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許されない、許すことなどない

#UDCアース

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#UDCアース


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●ある惨劇
 店の灯り、ビルの灯りが照らす夜の町。人々は賑やかに語らい、時には足を止めてショーウィンドウを覗いてはあれがいい、これもよさそうなどと他愛無い日常を謳歌している。
 その中で一つ。『バレンタインフェア』などとでかでかと広告された百貨店がある。
 中ではフロアの一スペースを使って既製品のチョコレートやチョコレート作りの材料に調理器具、レシピ本が並べられている。
 棚の合間合間では主に若い女性がきゃあきゃあと喋りながらチョコを選んでいる。

 そんなよくある平穏な光景に場違いな音が響き渡る。
 ガシャンと入り口のガラスが破壊され現れたのはバイクに乗ったモヒカン頭の男たち。
 あまりにも、あまりにも場違いな闖入者に店内の客たちが凍り付く。

「ヒャッハーーー!!! バレンタインは消毒だーーーーー!!!!!」
「この店のチョコレートは根こそぎいただいていくぜ!!」

 ギュインギュインギュルギュルガッシャーン!

 男たちは出鱈目に店内でバイクを操縦しては片っ端からチョコレートを奪っていく。棚に並べられた物も、カゴの中に入っていたものも、既にレジに通してあったものも、バレンタインフェアとは関係ないお菓子スペースにあったものも、チョコと名のつく物は全て男たちが奪い去ってしまった。
 後に残されたのは呆然と立ちすくんだり、地面にへたり込んだりしている客と店員たちだけだった。
 無理もない。何もできないほど唐突で圧倒的な暴力が巻き起こっていたのだ。

 男たちが去って行った後、あれはいったい何だったのか……と落ち着きを取り戻した人々は話し合う。
 人々には思い当たることがあった。最近噂の暴走族。チョコレート売り場を襲いチョコを奪っていく謎の集団。

 噂に聞いていたとはいえまさか目の前にやって来たとは……。

 ざわざわと話し合う中、困った顔で周りの客に声をかけていた女性がふと、こんなことを言い出した。
「あのね、これは私の友達の兄の知り合いから聞いたんだけど……あの男たちを追い返したお店があるらしいの」
 ここなら無事に買い直せそうじゃない? そんな女性の話を聞いて折角買おうとしたチョコレートを奪われた女性陣は頷いた。


●グリモアベース
「事件です」
 グリモア猟兵の緋打・よみぢ(色のない世界から・f10970)が集まって来た猟兵たちに告げる。
「UDCアース、都市部。暴走族が、出現し、売り場から、チョコを強奪、頻発してます」
 淡々と、途切れ途切れな話し方で説明を続ける。
 暴走族のメンバーは全員男性で、髪型も細かい形に違いはあれどモヒカンで統一している。
 バイクに乗って大型ショッピングセンターや専門店に襲撃をしてチョコレートの強奪を繰り返している。他の商品に手を付けてないあたり狙いはチョコレートだけのようだ。
 また、予知の中での彼らは不思議な力を行使したり神がどうたらなど口走っていた。察するに彼らは何らかの邪神の信者であろう。
 この事件はただの不良集団が暴れているだけではないのだ。

「だから、皆さんには、暴走族の狙いを、暴いて欲しいです。次の、襲撃場所が、予知で、わかりました。一旦、見逃します。しかし、後を追えば、狙いわかるかも、です」
 強奪事件には何か裏があるとも付け加える。さらに邪神が関わっているのならその本拠地を突き止める必要もあるだろう。最悪信者たちが邪神の召喚に手を付けている可能性もあるのだ。
 暴走族をただ取り押さえるだけなら簡単だが、重要な情報を知らされてなかったり、洗脳または記憶改竄されていれば足取りが途絶えてしまう。
 そのため一度暴走族を取り逃がして密かに追跡した方が真相に近づけるはずだ。

「加えて、被害者の皆さん、います。お客さん、店員さん。何か話聞けるかもしれません。ちなみに、被害状況、大ケガ、ゼロ。死者、ゼロ。命に関わる状態の人、いません」
 暴走族のことは人々の中で噂になっている。何気ない情報が思わぬ真実に繋がるかもしれないとのことだ。
「それと、『バレンタインフェア』となってる店が、襲われているようです。暴走族も『バレンタイン』と、行ってます。何か、意味があるでしょうか?」
 バレンタインとされてる日が近いですが、とも零す。
 よみぢはバレンタインというものがどんな日か知らないようで不思議そうな顔をしていた。

「ともかく、話せること、ここまでです。わからないことが、多いです。でも見つかるはず、です」
 そう言うと敬礼し、空いた方の手でグリモアを掲げた。


樫木間黒
 はじめましての人ははじめまして。また会った人はありがとうございます。樫木真黒です。
 もうすぐ二月なのでタイトルからわかりづらいですがバレンタイン依頼です。
 今回はおふざけマシマシ調査メインのシナリオになっています。

 一章の判定ですが襲撃現場での聞き込み(POW)、暴走族の追跡(SPW)、第六感などその他の手段での情報収集(WIZ)という感じに思っていただくとプレイングが書きやすいかもしれません。

 構成は

第一章 暴走族について調査
第二章 調査
第三章 ボス戦

 となっております。
 謎を解きながらの進行なので二章以降何をするかは敢えてのシークレットで。

 それではみなさんのプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『暴走族? 窃盗団?いいえ、只の邪教徒です』

POW   :    現場操作の基本は現地から! まずは辺りの人に聞き込み開始

SPD   :    事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きているんだ! 窃盗現場へ足を運んで事情聴取

WIZ   :    怪しげな占いヤマ勘、そして冴え渡る推理力。 そうか、犯人が分かったぞ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カイル・サーヴァント
バレンタインに向けて頑張っている人達の邪魔をするのはダメだし、ましてや略奪なんてもっての他!頑張って目的を暴いてやるんだから!

暴走族が去った後、よみぢは大怪我した人はいないっていってたけど、軽い怪我をした人は一杯いるだろうからその人達の怪我を応急処置したあとに聞き込みを開始するの。

彼らは何処からでもきたのか?
どの方向に去っていったのか?
何人くらいで現れたのか?
指示を出していた人物は居たのか?
居たならその人はどんな見た目だったのか?
彼らはなにか言っていたか?

これらを重点的に聞き回り、解ったことをメモしていく。


んー……暴走族さん達、何がしたいんだろう?


長坂・リン
SPD

一旦見逃さなきゃいけないのは悔しいけど、仕方ないか。
撃つべき相手が分かれば解決できるってことだよね。

襲撃された現場の人達から情報を集めるよ。
技能の【コミュ力】を上手く使えればいいんだけど、暴走族の噂についてと、現場であった出来事を詳しく訊きたいな。
かなり怖い思いをした人もいるだろうから、話したくなさそうな様子なら無理に聞き出さないし、お互い世間話してるくらいの雰囲気に持ち込もうと思ってる。
暴走族の噂と実際の行動に一致しない点があったり、族を追い返したお店の話が出てきたら詳細を訊きたいね。

奴らの本当の目的が何だろうと、さ。
奪うからには奪われる覚悟が出来てるってことだよね。


ナイ・デス
……チョコを奪って、それで召喚、できるもの、です?
人を生贄にしたりは……ない?
……実は人を集めていたり、ないでしょうか(第六感)

迷彩で髪や瞳、服とかを目立たないのにして
チョコ買いにきた子として、お店にいきます
一応、保護者役としてUDC職員さん、協力お願いです

そんな演技で、襲撃後のお店に聞き込み……可能なら襲撃前から、店内に
女性客が多いという地形の利用して
チョコを眺めてる子供として人に紛れて、色々観察も、したいです

……女の子と、思われてます?私。別に、不都合なければ気にしないですが
むぅ……もっとはやく、成長したい、ですね

あ、軽傷者は、いるのですよね
UDC職員さん、記憶消去可能?
なら光で治療、です



●一体何が

 パラリラパラリラ!!

