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【Q】ハロウィンと不思議な帽子パーティ

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン

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●帽子をどうぞ
 帽子の森へようこそいらっしゃい。
 木々に色んな帽子が成っているのが見えるかい。

 さあさあ、帽子はいかが。
 素敵な帽子をあげましょう。

 きみの手にした帽子はどんなでしょう。
 大きな口で笑う南瓜の帽子でしょうか。
 ドクロマークが描かれた海賊の帽子かしら。
 苺がのったショートケーキの帽子かもね。
 それとも、ふわふわウサギの帽子かな。

 帽子をかぶれば、あら不思議。
 きみの衣装はたちまち変わってしまうでしょう。
 帽子に似合いのコスチュームにね。

●グリモアベース
「この度見つかった『ハロウィンの国』へ向かってもらえないだろうか」
 クック・ルウはそう言って話をはじめました。
「私が案内するのは、アリスラビリンスにある不思議な力と法則のある処だ」

 今はオウガに支配された『帽子の森』という場所。
 そこでは、木の実のように色々な帽子が木に成っていて。
 おまけに人が訪れると、帽子がひとりでに飛んでくるのです。

「しかも飛んでくる帽子を被ると変身できる。シンデレラのようにな、ドレスアップだ」

 そんなのは御免こうむる。そう思った人もいるかも知れませんね。
 けれど、この国では帽子の森で仮装をした者がパワーアップするのです。
 当然オウガも仮装をしていますから、対抗するにはこちらも仮装するしかありません。

「どんな帽子が飛んできても被ってほしい。国を救う為、よろしく頼む」
 がんばれ、がんばれ。とクックは応援をしました。
 どんな格好をすることになっても、皆ならできると信じているのです。

「ただ、ボスのオウガは特別に強い。オウガ・オリジンから直接力を与えられていてほぼ無敵だ。仮装しただけでは勝てない」

 けれど、ご安心あれ。
 弱点はちゃんとあるのです。

「ご馳走を作るのだ。料理を出されると、オウガは国の定めた法則により絶対に食べてしまう。そして段々と眠くなって、寝ると無敵の力を失う」

 つまり食いしん坊の狼みたいに、そこをやっつけようという訳です。
 とはいえ、どんな料理を作ればいいのでしょう。

「ボスのオウガはお茶会好きのようだ。紅茶に合う茶菓子など、喜ぶのではないかな。とはいえご馳走する料理は好みで決めても大丈夫」

 食材やキッチンは向こうに揃っているのだそう。
 美味しい料理に限らず、気持ちのこもった料理ならば、効果は抜群でしょう。
 ハロウィンらしい料理だったりしても良いかもしれませんね。

「ハロウィンの国を取り戻して、パーティをしよう。楽しみだな」
 そう言うと、クックの掌の上でグリモアが輝き出しました。


鍵森
 舞台はアリスラビリンス。
 不思議な国のハロウィンは如何でしょう。
 🎃今作は地の文が童話風となります。

●1章:集団戦
 幻影を見せる『こどくの国のアリス』
 彼女たちは帽子と仮装を着て、パワーアップしております。
 こちらも仮装をしないと勝ち目はありません。
 自分らしくない格好になっても帽子のせいです。
 是非着こなして下さい。

 『プレイングボーナス』
 森から飛んできた帽子を被り仮装姿で戦うこと。

●2章:ボス戦
 お茶会好きの気狂い帽子『ピーター・ハッタ』
 『ほぼ無敵』の力を持っている為、作った料理を食べさせて眠らせましょう。
 お腹いっぱいになり眠れば一撃で倒せるようになります。
 料理中に攻撃を仕掛けてくる場合もあるので、お気をつけ下さい。
 紅茶を振る舞ってきたりするようです。

 『プレイングボーナス』
 オウガに手作り料理を食べさせること。

●シナリオについて
 こちらは儀式魔術【Q】によって発生した、全2章のみの特殊シナリオです。
 10/31までに成功したシナリオの本数に応じて、ハロウィンパーティ当日、そしてやがて始まるであろう「アリスラビリンスでの猟書家戦」に、何らかの影響があるかもしれません。
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第1章 集団戦 『こどくの国のアリス』

POW   :    【あなたの夢を教えて】
無敵の【対象が望む夢】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    【わたしが叶えてあげる】
【強力な幻覚作用のあるごちそう】を給仕している間、戦場にいる強力な幻覚作用のあるごちそうを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    【ねえ、どうして抗うの?】
自身が【不快や憤り】を感じると、レベル×1体の【バロックレギオン】が召喚される。バロックレギオンは不快や憤りを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●帽子の森へようこそ
 森へ足を踏み入れば、すぐに帽子が飛んでくるでしょう。
 思い切って被ってごらんなさい、変化はあっという間ですからね。
 着替えは終わりましたか? それでは先へ進みましょう。

 猟兵達がとっとことっとこ道を進んでいきますと。
「あなた達、ご馳走を作りに行くんですって?」
 そう言って声を掛ける者達がおりました。
 かなしげな顔をした金髪の娘は『こどくのアリス』というのです。
 彼女たちも帽子を被って様々な衣装を着ています。
「それなら『わたしが叶えてあげる』」
 そう言って、こどくの国のアリスはマッチを擦りました。
 するとマッチの火の中から、幻のご馳走が飛び出します。
「ほら、これでいいでしょう」
 ご馳走を差し出してきますけれど、幻では食べられません。
 気持ちは有り難いけど、此処でお別れしなくては。
「ここに居てよ、わたし達ずっと寂しいのだもの」
桜宮・縒
帽子を被るだけでいつもとは違う姿になれるなんて、不思議不思議
飛んできた帽子を手に取れば、それは桜の花が飾られた夜色の魔女帽子
今のわたしは夜桜の魔女、ね
ふふ、どうかしら?
常とは違う姿にちょっぴり心踊るのはここだけの話
さあ、行きましょう物語を進めるために

