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道化師は月夜に哭く

#クロムキャバリア #円卓連合

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#クロムキャバリア
#円卓連合


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●月光に潜む殺意
 月明かりの下、土煙を巻き上げてトレーラーの車列が渓谷の狭間を進む。積荷は全てキャバリア――この世界の主力人型機動兵器だ。バザーで持ち出した食料やインゴットをそれらと交換し、満載した機体を故郷――ガフの谷へと運ぶ、いつも通りの輸送任務……しかしそれは不意に終わりを告げた。突如鳴り響いた警報音と共に、進路上の渓谷にまるで赤い蛍火の様な光がぽつぽつと、その所在を誇示するかの様に灯り始めたのだ。
『振動音多数、音紋照合……機種はMk4。他に一つ』
『観測班より報告。肩に道化師のエンブレム……間違いない、奴らです』
 奴ら――最近『ラウンドテーブル諸国連合』内で暗躍している謎の武装集団。その形から『道化師の旅団』などと呼ばれている連中だ。
『会敵まで僅か。敵は上を取っている……抜けられるんすか?』
『抜けるしかないだろ。全車減速しつつキャバリア隊出撃!』
 重ねて勇ましいサイレンが車内に響き、途端にトレーラーの一部から重々しい機械の巨人――量産型キャバリア部隊が出撃する。それらをまるで見定める様に赤い光が尾を引いて、悪意を纏った歪んだ機械は猛禽の様に渓谷を舞い降りた。

「――そして戦端は開かれ部隊は全滅する。このままではね」
 朱皇・ラヴィニア(骸の虚・f29974)はグリモアベースに集った猟兵達の前で小首を傾げ、スクリーンの操作パネルをそっと触る。続けて映し出されたのは戦場と敵の詳細な情報と作戦目的。
「彼等を守って欲しい。彼等は円卓連合――その中でガフの谷と呼ばれる地域に住まう人達だ」
 ラヴィニア曰く、彼等は食糧やエネルギーを生成するプラントを所持しているガフの谷と呼ばれる辺境への帰路の途中だった。故郷の守りを固める為に、こうして定期的に生産資源を軍事物資と交換しているのだ。しかし歴戦の輸送部隊とは言え敵はオブリビオンマシン――搭乗者を破壊者へと洗脳し、恐怖をばら撒く狂気の機械。彼等だけでは到底対処出来る相手では無かった。そんな相手にどう立ち回れば良いのだと誰かが尋ねる。
「そうだね……んと、遠征隊の隊長はシドン技師長。キャバリアの運用に関しては神がかった腕前の持ち主だよ」
 スクリーンには髭面の屈強な男性の姿が映し出される。その男シドンは既に猟兵の存在を認識しているから、余程の事が無ければ快く協力してくれるだろうと続けて。更に。
「こんな状況だ。集団が積んでいる持ち帰り途中のキャバリアも彼に頼めば借りれるだろう。場合によっては上手く使って欲しい」
 目には目を、キャバリアにはキャバリアを。無論、自前の機体があるならばそれを使っても良い。使わずとも戦えるならばそれでも良い。猟兵らしく戦えば――言いながらラヴィニアは滑らかな手つきでスクリーンの表示を切り替えた。

「最初の敵はMk4。一般的な量産型キャバリアだね。これを倒して欲しいんだけど、中の人間はオブリビオンマシンの影響で正気を失っているだけだ」
 スクリーンには全身を火器で包んだ機動兵器が映し出された。確かに同サイズのキャバリアで立ち向かえば多少は戦い易くなるだろう。しかしラヴィニアはそれでも、と作戦目的を付け加える。
「……だから、生命まで奪わないで欲しい。機械は壊れても直せばまた動くけど、生命はそうは行かない」
 人ならざる身故に、生命の儚さも強さも知っている。だからこそ、敵機を戦闘不能に持ち込めば搭乗者を助けられると踏んでの願いだった。
「続けて現れる敵キャバリアも同じくね。ここを切り抜ければしばらく襲撃は無い――一気に渓谷を突破するんだ」
 もう一機――恐らくはこの『道化師の旅団』の隊長機だろう。その情報は残念ながら視えなかったと、悔しそうにラヴィニアは呟いた。
「戦いが終わったら最後の大仕事、ガフの谷にキャバリアを降ろして現地の格納庫へ運ぶのを手伝って欲しい」
 もしかしたら危ないマシンが混ざっているかもしれないから、と悪戯っぽくラヴィニアは笑って続ける。何なら気に入った機体があれば交渉してみてもいい。既に愛機があるならば修理や改造も施して貰えるだろう。それ程の戦力である事を、シドンはちゃんと認識しているからだ。
「よろしく頼むよ。今まで数多の世界を救ってきた君達なら、この世界を変える事が出来るって信じてるから」
 恭しく頭を下げたラヴィニアの右腕がまるで新体操のリボンの様にくるくると解けて、ぎゅるりと大きな弧を描き異世界――クロムキャバリアへのゲートが開く。
「同調完了。ここを通ればすぐに戦場だ……皆の無事と勝利を祈る!」
 転移先はトレーラー内部、目の前にはシドンがいる筈。最早猶予は無い……火薬と土の匂いを潜って、新たな戦禍に身を投じる時が来たのだ。


ブラツ
 ご無沙汰してます。ブラツです。
 今回の舞台は待望の新世界、クロムキャバリアにて、
 輸送部隊を敵群の襲撃から守る事が目的です。

 第1章は集団戦です。敵キャバリア隊を制圧して下さい。

 第2章はボス戦です。現時点で詳細は不明です。

 第3章は日常です。味方拠点でキャバリアの整備や改造などが行えます。

 その他、詳細はオープニングに準じます。
 戦闘判定はクロムキャバリアの世界観に則って行います。
(注意! 高高度高速飛行は出来ません!)
 キャバリア借用に関しては文末をご参照頂ければ幸いです。
 アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
 単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
 同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。

 プレイングは開幕後すぐに募集致します。状況はオープニングの通りです。
 今回は当方都合で恐縮ですが最大で8名様前後の採用になるかと思います。
 可能な限り努めてまいりますので、よろしくお願い致します。

 以下、キャバリア借用に関しての追加説明です。
(読まなくても問題ありません)

『キャバリア借用時の略称について』
 キャバリア借用時には以下の記号で種別を代用出来ます。

 クロムキャバリア=C
 スーパーロボット=S
 サイキックキャバリア=P
 ジャイアントキャバリア=G
 量産型キャバリア=M
 オブリビオンマシン=O

 各機体の特徴等、強調したい要素があれば箇条書きでも構いませんのでお伝えください。最大限反映出来る様努めます。但し版権作品名は出さないで下さい。
(例:近接戦闘型クロムキャバリア)
 C
 軽量級
 実体剣二刀流
『装甲を極限まで排し圧倒的な機動力を手に入れたマシン。所々剥き出しのフレームが垣間見える軽装に重々しい二振りの実体剣を装備した姿は、正に駆逐型クロムキャバリアとして見る者を圧倒する美しさと儚さ、そして恐ろしさが滲み出る様だった』

 こんな感じでやってきます。よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『オブシディアンMk4』

POW   :    ホークナパーム
【油脂焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【高温の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ピアシングショット
【スコープ照準】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【RSキャバリアライフル】で攻撃する。
WIZ   :    マイクロミサイルポッド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【誘導ミサイル】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

支倉・錫華

護衛任務ってことでいいのかな。
物資は民間のひとたちにも必要なものだし、雇われ騎士としてはやりやすい感じだね。

隊長は腕利きってことだし、戦闘時背中の心配はしなくてもよさそう。
ここは思い切って突撃してもいいかな。

敵中に入ったら、手近なところから【モーターブーム】を使って、
相手のキャバリアの腕か足を斬りおとして、行動不能にしていこう。
コックピットはなるべく壊さないように気をつけるけど、怪我くらいまでは許してね。

借用キャバリア
M
スタイルはシンプルな量産型キャバリアですが、
中身は【脈動臨界チューニング】で移動力を5倍、装甲を半分にした超高機動型。
小太刀タイプの二刀を構え、速度で相手を圧倒していきます。


ブランク・コード


……他に手練の方が居るなら解決の為に直ぐにでも
俺の機体を譲り渡したいんですがっ!
えっ、適合してるのは俺だからダメ? そんなぁ!?

スコープで視認するっていうのは
中々に『時間がかかる』ものですよね。
俺も経験あるからよく分かるんです。だから――
『掻い潜ります』。

【迷彩】【ジャミング】で照準を定められないようにしてから、
【ダッシュ】と【空中戦】を併用した
【指定UC】で詰めさせて貰います。
詰めてる最中にコクピットの位置を【瞬間思考力】で【見切り】。
光剣で以て素早く【切断】させて頂きます。
無論急所(コクピット)は外させて貰いますよ……!

……一応俺はただの一兵卒なので、
この機体が強いだけなんですってばっ!



●大地に立つ
「……他に手練の方が居るなら」
 慌ただしい車上、剥き出しのキャリアに牽引されている巨大なキャバリア用ハンガーで、パイロットスーツ姿の男が嘆いていた。
「解決の為に直ぐにでも俺の機体を譲り渡したいんですがっ!」
『駄目だ。残念だがお前が一番適任だ』
 嘆く男――ブランク・コード(無よりの変異・f30157)は観念して棺桶じみたコクピットへ押し込められる。途端、微かな振動と共に立ち上がったシステムの仄かな灯りが、ブランの全身を厳かな儀式の様に照らし始めた。
『ハンガーリフタップ! シグルドスタンバイ!』
『得物は分かるな? くれぐれも壊すんじゃねえぞ』
「だったら他の方が」
『直上! 対ショック!』
 立ち上げに残り数秒、空より寝た子を起こすまいと赤眼の巨体が鈍色の銃口をこちらへ向ける。あと僅か、間に合え……念じるブランの身に突如、激しい横揺れが襲った。
『モーターブーム!』
 誰かの声が聞こえる。キャバリアの質量を乗せた強烈な一撃がブランを揺らしたのだ。目を開き起動完了したコンソールをちらりと覗けば、直上にいた筈の敵機の光点は遥か彼方、そして煌々と輝く友軍機のシンボルが自機――シグルド=キャルバリアの真横の位置で燦然と光を放っていた。

「護衛任務ってことでいいのかな?」
『ああそうだ。手練れが来てくれて助かる!』
 新型の起動シークエンスを狙うなんて無粋な、いや分かった連中だと支倉・錫華(Gambenero・f29951)は笑みを零す。まるで袴の様に増設した下半身の五連スラスターと、極限まで装甲を配した上半身が、錫華の機体――改造した量産型キャバリア・フリントストーンを突撃仕様のピーキーな機体である事を知らしめた。転移直後に手近な機体を突貫で手直しした物ゆえに、動く度にフレームが軋む嫌な音がコクピットに響く。それ以外は素直な良い子だ。
(背中の心配はしなくてもいいかな――)
 ゆったりと立ち上がったシグルドを一瞥し、再びスロットルを開放する錫華。友軍もいるし、雇われ騎士としてはやりやすい感じだね――まるで開花した花弁の様にぶわりと広がった炎が、フリントストーンをその名の如き電光の速さで敵群へと突っ込ませた。
「……怪我くらいまでは許してね」
 先の一撃でMk4の弱い所は大体分かった。コクピットはなるべく壊さない様、すれ違い様に抜き身の小太刀で四肢を両断する。甲高い金属音が響く度に倒れ伏せるMk4を捨て置いて、猛獣の様に戦場を駆け抜ける錫華。凄まじいその光景を見ていた敵群はたじろぎながら距離を取り、肩部大口径キャノンを構え――ナパームの斉射で地形ごと焼き尽くせば、如何に機動性があろうとも無力化出来ると狙いを定めた。
「そう来たか。やっぱり無理したツケだね、これは……!」
 機動性を上げた代償。機体の冷却が追い付かない所に熱量攻撃の釣瓶打ち。動作リソースを冷却系へ回し僅かに挙動が乱れた刹那、赤熱化した蛮刀を振りかざし一機のMk4が突出した。だがそれも僅か、突如飛来した光の礫が側方よりMk4の全身を刺し穿つ。
「……一応俺も一兵卒なので、いやええと、この機体が強いだけなんですってばっ!」
「ありがと、お兄さん」
 起動したシグルドが殴り飛ばしたフロッティビット――小剣型の光剣ユニットが妖精の様に微かな光を撒いて、まるでマントの様にシグルドの背部へと懸架される。フリントストーンの強制冷却も間に合った――溢れる蒸気が両機を覆い尽くし、そして影は再び二手に分かれた。狩りはまだ終わらない。

(スコープで視認するっていうのは、中々に『時間がかかる』ものですよね――)
 蒸気で身を隠し、爆炎の中を掻い潜り、単機で逸れたMk4に狙いを定めたブラン。高精度の照準システムが搭載されている事は教本で嫌というほど分からされていた。だがそれこそが弱点――狙いをつけている間は、如何に優れたパイロットだろうと自在には動けまい。
「Mk4の機体構造は分かる。急所を外して確実に……!」
 幸い蒸気と爆炎でこちらの正確な位置を見失っている。懸架したビットを再び展開し、拳と蹴りでそれらを乱れ撃ち、その威に乗じて抜剣、吶喊――光剣ベルヴェルク=グラム展開。ターゲットの駆動部のみを狙って、切り崩す!
「やったか……!?」
 奇襲が成功した瞬間、続けて十重二十重の火線がブランに襲い掛かった。目立つ光剣を振りかざすシグルドに狙いをつけたのだ。幾ら強靭な装甲で持ち堪えているとは言え、止めど無い銃撃を喰らい続けては一溜りも無い。先の敵機は五体をバラバラにしてくれた。だがこのままでは自分がそうなってしまう。
「その得物は目立ちすぎる。こんな夜戦じゃ特にね」
 不意に通信が……同時に火線が一つ途切れた。二つ、三つと自らを包囲していた殺意の源が徐々に消えていくのが分かる。足を止めて撃ち続ければ居場所が分かるのはこちらも同じ――最小のブースト点火を繰り返し、一機ずつ確実に錫華の機体が敵を屠り、ここまで来たのだった。
「まだ来るよ。動けるかい?」
「動かなきゃ、やられるでしょうに!」
 花弁の様に五連スラスターを大きく開き強制排熱をするフリントストーン。
 ダメージコントロールのナノ装甲がバチバチと紫電を放つシグルド=キャルバリエ。
 三度迫る赤眼の悪意へ睨みを利かせ、二体の巨人は全身に力を漲らせ戦場へ躍り出る。
 その姿、疾さはまるで稲妻の如し。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

獅子戸・玲桜奈
加勢するぜ隊長さん。あんたらの命は俺たちが守る!
行くぜ!フレイムウィング!

こっちは正面から近づいてフレイムナックルでぶん殴るだけだ。一撃でお釈迦にしてやるぜ。
もちろん、中にいるパイロットには気ぃ付けながらだけどな。

ナパームは避けるなり、当たる前に炎属性攻撃で焼却するなりだな。まあ当たったところで火炎耐性があるんだ。ダメージはたかが知れてる……むしろちょうどよく体が温まるってもんだ。


陽向・理玖


おー
キャバリアかっけぇ!
これ壊すのかぁ
勿体ねぇ
でもやるしかねぇ

さてっと
まずは肩慣らしと行くか
キャバリア乗るの初めてだもんな
ダッシュで間合い詰め接敵グラップル
って早ッ!軽ッ!
拳で殴る

成程
これがキャバリア!
うおーすっげぇ!燃える!
何がいいって
思いっきり敵の関節狙い攻撃
ぶっ壊せば中の人助けられるのが最高だな

痛っ
くっそ
攻撃喰らうと中で振り回されんのはきついなぁ
UC使い
じゃあその前にぶっ壊せばいいか
慣れてくればいつもの間合い
鋭く踏み込みライフル狙って跳び蹴り
範囲攻撃でそのまま本体も吹き飛ばし他の機体も狙い
ダッシュで後追い拳の乱れ撃ち

C借用希望
近接格闘用
足回り素早さ重視
使いやすい奴似合いそうな奴でお任せ



●ブレイジング・フレイム
「おー、キャバリアかっけぇ!」
 戦闘に震える車内で戦況モニターを確認する陽向・理玖(夏疾風・f22773)は、激しくぶつかり合う鋼の巨体に感嘆の息を漏らす。人の叡智が造り上げた戦うマシン――自らの境遇とは似て非なるその姿に、少しばかり複雑な表情をして。
「これ壊すのかぁ……勿体ねぇな。でも」
 元は人が人の為に作り上げたモノだとしても、今やオブリビオンに支配された悪しきマシンだ。幸い搭乗者はこれらから救い出せば、生命までは奪わなくていい。それが何よりも救いであったし、何よりも難しかった。だからこそ。
「やるしかねぇ」
 決意を新たに面を上げた理玖。その視界に機付の整備班長が手を振る姿が見えた。
『出来たぞ! 操縦系はマスタースレイブでいいんだな?』
「え、マス……?」
 マスタースレイブ方式――操縦桿を握るのでは無く、自らの身体の動作を増幅して挙動を再現する、いわばパワードスーツの巨大版だ。これならば機動兵器の運用に聡くない理玖でも、幾分か思い通りに機体を動かす事が出来るだろうという班長の計らいだった。
『身体動かしゃマシンも勝手に動く! 得物は五体だ!』
「それなら分かった! これがキャバリア!」
 機体名スタークドラゴン。まだ色が塗られていない鈍色のスラリとした全身に、竜の髭をあしらった頭部の制御アンテナが目立つ格闘戦用クロムキャバリア――先のバザーで仕入れた最新鋭機のうちの一つだった。
「さてっと、まずは肩慣らしと行くか!」
 四肢をコントロールリングに嵌めて直立、起動――大丈夫だ、機械との一体化ならもう済ませている。あとは感覚を合わせるだけなら、動きながらやればいい! 青白い炎を吐いて、鋼の竜が燦然と戦場に降り立つ。

「関節の使い方さえ分かりゃあ、後は一緒……!」
 これがキャバリア。確かに自分が大きくなった様な、身体が拡張された感じだ。だがどうしてもコンマゼロ以下の動きにラグが出る。避けたつもりがギリギリの所で躱し切れず、一進一退の攻防が続く中で不意に大きな声が戦場に轟いた。
「大丈夫か!?」
 理玖の耳に届いた活気のある女の声――その方角からまるで炎の鬣の様な真っ赤なエネルギーを噴出する、神々しさすら感じる真紅のキャバリアが飛来した。
「こちらフレイムウィング。加勢するぜ隊長さん」
 声の主、獅子戸・玲桜奈(炎の翼・f30087)が叫ぶ。仲間の、ひいては操られた人々の生命を守る為、永き闘争を終結させる神機がトレーラーとの間に割って入る。ゆっくりと立ち上がる神々しくも恐ろしいシルエットにすかさず迎撃のナパームを乱れ撃つMk4。それを一顧だにせず、玲桜奈は果敢に飛び掛かった。
「あんたらの命は俺たちが守る! 行くぜ!」
 フレイムウィングより吹き荒れる赤が戦場の爆炎を吹き飛ばし、更に加速する玲桜奈が捉えたMk4の頭部を粉砕する。炎を纏った超常の鉄拳――機能が十全なら強制排出でパイロットは助かるだろう。それを終わるまで繰り返すだけだ、と玲桜奈は息巻く。
「……あれは?」
『キャバリア、いや……スーパーロボットって奴だ』
 理玖の質問に班長が返す。人の意思に呼応してその力を無限大に増幅する奇跡のマシン、それがスーパーロボット。そして標準的なキャバリアとは一線を画す荒々しい戦いぶりは、理玖の闘争心にも火を点けた。
「うおーすっげぇ! 燃える! 負けてられねえな!」
 これがこの世界のヒーローか。だったら尚更、黙って見ている訳にはいかない。

「痛っ。くっそ……」
 玲桜奈の奮戦に続いて我武者羅に立ち向かう理玖。しかし狙い澄ましたMk4の狙撃がその足を止めて、思いとは裏腹に自由に戦う事が出来なかった。
「猟兵! フィードバックを最大に上げろ!」
『馬鹿、そんな事をしたら!』
 急に玲桜奈と班長から通信が入る。フィードバックを上げれば確かに動きが過敏になる。その分もっと精確かつ素早く動けるという事だろう。しかし過敏過ぎるフィードバックは余計な動きも捉え、下手したらダメージまでも増幅される。
「いや――分かったぜ!」
 だからこそ、理玖には分かった。強化人間の身だからこそ、そういう理屈は言われずとも五体に刻まれている。
(ダメージを喰らえば中で振り回される。確かにきついけど)
「じゃあその前にぶっ壊せばいいか!」
 空いた指先で機体の感度ダイヤルを調整する。途端、痺れる様な痛みが身体を襲ったが成程……この位ならいつも通りだ。鈍色のマシンはゆらりと身構え、スコープ越しにMk4と対峙した。
「そういう事だ。さあ行くぞ!」
 刹那、鈍色が疾風の如き只ならぬ動きでMk4と間合いを詰める。トリガーを引く鼓動、軋むアクチュエータ、それら全てを五感で受け止め、事を成す前に叩き伏せる超常の挙動。明鏡止水の境地――照り返す炎がマシンを橙に染め上げて、その手には砕かれたMk4の両腕が握られていた。
「やるじゃないか……! 甘い、そんなのはたかが知れている」
 動きの変わった理玖から狙いを玲桜奈に定めたMk4。しかし浴びせ続けたナパームもまるで効いた様子が無い。何故ならばこの機体はフレイムウィングの名の通り炎のマシン。たかが雑兵の熱量攻撃程度で、絶対に落とされはしない!
「むしろちょうどよく体が温まるってもんだ!」
 返す拳が鋼を砕き、一つ、二つと倒れ伏せるMk4。最早迷いも恐れも無い。竜と獅子は戦場を蹂躙する、全ての生命を救うまで。

 トレーラー正面の敵を押し返す勢いで戦線は徐々に押し上げられていった。しかし観測が悲鳴を上げる。視線の先、レーダーには無数の光点が出現していた。
『あ、アンノウン多数、後方に出現……!』
 そのどれもが車列の背後、いつの間にか部隊は敵に包囲されていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト

では働こうか

天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
現着次第即展開し機動力を奪う

見えず触れ得ずとも既に囚われた後
抜けるなら形なき迷宮を解く以外は無い
破壊の手段も自壊対象
何にせよ急がねば存在が消えると知れ

対象外へは影響皆無。他の味方は完全に自由
精々憤れ

出口は自身に設定
万一辿り着くなら『討滅』を乗せ打撃で対処
戦況は『天光』で常時把握
自身への攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる


リア・ファル

キャバリア借りるよ

C
予備フレームを繋ぎ合せた試作機
機体制御やOS調整はリア任せ
ステルスクロークとビーム狙撃銃

突貫で組み上げただけに
無茶苦茶ピーキーな仕上りだね!

