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勃発!ぴっちりスーツクーデター!

#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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●パイロットスーツの流儀
 小国家フワラル。幾多ある小国家の中の1つ。その国に名高い将校の1人として、『タイリ・タイトラル』という女性パイロットがいた。彼女はとある拘りを持ち戦場に赴き、そして戦果を挙げて今の地位へと上り詰めた実績ある凄腕将校であった。
 だが彼女は1つの鬱屈とした思いを抱えていた。とある拘り、それが上官に受け入れられず、やめるように告げられたのだ。彼女としてはこれは効率を求めたものでもあり、決して100%私欲でやっているものではない。軍機にも違反をしているものではなく、ただ上官がそれを気に入らず、そして彼女の功績を妬んでのものであるのは察する事が出来た。

「ならば、更に上に昇り詰めるだけだ。そうすれば文句など言わせない」

 そして彼女は新たな任務に赴いた。いや、赴いてしまった。『新型機体』のテストパイロットという、後から思えば危険極まりない任務へ。

 彼女がその機体に乗り込んで数刻後――。

「タイリ様!何故、このような……!!」

 上官であるタイリがテスト中に暴走したという報が入り、鎮圧に赴いたのは彼女らの部下であったものたちだった。だが謎の力で強化されたタイリとそのキャバリアには成す術も無く、あっという間に全員が倒され、だが撃墜はされる事なくフワラルの大地にその身を乗機ごと伏してしまっていた。

「知れた事。お前達も知っている筈だ。やはり私は間違っていない。間違っているのは無能な奴らであり、国であり、そして世界そのものだ。私は決めた。まずはプラントを乗っ取り、そして私のあの思想が正しいと皆に教えてやるのだ! そしてその最初は、お前達だ!!」

 タイリの機体から黒い影のようなものが放たれると、それは部下たちの機体を包み込み、そして中のパイロットたちをも包み込んでいく。

「あ、あああ!これは、まさか!おやめくださいタイリ様!私は否定しません!ですが、自分で着るのはやはり、恥ずかし、ああああああああああ!!」

 やがて、部下たちの乗機は黒い色に覆われた別物の機体と化し、ゆっくりと立ち上がった。そしてコクピット内の彼女らも……。

「さあ、まずはプラントを占拠する。そしてこの力で市民たちにも徐々に教えてやるのだ。そう……パイロットスーツは、ぴっちりスーツしか在り得ないなのだとな!!」
「「「ハッ!ぴっちりこそ至高!ぴっちりに栄光あれ!!」」」

 コクピットにいるタイリ、そしてオブリビオンマシンに支配された部下たち。彼女らは全員が黒色の、ボディラインの出るタイトなスーツに身を包んでいた。
 これこそがオブリビオンに支配されている証、そして、タイリが持ち続けていた拘りの正体だった。

●なんだかんだああいうスーツもお約束だよね
「私がこれを予知しないで誰が予知する!! という訳で、ぴっちりスーツを愛するヒーロー、シズホがぴっちりな危機を予知しました」

 ぴっちりスーツに身を包んだ自称ヒーロー、シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)はとても真剣な表情で猟兵達を見詰めた。

「予知したのは新世界、クロムキャバリア。その国家の1つ、フワラル国です。ここでとある将校、タイリ・タイトラルという人物がクーデターを起こし、部下らと共にプラントを占拠。プラント周辺の町も支配下に置いています。これだけなら介入のすることない、その世界の問題ですが、予知した以上はそうではありません。タイリ将校がクーデターを起こしたのは、オブリビオンマシンというその世界のオブリビオンの影響によるものだからです。部下たちも同じくその支配下に置かれ、そして周辺の町民も同じく支配されています。このままでは徐々に支配は広がり、フワラル国自体が乗っ取られる事も十分あり得ます。なので皆様にはこのクーデターの鎮圧、正確にはオブリビオンマシンの撃破をお願いします」

 シズホは写真をとりだすと、それをホワイトボードに貼った。それを見て猟兵の一部がどよめいた。それはタイリ・タイトラルのパイロットスーツ姿。だが、そのスーツは首から下のボディラインがほぼ出ているタイトなデザインのスーツだったのだ。そう、まさに今目の前で説明しているシズホのような。

「タイリ将校はこのタイトタイプのスーツこそがパイロットスーツとして最適だと主張し、そしてそれを纏い戦果を上げてきたたたき上げのパイロットです。フワラル軍の軍機では、パイロットスーツは『自由』。なので宇宙飛行士のようなタイプとか、私服で乗っている人もいます。男性はタイトスーツタイプを着てる人も多いそうですが、女性はどうも恥ずかしいらしくタイリ将校他数名だったそうです。また、『煽情的だ』『眼の毒だ』とおっしゃる方たちもいたそうで、タイリ将校の主張は肩身の狭い状態だったようですね。どうやらその鬱憤がオブリビオンマシンの影響で悪い方向に膨らんでしまったらしいです。私としてもとても残念です。こういうのは本当に好きな人が自分の趣味の範囲で……こほん」

 シズホは脱線したと悟り、話を戻すことにした。

「プラントへの途上には街を通る必要があります。ただ市民たちはぴっちりタイトスーツ集団と化しており、皆さんに襲い掛かってきます。身体能力が強化された彼らに接触されると影のようなもやもやが伸びてきて、それが全身を覆ってしまうと皆様もぴっちりタイトスーツに覆われて、思考にも影響は出るでしょう。ただし、皆様も市民も元々の服の上から纏わりつかれているものになるので、自分のも市民たちのも無理矢理破壊したり剥ぎ取る事も可能です。市民たちはそうしたら元の衣服に戻り、精神も元に戻りますから情報収集も出来ますよ。ちなみにキャバリアで空を突っ切ろうにも、迎撃砲なども備えているようなので油断は禁物です。市民たちを掻い潜り町を突破する、市民たちのスーツを破壊する、突破方法は色々あるでしょう。
 ……後は無理にとは言いませんけど、同じような服装をしていれば攻撃はしてこないでしょうね。市民の皆様にはそれはもうじろじろ見られるでしょうけど、情報なども洗脳解除後と同じく収集できるでしょう。そこはお任せします。

 町を突破すれば、そこにはタイリ将校の部下らが市街地でオブリビオンマシンに乗り待ち構えています。機体は『オブシディアンMk4』。タイリ将校のオブリビオンマシンにより作られた物なので遠慮なく破壊しちゃってください。破壊すれば中のパイロットたちも支配から解放され、スーツも元に戻るでしょう。タイリ将校の指示がないとはいえ、鍛え上げられたチームです。油断はできませんよ。ちなみに、フワラル国がキャバリアを貸し出してくれるので希望する方はそれを使う事もできますし、操縦法も簡単に学習できるでしょう。

 部下らを倒せば後はプラントの傍にいる、タイリ将校のオブリビオンマシンだけです。流石に強敵ですが、彼女に声をかけたり訴えかける言葉によっては彼女を正気に戻し力を弱められるかもしれません」

 シズホは話を終えると猟兵らに向き直った。

「彼女も無理強いはするつもりはなかったでしょう。ただ、拘りを禁止されそうになった焦りをオブリビオンマシンに突かれたのかもしれません。同じぴっちりスーツ好きを助ける為にも、どうか皆様の力を貸してください!」

 シズホは珍しく、頭を下げて猟兵らに依頼の成功を願うのだった。


タイツマッソ
 ぴっちりパイロットスーツはいいものだと思うタイツマッソです。新世界、クロムキャバリアのクーデター阻止依頼をお送りします。

 1章は冒険でぴっちりスーツに支配された市民らを突破し町を抜ける事が目的です。迎撃砲もあるのでキャバリアでの突破も簡単にはいかないでしょう。ボーナスは『市民を殺害しない事』とし、ボーナスを得た場合は追加で3章で使えるタイリ将校の情報を提供します。
 市民らはぴっちりタイトスーツを着ていれば仲間だと思うので襲い掛かってきません。

 2章は集団戦でオブシディアンMk4戦となります。こちらでも『オブリビオンマシンを破壊しパイロットを殺さない』事をボーナスとし、こちらでは将校の情報、もしくは将校のオブリビオンマシンの情報を提供します。
 部下らはぴっちりタイトスーツを着ていると市民らにより増えた仲間だとは思うでしょうが、照会されるので長くは続かないでしょう。

 3章はボス戦でタイリ将校と謎のオブリビオンマシンとの戦いになります。タイトスーツで戦い抜いた叩き上げなだけに強敵ですが、『彼女本来の想いを取り戻すような呼びかけや説得』を行えば弱体化させボーナスを得ることができます。また呼びかけや説得に1章、2章で得た情報を使うと更にボーナスを加えます。こちらもオブリビオンマシンさえ破壊すれば、タイリを救出する事が可能です。
 支配能力を持つタイリはぴっちりタイトスーツを着ていてもすぐに見抜き、容赦なく攻撃をしてきます。

 フワラル国からキャバリアが貸与されるので所持していない方は借りる事もできますし、猟兵ならば生身でも戦闘は可能です。ちなみにパイロットスーツも様々貸与できます。ちなみにタイリ推奨のぴっちりタイトスーツもありますが必須使用ではありません。

 1章のプレイング受付はオープニング公開から開始し、執筆返却は9月30日8時31分以降からとなります。タイミングや内容によっては不受理となる可能性もありますのでご了承ください。
 2章、3章はそれぞれの断章にて受付等を公開します。

 それではプレイングお待ちしております。
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第1章 冒険 『激闘は憎しみ深く』

POW   :    暴徒たちを傷つけないように無力化する

SPD   :    暴徒たちの攻撃を素早くすり抜ける

WIZ   :    暴徒たちを説得して落ち着かせる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サエ・キルフィバオム
アドリブ等歓迎

「こういう潜入は得意分野だよっ♪」
【ミラード・クローゼット】でタイリ将校に劣らぬぴっちりスーツを用意し、持ち前の【変装】【恥ずかしさ耐性】で完全に溶け込みます
それどころか市民へ【誘惑】【演技】【挑発】【おびき寄せ】【パフォーマンス】で自らのスーツ姿をアピールします

「タイリ将校はぴっちりスーツが似合う同士を求めてるんでしょ?あたし以上にふさわしい人はいないんじゃないかな~?」
【情報収集】【コミュ力】【聞き耳】【言いくるめ】で将校の情報を集め、周囲の者から親衛隊にふさわしいんじゃないかという信頼を得ることで、先に進もうとします
触れられて影のもやを受けても、必要経費と割り切ります


ルミナール・セピアネス


タイリさんか。なんか話を聞くにボクも共感できるというか楽しくお話できそうな感じがするね。これは無事に助け出さないと、だね

操られてる市民を傷つけたくないし極力交戦しないようにスニーキングミッションだ!

ところでボクの恰好だけどぴっちりハイレグフィルムスーツなら仲間だと思ってくれないかな?
こそこそすると怪しまれそうだしむしろ堂々と移動していくよ。声かけられたりしたらぴっちりタイトスーツの良さを語って信用してもらう作戦さ。

「この体にジャストフィットする感覚が素晴らしいよね。君もそう思うだろ?」

ぴっちりスーツの良さを語って上手く市民達へ溶け込めればしめた物【情報収集】も忘れずに、だよ。



●スニーキングミッション

「こういう潜入は得意分野だよっ♪」
「ボクは元々フィルムスーツ愛用してるからね」

 市街地の中を、黒色のぴっちりスーツに身を包んだ二人の女性が歩いていた。1人はサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)。ユーベルコード【ミラード・クローゼット】を使い、見事な手先脚先まで包んだぴっちりスーツを着こなし潜入員としての精神で恥ずかしさなど微塵も出さない堂々な振る舞い。
 もう1人はルミナール・セピアネス(クレイジートリガー・f13615)。彼女はサエに比べれば肩や腿など露出部分こそあるがそれ以外は黒で包んだフィルムスーツであり、これはサエのように潜入用に用意したわけではなく、元々の愛用の私物である。つまり彼女は――

「タイリさんか。なんか話を聞くにボクも共感できるというか楽しくお話できそうな感じがするね。これは無事に助け出さないと、だね」

 彼女もまた、タイリの話に共感し助け出そうと思う、ぴっちりスーツ好きの1人であったのだ。故に、彼女も又堂々と恥ずかしさの無い堂々とした振る舞いである。

 尤も普通なら際立つそれも、この町ではそうではない。辺りには老若男女問わず、皆が黒いタイトスーツを着て町を練り歩き、友達と談笑し、食事を共にし、日常を謳歌しているのだ。服装以外は完全に日常である光景。それが却って異常さを際立たせてもいた。

「流石にボクも、町中がこの状態ってのはなぁ……」
「フィルムスーツは着こなしてるのに?」
「いや、やっぱりなんというか、こうやって人々が皆こうやって日常的に着てるってのはそれはそれでなんか違う感じ?」
「確かにね? こうしてみると皆受け入れているように見えるけど、これも無理矢理の支配によるものなんだろうし」

 一見では皆がそれを受け入れているようにも思える。だが、その彼らの顔がどこか虚ろで空虚に見えるのもまた事実ではあった。

「あら?貴方達、見ない顔ね?」
「本当だね。でも素晴らしいスーツの着こなしだ。さてはかなり着こなした人たちかな?」

 ふとある店の前を通りかかった時、二人に声を掛けた者達がいた。歳若い男女であり、二人とも黒いタイトスーツを着ている。

「あれ、わかる?」
「私達、近くでタイリ将校の革命を聞きつけてぇ。タイリ将校はぴっちりスーツが似合う同士を求めてるんでしょ?あたし以上にふさわしい人はいないんじゃないかな~?」

 それに対し、サエが一気に男性の方に近寄り、その身体に身を密着させる。二人ともぴっちりとしたスーツを着ているだけに、お互いの体温はとても伝わりやすく、そしてスーツはサエのボディの魅力を余すことなく伝え、彼女が男性に向ける蠱惑の視線を更に効果的にしていた。

「そ、そうだねえ。確かに俺達から見ても、アンタたちの着こなしは凄いと思うよ?」
「確かにねー。私達はほら、この通りこういう仕事だからさ」

 そう言って店を指差す女性。それを追うと、そこには服飾店の看板を掲げた店のショーウィンドウがあった。尤も、その中にあるのは全てボディラインを隠さない黒色のぴっちりスーツばかり。多少のデザインラインはあれど、全てが均一同じものであった。

「あれ、ボクみたいなのは無いんだ、残念」
「ゴメンね? タイリ様は手足まで全て包んだのしか認めなくって……色も黒で全部統一しているのよね……」
「? 黒はボクはオッケーだけど……お姉さん、残念そう?」

 女性の少しした顔色に気付いたのか、ルミナールが突っ込むと彼女は「しまった」という顔で目を背けた。
 それを見ると、サエは男性の方に更に身をすり寄らせる。

「ねぇー? 私はオッケーですよねぇ? 私、実はタイリ様とお近づきになりたくてぇ、是非全部知りたいんですぅ?」
「い、いやぁ……話してあげたいが、大きな声じゃ、なぁ……」

 サエの誘惑に男はドギマギし、顔を赤らめている。もう少し攻めれば何かを引き出せそうではある。

 だが、そこでルミナールがはっとする。サエが接触している男性のスーツから、黒いモヤがサエのスーツに進んできていたのだ。

(まさか、意識してなくてもアレって進むの!? まずい、これ以上くっついたら……)

 ルミナールが2人を引き離そうとする。が、それをサエは目配せをして押しとどめた。彼女もこのリスクには気づいてはいた。だが、潜入員としては情報を引き出せるなら多少の必要経費は祓わなければいけないという事を彼女は理解をしていた。躊躇をし中途半端をすれば、それは取り返しのつかない結果に還る事がある。それが彼女の経験則であった。

(大丈夫。本当にやばくなったら離れるから)
「ねぇ、お願いしますぅ。なんなら、あの子用に良い服お買い上げしますからぁ」

 サエが猫撫で声で男性にすり寄る。影には気づかないふりをし、金銭という明確なメリットを相手側に示す。幾らスーツに洗脳されていようと、金銭すら必要としないというレベルではない筈と踏んでの事だった。ルミナールもそれを読取り、後押しに動くことにした。

「うんうん、ボクも欲しいな!だから店内で、そのついでに、ね?」
「……それなら、仕方ない、かな?」
「そ、そうね。店内で案内ついでなら、ね?」

 男女は顔を合わせると、他人に聞かれないであろうという点も考えた末、静かな『取引』に応じる事にした。そして4人は店内へと入っていく。



「うんうん、手足まで密着のタイプも悪くないね。この体にジャストフィットする感覚が素晴らしいよね。君もそう思うだろ?」
「ええ、ええ。全く。私もそう思うわ。貴方みたいな子が、早めにタイリ様と会えてたら少しは違ったのかしらね……」
「? どういうこと?」

 店内で実際に商品スーツの試着をしながら何気なく話を切り出したルミナールに、女性がふと呟いた言葉に彼女は引っ掛かりを感じ、突っ込んでみる事にした。それに対し女性は少し考えるが、気を許した様子で口を開いた。

「実はこの店では以前は密かにこういうのを仕入れて、深夜時間にタイリ様に販売してたのよ。タイリ様の趣味用のをね」
「あ、やっぱり趣味ではあったんだ」
「ええ。表向きは仕事着として、という建前ではあったけどね。全部が建前って訳ではなかったらしいけど……何せ他に趣味を話せる相手も、そうできそうな相手もいなかったらしいしね。私はその頃はあくまで商品としてしか扱ってなかったし」

 聞くに、タイリはやはり趣味としてもぴっちりスーツを嗜好としていたらしい。ただ、その嗜好を暴露できる相手は少数であり、そしてその中に自分のような嗜好として共有できる相手は存在していなかったらしい。

(その辺りもこの大規模洗脳に関係してるのかな……なら、スーツに共感できる人ならそこでタイリ将校の心を揺さぶれるかも……?)

