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大食の村

#UDCアース

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#UDCアース


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 見慣れたグリモアベースの風景が西暦二千年代の『日本』、いわゆる猟兵達が『UDCアース』世界として認識しているものへと徐々に移り変わっていく。
「UDC、『アンディファインド・クリーチャー』。太古から蘇った邪神やその眷族達であるとは言われているけれど、何故そんなものが頻出するようになったのか、は気になる所よね」
 ふむ、と口元に指をあてて水衛・巽(鬼祓・f01428)はやや考えこむ顔になった。
「ある閉鎖的な村で、邪神復活のための儀式が行われているとの情報を掴んだわ。皆には潜入調査のうえ儀式場を特定し、邪神の完全復活を食い止めてほしい」

●大食の村
 儀式が行われているのは、北東北地方のとある山間の村。物理的に大きな街から遠いことも手伝い、外部からの来訪者をひどく嫌ううえ、村が高齢化で衰退するよりも狭く居心地のよいコミュニティを維持することのほうが大事だと思っている者が大半を占める、そんな村だ。
「ろくでもない儀式を秘密裏に進めるにはまさしく、お誂え向きって感じ。当然、儀式を進めている黒幕もそういう村を選んでいるって事でしょう」
 すり鉢状の土地を上へ上へ切り開くように農地が広がり、鉢の底には村役場や銀行出張所、小さな商店などが市街地を形成している。村人の住宅は農地部分に点在しているので、在宅の住民へ聞き取りを行うのは少々骨が折れるだろう。
「でもよそ者を嫌う空気がある以上、こちらの存在を無闇に誇示するのは禁物よ。村役場や商店のある市街地なら手っ取り早く村人に接触できるでしょうけど、あっという間に噂が広がりかねないし。どちらでどのように村人に接触するかは、各自の知恵の見せどころね」
 村人から情報を引き出す方法についても、こちらの力を誇示することで感銘を与える、あるいは力で脅すなどして吐かせるか、あるいは隠密行動などが得意な者がいれば役場などの建物に忍び込み情報収集を行うこともできるはずだ。もちろん、会話能力に自信があれば純粋に話術で籠絡したり誘導尋問を狙ってもいい。
「まずは儀式場の場所や、儀式を行っている黒幕の存在を突きとめるべきね」
 あちらも邪魔者の存在くらいは当然想定しているはずだ。何らかの妨害が入ることや儀式場に眷族を配置している可能性も考えられるので、肝心の邪神の討伐はその後ということになる。
 復活しようとしている邪神については、あまり多くの情報が得られていない。食べれば食べるだけ成長するとか、それに伴い口の部分が分裂するように増えていくだとか。
「似た特徴を持つ邪神の伝承が残っているけれど……過去に一度だけ現れて、都市ひとつを一体で喰らい尽くしたとか。その邪神は100以上の口を持っていたそうで」
 ――だったら寒村の人口くらい、いくつか口があれば十分かもしれない。
 そんなことを呟いた巽の眼差しは、どこか凄絶なほど冷えていた。


佐伯都
 こんにちは、佐伯都です。前作より引き続き、皆様の冒険のお手伝いをさせていただく事になりました。どうぞよろしくお願いいたします。

●情報収集に関するプレイングの指針
 下記を参考に、使用するユーベルコードや重視する属性によって、より良い結果が狙えるでしょう。キャラクターの性格(冷静、真面目)や得意分野(お笑いが得意、情報分析が得意)なども考えてプレイングをかけるとよいかもしれません。
 POW:腕力などの力を誇示し情報を引き出す。
 SPD:村内の要所に忍び込むなどして情報を調査する。
 WIZ:村人との会話から有用な情報を引き出す。

●市街地
 市街地部分には以下の施設(村役場、 銀行出張所、郵便局、商店×4(雑貨店、衣料品店、食料品店、金物店)、ガソリンスタンド )があります。

 成功条件は『邪神の撃破 』。

 それでは皆様の熱いプレイング、お待ちしております。
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第1章 冒険 『閉鎖的な村』

POW   :    腕力などの力を誇示する事で情報を引き出す

SPD   :    村の要所に忍び込む等して情報を調査する

WIZ   :    村人との会話で必要な情報を引き出す

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


押し黙るように並ぶ松と、冬枯れの木立。そして脛の半ばほどまで積もった水気の多い雪、その向こうに遠く、すり鉢状の集落が見える。鉢の縁にぽつりぽつり点在する村民の住宅は随分ひっそりとしているように思えた。
 ざくざくと獣道を踏み分けて進む猟兵達の息は白く、年の瀬も迫った12月の空気の冷たさは頬や耳に容赦がない。
 北東北の冬は沈黙の冬だ、何もかもが息を殺し日本海からの強い風雪をやりすごすことに懸命だ。だからこうして山の中もただ静寂ばかりがひろがっている。
 だから、ただ己の呼吸音と足音しか聞こえない。
 見えた、と誰かが呟いたような気がして顔を上げれば、すぐそこにまで目的の村は近付いていた。どこか露天掘りの鉱山を思わせるような、すり鉢状の集落。
 周囲の斜面にへばりつくような農地は雪の下に埋もれ、棚田と思われる階段状のスペースの縁を細い道路がめぐっている。ぐるぐると迷路のように続く道は徐々に太さを増し、鉢の底の市街地へと続いていた。
 びょう、と斜面を吹き上がってくるつめたい風が死神の手のように顔を撫であげていく。
 否、きっとこの風は死神の手ではない。
 このまま放置すれば現れるという邪神の、逸る吐息の冷たさだったのかもしれない。
赤星・緋色
邪神の復活儀式について調べればいいんだよね
頑張って怪しい奴らの尻尾つかんでこ!

大体こういうのって村の偉い人が絡んでるよね。偏見だけど!
村で偉いって言ったら村長さんだね!
役場に忍び込んで情報収集するよ
田舎の村だったりすると周りが知り合いしかいないし、防犯意識も弱かったり
2階側の窓とか、人が入れそうにない高さの子窓とかを狙って侵入
鍵かかかってなければいいけど、ちょっとくらいなら壊しちゃうよ
スカイステッパーを使って多段ジャンプで侵入しまっす

侵入できたら情報収集だね
邪教っていうからアナログな紙で依頼とか契約の内容とか書いてそう
ロックされてなかったら村長さんのPCのデータとかも持っていっちゃいたいな



「……大体こういう陰謀とか何とかって村の偉い人が絡んでるよね」
 ただし偏見だけど。
 そう一人ごちながら、赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)は村役場の裏手へ回っていた。何人かほかにも市街地へ潜入した者がいるが、過疎地であることも手伝い見咎められる事もなかったようだ。
 昼間だというのに行き交う車どころか、人影もほとんどない。錆びついたどこかのシャッターががたぴしと悲鳴を上げているのを聞きながら、緋色は村役場の二階の窓を見上げた。
「村で偉いって言ったら村長さんだし――何か知ってそう」
 合図のようにひとつ踵を鳴らし、緋色は空を蹴って跳びあがる。不可視の階段を駈け上がるように、リズミカルに宙空を踏んで村役場の二階の窓の庇までたどりついた。
 役場の駐車場にいくつか車が停まっていたことはわかっている。そっと中の様子を伺うと、寒々しいと言うかうら寂しいと言うか、いやはっきり言って貧乏くさいとでも言うのか、古びた机に古びたスチールロッカー、歴代村長のものとおぼしき日焼けした何枚もの大きな写真、ガムテープでぞんざいに補修された応接セット、といったものが見えた。誰もいない。
 ビンゴ、と呟いて緋色は窓へ手をかける。寒冷地らしく二重窓のそこは当然のように施錠されており、簡単には開かない。さすがに田舎の防犯意識の低さは、隙間風の原因でもある窓にまでは適用されないようだ。
 ガラス切りでもあれば物音を立てずに侵入できたかもしれないが、生憎何も準備してきていない。目的の村長室以外にも無人であることを願い、緋色はそのまま窓ガラスを叩き割った。
 急いで中に入り、村長の机を漁る。物音を聞きつけたのだろう、部屋の外で人の声や足音が聞こえる。情報が詰まっていそうなパソコンや帳簿、あるいはメモか。
 しかしパソコンは見当たらない。おそらく自身も高齢であろう寒村の村長にPC技術を望むのはややハードルが高かったのだろうか。あるいは施錠されている引き出しの中にあるのか、それとも応接セットの向こう側に見える助役席の机の中にはあるのか。
 一瞬どこかに身を隠してやりすごす事も考えたが、どのみち窓ガラスが割れている以上、隠れても意味がない。村長室に向かってくる足音を聞きながら緋色は机の前を離れ、そのまま割れた窓から外へ躍り出た。
 背中を何人かの、悲鳴に似た声が追いかけてくる。何も手掛かりを掴めなかったどころか、逆に村の中心である役場で騒ぎを起こしてしまった口惜しさに緋色は唇を噛む。
 ただでさえよそ者へ警戒心を持つ村。しかもその村長室へ明らかに侵入者の痕跡を残した事がこの先どんな顛末を辿るか。それはこの時点では、誰も知り得ないことだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

揺歌語・なびき
小さな村だからこそ、狂気は潜みやすいものだよね
必ず突きとめて、殺してやろう(緩く瞳を細め

SPDを活かして役場や郵便局、商店に忍び込むよ
余所者は目立つだろうから、なるべく服装は地味な物
人々の会話を盗み聞きして情報を多く獲得するよう意識

山奥や人通りの少ない場所へ移動している人物が居ればあとをつける
技能【追跡】を活用するね

様子を伺いつつ、これ以上単独行動が危険となれば撤退
無駄に突撃しすぎて怪しまれたくないしね

集めた情報を整理整頓して場所を特定したいな


コノハ・ライゼ
WIZ

まった邪神サンもメンドクサイ事してくれンねぇ

隠密や力技は得意じゃねぇし出来りゃ穏便に話聞きてぇ所
出来るだけ地味な身形で、口調は柔らかくを心掛け
商店の食料品店か金物店へ、料理研究家の体で聞き込みに

古くから残る町や村には土地独特の料理とか残ってるデショウ?
特に祭りや「儀式」に供するモノは風習として今でも作ったりするというし
是非とも知りたいンですよー。
そういったモノに詳しいヒトや
近々行われる予定とか、使われる場所とか、無いンです?
ああモチロンこの村に迷惑はかけませんとも!

