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楽しいスライム討伐

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#アックス&ウィザーズ
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#戦後


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●郡竜大陸で起きた戦争から数ヶ月経ち、それらの噂も、もう懐かしいと感じるようになった頃。
 ある辺境の炭鉱街からの依頼が、受諾した数々の冒険者を悩ませていた。

「廃坑の中から異様な音が聞こえるから、調査してほしい。って簡単な依頼だったんだ」

 依頼者である街の代表者から、受けた依頼だった。
 鉱脈を取り尽くした廃坑。そこから粘着質な音が何度も聞こえたらしい。
 代表者は最初、鉱夫と冒険者でパーティを組ませ、廃坑の調査をさせたらしい。単なる水音か。もしくはスライム系の敵が湧いているだけか。いずれにせよ確かめるだけだった。

「……行った奴らは、帰って来なかったよ。むしろ粘着質な音がより強まったみたいなんだ」

 手に負えない相手だと判断した代表者は、すぐに討伐隊を組んでそれを依頼。しかし彼らもまた帰らずの人となり、粘着質な音はより一層強く聞こえてくるようになった。

「と、いうわけなんだ……報酬金は高いんだが、帰って来なくなった奴に俺の顔見知りがいてよ。正直怖いんだ……」

●と、いうことがアックス&ウィザーズで起きていたらしい。
 これを予知したドラゴニアンの少女、ニーグラート・ジズ(黒龍とハイエルフの娘・f23326)はとてつもなく気まずそうな様子で、ちらりと集まった猟兵たちの様子を見た。

「……えーっと、予知した廃坑の中にいる魔物、すっごく心あたりがあります!」

 彼女は冷や汗を流しながら、討伐対象であろう魔物の情報を話し始めた。
 かつてアックス&ウィザーズに存在したという、『黒龍』なる魔物がいた。黒龍は帝竜と同格のドラゴンで、国や街に対して猛威を振るっていたという。しかし勇敢な冒険者によって黒龍は討滅され、死骸すら残らず消滅したという。
 ……が、その残さず消えたはずの死骸が、どうやら“粘着質な音”の正体らしい。

 『黒龍細胞片』。討滅された黒龍の惨死か、執念かは分からない。奇跡的に生き延びていた彼の細胞の一片が、自身をかつての姿に復活させんと魔物や人を喰らって増殖しているらしい。

「それでね、あなたたちには冒険者になりすまして、現地でこの依頼を受けて欲しいんだ。
 報酬はたくさんのお金と、ポーション類だよ。頑張ってね!」

 ぺこりと彼女は礼をすると、第三の捕食器官である尻尾から八面体のグリモアを吐き出した。
 何人かが涎まみれのグリモアにドン引きするが、ニーグラートはなぜか照れ臭そうにしながら、アックス&ウィザーズへの扉を開いた。

「えへへ……お父さ、げふんげふん。『黒龍細胞片』の討伐を、よろしくお願いします」

 輝きの先に、楽しい冒険が待っている。


天味
 天味です。
 お久しぶりアックス&ウィザーズ。というわけで、集団戦メインの通常シナリオです。

 今回は冒険をメインとした、ギャグ&お色気少々なシナリオです。楽しいノリで執筆したいと思います。

 第一章は冒険、廃坑の中を探索し、今回の目標である『黒龍細胞片』が湧いている位置を探します。道中、それの一部が出て来たり、分かれ道が出て迷ったり、とイベントを用意しております。

 第二章は集団戦、『黒龍細胞片』との戦闘です。スライム状の敵で、相手を“捕食”して戦います。討伐完了するまでずっと湧きます。

 第三章は日常、討伐報酬を貰って自由に行動できます。報酬は多額の金とポーションの類です。どんなポーションを貰うかはおまかせします。

 なお、お色気要素アリということで、そういうのが欲しい、もしくは入れてもいいよという方は、プレイング内容のどこでもよろしいので「◎」のマークを入れてください。
 どちらでもいいという方は「〇」を。
 一切NGであれば「×」をお願いします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『廃坑探索』

POW   :    廃坑の中を体力に任せて進む。落盤や瓦礫、住み着いたモンスターなど力で排除せよ。

SPD   :    廃坑の中を慎重に進む。事前に危険を察知し、状況を打破するだけの技量があれば安心だ。

WIZ   :    事前に調査し、現状を推理しながら進む。調べた廃坑の情報を元に最適なルートを推理、攻略せよ。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


(プレイング受付は10/16[金]20時からです。それ以前に来たプレイングは返却します)
井口・歩未

特徴
唯一使えるUCを除けば一般人並
生真面目で正義感が強く、人を救うためなら自己犠牲をいとわない
純真で色事一般に免疫がなく、苦手
赤面症
視線に敏感で、感じやすい
高圧的に来られると逆らえない
方向音痴

行動
UCの発動準備をした状態で参加するつもりだよ…本当はこんなこと気が進まないんだけど…
私に出来ることがあるんだったら…助けなきゃ
細胞片が相手なら、ばれずにステータスアップ出来る…はず
沢山聞き込みして慎重に進むしかないかな
近くにあるもので闘うことになるかも
UCの性質上、人から離れて行動したい気持ちはあるけど、必要に迫られたら我慢するよ


※NGなし
PLは他参加者に起こりうることは歩未にも起こりうると覚悟済み


エアリーネ・シルベンスタイン
帝竜もそうですが力ある竜って何かしら異能を持っていましたけど、その竜は何だったんでしょう……少し、気になります

【SPD】×
あらかじめ鉱夫の人とかに内部構造などの話を聞いておいて、周囲を警戒しながら進みますね
出来れば地図の情報を「白紙の魔導書」に写しておきたいです……

調査団が帰ってこなかった時にすぐ「討伐隊」を送るあたり、崩落のような事故は想定してように思いますし、
そっちへの警戒は念のため、ぐらいにして、潜んでいるという敵への警戒を中心に。
もし出会ったら不意打ちされたのでない限り情報集めをして、不意打ちされた場合だったり、情報集めが終わったら最後には空気の流れを遮断した結界に閉じ込め焼却、です。



 場所は廃坑。かつては質の良い鉄鉱がよく採れていたとされる場所だが、鉱脈が尽きてただの巨大な洞穴になってしまった場所。二本あるレールは錆びついて使い物にならなくなっており、支柱にされた木材は虫に食われ朽ちていた。
 そんな場所に一人、冒険者というにはいささか若すぎる少女がいた。

「……迷っちゃった」

 人間のUDCエージェント、井口・歩未(UDC組織の落ちこぼれ・f29774)は迷子になっていた。
 坑道内は広々としており、廃坑と言われているのが不思議に思えるほど、中はしっかりと整備されていた。だが、それはかつての姿がそのまま残っているだけに過ぎない。
 逆に広々していたのが、方向感覚を惑わせてしまったのだろう。歩未は辺りを見渡して自分がいる場所を再確認しようとしたが、もう自分がどこにいるのかわからない。

