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仮装と茶会は睡魔と共に

#アリスラビリンス #【Q】 #お祭り2020 #ハロウィン

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#【Q】
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 今日も今日とて、なんでもない日の不思議の国は大騒ぎ!
 だけれど、耳を澄まして、よくよく見れば、どうにも少し風変り。
 オウガの襲来?いえいえ、それだけではないのです。

 駆け回る虹色雲纏う獏達が、執事服の代わりにバニー服でウサ耳を揺らしていたり。
 そうかと思えば彼方では、妖精の付け翅を背負ってくるり。
 わああと言う声に振り返ったなら、そこには赤い頭巾を被った獏がポットを押さえ、守った紅茶に安堵の息。

 茶会の準備をしなくては、と、彼らが忙しく駆け回る森は、その様子を見てキャラキャラと笑う南瓜ランタンが木に揺れて。煌く花を咲かせる茂みから、木陰からと、突如飛び出すのは不思議な衣装。
 いつもの執事服を身に纏う虹色雲の獏達も、衣装が飛び出せば早着替え。あっちもこっちも、仮装の獏が溢れゆく。

 そんな様子を楽しげに見守るのは、茶会の主催者であり参加者たる彼女。
 しっちゃかめっちゃかな獏達を眺めては、揺れ笑うランタン南瓜に合わせ、同じ様にキャラキャラと笑い声を上げ長い舌を揺らしている。

 ――嗚呼、早く狂ったように楽しい茶会がしたい!
 ――獏達、準備はまだかい?お客様は、まだかい?



 「ハッピーハロウィーン!じゃよっ!」

 ご機嫌な声を上げながら、猟兵達の前に現れたのは、ティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)。
 少しばかり気が早い様子で、頭に猫耳付きの魔女帽子を被る彼女が、キャンディーケイン片手に言うことには、先の大戦の折、オウガ・オリジンによって「ハロウィンの国」に改変された国が彼方此方で発見された、とのことだ。

 「今回妾が案内するのは、元々、宝石の花弁持つ花が彼方此方に咲き、その花を加工して暮らす愉快な仲間達が住う『きらめく花の国』と呼ばれる国だったそうな」
 その国の特徴であった、煌き咲く花々は健在のようだが、国全体の様相は深い森に包まれて、木々にはキャラキャラと賑やかに笑う南瓜ランタンが揺れており、その木々や茂みの中からは何故か「コスプレ衣装」が飛び出してくる……と言った、不可思議な仕様になっているのだそうな。
 そうして、「ハロウィンの国」として改変された国には、独自の法則があると言う。

 「その一つが、森から飛び出してくる衣装を身に纏えば自身の力が強化される、と言うものらしいのじゃよぅ!」
 それで気の早い仮装なのか、と誰かが呟いたのを耳にして、そう!と嬉しげにキャンディケインを振り彼女は続ける。
 「森から飛び出てくる衣装は、ランダムらしい。何ぞ自分の趣味に合わぬものも手元に来るやもしれぬが……其方の為にと飛び出る衣装、意を決して纏えば、思いもよらぬ力が授けられるやもしれぬよぅ!」
 衣装チェンジは強制ではないが、得られる力は得てゆくのが良かろう。としたり顔で語る彼女が続けるには、衣装の力を得てその地のオウガ達も強化されている為、着るに越したことはない、とのこと。
 因みに衣装は、手に持った者の着替える意思を察知したならあら不思議、一瞬の光と共に衣装替えが完了するワンダー仕様。着替えの手間も要りません!そして事が終われば元通り!とっても便利だ、やったぁ!

 「そうして、オウガ達の群れをかいくぐり、南瓜ランタンが笑う森の一本道を通り抜けると、キッチンと茶会のテーブルが備えられた広場に出るよぅ。其処に、今回のオウガの群れを率いる者が待っておる」

 ――待っておるのじゃがな?

 と、含みを持たせた彼女が言うには、此処でもまた、「ハロウィンの国」の法則が働いているらしい。なんでも、ボスたる相手は、そのままでは無敵状態となっていて、此方からの攻撃が通らないと言うのだ。
 「されど安心して欲しい。キッチンがあると言うたろう?其処で美味しい料理を作って彼女へと食べさせたなら、だんだん睡魔が彼女を襲ってゆくのじゃ。そうして、完全に眠って仕舞えば、無防備な彼女へと此方の攻撃もあっさり通る」
 つまりは、無敵状態な相手からの攻撃を躱し耐えつつ、料理を作り食べさせるのが今回の主な役割だと言う。料理をする猟兵仲間を守る立ち回りもいいかも知れない。
 しかし、相手が料理を食べなければ?と言う誰かの疑問に、彼女は首を横に振り、その後ひとつ頷いたなら、安心するよう、と続ける。

 「作られた料理は、これまた不思議な法則によって、強制的にオウガが食すことになっている。何故か食べたくて食べたくて仕方なくなるのじゃろう。そうでなくとも、茶会を望むお相手のご様子。其の席に見合う料理であれば、喜んで口に運ぶじゃろうよ」
 そして、そうそう、と付け加えるように。料理は美味しいほど、睡魔の威力が増す様子だが、美味しい基準は味覚のみにあらず。「気持ちのこもった料理が、何より美味しいのよ!」という概念も通用するようだ。料理が不得意でも安心じゃな?と彼女は笑う。

 「なんぞ色々と不可思議な話じゃが、アリスラビリンスにおいては不思議こそ常。道中煌めき咲く花や、状況をも楽しむ心地で一つ、頼むよぅ!」

 健闘を祈る!そう告げた彼女は、集う猟兵達をかの地へと誘うのだった。


四ツ葉
 初めまして、またはこんにちは。四ツ葉(よつば)と申します。
 此の度は当オープニングをご覧頂き、有難うございます。
 未熟者ではございますが、精一杯、皆様の冒険を彩るお手伝いが出来ましたら幸いです。

 それでは、以下説明となります。

 ●シナリオ概要
 先ず初めに、公式よりの連絡事項として。

 1.当シナリオは初導入となる「2章構成のシナリオフレーム」です。2章完結のシナリオとなっておりますので、改めてご確認ください。
 2.10/31までに成功したシナリオの本数に応じて、ハロウィンパーティ当日、及び「アリスラビリンスでの猟書家戦」に、何らかの影響があるかもしれません。

 と、いった旨のシナリオとなっております。
 楽しみながら、来たる何かに向けて備えて頂けましたら幸いと存じます。

 ★各章について。
 第1章:集団戦『虹色雲の獏執事』
 オウガの軍勢は、森から飛び出してきた「コスプレ衣装」でパワーアップしています。
 猟兵も同じく、森から飛び出してきた衣装を身に纏えばパワーアップするそうです。
 森からランダムに現れる衣装を、華麗に可憐に楽しくわちゃわちゃと着用下さい。
 衣装はプレイングで指定頂ければそれが飛んできますが、あまりにあまりなものは不採用となる場合がありますので、ご注意とご理解を。
 また、衣装お任せの場合は、その旨を記載ください。プレイング内容に合わせ、四ツ葉が独断と偏見、時折ダイスで良きようにさせて頂きます。ランダムに何が飛び出て来ても許すよ!というPL様向け。