制御系フッティング……バランサー調整……
システムアップデート!
(ハッキング、メカニック)

名付けて「プロト・ガーネ」ってトコかな?

ステルスクローク・アクティブ(迷彩)
敵反応は補足済(情報収集、偵察)

射程距離、補足精度、離脱速度も、ボクなら勝てるさ

狙撃銃にボクのフォトンスナイパーライフルをリンク召喚!
UC【独創・術式刻印弾・脆弱】で機能停止に追い込む!
(スナイパー、地形の利用)



●測定不能
『どうすんだ! 正面の状況は!?』
『依然変わらず。しかし前衛をこれ以上後ろへ回しては……!』
 不意に出現した増援を前にシドンが声を荒げる。確かに猟兵の戦力で戦線は押し上げた。故に展開した部隊を戻せば元の木阿弥、間に合わなければ全滅までの時間が早まるに過ぎない。だが、猟兵はこれだけでは無いのだ。
「キャバリア、借りるよ」
『な、もう一人……』
 ふわりと、涼やかな表情を浮かべた少女が車内に転移した。
 その眼に諦観は無い。ただ一つ、勝利の為だけに。

『RS35のアンプはRじゃないVだぞ!』
『EP901プリセット! アクティブステルス異常なし!』
『オーバーとアンダーのマッチングまだ終わりません!』
『……おい嬢ちゃん、本当にこんなの扱えるのか?』
 急ごしらえのハンガーで突貫作業。前線ではよくある風景だ――クスリと微笑んで、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は得意げに言葉を返す。目の前には予備フレームを繋ぎ合わせた急ごしらえの試作機。それにロングビームライフルとステルスクロークを合わせた、傍目に見ても気難しそうな機体だった。
「大丈夫、制御系はボクの方で何とかするよ」
『あ、おい!』
 慌てる班長を尻目にヒラヒラと手を振ってマシンの中へ。成程、言う通りそこかしこに注意書きの付箋が貼り付けられて、剥き出しのハーネスを仕舞う余裕すら無かったらしい。そしてアイドリング中のジェネレータの脈動も嫌に不規則だ。
「突貫で組み上げただけに、無茶苦茶ピーキーな仕上りだね! でも!」
 転がっている結束バンドでそれらを固定し電源を入れ――タイムアウト。どうやらOSの立ち上げすらままならない様だった。
「制御系フィッティング……バランサー調整……システムアップデート!」
 バックドアからハッキングしプログラムの中身を見れば、成程。異なる制御系を無理矢理合わせようとして、無駄なコードがそこいら中に被せられている。それらを一律消去して代数変換、コマンド追加、パラメータ変更――これで。
『まともに動いた!? 信じられねえ……全部許容値だ』
『おい嬢ちゃん、まるで魔法だな。で、名前はどうする?」
 微かな振動と一斉に立ち上がったモニタがまるでリアを祝福するかの様に煌々と輝いている。機内を一瞥し満足げな笑みを浮かべ、リアは言葉を返す。
「そうだね。名付けて『プロト・ガーネ』ってトコかな?」
 そして狩人は飛び立った。敵は多勢、立ち向かうのは自分と――あと一人。

「この世界のオブリビオン、変容させるのは意識だけと聞いたが」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)はキャバリアを駆らず、人の身のままで無数の悪意と対峙する。正面には無数の敵影、全て叩き潰すだけならば難しい仕事では無い。だが、可能な限りマシンの搭乗者は救わなければならない。
「――では働こうか」
 瞬間、青白い光が戦域を包み込む。原理を編み『迷宮に囚われた』概念で縛る超常の牢獄。対象外には何も見えない、しかし捕らわれたモノ達は青白く輝く無限の迷宮に行き場を失う。
「見えず触れ得ずとも既に囚われた後、抜けるなら形なき迷宮を解く以外は無い」
 その壁を打ち破らんと火砲を斉射しようにも、原理の壁を貫く事は叶わない。そのものが攻撃すら破壊する、そして永劫に循環するエネルギー体だ。決して途絶える事は無い。
「故に、という事か……確かに厄介だ」
 だから、オブリビオンマシンは自らでは無く、洗脳されているだけのパイロットを使う事にしたのだ。散らばった各所の機体の情報を統合し、出口と思われる場所へ総当たりで移動する。確かにマシンならではの、そしてオブリビオンでは無い故に影響が少ない洗脳者を使うという選択は、この窮地を脱するには最適と言えた。
「だが、出口は俺自身――精々憤れ」
 ただ一つ、最強の門番の存在を考慮しなければ。

「纏めて破壊出来ない相手とは、如何にも……」
 正解を導き出口へ順次殺到するMk4を討滅の打撃で処するアルトリウス。これがただ一人の相手で、自身と同じくらいの背丈であれば叩くのは容易だったろう。だが数も多くサイズも違う――勝手の違う戦いに次なる手を考えた刹那、側方を強烈な光条が駆け抜けて一機のMk4の頭部が爆散した。
「援護するよ。それに」
 アルトリウスの背後にはゆらりと蒸気を上げる漆黒の銃口が――それが徐々にステルスを解除して正体を晒す。銀光を放つクロムキャバリア――リアのプロト・ガーネが、スラスターの炎をまるで翼の様にはためかせ、低空に佇んでいた。
「ボクじゃなきゃ探知出来なかっただろうね、一帯の異常な重力歪曲反応に」
「いつもの事だろう」
 リアがガーネに追加した(させた)重力ソナー――SSWの艦艇ならば大抵が付けている――がアルトリウスの超常を感知した。故にいつもの事、反応を捉え現場へ急行し直ちに支援に回る事が出来たのだ。
「そう……いつもの事さ!」
 そのまま大地に足を降ろし長物を構えるリア。矢張り地に足を付けた方が精度は格段に上がる。空中戦のデータはこれくらいにして、本来の仕事に取り掛かろうと静かに目を瞑った。
「来い! フォトンスナイパーライフル!」
 放たれた力ある言葉は手にしたロングビームライフルを形ある超常の業物へと変容させる。更に迷宮に囚われた敵機の動きは想像以上に単調だ。彼等の足を止めればいいだけならば、これほど相性の良い状況も無い。
「迷宮のおかげで、これじゃ射的だよ」
「ならばその腕前、存分に振るうがいい」
 照星に捉えたMk4を二連バースト――弱体化し止めを放つ。稼働不能に陥れば自然とパイロットは外へ脱出するだろう。確実に一つ一つの獲物を屠り、出口に飛び出た機体はアルトリウスが一撃の下に破砕する。パイロットを生かす為急所は外して――最大の難局は測定不能の埒外が、見事任務を果たしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴァイス・ローベルグ
ようこそ、猟兵の皆さん。鋼鉄の騎士の世界へ

…と、俺が貴殿らを歓迎するのはここまで
ここからはオブリビオンマシンを盛大に歓迎しよう

俺自身はウルバスがあるから借りはしない
むしろ、貴殿らの機体を後で見せて欲しい

【グラップル】での戦いだけは負ける気はしない
【オーバーブースト・マキシマイザー】の使用のための準備をしなければ…
殲禍炎剣の射程内に入らぬよう気をつけて高度を取りつつ、敵の懐に一気に入り込み、連撃をお見舞いしよう!

(終始無表情で話します。但し、機械に関する時だけ目が輝いている)

ウルバス…超軽量級格闘戦特化型C。遠距離装備はない

共闘、アドリブ大歓迎


響・夜姫

苦戦可

キャバリアをバラして売る。そのための足止めに……んん。これじゃない?
「キャバリア、売るよー」
こっち?

どさくさで試作機に乗り込むのがロマン。
空いてる機体を適当に乗るかもしれない。
乗らないかもしれないけど。
だいたい【サバーニャ】(全長1mくらい×大量)で【誘導弾/2回攻撃/鎧破壊/鎧無視攻撃/部位破壊】ズドンするから、あまり関係ないかもしれない。
狙うのは腕・肩・膝・股関節あたり。
「狙い撃つ、ぜー」

敵の攻撃は銃口の向きを【見切り】回避または【武器受け】で防御。
だいたいつもの戦闘パターン。

操縦担当:ぺんぎんさん。腕前はダイスのみぞ知る。
火器管制(乱れ撃つぜー)担当:夜姫。私にも銃を撃たせろー。



●ダブル・バースト
「ようこそ、猟兵の皆さん。鋼鉄の騎士の世界へ」
「おいっすー」
『グアッ!』
 後方からの奇襲は辛くも凌ぎ、残る敵は前方に展開した大部隊のみ。車上では続々と戦いの詰めに向けてキャバリアがスタンバイしている。その一角、ヴァイス・ローベルグ(鋼鉄の騎士の操り人・f30143)は新たに転移した一人と一匹の可憐な猟兵――響・夜姫(真夏の星の夢・f11389)に向けて戦況を説明し終えた所だった。
「……と、俺が貴殿らを歓迎するのはここまで」
 発進準備が整ったと顔を出した班長に目礼しつつ、夜姫の方へ向き直るヴァイス。やるべき時が来たのだと無言で少女の顔を覗き、荒事に向けての儀式を締めた。
「ここからは我々の手で、オブリビオンマシンを盛大に歓迎しよう」
 そのまま、軽やかな足取りでハンガーへ向かいながらくるりと向き直り、ニヤリと笑みを浮かべて夜姫に一言。
「むしろ、貴殿らの機体を後で見せて欲しい」
「私の、機体」
 手を振って搭乗口へ姿を消したヴァイスを見送り、夜姫は首を傾げた。機体持ってないし――むしろ。
「んむー、キャバリア……売ってる?」
『ここはバザーじゃねえ。それに、嬢ちゃんもアレか?』
 売ってない。そりゃあそうだ。声を掛けた班長に示されたのは前と後ろで起こっている激しい戦い。時折火球が爆ぜて、爆炎を吹き飛ばしながら鋼がぶつかり合う重苦しい音がここまで届いている。アレ――先に戦っている、仲間の猟兵達。
「うん、アレ」
『だったら、コイツをくれてやる』
 未だシーツが被っているやや小柄な機体――サイキックキャバリアと言うそうだ。兎も角、それに乗らないかという事らしい。夜姫はそれに無言で応じた。

「ペンギンさん、ゆーはぶ」
『グアッ!』
 その名も無き機体は白と黒のコントラストが美しい、まるで儀礼用の機体だった。ゴシック調の色味がかったドレスの様な装甲を纏い、両肩には翼の様な巨大な盾。頭部には嘴の様なフェイスガードが付いている。そしてコクピットは複座式。だからだろうか、ペンギンとペアで戦う様に見えた班長がこの機体を夜姫に提供したのは。しかし話はそれで終わらない。
『信じられねえ、あのペンギンが動かしてるのか……』
『何でも凄ぇサイキッカーらしい』
 夜姫の宇宙ペンギンは元々銀河帝国の最終防衛線で猛威を振るった超能力動物部隊の自称精鋭の推定超常兵器の類。如何に異世界のマシンとは言え、念動力でどうこうするならばうってつけのパイロットだったのだ。
『グアッ!』
 ペンギンが勇ましい叫び声を上げて、マシンがサイキックジェネレーターを最大稼働、妖精の羽根めいた光を撒き散らして、夜姫の機体は低空を猛スピードで駆け抜ける。
「成程、凄まじい……」
 更に超常が――無数の十字架型浮遊砲台を展開、蜂の群れの様にそれらが敵群へ雪崩込めば、瞬く間に戦列を分断。狙いをつける間も無くMk4は徐々に無力化されていく。
「当ててくれるなよ、猟兵――!」
 その渦中、ヴァイスは愛機ウルバスのスラスターを精一杯吹かして、止めど無く放たれる光弾の弾雨を躱していた。元より当たる事は無いだろうが、下手に掠れば超軽量級の格闘戦特化型クロムキャバリアたる自機では、甚大なダメージにもなりかねない。
「しかし、仕事もしなければな……」
 不意にレーダー上の光点と接触――敵のMk4だ。最大まで加速したウルバスなら軽く吹き飛ばせるだろう。操縦桿を器用に動かしスラスターの向きを変えて、インパクトの瞬間に最大級の鉄拳をお見舞いする。唯一と言ってもいいウルバスの武装、肥大化した腕部の攻防一体格闘デバイスが、弾雨に狼狽えるMk4をすれ違い様に削り飛ばした。
「戦場で余所見をするとは、迂闊」
 爆光を背に静かに言葉を吐いて、ヴァイスは次の獲物を見定めた。

「さあ、私にも銃を撃たせろー」
 一方、夜姫が展開した浮遊砲台――サバーニャは半自動で敵機を殲滅する。とは言え搭乗者の生命を奪わない程度に、敵機の四肢を吹き飛ばすくらいだ。だから物足りない。矢張りトリガーはエレガントに己が引かねば。ドレス状の装甲に仕舞われた分離型ライフルを繋ぎ合わせ、狙撃用のライフルをその場で拵える。サバーニャの射程範囲外にいる敵をスコープに納めて、静かに喧しく夜姫は吼えた。
「狙い撃つ、ぜー」
「乱れ撃ってるだろうに」
 開いていた回線から夜姫の雄叫びを耳にしたヴァイスがぼそりと呟く。視線の先では新たに爆ぜたMk4が光球と化した。だが未だ敵が優勢――ならば、そろそろだろう。無表情の奥でヴァイスが必殺のタイミングを計り、高度と出力、そして限界稼働時間を設定する。迂闊に高く飛び上がれば殲禍炎剣の餌食だ。それでも戦況をひっくり返すには最早、これしか手段が無い。
「よし……行くぞウルバス」
 カチリ、とタイマーが起動する。同時に機体のそこかしこから熱量を帯びた光が迸り――強制冷却も兼ねた超常の発光現象。これがウルバスの切り札。
「マキシマイザー……ドライブ!」
 刹那、激しい光が敵群へと飛び込んで、頭上より強烈な鋼の拳を見舞わせた。その反動で再度飛び上がり次の獲物へ――二つ、三つとヴァイスの眼下で火球が爆ぜる。幾ら堅牢なMk4とは言え、格闘戦特化機体の全力の一撃を喰らえばただでは済まない。粗方展開した敵機を倒した直後、雄々しく大地に立ったヴァイスに静かな殺気が刺さった。
「そこに居るのは、分かってる」
 瞬間の思考が、再び火を噴いたウルバスを弾丸めいた速度で飛ばす。トリガーを引くよりも早く、地面擦れ擦れを猛獣の様な姿勢で駆けたウルバスの連撃が、最後に残ったMk4を捕らえて砕いた。吹き飛ばされた大きな影は射出座席だろうか、後は搭乗者の無事を祈るだけだ。
「なんて、デンジャーな」
『グアッ!』
 大人しそうな割に恐ろしい戦い方をする、と。爆光を浴びてスラリと立ったシルエットを見やり、夜姫はほんの少し驚いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン


プラントに依って成り立つこの世界、コアマシンに依存した故郷を彷彿とさせます
騎士としてその生活を脅かす存在は許し難いですね
機体を破壊し搭乗者を解放しましょう

ロシナンテⅣを●操縦
センサーでの●情報収集と●暗視で索敵と渓谷の地形把握
輸送隊を●かばう為に派手に動き注意牽き付け

頭部と肩部格納銃器とサブアームの二丁のライフルによる●乱れ撃ちスナイパー射撃でナパームを●武器落とししつつ
●瞬間思考力で敵の攻撃や挙動を●見切り●推力移動での滑走や地形を●踏みつけての跳躍(●地形の利用)で狙い搾らせず敵集団に突撃

四肢を活かした運動と生身には不可能な挙動…私も慣れていますよ

懐に飛び込み装甲継ぎ目狙う近接攻撃で解体


ルイン・トゥーガン


はん、どっちかといえば勝ち馬に乗りたいものだけどねぇ?
とはいえ、『道化師の旅団』ってのがオブリビオンマシンなら寝返っても意味ないね
仕方ない、精々恩を売って報酬を期待するとしようかねぇ

アマランサス・マリーネ。ルイン、出るよ!
狭い渓谷でミサイルでミサイルとは、軌道が制限されて迎撃しやすくしてくれて感謝だねぇ?
ビームアサルトライフルと背中のサブアームに懸架したサブマシンガン2丁で撃ち落とすよ
ブーストと崖を蹴るのを合わせて渓谷を駆け上がって、敵が渓谷を降りたならそのまま渓谷の上から、渓谷の上に陣取ってるなら真下から強襲して一撃浴びせたら、そのまま敵の上空を滞空して【アドバンテージ・アンサー】を使うよ


秋月・信子
●SPD

…システム、オールグリーン
HCM-74ピースメーカー…起動

『上手く立ち上がれたじゃない。ほら、行くわよ。バザーで安く買い叩いたポンコツの実戦テストにね?』
…まさか、この子の『影』から『姉さん』ごと出せるなんて思いもよりませんでした

『そいつもあんた自身って事よ。ま、大量生産品のキャバリアだそうだし、連携運用が前提よね。それで行くわよ』

確かにこの子は、ワンオフ機…でしたか
たった一機で戦局を覆すタイプでなく、互いに補うように【集団戦術】を前提にした子でしたね
手堅く『影』や仲間達との【連携攻撃】、シールドによる【盾受け】、マシンガンによる【援護射撃】
攻勢に転じる際には二機連携の【制圧射撃】です



