会わねば孤独、会えば死ぞ
●孤独でないなら仲良く死んで
月も陰り、一寸先の視界もままならない闇の中を疾駆する存在があった。ビルとビルの間の小道を抜け、街灯もない路地裏で黒い人影を見つける。
「大丈夫? 見つかってない?」
女の声だ。人目を気にするようにごくごく小さな声で囁く。
「あぁ、大丈夫だ」
答えたのは低い男の声だ。こちらもまた、掠れんばかりの小声で話す。
無事なのを確認し、二人は躊躇うことなく互いを抱きしめ合った。
この二人は恋仲だった。しかし会う時はこうして人目を避けねばならなかった。
――いや、正確には、避けなければならなかったのは人目ではなく……。
「ふ……ふひ、い、いけませんねえ」
「ひっ!」
周囲の建物に反響し木霊のように響いたのは、やや低めの女性の声。いくらかどもるような不安定さがある。
「お、掟を破ったら……どうなるか、わ、わかってますよね……?」
声の主はすぐ近くのビルの屋上から、眼下に一時の逢瀬を実現していた二人を収めていた。
ざっ、ざっ、ざっ、ざっ。
二方向から剣を手にした者達が現れ、二人を閉じ込めた。
「やってください……ひひ、掟を破った者達に、死を」
白銀の剣が鮮血に染まるのに時間はかからなかった。
●恋のみならぬキューピッド
「大変です! またまたまたまた事件です!!」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)の足音はパタパタしていて可愛かった。
さて、彼女が言うように今回もまた事件なのである。残念ながら、敵は猟兵の休息など考えてはくれないのだ。
「『グリードオーシャン』の『古土宮島(こどみやじま)』という島で、悪の掟に関する事件が発生する『悪夢』を見てしまいました! それについてお話ししたいと思います!」
でもその前に、とロザリアは古土宮島について軽く触れた。
古土宮島は『UDCアース』から落ちてきたと思われている。ビルが立ち並ぶビジネス街や、飲食店・娯楽施設が並ぶ歓楽街が集まり居住区を形成しているからだ。いくらか風化も見られるが、人は確かに住んでいる。
「では本題になりますが、今この島では『人と人が会ってはならない』という掟により、誰もが一人で生活をしなければならなくなっているんです」
外に出れば、人とすれ違うなんてことはざらにある。それだけでも処罰の対象だと言うのに、あろうことか友人や恋人、家族など、ありとあらゆる場面で「人との対面」が規制される。
故に、家族であれば同じ屋根の下でも孤独に暮らし、恋人達は織姫と彦星のような一年に一度の逢瀬も許されず。
島民達は皆、孤独の中で生きているという。
「掟を破った人達は、その場で殺されてしまっているようです……そんなの、絶対に許せません!」
人は一人では生きられない。ほんの少しなら……と、文字通り命懸けで落合い、そのまま散らされる者達も少なくないようだ。
そして人々は、今この瞬間にも命を懸けている。孤独に耐え続けろというのも無理がある。衝動を抑えろというのは酷だろう。
「ですから皆さんには、島の皆さんを助けて頂いて、その上でこの島を苦しめるコンキスタドールを倒してきてほしいんです」
今回の作戦における猟兵の役目は、『誰かと会おうとしている、もしくは会っている人々をコンキスタドールの目から逃れるように避難又は防衛』し、その上で『コンキスタドールを倒す』というものだ。
「コンキスタドールの情報をお教えしますね。この悪の掟を敷いたのは『ヴィオラ・フィルザール』という呪術師のようです。ヴィオラは何というか……性格的にとても根暗で、人が人と楽しそうに過ごしているのがこの上なく気に入らないようですね。だからこんな無茶な掟を作ったのでしょう」
そして、ヴィオラがメガリスの力を用いて蘇らせたのが『神聖巨人騎士団『ホーリーハイランド』』。彼女を護衛するように取り巻く骸だ。この取り巻きを倒さねば、ヴィオラへとは辿り着けない。
「人を妬んで殺す、ということがあってはいけません! 皆さんの力を貸してください!」
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
新たな島が発見されました。よろしくお願いします。
●フラグメント詳細
第1章:冒険『避難誘導』
街で会おうとしている人達をサポートしつつ、避難させます。
どんな人がいるかはプレイングで触れて頂ければそれを前提にリプレイにします。
なければプレイングを元に何となくこちらで考えますので。
行動方針のWISで行動した場合は、人々が会う時間を猟兵達が確保して守り、描写外でその後避難させたとかそんな感じになるのではないでしょうか。
友人、恋人、離れた家族など、人と会いたい、と思っている人達を助けて頂けると嬉しいです。
第2章:集団戦『神聖巨人騎士団『ホーリーハイランド』』
ヴィオラがけしかけてくる騎士団との戦いです。
歓楽街とかビル街とか、建物が並ぶ街道になりますかね。
特に補足はないので普通に倒しましょう。
第3章:ボス戦『ヴィオラ・フィルザール』
俗に言う陰キャというやつでしょうか。
人が人と楽しそうにしていると……ああ妬ましい。
そんなわけで八つ当たり的に掟を作り、人を殺して回るようになりました。
なお、陽気なパフォーマンス等を元にした攻撃はよく効くようです。
●MSのキャパシティ
合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
ゆったりペースで進行予定です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『避難誘導』
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POW : 離れた場所へ力ずくで運ぶ
SPD : シェルター等の隠れられそうな場所を探し、誘導する
WIZ : 魔法的な結界・防御壁などを作る
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
睦月・伊久
【POW】
……人と人との助け合いで成り立っていた場所を知っている身としては、このような掟を作った方の気が知れませんね。
さて、避難のサポートですか……巨体を生かして会っている住民の方々を隠すように【かばう】などしたり、逆に向かってくる追手の進行を妨害したりすることで、逃げる隙を作る……というのはどうでしょうか。
余裕があれば、驚かさないように自分の足を畳んで住民の方々と目線をあわせて、味方であることを伝えます。
それでももし無理やりにでも住民の方々の方まで来ようとする輩がいたり、庇いきれなかったりした場合には……力技になってしまいますが、追っ手を【怪力】任せの突進で押し返したり、足で蹴飛ばします。
