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飲ミ込まレるナ

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン

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#【Q】
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#ハロウィン


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「はっ、はっ、はっ……」
 大量の木々にぶら下がってケタケタと笑い続ける南瓜のランタン。
 常に大量の食材と調理器具が完備されたキッチン。
 そんな物が両脇に並ぶ、先が見えないほど真っ直ぐに伸びる道をアリス達は息を切らして走っていた。
「あっ……」
 最後列を走っていたアリスが足をもつれさせて転ぶ。その音に気付いて、それ以外のアリス達も足を思わず止めて振り返ってしまう。
 その瞬間、道を彩るように脇に生えていた木々の間から赤い物体が飛び出してきた。
「Trick or treat!」
 それはアリス達の頭が包みながら、見た者の背筋が凍りそうな笑みを浮かべながら叫んだ。
「お菓子くれなきゃ……いたずらするぞ!」
 それから間髪入れることなくアリス達の悲鳴が、轟いた。

「アリスラビリンスにて、新しい国が確認されました」
 そこは喋る南瓜ランタンやコスプレ衣装が飛び出す森、あらゆる物が完備されたキッチン、めちゃくちゃ長い行列をするためだけに作られた道など、まさにハロウィンパーティにうってつけな土地となっているらしい。
 だがその情報を語るルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)の表情は晴れない。
 なぜならその場所はオウガ・オリジンが死ぬ前に作った場所だからだ。
「オウガ・オリジンの作った国は『悲劇を作る』ためのもの。そのためオリジン直々に力を与えられた凶悪なオウガ達がそこに住んでいるようなんですよね……」
 しかもそんな危険な場所に何人かのアリスが迷い込んでしまい、すでに餌食となってしまっていることが分かっているという。
「ですが、まだ間に合います。そこで皆様にはアリス達の救助に向かっていただきたいと思います」
 しかし案内出来るのは国の入り口まで。到着してから猟兵達による侵攻が必要となるという。
「この国は中央の広場から放射線状に直線の道が走っており、道と道の間に鬱蒼とした森があります。そのため見た目だけは非常に攻めやすい構造になっています。ですが……」
 この森には道を通ろうとした者の服を一瞬で着せ替えるコスプレ衣装が生息しているそうだ。それこそ早着替え名人も真っ青になるレベルの。
「森から飛んでくるコスプレ衣装の種類は完全に不明。皆様が全く望まないコスプレ衣装も飛んでくる可能性も非常に高いです」
 しかしこの不思議なコスプレを着ているとあらゆる能力が強化されることが確認されている。羞恥心にさえ打ち勝てれば強力なバフとなるだろう。
「その衣装はオウガ達も着てきています。コスプレ衣装に抗いながら戦うよりも、利用した方が良いと考えられます」
 それを突破して中央の広場にたどり着ければこの国を治めるオウガを見つけることが出来るだろう。だがそのオウガは国全体にかけられた魔術によってほぼ無敵となっている。
「しかし対処法はあります。それは『美味しい料理を食べさせること』」
 差し出された料理をオウガは抵抗できずに食べてしまう。例えそれが敵が作った物だと分かっていても。そして満腹になるにつれて段々眠くなっていき、完全に眠らせれば無敵状態は解除されるという。
 そして魔力の恩恵を得られなくなったオウガは非常に脆く、それこそユーベルコード未使用でのデコピン一発だけでも倒せてしまう……との見立てがついているそうだ。
「ただし毒を混ぜ込んでも効果は一切ないこと、相手方も自分の弱点について知っていることを把握しておいてください」
 キッチン自体は中央広場だけでなく森の中や道中にも点在しており、どんな場所でも食材や調理器具は全て完備されている徹底ぷりである。作り方さえ分かっていれば、希望通りの品を作ることは出来るだろう。
 しかし料理さえ見せられなければ眠くならないことはオウガも理解している。猟兵達の作業を無理矢理にでも阻止させることは十二分に予想される。
「肝心のオウガについてですが。ここでは2種類確認されてます。……そして両者ともアリスの頭部に貼り付いて寄生し、体のコントロールを奪う生態を持っています」
 つまり常に人質を盾に取りながら戦ってくる……ということである。
「オウガ達にアリスを道連れに死なすことは何としても阻止してください。以上、説明は終わりです。皆様よろしくお願いします」


平岡祐樹
 祭りの前に厄介者を排除しましょう。お疲れ様です、平岡祐樹です。

 このシナリオは特殊シナリオとなります。2章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。

 第1章ではMSの投じた判定ダイスの出目に合わせた服装で戦っていただきます。内容は「ハロウィンパレード」のページ(https://tw6.jp/html/world/event/016/016_setumei.htm)を参照してください。
 なお「本当はイヤだけど、勝つためにしょうがなく着るんだからねっ!」みたいなプレイングに対してはボーナスが発生します。
 逆に「このような扮装で戦います!」というプレイングは完全に無視され、全く別の衣装に強制的に着替えさせられますのでご注意ください。

 第2章ではキッチンで美味しい料理を作っていただきます。美味しくなくても、気持ちのこもった料理でも大丈夫みたいです。
 なお、オウガは自身の弱点について把握しており、料理の完成を妨害してきます。攻撃しても反撃を試みても国にかけられた魔力によって余裕で押し切られてしまうのでプレイングにはくれぐれもご注意ください。

 なおこのシナリオは10/31までに成功すると「アリスラビリンスでの猟書家戦」に、何らかの影響があるかもしれません。皆様のご協力、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『鬼面蟲』

POW   :    増蟲
自身が戦闘で瀕死になると【宿主の体内で成長した鬼面蟲】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    操蟲
【宿主の身体能力】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ   :    宿蟲
【宿主を捨て、頭部への飛びかかり、腹部】から【対象の喉奥へ産卵管】を放ち、【窒息と脳への侵蝕】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

家綿・衣更着
虫面とは斬新なコスプレっすな(白目)
ていうか虫面が本体ならそっちがコスプレすべきだろっす!

