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春来たりて冬は死す

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●時よ止まれ、お前は美しい
 冬と春は、一緒にはいられない。
 冬を司る妖と、春の領域の妖もまた然り。
 晩冬と早春の重なり合う、ほんの短いひとときだけが、逢瀬の刻。
 ……けれど幸福な時間は二度とこない。
 だから、ヒナタは自ら冬の領域へと足を踏み入れた。
「……ヒコっ」
 鳥居をくぐり、しんしんと雪の降り積もる神社へと呼びかけるヒナタ。
 常ならば猛吹雪に霞んでいる立派な社殿が、今ははっきりとその全容を露わにしている。
 吹雪に備えてもこもこに着込んできたのに、この程度の寒さなら自分の毛皮だけでも凌げてしまいそうだ。
 その事実が、愛する人の不在を如実に示している。
 ヒナタは込み上がった涙をこらえて、さらに声を張り上げる。
「ヒコーーーッ! 今度はわたしがきたよっ……あなたをひとりっきりにはさせないよ……!」
 呼び声はかすかな反響を引いて、冬空に吸い込まれていった。
 一拍の沈黙ののち──突如として風が渦巻いた。
 地面に積もる雪が巻き上げられ、ヒナタの眼前に小規模な吹雪の球体が顕現した。
 その内側に強大で怜悧な、けれど本当は寂しがりやな輝きを見出して、ヒナタは迷わず両手を広げ、全身で吹雪を受け入れた。
「ヒコ──!」

 そして春狐の少女と氷狐の大妖の魂は一つとなった。

 球体状の吹雪の中で、少女は閉ざしていた瞳を見開き、うっとりと微笑んだ。
「……時よ止まれ、お前は美しい」
 桜色から白々と冷えていく唇がその言葉を紡ぎ出した瞬間、世界は暗転した。

●グリモアベース:ゲネ
「カクリヨファンタズムで局所崩壊が始まった! 崩壊阻止のため、急遽現地に向かってもらいたい!」
 ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)は一分一秒も惜しいとばかりに、招集をかけるや否や必要な情報をホロモニターに一挙展開した。
「骸魂は生前に縁のあった妖怪を呑み込み、オブリビオン化する。今回飲み込まれたのは春狐の妖、ヒナタ。この子自身はどこにでもいるありふれた妖怪だ」
 一枚目のモニターに映し出されているのは、暖かな色合いの狐耳に狐尾の愛らしい少女妖怪。禍々しさや力強さの一切ない、低級の妖であると見てとれる。
「問題はこの狐娘を呑み込んだ骸魂のほう。こいつが大妖怪『凶氷狐(きょうひこ)』」
 二枚目のモニターには白銀色の巨大な狐が映し出されている。見るからに精悍で、野性味たっぷりの雄々しい狐。その体躯は、大きな神社の社殿全体を覆いつくすほどの巨体を誇る。その性格は冷徹かつ凶暴だという。
 一見接点のなさそうな二匹だが、晩冬と早春のほんの短い期間に逢瀬を重ねていたようだ。
 しかし幽世への移住の際、凶氷狐はヒナタを庇う形で力尽き、ヒナタ一人がカクリヨファンタズムに流れ着いた。
「ヒナタは凶氷狐を諦めきれなかった。カクリヨファンタズムの無規則な世界を渡り歩き、凶氷狐がかつて占拠していた神社そっくりの場所をとうとう見つけてしまったわけだ」
 果たしてそこには凶氷狐の骸魂が眠っており、ヒナタは望まれて骸魂に呑み込まれた。
 その時、満たされたヒナタが思わず呟いた言葉が「時よ止まれ、お前は美しい」。
「……こいつは世界の終わりを告げる「滅びの言葉」だとされている。事実、カクリヨファンタズムの崩壊が始まっている。今はまだ凶氷狐の影響下にある神社の範囲内に留まっているが、いずれ世界全体に波及するだろう」
 足元から崩れゆく世界。それを食い止めるには、崩壊の中心にある骸魂を倒し──すなわち、ヒナタと凶氷狐を引き裂かなければならない。
「残酷に思えるかもしれないが、それが世界のため、妖怪のため、引いては望まずに骸魂へと成り果てた凶氷狐と……ヒナタ自身のためでもあるんだろう」
 ゲネは速やかに転送術式を励起しモニターを書き換えた。
「ヒナタを呑み込んだ凶氷狐は、迷宮化した天地あべこべの社殿の内部、強烈な冷気の中心にいる! 必ず倒して骸魂を送り出してやってくれ……!」
 全てを塗り潰す輝きが、猟兵達を崩壊のカクリヨファンタズムへと連れ去った。


そらばる
 カクリヨファンタズム、「滅びの言葉」事件。
 崩壊の進む世界の中心へ至り、骸魂を撃退してください!

●第一章:冒険『無秩序な大迷宮を攻略せよ』
 神社の社殿が迷宮化し、捻じれ狂った巨大空間を形成しています。
 上下左右ちぐはぐで、刻一刻と構造が組み変わり、方向感覚まで狂わせる大迷宮を潜り抜け、中心を目指してください。
 凶氷狐のいる中心部に近づくほど寒さが増し、霜や凍結などの障害も発生するでしょう。

●第二章:ボス戦『大寒波・フローズンワールド』
 春狐のヒナタを呑み込んだ凶氷狐は、周囲を自分の住みやすい環境にしようと絶対零度を撒き散らし、大寒波を起こす存在に成り果てています。
 暖かい物が大嫌いで、熱を持つ物体に対して異常に執着し凍らせようとしてきます。
 凶氷狐としての意識も残っています。冷徹かつ凶暴な性格です。

 骸魂を倒せば、呑み込まれたヒナタを救出できます。

●第三章:日常『硝子の中の世界』
 気落ちしているヒナタと硝子細工作りで交流し、慰めましょう。

 執筆の進捗やプレイング締め切りなどは、マスターの自己紹介ページで呟いております。目安にどうぞ。
 それでは、皆さんの自由なプレイングをお待ちしています!
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第1章 冒険 『無秩序な大迷宮を攻略せよ』

POW   :    気合で走り回って通路を総当りで確認する

SPD   :    通路以外の脱出経路でショートカットを試みる

WIZ   :    無秩序の中に秩序を見出し、最短経路を模索する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●あべこべ大迷宮探索
 それは広大な和様の空間だった。
 板張りの床、連なる襖に障子戸、細緻な欄間、畳張りの室内。全体は四角四面の屋内だが、時折手水舎や本坪鈴と賽銭箱などが無秩序に現れる。
 大きな神社を構成するありとあらゆる施設が一度バラバラに解体され、正体の知れない真っ黒な空間につぎはぎされた広大な迷宮が、猟兵達の目前に立ちはだかっていた。
 ここでは上下左右がちぐはぐで、天地が定まらない。真横に向けて延びる階段、上から下へと横切る廊下、天井から生えながらも中身は決して落ちてこない賽銭箱などなど。物理法則もあやふやだ。
 その上、まるで寄木細工のからくり箱のように、時折構造が組み変わる。整然とした幾何学の景色が組み変わっていく光景は眩暈を催し、天地もその都度ころころ変わる。方向感覚はほとんど役に立ちそうにない。
 このとてつもなく面倒な迷宮を踏破せねば、崩壊の中心部にはたどり着けないだろう。
 頼りは冷気。中心部に近づけば近づくほどに、凶氷狐の発する寒波の影響が強くなるはずだ。そのぶん、霜や凍結などの厄介な障害が追加されることになるが。
 手間取れば世界の崩壊は広がり、大寒波が吹き荒れることだろう。
 猟兵達は速やかな事態の収拾を目指して、大迷宮へと立ち向かう。
ゾーヤ・ヴィルコラカ
 ……寒いわね。こんなに寒いと、故郷の村を思い出しちゃうわね。

 【UC:狼の鋭感】(WIZ)で感覚を鋭敏にするわ。強化された聴覚と肌の感覚で、凶氷狐さん達の気配や息遣いを感じ取ったり、肌を刺す冷気の強さから中心部への道を探ったりするわね。
 発動後は少し昏倒してしまうけれど、〈気合い〉を入れて倒れながらでも地道に進んでいくわ。雪国生まれだから寒さとの付き合い方はばっちりよ、持ち前の〈野生の勘〉しっかり発揮させて〈追跡〉していくわ。