 高笑いと共にモヒカンの男たちは強奪したチョコを乱雑に突っ込んだ袋を手に去っていく。
 後には呆然としている人々が残された。

 入れ替わりで襲撃現場に入ったのはカイル・サーヴァント(盾の守護獣・f00808)と長坂・リン(涼風猟兵・f12981)の二人。
 二人の目には自動ドア、窓ガラスだった物が砕けて散乱している光景が映った。その先には荒らされた店内。特に荒れた様子がひどいのはチョコレート売り場だと直感した。
 それを見てリンは苦々しい顔になる。ここまで好き勝手した相手をすぐに取り押さえることができないからだ。
「でも仕方ないか。撃つべき相手がわからないと解決しないからね」
 と、自分に言い聞かせる。
 カイルも悔しさを感じると同時にモヒカンたちへ怒りを露にする。
「バレンタインに向けて頑張っている人達の邪魔をするのはダメだし、ましてや略奪なんてもっての他!」
 頑張って目的を暴いてやるんだから! と意気込んで客の方へと向かっていく。

 聞いた通り放っておけば死に繋がるケガをした者はいない。
 しかしカイルが思った通り躓いて擦り傷を作った者、破片が掠って切り傷を作った者も少なくない。
「大丈夫? 今応急処置をするから傷口を見せて?」
 ケガをした客たちは猟兵が来たことに気づいて安心した様子を見せる。応急処置をしながらカイルは客に聞き込みを始めた。
 話しかけられた女性客は容姿からてっきりカイルを少女と思ったのか、質問にすらすらと答える様子を見せる。

「どこから? 多分突き破って来たのはあそこの一か所だけじゃないかな……ほら、ガラスが割れてるところ」
「どこへ行ったかはわからないけど入って来たところと同じところから出たと思うよ」
「五人ぐらいじゃないかな? サングラス付けてたのがあれこれ言ってたからリーダーかも。何を話してたのかは……ごめんなさい。とにかくあの状況はどうかしてたから何も……」

 メモを取りながら聞けた情報を纏めていくが、核心に迫るようなことは分からない。カイルは溜息をつく。
「んー……暴走族さん達、何がしたいんだろう?」

 リンの方も並行して聞き込みを行っていた。
 こちらは世間話でもするように緩い感覚で、怖い思いをした人もいるだろうからそこは無理に聞き出さず。友人のような距離感で聞き出していく。
 リンの方も聞き出せた情報は大体カイルと同じだった。暴走族についての噂も聞いてみたが矛盾する点はない。
 しかし気になる話も聞けた。それが暴走族を追い返した店の話だ。

「ねえ、そのお店について詳しく聞かせてくれない?」
「えっ、いいですけど……これって関係あるんですかね?」
「些細な事でもいいの。ヒントになるかもしれないから」

 渋々といった具合にその女性は答えた。

 その店は一度モヒカンの集団に襲撃されたことがあるがチョコレートを奪われずに追い返したということ。以来その店にはモヒカンに買い物を邪魔された人たちが訪れ、口コミから店の存在が広まっていったらしい。
 住所も分かっているようでその場でメモしたものをリンに渡してくれた。

 正直聞き出したリンも半信半疑だ。しかしどうにも引っ掛かることがあるのも事実。
(奴らは邪神の力を借りて暴れてるらしいけど、それを追い返したってことは邪神に対抗できる力を持っているはずよね?)
 そうだとしたら店に猟兵がいたか、それとも……。
 その時リンの視界にこちらに向かって走ってくる人影が映った。


 一方、襲撃前に店の中でモヒカンたちの動向を伺っている猟兵がいた。
 名前はナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)。彼はUDC職員の協力を得て迷彩で容姿と服装を変えて目立たないようにし、買い物に来た一般客のフリをしていた。
 密かに哀れな被害者を装ってモヒカンたちを観察した結果わかったことがある。
 まず道具を使わずに入り口を破壊したり手を触れずにチョコを奪い取ったり――邪神の力を借りていることは間違いない。
 それにやたらとチョコ、チョコと叫んでいてチョコレート以外は眼中に無かったように見える。軽傷者しかいないのもそのせいだろう。
 彼らを別に人を傷つけるために襲撃したわけではないのだ。
「チョコを奪って、召喚に使う……と考えました、が。……そうなのでしょうか?」
 こっそり人を攫ってはないかと疑っても見たがその様子もない。

「お嬢ちゃん大丈夫?」
「あ……はい、大丈夫、です」
 考え込むナイに近くにいた女性客が話しかけてきた。ナイには見覚えがある。彼女がチョコレートを盗られているところを見たからだ。
 様子を伺うため助け船を出せなくて居たたまれない思いはある。しかしその気持ちを振り払うように情報収集に挑んだ。
「そちら、こそ……どうです、か? チョコ、盗られて……ました」
「あっ……見られてたのね。……ほんと驚いちゃった! だって勝手に私の手からチョコが離れていくのよ?」
 それから彼女の見たこと、聞いたことを聞き出し、よろけて転んで作ったケガを見て【生まれながらの光】で治癒する。周りのケガ人もまとめて、だ。
 付き添っているUDC職員が後で記憶消去措置を取ってくれるので堂々と治療を執り行う。
 【生まれながらの光】が消えると同時に足を捻っていた客も普通に立ち上がる様子を見せた。そこまで見届けてナイは後で店内に入って来た二人の猟兵に近づく。
 同時にナイはお嬢ちゃんと呼ばれたことを思い出す。女の子と思われてしまったようだ。特に不都合はなかったので気にはしないが、やはり大きくなれば間違われないのかな……と少しは思ってしまう。


 カイルとリンはこちらに向かってきた人物が一般客のフリをした猟兵であることに気づくと、聞き込みを装って情報共有を始めた。
「ボクからはあまりいい情報はなかったかなー。リーダー格は目星付いたからそっちは追いかけた人次第かな?」
「チョコが目当て……とは、思いますが。まだ情報が、足りない……ようです」
「あたしはあの族を追い払ったお店があるって話を聞けたけど……これ、どう思う?」
 他の人にも聞けば何かわかることがあるかもしれない、と店について聞いた情報を二人に伝えた。
 それを聞いてカイルとナイも考えだす。沈黙訪れ、最初に静けさを破ったのはカイルだ。
「ねえ、暴走族にチョコを盗られたお客さんたちってこの後このお店に行きそうじゃない? 絶対行くよね! また襲われたらなんて考えると怖いし……」
「目的は、チョコ……そのものではなく、人をその店に、集めることです? 召喚の、生贄に、でも……するつもり、です?」

「それ、あり得るかも」
 そう言うや否やリンは後の処理をナイが連れてきたUDC職員に頼んで外に向かう。
「そのお店に行こう。何かわかるかもしれない」
 モヒカンたちの本当の目的はまだ推測の域を出ていない。彼らを追いかけた先に行けばまた違うことがわかるかもしれない。
 しかし今ここからできることを。リンはそう思った。
「奪うからには奪われる覚悟が出来てるってことだよね」
 口の端が上がる。

 リンの考えに同意するようにカイルとナイも追いかける。
「そう、いえば……お店はどこで、名前は何、でしょうか?」
「えーと、場所はここから駅二つ分で……都心部ではあるね。名前は――」

 『九龍beer』(コロンビア)

「あはは……ひどい名前」
 なんかもう、カイルは笑うしかない気分になった。

 ナニコレ。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ミーナ・ヴァンスタイン
アドリブやアレンジ歓迎です。

襲撃者が来たら【使い魔召喚】で呼び出した黒猫に後を追わせるわ。
「お願いね?」
相手がバイクなので、その一匹の黒猫に普段より多めの魔力を注ぎ身体強化させておきます。
「確かにバイクは速いけど、うちの子だってただの動物じゃないのよ」

聞き込みの情報から『九龍beer』へ向かうわ。
「ここね。話に出てきた場所は」
使い魔との感覚共有で、敵がここに来るのか確認します。
「当たり、でいいのかしら?」

違うなら、すぐ奴らの方へ移動しますが、当たりなら店の中に入り探索します。
「さて、怪しいところがないか調べないとね」
商品をこっそり魔法で調べたり、店員が怪しくないか観察。
「ふぅん、なるほど」


木乃花・蓮司
•WIZで調査
そんな大量にチョコを奪ってどーすんだろうね〜。チョコを捧げて復活する邪神とかめちゃくちゃ甘そうじゃない?
って感じで奪われたチョコの行方が気になるから、僕は暴走族の後を追っかけてみるよ。

「名犬召喚」でポチを呼んで、チョコを奪って去っていく暴走族を追っかけてもらおう。
今は逆チョコなんてのもあるし、襲撃前からチョコ売り場にいても別におかしくはない…よね?

