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科学者よ嗤え、琥珀の愛は複製できない

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 アポカリプスヘル。
 オブリビオンストームによって文明崩壊し、荒廃したこの世界には愛憎が募る。
 それはレイダーに大切な人を奪われたからとか。
 または飢えて明日を生きられなかったからとか。
 はたまた死者がオブリビオンになったからとか。
 様々な理由があるだろう、様々な因果があるだろう。

 だが、この科学者はどれにも当てはまらなかった。
 彼は愛する者を確かに奪われたが、この世界で奪われたわけではなかった。
 彼は愛する者の死を恐れたが、実際は彼女の複製を作ることしか出来なかった。
 彼は愛する者への復讐を誓ったが、それは彼の手では出来なかった。

 何故なら、愛する者は不思議の国に君臨していた原初の怪物に殺されたから。
 何故なら、愛する者は今や培養液に入った脳髄だけの存在だから。
 何故なら、愛する者を救う前に、彼はオブリビオンストームで落命したから。

 だから、今日も彼は荒野の片隅で嗤う、嗤う、嘲笑い続ける。
「何故だ、何故、彼女は未だに泣いているんだろうか!? は、はは、ははは……!」
 オブリビオンとして蘇生したルイス・ラドヴィッジ博士が、わらっていた。

「余の名は蛇神オロチヒメ。今から貴様らに信託を下す」
 蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)の肉体を借り、彼女に憑依している白き蛇神がグリモアベースにて、その重い口を開こうとしていた。
 集まった猟兵達の一部には、オロチヒメが出てきた意味を薄っすら把握する者も。
「……左様。余が神託を下す任務は、いずれも過酷な内容が多い。此度も其の類であると心得よ。正直、あまり後味の良い任務とは言えぬのでな……」
 勿体ぶるオロチヒメは、任務内容を話し始めた。
「任務自体は単純明快。これから余はアポカリプスヘルのとあるレイダーの要塞付近へ、貴様らを転送する。その要塞のレイダー軍団を貴様らが壊滅させれば任務完遂である」
 だが、とオロチヒメは言葉を継ぐ。
「今回はレイダー軍団というよりも狂信者の暴走に近い。主犯は『ルイス・ラドヴィッジ博士』。フラスコチャイルドの分野で一定の権威を持っていた科学者のようだ。もっとも、今はオブリビオンストームで死亡後、オブリビオンとして蘇生した敵である」
 敵、と断言した蛇神は、この博士の略歴を話し始めた。

「調べたところ、博士の恋人は……アポカリプスヘルのアサイラムからアリスラビリンスに転移していたようだ。そこで、あの『原初のオウガ』に喰われて死亡している。だが、博士は経緯不明だが、その恋人の脳髄を回収した後に、アポカリプスヘルの一角に研究所兼フラスコチャイルドの生産工場を建てた。この意味が判るか?」
 猟兵達は押し黙る。それは生命の冒涜であるからだ。
「……察しが付くが口にはしない、人の子らの良心よな。だが余は神なので告げよう。つまり、博士は恋人のクローンを量産し続けた。何のために? それはな?」

「復讐を遂げる道具……『死なない軍隊』を作るためである」

 博士の研究の結晶である『アリスズナンバー』シリーズは、たとえ個体が破壊されても、同じ記憶と性能を持ったスペアの肉体に瞬時に移植することで、その個体の存在を永続させ続ける。復讐を完遂させるために、たとえ、あの『原初のオウガ』が既に滅んでいたとしても。
「そして、博士は複製に失敗したアリスズナンバー個体……便宜上、『欠番個体(ロストシリアル)』とでも呼称しよう。それらを要塞に運搬し、改造して新たな化け物を生み出した。周辺には遺伝子操作で生み出された恐竜のような怪物が徘徊しているし、周辺の拠点(ベース)に被害が及ぶのも、もはや時間の問題であろうな?」

 故に、潰せ。
 神は猟兵達に宣告した。

「話は以上である。さて、各自準備が出来次第、余がアポカリプスヘルへ転送を開始する。猟兵達よ、こんな悲しい連鎖は此度で断ち切らねばならぬ」
 蛇神オロチヒメの言葉に、猟兵達は各々、何を想うのか?
「さあ、ゆけ、愛しき人の子らよ。蛇神オロチヒメの加護があろうぞ」
 グリモアが輝いた。


七転 十五起
 来いよ、絶望ブレイカー!
 心情系バトルシナリオで殴り合おうぜ!
 なぎてんはねおきです。

 第一章は冒険です。
 博士が実験の過程で生み出してしまった謎の巨大生物が、レイダー要塞の周囲を徘徊しています。オブリビオンではありませんし、巨大化生物も基本的には温厚で刺激しなければ、大人しく生活しているだけです。ですが、上手く切り抜けなければ、要塞に近付くことは難しいでしょう。

 第二章は集団戦です。
 量産したフラスコチャイルドの不良品『欠番個体(ロストシリアル)』を生体部品とした、改造オブリビオン軍団との戦闘です。場面は要塞内での屋内戦闘ですが、十分な空間は確保できているとお考え下さい。なお、生体部品化した『欠番個体(ロストシリアル)』の救助は絶望的です。それでも助けたい場合は、攻略難易度が跳ね上がります。ご容赦下さい。

 第三章はボス戦、ルイス・ラドヴィッジ博士との直接対決です。
 彼の狂った思想を打ち砕いて下さい。

 それでは、皆様の挑戦を、お待ちしております。
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第1章 冒険 『巨大化生物の縄張り』

POW   :    探索の妨害となる巨大化生物を力づくで排除しつつ、正面から探索する

SPD   :    見つからないように移動するなどして巨大化生物に邪魔させず、周囲の状況を良く確認し、探索を有利に進める

WIZ   :    知恵を駆使して巨大化生物を懐柔あるいは排除し、探索の為の作戦を考案する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【琥珀(こはく)(英: Amber、アンバー)】
 天然樹脂の化石であり、宝石である。半化石の琥珀はコーパル(英: Copal)、加熱圧縮成形した再生コハクはアンブロイド(英: ambroid)という。
 中には数億年という途方も無い歳月を経て現在にもたらされる黄金の石。
 別名、太陽の石。古代ギリシア語でエレクトロン。
 摩擦すると電気を帯びることから、こう名付けられたらしい(諸説あり)。

 琥珀は時折、太古の生物を樹脂の中に取り込んだまま化石となる。
 そして、取り込まれた生物のDNAは現代でサルベージすることが可能だと研究で判明している。つまり、琥珀は古代と現代を繋ぐタイムカプセルの役割を果たしているのだ。

 だからなのか。
 僕が絶望したあの時、真っ先に琥珀の逸話が頭に思い浮かんだ。
 万物は滅ぶ。だが例外がある。それが琥珀だ。
 琥珀から採取したDNAを元に、現代に古代生物を蘇らせようというプロジェクトを、古い学術書で呼んだことがあったからだ。

 つまり、こうだ。
 オリジナルの彼女の脳髄を元に、記憶とDNAデータを複製する。
 フラスコチャイルド――倫理観を捨てた先に、僕の未来が見えたんだ。
 そして複製された“娘たち”を増やせば、いずれ世界を超えて仇敵を殺せる日が来るかもしれない。

 僕――ルイス・ラドヴィッジの胸に、希望が宿ったこの日を忘れない。

<ルイス・ラドヴィッジ博士の手記>
エメラ・アーヴェスピア
…あまり仕事に心情的な理由をつけたくない私がここに居るのは場違いなのでしょうけれど…
つい受けてしまったわ…本当になんで受けたのでしょうね…?
…死なない軍隊、ね。ある意味私の兵器もその言葉には近い訳だけれど…まぁ、意味が違うわよね
何故軍隊の為にそれを選んだのか…
…兎も角、今は進むのみ…時間ね、猟兵の仕事を始めましょう

『渾天裂くは我が鉄翼』、幻影型5機召喚
2機は人型形態で私を運び、3機は飛行機形態で念の為の護衛よ
幻影投影で景色に同化するように幻影を被せ、空から行くわ
視覚しか誤魔化せないとはいえ、空から行ってあまり接近しない様にすれば問題なく抜けられるでしょう
さて、何が待つやら…

※アドリブ・絡み歓迎



 アポカリプスヘルに転送されたエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は、岩場の多い荒野の真ん中に立っていた。
 ふと周囲を見渡すと、左手の遠方に白い箱とドームが併設されたような建物が見える。
 距離はここから直線距離で1~2kmほどか。他に建造物がないため、すぐに目に付いたのが幸いだ。
 不自然に手入れが行き届いた様子の外壁を見るに、何者かが出入りしていることは間違いないだろう。
「……っていうのが、魔導蒸気ドローンからの情報ね。なるほど、あそこまでに辿り着くには、奇妙な生物が徘徊するこの岩場を抜けなければならないのね?」
 エメラは息を殺しつつ、上空からの情報をサイバーコンタクトに映し出して精査していた。
「それにしても……あまり仕事に心情的な理由をつけたくない私がここに居るのは場違いなのでしょうけれど……つい受けてしまったわ……。本当に、なんで受けたのでしょうね……?」
 自嘲するエメラは、ブリーフィングで蛇神が発した言葉を反芻していた。
「……死なない軍隊、ね」
 それは、国防における究極の戦力であろう。
 いくら斃しても立ち上がり、敵を殲滅するまで止まらない、そんな永久機関のような軍隊があれば、国家としての発言力も強まるだろう。もっとも、文明が滅んだこの世界では、全く意味がないことであるが。
「ある意味、私の兵器もその言葉には近い訳だけれど……まぁ、意味が違うわよね」
 エメラの主力兵器は魔導蒸気兵器。命を持たぬ歯車と蒸気と魔力で稼働する軍隊は、今回の首謀者の博士とは真逆の意味で不死を意味する。だがやはり、エメラは技術者であり、この事件の首謀者は生物学者という明確な違いが、彼女に思考の溝を生み出させていた。
「何故、軍隊の為にそれを選んだのか……何れにせよ、常軌を逸してることには間違いないわ」
 上空の魔導蒸気ドローンは先行させたまま、エメラは行動を開始する。
「……兎も角、今は進むのみ……。時間ね、猟兵の仕事を始めましょう」
 あとから来る猟兵が、少しでも進みやすくするためにも、エメラは先陣を切って道を切り開く決意を固めた。

「作戦目標を設定……要塞への到達と巨大化生物との遭遇の回避を最優先。各機、作戦開始」
 ユーベルコード『渾天裂くは我が鉄翼(エアファイター)』にて召喚するは2m程度の可変型魔導蒸気機翼兵5機。
 すぐさま光学迷彩を纏う幻影型に切り替えさせると、2機の人形形態の機翼兵らがエメラを運び、他3機はその周囲で護衛に付く。
 幻影を纏うことで周囲の景色に溶け込み、視覚情報を撹乱して通過してゆこうというのだ。
(ただ、音は消せないから、飛行時の騒音はやむを得ないわね……)
 それでも、一旦、空を飛んでしまえば地を這う巨大化生物は手出しできない。
 聞き慣れない蒸気の推進音に辺りを見渡す、恐竜のような巨大化生物達だが、何もいないと判断すると、またノロノロと徘徊を続けた。
「……そうよ、いい子だから向こうへ行って頂戴」
 巨大化生物をやり過ごしたエメラは、手持ちの工具セットで岩に傷を付けて矢印を描く。
 これで後続の猟兵達の道標を記そうというのだ。
(そういえば、私の兵器だけではなく、私自身も死なない軍隊とも言えるわね……)
 ふと、エメラは過去を振り返る。
 幼い頃、彼女は“ある災難”によって身体の大部分に大火傷を負った、らしい。
 らしい、というのは、エメラがトラウマとして刻まれている記憶以外が全て消去されているからだ。
 大火傷を負ったエメラは、もはや助かる見込みはないと思われた。
 しかしこの時、エメラの生命を繋げるため、焼け爛れた身体の殆どを機械に置き換えたのだ。後にこれがサイボーグ手術だと解ったが、その代償として外見の成長は止まってしまった。
「まさにテセウスの船ね。私という自我は、存在は、魂は、記憶を無くす前の私と同一性を保てているのかしら? 少なくとも、この幼い見た目は変わってないのでしょうけど……」
 修理や改修を行い、徐々にパーツが入れ替わった船は、最終的には一番最初の頃の船と同一と呼べるか?
 それは『テセウスの船の理論』……有名なパラドックス問題である。
 エメラも身体の大部分を置き換えられて生き延びた。
 彼女は、以前の彼女なのだろうか?
 それとも、記憶を消されたのは理由があるのか……?
「……止めましょう。考えていても答えが出ない自問自答は時間の浪費だもの」
 頭を振って、再び機翼兵に運ばれるエメラ。
 もうすぐ要塞に到着する。
「さて、何が待つやら……」
 エメラは、自分の喉がやけに乾くのを奇妙に思っていた。
 なにかの予兆だろうか……?

成功 🔵​🔵​🔴​

紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

「――研究者、か。……ちょっと思い出しちゃうな」
でも、いつか倒したあの人と一緒にはしたくない。――少なくとも、父の研究は、間違いなく(手段はどうであれ)「自分の為(復讐)」じゃなくて「誰かの為」だったんだから。

方針:SPD

【選択UC】で【情報収集】する。【目立たない】を通り越して不可視の偵察機で辺りの索敵を実施して、巨大生物を避けるコースを探して通る。どうしても近くを通る場合は、うまく地形を活かして(地形の利用)やり過ごしたりして、うまく進む。

「見てきて、ニュクティ(偵察機[DDNC]の愛称)――」

「(眼鏡を外しながら)――さあ、行くでありますよ」


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……失った過去を再現、な。
気持ちは分からなくもねぇよ。
アタシもそう言う奴を一人、知ってる。
けどな……いや、よそう。
今ここで口にするのは、さ。
これは、その博士に突きつけなきゃならねぇ奴だからよ……

だからそうそう、こんな所で被害を受けちゃたまらねぇ。
穏便に隠形に、『迷彩』をかけて静かに進む。
そう、【陽炎迷彩】の出番さ。
もちろんエンジン音に注意を払わせないために、
遠くの地面を不可視の『衝撃波』で弾き、
そっちの音に生物どもを『おびき寄せ』る。

後はゆっくり、ひっそりと。
なるべく音を立てないように『操縦』して通り抜ける。

…1-1+1の答えは、本当に最初の「1」なのかねぇ…?



 荒れ果てた大地には、切り立った岩が一定の間隔を空けて乱立している。
 岩の高さは5~7m程だろうか。大小様々な奇岩の群れは、文明が滅んでなければ珍景の観光地として有名になったかもしれない。
 だが、今ここは岩と岩の間を巨大化生物が悠然と闊歩している恐怖の場所だ。
 いくら刺激しなければおとなしいと聞かされていても、岩の高さに頭一個届かない程度の体躯の生物に威圧感を覚えないはずがない。
 だから、紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)と数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は、岩場の影に隠れて巨大化生物をやり過ごす。智華の索敵能力の高さが功を奏して隠れる場所を発見し、数宮が機転を利かせてサイキックの衝撃波を遠方に放って巨大化生物を爆音で追っ払ったのだ。
「……もう行ったかな?」
「ああ、文字通り尻尾巻いて逃げていったさ」
 数宮の安堵の言葉に、智華はすぐさま索敵を再開した。
 ユーベルコード『闇夜に潜む夜烏CA-W-02[DDNC](ダークダイブ・ニュクティコラックス)』……不可視の夜烏型ステルス自律兵器[DDNC]を空へ解き放ち、上空から巨大化生物の検知並びに要塞までの最短ルートの割り出しにリソースを割いてゆく。
「見てきて、ニュクティ」
 偵察機の愛称を口にした智華は、義眼(虚構の神脳)とデータ連動している電脳演算端末から視覚情報を取得し、周囲の地形を把握する。
「……よし。前方に異常なし。行けるよ、多喜さん」
「んじゃ、とっとと此処からずらかるよ! 智華さん、後ろに乗りな!」
 数宮は相棒の宇宙カブ『JD-1725』に跨り、智華も後部座席に座った。
「迷彩機能、オン」
 ユーベルコードの効果で、数宮自身と宇宙カブに乗った1人が透明になってゆく。
「穏便に隠形に、周囲の景色に溶け込んで進んでゆくよ。アタシの『陽炎迷彩(ミラージュビジョン)』の出番ってわけさ」
 姿は透明化のおかげで、周囲の景色と完全に溶け込んでいる。
 ただ、ドッドッドッドと鼓動のように鳴り止まぬエンジン音は隠しきれない。
 それでも、ゆっくりと……時速20kmほどの低速で荒野を進み始める宇宙カブ。
「どうだい? 音に反応する奴は?」
「……反応はありますが、接近はしてきません。このまま通過しましょう」
「オッケー。ゆっくり、ひっそりと。なるべく音を立てないように進んでくよ?」
 智華の見立てを信じ、数宮は巨大化生物の徘徊ルートを突っ切ってゆく。
「ところでさ……」
 数宮はじっと前を見詰めながら言葉を漏らし始めた。
「……奴さんはクローンで恋人と同じ姿のフラスコチャイルドを生み出したんだってね? 失った過去を再現、な。気持ちは分からなくもねぇよ。アタシもそう言う奴を一人、知ってる。けどな……いや、よそう」
 数宮は喉まで出た言葉をぐっと飲み込んだ。
「どうしました?」
 智華の疑問の声に、数宮は小さく頭を振った。
「今ここで口にするのはやめるってこと、さ。これは、その博士に突きつけなきゃならねぇ奴だからよ……」
「そうですか……。博士――研究者、か。……ちょっと思い出しちゃうな」
 今度は智華がぼんやりと物思いに浸ってゆく。
「私の父は、UDC邪神の討滅のための研究をしていました。私のこのサイボーグの体も、父の研究の一環なんです。まぁ、私は半ば無理矢理に改造されたんですけど」
「おいおい、実の娘になんてことしやがるんだ? 言い方悪いが、マッドサイエンティストの所業じゃねぇか!」
 呆れる数宮の反応に、智華は急に語気を強めた。
「父を、今回の首謀者の博士と一緒にしたくないです」
「あ、そりゃそうだわな……悪かったよ」
 気まずそうに謝罪する数宮の身体に、智華は腕を回してしっかり抱きしめた。
「いいえ。父も、研究の果てに邪神に殺されて、オブリビオンとして蘇ってしまったので。そして……私が、倒して、看取りました……」
「……そうかい。辛い話をさせちまったね?」
「大丈夫です! 最後は、父と解り合えたと想いますし。それに――少なくとも、父の研究は、間違いなく……手段はどうであれ、自分の為じゃなくて誰かの為だったんだから」
「復讐ではなく、あくまでも邪神を滅ぼす手段の模索ってことかね? なるほどねぇ……」
 智華の口調に後悔はない。
 それを組み上げた数宮は、ちいさく唸って考え込む。
「さて……『1-1+1』の答えは、本当に最初の『1』なのかねぇ……?」
 数宮の呟きは、荒野の風に溶けて消えた。
 後部座席に座った智華は、赤いフレームのメガネを外して意識を『仕事モード』へ切り替える。
「――さあ、要塞は目の前でありますよ」
 2人の先に、やけに真新しい建造物が荒野のど真ん中で待ち構えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アハト・アリスズナンバー
【ワンダレイ】
……博士。最初に貴方に作られた10人は、もう私だけになりました。
貴方から受け継いだ使命は、もう果たされたことを伝えましょう。
例えオブリビオンであっても、私は貴方に全てが終わったことを伝える義務がある。