 二人の絆を引き裂くようで心苦しいけれど、このままだと当人たちも含めて誰も幸せになんてなれないから、絶対に止めなきゃ。



●雪国を進むように
 無限に続くとも思える複雑怪奇な和様迷宮。
「……寒いわね」
 どこからともなく漂う底冷えする空気に、ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は小さく呟いた。
「こんなに寒いと、故郷の村を思い出しちゃうわね」
 ダークセイヴァーの雪景色を思い出す。万年雪と絶望の中に佇む、今はもうない集落……
 振り払うようにかぶりを振ると、ゾーヤは眼差しを伏せた。
「……先の見えない吹雪の中でも、必ず道は拓けるの」
 途端、聴覚と皮膚の感覚が野生の獣にも等しい精度を得て、迷宮中に拡張していく。
 大量の情報がゾーヤへと吸い込まれるように飛び込んでくる。迷宮奥深くに向かうほど下がる気温、肌を刺す冷気。それらは徐々に夥しい霜を下ろし、大量の氷柱を成し……
 ──その中央に、獣の息遣い。
「……ぅ──」
 明確な生命の気配を捉えた瞬間、ゾーヤの意識は緞帳を下ろしたかのように暗転した。
 ……気づいた時には、板張りの床にうつ伏せに寝そべっていた。どうやら短い昏睡状態に陥っていたようだ。無理やり感覚を覚醒させた代償だろう。
 だが、敵の居所は、しかと掴んだ。
「……気を失ってる場合じゃありませんね」
 まだ気だるい身体を起こして、ゾーヤは壁伝いに歩き出した。凶氷狐の居場所は立体的に把握した。どんなに迷宮が惑わせてきても、進むべき方向を見失うことはない。
 我知らず肌が泡立つ。次第に寒気が強くなってきた。
 だがこちらは雪国育ち。寒さとの付き合い方は心得ている。
「二人の絆を引き裂くようで心苦しいけれど……」
 霜を踏みしめ、持ち前の野生の勘で通路の組み換えを乗り越えて、一歩一歩、着実に凶氷狐の元へ。
「このままだと誰も幸せになんてなれない。……絶対に止めなきゃ」
 前を見据える緑の瞳には、強い決意が満ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫谷・康行
ルールはいらない
時空間に展開する力場を持って因果を繋げばいい
事実もいらない
結果さえ分からない
ただその先に立っている
それだけが意味を持つ

この空間に意味を持たせる必要はなく
俺が意味を認識出来ればいい


コード・イクステンド・オーダーを使い4次元から空間にハッキングをかけ
因果律を改変して先に進もうとする

鍵になるのは熱量の多寡
なら進む先の熱エネルギーが少なくなるように空間を調整出来ればいい
螺旋を下るようにエネルギー準位の低い位置へ

世界の有り様を変えるためには世界を知ることが必要だ
2人の狐の情報を探りながら進む

「まずは知ること
その冷たさを
その気持ちを
ただ聞くこと
まずはそこからかな」



●想いを手繰って
 理不尽な空間の繋がり。因果を無視した奇妙な迷宮。
 しかし一切の問題はないと、紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)は断じる。
「ルールはいらない。時空間に展開する力場を持って因果を繋げばいい」
 前方に差し伸べた指輪が、静かな輝きに満ちる。
「事実もいらない。結果さえ分からない。ただその先に立っている。それだけが意味を持つ」
 『妨げざるものの手』が力場波動方程式を走らせる。増幅された効力は世界の理をも跳び越え、四次元に至る。
「この空間に意味を持たせる必要はなく、俺が意味を認識出来ればいい」
 上位より下位を──三次元から平面を見下ろすように、四次元から三次元空間を見下ろし、因果に干渉する。
 あべこべの上下関係も、組み変わる狂わしい通路も、因果律の改変に合わせて康行の前に整然と整列していく。
 ──鍵になるのは熱量の多寡。
 ならば進む先の熱エネルギーが少なくなるように、空間を調整してしまえばいい。常温から低温へ。螺旋を下るように、エネルギー順位の低い位置へ。
 結果である終端を極低温に設定してしまえば、その経路は正解のルートということになる。そのように、因果を調律するのだ。
 カーン……カーン……と遠いどこかで拍子木に似た音が断続的に響き、そのたびに世界の理がねじれていく。
 闇の中、整然たる螺旋階段へと様変わりした迷宮を、康行は行灯を掲げるように淡く光る指輪を掲げながら下っていく。
「まずは知ること。その冷たさを。その気持ちを。ただ聞くこと。……まずはそこからかな」
 下方から吹き込み、徐々に勢いを増す冷気に、二匹の狐の気配を探る。世界の有り様を変えるためには、世界を知ることが必要だ。
 冷厳たる空気の因果を辿れば、淡い想念のようなものがあえかに触れる。
 悪戯心から始まった出会い。めぐる季節、重ねる逢瀬。心臓が張り裂けるような、最期の別れ。
 一度引き裂かれた二人の悲しみが、凍える風の奥に、確かに根付いている。
 カーン……カーン……
 遠く甲高い音の響く暗闇を、細い想いの糸を手繰るように、指輪の灯りが螺旋を描いて潜っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

神咲・七十
NGなし・アドリブ・連携お任せ

本当に、複雑な迷路ですね・・・迷路そんなに得意ではないのですが。
まぁ、さすがに今回の相手・・・狐さんでしたっけ?
狐さんのいる方向に進むようにしていけば、ある程度は、攻略もできますかね。(持ってきたお菓子もぐもぐ)

UC『制約:征服者』の探知能力を使って凶氷狐のいる方向にひたすら進むように攻略していきます。(面倒になってきたら一部破壊して)

かなり損な役回りの内容ですね、今回。
まぁ、でもこのまま崩壊させてしまうのもまずいですし。
(それに、個人的な考えではありますが、こういった内容で、お互いが好きになってしまったことを批難されるというのも嫌ですしね。)



●迷路攻略法(物理)
「本当に、複雑な迷路ですね……迷路そんなに得意ではないのですが」
 見たこともないような迷宮の構造に、神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)は吐息をついた。
「まぁ、さすがに今回の相手……狐さんでしたっけ? 狐さんのいる方向に進むようにしていけば、ある程度は、攻略もできますかね」
 などと言いつつ懐ごそごそ。取り出したお菓子をもぐもぐ。
 切らしてはならぬ甘味をしっかり摂取して、余裕の足取りで歩を進めながら、小さく呟く。
「Die Wurzel, die dem Leben beraubt」
 たちまち、七十の額に裂傷が生じた。鮮血が舞い、それを契機に目に見えぬ結界が七十を中心とした球体状に展開していく。
 範囲は戦場──すなわち、迷宮全体。
 迷宮の特殊性か、結界を広げるのもなかなかに骨が折れ、負担が一気に七十の全身に襲い掛かってくる。
「……っ、うわ思ったよりきつっ。ですが……」
 ぼやきつつ、とめどなく溢れる血を流れるままに結界に食わせながら、七十は知覚を研ぎ澄ませた。結界に触れるあらゆる情報に。
 迷宮内の気温の、強弱のグラデーション。常温から極寒へと急激に変じていく、その中心部の気配……
「……見つけましたよ」
 いかに迷宮がねじれていようと、目的地は不動。ひたすらその方向を目指せばいいのだ。
 問題は、物理法則無用の上に不定期に組み変わる迷宮の性質。
「面倒ですね」
 目の前に立ち塞がったのは、前触れなく進路を塞いだ板張りの壁……いや、床か。
 七十は軽く肩をすくめると、大剣を無造作に振り下ろした。
 板張りが爆ぜんばかりの派手な音を立てて吹き飛び、垂直の床に大穴が穿たれた。
 和風建築は木造が基本。その弱点は、物理的な破壊のしやすさだ。
「しかしかなり損な役回りの内容ですね、今回。まぁ、でもこのまま崩壊させてしまうのもまずいですし」
 ぼやきとお菓子もぐもぐを再開させつつ大穴をくぐり、現れた通路を進んでいく七十。
(「それに……ただお互いを好きになってしまったことを非難される、というのも嫌ですしね」)
 世界の崩壊を防ぐことは、二匹の狐を救うことにも繋がる。たとえそれが、永遠の別離であっても。
 目標をしかと定め、七十はより確かな歩みで最深部へと踏み入っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

プリシラ・マーセナス(サポート)
『記憶はなくても、物事の善し悪しはわかるよ』
『援護は任せて!君には当てないから!』
 キマイラですが、記憶を喪失した状態でダークセイヴァーで暮らしています。
ユーベルコードはどれでも使いますが、移動手段として「黒虎」を、緊急の近接手段として「ガチキマイラ」を使い、基本的にはマスケット銃での中・遠距離戦を好みます。
 依頼内容には拘らず、手当たり次第に選ぶ傾向があります。また、一人で戦うよりも前衛の隙を補う戦法を選びます。
 相手の年齢、性別を問わず少年的に振舞います(素を出すと侮られると思っている為)。但し、咄嗟に女性的になる場合があります(驚いた時の叫び声など)
後はお任せ、よろしくお願いします!


弥久・銀花(サポート)
大体危険を物ともせず突っ込んで行きます、武器が痛みそうな環境の場合、武装を置いて行く事すらあります

迷宮? ユーベルコードで壁を掘れば進めますよ?
人跡未踏の大自然? 人跡を作りながら進めば只のピクニックです
壊しちゃいけない所ですか……? うーん……、とりあえず壁に手を付いて進めば良いんですかね?