暴走族の行方だけじゃなくて、襲撃中や逃走中になにか手掛かりになる会話をしてないかどうかもしっかり盗み聞きさせてもらうよ〜。

チョコを集めることが目的なのかそれとも他に何か別のことを狙ってるのか、はっきりさせたいね。



 時は遡り、モヒカンたちが去っていく瞬間に動き出す猟兵もいた。

「お願いね?」
「おいで、ポチ」

 何も無かったはずの空間から黒い猫と犬が現れる。黒猫はミーナ・ヴァンスタイン(罪人殺しの聖女・f00319)の【使い魔召喚】、犬は木乃花・蓮司(ダンピールの精霊術士・f03953)の【名犬召喚】により呼び出された動物だ。
 主人の呼びかけに頷きすぐさまモヒカンたちのバイクを追いかけに走り出す。それを見届けて主人たちは使い魔およびペットと五感を共有した。

「確かにバイクは速いけど、うちの子だってただの動物じゃないのよ」
 ミーナの黒猫には魔力を注ぎ強化を施してある。バイクにも邪神の力が施されているのだろうか。周りの車を乱暴な運転で次々と追い越していくが、猫は車の横をするりと駆け抜け追いついている。
「ポチ、がんばってー!」
 犬型UDCのポチにもバイクと並走するほどの速さがある。こちらもすさまじい速さで爆走するバイクに並んで走っている。
 ミーナは感覚を共有しながら聞き込みをし、蓮司はモヒカンたちから情報を得ようと聞き取りに専念する。

 モヒカンたちの動きは乱暴だった。
 車線を無茶苦茶に移動したり反対車線に入り込んだり歩道を走ったりなどやりたい放題だ。あちらこちらでクラクションと罵声が聞こえる。
 ごうごうと風を切る音が邪魔をしてくるがなんとか男たちの会話内容が聞き取れた。先頭を走るサングラスをかけた男に他の男が話しかけている。
(確か、あの男がリーダーぽかったような……?)
 襲撃した時、蓮司もチョコレートを買いに来た客のフリをして潜り込んでいた。最近の逆チョコ文化のお陰で男性で一人でやって来る客を訝しむ人もおらず、現場での男たちのやり取りを捉えることができた。
 他の猟兵たちの情報収集も進んで裏付けも取れた。サングラスの男がこの集団でリーダー格なのは間違いない。

「なあ、兄貴。なんでこんな運転なんすかねぇ」
「ア、んなのこうやったらケーサツも追っかけてこねぇしすげえ暴走族っぽいからに決まってんだろ! ヒャハー!!」
「せやな」
「モヒカンもそう思います」

(ひどいなぁ……)
 巻き込まれた一般通過民間人はいい迷惑だろうし、蓮司の方も度々ポチが事故りかけている。ポチは紙一重で回避しているし、その自信は蓮司にもあるがやはり心臓に悪い。暫く他愛もない談笑が続き、周りの風景も市街地から離れて木々が多くなる。山道に入ったようだ。
 そしてようやく会話の中に目的地に関する情報が出てきた。

「道は大丈夫でござるか?」
「アア、もうすぐ工場に着く」

(工場?)
 その言葉が出てきてから間もなくバイクが右折した。そこには何もない、ただ壁があるはずだが突如空間がねじ曲がり道ができた。バイクはそのまま進み、黒猫とポチもそれを追いかける。そしてバイクが止まった。黒猫とポチも止まる。目の前には工場のように見える建物があった。男たちの来訪を出迎えるようにシャッターが上がる。
 バイクを置いてモヒカンたちは建物の中へと入っていった。当然動物たちもその後を追いかける。

「「「「「―――――っ、失礼しやーす!! 約束のブツを回収して参りやした!」」」」」

 店を襲った時とは人が違うようなへりくだり方だ。

「よくやった、同志諸君」

 機械の音を背に白衣とメガネのオールバックの男が現れた。
 モヒカンたちはその男のことを『ボス』と呼んでいるようだ。
「あの男が首領で間違いないみたいだね!」
 思わず口に出る。だが蓮司の声は男たちには聞こえていないし、ポチたちも気づかれてはいない。
「このまま何を企んでいるか、全部聞かせてもらうよ」
 意気揚々と次の男たちの言葉を待つ。ボスと呼ばれた男が口を開いた。その語る内容、思惑に蓮司は目を見開いた。
「なっ、なんだってー!」



 男たちが工場に辿り着く前のこと。ミーナは『九龍beer』という店の情報を得て調査に向かった。
「ここね。話に出てきた場所は」
 ミーナはそこで男たちが来ないか待ち伏せする。しかし視覚共有で得たモヒカンたちの動きはどうにもこの店に向かっていないらしい。
(回り道でもしてるのかしら……?)
 この店が“ハズレ”なら男たちの向かった先に行こうとは思う。しかしまだどこにも着く様子がない。
「いいわ。時間がもったいないし探りだけでも入れてみましょう」

 『九龍beer』という店はヘンテコな名前の割には外装はまともだ。普通のチョコレート菓子専門店にしか見えない。

 \いらっしゃい/

 ドアを開けるとカランコロンとベルの軽快な音とともに、なぜかガッツポーズをした店主が出迎える。

(怪しいと言えば怪しい……!!)
 喉から出かかった言葉をぐっと飲みこむ。怪しい所を調べに来たはずだがとんでもないインパクトを放つ店主がいるのは想定外だった。
 だが平然を装いチョコレートを物色しているように見せかけ、こっそり魔法を使って商品を調べる。
(ふぅん、なるほど……“当たり”かもしれない、わね)
 視覚共有で得た光景ではモヒカンたちは九龍beerに行かず見知らぬ工場の前に辿り着いている。しかしこの店が全くの無関係であるとは言いづらい。
 なぜなら、この店のチョコレートには妙な力がかけられていることが読み取れたからだ。素材のために溶かすだけのチョコにも、チョコではないトッピング用のアラザンやナッツ類にも。それもとびっきり禍々しい気配が感じ取れる。
 店主はミーナを疑う様子がない。それも当然だ。一般人ならチョコレートにかけられた力の存在に気づくはずがない。
(これ、一体なんなのかしら? とてつもなく嫌な予感がすることはわかるのだけれど……)
 チョコ選びに悩むフリをして考えあぐねている内に、ミーナの五感の中にもボスと呼ばれる男が登場した。



 その男は高らかに告げる。
「我らの、『ドキッ! バレンタインにリア充阿鼻叫喚地獄大作戦☆』の成就の日は近い!」
 工場中から男たちの歓声が響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジロー・フォルスター
歩きながら考えてみるか

強奪犯は男
そんでもって独特な髪型に小物具合
家族にも迷惑をかけているだろう

【世界知識】で知った風習からしてチョコは貰えない可能性が高い
だが、奴らはチョコレートを渇望している

(まさか、暴走族の奴ら…『アレ』で『貰った事』にしてないよな?)