「ど、どうしよう……っ!?」
「……あなた、は?……先発の方ではないようですね」

 後ろから気配。それを感じ取った彼女は、すぐさま振り返る。
 居たのは、メモ帳を手にしたエルフの女性、エアリーネ・シルベンスタイン(びんぼうエルフ・f26709)だった。相手が同じ猟兵だったためか、歩未はほっと一息つく。だが、エアリーネはどこか警戒した様子でじっと見つめる。

「……敵はスライム系だと聞きました。でしたら、擬態している……?」
「そんなことないよっ!」
「えぇ、そうですよね」

 なんとなくだが、猟兵はお互いを"猟兵"だと認識できる。オブリビオン相手でもそうだ。
 かくして同じ依頼を受けた仲間を見つけた歩未は、さっそくエアリーネに相談を持ち掛けた。

「……実は、迷って……しまいまして」
「迷った?……では、これを」

 エアリーネは持っていたメモ帳……"白紙の魔導書"の一ページを別の用紙に被せる。すると、用紙に模様が浮かび、それは地図へと早変わりした。

「これは?」
「事前に貰った地図の写しです。それと……私と同行しましょう。何かあった時に、二人なら対処しやすいです」
「ほんと!?やったっ!」

 同行相手をゲットでき、喜ぶ歩未を他所に、エアリーネは辺りを見渡して考える。
 話によれば、調査団が帰ってこなった時にすぐ討伐隊を組んだのだ。崩落や人為的な事故は想定していなかったと、彼女は考えていた。それを裏付けるように、この廃坑は地盤も基礎もしっかりしており、数年経っていると聞いても嘘としか思えない。

 となれば、最初から魔物が悪さをしていると感づいていたのだろう。歩未と合流する前に、エアリーネは地図を頼りに横道や、あちこちの採掘ポイントを見て回っていた。
 結果、彼女は異様な粘着物を発見していた。

「ところで、あなたはこれを道中で見たことはありますか」

 二人で先を歩きながら、エアリーネは歩未に一本の試験管を見せる。中に入っているのは、サーモンピンクの粘液だ。見るからにねっとりとしており、それはナメクジのように微かに蠢いていた。
 これを見てしまった歩未はギョッと反応し、ブンブンと首を横に振る。

「み、見たことないよ!なんなのそれ!?」
「……道中で、見つけたものです。採掘ポイントであろう場所に、よく付着していたので」

 地図を見返すと、進んだ道の途中にいくつかの採掘ポイントがある。その内の×印がついている箇所が、例の粘液がついていた場所なのだろう。
 この先にも採掘ポイントが集中しており、最奥には"末端"と名付けられた広い空間が描かれた場所がある。"末端"は大規模な採掘ポイントだったらしい。写した元の地図には、いくつものマークが記されていた。

「もし、さ。その粘液が、原因のスライムさんだったりしたら?」
「……そうですね。他の採掘ポイントを確かめる必要がありますが、恐らくは」

 推測だがここだろうと、今なら割り出せる。
 この依頼の討伐目標であるスライム、『黒龍細胞片』は採掘ポイントに居た痕跡があった。これが他の採掘ポイントにも同じように痕跡があれば、恐らく細胞片たちは採掘ポイントにあった何かを食べていたのだろう。
 坑道奥から響く粘着音。大規模な採掘ポイント……『黒龍細胞片』は、"末端"にいる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

美波・蜜香
チェルノさん(f06863)と一緒に冒険者に扮して廃坑探検
あたしは女戦士役なので【アリスナイト・イマジネイション】で女戦士っぽい鎧を作ったんだけど…
なんでビキニ鎧なの!?
確かに女戦士っぽいけど!けど!

気を取り直してダンジョンアタック
ランタンで光源を確保して段差は【ジャンプ】で乗り越え、落盤や瓦礫は【怪力】で排除し、竪穴は【空中浮遊】で降りて様子を見る

どうも事件の原因は粘着質の音みたいだからそこを目指して坑内を進んでいく
モンスターと遭遇したら【怪力】と【なぎ払い】でばったばったとなぎ倒す

こう見えてRPGは得意なんだよ?(どやっ)
※アドリブOK・NGなし◎


在原・チェルノ
蜜香ちゃん(f20221)と

今回あたしたちは冒険者って触れ込みだからそれらしいカッコしないとね
あたしはニンジャかな?いつも通りだけど
(でもなぜか対○忍コス)
そんな訳で流星忍姫チェルノ、参ります!

【失せ物探し】で先行した冒険者たちの痕跡を辿りながら【聞き耳】と【第六感】で周りを警戒して奥へと進む
もし冒険者たちが黒龍細胞片に襲われたのだとしたらこの先に敵がいるって事だから油断はできないわね
瓦礫や障害物が道を塞いでたら【念動力】で動かして、住み着いたモンスターは手裏剣の【範囲攻撃】で追い払う
細胞片に襲われたら【オーラ防御】で防御して【サイキックブラスト】で焼き払うわよ!

※◎NGなし・アドリブOKです


夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・◎
・アド/絡◎

■行動
成程、廃坑探索ですかぁ。
それでは、頑張って参りましょう。

まずは『効果弱め・効果時間長め』の『秘薬』を摂取し【霊結】を使用、『注意力』を強化しますぅ。
そして『FBS』を四肢に嵌め浮遊、足場の影響や『踏んで発動する仕掛け』等を対処しますねぇ。
後は不意打ち対策に『FSS』を死角になり易い『背後』や『横』に配置、気を付けて進みましょう。
分岐点では『地面の痕跡』を確認し何かあれば其方、特になければ『印』をつけた上で選択、順に探索しますねぇ。

問題は、体型的に詰まり易い『狭所』ですねぇ。
浮いたまま進むのも難しく、そこに『仕掛け』が有ると大変なことになりそうですぅ。



 報告を受けて、他にも猟兵がやってきた頃。
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は穴に嵌っていた。

「…………うん」

 油断した。まさか出ようとした時に下半身が引っかかってしまうとは。

 坑道の中にある採掘ポイント。そこに目を付ける事にした彼女は、まず『豊乳女神の加護・霊結』を発動し、秘薬を一服して注意力を強化した。さらに各種兵装を利用し万全な態勢で挑んだ彼女は、大当たりであろう場所にたどり着いた。
 採掘ポイントの一つに、人一人が入れそうな程の穴があったのである。

『ふむ、報告にあった粘液がびっしり』

 その奥へと入り込んだるこるは、小さな地底湖へとたどり着いた。事務所のワンルームほどの大きさの地底湖部屋だが、壁は隅々までサーモンピンク色に染まっており、今にも動き出しそうにねっちょりと粘液を垂らしていたのだ。
 アタリもアタリ、大当たりである。

『詳しい調査は他の方に任せて、一度でますか』

 るこるは周辺を一瞥した後、先ほどの穴から出ることにした。地図には印をつけたので、あとはそれを次の猟兵に託すだけ。
 と、穴に入って今に至る。
 上半身だけ穴から出ている状態。さながら逆壁尻状態になった彼女だが、下手に武器を使って強引に脱出などしようとすれば落盤の可能性がある。

