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素晴らしき賛辞……いや惨事

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン #おっちゃん

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「はっ! ランプさん、フライングしてるメイド服(ミニ)を発見!」
『よし行くワヨ!』
 望遠鏡であたりを探っていたうさぎの声に、魔法のランプがGOサインを出した。
 力持ちのたぬきがランプを擦って「えいやっ」と投げれば、魔法のランプから蒼穹の魔人が現われる。
『一着ゲットォォォ!』
 メイド服に襲われたランプ……もとい魔人は一瞬にしてメイド服を着こなし、くるくると空で舞う。フリルなスカートが華麗に翻り、ムキムキマッチョな魔人も可愛く見えてくる不思議……かと思いきや。
「ごふっ」
「しっかりしろたぬきっちぃぃぃぃ!!」
「くっ、なんて強烈な視界攻撃なんだ……!」
 たぬきっちが倒れ、つられて倒れそうになる住人たち。
 慣れたつもりだった。でもやっぱマッチョ魔人にミニなメイド服とかつら過ぎた。
 ビキニ姿の方が優しいくらいだ。

 ここはカロテンの国――否、カロテンの国だった。
 今やオウガ・オリジンの「現実改変ユーベルコード」の力により、ハロウィンの国となってしまったけれども…………ここはいつまでも、カロテン豊富な国だ。
 ニンジンやカボチャ、スイートポテト。カキやミカン、マンゴーとかキンカンなどの果物も豊富な国。
 例え、森から飛び出すコスプレ衣装がいようとも、延々と喋るくっっっそ迷惑な南瓜ランタンがいようとも――ここは、うさぎやたぬきが平和に暮らしていたカロテンの国なのだ。


「皆さん、アリスラビリンスでの戦い、オウガ・オリジンを首魁とする迷宮災厄戦のことは記憶に新しいと思うのだけれど、そのオウガ・オリジンの遺した爪痕ってのがまた凄くてね」
 グリモアベースへと入った猟兵たちを迎えるポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)。
 彼女の説明によれば、今回、オウガ・オリジンの「現実改変ユーベルコード」で『ハロウィンの国』に改変された国がいくつも見つかったらしい。
「食材が完備されたキッチン……は、国にとってもありがたいものだけど、喋る南瓜ランタンや、コスプレ衣装の飛び出す不気味な森とかが出来たらしくてね。
 まあそれだけなら暮らしにも害はないのだけど――問題は、国の性質」
 オウガ・オリジンの作った国は悲劇を作るためのものだ。
 国には直接力を与えられた凶悪なオウガたちがいて、住人たちを酷く苦しめているらしい。
「今回皆さんに行っていただきたいのは、元カロテンの国よ。国を支配しているオウガは、魔法のランプとバレエのおっちゃんなんだけど……みなまで言わなくとも、住人たちにとって悲惨だということは――分かるわね?」
 分かるような、分からないような。

「この国のボスであるおっちゃんは、たくさんの魔法のランプを従えて毎日楽しくハロウィン的に過ごしているわ。まずは、めざわりな魔法のランプを倒していきましょう。
 彼らは森から飛び出してくる「コスプレ衣装」でパワーアップしていて、その力を利用して襲いかかってくるわ。だから、こちらも森から飛び出してきたコスプレ衣装を身につけてパワーアップして対抗よ!」
「えっ、それは強制?」
「いえ、強制じゃないけど、普通に服が襲ってくるからその時は避けながら戦ってね」
 本当やイヤなんだけど、勝つためには仕方ない――そう覚悟を決める猟兵たちもいる。

「コスプレ衣装のマッチョ……じゃなかった魔法のランプを倒してしまえば、自然とバレエのおっちゃんも出てくるわ。
 ハロウィンの国では、国の法則によってほぼ無敵状態のおっちゃんなんだけど、倒す方法が一つだけあるの」
 それは、美味しい料理を食べさせること。
「皆さんにはおっちゃんの苛烈な攻撃に耐えながら、そこら中にある食材豊富なキッチンで料理を作っておっちゃんに食べさせてね」
 美味しくなくても、気持ちがこもっていれば大丈夫! 裏を返せば殺意であれ何であれ「気持ち」だ!
「完成すれば、国の法則によっておっちゃんは抵抗できずに料理を食べ始めるからね。皆さんの料理でたくさん食べさせて倒していきましょう」
 ある意味、オウガにとってもオニチクな国となる、ハロウィンの国。
 ――まあ、うん、ガンバッテコー。
 猟兵たちはちょっぴり虚ろな目で、アリスラビリンスへと出発するのであった。


ねこあじ
 とってもハロウィンらしいカオスシナリオ(たぶん)へようこそ。
 ねこあじです、今回はよろしくお願いします。

 今回の【Q】、ハロウィンシナリオは2章構成となっています。
 集団戦とボス戦ですね。
 10/31までに成功したシナリオの本数に応じて、ハロウィンパーティ当日、そしてやがて始まるであろう「アリスラビリンスでの猟書家戦」に、何らかの影響があるかもしれません。とのことです。

●第1章
 基本的に、飛んでくるコスプレ衣装はランダムです。
 えっちなのは無いですが、良い具合に色っぽいくらいまではあるかもしれません。
 MSが頑張るところですが、うちの子にはちょっと……ってなったら本当にごめんなさい。
 魔法のランプとの戦闘は普通にやっていきます。オウガの絵面が酷くなっているかもしれませんが……。

●第2章
 バレエのおっちゃんとの戦いです。ムキムキ無敵です。
 ですが、彼、とても真面目なオウガなので、真面目にハロウィンの国で「悲劇」を作る活動をしています。
 日夜、頑張るおっちゃんのために気持ちのこもった料理を作ってあげてください。とても褒めてくれると思います。
 料理を食べさせ続けて完全に眠らせれば、無敵状態は解除され、一撃で倒せるようになります。なので、基本的なプレイングは「料理を作る」か「攻撃を耐え忍ぶ」ものとなります。ぷらす何かやりたければイロイロ。

 以上です。
 きょうあくなオウガの撃破、がんばってください。
 楽しいプレイングお待ちしております。
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第1章 集団戦 『魔法のランプ』

POW   :    蒼の魔法
【魔法のランプ】から、【天候】と【弓】の術を操る悪魔「【蒼穹の魔人】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。
SPD   :    翠の魔法
【魔法のランプ】から、【自然】と【成長】の術を操る悪魔「【翠苔の精霊】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。
WIZ   :    緋の魔法
【魔法のランプ】から、【獄炎】と【剣】の術を操る悪魔「【緋衣の騎士】」を召喚する。ただし命令に従わせるには、強さに応じた交渉が必要。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御魂・神治
えっ、着るんか?この服?えっ、コップレ?
ワイなぁ...重火器扱う都合でこう見えて上半身ゴツいんや
パッツンパッツンやて絶対...せめてカッコいいタキシードとか
天将『何を着ても悲惨な結果になると思いますがね』

このまま戦うんかい、あーはずかし...
とりあえず邪魔なランプを蹴散らせばええんやな
森羅と天地で本体のランプを集中的に攻撃(乱れ撃ち・範囲攻撃)
近い奴は叢雲でぶん殴る
攻撃はオーラ防御で対処
魔人の相手はランプ壊してからや
せやないと何体も出てきて困るやろ
呼ばれたまま残った魔人は【深淵】を集団の上空に撃って
生成した暗黒球へ吸い込んで纏めてオジャンや


鵜飼・章
僕は鵜飼章
生きとし生けるもの大体すべて『かわいい』で片付ける男…
何を着て生きるかなんて人の自由さ
魔神がメイド服を着たっていいじゃない
かわいいよ…(ほめて攻撃を緩和する作戦)

僕の服趣味で着てると思うだろう
実はほぼ人からの貰い物だ
皆が喜んでくれるなら何でも着るよ
ダサセーターからヒラヒラまで概ね全部似合う
そう、個性がないから…

UC【ダモクレスの剣】で飛んできた衣装に合わせた武器を作り【早業】で攻撃
恥ずかしさや狂気には耐性があるし何でも平気だ
苔とかも闇くんに食べさせる

感じるよ
きみの『コスプレ楽しい』って気持ち…
だが僕は没個性を極めたプロのコスプレ人間
アマチュアには負けられないよね
衣装と一体化して戦うよ


グァーネッツォ・リトゥルスムィス
困ってる住人がいるのに自分らだけで楽しむなんて酷いぞ
カロテンの国もうさぎもたぬきも皆助けないとな!

普段からビキニアーマー着てるからどんな衣装も平気だ
コミカルやホラー含めてどんな衣装が飛んできても真っ先に着替えるぜ!
……でもさすがに着替える姿は見せられないからUCで召喚した、
オレが着る衣装と同じ姿の大地の巨人の影でするぞ

それにただ大地の巨人を召喚した訳じゃない、
蒼穹の魔人からの矢避け、更に雨避け風避け日差し避け雪避け避雷針と
どんな天候にも負ける気はしないぞ!
ランプ達が魔人に追加の交渉や命令してる隙をついて
コスプレ衣装に沿った演技しながら確保撃破だ
悪いランプを倒せてコスプレも楽しい、一石二鳥だぜ♪



 コスプレ衣装が飛び出してくる森は鬱蒼とした緑の匂い――ではなく、フロ~ラルな香りに満ちていた。
『ら・ら・ラ~♪ 素敵なコスプレ衣装でハロウィン舞踏会でも開きましょうか』
 魔法のランプたちが自身の呼び出した悪魔に華麗な衣装を着せて、踊っている。
 あちこちにかぼちゃのランタンが飾られている森の会場。
 強烈なオウガに振り回されているアリスラビリンスの住人たちの疲弊している様子に、グァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)はその優しき心を痛めた。
「困ってる住人がいるのに自分らだけで楽しむなんて酷いぞ――カロテンの国もうさぎもたぬきも皆助けないとな!」
「やるなら、皆が楽しめる――そんなハロウィンが良いよね」
 穏やかに言うのは鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)。
(「みんなヒラヒラキラキラしているなあ」)
 と、魔人たちの衣装に目をやって一人うんうんと頷く。さしずめ彼ら――いや、彼女? ――まあ彼にしておこう――はドレス探しへと行き始めた様子。
「ああもゴツいのにドレスとか着れるんやろか……いや奴らの着こなし謎過ぎん?」
「大丈夫だよ。デコルテの開いた服があるだろう?」
「デコルテ?」
 御魂・神治(除霊(物理)・f28925)の若干怯えたような気がしなくもない声に、章は首から胸周りへ指を舞わせ真剣に説明をする。内容はマッチョでも大丈夫なドレスの着こなし術であったが。
 そうして神治の片腕を、勇気づけるように叩いた。
「きっと似合うよ!」
「――いやや」
 お前は何を言ってるんだという目で章を見る神治。
「よし。オレはどんな衣装もどんとこいだけど、神治の着たいドレスが決まったところで、早速飛んでくる衣装を探しに行こう!」
「決まってへん。決まってへんよ!?」
 わーいと駆けだしたグァーネッツォの背に、神治のツッコミが追いかける。
『何を着ても悲惨な結果になると思いますがね……』
「君もなかなか言うね」
 神治の人工式神・天将の呟きに、章は苦笑めいた声を掛けるのだった。

 森から飛び出てくるコスプレ衣装は、うさぎやたぬきの住人たちへ「私を着て!」とばかりに覆いかぶさり攫っていく。
「わー、待った待ったちょっと待った~!」
 衣装に包まれ誘拐されそうになっていたたぬきを、グァーネッツォは庇うように抱っこする。
 その視線は飛んでいった衣装の向こうにいる魔法のランプへと向けられていた。
「嫌がっているじゃないか!」
『ハァロウィン舞踏ぉぉぅ会にはたくさんの賓客がつきものでしょう!?』
 何を言っているの!? と魔法のランプが声高にグァーネッツォへ言い返す。
『あなた!! ちょっといい!?』
「な、なんだ!?」
『何なのその衣装! 可愛いじゃないの!!』
 襲ってきたコスプレ衣装を巨人の影で着替えたグァーネッツォ。
 膝丈のフリルたっぷりのドレスはそれぞれの裾に金彩が施される、鮮やかな赤。同色の胴着に躍動感ある金の刺繍はまるで燃え盛る炎のように。
 金の髪には小さな赤薔薇を使ったカチューシャ。
「に、似合うかしら?」
 ちょっと言葉遣いに気を使ってみれば可憐な異国の令嬢となった。
「よく似合っているよ。可愛い」
 かわいい、かわいいとにこやかに言うのは章である。
「僕もほら、可愛いだろう?」
 大きな三角帽子に手を添えて、紫とオレンジのボリュームのあるレースパニエをひらひらさせる魔女っ子章。衣装のベースは夜空の煌きが飾る全身黒タイツだが、足首にレースを使ったショートブーツ、羽織りは月夜の灰色雲と、要所要所にふんわりを取り入れたもの。
「このまま戦うんかい……あーはずかし……」
「神治さん――ドレス、襲いに来てくれなかったんだね……残念だったね……」
 ぼやき現れた神治の姿を見た章は「あっ」と気遣うような表情を浮かべ、そっと目を逸らし、慰めるような声で言った。
「パッツンパッツンやけどな、これでええ」
 と神治はどこか引き攣った声で応じた。ドレスが来なくて内心ほっとした。
 ――瞬間、今までに感じたことがない悪寒が彼を襲う。
「な、ななな、なんやこの殺気!」
 ばっと振り向けば、ドレスの開いたデコルテの前できゅっと拳を作っている魔人の姿。
『ヤクザな王子様……(はぁと)』
「!?」
「ああ、なるほど、恋だね」
「余計なこと言うたらあかん……!」
 章の呑気さが恨めしい。
 神治は宮廷風紳士服という煌くビーズがたくさん刺繍された白タキシード姿である。けれども、やっぱり肩回りや背がパッツンパッツンだったため若干崩した。フリルたっぷりの白タイを緩め、水色シャツのボタンを二つ外し、上着は開いた。893な王子様である。
 一体の魔人の呟きに増援としてやってきた魔法のランプたち。
『え!? 王子様!?』
『舞踏会にお招きしなきゃ!』
『禁じられた恋のチャンスかしら』
『『『み~んなかっさらって、盛大なハロウィン舞踏会を開きましょう!!』』』
 野太い声やらキャピっとした声が重なり合って、猟兵たちを襲い始める。
 角材型のハンドガン、天地と森羅を構えると同時に引鉄を弾く。神治の銃弾が本体であるランプを撃ち貫くなか、既に銃口は次敵へと向けられている。
 頑健な神治の射撃はぶれることなく、時に反動を利用するように重心を変えた。
「物語ではヒロインを助けたり、貶めたりな魔女だけれども、たまには踊ってみるのもいいんじゃないかな、お姫様」
 そう言って伸ばされた悪魔の腕を掬うように――そして手を、指先を絡める章。そこには知性ある闇『闇くん』で作られた武器――手袋がはめられていた。
 頭無き悪魔――翠苔の精霊やランプへと囁く。
「何を着て生きるかなんて人の自由さ、悪魔がドレスを着たっていいじゃない――かわいいよ……」
『はわ、こんな私でも……?』
「もちろんさ。食べてしまいたいくらいにね」
 実際、食べるように攻撃する闇くん。感じるよ、と章は相手のごっつい手を握り締めた。
「きみの『コスプレ楽しい』って気持ち……だが僕は没個性を極めたプロのコスプレ人間――アマチュアには負けられないよね」
 翠苔の精霊が侵食され、消失する。
 ゴトリと落ちた魔法のランプは新たな存在を生み出そうとするのだが章に拾われた。
 蓋を開き、中へ闇くんを注ぎ込めばランプは割れて骸の海へと還っていく。

 グァーネッツォが舞えば、自身をトレースさせた同じ衣装のアースジャイアントも舞う。
「さあ、スッテプ&ターン! よ!」
 刹那、敵の放った雷矢の雨が降り注ぎ、避雷針がわりとなったアースジャイアントが轟音を奏でた。
 びりびりと虚空が震え、発生した雷玉が地を駆ける――赤いドレスを翻し、高らかに脚を振り上げたグァーネッツォが大地を踏み鳴らせば、アースジャイアントが雷玉を潰す。
 舞いながら敵の攻撃をいなす彼女の姿は、華麗な闘牛士のよう。
 嵐となれば風避けに、拳を振るい相殺する。
 雨降らば雨避けに、雨乞いのダンスをする一団へと一撃を。
 戦場という名の舞台を整えていくグァーネッツォ。
 対し、ランプ本体へと対処するのは神治だ。
「魔人の相手はランプ壊してからや。せやないと何体も出てきて困るやろ」
『眠り姫は、王子様のちゅーが欲しい!』
 トンでもない殺気を感じ、即座に撃つ。ほんとああいうのが何体も出てこられると困るのだ。神治的に切実に。
 撃てば跳ねる魔法のランプ。今だ滞空するランプへ二発撃ちこめば、ランプは破壊され解き放たれる悪魔たち。
 天将が告げる。
『除霊率、必中』
「そのごっついもん全部ぶっ潰したる」
 彼らの上空に向け陰陽霊弾『深淵』を撃てば、放たれた圧殺暗黒球がぐんと大きくなった。
「纏めてオジャンや」
 神治の言葉通り、相手にしていた魔人や精霊、(姫)騎士たちが吸い込まれていく。
 ばたばたと翻るドレスを押さえながら、グァーネッツォは巨人の手で隠れていた住人たちを庇う。
「あっ、魔法のランプたちが」
「マッチョが消えた!」
 巨人の指の間から暗黒球を見守っていた、たぬきやうさぎの住人たちがぴょんと飛び出した。
「大丈夫か?」
「うん! オウガのハロウィン舞踏会を阻止してくれてありがとう!」
 グァーネッツォの言葉ににっこり笑顔のうさぎ。
「おひめさま!」
 そう呼んだうさぎに、あっと我に返り、フリルたっぷりのドレススカートをつまみ、お辞儀をするグァーネッツォ。
「魔女っ子さんも、893な王子様もありがとう……!」
 微笑む章と同じく笑って応じようとした神治であったが、なんかいきなりがっくりときた。疲労感がはんぱない。
「…………着替えよか」
「え? もうかい? 新たな魔人の恋がくるかもだよ」
 ますます増す疲労感。
 けれどもまだ他の場所にも魔法のランプや、それらを率いるオウガがいる。
「悪いランプを倒せてコスプレも楽しい、一石二鳥だぜ♪」
 グァーネッツォが弾んだ声で言う。
 引き続き、猟兵たちはオウガを狩りに行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杓原・潤
魔法のランプが……コスプレ……?
魔人や精霊が仮装してるのかな……まぁいいや、うるうも負けないぞ!
とりあえずその辺の衣装を着て……
え、こんなの着るの?ちょっと恥ずかしくない?
もっとかわいいのだったら良かったのに……仕方ない、とにかくユーベルコードで鮫を呼ぼう!
剣は鮫の回転のこぎりや歯で受け止めて、炎対策は水の【属性攻撃】だ!
魔法の水を閉じ込めた泡で敵の炎の勢いを削いだり、鮫に水をかけて冷やして上げてもいいかな。
後は【集団戦術】で上手い事鮫達を攻撃・防御・牽制に分けて戦わせるよ!
……もしかしたら鮫に衣装着せたら強くなるかも?
試してみてもいいかもね!



