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OX-MEN:娘々大戦

#キマイラフューチャー #【Q】 #旅団 #OX-MEN

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#【Q】
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#旅団
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『これは旅団シナリオです。旅団「OX-MEN:フォース・ポジション」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです』

「ほお……」
 パラドックスマンは感嘆の声を漏らす。
 オックスマン一人を相手取っている時の戦闘力を100とするならば、獣壊陣を脱出したメンバーの加わった後は120と言ったところか。
 猟兵は一人で戦うよりも、協力した方が強くなる。単純な足し算ではなく、かけ算となる事はパラドックスマンもよく知っていた。
 だが、この力の上がりようは想像以上。
 そしておそらくは、オックスマンだけではなく他のメンバーも同様に仲間との連携でその力を増していくに違いない。
「カカッ、カカカカカッ」
「……何がおかしい」
 思わず笑い声が漏れる。先の戦い、パラドックスマンBFが螺旋魔空回廊でも敗れるはずだ。だからこそ……やらねばならぬ。
 全員がそろったならば、その時は……!
 主を蘇らせるほどの、途方のないエネルギー。それを集めるには、「彼らの協力」が必要なのだ。
「獣壊陣は十分な効果をあげているようだ! さあ、もっとだ……もっとお前たちの力をみせるがいい!」
 陣の作り出す異界の中には、復活のカギとなる三つの術と、三つの宝具が封じられている。だが、自分自身がその中へと入ることは適わない。それらの回収ができるのは、彼らだけだった。
 無論、これは危険な賭けだ。その力を受ければ、この身はもたない。だがこのパラドックスマンにはその命さえも主に捧げる覚悟がある!
「私も楽しみなのだよ。オックスメン……その力の真髄が!」
 瞬間、パラドックスマンが二人に分裂する。
「なんだと!? 分身したというのか!」
 掲げられた二つの錫杖からは雷が奔り、戦場を埋め尽くす。
「さあ、早く戻ってこい! 約束の時は近いぞ!」


納斗河 蔵人
 遅れてすまない。状況は理解した。このシナリオは旅団シナリオだ。
 参加できるのは【OX-MEN:フォース・ポジション】の旅団員のみとなります。

 例によって詳細は旅団掲示板でご確認を。プレイング期間も指定してます。
 皆さんの立ち位置をこれでもかと見せつけてください。
 今回のオックスマンは基本OPのみ。最後にちょっと出てくる可能性はあります。

 頑張っていきますのでよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『ライブ!ライブ!ライブ!』

POW   :    肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!

SPD   :    器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!

WIZ   :    知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!

👑1
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 霧に包まれると同時。足元の感覚が消えた。
 獣壊陣。パラドックスマンの仕掛けたこの罠にはルールがあった。
 取り込まれた世界に起きた事件を解決すること。それだけがこの陣を脱出する唯一の方法。
 しかし、これは。
「うおおおおおおおっ!?」
「きゃーっ!」
 OX-MENは遥か上空より落下する。大きな水柱が七つ上がった。

「う~ん、ひどい目に遭ったねぇ~」
「だな、いきなりこんなトラップとは、やってくれるじゃねぇか」 
 ジャブジャブと飛沫をあげて、メンバーたちは岸へ。どうやらここは大きな湖であったらしい。
「ははっ、こういう趣向も悪くないじゃないか。オレは嫌いじゃないね」
「そうかい、あたしはこういうのはごめんだね」
 幸いにして気候は暖かい。水に濡れ体でも風邪を引くことはないだろう。
 水が地面に垂れ落ちる。
「僕をこんな目に合わせるなんて、許せないよ」
「だよねだよね! この陣もサクッと突破してパラドックスマンをやっつけに行かなきゃ!」
「七海ちゃんもびっくりしたぜ。全員、無事か?」
 水の中から七海が問う。それぞれがスカートの裾や上着の袖を絞っているが、人数は7人。どうやらこれで全員のようだ。
「他の面子とは別の世界に取り込まれたみたいだねぇ」
「まあ、みんなならなんとかするよ~」
「だな。……あれ、リーオ。お前、背縮んだか?」
「あれ、そうだね。僕より大きかったはずなのに」
「ん? いわれてみればそうだな。ってか、ミルラもでかくなってねぇか?」
 ……だが、何かがおかしい。
 この世界に取り込まれたのは、クロウ、七海、リーオ、レナ、カデル、ミルラ、セレネ。それで間違いはない。
「てか、なんだか地面が遠くない?」
「ん? セレネも大きくなってるじゃん?」
 と、そこでリーオの後ろで赤頭巾さんが慌てた様子。
 リーオの体をベタベタと触り、他のメンバーを見渡せば頭を抱える。
「どうしたのかな~、赤頭巾さん」
「何かを訴えかけてるみたいだぜ」
 どうやら彼女たちにはわかっていないらしい。
 赤頭巾さんはリーオのローブに手をかける。
 何をしようとしているのかわかっていない”彼女”の態度をよそに、一気に剥ぎ取った。
「わー、何するの赤頭巾さん」
 ローブの下が晒される。
 縦セーターというものは体のラインを強調するものだ。”彼女”も例外ではない。
「おいおい、セクハラだぜそりゃあ」
「……あれ、何かおかしいね」
「……ん??? んんんんん???」
 赤頭巾さんがリーオと、クロウの二人を指さす。
 ローブの下で控えめに主張するリーオの胸部。
 肌を晒し、その豊かな胸を見せつけるクロウ。
「あぁん? なんだってんだよ、その視線は」
 存在するはずのないもの。変化したもの、それはすなわち。
 気付いたミルラとレナが足元を見る。……視界が広い。
「これは……」
「もしかして……」
 そう、彼らは。彼女たちは。
「性別が逆転してるー!?」

「おお……自覚したらなんつーか……」
 ふわふわと、自分の胸に手をやり揺さぶってみる。
 ……やわらかい。
 ああ、やはり自分はきょぬー好きだったのだ。この豊満なカラダは格別。
「……でっっっか」
 未知の感触に呆けているクロウの姿にミルラが漏らした。
 彼も元の姿に自信はあるが……ひょっとしたらあれには負けるかもしれない。
「つーか、あっちについてるってことは俺にも……」
 いつもとは違ってがっちりとした胸板を触り、手のひらはだんだんと下の方へ。
「やっぱ付いてんな。うん」
 あるはずのないものの感触に頷く。これは間違いなく性別が変わっている。
 レナも同様に、普段と違う自分の体を確かめていた。
「この感覚の違い……命取りにならなければいいが」
 猟兵たるものその戦闘能力において男女の差はないといっていいが、活かし方は違う。
 女の体ではできなかったこと。男の体ではできないこと。
 感覚の違いは甘く見てはいけない。この世界に閉じ込められるような事態にならないためにも。
「わーすごいよアーシェ! 僕が男の子になっちゃったね!」
 そんな彼らをよそに、カデルがはしゃぐ。
 ペタペタと胸元をさわり、クロウを見る。もう一度、自分を見る。
 チョーカーが突き出た喉仏に引っかかりちょっと辛い。
 ちなみにアーシェはこの異変の影響を受けなかったようで、ちゃんと可愛らしい女の子の人形のままである。
「あんまりあったわけじゃないけど、もっとないね!」
 ……どう答えればいいのだ。なんだかアーシェも困った顔をしているような気がする。
「ボクは何も変わってないのに……」
 他方、セレネは何かを悟ったかのような顔。
 服装は神父服に変化していたが、それ以外の変化はほとんど感じられない。
 男女で差が出るところといえば、まあ、胸である。
 実際メンバーのほとんどはそこを気にしている。誰しも少なからず変化はあったのだ。
 女体化したメンバーはクロウのみならず「これは大変だねぇ~」などとぼんやりしているリーオにもそれとわかるものはある。
 ミルラやレナは言うに及ばず。カデルも多少はあったらしい。
「背が高くなったのはいいけど、なんか釈然としない……」
「感覚が違うと結構やりづらいものなんだぜ? ここに危険があるんだとしたら、違和感は少ない方がいいじゃねぇか」
「え、七海さ……七海くんも変わってるの?」
 セレネが首をかしげた。
 口調が違っていることから彼も性別が変化しているのだろうが、見た目には変わっているようには思えない。
 シャチにしかわからない違いがあるのか。
「ほら、背びれをよく見ろよ。全然違うだろ?」
「ええ……」
 間違い探しかよ、と頭に浮かんだ言葉を飲み込み、セレネはため息をついたのだった。