「これは、ふふ……」

 恐らく秘薬の影響でむちむちになった腰が、そのままつっかえてしまったのだろう。入る時はすんなりと行けたのに、出る時だけはつっかえて出ることができない。ペットボトルでできた罠に引っかかったザリガニのようであった。
 こうなれば秘薬の効果が切れるか、誰かの助けがなければ出ることは不可能だろう。

「だーれかー!」

 とりあえず、彼女は大声で助けを呼ぶことにした。
 するとどうだろう。それに応えるかのように、るこるがいる採掘ポイントに人が現れた。
 しかも二人。

「よし、来たぞー!」
「到着したわ!」

 しかも二人とも露出度の高い装備の猟兵だった。

「……」
「……」
「……」

 ビキニアーマーを纏った人間の少女、美波・蜜香(ブルーメンリッター・f20221)と、ぴっちりとしたニンジャスーツ姿の女型スペースノイド、在原・チェルノ(流星忍姫チェルノ・f06863)は、今まさしく逆壁尻状態のるこると対面した。

「……あのー、助けてください?」
「ま、待って!ちょっと待って……あたしの装備、なんでビキニ鎧なの!?」
「女戦士を想像して『アリスナイト・イマジネイション』を使ったからかな?とても似合ってると思うけど」
「確かに女戦士っぽいけど!けどぉ!」
「助けてください??」

 蜜香の姿は、確かにビキニアーマーだった。いわゆる局部にしか装甲が当てられていない、裸も同然のアレである。
 しかし女戦士としてのイメージは間違ってはいない。何を言おう、アックス&ウィザーズで最も有名な女戦士の猟兵は、ビキニアーマー姿なのだ。

 そんなこんなで、二人はるこるに向き合う。

「……どうやって助けようか?」
「片腕を一人ずつ持って、引っ張ればいけると思うよ!」
「よろしくお願いします……」

 壁に挟まったるこるを救出すべく、右腕を蜜香が掴み、左腕をサイキックでチェルノが動かすことになった。詰まっているのなら、力強く引っ張りだせば抜けるだろうという、戦士らしい脳筋の発想である。
 互いに定位置に着くと、蜜香とチェルノは力を込めてるこるを引っ張りだした。

「そーれっ!」
「ん!」
「んぐぉ!!?」

 ぐいっと引っ張られるるこるの体。バーチャルキャラクターであるため人間よりか多少頑丈にできている体が、二人の力によってぐいぐいと腹部だけ伸びてゆく。つっかえた下半身は、まだ出そうにない。

「もういっちょ!」
「わかった……サイキック」
「ま、まって……一旦止め」
「フルパワー!!」
「全力発動!!」
「止めぇぇおぉ゛おっ!!?」

 生半可な力じゃ出ないと判断した二人は、自慢の怪力と念動力を最大限まで引き出し、るこるを引っ張った。
 ぎゅぅっと狭い岩の穴に締め付けられる下半身。搾られるというより、プレス機にかけられたかのような強烈な圧迫感。出そうで出ない下半身に、彼女は耐えれるのか。

「い、だい……ちょっとストッ、ふぶっ」

 そのまま上半身と下半身が千切れそうだと思いつつ、こちらからもなんとかできないかとるこるが考えた途端、足元にねちょりと異様な感触がした。
 一瞬くすぐられたような感覚がし、思わず噴き出した彼女だが、これが足元だけでなく下半身全体にも行きわたっているのを感じ取った。

「?どうしたの」
「すっ、ひゃっ!すみませっ、早くぬひっ、ひゃぇてっ」
「……あたし、猛烈に嫌な予感がするんだけど」

 チェルノが言葉にした嫌な予感。それは洞窟内に響き渡る粘着音によって、三人も理解する。
 ずちょっ、ぐじゅ……ぶちゅ……。不規則に、迫りくるように響く粘着音。遠くからやってきたそれは、最初は坑道のどこから響いているのか分からなかったが、次第にそれは大きく、分かりやすく耳に届く。
 主に、るこるが嵌っているであろう穴から。

「くひっ!ひぁ……あはははは!!ひぃっひっ!」
「ほ、本当にどうしたの!?」
「蜜香ちゃん、多分もうこっちにスライムが来てるんだと思う!」

 突如爆笑しだするこるに困惑する蜜香は、チェルノの言葉で理解する。
 るこるが嵌っている穴の隙間。そこから赤みがかった粘液が噴き出ており、じわじわと岩肌を塗り替えるように辺りを侵食していた。

「たっ、多分んんっふ……わらひのあひっ!くすぐられへぇっ!ぁっ!!」

 さらに隙間からあふれ出したのは、黒色に染まった水まんじゅうの如き塊だ。バレーボールほどの大きさのそれは僅かな隙間から大量に溢れだし、洪水のように塊の群れを生み出してゆく。
 これが、依頼にあった『黒龍細胞片』なのだろう。かつて帝竜と並ぶ力をもったドラゴンの肉片が、今まさに活性化していた。

 塊が溢れだす勢いは止まらず、息ができなくなるほどくすぐられていた彼女は、一瞬にしてその中へと呑み込まれてしまった。

「っ!こんのぉっ!!」

 状況に驚いていた蜜香は、すぐに意識を切り替えて塊の中へ身を突っ込ませた。強力な怪力で全身を砲弾にし、塊が内包しているであろう粘液に構わずタックルを放つ。
 『アリスナイト・イマジネイション』で女戦士となった蜜香のタックルは、塊を水風船を割るかの如く爆ぜさせ、すぐさま中に取り込まれかけていたるこるの手を取った。

「チェルノさん、後お願いできる!?」
「オーケー。了解されたわ──!!」

 全身に粘液を浴びたおかげか、埋まっていた下半身はすんなりと抜け、蜜香はるこるを抱えて来た道へと飛び出した。
 彼女らが離脱したのを一瞥すると、チェルノは溜め込んでいた念動力を解放。両手に紫電を纏い、躊躇なく塊どもに放つ。

「『サイキックブラスト』ッッ!!」

 二度目の爆発。
 それを最後に、三人は坑道を後にした。次回からは探索どころではない。総力戦になるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『黒龍細胞片』

POW   :    過食
戦闘中に食べた【有機物や生き物】の量と質に応じて【細胞分裂の速度が増して肥大化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飽食
攻撃が命中した対象に【自身の細胞の一つ】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【付着した箇所から細胞が増殖、取り込み】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    食物連鎖
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【侵食し、細胞群で覆わせ眷属】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・◎
・アド/絡◎

■行動
な、何やら大変な目に遭った気がしますが。
気を取り直して、頑張ってみましょう。

【過食】の効果を考えますと、『有機物』が有れば囮に出来るでしょうかぁ。
一度中に入った際に『運べるサイズ』は解っておりますから、小さめの『丸太』等を持参し囮にしますねぇ。
細胞片が近づいたら『FRS』『FSS』の[砲撃]で狙って叩いた上で、倒しきれなかったり、破片等から再生する可能性を踏まえて【乳焔海】を重ね、『乳白色の焔』で焼きますねぇ。