 ウィザードブルームに乗ってふよふよと空を飛ぶ魔女――杓原・潤(人間の鮫魔術士・f28476)の、いかにもハロウィンといった衣装は日常のものだ。
「魔法のランプが……コスプレ……?」
 はて、と考え込む潤。彼女の知る魔法のランプは、うん、ランプだ。
「魔人や精霊が仮装してるのかな……まぁいいや、うるうも負けないぞ!」
 そう奮起すれば眼下には飛来物――ばたばたと裾をはためかせて向かってくるコスプレ衣装だ。
「来たね! さっそく捕まえて――わぷっ」
 視界を覆うように広がった布地の突進を受けた潤。ウィザードブルームは失速した。そのままゆっくりと森の中へと降りていく。
「あっ、アリス? ううん、猟兵さんだ。こんにちは、猟兵さん」
「こんにちは……? ってたぬきちゃんどうしたの!?」
「ええーと、誘拐されてひっかかっちゃった」
 降り立った場所で声を掛けられ、ふと見れば木の枝にピンクのリボンをつけたたぬきが引っ掛かっていた。その体は衣服に包まれていて巾着状となっている。
「ハロウィンは毎日楽しくていいんだけど、こうやっていきなりさらわれちゃうの、参っちゃう」
 たぬきを助けてやり、巾着状の衣装を解いてやれば、誘拐犯なコスプレ衣装は逃げるように飛んでいった。
「この国のオウガたちを倒せば、少しはコスプレ衣装たちも大人しくなるかな?」
「たぶん?」
 カロテンの国は、これからもハロウィンの国のままかもしれない。今は活発化している衣装たちが少しは大人しくなるというのなら、やっぱりオウガは倒すべき。
「じゃ、うるうが倒してくるね! 負けないように、今捕まえたコスプレ衣装を着ようと思ってるんだけど」
「お手伝いするね」
 たぬきの申し出に、うんっと頷く潤。そして捕まえたコスプレ衣装を改めて確認してみれば、
「え、こんなの着るの? ちょっと恥ずかしくない?」
「シャラシャラ、シェルの飾りが綺麗ね。人魚姫かな?」
 お手伝いされながら着てみたそれは、人魚姫モチーフの踊り子衣装だった。オーロラの光を放つ布地は胸元を隠し、くわえてドロワーズ。
 帯には色とりどりの腰紐が編まれて、そこから垂れた数多の飾りがシャラシャラと音を立てた。腕輪と、銀髪に映える小さな王女の金冠を装着してみる。
「ちょっと大人っぽい? う~ん、もっとかわいいのだったら良かったのに……仕方ない、これで頑張ってくるね」
「がんばって!」
 たぬきに見送られて魔法のランプを探しにいく潤。
『ホホホホ』
『まあ、そんな噂が?』
 野太いような、キャルンとしたような声が聞こえてきた。
 茂みから覗けばそこはランプの魔法が椅子に置かれ、ドレスを着た魔人たちのハロウィンお茶会が開かれていた。
「?」
「!」
 懸命に給仕をしているアリスラビリンス住人のフェレットたちに目配せして、ひっそりと避難させる。
 星形のウィッチーズミーティアに指先で触れれば流星の魔力が駆けた――同時に広がる鮫魔術。
『はっ!? 乱入者!?』
『お茶会をぶち壊すのは誰!?』
 召喚した七十一体の回転ノコギリを生やした鮫たちが泳ぎ回る。
 潤とお揃いの踊り子の装飾を身に着けた鮫たちはあっという間にお茶会の会場をズタズタにして、魔法のランプたちは怒りの声を上げた。
『緋衣の騎士! やっちゃって!!』
 魔人のドレスをズタズタにされ、かわりに緋の魔法を繰り騎士を発露させるランプたち。
「あは、ドレスの魔法は解けたみたい?」
 振るわれる敵剣を噛み受け止めた鮫は、容易くその刃を折った。
 敵騎士の纏う焔は、バブルワンドを振り水魔法を当てた潤の攻撃で掻き消えた。
『こ、こうなったら新しいコスプレ衣装を……!』
「だめだめ、行かせないよっ。鮫たち、かみ砕いて!」
 ガシャンッと跳ねて逃げようとする魔法のランプたちを数多の鮫がくわえ、次々と噛み砕く。
 あっという間にオウガたちを蹴散らし、倒してしまった潤へフェレットたちが喜びの声を上げて駆け寄ってくる。
「わあ、踊り子さん、つよいんだね!」
「ありがとう!」
「あいつら、毎日ハロウィンパーティーを開いてたんだ」
「ぼくたちもパーティーしたかったのにね!」
「踊り子さん、お礼させてよ、何か食べたいものってある?」
 サメックス断章を閉じ、サメたちを送還した潤は、フェレットたちに「そうだなぁ」と呟きの声。
「戦いが終わったら、クレープいっぱいのお茶会に招いてよ。あとうるうは踊り子じゃなくて魔法使いなの」
 これだけは譲れない、と潤。
 小さな金冠をフェレットの首に装着させて。
 潤はいつもの三角帽子を被ってにっこりと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・イオア
魔法のランプか~。
一度使ってみたいけど出てくるのが悪魔なんだね……。

「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、舞い踊れ!」
貴方の炎とシホの炎、どっちが強いか勝負だ!
全力魔法と破魔に浄化もプラスして収束させた炎を叩き込むよ
命令するのに交渉が必要なの?
弾幕をはったり結界を使ったりして声をかき消したら隙ができないかな?

連携アドリブ歓迎!



 飛んできたコスプレ衣装はアルダワ魔法学園のようなツーピースのドレス。
 白手袋にミニハットと、お堅い感じのコスプレ衣装であったが、シホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)の輝きを隠すことは出来なかった。
 衣服をすり抜けた光粒たちは時に虹を作り出す。
「魔法のランプか~。一度使ってみたいけど出てくるのが悪魔なんだね……」
 そう呟きながらオウガを探して歩いていると――、
『ハロウィンパレードには凛々しい衣装も必要よね!』
『ここは姫騎士なんてどうかしら?』
 三体の魔法のランプ。
 ドレス姿の魔人を送還し騎士を召喚すれば、ドレスを纏う甲冑姿に。
『素敵!』
 きゃあきゃあと騒ぐ魔法のランプたちの姿。
(「見つけた!」)
「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、舞い踊れ!」
 祈り、解放されたものはシホの愛の力。比例し優雅に踊り舞う炎が、オウガを襲う。
『何者!?』
 シホの炎を飲みこむように獄炎が撒かれ、一気に戦場は焔と化した。
「貴方の炎とシホの炎、どっちが強いか勝負だ!」
 振るわれた敵剣へ、炎盾を作り防ぐシホ。対抗のため全力で叩きこむのは破魔と浄化の力。シホの溢れる力にルミナス・リングが顕現し、ついには敵の剣を弾いた。
『姫騎士! この女を倒したら、もっともっと良い衣装を探しに行きましょう!』
『あなたのためだけの、ふさわしいものをね!』
「命令するのに交渉が必要なの? ――だったら」
 宝石剣エリクシアを振らば、その斬線を起点に輝石が放たれた。
「結界術!」
 わんっ! と水の中であるかのように圧がかかる。音を通さない場を生み出し、声を遮断された魔法のランプは怯んだ。
 その隙を炎で焼き、剣で刈り取るシホ。
 確実に撃破し、オウガ三体を骸の海へと還していく。

 倒した魔法のランプが地面に転がった。
 ランプをそっと拾い上げ、擦ってみるシホ。けれども『魔人』は出ることなく――、
「いつか本物の魔法のランプ、使ってみたいなぁ」
 その時はどんなお願いごとをしようかな。
 そんなことを思い、夢を見る。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニオ・リュードベリ
アドリブ歓迎コスプレNGなし

怖い!!
コスプレ衣装のマッチョがいっぱい!!
どうしてこんなことに……
オリジンだってこんなことを望んでいたのかな……

と、とにかくオウガは倒さなきゃ
とりあえず受け取った衣装には素直に着替えよう
大丈夫よ、あたしは強い子だもの
どんな衣装だって着こなしてみせる……!

ランプから強い魔人が出てくるなら、あたしもデモゴルゴンを呼んじゃうんだから
デモゴルゴンは影で出来た巨大な魔人
殴る蹴るで暴れるよ
もし仮にコスプレ衣装を着せられたとしても気にせずにね……!

地獄絵図の中、あたしもアリスランスで敵と戦おう
似合ってない衣装ごと【串刺し】でボッコボコ!
どうせなら似合うの着てよね!!



 ハロウィンのガーランドや、お喋りをするカボチャのランタンがあちこちに飾られているハロウィンの国。
 ハロウィンツリーを「ほわぁ」と見上げ、周囲を見回しながら歩き進むアリス――ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)に、いつの間にか住人の一人であるフェレットがお供についていた。
「アリス、アリス、あっちから楽しそうなお喋りが聞こえるわ」
「ハロウィンのお茶会とかしているのかな?」
 楽しそうな声に導かれて辿り着いた先は――光景を目の当たりにしたニオは「ひゃっ!」と咄嗟に茂みへと隠れた。
「わぁ……」
 ガサガサと茂みから顔を出したフェレットが、引いた声を零して戻ってくる。
 確かにそこはハロウィンのお茶会会場であった。ふよふよとしたお化けの飾りや案山子の頭部に設置されたカボチャランタンのお喋り。オレンジ色の光が場を照らし、その色に馴染むカボチャのお菓子の香り、フレーバーティの香り。
『ホホホホ』
『ウフフフ』
 席に着くのは魔法のランプで、そこから出ている悪魔たち――甲冑姿の姫騎士、精霊も魔人もデコルテの開いたふりふりなドレスを着て、さしずめお人形遊びみたいなものなのだろう。ランプたちが歓談している。
「ふぇ、フェレットさん」
「あ、あ、アリス」
 ひしっと抱き合うニオとフェレット。その時、飛んできたコスプレ衣装がさりげなくひしっと二人に引っ付いた。
「怖い!! コスプレ衣装のマッチョがいっぱい!! ……っどうしてこんなことに……オリジンだってこんなことを望んでいたのかな……」
 いや望んではいなかったと思う……アリス・オリジンも頭を抱えそうなマッチョドレスに溢れた光景である。
「アリス」
「う、うん。……と、とにかくオウガは倒さなきゃ」
 そうと決まれば、まずは敵に対抗するために衣装を着なければ。ひしっと二人にしがみつくコスプレ衣装もまたカタカタと震えているような?
「酷い目にあったんだね」
 よしよしと服を撫でるフェレット。ニオは勇気づけるように、服の肩部分を掴んだ。
「ね、あなたも力を貸してくれる? ――大丈夫よ、あたしは強い子だもの」
 安心して、と衣装を広げてにっこりと。
「どんな衣装だって着こなしてみせる……!」

「カロテンの国、返してもらうよ……っ!」
 勇ましく切り込んでいくニオ。その姿はまさしく姫騎士のものであった。銀のサークレットには赤薔薇が一輪。靡く紫紺のリボン。
 胸当てには同じく銀のジャック・オー・ランタンの型が施され、その口と目からは不気味な紫の光が放たれていた。
『きゃあハロウィンお茶会を邪魔するの!?』
『アリス!?』
 びゅおっと吹き荒れる突風がニオを襲う。甲冑の下は、ばたばたとはためく、膝丈のフリルたっぷりのオレンジ色のドレスだ。縁には金糸が編みこまれていて、風ではためけば金粒が煌いた。
 同じ紫の編みこみブーツで踏ん張るニオが白銀の槍を掲げる。
「入り口は頭、出口は影。出てきて、デモゴルゴン!」
 ニオの影がずおっと膨らみ質量を持つ。
 影から出てきた片腕を地に着け、伸びる――振り被った拳が魔人を殴り飛ばした。
『きゃあなんてこと!』
『姫騎士のランプよ、投げておしまいなさい!』
「!?」
 給仕をしていたきつねを掴み、ニオへと投げてくる緋衣の姫騎士。手を広げなるべく衝撃を与えないように、きつねを抱きとめるニオ。
「なんてことを……!」
 敵の炎に触れてしまったのだろう、ふわふわなきつねの毛は焦げていた。
「こっちだよ、きつねこ!」
 フェレットがきつねを保護し、駆けて行く。獄炎が場を支配する。
 その間にもデモゴルゴンはその巨躯を存分に使って敵陣を攻撃していた。
「あなたの相手はあたしよ!」
 アリスランスを振るい、敵姫騎士へと突きからのなぎ払い。強く踏みこんだニオはそのまま石突で敵を穿った。
 敵の甲冑が砕け、中から現れたのはシフォンピンクのドレス。うぐ……とニオは息を呑んだ。
「どうせなら似合うの着てよね!!」
 翻した長槍を振り下ろして魔法のランプを割り砕けば、ランプの悪魔は掻き消えた。
 ドン! と、大地が震えてデモゴルゴンが拳を撃ったのが分かる。重なる攻撃に耐久性も落ちたのか、その一撃でランプたちは次々と割れていった。
『ああぁぁぁハロウィン……! まだ聖なる日は、きて、いない、の、に……!』
 魔法のランプが叫び、消失していく。
「……わ、お、終わった?」
 隠れていたアリスラビリンスたちの住人が出てきて、きょろきょろと。
 魔法のランプたちがいなくなったと分かれば、わあっと歓声を上げた。
「ありがとう、アリス!」
「強いんだね、アリス、影の悪魔さんも!」
「みんなが無事でよかったね。デモゴルゴンもおつかれさま――って」
 労いながら振り向いたニオの視界にはピンクのリボンをつけたデモゴルゴン。ラッピングされたみたいにぐるぐると。
 ニオは、デモゴルゴンにじっと見られている気がした。
「あ、ええと、だいじょうぶ、デモゴルゴンはかわいいから……!」
 そんなフォローを入れて、デモゴルゴンを自身の影へと帰らせる。
「アリスはナイト様なんだね……!」
「ハロウィンのドレスぴったりだね」
「そ、そう? ちゃんと着こなせてるかな?」
 大丈夫、と住人が甲冑を脱ぐお手伝い。そうして銀のファーがついたマントを羽織らせた。
「さあ、優しい『女王様』、お茶会の会場はちょっとめちゃくちゃになったけれど、お茶を一杯どうですか?」
 戦いの間に仲間の手当てを受けたのだろう。きつねが白のテーブルクロスを地面に広げて、セッティングをしてくれる。カップに注がれたのは芳しいローズティー。
「はは、――それでは一杯、頂こうかしら?」
 出来るだけ優雅に聞こえるような口調で答え、白の舞台に座れば、鮮やかなオレンジの花が咲き綻ぶように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

南雲・海莉
仮装は義兄さん見つけてからってずっと決めてたのにね
でも人命最優先だもの
いいわ、来なさい!
(受け入れたビクトリアンメイド服の上から純白のチェスターコート
その手に精緻なピアス細工と刻印の、人の背丈もあるモートスプーン)
これ……このスプーン
(握りしめる
義兄が残したメモにある仮装アイデアと同じ)

今ならどんな視覚の暴力とも戦える
義兄さんの想いと一緒だもの

(弓矢はUC宿した右手の刀で断ち切り
雨風はモートスプーンを素早く回転させて弾き飛ばす
モートスプーンを地面に突き立てて棒高跳びの要領で体を跳ね上げ
蒼穹を踏みつけて更に勢いをつけ、頭上より速度と重さを乗せた渾身の突きを)
あんたにはラビリンスより退場願うわっ!



 南雲・海莉(コーリングユウ・f00345)が降り立ったアリスラビリンス、カロテンの国は異様な空気に包まれていた。
 あちこちに灯るカボチャランタン、わいわいとした熱気はあれどそれは楽しいものではなく強制されたもの。
 森の方から飛んでくるコスプレ衣装は、小さな住人を包み攫っていく。きっとオウガが人を集めているのだ。どこからか聴こえる笛の音に操られ、住人たちがハロウィンパレードを作っていく。
 この力の根源であるオウガとハロウィンの国、対抗するには仮装しなければ――。
(「仮装は義兄さんを見つけてからって、ずっと決めてたのにね」)
 どこか寂しく感じるこの想い。海莉はふるりと頭を振った。
(「でも人命最優先だもの」)
「――いいわ、来なさい!」
 森を見据えて放った一言に、ざんっ! と茂みから飛び出してくるコスプレ衣装が一着。
 瞑るでもなく、どこか覚悟した瞳で海莉は真っ直ぐに衣装を見つめ、受け入れた。

「猟兵さん、これでいい?」
 纏めた髪にピンを差し込み尋ねるうさの子。
「ええ、いいわ。――うん、しっかりと纏まっているわね」
 ありがとう、と塀に立つうさの子へ礼を言う海莉。クラシカルなビクトリアンメイド服で綺麗なお辞儀を披露した。
 そして純白のチェスターコートを羽織る――何故か一緒にあったそれを無意識に――そして気付くのだ。手に精緻なピアス細工と刻印の、人の背丈もあるモートスプーンがあることに。
「え」
 ぱちぱちと目を瞬かせるその表情はどこか幼い。刻印をなぞり、指先から記憶を辿る。オートクチュールであるモートスプーンはそのピアス細工も一本一本異なる。では……、
「これ……このスプーン……」
 は、と息を呑み、握りしめた。
(「これは……義兄が残したメモにある、仮装アイデアと同じもの――だわ……」)
 どうして、とか、何故ここに、とか思考がぐるぐると廻った。
「猟兵さん?」
 うさの子の声にハッと我に返る。
「う、ううん、何でもないわ。それじゃあ行ってくるわね」
 手を振って、迷いを振り切るように海莉は歩き出した。