「さて、しばらくはこのカラダを堪能したいところだが……」
「異変は明確。これをなんとかしなければ元の世界には帰れない、と」
 そんなこんなで一息ついた彼らは落ち着きを取り戻す。
 これはパラドックスマンの獣壊陣の効果で間違いないだろう。
 ならばこれまで同様、事件の解決方法と陣を破る宝具が存在している。
 しかし目の前に広がるのは湖だけ。なんの手がかりもありはしない。
「……だーれもいないねぇ~」
「まずは人里を探してみる?」
 時間はかかるだろうが、それしかないだろう。わからないことは聞く。それでいいのだ。
 ……と。
「ああっ、あなた方もあの泉の呪いに蝕まれたのですね」
 背後から声がした。
 目を向けてみればそこには若い女性が二人。
 一人は黒い髪を腰まで伸ばし、一人は頭の上でシニヨンにしている。
 姿はチャイナドレス。どうやら、この世界は中華風の世界らしい。
「ラン、とおよびください」
「アタシはゼンだ」
 二人はまず名を名乗る。見た目は美しい娘である二人だが……
「あなた方も、ってことはお前らも……」
「はい、本来は男なのです」
「ここには料理の修業の途中で通りがかったんだが」
 聞けば二人は旅の途中に出会った、病に倒れた家族を救うために必要な食材を得るためにこの山に入ったという。
 しかし、この泉にたどり着いたところで異変が起こった。
 ひとりの女が宙から舞い降りたのだ。
「彼女は……青天娘々と名乗りました。この地に伝わる伝説に現れる天女の名です」
「アタシに言わせれば邪仙だがな、あんなのは」
 フン、とゼンは鼻を鳴らした。
「とにかく、一緒についてきてください。彼女は元に戻る方法を知っているというのです」

「はいようこそ。私が勧・青天。青天娘々とお呼びくださいな」
「わっ、びっくりした」
 薔薇の模様が彩られた中華風の服に、頭に挿した百合の花。
 ランとゼンに連れられやってきた場所で待ち受けていたもの。
 突然の声にカデルが見上げれば、そこにいたのは羽衣をはためかせる一人の娘であった。
「青天娘々さま、お連れしましたよ。さあ、私たちが元に戻る方法を教えてください」
「まあまあ、そう焦らずに」
 逸るランを抑え、青天娘々は微笑んだ。
「さて、皆さん。この泉はね、かつて「ピチピチギャルになりたーい」と叫びながら酔っ払って落ちた男の呪いで満たされているの」
「……うわ、予想以上にくだらねぇ」
「なんでそれで女が男になるんだ?」
 ミルラがげんなりした顔を見せれば、レナが疑問符を浮かべる。
 だが、青天娘々もその理屈は知らないようで。
「さあ……? で、面白いからそのままにしてあるのです。男は女に、女は男に。その体の変化に心も変わり、戸惑う姿。私そういうの好きなので」
「おっと、思った以上に悪趣味だぜ、このねーちゃん」
「こうして山奥にこもっていると娯楽も少ないものでしてね」
 七海の言葉にもどこ吹く風。天女、仙人とはこうもつかみ所がないものなのか。
「で、知ってるんだよね。ボクたちを元に戻す方法」
「はいはい、治せますよ。私の持っている鏡を使えばいいのです」
 セレネの問いに懐から取り出されたのは、銅でできた鏡だった。
 普通の鏡のように何かを映し出すわけではないが、籠められた魔力は誰にでもわかるほど。
「……なるほどね~、確かにそれなら元に戻れそうだよぉ~」
「それに、あれがきっとこの世界の宝具だよ。僕たちが元の世界に戻るためにもあれが必要なんだ!」
 リーオの読みは正しい。そして、カデルが気付いた。
 呪いを振り払い、獣壊陣を打ち破る。
 その為にはあの鏡、導天鏡を手にしなければならない。
「さあ、約束通りこいつらを連れてきたんだ。アタシらに鏡を渡せ! そして姿を元に戻せ!」
「だめだめ、久しぶりのお客様ですもの。退屈していましたし、もっと楽しませてもらわないと」
 ゼンは叫ぶが、話はそう簡単に進まない。
 そこで青天娘々はふむ、と考える。
 この状況を、いかに楽しむか。前に作った仕掛けだけでも十分楽しめそうだが、もう一押しほしい。
「……どうすればいい。お酌でもすればいいのかよ」
 クロウの言葉に、パチン、と手を打ち鳴らす。
「いいですね、それ! それでいきましょう! ついてきてくださいな」 

 そして、たどり着いた先に広がる光景。
「で、これでアンタを楽しませろ、ってことかい」
 ミルラがあきれたように言った。
 ぐらぐらと揺れるシーソー。回転する棒。ぷかぷかと浮かぶ足場。
 その下に満たされているのは謎の白い液体。
「はいその通り。まずは一つめ、ぐらぐらぬるぬる神獣橋です。あの障害を乗り越えて向こう側まで渡る、これはそういう趣向ですわ」
「シンプルだな。だが、あのよく分からん液体はなんなんだ?」
 レナが問う。
 が、青天娘々が口を開くよりも早く飛び出した影があった。
「あっ、赤ずきんさん~」
 リーオの姿を元に戻すべく逸る赤ずきんさんが突き進んだのだ。
 うまくバランスを取り、シーソーを進む。
 だが、浮き島へと飛び乗ったときに油断があったか。
「危ない! 跳んで!」
 セレネの叫びは届かず、赤ずきんさんは回転する棒になぎ払われて白い液体へと真っ逆さま。
 ドボン、と音を立てて沈んでしまう。
「ああ~、これは大変だねぇ~」
「あらら、せっかちさん。でも心配しなくていいですよ。体に危険はありません」
 青天娘々の言うとおり、どうやら命に別状はないようだ。
 しかし、浮かび上がった彼女の後ろ姿には予想外の変化が。
 それに気付いた七海が疑問符を浮かべる。
「おいおい、いつもの頭巾はどうした?」
 なんと、纏っていた赤頭巾が消え失せ、金髪の髪がさらけ出されているではないか。
 それだけではない。髪の隙間から覗く白い肌……
「はいそこまで。ご覧の通り、落ちたら服が溶け落ちるようになっています。たくさん落ちて恥ずかしがる姿を見せてくださいね」
 と、青天娘々が告げると同時。
 一瞬にして元の姿に戻った赤ずきんさんがリーオの足元にへたり込んでいた。
「くそっ、お預けかよ……!」
 クロウが悔やむが、仮に全裸になっていたとしても白い液体に覆い隠されその姿は他のメンバーには見えないだろう。
 キョロキョロと辺りを見渡す赤ずきんさんが「びっくりした」とプラカードを掲げた。
「赤ずきんさん、私のために頑張ってくれたんだねぇ~」
「私が楽しむのが第一ですけど、一人でも向こう側に渡れたらクリアとしますよ」
 楽しむのが第一。
 その言葉に、次なる「お楽しみ」の内容に不安を覚える一行であった。
 
「ではでは、こちらに用意したのはドキドキゾクゾク快天香ですわ」
 次に示されたのは、一軒の小さな小屋。
「名前からしていやな予感しかしないね、アーシェ」
「違いないや。だが場合によっちゃアンタたちをこの小屋に挑ませるわけにはいかないかもね」
 カデルはアーシェと顔を見合わせる。
 名前から感づいたのか、ミルラが頭に手をやった。
「はい、多分予想通りです。ボク本当は男なのに……とか、あたし女の子なのに……とかそういう姿を見て私が楽しむところです」
「ドストレートだな、オイ」
「アンタ欲望に忠実すぎだな」
 詳細は省くが、この小屋にたちこめる香は体と心に変化をもたらす。
 それは、今までに体験したことのない感覚。
 男だけの、女だけのそういうものを引き出すものだというのだ。
「ま、モノがモノなので30分入っていられたらその時点でオーケーとしましょう。いざとなったらゼンが一人でなんとかしますよ」
「おい待て、なんでアタシが!」
 ゼンが抗議するが、それはNPCだからである。どれだけひどい目にあっても大丈夫だからである。
 挑戦者ゼロでもここはなんとかなるのである。
「……」
 顔を赤らめ視線を泳がせる面子をよそに、そそくさと一行は次の場へと導かれるのだった。

「はい、ここでは先ほどもらった案を形にしてみました。その名もふわふわむわむわ蝶催倉」
 振り返れば、そこにあったのも一軒の小屋だった。扉を開けば、暗い照明と赤いカーペット。
 机の周りにはソファが置かれ、中心には氷とボトル。
「これは……」
「あなた方にはこう言えば伝わります? ほすとくらぶ、あるいは……きゃばくら」
「!」
 そう、ここは客をもてなし、心を昂ぶらせる花園。
 今宵は一夜限りの夢をご覧あれ。
「私、かわいい男の子もませた少女もオラオラ系もクーデレ淑女でもなんでもいけますのであなた方の全力で私を楽しませてくださいね」
「めっちゃ早口!」
「すごいね~豪華だねぇ~」
 バーカウンターにはずらりと酒が並び、ステージの上ではミラーボールが輝く。
 いかにもシャンパンタワーを作ってくださいと言わんばかりの台と山のようなグラスも。
「あなた方の持つイメージから作ってみました。こういう作りは私も初めてなので、頑張ってくださいね」
「ん? イメージ?」
「ちなみにシャチもアリです!」
「マジかよ」
 ふわりと背びれに触れる青天娘々の感触に、七海は目を細めるのであった。

