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#クロムキャバリア

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#クロムキャバリア


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 荒野に引かれた一筋の線は、もうもうとあがる土煙。
 発生させているのは運搬トレーラーであり、それは護衛するキャバリアが十機ばかり。
「いやあ、楽しみですね。今回はどんなモノがあるんでしょうか?」
「さあな。だが、これが国にとっても、俺達にとっても大事な娯楽の種であることは間違いない」
「今回はどんな感じかなあ。大人しめの曲か、それとも気分が高揚するようなのか。自分的には後者の感じだと嬉しいんですけれど」
「知るかよ。ってか、こっちの意見なんて聞いてねえだろ、お前」
「あ、分かりました?」
「ったく、浮かれるのはいいが、あんまりでけえ声で――」
「おい、まだ仕事中だぞ。私語はせめて聞こえないようにしろ」
「すいません!」
「すんません」
 ほら、怒られちまった。重ね重ね、すいません。
 そんな気の抜けたような会話が重なるのも、無理からぬこと。
 彼らがその護衛をもう幾度となくと繰り返してきていればこそ。運搬トレーラー――食料や医療品といった必需品ではなく、人の心を潤す娯楽を積んだ、その護衛を。
 そして、少なくとも、彼らがその任務についてからの幾度かにおいて、その運搬に問題が生じたことなどなかったのだ。
 ――今回を除いて、だが。
 突如として降り注いだ光が、二人を注意した機体――隊長機を呑み込み、爆炎へと変えた。
「な、ななな!?」
「きょどってんな! 敵襲だ!」
 対応は二つ。
 即座に反応し、攻撃へと対応せんと動いた機体が六。出遅れたか、はたまた、忘我に囚われたが三。
 だが、結末はいずれも同じ。
 降り注いだ光に、その光へと先導されるかのようになだれ込んだ黒に、呑み込まれて爆炎へと変わるのみ。
 そして、護衛を失ったトレーラーがどうなるか。それは記すまでもないことだろう。
『任務完了。この世に、人の心に、安息など必要はない』
 ただ、一際大きな火柱が遅れてあがった。それだけである。

「と、まあですねぇ。そのようなことがぁ、これから起こるらしいのですよぅ」
 集まった猟兵達の前にて語ったは、ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。その語り仕草に合わせ、頭部の兎耳も一緒に揺れる。
 そんな彼女が語ったのは、新たに発見されたばかりの世界――クロムキャバリアの世界でのことだ。
 その世界は100年近くも戦乱が続く世界であり、それによって荒廃した世界でもある。そして、そんな世界でヒトビトの生命を繋ぐものこそが『プラント』という生産施設である。
「そこで生産されるものはぁ、食料や鋼材などの様々な資源であることは御存知の方もいらっしゃると思いますぅ」
 だからこその生命線であり、遺失技術の賜物であるからこそ奪い合いへと繋がる火種でもある。
 だが、今回重要なのはそのプラント本体ではない。そこから運び出される物資こそが重要なのだ。
「今回ぃ、彼らが運びだそうとしているのは食料品などの必需品ではありませぇん」
 ならば、なんだと言うのか。
 当然の疑問に首を傾げる者もあることだろう。
「運搬トレーラーの中身はですねぇ。音楽や書籍のデータといった類なのですぅ」
 つまるところ娯楽、嗜好品の類。
 だが、それをそうと侮るなかれ。この荒廃した世界であればこそ、それはヒトの心を少しでも明るくするために大切なものでもある。
 この国にあるプラントでは、そういった類も僅かではあるが資源として生産しているのだ。
「今回の依頼はですねぇ。その物資を無事に送り届けて欲しいのですよぅ」
 それが無事に市街地まで届かないことは、予知で語られた通りである。
 しかし、それはまだ予知であり、まだ介入の余地があることを示すもの。
「どのタイミングで敵襲があるかは既に分かっていることですのでぇ、皆さんには最初から傭兵として護衛に参加してもらうなりぃ、それとも正義の味方よろしく助太刀して頂くなりぃ、してもらえればとぉ」
 傭兵として同道していてもいいし、戦闘に気付いて駆けつけたでも構わない。勿論、それ以外でも理由を付けての参戦でもだ。つまり、その物資を守れさえすれば、方法は問わないのである。
「敵に関してはですねぇ。この世界でもよく見かける量産機が少なくとも三十ばかり。それを統率する指揮官機が一と思って頂ければと思いますぅ」
 敵量産機については、護衛の機体と同じモノではあるが、カラーリングが黒で統一されているため、目視による判別も容易いことだろう。
 ただ、注意しなければならないことが一つ。
「最初は敵量産機とのぶつかり合いとなると思いますけれどぉ、その間にも敵指揮官機が動いてくる可能性もありますよぅ」
 状況によっては光学兵器による狙撃やバリアを纏った突撃を行ってくる可能性も否定はできない。
 多数を相手にしながら、しかし、同時にそれらへと注意を割くことは難しいかもしれないが、もしもの対応を考えていた方が良いだろう。
「多勢に無勢ではありますが、この世界の片隅に生きるヒトビトの心を少しでも明るくするためにも、皆さんの力を貸してあげてください」
 よろしくお願いします。と、下げられたハーバニーの頭。兎耳も遅れてぴょこりと揺れていた。
「あ、それとですねぇ」
 再びと顔を上げ、その胸元に下げた銀の鍵で世界を繋ぐ刹那、彼女は思い出したように言う。
「この国で生きるヒト達はぁ、プラントの生産した娯楽しか知らないらしいですからぁ、全部が終わったら生の音楽や娯楽を提供してあげてもいいかもしれませんねぇ」
 それもまた、この世界に生きるヒトビトの心を潤すモノとなることは間違いないだろうから。
 音楽ライブを開くもよし。己の書物を広めるもよし。それぞれ思い思いの娯楽を、この国へと。
 荒んだ世界へと渡る刹那のその言葉。それをどう受け止めるかは猟兵達次第。
 だが、まずは物々しき戦いを生き抜いてから。全てはそれからのこと。
 世界の境界を跨いで吹きぬけてきた風は、どこか乾いて感じられるものであった。


ゆうそう
 オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 今回の依頼は護衛及び戦闘からなる第一、二章と日常の第三章となります。
 以下、注釈を。