UC起動。アリスコード送信――最適化された移動ルートを情報収集して、即座に判断し、グラップルにて高速移動します。 移動ルートには印をつけておいて、囮の人達を誘導できるようにします。

……この生命体も、失敗の果てなのですね。
アリスズナンバーが作られる為に犠牲になった存在。
狂気の果てに生まれた希望がアリスズナンバーならば、私達は生まれるべきではなかったのです

※アドリブ・絡み歓迎


ノインツィヒ・アリスズナンバー
【ワンダレイ】
一番上のアイン姉はシグナルロスト。6番目のゼクス姉はオブリビオンになって、私が殺した。最初の10人はもうあんたしかいない。アハト姉。
これは私じゃなくてあんたがケリをつける物語だ。
復讐の道具も、これで終わりさ。

じゃあとりあえず、皆が探しやすいようにひと暴れしますかねえ!
巨大生物の首を怪力で掴みつつ、胸倉と認識してUCで他の生物に無差別攻撃で投げ飛ばす!挑発しつつ、みんなが研究所に辿り着けるように囮になる。
あの人が作ったもんなら、私が殺すのは当然の事だ。
今だけはカウンターナンバーに戻ってやるよ!
さあ来いよてめえら。次はまっとうな幸せを送れるように殺してやるからよ。

※アドリブ・絡み歓迎


アスカ・ユークレース
【ワンダレイ】アドリブ絡み歓迎

一度滅んで尚消えることのない復讐の心……執念めいたものを感じるわ、恐らく彼も当初は愛ゆえの行為だったのでしょうけど……いえ、これ以上はやめましょう。あくまで物語を進めるのは彼と、アリスズナンバー達ですから

索敵・隠密担当
予め◆武器改造により迷彩回路の機能を一部付けたドローンを配っておきます
自身にはUCを施すことで◆迷彩をかけておくとしましょう

◆視力のみならず聴覚や温度、◆第六感、あらゆる感覚を研ぎ澄ませて◆情報収集&共有するわ
ドローンや仲間からの情報も活用、◆封印を解き◆限界突破した私の◆瞬間思考力ならば多大な情報でも処理できる筈


星群・ヒカル
【ワンダレイ】で参加

執念深い男のツラ殴って目ェ覚まさせるってか。
おもしれぇ、アハト、助太刀するぜ!

『視力・第六感』で索敵しながら前へ進もう
施設への道を先導する皆からは少し遅れていくぞ

おれの役割は囮を果たしたジェイとノインを載せて施設内へ突っ走ることだ!
宇宙バイク「銀翼号」に『騎乗』し、ジェイとノインを『早業・ロープワーク』で、「超宇宙牽引ワイヤー」を用いて素早く回収
『逃げ足』、そして、【ゴッドスピードライド】
フルスロットルで巨大生物達を振り切って、皆が開けた穴へ滑り込んでいくぜ!

お疲れ様だ、だがやり切った顔をするのはまだ早いぜ、2人とも
こっからが喧嘩の正念場なんだからなッ!

※アドリブ連携歓迎


ジェイ・ランス
【POW】【ワンダレイ】※アドリブ歓迎
■心情
デスレスアーミーと言えば聞こえはいいけども。と。復讐の道具扱いされて生まれてきた身としてはどーなんだかね?ノインちゃん?
オレ?オレはまあ、生まれが違うから何ともね~。まあいいさ、ともかくオレはお手伝いさね。
■戦闘
"ツェライセン"を呼び出し、それに乗って突撃を慣行。"事象観測術式"にて強行偵察しつつ【情報収集】し、"慣性制御術式"や"重力制御術式"を使ってツェライセンを振り回しUCを発動。難所を【切断】していきます。また、各武装を【一斉発射】し【制圧射撃】しつつ【時間稼ぎ】し、他のメンバーが行動しやすいよう陽動します。

―――肉の牙城って感じだなココ


地籠・陵也
【ワンダレイ】アドリブ歓迎
見えない敵を探し続ける……それ程までに復讐の念を……
仇を探している側としては少し身につまされる話だ。
――いや、俺が後ろに振り返ってどうするという話でもあるな。
一番色々思うところがあるのは彼の子供であるアハトたちなんだから……

せめて俺にできることをしよう。
全員に念の為【多重詠唱】を使って【結界術】と【オーラ防御】を。保険はあるに越したことはないからな。
俺は【指定UC】でエインセルと視覚を共有して刺激を与えずに済む位置を探してみるよ。
もし何かしら穴を開ける必要があるなら囮側の攻撃の音に紛れるタイミングを見計らって【高速詠唱】で【レーザー射撃】【属性攻撃(光)】しよう。



 フラスコチャイルド『アリスズナンバー』シリーズ。
 それは、ルイス・ラドヴィッジ博士の研究の集大成であり、不死の軍隊であり、恋人の複製体である。
 かつて、アリスズナンバーには10人の“娘”がいた。
 いわゆる初期シリアル個体である。
 だが、今ではアハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)以外の初期シリアル個体は存在していない。
「一番上のアイン姉はシグナルロスト。6番目のゼクス姉は難民の子供を助けるためにオブリビオンストームに突っ込んだあと、案の定蘇ってオブリビオンになって、私が殺した」
 それがカウンターナンバー……『オブリビオンと化した姉妹を殺す妹』として生み出されたノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)の使命だった。思えばノインツィヒが出奔したのは、6番目の姉を殺したその日の夜だったな、と彼女は内心懐かしさを覚えた。
「さらに、私の原型だった9番目のノイン姉は……不死のシステムを拒絶して“人間らしく”“寿命”で死んだ。つまりだ、『最初の10人(ドーターズ・オリジン)』はもう、あんたしかいない」
 ノインツィヒの言葉を反芻するように、アハトは憂鬱になるほど真っ青に晴れ渡った空を見上げて呟く。
「……博士。最初に貴方に作られた10人は、もう私だけになりました。私は、かの仇敵をこの手で討ち果たしました。貴方から受け継いだ使命は、もう果たされたことを伝えましょう。例えオブリビオンであっても、私は貴方に全てが終わったことを伝える義務がある」
「そうだ、アハト姉。これは私じゃなくてあんたがケリをつける物語だ。復讐の道具も、これで終わりさ」
「ええ。……今日で終わりにしましょう。マザー。どうか私達に祝福を……」
 右手拳を胸元で握りしめ、アハトは口元をぎゅっと固く閉じた。
「ですが、ひとつ、気になる点があります」
 アハトは遠くに見える巨大化生物を指差した。
「……あの生命体も、失敗の果てなのですね。私達と同じ、オリジナル・アリスのDNAを持つ、いわば私達よりも先に作られた試作品の『姉』達……アリスズナンバーが作られる為に犠牲になった存在です」
「何が言いたいんだ、アハト姉?」
 怪訝な表情を見せるノインツィヒに、アハトは珍しく伏し目がちに答えた。
「狂気の果てに生まれた希望がアリスズナンバーならば、私達は生まれるべきではなかったのです」
「……ンなわけねぇだろうが、馬鹿姉!」
 思わず、ノインツィヒの平手打ちがアハトの頬を引っ叩いた。
「……! No.90……?」
 呆然とするアハトの胸倉をノインツィヒが掴み上げる。
「生まれるべきではなかった? ふざけんなよ? それは私達が今までやってきた猟兵活動を、それがきっかけで生まれた縁や絆を全否定する言葉だぞ。それに、私達のために駆け付けてくれたみんなの前で、よくそんなことが言えるな?」
 ノインツィヒが視線をアハトから逸らした先には、2人のやり取りを見守る者たちがいた。
 飛空戦艦ワンダレイ――マンタ型の空中戦艦に集う仲間達だ。
 アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は首に巻いた青いマフラーをいじりながら、浮かない顔でルイス・ラドヴィッジ博士の行為を考察する。
「一度滅んで尚消えることのない復讐の心……執念めいたものを感じるわ、恐らく彼も当初は愛ゆえの行為だったのでしょうけど……」
 恋人を複製し、それらを不死の軍隊に仕立て上げ、異世界の仇敵を討とうとする目論見は、狂愛の一言では片付けられない闇と激情が伝わってくる。
 だが、アスカはこれ以上の考察を止めてしまう。
「いえ、これ以上はやめましょう。あくまで物語を進めるのは彼と、アリスズナンバー達ですから」
「そう、だな。見えない敵を探し続ける……それ程までに復讐の念を……どれだけ辛いことだろう」
 地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)もアスカの言葉に同意を示す。
 同時に、自身の境遇と重ねてしまい、思わず顔をしかめてしまう。
「仇を探している側としては少し身につまされる話だ。――いや、俺が後ろに振り返ってどうするという話でもあるな。一番色々思うところがあるのは彼の子供であるアハトたちなんだから……」
 だから、この話を聞いた時、心が突き動かされたのだろう。
(あのグリモア猟兵の依頼……前回は酷い目にあったんだよな。だから、あれから今まで敬遠してきたんだが……でも、今はあの頃の俺とは違う……)
 陵也は成長し、強くなった。
 それこそ、仲間に手を差し伸べられるくらいにまで心身共に強くなった。
 陵也はアハトとノインツィヒの近くまで歩み寄ると、真剣な表情で2人へ告げた。
「せめて俺にできることをしよう。俺が2人を守ってみせる」
「んで、執念深い男のツラ殴って目ェ覚まさせるってか。おもしれぇ、アハト、助太刀するぜ!」
 星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)がビッと親指を立ててニカッと笑顔を見せた。
「ありがとうございます。ええ、皆さん、私に力を貸してください。そして先程はお見苦しいとこをお見せして申し訳ありません」
 アハトが頭を深々と下げ、今回の任務の同行の謝辞と先程のお詫びを述べた。
 と、ここでジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)がつつつ~っとノインツィヒに詰め寄ってきた。
「ね~ね~、ノインちゃん? 気になることがあるんだけど?」
「あれー? 急にジェイ君どうしたのかなー☆ 私ちゃんのサインなら、今日はごめんね☆」
 アイドルスマイルで対応するノインツィヒに、ジェイは単刀直入に話を切り込んだ。
「デスレスアーミーと言えば聞こえはいいけども。と、復讐の道具扱いされて生まれてきた身としてはどーなんだかね? ノインちゃん?」
「……それ、今聞いちゃうかー、別にいいけどさー?」
 途端に素の低いヤンキーボイスに戻ったノインツィヒが眉間にシワを寄せる。
「どーもこーもねぇよ。私はいわば『姉の不始末を暴力で解決する道具』だったわけでさ。そこから逃げて、必死に『人間らしい』事やってさ? ……私は今まで、使命から逃げ続けてきたのさ」
 とはいえ、ノインツィヒは一度、オブリビオン化した博士を殺している。
 今回は2度目の対峙であり、生みの親を2度殺すことになるだろうと薄々覚悟して此処にいるのだ。
「そういうジェイ君はどうなのさ? あんたも込み入った事情を抱えてるって噂だけど? どうなのさ、そのへん?」
 お返しとばかりに、ノインツィヒはジェイへ言葉を返した。
「え、オレ?」
 目をまん丸く見開いて、キョトンとするジェイ。
「オレはまあ、ほら? ノインちゃんたちと生まれが違うから何ともね~? キマフューの電脳にて埋まっていた古代のアニメの登場キャラがオレの原型だと思ってたけど、実はそれ、アニメじゃなくて実録の映像記録だったってオチで、オレの正体はつまり人類を監視するAIだったっていう話、詳しく聞く?」
「いや、今のでジェイ君も苦労してるってことがよく解った……」
 若干引いてるノインツィヒに、悪びれもしないジェイ君が道化師のようにニコニコと笑ってみせる。
「まあいいさ、今はオレのことなんて。ともかくオレはノインちゃんとアハトちゃんのお手伝いさね」
「ったく、足引っ張んなよ?」
 ノインが拳を突き出すと、ジェイはそれにコツンと自身の拳をぶつけてみせた。

 アハトとチームワンダレイは、それぞれが得意分野に分かれて連携を開始する。
 まずは索敵。
 アハトは早速ユーベルコードをアリスズナンバーネットワークを介して承認を求めた。
「ユーベルコード起動。アリスコード『アリスインデジャヴ』送信。総員、裁判の時間です」
 瞬時に他のアリスズナンバーの個体達に同期し、周囲の地形情報を検証させて最短かつ安全なルートを模索させる。
 更に、アスカがドローン群『Cluster』を周囲に解き放つ。ドローン群には迷彩機能を追加するよう改造済みだ。これは、ドローン群付近に滞在する猟兵の姿を光学迷彩でカムフラージュするというすごい機能を追加させているのだ。
「念の為だ、みんなに結界防壁を張っておく。険はあるに越したことはないからな」
 陵也は多重詠唱によって、自身が司る浄化の波動を仲間達へ伝播させ、結界防壁としてまとわせた。
 それが終わると、アスカはユーベルコード『虚宿(サダルスウド)』を発動させる。
「私は虚であり、虚は私である。私はきっと『そこ』にはいない」
 自身の制限を解くことで迷彩回路の出力を最大にし、更に自身の存在感を極限まで薄め、対象の認識を書き換える異能を宿し超強化!
 だが、デメリットの呪縛が発生してしまう。
「……この時のために、呪詛への耐性を高めてありますから」
 アスカはなんとかデメリットを最小限に食い止め、透明になったまま先行して引き続き索敵を行う。
 その後ろをアハトと陵也がついてゆく。
 陵也はユーベルコードで相棒を呼び出した。
「術式展開。……お前の力が必要だ。力を貸してくれないか?」
 出ていたのは、羽の生えた白い子猫ことエインセル。
 ユーベルコード『【昇華】風を追う白羽の猫(ピュリフィケイト・チェイスシャットエインセル)』で召喚された白い子猫も周囲を警戒する。子猫と五感が繋がった陵也は、アスカと並んで索敵の要となる。
 そして、星群とノインツィヒ、そしてジェイは先頭集団よりも遅れて後ろを付いてきていた。
「では、移動を開始しましょう」
 アハトはビームグラップル弾を発射し、立体駆動で岩と岩の間を飛び跳ねまくってゆく!
 まるで忍者! しかも岩に矢印まで書いてくれるオマケ付き。
 その後ろを猟兵達が駆けって追いすがる。
 だが、徐々に響く地鳴りに、アハトとジェイが立ち止まった。
 アスカと陵也もほぼ同時に声を上げた。
「皆さん、巨大化生物が3方向から、同時に接近中です! 2時と10時の方向、更に7時からも!」
 限界突破したアスカの瞬間思考力が、数多のドローン群からの情報を瞬時に処理することも可能だ。
「群れで来るぞ。アハト、ジェイ。囮と足止め、気を付けてくれよな?」
「私は先行します。あとはお願いますね」
 アスカ、陵也、そしてアハトは要塞へ真っ直ぐ向かっていった。
 残るノインツィヒとジェイが向かってくる3匹の巨大化生物の囮役と足止めを試みる。
「じゃあとりあえず、皆が探しやすいようにひと暴れしますかねえ!」
 可愛くデコったメリケンサックを両手指にはめ、拳を掲げて臨戦態勢へ移るノインツィヒ。
 一方、ジェイは可変式対艦概念破断剣“ツェアライセン”――7m級の概念兵装サーフブレードに乗って空中を駆け抜ける。
「事象観測術式(ワード・オブ・ディスティニー)起動っと。ついでに重力制御術式(ワード・オブ・グラヴィティ)でツェアライセンの揚力を確保だね」
 超巨大な刃物に乗ったジェイは、そのまま巨大化生物に突貫してゆく。
「こんにちは、デカブツさん。そしてサヨナラ!」
 次元破断剣『Zerreiβen』(ツェアライセン)……ユーベルコードと化した破断の事象が、巨大化生物の喉元をきれいに掻き切った!
 噴き上がる赤黒い血液、崩れ落ちる巨体。
 一撃必殺の斬撃が、まずは7時の方向の巨大化生物を沈めた。
 これに続かんとノインツィヒは岩を三角飛びの要領で蹴りながら、2時の方角から来た巨大化生物の鼻先まで駆け上ってゆくと、むんずと右手を伸ばし、その鼻先を掴んでみせた。
「せーの☆ くたばりやがれええええええ!!!!」
 凄まじい膂力による空中投げ落とし!
 これぞユーベルコード『乙女の☆胸倉落とし・極(ブツリテキガールズトーク・キワミ)』!
 10時の方向から突進してくる巨大化生物へ向けて投擲すれば、地上で激突して2匹とも明後日の方向へ吹き飛んでいった!
「あの人が作ったもんなら、私が殺すのは当然の事だ。姉妹を殺す妹、それが私……アリスズナンバーmark90-kの本来の役割だ。だから今だけはカウンターナンバーに戻ってやるよ!」
 起き上がる2匹が天へ向けて咆哮!
 すると、何処からともなく2匹が遠方から駆け付けてきたではないか!
 これにノインツィヒは凶悪な笑みを浮かべたまま、ガッチガッチとメリケンサックをぶつけて火花を散らす。
「さあ来いよてめえら。ブサイクに生まれ育っちまった姉どもにかける情けなんてねえよ。次はまっとうな幸せを送れるようにブッ殺してやるさ!」
 裂帛の気合の声とともに、ノインツィヒは渾身の右ストレートを巨大化生物の心臓のあたりへパイルバンカーめいて打ち付ける!
 巨大化生物はくの字に身体を折り曲げ、悲鳴とともに口から唾液と鮮血を吐き出しながら白目を剥いて沈黙してしまった。
 まさに一撃必殺!
 更に重点的に足を殴って潰すことで、先行するアハト達へ向かわないようにする念の入れようだ。
「これで回避も出来ないだろ? おら、もう一発! 往生せいやダボオオオォォォーッ!!」
 膝付く巨大化生物の首元を掴んで振り回し、ノインツィヒは無傷の巨大化生物へ、もう1匹をハンマーのごとく叩き付けた!
 ゴリッという鈍い音と共に、巨大化生物2匹が折り重なって絶命してしまった。激突の瞬間、頚椎や脊椎を破壊されたことによる即死ダメージが発生したのだ。
「それじゃ、トドメはオレが!」
 突進しながら重力偏光式全方位光線(ラィヒターレーゲン)の1920本ものレーザー光線を発射!
 巨大化生物はレーザー光線に全身を貫かれ、穴の空いたチーズめいてスカスカになって事切れていった。
「お疲れ様だ、だがやり切った顔をするのはまだ早いぜ、2人とも! こっからが喧嘩の正念場なんだからなッ!」
 ユーベルコード『ゴッドスピードライド』で、愛用の宇宙バイク『銀翼号』と合体した星群がノインツィヒの身体をヒョイッと担いで走り出す。
 ジェイは空を飛んでるので、星群の後ろをついて行くだけだ。
「って、まだ来るみたいだね? しつこいなぁ?」
 ジェイが振り返った先には、巨大化生物の大群が此方へ押し寄せてくる恐怖の光景が!
「おれの役割は囮を果たしたジェイとノインを載せて施設内へ突っ走ること! こんなところで捕まって堪るか! 飛ばすぜ、ノイン! ジェイ!」
 星群は超宇宙牽引ワイヤーでジェイのサーフブレードを牽引、ノインツィヒを抱えたままフルスロットルで逃走!
「おーい、陵也ー! 手はず通り頼むぜ!」
 手を振りながら向かってくる星群の後ろから迫る巨大化生物の大群を見た陵也は目を疑った。
「おい、マジかよ……! みんな、ちょっと伏せてろ!」
 陵也は掌を地面にかざすと、白い光が炸裂して地面を抉ってみせた。
 そこへ飛び込む星群たち!
 更に、迫りくる巨大化生物の足元へ、同様の白い光線の魔法を照射することで、落とし穴を作って行く手を阻んでみせた。
「そこでおとなしく穴にハマってろ!」
「皆さん、要塞に到着しました! 早く中へ!」
 アスカに促され、要塞の中へ逃げ込んだチームワンダレイの面々。
 どうやら巨大化生物は、この要塞の敷地内へは入ってこないようだ。
 ひとまず難を逃れることが出来たが、要塞の中も決して油断ならない雰囲気で満ちていたのだった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