研究の為と言って聞き出せたりヒントがあれば
其処へ向かってみるヨ
他に聞き込みするヒト居れば情報交換もね



村役場の2階で何やら騒ぎが起こったようだ。
「何だ?」
「村長室に泥棒だって!」
 暇をたっぷりもてあました老女の話し相手になっていた、村の中でも若手に入るのだろう中年の女性職員が腰を上げる。どうにかこうにか8ページ作るのが精一杯、といった様子の村の広報紙を開いていた揺歌語・なびき(人狼の咎人殺し・f02050)は、マフラーに顔を埋めるようにして人の流れをやりすごした。
 おやおやまあまあ、と杖をついた老女が右往左往している。よそ者である事を見咎められぬよう、なるたけ地味な服装を選び積極的に声をかけることもしていなかったが、上階での騒ぎのおかげでなにか通常とは違うことが聞けるかもしれない。
 閉鎖的な場所は変化に過敏だ。村民の感情が警戒に動くかそれとも浮き足立つかはまだわからないが――。
「どういうこと、みんな顔を知ってるようなこの村で泥棒なんて」
「窓ガラスが割られてるって! 村長さんの机が荒らされたみたい」
 誰かー、箒とちりとりー。あとビニールシート、昼の内に塞がないと雪入るー。そんな声が階上から聞こえる。
 まず片付ける前に警察ではないのか、となびきは考えたものの黙っておいた。助役らしい白髪の男性が、事務職の小柄な老人から箒とちりとりを受け取って階段を上がっていく。
「ああもう、泥棒が入るなんてありえない……ミサキちゃんも一人なんだから気をつけなきゃ駄目だよ」
「大丈夫だよぉ、うちは盗られるようなもの何もないんだから」
「盗られなくたって、鉢合わせて何かされたらどうすんの。ニュースで時々、東京とかで強盗殺人ってやってるじゃない」
「そうかい? あんまりニュース見ないからよく知らないけど」
「ミサキちゃん韓ドラ大好きだもんねえ」
 ……老女がミサキちゃんと呼ばれていることと韓ドラ好きという情報は得られたが、それ以上のめぼしい情報はなさそうだ。やや落胆した溜息をこぼしながらなびきが背を向けようとすると、そういえばねえ、と件のミサキちゃんが思い出したように続けるのが聞こえる。
「3区の相坂(あいさか)さんとこ、最近誰か行ってあげてるのかねえ」
「さあ? いつもの木崎さんとかは? 街のほうに家族いるとかは聞いてないけど、どうかした?」
「畑もいつも通り綺麗にしてるし冬囲いもしてあるから、奥さん亡くなったとは言え元気にしてると思うんだけど。何だか新しい車が出入りしてるから」
「新しい車? 相坂さんとこいっつも軽だよね、白の」
「そうそう。黒のいつもの形のじゃない、大っきいの。あんな車乗ってる人いたかねえ……」
「黒の乗用は田端さんと村長と……」
 話し相手になっている職員が次々と上げていく名に、なびきは内心うすら寒いものを感じざるを得ない。村民が乗っている車をほぼ把握しているとか、半分ホラーの世界だ。狭い世界は恐ろしい。
「そう、その誰でもないみたいで、誰なんだろうねえ……」
「まあ大丈夫じゃない? 長谷川助役のお義父さんなんだから、助役が誰かに行ってもらってるのかも」
 名前が違うということは助役の妻の父か、となびきは注意深く記憶におさめる。話題が今年の漬物になったので、なびきは改めて村役場を出ることにした。
 人通りの少ない場所へ向かっているような人物は、今の所見当たらない。むしろ通りの外れのほうで、買い物帰りらしき中年の主婦を呼び止めているコノハ・ライゼ(空々・f03130)の方へ進まないよう急いで回れ右をしたくらいだった。彼とは後で情報共有するのでここで互いに接近してしまっては少し困る。
「実はね、オレ料理研究家やってるンすよー。地方の隠れた名物とか、その土地独特の、お祭りにしか出されないような料理とかよくあるデショウ? そういうの研究してるンです」
「え? あ、まあ、ええ……」
 食料品店から出てきたところを捕まえた主婦は、三つほどの段ボール箱に食料品を満載している。田舎は基本的に買いだめが主流らしいが、それでもこの量はなかなかのものだ。
「特にその、祭事や儀式に供されるモノとか。過疎とかでいつのまにかなくなってるようなの、多いって言うじゃないですか。そういったコトに詳しいヒトや、近々行われる予定とか、使われる場所とか、無いンです?」
 ああモチロンこの村に迷惑はかけませんとも! とコノハは慌てた様子であえて言い繕った。
「ううん、まあ、そうですねえ……でもうちの村、古いだけでそんなご大層なものとかないですよ。お祭りって言っても秋と、年末年始の火祭りくらいで」
「火祭り?」
「火祭りって言ってもほんとに、そんな大したものじゃないですよ。年越しの夜中にこう、わーっと古い注連縄燃やすだけの」
 注連縄、とコノハは小さく呟く。普通、それは年が明けてからのものではないだろうか。
「年明けのどんど焼きで、じゃないンですね」
「年末に掛け替えた注連縄を、旧年中に燃やすことで新しい年には持ち越さないって事みたいで。その時だけは村長さんとか助役とか、区長さん達も揃って0時に御神酒あけたりする程度ですよお」
 ……なかなかきちんとした、地域特有の祭事なのではないだろうかとコノハは思うものの、これは女性の謙遜半分かもしれない。いや本気で大したものではないと思っている可能性もある。何せ小さな村ゆえに。
「で、それってどこでやるンです? 注連縄ってことは神社?」 
「神社とかそんな、大きなところじゃないですよお。あの斜面の上、畑ないでしょう。あの森の中に祠があって、そこから古い注連縄運んでいって市街でやるんです」
 え、と思わずコノハは短い声を漏らした。
 ……寒村の、お世辞にも賑わっているとは言えないものの、市街地で注連縄を燃やす?
「そういうのって、普通境内じゃないです?」
「でもうちでは市街でやる決まりだから。みんな集まって、その日だけはほんとに、賑やかでいいですよお」
 あらちょっと喋りすぎちゃった、とやや興奮ぎみに主婦は笑った。閉鎖的な村でも、おらが村的な所をくすぐられて嬉しくない住民はいない、という事なのだろう。
「へええ、ぜひ見てみたいもんデスねえ。でも古いお祭りっぽいし、よそ者が入っちゃまずそうなんで遠慮しときます」
 一瞬藪をつつくかも思ったが、まんざらでもなさそうな主婦の様子に賭けた。ウフフそうねえ、そういう事でもないんだけどねえ、と主婦は気を悪くした様子もなく続ける。
「持ち回りでお祭りの取りまとめ役をするんだけど、今年は相坂さんだから、尋ねていったら何か聞けるかもしれないよお」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

八坂・操
操ちゃん知ってるよ! 儀式とかのセットって、意外と手間暇がかかるんだよね! ホラー映画の舞台裏は何時だって予算との闘いだ☆
という訳で、商店四つに忍び込んで、最近の売上や在庫の帳簿をこっそり見てみよー! 小さな村とはいえ、何かを大量購入してたり、何故か在庫が綺麗さっぱりポッケナイナイしてたら、そっから足跡を追えるんじゃないかなー?
名前までは流石に控えてないだろうけど……あー、でもお爺ちゃんお婆ちゃんばっかりだと、覚え書きのメモは多そうだね。うん、期待期待!