 第2章:ボス戦『ピーター・ハッタ』
 オウガのボスは、「ハロウィンの国」の法則によって「ほぼ無敵」となっています。倒す方法はただひとつ、「美味しい料理を食べさせること」。
 食べさせ続ける事でオウガを完全に眠らせ、無敵状態を解除させるのが目的です。
 味覚に訴えるだけでなく、「料理は気持ち!」でも届くようです。味に不安な方も存分にお気持ちを篭めて頂ければ、と!
 というわけで、当章は基本的に「料理を作る」か、「攻撃を耐え忍ぶ」ものとお考えください。
 追加情報は断章に記載致しますので、合わせてご確認頂けましたら幸いです。

 どちらの章も、元々の住人たる愉快な仲間達は、オウガの襲来と共に彼方此方に隠れてしまって出て来ません。保護等気にせず行動下さい。

 ●プレイングについて
 オープニング及び各章公開後に簡単な断章を追加し、以降マスターページにて受付開始日をお知らせ致します。
 今回、執筆タイミングの調整で、各章、公開から受付開始まで少しお時間頂戴する形になると思います。お手数ですが、都度マスターページの確認をお願いします。
 受付の〆については基本、物理的な〆までと致しますが、期間を決める場合は此方もマスターページにてご連絡差し上げます。
 お手数をおかけいたしますが、プレイング送信前に確認下さい。

 ●その他
 ・同行者がいる場合は【相手の名前(呼称可)とID(f○○○○○)】又は【グループ名】のご記入お願いします。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・逆に、絶対に一人がいい。他人と組んでの描写は避けたい、と言う方は【絡み×】等分かるように記載して頂ければ、単独描写とさせて頂きます。記載ない場合は、組んだり組まなかったりです。
 ・グループ参加時は、返却日〆の日程が揃う様、AM8:31をボーダーに提出日を合わせて頂ければ大変助かります。

 では、此処まで確認有難うございました。
 皆様どうぞ、宜しくお願い致します。
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第1章 集団戦 『虹色雲の獏執事』

POW   :    「邪魔が入るようですね。番兵さん、出番です」
自身が【自身や眠っているアリスに対する敵意や害意】を感じると、レベル×1体の【虹色雲の番兵羊】が召喚される。虹色雲の番兵羊は自身や眠っているアリスに対する敵意や害意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD   :    「お疲れでしょう。紅茶とお菓子はいかがですか?」
【リラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子】を給仕している間、戦場にいるリラックス効果と眠気を誘う紅茶やお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    「外は危険です。こちらにお逃げください」
戦場全体に、【強い眠気と幻覚を引き起こす虹色雲の城】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 覆い茂る木々で薄暗さを感じる森。
 しかし、木々に揺れ笑うランタン南瓜の明かりが森を照らし、奥へと続く一本道の広さも十分で視界は悪くない。そして、煌く花の存在もある為か、その景は幻想的な雰囲気をも醸し出している。

 ゆら、ゆら、と。揺れ笑う明かりを受けて、各所に咲く輝石の如き花々も其の輝きが揺れて見えた。宝石のように一枚一枚を煌かせながらも、柔らかな花弁を持つ花々は、その色も種も様々で、薄暗い森を彩っている。
 青く煌く金木犀が茂みに香り、黄金色の彼岸花が集って頭を擡げて揺れて、他所の世界では季節外れとも言える桜が、茜色の花弁を舞わせたかと思えば、白き向日葵とスノードロップが並び輝き咲いている。

 長く長く続く一本道は、その様相も場所にて様々。ランタン南瓜がこぞって笑い賑やかす、まるでお祭りの様な道もあれば、花も南瓜も少なくて、時折笑い声だけが響いて届き、蝙蝠達が飛び回る薄暗く怪しげな道や、ぶら下がりながら南瓜もうっかり眠ってしまったのか、その明かりだけが道と花とを照らす静かで幻想的な場所もある。

 道中現れ出でる仮装漠達は、君達をもてなしたくて仕方がない様子。その手や頭に、紅茶やお菓子を携えて、隙あらば……と、うずうずしているのが見て取れる。
 駆け行く一本道の道すがら、好みの場所を見つけたならば、先に待つ彼女を眠らせる前に自分達が眠らぬよう気をつけ乍ら、仮装獏の給仕を受けて、花々と南瓜の森で茶会を楽しむことも出来るだろう。
 道の脇には、そのままテーブルや椅子になるような、お誂え向きの巨大なキノコやカボチャ、切り株などが見つかるだろうし、茶会の準備中、堪えきれず給仕に走ってしまった獏の、置き土産的なテーブルセットが転がっていたりするかもしれない。

 勿論、態度が友好的とはいえオウガの群れ。森より授かった仮装衣装を翻し、その数を減らし進んでも構わない。この道をどう抜けるかは、君達の思うがまま。

 ――さぁ、森の入り口だ。
 「きらめく花の国」より生まれし「ハロウィンの国」の、煌く花と笑う南瓜の森へ、ようこそ!
オズ・ケストナー
クラウ(f03642)と

衣装お任せ

わあ、ほんとだっ
ハロウィンってわくわくするねっ

クラウ、だいじょうぶ?
わっ
衣装キャッチでお着替え

クラウ、とってもにあってる
ふふ、みんなびっくりしちゃうよっ
一緒になって手をあげて

だれかの笑い声
かぼちゃさんが笑ってたの?
つられて笑み
うん、たのしいねっ

いくっ
道中バクに気づいて手招き
ね、よかったらいっしょにいこうっ
せっかくだもの、おはなばたけでお茶会なんてどうかな?
とってもすてきなティーセットをもってるんだもの

ひかってるお花も
クラウの笑顔も満開だからうれしくて
真っ白なひまわり見て
クラウみたいって笑う

クラウとみんなとおしゃべりしながらお茶会したら
ねむくなるヒマなんてないね


クラウン・メリー
おずりん(f01136)と

衣装お任せ

見て見て!ランタンカボチャにコウモリさんもいるよ!
俺達も早くオバケにならなくちゃだ!

ぴゃっと出てきた衣装を顔で受け止めて
わひゃ!本当に衣装が出てきた!

おずりん!早速着ちゃおう!
しゅぱーっと着替えて、じゃーんと両手を上げる
どうどう、怖いかな?みんなもびっくりするかな?

おずりんもとっても素敵!
カボチャの笑い声、お花のお歌に合わせてくるりと回り
ふふー、とっても愉快だ!

わあ、お花畑があるよ!
漠さん達も行こう!
賛成!楽しいお茶会にしよう!

お花がキラキラ光ってる!
指差し笑顔の花を咲かす

あたたかい色をした彼岸花を見て
こっちのお花はおずりんみたい!

いっしょにお喋り楽しいね!