 ●第一章
 開始はオープニング冒頭、敵からの奇襲直前からの開始となります。
 皆さんは既にその場に居てもいいですし、戦闘音に気付いて合流するでも構いません。勿論、それ以外でも。
 その状態から、押し寄せてくる敵量産機を千切っては投げして頂けたらと。
 敵は優先的に猟兵の皆さんや味方量産機を排除しようとしてきますが、運搬トレーラーも最終的には破壊対象のため、巻き込むことを厭いません。
 また、オープニングでも触れましたが、敵量産機との戦闘中も皆さんの行動(POWやSPD、WIZの種類)とダイス次第によっては敵指揮官機から以下の邪魔が入る場合もあります。
 POW:隙をついての突撃。
 SPD:光学兵器による狙撃。
 WIZ:敵量産機増援。
 対応しなくても致命には至りませんが、多少の傷(戦闘自体は続行出来る程度)は負う可能性もあります。
 護衛の味方量産機十機については、撃墜されても問題はありません。
 敵量産機と同型のため同じ兵装を持っており、頼めば援護もしてくれます。戦力としては敵量産機と1:1なら同等と思って頂ければ。1:2はまず勝てず、敵指揮官機には複数で対応したとしても手も足も出ません。

 ●第二章
 ボス戦として敵指揮官機との戦闘となります。
 量産機戦と同様、優先的に皆さんを狙ってきますが、それ以外が巻き込まれることも厭いません。

 ●第三章
 物資を守り抜いた末の日常となります。
 市街地は届いた娯楽にお祭り騒ぎとなっています。
 メインは音楽ライブとなりますが、音楽に関してはプラントの作成した歌しか人々は知りません。
 皆さんが生の歌を届けるもよし、音楽ばかりが娯楽ではないと自身の思う娯楽を広めるも良しです。お祭り騒ぎなので、当然、屋台的な食べ物等もあります。
 思い思いに日常を過ごしてもらえればと思います。

 以上が注釈となります。
 なお、3章に関してはハーバニーも居ますので、1人での参加はちょっと……という方はお気軽にご利用ください。
 また、2章、3章からの参加も歓迎致しますので、遠慮なくどうぞ。
 それでは、皆様のプレイングや活躍を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『オブシディアンMk4』

POW   :    ホークナパーム
【油脂焼夷弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【高温の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ピアシングショット
【スコープ照準】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【RSキャバリアライフル】で攻撃する。
WIZ   :    マイクロミサイルポッド
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【誘導ミサイル】で包囲攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リンカ・コーデリア
事前にクロムキャバリアを借り、トレーラーと並走しつつ戦闘機動を確認
あれこれ試して操縦系や機体性能等、概ね把握
そのうち興が乗って跳んだり急旋回したり
なんやかんやで楽しい……!

自慢のガジェットはキャバリアの右腕に固定
サイキックエナジーのパスを繋いでリモート操作可能状態に

そして初のキャバリア戦もホバー機動での速度重視
味方護衛機の損耗を減らすべく派手に動いて敵の注意を引きつつ、RSキャバリアライフルで応戦
不可避の攻撃や狙撃はガジェットの防護フィールド展開で凌ぎ、多少無茶しての被弾もやむなし
いざとなれば『コード・テンペスト』によりカメラで捉えた敵をガジェット側でロックオン、ホーミングレーザーで一網打尽に


クラウン・アンダーウッド
折角の娯楽が台無しにされちゃ勿体無い。

運搬トレーラーに相乗りさせて貰い、帽子を深く被りつつ陽気に鼻歌を歌いながら揺られて行く。

お、来た来た♪よっと。
第六感で相手の攻撃を予期して外の車両の上に飛び乗り、人形を呼び出して展開。味方に損害が出ないよう防護する。

やぁやぁ、皆さんごきげんよう。折角来てもらって恐縮だけど早々に退場して貰うよ♪

γ、キミの蝗の恐ろしさを彼らに教えてあげようじゃないか!

からくり人形(γ)は砂嵐の様に見える蝗の大群を操り、敵の内部に入り込ませて駆動系や通信系をボロボロに破壊して相手を無力化していく。

γ以外の人形とクラウンは投げナイフを手に、敵の弾頭を切断する等して迎撃していく。



 荒野を進むトレーラーと護衛の集団。
 本来であればその土煙が描くのは一直線のものだけであったことだろう。
 だが、今はそれへと付随して、子供が描いたような乱数機動の線がぐねりぐねり。
「右に、左に……これでロールしたり、跳んだり、かな?」
 それこそは、護衛の集団に混じったキャバリアの一機――リンカ・コーデリア(タイニーガジェッティア・f02459)が乗機が描く軌道の線。
 右に急旋回したかと思えば、片足を軸にその向きをぐるり。反対方向へとその舵を変えて、跳んで。
 体高5mの人型を土から僅かと浮かびあがらせるだけの推進力を持つエンジンが唸れば、それだけで荒野の砂煙がぶわり。そこに無軌道が加われば、その土煙があちらこちらとなるのも致し方ないことだろう。
「ちょっと操縦に癖があるけど、思い通りに動かせるようになってくれば楽しいね!」
「初めての運転でそれだけ動かせれば、充分すぎるだろ」
「あ、これは運転免許の合格を貰ったと思っていいのかな?」
「動きが奔放すぎて、本来の試験なら落ちそうだがな!」
「手厳しいね!」
 思うさま、楽しむようにと動くリンカの動きは、それを見守る護衛機のパイロット達に過去を思い出させるもの。
 キャバリアという兵器に抱いた幼少の憧れやそれを初めて動かした時の緊張、自由に動かせるようになった時の高揚を。
 胸に抱く思いは様々で、だけれど、操縦を純粋に楽しむように動くリンカの姿は、決して彼らに悪い感情を与えはしなかった。むしろ、やんややんやとその動きを揶揄ったり、指導の横やりを入れてみたりと大いに盛り上がりを見せていたのだ。
 それにリンカも、照れたような笑みと共に頬を掻いてみたり、真面目に聞き入れてみたりと表情はくるりくるり。
 そして、するりとトレーラーの鼻先――集団の先頭へと躍り出て、その運転手に向け、キャバリアの手をお道化たように振ってみせる。
 隊長機からであろう。あまりふざけすぎないように。なんて注意も通信機越しに聞こえるけれど、そこにあるのは厳しさよりも、苦笑の色合いが強い。
 それにリンカも一つと苦笑を浮かべ、ごめんなさい。と謝罪の言葉を送り返す。
 猟兵は確かに助っ人ではある。だけれど、小国家の上層部はさておき、その下で働く者達からすれば突如として任務に捻じ込まれた出自不明の者達でもある。当然ながらそれに対する警戒感もあったことだろう。だけれど、リンカのその行動が彼らの警戒感を確かに和らげていたのである。