 オックスメンと、ランと、ゼン。
 彼らを前に、青天娘々はいい笑顔で告げる。
「と、いうわけで私を楽しませる事ができたならば、あなた方にこの鏡を差し上げましょう」
 ぐらぐらぬるぬる神獣橋。
 ドキドキゾクゾク快天香。
 ふわふわむわむわ蝶催倉。
 いずれも困難かつ奇怪な仕掛けではあるが、今も戦い続けているであろう仲間のもとに駆けつけるためにも。
 本来の姿を取り戻すためにも。
 ここで立ち止まることは許されない。
「ははっ、あたしにかかればイチコロさ」
「なんだい、いつものオレみたいなことを言ってさ」
 クロウの言葉に、ミルラが笑った。
 姿は別でも、二人の立ち居地は変わらない。
「なんだって構わねぇ。やらなきゃならねぇならな」
「そういうことだ。存分に楽しませてやろうじゃねェか」
 レナも、七海も荒っぽくなってはいるが、その心に一本通った芯は失われていない。
 阻むものがあるならば、乗り越える。
「ボクもやるよ! 薬がなきゃ大変な人も居るんだよね!」
「おうとも、早く持って帰ってやらないとな!」
「ええ、私も全力を尽くします」
「ああ、そういえばその為に来たんでしたっけ……ついでですから、楽しませてくれたら薬草もあげますよ。山の奧にいくらでも生えていますし」
 セレネが気合いを入れれば、ゼンとランも続く。
 元の姿に戻るのも大事だが、この薬草を待っている人が居るのだ。
「アーシェ、僕たちも協力しないと。頑張っていこうね!」
「赤ずきんさんも気合い入ってるなぁ~。さっきみたいな事にはならないでねぇ~」
 カデルと、リーオのそばの赤ずきんさんも負けていない。
 試練の突破に向けて、何ができるか。戦略を考える。

 青天娘々を楽しませること。
 変化した性別がこの状況にどう影響してくるのかは未知数だ。
 しかし、君たちならば必ずやこの世界を脱出し、戦いの場へと赴くことができるはずだ。
 OX-MENよ! 障害を乗り越え、鏡を手にせよ!

 ぐらぐらぬるぬる神獣橋! 服を溶かされても屈せずに対岸を目指せ!
 ドキドキゾクゾク快天香! 未知の感覚に惑わされることなく耐えきれ!
 ふわふわむわむわ蝶催倉! 青天娘々をトークとテクニックで楽しませろ!
瀬名・カデル
どこに行こうか迷ったけど、
僕は神獣橋に挑戦するよ!

僕知ってるんだ!女の子が服溶けちゃうのは大変だけど男の子は元気だからいいんだよ!(?)
あ、でもアーシェは女の子だから、この試練の時は待っていてね。

行くよ…!
まずはシーソー!
これはグラグラするから慎重にね。
他にもきっと何人か参加してるんだから、反対側に乗ってすっごく傾かないようにいけたらいいかな?
まぁ僕羽あるからとべるけど!

回転する棒!
こいつは邪魔してくるんだね、縦の回転だったら避けて横のならつかまっちゃって遠心力で先に進めないかな?

ぷかぷか足場!
僕軽いから大丈夫!回転と一緒に気を付けていくよ!
まぁ僕羽あるからとべるけど!

さぁさぁどんどん行こー!


レナ・フォルトゥス
神獣橋で行かせてもらうぜ。
それにしても、浮いている石に乗らないようにすればいいわけだ。
まぁ、これなら、手の付け所があると思うんだ。
じゃ、やらせていただくぜ!

と、ただやるだけじゃあ、攻略に時間がかかるな。
ってなわけで、魔法使わせてもらうわ。『ヘイスト』!(加速の魔法)

これなら、石が沈む前に渡れるはずだぜ。
慎重に行きながら、石を渡って、渡りきれるようにすれば、俺達の勝ちだぜ。
沈まないように行けば大丈夫ってことだ。



 
●ぐらぐらぬるぬる神獣橋(男性編)!

「さて、それでは出場選手のご紹介でーす」
 まず一行が向かったのはぐらぐらぬるぬる神獣橋であった。
 青天娘々はふわふわと飛びながら出場メンバーをじっくりと眺めている。
「あの人、目が怪しいよ」
「今更だろ。こんな遊びを仕掛けてくるような奴だぞ?」
 彼女の表情は期待に満ちあふれていた。
 気持ちはわからないでもないが……付き合わされる身にもなってほしいものだ。
「まずは一人目! 瀬名・カデルくんでーす!」
「はーい!」
 元気に返事をしながら、ぴょん、とスタート位置についたのはカデルである。
 青天娘々は満足げに頷き、手を打ち鳴らす。
「元気があっていいですね! ですがそんな彼も18歳。少年から青年、大人へとなっていくその狭間が……」
 語りが止まらない。
 そんな彼女をよそにカデルはアーシェを丁寧に座らせた。
「アーシェは女の子だからね! 一緒には行けないから待っててよ」
 その様子に青天娘々は考え込む仕草。
「むむ、人形ですか……うーん……」
 何かを悩んでいるようだが、そんなものはOX-MENの知ったところではない。
 次なる挑戦者、レナが一歩進み出た。
「悩んでるところ悪いが、さっさと続けて欲しいんだがな」
 その声にはっ、と顔をあげた彼女は次なる挑戦者を指し示す。
「これは失礼しました。続きましてはレナ・フォルトゥスくんでーす!」
 その言葉にレナは片手をあげて応えるだけ。
「おっと、炎使いなのにクールですねぇ。そんなところも魅力でしょうか!」
 それはそれで青天娘々のツボにはまったようで嬉しそうだ。
 ともあれ、まずはこの二人が神獣橋へとチャレンジすることになる。

「それでは……ぐらぐらぬるぬる神獣橋への挑戦、開始してくださーい!」
「はーい、がんばるよ!」
 青天娘々のかけ声と共に神獣橋の仕掛けが動き出し、カデルが駆け出す。
 ぴょんと飛び乗ればシーソーがぐらりと傾いた。
「おっとっとっと」
 くるくると手を回し、重心を前へ。チラリと見えたシーソーの下には謎の白い液体が広がっているのが見えた。
 踏ん張ろうと力を籠める。
 背中の翼が小さく羽ばたいた。
「油断するなよ。危険はないんだろうが、あいつの好奇の目にさらされちゃたまったもんじゃないぜ」
 が、傾いたシーソーはゆっくりと並行に戻っていく。
 少し遅れてレナが飛び乗ったのだ。
「結構ぐらぐらするね! 慎重に行かないと」
「ああ、互いにうまくタイミングを合わせて進もうぜ」
 にっ、と笑うレナの姿に青天娘々も喜びを隠さない。
「いいですね、男の子同士の友情! でもでも、障害はまだまだ続きますよ!」
「わかってるっての。さっさと終わらせてもらうぜ」
 言葉と共に、カデルとレナはシーソーを踏みしめて跳ぶ。  
 眼下に広がるのは謎の白い液体。
 視線を先に向ければ揺れるシーソーだけではない。ぷかぷか浮かぶ足場や、回転する棒が待ち受けている。
 どの障害も足を踏み外せばどうなるか。それは先ほど赤ずきんさんが見せたとおりだ。

「お見事お見事! いいですね、頑張ってる子達は好きですよ!」
 障害を乗り越え、二人は進む。
「さあ、ここからはいろんな仕掛けの合わせ技です! 一つ一つなら突破できても……一斉に来たらどうなるか!」
 だが、青天娘々にとってはここからが本番だ。
 彼女の望みは最初に告げられたとおり。
「おっとよだれが……ちゃんといい表情を見せてくださいね」
「僕知ってるんだ! 女の子が服溶けちゃうのは大変だけど、男の子は元気だからいいんだよ!」
「うふふ、そんな事を言っている少年があられもない姿を晒すかと思うと、私楽しみで仕方がありません! ……おっといけませんよだれが」
 懐紙を取り出し、口元を拭う。
 レナとカデルを見守る、他のメンバーもドン引きである。
「青天娘々様……」
「これ、あたしらもやるんだろ……?」
 ランとクロウは次の挑戦者だ。こんな目で見られるかと思うと流石に気が滅入る。
 その後の試練も大概ではあるのだが。
 と、その時だった。
「あっ、危ない!」
「来ました? 遂に来ました?」
 セレネのあげた声に青天娘々が期待に満ちた視線を向けると、その先には先行したカデル。
 その様子を見守っていたレナも何かを口にしながら手を伸ばした。
 なんと、カデルはぷかぷか足場の上で遂に回転棒に触れて、宙に舞っているではないか!
「よし、よし! さあそのあられもない姿を……」
「えーいっ!」
 だが期待通りにはいかない。
 回転のエネルギーを利用したカデルは、その勢いで一気に次の足場まで歩を進めたのだ。
「ええーっ、そんな……ちょっと飛んでる時間長すぎじゃありません?」
「僕、気付いたんだ! 羽根があるから飛べるって!」
 にこりと笑ってVサイン。弾ける笑顔のカデル。
「あっ……ああああーっ! 私としたことが!」
 青天娘々の顔が絶望に染まった。
 