●人を冒涜する掟
「……いないか?」
「……あぁ、いない」
辺りを警戒する二人の少年の姿が街の隅にあった。街中はコンキスタドールが徘徊し、掟を破る島民がいないか探している。その包囲網を潜り抜けて落ち合っただけでも大したものだ。
「じゃあ、これな、次のソフト」
「さんきゅ。じゃあオレ、こっち貸すよ」
ゲームソフトの貸し借りをしているようだ。コンキスタドールが掟を敷いてからというものの、一人でいるには暇を持て余し過ぎる。ゲームソフトでも貸し合えば暇は潰れるが……その行動には危険が伴った。
がしゃん、と鎧が鳴る音に二人の少年の体が凍り付く。少年達が潜む薄暗い路地に近づく影があった。
すぐに動けばまだ路地の奥へ逃げ込めそうだったが、恐怖で足が竦む。死の音が近づいてくる。
「君達、こちらです」
固まった背中に柔らかい声がかけられた。少年達が恐る恐る振り返ると、そこには聳え立つほどに大きな人物――睦月・伊久(残火・f30168)の姿があった。
見下ろす表情は無に近いが、年下である少年達にも礼儀正しく接する。少年達が自分の存在に気づいたと見るや、四つ足を器用に畳んで身を低くし、視線を少年達の高さに合わせていく。
「僕は味方です。君達のような……『奴ら』に狙われそうな人達を助けにきました」
「本当……?」
「はい。ですので、まずはこちらに」
声色や言葉遣いで伊久を信用した少年達は、伊久がいる路地の奥へ走った。それから伊久がこっそりと路地を覗き見れば、その先の通りを徘徊する骸の騎士が過ぎていくところだった。
「とりあえず、大丈夫なようです」
「ありがとう……ございます」
少年の一人が、ばつが悪そうにしながら感謝の意を述べた。
掟を無視して友達と会っていたことが後ろめたいのだろう。悟った伊久は優しい言葉をかける。
「人は助け合ってこそ、生きていけるのです。君の行動が友達を思ってのことなら、何も恥じることはないですよ。このような掟こそが、あってはならないものなのですから。人を冒涜するような掟を作った方の気が知れませんね」
薄ら、笑みを見せると少年も安心したように明るい笑顔を返してきた。
子供は天真爛漫に、素直に成長してこそ。この笑顔は決して絶やしてはいけないと伊久は思う。
「ところで……用は済みましたか?」
「あっ……」
差し出されたソフトはまだやり取りの前だった。交換し、それぞれポケットの中に突っ込んだ。
「さて……君達が逃げるまで、少し時間を稼ぎます。一人であれば無暗に襲ってこないのではないかと思いますが……気を付けて帰ってください」
伊久は立ち上がり、自分の影に少年達を入れる。丁度、大回りしてきた骸の騎士が、伊久と少年のいる路地奥まで侵入してきたところだった。
骸の騎士からは少年の姿は見えていない。伊久の体がうまく少年達を隠している。
「走ります!」
伊久は骸の騎士に向かって駆け出した。わざわざ宣言したのは、少年達がすべきことを伝えるためでもあった。
少年達もそれぞれ別れて走り出した。骸の騎士は迫る伊久に気を取られ、その後ろに走っていく少年達には気づいていない。
「オオ……アアア!」
伊久は猟兵だ。たとえ一人であろうと、コンキスタドールにとっては敵性対象となる。剣を振り上げようとしたところを、前足を先に出すことで上から押さえつけた。
そのまま怪力で蹴り飛ばすと、骸の騎士は後転するように後方へ転倒する。
伊久はすぐさま後方を見た。少年達の姿はもうない。悲鳴などが特に上がっていないことから、うまく逃げ出せたのだろうと判断する。
それでも念には念を入れて。付近から来る可能性のある増援が少年達と鉢合わせしないようにと、伊久は戦闘継続を避け、骸の騎士が起き上がる前にその場を離脱した。
大成功
🔵🔵🔵
御乃森・雪音
WIZ アドリブ連携歓迎
誰とも会えないって悲しいお話よね。
本人の人間関係は興味ないけど、有り得ないでしょ。
この島の人達が精神的に参ってしまう前に手を貸したいわ。
【Giardino segreto】
手の中に下げた小さなガラス瓶をかざして、秘密の花園へご招待。
問題無いようなら時間を区切って場所を貸してあげましょう。
あまり長い時間は無理だろうけど、人数が多くてもどうにかできると思うわ。
人を拾ってはこちらも身を隠して。
中に知れてしまえば、後は素知らぬふり。
【演技】は得意だし【闇に紛れる】なら目立たずにいられるでしょ。
●アナタだけの世界、届けます
世界にたった一人、ぽつんと取り残されてしまったら。
彼か、もしくは彼女か。その一人はどんなに世界を満喫しようと、きっと最後には虚無が残るのだろう。
物語は悲しみの果てに幕を下ろすことになる。
「……誰とも会えないって、悲しいお話よね」
ぽつり、御乃森・雪音(La diva della rosa blu・f17695)は呟く。コンキスタドールはまだ見えぬ噴水広場。噴水はまだ飛沫上げる時間ではないのか、殊の外静かだった。
故に、響く早足はよく通った。一人の少女が息を切らしながら駆けてくる。
「……ねぇ」
雪音の声もまた、よく通った。声に気づいた少女はひゃあと声を上げ固まってしまった。
「心配しないで。万が一のことがあればアタシが守るし……そうでなくても、アナタみたいな見えない恐怖に追われた人達を助けに来たのよ」
腰掛けていた噴水の縁から立ち上がり、少女に近づく。少女の瞳は不安の色に揺れていた。
「外に出ているのには……理由があるのよね?」
「あの……実は、彼と――」
「皆まで言う必要はないわ。人と会う、ということよね。アタシが手を貸してあげるわ」
雪音は不意に手のひらを出す。その上にぽうっと現れたのは、手のひらに丁度乗るくらいのガラスの瓶だ。中には薔薇園のジオラマが透けて見える。
「この中は青薔薇が咲き乱れる別世界……敵の目にも触れないし、ここでなら気兼ねなく彼と会えるわね。……どう?」
雪音の問いに、少女はこくりと頷いた。
まずは少女を秘密の花園へご招待。少女からは「彼」の外見の簡単な特徴と待ち合わせ場所を聞いていた。その場所へ向かうと、人目を気にしながら待つ少年の姿があった。
薔薇園の少女とそれを待つ少年。二人は雪音と同年代の男女だが、それぞれ雪音と並んでみると、やや子供っぽく映る。
「アナタ、人を待っているのでしょう」
「うわっ!」
背後から声を掛けられ、思わず声を上げていた。しまった、とばかりに両手で口を覆う姿がやはり子供っぽさを残している。
「アナタが待つ人は……ここよ。この中なら誰の目にも触れないわ。時間はあまり与えてあげられないから、決めるなら早くお願いね」
雪音はガラス瓶を差し出す。自分が誰で何のためにここにいるのか、といった無価値な情報を並べている暇はない。ただ視線で、決断せよと迫っていた。