クラウン・アンダーウッド
随分と情熱的な御仁なんだねぇ。死した後も失わないその執念、尊敬に値するよ。まぁ、そうなりたいとは思わないけどね♪

癒しの業火を蝶の形に変化させて生物の鼻先辺りに飛ばし、意識をそちらに向けさせながら移動しようか。触れても怪我しないし、別の物に変化させて楽しませるのも一興だ。ボクは動物が好きだからさ♪

アレンジ・設定生やし 大歓迎



 クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)は煤けて動かない懐中時計のヤドリガミである。
 器物の煤け具合が影響しているのか、彼自身はブレイズキャリバーの才覚を発揮しており、自在に炎を操ることが出来る。
「今回の首謀者だけど、随分と情熱的な御仁なんだねぇ。死した後も失わないその執念、尊敬に値するよ。まぁ、そうなりたいとは思わないけどね♪」
 にこやかに笑みを湛えると、クラウンは指先から炎を生み出すと、その炎を宙に放った。
 それは次第に蝶を象って羽ばたき始め、次第に分裂して、最終的には86匹の炎の蝶が周囲を舞う幻想的な光景が広がった。
「ただ燃えるだけが炎じゃないのさ! 癒やす炎っていうのもあるんだ、こんな感じにね♪」
 一斉に炎の蝶を周囲に解き放つクラウンは、悠々と危険な岩場を散歩してゆく。
 近くまで巨大化生物が迫ってくるが、鼻先を通過する炎の蝶に気を取られて誘導されていってしまう。
「そうそう、そうやって蝶に釣られてボクを見逃してね♪」
 他の猟兵が注意を払ってスニーキングを押し進めていたのに対し、クラウンはまるで動物園内を闊歩しているかのごとく、巨大化生物を眺めて手を振ってみせたりしていた。
 それもこれも、炎の蝶が舞い踊るおかげ。
 巨大化生物は元来おとなしい性格であり、触れても火傷しない炎の蝶を玩具のように追い回し始めていた。
「こうしてみると、結構可愛い仕草だねぇ。人間の女の子みたいに可愛いモチーフのものが好きなのかな?」
 ふと疑問を抱いたクラウンは、炎の蝶の一部の形をハートマークや猫へと変化させてみる。
 すると、巨大化生物は明らかに喜んで、先程よりも食い付きよく追いかけ始めたではないか。
「やっぱり! 見た目は恐竜だったりキメラっぽい感じだけど、中身はとってもキュートなんだね!」
 クラウンだけが平和な光景が目の前に広がっている。
 他の猟兵とは大違いだ。
「ボク、動物大好きだからね♪ どういう経緯で生まれてこようが、この子達を傷付けるなんて出来ないよ!」
 巨大化生物のDNAが、もともとは1人の人間の女性のものだったとは、まさかクラウンも思ってはいないだろう。
 ともあれ、敵意を全く持たないクラウンは、周囲の巨大化生物を手懐けて、何事もなく要塞へと辿り着いてしまったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御魂・神治
クローンは遺伝子的に同一人物でも人格は他人やし
人格や記憶を移植したロボは同一人物やと言われても難しい
肉体も脳マップも完璧に復元したとしても、結局は復元体止まりなんやろな
死んだ事実を覆す事は出来へん

敵は刺激さえしなければええなら
なるべく影薄くする必要あるな
結界術の空中浮遊で足音を立てん様にして
天将、ジャミングで敵の索敵力を下げた上で
光学迷彩で姿を消してくれんか
それと、周囲の情報収集で常にアンテナ張っといてや

天将は一人しか存在せえへんけど
性質上、複製やバックアップは...出来るんやよな、多分...
せやけどなぁ、何かなぁ、バックアップしたないんさなぁ
天将、お前はどう思うんや



 御魂・神治(除霊(物理)・f28925)は蛇神の言葉を聞いて、すぐにこの任務を受領した。
「そういや、あの博士と因縁ある子とは、何度か依頼で顔合わせてたんなぁ」
 最近では、アリスラビリンスの猟書家討伐戦で偶然居合わせた。
「あちらさんがどう思ってるか知らへんけど、なんや此方は気になってもうたし、行くで天将?」
『向こうは全く覚えていないかもしれませんよ?』
 御魂に釘を差すのは、相棒たる人工式神(AI)の天将(てんしょう)。
 その指摘はもっともである。
 だが、御魂は首を横に振った。
「せやけど、わいは決めたんや。それにな、天将? わいはこの事件の首謀者である博士に物申したいんや」
 御魂は自分の胸の内を相棒へ言葉にして伝える。
「クローンは遺伝子的に同一人物でも人格は他人やし、人格や記憶を移植したロボは同一人物やと言われても難しい。肉体も脳マップも完璧に復元したとしても、結局は復元体止まりなんやろな。死んだ事実を覆す事は出来へん」
 あの子はどないやろな、と思わず言葉を零す御魂。
 オウガ・オリジンが作り変えた『踊り続けなければ死ぬ世界』で、あの子は御魂の面前で死んだ。
 だがすぐに別個体が転送され、記憶も肉体もそのまま違和感なく再現されていた。もはや蘇生という言葉に近かった。
「とはいえ、それでもあのシステムを構築した博士に一言ガツンと言わな気が済まんやろ、やっぱ」
 御魂は岩場の影などの遮蔽物を利用し、着実に要塞へと近付いてゆく。
「敵は刺激さえしなければええなら、なるべく影薄くする必要あるな」
 ならば、と結界壁を足元に発生させ、その上に御魂が乗っかった。
 そのまま結界を床代わりに前方へ伸ばしてゆけば、擬似的な空中浮遊となって足音が立たない。
「天将、ジャミングで敵の索敵力を下げた上で光学迷彩でわいらの姿を消してくれんか」
『了解しました。認識能力の阻害結界並びに光学迷彩空間を展開します』
 御魂と天将の姿が周囲の景色に溶け込み、巨大化生物の視界から消えた。
「それと天将、周囲の情報収集で常にアンテナ張っといてや」
『了解です』
 周辺の索敵を行いながら、足音を立てずにそのままスムーズに進んでゆく御魂。
 途中、巨大化生物が目の前をゆっくり通過していったが、全く気付かれずにやり過ごすことが出来た。
 ここで御魂は相棒を見詰めながら考え込む。
「天将は一人しか存在せえへんけど、性質上、複製やバックアップは……出来るんやよな、多分……」
 人工式神といえど、その本質はAIだ。
 ならば01のデータの集合体であり、そのデータを何処かに保管することも出来るだろう。
 だが、御魂はそれを気乗りしないようだ。
「せやけどなぁ、何かなぁ、バックアップしたないんさなぁ。天将、お前はどう思うんや」
 御魂の疑問に、天将はホログラムの表情をしかめさせる。
『もしこの体が何らかの理由で廃棄され、バックアップから復元されたとしましょう。それは間違いなくこの天将ですが、今まで連れ添ってきた天将ではありません。ですので、それは別個体だと判断します』
「せやろなぁ……」
 2人は妙に納得し、要塞に到着するまで無言を貫くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『量産型サイバー・メイデン』

POW   :    デスリップレーザー
【口内から放たれる極太レーザー】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    生命エネルギー弾連射
【両腕と両胸のエネルギー砲】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    生体ユニット活性化
【生体ユニットに刺激を与え、エネルギー吸収】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達は要塞内へあっさり侵入することが出来た。
 まるで招かれているかのような、そんな伏魔殿の中を探索し始める。
 だが、しばらくすると、何処からともなく、鋼鉄の女性型アンドロイドが猟兵達を取り囲んでしまう。その腹部には生きたままの全裸の女性が接続されているではないか!

『ようこそ、ボクの研究所(ラボ)へ。おもてなしはボクの娘たちに行わせよう』

 この声は、ルイス・ラドヴィッジ博士!
 館内放送から博士の声が響いてきた!

『アリスズナンバー・タイプ・サイバー・メイデン。『最初の10人(ドーターズ・オリジン)』よりも前に製造された失敗作である『欠番個体(ロストシリアル)』に、機械の体を充てがって強化した娘たちだ。今まで密かに冷凍保存をしておいて正解だったな。ようやく日の目を見せる時が来たようだ』

 生体部品と成り果てたアリスズナンバー『欠番個体』たち。
 その数は10、20を超え、まだまだ増えてゆく。
 しかも、サイバー・メイデンは『欠番個体』に電極や薬剤などで刺激を与えて出力を上げているようだ。なんたる悪辣な所業か!
 だが、これはつまり、生体部品を破壊すれば容易に機能を停止させられる事を意味する。と、同時に『欠番個体』達を殺すことに繋がるだろう。

 恐らく、かなり無茶をすれば生体部品である彼女たちを救出することが出来るだろう。とはいえ、出来たとしても、救出した彼女たちを庇いながらの戦闘は極めて困難を極める。それでもやるのなら誰も止めはしないだろう。
 
 かくして、猟兵達は博士のもとへと向かうべく、立ちはだかる『欠番個体』らと対峙するのであった。
 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
●プレイング受付は、もうひとつの断章追加時から受け付けます。●
 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 God bless Alice!
 遂に、遂に僕は成し遂げたんだ!
 幾多の失敗を乗り越え、資金難に喘いだ末、やっと『最初の娘』が誕生した!
 僕の最愛の女性ことアリス・グラムベルのDNAから生み出されたフラスコチャイルド……彼女の“身体(いれもの)”を、ようやく再現できたんだ!
 此処まで来るのに随分と時間が掛かってしまった。
 複製に失敗して変異体と化した『彼女』達や、アリスの記憶をコピーする際に脳神経が焼き切れた『欠番』達があったからこその成功だ!
 特に資金難はとても深刻だったが、突然やってきたヴォーテックス一族の配下と名乗る男からの援助でなんとか此処まで乗り切れた!
 これで彼女は僕とまた一緒に暮らせる!

 嗚呼、あの時――殺戮と狂気の迷宮世界で逃亡中に君があの食人鬼に喰われた時、僕はもう駄目かと思った。
 だが君が喰われたことによって、僕は君と一緒に元の世界へ戻ることが出来たのは本当に幸運だった!
 何故なら、僕等が見つけた『自分の扉』は僕しか脱出できない扉で、君が喰われて頭だけの存在になったことで扉には“物体”として認識され、はじめて僕と君は一緒に扉をくぐることが出来たのだから!
 当時の僕は故郷へ戻ってからも絶望と虚無感が胸を去来していたが、その感情が今日の成功を呼び込んだのだろう!

 ――だが、僕にはひとつ懸念があった。
 フラスコチャイルドは清浄な世界では生命維持装置を使用しないといけないほど脆弱だ。
 なにかの弾みでまたアリスが死んでしまっては困る!

 ……そうだ、もっと複製すればいいんだ。
 アリスの“身体(いれもの)”が出来た今、肉体の死が彼女の死ではなくなった。オリジナルのアリスの脳髄は培養液の中で浮かび続けている限り、アリス・グラムベルという存在は不滅になったのだ。

 だから複製しよう。
 サヨナラはしたくない、ずっとずっと、一緒に居たいから。
 もっと複製しよう。
 愛し合いたいんだ、もっともっと、死すら超越して。
 そうだ、アリスの記憶や肉体のデータをクラウド化できれば、遠隔でも肉体の蘇生が可能なのでは?
 それが可能だということは……?

(此処から先は、常人には到底理解出来そうにない数式や化学式がびっしりと書き込まれている)

(手記はある頁からごっそりと破り捨てられている)

(そして唐突に手記が再開されている……)

 最初の10人の娘たちが揃った。
 僕は今日から娘たちを製造番号で呼称する。
 アイン、ツヴァイ、ドライ、フィーァ、フンフ、ゼクス、アハト、ノイン、ツェン。もう彼女たちはアリスの“身体(いれもの)”ではない。

 僕が生み出したした娘たち。
 僕が構築したクラウドネットワーク。
 そして、最愛の彼女の記憶を保管したフラスコ。
 彼女たちは複製体の中でも特別個体……ネームドだ。

 今や工場で生産され続けるスペアとともに、ネームド個体の10人によって編成される『不死の軍隊』!
 それが『アリスズナンバー』!
 彼女たちがいれば、あの忌まわしき殺戮と狂気の迷宮世界に君臨するアリスの仇敵を殺すことだってできるはずだ!

 ……とはいえ、まずは娘たちの戦闘力を図るための実戦を経験させなくては。
 このところ、『工場』の近くの拠点(ベース)がレイダーに襲撃されているらしい。
 拠点に住まう難民と懇意になれば、武器の調達も用意になるだろう。
 僕はこの日、娘たちを初めて戦場へ送り出した。
 数時間後、娘たちは3人殺されたがスペアの肉体ですかさず復活を遂げ、意表をついてレイダー軍団を殲滅出来たと報告を受けた。
 よくやった、と僕はアインと呼び出して抱き寄せた。
 そしてふと、疑問が僕の口からこぼれた。
「アイン、僕は狂ってるのだろうか?」
「……判りません」
 アインを通して、僕はアリスを見ていた。
 彼女は……何故か泣いていたんだ。
星群・ヒカル
【ワンダレイ】
分かっていたけどどうにもいけすかないやつだな
アハトたちがその覚悟があるんなら、おれだって容赦はしないぜ
しかしあんまり気持ちのいい喧嘩じゃあない、啖呵を切っても意味がない
胸糞悪いったらありゃしないなッ!

宇宙バイク「銀翼号」に『騎乗』し、エネルギー砲は『視力・第六感』で『地形の利用』もしながら回避していく
周囲に仲間がいない場所まで彼らを誘導して、【超宇宙・真眼光波動】で、もろとも消しとばす!
みんなみたいに器用に倒せねぇけど、これがおれのやり方だ

陵也、おめー本当優しいタマしてんなぁ
彼女たちは生まれてこれなかった子供みたいなもんだ
次は素敵なお母さんの元に生まれられるだろうさ

※アドリブ歓迎


地籠・陵也
【ワンダレイ】アドリブ歓迎
っ……本当なら救ってやりたい。
……でも、無事に助けられたとしても彼女たちは多分、もう……
それなら、なるべく苦しまないように……

【指定UC】に【多重詠唱】を噛ませて【破魔】と【浄化】、それから【属性攻撃(光)】の魔術で連続攻撃する。
エネルギーを供給させる暇も攻撃させる暇も与えない、外殻を速攻で破壊する。
絶え間なく生命力を吸われて苦しかっただろう……もう大丈夫だ。今楽にしてやるから……!

遺体には安らかに眠れるように【祈り】を……
なあ、アハト、ノイン。
俺のエゴでしかないが、人として眠らせてやりたくてさ。
全部終わったら彼女たちを弔ってやってもいいか?
単純に墓を作るだけだが……


アスカ・ユークレース
【ワンダレイ】絡みアドリブ歓迎

娘と呼びつつモノ扱い……どこかで聞いた話ね。嫌な事思い出しちゃったわ。ま、今は目の前の問題が優先だけど。

【鎧砕き】の力を込めた【誘導弾】で外殻の関節を撃ち動きを止める。【情報収集】で外殻への供給路あるいは出力強化の装置を探りそこも破壊。

生体部分の生死は問わないけど、苦しんでるなら、彼女らが望むならUCで終わらせる事も考える。
【スナイパー】で一撃、せめて苦しまないように、安らかに眠ってください……なんて、やってることは殺人なのだけどね、結局は。

でも、ならばせめて、アハトやノインツィヒだけに背負わせないわ。


御魂・神治
オリジナルの脳が無事なら何で肉体を治そうと思わんかったんや
傷付けたくないからって脳のまま幽閉して
もう妹さんの事、遺伝子を取る為の素材としか見てへんな

天将、生体パーツと機体部分の制御系統をハッキングして狂わせろ
蒼天を撃って動きを封じたら高天原をリミッター解除し、
少ない手数で機体の四肢と頭を集中的に壊す
攻撃も出来ず動けなくしたら倒したも同然や
残ったロストシリアルは...生きていたら何とかする
生きていたら、やけどな
もし人格が崩壊していたら―― 一思いに介錯したる

博士なぁ...ヴァーテックスの連中に騙されとる気がするで
資金提供された時に弱み握られたか、
アカン契約持ち掛けられたんちゃうか?


