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狂奏のローレライ

#クロムキャバリア #トリアイナ

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#クロムキャバリア
#トリアイナ


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●海霧に包まれる航路にて
「船長、霧が濃くなってきました」
「ああ、そうだな。各乗組員に通達、本船はこれより第三種警戒態勢に移る。キャバリアパイロットはコクピット内で待機せよ」
 船長の船内放送が大型貨物船内に響き渡り、乗組員達が慌ただしくも担当する持ち場へ走り急ぐ甲高い音がブリッジにも遠巻きに聞こえてきた。

「近頃は空戦もするキャバリアが出てきたからな。用心することに越したことはない」
「そうですね。ところで、例の新型…。仮にこの機に乗じ、空戦型キャバリアが襲撃したとして、アレ一機だけで上手く迎撃してくれるのでしょうか?」
「さぁな。お偉いさん方が、このボロ船を改修する金をケチって押し付けてきた物だ。その分の働きをして貰いたいものだ」
 若さ故に知識は豊かだが若干経験不足とも言える副船長が懸念する中、顔に深くシワの刻まれた経験豊かな壮年の船長が彼と同じ年月を歩んだであろう使い古びたパイプを取り出す。それを咥えながらマッチ箱から取り出したマッチを擦ろうとした時、船長の指が止まった。

「…副長、何か聞こえないか?」
「何か、ですか? 船体が波を切る音ぐらいしか聞こえませんが…?」
「いや、確かに聞こえた。各乗組員に通達、各持ち場に異常がないか…」
 船長の不安が的中したかのように、貨物船が大きく揺れた。そして、慌ただしい叫び声がブリッジに響く。

「た、大変です船長! キャバリアが、ヘキサの傭兵らが乗ったキャバリアが叛乱を…うわぁ!?」
 爆発音と共にブリッジとキャバリア格納庫が通じていた船内無線が切れる。船長は叛乱の言葉に耳を疑った。
 ――あのヘキサの傭兵が? 我が国『トリアイナ』と同盟関係のヘキサが? 雇われ関係とは言え、何年も同じ船旅を送ってきた船員達が?
 巡る巡る疑念を振り払うよう、船長は務めを果たそうとブリッジに指示を出した。

「総員、第三種警戒態勢より第一種戦闘態勢に移行。叛乱を起こしたキャバリアを鎮圧…おい、副長! どうした!?」
「う…うぅ……船長。あ、あたまが…割れそうで……ッ!」
 副船長は頭を抱えながら倒れ込んでおり、辺りを見回すとブリッジ内の船員も同じく倒れていた。そして、船長にも鈍い頭痛の痛みが広がり始める。吐き気を堪らえながらも手すりにしがみ付いたが、その抵抗を嘲笑うかのように力は抜けていく一方だ。

「…もしや…く、そ……。アイツの、仕業、か…ッ!」
 船長は格納庫内で何が起きているのか理解したが、同時に彼の意識は闇の中へと消えたのであった。

●グリモアベースにて
「お集まり頂きありがとうございます。クロムキャリバアにて惨劇が起きるのを予知致しました」
 火急の要件との一報を受けて集まった猟兵達を前に、シグルド・ヴォルフガング(人狼の聖騎士・f06428)が軽く会釈をする。そして、シグルドは立て続けに説明を続けた。

「場所は海洋貿易小国家『トリアイナ』の領海内を航行中の貨物船内で、キャバリアパイロットの傭兵による叛乱が起きました…が、真相は異なります。船内のキャバリアがオブリビオンマシンとして覚醒したのです」
 そう、船長が気づいたのはオブリビオンマシンの存在だったのだ。

「キャバリアパイロットのパイロット、ヘキサの傭兵達はオブリビオンマシンに操られているに過ぎません。そして厄介なことに、そのヘキサとトリアイナはお互いに同盟関係を結んでおります。ヘキサはトリアイナで慢性的に不足しているキャバリアパイロットの派遣を、トリアイナは長く続いた内戦で疲弊したヘキサへ海上交易で得た食料や戦略物資を優遇価格で卸す協定です。船が沈み、ヘキサの傭兵による叛乱という事実が広がれば、両国は再び対立し合い戦いの火種になりかねません」
 あくまでも両国の同盟はビジネスの関係としての面が強い。山間部に囲まれて物資の乏しいヘキサは血を支払い、開かれた海を主な交易手段としているトリアイナはヘキサの生命線を握っている。仮に同盟が破綻すれば、弱肉強食の世を生き残るための戦いを何方かが仕掛けることになるのは明白だ。

「これから貴方達を送る先は、戦場と化しているトリアイナの大型貨物船の甲板です。ヘキサの兵たちが乗る貨物船防衛に積まれていた水陸両用キャバリアを無効化しつつ、この騒乱の元凶となったオブリビオンマシンを破壊ください」
 どのパイロットもオブリビオンマシンの手により狂わされているだけである。
 その点を心に留め置き、難しいかもしれないが機体だけを無力化して欲しい。
 念を押すようにシグルドは目を瞑ると意識を集中し、猟兵たちを現地に転送するのであった。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 10月になった途端、一気に冷えこんできましたね。
 今年の冬が早く来ても良いよう、車のタイヤ交換も早めにしておきたい所です。


●シナリオ解説
 第一章は【集団戦】フラグメントです。
 貨物船を破壊して沈没させようとしている、傭兵小国家ヘキサのパイロットが操る水陸両用の量産型キャバリア『ウォッグ』との戦闘です。
 やや旧式ですが、水さえあれば場所を選ばずに運用できる傑作機です。

 第二章は【ボス】フラグメントです。
 『ウォッグ』を操るオブリビオンマシンとの戦闘になります。

 第二章と第三章については、現時点で開示出来る情報はありません。
 章が進展する毎の情報開示となりますので、ご了承下さい。


 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『ウォッグ』

POW   :    クローアタック
【クローアーム】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    水陸両用射撃兵装
【背部水陸両用ミサイルと腕部ニードルガン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    水陸両用機
敵より【水中深くにいる】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達は大型貨物船の後方部、船橋前に転送され、甲板に降り立つ。
 どうやらブリッジはまだ破壊されていないようだが、霧が濃く見通しが悪い。

 ――バコォンッ!!
 突如積まれたコンテナが宙を舞い海へと叩きつけられる音が鳴った。
 そして霧を切り裂くように数個ものモノアイを光らせながら、こちらを凝視する物が居る。水陸両用量産型キャバリア『ウォッグ』だ。
 この大型貨物船は後方部にコンテナを積んでおり、前方部にキャバリア格納庫等が備わっている、所謂ローロー船である。
 航行によって生み出された船風に乗った『耳障りな音』が霧の奥から聞こえてくるとなれば、元凶のオブリビオンマシンはこの先に居るはず。船首までの距離はおよそ約数百メートル。距離にしては短いが、障害物となるウォッグの存在で近いようで遠くも感じてしまう距離でもあった。

 そして音の操り人形となっているウォッグが、突如現れた侵入者を排除せんとぎこちなく動き出したのであった。
ヨルゲン・エリクソン
うへぇ、こんな霧の中で戦うってのはかなり面倒だな。
まずは水陸両用機で襲ってくるってのなら、クローアタックあたりで襲ってきたところを反撃する形で、数を減らして行きたいところだ。

とりあえず自分のキャバリア、グロービョルンで前に出て、装備している二つの斧で接近戦を行い、出来れば腕や足を部位破壊により切断する形で、その戦闘力を奪いたい。

継戦能力や集団戦闘能力なんかは多少あると思うが、決め手に欠けるなら他の援護に回りたいところだな。

「敵の数が多いかもしれないが、こっちも纏まれば怖くないって行きたいところだよなぁ」
みたいな愚痴を言うかもしれないな。


※描写については好きに描いていただいて構いません。


星野・祐一
いきなりのお出迎えとは恐れ入るぜ
先にこいつ等から何とかしますか

[SPD]
視界の悪さは【暗視や足場習熟、戦闘知識】でカバー

まずは熱線銃で【先制攻撃】を仕掛けたら
人差し指を立てて【挑発、存在感】

ほら掛かってきな

【読心術】で敵の内心をそれとなく把握しつつ
敵の攻撃を【第六感】で察知するか動作を【視力で見切って】回避
同時に流星で関節狙いの【早業、カウンター、2回攻撃】

流星にはEsの【世界知識、情報収集】から得られたデータが送信済だから
【誘導弾】で狙い違わず当たるって訳よ
そして動きが鈍った個体から順に雷鳴で四肢を撃ち抜いて無力化な
(UC、部位破壊、貫通攻撃

先を急いでるんでね、そこで休んでな!