「なあ、あれ、お前さんのお仲間だろう?」
「そうだよ。とは言っても、直接的な面識はないけれどね」
「一緒に組まされてんのに、直接的な面識がないってのも変な話だな」
「ボク達にとっては、そういうこともあるんだよ」
「ははあ、傭兵ってのも大変なんだな」
 操縦席の向こう側、ガラス張りの景色の先で手を振ったキャバリアの一機。彼ら彼女らのやり取りはトレーラーの内部にも聞こえていたのだ。
 操縦を預かるは猟兵――ではなく、元よりこの任務に従事していた壮年の男性。その傍らにこそ猟兵の、クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)の姿はあった。
 道化師の服装とセットになった愛用の帽子を目深と被り、鼻歌陽気と口ずさみながら、ガラス向こうの荒野をちらり。
 そこでは変わらず、キャバリアの一機――恐らく、リンカのものであろう――が、飛んで跳ねてと動き回っている。それはまるでサーカスを思わせて。
「ボクも何かしら披露しても良かったかな」
 少しだけ疼いたクラウン/道化師の矜持。鼻歌最中と手が動く。
「お、お前さんも何か見せてくれるのかい?」
 そこに期待の眼差しが隣から加われば、それで止めるは名折れであろう。
 娯楽を台無しにさせまいと乗り込んだのだから、その期待に応えねば、だ。
 何も持たぬ手をひらりひらりと見せつけて、次にひらりと翻せば、その手の内にいつの間にやらのハンカチ一つ。
 クラウンからすれば初歩の初歩たる手品奇術の類ではあるけれど、滑らかな手つきは種も仕掛けも読み取らせない。
 アポーツもかくやと取り出して見せたハンカチに、壮年の男性も運転そっちのけで目を丸くする。自動操縦もあるお蔭で、幸いと事故に至ることは無いけれど。だが、観客として見るなら、その反応は百点満点であろう。
 それに気を良くすれば、ハンカチ一振り、ステッキ早変わり。
 男性の目がより一層丸く、大きく。
「ほらほら、あんまりこっちばかりを見てると事故するよ」
「お、おぉ、すげえもんだな」
「はは、それぐらい楽しんでもらえれば、冥利に尽きるね」
 ちらり。再びとクラウンが視線をガラス向こうに。
「どうやら、これが見たいのはキミだけじゃなさそうだ」
「……? 何の話だ、って、どこ行った!?」
 クラウンの視線に釣られ、そちらを見た男性が再びと視線を戻した時には、そこにクラウンの姿はなし。まるで魔法のように立ち消えていた。

 ――光が奔る。地の彼方から。

 それは予兆にて語られていた、本来であれば外の誰かの命を奪う輝きの矢。
 だけれど。
「ほら、来た来た♪」
「了解。なら、受け止めるよ!」
 それをそうとしないためにこそ、猟兵はここにあるのだ。
 車両の外――跳び出したトレーラーの上で、見晴らし良いそこから方向を指し示すはクラウン。
 その指示に反応するは、その輝きに狙われた/狙わせたリンカの機体。
 リンカのキャバリアが掲げた右腕、そこに搭載するは彼女自慢のガジェット。輝きの矢を吹き散らす、念動の壁を形成する装置。
 ――バチリ。
 衝撃の音と輝きを撒き散らし、飛来した矢はその威力を減衰させて荒野のあちらこちらに散り、突き刺さる。
 被害は――。
「な、ななな!?」
「きょどってんな! 敵襲だ!」
「各自、散開しすぎるな! 必ず二人一組を維持し、互いの死角を守り合え!」
 軽微。
 予知の中では爆炎に呑み込まれていた筈の機体も健在を示している。
 クラウンの察知能力とリンカの自らを目立たせる行動が、その結果を導き出していたのだ。
「あっちは大丈夫そうだね」
「キミが動き回った甲斐もあったってことだよ」
「はは、なら良かった。でも、一発目が来たって事は――」
「御明察」
 輝きに次いで、彼方より訪れるは雲霞の如き。
「って、三十どころじゃない数な気もしないかな!?」
「ボク達に合わせてくれたっところだろうね。満員御礼の札を用意し忘れてたよ」
 事前に齎されていた情報では、敵量産機の数は三十そこらという話であったが、リンカとクラウンの前に現れたそれはその数に収まるとは到底思えない程の。
 クラウンが言う通り、猟兵という戦力に合わせたのか。しかし、それにしてもこれだけの戦力をどこから用意してきたのか。
「タネがありそうだけれど、今はそれを見極めるのに集中し過ぎる訳にもいかなそうだ」
 押し寄せて来れば、猟兵は兎も角として、護衛機はまず間違いなく呑み込まれることだろう。
 ならばこそ。
「やぁやぁ、皆さんごきげんよう」
 それを歓待し、対応するのは猟兵たるの役目に他ならない。
 トレーラーの上で、クラウンが慇懃にお辞儀をする。これより始まるステージを報せるかのように。だが、それは決して歓迎を示すためのものではない。

「折角来てもらって恐縮だけど、早々に退場して貰うよ♪」

 骸の海へとそれらを叩き返すためのご挨拶だ。
 トレーラーから躍り出る影、元より外で随伴していた者、新たに参戦を示す姿、様々な形で控えていた猟兵達が戦場へと躍り出る。
 そして、それに続かんとばかりに、リンカとクラウンもまた。
「あなた達はトレーラーの防衛に専念してて。大事なモノなんだよね?」
「……すまん」
「いいってこと。そのためのボク達さ」
 護衛の機体をトレーラーの周囲に固め、打って出るはリンカの機体。
 試運転の最中で掴んだ操縦テクニックを遺憾なくと発揮して、地を滑るように。
 ホバー移動しながらの射撃。着弾の確認を待たず、その反動をすら利用して機体を廻し、位置をずらす。遅れて、その姿があった場所を弾丸が通り過ぎていく。
 味方を含めての数は当初より多いけれど、それでも、敵の数はその倍以上。
 照準されたを示す警報は鳴りやまず、機体を動かし続けねば、蜂の巣となるはリンカの方であろう。
 それを機動で攪乱し、時に飛来する輝きの矢共々と念動の壁で受け止めてはその身の無事を維持し続ける。
 集中からか、額より流れ落ちる雫。それが顔の輪郭と顎を伝ってポタリと落ちた。
「数が、多い!」
「なら、こちらも数で対するとしようじゃないか」
 クラウンのその指先が奏でるは、絡繰り人形の舞踊り。
 γと名付けられたそれを指先器用にと操って、荒野の最中で遊ばせる。
 だが、それはあくまでも一体のみ。数で対するというにはあまりにも。
「γ、キミの蝗の恐ろしさを彼らに教えてあげようじゃないか!
 いや、確かにそれは一にして数多であるのだ。
 荒野に吹き抜ける砂塵の風。それに混じって響き渡るは、暴食の羽音――蝗の群れ。
 それは小さき身体で無数と荒れ狂い、その場にある全て――クラウンの指示するものを、喰い荒らさんと飛来するのだ。
 小さきであればこそ、それは機体の隙間にすら入りこみ、きっとその内部からズタズタにしていくことだろう。
「なにそれ、なにそれ!」
「なあに、ちょっとした絡繰りだよ」
 ガジェットの技術体系とはまた違う技術に、リンカの瞳が疲労を忘れて瞬く。
 如何なる時であろうとも、やはり彼女は技術屋で、ガジェッティア。己を高める可能性のあるものには、貪欲であった。
 その間にも、羽音と駆動音との距離が埋まっていく。
 だが、無数と迫る蝗であろうとも、敵もただ受け入れる筈もなし。その肩に搭載されたミサイルキャリアが牙を剥き、蝗の群れもかくやの数をもって爆炎の熱で迎え撃たんとするのだ。
 如何な蝗の群れであっても、絨毯爆撃となぎ払われれば、近付くに能わず。
 故に。