「滑空までは認めます! ですが羽ばたいたら駄目です! それではお楽しみが減ってしまいます!」
「後出しのルールはいくら何でも卑怯なんじゃねーか?」
「私が正義です! 落ちるか、落ちないか? はい落ちたー! ってなるのがいいの!」
 物言いはどうにか穏当な(?)範囲で収まった。
 とはいえ、このことは最初から彼女の望みでもあったので仕方があるまい。
「怒られちゃった!」
「まあ、アイツの機嫌を損ねて鏡がもらえなくなっても困るしな」
 てへへ、と笑うカデルと、あきれたような顔で苦笑するレナ。
 ぽん、と頭に手をやってゴールへと視線を向ける。
「さあ、残すはあと少しだ」
「失格で無理矢理ひん剥かれないだけ有情だと……あれ、レナ? ここまで突破するのがずいぶん早くありません?」
 と、そこで青天娘々が気付く。つい先ほどまでレナは大分後方に控えていたはずだ。
「わ、ホントだ! いつの間に!」
「ま、そこは魔法ってやつさ」
 指を立ててくるりと回し、ちらりとレナは青天娘々へと視線を向ける。
「むう、私の隙を突くとは……まあいいでしょう。仕掛けを無視してきたというわけでもなさそうですし」
 応じて、彼女もほぼ同時に揺れるぷかぷか足場を眺める。
 不満そうだが、咎める事もない。それに、と続ける。
「たとえどれほど早く動こうと、空を飛べようと……きっとあなたたちは素敵な姿を見せてくれるに違いありません」
 そんな二人を待ち受ける最後の障害。
 揺れる足場に、立ち止まることを許さない回転棒、そして高くそびえる巨大な風車。
「さあ、この風を乗り越えて回転する隙間を抜けることができますか!」
 それぞれが一歩を踏み出す。
 しかし、ゆったりとした風車の回転に反して、巻き起こる風は強烈だ。
 カデルの羽根も、レナの魔法も。この状況では逆に枷となりかねない。
「期待通りには行かないぜ。さくっとクリアしてやるところを見せてやるよ!」
「元気ないっぱいところ、見逃さないでよね!」 
 赤毛が揺れる、羽根が舞う。
 揺れる足場も回転する棒も、もはや慣れたもの。一つ一つならば突破は容易だ。
 しかし、組み合わさればそれは大きな壁として立ち塞がっている。
「わわっ!」
「しまった!」
 風に煽られ足場が跳ねた。男になっても軽いカデルの体が宙に浮く。
 レナも体勢を崩し駆ける。
「いいわ! そのまま」
 青天娘々の表情に期待の色が浮かんだ。
 遂に謎の白い液体は本領を発揮し、二人はあられもない姿を晒すことになってしまうのだろうか?
「加速魔法、ヘイスト!」
 だがそれを阻む声がする。レナだ。
「なんとっ!?」
「滑空は認める……そういったな?」
「これなら……いけるよ!」
 レナの魔法によってカデルの動きが加速し、ひっくり返りそうになっていたカデルが体勢を立て直した。
 風はカデルの体をグングンと押し上げる。あっけにとられる青天娘々をよそにレナは次なる一手を打つ。
「カデル!」
「うんっ!」
 高度をあげるカデルへとレナの手が伸びた。違わずその手を掴み、視線を前へ。
「このまま風車の上をとびこえるよ!」
「うううううっ、それなら定めに違反はしていませぇぇぇぇぇん!」
 嘆きの声を背に、二人は遂に神獣橋の終着点へとたどり着いたのであった。

「やったね、レナ!」
「おう、これも協力のたまもの、ってやつだな」
 パチンと手を打ち鳴らす二人の前で、青天娘々は悲しみに暮れていた。
「よよよ……もっと華奢な胸板とかたくましい胸板とか立派なアレとかを見せてもらいたかったんですが……」
「ぐらぐらぬるぬる神獣橋、クリアだよ!」
「ルールは守ったぜ? 大人しく負けを認めるんだな」
 さめざめと袖をぬらす彼女に、二人の声が響く。
 この試練を始める前の言葉を考えれば、この状況はまずい。
 橋を渡りきればクリアとは言っていたが、楽しむのが第一の目的である。
 こんなのは無効だと言い出しかねない。
「ま、男の子同士の友情といいますか、絡み合いが見られたのでよしとしましょ。お楽しみはまだのこってますからね」
 ……と言う不安は、次なる言葉でかき消えた。
 カデルとレナはほっと息をつき、顔を見合わせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
UCは使えず

この儘だと…あたしは困るコトあるか?
折角なンでこの体を楽しンでから戻るぜ!

仲間を戻す為に神獣橋へ
慣れないヒールで進む
体感違いで態勢崩し落下
他仲間の救助へ

ン…ッこの液体気持ち悪ィ…(色気増し
で、次は…
思いの他動き辛ェな
あたし?イヤ、俺、男の癖に女装…今は女だけど、女の格好してる時点で昔の弟と変わらなくね?
急に嫌気が差してきた
服が似合ってたからまた困る(謎の自信とズレっぷり

最後は…要は”お持て成し”すりゃァイイんだろ

着替え可能なら露出高い和服に
ピアス無
足組んで客の隣へ座り接客
胸元見せて得意の和酒作る

なァ…お客サンの武勇伝聞かせて?
強いひとに惹かれるわ
いつかあたしともヤってくれよ(耳元で



●ぐらぐらぬるぬる神獣橋(女性編)!
 
「さて、クロウにラン……あなたたちにもしっかり挑戦してもらいますからね」
 青天娘々はにっこりと微笑む。
 残念ながら男性陣はカデルの羽根と、それを活かすレナの機転によって神獣鏡の罠に引っかかることはなかった。
「オイ……ラン。お前あの二人みたいにできるか?」
「まさか、無理ですよ。あのような超人的な動きは……」
「だよな……」
 だが、この二人ならば期待に応え、あられもない姿を見せてくれるに違いない。
 この笑みはそういった笑みなのだ。
「さあさ、挑戦者の紹介ですよ! まずは杜鬼クロウちゃんでーす!」
「ちゃん、って歳でもないと思うがなァ」
 どん、と張り出した胸部にすらりと伸びた脚。纏った服は男の時とさして変わらぬはずだ。
 しかし女と化した体はしかとその肢体を主張し、見るものを引きつけている。
「ぐふふふ、いいですねぇ……」
「いや、その気持ちはわかるぜ。あたしも元の姿に戻るまでじっくり楽しみたいからな」
 魅了されているのは青天娘々だけでなく、クロウ自身もそうなのかもしれない。
 ともあれ、楽しもうという姿勢は好印象のようだ。
「しっかりその姿でなければできない体験、していってくださいね! 続いては、ラン!」
 続くランは苦笑いだ。 彼女は流石に猟兵であるオックスメンに及ぶほどの力はない。
 この先待ち受ける悲劇(?)は逃れようもないだろう。
 覚悟はできているが、だからといって開き直れる訳でもなかった。
「ふふふ、そうですよ……そうやって恥ずかしがる表情! そういうのが見たいんです!」
「はは……お手柔らかにお願いします」
「それでは、ぐらぐらぬるぬる神獣橋! 二会戦目の幕開けでーす!」
 苦笑するランだが、手加減はしないと主張するかのように青天娘々は華麗にスルー。
 男性編よりひどいことになるのが目に見えた戦いは始まったのであった。

 とはいえ、ランだって薬を手に入れるために山に入る気概はあるし、旅の経験もある。
 ぐらぐらと揺れるシーソーはうまく連携を取って乗り越えた。
 動きがあったのはその次、ぷかぷかと浮かぶ足場である。
「へっ、これくらい……」
 彼女がもし、男の姿であったならばこのような事態にはならなかったはずだ。
「ぬおっ?」
「来た! 来ましたよ遂に!」
 余裕を見せていたクロウがぐらりと体を傾けた。
 性別と共に変化した服装……彼女によく似合う高いヒールがこの不安定な足場で遂に襲いかかったのである!
「いけねぇ!」
「クロウさん!」
 ランの叫びも空しく謎の白い液体が飛沫をあげ、足場が宙に飛ぶ。
 そして、憐れにも落下したクロウはといえば。
「ちっ、まさかあたしの方が先にしくじるとはねぇ」
 大方の予想通り衣服が溶け出し――
「よーしよしよし! 乙女の! 柔肌! いただきましたわ!」
 大きな胸の谷間が、細い腰が、すらりと伸びた脚が惜しげもなく晒されていた。
 だが、大事なところだけは何故かしっかりと守られている。ここだけは主張しておきたい。
「くそっ、セクシー衣装が溶けちまった! これじゃ全員悩殺しちまうぜ!」
「良いではないですか! より扇情的ですよ!」
「うわー、この女欲望に忠実すぎるわ」
「えー、見えないよー」
 その様子を眺めていたミルラがカデルの目を塞ぎつつ言った。
 ちなみに、自分はガン見である。
「いやいや、淑女にセクハラはいけねぇ」
 と、首を振って自分も目をそらす。とはいえ元の性別を考えれば……いいのか?
 そもそもカデルの目を塞ぐ必要はあったのか?
「赤ずきんさん、私も見えないんだけどー」
 そう考えればリーオの視界を遮るのが正しかったのかもしれない。「見ちゃダメ」と書かれたプラカードでガードされているが。
「うほっ……いやいや、アイツは男だ。なんだか自分でもよく分からなくなってきたぜ……」
 ゼンも何やらお悩みのようだが、悲劇は続く。
「クロウさん、捕まって……ああーっ!」
「おいおい、ラン……大丈夫かぁ?」
 手を伸ばしたランもまたバランスを崩し白い液体へと真っ逆さま。
「キマシタワー! そう、こうですよ! 男の子同士の友情もよかったけどこういうのが見たかったの!」
「あっ……見ないで……見ないでください……」
「見せつけるもよし! 恥じらいもよし!」
 青天娘々、テンションアゲアゲである。