アドリブ等歓迎



「うへぇ、こんな霧の中で戦うってのはかなり面倒だな」
 視界が霧で遮られ、数十メートル先も見通せれない甲板に立つキャバリア『グロービョルン』のコクピット内で、ヨルゲン・エリクソン(灰色熊・f30094)は厄介そうに顔を歪めた。今は目の前に一機のウォッグが居るが、目視できていない霧の奥でまだ控えているであろう。

「いきなりのお出迎えとは恐れ入るぜ。先にこいつ等から何とかしますか」
 星野・祐一(スペースノイドのブラスターガンナー・f17856)がグロービョルンの背後に控えながら、先程コンテナを吹き飛ばしたウォッグの歓迎をおどけさせる。とは言え、一振りで自らの全長程はあろうコンテナを叩き飛ばしたとなれば、その力は侮れないものである。それならば…。

 ――バシュンッ!
 星野が抜いた熱線銃から雷鳴のような轟音と共に青白い光弾が放たれた。ウォッグのぶ厚い装甲を完全に穿てなかったが、モノアイが星野へと向けられる。わざと装甲が厚そうな部分を狙い自身の姿を捉えたと確信した星野が中指を立て、ウォッグとそのパイロットへ挑発を行った。

「ほら掛かってきな」
 操られたウォッグのパイロットに星野の挑発を理解できる自我が残っているのかは分からないが、ウォッグの腕がぎこちなく星野へと向けられ、クローに内蔵されたニードルガンの砲口を覗かせる。そして、甲高い音と共に鈍い音が甲板に響いた。一つはニードルガンが撃たれた音。もう一つは…星野を狙ったウォッグの腕がグロービョルンの対キャバリア用斧で溶断され、船外へと照準が狂わされたニードルガンを撃って砲口から発射煙を燻らせたクローが甲板へと叩き落とされたのだ。

「よそ見はご禁物だぜ?」
 ヨルゲンの奇襲に、ウォッグは一歩引くと残った片腕のクローをグロービョルンに突き出した。先ほど見せたパワーと鋭さを兼ね備え、直撃すれば装甲の厚いグロービョルンとてタダでは済まされない一撃を受け流そうと、ヨルゲンは何年ものの付き合いとなっている愛機を翻させた。

 ――ギャギャギャ!!
 丸みを帯びたグロービョルンの肩にウォッグのクローによる傷が、金属同士が削り合うような音を立てさせながら横一文字につけられる。だが、お陰でクローはグロービョルンの外側に逸れて、片腕を喪ったウォッグは無防備同然となった。それを狙っていたヨルゲンがそのままの勢いでウォッグにショルダーアタックを仕掛ける。その外見と見合った重量を持つグロービョルンの体当たりに、さすがのウォッグも体勢を崩して積まれたコンテナに叩きつけられた。

「先を急いでるんでね、そこで休んでな!」
 ウォッグが立ち上がろうとしたその時、再び霧の中で雷火の光が迸る。先程とは違い、各シリンダーのチャージが完了したリボルバー型熱線銃『雷鳴』が放たれたのだ。星野は早業の早撃ちで、ウォッグの残った腕、肢を破壊し、最後の一撃はモノアイへと轟音を続け様に放った。その威力は先程と違い、ウォッグの装甲を貫通させ機能停止に至らしめさせる。

「これで一体目か。敵の数が多いかもしれないが、こっちも纏まれば怖くないって行きたいところだよなぁ」
「まったくだ。一気に行きたいところだが、人にも船にも優しく行かないとな。また悪さしないように、パイロットを引きずり出して縄でもかけるか?」
「そうしておこう。こうなればもう動けないが、自爆でもされたら夢見が悪い」
 コクピットハッチを開ければ、オブリビオンマシンに操られたせいであるのか、グロービョルンの体当たりによる衝撃で脳震盪でも起こしたのか。ウォッグのパイロットの意識は朦朧としていたが命には別状はない。ひとまずパイロットを安全な場所まで退避させ再び暴れないような処置を施した二人は、お互いに警戒し合いながら霧深い船首に続く甲板を進むのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御門・結華
マスター(f01546)と参加

ユウヤの機体が換装次第、肩に飛び乗り右手の怪力でしっかりと掴まります
「マスター、相手より深く潜水してください」
右手でデッキからウンディーネのカードをドロー、水の魔力を体に纏い変身します。
「水の精霊よ、我が身に宿れ」
防具改造で水色のドレスを、武器改造で氷のエレメントが融合した刃が氷で出来た大鎌を装備する。

シルフィードが避けきれない敵のミサイルとニードルはUCの氷壁で防ぐ
「無駄です」
敵が深く潜ろうとしたり囲もうとすれば、UCの氷壁で移動を妨害します
「氷の精霊よ、我が敵を拒絶せよ」

敵の隙を見切り、全力魔法で作り出した無数の氷槍を撃ち込みます
「この水すべてが私の武器です」


ユウヤ・シュバルツ
相棒(f01731)と参加

スマートな白銀色の愛機『シルフィード』のコクピットで、セットされた端末の画面に表示された電子妖精へ
「ルル!こっちも水中戦特化でいくぞ!」「了解だよ!アーマー転送!」
UC使用。白い装甲の一部とバックのスラスターをパージし、青い耐水圧装甲と水中用ジェットブースターを装備します
「ユウヤ!換装完了だよ!」「よし!いくぜ、結華!」
結華が掴まったら、潜水開始。敵の攻撃を見切り、残像を生み出す高速移動で回避する。
「ルル!敵の動きを!」「了解だよ!」
躱しきれない分を右手のショートブレイドで切断しながら接敵し、カウンターで切り裂いたり、左手のブラストナックルを叩き込む
「今だ、結華!」


メディア・エペ
【クロムキャバリアでの活躍を希望しています。】

冷静知的な女性です。

言葉遣いは丁寧ですが、ところどころにトゲがある女性です。
(プライドは相応にありますが、それ以上に相手を激高させて戦闘を有利にするため)

自身の乗機であるモイラ・キャバリアを駆って戦います。
基本は不殺を心がけており、電子兵装に強い装備を使用して相手を行動不能にする戦い方を好みます。

オプティカルカモフラージュ。アンチミサイルレーザー。プラズマフィールドを装備して敵陣においても類稀なる生存能力を誇ります。

また、万全を期して戦う為に自身のUCで顕現させた漆黒の花嫁と共に戦うか、能力を増強させて戦うことも多いです。



 何時何処にウォッグが潜んでいるやもしれない船上を猟兵達が進むと、貨物船に何か激突したかのような衝撃が船全体に伝わった。

「…やはり船が傾いていますね」
 戦車のような武装を持つオブリビオンマシン『モイラ・タンクキャバリア』を走らせていたメディア・エペ(ファントムコントロール・f30185)は、違和感を覚えてキャバリア下半部の無限軌道を停止させた。高射砲による砲撃戦用の水平器を確認すると、徐々にだが水平である事を表している横線が斜めに沈み込んでいる。何らかの理由で浸水し、船体が傾いている証拠だ。念の為と電子兵装を搭載しているモイラ・タンクキャバリアからブイのようなソナー探知機が船外へと射出させ、送られていくる情報を解析すると貨物船の周囲に何らかの反応を探知できた。大きさはキャバリアサイズだとすれば、ウォッグの可能性が高い。このまま放置しておけば浸水によるバラストバランスが大きく狂い、積荷を満載した貨物船が横に転覆するのも時間の問題となるだろう。

「それなら、ルル! こっちも水中戦特化でいくぞ!」
「了解だよ! アーマー転送!」
 その解析結果を伝えられたユウヤ・シュバルツ(白銀の疾風・f01546)が、コクピット内に接続された端末を操作して支援AIである電子の妖精「ルル」に命令を下した。彼が駆るスマートな白銀色の愛機『シルフィード』の装甲の一部とバックパックのスラスターがパージされて甲板上に転がり、転送されてきた青い耐水圧装甲と水中用ジェットブースターが機体とドッキングする。

「ユウヤ! 換装完了だよ!」
「よし! いくぜ、結華!」
 シルフィードの傍で控えていた御門・結華(色褪せた精霊人形・f01731)は主人であるユウヤの言葉に軽くうなずくと、ウンディーネアーマーとの換装を完了させたシルフィールドの肩に飛び乗って取っ手を強く握りしめた。

「こっちに居るのは私に任せて。下で暴れているのを大人しくさせて来てくださいね」
 船外へと飛び出して海に潜った二人の姿をメディアが見送ると、再びセンサーに注視する。前方から幾つかの反応があり、それはこちらに向かってゆっくりと進んでいるのであった。

「…確認しました。ウォッグです。マスター、相手より深く潜水してください」
「了解した!」
 海の下にはやはりウォッグが居た。貨物船には幾つか穴が空いていたが、ウォッグが突き破ったにしては小さすぎる。恐らく船内のキャバリア格納庫にはバラスト排水を利用した水陸両用キャバリア専用の出入り口があるのだろう。船上では動きが緩慢であったウォッグも、流石に水中では水を得た魚のようにその性能を発揮している。シルフィードの姿を数個のモノアイが視認すれば、船体の破壊活動を阻害する者の排除に乗り出してきた。