ただ、元は『竜の細胞』となりますと、もしかして食べられたりしますかねぇ?
『おなかの中で増殖しそう』な気がしたり等、色々と不安は有りますが、正直なところ興味が。



 坑道の奥から、うじゃうじゃと湧き出る黒い塊。泥のように粘りの強い濁流が押し寄せ、それらはボールの山のように”だま”を作って増殖し続ける。
 『黒龍細胞片』。かつて討滅された黒龍の残骸らしいが、細胞一つでこれほどの増殖力がある、厄介なオブリビオンだ。

 正直、これを全部……と言われると無理がある。改めて討伐対象と向き合った夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、目の前で増え続けるソレに、両腕に装備された固定砲台型のビット、『FRS』を向ける。

「事前にこういう敵だとは聞いていましたが、これほどとは……!」

 るこるの背面から、『FRS』とは別のビット、ビームシールド展開型の浮遊砲台、『FSS』が八枚飛び出す。
 合計十門の砲門が、迫りくる細胞どもに向けられた。

「放てっ!」

 まばゆい閃光が、細胞どもに直撃する。
 十本のビットから放たれた砲弾は、一瞬だけ細胞どもの中へと沈み、沈黙した。しかしその直後、飲み込んだ細胞どもを一瞬で消し去り、轟音とともにその被害を広げた。爆ぜて吹き飛ぶ粘液と、表皮であろう黒い塊がこちらに飛んでくるが、彼女はすぐさま翻してそれを避ける。

 と同時に、あらかじめ持ってきた丸太を細胞どもに投げた。

「お食べください……その間に、もう一度準備しますので」

 細胞どもは投げられた"有機物”に反応し、爆撃で失った分を補おうと、それに食いついた。
 一瞬で丸太は飲み込まれ、姿を消してゆく。モゾモゾと蠢いていたのが、丸太を食った途端に動きが早まったのを見つつ、るこるはもう一度十ある砲台を構えなおす。

 ちらりと地面を見れば、飛び散った破片や粘液から、小さな黒い玉が生まれていた。再生速度も並大抵のオブリビオンのソレではないらしい。

「……そういえば」

 今はこのような細胞の集合体とはいえ、元は竜の一部だ。となると食べれたりするのだろうか?
 ふと思いついた発想を片隅に、今度はユーベルコードを砲台に乗せて、再度砲弾を放った。

 二度目の着弾。そして爆発し、細胞どもの量を減らす。ただし、今度はただ爆発して終わりではない。爆ぜて生じた炎は乳白色に燃え盛り、細胞どもが増殖する前に焼き尽くし、生命活動を止めるべく火葬させる。
 『豊乳女神の加護・乳焔海(チチガミサマノカゴ・シロキホノオノウミ)』によって放たれた乳白色の焔は、増殖する敵には効果的だったのだろう。細胞どもはるこるに迫るのを止め、焔に苦しみ続けた。

 ちょうど、そんな火葬現場から逃れられた塊が一つ。るこるの前へと転がってきた。

「おぉ、これはこれは……」

 爆発の余波で飛び、ユーべルコードの焔を奇跡的に回避したソレを、彼女は拾う。
 「お腹の中で増殖するのでは?」などの懸念はある。しかし、それよりも興味が湧いたるこるは、おもむろに可食部でありそうな裏側、赤い粘液が滴る肉の部分にかじりついた。

「あむ、ん゛ぶっ!!」

 味は、超が付くほどに苦かった。世界一苦い物質、"安息香酸デナトニウム”を口いっぱいに堪能したかのような、食うに堪えないレベルの苦さだったのだ。
 やべー苦い。そう感じて口から細胞片を引きはがそうとしたが、懸念は現実になってしまった。バスケットボールほどの大きさだった細胞片は、そのままるこるの頭部を覆うように丸呑みにしたのだ。

「んぐぶっ!ん゛ん゛ぅっふぅ゛ん゛んっ!!?」

 口が苦味で支配されたまま、じたばたもがくるこるだが、足元にねちょりとした感触が襲い掛かる。燃やされていた細胞片が、活動再開したらしい。頭だけでなく、足からも。ぐちょぐちょと蠢く細胞の中へ、彼女は吞まれていった。
 泥の中に沈むような。しかし全身はマッサージでも受けているかのようにまさぐられる感覚。それは体外だけでなく、体内までにも行き渡ってゆく。
 もがくことはもうできない。るこるは細胞片に囚われ、そして一つになっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エアリーネ・シルベンスタイン
予想以上に、数が多い……
(でも、この数にも関わらず竜らしき形を形成する様子がない……、量が足りないだけ?それとも、単に殖えただけじゃ竜になれない……?)

どのみち、躾けて従わせるのも無理そうです……(少し惜しいですけど)残さず「掃除」しましょう

坑道内、小部屋での戦闘でしたら背後を取られぬよう地形を利用して《結界術》で守りつつ近付かれる前に《炎属性魔法》、あるのなら亡骸などの何らかの「餌」も纏めて《焼却》します
多分もう「生存者」はいないでしょうし……

そして攻撃が命中したら追撃でUC【バインドチェイン・ライトニング】
移動の阻害や同種への連鎖雷撃でのダメージで、集団ごと足止めしまとめて殲滅します……





 一方その頃。坑道内の別所でも、増殖する細胞どもに対抗する猟兵がいた。
 エルフの女性、エアリーネ・シルベンスタイン(びんぼうエルフ・f26709)は炎属性魔法を使い、なんとか一人で細胞どもの増殖を止めていた。
 油断すれば細胞片の一つを飛ばし、浸食してこようとする。細胞片、という割には過激な捕食行動が目立っていた。

「予想以上に、数が多い……!」

 ガスバーナーの如く焔をまき散らし、エアリーネを吞み込まんと増殖する細胞どもを焼いている彼女だが、いつまでも魔法を使い続けるわけにもいかない。このまま行けば呑み込まれて終わりだろう。敵を圧倒しているように見えるが、追い込まれているのはこちら側だ。
 その証拠に、彼女はゆっくりと後退していた。

(これだけの数にも関わらず、竜らしき形を形成する様子がない……量の問題じゃないのなら、一体何が竜になりえるトリガーなの……?)