 と、まあすったもんだはあったもののタイミングよく舞い上がる白い液体や謎の光によって彼女たちの最後の一線は守られた。
 最終的にはクロウがランを連れて液体の海を泳ぎ切ってゴールとなった。これでもよかったらしい。
「ふふ……良いですよね、百合……でもあなたたち本当は男の子なのよ……うふふ……」
「いいから、早く着るものをお願いします!」
「いいじゃぁねえか……もうちょっと楽しもうぜぇ」
 肌色の多い女性二人(本当は男)の絡み合い。
 青天娘々の倒錯的な趣味もご満悦であった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーオ・ヘクスマキナ
行くなら神獣橋か快天香かな~
蝶催倉……キャバクラは、私行ったこと無いから分からないし
……「さっき落ちたしあそこは浮游出来ないからヤダ?」
じゃあ快天香だね~

コレ、ある種の精神攻撃のようなものでしょ~?
なら私の出番でしょ~。ゼンさんに無茶させられないし~

生憎だけどね~
私、「本来の自分であればありえないような精神状態への変貌と、それに伴う負荷」や薬には少し強いんだ~(狂気、毒耐性
……それに、私には赤頭巾さんが一緒に居るから~
1人だと大変かもだけど、2人なら。ね~?




……え。「コッソリ貼ってた加護が効いてない?」
アッ、待ってヤバい~未知のゾクゾクが~!
あんな啖呵切ったんだし、何とか耐えて……ヒャンッ!?



●ドキドキゾクゾク快天香(悪いがここは男女一緒だ編)! 

「はー、堪能しました。でもお楽しみはまだ終わりじゃありませんよ」
 神獣橋の騒動を終えても、青天娘々は満足には至らないらしい。
 残りの試練(?)もやらずに済ませる、とはいかないようだ。
「橋を最初に見たときは面白そう! って思ったんだけどさ……」
 宣言を聞くとセレネはげんなりとした様子でつぶやく。
「何か全体的に色々おかしいよね……?」
「おかしいのはあの女だと思うぜ」
 そんな声に答えた七海の言葉は正しいのかどうか。
 いや、きっとセレネの勘は正しい。
「ではでは、こちらも期待大! 次なる催しはドキドキゾクゾク快天香です!」
 この試練は、”ヤバイ”。
 かと思えば逆に余裕を見せているものも居るようで――
「蝶催倉……キャバクラは、私行ったこと無いから分からないし、やっぱこれだよね~」
 赤ずきんさんを従え、リーオはのんびりと言う。
 実のところ、彼女たちはこの試練に対する自信があった。
「一人なら大変かもしれないけど、二人なら、ね~?」
 任せろ、というプラカードを手にした赤ずきんさんと共に、リーオは快天香のたちこめる小屋へと歩を進めていく。
「うふふ、その自信が崩れるのかどうか……しっかり見させてもらいますからね」
 その背を見送る青天娘々は不敵な笑みを浮かべていた。
 一方、そんな彼女を見つめる瞳がふたつ。
「ふふ、俺は負けないぜ」
 その正体はミルラであった。
(本来の女の身でも生娘ではなかったわけだしよ)
 だからこそ、自らが用いてきた手管が男の体にどのように響くか、彼は知っている。
「予想ができるなら不意打ちされない! 耐えられる!」
「ふふ、やる気があって結構ですわね、ミルラ。それにクロウも……」
 そんな様子に青天娘々は何かを感じ取ったらしい。
 口元を隠した笑みも怪しく、クロウへと話を振った。
「あたし? イヤ、俺、男の癖に女装……今は女だけど、女の格好してる時点で昔の弟と変わらなくね? ってな」
 と、そこまで答えたところで急に表情が曇る。
 何か思うところがあるらしい。
「……しかも服が似合ってるからまた困る」
「あらあら、さっきまでの楽しむ気概はどこへ行ってしまったのかしら」
「ははっ、よーく似合ってるぜ、クロウ」
 クロウの肩に腕を乗せたミルラであったが、自然視線は大きく開いた胸元へ。
「……いつもと立場が逆だなァ」
「そういう視線、わかるもんだろ?」
 不良神父がニッと笑った。

 結局強制参加となったゼンを交え、挑戦者は4人+1人(赤ずきんさん)と相成った。
「さて、それでは私は特等席で見させてもらいますよ」
「お前もこの……怪しい香りの中に入るのか?」
「そりゃそうですよ。あ、私にはこういうの効きませんので」
 ゼンが引きつった顔で問えば事もなげに青天娘々は答える。
 既に小屋の中には甘い匂いがたちこめ始め、じんわりとした熱が辺りを包んでいた。
 ……こんなものか、とミルラは思う。
 ゼンはともかく、リーオも今のところ平静を保っている。
 既に時間は5分が経過。30分の内の5分だ。
 この様子ならばさしたる問題も無く時間が訪れるはず……
「うふふ。余裕だぜ、って顔をしていますね」
「おっとぉ?」
 と、そんな事を考えていたところで声がする。
 いや、声だけではない。背中に当たる柔らかい感触。
 絡められた腕と耳元の囁きが。自らも用いたことのあるその手管が、今男として存在している自分自身に響く。
「でも、お楽しみはこれから……ふふ、ちゃーんと時間まで耐えられますかね」
「はっ、当然だぜ」
 ……とはいえ。青天娘々のいたずらっぽい表情がやけになめかましい。
 なんともないと思っていたが、ミルラもこの香りの影響を受けているのかもしれない。
 時計の針が、ひとつ進んだ。

「くそっ、暑ぃな……」
「そうだねぇ~」
 一方。のんびりとした口調のリーオに対し、やや余裕を失ってきたゼンである。
 じわりと汗がにじむ。その理由が暑さだけではないことはわかっている。
 だが、そうとでも思わなければやっていられないのも事実なのだ。
「……お前はなんでそんな余裕なんだ?」
「まあ、いろいろとあってね~」
『本来の自分であればありえないような精神状態への変貌と、それに伴う負荷』……UDCである赤ずきんさんを宿している為か。
 そういった、術や薬には少なからず耐性を持っている身である。
 それは体が女性と化したこの状況だからこそ強く働いていたとも言える。
 もっとも、故にリーオの精神は女性に近づいてしまったようだが。
「ふぅ……」
 そんな二人の正面で、ため息がひとつ。クロウだ。
 先の神獣橋での一件。ほとんど全裸のランを担いで泳ぎ切った彼女であったが精神は男のままと言っていい。
 それなのにクるものがなかったのはこの体のせいなのか。
 だが……つい先ほどまで全身にまとわりついていた白い液体の感触が、腹の奧で何かを呼び起こす。
「……」
 視線がミルラへと向かう。彼は今、この小屋の中唯一の男……
「いや、何を考えてるんだあたしは」
 これもこの香りのせいか? だが彼は本来彼女で今自分は女なのだから問題ないのでは?
 鈍っていく思考。
「ふふ……」
 そんな彼女たちの様子を眺めながら、青天娘々はペロリと唇を舐めた。

「ふぅ……ぅっ……」
「はぁ……くそっ」
「ふ、二人とも……大丈夫~?」
 時計の針も半分を過ぎた。
 いや、まだ半分といった方が正しいかもしれない。
 吐く息は荒く、にじむ汗が艶やかさを増している。
「ねぇ……赤ずきんさん~なんだか、様子が……おかしいよぉ~」
 耐性があると豪語していたリーオすら怪しくなってきた。
 そもそも影響を受けるはずのない赤ずきんさんですら吐息に熱をこもらせているような……
「……え。どういうこと?」
 そろそろと掲げられるプラカード。そこに書かれていた言葉に理解が追いつかない。
「コッソリ貼ってた加護が効いてない? ……それってつまり」
 気付いてしまった。
 先ほどから感じていたこの感覚。これは快天香の……
「アッ、待ってヤバい~」
 その考えに至った瞬間、背筋にぞわりと痺れがはしる。
 へなへなと崩れ落ち、汗ばんだ肌に衣服がまとわりつく。いつも着ているコートにこもった熱が息苦しい。
「こんな、こんなの……アンッ!」
 もぞもぞと上着を脱ぎ捨てても、熱は収まらない。
(あんな啖呵切ったんだし、何とか……)
 しかしこの感覚を知ってしまったら。突然自覚してしまったら。
 耐えきることができるものが居るだろうか?