●全壊/全開
「プラントに依って成り立つこの世界、コアマシンに依存した故郷を彷彿とさせます――騎士としてその生活を脅かす存在は許し難いですね」
「はん、どっちかといえば勝ち馬に乗りたいものだけどねぇ? とはいえ、『道化師の旅団』ってのがオブリビオンマシンなら寝返っても意味がない」
「あの、こういうの初めてなんですけど……」
 最後の出撃、三人の猟兵が肩を並べて狭い通路を歩む。トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)、ルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)、秋月・信子(魔弾の射手・f00732)、それぞれが蹲る様に待機しているマシンの元へ――皆、自前の機体を持っている者達。ただ一人、信子は不安げに鋼の巨体を見上げていた。
「そんな得物担いで初心な振りなんてさせないよ。基本は同じさ」
 その様子を揶揄う様にルインが背中を叩く。少し背の低い少女めいた彼女はこれでも歴戦のパイロット。マシンでの初陣で緊張する信子の様子を――小物長物を担いだ兵士らしい姿を見やり、足早に背を見せて進んで行った。
「精々楽しもうじゃないか」
「は、はあ……」
 確かに、戦闘自体は初めてではない。車両の操縦経験だってある。だが、この人型兵器は初めてなのだ……本当に大丈夫だろうかと高鳴る鼓動を感じながら、信子もコクピットへと身を滑り込ませる。
「では参りましょう。ロシナンテIV、トリテレイア・ゼロナイン、行きます!」
 そして二人が準備を整えるより一足先に、まるで自身をサイズアップしたかの様な騎士然とした量産型キャバリア、ロシナンテIVがけたたましい音を上げてゆっくりと立ち上がり、飛翔した。
「早いよデカいの。アマランサス・マリーネ。ルイン、出るよ!」
 続いてルインの海兵隊用クロムキャバリア、アマランサス・マリーネが飛び立つ。その様子をコクピット越しに眺め、信子も静かにマシンのシステムを立ち上げた。

......SYSTEM CHECK
Control system OK
Residual fuel OK
Firearm selection OK
............
......SYSTEM ALLGREEN
HCM-74 <PEACEMAKER> Ready to launch

『上手く立ち上がれたじゃない。ほら、行くわよ。バザーで安く買い叩いたポンコツの実戦テストにね?』
「え、ちょっと」
 内なる声が――『姉』と呼び慕う二重身がクスリと笑う。こんなものだ。立ち上がり動いてしまえば後はいつもと一緒。何を恐れる必要があると静かに続けて。
(分かってる……でも……)
「ピースメーカー、秋月・信子、い、行きます!」
 そんなに戦場の風が好きなわけではない。だからやるしかない、これ以上世界に、悪意をのさばらせないために。

「地形走査完了。データリンク」
「了解。っと、こんな狭い所で――熱源来るよ!」
「あっ!?」
 スリーマンセルで滑空する三機はトリテレイアを筆頭に直ちにデータ共有。残敵は仲間の奮闘もあり残り僅かが一カ所に固まっているに過ぎない。ならば手早く済ませるのが吉と見て、突出した彼彼女等をナパームの歓待が待ち受けていた。見事な機動で回避するトリテレイアとルイン、しかし信子が一手遅れる。直撃は免れても、体勢を崩してやられかねない――歯を食いしばり衝撃に備えた刹那、それは起こらなかった。
「……まさか、この子の『影』から『姉さん』ごと出せるなんて思いもよりませんでした」
『そいつもあんた自身って事。行くわよ』
 現れた『影』――ピースメーカーと名付けられた自機と瓜二つのマシンが、間に割って入り攻撃を防いだのだ。否、それは自分自身。超常の『二重身』が、自らを当然の様に護り抜いたのだった。
「手品はお仕舞い? だったら付いてきな!」
『上等よ、ケツぐらい守ってあげるわ』
 軽口を叩くルインに応じ、二つの炎が尾を引いて螺旋を描く。それを呆然と見送った信子の前には見慣れた巨躯が――トリテレイアが彼女を守る様に正面に立っていた。
「行きましょう秋月様。余り離れてはいけません」
「……はい!」
 そうだ。ここは戦場だ。呆けている場合では無い。スロットルを開き、残る二機も連なる様に戦場を疾駆する。ここからは反撃の時間だ。

「思ったより広がっていますね……では、敵を引付けます」
 突出したルインとダブルを追い抜いて、トリテレイアが再び先頭に立つ。それを囲む様に放たれた火線に沿って、展開したサブアームと格納銃器から無数の弾丸が敵機を襲う。いつも通り、内臓火器と副腕を活かした即席の強襲砲台。まるで蛇の様に火線をうねらせて、前に出た順にMk4が続々と落ちていく。これを覆せたものは世界広しと言えどそう多くは無い、トリテレイア自身の常套戦術だ。
「似た様なモノなのに、化け物じみた動きしやがる」
 同じくサブアームを有するマリーネと比べて、余りにも大胆なその攻勢に舌を巻くルイン。自前の手足のように副腕が自在に動くロシナンテIVの挙動を見て、トリテレイアの非凡な操縦技術に感心の声を上げた。
「四肢を活かした運動と生身には不可能な挙動は、慣れていますから」
 余り騎士らしくはありませんが。さらりと言ってのけるトリテレイアはそのまま敵陣を分断、散開した敵機が遅れて迫るルインらに狙いを定めた時、二機のピースメーカーが彼女を守る様に立ち並んだ。
「火線は防ぎます! ルインさんは突破を!」
『伊達に『調停者』じゃないからねぇ!』
 掲げた大盾で狙撃を防いで、返礼の制圧射撃で暴力的な弾雨の中を押し通る。量産型とは言え堅牢なマシンは、ちょっとやそっとの無茶には十分耐えられる。
「そこを退きなッ!」
 その間隙を縫う様にマリーネが前に出る。増槽を外しスラスターを最大噴射。渓谷の斜面を舐める様に上昇して岩場を蹴り上げ、追い縋るミサイルをサブアームのマシンガンで叩き落としながら、歴戦の海兵は更に上へと上がって――そして、頭上は取った。急制動/反転/ターゲット・ロック――!
「こんな狭い渓谷で使う得物じゃ無いだろうに!」
 まるで連続した花火の様に火球が続々と生まれては、その隙間から速射型のビームが間断なくMk4を落としていく。超常の機動――敵の上を取った時点で、既に答えは出ていたのだ。
「十分、あなたも恐ろしい機動をします」
「伊達に長生きしちゃあいないよ。さて」
 信子の感想に軽口を返すルイン。メインカメラの先にはもう敵はいない――否、一つだけ反応が、唐突に出現したのだ。
「アレがボスか……!」
 突如現れた反応は今迄のモノとは全く違う。渓谷の上で長大な砲を携えた禍々しいその機体は、恐らくはこの『道化師の旅団』の隊長だろう。
「データリンク……Mk4全機沈黙。残るはあの機体のみ、ですね」
 ゆっくりと降り立ったトリテレイアが最後の敵機を見上げて宣う。
 そして返礼するかの様に、正面のマシンはモノアイをじわりと点灯させた。
 まるで、邪悪に微笑む様に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ブレイジング・バジリスク』

POW   :    ブレイジング・シュート
【ライフルの集中射撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    バジリスク・ランページ
【右腕のライフル】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    エンジンキラー
自身の【オブリビオンマシン】から【漆黒のオーラ】を放出し、戦場内全ての【エンジン】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●月に狂う
『全滅、か……』
 眼前で煙を上げる同胞の亡骸を見やり、男はコクピットで紫煙を燻らす。
『だがまあ、いい。今日が駄目なら明日がある』
 何故こんな事になった? 想定外の埒外が意外に健闘したから?
 否、それだけじゃあない。奴等は想像以上に頑張った。この局面で諦める事無く。
『その前、に』
 ならば確実に排除しなければならない。僅かでも世界に歪みを与える為には、どんなに些細な要員であろうと確実に排除する。男は咥え煙草のまま器用にセレクターを弄り、マシンの長大な砲を展開し狙いを定める。敗因は生きて帰ってから考えればいい。今は只生き延びる。その為にも。

『馬鹿な、警備主任!?』
 シドンが大声を上げる。モニタに映ったキャバリア――肩に髑髏の道化師のマーキングが付いた隊長機は、間違いなくガフの谷の警備主任の機体だった。だとすれば、中に居るのも恐らく……。
『迷ってる場合じゃねえ。聞こえるか猟兵、アイツを止めてくれ!』
 もしそうだとしても、見逃す理由にはならない。狂ってしまうならば、マシンが人を狂わすならば、それを壊して元通りにしてやる他無いだろう。
 瞬間、光条がトレーラーの前を穿ち地面に大穴を空ける。射線上には敵は無く――否、飛翔した悪意は月を背負って、今一度反撃の狼煙を上げたに過ぎない。
 残る敵はただ一つ、これを止めなければ戦闘は終わらないのだ。

※プレイング募集:10/7(水)8:31 ~ 10/9(金)8:30 迄
アルトリウス・セレスタイト
さて。早々に止めねばならんか

確認次第『刻真』で自身を無限加速し接敵
機体に接触し天印起動
静止の原理は行動も能力も絡め取る
捕らえ、封じ、討つ

高速詠唱を幾重にも連ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
接触の一手で無数の印を同時に撃ち込み、更にその瞬間を無限循環
相応に強ければ一つ二つは抜け得るだろう
故に枷を増やす単純な図式
常に新たな印を重ね続け封殺を図る

戦況は『天光』で常時把握
自身への攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎


荒谷・つかさ
……出遅れたと思ったら、大物が釣れたみたいね?
いいわ、任せなさい。遅刻した分はきっちり働いて見せるわよ。

機体には搭乗せず、生身で正面から徒歩で接近
例え銃口を向けられたとしても、当たらない威嚇射撃を受けたとしても構わずに怯まずに真っ直ぐに見据えて近づいていく
命中弾が来るなら「怪力」込みで【螺旋鬼神拳】を発動
正面からライフル弾を殴って迎撃、バーストなら連打で破壊する
体勢は崩して無いもの、このくらい余裕よ

直後、一気に踏み込んで急接近
下半身フレームを狙い再度【螺旋鬼神拳】を叩き込む
行動不能にできたなら、素手(怪力)でコクピットハッチをこじ開けてパイロットを引きずり出すわ
(※救助活動です)



●鋼の悪魔
『待ちぼうけさせるのも何だしなあ……』
 男が――警備主任がハッチを開き、自ら身を乗り出して戦場を眺める。硝煙と血の臭いを乗せた風が心地よい。そして悍ましい。この闘争に溢れる世界は――。
『……終わらせるッ!』
 咥え煙草を吹き捨てて再びマシンへ。エンジンの脈動が全身を揺らし、途端、背後に背負った歪な機械がどす黒いオーラを噴出する。不定形生物の様にねっとりとした漆黒の津波が一面を覆って――それが通り過ぎると共に、数多の機械が突如その動作を停止した。
『ジャミング!? いや、エンジンが……』
『あの野郎、いきなりそれを使うってか!』
 予備バッテリーで辛くも機能を維持した車内でシドンが吼える。警備主任のマシン――バジリスクが背負った機械――対キャバリア用エンジン殺しが、範囲内の機械の心臓たるエンジンを強制的に止めたのだ。このままでは進む事も引く事も叶わない。
『さぁて、木偶人形はどんどん仕舞ってくぜ――!』
 バジリスクがゆっくりと銃口を上げる。狙うは機能停止したキャバリアの一団。銃身が展開し回転式速射砲の様な禍々しいフォルムが露わになって、照準のレーザーサイトが地を舐める様に光跡を伸ばしていく。しかしその光は、突如虚空に掻き消えた。

「……さて。早々に止めねばならんか」
 声がした。この状況下で動けるマシンは無い。にも拘らず己と対峙する、決意に満ちた冷たい声音が――アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)が屹然とバジリスクの前に立ちはだかった。
『レプリカント、いや違う……何者だ』
「貴様の敵だ。それ以上答える必要は無い」
 瞬間、レーザーサイトの光に沿って、青白い獰猛な光がバジリスクの喉元へと迫る。
『こいつはヤバい奴だッ!』
 歴戦の勘が――目の前の存在が埒外の戦力である事を即座に自覚させた。スラスターを噴射し距離を取るバジリスク。牽制の速射がアルトリウスの側を過り、耳障りな甲高い銃声が頭に響く。刹那、白い影はバジリスクの視界から消え失せて――たたらを踏んで着地したバジリスクの背後に忽然と現れた。
『動けるだと、この状況で?』
「生憎、俺のエンジンはここじゃあない」
 止まる訳が無い。人にして人ならざるアルトリウスの超常は原理――虚空に揺蕩う意思の端末なればこそ、指定された戦域のみ効果を及ぼすエンジン殺しは、アルトリウスの威を狩る事など出来ぬ筈、だった。
『そうかい。それが分かりゃ上出来……だッ!』
 警備主任がガチャガチャと端末を操作する。軽やかなキータッチはまるでピアノの旋律の様――しかし奏でられた音色は、美しいとは程遠い悍ましい音だった。

 クロムキャバリアには多数の機動兵器が存在する。それらは只の機械だけでは無い。意志持つ巨神スーパーロボット、魂無き器ジャイアントキャバリア、そして超古代の遺産たる魔導兵器サイキックキャバリア――故に、機械同士の戦いが全てでは無い事は、この世界において最早常識である。
「まさか、概念にすら干渉するか」
 対魔導干渉プログラム三番から全部、片っ端に直接物量攻撃――埒外が相手ならばこちらも埒外で対抗するまで。オブリビオンマシンたるブレイジング・バジリスクは寸での所で、攻撃対象に『魔術的概念で駆動するモノ』を付け加えた。故にアルトリウスの攻撃が届く瞬間――原理で駆動する埒外の超常は僅かにその威を削がれる。式の組み合わせで紡がれた現象ならば、その式を崩せばよい――僅かな干渉が作った隙、そしてその隙を逃す程、警備主任はまだ耄碌してはいない。
『理解した方が勝つんだよ、戦争ってのは』
 スラスターを吹かして距離を取るバジリスク。危ない所だった――アルトリウスの手が触れれば、間違いなく自分はここでやられていた。
「それじゃあ」
 故に、戦争は回帰する。法則に則り、最大の効果を発揮する様に。
「これは分かるかしら?」
 至極単純に、至極当然にそれは、烈風を纏い放たれた。

『ただの、投石……!?』
「そう、ただの投石よ」
 放たれたモノはそのあたりの転がっていた何か。それを鬼の女――荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)は力の限り、その拳で叩き放っただけである。
「……出遅れたと思ったら、大物が釣れたみたいね?」
 髪をかき上げ、表情も変えずに赤いマシンを一瞥するつかさ。その全身に漲る闘気が大気すら歪ませて――超常でも何でもない、鍛え上げた人の身が放つ凄まじき熱量が、冷たい暗夜を仄かに照らす様に。
「任せなさい。遅刻した分はきっちり働いて見せるわよ」
「持つのか?」
 一歩前へ。初撃はつかさの怪力に耐えられず着弾前に粉々に砕け散った。ならば、と周囲に転がる鋼の骸に拳をつけて。
「筋肉が動く限り」
 そしてジェット噴射の様な轟音と共に、鋼鉄の塊が再び宙を舞う。
「生憎、私はあなたと同じよ。止められるなら止めてみなさい!」
『化け物、がァッ!』
 エンジン殺しの最大の弱点、それは搭乗者と同じ仕組みで駆動するものまでは止められない。つかさは人の身なれど、強靭さは鋼と同等かそれ以上。その威を何もせず喰らい続けては、さしものバジリスクとて堪ったものでは無い。反撃の速射でつかさを狙うも、たかが徹甲弾――鋼を越える剛腕がそれらを尽く鬼神の拳で打ち砕く!
『チィッ! セレクト、弾種散弾! あのいかれた軍鶏をブッ飛ばせ!』
 ならば全身を狙えばいい。備え付けの銃身下部ガンポッドが回転し、大質量のショットガンが火を噴いた。それでも鍛えた体を穿つには、些か威力が足りなかった。

「散弾ではね――貫けないわ」
 ぎろりと睨みを利かせて跳躍した鬼は遂にバジリスクの胸元へ。強引に怪力がハッチをこじ開けて、剥き出しになったコクピットには冷や汗を垂らす警備主任の姿が。だが。
「この意志も、肉体も」
『だったらコイツはどうだ!』
 その手には対装甲用大口径拳銃――マスターキーとも呼ばれる対物兵装がつかさの眉間に狙いをつけた。途端、引き金が引かれると共に……暴虐の弾丸は青白い光と共に掻き消えた。
「消えた……」
「余り無茶をするな。お互い人の身だろう」
 つかさの横にはアルトリウスが――その手は既にバジリスクに触れた。途端、無数の青白い光が鋼の悪魔を包み込む。
『こんな、人間が、いてたまるか……!』
 攻撃対象はオブリビオンマシンのみ。まるで地獄の業火の様に青白い炎――アルトリウスの天印で焼かれる鋼の巨体を眺め、二人は静かに距離を取った。

『ハァ……まだだ……』
 解析完了。概念的欺瞞ユニット投射、代償にエンジン殺しの機能停止――仕方がない。生き延びる為にはこの地獄を潜り抜けねばならぬのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖


1章で借りたC

あれさ
壊した後直したり同じもの作ったり出来んの?
敵差し
いや
ほんのちょっと乗っただけでも
すげぇ頼もしいって分かるから
きっとあの乗り手の人にとっては
…大事な相棒なんだろうなって

まぁ死ぬより
仲間倒すよりはいいよな

試しは十分
本気で行くから
今だけ…もう少しだけ力貸してくれよ
相棒

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波飛ばし残像纏いダッシュで間合い詰めグラップル
拳で殴る
行ける!

集中攻撃なら直線だし読みやすい
UC起動し間近で見切り避け
部位破壊でライフル狙う

あんたらは長年のコンビなんだろうが
乗り手の意志が籠ってねぇな
そんなのに負けらんねぇ
更に踏み込み拳の乱れ撃ち
振り回されてんじゃねぇ


ルイン・トゥーガン
ハッ、警備主任ねぇ?
敵は獅子身中の虫だったわけだね、ってことはガフの谷の連中はどうなってることやら
ちゃんと報酬出るんだろうね?
出ないなら、正直一抜けさせてもらいたいもんさね
おっと、アタシも狙われてるとは、抜けたくてもそうはいかないようだねぇ
見逃しても……くれそうにないねぇ?
仕方ないね、恨むならその判断をした自分を恨むんだね

腕は確かなようだね。でも、それだけじゃねぇ?
渓谷の崖を蹴って足場に、ジャンプ力とスラスターを併用して縦横無尽に動き回るよ
右腕が武器腕と、なら左側で翻弄するさね
両脇下から突き出したサブアームのサブマシンガンで弾幕張って銃弾と粉塵で目晦ましで足を止めて、右腕に本命を撃ち込むよ!


支倉・錫華
これはまた……味方ごとっていうのが狂ってるね。
今回はちょっと助けてもらわないと、危険っぽいかな。

「アミシア、ジャミングと動力補正は任せるね」
わたしは機動と攻撃に集中するよ。

相手の性能はわからないけど、オブリビオンマシンってことだし、
こちらも強みを生かしていかないとかな。

格闘戦ができないとは思わないけど、射撃のほうが得意そうだから、
【モーターブーム】を使ってヒットアンドアウェイで相手を削っていこう。


できるなら機体の手足を切り落として機体を鹵獲したいところだけど、さすがに難しいかな?
ま、中の人を助けられるなら、そこはしかたないか。
それにしても、ワンオフっぽい機体はオブリビオン化しやすいのかなぁ?