「流石に水の中では素早いな。ルル! 敵の動きを!」
「了解だよ!」
 ルルが予測した敵機動データを元にユウヤはウォッグから放たれたニードルガンを掻い潜るが、紙一重で躱したニードルから伝わる水中衝撃でコクピットが揺れる。躱しきれないニードルを切り払うが、敵もさることながら回避される事を知った上での牽制と回避行動を取た場合に当たるよう撃ってくる。このまま接近しては自殺行為にもなりかねないだろう。

「結華!」
「了解しています。氷の精霊よ、我が敵を拒絶せよ」
 既に水の魔力で作り出した水色のドレス姿で氷で出来た大鎌を携えた結華がマスターであるユウキの命を受け、氷の大鎌を前方に振るう。すると、突如目の前に巨大な氷壁が形成された。ニードルは氷の壁に突き刺さり、予想もしない現象に困惑するウォッグパイロットの隙間を突き、シルフィードの水中用ジェットブースターを加速させて一気に距離を詰めた。シルフィードの電磁パルス発生型ガントレットが暗い海の中で仄かに発光し、勢いに任せてウォッグの顔面を大きくへこませる。接触によりブラストナックルから伝わった電磁パルスがウォッグの電子回路を駆け抜け、システムダウンを起こして沈黙させる。そして周囲のウォッグをセンサーで捉えると、ユウヤは再び結華にオーダーを下す。

「今だ、結華!」
「はい。この水すべてが私の武器です」
 幾重にも展開された魔法陣より、無数の氷槍が放たれた。
 それらは小さいものの、ウォッグに突き刺さるとその部位がみるみる凍っていく。命中するたびに氷が形成されて動きが緩慢となってしまえば、水の中では優位のウォッグもただの的である。そうして巨大な氷に閉じ込められたウォッグらはゆっくりと海面に浮上していった。

「暫く頭を冷やしていてください。さぁ、マスター。警戒を厳にしつつ、船体に空いた穴を氷で塞いで浸水を止めましょう」

 一方甲板では、漆黒の花嫁と共にモイラ・キャバリアの電子兵装を武器にメディアは戦いを有利に進めていた。

「あなたに捌けるかしら? 私と…彼女を」
 モイラ・キャバリアの頭上で浮遊する漆黒の花嫁が視界と動きを遮る魔法によりウォッグを鈍らせ、それをメディアがモイラ・キャバリアの浮遊砲より放たれる電装機器にダメージを与えるプラズマ弾を発射する。ウォッグにプラズマ弾が命中すれば目を灼くような眩い閃光が迸り、糸が切れた操り人形のようにモノアイが消えながら倒れていく。

「傾きは止まったようね。さぁ、後もう一息よ」
 水平器の変動が止まったのを確認すると、メディアは無限軌道を鳴らしながら停止して転がるウォッグを通過しながら前へと進む。見通しが効かない霧の中、ようやく積まれたコンテナ終わりが見えてくる。貨物船の船首まではもう少しであると共に、後方でも聞こえていた耳障りな音がより鮮明に強く聞こえてくるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

家綿・衣更着
「船上は厄介っすが、やるっすよ!テングリーフ、GOっす!」

天狗モチーフの速度特化機。状況に有効な装備を借りる(現場借用含む)っす。
衣更着も音対策に耳栓。

【ジャミング】を撒くスラスターを使い衛星に攻撃されない低空飛行、ユベコ発動で【結界術】と【化術】で作った【残像】で攻撃に対処。

「正気に戻るっす!傭兵が信用を失うのはまずいっすよ!」
ウォッグ自体はオブリビオンマシンでないなら、あやかしメダル【投擲】しはりつけユベコの【結界術】で敵キャバリアを包んで悪意ある音を遮断。
【おどろかし】てパイロットを正気に戻し【救助活動】できないか試すっす。

無理なら借りた装備や【ランスチャージ】【なぎ払い】で無力化っす


トリーシャ・サンヨハン
アドリブ&絡み歓迎

あらあら、耳障りな音ですわ
さて、私(わたくし)は余りのキャバリアでも借りて……あら、近くにない?
では、仕方ありませんわ……まずは【景気付けの一杯】
(プシュ!ごくっごくっごくっ!)……ぷはぁぁぁぁ!滅びゆく者達の為にですわぁ!
さぁて、霧に紛れて敵機に近づきますわ。キャバリア戦してるなら気づかれにくいはずですわ
そして敵機に取り付いてコクピットまで登って、コックピット開いてブラッディダガー突き付けて酒臭い息と共にホールドアップですわぁ
当然、パイロットは外に出してウォッグを奪いますわぁ
うぃ~、ひっく!さぁ、戦い方を教えて……欲しいですわぁ
奪ったはいいですがキャバリア実機操縦は初ですわ



「あらあら、耳障りな音ですわ。外もですけど、船の中でも聞こえますこと」
 進めば進むほどより強くなる耳障りで不快な音に、トリーシャ・サンヨハン(まるでだめなおねえちゃん・f29191)は耳を塞ぎながら、甲板ではなくブリッジ内部から続く船内の通路を進んでいく。途中で船体が傾いた事でのアクシデント、船底部へ降りようとしたら突如浸水が起こったかと思えばすぐ止まったりなどなどを潜り抜け扉を開ければそこはキャバリア格納庫だった。格納庫内は大きく荒らされており、内部でオブリビオンマシンに操られたウォッグの混乱がどれ程だったかを物語っていた。倒れているキャバリアメカニックや船員達の脈を測り気絶しているだけだと確認すると、一先ず安全な場所まで運んだのだった。
 
「さて、私(わたくし)は余りのキャバリアでも借りて……あら、近くにない?」
 猟兵たちが無力化した数のウォッグを考えれば、ほぼ全機暴れた事になるだろう。

「では、仕方ありませんわ……まずは景気付けの一杯でも」
 格納庫を見つければキャバリアに乗り込めると思っていたが、見当たらないとあればやるせない気持ちだけが溢れてくる。トリーシャはため息共にゴソゴソと何かを取り出すと、その蓋を開けて一気にあおる。

 ―プシュ! ごくっごくっごくっ!
「……ぷはぁぁぁぁ! 滅びゆく者達の為にですわぁ!」
 その正体はジュースのような舌触りでありながらアルコール度数は実に10%。値段も安く買える価格で手軽に酔えると人気を集め、巷ではその中毒性から合法ドラッグとも呼ばれている高アルコール系チューハイ『ストレングスゼロ』。通称ストレロだ!
 ロング缶を一気に飲み干したアリーシャは既に出来上がっており、その姿はもう冷酷冷徹で妖艶なダンピールではない。アル中の『ま』るで『だ』めな『お』ねえちゃん、略してマダオダンピールである。

「……ぷはぁぁぁぁ! あ゛あ゛あ゛ぁ~! やっぱりストレロは最高ですわぁ!」
 続けて開けた二缶目のストレロに酔いしれながら、アリーシャは千鳥足で船の揺れに合わせながらキャバリア格納庫の奥へと進んでいった。
 そんな船内であるが、船上は戦場そのものである。家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)が操縦する空力の為トンビのように尖った鼻先を持つ白いキャバリア「テングリーフ・ホワイト」が速度を落とした低空飛行で霧の空を切り裂いていく。甲板ではウォッグが対空防御でニードルガンをテングリーフ・ホワイトに向けて放った。

「船上は厄介っすが、やるっすよ! テングリーフ、GOっす!」
 本来であれば当たる速度でもウォッグの放ったニードルはテングリーフ・ホワイトに命中しない。何故ならばウォッグが狙っているのは衣更着の結界術と化術で作り出した残像なのだから。当たれば霧のように霧散し、また形成される。それに翻弄されるウォッグに別のウォッグが体当たりをし、態勢を崩したウォッグを羽交い締めする。
 暴走したウォッグの同士討ちに見えるが、そのウォッグは猟兵の味方である。何故ならば衣更着が放って貼り付けられたあやかしメダルが悪意ある音を遮断させ、パイロットは正気に戻ったのだ。彼が羽交い締めしたウォッグに衣更着はテングリーフを大きく旋回させ、狙いを定めてあやかしメダルを射出させる。見事コクピットハッチに張り付いたあやかしメダルはすぐさま効力を出し、暴れたいたウォッグは嘘のように静かになり止まったのだった。