キミは孤独なの?
キミは寂しいの?
わたしもひとり、けれど孤独じゃないし寂しくもない

『こどくのアリス』よりも素早く動いて栞を投げつけよう
十二枚の栞、彼女を捕縛して
彼女のユーベルコードを封じるわ
彼女の攻撃は自分の周囲に結界を張って防ごう

わたしではキミの寂しさを埋めることは出来ないの、ごめんね



 綴られた物語の傍らに寄り添う美しい桜の栞は、その足で冒険へと旅立ちました。
 ですからこれは彼女の物語なのです。
 それでは頁を捲るように、お話をはじめましょう。

 森の中へ降り立った、桜宮・縒(桜謐・f30280)は辺りを眺めておりました。
 なんて沢山の帽子でしょう。長いまつげに縁取られた双眸がゆっくり瞬きます。
 まるでコート掛けに引っ掛けたように、森の木の枝々に帽子が連なっているのです。
 帽子は街行く紳士が被っていそうなものもあれば、見たこともないような奇妙な形のものもありました。派手な色をした羽飾りの帽子なぞ、まるで大きな鳥のようです。
 珍しいその光景をよく見ようと首を傾けると、可惜夜をとかしたような艶めく長い髪が肩を滑ります。
 その時でした。
 縒の瞳と髪色に惹かれたのでしょうか、帽子が一つ飛んできて。
 蝶々が花にとまるように、そっと頭の上にとまりました。
「あ」驚いたのも束の間。
 またたく間に縒の着ている衣が、変わっています。
 本当にあっという間のことだったのですよ。
「これは、魔女の格好ね」
 魔女のとんがり帽子は濃藍の空のような色をしていました。そこへ夜風に舞うような桜の花飾りが散りばめられていて、夜に淡い彩りを灯しているようです。
 変じたのも魔女の衣装でした。帽子と同じ色の裾の長いドレスはとても上品で、動く度に滑らかな光沢を波打たせては、揺らめくように布地の濃淡に変化を起こします。細やかな桜の花の刺繍やアクセサリーが、手首の周りや胸元を飾り立てて、まるでドレスに桜の花が咲いているかのよう。
「今のわたしは夜桜の魔女、ね」
 帽子を被るだけでいつもとは違う姿になれるなんて、不思議不思議。
 縒は面白そうに口元を緩めて微笑みました。
「ふふ」
 どうかしら? と、心を踊らせながら、自分の姿を確かめます。
 それはそれは可憐な姿でしたよ。

 物語を進めるために、道を確かめ歩く縒をこどくの国のアリスが引き止めます。
 (彼女は蝙蝠の帽子とドレスを着ていました)
 アリスはマッチの火から湯気の立つココアの入ったカップをとって縒に勧めてきました。
「あたたかいココアを飲んで休憩しない?」
「ありがとう、でも今はいらないわ」
 丁寧に断ると、アリスは残念そうにココアを自分で飲み始めました。
 幻ですから飲む振りなのですけれど。
「ねえ、先へ進んでどこへ行くの」アリスが訊ねます。
「大事な仕事があるの」と、縒。
「それって大切なこと?」悲しげにアリスは訊ね。
「とてもね」縒は頷きます。
 縒を引き止められないと悟って、アリスは暗く沈んだ表情を浮かべていました。
「キミは孤独なの?」縒が訊ねました。
「ええ」アリスが頷きます。
「キミは寂しいの?」もう一度、縒は訊ねました。
「ええ」アリスは重苦しいため息を吐きます。
 周りの空気が冷たく張り詰めて、アリスの心の内から溢れる負の感情が、おぞましい怪物を呼び出そうとしていました。
 その様子を静かな眼差しで縒は眺めます。
「わたしもひとり、けれど孤独じゃないし寂しくもない」
 呟くとともに、ドレスの袖口を翻して。
 取り出した十二枚の栞が宙を飛び、ぐるりとアリスを囲いました。
 結界がアリスの動きと力を封じ込め、無力化します。
「わたしではキミの寂しさを埋めることは出来ないの、ごめんね」
 そうして、戦いの決着がつけられました。
 あたりは静かになります。
 マッチの炎が消えるように、こどくの国のアリスの姿も消えていました。
 ほんの一瞬だけ、縒は悲しげな表情を見せました。
 優しいけれど、どこか儚げな。
 満月の明かりに照らされた夜桜のような瞳を揺らして。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

ハロウィンの国を取り戻す為にも…
…この帽子は結構気に入ってるけれど……仕方ないや…
どんな帽子だろうと被り熟してやろう…!

[覚悟]を決めて飛び出す帽子を被り仮装し敵と戦おう

帽子訳ない…じゃない…申し訳ないけど
今すぐここから立たねばならない…邪魔するつもりならば!