大半の罠に引っ掛かりますが、華麗な力押しで攻略して行く事でしょう

地に足が着かなくて力を発揮できない、獲物を捕られる系のトラップの場合は大体抜けられなくなって為すがままです

敵が来たら迎え撃ちますが、奇襲を察知するスキルとか、毒の耐性、呪いなどの解除方法などは無いので、搦手には滅法弱いです



●破壊する者、補佐する者
 法則性のねじれまくった奇妙な迷宮。
 それを目前にした弥久・銀花(隻眼の人狼少女剣士・f00983)の結論はこうだ。
「迷宮? ユーベルコードで壁を掘れば進めますよ?」
「なるほど! ……んん? そ、そう?」
 勢いで思わず一度納得してしまってから、プリシラ・マーセナス(迷い子猫(21)・f21808)ははたと我に返って小首を傾げた。
 が、銀花はお構いなしに適当な壁の前に立つ。
「木造家屋なら、武器もそうそう痛まない──ですよね!」
 銀花の腕が輝き、エネルギー塊としての本性を現した瞬間、容赦なく壁をぶん殴った。ボッ、と鈍い音と共に、あえなく粉砕される木壁。
「で、寒いほうにどんどん進んでいけばいいのです」
「またずいぶんとアグレッシブだね……ってちょっと!?」
 慎重という概念を知らぬかのような歩みでずんずん進む銀花。暗闇に足を踏み入れた瞬間、その姿がふっつりと消えた。ドップラー効果を引きながら下へ下へと遠ざかっていく銀花の悲鳴。
「──黒虎!」
 プリシラは咄嗟に召喚式を発動し、己の身の竹の倍もある黒虎に騎乗し銀花の落ちた穴に飛び込んだ。
 黒虎はしなやかな動作で長々とした縦穴の壁面を蹴って、なすすべなく自由落下していく銀花を空中で器用に拾い上げると、そのまま穴の底に音もなく着地した。
 ほっと胸を撫でおろすプリシラ。
 銀花はぺこりと頭を下げつつ、なんということもなかったとばかりに華麗に床に着地した。
「いやあ、助かりました。地に足がつかないとふんばりが利かないので、力押し頼りとはいきにくいですね」
「つまり、物理法則が捻じ曲がっていようがトラップがあろうが、ゴリ押しで押し通るつもり、ということだね」
 猪突猛進な銀花の探索スタイルに、プリシラはいったん肩を落として吐息をついたのち、思い直して顔を上げた。
「今回の場合、それも一つの手かもしれないな」
 先ほど二人が降下してきた縦穴は、見上げれば垂直に延びる廊下だった。
 見回してみると、類似の垂直廊下や天井に張り付いた階段などを多々見かける。見た目通りの方向に重力が働いていたりいなかったりで、物理法則はちぐはぐだ。遠くでは通路が組み変わる乾いた木材の音。この有り様では、いちいち経路を決めて歩いたところで無駄に終わる可能性が高い。
 ならば、比較的破壊しやすい場所を選んで直線的に攻略するというのも、幾分か合理的に思える。
「全部が全部ひたすら力押しというわけにはいかないけど、壊しながら進むのには賛成だ」
 プリシラがそう言うと、銀花は少し得意げに胸を張った。
「では、破壊行為は私が担当しましょう!」
「あんまり一人で進みすぎないでね。僕は危険そうな場所に目を光らせておくから。援護は任せて!」
 記憶はなくとも分別は利くつもりだと、プリシラも胸を張って請け負った。
 かくしてちぐはぐな二名の意外と息のあった進軍が、迷宮内に断続的な破壊音を轟かせるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

劉・碧
ザッフィーロ(f06826)と

一歩社殿に踏み入れば冷気が掠めていく
春の狐はこの中にいるのか…全く
しかしこの先凍てるように冷気が濃くなるのだろう
黒いチェスターコートを羽織り襟を立てる

迷宮が不規則に動くなら、それに対応して動けば良い
まぁ…そうは思っても平衡感覚が狂いそうでいけねぇな
迷宮の奥に進めているのなら霜や凍結部分が散見される筈だ
奥は冷気も白いだろう…まさしく冬の絡繰箱だな
友人を見失わぬよう注意しながら迷宮を駆ける
俺の出身も暖かい地方でな…水が豊かだった
ここまで冷えることもなかったな
どちらかと言うと暑さの方が俺は得意だ
故郷の話をしつつ気を保ちながら進むとしよう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
碧f11172と

冷気が満ちる迷宮、か
方向感覚を狂わせる上に冷気を辿らぬといかんとは…
…厚手のマントを羽織って来て本当に良かった

迷宮内は『視力・聞き耳』で周囲を注意深く観察し『念動力』で『空中浮遊』しながら行動
…寒さは苦手だが…だからこそ漂う冷気には『第六感』が働くからな
冷気を探り己自身『鼓舞』しつつ碧と相談しながら進んで行こう
俺の器物の元が育まれた地は温暖な場所だったのでな…どうも寒さには慣れん
碧、お前は寒さには強いのか…と
同じ様な気候の国で生まれたのだなと寒さに強張っていた表情を緩め声を
人も器物も矢張り生じた場の気候が一番好ましいのだな
そう碧の故郷について尋ねつつ先を進んで行ければとそう思う



●暖かな故郷に思いを馳せて
 一歩社殿に踏み入れば、冷気が掠めていく。
「春の狐はこの中にいるのか……全く」
 なんとも言えない吐息をつく劉・碧(夜来香・f11172)。呼気も心なしか白く霞んでいるように思える。
「冷気が満ちる迷宮、か。方向感覚を狂わせる上に冷気を辿らぬといかんとは……」
 ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は我知らず肩を上げつつ、厚手のマントの襟元を掻き合わせた。
「……羽織って来て本当に良かった」
「しかしこの先凍てるように冷気が濃くなるのだろう」
 碧も黒いチェスターコートを手早く羽織り、襟を立てた。
「迷宮が不規則に動くなら、それに対応して動けば良い。まぁ……そうは思っても平衡感覚が狂いそうでいけねぇな」
「俺が先導しよう。……寒さは苦手だが……だからこそ冷気には第六感が働くからな」
 ザッフィーロは軽く床板を蹴ると、ふわりと宙に浮かび上がり先行した。滑るような速度に、碧は駆け足で追随する。
 ザッフィーロは視覚と聴覚を研ぎ澄ませ、念動力で器用に舵取りしながら組み変わる迷宮に対応していく。
「前方の床に穴がある。跳び越えてくれ」
「わかった」
「正面は壁……いや、垂直の床か。おそらく歩けるやつだろう」
「全く。眩暈がするような迷路だな」
 ザッフィーロの的確な先導を見失わぬよう迷宮を駆ける碧。
 カカン、ココン!
 歌舞伎の場面転換のような拍子木の音が心地よく響き渡り、突如周囲の通路が組み変わり始めた。二人は巧みに通路から通路へと飛び移り、足を止めずにひたすら進む。
 断続的な組み換えは、やがて迷宮に劇的な変化をもたらしていた。
 巨大な縦穴の吹き抜けを中心に据え、階段や廊下が無秩序に積み重なった立体パズルの様相だ。吹き抜け越しに上を見ても下を見ても、行く先は闇に没して判然としない。
「概ね二択といったところか。どちらへ進む」
 さすがにこれは方針を決めねば身動きがとりづらい。相談を持ち掛けるザッフィーロに、碧は思案する。
「迷宮の奥ならば霜や凍結部分が散見されるはずだ。つまり……」
「なるほど、ところどころ白んだ通路はそれか。ならば話は早い。──目的地は下だ」
 ザッフィーロは断言した。
 霜や凍結は組み変わった迷宮のところどころに無秩序に散らばっている。
 しかしそれらの部分が「下方からせり上がってきた」ものであることを、知覚を鋭敏にさせていたザッフィーロは見逃していなかったのだ。
 目標を定めてしまえばあとは一直線に進むのみ。碧とザッフィーロは再び通路が組み変わる前に、ひたすら吹き抜け迷宮の下方を目指した。
 下れば下るほど、空気が底冷えしていく。それが人体に負担をきたす寒さになる頃には、もはや冷気の出所は肌で感じられるほどのものになっていた。下方は白々と霜や凍結を帯び、奥底は空気さえほのかに白んで見えた。
「まさしく冬の絡繰箱だな」
 気が滅入る、とばかりに碧が呟いた。
 全くの同感だと頷くザッフィーロ。
「俺の器物の元が育まれた地は温暖な場所だったのでな……どうも寒さには慣れん。碧、お前は寒さには強いのか……」
 必死に寒さを誤魔化そうとするような話題に口許をかすかにほころばせつつ、碧はかぶりを振った。
「俺の出身も暖かい地方でな……水が豊かだった。ここまで冷えることもなかったな。どちらかと言うと暑さの方が俺は得意だ」
「同じ様な気候の国で生まれたのだな」
 思わぬ共通点があったものだ。寒さに強張っていたザッフィーロの表情も緩む。
「人も器物も矢張り生じた場の気候が一番好ましいのだな」
 互いの故郷をぽつりぽつりと語らいあう二人。
 己の原点を改めて見つめなおすことで寒さにうち伏しそうな自分自身を鼓舞し、下へ下へ、低温から極寒への階段を下る。
 崩壊と冷気の原因は、もうすぐそこだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『大寒波・フローズンワールド』