 長く続く一本道。その中でも影が濃く、蝙蝠も活発になる道筋に、明るい声が二人分響いていた。

 「見て見て!ランタンカボチャにコウモリさんもいるよ!」
 キィ、と鳴き声を上げ飛んでゆく蝙蝠や、頭上で揺れてはキャラキャラと、ケタケタと賑やかに笑うランタン南瓜を指差しながら、楽しげな声を上げるのはクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)。
 「わあ、ほんとだっ!ハロウィンってわくわくするねっ」
 そんな彼のすぐ傍で、示された指先を追いながら、同じ景色を空色の瞳に映して笑顔で語るのはオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)。
 暗がりの少しダークな雰囲気を纏ったこの地でも、彼らの楽しげな声音が響いたなら、それだけでぽっと燈が灯るよう。

 「俺達も早くオバケにならなくちゃだ!」
 そう紡いだクラウンの気持ちに反応したのか、一着のコスプレ衣装が彼の顔に目掛け、ぴゃっと勢いよく飛び込んできた。突然の出来事に、手も間に合わずクラウンは顔面でキャッチ!
 「わひゃっ!本当に衣装が出てきた!」
 「クラウ、だいじょうぶ? ――わっ!」
 衣装を頭から被り、くぐもった声で告げる彼へと慌てて駆け寄るオズの手元にも、キミにもどうぞ!と言わんばかりに、衣装がバサリと飛び込んでくる。突然の事に驚きながらも、オズはその手で無事キャッチ!
 もぞもぞと頭を覆っていたた衣装を手に取りながら、白黒ピエロは、だいじょうぶ、と友に笑う。そうして、
 「おずりん!早速着ちゃおう!」
 「うん!」
 其の言葉を合図に、手元の衣装が眩くピカッと光ったかと思えば、瞬く間にその光はクラウンとオズ、ふたりの全身を包み込み、眩しさで目を閉じたふたりが、再びその目蓋を上げる頃には……。

 「わぁ!本当にあっという間にお着替えが終わっちゃった!」
 「うんうんっ。ふふ、クラウ、とってもにあってる」
 そう言葉を交わすふたりの姿は、ハロウィンにぴったりの仮装に包まれていた。
 白黒ピエロだったクラウンの衣装は、纏う色こそ同じ白黒でも、胸元を柔らかなリボンタイが飾る白いシャツと漆黒の燕尾服。その上に羽織るのは、元気な彼が動く度、ひらりと靡く大きなマント。そして楽しげに笑う口元には、白い牙がちらりと見え隠れ。柔らかな髪揺れる頭に、蝙蝠飾りのついたシルクハットを被った姿は、吸血鬼の様相だ。

 オズの姿はと言えば、鮮やかな金色の髪から小さな螺子がぴょこんと顔を出しているかと思えば、色白なかんばせに縫い目模様のペイントが施され、ふたつの空色の間に境界線を作っている。元の衣装と変わって彼を包むのは、ツギハギ交じりのタキシード。胸元には青薔薇のブートニアが綻んでいた。
 そして、オズといつも共にいる、少女人形のシュネーもまた、先ほどの衣装から姿を変えて、裾が少し破れた真白のドレスに、オズと揃いの青薔薇を飾った白きヴェールを髪にと飾り、ゆらり、ふわりと柔らかな髪と共に風に靡かせていた。そう、彼と彼女は、フランケンシュタインとその花嫁である。

 「ふっふっふー。じゃーん!どうどう、怖いかな?みんなもびっくりするかな?」
 「ふふ、みんなびっくりしちゃうよっ」
 悪戯な笑顔を咲かせ、両手を勢いよく振り上げたクラウンがオズへと問えば、彼は楽しげな笑みを返して、同じように両手を高く振り上げる。ふたりの様子を見てなのか、頭上に揺れるランタン南瓜が、一際大きくケタケタケタと笑い声をあげた。
 そんな南瓜の笑い声に合わせたように、くるりとその身を翻した陽気な吸血鬼。真上から聞こえた笑い声に、きょとんと瞬いたオズも、その様子を見て楽しげに笑う。
 「わぁ!かぼちゃさんが笑ってたの?」
 「ふふー、とっても愉快だ!」
 「ふふ、うん、たのしいねっ」

 衣装替えを楽しんだ彼らがケタケタキャラキャラと響き渡る南瓜の笑い声に誘われて、道の先へと歩みを進めたなら、一歩また一歩と先行く度に、ぽつりぽつりと咲ゆく花が増え始め、昏い森が徐々に姿を変えてゆく。花と明るさが増すほどに、道中に仮装した獏達の姿も現れ始めた。そうして、その更に先には。
 「わあ、お花畑があるよ!」
 「おはなばたけ?いくっ!」
 クラウンの上げた声に、即座に反応したオズが、煌く瞳をそのままに、くるりと視線を移すのは、彼らの周りに集い始めた仮装の獏達。
 「ね、よかったらいっしょにいこうっ」
 「わたくしめもですか?」
 「ご一緒してよろしいので?」
 「とってもいい考えだ!漠さん達も行こう!」
 「うんっ。せっかくだもの、おはなばたけでお茶会なんてどうかな?」
 「賛成!楽しいお茶会にしよう!」
 「わたくし達に、給仕をさせて頂けるので?」
 「うんっ。とってもすてきなティーセットをもってるんだもの」
 オズの声掛けに同調したクラウンと、ふたりの言葉に仮装獏達は目を合わせ、頷きあったなら喜びに満ちた声で、喜んで!と返すのだった。

 そうして、暫く歩くと右も左も煌く花に満ち、頭上では楽しげにランタン南瓜の笑い声が響く、花畑の様相をした場所へと辿り着く。様々な色を花弁に宿し、ランタンの灯りを受けて輝く花に、オズもクラウンもその瞳が煌めいてゆく。
 「お花がキラキラ光ってる!」
 指差し笑うクラウンの笑顔が、咲く花に負けない位に満開で、其れを見ているだけで嬉しくなってしまうから。オズの表情も思わず綻び咲いた。燥ぐ友人の姿を眺めていた視線をふと動かしたなら、そこに今の彼そっくりの花を見つけて。
 「ねえ、このおはな、クラウみたい」
 そう、オズが指差したのは、彼に良く似た真っ白の向日葵。ぱっと明るく大きく咲いて、光を受けてキラキラと満開の笑顔で咲っている様な。
 「わあ!俺みたい?えへへ、嬉しいなっ。あっ!こっちのお花はおずりんみたい!」
 そう言ってクラウンが指差したのは、あたたかな色をした彼岸花。まるでオズの髪の色のように優しい金色で煌めく花弁は、ふわりと穏やかに風に揺れて見るものの心へ寄り添うように。

 互いが見つけた、互いの如き花を指さして微笑んでいたならば、後方で、放置されていたテーブルを茶会用に整え終えた獏達が彼らを呼んだ。
 「茶会の準備が整いました!」
 「さあさあ!お茶会に致しましょう!」
 「紅茶もすっかり飲み頃です」
 「お菓子の準備も万端ですよ」
 「お花も飾ってございます!」
 水を得た魚さながらに、さあさあ早くとはやし立てる獏達を見て、彼らは再び顔を見合わせ微笑みあう。
 はあい、と返事をして席に着いたなら、煌く花に囲まれた、楽しい茶会の始まりだ。

 「ご用意したのは、カボチャさながらお色味鮮やかなオレンジペコ」
 「南瓜のスコーンに南瓜のタルトはいかがです?」
 「クロテッドクリームも生クリームもお好きなだけ!」
 「あゝ、お口が甘くなりすぎたなら、口直しに紅茶のゼリーもございます」
 
 賑やかに嬉しげに楽しげに。時に妖精の付け羽を揺らしつつ、時に包帯だらけの体を割り込ませつつ、時にシーツなお化けの様相でその中身が判らない程の姿になりつつ、入れ替わり立ち替わりと訪れる仮装獏達との会話も楽しみながら。
 「いっしょにお喋り楽しいね!」
 そう笑うクラウンに、オズもまた微笑み返す。
 「クラウとみんなとおしゃべりしながらお茶会したら、ねむくなるヒマなんてないね」と。

