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一見は百聞に如かず

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章 #番犬の紋章 #地底都市

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●知は力なり
「カターニア様、本日の書物でございます」
 眼鏡をかけたメイドの女が、数冊の本を恭しくドレスの少女に差し出した。少女……カターニアはそれを受け取ると、ぱらぱらとページをめくり中を確認する。
「うん、ありがとう。さてさて、今日のはどんなお話しかな? えーと、冒険ものに剣術指南、それから多属性魔法相互干渉術応用編……なんかバトル系に寄ってない?」
「申し訳ありません。地下の人間たちが持つ本が枯渇してきまして、少々別所にて用立ててまいりましたので」
 表情を変えぬまま言うメイド。それを聞き流しながら、カターニアはぺらぺらとさらにページをめくる。
「まあいいや、それじゃお茶でも飲みながらゆっくり読もうかな。そうだなー、なんか本が濃い味だから疲れが取れそうな奴持ってきて」
「かしこまりました。では15年物の雌花で淹れましょう」
 そう言ってメイドは一礼しその場から立ち去る。その向かう先は地下の都市、そこに住む人間の元。

●知ってるだけで勝てれば苦労はない
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」
 アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)がそう言って頭を下げる。
「本日は、ダークセイヴァーにて、ヴァンパイアに支配される村を一つ解放していただきます」
 闇に閉ざされた世界ダークセイヴァー。そこでは多くの人間が今もって圧政の下に暮らしている。それを解放するのは、猟兵が長く続けてきた活動の一つだ。今回もまた一つそれを積み重ねるということか。
「ですが、いつもとは少しだけ事情が違いまして、皆さんに向かっていただくのは最近発見されたダークセイヴァーの地下都市。そこでは地上を知らない人たちが地上と同じように苦しめられています。ですが、そこを支配しているヴァンパイアは、地上の者とは比べ物にならないほどに強いです」
 いつもと似た状況だが、いつもより手強い敵がいる。そう言ってアレクサンドラは説明を始める。
「地下都市には都市ごとに『門番』と言われる強力なオブリビオンが入り口に配置されています。『門番』はその証として、体のどこかに『番犬の紋章』と呼ばれる寄生虫型オブリビオンを寄生させています。これによってその力は飛躍的に増強され、実力はあの『同族殺し』すら一太刀で屠るほどだとか……」
 同族殺し、それはその名の通り同族を殺すことに取り付かれ、それを成すだけの力を得た狂えるヴァンパイア。油断できぬ強豪として相まみえた猟兵もいるだろうが、それすらも物ともしない力を持つということか。
「この紋章は『辺境伯』なる存在に授けられたそうですが、その詳細は不明です……ともかく、まずはこの『門番』を倒し、地下都市へ入り込んでください。今回戦う『門番』は、『世界の真実を知るもの』カターニアという少女型ヴァンパイアです」
 世界の真実とは大仰な称号だが、その心は。
「彼女は本を読むのが好きで、古今あらゆる戦術戦略武芸に魔法、政治学問その他諸々の知識に通じている……と自称しています。その知識で相手の出方を見極め、カウンター主体の戦法を取ってくるようです」
 つまり、本好きの頭でっかちということか。しかしその実力と豊富な知識量は本物だ。番犬の紋章もあり油断できる相手ではないだろう。
「彼女の紋章は頭に飾りのようにつけている花……に擬態しています。ここが力の源であり、同時に弱点でもあります。上手く狙ってください」
 もちろん彼女もそれは承知のこと、守るように動いてくるだろう。いかにその守りを抜くか、それが戦いの鍵となりそうだ。
「そしてカターニアを倒したら、『付き従う者共』と呼ばれるメイド姿のヴァンパイアの集団が襲ってきます。彼女たちは街中で実際に圧政を実行している実働班のような存在です。紋章はなく個々の実力はカターニアは及びませんが、仕えることを無上の喜びとしており、自身の命すら厭わず攻撃してきます。魅了やカターニアの好物でもある血液入りの紅茶を給仕し行動阻害も狙ってきますので、決して油断なきよう……」
 降伏も逃亡もなく、最後の一人まで決死で向かってくる。全滅させるまで戦いは終わらないと心得るべきであろう。
「彼女たちを倒せばこの地下都市からヴァンパイアはいなくなります。ただ地下都市のヴァンパイアには横の繋がりがあるようなので、攻め入ったことがばれないうちに住人を連れ出す必要があります。幸い住人はさほど多くないので、猟兵なら護衛するのも可能でしょう。受け入れを表明している人類砦がありますので、そこまで連れていってあげてください。もっとも彼らは地上を知らないので、説得や説明を兼ね、何がしかの慰問をしてあげると良いかと……」
 それくらいの時間はあるし、心をつかんでおいた方が移動中の統制も取りやすくなるだろう。何一つ自由などない生活故、何をしても喜ばれるはずだ。大げさなことでなくてもいいので、彼らに失われた喜びを思い出させてあげるといいだろう。
「敵は強いですが、決して勝てない相手ではありません。どうか地下にも光を届けてくださいますよう、お願いいたします……」
 そう言ってアレクサンドラはもう一度頭を下げ、猟兵たちをダークセイヴァーへと送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。
 今回はダークセイヴァーにて、地下都市の一つを解放していただきます。

 第一章では『世界の真実を知るもの『カターニア』』とのボス戦となります。彼女は回避やユーベルコード反射によるカウンター戦法や、空想上の動物を具現化しけしかけて攻撃してきます。その実力は非常に高いですが、頭の花が寄生虫型オブリビオン『番犬の紋章』になっており、ここを攻撃することで大きなダメージを与えられます。プレイングボーナスとなりますので是非狙ってください。

 第二章では『付き従う者共』というメイド姿のヴァンパイアとの集団戦になります。魅了や血液入り紅茶による速度低下の他、自身の命と引き換えに獰猛な狼を召喚する技も使ってきます。死を厭わない強敵ですが、ここで猟兵の強さを示すことで、第三章での人々の誘導が容易になります。

 第三章では住人達に様々な癒しを施しつつ、外へ出るよう誘導してください。第二章の展開如何で説得の難易度が変わります。基本的に彼らは地上を知らず、猟兵の事も話に聞いたことすらありません。とはいえ今の生活から抜け出したいとは思っているので、言葉と行動で示せば最後は理解してくれるでしょう。

 それでは、光を運ぶプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『世界の真実を知るもの『カターニア』』

POW   :    その展開、知ってるもん!
【読書で得た見識の広さで、】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    想像の翼を広げちゃえ!
戦闘力が増加する【空想上の獣】、飛翔力が増加する【空想上の獣】、驚かせ力が増加する【空想上の獣】のいずれかに変身する。
WIZ   :    そのアイディア、いただきっ!
【自信が持つ本】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自信が持つ本から何度でも発動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はティフラム・ラルフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 依頼を受けた猟兵たちがダークセイヴァーの洞窟を進んでいくと、まるで広間のように広大なスペースに出た。
 その奥には仰々しい巨大な門があり、その前では不釣り合いに豪華な椅子に腰かけたドレス姿の少女が本を読んでいた。
「えーと、『相反する属性を直に掛け合わせるのは困難を極めるが、双方と相性の良い属性を間に挟むことで同時利用が容易になる。例えば不仲の代名詞とも言える火と水でも通電と発火を起こす雷属性を用いることで……』」
 少女は本を読みながら片手に持ったカップに口をつける。その茶というには赤すぎる液体を口に含み、少女はさらに書を読み進めていく。
 これがアックス&ウィザーズの昼下がりのカフェででもあればさして気にすることもない光景だったであろう。しかし目の前の存在がそんなかわいいものでないことは、猟兵たちは十分わかっていた。
「『然るに反目の極致である光と闇を対消滅させず同時に成り立たせるには……』ちょっと、今いい所なんだけど」
 少女は書を読むのをやめ、顔を上げる。突然の侵入者を睨みつけるその顔の上、頭に飾られた花が風もないのにびくびくと蠢き、その中央に不気味な目玉がぎょろりと現れた。
 間違いない、あれが寄生虫型オブリビオン『番犬の紋章』、そして彼女こそがここの門番、世界の真実を知るもの『カターニア』だろう。
「あなたたちもしかして、侵入者ってやつ? 知ってる知ってる! 大勢で来て一人の門番にボコボコにされちゃうザコキャラでしょ! こういうのは数が少ない方が勝つって決まってるんだから!」
 そう言って残る紅茶を一気に飲み干し、本を閉じて椅子から立ち上がるカターニア。
 さあ猟兵よ、この頭でっかちに文字だけでは知ることのできない現実を教えてやれ!
七那原・望
一人の門番相手に多数で挑む勇者一行なら勝利するでしょう?
数だけでは勝敗はわかりませんよ。
もっとも、数が多くてなおかつ全員相手より強く、なおかつ作戦も相手より優れていれば確実に勝てるのでしょうけど。

【果実変性・ウィッシーズアリス】を発動。ねこさん達の【多重詠唱】【全力魔法】で現実味のある幻覚を見せ認識を乱します。

【第六感】と【野生の勘】で相手の行動を【見切り】、回避。セプテットとオラトリオによる【一斉発射】【範囲攻撃】【乱れ撃ち】で獣達を仕留めましょう。
来ると分かっていれば驚きません。

隙を見てねこさん達と【多重詠唱】【限界突破】【全力魔法】を【乱れ撃ち】。敵の頭部の紋章を砕きましょう。



 地下にある大きな空洞、そこにある門の前で二人の少女が対峙していた。
「一人の門番相手に多数で挑む勇者一行なら勝利するでしょう? 数だけでは勝敗はわかりませんよ。もっとも、数が多くてなおかつ全員相手より強く、なおかつ作戦も相手より優れていれば確実に勝てるのでしょうけど」
 七那原・望(封印されし果実・f04836)は目の前の相手が直前に言ったことに対し、その反例を出し否定する。
 それに対し少女……カターニアはふんと鼻を鳴らした。
「まず前提が間違ってるね。主役は私、あなた達は一人じゃ勝てないと思って群れで来たザコ。しかも一人目なんて一発でやられるためにいるザコ中のザコじゃない。それに世界の真実を知る私より作戦も実力も優れてるなんて……」
 馬鹿にしたように言いながら、カターニアは手にした本をめくり始める。いつの間に持ち替えたか、その本は異形の怪物が表紙となった図鑑へと変わっていた。
「わたしは望む……ウィッシーズアリス!」
 攻撃はさせまいと、望は【果実変性・ウィッシーズアリス】を先んじて発動、4匹の猫をその場に召喚した。猫たちは当意即妙に喉を鳴らし詠唱を開始、その体から4色の光を放ち始める。
 光はカターニアを取り巻くよう放たれ、その直前で合成、その前に何匹ものネコ科の猛獣の姿を作り出した。
 光の合成によって作られたそれは魔法によるものでありながら光学的な光の合成を用いてもおり、幻術とは思えないほどリアルな姿でカターニアを取り巻く。さらに呼び出された猫たちが全力で唱える魔法が、その体温のような熱や生臭いにおいまで乗った風、狂暴な唸り声など、そこにいる猛獣たちにさらなる現実感を与えていた。
「なによこれ、うるさいし臭いし……猫っぽいならこっちのほうがいいもん! 蟻の獅子は餌を得られず死す、それいけミルメコレオ!」
 カターニアは目の前の獣をうっとおしがりながら、怪物図鑑のページを開いて声を出す。それと同時にカターニアの周りから獅子の前半身と蟻の後ろ半身を持った異形の怪物が大量に出現、幻覚の獣たちを飛び越え望へと襲い掛かった。
 いかにリアルに作っているとはいえ所詮幻影、獣たちは魔獣を止めること能わず、望はそれらに取り巻かれる。
 無茶な体形ながら想像の獣故勢い良く振るわれる爪を、望はすんでのところでどうにか避ける。何かを呼び出して来るとは分かっていたから驚きはしないものの、実体を伴った戦闘要員を躱し続けるのは難しく、全てを捌き切るのも困難だ。
 しかし、望の勘はたった一つを狙えばいいと己に告げる。それを狙えるならば避け切れなかったとて耐える価値はあると。そして、攻撃を受け、あるいは躱すうちその瞬間は来た。
「……あなたです」
 宙に浮く銃『セプテット』とエクルベージュ色の影『オラトリオ』が、他を無視し一体のミルメコレオに一気に攻撃をかけた。その攻撃は鬣の生えた頭部を直撃し、その体を大きく跳ね飛ばす。少し離れた地面に転がったその体は、異形の怪物ではなくドレスの少女、カターニアのものへと変じていた。
「な、なんで……」
「呼んだ獣は臭いも息もたいしてしてません。でも、あなたが化けたのだけはしてたのですよ。あなたが飲んだ血の匂いの息が」
 獣の臭いについて書かれた本はあれど、その臭いを鼻に伝えてくる本はない。無臭の獣の中、一体だけ血臭を放つ者を探れば、それでよい。そう見切った望は、敵のお株を奪う回避からの反撃をカターニアに叩き込んだのだ。
「さあ、大勢の総攻撃の始まりですよ、一人の門番さん」
 倒れ込むカターニアに、望と猫たち、そして武器による総攻撃が放たれた。カターニアは本を盾に必死に頭部の紋章だけは守ろうとするが、それがどれほど効果があったか、うずくまる彼女の様子からは窺い知ることができなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ジェイクと行動