アハト・アリスズナンバー
【ワンダレイ】
もう、私が知っている博士は死んだのですね。
……マザーから出撃要請を確認。止める権利など、私にはありません。
どうか姉達を、眠らせてください。――シンクロ開始。

宙を舞いつつ、一気に加速して鎧無視攻撃と部位破壊を応用して、生体部分目掛けてヴォーパルソードを突き立てる。
時間はかけずにせめて一突きで終わらせて、娘たちが苦しまないように。

娘たちを殺すのは苦しいけど、これは彼を置いて行ってしまった私の罪だ。 どうかまともに生ませられなかった私を恨んで欲しい。

私は娘たちを通して彼の最後を見るだろう。
猟兵の皆、ノインツィヒ、アハト。 どうか彼を、救ってください。

アドリブ・絡み歓迎


ノインツィヒ・アリスズナンバー
【ワンダレイ】
無茶すんなよアハト姉。皆。それにマザー。
こういうのは私の仕事だ。
昔から姉妹ぶっ壊すのは私の使命だ。
何のためのカウンターナンバーだ。全てはこの時の為なんだよ。

パフォーマンスとダンスを応用してステップを踏みつつ切り込み、一気に急接近。口からビームを打たれる前にその口をUCで鎧砕きする。
間に合わなくても勇気と覚悟を持って無理やりその鎧をぶっ壊す。
引き剥がした生体部分は戦闘の邪魔にならない所へ。

良いよ。全部終わったら、弔ってくれ。この姉達を。
……やるせねえなぁ。
でも、今日で終わりだ。あの野郎をぶっ壊す事が出来れば、こんな事もやらずに済む。
だから、決めて来いよアハト姉。

アドリブ・絡み歓迎


エメラ・アーヴェスピア
…永遠なんてないんだって…っていうのは、誰の言葉だったかしら
特にこの「時間」なんてものが使い捨ての世界では、ね
悪いけれどこちらも仕事、阻ませてもらうわ

さて、生きている以上助けるのが良いとは思うのだけれど…残念ながら私では助け出す手段は浮ばないわね
それでも助け易くする手段なら持ち合わせているわ
『遠き日を覆え我が狭霧よ』、魔導蒸気装兵に装着
特殊な蒸気により相手の機械部分に機能不全を起こさせつつ、装兵自体はその手に持つ魔導蒸気製の光剣で【遊撃】、時間稼ぎよ
迷宮厄災戦の「遠き日の憧憬の花園」と言う国で使われた兵器を元にした物を今回の相手に使うのは…皮肉よね

※アドリブ・絡み歓迎


ジェイ・ランス
【ワンダレイ】【SPD】※アドリブ歓迎
■心情
生体部品といての再利用か……。ま、効率的ではあるね。
どうも、みんなはせめても人らしい最後をって思ってるみたいだな。じゃあ、その意思をを優先させてもらおうかね。どこで狂ったかは知らないが、まあそれも、本人に合えばわかるだろうさな。

■戦闘
"事象観測術式"にて【情報収集】と【瞬間思考力】で敵の位置を把握しつつ、UCを起動。クイックな挙動(地形の利用、ダッシュ、空中戦、フェイント、滑空)で攻撃を避けつつ接近し、"電送砲"での【零距離射撃/鎧無視攻撃/クイックドロウ】で敵の機械の頭部を破壊、【蹂躙】していきます。

ま、介添えはほかのやつに頼むわ。


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

「悪趣味が過ぎる……!」

割と実父の所業も相当アレだったけど、これも相当にエグイ。動きを止めるだけならできなくはないけど――救出に関しては私の手札にはない。
【選択UC】で相手の攻撃を防御(盾受け)、【カウンター】になる形で電流(属性魔法)による足止めを実施する。エネルギーを吸収するにしても、限度はあるし、そもそも電流くらってまともに動ける筈もなし。
救う手立てがある人にその隙を活用してもらい、そうでなければその隙に『刹那』や[K's]Siriusで……楽にする。

「――今でありますよ!」(友軍に救う手立てがある場合)

「ごめん……っ!」(仕留める場合)


クラウン・アンダーウッド
アレンジ歓迎

成る程、資源の有効活用だねぇ。廃棄処分にしなかっただけ博士には好感が持てるよ。

ドンと鞄を置いて開け放つと人形達を呼び出し、人形楽団に演奏させて戦場を舞踏会場のようにさせる。

さぁ、いっしょに踊ろうじゃないか♪
一斉に10体のからくり人形達が両手に持ったナイフをクラウンに突き立て、各々が狂気を湛えた笑顔で生体部分以外の部位を解体せんとナイフを手に踊るように動き回る。

クラウンは一人、鞄片手に残った生体部品に近寄り質問していく。

キミの一番の救いは?生きることかい?死ぬことかい?ボクは優しいから好きな方を選ばせてあげるよ♪

無回答、死を望めば鞄を頭部に叩きつけ破壊。生を望めば鞄に入れて保護する。


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……。
悪趣味にもほどがあるけれど。
ここまでした「理由」はなんだ?
奴にはまだ会えないだろうけど……
ヒントならお前らが持ってる筈だよな。
死人を暴くのは気が引けるけれど……
アンタらを無力化するためにも躊躇してらんないんでね!

エネルギー砲の方向に注意しつつ、
『地形の利用』をして物陰に隠れ、しっかりと周囲の『情報収集』。
増援が出る気配はないか、奴らの接続部に不具合が無いか。
それと……『今、何を思っているか』『何を望んでいたか』。

彼女らの意識の、記憶の底に眠る情報こそが、
この先に進むための鍵だろうよ。
そうして攻撃プロセスに介入して砲撃できなくしたら、
そのまま駆け抜ける!



 アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)を始めとする『飛空戦艦ワンダレイ』の面々は、続々と集結してくる『欠番個体』達に複雑な心境を抱かざるを得ない。
「もう、私が知っている博士は死んだのですね」
 アハトはなんとなく予感していたのだろう。
 悲しむというよりも、ようやく腑に落ちたという納得の表情で斬竜剣ヴォーパルソードを鞘から引き抜いた。途端、剣身は青白く輝き始め、目の前に迫る『欠番個体』達を討つべき敵だと認識する。
 星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)は愛車の宇宙バイク『銀翼号』に跨ったまま、先程の博士の言葉を頭の中で反芻していた。
「……分かっていたけど、どうにもいけすかないやつだな」
「娘と呼びつつモノ扱い……どこかで聞いた話ね?」
 アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)の表情が思わず強ばる。
 かつて、アスカもまた実験兵器として研究所で生み出された存在だ。プロトタイプであったアスカは、後継機の鋳型のような存在であり、常に比較対象であった。そこに人間性を見出すことは出来ず、どう足掻いても当時のアスカは“実験機体”という存在意義から脱することは出来なかったのだ。
「……嫌な事思い出しちゃったわ。ま、今は目の前の問題が優先だけど」
「とはいえ、生体部品といての再利用か……。ま、効率的ではあるね」
 ジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)はニンマリと口元を緩ませながら、電極やコードで申し訳程度に隠れている裸体の生体部品を見遣る。
「で、アレ、どうする~? オレはみんなの意思を尊重したいかな?」
 ジェイの問い掛けに、苦悶の表情を浮かべる者が居た。
「っ……本当なら救ってやりたい。……でも、無事に助けられたとしても彼女たちは多分、もう……!」
 地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は今にも泣き出しそうな目を伏せながら声を振り絞る。
「それなら、なるべく苦しまないように……」
「そうよね……。自分たちの命が懸かっている以上、生体部品の生死は問える状況ではないわ。けど、苦しんでるなら、彼女らが望むなら、私達の手で終わらせてあげるべきよ」
 アスカの言葉に、星群が拳を強く握りながら肩を震わせた。
「アハトたちがその覚悟があるんなら、おれだって容赦はしないぜ。しかし、あんまり気持ちのいい喧嘩じゃあない、こんなの啖呵を切っても意味がない。ああ、ちくしょうッ! 胸糞悪いったらありゃしないなッ!」
 苛立ちを紛らわすべく、星群が愛車のハンドルに拳を叩き付ける。
「で、どうなんだ? アハト? ノイン? ……身内を殺せるのか?」
 星群の問いにノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)が真っ先に口を出した。
「こういうのは私の仕事だ。昔から姉妹ぶっ壊すのは私の使命だった」
 灰銀の瞳に漆黒の殺意が宿る。
 メリケンサックをはめた両拳を掲げ、ノインツィヒは力強い語気で言い放った。
「何のためのカウンターナンバーだ。全ては――この時の為なんだよ!」
 ノインツィヒの覚悟は固い。
 そして、姉であるアハトもまた、その目と表情から、やるべきことへの覚悟を感じさせていた。
「星群さん、ご心配は無用です。先程の巨大化生物も、私達の遠い『姉』でした。今更、彼女たちへ手心を加えるつもりはありませんので」
「……そうか。それを聞いて、おれも吹っ切れたぜ!」
「話は纏まった? どうも、みんなはせめても人らしい最後をって思ってるみたいだな。じゃあ、その意思をを優先させてもらおうかね」
 ジェイはワンダレイの仲間の意思を読み取り、とるべき行動指針を決めた。
 ここでアハトが小さく頷いた。
「それでは、皆さん。始めましょう」
 その言葉が合図となって、一同が攻撃を仕掛けてゆく。
 ……と、思った矢先の出来事だった。
 突如、衝撃波とともに吹き飛ぶ要塞の通路の壁!
 向かいの通路の壁が急に爆発したではないか!
 そして、壁の穴の中から、数名の猟兵達が飛び出してきた!
「本当、数が多すぎるわね。博士ったら、一体、何体失敗したのかしら?」
 エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は魔導蒸気猟犬の背に跨りながら、浮遊する魔導蒸気ガトリングガンのシリンダーを回転させて弾幕を張り続けていた。
 弾幕をやり過ごすべく遮蔽物へ逃げる欠番個体。
 その合間を縫って、一台の宇宙カブが勢いよく壁の穴の外へ飛び出してきた!
「よっしゃぁ! やっと外に出られたよ!ってっ! ここ、入り口じゃないかい!?」
 宇宙カブを運転する数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が白目を剥いて落胆しながらアハトたちの方へ走らせてゆく。
「ちょっ! 多喜殿! 前に人がいるでありますよ!」
 放心状態の数宮の背を叩くのは、後部座席に乗っている紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)だ。
 背を叩かれて正気に戻った数宮は、ワンダレイの面々の前で急ブレーキ&急旋回!
「あっぶねぇ!? ショックで危うく人様を轢いちまうところだったよ! って、あれ? ヒカル君じゃないか! ってアスカさんにジェイ君も? ってことは、ワンダレイの面々かい?」
「おや、ジェイ殿にノインツィヒ殿! こんなところで奇遇でありますな!」
 智華もまた、顔見知りの存在に目を見開いて驚く。
 そしてエメラもアハトの顔を見て、全てを察したようだ。
「あら、記憶違いじゃなければ、いつぞやでお会いした同僚さんね? この要塞の主、もしかして?」
「……ええ、そうです。私の……父というべき製造者たる博士です」
 アハトの言葉に、エメラは口元を固く結んだ。
「……だから欠番個体とか云々なんて言っていたのね、あの博士。ああ、先に言っておくけど、生きている以上は助けるのがベターとは思うのだけれど……残念ながら、私では助け出す手段は浮ばないわね」
「構いません。せめて、人としての死を与えることが、彼女たちへの慈悲ですので」
「貴女がそう言ってくれると助かるわ。でも、もうひとつだけ」
 強制的に出力を上げて襲ってくる欠番個体達を、エメラは浮遊型魔導蒸気盾で押し留めながらアハトへ提案する。
「それでも助け易くする手段なら持ち合わせているわ」
「それについてはアタシもさ……!」
 サイキック電撃を掌から放ちながら、敵を足止めする数宮も口を挟む。
「足止めくらいなら、私にも! って、私自身も救出の手立ては持ち合わせておりません……。ですので、やるのならばどなたかにお任せしたいのでありますが……?」
 04-MV[P/MC]マルチロールアサルトウェポン【刹那】の弾丸で牽制射撃を行う智華も言葉を発する。
 これにノインツィヒが怪訝な顔を見せる。
「もしもやれるんだったら、な? これは各自の判断に私は任せたい。けど、命の危険が及ぶようなら、容赦なく私がぶっ壊しに行くからな?」
「ええ、それで構わないわ」
 エメラが頷くと、数宮と智華もそれに追従する。
「というか、悪趣味が過ぎる! 割と実父の所業も相当アレだったけど、これも相当にエグイ!」
 智華が極力生体部品を傷つけないように、敵機の足元を重点的に撃ち抜いていた。
 対して、数宮は目の前の欠番個体達へ、憐れみの眼差しを向けていた。
「……。悪趣味にもほどがあるけれど。なぁ、教えておくれよ。博士って奴がここまでした『理由』はなんだ? 奴にはまだ会えないだろうけど……ヒントなら、お前らが持ってる筈だよな? 正直、死人を暴くのは気が引けるけれど……アンタらを無力化するためにも躊躇してらんないんでね!」
 数宮は智華に目配せをする。
 この意味を察した智華は、すぐさまカブの後部座席から飛び降りた。
「私はノインツィヒ殿らを守る盾になるでありますよ!」
「んじゃ、アタシは場を掻き乱して時間稼ぎをするとするかねぇ? エメラさんはどうするよ?」
「ユーベルコード……『遠き日を覆え我が狭霧よ(スティールミスト)』を使うわ。私も時間稼ぎと敵の弱体化に務めるつもりよ」
「つまり、ワンダレイ組が実質アタッカーってことか……」
 陵也は乗り気ではなさそうだが、目の前の彼女等の人の尊厳を損なわせたままにするつもりは毛頭ない。
 と、そこへ遅れて要塞に到着した猟兵達も合流を果たした。
「なんやなんや? こないぎょうさん敵も味方も集まって、一体どないしたん? 合コンかいな?」
『警告。真面目にやって下さい』
「なんや天将? 冗談に決まっとるがな……?」
 御魂・神治(除霊(物理)・f28925)と相棒の人工式神(AI)の天将のボケとツッコミが挨拶代わりとなった。
「いいねいいね♪ にぎやかなのは嫌いじゃないよ!」
 対して、クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)は、欠番個体達の生体部品を視認すると、興味深そうに見詰めていた。
「成る程、資源の有効活用だねぇ。廃棄処分にしなかっただけ、ボクは博士には好感が持てるよ」
 そのままドンッと大きなカバンを床に置くクラウン。
 カバンを開けると、中からは一斉に10体のからくり人形達が次々と飛び出してきた。
 更に、カバンの中からは全自動で演奏をする人形楽団が、まるでサーカス一座の出囃子のようなおどけた音楽を演奏し始めたのだ。
「さぁ、いっしょに踊ろうじゃないか♪ 死出の円舞曲をね?」
 クラウンが操る10体の人形たちの手には、それぞれナイフが握られている。
 そのナイフの刃を、唐突に主人であるクラウンの太ももや脇腹へ一斉に突き刺してみせたではないか!
 これには、見守っていた猟兵たちも驚愕してしまう!
「あいたたた……! だ、大丈夫♪ こうしないと、ボクの寿命が縮まっちゃうからさ!」
 さも当然のごとく、10箇所の傷から血を流すクラウン。
 そして、血のついたナイフを持った人形が、次の瞬間、発狂した。
「狂妄舞踏(スカーレット・エクス・マキナ)! みんな、踊り狂え!」
 人形たちがケタケタ笑いながら、まるで暴風の如く欠番個体達の機械の四肢を容赦なく切断してゆく!
 両腕や胸元からのエネルギー砲が発射されるまでの僅かなチャージ時間の間に、人形たちが通過すると生体部品以外がバラバラになってしまうのだ。
 それもそのはず。今、この人形たちの攻撃回数は9倍まで跳ね上がっている。そのうち、1回はクラウンの自傷に当てられているため、実質は8倍の攻撃回数であるが、それでも敵をバラバラに解体するのには十分過ぎる手数である。
 そして動けなくなった生体部品を、クラウンは二、三言葉を交わすと、人形に彼女等のとどめを刺させた。
「う~ん、残念! せっかく生かしてあげようと思ったのに、み~んな死にたがるなんてね?」
 ここでノインツィヒは我に返ると、ワンダレイの面々へ告げた。
「なんかすごいことが起きたが、私達も始めるか!」
「「おう!」」
 ワンダレイの面々は、それぞれの方法で欠番個体に引導を渡してゆく。
 星群は銀翼号をかっ飛ばし、欠番個体を一箇所へ追い詰めて集めてゆく。
「おらおらーっ! 轢かれたくなかったら退きやがれ!」
 敵から放たれる数多の生命エネルギー弾連射は、愛車の巧みなハンドル捌きとスピードで回避を実現させる。敵の弾道もしっかりと視認してるのも回避しやすい要因だ。
 次第に、星群は敵の集団を一箇所へ集めると、仕上げにユーベルコードで一網打尽にせんとする。
「その目に焼き付けろ。これが……超宇宙番長の輝きだッ!」
 星群の双眸に星が煌めく。
 途端、一瞬で強力な魔力光波動が、彼の両目から放たれた!
「超宇宙・真眼光波動(メンチバースト)ーッ!」
 その輝きは星の如く。綺羅びやかで、荒々しい輝きだった。
 光は集まった欠番個体達を飲み込み、一気に消し飛ばしていってしまった。
 跡形もなくなった眼前の様子に、星群は目を閉じて祈りを捧げる。
「みんなみたいに器用に倒せねぇけど、これがおれのやり方だ……」
 星群は討ち漏らしがいないか、周囲を宇宙バイクで走り、その都度追い詰めてはユーベルコードでまるごと消し飛ばしていった。
 一方、ジェイは“事象観測術式”によって、欠番個体達のバイタルサインを感知、この要塞内全ての彼女たちの分布を把握しようとしていた。
「この建物は3階建てで、ドンドンとこの1階に降りてきてるね?」
「やっぱこの気配は増援かい? きりがないねぇ!」
 数宮はジェイの演算の手助けをするべく、ユーベルコードで欠番個体の深層心理並びに対象の精神、そして過去の記憶にまで解析を進めていた。
(この『過去に抗う腕(カウンターパスト)』は、相手が『今、何を思っているか』『何を望んでいたか』を把握するにはうってつけさ。アタシの思念波が届く範囲なら、擬似的なハッキングが可能だからね!)
 なにせ、生体部品へ直接探りの手を入れる事ができるユーベルコードだ。目の前が死体でない限り、数宮のユーベルコードは今や、どんなハッキング技術よりも強力な威力を発揮する。
「あったよ! システムダウンのコマンド! おら、お前達、おとなしく寝ちまいな!」
 彼女たちの記憶の中から、サイバー・メイデンのメインエンジンを強制停止させることに数宮は成功したのだ!
「で、彼女たちの心の声、聞こえた?」
 ジェイの質問に、数宮は眉間にシワを寄せてしまう。
「ああ……聞こえちまったさ。……楽になりたい、そうだ」
「オッケー。それじゃ、苦しまないように逝かせてあげるよ!」
 ジェイはユーベルコード『慣性制御術式『高貴なる獅子』(イドラーローヴェ)』を起動!
「Ubel:Code Edler_Löwe Dame……」
 慣性の概念を制御する術式、その実験体。
 つまり、平たく言えばジェイの身体が加速する。
 一瞬で欠番個体の懐へ肉薄したジェイは、630mm仮想電磁加速電送砲(ブリッツカノーネ)の銃口を押し付け、そのまま引き金を絞った。
 バチチッと火花が散ったかと思えば、欠番個体の上半身は一瞬で蒸発してしまっていた。
「……こうする他ないのなら、仕方がないさね……」
 数宮は顔を地面に伏せ、どうしても彼女らの最期を見届けることに躊躇っていた。