 笑顔とお喋りの花が咲く彼らの茶会は、そう、まだ始まったばかり!
 そうして、茶会の最後も楽しみにしていて?
 悪戯笑顔の白黒ピエロ……今は白黒吸血鬼のとっておきが、きっと皆を驚かせるから。
 そう、愛らしい花嫁連れた、友人フランケンの優しい笑顔も、もっともっと咲く様な、とっておきの花舞うマジックを!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎本・英
【春嵐】

衣装お任せ

嗚呼。ナツ、あまりはしゃがないようにするのだよ。
宝石のように光る花が気になるようだね。
かと思えば南瓜のランタンか。
ナナは相変わらずなゆのお目付け役のようで頼もしいね。

ナツの歩みに合わせて気ままに進もうか。
しかし、君もナナもナツも、いつもと違う姿。
とても似合っているよ。

嗚呼。ナツ、それは獏だ。
私たちにお茶を与えたくて仕方がないようだね。
きのこの椅子に座って少し休憩をしよう。

ほのかに桜の香りがするような。
君に淹れてもらった茶を思い出すよ。
この茶もとても美味しいが、なゆの茶はもっと美味しいのだよ
獏も驚きの美味しさだ。
あのナナが気になる程だからね。

さて、そろそろ行こうか。
先はまだ長い


蘭・七結
【春嵐】

衣装お任せ

ナツ、ナツ、とてもたのしそうね
駆けてゆく仔猫をみとめて眦が緩むよう
共に駆けてしまおうかしら
嗚呼、ナナ。だいじょうぶよ
気をつけてゆくもの

はろうぃーん
年に一度のお祭りごとね
あなたも、よおく似合っているわ
ナナもナツも、なんとあいらしいこと
夏に被っていた帽子もステキだったわ
あかい花を添えてみましょう

ナナがじいと見つめているわ
そうとその背を撫ぜましょう
この椅子は弾むような不思議な座り心地ね
ちいさな椅子も揃っているよう
ほら、ふたりも

ふうわり香るのはサクラのもの
お気に召したのならば喜ばしいわ
あたたかなお茶がおいしい季節がやってくる
また、お茶をしましょうね

ご馳走さま
ステキなひと時をありがとう



 ●

 ランタン南瓜がゆらり、ケラケラと笑う道筋。
 笑う南瓜につられて、ゆらり、ひらり、と踊るかのような花の傍、白き仔猫が戯れていた。額に十字の模様を抱いた其の仔猫は、楽しげに尾を揺らしながら、其処に在る煌めきに夢中の様子。

 「嗚呼。ナツ、あまりはしゃがないようにするのだよ」
 そう、柔らかに声をかけるのは、榎本・英(人である・f22898)。そんな彼の言葉を解してか否か、今まで触れていた紫色の花を離れたかと思えば、対面の紅に染まる花へと駆けてゆく。
 「ナツ、ナツ、とてもたのしそうね」
 駆けゆく仔猫の背をみとめ、眦を緩めたまま、ゆうるり後を追うのは、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)。
 「宝石のように光る花が気になるようだね」
 そんな七結の隣に添うて、英がそう告げたそばから、ナツと呼ばれた白き仔は、ランタン揺れる木の幹へと駆け出した。

 ――かと思えば南瓜のランタンか。

 そう溢した英の笑い交じりの溜息に、鈴なるような笑いを重ねた七結もまた、視線で仔を追う。
 「共に駆けてしまおうかしら」
 楽しげな白き背を、揺れる尾を見て紡がれた其れを、耳聡く拾い咎める声を上げたのは……英、ではなく。

 ――みゃあ。

 七結と英のその間。小さくも頼もしい三毛の仔猫が、真っ直ぐにと、もの言いたげな視線を彼女へと向けていた。
 「嗚呼、ナナ。だいじょうぶよ。気をつけてゆくもの」
 「ナナは相変わらずなゆのお目付け役のようで頼もしいね」
 ナナと呼ばれたその仔猫は、二人の言葉を受けて、小さく尾を揺らしてみせた。
 そんなナナの様子に顔を見合わせ笑う二人のその向こう、笑うランタン揺れる木の幹へと到達したナツは、その前足を精一杯に伸ばして跳ねて、届かぬ燈へと必死になっていた。どうやら暫く格闘しそうな雰囲気に、その姿を見てまた二人は笑う。
 「ナツの歩みに合わせて気ままに進もうか」

 ゆったりと笑う英のまなこがふと、七結の纏う衣装へと焦点を合わせた。
 「……しかし、君もナナもナツも、いつもと違う姿」
 其処には牡丹一華の羽織を纏う恒とは異なり、真白の衣のみにて身を包んだ彼女の姿。その頭部を飾るのは同じく真白のナースキャップ。すらりと伸びた足先には、常と同じ高さのヒールでありながらこちらも真白のパンプスと言った、ナース姿の彼女が立っている。髪に飾った牡丹一華は変わらず咲くがゆえに、真白の衣装にその色彩がなお鮮やかに浮かび上がるよう。
 「はろうぃーん。年に一度のお祭りごとね」
 おまけとばかりについてきた、赤い液体入りの注射器模型を、戯れにと手の中で遊ばせて七結は楽しげにと笑う。
 「とても似合っているよ」
 彼女へとそう告げた英もまた、常の姿とは異なっていた。書生然とした恒とは違い、彼はと言えば、白のシャツに濃緑のネクタイを締め、その上から白衣を纏った医師の姿だ。首から下げた聴診器の先は胸ポケットに収まっている。
 襟元にて利口に巻きつくネクタイに慣れぬ様子で、時折指先伸ばしゆく姿を、七結は眦緩めて眺めていた。
 「あなたも、よおく似合っているわ」
 そう告げて彼女が移す視線の先には、なおもランタンと格闘しようとする白い仔猫とそれを止めに向かった三毛の仔猫、それぞれの背に揺れる白い翼と頭部に浮いた光る輪っか。白衣のふたりに寄り添う天使と云わんばかりのその姿は、無邪気な様子と相まって愛らしさもまた増すばかり。

 「ナナもナツも、なんとあいらしいこと」
 二匹を迎えに行こうかと、踏み出した彼女の足元に、ランタンの明かりできらりと光ったその花は、まるで彼の瞳のようなあか。
 「……夏に被っていた帽子もステキだったわ。あかい花を添えてみましょう」
 ぷつり。と微かな音を立て、彼女の指にて手折られたあかく煌めく花二輪。そっと二匹を彩れば、そこに咲いたいろにまた、彼女は柔く笑みを溢す。
 自分の身にあかが差された感触に、ふと振り返ったナツの目に、次の興味の種が映り込む。
 緩やかに歩みを進める彼ら彼女らを、木陰の向こうからそわそわと窺い見ている仮装獏達に気が付いたのだ。その手にはティーカップやティーポット、テーブルクロスや菓子などを持ち、声をかけるタイミングを計っているように見えた。
 「嗚呼。ナツ、それは獏だ。私たちにお茶を与えたくて仕方がないようだね」
 そんな獏達が覗く木陰のすぐ側には、ちょうど椅子としてお誂え向きの不思議なキノコが、ひとつ、ふたつ。そうして、そして。小ぶりのきのこもまた、ひとつ、ふたつ。
 まだまだ先の見えない一本道、ここらで休憩もいいかもしれない。そう思った英は七結やナナ、ナツへと声を掛けた。