少年は意を決した表情でガラス瓶の中に指を触れ、吸い込まれた。中でどのような逢瀬が行われているかはわからない。しかし雪音は別段興味もなく、わずかな時間を守るべく身を隠す。
薔薇園から出るのは中に入った者の意思による。やや時が過ぎ、二人は同時に外へ出てきた。
「ありがとうございます」
少女がぺこりと頭を下げ、それにつられて少年も頭を下げた。
「どういたしまして」
平坦な返事で二人と雪音の関係は終わり、彼らは去っていく。絡ませた二人の指が名残惜しそうに離れていった。
幸せな一時を与えることができたのだろう。
「……もう少し、見て回ろうかしらね」
満たされた――というわけではないが。雪音は胸に残された温もりにそっと手を触れていた。
大成功
🔵🔵🔵
外邨・蛍嘉
別人格クルワでの行動。携える武器は妖刀。
会えないようにするとは、なんとも酷いことデス。
ワタシは人を守る『鬼』。
『鬼』らしくないその矜持にかけて、一時を守りマショウ。
見つけましたら、礼儀作法をもって接しマス。どうやら、双子の兄妹のようデスネ。
家族をも引き離すとは、許せマセン。
ワタシが気づかれないよう結界術で結界を張りマスし、周囲を見張りマス。デスノデ、伝えたいことを思いっきり伝えてクダサイ。
そのあとは、結界維持しつつ敵の気配のない方向へ避難誘導シマス。
万一見つかったら、二人には走るよう伝え、ワタシは敵にUCつき妖刀で触れマス。触れたら斬れマスカラ。
※『双子の兄妹』という時点で、思い入れが強い。
●子供ながらに募る思いは
物陰からそっと街の様子を覗く少女の姿があった。年は十にも満たないだろう。小さい体を懸命に伸ばして、コンキスタドールの姿がないことを確認する。
今日は兄と会う日だった。掟のこともあり、彼女は両親と自宅であるマンションに。兄は、付近に住む母親の実家で祖父母と暮らすようになっていた。
なぜこうして兄妹で引き裂かれなければならないのか。彼女には理解できていなかった。
だからこうして両親が仕事で家を空けている隙に外へ出ている。
「……あっ」
見ればすぐにわかる。兄だ。兄もまた、木陰からこそこそとこちらの様子を伺っている。その間にコンキスタドールがいなければ、タタタと走って会うことができる。
その一部始終を、街灯の上から見守る猟兵の姿があった。外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)と名乗ることもあるが、今の彼女――もとい、彼はクルワ。鬼である。
(会えないようにするとは、なんとも酷いことデス)
兄妹を見ていて切に感じていた。兄のほうも見れば年頃も同じく。双子の兄妹なのだろう。
蛍嘉と境遇が重なる。それがコンキスタドールのために苦しめられているとあっては、動かないわけにはいかなかった。
思い入れは強く、それは心を通してクルワも感じ取っている。
もう一度言う。クルワは鬼である。だが、彼は人を守る「鬼」。人に寄り添う鬼なのだ。
意を決した兄と妹は懸命に腕を振って走ってきた。出会って間もなく、言葉を交わすでもなく、妹が兄へと飛びついた。
喋りたいことは山ほどある――が、どれほどの時間があるかはわからない。兄は黙って妹を受け止めつつ、目には警戒の色を湛えたままに。
心置きなく過ごせる時間を作ってあげなければ、とクルワは動いた。街灯から飛び降り、二人の元へ。
「コンニチハ。ワタシは……人のようなモノデス。お二人の、味方デス」
細かいことを説明している時間はない。ともかく自分が二人の味方だと信じてもらわなければならなかった。
幸い、双子の兄妹は素直だった。抱き合った姿勢はそのままに、クルワの顔を見上げている。
「これから周りニ、結界を張りマス。少しの時間デスガ、他に気づかれることなく会話ナドできマスノデ、伝えたいことがあれば伝えてクダサイ」
二人の返事も待たず、クルワは結界術を用いてくるりと取り囲むように結界を張る。横も上も完全に外界から隔たれた、二人だけの空間。クルワも一度結界を抜け、周囲の警戒をしつつ二人だけの時間を守る。
子供なりに積もる話もあることだろう。中の二人がクルワへ呼び掛ける声以外は聞こえないようにした。
いくらクルワが善人に映ったとしても、他人であることに変わりはない。聞かれたくない話もあるだろうと、そのように術を組んだ。
「……あの」
ややあって、結界の中から声が聞こえてきた。クルワは結界内へ戻る。
「もう、十分お話はされマシタカ?」
「はい、大丈夫です」
妹は笑顔で答えた。話したいことは全部話すことができたのだろう。すっきりした表情だった。
「ありがとうございます。僕達のために」
兄は礼儀正しく、一礼してクルワに感謝した。
「いえいえ。では、お二人をそのままお送りしまショウ」
結界を操作しながらクルワは動いていく。二人が無事に帰れるところまで連れていくのだ。
二人に道案内をしてもらいながら、まずはマンションの前で妹を見送り、次に近所だという二人の祖父母の家まで連れていった。
「……お姉さんは、これからどこへ……?」
別れる前、兄である少年が訪ねてきた。中身は男だが、青く長い髪に中性的な顔立ちは、少年にはそう見えるのだろう。
「君タチのように困っている人を助けマス。それが終われば……敵を倒しマス」
「応援してます。頑張ってください」
「わかりまシタ。……この島の支配は、もうすぐ終わりを迎えマス。それまで少しダケ、辛抱していてクダサイ」
クルワは少年を見送ると、また次の場所へと向かう。
また同じように島民を助けるか、それともコンキスタドールと一戦交えるか。それは、次の出会いに依るところだろう。
大成功
🔵🔵🔵
宇良潟・伝助(サポート)
わたくしは裏方メインの黒子ですから前線に立っての戦闘は致しません。
戦闘になると【目立たない】技能を使って存在感を消し、罠にも使えるアイテム【戦闘用舞台装置】と【罠使い】技能を使って敵の行動の妨害し、罠を使って攻撃をします。
あとは舞台演出のユーベルコードを使って猟兵達を強化して気持ちよく戦って貰います。
日常、冒険ではユーベルコード【黒子の団体】を使っての情報収集、探し物、救助などをします。
口調 は裏方作業中の時は(わたくし、~様、ございます、ございましょう、ございますか?)でございます。
●黒子はただ幸せを願う
上から見ると、それは海苔巻きのようだった。
これから一大イベントを行おうとしているカップルの男女をぐるりと一周、物言わぬ黒子が取り囲んでいる。
そしてその内側には、カップルの男女ともう一人、真っ黒な衣装に身を包み、蹲って石のように動かない猟兵がいた。
「あ、あの~……」
展開が早すぎた。女性が猟兵、宇良潟・伝助(裏方大好きな黒子猟兵・f21501)に声を掛ける。