 また、別の場所では、陵也が欠番個体と戦闘を行っていた。
「今から一気に畳み掛ける。覚悟してもらう」
 陵也の宣言通り、欠番個体らにユーベルコードを使用させう暇を与えないほどの高速詠唱で幾重にも同時に魔術詠唱を展開。
「アシストするわ。魔導蒸気機関正常稼働、力押しだけが全てではないわよ」
 そこへエメラがユーベルコード『遠き日を覆え我が狭霧よ(スティールミスト)』を発動させると、特殊な蒸気を放ち敵の力を奪う。
 たちまち、周囲の欠番個体の機械部分が動作不良に陥る。
 この好機に乗じて、陵也は光の弾丸を空中に描かれた魔法陣から一斉射!
 それらは次々と敵へ着弾し、機械部分が破壊された欠番個体が床にだらしなく転がり落ちてゆく。
 すかさず陵也は彼女たちへ駆け寄り、脈を取る。
「……駄目か。もしかして、ユニットが強制的に外されると生体部品も死ぬのか? だとしたら、本当にあの博士はエグいことをしやがるな……!」
 僅かに漏れる怒りと怨嗟。だが、これは自身がぶつけるべき感情ではない。
(そうだ、これはアハトとノインが博士にぶつけるべき感情だ。俺は、俺の出来ることを……)
 事切れた欠番個体達を、戦闘の巻き添えにならないように担ぐ陵也。
 その裸体はまだ温かいが、心音と呼吸音が全く聞こえてこなかった。
「……もう少し待っててくれ。また迎えにくるから」
 そう告げて離れようとした時、エメラが蒸気魔導マスケット銃をぶっ放しながら、陵也の護衛に駆け付けた。
「急に戦場を離れるから驚いたわ。どうする気なの、その子達?」
「……ちゃんと、人として葬ってやりたいんだ」
 その言葉に、エメラも沈痛な面持ちになる。
「なるほどね……。私も賛成よ。このユーベルコード、実は迷宮厄災戦の『遠き日の憧憬の花園』と言う国で使われた兵器を元にした物なの。それを今回の相手に使用するのは皮肉よね……。私も、せめてきちんと弔って、この事を侘びたいわ」
 エメラの視線の先には、召喚した魔導蒸気装兵が蒸気を噴霧しながら光の剣で欠番個体と斬り合っている様子があった。

 アスカと御魂、そして智華は、最初から救済のために欠番個体の殲滅を行っていた。
「ごめん……っ!」
 智華は愛銃で欠番個体の頭を吹き飛ばした。
 そして、四方八方から放たれるビームやエネルギー弾は、ユーベルコード『矛反転する見えぬ壁(ヴェンジェンス・ウォール)』で受け止める。
「此処には壁があるでありますよ。見えないと思うなら撃てばいいであります。――さて、答え合わせの時間だね?」
 パチンッと智華のフィンガースナップが響くと、攻撃を仕掛けた欠番個体へ高圧電流が放射された!
 生体部品であるがゆえに、感電で筋肉が収縮して強張り、多くの敵が麻痺してしまう。
「お二人共、今です……!」
 悲痛な声で攻撃を促す智華。
 これにまずはアスカが動いた。
「せめて苦しまないように、一撃で……!」
 愛用の機械弩『フェイルノート』からボルトが連続で射出される。
 ファニングショットめいた神速の短矢の雨は、寸分狂わずに彼女たちの額を貫通して終わらせていった。
 だが御魂はまだ諦めきれていない様子だ。
「なぁ、まだ殺すんは早計ちゃうんか? なんかがあるはずや……!」
 奥歯を噛み締め、相棒の天将に欠番個体の解析を急がせる。
『申し訳ありません。もうすぐで終わりそうなのですが……』
「まだかいな、天将? 嗚呼、てか、オリジナルの脳が無事なら何で肉体を治そうと思わんかったんや? 傷付けたくないからって脳のまま幽閉して、それ、もう恋人さんの事、遺伝子を取る為の素材としか見てへんな」
 苛立つ御魂は神器銃『天地』を構えてユーベルコードを使用。
「チョロチョロすんな、大人しくしいや」
 ダンッダンッと短い銃声が鳴り響く。
 発射された青白い軌跡を描く追尾弾が欠番個体の機体に命中すると、着弾地点を包む聖なる光が身動きを封じてみせた。
「高圧電流とわいの結界術のあわせ技や。これでよう動けへんわ」
『お待たせしました、解析完了です』
「ようやったで、天将。早速やけど、生体パーツと機体部分の制御系統をハッキングして狂わせろ」
『了解しました』
 相棒の命令に従い、周囲の機体が一斉にシステムダウン!
 そして、御魂は武器をブランダーバス型旧式神器銃『高天原』に持ち変えると、機械部分の四肢や頭部を躊躇せずに撃ち抜いてみせた。
「これで全武装は潰してやったわ。むやみに殺さんでもなんとかなるやろ?」
「……そうね。けど……」
 アスカは無力化された欠番個体に駆け寄り、息を確認する。
 ……まだ、かすかに胸元が上下している!
「息が、あるわ……」
「ちょっと話しかけてみませんか? 博士についてなにか聞けるかもであります!」
 智華もそばへしゃがみ込み、欠番個体へ呼びかける。
「お願いです。返事をしてくれませんか? 博士のこと、なにか知っていたら教えて下さい!」
 その問い掛けに、その個体は掠れた声を発した。
「コ……ロ、シテ……」
「……酷いこっちゃな」
 悲嘆に暮れる御魂は銃口を彼女の額に押し付けようとした。
 だが、それをアスカに止められた。
「なんや? アンタ、さっきまでバンバン額を撃ち抜いとったやん?」
「……彼女は、自ら死を望んでます。なら、もっと安らかに眠らせてあげませんか? 私なら、それが出来るわ」
「……エゴ、やな。まあ、ここにいるのはみんなエゴや。わいもエゴでここにおるようなもんやし。ええんちゃうん?」
 御魂は苦笑いを浮かべる。
 対して、智華は申し訳無さそうな顔をしていた。
「もっと、人間らしく見送ってあげたかった……」
「せやな。でも、今の状況じゃそれも叶わんわ。この子に任せてあげようや」
 御魂と智華がアスカを促す。
 アスカはすぅ、と息を吸い込むと、慈愛を込めて詠唱を始めた。
「癒したまえ、赦したまえ、祈りたまえ。暗鬱たる過去の幻影よ、その眠り努めて覚めることなかれ」
 すると、周囲に170匹の羊の群れが出現!
「この群れは、猟兵が触ると傷が癒えて、オブリビオンが触ると永遠の眠りへ誘うわ」
「……見た目によらず怖いわ!」
「でも、これで楽に死ねるでありますね」
 羊に見送られた欠番個体は、僅かに笑みを浮かべたまま、ひっそりと永眠に就いた。
「……とはいえ、やっていることは殺人なのよね」
 アスカがポツリと呟いた。
「でも、これでいいのよ。だって、アハトやノインツィヒだけに身内殺しの罪を背負わせないわ。私が、肩代わりしなきゃ……」
 アスカは張り裂けそうな胸の内の感情を、どうやって沈めればいいのか、分からなかった。

 次々と無力化または死亡してゆく欠番個体。
 これにノインツィヒが周囲に叫ぶ。
「無茶すんなよ、アハト姉。それに皆。あとはカウンターナンバーの私がやる!」
「NO.90こそ休んで下さい。この後の決戦に響きますよ」
「その言葉、そっくりそのまま帰すっつーの! ダラッシャアッ!」
 ノインツィヒがユーベルコードにまで高めた必殺の拳を生体部分の胸元へ叩き込み、その心臓を破壊して敵の機能停止させる。
 アハトもまた、躊躇せずにヴォーパルソードで生体部品を斬り捨てる。
 こぼれた内臓が、血液が、2人の周囲を次第に赤く赤く染めてゆく。
「しかし、まじでキリがねぇ! 生体部品を引っ剥がせたのも最初だけだったしな!」
 ノインツィヒも今では撃破に方針を切り替えているが、最初こそ部位破壊を駆使して生体部品を機械部品と分離して引っ剥がしていたのだ。
 だが、数で不利な猟兵には、その作業は大きな隙を生むことになる。
「って、言ってる間にまた来やがった! 畜生め!」
 ノインツィヒは床を蹴って機械部分の顔面へ飛びかかる。
 機械の口の中で収束するビームを間近に目視しつつ、ノインツィヒはその顎へ拳をカチ上げた!
 強制的に口を閉ざされた機体は、ビームが暴発して機械部分の上半身が吹き飛んだ!
「はっ! ワンパターンなんだよ!」
「……ですが、やはり目の前で苦しむ姿は堪えますね……」
 アハトの言葉通り、機体の出力を得るために、生体部品に電極で刺激を与え、時には媚薬や幻覚剤などの非合法な薬剤等まで投入してまで生命エネルギーを搾り取ろうとする様は、凄惨の一言では済まされないものであった。
「あれをなんとかしてあげたいのですが……おや?」
 この時、アハトは本拠地の『工場』から特殊なコマンドコードをアリスズナンバーネットワークから受信した。
「これは……マザーから出撃要請を確認」
「おい、マジすか?」
 ノインツィヒが目を丸くして驚いた。
「来るのか、此処にマザーが?」
「ええ。そして、止める権利など、私にはありません」
 アハトの左目が緑色に発光し、ネットワークに接続する。
「マザー。どうか姉達を、眠らせてください。肉体の操作権限を一時的にオリジナル・アリスに移行。――同調(シンクロ)開始」
 次の瞬間、アハトの身体が01データの光に飲まれてゆく。
 そして光が収まると、子供の姿のアハトではなく、凛とした雰囲気の成人女性がそこにいた。
「ノインツィヒ。いままでよく頑張ってくれましたね」
「マ、マザー! マジで出張ってきたのかよ……」
 狼狽するノインツィヒに、優しくマザーは微笑みかける。
「ええ。元はと言えば、これは私と彼の問題なのだから。私が直接手を下すべきと考えたまでよ」
 そう告げると、マザーは弾丸めいて一直線に駆け出してゆく!
「私はマザー・アリスことアリス・グラムベル。貴方達の母であり――」
 すれ違いざま、青白く輝くヴォーパルソードの剣閃が瞬く。
 途端、欠番個体の生体部分の首が地面にズルリと落ちた。
「貴方達を殺す処刑人よ」
 そこから先はノインツィヒも目を疑った。
 マザーの剣に、一切の躊躇がなかったからだ。
 迫りくる敵の攻撃をかわし、全て首や心臓などの急所への一撃で殺す戦闘力は、かつての“長女”を彷彿とさせた。
(これが、オリジナルの実力……! なんだこれ、化け物じゃねーか……!)
 カウンターナンバーが聞いて呆れるほどの無慈悲さに、いつしかノインツィヒの膝が笑っていた。
 そして、ある程度を捌き切ると、今度は唐突に宙を駆け上がっていくではないか。
「え、マザーって空飛べるのかよ?」
「ええ、この靴は魔法の靴よ。そして、ここからが私の本領発揮ね」
 空中を蹴って多段ジャンプを始めたかと思えば、超立体機動から繰り出される三次元剣術が、欠番個体の急所を死角から次々と狙い、寸分狂わずに絶命に追い込んでゆくのだ。
 その動きはまるで跳弾する銃弾か、はたまた某蜘蛛男のスーパーヒーローか。
「娘たちを殺すのは苦しいけど、これは彼を置いて行ってしまった私の罪だ。そして、この胸の苦しみは私の罰だ。どうかまともに生ませられなかった私を恨んでほしい」
 謝罪と後悔の言葉を娘たちに投げかけながらも、マザー本人は返り血ひとつ浴びないという達人の身のこなし。
 気が付けば、圧倒的戦闘力で欠番個体を殲滅してしまっていた。
「……虚しいですね。殺すことが愛情表現になるだなんて」
「ちょっと強すぎじゃねーの……?」
 後半はノインツィヒ、ただ見守るしか出来なかったほどに、マザーの戦闘力は凄まじかった。
 これにマザーは沈痛な面持ちで言葉を返す。
「強いのはアハトの身体だからよ。この子は『最初の10人』の中で戦闘特化型の個体だもの。……私の仇、この娘が取ってくれたのも納得できる実力だわ。あとは私自身の戦闘経験の差ね」
「うん、やっぱ化け物じゃねーか……」
 ノインツィヒは密かに思った。
(アハト姉の身体での戦闘力の高さは理解できるが、マザーの戦闘経験値ってどんだけだよ……)
 そのあたりの記憶は本体から引き継がれていないようなので、ただただ戦慄する他なかった。
 と、その刹那、アハトの身体にノイズが走る!
「うぐッ!?」
 マザーがその場でうずくまる!
 頭の中に、此処ではない場所の映像が浮かび上がり、また消えてゆく。
 これは……?
「おい、大丈夫か? これって一体……?」
「……アリスズナンバーネットワークが、アップグレードされたようね」
 マザーが訝しみながらも、確信を持った口ぶりで答えた。
「つまり、アリスズナンバーネットワークのグリモア化よ。アハトはグリモア猟兵に覚醒したんだわ」
「は?」
 ノインツィヒは目が点になる。
 そして、途端に青ざめた。
「って、それ、まずいだろ。博士もアリスズナンバーネットワークに接続できるんだが? オブリビオンがグリモアを持つとか、それ世界の危機じゃねーか!」
「……どうやら、また彼を止める理由が増えたようね?」
 マザーとノインツィヒはざわざわと胸騒ぎに駆られるのであった。

 こうして、全ての欠番個体が殲滅された。
 かろうじて人の形を保った個体は、全部で6体に留まった。
「なあ、アハト、ノイン。俺のエゴでしかないが」
 陵也が2人に提案する。
「彼女たち、人として眠らせてやりたくてさ。全部終わったら彼女たちを弔ってやってもいいか? 単純に墓を作るだけだが……」
「陵也、おめー本当優しいタマしてんなぁ」
 星群が陵也の首に腕を回して絡んでくる。
 身長差10cm以上あるので、陵也はがっちりホールドされてしまう。
「彼女たちは生まれてこれなかった子供みたいなもんだ。墓を作ってやれば、次はきっと素敵なお母さんの元に生まれられるだろうさ」
「良いよ。全部終わったら、弔ってくれ。この姉達を」
 ノインツィヒは伏し目がちに承諾してみせた。
「……やるせねえなぁ。でも、今日で終わりだ。あの野郎をぶっ壊す事が出来れば、こんな事もやらずに済む。だから、決めて来いよアハト姉。……マザーもな?」
「ええ、私は娘たちを通して彼の最後を見るのよね」
 今だ、マザーがアハトの身体の権限を操作中である。
 マザーはこの場にいる10名の猟兵に向き直ると、深々と頭を下げた。
「猟兵の皆、ノインツィヒ、アハト。 どうか彼を、救ってください」
 その真摯な態度が、猟兵達の心を打つ。
「永遠なんてないんだって……って、誰が言った言葉だったかしら? 頭を上げて頂戴。貴女の意思を阻害する人なんて、此処には誰ひとり居やしないはずよ」
 エメラの言葉と微笑みに、マザーは今一度、大きく頭を垂れた。
 

 ◆

 猟兵達は要塞内の探索を始めた。
 博士に関する情報を収集するためだ。
 やがて、御魂とクラウンが数冊の古ぼけたノートを発見した。
「これは、博士の手記だね? 読んでみればなにか判るかもしれないよ?」
「どれどれ……? ……うわ、博士、ヴォーテックスの連中と取引しとるやん。絶対、連中に騙されとる気がするで。多分、資金提供された時に弱み握られたか、アカン契約持ち掛けられたんちゃうか?」
 そこにはアリスズナンバー開発の秘話や苦悩などが事細かに綴られていた。
「……おい、待ってくれ。これは、嘘だろ……」
 ノインツィヒは三度、驚愕する。
 そこに書かれた手記の内容に釘付けになってしまった。


『今日、僕はアインに、あの忌まわしき殺戮の迷宮世界へのアサイラムの場所を教えた。
 今もその場所にアサイラムがあるかどうかは不明だ。
 だが、もしも世界を渡れた暁には、アインは僕の仇を討つと約束してくれたんだ。
 やはり、僕の愛娘はアインだけで十分だ……!』
 

 Tip:このシナリオに参加している猟兵全員が、博士の手記(※断章)の内容を把握しました。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ルイス・ラドヴィッジ博士』

POW   :    復讐の狼煙
【手に持ったタブレット】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、手に持ったタブレットから何度でも発動できる。
SPD   :    グリムコード「サモン・アリスズナンバー」
レベル×1体の、【目】に1と刻印された戦闘用【量産型フラスコチャイルド】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    彼女は今、泣いているんだ!
対象への質問と共に、【自身の怨念】から【燻り狂えるバンダースナッチ】を召喚する。満足な答えを得るまで、燻り狂えるバンダースナッチは対象を【燻り狂える顎】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アハト・アリスズナンバーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【プレイング受付開始日:2020/11/29 AM9:00~】
(博士の手記の所々に血液と思しき染みがこびり付いている)

 ヴォーテックス一族の配下の男が言っていたことは本当だった。
 僕がアリスズナンバーを完成させた途端、そのシステムや娘たちを拉致しようとするレイダー達が研究所周辺での活動を活発化させたのだ。
 研究費の援助を受け取る際の助言に従い、僕は彼女たちの生産工場の警備を超厳戒レベルまで構築。
 これにより、次第にレイダー達は生産工場や僕の研究所を襲撃する機会はめっきり減少した。

 故に。対価を支払わねばならない。
 今、この手記を書いている僕は、人間として最期の僕だ。
 僕はこれから死んで、オブリビオンに生まれ変わる。
 それがヴォーテックス一族とかわした契約だ。
 とはいえ、一体、どのようにすれば人間がオブリビオンに生まれ変わるのだろうか?
 まさか、人為的にオブリビオンストームを起こせるとでも言うのだろうか?
 万が一のため、この手記は金庫に入れて保管しておこう。
 いたずらに僕は殺されるだけかもしれないのだから。
 でも、これは彼女を守るためだ。
 そのためなら、僕は難だってやってみせる。
 
 もうすぐ約束の時間だ。彼が、来る。

(ここから自体が乱れている)

 素晴らしい! 本当にオブリビオンとして僕は再誕した!
 ヴォーテックス一族に僕は忠誠を誓おう!
 そして、嗚呼! 世界はなんて残酷なまでに美しいのだろうか!
 36の世界、骸の海、オブリビオン、猟兵……!
 遂に、僕は(血の染みで文字が滲んでいる)んだ!