【失楽園】で悪魔共を召喚し敵放つ召喚物共を
数の[暴力]で蹴散らそう

同時に鎖の鞭を打ち振るい[ロープワークと範囲攻撃]で敵群を
強かに打ち据えて痛めつけよう

[存在感と殺気]を放ち[恐怖をあたえ]敵を退けつつ
さっさと森から抜け出そう…!



 彼女は炎と共にありました。まさしく一心同体であったからです。
 そこに罪人あらば、処刑の炎は即座に振るわれるでしょう。
 ですから彼女は地獄の悪魔を引き連れて、この森へと現れたのでした。

 仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は、もう帽子を持っていました。
 森から飛んできた新しい帽子を被らなくてはいけない。
 アンナにとってこの国のルールは、なんとも悩ましいことでした。
 自分の帽子と飛んできた帽子を交換するなんて。帽子に悪いような気もします。
 でも、ハロウィンの国を取り戻す為にも……やらなくてはいけないのだとしたら。
「……この帽子は結構気に入ってるけれど……仕方ないや……」
 小さな溜息をして。
 被っていた帽子をとると、アンナは勇ましく森を見渡しました。
「どんな帽子だろうと被り熟してやろう……!」
 勇敢にもすべてを受け入れる覚悟をしたアンナが叫びます。
 すると、森から無数の帽子達が飛び出してきました。
 自分の帽子を大切にする人に、魅力を感じない帽子がいるでしょうか?
 帽子だってどうせなら優しくしてくれる人の元へ行きたいに決まっています。
 どの帽子がアンナに被ってもらえるのに相応しいか、競争を始めたのも当然の事でしょう。
「おっと」
 勢いに少し驚きながらも、アンナは一番目の帽子をしっかり被りました。(頭に乗り遅れた他の帽子は残念そうに元の場所へ戻っていきました)アンナの姿は一瞬の内に変身します。
 アンナが被ったのは、金色に煌くジランドール(枝つき燭台)をあしらった黒い帽子でした。まるで宝石のような硝子飾りが幾つも連なって、動く度にキラキラと輝くのです。
 燭台は本物の金属で、大きな蝋燭も挿してありましたが、不思議と重たくはありません。
 そして身に纏うのは、金色のドレス。派手すぎずシックな色合いをしていて、首周りや腕に硝子飾りのアクセサリーがあしらわれています。
「ふうん。これはこれは」アンナは体を動かして具合を確かめました。
 動きづらさはあまり感じないようで、満足気に頷くと道の先へ進みます。

「そこ行く貴方、そんな急いでどこへ向かうの」
「わたし達と食事をしませんか」
 蝶々の仮装をしたこどくの国のアリスたちが、アンナを引き止めます。
「帽子訳ない……じゃない……申し訳ないけど」
 アンナは帽子のつばを指で押さえて、そんな暇はないと答えました。
 道を塞ぐように、アリス達が集まってきます。
 おぞましい化け物を喚びながら、無理矢理にでも留まらせようと。
 そうして襲いかかってくるならば、迎え撃つしかありません。
「今すぐここから立たねばならない……邪魔するつもりならば!」
 アンナは鎖の鞭をしならせて打ち下ろすと、激しく地面を穿ちました。
 それを見ても怯まぬようなら、もう一度振り上げるのみ。
 キンと澄んだ金属の音を立て、近づく者を打ち据え。
 炯々たる瞳で睨めつければ、こどくの国のアリスは恐怖にすくみ上がりました。
 けれど彼女たちの恐怖は、おぞましい化け物を膨れ上がらせるのです。
 だけどね。いくら化け物がいようとも、アンナは恐れません。
「さあ、来い」
 まるでサーカスの猛獣使いのように、アンナは命じました。
 すると、にわかに熱気が辺りに起こって。
 地獄の炎に包まれた翼を広げた悪魔たちが空から現れます。
「吼え狂う混沌よ……邪魔する者に襲い掛かれ……!」
 不気味な吠え声を立てながら悪魔たちは敵へと飛びかかってゆきます。
 激しく号令を叫ぶアンナの身体から、火が吹き出ました。
 すると金のドレスは紅蓮の炎に照らされて赫々と輝き、アンナの姿は激しく燃え盛る炎の女王のようでした。アンナの炎が燃え移ったように帽子の蝋燭が次々と灯り、王冠のようにきらめいています。
「さっさとこの森から抜け出そう」
 アンナを止められるものなぞ、誰もいません。
 並み居る敵共はまるで飛んで火にいるなんとやら。
 おぞましい化け物も、こどくの国のアリス達も次々と炎に呑まれ。
 くらくらと焼かれてその姿は幻に消えていきました。
 アンナは振り向かず、立ち止まらず、先を目指して堂々と進んでゆきました。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディルク・ドライツェーン
アル(f26179)と
お~、なんか帽子がすっごい飛び交ってるなっ
お?アルの格好…なんかエロいなっ!
婦警…海賊からするとなんか真逆な感じか?
けど似合ってると思うぜっ

ん、オレもなんか変わったか?
(黙ってればかっこいい軍服のような格好になり)
お~……アル、どうだ似合ってるか?