 「其処のきのこの椅子に座って、少し休憩をしよう」
 「休憩ですか、皆様方!」
 「お疲れでしょう?此方に紅茶もお菓子もございます」
 「さあさ、其方にお掛けになって」
 「テーブルはすぐにでもご用意を!」
 そんな英の声に反応したのは仮装獏達。エプロンドレスを纏った獏や、頭からツノを生やした獏、ピエロの鼻を付けた獏など、仮装した彼等が待ってましたとばかりに押し掛ける。
 あれよあれよと取り囲まれる様子に、ナナも大きく目を開いてじいとその様を見つめている。そんな小さな背を、そうと撫ぜるのは七結の細く柔い指先。キノコの椅子に腰掛けて、指先は三毛の背に添わせながら、ぽよんとした独特の感触へと意識を向けた。
 「この椅子は弾むような不思議な座り心地ね。ほら、ふたりも」
 そうして、小さな天使達をちいさな椅子へと誘って。

 「皆様お席に着かれましたか?」
 「お絞りはこちらにございます」
 「紅茶も飲み頃でございますよ」
 「其方のちいさな方々は、専用のお菓子もございます」
 「お席が桜の下ですので、其れに合わせさせて頂きました」
 「皆様方のお好みに合いますれば幸い、と」

 入れ替わり立ち替わり。まるで仮装のショーを見るかの如く、様々な獏達が代わる代わるに世話を焼く。
 こぽぽと空気を含むように、高い位置から紅茶が注がれたなら、ポットへ向けた視線に煌く花弁が映り込む。はらはらと舞う花弁は、届く光の加減で紅にも、紫にも、時には金にも色を変えてゆく。
 立ち上る湯気と共に広がるのは、紅茶の其れに混じった、仄かな花の馨。
 「この、ふうわりかおるのは……」
 「嗚呼、ほのかに桜の香りがするような。君に淹れてもらった茶を思い出すよ」
 「ええ、ええ、この花に合わせて!其方のお嬢様も桜のお茶を?」
 香りに気付いて貰えた喜びに、声音も上がる獏であったが、続く言葉も気になるようで、英と七結を交互に見やる。そんな視線を受けながら、温かな紅茶を口内へ迎えた英はその味を楽しんだ後、一つ柔く頷いて。
 「この茶もとても美味しいが、なゆの茶はもっと美味しいのだよ。獏も驚きの美味しさだ」
 かちゃりと小さな音を立て、英が薄紅桜のカップを置けば、次いで七結の手からも薄紅蝶のカップがソーサーへと戻される。
 「お気に召したのならば喜ばしいわ」
 花弁が綻ぶように、七結のかんばせも綻び咲いたなら、気持ちは窓の外に桜舞う、かの一室へと思い馳せ。あゝ、間も無くあたたかなお茶がおいしい季節がやってくる。

 ――また、お茶をしましょうね。

 穏やかに告げた彼女の言の葉が、南瓜笑う森の中でもはっきりと。英の耳に、心に届いた。
 そんなふたりの様子を、獏達も給仕の手を一時休めて眺め見る。出来る執事は、不要な時には手を出さないのだ。
 そうして暫し、穏やかな春の日の如く時が流れゆき、ポットの茶も菓子も減った頃。

 ――にゃー。

 と、ひと鳴き。催促の声。
 其処に頼もしい視線を感じたならば、最初に腰を上げたのは英だった。
 「さて、そろそろ行こうか。先はまだ長い」
 「ご馳走さま。ステキなひと時をありがとう」
 名残惜しげな獏達へと礼を告げ、白衣のふたりと二匹の天使は森の奥へと進み往く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ピーター・ハッタ』

POW   :    「おめでたい日 万歳!」
【飲んでいる紅茶】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【帽子を殺戮捕食態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    「砂糖は2杯だ ありがとう!」
【紅茶】を給仕している間、戦場にいる紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    「なぜカラスは机に似ているのか?」
自身が【疑問】を感じると、レベル×1体の【ティーセット】が召喚される。ティーセットは疑問を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はスミンテウス・マウスドールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ●

 長い長い一本道を抜けた先。
 ぱっと開けた視界の先は、まぁるく広い花畑。

 きらきらと煌き揺れる花々は眩く鮮やかで、ぽっかりと開けたその場所は、森の奥に隠された秘密の園のようにも思えた。
 そんな開けた花畑の中央には、大きな大きなテーブルと並ぶ椅子。
 そして、奥には其のテーブルを半円状に取り囲む、立派な調理スペースも目を惹いた。
 何故森の中にキッチンが?という疑問は、だって不思議の国だもの、の一言で片づけられてしまうだろう。
 キッチンの傍には、望むだけ食材が溢れてくる不思議なバスケットやコンテナも在り、望む調理器具も調味料も、願いと共に引出しを開けたならぴょこんとその手に収まるだろう。
 作り手が望むのならば、どんな料理にも対応できる万能キッチン!なんて素晴らしいんでしょう!

 さて、視点を広場の中央に戻したなら、真白の椅子に逆向きで腰を掛け、倒れるように背をテーブルに預けながら猟兵達へとぶうらり手を振り、長い舌をぺろりと揺らした帽子を被る、白髪の長耳がひとり。
 待ちくたびれたと言わんばかりの視線を向けて、右に左にとその帽子頭を揺らしつつ。

 「やぁやぁ!随分遅かったようだけれど、寄り道でもしてきたのかい?」

 狼と花でも摘んだ?
 お喋りな花達に付き合わされた?
 一本道だから迷子にはなりようがないと思うけれど。
 パンくずでも撒いておいた方が良かったかい?

 「あゝ、それとも。私抜きでお茶会を楽しんだ、なんてことは……ないね?」
 ごろりとテーブルの上で寝返りを打ち、頬杖をついた彼女は、どこか咎めるような響きを含みながらも、悪戯めいた笑みで、周囲の木々から覗くようにしている獏達へと視線を向ける。
 その視線に一瞬びくりと肩を跳ねさせ隠れた獏達を、満足げな笑みで見回したなら、踵を一つ、たんっと鳴らし、先ほど腰かけていた椅子の背へ飛び乗った。
 器用に片足で立ちながら、両手を広げて芝居めいた笑いを上げる。

 「ははっ!まあいい。こうして客人を連れて来てくれたのだからね」

 嗚呼、けれどもね、私は随分待ちくたびれたんだよ。
 其れを補うくらい、君たちが楽しませてくれるかい?

 白髪の長耳が話すと同時に、同じ様に口を動かす舌出し帽子をくるりと回し。
 にやりと笑った彼女の視線が捉えたのは、広場の入り口に立つ猟兵達。

 「さあ!何でもない日のパーティを始めようじゃないか!」

 高らかに告げられた彼女の一言で、花咲く園にて戦いの火蓋が切って落とされた。
オズ・ケストナー
クラウ(f03642)と

すごい、森の中でおりょうりできるんだっ
そうだね、クラウっ
パンケーキにできたてのジャムをそえるのはどうかな?

呼びかけに笑って
ヴァンパイア、くだものを大きめに切っておくれ
きみのすきなあかいろを煮つめちゃおうっ

竹炭とココアを混ぜた種を
高いところから落としてじっくり焼けば
ふかふか高さのあるパンケーキに

ナイフでくりぬいてクリーム詰めたら
ジャックオランタンみたい
くりぬいたところは味見でたべちゃう
クラウ、あーん
おいしいっ

あかいジャムも周りに添えて
牙がきらりと光るヴァンパイアのパンケーキ

ピーターに差し出す皿は
チョコとジャムで帽子を描いて
バクさんも食べようっ

なんでもない日に、かんぱーいっ


クラウン・メリー
おずりん(f01136)と

みんなが楽しめるようなパーティーにしたいね!
どんなお菓子を作ろっか?