それにしても、すり鉢状の真ん中に市街地……邪神サマが出たら、まるで蟻地獄みたーい☆



『3区の相坂宅に見慣れない車が出入りしている』
『村の助役である長谷川氏がその相坂氏の娘を妻に迎えているので、見慣れない車は長谷川氏の差配によるものかもしれない』
『この村独自の火祭りが行われているが、今年の取りまとめ役が件の相坂氏である』
 村の市街で行った情報収集の結果、得られたのはこのようなものだった。村役場におけるミサキちゃんの言動からするに、相坂氏はここ最近、外出したり誰かに姿を見られていないものと思われる。
 しかし以前から懇意にしているらしき木崎家が何の動きも見せておらず、そもそも義理の息子の長谷川助役が父の事を何も喋っていないということは、果たして何を意味するのだろう。
 そして猟兵達が揃って違和感を覚えている、火祭りの場所。
 普通、注連縄を焼くのは境内の中だ。なぜ外に持ち出して、しかも市街の中で焼くのか。
 火祭りで見物客が沸く、それ自体は別にいい。祭事なのだから、厳格なものでなければ見ているものが沸いてナンボ、の世界である。しかし場所が場所で、村民がこぞって見物に来るという状況がいただけない。それこそ八坂・操(怪異・f04936)が無邪気に呟いた言葉の通りではないか。
「すり鉢状の真ん中に市街地……邪神サマが出たら、まるで蟻地獄みたーい☆」
 その光景を想像して何人かが息を飲んだのは当然のことだった。
 邪神単体ならまだいい、しかしそこに火祭りが来るとなると、儀式をもくろむ何者かは火祭りを何らかの形で利用しようとしているとしか思えなくなってくる。そもそも件の伝承の邪神とやらは、人を喰らって成長するのではなかったか。あと半月後に迫った、村民が集まる年に一度の機会を見逃してくれるなど到底考えられない。
 しかし、相坂氏に狙いを絞った情報収集を行う前に、当の操が持ち帰った別の情報が猟兵達の不安をさらに煽る。
「操ちゃん知ってるよ! 儀式とかのセットって、意外と手間暇がかかるんだよね!」
 ホラー映画の舞台裏は何時だって予算との闘いだ☆ と底抜けに明るい声で呟きながら、操は市街を単独行動で歩き回っていた。小さな市街に、肩を寄せ合うようにして並ぶ4つの商店へ忍び込み、最近の売り上げや帳簿から村の異変の兆候を知ろうとしたわけである。
 何しろ寒村の商店だ、複数の従業員を雇い入れるような余裕はないし、そもそも来客自体少ないので『ただいま外出中です』『昼食中です。2時頃戻ります』的な張り紙をして一時間ほど閉店中、な事も当たり前にある。忍び込んで帳簿を調べるのはたやすい事だった。
「……何かありそう、と思ったんだけどな」
 しかし残念ながら操が思ったような特定の品物の大量購入や、在庫不明品の存在もなく、帳簿や店の日誌から特におかしな点は見当たらない。見事なほどに。
 金物店、コノハと時間をずらして食料品店、衣料品店ときて最後の雑貨店の帳簿をめくる操の表情はやや暗い。年寄りの多い村ゆえにメモは多そうと思っていたのだが……。
「いちいち名前までは控えてないだろうけど、もうちょっと何かあっても……うん?」
 発注伝票や納品書を眺めるうち、操の手が止まる。
 過疎地で老人が多い村。さすがに衣料品の購入だけは年齢を問わず村の外に出る者も少なくないのだろう、どの品目も発注数の推移は安定していた。金物店と食料品店もそうだ。
 しかし雑貨店だけは違う。年齢層がひどく高い地域なので子供むけ商品の発注はとても目立った。
 定期的に学用品、特に筆記具やノートの類いを注文していた形跡がある時期を境にぱたりと途絶えている。確実に購入するからだろう、定期的な注文とは別口の客注扱いだ。
 店頭扱いでも同じ品を置いているので、客注扱いをやめた、と考えればおかしな話ではない。しかし操が手を止めたのは別の理由からだった。
「……長谷川助役」
 家族経営の小さな店ゆえの大雑把さだろう、別口でわざわざ子供の学用品を注文していた客の名前は、助役、と記入されてあった。ある程度の期間を置いて定期的になされていたその注文は、半年前が最後。
 白髪だったという役場組からの情報があるので実子ではなく、孫かそれとも、遅い子供だろうか。あるいは若いうちに白髪になるような病気か、それとも何かが起こった……?
 小さな棘のような違和感を抱えながらさらに操は帳簿を捲る。古いものから近い日付へ遡るうち、もう一度操の手が止まった。
 長谷川家葬儀用、と但し書きのついた客注が一ヶ月ほど前に連続している。品物は文字通り葬儀に使われるようなものばかりだ、線香だの熨斗つき封筒だの。それだけならまだいい、明らかに数がおかしい。
「……ふたりぶん……?」
 帳簿が示す数字は、長谷川助役が2名分の葬儀を執り行ったことを示していた。それも、義理の母と幼い少女の。

成功 🔵​🔵​🔴​


猟兵達の集めた情報は不思議と、相坂氏と長谷川氏の二人へと収束している。
 一度に近しい人物を二人も亡くした長谷川氏の心痛はいかばかりだろう。しかし邪神の儀式を疑われている村で、たまたま一度に二人分の葬儀、なんてあまりにも話がおかしい。
 物事にはかならず、それが起こる理由や原因があるものだ。偶然なんて一度か二度がせいぜいで、それ以上重なるようならそこには高い確率で偶然以外の何かがある。
 やはりここは相坂氏に直接話を聞くべきだろうと、猟兵達の意見は一致した。
揺歌語・なびき
纏めると、相坂さんに会いに行くのが良さそうだね

場所と人物像を聞き相坂さんのお宅へ
出会う人には怪しまれぬよう丁寧にお辞儀し穏やかな口調心がけ

近くに仕事で来ていて
偶然この町のお祭りの話を聞いたんです
珍しいなと思って、今年のまとめ役である相沢さんにお話を聞けたらと(おっとり笑い

SPDを活かすよ
他の猟兵が住民と会話する隙をついて
外観や窓から怪しいものがないか確認の上裏口などから侵入

相沢さんの無事を確認できれば話を聞き
何者かに見つかりそうなら痕跡残さず撤退

怪しい人物、もしくは話題に出た黒い車が何処かへ向かうなら追跡
技能【追跡】を活用
なるべく見つからないよう意識して移動するよ


コノハ・ライゼ
相坂家へ向かう
……「居る」とイイよねぇ

話す時は【WIZ】活かす

相坂が健在とは思えない
が、主婦の時と同じ体で相坂を訪ねるフリをし接触

本人が居れば世間話装い家族の事に触れる
妻と孫を一度に亡くしたなんて、と慮る姿勢で
身の回りの変化について問う

本人不在であれば代わりに誰か居るのでは
何も知らぬフリで居所を聞く
もうすぐお祭りでしょう、と気に掛ける素振り見せ反応を見る
村民であるか否か、何をしに来てるのかも探れれば

何れにしても接触し動きがありそうな相手に【黒管】使用
何処へ向かうか追跡
深追いはせず得られた視覚情報は猟兵仲間へ



「得られた情報を纏めると、ここはやはり一度相坂さんに会ってみるのが良さそうだね」
「……。……」
 思案顔のなびきを横目にしながら、『居る』とイイよねぇ、とコノハは胸の中で呟く。ここしばらく他者に姿を見られていないという状況を鑑みるに、コノハ個人としてはすでに相坂氏はこの世にいない可能性のほうが高いと思っていた。
 食料品店で話を聞いた主婦から相坂家の場所は聞き出している。うっすらとタイヤ痕が残る人っ子一人いない田舎の坂道を登る間じゅう、二人は無言だった。
 頭上から小さく車のエンジン音が聞こえてきて、顔を上げたなびきが足を止める。まさしく、目指す相坂家に黒の乗用車がゆっくりと入っていった所だった。
「あの車、もしかして」
「すぐ出てくるようなら【黒管】に追跡させるヨ」
 走るようにして坂道を登る。二人が相坂家の門前にたどりつくまで黒塗りの車が相坂家から出てくることはなかった。……が。
 レンガをまっすぐ柱状に積み上げた、戸の部分がない簡易な門。そこをくぐると、黒塗りの車は庭木の陰にひそりと駐められてあった。車内に人影はない。薄く積もった雪の上に、ひとり分の足跡が玄関まで続いている。
 そこまではいい。家の敷地をめぐるように植わっている木々や庭にはきちんと冬囲いがされているし、荒れている形跡はどこにもない。綺麗なものだ。問題は、綺麗すぎる、ということだ。
 2・3日前に降ったと思われるまとまった雪の上にも、人間の足跡はもちろん雀の足跡すら見当たらない。完全にまっさらだ。それこそ先程つけられたはずの、黒い車から玄関まで続く足跡だけがくっきりと浮き上がるように。
 そこに生活の気配は完全になく、何かのタイミングを最後に綺麗に『保存され続けている』という強烈な印象があった。
「……こんにち、は……?」
 半信半疑でなびきが周囲に向かって呟いた言葉にも、返る声はない。家の中は静まりかえっている。
 ミサキちゃんは家の敷地の中まで見に来てはいなかった、という事だろう。コノハはゆっくりと玄関に近付き、家のチャイムへ指をのばす。電気は通っているようで、きちんと鳴った。
 たっぷり3呼吸ぶんを待つが反応はない。もう一度押そうかとコノハが考えた瞬間。
「……はい、はいはい」
 老人男性の声がした。
 それも、玄関からさほど離れていない所から。
 誰かが内部を歩いている音など、誓って、聞こえなかったというのに。
 じんわり嫌な汗が浮いてきた手の平を上着のポケットの中へ隠し、コノハは務めて明るい声をあげた。玄関の引き戸の向こうに呼びかける。
「あのー、ちょっとスイマセーン。坂本さんから相坂さん紹介してもらった者なんでスけどォー」
 坂本というのは食料品店で会った主婦の名だ。
「その土地独特の料理とか、祭事にだけ出される料理とか研究してる者でしてェー、年末の火祭りについて相坂さんにちょっとお話伺いたいンですがァー」
 ずりずりと何かひきずるような足音が聞こえて、勢いよく玄関が開く。
「火祭り。火祭りのことかい」
 姿を現した老爺は、やや腰が曲がっているものの耳が遠そうな気配もなく、農村特有の元気な年寄りといった風情だった。身なりもわりかし整っていて、加齢臭がするという事もない。当人からは。
 そう、『当人』からは。
「ええ、近くに仕事で来ていて……偶然、この町のお祭りの話を、聞いたんです」
 なびきは自分が息を止めたのを気取られぬよう話す事に懸命だった。家の中から漂うあきらかな死臭。後頭部に冷たい、ひどく嫌な感触が凝ってくる。
「そうかいそうかい、坂本さんが。なるほどねえ」
 ここは危険だ。急いで走らせた視線の先には、数ヶ月は掃除がされていないと思しきホコリが積もった廊下と、巣のヌシが鎮座ましているいくつもの蜘蛛の巣。外から見える部分はなるほどきちんと保たれているが、中の様子はまるで違った。
「うちの村の火祭りはたしかに、ちょっと変わってるなあ。注連縄焼く日も、焼く場所も。普通は神社の中とか、年明けだからなあ」
 当人に会うまえに周囲を探るべきだったかとなびきが一瞬後悔するも、目の前の異様な老爺は――実に機嫌よさそうに笑って二人の猟兵を中へ招じ入れる。
「まあ、長い話になるから上がっていきなさい。お茶を入れようねえ」
 ごくりとコノハの喉が鳴る。
 ホコリと土埃だらけの玄関の土間、そこには、もう随分前からそこにあると思われる汚れた靴が数人分打ち捨てられてあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『嘲笑う翼怪』