なるほど、間に別のを挟むといいのね。
盗み聞きになったけど、いいこと聞いたわ。
ヤヌスを持って光刃を形成して攻撃を仕掛けるわ。
カウンターで返してくるならカウンターで対処すれば。
フェイントなんかも繰り出せば隙を突けるかも。
妙に頭への攻撃を気にする様なそぶりを見せるけど、あの花に何かあるのかも。

絡み・アドリブOK


アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ジェイクと行動

ザコかどうかはやってみるまで分らんぞ。
白銀の魂を槍に形成して攻撃を仕掛ける。
あの花飾り、あれがどうやら強化をしているみたいだな。
あれを狙って破壊できれば有利になるか。
フェイントで回避させて逃げる先を第六感で予測して仕掛ける。
向こうも予測して動くだろうから、そこをうまく突けば……。

絡み・アドリブOK


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ジェイクと行動

あの花を狙い撃てば相手も弱くなる可能性が。
ヴァナディースでスナイパーによる狙撃を行えば。
援護射撃を行いつつ、有利に運べるようにしないと。
予想はしてたけど、結構回避しますね。
なんとか動きをできれば……。

絡み・アドリブOK


ジェイク・リー
※アリス、エルーゼ、華澄と行動

白狼の毛皮を被った姿の方で助けに入る。
「俺とも遊んでくれるよなぁ?」
八邉鬼衆を太刀に形成して早業による居合を繰り出す。
フェイントを織り交ぜ、魔力溜めによる魔力を融合させた衝撃波を飛ばす。
「ああ、グリムの事か」
別件で三人を助けたのがグリムニルだと話し、フェンリアと名乗る。
「ここ最近有名になった寄生型か。あのグリムが飛びつかねえわけがねえ」
ダッシュからの突き、フェイントで欺き二撃目で繰り出し刺し貫く事を狙う。

絡み・アドリブOK



 最初の戦いで早速醜態を晒したカターニアの前に、さらに猟兵が現れる。
「なるほど、間に別のを挟むといいのね。盗み聞きになったけど、いいこと聞いたわ」
 エルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)は接敵前、カターニアが独り言として読み上げていた本の内容を思い出す。エルーゼもまた属性を帯びた魔力を用いることがあり、その有効な組み合わせ方を断片的ながら聞けたことに笑みを浮かべた。
「なによ、人の本の中身勝手に聞いたりして。情報だって財産なのよ、勝手に聞くのは泥棒になるんだからね!」
 そもそもそれ以上に重い罪を山ほど積み重ねていることなど棚に上げ、エルーゼに文句を言うカターニア。あるいはヴァンパイアにとって人間など餌でしかない故、それを罪だとも思っていないのかもしれない。
「ザコかどうかはやってみるまで分らんぞ」
 さらにその隣で、『白銀の魂』を槍に形成しながらアリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)が構えを取る。その構えに隙はなく、彼女が雑魚どころか屈指の達人であることは一目瞭然であった。
「あの花を狙い撃てば相手も弱くなる可能性が」
 ライフル『ヴァナディース』を手に、藤宮・華澄(戦医師・f17614)も相手を検分する。武器を構えた二人の姿を見て、カターニアは余裕気に笑う。
「槍に銃ね、いかにも人間たちのとっておきって感じ? まあ人間同士の戦いならそれが一番強いよね。リーチが大事って分かってるのは偉いかな」
 偉そうに二人の武器に対しそう述べるカターニア。リーチの優位性という戦闘では初歩の初歩とも言える概念を得意げに述べるその姿は、あるいはそのまま彼女の実戦経験の乏しさを表しているのだろうか。
 そんなカターニアの姿を、白狼の毛皮を纏ったジェイク・リー(影の護り手・f24231)は静かに見据えていた。その目に宿るのは侮蔑か呆れか、あるいは倒すべき敵を観察しているだけで特別な感情など持っていないのか、その姿からはうかがい知ることができない。
 カターニアと猟兵、しばし互いの出方を窺うように双方が攻め込まず睨み合っていたが、やがてまずはエルーゼが光刃に形成した『ヤヌス』を構え、カターニアへと切りかかった。
「最初は踏み込んで正面狙い、そのくらい知ってるもん!」
 本を頭上に掲げ、エルーゼの振り下ろしを受け止めるカターニア。それは紙製の本とは思えぬ硬さで光刃を弾き、刃を自身へと届かせない。
 何度か刃と本を打ち付けあった後、エルーゼは数歩引いてカターニアから距離を取る。
「ふふん、もうあきらめた?」
 引いたエルーゼに追撃せず、カターニアは得意顔でそう言った。だがエルーゼは、今放った攻撃の感触を確かめながら考えを巡らせる。
「妙に頭への攻撃を気にする様なそぶりを見せるけど、あの花に何かあるのかも」
 振り下ろしの攻撃に関しては特に迅速に防御態勢を取るカターニア。頭部へのダメージを恐れるのはある種普通の事だが、それにしたって過剰だ。
「あの花飾り、あれがどうやら強化をしているみたいだな。あれを狙って破壊できれば有利になるか」
「狙い撃ってみましょう」
 話にあった『番犬の紋章』はあの花で間違いない。そう確信したアリスと華澄は、それぞれの武器を用いカターニアへと攻めかかる。
「あーもうしつこい! 面一本狙いなんて通じないんだからね!」
 まずヴァナディースの銃弾を本で弾きながら、カターニアはいらついたように言う。さらにイザナギの覚悟の刃も本で受け止めようと、その表紙を前に突き出した。
「そうだな、私もそう思う」
 だが槍の刃は本に当たる前に翻り、下へと落ちて足元をなぎ払う。なんてことはないフェイント攻撃なのだが、頭部に意識が言っていたカターニアは簡単に足を払われ、バランスを崩した。
「うわっ!?」
「そしてこうすれば当たる。出来損ないと言えど邪神の力は侮れんぞ」
「元素を交差させてより強く……さっそく真似させてもらうわね」
 さらにその頭部に【血の覚醒】で強化されたアリスの一撃に、【クロス・エレメント】で魔力を乗せたエルーゼの攻撃が襲い掛かった。エルーゼの攻撃は陽焔の魔力と水氷の魔力の間に風雷の魔力が挟まれ、先に盗み聞いた属性の合成を急ごしらえながら再現し、スムーズな通電と落雷による発火を本を貫いて頭部の花へと叩き込む。
「やっ、ちょ、やめてよもう! でもそうやってパワーアップして殴り掛かるアイデアは認めてあげる、私の方が上手だけどね!」
 焼け焦げた本から元素と魔力が迸り、カターニアの体を覆った。それはアリスとエルーゼの使った強化技のコピーだが、元々の力が強いカターニアが使えばその強化比率も格段に跳ね上がる。
 両手に炎と水を纏わせながら、カターニアは二人へと殴り掛かった。
「俺とも遊んでくれるよなぁ?」
 だが、その一撃はジェイクの放った『八邉鬼衆』の居合抜きにより押しとどめられる。さらにジェイクは連続で太刀を振るって魔力を纏う拳に叩きつけ、その衝撃でカターニアを押しとどめた。
「凄いパワーね……ジェイク……いえ、あの時の?」
「いえ、あの人とは服が違いますし、何より声が……」
 ジェイクのその様子に、彼の持ついくつかの人格のどれかが発現しているのだと当たりをつけるエルーゼと華澄。
「ああ、グリムの事か。声に特徴があるやつって言えばグリムニルだろう。俺はフェンリアだ」
 ジェイク……もといフェンリアはそう自分とまた別の人格の紹介を簡単に済ませると、さらなる追撃をかけんと踏み込んでいく。
「剣での連続攻撃でしょ、ありきたりすぎ!」
 そう言いながら、カターニアはドレスを翻しながら斬撃を避けていく。元々能力は高いのだ、一度落ち着けば猟兵の攻撃と言えど見切れないわけではない。
「そうか、じゃあ知ってるだろ、剣の攻撃は突きが一番早い」
 フェンリアは真っ直ぐ頭部へ向けて突きを放つ。が、カターニアはそれも素早く体を動かして避けた。
「でも私はそれより早いもんね!」
「早いほどそれに振り回されやすいものだけどね」
 そうして避けた姿勢のカターニアに、エルーゼの踊るような攻撃が連続して襲い掛かる。不安定な姿勢から強引に身をよじってそれも避けるが、その動きは最早華麗とは言い難いもがくようなものだ。
「もう一つ言いますと、上半身と下半身を別方向に動かすってすごく難しいんです。分かっててもなかなかできないくらいに」
 そこに華澄のヴァナディースの連射が、足元めがけて放たれた。上下で別の攻撃を回避するカターニアの姿は、最早下手糞なダンスを踊っているかのようだ。
「そうすればいくら守りに優れていても防ぎきれまい。ましてやカウンターなど」
 そこにアリスのイザナギの覚悟による打ち下ろしが放たれた。カターニアは何とか本を振り上げ、それを受け止めようとする。
「あともう一つ。一々敵に本当の考えを言ってやるお人よしはそういない」
 振り下ろされた槍の刃が止まり、一瞬に消えた。そして上に持ち上げられた手の間を二本の刃が通り抜ける。アリスのイザナギの覚悟と、フェンリアの八邉鬼衆。フェイントから放たれた二つの突きが、ついにカターニアの頭部の花……『番犬の紋章』に突き立てられた。
「いやあああああっ!!」
 本を放り出し、頭を抑えてうずくまるカターニア。その指の間からは、植物の根のようにも見える細い触手がカターニアの頭部に刺さり、その傷を縫い合わせるよう蠢いているのが見えた。
「ここ最近有名になった寄生型か。あのグリムが飛びつかねえわけがねえ」
 恐らく寄生を深め己と宿主を修復しようとしているのだろうその動き。他のオブリビオンにないその特性を見て、フェンリアは別の己たる存在が出張る理由を推察するのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
WIZ

読書中に失礼します。私は雑種のドゥルール。
カターニア様、貴女を救済しに参りました

守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力を高め
悲愴の剣で【ダッシュ・切り込み・2回攻撃】

数多のオブリビオンとの戦いで培った【戦闘知識・第六感】で
相手の防御や回避の動作を【見切り】
【残像】を残し【ジャンプ】
頭上から【呪詛・属性攻撃】の黒雷を纏った包帯を
蛇腹剣のように振るい【捕縛・マヒ攻撃】
更に【念動力】で金縛りに

