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Muscle World ~筋肉は裏切らない~

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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●Muscle Talks ~筋肉は語る~
 舞台はキマイラフューチャー。とある地下施設の一室に男…いや、漢がいた。
「フンッ…フッ…ゥ…」
 バーベルベンチプレスをしている彼からは、苦しそうな息遣いが聞こえる。しばらくしてバーベルを下ろし一息つくと漢は1枚のチラシを手に取った。
『第13回 CFBBC(Chimaira・Future・Beauty・Body・Colosseum)』
 1年に1回の肉体美の祭典。自己アピールと実力を兼ね備えた猛者が集う、ガチンコバトルのチラシだった。
「…優勝は俺がいただく!」
 不敵な笑みを浮かべる漢は、パンプアップされた大胸筋を躍らせるのだった。

●Rise Up Jaeger ~立ち上がれ、猟兵よ~
「キマイラフューチャーのとある大会で、優勝を狙うオブリビオンの存在が確認されました」
 グリモアルームに集まった猟兵たちを前に、ロダはいつも通り静かに話し始めた。
「この大会は通称『CFBBC』と呼ばれる肉体美を競う大会で、毎年自分の肉体を武器に沢山の猛者たちが集まります。ポップでおもしろおかしく暮らしているキマイラたちの中では異色とも言えるかもしれませんが、回を重ねるごとに大手のスポンサーがついて大会の規模が大きくなって話題になっています」
 ロダは猟兵たちの前にチラシを差し出した。そこには『第13回 CFBBC 今年の栄光は誰の手に!?』と大きく書かれた文字と、優勝経験者・注目株・有名クリエイターなどの参加者の写真が載っていた。
「みなさんには、選手としてこの大会に参加していただきます。大会を楽しみつつ、最終的に怪人の目論見を阻止してください。この大会は大手の動画共有サービスがスポンサーについているため、全世界へライブ配信されます。かっこいいパフォーマンスには視聴者が『いいね』という機能で評価し、最終的にその『いいね』の数とバトルの結果で優勝者が決まるという仕組みになっています」
 そして大会の話もそこそこに、ロダは次に一枚の絵を出した。グリモアで視たものを元に作成された怪人の似顔絵だった。
「怪人の名前は『怪人アルパカマッスル』。見た目通りのマッチョなアルパカ頭の怪人です。筋肉を愛する脳筋怪人ですが、彼の目的は『優勝すること』なので、ルールに反することは良しとしない律儀なところもあります。なので皆さんもルールに則って戦ってください」
 そこまで聞くとあまり脅威に感じない怪人かと思われるが、彼が優勝を狙う理由が本当の目論見だとロダは語る。
「この大会の優勝者には賞金のほかに、全スポンサーの総力で優勝者の願いを叶える副賞が付いてきます。もちろん願いの限度はありますが、大手スポンサーが多いため大体のことは実現出来るとも言われています。そして怪人の狙いは『優勝して全人類の筋肉をパンプアップさせること』という筋肉(欲望)に忠実な願いを叶えることであるため、このまま放っておくとキマイラフューチャーがムキムキマッスルワールドになってしまうかもしれません。…体を鍛えることは確かにいいことです。基礎代謝・身体機能の向上に繋がりますから。しかし、それは鍛えたい人が鍛えるべきであって、押し付けられるものではありません」
 一呼吸置き、背筋を伸ばすとロダは続けた。
「…キマイラフューチャーの住民にとって猟兵は『怪人をやっつけるめちゃくちゃかっこいいヒーロー』なのだそうです。パフォーマンスをこなしつつ、欲望(筋肉怪人)に打ち勝つ皆さんのかっこいい姿を全世界へ届けてください」
 新たな事件に猟兵たちは立ち上がるのだった。


小人星人
 こんにちは、小人星人です。
 皆さんは鍛えていますか?
 私はたるんだお腹のお肉を見ながら、棚に上げてシナリオを書いています。
 キマイラフューチャーでは猟兵たちは人気者、かっこいいヒーローだということで自分をアピールしつつ、怪人をやっつける非常に動画映えするであろう舞台を用意しました。

 1章では自己アピールの勝負になります。かっこよく登場して名乗りを上げるもよし、ド派手な演出で惹き付けるもよし。ポーズを取って肉体を自慢したり、事前に考えたキャッチコピーを司会に紹介してもらうのも自由です。自分の魅力を惜しむことなくアピールしてください。

 2章では他の出場者との対戦になります。ただし相手は肉体に自信があるとはいえ一般人ですのでユーベルコードの使用は禁止になっております。使ってしまったら反則負けになるのでお気を付けください。蹴りには蹴りを、拳には拳を。アガるバトルを期待しております。

 3章はいよいよボス『怪人アルパカマッスル』との対決になります。本来であれば一般人を非難させるところですが、会場の熱気と盛り上がりでそれどころではありません。怪人の狙いは『優勝して全人類の筋肉をパンプアップさせること』なので、ルールに反するようなことは極力控える律儀なところがあります。なので、一般人への被害はほとんど出ないと思われます。相手が怪人なのでユーベルコードの使用は特に問題ありませんが、あえて使わず殴り合うのもアリです。ただし、ただ撃破するだけでは目論見を止めることは出来ないので、戦闘以外で勝負したり、怪人の狙いを諭したりしてみてください。脳筋な怪人ですが、筋肉を馬鹿にするような言動を取らない限り話は通じる方です。(肉体美の祭典なので、馬鹿にするのは厳禁です。一般の出場者と私が泣きます。)

 リプレイの返却等追記することが出来ましたら、マスターページに記載するのでそちらの確認もお願いいたします。
 肉体に自信のある人、ヒーローとしてかっこよく盛り上げたい人、筋肉を愛してやまない人、ネタシナリオが好きな人…皆さんの参加お待ちしております。

 …え、キャッチコピーとか自己アピールとか恥ずかしい?
 ヒーローに恥なんて言葉はない。
 彼らにあるのは愛と勇気と希望だ。
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第1章 冒険 『開催! 格闘大会!』

POW   :    肉体美や筋力でアピールする

SPD   :    演舞や試し切りでアピールする

WIZ   :    かっこいいマイクパフォーマンスやキャッチコピーでアピールする

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Excitement And Muscles ~興奮と筋肉~
 喧騒と興奮の入り混じった会場内、案内アナウンスが流れる舞台裏で出場者たちもまた開催宣言のアナウンスを待っていた。ある者は演出の最終確認を。ある者はギリギリまでトレーニング。ある者は緊張を解そうとほかの出場者たちと談笑を。ある者は開催前の様子を自分の動画配信チャンネルで伝える。それぞれが大会への思いを馳せて、ただその時を待っていた。
「えー…大変長らくお待たせいたしました」
 会場に流れるその声に、辺りは一瞬で静まり返る。ライトアップされたステージには、一人の男性が立っていた。
「今年もこの日がやってまいりました…己の肉体美と強さを余すことなく披露する、筋肉の筋肉による筋肉のための祭典!第13回、CFBBC!過去最大規模で開催ですっ!!」
 司会の男性のその宣言に、会場は歓声と雄叫びが響くのだった。