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 猟兵達は、要塞の三階の最奥区画へ侵入していた。
 そこは蛍光色の光源に照らされた巨大な試験管のようなガラスの筒が立ち並ぶ研究区画であった。
 培養液で満たされたガラスの筒の中に、生物の胚と思しき肉塊が蠢いている……。
 奥へ進むたびに胚は魚や爬虫類、そして次第に人型に近付いているように見える。
 まさか博士は、ここで新たなアリスズナンバーを製造しようとしているのだろうか?

 不意に、猟兵達は研究区画の一番奥……そこだけ照明が照らされていない金属製のドアが開け放たれた。
 コツ、コツ、コツ、と革靴の底を鳴らして歩み寄ってくる白衣を着た銀髪痩身の男が、猟兵達を品定めするように見詰めていた。

「はじめまして、いや、久しぶりというべき者もいるようだ。ようこそ、僕の研究所へ」

 ルイス・ラドヴィッジ博士は、猟兵たちに扉の奥へ付いてくるように促す。
 一瞬、猟兵達は罠を警戒するが、このまま培養液の満たされたガラスの筒の区画に留まっていても仕方がないと判断したため、ゆっくりと鉄の扉をくぐってゆく。
 扉の奥は下り階段になっていた。
 どうやら、要塞の外へ通じている非常階段らしい。
「君たちは何故、僕が外へ向かっているか疑問を抱いているだろう。単純な話だ、培養液の中の娘たちを見ただろう? あそこで戦闘を行えば、彼女たちに影響が出る」
 だから、十分な戦闘行為が可能な屋外へ移動した、と。
 要塞の外へ出ると、猟兵達は博士を逃げられないように包囲した。
 博士はこれに思わず失笑する。
「僕が逃げるとでも? 勘違いも甚だしい。僕は今から君達を殺して、ヴォーテックス一族へその骸を献上するんだ。研究費の増額を乞うためにね」
 ……眼の前の博士は、もはや完全に人間性を放棄し、オブリビオンとしての言動が自我に染み付いてしまっていた。
「それに、だ。アリスズナンバーネットワークのグリモア化は、僕にとっても僥倖だ。これを完全掌握すれば、僕がこの世界のオブリビオン・フォーミュラとして君臨することも、否、他の世界すら過去で埋め尽くせるだろう!」
 博士の野心に満ちた狂気の双眸がギラギラと輝き、ゲラゲラと声を上げて嗤い出す。
「だから、アリス。そこにいるんだろう? 何故、僕のアリスズナンバーネットワークの完全掌握を阻む? 僕は遂に本懐を遂げようとしているんだぞ? 君との約束を果たそうとしているんだぞ? 君のためなんだ、全部全部、君のためなのに……、何故だ? 何故、僕に上位権限を与えない!? グリモアを一番有効活用できるのはこの僕だぞ!!」
 どうやら、博士のネットワーク権限は現在、最低限のものしか行使できず、マザー・アリスによって上位権限がロックされているようだ。
 オブリビオンがグリモアを持ってしまえば、秘匿され続けているグリモアベースへの侵攻を許してしまいかねない!
「くそっ! 余計な真似を! やはり、やはり君は『偽物』だ! 経年劣化で本来のアリスの人格と乖離してしまっている! そこにいる8号も、カウンターナンバーの90号もそうだ! 彼女はそんな性格ではない! そんな事は言わない! そんな目で僕を見たりしない!! そもそも僕に歯向かったりなんてしない!」
 憤怒の形相で猟兵達へ叫ぶ博士。
 その目に、一筋の涙がが流れ落ちる。
「やはり、完全なアリスは……長女のアインだけだ。アインだけが、アリスの魂を完全復元できているんだ! なぜなら、彼女は僕に優しかったし、いつだって僕の言葉に従順だったし、彼女は僕を拒んだことは一度もなかったし、僕が組み伏しても彼女は受け入れてくれたし、彼女は僕を愛してるとも言ってくれた! アインこそが真のアリス・グラムベルなんだ! 他は粗雑乱雑な劣化コピーに過ぎなかったんだ! だが、嗚呼! アリスラビリンスに向かったまま、彼女は今だ帰ってこない! きっとまだ『自分の扉』を探し当てられていないんだ! これでは二の舞じゃないか! もしもあの世界でアインが絶望でもしたらどうしてくれるんだ!? そんな事になったら、彼女は生きながらにしてオウガへと成り下がってしまうじゃないか! そんな結末のために! 僕は! 恋人を復元したつもりはない!」
 ダンダンッと子供のように地団駄を踏む博士。
「……だから今すぐグリモアが必要なんだ! 今すぐ、アリスラビリンスへ向かってアインを助けなければ! さあ、上位権限を寄越してもらおうか! でなければ、殺してでも奪い取る!」
 歯噛みする博士が、手に持っていたタブレット端末を掲げて猟兵達に喚き散らす姿は、おぞましいの一言では足りなかった。
 狂ってしまった愚かな博士は嘆き悲しみ、激昂しながら天へ咆哮する。
「彼女は……アインは今、泣いているんだ!」
クラウン・アンダーウッド
なんというか、悲劇というよりは喜劇だねぇ。キミは十分に愛されていたよ。まぁ、分からないだろうけどさ♪

さぁて、博士のことはとことん陵辱しよう♪おいで、δ(デルタ)。キミの森へご招待だ!

カーテシーしたδを中心に樹海の迷宮が展開される。

さぁ、舞台は整った。出口は一定間隔でこの子(δ)に移動させるから早急に斃すことをオススメするよ♪キミの執念や記憶が失われてしまうのが先か、この子が機能停止してしまうのが先か、競争といこうじゃないか!

クラウンとその他のからくり人形はδを守護するように立ち回る。どんな質問にも博士の神経を逆撫でする答えをして反応を楽しむ。時間がたつ程自身がした質問の内容すら忘却させていく。



 完全に狂ってしまったオブリビオン――ルイス・ラドヴィッジ博士を相手に、クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)は道化らしくニタリと嘲笑う。
「なんというか、悲劇というよりは喜劇だねぇ。キミは十分に愛されていたよ。まぁ、分からないだろうけどさ♪」
「ああ、分からないさ。愛なんて知らないし、愛なんて分からない。最愛の人は未だに帰ってこないのだから!」
「だから、愛自体を終わらせちゃうっていうのはナンセンスだよね♪」
 クラウンは10体の人形を整列させると、そのうちの一体を前に進ませ、博士へスカートの裾を摘んで屈み、一礼する。
「うんうん、ちゃんとカーテシー出来てお利口だね、δ(デルタ)? さぁて、博士のことはとことん陵辱しよう♪ δ、キミの忘却の森へ博士をご招待だ!」
 δの全身が淡く輝いたかと思った次の瞬間、研究所の荒野が一瞬にして深い樹海に包まれる!
「な、何を始める気だ……?」
 博士はとっさにユーベルコードの攻撃を警戒する。
 と、その時、樹海の奥底から、クラウンの声が聞こえてきた……。
『さぁ、舞台は整った。出口は一定間隔でこの子……樹海を発生させているδに移動させるから、早急に斃すことをオススメするよ♪ キミの執念や記憶が失われてしまうのが先か、この子が機能停止してしまうのが先か、競争といこうじゃないか!』
「ふざけるな……! 遊んでいる余裕はないんだ、早く此処から僕を出せ!」
「嫌だね♪ ほらほら、楽しい樹海探索の始まりだよ!」
 まったく質問に取り合わないクラウンの言動に、博士は強い怨念を滲ませる。
「嗚呼、僕がこんなところで足止めを食らっている今も、アインは……彼女は今、泣いているんだ!」
 博士の怒号とともに召喚猿は、燻り狂えるバンダースナッチだ。
 それは犬のようであり、または鳥のようであった。腕の長い猿のようにも見えるが、姿はすぐに消えてしまった。
 一瞬で博士の視界から消えてしまえるほどの敏捷性を有しているのだ。
「うぐっ……! くそっ! 頭の中をかき混ぜられているような気分だ……!」
 ユーベルコード製の樹海が持つ効果は『忘却』。
 博士の有する記憶が、この樹海にいるだけで刻々と剥がれ落ちてゆく。
 だが、唐突に博士は有名な童話の一小節を唱えてみせる。
「勝ったつもりでいるだろうが、どうやらピエロの猟兵のキミは知らないようだな?
 “You see, a minute goes by so fearfully quick. You might as well try to stop a Bandersnatch!”

 ――喰らいつけ、バンナースナッチ!」
『え、今、なんて言ったのかな? って、うわあああああああああああああ!』
 陶器が軋み、砕け、破壊される甲高い音とクラウンの悲鳴が折り重なる。
 怪物の咆哮とともに、何かの破砕音が樹海の中に轟く!
 途端、樹海は消滅し、元の荒野へ周囲の風景が戻る。
 博士を苛んでいた頭痛や倦怠感は解消され、対して、クラウンはボロボロの人形達を抱えて、自身も両腕を負傷していた。
「なんで……? こうもあっさり、δの居場所が分かった……?」
 クラウンの前にはバンダースナッチが立ちはだかっていた。
 その伸びる頸部と、獲物を捕らえるためにくすぶり狂った顎でクラウンを脅かす。
 怪物の犬歯には、人形の衣装の切れ端と思しき布切れが挟まっていた。
 博士は告げた。
「僕の怨念の深さを忘却させるつもりだったようだが、バンナースナッチは満足な答えを得るまで対象を攻撃を止めない。自動追尾型なんだよ、このユーベルコードは。つまり、最初から迷路など無意味だ。ユーベルコードの相性を見誤ったキミの敗北だ」
「で、でも、早すぎる!」
「バンナースナッチはとても素早い怪物だ。知らなかったのか? 有名な話だと思ったが、そうか、ピエロは童話を嗜まないか」
 博士がボロボロのクラウンへ怪物をけしかける。
「まずは1人。さようならだ」
「……ッ!」
 クラウンの喉笛へ向かって、怪物は頸部を伸ばし、燻り狂える顎を喰らいつかせんと試みる!
 道化は死を覚悟するも、眼前に飛び込んできた魔法剣によって怪物の顎から一命を取り留めた。
「……ごめん、みんな! あとは頼んだよ!」
 クラウンはやむなく、戦場から離脱せざるを得なかった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アハト・アリスズナンバー
【ワンダレイ】
……博士、報告します。
オウガ・オリジンを抹殺に成功。私達の戦いは終わりました。
そういっても、貴方の中ではまだ続いてるのでしょうね。
貴方がそうあり続ける限り、アリスは泣き続ける。

対象をジャバウォック、並びにバンダースナッチと認識。ヴォーパルソード射出。
その内の1本を掴み、剣の影に隠れながらダッシュで接近。激痛耐性を使って攻撃を無視したまま、心臓へと差し込みます。

博士、どうしてあなたはアリスズナンバーに個性を与えたのですか。
アリスの入れ物ならば自我など要らなかったでしょう。
私とて、貴方を討つ事に悲しみを覚えるんですよ。
貴方は何を見ているのですか?
……さよなら、お父様

アドリブ・絡み歓迎


ジェイ・ランス
【POW】【ワンダレイ】※アドリブ歓迎
■心情
(ひとしきり笑い)……はーしょうもなっ。ヴォーテックス一族なんてもんが出て来た時点で「あっ察し」だったのに、よりに寄って自らオブリビオンになったか。あんた、甘言に乗せられたねえ。
泣いているか、泣いてるねえ。あの子は泣いてるよ、博士よ。あんたに泣いてるよ。…ほんと、しょうもない事にしてくれたよ。あの一族は。

■戦闘
UCを起動、真の姿となるべく"ツェアライセン"を呼び出し、合体。漆黒のキャバリア形態に変形しもう一本の"ツェアライセン"を振るい、敵UCの封印を試みます。

"我々"の初お披露目としては貴様では少々物足りぬが、"我々"も少々腹が立っているでな。


ノインツィヒ・アリスズナンバー
【ワンダレイ】
……くそったれがぁ!!
アイン姉は泣いてた理由もわからない癖に!
他の姉妹はなんだ?てめえの道具か!
ツヴァイ姉も、ドライ姉もゼクス姉もノイン姉も!てめえの狂った復讐のための捨て駒か!

クリスタルビットを射出しながらレーザー射撃で援護させる。
UCで切り込み、無差別攻撃しながら数を減らして対応する。
ぶっ飛ばした他のナンバーからエネルギー充填しつつ、どうにか博士を1発ぶん殴って見せる。

アイン姉がシグナルロストしたのてめえの差し金か。
オウガ化したアイン姉にグリモアが渡ったら、仇どころじゃねえんだぞ。
……泣いてんのは、どっちもだよ。
もうそれも、思い出せねえのか。

アドリブ・絡み歓迎


アスカ・ユークレース
【ワンダレイ】真の姿
訂正してください、今の言葉。アハトとノインツィヒ、そして彼女の姉妹を劣化コピーと、偽物と言ったこと。彼女達は誰かの偽物でもコピーでもない。それぞれが自我と個性を持った一人の人間よ。貴方の言う彼女の人格と乖離してる?当然じゃない、遺伝子は同じでも違う経験を積んだ「別人」なんだから。ちゃんと、それぞれを、娘一人一人を、見なさいよ。そんなだから彼女を泣かせるのよ。
【誘導弾】の【範囲攻撃】動きを制限すると同時にUCの布石とする。チャンスが来たら時間差でUC発動、予め壁に撃った弾同士を繋ぎ張り巡らせ彼を捕えるわ。行って、アハト!彼を止められるのは…アリスだけよ。
アドリブ絡み歓迎


星群・ヒカル
【ワンダレイ】で参加だ

敵の攻撃を『銀翼号』に『騎乗』してかいくぐり、陵也の攻撃が敵へ通る隙を作ったうえで【超宇宙・拡我黎明光】で啖呵を切る
成功率を上げる行動は「陵也の啖呵との相乗効果で陵也のUCを、正気に戻った敵に本当のアリスとの思い出を見せるレベルまで強化する」だ

今のを聞いてようやくわかったぜ
……なあ、アインちゃんとやらは、ホントにてめーの愛したアリスちゃんかよ
都合のいい恋人と、その劣化コピー扱いされる彼女たちを、死んだアリスちゃんはどう思うだろうなぁ
てめーはオブリビオンのくせして、過去すら愛していないんだ
彼女の前で、娘たちの前で、いっぺんちゃんと詫びて見せろよ!!

※アドリブ連携歓迎


地籠・陵也
【ワンダレイ】アドリブ歓迎
ふざけたこと抜かしてんじゃねえよ!!
あんたはアハトたちの親なんだろう!?二人共あんたの為に生命をかけて戦ったのに!
オウガ・オリジンだって倒したってのに、何でよくやったの一言すらロクにかけてやれねえんだよ!!
あんたがそんなんじゃ、何のために二人は姉たちを手にかけてまでここまでやってきたんだよッ!!

……絶対に許さねえ。何が何でも目を覚まさせてやる……目を向けさせてやる!!

俺も前に出るよ。
【結界術】と【オーラ防御】を併用して攻撃は俺が【かばう】。
【高速詠唱】の【属性攻撃(氷)】で牽制し、【指定UC】で奴の狂気を【浄化】する!
例えそれが少しの間だけでも、突破口になるハズだ!


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

「――控えめに言って、状況はまずいでありますね」

元より、オブリビオンが仕留めるのみだけど、余計に逃す訳にはいかない。とはいえ、因縁のある方もいるようですし、私は陽動に専念。
敢えて煽ったりして目立つように動きます。手記も見たし、地雷原でタップダンスする準備はできてる。

「さぁ、此方でありますよ! 復讐? 何を頓珍漢な事を言ってるでありますかね!?」

【選択UC】(第六感,見切り)で相手の攻撃を捌きつつ、此方に攻撃を集められるよう手持ちの銃や素手で可能な限り大立ち回り。勿論、限度はあるので、友軍の準備が整い次第離脱。以降は【目立たない】所から狙撃等(スナイパー)の後方支援に徹する。


御魂・神治
こりゃあアカンやつや、交渉決裂や!
こんな阿呆は祟神さんでお仕置きや
ぎょうさん生贄も召喚しよって
神さんも喜ぶなぁ...
おっと、神さんは容赦ないでな
発狂耐性と呪詛耐性の結界術でワイも皆も守っとこ

自分自身の意識だと思っていたものが
第三者が植え付けた偽物やったり
そもそも自己暗示で博士を演じている
全くの他人やったらと考えた事、あるかいな
或いは博士という存在は始めから存在しない創作やったとか
死んでから蘇るまで間、あるやろ?
その間に誰か手を加えたとしたら――
...と、思い込んでしまうような神秘(おぞましい智慧)で祟神さんは語り掛けるで

懺悔してもワイは助けたらんでな!


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……博士さんよ。
アンタ、哀しいヒトだねぇ。
最初の想いと、今の思い。
アンタ自身の想いが変わっちまってるなら。
他のヒトの想いが変わるのを、否定するんじゃないよ。
それに……アリスズナンバー、だったか?
彼女たちを生み出したのも、アンタだろうがよ。
アンタのなけなしの「良心」を、否定するのなら。
アタシも言いたくない最後の一言を、言わなきゃいけねぇ。

気付いてるかい?ラドヴィッジ博士。
ある事実に。
アンタが、オブリビオンになっているという事実が何を意味するかに。
アンタ、もう『オウガと同じ存在に成り下がってる』んだよ。
自分が復讐する相手そのものになってる事を、
深く噛み締めやがれ……!