 ぎり、と奥歯を噛みしめる。
 はっきり言って、全員がこの快天香の影響下にあるこの状況で一番きついのは彼である。
「おいおいおいおいおいおい」
 呑み込まれつつある女が四人目の前で喘いでいる。
 そんな状況で、不動で居られたミルラの精神力はすさまじいと言えよう。
 だが、そんな彼だっていつ耐えられなくなるか知れたものではない。
「ねぇ……その知らない欲望、解き放ってしまったらどうですか……?」
 耳元の囁きに体が震えた。
 青天娘々はわかっていたのだ。だからミルラに狙いを定めていたのだ。
 女が五人、男が一人。欲望を引き出す香り。熱を帯びた密室。何も起きないはずはなく……
「……俺は負けないからな!」
「女と男の両方を知ることができるなんて……今を逃したら二度とないかもしれませんよ」
 もはや思考は行ったり来たり。
 残り時間はあとどれだけだ。どれだけ耐えればこの生殺しは終わる。
 いっそこの誘いに乗ってしまおうかと言う考えとのせめぎ合い。
「なぁ……ミルラよ……」
 右の肩に重みを感じた。いつの間にかクロウがやってきていたのだ。
「アンタ……この熱を鎮める方法を知ってるんだろ……?」
 その反対からはゼンだ。腕を絡めた彼女の言葉と共に、首筋に息がかかる。
「ちょっとでいいから~」
 脚にはリーオがしなだれかかっていた。赤ずきんさんも同様に。
「うっ……お、お前ら……」
 もう限界だ。全員が限界だ。
 よいかミルラよ、我々はインペリアルクロスという陣形で戦う。
 前はリーオと赤ずきんが物欲しげに見ていて、右からクロウ、左はゼンの巨乳コンビ。
 そして後方からは青天娘々の囁き。
 中央のお前が一番危険だ。存分に解き放て。
「お、俺は……!」
「据え膳食わぬは、ってあなたも言ったことがあるでしょう?」
 その囁きを最後に、全員の意識が飛んだ。

「あっ、出てきたよ!」
 カデルが声をあげた。予定の30分を過ぎても誰も出てこなかったので心配していたのだ。
「……予想はしちゃあいたが」
「大丈夫か、あいつら」
 レナと七海が出てきたメンバーの姿に冷や汗をたらす。
「お、俺は……!」
 ミルラが壁に頭を打ち付けた。
「くそっ……何も覚えてねェ……何があったんだよ……」
 クロウが頭を振って、無意識に腹に手をやる。
「赤ずきんさん~そんな落ち込まないで~」
 さめざめと袖をぬらす赤ずきんさんと、寄り添うリーオ。
「一体何があったんだ……?」
「聞くな……聞くんじゃねぇ」
 ランの問いに絶望的な顔で答えるゼン。
 青天娘々を除いた全員が汗だくで、衣服を乱している。
 あの密室で何があったか……想像するに難くない。
「い、いくら何でもやり過ぎなんじゃ?」
「よく分からないけど、この試練は大変だったんだね……!」
 セレネのつぶやきに、カデルがぽかんとしたような表情で言葉を漏らす。
 そんな状況の中、小屋から出てきた青天娘々が参加しなかったメンバーの元へと歩み寄ってきた。
「大丈夫、残念ながらあなた方が想像したようなことは何も起きませんでしたよ……でも」
 いい笑顔の青天娘々が快天香の参加者達には聞こえないように言う。
 そして振り返り、頭を抱える参加者達を見てニンマリと唇をつり上げた。
「私はああしている姿が見たかったのよ……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミルラ・フラン
(うさんくさいイケメン神父が煙草をくゆらせている)
神獣橋は逆にやりやすいよな。今は男なんだから、見えても別に恥ずかしかないし、元々見えても気にしねぇし。
……女に変化した奴もいるんだったな。淑女にセクハラはよくねぇ。

快天香……ふふ、俺は負けないぜ。
本来の女の身でも生娘ではなかったわけだしよ。
男の感覚だって過去の観察から予想が出来る!予想が出来るなら不意打ちされない!耐えられる!
……耐えられるからな!(フラグ)

(何故か白いスーツに柄シャツに着替えてきて)
青天娘々ちゃん可愛いよ~!
ドンペリ入れる?入れるんだね?はいドンペリ入りました~!!
のーんで!飲んで!ハイ!ハイ!
……フッ、勝ったぜ


※アレンジ歓迎



 
●ふわふわむわむわ蝶催倉(キャバクラ編)!

「さてさて、名残惜しいですがこれが最後の試練。ふわふわむわむわ蝶催倉でございまーす」
 それから少しして。オックスメンが導かれたのはキャバクラであった。
 これから君たちは青天娘々をもてなしにもてなして満足してもらわなければならない。おさわりは禁止です。
「とはいえ、リーオちゃんはここには来てくれないみたい……悲しいですね。と、いうわけでラン、ゼン。あなた方も強制参加ですよ」
「なんとなくそんな気がしていました」
「ここまで来たら仕方ねぇ……約束は守ってもらうからな」
 ランとゼンがため息をつく。元の姿に戻してもらうのも大事だが、二人がこの山に入った目的は薬草だ。
 群生地まではここからさらに山の奥深くまで行かなくてはならない。青天娘々がそれをくれるならば彼ら(今は彼女)たちにとっても利のある話なのだ。
 だから思うところはあっても素直に従うしかない。
「クロウはこれで全部に挑戦することになりますね。やる気があって大変よろしい」
「まあ、乗りかかった船ってやつよ」
 先ほどまでの姿とは打って変わって、クロウの纏う衣服は和の雰囲気。
 しかしながら開いた胸元が扇情的であり、このキャバクラという場にしっかりと馴染んでいる。
「それじゃ、早速おもてなしいただきましょうか。ふふ、しっかりと楽しませてくださいね」
 
「ようこそ、勧青天さま」
「あらあら、入り口の外にまでお出迎えなんて愛い娘達ですこと」
 最初が肝心。麗しき淑女たちは、この花園へと足を踏み入れんとするかの麗人を最上の礼をもって迎え入れる。
「今宵は至上の喜びをこの蝶催倉にて……」
「あー、その……つまりは、楽しんでいけってことだ」
「まま、まずは座って座って」
 ランとゼンにはまだ照れがあるらしい。
 一方、クロウは素早く青天娘々の手を取る。さりげなく腕に膨らみを押し当てるのも忘れない。
 これも快天香の経験が活きたと言えるかも知れない。
「ふふ、歓迎してくれて嬉しいわ。クロウちゃん、となりにお座りなさいな」
「じゃあ遠慮なく……まずは乾杯と行こうぜ」
「ではでは……うーん、こういう時何を頼めばいいのかしら」
「おっと、お客さん初めて? じゃあ、知らないこといっぱい教えてやらなきゃな」
 最初にこの試練を告げたときにも感じたことだが、青天娘々はキャバクラについて詳しくはないらしい。
 ならば何故ホストやキャバクラと言った単語が出てきたのか……
(いや、今はそんなこたぁいいか)
 今重要なことはそこではない。彼女を楽しませること頃が重要なのだ。