「わたくしは今、道端の小石と同じ些末な無機物でございます。少々大きいことについては、どうか御容赦下さいませ」
身動き一つせず、伝助は答えていた。それから数秒、女性は伝助を見つめていたが、呼吸をしているのかどうかすら怪しいほどに全く動かない。
さてここで事のあらましを、少し時を戻して手短に見ていこう。この島を訪れた伝助は、公園で挙動不審なカップルを発見した。掟がある故かと思ったが、どうもそれだけではないらしい。
男は後ろ手に何かを隠しているようだった。
何か大きな事が起ころうとしている。常に裏方、人を立てて生きてきた伝助にとって、これは立てるべき場面であると瞬時に判断できた。
ただ、今この島では掟のこともある。故にコンキスタドールの目を逃れるよう黒子でぐるりと囲んで周囲からの視線を防ぎ、場を作ったのだった。
カップルの男女はそれぞれ真剣な面持ちで向き合っていた。男は覚悟を決めて、後ろ手に隠していたそれを差し出す。
小さな箱を開ければ、そこには指輪が。
「こんな大変な時期だけど……乗り越えたら、俺と……結婚してください」
「…………はい」
ここに一組、夫婦が成立した。困難な島の状況で場を提供できたことは、黒子冥利に尽きるというものだ。
「黒子さん、もう、大丈夫です」
男が事の終わりを告げる。
「そうでございますか。誠におめでとうございます。ここで盛大にお祝いをさせて頂きたいのは山々なのですが、この島の状況故時間はかけられぬこと、ご理解いただければ幸いです」
「大丈夫ですよ。むしろ、こんな時にこうして助けて頂いて……本当に感謝しています」
「そのお言葉だけでも恐悦至極に存じます。では……長居も無用かと思いますので。お二人もどうか、ご無事にご帰宅なされるよう。では」
黒子がさっと消え、そこにいたはずの伝助もいつの間にか二人の前から消えていた。
黒子の神髄。今日この時こそ、黒子という役目が一番光った――かもしれない。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『神聖巨人騎士団『ホーリーハイランド』』
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POW : 誇りの一撃
単純で重い【巨大なクレイモア】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 戦神への信仰心
全身を【魔法に強力な耐性を持つオーラ】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【負傷】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。
WIZ : 戦神の加護
【徐々に回復する体力の守護】【衝撃に強く仰け反り辛くなる体幹】【死ぬ程のダメージを受けても短時間動ける体】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
イラスト:Moi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●神聖巨人騎士団『ホーリーハイランド』
骸の騎士が一か所に集まり始めていた。
島民を助ける猟兵の行動が、コンキスタドールにも知られ始めていたのだ。
勿論それは猟兵が動けば遠からず現実となっていたこと。
故に、この後の交戦も必至であった。
結成された神聖巨人騎士団『ホーリーハイランド』は、ただ今を以って、猟兵の討伐へと乗り出すのだ。
外邨・蛍嘉
引き続きクルワとしての行動。
アア、一ヶ所に集まり始めマシタカ。好都合デス。
探す手間が省けるノデスカラ。
武器を振り下ろす暇もなく、この妖刀を振るい敵に当てましょう。
ワタシの【棘一閃】は、触れればいいのデスカラ。ついでに生命力吸収もシマショウ。
それでも間に合わないと第六感が訴えたのならば、それに従って回避シマス。
ワタシは雨剣鬼クルワ。慈しみの雨のように、視界を遮り牙を剥く雨のように…そのようにありマショウ。
●乾いた空に雨が降る
騎士は集えば騎士団になる。それぞれの列を互い違いにして進むことで層を厚く見せていた。
「アア、一ヶ所に集まり始めマシタカ。好都合デス」
街中を走り回って1体1体倒していくなど徒労が過ぎる。
騎士団が猟兵を狩ろうと言うなら――逆に狩ってみせればよいのだ。
クルワは音もなく跳んだ。地に落ちた影は小さくなりながら騎士達のほうへ滑っていく。
「オオ……オオオ!!」
空を見上げた騎士が叫び出す。妖刀を手にしたクルワと視線が合ったのだ。
ようやく互いが相手を認識した形になるが、先手を取っているクルワに分があった。騎士達が重厚な輝きを放つクレイモアを振り上げた時には、クルワの姿は地上にあった。
クルワ――二つ名に「雨剣鬼」を冠する。雨は時に静かに、時に激しく。
クルワは着地の瞬間まで音らしい音を立てていない。ただ一度、妖刀を騎士達の頭上で薙いだ。
風が鳴いたような気がした。それだけで――ガキンとけたたましい金属音が静寂を破っていた。
振り上げたクレイモアの刃先が宙に浮いていた。振り下ろされるはずの剣は真っ二つに折れ、それからピシピシと騎士の鎧に亀裂が走った。
視界を遮り牙を剥く雨のように。鎧の内にまで届いた斬撃が騎士達を断つ。オオオ……と呻く騎士達はその太刀筋が見えぬまま崩れ落ちていく。
騎士達は骸であった。不死ということではなく――生者のような理性を持ち合わせていないということだ。
たった今倒れた仲間を踏み越え、次の騎士達が地上のクルワへと剣を振り上げる。
互いの攻撃のベクトルは先と逆だ。剣の重い一撃を真上から叩きつけられては身が持たないと直感したクルワは後方へ跳んで騎士達の足元から離脱。
振り下ろされた騎士達の剣は倒れた仲間の鎧諸共地面を円形に破壊する。
一組の攻防が終わると雨が止むように。場には静寂が戻っていた。
大成功
🔵🔵🔵
シャイニー・デュール(サポート)
『拙者は剣士でござります故!』
ウォーマシンの剣豪×クロムキャバリアです
真面目な性格ですが勘違いや空回りも多く、かつ自分がズレているという自覚もありません
正々堂々とした戦い方を好みますが、それに拘泥して戦況を悪化させたりはしません
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
公序良俗に反する行為は(そういう依頼でない限り)しません
サムライというものに憧れていますが、正しい知識はありません
銃を使うことを嫌っているわけではなく、必要に応じて刀と内蔵兵器を使い分けます
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●道は奥が深いであります(?)