幻のご馳走かぁ、それじゃ腹は膨れないしな
寂しい…?うーん、寂しいって言われてもなぁ
オレたち進まなきゃいけないから悪いなっ、倒させてもらうぜ

アルの支援を受けながら
オウガ刀を振り回して【怪力】【なぎ払い】する
それでも向かってくるなら、UCの鬼神の咆哮で纏めて【吹き飛ばす】ぜ


アルデルク・イドルド
ディルク(f27280)と
(飛んできた帽子に眉を寄せながらもかぶって)
ポリス…いやこれは婦警さんてやつだなタイトスカートにタイツとかちょっとマニアックじゃないか?そしてナチュラルに女装…。
ディルクの方はと…似合ってるじゃないか。
カッコいいぜ?ディル。
あー…でもしゃべるといつものディルクだな。

あれが敵か…寂しいと引き止めるだけよりも自分が動くのもありかと思うが…それが出来ないのがオウガの悲しいところか?

それじゃあ、ディル。よろしく頼むぜ。
UC【眠れる力を呼び起こせ】

望む夢は望む『夢』でしかない。
俺は海賊だからな希望は自分が奪ってでも手に入れる与えられるものはいらないさ。



 金銀財宝、耀う宝石たち。珍しいものや綺麗なもの。
 この世には様々な宝が眠っていて、海賊たちを待っています。
 例えば、今日出会う帽子もそんな一つなのかもしれません。

 森に辿り着いたディルク・ドライツェーン(琥珀の鬼神・f27280)とアルデルク・イドルド(海賊商人・f26179)は木に成った色とりどりの帽子が飛んでいるさまを眺めながら歩いていました。
「お~、なんか帽子がすっごい飛び交ってるなっ」
 ディルクは森の不思議な光景を見て、好奇心に瞳を輝かせました。
 帽子が木々の中から飛び出して、そこらを行ったり来たりします。元気のある動きは、お客さんを喜んでいるように見えました。
「おっ、こっちに来た!」
「……こいつは」
 思わずそれを手でキャッチしたアルデルクは、帽子を見て眉根を寄せましたが、潔くそれを被りました。そして次の瞬間、彼はもう別の衣装を身に纏っていたのです。
 ディルクは目を瞬き、その姿をよく見ました。
「お? アルの格好……なんかエロいなっ!」
 それはとても素直な感想でした。
 制帽を被ったアルデルクは、婦警さんの格好に変身していました。
 ブルーのシャツに紺色の膝丈スカート。女性用の服であることは間違いなく。
 シャツの胸元や、タイトなスカートがパッツンパッツンしています。更に透け感のある黒タイツを履かされたことによって、得も言われぬ色香をプラスしているのです。
「海賊が婦警って真逆な感じがするけど、似合ってると思うぜっ」
 この言葉も、心からの素直なもの。
 ディルクは、にこーっ! と太陽のような明るい笑顔を浮かべて言いました。
 大きく動揺した様子もなく、アルデルクは肩を竦めます。ナチュラルに女装をさせられたぐらい、騒ぎ立てるほどの事じゃないというように。
 そして、ふっと口元を緩めてディルクを眺めました。
「そっちの格好も、海賊とは真逆だな」
「ん、オレもなんか変わったか?」
 言われて初めて気がつき、ディルクは自分の姿を確かめました。「お~……」感心したような声を上げながら、くるっとその場で回転してみます。
 ディルクは軍人の格好をしていました。正装用の立派な制服です。ジャケットには総のついた肩章や飾緒があしらわれ、胸には勲章もありました。かっちりとした出で立ちは、壮麗で厳粛な雰囲気を感じさせます。
「アル、どうだ似合ってるか?」
「カッコいいぜ? ……でも、しゃべるといつものディルだな」
「なんだよ、それ」
 可笑しそうにディルクは笑います。
 けれど肩をそびやかして歩きだすと、その姿はとても様になっていました。

 道を進んでいくと、森の中から現れた娘達が二人の行く手を塞ぎます。
「そこの方、」と、彼女たちは言いかけて言葉を止めました。
 かたや格好のいい軍人さん、その隣にはセクシーな婦警さん。
 二人の鋭い眼差しで睨めつけられ、アリス達はきゃっと頬を赤く染めました。
 無理からぬ事でした。
 大人の魅力は娘たちに少しばかり刺激的だったのです。
「ええと。その。なにか食べていかれませんか、ご馳走を出しますから」
 目のやり場に困ったように、瞼を伏せながら。
 こどくの国のアリス達は、二人を引き留めようと幻のご馳走を差し出します。
「それじゃ腹は膨れないしな」
 いらないよ。とディルクは首を横に振りました。
「それならば、あなたの夢を教えて下さい」
「きっと叶えて差し上げましょう。……此処にいる限り」
 すがるように、娘たちは言葉を重ねます。
「どうか行かないで下さい。寂しいの」
「寂しい……? うーん、寂しいって言われてもなぁ」
 どうしてやることも出来ません。差し出されるものは全て幻なのだから、ディルクの心が揺らぐこともないのです。
「そうやって引き止めるよりも、自分から動いたらどうだ」
 アルデルクはそう言いながら、オウガにはそれが出来ないのかもしれない。と考えていました。
 憂鬱な溜息が、その考えを肯定します。
「こどくの国のアリスは、どこへ行ってもこどくの国のアリス。動いても、それは変わらないのです」
「オウガの悲しいところか」
 だからといって、寂しさを埋めるように他者を道連れにすることは許されません。
 アルデルクは用心棒の肩をかるく叩いて合図しました。
「それじゃあ、ディル。よろしく頼むぜ」
 おう。と一声。
 オウガ刀を構えて、勇ましくディルクが駆け出しました。
 厚みのある刀身は棍棒に近く、振り回すと唸るような風を起こします。
「オレたち、進まなきゃいけないから悪いなっ、倒させてもらうぜ」
 刀を振り上げて思い切り地面を叩けば、大地が揺れて衝撃波を起こし、こどくの国のアリス達を次々と吹き飛ばします。
「望む夢は望む『夢』でしかない。俺は海賊だからな、希望は自分が奪ってでも手に入れる」
 聞くものを奮い立たせる力強い声でアルデルクが言います。
「与えられるものはいらないさ」
 金色の瞳が見つめる中。
 幻は全て掻き消え、こどくの国のアリスの姿も失せていきました。
 その場に残ったのは二人だけ。
 アルデルクとディルクは顔を見合わせて、ニッと笑いました。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ピーター・ハッタ』