POW   :    組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:yuga

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


もし今立っている土間から先に入れば、まず間違いなく相坂氏の真実に迫ることができる。しかし、本当に足を踏み入れてよいものかどうか。
 いや、中には黒い車に乗ってやってきた何者かもいるはずだ。相坂氏自身の足跡――と呼んでもよいか迷うような、這ったような跡だが――に消されてしまったのか、件の何者かの足跡は見える範囲に確認できないとは言え。
 しかし家の中に入れば、相坂氏の真実と共に死地が待っていることもまた間違いない。慎重な対応が求められるだろう。
 靴を脱ぐのは憚られる汚れ具合だったのでいちかばちか、靴のままで上がりかまちに足を乗せても、相坂氏は気にした様子もなくほくほくと好々爺そのものの顔で笑っていた。
「少し寒くて申し訳ないが、上着を着ていれば大丈夫かねえ。ストーブが点かなくて」
 玄関からすぐ左手の和室は、障子こそ破れていないものの内部はひどい。
 ストーブ、と老爺が表現したものは部屋の隅に横倒しになっていた。死臭に混じって灯油の臭いがする。靴で内部を歩き回ったようで、畳もい草がめくれ上がり散々だ。
 何よりもつきあたりの襖は滅茶苦茶に破れ、その奥の次の間までなかば素通しになっている。
 奥の間の真ん中に何か、人形のような、出来の悪いカカシのようなものが見えた。死臭はそこから漂っているように思える。
 ……義理の息子のはずの長谷川助役はこの事実を知っているのだろうか。いや、それとも知っていて伏せているのか。それとも協力させられているのか、あるいは自らそうしているのか。
「いやあすまないねえ、木崎さん」
 相坂氏は奥の間のカカシのような何かに向かって、朗らかに笑った。
「遠くからお客さんなんだよ。……どうしてだろうねえ?」
クロト・ラトキエ
相坂氏を訪ねた方々は、何かを掴めましたかね?
【影の追跡者の召喚】で以って、彼ら…中へ入る人の後を辿り
可能ならその内部の様子について情報を得、仲間たちに共有を
察知したのが異変や危険の類なら、皆さんと援護に向かいたく
戦闘に於いても、武器のロープで足を絡め取り隙を作るなど、援護を中心に

思い、馳せる
長谷川助役の義母さんに、お子さん――つまりが、相坂氏のご細君とお孫さん
木崎さんと呼ばれた異形
そして…或いは、相坂氏すらも
起こること、在るもの
その悉くが、日常の中に在ってあまりに異常なものばかり
その様なものが傍らにあっては、そりゃあ怖れで髪の色だって抜けそうなもの
…貴方は今、何を思うのでしょう

ねぇ…長谷川さん


八坂・操
『忍び足』で先回りしてたけど、こりゃあホラーだ。良い演出してるね☆ 名作映画の香りがするよ! ……まっ、実際に漂ってるのは死臭だけどね。
葬儀の件で、今回の動機は何となく予想出来るけど、やっぱり本人の口から知りたいと思うのが人情だよね。

という訳で、【オルタナティブ・ダブル】の操ちゃんは『目立たない』よう近付いて、相坂くんを拘束してね! 傷付けちゃ駄目だよ! まだお茶も貰ってないし、何も聞けてないんだからね!
本物の操ちゃんは用心して『目立たない』まま隠れてるね♪ こういうのって、大抵化物が乱入して場をかき乱すからね。現れた所をバックスタブだ!


揺歌語・なびき
あぁ、うん
これって結構危ないよね(冷や汗を流しつつ、ひくりと笑い
相沢さんに慎重に話しかけつつ
戦闘態勢に入るよ

最近あなたの様子がおかしいと言われて
おれ達、様子を見に来たんですよ
そこに居るのは…木崎さんって仰るんですね
木崎さんとお話しても、構いませんか?

まぁ見た感じ、会話なんて無理だろうけど!
何者かの攻撃を受ければ咎力封じで対象を拘束
おれは足止めに専念して味方に攻撃を任せるね
味方と連携を図ってこの場を切り抜けよう

相沢さんも咎力封じで拘束
もう元の彼ではないだろうけど

戦闘後は火祭りの情報を探るため屋内を捜索
はぁ、他にも遺体や見るに堪えないものが出てきそうだなぁ


コノハ・ライゼ
……大丈夫、ウソは得意だ

表情も態度もそのままに、散らばる靴の数をすばやく確認
その数分、ナニカが居そう

下(市街)で色々オハナシ聞いたンですよ
奥サンとお孫サンまで亡くされたそうで……皆サン心配されてましたよ?
慎重に足を踏み入れ警戒隠し出方を見る
アンタが木崎サン?他にも先客がいらっしゃるのかな

襲撃受けたら牽制として、
それから相坂の逃げ口塞ぐよう出入り口に向け【月焔】
戦闘となれば以降合体で威力増した月焔をぶつける
こう見えて頑丈でネ
仲間と連携し出来た隙逃さず
懐飛び入り【捨て身の一撃】にて【傷口をえぐる】
振るうナイフが触れたなら【生命力吸収】を

屋内も気になるが
市街に何か向かわなかったか確認しとこう


ニコ・ベルクシュタイン
遅参、申し訳無く。其の分確り務めを果たしたい所存。

相坂氏から感じる狂気に眉を顰めつつ、危険と敵襲に備える
同行の味方の動向にも気を配り、戦闘前に何か試みるならば
可能な限り支援する

戦闘になったらウィザード・ミサイルで攻撃
高速詠唱を活かし限界まで発動速度を高める
敵が単体ならば炎の矢を集中させ、複数ならば可能な限り
多くの対象を巻き込めるように撃ち放つ
「雨よ降れ降れ、炎の雨よ!」

室内での戦闘は足場が悪く混戦にもなりやすいので
同時に戦う味方には声掛け等で注意喚起や情報共有を
積極的に行っていこう

……予感がする、此処は決して退いてはならぬ場面だ。
何としても切り抜けて、真相を突き止めるぞ。


クロウ・ミスト
SPD
あ、あれが木崎さん…随分変わった格好の人
…じゃなくて!て、敵です!よね?

村の人達は事情を知らなそうでした
それならせめてもの救いでしょうか…

室内だったら荒らしてしまいますが、ごめんなさい
一掃します!
皆さん、上に気をつけて
【百億の星】!

数を減らせれば皆さんの援護も出来る筈
技能【だまし討ち】【援護射撃】【2回攻撃】【目潰し】組合せ
数減れば命中重視で確実に撃破
障害物利用し死角から攻撃
距離保ち、囲まれたり仲間と分断されぬよう
接近戦は短剣で応戦
少数は包囲

うう、呪いの類は嫌いなんです…揺さぶられやすい体質みたいで
苦痛が伝わってくる
まるで自分のことのよう
それでも…ここで、止めなくちゃ
「行っけぇぇーー!」


吉祥天・折薔薇
「苦戦してるんじゃない?ボクが手助けするよ」
夜間に行動することを想定してヘッドライトは常備している
明かりが必要ならライトを使用
部屋の内部を素早く確認し
敵の様子、数
部屋の広さ
隠れる場所があるか
などを確認

「伊達に人形やってないからね。人真似するのは得意だよ!」
ミレナリオリフレクション発動
組みつく怪腕を相殺する
これで敵の攻撃はしばらく封じることができる、今のうちに、と仲間の攻撃をうながす
「クロウさん、やっちゃって!」
自身で攻撃する場合はレガリアスシューズを使用する

