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ただ一つ欲しかったもの

#UDCアース

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#UDCアース


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●「……違う、違うッ!これじゃない!」
 少年は頭を抱え、目の前にある巨大な水槽に生まれた生命体を睨む。
 緑色でドロドロに溶けた、むっちりとした体付きの、女性のカタチをした生命体。いわゆるスライム娘というものだが、本来これは妄想の中の存在。現実に生まれることを許可されていない、"UDC"と呼ばれるもの。
 溶けていながらも顔立ちはよく、先述通り煽情的な体をしており、なおかつ生きている。科学者目線で見ればとても素晴らしいものだと思えるだろう。だが、少年が望んでいたのはこれではない。
「……ぁ、アぷ……かぷァ……」
 こんな不定形でも、こんな緑色の体でもない。
 求めていたものは"UDC"なんかじゃない。
 水槽から出ようともがく不定形の女性は、途切れ途切れに少年に何かを告げようとする。だが、液体でできた喉は上手く空気を通すことができず、まるで溺れた状態で喋っているかのような声になる。
 少年はますます激高し、ついに叫んだ。
「黙れ!この失敗作が!……ボクのお姉ちゃんは、お前のようなキモいやつじゃないんだよ!!」
 少年は様々な薬品や資料が収められた棚を蹴り、そして部屋を出ていく。
 水槽に残された不定形の女性は、どこか悲しそうな表情で乱暴に閉ざされた扉を見つめていた。

●グリモアベースのブリーフィングルームにて。いつものように猟兵たちが集まり、そこに作戦指揮である白い妖狐の少年、ヘクター・ラファーガ(加速するデュランダル・f10966)が登壇する。
「つーわけで、今回は小さな事件だ」
 モニターに場所が表示される。
 UDCアース、その山中にあるニュータウン……その名残にて。予知によって顕著になったオブリビオン反応がここから検出されたようだ。
「オブリビオン反応はまあ、大目玉剥くようなやつじゃない。むしろよく反応に引っかかったなってレベルで弱い……だが放っておけないだろ」
 予知してしまった以上、無視はできない。グリモア猟兵として、ヘクターは今回の事件の概要について説明を始めた。

「エージェントの方々からの情報だと、取り巻きの方で苦戦してるっぽいな」
 そこに映し出されたのは、ドロドロに溶けた緑色の少女のようなもの。それをエージェントが各々の武器を使い対処している画像だ。
 『不定形少女』と呼称が付けられたそれは画像の中に大量に映っており、瓦礫や廃墟から湧き水のように続々と出ているのがわかる。
「どうやらコイツを生み出してる科学者がいるらしくてな。その科学者ってのが今回のオブリビオン反応に引っかかったやつだ。んで当然の如く科学者の潜伏場所がわからん」
 画像が変わりニュータウンの地図が表示される。
 目ぼしい位置や建物にマーカーが張られているが、そこに全て×マークがつく。エージェントたちが調査した箇所らしいが、どれもハズレらしい。しかしオブリビオン反応はこのニュータウンから出ているため、恐らくどこかに研究者のいる場所への入り口があるはずだ。
 湧き出す『不定形少女』、そしてそれを生む科学者。どちらも猟兵に委ねるということなのだろう。
「任された以上きっちりこなしてもらうぜ。科学者を一発ぶん殴るという仕事をな」


天味
 天味です。
 今回のシナリオの舞台はUDCアース。目的は、スライム娘を量産しまくるショタを一発ぶん殴るというものです。

 第一章では、オブリビオン反応が確認されたニュータウンの名残の中で、本命のショタが潜伏しているであろう研究所の入り口を探してもらいます。
 第二章では、量産されたスライム娘たち『不定形少女』の掃討。
 第三章では、本命であるショタとの対決になります。

 それでは、皆様の自由なプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『死都探訪』

POW   :    壁や床を破壊して回れば、なにか見つけられるかも。

SPD   :    知覚力を活かせば、怪しげな場所を特定できるかも。

WIZ   :    建築記録等に目を通せば、重要な情報が掴めるかも。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

天星・暁音
 …まあとにかく…相手の居場所を調べないとね。
建物の記録に目を通していけば何か分かるかも…無駄だとは思うけど追跡者にもその科学者を探させてみようか…
怪しい場所が見つかったらそこを重点的に探してみよう。
何にしてもきつちり止めないとね。

世界知識、第六感、情報収集等を用いて資料から怪しい場所を探り其処を追跡者や動物会話で周囲の動物から情報を集めたり追跡等で自分でも出向いて重点的に調べていきます。
途中でエージェントが戦っていたりするなら手助けもしながら


波狼・拓哉
さーてお仕事お仕事。探偵としてやってることだし張り切っていきますか!
さてと潜伏場所の捜索か…ニュータウン廃墟ね…定番つっちゃあれだけど地下室か最上階にいそうな気はするけど…建築記録借りて来て現地で色々見て回るか。記録と違う所とかあると怪しい気がするし…
んー目ぼしい所は先に探してくれてるんだよね…となると目ぼしくない場所…?建物がない空き地とか公園とか怪しいか…?取り敢えず詳しく考えるの現地でだな。第六感とか働いてくれるといいんだけど。
(アドリブ絡み歓迎です)


アルファ・ユニ
そんな姿をしてるもの、誰が何の為に生み出したんだろう?単純にオブリビオンとして地上を荒らす為?…それだけじゃなさそう。気になるな…

×の場所をまわって、湧き出ているものに触れその残留思念…記憶を読ませてもらうよ。どんな人がどんな風に生み出して、この液体さんは何処からきて何処にいったのか。

そこからの情報だけじゃ足りなかったらあんまり使いたくないけどサトリの眼…右眼も使って周囲の残留思念や地形も読むよ。どこから染みだしてるかとかでなんとなくでも場所を特定できれば。

他の猟兵達の情報とも照らし合わせて、奴等を追おう。



「これが、我々が探索したポイントになります」
 UDCエージェントから渡されたタブレットには、ブリーフィングで見た時と同じ×印まみれの地図が映し出されていた。
 アルファ・ユニ(愛染のレコーディングエンジニア・f07535)と、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)、そして天星・暁音(貫く想い・f02508)はそれぞれ同じことを考えていた。
 建物の記録や周囲の状況を見て、目標のいる研究所の入り口を探すこと。
「それと、地上にいた『不定形少女』は我々が処理しました。またいつ湧き出すかはわかりませんが、どうやら今は不思議なことに湧いてこないようで……では、また何かあれば」
 エージェントは三人の猟兵に頭を下げると、そのまま去ってゆく。
 タブレットを持っていた拓哉は、走り去ってゆくエージェントを見届けながらつぶやいた。
「……とりあえず、色々探ってみよう」

 まずは建物記録。UDCアースで生まれ育った彼はタブレットを慣れた手つきで操作し、地図と共に保存されていた、この場所……廃棄されたニュータウンの記録を開く。
 このニュータウンが建てられたのは昭和。現在のUDCアースの暦と比べると約40年もの差があるが、建物の殆どは鉄筋コンクリート造で倒壊しているものは少ない。蔦やコケが目立つとはいえ、ここまで保存状態のいい場所は珍しいだろう。
「んー目ぼしい所は先に探してくれてるんだよね……となると」
「空き地か、公園だよね」
 拓哉の隣で見ていた暁音は、拓哉の考えに気付く。既に目ぼしいポイントが探られているというのなら、その逆である怪しくないポイントに目を付けた。
 パチンと指を鳴らし暁音は影の追跡者(シャドウチェイサー)を召喚すると、公園へ向かって走ってゆく。

 一方、ユニはエージェントが探索した場所にいた。
「……聴かせて」
 念力系ユーベルコード『サトリの宿命(サイコメトリー)』を発動させ、ユニは周囲一帯の記録を"波"で読み取る。
 浮かんできたのは、ねっとりとした緑色の液体で構成された少女たちと、それと対峙するUDCエージェント。数十分前の記録だ。
『ダメだ弾がもうない!』
『一旦引け!』
 排水溝、建物の壁、街路樹、電灯、電線……地面だけでなく、様々な場所から湧き出すカタチない少女たち。それに対処しきれず撤退してゆくエージェントたち。ここのポイントでは犠牲者は出ていないようだ。
 そして、どの時間の記録を探っても、科学者らしき影は見えない。
「……ふぅん」

