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夜と海の狭間を駆け

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●夜と海の狭間を駆け
「――ああ」
 憶えている。忘れるわけが――ない。
 ぼんやりと響く優しい声。それは我らが主、我らが頭目。
 やさしさと、強さと、すべてを抱いたかの方はいつもゆうゆうと歩いてらしたのだ。
 わたしたちはその後ろをついていく。人魚、魚の妖怪、海で死した者達の幽霊、入道たち、皆がかの方の後ろをついていく。
 水の中を、海の中を。暮れと夜と明けの狭間を。
 時には空に駆けあがり、空駆けるものどもと。時には海岸線にて陸のものどもと。
 力比べをして遊ばれるのもまたお好きだったかの方。
 その姿を思い描いていたならば――骸魂としてわたしの前に現れたのだ。
 ほろりと零れ落ちた涙は真珠へと変わり沈んでいく。深い海の底へ。
「ああ――」
 こう、紡がずにはいられまいよ。

 時よ止まれ、お前は美しい。
 かの方と共にわたしは――これから、共に。

●予知
 カクリヨファンタズムの世界が滅びようとしていると、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は紡ぐ。
 時よ止まれ、お前は美しい――それはカクリヨファンタズムにおいては滅びの言葉だ。
 その言葉を、紡いでしまったものがいるのだと。
「骸魂となったものを、ある妖怪が受け入れてしもたことで、この崩壊は始まっておるんじゃ」
 その言葉を紡いだのは、『大切な人』が骸魂となって帰ってきて、自分とひとつになった事で満たされた故に。
 嵐吾は崩壊の中心に向かい、骸魂を倒してきてほしいと言う。
 それは、ひとつになったふたりを引き裂くことになるがそうしなければ世界が終わってしまうのだ。
「世界を、滅ぼすわけにはいかんからの……」
 向かう場所は満月が頭上に浮かぶ、荒れた世界。
 海であったのだろう。逆巻く水と、岩や瓦礫が足場となって、飛び移ることで中心へと向かうことができる。
 けれど、その行く手を邪魔するように無数の妖怪たちが襲い掛かってくるようだ。
 彼らは何かの影響を受けて好戦的になっている様子。それをうまくかわすか、戦いつつもなるべく傷をつけぬようにするか。
 その辺りは赴いて、対した皆次第だろうと嵐吾は告げ手の内のグリモアを輝かせた。
 世界を終わらせぬように、頼むと紡いで――猟兵達はその世界へと、送られていく。


志羽
 お目通しありがとうございます、志羽です。
 プレイング締め切り、受付方法などはお手数ですがマスターページの【簡易連絡】をご確認ください。

●シナリオについて
 第一章:冒険『誅襲の冥月』
 第二章:ボス戦『???』
 第三章:日常『夜行』
 以上の流れとなっております。

●三章について
 こちらは問題ないプレイングはすべて採用します。
 お遊びタイムです。
 皆で仮装をし、百鬼夜行を楽しむ雰囲気となっています。
 詳細は追加される冒頭をご覧ください。
 またお声掛けがあれば嵐吾もご一緒できますが基本的にはいません。

●お願い
 複数人数でのご参加の場合は、ご一緒する方がわかるように互いに【ID】は【チームタグ】を記入していただけると助かります。また、失効日が同じになるように調整していただけると非常に助かります。(続けて二章、三章参加の場合、IDについては必要ありません)
 ご協力よろしくお願いします。

 以上です。
 ご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『誅襲の冥月』

POW   :    襲い掛かる妖怪の攻撃に耐え原因を探す。

SPD   :    襲い掛かる妖怪の攻撃を躱し原因を探す。

WIZ   :    襲い掛かる妖怪の攻撃を防ぎ原因を探す。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 さぁ、さぁ!
 今宵は楽しき、久方ぶりのわが夜行。
 百鬼集って、いやそれ以上。
 海のものども、我に付き従いあとをついてこい。
 その先は崩壊なれど、それまでの間は――かつてのように。
 いやかつてよりも、派手に楽しく、我と往こう。
 そうさなあの、満月まで。



 滅びゆく世界は、上も下も右も左もぐちゃぐちゃだ。
 ただひとつ、目印となるものがあれば――満月。
 その満月背負って、ひときわ大きな水流が躍っていた。
 そこに見えるのは、一つの影。それが、骸魂と一つになりオブリビオンとなった妖怪だろう。
 空に浮かぶ、足場となるような岩場や瓦礫はそこかしこに。
 飛び移ること、空を行けるならその間を抜けて向かう事もできる。
 道筋さえ定めることができたなら、猟兵にとってそれは容易いことだっただろう。
 しかし、そうではなかった。
 この場に無数にある水流。その中から魚の妖怪が飛び出て襲い掛かってきたり、幽霊たちが行く手を邪魔するようにさえぎったり。
 簡単には、あの満月の方へと行かせてはくれないようだ。
 妖怪たちは口々に紡ぐ。
 かの方のもとにはいかせぬと。
 我らは滅びの中でかの方についていくと――楽し気に笑っていた。
 もともと穏やかなもの達もいるだろうに、どの妖怪も好戦的だ。
 空を躍る人魚たちがその爪を伸ばし襲い掛かり、惑わせるような歌も奏でてくる。
 その間に鋭い牙の魚たちが襲い掛かり、その身を喰らおうとしてきたり。
 彼らが抱く、かの方というものに対する畏敬、尊敬。いや、もっと簡単に言葉にできぬような想いは本物なのだろう。
 しかしそれは、今は――オブリビオンとなったそれに歪められている様子。
 あのオブリビオンを倒すことは、再びかの方とやらを死の淵に落とすことになる。
 しかし、このまま世界を滅ぼすわけにはいかず猟兵達は、向かってくる妖怪たちと対しながら、満月へと向かう。
漏刻・カイカ
攻撃は怪火で防ぎ、体力がやばければ好戦的な雰囲気に中てられたように誤魔化しつつ生命力吸収。
あなた方側の妖怪だよーみたいな顔でしれっと情報収集できたらなと。

「かの方」ってのはすげえの?
俺妖怪としては若いし不安定だし、師と、主と、仰げる人がいるならついていきたいんだけど

…とか適当に言って、そこから流れでその人の人となりとか最近様子とか変わったこととか聞き出せればと。
聞く耳なさそうなら分身けろろと一緒に同じこと繰り返してしつこく聞く。
五月蠅い?熱意です。そんだけ本気なんです。「かの方」についておーしーえーてー

しっかし楽しそうだなあ。いいなあ、この混沌具合
……じゃないや、呑まれないよう気を付けないと。



 地が割れて浮き上がる。水の流れは自由気侭に流れて、満月への道を作っているのか、それとも塞いでいるのか。
 とん、とん、と軽やかに浮いた足場を漏刻・カイカ(あやしび・f30045)はわたっていく。
 ひゅっ、と音がした。それは風を切る音。
 何かの気配を感じて怪火をカイカは走らせた。
 ぶつかってきた水と爆ぜるようにそれは消えていく。
「……っと……囲まれた?」
 まぁそれはそれで、楽しいかとこの雰囲気に中てられたように笑って見せる。
 水を放ってきたのは人魚だ。カイカはその人魚へとなあ、と声かける。
「『かの方』ってのはすげえの?」
「かの方を知らぬのか? なんてこと!」
 くわ、と表情を荒々しく。人魚が掴みかかってこようとするのをカイカは躱す。
「いや、ちょっと話きいてくれって。俺妖怪としては若いし不安定だし、師と、主と、仰げる人がいるならついていきたいんだけど」
 そう言うと、人魚はぴたりと動きを止めた。
「師と、主と――であればかの方は素晴らしき方! きっとお前も見えればその御姿にひれ伏すだろうさ!」
 人魚はうっとり笑って、この海の道を駆けあがりかの方の下へ行くが良いと満月を示す。
 案外聞く耳あるのか、とカイカは思うのだが――その口ぶりに狂った末の気配もある。鵜呑みは危険かと思っていると肩でぴょんとけろろが跳ねて。
「もっと、おーしーえーてー」
 おーしーえーてー、おーしーえーてーと何度も紡ぐ。
 その声に人魚は会えばわかるというだけだ。
 けれど――あまりにも弱き者はかの方にそぐわぬともいう。
「己の力でかの方のもとにたどり着けたなら、きっと夜行に加えていただけるだろう」
 だから行け、と人魚は言う。
 道を示してくれているのだ。ここは逆らわぬほうが、話が速そうだとカイカは頷いて進む。
 空を浮く地を蹴って進んで。
 そして多くの妖怪たちがじゃれあうように戦っている様を目にした。
「しっかし楽しそうだなあ。いいなあ、この混沌具合……じゃないや、呑まれないよう気を付けないと」
 世界の終わりに共に浸りたいわけではない。
 楽しそうなのは、いいけれど――
「おやびんおやびん、まだやることがある!」
 けろろの言葉にそうだと笑って、カイカはかの方の下へ向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
易々と世界を滅ぼされそうになる
これがこの世界の危険な所なのでしょうな

はい、倫太郎
……分かりました、簪は懐に仕舞います

足場が少ない岩場や瓦礫を視力と暗視で確認
安全な位置へ飛び移って移動をしていきます
倫太郎にも視線で合図して場所を教えましょう

潜んでいる妖怪には聞き耳、第六感にて気配を察知出来ないか試す
避けられない妖怪に対しては結糸で動きを封じます
そういえば彼女はこのカクリヨで出会ったのですね
頼りにしていますよ、白花

好戦的になってしまっているとしても
慕おうとする気持ちがあるが故の行動
この世界が滅んでしまっては、そうした思いさえ消えてしまう
それが彼等にとって正しい選択ではないでしょう


篝・倫太郎
【華禱】
世界を滅ぼしますって言われて
ハイ、ソウデスカとは返せねぇから

往こうぜ、夜彦
あ、でもその前に……簪、落とさないようにしといてな?

岩場や瓦礫の場所を確認して飛び移って移動
夜彦と俺と、どちらかが先に移動して後から移動する方をフォローしてく

潜んだり、空を踊ったりする妖怪達は
視力や聞き耳、見切りで出来るだけ躱して行こう
躱せない場合は天地繋鎖で指定
その場から動けないようにして先を急ぐ

岩場や瓦礫が滑らないとも限らないから
着地の際はバランスに注意してく
水流の飲まれたら色々大変そうだしな

好戦的になっちまう程に慕ってるんなら
それほどに慕われてるんなら尚の事
滅びを呼ぶなんて事はさせちゃなんねぇよな、やっぱさ



 水が待って重なって、踊り狂うようだ。
 道筋を塞ぐように、導くように。迷路のように、しかし絡み合って――道行はなかなか難しそうだ。
 しかし、途中にある瓦礫は良い足場になると見える。
 間で戦いあう妖怪たちは、そらの満月へと向かっていた。
 そんな世界を、見詰めて。
 易々と世界を滅ぼされそうになる――これがこの世界の危険な所なのでしょうな、と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は零す。
 その言葉耳にした篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は小さく肩を竦めて見せる。
「世界を滅ぼしますって言われて。ハイ、ソウデスカとは返せねぇから」
 そう言って倫太郎は夜彦へと視線向けた。
 傍らの男は、どのような世界にあってもいつもそのたたずまいは変わらぬものだ。
「往こうぜ、夜彦。あ、でもその前に……簪、落とさないようにしといてな?」
 それは夜彦の本体だ。夜彦は瞬き、笑み向ける。
「はい、倫太郎……分かりました、簪は懐に仕舞います」
 夜彦は簪を懐へ。それで倫太郎はまた少し、安心するのだ。
 それは決して傷つけてはならないものだから。
 そして二人、崩壊する世界の中へ跳躍する。
 視線を一つ向けて、夜彦は倫太郎へ移動する場所を教えた。
 岩場、瓦礫と足場はあるものの不安定ではあるのだ。時折じゃれるように水流が向かってくるのも少し厄介。
 夜彦が先に足場に飛んで、倫太郎が続く。その逆のまたあるのだ。
 周囲に意識を巡らせていた倫太郎は、妖怪の気配を感じて向かってくることを躱すために先を急ぐ。
 夜彦もそれを感じたのだろう。けれど向かってくる数が多く――避けられないとも思えた。
「頼りにしていますよ、白花」
 和柄の可愛い管から白い毛並みの管狐を夜彦は放つ。
 そういえば、このカクリヨで出会ったこの白花。白花は世界の崩壊に驚きつつも、頷いて糸を生み出し妖怪たちを縛りその場所で動けなくする。
 その様子に夜彦は白花へ礼を告げ、先へ進みましょうと促すのだ。
 そして倫太郎も、指先向けた場所に天と地に不可視の鎖を結んで妖怪をとどめ、行こうぜと言う。
 彼らは――口々に、かの方かの方と紡ぎ、戦いあっている。
 それはじゃれているのか、それとも本気であるのか。かの方に我の力を、と示すものいる。あの方の下にと急ぐものもいる。
 己が先に、一番にと競いあっているように見える。好戦的になっているのだろう。荒れる海のように。
 しかし、それでもかの方とやらを慕おうとする気持ちがあるが故のと夜彦は思う。
 倫太郎もそれほどに慕われてるんなら尚の事、と思うのだ。
「滅びを呼ぶなんて事はさせちゃなんねぇよな、やっぱさ」
「ええ。この世界が滅んでしまっては、そうした思いさえ消えてしまう」
 それが彼等にとって正しい選択ではないでしょうと夜彦は零し、行きましょうと紡ぐ。
 水流が荒れ狂う先、満月が浮かんでいる。
 この荒れるものはかの方とやらの気性なのか、それとも世界が終わっている途中だからなのか。
 少ない足場を見つけ、二人もまた進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブOK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

相変わらず月が綺麗な世界だ。
だいたい満月なのは嬉しいけど、こうも滅びが背中合わせなのは勘弁してほしい。
骸魂が活発になるには満月が必要なのか、それとも逆に満月を引き寄せるのか…。

幸い足場があるのだからさっそく進もうか。
基本的に道を阻むものがいたとてなるべく戦いは回避したい。
先に進むにしろ回避のためにしろ、時にUC空翔を使い進んでいく。一応足を滑らせないように船上戦の要領で足場習熟も利用して。
もし戦闘回避不可能であれば応戦はするが、マヒを込めた飛刀の投擲や攻撃で怯んでくれればありがたい。水妖の系統であれば多分水に沈んでも大丈夫、なはず。



 相変わらず月が綺麗な世界――と、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は見上げる。
 その右手に胡、左手に黒鵺をもって駆け抜ける。
 頭上に浮かぶものを僅かに瞳の端に捉えて、相変わらず月が綺麗な世界だと瑞樹は紡いだ。
「だいたい満月なのは嬉しいけど、こうも滅びが背中合わせなのは勘弁してほしい」
 ぽろりと零した言葉。それと同時にとびかかってきた妖怪。
 それを切り伏せれば、ぎゃっと短い悲鳴が上がって逃げていく。
「骸魂が活発になるには満月が必要なのか、それとも逆に満月を引き寄せるのか……」
 逃げる者を追う必要はない。
 幸い足場はある。瑞樹は行き先を見定めて、軽やかにわたっていく。
 時には空を蹴って、跳躍を重ねてだ。
 その足元は気を付けて、足を滑らせないように。
 此処を船上だと思えばいい。そこでの戦いの要領をもって、進んでいく。
 と――これは、避けられないと瑞樹は判断する。
 飛び出してきたのは魚だ。しかしその口には牙がありなかなかに動きは速い。
 瑞樹は飛刀に麻痺を込めて、その魚へと放った。
 その身をかすった刃。途端、その動きは握って落ちていく。
 その先には水の流れが見えた。
 水妖であるのだから、水の中で沈んでも大丈夫だろうと瑞樹は思うのだった。
 そしてまた、先へと向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
見上げれば、煌々と照る満月
月の魔力は人を狂わせる、とは聞くが
妖怪達も狂わせているのかもしれないな
しかし世界を崩壊させるわけにはいかない
では、満月の元へと向かおうか