「長谷川助役が事件の要石。とっ捕まえに行こうか」



「……こりゃあホラーだ。良い演出してるね☆ 名作映画の香りがするよ」
「あぁ、うん……これって結構危ないよね」
 実際に漂っているのは濃い死臭だが、操の表情は口調ほどには明るくない。なびきはややひきつった笑顔を浮かべたが、背を向けたままの相坂はそんな猟兵達に構う様子もなく、和室の中央へ進む。
「葬儀の件で動機は何となく予想できるけど、やっぱり本人の口から知りたいと思うのが人情だよね」
 ひそやかに呟いて、操は【オルタナティブ・ダブル】を発動した。いつでも相坂を拘束できるよう、操の分身を和室の中へ進んだコノハやなびきの背後へ配置する。見る限り隠れられるような箇所はないので、死角しか選択肢がなかった。本体はそのまま玄関内に残ることにする。
「あ、あれが件の木崎さん……随分変わった格好の人……じゃなくて」
 て、敵です、よね? と自分でもやや半信半疑なクロウの呟きに、どうでしょう、と折薔薇が冷静に呟く。
「動き、なおかつこちらに攻撃してくるなら敵でしょうけど」
「今の所、動けるようには見えないな」
 地を這うようなニコの声には、単純な警戒よりももっと不快感をこめた何かがある。
 歩くと言うよりは完全に足の裏をつけたまま進むせいで、ざりざりと、めくれ上がったい草が相坂の足元で耳障りな音を立てていた。
「おかしいねえ……祭りの話は私と木崎さんとの間だけの話だったんだが、誰がそんな事言っていたのかねえ……?」
 つい先ほどまでの自身の発言と矛盾する内容がいきなり飛び出してきて、コノハは一瞬怪訝な顔をするものの、注意深く言葉を選ぶ。
「坂本サンとこの若奥様からですよ? 下――って言うか市街で色々オハナシ聞いたンですよ、大晦日から元旦にかけて、市街で注連縄燃やすって」
「ああ、そうだった、うちの義理の息子がとても熱心に準備を手伝ってくれてねえ、自分の仕事も忙しいのに。本当にあの子はいい旦那をもらって幸せ者だった。親としてこんな嬉しいことはないよ」
 じっと相坂の話を聞いていたクロトの目が細くなった。幸せ『だった』?
 長谷川助役の義母と、その子供である少女――つまり、相坂氏の妻と孫のほかにも、この家族にはすでに亡くなっている人物がいるということか。妻と娘と孫。女性ばかりという所が気になるが、長谷川助役の妻という女性がいつ亡くなったのかの時系列が不明なので、いまはまだ置いておくことにする。
「いい息子サンなんですね、長谷川助役は」
「ええ、とてもいい息子で――いや待ってください木崎さん、そりゃ駄目だ、それだけは駄目だ!! これ以上人を殺したら最後、アンタは今度こそ人の道をはずれちまう!!」
 途中からいきなり切羽詰まった悲鳴をあげ、相坂は破れた襖の向こうのなにかにむかってひれ伏した。汚れ、痛みきった畳へ顔をこすりつけるようにして叫ぶ。
「頼む、頼むから木崎さん、伝承の再現なんて恐ろしい事はやめてくれ。家内のことは私とあんただけの秘密にして水に流そう。あれは事故だ、事故だったことにするんだ。だからこれ以上はやめておくれ、芹那を出すくらいなら私が死んだ方がまだましだ!!」
 先ほど当の自分が『木崎』と呼びかけた、奥の間の、どういうわけか構造がでたらめになったつぎはぎだらけの遺体に相坂は涙を流して哀願した。
「……アンタが木崎サン?」
 玄関に散らばった靴の数を頭の片隅に留め置き、コノハは遺体を見据える。しかし遺体からはもちろん、相坂からも返る言葉はない。
 じっと観察していたい光景ではないが、戦場傭兵のクロト、そして人ならぬ獣の部分をもつなびきやコノハは、それが『何かに食い散らかされた死体』であることが薄々読めてくる。そうやってばらばらになってしまったものをどうにかこうにか、元の形へ戻そうとしたような。
 そしていつしか日が経って、水気が飛びきらぬうちに腐りはじめて見るに堪えない『何か』になった、そんな異様な顛末が想像できる。
「家内なら息子がなんとかしてくれる、先に火葬したとか、見るに耐えなかったから先に葬儀をしたとかいくらでも言い訳はできるんだ……!!」
 言い募る相坂と『木崎』と呼ばれているつぎはぎの遺体、その向こうの薄暗がりに何かが動いた。
「私も木崎さん、ここで引いてくれるならあんたを恨まないと誓おう。家内と、あんたの計画のことは私が墓まで持っていく。息子にもそう誓わせよう。あんたが計画のために殺したなんて誰にも言わないから!! どうか! どうか芹那だけは!!」
 ざり、ざり、ぞろり、と、痛んだ畳を踏んで、複数の影。
 怯えたように一瞬身を起こしたものの、相坂はその影を目にいれるなり歓喜の声をあげた。
「芹那!」
 白く丸い仮面のような顔、そして体躯に似合わぬ大きな翼。相坂氏が芹那と呼称した異形のいきもの――否、生物学上の生物に該当するかと問われれば明らかに埒外のソレは、愛らしい少女の声で笑った。
『うふふ、せりなね、おじいちゃん大好き、だいすき!』
「ああそうかい芹那、嬉しいねえ」
 皺深い顔を笑みに和めて相坂氏は異形へと歩み寄る。クロウや折薔薇が固唾を呑んで見守る中、破れた襖を乗り越えて進み、相坂氏は愛おしげに異形の翼を撫でる。
『おじいちゃん、おじいちゃん、せりなね、なわとび100回とべたの! すごい!?』
「ああすごいねえ、芹那は頑張り屋さんだ」
『おかあさんがいなくても、せりながんばるの! ちゅうがくせいになったらね、じぶんでおべんとうもつくるんだよ!』
『だからおばあちゃんにいっぱい、りょうりおそわるの』
 所々血で汚れた顔をカタカタと揺らし、異形は相坂へ身を寄せる。もし異形の姿形が小学生ほどの少女であれば、仲睦まじい祖父と孫の光景だったかもしれない。
『おじいちゃん、木崎さんがきたよ、どこにいるの?』
『おまつりのおはなしですか? ごめんなさい、おじいちゃん、やくばにいってるみたいでいまいないの』
 ああ、と相坂が膝から崩れ落ちた。
「芹那、芹那、ああ許しておくれ、許しておくれえ……まさかあんな事になるなんて!! お前を一人にしておくべきじゃなかった!!」
『いや、いや、いきたくない――助けておじいちゃん! おとうさん!! いやああ!!!!』
 白く丸い仮面のような顔が、少女の末期の壮絶な悲鳴とは逆に、口角をつりあげて笑っている。悲痛な叫びを嘲笑うように、楽しむように。『嘲笑う翼怪』の名の通りに。
 それまでずっと事の成り行きを観察していたニコの眉間へ皺が寄りはじめる。狂っている、と苦りきった声が漏れた。
 恐らく事件の発端はこうだ――邪神復活儀式を最初に始めたのは、相坂ではなく木崎。どのような経緯で、そしていつ相坂が木崎の恐ろしい計画に気付いたか今は不明だが、どこかのタイミングで木崎は相坂の妻を殺してしまった。
 木崎を警戒していたものの、恐らく妻を殺してすぐに孫に手をかけるとは相坂も思わなかったのだろう。狭い村で続けて死人を出すなど、それこそさあ自分を疑ってくださいと言わんばかりの所業だ。逆に言えば、そこに気付かぬほど木崎はその時点で『狂って』いたのだろう。
 相坂の妻と孫の葬儀が行われたのが、操の潜入調査での帳簿上の記録で3ヶ月前。秋の頃だ。葬儀がすぐに行われたかどうかは不明なものの、木崎は二人の死後のどこかのタイミングで何かに食い散らかされ、こうして相坂家で余生を送っている、という事になる。
 これだけことごとく異常な事が身近で起こったのだ、長谷川氏とて恐怖で髪の色だって抜けそうなものだとクロトは嘆息するしかない。
 それにしても。儀式の邪神復活の儀式を現在継続させているのは一体誰なのだろう。
 発狂してしまった相坂がそれを引き継いだとは考えにくい。それとも黒い車に乗ってこの家にやってきた、今もどこかにいるはずの何者かなのか。あるいは残る関係者で、動機があるとすれば長谷川助役だが、今ここに彼はいない。それに娘の死の原因となった儀式を継続する気になるかどうかは、正直疑わしところだ。
 長谷川助役こそ事件の要石、と折薔薇は確信するが、今はまず目の前の異形をどうにかするのが先だ。いったいどこに隠れていたものか、ぞろぞろと白い顔が4つ湧いて出てくる。
「ああ、芹那、芹那……」
 弱々しく脚にすがる相坂を踏みつけにして、オブリビオン――そう、目の前の異形もといオブリビオンはこちらへ近付いてきた。UDCの姿をとった、猟兵すべての怨敵。
「最近あなたの様子がおかしいと言われて、おれ達、様子を見に来たんですよ。それがこんな事になるなんてね……!」
 言いざま、なびきは【咎力封じ】を嘲笑う翼怪へ放った。拘束ロープがオブリビオンの足元へ絡みつき、2体が奥の間で足止めされる。残る2体が、きゃっきゃと楽しげな少女の声で歪んだ翼をはためかせた。最前列にいたなびきへ、でたらめに羽毛を貼り付けた腕がのびる。
「伊達に人形やってないからね。人真似するのは得意だよ!」
「室内を荒らしてしまいます、ごめんなさい」
 翼のような腕のような、ひねこびた腕がなびきの首を拘束したのを見て、折薔薇が【ミレナリオ・リフレクション】で反撃した。誰かが一撃もらう必要はあるが、全く同じユーベルコードを模倣できるこの技はうまくハマれば相殺が狙える。
「クロウさん、やっちゃって!」
 なびきへ組みついた個体を引きはがすようにクロウが短剣で応戦した。
「こう見えて頑丈でネ。ストーブも点いてないし、『暖めてあげようか』!」
 どっ、と溢れ出るような白い炎。相坂が逃走をはかりそうなら【月焔】を玄関側に配置することもコノハは考えていたが、狂気に支配されたその様子を見れば、必要ないことはもはや明白。牽制するようにばらまいた炎に加え、矢継ぎ早に複合合体を繰り返すことで威力を積み重ねる。
『やめて、たすけて!! たすけて!』
 わかっている。この声が本当の意味で少女の声ではないことなど。
 最後に喰らった子供の声をただ模倣しているだけで、人語を解する能力などないことも。そして喰らった子供の末期の悲鳴を再現し敵をすくみあがらせるような、まともな思考を持っているはずがないことも。
「現状がキッツいのは当然として、この声もクるものがあるねえ……」
 思わずコノハが漏らした呟きは、全員が同意する所だっただろう。
「ああ、だが本物ではない。怯んでもならない」
 ここは決して退いてはならない局面だとニコの勘が告げていた。
 物事にはすべて、それが為されるべき時というものが決まっている。時計として生み出され百年と少し、時を知らせ時を刻んできたニコはそれをよく知っていた。ここは何としても切り抜けて、真相を突き止めなければならない。それこそが、今この時なのだと。
 口早な高速詠唱。コノハによる高威力の火炎で次々火だるまにされていく嘲笑う翼怪。それを睨み据えたニコの周囲へ、数十を越える炎の矢が現出した。
「この機会を逃せば決して真相へはたどり着けまい――『雨よ降れ降れ、炎の雨よ!』」
『いやあああ、たすけて、おじいちゃん!! いやあああ!!!!』 
 炎の矢、もとい【ウィザード・ミサイル】で半ばハリネズミと化したオブリビオンがあげる、喉も張り裂けんばかりの悲鳴。黙れ、という断ち切るようなニコの怒号に重なってもう一度、なびきの【咎力封じ】が飛んだ。足元をすくわれるように転倒し、翼がばたばたと激しく畳を叩く。
『いたい、いたいよおおお!! やめて、やめてええええ!!』
「芹那、芹那! やめてくれ、芹那はなにもしていない!」
 あのオブリビオンのどこに孫の面影を見ているのか、いや、もう孫の面影など実はどうでもよくて、その声音だけにもうどこにもいない少女を感じているだけなのか。一斉攻撃を浴び悶え苦しむ嘲笑う翼怪の群れ、そこへ飛び出しかねないほど暴れる相坂を、操は分身でもって押さえ込み続ける。
 もしかしたらこのまま狂気の中で相坂は息絶えるのが幸せなのかもしれない。老い先短いこの先、たとえ正気を取り戻したとしても妻と孫は戻ってきやしないのだから。それをわざわざ思い知らせる必要がどこにあるだろう。
 ひとり玄関に留まり、背中で激しい戦闘の余波を感じながら操は呟く。
「でも、まだ相坂くんは死んじゃいけないと思うんだよね」 
 ……だって、まだお茶も貰ってないし。
『いやあ、いやあああ! いたい、いたいいぃぃい』
 畳の上で文字通り悶絶する翼怪に、クロウの顔が歪む。もともとこういう、怨みとか呪いとかには弱いたちなのだ。ネガティブな感情に揺さぶられやすいタイプという自覚もあるので、できればご遠慮願いたい。しかしそれでも、猟兵には譲れぬ一線というものがあるのだ。
 たとえそれが自分自身の苦痛のように思えたととしても。
「それでも……ここで、止めなくちゃ」
 肩で息をしながらクロウは顔を上げる。折薔薇の声がどこか、遠い。
 喘ぐように息を継ぎ、最後に残った翼怪へ短剣を振り下ろす。鈍く重く肉を貫いた感触があって、ばたばたと翼をはためかせていたオブリビオンがようやく沈黙した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『牙で喰らうもの』