『さあさ、楽しく歌って踊りましょう♪』
 ハロウィンツリーの周囲でくるくる踊る魔法のランプ――ではなく、ヒラヒラな民族ワンピースを着た悪魔は、一人のうさぎ住人を抱えダンスの練習をしているようだ。エプロンドレスにされた刺繍はカボチャやコウモリ、蜘蛛の巣といったハロウィンカラーのもの。デコルテの大きく開いたワンピースは、踊れば弾む胸筋が確りと見えていた。
「「「…………」」」
『ちょぉぉっと音楽! 止まっているわよ! ちゃんとわたしの華麗なダンスに付き合いなさい! 本番のハロウィンは刻一刻と迫っているのよ!』
「は、はいぃぃ」
 会場の隅っこで屍(?)となっていたアリスラビリンスの住人へ、野太い声で怒鳴りつける魔法のランプ。
 ちなみに先程の沈黙時は海莉も加わっていたりするのだが、うん、と彼女は気を取り直すように一つ頷いた。
「今ならどんな視覚の暴力とも戦える――義兄さんの想いと一緒だもの」
 まさかお義兄さんも義妹がこんなある意味苛烈な戦いの場に身を置いているとは、思いもしなかったことだろう。
「ハロウィンは皆で楽しむもの、あなたたちだけ楽しむなんて、そんな酷い所業を許すわけにはいかないわ」
『何者!? ――いえ、邪魔をする者は消すのみね!』
 シフォンイエローのドレスを着た蒼穹の魔人が剛腕を振るえば、一気に周囲の天候が変化した。強い雨風が吹き付け、会場をずたずたにしていく。
「ひやあ~」
「私の後ろに! そのまま避難して頂戴」
 飛ばされそうな住人たちの前に立った海莉はモートスプーンを素早く回転させて、雨風を弾き飛ばす。刻印が流れ綺麗な円模様を描いた。
 矢が降り始める頃には、住人の退避もほぼ終わっており、体を屈め駆ける海莉。蹴るように駆ければメイド服の裾が舞い、チェスターコートは厚みのある翻り。
 モートスプーンを思いっきり地面に突き立てて起こる反動に乗った。
 棒高跳びの要領で体を跳ね上げ捻れば、広がったスカートが蕾のように。
「ていっ!」
 蒼穹の魔人を踏みつければ、スカートは花弁が開くように広がった。その際に振り被った両腕を思いっきり振り下ろす。
 モートスプーンによる渾身の突きが頭無き魔人の胴へとめりこんだ。
「あんたにはアリスラビリンスより退場願うわっ!」
 魔人の首元から胴を穿った攻撃は、真下のランプにまで伝わり、ばりんッと音を立て割り砕けた。
『お、おのれ、ハロウィンは目の前だったというのに……ッ』
 ぐぐぐっと魔人の体を震わせたのち動かなくなった魔法のランプが骸の海へと還っていく。
「わあ、ありがとうメイドな猟兵さん……!」
「これでキッツイハロウィンからおさらばだよ!」
「カッコイイ~。戦うメイドさん、素敵だねぇ」
 ぱたぱたと、海莉の元へと駆け寄ってくる住人たち。
 海莉はひとつ頷き、微笑む。
「とりあえず、この場の皆が助かってよかったわ。――まだ凶悪(視界的に)なオウガはいるけども、ね」
「あ、あいつか~」
 ちょっと遠い目になる住人たち。分かるわ、と海莉も遠い目になってしまう。
「えと、メイドさん、美味しいもの食べて英気を養おうよ」
「僕らもハロウィンパーティ―の用意をしていた途中だったんだ、そしたらあのオウガがダンスの練習始めちゃってさ……」
 愚痴りながらもお茶を、お菓子を、と海莉をもてなそうとする彼らに、再び微笑む。
「そうね、頂こうかしら」
 そう言って用意された席に座って。
 フレーバーティーはおまかせで。
 濡れてしまったテーブルクロスを取り替えて、たくさんの種類のクッキーを並べていく。
「さあ、召し上がれ。ちょっとしたお茶会だね」
「ふふ、みんなもおつかれさま」
 にっこりと微笑み合う住人たちと海莉。
 ほんの一時の癒しの時間を共有するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
【かんさつにっき】だよー。

へー、かろてんの国。
ニンジン……
コダちゃん、ピーマンはいない、ケド?

魔法のランプと、こすぷれ。
こすぷれって、アレだよね、メイド服が飛んでくるヤツ!
カワイく強くなれるかなあー♪(ワクワク)

ランプさんが悪魔さんを呼んでるねー?
(コスプレ済みできゃっきゃとハロウィン行列♪)
七面鳥さんとかも呼べるのー? 無理?

それじゃ、ランプさんにはお帰りいただかなきゃだね♪
衣装に合わせ、如意な棒と綾帯を構えてっと。
先頭に立って、行っきまーす♪

ふわり踏み込み、舞うように。
楽しく踊ろ♪
アンちゃんも、コダちゃんも、みんなもね♪

せっかくだから、たまこも呼んでみよー。
メカたま、カモーン♪
(コケコケ)


木元・杏
【かんさつにっき】
今、魔法のマッチョはどのような惨事に…(ごくり)
待っててたぬさんにうささん
今、助けにいく…!

あ、おっさんいた
小太刀、先陣はまかせた(ずいっと前に小太刀差し出し)

小太刀変身…どんな姿?(覗き込み)
よし、かわいい!(杏目線)
ではわたしも、さあ、来い!

かわいいを期待して仮装待機
かわいければ嬉しくてパワーアップ
ザンネンだと首を傾げてパワーアップ
(仮装はおまかせ)
んむ、カボチャうるさい(灯る陽光でぺちっ)

ところで
何故ゆえこの中で
まつりんが一番かわゆいのか(杏目線)
少し貴方とは話し合わねばならぬ気がする

【華灯の舞】
すっとランプの脳天(蓋)を指差し
白銀の光を撃ち落とす


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

カロテンと言えばニンジン
そしてまっちょなメイド服…
目の前の悪夢に重なるのは
その昔父の部屋で見てしまった秘密のアルバム
忘れたくても忘れられないあの衝撃が今またここに
これは、斬るしかない!

杏の声に任せてと
迷い無く飛び出して
わわ、何か来た!
これは…!?
(仮装はお任せ

(恥かしさに悶えつつ
そこの南瓜、余計な事言わないの!

杏と祭莉んは…
これはこれでアリかも?(ほにゃ
とりあえずスマホでパチリ、ポノに送ろう
メカタマコもこっち向いてー♪

とかやってる場合じゃなかった!
そうだアイツを倒さなきゃ
見てたら何でかな
諸々恨みが込み上げてきて
冴えわたる剣刃一閃
八つ当たり?
キノセイったらキノセイよ!(誤魔化し



『灰色のツリーに、真っ黒はふわふわな綿をのせて♪』
『お喋りなランタン、真っ黒な蝙蝠、そうだハロウィンドレスを着たうさぎさんも飾っちゃいましょう~』
「ギィィぃぃ」
「……」
 紐で括られたコウモリたんがバタバタと懸命に羽根を動かして、紫色の魔女っ子ドレスを着たうーさが吊るされた。遠い目をしている。
 魔法のランプの悪魔が行なうツリーの飾りつけに、周囲の住人たちは震えあがっていた。
 デコルテの開いたマッチョ悪魔のシフォンドレスもさることながら、その所業はいかにもオウガ。
「へー、ここがかろてんの国……の、はろうぃんつりー?」
 茂みに身を潜める【かんさつにっき】、木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)は飾りつけ途中のツリーを見上げた。
 そんな祭莉の隣で「うぐぐ」と唸り声を放つのは鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)だ。
「カロテンと言えばニンジン……そしてまっちょなメイド服……」
「コダちゃん、ピーマンはいない、ケド?」
 その唸りはピーマンを前にした時のようなものに似ていて、祭莉は不思議そうに小太刀を見た。頭を抱えている。
 昔々。
 幼い小太刀にとって父の部屋はちょっとした探検が出来る部屋だった。
 引きだしを探って見つけた万年筆や仕事道具で大人ごっこをしたり、世界のことを書いた本を眺めたり。よく分からないものがたくさんあった気がする。
 けれどもある日、小太刀は見つけてしまった。それは秘密のアルバムであった。
 ページを捲れば、ウサミミを付けたメイド(父)や同じ格好をした知り合いのおじさんとか、おば……お姉さんとか、知っている人ばかりのアルバム。
 ――幼い小太刀は動揺するままにアルバムを閉じた。
 そんな幼少時に体験した衝撃が甦り、小太刀はスッと半眼になる。
「これは、斬るしかないわね」
 そんな小太刀の隣で、あんまりな惨状にごくりと息を呑む木元・杏(マスター縁日・f16565)。
(「待っててたぬさんにうささん。そして今攫われてきたらしきミニブタさん、助けにいく……!」)
「ぷぎぃぃぃ」
 コスプレ縄に誘拐されてきたミニブタが悲し気に鳴く。
『ほら見て~ハロウィン亀甲縛り~♪』
『えーやだぁあんなのもあるんだ~』
「ぷぎぃぃぃ」
 新たな犠牲者はハムハムしい縛られ方をされツリーに飾られた。よし、と拳を作った杏は、次に小太刀の背中に手を当てた。
「小太刀、先陣はまかせた」
 ぐいぐい。
「分かったわ、ここは任せて! ――って、わわっ!?」
 背中を押され勢いよく飛び出した小太刀であったがコスプレ衣装の襲撃を受け、ひっくり返って後方の茂みの中へ。次の瞬間にはどこかくぐもった声が放たれる。
『あっ、ちょっと! そんなに引っ付かないで! しつこい! きゃあ服を引っ張るなー!』
「小太刀、引きずりこまれた……? ま、まつりん……?」
 ふるふると震えながら杏が祭莉を探せば、双子の兄はわくわくとした様子でコスプレ衣装を探しに行ってしまったようだ。 
『こすぷれって、アレだよね、メイド服が飛んでくるヤツ! カワイく強くなれるかなあー♪ ……あり? メイドじゃないよ??』
 という明るい声が聞こえてきて、杏は安堵する。
「杏、もーみてよコレ!」
 待っていると憤慨した小太刀が茂みから出てくる――生足が眩しく輝く、くのいち姿だ。袴は無く浅葱色の長い上衣のみで両脚サイドにはしっかりとスリットが入っている。紺の脚絆と、同色の大きなリボンがポイントなポニーテール。
 そして大きな襟巻。
「スポーツパンツはいてるけど、ちょっとスリット深くない?」
 あわあわと顔を赤らめる小太刀。
 たんっと、杏は地面を手で打った。
「よし、かわいい! わたしも行こう、さあ、来い!」
 バッと立ちあがった杏が飛び出せば、襲撃してくるコスプレ衣装。どすっと腹に一発喰らい、茂みへと放られる。
『……ふはっ。くすぐったい……え、これどうやって着る? すぅすぅする』
「あっコダちゃん、凶悪ニンジャー?」
「どう見ても、可愛いくのいちでしょーがっ! ま、祭莉んは――可愛いわね」
 合流した祭莉の感想に言い返したあと、少年の姿を見た小太刀はちょっと仰け反った。顎に手を当てて呟けば悪役令嬢っぽい。
 にへーっと笑顔になった祭莉は、チアガール姿だ。清楚な白のウェアにヒラヒラ舞うスカート。スポーティなシューズは向日葵色。
 ふわふわな髪には大きな赤いリボンが揺れて、同じ色のボンボンを持って軽やかステップ。
「まつりん、小太刀、着れた」
 次に現れた杏はアラビアンナイト風の踊り子さん衣装だ。虹色のビーズを縫い付けたボディウェアとハーレムパンツは桃色。
 ベールと、コインやフリンジのついたヒップスカーフは白から赤へと変わるグラデーションで、動けばシャラシャラと音が鳴った。髪はツインテールに。
「かわいい?」
「うん、かわいい! えっと、ちょっと待って写真――……ってやってる場合じゃなかった! そうだ、はやくアイツらを倒さなきゃ」
 スマートフォンを取り出そうとした小太刀は我に返る。
「ランプさんが新しく悪魔さんを呼んでるねー? なんかごっついのきたー」
 皆ごっついので、祭莉の言うごっついのは悪魔である緋衣の騎士のことだろう。姫騎士風になってるけど。

 そうこうしているうちにハロウィンツリーは完成して、テンポの良い音楽が流れ始めた。
 ツリーの周りを魔法のランプがカシャンカシャンと跳び回れば、ドレスを着た悪魔たちも舞うように踊り始める。
「行っきまーす♪」
 ボンボンを腰に携えて、バトンのように如意な棒をくるくると回す祭莉。ステップアンドターンとすれば天地の綾帯がくるりと回ってバシンと悪魔に一撃。
『!?!? ちょっと気を付けてよね!』
 と、声を出すのは魔法のランプだ。
「あっ、ごめーん! でもほら、そっちもステップ合わせてよ~。チェンジちぇんじ!」
 そう言った祭莉は跳ね回っているランプを拾い上げ、すりすりと擦る。
「ねー七面鳥さんとかも呼べるのー?」
『アッちょっと擦らないで!! 七面鳥なんて呼べるわけないでしょう! そこのブタハムで我慢なさい!』
「ぷぎゃぁぁぁ」
 涙目で暴れるハム縛りのミニブタを祭莉が撫でる。
「よしよしごめんね、怖かったね。こわ~いやつらは、こうするね!」
 と如意な棒で叩き割った。
 一方、杏は。
「ん、可愛く踊る。しゃらららら……」
 独特なリズム感を持つ杏は、遅れたり速かったりなテンポで懸命に踊っていたり。
『~♪ ~♪ ~~……? ~♪』
 歌うカボチャランプであったが、杏に釣られて怪しいリズムになっていく。
『ちょいと踊り子さん、真面目に踊ってくださいな!」
「む。わたし、まじめ!」
 入る苦情に抗議し、灯る陽光でぺちぺちする杏。
「踊り得意だもん。躍らせるのも、得意」
 ぺちぺち、ぺいっと指差せば白銀の光が魔法のランプの脳天に落ちた。
『!?!?』
 蓋が虚空を飛び、さらには割れたランプから放たれた緋衣の騎士が空を飛び、桜の花弁を思わせる残滓を纏いながら消えていく。
 その頃、小太刀はマイムマイムするマッチョに囲まれていた。彼らのシフォンドレスは淡いパステルカラーでお揃いだ。
「……何でかな……諸々恨みが込み上げてきた」
 野太い声で歌う彼らの震える胸筋を間近に見て突然の反抗期だろうか。
 しゃがんだ格好から鯉口を切り、弾く。
「剣刃一閃!」
 抜刀から放たれた斬撃はそのまま刃を返しての二撃目へ。
『キャァァァ!』
『な、なんてことを!』
 雨矢が降り注ぐも、素早い斬撃でことごとく叩き落としていく小太刀。
「あれー? コダちゃん、イライラしてる?」
「してないわよ、キノセイ、キノセイ!」
(「そう、決して、決して八つ当たりとかじゃないんだから!」)
 しかし、刀の振りが打倒の一閃なのは気のせいだろうか?
 首を傾げた祭莉は、ま、いいかと。
「せっかくだから、たまこも呼んでみよー。メカたま、カモーン♪ ばりばり~」
 コケッとニワトリ型ロボ・メカたまこも参上し、駆けると共に電撃の属性攻撃。
 こうして、次々と敵を撃破していく三人であった。

「うさぎ、大丈夫?」
 吊られたうーさを助ける杏。縛られた縄を解いてあげると、うーさはへたり込んでしまった。
「あ、ありがとう~……」
「災難だったね」
 ドレスを整えてあげて、よしよしとうーさの頭を撫でる。
「こっちはハム……じゃなくて、ミニブタさん」
 そう言って小太刀は、ミニブタのハムハムしい縛りを解いてあげた。その様子を見てケタケタと笑うのはお喋りなカボチャランタンだ。
『そのまま美味しくしちゃえばよかったノニー』
「ぷぎゃぁぁぁ」
「こら! 余計なこと言わないの! いじめちゃだめ!」
 お喋りなカボチャランタンに棒飴を突っ込み、しばらく黙らせる小太刀。そうしてミニブタにハロウィン衣装を着せてやりつつ、再びハッと我に返った。
「そうだ、写真! 皆集まって、一緒に撮ろうよ!」
 今度こそはとスマートフォンを取り出して、カメラアプリを起動させる。
 チアガール&踊り子な双子のポーズや、メカたまこのワイルドなポーズ。そこに小太刀が忍んでみたり、飾りなおしたハロウィンツリーと住人たちと一緒に撮ってみたり。
「ふふ、あとでポノに送ろうっとー♪」
 可愛くて、面白くて、楽しいがいっぱいのフォルダを眺める。
「ほら、杏、祭莉ん、いっぱい可愛く撮れたよ」
 たくさんの写真を見せてもらう双子――色々な写真に杏はこてりと首を傾げた。
「ところで、なにゆえ、この中で、まつりんが一番かわゆいのか? ……少し貴方とは話し合わねばならぬ気がする」
「ええ~アンちゃんそれ誰の真似っ子ー? サムライ? あっ、揺するのやめてよ~。かわいいのひけつなんてカンタンなことだよー」
「……かんたん?」
 祭莉の言葉に、ぴくっとする杏と小太刀。
「そうそう、二人ともとくいでしょ? 笑顔だよ!」
 にぱっと笑って、ね、カンタンでしょ、と祭莉は言うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】


アヤネさんはどんな衣装が着たいです?
私は可愛いやつがいいな
でも恥ずかしい衣装が飛んできたら変更できますよね…って言ってたら飛んできた!
わぁアヤネさん新撰組だ
格好いい!よく似合ってます(スマホで撮影)
私のは何かな?
この赤い獅子のお面に緑の外套…って獅子舞じゃないですかー!
いくらなんでも季節先取りすぎ
やだやだやだー
私も新撰組がいい!

ああっもう敵が来ちゃった!
仕方ない…(慌てて着替え)
ええい、この獅子がランプなんて噛み砕いてやります!
(刀を両手に持った二刀流の獅子舞)
うおおおー!超高速の獅子舞が空を駆け巡り斬撃を放つ!!

え、可愛いですか?
ありがとうございます
でもやっぱり新撰組がよかったよぉ〜


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】

コスプレ衣装ねえ
ソヨゴにはかわいいのを着て欲しいネ
まあ仕事だし
僕は何でも着るよ

羽織袴に日本刀?水色にギザギザの模様は新選組だっけ
僕は詳しくないけど
沖田総司くらいはわかる

スマホで撮られて格好良くポーズを決め
ゲホゲホと労咳で咳き込む演技
あ、演技は必要ないのネ
ついつい

ソヨゴのそれは時代を先取りしてるネ
交換してあげてもいいけど…
っと敵が来た!