零れ桜咲かせ強化施した後
行先の足場を見切り見極め、道筋を定めつつ
開いた扇を手に、巧くバランスを取りつつ征こう

魚さんや幽霊さんとお喋りして少しでも説得等できれば良いのだが
聞く耳は今は持たないかもしれないからな
確りと襲い来る妖怪達の動きを見切り、桜吹雪纏いし残像を駆使し
出来る限り身を翻し躱して征こう
躱しきれぬものは、広げた扇で相手が怪我せぬように受け流し払う

満月の下、水の流れる音を聞きながら
扇翻し舞う様に、立ち止まらず進んで征こうか



 世界が崩れ落ちていく――けれど変わらぬものもあるのだ。
 見上げれば、煌々と照る満月。
 それを瞳に映し、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)はふわりと笑みたたえた。
「月の魔力は人を狂わせる、とは聞くが」
 呟きながら、微かに青やどる赤の瞳が周囲を撫でる。そして飛び出してくるものを見つけた。
 それは魚人。敵意をその瞳に宿らせて飛び出てきたのだ。魚と人が混ざり合ったようなそれは、ぎょろりと大きな瞳。口には牙をとがらせて噛みつかんとする。
「妖怪達も狂わせているのかもしれないな」
 その敵を一閃して涼やかに口端を上げる。
 しかし――世界を崩壊させるわけにはいかない。
 では、満月の元へと向かおうかと男は桜の花弁を共として海と夜の間に躍り出る。
 行先はどこか。それを見極め清史郎は道筋を定める。
 開いた扇を手に、とびかかってきた小さな魚の群れをはじく清史郎。
 さらに追いかけてくるような水流の中には人魚や魚の姿が見えた。
 お喋りのできる相手ではありそうだ。けれど襲い掛かってくる様は狂騒の中にある。
 説得等できればと思っていたが、と清史郎の表情は僅かに曇る。
「魚さんも幽霊さんも、聞く耳は――今は持たないようだな」
 それならば仕方ないというように清史郎は飛び出してきた魚たちの動きを見切りいなした。
 今はお喋りできないだろうが、正気に戻ればきっととその時を楽しみにしつつ、くるりと体回転させて避けるだけ。桜吹雪を連れて、人魚が狙い定めた先に残像残して駆けるだけだ。
 傷つけたいわけではない。躱せる限りは、躱していく。
 開いた扇で、人魚が叩きつけるように振り下ろした尾鰭をひらりと撫でて受け流し、払った。
 清史郎は涼やかに笑って、人魚を水流の中へと送り返す。
 派手にあがった水音も、また楽しきもの。
 満月に向かって踵返し清史郎は次の足場へと舞うように跳躍する。
 扇翻し、立ち止まることなく満月へと向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f09129/ユルグさん

満月に狂うのは生き物のさだめなのかしら
あぁ、でも――、

身体の透けた幽霊達は
生き物の部類に数えて良いものやら、と
ゆるり首を傾げる様は
迫り来る妨害者達を
駆けて跳ねて躱しながらの爽快な速度に反して
何処かのんびり

けれど其れは勿論
頼もしき彼と
一緒の道のりだからこそ

掴みかかる人魚の魔手や
我等を弾こうとする魚の尾鰭を
踊るような足取りで避け
帛紗でさらり、風を撫でたなら
甘やかで柔らかな花の馨が
彼らをふわり、包み込む

無益な殺生も
過分な傷を与えるのも
極力回避したく

馨遙で
穏やかな眠りへ、優しい夢へと導こう

眠る瞼の向こう
微笑み浮かぶ眦に光る雫
「かの方」との懐かしき日々に游ぶ夢を見ているのだろうか


ユルグ・オルド
f01786/綾と

生き物だろうと幽鬼だろうと
折角見事な月なんだ
そら拝んでやろうッて気にもなるさ
つっても特等席を譲る気はねェでしょ

暢気に眺めるにゃまだ早い
手引くような相手でなしに
歩を緩めるワケもねェし
なんだかんだで追い越してくし
駆けんのを知ってるから前に、席に
瓦礫を跳んで、月に手伸べるみたいに上へ

んふふ、願い比べといこうじゃねェの
月を前に眠っちゃうかい
つまんないじゃん?
綾は優しいこってと峰打ちで往なし
百鬼が来たって怖かねェわ
打ち漏らしにも良い子守唄があるときて

流れつく先が海ならば
行き着く先は一緒だろうさ
焦がれるそこへと、行ってみる?
振り返ったならほら、まだ先だ



 ざぁざぁと耳に響く音は、荒れ狂う水流の音か。
 その向こう側に見える月と――影を都槻・綾(糸遊・f01786)は見上げていた。
「満月に狂うのは生き物のさだめなのかしら」
 あぁ、でも――、視線はそれらの姿を捕まえた。
「身体の透けた幽霊達は生き物の部類に数えて良いものやら」
 ゆるりと首傾げる綾。
 それに対して、笑って駆けるはユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)だ。
「生き物だろうと幽鬼だろうと」
 折角見事な月なんだ――と見上げて、振りぬく一刀。
「そら拝んでやろうッて気にもなるさ。つっても特等席を譲る気はねェでしょ」
 跳ねて、躱して。ユルグが払った先に道ができる。
 足場の少ないこの場所を、軽く跳ねて飛び移っていくユルグ。
 綾もその速さについていっているのだけれど、動きは緩やかで何処かのんびりとしているように見える。
 けれど其れは勿論、とその背を追うのだ。
 頼もし気彼と一緒の道のりだからこそと笑んで。
「暢気に眺めるにゃまだ早い」
 なんて、僅かに視線が噛み合った際に投げられたら、遅れたりしませんよと笑い返す。
 手引くような相手では、もちろんない。
 歩を緩めるワケもないのは――ほら、これだ。
 水流より飛び出してきた魚をユルグが打ち払えば、その隙に。
「お先に」
 と、笑み零してすでに一歩先。追い越していってしまう。
 ユルグは笑って、また追い越して。
 綾が瓦礫一つ越えるなら、その間に二つと跳ねる。
 月に手伸べるように上へ、上へ。
 満月へと近づいているはずだがまだ遠く。
 この先に進む気なら、遊んで行けと戯れのように掴みかかってくる人魚の手。
 尾鰭は弾きだそうと振るわれるのを、踊るような足取りで綾は避ける。
 ユルグは一足、深く踏み込んで身を低くしそれを逃れた。
 綾は帛紗でさらり、風を撫で――甘やかで柔らかな花の馨で、手を伸ばしてきた者どもをふわり、包み込む。
 無益な折衝も、過分な傷を与えるのも極力回避したい。
 穏やかな眠りへ、優しい夢へと導こうと綾の手から広がって。
 けれど、その眠りから頭振って逃れるように、魚人が跳ねる。
「行かせぬよ、かの方の下にいくのは我らが先だ!」
「んふふ、願い比べといこうじゃねェの」
 行く先を閉ざされるなら払うのみだ。手にしたシャシュカで打ち払う。ユルグの向けた切っ先が導くのは再び水流の中。
「月を前に眠っちゃうかい。つまんないじゃん?」
 眠る瞼の向こう、微笑み浮かぶ眦に光る雫。
 その様を見て綾はゆるりと思う。
(「『かの方』との懐かしき日々に游ぶ夢を見ているのだろうか」)
 穏やかな眠りであればいいのだけれど、と眠りに落ちるものたちへと優しい視線を綾は向ける。
 ユルグは眠りに落ちるものたちも目に映し綾は優しいこって、と峰打ちで往なす。
「百鬼が来たって怖かねェわ」
 打ち漏らしにも良い子守唄がある、と先へ進むのみ。
 足場を渡って、進んで――近づいてくる。
 水の流れもひとつところに向かうように。
 その先をユルグは見やって、流れ着く先が海ならばと思うのだ。
 行きつく先は一緒だろうさ、と。
 妖怪たちも、向かってくる。そちらへと向かっていく。
「焦がれるそこへと、行ってみる?」
 振り返ったなら――まだ、先だ。
 月が囁くように光零して、道筋を現していく。
 けれどこの先に待つ、妖怪たちの主たるものの姿は、まだ少し遠く。
 それは簡単には手が届かぬ相手のようだと、世界の終わりを二人は駆ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
何度お聞きしても、ロマンティックな言葉…
それが、滅びの言葉だなんて
なんと悲しい事なのでございましょう

皆さまのお守りしようとなさっている方は
もう在りし日の頭目さまではないのでございます
どうかあの場所へ、行かせてくださいませ

【絶望の福音】にて妖怪の皆さまの行動を先読みしつつ
【ダッシュ・ジャンプ、空中浮遊】を活用し回避
【足場習熟・地形の利用】にて足を滑らせぬよう気をつけながら
時には【フェイント】にてあちらへ行く素振りを見せ別の方向へ
【念動力】にてアイテム【赤薔薇の花びら】を散らし目くらましもしつつ
そうやって皆さまをかわしながら進みたく
どうしても対峙してしまう場合には当て身・体当たりにて【気絶攻撃】を



 その言葉は――世界を終わらせる言葉だ。
 それをベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)ももちろん知っている。
「何度お聞きしても、ロマンティックな言葉……」
 そう思うものの、表情は曇ってしまう。
 それが、滅びの言葉だなんて――
「なんと悲しい事なのでございましょう」
 崩れていく世界の中で、水流は渦巻いて、逆巻いて、流れて。
 ベイメリアも崩壊の中を進んでいく。
 すると――ばしゃん、と大きな水音がした。
「お前もかの方の所にいくのか? 弱いやつはあの方には似合わん!」
 試してやる! と飛び出してきたのは大きな魚だ。
 大きな尾鰭を閃かせて、ベイメリアをこの世界の端へと弾き飛ばそうとしてくる。
 すると、それを見つけた他の妖怪たちがなんだなんだとはやし立ててくるのだ。
 かの方の下に行こうとしているのか、強ければいけるだろう。
 負けたならここに残れと笑いあうように。
「皆さまのお守りしようとなさっている方は、もう在りし日の頭目さまではないのでございます」
 そう告げると、しかしあの方はここにいると口々に紡ぐ。
 共にいらっしゃる。かの方と共に、また夜を駆けるのだと口々に。
 本当に慕っているのだなと、ベイメリアは思う。
 けれど――決して、放っておいてはいけない存在になってしまっているのだ。
「どうかあの場所へ、行かせてくださいませ」
 今は言葉届かないのだろう。
 とびかかってくる、その行動を先読みして、高く跳躍し空中で方向を変える。
 次の足場は、あの薄い板。けれどそれを蹴ってすぐに次の足場へ。波に乗って妖怪たちが押し寄せてきたからだ。
 波のように押し寄せてくる。
 赤薔薇の花びらを散らし、ベイメリアは目くらましをかける。
 花弁に視界を奪われたものもいれば、じゃれつかれ邪魔だと払いのけるのに必死なものも。
 ベイメリアは気を取られている内に進む。
 あの満月へと向かって、着実に一歩を刻んで。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟迎櫻

わぁ?!魚の妖怪に人魚がいる……ふぅん、君も歌うの?歌なら負けないよ
張り合う気持ちが生まれる

カムイ、僕は闘魚の人魚だよ
妖怪とは違うんだ

櫻宵、カムイ!いこう
お月様の方まで泳いでいくんだから!
僕もまた水の生き物だ
ヨル、しっかり掴まっているんだよ

櫻宵とカムイを守るように水泡のオーラを巡らせて
2人への鼓舞を込めて歌う
「魅惑の歌」
時が止まったこの世界
君達の時もとめてあげる
神と龍が通るんだ
人魚の歌で飾らせてもらうよ

薄紅が舞って、朱砂が斬る
ふふ!櫻宵もカムイも息がぴったりだ

かの方、とやらがどんな存在かはわからないけれど
奪ってしまうことは申し訳ないと思うけど

会わせてもらうよ
終わらせる訳にはいかないんだ


朱赫七・カムイ
⛩迎櫻

綺麗な月だね
こんな日には和歌のひとつでも詠みたくなるよ

月から妖達が降りてくるみたいだね
あれは人魚?
リルの仲間…とは違うよね
リルの方がずっと、姿も歌も綺麗だよ
初めて聴いたリルの歌は、奇跡のように美しい

カラスに道筋を偵察してもらって
カグラに防護結界を張ってもらい攻撃を防ぐよ
サヨ、私が先に斬り拓く
決してきみを、リルの事だって傷つけさせないよ
早業で駆ける
攻撃は見切り、躱し際になぎ払って切断する
サヨの剣戟は舞うようでとても美しい
神楽。私へ舞ってくれた
嬉しいな
刀を握る手にも力が籠る

かの方とは妖達の大切な存在なのかな
例えそうだとしても

私だって、私の大切なきみを
きみと出逢った世界を
奪わせる訳にはいかない


誘名・櫻宵
🌸迎櫻

綺麗な月だわ!
カムイの和歌?ぜひ聴きたいわね

枝垂れ桜の翼を広げ
空を飛び月を目指すわよ
あら、人魚!
でも、私の人魚の方が美しくて歌も素敵よ!
カムイはリルの歌、初めて?
聴き惚れて地におちないようにね、なんてくすりと笑う

ええ、お願いね
頼もしいわ、私の神様

朱の斬撃に、桜を咲かせて
月夜を桜で彩りましょう
生命喰らい桜と変える神罰と、幽霊祓う浄化を込めた破魔の斬撃を放ち
カムイの後を飛び進む
神楽を舞うわ
あなたの為の神楽を

