これも用意されていた檜扇で顔をなかば隠しながらそっと息を吐き、挙動を確認する。
 動きにくい衣装とは言え、コツを掴んでしまえば多少でも動きやすい所作が見つけられる。衣装があちこちに引っかからないよう器用に避けながら、森のなかへそっと身を翻した。
 逃してはいけないと慌てて追いかけると姿を見せたのは、顔から衣装から雰囲気から、そしてその笑みまでまったく同じ二人。
「ど、どっちだー!?」
 動揺するサーバントバニーを惑わせるようにそれぞれに木の陰に隠れ、或いは姿を見せる。
 翻弄してくる猟兵にオブリビオンたちは逡巡し、しかしすぐに行動に移った。
「攻撃しちゃえばどっちが本物か分かるさ!」
 周囲の障害物よりもなお高く飛び上がり、『猟兵』目掛けて思いっきり蹴りを放つ。
 勢いをつけた蹴撃は狙い過たず、その姿を穿つはずだった。
 がづっ!
「いったぁー!?」
 およそ人体を穿ったとは思えない硬質の音がして、泣きそうな悲鳴を上げる。
 それと同時に『静穂』の姿がかき消え、代わりに人の背丈ほどもある岩が現れた。
「なんで!?」
「私も猟兵の端くれだけれど、他の子のように、武器や格闘技で戦うのは得意じゃないの」
 驚き絶句するオブリビオンに、もう一方……本物の猟兵が微笑む。
「だから、ちょっと「ズル」をさせて貰うわね」
「……ズル?」
「たとえば、岩を私に似せて変えれば、それを蹴ったり叩いたりして自滅してくれるでしょう?」
 たしかにそれを今実行させられた。
 まさに。彼女の狙いは戦いからの逃走や回避ではなくそれだった。
「そうそう、水も無機物よね」
「……ん、んんむ……」
「池や川があるなら、その水を私そっくりに変えてみたいわ」
 柔らかな口調とは裏腹の恐怖。
 どれが本物か分からないということは、うっかり攻撃したのが偽物だったらこちらがダメージを受けてしまう。しかし攻撃しないわけにもいかない。
 檜扇に隠した口元で再びユーベルコードの詠唱が紡がれ、またひとり『静穂』が増える。
「どう? 面白い光景が見られると思わない?」
 『静穂』の穏やかな微笑みに気圧され、サーバントバニーたちの顔が青ざめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鎹・たから
1:お任せ(花嫁衣裳系