 燃やしても燃やしても、それでも数を増やし続ける細胞どもに、そんな疑問が浮かぶ。今はそれどころではないが、あまりの物量の激しさに、別のことを考えてしまうほどに集中力が切れかけていた。
 一歩、また一歩と後ろへと歩く。そんな時、

「っ?」

 背中からトン、と何かにぶつかる。人にぶつかったのだろうか、となれば応戦に来た猟兵か。
 魔法に注ぐ集中力を途切らせないよう気を付けつつ、エアリーネは後ろを振り向いた。

「あの、もしかし──」

 ぶつかった相手は人、の形をしていた。
 全身が細胞片と同じ黒色の表皮で覆われており、つなぎ目のような箇所からは赤い柔毛が粘液をたらしていた。
 うにょんうにょんと蠢く全身。イソギンチャクめいた柔毛。それは、凹凸あるだまで出来上がった、人のように見える細胞片の眷属だった。

「──ぎゃああああああああああ!!!?」

 エアリーネは、すぐさま魔法を向ける方向を細胞どもではなく、細胞片の眷属へと向けた。焔で即焼き消されたソレだが、一体だけではない。
 奇襲を警戒してあらかじめ背面に結界を張っていたエアリーネは、こんな形で眷属と邂逅してしまったことに疑問する。

 彼女は気づいていなかったが、いつの間にか十字路まで後退していたらしい。左右の坑道から、ゾンビ映画のようにふらふらと人型の細胞片が近寄ってきていた。大小違うようだが、それらは皆細胞片に覆われて全く見た目がわからない。

「なっなんでっ!?っ、結界は張ってたのに!」

 既に"生存者”はいないと断定していた彼女だが、こんな形で出会ってしまうとは予想していなかった。
 幸い来た道からは眷属が来る様子がなく、エアリーネは魔法の手を止めてそこへ走りだす。それを境に、細胞片の大群は一気に彼女めがけて流れ込んだ。
 このまま呑み込み、あの人型眷属にさせるつもりなのだろう。当然、彼女はそんなのお断りだ。

「もう、大変なお掃除ですねっ!」

 振り返りざまに、エアリーネは通路を塞ぐように魔力をまき散らす。
 すると流れ込んできた細胞どもが見えない壁にぶつかり、つられて流されていた眷属もそこに激突する。魔力による結界術だ。ちらりと後ろを見て、奇襲はないと確かめた。

 そして彼女は理解した。結界に張り付く粘液、それが魔力を吸っており、徐々に浸食していることに。
 どうやら細胞片が食べるものは、有機物無機物に限らないらしい。魔力という概念さえも食らっている様を見て、結界がいつの間にか破られていたことに納得した。

「……けど、もう終わり!!」

 だから次は、捕食を許さない壁を張る。
 結界を張り替えるように放った『バインドチェイン・ライトニング』は、細胞どもに紫電の拘束を放つ。一ミリも動くことを許さない強烈な電撃は、細胞どもの一個一個を麻痺させ、そして高圧電流に焼かれてゆく。

「……焔より、こっちの方が効果的だったか」

 細胞片のすべてが、柔毛や表皮を同化させて塊となっていたのだ。一個一個に丁寧に麻痺を与える紫電の鎖は、細胞どもの食事を強制的に止めた。
 せめて、巻き込まれた冒険者たちもここで、止まらない食事を終えさせるように。

成功 🔵​🔵​🔴​

在原・チェルノ
蜜香ちゃん(f20221)と一緒にスライム討伐

【第六感】と【聞き耳】で物陰に潜んだスライムの奇襲を警戒しながら蜜香ちゃんと協力して湧き出るスライムを【サイキックブラスト】で焼き払っていく
(だが気づかないうちに体に付着していた粘液が少しずつニンジャスーツを侵食して)
え、ちょっと!勝手にUC解除しないで…って、なにこれ!?
(気がついたら身体中をスライムでコーティングされた姿に)
やだ、手が勝手に…ひゃんっ!
(身体の自由を奪われて自分の身体を勝手に愛撫し始める)
ダメ…どんどん気持ちよくなってきちゃって…
蜜香ちゃぁん…一緒に、しよ?

※◎NGなし・アドリブ&サービスOKです


美波・蜜香
チェルノさん(f06863)と一緒にダンジョンアタック!
スライムは比較的弱いモンスターだから楽勝…
なんて思ってた時期があたしにもありました
どうしよう、どんどん湧いてくるよぉ…

それでも押し寄せるスライムの塊目がけて【ダッシュ】+【ランスチャージ】で突撃し、そのまま【アライアンス・リベンジャー】の燃える拳で焼き尽くす!

それでも全身に飛び散ったスライムはあたしの身体を覆ってスライムスーツになり、全身から与えられるぬるぬるの快感とともに細胞が侵食されて身も心も支配されてそのままチェルノさんと一緒にぬるぬるえっちの虜に…

※アドリブOK・NGなし◎


シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
友達に頼まれて来てみたけど大変な事になってるみたいだね
これ以上事態が悪化する前にきっちり片付けなくちゃね
行くよ、ウィーリィくん!

要救助者はウィーリィくんに任せてボクは細胞片を相手する
取り込まれたらヤバそうだからアウトレンジから熱線銃の【クイックドロウ】+【乱れ撃ち】で焼き払う
撃ち漏らしが近づいてきたらブランダーバスの【範囲攻撃】+【制圧射撃】で細胞片を【吹き飛ばし】ちゃうよ!




ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】

黒龍の置き土産ってところか。
どっちにしろ俺の故郷のA&Wで好き勝手はさせないぜ!

細胞眷属の中にはまだ生存者がいるかも知れないから俺はその救助を担当する。
【聞き耳】でその居場所を察知し、敢えてそいつらの注意を引く事でこっちに誘導し、中の人が細胞片に喰われる前に【幻炎鎮魂斬】で邪心を持った細胞片だけ攻撃する事で引きはがし、そのまま炎の【属性攻撃】を付与した大包丁の【二回攻撃】を【早業】で繰り出し、切り裂いた細胞片を焼き払う。
その繰り返しで助けられる限りの生存者を救出する。
中には取り込まれた猟兵もいるかも知れないからな。



 細胞片の数は少しずつ減少し、残すは最奥の"末端”にいる塊だけとなった。しかし最奥にいるというだけあって、塊となった細胞片どもは、一種のドラゴンのように、巨大な体躯を作り上げようと必死になっていた。
 そんな細胞片どもに、紫電が浴びせられる。

「させないっ!」

 両掌から紫電を放ち、細胞片が合体しているのを強引に引きはがす。『サイキックブラスト』を放った在原・チェルノ(流星忍姫チェルノ・f06863)は、走りながら"末端”の中へと入った。
 広々とした空間の中には、びっしりと細胞片が壁のようにへばりついていた。床も同じく、もはや怪物の胃の中のようにも思える空間に、チェルノはうへぇと声を漏らした。

「これも全部討伐……しなきゃね」
「うん……スライムって、比較的弱いモンスターだと思ってたけど」

 チェルノに続いて、中に入った美波・蜜香(ブルーメンリッター・f20221)もあまりの光景に感嘆を漏らす。しかし側面から飛び込んできた細胞片に対し、二人は即座に拳で対応した。
 燃え盛る両拳。細胞片どもに舐めさせられた苦汁を糧にし、蜜香は細胞片の塊に目を向けた。