「おぉ、これが『骸の騎士道』というものでありますか……!」
現場に到着したシャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)は猟兵と骸の騎士達の交戦を目の当たりにし、感嘆の声を上げていた。
物事には「道」という、そこに精通する者が身に付けている作法のようなものがあるということを、シャイニーは朧げに知っている。
サムライ道もその一つ、とシャイニーは内心自負しているが、果たしてその表現が正確なのかは、内に秘めたるままのため決着がついていないようだ。
ちなみに、ここでシャイニーが言う骸の騎士道とは、仲間の死を顧みず、場合によっては踏み越えてでも敵を倒すという邪の王道を行くような行動を差していた。
んなわけあるかい! とかなんとか関西弁ででも突っ込んでくれる人物が居合わせていればよかったが、残念、シャイニーは単騎だった。
「見事であります……。しかし、拙者は剣士でござります故……その道を学ぶことはできないであります」
認識は空回っていたが、サムライに憧れる上で道を踏み外すことはなかったようだ。
「では……話もそこそこにするのであります。いざ、尋常に――」
ちゃっ、とシャイニーは無銘刀を取った。重心を落とし低く構えると、地を蹴り骸の騎士達の懐へ飛び込んでいく。
「オオオオオ!!」
騎士達が猛る。崩れた足場を踏み越えて大きく剣を振り上げた。
同じ攻撃を愚直に繰り返してくる。それは騎士達が骸故の行動なのか。
シャイニーが見ていたのと全く同じ動きだった。先の猟兵は回避を選択していたが、シャイニーはウォーマシンの馬力を生かし受ける手を選択した。
シャイニーの眼前に、剣と刀が衝突した火花が散った。重くのしかかってくる一撃だが、ギリギリのところで耐えている。
シャイニーは騎士達の「攻」を封じた。では、シャイニーが繰り出す「攻」は如何なるものか。
『敵性存在識別完了。掃討開始します』
やけに機械染みた音声に従い腹部が開いた。そこに現れたのはガトリングガンだった。
サムライが銃火器を使ってはいけないという道理はないのだ。使える物は何でも使う。それが彼女のサムライ道――なのかもしれない。
「……オオ」
無防備の騎士の体に鉛玉がぶち込まれ吹き飛んだ。さらに射程内の騎士達を次から次へと撃ち抜き鎧諸共破壊していく。
銃弾に耐えられるだけの体の強度がないのだ。積み上がる鎧と骸の横に無傷の剣が横たわる。
「さて……次は誰でありますか?」
騎士団の隊列をいくつか一掃し、シャイニーの瞳は次なる敵へと向いていた。
成功
🔵🔵🔴
リステル・クローズエデン(サポート)
基本
援護主体。あくまでサポートですからね
潜
迷彩+目立たない+闇に紛れる
避
視力+第六感+見切り
ダッシュ、ジャンプ、空中浮遊など
防
オーラ防御、各種耐性。
武器受け
POW攻
呪剣・黒と
ユーベルコードを用いた接近戦。
鎧砕きや武器落としで戦力を削る。
SPD攻
クナイの投擲による援護射撃。
範囲攻撃、乱れ撃ち込みで
ユーベルコードも有効なら使用。
WIZ攻
ユーベルコードに
破魔、呪詛、恐怖を与える等を組み合わせ。
範囲攻撃することで足止めや
行動阻害を行う。
(コメディタッチシナリオでも、空気を読まず
基本的にはまともに行動します
ただ、ちょっとズレタことになるかも。)
口調 (僕、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
●神聖なる骸を浄化せよ
リステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)は戦場を、弧を描きながら駆けていた。真正面からぐるりと騎士達の側方へ。リステルの動きにつられて騎士の一部隊がゆっくり向きを変え、鎧をがちゃがちゃと鳴らしながら進軍してくる。
「さて、戦力は分散させましたし――」
一種の陽動。リステルが騎士団の一部を引き受けたことで、他の猟兵も戦いやすくなったはずだ。
『紅き呪い。切り裂く炎となれ』
呪剣・黒の銘を持つ黒剣に真紅のオーラが走る。骸の騎士が振り上げるクレイモアは禍々しいオーラを帯び、力を蓄えていた。
紅と漆黒が衝突した。ほとんど真上から振り下ろされていた騎士の剣だが、リステルは身体操作から武器受けの技術を生かして受け止める。
一瞬の威力を受け止めてしまえば剣圧はそれほど強くなかった。低い姿勢から上部へ押し出すようにして騎士の剣を弾き返す。
「オオオオオ!!」
リステルが引きつけた騎士達が続々と剣を振るってくる。しかしただの闘争本能で襲っているせいか個々のタイミングがバラバラで対処はしやすかった。
向かってくる刃から順に、横方向から薙いで捌く。相手の力も利用して的確に剣をぶつけていけば、騎士の手から剣が弾け飛び地面を滑って転がった。
「所詮は骸……脆いですね」
剣を失った騎士の胴を一閃、斬り裂いた。鎧はあっけなく砕け、中の骸も芯となる骨が両断される。そして最後は火葬されるかのように燃え上がり真っ黒な灰となった。
近づく者から斬って捨てていく、その繰り返しだった。リステルの周囲には騎士を滅した証の灰と、わずかに残った鎧の欠片が積み上がっていた。
成功
🔵🔵🔴
御乃森・雪音
へぇ、わざわざ集まってくれるなんてねぇ?
探し回らなきゃならないかと思ったわ。
さ、まだ後があるんだしさっさと終わらせちゃいましょ。
【Fiamma di incenso rosa】
真っ直ぐに骸の騎士に手を差し伸べ、薔薇の花弁をプレゼント。
神聖、なんて自分たちで名乗るような者達を包むこの炎はどんな風に舞うのかしら。
焔の制御は歌で……何を歌えばこの舞台に合うかしらねぇ。
まあ、一応は弔ってあげましょう。
指をゆっくりと祈りの形に、捧げるは鎮魂の歌を。
終われば香りだけを残して炎は消し去って。
戦いの後を残すなんて無粋な真似はしたくないわね。
シフォン・メルヴェイユ(サポート)
『楽しい世界が待っていたらいいなぁ。』
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
怒った時は「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
のんびりとして、無邪気な性格をしています。
基本的に常に笑顔で人に接して、
敵以外なら誰に対しても友好的な性格です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●花弁二重奏
「探し回らなきゃならないかと思ってたけど……集まってくれるなんてねぇ」
「わぁ、骸骨さんがいっぱい!」
雪音が島民達を助けながら騎士団が待つ戦場へ辿り着いたのと、グリモア猟兵に声を掛けられ作戦に参加したシフォン・メルヴェイユ(夢見る少女・f19704)が到着したのはほとんど同時だった。
「とりあえず、いっぱいいるのを倒せばいいのよね?」
「そういうことね。さ、まだ後があるんだしさっさと終わらせちゃいましょ」