「これで全部だな。済まなかった。本来であれば、俺達の尻拭いは俺達の手で付けるべきであったのに」
「別に良いっす! 正気に戻れてなによりっす! 傭兵が信用を失うのはまずいっす!」
「ああ、全くだ…うん? キャバリア格納庫のエレベータが上がってきている」
 鈍いモーター音と共に甲板に空いた穴から一機のウォッグがせり上がってくる。キャバリア格納庫に残っていた暴走ウォッグか?
 二人が身構えると同時にウォッグが動き出した…が、何やらその様子はおかしい。まるで酔っ払いの足取りのようにフラフラとおぼつかない動きだ。

「うぃ~、ひっく! さぁ、戦い方を教えて……欲しいですわぁ」
 コクピット内にすっかり出来上がった酔っぱらいのような女性の声が響く。その声の主はトリーシャ本人であった。

「…もしかしてだが、君達の仲間…なのか?」
「う、うん…そうみたい…っす」
「奪ったはいいですが、キャバリア実機操縦は初ですわ~」
 なんとも言えない空気が漂い、トリーシャが乗ったウォッグはあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。

「あー…彼女と仲間達の事は任せてくれ。この元凶を作り出したヤツの始末を頼む」
「りょ、了解したっす!」
 ウォッグのパイロットの機転により、衣更着はこの場を彼に委ねることにしてテングリーフ・ホワイトを船首に向けて旋回させた。
 その姿を見送ったウォッグのパイロットは、取り敢えずトリーシャに対し操縦桿の操作や計器類の説明などを行うのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『ディソナンスウェイブ』

POW   :    ヒュプノシス・コンダクター
【全身のスピーカー】から【自身からレベルm半径内の全員に催眠音波】を放ち、【精神を支配すること】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ノイズウェイブキャノン
【両肩のスピーカーから放つ強力な騒音】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【音の衝撃破】で攻撃する。
WIZ   :    ディソナンス・オーケストラ
【全身のスピーカーから強烈な不協和音】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠夢幻・天魔です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 霧が漂う海を進む船首の上で、何かが佇まいながら動いている。
 暴走したキャバリアを鎮圧しながら貨物船の奥から進んできた猟兵が見たものは、全身に装備された音響装置で大気を震わせながら指揮棒を振リ続ける一機のキャバリアであった。
 耳障りな音の正体こそ、このキャバリア『ディソナンスウェイブ』が発し続けていたものであり、これこそが船上での対空攻撃用にこの貨物船に配備されて覚醒したオブリビオンマシンだ。本来であればウンカのように迫る敵機を指向性を持たせた音響兵器により迎撃する為の物であっただろうが、その矛先は船首から後方のブリッジ、船全体に向けられた。催眠音波でキャバリア乗りが操られ、耳障りな不協和音により船員達は気絶したのが、この船で起きた事件の顛末だ。

 遠くから汽笛の音が聞こえる。ここはトリアイナの領海内であり、船の航路となれば直ぐ側で航行している別の貨物船が霧中信号を送っていてもおかしくはない。つまり、このオブリビオンマシンがこの汽笛音を頼りに、他の船舶へ音響兵器を向ければ再びこの惨劇が繰り返される…止めければ。船乗りを狂わせ、破滅へと導くこの狂奏曲を。
 オブリビオンマシンの破壊を決意した猟兵をも狂わせようと、オブリビオンマシンはより強く指揮棒を振るったのだった。
家綿・衣更着
「おいらジョブ無いから操縦はうまくないし機体相性も悪いし、味方が近づくための囮優先っす」

索敵妨害の準備時間稼ぎで敵に勧告
「貴方の行動はトリアイナの交易を阻害しヘキサの物資調達を妨害してるっす!ただちに降伏せよっす!」
【残像】【結界術】で自分を守り、【推力移動】で衛星に狙われず他の船舶を巻き込まぬよう空中移動
【ジャミング】効果のある粒子と【化術】込めた自身の毛で幻影を船上にばらまき、味方を【迷彩】

「制圧するっす!テングリーフは音よりずっと早いっす!」
『流星突撃槍』で【ランスチャージ】
いけるならジャミングで索敵妨害と、毛に込めた化術で攻撃方向を誤認させる
連携できる味方方向に吹き飛ばしコンボも狙う


ヨルゲン・エリクソン
「くっそ煩い状況だな、おい! 誰か耳栓持ってない!? 耳栓!」

と、耳栓なんか探しつつ今回も戦おうか。
継戦能力はそこそこあるため、煩い状況であろうと戦闘自体は出来るだろうと祈りたいところ。
戦い方は装備しているショルダーキャノンでの遠距離戦で。
砲撃の音で、他の汽笛音を紛らわせれば良いなと思いつつも、出来なければ味方の援護の終始したいところだ。

火力が足りなければユーべルコードでも使って、さっき倒して来たウォッグの腕部ニードルガンや背部水陸両用ミサイルなんかも利用しつつ戦いたいところだな。
「元々、そっちのもんじゃないだろう? 好きに使わせて貰うさ」

※描写についてはご自由に書いていただいて構いません。



「くっそ煩い状況だな、おい! 誰か耳栓持ってない!? 耳栓!」
 キャバリアに乗っていても、密閉されたコクピットの中に居ても、音が装甲をフレームを振動させながら伝播し伝わってくるあまりの煩さに、ヨルゲンは思わず耳を塞ぎながら叫んでしまう。精神にヤスリをかけられてこそがれるような不快な音に苛まれながら、狭いコクピットの中にあるもので耳栓の代用となりそうな物を額に脂汗を伝わせながら探した。そして彼が取り出したのは、緊急用のメディカルキットだった。中は消毒液や携帯用の傷薬など簡素な医薬品しか入っていないが、止血用の脱脂綿を千切るとそれを指で押しつぶすように圧縮させながら丸めて耳の穴に詰め込める。

「…よし。これで少しはマシになったな」
 指による圧縮から解放され、徐々に耳の中で膨らんでいく脱脂綿の圧迫感と共に音も遠のいて行くのを確かめると、カタカタと音響で震えるコクピットの中で操縦桿をヨルゲンは強く握り直した。

「貴方の行動はトリアイナの交易を阻害しヘキサの物資調達を妨害してるっす! ただちに降伏せよっす!」
 衣更着は船首中心をテングリーフ・ホワイトを大回りに旋回させながら、正気を取り戻させたウォッグとのやり取りで使っていた通信周波数帯による回線チャンネル越しに、オブリビオンマシンと化したディソナンスウェイブのパイロットへ呼びかける。しかしその返答はパイロットの言葉ではなく、機械が発する音塊だった。
 無線越しに、こっちに来るな、落ちろ等と喚き叫んでいる様子からすると、オブリビオンマシンが彼にテングリーフ・ホワイトを貨物船に襲いかかる敵機であると思わせているのであろうか。指向された音の見えない大砲が次々と放たれ、センサーが探知する霧に紛れるようにばら撒いた粒子の歪みを頼りに既の所で回避したが、空気越しに伝わる衝撃の残波にバランスを崩しかけてしまう。

「何か手を打たないと、このままでは不味い事になるっす!」
 テングリーフ・ホワイトを持ち直させた衣更着が懸念するのは、鳶のように光る目のようなレーダーが近くに他の船舶が航行している位置を探知したが為だ。幸いな事に霧に隠れて視認することは難しいが、対空用に積まれたのであればディソナンスウェイブにも音の反射を利用したソナーと似た原理のレーダーが搭載されているかも知れない。とすれば、オブリビオンマシンが他の船舶に対して、この船のキャバリア乗りを狂わせたのと同じ催眠音波を使用しかねない。
 更には攻撃しようにも、こちらは航空型キャバリアで、あちらは対空兵器として調整されたキャバリアだ。相性が悪いのを衣更着は承知しながらも、攻勢を掛ける足がかりができるをひたすら伺っていた。
 そして、再び砲撃音が伝わる。テングリーフ・ホワイトを再び回避行動を取ろうとしたが、空間の歪みを探知するセンサーは沈黙したままで衝撃波は伝わってこない。それもその筈。その砲撃音の正体は、ヨルゲンが駆るグロービョルンのショルダーキャノンであった。

「お前の相手は俺だ。さぁ、撃ち合おうぜ!」
 照準しないままで放った牽制用の初弾の軌道データを修正させながら次弾が装填されると、再びグロービョルンのショルダーキャノンが咆哮を上げた。放たれた砲弾がそのままオブリビオンマシンに直撃する…筈だった。砲弾がこちらを向いたオブリビオンマシンを避けるように横に逸れたのを見たヨルゲンが目を見開いたと同時にグロービョルンに衝撃が走る。ディソナンスウェイブから放たれた衝撃波が弾道を歪めさせたのだ。この攻撃に各種損傷を知らせる警告音がコクピット内で一斉に鳴り始めた。