コスプレ衣装、早・着!(コスプレ内容に合わせたポーズと【演技】。内容次第で道端でけろけろ。女装OKアドリブ大歓迎)

くそう、忍びが目立つのはいやっすが、いやっすが勝つため仕方ないんす!(ポーズ)
おいらは体の一部を変化させたストールがあるし!(隠す気はない)

戦闘は『綿ストール・本気モード』発動しアリスを助けられるよう敵の動きを【見切り】鬼面蟲のみを狙ってストール【なぎ払い】。
道連れ阻止に必要なら【化術】で【おどろかし】て動きを止めたり、慣れない服でしくじった【演技】で【だまし討ち】

戦闘後アリス達に【救助活動】



「虫面とは斬新なコスプレっすな」
 白目を剥く家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)の見る先には、鬼の面のような見た目をした虫を頭に貼り付かせてフラフラとした足取りで道を塞ぐアリス達の姿がある。
 その服装はセーラー服やら女中姿やら魔女装束やら多種多様だったが、虫自体には何の布も引っかかっていなかった。
「ていうか虫面が本体ならそっちがコスプレすべきだろっす!」
 そんな魂の叫びを聞き届けたのか、森から飛び出してきたコスプレ衣装が……衣更着の方に飛んできた。
「いや、今の流れならおいらじゃなくって!?」
 思わず突っ込むが、ここは今は亡きオウガ・オリジンがその地に住むオウガがやりやすいように組んだ世界である。こうなってしまうのもある意味では当然なのではないか……と冷静に考え直した。
「くそう、忍びが目立つのはいやっすが、いやっすが勝つため仕方ないんす!」
 逃げる足を急停止させ、虫達の前に躍り出た衣更着はビシッとポーズを取る。
「コスプレ衣装、早・着!」
 それと同時に衣更着が大量の布に揉みくちゃにされる。時折手や足が塊の中から出ては引っ込むのを経て、波が引くようにコスプレ衣装達が森の中へ去る。
 そして残されていたのは一つの宝箱だった。布要素は何処へ。
 しかし虫達にはそんなことは関係ない。閉じ込められているうちに叩き潰そうと、アリス達を迫らせる。
「ぷはっ!」
 しかしその手が届く前に衣更着が立ち上がる。箱が壊れたのではない、動こうとしたら元から付いていた線に合わせて割れたのだ。
 いつもの忍び装束から、箱を分解したような見た目の鎧装束となった衣更着の手にストールが戻ってくる。
「な、なんか分からないっすけど、動けるなら! 『打綿狸の本領発揮、誰にもこの綿は捉えられないっす!』」
 首から垂れる鍵穴を模したネックレスを揺らしながら、ストールでアリス達を端から薙ぎ払う。
 そして右下から左上へと振り抜かれたそれに掬われる形で宙を舞った虫の上方に飛びつくと、続け様に叩き落とした。
 虫達が地面に出来た凹みの中に緑色の液体を滴らせながら痙攣する中、ストールがかすっていただけの虫達も限界が来て気絶する。
 綺麗に着地した衣更着は意識を失っても頭から離れない虫の足を折る勢いで強引に引っぺがす。そして足以外の拘束方法を見て顔色を変えた。
「こいつら産卵管を喉に!? ……ごめんなさい、背に腹は変えられないっす」
 どこかの映画で見てしまった、腹を食い破って出てくる怪物の姿を思い出した衣更着はアリス達を救うため、その口に自分の手を突っ込ませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

髪塚・鍬丸(サポート)
「御下命如何にしても果たすべし
死して屍拾う者無し」

【人物】
時代劇に出て来る遊び人の兄さん風の、飄々とした言動の人物です。
正体は抜け忍です。基本的には任務の為なら手段を選びませんが、そういう殺伐とした生き方を嫌って逃亡した為、残虐非道な行動だけは避けます。

【行動】
情報収集時は、出来るだけ状況を楽しみつつ、忍者時代の技術を活かして行動。
戦闘時は、忍装束を纏い忍者として気を引き締めて戦います。
【早業】の技能を活かし、手持ちのユーベルコードから、適切な能力で行動します。
連携、アドリブ感激です。