雪音はゆっくりと、しなやかな動きで骸の騎士達に手を差し伸べる。
『さあ、この炎はどんな形に踊るのかしら?』
手のひらの上に色とりどりの薔薇の花弁が現れる。それにそっと息を吹きかけると、花弁は風に乗って骸の騎士達に殺到していった。
「わ、きれ~い!」
シフォンは目をキラキラさせながら声を上げた。
「『神聖』なんて自分たちで名乗るような者達を包むこの炎はどんな風に舞うのかしら」
骸の外見は凡そ神聖とは程遠い。それを自ら名乗っているのだから滑稽と言うしかないだろう。
薔薇の花弁は戦場を鮮やかに彩る。その奔流に呑まれた騎士達は七色に踊る炎に包まれていった。
「オオ……オオオ!!」
クレイモアを振り回して強引に炎を払おうとするが、炎は雪音が操っている。
戦場に流れるは鎮魂の歌。指で祈りの形を結ぶ。
騎士の剣が巻き起こす旋風に乗ってまた別の騎士達へ、炎はどんどん広がっていき、もがき苦しみ息絶えた骸は、戦場に漂う薔薇の香りを含んだ灰となった。
「よ~し、私も! ドレスア~ップ!」
シフォンは気合を入れると片足をぴょんと跳ねて、ドキドキ、プリンセスハートと一緒にポージング。それにより豪華絢爛なドレス姿へと変身した。
ふわふわ空飛ぶプリンセスハートに力が溢れてくる。雪音に負けず花びらを戦場に散らすと、それは骸の騎士達までの道を作った。
「いっくよ~!!」
シフォンは花びらの道を飛翔する。炎の外側に新たに現れた花びら、そして空に舞い上がるシフォンに警戒を見せた騎士達はぐっと骸の体躯に力を込めて守りを固める。
「プリンセスハート~……シュート!」
シフォンは周りに漂うハートを回転しながら投げるように飛ばした。撃ち下ろされたハートがとくん、と鼓動する。
「防御に回ったようね……なら少し、お手伝いするわ」
雪音は騎士達の新たな動きに気づいていた。ハートの通り道を雪音の花弁が作り出すと、その中をハートがひゅーんと抜けていく。
ハートと花弁の二重奏。花弁によって鎧に炎が纏わりつくと、騎士達がそれを嫌がり腕を振り回した隙にハートが命中。鈍器で殴られたような衝撃を不思議なハートから受けた騎士達は仰け反りドミノのように次々と倒れていく。
「ありがと~!!」
シフォンは雪音に向かって無邪気に手を振る。いつでもどこでも天真爛漫な笑顔を振りまけるのはシフォンの長所の一つだ。
「オオ……オオオ!」
倒れてきた騎士に圧迫され、潰れていく騎士も出てきた。そこへハートが、花弁が降りかかりトドメを刺していく。
やがて戦場は静寂に包まれた。シフォンは空中で変身を解除し、すたっと地上に着地する。
「戦いの跡を残すなんて無粋な真似はしたくないわね……」
地面に燃え残る炎を、雪音は手を振り、風を送るかのようにして消し去って。
猟兵達は薔薇の残り香を感じ取り、次の戦いを待ち構える。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『ヴィオラ・フィルザール』
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POW : 黒き足跡
【あらゆる闇から出現する自在に動く影の手足】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 神罰呪詛返し
【土着宗教の御神体を傷つける事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【対象が持つ耐性系技能値の合計*五倍の神罰】で攻撃する。
WIZ : 自分もああなればいいのに
【感情、性格、性質を反転させる衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:黒丹
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「プリンセラ・プリンセス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●集まってる人間全部死ね
薔薇の香りに誘われたか否か、ようやく黒幕が姿を現す。
「えぇ……猟兵が、ひぃ、ふぅ、みぃ……ふひ、い、いますねぇ……あぁ、いやだいやだ……」
陰鬱な空気を纏った呪術師、ヴィオラ・フィルザールその人であった。
「集まってるのは、見たくもないですねぇ……ひひ、今すぐ一人にしてあげますよ……。死んだら皆、孤独ですからねぇ」
ヴィオラの魔力が高まっていくのを、猟兵達はぴりぴりとした空気の中に感じ取っていた。
御乃森・雪音
なんだか重たい空気の人ねぇ。
自分が苦手だからって、他の人の行動まで制限するなんて有り得ないわ。
気に入らないなら勝手に引き籠ってれば良いのに。
何人殺めたのか知らないけど、報いは受けて貰うわね。
【La danza della rosa blu】
青薔薇の鎖が手向けの花、貴女の纏う闇を吹き飛ばして綺麗に飾ってあげるわ。
華やかな色を纏えば少しは明るくなるでしょ。
(とん、と一度踵を地に打ち付けRosa neraを構える)「――さぁ、ちょっと付き合って貰うわよ?……貴女の終わりまで」
●闇払う青薔薇
「なんだか重たい空気の人ねぇ」
雪音が言う。ヴィオラが纏う空気は陰鬱な雰囲気に満ちていた。
猫背の姿勢も重々しさを助長しているのだろう。
戦場の一画はヴィオラの登場によって、決して触れたくない淀みの淵へと変貌していた。
(自分が苦手だからって、他の人の行動まで制限するなんて有り得ないわ)
雪音にとって此度の戦いは理解が及ばないことだらけだ。自分が苦手だから他の人間の行動まで制限するなど――ヴィオラにどんな理由があろうと聞く気にはならない。
(気に入らないなら勝手に引き籠ってれば良いのに。何人殺めたのか知らないけど、報いは受けて貰うわね)
ただ、滅すのみ。そのために雪音はステップを踏んだ。線の細い雪音の体がしなやかに、そして優雅に戦場を舞った。
舞いの華やかさはヴィオラには殊の外眩しく映った。目を覆いたくなるほどに。
「ああ……私も、ああなれれば、いいのに……」
ひどくため息の混じった羨望の声だった。負の感情がヴィオラの力を増幅させていく。獣の頭骨をあしらった杖の先端を舞い踊る雪音へと向けた。
鈍器のような黒く重い衝撃波が迸る。直撃すれば全てを反転させるものだ。その影響は明るく輝く者ほど、闇の底へ突き落すような落差を生む。
ステップを踏む中で雪音は見えていた。それまでのリズムをワンテンポ遅らせ、向かい来る衝撃波へ雪音は腕をしならせながら伸ばした。
計算の通りだった。衝撃波は雪音が伸ばした腕の真横を掠めるかどうかという距離ですり抜けていく。
『次のパートナーは貴方かしら?』
わずかに反った指の先がヴィオラに向いていた。踊りの中で紡がれていた歌が青薔薇の鎖を作り出し、それは蛇のように宙をうねりながらヴィオラを束縛する。
淀んだ闇の気が青薔薇の鎖に裂かれ、陽の気が徐々にヴィオラに食いついていく。