 数分後、三人は元の場所に集まりそれぞれが得た情報を話した。
 その中でも一番収穫があったのはユニ。なんでも、例の『不定形少女』はどこからでも湧いてくるというものだ。
「地面だけだと思ってたけど、違うみたい」
「あっ、俺もそのことで少しいいかな?」
 冷静に考え込むユニに、暁音が手を挙げて割り込む。
「『影の追跡者の召喚』で公園や池とか、×印がついてない場所を調べてみたんだ。ついでにそこにいた動物たちからも何かないか聞いた」
 得られた情報は、ユニと同じ。探索されてない場所からも『不定形少女』が湧きだしたという。
 その場所もエージェントによって『不定形少女』が駆逐された痕があり、動物たちはその一部始終を見ていたようだ。
「それで、さっきちょっと見たんですよ」
 今度は拓哉が二人に割り込み、背中を見せる。そこにはブリーフィングで見た『不定形少女』と同じ緑色の液体が垂れており、濡れた箇所が溶けて肌が丸見えになっていた。
「電線とか、ビルの壁からも湧き出したって言ってたじゃないですか。俺が見たのは……空からなんです」
 それは電線のない公園から。まるで雨が降り始める前のように、快晴の空から一滴のスライムが垂れてきたという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

憩・イリヤ
んんんん……!
ユニちゃん達のお話聞いても全然わかんないの!
どこから出てくるの?
お空から降ってきたのは、そこを通ってたから?
それとも雨みたいに、集まって……?
そんなの捕まえられないの……!

イリに出来るのは飛ぶことくらいだから、公園の上空を飛んで探してみるの。『空中戦』
飛んでたり、もしかしたら違う目線で探せちゃったりしないかな。

ちょ、ちょっとなら壊しても怒られない?
もし緑色のスライムを見つけたら、えいやでその子が出てきた、あるいは消えてった場所を壊しちゃうの。
ご、ごめんなさい!

他の猟兵さんが居たらイリも情報共有するの。

止めたいな。
科学者さん。
キモチが、才能が、もったいないの。

※アドリブ歓迎



「んんんん……!ユニちゃん達のお話聞いても全然わかんないの!」

 憩・イリヤ(キミガタメ・f12339)は現地に到着した猟兵たちやエージェントからの話を聞き、困惑する。
 スライムはどこからも湧いてくる。物理的な隙間だけでなく、空からも。となれば異次元的な隙間からもスライムが湧きだしている可能性がある。
 ただこれでは目的である研究所の入り口の前に、スライム出現の謎を解いてしまいそうだ。
「でも、イリにできることは……」
 『スカイステッパー』を使い、イリヤは高らかに公園の上へ向かって飛翔する。
 空を飛び、実際に自分の目で見てみること。上空という普段見ることのない視点から観察することで、何か得られないか探ろうとした。
 目に映るのは青空。その下は、白く反射する瓦礫の表面と、モザイクをかけるように波打つ瓦礫の影たち。公園の池や噴水は枯れてひび割れており、そこからあのスライムの少女が出た形跡もある。
 特に目ぼしいものはない。それが空から見た街の様子だった。
「……うーん」
 もしも話の通り、空中やどこかでスライムの少女が出てきた場合、それを壊すつもりだった。もちろん無碍に街や物を破壊することはなく、もしもの場合だった。
 逆に、出てきた場所を破壊しスライムの少女を呼び出せばヒントになるのでは?そんな発想が思い浮かぶ。
「ううん!イリはそんなことしないもん!」
 自身を落ち着かせるためにも、場所を変えよう。ターンし、公園だけでなく住宅地にも視点を置こうとふよふよと移動する。その時だった。

 ぶにっ、と柔らかいゴムのようなものにぶつかる。

「にゃぁあっ!?」

 イリヤはすぐさま"メイス"を構え辺りを見渡した。しかし周囲には何もない。だが先ほど、確かにイリヤは何かにぶつかった。
 何もないはずの上空に、目には見えない何かがある。
 もう一度、イリヤはメイスを片手に恐る恐るぶつかったポイントに手を伸ばす。
 ぷにっと柔らかい。それでいて、どこかべたべたする粘つきがある。それはシャボン玉のように膜があり、空に溶け込んでいる──

 まるで、エージェントから聞いた『不定形少女』の一部。緑色のスライムが、薄皮となって空を覆っていた。

「……うそ、でしょ?」
 状況を理解したイリヤは、すぐさま降下を始めた。
 他の猟兵たちに知らせなければ。そして、エージェントたちにも。

成功 🔵​🔵​🔴​

木目・一葉
仕事に取り掛かる
弱い反応とはいえ、後々拡大して致命的な何かを残す恐れはある
「確かに放っておけない」

【SPD】
まず交戦したUDCエージェント達に【礼儀作法】と【コミュ力】で【情報収集】を行う
特に知りたいのは倒されそうになった不定形少女が逃げようとした方角
元の場所に戻るより主にすがろうとした固体がいた可能性もある
その方角から居場所を推測する
それと対処しきれなかったとはいえ、何体か倒されたのもいる筈
倒された不定形少女の場所も聞いておく

これらと仲間の情報を元に現場で【第六感】と【失せ者探し】を用いて探索する
倒された不定形少女の残骸が残ってれば『操り糸の影』を使用し、その残された思念を読み取ってみよう


波狼・拓哉
…空を…覆ってる…!?え?まじで?唐突に降ってきて吃驚したりしたけど!?
…うん、いったん落ち着こう。んー定番だけど何処か地面とか建物屋上と繋がってる端というか基点があると考えられるな。たぶんそこが研究所の入り口だろう。
UDC職員達が『不定形少女』とやらと戦った場所が地図に記載されてば大まかな膜の範囲が割り出せそう。記載されてなければ聞きにいかな…さっきどっちいったけ?後は端を見つけて虱潰しにっと…膜に突っ込むのだけが怖いな。端でありそうな所に差し掛かったらそこら辺の石とか枝投げて確認だけしとこ。
(アドリブ絡み歓迎)



「……空から、か。確実に放っておけないな」

 崩れて瓦礫まみれになった広間にて。
 噴水の名残や、瓦礫を積み立てて作った椅子に座り休憩するエージェントたちから話を聞いた木目・一葉(生真面目すぎる平凡な戦士・f04853)は考える。
 物理、ましてや空間を無視して出現する『不定形少女』。
 出現する時間や位置に法則性があるとは感じられない。
 さらに空には『不定形少女』?と同じ緑色のスライムが薄膜で覆っている。
 肝心の研究所の位置は未だに不明。
 この四つを合わせて考えると、事件を解決する一歩にはまだたどり着けていないと一葉は感じた。

「でも、原因が研究所に住むオブリビオンなら、そこから出てるはずですよ」

 そんな彼女を手助けするように、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は声をかける。

「もう一度地図を見てみませんか?実はちょっと気になってたことがあって」
「?でも法則性はなかったんだろう。僕は調査に出ようと思ってたんだが、何か掴めたのか」
「……あんまり自信ないというか、もう一度地図見てわかったんですけど、とりあえずこれを見てください」

 拓哉はエージェントから借りたタブレットの画面を一葉に見せる。
 地図の×印は『不定形少女』が出現し、そして交戦した位置だ。それらはこの廃都を覆うように点在している。

「さっき見た」
「ですよね。けど地図を縮小したら……」

 拓哉はタブレットに二本指を当てピンチアウトする。地図が縮小され、廃都を指す薄赤色のエリアもそれに比例し小さくなってゆく。点在する×印も縮小によって小さくなり、×印が集合して一つの丸のような形になった。

「丸い?」
「そうです。それに、『不定形少女』は廃都から外には一切出現していない。一匹や二匹くらい街に出てもおかしくない量を駆逐されているのに、ですよ」
「……!先にこの場所へ行ってくれないか?僕はもう何人か呼んでくる」
「え?は、ちょっと!?」

 一葉はタブレット画面の一部を指し拓哉に言うと、拓哉が止める前に走り出した。追う間もなく走り去られ一人困惑する拓哉だったが、彼女が指した廃都の外側付近へとゆっくり歩いてゆく。

 指示通り、拓哉は廃都の出入り口付近にきた。
 門のようなものがあり、ここに住んでいた人々はここをくぐってこの街を出入りしていたのだろう。防護壁や建物でこの廃都を囲み出入り口を限定させていることはない。門以外からもこの街に出入りすることはできる。
 ちょうどそのタイミングで、一葉はエージェント数名を連れてやってきた。