「今度は油断せずに、ッ!!」

 調査の段階では、細胞片にやられかけてしまった。だが今度はそうもいかない。
 『アライアンス・リベンジャー』を発動した彼女は、細胞片に覆われた床を蹴って走る。炎が弱点となれば、それを親玉らしき塊へと叩き込む。自らを投擲された槍のようにし、最大火力の炎と拳で、彼女は放つ。

「とりゃあァッ!!」

 ボンッ!!と、塊が爆ぜた。細胞片どもは衝撃でいくつも吹き飛び、室内は一瞬にして蒸し風呂の如く熱く蒸気を生み出した。炎が粘液を蒸発させ、塊を無きものにしたのである。
 あまりの衝撃にチェルノも思わず顔を腕で塞ぎ、蜜香も彼女の元まで吹き飛ばされた。飛び散る熱い粘液と、細胞片どもの特徴であった黒い表皮が空中に舞い、爆発の余波はまだ残っていた。

「……~~~っ、さすが蜜香ちゃん」
「あいたた……多分、これでスライムの親玉は倒せたかな」

 さすがに壁や床の細胞片はまだ残っているが、大方脅威であろう塊は倒した。と、蜜香は確信していた。
 ぬちゅ、という粘ついた音を聞くまでは。

「……ん?えっ?」
「あれ、体が重……いっ!?」

 床にへたり込んでいた蜜香の体に、何かがへばりついていた。赤色の粘液と、ボロ切れのようになった黒色の皮。それらが拘束するように、彼女の体を覆ってゆく。それはチェルノも例外ではなく、足から腰へと、どんどん黒と赤が浸食してゆく。
 気づいた時にはもう遅く、チェルノは即座に『サイキックブラスト』を発動しようとしたが、手も黒色に覆われて不発に終わる。蜜香は既に首から下を全てコーティングされ、引きはがそうと手を動かすことすらできなくなっていた。

「っ、うそでしょ!?みっ、蜜香ちゃ……っ!」
「ぁぐ、ぅ……体が、勝手に……ぃっ!」

 そして二人の顔も、粘液と皮に覆われて、二人は細胞片となんら変わりない姿へと変貌してしまう。体は勝手に動かされ、二人は抱き合うように手足を絡めてゆく。
 あらゆるものを捕食し増殖する細胞片だが、猟兵は"喰えない”と判断したのか、二人を依り代にすることに決めたらしい。必要なのは体だけで、そこに二人がなんであるかは関係ない。互いの個性を剥奪した細胞片どもは、もう一度黒龍を再生させんと残った細胞片を集めてゆく。二人はその中で、ひたすら細胞片の言う通りにしていればいいのだ。

「っと……遅れたか!」

 増殖を再開した細胞片ども。そこに、もう一人の猟兵が現れる。
 スペースノイドの少女、シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)が"末端”にたどり着いた頃には、チェルノと蜜香の姿は細胞片の中だった。チェルノに頼まれてきた彼女だが、手遅れだったらしい。

「これは、まずいね。ウィーリィくん!」
「オーケーだ!まずは二人を救う!」

 シャーリーに続いて、人間の少年、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は炎を纏った大包丁、"三昧真火刀”を手に塊へと飛び出した。
 塊はドラゴンの形を作り、まだぶどうのようにボコボコとした見た目ではあるが、『黒龍』の復活は果たしかけていた。

「俺の故郷でもう一回好き勝手はさせねェッ!!」

 マジックナイト兼料理人の彼は、すぐさま塊の体構造を把握する。『帝竜戦役』で数々の竜と戦ってきた彼にとって、ドラゴンの心臓がどこにあるかはすぐに把握できる。それは不完全な復活を遂げようとしているドラゴンであっても同じだ。
 二人を核に復活するならば、核を置く場所は心臓か脳が適所。よって、他の部位は削ぎ、そこだけにUCを放つ。

「極めた火工と刀工は、誰かの心を救うため!」

 熱い想いを大包丁に乗せ、彼は『幻炎鎮魂斬(セイヴァー・セイバー)』を発動した。ウィーリィは燃え盛る"三昧真火刀”を素早く振るい、さらに一閃を放って着地する。
 瞬間、塊のドラゴンの首と胴部が分断され、残る部位は爆発しながら燃え上がった。だがこれは下ごしらえ。まだ炎を纏い続ける大包丁を、残った首と胴部へ振るう。

「──心臓か!!」

 一秒だけ立ち止まり、ウィーリィは首と胴部から聞こえる音に耳を傾ける。チェルノと蜜香が取り込まれた場所は、心臓だ。そこに大包丁を、今度は針で突き刺すように素早く卸した。
 ぶしゅっ!と粘液が噴き出し、何層にも重なった黒い皮から二人の猟兵が吐き出される。粘液まみれになった二人、チェルノと蜜香が出たのを見て、ウィーリィは「うげっ!?」と声を出してしまう。
 チェルノと蜜香は全裸で、なぜか幸せそうな笑みを浮かべて伸びきっていたからである。

「っ、シャーリー!後で服か布用意してくれ!」
「こうなると思ってたよ!!早く二人を連れてこっちに来て!」

 予想していた事態に頭を抱えつつも、シャーリーは彼に合図をした。壁や床から、細胞片はシャーリーを喰おうと飛びつくが、彼女の『クイックドロウ』はそれを許さない。適格に、一匹も逃さず熱線銃の"シューティングスター”で撃ち落としてゆく。
 一匹でも体にへばりつけば、それだけで取り込まれるのだ。部屋の外から迎撃していたシャーリーは、チェルノと蜜香を抱えたウィーリィーが"末端”を離れたのを見て、もう一つの熱線銃を取り出す。ブラウンダーバス型の"スターボースプラッシュ”を構え、狙いを定めた。

「……後からじっくり、チェルノには話を聞かせてもらうからね!」

 猟兵という貴重な核を失い、それでもなお『黒龍』の形を作ろうと細胞片を集める哀れなドラゴンに向けて。
 海さえも蒸発させる熱を。リミッター解除を行い、彼女は蠢くもの全てに狙いを向けてビームを放った。

 膨大な熱と蒸気を内包した坑道は崩れ、穴という穴を埋めるように岩なだれが起きる。崩落が起きた坑道は陥没し、入り口があった場所には、大きな穴ができていた。
 分かっていることは、もう細胞片は元廃坑の中には存在しない。討伐は──完了したのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ポーションを作ろう!』

POW   :    誰も行ったことの無いであろう場所へ探しに行ってみる。

SPD   :    近隣の森を広範囲で探ってみる。

WIZ   :    新たな材料を使って新ポーションの作成方法を考えてみる。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 というわけで。

「依頼完了、お疲れ様でした。報酬がこちらになります」

 依頼があった冒険者ギルドから多大な金貨、そして事前の予告通りポーションやその材料が、参加した猟兵の元に贈られた。細胞片との戦いは終わり、報酬は貰ったため後は帰るだけだ。

 廃坑を保有していた村は、陥没してできた穴を埋め立てるらしい。今度こそあのおぞましいスライムの巣にならないようにする、という理由で埋めるようだ。
 大穴の底は坑道にあったレールや岩でみっちりと塞がれているが、もしかしたら何か見つかるかもしれない。
 ……もしかしたら、だが。
[プレイングは11/25(水)9時から、11/26(木)8時半までの一日以内とさせていただきます]
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
大変な状況でしたが、何とかなりましたねぇ。
良かったですぅ。

【時珠】で無事に復活出来ましたが、元々『反動』で出る『強い空腹感』に加えて『細胞片』の影響も多少残っているのか、普段以上にお腹がすいていますねぇ。
折角ですから、何か食べたいところですぅ。
『食べ放題』でもあれば有難いですが、流石に難しそうですかねぇ?