POW   :    「おめでたい日 万歳!」
【飲んでいる紅茶】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【帽子を殺戮捕食態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    「砂糖は2杯だ ありがとう!」
【紅茶】を給仕している間、戦場にいる紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    「なぜカラスは机に似ているのか?」
自身が【疑問】を感じると、レベル×1体の【ティーセット】が召喚される。ティーセットは疑問を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はスミンテウス・マウスドールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 帽子の森を抜けると、そこには広いテーブルとたくさんの椅子が並ぶ広場でした。
 森の中でパーティをするならピッタリの会場でしょう。
 ここで『ピーター・ハッタ』はたった一人でお茶会をしているのです。
「やあどうも、御機嫌よう。素敵な帽子だね」
 カップに紅茶を注ぎながら、ピーターは片目を瞑ります。
 きっとまたカラスと机について考えているんでしょう。
 とても真面目ぶった顔をしていますからね。
 ピーターが自分の考えに夢中な間に、奥へ行きましょう。

 広場の奥には、野外キッチンがあります。
 鍋に包丁にオーブン……料理に必要な道具は大抵揃っているでしょう。
 大きな冷蔵庫の中には、どんな食材だってあるようです。
 もし、足りないものがあるようなら、呼びかけてご覧なさい。
 急いで駆けつけてくれるでしょうからね。
 だってここは不思議の国だもの。

「ご馳走を作るのかい、そりゃ結構」
 ステッキを振って、ピーターが呟きます。
「帽子も腹ペコしてたとこさ」
 ピーターの被っている緑色の帽子が、長い舌を出して舌なめずり。

 食べられる前に、はやくご馳走を作ってしまわなくては。
 どんな料理が出来上がるのでしょうか。楽しみです。
桜宮・縒
ご機嫌よう『ピーター・ハッタ』
帽子をほめてくれてありがとう
ふふ、腹ペコさんに食べられてしまう前に料理を作りましょう
まずはあなたのその紅茶にぴったりなお菓子がいいかしら?
基本のイングリッシュスコーンを焼いてみましょう

素早くキッチンに結界を張って、ピーター・ハッタの邪魔を阻害するわ
結界には破魔を籠めて、邪な魔のものを打ち負かしてみせましょう
おいたはダメよ?
いい子にして待っていてちょうだいな

スコーンは雑に作った方が美味しいのだとか
薄力粉とベーキングパウダー、塩とバターと砂糖、そして牛乳
変わったことのない基本に沿ったレシピ
クロテッドクリームとジャムも用意したわ
焼きたての一番美味しいものを召し上がれ



 風にのって運ばれてきた桜の花弁のように、ふわりと。
 お茶会に最初に現れたのは、夜桜の魔女でした。

「ご機嫌よう『ピーター・ハッタ』、帽子をほめてくれてありがとう」
 桜宮・縒(桜謐・f30280)は丁寧にお辞儀をして挨拶をしました。
 帽子を傾けてピーターも挨拶を返したけれど、しかしその眼は妖しく輝き、いかにも縒を食べたそうにしています。
 ずいぶんお腹が空いている様子でした。
「ふふ、腹ペコさんに食べられてしまう前に料理を作りましょう」
 小さく笑いながら、縒は軽やかにキッチンへ向かいます。
 まずは材料を揃え、調理器具を確かめたりしていますと、ほどなくしてピーターも後からやってきました。
「なにをつくるんだい、花の君」
「そうね、まずはあなたのその紅茶にぴったりなお菓子がいいかしら?」
「嬉しいね、私はもうずっとスコーンが食べたかったのさ」
 それは良かった、と縒はお菓子作りにとりかかりました。

 真っ白な薄力粉に、バターのかたまりをたっぷり。
 塩と砂糖を少々。
 それから新鮮なミルク。
「基本にのっとった作り方をしましょうか」
 スコーンは雑につくった方が美味しくなると、縒は知っていましたから。
 用意した材料を、順番に合わせながら。
 さっくりと、ひとまとめにして。
 重ねるように畳んで、円型にくり抜いていきます。
「さあ、上手に焼けるかしら」
 オーブンの火加減を確かめて、頷きを一つ。
 縒はスコーンの生地を載せた天板を熱いオーブンの中へ入れました。
 その工程を興味深そうに眺めていたピーターでしたが、そろそろ我慢ができなくなった様で。