ふふ、おずりんナイスアイデア!
いっぱい積み重なったパンケーキにジャムをたっぷり掛けよう!

俺は何をすれば良いかな?フランケン
ニヤリと牙を見せて笑う

ふふ、林檎に苺
真っ赤に染めてみせよう!

漠さん漠さんっ、紅茶を用意してくれるかな?
甘い香りに喉を鳴らす

まほうのように出来上がっていくパンケーキに瞳を輝かせ
あーんっ!美味しい!

パンケーキにチョコネジと青い花を添えて
にっこり笑顔のチョコソース
フランケンと花嫁パンケーキの完成!

何でもない日のパーティーにかんぱーい!

口の端に欠片を付けて
みんなキラキラ『おいしいえがお』!



 ●

 森の奥、花に囲まれた地に立つキッチン。
 いかにもメルヘンなその様相に、空色の瞳を輝かせたのはオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)。
 「すごい、森の中でおりょうりできるんだっ!」
 わくわくとした声音で手を叩いたオズの隣で、同じ様に金色の瞳を瞬かせてクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)も楽しげに声を弾ませる。
 「みんなが楽しめるようなパーティーにしたいね!おずりんっ」
 「うんっ。そうだね、クラウっ」

 微笑みあった二人は、早速キッチンの前に立つ。
 なんでも作れそうな不思議なキッチンだからこそ、何を作ろうか迷ってしまう。
 「どんなお菓子を作ろっか?」
 うーん?と首を傾げるクラウンに、そうだなあ、と鏡写しの様に首を傾げていたオズが、閃いたように、ぽん、と手を鳴らす。
 「パンケーキに、できたてのジャムをそえるのはどうかな?」
 その言葉を聞いたクラウンの表情が、ぱっと明るく花咲いて、おずりんナイスアイデア!と、足元軽くステップを踏む。
 「いっぱい積み重なったパンケーキに、ジャムをたっぷり掛けよう!」
 二人揃えば素敵なアイデアはいくらでも湧いてくるから、これから作るパンケーキの様に膨らむ想像を、わくわくと一緒に形に変えてゆこう!

 「俺は何をすれば良いかな?フランケン」
 作るものが決まったなら、早速作業に入ろうと、吸血鬼姿のクラウンが、隣立つオズへとニヤリと牙を見せて笑う。
 仮装に合わせた呼びかけに、悪戯めいたその様子に、ふふ、と笑ったオズもまた。
 「ヴァンパイア、くだものを大きめに切っておくれ」
 ちょっぴり演技めいた口調に乗せて、問う彼へと指示を出す様に大きく胸を張って、人差し指を立てながら、えへん、と伝える。
 そうして、小さく笑ったなら、
 「きみのすきなあかいろを煮つめちゃおうっ」
 いつもの声音に乗せて、にっこりそう添えるのだ。ヴァンパイアの好きなそれに似せた赤いジャムを、きみといっしょに作ろう、と。
 そんな笑顔と提案を受けたクラウンもまた、にっこり笑顔を向けて返して。
 「ふふ、林檎に苺……真っ赤に染めてみせよう!」
 演技めいた口調はそのままに、まかせて!と言わんばかりに胸を張る。

 真っ赤なジャムを作るなら、色を担う苺にラズベリー、クランベリー。赤いベリーをふんだんに。
 赤い皮に黄色い中身の林檎は、ごろっと贅沢に切ったあと、少しばかり色付け施してから、仲間に入れるとしましょうか!
 ひょいひょいと籠から赤い果物を取り出しながら、ジャグリングを披露するのはご愛嬌。作っている間もみんな楽しく!そんな気持ちを表すように。

 「やぁ、やぁ!君も器用なことだね!」 
 「ふふー。凄いでしょ?これくらいお手の物!」
 「なら私もひとつ、魅せるとしようか!」
 「ふふ、ヴァンパイアも、ピーターもすごいねっ」

 器用に果物を扱う吸血鬼と、其れに張り合うように、数多のカップやポットを操って見せるピーターを、優しい瞳で見守るフランケンもまた、鼻歌交えてその手を食材へと伸ばしてゆく。
 パンケーキの種に使うのは、優しい白を数種類。小麦粉、お砂糖、ベーキングパウダーに少しのお塩を加えましょ。白い卵を割り入れて、ミルクを足せばまーぜまぜ。ほうら、パンケーキの種の出来上がり!
 そうしてそこに、もうひとつ。オズが加えるのは“遊び心”。なんたってハロウィンの国だもの。作った種の半分に、竹炭とココアを混ぜたなら、夜空のような黒い種もできちゃった!
 下ごしらえが出来たなら、二人で顔を見合わせて、並んでコンロに立ちましょう。
 吸血鬼はあかいお鍋をぐーるぐる!
 フランケンは、あったかフライパンに高いところから種を落として、じっくり焼いてふかふかに!
 甘酸っぱいかおりと、甘く香ばしいかおりが、並んで混ざり合ったなら、お腹も鳴ってしまいそう!

 「獏さん獏さんっ、紅茶を用意してくれるかな?」
 お腹の音は押さえながらも、思わず鳴った喉の音。其れをかき消すように、遠巻きに眺める獏達へと、クラウンがお願いしたならば、お任せください!と獏達も色めき立って。
 紅茶の準備はわたくしめが!ならばお皿はわたくしが!でしたらナイフとフォークはわたくしに!とテーブルへ向かい群れをなす。
 そんな様子が微笑ましくて、聞こえる声が楽しくて、焼き上げたパンケーキを山と積み上げながらオズの頬は綻んでゆく。
 種を全部焼き上げたなら、オズはくるりと回したナイフを手に持って、冷めたものからくり抜いてゆく。そうして、そこにクリームを詰めたなら。
 「ふふ、ジャックオランタンみたい」
 「わあ!おずりん、魔法みたいだ!」
 お皿に現れた顔へと其々の感想をこぼしつつ、くり抜いた生地を手にしたオズがにっこり微笑んで。
 「クラウ、あーん!」
 「あーんっ!……美味しい!」
 「ふふ、おいしいねっ」
 声に合わせて、ふたりでぱくっ!
 味見という名のつまみぐいだって、たのしいお料理の醍醐味だからっ!

 お味見もしっかり楽しんだなら、最後の仕上げ!
 くり抜きクリーム詰めたパンケーキの周りに、クラウン特製の赤いジャムを添えたなら、悪戯な牙がきらりと光る、彼にそっくりなヴァンパイアのパンケーキ!黒い帽子もお洒落です。
 そんなオズのすぐ隣、吸血鬼の手で描かれゆくのは、白いパンケーキに咲いた、にっこり笑顔のチョコソース。その側にはチョコネジと青い花を添えて……ほうら、こちらも。幸せに咲う、フランケンと花嫁パンケーキの完成です!

 みんなで一緒に食べるため、悪戯笑顔に幸せ笑顔、お皿にたくさん作ったら、さあさ、テーブルへと並べましょ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榎本・英
……なゆ、君は料理を作れるかい?
ちなみに私は菓子類は作った事は無いよ。
せいぜい味噌汁などの軽い物くらいだね。

君さえ良ければ、私の先生になってくれるかな?
嗚呼。とてと頼もしいね。
それではなゆ先生、よろしく頼むよ。

料理は気持ち。
嗚呼。それならばありったけの思いを込めれば良いのかな?