今のはUCではありません。
ただの通常攻撃です

『快楽の檻』で戦闘力450倍の群体淫魔と化し
彼女の全身を包み込み
頭部の花も下腹部の華も【慰め・生命力吸収】

読書では味わえぬ
究極の快楽をご堪能ください♥



 頭部に寄生する『番犬の紋章』諸共傷を負ったカターニアは、再び椅子に腰掛け書を開いていた。普通ならば何も考えず体を休めるのが第一の状況なのだろうが、これが最も安らぐ体勢なのか、ゆっくり気を落ち着かせるようにページをめくっていく。
 そうして乱れた息がある程度収まった所で、また一人彼女に声をかけるものが現れた。
「読書中に失礼します」
 その丁寧な声は従うメイドたち……いや、違う。その聞き覚えのない声にカターニアが顔を上げると、そこには見知らぬ一人の女の姿があった。
「私は雑種のドゥルール。カターニア様、貴女を救済しに参りました」
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は休憩中の不意を撃つこともなく、カターニアに対し恭しく一礼した。その様子に、カターニアは本を開いたままドゥルールを睨みつける。
「雑種? ああ……そう、そういうことね。私はそういうの興味ないけど、そういうのが好きなヴァンパイアがいるのは知ってるし。でも大概純血より弱い雑種が救済って……頭まで変なものが混ざっちゃったのかしら?」
 同朋についての知識も仕入れているのだろう、ドゥルールの出自を推察するカターニア。だがその後ろの言葉の意味は理解できず、結局は人間側の刺客として自分を倒しに来たのだろうと当たりをつけ、本を閉じて立ちあがる。
 そのカターニアに対し、ドゥルールは諸刃の短剣を抜いて一度敬礼するように顔の前に立て、そしてそれを構えて素早く切りかかった。
 悲鳴のような風切り音と共に二度刃がカターニアの頭部を狙うが、頭上でくるりと回された本がそれを弾いた。
「その構えだとどんなルールでも上半身は有効面だもんね、知ってるよ!」
 初撃を防ぎ得意になるカターニアは、本を鈍器のように振るってドゥルールをなぎ払おうとする。だがドゥルールは残像を残すほどの速さでそれを上に飛んで避け、さらに相手の頭上で手を振り下ろした。
「そこ狙いなのはバレてるって気が付かないかな?」
 もう一度本を掲げその攻撃を防ぐカターニア。だが防がれたはずのその武器は本の表面に沿って曲がり、そのまま下方へ伸びてカターニアの頭部まで届いた。とっさに首をそらし頭部の花への直撃は避けるが、その伸びたものが肩口を切り裂く。
「っく……!」
 顔をしかめるカターニア。さらにその切り裂いたもの……念動力で硬化された包帯がカターニアの腕と胴に巻き付き、その動きを制限していく。その白い包帯からは時折黒い閃光が迸り、それがカターニアの肌をぴりぴりと焼いてその動きを少しずつ戒めてもいた。
「これは私が救済した者たちのほんの一部……ご堪能いただければ幸いです」
 包帯を念動力で刃の如く強化し、捕縛術にて戒め麻痺の魔術で自由を奪う。様々なオブリビオン達が己に向かって用い、そして救済し守護霊として一体化することで己のものとした技法の数々。実戦の中で自らの者とした知識で、ドゥルールはカターニアをその場に釘付けにした。
「鞭とか魔法とか呪いとか……全部本で見たことあるもん! 威力も大したことないし、こんなの私にかかれば一瞬でまねできるんだから!」
 武器の切り替えからの攻撃に戒められながらも、それを構成する要素を分解し己の知識に当てはめるカターニア。幸い武器は本で受け止めた、後は己の知識で再構成し跳ね返すまでと、痺れる手を強引に振るいカターニアは本を開いた。
 だがそれで聞こえたのは、ぺらぺらとページがめくれる音だけだ。
「え、何で、雷魔法と神経呪の合成でいけるはず……」
 驚愕するカターニアにドゥルールはゆっくり近づいていく。
「今のはUCではありません。ただの通常攻撃です」
 そう言いながら、ドゥルールは悲愴の剣を手放した。剣が掻き消えると同時にドゥルールの体が無数に分かれ、巨大な淫魔の群体へと変貌する。
「これが私のユーベルコード、そして愛の力でございます」
 その言葉と共に、群体となったドゥルールはカターニアの全身を己の中に飲み込んだ。その勢いと群体による戒めは黒雷や包帯のそれとは一線を画し、通常攻撃とユーベルコードの差を如実に表している。
 そのか細い全身を優しく撫で、唇や薄い胸、細い手足に何度も口づける。そうしながら責める部分を少しずつ上下に二極化していき、やがて二つの『花』にたどり着いたとき、そこから一気に生命力を吸い上げた。
「や、やだ、やめて、なにこれぇっ!」
 今まで感じたことのない生命を直接抜かれる感触に、カターニアは高い声を上げる。ユーベルコードなら本に当てれば反射は可能だが、群体のドゥルールは本だけを避けるように群がってそれをさせず、マヒしたカターニアは自ら本を当てに行くこともできない。
「やっ、知らない、こんなの知らないからぁっ!」
「読書では味わえぬ究極の快楽をご堪能ください♥」
 知識偏重の者ほどそれを初めて体験した時に『こんなのだとは思わなかった』と言う。それは感じ方にも個人差があり、また相手の技量や注ぐ感情にも左右される。
 快楽……あるいは愛と呼ばれるそれを、ドゥルールはカターニアに丁寧に教えていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アニカ・エドフェルト
カウンターを、使うと、言うことは…
動きを、読まれちゃうと、辛そう、ですね。

だとすると、使わない武器…マスケット銃辺りが、いいでしょうか。
どうせ、使うのは、不得手です。撃つことは、ありませんから、効果の無い、レプリカなら、持っていける、でしょうか。
その銃で、相手を狙うふりを、しながら、〈空中戦〉で、一発で仕留めるタイミングを、探す〈演技〉で、飛び回ります。

そして、思いっきり近づいて、いざ撃とうと、した瞬間…
銃を、手放します。
そちらに、気が向いて、UCを使われた隙に、腕を取って、思いっきり、投げ飛ばします。
頭の花の方から、地面に、叩きつけたり、倒れたところに、蹴りを、お見舞い、しちゃいますっ



 次々と本には書かれぬ戦法、知っていても対処できぬ攻撃を受け、苛立ちを募らせるカターニア。
「私は世界の事を何でも知ってるのよ……こんなの間違ってる!」
 自分が負けるはずがない、豊富な知識を持ち圧倒的な力のある自分が不利になる世界の方が間違っているのだと、カターニアは身勝手に憤る。
 知識も力も確かにあるその彼女を前に、アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)は彼女の戦法を分析していた。
「カウンターを、使うと、言うことは……動きを、読まれちゃうと、辛そう、ですね」
 どんな武器や技にも向き不向きがある。広い知識を持つカターニアは、相手の武器を見てその特性を見極め、もっとも不得手とする動きで躱し模倣して反撃をしてくる。目の前で怒りをぶちまける一見ただ我が儘なだけの少女が、しかしそれを可能とする実力者であることをアニカはよく分かっていた。
 アニカはそれに対応するべく、マスケット銃を構えながらふわりと宙に浮き、銃口をカターニアに向けながらつかず離れず距離を測る。
 自身に銃が向けられているのに気付いたカターニアも本を構え、敵を排除せんとその出方を窺った。
 マスケット銃はダークセイヴァーでは人間側の強力な兵器であり、人間がヴァンパイアに挑む時にはとっておきとして持ち出されることがままある。それだから、人間側には頼みの綱の武器として、ヴァンパイアにも一応は注意しておくべきものとして、その存在や使用法を記した書物は少なからずあった。
 そう言った書物を何冊となく読んだカターニアは判断する。あの敵は、銃の腕は大したことはないと。
 照準を合わせてこちらを狙っているが、片目をつぶっている。さらに銃床は肩に担ぐようにし、反動を体で支えようとはしていない。これでは距離感も狂うし、打てば反動で銃そのものが跳ね上がってしまうだろう。
 あの小さな体格から、腕力に依存しない銃を用いて攻撃しようという腹か。だが、銃とて誰でも扱えるわけではないと、カターニアは知っている。相手の自滅を待つべく、カターニアはあえて狙いをつけようとする敵に自らの身を曝け出した。
「それで頭でも撃ちぬくつもり? よーく狙わないと当たらないよ!」
「わ、分かってます! むむむ……」
 さらに力んだように銃に顔を押し付けるアニカ。一撃で仕留められる場所を狙っているのか、ふらふら飛び回りながらも少しずつ距離が縮まっていく。
 やがて、どんな下手な撃ち手でも外しはしないだろう距離まで二人の位置が詰まる。
「……そこです!」
「うん、知ってた!」
 これ以上近づいたら銃を使う意味がなくなる、その間合いまで来た瞬間、アニカは声を上げ、同時にカターニアは真横に動いた。飛来する弾丸に後出ししても間に合う程の身のこなしで一歩横にずれ、さらにそこからカウンターの為に前に体重を移すカターニア。そしてそれと同時に外れることが確定した虚しい銃声が。
 響かなかった。
「あれ……え?」
「その手は……甘い、ですよっ」
 攻撃のため伸ばしかけたカターニアの腕、その腕をアニカの両手ががっしりと掴んでいた。その手の中にあったはずの銃は、地面へと落下していっている。
 それを疑問に思う間もなく、カターニアの視界がぐるりと回った。
 腕を支店に強烈な投げが決められ、カターニアは頭から地面に叩きつけられた。やや角度をつけての投げがカターニアの首と、それ以上に直接頭部と地面に挟まれることになった番犬の紋章に甚大なダメージを与える。
「え、え……銃、は……」
「これが私の、本当の武器ですっ……!」
 仰向けに倒れ込んだカターニアの頭部に、アニカは追撃の蹴りを食らわせる。容赦のない抉りこむような蹴りが頭の花にめり込み、蜜とは違うねばついた動物性の体液をそこから噴き出させた。
 アニカの銃の構えが堂に入っていないのは当然である。彼女は銃などロクに扱ったことはない。友を真似て身に着けた投げと蹴りこそが、アニカの真の武器なのだ。
 囮として持ち込んだ銃に向けたカウンターに、さらに得意の投げでカウンターを取る。闘技場仕込みのダブルカウンターが、カターニアを完全にダウンに追い込んだ。
「残念です、けど、このまま……!」
 えげつないほどの蹴りの嵐がさらにカターニアを襲う。カターニアの強化された力なら、最初から組み合いの可能性を警戒していればここまでの遅れを取ることはなかったかもしれない。だが目に見えるものに溺れ惑わされたカターニアは、結果地に伏すという現実に打ちのめされることになった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…そう。ならばその身で確かめてみると良いわ
私達がお前の筋書き通りに動く存在なのか否か…ね

吸血鬼の存在感を第六感で捉えUCを発動
今までの戦闘知識から90体の残像と連携して敵を乱れ撃ち、
攻撃を本で防御させてカウンターUCを使うように誘導する

…汝は吸血鬼。血によりて生きる者なり

…さあ、吸血鬼狩りの業を知るがいい

敵がUCを使い分身が"吸血鬼"に攻撃を開始したら闇に紛れて切り込み、
頭の紋章に向け傷口を抉る呪詛を銃撃をした後、
魔力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払う2回攻撃を行う