 この先を見据えた事を思考しつつ、ルミナールは引き続き店内のスーツを見てみるのだった。


 一方、男性店員とサエの方はというと。

「以前はもう少しデザインに幅があった?」
「ああ。タイリ様にはこうなる前から秘密裏に取引があったんだが、その頃はタイリ様も黒だけでなく、赤とか青とかいろんな色のを変われていたし、デザインもこうではなくもう少しパイロットスーツとしての体裁ある装飾があったのも着ていたし、さっきの彼女みたいなノースリーブタイプも着られていたんだ。それが、俺達がこうなってからはこのデザイン1つでな……」

 色気と誘惑を前面に出したサエ相手に男性店員はぺらぺらと表では口に出せない事を言っていく。恐らくそれがサエの手練手管により引き出されているものだとは彼は気が付いてはいないだろう。

「俺達だってこれが素晴らしい物だとは思っている。ただ……なまじ、他のデザインも嬉しそうに買っていったタイリ様の姿を覚えているだけに、なんというか、違和感というか、寂しい感じが、な……」
(成程……そこがオブリビオンマシンの影響でおかしくなった差異って事か。これは声かけには使えそうかも)

 洗脳された市民たちはその洗脳をタイリ自身が施したと思っているのだろう。普通の市民ならばそれで完結し、タイリに違和感を覚える事は無い。だが、以前の彼女をよく知っている者ならば、彼女の変化に違和感を覚える事までは止める事が出来ないのだろう。

「く、くれぐれもタイリ様や配下の人たちの前ではオフレコで頼むぜ。批判していたと受け取られたら大変な事になっちまう」
「ふふ、おっけおっけ♪ その代り、商品はちゃんと買わせて貰うから♪」

 紙幣をひらひらさせながらサエが言うと、男性は安堵したように胸をなでおろす。そこにサエは更に顔を近づける。

「ところで、タイリ様と取引が以前からあったって事は、今も多少なりとも繋がりはあるって事でいいのかしら?」
「あ、ああ。常時のスーツとはまた違う、生地としてのスーツを味わいたいという人達もタイリ様の部下にはいてな。タイリ様からここを教えて貰ったらしくて、今も連絡は取れる」
「ふうん……なら……」

 サエは侵蝕してくる影へのリスクを恐れずに、更に体を密着させて顔を覗き込んだ。



「私達、是非タイリ様の親衛隊になりたいんだけど……その人たちとの接触の場、取り持ってくれない?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

美波・蜜香
チェルノさん(f06863)と一緒

…だったのですがはぐれてしまって町のみんなに囲まれてさっそくピンチです!
皆さん、落ち着いて!気を確かに持って!
操られているだけの人たちに手荒なこともできなくてそのまま押さえつけられて、
そして影のようなもやもやがあたしの体に…

んっ…キモチイイ…
身体に張り付いて締め付けてくるスーツの感触も、
みんなにあたしのカラダを視られるのも…

ぴっちりこそ至高ぉ…
ぴっちりに栄光あれぇ…

※アドリブOK・NGなし


在原・チェルノ
蜜香ちゃん(f20221)とペアで行動してたけどいつの間にかはぐれちゃったみたいなので彼女を探して町を捜索
【変装】で市民の人たちとお揃いのぴっちりスーツ姿になって(元から似たようなカッコだし)目立たないようにしながらタイリさんについての情報と一緒に蜜香ちゃんの特徴を伝えて彼女の居場所を探す

見つけたら彼女に気づかれないよう近づいて背後から【暗殺】でフォースセイバーの【早業】でスーツを切り裂いて洗脳を解く
さぁ、市民のみんなに見つからないうちに早く脱出しましょ?

※NGなし・アドリブOKです



●蜜香危うし! 恐怖のぴっちりスーツ洗脳!

「あれー?どこいっちゃったんだろ?」

 町の中の別の場所にて、先の2人のように黒いぴっちりスーツに身を包み町に潜入した在原・チェルノ(流星忍姫チェルノ・f06863)は辺りを見回しながら歩いていた。情報収集、にしては様子が変だ。というのも……

「蜜香ちゃん何処いっちゃったんだろ?」

 チェルノはもう1人の猟兵仲間、美波・蜜香(ブルーメンリッター・f20221)と共に町に潜入したのだが、軽く手分けして聞き込みをして情報収集した時に、戻っても蜜香の姿が無かった為、今こうして探しているのだった。

「本当はタイリ将校について調べなきゃだけど……すいませーん!」
「あら、堂々とした着こなしが素敵な方、何か?」

 チェルノが話しかけたタイトスーツの女性は快く応えてくれた。チェルノも普段からこの手のを着こなしているタイプなので、少なくとも見かけで恥ずかしさは出ないくらいにはぴっちりスーツを着こなす事が出来、市民らに馴染んでいるのだ。

「顔がかくかくしかじか、服装がまるまるうまうま、そしてお胸がばいーんとしている子見ませんでしたか?」
「ああ、その子なら、ジュリィたちと一緒にアッチの方へ向かったわね」

 チェルノの正確な情報伝達(?)で女性が指差したのは路地裏に繋がる細い道だった。その先と言われ、チェルノに嫌な予感が過った。そして何より女性の顔が気まずそうだったからだ。

「知り合いなら、急いだ方がいいかもしれないわ。あの子達は元々町でも有名な不良集団で、市民一斉洗脳の時も結構手荒な手段を使っていたから、既に洗脳済の子でも何をするかわからないわ」
「!? まずい!」

 チェルノは礼を軽く済ませ、路地裏へと走り出した。なにせ蜜香は洗脳済どころかされていないのだ。もしそれがバレてしまったら……!



「へっ、でっけえ胸してるからって偉そうにしやがって!」
「そんな奴は更に深くスーツ漬けにしてやんねえとなあ!」

 情報を提供すると言われて路地裏に誘い込まれ、不意を突かれて捕縛された蜜香は路地裏の一角で不良娘スーツ集団(こころなしか総じて胸のサイズは控えめ)に取り囲まれてしまっていた。

(どうしよう。強行突破はできなくもないけど、どうしても手荒になっちゃう。この子たちは操られているだけだし、それに大騒ぎになってチェルノちゃんや他の人たちの潜入に差し障ったりしたら悪いし……)

 蜜香1人なら無理矢理少女らを倒すことはできたが、彼女は静かに倒す手段が思いつかず、他の猟兵が情報を集めているという事も枷になり、されるがままになってしまっていたのだ。

「皆さん、落ち着いて!気を確かに持って!」
「へっ、あたしらは正気だよ!タイリ様だってスーツの重ねがけは推奨してるしな!」
「昔は決して無理強いはしてはいけない、自分のスーツはあくまで自分で着るだけだって言ってたけど、今はすっかりそれも捨てられたみたいだしな!」
(やっぱりタイリ将校はオブリビオンマシンの影響を受けるまでは決して無理強いはしなかったんだ……って、情報は得られたけどそれどころじゃ……!)

 蜜香の説得も空しく、ジュリィたちのスーツに包まれた手が蜜香の潜入用スーツに触れ、遠慮なしにべたべたと触れていく。その度に影のようなものが伸びていき蜜香の全身をスーツの上から更にオブリビオンの力に満ちたものが包んでいく。

「んっ……あぁ……だめ、たえられ、ない……き、キモチイイ……」
「はっ、そうだろそうだろ!皆結局はそうなるんだ……あれ?なんかコイツ洗脳されてたにしちゃなんか初心じゃね?」
「きっと元のスーツの効果が弱かったんだろ?それそれ、感覚もどんどん変わってくだろ!」

 スーツが包んでもジュリィ達の手は止まらない。洗脳を更に強固に、そしてその快楽に支配されていく蜜香の姿が面白いという嗜虐心によるものだ。

「身体に張り付いて締め付けてくるスーツの感触も、スーツ越しのみんなに触られる感触も、みんなにあたしのカラダを視られるのも……全部、いいのぉ♪」

 快感の嵐は蜜香の頭からすっかり猟兵としての潜入任務も全てを追い出し、あっという間にスーツによる支配で埋め尽くして行ってしまう。首から下はすっかり洗脳ぴっちりスーツに包まれ、ここにまた新たなタイリによる支配兵が生まれようとしていた。

「ぴっちりこそ至高ぉ……ぴっちりに栄光あれぇ……タイリ様に私の全てをぉ……♪」
「ギャハハハハ!やっぱこの瞬間がたまんねえな!そらもっとやってやら!」
「……いや、たまんねえけど、やっぱおかしくね? これどう見ても初めて洗脳した……うっ!」

 怪しんだ仲間が突然倒れ込み、気付いた仲間が続けて倒れ伏すが、ジュリィは蜜香への洗脳に夢中でまるで気づいていない。

「もっとぉ、もっとぉ♪」
「いひひ!いいぜもっとだ!もっとやって……」
「いや、流石にその辺りにしてもらうよ」
「は?」

 聞きなれない声にジュリィが振り向くと、そこにはピンク髪の見慣れないスーツ姿の女、そして倒れ伏している仲間達の姿があった。

「は、はぁ!? お前、一体な……うっ!」
「集団ならまだしも、何かに夢中で1人ずつなら、首から上が無防備だしなんとかなるんだよね」

 身構えようとした瞬間には、女――チェルノーーによる暗殺じみた早業の一撃がジュリィの首元へと入り、その意識を瞬時に刈り取っていた。流石に1対1では、強化されていようとも猟兵相手ではどうしようもなかったのだ。
 そしてそれは、快楽に夢中である蜜香も同様である。

「あれ? どうしたの? 早く、もっと触って――はう!?」

 流石に猟兵である蜜香まで戦闘体勢に入っては手間取る為、チェルノは瞬時に背後に回り、フォースセイバーで瞬時に蜜香のスーツを遠慮なく斬り裂いた。万一ダメージが貫通しても、一般人よりは耐性が効くであろうという目論見の元であった。
 果たして、光の一閃は蜜香の洗脳スーツだけを破壊し、潜入用のスーツだけ残す事に成功した。蜜香が倒れ込むが怪我が無いのを見て、チェルノは続けて倒れ伏す少女たちに向き直る。

「万一の為に、そっちのも壊させて貰うね。尤もそのままじゃ再洗脳されるだけだし、洗脳されていたとはいえ仲間を捕まったのもちょっとあたしも怒ってるし……」

 チェルノは蜜香の捕縛用に使ったであろう、余ったロープを拾うとそれをぴしんと手で張った。

「縛ってしばらくその辺に隠させて貰うね」



「う、ううん……あたし、あれ?」
「大丈夫? 意識ちゃんとしてる?」
「う、うん、大丈夫……意識が危なかったのも、覚えてる……ごめんね?」

 意識を取り戻した蜜香は、記憶を失ったわけではなくほとんど覚えていた。その上でチェルノに謝った。だが怪我の功名の事もあった。

「成程、やっぱりタイリ将校が無理矢理着せるとか自分のスーツ着用を他人に押し着せるって事は無かったのは確かなんだ」
「うん。それに、着せられて分かったけどやっぱりアレはとても暴力的な洗脳だよ。素質があれば、とかそういうのじゃあない。多分タイリさんも影響を受けてるんじゃないかなって思う」
「なるほどね。前情報通りとも言えるけど、それが確実な事だっていうのは声かけでは役立つね。大変ではあったけど、無駄じゃあなかったね」
「よ、よかった」
「でも次からは気をつけてよね!次も同じようにいくかわかんないし!」
「う、うん……大丈夫大丈夫」

 と言いつつ顔を赤らめている蜜香にチェルノはやや不安を感じつつも、蜜香を連れて再び町へ繰り出した。ジュリィたちはスーツを破壊し、縛って隠してあるのでそうそう見つかりはしないだろう。

 とはいえ一抹の不安は、蜜香にだけあるものではなかった。なぜなら、チェルノもまたあの洗脳の様子を見て、すぐに飛び出すことはできず、つい魅入ってしまったからだ。洗脳される蜜香の姿を、つい見届けてしまった自分自身に、若干の不安が彼女の心の中にはまだ残っていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
(SPD)
ボクがまだ小さい頃から憧れていた宇宙を股にかける宇宙海賊は、コミックスの中で宇宙ビキニに身を包んでポーズをキメていた
さすがに恥ずかしいのでボクは宇宙スク水にしたけど、それでも羞恥心を克服するのにしばらくかかった
でも、今のボクならぴっちりタイトスーツで町を歩いても大丈夫
だからそのまま堂々と町を歩いて突破する
後は一人でいる市民をウィーリィくんと二人で物陰に連れ込んで服を脱がせてタイリさんに関する情報収集

あ、ウィーリィくんが恥ずかしそうにしてたら【鼓舞】する
大丈夫、みんないつものボクより露出少ないでしょ?
ウィーリィくんだっておいしそ…立派なカラダしてるんだから自信を持って、ね?


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
(SPD)
びっくりするほどディストピア!?
とはいえ、市民相手に荒事は避けたいのでシャーリーと二人でぴっちりスーツ姿で市民をやりすごす。
色々と恥ずかしいけど(シャーリーやみんなの眺めや自分自身のカッコ)【勇気】と【気合い】と【覚悟】で乗り切る。

で、可能なら市民の一人をシャーリーに手伝ってもらって人気のない場所に連れ込んで【シーブズ・ギャンビット】の【早業】で包丁片手に【料理】の腕前で身体を傷つけずにぴっちりスーツだけを切り裂いて洗脳から解放してやる。
「大丈夫。俺達が将校さんもみんなも元に戻してやるからな」
そして将校についての情報を聞き出す。



●神速一閃

(びっくりするほどディストピア!? しかも見た目には皆普通に日常を過ごしているみたいなのが更にそれっぽさあるな……何しろ衣服だけは異常な状態なんだから……)

 一見おかしいところのない街の様子、だが確かに何かがおかしいその光景にウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は表には出さないように驚愕していた。誰も彼もが同じスーツを着て何事も無いかのように歩き、売買をし、談笑をするその様子に背筋が寒くなる。

「なんとかしないといけないよなシャーリー……シャーリー?」
「ボクがまだ小さい頃から憧れていた宇宙を股にかける宇宙海賊は、コミックスの中で宇宙ビキニに身を包んでポーズをキメていた――」
「え、回想!?回想モノローグに入ってるのかいつの間にか!?」

 隣に佇んでいる共に潜入しているシャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)はいつの間にやら遠い目で空を見詰めている。これはいわゆるアニメや漫画でほわんほわんしながら入る回想状態だ。

「さすがに恥ずかしいのでボクは宇宙スク水にしたけど、それでも羞恥心を克服するのにしばらくかかった。でも、今のボクならぴっちりタイトスーツで町を歩いても大丈夫。だから堂々と歩ける訳さウィーリィくん!」
「そう繋がるのか……いや、お前はいいかもしれないけどさ……」

 当然こうして町中にいる訳だから、二人とも黒いぴっちりタイトスーツに身を包んでいる。シャーリーは回想の通りに堂々と着こなしているが、流石に普段着ではないウイーリィは若干恥ずかしいのか周りを気にしている。流石に少年には、女性たちのスーツ姿、そしてその中を自分が同じ服で歩いているというのは中々に堪える状況だった。

「大丈夫、みんないつものボクより露出少ないでしょ?」
「確かにそうだけど、そういう励まし方でいいのか……?」
「ウィーリィくんだっておいしそ…立派なカラダしてるんだから自信を持って、ね?」
「あ、ああ、恥ずかしがるような鍛え方はしてないつも……なあ、今なんか何か言いかけなかったか?」
「あ、すいませーんそこの人ー!」
「おいシャーリー!?誤魔化してないよな!?」

 心なしかウイーリィの追求を誤魔化すようなタイミングで見かけた人にシャーリーは声を掛けた。

「あら、何かしら?」

 声を掛けたのはなんと、婦警の帽子を被った女性だ。最も帽子だけで、それ以外は完全にぴっちりタイトスーツで上着やスカートすら無いのだから婦警とは何なのかという状態である。

「あっちで倒れてる子がいて!もしかしたら未洗脳者にやられたのかも!」
「なんですって!おのれ未洗脳者!……そこの君も見たの?」
「あ、ああ!あっちで見たぜ!」

 なんとか自分の恥ずかしさに懸命な恥ずかしさ耐性(未所持)を付けてウィーリイは努めて堂々としながら人気のない道を指差した。

「そこまで堂々とした着こなしな貴方たちなら信用できそうね!案内して!」
「はい!」

 洗脳されていても元々の職務に忠実な精神は変わっていないのか、応援を呼ぶことも忘れて急いで2人についていく婦警。そして表通りから死角になる場所に入った瞬間。

(今だ!【シーブズ・ギャンビット】!)