●First Approach ~強さ、それは己を知り見つめること~
 開会宣言を終え、選手やスタッフたちが準備をする中、司会がトークで会場の熱気をキープしていた。
「毎年、過去最大と言っている気がしますが、今年は本当に会場もスポンサーも選手も豪華ですね…!有名な方々はもちろん、初出場の皆さんもレベルが高い…!先ほど、舞台裏でも挨拶させていただきましたが、皆さんしっかり仕上げてきているようです」
 興奮冷めやらぬといった感じの司会は、毎年このCFBBCを仕切る名物の一人である。
「それと、BIGニュースですが、今回の大会には我々の憧れである猟兵の皆さんが参戦されております!」
 その報告に会場はより一層湧き上がる。彼らにとって猟兵はヒーロー、参加者の中には猟兵に憧れて体を鍛え始めた人もいるようで、舞台裏で選手同士が挨拶した時感極まって涙を流したとか。
「これはこの先の展開が楽しみですね!一体どんなパフォーマンスを魅せてくれるのでしょうか?」
 スタッフが準備完了の合図を司会に送る。
「おっと、どうやら準備が整ったようです。では、早速始めていきましょう!」
 何台もあるカメラに目線を送り、メインカメラに向き直ると司会は高らかに声を上げる。
「選手一人ひとりの魅力をしっかり目に焼き付けてください!First Approach開始します!」
カイム・クローバー
CFBBC!!筋肉の筋肉による筋肉の為の祭典!優勝賞金は…っ!
はいはい、参加する!俺、参加するー!!これだけ豪華なイベントなんだ!指くわえて見てるなんてつまんねーこと出来るかよ!!
筋肉=POW判定だろ!参加前に『賞金に釣られて筋肉が唸りを上げる!今宵の盗賊は魅せます、出します、晒します!凄腕イケメン筋肉盗賊』…で紹介してくれ。俺は上半身を脱いで裸でマッスルポーズを披露するぜ。猟兵やってりゃ筋肉は嫌でも鍛えられる。肥大化した筋肉じゃねーが、無駄なくしなやかに、プロテインとかに頼らないナチュラルな健康美ってやつだ。左胸の古傷が目立つが…まぁ、お祭り好きのキマイラならどうこう言われることもねーだろ。



●Thieves Fascinate ~盗賊は魅せる~
 「賞金に釣られて筋肉が唸りを上げる!今宵の盗賊は魅せます、出します、晒します!凄腕イケメン筋肉盗賊!カイム・クローバー!!」
 司会がコールすると、ステージの上をスポットライトが照らす。光の中央で服を脱ぎ棄て上裸になった男、カイム・クローバーは静かに口角を上げた。
「おぉ…これはなんと美しい肉体でしょう…しなやかで無駄のない、それでいて逞しい体です…」
 うっとりと魅入る司会と観客。増え続ける『いいね』カウンター。カイムはカメラ1台1台にサービスショットをお見舞いする。胸板・二の腕・背筋などなど…カメラを通じて映される体に、ネットは瞬く間にコメントの海となった。肉体美を競う大会だが、イケメンな彼の自信に溢れた表情に『体もいいが、顔もいい…』『体も顔も素敵!ヤバイ!!』『ネットでこの破壊力…会場のみんな大丈夫か…』といったイケメン部分にも注目したコメントが相次ぐ。…彼らは知らない。カイムがこの大会に参加を表明した時の表情を。優勝賞金を見て目を輝かせた『好奇心×盗賊ゆえの現金な感情』を混ぜ合わせたような表情を。でもいいのだ。これはCFBBC。肉体美を競い、観客はその熱狂に夢を見る。司会のコールにも『賞金に釣られて』と堂々と名乗っているが、あえて司会は突っ込まないのだ。重要なのは熱意だから。
「胸に傷跡が残っていますが…あれは戦いで負ったものでしょうか…逞しさだけでなくワイルドさも兼ね備えているとは…ムキムキなマッチョボディもいいですが、カイムさんのような実戦向けのナチュラルな健康ボディもいいですよね…」
 司会の言葉に頷く観客一同。アピールタイムが終わりに近づくとカイムはメインカメラに近寄りマッチョポーズを取ったあと銀髪をかきあげる。色っぽいその仕草に女性陣から黄色い悲鳴があがるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
鍛錬は大切です。大きな志を持つのも良いでしょう。
しかしそれが独り善がりなものなら阻止せぬ訳にはいきません。

◆アピール
余り目立つのは苦手なのですが此度は別。
諸肌脱ぎの着物姿に袴を付けたのみの格好で肉体を晒して参りましょう。

過大な筋肉こそなく、寧ろ細身にすら見えるでしょうが、物心付いてより弓馬槍刀の稽古で磨いた体。
敢えてキャッチコピーを付けるなら剛毅、実直、清廉たる精神の器とすべく研ぎ澄ました「武士系まっする」なり――!

素振り用の巨大木剣を二刀携え、それを【怪力】で軽々扱う演武で衆目の心も掴んでみせます。

……つい熱が入ってしまいましたが、サムライエンパイアの幕府旗本として恥じぬ武威を示せた筈。



●Samurai Spirit ~武士の精神~
「さて、次の挑戦者に参りましょう!どうぞ!」
 今か今かと観客たちは身を乗り出すようにして、出場者が現れるのを待っていた。しばらくすると、ステージに巨大木剣を二刀携えた男、鞍馬・景正が姿を見せる。着物に袴姿の景正は、観客に向けて一礼すると諸肌を脱いで木剣を構える。気迫のこもる彼の表情に、観客たちは自然と居住まいを正していた。そして景正は静かに足を引く。ゆっくりと腰を落とし構えた木剣を振るうと切っ先が空を切った。瞑色の髪が色白の肌の上で揺れる。
「すごい…」
 観客の中からそういった声が感嘆とともにもれる。巨大な木剣をいとも簡単に扱う景正の演武に魅了されていた。一見細身とも言える肉体が繰り出す所作は、力強さの中に繊細さも兼ね備え、流れるようなその動きに司会も息をするのを忘れて釘付けになっていた。過大な筋肉だけが全てではない。日々の鍛錬が、地道な積み重ねが強靭な肉体をつくるのだ。演武がクライマックスに近づくにつれ景正の動きは大きくなり、最後にビシッとポーズを取ると、背筋を伸ばし観客たちに向けて三方にお辞儀をする。最初から最後まで武士道たっぷりの演目に、観客たちはスタンディングオベーションだった。ポップな世界では、やはり本物の武士の類は頻繁に見られるものではないのだろう。キマイラたちの目はとても輝いていた。
「素敵な演武、ありがとうございました!いやぁ~あんな大きな剣を軽々と扱うだなんて凄いですねぇ…これが『武士系まっする』ですか…」
 会場が拍手喝采の中、司会は手元にある書類に目線を落とす。出場者のプロフィール等の書かれた紙を最初に見たとき、『武士系まっするとは一体…』と思ったが、間近で景正の演武を見て武士というもの、その精神が分かったような気がしたと後に司会は大会レポートで語るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
筋肉…自己鍛錬…バルクアップ…。
俺はヤドリガミであり、此の肉体もまた仮初めのものではあるが
折角得た人の身体よ、とことん鍛え上げたいではないかと
日々ジム通いをしていた成果を…今!見せよう!

ステージにはかっちり着込んだ上着を全て脱ぎ捨てて登場
実は脱いだら意外と精悍なボディをしていますね的な雰囲気を醸す

マイクパフォーマンス…演説の類は不得手だが頑張るか
筋肉は裏切らないという金言が有るが、アレは本当だ。
俺も猟兵の端くれだが此の筋肉のお陰で助かった事数知れず
(WIZ特化のステータスからは目を逸らす)
鍛えれば鍛えた分だけ筋肉は応えてくれる、最高の相棒だ。
俺の筋肉はまだまだ発展途上だが、情熱では負けぬよ。



●Fearless Magic Knight ~精悍な魔法騎士~
 次々と現れる挑戦者たちに会場のボルテージは上がるばかり。
「会場の盛り上がりが凄いですねぇ!そういう私も興奮しっぱなしなのですが」
 ネットでは今までステージに上がってきた出場者たちの映像が早速まとめられてHPに投稿されていた。もちろん視聴回数はうなぎ登りである。上半身の服の有り無しの写真がプロフィールと共に載せられており、そのビフォーアフターの変わりようも見どころの一つなのだ。『次の人、すごく真面目そう』というコメントがちらほら見え始めたころ、会場では照明が落ち、観客たちがステージを注視していた。
「続きまして、ヤドリガミのマジックナイト、ニコ・ベルクシュタイン!!」
 コールに合わせてニコはステージの中央へ向かう。舞台袖で上着を脱ぎ捨ててきた彼の精悍な体がライトに照らされ観客の目に眩しく映った。日々ジム通いし、着実に鍛えてきた肉体と真面目そうな雰囲気のギャップにノックアウトされる観客が所々で見られたが、お構いなしに進めていく。一通りマッスルポーズを披露すると、スタッフに手渡されたマイクを握りスピーチを始めた。
「…筋肉は裏切らないという金言があるが、あれは本当だ。俺はヤドリガミという種族で、この肉体は仮初のものではあるが、日々のトレーニングのおかげで此の筋肉を手に入れた。猟兵という仕事柄、危険な場面も多々あるが此の筋肉のおかげで助かった事も数知れずだ。鍛えれば鍛えた分だけ筋肉は応えてくれる。まさに最高の相棒だと俺は思う。まだまだ発展途中の肉体だが、筋肉にかけるこの思いは、情熱は誰にも負けんよ」
 落ち着いた口調でしっかりと演説をこなすニコ。こういった事は苦手らしいのだが、筋肉の事となるとまた違うのかもしれない。『鍛えた分だけ応えてくれる』という彼の言葉に、観客たちはジム通いを検討し始めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィゼア・パズル
筋肉による筋肉の祭典!面白そうな催しだ。さて、ケットシーでありながらエントリーさせて貰おうか
上半身を脱いで筋肉が毛皮に縁取られた獣らしい身を晒そう

これまでの筋肉、実に見事だ。しかし、肉体美は人型の筋肉だけだと思っていないか?
…勿体無い!実に勿体無い…!
野生の筋肉…獣の筋肉も肉体美を体現している。この様にな!