リルの歌に合わせ裂いて咲かせて月の夜
白が歌い、朱が舞う
噫、なんと美しい

滅ぶというのに楽しげね
でもね
私は終わりなどいらないの
咲いて咲かせて生きていくと決めたから

かの方への路を
あけてもらうわ



 綺麗な月だね、と朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)は世界を見上げた。
 誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)もその言葉にそうね! と頷く。
「こんな日には和歌のひとつでも詠みたくなるよ」
「カムイの和歌? ぜひ聴きたいわね」
 頭上には満月。
 瓦礫、どこかの地面が割れたのだろうか、巻き上がっていく。そして水流も踊り狂うは世界の終りの始まりだ。
 リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)はその水流の中にある妖怪の姿見つけて瞬いた。
「わぁ?! 魚の妖怪に人魚がいる……」
 ばしゃり、水流から飛び出してきた人魚はこの先には進む資格があって? と笑い――歌う。
 かの方をいとおしむ、讃える――そんな、歌だ。
 その歌声は、高く浅く、低く深く広がっていく。その歌声を耳に、リルの心にぽつりと一滴落ちていくようなものがうまれる。
 それは張り合う気持ちだ。
「ふぅん、君も歌うの? 歌なら負けないよ」
 月から妖達が降りてくるみたいだねとカムイは見上げて、リルの見つけた人魚を瞳に映す。
「あれは人魚? リルの仲間……とは違うよね」
「カムイ、僕は闘魚の人魚だよ」
 妖怪とは違うんだ、とリルは言う。
 その言葉にカムイは頷いて。
「リルの方がずっと、姿も歌も綺麗だよ」
 枝垂れ桜の翼を広げ、櫻宵は当たり前よ! と紡ぐ。
「私の人魚の方が美しくて歌も素敵よ!」
 あの人魚よりも、他にもここにいるであろう人魚よりもと櫻宵は笑う。
「櫻宵、カムイ! いこう。お月様の方まで泳いでいくんだから!」
 その、向かう先をリルは指刺した。
 まん丸お月様。その前に立ちはだかる妖怪たちの姿。
 あの水流の流れにいくつか乗っていけば、満月まで早く辿りつけそうだ。
 僕もまた水の生き物だ、とリルは尾鰭を動かした。
「ヨル、しっかり掴まっているんだよ」
 ぴぃ、としっかりとリルへとヨルはつかまる。リルもヨルが落ちないように抱え込んだ。
 そして櫻宵とカムイを守るように水泡のオーラを巡らせていくリル。
「カムイはリルの歌、初めて?」
 聴き惚れて地におちないようにね、なんてとくすりと櫻宵は笑い零す。
 初めて、と頷くカムイはリルに視線を向けた。リルはよく聞いててねと笑う。二人を鼓舞するために。
 すぅ、と息を吸い込んでリルは歌い始めた。
 魅惑の歌――時が止まったこの世界、君達の時もとめてあげる、と。
 神と龍が通るんだと微笑んで、歌紡ぐ。人魚の歌で飾らせてもらうよと。
 その歌声――初めて聞いたリルの歌。奇跡のように美しいとカムイは思う。
 カムイは、カラス、と呼び掛けて道筋の偵察を頼む。そしてカグラには防護結界を重ねて張ってもらった。
「サヨ、私が先に斬り拓く」
 決してきみを、リルの事だって傷つけさせないよと紡いで、一歩先へ。
「ええ、お願いね」
 頼もしいわ、私の神様と紡ぐ櫻宵。
 何よりも早く、カムイは駆け抜ける。
 とびかかってきた魚の口には牙が並ぶ。躱し際に薙ぎ払っていくカムイ。
 それを追いかけて櫻宵も戦いに加わる。
 朱の斬撃に桜を咲かせて――世界の終わり、月夜を桜で彩って。
 カムイの後を追いかけ、櫻宵は神楽を舞う。
「サヨの剣戟は舞うようでとても美しい」
 あなたの為の神楽、と振るう袖。
 自分のために舞ってくれたと、カムイは瞳細める。
 嬉しいな、と刀握る手にも力が籠るのだ。
 リルの歌に合わせ、裂いて咲かせて――月の夜に舞うのだ。
 歌を色にするなら白だろうか。朱が舞って、踊って。薄紅が追いかける。
「噫、なんと美しい」
 ほろりと、櫻宵の口から零れていた。
 薄紅が舞って、朱砂が斬るとリルもその様を瞳に映す。
「ふふ! 櫻宵もカムイも息がぴったりだ」
 その様を一番近い場所で見ることができるのはリルと、その腕の中にいるヨルだけだ。
 瓦礫の先、水流の先。満月の下に往く者達を払って、進んでいく。
(「かの方、とやらがどんな存在かはわからないけれど」)
 こんなにも妖怪たちが求めて、焦がれて。
 奪ってしまうことは申し訳ないと思うけれど――世界を終わらせるわけにはいかないのだから。
「会わせてもらうよ」
 終わらせる訳にはいかないんだ、とリルは紡ぐ。
 この先にはいかせないのだと、新たな妖怪たちが立ちふさがる。
 かの方のもとには、と。
 そう言いながらも彼らは楽し気なのだ。
 かの方のもとで、戦えるということが。
「滅ぶというのに楽しげね」
 櫻宵はでもね、と彼らを見やる。
「私は終わりなどいらないの」
 咲いて咲かせて生きていくと決めたから――終わりなど。
 だから、かの方への路をあけてもらうわと刃を閃かせる。
「かの方とは妖達の大切な存在なのかな」
 例えそうだとしても、とカムイもしっかりと刃握って。
 私だって、私の大切なきみを――きみと出逢った世界を、奪わせる訳にはいかないと、想いそれをふるうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

思・桜
蘭さま(f00421)と

その先が滅びの定めと知り、それでもなお求められるその方は、
如何様な経緯を辿られた御方だったのでしょうか…
妖たちの思いに問いを抱きましょう
強い思いは強い妖を生むと聞きまする
急ぎましょう、蘭さま

月までの百鬼夜行、
道程は障害も多いと聞き及びまする
瓦礫や岩場があるのでしたら足元の心配には及びませぬが…油を売ってもおれませぬ
常の半竜の姿から完全竜体へと姿を解けば、蘭さまを背に乗せるよう低い位置を畝り
落ちぬよう確り掴まっててくださいまし
向かう道中は【竜神飛翔】を使い雷にて妖共を牽制いたしまする
奇禍を退く蘭さまと共に、道筋を模索しつつ駆けましょう

今宵は中秋、満つ月は妖を惹くのでしょう


蘭・七結
スゥさん/f29610

常に破滅と隣合わせな世界
かくりよの地に惹か続ける理由、それは
この世が危うさを纏い続けるからかしら

滅びの末、終いの先
そこに求むものは如何なものかしら
胸裡を満たすのは疑問、そして好奇心

ええ、スゥさん
隣のあなたに意を重ねるよう頷いて
円かな月までの夜行を手繰りましょう

てん、てんと跳ねることは得意だけれど
あなたの背をお借り出来るだなんて、光栄だわ
神なる竜の背へと乗り、天上の月を目指す

災厄を払うのだと、あなたに告げたばかり
好戦的な彼らを薙ぎ、春の嵐をお見せしましょう
神雷に添わすのはあかい牡丹一華たち

天へと飛翔するうつくしい竜神
あなたの往く先をひらいてゆく

嗚呼、お月さまがとてもキレイね



 世界が終わる――常に破壊と隣合わせなこの世界。
 かくりよの地に惹かれ続ける理由、それはと蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)は思う。
 この世が危うさを纏い続けるからかしら、と。
 満月が浮かぶ世界。崩壊し、砕けた欠片が散りばめられて、その間を水流が躍っている。
 滅びの末、終いの先。
 そこに求むものは如何なものかしらと七結の胸裡を満たすのは疑問と、そして好奇心。
 そして七結の傍らで思・桜(水葩・f29610)もこの世界に目を向ける。
 妖怪たちが口にする、かの方とやらはあの満月のもとにいるらしい。
「その先が滅びの定めと知り、それでもなお求められるその方は、如何様な経緯を辿られた御方だったのでしょうか……」
 妖たちの抱えた思いに問いを抱く桜。桜は七結へと視線向け。
「強い思いは強い妖を生むと聞きまする。急ぎましょう、蘭さま」
「ええ、スゥさん」
 その意を重ねるように七結は頷く。
「円かな月までの夜行を手繰りましょう」
 その、満月までの百鬼夜行。
 道程は障害も多いと聞き及びますると桜は紡ぐ。
 瓦礫や岩場――足元の心配はなさそうだ。
 七結も、てん、てんと跳ねることは得意だけれど、とその先を視線で追っていく。
 けれども。
「……油を売ってもおれませぬ」
 桜はそう言って、その身を――常の半竜の姿から、完全なる竜体へと解いていく。
 そして竜となった桜は低い位置を畝り、七結はその意味を理解する。
「あなたの背をお借り出来るだなんて、光栄だわ」
「落ちぬよう確り掴まっててくださいまし」
 桜の背中をそうっと七結は借りる。神なる竜のその背にのって、天井の月へ。
 竜だ、行かせるなと妖怪たちが群れ始める。
 桜は雷を放ち、妖たちを牽制した。
 そして災厄を払うのだと、あなたに告げたばかりと――七結は春の嵐を巻き起こす。
 好戦的な妖達を薙ぎ払うそれ。
 神の雷に添わすのは、あかい牡丹一華たち。
 雷の走る先をなぞって、妖達を払って道開いていく。
 道筋が閉ざされても、新たに生み出せばよいのだ。
 天へと飛翔する、うつくしい竜神。その背から、先を導くように牡丹一華の嵐を七結は走らせた。
 今度は、その風を追って桜が進んでいく番だ。
 進む先――その、月を見上げて。
「嗚呼、お月さまがとてもキレイね」
 七結が零した声に、桜はええと頷くのだ。
「今宵は中秋、満つ月は妖を惹くのでしょう」
 そんな、月の元まで――駆け上がる。
 かの方、と多くの妖たちが激しく戦いながらも慕うものの姿が、見えてくる。
 世界の終わりを望んでいるのか、それとも――それは望まぬものだったのか。
 その答えは見えて、言葉かわせばきっとわかるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『偉大なる海の守護者』

POW   :    深海の歌
【津波を呼ぶ歌】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    海の畏れ
【他の海にまつわる妖怪を吸収する】事で【鯨の鎧を強化した形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    災厄の泡
攻撃が命中した対象に【祟りを引き起こす泡】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【恐怖による精神ダメージと祟り】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はペイン・フィンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 世界が終わる、その中の満月の下。
 それはゆうゆうと、泳いでいた。
 それこそがここまでくる間、妖怪たちが口にしていたかの方と共になった人魚。
 人魚であったものの身を覆うは骨の骸。それはかの方の残滓を纏っているのだ。
「ああ、わたしはかの方と共にある」
 そのなんて、幸せなこと――と人魚は微笑んでいた。
 大海を守護する鯨の大妖たるかの方と、共に。
 共にあるならばかつてのよろこびを再び得ることもできるだろう。
 かつては、先に立っておられたかの方の後ろを追っていたが、今は共に、傍らにある。
 きっとこの後ろを、かつてを知る妖たちがついてくるだろうと人魚は思う。皆、喜ぶだろうと――だって今も、戦い遊んでこちらへこようとしているのだからと。
 ざぁ、と水流を引き込んで、踊らせて道を生み出して。
 けれど、現れた猟兵達の姿に人魚は瞳眇めるのだ。
 人魚にとってはそう、猟兵はこの一時を邪魔するものに違いないのだから。
 人魚の心は、今、かの方とあることの幸せに満ちている。
 だからこそ世界が終わる――そのことも、忘れてしまっているのだろう。
 その先に何もないことを気づかないのか、見ないふりをしているのか。
 ただいま、この一時を享受することにすべてを傾けているのだから。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

一つになるって事を否定的に思っていたけれど。
でも今回は少しわかる気がする。
少し前まで俺も主の強さを追いかけて、追いついてしまった今とっくの昔に死した主とも共にあるわけにもいかない。
それに世界と天秤にかけるなんて許さないだろうし。

存在感を消し目立たない様に立ち回る。そして可能な限りマヒ攻撃を乗せた暗殺攻撃を仕掛ける。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。
祟り、恐怖はUC炎陽の浄化能力と呪詛、狂気耐性でしのぐ。



 鯨の大妖と共になった人魚の姿を前に、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は思うのだ。
 人魚は、ひとつになったことを嬉しそうに、幸せそうにしている。
「一つになるって事を否定的に思っていたけれど」
 でも今回は少しわかる気がすると、瑞樹は零した。
 水を操り崩壊する世界の中にある人魚と向き合って瑞樹は思うのだ。
(「少し前まで俺も主の強さを追いかけて、追いついてしまった」)
 けれど――今とっくの昔に死した主とも共にあるわけにもいかないと瑞樹は思う。
 それがあの人魚と、瑞樹の違いだろう。そして主がもし、ここにいたのならば。
「それに世界と天秤にかけるなんて許さないだろうし」
 そのことが簡単に想像できる。それは長く共にあったからこそ、思うことなのだ。
 主の事を少し、思い出しながら瑞樹は進む。
 崩壊の中心は一層、嵐が深まる様に荒れていた。瓦礫や、水流は動き進む先を阻もうとするのだ。
 けれど瑞樹はその間を存在感を消し、縫うようにすすむ。水流の間を身を低くして、それに捕らわれぬように注意して。瓦礫の上は長くはとどまらず、一足で次の足場へ向かう。
 身を隠すことできる場所があればそこで僅かに、周囲の様子を伺って次に向かう場所を決めて。
 そして可能な限り近づいて――人魚へと攻撃を仕掛けた。
 麻痺を乗せ、暗殺の一撃を。その刃は人魚の身を斬り裂くが、しかしその尾が跳ねて攻撃を返してくる。
 瑞樹はその尾を受け流すようにするが衝撃は殺しきれない。
 そしてその尾に絡んでいた泡が瑞樹を祟る。精神に響いてそこから崩そうとしてくるのだ。
 しかしその泡を、
「緋き炎よ!」
 金谷子神の錬鉄の炎を放って瑞樹は払い飛ばす。泡は炎の熱によって爆ぜて、消えていった。
 人魚は目の前に現れるものは、己を邪魔するものだと思っているのだろうか。ゆるりその尾を動かし空を泳いで人魚は動く。
 再び息をひそめ、瑞樹は攻撃かけるその機をうかがっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
ああ…この方は
想い人と一つになる事で、まわりの妖怪の皆さまを犠牲にしてしまう事を
恐れなくなってしまっているのでございますね
それどころか、それを皆さまが望んでいるかのように
錯覚してしまわれています
その目、お覚まし申し上げなければ
妖怪の皆さまも、この世界も
なくしてしまう訳には参りません

空中浮遊にて水から逃れつつ
呪詛耐性・オーラ防御を活用し、恐怖・祟りに耐え抜きたく
恐怖は、自分を傷つけられないかといった感情
いいえ、わたくしは
他の皆さまが傷つく事になる方が、余程恐ろしく感じます
お二人を引き離す事で、貴方が傷つく事になることもまた
悲しく恐ろしい事に思います
けれどここは、心を鬼にし、全力魔法を打ち込みます



 終わる世界の中を――自由に、泳いでいる姿が見えた。
 その姿は喜びに、幸せに満ちている。己のその選び取ったものが、何を引き起こそうとしているのか、きっとわかっていないのだろう。
(「ああ……この方は」)
 この世界の崩壊の中心までたどり着いて、ベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)はその姿を見詰めていた。
 ベイメリアは瞳伏せる。
 あの人魚はきっと――想い人と一つになる事で、なってしまった事で。
 まわりの妖怪の皆さまを犠牲にしてしまう事を。
「恐れなくなってしまっているのでございますね」
 それどころか、とベイメリアは緑色の瞳を向ける。空を――いや、今はもう空も海も地もないこの世界を泳ぐように駆けている。
 そして集う妖怪たちは、狂いの中にあるのだ。
「皆さまが望んでいるかのように錯覚してしまわれています」
 空を巡る様に妖怪たちも集えていく。
 人魚の後を突いていく、それは皆で世界の終わりへと進んでいるようだ。
「その目、お覚まし申し上げなければ」
 妖怪の皆さまも、この世界も――なくしてしまう訳には参りません、とベイメリアは紡いで、足場を蹴った。
 空を浮遊して、押し流そうとしてくる水から逃れる。
 ベイメリアが向かえば人魚もまた、その姿に気づく。
「お前も邪魔をしようとするの?」
 近づかないで、邪魔をするなと人魚は泡を生み出して零す。
 尾を振ればその泡はベイメリアへと向かってきた。その泡は祟りを引き起こす。
 そして恐怖を、この場へと広げるのだ。
 ベイメリアの心を這いあがる恐怖もあった。
 自分を傷つけられないかといった感情――けれど、それをベイメリアは振り払う。
「いいえ、わたくしは」
 傷つけられる。傷を負う――それよりも。
「他の皆さまが傷つく事になる方が、余程恐ろしく感じます」
 そう言って表情は僅かに、苦し気に歪む。
 それはこれから、相手を傷つけてしまうことをわかっているからだ。
 あの人魚を、骸魂を倒してしまわなければならない。
 それは二度目の別れをあの人魚へと向けることになるのも、ベイメリアはわかっているのだ。
「お二人を引き離す事で、貴方が傷つく事になることもまた悲しく恐ろしい事に思います」
 けれどここは、心を鬼にして――ベイメリアの指先が空をなぞる。
 それは人魚の泳ぐ先へと、全力で魔法を向けるために。その行き先を定めるために。
「裁きの光を受けなさい……!」
 己の心を侵食する何かはあるけれど、それを耐えてベイメリアは攻撃向ける。
 全力を傾けて放った全属性の光の矢は、人魚の身を護る様に走る骨を砕いた。
 しかしその身まで矢が届いていない。骨が、その骸が人魚を守って砕けたのだ。
 人魚の身に傷は負わせぬというように――それは骸魂の遺志なのかも、しれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

思・桜
蘭さま(f00421)と

姿を現した人魚の袂まで蘭さまをお連れ致しまする
常の半竜に姿を転じ、蘭さまのお傍へ控えましょう
わたくしで良ければまたいつでもと笑み

未だ少女のなりをした人魚は
まるで骨の骸に包まれて、
在りし日の「御方」の栄光の幻想を追う
その振る舞いは、張りぼてのようでございまする
疑念に瞳を眇める人魚に、わたくしは問いましょう
あなた様の御心の、真の思いは何処なりや?
お慕い続ける「彼の御方」の、真の願いは何処なりや?
──望みは願い、願いは祈り、祈りは思い、思うは苦楽…
その苦楽に過去を解ひ聞かん
「哀うたと銀響の縛鎖」を和燈に込め、鐘響を翳し鳴らす
紡ぐうたと鐘響にて悪しき妄執を縛り鎮めんと試みる