「は……離れて……」
身悶えるヴィオラを青薔薇の鎖は締め上げ離さない。ローブに食い込み、その細身を軋ませていた。
新たなステップをとん、と一つ。踵を地に打ち付け短剣――Rosa neraを構えた。
「――さぁ、ちょっと付き合って貰うわよ? ……貴女の終わりまで」
鎖を引くと、青薔薇に導かれたヴィオラがわずかに浮かびながら、締め上げられたそのままの姿勢で陰鬱な闇から引き剥がされる。
そこは青薔薇の鎖の道だ。鮮やかな色が輝き、一層ヴィオラを苦しめた。
「う……うああぁぁ……」
力無い呻き声を上げるヴィオラへ、パートナーを待っていた雪音はヴィオラの勢いを殺すことなくくるりと回り込み、カウンター気味に刃をローブへ抉り込ませた。
鎖の青薔薇がバッと咲き乱れ、色彩に当てられたヴィオラは苦悶の表情を見せていた。鎖をようやく振り解くと、杖をついて立ちながら傷口を押さえる。
「華やかな色を纏って、少しは明るくなったのかしら?」
「ああ……ふひ、やっぱり、憧れるなんておこがましいですねぇ……」
傷口がじゅくじゅくと痛み続ける中、ヴィオラは身の丈というものを悟っていた。
大成功
🔵🔵🔵
プリンセラ・プリンセス
「姉さま、どうして……」
オブリビオンは過去の人を蘇らせる。ならば死したプリンセラの兄姉も例外ではない。
気づいて然るべき。覚悟して然るべき。
他の人に対する態度とは別にプリンセラには優しく声をかけてくる。
そしていうのだ、オブリビオンになれば兄姉皆と暮らせると
「ああ、ああ……!」
ひねくれた姉ではあるが優しくしてくれた姉だ。その姉をオブリビオンといえど殺せるはずがない。
放たれる衝撃波。その効果により反転する。
「よくも、よくも、オブリビオン!」
筆記詠唱のノートが消える。放つのは皇竜閃燼黒光破。
本意ではない、だが猟兵としては最善の行動。
きっと他の兄姉もオブリビオンになってくる。確信に近い予感があった、
●邂逅、それは叶わぬ夢
オブリビオンとは過去である。故にまれにではあるが、故人となった縁者と予期せず再会してしまうことがある。
「姉さま、どうして……」
プリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)は愕然としていた。変わり果てた姿――しかし面影は確かにある。
猟兵として生きることは、捨てられた過去と戦うことだ。その過去はありとあらゆる世界で消費され膨大なものとなっている。そこからたった一人の人間と出会う可能性は、果てしない銀河の中から星一つを探すようなものだが――。
可能性が億に一つでもあれば、巡り巡って現実となることがある。
亡き血縁と敵対する――いずれ来てしまうその時を覚悟しておく必要があった。
「ひひ……い、あ、あぁ……まさか、プリン……セラ……」
オブリビオンは全くの無から生じたものではない。故に、その礎となった過去を引きずってしまうことがある。ほとんどの場合においてそれは無意味なものであるが……ヴィオラにとってプリンセラとの対面は、こちらも予期せぬものだった。
他者は忌み嫌うべきもの……それなのに。目の前の少女が心のどこかで愛おしい。
何故名前が口から零れたのか。ヴィオラ自身も理解はできていなかった。ただ、過去が――ヴィオラを構成している過去が、教えてくれるのだ。
「プリン、セラ……プリンセラ……」
「姉さま……!」
耳を優しくなでる声に、プリンセラの胸がきゅうと締め付けられる。
ただ目の前の存在を姉と呼ぶことしかできない。その顔へ、その体へ、その手のひらへ、触れたくとも触れられない。
今のプリンセラにとって、猟兵であることは枷だ。
ヴィオラは蝸牛のように遅い歩みながらも、一歩一歩プリンセラへと寄ってくる。
「かわ、いい……妹……。あぁ、そうだ、せっかく会えたのだから……一緒に、暮らそう……」
プリンセラにはこの上ない甘い響きだった。二度と手に入らないと思っていたものが、今、ここに。
「ああ、ああ……!」
慟哭していた。
夢に願ったことは数え切れぬほど。それでも、たった一夜の夢でさえ叶わなかった願いが、ころりと手の中に転がり落ちてきた。
それを掴み取ってしまっていいものか。猟兵としてのプリンセラは脳裏で拒絶の意を示す。
それが当然――分かってはいるが、簡単に割り切れるものではない。願望を捨て武器を取れと――今のプリンセラにはできるはずもなかった。
しかし、コンキスタドール――オブリビオンとなったヴィオラと共に歩むということは、自身もオブリビオンになるということ。ヴィオラもそれを望み、プリンセラに杖を向ける。
禍々しい魔力が先端に溜まり、放たれた衝撃波はプリンセラを真正面から襲う。
逃げるだの避けるだの、身を守る考えは全くなかった。ただその身を全て運命に委ねた。
天地がひっくり返った気分だった。いや、実際にひっくり返っていたのだ。ヴィオラが放った衝撃波をまともに受けたプリンセラの体は宙に吹き飛び、丁度一回転して地面に叩きつけられた。
「ああ……よくも、よくも、オブリビオン!」
悲しき哉。ヴィオラの放った衝撃波は、命中した対象の感情、性格、性質を反転させる。コインをひっくり返すようなものだ。
今、プリンセラの「表」は猟兵となった。手の中にあった虚ろな願いはすぐさま捨てた。
枷は、過去から染み出た害悪を滅ぼす武器となった。
「ボルト・レード・ペック・ラスタ――朱焔の竜よ吼え哮れ。覇王の契約の元に、全て灼き滅ぼす黒炎を纏い――我が剣となりて全ての敵を絶ち斬れ!」
詠唱に合わせて指が走っていた。長き呪の魔力はその詠唱により増幅され、強力な破壊の力となる。
「裏」となった感情はそれを望まぬも、正義は「表」にありと目を伏せる。
宙に描かれた方陣から放たれた光線は一切を貫く光の槍だ。ヴィオラが湛える暗黒の魔力を全て吹き飛ばし、体を穿つ。
今度はヴィオラが宙に舞った。光線の威力を体で吸収しきれなかった。地に落ちたヴィオラは潰れたカエルのようにうつ伏せになっていたが、やがて杖に触れ、立ち上がってくる。
「あ……が……プ、プリン……セ、ラ……ひひ、ひひぃ……」
己を構成する過去までぐしゃりと壊されたのか、腹に穴を開けたヴィオラは杖で身を支えながら不可解な響きの笑いを零す。
痛ましい光景――しかし、この光景は瞳に焼き付けておかなければならない。
猟兵として世界を渡る限り、他の兄、姉もまた、プリンセラの前に姿を見せる。
確信にも等しい予感にプリンセラは襲われていた。
大成功
🔵🔵🔵
音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。
自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
プロデューサーより
●ネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上
なんだか戦闘が激しさを増してきた。