精霊術を使用した【偽翼】を背中に展開し身体を浮かばせれば小さなナリでも舞台の対応は出来る
猛禽類の翼持つケットシーとしてUCの花弁演出と合わせよう

実は内心、非常に照れるマイクパフォーマンスなんだが、な。
恥じていては面白くないだろう?



●Wind And Cait Sith ~風とケットシー~
「様々な筋肉を、肉体を見てきましたが皆さんは胸にグッとくる筋肉に出会えましたでしょうか?出会えた方もまだ出会えていない方も、まだまだ楽しんでいきましょう!続きまして自由を愛するケットシー、ヴィゼア・パズル!!」
 ライトに照らされたステージで恭しくお辞儀をする上裸のヴィゼア。観客の『か、かわいい…』『モフモフしたい…』という声も気にせず、ヴィゼアは傍らにいる風の精霊フロゥラに合図を送るとフロゥラはヴィゼアの頭上を数回旋回した。
「時渡り風に乗り、姿変えし蝶の翼よ…遊べや遊べ」
 まるで詩を詠うように紡がれる言葉が終わると同時に、ヴィゼアの背中に装備された偽翼とフロゥラの翼が大きく羽ばたく。偽翼はヴィゼアを宙へ導き、フロゥラの翼は端から花弁へと変わってヴィゼアの周りを舞い上がった。『優雅』『華麗』といった花言葉を持つ黒蝶ダリアの花弁は美しくヴィゼアを彩る。小柄な体格をカバーしたその演出に司会も観客もただただ魅入って言葉を失っていた。そして、事前にスタッフから借りていたマイクを構えてヴィゼアは語りだす。
「これまでの筋肉、実に見事だ。しかし、肉体美は人型の筋肉だけだと思っていないか?…勿体無い!実に勿体無い…!野生の筋肉…獣の筋肉も肉体美を体現している。この様にな!」
 胸を張るヴィゼア。『ババンッ!』という効果音が聞こえてきそうだ。
「私は他の出場者に比べて小さなナリだが、人柄がそれぞれ違うように、筋肉も肉体もみんな違っていいと思うんだ。…その方が見る楽しみが増えるだろう?」
 内心、マイクパフォーマンスに照れつつもニッと笑みを浮かべた。舞っていた花弁が集まりフロゥラが元の姿に戻るとヴィゼアの腕にとまる。軽く頭を下げてステージを後にする彼の背中で、割れんばかりの拍手が盛り上がりを奏でていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『ファイトクラブ』

POW   :    パワーと気合で敵を圧倒!

SPD   :    スピード、テクニックで相手を翻弄!

WIZ   :    頭脳戦でバトルを支配する!

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Interval ~余韻に浸り、次へ思いを馳せる~
「…以上で第一部終了となります。この後しばしの休憩を挟み、第二部へ移りたいと思います…」
 アナウンスが流れる中、観客たちは余韻に浸っていた。『今年も凄いよね…』『色んな筋肉が見られてマジでヤバイ』『それにイケメン多くて最高…』といった女性陣の声や、『パパ、ぼくもきたえたらあんなふうになれるかな?』『毎日コツコツ続けてたらなれるかもな?』という親子の会話に花が咲く。着眼点は人それぞれだが、お祭り好きな彼らにとって、このような大会はみんなで盛り上がれる最高の催しなのである。
「…もう間もなく、第二部が始まります。皆さん、食べ物や飲み物の補充等はお済ですか?お次は拳と拳、筋肉と筋肉がぶつかり合うバトルが皆さんを待っています!」
 いつの間にか休憩時間も終了間近になっていたようで、アナウンスが入ると観客たちは余韻から次への興奮に向けて思いを馳せる。
「ネット中継をご覧の皆さん、引き続きCFBBCをお楽しみください!」
 第二部の舞台となる特設リングがライトアップされ、歓声が上がるのだった。
カイム・クローバー
さて!アピールタイムは終わって次からは殴り合いだっけ?ユーベルコードは禁止…ま、当然だな。肉体言語!殴りあって通じる言葉もあるってこったな。
SPDで勝負。ムキムキのボディービルダーみてぇな参加者も居るし、流石に筋肉に任せて殴りあうのは分が悪い。優勝しなきゃ賞金は出ねぇしよ。っつー訳で、足を使って動きながらヒットアンドアウェイで立ち回るぜ。技能は【二回攻撃】のみの使用。両手を使ったボクシングスタイルだ。ジャブやブローで体力を奪って決め技は…あー……名前も視聴率目当てに派手な方が良いよな?じゃあ、サイクロントルネードスーパーノヴァビッグバンアッパーで。終了後は握手だな。昨日の敵は今日の友ってな?



●Body language ~肉体言語、それは万国共通~
 特設リングに上がる男二人、静かに目線で闘志をぶつけ合っていた。カイムの相手となるのは、キマイラフューチャーではかなり有名なボディビルダーであり、この大会が始まった年から毎年参加している常連でもある。
「…カイム君っていったっけ?猟兵との勝負だなんて嬉しいなぁ。俺のこの筋肉が君にどこまで通用するのか…胸を借りる気持ちで挑ませてもらおう!」
 腕を回しつつゆっくりと近づいてくる相手を前に、カイムは思考を巡らせていた。
(筋肉に任せて殴り合うのは分が悪そうだな…身軽さを活かしてヒットアンドアウェイでいくか…)
 ボクシングスタイルの戦法を選んだのか、カイムはスッと両手を構える。両者一瞬の沈黙の後、先に攻撃を仕掛けたのはカイムだった。素早さを武器に相手の懐に踏み込むと、ジャブやブローを打ち込む。相手にダメージは与えているが、筋肉が鎧のように体を守っているのか、体勢を崩すまでのダメージは入っていないようだった。
「やっぱかてーな…」
「自慢の筋肉だからな。それに…簡単に倒れちゃ情けないだろ?」
「フッ…そうだな」
 舞台を盛り上げる演者としての言葉に、ゆっくり口角を上げてカイムは応えた。
「でも…手を抜くなんてナンセンスだろ?」
「ああ、もちろん。だから…」
「「全力でぶつかるのみッ!!」」
 言葉と共に互いに拳を繰り出した。ぶつかり合う拳で押される前にバックステップで距離を取るカイムの足元へめがけて大きな拳が降りかかる。
「おっと、あぶね…ッ」
 そう言いつつも相手の動きを見極めて躱すカイム。一般人なら避けても掠めたり、あるいは避けきれずに食らってしまう攻撃も、猟兵の経験値が彼の体を動かした。
「流石猟兵だなぁ」
「ま、それなりに場数は踏んできてるんでね…それより隙ありだぜ?」
 カイムは先ほどの攻撃を躱した流れで、片足を軸に体を捻って回転させる。
(決め技の名前は…派手な方が良いよな)
 グッと拳を握りしめ、回転の勢いを利用し拳を突き出し叫んだ。
「ッ…サイクロントルネードスーパーノヴァビッグバンアッパー!」
 拳は相手の顎を捉える。そして次の瞬間にはリングに大の字で横たわるボディビルダーと、そんな相手の傍らに近づくカイムが。頭部に受けた衝撃で起き上がれない相手の手を掴み、ゆっくりとその体を起き上がらせる。
「はは…つえーな、やっぱり…」
「だろ?」
 短い言葉のやり取りだが、そこには確かに友情が芽生えていた。レフェリーが近づき続行するかどうかの意思を問うと、ボディビルダーは静かに首を横に振り潔く負けを認めたのだった。
「今の一撃はかなり効いたぜ」
 ふらつく体をレフェリーに支えられた相手は、カイムに向き直る。負けた悔しさを持ちつつもどこか清々しい表情の彼は、大きな掌を差し出した。カイムは自分の手を重ね握りしめる。決着のゴングが鳴り響く会場、観客の歓声と勝利者の名前を叫ぶ司会。その中で固い握手を交わす二人は互いの健闘を称え合うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
さて、ここからが本番でしょうか。
私としても試合の方が馴染みは深い。
謹んで挑ませて頂きましょう。