どうせならなゆ、君の好物を作りたいのだよ。
フルーツサンドだったかな。
パンと生クリームにたっぷりのフルーツだね
君の好きなフルーツはあるかな?
それを多めに入れよう。

フルーツサンドは簡単で良いね。
これならば沢山作れそうだよ。
嗚呼。味見をしてくれるかい?

私の作ったフルーツサンドは、お口に合うかな?


蘭・七結
【春嵐】

お菓子作りはおいしくたのしい数式
分量を計らないと失敗してしまうの
あなたは計算はお得意?

目分量ではなくきちりと
けれども真心はたんと込めて
料理は気持ち、その通りね
屹度おいしく出来上がるわ

まあ、わたしの
固めで甘いクリームがおいしいの
なゆはベリーがすきよ
甘酸っぱいイチゴをたっぷり使いましょう
英さんもお好きでしょう?

さらさらと砂糖の分量を計って
クリームを作り上げ……自動の泡立て器?
文明の発達とはすばらしいものね

仕立てたクリームを塗って
とりどりの果物たちを飾りましょう
ふたりとも。もう暫し待っていてね
あなたたちも果物がお好きかしら

できあがり
嗚呼、やさしく解けてゆくお味だわ
彼女も喜んでくださるでしょう





 甘い香りが漂う中、キラキラと揺れ煌く花の園にて、もう一組の猟兵達がキッチンに立っている。
 「……なゆ、君は料理を作れるかい?」
 そう並び立つ彼女へと言の葉を紡いだのは、榎本・英(人である・f22898)。
 「ちなみに私は、菓子類は作った事は無いよ」
 せいぜい味噌汁などの軽い物くらいだね。と、続けた彼の眉は少しばかり下がり気味。
 そんな英のあかい眸を眦柔く見つめ返して、そうと口を開いたのは、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)。
 「お菓子作りはおいしくたのしい数式。分量を計らないと失敗してしまうの」

 ――あなたは、計算はお得意?

 そう問い返す金環抱いた紫色の眸は、其れ映す赤の内にて実に頼もしく煌いた。
 周りに咲くどの花よりも、鮮やかに。嗚呼、だから。
 「君さえ良ければ、私の先生になってくれるかな?」
 「ええ、わたしでよければ、喜んで」
 おいしくたのしい数式を、あなたと紡いでゆきましょう。
 さあ、ようくきいて、お菓子作りの注意点。目分量ではなくきちりとね。けれども真心はたんと込めて。
 「真心……料理は気持ち。ということかな」
 「料理は気持ち、その通りね」
 「嗚呼。それならば、ありったけの思いを込めれば良いのかな?」
 それならば、と。英の表情も明るくなる。
 そんな彼の顔を見たならば、七結の心もまた鮮やかないろが満ちゆくようで。
 「屹度、おいしく出来上がるわ」
 紡いだ声も、弧描く眸も、柔らかく、柔らかく染まりゆく。

 そんな七結へと、英が続けて紡ぐのは。
 「どうせならなゆ、君の好物を作りたいのだよ」
 ありったけの。そう、思いを込めて作るなら。そこに込める想いはきみに。
 「……まあ、わたしの」
 彼の紡ぐ思いを受けて、ぱちりと瞬いた彼女の頬が紅を指す。ほんのりと柔く淡く。喜び咲いた春花のように。
 「フルーツサンド、だったかな」
 「ええ、ええ。固めで甘いクリームがおいしいの」
 「ならば必要なのは、パンと生クリームにたっぷりのフルーツだね」
 山のような食材をくるりと一度見渡して、素材探しと行く前に、もう一つ聞いておくことがある。
 「君の好きなフルーツはあるかな?」
 それを多めに入れよう、と。もひとつ加わる提案に、彼女もまた花咲くままにと頷いて。
 「なゆはベリーがすきよ。甘酸っぱいイチゴをたっぷり使いましょう」
 英さんもお好きでしょう?そう微笑んだ彼女へと、英もまた頷いて。
 ふたりの好きなあかい果実は、たあんと籠に迎えよう。
 山と盛られた赤く艶やかな宝石に、ナツとナナも興味を向けて。その瞳にあかを映しつつ、尾を右に左にと揺らしている。

 英がフルーツを集め刻む間、七結は手慣れた手つきで生クリームの材料を計り上げてゆく。
 ボウルに移した生クリームに、きちんと計った砂糖をさらさら加えて、準備は万端!
 さあ、クリームを作り上げようと、七結が引き出しへと手をかけたなら……ぴょこんとその手へ飛び込んだのは、彼女の目には見慣れぬもので。
 「まあ、これは……」
 「やあやあ、君はご存知ないかい?それは自動の泡立て器!」
 「そこのボタンを押してご覧なさいませ、お嬢様!」
 「少しばかり、音はおおきゅうございますが」
 「そのお手を疲れさすことございません!」
 「あゝ、けれど、取り出す折には気をつけて」
 「「「動かしたままだと大惨事!!」」」
 不思議そうに瞬いた七結の傍、いつの間にやら現れたピーターや獏達が、入れ替わり立ち替わりにと手に持つそれの説明を挙げてゆく。
 「まあ、そうなのね。文明の発達とはすばらしいものね」
 ご忠告もありがとう、と彼らに告げた彼女は、教わった通りにそれを使いクリームを仕立ててゆく。
 機械音を立てながらクリームをかき混ぜてゆくその品に、二匹の天使の視線はまたしても釘付けだ。
 耳をひくひく、尻尾はゆらり。
 その手で混ぜる恒よりも随分早く、ふうわりと柔いツノを生んだ白いクリームが出来たなら、隣でとりどりの果実を刻んでいた英の準備も済んだよう。
 苺をはじめ、パイナップルやキウイフルーツ、オレンジと甘酸っぱい香りが満ち満ちて、赤に黄色、緑に橙。英の集めた花に負けない彩りが、甘く柔い布団に包まれるのを待っている。

 ここからはふたりで同じ作業。
 真白のクリームを真白のパンにたっぷり塗って、挟んでゆくのは色とりどりの果実達。
 それはまるで、色の無い世界にひとつひとつと彩りを纏わせゆくようでいて、真白の頁に想い出を刻みゆくのにも似ていた。
 ふたりでただ一つの絵を描くように。そう、ふたりの好きなあかを、少しばかり多めに加えて。

 「フルーツサンドは簡単で良いね。これならば沢山作れそうだよ」
 英の言葉の通り、ひとつ、またひとつと甘いキャンバスが彩られてゆく。
 甘い山が、ひとつ、ふたつと増えゆく毎に、そこから漂う甘くも酸味を帯びた香りに誘われるかの如く、白き天使がそろりと近づいて、それを諫めるように、三毛の天使が翼を咥え引き留めた。
 「ふたりとも。もう暫し待っていてね。あなたたちも果物がお好きかしら」
 その姿をみとめた七結が、やんわりと二匹へ告げる。そう、たのしいパーティーまでもう少し。
 そうして、七結が最後の一つを挟み終えた。
 「さあ、できあがり」
 「随分沢山作ったね。嗚呼。なゆ、味見をしてくれるかい?」
 「ええ、それじゃあ。いただきます」
 「私の作ったフルーツサンドは、お口に合うかな?」
 英の作ったフルーツサンド。はじめてのひとくちは、七結のもとへ。ふたりで作った、たのしい数式は彼女の口内でやわく、あまく、すこうしすっぱく解けてゆく。
 「嗚呼、やさしく解けてゆくお味だわ。彼女も喜んでくださるでしょう」
 解けゆく数式に添うように、彼女のかんばせも、やわくあまくとけたなら、それは英にも伝染するよう。

 たっぷり込めた気持ちもまた、ふたりの笑顔で確認したなら、さあさ、テーブルへと運びましょう!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



 
 さぁさぁ!料理が揃いました!
 これからパーティーの始まりです!
 