ゴスロリマッチョ
ソヨゴが着たがっていたかわいい服をお前みたいな奴が
似合わないし気持ち悪いネ

武器は日本刀の代わりに大鎌を用意
一番隊組長いざ参る
天才剣士の剣技の冴えを見よ!
なんてネ

ソヨゴと息を合わせて切って捨てよう

ソヨゴの獅子舞かっこいいかわいいネ
と微笑み



「わ~ほんとに服が飛んでる……」
 元カロテン・ハロウィンの国のハロウィンツリーから離れて森へと向かっていた城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は、空を行く中世風ドレスを見つけて呟いた。
 彼ら(?)には標的がいるのだろう、二人には気付かずに飛んでいく。
「アヤネさんはどんな衣装が着たいです?」
「うーん……コスプレ衣装ねぇ……」
 冬青の問いに、やや目を閉じてふんわり考えるアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)。
「まあ仕事だし、僕は何でも着るかな……あ、でもソヨゴにはかわいいのを着て欲しいネ」
 にこっと微笑んでそう言えば、冬青も「はい」と頷いた。
「私も可愛いやつがいいです。でも、恥ずかしい衣装だったらどうしよう……変更できますよね……?」
 とお喋りしながら進んでいると、一度空を旋回したらしき何かが視界の端に飛び込んできた。
「アヤネさん! 言ってたら飛んできましたよ! ――わぷっ!?」
 ばっさあ! と冬青を覆うように広がった衣装。ハロウィンの国の魔法なのか、ハッと気付いた時には――。

「わぁ! アヤネさん新撰組だ! 格好いい!」
 まず冬青の視界に映ったのは、浅葱色のだんだらを羽織ったアヤネの姿であった。
「え、何、今の。どういう現象なんだ……元々の僕達の衣装はどこへ? 一定時間で解ける、子供用童話みたいな魔法なのかな」
 ちょっと驚いているアヤネ。自身を見下ろせば、腰に刀を差していた。
 いわゆる羽織袴の衣装で、腕を上げてみれば目に入る裾のギザギザ模様。冬青の言う通り「新選組」の服装だった。
「新選組……僕はあまり詳しくないけれども、『沖田総司』くらいなら分かるネ」
「よく似合ってます!」
 と、冬青はスマートフォンのカメラアプリを起動させての撮影会。
 格好良くポーズを決めるアヤネや、咳き込む演技をするアヤネと撮っていくが、
「アヤネさん、ぶれちゃうー」
「ん、やっぱりピシッとしておいた方がいいネ。……ところで、冬青のそれは――」
「アッハイ、これはですね、たぶん」
 赤い獅子のお面に緑の外套――獅子舞だった。
 改めてアヤネに観察されると突き刺さるナニカ。
「いくらなんでも季節感先取り過ぎですよね!? やだやだやだー、私も新選組がいいー!」
「ソヨゴ、大丈夫、かわいい!」
「ええ!?」
 獅子面と外套の毛卍文は獅子舞のそれであったが、冬青が着るのは裁着袴。着物は薄紫とよくよく見れば可愛らしいものだ。
 が、獅子舞のインパクトがその存在をかっさらっていく。
 うん、と、アヤネは改めていい笑顔でひとつ頷いた。
「ソヨゴのそれは時代を先取りしてるネ。交換してあげてもいいけど……羽織ってみる?」
「はっ! 羽織を交換すれば私たち、たちまち――って、ああっもう敵が来ちゃった!」
『おっ、ハロウィンパレードの参加者はっけん~』
 わちゃわちゃしている間に、笛の音がどんどんと近付いてきて、ハロウィンパレードと遭遇する二人。
 カチャカチャと飛び跳ねる魔法のランプと、その上でデコルテの開いたドレスで胸筋を見せつけるようにダンスをする悪魔たちの姿。
 くっ、と何かに耐え、決意した冬青はキリッとした表情に。
「仕方ない……」
 獅子面を被り、緑の外套を広げた。その両手は刀へと添えている。
「ええい、この獅子がランプなんて噛み砕いてやります! ――音速で駆け抜けますよ!」
 花髑髏と不死蝶を抜き放ち、黒蘭の花弁を纏った冬青は飛翔した。
「はあっ!」
 鋭い呼気と共に刀を振るい――飛翔速度に乗った冬青は重心を変えての回転斬り。
『えっやだっ、けだものが来るゥゥゥ』
『イヤアアア!』
「ちょっ、ケダモノはそっちでしょー!?」
 ずばばん! と勢いある斬撃を放った冬青は、体勢を整えるため一度空へと上がる。
 蹴散らされた魔法のランプと悪魔へと接敵するのはアヤネだ。
「ゴスロリマッチョ、ソヨゴが着たがっていたかわいい服をお前みたいな奴が……!」
『ええっ』
 心外! という風に戸惑いの声を零す魔法のランプ。
 ムチムチボディにピチピチ魔女っ子衣装を着た悪魔がくねくねと動き、アヤネは仏頂面となる。
「似合わないし気持ち悪いネ」
『ザックリー!? ワタシの乙女心ざっくり!!』
「一番隊組長いざ参る、天才剣士の剣技の冴えを見よ!」
 アヤネが振るうは日本刀。
 ……ではなく、使い慣れたウロボロスの大鎌であった。
「なんてネ」
 Scythe of Ouroborosの影刃が一閃し、周囲の敵を払ったあとに振り下ろした刃先が魔法のランプを割り砕く。
 だが敵もやられるままではない。
 蒼穹の魔人は吹き上げる風に乗せて矢を放ち、緋衣の騎士……姫騎士がアヤネと剣を交わす。
 それでもコスプレ衣装を身に纏う二人に比べ、攻撃の媒体に衣装を着せている魔法のランプたちが叶うわけもない。
 あっという間にパレードは蹴散らされ、撃破されていくのだった。

「ソヨゴ! やっぱりソヨゴの獅子舞は、かっこいいかわいいネ!」
 空から降りてきた冬青を迎えて、アヤネはそう言った。
 お面を上げてから見えた彼女の微笑みに、冬青もまた笑顔を返す。
「えへ、そう言ってもらえると、やっぱり嬉しいな。ありがとうございます。
 上から見てましたけど、アヤネさんも格好良かったですよ」
「ふふ、ありがとう」
 にこにこ~っと笑い合って、気を取り直した冬青は再びカメラアプリを起動した。
 端末を掲げて、二人で自撮り撮影。
 と、しばらく遊んでいると、魔法が解けたかのように元の服装へと戻る。
 いつの間にか手には着ていた衣装が。
「……でもやっぱり新撰組がよかったよぉ~」
「……服、交替して撮影会しようか」
「はい!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
【KOR】

ランプの精のご容姿が気になりますね
もし奇妙な恰好をしていましたら
こ、これは…動物さんたちにはとても
お見せする訳には参りません!
早々にお退治申し上げなくては!

火炎耐性・環境耐性を活用しながら
飛んできた衣装に袖を通し戦いたく存じます
も、もしお色気モノが飛んできたとしても
し、仕方がございません
幽兵さま、サクラコさま、わたくし頑張ります…!

…と、あら?幽兵さまも、露出が多くていらっしゃいます…?
サクラコさまは…お、おかわいらしい…!
抱きつきたくなる気持ちを抑えつつ
オーラ防御にてお相手の攻撃を防ぎ
可能であればお二人もオーラに包むよう布陣して
こちらからは、早業・高速詠唱からの2回攻撃を狙いますね


花屋敷・幽兵
【KOR】
ランプの精が面白い恰好…だな。
おお…これは凄いな。俺が霞む。どう思うサクラコ。
俺は何かこう…スラっとしたカッコいい衣装がいいが…露出変態系でも別にいい。
似たような格好だし。なあベイメリア?
お、サクラコは可愛い格好だな。はいはい可愛い可愛い。
何だそのポーズ。タヌキか何か?
む。ベイメリア、ちょっとそのまま…はいはいそのまま(魔眼で直視)
取り合えず戦いはスチームエンジンで強化してリーチを活かしてキリッといくぜ。
鍋蓋来い!頑張れサクラコ。エロい女神が俺たちに祝福をくれるぜ。
普段色気のないのとか百合と冒険しているからな。テンションも上がるってもんだ!


鏡彌・サクラコ
【KOR】

ランプの精があられもないお姿で…
いやあああ!?
これは教育に悪そうでいす
R18Gのタグをつけて追い払うといたしましょう!

さあどんな衣装?
っと
いつの間にかパジャマスタイルの黒猫の着ぐるみを着ている?!
にゃーん
ついついポーズをつけてしまいます

抱きしめてもいいのですよ?
いやたぬきじゃないでいす

ベイメリアさまはちょっと肌色面積広めの衣装でしょうか
げげーん幽兵さまはヘンタイだー?!

はい幽兵さまはガン見してないで戦ってくださいませ!

銅鏡を80個くらい飛ばして立体的な護りといたします

あのランプさん
精霊に交渉する際に
いちいちくねくねしていて気持ち悪いのでいす

幽兵さまが雉も鳴かずば撃たれまい状態ですねい



 アリスラビリンス・カロテン国のある場所では、不思議な笛の音が鳴り響いていた。
 軽快なリズムに導かれるように追ってきた【KOR】は、そこでハロウィン・パレードを目の当たりにする。
『『『ど~こまでもつづく~よ~ハロウィンぱれえーど~~♪』』』
 アリスラビリンスの住人たち作る行列の中には、魔法のランプとそこから出ている悪魔の姿も。
 悪魔は姫騎士の格好をしたり、ピエロの格好をしていたり、クネクネとしたアラビアンナイト風の踊り子さんであったり。
 まあ、と驚きの声を零したのはベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)。
「サクラコさま、幽兵さま、あちらをご覧くださいませ。ほら、波打ち際を駆けているかのような、白ワンピースの彼女と彼氏さんが追いかけっこをしているお姿も」
『アッハハ~待てよぅこいつぅ』
『ウフフ、パレードの先まで逃げきってみせますわ~』
 デコルテの開いたワンピースでは駆ける弾みとともにマッチョ悪魔の逞しい胸筋が揺れている。その下の魔法のランプはキラキラ効果を周囲に放っていた。ちなみに彼氏さんな悪魔の方は胴にホッケーマスクを装着している。
「おお……これは凄いな。ホラーなフラグを持つカップル(?)か。俺が霞む。……どう思う? サクラコ」
 ホラーなフラグを持つカップル(?)を見た花屋敷・幽兵(粗忽なダークヒーロー・f20301)が鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)へと尋ねる。
 問われるまでもなく、サクラコの全身はゾワワワッと寒気が走った。
「――いやあああ!? これは教育に悪そうでいす! R18Gのタグをつけて追い払うといたしましょう!」
「そ、そうですね……純粋な、まだ視界被害のないアリスラビリンスの住人さんたちにお見せする訳には参りません!
 早々にお退治申し上げなくては!」
 ベイメリアがそう言った瞬間、我々が力を貸そう――という雰囲気でコスプレ衣装が飛んできた。
 サクラコがハッとした声を上げる。
「ベイメリアさま、幽兵さま、来ました! ――いえ、着ました!?」
 この元カロテン・ハロウィンの国ではコスプレ衣装に襲撃されると、いつの間にか着替えが終わっていることもある。
 パジャマスタイルの黒猫の着ぐるみ姿となったサクラコは、おててを丸め、そのもふもふの素材で顔をくしくししてみた。ふわふわしていて気持ちがいい。
「お、サクラコは可愛い格好だな」
 そう言った幽兵へ、フードのネコミミを見せつけるように頭を下げるサクラコ。
「はいはい可愛い可愛い」
「にゃーん」
 猫の手をくいくいとして、思わずといったように黒猫のポーズ。
「何だそのポーズ。タヌキか何か?」
「いやたぬきじゃないでいす」
 ビシッと手首にスナップを利かせて、猫パンチを披露するサクラコ。そんなしぐさも懐かない黒猫のように見えて、ベイメリアは頬に手を当てて歓喜の声を上げた。
「サクラコさま……お、おかわいらしい……! 撫でて差し上げたい……いえ、抱きつきたくなりますね」
「抱きしめてもいいのですよ? ほら、もふもふしているのでいす」
「わ、もふもふ……そしてふわふわですね」
 両腕を広げたサクラコに、そろっと抱きついたベイメリアは、バニーガールの姿となっていた。
 黒うさ耳にレオタード姿ではあるが、黒タイツには太腿と足首に黒いファー。細い腕も長手袋に包まれて、灰色のファーが付いたコート。シックで大人なバニーレディだ。
「ベイメリアさまはとっても色っぽくなりましたねい。綺麗ですよ」
「そ、そうですか? 結構体の線が露わになっていて……お恥ずかしい限りです……」
 頬を染めてベイメリアが言う。
 そんな二人をじいいっと凝視しているのはロックな格好をした狼男。ふわふわな狼耳と尻尾に、ラーダージャケットというなんかやけにシュッとしたスタイルであった。
「おー、幽兵さまはかっこいい系? いや言動はアレですけども」
「フッ、そうだろう、そうだろう」
 サクラコの言葉に頷いた幽兵は、ハッとシリアスな表情で何かに気付いた。視線が怪しくなる。
「む。ベイメリア、ちょっとそのまま……はいはいそのまま」
「はい! 幽兵さまはガン見してないで戦ってくださいませ!」
 ぱんっとサクラコが手を打てば、笛の音が一瞬掻き消えてロックな調べに。
「! 気付かれたか、ゆくぞ二人とも!」
 そう言って走り出した幽兵の後ろ姿は――ベルトの交差する裸だった。いや正確には衣装は前半分だけという――もっふもふな尻尾が揺れている。
「幽兵さまがヘンタイだー?!」
「むっ!? どうりですぅすぅすると思った!!」

『パレードの加わらないというのなら、ええーい、おどきなさーい!』
「推して参る! 分断してやるぜぇ!!」
 鋼鉄の槍を振り回し、パレードへと乗り込んだ幽兵が魔法のランプを弾き上げる。
 ガキッ! と緋衣の姫騎士の剣がダイタク=ヘリオスの長柄を払った。そのまま翻った刃が幽兵へと振り下ろされる。
「鍋蓋来い!」
 幽兵が声を張れば、サクラコの力にて錬成され自陣を護る銅鏡が飛んできた――そのまま水平にごすっと幽兵に体当たりする。痛い。物理的な、斬線から外す護り方だ。
「幽兵さまが雉も鳴かずば撃たれまい状態ですねい」
 それも味方(銅鏡)から。
 やや呆れたような呟きのサクラコ。
「まあ、それはそれとして、きっちりサポート致しましょう」
 八十二個の銅鏡を念力で操り、サクラコが悪魔たちの動きを抑える。面を並べればそれは盾となり、攻撃の隙を作った。
「エロい女神が俺たちに祝福をくれるぜ!」
 蒸気エンジンを噴出し、その蒸気を目くらましに穂先が敵を穿ち、幽兵が身を捻れば柄はしなり敵陣を払う。
 敵の攻撃を弾く銅鏡の高らかな音、そしてベイメリアの光が三人の身を守る。敵の獄炎が瞬時に広がるも、清廉な光と風が邪気を祓っていった。はたはたと黒のウサミミがはためく。
 薔薇の装飾がなされた銀製のクロスに触れ、ベイメリアは祈る。
「紅の聖花の洗礼を受けなさい……!」
 深紅の薔薇の花弁が焔と熱の残滓を細やかに相殺し、緋衣の姫騎士を攻撃する。
 悪魔を弱らせるベイメリアと、魔法のランプを割り砕く幽兵。
『んまあ! んまぁぁ! 本当のハロウィンは目の前だというのに! こんな邪魔が入るなんて!』
 野太い声で魔法のランプが叫び、呼び出した精霊へと交渉を始める。
『ここはカロテンの住人たちを人質に逃げましょう! そうね、あなたたち邪悪な精霊への生贄としてもいいわ!』
「あのランプさん……お喋りするたびに、いちいちくねくねしていて気持ち悪いのでいす」
 サクラコがパレード後方のアリスラビリンスの住人たちを護るように、銅鏡を組み上げる。
 そして魔法のランプを囲めば、ベイメリアの薔薇の花弁が中でぶわっと溢れかえった。
『ひっ、いやぁぁぁ!』
 常は滑らかな花弁の攻撃にさらされ続けた魔法のランプたちが骸の海へと還っていく。
『――――!』
 断末魔も最期には掻き消えて、放たれた魔の呼気が冷たく広がり霧散していく。
「無事、倒せましたでしょうか?」
 ふ、と息を吐き、ベイメリアが呟いたその時、わあっと歓声があちこちから上がった。
「わあい、ありがとう綺麗なお姉さん!」
「あくどいランプもこれでいなくなったね!」
「黒猫のお姉さんも、僕達を護ってくれてありがとう!」
 パレードに強制参加となっていたのたぬきやうさぎ、ミニブタ、フェレットたちが三人へと喜びの声を上げる。
「狼なカッコイイお兄さんもありがとう」
「あ、待って、うしろ……」
「あ……変なオニーサンもアリガト。アノ、風邪ヒカナイデネ?」
 ザッと出来上がるこころの彼我の距離。途端に棒読みになるたぬきに、うむ、と幽兵は頷いた。
「サクラコの、たぬき仲間が無事助かって良かった」
「たぬきじゃないでいす」

 ――何はともあれ、ハロウィンパレードから住人を救い出すことができた。
 魔法のランプたちも国から一掃し、猟兵たちはどこか狂ったハロウィンの国でバレエのおっちゃんとの戦いに備えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『バレエのおっちゃん』

POW   :    漢の美麗なバレエキック
【バレエのダンスを踊りながら繰り出すキック】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    漢の華麗なバレエキック
敵を【バレエのダンスを踊りながら繰り出すキック】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ   :    漢の綺麗なバレエキック
【バレエのダンスを踊りながら繰り出すキック】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【をキックの衝撃派によって破壊し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠竹城・落葉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ある時間帯のおっちゃん
「ふんふんふんふん、ふ~ん♪」
 ご機嫌に、野太い鼻歌を披露するバレエのおっちゃん。
 悪魔のいない魔法のランプ(中身は紅茶)をティーコジーに包み、真っ白なクロスをかけたテーブルへ。
 そのテーブルについているのはアリスラビリンスの住人だ。仮装していて、しかも突っ伏している。
「まだまだおかわりはあるぞ。本物のハロウィンが来るまでパーティを続けなければ」
 ニコッと白い歯を見せて爽やかな笑みを浮かべるバレエのおっちゃん。
「オウガ・オリジン様は大喰らいだ。そんなことではあの方のお茶会になどついていけないぞ」
「う、うう……」
 しぬ思いで飲み、食べ切った住人へ「偉い!」と直ぐに追加のお菓子やお茶を出すバレエのおっちゃん。
「まだ大丈夫! 君の胃袋は破裂していない! まだいける! 鍛えたら、次は一発芸の練習だ!」
 わんこそば状態のお茶会はおっちゃんなりの応援であった。

●ある時間帯のおっちゃん
「ふ。ハロウゥゥイィィンにかぼちゃはつきもの――ならばこの一帯の果樹を南瓜樹に変えてしまおうではないか!」
 そ~れ、ハロウィンの魔法★ とタクトを振るい、白羽根がふんだんに使われた魔女帽子を被ったバレエのおっちゃんが開拓をすすめている。
 りんごの木はかぼちゃの木に。
 柿の木もかぼちゃの木に。
 にんじんやピーマンの木もかぼちゃの木に。
「うむ! カロテンが豊富でこの樹、良い樹だなっ!」
 ぱんっと幹を叩くバレエのおっちゃん。
「……うっううっ、かぼちゃに恨みはないけど、もうかぼちゃ嫌いになりそうだよぉ」
「ふえぇぇん」
 住人たちが絶望に嘆く。
「ハッハッハ。ほぅら、好き嫌いはだめだぞぉ。この南瓜の煮付けを食べ切ってから、ハロウィンの準備をするのだ」
「うぇぇぇん」


 ――と、ハロウィンの国に改変されたカロテンの国を、よりハロウィン「らしく」日々育てあげているバレエのおっちゃん。
 もちろん怪我をしてしまったコスプレ衣装も夜なべして縫い直すし、お喋りなカボチャランタンが寡黙になったら魔法をかけて元気にしてあげる。
 そんなバレエのおっちゃんはハロウィンの国では無敵の存在だ。

 彼を倒す方法は唯一つ、気持ちの込もった料理を食べさせること。

 農園で収穫した作物は、キッチンの傍に。
 果樹園には、普段土で育つ作物も実っていたりするので、そこから新鮮作物を調達するのも手だ。
 神出鬼没。あちこちで猟兵たちの前へと出現するバレエのおっちゃんの苛烈なおもてなし(たまにキック)、または助力(たまにキック)に耐えながら、キッチンで美味しい料理を作ってみよう。
 彼は抵抗せずに猟兵たちの料理を食べ、徐々に弱っていくはずだ。
グァーネッツォ・リトゥルスムィス
やっている事は国も住人もめちゃくちゃにしているのに
バレエしてるおっちゃんだから気が抜けちゃう……
いや外見で油断しちゃダメだ、カロテンも皆の笑顔も取り戻すぞ!