…見誤ったわね、世界の真実を知る者

その術は吸血鬼を狩る為に編み出したものよ

…ならば狙うのは当然、吸血鬼をおいて他に無いわ



「うぅぅ……なんで、私がこんな目に……! 私は全てを知る者、辺境伯様から紋章を頂いた門番……選ばれた者なのに……!」
 頭を抑え、喚くカターニア。その頭には自分で言う所の選ばれた者の証、門番の紋章が蠢いている。自身と宿主の損傷を補うためか最初よりもその大きさは広がり、頭の半分程度を覆うまでその身を露にし、頭部に蔦にも見える触腕を広げていた。頭部そのものが大きくなったようにも見えるその姿は、知識に絶対の自信を持つ彼女自身を皮肉るような姿にも見える。
「……そう。ならばその身で確かめてみると良いわ。私達がお前の筋書き通りに動く存在なのか否か……ね」
 その知識自慢の相手に、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそんなカターニアに冷たく言い、武器を向けた。
「……呪式奥義展開。逃れられると思うな」
 そしてリーヴァルディは自らの感覚を研ぎ澄ませ、カターニアのヴァンパイアとしての存在感を感知、その在り様を己の中に刻み込む。ヴァンパイアらしく圧倒的な実力と豊富な知識があり、そしてそれに溺れすぎる外見相応の心を持つ吸血鬼。ヴァンパイアとの豊富な交戦経験とそこから来る知識に基づき、リーヴァルディは高速で動いてたじゅうに残像を産み出しながらカターニアへと切りかかった。
「『私達』なんて誤魔化したって……どうせ全部残像でしょ! 早いのは認めてあげるけど、残像に攻撃なんてできないのは知ってるんだから!」
 例え激昂していても高い力を持つヴァンパイアなのには変わりない。カターニアは残像に惑わされることなく、実際の攻撃が来る瞬間を見極めんとじっとその場を動かずに待つ。
「そこっ!」
 そして自身に刃が届く刹那、カターニアは素早く本を掲げてその刃を受け止めた。本はまるで鋼鉄のように刃を受け止め、その攻撃を完全に防ぐ。
「……防がれたか」
 そう呟くリーヴァルディ。だが、その声を発したのは本に刃を当てている者ではない。後ろに控える残像と思われた者……それは動きが止まっても消えることはなく、無数のリーヴァルディとしてなおそこにあった。それと同時に、刃を当てていた方のリーヴァルディは消え失せる。
「あー、なるほど、残像に分身を紛れ込ませてたわけだね。で、カウンターされてもいいようにしたわけだ。うん、いい考えだと思うよ……そのアイディア、いただきっ!」
 種は分かったという風に得意げに言い、カターニアは本を開く。そしてその本から召喚されるように、無数のカターニアが次々と現れた。その数はリーヴァルディが呼んだ分身よりもさらに多く、広さのある門前を埋め尽くしていく。
「……汝は吸血鬼。血によりて生きる者なり……さあ、吸血鬼狩りの業を知るがいい」
 しかしその光景に、リーヴァルディはうろたえない。
「何、諦めちゃったわけ? そうだよね、自分の技だから威力は自分が一番よく知ってるよね? それじゃ自分の技でやられちゃえ!」
 動かぬリーヴァルディへ、カターニアは分身たちをけしかけるように指を向けた。そして無数の分身たちが一斉に攻撃を仕掛ける。
 カターニアに向かって。
「ひっ、やっ、ちょっと、何っ!?」
「……見誤ったわね、世界の真実を知る者」
 その光景を、分かり切っていたことだとばかりにリーヴァルディは冷たく見据える。カターニアがコピーしたユーベルコード【幻魔の型】は、『敵』を討つための技ではない。この技は、最も濃い『吸血鬼の気配』を持つ者を追尾して攻撃する技。それ故、たとえ誰かに模倣されようと、戦場にいる者が変わらなければ標的となる者も変わらない。敵が吸血鬼でなければ攻撃対象を見失い、場合によってはダンピールの力を持つリーヴァルディ自身に襲い掛かることすら有り得る技だが、それ故上位の吸血鬼が相手となる程その狙いは明確となる。
「その術は吸血鬼を狩る為に編み出したものよ……ならば狙うのは当然、吸血鬼をおいて他に無いわ」
「なによそれ……こんな技いらない! 消えて!」
 高い力を持つ自分自身のコピーの攻撃に耐えかね、カターニアはユーベルコードを解除した。無数のカターニアたちは一瞬で消え失せるが、当然ながらリーヴァルディの分身の方は消えることなく、追撃のようにカターニアに襲い掛かる。
 さすがに単体としての実力はカターニアには劣るため何体かはカウンターを受け消されていくが、元より攻撃を加えれば消える分身、その数による波状攻撃そのものが最大の武器であり、カターニアはその対処に追われてしまう。
 そしてその後ろ、たった一人追撃に加わらなかったリーヴァルディ本体が、ダークセイヴァーの暗闇の中銃を構えていた。その銃口から、傷ついた番犬の紋章に向け、傷を抉る呪いの弾丸が放たれる。
「こういう時本体が後ろに控えてるのは分かってるもん!」
 それ自体は分かっていた、とカターニアは本を掲げ、銃弾を防いだ。弾丸は本にめり込み傷まで届きはしなかったが、その強力な一撃の防御のため空いた体に、分身たちの攻撃が絶え間なく襲い掛かる。
「うぐっ……!」
 急所以外の場所とはいえ連続で受けたダメージに、カターニアは思わず蹲る。
「その花、刈り取らせてもらうわ」
 隙を曝したカターニアに、魔力を込めた大鎌『過去を刻むもの』が、分身をはるかに超える怪力を乗せて二度振り下ろされた。花というには生々しく不快な手ごたえと共に、頭部の花が半分以上切り落とされ、べちゃりと粘液を撒き散らし地に落ちたた。

成功 🔵​🔵​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
成程、確かに厄介な方ですねぇ。
何とかやってみましょうかぁ。

『知識』を元に対処されるのなら、『この世界の存在が知り得ない知識』をベースにし、且つ『回避』が極めて難しい攻撃であれば無効化は難しいでしょうかぁ。
【翳華】を使用、全身を『ブラックホール』に変換し、吸収を行いますねぇ。
此方は『吸収対象の選択』以外は『実物』を再現する【UC】、『魔術』ではなく『宇宙物理学』の領域となれば、そのような知識の存在していない『この世界の書物』をどれほど読んでいても、まず対処法は記載されておりません。

『紋章』の吸収を優先的に狙い、確実に力を削いで参りましょう。
仕留めきれれば最良ですが、さて?



 何度となく知識に溺れるその姿勢を出し抜かれ、窮地に陥ったカターニア。その自慢の知識が蓄えられた頭部は、今や半ば花を模した寄生虫に覆われかけていた。力の源でもあるが弱点でもあるそこを猟兵たちに執拗に狙われ、傷ついた番犬の紋章が回復のため宿主であるカターニアを食らうように侵食しているのだろう。
 結果的にカターニアの体や脳髄はほぼ紋章と不可分なほどに寄生を深められたが、それ故に彼女は瀕死の体でも圧倒的な力をまだ残していられた。
「成程、確かに厄介な方ですねぇ。何とかやってみましょうかぁ」
 その壮絶な姿に夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は威圧感と多少の憐憫を感じながらも、彼女の先にあるもののためにも戦う姿勢を解きはしない。
「大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ」
 るこるは【豊乳女神の加護・翳華】を使い、その身を黒い渦へと変じさせた。その姿を見たカターニアは、訳知り顔で頷いて見せる。
「闇属性の魔法ね……異常にドレイン、精神汚染、あとは回避上昇かな? 全身変えてるってことは防御系っぽいけど……」
 闇属性に多い特徴を並べ、外見からその性質を推測するカターニア。この状況でも知識に問題はなく、その中から最適な対処法を頭の中で検索しているのだろう。
 そして対処法が決まったか、手の中を本を開く。その本は戦闘が始まる直前に読んでいた、属性魔法に関する本だ。
「効率のいい合成のところはまだ読んでないけど……合わせないで消すだけなら知ってるもんね! 闇は光に照らされれば消えちゃうの!」
 カターニアが開いた本の中から、るこると同じくらいの大きさの光の渦が放たれた。それは真っ直ぐるこるへと向かい、真正面からぶつかろうとする。今のるこるを闇属性の塊と見たカターニアは、同程度の光の魔法をぶつけることで対消滅させ回避することを選んだのだ。
 狙い通り光は闇の渦へとぶちあたる。だが触れた瞬間、その光は軌道を中央方向に捻じ曲げられ、るこるの中へと飲み込まれて行った。
「え、嘘……光は直進する、そんなの常識でしょ!? 反射や屈折は水属性の領域で……」
 その知識の外の光景にカターニアはうろたえ、次の手を取れないでいる。その隙をつき、黒い渦はカターニアへと一気に迫った。
「ご存じないとは思いますが……これはブラックホール、宇宙に存在する光さえ捻じ曲げる超重力の空間ですぅ。宇宙関係の本でしたら子ども向けのものでも乗っているのですけどねぇ」
 るこるは今の自身の体をそう説明する。科学技術のさして発達していないダークセイヴァーでは、宇宙の概念など当然なくブラックホールについて記された本ももちろん存在しない。たとえこの世界に存在する本をどれほど読み漁ろうとも、存在しない概念の知識を得ることは出来ない。相手が『世界の真実』を武器にするなら、『世界にないもの』でそれを上回る。36あるという世界を股にかける猟兵だからこそ許される埒外の攻撃が、カターニアの自慢の知識を完全に打ち砕いた。
 そして知識に頼りきるということは、時に乾坤一擲の打開策となる『当たって砕けろ』の発想を阻害することにもなる。この知らないものの対処法を必死に探そうとするうち、何もできることはなくカターニアの体はるこるの中へと飲み込まれた。
「ああぁ……重い……痛い……吸わ、れる……!」
 ブラックホールの吸引力が、カターニアの頭部をその奥へと強引に引き寄せていく。カターニアはその高い力で必死に踏ん張りをかけるが、体が動かなくともその変化は頭部に訪れた。
「やだ、やめて、出てく……私の、頭……私の、知ってるのが……!」
 頭部からぶちぶちと音が鳴り、頭についていた花……番犬の紋章が引きはがされていく。最早擬態している余裕もなくなったか、その表面は生々しく蠢き、花の中央では不気味な目が苦しむようにぎょろぎょろと動き回っている。
「いや……いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 やがて赤い血と半透明の粘液を撒き散らし、長い触手をカターニアの頭部から引きずりだされながら、紋章はるこるの中へと吸い込まれて行った。あくまで力を与えるだけで単体では何もできない紋章は、ブラックホールの超重力の中で跡形もなく潰れ消え失せる。
 るこるが体を元に戻すと、その眼前で紋章を失ったカターニアもまたうつぶせに崩れ落ちた。既に生命活動のほとんどを紋章に依存していたのだろう、それを失った体は、最早動くことはなくなっていた。
「本がお好きなのだけは、本当だったみたいですねぇ」
 読み切れなかった本に大事そうに手をかけたまま目を閉じるカターニア。その骸を乗り越え、るこるは彼女の守っていた巨大な門を押し開けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『付き従う者共』

POW   :    主の為ならば、この身など惜しくはありません
自身の【心臓】を代償に、【従順な狼の群れ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い牙と爪】で戦う。
SPD   :    主様からのご厚意、ありがたく受け取ってくださいね
【人間から絞った血液を混ぜた紅茶】を給仕している間、戦場にいる人間から絞った血液を混ぜた紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    貴方も、私達と共に仕えませんか?
【蠱惑的な声で、仕える主の素晴らしさ】を披露した指定の全対象に【死ぬまで主に仕えたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 門番を退け、地下都市への進入を果たした猟兵たち。そこは夜の続く地上よりもさらに光のない世界であり、光り苔のうすぼんやりとした光だけに照らされていたが、街並みそのものは地上とさしたる変わりはなく、それがかえって違和感を助長させていた。
 その立ち並ぶ家の窓や戸が僅かに開かれ、そこから人々が不思議なものでも見るかのように遠巻きに見てくる。恐らく町の外から誰かが来たのを始めてみるのだろう。その目にあるのは恐怖がほとんどだが、もしかしたら何かが変わるかもしれないという期待も含まれているようにも見えた。
「カターニア様は破れましたか」
 だが硬質な女の声が聞こえた途端、人々は即座に戸や窓を締め、家の中へと閉じこもる。猟兵の前に現れたのは、眼鏡をかけたメイド服の女性の集団であった。
「万一に備え戦闘向けの知識の多い本をお与えしてきたのですが……こうなっては次の門番が派遣されてくるまで我々がここを守ねばなりませんね」
 門番が倒されたことを危険と思ってはいても、怒りや悲しみがある様子はない。恐らく彼女たちの忠誠はカターニアではなく辺境伯の方へ向いているのだろう。実力はどうあれ、この町の実際の支配者は彼女たちの方だったということか。
「辺境伯様よりお預かりしたこの地、落とさせるわけにはまいりません。我ら付き従う者共、命失おうとお役目果たさせていただきます」
 ダークセイヴァーの絶対の支配種族でありながら、個としての名すら捨て他者に従うことを至上とした『付き従う者共』。この異端のヴァンパイアたちを倒し、地下に光を届けるのだ!
七那原・望
大した忠誠心ですね。けれど目的の為に簡単に自分を捨てるのは正直どうなのでしょうね?