 「ピーター、おまたせっ!バクさんも食べようっ」
 そう告げながらオズが差し出すお皿は、チョコとジャムで帽子を描いたピーター専用。
 「こちらのフルーツサンドも、どうぞ」
 次いで七結が差し出すのは、苺がたっぷり挟まった、色とりどりの甘くて酸っぱいフルーツサンド。
 手招きに応えた獏達の分やおかわりも、テーブルへずらりと並べたなら、パーティの準備は万端!

 集まる獏達によって、さあさあどうぞと引かれた椅子に、シュネーが寄り添うオズとクラウン、その隣には七結と英、小さな椅子へナツとナナも座ったなら……カップはみんなの手もとにありますか?
 それでは、せーのっ!

 「何でもない日のパーティーにかんぱーい!」
 「なんでもない日に、かんぱーいっ」
 「「「乾杯っ」」」
 「「にゃあ」」

 ピーターが最初に手をつけたのは、笑顔の咲いたパンケーキ。
 お味は如何?と作ったふたりが見守る中、ピーターはナイフとフォークで口へと運び、同時に頭の帽子もまた、同じ皿から長い舌でぱくり、ぺろり!
 そうして咲いた笑顔もまたふたつ分!

 「あゝ、これは美味しい!」
 「ほんとう?」
 「あゝそうさ、プレーンとココア、ふたつの味が楽しめるのが先ずいいじゃ無いか!それにふかふかな焼き加減も素晴らしいね。ナイフを入れる瞬間がとても心地よかったよ。
 此処に描かれた笑顔は、この地に咲く花にも負けずに綻んでいるし、君達のその仮装に合わせたデザインも楽しくていいじゃないか!其々に相手をモチーフとして作り上げているのがまた、思う気持ちがこもっていて素晴らしいね。
 そちらの小さなレディもきちんと寄り添っているのが微笑ましい。ネジのチョコや青い花もいいアクセントだ!そしてこちらの吸血鬼くんはとても綺麗にくり抜かれているね!私も器用な方だけれど、実に美しいじゃあないか。
 吸血鬼らしい真っ赤に染まるジャムが添えてあるのも遊び心があると言うものさ。あゝそして、ココアだけでなく竹炭が混ざっている分、しっかりと黒い色になっているのも好感だね!クリームで色分けされた牙もくっきりと見て取れるし、このいかにも悪戯好きそうな表情が、そこの彼らしさが出ているよ!
 きっと君達は互いを良く知る仲良しなのだろう。あゝそうに違いない!味も思いも満点さ!」

 ペラペラと、止まるところを知らぬ勢いで、長耳と帽子が同時に口を動かす。どちらの声なのかが分からぬほど、食べる時も話す時も同時の二つの口は休むまもなく動いてゆく。
 それは元々の彼女の性質なのか、ハロウィンの国の力なのか、今は誰にも分からない。しかし、どうやら彼女は上機嫌。出された皿をペロリと綺麗に平らげて、紅茶で喉を潤したなら、続いて隣に並ぶフルーツサンドの皿へと手を伸ばす。

 「やぁやぁ!こちらも美味しそうじゃあないか」
 そう言って、七結と英の視線を受けながら、長耳がひとつ手に取り口へ運べば、やはり帽子も長い舌を伸ばし行き、同じタイミングでぱくり!ぺろり!

 「あゝ、こちらも美味い!」
 「嗚呼それは良かった。君の口にあったかな?」
 「あゝ、あゝ、いいね!柔らかなパンに挟まれた、程よい硬さのクリームが舌に馴染むよ。同じく挟まる果物は瑞々しくて甘酸っぱい。そう、甘酸っぱさの調和が取れる、いい果物の扱いをしているじゃあないか。
 そうして私は知ってるよ、少し多めに加えられたこのあかい苺は、君たちの好きなものなのだろう?ふふふ、気持ちを込めながら作っている君たちの会話だってしっかり私は聞いているんだ。ほぅら、こんなに耳も長いからね!よく聞こえるのさ!
 それに、話と言えば君はお菓子作りは初めてなのだろう?どうだったかな?あゝいや答えなくても構わない!食べればわかる話なのさ。だってほら、こんなにも美味しいんだから!きっと先生がよかったのだろうね、たのしくおいしい数式を、彩を、あゝふたりで編んで飾ってゆけたのだろう!
 そちらのレディも、はじめての道具はどうだったかい?便利なものを使うのも良いだろう?ちょっとアレは煩いけどね!あゝ話が逸れてしまった!いやでも通じているのさ。見守る小さなその子達の視線や思いもね。
 その全てがこのフルーツサンドに挟まって、美味しさも気持ちも満点さ!」

 なおもペラペラと語った長耳と帽子は、ゆらりゆらりと首を舌をと揺らしながら、次の皿へと手を伸ばす。そんな彼女の長い話を聞きながら、テーブルを囲む面々もまた、彼女と同様に甘くて美味しい、想いのこもったスイーツ達を口へと運ぶ。
 自分達で作ったもの、居合わせたふたりが作ったもの。其々と口へと運んだら、綻び咲くのは、時折口の端に欠片を付けた『おいしいえがお』!
 互いの感想を伝え合ったり、広がり花咲くお喋りは、この地で出会った縁のひととき。

 楽しい時間は刻一刻と過ぎ行きて、テーブルの料理がなくなる頃、食べては絶えることなく続いていた、ピーターのペラペラ賑やかなお喋りがいつの間にやら聞こえなくなって。
 色鮮やかで、甘く美味しい料理に代わり、今テーブルに並んでいるのは、気持ちよさそうに眠る獏達とハッターの幸せな寝顔。

 クラウンとオズ、英と七結は其々にと頷き合って。さあ、パーティーの終わりを告げましょう。

 楽しいパーティーの最後には、楽しい終わりが似合うもの。
 周囲に煌めく花に交じり、柔らかな髪靡かせた少女の繰る手の内より牡丹一華の花嵐が舞い彩ったなら、其処へちょっぴりへんてこなガジェットが現れ出でて、虹色の夢見るシャボンがふわふわり。眠る彼女らをさらに深く誘うよう、浮いて踊ってぱちりと弾けた。白と三毛、二匹の仔猫がこの場を舞い彩るそれらと戯れるように駆け遊ぶ中、パーティラストのショータイム、と、白黒ピエロが何処からともなく放り投げた大きな薬玉を、投げるナイフで弾けさせたなら。キラキラと舞う紙吹雪。華やかでありながら、力を持つそれらによって、夢見るオウガ達は骸の海へと還される。

 おやすみなさい、またいつか。
 今日という何でもない日を彩るパーティは、美味しく楽しいひとときは、きっとみんなの心の中に。

最終結果:成功

完成日:2020年10月27日
宿敵 『ピーター・ハッタ』 を撃破!


挿絵イラスト