 ウィーリィが即座に抜き放った包丁で府警に気付かれる間もなくその刃を一閃。過たずスーツだけを正確に斬り裂き、その存在を消滅させた。

「あっ!? う、うーん……」

 元の婦警らしい服装に戻った女性が倒れ込むのをシャーリーが抱えて、地に堕ちるのを防いだ。そしてそのまま近場の廃墟を見つけるとその中へと女性を連れ込むのだった。



「な、成程……事情はよくはわからないけど、助けてもらったみたいねありがとう」

 意識を取り戻した府警に簡単に事情を説明した2人は、タイリ将校の人柄について質問をしてみる事にした。オブリビオンマシンによって想いを歪められているであろうタイリと相対するならば、特にその前の人柄や行動は参考になる筈と思ったからだ。

「そうね……タイリさんは自警のパトロールも自主的にされていたわね。私達としては喜ばしい事ではないけど、でも人々を護ろうとする姿勢は軍人としての職務以上にお持ちだったみたい」
「なるほどなるほど」

 やはり決して悪い人では無さそうだ、と二人は顔を見合わせた。

「ただそういった姿勢も含めて功績をやっかむ人たちもいたみたいで、それでパイロットスーツを変えるようにって圧力がかかっていたらしいわね」
「やっぱりそれも本当だったのか……」

 その圧力もまた彼女を追い詰めるものになったのかもしれない、と二人は考えた。

「それじゃ、ありがとうねお姉さん」
「しばらくはここで隠れていた方が良いな。その内なんとかするつもりだけど、どのくらいかかるかはわからないし。それにもし万一騒ぎが起こったら、巻き込まれるかもしれないしな」
「まー潜入するつもりの人が多かったと思うから、多分大丈夫……」

 その時、外からくぐもったような爆音、そして人々がざわめく声が聞こえてきた。

「……大丈夫がなんだって?」
「……あれー?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
いや、ぴっちりスーツって。
確かにロボアニメとかでたまに見るけどさぁ。
まあ、いいや。何はともあれクーデターは止めねえとな。

まずは、市街を突破しねえとな。
ぴっちりスーツを着てれば襲われねえのか。
なあ、相棒。
「嫌です。」
いや、まだ何も・・・。
「絶対に嫌です。」
そうは言ってもだな・・・。
「あんな恥ずかしい格好で町を歩ける訳ないでしょッ!」
相棒の意思は固いようだ。
しょうがねえ、普通に突破するか。

千刃桜花を展開して進むぜ。
こいつは刻む対象を選べるからな。範囲に入ってきた対象を容赦なく斬り刻むぜ。
対象はズバリ『ぴっちりスーツ』。
市民が正気を取り戻したらついでに情報収集だぜ。

【技能・情報収集】
【アドリブ歓迎】



●こんなぴっちりスーツなんて着られるか!私は神社に帰らせて貰う!

 それは時を遡り、転移前の事。皆が着て行った黒ぴっちりスーツの1着。それを目の前にして、まるで何かに止められるように身体が動かない猟兵が1人いた。

「なあ、相棒」
(嫌です)
「いや、まだ何も」
(これの前に立っただけでわかります。絶対に嫌です)
「そうは言ってもだな……穏便に済ませるならこれが一番……」
(あんな恥ずかしい格好で町を歩ける訳ないでしょッ!)

 それは神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)であった。鬼面と巫女である桜のコンビである存在なのだが、凶津が「ロボアニメとかでパイロットスーツとしてよく着てるし別にいいか」と着ようとしたのに対し、肉体である桜がとんでもない静止力を持ってその動きを断固拒否しているのだった。ここまで動きを止められるのは今まででも滅多になかったかもしれない、と凶津は思った。

「いやでも露出はねえし」
(裸も同然です嫌です)
「ほらパイロットスーツだと思えば、こんなのよくあるもので」
(私はそんなの知りません嫌です)
「この前の戦争だってパジャマやらバニーやら着たんだし、これくらい」
(嫌です)
「……はぁ、わかったわかった。別に必須って訳じゃなかったしな、うん」

 桜の決意が固いことを読み取った凶津はスーツを諦め、転移を促すことにした。相棒の関係である桜の意志を無視してまでやろうとは流石に思わなかった。

「よっし、そんじゃあ、正々堂々と強行突破といくかぁ!!」



 そして今に至る。

「巫女服だと!?ぴっちり要素0の服め、許すまじ!」
「貴様はぴっちり刑法に違反している!逮捕しスーツをくれてやる!」
「巫女をぴっちりスーツに……はぁはぁ」

 今までスーツで潜入していた猟兵らへの対応が嘘かのように、凶津めがけて怒りと狂気の表情で次々にとびかかってくるスーツ市民たち。身体強化もされているので、その動きは猟兵でも手こずるであろう。しかも触れれば侵蝕できるだから市民はなりふり構わず突撃してしまえばいいだけだ。だが凶津もそれを当然読んではいた。

「そぉら!!」

 構えていた薙刀を一閃し、とびかかっていた市民のスーツだけを的確に破壊する。意識を失った市民が倒れ、その隙に凶津は町の出口向けて進んでいく。市民たちはあくまで市民であり、軍隊のように統率されているわけではない。各個が勝手に襲い掛かってくるだけならば、こうしてやりようはあった。更に言えば、彼らと凶津自身が相性がいいのもあった。

「くらえ未洗脳巫女……あれ?鈴の音?あれ?うーん……」

 とびかかろうとした市民の一部が、凶津が鳴らした神楽鈴の音を聞いてその場に倒れた。そしてその身体からスーツが消え元の衣服へと戻る。

「へへ、魔を祓う清浄な鈴の音、思った通り、人間に憑りついたオブリビオンの力とは相性抜群だぜ!」

 桜は巫女であり、邪や魔を祓い清める事は得手である。今回のような人々を支配し思考を歪める存在は、まさにうってつけの相手だったのだ。

「このまま一気に……げっ」

 プラントへと続く出口へとたどり着きそうだった凶津の目の前に、嫌なものが見えた。それは時間をかけたことにより、凶津の行先を読まれた為に布陣された市民や警察らが自分達自身で作った出口のバリケード、人の波だった。

「こうして固まってしまえば、簡単には突破できまい!」
「こちらは一人でも触れればそれでいいのだからな!!」
「ちっ、上等だ、強行突破だーーー!!」

 手を全員かざしながら立ちふさがるスーツ市民たちに向け、凶津は焦りを顔に浮かべながらも突っ込んでいった。だが無謀である。鈴の音や薙刀で相手をしても敵が多すぎるため、どうしても完全な接触を断つことはできそうにない。それでも凶津が人々の壁の目前まで迫った瞬間――

「なぁんてな。【千刃桜花】!そのスーツだけを、細切れにしてやるぜ!!」

 薙刀が一瞬で無数の桜の花びらに姿を変えると、周囲へと風も無いのに一気に舞い散った。そしてその花びらはスーツに接触すると、それをあっさりと斬り裂き、そのスーツを霧散させていく。市民たちは意識を失い、次々と倒れていく。

「なんだとぉ!?」
「コイツの射程は今の所半径87mでな。余裕だとは思ったが、伏兵がいても困るしな。一番有効なとこまで近づいてから使わせて貰ったぜ!」

 桜の花びらが周囲のスーツ市民を次々に斬り裂き、スーツだけを消滅させて無力化させていく。圧倒的な範囲の前には、市民たちのバリケードなど数分後には完全に消え去ってしまっていた。

「ふぅ、これでなんとか突破可能だな……うん?」
「タイリさん……やめてください……」
「貴方はそんな、無理やりするような人、じゃ……」
「助けて……やめて……」

 倒れ伏す市民たちが、意識を失いながらもそう悪夢を見るかのようにぶつぶつと口にしていたのに凶津は気が付いた。市民らは決して受け入れた訳では無かった。日常のように見えたのは、やはり無理矢理の洗脳による強制的な偽りの日常だった。そして、タイリは決してそれをする人物でもない、というのは人々の認識でもあったようだ。

「……悪いな相棒。やめたとはいえ、同じような事させるとこだったかもしれねえ」
(ううん、違うよ。同じじゃない。でも、助けなくちゃね)
「ああ。この先にいる部下も、そしてタイリって人もな」

 凶津は苦しむ人々へ向けて、安らぎの鈴を鳴らすと、集まってきた潜入猟兵らと共に町の出口へと歩みを進めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『オブシディアンMk4』

POW   :    ホークナパーム
【油脂焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【高温の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ピアシングショット
【スコープ照準】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【RSキャバリアライフル】で攻撃する。
WIZ   :    マイクロミサイルポッド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【誘導ミサイル】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※都合により断章投稿が7日(水)となります。もう少々お待ちください
●黒き機体と黒き乗り手

「ふふふ、何人たりとも近づけさせはしない。タイリ様にも、プラントにも」

 プラントへと続く市街地。そのエリアは市民たちが全員退去させられており、いるのはタイリの部下たちが乗るオブシディアンの隊のみであった。
 彼女らはプラント周辺の警備を任されており、それで長い間ここにずっと警備を勤めていた。普通ならば根負けするであろうほどの時間だが。

「あぁ、このスーツに包まれて拘束される感覚……それだけでいくらでもすごすことができるわぁ♪」

 全身を包むスーツの感触に恍惚とし、笑みを浮かべる彼女らからは、タイリに強制的に着させられるまではスーツを拒絶していたなどとはとても想像はできないだろう。それほどまでに人間を歪めてしまうのがオブリビオンの、そしてそれを助長するタイリの歪んだ想念であった。

「とはいえ、暇であるのは確かね……またあの業者に生地のスーツでも頼もうかしら。いっそ敵が出てきてくれればいいのだけど」

 彼女らはスーツに身を包み微笑みながら、画面越しの町並みを見つめ続けていた。さすがに彼女らも歴戦の兵士。感じ取っているのかもしれない。これからやってくる、明確な敵の気配を。

※機体さえ破壊すればパイロットは正気を取り戻し救出することが可能です。パイロットが死んでいなければ、タイリや彼女の機体の情報を得られるものとします。

※1章にて、彼女らと繋がっているスーツ販売店と接触できたため、店を通じて部下たちにコンタクトを取る事ができます。スーツの店として違和感ない内容ならばプレイング記載の内容で接触が可能です。この方法をとる場合は纏めて描写するため、冒頭に「店」と記載ください。方法が食い違う場合は別々で描写します。兵は全員いったん合流しているので、接触していない猟兵もこの方法に参加可能です。

※黒タイトスーツを着ていった場合は、一目で看破はされませんが身元の照会が行われるため、騙したままタイリの元まで辿り着くことはできません。部下たちへ接近するまでは可能です。

※1章での町での騒乱は連絡前に気絶できた為、部下たちには伝わっていません

※キャバリアを自前かレンタル希望の方は、グリモアベース経由での転移で移動させたとしてここから騎乗することが可能です。機体や武装はプレイング記載があればそれとし、記載がない場合は猟兵の装備アイテムと似通った武装ということでこちらで決定させていただきます。

※プレイング受付は10月8日(木)9時から開始し、9日(金)から執筆を開始します。
ルミナール・セピアネス


よしよしボクの【バレットストーム】も無事転移されてるようだね。ここからは愛用のキャバリアに騎乗しつつ進むことにするよ。

ドンパチするにしても巻き込んだら大変だし。スーツ販売店として潜り込んでる組の様子を見つつ部隊へと接近するよ。
オープンチャンネルで通信をしつつ、ね。

「大変です、町で未洗脳者達による攻撃があったとか。これは偉大なるタイリ様とぴっちりスーツへの冒涜かと!」

映像通信でぴっちりパイロットスーツ姿を見せて油断させ接近。正体がバレるまでのスピード勝負!

【対キャバリア用動作妨害弾】で敵の動きを妨害してパイロットの無事を確保しつつ戦うよ!
ミサイルには【デコイグレネード】で対策さ。


神代・凶津
「・・・転身ッ!」
先手必勝、初っぱなから雷神霊装で強襲だぜッ!

おっと、決して無策で突撃する訳じゃないぜ。
この世界は猟兵が現れて日が浅くキャバリアにはキャバリアが常識。
それなのに生身で下手なキャバリアより速いヤツが強襲かけてきたら、我が目を疑い気が動転する筈だぜ。
いくら訓練された兵士だろうと目の前で自分の常識外の事が起きたら混乱は免れまい。
しかも堂々と巫女服。
他のぴっちりスーツ着た猟兵達を構っている暇は無くなる、筈。

敵キャバリアの攻撃を見切って避けながら戦場を駆け巡りつつ、腕や脚の関節部分に雷撃を纏った妖刀の斬撃を放ってぶっ壊してやるぜッ!


【技能・先制攻撃、恐怖を与える、見切り】
【アドリブ歓迎】



●部隊A戦(表)

「よしよしボクの【バレットストーム】も無事転移されてるようだね」
「へぇ、コイツがアンタのキャバリアか。まさに火器浪漫って感じだな」

 市民たちのいる地帯から離れた後の町の一角、そこに現れた鈍色の重量級重火器キャバリア。それこそがルミナール・セピアネス(クレイジートリガー・f13615)の自前のキャバリアであった。その威容に、たまたま近くに居合わせた神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は素直に感嘆した。

「わかる!?やっぱり重火力、そして火薬式が一番よね!」
「生憎銃火器は持ち歩いてねえけど、浪漫はわからなくもないぜ。で、それで突っ込むのか?」
「いや、折角ぴっちりスーツが自前であるし……」

 ルミナールが自分の作戦を凶津に伝える。すると、凶津はにやっと笑った(ような気配がした)。

「ならその作戦、俺のとすり合わせられるかもしれねえな」



(よし、『あっち』の準備もオッケー。じゃあ、同時に仕掛けようか!)