蘭・七結
スゥさん/f29610

麗しい白竜の背を借り彼女の元へ
ありがとう、スゥさん
とてもよいひと時であったわ
半竜の姿へと変じたあなた
その隣へと立ちましょう

人魚たる彼女が纏わう骨の骸
傍にあるものこそが、彼女の信ずるもの
嗚呼、なんて満ち足りたお貌
けれども、敢えて問いかけましょう

『それは本当にしあわせ?』

しあわせとは、此処で果てることかしら
消えゆく世界に呑み込まれたまま
あなたは崩れて消えてしまうわ

鋭く穿つ留め針は袖の内に
あかいいとに結いで留めましょう
身の自由を封じたのならば、あなたへ目配せを

なんと清らな音色
妄執の色が、雁字搦めのいとを解かしてゆくよう
囚われの心には何を抱くのでしょう
本当の心を、わたしはしりたい



 ゆうるりと泳いでいく。蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)を背に思・桜(水葩・f29610)が世界の終わりを進んで――人魚の袂まで。
 骨の鎧は骸魂の現れなのだろう。彼女はほかの妖怪たちの先を行く。
 そして、たどり着いたそこで桜は常の半竜の身へと転じた。
「ありがとう、スゥさん。とてもよいひと時であったわ」
 麗しい白竜の姿であった桜へと七結は微笑んで礼告げる。
 すると桜も小さく笑み零し。
「わたくしで良ければまたいつでも」
 ふたり、あわさった視線は人魚へと向く。
 人魚は己の邪魔をしに来たのかと、二人の前でくるりと回る。
 その骨の鎧の一部は僅かに、砕けていた。しかしその鎧の傷を前に飛び出してきた魚の妖怪を吸収し直してしまう。
 その妖怪も、望んでそうされたように見えた。再び元の姿に戻るそれは――ひどく、寂しげなことにも見える。
 己の傍らにあるものこそが、彼女の信ずるものなのだと七結は思う。
 そう思うのは、人魚の表情ゆえに。
「嗚呼、なんて満ち足りたお貌」
 けれども、敢えて問いかけましょうと七結はその唇を動かす。
「それは本当にしあわせ?」
 問いかけに、人魚はおかしなことを尋ねるのねところころと笑って見せる。
 幸せであるから――世界はこうなってしまったのだと。
 世界が終わることが、共にあることのしるしなのだと、言うように。
 けれど七結は、その言葉を真っすぐに受け入れられないのだ。
 しあわせとは、此処で果てることかしら――そう、と答えが返る。
 消えゆく世界に呑み込まれたまま、あなたは崩れて消えてしまうわと紡げば、それでいいのと終わりを受け入れて望んでいるかのような口ぶりだった。
 かの方と共に果てる事なかった過去――でも、今は、と。
 人魚は、ほうと蕩けるような吐息を零し、想いを馳せているのだ。
 まるで骨の骸に包まれて、在りし日の『御方』の栄光の幻想を追う――その振る舞いを桜は。
「張りぼてのようでございまする」
 その一言だけを手向けるだけで十分だった。
 そしてそれを拾い上げた人魚は瞳眇め、桜を見詰める。
 どうして、と。その視線に、桜は問いを返すのだ。
「あなた様の御心の、真の思いは何処なりや?」
 お慕い続ける『彼の御方』の、真の願いは何処なりや?
 桜の視線は射抜くよう。その言葉は人魚の心に、細波たてる。
(「──望みは願い、願いは祈り、祈りは思い、思うは苦楽……」)
 その苦楽に過去を解ひ聞かんと桜の口から向けられた言葉に人魚が持つ言葉はなく。
 けれどそう、このまま問答を続けるわけにもいかないのだ。
 七結はすでに動いていた。問い掛けと共に、その言葉は――あかいいとに。
 それを鋭く穿つ留め針を袖の内に持ち、あかいいとに結いで留めて。
 問いかけに気を取られていたか、人魚はそのあかの内に捕まって封じられる。
 攻撃のための泡も、そのいとに触れて弾けていって届かない。
 七結は桜へと、視線一つ。桜も頷いて返して。
「忘れないで、想い出して」
 藍の薄硝子は煌く燈り隠すための小さな帳。鐘響を翳し、伴として、宵へ導くため――鳴らして、うたを紡いだ。
 悪しき妄執を縛り鎮めんと、鎖が編まれて人魚を縛る。
 その音を耳に、七結はなんと清らかな音色と瞳細めた。
 それは――目に見えぬものを見ているよう。妄執の色、雁字搦めのいと。
 それが解かされてゆくようで、そう――先ほど、他の妖怪をくらって吸収した鎧が砕けて、もとの妖怪に戻っている。
 人魚も、妖怪も何が起こったのかと言うようだ。
(「囚われの心には何を抱くのでしょう」)
 七結は見詰めて――思うのだ。
 本当の心を、わたしはしりたい、と。
 そして、一つ手繰り寄せたような気がする。己から砕けてしまったように見えた骸の鎧。
 かつて生きていた妖怪であった、骸魂。その鎧は、骸魂はここにあることを望んでいないかのようだ。しかし人魚の身を傷つけさせるのは厭うのか、守りはかたく。
 けれど桜の編むうたが、音が人魚と骸魂のいびつな繋がりを少しずつ、解いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
骸を纏う人魚、ですか
それ程までにその大妖を慕っていたのでしょうね
彼女が幸せであったとしても、世界を滅ぼす理由にはなりません
……亡き「かの方」も同じ思いかどうかも今は分かる術はなく
私達が成すべきことは、彼女を止めるのみ

水霊『紫水』を召喚
水の壁を形成し、津波の威力を軽減し、カウンターで毒の飛沫を放つ
倫太郎と合わせて攻撃を仕掛けている間に水壁に飛び乗る
そこから敵へ向けて一気に接近
早業のなぎ払いにて斬り込んでそのまま接近戦に持ち込む

敵の攻撃は残像で回避
回避困難であれば見切りにて攻撃の軌道を読み、武器受けにて防御
攻撃を受け止めた後、カウンター


篝・倫太郎
【華禱】
この……『鯨の妖し』と『人魚』が自分達であったなら
どうしただろうと少しだけ思う
思った所で答えの出ないものだけど

一度は喪った喜びを得られるのであれば
世界など知った事ではない
そう思うんだろか……

人の身では思うだけのそれも、夜彦には身近なのかもしれない
だからこそ、問い掛けは出来ない

ま、世界滅ぼされちゃ困るんで往きますか

燎火使用
召喚した神霊には
攻撃力重視の風の属性攻撃での先制攻撃を指示
同時に吹き飛ばしと衝撃波を乗せた華焔刀でのなぎ払い

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防いで凌ぐ
夜彦への攻撃も可能な限り華焔刀やUCを使用して相殺を狙う

夜彦が往く道を作るのが俺の仕事だ、いつだって



 あれが、と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は世界の終わりの中心を見詰めていた。
「骸を纏う人魚、ですか」
 それ程までにその大妖を慕っていたのでしょうね、と夜彦の言葉にはやさしさのようなものがあった。
 彼女の気持ちは決して間違ったものではないというように。
 そして篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)も、想い抱く。
(「この……『鯨の妖し』と『人魚』が自分達であったなら」)
 どうしただろうと、少しだけ思う。思った所で答えの出ないものであることも、わかっているけれど。
 一度喪った。しかし再び出会えた、共に荒れる喜びを得られるのであれば。
「世界など知った事ではない。そう思うんだろか……」
 ぽつり、知らずのうちに零れていた倫太郎の言葉を掬い上げて、夜彦はいいえと首を横に振る。
 幸せなのかもしれない。けれど――
「彼女が幸せであったとしても、世界を滅ぼす理由にはなりません」
 今の行いは、諫めねばならぬものなのだと夜彦はわかっている。
(「……亡き『かの方』も同じ思いかどうかも今は分かる術はなく。私達が成すべきことは、彼女を止めるのみ」)
 倫太郎は人の身では思うだけの。けれど夜彦には身近なのかもしれないと思うからこそ、問い掛けは出来なかった。
 けれど、貰った言葉にはそうだなと頷くだけ。
「ま、世界滅ぼされちゃ困るんで往きますか」
 ほかの猟兵の攻撃を受けて、その骨の鎧は一部砕けている人魚。
 人魚は何事かを零している。
 どうして、幸せなのだから邪魔しないでと。
 邪魔をするなら――押し流して綺麗にしてしまいましょうと歌を、紡ぐ。
 ざわり、水の流れが集い、変わる気配に夜彦は動く。
「――来たれ、紫水」
 津波に抗うように水の壁を形成する夜彦。一気に、二人へと向かう海流が二つに割れる。
 津波に威力を軽減し、その間に倫太郎は神霊を召喚していた。
 神霊に風をもっての攻撃を指示し津波の上へと向かわせる。
 そして夜彦も津波を耐えきったのちに毒を含んだ飛沫を放ちつつ水壁の上へと飛び乗った。
 倫太郎が華焔刀を振り払う。衝撃波と共に周囲のものを吹き飛ばして道を作るのだ。
 往け、と倫太郎は視線一つで告げる。
 頷いた夜彦は一気に人魚へと距離詰めた。早業のなぎ払いで、目の前に飛び出てきた妖怪を斬り伏せてその懐へ。
 倫太郎が繋いでくれた道だ。夜彦はその一刀を人魚へと向ける。
 その身を覆う、骨の鎧が刃を受けて――また少し、砕けた。
 人魚が、それを目にして表情変える。
 その骨の鎧は、『かの方』と共にあるからこそのものだ。
 それが砕けるということは人魚にとって別れを予感させるものでもあるのだろう。
 この二人とは距離をと再び津波を引き起こそうとする人魚。
 しかし、その前に――衝撃波がひとつ飛んでその動きを邪魔した。
「夜彦が往く道を作るのが俺の仕事だ、いつだって」
 何も言わずとも、夜彦はどうすべきかわかっている。
 その言葉を背中に受け、再び踏み込み攻撃を。
 人魚の身にその刃は届かないのだが、鎧は砕ける。しかしその手応えに夜彦は瞬き一つ。
 攻撃をかけているからこそ、感じることもあるのだ。
 骨の鎧は、人魚の身を守っているように思えた。しかし、守っているのに簡単に砕けるような手応えなのは、きっと――その鎧は、『かの方』であった骸魂は世界の終わりを望んでいないからだろうと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
かの方と共にある事の喜び、か
俺は正直、その様な感情を今まで抱いた事がないため分からないが
その表情を見れば、人魚にとって幸せな事なのだろうな

けれど、だからといって世界を滅ぼして良いものではないし
それにひとつになったという、そのかの方は骸魂
人魚の知る、かの方ではない
世界の為にも、人魚の為にも、かの方とやらの為にも…引き離させて貰おう

災厄の泡は水の矢で相殺
水と桜舞わせ敵の目を欺く残像を駆使し、敵の攻撃や動きを見切って接敵
抜いた刀で、骸魂へと斬撃を見舞おう

共に在れて…ひとつになれて嬉しい、か
今回は相手が骸魂になった故に、引き離さねばならないが
その様な存在がいるのは、ある意味羨ましい事かもしれないな



 筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)がその姿を目にした時、人魚の纏う骨の鎧の一部は欠けていた。
 人魚はそのことに、悲鳴のような声を上げている。
「かの方が! だめ、砕いたりしないで、共にいられるのを邪魔しないで」
 その骨の鎧を砕かれることは、人魚にとってかの方との別れを思わせる事なのだろう。
 ともにあることは、幸せだと、喜びだと。だから邪魔をするものはと敵意を露わにする。
「かの方と共にある事の喜び、か」
 骨の鎧として纏って、それは共にあると言えるのか、とも思うのだが。
「俺は正直、その様な感情を今まで抱いた事がないため分からないが」
 その表情を見れば、人魚にとって幸せな事なのだろうなと清史郎は零す。
 けれど、だからといって世界を滅ぼして良いものではない。
 それにと清史郎は思うのだ。
 それに――ひとつになったという、そのかの方は骸魂。
 人魚の知る、かの方ではないのだと。
 かの方であった、というだけなのだ。骸魂になってしまえば、もう違うものであることを、人魚はわかっていないのだろう。
「世界の為にも、人魚の為にも、かの方とやらの為にも……引き離させて貰おう」
 させはしないと、人魚は泡を生み出して放つ。無数の泡は祟りを引き起こし精神に響くものだ。
 ひらりと扇を躍らせれば水の矢が番えられた。水の矢の傍らにははらりと桜の花弁が舞っている。矢が泡を砕けば花弁も舞って、人魚が歯噛みしながらその様見詰める間に、清史郎は懐へ。
 すらりと、刀を抜き放ち――その、骨の鎧へと一撃を。その鎧は簡単に砕けていってしまうのだ。
「やめて! 折角、一緒になれたのに」
 引き離さないでと、人魚は言うのだ。
「共に在れて……ひとつになれて嬉しい、か」
 けれど、今回は――骸魂である故に、引き離さなければならない。
 引き離されると悲しんで、否定して逃げようとする。
 ふと、清史郎は思う。さて己にそんな相手がいるだろうかと。
「その様な存在がいるのは、ある意味羨ましい事かもしれないな」
 そこまで心傾けられる相手は――清史郎にはおらず。
 はたして、その心がどのようなものか。興味は多少があるが、己が抱えるに至るとは今は到底、思えないことでもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f09129/ユルグさん

幸せに浸ったまま
刹那に溺れたまま
生あるものの斯様な願いは
いつだって主観的で我儘で
だからこそ
真っ直ぐで純粋で眩いから

憎らしいとも
思惑を砕いてやろうとも
思えないのですよねぇ
…けれど、

淡く笑んで
崩れ行く足場を、水辺を、翔けて跳ねて
高みで抜刀

他にも懸命ないのちの耀きがある限り
どうぞ自由に崩壊してと迎合するほど
情を寄せる訳にも行かないから

――百鬼夜行は解散しませんとね

月影を背負い
閃かす刃は
「かの方」の還るべき海路への、禊

後はきっと
あなたが導いてくれるでしょ
なんて
ユルグさんへの仕留めの丸投げは
勿論
揺るがぬ信頼の証

駆ける其の背に向けた眼差しと
浮かべた笑みが
口にせずとも雄弁に語るかしら


ユルグ・オルド
f01786/綾と

恋は盲目?
思慕の違いに疎くてネ
溺れる程ってんならば
まァ、

羨ましかったりする?
眩げな隣へ問いかけて
んふふ、優しいこって
真正面から砕くべく刃を振って
全部巻き添えに海の底
それでも一緒の願いなんざ
一生分からずいるかなァ
だからここらで仕舞いといこう

濡れたら錆びない?崩れる足場の先から先
翻る裾から毀れた破片の端と端
つるっといきかけたのは見ねぇ振りで

先へ行くだけ行ってそらねェわあ
着いてこなかったらどうする気
思ってもないこと嘯いて
擦れ違いに駆け抜ける口の端で笑う
やァね戯けて今更通じない手合いでもなし
捕まえたと肉薄したら
その夢見せてと熄でもって応えるのはその信へ