◆試合
・POW
予め申せば、当方は小具足術――柔の術を使います。
嘗て戦場で首の奪い合いと共に磨いた流儀、荒々しいかも知れませぬがよしなに。

まずは落ち着いて相手の出方を【見切り】、攻めて来るなら身を捌いて躱すと同時に両腕を掴んで、十字に捩じりながら肩より投げ、倒れた相手の胸を膝で圧して極めとしましょう。

逆に待ちの構えでいるなら低い姿勢から挑んで背中の腰を掴み、そのまま担ぎ上げてからの投げ技で決着に持ち込みます。

いずれも鍛えた肉体は甲冑にも等しき見事さ――私も全力の組討(【グラップル】)で臨ませて頂きます。



●What was polished on the battlefield ~戦場で磨かれたもの~
 リングに立つ景正の前には、厳つい顔立ちの巨漢がいた。キマイラフューチャーではまだまだ競技人口が少ないプロレスの、悪役レスラーとして名を馳せている男だ。プライベートでは礼儀正しくお茶目で可愛い面もあるらしいのだが、ここはリングの上。立つ場がリングの上ともなれば闘う者としての血が騒ぐのだ。対照的に景正はとても落ち着いた様子だった。静かに目を閉じ精神統一で己を律しつつ、内に秘めた闘志を高める。巨漢の闘志が燃え盛る炎とするならば、景正のそれは水面に広がる波紋と言えるだろう。やがて開始のゴングが鳴り響くと、巨漢は猪のごとく突進してきた。
「オラアァァァ!!」
 筋肉で盛り上がった太い両腕を振りかざし掴み掛ろうとする巨漢の動きを、景正は最小限の動きで躱しその両腕を掴んで十字に捩じる。巨漢の相手が驚く間もなく、その体は投げ飛ばされ宙に浮いた。叩き付けた相手の胸に膝を当て、圧をかけると苦しそうな声が巨漢から漏れる。抵抗しようともがくが、息がうまく出来ないことで力が思うように入らず、またもがくことで息も上がり体力ばかりが減らされているのは観客から見ても一目瞭然だった。それでもリングに立つ者としての意地なのかギブアップしようとしなかったが、傍らのレフェリーが10カウントを宣言した瞬間、これ以上の攻撃は不要と見た景正が巨漢の上から降り、観客に向かって一礼をした。息も絶え絶えになっていた男は今なおリングの上に横たわったまま、悔しさを噛みしめる。開始からわずか数分で決着がついてしまった不甲斐なさにショックを受けているようだ。それほどまでに景正の動きには無駄がなく、洗練されたものだった。
「なあ…あんたのその強さ…それは何で身に着けたんだ…?」
 横たわったままの男は静かに景正に問いかける。自分の方が体格的に有利なこともあり、『勝つ』とまではいかなくともそれなりにいい勝負に持ち込めるのでは…と見込んでいたようだった。
「何でと申すと考えられるものはいくつか浮かびますが」
 問いかけにしばし考える素振りを見せる景正。
「一番は…身を置いていた環境でございましょうか。嘗て私は首を奪い合う戦場におりました。そのような戦場での負けは即ち死を意味します。生き残る為には強くならなければならない…強くなるためには技を磨く他ない。そういった経験が今の私の強さの理由かもしれません…」
 道場で覚えた技は戦場で磨かれ、そしてその技は今猟兵としての自分の力になっている。
「普段私は剣を握っておりますが、剣術だけが冴えていても意味がないのです。この体の使い方を知っていなければ、敵の攻撃を躱すことは出来ませんし、この体を鍛えていなければ、敵の攻撃を受け止めることも出来ませんから」
 だから稽古を重ねるのだと相手を真っすぐ見て、自分が至った答えを告げる。その眼差しに巨漢は深いため息をついた。
「全く…全くもって完敗だ」
 自分の考えが甘かったと反省する相手に対し、景正は手合わせの礼を示すと静かにリングから退場するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エスタシュ・ロックドア
俺、参戦(首ゴキッゴキィ)
やっぱなぁ、筋肉は使ってこそだよな
その上拳で解決するならもー何も言う事はねぇ
え、コートは脱いだ方が良いって?
背中にエグいの(羅刹紋 荊蔓)入ってんだが、大丈夫か?

【存在感】で観衆をアゲつつ入場すっか
折角の祭だ
羅刹の膂力に物言わすノーガードの殴り合いといこうかぁね
流石に急所への攻撃はちょいと場所をずらすが、基本避けねぇ
く、ははっ、良い、良いぜ
楽しいなぁ、おい
もっとガンガン来いよ
俺も【怪力】【グラップル】【第六感】【カウンター】で遠慮なくやっからよぉ!
至近距離で殴り合いつつ適度に【吹き飛ばし】て緩急もつけてやらぁ
シメは真っ直ぐ右ストレートでいきたいもんだ



●Discuss with a fist ~拳で語り合う~
 リングに立つ二人は存在感を放っていた。エスタシュ・ロックドアは、上着を脱ぎ捨て首を鳴らす。その背中には彼が荊蔓と呼ぶ羅刹紋が浮かび上がっていた。向かい合うのは唇にルージュをのせた大柄の男である。歓声に笑顔で手を振り応える相手に対して、エスタシュの表情は相手を挑発するような不敵な笑みを浮かべていた。
「赤コーナー!パティスリー『あっぷる』店長!美味しく繊細なケーキを作る手も、今日は力いっぱい振るいます!『狂犬』リンゴロウ!」
 司会のコールに「リンゴちゃんって呼びなさいよ!」と抗議しつつ、観客に向かって投げキッスをするオネエさん。
「青コーナー!物事は簡潔に、尚且つ拳で解決することを好む彼にとってこの場所はまさに最高のステージになるでしょう!『ブレイジングオービット』エスタシュ・ロックドア!」
 拳を突き上げて歓声に応えるエスタシュ。両者が構えると開始のゴングが鳴り響く。そして壮絶な殴り合いが始まった。相手が一般人のため、急所への攻撃はずらしつつ、己はノーガードで相手の攻撃を受け止めるエスタシュ。一方のリンゴちゃんも先ほどまでの柔和な笑顔から、戦いを楽しむバトルマニアとしての獰猛な表情に変わっていた。
「く、ははっ、良い、良いぜ!楽しいなぁ、おい…もっとガンガン来いよ!」
「あらぁ、そっちこそもっと激しくぶつかって来なさいよ!」
 口元に拳を受けて唇を切るエスタシュ、攻撃の吹き飛ばしで後方に弾かれるリンゴちゃん。それでも二人の表情から笑みは消えなかった。
「良い拳じゃねえか…」
「貴方だって力強くて素敵よぉ…」
 開始からどれくらい経ったのだろうか。二人はただひたすら殴り合い、その拳を受け止めていた。しかし疲れが出てきており、肩で息をしながら言葉を交わす。勝負の終わりが見え始めていた。
「ねぇ…エッちゃんは、何のために鍛えているの?もちろん猟兵だからってのいうのもあるんだろうけど」
「あ?なんでって言われてもなぁ…俺は羅刹だ。羅刹ってのは戦闘狂の種族なんでな。自然とそうなっちまうんだよ。そういうリンゴロウはなんでこの大会に出てんだ?」
 女性のように振舞いながら、それでも形振り構わず拳を振るう相手に質問を返す。
「…守りたいものがあるのよ」
 そう言うとリンゴちゃんは観客席に視線を移す。エスタシュがその視線を追うと、小さな子供と女性がいた。
「アタシの家族よ、可愛いでしょ。…アタシこんなナリなもんだから、やっぱりからかわれることがあってね。この大会で強さを見せつけておけば、かなりの抑止力になるのよ」
 現に有名になり、お店も繁盛するようになったのだという。
「でも、勝負は勝負よ。遠慮も加減も要らないわ…」
 恐らく次の一撃が最後だろう。構える相手に、それを察したエスタシュが応じると、一斉に拳を突き出した。鈍い音の後、ゆっくりと崩れ落ちる狂犬。エスタシュの右ストレートが僅かに早く届いたのだ。倒れ掛かる相手を支えるエスタシュ。
「子供に…カッコ悪いと、思われちゃったかしら…」
 リングを降りながらそう言う相手に、エスタシュは静かに笑った。
「いいや、そんなことないと思うぜ?」
 前を見るように促すと、二人を待っていたリンゴちゃんの家族がいた。そして出迎えるとただ一言「かっこよかったよ!」と言葉をかける。リンゴちゃんが感極まって熱い抱擁を交わしてきたのは言うまでもなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
ユーベルコードの使用は不可、成程試合の相手が相手ならやむを得まい。
ならば此の身一つで勝負に臨もうではないか。
誰であろうとかかって来い、おもてなししてやろう!