 ルミナールは通信である人物と連絡を取り、開始合図を取ると通信を一旦切った。そして、機体を動かし進んでいく。その先に構えているのは、タイリ配下の部隊の1つだった。当然ながら、武装してきたキャバリアに配下たちは銃を構える。それに対し、ルミナールはオープンチャンネル状態で通信を行う。

「大変です、町で未洗脳者達による攻撃があったとか。これは偉大なるタイリ様とぴっちりスーツへの冒涜かと!」
「何!?おのれ、反乱分子か!今すぐ……」
「待て! 貴様、見慣れないキャバリアだな。怪しい……コクピット画面で通信しろ!」

 ルミナールの誤情報をリーダー格と思しき女性が信じ込まずに怪しんだ。そして本当に市民らの誰かかどうかを確認しようとコクピットを表示しろと要求した。何しろ市民らは皆黒タイトスーツを着ている。つまりそれで一応の判別は可能だからだ。ルミナールはその要求に対し、躊躇う事無くコクピット画面の表示をONにした。

「この通り!私は市民らにぴっちりスーツの魅力を教えられた、一介のキャバリア乗りであります!」
「むぅ、確かに堂々たる恥じらいなき立派な振舞い!」
「ふむ……ならば一応は信じよう。だが、そこで暫し待て。貴様の顔を今からデータと照合する。名前も含めれば、フリーだとしてもどこかでヒットするだろう。さあ、名前も言え」
「ルミナール・セピアネスであります!」
「よし、今から照会を行う。少し待っていろ」

 そう言い、一人が銃をまだ向けつつもある程度の距離のまま、リーダー格の方がデータベースとの照会を行う。ルミナールは素直に本名を言った。別に偽名でもいいがどうでもよかったからだ。何故なら……欲しかったのは、この照会の隙だ。リーダー格がデータベース画面を見ている間、こちらへの警戒は手薄になる。更に言えば、ルミナールが普段からフィルムスーツを愛用していたこともあっての堂々とした着こなしで、こちらに銃を向けている機体の方は完全に市民だと思っていてその警戒は形式的なおざなりなもの。よって、動くには最適のタイミングだった。ルミナールは別通信で連絡を取り、同時に今まで閉じていたバレットストームの拳をゆっくりと開いていく。

『今だよ!』
『オッケー、斬り込ませて貰うぜ!! 転身!』

 拳が開いた瞬間、そこから雷の閃光が迸り、辺りを光に包む。

「えっ!?」
「何!?」

 照会していたリーダー格が流石に気付くが時すでに遅し。拳に包まれていた者――凶津は、【雷神霊装(スパークフォーム)】はその身に雷を纏い、巫女服の一部を紫に変えながらバレットストームを足場に一気に銃を向けていた機体向けて跳んだ。警戒がおざなりだった部下は対応しきれはせず、同時に突き出された薙刀の突きをそのボディに受けて派手に吹っ飛んでいく。

「きゃあああああっ!?」
「電磁砲!? いや、違う!? おのれ、やはりきさ…」

 リーダー格がバレットストーム向けてライフルを向けるが、その時にはすでにバレットストームのガトリングキャノン「ライオネル」が向けられていた。

「うん、ゴメンね?でも未洗脳者による攻撃は本当だよ。尤も、今からここでも始まるんだけどさ!!」
「くうっ!!」

 放たれるガトリング弾にリーダー格の機体が回避運動を取る。なんとかかわすが、先手は許してしまう結果となる。だが彼女に焦りは無い。なぜなら、戦闘音があれば周囲から応援が駆け付ける。それまで凌げばいいだけの話だったからだ。



 一方、凶津の方は位置が近かったのか、早くも戦闘音を聞きつけた部隊が駆けつけてきていた。先手でフッ飛ばした機体も、一撃では倒しきれなかったのかなんとか立ち上がっている。

「なんだコイツは!?」
「ええい、たかが人間だ! タイリ様に与えられた機体と力なら、恐れるまでもない!!」
「よくも、騙してくれたなあああ!!」

 激昂した者も含めた、複数のオブシディアンがライフルを構え、凶津に狙いをつけて必殺の一撃を放とうとする。だが、それは容易い問題ではなく。

「へっ、そうはいくかね!!」

 凶津は雷の力での高速移動で宙を駆ける。そのスピードは百戦錬磨の彼女らですら容易に狙いをつけられない程。そして更に彼女らを困惑させる要素もあった。

「ま、的が小さくて……!!」
「く、出鱈目だ!キャバリアでもないのに、しかもただの巫女にしか見えないのに、あんなスピードが……なっ!?」

 捉えられずにいて、更には混乱しているうちに、オブシディアンの1体の腕が雷の閃光と共に分断され、宙へと吹き飛んだ。そして返す内にその脚もまた分断され、バランスを崩して地に倒れる。

「勝手が違うよな? そりゃそうだ。なんせアンタらがやってきたのはキャバリア同士の戦いだ。キャバリア並に動ける人間を想定した訓練なんて、まずやっていやしないもんな!!」

 クロムキャバリアは5M規格のキャバリア同士での戦争世界。人間大の相手など、精々砦や基地備え付けの砲塔等くらいの想定。相手がキャバリア並に動く相手、というのは想定の外であり不慣れな挙動になってしまうのは当然とも言えた。

「お、のれ!!」

 部下がなんとかライフルの照準を合わせようとするが、凶津の雷速を捉えられはせず、外した弾がビルを1つ破壊するのみ。そしてカウンターで別のビルを蹴り、一気に肉薄した凶津が構えた妖刀に雷撃を充填する。

「そら、コクピットは外して、戦闘不能にまで持っていってやる!!」

 雷刀の一閃が、間接を狙ってのオブシディアンの手足やミサイル兵装すらも粉砕し、コクピットを残した胴体のみを残してそれ以外を一瞬で吹き飛ばしていった。



 一方、バレットストームの攻撃の回避に徹していたリーダー格の元についに増援が現れた。銃撃を浴びせかけられたバレットストームも攻撃中止を余儀なくされ、一旦距離を取る。

「よし、よく来てくれた……ん?お前達だけか?」
「敵襲ということは伝わっている筈よ。その内来るわ!」

 だが予想に反し、その数は少なかった。配置的にもう少し駆けつけてもいい筈。それは凶津の方の部隊の分を含めても、明らかに数が足りなかった。その様子にルミナールはほくそ笑んだ。どうやら、『アッチ』も上手くやってくれたようだ、と。

「まあいい!数が集まれば、こちらのものだ!」

 オブシディアン数機が陣形を取ると、肩のミサイルポッドを一斉に開いた。そこに込められた大量のミサイル。それは全てバレットストームを照準に捉えた、誘導ミサイル。回避は絶望的な弾幕攻撃だ。
 それに対し、バレットストームは回避を試みるでもなく、銃口の1つを天に向けた。

「はっ、苦し紛れの信号弾か!? 無駄な事だ! タイリ様とぴっちりへの愚かな反逆者め! 散るがいい!!」

 オブシディアンのマイクロミサイルポッドから大量のミサイルが発射される。それは幾何学な軌道を描きつつも、確実にバレットストームを追いかける追跡弾頭。そして同時にバレットストームもまた天へと何かを発射した。それは何の変哲もないグレネード弾。信号弾にもならないようなその一撃。

 だが、その一撃こそが全てを引っ繰り返す。

「な!?」

 バレットストームへと向かっていた筈の大量のミサイル。それが一斉に向きを変え、空へと飛んだグレネード向けて跳んでいく。やがてミサイルは収束し1か所に集まり、一斉に空で大爆発を起こした。

「まさか、デコイ!?」
「正解、デコイグレネードだよ!そして、今がチャンス!」

 集合陣形を取っていたオブシディアンらへと、バレットストームのガトリングが発射される。流石に今度は回避がしきれず、何発か全ての機体へと命中する。だが、堅牢を誇るオブシディアンにはその程度は問題にならず、破壊には至っていないようだ。

「ふははは!この機体を舐めるなよ!その程度の豆鉄砲が通じるか!さあ、今度こ……」
「いや、もう君達に次なんてないよ!」
「な、に!?」

 ルミナールの通信に疑問を浮かべた瞬間、破壊されていない筈のオブシディアンの機体ががくがくと奇妙な動作を起こし、やがて次々と膝を付いたりそのまま倒れたりしていく。

「操縦不能状態!? き、貴様、まさかさっきの弾は!」
「またまた正解! さっきのはボクのユーベルコード、【対キャバリア用動作妨害弾】さ! それで火器にキャバリアの動作を妨害する効果を与えて、さっきの隙に命中重視で撃たせて貰った訳。これなら、防御なんて関係ないからね!」
「ぐ、おの、れええ!!」

 リーダー格が怒りと意地で操縦不能寸前の機体を動かしライフルを向けようとする。だが、牛歩の如き遅さでは、バレットストームの火力兵装が向けられる方が当然早い。

「大丈夫。下手に動けないなら、確実にコクピット以外を粉砕してあげるからさ!!」

 バレットストームのガトリング、ミサイル、グレネードが一斉に放たれる。それは過たず、リーダー機のコクピット以外の部分に全弾被弾。全てを粉砕し、その身体を大地へと沈めたのだった。



 しばらく後、二人はそれぞれの方法で敵機を撃破し、機体からパイロットたちを救出した。救出した瞬間、彼女らのスーツは消え去り、元の軍服姿が現れ、やがて意識を取り戻した。

「そういう事だったか……すまない、本来ならば私達があの方を止めるべきなのに」
「いいのいいの。それで、何か情報は無いかな?」
「そうだな……タイリ様の機体は、どうやらジャイアントキャバリアらしい」
「ジャイアントキャバリア……確か、巨人に装甲とかコクピットを後付けしたって奴か」
「ああ。そして兵装の1つに、機体周囲を覆う電磁バリアがある。あのバリアにこちらの攻撃が当たると、その防御した攻撃をそのままバリアの何処からでも反射されてしまうようだ。私達は皆それにやられた」
「バリアか。厄介だね、それ……」
「だが、倒れる直前、なんとか見る事が出来たんだが、どうやらテスト途中だったからか、バリアにはごく小さな穴があるらしい。ただし場所は機体の頭部のクリスタルのような部分の範囲だけだ。真正面からやらないといけない以上、タイリ様の腕の前では単純に狙えば回避されてしまうだろうな」
「成程。正面にだけあるバリアの穴、か」
「うん、それでも有難い情報だよ!ありがとう!」
「これくらいしかできないが……どうか、タイリ様を頼む」

 リーダー格ら隊員たちが頭を下げるのに対し、ルミナールと凶津は深く頷いた。


 そして心中でルミナールは呟く。

(さて、『アッチ』の方もいい情報は得られたかな?)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サエ・キルフィバオム
☆「店」

「あのー、すいませーん。親衛隊志望なんですけどぉ」
前回の通り、店を通して親衛隊希望である事を伝えた上で接触、【誘惑】【演技】【コミュ力】【恥ずかしさ耐性】【パフォーマンス】等を駆使し入隊します
前回同様、浸食は覚悟の上です

「スーツを着こなす事が、キャバリア操縦に必要なんですよね~?」
自らの汚染も逆手に取り、【チープ・チャーム・チェイン】によって「ぴっちりスーツを着こなせばキャバリアを操れる」と【言いくるめ】て言質を得、兵士と兵士たちを操るオブリビオンマシンを縛り付けます

「じゃあ、この機体は私のもの♪」
首尾よく自分用機体を確保したのち、【情報収集】で他の猟兵の為に周囲の人や状況を確認します



●部隊A戦(裏)

 先の戦場が始まる少し前、やや離れた部隊配置場所にて。

「む?生体反応あり……止まれ!!」
「あのー、すいませーん。親衛隊志望なんですけどぉ」

 オブシディアン達が配置を固めている市街地の中を、黒いタイトスーツに身を包んだ少女が現れ、そのメインカメラにその身を堂々と晒す。

「何? ……ああ、そういえばスーツ業者から連絡が入っていたな。親衛隊志望の奴が来ると。容姿は……一致するな。名前を名乗れ」
「はい、サエ・キルフィバオムです」

 此方も素直に名前を名乗る、サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)。照会はその情報時点では行われておらず、やるとしたらここである。

「よし待て。今から照会を……」
「その前にぃ、業者さんから新生地スーツをお持ちしたので、それの後でもいいのではぁ?」

 サエは抱えていたバッグからタイトスーツを取り出し、それを見せる。デザインはほぼ同じ。だが、やや差異があり見覚えの無い装飾があったり、生地も今までにないもののようにも思えた。

「む……だが、それは照会の後だ。まずは……」
「ええぇ? でもでもぉ、皆さんってタイリ様の配下として、ぴっちりスーツを着こなしてキャバリアを自在に操ることができる精鋭部隊ですよねぇ? タイリ様も、ぴっちりスーツを着こなして戦果を上げた素晴らしいお方ですしぃ? もしかして、キャバリア操縦の邪魔になるから、余計なスーツは着たくない、とかですかぁ?」

 サエの上目遣いの視線がカメラ越しにパイロットへと突き刺さる。その眼は、彼女らへの失望の色を明確に伝えていた。それはタイリの配下としてぴっちりスーツを着こなしキャバリアを操るという彼女らのプライドを刺激する物だった。

「ぐ、ぬ、そんな事は……!」
「皆さんは、ぴっちりスーツを着こなす事でキャバリアを操る、タイリ様のお考えに賛同されてるんですよねぇ?」
「そ、その通りだとも!ぴっちりスーツこそが最上のパイロットスーツ!白目で見られてきたタイリ様のそのお考えに、我々は従う者だ!」
「なら、『この新作スーツを着こなしてこそ、キャバリアを操ることができる』。そういうことですよね?」
「それはまあ、確かに……」

 まんまと言いくるめられたパイロットの返答に、内心でサエはにやりとほくそ笑んだ。これを待っていた、と。

「ならお願いしますぅ。それとも、新作スーツなんて着られないっておっしゃるんですかぁ?そんなこと、スーツを愛するタイリ様のお耳に入ったらどうなってしまうか……」
「わ、わかった!ただし万一の事態の為にすぐに乗れるよう、キャバリアのすぐ近くでだ!」
「わかりましたぁ」

 程なくして、キャバリアそれぞれが座し、その近くにてパイロットたちはサエの取り出した新作スーツを着用し始めた。既存のスーツの上に着るので着替えに行く必要もない。黒いタイトスーツを更に着てもパイロットたちは恥ずかしさも見せずにいる。

「ほう、今までよりも大分きつ目だな」
「そうね、このベルトのような装飾もやけに……」
「ええ。それはもうだって……皆さんを拘束する為の物ですから」

 にやっと笑顔になったサエが指を弾くと、途端、スーツについていたベルトのような装飾――に見せかけた、サエの自前ロープがその拘束を一気に強め、スーツの上からパイロットたちを縛り付ける。突然の縛りに倒れるパイロットたち。サエは新作スーツに予めロープを仕込んでおき、それを今拘束状態に変えたのだ。

「き、貴様、何を!!」
「ごめんね?親衛隊になりたいってのは嘘なの。タイトスーツなら少しきつめの細工をしてもバレにくいしね。それじゃ、今のうちに機体はいただくわね」

 サエが地に倒れ伏すパイロットたちをしり目に、機体へと進んでいく。オブリビオンマシンといえど、パイロットが中にいなければただの置物同様である。だがパイロットたちもその加護を受けている体。無理にスーツを引きちぎることもできなくはない。

「させるか!こんなもの、すぐに壊し……ガハ!!」

 新作スーツを壊そうと手を駆けたパイロットが、突然内部にダメージを受けて転がった。その様子に他のパイロットたちが驚愕するのを見て、サエが振り向いた。

「さっき、『この新作スーツを着こなしてこそ、キャバリアを操ることができる』って言った時、既に私のユーベルコード【チープ・チャーム・チェイン】を発動してたわ。上目遣いからの視線なら、カメラ越しでも通用して助かったわね。アレを貴方達も承諾した以上、貴方たちはあの時私が宣言したルールに従うしかないの。歯向かったら即刻ダメージが入って、動くどころじゃあないからね?新作スーツを着こなしてないと、キャバリアに乗ろうとすることもさせないわ。尤も、簡単に着こなせる拘束にはしてないんだけどね?」

 仕込みは既にさっき終わっていたのだ。キャバリアに乗るには新作スーツを着たままでなければいけない。だが、新作スーツは身体強化込みでも動けないレベルの拘束になるようにしてあるので、これはもはや詰み。

「く、くそおおおおおおお!!!」

 スーツとロープに縛られ、何もできずに地に倒れるパイロットたちの悔しさの籠った声が周囲に響いていった。

「さあて、じゃあ機体は頂くとするわね。私のスーツには町で受けた浸食が及んでる。だから、機体からの支配もいくらかは耐えて操縦が可能なはず」

 サエがコクピットに乗り込めば、果たして機体はそれに応えて稼働開始のシークエンスを始めた。ただし、その引き換えにサエには黒い影の浸食がコクピットから更に加えられていく。だがサエは物おじしない。それでも猟兵であるならまだ耐えられる筈。タイリを倒すまで持てばいい、と。

「ん?援軍要請……アッチも上手くやっているみたいね。手筈通り、無視無視、と」

 別の猟兵が動いた事による別部隊からの援軍要請を無視し、サエは機体内のデータを調べ始めた。潜入員としてのスキルもあり、目当てのデータはすぐに発見できた。

「あったね。この機体も元は配下の機体。なら、タイリの機体との交戦データが残ってるはずってのはビンゴだった。……うーん、でも破損してて、機体の外見があんまりわからないな。でも、浮遊してる?それだけはわかるか……おや」

 機体に残っていた、タイリとの交戦データを見ていたサエはあるデータに気付いた。それは、背後に回ったこの機体が攻撃しようとした瞬間、背中から顔のような物が出てきて、その口からレーザーが発射されこの機体を吹き飛ばした光景だった。

「背後からの攻撃も死角はなし、か……でも逆にとれば、背後に回れば必ずこの顔による迎撃がされるって事か。そして攻撃手段は口からのレーザー……これは良い情報、かもね」

 データを念の為抜き出す作業をしながら、サエはオブシディアンを駆り、猟兵との合流ポイントへと向かった。連絡を取り味方識別信号の打ち合わせをしながら、彼女は無傷で奪った、だが長期の操縦は危険でもあるオブリビオンマシンを手に町を進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
なるほど、歴戦の兵士だけあって操縦技術はボクたちより上だよね
でもチームワークなら負けてないよ!
行くよ、ウィーリィくん!