【第六感】と【野生の勘】で相手の行動や位置を【見切り】、【オーラ防御】【結界術】で攻撃を防ぎつつ【魔力を溜めた】【全力魔法】の【Lux desire】を【乱れ撃ち】し、一方的に【蹂躙】しましょう。
更にアマービレで呼び出したねこさん達の【多重詠唱】【全力魔法】、オラトリオやセプテットの【一斉発射】で【範囲攻撃】を。

そんな簡単に捨てられる程度の命なら、代償としての価値はとても安いでしょう?だから出てきた狼もこの程度の強さでしかない。
もっと必死に生にしがみ付いて、最後の抵抗に使われていたら、もう少し苦戦したかもですね。



 地下に広がる町の中、そこを支配するメイド……『付き従う者共』の一団に、町を解放すべく立ち向かう猟兵たち。その先陣を七那原・望(封印されし果実・f04836)が切った。
「大した忠誠心ですね。けれど目的の為に簡単に自分を捨てるのは正直どうなのでしょうね?」
 望はそう言って彼女たちの姿勢に疑問を呈する。
「命を捨てるに値する仕える幸せ、理解しろとは申しません」
 メイドの一人は冷たく言い、素早く踏み込んで拳を振るった。その動きは人間に比べれば早く鋭いが、高い実力を持つ猟兵である望からすれば素人武術のレベル。その動きを容易く見切り、感に任せるだけでも容易に躱すことができた。
「全ての望みを束ねて……!」
 その隙をつき、『真核・ユニゾン』を取り出し、そこから光の奔流を放つ望。【Lux desire】の光がメイドに直撃し、そのまま打ち倒した。
「……なるほど、門を破るだけのことはあるようですね。差し当たって5人ほど使いましょう。後は任せます」
 後ろに控えていた別のメイドがなんでもないことのようにそう言い、自らの胸へとその手を抉りこませた。胸と口から鮮血が溢れ出すが、彼女は表情すら変えることなくそのまま手を動かし、やがて胸から赤いものを引きずりだす。それは鮮血を噴き出す、自身の心臓だった。
 さらにそれに合わせるよう、別のメイドたちも自らの胸を抉り、心臓を掴みだした。そして彼女たちがそれを掲げると、町のあちこちから遠吠えが聞こえ、そして何匹もの狼が家々の間から現れた。狼たちはメイドに飛びついて、その手から心臓を奪い取り咀嚼する。そしてそのままメイドが倒れると、まるでその遺志を継いだように望を睨みつけ唸り声をあげた。
 そのまま狼たちは一斉に望に飛び掛かり、その体に爪と牙を突き立てようとする。その動きはメイドたちよりはるかに早く、一瞬でも油断すれば望の心臓もまたその餌となってしまいそうなほどだ。
 だが、望は慌てることなく身をかわし、狼たちの攻撃をはずした。そのまま黄金のリンゴから連続して光を放っては体勢を崩した狼たちを打ち据え、押し返す。
「そんな簡単に捨てられる程度の命なら、代償としての価値はとても安いでしょう? だから出てきた狼もこの程度の強さでしかない」
 代償に捧げるものの価値は人によって異なる。メイドたちにとって職務を遂行することは、自らの命よりずっと価値ある行為。即ち彼女たちにとって自身の心臓は強い敵への迎撃に用いる、多少高価な弾薬程度の価値しかない。望はそう断じながら、片手でタクト型の獣奏器『共達・アマービレ』を振り、魔法猫たちを召喚する。
 狼たちをにらんだ猫は一斉に魔法を詠唱。それに重ねるよう、望自身も歌うように詠唱の言葉を唱える。
 それをさせまいと望むと猫に狼たちはめいめいに飛び掛かった。だが、その爪が各々の標的を切り裂く寸前、真核・ユニゾンが今までよりさらに強い光を放つ。
「もう一度、全ての望みを束ねて……!!」
 多重に詠唱された魔法が光の積層となり、【Lux desire】の攻撃回数を一層強化、周囲の全範囲に力として放たれ、その光に焼かれ狼たちは消し飛ばされた。
「もっと必死に生にしがみ付いて、最後の抵抗に使われていたら、もう少し苦戦したかもですね」
 命など惜しくないという意思が力になることも決して少なくはない。だが、付き従う者共はただ己の命を安く見積もって使い潰しているだけだと、その光をもって望は彼女たちに語るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
忠心は否定しませんが、敵対する以上容赦はしません。
始めましょう。

『FBS』を四肢に嵌め飛行、【秤濤】を使用しますねぇ。
相手の性質上『魅了』は期待し辛いですが、[2回攻撃]として続く『超重力波』による広域への[範囲攻撃]&[重量攻撃]は問題なく有効ですぅ。
召喚対象が『狼の群れ』である以上、攻撃方法は『近接攻撃』に限定され『飛行する相手』を狙うには『跳躍』等の方法が必要になるでしょう。
その『跳躍』を『超重力波』で抑えてしまえば、仮に『圧潰』を免れても『攻撃手段』は無く、展開した『FRS』『FSS』による[砲撃]の餌食ですぅ。

召喚主・召喚対象共々、確実に減らしていきましょう。


アニカ・エドフェルト
次の門番さん、ですか…。
そんな人、呼ぶだけ無駄、ですよ?
このままここ、解放しちゃい、ますからねっ

さて…狼さん、出してくれる、んですよね。
はやく、見せてください、よ?
…ふむふむ、確かに、この数は、なかなか、厄介そう、ですね。
それでも、先に、見せてもらった、おかげで、やりやすく、なりました。(※UC)
スピード重視で、多少の傷は、気にせず、狼さんの、間を、ぐるぐる飛び回りながら、蹴り飛ばして、行きます。

でも、ただこうやってても、時間が、掛かりそう、ですね。
時々、地面を思いっきり蹴って、ヴァンパイアさんに、直接攻撃しに、行ったりも、してみます。

この地も、わたしたちに、返してもらいます、ねっ



 地下の町の中、解放のための戦いは始まった。この町を支配するヴァンパイア『付き従う者共』を倒すべく、さらに二人の猟兵が立ち向かう。
「次の門番さん、ですか……そんな人、呼ぶだけ無駄、ですよ? このままここ、解放しちゃい、ますからねっ」
 アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)はゆっくりと、だが力強く彼女たちにそう宣言した。次の門番が必要となるのは、この町の支配がこれ以降も続くならの話。それをさせないためにここに来たのだからと、アニカはメイドの群れに相対する。
「忠心は否定しませんが、敵対する以上容赦はしません。始めましょう」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は死すら厭わぬ彼女たちの忠誠心そのものは認めつつも、目的とするものが真逆である以上、彼女たちとの和解はあり得ないと多くを語ることはなく戦闘の構えに入る。
「我々を全滅させるおつもりですか。それは構いませんがここを解放すると言うのは認められません」
 命よりもこの地を失うことの方を許容できぬと、メイドの中の数人が二人へと殴り掛かる。だがその攻撃はアニカには腕を取られ投げ返され、浮遊兵装『FBS』を四肢にはめて空中に浮いたるこるには届かずと何の効果も得られなかった。
「さて……狼さん、出してくれる、んですよね。はやく、見せてください、よ?」
 その手ごたえのなさから、牽制ですらないただの様子見程度と悟ったアニカが敵にユーベルコードの使用を促す。
「ええ、構いません。少し増員しましょう」
 敵からの命を捨てろと言う要求に、何の躊躇いもなく従って自分たちの胸に手を突き入れるメイドたち。敵にかかる役を受けた時点で自分の命などないものとでも思っているのか、その動きや表情に惑いや恐怖は一かけらも感じられない。
 鮮血と共に掲げられた心臓と屍に食らいつきながら、倒れたメイドよりもさらに多い数の狼があちこちから現れ、二人を取り囲んだ。
「大いなる豊饒の女神、その御力の欠片による裁きをお与え下さい」
 だが狼の群れに取り囲まれるのは予想していたこと。ここからが本番だとばかりに、るこるは【豊乳女神の加護・秤濤】を発動、乳白色の波動を辺りに撒き散らす。その波動を受けた狼たちは一瞬警戒するよう動きを止めるが、すぐに喉を鳴らし、牙を剥いてるこるへと飛び掛かった。
「やはり、魅了は聞きませんでしたか。それでは、実力行使ですぅ」
 召喚された存在な上召喚主は盲信とも言える程の忠誠心を持つメイドたちである。その精神の向かう先を変えるのは容易なことではない。それ故るこるは波動のもう一つの力である、重力増加の力で狼たちを抑え込んだ。高い所への攻撃には跳躍を必要とする狼たちは、たちまちるこるへの攻め手を制限されていく。
 ならばとアニカの方へ低い位置から噛みつこうとするが、アニカもまた狼たちをじっと観察、その動きに対策を立てていた。
「……ふむふむ、確かに、この数は、なかなか、厄介そう、ですね。それでも、先に、見せてもらった、おかげで、やりやすく、なりました」
 すっと動き狼の牙を躱すアニカ。その動きには無駄がなく、まるでこの短い時間で狼たちの動きを全て見切ったようですらある。相手のユーベルコードへの興味と、それに伴う不利な行動を力に変える【死闘天使】の効果により、先んじて召喚された狼に対抗する力はアニカの中に十全に漲っていた。
 その強化された動きでアニカは狼たちの中を飛び回る。放たれている重力波は敵対者だけを捕らえるものなのでアニカの動きは疎外せず、重々しい動きで繰り出される反撃を軽やかにかわしながら、アニカは狼の下腹に蹴りを叩き込んだ。
 上に向かって狼は打ち上げられるが、重力が飛び上がるのを抑え込み、結果として上下から強烈に潰されて狼は全身を砕かれる。その一撃の隙に他の狼が大口を開けて噛みかかるも、その動きもるこるが放った『FRS』『FSS』の二つの砲撃によって上から抑え込まれた。
 一方的な攻撃を受け、次々撃退されていく狼たち。それを遠くから見ていた別のメイドは、静かに自分の胸に手を当てた。
 だが、次の瞬間地面を蹴り一瞬で飛来したアニカの足がその顔面を捕らえ、地面に蹴り転がす。さらにはそのメイドに砲撃の雨が降り注ぎ、何かを成す前にその体を消し飛ばした。
「召喚主の方共々、確実に減らしていきましょう」
 あくまで敵は付き従う者共であり、狼はそのユーベルコードの効果としての存在である。真に倒すべきを見定めている二人は、討つべき対象を見誤らなかった。
「この地も、わたしたちに、返してもらいます、ねっ」
 既に猟兵の活躍によっていくつもの地下都市が解放されている。ここもその一つになるのだと、アニカは敵を蹴り倒しながらはっきりと宣言した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…成る程。やはりこの地の支配者はあの吸血鬼ではなかったのね

…ならば、あまり時間はかけられない
この騒動が他所に知られる前に全て終わらせないとね

敵のUCは狂気耐性や吸血鬼への殺気で気合いで耐え、
今までの戦闘知識と経験から敵の攻撃を先読みして見切り、
"血の翼"を広げ空中戦機動の早業で敵陣に切り込みUCを発動