まぁたからはかっこいいので何でも似合ってしまうのですが
お嫁さんになる予定はないのです
多少動きづらい気もしますが、仕方ありませんね

ふわふわの尻尾にぴょんとした耳
全身もこもこならもっと可愛いでしょうね
ですがオブリビオンはほろぼさなくては

なんですか、その目は
確かにたからは何でも似合ってしまいますが
猟兵としての務めは果たせる衣装のはずです

投げキッスはすきな人にだけすべきですよ
アイドルは別かもしれませんが
直撃は残像で躱しましょう

素早く駆けまわりバニーを集め
味方が居ないのを確認
一気に巨大手裏剣を振り回します

2回攻撃が3回なので、ひぃ、ふぅ
…まぁ大体5回か6回でしょう(ぶんぶん



「まぁたからはかっこいいので何でも似合ってしまうのですが」
 ふふん。と胸を張る鎹・たから(雪氣硝・f01148)の姿は、レースがたっぷりのウェディングドレスだった。
 ミルキーホワイトのビスチェには雪の華を散らし、裾へ向かって薄いパステルカラーにグラデーションしているスカート。
 どこからどう見ても花嫁姿だが、お嫁さんになる予定はないのです。
 もしもそんなことになったらとてつもない感情に打ちのめされる男の姿が浮かぶ。それとも、崩れ落ちてむせび泣くだろうか。
 どちらにしても、情緒が大変なことになることだけは間違いない。
「多少動きづらい気もしますが、仕方ありませんね」
 シフォン生地のコサージュが散りばめられオーガンジーとチュールのレースを幾重にも重ねたスカートを持ち上げても、裾が地面から持ち上がらない。
 服装を確かめてから、たからは右往左往するサーバントバニーを見た。
 ふわふわの尻尾にぴょんとした耳。
「全身もこもこならもっと可愛いでしょうね」
「でっしょー!? ファーとかもつけちゃったりすると、かぁーわいいんだー!」
「ですがオブリビオンはほろぼさなくては」
「チッ」
 褒めた時の反応からは急転直下の舌打ちである。
 とはいえ、オブリビオン側も戦闘を回避できるとは思っていない。最前までのノリノリのテンションから一転、きりっと表情を引き締めるが。
「なんですか、その目は」
 やっぱりちょっとその格好はどうなのかなー? 的な視線に、たからが裾をつまみながら抗議する。
「確かにたからは何でも似合ってしまいますが、猟兵としての務めは果たせる衣装のはずです」
 いやそれはどうだろう。結構動きにくそうというか、その格好で大立ち回りをしてみせようとは思えない。
 指摘されると、たからはやや不満げに唇を引き結んだ。
 確かに動きにくいし、できるなら戦闘に適した格好のほうがいいに決まっている。
「んふふ、花嫁さんを強奪さぁ!」
 タキシードジャケットを羽織ったサーバントバニーがお色気たっぷりに投げキッスを放つと、投げキッスは衝撃波をまとい、空を裂いて猟兵へと襲いかかる。
「投げキッスはすきな人にだけすべきですよ」
 アイドルは別かもしれませんが。
 言い放ちながらスカートを持ち上げて跳躍すると、ようやく地面からスカートが離れた。
 直撃は残像で躱したが、地面に大きなハートマークが刻まれる。
「ふふーん。愛はたっくさんあってもいいものなんだよ!」
「うわきものー!」
「愛の旅人と言いなさーい!」
 別のサーバントバニーからのブーイングに、タキシードジャケットのサーバントバニーが反論した。
 しかしそんなことは、たからには関係ない。
「たからはお嫁さんになる予定はないのです。まして、オブリビオンのお嫁さんには」
 すっぱりと切り捨てると素早く駆けまわりバニーを集め、味方が居ないのを確認する。
 味方が周囲にいなければ、気を遣わずに存分に振るえる。一気に巨大手裏剣を振り回し、2回攻撃が3回なので、ひぃ、ふぅ。
「……まぁ大体5回か6回でしょう」
 ぶんぶんと巨大手裏剣を振り回し連続して攻撃を放つたからに、サーバントバニーたちから「雑!」「雑だぞ猟兵!」と抗議があがった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アニタ・エヴァーフィールド
1露出度高めの服

ぴゃっ…!
これ…着るの…着るのね…?(こそこそ隠れて着替え)
…はわあああ…(真っ赤)
で、でも、これで少しはがんばれる…がんばれ…無理かも…

勇気を出して、がんばって攻撃するよ
トリニティ・エンハンスで攻撃力を強化して…
戦うのは初めてだから、無理に攻撃を仕掛けないように気をつけて
…み、見えてない?だいじょうぶ?ほんとに?

相手の動きをうかがいながら、攻撃の機会を狙って…
攻撃はできるだけ、避けるようにして
…うう、すごく視線が気になる…
でも、相手はバニーガール…どっちが恥ずかしいかな…

…や、やっぱり見えてる?見てる?見てない?
み、見ないでくださーいっ!
(耐えられず、なりふり構わず攻撃)