「そうだな。それはさっき聞いた……エージェントさん、あなたたちは僕たち猟兵と違って足を使ってここに来たんだろ?」
「えぇ、そうです」

 エージェントが頷く。そして一葉は質問を続けた。

「入る時、何かなかったか?」
「……そういえば、ここをくぐる前に蜘蛛の糸に引っかかったみたいなことを言ってたのが数名いましたね」
「!!そうか、そういうことか!」

 確信し頷く一葉。そして何かに感づいた拓哉。 
 拓哉はそこらに転がっている手ごろな石を掴むと、拓哉は思い切りで門に向けて石を投げた。
 石はニチャッという粘液質な音とともに、まるで蜘蛛の糸に引っかかった虫のように"見えない何か"に引っ付いた。

「俺たちはテレポートで街に入ったからわからなかったけど、そうか。街全体を覆ってたのか!」

 さらにもう一つ、今度は門から外れた場所に向けて石を投げる。それも先ほどと同じように空中で見えない何かにへばりつき、空中で石が静止しているという、青色の空に一滴墨をこぼしたかのような光景に変わる。
 どよめくエージェントたち。そんな彼らに、一葉はもう一つ質問を投げる。

「これに見覚えは?」

 一葉がエージェントに差し出したのは、濃い抹茶色の球体。
 すると銃を持っていたエージェントが反応する。

「そ、ソイツは『不定形少女』のコアだ!けど、どうしてそれを」
「僕には残留した思念を実体にして汲み取るユーベルコードがある。持ってきたのは分身だけどね」

 気が付くと、一葉の隣には一人の真っ黒な少女が立っていた。
 エージェントたちは一斉に銃を構え、拓哉はそれに驚愕する。
 影の形は丸っこく、ドロドロと常に流動している。『不定形少女』のシルエットだったからだ。
 『操り糸の影』は倒された『不定形少女』のカタチを読み取り、それを再現した。
 そして今彼女が手に持っている球体こそが、『不定形少女』を形成する核部分。どんな隙間からでも現れる『不定形少女』と違い固体でありながら、液体のように軟性の命(モノ)。

「きっと、街を覆っているのは……いや、街そのものが超巨大な『不定形少女』の中に収められている。そして……」

 一葉は空を見上げる。

「研究所の場所は、超巨大『不定形少女』のコアだ!」

 実体化した『不定形少女』の残留思念。その背中からリードのように黒い糸が引かれており、それは空へと向かって伸びている。
 先ほどまで青色だった空は緑色に変色し、そこには薄っすらと黒い月が浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『不定形少女』

POW   :    あたまはこっちにもあるよ
自身の身体部位ひとつを【自分が擬態している少女】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    みんなとかしちゃうよ
【触手状に伸ばした腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【衣服を溶かす溶解液】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    いっしょになろうよ
【全身を不定形に変形させて】から【相手に抱きつくために伸ばした身体】を放ち、【少しずつ溶解させていくこと】により対象の動きを一時的に封じる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 動き出す緑色の異物。
 街を腹に収めた巨大な『不定形少女』は、ゆっくりと腹の中へ消化液を垂らした。
 ぽた、ぽたと緑色の雨が降る。
 それはエージェント、猟兵たちの皮膚を焦がす。毒の雨。

「う、うわぁぁぁ!!」

 一人のエージェントが叫ぶ。
 地面から、空から、そしてどこからでも『不定形少女』が湧きだす。液体の手が、ねっとりとした雨が、エージェントの防護服だけでなく体まで溶かし、侵食してゆく。
 ここはオブリビオンの胃の中。そこに入り込んだ生き物は消化されて当然だ。
 当然、世界に庇護されている猟兵も例外ではない。
 まとわりつく緑色の雨は衣類を溶かし、沼のように広がりつつある『不定形少女』の一部が足にまとわりつく。
 まさしく絶体絶命。今この状況を切り抜けるには、『不定形少女』を削りなんとしてでも上空のコアまでの道を作るしかない。

 皮肉にも今回の事件の目的地こそが、現状もっとも安全な場所と言えるだろう。
木目・一葉
いきなり戦闘か
では今ここにいる不定形少女を退けよう
ただ問題は、あのコアにどうたどり着くか、もしくは主犯をどうやってここへ誘き寄せるか、だな

・戦闘
敵の数は多いから、足を止めるのはご法度だ
なので『妖剣解放』を使用する
このUCの高速移動で相手に捕捉されぬように常に動き続け、複数体を【なぎ払う】ように衝撃波を放つ
またこの高速移動時には【第六感】を働かせつつ、【地形の利用】で周囲の障害物を利用して背後をとられぬよう立ち回る

周囲に敵が一旦いなくなれば、近くで倒れた不定形少女に再度『操り糸の影』を用いて残された意思を探る
特にほしい情報は主犯が何を求めたかだ
それが判明すれば、誘い出せる手が思いつくかもしれない



「いきなり戦闘か──」

 緑色の雨の中。
 木目・一葉(生真面目すぎる平凡な戦士・f04853)の行動は誰よりも早かった。
 ユーベルコード『妖剣解放』を用いた彼女は、装備していた武器から怨念を外套のように纏い、地面から湧き出す『不定形少女』から足を取られぬ内に高速移動を行う。

「おいで?」
「とけちゃお?」
「いっしょになろうよ」

 地面から、壁から、空からも。『不定形少女』の手が伸びる。それは絵具のように、街をライムグリーンで塗りつぶし、建物やエージェントたちを覆い侵食してゆく。
 少女たちは懸命に一葉へ手を伸ばすが、それは届かない。届いたとして、あまりの速さに手が爆散し掴めないのだ。

「うるさい!」

 "第六感"であちこちから生える緑色の手を避け、沼に足が沈む前に一歩踏み出し沈まぬよう動く一葉。
 複数体をまとめて薙ぎ払おうと考えていたが、一面ライムグリーンの景色、全部『不定形少女』になりつつあるこの状況では、薙ぎ払ってもキリがないと結論付けた。

「……いや、待て」

 一葉はあることを思い出す。
 それは街を調査する前。この世界にテレポートした直後にエージェントから聞いた話だ。
 『不定形少女』はエージェントでも倒せるほど弱い。持っていた小銃に込められていた弾は実弾。それで倒せるほどレベルの低いオブリビオン──

 数の暴力で攻める戦法は雑魚にでもできることだ。しかし、それさえも圧倒する力を持つ者はこの世界にはいない。
 だが、猟兵にはある。

「これだッ!!」

 『妖剣解放』で纏った怨念をエネルギーに、一葉はエージェントたちを覆う『不定形少女』、それらがいる地面へ向けて刃状の衝撃波を放つ。空を切り裂き、真空を生み出す透明な刃はライムグリーンの沼に激突し、風船が弾けるかのように『不定形少女』と緑色の液体を吹き飛ばした。
 エージェントたちに纏わりついていた『不定形少女』も、地面から湧き出していたライムグリーンの沼も、消えている。ゲート付近は衝撃波だけで全て元通りになっており、辺りにいた『不定形少女』はその余波で自壊しかけている。
 効果はある。『不定形少女』は想像以上に"弱い"。

「あれ、とんじゃう」
「きえちゃう」
「どこかへ」

 一葉はすぐさま自壊する『不定形少女』たちへトドメの衝撃波を放つ。横なぎに放たれた刃はワイパーのごとくライムグリーン色と化した街に一本の瓦礫道を作り、清掃を行う。
 ここまで弱いと拍子抜けしてしまうが、油断はしない。未だに足元から手を伸ばす『不定形少女』は存在し、掃除したばかりのゲート付近もまた『不定形少女』が湧き出しはじめている。

「キリがない。だが──これはやりがいがある!」

 一度の攻撃で数十、いや数百も固まって沼を生み出す『不定形少女』を消し飛ばすことができる。
 ビーム兵器でも手にした気分になった一葉は、唇の端を上げて真空を生み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