POW   :    氷結暴風地帯
自身からレベルm半径内の無機物を【吹雪を纏った絶対零度の竜巻】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    氷結粉砕
【冷凍光線】が命中した対象に対し、高威力高命中の【巨大な氷柱】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    絶対零度嵐
【広範囲に過冷却水】を降らせる事で、戦場全体が【全てが氷漬けになる世界】と同じ環境に変化する。[全てが氷漬けになる世界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠チリー・スティーリアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●凶氷狐
 狐は極寒の午睡に夢を見る。
 狐はかつて、冬に起き春に眠る大妖だった。
 晩冬から初春に至ろうという頃、悪戯心で小さな白狐に化けて春の領域に少しだけはみ出してみた。それが出逢いだった。
 なぜ彼女だったのかはわからない。ただ、一目見た時から彼女だけが輝いて見えた。
 それから毎年春の領域で逢瀬を重ねた。領域をはみ出すことの負担が澱のように体内に沈殿していくのを感じながらも、次第に逢瀬は長くなっていった。
 そして、いつもよりも急激に冬が明けた年。
 惜しみながらも別れを告げて冬の領域に帰ろうとしたその時、ついに恐れていた事態が起きた。
 人間の認知から外れ、飢餓が進んだ春狐の群れが、彼女を連れて幽世への移住を決行したのだ。
 狐は冬の領域には帰らず、春狐の移住を追いかけた。移住の過酷な道程に力尽きそうになっていた彼女を、本来の大妖の姿で背に乗せ幽世へと運んだところで力尽き──
 そして骸魂となった。

 近づく複数の気配に、狐は目を見開く。
 迷宮の最深部は、広大な球状の空間だった。
 壁面は神社にまつわるあらゆる施設が無秩序に張り付いた球体。そのどれもが、中央に浮かぶ狐から吹き荒れる吹雪に霞み、凍結している。
 狐が吹雪を自身に集束させると、視界がわずかにクリアになり、球状壁のあちこちから猟兵たちが最深部に到達したのが見えた。
 狐は銀眼を剣呑に光らせる。
『よそ者か……俺の縄張りを踏み荒らし、眠りを妨げたな。この報い、高くつくぞ──!』
 凶暴な咆哮と共に再び吹き荒れる吹雪。

 吹雪の中央に浮かび上がる人影。厚手のダッフルコートに身を包んだ少女を、さらに白い毛皮が離すまいとばかりに幾重にも包み込んでいる。雪国にも稀な重装備だというのに、少しも暖かそうには見えない。
 半ば現象と化しつつあるオブリビオン『大寒波・フローズンワールド』。
 その骸魂本来の名を、『凶氷狐』。
 冬の化身とも言うべき極寒の吹雪が、近づく者を凍えさせ、苛烈に蹂躙していくだろう。
 しかし世界の崩壊を食い止め、かつ依り代となったヒナタを救うには、このオブリビオンを……凶氷狐の骸魂を、倒さなければならない。
 たとえそれが、共に在ることを望む恋人たちを、永劫引き離す行為であろうとも。
紫谷・康行
少し羨ましい
君は彼女を救えたのだから

少しだけ分かるかもしれない
残された者の気持ちなら

冬は得意だ
好きかどうかは分からない
それしか見ていなかったから
たぶん、好きなのだろう
何かの暖かさを一番感じられる季節だからね

寒さに耐えるためには
強い気持ちを胸の真ん中に持つこと
心が死ななければ体は動く

ゆっくりと時を待つ
体の内側の熱を守りながら
右手に込めた炎を感じながら

動きを読みながら
手を触れる機会を待つ

彼らを別けることになる
一緒に消え去ることは幸せかもしれない
それはしない

春は希望の時
君は彼女を救ったんだ
君のしたこと
彼女のことを
生かすために
君達を別けよう

ここと言うときに手を伸ばし
右手に込めた気持ちと熱を伝える



●触れて、伝えて。
 極寒の吹雪の中心に、紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)は目を凝らす。
「少し羨ましい」
 白い吐息と共に流れていく独白に、ぴくり、と狐の耳が震えた。
 康行は顔色一つ変えずに言葉を繋ぐ。
「君は彼女を救えたのだから」
 狐の銀眼に感情が揺れる。その正体までは読み取れない。
「少しだけ分かるかもしれない。……残された者の気持ちなら」
 返されるのは沈黙。風を切る吹雪の音だけが、鋭く鼓膜をひっかき続ける。
 康行を見据える銀眼が、透徹の輝きを帯びる。その底に生じた何かを誤魔化すかのように。
「戯言を……!」
 白い吹雪が襲い来る。真白に霞む視界
 睫毛に霜を下ろしながら、康行はやはり動じない。
 冬は得意だ。
 好きかどうかは分からない。それしか見ていなかったから。
 そんなふうに考え巡らせながら胸を押さえて、康行はふと思い直す。
 たぶん、好きなのだろう。何かの暖かさを一番感じられる季節なのだから。
「炎を灯すものルウォルビルよ……」
 小さく呟き、心に火を灯す。身体の内側に暖かな炎が生まれる。
 寒さに耐える方法を、康行は知っている。
 強い気持ちを胸の真ん中に持つこと。心が死ななければ、身体は動く。
 そして、ゆっくりと時を待つ。体の内側の熱を守りながら。右手に込めた炎を感じながら。
 何かを待ち受けるようなその仕草に、狐は警戒も露わに吹雪を強化した。
 いっそう霞む視界の向こうで、狐の手が康行に向けて翳された──その瞬間、何かの輝きがちらついた。
 狐の仕草の意味するところを読み取り、康行は咄嗟に身を躱した。紙一重を掠める青白い冷凍光線。それが背後の地面を焼き払った瞬間、巨大な氷柱が飛来した。
 地面に降らせて巻き込みを狙っているのだ。康行は大きく横っ飛びに退き、光線と氷柱を逃れながら機会を待つ。
 ……彼らを別けることになる。
 本当は一緒に消え去ることは幸せかもしれない。だがそれはしない。
 吹雪も光線も一向に効を成さず、狐に苛立ちが見える。身に纏う吹雪には、綻びが。
 康行は氷柱の背後を駆け抜けながら、その綻びへと飛び込んだ。
 伸ばした手が、暖かな熱を帯びて吹雪を割り、狐へと届く──

 春は希望の時
 君は彼女を救ったんだ
 君のしたこと
 彼女のことを
 生かすために
 君達を別けよう

 想いを込めた言霊は炎となり、狐を包む。
 狐の代わりに吹雪が鳴いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可
WIZ

めちゃくちゃ寒いのですっ…!しかし何とかしなければ永久凍土…ここで凍ってしまったら永久に氷像のままになってしまいます…

少しでも暖めたいので【もふもふ☆ケモショタチェンジ!】なのです!
わたしの【魔法の杖【ラビット・ラビッツ】】で攻撃(物理)しましょう!
完全に凍ってしまう間に多くのダメージを与えなければ…!
(どう凍ってしまうかはお任せします)


ゾーヤ・ヴィルコラカ
 助けるために愛し合う二人を永劫に引き裂く。
 とっても傲慢で罪深いことだけど、それでも私は彼女を助けるわ。
 世界の為にも、彼女の為にも、あなたの為にも。

 囚われているヒナタさんを助ける、その〈覚悟〉を決めて、【UC:絶対零度の眼差し】(WIZ) を発動するわね。目の前の彼を鋭く見据えると、大量の氷塊がヒナタさんを包む毛皮に降り注ぐわ。

 相手の【絶対零度嵐】は、〈結界術〉で周囲に展開した〈氷結耐性〉を持つ結界で、致命的な凍結だけは防ぐわ。いくら凍り付いて傷ついても、彼らのために立ち向かい続けなきゃ。彼女が死んでしまうなんて、凶氷狐さんは望んでないはずだから。

(アドリブ連携等々全て歓迎です)