おっちゃんがどこから来るか分からないし油断を戒める意味でも
食材探しや調理中は瞼を閉じ鼓膜も唾で封じ(ちゃんと指を洗う)
視覚も聴覚も頼らず調理もおっちゃんの攻撃の躱しもしてやるぞ!
『朽ちぬ闘魂』で食材の鮮度を嗅覚や手の触感で感じ取り、
野生の勘や空気の流れから包丁や火、おっちゃんの攻撃で怪我しない様にするぞ
今のオレなら最高の料理を作れそうだ!

南瓜を丸ごと一個お皿にした南瓜グラタンの出来上がり!
皿代わりの南瓜も食べられるから豪快にどうぞだぜ!



「今はいない……か……?」
 ハロウィンの国のあちこちにある完備されたキッチンの一つを見つけたグァーネッツォ・リトゥルスムィスは、周囲を見回しつつ警戒心に満ちた声で呟く。
 そして思い出すのは、先程遭遇したバレエのおっちゃんのことだった。
(「やっている事は国も住人もめちゃくちゃにしているのに、バレエしてるおっちゃんだから気が抜けちゃう……」)
 スワンな真っ白のバレエ衣装を着た強面のおっちゃんが、アリスラビリンスの住人たちに給仕をしている姿――つま先を伸ばした歩き方はまさしくバレエそのものであった。
「――いや! 外見で油断しちゃダメだ」
 そう、相手は面白おかしいオウガでも、基本的にオウガは人肉を喰らう存在だ。もしアリスがやってくれば食べられてしまう。住人たちもいつ食べられてしまうか、分からない。
「カロテンの国も皆の笑顔も取り戻すぞ!」

 飛んできた仮装衣装のなかで、空色のエプロンを見つけたグァーネッツォはそれを装着してキッチンに立つ。備わった籠のひとつにリスの住人が入っていた。
「猟兵さん、何か作りに来たの?」
「ああ、そうだぞ。何を作るかは決めてるから、材料をチェックさせてくれるか?」
「どうぞ~。冷庫もあるからね」
 と、リスはキッチンの横の箱を指差した。「冷たい魔法」がかけられた冷庫にはミルクやチーズが入っている。
「え~と、あとは……ベーコンとマッシュルームがいるな――よし」
 ぺろっと指先を舐めたグァーネッツォは唾で耳を封じ、目を瞑る。そして、
「張り切ってレッツ・クッキングだ!」
 ユーベルコード・朽ちぬ闘魂を展開した。
 手を洗い、リスの入った籠を持ち、食材探しへ。視覚と聴覚を敢えて閉じるという不利な行動は、グァーネッツォの嗅覚や触感そして勘を研ぐ。
「まずはベーコン――お、これかな? ……きりかぶ?」
「それは元々お肉の木で、今はベーコンとなってしまっているんだ」
 ――というリスの声も、グァーネッツォの耳にはくぐもって聞こえる。明瞭ではない。
 切り株の上部を竜骨ナチュラルアックスですぱっと削ぐと、ベーコン。
 次は地面に屈んでマッシュルームの採取だ。
「これかな?」
 手で触れる土はふかふかで、くんくんと匂いを辿りながらグァーネッツォはマッシュルームを見つけていく。
 リスも採取して籠に入れていくというメルヘンな光景に出会ったのは――バレエのおっちゃんである。
「お嬢さん、お嬢さん、ちょっとひと休みしないか? お茶会へ招待しよう」
「……マッシュルームもこれくらいでいいかな。よぉし、さっそく調理だ~」
 つま先で立ちくるくると回りながらのおっちゃんの誘いも、完全スルー状態でグァーネッツォはスキップしながらキッチンへと戻っていった。
「~♪」
 食材を包丁で切り――しゅぱぱっとした動きに、蹴りを放とうとしていたおっちゃんは結局避け。
「あ、手が滑った」
 ひゅんと包丁がおっちゃん目がけて飛んでしまうも、華麗なダンスステップで回避するバレエのおっちゃん。
 フライパンにバターを溶かし、ベーコン、玉ねぎ、アスパラとマッシュルームを炒める際も、時に火力のままならないキッチンからフライパンを持ちあげつつ、たまに豪快な動き。
「アチッ!」
 油がジュッと飛んでおっちゃんの剛肌にぶち当たった。
 一瞬にして凶悪になったおっちゃんの表情――その時、無意識に空気を読んだグァーネッツォは呟くのだ。
「美味しく食べてくれるかな、バレエのおっちゃん!」
 スタイルの良い可愛い女の子が空色のエプロンを着て、自分のために料理を作ってくれている――ここでキュンとこない男は&食べることが大好きなオウガはいないだろう。
 おっちゃんはいそいそとテーブルをセッティングし始めた。その様子をリスは白けた目で見ている。
 小麦粉を入れてミルクを入れて、木べらで混ぜながら味を調えていくグァーネッツォ。この時点で、くつくつと美味しそうな香りが立つ。
 出来上がったそれをくりぬいたカボチャにおたまで流し込み、削ったチーズを振りかけてオーブンへ。
 そうして十数分待った結果、出来上がったのは――。
「カボチャを丸ごと一個、お皿にしたカボチャグラタンの出来上がりだぜ!」
 チェック柄のミトンであつあつな鉄板の上のカボチャを、おっちゃんがセッティングしたテーブルへと持って行くグァーネッツォ。
 その目は開かれており、金の瞳がキラキラと輝いている。
「皿代わりのカボチャも食べられるからな。豪快にどうぞだぜ!」
 盛り付けのためのカボチャ蓋を取れば、チーズがぐつぐつと沸騰しており、まろやかな香りが辺りに広がった。
「ふぉぉ、いただきます!」
 木のスプーンを差し込み掬えば、とろとろとしたチーズが伸びた。次いで甘味のあるカボチャの匂い。ふぅふぅと息を吹きかけたおっちゃんが豪快な一口。
「ふむ、むむ! これは素晴らしいな。まろやかなホワイトソースに、噛み応えある厚切りのベーコン、マッシュルームにはしっかりと焦げ目も付いていて、一口に二度の香ばしさ。
 くわえて、カボチャをまるごと使った器というのも良い。
 やわらかな中のカボチャは、スプーンで突けばほろほろと崩れ、甘味が加わる……! もしかしてこれは、お嬢さんにとって最高の出来となる一品では!?」
「分かるか!? 作ってる間、すっごく調子が良かったんだぞ!」
 笑顔になるグァーネッツォ。
「ふ」
 サングラスをちょっと上げて、目を擦るおっちゃん。
「君の笑顔も最高だ。きっと腕の良いクッキングダンサーとなれるだろう。本物のハロウィンも迫り、肌寒い日々が続く中のカボチャグラタン――実に美味であった、ごちそうさま! だ!」
 カボチャグラタンを、柔らかな器――皮までしっかりと完食し、おっちゃんはあでゅう! と、どこか緩やかとなったダンスステップで去っていく。

「猟兵さん、ボクも何か食べたい」
「ボクもボクも」
 リスと、そしてアライグマな住人たちも美味しそうな匂いに寄ってきて、グァーネッツォにねだる。
「そうだな、オレもお腹が空いたし、一緒にご飯でもしようか!」
 そう言って、厚切りベーコンを細かく切って、今度はガーリックバターで焼くグァーネッツォ。
 カボチャグラタンはいくつか一緒に作っていた。あと一品か、二品、何にしようかな。
「――でもつまみ食いも楽しいんだよな」
「わあ、猟兵さんわるいこだ~。ボクもわるいこー」
「でもすごくおいしく感じちゃう罪のあじだよね~」
 調理していくそれを皆でつまみ食いしちゃうのもまた楽しい。
 皆で合わせた忍び笑いは、いつしか声ある笑顔となっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・イオア
さて、何を作ろうか。
美味しくてー。
楽しんでもらえそうなものがいいよね☆
平和の祈りを込めて楽しく真剣に作るよ。
念のため聞いておくけど食べられないものってある?

シホが作るのはーこれだ☆
【ハロウィン・ホットケーキ】
三段のホットケーキで
一枚目は細かく切ったリンゴを生地に混ぜて焼き
二枚目は干しブドウを生地に混ぜて、
三枚目は栗を生地に混ぜて、
それぞれの生地の間に南瓜を裏ごしして混ぜたカスタードクリームをたっぷりと。
仕上げは上からはちみつをかける。
生クリームが用意できたら可愛らしくデコってもいいかも。
食べられないのがあったら除いておきます。

アドリブ歓迎!



「アリスを焼くための薪を作るべし!」
 バレエのおっちゃんの回転蹴りが生木を裂き、薪として仕上げていく。
 人肉食主義のオウガは準備にも余念がない。
「あ、アリス……これから来るかもしれないアリスがやばい」
「ふええ」
 アリスラビリンスの住人たちが、震えながら嘆いている。シホ・イオアはそんな住人たちを励ますように言った。
「だいじょうぶ、まかせて。この国を平和にするために頑張るからね♪」
「「「猟兵さーん」」」
 抱きっ。と飛び込んできたうさぎやたぬきの住人を抱きしめ返す。
「さて、そのためにはおっちゃんに料理を食べてもらわなきゃね、何を作ろうかな……」
 キッチンと材料、冷たい魔法のかかった箱・冷庫を見てシホは考える。
「バレエのおっちゃんは食べられない物ってある?」
「何でも食べるぞ。特にオウガ・オリジン様の好きな、感情のこもった人肉が好きだ」
 バレエのおっちゃんはさりげなくリクエストしてきたが、さすがにこれは調理できない。
「わかった! それじゃあ楽しんでもらえるように、パンケーキを作るね☆」
 シホは笑顔でばっさり、はっきりとそう言うのだった。

 卵黄と砂糖をボウルに入れて混ぜ、更に薄力粉を入れてさっと混ぜる。
 そして少し温めたミルクを少しずつボウルに入れながら混ぜ、鍋に移した。火にかけて木べらで混ぜ続ければ、なめらかなクリームの出来上がり。
 バットに広げた氷の上に置いて余熱を取る。
「猟兵さん、お手伝いいる?」
「それじゃあカボチャを裏ごししておいてくれるかな?」
 住人の一人、大きな時計を背負ったうさぎさんが手伝ってくれるようだ。
 遠慮なく頼んだシホは、次にホットケーキの生地をボウル三つぶん用意した。
 バターを溶かしたフライパンに、細かく切ったリンゴを混ぜた生地を流しこんだ。ホットケーキの生地とバター、そしてリンゴの爽やかな匂いが辺りに漂う。
「二枚目は、干しブドウを混ぜた生地だよ☆」
 一枚目と同じようにぷつぷつと気泡が立ってからひっくり返し、しばらくすると二枚目が出来上がる。
 三枚目は、栗を混ぜた生地だ。
 混ぜながら、焼きながら、シホがこめたのは平和の祈り。
「猟兵さん、カボチャこれでいい?」
「うん、大丈夫♪ ありがとう!」
 裏ごししたカボチャは、先に仕上げたカスタードクリームと一緒に混ぜて。
 焼き上がったホットケーキにたっぷりと乗せて、二枚目、三枚目と重ねた。
「仕上げははちみつだよ☆」
 蜂の巣の形をしたそれを絞れば、とろとろと蜜が落ちてきてとても甘い香りを放つ。
 冷庫には生クリームもあったので、それを使ってホイップクリームに。
 濃厚なホットケーキと合うように、甘さは控えめにさっぱりと。
 そして飾り切りをしたリンゴと、栗を顔に、干しブドウを耳と、クマに見立てて控えめにデコってみた。
「完成~☆ ハロウィン・ホットケーキだよ! バレエのおっちゃん、どうぞ召し上がれ♪」
「ほほう、ハロウィンと。ではいただきます」
 席に着いてバレエのおっちゃんがフォークとナイフを手にした。
 三段ホットケーキへスッとはいるナイフ。上段にてさくっと音を立て、徐々に切りこめばその厚みが分かる。綺麗に取り分けたおっちゃんは、大きく口を開けた。
「わあ、ひとくち! すごーい」
 シホも驚きの声。
 噛むのに十秒、飲みこむのにさらに五秒、味わったおっちゃんは一つ頷いた。
「はちみつの濃厚な甘さと、また別の意味で濃厚な、舌触りの独特なかぼちゃのクリームがとろけあってハーモニーを繰り出す。
 濃厚に満ちた戦場へ、ふかふかな生地たちが癒しの魔法をかけてくるように、場に散っていく――コロコロとリンゴが砕け、干しブドウの酸味とまた違った果実の調和が来たところで、栗のクラッシュか。なかなかにやるな」
「濃密なハロウィン・パレードみたいでしょ?」
「ああ、素材の笑い声が口の中で響き渡っているようだ」
 そして生クリームを掬い、口に含めば「ケタケタ」とした笑いが「きゃらきゃら」と楽しいものへと変化した。とおっちゃんた例えるコメント。
 添えられた飾りのリンゴも生クリームをたっぷりとつけて。
 次はそれぞれのホットケーキをじっくりと楽しんで、再び口の中のハロウィン・パレードを楽しむバレエのおっちゃん。
 食べているうちにふるふると震え出し、立ち上がるとダンスステップ、あんどぅとろわと弾み始めた。
 ターンからの着席。
 そして三段ホットケーキを平らげる。
「素材の見事な並び、および素敵なパレードをありがとう! ごちそうさまだ!」
「いえいえ、楽しんでくれたみたいでよかったよ☆」
「こうしてはいられない! このハロウィンに負けぬ濃厚なパレードを練り上げねば! さらば!」
 シホに告げ、バレエのおっちゃんはステップしながら去っていく。
 ふあぁとほんの少し欠伸をしながら。
 にっこり笑顔で手を振り見送ったシホは「さて」とキッチンへ戻った。
「シホも何か食べようかな?」
「わあ、それなら猟兵さん、お茶会しようよ!」
「つらいハロウィンの国だけど、猟兵さんと普通のお茶会がしたいな」
 シホの言葉に、集まってくる住人たち。
「生クリームも、カスタードクリームもあるし、残った生地でスコーンを作ってみるね♪」
 甘い焼き菓子にはアールグレイの紅茶。
 住人たちとシホは穏やかなお茶会を楽しむのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御魂・神治
天将、料理頼むわ(UCで実体化)
天将「はい?」
ワイ、小中高と家庭2やったし?
この前かてサンマ焼いて火災警報器鳴らしてしもたやろ?
頼むわ、な?な??な???
天将の料理の腕前?えっと、知らん!
まぁ、自分で分析して調べてどうにかするやろ(情報収集)
スターゲイジーパイとか止めとけよ?(フリ)
高速で料理するんちゃうか?天将の事やし(リミッター解除)
ワイは邪魔するオッサンの相手するから!
出たら即叢雲でしばき回すから!
天将の邪魔はさせへんから!

天将「泥仕合の予感がしますが、いいでしょう、放っておきます」
天将「神治のブロックをすり抜けてきたら此方も対処します」
天将「武器に丁度いい調理器具は沢山ありますからね」



「ショウタイムや!! よっしゃ天将、料理頼むわ」
 キッチンへ立ち開口一番、御魂・神治が放ったのはユーベルコード・銃火神楽『輪舞』で、等身大の天将が顕現する。
 そして天将も開口一番、出したのは怪訝な声だ。
「はい?」
「や、ちょっと聞いて欲しいんやけど」
「はい」
「ワイ、小中高と家庭2やったし? この前かてサンマ焼いて火災警報器鳴らしてしもたやろ?」
「そうですね」
 普通に焼いてたら発火した。「はっ?」と仰け反って、あ、どうしよ、とか思っている間に火災警報器が鳴り響いたのは神治の記憶に新しい。天将のメモリにもまだ最新部のところにあたる。
「頼むわ、な? な?? な???」
 な、が進むたびに発音が甘えたものへとなっていく神治。そして姿勢は拝み倒すものだ。
「…………」
「頼むわ~~~~」
「…………分かりました」
「あっ、でもスターゲイジーパイとか止めとけよ?」
 天将の料理の腕前は神治も知らないところであるが、全幅の信頼は寄せている。
 まず「料理とは」の部分から自身がストックしていたデータで検索を行う天将。
 と、その時、ばっさあ! と茂みが動き、スワンが飛び出してきた――否、バレエのおっちゃんだ……!
「む! 硬そうな人肉を発見! 食卓に並べてくれよう!」
 すね毛のない、艶やかで滑らかな脚を振るっての回転蹴り。
「出たな変態! 天将、ここはワイに任せとき! 邪魔はさせへんから!」
 天将とキッチンはワイが守るから! と無駄にキラッとした笑みを浮かべて叢雲でおっちゃんの脚を打ち返す神治。
 着地からのダンスステップ、華麗なピルエット・アン・ドゥオールを披露するバレエのおっちゃんがキックを繰り出してくる。真面目に戦えば一撃一撃のなんと重いことか――。