その無事な店ってのも怪しいもんだ
もし暴走族とその店が結託していたら…と思考を進ませてみるか
追い返す演技なら幾らでもできる

この近隣でチョコを入手するならその店に行くしかない
つまりその店に利益が全部落ちる寸法だ

無事な店の周りで【コミュ力・情報収集】で聞き込もう
周辺の人間と動物(動物と話す)に
「この付近で、ヘンな髪の男かでかいバイクを見てないか?」



「歩きながら考えてみるか」
 ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)も九龍beerに向かって歩みを進めていた。これまでに襲撃現場で集めた情報をまとめながら事件について考察を始める。

 この時の彼はまだ他の猟兵が視覚共有で得た情報は手に入っていない。
 しかしそれでも推測はできることはあった。

 まず、強奪犯は全員男性で全員独特な髪形だ。家族に迷惑をかけているに違いない。
 そしてジローの知るバレンタインの文化と照らし合わせて鑑みるに、彼らが異性からチョコを貰えるとは思えない。

(まさか、暴走族の奴ら……『アレ』で『貰った事』にしてないよな?)
 男たちが狙っていたのはチョコレートだけだ。ということは強奪することでチョコレートを貰えない悲しみを埋めている可能性だってあるのではないか。
 まさか。
 まさかとは思うが否定できない。嫉妬に狂った人間というのは何をしでかすかわからない。

(結論を出すのは早計だ。とりあえずこの辺で聞き込みでもしてみるか――)
 九龍beerは円形広場を取り囲む店の一部として鎮座している。
 夜ではあるがまだ人通りはあり、中央の噴水の傍で談笑したり、軽食を取ったりしている人もいる。
 ジローの目に留まったのは『九龍beer』のロゴが入った袋を持っている少女だ。

(あの店と暴走族が結託してた、ってのもあり得るな)
 追い返す演技なら簡単にできる。もしかしたら暴走族が密かに店を訪ねたこともあるかもしれない。
「ちょっといいか? この付近で、ヘンな髪の男かでかいバイクを見てないか?」
「ふぁい?」
 声をかけられた少女は何かしら食べてるようで一度口の中の物を飲み込んでから質問に答えた。
「モヒカンもバイクもここでは見ないねー。前わたしが行った店には出てきたんだけど。もうホント、びっくりしたしとっても怖かったよ」
「そうか。食事の邪魔して悪かったな」
「大丈夫だよ~。それより警察……じゃなくて探偵さんかな? お仕事がんば……ぁ、ア? ぐ、アアアあアア????」

 突然のことだった。先ほどまで普通に話していた少女が突然胸元を抑え苦しみだす。ジローは少女に駆け寄ったが、少女は怒声を上げてジローに殴りかかった。
 ジローは咄嗟にその手を掴み、抑え、気絶させる。
「……突然どうしたんだ?」
 一先ず拘束を解いて噴水の壁にもたれかかるように座らせる。
「そういえば、何か食べていたな」
 少女に頭を下げてから九龍beerの袋の中身を調べる。中にはチョコレートの箱が二つ入っていた。一つはラッピングされていたが、もう片方はラッピングもされておらず包装も開けられている。プレゼント用と自分で食べる用に二つ買ったのだろう。

(待てよ。もしかすると……)
 店と暴走族が結託していたとして、メリットがあるとすれば他店舗を差し置いてチョコレートの利益を九龍beerが全て得ることになる。しかし食べた少女の様子を見てわかった。あの店のチョコはただのチョコではない。
(目当ては利益じゃなかった。……できる限り多くの人にあの店のチョコを買わせることか!)

 嫉妬に狂った人間というのは何をしでかすかわからない。

「そういうことかよ……畜生!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

木乃花・蓮司
●WIZで調査
リア充阿鼻叫喚地獄大作戦………?!作戦名だけで碌でもないことを考えているのが分かっちゃうな…
とりあえず空間が捻じ曲がった場所までの道のりはちゃんと記録しておこう。

後は…もう少し暴走族とオールバック男のやり取りを盗み聞きして情報を集めようかな。
例の怪しい店も禍々しい力を使っているようだし、この工場との関係をはっきりさせる証拠が掴めるといいんだけど。


※アドリブや絡み歓迎



「我らの、『ドキッ! バレンタインにリア充阿鼻叫喚地獄大作戦☆』の成就の日は近い!」

(あー、作戦名だけで碌でもないことが分かっちゃうなあ……)
 蓮司は心の中で深く深くため息を吐いた。
 一先ず不自然に空間が捻じ曲がったところまでの道順を記録する。若干わかりづらいが周辺の特徴もメモしたのでまた同じ場所に踏み込めるだろう。

 モヒカンたちがどこに行ったかは分かった。が、もう少し情報が欲しい。
 同じ頃に九龍beerのチョコには何らかの力が封じ込まれている、チョコを食べた人間が突然暴れ出したとの情報も届いた。工場も店も悪事に手を染めてることは確実だが、二つを結びつける確証はまだない。

「もうちょっと情報が欲しいからがんばってね、ポチ」
 その場にいないとはいえ指示は通じているようだ。ポチは蓮司の言う事を聞いてちょこんと物陰に隠れながら工場での密談を盗み聞きしている。

「九龍beerの売り上げの方はどうだ。いい感じに売れているか?」
 オールバックの――ボスらしき男。彼はモヒカンとはまた違う白衣の男に尋ねた。
 話しかけられた男は威勢よく返事し順調にリア充どもに売りさばいていること、モヒカンたちの襲った店の客も首尾よく流れ込んでいることを報告した。

(ビンゴ!)
 明確に九龍beerの名前が出た。あんな独特な響きの店名だ。
 偶然別の店がありました、なんてことはないだろう。

「ここで作った我らの嫉妬が詰まったチョコを売りさばき、リア充どもを暴徒化して破滅させる。満遍なく行き渡るように世紀末部隊に店を襲ってもらい『チョコを買うなら九龍beer!』と思い込ませるマッチポンプ……実に完璧だ。うまく行きすぎて怖い」
「しかしボス、こんなにぺらぺら喋って大丈夫でしょうか?」
「大丈夫に決まってる! ここまでのルートは神様の力を借りて隠している。誰にもバレるわけがないし盗聴器を仕込まれることもない。その上神様のご本尊もこことは別の場所に偽造してるわけだからな……万が一ここを潰されても安全。隙を生じさせぬ二段構えという寸法よ」
「さすがボス! クレバー!!」

「いや聞こえてるんだけどね」
 届くわけがないが蓮司はポツリと呟く。
 隠蔽が厳重すぎてプライバシー意識が低くなり過ぎたことが幸いしたようだ。
「でも、そのおかげでこの作戦を止めることができる」
 男たちの会話の内容を記録する。
 さて、次にやるべきことは――

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『嫉妬教団の暗躍【バレンタイン編】』

POW   :    チョコでおかしくなったカップル達を押さえつけて情報を得る

SPD   :    噂のチョコを売っている人を探し、追跡調査を行う

WIZ   :    ジーク嫉妬ッ!ハイル嫉妬ッ!自分も『嫉妬教団』の一員として紛れ込み情報を得る

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

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 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの捜査の結果、チョコレート強奪事件に隠されていた真の目的が判明した。
 暴走族の正体はとにかくリア充が憎くて憎くて仕方がなく、嫉妬心のあまりつい邪神の力に手を出してしまった非リア集団『嫉妬教団』の手先。チョコレート専門店『九龍beer』も嫉妬教団の息のかかった店であった。

 彼らの掲げる作戦『ドキッ! バレンタインにリア充阿鼻叫喚地獄大作戦☆』とは、

 一つ、食べたものが凶暴化する邪神パワーを込めたチョコ(通称しっとチョコ)を作る。
 二つ、マッチポンプでしっとチョコを売りさばきカップルの手に出来る限り多く流通させる。
 三つ、チョコを食べたカップルは凶暴化して喧嘩! 破局! 非リア充大勝利!!

 というシンプルであるが人間関係を破壊させるには十分な策だった。
 これもご丁寧にボスと呼ばれる男が語った結果得られた情報である。


 情報収集を済ませた猟兵たちの次なる使命はしっとチョコの回収と工場の制圧、そして嫉妬教団の本拠地を見つけることである!
 しっとチョコと製造工場を潰せば『ドキッ! バレンタインにリア充阿鼻叫喚地獄大作戦☆』は失敗に終わるだろうが、彼らの嫉妬と邪神の加護が消えるわけではない。
 本拠地を突き止めればこの嫉妬教団は事件を起こす力を失うだろう。

 猟兵たちは各々の方法で新たな情報収集に向かった。
ミーナ・ヴァンスタイン
アドリブやアレンジ歓迎よ。

眼鏡を外して吸血鬼としての姿を解放、その魔力で大量の【使い魔召喚】に売人を探させ、工場まで追跡させるわ。

また暴れている人達がいたら
「見過ごせないわね」
【礼儀作法】で丁寧に声掛けします。
「あの、ちょっといいかしら?」
殴り掛かってきたら【グラップル】【見切り】【カウンター】で軽く当て身で手加減の【マヒ攻撃】で気絶してもらうわ。
「ごめんなさいね」
残りの一人は【残像】【忍び足】で後ろにまわり【怪力】で動きを封じて軽く当て身を。
「アナタも正気に戻りなさいな」
起こしたら【コミュ力】で情報を聞きます。
「チョコを食べたと思うのだけど、どこでもらったの?」