●極寒を克服する者、期待する者
「めちゃくちゃ寒いのですっ……!」
 猛吹雪に曝されたテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は素直な悲鳴を上げた。
「しかし何とかしなければ永久凍土……ここで凍ってしまったら永久に氷像のままになってしまいます……」
 テフラは脳裏に「巨大な氷塊の中に切なげな表情と可憐な仕草で凍り付いている自分の姿」を思い描いて武者震い──もとい身震いすると、気を取り直して魔法の杖を振るった。
「少しでも暖まりたいのです……というわけで変身! もふもふ☆ウサケモ~♪」
 たちまちうさぎのケモショタへと変じるテフラ。まあるい尻尾にもこもこ毛皮。萌え重視の愛されデザインゆえ若干頼りなく見えるが、防寒の役は為すだろう。
 そして、向上したのは保温性だけではない。
 吹雪を逆走する助走から、うさぎの跳躍力を活かして高々と跳び上がると同時、二本のウサミミが凧のように大きく広がった。冷たい風を捉えて超高速飛行するケモショタ。
「魔法の杖(物理)を食らうのですっ!」
 テフラは超速飛行で極寒の竜巻を素早く回避し、吹雪の中心の狐の懐に飛び込むや、全身の膂力を込めて杖を振り下ろした。
『──っ、小癪な!』
 毛皮を巻き付けた腕で咄嗟に攻撃を受け止めた狐は、顔をしかめつつテフラを吹雪で振り払った。
『凍りつけ!』
 続けざまに狐は何もない空中から戦場全体に雨を降らせ始めた。触れた瞬間その物体を凍結させる過冷却水に、テフラは悲鳴を上げる。
「つめたたたたっ!? このままではまずいのです……完全に凍ってしまう前に多くのダメージを与えなければ……!」
 ひりつく痛みに耐えながら、テフラは(なぜか嬉々として)さらなる特攻を仕掛けていく。
 テフラが敵の注意を大いに惹いているその傍ら、ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)は氷結耐性の結界をぬかりなく張り巡らせながら、攻め入る期を見定めていた。
 囚われているヒナタを助ける。目的はただその一点。
 覚悟を決めて、ゾーヤは戦線へと歩み出る。
 その動きに気付いた狐が、テフラを牽制しながら絶対零度の竜巻を解き放ってきた。直撃コース。しかしゾーヤは一切退かない。結界で緩和してなお身を苛む極寒すらも、克服すべき敵だった。
 どんなに凍り付き傷つこうとも、彼等のために立ち向かい続けなければ。
(「彼女が死んでしまうなんて、凶氷狐さんは望んでないはずだから」)
 嵐の晴れ間に、痛いほど冷えた空気を肺に取り入れ、ゾーヤは狐と対峙する。
「助けるために愛し合う二人を永劫に引き裂く」
 唐突なその言葉に、狐の銀眼が剣呑に細められる。
 しかしゾーヤは怯まない。覚悟が胸に灯っているから。
「とっても傲慢で罪深いことだけど、それでも私は彼女を助けるわ」
 伏し目がちに想いを宿していた瞳が上げられる。
 鋭い眼差しが、狐の姿をしかと捉える。
「世界の為にも、彼女の為にも、あなたの為にも」
 狐の瞳に何かが揺らいだ──瞬間、
 周囲の中空に、忽然と大量の氷塊が生じた。
『──!? ぐぁぁぁぁっ……』
 光を弾いて煌めき、互いにぶつかり合って割れて鋭さを増し、絶え間なく降り注ぐ氷塊の雨。狐の苦悶の声はきらびやかなまでの破砕音にかき消されていく……
 ゾーヤは見逃していない。魔法の杖に殴り掛かられた瞬間、白い毛皮が少女の肉体を守るように分厚く取り巻き、実際に攻撃の衝撃を全て毛皮だけで受け止めたのを。
 氷塊の雨がやみ、長い余韻を経てようやく開けた視界には、果たして、傷一つない少女と、その全身に取り巻いたままところどころに損傷を負った白い毛皮の姿があった。
「──もう一発! なのですっ!」
 肩で息をつく狐を、背後から飛来するケモショタの魔法杖が襲い、毛皮に追い打ちの一撃を叩きつけた。
『ぁぐッ……貴様ァッ!!』
 激高する狐に過冷却水を浴びせられ、大きく戦線後方へと吹き飛ばされるテフラ。ずざざざ……と床をスライディングしたのち、ピタリと止まって動かない。
 だがどうやら死んではいないようだと安堵して、ゾーヤはその傍に駆けつけた。
「お疲れ様。派手に動いてくれたおかげでこちらも動きやすかったわ」
「ふ……ふふっ……お役に立てて……本、望……です……っ」
 想像よりは若干不格好ながら、立てたフラグをしっかり回収した充足感の中で、テフラはスヤァ……と横たわり眠る氷像となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

劉・碧
ザッフィーロ(f06826)と

惚れた腫れたが無くとも、
気付いたら当たり前に居る存在と離れるのが辛いのは分からんでもない
あぁ勿論だ…なるべく手短に終わらせよう

友の動きに追随し地形の利用を以て地を滑る
相手に真意を察知されぬよう間合いを詰める
この時点で拒絶されれば抵抗だが、向けるのは恐らく大寒波
それならば勝機はきっとある

言葉が届くなら凶氷狐へ語りかける
二度目の死をアンタが救った掛け替えのない命に齎してもいいのか?
友の助力に救われつつ接敵
粘膜や鳩尾等披ダメが大きい部位へ拳を振るう
どっちか片方生きてりゃなぁ
そいつの中で二人の思い出が生き続けることだって出来るんだ
死は一時の別れだ
でも冬の深切を春は忘れない


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
碧f11172と

生き辛い気候の地とて愛しい相手の隣に在る為ならば耐えられる、か
俺も解る感情故、少女の覚悟を想えば引き離す事は気が重いが…命をかけ護った少女の不幸はきっとあの狐も望まんだろう
碧、準備は良いか?

戦闘と同時に『オーラ防御』
冷気から身を護り凍結した地を『地形の利用』を使い滑走し間合いを詰め『怪力』を乗せたメイスを振るわんと試みよう
氷結世界へと変われば『全力魔法』にて【狼達の饗宴】
炎の狼達にて己や碧を囲い凍る身を解さんと試みながら狼達を敵へと放って行こうと思う
俺は上手い言葉が見つからぬ故碧が動き易い様狼を嗾け援護を
碧も誰かを背負って居るのかとは聞きはせんが…その言葉が響けば良いとそう思う



●友と共に
 猛吹雪の向こうの狐の息は荒い。しかし、戦意を手放す気はないようだ。
『──邪魔をするな!』
 咆哮が嵐を呼ぶ。幾度となく吹き荒れる吹雪が周囲を極寒に閉ざしていく。
「生き辛い気候の地とて愛しい相手の隣に在る為ならば耐えられる、か」
 美しくも悲劇的な狐たちの逢瀬を見上げるザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)の眼差しは、幾分か同情的だった。
 傍らの劉・碧(夜来香・f11172)の表情もまた、似通った感情を示している。
「惚れた腫れたが無くとも、気付いたら当たり前に居る存在と離れるのが辛いのは分からんでもない」
「ああ。俺も解る感情故、少女の覚悟を想えば引き離す事は気が重いが……命をかけ護った少女の不幸はきっとあの狐も望まんだろう」
 二人は思い同じくして戦線へと歩み出た。
 すでに床や壁面は大半が氷を張り、まともな移動も難しい。しかし二人は、それを逆手に取ることを決めていた。
「碧、準備は良いか?」
 身を守るオーラを展開しながら、ザッフィーロは相棒を見ずに呼びかけた。
「あぁ勿論だ……なるべく手短に終わらせよう」
 華やかな声色に決意をにじませて碧は応えた。
 次の瞬間、二人は弾かれたように駆け出した。ザッフィーロが先兵を務め、オーラで吹雪をいなしながら凍結した地面を滑走する。碧はつかず離れず一定の距離を置いてその後ろを追随する形で、同じく氷結した地形を滑っていく。
『邪魔をするなと言っているッ!』
 メイスを手に突っ込んでくるザッフィーロへと振り撒かれる過冷却水。
 何もかもを氷漬けにする雨を、二人は周囲に無秩序に生える手水舎や社殿などの遮蔽物を利用しながら巧みに避け、新たな凍結部分を足掛かりに執拗に接近を図る。
 ザッフィーロはメイスを掲げたまま、一気呵成に炎の魔力を練り上げた。周囲に浮かび上がる赫赫たる業火は、二人を取り巻き極寒に強張る身体を解しながら、大量の獣の形状を形作っていく。
 狐が警戒を露わにしたのを見取り、碧は吹雪を貫く声を上げた。
「二度目の死を、アンタが救った掛け替えのない命に齎してもいいのか?」
『──』
 いらえはない。ただ、少女の顔立ちは翳を深めたように見え、吹雪の勢いがわずかだが確かに緩んだ。
 瞬間、ザッフィーロの炎は数多の狼の姿へと集束した。
「子羊ではないが、狐ならばあそこに居る。……精々暴れて来い」
 炎狼の群れが一斉に狐へと襲い掛かった。穢れを滲ませながらもその炎は力強く輝き、吹雪の間隙を縫って縦横無尽に中央へと殺到する。
 正反対の熱運動に加えて、相手は狐の天敵で、しかも群れ。狐は極寒の暴風を巻き起こしてなんとか対抗しようとするも、ほんのわずかな判断の遅れによって火勢を殺しきれず、かなりの数の間合いへの侵入を許してしまう。
 炎に毛皮を焼かれ、苦痛を示す狐の咆哮が轟き渡る。覿面の効果だ。勢い乱れる吹雪の中を遡る人影にも気づかない。
 二人揃ってのがむしゃらな突撃は、これを悟られぬためのもの。
「頼んだぞ」
 狐の視界を塞ぐように狼達を御しながら、白む視界の向こうに背中を見送るザッフィーロ。
 狐にかけるための上手い言葉が見つからない。だから、託した。
『このっ──家畜に成り下がった獣どもがァ!!』
 ありったけの気勢を込めた狐の一喝が、凍てつく大寒波で炎狼の群れを一気に消し飛ばした。
 しかし時すでに遅し。友の助力を得て、狐の意識の裏をかいて肉迫した人影は、狐の懐まで間合いを詰めている。
 瞠目する狐の銀眼の中で、碧の唇が静かに動く。
「どっちか片方生きてりゃなぁ、そいつの中で二人の思い出が生き続けることだって出来るんだ」
 荒ぶる拳は吹雪の白に紛れて、軌道も音も、一切の痕跡を残さない。
「死は一時の別れだ。でも冬の深切を春は忘れない」
 しん、と静まり返る空間に響く声に、ザッフィーロは友の背負う何かを──誰かを、見た気がした。
 それが誰かを問うことはしない。
 ただ……その言葉が悲しい二匹の狐に届けば良いと、切に願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

チリー・スティーリア
【とどめ希望】
愛する者と共に在ることを望みながら、私達の世界と相容れぬ存在、『凶氷狐』...
春と冬、それは交われぬ存在なの
悪いけど...永遠の冬に眠ってもわうわ

冷気の流れを読むのは得意よ、【第六感】で絶対零度の竜巻を掻い潜り、【氷結耐性】で何とか懐まで潜り込んで短期決戦を仕掛ける

この吹雪と冷気、凄く寒い...
長居は出来なそうね、【エネルギー充填】を使いながら、自身が凍るギリギリまで近づいて【氷獄の吐息】
この絶対零度の吹雪の中で、凍結耐性を攻撃されれば...?
ふふっ、氷漬けになる覚悟はいいかしら?