「ちっ、さっきの一撃でキャノンはイカれたか。だがな…」
 堅牢さがウリであるが、製造されてからだいぶ経って往年とも言える愛機。コイツとはもう長い付き合いで、いい加減このボンクラを交換したいと思ったことは幾度もあった。もしかしたら、さっきので一気にガタが来たかもしれない。となれば、コイツとはもうオサラバだ…これも何度思った事だろうか。だが、ヨルゲンは交換せずままだった。無精者だというのもあるだろうが、何より彼が頑丈さだけが取り柄のボンクラだと冗談めきながら語るグロービョルンを誰よりも無意識に愛し、信頼しているからだ。

「元々、そっちのもんじゃないだろう? 好きに使わせて貰うさ…何時ものようにやられた分を倍返しと行こうぜ、相棒」
 グロービョルンはフレームを軋ませながら左腕を突きつけ、鋭く光るクローアームが開き腕の中に仕込まれた砲口がオブリビオンマシンへと向けられる。その腕はウォッグの物であり、ここに来る間に切り落とした物だ。キャバリアのパーツ規格が共通化しているから可能な芸当であり、ウォッグとの戦闘で故障した左腕とその場で組み替えておいていたのだ。ニードルガンを迎撃しようとオブリビオンマシンは再び音の壁を作り出そうとするが、、甲板になにやら細かい毛のようなものが舞い落ちてくる。

「それはおいらの毛っす。おいらの化術で誤認させる援護するっす」
 無線で送られる衣更着の声に合わせ、甲板には次々と化術で作り出されたグロービョルンのデコイが作り出される。それらは意思を持ったかのように動きオブリビオンマシンを翻弄させ、ヨルゲンも動く度に軋むグロービョルンの老骨に鞭を撃たせた。
 一発毎に放たれた衝撃波がグロービョルンを狙うが、それは幻影で霞のように霧散する。ニードルガンが放たれたグロービョルンを狙ってもそれも幻影だ。あたかも質量を持った分身とも言える化術に翻弄されるオブリビオンマシンの右肩部スピーカーへ、ニードルガンが突き刺さった。
 残された左肩で撃ち返したが、残念ながらそれも幻影。霧散したグロービョルンの隣りに居た本物が、再びニードルガンで左肩部のスピーカーを貫きみせた。

「これでカンバンだ。後は頼んだぜ、衣更着」
「任せるっす! これで対空攻撃されずに済むっすから、心置きなく仕返しをしてやるっすよ!」
 今まで貨物船の上空を旋回していたが衣更着はオブリビオンマシン目掛け、流星の如き加速速度でテングリーフ・ホワイトを急降下させる。今まで彼を近づけさせず翻弄していた両肩のスピーカーは沈黙しており、急降下と加速による強烈なGに身体を震わせながらジャミングと結界術を纏わせ更に加速させる。

「流星の化身『天狗』の力を借りて、流星のごときランスチャージっす!」
 超音速の衝撃波を伴う強力な突撃『流星突撃槍(テングリーフ・アルティメットランスチャージ)』がオブリビオンマシンに直撃し、後方へのコンテナへと吹き飛ばす。再び上昇しながら減速するテングリーフ・ホワイトから貨物船を見下ろす衣更着は、徐々に霧の中に隠れていくグロービョルンの姿を確認すると、やったっすと無線を送りながら親指をぐっと立たせる。
 無線越しで姿こそは見えないが、霧の空に隠れようとするテングリーフ・ホワイトの姿を見上げながらヨルゲンも、やったなと返答して親指を立て返すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
成程あんたが元凶か
その演奏さっさと止めさせて貰うぜ!

[SPD]
まずはEsによる解析で攻撃部位と動作…指揮棒の動作パターン辺りを把握(偵察、情報収集、戦闘知識

次に相手の攻撃を周囲の障害物を利用して大雑把に回避しながら(第六感、読心術、地形の利用
衝撃波の流れをEsの【学習力】を元に視覚化した情報をSSに送って【視力】で捉えられるようにする

準備が出来たら反撃開始だ
狙いは衝撃波を放つスピーカー!
攻撃を【見切り、残像】で最小限の動作で避けつつ
雷鳴のUCでスピーカーに叩き込む(早業、カウンター、部位破壊、貫通攻撃

まず両肩を潰したら残りの部位も壊し最後に指揮棒を撃ち抜いて
何も出来なくしてやるぜ

アドリブ等歓迎



「成程あんたが元凶か。その演奏さっさと止めさせて貰うぜ!」
 崩れた貨物コンテナの中から悠然と再び姿を表したオブリビオンマシン・ディソナンスウェイブ。自ら振り上げる指揮棒に合わせ、物質をも精神をも破壊する殺人音波を発する鉄巨人の姿を、祐一はコンテナの影から様子を伺った。

「まずはEsによる解析で攻撃部位と動作…指揮棒の動作パターン辺りを把握して……なんだ、こりゃ」
 彼がEsと呼んでいる銀河帝国製AIユニットを搭載したサポート・ドローン『Eins(アインス)』から送られてきた解析データを見て、祐一の表情が曇る。何故ならば、串刺しにされて破壊されたはずの両肩部が再生しつつあるとの知らせだったからだ。怪訝な表情で再び物陰から覗き込み、霧で霞む姿を目を凝らすと何やら黒い物が破壊された箇所から這い出るように蠢いているようだった。

「オブリビオンマシン化したことによる自己再生機能みたいなもんか? だとすれば、早く手を打たないと……やべっ!?」
 オブリビオンマシンの頭がこちらを捉え、両脚に備え付けられた小連結スピーカーを向けられ、祐一は本能的にしゃがんでいる状態からの跳躍補助デバイスによる補助で距離を伸ばしたローリングジャンプでその場から離れたと同時に、頑丈なコンテナが突如ひしゃげながら後方へと吹き飛ばされる。
 足元のスピーカーは対人攻撃を兼ね備えたものか。受け身を取りながら立ち上がりつつ、もしその場に留まっていたらどうなっていたかと思うと背中に冷たいものが流れるのを感じつつ、彼は耳掛けイヤホン型のAR(拡張現実)照準器のスイッチを入れた。

 ――ブゥン。
 小気味の良い起動音と共にホログラムHUDが祐一の眼面に広がり、Esで観測された先程の衝撃波が再び使用された時の予想拡散図、予想再使用の時間が表示されていた。
 反撃の準備は整った…あとは、どれに狙いを絞るか。
 再生が完了しようとしている両肩か? それとも再使用してくる両脚か? 指揮棒か?

「この一撃雷で終わりにしようぜ…!」
 祐一に迷いはなく、愛銃『雷鳴』に手を掛けると続けざまにオブリビオンマシンへ各シリンダーにチャージされた熱線を轟音と共に撃ち放った。
 彼が放った四重の熱線は一つの轟雷となり、船上に轟いた。両脚、両肩を四つの標的を瞬時に命中させるゲット・オフ・フォーショット。脚のスピーカーと両肩のスピーカーは同時に撃ち抜かれ、再び再生されるまでの時間稼ぎは出来ただろう。

「最後の仕上げだ。何も出来なくしてやるぜ」
 声を喪われ立ち竦むオブリビオンマシンに向けて、祐一は再び雷鳴の撃鉄を起こして落とす。霧を晴らすかのような轟音が再び響くと、オブリビオンマシンが手にしている指揮棒を撃ち抜いてみせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリーシャ・サンヨハン
アドリブ&絡み歓迎

操縦法を教わったのでウォッグに乗ったまま、海にドッポンですわぁ
海に潜れば音の影響も殆ど出ないはずですわ
海の中から機会を伺いつつ、コクピット内で【景気付けの一杯】ですわぁ!
(プシュ!ごくっごくっごくっ!)……ぷはぁぁぁぁ!これは迎え酒なのですわぁ~!(誰に向かっての言い訳なのか)
ヒック、迎え酒でいい感じになったので、音の衝撃波での波が途絶えたら、水陸両用ミサイルを撃って目晦まししてから海上に飛び出して一気に敵に向かってジャンプですわぁ!
ひゃっはー!ですわー!敵の目の前に着地と同時にスピーカーのどれかに向かってクローアタックをお見舞いしますわぁ!
うぷっ、派手に動いて吐き気が……


御門・結華
ユウヤと参加

「了解しました。マスター」
ユウヤと同時に水中を飛び出して甲板へ着地。デッキから新たなカードを引き、憑依変身を行う。
「雷の精霊よ。我が身に宿れ」
防具改造で白と金色で彩られた軽装の鎧ドレスを纏う。UCを使用、武器改造で二本の精霊剣を合わせた雷精弓を構える。

「雷精よ。我が敵を刺し穿て」
敵が音を放つ前に、スピーカーを狙い雷の矢を撃ち込む。敵がこちらを狙ったら、残像を伴う雷速の移動で回避します。
「雷の速度をご存じですか?」