「お待たせしました。ええと……ドンペリです」
 ランがドンペリと言って差し出したのは明らかにシャンパンではなかった。
 しかしキャバクラと言えばドンペリなのだ。知らんけど。
 そしてそれを指摘する者は誰も居ない。彼女たちは全員イメージでキャバクラをやっている。
「ええ、ありがとう。それじゃあ乾杯しましょうか」
「……アタシたちもこれを飲んでいいのか?」
「もちろんよ。あなたたちもお飲みなさいな。ほら、反対側が空いてるわよ」
 とんとんと示されランとゼンもクロウとは反対側に腰掛けた。
 ドンペリ(仮)を手に、グラスを掲げる。
「かんぱーい」
「カンパーイ」
「乾杯です」
「……乾杯」
 そして、音頭と共に一気に喉へと琥珀色の液体を流し込んだ。
「ふぅっ」
「お姉さんいい飲みっぷりだ!」
 ぽっ、と青天娘々の頬が赤らむ。
 毒の類いは効果がないと本人は言っていたが……
「大丈夫ですか、青天娘々さま」
「へーきへーき、これでも長く生きてるんですからね」
「長くって……どれくらいだ?」
「やだわ、女性に聞くものじゃないわよ……いえ、女同士だからいいか。ざっと1000年ほどかしらねぇ」
「うげっ」
 ゼンがたらりと冷や汗を垂らす。予想以上だった。
「でもねぇ。こんなところまで来る人間も少ないし……」
「そうでしたか……では、せめて今は私たちが全力でおもてなしを」
 ランが娘々グラスに酒を足す。すると即座に飲み干し、お代わりを要求。
「これでも、昔は世界を救ったりしたんだから。もっと敬われても良いと思うのだけど」
「……へェ? お客サンの武勇伝……聞かせて」
「そうねぇ……じゃあ、悪ーい竜を追い払ったお話でもしましょうか」
 その物語は世界の支配を目論む邪悪な竜との戦いであった。
 邪竜は三人の配下と無限の軍勢を従え、人々を絶望の底へとたたき込む……
 そんな敵を相手に、大立ち回りを演じた一人が彼女なのだという。
「一度に五人の男に言い寄られたりして……まあみんな寿命で死んでしまったけれど、私も浮き名を流したものよ」
「へぇ……そりゃすごいや。強いひとに惹かれるわ」
「そうでしょうそうでしょう。もっと褒めてもいいのよ」
 実のところ、酔っ払いの言うことだ。どこまで本当かは知れたものではない。
「知りませんでした。この世界はそんな危機に見舞われていたのですね」
 だが、こういう時否定してはいけない。
 さすが! しらなかった! すごい! センス良いですね! そうなんですか!
 褒めるときのさしすせそだ。
「ふうん、なんだかんだ言っても霊力のすごさは確かだしな……流石、っていっとこうか」
 ゼンもこういう話には興味があるらしい。場は一気に温まり、盛り上がりは最高潮。
 青天娘々の舌も回り、気分よく過去を語り続けた。
「男の子を落とす手管を教えてあげてもいいのだけれど……あなたたち本当は女の子じゃないのよねぇ。残念だわ」
「はは……」
「ややこしいったらありゃしないぜ」
 そうなってくると猥談が始まるのは男も女も変わらないらしい。
 先二つの試練を考えても、彼女はそういった事柄にあけすけでもあるようだし。
 ならば、とクロウは耳元でささやく。
「なあ、いつかあたしともヤってくれよ」
 しかし青天娘々はきょとんとした表情を見せた。
 そして微笑む。
「私、女の子を蕩かす手管にも自信があるのよ。一度味わったら、男の子に戻れなくなってしまうかも」
 甘い囁き。体に触れる手。一瞬それでもいいか、と思ってしまう。
「いいね、最高だ。そっちも永遠の命を捨てる覚悟で来なよ」
「あら素敵だわ。行っちゃいます? 二人で……」
 互いに体重を預け、行くところまで行くか……
「ちょ、ちょっと待てクロウ! 考え直せ!」
「そうですよ! 青天娘々さまも!」
 とはならず、止めが入った。
「ほほ、冗談よ。でもクロウ、私が欲しければ世界の36個くらいは、救ってからいらっしゃいな」
「はは、その時を楽しみにしておきな」
 大人同士の機微か、二人は笑う。
 その様子をランとゼンはわけがわからない、といった表情で眺めているしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレネ・リノークス
最初の橋を見た時は面白そう!と思ったけど…何か全体的に色々おかしいよね…?で、でも頑張るよ!

神獣橋は服が動き辛いからパス、快天香もヤバそうだからパス!

残りは蝶催倉だけど…ボク美少年だからヨユーだよ!ホストとかキャバクラとかよく分かんないけど、まぁ見てなって!
ここでは青天娘々…いや、姫が主役だよ!何でも言う事聞いちゃう!ボクは神だからね!
お酒飲む?何が飲みたい?もちろんお酌もするね。
褒めるとかどう?ずっと思ってたけど姫って頭の百合の花もその服も似合ってて綺麗だよね、みたいな感じで?
お話するってだけなのも味気ないよね。壁ドンや顎クイもできるよ!
もちろん姫の為にシャンパンタワーだってやっちゃうよ!



●ふわふわむわむわ蝶催倉(ホスト編)!

「ふっふっふー、ボク美少年だからヨユーだよ!」
「おっ、自信満々じゃねーか」
 さて、キャバクラが盛り上がっている間も、着々とホストクラブの準備は進められていた。
 セレネが勢いよく巨大な水槽を店の中央へ滑り込ませれば、七海が勢いよくその中へと飛び込む。
 跳ね上がった細かい飛沫がシャンデリアの明かりに照らされキラキラと煌めいた。
「おっ、なかなか派手じゃねーの」
 ミルラが笑う。彼は先ほどまでの神父の姿とは違う、全身白のスーツでコーディネート。
 しかし襟元から覗くシャツは派手な柄物で、ワイルドさもアピールしていた。
「あ、服変えたんだ」
「別に神父のホストクラブってわけでもねーからな」
 そう、セレネも形は違えど神父の姿。
 ホストのNo.1は弱肉強食。キャラかぶりは厳禁である。
「まっ、俺に任せておけば青天娘々ちゃんもイチコロよ」
「ふふん、ボクだってトークには自信があるよ」
「シャチでもいいって事は俺も喋りで楽しませてやらねーとな」
 ガシガシと氷を削るミルラを横目にセレネはこほんと咳をひとつ。
「なまむぎゃなまごみゃ……いてて」
「って、早口言葉かよ。舌かんでるじゃねーか。どれ……」
 それに応じて、七海も息を吸って続く。
「生麦ママ米生卵……ってな」
「お前も言えてないぜ? てか、お前達ホストクラブがなんだかわかってやってるのか?」
 そんな二人にミルラは苦笑い。
「ま、ちょっとした余興ってやつよ。要はバーみたいなもんだろ」
「よく分かんないけど、まぁ見てなって!」
「わかってないんじゃねーか!」
 思わず吹き出す。
 ホストクラブ『OX-MENS』の開店は近い。

「いらっしゃーせー!」
「姫のご到着だよー!」
 シャラララーン、という音と共に開かれる扉。店内を動き回るスポットライト。
 その光が止まった場所に立っていたのは、青天娘々である。
「おほほ、歓迎してくれて嬉しいわ」
 傅かれ、セレネの手を取る。一段一段階段を下り、フロアの中心へ。
 降り注ぐ光の中を進み、そこで待っていたのは。
「ようこそお客様、いらっしゃいませ」
 巨大な水槽と、その中を漂うシャチであった。
「ぷっ……うふふふふ、楽しいお店ね」
「そうそう、ここでは青天娘々……いや、姫が主役だよ!」
「青天娘々ちゃんに最高の時間を届けてやるからよ。楽しみにしてなって」
「ささ、まずは座ってくんな」
 七海が促し、セレネがエスコート。ふわりと浮かぶスカートが落ち着いたところで跪き、宣言する。
「今日は何でも言う事聞いちゃう! ボクは神だからね!」
「ふふ、頼もしいこと」
「青天娘々ちゃん、これメニューね」
「何飲む? 何飲む? 何が飲みたい?」
 自然と隣に腰掛け語りかけるミルラの余裕と対照的に、積極的なセレネ。
「今日はいかがなさいますか?」
「じゃ、まずは軽いものから」 
 そして七海はまさかのバーテンである。
「ドリンクオーダーいただきましたーッ!」
「ヒューッ!」
 念動力で器用にシェイカーを振り、シュッ、とカウンターを滑らせる。
 ミルラが華麗にキャッチし、ピタリと姫の前へ。
「さ、青天娘々ちゃん」
「ありがと、ミルラ」
「それじゃあ、乾杯入りまーす!」
「ミュージックスタートーッ!」
「我らが姫に……乾杯ーっ!」
「青天娘々ちゃんかわいいよーっ!」
「いえーい、っと」
 合図と共に照明が派手に明滅し、麗しき華をもてなす祝宴が始まった。
 
「みらくる……なんですって?」
「だーかーらー、ミラクルバナナってゲームよ。バナナと言えばゴリラ……ゴリラと言えばジャングル……ってな」
 宴もたけなわ、ここはひとつゲームで盛り上がっていこうと始まったのは連想ゲームである。
「じゃあ俺から行くぜ! バナナといったらおいしい!」
「お、おいしい? 美味しいといったら……桃とかどうです?」
「桃! 桃と言えば……きびだんご!」
「え、何で桃からきびだんごなんです? ……ああ、そういうお話があるのね」
 文化の違いか連想するものにぎこちなさはあるようだが店内のボルテージはアゲアゲである。
「いちごといえば……パンツ!」
「あらやだ、どうして私の下着の柄を知ってるのかしら」
「うっ……そりゃあ……」
「パンツ、パンツかー。パンツといえば、パンチかな!」
「えいっ」
 セレネの答えと同時。青天娘々の拳がミルラへと突き刺さった。
「うおっ」
 結構いいパンツ、いやパンチだ。酒が入っていろいろと加減が効かなくなっているのか?
「ヒューッ、いいパンチだ。こりゃミルラの負けだな」
「姫、すごいや!」
「うふふ、もっと褒めていいのよー」
 笑顔もなんだかふわふわしてきた。
 ちら、とミルラは七海へ視線を向ける。応じて頷く姿を確認し、今度はセレネの肩に手を置いた。
 場は十分に整った。ホストクラブといえばこれ。今こそその封印を解き放つ!
「青天娘々ちゃん。俺たち最っ高のショーを見せられるんだけど、どうだい?」
「あらあらあらあら、素敵ね、素敵。一体なんなのかしら」
「ボクもこれは知ってるよ! ほらここ、メニューのここ見て! ドンペリ!」
 そう、これぞ伝家の宝刀シャンパンタワーだ!