「泥仕合の予感がしますが、いいでしょう、放っておきます」
 電脳世界にアクセスし、エプロンを装着したりクッキングに合ったクラシック音楽を流し始めた天将は物理的干渉を行い、早速魚を捌いた。
 湯を沸かしてゆで卵を作りながら、ベーコンと玉ねぎ、きのことジャガイモ、そしてたくさんあったカボチャを刻み、フライパンで炒め、塩コショウを振った。
 これはホワイトソースにする。ミルクと小麦粉を加え、とろとろ、くつくつと煮込んだ。
 と、ここで火が大きく揺れ、戦闘による爆風が飛んできたことに気付く。
「此方も対処いたしましょう。――爆龍符」
 爆風や衝撃波を発生させる御札型爆弾を虚空へ浮かし、一時の結界とした。これで攻撃が飛んできてもカウンターできるという仕様だ。ただ広範なので神治は頑張って避けて欲しい。
 キッチンに既にあったパイシートを器に敷き、煮こんだものを入れたあと、ゆで卵とホウレン草を散らしていった。
 ――いよいよ魚の出番だ。全部で五尾。
 頭部が星型となるように並べて形を整えた。そして少し仕掛ける。
 更に上を囲うパイ生地と魚を整えるのにコツがいるが、そこは可動や角度などを計算して天将は完璧にこなす。溶き卵で生地を塗ってオーブンに突っこみ――そして天将は言った。
「神治、焼き上がり、三十分となります」
「さんじゅっぷんんんん!? ちょぉ、そこも高速でしよかー!?」
「……仕方がありませんね」
 アリスラビリンスのレトロなオーブンにエネルギーを充填し、限界突破させる天将。ぼん!! とオーブンが爆発した。
「出来上がりました」
 熱を相殺しながら取り出したパイは、何とも不気味な、魚の頭部と尾が突き出たパイだ。
 魚が星を眺めるパイ――スターゲイジーパイ。
「バレエのおっちゃん、出来上がりました。お召し上がりください」
「美味そうな匂いがッ!」
 神治を蹴飛ばしたところのおっちゃんに声を掛ければ、いそいそとステップしながらやってくる。
 キッチン横に備わったテーブルへ案内すれば、着席し、フォークとナイフをもつバレエのおっちゃん。
「見た目は一見グロテスクだが、見慣れると可愛らしいパイだ。いただきます」
「……可愛いか?」
 受け身をとり、立ち上がった神治が小声でツッコミながらやって来る。
 ナイフを入れればさくっとした音と、ほわんとまろやかなホワイトソースの香り。
 一切れをとりわけ、じっくりと味わいながら食べていくバレエのおっちゃん。
「……うむ……うむ、キッシュのような美味さ。それでいて魚は香ばしく、白身もほくほくだ」
 もう一切れ――それを食べたおっちゃんは、カッと目を見開いた。だがおっちゃんはサングラスをしているので二人には認識できなかったが。
「な、なんだ、この旨味のある苦みは……! 革命か!?」
「あ、その部分は酒盗を入れてみました。大人の味です」
「このアレンジ力! 良いお嫁さんになれるな」
「ありがとうございます」
 お酒が恋しくなる味なのだろう。うまいうまいとその一切れを食べ、残りのパイも完食するおっちゃん。
「ごちそうさまでした。――おい、そこの糸目」
 サングラス越しにギロリと睨まれて、思わず構える神治。
 歯をキラリとさせて、ふっと微笑みおっちゃんは言う。
「料理の得意なこの女性を、大事にしたまえよ」
「は?」
 言い置いて、さらば! と華麗に去っていくおっちゃん。ふぁぁんと可愛らしい欠伸が聞こえた気がする。
「行ってしまいましたね。神治、戦っていてお腹が空いたでしょう? 酒盗たっぷりのパイもありますので、どうぞ」
「……それ全体的に苦いヤツやろ」
 言っていることは優しいけれども何処かからいことをする天将に、神治は呟き返すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鵜飼・章
おっちゃん…顔は怖いけどいい人だ…
でも南瓜ハラスメントはおしゃれ魔女ビューティーアキラが許さないよ

この国ならではのカロテン豊富な料理を作ろうね
僕激辛料理が好きなんだ
そう…メインは唐辛子だ
南瓜に飽きた口には丁度いい筈さ
空気を読んでミュージカル風に踊りながら
おっちゃんの攻撃を回避しつつ作ろう

まず唐辛子をねりこんだ麺を用意するよ
味噌ベースのスープに豆板醤、ラー油、山椒をブレンド
彩りにほうれん草、小松菜、青唐辛子を添え
仕上げに油で炒めて刻んだ鷹の爪を死ぬほどかけるよ
海苔を添えるのも忘れずにね…
スープを吸って猛烈に辛くなるよ

僕の激辛愛がこもった
カロテンたっぷり魔女の激辛地獄ラーメンだ…
食べてくれるかな?



 ズンチャチャ、ズンチャチャ。
「?」
 思わず踊りたくなるような音楽に惹かれ鵜飼・章が歩みを向けてみれば、とある広場で楽団による演奏会。
 プッ、ぷー、ぷあー……!
 空振ったトランペットの音が響けば、途端に音楽は止んでしまう。
「あ、やば、もうだめ」
「みんな限界が近いね……」
 がっくりとする楽団にそろっと近付いた章は「どうしたの?」と声を掛ける。
「あ、猟兵さん、今ねハロウィンパレードの曲の練習中なんだ」
「でももう肺が痛くって」
「ボクも。喉が痛くって――がふっ」
 聞けばオウガに与えられた譜面は山のように積まれていて、血反吐が出るほどの練習を強いられているのだそう。
「かわいそうに。酷いハロウィンハラスメントだね……」
 章がそう言った時、近くにあったキッチンからバレエのおっちゃんがくるくると、ピルエット・アン・ドゥオールを披露しながらお茶を運んできた。
「飲みたまえ、蜂蜜入りカボチャ紅茶だぞ。たぶん喉に優しい」
「ううっ……」
 カボチャ、カボチャ、もうやだなぁと住人たちが呟く。
「飲まないと、喰ってしまうぞ!」
「ふえええ」
 人肉食主義のオウガは怖い。住人は泣きながらカボチャ紅茶を飲む。
 それを確認し満足そうに頷いたおっちゃんは踊りながら去っていった。
「おっちゃん……顔は怖いけど、人の世話を焼けるいい人だ……でも南瓜ハラスメントはおしゃれ魔女ビューティーアキラが許さないよ」
 魔女っ子仮装でキラリンとポーズをとったのち、そっと住人から紅茶を取り上げキッチンへと向かって行く章。
 そして蜂蜜生姜な紅茶を淹れ直してやった。
「少し休憩したらどうかな? その間に僕がとっておきの、そう、この国ならではのカロテン豊富な料理を作るからね」
 ハラスメントの酷いオウガを倒すために。
 住人たちへ、にっこりと微笑んで章は言うのだった。

 キッチンに立つと、ついてきたリスが「猟兵さん、何を作るの?」と尋ねる。
「僕、激辛料理が好きなんだ――そう……メインは唐辛子さ」
 食材のある場所からたくさんの唐辛子を取り出した章が一つをつまみ。
「カボチャに飽きた口には丁度いい筈さ」
 強力粉に打ち水をし、指で混ぜ回す。練り状のおからのようなものへと変化したそれを、更に優しく擦り合わせてふわふわと混ぜていく。
 そうしてくとやがてグルテンが発生し、コシのある生地が仕上がってきた。すり潰した唐辛子を混ぜ込み、寝かせる。
「猟兵さん、何か手伝えることってある?」
「それなら、洗い物とかの片付けをしてくれるかな」
 リスとアライグマの申し出を有り難く受け、掃除の苦手な章はそう頼んだ。キッチン台を拭くリスと、洗い物をするアライグマ。
 麺を作り、スープに取り掛かろうとしている現在、キッチンは結構な散らかり具合となっていたのだ。
 味噌ベースのスープを作り、ブレンドとして豆板醤、ラー油、山椒を投入。
 その時、戻ってきたバレエのおっちゃんが「こらー!」と叫んだ。
「楽団! さぼってちゃだめだろう!?」
「ふええ」
「しょ、しょうがない、皆、演奏していこう」
「はろうぃん飽きた~」
「じゃあ、これでいこう」
 タクトと振った時計うさぎが合図を送る――奏でられるのはクッキングにぴったりなクラシック音楽だ。
 これにはおっちゃんも怒る。チャンチャラララと音楽に合わせて鍋をかき混ぜる章に気付いたのだ。
「こらー! ハロウィンの邪魔をするのはお前かぁぁ!」
 高く跳躍し、掲げた手はスワンの翼のように。キッチンに立つ章へと向かってきたバレエのおっちゃんはキックしてくるのだが、章は、音楽に合わせてひらりと避ける。
 鵜飼流人間奥義『空気を読む』……! ざるをおっちゃんに投げつけ、
「構えて」
「!?」
 ざるを構えたおっちゃんに麺を湯がいていた鍋をひっくり返すように投げつけた。
 無敵のオウガは熱いお湯でも、大丈夫。
「アッチィィ!!」
 熱いものは熱いけれども、大丈夫。
「おっちゃん、お手伝いありがとう」
 サッと麺を取り上げて、器に盛り付けていく章。スープを入れ、彩りにほうれん草、小松菜、青唐辛子を添えた。
 仕上がりに乗っけるのは油で炒めて刻んだ鷹の爪だ。たっぷりと、山を作るようにのせて。
「あ、そうそう。海苔も添えなきゃね」
 旨味成分で深みのある味を出してくれる海苔……果たして、旨味を感じ取れるのだろうかという料理ではあるが――そう、これは。
「おっちゃん、出来たよ。僕の激辛愛がこもった、カロテンたっぷり魔女の激辛地獄ラーメンだ……」
 香りを嗅げば鬼も泣く代物であった。
「食べてくれるかな?」
「くっ、見るからにやばそうだが――しかしっ!」
 ここは、オウガ・オリジンのユーベルコードで作られたハロウィンの国。悪食の限りを尽くしたオウガの力に、配下であるバレエのおっちゃんは抵抗が出来ない。
 操られたかのようにテーブルへとつき、箸を持つ。
「……はぁ、いただきます」
 一種の儀式であるかのような呪いともいえよう。
 ずるずると麺を啜ったおっちゃんは次の瞬間、ごふぉっと咽た。咽ながらも啜る動きは止まらない。
 サングラスをしていても激辛は目に染みるし、涙も鼻水も止まらない。
 苦しみ食べるおっちゃんの姿は、違った意味で住人たちを震え上がらせた。
「ひえ……たべてるぅ」
「ハロウィンの呪いこわい」
 水も与えられず、カロテンたっぷり魔女の激辛地獄ラーメンに「やさしさ」があるとするならば、鷹の爪を避けたほうれん草と小松菜のスープに浸かっていないゾーンのみ。まあ一瞬で獄炎へと沈んでいく儚いものだが。
 普通のラーメンではまたひと味違った旨味ゾーンな海苔も、スープを吸ってしまえば猛烈に辛く、そして下手をすれば息も絶え絶えな喉に張り付く。
 おっちゃんのムダ毛のない、綺麗な肌が真っ赤に染まっていった。赤鬼のようだ。
 本来、味噌はまろやかな旨みと香りを持つ。けれども激辛ブレンドされたベースの味噌は掌をくるりと返すように、辛さに更に便乗したものへ。びりびりとした舌の痺れ、胃と肺もまた悲鳴を上げていることだろう。
 いっそ殺してあげた方がマシなんじゃないかなというレベルで苦しみ、スープも飲み干したおっちゃんは机に突っ伏した。
「ふぇぇ……オニチクがいっぱいだよぅ……」
 おっちゃんを可哀想に思った住人がお水をあげる。
「ここの住人さんは優しいね。おっちゃん、ラーメンは美味しかったかい?」
 章が問えば、おっちゃんは震える腕を持ちあげて親指を立てた。辛さは別として美味だったようだ。
 水を飲み干したおっちゃんは、ごほんごほんと咳き込んでいる。
「う゛づぅ……ごほっ……ごふっであれば」
「? 何て言っているのか、分からないよ」
 耳に手を当て、よく聞こえるように身を屈める章。
 普通は食べながら賛辞を送るのだが、このように惨事となってしまったため地の文で許して頂きたいみたいなことをバレエのおっちゃんは言いたいようだ。
「察して」
「おにちくなおにいさん、察して」
 住人たちがうるうるとした瞳で章を見上げてくる。章はそんな彼ら――アリスラビリンス世界の生き物たちに慈愛の笑みを浮かべ頷くのだ。
「うん、大丈夫さ。僕もたぶん空気は読めるからね。……ほら、おっちゃんも、もうお行き」
 おっちゃんの手を取り、広場の外へと連れて行った章は、捕まってしまったスワンを解き放つように、おっちゃんを解き放つ。
 バレエのおっちゃんはよろよろとしながら、そしてたまに咳き込みながら、いつか野垂れ死にそうなふらふらとしたダンスステップで去っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
【KOR】

幽兵さま、サクラコさま…
この方、頭だけでなく下半身にも
鳥さんの口があるようにお見受けするのですが
どちらのお口に食べ物を運べば良いのでございましょう?
吐き出す…?なるほど納得でございます

フルーツをふんだんに使ったホールケーキと
得意料理のアップルポテトパイをご用意
第六感・野生の勘にてキックを見切り避けて
ふふ、幽兵さま、格好良くしていらっしゃいますよ

サクラコさま、お料理を致します際は
おいしくな~れ、と念じながら作ると良いと伺いましたよ

まあ、サクラコさま
味見してくださるのでございますか?
いかがでございましょう?うまく出来ておりますでしょうか

ええ、幽兵さま
今度は幽兵さまのためにお作り致しますね


鏡彌・サクラコ
【KOR】
下についているのはおまるの頭に見えますので
場合によっては何か吐き出してきそうで怖いでいす
幽兵さまは変態が治っていませんねい
狸じゃないでいす!

サクラコは
ホイップクリームをしっかり乗せて投擲用パイ作りします
これでも食らえ
と念を込めて

キックは銅鏡で受け流します

ベイメリアさまのケーキ美味しそうですねい!
サクラコにも味見させてくださいませ
んー!美味しい!
おっさんにあげる分がなくなりそうでいす

ベイメリアさまの次に
パイ装填完了
もちろん食べる作法は
顔面にぶつける
でいす

さあ幽兵さまもご一緒に!
全力で
これでも食らえ!

おっさんがぶつけられても普通に食べそうなので
とどめの技
84枚の銅鏡からパイを降らせます


花屋敷・幽兵
【KOR】
誰このオッサン。
下のアヒル口は某バレエ団のオマージュかな?
後なんで俺後ろの服がないの?

料理を食わせると倒せる?ほう…
女の子っぽいのはベイメリアと一応サクラコもそれっぽいのを作っとるな
俺は…でっかいフランクフルトかな?
アツアツのを食わせてやるぜ…駝鳥倶楽部のようにな!
ホレホレ、頬張るがよい…!キックは槍で華麗にさばく…カッコいいだろ、ベイメリア
サクラコはどんどん何か丸い奴を飛ばせ!タヌキパワーだ!

ベイメリアのケーキ旨そうだな、今度作ってくれ。
今回はオッサンに食わせよう。
パイを食らえや!後俺のも(ねじねじ)

そして仕上げは蒸気エンジンで槍ぶっさしだ!
行くぜ俺の女達よ(調子に乗る) 



「ベイメリアさま、ワルイコしましょう♪」
「まあ、悪い子ですか?」
「はい、ちょっとつまみ食いするのでいす♪」
 カシャカシャと泡だて器でかき混ぜる心地の良い音に、きゃっきゃとした女子の会話が聞こえてくる。ホイップクリームをつまみ食いしてみた、鏡彌・サクラコとベイメリア・ミハイロフの楽しそうな声に癒されているのは花屋敷・幽兵。何やらうんうんと一人で頷いていた。
 焼いた石を敷き詰めたレトロなオーブンからは美味しそうな香りが漂ってきている。
 スポンジケーキは既に焼き上がっており、今中にあるのはベイメリアの得意料理、アップルポテトパイだ。サツマイモとリンゴの甘い香りがとても優しい。
 キッチンで調理を行う三人――サクラコはたくさんのホイップクリームを使うようで、懸命に量産中だ。
「これでも食らえ、これでも、食らえ……!」
 念を込めながらクリームを掻き回すサクラコに、ベイメリアは思わず吹き出してしまった。
「ふふっ、サクラコさま、お料理を致します際はおいしくな~れ、と念じながら作ると良いと伺いましたよ」
 途中まで一緒にホイップクリームを作っていたベイメリアは、今はケーキ生地にデコレーションを施しているところ。生地と生クリームの間に、今の旬であるブドウや梨、キウイやリンゴなどのフルーツをふんだんに使い、飾り切りにもしたそれを飾っていく。
 幽兵が焼くのは屋台でよく見る串付きのフランクフルト。
 女の子っぽいものを作るベイメリアの様子を眺め、次にサクラコを眺め――、
(「女の子っぽいというかそれっぽいというか」)
 投擲用パイを作るサクラコだが、これは幽兵にしてみれば「銅鍋」と同じジャンルに分類されるらしく……それっぽいというかアレっぽい、という場所に彼の中では着地した。

 その時、すぅすぅとした幽兵の背中にオウガの殺気が突き刺さった。
「何者!?」
 バッと振り向いた幽兵が誰何すれば、華麗なピルエット・アン・ドゥオールを披露し森から出てくるバレエのおっちゃん。
「ふはははは、ハロウィンの準備か? 結構結構!」
 ダンスステップに伴って股間のスワンだかアヒルだかがビョンビョンと動く。
「……誰この変態、いやオッサン」
「幽兵さま、サクラコさま……この方、頭だけでなく下半身にも、鳥さんの口があるようにお見受けするのですが……」
 おっちゃんの綺麗なうるつや肌なスキンヘッドを見て、そして鳥さんの方にも目をやって呟くベイメリア。ちょっと困ったような、おろおろとした声。
「どちらのお口に食べ物を運べば良いのでございましょう?」
「下についているのはおまるの頭に見えますので、場合によっては何か吐き出してきそうで怖いでいす」
 シリアスな表情でサクラコが言った。
「何か。え、何を? え、怖」
「吐き出す……? なるほど納得でございます」
 ぞわっとした悪寒に襲われ剥き出しの背を震わせる幽兵と、純粋に納得するベイメリアのなんと対照的なことか。
 おっちゃんはジロジロと猟兵の作っているものへ目をやる。
「しかし作っているものは、ハロウィンらしくないな! ここはカボチャを混ぜ込んだクリームやカボチャケーキはどうだろうかっ!?」
 姑かな。
「おっと! サクラコとベイメリアの、キャッキャウフフな女子時間は邪魔させないぜ! 俺が守る」
 焼いていたフランクフルト(大)を両手に構え、幽兵が立ち塞がった。
 おっちゃんは両腕を上げ、手首を翼のようにばっさばっさとさせるスワンの構え。
 互いに窺うような初手。
 轟! と爆風が発生するおっちゃんのキックへ、幽兵のダイタク=ヘリオスの穂先が螺旋を描き突き出される。風を切り、すね毛のない綺麗なおっちゃんの脚をいなす幽兵。順手逆手と長柄を繰り、おっちゃんを翻弄する。
「――カッコいいだろ、ベイメリア!」
「ふふ、幽兵さま、格好良くしていらっしゃいますよ」
「よし!」
 ベイメリアの優しく柔らかな、透き通った声にテンションの上がった幽兵が跳ぶ。
「アツアツのを食わせてやるぜ!」
「ハッハッハッ! 美味しくいただきます!!」
 跳躍した二人が交差する――おっちゃんの口に、そしてアヒルの口にフランクフルトを突っ込んだ幽兵であったが、おっちゃんは食べながら瞬時に体を丸め、過ぎ行く幽兵の背を蹴った。
「ぎゃあ!? トゥシューズに生々しい感触! お前ナゼ裸、ヘンタイか!?」
「おっさんに言われたくねぇぇぇぇ!!」
 そんな会話が空高らかに交わされて、更なる高度を得たおっちゃんは真っ直ぐに女子のいるキッチンへ飛び込もうとしている。
「ぎゃあ、ベイメリアさま! ヘンタイがこっちにきます!」
 思わずといったようにベイメリアを庇い立ったサクラコが、錬成カミヤドリにて数多の銅鏡を放つ。作ったばかりの投擲用パイを掬い上げ――三つほど投げる!
「むっ!?」
 オウガにとって呪いともいえそうなハロウィンの法則が発動し、おっちゃんが投擲されたパイに喰らいつく。けれども被弾した真っ白なバレエ衣装はさらに真っ白なクリームでデコられ、全身甘ったるい香りに。
「!! 味のない投げパイかと思えば、甘い……! ふわふわのホイップクリームをここまで育て上げるのは大変だっただろう。偉いぞ!」
「頑張ったのでいす!」
 褒められて胸を張るサクラコ。そこへすかさず幽兵が、
「サクラコ! 胸を張るな、ぽんぽこりんが目立つぞ」
「狸じゃないでいす!」
 仲間にも思わずパイを投げてしまうサクラコの乙女心。ぷんぷんと頬が膨らんでいる。
「まあ、サクラコさまったら。ほら、こちらを召し上がってくださいませ。いつものにっこり笑顔にきっと戻られますよ」
 出来上がったホールケーキの一つを切り分けて、ふわふわなそれを差し出すベイメリア。
「わあ! ベイメリアさまのケーキ美味しそうですねい! 味見しても良いのですか?」
 ぱっと咲綻ぶ花のような笑顔となったサクラコは、受け取ったケーキに目を輝かせてフォークを手に取った。
「いただきます。――、――!」
 ふわふわなスポンジ生地と、きめの細やかな生クリームは口の中で甘く広がり、追ってフルーツの爽やかな酸味。
「いかがでございましょう? うまく出来ておりますでしょうか」
「んー! 美味しい! とっても美味なのでいす!」 
 ぱくぱくと食べ称賛するサクラコに、嬉しそうに頬染めるベイメリア。
 バレエのおじさまもどうぞ。と差し出されたホールケーキ、そしてリンゴの芳しい香り、サツマイモのねっとりとした甘さのハーモニーが見事なアップルポテトパイを食べて行くおっちゃん。
「うむホールケーキはご褒美だな! 食べていると贅沢な気分にもなり、アップルポテトパイは麗しき女性の家庭の味が……! ぐっと、胃も心もわしづかみにされる」
 そして、投擲されべっちゃりとついたパイのクリームを舐めるバレエのおっちゃん。
 そんなおっちゃんの舐めプレイから若干目を逸らしつつ幽兵がフランクフルトを差し出せば、フランクフルトも自然とホイップクリームがべったりと付着した。
「銅鍋、頼みがあるんだが。ここ、モザイク処理」
 なんか色々絵面が酷いので銅鏡――を通してサクラコに要請すれば一時的に壁が作られた。