「ね。君を一口齧らせてはくれないかい」
 そう言って、縒へにじり寄ろうとしたのです。
 すると、縒の懐から栞が飛び出して。
 聖なる光の加護は五芒星となり、キッチンに結界を張り巡らせました。
 結界がある限り、邪な魔であるオウガは近づけもしません。
「おいたはダメよ?」
 縒は人差し指を唇に当てて、そっと言いました。
「いい子にして待っていてちょうだいな」
 窘められ、ピーターとその帽子はふてくされた顔をしました。
 ティーセットが現れて、結界の周りをカチャカチャと踊ります。
 けれどそれ以上どうすることも出来ません。
 ピーターは仕方なく、自分の席に戻っていきました。
 やがて、焼けたスコーンのいい匂いが辺りに漂ってきます。
「さあ、焼きたての一番美味しいものを召し上がれ」
 縒がスコーンを載せたお皿をテーブルに置いてあげると、ピーターはとても嬉しそうな笑顔を浮かべました。
「ジャムとクロテッドクリームも用意したわ」
「本当に? それは素晴らしい事だね!」
 ジャム壺が幾つも並んでいましたが、真っ赤な苺ジャムを見て、ピーターは特に喜んだようです。早速スコーンを上下半分に割って、ジャムとクロテッドクリームをタップリ塗りました。
「それじゃ頂くよ」
 一口食べた途端、ピーターの瞳はパッと輝きました。
 スコーンはあたたかくて、口の中に入れた途端ふわりとバターの風味が広がって、塩気のある生地と一緒に甘いジャムとクリームがまろやかに蕩けていきます。
「外はカリッと、中はふくふくして。なんて良い焼き加減だろう」
 ピーターは夢中でスコーンを次々と食べました。(もちろん、帽子にもわけてあげましたよ)お皿の上からあっという間にスコーンが消えていきます。
「お気に召したかしら」
「うん、とても美味しい」
 ピーターは帽子と半分こしながら最後のスコーンを食べ紅茶を飲みました。
 その内に子守唄を聞いた幼子のような心地になったのでしょう。
 ゆるりと細めた眸で夜桜の衣を纏う縒を眺めて「眠りにつくには良い夜だ」と呟きます。
 縒は静かな微笑みを返して、その様子を見守りました。
「おやすみなさい、ピーター」
 その時が来たのなら、縒は優しい声でそう云うのでしょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルデルク・イドルド
ディルク(f27280)と
さて、まずは料理作りか…カボチャもあるしせっかくのハロィンだパンプキンパイでも作るか。
ディルクも手伝ってくれ。
この格好だとちょっとやりにくい…。

あーレンジがあるならまずはそれで加熱するか。
まぁ、ディルクなら力もあるし生でも切ってしまえそうだがな。
…素手で割ったのかすごいなディル。

カボチャをペーストにしてパイで包んで焼いたら完成だ。
ん、全部オウガにやるのもなんだからなディルの分も作っといたぜ。

さて、お味はいかがかな?
満足したならさよならだ。

UC【海神の弓矢】発動


ディルク・ドライツェーン
アル(f26179)と
おおっ、すごいパーティ出来そうな場所だな!
なんだアイツ腹減ってるのか
なんか作ってやれば満足するならアルと一緒に作ってやるぜっ
まぁオレは手伝いだけなんだけどな
アル、せっかくだしなんか甘いもの作ってくれよ

パンプキンパイ?南瓜のパイなのか!
南瓜ってそのままでも甘いもんな、美味しいのが出来そうだっ
じゃあオレは南瓜を【怪力】で割るぞ
え、レンジでやったほうが良かったのか
中身をくり抜いたらどうすればいいんだ?

パイで包んでオーブンで焼いたら
すっごいいい匂いがしてきた…っ!
えっ、オレも食べていいのか?!
サクサク甘々ですっごく美味しいな♪

お、敵が寝たなら後は倒すだけだな!
UCでぶっ飛ばすぞっ



「森の奥にこんな場所があるなんてな!」
 パーティの会場にぴったりな場所が見つかって、ディルク・ドライツェーン(琥珀の鬼神・f27280)の瞳は輝きました。きっとすごいパーティが出来るにちがいないと、胸をワクワクさせます。
 隣を歩くアルデルク・イドルド(海賊商人・f26179)は、そんなディルクの様子を見て口元に笑みを漂わせます。あたりにはパンプキンカラーに彩られた装飾が並び、大きなカボチャや小さなカボチャが並んでいました。
「さすがはハロウィンの国と呼ばれるだけはある」
 この国でパーティを行うためにも、『ピーター・ハッタ』に料理を食べさせなくては。
 二人は早速キッチンへ向かいました。
「アル、せっかくだしなんか甘いもの作ってくれよ」
「そうだな……カボチャもあるし折角のハロィンだ。パンプキンパイでも作るか」
「パンプキンパイ? 南瓜のパイなのか!」
「ああ。ディルクも手伝ってくれ。この格好だとちょっとやりにくい……」
 なにしろ婦警さんの格好のままでいなくてはならないのです。
 少し困ったような顔をするアルデルクの言葉に、ディルクは快く頷きます。
 元より一緒に作りたいと思っていたので、手伝えることが嬉しいのです。
「南瓜ってそのままでも甘いもんな、美味しいのが出来そうだっ」
 ディルクは今までパンプキンパイを食べたことがありません。
 どんな味がするんだろう。と想像するだけで心が躍るようでした。
「まあ、作ってからのお楽しみだ」
 アルデルクはそっと呟きました。