もし敵が接近したら、弓を二刀形態へ分割し、怪力で叩き斬る。
「小柄だからと、侮らないで下さい」

弓の前に、全力の魔方陣を展開し巨大な雷の矢を放つ
「雷精咆哮-ライトニングロア-」


ユウヤ・シュバルツ
結華と参加

「オレ達で奴を攪乱させる。結華はサポートを頼む!」
水中から飛び出すと同時に水中用アーマーをパージし、スラスターと白銀の装甲を纏う
「ルル!全速力でいくぞ!」「了解だよ!アーマー転送!」
UCを使用し、相手がこちらを向こうとする動作を見切り、高速機動による残像で音の衝撃波を回避。隙を見て右腕の荷電粒子ビームライフルを撃ち込む。
「音波攻撃は厄介だが、シルフィードの高速機動は音速すら超えるぜ!」
「ユウヤ!気を付けて!相手の動きが変わったよ!」
敵が無差別攻撃を行おう前に、高速で突っ込みカウンターに左腕のブラストナックルを叩き込む。
「させるかよ!やれ、ルル!」「了解だよ!電磁パルス、フルパワー!」



 オブリビオンマシンが奏でる音と猟兵達の攻勢による衝突音が混じり合う船上とは対象的に、暗く冷たい海の中は音が遮られていて静寂そのものだった。その中、海面を目指しているぼんやりと光る一つの灯火が見える。それはトリーシャが駆るウォッグのモノアイだった。

「海に潜れば音の影響も殆ど出ないはずですわ」
 正気に戻ったウォッグのパイロットからキャバリアの基本的な操縦法を教わり、彼の静止を振り切って海に飛び込んだ。海の中にウォッグ達が残っていないか探りながら、丘の上では他のキャバリアよりも鈍重であるが本来のフィールドである水中では水を得た魚のように身軽になったをウォッグを潜航させながら、トリーシャは船首を目指していた。
 そして今は海中の安全が確保され、海面へと浮かばせたワイヤーソナーブイが拾うオブリビオンマシンが発する衝撃波の振動を探知させながら、海上に飛び出すタイミングを図っている…のだが、コクピット内でプシュッと炭酸系の缶を開ける音がした。

「ごくっごくっごくっ! ……ぷはぁぁぁぁ! これは迎え酒なのですわぁ~!」
 迎え酒と言いながらも、既に足元にはストレロの空き缶が幾つか転がっている。一体これで何度目の迎え酒なのか。

「トリーシャ、外の様子はどうなんだ?」
 ウォッグのコクピットに通信を通してユウヤの声が伝わる。
 トリーシャがストレロの缶を残さず飲みきり、ヒックっとしゃっくりを上げながら徐々にアルコールが染み込んでくる耳を研ぎ澄ますと、海上の音が途切れていた。

「音はお止みになられたようですわぁ~…ヒック!」
「なら手筈通りに行くぞ! …さっきからしゃっくりが続いてるけど、大丈夫か?」
「大丈夫ですわぁ~。寧ろ絶好調で、何もかもうまく行きそうですわぁ♪」
 ストレロを飲んでいる時は通信を切っている状態であったのもあって、まさかトリーシャが酒を飲んでいるとは知らないユウヤは彼女がしゃっくりを上げているだけと勘違いし、ルルもお大事にねと通信を送る。
 そして作戦は開始された。トリーシャがウォッグの水陸両用ミサイルを海面に向けて一斉に発射する。それに続き、ユウヤが駆る水中用アーマー『ウンディーネアーマー』に換装済みのシルフィードが水中用ジェットブースターを急加速して海上へと躍り出る。

「オレ達で奴を攪乱させる。結華はサポートを頼む!
「了解しました、マスター。ご武運を」
 水中を飛び出したシルフィードの肩に掴まっていた結華がジャンプし、甲板へと無事に着地したのを見届けたユウヤは続けてルルに号を下した。

「ルル! 全速力でいくぞ!」
「了解だよ! アーマー転送!」
 シルフィードが水陸両用ミサイルに向け発砲し、ミサイルが次々と誘爆されていく。その爆煙を盾にしながら、空中で水中用アーマー『ウンディーネアーマー』が滴り落ちる海水と共にパージされ、転送されたスラスターと白銀の装甲がシルフィードとドッキングする。それを背後に甲板に着地した結華は、突如起きた爆発に気を取られているオブリビオンマシンを前にしながらデッキからカードを引き抜いた。

「雷の精霊よ。我が身に宿れ」
 身体に閃光が走り、白と金色で彩られた軽装の鎧ドレスを纏った結華は、手にしていた二本の精霊剣を組み合わせた雷精弓をオブリビオンマシンへと構えて引き絞る。

「雷精よ。我が敵を刺し穿て…雷精咆哮-ライトニングロア-!」
 結華の詠唱とともに作り出された魔法陣を突き抜けるながら、雷の精霊が生み出した彼方まで届く電撃の矢が放たれる。彼女の攻撃のタイミングに合わせるよう換装を終えて爆煙から抜き出たシルフィードも荷電粒子ビームライフルを放ち、二つの閃光はそれぞれオブリビオンマシンの肩を撃ち貫かせた。

「ユウヤ! 気を付けて! 相手の動きが変わったよ!」
 両肩を喪って破れかぶれにでもなったというのか。残された脚部の修復が完了していないスピーカーが全周に向けて甲高い高周波を放ち、音と共鳴する貨物船の甲板に亀裂が走り始める。道連れにしようとでもする魂胆なのか。

「させるかよ! やれ、ルル!」
「了解だよ! 電磁パルス、フルパワー!」
 風よりも、音よりも疾く、スラスターを噴射させながらシルフィードが霧の切り裂きながら翔ぶ。加速するには邪魔な荷電粒子ビームライフルを捨て去り、より速度を増しながら左腕にエネルギーが集中されていく。そしてその勢いのまま、オブリビオンマシンの胴体にブラストナックルを叩き込んだ。
 白銀の拳は装甲を貫きコクピットブロックを掴むとスラスターを逆噴射させ、一気にブチブチとフレームとコクピットブロックを血管のように繋いでいるケーブルごと引き抜いていくく。生体ユニットでありコアとも言えるパイロットを喪ったオブリビオンマシンがわずかに残された電子信号を頼りに取り返そうと前に出たその時、再び背後から何者かにより胴体を貫かれた。

「作戦は見事成功、ですわぁ~♪」
 ユウヤ達とは反対側からトリーシャのウォッグは甲板に飛び上がり、彼らに気を取られているオブリビオンマシンの背後を取る。それが彼らの作戦であったのだ。
 催眠音波によりパイロット達を操り、暴走させたキャバリアに討たれるという皮肉の最期の中、心臓でもある動力部を貫かれたオブリビオンマシンはウォッグのクローアームが引く抜かれると、糸が切れた操り人形のように甲板へと崩れて活動を停止させた。

「ひゃっはー! ですわー! 勝利の美酒でにストレロをもう一杯…うぷっ、派手に動いて吐き気が……」
 水上への急上昇と機動戦の振動で込み上がってくる吐き気に手を抑えながら堪えているトリーシャのウォッグの背後で、光がチカチカと点灯するのが霧の中から見えた。今まで戦ってきた暴走ウォッグのモノアイに似た光に猟兵達は思わず身構えたが…すぐに臨戦態勢を解いた。
 それはモールス符号に則った信号灯によるもので、航路内に響き渡る激しい戦闘音と呼びかけに応じ無い貨物船の通報を受けて派遣されたトリアイナ海軍船籍の海上護衛巡洋艦の物であった。この悪夢が終わりを告げるかのように霧が徐々に晴れて行くと、空と水平線の境目に盛り上がった陸地が見えてくる。
 すぐそこに大きな港…トリアイナの港町が広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『クロムキャバリアで飲むコーヒーは苦いか?』

POW   :    コーヒーは豆の挽き方が重要だ。絶妙の力加減でベストの状態へもってゆく!

SPD   :    コーヒーは抽出の手順が大事だ。ひとつひとつ丁寧に、妥協は許されない!