…無駄よ。私は吸血鬼を狩る者だもの
お前達のような者の言葉に傾ける耳なんて、
最初から持ち合わせていないと知れ

生命力を吸収する無数の血糸を乱れ撃ち敵を拘束し、
傷口を抉る呪詛を流し込む闇属性攻撃で仕留めて回る

…お前達の存在できる場所なんて、
この世界の何処にもありはしない
消えなさい。この世界から…



「……成る程。やはりこの地の支配者はあの吸血鬼ではなかったのね」
 強豪とはいえただ門を護るだけであり、それ以外は己の嗜好を優先させていたカターニア。その様子からある程度の予感はしていたが、実際に町の中を取り仕切り、門が破られた後のことも考える付き従う者の姿と態度を見て、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はここを本当に支配していたのが誰なのかを改めて認識する。そしてそれに伴い生まれる新たな危惧。
「……ならば、あまり時間はかけられない。この騒動が他所に知られる前に全て終わらせないとね」
 地下都市を支配するヴァンパイアたちは独立した存在ではなく、全て辺境伯の配下の者だ。つまりは巨大組織の一部とも言える存在であり、一つが危険にさらされたとなれば増援が派遣されてくることも十分考えられる。ここからは時間との勝負になる、そう考えたリーヴァルディは迅速に事を終わらせるべく武器を構えた。
 そのリーヴァルディの姿に、メイドたちは恐れる様子もなく、むしろ好ましいものでも見たかのように薄笑いを浮かべ彼女へと近づいていく。
「先の方々と違い、貴女様は我々に近い何かをお持ちとお見受けします。よろしければ我々と共に辺境伯様にお仕えしてみては」
 リーヴァルディを敵であると認識しながら、平然と勧誘をかけるメイド。その言葉に、リーヴァルディは隠すことない殺気を向け、気合で己を鼓舞してその狂った誘いをはねのけた。
 リーヴァルディはそのままメイドから離れるかのように跳躍すると、背中から『血の翼』を出して空中に留まる。そこから限定的に吸血鬼の力を用いたその翼で宙を舞い、誘いをかけてきたメイドを切り裂きながら前進、さらにその後ろに控える一団へと切り込みをかけた。
「その力、やはり我らと同じもののご様子。ご安心を、辺境伯様は過去を問うようなことは致しません。貴女様程の方なら喜んで紋章をお授けになるでしょう。新たなこの町の門番として、我らと共に命尽きるまで辺境伯様にお仕えいたしましょう」
 切られながらもなお誘いの言葉をかけるメイドたち。勿論これはただの勧誘ではない、ユーベルコードの力を乗せた洗脳術だ。僅かにでも意思を揺らがされれば、そこから心の奥へと入り込み精神を侵していくだろう。
「……無駄よ。私は吸血鬼を狩る者だもの。お前達のような者の言葉に傾ける耳なんて、最初から持ち合わせていないと知れ」
 しかしリーヴァルディは、その言葉を冷然と切り捨てた。ほんの少しの綻びさえあれば心の全てを狂わせる術も、その僅かな隙もなければただの戯言の羅列でしかない。
 ヴァンパイアを狩る、ただそれだけを目的に戦い続ける彼女は、これが返答だとばかりに空中に無数の黒糸を張り巡らせた。
「……対吸血鬼用拘束封印術式……B・B・B発動」
 【血葬の型】にて幾何学模様に編まれた黒血糸が、眼下のメイドたちにその行動を戒めるかの如く絡みつく。その細糸は刃のようにその身を切り裂き、病的な知ら肌から鮮血を滴らせそれを吸い上げた。
「ああ、素晴らしい。この力、是非とも我が主がために……!」
 致死量の血を抜かれながらも、なおも誘いをやめないメイドたち。それは己が死してもこの力ある者を主の従僕とできればという、その一心による最後の攻勢でもあるのだろう。
 その誘いに、リーヴァルディは最後の返答を返す。
「……お前達の存在できる場所なんて、この世界の何処にもありはしない。消えなさい。この世界から……」
 黒血糸を伝い、闇の力に満ちた呪詛がメイドたちの中へ流し込まれる。それは抜かれた血の代わりとでも言わんばかりにその全身を巡り、彼女たちの体を内側から滅ぼしつくした。
 これがリーヴァルディからの付き従う者共、そして辺境伯への何よりも雄弁な答えであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイク・リー
黒地に藤と彼岸花、蛍と蜘蛛の詩集が入った着物に黒の塗り笠姿で藤の枝が巻き付いた赤い杖を持ち、藤の花の香を纏う者の姿で現れる。
「お生憎、仕える相手はおりませぬ故に」
華奢な体躯に高い声と女と思われるが男である。所謂女形。
「ここの者達、良縁結ばせていただきたく」
要約すると邪魔者を始末する。
自然界にあるキノコを含む猛毒植物から作り出した毒薬香や粉を用いる。
「煉獄火蝶」
吸えば内部を破壊、触れても焼け爛れる猛毒の無差別攻撃で攻める。

アドリブOK


アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ジェイクと行動

誰だろうか。聞いてみれば蓮獄と返してきた。
(これほどまで美形……見たことはない)
女である私も見とれる程の美形だが、男なのが驚きだ。
向こうは任せて、こっちは私たちで対処する。
華鳥封月を抜き、ダッシュで移動しつつ斬り捨てる。
呼吸で能力を上げる術があると聞いた事があり、それを実戦で使う。
まだ不完全だがここで使ってみなければ今後に響く。
切断する力を増せれば……より速く移動できれば。

絡み・アドリブOK


エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ジェイクと行動

薄暗いから暗視で視界を何とかしないと。
アリスも華澄も暗視で視界は何とかなってるみたい。
問題はこの蓮獄って人よね。なんか危ない気配がするから別に動くことに。
ヤヌスを抜いていつも通り攻撃を繰り出す。
空中浮遊とダッシュで機動力を確保して、翻弄しながらなんとかしたいけど、被害を出さない様にしないと。
(これは……)
私と同じ姿……クロタ。前と違う。

絡み・アドリブOK


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ジェイクと行動

これ、エルーゼと似てるけど違う。
髪の色は赤と青のグラデーションで翼は黒くて耳や尻尾は黒くなってる。
雰囲気や口調なんかも違うから分かるけど、味方してくれるかどうか。
ヴァナディースで援護射撃を行いながら被害を出さない様にします。
一応、傍にいるのはありがたいですけど、紅い光刃見てると不安になりますけどまあ大丈夫かなと。
地形利用で隠れたりして援護をします。

クロタの口調:我、呼び捨て。妖艶で上から物を言う
絡み・アドリブOK



 命を捨てることすら厭わぬ敵との戦いは、無数の屍を積み上げながらなお続く。
「次はだいぶ大勢いらっしゃるようで……総員にてお相手致しましょう」
 ここに攻め入ってきた敵は強い。それを改めて認識した付き従う者共は、残る全員をこの場に集め敵の排除に当たるつもりのようだ。その総力戦に立ち向かうのは四人の猟兵。
 その四人の間には、言い知れぬ緊張感が漂っていた。強敵を前にした戦いの緊張、それとは違ううちに向けた緊張感。それが決死の敵を前にして、四人の間を支配していた。
 その原因となっているのは、先の戦いでも組んでいたはずの四人のうちの一人。
「お生憎、仕える相手はおりませぬ故に」
 冷然と付き従う者共に対し言い放つその女……否、それは女と見紛う程の美しさを持つ男。彼の名はジェイク・リー(影の護り手・f24231)……だが、逞しく多しい彼の面影はその姿には無い。黒地に藤と彼岸花、蛍と蜘蛛の詩集が入った着物に黒の塗り笠姿で藤の枝が巻き付いた赤い杖を持ち、藤の花の香を纏うその姿は、先にカターニアと戦っていた時の姿とは似ても似つかない。
「これほどまで美形……見たことはない」
 その姿に、アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)も思わず声を飲む。見知った男の初めて見るその姿に驚く様子を見たか、ジェイクであったものはそちらに視線を向ける。
「蓮獄と」
 言葉少なにそう自己紹介した蓮獄。その美しさに息をのむアリスとは対照的に、エルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)は警戒したように彼から距離を取る。
「薄暗いから暗視で視界を何とかしないと。アリスも華澄も暗視で視界は何とかなってるみたい」
 仲間二人と自身の視界状況を確かめるが、その言葉の中にジェイク……蓮獄の名は出てこない。ジェイク自身や他の人格とは違う危うさを感じ取ったエルーゼは、あえて彼から距離を置き、別働で敵を処理する位置を取った。
「とにかく、これで最後の敵です。迅速に倒してここを解放しましょう」
 その言い知れぬ緊張感に一抹の不安を抱きつつも、藤宮・華澄(戦医師・f17614)は愛銃『ヴァナディース』を構え一歩下がり、支援の構えを取った。
「……さて、始める前に一つお聞きしておきましょう。辺境伯様にお仕えするつもりはございませんか? 返事を急ぐ必要はありません。お茶でも飲みながらゆっくり考えて頂ければ」
 全員が臨戦態勢に入る中、前に進み出たメイドの一人が突然そんなことを言い、ティーセットを取り出した。戦闘中に何を……と思う間もなく、ポットからカップへ湯気を立てた液体が注がれる。それは一見すれば紅茶のようにも見えるが、その色は余りにも赤く、僅かに鉄の臭いが鼻を突く。
「カターニア様にお淹れした二番煎じで申し訳ございませんが、よろしければ」
 ヴァンパイアである彼女に淹れた茶ということは、つまりはそう言う事。それに対しアリスは真っ先に二つの剛刀『華鳥封月』を抜き叩き落とそうとするが、その動きは余りにも重く、遅かった。
「く……こういう技か……!」
 給仕した品を楽しまないものの動きを鈍らせるユーベルコード。その術中にはまってしまったアリスの斬撃は、特に慌てることもなく動いたメイドにあっさりと躱される。『ヤヌス』を抜いたエルーゼも合わせて切りかかるが、その動きはやはり遅く、歩くような動きで躱されてしまった。
「ここの者達、良縁結ばせていただきたく」
 その苦境を見て、静かに進み出たのは蓮獄であった。彼は相手の要求を呑むような言葉と共に、メイドたちへと手を差し出す。
「な……!」
 まさか敵の誘いに乗るのか、そう驚く仲間たちの前で、蓮獄はカップを通り越し、ゆっくりとメイドの前に手をかざす。そうされたメイドは突如としてカップを取り落とし、喉を抑えて苦しみ始めた。
 よく見れば蓮獄の手からは細かな粉が漂っている。それはキノコをはじめとする猛毒より作られた毒薬。蓮獄の言う良縁、それはつまり始末するものとされるものという関係の事であった。
 メイドがカップを取り落としたことで体の自由が戻り、三人も元のスピードで一斉に動き出す。それを迎え撃つべく、毒から逃れたメイドたちは一斉に自らの心臓を抉りだした。
 一人でも生き残れば、その遺志の元犠牲となった大勢の命を喰らい、狼の群れが猟兵たちを取り囲む。
「出来損ないと言えど邪神の力は侮れんぞ」
「これで!」
 生き残ったメイドは蓮獄に任せ、それを迎撃すべくアリスは【血の覚醒】で自らを強化し、華澄が【ノーブルラウンド】でそれをさらに後押しする。
 一方エルーゼは自らを強化するのではなく、己に宿った力を放つことで戦わんとした。
「顕現せよ、クロタ」
 その声に応えるよう現れたのはもう一人のエルーゼ……いや、違う。姿かたちは似てこそいるが、それは明らかに別の存在であった。
「これ、エルーゼと似てるけど違う……」
 華澄の言う通り、その姿は赤と黒のグラデーションの髪に黒の尻尾や翼をもつ、キマイラとしての形質を強く前面に押し出した存在であった。
「これは……私と同じ姿……クロタ。前と違う」
 その姿に、召喚したエルーゼ自身もまた驚いて動きを止めていた。だがそんな自身に注がれる視線など知らぬ気に、クロタは紅い光刃を抜いて狼たちに向かう。
「狼風情が我を喰らうと? 身の程知らずに」
 妖艶に、そして尊大に言いながら、クロタは赤い刃を振り払って狼たちを切り捨てた。エルーゼとはまた違うその戦い方に、どうしても異物感をぬぐえず動けないエルーゼと華澄。
 そうして止まったエルーゼに、脇から回り込んだ狼の牙が迫っていた。エルーゼはそれに気が付き宙をかけ逃げようとするが、初動の遅れ故かうまく宙に浮けない。
「ふっ!」
 あわや、というその瞬間、アリスの刃がその狼を切り捨てた。その刃は重く、だが早く、普段の彼女と比べても強い一撃であることが明らかであった。
 呼吸法による身体強化、まだ不完全ながら、今後のためにも実戦で用いていかなければならない。己の技術への向上心が、異例尽くしのこの戦場でアリスの心に平静をもたらしていた。
「大丈夫か?」
「ごめん……ありがと」
「そうですね、今はとにかく、目の前の敵を片付けましょう」
 考えるのは終わってからでいい、とにかく今すべきことをなすべく、三人は狼たちを片付けていく。
 そして生き残ったメイドたちもまた。
「煉獄火蝶……いずれそちらに送る主様にも差し上げたく」
 蓮獄の撒き散らす猛毒が、内外からメイドたちを破壊していた。外を焼かれ、内を腐らされては餌にする心臓もない。一人でも生き残り主へ急を知らせれば。その一心にて対局の勝利を目指した付き従う者共だが、それすら叶わせぬと一人残らず毒に巻かれ、その場に頽れていった。
「辺境伯様……申し訳、ございません……!」
 最後のメイドがそう言ってこと切れる。その苦悶の表情は毒による苦しみか、あるいは至上とする主命を果たせなかった無念からか。
 ともあれ、ここに地下を支配するヴァンパイアたちは一人残らず倒されたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『失うで終わらせない』