●リスタート
『エンジン起動! 各キャバリアの状況は!?』
『半数は無事に再立ち上げ完了です!』
『奴はどうなった! あれで終わるタマじゃあない!』
 怒号が飛び交う車内、モニタリングしていたバジリスクは既に姿を消していた。先の攻撃を受け渓谷の奥へ逃げ込んだのだ。しかしレーダーは複雑な地形のおかげでその姿を捉える事は出来ず、戦況は開始時点に戻ったと言ってもいい。
「ハッ、警備主任ねぇ? 敵は獅子身中の虫だった訳かい、ってことはガフの谷の連中はどうなってることやら」
『狼煙は上がってねえ。俺達が出た時間を考えりゃ、谷はまだ無事だろう』
 悪態を突くルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)へ苦虫を潰した様な声色でシドンが答えた。狼煙――万が一の事が谷に起これば、特定の色の狼煙があげられるという決まりである。故にこの状態でも谷そのものは無事だろうというのがシドンの考えだった。最もルインにとっては谷の無事よりも大事な事がある。
「そうかい。で、ちゃんと報酬出るんだろうね?」
『たんまり用意してやらあ。ここを無事に抜けられればな!』
 こんな状況だ。正直一抜けさせてもらおうかとも思ったが……出るモノが出るなら話は別。滑らかな手つきで暖気状態の機体を目覚めさせて、アマランサス・マリーネはアイセンサを静かに灯す。
「上出来だ。吐いた唾呑むんじゃないよ!」
 スロットルマキシマム。長い炎が尾を引いて、ルインの機体が一足先に矢の様に放たれた。敵が渓谷に逃げたのならば丁度いい――ゲリラ戦は海兵隊の十八番。存分にその力を見せつけてやろうじゃないか。

「あれさ、壊した後直したり同じもの作ったり出来んの?」
「まあ、部品さえあればな。キャバリアとはそういう物だ。何故そんな事を?」
 一方、陽向・理玖(夏疾風・f22773)と支倉・錫華(Gambenero・f29951)は機体を整備班長に預け、それぞれのコクピットの中でつかの間の休息を得ていた。慣れてきたとはいえキャバリアは初陣の理玖に、借り物を強引に改修した錫華、共に機体のダメージが蓄積している最中、先の混乱に乗じて可能な限り修復作業を進めていたのだ。
「いや、ほんのちょっと乗っただけでも、すげぇ頼もしいって分かるから」
 モニタに映るのは先の戦い。赤いマシンが戦場を跳び回り、二人の猟兵がそれを追い詰める姿。あの恐ろしい二人を相手に逃げ果せたのだから大したものだと理玖は感心する。自身だって肉体が拡張したようなこの感覚は新鮮で、何よりも力強さを感じられた。だから。
「きっとあの乗り手の人にとっては……大事な相棒なんだろうなって」
「その気持ちだけで十分だよ、きっと。しかし」
 通信越しに微笑する錫華。確かに、自分にだってそういうマシンがある――見せる訳にはいかないが。誰にとっても愛機とは、大抵がそういう物だから。だからこそ、錫華は静かに怒りを覚えているのだ。
「これはまた……味方ごとっていうのが狂ってるね」
 恐らく基点となったのはあのバジリスクだろう。警備主任用の特注機。背部多目的バックパックにはまだ見えざる機能もあるだろうし、右手のライフルは様々な形状に可変する万能兵装――矢張り、ああいうワンオフっぽい機体はオブリビオン化しやすいのか、と独り言ちて、谷の警備隊を狂わせたその元凶に思いを馳せる。
「まぁ死ぬより、仲間倒すよりはいいよな」
「そこは同感だ。さて」
 理玖の言う通り、マシンさえ破壊し中のパイロットを救出すればいい。決して容易い事ではないが、その事実がどれだけ救いであるか――数多の世界を戦い抜いた理玖にとって、それは希望に他ならなかった。

「腕は確かなようだね。でも、それだけじゃねぇ?」
『今度はキャバリアか! ならば!』
 渓谷では第二の戦いの火蓋が切って落とされた。損傷した構造材をナノマシンが急速補修し、エンジン殺しの再稼働までエネルギーを貯えきる――そんな事はさせまいと、闇に紛れたマシンが火を噴いて、渓谷を跳び回り旋回包囲機動を取る。崖を足場にマリーネが武器の無いバジリスクの左側を取る様に跳ね回れば、対称形にスラスターを吹かし一定距離を保ちつつ応戦するバジリスク。マリーネのビーム突撃銃の火線がまるで誘導灯の様に鮮やかな軌跡を描き――狙いはバジリスクの足元。幾ら重装甲の特注機とは言え動きさえ止めてしまえば、火力に劣るマリーネとて十分に勝機はある。だが。
『随分と元気だが、ここでの戦いは初めてだろう!』
 不意にバジリスクの火線がマリーネの頭上を襲う。外した――いや、違う。明確にそこを狙うという殺意があった。
「気でも狂ったのかい? アタシはここだよ!」
 その隙にスロットルを全開にして突撃するルイン。しかし敵の狙いはルインでは無かった――不意に崩れた岩場が続々とマリーネの行く手を遮る。多数の構造物はレーダーの反応を狂わせて、衝撃が一つ、二つとルインに襲い掛かった。
「ちいッ! 最初からこれが狙いかい!?」
『そうさ。ここは俺の庭みたいなもんでね』
 崩落する岩場に巻き込まれぬ様退避をしつつ、喧しいアラートを切って目視戦闘に切り替え……瞬間、ぞっとする殺意が、鈍色の銃口がいつの間にかルインの眼前に迫っていた。

『あばよ、中々いい腕だった』
「だったら、アタシを雇わないか?」
 今際の際か、銃を落としてわざとらしく命乞いをするルイン。しかしその眼に諦観は無い。海兵ならば最後まで決して勝利を諦めない。それだけは常に心に刻んできた。
『いいや、もう十分足りている』
「なら、仕方ないね」
 諦めて両腕を降ろしたマリーネを見下ろし、バジリスクがトリガーを絞る、刹那。
「恨むならその判断をした自分を恨むんだね」
 不意に横薙ぎの突風が、バジリスクの巨体を大きく揺らした。
『何だ、モーターブームか!?』
「アミシア、ジャミングと動力補正は任せるね」
「余所見してんじゃあ、無いよ!」
 そしてマリーネの隠し刃――副腕のサブマシンガンがそれに乗じて火を放つ!
『まだ、いたと言うのか……おのれぇッ!』

 錫華の相棒――パートナーユニットのアミシアがフリントストーンのジャミングを起動し、存在を隠匿したまま奇襲のモーターブームを浴びせる。体勢を崩した所を更に正面のマリーネがサブマシンガンで動揺させて、本命の攻撃――スタークドラゴンの鉄拳が直上よりバジリスクに迫る。
「試しは十分。本気で行くから、今だけ……もう少しだけ力貸してくれよ、相棒!」
 加速した鈍色の巨体は摩擦熱で外殻が赤熱化――否、それだけでは無い。
「行くぜ……変身ッ!」
 スタークドラゴンの内部で理玖の発した莫大な熱量が、そのままマシンに伝播する。その熱が鋼鉄を鈍色を焼き尽くして、青光りする玉虫色の鋼へと変貌せしめた。
『三機だとぉッ!?』
 正面の銃撃、側面の衝撃、そして直上の鉄拳が同時にバジリスクを襲う。
「寝坊でもしたのかい? 延滞分はきっちり仕事してもらうよ!」
「狙うのは、勿論……」
「右腕の、ライフル!」
 取り囲む様に旋回包囲を取るルインと錫華、その真上から理玖の拳がバジリスクの肩口を捕らえた。咄嗟の回避で左腕を突き出して、かろうじでライフルへの直撃を避けたバジリスク。砕かれた左腕がバチバチと紫電を漏らして、それでも尚獰猛なモノアイが――否、閉じられていた右眼が露わになり、無数の目が連なる複合型センサーユニットが三機の動静を把握した。まるで深淵から睨み返す怪物の様に。

『成程どうして大した連中だと思えば、谷の奴らじゃねえな』
「その谷を守ってたんだろ、あんた」
 今更な台詞に対し啖呵を切った理玖。自らの役割を忘れ狂気に呑まれた彼を糾弾する必要は無い。だが。
『忘れちまったな、そんな事は!』
「……だったら機体を捨てて逃げればいいさ」
 過去が今を無かった事にしようとする言動は、甚だ許されるものでは無かった。それはこの世界を戦い抜くルインも同じ。自身をこんな目に合わせた国を許す気は毛頭無いが、生き延びる為の術を与えてくれた事自体は否定しようが無い。それすらも、オブリビオンは無碍に出来るというのならば……そんな連中が私をこんな目に遭わせたのだというならば、倒すべき敵はあのマシンだ。
「できるなら機体の手足を切り落として機体を鹵獲したいところだけど、さすがに難しいかな?」
『可愛い声しておっかねえ事……言いやがるッ』
 そして錫華の意に反する様に、バジリスクのライフルが火を噴いた。徹甲弾が大地を舐めるように穿てば、三方に散らばったキャバリアを射殺さんと苛烈な弾幕を形成する。片腕が無い分反動をもろに喰らうのか、たたらを踏んでつんのめったバジリスクの動きは、まるで下手糞な舞踏の様だった。
「振り回されてんじゃねぇ。意志が見えねえんだよ、今のあんたの動きには」
 それでも殺意は苛烈――跳弾が渓谷を乱舞して自在な動きすら阻まれる。それでも、傷を負おうと飛び込まねばならない。拳を突き出して突撃する理玖を援護する様に、ルインの火線が、錫華のモーターブームがその道を切り拓いて。
「長年のコンビなんだろうが!」
『だから、こういう事も出来る!』
 そして、激突。前のめりに倒れたスタークドラゴンの拳がバジリスクのライフルを捉え、止めのモーターブームが右腕を根こそぎ断ち切った――否、蜥蜴の尻尾切りの様に、バジリスクは己が得物をあえて捨てたのだ。我が身一つでそのままスラスターを吹かし、赤い悪魔は渓谷の更に奥へと姿を消す。
「ここから逃げるなんて大したものだね。まあ……」
 武装は剥ぎ取った。もし再構築しようとも限度がある。着実に猟兵はバジリスクを追い詰めているのだ。
「そう長くは無いよ、きっと」
 ハッチを開き煤けた匂いを浴びた錫華がぼそりと呟く。狩りはまだ終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァイス・ローベルグ

エンジン停止は厄介な…
近づくだけの時間が欲しい
…そうすれば30秒は稼いでくる

生身の方がいいならウルバスから降りて突っ込むか

近づければ【絶対零度の聖域】を発動する

「近づければこちらのものだ。…30秒、いや、40秒しか持たん、最悪俺ごと行け。」

凍って動きにくくなっているが、無理矢理動いて【グラップル】で殴り付ける

そんなに時間はかけられん、【限界突破】でもしておくか

…一応解くのに時間がかかるから少なめに言ったのだがな
ゆっくり解かんとショックを起こすから…


響・夜姫


「見つけた。世界の歪みを。私、響・夜姫神が粛清しようというのだー」
……大丈夫。峰撃ちにするから。
無駄に両手を広げて【空中浮遊/存在感】で悠然と移動しつつ【先制攻撃】。
「絶紅蝶であるー。ふぁいやー」
蝶の形で炎の弾丸・華焔を【範囲攻撃/一斉発射/乱れ撃ち】といった技能で飽和射撃したり。
「せーふてぃーを外す。カマエル。撃つ。簡単、でしょー」
分離状態のライフルを可動させた肩のシールドとサバーニャで囲んでエネルギーフィールドで強化して照射ビームしたり。

戦闘スタイルは、機動戦しながら範囲攻撃ばら撒き。
一応、ちゃんと四肢や関節部分を狙う。

ぺんぎんさんは念動に集中してた。PengiNドライヴモードらしい。



●キルゾーン
「エンジン停止は厄介な……近づくだけの時間が欲しい。出来るか?」
 渓谷の更に奥、ヴァイス・ローベルグ(鋼鉄の騎士の操り人・f30143)と響・夜姫(真夏の星の夢・f11389)は先回りし、岩場の上でバジリスクの通過に備えていた。あれだけ派手に暴れていたのだ。その間に移動した各部隊によって既に包囲網は完成している――故に、バジリスクが前進を選ぼうと撤退を選ぼうと、最早逃げ場はない。
「おっけー。あ……来たよ」
 レーダーに迫る光点が映る。その速度は更に増して、会敵まで残り僅か――直ちに二人はキャバリアを待機状態から戦闘状態へ立ち上げる。途端、破裂しそうな震動が足場の岩塊を砕いて、バラリと採石が転がった。
『腕の予備フレームは間に合ったか。まさか、ここまでやるたぁな』
 バジリスクのコクピット、警備主任は徐々に消えていく警告灯と入れ替わる様に響いたアラートに舌を打つ。レーダーに感。敵は二機――通常型とサイキック。手傷を負わされたこの状況では些か分が悪い。
『で……こんな所で待ち伏せかい』
「見つけた。世界の歪みを」
 煽る様に通信を開き、口元を歪ませてコンソールを叩く。モード速射。やられる前にやる――ターゲットはサイキック。ああいうのは能力発動に時間が掛かるのが常、その前に叩けばいい。ガチャリとバジリスクが手にしたライフルが変形し、真新しい銀色の砲身が飛び出した。
『何が歪みだ。外から来ただろう貴様らが何を!』
「私、響・夜姫神が粛清しようというのだー」
 外から来た――埒外の戦力共は、あの人間離れした連中も含め本当に何を言ってるのか理解に苦しむ。たかが個人の力だけで世界をどうこう出来ると、本気で思っているのか――返す言葉と共に銃口を夜姫の機体へと向けて、戦端が開かれた。
『喧しいわ、小娘がッ!』
 凄まじい炸裂音と共に徹甲弾の火線が魔導士めいたキャバリアへ殺到した。それを難なく躱しふわりと浮かび上がったまま、夜姫は無数の浮遊砲台――サバーニャを展開し、バジリスクを取り囲む様に死出へ誘う十字架が一斉に火を噴いた。
「当たらなければ、何ともないー。ぺんぎんさん、例のアレ」
『グアッ!』
 念動エンジンたるPengiNドライヴが漲る力を解き放ち、マシンを操るペンギンの念動力が炎の蝶へと転化される。赤黒く燃え盛る炎に囲まれたその姿は正に不死鳥、いや――。
「絶紅蝶であるー。ふぁいやー」
 炎の蝶だ。十字架より放たれた蝶を模した全方位攻撃は瞬く間にバジリスクの周囲を焼き尽くした。その威力は銃を撃とうものなら引火して自らが爆発しかねない程。
『何て出鱈目な! これだから、魔導兵器は……!』
 更にバジリスクを逃さぬ様に周囲をエネルギーフィールドで包み込み、自身の武装を長砲身のロングライフルへと組み替えて精密狙撃で逃げ場を封じる夜姫。そして急速に上昇した機体温度は、遂にバジリスクの自由を奪い始めた。
「せーふてぃーを外す。カマエル。撃つ。簡単、でしょー」
『クッ! 強制冷却!』
 ラジエータが轟音を立てて強制排熱。せめてもがれた手足の内、足だけでも自由を取り戻さんとバジリスクは悲鳴の様な音を立てる。幾分か動きが鈍くなろうと、このまま焼かれて死ぬよりはマシ――かろうじで四肢の自由を取り戻す。しかしそれこそが、彼の待ち望んだ時であったとも知らずに。
「――その時を待っていた!」

「これより現れるは神話の領域。生きたいのなら逃げることをお勧めする」
『誰が逃げるか! 誰が……!』
 ヴァイスの機体――ウルバスが拳を前に突き出して一歩ずつバジリスクの方へ。のたりとした赤い悪魔を追い詰めるのに、最早速度はいらない。だからこそ確実に仕留める――インパクトナックルの固定ボルトが展開し、まるで花の様に開いた中心には青白い光が。それは超常、内なるヴァイスの持つ神器の力を開放した絶対零度の聖域。
「逃げられれば、な!」
 途端、渦を巻いて放たれた凍てつく刃が周囲を急速に凍らせる。入れ替わる様に炎の蝶が鳴りを潜め、変わって世界は赤黒い炎熱地獄から青白い氷結地獄へと様変わりしたのだ。
『ば、ラジエータが……機能停止!?』
「近づければこちらのものだ。30秒、いや、40秒しか持たん、最悪俺ごと行け」
「らじゃー」
 強制冷却モードで動きが鈍らなければこうもならなかっただろう。それに灼熱の次に氷結の攻撃とは予想だにしなかった。だがそれが可能なのがユーベルコード――物理法則はとうに超越している。そしてそんな戦いを幾度も潜り抜けて来たのだから。
『ええぃ、動け!』
 奴等を止めれば――エンジン殺しさえ動けば。しかし急激な温度変化でマシン自体の機能が停止。再立ち上げには時間が掛かる……その隙を、彼等が逃すとは思えない。
「……大丈夫。峰撃ちにするから」
『殴り殺すつもりか、その機体で!?』
 サブシステム起動――完了。
 駆動系の復旧を最優先――完了。
 方位設定、正面に敵を捉えろ。まだ戦いは終わっていない。
 動けぬのなら敵の力を使えばいい。ここは俺の庭だ……刹那の思考が無意識にマシンを動かして、ヴァイスと夜姫の二体と正面から対峙するバジリスク。
「そんなに時間はかけられん……これで終わらせる!」
 限界突破――自身すら無事では済まない大技を引っ提げて、ウルバスの突き出した鋼の拳がバジリスクを吹き飛ばす。その直後、火線を絞った夜姫の追撃がバジリスクの四肢に命中し、霜の張った真紅の巨体はそのまま遠くへと吹き飛ばされた。
「やったの?」
 方位はバジリスクが現れた方……つまり、仲間の包囲網の内。これならば逃げる事は叶わないし、何より。
「恐らくは。あれだけの温度攻撃だ。電装系もズタズタだろう」
 手ごたえはあった。内からも外からもバジリスクは多大なダメージを受けている。超常を解除してゆっくりと機体を起こすウルバス――拳を振り抜いた姿勢から徐々にその身体を持ち上げる姿は、大きな戦いを終えた勇者の様だった。
「ゆっくり解かんとショックを起こすから、気をつけろ」
「でも、ペンギンさんは、喜んでる?」
 炎に氷――幾らサイキックキャバリアと言えど掛かる負担は絶大の筈。だが氷はペンギンにとってホームグラウンド。何故か出力は上がっていた。
「まあ……無事ならばよかった。後は」
 後は、仲間に任せよう。戦いの終局は近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン

警備隊長…手練れだとしても引き下がる訳にはいきません
トレーラーには指一本触れさせはしませんよ

センサーでの●情報収集と●スナイパー知識で敵位置計測
トレーラー狙いの射撃をUC●盾受けで反射
盾を印象付けると同時に攻撃牽制

ジェネレータのエネルギーにも限界ある以上…

銃器の●乱れ撃ちで迂回行動を牽制しつつ●推力移動で敵機に急速接近
トレーラーをかばう為●ハッキングによる直結●操縦での細やかな挙動で敵を抜かせず張り付く近接戦闘

強行突破する敵へすれ違い様にアンカーを●だまし討ち捕縛
大盾を脚部に●投擲し移動阻止
好機と放たれた弾を●瞬間思考力で●見切り●武器受けで反射

指一本触れさせぬと言った筈です


ブランク・コード


どんな切っ掛けでも煽られてしまえば
マシンの手に『堕ちる』とは聞いてはいますけど……、
守る側が堕ちてしまってはしようが無いじゃないですか!!

……獲物が獲物です。潰させて貰いますよ!
このまま高速戦闘で駆け抜けます!

敵のライフルからの攻撃……
おそらく乱れ撃ちに近いでしょうが、
【瞬間思考力】で【見切り】、
【ジャミング】で照準を妨害しながら【指定UC】で駆け抜けます!
狙いは――ライフル本体!

機体は射撃型ですし、
そこまで白兵に長けていないでしょうから、
懐に潜り込んだなら【鎧無視攻撃】【切断】の【早業】で
その得物――光刃で貰い受けます!!