そして[大食い]で色々と食べつつ、いただいた『ポーション』や『材料』の目録を見ていたのですが、一つ気になる品が。
『試作品の強化系ポーション』ですかぁ。
何が強化されるか不明ですが、試しに一口舐めてみますかねぇ?
『豊胸』等と言われてなければ、まあ(ふらぐ)。



 報酬を貰った夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は、さっそくギルド近くにあった食事処に入った。依頼達成祝いの食事に来た彼女だが、細胞片を食べたおかげか、空腹感がいつもより強かった。

「さて、いただきます」

 目の前には大量の食事。ステーキにパスタ、ミートパイに巨大魚の塩焼き、ピザにスープ……とにかく頼めるだけ頼んだためか、テーブルを埋め尽くすほどの料理を注文した。ちなみにスープは野菜をじっくり煮込んだものなので、栄養バランスはバッチリである。

 そして、食べ終わるのも早かった。さながら、細胞片が有機物無機物問わずあらゆるものを取り込み増殖していたように、るこるの胃は注文した料理を脂の一滴も残さず平らげてしまったのだ。

「ごちそうさまでした……ふぅっ。ん?そういえば」

 ぽっこりと膨れた腹をさすりつつ、さらに店員にデザートを注文する最中、るこるは報酬で貰ったポーションと、その材料の目録を見て、一つ気になるものを見つける。
 『試作品の強化系ポーション』と名付けられた、赤色のポーションだ。いかにも効果がありそうなその色と名前に、るこるは自然と惹かれてしまった。

「えーと……これですね」

 試験管、もといポーションが複数入った木箱を漁り、るこるはその一本を手に取る。
 明確に"何”が強化されるかは記されていなかったそれだが、もしもユーべルコードを強化するものであれば、今後の依頼で役に立つかもしれない。

「……強化されるのは胸だったり。なんて」

 ちょうど注文した大盛りフルーツパフェを尻目に、彼女はポーションの蓋を開けた。匂いはない、赤色の液体を一滴、匙に垂らす。
 そして、るこるはそれを口の中に入れた。

「あむっ。ん゜ッ!?」

 あぁ、これ数時間前に味わったことのある。クソマズい味──それに気づいた途端、るこるの体に突如熱いものがこみ上げた。
 谷間をさらけ出していた着物からそれは脱出し、ばるんっとテーブルの上に巨大な実がはみ出る。それは置かれたパフェを挟むようにずっしりと置かれ、客の前に曝け出されてしまった。

「…………」
「…………」

 周りの視線が全てるこるの胸元に集中するが、彼女はぷるぷると震えながら首を横に振った。違うんです、犯人はコイツです。と、ポーションを指しながら。
 なお、デザートのパフェは美味しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

美波・蜜香
【よせなべ】
ううっ、二人が来てくれなかったら危ないところだったよぉ…

助けてくれた二人にお礼を言って、報酬(と新しい服)をもらってミッションクリアー!
と思ったら新たなミッションが!
えーっ!?ポーションの中身がわかんなくなっちゃったの?

しょうがないからみんなで味見
一口だけならそんなに危険な事にはならないよね?よね?
ごくり…
(効果:肉体強化系のポーション)
わぁ、なんだか身体に力がみなぎってきた感じ~!
(感じがするだけで実際には胸やお尻がどんどんムチムチになっていく)
え、あの…あれ?
(たちまち衣服が耐えきれずにあちこち破け始める)
ちょ、ちょっとタイム!
誰か助けて~~~!!!

※アドリブOK・NGなし◎


在原・チェルノ
【よせなべ】
ま、まぁ、結果オーライって事で、ね?
シャーリーちゃんだって呑み込まれてみればあたし達の気持ちもわかると思うし
うふふ…
(耳元に息を吹きかけながら妖しく囁く)

お遊びはここまでとして、どうしよっかこれ
(中身不明の四本のポーションの瓶を前に)
飲むしかないかな、うん
そんな訳でノルマは一人一本!
覚悟はいい?いっせいの…せ!
(グイっと飲んで、次の瞬間盛大に噴き出す)
辛っ!何よこれ!?
(瓶の中身は紛れ込んでいたウィーリィくんの調味料だった)

※◎NGなし・アドリブ&サービスOKです


シャーリー・ネィド
【よせなべ】
まったく、ボクたちが来るのがあともうちょっと遅かったら危ないところだったんだよ?
しかも二人とも何か気持ちよさそうな顔してるし!
何があったからちゃーんと話してもらうからね!

(顔を真っ赤にして)ストップストップ!もういいから!

気を取り直してポーションの試飲会
ウィーリィくんは後でお仕置きだからね
(ごくっ)
んっ…何だか身体が熱ぅい…
(飲んだのは媚薬ポーション)
うふふ…ウィーリィくん、おしおきターイムの開始だよ…?
(目にハートを浮かべてじりじりとにじり寄る)



ウィーリィ・チゥシャン
【よせなべ】

黒龍の細胞片は残らず処分して、要救助者二名の救出(とお説教)も完了。
残る問題は、
「俺達四人が貰ったポーションの効能についての説明書を失くした」
事。
どうやら俺が村で買い物してた時にどこかに紛れたらしい。
……ごめん、みんな。

そんな訳で四人でそれぞれランダムで選んだポーションを一口飲み効能を確かめる。
俺のは赤いポーション。
どんな効果なんだこれ?
(※効果はお任せします)



 一方その頃。
 時刻は夜。報酬を貰った残りの猟兵たち、蜜香とチェルノ、そしてシャーリーとウィーリィの四人は、ギルド近くの宿の一室に入っていた。
 四人ということで大部屋にいる彼彼女らは、木箱を囲んであぐらをかく。

「……ごめん、みんな!」

 バッ、と頭を下げるウィーリィ。その横、シャーリーは難しげな表情で彼を見つめていた。
 木箱の中にある複数の試験管、これは報酬で貰ったポーション類だ。しかし肝心なことに、中に入っていたはずのポーションの説明書を、彼が無くしてしまったのだ。

 依頼が終わった後、彼はA&W世界の食材を買おうと村に足を運んでいたが、その際に落としてしまったらしい。木箱を持って要らないポーションや材料の売買も行っていたため、その時にやってしまったのかもしれない。