POW   :    体を動かして肉体的癒しを

SPD   :    沢山料理を作ってお腹を満たす

WIZ   :    知識を与えて知的好奇心を刺激させる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 門番カターニアと、真に主の意思を汲んでいた付き従う者共。この地下都市を支配していたヴァンパイアは、猟兵によって全て倒された。家の中からその姿を盗み見ていたらしき住人たちが、恐る恐るといった様子で扉を開け、外へと顔を出し始める。
 最初は遠巻きに猟兵を見るだけであったが、やがて一人が意を決したように猟兵に声をかけた。
「あなたたちは、一体……?」
 その声色には、あの恐るべき存在を駆逐した者への期待が込められているようでもあった。その期待に応える言葉を猟兵たちは持っているはずである。そしてこの地下世界からの脱出というそれ以上のものも。
 だが、それだけでは彼らには足りまい。喜びだけでは満たされぬほど、彼らが奪われてきたものは多く、重いのだ。
 なんでもいい、何かより実のあるものを施せば、彼らの信はより強固になり、脱出の際の統制や進行速度にも良い影響を及ぼすはずだ。
 伝令役一人逃さなかったことで、この地下都市陥落が他のヴァンパイアに知られるまでまだしばしの猶予がある。さあ、光知らぬ住人達に、光の一端を見せてやるとしよう。
七那原・望
細かい話は後回しにしましょう。
今はあなた達の味方とだけ思ってくれれば大丈夫なのですよ。

アマービレでねこさんをたくさん呼んだら、一部は住人達がもふもふできるように残しつつ、残りはメイド達がカターニアへ供給する為に溜め込んでいるであろう食糧を取りに行ってもらいましょう。

たくさんの食糧はねこさん達やオラトリオで作った影の分身と協力して纏めて【料理】してみんなへ振る舞うのです。

たくさん食べていいのですよ。もうあなた達を支配する者はいないのですから。

彼らが落ち着いて来たら切り出します。

わたし達はあなた達を此処から解放して、地上へと導く為に来ました。
もうあなた達はヴァンパイア達に服従しなくてもいいのです。



 町を支配していた吸血鬼たちを倒した猟兵に、恐る恐るといった様子で声をかける地下都市の住人達。自分たちを圧していた者たちを排除してくれた、それ自体は有り難いが、それほどの力を持つ者なのだ。より強固な圧政を敷くことも容易いだろう。
 それらの危惧を感じ取ったか、七那原・望(封印されし果実・f04836)は余計な言葉を使わず簡潔に状況だけを告げる。
「細かい話は後回しにしましょう。今はあなた達の味方とだけ思ってくれれば大丈夫なのですよ」
 そう言って望は『共達・アマービレ』を振り、たくさんの魔法猫たちを呼び出す。付き従う者共との戦いで使役されていた獣の出現に住人たちは一瞬ざわつくが、猫たちの一部は構わずにその足元へ移動、甘えるような声を出して体を摺り寄せた。
 最初は怯えるような表情を見せていた住人たちだが、やがて子どもたちが前に進み出て、おそるおそるその背中を撫でる。撫でられた猫はにゃあん、と一声鳴き、その子どもの手のひらに顔を擦り付けた。
 それを契機に、少しずつ住人達が猫に構い始め、やがて猫を取り囲む人の輪ができていく。
 それを確認した望は残った猫たちを町中に差し向け、メイドたちが管理していた食料を探しに行かせた。
 ただでさえ食糧事情の悪いダークセイヴァーのこと、町を支配するのであれば食料関係は抑えられているだろう……望のその予想は果たして当たり、彼女たちの管理下にあったと思しき大きな建物に、多くの食料が隠されていた。
 内約は全滅しない程度に配給していたのだろう穀物や野菜、切れ端程度の干し肉など人間用のものに加え、恐らくカターニアに供していただろう上等な茶葉や、辺境伯への捧げものにでもするのかワインなど。
 中には人目に触れさせないほうがいいヴァンパイア基準での『食料』も見られたが、それは後で別に処理することとして、人間が食べても問題なさそうなものを猫たちは一斉に運び出し、望の元へと運んでいった。
「こんなにたくさん……それじゃあ、始めましょう」
 望はその食料を、猫たちとフォースオーラ『影園・オラトリオ』を実体化させた影と共に手早く料理していく。満足な食事を取れていないだろう住人達に合わせ、柔らかい煮込み料理を主体に作っていくと、やがて立ち上る香りが住人たちを振り向かせる。
 料理を見る住人達の眼はいずれも飢えと羨望に満ちていたが、長い支配生活のためか、「欲しい」の一言すら言えずにただ見つめるばかりだ。それを察した望は彼らに優しく告げる。
「たくさん食べていいのですよ。もうあなた達を支配する者はいないのですから」
 その言葉に、猫によって警戒を解かれていたこともあってか、住人達は我先にと料理へと群がった。望は器用に動く猫たちと共にパニックが起きないよう取り分けつつ、全員に料理を行き渡らせる。
 しばらくはがっつくように食事を取っていた住人達だったが、ある程度それが落ち着くのを見計らって望は彼らに声をかけた。
「わたし達はあなた達を此処から解放して、地上へと導く為に来ました」
 望の言葉に、人々は疑問に満ちた顔で彼女を見る。解放してくれたと言うのは分かるが、地上とは何か、それすら知らない人々は望の言っていることの意味を理解できないでいた。
 そんな彼らに、ここの外にも世界があることと、このままでは再度ここにヴァンパイアが来て再び圧政が始まることを伝える。
「もうあなた達はヴァンパイア達に服従しなくてもいいのです」
 だから自分たちと一緒に来て欲しいと、望は閉ざされた目で真摯に彼らを見つめ、伝えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
確かに、彼らからすれば『いきなり現れた異端者』ですからねぇ。
何とか信じていただきたいところですぅ。

【豊饒現界】を使用し[料理]を強化、身体を温めていただけるよう『シチュー』をお作りしますねぇ。
入手が難しかった可能性が高そうな『肉類』を中心に『この世界に存在する素材』を使い、柔らかくなるまでしっかりと煮込みますぅ。
そして、その『素材』について触れる形で『外の世界』についてのことを、そこから話を繋げて『人類砦の事』や『そこまでの誘導&護衛の旨』を伝えましょうかぁ。

脱出時の移動の際に『運び出したい重量物』等が有りましたら、強化中の[怪力]でお手伝いしますねぇ。



 ヴァンパイアたちを倒し、食料の解放もされたことで猟兵に心を開いていく住人達。だが、そもそも外の世界というもの自体を知らないのだ。ここから出ていって他の人間が住む場所へ合流すると言われても、何のことか実感はまだ湧いていないらしくなかなか動こうとはしない。
「確かに、彼らからすれば『いきなり現れた異端者』ですからねぇ。何とか信じていただきたいところですぅ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はそんな彼らにもう一押しすべく、さらに食事を供しようとする。
「大いなる豊饒の女神、《楽園の地》の豊かなる恵みと力をお貸しくださいませ」
 【豊乳女神の加護・豊饒現界】を使い、料理の腕前を上げたるこる。それで作るのは、食料に乏しいダークセイヴァーでも誰もが一度は食べたことがあるだろう、温かいシチューだ。
 具材は肉が多めな以外は、人参にじゃがいも、玉ねぎと言ったどこにでもあるようなもの。その気になれば他の世界からより豪華な食材を持ち込むこともできたが、あえてそれはしなかった。ただ、この閉鎖空間では大きな肉類の入手は難しかろうと、肉だけは大ぶりに切った生のものを丁寧に調理して使っている。
 やがて全ての具材が軟らかく煮こまれた、薫り高いシチューが完成した。
 るこるはシチューをとりわけ、住人達へと配る。見知った料理ながら自分たちが食べていたものとは比べ物にならない上等なそれに、住人達は目を輝かせて食らいついた。
 中でもやはり、大きな肉の塊は珍しいのかスプーンに乗せたまましばらく眺めた後食べる者が多く見られる。
「皆さん、お肉はやはり珍しいのでしょうか。これはこの洞窟の外から持ってきたものです。それだけでなく他の具材も、皆さんが奪われていたものではありません。ここの外から持ってきたものです」
 住人達の様子を見たるこるは、食材の出所について説明し、そこから外の世界について言及していく。
「他の方も説明しておりますが、この洞窟の外にも世界は広がっています。そこにもヴァンパイアたちはいますが、多くの人たちが力を合わせてそれに立ち向かっております。その戦いは徐々に実を結んでおり、今はこのような食料を人の手で得られるところまで来ています」
 今食べさせた食料を具体例とし、外の世界についての説明をするるこる。
「その外の世界は、皆さんの受け入れを表明しております。もちろんただ行けとは言いません、私達が責任をもって、皆さんをそこまでお守りしながらお連れしましょう。この洞窟は未だヴァンパイアの影響下にあり、例え何度倒してもすぐに新しいヴァンパイアが来てしまうでしょう。どうか皆さんには、外の世界で生きていってほしいのです」
 るこるの真摯な言葉に、住人達もじっと耳を傾ける。知らない世界の存在はもう疑う余地はないが、果たしてその世界は安全なのか。だが今までの生活で何かが満たされたことなどなく、今より悪い生活の方が想像がつかないのも確かだ。そして何より、自分の手の中で暖かな湯気を立てる、見たこともない大きな肉。その目の前にある確かな恵みが、人々の心を何よりも動かしていた。
「もし運び出したいものがありましたら言ってくださいませ。お運びいたしますぅ」
 そう言いながら、強化された力を見せつけるように近くにあった大きな樽を持ち上げるるこる。その姿に、住人達は何を持ちだすかを徐々に思案し始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイク・リー
※アリス、エルーゼ、華澄と行動

祟り神とも言える霊、蓮獄の瘴気の毒に中てられ動けない状態に。
治療の為に呼び出したのは蝶を模した髪留めを付け、白い羽織を着た女剣士、胡蝶さくら。
お経やら漢字の書かれた派手な着物の浪人、右近を呼び出す。
「菖蒲の花から作った霊薬でなければ瘴気を浄化できないのですよ」
礼儀正しいさくら。
「俺が剣術教えてやるから、な?」
ニタニタ笑い、飄々と掴みようのない右近。
剣術の腕は凄腕、基礎から教えるなど行う。
さくらは華澄と共に医術を教える。

絡み・アドリブOK


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ジェイクと行動

えーと、胡蝶さんと一緒に動くことに。
解毒作用のある植物とか治療方法を教えるようで。
「あっ、私は射手で援護が主なので」
ヴァナディースを珍しそうに見るので聞いたら、大正時代の人みたいで。
「持ってはいるんですけど、まともに使ったことがなくて」
刀はあるけど、今まで使ったことないと話すと短刀に変えるのがいいと教えられ。
「ありがとうございます」
なによりこの人、手当の仕方が早い。見習わないと。
あ、ここの人たちにも教えながらですよ。

絡み・アドリブOK


アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ジェイクと行動

演習、要は手始めに見せることになったが。
ニタニタしてふざけてる様に見えるが、下手に飛び込めば恐らく……。
これは演習、鍛えれば戦える事を教える為のものだから危険はないと思うが。
(たった一本の刀でここまで!)
侮っていた。こちらの動きを読まれているとも思える。
呼吸で能力を上げても向こうが上手。まるで水か風の様に変幻自在で入り込んでくる。
(これが本物の剣豪の業)
圧倒的な差を知ることになったか。

絡み・アドリブOK


エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ジェイクと行動

私はどうしようかなと思ってたけど、大量の本があるかもしれないから、そこを手伝ってもらって運び出そうかな。
どれくらいあるかは分からないけど、あれば何かの役に立つかもしれないしね。
砦の防衛戦術にも役立つかもしれないから、できるだけ多く持っていけたらいいわね。
元素関連の本は、少しもらえるか聞いてみようかな。