ウィーリィくんとキャバリアに搭乗してオブシディアン隊を制圧
相手の狙撃を【フェイント】で躱しながら飛んできたミサイルをウィーリィくんと手分けして【乱れ撃ち】で迎撃、
同時に【リミッター解除】で機体の駆動系のリミッターを外して【操縦】で暴れ馬状態の機体を駆ってウィーリィくんと一緒に敵に突っ込み、【零距離射撃】や【武器落とし】で周りの機体を片付けながら【ロープワーク】で単分子ワイヤーを張り巡らせて敵をまとめて捕縛して【クイックドロウ】+【乱れ撃ち】で機体を一気に破壊する!


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
シャーリーと一緒にレンタルしたキャバリアでオブシディアン隊を無力化させる。
洗脳されているとはいえ相手はプロの兵士。
キャバリアの扱いについては向こうの方が上だ。
だから仲間達が行動を起こすタイミングに合わせて仕掛ける事にする。

よくわかんないけど敵の機体は銃火器でバリバリドカーンってやる感じなんだよな? シャーリー。
だったら懐に飛び込むまで!
【厨火三昧】で誘導ミサイルを迎撃し、【物を隠す】でその爆炎に紛れて【ダッシュ】で一気に間合いを詰め、
【武器落とし】で敵機体の兵装を破壊ながらキャバリアのナイフで【早業】の【部位破壊】で機体の動力部を破壊し次々と機体を停止させていく。



●部隊B戦(表)

 先の戦場からは離れた地点。そこに転移してきたレンタルキャバリアに乗る2人の猟兵がいた。

「どうだ?」
「しっかり防備を固めてるねー。流石に洗脳されてても一部隊って感じだね」

 キャバリアのカメラアイと自身のセンサーアイパッチを同期させ、気付かれない場所から敵部隊の様子を確認しているのはシャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)。隣に機体と共に潜んでいるのはウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)。2人で来てはいるが、それでも彼女らは油断をせずにいた。歴戦の猟兵とはいえ、キャバリアの扱いについては相手の方が上手。故に思わぬところで足を取られる可能性もある、と勢いに任せた突撃は避けていた。万全の結果の為に、確実にできる事をする。

「操縦の勝手はどうだ?」
「いけそうかなー。元々操縦自体は得意な方だし、後はキャバリアの慣れの問題かな。遠距離戦仕様のを選んだし、カスタムで武装も追加してもらったし。ウィーリィくんこそ、いつもの包丁や鉄鍋じゃないけど大丈夫?」
「確かに勝手は全く違うけど、刃物装備のを選んだし多分いけるだろ」

 シャーリーはスターライダーでもあり、宇宙バイクの操縦を得手としている。勝手こそ違うが、騎乗し操る者ならば慣れる速度はウィーリィよりは速い。

「『アッチ』の様子は?」
「準備はできたってさ。後はあっちで動いてくれた時だ」

 ウィーリィからどこかと連絡を取っている旨の通信を受け取り、じっと動かぬように潜むシャーリー。二人は待つ。好機の訪れを。


 果たして、数分後。程なく離れた方で突然の爆発音が上がった。それは、先の戦場とはまた違う、別の部隊がいる筈の場所。そしてその轟音は近場にいる部隊にとっては大きな異変の知らせである。

「なんだ!?」
「アチラは確か……」

 オブシディアンの部隊が徐に爆発の方向にカメラごと頭部を向ける。それこそが2人の待っていた隙。

「今だ!行くよ!」
「ああ、行くぜ!」

 2人は息を合わせて同時に機体を動かす。そして敵部隊へ向けて一気に突っ込んでいった。

「何!?」
「敵襲、敵襲!!!」

 部隊もその接近に気付くが、それは対応するにはあまりに遅く、もはやそこはシャーリーの間合い!

「喰らえ!」

 シャーリーの機体は遠距離がメインのミサイルや熱線レーザー仕様の機体。装備した武装から弾やレーザーが発射され、対応が遅れた機体を容赦なく破壊し吹き飛ばしていく。だがその全てはコクピットは見事に避け、手足や武装だけを粉々にして戦闘不能状態にしていく。だが敵も歴戦のパイロット。その嵐をなんとか避ける者も出てくる。

「おのれ、よくも――」
「させるか、よ!!」

 反撃としてシャーリーの機体を撃とうとしたオブシディアンを、鋭いナイフの一閃が斬り裂き、動力部分を断絶し機体の動きを止めた。ウィーリイの機体はナイフが主武装の軽量機体。シャーリーの攻撃による煙や光に紛れて突っ込んできて、打ち漏らしの機体を破壊にかかっていたのだ。どちらかが動きを間違えれば、フレンドリーファイアしてもおかしくない際どい連携。だが息を合わせた2人は、例え鋼鉄の機体越しであってもそれを可能としていたのだ。

「落ち着け!ミサイル陣形に入れ!2機とも纏めて消し飛ばしてくれる!」

 部隊の中のリーダー格が混乱する者たちを落ち着かせ、オブシディアンたちが陣形を整える。破壊した機体を地に倒したウィーリィがそれに気づき身構えた。

「来るぞ!こっちはこっちで切り抜けるから、集中してくれ!」
「わかった!信じてるよ!」

 ウィーリィがナイフ一本を構え、そしてシャーリーが推進器で突き進む。それはまさに敵にとっては火に入る夏の虫のような挙動。

「やけになったか!誘導ミサイルの飽和だ、消し飛ぶがいい!!」

 配置についたオブシディアンたちの肩のミサイルポッドが開くと、そこからミサイルが2人向けて読めない軌道で飛んでいく。だが全ては誘導ミサイル。どんな軌道を描いても2人向けてそれは収束してくる。それは回避の難しい絶望的な情報。だが、逆を取れば。

「ミサイルは最後には俺達の近くまで迫ってくるって事だ!【厨火三昧(プライマル・ファイア)】!!」

 ウィーリィの構えたナイフから次々に炎が発射されると、それは2人の周囲を囲むように滞空する。その数は実に90個。形成された炎の壁にミサイルが接近する。当然そうなれば、起こるのは高熱によるミサイルの大量誘爆。

「なにぃ!?」

 次々に起こる連鎖爆発がオブシディアンの視界を覆い尽くす。爆発はしたが、明らかにそれは2機とは距離の離れた場所でのもの。とてもではないが致命的な損傷は与えられていない筈。

(落ち着け。このような状況はタイリ様の下でいくらでもあった。冷静に、敵の気配を悟る事に集中しろ!)

 部隊員たちが戸惑う中、リーダー格だけは冷静に思考を切り替え、ライフルを構えて周囲を探索した。必ず2機はこちらをここで狙ってくる筈。それさえ先に感知が出来れば。

「! 見つけたぞ、重武装機!!」

 果たして、歴戦たる彼女の勘は煙から現れたシャーリイの機体の姿を捉えた。瞬時にライフルを向け、スコープに捕えた敵向けてピアシングショットが発射される。それは通常ならば回避不能であったろう渾身の一射であった。だが、シャーリーはそれもまた可能性として踏んでいた。キャバリアとしての操縦の差がある以上は。ならば、それを覆す為には、『覚悟』を持っての挙動しかない。

「一か八かだ! リミッター解除!!」

 シャーリーは即座に機体のリミッターを解除する。それは操縦性を重視する為のパイロットの為のリミッター。キャバリアに不慣れな状況でそれを解除するのは正に自殺行為に等しい。だが彼女は信じる。キャバリアではなくても、宇宙バイクで鳴らした自分の操縦テクニックを。

「くっ、うあああああああああああ!!」

 シャーリーは無理矢理に機体を動かし、ブースターを点火。直撃地点を見極め、そこから機体の部分を強引に跳ね上げ、必殺の一撃を回避する。その無理のある動きに機体が軋み悲鳴を上げる。だがシャーリーはそれに耳を貸さず、そのまま地を蹴り機体を動かす。

「な、にぃ!?」

 必殺の一撃をあまりに強引な操縦で回避された事に驚愕するリーダー格。機体も自分も後を考えないようなその戦い方は統率された軍隊である彼女らには思い浮かびもしない無茶な選択。それに動揺する間にもシャーリーは攻撃を開始する。

「高分子ワイヤー、いっけえ!!」

 カスタムで取り付けた武装、高分子ワイヤーを発射し、周辺機体を巧みにからめとると、それを一気に引き寄せていく。機体が抵抗できる間もなく、その機体に彼女の機体のレーザー砲が密着した。レーザーが放たれ、コクピットではなく武装のほとんどを吹き飛ばし、更に連射されたレーザーが手足を粉砕していく。

「バカな、あの機体の冷却機関ではあんな連射が出来る筈は!!」

 レーザー砲には冷却の時間が必要であり、連射すれば砲身が解けてしまう性質がある。だが、物理法則を無視するのがユーベルコード。シャーリーは【クイックドロウ】を発動し、熱線砲(ブラスター)扱いしたキャバリアのレーザー砲の連射を可能にしたのだ。これこそが猟兵がキャバリアを使い発動するユーベルコードの変化技、そして可能性の広さ。

「纏めて、吹っ飛べ!!」

 連射されたレーザーが次々に周囲の機体の武装や手足を貫き、無力化させていく。乱れ打ちにもかかわらずコクピットを見事に避けているのはシャーリーの技能の賜物であった。

「くそ、今度こそ!!」

 レーザーをなんとか避けたリーダー格が再びライフルをシャーリーに構える。今度こそ避けるなどできない筈。そうリーダー格は確信し引き金を引こうとする。

 そして轟音が響き、ライフルが放たれた。ただし、それは何もありもしない空の彼方へ。なぜなら、ライフルごと機体の腕が断ち切られたために狙いが大きくずれたからだ。

「あ、な……!?」
「させねえよ。シャーリーの背中は、俺が守る」

 それは爆煙に紛れて接近していたウィーリィのナイフによるもの。ナイフにはミサイル迎撃から残った炎が纏わりつき、それは灼熱化した刃、ヒートナイフと言える状態になっていた。溶断性を持った刃は鋼鉄の機体をも容易く両断できる。

「おの、れ……!」

 リーダー格は咄嗟に近接武器でウイーリィを攻撃しようとした。が、それよりもヒートナイフが早業で動き、オブシディアンの動力部を貫くのが早かった。引火させないよう、刺す直前で炎を解除する事で瞬時に元のナイフに戻す事も忘れない。オブシディアンの動きががくんと止まる。

「一丁あがり、だ」



「すまない。本当に助かった」

 機体を全て破壊し、パイロットを皆救出した2人はスーツも消え去ったタイリ配下の者たちに話を聞いていた。

「タイリ様、そしてそのマシンは強敵だ。お前達ならば抵抗はできるかもしれないが……」
「何か、不安な要素でもあるの?」
「ああ。実は私達が戦った時、最後に洗脳されたのは大多数でな。一部は既に、戦闘中から洗脳を仕掛けられていたんだ」
「え、皆倒されてから洗脳されたんじゃなかったのか?」
「違う。タイリ様の機体の飛行スピードが突然上昇し捕捉できなくなったかと思えば、突然周りの者が苦しみだし、やがてタイリ様のぴっちりスーツ構想に同意して襲い掛かってきたんだ。一部はそうやって同士討ちの形で倒された」
「もしかしてキャバリアからの洗脳電波とか、かな?」
「スピードが上がるのがその予兆か……でも防ぎようがないよな」
「仕掛けられたからこその感想だが、あれはぴっちりスーツからの支配と同種だと思われる。スーツを絶対に否定する意志や、侵蝕への対策、後は電子戦対策をしておけば効果を薄めることはできるかもしれん。私も今のタイリ様はおかしいという考えを倒されるまでは持っていたからこそ暫くは抵抗ができたのだと思う」

 その意志があっても最後にはああして染め上げられてしまう。オブリビオンマシンの支配の力、戦闘ですら働くその強さに2人は危機感を強めるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

在原・チェルノ
【店】
蜜香ちゃん(f20221)、ちゃんとついてきてるわよね?
そんな訳でスーツ販売店の店員に【変装】して蜜香ちゃんがタイリさんの部下の気を引いている隙に【暗殺】+【早業】でスーツを切り裂いて無力化
バレたら【念動力】で待機状態のキャバリアを転倒させてその隙に蜜香ちゃんを連れて退散
メカアクションはみんなにお任せ!

※NGなし・アドリブOKです


美波・蜜香
「店」
今度はちゃんとチェルノさん(f06863)と一緒です
スーツ販売店の配送員に二人で変装して生地を持ち寄りながら油断させて兵隊さんと接触してみるね
でも持っていくのは「今までと同じ」色とりどりのスーツ
「え?今まではこういうのも着てたんですよね?これなんかお似合いですよー?」
と何も知らないフリをして注意を引く事で囮役を務め、その隙にチェルノさんに兵隊さんの洗脳を解いてもらうって作戦!
まぁ、うまくいくとは限らないし全員は無理だろうけど、それでも陽動にはなればいいかな?かな?

※アドリブOK・NGなし



●部隊B戦(裏)

 時は遡り――

「蜜香ちゃん、今度はちゃんとついてきてるわよね?」
「流石に何度もはぐれないよぅー」

 町を抜け出した在原・チェルノ(流星忍姫チェルノ・f06863)と美波・蜜香(ブルーメンリッター・f20221)は鞄を持って町中を進んでいた。先の経緯から、またもはぐれないことをチェルノに釘を刺されつつも目標部隊を確認し、そして堂々と前に出る。

『む、生体反応……止まれ!!』
「わ、私達、敵じゃありませーん!」
「新作スーツをお届けに来ました!」
『ああ、連絡があった奴らか。よし、鞄を置いて、手を上げろ』

 2人はスーツ店と接触した猟兵と合流した際に、自分達もそこに加わらせて貰えないかと提案。その結果、2部隊からの注文があった事が分かったため、それぞれへの配達を請け負ったのだった。
 パイロットらの声で2人は一旦鞄を置くと、手を開き上げる。黒タイトスーツ姿の場合、ポケットも何もないので基本何か武器を隠し持つことはできない。ある意味持ち物検査がしやすい服装でもあった。武装を持っていない事を確認すると、パイロットはハッチを開けて機体から降りてきた。

「よし、そのままだ」

 特に何も精神的な動揺を仕掛けていないので、パイロットたちの警戒は最低限でも入っている。カバンから少し距離を置かされ、そしてパイロットたちが鞄の中を改め始めた。

「タイリ様のスーツもいいが、やはり生の生地の感触もまた格別だからな」
「こら!滅多な事を言うな」
「し、しかし、これは以前のタイリ様もそうおっしゃっていたではないか。生地の感触あってこそのスーツだと。だが、タイリ様は今やすっかりこの影が形を模したスーツだけを……」
(ふうん。あのスーツ自体も、そもそも以前のタイリの主張とは食い違ってるってわけか)

 タイリが愛していたのは、生の生地によるタイトスーツ。だが今の彼女らのスーツはオブリビオンマシンの力が具現化した偽りのもの。それに対して違和感を覚えるものもやはりいるようだ、と2人は感じた。

「さて、では……ん?お、おい!これはどういうことだ?」
「あれ、どうかしましたー?」

 鞄の中を見たパイロットたちが動揺した声を出したのに対し、蜜香が首をかしげて近寄る。

「このスーツだ!」
「注文通り、手足までぴっちりのスーツですけど?」
「いやいやいや!これ、色が赤じゃん!」
「こっちは青だ!」
「こっちは緑! これじゃ、タイリ様にお叱りを受ける!」

 取り出されたスーツはどれもが、タイリが洗脳後徹底した黒いスーツではなく、色んな色が1つずつ統一されたタイトスーツだったのだ。これは店に以前からあったスーツを見繕ってきたもの。処分が言い渡されていたが、タイリの変化に疑問を覚えていた店員たちが捨てるに捨てられずに隠し持っていたのだ。それを少し拝借してきたもの。

「でも、タイリ様も以前は色とりどりのスーツを好まれていたって店側の人がおっしゃってて、それでたまにはいいのでは、っていう新作なんですけど?」
「何?店側も?……い、いや駄目だ!確かにこれは趣味用だが、それでもタイリ様が見に来た際に見つかっては洒落にならない!」
「でもでも、ほら、この紫色とか悪くないと思いません?」
「た、確かにそれはかつてのタイリ様のパイロットスーツの色だが、しかし……!」

 蜜香にタイリの変化を突き付けられ、動揺したパイロットたちは気付かない。服を詳しく説明する為に、蜜香だけがいつのまにか近づいてきている事を。そして、彼女の体がパイロットたちの視線から背後のチェルノを隠す状態になった事を。たった僅かな隙。だがそれは、流星忍姫チェルノにとっては十分に過ぎる隙となる!