 連続攻撃に駆逐されつつあるサーバントバニーの様子を、恐る恐るうかがっていたアニタ・エヴァーフィールド(さまよいゆくこころ・f26832)に、不意に何かがぶつかってきた。
「ぴゃっ……!」
 小さく悲鳴を上げながらそれを確かめるとコスプレ衣装だった。なんだかちょっと、小さいというか厚みがそんなにないというか。
 広げてみると、シンプルなデザインのチューブトップとホットパンツのセット。
「これ……着るの……着るのね……?」
 こそこそ隠れて着替え、改めて自分の格好を確かめた。
 スポーティな組み合わせのはずだが、そこはかとなくセクシーでもある。
「……はわあああ……」
 想像以上の格好に、アニタは耳まで真っ赤になってしまう。
 時計ウサギである彼女の耳がひくひく跳ねるのを見て、サーバントバニーたちは賛辞をコールした。
「かわいいよ!」
「超キュート!」
「ぴゃーん!」
 恥ずかしさのあまり服の裾をつかもうとして、しかしつかめるような裾がないことに気づくとぐっと拳を握りしめる。
 はわはわと視線をさまよわせまくり、ぎゅーっと目を閉じてからばっと開いた。
「で、でも、これで少しはがんばれる……がんばれ……無理かも……」
 だが、この場に立つ以上は頑張るしかないのだ。
 ありったけの勇気を出して、がんばって攻撃する。
 トリニティ・エンハンスで攻撃力を強化して……武器を手にオブリビオンと対峙し、戦うのは初めてだから、無理に攻撃を仕掛けないように気をつけて。
 ふわふわのしっぽを揺らし、スラリと伸びる脚を躍らせ狙い討つ。
 しかしつたない攻撃はするりとかわされてしまい、逆に敵へ隙を見せてしまった。
「くらえ! ウサキ~~ック!」
「ぴゃっ!」
 跳躍からの重い蹴りをもろに食らってしまい、鋭い悲鳴を上げる。
 勢いを殺せず、ずぁっと地面に転がって、ばっと脚を閉じた。
「……み、見えてない? だいじょうぶ? ほんとに?」
 やや早口の問いに、こくこくと頷くサーバントバニー。じゃあ、戦闘続行で。
 相手の動きをうかがいながら、攻撃の機会を狙って……。
 攻撃はできるだけ、避けるようにして。
「……うう、すごく視線が気になる……」
 戦うのだから、当然相手を見なければならない。見ないで戦える人はいるかもしれないけども。
 いつも以上に視線が気になってしまう。
「でも、相手はバニーガール……どっちが恥ずかしいかな……」
「この格好は恥ずかしくなんかないよー!?」
 露出度の高さで言えばアニタのほうが上だが、セクシーさで言えばサーバントバニーのほうが上だ。
 どっちが恥ずかしいか、は主観による。
 不慣れながらも戦いを続け、ふとぴたり動きをとめた。
「……や、やっぱり見えてる? 見てる? 見てない?」
 脚をピッタリと閉じてモジモジと問うと。
 サーバントバニーは無言で視線をそらし、アニタはかああっと顔を真っ赤にする。
「み、見ないでくださーいっ!」
 視線も言葉も何もかもに耐えられず、なりふり構わず攻撃を放つ。
 そうして気がつけば、サーバントバニーはほとんどいなくなっていた。
「……もう、いいわ」
 不意に。
 静かな声とともに巨大な気配が現れる。
 棘と薔薇をまといゆっくりと姿を見せ、猟兵たちを睥睨する紅い竜。
「あなたたちはいつもわたしから何もかも奪っていく。そうなのね」
 口ぶりだけは穏やかに言って、紅い竜――レディ・ローズが緑の瞳を猟兵たちへと向けた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『紅き竜『レディ・ローズ』』

POW   :    『二度と忘れないで』
自身の【纏うバラの花】を代償に、【攻撃対象が失っていた記憶】を籠めた一撃を放つ。自分にとって纏うバラの花を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    『これがあなたとわたしの運命よ』
自身の【瞳から溢れる涙】が輝く間、【鋭い爪と茨】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    『この花の色は決して褪せない』
【バラの花びら】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に茨を茂らせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はエドガー・ブライトマンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 薔薇をまとった紅き竜は、猟兵たちを前にして、静かに口を開いた。
「いつもそう……あなたたちはわたしから奪っていく」
「奪う……?」
 それは彼女の過去なのか、それとも狂気の果ての妄執なのか。
 どちらにしても、レディ・ローズは猟兵たちを見ているようで見ていない。
 そして今の彼女は、ハロウィンの国の法則によりほぼ無敵となっている。
「美味しい料理を食べさせて眠らせることで、倒すことができる、か」
 だが、悠長に料理を作ることをレディ・ローズは許さないだろう。
 攻撃を防ぎ耐えながら料理を作り食べさせる。言うだけなら本当に簡単だ。
「世界《あなたたち》を壊さなければ」
 すがめた瞳の緑が深く光を宿す。
 ハロウィンの国を守るため、猟兵たちの取るべき行動は。
殺風景・静穂
攻撃に耐えながらお料理をつくれ、か
ふふっ、本当、簡単に言ってくれるわね
スリリングなクッキングになりそうね
愉しみだわ