「輝く矢はそっちの専売特許じゃないんだよ!」

 その牙を妨げる嵐をここへ。
 カメラ越しにミサイルの雨無数を捉えるはリンカであり、彼女のガジェット。
 ――コード・テンペスト。
 テンペストの名に恥じぬ、ホーミングレーザーの暴風雨でもって、そのミサイルの大群を効果発揮しきるより早くと撃ち抜いていくのだ。
 それはまさしく物量と物量とのぶつかりあい。互いが互いを喰い合って、呑み込みあって。
「光と炎の舞台とは、随分と豪勢だね♪」
 輝きと爆風の合間を縫って、暴食の羽音はその数を減らしながらも、しかし、遂にと黒の機体へと潜り込むのだ。
 一つ、二つ、三つ……次々と沈黙していく機体達。
 物量の大本が減らされれば、火力もまた減っていくは当然で、未だ健在を誇るもう一方の物量に喰い荒らされ、吹き荒らされるのは、もう時間の問題。
 荒野の一角。戦場の一つで、勝利が一つと積み上がった瞬間であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
護衛時の移動は魔法の箒に跨って、殲禍炎剣に攻撃されない高度を飛行します。「音楽と書籍のデータですか。これは絶対に守らないといけませんね。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【先制攻撃】の【高速詠唱】で【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【サンダーランス】を【範囲攻撃】にして、『オブシディアンMk4』達を纏めて【2回攻撃】します(2回目の攻撃は増援部隊分でも構いません)。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。



 ふわりふわり。
 魔法の箒に跨って。
 ふわりふわり。
 ウィザードローブを風に遊ばせて。
 護衛の集団へと随伴するは、まさしく魔法使い然とした姿の女性――火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)。
 この鉄火の世界においては、魔法使いなどそれこそ御伽話の存在。ちらりちらりと興味深げな視線が、機械のスコープ越しに届くのを彼女は感じていた。
「娯楽が少ない故、なのかもしれませんね」
 長く続く戦乱の時。資源も時間も費やされ、ヒトの心は疲弊するばかり。その中においては、遊び心という余裕は随分と遠い場所にあることだろう。
 その最中に現れた、御伽噺から抜け出したかのような明の存在に、彼ら彼女らが注目するなというのも無理がある。
 それを朧げに理解してか、はたまた、その衣装の大胆さ故に視線に慣れているからか、明はその視線に敢えてと何も言わずに受け入れていた。
 そして。
「確か、音楽と書籍のデータでしたか。これは絶対に守らなければなりませんね」
 この世界の貴重なる娯楽を守るべくと、戦いへの決意を新たとするのである。

 ――ぶわり。

 ホバーの気流にも負けず劣らずの土煙を巻き上げ、突き進む先は雲霞の如くと押し寄せ始めた敵量産機の群れ。
 戦の始まりを告げる鏑矢は、他の猟兵の手によって防がれていた。
 しかし、二の矢として放たれた敵の数は予知にて告げられていた三十を超えるもの。
 それが四方八方からと押し寄せるが故に、明を始めとした猟兵達はその対応へと打って出る他にない。
 いや、そうでなかったとしても、その奥に潜むであろう敵指揮官を討つ為には、どちらにせよとそれを退けねばならぬことに変わりはないのだ。
「高度を上げることが出来れば、随分と楽なのですけれどね」
 魔法の箒の力で、明自身の力で、天高くと舞い上がり、そこから空飛べぬ敵量産機を爆撃すれば、瞬く間に終わるだろう。
 だが、実際にはこの世界でそれは叶わぬこと。
 空の上のそのまた上に浮かぶ、殲禍炎剣と呼ばれる暴走衛星が目を光らせているからこそ。
 だから、明は土煙を巻き上げながら、地を滑るように箒を走らせるのだ。
「言っても詮無きことですか」
 間近で弾ける紅蓮の花。それは敵量産機より放たれたミサイルの雨が断片。
 遠きではそれを撃ち落とす仲間の姿も見える。
 熱と破片とが撒き散らされ、戦場の風となって吹き抜けていく。
 その合間を、破片に濡れぬよう、紅蓮に染められぬようと、進路を見切り、躱し、駆け抜ける箒の一筋。
「数の多さは、なかなかに厄介ですね」
 物量がある故に、それを強みと弾幕を張り続ける敵量産機。
 近付くに近づけず、攻撃に転じるに攻撃へ転じきれぬ。
 見れば、戦闘が始まる前は明へと視線を向けていただろう味方の護衛機達も、その弾幕への対処をするに精一杯で、到底、こちらへと援護を期待できるものではない。

「――致し方ありませんね」

 ぐん。と更に箒が加速する。高度をあげる。
 高度をあげては、速度をあげては、暴走衛星に撃ち落とされるのではないのか。
 ――いいや、彼女であるならば問題はない。
 敵のミサイルも着弾までに高度をあげていたにも関わらず、それを撃ち落とされる気配はなかったのだ。ならば、その高さまでならば問題ないと見切ったからこそ。
 戦場の熱い空気とはまた異なる空気。
 轟々と吹き抜ける音は風切り音か。はたまた、至近を抜けていくミサイルの轟音か。
「残念。私を狙うには、少し狙いが甘すぎます」
 零した言葉は誰に届くでもなく、空に溶けていく。
 それで問題はない。届けたいのは声ではないのだ。届けたいのは――。

「我、求めるは、新たなる雷撃の力」

 天より降りしきる、雷鳴の声であればこそ。
 掲げた七色の杖の先、ばちりと弾けた雷撃の音。奔る稲妻を無数の槍へと変えて、明はそれを地へと差し向けるのだ。
 そして、放たれたそれは空に上がりくるミサイルを呑み込み、その先にある量産機達へと、その牙を届かせた。
「さて、少しでも他の方への圧力が減ればいいのですけれど」
 バチリバチリと雷鳴を鳴らしつつ、空の上より魔法使いは地を睨む。
 少しでも、それが仲間の助けとなればと願いながら。
 敵量産機の数が、減っていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
やることは同じか
では働こう

天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
対象外へは無害で内から外へは何も出来ず逆は自由な理不尽だ
精々憤れ