……あ、俺一兵卒ですよ???
(※最早言い訳するのも苦しい立ち回り)



●騎士と兵士
「警備主任……手練れだとしても引き下がる訳にはいきません」
「どんな切っ掛けでも煽られてしまえばマシンの手に『堕ちる』とは聞いてはいますけど……守る側が堕ちてしまってはしようが無いじゃないですか!!」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)とブランク・コード(無よりの変異・f30157)はトレーラーの守備を担当していた。万が一抜かれた時の最終防衛線――その万が一が遂に、起ころうとしていた。
『よぉ、呼んだか?』
 突如レーダーに反応が一つ。先の戦いでボロボロにされ吹き飛ばされたバジリスクが、渓谷の隠し通路を伝ってここまで出て来たのだ。奥へ逃げようにも敵が待ち構えている。ならばもう、前に出て目的を達成する他無い。たとえどんな手段を使おうとも――しかしここでも、猟兵達はまだ自身の邪魔をするのだと息巻いている。
「トレーラーには指一本触れさせはしませんよ」
「……獲物が獲物です。潰させて貰います!」
 トレーラーの守備を買って出たのか――守備、かと自嘲気味に笑う警備主任。だがマシンが囁くのだ。本当に世界を守りたければ、やるべき事はこれなのだと。
『……やってみろよ』
 ガチャリと銃口を上げてすぐに、開幕のゴング代わりの速射砲が渓谷に響き渡る。ここを突破すれば目的は達成されるのだ……そして、最後の戦いが始まった。

(成程、類い稀な継戦能力の正体はこれでしたか)
 トレーラーに向けて伸びる火線に割って入ったのは、トリテレイアのロシナンテIV。雄々しく掲げた大盾がバジリスクの攻撃を弾き、同時に機体のセンサをフル稼働させて敵機の様子を探る。どうやらバックパックに四肢や武装の予備を積めるだけ積んで、破壊される度に繰り返し交換していたらしい。その予備もあと僅か、ここさえ凌げば自分達の勝利は間違いない。
『中々早いじゃねえか、見た目の割によッ!』
 吼える警備主任。同時にライフルの銃身が大きく伸びて、速射砲を放ちながら長大な砲を形成する。それは戦闘開始を告げた、バジリスク最大の武装。
「敵のライフルからの攻撃……あれは!」
 故に止めねば。ブランクの手がコンソールを叩き、続けてビットがバジリスクへと叩き込まれる。そのままスロットルを最大に開いて、ブランクのシグルド=キャルバリアは瞬く間にバジリスクへ間合いを詰める。
「それは撃たせない!」
『ならば、やってみろと言ったッ!』
 勇ましく飛び込んだブランク。マシンが手にした光剣が最大展張し、まるで爆ぜる前の恒星じみた輝きを放つ。それを見やり、トリテレイアから攻撃対象をブランクへと変えたバジリスクが、右の複眼を妖しく開いて睨みつける。
 瞬間、光が世界を覆い尽くした。

「やれた、のか……?」
「まだです。敵は健在、反応も近い」
 膝を付いたシグルドを起こして、ロシナンテが全周を警戒する。バジリスクの火砲とシグルドの光剣が激突して、辛くもトレーラーへの直撃は防げたものの、それを目くらまし代わりに奴は姿を消した。
「やっぱり、俺では無理だ。たかが一兵卒が」
「兵士は忠をもって戦うものです。自身を卑下する理由にはなりませんよ」
 勝手に気を落とすブランクへ喝を入れるトリテレイア。騎士を目指す機械人形は、己が役割を定義しているのなら果たせと言いたかった。元より兵士も騎士も、こと戦場においては似たようなものだ。
「兵士にしか出来ない事があります。戦から民草を守るのは兵士の使命でしょう」
「俺の、使命……」
「一兵卒だからやるんです。来ましたよ、反応増大」
「!」
 そうだ。逡巡している場合じゃない。マントの様に広げた小剣型ビットを柵代わりに展開し、バジリスクの奇襲を防ぐ。そのままシグルドは光の翼を広げて、火線の先――闇に紛れたバジリスクの方へ一直線に飛び掛かる!
「マキシマイザーオン! シグルド、届けよ!」
『初心者かあ? 馬鹿目立ちし過ぎだッ!』
「それは、あなたもです」
 不意に、バジリスクの側方にロシナンテが姿を晒す。いつの間に――否、当然の芸当だ。宙間戦闘で己が位置を晒さぬ様スラスターの火を消して最短で飛び掛かるなど、歴戦のトリテレイアにしてみればいつもの事なのだから。
「幾ら姿を隠そうと、マシンの鼓動は隠せない」
 そして、大物を振り回した時にバジリスクの位置は完全に把握出来た。後はスラスターの火を消して一気呵成に飛び掛かれば、奇襲返しも難しくは無い。そのままワイヤーを撃ち込んで加速――迎撃の火線がこちらへ伸びればしめたモノ、全ての策が成立した。
『ワイヤーだと!? 厄介なッ!』
「指一本触れさせぬと言った筈です」
 翻ってロシナンテを撃ったライフルは、トリテレイアの超常で防がれる。反射した弾幕がバジリスクの自由を奪い、続けて投射されたロシナンテの大盾がバジリスクの脚部を大地に縫い付ける。
『器用だな、デカいのッ!』
「うおおおッ! その得物――光刃で貰い受けます!!」
 そして一閃――シグルドがバジリスクに重なった刹那、爆発と共に火線はその威を失った。

「とはいえ、また逃げましたか」
「大丈夫でしょう。もう予備部品は尽きる頃です」
 片腕と両脚を犠牲に、バジリスクはこの場を切り抜けた。ボロボロの左腕は何故かそのまま、右腕は何度も交換されて、この場ではシグルドが切り落としたライフルと共に残骸が火を噴いている。
「一兵卒、役割は果たせましたね」
「はい……? ええ、まあ……」
 背後に佇むトレーラーを見やり、二機は誇る様にその場に立つ。
 不意に昇り始めた朝日の僅かな光が、その姿を称える様に差し込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

獅子戸・玲桜奈
エ、エンジンを無効化だあ!?そいつはヤバイ……マジでヤバイ!
神機が動かなくなるだけじゃねえ。熱血エンジンが止まったら俺も死んじまう!

エンジンが止まってもエネルギーが残ってれば多少は動ける。ガス欠で死んじまう前にオーラの放出を止めるぜ!
リミッター解除で機体の性能を限界突破させるぜ。こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際だ。機体の心配はしてられねえし、反動で体がぶっ壊れても死ぬよかマシだ。

エネルギーが底をついたか?神機の動きがトロくなってきたぜ……。俺の意識も遠のいてきた……。
あと何秒動ける?10秒か5秒か……十分だ。俺の怒りを籠めたワンパンでノックアウトさせて生き返ってやらあ。


リア・ファル

そのまま『プロト・ガーネ』
脚部ミサイルポッドもあったらしい

「マシンに染められてる場合じゃないでしょ!」

ガーネはイイ子だけど、武装レンジに穴もあるし
細かい調整が甘い

遮蔽を利用しつつ反撃の機会を狙う
(操縦、逃げ足、時間稼ぎ、情報収集、地形の利用)

「これ以上はやらせない。……リミット解除!」
強襲戦術機動、見せてあげる!

ライフルを偏差射撃(スナイパー、早業)
続いて、ミサイルポッドで相手の動きを止め(目潰し、爆撃)
ステルスクロークで超低空で突撃(迷彩、リミッター解除)
敵機背後から、ライフルをぶっ差し、零距離で最大の一撃を放つ!
(砲撃、零距離射撃)

「ボクらは今を生きる誰かの明日の為に在る。……コレがね」



●月夜に哭く
『ハハッ……これで、終わりか』
 警備主任は狂った様に笑い声を上げて、渓谷を滑る様に飛んでいた。正面も退路も無くした。後は隠れ家――俺しか知らない秘密の坑道を抜けて、時間を掛けて体勢を立て直す。そう思っていた。
「そうだ、終わりさ!」
 だがそれは叶わない。目の前には二体のキャバリア――クロムキャバリアとスーパーロボットだろう。二つの甲高いエンジン音が狭い坑道に響き渡り、獅子戸・玲桜奈(炎の翼・f30087)の朗らかな声が警備主任の耳に届いた。
『いいや、お前らの事だよ』
 銃口を上げてモノアイがマシンを、フレイムウィングを睨みつける。この期に及んでもバジリスクは、オブリビオンは何一つ諦めてはいない。火を噴いた鈍色が、坑道で徹甲弾が乱舞して双方の進退を遮る。破れかぶれにも見える所業に対し、白銀のマシン、プロト・ガーネが足元よりミサイルを放つ。
「マシンに染められてる場合じゃないでしょ!」
 ミサイルの小爆発が徹甲弾を飲み込んで、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)はスロットルを一気に開いた。突撃槍の様に長銃を構えて跳び回るガーネ。レンジに穴があろうとも地形を使えば十分に立ち回れる。
『やるかぁ……小娘どもッ!』
 だからこそバジリスクは最後の手段に――再び、悍ましい漆黒が世界を染め尽くした。

「エ、エンジンを無効化だあ!? そいつはヤバイ……マジでヤバイ!」
 計器が一斉に沈黙し予備動力――生命保全用のバッテリーに切り替わったフレイムウィング。機体の動力源は熱血炎心――このエンジンが止まれば神機たるフレイムウィングはおろか、最悪玲桜奈自身も死ぬ。だからこそ、鈍い動きで一歩前へ。絶対にここを退く訳にはいかない。
「なら、ガス欠で死んじまう前にオーラの放出を止める!」
 キャパシタ開放、コンデンサ全段直結、コクピット内の薄暗い非常灯が更に暗い赤色灯に変わり、機体が纏う紫電が炎に転じて神機を包み込む。リミッター解除――限界を超えた玲桜奈の怒りでマシンの威力が大きく爆ぜる。
「あと何秒動ける? 10秒、いや5秒か……十分だ」
 それが超常――爆ぜた怒りが炎と成って、翼は再び大地を駆ける!
『どうして、動きやがる、テメェ!』
 あり得ない! あらゆるマシンの駆動系は止まっている筈。機械的にも物理的にも魔術的にも。後ずさるバジリスクに炎が――神機の拳が差し迫る。この威力は一体どこから……!
「ブッ叩く!」
 それは精神。烈火の如く燃える怒りと、正義を成さんとする黄金の意志。如何に世界を止めようと、人の精神まで凍らせる事は決して出来ない!
「――戻った。行くよガーネ」
 そして黄金の炎が漆黒を止めた時、研ぎ澄まされた白銀が再び息を吹き返す。

「これ以上はやらせない。……リミット解除!」
 再び立ち上がったコンソールを軽やかに捌いて、リアはガーネの長銃を構えて再びバジリスクへと立ち向かう。動力系も制御系も正常。ならば後は突き抜けるだけ――起動時と同じ様にマシンを上手くあやしながら、ジグザグ軌道と包囲戦術の組み合わせでバジリスクを翻弄する。
『ちいッ! しつこい!』
 エンジン殺しはもう使い物にならない。しかし炎に包まれた黄金のマシンも捨て置けるような状況じゃない。迂闊に動けば恐らくは背中を取られる――飛び回り精確な射撃を繰り返すガーネを倒すには一撃必殺、奴が間合いを詰めた瞬間に最大の一撃を喰らわせる。セレクターを弄ってライフルを変形させる警備主任。軌道パターンは凡そ見切った。最接近した時に止めを――抽出した状況再現まであと三、ニ、一……。
『正面取ったぞッ!』
「いいや、遅い」
 片脚に体重をかけて僅かに転ぶ様な姿勢を取り、バジリスクの銃口がガーネの胸元を捉えて、強烈なエネルギー砲が坑道ごとマシンを貫いた――かに見えた。焼き付きを防ぐ為に切られたカメラからの映像が戻った時、目の前には残骸はおろか、何も残ってはいなかった。
「零距離――外さないよ!」
『ステルス迷彩、歪曲空間……貴様ぁッ!』
 ぐらりと、バジリスクが傾く。三次元ジャイロが異常を検知――ガーネの仕業か、貫いた筈のマシンは虚像、歪められた映像を実体と見間違えただけの事。刹那、背後に回り込んでいたガーネの長銃がバジリスクの背部を貫いて、眩い光が収束する。
「ボクらは今を生きる誰かの明日の為に在る。……コレがね」
 そして、手品の種明かしの様にバジリスクが大きく爆ぜた。

「ほら、起きろよ」
 そのまま放っておけば警備主任は死んでいただろう。だが、マシンが無力化された今なら――多少熱いのは耐えられると、玲桜奈がその身を挺して彼を助け出したのだ。肩をバシバシ叩いて警備主任を起こす玲桜奈。やがてゆっくりと彼は身を起こす。
『ああ……』
 警備主任の目の前には燃え盛る愛機の姿が――ああ、何時の頃からか、アイツに乗る度変な疼きが自身を支配して、そして、取り返しのつかない事をしてしまった。恐ろしいマシンだった。だが、それ以上に大切なマシンだった。こんな別れ方をする羽目になろうとは思わなかった。だが。
『じゃあな、相棒』
 そして、圧縮された大気が悲鳴の様な――まるでマシンが哭く様に大きな音を立てて、崩れ落ちる。幸い坑道には叩きで空いてしまった大穴がある。二次災害が起こる危険も多少は減ったろうと、リアは安堵の溜息を漏らした。
「さて、荷物はちゃんと届けないとね」
 微笑んで呟くリア――ふと顔を上げると、日の光が大穴より差し込んできていた。それはまるで、戦士達を祝福するかの様に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『インターミッション』

POW   :    基地やバザーで、キャバリア用の補給物資を手に入れよう

SPD   :    格納庫に佇む、戦いで傷ついたキャバリアの修理をしよう

WIZ   :    次の戦いに備えて、キャバリアを強化改造しよう

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●戦い終わって
 廃棄された敵マシン群は念入りに焼却し、救助したオブリビオンマシンのパイロット達をトレーラーの空きスペースに詰め込んで、一同は再びガフの谷へ向かう。車中では皆疲労困憊、とてもじゃないがキャバリアの整備をする余裕なんて全く無かった。それでも最低限の補修を済ませ、万が一の敵襲に備えつつもう一晩を越えて、ようやくガフの谷へと到着する。
『皆、ご苦労だった……が、本番はここからだ!』
 檄を飛ばす整備班長に呼応して、屈強な整備兵達が思い思いの荒ぶる感情を表現する。何せ本来の主力であるオブシディアンMk4は大半がオブリビオンマシン化して破壊されたのだ。故に二線級の旧式を引っ張り出したり、仕入れた最新鋭機の調整を行ったりとやる事は山ほどある。それにしても叫び声とか恐い。
『まあ、怪我してる奴もいるしな、余り無茶はするなよ』
 とシドンが諫めて、そのまま同行した猟兵達に顔を向けた。
『アンタらがいなきゃ俺達は――警備主任もだ、皆死んじまってただろう。改めてお礼を。本当にありがとう』

『良かったら谷でゆっくりしてってくれ。ああ、先の戦闘で使ったキャバリアは持って行っていいぞ。ここでイニシャライズしたら折角の戦闘データが勿体ねえ』
 もっさりと生えた髭を撫でながらシドンが言葉を続ける。一度癖の付いた(しかも猟兵の強烈な)マシンを一から手直しするのは時間が掛かる。それに埒外の戦力である猟兵が運用するならば、それはきっとこの世界の為になるだろうから、と。いらないなら置いて行ってくれて構わないと付け加えて。
『あと、キャバリアを持ってる奴は整備も補給もこっちで受けるぜ。殊勲者をタダで帰す訳にゃいかないだろう……それと』
 幸い物資は潤沢にある。トレーラー部隊は奇跡的に無傷でここまで辿り着けたから、補給や整備だけでなく武装の提供や改造も可能な限り受け持とうという事らしい。そしてシドンに導かれる様に、全身包帯だらけの男――警備主任が現れた。

『先の戦いでは世話になった。本当にありがとう。どうしてあんな事になったのか、正直分からない……だが』
 自分の愛機がいつ、どうしてオブリビオンマシンになったのかは分からない。だが警備主任はこの辺りの土地や情勢に一番詳しい――故に敵に回れば一番恐ろしい存在だった。だからこそ、こうして彼が戻ってこれた事は本当に喜ばしかった。
『この辺り――円卓連合の事とか、色々と話せることはあると思う』
 ガフの谷は『ラウンドテーブル諸国連合』――通称『円卓連合』を構成する一国だ。名前は谷だが連合のエネルギー資源の殆どを担っている重要な地域。故に国家単位の扱いを受けて今に至る。他にもクリスクワイア帝国、ドワーオ研究都市国家、オブイエ王朝など、大小様々な国家がガフの谷を中心に円状に点在している。
『まあ、とりあえずはつかの間の休息って奴だ。自由にふらついて貰って構わない』
 シドンが締めてこの場は一旦解散となった。戦いは無い。だが次の戦いに備えるのも、そうでないのも各々の自由だ。

 第3章は日常です。機体の整備、改造、武装追加、機体の説明、情勢の把握、食事、他何でもご自由にプレイングをお掛け下さい。大体何とかしますが、公序良俗に反する内容等は採用致しかねる場合もありますのでご注意下さい。
 
※プレイング募集期間:10/14(水)8:31 ~ 10/17(土)8:30 迄
響・夜姫

私たちの乗った、あの複座機。アレは良いもの。
「言い値で買っても良い位。この気持ち。まさしく、愛」
……持ってって良いの?まじ、でー。
「感謝。それなら、暫くは。ここをキャンプ地と、する」
機体の調整、拠点の準備、美味しい食べ物探し、防衛の手伝いとか色々やる。
でもまずは。
「今から、この機体を。南極皇帝・ダイペンギンとする」
……おかしい。出力、ガクッと落ちた。解せぬ。
仮称。もしくは愛称に留めておこう。


今更だけど。
「キャバリアも動かせる。流石はぺんぎんさん。略してさすぺん」
そのうち、めんちとわに用の機体も用意したいかも?

※横を見ると、3匹が別の機体のコックピットに潜り込み、動かしてたりする。



●機械を越え、獣を越え
「言い値で買っても良い位。この気持ち。まさしく、愛」
 響・夜姫(真夏の星の夢・f11389)はキャバリアをシドンらに預け、腕を組みその雄姿を眺めている。ここはガフの谷の第一整備場、先の戦いで傷ついたマシンを並べ、戦いに備え修理を進めている所だった。
『愛、ねえ……ところでこれは』
 夜姫の傍らには厳ついタブレットを手にしたシドンが――夜姫が駆った機体のエネルギー伝達経路のチューニングを進めているそうだ。更にその周りに、今までいなかった獣くさい影が二つ。
「まさしく、ワニ」
『ワニ』
 何故ワニが。ペンギンが駆るマシンをぼうっと眺めている辺り、恐らく夜姫の連れだろうが……溜め息を吐いて、シドンがそのまま言葉を続ける。じゃあもう一つは?
「ドラゴン」
『ん……まあ、タダで持ってけって。こんなテクニカルな機体、そもそも使い手から探さにゃならんよ』
 恐らくこの娘は何でも操る……いや、操るというのは的確じゃない。人機一体とも異なる境地、人とマシンとで手を取り合って、その力を何倍にも増幅する。このサイキックキャバリアはそういう機体なのだろうと、シドンは思案していた。
「ほう……持ってって良いの?」
『ああ。その代わり世界の事は頼むぜ』
 だから、マシンを提供する代わりに、その力を正しい事に使って欲しい。百年の戦乱に終止符を――そんな祈りを込めて。
「感謝。それなら、暫くは。ここをキャンプ地と、する」
『響君あのさあ、ここは動物園じゃないんだぞぉ』
 呆れた口調で更に盛大な溜め息を吐くシドン。ペンギン、ワニ、ドラゴン。一体どんなコンボなんだ。しかしそんな憂いを吹き飛ばす様に、夜姫は胸を張り言い放った。
「問題ない。みんな、キャバリア動かせる」

「キャバリア、売るよ」
『売らねえよ! どうなってるんだよ!』
 どうもこうも、動物達が空きキャバリアに乗り込んで作業を手伝っているだけですが何か? と言わんばかりの表情で夜姫がドヤる。
「キャバリアも動かせる。流石はぺんぎんさん達。略してさすぺん」
 そしてワニもドラゴンも。どれもが器用に両足を動かしてマシンを操り、倉庫から予備のキャバリアを担ぎ出したり積み上げた荷物や食料を運んだりしている。本当に大丈夫なのかと訝しんだシドンに、再び自信満々の表情で夜姫が返す。
「大丈夫だ問題ない。それに他のみんなも。用意したいかも?」
『まあ、動かせちゃったもんなぁ……』
 これで多数のマシンを従えれば分隊クラスの動きも取れるだろう。だが流石に、先の戦いで消耗しているガフの谷から、これ以上キャバリアを提供するのは難しかった。酷く残念そうな顔を見せ――しかしすぐに気を取り直し、ペンギンが駆るサイキックキャバリアを指差して、夜姫は三度ドヤ顔で宣った。
「今から、この機体を。南極皇帝・ダイペンギンとする」
 風が吹いた。瞬間、ダイペンギンと名付けられたこのマシンは振動を抑え、瞳から光は消え、徐々に音を静かに――要するに、止まった。
『パワーゲージ低下、一体何が……』
「……おかしい。出力、ガクッと落ちた。解せぬ」
『グアッ!』
 しょうがない。仮称。もしくは愛称に留めておこう。
 そう心に誓う夜姫であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
愛機『スルト』の整備と補給を依頼
(戦闘では使わなかったけれどトレーラー部隊の所までコレで駆け付けたので)
(キマフュー製で色々規格も違う筈なのに何故か普通に整備やエネルギーインゴットでのEN補給ができる謎。クロキャバ驚異の技術力)