ごめんね、貴女はただ、二人で居たかっただけなのに...
永遠の冬の中、せめて安らかに眠りなさい


神咲・七十
NGなし・アドリブ・連携お任せ

(あ、そうだ『凶氷狐』でしたね。この狐さんの名前)
すいませんが、ヒナタさんを連れ帰らせてもらいますよ。
そうじゃないと、いろいろ面倒なことになるので。(もぐもぐ)

UC『外伝:紅色蝶』を使い、ダメージは無視しながら、杭とショトガンで牽制しながら近づき、自己強化をしながら、大剣と尻尾で接近戦を仕掛けます。


このままだと、貴方がヒナタさんを救ったことが無駄になってしまうかもしれません。

もしまだ彼女のことが好きなら、もう一度お願いします。
ヒナタさんに『先』を残したのなら、それを残し続けるために、彼女の手を放して『その先』へ行けるようにしてあげてください。



●終わりの刻
 崩れ始めている。二匹の狐の繋がりが。
 凶氷狐の骸魂が明白に存在を薄め始めたのを、チリー・スティーリア(絶対零度の案内人・f29046)はしかと見取る。
「愛する者と共に在ることを望みながら、私達の世界と相容れぬ存在、『凶氷狐』……」
 今が押し切る好機。チリーは静かに身構えた。
(「あ、そうだ『凶氷狐』でしたね。この狐さんの名前」)
 忘れてました、とは胸中で密かに呟くに留めて、神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)は懐から新たな甘味菓子を取り出した。
「すいませんが、ヒナタさんを連れ帰らせてもらいますよ。そうじゃないと、いろいろ面倒なことになるので」
 言葉尻に口に菓子を放り込み語尾をもぐもぐ濁らせる態度は、傍から見ればなかなかに挑発的だが、もちろん本人にその意図はない。
 畳みかけるように、チリーはきっぱりと断じる。
「春と冬、それは交われぬ存在なの。悪いけど……永遠の冬に眠ってもらうわ」
『……黙れ……!』
 牙を剥き、一喝と共に最大級の竜巻を解き放つ狐。
 静から動へ、二人は一気に散開した。勢い止まらぬ竜巻が後方の壁を破壊する音を背で聞きながら、それぞれがそれぞれの戦い方へと移行する。
「幾つか切り取って、使いますか……」
 七十は全身から杭を生成すると共に、ショットガンによる射撃と杭の投擲を織り交ぜて牽制していく。身を蝕む寒さは無視してひたすらに攻め込む。
 チリーは冷気の流れを読んで絶対零度の竜巻を掻い潜り、冷気に押し出された気流に乗るようにして、身の内に呪いを書き溜めながら敵の懐へと駆け抜ける。
 狐はすぐさま接近するチリーを押し戻そうと竜巻を連続させるが、七十の銃撃に牽制されて軌道を操り切れない。
「この吹雪と冷気、凄く寒い……」
 極寒の暴風圏の内側で眉を顰めるチリー。冷気は得意だが長居は難しそうだ。
 耐性を貫いて蝕む冷気に、身体が末端から感覚を失っていく。冷気を操る技量は敵が遥かに上。
 しかしチリーは恐れることなく高々と跳躍し、我が身を敵前へと曝した。全身が凍り付く一歩手前の距離。狐の銀眼と視線が交錯する。
 狙うは短期決戦。
 この絶対零度の吹雪の中で、凍結耐性を失ったならば……?
「ふふっ、氷漬けになる覚悟はいいかしら?」
 少女の唇から、氷の吐息が解き放たれる。
 破壊するのは敵の肉体ではない。冬の化身とも言うべき狐の、当然に備えているであろう、冷気に対する抵抗力だ。
『──させん!』
 本能的な危機を察知した狐は、吐息を押し返さんとばかりに吹雪をチリーへと集約させた。それまで以上の暴風にチリーの吐息は拮抗するも、徐々に押し返され始める。やはり技量の差は大きいか……
 その横合いから、淡々とした声が狐の鼓膜を打った。
「このままだと、貴方がヒナタさんを救ったことが無駄になってしまうかもしれません」
『──』
 狐の動作に、明確な空白が生じた。
 と同時に飛来した杭が狐の首元を穿ち、急速に身体の力を奪っていく。吹雪が乱れ、氷の吐息に押し返され始めた。
 続けざま、白く細長い尾が、吹雪を操る狐の腕に絡みついた。
 狐の眼前に躍り出た人影は、大剣を振り上げる七十。吹雪が一方向に集束した結果、難なく懐へと飛び込めたのだ。
 漆黒の大剣が振り下ろされる。咄嗟に捕らわれていない片腕の毛皮でそれを受け止める狐。
 両者一歩も退かない拮抗の中で、七十は狐の銀眼を覗き込む。
「もしまだ彼女のことが好きなら、もう一度お願いします。ヒナタさんに『先』を残したのなら、それを残し続けるために、彼女の手を放して『その先』へ行けるようにしてあげてください」
『……ッ、知った口を……!』
 狐は苛立ちに任せて大剣を振り払った。
 七十は押し返されるまま退くと見せかけて、尻尾で捕らえた狐の腕を支点にブランコの要領で一回転。その遠心力によって、ついに狐の姿勢を崩して見せた。
 その時、一瞬だけ、吹雪が晴れた。
『────!!』
 氷獄の吐息が、とうとう狐の全身に到達した。
 追いつかれた狐の、虚を衝かれたその表情は、あどけないほどに無垢。
「ごめんね、貴女はただ、二人で居たかっただけなのに……」
 チリーは痛む胸に手を当てる。
 それでも、この狐は、チリーが倒さねばならなかったのだ。
「永遠の冬の中、せめて安らかに眠りなさい」
 自分自身の生み出した極寒の中で、狐は白く凍結した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『硝子の中の世界』

POW   :    直感で探してみる

SPD   :    よく観察して選んでみる

WIZ   :    色や形を吟味してみる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狐の別離
 吹雪が収まり、すっかり静まり返った球体の中心に、純白に凍り付いた『大寒波・フローズンワールド』の姿はあった。
 その歪な姿が清廉な光に満たされたかと思えば、次の瞬間、二つに分かたれた。
 目にいっぱいの涙を湛えた春狐の少女と、彼女の膝に抱えられている瀕死の小さな白狐。
 話に聞いていた姿よりずいぶんと小さい。これが大妖になる以前の、凶氷狐の本性なのだろう。
「ヒコぉ……」
 春狐のヒナタが幼くも切ない声を上げて、夥しい霜を帯びた狐に縋り付く。
 狐はうすらに目を開き、チッ、と小さく舌打ちした。
「……俺は本気だ。連れていけるものなら連れていく。お前がどれほど嫌がろうが、生に未練を残そうが、お前を惜しむ同族がいようが、知ったことか。お前がいなければ俺は俺ではない。ただ災厄という概念に成り下がる、無意味で惨めな未来しかない……」
 力なく、うわごとのように、しかしたっぷりと言いたいだけ言って。
 狐はニヒルに口許を持ち上げ、ヒナタを目だけで見上げた。
「だが、失敗しちまった」
 それはどこか、安堵にも似ていた。
 白狐の輪郭が光へと転換していく。ヒナタの喉を痛々しい悲鳴が割る。
「もう好きにしろ。俺のことなんか忘れちまえ」
 あっという間に狐の姿は無数の光の粒にほどけた。
 気まぐれに遊び飛ぶ蛍の如く空を駆けのぼり、未練ひとつ残さず消え去る光。
 それを見送るしかないヒナタ。
「……ヒコのばかぁぁ……っ」
 忘れられるはずがない。忘れてなんかやるものか。
 ヒナタの号泣に呼応するように、崩壊しかけていた世界が、急速に秩序を取り戻していった。

●やさしい時間
 気づけば猟兵とヒナタは、夕焼け空の下にいた。
 目の前に鳥居がある。
 遠くでひぐらしの鳴く声が夏を告げている。参道には多数の露店が軒を連ねる。郷愁に満ちた縁日の神社の景色だ。
「ヒコの神社……」
 涙も枯れ果てたように、呆然と、ヒナタが呟いた。
 どうやら凶氷狐を奉っていた神社の参道らしい。凶氷狐が消失したせいで、冬は完全に去ったようだ。
 影法師の露天商が、表情を描かない頭で頷いた。
「そう。凶氷狐様のお社さ。故郷にあったものの写しだけれどね。想いの中心にいた凶氷狐様がお隠れになった以上、いずれ別の姿に変わってしまうだろう。この夕暮れの縁日は想いの残り火、あるいは影。想い出を胸に刻むためのほんのひと時の猶予。さあお嬢さん、短い時間を楽しみなさい」
 言う間に、影法師はバーナーで熱したひと塊の硝子に器用に細工を施して、獣のシルエットを作り出していく。瞬く間に、真っ白な毛皮の雄々しい狐の姿へと。
 途方に暮れたようにぼんやりそれを見つめていたヒナタは、硝子細工が完成に近づくにつれて、赤くなった目に生気を取り戻していった。
「……おじさん」
 ことり、と机の上に置かれた硝子細工にまじまじと見入りながら、ヒナタは影法師に呼びかけた。
「これ、わたしにも作れる?」
「ああもちろんだとも。この夕日は暮れない。いくらでも付き合ってあげよう。……君たちもそうだろう?」
 表情のない影法師から視線を向けられたのを、猟兵達は確かに感じた。