「任務了解、だ……だが」
 そう言って髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は苦笑いを浮かべつつ、正面に広がる森に視線をやる。
 普段から忍装束を様々な場面に合わせて切り替えるということはしてきた。しかしそれをひん剥かれて、別の物を強制的に着させられるというのはあまり好ましくないことであった。
 だが、虫に喰われる少女の存在を聞かされ、見て見ぬふりをしてしまうのも忍びないことであった。
「まぁ、頑張るとしますか」
 そう言って、鍬丸が長い一本道に足を踏み入れると同時に森の中から何かが飛んでくる。
 敵の攻撃かもしれない、と反射的に蹴り飛ばそうとしたが返ってきたのはぼふっとした柔らかい感触。
 その感触の主はふっ飛ばされることなく鍬丸の足に絡みつくと、そのまま引っ張り込んで体勢を崩させる。
 反撃をしにくい状態にした所で、追撃とばかりに大量の布が鍬丸にのしかかってその体を飲み込んだ。
 その騒ぎに気づいたのか、虫もアリスの体を操ってその布の山に向かって走ってくる。
 そして手に握った箒で布ごと殴りかかろうとしたが、山の中から突然伸びて来た手に受け止められた。
『……天魔覆滅』
 そしてそのまま箒が折られて地面に転がる。残った柄を慌てて引っ込めつつ距離を取ったアリスをよそに、布の中に出来た暗闇から見えたオッドアイからは血の涙が流れていた。
「見せてもらおうか、俺に着させられたコスプレとやらを!」
 布の山が内部から爆ぜるように空へ吹き飛ばされ、中から飛び出した者がアリスの懐に滑り込む。
 そして丸見えになった腹部……ではなくアリスの顔面を覆い隠している虫の正面の目に手裏剣の刃を突き刺した。
 虫が傷をアリスの手で押さえながら背を逸らし、悶え苦しむ一方で、潰される間際に映し出された自分の姿を見た鍬丸はまじまじと自分の装束を眺めていた。
 真っ白な袈裟と篠懸に、頭には多角形の小さな帽子のような物を被せられ、これだけではただの山伏である。
 だがその背中には巨大な翼が生え、腰にはヤツデの葉の形をした団扇がぶら下がっていた。
「……よりによって、本当に天狗になる奴がいるか」
 長い鼻を生やされる羽目にならずに済んだかと作り物の翼を弄っていると、虫の痛みを伝染されられて甲高い声をあげていたアリスの声が止む。
 視線を戻せば、反った体勢で気絶したアリスがそのまま後ろ向きに倒れようとしていた。
 幽鬼の如き神出鬼没の瞬間転移能力でそれを受け止めた鍬丸はアリスの頭に食い込んでいる虫の足を切り捨て、解放させる。
 その痛みで息を吹き返した虫が手の中で暴れ出したが、鍬丸は無言で握り潰した。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正(サポート)
※サポート不要の場合は却下でお願いします。

「戦働きこそ武士の本領――参る」

◆キャラ指針
サムライエンパイア出身。
実直で真面目な性格の青年武士。

どんな敵にも怯まず、侮らず。全力を尽くして対峙します。

本人の性格的に真っ向勝負を好みますが、必要なら他猟兵の支援に徹したり、一般人がいれば救助や保護を優先します。

◆戦闘
接近戦では剣術や組討、遠距離なら弓を使用。
羅刹の【怪力】と、武術稽古で培った【見切り】を活かした戦法が得手。

状況によって味方や一般人を【かばう】盾となったり、愛馬に【騎乗】もします。

UCは相手に応じて適切なものを。

◆備考
アドリブ、連携歓迎。
悪事や不正、他猟兵への迷惑行為等はNGで。



「こちらでは、あの身の毛のよだつ仮装が無いことを祈るしかありませんね……」
 徳川家と仇なした武将由来の3点セットの悪夢が記憶に新しい鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は吐いた息を震わせながらハロウィンの国にある森を開拓して作られた真っ直ぐな道を見やる。
 そこには虫に取り憑かれ、自らの意志を失わされた哀れなアリスの姿があった。
 しかし死んでいるわけではない。まだ、間に合う。
「戦働きこそ武士の本領――参る」
 アリスを救うべく足を踏み出した瞬間、その身を押し留めさせる布の群れが森の中から放たれる。
 その布が触れた瞬間、自分の意思関係なく、着ていたはずの甲冑と陣羽織がはだけ落ちる。
 しかし裸にはならず、新しい服が景正の身を包んでいた。
 それは真っ黒に染められた西洋式の甲冑。顔を覆う兜によって視界が狭まったが、刀を抜き振るうのに支障は無い。
 一閃された瞬間に、実力差を見誤ってアリスを打って出させた虫の上半分が宙を舞い、まるで噴水のように体液が追って出る。
 地面の上で痙攣する虫を踏み潰した景正は、指示する物が消えたことで倒れ伏したアリスの顔から残りの体を剥ぎ取ると抱き上げた。
「大丈夫か?」
「ん、うう……」
 景正の呼びかけに、閉じられていたアリスの目が震えてから開く。そして弾かれたように体を起こした。
「こ、ここは、あなたは」
「安心してください。皆さんを助けに来ました」
「そうなんで……」
 ホッとしたのも束の間、アリスが急にえずきだす。
「うっ、おぇぇぇぇ……っ!」
 そして顎を上げるとその喉元に瘤が姿を見せ、不気味に蠢きつつ大きさを増しながら、喉の中を上へ上へと移動してゆく。
 そして目一杯に開かれた口から新たな虫が飛び出した。
 兜の中で息を飲んだ景正はすぐに気を取り直し、半身をアリスの体内に収めたまま消化液と涎で濡れた脚を動かす虫の体を斬り裂いた。
 そしてすぐさま口内に残った虫の体を引き抜いて、その辺に投げ捨てる。
 全身に残った嫌悪感から、その場で四つん這いになったアリスは涙目で荒い呼吸を繰り返す。そしてさらに吐こうとしたが、出て来るのは呻き声と透明な糸をひく水分のみ。
「どうしましょう……虫下しの薬は……」
 まさか虫畜生がこんな隠し球を切ってくるとは思っていなかった景正は加勢に警戒しつつも、同じ事が繰り返されないことを祈るしか出来なかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミント・キャラメル
頭を虫に咥えられていたらハロウィンも楽しめないですよねぇ。