いつ出ていこうか、ああもうちょっと待ったほうが、でもこれ以上待っていると出るタイミングを失うかも――。
意を決したのは、戦場に到着してからしばらく後のことだった。
「せ……世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上」
音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)の棒読みのような口上を、動画撮影ドローンは余すところなく画面の向こう側の視聴者に届けていた。
沸き立つ視聴者の熱狂が、鬱詐偽の力となって返ってくる。力を一身に受けた鬱詐偽は……その場でちょっと固まっていた。
(って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ……)
鬱詐偽はアイドル、すなわち偶像である。視聴者が望むなら、時にはその姿を、身を粉にしてでも披露しなければならない。
(……うぅ、これも番組の為なのね)
アイドル業、それは番組での露出が事を大きく左右する。視聴者の笑顔のために、ネガティブマインドの鬱詐偽は頑張った。
「ひひぃ……ま、また、面白いのが、増えましたねぇ……」
傷ついてはいたが、黙って滅ぼされるのを待つわけにはいかない。ヴィオラは杖を向ける。
「……し、しかし、なんか、似た雰囲気を感じますね……ふひ、これを使うのは気が引けますが……」
ヴィオラの歪んだ性質は鬱詐偽のネガティブとどこか通じるものがあったのか、杖を向けるも魔力の充填に間があった。
「あぁ……皆のためにも、やらなくちゃ……」
ドローン映像を見守る視聴者は鬱詐偽の活躍を期待しているはず。そうは言っても気は重いが……それで番組が潰れてしまっては元も子もない。
鬱詐偽はサウンドウェポンを手にした。
「わ……私の歌を、聞いてぇ~~……」
とたとたとた、鬱詐偽は走る。口ずさむ歌はドローンを通して視聴者に届けられ、その共感が鬱詐偽に絶大なパワーとなって跳ね返ってきた。
「ひ、ひひ、来ましたか……」
鬱詐偽のネガティブなキャラクターをちょっと惜しいなと思いつつも、ヴィオラは魔力を充填した。黒い靄のような球状の魔力がばしゅんと放たれた。
ブラックホールのように周囲の光を捻じ曲げて飛んできた衝撃波を鬱詐偽はぴょんと避ける。ネガティブボディに宿る力がまさにウサギな跳躍力を与えていた。
鬱詐偽、躍動。ファンクラブの小冊子などあれば、見出しとして小躍りしそうである。衝撃波を飛び越えた鬱詐偽はサウンドウェポンを振り上げて、
「……えいっ」
「ひぎゃっ!」
スイカ割りのように真っ直ぐ振り下ろされた一撃がボカリとヴィオラの頭を直撃。打撃の衝撃でフードが外れ、ぼさぼさの髪が露になった。
目に星が飛んだヴィオラは後方によろけていく。それを追うように着地した鬱詐偽もよたよたと前のめりになっていたが、なんとか際どく踏み止まる。
「ネガティブアイドル鬱詐偽さんも、やればできるのよ……」
ネガティブなりに言い放ってみると、視聴者の熱狂がまたほんわりと鬱詐偽の力となって宿るのだった。
成功
🔵🔵🔴
外邨・蛍嘉
死んだら皆孤独?それは否定シマス。(輝くジョブ:悪霊)
エエ、私、死んでマスカラ(にっこり)
デモ、一人ではアリマセン。多重人格者で通してマスガ、ここにはもう一人イマスノデ(にっこり)
視認されなければいいのデスカラ。妖剣解放での高速移動を生かしマショウ。
今までの報いを受けナサイ。アナタに強制する力は、由縁はないのデス。
人のたくさんいる場所で、骸の海に帰りナサイ。
速度を落とさずの抜刀。止まるわけはアリマセン。
削る寿命はワタシのだけ。ケイカは…眠ってイマスカラ。
●死してなお孤独か否か
「あぐ、ぐぅぅ……」
ヴィオラは外れたフードを被り直す。それは余裕がなくなった表情を隠すためか。
「アナタが言いたいことはわかりマシタ……デスガ、私はソレを否定せざるを得ないのデス」
クルワがヴィオラの前に立ちはだかる。清々しいほどの笑顔を見せながら。
「私、死んでマスカラ」
悪霊――それは表向きジョブとして通しているが、「外邨・蛍嘉」という人物の、今ここに在る姿であった。
そして、今はクルワにその身を任せ眠りについている。つまり、死してなお孤独にあらず。
ヴィオラの主張を打ち砕く反例。しかし彼女の存在が意味を成す時はもうとうに過ぎ去ったのかもしれない。
「ふひ……もう、いいんですよ……この場の全てを、殺し尽くせば……!!」
ヴィオラには後がない。自身の目的をどうこう言われたところで「存在し続けなければ」反論もできないのだ。
体力は底を尽きかけている。全力の攻撃ができるのも、もう何度もあるか。
「ふひ、これを……以って、全てに……罰を……!」
ヴィオラは杖を地面に叩きつけた。先端の頭蓋骨がバキリと砕け散る。
これは代償。支払うことでヴィオラは恐るべき力を得る。
ヴィオラの目に映る全ての者に神罰を――。
「アノ目は……危険デス」
クルワは妖刀の怨念を即座に纏い、ヴィオラの視界に入らないよう高速で戦場を駆け回った。
寿命を削る技だが、躊躇うことはない。眠っている蛍嘉には何も起こらないのだから。
ヴィオラはクルワを追い、その場でぐるり、ぐるりと体を、首を振り回す。
視界に捉えれば一撃――だが、視認能までもが向上しているわけではない。あくまで自身の力で認識できる範囲でしか攻撃を放つことはできない。
故に、視界に捉えられないほど高速で移動するクルワへの攻撃タイミングを掴むことができなかった。
「今までの報いを受けナサイ。アナタに強制する力は、由縁はないのデス」
ヴィオラにとっては、深い森の中で精霊の声でも聴くような感覚だった。声はすれども姿がない。
「力……? あぁ、そ、そうですねえ……。ふひひ……この力も、当てる術が、なければ……」
円を描くように移動していたクルワが一直線にその中心へと向かっていた。もしその方向に目を向けていれば、クルワの姿を捉えていたかもしれないが。
「人のたくさんいる場所で、骸の海に帰りナサイ」
最後の声はハッキリ近くで聞こえた。くるりとヴィオラが振り向くと、クルワがすらりと剣を抜き――。
ヴィオラが脳でクルワの姿を認識した時には、もう呪詛返しの力は失われていた。
――ヴィオラの命の灯火が消えていたからこそ、力は消滅していたのだ。
痛みはあったかなかったか。大きく穴の開いた胴体を完全に斬り離されただけだ。完全な輪切りに比べたら、切断された神経は然して多くもない。
「ひひ……これで、独りぃぃ……」
天を仰いだその顔は、やはり不気味な笑みだった。
倒れゆくヴィオラを背に、クルワは刀を収める。大きな傷もなく体を蛍嘉へ返せることに、ほっと胸をなでおろしていた。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2020年10月12日
宿敵
『ヴィオラ・フィルザール』
を撃破!
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