そんなわけで、はい、召し上がれ
何時の間に作ったかって?
そんなことどうでも良いじゃない
さあ、冷めないうちにどうぞ

種明かしをすると、
ぜんぶ舞陽炎で造った幻なの
幻といって馬鹿にしたらいけないわ
視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚……
同時にだますには、案外コツがいるのよ?

お味のほうはどうかしら?
おかわりもすぐに用意するわね
たんと召し上がれ

そうして眠らせることには成功したら、
魔星鍵を使って、精神にダメージを与えようかしら
とびきりの悪夢を見せてあげる
きっと素敵な目覚めになるわよ


アニタ・エヴァーフィールド
攻撃…をされないように、お料理…うん、大丈夫

紅茶の時間で、お茶を給仕して…
そうしたら、お茶を楽しんでくれなかったら動きが遅くなるものね
…お茶はお料理じゃない、かしら?
でも、丁寧に淹れたお茶はお料理と同じ、よね?
だから私のお料理はこのお茶
カモミールにラベンダー、ローズヒップ
優しく落ち着けるブレンドのお茶
ティーカップだと小さいかしら?
もしもそうなら、代わりになりそうな食器を探すよ

ちょっと、すごく、怖いけど…
敵じゃなくて、いたわる相手として、ゆっくりとお茶を飲んでもらうの
攻撃的な動きを警戒するのは忘れないで

倒せそうになっても、攻撃は他の人に任せるよ
本当なら、このひととも楽しく過ごせたのかな…



「攻撃に耐えながらお料理をつくれ、か。ふふっ、本当、簡単に言ってくれるわね」
 呆れたような言葉と裏腹に、静穂は楽しげな笑みを浮かべた。
 スリリングなクッキングになりそうね。
「愉しみだわ」
 口の端に乗せた言葉が、オブリビオンを刺激する。
 愉しみだと? 悲しみに満ちたこの世界の、何が?
「愉しみなど、この世界のどこにもない……!」
 ああ、こうして心を荒ぶらせても虚しいばかりだ。
 それでも荒れずにいられない。荒まずにはいられない。そうしてまた悲しみをつのらせていく。
 オオオオオオオオオオオオ…………!!
 終わりのない繰り返しに咆哮を響かせながら真紅の爪を振るい、朧な猟兵へと襲いかかろうとする紅き竜に、涼し気な声が向けられた。
「そんなわけで、はい、召し上がれ」
 指し示されたテーブルの上に、ずらりと料理が並んでいる。
 見目のよい仕立てに芳しい香り。立ち上る湯気は、口に含んだ際の快いぬくもりを想像させる。
 場違いな不意打ちに面食らい、レディ・ローズが攻撃をピタリと止めた。
 こんなものが、いつの間に?
「何時の間に作ったかって? そんなことどうでも良いじゃない」
 さあ、冷めないうちにどうぞ。
 素晴らしい料理を前にした紅き竜は、怪しみながらもハロウィンの国の法則に従い食器を取った。
 器用な仕草で料理を口に運び、目を細める。
「まあ……これは、なんと言えばよいのか……」
 先程までの情動をどこへか、感嘆の声を上げた。見目通り美味。だが、レディ・ローズの表情はどこかはっきりとしない。
 同じく不思議そうな顔をしている他の猟兵たちに、静穂はそっと口元に指をあてる。
「種明かしをすると、ぜんぶ舞陽炎で造った幻なの」
「幻……?」
「幻といって馬鹿にしたらいけないわ」