コスプレは何でも着ますよぉ。
「かわいいのがいいですねぇ☆」
「……かわいくないですねぇ」

「宿蟲」に対し「サモニング・ガイスト」ですぅ。

「ユーベルコード・イリュージョン☆ ワぁン・ツぅー・スリぃー! 古代の戦士さぁーん☆」

はわっ、虫さんが跳んできたですぅ!
わたしも取り付かれるわけにはいかないので、古代の戦士さんに槍でサクッとキャッチしてもらいますぅ。

回復系のことは何もできないですけど、虫さんから解放された「アリス」の皆さんを介抱してあげたいですねぇ。



 猟兵であると同時に1人のアリスとして、多くの不思議の国を彷徨い、美しい地獄を生き延びたミント・キャラメル(眠兎キャラメル・f25338)にとって、この程度の障害は大して苦にはならない。
「かわいいのがいいですねぇ☆」
 それ故に、何が来るのだろう、とワクワクしながらミントは大人しく森から襲いかかってきた生地の餌食となった。
 そうしてもみくちゃにされた末に着せつけられたのは頭と手以外の肌を覆い隠すシンプルな白黒の横縞の服に右の足首に繋がれた足輪と鉄球。
 これはどこからどう見ても囚人服であった。
「……かわいくないですねぇ」
 そう言ってミントは右足をゆっくり振り上げてみる。拘束具は本物ではなくどうやらおもちゃだったらしく、鎖は鳴らず鉄球も簡単に持ち上がった。ただ、とにかく鬱陶しくて堪らない。
 しかし外そうにも足輪を固定している鍵は近くに見当たらなかった。
 そんな不満そうに口を尖らせているミントに気づいた虫がアリスを操作させ、ヨタヨタとおぼつかない足取りで近づいてくる。
 その気配にミントが顔を向けた瞬間、虫は次の寄生先にすべくアリスの頭から外れた。
「はわっ、虫さんが跳んできたですぅ!」
 硬そうな脚でアリスを踏み台にして跳びかかってきた虫はアリスの体液が滴り落ちる産卵管をミントの口に向ける。
「ユーベルコード・イリュージョン☆」
 それに対してミントは目を見開きながらも頭に左手を伸ばしたが、本来あるべき帽子は布に引っぺがされていて空振ってしまった。
「……ワぁン・ツぅー・スリぃー! 古代の戦士さぁーん☆」
 所在なげになった手を誤魔化すように声のボリュームをいつもより上げながらミントは顔の横で拍手を打つ。
 すると鋭い牙が生えている口を開けていた虫に向けて何も無かった真横から槍が突然伸びてきた。
 突然の攻撃を、羽根の類が無く空中では慣性でしか動けない虫に避けられるわけがなく、硬い装甲を紙のように貫かれる。
 切り落とされなかった虫は脚をバタつかせながら痙攣し始め、動きを止めると同時にそのまま消失していった。
「頭を虫に咥えられていたらハロウィンも楽しめないですよねぇ」
 回復系のことは何もできないが、虫から解放されたばかりのアリスを介抱すべくミントは鉄球を蹴りながら進んでいく。
 うつ伏せに倒れたまま微動だにしないアリスの頭には変な凹みが生じていた。虫に強い力で掴まれ続けたことで出来てしまったのだろう。
「でも、血は出てませんねぇ。ギリギリ、間に合いましたかぁ」
 脳を弄られてさえいなければ何とかなる。ミントは意識を取り戻さないアリスを起こすべく、呼び出した戦士に体を持ち上げさせてから思いっきり背中を叩いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴木・志乃(サポート)
鈴木です。よろしくお願いしますね。

DS生まれCF育ちです。
皆が幸せな世界になったらいいのになァと思って、戦ってます
単純な火力よりかは光の鎖を使った捕縛とか
トラップ使った搦手が得意ですね
高速詠唱で幻影を作ることも多いかも

劇団に所属してて、CFでは配信者やってます
面白いことなら大体好きですね
歌、踊り、演技ならそれなりに出来ますよ
敵を騙す為にわざと怪我を負ったりします
自分が傷つくのは厭わない方かもしれません

人の笑顔の為なら結構無茶します
必要ならシリアスもネタもカオスもどんとこい
ただし公序良俗に反する行動は、依頼達成の為でもしません



 眼前に広がるのは、入った者全ての服を着せ替えるという、変な布や衣装が跋扈する魔の森。
「キマフュのみんなが聞いたらこぞって飛び込んでいくんだろうなぁ……」
 説明を聞いた瞬間に怖がるどころかむしろ喜び勇んで森に突撃していくキマイラ達を脳裏に思い浮かべながら、鈴木・志乃(ブラック・f12101)は半笑いを浮かべつつ、ハイライトを失った目で遠くを見つめていた。
 楽しいことは大好きだし、パフォーマンスへの情熱は一切尽きてはない。コスプレも必要とあらばする。
 だが、絶対に似合わない衣装も容赦なく飛んできかねないとはどういうことか。普段なら絶対に着ないような衣装をあてがうことに快感でも覚えているのか、それとも自分を嫌がっている相手の様子を見て興奮する変態なのか。正直進んで関わりたくはない。
「でもな、でもなぁ……」
 しかしそんな森を切り拓いて作られた道には虫に意識を奪われ、操り人形と化しているアリス達の姿。このまま放置していれば、アリスは死ぬまであの虫の苗床として生かされることとなる。
「こういうのを見せられて、無視できるほど私の性根は腐ってねぇんだわ」
 せめて動画の一発ネタ程度には使えそうな服が来てくれることを祈りつつ、志乃は一歩踏み出すとその歩調を早めていく。
 その行く手を阻むかのように、布が森から迫り出して壁のように広げられる。そこを○×クイズの壁の如く突き破った志乃の体は黄色と茶色で構成された、短い毛皮に覆われていた。
「これ……裸、では無いな! とにかくヨシ!」
 耳と尻尾も完備されたまるでトラネコのような姿にさせられた志乃は思わず声を上げながらも全身から光を放つ。
 その光を正面から浴びてしまった虫は抵抗する間もなく睡魔に襲われ、アリスごと地面に崩れ落ちた。
 敵を完全に無力化できたところで志乃は改めて自分の全身を見回してみる。
「着ぐるみ……というより全身タイツに毛を乗せてる、のか? これなら、まあ、普通に歩ける分まだいいわ」
 ゲテモノが来なくて良かったと安堵しつつ、志乃は未だにアリスの頭に引っ付き放しの虫に手を伸ばす。
「それより……いつまでくっついていやがんだ虫野郎。この子の服と致命的に似合ってねぇぞ」
 睡魔に負けて力も抜けた虫の体は簡単に外れた。おそらく虫もアリスも外されたことに気づいていないだろう。
 それを全力で地面に叩きつけた志乃はダメ押しとばかりに猫の脚を象ったブーツで踏み潰した。