(今だ!)

 チェルノは残像を残すほどのスピードで一気に背中から飛び出し、パイロットたちの横へと移動。そして手のひらから電撃が迸り、発射された【サイキックブラスト】がパイロットたちを襲った。

「がっ!」
「ぐえっ!」
「何!?」

 大量の放電は半分ほどの意識を奪う事に成功した。だが、それでも全員とはいかずに何人かがなんとか回避して電撃をかいくぐる。

「貴様ら、襲撃者か!!」
「おのれ、急いで機体に戻れ!」

 残ったパイロットたちが急いで機体に戻ろうと走り出す。チェルノは鞄の中のスーツのそこから、スターボウ・スティンガーを取り出すが、流石にパイロットたちが乗り込むのを止めるのは間に合わない。ただし、それは1人だけの場合。

「蜜香ちゃん!」
「うん!貴方達もタイリさんも救う、正義を!【スーパージャスティス】!」

 蜜香の全身を黄金のオーラが包み込むと、蜜香が飛び上がり空へと舞い上がる。そして、すぐに戻るとそのまま今パイロットの1人が乗り込もうとしているキャバリアの1つへと突進した。

「いっけええ!!」

 正義の意志の力に応じてスピードが上昇するその突撃の前には木偶状態のキャバリアでは耐えきる事が出来ず、その体躯が大きく傾ぐ。
 そしてもう1機。その脚の関節に力が働き、徐々にその身体が傾いていく。それはチェルノのフォースによる念動力。1機に集中すれば彼女も又同等の動きが可能になる。

「これが、フォースの力だ! なんてね!」

 そして2人により、2機のキャバリアが倒れていく。その先には、乗り込もうとした本人他、無事だったパイロットたちが密集しており……

「う、うわあああああああああ!?」

 キャバリアが地に倒れる轟音が周囲に成り響き、そしてパイロットたちが周囲に吹き飛ぶ。いくら身体強化されていても、流石にこの衝撃の前には無事ではいられなかった。

「お、おの、れ……!?」

 なんとか立ち上がろうとしたパイロットの身体を光が一閃したかと思うと、スーツが破壊され、意識を失ったパイロットが倒れ込んだ。
 その背後には瞬時に回り込みスティンガーでスーツを斬り裂いたチェルノの姿があった。

「ここまで隙だらけになれば、後はスーツを壊すだけ!」

 チェルノは、蜜香が他のパイロットを抑え込んでいるのを確認すると、次のスーツを破壊する為に駆けだした。

 キャバリアが倒れ込んだ衝撃で倒れ伏すパイロットたちの全てのスーツが破壊されるのに、そう時間はかかりはしなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『電脳巨兵オリバレス』

POW   :    ユミルの落とし子
自身の身体部位ひとつを【プラントで生まれ損なった巨人】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    シンクロゲイザー
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【電脳】から【洗脳電波】を放つ。
WIZ   :    UCフィールド
【電磁バリア】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、電磁バリアから何度でも発動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナギ・ヌドゥーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●待ち受けるボディスーツ主義

「部下たちはやられたか……まあいい。むしろ奴らからノコノコと来てくれるのならば好都合というもの」

 プラントの傍に浮遊する巨大な機影。それは一見女性のように見えるが、その鋼でできた肌や無機質な見た目でそれがキャバリアの1種であることを推測する事が出来るだろう。
 それこそが試験段階であったジャイアントキャバリア、電脳巨兵オリバレス。単純な戦闘力のみならず、防御機構や洗脳機構まで備えたハイスペックマシン。そしてこのマシンこそが、タイリを狂わせたオブリビオンマシン。
 黒いボディスーツに身を包んだ女性、タイリ・タイトラルはコクピットに座し動揺する事無く悠然と構えていた。焦りは見えない。それは凄腕で鳴らした自分の腕に自信があるからか。いや、それ以上に。

「猟兵という奴らだろうな。我が部下を倒せるほどの者達ならば、いいぴっちりスーツ兵となるだろう!楽しみだ、これから来る奴らを我が思想で染め上げる事が。そうだろう、オリバレス!」

 狂気の笑みを讃えたタイリが画面を見ながらほくそ笑む。これから来る者達を倒し、あるいは戦闘中であろうと容赦なくオブリビオンマシンの支配で包み込む様を思い浮かべて。だからこそ彼女は恐れなどしない。それよりもこれから行うことへの喜びが彼女を支配しているのだから。

※場所はプラント近くの市街地ですが、市民はおらず、プラントもバリアで護られているのでプラントを気にして戦闘する事はありません。

※プレイングボーナスは「タイリへの有効な声かけをする」「タイリの機体の情報に沿った対策を取る」のそれぞれとなりますので、片方のみでもボーナス加算されます。

※「タイリへの有効な声かけをする」は、基本は以前のタイリとの差異などを利用するものとしますが、MSが有効と判断した場合はこれ以外の方向でも加算とします。ここまでで得られた情報は以下の通り
 ・タイリは趣味でボディスーツを着ている面があった。その頃その趣味を共有できる者はほぼいなかった。
 ・タイリは色やデザインも多様に受け入れていたが、暴走後は黒で手足まで包んだものしか認めない。
 ・タイリはあくまで自分のスーツ着用を認めて欲しかっただけで他者へ押し付けるつもりはなかったが、暴走後は他人にスーツを強制している。
 ・スーツの洗脳は強力であり、素養のあるなしは関係ない。
 ・タイリは自主的に警備をするなど正義感ある人物だった。
 ・タイリのスーツ着用禁止命令はタイリの功績をやっかんだ上層部によるものという噂。
 ・市民らのスーツ着用は洗脳であり、人々は拒否し苦しんでいる。
 ・タイリが着用していたのは紫色のボディスーツ型パイロットスーツ。
 ・タイリは生地あってのぴっちりスーツを好んでいた。だが暴走後の洗脳スーツは本物の生地ではなく、オブリビオンの支配力の具現化。

・「タイリの機体の情報に沿った対策を取る」は2章で得られた情報を敵の技への対策に取り入れた場合、ボーナス追加とします。情報は以下の通り。
 ・POW「ユミルの落とし子」:オリバレスの死角方向から攻めるとそちらに別の顔が現れ、口内のレーザーで攻撃する。
 ・SPD「シンクロゲイザー」:前段階として必ず飛翔スピードがアップし、「タイリへの忠誠心を刻み込み、猟兵本人の身体を黒い影が包んでいきぴっちりスーツが完成すると洗脳状態になり仲間へ攻撃を開始する」洗脳電波が発射される。スーツを絶対に否定する意志や、侵蝕への対策、電子戦対策、現在のタイリを否定しきる意志があれば抵抗可能。
 ・WIZ「UCフィールド」:電磁バリアを張り、UCを防御して跳ね返すが、オリバレスの頭部に在る水晶体だけはバリアが張られない。ただし真正面の為、単純な攻撃では回避される可能性が高いので注意。

※タイリは支配力が相手に及んでいるかを即座に確認できるため、ボディスーツを着て騙す事はできません。

※直接入手、又は無傷での確保が出来たため、キャバリアとしてオブリビオンマシン「オブシディアンMk4」が使用できます。ただし、オリバレスによる支配力が残っている為、操作しているだけで洗脳支配が行われるため長時間の使用は危険です。

※オリバレスさえ破壊できれば、タイリを救出する事が出来ます。

※暫く執筆時間が取れない為、プレイング受付は10月20日9時以降とし、10月21日から執筆開始いたします。申し訳ありませんがもう少々お待ちください。
・追加情報

※タイリへの機体対策は、有効かに関わらずボーナス対象とし、前情報からの対策でなくても有効であればボーナス加点は別個として致します。
神代・凶津
あのキャバリアを生身で相手は厳しそうだな。
なら対キャバリア用の取って置きの出番だぜッ!
「・・・式、召喚【戦駆け劔武者】」
こいつの肩に乗って戦闘開始だぜッ!

敵の動きを見切りつつ高速で接近しながら式神の太刀でぶった斬ってやるぜ。

洗脳電波は呪詛耐性に加えて相棒のぴっちりスーツ断固拒否の強い意志がありゃ大丈夫だろ。
おらッ!タイリの姉ちゃんも目を覚ましやがれッ!
あんたは嫌がる人間に無理矢理着せるような奴じゃなかったんだろッ!

電磁バリアを張られたら式神を突貫させて敵が式神に気を取られた瞬間に、俺達が式神から飛び降りて妖刀を頭の水晶体に突き立ててやるぜッ!


【技能・式神使い、見切り、呪詛耐性】
【アドリブ歓迎】



●キャバリア対巨大武者

「流石にあのキャバリアを生身で相手は厳しそうだな」
(確かに。大きさは今までのと変わらないけど、威圧感がまるで違う)

 市街地の雑居ビル屋上から、プラント傍に佇むオリバレスの姿を確認した神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)はその様子からこれまでのオブシディアンと同じ対処は通用しないだろうと察していた。機体の性能、そしてパイロットの腕。例え小さい目標に不慣れだとしてもタイリならば捉えてくるだろうと。

「なら対キャバリア用の取って置きの出番だぜッ!・・・式、召喚【戦駆け劔武者】」

 意識を一瞬、式神使いである桜に切り替える。そして彼女が御符を空にかざすと、目の前に巨大な鎧武者が現れる。その大きさは5m。まさにキャバリアの規格と同じ。これこそが巨大な騎士が蔓延る世界に対応する為に生み出した新たな式神【戦駆け劔武者】。その鎧の隙間からは炎が噴き出し、中身は歯車でできた機械仕掛け。その駆動には霊の力が動力となっているが、その霊がどこかの世界の武士たちなのか、はたまた別の存在なのかは今は関係はないだろう。いずれにせよ、刀をまだ抜き放たずに佇む姿は明確にオリバレスの姿を見据えているのは間違いない。

「よっ! 行くぜ、戦駆け劔武者! あっちが鋼の騎士なら、こっちは鋼の武者だ! 初陣を飾れ!!」

 武者の肩に飛び乗った凶津が檄を上げると、武者は刀に手を置いたまま、一気に高速で浮遊し突撃した。霊が元であるならば、当然浮遊能力も持ち合わせている。同じく浮遊が可能なオリバレスに追いつけない事はない。

「東洋鎧のキャバリアだと!? ふっ、面白い!」

 タイリもその姿を認め、装備した武装から迎撃のミサイルを発射する。ミサイルは過たず武者向けて飛来していく。だが凶津は動じる事は無い。

「あんなもんは飛矢みたいなもんだ! お前の敵じゃねえ、そうだろ!」

 その声に応えるように、武者が一瞬体をくぐめる。そしてミサイルが接近した瞬間、光の筋が空に煌いたかと思うと、ミサイルが突然何もない場所で爆発した。

「何!?」

 タイリが驚く間もなく、その爆煙の中を武者が突っ込んでくる。その腰にはまだ抜かれていない太刀。だがその柄には手が添えられている。それを見てタイリにはある知識が過った。

「これは、まさか……いかん!」

 タイリが操縦し、オリバレスが緊急回避行動をとる。その刹那、先程までオリバレスがいた空間を何かが煌いた。そしてその近くに在ったビルが斬り裂かれ、ずり落ちていく。

「チッ、避けられたか。自慢の居合術だってのに!」

 凶津が歯噛みする。これこそ武者の必殺居合。これでさっきのミサイルも迎撃し、そして今オリバレスを狙ったのだ。だが、どうやらタイリには居合の知識もあったらしい。

「どこと戦争にならない世だ。東洋の武術とて聞きかじってはいる! そして、もうこれ以上はさせん!」

 オリバレスの身体が光ったと思うと、包むようにバリアが展開されていく。これこそ完全防御の電磁バリア。これにユーベルコードが命中すれば同じものを返されてしまう。

(分類的には武者は完全ユーベルコード製だ。もし接触したり攻撃がふれたら、同じ武者を出されちまうか、同じ攻撃がこっちに跳ね返って来ちまうか。だが、それでもまだ手はある! こっちは弱点を掴んでいるからな!)

 武者がオリバレスの正面向けて移動しようと高速で動く。既に部下たちから得た情報。電磁バリアには唯一穴があり、それが正面額の水晶部分である事。そこを狙う事が出来れば。だが

「わざわざ真正面に出てくるとはな!」

 真正面とは当然敵の完全視界内。ミサイルが放たれ、更に今度はレーザーも混ざってくる。武者は居合で迎撃、あるいは高速移動で回避する。だが、それは接近が阻まれるということである。かといって下手な遠距離攻撃でもしようものなら、バリアで防がれてそれが跳ね返されてしまう。そして居合も何度もやれば、タイリも慣れてきてしまう。徐々にミサイルも時間差で放たれ、迎撃が難しくなっていく。

(慣れてきやがったな……だが、これが機だ! 『慣れてきた』今こそがな!)

 そして凶津は勝負に出る。間違えれば自分が危うい、だがこの巨大機同士の戦いとなった今こそのチャンスに打って出る。

 やがて武者が再び居合を放ち、ミサイルが爆発する。だが時間差のミサイルが武者の傍を掠めた。

「ふふ、そろそろそれも読めてきたぞ。次で仕留め………!?」

 ほくそ笑んでいたタイリの笑いが止まった。それは真正面を向いたモニター、爆煙に紛れて突っ込んでくる、武者に比べれば小さな姿。それはーー

「巫女女、だと!?」
「へっ、気付いてももう遅いぜ! 中々きつかったが、猟兵ならこのGもなんとか耐えられる!」

 それこそは空を飛んでくる凶津の姿。だが、今はストームフォームも使用していない。ならばどうやってこれほどの速度を出したのか。
 答えは簡単。一瞬のスキを突き、彼は武者の腕へと移動したのだ。そしてそのまま武者が神速居合をミサイルに放てば、斬撃に遅れて凶津の身体が投げ飛ばされるように空へと放たれる。後は結界術でミサイルの爆風を凌ぎ、オリバレスの額向けて跳んでいったのだ。

「アンタはまんまと、俺の鎧武者を相手にしてキャバリア同士の戦闘に思考を切り替えた。当然だよな、ベテランなんだから。だから、猟兵である俺の存在は思考から消えていた! そこをつかせてもらった!!」

 タイリも最初は凶津にも注意を払っていただろう。だが戦況が5m同士の戦いに移り、タイリの意識は慣れ親しんだキャバリア戦のそれに戻ってしまった。その隙を狙っての凶津の突撃だったのだ。

「だが、ここからでも回避は!」

 タイリは咄嗟の回避を試みようとする。それを察知した凶津はすぐさま叫ぶ。

「おらッ!タイリの姉ちゃんも目を覚ましやがれッ!あんたは嫌がる人間に無理矢理着せるような奴じゃなかったんだろッ!」
「っ!?」

 心が落ち着かない内の凶津の訴えに、タイリの動きが止まる。彼女の心への呼び掛けは僅かにオリバレスの回避を遅らせた。そしてその遅れは致命的だった。

「よし!喰らいやがれ!」

 凶津は水晶体前のバリアの穴から、薙刀を突きいれるとオリバレスの頭部水晶体を突き刺した。

「ぐ、おおおおお!」

 水晶から漏電が迸り、やがて小規模な爆発を起こす。凶津は直前にオリバレスを蹴り、距離を取るも爆発に吹き飛ばされる。

「ぐあっ!く、おわっ!」

 受け身を取ろうとした所に思わぬ軽い衝撃。見上げると、そこには鋼武者の顔があり、その大きな手で凶津の体を受け止めてくれていた。

「ふう、サンキュー……と、奴は?」

 前を向くと、そこには水晶体が破壊され、水晶が発動機関だった為かバリアを消しながらふらふらとどこかに飛んでいくオリバレスの姿があった。まだ動けるということは、まだタイリの洗脳もとけきってはいないようだ。だが凶津は落胆などはしていない。なぜなら自分は一人ではないのだから。桜もいる、という話ではなく。

「バリアはなんとかしたからな……後は、任せたぜ……」

 巨大武者の掌の上で、空を見上げながら凶津はそう呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

在原・チェルノ
蜜香ちゃん(f20221)と一緒に盗んだオブシディアンで走り出す
リスクはあるけど、策もある
当然、敵マシンはあたし達を支配しようと洗脳電波を仕掛けてくる
だけどその前に機体の制御を【バトル・インテリジェンス】に委ねてマシンへの攻撃を継続してもらい、あたし自身も【オーラ防御】で洗脳に抵抗する
そしてあたしが支配されていない事はタイリさんにもわかるハズだからすかさずこう言い放つ
「どんなに強制されたってあたしはあたしの着たい服を着る。あなたは自分が受けた理不尽を他人に押し付けるの?」
タイリさんがマシンに抵抗すれば動きは鈍るはず
そこが撃破のチャンス!