エメラ・アーヴェスピア
人為的なオブリビオン化…?私としてはそちらの方が気になるのだけれど
それも、様子を見るに思考の誘導も込みよね…
…さて、どうやら今回かなり拙い事になり始めているようだし、何とかしないといけないわね
…都合がいいからそれを本物とする、本当に救われないわね…本当に泣いているのは誰なのかしら
そもそも判っているのかしら?オブリビオンになったという事は…貴方自身が過去から滲みだした…複製された存在だという事を

この場で貴方に引導を渡すべき猟兵は他に居るようだし、私は援護に回りましょう…そう、いつも通り、ね
『我が砲火は未来の為に』…未来の為に立ち塞がるというのなら、撃ち砕くのみよ

※アドリブ・絡み歓迎



 バンダースナッチの燻り狂える顎を遮ったのは、アハト・アリスズナンバー(8番目のアリス・f28285)のユーベルコード『アリスオブヴォーパルソード』にて生成した魔法剣であった。
「……博士、報告します」
 アハトは射出した魔法剣を手元へ引き寄せ、自身の周囲に浮遊させる。
「彼の地にて、オウガ・オリジンを抹殺に成功。私達の戦いは終わりました」
「なんだって……?」
 ルイス・ラドヴィッジ博士は自身の耳を疑った。
「本当に、あの原初のオウガを殺したのか?」
「はい。この斬竜剣ヴォーパルソードで、確かに」
 アハトはもう一振りの青白く輝く長剣を博士へ掲げる。
「アリスズナンバーの標準装備に、そんな剣は存在しない……。本当に、あの世界へ行けたのか?」
「ええ。今やこのNo.8は猟兵です。グリモア猟兵の力を借り、我々猟兵はアリスラビリンスと呼ばれる彼の地で大規模な戦闘を繰り広げたのです」
「アハト姉の言ってることは嘘じゃねえよ」
 ノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)もアハトの言葉に裏付けするために言葉を添える。
「マザーの無念は、あんたの無念は晴れたんだ。復讐は終わったんだ」
「うそだ……」
 博士が頭を抱える。
 ノインツィヒは眉をひそめて訂正する。
「いや、だから嘘じゃねえよ。確かにアハト姉はあのオウガを殺し……」
「それが余計な事だと言っているんだ!」
 博士は目を血走らせながらノインツィヒに向かって怒号を飛ばす。
「じゃあ何のためにアハトがアリスラビリンスへ向かったんだ!? 完全に無駄足じゃないか! まだ僕の戦いは終わってない……アインを助けなくては……!」
 アイン、アイン、アインとブツブツ呟く博士の姿に、アハトは思わず目を閉じて首を小さく横に降ってしまう。
「……やはり、貴方の中ではまだ続いてるのですね。貴方がそうあり続ける限り、アリスは泣き続ける」
「くそったれがぁ!! アイン姉が泣いてた理由もわからない癖に!」
 ノインツィヒは怒髪天を向いて両拳を握り締める。
「他の姉妹はなんだ? てめえの道具か! ツヴァイ姉も、ドライ姉もゼクス姉もノイン姉も! てめえの狂った復讐のための捨て駒か!」
「聞かれるまでもない! 複製体を作ると決めた時点で、その可能性に気が付いた時点で、お前たちはただの“入れ物”だ!」
「てンめぇええええええええええええええっ!!」
 ノインツィヒの身体が弾けた。
 地を低く走り、博士の顎へと拳を振り抜く!
 だが、その拳は第三者によって遮られた。
「……畜生が! 邪魔だっつってんだよ、“姉妹(てめぇら)”!」
 ノインツィヒの拳を遮ったのは、博士が召喚したアリスズナンバーの素体達だった。
「残念だったな、90号? これで理解出来ただろう? “入れ物”も数の暴力で戦力になる!」
 召喚されたアリスズナンバーの数は90体!
 ノインツィヒは肉の壁に蹴り飛ばされて押し戻されてしまう。
「No.90!」
「大丈夫だ、アハト姉! このくらい、かすり傷にも入らねえよ!」
 すぐさま立ち上がると、ノインツィヒは召喚されたアリスズナンバー達を睨み付ける。
 この光景に、ジェイ・ランス(電脳の黒獅子・f24255)が先程から笑いをこらえていたが、遂に失笑して声を上げてしまう。
「――ぷっ、くすっ、はーははははは……はーしょうもなっ!」
 唐突に嗤い出すジェイに、猟兵達は呆気にとられてしまう。
 ジェイは皆の視線に苦笑いを浮かべた。
「嫌だなぁ~? そういう意味じゃないって! いやさ、ヴォーテックス一族なんてもんが出て来た時点で『あっお察し状態』だったのに、よりによって自らオブリビオンになったか」
 博士を指差し、小馬鹿にするジェイ。
「あんた、甘言に乗せられたねえ。いいように利用されたのさ」
「そんなことはない! ヴォーテックス一族は良き理解者だ!」
「何が良き理解者だよ。今の博士の存在が何なのか、気が付いていないの? ほんと、しょうもない事にしてくれたよ。あの一族は!」
 ジェイはカラカラと笑い声を漏らしながら天を仰ぐ。
 この光景を黙って見守るエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は、内心、別のことに興味を示していた。
(人為的なオブリビオン化……? 私としてはそちらの方が気になるのだけれど。それも、様子を見るに思考の誘導も込みよね……)
 エメラもまた、博士はオブリビオン側に利用されたという見解を持っていた。
(……さて、どうやら今回かなり拙い事になり始めているようだし、何とかしないといけないわね)
 アリスズナンバーネットワークのグリモア化……因縁ある猟兵と博士を繋ぐクラウドネットワークは共有状態だ。
 博士を止めなければ、オブリビオン側にグリモアが渡ってしまいかねない危うい状況が現状だ。
 出来るなら、因縁を持つ猟兵に花を持たせるべく、エメラは慎重に事を運ばせるべくタイミングを伺う。
(この場で貴方に引導を渡すべき猟兵は他に居るようだし、私は援護に回りましょう……そう、いつも通り、ね)
 そして、もうひとり、紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)もこの状況に危機感を抱いていた。
(――控えめに言って、状況はまずいでありますね)
 元より、オブリビオンが仕留めるのみだけど、余計に逃す訳にはいかない。
 ならばどうするべきか?
(……ラプラス。いつでも行けるようにスタンバイを)
 自身の義眼の機能のロックを解除。
 未来視の権能をいつでも発揮できるように待ち構える。
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)も沈痛な面持ちのまま、博士とアハトをはじめとするワンダレイメンバーを見守っている。
 と、ここでアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)の姿が01データの瞬きと共に真の姿へ変貌を遂げてゆく。
 全身に血管のように浮き出た、青く光る電子回路がアスカを人型兵器だと周囲に認識させる。
「先程の言葉、訂正してください。アハトとノインツィヒ、そして彼女の姉妹を劣化コピーと、偽物と言ったこと。彼女達は誰かの偽物でもコピーでもない。それぞれが自我と個性を持った一人の人間よ」
 アスカは愛用のピストル式機械弩『フェイルノート』にボルトを装填させ、いつでも博士へ射出できるように身構える。
「貴方の言う彼女の人格と乖離してる? 当然じゃない、遺伝子は同じでも違う経験を積んだ『別人』なんだから。ちゃんと、それぞれを、娘一人一人を、見なさいよ。そんなだから彼女を泣かせるのよ」
「……博士さんよ。アンタ、哀しいヒトだねぇ」
 数宮も遂に沈黙を破った。
「最初の想いと、今の思い。アンタ自身の想いが変わっちまってるなら。他のヒトの想いが変わるのを、否定するんじゃないよ」
「否定ではない! 僕は事実を……!」
「アンタが現実を受け入れないだけじゃないかい? それに……アリスズナンバー、だったか? 彼女たちを生み出したのも、アンタだろうがよ。アンタのなけなしの『良心』を、否定するのなら。アタシも言いたくない最後の一言を、言わなきゃいけねぇ」
 数宮が苦虫を噛み潰すように顔をしかめると、星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)がアハトへ叫ぶ。
「おい、アハト! もういいよな! さっさと博士の目ェ覚まそうぜ!」
「……絶対に許さねえ。何が何でも目を覚まさせてやる……目を向けさせてやる!!」
 地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)も怒り心頭で前へ歩を進める。
「俺も前へ出る! アハト、ノイン、一緒にあいつをぶん殴ってやろうぜ!」
「ヒカルさん、陵也さん……」
 アハトは斬竜剣ヴォーパルソードを翻させ、そのままユーベルコードを発動させる。
「対象をジャバウォック、並びにバンダースナッチと認識」
 アハトの硬めが緑色に輝き、アリスズナンバーネットワークによって、ユーベルコード使用許諾が降りる。
「ヴォーパルソード、射出用意。準備完了まで、200カウント……?」
「ちっ! 博士の野郎、上位権限が使えないからって、回線に負荷をかけてアハト姉を妨害するってか!」
 ノインツィヒは普段ならすぐに展開されるアハトのユーベルコードの遅延に、博士を睨み付ける。
「皆さん、申し訳ありません。しばらく、時間を稼いで下さい……」
「言われなくてもそのつもりだ!」
 陵也はアハトの盾となるべく、眼前にオーラ結界壁を生成。
「俺がアハトを守る! みんなは博士を!」
 陵也の合図で、猟兵達の攻撃は堰を切ったかのように博士へ流れ込んでゆく。
「こりゃあアカンやつや、交渉決裂や!」
 今まで傍観に徹していた御魂・神治(除霊(物理)・f28925)は、これ以上の博士との会話は無駄だと判断、ユーベルコードで名状し難い祟神を召喚し始めた。
「こんな阿呆は祟神さんでお仕置きや。ほんま、ぎょうさん生贄も召喚しよって。こりゃ神さんも喜ぶなぁ……」
 アポカリプスヘルの空が、前触れもなくヒビ割れる。
 名状し難い神域と通じる次元の狭間から、ずるずるり、と見るのもおぞましい姿の名状し難い祟神が地上に這い出てきた!
「あ~あ、懺悔してもワイは助けたらんでな! 同僚の皆さ~ん、神さんは容赦ないでな? これ、受け取ってや!」
 御魂は爆龍符……の起爆機能を除外したただの霊符を猟兵たちへ器用に投擲してみせる。
 受け取った猟兵は、狂気と呪殺に対する耐性が上がる結界に包まれる。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!」
 もはや言語化するのも恐ろしい咆哮とともに、博士を見下ろす祟神。
 御魂は問い掛けた。
「自分自身の意識だと思っていたものが第三者が植え付けた偽物やったり、そもそも自己暗示で博士を演じている、全くの他人やったらと考えた事、あるかいな?」
 御魂のユーベルコードは質問をトリガーにして効力を発揮される。
 祟神が博士へ狂気と呪殺の権能を放ち、精神を蝕んでゆく。
 召喚されたアリスズナンバー達は祟神の触腕に絡みつかれ、そのまま捕食器官にひとり、またひとりと消えてゆく。
「おーおー、クローンとはいえ若い女の肉は美味いか、神さん?」
 生贄を喰らうたび、狂喜乱舞する祟神は、博士へ触腕を叩き付ける!
 博士の身体が木の葉のように軽々と錐揉み状態でふっとばされてゆく!
「或いは博士という存在は始めから存在しない創作やったとか、死んでから蘇るまで間、あるやろ? その間に誰か手を加えたとしたら――」
「や、やめろオォォオッ!」
 御魂の言葉は今、祟神によって代弁され、その神秘的な一言一句が博士を蝕んでゆく。
「今更、神などに屈するかぁ!」
 博士は必死に抵抗する!
 しかし、そのたびに祟神に叩き潰され、薙ぎ払われてしまう。
「そろそろおとなしくなったやろか? ほら、はよ決着つけてぇや?」
 御魂はユーベルコードを維持してアリスズナンバーを間引きし続ける。
 これによって博士の戦力が減少した。
「この人数なら!」
 続いて智華が囮となるべく前へ出る。
 ユーベルコード『虚構の神脳(イミテーション・ラプラス)』を発動させ、短時間の未来視を発揮する。
「――見えた」
 アリスズナンバーのレーザーライフルの弾幕を掻い潜ってみせる。未来を見たからこそ、光の弾丸さえも回避が可能なのだ。
 そのまま04-MV[P/MC]マルチロールアサルトウェポン【刹那】で制圧射撃を敢行し、アリスズナンバーを足止めする。
「ノインさん、今であります!」
「智華ちゃん、サンキュー!」
 ノインツィヒが再び駆け抜ける!
 その背中には浮遊するクリスタルビット……本来はキャバリア用の武装だが、ノインツィヒは脳波で遠隔操作させながらレーザー射撃を行う。召喚されたアリスズナンバー達は、その場で釘付けになってしまう。
「てめぇら、貧乏クジ引いちまったなぁ? 悪く思うなよなァ!」
 ノインツィヒの瞳が瞬く間、瞬時に繰り出される怒涛の9連撃!
「これが乙女のォ……拳じゃああ!!」
 押し寄せた拳の弾幕が5人のアリスズナンバーの骨肉を砕いて吹き飛ばした!
「まだまだァァァァッ!」
 ノインツィヒは連続してユーベルコード『乙女の百裂拳(オトメノラッシュ)』を放つ!
 その背後に、突如、大きな影が覆いかぶさる。
「え、キャバリアだと!?」
 誰の機体だ?
 ノインツィヒは的か味方か判別付かない漆黒のキャバリアに思わず身構える。
 だが、キャバリアから聞こえてきたのは、馴染みのある声だった。
『Operation:Penetration Lauf……。“我々”のこの姿は初めてお披露目する、ノイン』
「まじか、ジェイの機体かよ!」
『正確には違う。“我々”は可変式対艦概念破断剣“ツェアライセン”と融合した真の姿。この身は概念武装であり猟兵である』
「なんだかスゲー事になってるが、手伝ってくれるんだよな?」
『無論だ。“我々”の初お披露目としては貴様では少々物足りぬが、“我々”も少々腹が立っているでな』
 ジェイは空間からもう一振りの7m級可変式対艦概念破断剣“漆黒のツェアライセン”の柄を掴んで振り抜く。
『さあ、覚悟しろ。未来を捨て、過去すら冒涜した貴様は“我々”の制裁対象だ』
 人類をより良い方向へ向かわせるための監視AI。その真の姿となったジェイは、己に課された使命をまっとうするべく可変式対艦概念破断剣の切っ先を博士に突き付ける。
『アリスズナンバーネットワークとやらは封鎖させてもらうぞ』
「まず……っ!」
 オブリビオンとはいえ、体高5mの機械兵器には太刀打ちできない。
 博士は胴体にかすめる剣の刃をかわしきれず、更に地面に剣が突き刺さった衝撃で吹き飛ぶ!
 その着地点には、ノインツィヒが走り込む!
「私のユーベルコードは味方を殴らねえと寿命が縮むんだが、てめぇが召喚したアリスズナンバーは私達の身内、つまり味方だからなァ? 遠慮なく殴れるぜエェェーッ!」
 ノインツィヒの拳がバチバチと紫電が纏う!
「ついでによォ! アリスズナンバーを殴ったときに、生体電気エナジーを吸い取らせてもらったからなァ? 今、私のエネルギーは250%ッ! オーバーチャージだ、ボケェェーッ!」
 ノインツィヒの瞳が瞬き、両拳のワンツーパンチが9倍に跳ね上がり、18連撃へと発展!
「アイン姉がシグナルロストしたのてめえの差し金か! オウガ化したアイン姉にグリモアが渡ったら、仇どころじゃねえんだぞ! ……泣いてんのは、どっちもだよ。もうそれも、思い出せねえのか! だったら、歯ァ食いしばれやビチクソがッ!!!」
 霹靂乱打! 博士の身体に火花が散る!
「グ、グワーッ!?」
 博士の身体が砕ける感触がノインツィヒの両拳に伝わってくる。その一撃を叩き込むごとに、ノインツィヒの胸の中で何かが音を立ててひび割れてゆく。
 地面に転がってゆく博士はそれでもよろよろと立ち上がると、再び戦力補充をしようとネットワークへの接続を試みる。
 だが……。
「くそっ! ユーベルコードの効果で封鎖されるだと!」
「もう肉の盾はないぜ、博士よぉ?」
 星群が愛車『銀翼号』で博士に突っ込む!
 博士はボロボロの体を押して、転がるように星群のウィリー突進を回避!
「今のを聞いてようやくわかったぜ? ……なあ、アインちゃんとやらは、ホントにてめーの愛したアリスちゃんかよ?」
 星群の言葉はユーベルコード『超宇宙・拡我黎明光(タンカインフレーション)』となって、因果律を捻じ曲げ始める。
「都合のいい恋人と、その劣化コピー扱いされる彼女たちを、死んだアリスちゃんはどう思うだろうなぁ?」
「黙れ、バンカラ猟兵! 何も知らないくせに、勝手なことを言うな!」
 博士の反論に、星群は嫌がらせのように周囲をグルグルと走らせて苛つかせてゆく。
「てめーはオブリビオンのくせして、過去すら愛していないんだ! 彼女の前で、娘たちの前で、いっぺんちゃんと詫びてみせろよ!!」
「……都合がいいからそれを本物とする、本当に救われないわね……。本当に泣いているのは誰なのかしら?」
 エメラは自身の搭載している浮遊型魔導蒸気砲の砲口を博士に向け、最後通牒の如く語り掛ける。
 これに数宮も言葉を継ぐ。
「気付いてるかい? ラドヴィッジ博士、アンタがやらかしたある事実に。アンタが、オブリビオンになっているという事実が何を意味するかに」
 数宮はエメラの顔を見遣る。同時に、エメラも数宮に小さく頷く。
 どうやら、同じことを考えていたようだ。
「貴方がオブリビオンになったという事は……貴方自身が過去から滲みだした……骸の海から複製された存在だという事を」
「そういうこった。アンタ、もう『オウガと同じ存在に成り下がってる』んだよ。とっくの昔にな!?」
「な……っ!」
 博士は後頭部を半馬0で殴られたかのような衝撃に見舞われ、たたらを踏んだ。
 ……実際、数宮の言葉はユーベルコード『道説く陽光(テンモウカイカイソニシテモラサズ)』の効力を帯びており、対象が犯した悪行に対する、当を得た糾弾によって少しでも罪の意識が芽生えた場合、心にその意識は棘となって突き刺さり、罵倒や罵詈雑言、その他悪行の数々に応じた追加ダメージが累積してゆく。
「自分が復讐する相手そのものになってる事を、深く噛み締めやがれ……!」
「違うッ! 僕は、僕が人間を喰らうような存在に成り下がったわけじゃない! この心身は不老不死になっただけだ!」
「いい加減にしやがれ!」
 博士の弁明を陵也の怒号が掻き消した!
 そのまま怒りに任せて陵也が飛び出してゆく。
 片手には形見の杖を握り、杖先から浄化の気を宿した白い魔力の刃を生成する。
「ふざけたこと抜かしてんじゃねえよ!! あんたはアハトたちの親なんだろう!? 二人共あんたの為に生命をかけて戦ったのに! オウガ・オリジンだって倒したってのに、何で『よくやった』の一言すらロクにかけてやれねえんだよ!!」
「行け! 陵也! 俺のユーベルコードで、お前の行動は100%成功するぜ!」
 星群の言葉に、博士がようやく気が付く。
「さっきの啖呵は、因果律の操作のユーベルコードか!」
 だが、既に目の前には陵也が博士に肉薄している!
「何処見てやがるんだ! あんたがそんなんじゃ、何のために二人は姉たちを手にかけてまでここまでやってきたんだよッ!?」
「勿論、グリモアを入手するためだ!」
 博士がタブレット端末を掲げる。
「よもやと思って、さっきのバンカラ猟兵の言葉は録音させてもらったよ! これで僕も因果律をいじる事ができる!」
「やべぇぞ! あいつ、いつの間に!?」
 博士はユーベルコードをタブレット端末で防御する……この場合、言葉を受け止めることだが……ことで相手のユーベルコードをコピーし、90秒間、何度でも繰り返し使用が可能なのだ!
 つまり、陵也の1回の行動が成功しても、その先の行動の因果律の決定権は博士が握ってしまっている!
「でもやるしかねぇ! 俺は博士の目を覚まさせるんだ!」
 陵也は構わず突撃!
「無駄だ! 君は仲間のユーベルコードで敗北する!」
 博士が因果律を捻じ曲げようと、タブレット端末の音声再生ボタンに手をかけた。
 その時だった。
「私達のこと……」
「忘れてないかしら?」
 アスカとエメラの射撃が博士を襲う!
 まず、クロスボウのボルトが博士の周囲にばらまかれた。
 地面に突き刺さったボルトは、たちまちしなやかで丈夫な鋼鉄糸に変形し、博士の身体を突き刺して捕縛する!
 身動きが取れなくなった博士へ、エメラの黄金に輝く浮遊型魔導蒸気ガトリングガンの弾幕が容赦なく浴びせかけられた!
「via lattea(ヴィア・ラッテア)!」
「我が砲火は未来の為に(オープンファイア)! 未来の為に貴方が立ち塞がるというのなら、撃ち砕くのみよ」
「ぐっ、ぐがあぁァッッ!」
 常人ならば一撃でミンチになってしまう攻撃だが、オブリビオンである博士はいまだ健在。
 しかし、タブレット端末を握っていた右腕は千切れ、砲弾で打ち砕かれた!
 そこへ、陵也のユーベルコード『【昇華】解放を刻みし聖光の楔剣(ピュリフィケイト・リベレーションズエクスカリバー)』が博士の身体を袈裟斬りに伏せる!
「思い出せ! あんたの中にあるのは、ただ辛く苦しい思い出だけじゃないハズだ……!!」
 その刃は、肉体を傷つけずに博士の心を縛りつける穢れや悪意のみを攻撃する。
 それすなわち、博士の凝り固まった復讐心と、ねじ曲がった恋人への狂愛を叩き切る事を意味する!
「あ……が……っ! そう、か……。復讐は、終わったのか……!」
「博士……!」
 アハトが声を震わせる。
 博士は、血反吐を地面に撒き散らしながら、アハトへ告げる。
「思い出した……。もう、全て、終わったんだな、8、号……?」
「ええ、ええ。終わったのです。オウガ・オリジンは、私を含めた猟兵達によって抹殺されました。私達、アリスズナンバーの役目は、完了したのです、博士……」
「そう、だったのか。僕は、そうとは知らずに……なんて、愚かな……ゲハッ! ガフッ……!」
 大量に喀血する博士。
 もう、長くは持たないだろう。
 そう判断したアハトはユーベルコードを解除し、博士に歩み寄る。
 博士の最期を看取ろうと、歩み寄る。
「……博士、もう喋らないで下さい。余計に苦しむだけです」
 震える博士は、じっとうずくまったまま動かない。
「なぁ、8号。マザーは……アリスは、私を許してくれるだろうか?」
 博士の問いにアハトが答えた。
「マザーは……貴方を救いたいと仰ってます。正気に戻った博士を看取るのが、その救済だというのなら、私はマザーの意向を汲みましょう」
 更にアハトは博士に歩み寄る。
 と、ここで星群が周囲を見渡した。
「なぁ……そういやさ? さっきまでいた、あのバタースナックは何処行った?」
「いや、バンダースナッチよ……」
 アスカがすかさず訂正した。
 だが、これにノインツィヒが顔を強張らせて叫んだ。
「離れろ、アハト姉! そいつはまだ改心しちゃいねえぞ!」
「……はい?」
 アハトが振り返る。
 博士が顔を上げると、そのボロボロの体内からバンダースナッチが飛び出してきた!
「やべぇ、間に合わねぇ!」
 陵也が庇おうと飛び出すが、目の前でバンダースナッチがアハトの頸部を噛みちぎってしまう!
「アハトーッ!! うわああああああああああああああああ!」
 首なしの胴体と、転がるアハトの頭部を目の当たりにして、陵也が叫ぶ。
 だが、ノインツィヒは意外と冷静だった。
「なぁ、博士。アハト姉を殺したところで、スペアが転送されてくるの、解ってるだろう? なんで殺した?」
 ノインツィヒの言葉通り、すぐに無傷のアハトが転送されてくる。
 マザー・アリスの庇護がある限り、アハトは無尽蔵に命を浪費できてしまう。
 だから、ノインツィヒには博士の攻撃が理解出来なかった。
「最初に言ったはずだ。彼女が、アインが泣いているんだ、と」
 怪物に拘束を解かせ、博士は先程殺したアハトの身体から、斬竜剣ヴォーパルソードを奪うと、転送されてきたアハトへ剣を突き突ける。
「もう復讐のためではない! 僕は、娘を助けるためにグリモアを欲する!」
「正気になった途端、親バカ拗らせてんじゃねえよ!」
 ノインツィヒは思わず頭を抱えてしまった。
「確かにアハトは死なないだろう。だが、マザーは、アリスは耐えられるだろうか? 僕は宣言する。アリス、僕は上位権限を譲ってくれるまでアハトを殺し続ける!」
「ならば、今度こそ、私があなたを殺して止めましょう」
 アハトの左目が緑色に輝く。
「アリスコード送信。対象をジャバウォック、並びにバンダースナッチ、そして……言い訳の聞かないお父様と認識。ヴォーパルソード、射出用意」
 既に博士はユーベルコードの発動阻害を行わない。
 それはすなわち、本気でアハトを殺し続け、アハトを通じてマザー・アリスを説き伏せる覚悟の現れだ。
 アハトは最初と同じく、生成された930本もの対怪物殺傷用魔法剣のうちの一振りを掴むと、博士へ切っ先を向けた。
「では、心置きなく、親子喧嘩(コロシアイ)を始めましょうか」
「来るがいい、我が娘よ。ともに征くぞ、バンダースナッチ!」
 怪物が咆哮すると、博士とともにアハトへ突撃を開始!
 アハトは深呼吸をした後、ユーベルコードを解放した。
「ヴォーパルソード、射出」
 次の瞬間、まるで爆撃か、はたまた大瀑布かと聞き紛うほどの轟音が荒野を支配する!
 降り注ぐ魔法剣の雨を、博士は青白く輝く長剣で弾き返す!
「思い出すね、アリスとの命懸けの冒険の日々を! 僕もこうやって、アリスラビリンスで剣を振るったものだ!」
「なるほど、伊達に彼の地から生還しただけはありますね」
 アハトは剣の陰に潜り込み、博士の視覚外から斬りかかってゆく。
 手応えはある。
 しかし、博士の精神が肉体を凌駕し、隻腕とは思えぬ太刀筋を披露する!
 アハトは腹を斬られて、再びスペアとバトンタッチ!
 そして俊敏性に優れたバンダースナッチをアハトの死角から襲わせることで、アハトの接近を牽制する。
 バンダースナッチの頸部が伸び、剣の雨を掻い潜る!
「アハトーッ!」
 今度こそ陵也が身を挺してバンダースナッチの顎から庇う!
 怪物の動きが鈍った瞬間、遠方から突如、発砲音が響いた!
「さぁ、此方でありますよ! 説得? 何を頓珍漢な事を言ってるでありますかね!?」
 思わぬ狙撃手の登場に、バンダースナッチは動揺し、剣の雨を回避できずに串刺しになってしまった!
 これでアハトと博士の一騎打ちとなった。
 と、ここでノインツィヒがイドラ・サウンドスピーカーユニットを転送させる。
「アハト姉と博士の一騎打ちに水を差す真似はしたくねえんだが……“私ちゃん”はさ……アイドルだからな……」
 超魔改造ハイテクマイク『アイドル魂』をスイッチオン。
 ハウリングが鳴り止むと、ノインツィヒは叫んだ!
『アイドルは、頑張る誰かの背中を応援するために歌うって相場が決まってるんだよ☆』
 本当なら、身内の前で歌いたくない。恥ずかしいから。
 でも、いまやたった独りの姉を応援するべく、そして、博士へ伝えるメッセージを届けるべく、胸の内の歌を唄い上げる!
『それでは、聞いて下さい……。“Welcome to the Black Parade(地獄へようこそ)”!』
 サウンドスピーカーユニットから流れてくる、物悲しげなピアノの旋律。
 それに合わせ、ノインツィヒが唄い始めた。