成功 🔵​🔵​🔴​

アニエス・ベルラン
…中々趣味が悪い恰好をしているね。虫面とはね…まあいいけど
さあ偉大なる魔女様のお通りだよ
オウガたちよ、ぼくの崇高な魔術に恐怖するがいいさ

って、なんだいこの恰好は!?
く…恥ずかしい…が、着替えている時間も惜しいし、仕方ない…!

相手は料理を食べて満腹になると弱体化するんだったね
ならば相手を【誘惑】しつつ、この大量のシュークリームをプレゼントしてあげようじゃないか
本当は戦闘後に自分一人で楽しもうと思っていたけど仕方ない…敵を倒すためには仕方ないんだ…!

ああもう!段々腹が立ってきたよ!
【魔力溜め】【高速詠唱】!
『水底への手招き』によって押し流されるがいいさ!
ぼくのシュークリームを食べた罪は重いぞっ!



「……中々趣味が悪い恰好をしているね。虫面とはね……まあいいけど。さあ偉大なる魔女様のお通りだよ。オウガたちよ、ぼくの崇高な魔術に恐怖するがいいさ」
 そう自信満々に名乗りをあげたアニエス・ベルラン(自称知識人の幼い老婆・f28971)も容赦なく布地の犠牲となった。
「ぷ、ぷはっ、一体何が……って、なんだいこの恰好は!?」
 ひん剥いた目の向いている先に見えたのは昔懐かしい体操服。ブルマではなかったものの、胸には「1 - K あにえす」とデカデカと書かれた布が貼り付けられていた。
 そんな子供っぽい姿にアニエスの顔はあっという間に髪と負けず劣らずの真っ赤っかになった。
「く……恥ずかしい……が、着替えている時間も惜しいし、仕方ない……!」
 だが視線を前に戻せば、早くもアリスを乗り捨てた虫達が迫ってきている。おそらく見た目だけで判断して汲みやすいとでも思ったのだろう。ここで脱いで襲われたら、下着姿でフラフラする痴女の出来上がりになってしまう。
 だからこそ、この姿のままアニエスは戦うことを決意した。しかもこちらには事前に知らされている情報がある。
「確か料理を食べて満腹になると弱体化するんだったね? ならばこの大量のシュークリームをプレゼントしてあげようじゃないか!」
 本当は戦闘後に自分一人で楽しもうと思っていた品だが、敵を倒すためには仕方ないとばかりに秘蔵のシュークリームを一気に放出する。
 大量の甘味を前にして、虫達は貪り喰らい始めた。
 品ごとの歯応えやクリームを1ミリも味わおうとせず、シュークリームをシュークリームで流し込み、飲み込みきれないほど口いっぱいに頬張っていく。
 そんな餓鬼のような有様に、アニエスの堪忍袋の尾が千切れ始めた。
「ああもう! 段々腹が立ってきたよ!」
 楽しみにしていたシュークリームを適当に消費されたことに対する怒りが魔力に変換され、アニエスの体に蓄積されていく。
 そしてそれが威圧感として顕現したところで、虫達はようやく注目をシュークリームからアニエスに戻した。
「『我が水に飲まれ、己の無力を知るがいい』…… ぼくのシュークリームを食べた罪は重いぞっ!」
 顕現されたクリスタルから放たれた水流が食べかけのシュークリームや意識を失っているアリスをスルーして、雰囲気に飲まれた虫達のみを一気に押し流していく。
 相手が攻勢に出たことに遅ればせながら勘付き、愚かにも恐怖心を得なかった虫が地面を蹴ってアニエスに迫り直す。
 しかし不機嫌真っ只中のアニエスは表情を全く変えずに杖のフルスイングで、それを水流の中に叩き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『クマずきんちゃん』

POW   :    心細いクマずきんちゃんは猟兵に抱きついた。
【背骨が折れるほど強力なアリスの抱きつき】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    しかし、頭巾は装飾だった。
防具を0.05秒で着替える事ができる。また、着用中の防具の初期技能を「100レベル」で使用できる。
WIZ   :    猟兵さんはアリスの仲間ですよね?
敵を【自身の意思とは関係なく怪力】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 虫達を一掃し、寄生されていたアリス達を解放した猟兵達は道に沿って進み、広場に集合する。
 そこにはクマの頭巾を被ったアリスがテーブルの上に座って足をブラブラさせていた。
「Trick or treat!」
 声が虚ろな表情を浮かべるアリスの口からではなく、頭巾から聞こえてくる。
 愉快な仲間かヒーローマスクに似た性質を持ったオウガは自分の国を侵略してきた敵達に向けて、ボタンで出来た目を光らせた。
「お菓子くれなきゃ……いたずらするぞ!」
家綿・衣更着
「アニエスさん料理食べて弱体化はこっちっす」
知り合いの勘違いに涙…あと似合ってるっすよ(目逸らし)