※NGなし・アドリブOKです


美波・蜜香
チェルノさん(f06863)と一緒にキャバリアで出撃!
でもあたし免許持ってないけど…って、止まって、止まってぇ!

…と操縦に慣れてないフリをして油断させてチェルノさんの動きにオリバレスが気を取られた隙に【ダッシュ】で背後から急接近!
背後からのレーザー攻撃が来る直前にコクピットから脱出して同時にむんっと【気合い】を入れて【スーパー・ジャスティス】でパワーアップ、猛スピードで突っ込んで【ランスチャージ】でコクピットハッチの継ぎ目にランスを突き刺し【怪力】でこじ開け、タイリさんの好きな紫色のボディスーツに身を包んだ姿で手を差し伸べる
「大丈夫、あなたは自由になっていいんだよ?もう一人じゃないんだよ?」



●黒き機体の連携

「んんっ!これがマシンの支配か……蜜香ちゃん大丈夫? 前科があるだけに……」
「前科って言わないでー!」

 在原・チェルノ(流星忍姫チェルノ・f06863)と美波・蜜香(ブルーメンリッター・f20221)は、パイロットたちを無力化させる事で無傷で奪取したオブシディアンに乗り、降り立ったオリバレス向けて進んでいた。まだオリバレスによる支配能力が残っているオブリビオンマシンは2人にも洗脳効果、そしてあの黒い影による全身抱擁も徐々に行ってきている。だが猟兵ならば短時間であれば耐える事が出来る。2人はオブリビオンマシンだからこそのパワーによる速攻に賭けた。

「でもあたし免許持ってないけど…って、止まって、止まってぇ!」

 如何せん猟兵はまだまだキャバリアは不慣れ。オープンチャンネルスイッチを入れてしまったのか、外にまで響く声と共に蜜香のオブシディアンはあらぬ方向へと進んでいってしまった。

「蜜香ちゃーーーん!? おのれオリバレス、よくも蜜香ちゃんを!」
「まだ何もやってないのだが!?」

 オリバレスの代わりにタイリが理不尽な文句へ応えた。オブシディアンから大量のミサイルが放たれるが、タイリはオリバレスを高機動モードへ切り替えると、そのスピードアップした挙動でミサイルを回避してみせた。

「お望みならばやってやろう!我が配下の機体を使うなど、支配下に置いてくださいと言っているようなものだ!」

 高機動状態のオリバレスから洗脳電波が発射される。どこかへ進んでいってしまった蜜香は射程外に逃れていたが、接近していたチェルノの機体はそうはいかない。

「あがっ!! あ、ああ……タイリ、様……ぴっちりこそ、正義……私はぴっちり忍姫……」

 チェルノに洗脳電波が届き、機体の動きが止まる。彼女の通信から出てくる声にも洗脳効果が表れているのは明白。しかも、わざわざ電波を使わなくても洗脳効果が及ぶオブシディアンに乗っているのならばその効果はさらに強い。洗脳電波の力もそして支配までの時間すらもあっという間だろう。

「ふふ。さあ、私の配下となれ。そしてその身にスーツを纏い……」

 その時、突然チェルノのオブシディアンのライフルが持ち上がると、タイリ向けて正確な射撃を行った。完全に不意を打たれたタイリはらしくもなく直撃を受けてしまう。

「な、に……!? バカな、洗脳は及んでいる筈!」
「たし、かに……抵抗はできてるけど、まともに操縦出来る程じゃない。でもそれなら、あらかじめAIを仕込んでおいて操作させればいい!」

 【バトル・インテリジェンス】。本来はAI搭載戦術型ドローンに自分自身を操作させる事で戦闘力を引き上げるUC。それをキャバリアを媒介にして発動したならば、ドローンをキャバリアに一体化させより正確な動作を、パイロットの状態に依らずに実行させる事が出来る。洗脳電波がパイロットを標的に行われているのだからその効果は覿面。チェルノの状態を意に介さず、AIにより動くオブシディアンは射撃を行いながらオリバレスへ接近していく。

「だが、この機体も本来は電子戦用だ! ならば今度は機体掌握を狙えばいい!」
「させない!!」

 電子戦掌握用の機構を発動しようとしたオリバレスの背後に、別のオブシディアンが接近してきていた。それは先程、不慣れな操縦で離れていたはずの蜜香だった。その動きからはとてもその様子はうかがえず、背後に気付いたタイリはそれで察する。

「先程のは演技か!自然に洗脳電波から逃れる為の! だが!!」

 それでもタイリの余裕は崩れない。オリバレスにはそう言った動きにも対応可能な技がある。オリバレスの背中に巨大な顔が現れるとその口が開き、レーザーが発射される。蜜香のオブシディアンも銃口を向けるが遅く、その機体をレーザーが貫き、エンジン部が爆発。機体が炎に包まれていく。

「フッ、呆気なかったな。さて、次は目の前の……!?」

 次はチェルノのオブシディアンを制圧しようとしたタイリの耳に奇妙な音が聞こえた。それは自身のいるコクピットに響いた歪な鉄音。見れば、閉じたハッチ部分に何かが捻じ込まれている。

「よいっしょ!!」

 掛け声と共にその異物、槍の先端が跳ね上がり、ハッチが無理矢理開かされた。コクピット内が光で満たされると、そこには黄金のオーラで身を包み、槍を掲げた蜜香の姿があった。
 彼女はレーザーが来る情報は得ていたため、直前にオブシディアンのハッチを破壊。【スーパージャスティス】による身体増強と飛翔力増強により、コクピットから脱出。そのまま爆煙に紛れてオリバレスにとりつき、タイリのいるコクピットハッチをこじ開けたのだ。

「おのれ、貴様……なっ、そのスーツは……!?」

 咄嗟にオブリビオンの力で強化された拳銃を向けたタイリだったが、その動きは蜜香の着ているスーツを身て止まってしまった。

「それは、私のかつての……!? い、いいのか、だって……」
「全然平気! 大丈夫、あなたは自由になっていいんだよ?もう一人じゃないんだよ?」

 蜜香は平然とタイリのかつて着ていたパイロットスーツを着て堂々と言い放つ。……そもそも町で露出度が同じスーツを着ていたのだから今更では、とは言ってはいけない。

「私は、自由の筈だ! もう何かに縛られずに、こうして……!」
「どこが自由だよ……! オブリビオンマシンに支配されて、人々には同じスーツだけを強要して! 貴方にスーツを禁じた人たちとまるで同じじゃ、ないか!!」

 その声は蜜香ではなく、蜜香が動きを止めた隙に近づいてきたオブシディアンからのチェルノの声だった。操縦こそAI任せだが、彼女は自身のフォースオーラを使うことでなんとか洗脳を押しとどめていたのだ。チェルノが支配に抗えていることはタイリにも把握できていた。だからこそ、自分のスーツ支配に反抗できていることに驚愕しているのだ。

「あたしもこういうスーツとかの衣装は好き。どんなに強制されたってあたしはあたしの着たい服を着る。あなたは自分が受けた理不尽を他人に押し付けるの?」
「ぐっ、わた、しは……ううっ!」

 タイリが苦しそうに頭を抑える。いけるかとも思ったが、コックピット内にあの黒い影が増えていくのを見て蜜香は苦渋の撤退を選択した。やはり大本のオリバレスを何とかしないといけない。蜜香はもやを避けてチェルノのオブシディアンに飛び付いた。同時にAIもまた撤退を選択したようでオリバレスから距離を取る。だがただでは離れはしない。

「どうせここまでのつもり、だしね……全弾、使って!」

 チェルノの声と共にオブシディアンの全武装が開き、ライフルやミサイルが放たれる。オリバレスがその砲火を受けるのを見やりながら、二人は撤退していった。


 尚その後、果たして中のチェルノは撤退完了までにどこまで洗脳やスーツ侵食に耐えることができていたのか……それは蜜香のみぞ知ることであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
機体も技量も差は歴然。
それでもタイリを救うために、シャーリーと連携し別方向から同時に仕掛ける。
【盾受け】で攻撃を凌ぎながら【ダッシュ】で肉迫、そのまま【シールドバッシュ】で突っ込むように見せかけて【フェイント】でシールドを投棄してそれを囮に死角に潜り込む。
敵UCによる迎撃は【覚悟】の上で【捨て身の一撃】の【カウンター】を【早業】で繰り出しキャバリアのナイフをレーザー発射口に突き刺し、そこから【幻炎鎮魂斬】でマシンのシステムを攻撃し、同時に彼女に呼び掛けて【鼓舞】する。
「街の様子を見てあんたも間違いに気づいてるはずだ。頼む、みんなを助ける為に俺達と一緒にそのマシンと戦ってくれ!」


シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
悔しいけどタイリさんもあのマシンも強敵だよね
けど、ボクたちの絆の力で勝ってみせる!

彼女の機体のスピードがアップしたら【バトル・インテリジェンス】の力を借りてその動きを【見切り】、【リミッター解除】+【空中戦】でドッグファイトを繰り広げ、洗脳電波を【気合い】で抵抗しながら【罠使い】+【ロープワーク】で周囲に張り巡らせたワイヤーでマシンの動きを一時的にでも止めてウィーリィくんが動くチャンスを作り、ボクもそれに乗じて彼女のマシンの【手をつなぐ】ことで中のタイリさんを【慰め】、【鼓舞】して正気に戻す
「あなたは悪くない!あなたも、あなたの趣味も!マシンに利用されてるだけなんだよ!」



●絆の連携

「どう?」
「やっぱり、機体も技量も差は歴然だな。俺達のはレンタル品だし、キャバリアの操縦に限ればアッチが勝るだろうし」
「だよね……悔しいけどタイリさんもあのマシンも強敵だよね。だけど、彼女は1人だけ。ならボク達の絆の力で勝ってみせる!」
「ああ! そこだけなら負けるつもりはないからな!」

 遠くから戦況を見守っていたシャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)とウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は猟兵とタイリとの戦闘を見守っていた。出遅れたため乱入はできなかったが、だがそれで敵の実力は改めて確認できた。そして、それでも自分達は負けない、と気合を入れる。

「まずは範囲が広い洗脳攻撃が来るだろうから、ウイーリィくんは後からお願いね!」
「わかった。信じてるからな!」
「大丈夫!ボク、この任務が終わったらウィーリィくんの料理食べるんだ!」
「嬉しいけど直前にそういう事言うなよ!?」

 ウィーリィのツッコミを聞きながらシャーリーはミサイルを全身に受けながらもまだ稼働可能と見られるオリバレスへと接近していく。装備されたレーザー砲をオリバレスへと向けて発射する。だが熱源を感知したのか、オリバレスが反応の素振りを見せると、空に高速で舞い上がり熱線をかわす。

(高速飛行! ってことは、来る!)
「間髪入れず襲撃してくるとは……いいだろう、ならば今度こそ貴様を我が配下にしてやろう!」

 オリバレスの力で動揺から立ち直ったタイリは地上下に見えるシャーリーのキャバリア向けて洗脳電波を放つ。タイリの思想に無理矢理共感させ、支配のスーツで包み込む技だ。高速飛翔化を伴うそれは回避がとても難しい。普通なら。

「今だ!リミッター解除!!そして、【バトル・インテリジェンス】!」

 シャーリーはキャバリアのリミッターを解除。操縦安定、そして機体の耐年期間を延ばす為にあえて抑えられた性能を引き出す。更に【バトル・インテリジェンス】をキャバリアを媒体に発動し、戦術AIによる操縦強化により操縦技術も格段に引き上げる。キャバリアは従来のスペックを越えたスピードで駆け、放たれた洗脳電波の直撃をAIの補助を伴って回避する。

「な、に!? おのれ、だがまだだ!」

 だがタイリも怯みはせず、高速飛翔で追いすがりながら洗脳電波を連発していく。その度にシャーリーは市街地を高速で駆け、空を舞い、直撃を回避していく。
 しかし相手は電波。見えず広がっていくもの。直撃を回避しても完全にその影響を無効化することはできず、シャーリーの脳へダイレクトに暴力的な洗脳が襲い掛かる。

「う、ぐ! 負ける、もんか! タイリさんを利用している、あのオブリビオンマシンの洗脳になんか、負ける、か!!」

 だがシャーリーはそれに強固な意志と気合で抵抗し、それでも鈍った操縦をAIで補強して回避を続けていく。リミッター解除に伴い、機体の各部からも煙が出ていくがそれでも構いはしない。一方、タイリはそれを見てほくそ笑む。

「ふふ、そろそろ限界のようだな。さあ、諦めて我が配下に……何!?」

 更に追いすがろうとした時、突然オリバレスの動きが大きく鈍った。エンジン異常? 違う。まるで何かに絡めとられたかのような……。

「これは、まさか、ワイヤートラップか!?」
「へへ、せい、かい……!」

 オリバレスは市街地に張り巡らされたワイヤートラップに身をからめとられ、その動きを制限されていた。これはシャーリーが回避しながらさりげなく仕掛けていったもの。そのワイヤーの集中地点、いわば蜘蛛の巣のようなところに今オリバレスを誘い込んだのだ。流石に全てのワイヤーを一気にはオリバレスも引きちぎることができず、動きを止められている。チャンスではあるが、シャーリーのキャバリアもここまでの無理がたたり、すぐに追撃できる状態では無かった。だからこそ

「追撃、お願い!」
「ああ、待ってたぜ、この瞬間を!」

 オリバレスの背後の方向、そちらからウィーリィのキャバリアが現れ、大剣を構えるとまっすぐに突進していく。オリバレスの体勢がワイヤーで固定されている今なら、背中側に洗脳電波は発射されない。ウィーリィは配下から得た情報やここまでの情報でそう判断し、背中へと接近していく。だが当然タイリもそれに気づき、ミサイルをウィーリィに発射する。だがウィーリィはキャバリアのシールドでそれを受け止め、更に多数のミサイルに向けてそのシールドを投げると、それで爆風を遠距離に抑え、オリバレス向けて距離を縮めていく。

「舐めるなよ! このオリバレス、死角すら存在しない事を教えてやる!!」

 オリバレスの背中に大きな顔が現れ、その顔が口を開くとその口に光が集まっていく。顔から発射されるであろうレーザーは背中に迫るウィーリィを撃ち抜き、更にワイヤーも溶解してしまうだろう。まさに一石二鳥の攻撃。普通ならば慌てて回避しようとする。だが、既にこの技を知っていたウィーリィは動揺する事はなかった。そして更に言えば、シャーリーがあれだけ無茶をしたのだ。ならば自分がここで我が身可愛さな手段などとれはしない。

「極めた火工と刀工は、誰かの心を救うため! 前のめりに、斬り込むぜ!」」

 キャバリアの大剣が炎に包まれると、ウィーリィは回避どころか敢えて前進。そして躊躇うことなく、その大剣をオリバレス背中のレーザー射出顔の口に向けて思いっきり突き刺した。発射直前だったレーザーは炎と刃で発射を阻害される。だが、それ故に暴発気味に拡散したものがウィーリィの機体に襲い掛かる。