 ヒナタは硝子細工作りに夢中だ。たとえ一時の現実逃避だとしても、きっとこの時にしかできない、大切なことなのだろう。
 猟兵達は彼女の思うままにさせてやりながら、手伝ってやればいい。
 声をかけてやれば何か答えてくれるだろう。彼との想い出を聞いてやるのもいいだろう。
 細工がうまくいかなくて手が止まったり、時折凶氷狐を思い出してめげてしまうかもしれない。そうしたら励ましたり慰めてやればいい。
 露店には多種多様な硝子細工が陳列されている。そこからヒナタが作ろうとしている硝子細工の傍らを彩るものを探してもいいし、なんなら他の影法師を捕まえて自分で硝子細工にチャレンジしてみるのもいい。
 ここに奇跡のように残された影の時間を、ただただやさしい時間にしてやろう。
紫谷・康行
夕暮れは別れの時間だ
明日また会うための
またねと言うことが出来るなら

それが本当のさよならなら
何を言うだろうか

今すぐ歩き出す必要はないだろう
時が経ち
季節が移ろって
忘れることもあるだろう
忘れられないこともあるだろう

大丈夫、彼はそこにいる
君の心の中に
君が生きている限り
彼もそこにいる

寂しくならないわけじゃ
ないだろうけど

それだけじゃない


露店で買った菓子を食べ、お茶を飲みながら
ヒナタの近くに座って静かに見守る

ただ静かに
話を聞く

静かにヒナタの気持ちを受け止める
できるだけ、優しく寄り添う

自分からは話さないが
聞かれれば必要最低限
答えてあげる

「夕暮れは好きだね」
「それじゃ、またね」



●声のない言葉で
 夕焼け色の境内を眺めるともなく眺めながら、紫谷・康行(ハローユアワールド・f04625)は出店で調達した菓子と茶を手に、元の露店の場所へと取って返した。硝子細工屋の作業台にかじりついて、バーナーと硝子片と格闘している狐の少女の姿が見えてくる。
 目許にはまだ泣きはらした後も生々しく、やけっぱちな仏頂面は控えめに評しても不細工だが、泣いてばかりではいない強さは好ましく見える。
 康行は露店の角隅に腰を下ろした。傍らというには少し遠く、けれど突き放すこともない距離。声はかけずに、菓子と茶を供に、ただ見守る。
「……うぅ~~っ、違う!」
 形になりかけた細工をバーナーで炙ってドロドロに溶かすヒナタ。
「ヒコはこんな貧相じゃないもん! 毛皮は真っ白でふわふわであったかくて、信じられないくらい綺麗でね、顔だってもっと精悍で──」
 影法師の店主が何も言わずに差し出す新たな硝子片を受け取りながら、つらつらと口を割って出る恋人への美辞麗句。想い出が溢れている。康行は影法師同様、彼女の気持ちを黙って受け止めた。
 『ずっと一緒にいたかった』。
 そんなたった一つの願いに集約される、全ての想い出を。
「夕日は嫌い」
 ぽつり、とヒナタは呟き、手を止めた。目に新たな涙の気配をためて。
「……毎年春が来て、ヒコと別れるのも夕方だった。だから夕暮れは……寂しい」
 何かコメントを求められている。そんな気配を察して、康行は沈まない夕日に視線を巡らせた。
 夕暮れは別れの時間だ。
 明日また会うための、またねと言うことが出来るなら。
 それが本当のさよならなら。何を言うだろうか。
「夕暮れは好きだね」
「……そう」
 会話はあっさりと途切れる。
 最低限だけ答えて、康行は長い沈黙に付き合った。
 今すぐ歩き出す必要はないだろう。時が経ち、季節が移ろって、忘れることもあるだろう。
 忘れられないこともあるだろう。
 ……大丈夫、彼はそこにいる。
(「君が生きている限り、彼もそこにいる。君の心の中に」)
 寂しくならないわけじゃないだろうけど、それだけじゃない。
 声に出さない言葉は、きっとヒナタに伝わっただろう。不思議とそう信じられて、康行は席を立った。自分の役目は終わりだと。
「それじゃ、またね」
 ……ばいばい。
 顔を上げぬヒナタの、涙と、涙だけではない暖かな何かが滲む声を、康行は確かに背中で聞いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾーヤ・ヴィルコラカ
「ヒナタさん、冬は好き?」
 そう話しかけて、彼女に寄り添うわ。ヒナタさんの硝子細工作り、お手伝いしながら、わたしも【SPD:よく観察して選んでみる】ことにするわね。凶氷狐さんとヒナタさん、二人にぴったりの輝きを探してみるわ。

 時は止まらないわ、それを望んでも望まなくても。けれど、想い出だけは色褪せず、美しいまま。ヒナタさんとヒコさん、二人きりの、止まってほしいと願うほどかけがえのない時間を、あなたの硝子に込めましょう。

 ゾーヤさん、冬は好きよ。会いたい人も、見たい景色も、素敵だった時間も。冬の記憶の中にある大切なものが、そこにあるって、肌で確かめられるから。

(アドリブ連携等々全て歓迎です)



●失われた時間を込めて
「ヒナタさん、冬は好き?」
 気負わぬ声を掛けながら、ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)はごく自然な仕草でヒナタの隣に腰かけた。
「すき」
 ヒナタは即答した。手先も視線も一点に集中したままに。
「寒いのは苦手だけど、冬はすき……だった」
 ぽつぽつとした呟きが、不意に途切れる。
 冬を肯定するのは凶氷狐を肯定することと同じ。しかし、今となっては……
 ヒナタの堅い横顔を、ゾーヤは柔和な笑顔で覗き込むと、露店の陳列棚に視線を転じた。硝子細工が斜陽を反射する色とりどりの輝きが視界に溢れる。
「時は止まらないわ、それを望んでも望まなくても。けれど、想い出だけは色褪せず、美しいまま」
 歌うように朗らかに、ゾーヤは硝子細工に目利きを働かせていった。
 どれがいいだろう? 凶氷狐とヒナタ、二人にぴったりな輝きは……
「ヒナタさんとヒコさん、二人きりの、止まってほしいと願うほどかけがえのない時間を、あなたの硝子に込めましょう」
 静かに、暖かな輝きを放つ欠片をひとつまみ。作業の手の止まっているヒナタへ、ゾーヤは差し出した。
 ヒナタの小さな手の中にころりと転がったのは、もっと小さな、無色透明の硝子のハート。
「ゾーヤさん、冬は好きよ。会いたい人も、見たい景色も、素敵だった時間も。冬の記憶の中にある大切なものが、そこにあるって、肌で確かめられるから」
 ヒナタは掌の上の輝きを呆然と見つめながら、ゾーヤの言葉を我が身に染み込ませる。
 長い沈黙ののち、唇を噛みしめて、
「……わたしも」
 小さな同意と共に乱暴に目許を拭って、顔を上げる。
「手伝ってくれる?」
 真剣なヒナタの眼差しに、もちろん、と笑顔で頷くゾーヤ。
 少女達は力を合わせて、個体と流体を行き来するままならない作業へと立ち向かう。
 透明な、美しい想い出を、そこに宿す為に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
碧f11172と

碧とヒナタを見守りつつ別の影法師に聞き星の形の硝子細工を作ろう
ヒナタには細部の作成法や彼の者はどの様な表情をしていたのか等ヒナタが作る狐を視つつ尋ねてみよう

碧の言葉には逡巡後ヒナタに聞こえぬ様声を
俺は…俺が先に逝ったとて宵には生きて欲しいと思っていたが朽ちた後も共に在りたいという言に是と応えてしまったからな
己が出来ん事を彼らに課した事は心が痛いが…あの狐の最後の表情を見ればきっとこれで良かったのだと俺は思う
それに…死は一時の別れなのだろう?と問いつつ碧もそう思うだろうと声を
だが…友との別れは辛いからな。…なんだ。お前は成るべく長生きしろ
後はヒナタの思い出話を聞ければとそう思う


劉・碧
ザッフィーロ(f06826)と

影法師に倣い硝子細工を手に取ろう
作りたい物は容易には浮かばないが
ヒナタの様子も気になる

問えるなら問うてみたい
今のヒナタの目に映るものを
喪った者の苦しみは分からない
だが、残された者の痛みは少しは理解出来る
これから何をよすがに生きるのだろう

耳打ちされた友の話に耳を傾け
途方もなく先の不確かな事変に苦く笑み
問い掛けには、そうだなと頷く

思い出話の名残に
俺が対面した凶氷狐の意思を伝えよう
一瞬でもヒナタの死を
凶氷狐が恐れ手を止めたことも
代弁とは烏滸がましいが
生きて幸せになってほしいと
─ ─きっと願っていたのだ、と
今度はヒナタが凶氷狐の思い出を守る番だ
何、アンタなら出来るさと笑み