 おっちゃんが落ち着くまでの間、再び懸命にホイップクリームを量産していたサクラコ。
 銅鏡ひとつひとつに、パイを装填し――それぞれを狙撃位置へ。
「投擲用パイの食べる作法は何だか分かりますかねい?」
「パイ? 普通に食べるのではだめなのか?」
 不思議そうに尋ね返すおっちゃんへ、サクラコは楽しげな笑顔を浮かべてみせた。
「ふふーん、食べる作法! それは、顔面にぶつける! でいす!」
 ババババッと銅鏡たちがパイを投擲していく。
「ならば!! 全てを顔面にて受け止めてやろうぞ!!」
 バレエのおっちゃんの漢気溢れる言葉に「まじかよ……」と幽兵。
「ベイメリア、見ろよ。オッサンがクリームの海に沈んでいく」
「アヒルさんも食べ放題でございますね」
 良かった、とベイメリア。
 繰り広げられるクリームプレイに、やはりやや目を逸らす幽兵。
「……そうだ、ベイメリアのケーキ旨そうだったな、今度作ってくれ」
「ええ、幽兵さま。今度は幽兵さまのためにお作り致しますね」
「やった! 約束だぞ! ――サクラコ、俺も戦う!」
 ベイメリアの返事に、ガッツポーズを繰り出した幽兵が槍とフランクフルトを持ち生クリームの海へと突っこんでいく。
「はい、幽兵さまもご一緒に!」
 サクラコが勇ましくそう言ったかと思えば、「行くぜ俺の女達よ!!」とツッコミどころいっぱいな幽兵の叫び――銅鏡ひとつが乗せたパイを幽兵に投げた。
「!!」
 一瞬にしてホイップクリームまみれとなる――その惨状に、ベイメリアとサクラコは顔を見合わせて、同時に笑ってしまった。

 戦いであってもどこか楽しい。それもまたハロウィンの国の法則なのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

南雲・海莉
【かんさつにっき】
UCでメイド服の奉仕レベルを100にしておもてなし

材料に圧力鍋は持参したわ
残るは南瓜に…うん、カテキンだもの
茶樹もある
摘んだ生茶葉は乾煎りし、水分を飛ばして前菜代わりの菓子に

給仕の間に紅茶はみりんと砂糖で味付けて鶏肉を煮込み
南瓜は餡にし、抹茶を混ぜ込んだ求肥に包んで

鶏肉の紅茶煮も、抹茶と南瓜の練り切りも義兄が作ってくれたレシピ
『茶はいつも人を癒すために』
その言葉は、想いは私の中にも刻まれてる
そう、恐怖の為にお茶の時間はあるわけじゃないの

ウサミミ黒南瓜さんも可愛いわ

…あれが、木元さんちのパパ直伝のレシピ
愛を感じるわ
…でもお茶会はお仕事の後で、ね(確保されたものから目を逸らし)


木元・杏
【かんさつにっき】
海莉も来てた。リンデンにもご挨拶
そして海莉の本気を、見た>奉仕100

わたしも負けてられぬ
UCで割烹着姿に変・身!
南瓜は怪力でとりゃっ(割る)
身をくりだし潰してこねこね
衣をつけて…油にとりゃっ(揚げる)
ん、かぼちゃコロッケの完成!(ドヤ顔)

ふふ、南瓜饅頭が這い寄る日常の風景
…?海莉、どうかした?
小太刀のお料理にもうさみみ(型の人参薄切り)つけよう(ぷす)

お饅頭を4つ捕獲し
さ、皆の揃えて美味しくいただこう♪(そわそわ)
住人さん達も一緒に食べよう
お茶会は心を満たす
優しい言葉にこくりと頷き

……ぇ、おじさんも欲しい?
じゃ、じゃあ少ぅぅぅぅしだけ…あ、たくさん!←本来の目的を思い出した


木元・祭莉
【かんさつにっき】ダゾ♪

おいら、木元家伝来、這い寄る饅頭を作るね!

父ちゃんのレシピはっと。

『南瓜は、撫でて柔らかくしてから中身を叩き潰す』

ふむふむ。(ポンポンで撫でる)
てや!(ぱんち!)

わわ、飛び散った!?(おっちゃんに向け)
集めるの手伝ってー!

『茶巾で包み、油をかけてから点火する』

ふむふむ。(手拭いを被せる)
ファイヤー!(点火!)

うわ、叫び声あげた!(おっちゃんに向け)
ドコ行くのー!?

『駆け出したらウサ耳を挿し込む』

ふむふむ?(捕獲)
ウサ耳……で飾る!(ぐさ!)

『おとなしくなったら成功』

あ……這い寄り始めた!(おっちゃんに向け)

おっちゃん、南瓜饅頭だよ♪
美味しく食べてね!(お口に飛び込む)


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

出たわねおっちゃん
ハロウィンだからって変な衣装…はいつもの事だったや
色々迷惑な奴だけど
『ピーマンの木を南瓜に』そこだけはナイスだわ!(サムズアップ
そんなおっちゃんの為に
美味しい料理を作ってあげようじゃないの♪

という事で
オジサンも手伝って(召喚

海莉のメイド力が100に!?
やるわね、私も忍者力を…忍者力って何だろ?

ここはワイルドに炭火焼とか(焦げてる
出汁で煮込んでそぼろあんかけに(焦げてる
何でも黒くなるのは…そう、忍術よ!(誤魔化し
ピーマンじゃないからきっと美味しい(お任せ

ウサ耳付いたら黒ウサギに
こっちは這い寄らないよね?
這い寄…これはこれで可愛いかも(ほにゃ

さあさあ召し上がれ♪



「海莉」
 聞き慣れた声に呼ばれ南雲・海莉が振り向けば、木元・杏が駆け寄ってくるところ。
「杏さん――みんなも、こんにちは」
「ん、こんにちは。海莉も来てた。リンデンも、こんにちは」
 【かんさつにっき】の皆が集まって挨拶を交わしていると、「わふっ」とリンデンも尻尾を振ってご挨拶。
 そうっとリンデンを撫でていた木元・祭莉は、ふと海莉を見上げてにぱっと笑った。
「メイド服かわいーねー」
「うん、何だかオーラを感じるっていうか……」
 むむむ、と目を凝らして海莉を凝視するのは鈍・小太刀だ。
 それもそのはず。屋敷の懐刀とも呼ばれる、数多の仕事をこなすスティルルームなビクトリアンメイド服を着こなす海莉はユーベルコード・朱ノ華七変化によって並々ならぬ奉仕力を得ていた。
 立ち居振る舞いも違ってくるというものだろう。
「やるわね、海莉。ここは私も忍者力を……。…………ん? 忍者力って何だろ?」
「ツンツンする?」
「それは関係なーいー」
 茶々を入れてくる祭莉に返す小太刀。
「わたしも負けてられぬ――そう、わたしはクールな女」
 ユーベルコード、どれすあっぷ・CBA(クールビューティーアン)を発動した杏がくーるびゅーてぃーな割烹着姿となった。三角巾も忘れずに頭に装着。
 持参した圧力鍋をキッチンに置き、海莉は微笑む。
「ふふ、みんなやる気満々ね。頑張っていきましょう」
「「「れっつ・くっきん!」」」
「わふん」


 渋い緑色のカボチャを手に取った杏。
「調理、開始」
 まな板の上にカボチャをセットし、両手でカボチャをがしっと掴んだ。
「かぼちゃは――とりゃっ!」
 ビビビッと震えたカボチャに更に力を籠めれば、カボチャは割れた。
 割れた。
 ……別にカボチャが軟弱なわけではない。ちゃんと硬いレベルMAXなカボチャなのだ。杏が怪力なだけである。
 種を取って、ここでようやく包丁を使って切って、柔らかくするために茹でる。
「まっしゅ、まっしゅ」
 茹でて粉ふきカボチャとなったそれをボウルに入れて、潰す杏。皮も少し入れているので、ちょっと尖った感触。混ぜる段階で少しの小麦粉を足して。
「まるくする」
 こねこねと形を整えていると、リンデンがやってきてふんふんとカボチャの匂いをかいでいる。
 こねこね。
「……ん、これリンデン」
 丸、リンデン、うさぎと色んな形で作ってみる杏は、それに衣をつけていった。いつもの通り、小麦粉・溶き卵・パン粉の順番だ。
 そして高温にした油に、
「とりゃっ」
 と勢いづいた声で、そうっと入れてじゅわじゅわと揚げていった。
 そうして出来上がったのは――。
「ん、かぼちゃコロッケの完成!」
  可愛らしくどやぁっとした顔になる杏。
 菜箸で持てばざしざしとした感触。油を切って、揚げたてのカボチャコロッケを盛り付ければ、そこには黄金の山が出来ていた。

「あとは……カボチャと」
 自身のキッチンにカボチャを置いたあと、海莉は周囲を見回しながら探し歩く。
 そう遠くない場所で茶樹を見つける海莉。
「今の時期だと秋茶葉かしらね」
 腰ほどの高さのチャノキから葉の小さなものを摘んでいく。
 摘んだ生茶葉は乾煎りして、水分を飛ばしておいた。
 と、ここで華麗なピルエット・アン・ドゥオールを披露し森から出てくるスワン――バレエのおっちゃん。
「来たる本物ハロウィンの準備か? 感心、感心!」
「出たわねおっちゃん! ハロウィンだからって変な衣装……は、いつものことだったや」
 げっ、と一番最初におっちゃんを捉えた小太刀が言った。
 バレエのおっちゃんの奇抜な格好も、ハロウィンの国だからか馴染んでいる(たぶん)。
「こう、視界的にも色々迷惑な奴だけど、『ピーマンの木をカボチャに』――そこだけはナイスだわ! そんなおっちゃんのために美味しい料理、作ってあげるから待ってて!」
「こちらへどうぞ」
 サムズアップしながらおっちゃんへと話す小太刀。そしてテーブルへと案内するのは海莉だ。
「しばらくお待ちくださいませ。お茶と前菜代わりのお菓子をお持ち致します」
 一礼。
「これはこれは、ご丁寧に。ありがたく待たせていただこうかな」
 ダンスステップを刻んだのちに着席するおっちゃん。
 給仕をしながらも、海莉はまだ調理中。
 わふわふとついてきたリンデンに微笑みを返して続ける。
 みりんと砂糖で味付けた鶏肉を紅茶で煮込み、カボチャは鍋で煮詰めて餡にした。
 煮込んだり冷ます間に、餅粉と砂糖をよく混ぜて、更に熱を通しながらよく混ぜる。艶が出てきたところで、あらかじめ敷いておいた片栗粉の上に広げた。まぶしながら指で広げていけば求肥の出来上がりだ。
 冷まして、もっちり柔らかなそれで、抹茶を混ぜ込んだ先程のカボチャ餡を包んだ。
 結ぶ先は捻ったり、小さな餡を乗せたり。残った抹茶で化粧を施してみたり。
「――鶏肉の紅茶煮と、抹茶と南瓜の練り切り……完成ね」
 どこか懐かしそうに海莉は呟いた。

 おっちゃんが席へと行くのを見送って、腕まくりをする小太刀はやる気満々であった。
「ということで、オジサンも手伝ってね」
 サモニング・ガイストで鎧武者の『オジサン』を召喚した彼女は早速何を作ろうかと相談をする。
「ここはやはりお肉かな? 手羽先あるし、地鶏とかも、あと小魚~」
 最初に決まったのは炭火焼だ。
 炭火を起こし、網を構えた。豪快に肉をのせて焼いていくと、どうも火力が足りない気もする小太刀。
「ねえ、オジサン、もっと炭火がいるかな?」
 と小太刀が言えばオジサンが炎を繰り出した。ゴウッ! と燃え盛る炎。
「わ~、あったかーい……ってコレ勢い良すぎじゃ……?」
 手羽先などはじわじわと端っこの方で焼いた方が宜しいのだが、火球の如き場となったそこに小太刀はおろか菜箸すらも差し込むことなどできなかった。
 結果、肉の炭火焼は消し炭に。
「……これ、元々の炭? それともお肉の炭? わっかんないや。――ま、おっちゃんなら食べてくれるよね」
 キラキラとした笑顔で小太刀はそれらを皿に盛りつけた。
「きゃうん……」
 匂いを嗅ぎ取ったリンデンが小太刀を避けて歩いていく。
「あとは、出汁で煮込んだものを……」
 包丁による斬撃でカボチャを捌き、鍋に投入。そぼろ肉も入れて調味料を入れて、火にかけた。しかし水加減がよくなかったのか、それとも火が強すぎたのか、鍋も中身も焦げつき悲惨なこととなった。
 菜箸でガシガシと掻くも、そぼろあんかけはすっかり鍋と一体化してしまった。
「む~、まあおっちゃんなら……あ、オジサンも見てないで手伝ってよ」
 しょうがないな、って感じでオジサンは団子を戸棚から取り出した。昭和の香りがする仕舞い方である。
「それじゃあ今度は簡単(?)に焼き芋……焼きカボチャでも」
 ――まあそれも黒くなるんですけどね。

 さて、海莉の給仕を受けながらおっちゃんは、何だか久しぶりとなるような気がする癒しのひと時を過ごしていた。
 思い返せば激辛地獄を味わったり、ホイップクリームプレイをしたりと色々なものを食べてきた。
 ハロウィンの国の、どこかどよんとした陽射しは生暖かく、うとうととしてしまいそう。

「よーし、おいらは木元家伝来、這い寄る饅頭を作るぞー」
 れっつ・くっきん! から突き出した腕をグルグル回したあと、祭莉は懐からメモを取り出した。
「えっと、父ちゃんのレシピは、っと」
『かぼちゃは、なでてやわらかくしてから中身をたたきつぶす』
 かぼちゃがいるのかぁ。でっかいのあるかなー? と、まずはカボチャ探しだ。
 渋い緑色、鮮やかなオレンジ、桃色のカボチャやどどめ色とか、様々なカボチャがあるようだ。
「おっちゃん、こっちとこっちとこっち、食べるとしたらどれがいー?」
 席に着席してのんびりと過ごしている最中のバレエのおっちゃんへ祭莉が問う。
「一番最初の普通のカボチャだな」
「えー、うーん、じゃあオレンジにしようかな」
「おじさんの話を聞こうか??」
 仮装で手に入れたポンポンで撫でて、撫でて……撫でて? やわらかくなった気がした辺りで「てや!」と拳を突き出した。
 捻りを加えたパンチで無残に飛び散るカボチャ。ぺっとりとしてどこか硬さも残るカボチャの破片まみれになるおっちゃん。
 祭莉の手もどろっとしたオレンジ色に染まるが「あちゃあ」と当人はどこかのんびりとしている。
「おっちゃん、集めるの手伝ってー」
「…………しょうがないな」
 おっちゃんにしてみれば、料理というよりも泥遊びに近いソレである。飯杓子を用いてかき集めたどろっとしたナニカを集めて祭莉の方へと寄せてやった。
 地べたに座る祭莉の側にしゃがむおっちゃん。股間のスワンが揺れている。
 次は、と父のメモを見る祭莉。
『茶巾でつつみ、油をかけてから点火する』
「ふむふむ?」
 集めたソレに手拭いを被せて、メモの通りに油をかけて、点火棒で「ファイヤー!」と点火すればそれはあっというまに火達磨となった。
『ギッ! ギィィィヤヤアアァァァ!!』
「!?」
 マンドラゴラの叫びに似たものである。耳を劈くそれはおっちゃんに向かって放たれていて、作り手……創り手である祭莉には向かない。
 アルダワ魔法学園で何度かマンドラゴラを扱ったことがあるのだろう、聞き慣れたくはない、しかし聞き覚えのあるその声にパッと反応したのは海莉と小太刀であった。
「ふふ、南瓜饅頭が這い寄る日常の風景。……? 海莉、どうかした?」
「そ、そう……あれが、木元さんちのパパ直伝のレシピ……愛を感じるわ」
 杏の言葉に思い当たった海莉は警戒を緩め、にこやかに微笑む。
 何度か見たことがあるのだろう小太刀は、目(意識)を合わせたら負けだとでもいうように、その目を逸らした。
「ドコ行くのー!?」
 火の勢いは衰えたものの、どろっとしたソレは小さな触手のようなものをたくさん出して駆けて行く。慌てて追いかける祭莉の手にはウサ耳。
『かけだしたらウサ耳を挿しこむ』
 人の歩みほどのスピードで駆けていたソレをあっさりと捕獲し、ぐさっとウサ耳を突き刺す祭莉。
『おとなしくなったら成功』
 どきどきしながら様子を見る。うぞうぞとしたソレは、駆けることを止め、這い始めるのだった。
「おっちゃーん! 南瓜饅頭だよ♪ 美味しく食べてね!」
「あぁぁぁハロウィンの法則が憎い!! いただきます!!!」
 半ばヤケとなったバレエのおっちゃんが叫び、這い寄り口に飛び込んできた南瓜饅頭を食べ……飲みこみ始める。
 這い寄る饅頭にオウガが襲われる――否、苦しむオウガに食されているというレアな光景だ。
「はわ……、ハロウィンの森を歩いていたらホラーなスライム? プレイな光景が……」
 通りかかったアリスラビリンスの住人たちは硬直したのだった。