何事も勝負の明暗を分けるのは、如何に相手の実力を出させないか
――此れに尽きるのではなかろうかと俺は思う
ボクシングが得意な相手ならば極力拳を封じ、
柔道の使い手ならば寝技に最大限の警戒をし、
其の上で自分の得意な戦法――スクワットで鍛え上げた脚による蹴りを。

「戦闘知識」を最大限活用して対戦相手の出方を見極め
万一劣勢に陥ることがあれば観客へのアピールも兼ねて
「気合い」を入れて危機を脱するべく全力を尽くそう

どんな結果になろうとも、対戦相手には敬意を。



●Hospitality on the ring ~リング上のおもてなし~
 白熱したバトルが続き、観客の熱気で会場の温度が上がる中、ニコはリングの外でウォーミングアップをしていた。
(誰であろうとかかって来い、おもてなししてやろう!)
 そう意気込んでリングに上がるニコ。彼を待ち受けていたのは———…。
「お姉さーん、今日は誰を見に来たの?え、俺っち?嬉しーなぁ!」
 リングの上から観客席の女性陣と楽しそうに談笑する男だった。出場者の中でもかなり目立つ派手な外見をした、所謂チャラ男と呼ばれる類のものである。隆々とした肉体、厳つい顔立ちが必然的に多く集まる大会のため、ニコも対戦するのはそういう相手だろうと予想していたのだが、目の前にいるのはチャラ男。紛う方なきチャラ男である。ニコの中で何かがピシッと音を立てた。彼の眼鏡が割れた音ではないぞ、決して。
 『チャラ男VS生真面目』と誰かが言う。見た目も雰囲気も正反対の二人を見ればそう思うのも無理はなかった。
(見た目に騙されてはいけない…この大会に出ている以上、相手も相当鍛えているはずだ…)
 静かに深呼吸し相手を見るニコ。落ち着きを取り戻したその眼鏡の奥の赤い瞳には、闘志が宿っていた。レフェリーが促し、二人は拳を構える。まもなくゴングが鳴り響き、二人のバトルが始まった。
 最初に仕掛けてきたのはチャラ男だった。軽いフットワークでニコとの距離を詰めるとその顔面に向かって拳を振るう。チャラ男の攻撃をギリギリまで引き付け、振るった拳側の腕を使って受け流したニコは、それと同時に脚を払って相手の体勢を崩しにかかる。
「うぉ!?」
 前のめりに倒れるチャラ男の隙を突いて蹴りを入れようとするが、体重移動で横へ転がり間一髪で避けられる。一進一退の攻防に観客たちの興奮もヒートアップしていた。
「…ッ、おに―さん容赦ない、ね!」
 低姿勢の状態からニコの脛を狙って蹴りを放つチャラ男。
「リングの上だぞ、容赦するわけなかろう。これが俺なりのおもてなしだ」
 それをニコは落ち着いた様子でバックステップを使い、華麗に躱す。そこに間髪入れずタックルを仕掛けるチャラ男と、倒れまいと踏ん張るニコ。
「…フンッ!!」
 裂帛の気合を込めたニコは、チャラ男をジリジリと押しやる。日々のトレーニングで鍛えた脚は彼の得意な戦法としても使われているのだ。一般人に後れを取ることはない。
 押し切られてはマズイとタックルを諦めニコから離れたチャラ男は、即座にパンチを繰り出す。しかし、自慢のタックルを受け止められ焦りが出ていたのか、精度が低く隙が多く出来ていた。その隙をニコは見逃すことなく、回し蹴りを放つ。長くしなやかな脚はチャラ男の脇下を捉え吹っ飛ばした。そしてチャラ男はリングの隅に設置されている鉄柱のコーナーポストに激突し倒れ勝負に決着が着いたのだった。


 試合後救護室へ運ばれたチャラ男は目を覚ました後、一人天井を見て呟いた。
「あのおに―さん…こんな俺っち相手に真剣に戦ってくれた…」
 普段から軽いノリでいるため、どうしてもふざけて絡んでくる奴らが多かったチャラ男。自分がこんな感じだから仕方ないと半ば諦めていたのだが、ニコとの戦いで何か思うことがあったのだろう。ボロボロになった男の瞳は、新たな目標と課題を見据え輝きに満ちていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『怪人アルパカマッスル』

POW   :    ポージング
自身の【肉体美の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    鋼の筋肉
全身を【力ませて筋肉を鋼の如き硬度】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    つぶらな瞳
【つぶらな瞳で見つめること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【瞳から放たれるビーム】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニィ・ハンブルビーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Phantom VS Jaeger ~怪人VS猟兵~
 順調に勝ちを収める猟兵たち。でもそれは彼らだけではなく『怪人アルパカマッスル』も同じであった。彼はルールを破ることなく、正々堂々と戦っていたのだ。このままであれば何も問題はないのだが、彼の目的は『優勝して、全人類の筋肉をパンプアップさせること』である。つまり優勝が危ぶまれた時にヤツは動く。そう踏んだ猟兵たちは怪人と一定の距離を保ちつつ様子を窺っていた。
 会場のモニターを見やる怪人。そこには第二部序盤までの各出場者の『いいね数』が表示されていた。この後一定時間をおいて最終的な総数を発表し、第二部の結果と合わせて優勝者を決めるのだが、怪人のいいね数は伸び悩んでいた。
(何故だ…何故数値が伸びない…しっかりアピールもしたし、反則だってしていない。なのに何故なんだ…!)
 頭を抱える怪人。アピールタイムもバトルも観客たちは盛り上がっていたというのに、自身の成績は今一つ。理解が出来なかった。
「ね、今回の優勝って誰になるかなー?」
「えーこの人じゃない?」
 怪人から少し離れた場所で少女たちが話す声が聞こえた。彼女たちは携帯端末でネットの情報を漁っていた。
「今年もほんとに凄かったもんね…迫力もあったし、それに…」
「「かっこいい人多かった!!」」
 息ぴったりの少女たち。そんな少女たちのもとにゆっくりと近づく怪人。彼女たちの前に立つと怪人は叫んだ。

「結局は顔なのか———!!!」
 アルパカマッスルは激怒した。
エスタシュ・ロックドア
抱き着かれて背負い投げしちまったが、
リンゴとは家族込みで談笑してた(子供肩車中)
暴れ始めたか
子供返すわ、リンゴは家族守っとけ

おいアルパカ
トーシロの評価がでけぇこのルール、
連中の求めるモンに応えなきゃ意味ねぇだろ?
顔がウケねぇなら他のやり様はあった
だがテメェはテメェの美学に固執し過ぎた
それだけのこった