整備の様子を眺めてる所で、見覚えのある顔(警備主任)を見つけて声をかけ話をする

傷の具合はどう? 愛機がオブリビオンマシン化していたなんて、災難だったわね。
……どうしてさっきは機体を使わなかったのかって?
そうね、エンジン殺しの存在もあったけれど。
貴方を殺さず助けるには、手加減していられなかったから。
……ええ。私、生身の方が強いのよ?
って、引かなくてもいいじゃない……



●鬼無頼
『何このマシン』
『キャバリアじゃない……スーパーロボット?』
『しかしサイズが……なんちう技術だ』
 XGG00 『機煌炎神』スルト。異世界の戦争で生まれた奇跡のマシンだ。全長3m前後、背面にはオプションで連装スラスターも装着出来る。他にも対艦・要塞クラス戦闘も容易に可能な拡張ユニットもある。
『信じられん。規格が違うのにインゴット食えてる』
 何よりクロムキャバリアでこのサイズの機体は規格化されていない。全く異なる技術のマシンだ――にも拘らず、スルトは介したアダプターを通してエネルギーを補給出来ていた。戦場まで全速力で飛んで来た。しかも殲禍炎剣を避ける為に超低空を地形追従モードで。確かに燃料をドカ食いするのも分からなくはない。だが何でも喰らうというのは、最早彼等の常識の範疇を大きく超えていた。
『信じられん。このサイズでMk4の5倍どころか5万倍のエネルギーゲインが』
 しかも標準的なキャバリアと比較して桁違いのエネルギー出力を誇る。各所に分散配置されたジェネレーターが永続的にエネルギーを動力に変えている。人体でいう筋肉の様なモノで全身を構成しているという、これも桁外れのスペックの一因だった。
『武装自体がジェネレーターになりそうだな。鞘にキャノンでも仕込めそうだ』
 更には武装まで、サイキックキャバリアの様に精神感応しエネルギーを発生させるという事。何から何までおかしいこのマシンが先の戦いで投入されていたら一体どうなっていた事だろうか。整備員達はどよめきを隠せない。
『おい嬢ちゃん。どこで仕入れたんだこんなマシン』
「え? キマイラフューチャーだけど」
 混沌とした未来異世界からの来訪者。猟兵というのはかくもこんな装備を平然と持ち得ているのか――きょとんとした小柄な少女、荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)の言に整備班長が肩を落とす。
『未来って凄ぇんだな……』
 そして、まだまだ知らない事があり過ぎるのだなと、規格外のスーパーロボットを見上げて嘆息した。

「傷の具合はどう?  愛機がオブリビオンマシン化していたなんて、災難だったわね」
『ああ、君か。全くだ。本当に……死ぬかと思った』
 傍らでスルトを眺める警備主任を目にして、つかさがそっと声を掛ける。親子ぐらいの身長差があってもこの娘は先の戦いで素手でハッチを引き剥がした恐るべき猟兵だ。
『まさかキミもパイロットだったとはね。さっきはどうしてそのまま戦ったんだい?』
「……どうしてさっきは機体を使わなかったのかって?」
 幸い包帯で表情までは見えていない。動揺しつつも、この恐るべきスルトを目の当たりにして至極真っ当な質問を投げかける警備主任。その言葉につかさはそっけなく返した。
「そうね、エンジン殺しの存在もあったけれど」
 激しい機械の音が辺りに響く。スルト以外にも多数のキャバリアが整備されていた。どれもが傷ついて……先の戦いの苛烈さを否応なく見せつける。それ程の戦いだったのに、どうしてと警備主任は疑問に思ったのだ。だが答えは、やっぱり、そうだった。
「貴方を殺さず助けるには、手加減していられなかったから」
『手厳しいな。手加減無用だから、機体から降りたって……え?』
 手を抜ける様な状況ではない。一対一の戦いで確かに、全身武装の筋肉マシンを振り回すよりは身軽な生身で立ち向かった方が確実、なのはわかる。いや分からない。
「……ええ。私、生身の方が強いのよ?」
 瞬間、大音を立てて何かの部品が落下した。怒鳴る整備班長。すかさずサポートの機材が煙を噴いて現場へ急行する。そんな背景の前で、沈黙が場を支配した。
『嘘だぁ』
「本当よ」
 本当なのか。分からなくもない。確かに軍用機のハッチは搭乗者の生存を護る為にかなり厳重な安全装置がつけられている。キャバリア同士で殴り合えば加減も難しい。だがそういう事じゃない。
『…………』
「って、引かなくてもいいじゃない……」
 いいや引く。ひきつった笑みが漏れ出ていないだけ救いはあった……が。
『……そうか』
「そうか、じゃないわよ」
 やや納得のいかない表情で警備主任を見上げるつかさ。これだけ見れば微笑ましい光景だが、目の前の二人は少し前まで生命の取り合いをしていた仲だ。これから先に続くであろう戦いに思いを馳せて、警備主任は静かに肩を落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
先ずはこの度の機体の一件
誠にご愁傷様でした
気を落とすなとは口が裂けてもいえませんが、貴方は優秀なパイロットです
この地の保安の為、お早い復帰をお祈り申し上げます

ところで、ご相談したきことが
(自爆運用も前提だからなのは伏せつつ)
私の機体はこの世界の普及機がベース
高級機ですがパーツ供給は比較的苦労は無いのですが…

あの騎士のような外装は話が別でして
出撃が続くと普及機の装甲を纏ったパッチワーク状態となるのです…

戦術的に意味は無いのですが、あの外装には拘りがありまして
類似した外装の入手ルート確保の為にも、外観を重視したキャバリアを生産する国の紹介と共に円卓連合についてお話を聞かせて頂けませんでしょうか?



●円卓の騎士達
「先ずはこの度の機体の一件、誠にご愁傷様でした」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は整備場のキャットウォークに佇む警備主任にそっと声を掛ける。傷は深くまだ戦線に戻る事も出来ない――にも拘らず、キャバリアの様子を見に来るのは戦士の性だろうか。
「気を落とすなとは口が裂けてもいえませんが、貴方は優秀なパイロットです。この地の保安の為、お早い復帰をお祈り申し上げます」
『こちらこそ。君がトレーラーの警護をしていなかったら危うい所だっただろう。本当にありがとう』
 ウォーマシンの巨体に臆する事無く、ゆっくりと手を差し出す警備主任。その手を取って握手したトリテレイアは、そのまま音量を下げてぼそぼそと言葉を続けた。
「ところで、ご相談したきことが」
 何だ。余り大きな声で話せない内容なのだろうか……だとすればここよりも適した場所がある。だがその杞憂は、トリテレイアの話の本題で見事に吹き飛んだ。

「私の機体はこの世界の普及機がベース。高級機ですがパーツ供給は比較的苦労は無いのですが……」
 彼の機体『ロシナンテIV』は量産型キャバリアをベースに高級機の部品で改修したワンオフ機と見受けられた。部品の供給――クロムキャバリアの様にそのものが特注であれば消耗品の共有すら出来ない場合もある事を鑑みれば、正に実践志向の堅実な機体と言えるだろう。
「あの騎士のような外装は話が別でして。出撃が続くと普及機の装甲を纏ったパッチワーク状態となるのです……」
 だがそれは中身の話。問題は外観、御伽噺の騎士然とした本人そのものをスケールアップしたような、ロシナンテIVの外装は下手をすれば板金作業で作り直さなければならないかもしれない。その外装と普及機の武骨な部品が組み合わさるのは成程、避けたいというのも道理だろう。
「戦術的に意味は無いのですが、あの外装には拘りがありまして」
『分かるよ、分かる。うん。私も苦労したものだ。パーツのクリアランスが違うから反応速度に差が出るんだとデータを捏造してでも仕入れたりな、昔は……』
 いかん。彼の言い分に共感し過ぎて口を滑らせた――咳払いをしてトリテレイアに向き直る警備主任。目的は凡そ把握した。可能な限り応えようと心に秘めて。
「類似した外装の入手ルート確保の為にも、外観を重視したキャバリアを生産する国の紹介と共に円卓連合についてお話を聞かせて頂けませんでしょうか?」
 それが自爆運用前提の自機の部品調達の為だとは、流石のトリテレイアも告げられなかったが。

『先ずはここ、ガフの谷。ラウンドテーブル諸国連合のエネルギー生産の8割はここで賄っている』
 タブレットを取り出してざっくりと周辺の地図を表示した警備主任は、円状に配された山脈の中心を指差す。それがガフの谷――現在地という訳だ。
『その代わり、ここのプラントは殆どキャバリアの部品は造らない。素材もだ。純粋なエネルギーや、食料めいたモノ以外は生み出さないんだ』
 時折ジャイアントキャバリアが吐き出される事もあるが、年に一度か二度ある程度、と付け加えて。そのくらい、この谷はエネルギー生産に特化しているのだと言う。
「成程。それで周辺諸国と渡り合っているという事ですか」
『ある種のバランサーだ。エネルギーを提供する代わり、各種装備を見返りに貰っている。それにこの地は円卓の中心――盆地のど真ん中だからね。戦略的に要衝と言っていい』
 ここからのエネルギーが無ければ余所には勝てない。だがここを落とそうとすれば相当の資源が無ければ対抗出来ない。そして敵は円卓の外にもいる。下手に戦力を割けばただでは済まない事は明白だ――そのまま警備主任の指が続いて、北側の一帯を静かになぞる。
『次に、最も軍事に力を入れているのがクリスクワイア帝国。君の言う外装に近い機体はここが最も生産しているだろう』
 圧倒的な武力を誇る大国だった、とも。この谷のプラントが見つかるまでは純粋に武力がモノをいう時代だったのだから。だがこの国をもってしても、ガフの谷を制圧する事が出来なかったのだ。他所からの支援があったとはいえ、それだけでも兵站の重要性が分かるというものだ。
『統制の取れた軍隊、と言うべきか時代錯誤と言うべきか……上意下達が徹底されて、各部隊はそれぞれ『騎士団』などと名乗っているよ』
 帝国の各騎士団は騎士団長を筆頭に戦慣れした強靭な部隊だという。平時は他国へ戦力を輸出――傭兵紛いの事もしているらしい。
『何せ皇帝自ら派手なクロムキャバリアで前線に出る事もあるんだ。その威もあって円卓外への睨みも利かせられているんだが――ああ、余計だったかな』
 その皇帝機に合わせて、この国の正式採用機はどれもが中世の騎士じみた外装の超高性能機で構成されている。トリテレイアの目当ての部品はきっとここに有るだろう。
『次にオブイエ王朝。ここはこの辺りで最も歴史の深い古い国だよ。発掘したサイキックキャバリアを主力としている連中だ。比較的穏当だが、内実政治闘争が激しくてね』
 今度は谷の南西、周辺を小国に囲まれた中で一際大きいオブジェクトを指し示す。オブイエ王朝、最も歴史の古い国。帝国とは別の意味で厄介な国だが、帝国がガフの谷へ侵攻した時に真っ先に救援に駆けつけたのはこの国だった。
『やれ密告だ粛清だと、物騒な話題に事欠かない国だ。君らの言うオブリビオンマシンのおかげで、そういう傾向に更に拍車がかかっている感じだ』
 それも自らの立場を守る為……故に対外的に重要な情報は余り流れていない。分かっている事はただ一つ、この国が『谷に手を出すな』と言わなければ、円卓連合は結成すらされなかったという事だ。
『最後にドワーオ……研究都市国家などと嘯いているが、元は帝国の研究所だったんだ。それが』
 そして王朝の右側から遥かに先、円卓の最東端にドワーオ研究都市国家は位置していた。
『労働者階層――研究者の事なんだが、彼等の突き上げを喰らって突如独立を宣言されて、50年前に一戦交えて本当に独立してしまったんだ』
 所謂ブラック企業の親玉からスピンアウトした技術者集団という事らしいが、頭より体と心、非常に特殊なキャバリアの研究をしていた為、ここには普通の人間はいないともいう。その由来ももっともらしいが、ノリと勢いで付けたのだろうと警備主任は言って憚らない。
『ドワーフと言う職人の妖精からその名を取ったなんて言っているが、私は違うと思うね。主力はスーパーロボット。帝国の騎士団を単機で殲滅すら出来る、恐ろしい連中だよ』
 周辺では圧倒的大国の帝国の軍事を単機で殲滅する。むしろこの国に集団戦術という言葉は無いと付け加えて、警備主任は言葉を結んだ。
『こんな所か……参考になれば幸いだ。ああ、どの国でも部品が欲しければ取り寄せられる。時間は掛かるが、気にせず声を掛けて欲しい』
「ありがとうございます。でしたら……」
 これで兵站は確保出来たも同然。トリテレイアは深く頷いてタブレット上の情勢を改めて伺う。これまでの世界とは違い、世界の中で戦争を……それも、カクリヨとも違う人と人同士の戦争だ。その事実に少し哀しみを覚え、そしてウォーマシンの本能の高鳴りを僅かに感じるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

獅子戸・玲桜奈
ったく大変だったぜ、あんたらを止めんのはよ。詫びに飯ぐらい奢ってくれんだろ?警備主任殿!(背中を軽く叩く)

戦いの後は肉に限るぜ!随分エネルギー消耗したからな……いくらでも食えそうだ!
あんたももっと食わねえとそのケガ治らねえぜ?

それはそうと、ここいらは重要な地域らしいな。谷が他所から狙われることもあるのか?トレーラーの積み荷はキャバリアだったし、全くねえって訳じゃねえんだろ?
もしその相手がオブリビオンマシンなら……って、あんたらじゃ見分けつかねえんだっけな。
まあもしもの時はきっと駆けつけるからよ。今回みたいにな!



●ブレイクタイム
 時刻は昼に差し掛かり、整備場に交代要員が続々と入ってくる。機体の整備は急ピッチで進められてはいるものの、依然足りてるとは言い難い状況だった。
(やはり時間は掛かる、な……もう昼とは)
「ったく大変だったぜ、あんたらを止めんのはよ」
 駐機してるキャバリアを見上げて思案する警備主任にふと、快活な女――獅子戸・玲桜奈(炎の翼・f30087)が声を掛ける。先の戦いではバジリスクの猛攻を潜り抜け、魂の一撃を喰らわせた傑物だ。相当の疲労が溜まっているだろうに、それをおくびにも出さず笑顔で警備主任の肩に手を回して。
「詫びに飯ぐらい奢ってくれんだろ? 警備主任殿!」
 軽くポンと――傷に触らない程度に叩いて、ランチのお誘い。確かに、日がな一日ここでぼうっとしている訳にも行くまい。
『ああ、勿論だ。この谷の特産品がインゴットだけでは無い事を教えよう」

「戦いの後は肉に限るぜ! 随分エネルギー消耗したからな……いくらでも食えそうだ!」
『ハハ……いや……何でもない』
 食べ過ぎだ。それが第一印象。常人の三倍は食べてないか? いや、あの様な自身そのものをエネルギー源とする様なスーパーロボットに乗っているのだ。消耗もきっと激しいのだろう、と思う事にした。小気味良い玲桜奈の食べっぷりを横目に見つつ、警備主任もスプーンを口元へ運ぶ。咀嚼はまだ止めておけと言うお達しだ――早く傷を治し、仕事に戻る為には致し方ない。
「しかし意外だな。食料の生産もって言ってたけどよ、肉はちゃんとしたのが出るなんて」
『そもそもプラントが見つかるまでは牧畜が主産業だったからね。牛や羊を百年よりもっと前から飼い慣らしていたんだよ』
 ガフの谷のプラントが発見されたのはクロムキャバリア世界が大規模な戦争に見舞われて50年以上経ってから。帝国とドワーオが袂を分かってしばらく、突然見つかったものだという。
「成程な。ま、あんたももっと食わねえとそのケガ治らねえぜ?」
『ああ。食べたいのはやまやまだが……』
「食べさせてやろうか?」
『そういう事じゃない。気持ちだけ頂いておくよ』
 悪戯っぽく笑みを浮かべる玲桜奈に包帯まみれの肩をすくめて応える警備主任。彼女の言う通り、キャバリアの前に自分の整備をきちんとしなければ……故に、自由に食事が出来ない自身が恨めしい。
「それはそうと、ここいらは重要な地域らしいな。谷が他所から狙われることもあるのか?」
『襲撃ね。時折山賊めいた連中は出てくるが……最近は矢張り」
 静かにスプーンを置いて、口を紡ぐ警備主任。そもそも円卓連合が手を出してくる事はそうそうあり得ない。だがそうでは無い連中は、もう幾度と無く襲って来ているのだという。
「道化師の旅団ね。自分らがなっちゃ元も子もない……って、あんたらじゃ見分けつかねえんだっけな」
『悔しい事にな。こればかりは君達……猟兵の力を借りざるを得ない」
 正体不明の集団。これまではぐれ者の集まりだったり、政治的配慮で葬られた他国の軍勢だったりと、何らかの事情が垣間見えた連中が相手だと思っていたが……まさか自身がそうなるとは思いつきもしなかったから。
「オブリビオンマシン、か。何時からあんな連中が蔓延ってたんだか」
 全て、悪因に引き寄せられたキャバリアが原因だという。猟兵のいう他の世界ではマシンでは無く、個体として過去の残滓がそのままの姿で現れるとも。ならばキャバリアとは、オブリビオンマシンとは一体何なのだ。
「――今更知った所でどうしようもねえか。まあもしもの時はきっと駆けつけるからよ。今回みたいにな!」
『ああ。また頼らせてもらうよ、本当に』
 玲桜奈の言う通り、知った所でどうしようも無いだろう。現に全く無関係と思われたガフの谷の機体ですらそうなる危険があるのだから。だから、もしもの時は……。
「また、助けてやるからさ」
 その言葉は本当に、救いだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖


えっ…マジ?
キャバリアいーなー欲しいなーって思ってたけども
マジでくれんの!?
すげぇな、さすが隊長さん太っ腹じゃん

あっでも
どこに置こう…
UDCのアパートには置けねぇし…
ヒーローズアースの方かな…
地下格納庫作る…とか?
…ちょっとかっけぇかも
目を輝かせつつ

あのさ
でも整備とか出来ねぇんだけど
軽く教えて貰ってもいい?
出来るか分かんねぇけど
折角だし
もし本格的な奴必要な時はまた来てもいいかな

あと
もう少しキャバリア見て回りてぇ!