情報を基に探索範囲を絞るわ。


ジロー・フォルスター
このまま放っておけねえよなあ…
カップル達を治療して、情報を得て流してみるか

さっきの子か新たな被害者、もしくは自分の体で治療を試みる
【医術】で考えればさっさと体内から出した方がいいよな
もっと呪術的な影響なら『生まれながらの光』か【祈り】、【オーラ防御+呪詛耐性】で癒せればいいんだが

治療法を見つけたら【世界知識】で【情報収集】
情報が広まるのは時間の問題だろう
被害者と協力して知り合いやネット上に『九龍beerのチョコを食ったらおかしくなった。ここで治療している』と情報を流す

偽情報を警戒し、訪れた人をメインに【情報収集】
店の情報、この店を教えた人物、襲撃した人物…何か情報は無いか当たってみるぜ



●しっとチョコの恐怖
「いい? あの人を追いかけるのよ。よろしくね?」
 眼鏡を外し吸血鬼としての姿を解放したミーナが使い魔に呼びかける。
 使い魔の数はモヒカンの追跡に使った時とは違い何十匹もいる上に種類も黒猫、白蛇、蝙蝠と様々だ。
 呼びかけに合わせた使い魔たちは散り、物陰に隠れ闇夜と同化する。店から出る店員、その後を追うため。


 使い魔を見送ったミーナは街に出る。夜の寒さとともに雪も降って来た。
 はらり、と舞い降りる雪につい視線を奪われたその時、ミーナの耳に喧騒が聞こえてきた。

「おいてめー!! なにクソまずいチョコ食わせやがったんだ!!!」
「なんだよ、オラ。お前こそせっかく買ってきてやったのにクソまずいなんてどの口が!! 言って! るんだ!!!」

 そこでは二人の若い男女が言い争っていた。口調は乱暴で今にも殴り合いに発展しそうな空気だ。そこにミーナは割って入った。
「あの、ちょっといいかしら?」
 二人はその声に気づいた――が、忌々しいと怒りの表情を向けてあろうことか拳を向けてきた。しかし猟兵の身体能力に一般人は敵わない。
 反応が速かった男の拳を紙一重で避けて瞬時にカウンターを叩き込む。勿論、全力ではない。意識だけを刈り取りおとなしくさせるためだけに限界まで手加減してある。それを見た女の方は一瞬動揺して動きが止まる。
「アナタも正気に戻りなさいな」
 その隙を見逃さず背後に回り込み組み伏せ、首筋に当て身をし同様に気絶させる。

 カップルを気絶させた頃にジローが合流した。
 彼は先ほどの少女と九龍beerのチョコを連れて訪れた。すぐにミーナの足元で倒れているカップルの存在に気づく。
「そちらさんもあのチョコを食べたのか?」
「恐らく、と言ったところね。さっきおとなしくしてもらったばかりだから」
「そうか。治療はこっちでやる。また暴れてるのがいたら連れて来てくれ」
 タイミングよくまた怒声が上がる。頷いた後ミーナは声の方へ駆けて行った。

 ジローは倒れた少女とカップルに生まれながらの光を使う。間もなくして被害者たちは意識を取り戻した。

「う……あれ? ここは一体……」
「何してたっけ俺……」
「突然頭の中が真っ赤になったような……」

 聖なる光に邪神パワーを取り除かれのか、それとも気絶した段階で抜けたのか、彼らは正気に戻っていた。
 すかさずジローはカップルから話を聞き、暴れ出す前に九龍beerで買ったチョコを食べていたと答えた。
「やっぱりな」
 チョコの流通を防ぐためにジローは被害者たち、そして集まった野次馬にも九龍beerと暴走族の関係性、そして嫉妬教団の野望について話す。半信半疑ではあったが実際に暴れ出す人々を見ていたためか、頭ごなしに否定する様子はない。

 話している途中にミーナが気を失った男性を背負ってこの場に戻って来た。横には怯えた様子の女性を連れている。
「この人も九龍beerのチョコを食べて暴れ出したみたいね。しかも止めようとした人を何人か殴り倒したみたいで……チョコを食べてはいないけど後で連れてくるわ」
「ああ、頼んだ」
 ジローは怯えている女性の様子を見る。無理もない、突然目の前で相手が暴れ出すところを見たのだから。チョコのせいと言われてもその恐怖は拭いされない。
(放置してればチョコのせいとは気づかれず間違いなく破綻していたな……)
 そこでジローは被害者と野次馬に呼びかける。

「『九龍beerのチョコを食べるな、回収と治療をしているからおかしくなった人がいたらここに来てくれ』――これを知り合いでも、ネットでもとりあえずに拡散してくれ。以上チョコの被害を出さないためにも協力してくれないか?」
 恐る恐るといった調子であるが彼・彼女らは頷いた。時期にチョコと食べてしまった人たちが集まるだろう。

 拡散に協力してもらいながらさらにジローは情報収集を続ける。
「この店のことなんだが……誰に教えてもらったんだ?」
 多くがネットの噂、友人、チョコを強奪された被害者仲間からの又聞きと答えるが、その内ジローはあることに気づいた。最初は奇妙だとは感じなかった。その時話を聞いていたのが学生だったからだ。しかし同様の報告が増え、よくよく考えるとそれはおかしな事だった。
「学生とはいえ、学校でしかも男子にこの店のことを聞いたやつが多すぎやしないか……?」

 一方、ミーナは使い魔から予想外の情報を受け取っていた。
 てっきり店員は工場に向かうのかと思った、しかし――

「――学校?」

 共有した視界に映っていたのは榊坂高校。UDCアースの都心部、今現在騒ぎが起こってる広場からそう離れていない、どこにでもあるような普通の高校だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木乃花・蓮司
うーん、聞けば聞くほど碌でもない作戦だ…!
これ以上バレンタインを楽しみにしてる人達や店に被害を広げる訳にはいかないし、早く解決しないとね。

更に情報を得る為には教団内に入り込んだ方が良さそうだ。
さすがに髪の毛は切りたくないから、モヒカンのカツラとサングラスでそれっぽく変装して潜入しよう。リア充許すまじ!バレンタインなんてぶっ潰せ!ってノリでいけるかな?

うまく入り込めたら隠されている本尊についてとか、何か役に立つ情報がないか調べるよ。
僕が入れない場所はまたポチの力を借りて調べてみよう。

※アドリブや絡み歓迎



●ジーク嫉妬ッ! ハイル嫉妬ッ!

「リア充は?!」
「「「「「許すまじ!!!!」」」」」
「絶対破滅!!」
「人間関係ぼーろぼろ!!」
「やつらのかーちゃんでーべーそー!!!」

 ボスと呼ばれる男の演説に触発されたのか、モヒカンと工場の職員たちがえいえいおーのノリで意気込んでいる。その中に紛れ込んだ猟兵がいるとは気づかずに。

「お、おー!!」
 蓮司はモヒカンとサングラスで変装し、直接工場内に乗り込んでいた。
 若干たどたどしくはあるが新入りと思われているのか、怪しまれてはいない。

(しかし聞けば聞くほど碌でもない作戦だ……!)
 彼らの目論見を放置すればバレンタインを楽しみにしている多くの人たちや店に被害が出る。早く解決せねばならない。
 そのために危険を冒してでも潜入したのだ。
 怪しまれない程度に辺りを見回し、ポチの力も借りながら工場を調べる。

 目につくのはチョコレートを作る用と思われる物々しい機械類。とびっきり禍々しい気配を感じるのは邪神パワーを込めるためのものだろうか。
 白衣を着た男がモヒカンの回収したチョコを投入口と張り紙をされている部分にどさどさと入れた。そこからゴウンゴウンと鈍い音を立ててからベルトコンベアの上に完成形のチョコがラッピングされた状態で流れ出す。
(この機械そのものが邪神の力で作られたみたいだね……)
 あまりにものハイテクさに感心しかけるが、怪しまれないように視線を逸らす。
(「本尊はここにはない」と言ってたけどヒントすら見つからないとはね)
 だんだんモヒカンのテンションに合わせるのも疲れてきた。その時、ボスが口を開く。打って変わって信者たちは静かになった。