POW   :    飽き止まぬ無限の暴食
戦闘中に食べた【生物の肉】の量と質に応じて【全身に更なる口が発生し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    貪欲なる顎の新生
自身の身体部位ひとつを【ほぼ巨大な口だけ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    喰らい呑む悪食
対象のユーベルコードを防御すると、それを【咀嚼して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:もりさわともひろ

👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


誰かが大きく息を吐き、その場の猟兵全員が戦闘の終了を自覚する。
 相坂が弱々しい悲鳴を上げていたが、正気を失った老人ひとり、放置しておいても害はないだろう。
「――いや、いや。お見事でした」
 そして改めて屋内の探索にとりかかろうとした猟兵達の前に、30代ほどと思われるダークスーツの男が現れた。
 よく磨き込まれた靴が破れた襖を踏み、恐らく居間であったのだろう和室に入ってくる。
「まさかここを突きとめられるとは想像していませんでしたよ。何だか嫌な予感がしたので様子を見に来たのですが……どのみち、2週間くらい誤差の範囲です」
 儀式の本物の首謀者かと猟兵達から誰何の声が飛び、男は実に鷹揚な態度で首肯した。
「ひとり、ふたり……まあ、いいでしょう。旧き神は大食でいけない。しかしよく食べることでよく育つのですから、これくらいの人数があれば2週間の期間など、たやすく埋められようというもの」
 2週間という数字。それは大晦日から元旦にかけての、件の火祭りを強く連想させる。
「神の糧となることを喜び光栄と思いこそすれ、恨むなど。身の程をわきまえなければね」
 伝承にうたわれる大食の邪神。その贄になれという意味にもとれる台詞に猟兵達へ緊張が走る。折しも、何か大きく重いものが和室の向こうで身じろいだ、そんな気配がした。
 男は動かない。一瞬の静寂を破り和室の砂壁が吹き飛んだ。
 壁を木っ端微塵にして現れたのは、ワニのような大きな口を持つ、目鼻のない二足歩行の怪物。二対の腕と脚が見えるが、頭以外の箇所にもでたらめに口が備わっている。人間であれば腹部にあたる箇所にまで、ずらりと牙を並べた口が開いていた。
 それこそが、邪神『牙で喰らうもの』。まだ不完全な復活であることが不幸中の幸いだろうか。
 邪神の復活を阻止しなければならない以上、『牙で喰らうもの』をさしおいて男を捕らえるのはおそらく不可能に近い。それこそ、今まで何の気配もさせずにいた事で男の実力は推し量れる。口惜しいが、今は邪神討伐に専念すべきだ。
 大きな頭をもたげ、『牙で喰らうもの』が猟兵達を見る――いや、目に相当する器官が見当たらないので主観でしかないが、『見た』ように感じた。得物を睥睨する肉食獣そのものの仕草で。
揺歌語・なびき
ああ、駄目だ…キレちゃった
(ひくりと笑ってから怒り露わに

お前みたいな奴は大嫌いだ
おれが殺す、潰す、ぐずぐずに
邪神も、お前の策略も

黒服を即座に咎力封じで拘束後に邪神へ参戦

咎力封じで邪神の動きを封じる
背後や腕、脚を狙って拘束
【傷口をえぐる】【呪詛】を活用し確実にダメージを増やす
全員の攻撃が当たることが最善策
その長い舌も全て動かないようにしてやる

頭を冷静に働かせ味方との連携最優先
集中攻撃を受ける者が居れば声掛け適宜に庇う
この家で、これ以上誰も死なせない

戦後は黒服の腹を無言で蹴り続ける
侮蔑の目で見つめ

お前を殺してやりたいが
UDC組織に引き渡す
一生赦されずに生き続けて、惨く死ねよ
なぁ、絶対だ、そうだろ


八坂・操
不完全な化物を引き連れて黒幕登場! 分かってるね☆ ……じゃあ、クライマックスだって分かってるんだろ?
口だけは達者な化物と、大口叩いて手綱も持たない狂信者。お似合いだよ、アンタら。

とはいえ、まずは被害者の安全確保だ。幸い【オルタナティブ・ダブル】の私はまだ相坂の近くにいる。私が『忍び足』で強襲すると同時に、そのまま担がせ『怪糸』で『逃げ足』だ。
化物が弱れば、近くの餌を食らうのは必須。『目立たない』よう隙を見て、長谷川も拘束して逃げ出そう。敵を助ける形になるが、化物が強化されるのは避けたい。
それに……神に酔った狂信者にとって、殉教は誉れだ。そう簡単に逃してたまるか。自分の神が死ぬ所を見ていろ。


クロウ・ミスト
邪神を生む目的は何か

例え神と呼ばれるものであったとしても、信じたくない
神様は、僕達が生きていく為の拠所になってくれるもの
こんな神様なんて、願い下げです…っ

弓は不利とし短剣で応戦
噛みつかれれば急所避け、狙い易くなっている内に、通りそうな箇所へ攻撃

ぶわりと悪寒が駆ける
怨嗟、嘆き、苦痛、怒り
贄となった人々の念に、持っていかれそうに
…っ

いいですよ
僕の身体を、使っても
でも僕は、まだそっちには、行けません…

(真の姿では憑依物の影響を受けて色が変化し念を纏う想定
自身の内なる他人格ではなく、
外部から人格のようなものを一時的に取込むイメージの多重人格者です
言動も引っ張られて変わるので、お好きに動かしてください)