「大丈夫だって。ボクが覚えてる限りだと、毒とか睡眠とかの類はないんでしょ?」
「そうだけど、売りさばけなかったポーションがほとんど赤色なのが問題なんだ……」

 強化系、ということは朧気に覚えているが、どれがどんな強化をもたらすのかは把握しきれていない。つまるところ、飲まないとわからないという闇鍋じみた状況になっていた。

「そ・れ・よ・り・も!二人はあの時何してたの!?なんか気持ちよさそうな顔してたし!」
「うぅ……それはぁ」
「あ、あはは……ま、まあ?結果オーライってことで、ね?」

 シャーリーの横と、その横。チェルノと蜜香は顔を赤らめて目を逸らした。
 全裸で救出された二人は、報酬の金貨で新しい服を購入したらしい。チュニックを身をくるんだチェルノは、そっとシャーリーの肩に手を置いて距離を詰める。

「なんで気持ちよさそうな顔してたか、教えてあげようか?」
「ふぇ、な、なに」
「シャーリーちゃんだって、あの中に呑み込まれたらあたしたちの気持ちもわかると思うし……」
「さ、細胞片は討伐したし、そんなこと言われたって……」
「……っ!ちぇ、チェルノちゃんっ!」

 何かを思い出したらしい、蜜香がチェルノに掴みかかり、それ以上のことをしゃべらせまいとする。耳元で甘くささやかれたシャーリーはというと、チェルノが言ったことの続きを聞きたそうにソワソワとした気持ちになっていた。
 そんな姦しい時間は、すぐに終了する。

「で、どうするんだ?このポーション……効果がわからない以上、下手に扱えないぞ」

 一本ずつ色を確かめていたウィーリィの声で、三人は改めて木箱に向き合った。
 木箱にあったポーションの残りは四つ。全部赤色で、それぞれに微妙に色味の差があった。

「……確かに、どうしよっかこれ」
「見た限り、微妙に色が違うのがいくつかあった。こっちはオレンジ色が混じってて、こっちはちょっとピンクがかってる。なんかキムチっぽい色のと、普通に赤色のだ」
「全部赤色じゃん!」

 シャーリーのツッコミ通り、全部赤色にしか見えない。が、ウィーリィの鑑識眼の通りならば、それぞれ効果が違うはずだ。
 というわけで、

「それぞれ一本ずつを、一滴飲んで効果を確かめてみないか?」
「味見かぁ」
「あたしはさんせー」
「ボクもやってみようかな」

 蜜香は普通に赤色のを、チェルノはキムチじみた色のものを、シャーリーはピンクがかったものを、ウィーリィはオレンジ色が混じったものを手に取った。
 小皿に一滴たらし、四人は同時にそれを舐める。すると……

「あれ、おいしい?」
「辛ぁあ゛ッ!!」
「甘い……結構いける味だよこれ!」
「……俺のは酸味の強い味だったぜ」

 三人がポーションの味を堪能する中、チェルノだけが火を噴いた。

「ぶはっ!はぁっ!はぁ……っ、これウィーリィの調味料じゃないの!?」
「なわけ……マジだ。じゃあ、残りはそのまま飲んでも、って!?」
「んっ、んく……」
「ぷはーっ!」

 あまりの辛さに舌を出しながら抗議するチェルノだが、彼女を他所に、蜜香とシャーリーはポーションの残りを全て飲み干してゆく。特にシャーリーの顔はまるで酒に当たったかのように赤く、そしてにへらと頬を緩ませていた。
 ウィーリィが察した時には既に遅し。シャーリーは空になったポーション瓶を投げ捨て、彼の肩に掴みかかった。

「……ウィーリィくん」
「っ、ま、待て!二人がいるだろ!な、な……あ!?」
「体に力がみなぎってきた感じ……ぃっ!」

 咄嗟に蜜香に助けを求めようと顔を向けると、そこには異様にチュニックを膨らませた姿の彼女がいた。さながら風船のように生地が伸び、やがて耐えれなくなったのかビリッ!と破け炸裂する。
 丸出しになった素肌に、むっちりと重量の増した体。蜜香はまた全裸になったが、今度はお肉たっぷりのわがままボディになってしまっていた。

「ちょ、ちょっとタイム!あっち見て!」
「ウィ~~~リィ~~~~く~~~~~ん?」
「いやいやいやいや!不可抗力だ!!」

 目の前に彼女がいるというのに、蜜香を見ていたウィーリィに対し、シャーリーはガッチリと両肩を掴んで迫る。瞳に浮かんだハートはしっかりと彼の顔を捉えており、いつの間にかずらした海賊衣は胸元まで剥けて、ウィーリィの視界には見えざるものが映っていた。
 どうにか、どうにかならないのか。最後の希望を、唯一ハズレを引いたチェルノに懇願する。しかし、

「じゃ、あたし蜜香の着替え買ってくるから」
「うへぇ……重たいよぉ」
「待てや!!!!」

 チェルノはムチムチになったチェルノの肩を持ち、部屋を出ていってしまった。出ていく際のしたり顔を見るに、この状況を放置する気満々だったのだろう。
 もう、逃げられない。

 あれだけ騒いでいたはずが、いつの間にか二人きり。シャーリーの顔を見れば、物欲しそうに、そして加虐心にあふれた目つきでこちらを見下ろしていた。
 そっと彼女の手が、ウィーリィの下腹部に触れる。

「……っ!」
「へぇ、ウィーリィくんが飲んだポーションって……うふふ♡」

 獣に押し倒されたかのように、力強く肩を抑えられたまま、シャーリーは体重を彼にかける。このまま彼女は彼を逃がすことなく、湧き出る欲望のままに弄ぶのだろう。
 今にもよだれが垂れそうなほど緩みきった表情を見せ、彼女は耳元でささやいた。

「おしおきターイムの開始だよ……?♡」

 ──部屋から甘い声が響き、それは夜が明けるまで続いた。

 ──そんな隣が忙しそうにしている間。
 別室に移ったチェルノは、たゆんたゆんにお肉が揺れるようになった蜜香をベッドに寝かせたところだった。

「……まだ膨らむ気がするよぉ」
「細胞片に生まれ変わったみたいね。膨らんでるところとか」
「え~~~!冗談でもそれはやだ!」
「ごめんごめん……ねぇ」

 寝転がった蜜香は、チェルノが差し出したものを見る。ピンク色のポーション、シャーリーが飲んだソレと同じものが二本もある。

「これって、もしかして」
「シャーリーちゃんがあんな感じだしさ、それに……」
「……それに?」
「……もう一度、あの時のような一体感……が、欲しくて」
「…………」

 チェルノの言う一体感。文字通り、心も体も粘土のように練りあわされて、混ざりこんだあの感覚。細胞片の核にされた時の快感は、二人にとって忘れがたいものだった。
 つまるところ、彼女らが言葉に表したその時には、既に持ち出されたポーションは空になっていたのである。

 ──二重に響く甘い声。終わらないピンク色の水音。まさしくスライムと戦っている時のように、彼女らは依頼を終えてもなお体を動かし続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月05日


挿絵イラスト