『羅刹旋風』で拳をゆっくり振り回すぜ
避けんのか?
そのシックスパックは飾りか?
そーだよ求めに応じるってそう言うことだよ
耐えればいいねが一気につくぜ!(【怪力】【吹き飛ばし】顔面狙い)
ダーティなのも需要があんだよ
特に思い通りにならねぇからって幼気な少女に怒鳴り散らす、
漢の風上にも置けねぇ野郎相手にはよ


鞍馬・景正
矜持のある相手――ならば正々堂々と。
【乗打推参】で組討を挑みつつ、怪人に呼び掛けよう。

貴殿が人々に鍛錬を促そうとする志、ひとつの信念と感ずる。
その肉体も弛まぬ鍛錬の証と敬服する。

――しかし何故、人は逞しき筋肉を美しいと感じるのだろう。
その理由のひとつは、「その研鑽に費やした努力や覚悟」が見事であると感じるからではないだろうか。

だがもし貴殿の望みが叶い、誰しも筋肉を纏うのが当たり前の世となれば――筋肉が美しいと思う者は減り、惰性で鍛え、どんな見事な肉体も賞賛されずに当たり前と一顧だにされぬ……そんな世界になるかも知れん。

私の言葉をどう受け止めるかは自由。
最後まで言い切れば、決着を付けに参る。



●The Final Battle of fist ~ボス戦、ぶつかり合う拳~
 動き出した怪人に会場は騒めく。しかし避難らしい避難はしなかった。だってここには猟兵たちがいる。怪人VS猟兵の戦いをこんな至近距離で見るなんてそうそう経験できるものじゃないと、むしろ盛り上がっているのである。『怪我をしても自己責任ですよー!』と警告する司会ですら、マイクを握りしめて食い入るように見守っていた。

 先ほど対戦したリンゴちゃんの子供を肩車していたエスタシュは、アルパカの怒号を聞き子供を降ろす。
「子供返すわ、リンゴは家族守っとけ」

 リンゴちゃんたちがエスタシュの羅刹紋の刻まれた背中を見送る中、怪人アルパカマッスルはつぶらな瞳で少女たちを見つめ、ポージングを取り鋼の筋肉をこれでもかと見せつけていた。
「ここは!筋肉を!肉体美を!競う大会だろう!!お前たちは!何を!見て!評価してるんだ!!」
 言葉を区切る度ポージングを変える怪人。効果音はもちろん『ムキッムキッ』だろう。おそらく彼にとって威嚇の部類に入るのだろうが、少女たちはあっけにとられていた。だってよく考えてごらん。目の前でマッスルボディを持ったアルパカがマッチョポーズを取りながら、つぶらな瞳でこちらを見ているのだ。そりゃあリアクションに困るって。

「おいアルパカ。トーシロの評価がでけぇこのルール、連中の求めるモンに応えなきゃ意味ねぇだろ?顔がウケねぇなら他のやり様はあった。だがテメェはテメェの美学に固執し過ぎた。それだけのこった」
 怪人に近づきながら、エスタシュはゆっくりと拳を回す。

「貴殿が優勝に固執する理由は?」
 近くに控えていた景正が怪人に問いかける。自分たち猟兵は事前に聞き及んでいるが、ここにいる観客や他の一般参加者はもちろん知らない。彼らから見れば今の状況は『突如暴れだした出場者の怪人とその怪人を倒そうとする猟兵たち』といったところだろうか。中には『新しい催しものか?』と状況が分からないままの観客もいるかもしれない。

「理由だと…お前たちは知っているから止めに入っているのだろう?…まあいい、この際だ。ここにいる観客たちと配信を見ている奴らにも教えてやろう!」
 声を高らかに上げてアルパカマッスルは仁王立ちになる。なかなか迫力のある絵だ。
「俺が優勝を狙う理由はただ一つ!副賞の『優勝者の願いを叶える』だ!俺はこの副賞でこのキマイラフューチャーの全人類の筋肉をパンプアップさせるんだ!」
 その大いなる野望を聞いた観客たちはざわ…ざわ…としていた。
「え…全人類って私たちも?」
「そういうことじゃねぇか?冗談言ってるようには見えねぇし…」
「いやよ、そんなこと!」
「俺だっていやだよ!」
 それはそうだろう。彼らはこの大会の『観客』。見るのは好きだけど自分が鍛えるのはちょっと…ってなるわ。
「な、何故だ!お前らは筋肉が、鍛えられた肉体が好きだからここにいるのだろう!?」
 そんな観客たちの心理も理解できないくらいアルパカマッスルは脳筋だった。仕方ない、名前に『マッスル』って入ってるし。

「貴殿が人々に鍛錬を促そうとする志、ひとつの信念と感ずる。その肉体も弛まぬ鍛錬の証と敬服する」
 静かに怪人に歩み寄る景正。そしてこう続けた。
「――しかし何故、人は逞しき筋肉を美しいと感じるのだろう。その理由のひとつは、『その研鑽に費やした努力や覚悟』が見事であると感じるからではないだろうか」
 諭すように、しかしその歩みは止まらず。その景正の言葉に怪人アルパカマッスルは大きくうなずいた。

「ああ、もちろんそうだとも!その積み重ねの果てに得た筋肉こそ、最高の美!」
「…だがこうは考えられぬか?もし貴殿の望みが叶い、誰しも筋肉を纏うのが当たり前の世となれば――筋肉が美しいと思う者は減り、惰性で鍛え、どんな見事な肉体も賞賛されずに当たり前と一顧だにされぬ……そんな世界になるかも知れん」
 その言葉にハッとする怪人。競い合うからこそ磨き光るものが、慢性と惰性で失われてしまう。自分が目指すものはそこではない…!と頭を振ったが、怪人はもう引き下がることは出来なかった。きっとそれは怪人としてこの世界に蘇ったその時から。

「それでも…たとえ貴様が言ったことが真実になろうと、俺は止まるわけにはいかないんだ…俺には筋肉しかないんだよ!!」
 それは悲鳴に似た叫びだった。彼が生前どんな人生を送ったのか、それは本人にしかわからない。しかし彼がここまで筋肉に拘る理由がそこにはあるのだろう。

 怪人は頭を上げる。そのつぶらな瞳でまっすぐに猟兵たちを見た。ここまで来た以上引き下がれない、そして彼ら猟兵はそんな自分を止めにここにいる。ならば彼らを倒さねば、優勝しても自分が望んだ結果にはならないのは目に見えていた。

「お、その目は本気の目だな」
 エスタシュは嬉しそうに言った。先ほどから回していた拳は力が蓄えられうっすらとオーラを纏っていた。その拳を構えると、口元の笑みを深める。当然怪人はそんな彼を警戒するが、さらにエスタシュはアルパカマッスルを挑発する。
「避けんのか?そのシックスパックは飾りか?」
 言われっぱなしはやはり堪えるものがあるのだろう。怪人はポージングを取り始めた。敢えて不利な行動を取り、防御を捨てる。怪人とてここでは出場者。彼にも戦いの矜持というものが残っていた。
「そーだよ、求めに応じるってそう言うことだよ。耐えれば『いいね』が一気につくぜ!」
 エスタシュは構えた拳を怪人の顔面に放つ。めり込み、骨のきしむ音がした。

「フン…ッ…!」
 食いしばって耐えるアルパカマッスル。その口元には血が滲んでいた。

「ダーティなのも需要があんだよ。特に思い通りにならねぇからって幼気な少女に怒鳴り散らす、漢の風上にも置けねぇ野郎相手にはよ」
 その言葉の後に続くのは景正だ。先ほどエスタシュが怪人の顔面に拳をお見舞いした時、すでに彼はアルパカマッスルの背後から『乗打推参』の範囲にまで踏み込んでいた。

「御首級、頂戴する」
 組討により怪人を無力化させて超高速、かつ大威力の一撃を放つ。呻き声を漏らす怪人。先ほどの『ポージング』の効果で『鋼の筋肉』ほどではないが、身体能力の向上によりグッと耐えていた。