「へえ……『不完全な化物引き連れて黒幕登場』か、分かってるね☆ ……よくある映画の筋書きそっくりだ」
 だからもうクライマックスだって分かってるんだろ、と続けた操に、ダークスーツの男は何か面白いものを見る顔になる。
「威勢の良いことだ。元気な人は嫌いじゃありません」
「そうかい……おれは、お前みたいな奴は大嫌いだがな……!」
 憤怒の形相でなびきは男の前に立った。グェゲゲゲ、と蛙のような生々しい声を漏らしている邪神などまるで意に介さない。
「おれが殺す、潰す、潰してやる! そこの邪神まるごと、お前の策略も!!」
「ええ、こんな神様なんて、僕達は願い下げです……っ」
 短剣を構えたクロウもまた、前へ出る。
「たとえその化物が、百歩譲って神と呼ばれるものであったとしても。僕は人の命を糧にする神など信じたくない、いえ、信じません! 神様は僕達が絶望せずに生きていく、そのよりどころになってくれるもののはずです!!」
 どこか切実さすらにじませたクロウの叫びも軽く受け流し、男は頑是無い子供を眺めるように傍らの邪神を見上げた。
「貴方達がどう言おうとカミはカミなのですよ、揺るぎなく。知りませんか、仏は慈悲しか与えないが神は祟る、という言葉を」
 ひどく能面じみて整った顔に微笑がひろがる。
 好意的な笑みではないことくらい、誰の目にも明らかだった。
「お前を殺してやりたいが、殺しはしない。ここで捕らえてUDC組織に引き渡す……一生だれにも赦されずにずるずる生き続けて、惨く死ねよ。なぁ、絶対だ、そうだろ!?」
 なびきの咆哮もまるで意に介さず、男は、さあ仕上げの時間です、と歌うように呟いた。
 嫌な予感がしたのだろう、玄関で待機していた操の本体が今へ飛び出す。ほぼ同時に彼女の分身が、泣き崩れていた相坂の身体をかっさらうようにして抱き上げた。振り返りもせずそのまま脱兎の如く戦場を離脱していく。
 さらになびきが【咎力封じ】で男を拘束しようとしたその瞬間に、すべては起こった。
「殉教とは誉れ。誉れとは御国へ入る許し」
 ゲロゲロと鳴きながら棒立ちになっていた邪神の前に男が進み出る。蛙のような鳴き声だとクロウは思っていたが、目の前のものを素早く捕食する生態まで蛙じみていたとは思わなかった。
 ばくん、と妙にあっけなくダークスーツの男が『牙で喰らうもの』の顎に挟み込まれる。ちょうど腹のあたりまで一気に持っていかれたせいで、咀嚼のたびに大きく両脚が踊った。
 誰も、何も言えずに見守るしかない。
 咀嚼にあわせてぶらぶら踊る足から靴がすっぽ抜け、高く宙を舞って障子を破っていった。骨格が噛み砕かれ肉がすり潰される音が響く。男は悲鳴どころか今際の際の声すら一度も上げず、猟兵達の眼前で『牙で喰らうもの』の贄として喰われてしまった。
 ちぎれた足首を拾って口の中へ放り込み、『牙で喰らうもの』はおもむろに猟兵達へ向き直る。そして真っ赤な血と臓物に濡れる最も大きな口で、明らかに、笑った。
 表情など浮かべるはずのない肉体としか思えないのに。
「確かに、……神に酔った狂信者にとっては、殉教は誉れだったな」
 操が口惜しげに呟き、身構える。できればまだ市街にいるだろう長谷川助役も連れて逃げ去りたいところだったが、猟兵として男を喰らった邪神を討伐することせずに逃亡できるはずもない。
 なびきが血を吐くような叫びをあげて『牙で喰らうもの』へ【咎力封じ】を放った。邪神の二対の腕のうち、赤く濡れた大きな左腕がぶくぶくと泡立つように膨れあがって頭部の形を成す。
 凄まじい勢いで絡みついた縄状のユーベルコードが、新生した邪神の頭部を拘束した。ぎしゃあ、と先ほどの蛙のような鳴き声とは別の、金属音めいた錆びた声音が耳をつんざく。
 あれは不完全な復活のさらに一歩手前だったか、とクロウは歯噛みした。どうりで、すぐにこちらへ襲いかかってこなかったわけだ。
 邪神がふりまく気配に悪寒が走る。
 うすうす勘づいてはいた。
 この異様な家の内部に踏み込んだ時から、ここで死んだものの数の見当くらいは。
「……ええ、いいですよ、僕の身体を使っても」
 文字通りの怨念と交信する能力はクロウにはない。でも贄となった人々の悲しみや無念は、簡単に想像できる。
「でも僕は、まだそっちには、行けません……!」
 猟兵達が持つ真の姿を解放し、クロウは『牙で喰らうもの』へ己の短剣を突き立てた。黒くぬめ光る身体をよじり、邪神が苦悶の叫びをあげる。
 邪神を葬ったとしても、犠牲になった人々を弔えるわけではないことくらい、知っていた。けれどこの歪んだ『神』を除かぬかぎり、死んだ人々はいつまでたってもあの狂信者に踏みにじられるだけ。
 ならば猟兵は猟兵として、オブリビオンを討つ。
 それがたったひとつ、世界に選ばれ、そして世界に赦された猟兵としての正義だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ニコ・ベルクシュタイン
…ただただ、痛ましい。
そしてただただ、首謀者に手が届かないのが口惜しい。
ならば、せめて今出来る精一杯を尽くそう。

常に共に戦う猟兵との位置関係に注意
時に声を上げ敵の気を引いたり、味方に声を掛けるなどで
自分か、若しくは他の誰かが常に死角を突けるように立ち回る

『牙で喰らうもの』へは【時計の針は無慈悲に刻む】を使用
時刻みの双剣の切っ先を敵へと向けて狙いを良く定め
大小二振りの剣で連続攻撃を狙う
万が一反撃により喰われてしまったら…其れはとても悔しいな

過ぎた事を悔やんでも仕方が無い、と言うより他に無いのが残念だ。
無事事件を解決出来た暁には、出来る限りの事後処理を行いたく思う。
其れがせめてもの手向けとなろう。


クロト・ラトキエ
「誤差、ですか」
男との実力差は分かります
無論、異形が脅威である事も
…けど、浮かぶ微笑みは絶えず

僕に掲げる正義など無い
オブリビオンである、故に倒す。それだけ
ですがまぁ…
苛立つ事くらい有るのですよ

「決定的な差、じゃ無きゃ良いですねぇ」
いつも通りの表情の下、静かな腹立ちを灯して、皮肉を返す
えぇ。この悪辣な趣向――

潰してやらねば気が済みますまい


戦闘知識を頼りに、援護を主として立ち回ります
フック付きワイヤーで引っ掛けて攻撃を逸らしたり
よく狙われている方が居れば【トリニティ・エンハンス】で防御力を強化したり
その拍子に、2回攻撃も狙いたく

「神は愛するだけでいい。手は、出すな――って、誰かが言ってましたし?」


コノハ・ライゼ
首魁登場って?イイね、さっきのよか余程やり易い
口の端上げ想う
ああどうして。ソコまでナニカを信じられる――?

【POW】ともあれ喰らうものをぶっ倒さねえとな
【紅牙】発動し「柘榴」を捕食形態に展開
構わず懐へと飛び込む
「ふ、はは。イケてる面じゃん、悪食対決と行こうじゃない!
仲間の攻撃や敵の反撃の隙も逃さず
与えた傷を柘榴に喰らわわせ『生命力吸収』し『傷口をえぐる』
口が増えたり傷治ったりとメンドクサイこと
攻めあぐねるのであれば一時だけ真の姿(銀毛の狐)曝し『捨て身の一撃』にて攻撃
仲間が攻撃する隙を作ろう

スーツ男は逃がさんよにしたいトコだが、さて
間に合や右目に仕込んだ「氷泪」差し向け足を止め
同様に攻撃を


赤星・緋色
ほいほいっと
ちょっと失敗しちゃって遅れたけど最後ぐらいはみんなを手伝うよ
私もちょっとくらいはみんなの役に立たなきゃだし、このまま帰れないよ

今回の相手は邪神、牙で喰らうもの、の不完全体が相手なんだね
ユーベルコード『セミオートバースト』で技能の援護射撃を使って仲間の攻撃防御の支援、敵の攻撃回避の邪魔をしていくよ
仲間の攻撃タイミングに合わせたり、敵の行動を読んでガトリングの弾を撃ち込み
防御の隙をついたダメージ狙い、相手の攻撃の妨害、敵の回避予想ルートに弾をばら撒いて避けにくくするのがメインかな

邪神って言うくらいだから簡単に倒せるとは思ってないけど、ここで絶対倒しておかなきゃ
もう一人の方も気になるけど


吉祥天・折薔薇
(これはまた、続けて気持ち悪い相手だね…)
そもそもまともに相手をして勝てるかどうか不安だ。
先ほどの男が黒幕だとして、ボクたちの戦いをどこかで見ていただろうに
それでもああ言うからには余程自信があるんだろう。
不意打ちに備えて警戒。
相手のテリトリーで戦うのはまずい気がする。
せめて外に誘い出せれば。
不利な状況と判断したら全員に声がけし、外に移動する
相手が強すぎる場合は撤退も考慮しないと
もし誰かが倒れたらできれば倒れた者を連れて退避する。
グラフィティスプラッシュを使用
「口ばかりじゃ不便だろう?目鼻も描いてあげようか!」
戦闘が終わったら黒幕の男を問い詰めたいところだけれど