「よし、お前らご本尊に力を注ぎに行くぞ。工場担当も日付が変わる前に帰れよ」

 信者たちは二つ返事で答え、工場から出ていくボスの後をぞろぞろと付けていく。蓮司も怪しまれないよう同行した。
 工場から出ると、ボスは空に紋様を書く。紋様の書かれた場所はぐにゃりと歪み躊躇いもなくボスはそこへ目がけて歩いて行く。モヒカンたちも蓮司も同様に。
 通り抜けていくとふわっとした、少し気分の悪い浮遊感を感じ一瞬目を閉じてしまう。浮遊感がなくなって目を開くとそこは――薄暗い倉庫のような場所だった。
 またボスが床に指先で紋様を書くと、床から紋様が赤い光を伴って浮かび上がりズズズと床が動き出す。その先には地下へと続く階段と永遠に続きそうな深い深い闇。

 蓮司は階段を下る男たちの後は付けない。代わりにポチを送り込む。
 咄嗟に試したいことを思いついたからだ。それにポチなら男たちにバレずに様子を見てもらうことができる。

「よっと」
 男たちが全員地下に消えていき、動いた床が元に戻ったのを確認してから今はもう何もない床まで近づく。
 そしてボスと同じ手順で紋様を書いた。すると再び床が光音を立てて動き出す。
「これって邪神の信者じゃなくてもそれに近い方向性の力なら動かせるってことかな?」
 邪神、もといオブリビオンも猟兵も世界法則すら覆す力が使える。だから同じ反応を示したのだろう、多分と蓮司は思った。
 乗り込むのはまだ早い――とりあえず倉庫から出る。この場所がどこか確認するために。

成功 🔵​🔵​🔴​

アララギ・イチイ
恋人達の痴話喧嘩は面白いわねぇ
あ、ちゃんと依頼を実行しないと起こられるから観察はほどほどにして情報収集しないとぉ

【召喚・群狼戦術】を使用するわぁ
召喚した見えない狼達に【動物と話す】技能で、売人を視覚・嗅覚を活かして追跡工場の場所を調査する様に指示を出しておくわぁ
工場の場所を見つけたら、見張りを残して撤収、私に連絡する感じねぇ

あと、暴れているカップルが居たら擬似神経ナノフィラメントを【念動力】で操作、接触させた後、精神への【ハッキング】を行い、死なない程度の【気絶攻撃】を直接脳内に叩き込んで大人しくさせるわぁ
そのまま脳からチョコに関する記憶の【情報収集】でもしてみようかしらぁ



●度し難い者たちへ
 アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は街中の喧騒を愉快気に眺めていた。
「恋人達の痴話喧嘩は面白いわねぇ」
 なんて独り言ちながら、しかしいい加減働かないとさすがに怒られると思い動き出す。
 見物する前に売人をユーベルコードで呼び出した狼たちに追跡させていたが、報告に戻ってくるまで時間がかかりそうだと判断し暴走するカップルの前に躍り出る。

「はぁい♪」
 脇目もふらず殴り合っていたカップルだったが、それでも突然目の前に現れた着物の少女には驚いたようで一瞬動きが止まる。
 その隙をアララギは見逃さない。シュルシュルとアララギの両の腕からフィラメントが飛び出し、耳から中枢に入り、接触した神経へ直接刺激を叩き込み外傷すら残さず気絶させた。
 そのままフィラメントを操作し、次は脳へ。直接記憶からチョコに関して調べ上げる。

 カップルの記憶からは、チョコレートは女の方が九龍beerで購入したこと、九龍beerに行ったのはモヒカンの襲撃でチョコが買えずネットで噂話を調べて行き当たったことが読み取れた。
 そして密かに、女性は気にも留めていなかったようだが店員の内緒話が記憶を直に調べたことで拾い上げられた。
 「嫉妬教団」「神様復活は近い」「工場からチョコを受け取る」「榊坂高校で儀式の手伝いを」――断片的にだが、重要度は高そうだ。

「んー、他にも情報はもらえないかしらねぇ?」
 フィラメントを仕舞って背伸びしながらそう言うと、次の喧騒を聞きつけて走り出す。
 圧倒的な手際の速さで、狼たちが戻って来た頃にはかなりのしっとチョコの被害を鎮圧した後だった。

「あらぁ、お帰りなさい……ってあれ、全然別の方向から来てる子いるわねぇ?」
 疑問を解決するため、狼と対話し情報を引き出す。
 どうやら売人の中には工場へ行った者と、榊坂高校という学校へ向かった者に分かれたらしい。
 繋がったみたいねぇと心の中でくすりと笑い、アララギは駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ライジェル・スーパーノヴァ
んー……なんか、すっげー滅ぼしたい感じの教団だ、な。
やってることのショボみがイラつくってゆーか、嫉妬ってゆー普遍的な原動力がジワジワくるってゆーかイヤ共感性羞恥とか断固としてチガイマスそれよか調査ね。

食べるとヤバくなるチョコとか超食べたいけど。ま、置いといて。
九龍beerの店員が向かったっていう榊坂高校の様子見に行く。
あんま溶け込めそうにはないからこそっと。
ここの人たち誰もツノついてないし……

店員がどこ行ったかわかるといいんだけど。
わかんなかったらそれはそれで、店員は学校に紛れ込める人物ってこと、かな?
チャンスがあれば捕まえる。ジャン、ここに処刑用椅子があります。



 榊坂高校の前に辿り着いたライジェル・スーパーノヴァ(Delicious×Revenge×Spicy・f13473)は周囲を見渡してほっと一息ついた。
 ライジェルの頭部には特徴的な角がある。そして榊原高校は一般人が普通に通っている普通の高校だ。人から離れた外見は悪目立ちしたり浮いてしまうに違いない。
 幸いライジェルの不安に反して陽が沈んだ時間帯の校舎には人はいない。周囲の目を伺いながら、榊坂高校に入ったという店員を探して校舎に入り込む。

「はぁ……」
 月の光が照らす薄暗い校舎の中、誰に聞かせるわけでもない溜息を吐く。
(なんか、すっげー滅ぼしたい感じの教団だ、な)
 やってることが非道とか、許せないとかよりは、まずしょぼいという感想がでる。
 動機が嫉妬という普遍的なものであることもうまくは言えないがジワジワと来て、イライラする。
 共感性羞恥という言葉が頭をよぎるがあんな集団と同族ではない。断じてそんなものではナイナイと振り払うように頭をブンブンと振る。

「あのチョコ食べてみたかったな……。ん?」
 気を紛らわせるかのようにしっとチョコに思いを馳せた――ところでグラウンドをこそこそと走る人影を見る。
 学生にしては年を食い過ぎている。教職員にしては共同不審。
 そしてちらと見えた顔は九龍beerにいた店員で間違いなかった。




 男は一瞬自分の身に何が起きたかわからなかった。
 突然自分の体に衝撃が走り視界がぶれて気づいたら椅子に縛り付けられていた。

 そして目の前には角の生えた銀髪の少年が、

 じりじりと近づいてくる。

「ア、アーーーーーーーッ!!」
 悲鳴は誰にも届かず虚しく木霊した。




 ライジェルが処刑用椅子に縛り付けた店員からこの高校の用具入れに儀式場への地下通路が隠されていること。神様から力を借り受けている信者なら床に描かれた紋章に力を注ぐことで道が開くこと。下位の信者は力を借りれないのでアイテムを使って出入りしていること。そして今現在神様を召喚するための儀式を行っている最中だということを聞き出せた。
 尋問の詳細は男の名誉のため省かせていただくとする。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『敬虔なる邪神官』

POW   :    不信神者に救いの一撃を
【手に持つ大鎌の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    出でよ私の信じる愛しき神よ
いま戦っている対象に有効な【信奉する邪神の肉片】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    神よ彼方の信徒に微笑みを
戦闘力のない【邪神の儀式像】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【邪神の加護】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天通・ジンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●アンハッピー・バッド・バレンタイン・ファイナル
 集めた情報を元手に猟兵たちは榊坂高校の地下儀式場に突入した。
 まさか儀式場の場所を突き止められるとは思ってもいなかったようで、信者たちは慌てふためきその場から逃げ出そうとする者もいる。
 しかしボスの男は冷静さを欠くことはなく、信者たちを一喝する。