「す、すげえ…」
「あの人たちの攻撃を耐えたぞ…」
 怪人の踏ん張りに観客たちはただ驚きを隠せなかった。吹き飛ばされそうなほどの攻撃を食らっても倒れない、これが怪人と猟兵の力なのかと。その凄さに、拍手をする観客もいた。それは攻撃を耐えた怪人としてではなく、一人の出場者の矜持を称えたものかもしれない。
 そんな拍手の音は怪人の耳にも届いていた。そしてそんな音が心地よいと思っていた。優勝に固執し、反則をしないよう気を付け、一般人が相手の戦いでは手加減をしていた。観客たちはもしかしたら、そんな全力を尽くしていない自分を無意識のうちに感じていたのかもしれない。現に『いいね』の数が多いのは勝ち負け関係なく、戦いを楽しみ、そして全力で挑んでいた者たちだった。

(ああ、そうか…俺に足りなかったものは———)
 怪人の血の滲んだ口元には、笑みが浮かんでいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニコ・ベルクシュタイン
世知辛い世の中であるよ、お前が筋肉への道を志さずに
全身愛らしいふわもこのアルパカで居たならば
あるいはモテ街道まっしぐらであったやも知れぬのに

…だが、あくまで筋肉に固執するというのならば
後は拳で、いや筋肉で語らうまで
最早小細工は不要、全力の「ダッシュ」で正面から突撃し
【時計の針は無慈悲に穿つ】の間合いまで一気に踏み込み、
全力の一撃を放とう

恐らくアルパカマッスルは俺の攻撃を避けないだろう
敢えて受ける事で己の肉体美を誇示すると見た
反撃が少々恐ろしいな、普段ならば「オーラ防御」で
防ぐところだが、今回は「気合い」ひとつで受けて立とう
筋肉で攻めてくるなら筋肉で受け、防ぐ
良い子の皆は真似をしてはいけないよ!



 ニコは眼鏡をクイッと上げると目の前のアルパカに語り掛けた。
「…世知辛い世の中であるよ、お前が筋肉への道を志さずに全身愛らしいふわもこのアルパカで居たならば、あるいはモテ街道まっしぐらであったやも知れぬのに」
 確かにふわもこって人気よね。可愛いし癒されるし、そういうのが好きな女の子多いし。ムキムキなアルパカじゃなくてふわふわもこもこなアルパカだったら、キャーキャーと黄色い声を浴びまくっていたのかもしれないよね。
 ニコの言葉を聞いて怪人の体がピクッと微かに動いた。頭を垂れて震えている。

「………んだ」
 小さな声は聞き取りにくく、ニコは首を傾げた。するとガバッと頭を上げたアルパカは叫んだ。
「イケメンのお前に何が分かるんだ!!」
 アルパカは泣いていた。つぶらな瞳から大粒の涙を流していた。そんな姿にニコをはじめとした周りの観客たちがぎょっとする。そんな周りの目すら気にせず、怪人は更に声を上げる。
「俺だって…俺だってな、最初は筋肉なんて興味なかった…細身だったし戦うだなんて考えたこともなかった…」
 まぁアルパカって草食ですしね。まさしく彼は名実ともに草食男子だったということだ。
「でも、好意を持った女子たちはみな『私、逞しい人が好きなの』だの『弱い人はちょっと…』って見向きもされなかった…中には可愛いと言ってくれた子ももちろんいたさ…でも可愛い止まりだった…」
 宙を見やる怪人。その背中は哀愁すら漂っているように見えるだろうか。
「だから体を鍛え始めた…最初は辛くて苦しくて逃げだしたくなった筋トレも、次第にそれが楽しくなった。努力がちゃんと筋肉として応えてくれたからな…そうして鍛えて鍛えて、文字通り『逞しく』なった!『強く』なった!」
 腕を広げ観客に見せるようにその場を一回転する怪人。その様子を警戒しつつも、アルパカマッスルの叫びに耳を傾けるニコ。きっかけは人それぞれだが、怪人は確かに努力をして、そして成果を得た。それは称賛されるものだろう。
「だけどな…」
 先ほどの声とは打って変わってその声は弱かった。
「鍛え上げた俺を見て、アイツらは言ったんだ…『さすがにそこまでムキムキなのは…』ってな!」
 無慈悲な現実と言えるだろう。言われた言葉を真剣に受け止めて、自分なりに努力して掴み取った結果を否定されてしまったのだから。まぁ何事もほどほどにしておけば良かったのだろうけど、きっと彼はとても純真な人だったのだ。そして筋肉に全てを捧げてしまうくらい、筋肉マッチョな怪人として蘇ってしまうくらい心が繊細な人だったのかもしれない。

「…なるほど」
 ひとしきり怪人の主張を聞いたニコは静かに口を開いた。
「ならばその筋肉を余すことなく見せつければ良いだろう、ここはCFBBCだ。筋肉と肉体美を競う祭典だ。お前のその筋肉を笑うものも否定するものもここにはいないぞ」
 観客たちを見渡す。怪人ということに驚いたり、全人類の筋肉をパンプアップさせる計画を知ったときはさすがに抵抗したが、誰一人として彼の筋肉を馬鹿にしたものはいなかった。アルパカマッスルに怒鳴られた少女たちですら、逃げずにずっとこの状況を見守っていのだ。

「そうだな…ここはそういう場所だったな…ならば最後まで大会を楽しむのが筋ってもんだよな」
 独り言のように呟くと、まっすぐにニコを見た。その瞳に涙はなく、どこか吹っ切れたような感じにも見えた。

「…来い、猟兵。俺の筋肉が迎え撃とう!」
 ポージングを取る怪人に向かって、ニコは全力の『ダッシュ』で突撃する。一気に踏み込んで【時計の針は無慈悲に穿つ】を放った。
「歯を食い縛り覚悟せよ、此の一撃はかなり痛いぞ」
 ニコの鍛え上げられた拳は、アルパカマッスルのボディに食い込んだ。その勢いに押されるも踏ん張り耐えていたが、先ほどから攻撃を食らい続けたことによるダメージはやはり大きいものだった。荒い息遣いが聞こえる。
「効いたぜ、今の一撃…次はこっちの番だ!」
 至近距離にいるニコへ、ポージングによって身体能力が上がっているアルパカマッスルの拳が放たれる。
(普段ならば『オーラ防御』で防ぐところだが…)
 ニコは防御を捨てた。相手が筋肉で受け止めたのだ。ならば自分もそれに応えるのが筋だろう。
 肉体にぶつかる拳を『気合い』ひとつで受け止める。強化された相手の拳を受け止めるのは容易ではなかったが、『ここで倒れてはならない』という気持ちが彼を踏ん張らせた。ニコの口からも苦しそうな息が漏れる。そんな彼らの攻防を観客たちは固唾をのんで見守り、配信用のカメラは危険を承知で二人の様子を至近距離から捉えていた。そのカメラに気付くと、ふらつきながらも近寄るニコ。カメラを掴み目線を合わせるとアップになった彼の顔が。
「筋肉で攻めてくるなら筋肉で受け、防ぐ。だが、良い子の皆は真似をしてはいけないよ!」
 そしてちゃっかりと美味しいところを持っていくニコなのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
話は聞かせてもらった!!
こんな熱い戦いを見せられたら俺も参加したくなったぜ!
見ろ、俺の筋肉ー!!
(バッと上の服を脱いでマッスルポーズ)(ぷにぷにの6歳児ボディ)
…なんかいま観客席から鼻で笑われた気がするけど俺はめげない!

お前の筋肉は確かにすげー!
俺にもそんな筋肉があればそこのヤドリガミ(f00324)も
ケチョンケチョンにしてやるのになぁと思う!
でもそれ以上に!お前のその悲しい過去と、たゆまぬ努力と、
心から楽しそうに戦うようになったお前に心動かされた!
全人類がただただマッチョになっただけじゃ
きっとこんな感動は味わえない!

お前の筋肉にもひるまず俺は戦うぞ!
喰らえ、こんしんのうさみっちビンター!!