ただただ、痛ましい。そうニコは思った。
 そしてただただ、首謀者に手が届かなかったことが、届く技量が備わっていなかったことが口惜しい。
「過ぎたことを悔やんでももはや詮無いことだな」
 幸い、真の姿を晒した猟兵の攻撃で邪神は消耗しているようだ。首謀者を喰らわれてしまったことは業腹だが、今がチャンスではある。
「誤差、ですか。……僕にとって掲げる正義などありはしませんが、まあ……苛立つ事くらいはあるのですよ」
 腹部に開いた口は先の短剣の一撃で大きく裂けて、クロトの前に生々しい内部を晒している。
「もはや聞けているはずがありませんが、それが決定的な差、じゃなきゃ良いですねぇ」
 当然クロトもそうする気はない。邪神の完全復活は止められないとでも男は言いたかったのかもしれないが、猟兵が関わり阻止されるならば、それは決定的な差だ。
「ともあれ今はアイツをぶっ倒さねえとな! ――『イタダキマス』」
 先陣をきってコノハがその懐へと飛び込んでいく。自身の血を代償にしてユーベルコード【紅牙】を発動させ、黒剣『柘榴』を捕食形態へ展開した。『牙で喰らうもの』の新たな口がもうひとつ、首の根元辺りに出現する。
「とことんまで口にこだわるんだね――とは言っても口ばかりじゃ不便だろう? ボクが目鼻も描いてあげようか!」
 痛んだ畳の上に【グラフィティスプラッシュ】が炸裂した。邪神のねぐらで戦闘を行うのは不利なはずだと考えたが、そこを折薔薇のテリトリーに塗り替えてしまえば話は変わってくる。
「ほいほいっと! 『ひっさーつ!』」 
 村役場での失敗を取り返さずには帰れない。まず外す事はない、そんな高い命中率を誇る緋色の【セミオートバースト】は、当たりさえすれば確実に『牙で喰らうもの』を追い詰めてくれるだろう。
 その期待通り、狙い澄ました射撃を喰らった巨体がもんどりうって倒れた。巨大な口が苦悶の叫びと共に大きく開かれる。
 一瞬その暴れっぷりに家が崩れかねないのではとコノハは危惧するが、……ならばその前に片付ければよいこと、と考え直し攻め手をゆるめない。
「ふ、はは。無様に弾食らってイケてる面じゃん、悪食対決といこうじゃない!」
 反撃の隙など許さない。その隙さえ作らせない。これ以上この邪神の存在を許してはならない。
 今やコノハの【紅牙】により、その黒剣は邪神の命を啜り、かつその傷口を抉る獰猛な捕食動物そのものだ。なかなかに禍々しい光景だがそれを操るのが邪神を屠る猟兵であるなら、正しく邪神狩りだろう。
「潰してやらねば気が済みますまい……!」
 静かな腹立ちを宿したクロトの声。
 闇雲に振り回される凶悪な手脚をバックステップでかわし、【トリニティ・エンハンス】で防御力を高める。するり、服の袖から引き出したフック付ワイヤーを投げざま、クロトはその場を時計の針を模した双剣を閃かせるニコへ譲る。
 『牙で食らうもの』の眼前。眼に相当する器官があれば、恐らくニコはそこへ双剣を突き立てていただろう。
 見事クロトはフック付ワイヤーで邪神を絡めとった。ただひたすらにもがき、手も届かぬ何かに向かって暴れるだけの塊でしかなくなった邪神に、鋭い刺突に似た連撃【時計の針は無慈悲に刻む】が襲いかかる。
「旧き神は旧き時間の海へ戻るがいい――『過去は過去に。未来は俺達のものだ!』」
 金属片を滅茶苦茶に擦りあわせたような、怖気の走る絶叫。
 鋭く細く、ぬらぬらと血に濡れ光る巨体をニコの双剣が痛んだ畳へ深く縫いとめた。巨大な口が足掻くように、手当たりしだいに何かを喰らおうとしているものの猟兵達をとらえることはできない。
 緋色の手元に現出したガトリングが再度火を吹く。ぼっ、と邪神の脇腹が吹き飛んだ。牙をならべた口はすでに捕食者としての矜持を失い、哀れな苦痛の声を上げているだけ。
 相手は邪神だ。簡単に倒せるなんて思っていない。しかしここで絶対倒さなければ。
「止まれ! 止まれ……!!」
 黒い巨体を、断罪の色に塗り替え続ける折薔薇。邪神がふりまく体液も、惨劇の痕跡もなにもかも覆い尽くしていく。
 ワイヤーを引き絞るクロトのこめかみに汗が流れはじめた。そろそろ力負けしかねない、そんなタイミングで相坂家の前に突如エンジン音が鳴り響く。
「御義父さん! 御義父さん!!」
 血相を変えて飛び込んできたのは白髪の、ぴしりとスーツを着こなした中年男性だった。緋色はその面影に見え覚えがある。
「長谷川助役……?」
「離れろ!!」
 一喝したニコに気圧されたように、長谷川助役は玄関で立ち止まった。後一押し、とばかりにコノハは今一度黒剣をふりかざす。
「これで、――終いだッ!!」
 渾身の【紅牙】が、邪神の頭部を喰らい尽くす。
 そして最期の足掻きとばかりに高く高く振り上げられた手脚は、何も捕らえずにそのまま畳へ落ちた。

「相坂氏はここから逃がしたので無事だ。ほどなく戻るだろう」
「ありがとうございます」
 息せき切って駆けつけた長谷川助役は汗を拭いながら、猟兵達に深々と頭を下げる。
 事件の説明を求めると、義理の父が木崎の計画に気付いたのは半年ほど前だったようだ、と長谷川助役は静かに、しかし疲れきったように語りだした。
「それこそこの村で生まれ育った小学校からの同級生、という付き合いだったようです。火祭りのことで、以前取りまとめ役だった木崎さんに色々聞きにいくうち、見てはならぬものを見てしまったと言っていました」
 庭石に腰を下ろして、長谷川助役は溜息をつく。
 相坂は昔からのよしみで懸命に考え直すよう説得を重ねたが、それを疎んだ木崎はこれ以上の邪魔をするなら相坂の妻を邪神の贄に捧げると脅しをかけたそうだ。ひいては家族を贄にしてしまうというものだったので、当然相坂はそれ以上強く出ることもできず黙り込むことになる。
 しかしそんな事情を知らぬ彼の妻が、最近姿を見せない木崎の妻を心配して木崎家を訪問してしまったことが悲劇の始まりだった。
 気配があるのに返答がない家を不審に思い、玄関の引き戸を開けてしまった――その時にはすでに木崎家内部は邪神復活の儀式場として機能しており、相坂の妻を待っていたのは無残な死体や血痕が飛んだ壁。ごく単純に、贄をかねて口封じに殺されたのだろう。
「最初のうちは木崎氏の妻、息子夫婦、孫三人……そして義母が加わり、その時点でもはや木崎氏はまともな状態ではなかったようです。義父は薄々木崎氏の狂気に気付いていたものの約束が違うと問い詰めました、ですが」
 その返答は、ここまで看過してきた相坂にも連帯責任はある、儀式の協力者として一人だけ逃れようと思ってもそうはいかない、というものだった。
「……脅迫しておいて何を勝手なことを」
 ニコが呟いたのも無理からぬ事だろう。
「義母を殺され精神的に追い詰められていた義父には、木崎氏の論法の隙を突く余裕もなかったようです。全てを明るみにされたくなければ孫を――私の娘を、贄に差し出せと」
 深い溜息は苦渋に満ちている。
 訊いてもよいものかどうかクロトは随分迷っていたのだが、長谷川助役の話がやや途切れたので先を促すのも兼ね尋ねてみた。
「助役はいつの時点でこの儀式、いえ、お義父さんが事件に巻き込まれている事に気付いたんです?」
「娘が……死んだ後です。私の家はもう少し市街に近い区にありまして、妻が三年前交通事故で亡くなったあと、義母はもちろん義父もよく芹那の様子を見にこちらへ来てくれていたものですから。義父もまさかこんな狭い村で、自宅内の人間だけならまだしもたてつづけに他人を手にかけるとは思わなかったようです。遊びに来ていた芹那に留守番を頼んだところへ、木崎氏が……不用心だったと思われるかもしれません。私が、こちらへ迎えに来る約束になっていたという事情もあるのです。芹那が一人でいたのは実質1時間あるかなかったか、でした」
 そして、あとは猟兵達が推理していた通りらしい。
 長谷川助役は遺体のない義母と娘の葬儀を行ったのち、徐々に正気を失っていく義父の面倒をみながら対面を取り繕っていたようだ。この頃になると、もはやまともな受け答えもできない木崎氏のかわりに件のダークスーツの男が相坂氏に接触してきていたらしい。
 これ以上無闇に犠牲を増やしては、計画が露見しかねないと判断したのだろう。もう少しで邪神復活に必要なだけの贄に足りてしまいそうだったので、木崎氏は邪神の贄にではなく、あの『嘲笑う翼怪』に食われたそうだ。
 男にかわり儀式を進めていた中心人物が消えたため儀式場は木崎家から相坂家へ移り、それに伴い相坂氏の狂気は決定的となった。
「ですが、これだけは。……義父は儀式のために人を差し出すような真似だけは、しておりません。私もです。もちろん儀式をひた隠しにしていた罪はあるでしょうが」
「ねえ、訊いてもいい?」
 沈痛な表情の緋色が、涙をにじませた長谷川助役を見る。
「どうして誰にも言えなかったの? 儀式がもう少しで完成しそうだって、多分わかってたよね」
「はい。いずれ遠からぬうちに伝承の邪神は復活すると予測はできました。ですが村の火祭りが、その由来の通りであれば――」
「火祭り?」
 猟兵達が互いに顔を見合わせる。
 あの、市街で行われるという一見風変わりな祭り。
「もうわずかな人間しか知らぬ由来です。あの火祭りは、かつてこの村の地形を利用し、この地に古くから棲みついていた悪鬼を火攻めにして退治たという由来があるのです」
 大晦日の夜、すり鉢の底で大きなかがり火を燃やし、人々が集まっていると思わせ悪鬼をおびき寄せ火攻めにする。燃料となる薪を集めていては不審がられるので、神からの加護も願いあえて村人が注連縄を持ち寄り、それを燃やしたのがはじまりだった。
「その火祭りを邪神披露の場にするつもりだったあの男と木崎氏は、その正しい由来を知らなかったというわけだね」
 折薔薇の声に、長谷川助役は首肯する。
「そうです。今でこそ村民がこぞって見物に来るだけのような祭りですが、元を辿れば正しく鬼退治。ここまで来てしまったからには、なんとか火祭りのまで次の犠牲を出さずに持ち堪え、そのうえで……火祭りの伝説にすがるしかないと」
 長谷川助役の頬に涙が伝った。
 コノハはその涙を眺めながら考える。
 助役は巧みに説明を避けたようだが、恐らく助役は自分の命もろとも邪神を焼き殺すつもりだったのでは、と。その上で。
「長谷川サン」
 うなだれる助役に、コノハは静かに問いかける。
「どうしてソコまで、伝説を――?」
 何故そこまで、遠い昔の伝説を信じて縋れたのだろう。
 もう知る者も少ないという悪鬼退治の伝説を。
 遅くに子に恵まれたであろうとは言え、長谷川助役はやはり若いのだろう。真っ白な髪からは想像できないが、手指や首元を見ればまだ若々しく、やや皺が目立つとは言え意外なことに顔もシミひとつない。
「言っておりませんでしたね」
 諦念をにじませる横顔にはただ深い悲しみだけがある。
「私の家は代々あの祠を祀り、管理してきましたから」

 嫌な事件だった、と猟兵達は村を振り返りながら嘆息する。
 せめて儀式の歓声が未然に防がれた事を喜ぶべきなのだろう、けれど。相坂氏は経緯が経緯だけにUDC組織へ今後の対応を任せる事になったし、長谷川助役のケアも行ってくれるだろうと思う。しかし……。
 いつの時代でも、神は祟る。敬い祭るに値する神ならまだしも、それが邪悪な神であった時は。
「……帰ろうか」
 誰にともなく呟いた声は、雪まじりの風に浚われて消える。
 遠くなるすり鉢状の北の寒村。春はまだ遠い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月25日


挿絵イラスト