「お前たち! 計画とは違うが召喚の儀を行え!」
「えっ、でもこの嫉妬パワーだけでは我らが神は……」
「構わん! ここで猟兵どもに邪魔をされれば全て水の泡だ。我らと儀式を守っていただく使徒様を呼ぶのだ!!」
「……! わかりました! ボス!」
 烏合の衆となりかけた信者たちは打って変わって結束、そして猟兵の妨害よりも早く詠唱を遂げる。

 光の中から現れたのは――鎌を持った華奢な少女。
「わたしを呼んだのはあなたたち?」
 少女は天使のような笑顔で信者たちに微笑みかける。
 首を垂れて拝む男たちを見て少女はまた笑う。
「わかったわ。わたしが守ってあげるねっ」

「はわわ……ありがとう、神官たん!!」
「神官たんマジネ申!!!」
「お前らー!! 神官たんを応援するぞーー!!!」

 信者たちは謎の一体感を見せて謎の大振りな踊りを始めた。
 だがふざけた踊りに反して邪神官のパワーは上昇していることを感じるだろう。
 どうやら男たちのリア充を憎む気持ち、この世界を変えてしまいたいと思う気持ち、神官に勝って欲しい気持ちが邪神官をパワーアップさせているのだ。


 力の増していく邪神官を前に猟兵たちはそれぞれ武器を、術を構える。
 嫉妬教団の計画を終わらせるために。
アララギ・イチイ
あら、その太腿の御肉が柔らかそうで素敵ねぇ
両足を引き千切って後で喰らってみようかしらぁ

【特殊武装・超振動~】を使用するわぁ
装備品の擬似神経ナノフィラメントの表面にナノマシンを纏わせて【念動力】で操作、フィラメント表面の分子振動を高めて(ナノマシンの効果)、接触した対象を切削、超高温で溶断する状態にして、敵の動きを【見切り】つつ攻撃を仕掛けるわぁ

上記の攻撃中に周辺環境にナノマシンを散らばるだろうから、一定数以上になったらナノマシンの【捨て身の一撃】で分子振動を極限まで高め、超高温攻撃も試してみようかしらぁ

懐に潜りこまれそうなら、改造ブーツの【串刺し】のドリルキックを繰り出すわぁ



 声援を受けて決めポーズをする邪神官に極細の糸が襲う。
「あわわ~、あっぶなーい!」
 おどけた口調で邪神官は糸を薙いで、弾く。
「あらぁ、よく見えてるのねぇ」
 糸を操作する着物の少女――アララギは攻撃を弾かれたにも関わらず余裕を保った態度だ。

 じゅわ。

 邪神官の鎌の一部が融解する。それは先ほどフィラメントを弾いた時に接触した部分だった。
「本日の秘密兵器……ナノマシンよぉ。見えない攻撃にご用心ねぇ?」
 ケタリ。無邪気に、だが狂気を帯びた表情で嗤う。
 フィラメントに纏わしたナノマシンを高速で振動する。分子の振動は熱を発生し、物質を溶かす。
 そして――
「あはぁ♪」
 念動力で動くフィラメントが再び邪神官を襲う。咄嗟に邪神官は鎌で凌いだ。
 その鎌をフィラメントがあっさりと切断する。
 そう、融解して硬さを丸ごと溶かしたのだ。

「その太腿の御肉が柔らかそうで素敵ねぇ」
 舌なめずりをするアララギ。彼女の周囲をフィラメントが漂う。
「引き千切って後で喰らってみようかしらぁ!」
 意思を持った生き物のようにフィラメントが再び邪神官に飛び掛かる。

「やだ……」

 その言葉と共に壊れたはずの鎌が再生する。

「やだやだやだ! 気持ち悪い~~!!」
 鎌の形が崩れることも厭わずフィラメントを防ぎ、目にも留まらぬ速さでアララギの懐へ飛び込んだ。
 その動きを見切り足で踏みつけて抑える。ぎゃり、と鈍い音を立ててブーツから飛び出たドリルが鎌を削った。
 だが決定打を与えようにも邪神官の速さと膂力が邪魔をする。信者たちの声援に合わせて鎌も壊した端から再生し、フィラメントが邪神官の体へ届かない。
(そろそろかしらぁ?)
 ちらりと、一見何もないはずの空間を見る。そこに邪神官が足を踏み込んだ。その瞬間、
「レンジでチン! なーんてねぇ」
 ぶちっと邪神官の体から何かが千切れる音がした。

「あ、アーー? あーーーー!! 痛い……いたいいたいいたいぃぃぃぃ!!!」

 痛切な悲鳴を上げて姿勢を崩した邪神官が転がり込む。
 自爆覚悟で空間に散らばったナノマシンを高速振動――その結果が邪神官の両足に訪れた。焼き切れて失った足に涙を浮かべる少女。
 アララギに信者からブーイングが飛び交った。かわいそうと泣き出す信者まで出てくる。
 その信者の声に、願いに応えるように邪神官の足が再生した。ダメージは確かに与えられている……しかし信者の声援が尽きぬ限り何度でも立ち上がるつもりのようだ。

「おかわりかしらぁ?」
 ブーイングに気を留めず、アララギはくすりと笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライジェル・スーパーノヴァ
どっちかってゆーと殴りたいのは信者のほうだけど。なんかあの神官たん? の応援を受けて力を増したドヤ顔もたいがいムカツク。
うーん、どうすっかな。普通に戦うと神官たんガンバレガンバレで強くなりそうだし。あの謎の一体感イラつくからめちゃくちゃ乱したい。

そうだ、神官たんの服破ろう。ナイフとフォーク、あんなピラピラした服ガンガン引っ掛かるだろ。ショボ信者たちはいっそオレを応援しろ。カッコつけんなよ、ヤリたいんなら混ざれよ。
神官たんもさ、アイツら守るとか本気で言ってる? さっさと肉盾になれよクソザコとか思ってない?
長引くかもしれないから尻尾の蛇に噛ませる(ガチキマイラ)攻撃しつつ回復する。



 ライジェルはまず信者たちを一瞥し、どや顔を決める邪神官に向き直る。
 そして舌打ちした。

「どっちもムカつく」

 深く腹から溜息を吐き出し、武器であるナイフとフォークを取り出した。
 食事に使われるような小さな物だが切れ味は折り紙付きだ。
 それを邪神官は鎌と放り投げた肉片から呼び出した触手で応対する。目に怒りの炎を宿して。
「あったま来たから……絶対、切り飛ばすっ」

「はぁはぁ、その顔もかわゆす……」
「最高にマブ……」
「びゅーてぃふぉー……」
 きっと睨みつける邪神官。その姿に興奮した信者がさらに邪神官をパワーアップさせる。
 ライジェルは思う。あの応援はイライラする上に邪神官を強化して面倒だと。
 普通に戦っても邪神官を応援させる要素を作るだけだろう。
 ならばとナイフを横に振るった。その手は触手に遮られ邪神官の皮膚の肉を裂かない。

 しかし、代わりに引っ掛かった邪神官の服を切り裂く。

「えっ……? きゃっ……」
 乙女の甲高い悲鳴。衣を裂かれたために発せられた絹裂くような悲鳴。
 それに対して信者は――若干嬉しそうな顔をしている者が多かった。

 服を裂かれた邪神官に思わず口笛を吹いてしまう者、赤面してガン見する者、または目を背けてしまう者。
 信者たちの様々な反応を見てライジェルの思惑通り足並みが乱れたことを確信する。
 それを証明するように怒りのあまりに鎌を振るう邪神官の動きが鈍い。そして裂かれた衣服は再生せずボロのままだ。
「ショボ信者たちさあ、どうせならオレを応援しろよ」
 易々と避けて次はスカートを破る。

「あの少年……そこ代わ、いやヤメロよぉ!!」
「女の子がかわいそうだるぉぉ?!」
「いやでももうちょっといい感じに……」

 邪神官が押され気味で狼狽はするものの、それはそれとして信者たちは健康な男性だ。
 欲望に正直に感情が流される。故に邪神官の弱体化を加速させる。
 ライジェルの「ヤリたいんなら混ざれよ」との言葉には全員顔を背けて俯いたが。