●残された者の心の星
 並びはこうだ。ヒナタが露店隅の作業台を占拠し、角を挟んで側面の席に劉・碧(夜来香・f11172)が優雅に座し、そのさらに隣にはザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)が腰を落ち着けている。
 はす向かいから見れば、ヒナタの表情も作業の様子も一目瞭然だった。ザッフィーロはヒナタを見守りながら何くれと声をかけてやる。
「ずいぶんと形になってきたな。細部はどうする」
「まだ全然ヒコじゃない……もっと毛づやをよくして、精悍に見えるように……」
「ふむ。しかしこういった物の良し悪しは表情の出来に掛かっているのではないか? 彼の者はどの様な表情をしていた?」
「……ヒコ、は……いつも不機嫌そうで……でも、本当はやさしくて、照れ屋で……」
 硝子細工に落ちるヒナタの視線が、次第に過去を追い始める。
 その様子を見つめる碧は迷いのようなものを感じていた。作りたい物は容易には浮かばないし、ヒナタの様子も気になる。
 それに、これを訊ねて良いものか否か……いや、今ならば。
「……。今、ヒナタの目には何が映っている?」
 茫洋と過去を追いかけているヒナタに問いかける。
 喪った者の苦しみは分からない。だが、残された者の痛みは少しは理解出来る。
 これから彼女は、何をよすがに生きるのだろう。
「ヒコ」
 ヒナタの答えは、至極シンプルだった。
「ヒコしか見えない」
 見る間にその瞳が塩辛い水分に覆われる。零れ落ちるまま、声もなく。その目線は変わらず過去を追っている。
「ただ一緒にいたの。ふわふわの毛皮に寄りかかって、ずっとどうでもいい話をしていたの。話すことがなくなっても怖くなかった。だってヒコだもの。ヒコがそこにいたもの。一緒にいたもの……」
 目をこすり、ぐずぐずと洟をすする音。
 何も言えずに見守る碧に、ザッフィーロは密かに耳打ちする。ヒナタには聞き取れぬトーンで。
「俺は……俺が先に逝ったとて宵には生きて欲しいと思っていたが、朽ちた後も共に在りたいという言に是と応えてしまったからな」
 途方もなく先の、不確かな約束。碧は苦く笑むしかない。
「己が出来ん事を彼らに課した事は心が痛いが……あの狐の最後の表情を見ればきっとこれで良かったのだと俺は思う」
 ザッフィーロの見つめる視線の先で、ひとしきり洟をかんだヒナタは、再び作業に取り掛かり始めている。目はまたしても腫れぼったくなってしまっているが、据わった目つきは力強い。
「それに……死は一時の別れなのだろう?」
 友の問いかけに、碧は、そうだな、と小さく頷いた。
「だが……友との別れは辛いからな。……なんだ。お前は成るべく長生きしろ」
 適当な影法師を捕まえて作り上げた星形の硝子細工を斜陽に掲げながら、ザッフィーロは不器用にそんな言葉をぼやいてみせた。碧はただ静かな笑みで応える。
 ヒナタは凶氷狐との想い出をぽつぽつと語る。そのどれもが、本当に他愛のない逢瀬だった。共に在るだけで彼等は満たされていたのだ。
 だからこそ、ヒナタは別離を受け入れられなかったのだろう。おそらく凶氷狐も。
 そんなだから、瞬く間に語るべき想い出は尽きてしまった。
 落ちた沈黙に思い出話の名残が消えないうちに、碧は口を開く。
「俺は、凶氷狐の想いを見た、と思う」
 ヒナタの視線がふらりと上がり、碧の顔を注視する。
 碧は宙に目線を留め置いて答える。
「一瞬でもヒナタの死を恐れて手を止めた。それが凶氷狐の本心だろう」
 そして、ヒナタに視線を合わせて、
「代弁とは烏滸がましいが……生きて幸せになってほしいと」
 ──きっと願っていたのだ、と。
 彼と刃を交わした一人としての責務を果たすように、断じた。
「今度はヒナタが凶氷狐の思い出を守る番だ。何、アンタなら出来るさ」
 声もなく涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったヒナタに、碧は艶やかに微笑んだ。
 その手元では、未完成の硝子の狐の傍らに、ザッフィーロが差し出した硝子の星が輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神咲・七十
NGなし・アドリブ・連携お任せ

お茶とお菓子もあるので気が向いたら食べてみてください(もぐもぐ)


貴方達を引き離した、私が言うのもなんですが、『永遠』に続くものは存在しないと思います。
私達でなくてもこの先誰かが同じことを、先になったら貴方達に悲しい感情をぶつける。
そう思って私は凶氷狐さんを倒しました。

私の知る『永遠』に近い人は終わることを望んでます。
いつか方法を見つけて、その人も消えてしまう、だから真に『永遠』なものはないと思います。


そうじゃない者に出来るのは、それを長く残せるように足掻く事だけ。
それでもそれは意味のあることだと私は思ってます。

(福寿草の硝子細工を渡す)
だから、残す努力を一緒に



●永遠をここに
 少し泣き疲れたか、作業の手が止まっているヒナタの傍らに、すす……と色とりどりに盛り付けられた甘味が差し出された。
「お茶とお菓子もあるので気が向いたら食べてみてください」
 かく言う神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)はすでに菓子をもぐもぐしている。
 ヒナタは小さく、ありがと、と答えて、金平糖をひとかけら口に投じた。ほっとしたように肩が下がる。やはり疲労が溜まっているのだろう。
「貴方達を引き離した、私が言うのもなんですが、『永遠』に続くものは存在しないと思います」
 絶え間なく菓子を頬張り、露店の陳列を物色しながら、七十は淡々と持論を唱えた。
「私達でなくてもこの先誰かが同じことを、先になったら貴方達に悲しい感情をぶつける。そう思って私は凶氷狐さんを倒しました」
「……」
 ヒナタの沈黙には複雑な色がある。それはそうだろう。実際のところ、猟兵は凶氷狐の仇だ。
 だが彼女は、猟兵に怒りをぶつけるという、感情の解消行為を取りそびれてしまった。きっと、凶氷狐が「忘れろ」などと言ったからだ。
 ヒナタの怒りも悲しみも、全てが凶氷狐へと向いている。
 七十はのんびりと硝子細工に手を伸ばしながら、日常の延長線上のように気負いなく言葉を繋ぐ。
「私の知る『永遠』に近い人は終わることを望んでます。いつか方法を見つけて、その人も消えてしまう、だから真に『永遠』なものはないと思います」
 摘まみ上げた硝子細工を陽に透かす。
「そうじゃない者に出来るのは、それを長く残せるように足掻く事だけ。それでもそれは意味のあることだと私は思ってます」
 そしてそれを、ヒナタの手へと差し出した。
 ヒナタの掌に転がったのは、春を思わせる鮮やかな黄色の花。
 早春、一番に春を告げるという、福寿草。
 花言葉の一つは、「永久の幸福」。
「だから、残す努力を一緒に」
 ヒナタは七十の言葉と思いを受け取るように掌を握りしめ、深く頷いた。

●春は来た
「でき……た……っ」
 ヒナタは渾身の力で呟き、バーナーを置いた。
 少女の拳よりも小さな硝子細工。透ける硝子の表面に細緻な細工を施すことで、白狐の毛並みを上手く表現している。精悍で、不機嫌そうな仏頂面は生き生きとして見事の一言。
 素人らしい造形の甘さは細かにあったが、ヒナタの見つめていた凶氷狐は、確かにそこに再現されていた。
「できたかい。では仕上げは承ろう」
 店主の影法師がだしぬけに完成品の上に手を翳すと、一瞬で硝子細工は透明な物体の中に閉じ込められた。極力角をそぎ落とし、球体に近づけた結晶……いや。
 これは、氷塊だ。
「この力、ヒコの……!」
 驚き顔を上げたヒナタの視線の先に、影法師はもういない。
 参道を行き交う影法師が口々にざわめく。
「言ったはずだ、ここは凶氷狐の想いの写し」
「残り火」
「影」
「我々もまた同じ」
「凶氷狐の名残」
「余韻に過ぎぬ」
 世界がにわかに崩れ始める。空が硝子のように砕けて、雪のように降り積もる。それは崩壊ではなく、正常な形へと急速に戻ろうとする反動の景色。
「さあ猶予は終わった」
 酷薄なほどあっさりと、影法師達は突きつける。
「お前は帰れ」
 ──生きるべき場所へと。
 大量の世界の欠片が一瞬のつむじ風のようにとなって逆巻き、思わず目を瞑った隙に、世界は在るべき姿を取り戻していた。
 天上には暖かな蒼穹。地上には柔らかな草原。
 春狐の生きていく、暖かな春の世界が、そこに広がっていた。
 ヒナタの泣き声が辺り構わずわんわんと響く。その胸の中にしっかりと、大切な想い出を抱きしめて。
 永遠に溶けない氷塊の中には、仏頂面の白狐の隣に寄り添う、愛らしい少女の硝子細工が付け足されている。
 少女と白狐の間には赤いハートが浮かび、少女の指差す先には晩冬の一番星が輝き、二人の足元には早春を告げる黄金色の花が咲く。
 想い出という永遠を抱えて、春狐の少女は、これからを生きていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月25日
宿敵 『大寒波・フローズンワールド』 を撃破!


挿絵イラスト