WIZ   :    コーヒーは結局、香りだ。活かすも殺すも火加減次第だと教えてやろう!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●トリアイナ領港湾都市『デュシス港』

 通報を受け派遣されたトリアイナの軍艦に曳航されて、貨物船は戦闘により船体の損傷こそ多い物の無事に港へ接岸された。
 幸いにも猟兵達への事情聴取から事の顛末はオブリビオンマシンによる被害であると判明し、港へ着く頃には幾つもの規制線が張られ巡らされていた。既にスクラップ同然となったディソナンスウェイブは港内の貨物クレーンにより降ろされ、資源の再利用もされない焼却処分を受けるべく厳重に封印が施された後に貨物トレーラーで何処へと運び出されていった。
 あとは意識を取り戻した船員と正気に戻り仲間達の救助活動にあたったヘキサの傭兵達の証言、各キャバリアに搭載され全て無傷であったレコーダーの音声データを元に全ての真相が明らかとなり、最悪のシナリオであったトリアイナとヘキサの両国間における政治的な衝突は避けられるだろう。

 そして猟兵達はこの国の関係者に事後処理を委ね、港町に繰り出した。港には他の貨物船も到着していて、各国からの交易品が市場を潤してより一層活気づかせているようであった。猟兵達は露天商達からの差し招られているような商品の謳い文句を他所に進み、一軒のこじんまりとした店の看板を確認すると店の中に入った。
 ここは意識を取り戻した貨物船の船長が港に帰ったら必ず立ち寄る、彼のお気に入りのコーヒー店だ。オブリビオンマシンから受けた音による脳へのダメージを精密検査するべく病院へと搬送される前に礼にと場所を教えて貰い、彼の好意に甘えてこうして足を運んだ訳である。
 この店は各国からの交易でもたらされた様々なコーヒー豆が揃っており、それを店員ではなく客自らが自分好みに淹れて楽しむという変わった趣のセルフドリップコーヒー店だ。故に船長のようなこだわり派のコーヒー通に人気があるが、普段コーヒーを飲まない人やハンドドリップ未経験の人でも気軽に楽しめるよう、店員がサポートやアドバイスをしてくれるとの事。

 果たして、猟兵達が作るクロムキャバリアのコーヒーはどんな味になるのであろうか。
ヨルゲン・エリクソン
「あ、ミルクと砂糖たっぷりで。追加でハチミツとかガムシロップとかない?」

コーヒーが飲めるということで、せっかくだから、遠慮なくいただこうか。
あ、けどどっちかと言えば甘党なんだよね。
ブラックとか飲んだら大変なことになりそうだ・・・・・・出来れば甘く仕上げるか。

みたいな感じでコーヒーを作ります。苦いのより甘いのが好きな男です。
なんか生クリームとか乗せられたらそれも乗せます。
熊さんの絵とか描いてくれればそれもそれで喜びます。

※描写のアレンジ、他のキャラとの絡み等々歓迎しております。



 外界の喧騒から隔絶されたかのように、音楽が流れる店内は刻がゆっくり進んでいるような錯覚を覚える。訪れている客層も疎らで、壮年の紳士からうら若い貴婦人まで多種多様だ。ただ共通して言えるのは、このクロムキャバリアが闘争に明け暮れ戦いが止まない世界であるのを、一時にではあろうがこの空間で忘れる事ができる事なのだろう。
 そしてヨルゲンは船長の好意で訪れたのは良いもの、まさかコーヒー専門店だとは思いもよらずに彼は迷っていた。有り体に言えば、苦い物が苦手な甘党なのである。コーヒー豆を自分好みに淹れて味と香りを楽しむということは、相当ブラックにうるさいコーヒー通が通っているのだろうか。
 例えば、エスプレッソであろうか。いかにもコーヒーに拘りを持っていそうな初老の男性がマキネッタから小さなカップに淹れているのを彼は遠巻きに見ていた。きっとあれ程の苦さを自分が飲んだら、大変なことになりそうだ。そう思った矢先、ヨルゲンは驚愕した。初老の男性はそのまま持っていかずに…平然とした顔のままエスプレッソに砂糖を投入したのだ。それも5杯も。

「どうかなされましたか?」
 信じられないものを見たかのように固まるヨルゲンへ、この店の店員が声を掛けた。

「え? あ、ああ…いや、あんな小さいカップなのにアレだけの砂糖を入れているのが珍しくて」
 ああ、と店員は自分好みのエスプレッソを自らの席にまで運び味を楽しんでいる初老の男性の姿を見て、ヨルゲンの疑問に答えていく。

「エスプレッソはそのまま飲むお客様もおられますが、大半のお客様は砂糖を自分好みの量で調整なさっています。甘そうに見えますが、砂糖を入れることによって後から苦味がふわっと尾を引く感じが楽しめます。それと…」
「それと?」
「最期にカップの底に残った砂糖をスプーンで掬ってデザートとして味わえるのが、一番の楽しみです。例えるなら…そうですね。プリンのカラメルでしょうか?」
 その言葉にヨルゲンは衝撃を受ける。プリンのカラメル…まさかコーヒーでそれだけをたくさん食べれるだなんて。

「じゃあ、そのエスプレッソ……じゃなくて、カプチーノ。あ、ミルクと砂糖たっぷりにして貰って、追加でハチミツとかガムシロップとかない?」
「はい、ございます。ミルクはスチームミルクの他にフォームドミルクを追加でマキアートも出来ますが、以下がなさいます?」
 手に持った伝票にヨルゲンのオーダー内容を事細かく店員が記載していく中、ヨルゲンは是非にと即答してある物も追加でオーダーした。そうして出来たのが、熊さんのラテアートが描かれたカプチーノで、それを見たヨルゲンは子供のように目を丸くさせながら輝かせた。
 それではごゆっくり、と店員が去った後も彼はカップに描かれたまるで子熊のような可愛らしいラテアートを飲むのはもったいないとばかりに、カップの取っ手に手を付けないまま見続けていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
世界が違えば豆も違うだろうし素直に店員のアドバイスを聞き、酸味の少ない豆を細挽き深煎りした、香りを楽しむ水出しブラックアイスコーヒーを。水は軟水でお願いっす。
抽出に時間がかかるのでそれと別にミルクも砂糖もたっぷりな甘いカフェオレも作るっす

「皆さんお疲れ様でしたっす。キャバリアの暴走は大変でしたが、港までたどり着けてなによりっす」
傭兵や船員がいるならカフェオレを飲みながら談笑し労うっす。

水出しコーヒーは戦闘時と違う穏やかな音楽を聴きながら一人で静かにゆっくり楽しみ、帰りには市場で毛を抜いた所用に薬を買い…
【迷彩】からこっそりオブリビオンマシンにつけたあやかしメダルを追跡し、念のためその後を調査



 世界が違えば多少の僅差はあれど、文化の違い、考えの違い、物の違いはある。それはコーヒー豆も同様で、猟兵によっては似た文化圏のUDCアース産とヒーローズアース産でも大きく違うと語る。同様にカクリヨファンタズム出身の衣更着も、昭和テイスト溢れる行きつけの喫茶店とは別の味であると考え、ここは素直に店員からのアドバイスを貰いながら選んでいく。
 彼が淹れようとしているのは水出しコーヒーで、香りを楽しむブラックアイスコーヒーだ。一般的にコーヒーはお湯の温度で抽出時間が異なり、お湯が熱いほど抽出速度が速くなる。95度以上のお湯ではしっかりとした苦味とメリハリのある味わいになる一方、75度以下の温度になれば穏やかな味になると言われている。それらよりも温度が低い温度となる水出しとなれば、成分を抽出する時間を掛けてしまう欠点はあれど、ゆっくりと抽出することで人によっては嫌な苦味やエグみを抑え、よりまろやかで優しい味わいとなる。だが、温度が低いと酸味が引き出せれないので、豆の相性で大きく左右されるのも特徴である。この世界ではどの豆が水出しに適しているか、それを熟知しているのはこの店の店員に他ならないので、アドバイスを貰うのは至極当然の選択でもあった。
 そして砂時計のような形の一人用ウォータードリップコーヒーメーカーに中挽きしたコーヒー粉と軟水のミネラルウォーターで淹れて、飲めるようになるまでに掛かる時間は一時間弱。それまで別に作ったミルクと砂糖たっぷりな甘いカフェオレを作り、テーブルについた所で一人の若い男に同席してもいいかと尋ねられた。

「別にいいっすけど……失礼っすけど、どなたでしたっす?」
 聞き覚えのある声だったので相席に了諾したものの、彼が一体誰なの記憶を辿っても顔が浮かばない。そんな衣更着の表情を見て、男は通信越しだと無理がないと溢しながらポケットから取り出して見せたのは……貨物船で暴走していたウォッグのパイロットを正気に戻すために射出したあやかしメダル。それもこの絵柄は、一番最初に正気に戻り仲間の傭兵達を救おうと彼と共闘したウォッグに貼り付けたものではないか。

「…あーーっ! もしかしてもしかしなくても、あのウォッグのパイロットっす!?」
 人を驚かせる狸が逆に人から驚かされるとは、衣更着にとって始めての体験だったかもしれない。まさかこんな場所で再開するとは、彼も思ってはいなかっただろう。

「言ったろ、この借りは必ず返すって。親父さん……あっ、いや船長からこの店を紹介されたと聞いて、役人からの事情徴収が終わって来たのさ。奢るついで、このメダルも返させて貰うよ」
「別にいいっすよ。猟兵として当然の事をしたまでっす。そのあやかしメダルもあげるっす」
「そうか? じゃあ、コイツは幸運のお守りとして、ありがたく貰っておくよ」
 男は接客に来た店員にいつものを頼むと注文する。どうやらこの店に随分慣れたなじみ客のようだ。