 まずはパイを作るための材料を揃えて、調理器具を確認していきます。
 ある程度の設備は整っていましたが、一つだけ足りないものがありました。
「レンジがあると助かるんだが」
 アルデルクが呟くやいなや、どこからともなくレンジがそこに現れました。
 タイマーに蒸気センサー、沢山機能がついている大きなレンジです。
 電化製品のようですが、問題なく動くようでした。
「便利だな、この国」アルデルクは少し唸るように言いました。
 こんな事が起こるのも、不思議な国ならではでしょう。

「俺はパイ生地を作るから、南瓜の方を頼めるか」
「おう! 任せろ!」
 手伝いを任されて、ディルクは大張り切り。
 大きな南瓜を持ち上げて運ぶと、調理台の上に置いていきます。
 それから、おもむろに手刀を振り下ろしました。
 ぱっかーん!
 なんという怪力でしょう! ディルクの手で南瓜は簡単に割れてしまうではありませんか。そのまま卵を割っていくように、次々と南瓜を砕いてしまいます。
 きっとディルクならできると思っていましたが、アルデルクは感心してしまいました。
「……素手で割ったのか、すごいなディル」
「へへっ、これぐらい簡単だ」
 褒められて、ディルクは嬉しそうに笑いました。
「あとは、中身をくり抜くんだよな」
 南瓜の中に詰まっている種とワタを取り除いていきます。
 それから南瓜を叩いて砕き、もっと小さな固まりにしてしまいます。
「それぐらいでいいぞ、後はレンジに入れて柔らかくしてから潰せばいい」
「え、レンジでやったほうが良かったのか」
 潰すのも素手でやりかけていたディルクは、慌てて南瓜をレンジに掛けて、レンジのタイマーが鳴るのを待ちます。

 その間に、アルデルクはパイ生地を作りました。
 薄力粉にたっぷりのバターを練り込んで、ひとまとめにした生地を冷蔵庫に入れて冷やしておきます。
 すると。
「やあ、御機嫌よう婦警さんに軍人さん。おやおやカップが空じゃないか」
 不意にピーター・ハッタがやって来て、二人に紅茶を振る舞いました。
 断る間もなく、お構いなしにです。なんて気ままなことでしょう。
「どうする、アル?」
「今は倒せないなら、放っておけ」
 ピーターはそれ以上特には何もせず、紅茶にも害はない様子。
 二人はパイ生地を寝かせる間だけ、紅茶を飲んで休憩をしたのでした。

 チン。とタイマーが鳴る音がして。
 レンジから取り出した南瓜は、ほこほこと柔らかくなっています。
 それを木べらですり潰すようにしてペースト状にしたものに、砂糖やクリームを入れて更に滑らかにして。
 もったりとした南瓜のクリームを型に広げたパイ生地の上に流し込み、包んで飾り付けをして焼いたら――。
「すっごい、いい匂いがしてきた……っ!」
 オーブンの前でディルクは待ちきれない様子で声を上げました。
 パンプキンパイの焼ける香ばしくて甘い香りが、鼻をくすぐります。
「さあ、完成だ」
 アルデルクは焼き上がったパイを取り出して皿に載せました。
 とっても美味しそうでしたが、これはオウガに食べさせるもの。
 解っていましたがディルクは残念な気持ちがしていました。
 けれど、パイは一つではありませんでした。
「ほらディル、こっちはお前の分だ」
 手の中にパイが載った皿を載せられて、ディルクは眼を丸くします。
 アルデルクは、ふっと小さな笑みを浮かべました。
「えっ、オレも食べていいのか?!」
「ん、全部オウガにやるのもなんだからな」
 ディルクは、それはもう大喜びで、パンプキンパイを食べました。
 出来たて熱々のパイは、噛むごとにザクザクと小気味好い音を立てて、中にギュッと詰まった夕焼けの太陽みたいな色をした南瓜のクリームがホクホクとした甘さを口の中に広げます。
「サクサク甘々ですっごく美味しいな♪」
「そうか」
 それは良かった。とアルデルクは微笑みました。

 それから。
 ピーター・ハッタも、勿論よろこんでパンプキンパイを食べました。
 ふわふわと眠たげに頭を揺らし始めては、どうしてこのパイは甘いのだろうと考えて。
 自分のパイにも一欠片、誰かへの思いが籠もっているせいだろうか。と微睡むのです。
「さて、お味はいかがかな?」
「ああ……とてもいいよ。甘くて優しい、そんな味がしたとも」
 誰かの尋ねる声に、満足気にそう答えます。

 さよならの時はもうすぐ。
 その時は、矢の雨が降り、鬼神の掌が、終わりをくれるでしょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

これはどうも…じゃないや…
料理を作るのは得意ではないけど…やるしかあるまい!
料理を作り思う存分、食わせてやろう…!

料理を作り絶対に食べさせる[覚悟]を胸に相手しよう

野菜や肉を切り刻み、具材と水を鍋にぶち込み
我が身から噴き出す地獄の炎を利用しぐつぐつ煮込み
さらに香辛料やカレールウをぶち込んで辛口のカレーを作ろう

【十二匹の怒れる悪魔】を召喚し調理の手伝いをさせよう
調理の手伝いをさせつつ襲い来るティーセットを破壊したり
紅茶を飲ませたりして迎撃させよう

カレーを作り上げたら
[威圧と威厳]を放ちながら敵に差し出そう

さぁ…存分に喰らうがいい…
地獄のように辛いカレーだ…
たんまりと味わうがいい…!