絡み・アドリブOK



 徐々に地下脱出の意思を固め、その準備にかかりだす住人達。にわかに慌ただしくなった地下都市の一角で、ジェイク・リー(影の護り手・f24231)は息を荒くして座り込んでいた。
 先に付き従う者共との戦いで彼が顕現させた人格『蓮獄』。彼は猛毒の使い手ではあったが、同時に祟り神とも言える危険な霊。その毒気に当てられ、ジェイクは力をなくしその場に座り込んでいた。
「大丈夫ですか? これで……」
 そんな彼を心配そうに診察しながら、藤宮・華澄(戦医師・f17614)は【ノーブルラウンド】を使い彼を治療しようとする。だが蓮獄の毒はそれほどまでに強いのか、ジェイクはすぐに動けるようにはならない。
「来い……!」
 その中で搾りだすような声で、【守護者召現】を使用。蓮獄とも、またフェンリアとも違う二人の人格を具現化させた。
 一人は蝶を模した髪留めを付け、白い羽織を着た女剣士。彼女はジェイクの傍らに屈むと、てきぱきとその体を治療していく。
「胡蝶・さくらと申します。菖蒲の花から作った霊薬でなければ瘴気を浄化できないのですよ」
 さくらはある意味自分の体とも言えるジェイクの体を手早く治療し、そう自己紹介した。
 そしてもう一人は、お経やら漢字の書かれた派手な着物の浪人。
「俺が剣術教えてやるから、な? あ、俺は右近ってんだ」
 ジェイクの治療には加わろうとせずニタニタ笑い、飄々と掴みようのない様子で女性陣に向かって自己紹介する右近。その様子は一見ふざけているようにも見えるが、アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)はその所作に彼が凄腕の力を隠していることを見て取った。
「できるな……」
 その呟きを聞いたのか、右近はアリスに近寄ってにやりと笑う。
「俺はお医者様じゃないからよ、別の方向でお役に立たせてもらうぜ?」
 そう言って半ば強引にアリスを伴い、人々の方へ歩いていく。
 一方さくらは、華澄の持つ『ヴァナディース』を興味津々という様子で見つめていた。
「あっ、私は射手で援護が主なので」
 銃が珍しい時代の人間らしき彼女と一緒に、華澄もまた治療や診察が必要そうな住人たちのもとへ向かう。
「さて、私はどうしようかしらね……」
 図らずも蓮獄への不安が的中してしまったエルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)は、他の人格たちと同行する気にもならず、一人何ができるかを考える。とりあえずは自分の得意分野で考えようと、あるものを探しその場を離れるのであった。

 まず華澄とさくらは、住人達に医術の心得を教えていた。
「これが化膿止めの解毒作用があります。煎じ方としては……」
 さくらは薬学の知識を用い、ダークセイヴァーでも比較的容易に入手可能な薬草とその使用方法を住人に伝えていく。それに倣い華澄も同様に、自らの持つ医術知識を、素人にも分かるよう伝えていった。
 やがてそれが一段落し、再びお互いの持つ武器の話になる。射手を主とする華澄に、剣は使わないのかとさくらは尋ねた。
「持ってはいるんですけど、まともに使ったことがなくて」
 そう答えると、さくらは少し考えるそぶりを見せる。
「遠距離主体なら、短刀に変えてみてはいかがでしょう。短い刀は携帯性もいいし、武器以外にもいろいろと便利に使えます」
 その提案に、華澄はなるほどと思いながらこれからの自分の戦い方を考えた。
「ありがとうございます」
 いつも自分の得意な間合いで戦えるとは限らないし、うまく戦いが運ぶというわけでもない。さらに医術士としても、さくらの手の速さには驚くべきものがある。
「私も見習わないと……」
 そう考えながら華澄は、質問にやってきた住人に答えるさくらの手技を改めてみるのであった。

 一方、アリスは右近と共に、町の広場で武器を構えていた。人類砦まではもちろん万全の態勢で護衛するつもりだが、それ以後は常に猟兵が傍についているわけにもいかない。たとえ猟兵には遠く及ばなくとも、最低限自分の身を護るくらいの力はあった方がいいと、二人は志望者に対して稽古をつけていた。
 そしてその一つとして、二人で簡単な模擬戦も行うこととなった。だが。
(ニタニタしてふざけてる様に見えるが、下手に飛び込めば恐らく……)
 何度か武器を打ち合わせるが、アリスは一度として効果的な攻撃を撃つことができずにいた。あくまで演習なのだから手ひどいことにはならないだろうが、それにしても簡単にあしらわれ過ぎである。
(たった一本の刀でここまで!)
 侮っていた部分があることは否定しない。あるいはそれこそが己の失敗であることも。だが動きは全て読まれているような気さえするし、付き従う者共との戦いで見せた呼吸法もまるで通じないままにまるで水か風の様に変幻自在で入り込んでくる。
 結局いいようにされるがまま、アリスは武器を下げることとなった。
「まぁ、今のは極端な奴よ。ここまでやれとはいわないさ。もっと基礎から教えてやるから、な?」
 相変わらずのにやけ顔で右近は住人達に言うが、アリスにとってそれは己に言われたも同じようにしか感じられない言葉。
(これが本物の剣豪の業)
 圧倒的な差を、アリスは思い知っていた。

 そしてエルーゼは、地下都市の入口近く、カターニアが詰めていた場所を探索していた。そこにあったのは、彼女が読み終えたと思しき膨大な蔵書だ。
「どれくらいあるかは分からないけど、あれば何かの役に立つかもしれないしね」
 その多くは地下の町から奪われたものであり、内容も実用書としては一般人レベルで、それこそ全てを読み込むつもりでもなければ即実戦に使えるようなものではないだろう。
 それらの本を見つけたエルーゼは、住人達に声をかけ、その本を運び出すのを手伝わせる。それと同時に本の種類を検めさせ、町から奪われたもの、住人達に役立ちそうなものは彼らへと譲り渡していった。
 これから彼らが向かう人類砦、そこを防衛するための戦術などが書かれた本があれば、今は理解できなくとも砦についた後でそこにいる者が役立てられるかもしれない。そう考えると、本は可能な限り回収し、住人の手元に残したかった。
 またそれらに混ざって明らかにこの閉ざされた場所には似つかわしくないもの、高度な魔術や拠点防衛術、集団戦での戦術などが書かれた実用性の高い書物がいくらか散見された。
 付き従う者共の弁では意図的に戦闘向けの書物をカターニアに提供していたとのことなので、これらは彼女たちがどこか別の場所から仕入れ、カターニアに読ませていたものなのだろう。
 流石に元素を操作する魔法などはここの住人達には使えないだろうし、悠長にそこまで学んでいる時間もないだろう。そう思いエルーゼは一部の本を譲ってもらえないかと願いでる。
「ああ……こんなの読めないし、もしあなたが読めると言うのなら……」
 試しに住人の一人がその本をぱらぱらとめくってみるが、すぐに顔をしかめ、エルーゼへと差し戻した。何が書いてあるのかまるで分らない、自分たちにとっては無価値な本でも猟兵の役に立つならと、難解過ぎる本は全て譲るつもりのようだ。
 カターニアのように溺れさえしなければ、知識はあって損をする者ではない。彼女が学びきることなく息絶えたその知識を吸収するかのように、エルーゼは魔術合成の本に目を通すのであった。

 自身の別人格と仲間たちが、それぞれに住人に様々なものを施していくのを見て、ジェイクは息をついていた。
 主人格たる己すら侵食する猛毒を持って制したこの戦い。だがその敵すら、辺境伯なる未知の敵が無数に抱える手駒の一つに過ぎないのだ。
 この先この、そして他の全ての世界での戦いがどれほど激化していくか分からない。その時果たして一戦終えてこうして休んでいる間があるのか……
 ジェイクはそう考えながらも今は改めて己の身を休める。次の戦い、それに備えるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…さて、私達の説明や地上への勧誘は他者に任せるとして…

…時間はそこまで遺されていないだろうけど…そうね
折角だから、私は怪我人や病人の治癒に向かうとしましょうか

礼儀作法に則り自己紹介を行った後、
街人に頼んで傷病者の元に案内してもらう

…私は医者や薬師ではないけど、治癒する手段を持っている

…だから、どうか傷病者がいるならば案内してほしい

第六感が捉えた患者の肉体を覆うオーラ防御が薄い部位を、
魔力を溜めた両眼で暗視して見切りUCを発動
吸血鬼化して限界突破した生命力を吸収した血を一滴、
患部に垂らし傷病を治療して回る

…折角、圧政から解放されたんだもの
光を見ないまま貴方達を終わらせたりしないわ。絶対に…



 猟兵たちの説明により外の世界の存在と、この地下都市に留まることの危険性を理解した住人達。ほとんどの住人達は猟兵の手助けもあって脱出の準備を整え、既に一か所に集まっていた。
「……さて、私達の説明や地上への勧誘は他者に任せるとして……」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は基本的な説明の部分は他人に任せながらも、決して何もしないわけではなく、自分だけができることを考え住人達の様子を観察していた。
 そうしていて目に入ったのは、体に包帯を巻いた男。この状況下で満足な医療など受けられたはずもなく、何らかの事情で怪我を負っても粗末な応急手当程度の治療が精一杯だったのだろう。むしろ今までのこの町の状況を考えれば、外に出られる彼は軽傷者の部類にすら入るのかもしれない。
「……時間はそこまで遺されていないだろうけど……」
 そう呟いて、リーヴァルディは静かに彼らの元へと歩み寄った。
「突然失礼。私はリーヴァルディ・カーライル。この町を解放に来た猟兵の一人よ。どうかお見知りおき願うわ。見たところあなたは怪我を負っているみたいだけれど……この町には傷病者はたくさんいるのかしら?」
 声をかけてきたリーヴァルディに負傷者は一瞬驚いた様子を見せるが、彼女の礼儀正しい名乗りと、すでにここまでで十分に猟兵を信用していたこともあり、すぐに質問に答える。
「そうですね……そんなに多くはありませんが、確かにいます。怪我人は移動の足手まといになる……共倒れを避けるため、私はこの町に残るつもりです」
 怪我をしている男のその答えを聞き、リーヴァルディは思う。この環境で病人が少ししか出ないということはあり得ない。恐らく、体に障りが出た者は早々に『病人』を通り越してしまうのだろう。だがだからこそ、今間に合った者だけでも何とかしなければならない。
「……私は医者や薬師ではないけど、治癒する手段を持っている……だから、どうか傷病者がいるならば案内してほしい」
 リーヴァルディの真摯な言葉。その言葉に、包帯の男は一瞬縋るような眼をした後一度頷き、リーヴァルディを案内して歩き始めた。
 しばらくして辿り着いたのは一軒の粗末な家。その家の中で、木を組んだ上に布を乗せただけのようなベッドの上にやせ細った女が寝かされていた。女の腹には包帯が巻かれているが、その包帯はひどく汚れ、悪臭も放っている。恐らく下の傷が化膿しているのだろう。
 リーヴァルディは女に近づくと、ためらいなくその包帯をはぎ取った。その下からは予想通り半ば腐った傷が出てくるが、リーヴァルディは臆することなくその傷を見つめる。
「……オーラがここからほとんど流れ出ている。ただの傷じゃない、ここから何か吸われたわね」
 その言葉に、傍で聞いていた男は目を丸くした。
「……はい。腹を抉られ、血を……」
 誰が何のためにやったのかは明白だ。そして外に出られる程度の怪我だった男が町に残るといった理由も。
 女の傷の上に、リーヴァルディは手をかざす。
「……限定解放。傷ついた者に救いを……血の聖杯」
 一瞬リーヴァルディの姿が吸血に変じ、その手から一滴の血が滴り落ちる。それはただの血ではない。彼女の生命力を限界を超えて詰め込んだ、いわば命の雫。その血が染み込んだ傷は、まるで命そのものを与えられたかのように瞬時に肉が盛り上がり、塞がっていった。
 男が驚きながら体の上に残った血と膿をふき取ると、そこにはただ白い肌だけがあった。
「あな、た……」
 薄く目を開けた女がか細い声を上げる。
「良かった……お前……ああ……ありがとうございます……!」
 男はまるで神の奇跡でも目の当たりにしたかの如く、リーヴァルディに跪いて涙を流した。
 リーヴァルディは表情を変えないまま、しかし確かな意思を込めて男を見る。
「さあ、他にも動けない人はいるはずよね。探しましょう。私ならそれをどうにかできる、彼女の姿が何よりの証拠になるはずよ」
 リーヴァルディがそう言うと、男は力強く頷いて集まっている人の元へ駆けて行った。
「……折角、圧政から解放されたんだもの。光を見ないまま貴方達を終わらせたりしないわ。絶対に……」
 その姿を見ながら、リーヴァルディもまた自ら傷病者を探すべく家の外へと出ていった。

 こうして長き圧政を受けてきた地下都市は解放され、全ての住人は猟兵の守りの下、受け入れを表明していた人類砦へと移送された。暗き世界に猟兵はまた一つ光を灯したのだ。
 果てない闇の中で、この光は余りに小さい。だがいつかこの光が地上を満たし、闇の世界を塗り替える日が来るはずだ。それを信じて、猟兵は今日も光を届け続けるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月31日


挿絵イラスト