パイロットは正気に戻り得るなら対象外

範囲に踏み込めば条件を満たす全てが自動的に虜囚
隊長機も例外ではない

出口は自身に設定
見えず触れられぬ迷宮を解くのはさぞ苦労しよう
無論思うままになど動けぬのが道理
囚われ自壊するものには攻撃手段も含まれてる
脱出、破壊。どちらも急がねば消え失せるぞ

万一出口へ至る個体があれば『討滅』を乗せた打撃で
自身へ及ぶ攻撃は『絶理』『刻真』で命中前に終わらせ影響を回避

※アドリブ歓迎



 既に鏑矢は放たれた。
 敵は事前の情報を越え、雲霞の如くと押し寄せる敵量産機。
 それらも討つべきモノ達ではあるけれど、それを隠れ蓑と奥に秘するモノもまた討つべき存在。
 だが、どうにせよ、それを討つ為には、まずは目前に迫るヴェールを剝がねばなるまい。
「……やることは同じか」
 どちらを先に討つにせよ、どちらも討ち滅ぼすことに変わりはない。
 ならば、その違いに何の意味もありはしない。
「では、働こう」
 着の身着のまま、鋼を纏うでもなく、戦に身構えるでもなく、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は、いつもの調子のまま、戦場へと足を踏み入れる。
「お、おい、あんた! 一人で行くのは――」
「問題はない。こちらからの侵攻は俺が抑えよう。逆に、お前達があまり俺に近付き過ぎないことだ」
 その気負いのなさに、まるで散歩にでも行くかのような気安さに、護衛の一機より声が掛かるが、アルトリウスは心配ないと返すばかり。
 そのあまりにも泰然とした姿は、その歩みを止めるべくと声を掛けた護衛の声を沈黙させるに余りある。
 だが、それでいい。
 何故なら、彼の周りは既に――。

「惑え」

 この世の理から外れた場所であるからこそ。
 体高5mのキャバリアからすれば、小さなアルトリウスの姿。容易く蹂躙し、踏みつぶさんと迫り来ていた敵量産機の姿が、彼の引いた一線を越えた瞬間に掻き消える。
 どこへ行ったのか。どこへ消えたのか。
「入るは自由でも、出るは困難なる倫理の牢獄。形なき迷宮に囚われ、果てるがいい」
 それを知るは、アルトリウスのみ。
 だが、言えるのは彼がかく語ったが如く、敵量産機の一角はこの世でない外の世界――原理に絡めとられ、形なき迷宮へと囚われたということだけ。
「精々、その理不尽に憤れ……いや、お前達は、それすら出来んか。中身なき伽藍洞なら」
 彼だけに見える、中に囚われた者だけに見える牢獄の世界。
 そこに惑う敵量産機であれど、そこに動揺の字はなく、ひたすらに突き進み、その迷宮を破壊せんとする姿。それはまるで、機械そのもののような。だが、それもそうであろう。かの量産機に中身――搭乗者の姿はないのだから。
 如何な仕掛けかは推察も出来ようが、今はそれに意識割く時ではない。
 原理の世界から現実へと目を向け直せば、そこには降り注ぎ来るミサイルの雨霰。
 近づき、掻き消えさせられるというのであれば、近付かずに諸共と吹き飛ばそうという目論見なのだろう。
 だが。

「何を勘違いしているかは知らないが、囚われるのは何もお前達だけではないぞ」

 呆れを宿すでもなく、嘲笑を宿すでもなく、ただ事実を指摘するだけの声。それを示すかのように、ミサイルもまた一つの境界を越えた時点でその姿を掻き消えさせていた。
 ざりとアルトリウスが土を踏みしめて一歩と前に進めば、境界線もまた一歩分へと先に進む。
 ただ歩くだけ。
 それだけで、彼は敵の波を受け止める防波堤たる存在として確かにそこに君臨していたのだ。
 だが、彼とてただ敵を止め続けるだけであろう筈もない。その原理の内に捕らえた敵を放置せぬ筈もない。
「さて、仲間を助けるという概念がお前達にあるのかは知らないが、放っておけば仲間はこの世から消え失せるぞ」
 彼にしか見えぬ原理の視界の中、右往左往の敵機達。
 だが、その迷宮の出口はそこにはなく、あるのはただ迷宮の自壊へと巻き込まれる運命だけ。
 その終わりは、彼の正面で二の足を踏む量産機達の末路を示しているかのようでもあった。
「さて、そちらから来ないのであれば、こちらから行くとしよう」
 原理世界の崩壊を見届け、再びと踏み出す一歩。
 その先がどうなったか。少なくとも、アルトリウスが存在する方向から敵機がその増援を含め、トレーラーへと近づくことは終ぞなかった。それだけは確か。

成功 🔵​🔵​🔴​

藤守・響
護衛として輸送隊に同伴する。

娯楽を奪うなんて許さないぜ。それが音楽ならなおさらな!

よっと。
護衛するキャバリアの一体の右肩に飛び乗りUCを使用。バックパックから急速成長した植物が大砲の形に変化して、さながらキャバリアの武装の様になる。

吹き飛べぇぇぇ!!
両足、両腕、頭の順に相手を無力化するように弾丸を撃ち込む。時には外れた至近弾から発芽した植物を成長させ、相手に絡み付かせて動きを妨害する。

ん?なぜ、キャバリアに飛び乗っただって?簡単なことだぜ。響には相手の攻撃を凌ぎきれないからな!ってことで露払い宜しくだぜ!!



 緑少なき荒野の光景は、藤守・響(騒がしい木霊・f28361)にとってどこか寂し気な印象を与えていた。
「こんな場所なら、娯楽は一層と大事ってもんだぜ」
「お、分かってくれるの?」
「そりゃ勿論さ。しかも、それが音楽ならなおさらな!」
 揺れる荒野の光景は、根を下ろす大地とは異なるが故。
 響が今あるのは、護衛十機の内の一機、その肩の上。そこに腰掛け、自分の意思と反して上下に動く視界の新鮮さを味わってもいたのだ。
「これが物語の妖精とかの視点なんだろうな」
「揺れ動くそこでそんな暢気な感想が出るなんて、あんたすごいのね」
「そうかな?」
 上下に揺れる視界は、常人であれば瞬く間に三半規管をやられて酔ってしまうこと間違いなし。だけれど、そこは猟兵にして、妖怪たる響が常人の枠に囚われる筈もなし。
 護衛機のパイロット――この隊においては数少ない女性に浮かぶは、感心するような、呆れるような、そんな複雑な表情であった。
「ま、でも、妖精が乗ってるってのなら、あたしにもツキの一つが回ってくるかな?」
「響は妖精そのものとは大分遠いけどなあ」
「気分だよ、気分!」
 妖精ではなく妖怪。と言ったところで、それこそ女性にとっては本の中の存在で、正体を明かしたところでどこまで理解できるものか。
 それ故、響も敢えてとそれ以上は修正せず、その気分とやらを損なわせる必要もあるまいと判断したのだ。