 現実と混同してしまうほどの幻ならば、そう認識してしまうとそれはもはや現実と違いない。
 ましてそれが、五感さえ惑わすほどであればなおさらのこと。
「視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚……同時にだますには、案外コツがいるのよ?」
 事実レディ・ローズは目の前の幻を本物のように認識し、幻に舌鼓を打っている。
「お味のほうはどうかしら?」
「ええ、とても素晴らしいわ。どう伝えればよいのか分からないけれど……」
「おかわりもすぐに用意するわね。たんと召し上がれ」
 たおやかな仕草で幻を給仕する静穂。
 だがレディ・ローズは、心地よさげな素振りだが、眠りにつくほどには見えない。
 ひと事あらばすぐさまその凶爪で穿つであろう静かに狂える紅き竜を前にして、アニタは心のなかで噛み締める。
(「攻撃……をされないように、お料理……うん、大丈夫」)
 先行した静穂にレディ・ローズが意識を取られている間に支度を整えて。
「お茶を、どうぞ」
 できる限り平静を装って、ティーポットとカップを載せたトレイをテーブルに置く。
 もちろん、ただお茶を給仕するわけではない。時計ウサギである彼女のユーベルコード、紅茶の時間のためだ。
 そうしたら、お茶を楽しんでくれなかったら動きが遅くなるものね。
 考え、ふと首を傾げる。
「……お茶はお料理じゃない、かしら?」
 でも、丁寧に淹れたお茶はお料理と同じ、よね?
 だから私のお料理はこのお茶。
 カモミールにラベンダー、ローズヒップ。優しく落ち着けるブレンドのお茶。
 カップにお茶を注ぎながら伝えると、レディ・ローズは静かに頷いた。
「そうね。美味しいお茶を淹れるのはとても難しいわ。であればそれは料理と言えるでしょう」
 肯定にぱっと笑顔になり、次の瞬間はっと気づく。
(「ティーカップだと小さいかしら?」)
 アニタの心配を知らず、オブリビオンはティーカップをつまみ上げ、貴人の如き仕草で口に運ぶ。
 もしも合わなければ代わりになりそうな食器を探すつもりだったが、その心配はなさそうだ。
「……柔らかい香り。酸味も強くなくて、すっと飲めてしまうわね。そして、心を落ち着かせてくれるぬくもり……」
 いつか誰かにも向けていたであろう穏やかな言葉。伏せた瞳から涙が一粒落ちる。
 戦いに慣れていないアニタには、いつその挙動が敵意に変わるか不安で仕方がない。
(「ちょっと、すごく、怖いけど……」)
 敵じゃなくて、いたわる相手として、ゆっくりとお茶を飲んでもらうの。
 きっと彼女が本来望んでいたのは、そうして過ごす時間だったのだろうから。
 攻撃的な動きを警戒するのは忘れずに、求められるままに給仕する彼女を、レディ・ローズは静かに見つめている。
 だが、眠らせるにはまだ足りない。
 魔星鍵に手をかけていた静穂は、少しだけ残念そうに眉をひそめ、しかし微笑みを崩さない。
 その機会が来た時に素晴らしい夢を見せてあげよう。
 千々に乱れるような、夢を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎹・たから
奪われるのは、悲しいですね
でも、たからはあなたにおいしい料理を振る舞います
…正直言ってあまり得意ではありませんが