「さあ、ハッピーハロウィンっす!」
妖怪煙で煙幕を張って【迷彩】し、【化術】で【残像】を作り出したり【化術】で【おどろかせ】たり【催眠術】で敵を幻惑。
『キャバリア憑依の術』で妨害を妨害し、カクリヨ産駄菓子を【投擲】し食べさせ時間稼ぎ。

その間に【料理】。
鍋に水、バター、油を入れ沸騰。篩った薄力粉をよく混ぜ溶き卵を加えて混ぜて生地に。
絞り袋で生地を絞り出し、オーブンでシュー生地を焼き上げる。
焼いてる間に作ったクリームを中に絞り、粉砂糖をかけてシュークリーム完成っす!
オーガもアニエスさんも召し上がれ!っす


アニエス・ベルラン
衣更着君(f28451)と同行

シュークリームもなくなってしまったし、ぼくは料理は得意というわけでもないし…
ここは時間稼ぎに徹して、衣更着君に安全に料理を作ってもらおう
今回ぼくは囮だよ。相手を【誘惑】しておびき寄せようか
ほらほら、こっちにいるのは可愛らしい魔法使いだよっと

魔法を【高速詠唱】…『ミゼリコルディア・スパーダ』で攻撃するよ
君らにこの複雑な動きを見きれるかい?
…効かないのは承知しているけれどね。ただ…こちらに注意を向けられればそれで十分だ

おや衣更着君、料理は出来上がったのかい?
…そ、それは、シュークリームじゃないか!
わざわざぼくのためにチョイスしてくれたのかい?ありがたいね
ああ…美味しい



「く……くく……」
「何だいミミック衣更着君? 言いたいことがあるならきちんと言ったらどうだい」
 笑い声と思わしき声を漏らしながら目を顔ごと逸らした衣更着は肩を震わせる。その様子にアニエスは眉間に皺をよせつつ問い詰めにかかっていた。
「に……似合ってるっすよ……」
「ああ、それはよかったよ!」
 明らかに不機嫌なトーンで返したアニエスの注目から逃げるためか、ガタガタぶつかり合う音をたてながら衣更着はしゃがみ込む。
 たったそれだけで宝箱の姿になった衣更着の姿にアニエスは目を細めた。
「……羨ましいな。ぼくのと違って面白い使い方が出来るなんてね」
「Trick or treat! お菓子くれなきゃ……いたずらするぞ!」
 その背後から何かが大声で叫びながら走り寄ってくる。素早く声の主から距離をとったアニエスが宝箱の隣につくと、衣更着は両腕を上げることで顔を覗かせた。
「あれが例の、っすね」
「ああ。あとそれと、さっき虫で試したんだが、結構な量を食わせたのに寝なかった。だから」
「え? アニエスさん、料理食べて弱体化はあいつだけっす」
「へ?」
 衣更着の指摘にアニエスが固まり、2人の間に何とも言えない沈黙が流れる。
「じゃあ、なんだ? ぼくのシュークリームは、食べられ損だった……ってこと、かい?」
「そ……そうっすね……」
 地味にショックを受けている様子のアニエスをどう慰めようか悩んでいると、オウガは足で地面を深く抉って首を傾げた。
「猟兵さんはアリスの仲間ですよね? なら、僕らの仲間になってよ!」
「絶対にお断りっす。……アニエスさん、ちなみにまだ残ってたりはします?」
「いや、全部食わせちゃった。あとぼくは料理は得意というわけでもない……」
「分かったっす、ならおいらが。その代わり……」
「言われなくても分かってる。衣更着君が安全に料理を作り終えるまで時間稼ぎに徹してやるさ」
「お願いします。あと、助っ人? もお貸ししますっす」
「ねぇー、僕の言ったこと聞こえてるー?」
 小声で行われていた相談に、オウガが痺れを切らして近づいてくる。衣更着は跳び上がって立ち上がると箱の中に隠しておいた妖怪煙を取り出した。
「さあ、ハッピーハロウィンっす!」
 煙幕が張られ、一面が白色に染まる。オウガが辺りを見回していると、煙幕を切り裂くようにトンビのように尖った鼻先を持つ白いキャバリア「テングリーフ・ホワイト」が飛び出してきた。
『誰も乗ってないのに動くキャバリア、これぞ狸憑きの秘術っす!』