 ――光が、弾けた。

「なに、なになに!?」
「敵襲だ!」
「お、遂に来たか!」
「余裕だね、キミ!?」
 弾けた光は彼方よりの狙撃。そして、それを他の猟兵が防いだ証。
 であれば、次に来たるのは――。
「こっちも準備しとかないとな!」
 雲霞の如くと雪崩来るであろう黒。敵の量産機である筈。
 それもまた知る故にこそ、響は己――ではなく、間借りしているキャバリアの肩に『ソレ』を生み出すのだ。

「これが響のアハトアハトだ!」

 様々な植物の種や苗木等の入った響特製のバックを漁り、取り出したるは松のそれ。
 ちょいとまじない一つを込めて、キャバリアの肩に乗せればあら不思議。『ソレ』――瞬く間にと大砲を形作っていく。
「敵も増えたら、武器も増えた!?」
 そのタイミングを待っていたかのように、はたまた、そのタイミングを読んだからこそ間に合わせかのように、視界の先を埋め尽くす黒。三十を優に超える数が、そこにはあった。
 だけれど、響に臆するところは一つも無い。
 娯楽を、音楽を奪わんとする者達に、屈するつもりなど彼には微塵もない。それに同じくと戦いを繰り広げるであろう猟兵達が他にもあるのだ。
「さあさ、仕事を果たそうぜ!」
「驚きすぎて、逆に冷静になってきたわ」
「そいつは頼もしいな!」
 他の護衛機が下がる中、猟兵への協力という名目で残る彼女とその機体。
 恐れはあるだろうけれど、それでも、運搬トレーラーを、ひいてはその中の大切なるモノを守らんとする気概がそこにはあった。
 雪崩来る黒を前にして退かぬその姿に、響もカラリと明るい笑顔。ならば共に、と。
「そんじゃ、一気にやっちまおうぜ!」
「無理はしない程度に、ね!」
 景色が急速に流れるは、後ろに、前に、左右へと、向かい来る敵量産機の波に呑み込まれぬように。
 護衛機の両手に握られたライフルが吼える。弾丸撒き散らし、少しでもその波の歩みを遅めんとして。
 だが、はたして、その効果はあったと言えるだろうか。
 狙いをつけるまでもない程の敵の量は、それだけで足を止めることが出来るだけの量ではない。
 逆に、無数の銃口が、ミサイルキャリアの牙が、響達へと向けられる。
 もしもそれが放たれたとすれば、回避は絶望的であろう。
 ――ただし、それは響が何もしないままであれば、だが。
「吹き飛べぇぇぇ!!」
 一機では足りない弾幕を補うかのように、植物の大砲が響の気勢に合わせて吼える。
 撃ちだされるは松ぼっくりの特大弾。それは直撃すれば機体ごと圧し潰し、外れてもその後には緑の芽吹きを生み出し、大地を緑と染め上げるのだ。
「こ、これ、あたし必要だったかな」
「いやいや、必要だぜ?」
 雲霞を押し留めるは緑の絨毯。
 荒野を染めるそれは響の加護を得、瞬く間とその身を成長させて敵量産機達の手足に絡み、その動きを妨害していく。
 自由に動き続けられる響達と数は多くとも動けぬ敵機達。
 そうなれば、どちらが優位に戦えるかなど、語るまでもない事だろう。
「何で必要かって思ったよな?」
「ああ、まあね」
「そりゃ決まってる。響だけじゃ相手からの攻撃を防ぎ切れないからな」
 植物の大砲が、この結果の示すが如くと如何に強力であろうとも、固定砲台のままではやれることも減るであろう。だからこそ、その身を動かす足が欲しかったのだ。
「――ってことで、露払い宜しくだぜ!!」
 カラリとまた明るい笑顔。
 それに思わずと女性も肩の力が抜けて、苦笑を浮かべるばかり。
 どんな理由にせよ、本来の彼女だけであればば敵量産機の群れとなど相対して生きる道がなかった。それを思えば、その協力に感謝こそすれであったと言えた。
「それじゃ、ご期待通りとあんたの足になり、露払いを務めましょ!」
「おう、頼んだ!」
 轟とブースターが黒の波へと突き進めば、侵食する緑がまたじわりと広がっていく。響と護衛機の手によって、確実に進行が妨げられていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

祇条・結月
普通の娯楽、っていうのが難しい世界、たくさんあるよね
このプラントも、そう
そういう小さな希望が、皆の居場所を守ってる、って思う
だから行くよ
できることをする

戦車に随行歩兵が付いてるのは基本だよね
キャバリアに乗ってないから、って甘く見ないでほしいかな

敵の量産機に【切り込み】【敵を盾にする】ように立ち回るよ
人間サイズじゃロックしにくいだろうし、そうなると使える火器は限られるはず
射線を【見切り】、関節やカメラに銀の弓から矢を撃ちこんで動きを封じていく

その間も警戒は怠らない
【第六感】に来るものを感じたら咄嗟に≪鍵ノ悪魔≫を下ろす
大丈夫、当たらないから
皆と協力して、まずは雑兵を無力化していくよ


オリヴィア・ローゼンタール
人は明日の安息を願って今日を頑張るのです
邪悪の跳梁を、私と鋼の勇者は赦しはしない

――天来せよ、鋼の大英雄(ヘラクレス)
万雷に等しい轟音を伴い、虚空より現れる巨躯
搭乗し、座すれば意のままに駆動する

ここは我らが引き受けます(鼓舞)
護衛の皆さんは必ず数の優位を保って戦ってください

分厚い装甲に【オーラ防御】を上乗せして防御を固め、ライフルを弾きながら吶喊(ダッシュ)
【威圧】感を放つことで敵の意識を釘付けにする(おびき寄せ)

唸りを上げる鋼の剛腕を叩き付ける(怪力・重量攻撃・鉄拳聖裁)
打ち砕け!