波狼・拓哉
ばれたとみなして襲い掛かってきた感じ…首謀者はまだ出てこないか。なら出てくるまで湧き潰しといきますか。
箱型生命体のミミックを召喚し、敵陣の真ん中目掛けて投擲。触手や頭部が当たる前に炎に化けな。さあ、全て陽炎が焼き尽くす時間だ・・・!あ、周りの人は気をつけてね?あの炎無差別だし。鎮火してから突っ込むのをオススメするよ?…これである程度の数は処理できる…はずだ!
自分は衝撃波を込めて属性付与した弾で敵の行動阻害でサポートを。地形を利用して目立たないようにしつつ、ロープで立体的に移動しながら錯乱とかしていこうか。
(アドリブ絡み歓迎)



「さあ、化け焦がしなミミック……!」

 ユーベルコード『偽正・炎精陽炎(フォーマルハウト・ミラージュ)』。波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は箱型生命体のミミックを召喚すると、上空に浮かぶ黒曜の月へ向けてそれをぶん投げた。
 ミミックは勢いよく宙を舞い、緑色の雨に打たれ身を焦がしながらも全身を炎に変える。

「陽炎が全てを焼き尽くす時だ!」

 赤色から青色、そしてオレンジ色へと炎が変色し、雨も辺りのスライムも蒸発するほどの熱源となって上空の膜に着弾する。
 ジュウジュウと脂が焼ける音を立てながら膜に食らいつき、炎を強め辺りに火の粉をまき散らしながらミミックは進軍する。膜から湧き出した『不定形少女』は近付いただけで手足が凝固し、中には燃え上がり火だるまとなって地面へ落下してゆくものもいた。

「なにあれ」
「あつい」
「かたまる……」
「いっしょになれない」

 『不定形少女』たちの言葉に耳を傾けることなく、ミミックはさらに炎をまき散らし、緑色の雨と共に火の雨を降らす。
 そして、

 箱の底が見えるほど大きく顎を開くと、太陽を思わせる白い光を黒曜の月へ放った。

 熱は全てを焼き尽くし、陽炎は視認不可能なほどの光と熱を持って巨大『不定形少女』の心臓までの道を開く。
 どれだけ大きく強大な姿となれど、中身は実弾で死ぬほど脆い烏合の衆。単なるスライムの塊でしかないのだ。

「よしっ!」

 月はまだ落ちていない。だがそこまでの道は開けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルファ・ユニ
【ペンドラゴン】
街全部覆うって…はぁ。あれ倒して上にいくの?ユニ空は飛べないよ?
まぁ…でも3人なら、きっと大丈夫。

情報収集、戦況把握に努める。クローネにレイとイリヤさんをリンクさせ遠くでも指示ができるように。
戦場にユニの精霊達を散開させてその視界もクローネに集約。その映像から敵の攻撃の予測や最適な位置取りを考えて2人に指示を出す。
あの緑色にはコアがあるんだよね?それも精霊達の目で探して見つけたなら仲間に報告、破壊しに行ってもらおう。

あんまり高く遠くない位置での戦闘なら分散和音で周囲のオブジェクトを操り溶解液のガードや2人の援護を。


憩・イリヤ
【ペンドラゴン】の3人で!

むむ、研究所はお空に浮いてて……不定形な女の子の心臓の中にあるの?
わ、わ、まだいっぱい出てくるの!
ならまずはお掃除しなくちゃ!
お掃除は得意なの、いつもホテルでやってるもん

ユニちゃんとレイちゃんの頭上に女の子が降ってこないように『空中戦』
レイちゃん、上は任せてなの!
基本的に【ジャッジメント・クルセイド】を使いつつ、武器でもえいえい攻撃するの
もしも離れちゃったりしてふたりが危なかったら、【スカイステッパー】とか使えたら間に合うかな?

心臓まで行くときは、ユニちゃんが飛べなくてもイリが連れてくから大丈夫! お手をどうぞ、なの

※アドリブ歓迎、UC名称叫ばない


レイ・キャスケット
【ペンドラゴン】で参加
ユニとイリヤちゃん。二人のお手伝いに来たよ
溶かしてくる系のスライムは苦手だけど、3人で力を合わせれば敵じゃないね

【WIZ】
じゃぁ、ユニ、ナビゲート任せたよ!イリヤちゃん、援護よろしく!

戦場把握【情報収集】はユニに完全にお任せ
とにかく目の前のスライムを片っ端から掃除だね
風の【属性攻撃】を刃に【全力魔法】を付与して振り抜けば巻き起こる突風が一帯の敵を【吹き飛ばす】
≪魔法跳躍≫を使って【ダッシュ】移動すれば地上も空中も一気に距離を詰められるよ

もしイリヤちゃんやユニの方に敵が流れて処理に手間取りそうなら【高速詠唱】≪アイスバレット≫で【援護射撃】

※アドリブ歓迎。詠唱は省略推奨



 緑色の空に薄っすらと浮かぶ黒曜の月。それは先ほど開けられた穴により、ゆっくりと降下しつつある。
 しかしまだ落下するまでには至っていない。幾億もの『不定形少女』が手を伸ばし、必死に月の落下を止めている。
 彼女たちは鈍重で、脆い。そして知性も乏しい。しかしこれだけは本能で理解している。「この心臓だけはなんとしてでも守らなければならない」と。今この心臓が落ちた時、同じ黒曜の核を持つ『不定形少女』たちは命の源を絶たれてしまう。

「うーりゃぁぁぁ!!」

 だからこそ、止めなければならない。
 まずはこの猟兵たちを、無慈悲に武器を振るう少女たちを止めなければ──

「お掃除っ、するの!」

 憩・イリヤ(キミガタメ・f12339)は軽やかに宙を跳び、右手に携えた"ほん"で『不定形少女』の塊を殴る。辞書よりも厚く大きな本は最高の鈍器。殴られた塊は"ほん"の重みから生じる衝撃によって容易く自壊し、弾け飛んだ。
 攻撃手段はただ殴るだけではない。ユーベルコード『ジャッジメント・クルセイド』によって放たれる天空からの光柱はこの街を呑み込んだ超巨大『不定形少女』の体を貫通し、的確にこちらへ振って来る『不定形少女』を焼き消す。
 緑色の空に、緑色の雨。一滴の粘液に混じり振り落ちる『不定形少女』の数は無数。しかしその無数から下にいる二人を守る。それがイリヤの担う役割だ。

「ユニちゃん!レイちゃん!そっちはどうなのー!?」

 一方、地上にて。
 降り注ぐ光柱は『不定形少女』だけでなく、風を纏う剣"ブランクソード"を振るう少女、レイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)にも被弾しかけていた。
 超巨大『不定形少女』を貫通させているせいか、並行して空中戦を行っているためか、ときたま味方への誤射が起こりつつある。

「わわっ!?イリヤちゃんちょっと危ないかなぁっ!」

 もう一人の仲間には光柱は落ちてきていないようだが、激しく動き回りスライムの塊や『不定形少女』の対処を行うレイには多く降り注ぐ。しかしその程度で彼女の攻撃の手は止まらず、むしろ加速してゆく。
 剣を覆う魔法の風は勢いを増し、振る度に暴力的な突風がのそのそと近づいてくる『不定形少女』たちを吹き飛ばす。突風はスライムの塊を一瞬で空中分解させ、『不定形少女』はコアと自身の体が霧になってゆくのを感じた。

「ユニ、状況は?」
『イリヤさんはこっちに振ってくるスライムの対処に集中してるみたい。空中に湧き出す不定形少女が増えてる……そろそろシフトするべきだろうね』

 レイから少し離れた場所で、アルファ・ユニ(愛染のレコーディングエンジニア・f07535)は身に着けているヘッドホン"AudioStreaming Mk-II"をしっかりと支えながら、万能型PC"クローネ"の画面に齧りつく。
 画面にはこの街全体の立体図と、二つの青色の光、レイとイリヤの情報がリンクされリアルタイムで場所と体力、視界情報が表示されている。
 彼女は二人の指揮役となり、精霊たちを散開させ戦況分析に勤めていた。

 現在の状況は有利不利もなく、均衡した状態。戦力はこちらが少数でありながら一方的に有利といったところだろうか。イリヤとレイの攻撃は一撃で数十体を葬ることが可能で、司令塔であるユニの存在により、空中や地面からの奇襲はほぼ全てカットしている。
 だが状況は有利に見えて、実はそれほど事は進んでいない。湧き水の如く湧き出すスライムに、そこから分裂し同化の触手を伸ばす『不定形少女』たち。
 どれだけ火力があろうとも、優秀な司令塔がいても、時間をかけて体力を削り取ることのできる数の暴力に勝ち目はない。