邪魔されぬよう猫を呼びます
皆で花弁をどかしてくださいね

たからが作るのはオムレツです
卵をかき混ぜて、バターをひいたフライパンに流しいれ
具はお醤油とキムチを入れるのですよ
半分に閉じて完成です

おいしくなあれと願いを込めて
見た目は不格好ですが、きっと大丈夫です

昔、教えてもらったおかずです
もう一緒には作れないけれど

熱いのは苦手なので、なるべく冷まして食べるのですが
あなたにはあたたかい方が良いでしょうね

たからは美味しいと不味いがわかりません
でも、これはたからのだいすきな味です

どうぞ、めしあがれ



 懊悩するレディ・ローズに、たからは目を伏せた。
「奪われるのは、悲しいですね」
 自分でその手に掴んでも、不意に手のひらからこぼれ落ちてしまう。
 そうならないように、しっかりと掴んでいても。
「でも、たからはあなたにおいしい料理を振る舞います」
 奪われたぶんには到底届かないだろう。それでも、少しでも与えることを選ぶ。
「……正直言ってあまり得意ではありませんが」
 ややトーンを落として続けた。
 彼女は、生きることさえ得意ではないのだ。
 傷ついて、悲しんで、涙をこぼして。
 他人から見ればどうしてそんなふうにとさえ思えるような。
「そんなもので、心は満たされないのよ……!」
 紅き竜の悲痛な叫びとともに、薔薇の花びらが狂い舞う。
 降りしきる花びらに触れるより早く、たからのまとう雪模様と同じ模様を持つ猫が現れ散らしていった。
 彼女が料理を作るのを邪魔されぬよう呼んだ猫たちは、さらさらと虹のきらめきを放っている。
「皆で花弁をどかしてくださいね」
 そう呼びかけ猫たちが花びらをいなしている間にたからが作るのはオムレツ。
 卵をかき混ぜて、バターをひいたフライパンに流しいれ。
「具はお醤油とキムチを入れるのですよ」
 一般的な具入りオムレツの具から離れたそれらの登場に、一瞬周囲がざわめく。
 味の想像ができるようなできないような周囲の反応をよそに、半分に閉じて完成です。
 おいしくなあれと願いを込めて、皿に乗せたオムレツの形は歪つで、見て取れるつたなさから不安を拭えない。
 だが、たからはむしろ自信があった。
 見た目は不格好ですが、きっと大丈夫です。
「昔、教えてもらったおかずです」
 もう一緒には作れないけれど。
 けれど、一緒に作った記憶はいつも彼女のなかにある。
 先の見目よい料理との差に怪訝なレディ・ローズへ、熱いのは苦手なので、なるべく冷まして食べるのですが。そう言い添えて。
「あなたにはあたたかい方が良いでしょうね」
 あたたかいものを、あたたかいままに。
 それはいたわりと気遣い。
「たからは美味しいと不味いがわかりません」
 その言葉に、いっそうレディ・ローズが怪訝な顔になる。
 自分で美味しいか分からないものを、こいつは食べさせようというのか?
 だが彼女の意図は違った。
「でも、これはたからのだいすきな味です」
 だからあなたにも、食べてもらいたい。
 だいすきなものは、一緒に味わいたい。
「どうぞ、めしあがれ」
 促されて恐る恐るオムレツを口に運ぶ。
 口のなかに広がる味は、想像どおりだったか、想像とは違ったか。
 確かめるようにゆっくりと噛み締め、それからふっと息を吐く。
「……不思議。こんなに塩気を前に出したオムレツは初めてだわ。けれど嫌味がない。塩気と辛味を卵で柔らかくしている。これは……ああ、そう……これは、『大好きな人が作ってくれたものを、自分も誰かに作ってあげたい』……そういう料理なのね」
 そして、あたたかい。
 溜息をつくレディ・ローズは、どこかとろりとした瞳で心地よさげだ。
 たからもまた、表情こそは変えなかったが、優しい色を瞳に浮かべた。

成功 🔵​🔵​🔴​

仲佐・衣吹
オルタナティブ・ダブル発動!
分身は僕ことベスト
調理場からはなるべく離れて派手に暴れ囮になるよ
武器は氷の精霊属性を宿したルーンソードやルーンカルテ
茨をどんどん凍らせ障害物にして、狙い難くしていくんだ
まあ最悪、僕は倒されても良いんだからね
後は頼むよ、ネイル!