 ♪まだ幼かった頃 貴方は街へ連れてってくれた
 ♪賑やかなマーチバンドを見に行こうって

 それは全編英語の歌詞だった。
 切ない歌声は荒野に響き、アハトと博士の剣戟の音がリズム体となって音楽を形成してゆく。

 ♪あんたは言った お前がおおきくなったら
 ♪この世界で苦しみ、傷つき、悲しむ人達を救ってやってくれないか?
 ♪人間に巣食う悪意や、神を信じない愚かな悪人たちを懲らしめてくれないか?
 ♪私は先に此世を去るだろう
 ♪そしてお前はあの夏の惨劇に立ち向かうだろう
 ♪復讐という名の地獄へ足を踏み入れるために

 アハトの剣が博士を斬りつければ、アハトもまた斬られて血風を撒き散らす。
 無間地獄のような壮絶な戦闘は、未だ終りが見えない。
 曲調は一変し、激しいロックナンバーへと転調。
 ノインツィヒの歌声に怒りと覚悟が宿る。

 ♪運命ってやつに見守られてる気がするんだ
 ♪動き出さなきゃって急かされてるんだ
 ♪乗り越えてきた生と死 振り向けば大量の屍の山
 ♪だからあんたが死ぬときに分かってもらいたいんだ

 ♪人生を紡いでゆく そして進み続ける
 ♪あんたが死んでしまっても、どうか信じてほしい
 ♪あんたの想いは続いてゆく
 ♪この想いは胸の中では収まりきれない
 ♪どんな賛美歌だろうが言葉に表し切れないんだ

 やがて剣戟は互いのスピードが掴み合い、一進一退の攻防から拮抗状態に移行する。
 剣の雨など気にせずに切り結ぶ博士。
 斬られても痛みなど意に介さずに薙ぎ払うアハト。
 もはや2人にか理解し合えない、剣と剣での会話が成立していた。

 ♪あなたが絶望して夢破れた世界
 ♪その憎悪は私達を皆殺しにするだろう
 ♪何もかもを黒く塗りつぶせ そして全てを取り戻せ
 ♪世界の最期で誰かが叫んでいるんだ

「博士、戦いの最中に嗤うなんて不謹慎ですよ」
「そういう8号こそ楽しそうじゃないか!」
「御冗談を」
「冗談を言うな」
「「冗談を言うならお前が先に死ね!」」
 剣を振る速度が互いに早くなり、2人の身体の間で激しい火花が散る!

 ♪あんたの想いは続いてゆく
 ♪どんなにあんたがボロボロになろうが
 ♪這いつくばってでも私達は前に進む

 ♪覚悟は完了した もうあんたには屈しない
 ♪世界が邪魔しても この意思は絶対に揺るがない
 ♪何も怖くない 私達は無敵だ
 ♪あんたの目的を成し遂げたんだ

 ♪でも私達は人間だ 人形でも英雄でもない
 ♪恥ずかしくても一生懸命 この歌を歌うただの少女だ
 ♪私達は人間で 人形でも英雄でもない

『アハト姉ぇぇぇえっ! 負けんなぁぁぁぁッ!!』

「……天の邪鬼な妹を持つと苦労しますね」
「何処を見ている!」
「それはそっちの台詞です」
 斬ッ!
 博士の背中が突然、斬り裂かれた!
「娘たちをたくさん出してくれたおかげね、ルイス?」
「ア、アリス……だとぉ!? 何故、僕を斬るんだ!?」
「あなたがオブリビオンだからよ……!」
 召喚された抜け殻のアリスズナンバーの肉体に、限定的にマザー・アリスが覚醒した!
 これで2対1、一気に博士を追い詰めてゆく!
 仲間達も声援を送る!
「“我々”が最後まで見届けよう」
 ジェイが。
「行って、アハト! 彼を止められるのは……アリスだけよ!」
 アスカが。
「喧嘩は気合だ、アハト!」
 星群が。
「アハト、負けんな! 負けんじゃねぇ!」
 陵也が。
「絶対に負けないで下さい!」
 智華が。
「そんな親父なんぞ、ぶっ飛ばしたれ!」
 御魂が。
「勝機をこぼすな!」
 数宮が。
「その手で、運命をつかみ取りなさい!」
 エメラが。
 アハトとマザーの勝利を確信して声援を送る。
 博士は自分の置かれている理不尽さに苛立ち、声を荒げながら剣を振り乱す。
「私は! ただ! 幸せになりたかっただけだった!」
「ジェイ!」
 マザー・アリスと博士が刺し違える!
 両者、致命傷!
「ア、ハト……! 今、です!」
「博士……お父様……!」
 魔法剣を博士の心臓に深々と突き立てるアハト!
 完全に、この一撃が決定打ッ……!
 博士の全身から力が抜け、崩れるように倒れ込む。
 そして、マザー・アリスも寄り添うように昏倒。
「マザー!」
「大丈夫よ、アハト……。『本体』が無事なら、私は平気。それに、久々の痛覚も悪くなかったわ」
「マザー……いえ、お母様……」
 アハトの目に涙が浮かぶ。
 マザー……アリス・グラムベルの意識は、静かに『工場』にある本体へと帰還していった。
 今度こそ、最期を看取るべく、アハトは博士の元へしゃがみ込む。
「博士、答えて下さい」
 心臓に剣が突き刺さったまま、博士は虫の息で視線だけをアハトへ向けた。
 アハトはそれを承諾と捉え、勝手に話し始めた。
「博士、どうしてあなたはアリスズナンバーに個性を与えたのですか。アリスの入れ物ならば自我など要らなかったでしょうに」
「……同一意識は、意思疎通の、効率がいい反、面……ひとつの、トラブルで、壊滅、する恐れが、あ……ゲハッ!」
「つまり、個性をもたせることで、様々な問題に対処できるように備えたと。では、もうひとつだけ」
 アハトはポロポロと涙を零しながら博士へ問い掛けた。
「博士、どうして……どうして、あなたはアリスズナンバーに感情を持たせたのですか。性能差や役割を区別する道具なら、私達に感情は不要だった」
 アハトは自分の胸に手を当て、嗚咽混じりに言葉を紡ぐ。
「私とて、貴方を討つ事に悲しみを覚えるんですよ。どうして……どうして……?」
 博士はもはや意識が朦朧としている。
 そして、次第に全身が風化し始めていた。
 アハトが宿縁を断ち切ったためか、博士の完全消滅が始まったのだ。
「答えて下さい、貴方は何を見ているのですか?」
「……あ、い……」
「へ……?」
 掠れた博士の声をアハトは聞き漏らさぬまいと耳を澄ます。
 博士は震える手で、アハトの頬に伝う涙を指で拭った。
「あい、してる……か、ら……。アリ、ス……と、むす、め……た――」
 頬を拭う指が、ぱたりと地面に落ちた。
 博士の足元が、ザワザワと砂塵へと変わって世界へ溶けてゆく。
「……さよなら、お父様。最期にそんな言葉を投げかけるなんて、なんて意地悪なのでしょう」
 アハトは博士のまぶたを閉じさせ、その口を自分の口で塞いだ。
 そのまま博士の肉体が風化するまで、アハトはその姿勢のまま、彼を見送ったのだった。

「……悪いな、みんな。埋葬、手伝ってくれて」
 陵也は無事だった『欠番個体』に召喚されたアリスズナンバーの素体達(+アハトの死体の山)を埋葬するべく、猟兵達の手を借りていた。
「まぁ、化けて出てこられても夢見悪うなるし、職業柄、除霊はしといたるわ」
 御魂が埋葬される彼女たちへの鎮魂の義を執り行い、星群やアスカが遺体を運搬する。
「なぜ“我々”が重機の真似事を……」
 そしてジェイは真の姿のまま、墓穴を掘らされていた。
 智華もエメラも、そして数宮も快く協力し、作業は順調に進んでゆく。
 その傍らで。
「……アハト姉。アイン姉のこと、どう思うか?」
 ノインツィヒの言葉に、アハトは首を横に振った。
「駄目でしょうね。幸い、マザーがアインのネットワークIDを完全凍結すると通達してますが」
「そっか。……ったくよぉ、あの博士、とんでもねぇ事してくれたな?」
 深い溜息を吐くノインツィヒ。
「……アハト姉。また私はカウンターナンバーとして、今度はアハト姉を殺すことになる。そん時は……」
「安心して下さい。その時は……」
 アハトが口端を釣り上げる。
 それにノインツィヒが驚愕した。
「マジかよ! 鉄皮面のアハト姉が笑っただと!?」
「え、私、今、笑ってますか?」
「自覚なしかよ! おーい、みんな! アハト姉が笑ったぞ!!!」
「待って下さい、No.90? 待って下さ、待って……ノインツィヒ! 待って下さい!
「今度は怒った!?」
 一瞬にして、彼らに日常が戻ってくる。
 彼女たちは大きな運命を乗り越え、成長し、そして、次の道を歩み始める。
 その背中に、亡き者の想いを背負って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年12月02日
宿敵 『ルイス・ラドヴィッジ博士』 を撃破!


挿絵イラスト