 そして今、イリヤの戦況に僅かな乱れを感じ取ったユニは、予め決めていた作戦を実行する。

「オッケー。それなら、イリヤちゃんの援護に回るよ!」
『了解──聞こえる?イリヤさん、タイミングを合わせてシフト!』
『了解なの!』

 レイはブランクソードから魔力を切り手ぶらになると、魔力に宿る属性を氷に変え指を拳銃のように構える。
 同時に、ユニもスピーカーが搭載された"改造トンファー"と専用のマイク"精密コンデンサUN10022"を用意し準備。
 空中で戦っていたイリヤも一瞬手を止める。

「さて、と。仕切り、直しッ!」

 ユニはヘッドホンを外すと、改造トンファーを軽く地面に叩きつける。
 次の瞬間、トンファーを中心に大地を揺るがすほどの衝撃が街全体に伝わり、そして耳を塞ぎたくなるような強烈な金属音が全てを薙ぎ払う。
 それはまるで音の核爆弾。小さな衝撃から発せられた『分散和音(アルペジオ)』は街を覆うスライムの天井を吹き飛ばし、風穴を開けた。
 いつしか雨は止み、そこには真の空が顔を覗かせる。

「イリヤちゃん!」
「はいなの!」

 つかさずレイも指先に溜めていた魔力を解放。氷の弾丸が残骸となってもなお溶かさんとするスライムの塊へ向けて放たれる。『アイスバレッド』は着弾した対象を氷結させ行動不可能にするユーベルコード。無残にもスライムの塊は凍り付き、地面に落ちる頃には空中で砕けていた。
 すぐさま『魔法跳躍(エレメントステッパー)』で跳び上がる。レイは空中で停止するイリヤの元へ。
 イリヤもまた『スカイステッパー』を使い、役割をチェンジした。

 作戦というのは、ユニのユーベルコード『分散和音』で街全体に攻撃、怯んだ隙にイリヤとレイの役割をチェンジさせ消耗を抑えるというもの。
 ユニのユーベルコードは街だけでなく『不定形少女』を無限に生み出す超巨大『不定形少女』に直接攻撃できる。しかし連続で使えばすぐに自壊し、上空に漂う上半身がそのまま落下してくる。ということがあり得た。そのため連続での使用はできず、こうして作戦変更時の一手として温存していた。
 なお一度の使用で、既に超巨大『不定形少女』はバランスを崩しており、今にも倒れそうになっていた。

「……ヤバいかなアレ」

 手を止めることなく掃討を続ける二人を仰ぎ、ユニはまたヘッドホンを被りなおす。
 彼女は今の状況を好転と考えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
【ソロ希望】
援軍として駆けつけたらオブリビオンの体内とは
驚いたわ。とにかく彼女達(不定形少女)が相手ね

……でも、何だか悲しい目をしてるように見えるわ。
わざと抱きつかれながら【催眠術】をかけ
彼女達自身の事や、黒幕の目的を聞き出すわ
衣服が溶かされても気にしない

その後は『愛の想起・妖狐桃源郷』発動。
24体の妖狐の精気吸収と、私の【生命力吸収】で
不定形少女の生命を吸い尽くすわ

「ええ、一緒になりましょう。
身も心も蕩け合い、永遠に一つに……」

苦痛は与えない。悲しい目をした彼女達には
温かく、眠りに落ちるような最期を……

そして、彼女達を……自らが創造した生命を
大切にしない科学者には、必ず 裁きを下すわ……!!



「……派手にやるものね」

 その一部始終を見ていたドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)
は、運よく音の核から免れた一体の『不定形少女』を見つける。体内にある黒曜の核は無事で、ダメージを受けた様子もない。本当に運よく逃れられたのだろう。
 ドゥルールはその『不定形少女』にトドメを──刺すことなく、逆に近づいてゆく。

「あ……ん?」

 これまで見てきた人と真逆の行動に、『不定形少女』は首を傾げる。
 軍服を着た男性はすぐさま銃を向けた。
 似た魂を持つ女性はその力で混沌の渦に落としてきた。
 ある少女は異様な魔力を纏った剣で首を跳ねた。
 街を散策していた青年は箱型の魔物を召喚し焼き殺した。
 空を舞う少女は明確な敵意を持って本で殴り殺した。
 地上で剣を振るう少女は突風を浴びせ蒸発させた。
 機械に夢中だった少女は何かをする前に全てを消し去った。

 わたしを産んだ少年は、酷く苛立った様子でわたしを吸収した。

「……そう。それがあなたの、いえ、あなたたちの」

 気が付くと、『不定形少女』はドゥルールに抱き着かれていた。愛娘をあやすように、服が溶け緑色のスライムに覆われてゆくのも気にせず、背中を撫で悲しむ。
 初めてだった。生まれてから死ぬ存在だと気づいていた少女たちは、コアの底で「愛されたい」という願望を持っていた。愛とは何か、愛されたいとはそもそも何か、考えても答えは「自分と違う誰かと一つになる」というもの。
 どこかそれが違うと感じていながらも、ドロドロに溶けたこの体ではそれ以上考えることができず、本能と母体たる黒曜の月からの指示に従うのみ。結局答えは見つかることなく、生まれて死ぬことが宿命だと思い込んできた。

 だけど、ドゥルールに抱かれ初めて気づいた。
 わたしたち『不定形少女』は「愛されたい」という思いから生まれたものなのだと。だから愛を求め、こうして抱かれたいのだと。
 ようやく気が付いた。

「えぇ……でも、一つになるという答えも正解よ」

 ドゥルールから甘い匂いが漂い、やがて彼女の存在が自身を産んだこの街を覆うスライムの集合体よりもはるかに愛おしく思えてくる。
 周囲には見たこともない金色の毛並みをもつ獣たちが囲んでおり、それらはこれまでやってきた「一つになる」ことと同じ行為を始める。
 体の境界線がなくなり、緑とベージュ色が混じり合う。抱き合うよりも温かく、「愛してる」という言葉だけが木霊する。
 優しくて甘い、より一層ドロドロに溶けてゆく。桃源郷に、溺れてゆく。

 ──だけど、それがわたしたちの求めていたもの。
 ただ一つ欲しかったもの。

「身体も心も蕩け合い、永遠に一つに……科学者の坊やはそれを求めてこの子たちを生み出していたのね」

 『愛の想起・妖狐桃源郷(リザレクトオブリビオン・エクスタシーヘヴン)』。
 ドゥルールのユーベルコードは一人の彷徨う少女に永遠の与え、全てを受け止め吸収した。
 そして、血が滲むほど力強く拳を握る。

「──全部失敗作ですって?ふざけないで!」

 溶け合う中で少女から全てを聞いたドゥルールは激高する。
 科学者の少年は「愛されたい」という願望の元、自分の思う最高の少女を作っていた。しかし、どれも肉体が半壊し溶けているものばかり。自分が思うような理想の"人間"は、一生生まれることがなかった。
 その試行回数は、この街を腹に収める超巨大『不定形少女』を生み出すほどだった。

 少年は気づいていた。自身がオブリビオンだから、生まれるのもまたオブリビオンなのだと。そして必ず天敵たる猟兵たちがここに来るだろうと。
 気が付けば、「愛されたい」がために生んでいたはずの命は「猟兵に抵抗する兵器」としての命に変わり、これまで生み出された少女たちもまた目的が変わり「愛されたい」は「一つになりたい」という破滅願望になっていた。

 命を生みながらそれを蔑ろにしたことへの怒り。そして、「愛されたい」という気持ちを失ったことへの悲しみ。
 支える力を失い地上への落下を始めた黒曜の月へと向かって、ドゥルールは叫んだ。