ところで
主任さんは次はどうすんの?
同じ奴ような奴乗るの?
あーいや
…壊すしかなかったんだけど
燃やしちまうとはなって
少し申し訳なさそうに
すごかったぜ
あんたもあんたの機体も
色々教えてくれよ



●秘密基地
「えっ……マジ? キャバリアいーなー欲しいなーって思ってたけども」
『ああ。約束の通りあの機体は貰って欲しい』
 駐機場には玉虫色に輝くクロムキャバリア――スタークドラゴンが。その足元で陽向・理玖(夏疾風・f22773)は目を輝かせて、鋼の雄姿を眺めていた。
「マジでくれんの!? すげぇな、さすが隊長さん太っ腹じゃん」
『特にクロムキャバリアは繊細な分、一度付いた癖を矯正するのは中々難しくてね。技師長の判断だし、私も同意見だから問題ない』
 包帯の奥で微笑む警備主任が相槌を打つ。何より埒外の戦力だ――オブリビオンマシンへ反旗を翻すのにこれ程の適役はいないだろう。最早自分達だけでは対処出来ない問題なのだから、と思案して。
「あっでも……どこに置こう……」
 ふと、理玖が現実的な問題に気付く。UDCのアパートには置けねぇし……ヒーローズアースの方かな……地下格納庫作る……とか? ちょっとかっけぇかも。
『まあ、置き場が決まるまでここに置いて貰って構わないよ』
「それじゃさ、それと一緒に……」
 改築だって時間や金が掛かる。でも、面白そうだと目を輝かせながら、理玖は合わせて警備主任へ尋ねた。
「整備とか出来ねぇんだけど、軽く教えて貰ってもいい?」

「成程なぁ。予備のサーキットが無ければ組み替える、か」
『主系統がダウンしたら大体自動で切り替わるが、そうならなかったら試すといい』
 自身の身体も機械的な部分はあるが、大掛かりな整備じみた事は殆どしない。だがこのマシンもどうやら似た様なものらしい。自らの手でどうこうする時は、本当にヤバい時だけだ、と。今の話も制御系のトラブルが発生した際、同系統の部品や経路で緊急の補修をする手段に過ぎない。
『格闘用の機体だからね。装甲はナノマシン装甲で自動修復するし、制御系も自己診断モードで大体復旧出来る。ま、機械だが生きてるようなものだよ』
 所謂メンテナンスフリーと言う奴だ。前線で一番槍を務める様な接近戦特化の機体らしく、予めダメージコントロールは機体に組まれているという訳だ。これならば動作チェックだけで大概の運用には耐えられるだろうと言葉を続ける警備主任。
『万が一大きなダメージを受けたらいつでも来るといい。格納庫は……降着形態なら3~4m四方の空間があれば、何とか置けるかな? 出る時気をつけなければならないが』
 合わせて格納方法を教授して一通りの説明を終える。他に何か聞きたい事は? と尋ねる警備主任に、理玖は再び目を輝かせて思いを伝える。
「ありがと! あと、もう少しキャバリア見て回りてぇ!」

『あれはフリントストーン、今回仕入れた機体だ。その奥がオブシディアンMk3、型落ちだが調整次第じゃ十分戦える』
 正面には先の戦いでも目にした細身の機体、フリントストーン。量産型だが軽量級の一撃離脱に特化したマシンだ。起伏が激しく立体的な立ち回りが要求される渓谷では、こういった機体が斥候を務め、前線を攪乱するのが主らしい。その背後にも見覚えのある――だが細部が大きく異なるマシンが。オブシディアンMk3。先の戦いで刃を交えた機体の一世代前のマシンらしい。確かにMk4程洗練されていない形状は更に武骨で、装甲を着込んだMk4の様な印象を受ける。
「ところで、主任さんは次はどうすんの? 同じ奴ような奴乗るの?」
 警備主任の機体――バジリスクは完全に消失した。高機動型強襲機とも言うべき、圧倒的な突破力、耐弾性、火力を誇った恐るべき機体。
「あーいや……壊すしかなかったんだけど、燃やしちまうとはなって」
『仕方がない。同じ部品を使って再び暴走したら危険だからね』
 思う所があるのか、遠くを見据える警備主任。きっと今まで幾度と無く死線を乗り越えてきた相棒なのだろう。それがオブリビオンマシンになってしまい、世界に牙を剥く羽目になる。そんなの、理屈で分かってはいても許せる様な事じゃあない。
「あんたも、あんたの機体も色々教えてくれよ」
『ああ。バジリスク、か……』
 雪の降る冬の山、資源を狙った山賊の襲撃があった。
 逆賊と化した元正規軍の強襲を受けた事もあった。
 他国の戦争に介入したことだってある。
 鋼と鋼がぶつかり合い、硝煙とイオン臭が入り混じった、むせる様な戦場の匂い。
 そんな地獄を何度も見て、乗り越えて、今に至って、そして……。
『君達は強い。そしてその力を正しく使う事が出来る。だから』
 力は使い方を誤れば厄災となる。そういう世界なのだと改めて思い知ったから。
『バジリスクも君達と戦えて、本望だったと思うよ』
 だから、ありがとうと。警備主任は静かに言葉を結んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブランク・コード
改造――するとなんか本国に許可とかそんなのがいりそうですが。
あれ、許可先とか? 俺よく知らないんですよね(歯車感ある表現)

……伝承の騎士が元にした機体だとかいうんですが、
正直俺にとっては身に余すんですよね、でも俺じゃないとダメらしくで。
だもんで代替準備も始まってるらしく――って痛っ
(すっとやってきた『アルター・コード』にぶん殴られるブラン)

整備とか正直疎いんでお任せしますよ……(しくしく)

……よく分からないですけど、弐号機作る計画は持ち上がってるそうです。
……本当によく分からないですけど……。
(気づいたら計画の中心に投げ込まれていた元一兵卒面)

※アドリブ可



●ソルジャードリーム
「改造――するとなんか本国に許可とかそんなのがいりそうですが」
『あるよ』
 整備場でボヤく兵士にそっけなく返す整備班長。兵士――ブランク・コード(無よりの変異・f30157)は盛大に溜息をついて目の前のクロムキャバリア『シグルド・キャルバリア』の雄姿を眺める。騎士然としたシルエットにマント上に配された数多の小剣。白兵戦に特化した機体である事を伺わせる白銀の美麗なマシンは何も語らず、目下をじろりと睨みつける様に佇んでいた。
「あれ、許可先とか? 俺よく知らないんですよね」
『だから、大丈夫だって。ほれ』
 ちらりと押印された書類を差し出す整備班長。このご時世に紙の書類とは……訝しんだブランクが読み取った内容は『シグルド・キャルバリア運用に関する制限解除通達』、それともう一枚、何故かブランクの名が記された素っ気ない書類。
「何ですかコレ」
『辞令だよ、猟兵』

『しっかし面倒な機体だなコリャ。特にデザインが、形状が、何というか面倒だコリャ』
「……伝承の騎士が元にした機体だとかいうんですが、正直俺にとっては身に余すんですよね、でも俺じゃないとダメらしくて」
 午後の作業が始まり、再びシグルドのエンジンに火が点る。破裂しそうな轟音を奏でる主機関はクロムキャバリアどころでは無い超高出力。そして甲高い排気音とメカニカルノイズが二人の声すら掻き消しかねない。大声で老齢の整備員に説明するブランクは、本当にこんな機体に乗って大丈夫なのかと改めて不安を感じた。
『帝国の試作機を買い上げてドワーオでチューニングして王朝で仕上げたって本当かよコリャ。だとしたらとんだ混血だなコイツはコリャ』
「だもんで代替準備も始まってるらしく――って痛っ!」
『口じゃ無くて手ェ動かせ……』
 ふらりと、アルター・コードがやってきてヘルメット越しに頭を叩く。そのまま姿を消して……何やってんだアイツ。そもそもだ、そもそもブランクは。
「整備とか正直疎いんでお任せしますよ……」
『それじゃ、俺のガソリンを用意してもらおうかね』
 出来ない事は人に任せるしかないのだ。クイッと杯を持ち上げるジェスチャーをする整備員を見やり、ブランクは再び盛大な溜め息をついた。

「……よく分からないですけど、弐号機作る計画は持ち上がってるそうです。……本当によく分からないですけど……」
『まあ、先の戦いのデータを見る限り、大丈夫だろ』
「ハッ!? いや、だって、アレ一人だったら」
 急に指令室へ呼び出されたブランクは、先程の書類を基地司令に手渡して正式に辞令を受けていた。顔面にサンマ傷を走らせた、筋骨隆々の正しく現場指揮官を体現したような厳つい風貌を揺らし、不意に指令が睨みを利かす。
『お前さん、一人で戦争するつもりかい?』
「いえ、そんな事は……」
 どすの利いた声色。荒くれ者どもを率いる指令の貫録を余す事無く発露して、一兵卒のブランクを威圧――本人は窘めているつもりだが――する。指令にしてみれば大事な戦力を上の都合で勝手に徴発されるのだ。堪ったものでは無い。そんな怒りも滲ませて、ブランクへ言葉を続ける。
『気張り過ぎなんだよ。もちっと楽にしろ。死ぬぞ』
 兵隊は消耗品だなんて阿呆な事を抜かす文官を何人も病院送りにしてきた叩き上げの指令にしてみれば、分も弁えぬ一兵卒を最前線に送り込むなんて愚策を認めたくは無かった。だがその背後にあるモノを理解してしまえば、そうも言ってられない。だからこそ、ブランクを――何も知らぬ一兵卒にせめて、一兵卒として最後の言葉を伝えなければならなかった。
『ブランク・コード伍長』
 ガタっと高級そうなチェアを引いて立ち上がる指令。高い上背が照明を遮って大きく影を落とし、直立不動で身構えるブランクを取り込む様に伸びる。そして静かに、厳かな儀式が始まった。
『本日をもって第二警備中隊第二小隊前衛の任を解き、無期限の特務について貰う』
「……はい」
『作戦内容は『世界を救え』だ。期待してるぞ』
「……は、はい」
 冗談の様な作戦内容だ。だが上は本気で――それを現場に放り投げた。いや、開発も、生産も、兵站周りも必死にこの時の為に時間を費やしてきた。決して放り投げた訳ではない。ただ、偶然にパズルのピースがここで嵌ってしまっただけなのだ。だから。
『ああ、それから……一兵卒へ俺から最後の訓示だ』
 ずい、と大柄な身を乗り出して重い声色で言葉を続ける指令。丸太の様に太い腕を突き出して、拳をブランクの胸元へ静かに当てる。
『テメェに命令出来んのはテメェだけだ。以上』
「……はぁ」
 今は気付き様が無いだろう。だがいつか、決断の時が来る。
 その時に、せめて迷わない様にと、思いを込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルイン・トゥーガン
補給と整備はありがたいねぇ
なにせアタシは指名手配中の戦犯だからねぇ
だが、ここらではまず見ないアマランサスタイプの特務隊及び海兵隊仕様のマリーネをちゃんと見れるのかい?
……まぁスーパーロボットやワンオフ試作機とかと比べりゃ、アタシのアマランサス・マリーネのが補給や整備の難易度はずっとマシかね
元よりユーベルコード覚醒者専用高性能機アマランサスの、特務・海兵隊仕様の再設計機でも軍の正式採用機には違いないしねぇ
さて。で、補給と整備以外にちゃんと報酬タンマリ渡して貰おうか?
払えないなんて抜かすと悲しい事故が起きて、アタシの罪状がまた増えることになるさね
まっ、流石にそんなことにはならないよねぇ?



●海兵は永遠である
「補給と整備はありがたいねぇ。なにせアタシは指名手配中の戦犯だからねぇ」
 ルイン・トゥーガン(B級戦犯指定逃亡者・f29918)はハンガーに掛けられた愛機を眺めてニヤニヤと笑みを浮かべる。報酬も貰えて整備も向こう持ち。美味しい仕事だった……生きて戻れた今となれば、だが。
『道理で物騒なマシン乗ってると思ったよ……何したんだい嬢ちゃん』
「言うと思ったかい?それより、ここらではまず見ないアマランサスタイプの海兵隊仕様をちゃんと見れるのかい?」
 軽口を叩く整備班長に口を尖らせて返事するルイン。腕が無ければ簡単には扱えない機体だ。ユーベルコード覚醒者専用高性能機アマランサスの、特務・海兵隊仕様の再設計機で軍の正式採用機――古めかしいながらも中身は最新鋭と言うレストモッドタイプの機体は、クリアランスも絶妙で仕様書が無ければ簡単に分解整備出来る代物では無い。幾らスーパーロボットやワンオフの試作機と比べればマシとは言え、中身を知ってるか知らないかで作業難度にかなりの差が出る。
『本物を見るのは初めてだ。メディアじゃ何度も見てるから大丈夫だ』
「お前さん、TVゲームでしか戦争した事無いだろう」
 脇から口を挟んだ若い整備員を咎めるルインに苦笑して、整備班長が言葉を重ねる。その顔には絶対の自信が溢れていた。むしろ、珍しい機体を整備出来るとあって興奮を隠せない様子だ。
『大丈夫だ。このタイプの部品は共用規格が多い。外でドンパチやる為にな』
「覚醒者専用機だよ? そこの所は分かってるんだろうねぇ?」
『サイキックもジャイアントも面倒見てきたんだ。作れねえが直すのは引けを取らねえよ』
 このガフの谷はキャバリアの運用はしているが製造はしていない。その分、周辺諸国から買い上げた多種多様なキャバリアの運用実績がある。初見だろうと必ず完璧に仕上げてみせると親指を立てた整備班長に、再びルインは口端を歪めた。
「さて。それじゃあ、補給と整備以外にちゃんと報酬タンマリ渡して貰おうか?」

『……で、ここに来たと』
「そうさね。出すもの出して貰わないとねぇ」
 司令官室にはルインと司令官、そして秘書らしきメガネ男がトランクケースを抱えて、重厚なデスクを挟んで向き合う様に対峙していた。小柄なルインを見下ろす様に、重々しい声色で司令官が言葉を続ける。
『金か……傭兵ってのは、全く』
「払えないなんて抜かすと悲しい事故が起きて、アタシの罪状がまた増えることになるさね」
 ずい、と身を乗り出して司令官を睨み上げるルイン。厳つい大男だろうと決して引かないという強靭な意志を示して――海兵は屈さず。それは任務は必ず遂行するという矜持。
「まっ、流石にそんなことにはならないよねぇ?」
『おお怖……安心しな。契約は守る。おい』
 ルインの意を組んで、おどける様に司令官がメガネに報酬の提示を促す。その言葉に従い、メガネがひっそりと前に出てトランクの中身を差し出した。中身はチョコバーの様に茶色い棒状の物体が三本。片手で持てるサイズのそれには、証紙とバーコードがこれ見よがしに張られていた。
『純度フォーナインのインゴット三本。換金すりゃ一年は食うモノに困らない』
 茶色の部分は絶縁物質の被膜。フォーナイン――純度99.99%のエネルギーインゴット。一本で標準的な全力稼働のクロムキャバリアを72時間立たせられる代物。それは容易に手に入る代物では無い事は、元軍人のルインには即座に理解出来た。
「ふぅん……エネルギー生産の一大拠点ってのはあながち眉唾じゃない、か」
『現金は先のバザーで使い果たしちまってな。これでどうだ?』
 それで金は無い、という事か。更に司令官は追い打ちをかける様にルインへ言葉を続ける。
『こんなもんで良けりゃ、またくれてやる』
「ほう……」
 整備・食事付きで報酬はインゴットの現物。まあ、決して悪い条件ではない。蓋を閉じたメガネから掻っ攫う様にトランクを奪い取り、くるりと回って部屋を後にするルイン。最後に片手をひらひらと舞わせ、司令官に一言を残して。
「次もまた、良い取引を」

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋月・信子
●SPD

大破こそは免れましたが…ピースメーカーは大きく損傷してしまいましたね
『まっ、初陣にしては上出来じゃない?手間暇かけて育てた戦闘機パイロットは最初の出撃で生きて帰って来るのは多くなかったそうよ』
それなら、私は…一人前です?
『…半人前よ。私とあんたを合わせてね。慣れていい気になった時が1番危ないから、そこだけは肝に銘じなさい』

町の皆さんのご厚意に甘えて、修理施設でピースメーカーの修繕並びに改装を行って行きます
『これ、確かに万人向けだけど、特長がないのが特長かしら。あまり面白くないわよね』
そうですか?素直で動かし安いとは思いますけど…
私の影とそんなやり取りをしながら修理と改修をやっていきます



●ミッションオーバー
「大破こそは免れましたが……ピースメーカーは大きく損傷してしまいましたね」
『まっ、初陣にしては上出来じゃない? 手間暇かけて育てた戦闘機パイロットは最初の出撃で生きて帰って来るのは多くなかったそうよ』
 整備場の一角、秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は先の戦いでは後詰を務め、万が一の敵襲に備え――そして実際に現れたMk4の生き残りに対し、たった一人で応戦していた。単独で超常を用い二機を運用出来る信子なればこその技だ。だがその代償に、機体が受けたダメージは想像以上に深刻だった。
「それなら、私は……一人前です?」
 そしてガフの谷への到着と共に、信子は自ら機体の整備を買って出た。これから長く苦楽を共にする相棒なればこそ、自分の手で直す事が出来なければ。その思いに応えた整備班長の計らいでスペースを借りる事が出来、こうして修理作業に励んでいるのだ。
『……半人前よ。私とあんたを合わせてね。慣れていい気になった時が1番危ないから、そこだけは肝に銘じなさい』
 喋りながら外したパネルの中から焼き切れたハーネスを引き出して、新品の物と交換する『姉』に工具を手渡す信子。ここでも二人掛かりならきっと出来ない事は無い。そう信じて、朝から黙々と作業を続けていた。
『これ、確かに万人向けだけど、特長がないのが特徴かしら。あまり面白くないわよね』
「そうですか? 素直で動かし安いとは思いますけど……」
 そう愚痴るのは姉の方。HCM-74『ピースメーカー』、傭兵国家『ヘキサ』製量産型キャバリアたる本機は堅牢で堅実な作りである反面、突出した能力がないのは確かだった。だがそのお陰で初心者の信子にとっては扱いやすく、素直な操縦性と重厚な外見に反し必要十分な機動性を確保している。故にツーマンセルで息の合った連携をすれば、スペック以上の戦果を叩き出す事も難しくはない。そして実際にそれをやり遂げたのだから、信子の言い分も至極もっともであった。
『そうねえ……まあ、あんたがいいならいいけど。いや私が良くないわ』
 ハーネスを組みつけ、トルクレンチでパネルを締めた姉が立ち上がり、そのままふらりと姿を消す。
「姉さん、何か良からぬ事を……」
 大方仕事に飽きた所なのか、あるいは……その予想は見事に的中した。どこぞから大量の軍装品カタログを持ち出した姉が、一角の入り口で満面の笑みを湛えて立っていたから。

『あ、これなんてどうかしら? 加速用のブースターとシールドが一緒になった奴』
 黙々と装甲の交換を続ける信子。大分機材の使用も手馴れてきた――この分なら今日中に大体終わりそうだ。流石に機関部の修理は専門家に見て貰わなければ分からない部分もあるが、目に見える部分や簡単な部品交換は――何よりピースメーカー自体がそういった作業をし易い様に比較的簡便に造られていた事もあって、作業は足回りを残して大詰めを迎えていた。
『サブアーム! 武器いっぱい持っても大丈夫よ』
「そんなに沢山装備しても扱い切れませんよ……」
 だからか、姉はそれよりも機体の改修に気が向いて、最早修理は信子に任せきりである。カタログにはキャバリア用の汎用装備がごまんと並び、それを眺めては嬌声を上げる姿は傍から見ればファッション誌を片手に談笑している女子高生にも見えた。
『これ可愛い! ハイヒールみたいな、スラスターかしら?』
「ええ、武装が増えたら必要かもしれませんね」
 しかしその内容は物騒極まりない武装の話ばかり。一人で黙々と作業を続ける信子に対して、姉は我関せずと言わんばかりにカタログのページをめくる。
『狙撃用のスコープを内蔵したヘッドギアね!』
「今の得物じゃそんなに遠くへ届きませんよ!」
 流石、円卓連合の様々な機体が集まるガフの谷。あれもこれもどれもが欲しいと宣う姉に呆れた口調で信子が返す。この調子じゃ折角進んだ作業も……今日中に終わらせるつもりがどんどん先延ばしになってしまう。それでは、この場を貸してくれた整備班長に合わせる顔が無い。
『いっそオーバーフレームごと替えちゃうっていうのも』
「姉さん!」
 遂に信子が声を荒げて、のほほんとカタログを眺める姉を強く諫めた。ここへ何しに来たのかしら? と言わんばかりの強い視線を向けて、一拍の間の後にきつい口調で言葉を掛ける。
「……手伝って」
『……はい』
 流石にまずいと悟った姉も機体の足元で作業を再開する。日没も近い。そしてこの間も世界の各地では戦が起こっているのだ。だから、調停者の名を冠するこのキャバリアを一早く直し、その名の通りの仕事をしなければならないのだから、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァイス・ローベルグ