 テングリーフ・ホワイトは槍を持っていない方の手の中にあった物をばら撒く。そのうちの1つを拾い上げたオウガのボタン製の目が光り輝き始めた。
「だ・が・し・だー!」
 その間にキッチンに滑り込んだ衣更着は鍋の中に外で放置されていた水やバター、塩を素早く入れて火にかける。
 バターが溶けてきたら火を止め、篩った薄力粉を加えてから再び火をつけて混ぜ始める。
「他には……ってあれ? 消えちゃった」
 幻影を掴まされて困惑するオウガの声を聞きながら、鍋底に薄く膜がはり始めたタイミングで火を止め、生地の素に溶き卵をちょこちょこ加えながらさらに混ぜる。
「もー、駄菓子どこー? って、あれー? あなたはー?」
「ほらほら、こっちにいるのは可愛らしい魔法使いだよ、っと」
 木べらからゆっくりと落ちる程度にまでの固さになったところで絞り袋へ入れ、クッキングシートを敷いた天板に等間隔で絞っていく。
 そして形を整えて霧吹きを使って水を吹きかけてから、オーブンに叩き込むとほぼ同時に、アニエスは魔法の剣を浮かび上がらせていた。
「君にこの複雑な動きを見きれるかい?」
「えー、僕わからなーい!」
 幾何学模様を描きながら迫る剣が当たってもアリスにもオウガにも一切の傷がつかない。それを良いことに、オウガは自分から剣の群れに突っ込んでいくと強引に掴んでへし折り始めた。
「……効かないのは承知しているけれどね。ただ……こちらに注意を向けられればそれで十分だ」
 剣が折られるたびに響く音を聞きながら、扉を開けないままオーブンの温度を少しだけ下げた衣更着は氷水で冷やしたボウルの中に生クリームとグラニュー糖を入れて根気よく混ぜる作業を再開させる。
「しかし、ここまで簡単にへし折られるのを見せられるっていうのは、なかなかこう、心にくるものがあるね」
 焼き上がって膨らんだ生地の粗熱を取り始めた衣更着が泡立て器をクリームから離す。最後までくっついていたクリームはしっかりと角を立たせた。
 ほんのりとまだ温かい生地をひっくり返した衣更着は出来たばかりのクリームの注ぎ口を突っ込まれて絞り出す。
 そして最後に冷蔵庫の中に入れた頃には魔法剣が100本を切り始め、目つきが厳しくなる。
「出来たっす!」
「おや衣更着君、料理は出来上がったのかい?」
 そして最後の1本が折られたタイミングで響いた言葉を皮切りに、煙が薄まっていく。内心ホッとしながらアニエスはその声がした方を向き、目を大きく開いて固まった。
「……そ、それは、シュークリームじゃないか!」
 粉砂糖で表面を白く飾りつけたシュークリームの山が鎮座している。それに気づいたオウガは剣を放り投げて一目散に跳び寄った。
「わざわざぼくのためにチョイスしてくれたのかい? ありがたいね」
「いやぁ……あんな絶望的な顔をされてたら……。でもいっぱい待たせて申し訳……」
「大丈夫だ、このぼくならそれだけの時間を稼げると踏んでくれたんだろう?」
「ん〜サクサクフワフワのシュー生地と滑らかなクリームがベストマッチしてて、美味しー! やっぱり既製品より出来立て手作りだよねー!」
 大量にあったはずのシュークリームの山が視線を逸らしていたうちにどんどん丈を失っている。顔をまた青くしたアニエスに衣更着はあらかじめ別によそっておいたシュークリームの皿をそっと差し出した。
「ああ……美味しい」
 緊張によって疲れ切った心と体に、その甘さは染み渡るようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リノス・アバーテ(サポート)
人間のスカイダンサー×シンフォニア、20歳の女性です。
歌と舞を愛し、猟兵としてはそれを攻撃へと転じて戦います。
人を揶揄うのが好きで、ふざけた事を言っては相手の反応を楽しみます。
敵に対しても同じテンションのままです。