アタシにまかせなさい!
器用さなら衣吹で一番のネイルお姉さん
特製の卵焼きをくらいなさい!
お砂糖と牛乳を入れた、ふわふわで甘い味付けに仕上げるわ
調理中はこっそりと手早く
狙われたら投げた外套の陰に隠れて素早く回避

赤いバラがよく似合うドラゴン
できれば戦場以外でじっくり鑑賞したかったわね
意識が混濁したところで、急所にダガーをズドンと撃つわ


ジャスパー・ジャンブルジョルト
奪ってばかり? じゃあ、与えてやるよ。ほっぺたが落ちそうなごちそうをな。

お料理隊、集合!
あの被害妄想が強そうな赤い姉ちゃんになんか作ってやんな。ハロウィンだから、カボチャの料理がいいかなー?
で、料理が邪魔されないよう、俺が姉ちゃんの相手をするぜ。

手強そうだから、真の姿を解放!
どうだ? 今度こそカッコよく決ま……ってなぁーい! 衣装がそのままだー!
人間(三十四歳・男)の姿でこの格好はマズい! 普通に通報案件!
でも、着替えてる暇はねえんだよな、ちくしょー!
(【存在感】で注意を引きつつ、【逃げ足】で逃げまくって時間稼ぎ)

※余裕があれば、お料理隊は他の猟兵も手伝う

※似るな焼くなとご自由に扱ってください



 オブリビオンと化す前に浸っていたであろう感情が、レディ・ローズを震わせる。
 ああ……ああ! これは喪ってしまったもの。わたしが奪われたもの!
 その瞳から落ちる雫が悲しみに輝き、彼女のまとう茨がぞわりと鋭さを増していく。
「奪ってばかり? じゃあ、与えてやるよ。ほっぺたが落ちそうなごちそうをな」
 声高に宣言し、ジャスパーが指を鳴らした。
「お料理隊、集合!」
 召喚に応じ、エプロンとコック帽を身に着けたネズミが列をなして現れる。
 どう見ても料理のためのそれらには目を向けず、猟兵は腰に佩いたサーベルを抜刀して振るうと、ヒュカッと音がした。
「あの被害妄想が強そうな赤い姉ちゃんになんか作ってやんな。ハロウィンだから、カボチャの料理がいいかなー?」
 ビシッと敬礼して応え、すぐに支度にかかったネズミたちが邪魔されないようジャスパーが構えた。
「与えてどうなるというの……! 満たされた後にはまた喪う。奪われてしまう!」
 責め苛むように、茨がぎりぎりと彼女の身体を這い茂っていく。
 手強そうだから、真の姿を解放!
 小柄なケットシーのシルエットが、づ、っと形を変える。すらりとした人間の姿となり、その格好も……あっ。
「どうだ? 今度こそカッコよく決ま……ってなぁーい! 衣装がそのままだー!」
 確認しよう。今の彼の格好は、サイズこそは成人男性が着用可能なものになっているが、ランドセル&通学帽付きの小学校の制服である。
 人間(三十四歳・男)の姿でこの格好はマズい! 普通に通報案件!
 通報されなくても、すでに他の猟兵たちから「あっ……」という空気を察してしまったし、レディ・ローズからも「あっ……」という感じがしている。
 ひりひりとした敵意がその時だけはふっと消えて、代わりになんていうか、ちょっと気遣うような。
 オブリビオンになる前は慈しみ深い存在であっただろう紅き竜は、可能な限り言葉を選んで猟兵へ告げた。
「……人の好みはそれぞれだもの。大丈夫よ、わたしは気にしないわ」
「いやそこは気にして!? あっでもやっぱり気にしないでください!」
 そもそもこれ仮装ですし! 仮装ですし!!
 多分本当に気にしていないのだろうけど、優しさが痛い。
「でも、着替えてる暇はねえんだよな、ちくしょー!」
 叫んで、レディ・ローズから距離を取る。
 そしてランドセルに引っ掛けた給食袋を揺らして逃げ出した。
「威勢のよいことを言って、逃げるとは……!」
 紅き竜の咆哮とともに薔薇の花びらが舞い、風もないのに投擲されたかの勢いで猟兵の背へと迫る。
 絡めとろうとする花びらをかわし、つんのめるようにサーベルを振るって断ち斬り……いや、そのゴム製の刃で弾き飛ばした。