「ぐ、ううううう!!」
「ウィーリィ、くん……!」

 やっと機体が復帰してきたシャーリーが直撃ではないがレーザーの光を受けているウィーリィを見て、なんとか稼働し動かしていく。
 一方、オリバレスは背中から刃を突き刺された。そしてその位置はまさにコクピット位置。完全にタイリも貫かれて焼き尽くされている筈の状態だったが。

「……な、に? 私は、生きている、のか……?」

 なんとタイリは生きていた。しかもどう見ても刃が貫いているのにそれはすり抜けているようになり、炎もまたタイリ自身を焼きはしない。むしろ

「なんだ……この、心地良さは……今まで、私を縛っていた物が、消えていくような……」
「当然、さ。俺の【幻炎鎮魂斬(セイヴァー・セイバー)】は肉体を傷つけずに邪心だけを斬り裂く浄化の技だ。ここまでで揺さぶられてたあんたになら、きっと効くと思った」

 ウィーリィは突き刺す直前にそれを発動。タイリを支配する邪心、オブリビオンの洗脳支配効果だけを攻撃したのだ。では、諸共に突き刺されたオリバレスもまた無事だろうか。答えは否だ。

『——!!』
「苦しいだろうな…!オブリビオンマシンは存在自体が邪心の塊みたいなもんだ。つまり、お前自体にはコイツの刃は通る!」

 機体でもあり邪心の宿る存在でもあるオブリビオンマシン。パイロット、そして機体自体は無事でもその根幹である邪心自体は大きく今ダメージを受けている。その様子にチャンスだと感じたシャーリーは悲鳴を上げる機体を何とか動かし、オリバレスの腕にあたるような砲パーツをキャバリアで掴み、直接タイリへ通信を繋げる。

「あなたは悪くない!あなたも、あなたの趣味も!私は否定しない!貴方はマシンに利用されてるだけなんだよ!」
「そうだ!邪心を切られたあんたなら分かるはずだ!街の様子を見てあんたも間違いに気づいてるはずだ。頼む、みんなを助ける為に俺達と一緒にそのマシンと戦ってくれ!」
「! 私は……オリバレスに利用されていた、のか……?私は、なんてことを……!?くっ、私は、私は一人ではない……!もうお前など、操りなどしな……」

 ウィーリィの技で肉体ではなくオリバレスに植え付けられた邪心を斬り裂かれたのが功を奏したのか、タイリの目は落ち着き、そして自分の所業を顧みるほどになっていた。

 だが、ここで足掻いたのはこの3人だけでは無かった。他ならぬ、オリバレス自身も又大きなダメージを喰らった事で死にもの狂いに出たのだ。

「ぐ、ぐう、ああああああああああ!!!!」

 コクピットのタイリに今までとは比べものにならない黒い影が満ち、首の下どころか頭までの全てが黒い闇のスーツに包まれてしまう。そしてもうそこにタイリの心は残っていなかった。オリバレスはついにタイリを無理やり動かすと言う、操縦の関係を逆転させた手に出たのだった。

「コイツ、まだ……!ぐあ!!」
「ウィーリイくん!!」

 オリバレスが抵抗にミサイルを放つと、至近にいたウィーリィの機体が直撃を喰らい剣ごと吹き飛ばされてしまった。シャーリーが咄嗟に援護射撃を行うが、オリバレスは空に舞い上がり、そして一直線にある方向向けて飛んでいってしまった。

「ウィーリィくん、大丈夫!?」
「ああ。機体はもう動かせないくらいやられたけど、俺は大丈夫……くそ、あともう少しだったのに!」

 ほとんどの機械がショートを起こしつつもコクピット自体は無事だったが、ウィーリィは悔しそうにシートを叩いた。オブリビオンマシンの邪心。パイロットを逆に操るほどのそれはやはり桁外れだった。

「それより、奴とタイリさんは……?」
「飛んでいっちゃったよ……あの方向。多分、奴の目的は……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルミナール・セピアネス

タイリさんとは直接お話したいね。彼女の気持ちを直接受け止めたい、そう思うんだ。

【コード・フォローパートナー】を使用してAIにキャバリアの操縦を任せてボクはその頭部に立ってタイリさんへ通信を入れるよ。

まずは私がタイリさんと同じくぴっちりスーツが好きな事を伝えよう。
そしてタイリさんが今まで溜め込んできた思いを聞き出そう。
好きな物を語れる相手、タイリさんに足りなかった物の一つさ。ならボクが聞いてあげるんだ。
そして今のタイリさんがやってる強制については否定しよう。それは元々のタイリさんがしたかったことじゃないそれも伝えるんだ。

ちなみにもし洗脳状態になった時にはAIに私の捕獲も指示してるよ。保険だね。


サエ・キルフィバオム


「この状態だと嫌でも分かるね、接近するよ」
前回得た機体に引き続き搭乗します
タイリに近づくにつれ、コックピットそのものまでもが密着してきますが、怯むことなく接近します

「貴女が望んだスーツ、貴女が望んだ機体、その全てで貴女に対抗するわ」
洗脳に対して【一狐の腋に如かず】で対策、今のタイリが望んだ理想の部下の状態でありながら、タイリに反抗するという状態を思い知らせます

「そもそもスーツを広めるなら洗脳だけで良かったはず。プラントの占領はスーツに全く関係ないでしょ?」
「もしあなたが冷静なら、国家に影響を与えずともスーツを広める事ができたんじゃない?」
占領するといった軍事行為に対しての疑問を投げかけます



●肯定、そして否定

「はぁ……はぁ……近づいてくるね。この状態だとはっきりわかる」
「やっぱりね。追い詰められれば、『ここ』に戻ってくるんじゃないかって予想は当たったみたいだね」
「ええ。失ったエネルギーを補給する為に、この『プラント』に接続しようと狙ってくる。そして、連絡で聞いた状態でここを目指したってことは、やはり私の予想は正しかったみたいね」

 最初にタイリがいて、そして離脱した地点。そのプラントのすぐ近くに、愛機バレットストームを駆るルミナール・セピアネス(クレイジートリガー・f13615)と、オブリビオンマシン、オブシディアンMk2を駆るサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)の2人がいた。
 サエの声が苦しげなのは、彼女がオブシディアンに残る支配効果を受け続けているからであり、今や彼女は元々着ていたスーツのほとんどを黒いボディスーツで覆われていた。だが彼女は猟兵としての抵抗力と強い意志でここまで耐え凌いでいた。オリバレスには及ばないがオブシディアンもまたオブリビオンマシンの1種。強い力であることは変わりない。そしてもう1つ理由があった。

「聞いた所だと、もうタイリさんの意志はほとんど残ってないらしいけど」
「それだけ無理矢理な支配なら、逆に綻びだって起きるさ。ボクは予定通りやるよ。きっと届くし、きっと彼女だって抵抗してるに違いない」
「ふふ、そうね。私もそうでなくちゃ、ここまでやった意味がないものね」

 そして2機は待ち構える。迫るジャイアントキャバリア、オリバレスの姿を捉えて。プラントのエネルギーを求めて突っ込んでくるその巨躯。それ目がけて2機ともがミサイルなどの火力武装を発射する。2体分のその弾幕は回避の難しいもの。
 だがオリバレスがスピードを上げ、ミサイルを次々に回避した。既に何度も行われた、飛翔高速化。つまりその後に行われる攻撃は--。

「くうっ!」
「あぁ、うっ……!」

 2機へと襲い掛かるオリバレスの洗脳電波。タイリに屈せよ、タイリに従え。タイリ自身が支配されている状態での洗脳は無機質染みた、それでいて強力なものだった。当然、こんな強力な洗脳を施されては2機とも操縦など不可能……の筈だった。

『!?』

 オリバレスの身に再びミサイルが襲い掛かり、何発かが命中する。操縦不能の予想を覆したその衝撃に、オリバレスに支配されたタイリは画面を見やる。そこには何事もないかのように攻撃と動きを行う2機の姿があった。

「な……ぜ……?」
「聞こえる!?タイリさん!!」

 コクピット内にオープンチャンネル通信が入る。その元は、動くキャバリアの1体、バレットストームからだった。正確にはその上……キャバリアの頭部にルミナールがなんと立ってそこから通信が行われていたのだ。
 普通ならば在り得ない状態。だが彼女は既に【コード・フォローパートナー】を使用していた。これはキャバリアを搭載したAIで動かす事で自分と別個行動を行えるもの。これを使う事で、自分が操縦困難な状態であってもこうしてキャバリアとしての活動をできるようにしたのだ。現にルミナールは通信こそできてはいるが、その身には洗脳電波により黒い影のスーツが纏わり始めており、思考も定まらず確かに操縦のような動作は行えそうになかった。だからこそ、彼女自身はタイリへの呼びかけにだけ集中することにした。操縦をAIに任せたならばそんな分業も行うことができる。

「ボクの名前は、ルミナール・エピアネス! 貴方と同じで、ぴっちりスーツが大好きだ!貴方もスーツが好きなのはしってる。でも、それ以外にも色々あるの、教えて! 他にもスーツ趣味の人たちで集まって、貴方のそんな話、皆で聞きたい!」
「ぁ……」

 スーツに全身全てを覆われたタイリから声が漏れた。趣味を共有し、腹を割って話せる相手。彼女はそれに恵まれなかった。だからこそ弱音も抱え込んでいくしかなかった。自分の趣味を肯定してくれる相手。それはまさに彼女の望んだ……

「でもね。今貴方がやらせてる、スーツの強制……あれは、駄目だよ。貴方は趣味だったとしてもそれを強制したりはしなかった。それを貴方はやった。例え趣味を通じた友になれたとしても、ボクは、否定するところは否定する!」
「!!」

 肯定するだけではない。否定もまたする。彼女が以前の彼女ではないからこそ。それもまたタイリがどこかで求めていたかもしれないもの。

「聞こえる?見えるでしょ、今の私の姿」
「っ!」

 そこへ別の通信が入る。それは、鹵獲されたと思われる配下のオブシディアンからのもの。そこにはコクピット内が映し出されており、そしてそこには配下の証である黒いボディスーツに身を包んだサエがいた。だが彼女の表情は、決して支配されている顔ではない。

「成功したって思ったでしょ?残念。貴女が望んだスーツ、貴女が望んだ機体、その全てで貴女に対抗するわ」
「……私が、配下たちに、望んだ姿……」

 サエは洗脳電波を受ける直前、【一狐の腋に如かず(アトラクティブ・カウンター)】を使用していた。脱力状態になる事でその影響を無効化し、自分に有利な効果へと変えて魅力を高めるという技。
 今回サエが選択したのは、自身の声をオリバレスの支配を突き抜けてタイリに届かせる事。これにより、ルミナールに揺さぶられたタイリの心へ、サエの声が届く。

「そもそもスーツを広めるなら洗脳だけで良かったはず。プラントの占領はスーツに全く関係ないでしょ?」
「……あ、れ?たし、かに……なぜ、私は……?」
「更にもう1つ。もしあなたが冷静なら、国家に影響を与えずともスーツを広める事ができたんじゃない?こっそり広めたり、徐々にやっていくとか……つまり、貴方の抱えていた鬱屈を利用して都合が良いように修正していた奴がいる。……1人、いえ、1機しかいないわよね。そう、そこの貴方よ、電脳巨兵オリバレス」

 サエのその推理に、オリバレスは自身のミサイル弾幕で応えた。だが、それはバレットストームのガトリングガンの掃射が阻止する。『邪魔はさせない』と言わんばかりに。

「タイリ将校の抱えていた願望を利用し、プラント支配や国の支配へと行動させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


※ミスにより、途中でリプレイを提出してしまいました。判定は間違っていない為、このまま最後まで投稿します。



 何故ならその方が貴方には都合がよかったから。貴方は忠実に従う機械なんかじゃない。タイリ将校の想いを利用する、悪魔よ」

 『黙れ』と言わんばかりに、オリバレスが再びタイリを動かし洗脳電波を発動させようとする。だが、そのタイリの動きがぴたりと止まった。

『!?』
「……私の想いは、歪められ、利用されて、いたのか……」
「ええ。でも全部が偽りじゃない。貴方の本音も確かにあった。だからこそ、私達猟兵はその想いを受け止めて、それで貴方に呼びかけてきた。私も貴方のこの支配を貴方の本音の1つとして受け止めた。これが本当に貴方の望みか。本当の貴方は何をしたいのか……それを、教えて……」

 洗脳電波こそ無効にはしたが、サエには潜入時からタイリへの服従支配の洗脳が及んでいた。それはまさに今限界寸前に至ろうとしていた。
 そしてルミナールも、抗いは限界に来て体勢を崩しており、事前に仕込まれたAIはルミナールの捕縛行動をも視野に入れ始めていた。

「……決まっている。私、タイリ・タイトラルは……お前達に、命じる」

 オリバレスの顔がどこかほくそ笑んだようにも見えた。抵抗したようだがやはりタイリへの支配はそのままだ。これで逆転。猟兵たちを支配下に加え、プラントのエネルギーでこのままこの国を一気に支配し--


「我が支配に堕ちた者達よ。全力で、私の機体、オリバレスを完膚なきまでに破壊せよ!!」


 タイリは頭に被さったスーツを脱ぎ捨てるようにして破壊した。現れた彼女の顔は、完全に理性を、自分の意志を取り戻していた。
 そして彼女の言葉は、洗脳電波とスーツの支配に包まれたサエとルミナールへと届く。二人はその声に、笑顔で頷く。

「「了解しました、タイリ様!!」」

 オリバレスはここで自分が間違いを犯したと気づいた。タイリを利用していたからこそ、その支配の条件付けは『タイリに従う事』だったのだ。故に、タイリが命じたのならば、洗脳の大元であるオリバレスであろうと猟兵は何に縛られることもなく攻撃ができる。その上、その命令は2人の元々の意志と完全合致している。その動きを制限されることはない。

「マイクロミサイルポッド全展開、発射!!」
「バレットストーム、フルバースト!!」

 タイリは『全力で』と命じた。それは支配を通じて猟兵たちの能力をブーストさせる効果を齎す。サエのオブシディアンのミサイルポッドは変幻自在の幾何学模様を描きながらフェイントを交えてオリバレスへと放たれ、ルミナールのバレットストームは乗り直したルミナールの底上げされた射撃能力による隙の無い大火力弾幕を空へと放つ。

 オリバレスは回避をさせようとする。だが、タイリは当然動かない。

「……ありがとう。私を肯定し、そして全力で否定をしてくれた者達……」


 やがて、全ての弾がオリバレスへと命中。頭を、砲ユニットを、オリバレスを構成するほぼすべてのパーツが完膚なきまでに粉砕され、空へと散らばっていく。

 残されたのはたった1つ。正確無比な射撃により、無事に残されたコクピット部分。落下していく其れを、オブシディアンとバレットストームの2機が地上にて受け止めた。



「本当にありがとう。配下の者たちや市民には、本当に謝罪してもしきれない……」
「ふう。あのスーツも無くなってみると、若干寂しくもあるわね」
「町からずーっと着てたもんね」

 コクピットから助け出されたタイリ、オリバレスが破壊された事で元に戻ったサエとルミナールは機体から降りて顔を合わせていた。

「ま、あまり溜め込み過ぎてはいけない事ね。ああ、なんならその上層部が煩わしいなら言って? 弱みの1つや2つ、潜入して掴んできてあげるわよ?」
「だ、大丈夫だ。そこはやはり自分の力で何とかするさ」

 サエの冗談ではなさそうな提案にタイリは冷や汗を流しながら答えた。

「あとその……呼びかけてくれていた猟兵の方たちともお会いしたい。特に、貴方のように、私と趣味を同じくしているという方には、その」
「うんうん! 是非連絡先交換しとこうね! なんなら時々ぴっちりスーツ女子会しちゃおっか! タイリさんとならキャバリアの話もできそうだし!」
「う、うむ! 是非、お願いしたい。ぴっちりスーツ女子会……ふ、ふふふ」

 趣味が完全に漏れ出して変な笑いがこぼれているタイリ。そんな彼女を見てルミナールは吹き出し、同時にこの彼女を守れて良かった、と思った。


 こうしてフワラル帝国で起きたクーデターは幕を閉じた。タイリには色々と今後も大変な事が待ってはいるだろうが、それでも彼女は諦めずに進んでいくだろう。
 彼女の心には確かに自分に語り掛けてくれた猟兵達の姿が、しっかり残っているのだから。

最終結果:成功

完成日:2020年11月02日


挿絵イラスト