 ユーベルコードは邯鄲の夢を最初に使用し、味方の戦闘力を上げられるようにします。
その後は六波羅蜜での治癒を中心に、適宜攻撃もします。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


夜桜・翡翠(サポート)
 神のブレイズキャリバー×神器遣い、37歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、~君、です、ます、でしょう、でしょうか?)」、演技時は 上品に(わたくし、~殿、です、ます、でしょう、でしょうか?)

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


二天堂・たま(サポート)
ワタシは流血を伴わない攻撃手段が主だ。
武器:ケットシーの肉球による“負の感情浄化”や、UC:常識を覆すピヨの波動によるスタミナ奪取を多用する。

直接触れないような相手(体が火や毒で覆われている等)の場合はUC:アルダワ流錬金術を応用した攻撃が主力だ。
(火に覆われているなら水、毒液で覆われているなら砂嵐等)

しかし実際には直接的な戦闘以外の方が得意だな。
ボビンケースの糸を使った即席の罠の用意、料理や情報収集や掃除。
UC:親指チックで呼びだした相棒による偵察と、同UCによる居場所交代(テレポート)で潜入・解錠して味方の手引きとかな。

もふもふが必要ならなでても構わんぞ。UCで呼んだ相棒達(ひよこ)もな。



「料理か。ならばワタシの出番だな」
 そう頷いたチャイナ服姿の二天堂・たま(神速の料理人・f14723)の前には大量の食材と調理器具。
 試しに包丁を一つ手に取ってみれば、まるでずっと昔から扱ってきた物かの如く手に馴染んだ。この分なら時間のロスはあまり無いであろう。
「この国に巣食うオウガの最後の晩餐、腕によりをかけて作らせていただこうではないか!」
 そんな二天堂の姿を、遠くからシュークリームの山を食べ尽くしたオウガが取り憑くアリスの口からはダラダラと涎が垂れていた。
「美味しそう美味しそう、仕込みの時点で美味しそう……もう待てないや、食べさせろー!」
「あら、お行儀がなってませんね?」
 そう言って走り出そうとしたオウガは後ろから突然かけられた言葉に動きを止める。
 振り返ってみれば、クラゲのようなフワフワのドレスに身を包まされたリノス・アバーテ(揺蕩う哀傷・f03293)が使われていない調理台に腰掛けて、握り拳で口元を隠しながらクスクスと笑っていた。
「そんなクリームでベタベタのお顔で……私が見つけたお船みたい。誰にも拭いてもらえなくて、痛んで、ボロボロになっちゃうの」
「えー、僕についてないからいいんだよー。この子はどうせ使い捨てなんだから!」
 食事に向かう気概を損ねられたことに怒ったのか、対象を移して跳びかかってきたオウガを前にして、リノスは鈴を鳴らす。
『一時の夢に耳を傾ければ、それは真の力へと…』
 まるで波のさざめきのように音色が響く中、太陽の光が何かに遮られてオウガのいる辺りが暗くなる。
 気になって上を向いてみれば、無骨な鉄塊の如き大剣を振りかぶる小柄な女性の姿がそこにはあった。
「うわわわわっ!?」
 受けても大したことは起きないと分かっているからか、オウガは驚きながらも一切避けようとせず頭で受け止める。
 結果、フワフワな頭巾に跳ね返される形となった剣は本来の重量通りに近くの地面に突き刺さった。
「ありがとう、君の鈴の音のおかげで居場所が分かったよ……でもさ」
 剣を引っこ抜いた夜桜・翡翠(WordDestruction・f31145)は不満そうに口を尖らせる。普段黒一色でシックにまとめているはずの服装は蛍光色のパーカーに穴空きジーンズといったややパンクな物に変わっていた。
「この世界はいったい何なの? こんな変な服無理矢理着せられてさ」
「この場所に住む愉快な仲間さん達はいたずら好きだそうですから、ここに呼ばれちゃった以上は大人しく受け入れるしかないんじゃないですかー?」
 嘲るように笑い続けるリノスを睨みつけた後、翡翠は大きなため息をつく。
「ねぇ、あなたも僕の邪魔をするの? ……なら、分かってるよね?」
 そんな視線を逸らしていた間に近づいていたオウガは細腕からは想像も出来ない程の馬鹿力で翡翠の体に抱きつく。背骨が折れるような強烈な痛みに翡翠は喘ぎながら、別の剣を取り出して服ごと自らの太ももにそれを突き刺す。
 そこから噴き出した炎が頭巾のような体の先端を掠ったオウガは翡翠を突き飛ばし、消火を図るかのごとくゴロゴロと地面を転がった。
「あ〜……神様じゃなきゃ死んでたかも」
 痛みと恐怖から出た脂汗を拭った翡翠の後ろでリノスによる愛と祝福を謳う歌が紡がれる。まだまだ余力のある敵の前で聴き入ることは出来なかったが、体や気持ちは少しだけ楽になれた。
「でも、『眠らない限り無敵』だったっけ……こうして実際に戦ってみると厄介極まりないわ」
 そうボヤく翡翠の前には先程燃やしたはずなのに一切火傷をしていないオウガがニコニコ笑顔で話しかけていた。
「あー、驚いた!でも他人に戦わせておいて、後ろで呑気に歌ってるなんて、随分呑気だねぇ!」
「ようし、出来上がったぞ!」
 突然の一声に全員の視線が集中した先には腕組みをした二天堂とクロスがけされたテーブルの上に和洋中区別なく並べられた様々な料理だった。
「戦った後ならお腹も空いているだろう? 思う存分食べると良い!」
 実際に出来上がった料理に完全に心を奪われたオウガは先程まで言い争い戦っていた二人を放っておいて一目散にテーブルに駆け寄り、手掴みでそれらを口に運び出す。
「あら、戦いよりも食い気に走るオウガくんの方がよっぽど呑気だと思いますけど?」
 リノスの挑発に似た揶揄いも無視して大量に作られたはずの料理をオウガは一心不乱に貪り食い、あっという間に皿だけになっていく光景に思わず二人は息を飲むが、当の料理人は追加の料理の準備をしようともせずニコニコとした笑みを崩さないままその様子を眺めていた。
 そして最後の一皿が片付いたところで、オウガは膨れ上がったアリスのお腹を叩きながら息を吐いた。
「はぁー、食べた食べた。美味しかったー……」
 そしてそのまま満足そうに瞳を閉じるお、大きなイビキをかいて寝出してしまった。
 お付きのヒヨコ達がお皿の片付けを行う中、二天堂はさも当然のように頷く。
「いくらオウガとはいえ、小さなアリスの胃袋を借りている以上食える量は限られている」
 オウガが寝返りを打つ度に片付けの邪魔をされるヒヨコが無言でその体を見つめる。
「先程食べていたシュークリームの量とその後の腹の膨らみ様を照らし合わせれば……どれだけ食べれば満腹になるかの予想はつくものだ」
「ピー……ヨーッ!」
 そしてその場で震えてから、勢いよく跳び上がった頭突きがオウガにクリーンヒットした。
 するとたったそれだけで布のような素材で出来たオウガの体は崩れ出し、元の形どころか色までも判別できないほど劣化していった。
「死出の料理、ご満足いただけたのなら幸いだ」
 そうつぶやいて、二天堂は頭に被せられていたカラフルな丸帽子を脱いでお辞儀をした。

 こうして被り物のオウガ達によって支配されていたハロウィンの国とそこに迷い込んで捕まったアリス達は解放された。
 だがこの国にはまだ、お菓子を貰っても訪れた者のコーディネートを勝手に行う愉快な仲間たちがいっぱい残っている。
 もし明日着て行く服や買いたい服に困ったら、彼らの手を借りるのもまた一興……かもしれない?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年12月14日


挿絵イラスト