 ピーター・ハッタに帽子を褒められ、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)は思いもよらぬ様子で「これはどうも……」と会釈をしました、
 けれどもすぐに"ハット"なって挨拶をしている場合じゃないとキッチンへ向かいました。

 実のところ、アンナはそれほど料理を作るのは、得意じゃありません。
 しかしやらねばならない。そんな時、彼女はどんな困難にも立ち向かうのです。
「これもオウガを葬るため。料理を作り思う存分、食わせてやろう……!」
 その胸に自分の手料理を絶対に食べさせるという覚悟を宿らせて。
 熱い炎が灯るような眼差しで、キッチンに立ちます。
 一体何を作るのでしょう。
 鬼気迫るといってもよい様子からは、まるで想像もつきません。
「十二匹の怒れる悪魔よ」
 アンナは腕を広げて、悪魔たちを喚びました。
 そして傅く悪魔へ、
「カレーを作るぞ」
 そう命じたのです。
 まるで地獄に君臨する主人のような威厳のある重々しさでした。
 悪魔たちは、すぐにカレーに必要な野菜や香辛料を集めてきます。
 人参、玉ねぎ、じゃがいも……そして牛の肉。
 ビーフカレーの用意です。
「さあ、刃を持てお前達」
 まずは下ごしらえ。アンナと悪魔たちは、材料を切り刻みました。
 包丁が振り下ろされ野菜が切断される度、ドスン、と不吉な音が響きます。

 何故でしょうか。
 ありふれた調理風景のはずが、恐ろしいほど禍々しく見えてくるようです。

「鍋をここへ」
 儀式を始めるかのように厳かな動作で悪魔が鉄の寸胴鍋を竈の上に置きます。
 にわかに熱波が立ち込め、アンナの身体から地獄の炎が吹き出しました。
 熱された鍋の上に、牛肉が置かれます。ジュウウ……! 肉の焼ける音が辺りに響き渡りました。すかさず、臭み消しのスパイスが振りかけられます。
 悪魔たちは頃合いを見て、鍋の中に香辛料を投入していきました。
 肉を裏返し、中までしっかり焼いたら……次は野菜の番です。
 薄切りの玉ねぎはにんにくと一緒に炒められ、飴色になるまで焼かれました。
 これはコクがでることでしょう。
 肉を焼いた鍋の中に、野菜と水を入れて煮込みます。
 グツグツ……グツグツ……。白い湯気が昇り、あぶくの弾ける音がして。
 鍋の中に赤や黄色のスパイスが染み渡り、目が痛くなるような辛さを放ちます。
「いいぞ、いい具合だ」
 アンナは満足げな笑みを口端に広げました。
 これは拷問ではなく、あくまでも調理です。
 ですが、ちょっかいを出してやろうとしたピーター・ハッタですら、すこし怖気づくような迫力のある光景でした。
 果敢にもピーターのティーセットが兵隊のように悪魔たちへ向かっていきましたが。けれど無敵の力を持ってしても、悪魔たちがあまりにも恐ろしい顔をしてうなり立てるので、すっかり怯えてカチャカチャ震えながら引き返したのでした。

「もう良いか……さあ、ルウをぶち込んでやれ」
 最後の仕上げにカレーのルウを入れれば、鍋の中のカレーはどろりと黒くなって。
 ここに、アンナ特製地獄のビーフカレーが完成したのです。
 炊きたての御飯(このカレーはインド風ではなかったのです)を盛った皿に、ビーフカレーが流し込まれていきます。

「さぁ……存分に喰らうがいい……」
 皿を運ぶアンナの帽子の燭台に火が灯ります。
 黒いドレスの裾をひゅうるりとたなびかせて、テーブルへ。
「地獄のように辛いカレーだ……」
 無慈悲なほどに味加減をマシマシた、ギロチンのように刺激的な風味。
 それが処刑人が贈る、断罪の馳走。
「たんまりと味わうがいい……!」
 大盛りカレーが、ピーターの目の前に置かれました。
 他の料理を食べた後だったピーターも、この時ばかりは一瞬眠気が消えたようです。しかし、ルールには逆らえませんから、出された食事は食べることになります。
「頂くとするよ、炎の君」
 スプーンを持って、いざ実食です!
 カレーを口に運んだピーターは、苦しげに噎せました。
 シンプルに辛いのです。
 一口食べ進める毎に息遣いを荒げて、痛みで気が変になったような笑い声を上げ始めました。
「地獄の炎が舌の上で踊るようだ。……ハハハッ! こんなに熱いものは食べたことがない! でも旨いなあ、君の気持ちがしっかりと籠もっている! 喉を灼く、臓腑を灼く、私を灼く味だ!」
「その通りだ! 最後まで味わうがいい! ワタシが見届けて、お前に最後をくれてやる!」
「狂気的じゃないか! まったく最後の料理に相応しい!」
 ピーターとアンナは机を挟んで叫び合いました。
 まるで刃を交えるが如く激しい空気が張り詰めていきます。
 笑いながらピーターは最後の一口までカレーを食べ終えて。
「『殺意』! 最高のスパイスじゃないか? ええ、君」
 言い終えるが早いか、まるで意識を断たれたようにガックリと眠り落ちました。
 もう二度と目覚めることはないでしょう。

「さようなら、ピーター・ハッタ」
 地獄の炎がメラリと迸り。
 そして。
 ピーター・ハッタはこの世界から去ったのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月25日
宿敵 『ピーター・ハッタ』 を撃破!


挿絵イラスト