指揮官機への対策は、地面を殴りつけ(地形破壊)、土埃を起こして光線の通りを悪くする
大きめの岩を【投擲】して牽制



「普通の娯楽、っていうのが難しい世界、たくさんあるよね」
「そうですね。私の故郷である世界もそうです。そして――」
「――この世界も、そう。だよね?」
「その通りです」
 猟兵があるからか、押し寄せる敵機の群れは事前の予知に語られていた三十を超える。
 されど、それに臆する者はここにはない。
「だからこそ、人は明日の安息を願って今日を頑張るのです」
「このトレーラーに積まれてるのは、小さな希望。そういうのが皆の居場所を、心を守ってる、って解る」
「故に、それを潰えさせんとする邪悪の跳梁を、私と鋼の勇者は赦しはしない」
「僕にはそんな力はないけれど、でも、できることをする」
 いざ、往かん。黒の海を切り拓き、希望を明日へと繋げるために。
 そのためにこそ、祇条・結月(キーメイカー・f02067)は、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、ここに在るのだから。

「――天来せよ、鋼の大英雄!」

 宙に響くはオリヴィアの声。虚空より響くは万雷の嘶き。
 神鳴る声の示しを得て、『ソレ』は荒野に顕現する。
 其は死して空に召し上げられた偉大なる英雄の名を冠せしモノ。
 鋼の体躯にオリヴィアという名の魂を受け入れ、荒野に降臨した機人/ヘラクレスは堂々たると立ち示す。
「ここは我らが引き受けます! 護衛の皆さんは必ず数の優位を保って戦ってください!
 外部スピーカーを経て、声は凛と響いて。
 それを受けてと言うべきか、それも受けてと言うべきか、護衛の機体達は敬礼を残し、トレーラーの護りへと。邪魔になるぐらいであれば、それに専念することで少しでも足を引っ張るまいというのだろう。
「なんていうか、すごいね」
 その鋼の巨躯と鼓舞を見上げ、結月は感心したように。
 彼の身は未だと生身。この鋼と鋼がぶつかる中で、未だと生身。
 だが、そのことに彼は気負いを持たぬ。
 キャバリアを操る力はまだないというのは、自身が最も知るところ。故にこそ、結月はできることをせんと語ったのだから。
「踏み潰されないように、頑張るよ」
「何を言っていらっしゃるのですか。踏み潰されるつもりなどないでしょうに」
「勿論だよ。僕はまだ死にたくはないからね」

 ――無数の銃口が、二人を睨む。

 それは黒の海からの敵意。
 視られている。
 それを理解するは結月の第六感であり、ヘラクレスからオリヴィアへの警報音。
 発砲の音と二人の身体が動いたは同時。
 オリヴィアは土を巻き上げる程の勢いで、結月はまるで溶け消えるかのような静かさで、それぞれにその身を翻す。
 果たして、銃弾は荒野の大地を耕すばかり。
「開幕の銅鑼は譲ってしまいましたが……オリヴィア・ローゼンタール、ヘラクレス、参ります!」
 その巨躯に、重さに似合わぬ身のこなし。
 躱した勢いをそのまま前進制圧への勢いと変え、オリヴィアは黒の海へと立ち向かう。
 右に、左に、銃弾の雨を掻い潜り、そして。
「その程度の豆鉄砲でどうにかなるものではありませんよ!
 時に、躱しきれぬ弾幕を、その堅牢さに任せて突破する。
 それはまるで、神からの試練へと挑む英雄の姿を彷彿とさせるかのような勇壮さ。
 彼我の距離を瞬く間にと踏破するその勢いは、敵の目を惹きつけるに十分。十分であるからこそ。

「戦車にだって随行歩兵が付いてるのは基本なんだ。キャバリアにだって、それはあってもいいよね」

 その勇壮さを目晦ましと変えて、静かなる牙がその鋭さを思うままにと振るうのだ。
 結月の携えるは銀の弓。
 本来は鍵の形をしているそれを今はその形と変え、引き絞る。
 矢を番える動作など要らない。弦を引き絞れば、そこには輝く矢がいつの間にかと形成されるのだから。
 ――ヒョウ。
 空気切り裂く音立てて、放たれた矢は敵機の瞳を、関節を射抜く。
 オリヴィアに意識を割かされていた敵機達からすれば、それは寝耳に水も良いところ。
 突然の視界消失に、動作不良に、僅かと言えど行動が遅れる。そして、行動が遅れればどうなるか。

「――悔い改めよッ!」

 唸りをあげる鋼の剛腕が、その身を容赦なくと叩き潰すのだ。
 元より怪力を誇るオリヴィアではあればこそ、その彼女が搭乗するヘラクレスがそれに劣る筈もなし。
 へしゃげ、ひしゃげ、火花を散らして黒の海の一部が吹き飛んでいく。
 まさしく、鉄拳聖裁。容赦のない天罰の体現がそこにはある。
 オリヴィアの突破力。結月の狙撃によるアシスト。そのどちらもが放置出来るものではない。
 だからこそ、どちらから対応すべきかと敵機が僅かに思考を悩ませば、それを妨げるようにまた矢がするりと間接に潜り込む。
「キャバリアに乗ってないから、って甘く見ないでほしいかな」
 いつまでも同じ場所に結月が居るとは限らない。
 狙撃手であればこそ、常に優位を得られる位置を確保し続けるは当然のこと。それが例え、黒の海の間近であろうとも。
 また一つ、波が砕けて飛沫となった。

 ――感じたは視線。地の彼方よりの。

「来る!」
「あなたは私の後ろに!」
 輝きが射抜くは/輝きを受け止めるは、鋼の巨躯。
 ばちりばちりと拮抗にオーラの粒子を弾けさせ、それを正面から捻じ伏せんと。
 大立ち回りを繰り広げていたからこそ、狙いは結月ではなく、より目立っていたオリヴィアへと向かったのだ。
 ジリ、と輝きを受け止めるヘラクレスの足が後ろに押される。
「中々に重い……ですが!」
 それを通せば、後ろにある結月も、トレーラーにも、影響があることだろう。いや、結月に関しては別段問題もないかもしれないが、それでも。
 押された足を意思の力で前へと進め、振り出しに戻す。
 そして、振り上げる拳。
 光を殴るというのか。いいや、違う。振り下ろす先は――。
「打ち砕け!」
 荒野の大地。
 ズンと地面が震え、もうもうと立ち込めるは土煙。
 その輝きが、狙撃が光学兵器の類と知るからこそ、ならばその通りを悪くすれば、と。
 ――そして、それは成ったのだ。
 土煙が妨げ、威力の減衰したそれは、そうする前に比べて最早オーラを貫通せんとするだけの勢いはない。
「御願いします!」
「任されたよ」
 オリヴィアが輝きを受け止めたからこそ、鍵の悪魔は降ろさなかった。だから、今の結月の身には、それを降ろしたことで蝕む呪いも、痛みも、毒もない。
 土煙が立ち込めるは輝きを弱めるでもあるけれど、結月の視界を妨げるでもある。
 だが、だからどうした。
 輝きの飛来した方角は理解している。感じた視線の位置も理解している。
「それだけ分かれば、十分だ」
 鍵穴に合う鍵を差し込めば開くは当然で、その当然さをもって結月はそれを為す。
 ――見えぬ先へと目掛け矢は放たれた。
 輝きが消失する。
 直撃させたのか。否。今は、牽制だけ。
 こちらが輝きに対応できたように、きっと距離のある今の段階では、対応もされようから。それに、この周囲の敵機を打ち払うことが優先だから。
「これで、少しは煩わしい視線が減るかな」
「ええ、今のうちにこちらを終わらせてしまいましょう」
 妨げはなくなった。
 ならば、二人の勢いを止めることが量産機に出来る筈もない。
 拳が唸り、矢が翔ける。黒鉄の骸が、山と積まれていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