 世界の終わり。その様相がまた変わっていく。
 頭上の月は変わらず。しかし世界は徐々に崩れていく。
 荒れる水の中を泳ぐように駆けていく人魚は、泣いていた。
 ぽろぽろと真珠の涙が零れきらきらと輝いているのだ。
「ああ、ああ――どうして、ただ共にありたいだけなのに」
 世界が終わっても、共にいられるのだから、これこそが望みなのだと。
 喜びを、幸せを得て――今はそれが、失われかけていることに感情を隠せぬ人魚。
 ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)はその感情の機微を見上げていた。
「恋は盲目?」
 その姿を都槻・綾(糸遊・f01786)も青磁色の双眸を細め、共に見詰めていた。
 恋? と聞き返す。
「思慕の違いに疎くてネ。溺れる程ってんならば、まァ」
 そういうものではないのかと、笑うのだ。
 幸せに浸ったまま、刹那に溺れたまま――生あるものの斯様な願い。
 それはいつだって、主観的で我儘で。だからこそ、綾にとっては真っ直ぐで純粋で眩いものだった。
 その輝きは、まっとうなものなのだろうか。
 その、眩し気な様にユルグは。
「羨ましかったりする?」
 問いかけて。綾は少し考えて、ゆるく唇を動かした。
 憎らしいとも、思惑を砕いてやろうとも。
「思えないのですよねぇ」
「んふふ、優しいこって」
 淡く笑んで綾は己の崩れ往く足場を踏んで、水の流れの上をも翔けて跳ねていく。
 そして高みで、花々の宴を纏う漆黒の鞘より冷謐に凍れる真冬の、黎明の如き清澄な刀身を世界に導く。
「……けれど、」
 人魚のありようを否定したいわけではない。
 だが人魚の想いと世界とを天秤にかけたのならば――世界に傾くのだ。
 他にも懸命ないのちの耀きがある限り、どうぞ自由に崩壊してと迎合するほど情を寄せる訳にも行かないからと、振り下ろすだけ。
 それは、ユルグにもわかることだ。
 全部巻き添えに海の底、それでも一緒の願いなんざと笑って。
「一生分からずいるかなァ」
 だからここらで仕舞いといこうと追いかけて、跳ねあがった飛沫。
「濡れたら錆びない?」
 踏み出せば、その場所がすぐさま崩れていくのは世界の終わりの中にあるからか。
 翻る、そして毀れていく――つるっといきかけたのを見ないふりしながら、距離詰めていく。
 そう思う矢先に、先に一足、跳躍したのは綾だ。
「――百鬼夜行は解散しませんとね」
 月を背負う、その位置が変わるのだ。
 綾が閃かす刃は――禊でもあるのだ。人魚が纏う骨の鎧、『かの方』の還るべき海路への。
 人魚の身を護る、その骨の鎧を一閃で砕いて、綾はひとつ、視線を投げた。
 後はきっと――導いてくれるでしょ、と。
 その視線にユルグも言葉はなく視線で返す。
 先へ行くだけ行ってそらねェわあ、と。
「着いてこなかったらどうする気」
 なんて、思ってもないことを嘯いて、擦れ違い駆け抜ける口の端で笑う。
 信頼してるからですよ、と言葉にする必要もなく。
 仕留めを丸投げして綾は過ぎて行ったその背を見詰める。
 やァね戯けて今更通じない手合いでもなし――と、肉薄しその手はもう、届く。
 綾がその背に向けた眼差しと、浮かべた笑みは言葉にせずとも、その想いを語る。
 そして背に向けられたそれをユルグも感じその信に応えるべく。
「その夢見せて」
 真っすぐ飛び込んで、斬撃を見舞う。人魚はそれを防ぐ事もままならず、その衝撃に身を折って耐えたけれども、纏う骨の骸が砕けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩迎櫻

ずっと求めた存在と共に在りたいと想う気持ちはわかるよ
いなくなってしまった大切な存在と
また共に
私だってかつてずっと願って…記憶は無いけれど
そんな気がする

かの方とはそんな存在だったのだろう

私は今こうしてサヨと居られる
私がずっと求めていたこと
終わらせない

リルが歌って制してくれる
どんな人魚の歌よりも美しい歌が私達を守ってくれる

その間に
いこう、サヨ
再び出逢えたかけがえのないきみと共に

カグラ、防御結界を頼むよ

全てが失敗する厄の神罰を降らせ見切り躱しながら前へ
桜守ノ契
早業で駆け飛んで纏う骨ごと波ごと切り込み切断する
重ねられるサヨの剣戟に合わせ刃をはしらせる

共に斬ろう
やっと繋がったこの路を壊させはしない


リル・ルリ
🐟迎櫻

櫻、溺れないように気をつけて
ううん、流させなんてしないよ
僕とカムイで守るから安心してよね

ふうん、君も人魚なんだ…歌を歌うの?
なら、負けないよ
かの方、と言うのはその骨…君の大切な存在のよすがなのかな
例えそうだとしても――
今、生きている大切なこの世界を終わらせはしない

歌唱には櫻宵とカムイへの鼓舞を込めて
歌う「薇の歌」
どんな祟りも、津波も、皆
僕の大切な存在を傷つける、そんなもの
皆、何もなかったと世界から否定し取り除く
道を、作るよ

水泡のオーラを巡らせて身を守り
櫻宵達をフォローしながら人魚に対抗して歌う
歌う、声をはりあげて
世界を包むよう響かせて

幸せに満ちたその心のまま、かの方への想いと共にお眠り


誘名・櫻宵
🌸迎櫻

私は游ぐのは得意ではないの
リル、ありがとう
気をつけるわ

カムイ…
『あなた』はいつも私の前にいて私の前で刀を振るい守っていてくれた
(そう、『師匠』)
横に並び立てることは奇跡のよう
共にあれる幸せは同じ
だからこそ―この一時に流されはしないわ
ずっと共に歩んで行きたい

リルの歌はすごいのよ!
美しい歌声に希望が湧き上がる
ええ、行くわよカムイ
あなたをリルを守る
共に迎える明日を守るわ!

路切り拓くように浄化を込めてなぎ払い、衝撃波と共に切裂き断つ
生命喰らい桜と変える神罰巡らせて桜を爛漫に咲かせるわ
全て私の神の糧となるから
カムイと合わせ思い切り斬撃を放つ

かの方と共に戦うのは楽しい?
その想いを抱いたままおかえり



 その身に纏う骨の鎧は、すでに半分以上崩れて人魚は嘆いていた。
 このままではこの身が終わってしまう。そうなれば『かの方』とはまた離別を迎えてしまうことに人魚の心は荒れていた。
 そしてその心を写し取ったかのように人魚の周囲は荒れている。
 リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)は誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)へと手を伸ばす。
「櫻、溺れないように気をつけて」
「リル、ありがとう。気をつけるわ」
 櫻宵は頷いて返す。游ぐのは得意でないのだから、この荒れる水の流れに飲まれたならあっという間には慣れてしまいそうだから。
「ううん、流させなんてしないよ。僕とカムイで守るから安心してよね」
 リルが視線向けた相手、朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)は人魚へと視線を向けていた。
 人魚は、お前も邪魔をするのかと鋭い言葉放つ。けれどカムイはゆるく、首を横に振る。
「ずっと求めた存在と共に在りたいと想う気持ちはわかるよ」
 いなくなってしまった大切な存在と、また共に――その気持ちには、何か――かすかに、覚えがあるのだ。
「私だってかつてずっと願って……記憶は無いけれど、そんな気がする」
 かの方とはそんな存在だったのだろうとカムイは思うのだ。
 私は、とカムイは己と人魚の違いを想う。
 私は今こうしてサヨと居られる――しかしそれも、世界があるからだ。
「私がずっと求めていたこと――終わらせない」
 そうして構える。
「カムイ……」
 櫻宵もまた、その姿を見詰めている。
『あなた』はいつも私の前にいて私の前で刀を振るい守っていてくれた――と、僅かに瞳細めて。
(「そう、『師匠』」)
 横に並び立てることは奇跡のよう。
 共にあれる幸せは同じなのだ。人魚の気持ちも、わかる。
 わかるけれど、だからこそ――この一時に流されはしないわと櫻宵は人魚を見詰めた。
 だって、これからも。
「ずっと共に歩んで行きたい」
 そう、零していた。それはカムイも――そしてリルとも。
 リルもまた、人魚を見詰めていた。彼女と自分の姿は似ている。
「ふうん、君も人魚なんだ……歌を歌うの?」
 歌は――嘆きの、叫ぶような歌だ。
 その声にリルは己の歌声をかぶせていく。
 なら、負けないとその想いをもって。
(「かの方、と言うのはその骨……君の大切な存在のよすがなのかな」)
 例えそうだとしても――今、生きている大切なこの世界を終わらせはしないと声を、喉を震わせる。
 リルの歌声、響く、響いていく。
 櫻宵とカムイのために歌われるそれは『薇の歌』だ。
(「どんな祟りも、津波も、皆――僕の大切な存在を傷つける、そんなもの」)
 皆、何もなかったと世界から否定し取り除く。
 人魚が放った泡も、波も何もかもが消え去った。世界のすべての、ではないけれど――二人が進む、その道があれば十分だろう。
 向かってくる津波が消えて、カムイは瞬く。
「リルの歌はすごいのよ!」
 美しい歌声に希望が湧きおこるような。櫻宵の言葉にカムイも頷いた。
 どんな人魚の歌よりも美しい歌が私達を守ってくれる。歌って、制してくれると。
 そしてリルは見ず泡のオーラを巡らせて身を護りながら、一層深く声を張り上げる。
 この世界を包むよう――響かせて。
(「幸せに満ちたその心のまま、かの方への想いと共にお眠り」)
 世界を終わらせるわけにはいかないからと、先に進む二人を援護しながら、リルは歌う。
「いこう、サヨ」
 その間に、とカムイは櫻宵へと一声。
「再び出逢えたかけがえのないきみと共に」
「ええ、行くわよカムイ」
 あなたを、そしてリルを守ると二人に告げ櫻宵は己の得物に手を添えた。
「共に迎える明日を守るわ!」
 路を切り開くように、浄化を込めて邪を祓い屠り咲き誇る桜龍の牙、血桜の太刀で薙ぎ払う。
 そして生命喰らい桜と変える神罰を巡らせれば滅びゆく世界、海のさなかは桜を爛漫に咲かせる世界へと変わるのだ。
 そうしてそれは――
(「全て私の神の糧となるから」)
 カムイは全身を朱桜花弁に変え、邪なる存在を喰殺し咲き誇る桜龍の牙、朱砂の太刀をふるう。
 駆けこんでその纏う骨ごと、そして己守る様に走らせた波ごと切り込む。
 そこへ櫻宵の続けて、刃を合わせてはしらせた。
 ふたりの斬撃が、咬み合って重なりあう瞬間がある。
「かの方と共に戦うのは楽しい? その想いを抱いたままおかえり」
 櫻宵は、終わりを告げる。
 そしてその心はカムイにも響いているのか、共に斬ろうとその刃握る力は強まる。
 やっと繋がったこの路を壊させはしないと――それぞれの想いは重なって。
 人魚の纏う骨の鎧が砕け散る。その瞬間、人魚とかの方は別離を迎える。
 嗚呼、と人魚は――人魚も、そう。わかってはいたのだろう。このまま、かの方をここにとどめおくわけにはいかないことを。
 諦めのような吐息を零して、さよならを告げながら崩れ落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『夜行』

POW   :    力いっぱい先頭で楽しむ

SPD   :    賑やかな中ほどで楽しむ

WIZ   :    最後尾でゆるゆると楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 世界の崩壊――その危機は消え去った。
 頭上に月があるのは変わらないけれども――裂けて、砕けた地は元に戻り。
 海は穏やかな姿を取り戻していた。
 その崩壊を招いていた人魚は、かの方の骸魂を迎えた場所で真珠の涙を零す。
「ええ、ええ……わかってはいたのです。止めて下さって、ありがとう」
 ありがとう、と紡ぐけれども人魚の心はやはりまだ悲しみの中にはあるのだろう。
 思い出してしまったのだから――けれど、どこからか火の玉がひとつふたつと現れて、近づいてきて視線はそちらへ向けられた。
 きゃっきゃと楽しそうな声も聞こえてくる。
 やんややんやとにぎやかな声色を共に連れて人魚の下にやってきたのは巨大な、狐だった。
「おうおう、懐かしい気配があったと思ったのだが――いや、世界がかき混ぜられて誰かがあいつを呼んだかと思って会いにきたんだが」
 もうすべて終わっていたかと笑うのは狐。狐の大妖だった。その尾は九つか、ゆらりふんわりと揺らしている。
 そして巨大な彼の足元では狸たちや狐たち、他にも様々な獣の妖怪たちがじゃれついて、ついてきているようだ。
 人魚はその姿に覚えがあるのか、お久しぶりですと紡ぐ。
 その狐は――懐かしいなと、紡いだ。そしてあの鯨のは強い妖だったと語る。
 海からあがり、陸にまで夜行を率いてやってきて。喧嘩をしては――酒を飲み。語らいあったと昔を騙る。
 その中にお前もいたなと、狐は器用にその足で人魚を撫でた。
「人魚の嬢ちゃんや、だぁれも鯨のを、忘れてなどないぞ」
 ほら見ろと、頭上を示せば――羽ばたきの音と落ちてくる羽根。
 そこにいるのは烏天狗。狐と同じように、懐かしき者の姿を求めにやってきたのだ。
 人魚はかつてをまた、思い出す。
 そう、皆の前を歩いて守っていてくれたけれど。かの方はこうして、友らと遊ぶも大好きだったと。
 そして人魚は――まだこの心は寂しいままだけれども。今日は、かの方を想いたいと告げる。
 そしてかの方が大好きであった夜行をこの海に、地に、空に巡らせてほしいと。
 列をなしての、妖怪たちの行進を。そう望めば、どこからか多くの妖怪たちが集うのだ。ああ、もちろんと言うように。
「海はわたしが。かの方が進んだ道を、共に」
 海の中での呼吸は気にしなくていいと人魚は言う。私の進む後をついてくれば、大丈夫というように。
「ならば空には我等があげよう。翼なくとも一時、空の道を巡るくらいは容易い」
 烏天狗もまた、己の後をついてくれば空の道を進めようと告げて。
「地を往くなら我の代わりをするがいい。獣道を進むもまた楽しいぞ」
 狐は――ここで人魚と烏天狗の道行きを見守るという。
 妖怪たちの列に加わるのも、その様を浜より眺めるのも良い。狐は尋ねればかつてを快く、楽しく話してくれるだろう。
 喧嘩も大好きだったのいうのだから、派手に手合わせなどを見せてやるのも――妖怪たちは楽しむだろう。
 願えば、妖怪たちとも手合わせはできそうだ。
 そしてその姿は別にこだわらなくてもよい。賑やかに楽しんでいたなら、それだけれ――再び還っていった鯨の大妖への手向けとなるだろうから。
高鳴・不比等
リオン(f02043)と

烏天狗に続いて空の道へ

自分の帽子が頭になく、隣にそれを被る者が居るというのは何とも妙な気分だ。しかもそれが彼女であれば、尚の事
それを知ってか知らずか、嬉しそうな彼女を見れば、自然と笑みも漏れ出る

ああ、お似合いですよ。

ん、狩って来た。ってのは冗談で買ってきたんですが、そいつ曰くモノホンだそうで。お嬢も狩られちまうかもしれませんねぇ。ハハハ、冗談でさァ。そん時ゃ優しくしてあげますよ。

確かに夢の様で…

……いや意外と怖くね?脚元スケルトンヤバくね?

綺麗ですねぇアッハッハ。

なら、お願い出来ますかぃ?

この血は悪しき物だが、今日位感謝してやっても良いかもな

…ホントだ。何も怖くねぇ。


神羽・リオン
高鳴さん(f02226)と

烏天狗に続いて空の道へ

高鳴さんの愛用する魔女帽子を借りて嬉しそうに
似合うでしょ?

高鳴さんは狩人?耳や尻尾がよく出来ているわね…えっ!本物?
おろおろしながら思わず自分の尻尾をぎゅっと抱きしめて

や、優しくって何を!?
狐を狩るってもしかして……
あらぬ妄想を始め顔を熱くする

私は妖狐だもの。夜行に加われば気分も高揚
夜空を歩けるなんて夢の中にいるみたい

ん?そう……?
……ッ!結構高いわね!
脚が震えだしたのを隠す様に
高鳴さん怖いの?手くらい繋いであげてもいいわよ?