「このお店にはいつも来てるっすか?」
「ああ、この国に派遣された時に船長からいい店を紹介して貰って以来だ。コーヒーと言えば眠気覚ましの合成コーヒーしか知らなかったが、本物のコーヒーはこんなに旨いのかって知ってからはハマってしまってね。この港に戻ってきた時の楽しみさ」
「そうだったっすか。何はともあれ、皆さんお疲れ様でしたっす。キャバリアの暴走は大変でしたが、港までたどり着けてなによりっす」
 始めて顔を合わせた二人がコーヒーを楽しみながら断章し合い、お互いに労い合う。そして、衣更着はこの国、トリアイナについて幾つかの情報も得られた。
 曰く、この国は国として成立しているが本質は『複合化された巨大企業』であること。国王に位置づけられるCEO並びに大臣に相当する取締役以下重役らは、創業者一族によって管理運営されていること。国全体が企業城下町として機能しており、貨物船の船長並びに船員達、そしてこのコーヒー店従業員も『社員』であること。オブリビオンマシンについては、その被害が普遍的に起きるものとして『何故わざわざ旧型船であった貨物船に優先されて配備されたのか』怪しんでいる様子はなかった。そして彼はふと時計に目をやると、もうこんな時間かと席を立った。

「これから船長の見舞いにでも行こうと思ってな。これだけ時間が経てば、流石に面会もできるだろう。何なら一緒に行くか?」
「ちょうど水出しコーヒーが出来上がった頃っすから大丈夫っす。その代わり、船長にはお大事にって伝えて欲しいっす」
「おっと、それは済まなかった。言伝は了解、勘定は纏めて払っておくぜ」
 別に奢らなくてもいいのにと言ったのだが、ここは彼の好意に甘えよう。刻を刻み終えて底に砂が溜まった砂時計の中から時間を取り出すように、衣更着はコップに水出しコーヒーを注いだ。そして、戦闘時とは違う音楽を静かに身を委ねながらコーヒーを味わう。時間の流れの感覚が麻痺してしまう店内で時間を過ごし、気づけば外は既に夕暮れとなりつつある。

「もうこんな時間っすか…。ごちそうさまでしたっす」
 店を出ると、そこから望める港を夕陽が紅く染め上げている。港町ならではの景色を楽しみながら衣更着は戦闘中に自らの毛を抜いた後のケアに使う薬を求めて薬局を渡り歩き、その道すがらある場所に着いた。
 港湾施設と思わしき厳重に張り巡らされた柵、そして三叉の槍…トリアイナの国旗が描かれた看板から察するに国営施設なのだろうか。その奥にそびえる黄昏れの闇に呑まれつつある建物を衣更着はじっと見つめた。何故なら、そこからこっそりオブリビオンマシンの残骸に隠すよう貼り付けておいた自らのあやかしメダルの気配がするのだから。
 果たしてここが、オブリビオンマシンを焼却処分する為の施設なのか?
 それとも……。これ以上踏み入るのはオブリビオンマシンを破壊する為の任務から逸脱するものとして、彼は夕闇の中に消えていく。
 願わくは、衣更着の不安が的中せず、ただの杞憂に過ぎない事を信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユウヤ・シュバルツ
結華と参加!

店内の壁によりかかり、手元の携帯端末に居る電子妖精のルルに話しかける
「ルル。シルフィードの調整は問題ないか?」「大丈夫だよ、ユウヤ!バッチリ終わったよ!」
安心したように返事をしつつ、歩いて行ってコーヒーカップを手に取り
「そうか。じゃ、こっちもゆっくりしようか。なぁ、結華?」
相棒の少女と、いつもの軽口でやりとりしつつ地元のアックス&ウィザーズや異世界を渡って得た【料理】知識、ルルが端末からネットアクセスして得たキャバリア世界の知識で色々と試してみる
「お、この豆は面白そうだな」「あ、ユウヤ。それは渋みが強いみたいだよ?」
「こういうのは味の癖が強いほうが作り甲斐があるもんさ」


御門・結華
マスターであるユウヤと参加します。
クールな魔動人形の少女。ユウヤに対しては信頼しつつも、小言が多くややツンデレ気味。

ユウヤの邪魔にならないよう、彼の傍で従者のように姿勢を正して待機しています。ユウヤとルルの会話が終わると調べた情報を伝えます
「マスター。この店は、客自らが好みのコーヒーを淹れるという仕様のようです」
歩き出すユウヤの後ろに付いていきながら、自らも豆を見ています
「マスター。いろいろな種類があるのですね」
戦闘用に作られた結華に料理知識はない、ゆえに悩み中である
「……マスター。私はこれにします」
結果的にユウヤに手伝ってもらうことになり
「申し訳ありません、マスター」
やはり料理を覚えなければ



「ルル。シルフィードの調整は問題ないか?」
「大丈夫だよ、ユウヤ! バッチリ終わったよ!」
 デュシス港と港町の境目にあるキャバリアデッキに停留させた自らの愛機『シルフィード』の状態を、手元の携帯端末を通して電子妖精『ルル』にユウヤは店内の壁によりかかりながら語りかけている。厳密に言えば、キャバリアに接続している契約デバイスの中のルルの本体と現在持っている携帯端末にリンクさせたルルの一部が互いに連絡を取り合っており、今こうしてシルフィードと遠く離れていても彼女を連れているのと同じ状態という訳である。

「そうか。じゃ、こっちもゆっくりしようか。なぁ、結華?」
 戦闘後のシルフィードの調整を終えた連絡を受けたユウヤは安心した顔持ちでルルに返事を返してコーヒーカップを二つ取ると、彼の傍で従者然と姿勢を伸ばしながら静かに控えている結華へ頭を向けた。

「マスター。この店は、客自らが好みのコーヒーを淹れるという仕様のようです」
 自らの主人であるユウヤの言葉を受け、彼がシルフィードの状態を確認している間に見聞きしたこの店についての説明を静かに語った。

「へぇ、それは面白いな。なぁ、ルル。ライブラリの中にお勧めのブレンドの仕方なんてないか?」
 いつものようにユウヤを先頭に、その後ろを結華が付き添う。そして、これもいつも通りにユウヤが軽口を彼女に叩くと、結華はそっけなくそれに答える。焙煎機やコーヒーミルが置かれたテーブルの傍にある棚の中には、大きなガラス瓶の中にコーヒー豆がびっしりと詰められているのを二人は興味深そうに覗き込む。

「マスター。いろいろな種類があるのですね」
 結華の目には、別々に詰められている瓶の豆が全て同じように見える。というのも、ユウヤの従者である彼女であるが、機能面では戦闘用のミレナリィドールであり、実のところユウヤには黙っているがこのような事にはめっきり疎い。理屈や知識では理解しているのだが、実践となればほぼ無きに等しい事からの不安だ。
 そんな彼女の葛藤を他所に、ユウヤは一つの瓶を棚から取り出した。

「お、この豆は面白そうだな」
「あ、ユウヤ。それは渋みが強いみたいだよ?」
「こういうのは味の癖が強いほうが作り甲斐があるもんさ」
 彼とルルとの会話に入る余地は彼女にはなかった。それは、自ら確証を得れなければ口に出さない結華の本分であるのだが、心の底には確証を得られぬままな間違った内容で彼に失望されたくないという乙女心もあってだ。今こうして冷静にユウヤとルルのやり取りを見てはいるものの、それを無意識に彼女は羨まく思っていた。

「なぁ、結華はどれが良い思う?」
 悶々としている中で突然ユウヤから会話を振られ、結華は表情にこそ出さないがハッとした。返事を返さねば。彼女は喋ろうとしたが、喉に言葉を詰まらせる。喋らなくては。焦る気持ちとは裏腹に、焦れば焦るほど頭が真っ白になって何を喋って良いのか分からなくなってしまう。瓶に貼られた豆の名前と解説を頼りに彼女は一つの瓶を手に取った。

「……マスター。私はこれにします」
 それを結華は、おずおずと若干目を伏せながら彼に差し出した。彼女としては本来自らが淹れるべきであったのだが、分量が分からずじまいで結果的に主であるユウヤに淹れて貰い、二人は面と向かいながら二人用のテーブルへと着く。

「申し訳ありません、マスター」
「そんなに畏まらなくてもいいって。地元の世界や異世界を渡って覚えた知識を、俺は試したかっただけだぜ」
 きっとそれは、表裏のない彼本心の言葉だろう。主人である彼が口をつけるのを待つ中で、やはり料理を覚えなければと結華は心に強く刻み込んだ。
 ユウヤがあまりの渋みで盛大にむせている中、ルルの警告を無視したからですと小言を吐きながら、結華もコーヒーを口に運ぶ。
 その味はほんのりと苦みが強い。しかし、どこか暖かみのある味でもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月01日


挿絵イラスト