 広い――ものすごーく広いテーブルに席を移し、ひとまずは這い寄る南瓜饅頭たちから対角となる場所に座る四人と、近くにいたアリスラビリンスの住人たち。
 お茶会をやるって? わーい! と集まってきたのはリスとアライグマ、うさぎとたぬきの四人。
「揃った? そろった? 皆で美味しくいただこう?」
 そわそわとした杏の言葉で「いただきます」の声が次々と上がっていく。
「いただきます♪」
 わあい、と杏はまずは味見がてら自分のコロッケを頬張り、次に海莉の鶏肉の紅茶煮を食べて、更にぱああっと輝かしい表情となった。
「海莉、海莉、これ美味しい♪」
 食感はしっとりと、それでいて爽やかな風味の紅茶煮。
「こっちの練り切りも凄くおいしーよー」
 と、小太刀。かぼちゃコロッケもさくさく、ほくほくで幸せ気分だ。
 ニコニコ顔の祭莉もずっと口の中に何かが入っている状態であったが、尻尾がぶんぶんと動いていて今の気持ちを表現している。
 同じくリンデンも尻尾を振り振り、分けてもらったものをお行儀よく食べている。
 ありがとう、と言って海莉は続ける。今日垣間見える、懐かしそうな表情で。
「これはね、義兄が作ってくれたレシピなの」
『茶はいつも人を癒すために』
「その言葉は、想いは、私の中にも刻まれてる。そう、恐怖の為にお茶の時間はあるわけじゃないの」
 ――お茶会は心を満たす――その優しい言葉に杏はこくりと頷く。
 分かる気がするなと、小太刀も微笑む。
「そうだな」
 ふっとサングラスの向こうで目を和らげ、バレエのおっちゃんも微笑んだ。襲ってきた這い寄る饅頭を食べ終わったようだ。
「地獄ののど越しだった。少年、ごちそうさまだ。そしていただきます」
「……ぇ、おじさんも欲しい、の? じゃ、じゃあ少ぅぅぅぅしだけ……――あ、たくさん!」
 席に着くおっちゃんを見て「え」としょんぼり顔になった杏だったが、目的を思い出したのだろう。慌てて言い直す。
「うむ。いただきます」
「さあさあ召し上がれ! まずはこれ!」
 小太刀がおっちゃんへと差し出すのは、自分の料理である。こんもりと盛り付けたワイルドな炭火焼である。
「黒いな――いただきます」
「何でも黒くなってしまうのは――そう、私の忍者力が高いから! 忍術よ!」
「にんじゅつ」
 小太刀の言葉に思わず真顔となる祭莉。
 ざしっと噛む炭の音。ざしざししゃりしゃり。
「果てしなく続く、燃え尽きた炭の荒野のような心の潤いを枯渇させる味だな」
 ジャックジャックとした音は、まるで炭の原を踏みしめる音のよう。
「ハロウィンのほーそくっていうよりも、なんか呪いみたいだね~」
 祭莉がそう言えば、おっちゃんは泣きながら食べていくのだった。

 杏がうさみみ型の薄切り人参をつけてくれた炭火焼は、何だか可愛くなって小太刀はずっとにこにこと眺めている。
「黒うさぎみたいで可愛らしいわね」
「だよね! ……這い寄らないよね?」
 海莉の言葉に笑顔で頷きつつ、つんつんと突けば、サリッとした感触。うん、這い寄らない。
 お茶会も半ばに差し掛かり、這い寄る饅頭たちもこちら側のテーブルへと辿り着こうとしているところ。
「祭莉ん作……まあこれはこれで可愛いかも?」
「そうね、可愛いかも……?」
 口調を真似て、くすくすと笑い合った。
 ウサミミがたくさんなテーブルを眺める海莉。

 少ぉぉしカオスな光景だが、声の絶えないお茶会は賑やかで。
 気持ちのこもった料理も大事だけど、楽しく、穏やかな時を味わうのも美味しい食べ方の一つなのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

アヤネさん
流石にそれは大袈裟ですよ
あとそのホットドッグは劇薬入ってません?

それじゃあミートローフケーキを作ってみますよ
ミートローフの表面をポテトクリームでコーティングしてケーキっぽくした城島家ではお馴染みの食べ物なんですよ
ハロウィンですし南瓜の飾り切りをトッピングしましょう
アヤネさんには味見をお願いしちゃいます
他にも手伝ってくれるんですか?
じゃあ飾る野菜を切って貰おうかな

おっと!料理を作ってるんですから攻撃しないで下さい
残像でサクッと回避して距離を取ります
忙しいんでおっちゃんはカラスくんと遊んでて下さい

アヤネさんのホットドッグ?!
私も食べたい

えへへ
ケーキもホットドッグも美味しそうですね


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
こんな変態のおっさんにソヨゴの心のこもった手料理を食べさせるのって人類にとっての損失だよネ
一息で断言

僕も殺意のこもったホットドッグとか作ろうかな

僕にも食べさせてくれるの?
むー
じゃあ僕がしっかり味見してからおっさんにお裾分けだ
仕事だから仕方ないネ

おっさんのキックを避けつつ
すごく手が込んでるネ
飾り付けが可愛らしい
手伝えることがあれば手伝うよ
野菜を刻みつつ

自分の分の準備もしよう

え?ソヨゴ食べたいの?
じゃあ二種類用意するネ

ザワークラウトとレリッシュをたっぷり
焼きたてのソーセージを軽く焦げ目をつけたパンで挟む
ソヨゴにはマスタードとケチャップを
おっさんにはハラペーニョとデスソースをかけてあげよう



「ふぅ~う~、眠くなってきたなぁ」
 ふぁぁんと可愛らしい欠伸をしながらダンスステップを繰り出し、アヤネ・ラグランジェと城島・冬青の視界に入ってくるバレエのおっちゃん。
 眠気覚ましのためかひたすらに優雅に踊っている。今のところ攻撃してくる様子はない。
「こんな変態のおっさんにソヨゴの心のこもった手料理を食べさせるのって人類にとっての損失だよネ」
 はっと吐き捨てるようにアヤネが一息に言い切った。
「アヤネさん、流石にそれは大袈裟ですよー」
「そうかな。この手で物理的に倒せないのが残念だ。僕も殺意のこもったホットドッグとか作ろうかな」
 視界にも入れたくないとばかりに手を振ったアヤネに、冬青はしょうがないなぁって苦笑する。
「そのホットドッグって、劇薬入ってません?」
「大丈夫、ダイジョウブ。入ラナイヨ」
 ニッと笑ったアヤネはカタコトで答えた。

 じゃがいもや、飾り切りしたニンジン、ブロッコリーといった野菜を茹でた冬青。
 ひとまずじゃがいもだけを取り出し、マッシュする。生クリームを少しずつ入れて混ぜていけばなめらかなマッシュポテトの完成だ。
「ソヨゴは何を作ろうとしているの?」
「ミートローフケーキですよ。城島家ではお馴染みの食べ物なんです♪」
「何か手伝えることはある? 野菜とかは刻むのかな?」
「あっ、じゃあお願いします~」
 アヤネがピーマンや赤ピーマン、にんじんを刻んでグリーンピースを用意する。
「はい、冬青」
 同じキッチン。手を伸ばせば届く範囲にいる冬青へと渡し、次に自身で使うキャベツを千切りにした。ピクルスがキッチンの棚にあったのでそれもみじん切りに。
「あとは果実と香草……何を使おうかな」
 材料を探すアヤネ。その一方で、冬青は捏ねた粗挽き肉に野菜を投入。ベーコンを敷き詰めた型に移す。
 ぎゅっと詰めたそれを石炭を敷いた、アリスラビリンスのレトロなオーブンで焼く。
「上手くできるかなぁ」
 熱加減を自分で見なくてはならないので、若干どきどきする冬青。
「アヤネさんのそれは何ですか?」
 待っている間に、アヤネの方を覗きこみ。
「ん、ザワークラウトだよ」
 酢と砂糖などを混ぜた調味液に千切りキャベツを漬け込んでいる。
「今日は特急品。本当はじっくりと発酵させたいところなんだけどネ」
 レリッシュもたっぷり。
「わあ、何だか本格的ですね! 美味しそうなホットドッグになりそう~。私も食べたいです」
「え? ソヨゴも食べたいの? じゃあ二種類用意するネ」
 にこっと笑顔になるアヤネ。つられて満面の笑みを浮かべる冬青であったが、「ん? 二種類?」と首も傾げることに。
 そんな会話をしているとミートローフも焼けたようだ。取り出せばこれだけでも美味しそう。
 完成品に近いそれを察知し、ハロウィンの法則によりおっちゃんが近寄ってきた。
「いただきます……!」
「わーだめだめ! まだですよ! あっちで大人しく待っていてください!」
 冬青が避ければその残像に突っこんでいくところのおっちゃん。
「そうか……まだなのか」
 しゅんとしてテーブルに着席した。
「まったくもー」
 熱を飛ばしてから、表面をポテトクリームでコーティングしていく冬青。さてさて、次はお楽しみの飾りつけ。
「ハロウィンですし南瓜の飾り切りをトッピングしましょう。小さく飾り切りしたニンジンも散らして、っと」
 なめらかなポテトクリームに可愛い形の鮮やか色な野菜が飾られていく。

 グリルで焼いたソーセージ。
 パンも軽く焦げ目をつけて、包丁で切り目を入れた。さく、と音が鳴る。
「うん、程よくジューシーに、パンもカリッと焼けたかな」
 パンにザワークラウト、レリッシュ、そして焼きたてのソーセージを挟み、マスタードとケチャップをかける。慣れているのだろう、その手際は良い。
「おっさんにはハラペーニョとデスソースだ」
 ハラペーニョはまだしも、デスソースは殺しにかかる辛さのものを。
「ソヨゴ、できたよ」
「私もです! わあい、一緒に並べましょう!」
 出来上がり!
「飾り切りが可愛らしいネ」
「アヤネさんのホットドッグも美味しそう~」
 ミートローフケーキとホットドッグを並べて、携帯端末のカメラアプリを起動。流れるように写真撮影する。
「えへへ、どっちもちゃんと美味しそう~。アヤネさんには味見をお願いしちゃいますね」
 そう言って冬青はミートローフケーキを切り分けた。
「はい、僕も、ソヨゴにホットドッグをネ」
 交換して実食だ。
 待ち切れないおっちゃんがキッチンの前で反復横跳びをし始めたので、はいはい、という風にデスソースの方のホットドッグを渡すアヤネ。
「「「いただきます……!」」」
 ミートローフケーキは肉の旨味が濃密にぎゅっと詰まっている。口の中でポテトクリームと絡み合っていく、肉。
「それでいて野菜たっぷり。栄養満点ですよ」
「ソヨゴ、これすっごく美味しい!」
「ほろほろとした肉の大海原にいるかのようだ」
「ありがとうございます」
 アヤネもおっちゃんも大絶賛であった。ちょっと照れたようにはにかむ冬青。
 ホットドッグは本場のものを食べてきた者ならではの出来。
 香ばしいパンに、溢れるほどに具だくさん。ソーセージはパリッと弾む食感で、酸味やピリリとした辛味が絶妙である。
「もう一つ食べられそうです。アヤネさんのホットドッグ美味しい……!」
 美味しかったり、楽しかったり嬉しかったりで、冬青は笑顔だ。
 一緒に食べる時間はいつも楽しく、けれども同じキッチンで作業をするという時間も楽しかったのだ。
 満ちた心は満腹状態で、時間にも「美味しさ」があるのかもしれない。
 デスソースのそれを食べたおっちゃんは顔を青くしたり赤くしたりしながら食べている。
「癖になる美味さ――ぐふッ」
 言葉もなく悶えている。
 そんなオウガを見て、二人は軽くハイタッチをして笑いあうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杓原・潤
いくらハロウィンだからっておっちゃんのその格好はヤバくない?
大丈夫?ほーりつ的に問題無い?

とにかくキックは受けたくないなぁ……って事で、うるうはキックの届かない所まで空中浮遊!
地形が変わったってユーベルコードでびゅーんって飛べば大丈夫!怖いけど!
道具や材料を取るのに地上近くに降りる時は注意しなきゃね。
用意できたら料理開始!
念動力で浮かせたお鍋を下から火の属性攻撃であっためてかぼちゃを蒸して……裏ごしは大変だけど頑張る!
後はお砂糖と牛乳と卵を混ぜて、器に分けてもう一回蒸せばかぼちゃプリンの完成!
ハロウィンって言ったらこれだよね!
チョコとかでジャック・オ・ランタンに出来たらいいな。
さ、召し上がれ!



 アリスラビリンスのハロウィンの国にて、出会ってしまった変態……もといバレエのおっちゃんを遠くから見守る杓原・潤。
 木の幹を盾にし、そっと覗くように。
 おっちゃんは華麗なピケ・ターンを駆使しながあ「ああ、眠い眠い、ふあぁ~☆」と眠気を飛ばそうとしているようだ。
 と、潤に気付いたのか、近寄ってくる。
「うわこっち来た。いくらハロウィンだからっておっちゃんのその格好はヤバくない? 大丈夫? ほーりつ的に問題無い?」
 ちょっとばかし早口に、おませな口調で後退しながら潤。
「大丈夫だいじょうぶ、怖くないヨ。普通だヨ。君はアリスかな? おじさんが食べてあげようね」
「ひえっ、やばいへんなおっちゃんだ……!」
 ウィザードブルームに座った潤は瞬時にウィザーズ・マニューバを展開し、ばびゅんと空に逃げた。
 いかがわしいスワンだかアヒルだかおっちゃんが視界から消えて、安堵の息を吐く。
 あんなすね毛もないつやつやな美脚のおっちゃんのキックは潤だって受けたくはない。少女はこのまま調理をしていくことにした。
「オウガを倒すためだもん。がんばろっと」
 おっちゃんからは少し離れたキッチンを見つけて、カボチャと卵、冷たい魔法のかかった箱からミルクを取り出して、ざっとキッチンの設備を確認した。
 ウィッチーズミーティアが煌き、指先を躍らせるように振るえば材料や、鍋、泡だて器とボウルと様々なものが浮遊しはじめる。
「いっくよー、ついてきてね」
 『みんな』と一緒にふわふわと浮上して再び空へ。
 まな板の上にカボチャを乗せて、念動力を駆使した包丁でざっくり。その間に火の魔法で鍋の底部をあっため続けて、かぼちゃを蒸す。
 料理は魔法であり、指揮する音楽のようなものかもしれない。
 指先をくるくると、時にふわっとゆっくり弧を描き、弾ませる。
 潤は膝の上に寄せたボウルをのっけて、さらにこし器をのせて熱々のカボチャを木べらで押し付けた。
「わ、わ、傾いちゃう――ええーと」
 ここも念動力。なるべく集中して固定して、と、頭も使えば力も使う作業となった。
 裏ごししないやり方も知ってはいるけども、やっぱりきめ細かく美味しいものに仕上げたい。
 少しずつ押し付けて裏ごししていく。
「……ふう、こんな感じかな。腕がぷるぷるするよ」
 再び念動力を浮かせてそれらを手放し、手や腕を振る潤。
「お砂糖、牛乳~、たっまっごー♪」
 歌うように呟いてボウルに投入して、泡だて器をくるくる回しかき混ぜていった。
 一旦片付けるため、そして器をゲットするために再び降下する。
「器は可愛いのあるかな? ……あ、ゼリーの型とかカボチャ型の器がある。あとは――チョコレート細工?」
 冷庫をよくよく見てみれば、三角や平べったい丸形のチョコレート。チョコペンもある。
 色々あるなぁと探索していると、茂みの中から飛び出してくるスワン――否、バレエのおっちゃん。
「アリス! みぃぃぃっけぇぇ!」
「ひえっ、もう来た! アリスじゃないから!」
 型や鍋、チョコレート共に、またまたばびゅんと空に逃げる。
「はー、もーびっくりさせないでよね」
 待機させていたボウルから器や型へと生地を流し込み、もう一回、火の属性で鍋を熱した。

「~♪ よしっ、できた!」

 かぼちゃプリンの完成だ!
「お皿の上に型をひっくり返してーっと」
 ぷるんと出てくる黄色いやつ。
 チョコペンでジャック・オ・ランタンの顔を描けば、ぷるぷる動く表情豊かな可愛いやつになる。
 薄く丸いチョコをのせて、その上に三角チョコをのせれば三角帽子。
 お皿を持って、そろそろと地上へと降りていく潤。
「こっちの可愛い奴はおっちゃんにあげるね! さ、召し上がれ!」
「おおお、なんと可愛らしいハロウィン・プリン……! いただきます」
 潤を狙っていたおっちゃんは、すっかりプリンに魅了されてしまったようだ。
 いそいそと近くのテーブルに着席し、カボチャプリンを食べる。
「む、む、む! きめ細やかな、滑らかなぷいん……! それでいてカボチャだと分かる食感。味も優しいな――」
「うん、よくできたと思う!」
 カボチャの形の器のプリンに、にこちゃんマークをチョコペンで描き、同席して実食する潤も満足の出来だった。
 裏ごしを頑張ったかいがあった。
 満遍なく均等に蒸された絶品のカボチャプリン。
「おっちゃん、おかわりいる――……?」
 まだまだあるよ、と潤が声を掛ければテーブルに突っ伏し眠るおっちゃんの姿がそこにはあった。
 スプーンを手に、ぐうぐうと寝ている。

 気持ちのこもった料理、変わった料理、時にプレイしながらの食事となったけれども、そのどれもが美味しく(一部を覗く)、猟兵たちと楽しい時間(一部を覗く)を過ごしたバレエのおっちゃん。
「……おやすみ、おっちゃん。骸の海でイイ夢みてね」
 潤はバブルワンドをそっと掲げ、魔力をこめた。


 こうして、元カロテンの国、現ハロウィンの国からオウガはいなくなった。
 住人たちは喜び、普通のお茶会をあちこちで開催する。もちろん猟兵たちもご招待だ。
 住人たちは招待状代わりのクッキーを配り、喋るランタンとも交渉し、ランタンはお茶会に参加したり、場を飾ったり。
 楽しく、愉快に。
 これからは住人たちの手でいつも通りに改造され、過ごしやすい国へと変化し続けていくのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月29日


挿絵イラスト