手を繋ぐどころか彼の腕にしがみつく様にくっついて
安心したのは自分の方なのに得意げな笑み

ほら、こうすれば怖くないでしょ?



 さぁ、行こうかと――羽ばたきと共に、空へあがるは烏天狗。
 その後を続けば、不思議なことに翼無き者、空を飛ぶ事できぬ者も、ひとときは空の加護を得るのだ。
 高鳴・不比等(鬼人剣・f02226)は一歩踏み出して、ふわりと体が浮く感覚に不思議だと瞬く。
 そして傍らで、嬉しそうな神羽・リオン(OLIM・f02043)の声が響いた。
「似合うでしょ?」
 リオンが深く被って見せるのは、いつもは不比等が愛用している魔女帽子だ。
 自分の頭の上に帽子がなくて、隣にそれを被る者がいるというのは何とも妙な気分だ。
 それが、リオンであれば――尚の事。
 それを知ってか知らずか、嬉しそうにくるりと回って見せる姿見れば、不比等も自然と笑み零して。
「ああ、お似合いですよ」
 先程の問をゆるりと返す。
 リオンはありがと! と笑って言って、不比等の姿を見詰める。
「高鳴さんは狩人? 耳や尻尾がよく出来ているわね……」
「ん、狩って来た」
 じぃ、とその耳と尻尾を見ていれば、不比等が紡ぐ言葉にびっくりして。
「えっ!」
「ってのは冗談で買ってきたんですが、そいつ曰くモノホンだそうで」
「本物?」
 おお嬢も狩られちまうかもしれませんねぇ、と揶揄うように紡げば、リオンはおろおろしながら思わず自分の尻尾をぎゅっと抱きしめていた。
 その様子にくすりと、不比等は笑い零し。
「ハハハ、冗談でさァ。そん時ゃ優しくしてあげますよ」
「や、優しくって何を!?」
 不比等の言葉にリオンははわわわ、と慌てて。
 狐を狩るってもしかして……もしかして――と、あわわと。あらぬ妄想をはじめ顔は熱く。頬押さえてふわ~と思わず声零れる。
 けれど今は自分がどこにいるのか、何をしているのかリオンは思い出す。
 リオンは妖狐だ。こうして夜行に加われば――気分も高揚する。
 多くの妖怪たちと共に、連なって進む。それも今日は、夜空をだ。
「夜空を歩けるなんて夢の中にいるみたい」
「確かに夢の様で……」
 と、言ったところで不比等の視線は足元を見てしまった。
 不思議なことに、そこには床などなにもなく。けれど足は空をしっかりと踏みしめて。
「……いや意外と怖くね? 脚元スケルトンヤバくね?」
 何も足元に無いことは、僅かに不安をあおる。だから不比等は上を見上げた。
「ん? そう……?」
 そして言うほど高くはとリオンも足元見つめて。
「……ッ! 結構高いわね!」
「綺麗ですねぇアッハッハ」
 脚が震え出して、リオンはそれをごまかす様に不比等へ視線を向けた。
「高鳴さん怖いの? 手くらい繋いであげてもいいわよ?」
 それは自分の震えを隠すように。
「なら、お願い出来ますかぃ?」
 その言葉にええとリオンは手を繋ぐ――どころか、腕にしがみつく様にくっついて。
 安心したのは――リオンの方だけれど、得意げな笑みを不比等の帽子の下から向けるのだ。
「ほら、こうすれば怖くないでしょ?」
 もう震えは何一つなく。
 不比等は、この血は悪しき物だが、今日位感謝してやっても良いかもなと思いながら口開く。
「……ホントだ。何も怖くねぇ。」
 これなら、夜空の散歩もなんてことはない。
 ただ楽しい時間になるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
仮装は烏天狗
この時期に仮装をするのは今年で二度目

彼の姿は、とても美しくて
目尻の紅化粧もあって雰囲気も違っていて
装いも装いなもので、少しばかり照れ臭い

海を眺めに行きたいものの、その装いを汚したくはなくて
抱きかかえて海へと向かう

彼が簪と言えば、ちゃんと仕舞いましたと
それから指輪……はい、これはお互い様wです
しっかり付けていれば大丈夫な気もしますが大切なものですからね
私は手が塞がっておりますので、懐の巾着袋に一緒に入れてください

海を歩く合間も笑ったままの彼に何があったのか尋ねてみる
確かに本来は空を行く者ですが、貴方も陸の狐です

台無しだなんてとんでもない
そんな貴方を、選んだのは私なのですよ?


篝・倫太郎
【華禱】
黒無垢で狐面を着けた、狐の嫁入りな仮装で
隣の夜彦に笑い掛ければ
なんだか満更でもなさそうな顔

挙句、ひょいっとお姫様抱っこ

?!

吃驚したけど
恥かしさよりも嬉しさのが強くて
ぎゅっと抱き付いて

簪……
そこまで言えば
いつもの事だからか笑って返されて

指輪も……

二人、指輪についての言葉が重なったのがおかしくて
また笑って、言われるままに仕舞う

笑ってばかりだけど
鯨の大妖は夜行を楽しんでたみたいだし
きっと悪い事じゃない

俺が笑ってばかりいるからか
夜彦が少し心配そうな顔で尋ねてくる

空を自在に渡る烏天狗が
海の夜行を巡ってるって変わってていいなって?
後、喋ると台無しじゃない?
そうでもない?

……ア、ハイ(照れつつこくり



 月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は、柔らかに笑みを浮かべた。
 己は烏天狗の姿を装って――この時期に仮装をするのは今年で二度目と思う。
 そして、傍らの篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が纏うのは黒無垢だ。狐面をつけて、それは狐の嫁入りと言ったところ。
 倫太郎は夜彦へと笑いかける。すると、夜彦の表情はなんだかまんざらでもなさそうなもので、倫太郎の笑みも深くなるのだ。
 いつもと、雰囲気が違うように思えるのは目尻の紅化粧のせいだろうか。
 装いも装いなもので、少しばかり照れ臭いと夜彦は思う。とても美しくて、視線が外せないような。
 海を眺めに行きたいものの、その装いを汚したくはなく――夜彦が思いついた手は、抱きかかえることだった。
「?!」
 突然のことに倫太郎は吃驚する。抱え上げられた事は恥ずかしさより嬉しさのほうが強く、倫太郎はぎゅっと抱き着いた。
 そしてふと。
「簪……」
「ちゃんと仕舞いました」
 呟きにはすぐ声が返った。いつもの事だからか、笑って。
「指輪も……」
「それから指輪……はい、これはお互い様です」
 指輪の言葉が重なって、二人で笑いあう。
「しっかり付けていれば大丈夫な気もしますが大切なものですからね」
 私は手が塞がっておりますので、懐の巾着袋に一緒に入れてくださいと夜彦は頼む。
 倫太郎はまた笑って、言われるままに夜彦の指輪を外し懐の巾着袋へ。
 そして、ふたりで人魚の開いた海の道を進む。
 水の中だというのに不思議と呼吸はできて。
 水の世界は揺蕩うて。月の光を吸い込んできらきらと反射しているようだ。
 笑ってばかりだけれども――鯨の大妖は夜行を楽しんでたみたいだし、きっと悪い事じゃないと倫太郎は思う。
 けれどずうっと笑い続けているから夜彦は倫太郎に何が、とその笑いの理由を聞いてみる。
「空を自在に渡る烏天狗が、海の夜行を巡ってるって変わってていいなって?」
「確かに本来は空を行く者ですが、貴方も陸の狐です」
「後、喋ると台無しじゃない? そうでもない?」
 そう言うと、至極真面目な顔で夜彦は、台無しだなんてとんでもないと言って。
「そんな貴方を、選んだのは私なのですよ?」
 そのまっすぐな言葉に倫太郎は瞬いて、頬に色乗せて照れつつ。
「……ア、ハイ」
 こくりと頷いた。
 すると――空のと陸のがいちゃついてるぞ、と海の妖たちがはやし立てる。
 その声に倫太郎と夜彦は視線合わせ、同じタイミングで笑いあうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
ティアちゃん(f26360)と

神父の仮装
神様がこの格好って笑っちゃうけど
可愛い悪魔に誑かされるなら良いかな
十字架に戯れに口付けながら
さぁ何処に連れてってくれるの?
ティアちゃんをもらって―ううん
甘いソーダ水に溺れるみたいに海へ

賑やかしは歌とダンスを
海の中に響くぐらい歌声を響かせて
君の誘いに乗ってステップ踏んで
くるくるとおちるよう
楽しいねって笑い合う
ああ、十字架がどっかいっちゃった

遊んで楽しんで、ふと聞いてみる
ねぇもしさ
ティアちゃんとずっと一緒に居るって言った子が
滅びの言葉を望んだらどうする?
時よ止まれ―と

いいよ
それがティアちゃんの願いなら
叶うなら今すぐにでも―なんて、ね?ふふ
笑って秘め事みたいに


ティア・メル
ロキちゃん(f25190)と

悪魔のツノに悪魔の尻尾で小悪魔の仮装
んふふ、ロキちゃんを誑かしちゃおう
素敵な神父さんの手を引いて
向かうは海
ぼくにとっての故郷みたいな所
一緒に来てくれるお礼にぼくをあげる
甘くて美味しいソーダ水だよん

響く歌声はずっと待っていたみたいに
ふたりでステップを踏んだなら楽しくて目的を忘れそうになっちゃう
ゆびさきを絡めて、付かず離れず
楽しいねっ!ロキちゃん
ありゃりゃ
十字架を探そうと彷徨う視線は君に釘付け
んに、誑かされてたのはぼくだった?

そうだね
一緒に時を止めるよ
君が1番美しい―――ってね
ロキちゃんは?
ぼくと一緒に時を止めてくれる?
ふふふ、悪い神父さんだね
甘い秘め事を飲み込んだ



 妖怪たちが集って、そして夜行を始める。
 かつての日々を、懐かしみ楽しむかのように。
 その中でひらりと、衣の裾を翻し、混ざる姿があった。
 神父の仮装の己を顧みてロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)は笑い零す。
「神様がこの格好って笑っちゃうけど、可愛い悪魔に誑かされるなら良いかな」
 そう言って、ロキが視線を向けた先はティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)がいる。
 悪魔のツノに悪魔の尻尾で小悪魔の仮装。くるりと回って、ティアはどうかなと笑み零して、表情は小悪魔のもの。
「んふふ、ロキちゃんを誑かしちゃおう」
 ロキのその手を取って、行こうとティアは言う。
 十字架へと戯れに口づけながら、ロキは笑って手を引かれるまま歩み始める。
「さぁ何処に連れてってくれるの?」
 それは――海。
 そこはティアにとって故郷のよう所。
「一緒に来てくれるお礼にぼくをあげる」
 甘くておいしいソーダ水だよん、と笑う彼女。
 楽し気なその言葉にロキは瞬き、ティアちゃんをもらって――ううん、と小さく首を横にふり、甘いソーダ水に溺れるみたいに海へ。
 人魚が先往く、その海は――水の中にあってそうではないようでもある。
 ただ歩むだけでなく、楽し気に。賑やかしは歌とダンスだ。
 海の中に響く歌声を奏でる。ロキのそれに、ずっと待っていたみたいに、ステップ踏んでくるりと回って誘いをかけるティア。
 伸ばした手、指先ひっかけて、絡めて。
 その誘いに乗ってロキもステップ踏んでいくだけだ。その感覚はくるくると、おちるよう。
「楽しいねっ! ロキちゃん」
「楽しいね」
 と、笑いかけて――ふと、ぷつりと十字架繋ぐものきれてどこかへ。
「ああ、十字架がどっかいっちゃった」
「ありゃりゃ」
 どこかへ、深い海へときらきら沈んでいった十字架。それを探そうとティアの視線は彷徨っていたはずなのに、それはいつのまにかロキに釘づけた。
「んに、誑かされてたのはぼくだった?」
 と、小さく零せば――その声が聞こえたのか。ロキはティアの方をふと向いて。
「ねぇもしさ」
 ティアちゃんとずっと一緒に居るって言った子が――滅びの言葉を望んだらどうする?
 悪戯するように問いかける。
 時よ止まれ――と、それを音にはせずに紡いで見せて。
 その問いかけにティアは瞬いて、笑って返したのだ。
「そうだね、一緒に時を止めるよ」
 君が一番美しい――ってね、と帰す。
「ロキちゃんは? ぼくと一緒に時を止めてくれる?」
「いいよ。それがティアちゃんの願いなら」
 叶うなら今すぐにでも――なんて、ね? と。ふふとロキは笑い零す。
「ふふふ、悪い神父さんだね」
 そう、小悪魔に誑かされた悪い神父さと揶揄うように返して――笑って。
 秘め事のように、甘いそれを飲み込んだ。
 きっとそれは海の底に沈んでいく、この夜だけのもの。
 ぷくりと、上がっていく泡は消えていくものだけれども、過ごした時は消えてはいかない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
らんらんと夜行の列に加わろう

かの方は、人魚だけでなく皆に慕われていたのだな
喧嘩をしては、酒を飲み、語らいあった、か
ふふ、俺達の様だな、らんらん

友との戯れ合いの喧嘩もまた楽しいし
狐の大妖の九尾はもふもふで気にはなるが
今宵は幽世の世界を眺め歩きつつ、少し友と話がしたい気分だ
この世界で絆結んださめさめも共に
…ふむ、さめさめはこんこんと仲良しだな(微笑み

らんらんは、ひとつになりたいと想う程の存在がいたことがあるか?
俺はまだその感情は分からない
だが、狐の大妖の言の葉は分かる気がする
俺は生に執着はないし、今が楽しければそれでいい
けれど…きっと忘れないだろうなと、最近思う
皆と…友と過ごした楽しい時間の事はな



 楽しそうな声をあげながら、妖怪たちが進んでいく。
 その列へと、友たる終夜・嵐吾(灰青・f05366)に、共に加わろうと筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は涼やかに笑いかけた。
「ちゃあんと世界が終わるんを止めてくれたんじゃね」
「ふふ、俺一人ではないがな」
 ありがとの、とここへ導いた嵐吾は清史郎へと笑いかけた。清史郎は友の頼みであったからなと緩やかに微笑んで。そして、海へと向かう人魚たちの姿を目にとめた。
 彼らは口々にかつての記憶を語って、懐かしんでいるようだ。
「かの方は、人魚だけでなく皆に慕われていたのだな」
 喧嘩をしては、酒を飲み、語らいあった、か――と、現れた狐の大妖怪と、烏天狗の話を聞いて清史郎はふと笑み零した。
 その聞いた話は――身近に感じるものだったからだ。
「ふふ、俺達の様だな、らんらん」
「わしらは喧嘩はそんなにせんじゃろ、いやするか」
 けれどその喧嘩よりも多く、遊んでおるしと言って、嵐吾は笑い返すのだ。
「喧嘩しても本気じゃないしの」
「ああ、戯れ合いの喧嘩もまた楽しい」
 話しながら、清史郎の視線が向く先を嵐吾は追いかける。
 そこにはもっふりした尾を揺らす狐の大妖だ。
 もっふもっふ。
 それを見て、あれに惹かれておるんじゃろな~と嵐吾はのんびりと思う。
「……さすがにあのもふにはわしも負ける……せーちゃん、気になるんか?」
 ふわっと己の尻尾を揺らめかせながら問う嵐吾に、たしかにもふもふで気にはなるがと笑み零して。
「今宵は幽世の世界を眺め歩きつつ、少し友と話がしたい気分だ」
 それから、と清史郎は己の肩の上に器用に飛び乗ったもふもふ仔狐の氷雨の喉元を擽る。
「この世界で絆結んださめさめも共に」
「ふふ、話ならいつでもしよるけど、このような場でするのはなかなかないか」
 もちろん、さめさめと共にと嵐吾の連れたるこんこんも姿見せる。すると氷雨は肩から降りて、一緒に並んで歩み出した。
「……ふむ、さめさめはこんこんと仲良しだな」
「順調に仲良くなっとるの」
 尻尾をお互いにふわふわ揺らしつつ、とてとてと歩いていく氷雨とこんこんを見つつ、行こうかと二人で歩み始める。
 賑やかな声。妖怪たちの笑い声――踊り始める物だっている。
 そんなもの達の姿を見つつ、ふと。
「らんらんは、ひとつになりたいと想う程の存在がいたことがあるか?」
「ん? いたというか、おるよ。むしろもう一緒~」
 とんと己の眼帯を指先でたたく。そうだったなと清史郎は瞳細め小さく笑った。
 その瞳の洞で眠っているものとは、確かに一つともいえる。
「しかし、なんでそんなこと聞くん?」
「俺はまだその感情は分からない」
 ああ、箱じゃったもんねと嵐吾は軽く返す。けれど、それを問うということは何か、思うところがあるのだろうと次の言葉を待った。
「だが、狐の大妖の言の葉は分かる気がする」
 俺は生に執着はないし、今が楽しければそれでいい――硯箱の男はそう思っていた。
 それは今も変わらないのだ。
「けれど……きっと忘れないだろうなと、最近思う」
 しかし、変化はある。
 それは人の心の機微がわかってきたからなのか、それともまた別の何かがあるのか。
「皆と……友と過ごした楽しい時間の事はな」
「わしも楽しい事はきっと忘れんよ」
 今までの想いでも、それから今も、これからもきっとと友が笑う。
 これからも続くその日々が――楽しみだと、清史郎も笑み深くして。
 妖達との時間も思い出のひとつになっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩迎櫻