「ドンペリ入れる? 入れるんだね? はい! ドンペリ入りました~!!」
「ドンペリ! ドンペリ!」
 照明がド派手に回る。赤から青へ、緑へピンクへ。
 七海の念動力によって着々と積み上げられていくシャンパングラス。
 その光景を青天娘々は手を叩いて待ちわびていた。
「そらよっと、天井ギリギリまでいってやるぜ」
「ひゅーっ! 絶妙なバランス!」
「崩れる……崩れない! いいわ、その調子よ」
 そして時は来た。
「きゃーっ、すごいわよ、セレネくん!」
「姫、見て見て! ミルラくんのテクニック!」
 てっぺんのグラスから注がれたドンペリ(?)は溢れ、伝い、次のグラスへ。
 そしてまた同様に一段下へ。
 高価な酒を贅沢に使ったファンタジスタはテンションアゲアゲグロウアップ。
 ボルテージはマックスである。
「いいわ、もう一本! もう一本行きましょう!」
「ドンペリもう一本入ったよーっ!」
「オッケェーイ! 我が命に替えても!」
 もはや何が何やら。だがホストクラブとはこういうものなのだ。そうに違いない。

「どうぞ。このタワーのてっぺんは青天娘々ちゃんのものさ」
「うふふ、だって私は今お姫様だものね」
 ミルラから差し出されたグラスを揺らし、頬を染める姿は確かに美しい。
「そうだよ、姫って百合の花がホント似合ってるよねー」
「男だったら放ってはおかないぜ」
「ふふ、お上手ね。まあ、それほどでも……ありますけど!」
「のーんで! 飲んで! ハイ! ハイ!」
 くい、とグラスを傾ける。液体を喉に流し込む姿も様になっていた。
 空にして、一息。
「でもね、お姫様扱いも素敵だけれど……私、男性には強く迫られるのも好きなのよ」
「へえ、そいつぁ意外だ」
 グラスを取り替えつつ、ミルラが笑う。
 ふぅん、とつぶやいたセレネが立ち上がった。
「ねえ姫、ちょっとこっちへ」
「あら、セレネくん何かしら? 私、君の可愛らしさも素敵だと思いますよ」
 軽やかな足取りで青天娘々は立ち上がる。もううっきうきである。
 と、その瞬間腕を強く引かれ、体勢が入れ替わった。
「あらら?」
 壁を背に、急に何をと思えば、すぐ耳元で大きな音がする。
 ダァン!
「姫、そんなこと言ってると……襲っちゃうよ?」
 強く突かれ、逃げ場を封じたセレネの腕。
 もう一つの手は青天娘々の顎に添えられ、その視線を彼の力強い眼に引き寄せる。
 ほぅ、と息が漏れた。
「は、はい……」
 突然の出来事に青天娘々もまさかの反応である。 
 潤んだ目。その頬が赤らんでいるのは酒のせいか、それとも。
「優しく……いえ、激しくしてくださいね……」
「えっ、ちょっと待って!」
 こんなことを言われてはセレネの方が慌ててしまう。 
「こういうのが好きだっていうからやっただけだよ!? ねえ!?」
 ガクガクと肩を揺さぶるが、彼女の顔は蕩けたまま。
「ぶはっ、青天娘々ちゃん、ホントにそういうのに弱いんだ!」
「意外な伏兵、ってやつだな! やるじゃねーか、セレネ!」
 ミルラと七海が思わず吹きだした。
 こうして、ふわふわむわむわ蝶催倉の夜はまだまだ続いていくのである。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

天王寺・七海
今回は蝶催倉で乗り切ることにするぜ!

とまぁ、シャチでもいいよって、喋りで楽しませろってことだよな?
てか、早口言葉って、舌噛むだろ。
生麦ママ米生卵ってな…やはりずれてらぁ。

事は、バーの面子なら、早口でなくてもいいわけだけどさ。

「ようこそお客様、いらっしゃいませ」ってな。
ま、オレが七海ちゃんなわけだけど。
今回はいかがなさいますか?
であれば、そっちの椅子にどうぞ。
じゃ、なにしてやるんだ?
んじゃ、はい、これ、ハイボール(【念動力】を駆使した酒入れ)
あと、楽しむといえば、ゲームじゃねぇ?
なら、マジ○ルバナナとかよぉ。
バナナといえば、ゴリラ…ってなぁ。
もう、これ以上の発言はかけねぇから、後はお任せだぜ



 ●戻ったよ
 
「ああ、楽しい時間でした……終わってしまうのが勿体ないわ」
 全ての試練は終わった。
 宝具、導天鏡を手に入れるため青天娘々を満足させる……長く苦しい戦いであった。
 その結果がいかなるものであったか。それは彼女の表情を見れば明らかであろう。
「では、約束通り……」
「ええ、いいでしょう。この鏡はあなたたちに差し上げます」
 くるんと指を回せば、宙に銅鏡が浮かび上がる。
 昇る朝日を受けて、辺りに光が溢れた。
 まぶしさに目を閉じ、そして開けば。
「わ、戻ったよ!」
 カデルがアーシェを手にくるりと回った。
「やれやれ、なんとかなったか」
 ゆっくりと降りてきた導天鏡を受け止め、レナがため息をつく。
「ま、これはこれで貴重な体験だったって事でなァ」
「だね! ボクもなんだかんだ楽しかったよ!」
 クロウが笑えば、セレネも同意。
「……七海、アンタも戻ってる……んだよね?」
「見ればわかるでしょ。この背びれ。どこからどう見ても元に戻ってるわ」
「いやー、戻ってよかったね~」
 ミルラは首をかしげるが、七海は当然、といった風。
 リーオの背後では赤ずきんさんがほっと胸をなで下ろしていた。
「あー、ようやく! ようやくだぜ。おい、薬草を手に入れたら急いで戻るぞ!」
 ゼンが叫ぶ。先ほどまでの姿とは打って変わってかなりの大男である。
「ゼン、そんな顔してたんだな……」
「何だよ、文句あんのか?」
 快天香での出来事を思い出し、ミルラが苦笑する。
 ……いや、これ以上はいうまい。
「青天娘々さま、お礼もそこそこで申し訳ないのですが……」
「はいはい、わかっていますよ。薬草はここに」
 一方のランは線の細い優男といったところか。
 いつの間に用意したのか、青天娘々は確かに彼の求める薬草を手にしていた。
「ありがとうございます。これなら間に合う……!」
 姿は戻った。この山に入った目的も果たした。
 ならば、これを待っている者のために急がなくてはならない。
「まあ、なんだ。いろいろと文句は言いたいが……それでも、助かった!」
「ま、私も楽しませてもらいましたから。気をつけてお行きなさい」
「皆さんも……ありがとうございました! このお礼はまたいずれ!」
 ドタバタと二人は荷物をまとめ、慌ただしく駆け出す。
 その背を見送り、オックスメンは深く息を吐き出したのであった。

「さて、あなた方には一つ、話をしておきましょう」
 朝の日差しを背に、青天娘々は向き直る。
 永き時を生きてきたという仙女の顔。
 それまでのいたずらっぽい表情とは違い、真面目だ。
「獣壊陣について」
「なっ……」
 獣壊陣。パラドックスマンが用いる、彼らを異なる世界へと送り込む術。
 だが、いずれの世界の人々もそのことは知らず、気付くこともなかった。
 それを彼女は何故知っているのか?
「元々この陣は、私たちが邪悪で強大な龍の力を封じるために用いたものです」
「それがどうしてあたしたちをハメる罠になってるんだい?」
「龍の配下に逆に利用されてしまったのでしょうね。宝具が陣の中にある限り龍の完全な復活はできませんから」
 だが、陣の中に送り込まれたものは宝具を手にしなければ元の世界に戻ることはできない。
 だからこそ封印は解かれることなく長い時を超えてきたのだが……パラドックスマンはそれを逆手に取った。
「あなた達の立ち位置は不思議ね。龍を討つ力と、奴を蘇らせる力の両方を持っている」
 そこで彼女はオックスメンの顔を見渡し、言った。
「でも、きっとあの龍を滅ぼすことができます。あなたたちには数多くの仲間がいますから」
「なんだかよく分からないけど敵は倒せって、そういうことだな?」
「……ふふっ、そういうことでいいです。話は単純な方がいいものね」
 と、そこでようやく青天娘々は表情を緩めた。
 彼女は全て知っていたのだ。オックスメンに待ち受ける運命も、敵の存在も。
 だからこそ鏡を手に彼らの前に現れたのだ。
「……つまり、あの試練は僕たちを試してた、って事なのかな?」
「いえ、あれはただの趣味です」
「あ、そうなのね……」
 助けるついでに娯楽を求めて。

「戻ったらきっと戦場よ。気を引き締めてお行きなさい」
「任せてよ! ボクらがサクッと悪い奴らをやっつけちゃうからね!」
 導天鏡に反射した光が、彼らに行く先を指し示す。
 待っているのはパラドックスマンとの戦いだ。
「その鏡はきっと戦いの役に立つわ。包丁と、勾玉もね」
「包丁? 料理対決でもするのか?」
「ええ。婚活をしてきた子もいるはずよ」
「わけがわからねぇ……」
 だんだんと、青天娘々の声が遠くなっていく。
 光の先では仲間達が戦っている姿が見えた。
 OX-MENよ! 邪悪なる龍の復活を阻止し、パラドックスマンの野望を打ち砕け!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月04日


挿絵イラスト