「自らが創造した生命(いのち)を大切にしない科学者には、必ず……裁きを下すわ……!!」

 月が地面と激突し癇癪玉のように炸裂したその中から、一基の白いコンテナが露わになる。
 無数に生えたパイプに囲まれた扉が開かれ、出てきたのは──

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『狂ったカガク者あるいは探究者』

POW   :    研究の副産物
自身の身体部位ひとつを【蠢くナニか】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    ビビットケミカルズ
【蛍光色の薬品が入った試験管】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【にぶちまけられ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    薬品大乱舞パーティー
自身が装備する【劇薬や毒物の入ったフラスコ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鳥渡・璃瑠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 落ちてきた月は砕ける。
 黒曜の殻は剥がれ、そこから現れたのはコンクリートでできた立方体。立方体には何本もの鉄パイプが張り巡らされており、中には割れて例のライムグリーンの液体が漏れているものがある。
 注目すべきは、鉄パイプを避けるように鎮座するハンドル付きの鉄扉。キュルキュルと金属が擦れる音と共に、扉が開かれる。
「──猟兵、よくもボクの家を荒らしてくれたな」
 現れたのは、12歳くらいの子供。容姿から見て少年というのが妥当だろうか。しかしその少年は身の丈に似つかわしくないダボダボな白衣を纏い、その手には毒々しい色の液体を詰めた試験管を手にしている。
 少年──『狂ったカガク者』は叫んだ。
「……ボクの、研究の邪魔をするなぁッ!!」
波狼・拓哉
首謀者のお出ましと。あ、自分背景とか正直興味ないんで取り敢えず打ん殴りますね!
とか言いつつミミックを再び召喚。まあ、炎になってんの見られたし警戒されてるだろうなぁ。それじゃ別の姿と行きますか。さあ、化け咆えなミミック!狂気を狂気で塗潰し真の狂気を教えてやりな!ついでに試験官とかフラスコとかも一緒に爆破してこっちまで飛ばさんように出来たりしない?
自分は衝撃波込めた弾装填しつつ地形を利用して目立たたないように行動。飛んできたフラスコとか試験官とか撃ち落としたり、相手の傷跡を抉るように撃ち込んだりしてサポートに回るかな。
(アドリブ絡み歓迎)


木目・一葉
失敗作か
誰かに似せようとしたのか
「似せる、か」
ふと、外見も言葉遣いも性格も以前と同じなのに中身だけが異なる父を思い出す
僕はそれを指摘せず、似せようとする彼を父と認めた
もう一人の父として受け入れた
そんな僕にとって少年のやることは許せない
「生み出したのに、彼女達を受け入れない
それはあまりに身勝手だ」

・戦闘
真の姿を解放
『妖剣解放』で高速移動しつつ、周囲の障害物を【地形の利用】でフラスコと噛み付き攻撃への盾代わりにし、衝撃波で【カウンター】
【第六感】で試験管の取り出しを察知したら、すぐ衝撃波で【目潰し】
それで試験管を落としかけたら、高速移動で地面に落ちる前に拾うか、少年の身体を効果範囲外へ突き飛ばそう



 科学者の少年は大地に足をつけ、右腕をライムグリーン色に変色させドロドロに溶かす。
 彼は人ではなくオブリビオン。そしてこの狂気的とも言えるほどの数の『不定形少女』を生み出してきた元凶だ。
 右腕があの不定形少女の上半身に変わる。溶けていながらも美しい女体を晒すそれを、少年は拳銃を構えるように水平に構えた。
「消えろ!!」
 不定形少女の上半身が伸びる。それは体を伸ばすごとに女性らしい体つきを失い、ゴムのように伸びて高速で向かってくる。
「悪いけど消えるのは、あなたの方だと思いますよ」
 狙われたのは、波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)。
 まっすぐ向かってくる不定形少女の上半身。それに対し、彼はニィッと笑みを浮かべ、召喚する。
 彼が召喚するものはミミック。それは青白い炎で構成された、ユーベルコードによって生まれた箱型の生命体。──ではない。
 より上位の存在。ミミックが箱という殻を捨て、進化した姿。あらゆる生命体の頂点に近い位置に君臨する最強の幻想生命体。そう、ドラゴンである。
 少年と、伸ばされた右腕……スライム娘はぎょっとする。彼らからしてみれば、拓哉の足元にいたミミックが突如ドラゴンにフォルムチェンジしたのだ。
「『偽正・龍滅咆哮(ドラゴン・ロア)』」
 無慈悲な宣言(ユーベルコード)。
 ドラゴンが顎を開き放ったのは、純粋な圧倒。廃都一帯に轟いたのは、狂気渦巻く最強の咆哮だ。
「あ、ァ……!」
「うぐぉ……ごポォッ!?」
 ゴムのように伸びていたスライム娘は瞬く間に咆哮の圧に負け押し返され、少年は咆哮をモロに浴び、慄いて一歩下がる。が、次の瞬間少年の身に起こったのは、爆発だった。
 腹部が水風船のように破裂し、体内を循環するライムグリーンのスライムが飛び散る。圧縮されていたのかは定かではないが、破裂し飛び出たスライムの量は、少年の体と見合わぬほどの量で、スライムの池ができあがった。
 しかしこのユーベルコードが真に恐ろしい部分は、咆哮はただのおまけ。真の力は咆哮を浴びた対象の束縛にある。『偽正・龍滅咆哮(ドラゴン・ロア)』が行ったのは、咆哮を浴びた対象を"狂気"で捕縛すること。精神的な鎖でお互いが繋がれ、狂気を伝染してゆくのだ。
 ドラゴンの咆哮を浴びせ、狂気という混沌化した精神で繋がれた拓哉と少年。
 拓哉は、少年のことなどどうでもいいと感じていた。どのようにしてスライム娘を産んだのか、どんな理由や目的があってUDCアースに復活したのかは知らない。むしろどうでもいい。
 殴りさえば終わり。そう思っていた。
 互いの持つ狂気を交換し、その光景を目の当たりにするまでは。
「……ッ!?」
 頭の中に広がったのは、ライムグリーンだった。泡立つライムグリーンの景色。ここはスライムの中だろうか。その中に、人がいる。カタチ的に不定形少女と同じ女性だろうか。にしてはかなり大人びており、子供一人を包めるほどグラマスだ。
 両手を伸ばし、それはやってくる。
 だが、
「興味な……い、ん、ですけど……ねぇ!」
 拓哉は自身の頭を掴み、振り払う動作をする。
 束縛しなければ、少年は動くだろう。とはいえ、このまま狂気で繋がれるのは何かまずい。
 意を決して拓哉は束縛を解除。狂気の伝染は止まり、少年は腕ごと復元された右手にフラスコを持ち、バッと立ち上がる。
「──せいッ!!」
「来んじゃねぇ!!」
 少年は即座に振り向き、左手をスライム化させ背後から襲い掛かった猟兵の剣を止める。硬化したスライムに剣に突き刺さり、剣の持ち主はそこから引き抜くことができない。
 木目・一葉(生真面目すぎる平凡な戦士・f04853)は、奇襲に失敗した。しかし動揺はせず、冷静に剣を手放し、一歩引いてユーベルコードを発動する。
「失敗作、か……」
 少年が右手に持つフラスコの蓋を開けた瞬間だった。一葉は『妖剣解放』を用い、スライムの左手に刺さった剣から妖気を吸収。少年が視認できないスピードで剣を掴み、盾のように持って左手を地面に叩きつけた。
 そこに佇むのは、体のあちこちに炎の文様を刻み剣を手にする少女。炎でより一層鮮明になった影に映るのは、二本の角。
 人間でありながら天牛のような姿となった者。一葉の真の姿に、少年は目を見開いた。
「くぅっ!?」
「誰に似せようとした?」
 呻く。剣を受け止めれるほど硬度を上げたのが仇となり、左手から衝撃波が伝わる。剣を持ちなおされ地面に叩きつけられるまでに、一葉は三度衝撃波を発射。ごく一瞬とはいえ、落下速度を数倍にして少年にカウンターを放った。
 一葉はその中でも、冷静に問いかける。
「生み出したのに、彼女たちを受け入れない」
 すぐさま少年はフラスコを投擲する。だが、そこに一葉はもういない。
 衝撃波と地形の利用。それにより、一葉はまるで四肢にジェットブースターがあるかのように、高機動での移動を可能としていた。
 上下左右、後ろを振り返っても姿が見えない。少年は焦り──一葉は突如目の前に現れる。
「それはあまりに身勝手だ」
「黙れェッ!!」
 何度目かわからない衝撃波の発砲。それがこちらに向けられたものだと理解した瞬間に、少年は体の半分をスライム化させ衝撃波を受け止める。
 いくら妖気を纏い自身を強化、高機動戦闘を可能にしたとはいえ、できる攻撃手段は物理的なものばかり。
 物理攻撃に対し最強の盾、液体には勝てない。
「誰に似せようとしたか?決ってる、ボクの"理想のお姉ちゃん"だ!!」
 全身が溶ける。残る半分もライムグリーンに染まり、人型を失った少年はボコボコとライムグリーンの体から様々なフラスコを産み落とす。
「……!」
 一葉は全身から妖気が抜けてゆくのを感じ、最後の衝撃波を放ち少年から距離を取る。
 『妖剣解放』の弱点は寿命を対価にすること。計り知れない力の糧を喰らい肉体の加齢が進んだのか、足取りが重く感じた。

 フラスコの中身はどれも劇薬や毒物。それらは地面に落ち砕ける前に宙に浮き、ライムグリーンから肌色へ、人型に戻ってゆく少年を囲むように並んだ。
「理想に届かなかったゴミなんて、必要ない。せいぜい素材になってもらうだけだ」
 お前もその材料にしてやる。と、少年は忌々しげに言い放つ。
 戦いはまだ、始まったばかり──。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィロメーラ・アステール
「理想のお姉ちゃんってこういうヤツだろ!」
【第六感】テレパシーでイメージを【盗み】取り!
緻密な再現を行った結果、いい感じになった!
見よ!!!