噫、皆楽しそうだね
例え骸になろうとも
重ねた想いは枯れない
世界が終わらなければ、いきていれば
いつかきっと出逢えるのだろうね

私かい?私は鬼になってみた
サヨはキョンシーでリルは陰陽師…2人共似合っているね
噫、そうだ
リルに祓われてしまうよ、サヨ
笑いかわして
さぁ行こう

私は鴉に変じて、空を飛んでいるよ
空は馴染み深いかもしれないな

リルと目配せ、歩む路はひとつ
私達の櫻の手をとり地を歩もう

美しい櫻と寄り添って永遠に咲かせていられるように
綻ぶ桜に心が染まる
転じ生まれたこの世界
きみのいる世界はこんなにも彩に溢れている

リルの歌が言祝ぐようだ
温かな春の手を握りしめる
離れ離れにならないように

噫、私は幸せな神であるよ


リル・ルリ
🐟迎櫻

心が踊って華やいで笑顔が自然に零れてく
妖達が重ねる心があたたかい
皆、かの方をちゃんと覚えてるんだ
皆に好かれていたんだね
大切なひとは何時だって胸のうちに咲いている

僕が扮するのは陰陽師!
櫻宵は実は陰陽師だもん
カムイは鬼?赤鬼だ
祓ったりしないんだから!

どの道へいく?

僕は水にいきている
水の中は僕の世界

ヨルはカグラに抱っこされてご機嫌だ

カムイと目配せ
游ぐ路はひとつ

僕らの櫻の手を繋ぎ
皆で一緒にこの地をすすむ
どんな困難も越えられる

溢れる歌はこの道を祝すように
僕は歌う
君に出逢ったこの世界はこんなにも音に溢れてる

握った手を離さぬように
例えば終わりを謳われたって
共に

ふふ!僕だって
なんて幸せな人魚なんだろう


誘名・櫻宵
🌸迎櫻

大切な存在はいつだって傍にいてくれるわ
あなたが忘れない限り生き続けるの
心にね

私は殭屍よ
どうかしら?
リルは陰陽師に、カムイは鬼ね!
うふふ
リルに祓われてしまうかもしれないわね、私達!
カムイと瞳合わせて含み笑い
さ!宴へ出かけましょ

私は地に咲いているわ
根を張り芽吹く桜花のように

二人の声に桜咲く

私の肩にカラスがとまり
空に縁ある親友と水に縁ある恋人と
いとしいふたつの手を握りしめ

三人一緒、地を踏み歩いてゆく
どんな獣道だって怖くない
踊るような足どりで
指先に春の熱を絡めて
終ることなく廻り続く世界を歩む
大切なあなたとあなたと共に
空と海と共にある
世界はこんなにも愛おしい!

私はなんて、しあわせな櫻なのかしら!



 空も、海も、陸も。すべてを制するように妖怪たちは列を作り進んでいくのだ。
 その様を目に、リル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)の表情は綻ぶばかり。
 心が踊って華やいで笑顔が自然に零れてくのだ。
 妖達が重ねる心があたたかい――そう、リルは感じていた。誰も、何も忘れていないのだと。
「皆、かの方をちゃんと覚えてるんだ。皆に好かれていたんだね」
「大切な存在はいつだって傍にいてくれるわ」
 あなたが忘れない限り生き続けるの、と誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)は言ってそうっと己の胸に手をあてた。
 ここに、心にねと。
 大切なひとは何時だって胸のうちに咲いている。
 それは自分と、同じなのだとリルはなんだか嬉しくもなってくる。
 その様を朱赫七・カムイ(約彩ノ赫・f30062)は見詰め、ふと瞳細めた。
「噫、皆楽しそうだね」
 例え骸になろうとも、重ねた想いは枯れない。
 それを示しているようだとカムイは思う。
「世界が終わらなければ、いきていれば――いつかきっと出逢えるのだろうね」
 思い零して、カムイが視線向けた先にはふたりがいて、今日の仮装はと話をしているところ。
「僕が扮するのは陰陽師!」
 櫻宵は実は陰陽師だもん、と言って返すリル。
「私は殭屍よ。どうかしら?」
「私かい? 私は鬼になってみた」
「カムイは鬼? 赤鬼だ」
「リルは陰陽師に、カムイは鬼ね!」
 そう言って口々に言葉を重ねて。
「サヨはキョンシーでリルは陰陽師……2人共似合っているね」
 頭の上から足の先まで改めて見て、もう一度似合っているねと頷くカムイ。
「うふふ、リルに祓われてしまうかもしれないわね、私達!」
「噫、そうだ。リルに祓われてしまうよ、サヨ」
 櫻宵とカムイは視線合わせて、ふたりで含み笑い。
「祓ったりしないんだから!」
 リルは、ふたりは祓わない陰陽師だよ! なんていう。
 そんな風に笑いをかわして――こうしていられる幸せがここにはあって。
「さ! 宴へ出かけましょ」
 さぁ行こう、とカムイは歩み始める。
「どの道へいく?」
 僕は水にいきている、とリルは思う。
 水の中は――リルの世界だ。
 そして、リルの傍にいつもいるヨルは、今はカグラに抱っこされてご機嫌。
「私は鴉に変じて、空を飛んでいるよ」
 だから、空は馴染み深いかもしれないなと空見上げる。
 そして櫻宵は――地にいる。
 私は地に咲いているわ、と言うのだ。
 根を張り芽吹く桜花のように――桜竜は地と共にあるのだ。
 しかしもう、今日進む道は――決まっている。どこに行く、というのはもう相談しなくていい。
 カムイとリルは目配せしあう。
 歩む路はひとつと、櫻宵の手をとった。私達の、櫻と。
 そう、游ぐ路はひとつ、と。
 真ん中に挟まれた櫻宵。その肩にカラスがとまって。
 櫻宵は――どんなに、今この瞬間が幸せなのだろうと思う。
 空に縁ある親友と水に縁ある恋人と、いとしいふたつの手を握りしめ、共にここにある。
 共に地を往けるのだ。同じ速さでこの地を共に進んでいける。
「どんな獣道だって怖くないわね」
 どんな困難も越えられるからと、リルが笑う。
 踊るように足取りは軽く。繋いだ手――指先はあたたかい。
 それはきっと、春の熱。
 美しい櫻と寄り添って永遠に咲かせていられるように――綻ぶ桜に心が染まる。
 カムイの心に、花が咲いていくのだ。
 転じ生まれたこの世界――この世界は、きみのいる世界はとカムイは心に抱く。
(「こんなにも彩に溢れている」)
 楽しくて、幸せで――溢れる想いがある。
 それをリルは歌として、この道を祝すように紡ぎ始めた。
 君に出逢ったこの世界はこんなにも音に溢れてる――その歌にだれかが、同じ音を重ねて返して、響きはまた深くなるのだ。
 その、リルの歌声。言祝ぐようだ、とカムイは笑み零す。
 そしてきゅっと、繋いだ手を握りしめた。
 温かな――春の手だと、カムイもまた思う。
「離れ離れにならないように」
 この世界は終わらない。
 終わることなく廻り続く世界を歩む。櫻宵は、思うのだ。
 大切なあなたとあなたと共に、と二人をみやって。空と海と共にある――それはなんて。
 世界はこんなにも愛おしい! と。
 そう、この手はずっとこのままに。
 離さぬように――それが例えば、終わりを謳われたってだ。
 共に、とリルの視線は紡いでいる。
「私はなんて、しあわせな櫻なのかしら!」
「噫、私は幸せな神であるよ」
「ふふ! 僕だって」
 なんて幸せな人魚なんだろうとリルは尾鰭をくゆらせる。
 だれが一番幸せだ、なんて言わない。
 だって三人共にあれることが――幸せなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

君影・菫
ちぃ(f00683)と

毎夜物語を紡ぐ語り部の纏いでひらりひらり
好奇心の侭に手を引く相手は白雪の王子
…ふふ、物語やと姫の筈やのにまあ
よう似合うし、面白い物語聞かせて貰た
なあ、うちにも金の林檎ちょーだい?

何処へ之くのも良いけれど
海も地も空も欲張るように浜辺に座って
膝へ導き、招こか
語り部は語ることしか出来んから
キミには寝物語をあげるて膝枕の誘い
隣の狐はんに昔の話聴きながら
微睡む王子に物語のように紡ぎを零すそれは揺りかご
子供のように笑う眸に少し大人びた笑みを重ねて
狐はんには語り部が覚えてゆくねと約束でも

喧騒もひとつの奏で
ふわふわした心地に噺とそれから子守唄
毒も何もない夢の一夜に
おやすみ、白雪の王子さま


宵鍔・千鶴
菫(f14101)と

異国の装飾が靡く彼女の纏う風貌は
艶かしくて、識らない国のひとみたい
自分も慣れない白雪名乗る王子を装い
実は姫は男でした、って物語も面白いだろ?
金の林檎を齧り、勿論きみにも甘い蜜林檎をひとつ

引かれる手は彼女に委ね
凡ての景色を見渡せる場所へ
導かれるはきみの膝、躊躇いがちに
…少し緊張するね
俺が眠るまでお噺聴かせてくれるなら
甘え寝転び、柔く心地よい膝に微睡みは直ぐ

見上げれば菫色の眸と重なって
手を伸ばし子供っぽくふわりと白雪は笑う
薄れていた懐かしい記憶にも浸るから
傍ら狐には俺の代わりに昔噺を預けよう

今宵だけは毒を喰む無いままに
きみの噺と子守唄にだけ耳を傾けて
おやすみ、語り部のお嬢さん



 ひらり、と毎夜物語を紡ぐ語り部の装いで君影・菫(ゆびさき・f14101)はくるり回ってみせる。
 そして手を伸ばし、好奇心のままにその指先とって、手を引く相手は白雪の王子――宵鍔・千鶴(nyx・f00683)だ。
 菫のその、異国の装飾靡く姿というのは艶めかしくて、識らない国のひとみたいと千鶴は思う。
「……ふふ、物語やと姫の筈やのにまあ」
「実は姫は男でした、って物語も面白いだろ?」
 慣れない白雪名乗る王子を装って、千鶴は笑って手の上で金の林檎を遊ばせる。
 よう似合うし、面白い物語聞かせて貰たと菫は笑う。
「なあ、うちにも金の林檎ちょーだい?」
「勿論」
 その言葉に千鶴は一口齧り、きみにも甘い蜜林檎をひとつ、と渡すのだ。
 二人、その手に林檎をもって進む先はどこだろうか。
 何処へ之くのも良いけれど――海も地も空も欲張るように浜辺へと、菫は腰下す。
「おや、ここでいいのか?」
 なんて、皆を眺める狐の大妖からの声にここがええんよ、と菫は笑う。
 行く先は菫に委ねていた。ぽんぽんと、座った膝を菫が叩いて招いている。
 語り部は語ることしか出来んから――キミには寝物語をあげる。
 だから、と膝枕の誘い。千鶴は躊躇いがちに、傍らに腰下して。
「……少し緊張するね」
 その膝に頭預けて、眠るまでの間に物語を。
 傍らの狐が語る昔話。
 年若い妖怪たちが集って、その技を競いあった日々の事。
 やんちゃで、それぞれ泳ぎが、飛ぶのが、駆けるのが下手な頃に知り合った。
 喧嘩も、共に笑いあい、共に肩を並べて戦ったりも――様々な思い出を紡ぐ。
 共に遊んで、競い負った妖怪はほかにもいた。けれど、特に強く縁結んだのは鯨と、烏天狗と狐。
 先に逝ってしまった鯨は、その最後の夜に大きな飛沫をその空に跳ね上げて美しい夜を贈ってくれたのだと紡ぐ。
 優しく、懐かしみを含むその声は、揺りかごのようなものだ。
 千鶴の髪を、そっと菫は梳いて微笑む。
 それがくすぐったかったのか、千鶴は瞼を震わせる。見上げれば、菫色と出会って、視線は重なるのだ。
 千鶴は、白雪は手を伸ばしふわりと子供っぽく笑う。
 その、子供のように笑う眸に少し大人びた笑みを重ねる菫。
 薄れていた懐かしい記憶にも浸るようなここちだ。
 そして――狐はん、と声かける。
「語り部が覚えてゆくね」
「ふふ、そうしてもらえると嬉しい」
 誰かが、覚えていることは嬉しい事だとふわりと尾を揺らして。
 遠く――夜行の賑わいが聞こえてくる。ここへそろそろ戻ってくるのかもしれない。
 その喧騒もひとつの奏でだ。
 ふわふわした心地。
 今宵だけは毒を喰む事ないままに、白雪はゆるりとまた瞳伏せることができる。
 語り部が紡ぐ噺と子守唄。夢見心地の時間はとろりとろりと、微睡むためのものだろうか。
 毒も何もない一夜を王子さまにと、語り部は微笑んだ。
「おやすみ、白雪の王子さま」
 その優しい声に耳傾けて、小さな笑みと共に。
「おやすみ、語り部のお嬢さん」
 まだ夢は――覚めなくていい。少なくとも、空と海と地の夜行が戻ってくるまでは。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

劉・碧
縁(f23531)と

仮装は金華猫
生涯で手に入れる財宝はただ一つ
その在り方までも模倣するように
ゆぅらりと作り物の猫尻尾を動かして見せる
縁は桜色の金魚かな
愛らしいな、よく似合ってる

黒衣に隠れた指を掴みやすいよう広げては
掴む幼く柔い手を緩く握り返し
空と海と浜と…さて、縁はどこ行きたい?
あぁ、共に往こうか

…ところでなんでその仮装を選んだんだ?
成る程、そうかと笑み返し
俺はそうだなぁ…生涯で唯一つの財宝を追っかける為さ
どうにも手に入る気はしないが…

そうだなぁ…いっとう甘やかなものさ
縁が大人になったら聞かせてやろうな
何、金華の猫は手に入れるまでは生き延びるという
暢んびり待っているさ

夢の続きを追うように歩こう


誘名・縁
❀碧のあにさまと/f11172

纏う衣はふうわりひらり、桜翻す桜金魚の装いを。
彩し妖、踊るよう
喜色溢れるあやしの夜を游ぎ参りましょう

碧のあにさまはうつくしかわゆし
金華の猫なのですね

妖の宴加わるならば海へ

碧のあにさま
ご一緒して下さいますか?
握られる手の大きく逞しくあたたかなこと
綻び微笑む

游ぐ海の美しきこと
泳げぬ不安も
碧のあにさまがいらっしゃるゆえ解け消えるのです


縁が何故この仮装を?
白珠人魚のてて様のように、縁も泳いでみたかったのです
碧のあにさまは?