アレクシア・アークライト
 凄い。
 今、貴方がどれだけの力をその筋肉で受け止めたのか、観客は分かっているのかしらね。

・【本気の一撃】で床を粉砕する。

 これが私の40パーセント。
 次は、100パーセントで行くわ。
 直っすぐ行ってぶっとばすから、受け止めてごらんなさい。

・正面から飛び込み、力場を拳に収束して【本気の一撃】を放つ。(空中戦、念動力、グラップル、捨て身の一撃)
・受け止められたら、そのまま同じ力で回し蹴りを放つ。(2回攻撃)

 私達は、貴方達オブリビオンと戦うために技と力を磨いている。
 対して貴方は、モテたいっていうだけで、個人レベルでは私達を超える力を身に着けた。
 正直、その努力と才能には嫉妬するわね。



●Reinforcements appeared ~援軍登場~
 睨み合う猟兵と怪人、その様子を見守る観客たちの頭上で高らかな声が聞こえた。
「話は聞かせてもらった!!」
 声に釣られるようにして上を向いた彼らの視線の先に声の主は居た。正確には飛んでいた、だが。ピンク色の塊がフワフワと降りてくるとその姿がハッキリと視認できるだろうか。全長約17cmの垂れうさ耳を持ったフェアリー、榎・うさみっちである。うさぎなのかフェアリーなのかどっちなんだという声が聞こえてきそうだが、それは今回置いておこう。
「あんな参加者いたか?」
「さぁ…」
 突然のうさみっちの登場に困惑しているのは観客だった。彼らが首を傾げるのも無理はない。うさみっちはこの大会の参加者としてではなく、援軍という形で駆け付けたのだ。といっても実は少し前から様子を見ていて、登場する場面を見計らっていたのは内緒だ。
「こんな熱い戦いを見せられたら俺も参加したくなったぜ!」
 おもむろにパーカーとシャツを脱ぐとマッスルポーズを取る。
「見ろ、俺の筋肉ー!!」
露になる筋肉…ではなくぷにぷにの6歳児ボディ。マッチョたちに囲まれてると逆に目立っているような気がするが本人は気付かず。
「…なんかいま観客席から鼻で笑われた気がするけど俺はめげない!」
 そんな鋼のハートを持ったうさみっちが降り立つ。怪人アルパカマッスルの肩の上に。これには流石にアルパカマッスルも戸惑っていたが、さすがに猟兵とはいえこんなに小さな生き物を叩き落す気にもなれなかったようだ。何となく、自分の中の戦うものとしての矜持が許さなかったのかもしれない。それが甘いとすぐに思い知ることとなるのだが。

「お前の筋肉は確かにすげー!俺にもこんな筋肉があればあの生真面目ヤドリガミもケチョンケチョンにしてやるのになぁと思う!」
 ライバルに闘志を燃やしつつ、うさみっちは怪人の肩の筋肉をぺちぺちする。6歳のぷにぷにボディがこうなったら迫力は出そうだが、まだまだ可愛さの方が勝るかもしれない。
「でもそれ以上に!お前のその悲しい過去と、たゆまぬ努力と、心から楽しそうに戦うようになったお前に心動かされた!全人類がただただマッチョになっただけじゃきっとこんな感動は味わえない!」
 ずびしっと怪人を指差すうさみっち。言い切った彼の言葉に周りから「そうだそうだ!」という声が上がる。
 いつの間にか観客たちを味方にしたうさみっちの言葉に、怪人も『確かにそうかもしれないな…』と感じていた。実際、優勝を意識するあまり全力を出せていなかったが、猟兵たちとぶつかっていくうちに心から楽しめている自分がいたのだ。
「だから!」
 うさみっちはふん!ふん!と頭を振り回し始めた。
「……?」
 傍から見たら可愛らしさしかないその光景に、怪人は首を傾げる。
「お前の筋肉にもひるまず俺は戦うぞ!喰らえ、こんしんのうさみっちビンター!!」
 そんな油断を見せた敵に容赦なく振るわれる垂れうさ耳。バチーンッ!!という音がとてもよく響いた。ちなみにこの『こんしんのうさみっちビンタ』は『ウサミノ・オミミハ・イワヲモ・クダク』と読むだけにその威力はかなりのもので、ヒットした顔面(目元付近)は赤くなっていた。
「く…おのれ…ッ」
 さすがに目元は痛かった。つぶらな瞳に涙が浮かんでいる。いくら身体能力を上げたとしても、目玉の耐性は上がるはずもなく。怒ったアルパカマッスルはガシッとうさみっちを掴むと、そのムキムキな腕を振り回して床に叩きつけようとした。
 しかしうさみっちの体に痛みはなかった。
「っと、大丈夫かしら?」
 叩き付けられる寸前。彼を掬い上げた手があった。ぎゅっと瞑っていた瞼を開けたうさみっちの前には、赤い瞳が魅力的なアレクシア・アークライトがいた。
「う、うん大丈夫だぜ!」
 怪我を負っていないか確認したあと、アレクシアはそっと床にうさみっちを降ろし怪人に向き直った。

「それにしても…凄い。今、貴方がどれだけの力をその筋肉で受け止めたのか、観客は分かっているのかしらね」
 心からの言葉だった。今まで受けた攻撃に耐え、なお猟兵の前に立つアルパカマッスルの強さは本物だと戦った猟兵たちなら誰もが分かった。観客の目では殴り合いに見えるかもしれないが、その一撃一撃の重さが違うのだ。
 周りにいる観客に下がるよう言うと、アレクシアは拳を構え『本気の一撃』を放つ。大きな音と舞う粉塵が晴れたそこはクレーターのように抉れた床があった。
「これが私の40パーセント。次は、100パーセントで行くわ。直っすぐ行ってぶっとばすから、受け止めてごらんなさい」
 アレクシアからの宣戦布告に怪人は受けて立つとでもいうようにポージングを取る。先ほどから身体能力が増大していくだけあってその迫力は見事なものだが、同時に猟兵たちの攻撃を体一つ、筋肉一つで受け止めてきたことは怪人が思っていたよりもダメージを受けていた。
(あと一撃が限度か…)
 己の体の状態は、何より本人が理解している。それでも引き下がることは選ばなかった。だってここまで来たんだ。気持ちが昂る戦いが出来たのだ。きっちり締めくくらないなんてそんなかっこ悪いことは出来なかった。
アレクシアは正面から飛び込み、力場を拳に収束して『本気の一撃』を放つ。怪人のボディに食い込む拳。先ほど床を粉砕した威力とは比べ物にならない力がアルパカマッスルを襲う。
「ぐ、ぅ…っ!!」
 踏ん張るもやはり力に押され気味の怪人。しかし、まだ倒れてはいなかった。そこに間髪入れずアレクシアの回し蹴りが入る。限界を超えたアルパカマッスルの体は宙を飛び、ようやっとその立派な筋肉を床へ倒したのだった。
「私達は、貴方達オブリビオンと戦うために技と力を磨いている。対して貴方は、モテたいっていうだけで、個人レベルでは私達を超える力を身に着けた。正直、その努力と才能には嫉妬するわね」
 倒れた怪人の傍に立ってアレクシアは彼を見下ろす。しかしその瞳は蔑むものではなく、称賛の眼差しだった。そんな瞳に、満足そうに笑う怪人アルパカマッスル。そこにパタパタと駆け寄る足音が聞こえた。

「あ、あの!」
 目を向けると、そこには怪人に怒鳴られた少女たちがいた。ああ、負けた自分を笑いに来たのかと心の内で自嘲していた怪人の耳に届いたのは、その期待を裏切る言葉だった。
「アルパカさん、すごくカッコ良かったです!」
 目を見開くアルパカマッスル。怖い思いをさせたはずなのに何故と言いたげな彼を遮って彼女たちは続けた。
「戦っているときすごく楽しそうにしてて」
「それにすごく輝いてました!」
 そう、ここはCFBBC。筋肉と肉体美を存分に披露する祭典である。ここに集まるのは、そんな逞しい筋肉が、美しい筋肉が、強い筋肉が集まる場所である。そしてそんな筋肉を愛する観客たちが集まる場所でもあるのだ。そう、観客たちにとっての『かっこいい』は立派な戦いを魅せた人たちへ送る最大の称賛の言葉なのだ。最後の最後にそれを理解した怪人は満面の笑みだった。
「優勝よりもいいものをもらったな…ありがとよ」
 一人の男の努力が実を結んだ瞬間だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月06日


挿絵イラスト