【創成したる唯の連星】を発動するぜ!
【全力魔法】で、唯一無二の理想のお姉ちゃんをお届け!

……って、あーーーーーっ!?
敵の攻撃をお姉ちゃんが【かばう】形になった!
お姉ちゃんに薬品がヒット! 外見やべえ! 無惨!
なんてひどい弟なんだ! お姉ちゃん怒りの突撃!
(遠隔操作です)

【オーラ防御】を展開して【残像】の速度で体当たり!
華麗な【空中戦】の跳躍から【気合い】を込めたヘッドバット!
何かに目覚めそうな【踏みつけ】!

でも現実の姉ってむしろこういうタイプの方が多(略


ドゥルール・ブラッドティアーズ
WIZ
彼女達がゴミですって……?
取り消しなさいよ、その言葉ッ!!

『愛の想起・花と鳥の小夜曲』発動。
ハーミアとアルルの歌で相手の精神を蝕み
薬品を飛ばす念力を弱めつつ、私は戦闘力アップ

敵の変身を解除する効果もあるから
液体への変化も無効よ

勢いの弱まった攻撃を【見切り】
薬品を【衝撃波】で跳ね返しつつ
相手に接近し……抱きしめる

死霊術の真髄は、永遠の愛。
彼女達も、貴方が愛情を注いでいれば
いつか理想の存在になってくれたはずよ。
彼女達には、確かに心があったのだから

胸に顔を埋めさせ、頭を撫で、優しく諭す。
求めていた温もりの中で眠らせてあげる。
彼女達も、そうしたかったと思うから……
【誘惑】【催眠術】【生命力吸収】



 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は、その言葉を聞いた途端こめかみから何かが千切れる感覚がした。
 どんな形であろうと生まれた命を無碍にするその心に、怒りが迸る。
「彼女たちが、ゴミですって……?」
 彼女たちが何をしたというのか。ただ生まれただけで、あのように扱われるのか。
 理想に届かなかっただけで、捨ててなどいいものか。ドゥルールはユーベルコードの光を両腕から放ち、二人の精霊を召喚する。
 一人は美しき"半人半鳥(ハーピー)"の歌姫、ハーミア。
 もう一人は可憐なる"花の精霊(アルラウネ)"、アルル。
 二人の精霊はドゥルールを挟むように立ち、愛を唄う。その音色はドゥルールの闘志を上げ、科学者の少年の心を蝕む呪詛。
「取り消しなさいよ、その言葉ッ!!」
 『愛の想起・花と鳥の小夜曲(リザレクトオブリビオン・ビューティフルセレナーデ)』。愛と呪詛の歌が、廃都に響き渡る──!
「う、ぐ……!?」
 科学者の少年は、咄嗟に耳を塞ぐ。ハーピーとアルラウネ、伝承の存在である精霊の歌は魔法そのものであり、耳を塞いでもその音色は心に届く。歌は少年の体が変化することを許さず、"理想のお姉ちゃん"を想う心を抉る。良心の呵責など感じなかったはずの心に、一つのヒビができてゆく。
「隙ありだぜ?受信受信♪」
 そんな中、両手を塞ぎたじろぐ少年の心を読み、"理想のお姉ちゃん"のイメージを盗み見るものがいた。フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)、黄金の妖精である。
「理想のお姉ちゃんってこういうヤツだろ!」
 少年がダウンしているのをいいことに、フィロメーラもまたユーベルコードを発動する。
 全身全力を持って放たれた光は巨大な立方体を描き──それはベージュ色の光を放ちながら変色する。
「よーしいい感じ!」
 実物を模した偽物を作るユーベルコード、『創成したる唯の連星(ユニバーサルミメーシス)』は正常に発動した。イメージで見たものは、肌色の人間の女性。イメージしていた元が男ということもあって少々わがままな体付きをしていたが、 フィロメーラは無視して構成を続ける。
 立方体が縮小し、人の形にまで無駄なものが収められてゆく。四肢が模られ、そこから必要な数だけの指が生える。端正に顔が描かれ、そして少年が纏うものと同じ白衣が飾られた。
 偽物とはいえ、これこそが少年が求めていた"理想のお姉ちゃん"。オブリビオンになってでも欲していたものだ。
 だが、
「──キモい」
「え?」
 少年を囲んでいた試験管の一本が、無慈悲に"理想のお姉ちゃん"へ飛来した。
試験管は直撃し、生命を溶かす猛毒を含んだ液体とガラス片を偽物に浴びせる。液体は偽物の皮膚を焼き、ガラス片は露出した肉に突き刺さる。美貌は崩れ、ふくよかな体は日光を浴びたアイスクリームのようにドロドロに溶けていった。
 幸いにも、遠隔操作のための感覚共有をする前に攻撃されたことで、フィロメーラは無事だった。しかし納得がいかない。
 確かにイメージ通りに、"理想のお姉ちゃん"を作り上げたというのに。「キモい」とは何事か。
「えええーーーーー!?」
「そんなもの、見せるなぁぁぁッ!!」
 一本だけではない。二本、三本とケミカルな色の液体が入った試験管が、今度は偽物を生み出したフィロメーラへ飛んで行く。
 しかしあの歌声の影響が残っているのか、試験管は正確にフィロメーラへ飛ぶことはなかった。
「あわわ……!解釈違いってこと?どういうこと!?」
「知らないわ。けど、理想の姿を見てあんな反応するかしら」
 慌てるフィロメーラを他所に、ドゥルールは一気に少年へと距離を詰める。
 薬品の投擲はドゥルールへ向けられていない。その隙を突き──彼女は少年を抱きしめた。
 胸に顔を埋めさせ、愛子のように。自身が"理想のお姉ちゃん"となって少年の頭を撫でる。
「あなたの罪は計り知れない。けど」
「……!」
 少年は気づくことすらできず、彼女に抱かれより一層強い愛を注がれる。優しく撫でるその手から送られるものは、愛情というよりも洗脳に近い。その手は少年に愛を注ぐと同時に、生命力を吸い上げているからだ。
「彼女たちも、こうしたかったと思うから……」
 死霊術の真髄は、永遠の愛。
 "理想のお姉ちゃん"を作っていた動機も、そこに通ずるものがある。ドゥルールはそう考えた。
 それでも、
「うるせぇ、緑色のバケモンが!!」
 少年には通じなかった。
 いつの間にかスライム化していた少年の右腕に、ドゥルールは振り払われる。
「緑色って、なっ!?」
「うおおっ!!大丈夫か!」
 宙に飛ばされたドゥルールを、フィロメーラがオーラを活用しキャッチする。
 ここまで愛が伝わらない。その違和感にドゥルールは悩む。
 フィロメーラが作りだした偽物は、即座に破壊された。少年が試験管を投擲した時、それが偽物と気づいた様子はなかった。
 ドゥルールが抱きしめた時、少年はドゥルールに対し「緑色のバケモン」と言い放った。ドゥルールはダンピールだが、肌の色は一般的な人間と同じベージュ。服装や装飾に緑色のものは一切ない。
 ふと、フィロメーラが作りだした偽物も一般的な人間と同じベージュの肌の色だということを思い出す。
 気持ち悪いと付き放ったのは、今まで作りだした『不定形少女』と同じライムグリーン色の肌に見えたから?
 抱きしめてきたドゥルールが、もしも言葉通り「緑色」に見えていたのなら。
「……最初から、あなたは理想のお姉ちゃんを作れないわけね」
「なにか、わかったのか?」
「えぇ。嫌なことが……多分だけど」
 あの少年は、恐らく肌色がライムグリーン色に見えてしまう。いわゆる"色盲"なのだろう。
 フィロメーラのオーラから降りたドゥルールは、そう考察した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

憩・イリヤ
【ペンドラゴン】の3人で!