あなた様の抱くいっとうの
宝とは如何なるものなのでしょう
きっとそれはあまやかな
かけがえのないものなのでしょうね

こんな夜もよいですわね
嗚呼、夢の中を游ぐよう



 ゆぅらりと、作り物の猫尻尾を劉・碧(夜来香・f11172)は動かして見せる。
 碧の仮装は金華猫。
 生涯で手に入れる財宝はただ一つ。その在り方までも模倣するような緑。
 そしてその横でふうわりひらり、薄桜抱く白雲の髪もふうわり、共に躍らせて。桜翻す桜金魚の装いの誘名・縁(迎桜・f23531)の表情は楽しみに満ちている。
 彩し妖、踊るよう。桜金魚はゆうるりと、回って見せる。
 美しい桜金魚がくるり躍れば金緑石の眦も緩む。そのいろに、縁の桜霞の瞳も柔らかに緩むのだ。
「愛らしいな、よく似合ってる」
 その、碧の言葉に縁は嬉しそうに笑って。
「碧のあにさまはうつくしかわゆし、金華の猫なのですね」
 動く尻尾に気づいてそれをおいかける。そして碧のあにさま、と笑いかけ。
「喜色溢れるあやしの夜を游ぎ参りましょう」
 碧は、黒衣に隠れた指を掴みやすいように広げる。その指先を縁の幼く柔い指が掴んで、碧も握り返す。
「空と海と浜と……さて、縁はどこ行きたい?」
 その問いに、縁は海へと言う。
 桜の精である縁にとってそこは知らぬ世界。地は、己があるところ。空も見上げれば近いけれど――海は、遠く。
「碧のあにさま、ご一緒して下さいますか?」
 その、握られる手の大きく逞しくあたたかなことに綻び、微笑んで。
「あぁ、共に往こうか」
 海の中へと向かっていく。
 多くの妖怪たちも共に、海の中を泳いで、進んで。
 夜の海――游ぐ海の美しきこと、と縁は笑む。不思議な、己の知らぬ世界に一歩踏み込んだら心はその世界を享受することに傾けられる。
 泳げぬ不安もあったけれど――繋いだ手を見て、そして碧を縁は見上げる。
 碧のあにさまがいらっしゃるゆえ解け消えるのですと微笑んで。
「……ところでなんでその仮装を選んだんだ?」
「縁が何故この仮装を?」
 それは、と縁は小さく笑む。
「白珠人魚のてて様のように、縁も泳いでみたかったのです。碧のあにさまは?」
「成る程、そうか。俺はそうだなぁ……生涯で唯一つの財宝を追っかける為さ」
 笑み返し、どうにも手に入る気はしないが……と最後は苦笑まじりに。
 その言葉に縁は瞬いて。
「あなた様の抱くいっとうの、宝とは如何なるものなのでしょう」
「そうだなぁ……いっとう甘やかなものさ」
「きっとそれはあまやかな、かけがえのないものなのでしょうね」
 きゅっと、握る指に力を込めてくすぐったそうに紡ぐ縁。
 縁が大人になったら聞かせてやろうなと碧は笑いかける。
「何、金華の猫は手に入れるまでは生き延びるという。暢んびり待っているさ」
 尻尾を動かして――歩みを共に。縁が大人になるのと、宝を得るのとどちらが早いだろうか、なんて思いつつ。
「こんな夜もよいですわね。嗚呼、夢の中を游ぐよう」
 夢の続きを追うように、ゆうるり、泡弾ける夜の海を歩いていく。
 まだこの夜は終わらない。
 賑やかさの中に溶け込んで、日常から離れた世界を楽しむのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブOK
彼岸花柄の中華風衣装に彼岸花意匠がされた黒の布面。

少し離れた場所から聞こえてくる狐の話を聞きながら浜で夜行の列を眺める。
賑やかに、がいいんだろうがどうしよう。今の俺にはそれができない。
何度かこんな風に別たれた大切な人の話を聞くにとてもつらくなる。
寂しいと思う事は悪い事じゃない。それはその人がまだ心の中で生きてるって事。
たとえ一つになれなくとも共にあるって事じゃないか。
たとえ今は一人寂しくともそういう人に出会えた事、一時でも共にあれたことは幸いなのだと思う。
少し羨ましい。
主の事は大事な思い出だけど、俺が俺として生まれてからはそういう人はいないから。
いつかと願いながらもう諦めてる。



 黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は、夜の海を、そして空を眺めていた。
 狐が誰かに話している――その声が聞こえてくる。
 競いあった事もあった。
 知り合ったのはまだまだ年若く幼い頃のことだという。
 喧嘩もした、共に笑いあい、共に肩を並べて戦ったりもしたと、楽しそうな声だ。
 狐と、烏天狗と――鯨と。
 ともに重ねた時間は彼らだけのものなのだろうか。
 先に逝ってしまった鯨の、その最後の姿も狐は語る。
 大きな飛沫をその空に跳ね上げて美しい夜を贈ってくれたのだと――懐かしみを滲ませて。
 そんな話に、耳を傾けていた。
 彼岸花の柄の中華風衣装に、その衣と同じ彼岸花の意匠が施された黒の布面をつけた瑞樹。
 この夜行に集う妖怪たちの昔話を小さく、聞きながら空と海と陸と。
 並ぶそれを眺めていた。
「賑やかに、がいいんだろうが」
 どうしよう、と思う。今の瑞樹にはそれができないからだ。
 何度かこんな風に別たれた大切な人の話を聞くにとてもつらくなる。
 寂しいと思う事は――悪い事じゃないとは思うのだ。
 それはその人がまだ心の中で生きてるって事なのだから。
「たとえ一つになれなくとも共にあるって事じゃないか」
 たとえ今は一人寂しくともそういう人に出会えた事、一時でも共にあれたことは幸いなのだと、瑞樹は思う。
 少し、羨ましいと、この場に集った妖怪たちを想う。
 主の事は大事な思い出だ。けれど、瑞樹が瑞樹として生まれてからはそういう相手はいないのだ。
 いつか、巡り合えたらと願いながら――瑞樹はもう諦めてもいる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f09129/ユルグさん

烏天狗さんの羽搏きを先導に、天へ

はためく袖や裾
翼無き身でも悠々と
風に乗り
雲に隠れて遊び
其れでも星は、

――あんなに遠いのですねぇ

高みへ航る程
空は昏く深くなり
宇宙により一層
近付いた筈なのに

掴めるものは
なぁんにも無くて
軽く肩を竦め
何の気なしに懐に手を遣れば
隠しに仕舞っていた小袋に指先が当たる

中身は
幾つもの小さな飴玉

…ね、
甘露を降らせてみましょうか

夜行にはきっと
ささやかな悪戯が付き物だから

雨ならぬ飴は地上への贈り物
或いは流れ星にも見えるかもしれない

差し出された手へ
掌を重ねる素振りで
小気味よい音を響かせ打てば
ふくりと笑む

えぇ勿論
あなたへは飛び切り甘い盃を一献
さぁさ
酔いに参りましょ


ユルグ・オルド
f01786/綾と
地面を潜った海の底
覗いたんなら次は天辺

鳥の眺めは何時でもこんなかね
風の標も迷うまいと
翼のない身で歩くなら
ふと踏み外して落ちそうな
こんな高揚も悪かないと口笛一つ

泰然と行く隣を仰いで追う視線は遠く
空を飛んだ程度で手が届いちゃあネ
一つ上がって一歩寄せて
掌中なんざ詰まらないさ
尋ねて覗く裡だって、同じように

悪戯な提案にはいつでも小さな笑みがのる
イイね、今日ばっかりは
綾が星にかける願いの主だ
コンと鞘で弾いてもっと遠くまでと駆けて

流れ落ちる滴を見送ったんなら
ネ。
勿論俺にもあるんでしょうと手を出して
目覚める一音にも夢の世界はまだ割れず
そりゃア楽しみだと並び歩く夜は終わらない



 空を歩むとは、如何なるものか。夜空を自由に駆けることができるのは、空を飛ぶことができる者たちだけだが――今宵は、空へと導いてくれるものがいる。
 都槻・綾(糸遊・f01786)は先を行く烏天狗の羽搏きを目に、一歩踏み出した。
 はためく袖や裾。翼あるものは一層自由に。
 翼無き身でも悠々と風に乗り誘われるままに。
「鳥の眺めは何時でもこんなかね」
 そう言って笑うはユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)だ。
 地面を潜った海の底、覗いたんなら次は天辺と笑い零して。
 風の標も迷うまいと、翼のない身で歩くならとユルグは僅か、視線を下へ。
 ふと踏み外して落ちそうな――こんな高揚も悪かないと、今だけ味わえる感覚、世界に口笛一つ。
 雲に隠れて遊び、其れでも星は、と綾は見上げる。
「――あんなに遠いのですねぇ」
 泰然と行く隣を仰いで、追う視線は遠く。
「空を飛んだ程度で手が届いちゃあネ」
 ユルグは一歩、先を踏み出して――一歩、空に寄せて手を伸ばして。
「掌中なんざ詰まらないさ」
 届かぬものを、掴んだかのように。でもそこには、何もないのだ。
 あの煌めきはまだまだ、永遠に遠いのだろう。
 進んで高みへ航る程、空は昏く深くなり。宇宙により一層、近付いた筈なのにと綾は肩竦めて見せた。
 確かに、掴めるものはなぁんにも無くて。
 同じく手を伸ばそうかと思ったけれど、何の気なしに懐に手を遣れば――隠しに仕舞っていた小袋に指先あたって、綾は瞬きひとつ。
 掴めるものは此処にありました、と笑う。その、懐探ったその手に何があるのとユルグはのぞき込む。
 これですよ、と綾は掌に幾つもの小さな飴玉を転がして見せて。
「……ね、甘露を降らせてみましょうか」
 夜行にはきっとささやかな悪戯が付き物だからと、綾は笑みにその心を乗せて。
 その悪戯な提案に傍らの男は異を唱えることはなく――むしろ小さな笑みを。
「イイね、今日ばっかりは――綾が星にかける願いの主だ」
 雨ならぬ飴。それは地上への贈り物だ。
 或いは、流れ星にも見えるかもしれないと悪戯に疼く子供のように言って。
 そのひとしずくをユルグはコンと鞘で弾いてもっと遠くまでと駆ける。
「ネ。勿論」
 俺にもあるんでしょとユルグは手を差し出す。
 その手を見て瞬いて、ふと笑み浮かべて掌を重ねる――そのそぶりで小気味よい音を響かせ打てば、ふくりと笑む。
 ありゃ、とその目覚めるような一音にも、夢の世界はまだ割れずだ。
 そこに甘い飴は無く、視線向ければ悪戯の続きを向けるように。
「えぇ勿論。あなたへは飛び切り甘い盃を一献」
 それは確かに飴よりも――甘いものとなるだろうか。
「さぁさ、酔いに参りましょ」
 そりゃア楽しみだとユルグは返す。飴もいいがそれもいい。
 けれどまだ夜行の終わりはしばし先の様。並び歩く夜は終わらず、にぎやかな声が響く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
小夜子さま(f01751)と

彼女と合流し、陸の行列に加わります
黒地の着物(柄お任せ)・それに黒猫のお面を頭につけて
妖の皆さまに混ざりとうございます
小夜子さまとは色違いのお揃いでございますね
とてもおかわいらしくていらっしゃいますよ

まあ、小夜子さま
カクリヨの世界は初めてでいらっしゃいましたでしょうか?

この世界を救うためとはいえ、折角結ばれたご縁を
断ち切る事になってしまったのでございます…
そのご様子を拝見致しておりましたら、わたくしも
少し人肌恋しくなって、小夜子さまにおいで頂いたのでございます

小夜子さまは、どうかなるべく
多く一緒にいてくださいませね
危ない時は、わたくしが小夜子さまをお守り致しますから


沖浦・小夜子
友人のベイメリア(f01781)と

ベイメリア様にいざなわれてやってまいりました。
これが、カクリヨ。
なんだか足元が少し落ち着きませんね。ふわふわします。
不確かなものに揺蕩っているのでしょうか。

ベイメリア様と共に、ベイメリア様とお揃いの柄の、
白の着物と、白猫のお面で、行列に加わります。

この世にはどうにもならない事はないと思っていますが、
それは手を伸ばしてはいけないものなのでしょうか。
私は人の気持ちがどこからやってきて、
どこへゆくのかまだ分かりません。

ベイメリア様、そんな事言わないで下さい。
私がベイメリア様の盾になります。
これからもベイメリア様といろんな事がしたいです。



 黒地に赤い花咲く着物を纏い、黒猫のお面を頭へと乗せたベイメリア・ミハイロフ(紅い羊・f01781)は、その姿を見つけて手を振る。
 沖浦・小夜子(深淵泥濘プリズナー・f01751)は白地に赤い花の着物と、白猫のお面をつけて。
 手を振るベイメリアのもとに、小夜子は駆け寄った。
 二人の装いは色違いの揃いのもの。はたから見れば、姉妹のようにも見えるかもしれない。
「色違いのお揃いでございますね。とてもおかわいらしくていらっしゃいますよ」
 その言葉に小夜子もくすぐったそうに笑ってこの世界を見渡した。
「これが、カクリヨ」
 なんだか足元が少し落ち着きませんね。ふわふわします、と――足元に目を向ける。
 地にちゃんと足はついているというのに、不思議な感覚だ。
「不確かなものに揺蕩っているのでしょうか」
「まあ、小夜子さま。カクリヨの世界は初めてでいらっしゃいましたでしょうか?」
 それなら、この世界を今は歩いて、楽しみましょうと夜行の列へと二人も加わる。
 楽しそうな妖たち。しかし、この列があるのは――世界の終わり、その可能性があったからだ。
 ひとつの終わりの気配にまたこうして集えた妖怪たち。
「この世界を救うためとはいえ、折角結ばれたご縁を断ち切る事になってしまったのでございます……」
 ベイメリアは――人魚が零していた想いを知っている。
 その気持ちを知ってしまったから、ただ敵意を向けるだけではいられなかった。
「そのご様子を拝見致しておりましたら、わたくしも」
 と、ベイメリアは小夜子を見て微笑む。
「少し人肌恋しくなって、小夜子さまにおいで頂いたのでございます」
 その話を聞いて小夜子はベイメリアを見詰めていた。
「この世にはどうにもならない事はないと思っていますが、それは手を伸ばしてはいけないものなのでしょうか」
 私は、と小夜子は続けて紡ぐ。
 人の気持ちがどこからやってきて、どこへゆくのかまだ分かりません、と。
 いずれ、やがて。
 その行く先を知ることもあるのかもしれない。
 その道筋にこの夜行が導いてくれるのかどうかはわからないけれど、今の一時はふたりにとって穏やかな、楽しい時間となるのだろう。
「小夜子さまは、どうかなるべく。多く一緒にいてくださいませね」
 危ない時は、わたくしが小夜子さまをお守り致しますからとベイメリアはお面をちょっとだけ被って、告げる。
 けれど小夜子はふるりと、首を横に振りベイメリアを真っすぐに見上げる。
「ベイメリア様、そんな事言わないで下さい」
 私がベイメリア様の盾になりますと小夜子は言う。
 これからもベイメリア様といろんな事がしたいですと、己の望みを告げて。
 小夜子さま、とベイメリアはその名を呼び笑いかける。
 では共に、守り合えば長く一緒にいられますねと紡いで。
 すぐに終わる縁にはしたくないのだと、それはお互いが思っている事。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 めぐる夜行の列は久方ぶりの賑わい。
 それはいつ終わるかわからぬような夢心地の時間。
 すこおしだけ、この世界に戻ってきた鯨の大妖はきっと今頃、その様を眺めて。
 ああ、加わりたかったなぁと懐かしみ、少し残念がりながら笑みを浮かべているに違いない。
 後を任せられる人魚と、古い友たちの姿に――だあれも忘れていないことは、と瞳細めて。

最終結果:成功

完成日:2020年11月09日


挿絵イラスト