【SPD】

さて…帰る前に修理しておこうか
電気装系が逝かれる可能性があるUCも考えものだな…

仕事道具片手にウルバスのメンテナンスをしよう

本当は他のキャバリアのメンテナンスもしたかったが…流石に数が数、帰還するまでの時間では自機が限界だろう

…む、エネルギーが不足しているな。少し分けてもらえないだろうか…
話ついでに円卓連合の話も聞いてみるか
そういえばかの連合について何も知らずに来たな…



●インターミッション
「さて……帰る前に修理しておこうか。しかし電装系が逝かれる可能性があるUCも考えものだな」
 ヴァイス・ローベルグ(鋼鉄の狼牙・f30143)は傷だらけのウルバスの前で静かに息を吐いて思案する。先の戦いで放った大技は敵だけでは無く自らの機体にも、かなりのダメージを与えていた。故にここで直していかなければ、文字通り先が無いという状態だった。
(本当は他のキャバリアのメンテナンスもしたかったが……流石に数が数、帰還するまでの時間では自機が限界だろう、と思ったが)
 だがマシンの整備は己の本分。そしてガフの谷は新旧様々なキャバリアが取り揃えられていた。整備班長の好意から借りた整備場の一角には、ずらりと多種多様なキャバリアの交換部品が並んでおり、板金作業を除いて内装の修繕には十分に事足りる状況だった。思いの他、ウルバスの復旧作業は手際よく終わらせられたのだ。
(流石、多機種を運用しているだけある。部品の欠品を懸念したが――何とかなるものだな)
 見た目は兎も角、これで再び戦場へ立つ事は出来る。時間もあるし装甲の交換でも進めようとした矢先、不意に老齢の整備員が手を振ってこちらへ近付いてきた。
『おぅい、兄ちゃん。暇か?』
 暇、に見えるのだろうか。いやこの場合は……整備員同士の挨拶の様なものだろう。
「暇ではない……が」
 そして曲がりなりにも半日でキャバリア一台を、それもたった一人で粗方仕上げた腕前を知られたとあれば、こういう場で掛けられる声にはきっと意味がある。
「時間は作れるよ」
 いや、無理にでも作らせて貰おう。恐らくこの先に、俺の本来の戦場が待っているのだから。

『ちょいとなあ。よく分からんマシンが混ざっててな。外の話も聞いてみたいんよ』
「うむ……これは」
 整備員に連れられてヴァイスが向かった先には、先の戦いで肩を並べた随分と荘厳なサイキックキャバリアがその威容を示していた。どうやらパワーダウンしたこの機体の整備について問題が発生しているらしい。
「ソケットの規格が標準と違うのか。ハーネスの大元は?」
『メインボードは標準だよ。だがその先のピンが分岐してるみたいでね……』
 手渡されたキャバリアの部品――絶縁体で被覆された細長いホースの様なモノは、恐らくこの機体の伝達系の部品だろう。だが入力と出力でプラグの形状が全く違う為、むしろ見覚えの無い線が急に生えてきている為、どうやってこれを繋げれば良いのか思案している様であった。
「多分、読み取り用に信号を分岐させているだけだ。動かすだけなら細い方がメクラでも問題無いだろうが……」
『それか。純正だと随分妙な奴使ってるんだろうなぁ』
 ヴァイスの見立てではサイキックキャバリアの念動伝達系の部品。恐らくは駆動系と兵装コントロールの信号を分岐させて、万が一のバイパスとして使う代物と予想した。先の戦いでその部品が欠損し、代用品を探していた所で用途不明の形状に出くわしたといった所か。戦場ではよくある事だ。そしてこういう時は、大抵動けば何とかなる。
『ありがとよ。行先さえ分かりゃ、後は何とかして見せるさ』
「健闘を祈るよ。さて……」
 答えが分かれば後は熟練に仕事を任せればいい。きっと日が沈む頃には真っ当に動かせる機体が一台増えている事だろう。そのまま整備場を後にする――事も無く、居並ぶキャバリアを興味深げに眺めるヴァイス。標準的な機体が多いが、中には珍しいモノもある。これだから前線の整備はやめられないのだと、高鳴る鼓動を秘めたまま錚々たる鋼の巨人を一瞥して。
「Mk3、フリント、あれはドラゴンタイプ……それに」
『キャバリアに興味があるのか?』
 再び、今度は知った声がヴァイスの耳に届く。振り返れば包帯まみれの警備主任が、片手を上げてヴァイスに近付いてきた。
「まあ、仕事柄……そうだ」
 むしろこっちが本業だからな、と付け加えて。矢張り先の戦いのダメージは相当深刻なのだろう。時折足を引き摺る様子は痛々しい……それでも、役目を果たさんと猟兵達の間を駆け回っている事はヴァイスも良く知っていた。だからこそ彼に頼めば何とかしてくれるだろうと、言葉を続ける。
「インゴットを分けて貰えないだろうか。そういえばガス欠だった」
『勿論だ。他に何かいるモノはあるか?』
 よかった。流石、一帯の兵站を取り仕切っているだけの事はある。ならばついでに聞いておきたい事があった。それは本業――。
「そうだな。そういえば円卓連合ってのは――戦はしてるのか?」
『戦か……ちょっと移動しようか』
 否、再び過去と対峙する為の、予行演習として。

『君の言う通り、現在我が国は――いや、我が連合は周辺国との交戦状態にある』
 人気のない食堂で警備主任がタブレットに映した円卓連合の周辺地図に、大小の矢印が赤と青に色分けされて続々と立ち並ぶ。それらはまるで台風の様に外側から内側、内側から外側へと伸びているのが見て取れた。特に大きいのはクリスクワイア帝国から外側へ伸びているモノ。続いて意外な事にドワーオ。オブイエ王朝はどちらかといえば、内側に伸びる小さな矢印が沢山見受けられる程だ。
『だが、その原因がオブリビオンマシンだと判明した今ならば――』
 これらの矢印が戦線を意味するのだとしたら、そこにオブリビオンマシンが必ずいるという事だろう。明らかに稼働率の高そうな帝国は成程、円卓連合の盾となり剣となり、最前線でそれらを含めた敵国と渡り合っているという事になる。
「今なら、無為に戦火を広げる事も無いだろう、と」
『しかし無辜の民には関係の無い事だ。巻き込まれれば尚更……』
 幾ら敵の正体が分かったとはいえ、見破るのは猟兵頼みだ。そんな事を、事情を知らぬ者達がおいそれと飲み込める訳が無い。そうして見えざる悪意が不意に広まっていく事は、ヴァイスはその身をもってよく知っていたから。
「先は長い、か」
 人の心は、生命は、機械と違って手順通りに直す事など出来ないから。
 だから、この戦争が――百年の争いが終われば皆、元に戻るのだろうか。
 そう、祈る様にヴァイスは静かに瞳を瞑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・ファル
『プロト・ガーネ』を正式に調整し、
リア・ファル専用機『ガーネレイ』として仕上げよう

ボクがこれまで得た各世界の技術知見、
戦艦AIとしての持てる機能技術を導入してカスタマイズ

『イルダーナ』をコクピット部としてドッキングさせることで
戦闘中でも分離・合体が可能
『イルダーナ』の光子波動エンジンからのエネルギー供給により出力安定
タンデムシート部も復座として利用できる

武装面も、『ヌァザ』の多元干渉をリンクさせて利用可能だし
『セブンカラーズ』と同設計のライフルや『アンヴァル』も運用可能
『ライブラリデッキ』の魔術系兵装も制御できてる

開発に付き合わせてゴメンよ?
三界の魔術師らしい明日の為のマシンにしたかったのさ!



●いつか来る明日の為に
『ってかそのバイクみたいなのを構造材代わりにするってなぁ』
「これでも宙間戦闘機、フレームの強度は十分なんだから」
 リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は自身の愛機『イルダーナ』を『プロト・ガーネ』のオーバーフレームを拡張した胸部へはめ込む様に接続し、元より存在していたエネルギー経路の再接続を進めていた。リアの言う通り数多の戦場を駆け抜けたイルダーナの強度は折り紙付き。本来頑丈なコクピットブロックとコ・ジェネレータ―が配された胸部の――いわば内臓と骨格をごっそりとくり抜いても、代わりに配する事によってこれまで以上の堅牢さを確保出来ていた。
「ついでに光子波動エンジンからのエネルギー供給で出力も安定させられるし、タンデムシートは複座部にもなるよ」
『いやそういう問題じゃ無くてな、嬢ちゃん』
 呆れた口調でボヤく整備員を尻目に、リアは滑らかな手つきでコンソールを叩き――その動作に合わせて無数のコードの束がプロト・ガーネのアクセスポートに結びついていく。ハッキングといえば若干聞こえが悪いかもしれないが、これもマシンのセットアップ手法の一つ。配線図に頼らなくてもこれまで得た知見から部材を最適に配置していけば、あっという間にイルダーナとプロト・ガーネの結合作業は完了していた。
「大丈夫、強度計算もバッチリだから」
 これで物理的にガーネをイルダーナから直接操る事が出来る。矢張り慣れ親しんだコンソールだと仕事が早い――爽やかな笑顔を振りまいてするりと白磁の様な床へ降りたリアは、待ち望んでいた施設の女主人――研究所長の姿を確認してヒラヒラと手を振った。

『で、ラボから呼ばれたってェ訳ね……』
 ここは整備場ではない。ガフの谷唯一のキャバリア運用研究施設――と言えば聞こえはいいが、要は海千山千の買い上げ品を解析する為だけの、いわばキャバリアの屋内試験場に過ぎない。ぼさぼさの長髪をかき上げて、新たに届いた異質なクロムキャバリアを前に所長はあくびを一つ。そして即座にその機体が、これまで見てきたどんなキャバリアとも違うモノであると見破った。
『んー……古代魔法帝国の様式に似てる気もするけど、読み取れるのは空間転移系の波動?』
 視線の先にはプロト・ガーネが発する異質な波長の測定記録。本来サイキックキャバリア運用の為に備えた空間測定器は、先程から見た事も無い数値を弾き出していた。そしてその数値から周囲の大気組成すら書き換えている事に所長は気付く。
『……ナノペーストありったけ。下手したらアタシ達喰われるかもよ?』
「そんなに怖くないよ。ずっと一緒に戦って来たんだから」
 顎で助手をこき使い、即座に装甲用の予備素材を取り寄せる所長に微笑むリア。大気組成の書き換えは良い線を行っていたが、実際は光子波動エンジンの余波が周辺で原子の破壊と再生を繰り返しているだけ。本来はアカシックドライブと接続し事象変異(ユーベルコード)を自在に発露する為の主機関だと現象の説明をする。
『ハァん……成程、高次存在とアクセスして多次元干渉プラットフォームとして運用する訳か。それをこの世界で稼働させるにはこの世界の存在を依り代にした方がより安定する可能性が高い。むしろ、こちらの技術を組み込む事で次元干渉許容範囲を更に拡大させるのが目的かな? 成程成程……面白い。ちょっと、この前のサイキックの転移実証試験のレポート持ってきて。三か月前の。あれ多次元観測プローブが行方不明になって司令官に右ストレート貰った奴。助手が。あの時の手順と……』
 どうしてこういう人は突然早口になるのだろう。まあ当たらずとも遠からずというか……世界の余計な火種になりそうなのでこれ以上は伝えず、リアは所長を一しきり喋らせる事にした。

「開発に付き合わせてゴメンよ?」
『いいや、こういうのは、大歓迎だよ。いっっっっっつも油と火薬の臭いばかり。たまに面白い事もあるけれど予算は全然降りなくてさ……ウンザリしてたんだ!』
 喋り過ぎて息切れした所長は冷水を一気飲みすると、ちょっとだけむせてリアに満面の笑みを向けた。作業は全て終わった。光子波動エンジンの出力は安定。サブのインゴットシステムも問題無く立ち上がっている。先の戦いでは急ごしらえだったロングビームライフルも、まるで突撃槍の様な鋭い穂先を備え付け遠近両用の武装と化した。非展開状態のステルスクロークはあたかも白銀の翼の様に広がって、神々しい輝きを放っている。
『それで、名前はどうするんだ。Xナンバーはもう卒業だろう?』
 ニヤリと口端を歪めて所長が尋ねる。勿論とリアが微笑み返す。突貫で調整した外装も今は無く、騎士然とした、あるいは超然とした異端のフォルムが目に映る。耐弾性を考慮した継ぎ目の見えない滑らかな白銀の装甲は光学兵器の減衰すら可能として、密やかに咲く花の様にすっぽりと偏向板に覆われた三次元スラスターは陽炎を揺らめかす。所々に立ったエッジは切り札の超常を発露する電脳魔術が刻まれて、そして流麗な騎士兜めいた美しい頭部に、闘志を発露する双眸が煌々と輝いていた。この機体はもうただの改造試作キャバリアじゃあない。三界の魔術師が駆る超常のマシン。機甲騎士と電脳魔術が合わさった奇跡のキャバリア――それは。
「『プロト・ガーネ』は今ここで『ガーネレイ』に生まれ変わるんだ!」
 白銀の巨体が咆哮する様に、雄々しいエンジン音が高らかに響き渡る。
 ガーネ・レイ――全ては、今を生きる人々の明日の為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

支倉・錫華
ん、ありがと。
でも数も減っちゃったし、機体は今まで以上に大事だと思うから、こっちで使って。
戦闘データのメモリーだけ、アミシアに渡させてもらうね。

それにしても『円卓連合』かぁ。
一国が治めてるわけではないところは、いろいろ事情も複雑そう。
またなにかあったら、お世話になることもあるかもだね。
ま、そんなに頻繁に傭兵を雇わないといけないっていうのも良くはないけど。

そういえばここは『谷』って環境だけど、オリジナルの武装とかないのかな?
狭い地形とスピードを生かして攻撃する武器とか戦術とかありそう。
あったら参考にしたいし、見せてもらえたら嬉しいな。

あ、でももちろん、機密事項なら無理には聞かないけどね。



●日は沈み、また昇る
「ん、ありがと。でも数も減っちゃったし、機体は今まで以上に大事だと思うから、こっちで使って」
 すっかり日は沈み、整備場の作業灯が一つずつ消えていく。その暗闇の中、支倉・錫華(Gambenero・f29951)は共に戦ったフリントストーンを見上げながら、傍らで片付けを進める屈強な男――シドンに礼を述べた。
『そう言ってもらえると助かる。嬢ちゃんの機体は量産型だったからな……他と比べりゃイニシャライズは幾分かマシって奴だ』
 全部くれてやると豪語したものの、減ってしまった戦力を少しでも埋める為には一機でも多くキャバリアを手配しなければならない状況は変わらない。幸い錫華のフリントストーンは量産型キャバリアなだけあって、再チューニングに掛かる時間はそれほど掛からないと思われる――シドンにとってこの申し出は渡りに船だった。
「うん。ただ戦闘データのメモリーだけ、アミシアに渡させてもらうね」
 微笑む錫華の側には物静かな少女――実体化したAI、アミシア・プロフェットが静かに首を垂れている。そしてチリチリと火花の様な光が瞬いて――軍用暗号通信がフリントストーンに蓄えた錫華の戦闘データを引き出した。全ては次の戦いに向けての糧とする為に。
「それにしても『円卓連合』かぁ。一国が治めてるわけではないところは、いろいろ事情も複雑そう」
『ハハッ! 気取っちゃいるが、ここらの蛮族の寄り合いが“とりあえず喧嘩は止そうぜ”ってなだけだ。こんな辺境、デカい国家を相手にしたら順繰りに潰されちまうからな』
 からりと大声を上げて笑うシドン。事実、ガフの谷の兵力――キャバリアはその寄り合いから掻き集めた有象無象が立ち並んでいる。用途も規格も装備もバラバラ。これでは組織だった軍事行動を取るのはどう考えても難しい。にも拘らずそういった物騒なモノを掻き集めなければならないのは、それなりの理由があった。
「それだって、オブリビオンマシンのせいでしょ?」
『でもな、人間ってのは分かっちゃいても割り切れねえモンなのさ』
 シドンの言からは、未だ円卓連合が危ういバランスの上にかろうじで成り立っている事が暗に示された。敵は内にも外にも……だからこそ、自分達の身は自分達の手で守らなければならない、と。

「またなにかあったら、お世話になることもあるかもだね。ま、そんなに頻繁に傭兵を雇わないといけないっていうのも良くはないけど」
『ありがとうよ。当てにさせて貰うぜ、猟兵』
 言って早速? 苦笑する錫華に敬礼で帰すシドン。ふと、去り際にちらりと辺りを見渡して、錫華が言葉を紡ぐ。
「……そういえばここは『谷』って環境だけど、オリジナルの武装とかないのかな?」
『武装かぁ……オリジナルかどうかは別として』
 やや思案したシドンが指し示したのは武骨なウインチ。その先にはまるで猛禽の様な鋭い鋼鉄の爪がギラリと鈍い光を放っていた。
『ワイヤーハーケン。山間だからな、火を噴かなくても飛び回るにゃあコイツが一番都合がいい』
『慣れれば目を瞑ってでもサルの様に跳び回れるよ』
 シドンの言葉に被せる様に現れたのは警備主任だった。全身を包帯で包んだその姿は痛々しくも、その瞳からは漲る生気が溢れている。放っておけば今すぐにでも戦列に復帰しそうな勢いだ。これまでの猟兵達との交流から、彼なりに何か思う所があったのかもしれない。
「大丈夫なの? 身体は?」
『大丈夫ではない……が、のんびりしてもいられないからな』
『あ、そうだ。潰したバジリスクの代わり、嬢ちゃんのフリント使ってくれ』
 突然のシドンの言い草に面食らったのは警備主任。病み上がる途中だというのに、既に次の仕事が用意されている……それも錫華のピーキーなチューニングが施された、生半なパイロットではとても扱えない代物。だが。
『高機動型か、悪くない』
「ぐるぐる目が回らないようにね。感度を上げてるから」
 錫華の言葉に警備主任はニヤリと目を細める。半病人とは言えあの荒々しい戦いぶりを見せつけた闘争本能は健在といった所か、それに自らに手傷を負わせた相手の機体となれば、昂るのも訳はない。そしておどけて敬礼で返す警備主任に、何か思いついたように錫華が言葉を続ける。
「そうだ。そのハーケンを使った戦術とかないの?」
『あるにはあるが、この身体ではな……』
 あの戦いぶり――高機動強襲型のバジリスクタイプの性能を遺憾なく発揮していた警備主任ならば、更に高度な戦闘技術を持っているのではないかと思って。それは諜報員としての仕事でもあり――やや思案した警備主任が取り出したタブレットに、続々と“彼等の戦い方”が記された戦闘教則が映し出される。
『特製の静穏式ワイヤーハーケンを使ったデストラップ設置法。他には三次元機動戦術――ただスラスターを吹かすよりトリッキーな動きが出来る』
 再生された動画の中で、まるでキャバリアが忍者の様に渓谷の斜面を走り、跳び、縦横無尽に駆け巡る。所々で射出したワイヤーハーケンが岩肌に食いついて、立体的且つ奇想天外な機動を可能としていたのだ。確かにこういった戦場ならばこの方がエネルギー効率もいいし、不意を打つような様々なマニューバを取る事が出来る。
「まるで蜘蛛だね」
 ぼそりと錫華が呟く。トリッキーな種々の動きは成程、人型の枠外にある別の生物を想起させた。それは正しく、山間の様な限定空間を狩場とする獰猛な獣の動き。しかし錫華の言葉を聞いた二人の反応が不意に鈍くなる――なったような気がした。これ以上はまずいか……諜報員の勘が“余計な詮索”という不可解なワードを立ち上げる。しかし意外にも、その回答は呆気ないモノだった。
「……これ以上は、機密かな?」
『機密、って程でも無いが』
『この谷の古い言い伝えでな。蜘蛛の化け物がデカい巣を張っているってのがあってな』
 口籠る警備主任に被せる様に、今度はシドンが朗らかに口を開いた。ガフの谷の伝説、謎の巨大な化け蜘蛛の話。こんな機械に満ちた世界だというのに変な御伽噺だと思ったが、こういう話の結末は大体相場が決まっている。
『それを確かめに来た連中が見つけたのが、蜘蛛のお宝……プラントだったのさ』
 故に蜘蛛というワードを知る者は円卓の古い姿を知る者――と勘違いされ、警備主任は俄かに警戒し、シドンは与太話と笑い捨てた。それだけだ。
「他の国も、そんな話があるの?」
『かもな。まあ真に受ける事は無ぇよ』
 つまりこの辺りの伝承の行きつく先が須らくプラントだった、という事だろうが……今はさして重要な話でもない。心に秘めて、今度こそ錫華はくるりと二人に背を向ける。
「うん。それじゃ、ばいばい」
『ああ、貴殿の行く先に幸多からん事を』
 欲しいものがあればいつでも来てくれ、仕事もあるがな。とシドンが続いて、錫華の姿が闇夜に消えていく。あたかも初めから闇そのものだったかの様に。

 これでこの戦いの話は終わりだ。次はまた、いつかの夜明けに。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月21日


挿絵イラスト