うわ、うわ、男の子もスライムだったの……!
溢れたスライムに足を取られないように気を付けて飛んで、
レイちゃんと前衛頑張るの!
本で殴ったり『衝撃波』も使って
危なくなったらユニちゃん助けて!
逆にふたりが危なかったら【ジャッジメント・クルセイド】で遠くたって攻撃するんだから
でも今度はふたりを巻き込んだりしないように注意するよ!

うん、イリも気になってた
『理想のおねえちゃん』って、モデルさんはいるのかな?

イリもますたーに会いたい
だから自分で作っちゃうくらいの情熱はすごいなって、最初は思ったの
でもこんなにいっぱい迷惑かけちゃだめなの!

※アドリブ歓迎


レイ・キャスケット
この子の言う「理想のお姉ちゃん」ってそもそもちゃんとイメージ出来てるのかな
過去から染み出した存在の理想は現在にも未来にもないと思うんだけどな?

【ペンドラゴン】で共闘
人型かと思ったらスライムそのものなんだね、っていうか中身どうなってるのあれ??

魔法主体のボクの攻撃は苦手なんじゃない?イリヤちゃんと一緒にHIT&Away戦法
雷魔法の【マヒ攻撃】で動きを止め氷結の刃で凍らせて体積を削っていくよ

薬品割りはユニにお任せ。劇薬は直接浴びないように気を付け空気中に滞留する毒成分は【毒耐性】で対処
≪プリズム・オブ・フェノメナ≫で再現した毒成分を濃縮させて毒【属性攻撃】弾をお返しするよ

※アドリブOK


アルファ・ユニ
【ペンドラゴン】
後方で指示を続けながら監視精霊[バンシー]を敵周辺とレイ・イリヤさんを守るように配置。薬品、スライムの体が飛んできたらUCの超音波でそれらを高速振動させ液体は沸騰・蒸発、ガラスは爆破。 サトリの右眼でできるだけ敵の行動を予測し早い段階で行って、敵自身に蒸発毒やガラス破片の被害がいくように。
隙が視えれば即情報共有
もし蘇生とか考えてたんだったら。大切なひとだったのかな、あんたにとっては
でもあんたも過去の存在でしょ
待ってるんじゃないの、海に還りな



 もし彼が大切な人を、恋人や肉親を蘇生しようと考えていたとすれば、彼にとって"失敗作"とはなんだったのだろうか。
 緑色だったからか?確かに、彼が作りだしたものはライムグリーン色のスライムで構成された少女で、形は歪ながらも人に近いが、人間とは呼べない。
 理想の形じゃなかったからか?生まれた『不定形少女』はどれも幼い少女の形をしていた。彼の理想は年上だと判明している。趣向から外れているとでも言えばいいだろうか。
 資料や大型カプセルに囲まれ、歩くスペースが必要最低限しかないこの研究室の中で。監視精霊(バンシー)の一体は、肌色の粘液で満たされた水槽を見た。

「どいつも、コイツも!!」
 レイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)は冷静に、少年の右腕から振るわれるスライムの巨腕を氷結の刃で弾く。スライムの巨腕はレジンのように硬化しており、刃に当たる毎に無機質な衝突音を奏でる。
 切羽詰まった様子の少年に対しレイは余裕そうに、しかし一切の隙を見せることのない真剣な眼差しを少年に向ける。
「ボクの邪魔を、するなァッ!!」
 少年は右腕を空に向け、そこから六本の触手を開花させ、大樹の如く枝から無数の毒液とレジンの試験管を作る。
 異形の肉体から生み出された劇物。それらは栓をされ少年の手元に渡る前に、突如試験管に入れられた毒液が爆発し、紫煙が少年を包む。
 少年とレイ、二人を囲むように配置された数体のバンシー。そこから得た情報を元に支援を行っているのはミレナリィドールの少女アルファ・ユニ(愛染のレコーディングエンジニア・f07535)だ。
 先ほどの爆発は彼女のユーベルコード『絶叫哀歌(ラメンタービレ)』による超音波攻撃。的確に少年が生み出した劇物にだけバンシーの死を呼ぶ泣き声を浴びせ、高速振動を起こし液体を気化、沸騰と蒸発を同時に起こさせ爆破したのだ。
 少年とレイが見える瓦礫の山の上。そこで司令塔を担ったユニは、すぐさまもう一人の猟兵に連絡を送る。
「煙が晴れる前に攻撃を仕掛けて、イリヤさん!」
「はいなの!」
 少年がいた場所から少し後ろで、憩・イリヤ(キミガタメ・f12339)は"ほん"を手に紫煙の漂う場所に指を差す。
 紫煙が減り、少年の姿がシルエットで見えるようになった。直後──聖なる光が紫煙を貫いた。天罰とも言える、極太の光。それは紫煙を最初からなかったかのように吹き飛ばし、命あるものを焼き焦がす。『ジャッジメント・クルセイド』。
「──ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」
 光の中で、少年は叫ぶ。全身が焼ける。気化した毒が回り、スライム化した右腕以外が壊死し始める。血の四分の一が乾き、もはや意識があるのかないのかさえわからなくなる。
 それでも、少年は立っていた。
「ちょ、直撃したのに……!?」
「けど、もう限界に見えるよ」
 光が途絶え静寂が訪れる中、狼狽えるイリヤにレイは落ち着くよう声をかけた。
 左手に雷を纏い、レイはゆっくりと黒焦げになった少年に近づく。
「過去から染み出した存在の理想は、現在にも未来にもないって教えられた」
 右手には氷結の刃。冷気が少年を包み、スライム化したままの右腕に霜が降る。
「生み出そうとしても、生めないんだよ。オブリビオンは過去で世界を埋め尽くそうとする──だから、キミの言う理想のお姉ちゃんを作っても、必ず失敗するんだ」
 あるはずだった可能性、世界から廃棄された過去──それらが受肉したものこそ、『オブリビオン』と呼ばれる怪物。それらは世界を必ず滅亡に導く存在だ。
 もしそれらが滅亡に導く行動から外れ、夢や理想を手に入れたとしても、オブリビオンがすることは変わらない。猟兵がオブリビオンを倒し世界を守るように、オブリビオンは世界を過去に染め滅ぼす。
 これまで生み出したものは、なんだったのだろうか。たった一つの理想を追い、何度も失敗作を作った──今思えば、それらはこの世界を滅ぼすための尖兵を、無意識に生み出していただけではないのか。
 では、この頭の中にある理想は何だろうか。理想のお姉ちゃんとは、何を示していたのか。明確なイメージはあるのに、頭の中では肌色であるはずの理想が、緑色になる。自分の手足も、心も、体も、全て。
「……会いたかった、のかな」
 炭化した体からライムグリーンの液体を漏らし、自壊してゆく少年を見つめながらイリヤは呟く。
「自分で、理想を作っちゃうくらい……寄り添ってくれる人が、欲しかったのかな」
 何もかもが液体となって消えてゆく中、少年は悲しそうに見つめるイリヤに、たった今理解した答えを想った。
 オブリビオンとして復活した自分には、ただ世界を滅ぼすことしかできない。科学者としてではなく、一人の天才としてではなく、一人の少年としてではなく……だからこそ恐れた。
 元ある世界を過去に染めたところで、その後はどうなるのだろうか。世界を滅ぼした後は、自分自身も滅び消えゆくのか。それとも、ただ一人この世界に佇むだけなのか。それは世界を滅ぼした後じゃないと分からない答えだった。
 だからこそ欲した。使命を忘れ、本能を振り払い、生み出そうとしたのだ。たとえ自身の目に呪いをかけられても、体が生み出した失敗作と同化しようとも、作り続けた。

 科学者として、一人の天才として、独りの男として……ただ一つ、寂しさを埋めてくれる人間が欲しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年04月27日


挿絵イラスト