「神官たんもさ、アイツら守るとか本気でいってる? さっさと肉盾になれよクソザコとか思ってない?」
「はあ?! そんなこと思ってるわけないでしょ? あの人たちは主様降臨のための貴重なリソース。あの人たちの嫉妬エネルギーがないと主様はここに来れないんだから!」
 ぷんすかと怒気の混じった声で打ち合う。
 その言葉に一時的に信者が落ち着きを取り戻したらしく、若干だが力が上昇する。
 鎌の持ち手がライジェルの腹に打ち付けられ、無理矢理息を吐き出させられる。
「そうか……よっ!」
 悪態を吐き、尻尾の蛇に邪神官を噛ませてから蹴とばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイ・デス
道に迷っていたら、クライマックス、ですね

私は、他の猟兵さんが、戦っている隙に
【地形の利用・忍び足ダッシュ】で、地下儀式場へ素早く入り込み
そうして……
……ふむ。信者さん達が、ヤドリガミにとっての、本体みたいな事になっている、でしょうか?
【激痛耐性】で耐えながら【生まれながらの光】で、私も高速再生
斬る度に斬られる度に邪神官から【生命力吸収】しながら、根比べ……も、できますが
ここは……信者を一人ずつ
信者もオブリビオンなら【暗殺・生命力吸収】で、殺して塵も残さず、私の力にする、ですが
オブリビオンでないなら、私は基本、殺さない、ので
【医術】で、殺さないように、暗殺……触れて、生命力吸収して、気絶させます


ジロー・フォルスター
邪神官に力を与えてるのは信者達か…厄介な上に癇に障る奴らだな

・戦闘
儀式像は片端からジャマダハルで【串刺し・鎧砕き】

邪神官は光の中から現れたな
【敵を盾にする】で像の死角から魔導銃を敵に向け闇の【属性攻撃】→【零距離射撃】していくぜ

応援する信者達に『天声』で呼びかけ、力の供給を止める
「ああ、可哀そうだとも。で、そんな彼女を守ろうって気概のある奴らはいないのかい」

力の弱い相手からは奪い妙なモンを食わせる
力のある相手には守って貰い安全な所から口だけ出す…

「そういう事をしてっから、いつまでも相手にされないんじゃねえか」

終わったら他の被害者の確認と治療の続きだ
こいつらを雑用でこき使うくらいはしてもいいよな



 思いもよらない服破りに邪神官は儀式像を召喚して弱体化分を補わんとする。しかしそれを片っ端からジローの短刀が破壊していく。

「ジャマしないで!」
 触手がジローを拘束せんとする……が、破壊した像の影に遮られゼロ距離から打ち込まれる弾丸に砕かれてしまう。

「神官たんがんばって……!」
「あ、動くと際どい……」
「こんなやつらに負けるなー! 神官たんー!」

『威勢がいいことだな。で、そんな彼女を守ろうって気概のある奴らはいないのかい』

 突如頭の中に直接聞こえる声に信者たちは戸惑う。
 声の正体は天声を使ったジローだ。

『力の弱い相手からは奪い妙なモンを食わせる。力のある相手には守って貰い安全な所から口だけ出す。しかも欲望のままに振り回して……都合のいいやつらだな』

 そういう事をしてっから、いつまでも相手にされないんじゃねえか、とも付け加える。
 多くの信者が応援をやめて黙ってしまう。厳しい正論が心に突き刺さり過ぎたのだ。その間、目に見えて邪神官は弱体化しているようだった。

「うるせえ! 俺らの苦しみを知らないやつに好き勝手言わせてたまるかよ!!」
「そ、そうでござる!」
 沈黙を破り威勢よく邪神官の下へ向かおうとする信者が現れた、その時だった。

「やめて! わたし、そんなこと望んでない!」

 ピタリ、涙混じりの訴えかけに信者の動きが止まる。

「あの人の言う事は詭弁よ! 騙されないで……あなたたちは主様を呼び出し、あなたたちの理想を叶えることを考えていればいいの」
 邪神官の説得に信者たちの意思が纏まる。例の踊りと共にパワーアップした邪神官がジローに襲い掛かるかと思われた。それを阻止したのがナイだ。

「信者さんは、普通の人みたい、です。だから、気絶させて、おきました」
 ナイは一度生まれながらの光による邪神官との根競べも考えた。が、ヤドリガミと器物の関係性をヒントに力の源を断つ方向へ、密やかに動いていた。
 突入のどさくさに紛れて信者たちの後ろ側へ。後は邪神官に夢中になっているところを狙って、死なない程度に―信者たちが人間でなければ皆殺しも考えたが、力を借りているだけで全員元は一般人であるとわかったので―生命力を吸い上げたというわけだ。
 信者のほとんどは気絶しており、立ち上がってる者はボスのように邪神から力を借りている者だけだ。しかしそのエネルギーが尽きるのも時間の問題であろう。

 生まれながらの光による代償を吸い上げた生命力で癒し、対象を邪神官に向ける。
 邪神官は体から力が抜けていくのを感じた。ナイによる吸収だけではない。信者の応援を受け取れなくなった結果が体に表れている。

「嘘よ! 嘘よ嘘よ嘘よ!! 冗談じゃないわ!!!」
 床から儀式像がせり上がり邪神官を強化する、がそれもただちにジローに砕かれてしまう。
 応援してくれる信者の大半を失った邪神官の力は最初の輝きを失っていた。
 討伐は時間の問題だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミーナ・ヴァンスタイン
アドリブやアレンジ歓迎よ。

吸血鬼の力を解放した状態でゆったりと、優雅に、歩いていきます。
【礼儀作法】【存在感】
「貴女に恨みはないけれど、邪神の使徒だというならば容赦はしないわ」

敵の攻撃は味方の攻撃や今までの動作から【視力】で【見切り】【カウンター】に『断罪撃』の拳や蹴りを【グラップル】【2回攻撃】で放つ。
・大鎌の攻撃は持ち手の部分や刃の横を狙って打撃を与え、受け流したり【怪力】で受け止める。
「見えてるわよ?」
予測不能な攻撃は【聞き耳】や【第六感】で【残像】を囮に回避よ。
「ふふっ♪惜しかったわね」
そして【ダッシュ】で距離を詰め、儀式像や邪神の欠片を【破魔】【鎧砕き】で破壊よ。
「これで終わりよ?」



 冷たい床の上に崩れ落ちる邪神官。その目の前にミーナがゆったりと歩み寄る。
「貴女に恨みはないけれど、邪神の使徒だというならば容赦はしないわ」
 体に流れる吸血鬼の血を解放させ貴婦人のように、しかし明確な敵意をもってにじり寄る。思わず重い体を引きずり上げて鎌を振るう。だがすでに何度も繰り出した攻撃。

「見えてるわよ?」

 信者の応援もなくなった今では欠伸がするほどに単調で緩慢なものだ。あっさりとミーナは鎌の柄を掴み、その怪力で鎌ごと邪神官を放り投げようとする。

「きゃ、ああーーーーー?!」

 かはっと地面に邪神官の華奢な体躯が叩きつけられる。
 勢いで手からすっぽ抜けた鎌の代わりに触手を呼び出そうとするが、肉片は姿を変える前に蹴りで砕かれた。

「これで終わりよ? “断罪―ジャッジメント―”」

 間髪入れず踏み込み間合いを詰める。一撃目はアッパーで持ち上げ、二撃目は鋭いキックを腹に。

「“撃―ブロウ―”!!」
 蹴りに射抜かれた邪神官の体からピシリと、砕けるような音が鳴る。
「わたしの、夢……わたしたちの望みが、ああ……」
 ミシミシと音を立てながら邪神官の体は薄らと光の中に溶けるように崩れていく。

「ごめんなさい……主様……」
 最期にそう呟いて少女の体は消えてなくなった。











 その後、意識を取り戻した信者たちは自分たちの計画が終わったことを知り、大人しく全員拘束された。
 猟兵たちは『UDC』のバックアップもあり、ばら撒かれたしっとチョコの全回収に成功。中にはチョコを食べてしまった人もいたが、大きな被害を出さず治療することができた。
 事件に関わった一般人には記憶処理が施され、奇妙な珍走団の都市伝説は残るものの無事平和なバレンタインデーを迎えるだろう。
 『ドキッ! バレンタインにリア充阿鼻叫喚地獄大作戦☆』はこれにて終息となった。


 しかし忘れることなかれ。人の心には常に嫉妬心が存在する。
 故に彼らが破れても、再び第二第三の嫉妬教団が暗躍するのだ! 多分。


〈了〉

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月13日


挿絵イラスト