「逃げているんじゃねえよ!」
 ジャスパーが向かう逆方向には調理場がある。調理の邪魔をさせないよう注意を引いているのだ。
 そして彼の振るうサーベルは、その形をした獣奏器。振るう勢いで音を立てて指示を出す。
 落ちた花びらから茂る茨をレディ・ローズがなおまとい、彼女から離れて落ちた花びらから伸びた茨は猟兵たちを追う。
 鋭い棘がジャスパーを捉えようとしたその時、音もなく凍りついていった。
「!?」
 茂らせたのが仇となり、凍りついた茨がオブリビオンの追撃を阻害する。
 その向こうから踏み込んだのは仲佐・衣吹(多重人格者のマジックナイト・f02831)。
 調理場からはなるべく離れて派手に暴れ囮になる。
 次々と伸びる茨を、氷の精霊属性を宿したルーンソードやルーンカルテでどんどん凍らせ障害物にして、狙い難くしていく。
「小賢しい真似を!」
 氷塊を打ち砕きなお花びらと茨を迸らせるレディ・ローズに、彼は笑みを浮かべた。
 まあ最悪、僕は倒されても良いんだからね。
 ガッ、と剣で茨を打ち払い凍りつかせ、
「後は頼むよ、ネイル!」
 叫んだ相手は、彼と同じ姿。
 多重人格者である衣吹の、攻撃者にして囮を務める分身の人格はベスト。
 そして本体である衣吹の、弱体化させるための調理を行う人格はネイル。
「アタシにまかせなさい!」
 器用さなら衣吹で一番のネイルお姉さん。
 こっそりと手早く、手際よく調理を進めていくと。
「あら?」
 ジャスパーのお料理隊がネイルの調理場に姿を見せた。
 手伝ってくれるのかと問うまでもなく、使わない器具を片付けたり必要なものを用意したりとちょろちょろ動き回る。
 狙われるのを警戒していたが、ベストがうまく囮になりオブリビオンの意識がそちらに逸れていたために、邪魔をされることはなかった。
 そうして完成したのは。
「特製の卵焼きをくらいなさい!」
 お砂糖と牛乳を入れた、ふわふわで甘い味付けに仕上げた卵焼き。それに加えて、お料理隊が作ったカボチャの料理も。
 苛立ちが極限まで達していたレディ・ローズは、ネイルが示した料理を前に低く唸った。
 だが、ハロウィンの国の法則に彼女は逆らえない。数度浅く、深く息を吸うと、落ち着きを取り戻す。
 促され、食器を取って一口含む。
 ゆっくりと噛みすすめるうちにほつりとその瞳から涙が落ち、レディ・ローズが目を閉じた。
「……ああ。どうして……あなたたちは、どうしてそうなの……」
 こぼれたのは悲痛。
 浮かぶのは愛しみ。
「火加減を調整しているだけではないのね。とけるように柔らかくて、お菓子のように甘い。このカボチャの料理も……とても……とても落ち着くわ。どうしてこんなにも優しい料理を作るのかしら……」
 その声がすっと消えて、かちりと食器が音を立てた。そおっと様子をうかがうと、静かな寝息を立てている。
 眠ったのを確認し、静穂が魔星鍵をオブリビオンへと向けた。
 この鍵は、心と魂だけを貫く事ができる「マスターキー」。
 とびきりの悪夢を見せてあげる。
「きっと素敵な目覚めになるわよ」
 笑みを浮かべ、その心深くを差し穿ち――。
「…………………………………………!!!!」
 平穏な眠りを破られたレディ・ローズは身悶えし、咆哮が轟く。
 赤いバラがよく似合うドラゴン。
 この紅き竜にとっての悪夢とは何なのだろう?
「できれば戦場以外でじっくり鑑賞したかったわね」
 ネイルが急所へ向けてダガーをズドンと撃つ。
 鋭い一撃が苦悶から解き放ち、紅き竜はぶるりと震えて地に伏せた。
 息絶えるレディ・ローズを見つめ、アニタはそっとつぶやく。
「本当なら、このひととも楽しく過ごせたのかな……」
 その問いの答えは、散りゆく薔薇の花びらとともに消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年11月08日


挿絵イラスト