草野・千秋
アレンジアドリブ等◎

新しい世界クロムキャバリア
この世界にも僕は平和をもたらしてみせる
猟兵たるものどんな世界も平和にすると誓ったのです

運搬トレーラーの中身が音楽や書籍なら
それは尚更救って差し上げねばですね
人は文化を愉む心と娯楽を失っては生きていけないのですから
心の栄養だって必要なんです
この荒廃した世界ならなおのこと
僕だって腕は鋼鉄ですけどこの心は血肉が通っています

敵攻撃は第六感と見切り、UC【Alea iacta est!】で回避、攻撃を目論見る
前線に立ち応戦
拳に雷の属性攻撃を宿らせ怪力、2回攻撃で敵を殴る蹴るで倒していく
攻撃が当たれば激痛耐性で耐え味方はかばう



 増援に次ぐ増援。
 敵は雲霞の如くと押し寄せて、それを退け続けるは猟兵達。
 彼ら彼女らの引いた防衛線は未だと破られることもなく、トレーラーと護衛機達は健在を示す。
 だが、絶対の防衛線があろうとも、打って出ることが出来ねば、いずれは矢弾も尽き果てることだろう。
 だからこそ。
「この世界にも、僕は平和を齎してみせる」
 変身の掛け声も高らかと、荒野に響くは草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)。ヒーローは抗うヒトビトに手を差し伸べるために、その姿を現すのだ。見上げるような巨躯は非ず。されど、鋼をその身にと纏いて。
 娯楽の類を運ぶというトレーラー。その周囲にて展開する護衛機と随伴していた猟兵達。そして、それを取り囲む量産型の敵機達。
 そこに一撃を加えんと、今、正義の矢は解き放たれる。

 雷纏った拳が唸る。巨躯の一部が砕けて、崩れる。
 敵機の海に身を投げた瞬間から、千秋は既に賽は放っているのだ。
 カラリカラリと脳内で骰子が踊り、その結果は如何にと自身に問いかける。
 そんなもの決まっている。
「猟兵たるもの、どんな世界にも平和を齎すと誓ったのです」
 ならば、進むべき未来が、掴むべき未来がどんなものかも、今更と問いかけるまでもない。
 トレーラーを囲む海の外側から、じわり、じわりと道を拓かんと。きっと、その内にて抗っているヒトビトも、猟兵の仲間達も、その海の外へ出んと道を拓こうとしているに違いない。ならば、この道はきっとそれに繋がるとして。
 ――照準器越しに見られている気配。
 目前の敵を蹴り飛ばし、その勢いで後方に跳ぶ。
 翻る身体。その目前を弾丸が風切り音を立てて過ぎ去っていった。
「人は……人は文化を愉しむ心と娯楽を失っては生きていけない」
 衣食住あれば、確かにヒトは生きていけるだろう。だが、それはきっとただ生きているだけ。
 その心に娯楽や生きがいといった栄養が与えられて、始めてヒトはヒト足りえる。
 それはヒーローとしてヒトの身を守るだけでなく、『radu』という歌い手としてヒトの心に寄り添わんとする千秋だからこその想い。
 着地と同時、地を削る勢いで再びの前進。
 銃弾の雨に濡れぬよう、前傾の身で走る姿はまるで地に触れそうになるほど。
「この荒廃した世界なら、それはきっとなおのこと」
 銃弾を掻い潜り、踏破した勢いのままに拳が唸る。5mの巨躯が浮き、その周囲を巻き込んで吹き飛んでいく。
 敵機を砕いた感触が残る鋼の拳。
「僕だって腕は鋼鉄ですけど、この心には血肉が通っているのです!」
 だからこそ、運搬トレーラーが運ぶ心の栄養を守り抜こう。その心の誓いのままに。
 感触残る拳を再びと握りしめ、鋼の身が海の中で踊る。
 ――じわり、じわり。
 距離取られれば、数に勝る敵機に有利であったであろう。
 だが、今はその懐深くへと千秋が斬り込んでいるが故に、小回りの差で優勢の天秤は千秋にこそ傾いている。
 そして、敵の懐にあればこそ、その身は敵機の影に隠れ、狙撃と言う名の横槍入るを未然と防いでいた。
 それらを導き出したのは第六感の無意識か、はたまた、見切っての事かは分からない。いや、もしかすれば、常に前線に立とうする意思が、ヒトに立ち向かう者としての背中を見せんとする心意気が、その結果を引き寄せていたのかもしれない。
「負けられない戦いがあるんです!」
 唸りをあげる正義の拳戟。
 空を切り裂く正義の蹴撃。
 ――じわり、じわり。
 また外円が削られて、道が確かに先へ伸びていく。その救いの手がトレーラーへと届くまで、あともう少し。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ロキ/f25190と

きゃばりあ というのを借りてみた
うむ!ちょっと狭いが格好良い!
お、ロキからの通信だ
えーと……ん?どこを押せば良いんだ、これ……?
まァ何でも良いか
こういうのは第六感に任せる方が良い結果が出るというものよ!(適当なボタンを押す)
おお、動いた
確かにこれは楽しいな、ロキ!

全く、娯楽なしで生きていくなど屍と同じよ
生命には楽しみというものが必要だ
ま、オブリビオンには関係ない話か
面倒な増援も纏めて叩き潰してやろう
天罰招来、【奸計の霜王】
そらそら避けてみろ。その図体じゃあ難しいであろうがな
ロキの鳥は注意を引くであろうし
悟られぬうちに凍らせてやる

おうとも!世界の愛と希望を、証明してやろう!


ロキ・バロックヒート
ニルズくん(f01811) と

キャバリアを借りてわくわく乗り込む
こちらロキ、ニルズくんおーとーせよ
なーんて
こういうのアニメとかで見たことあるよ
操作方法?適当になんとかなるってたぶん
えーとこれがビームとか?(ぽち)
わぁ動いたなんか光った
ねーニルズくんもなんか押してみてよ
面白いよぉ

真打登場っぽく参戦
娯楽が狙いなんて酷いよね
娯楽がないとひとは死なないけど死んじゃうよ。ねぇ?
それとも娯楽を知らないの?可哀想に
増援を呼ばれても【鳥葬】してあげる
敵に合わせて鳥もおっきくして…うーん
もっと鳥ゴツくならないかなぁ
鳥で遊んでたらどんどん凍ってく
さっすがニルズくん

よぉし残りも世界の愛と希望のために殲滅しちゃおうよ



 ぐおんぐおんと起動音。
 荒野に佇むキャバリアのパイロット座席は、外の空間と隔てられた小さな密室。
「うむ! ちょっと狭いな!」
 キャバリアの体高は約5m。であるならば、その操縦座席はさて、どの程度か。
 少なくとも、2mに届こうかという身長を持つニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)からすれば、少し窮屈に感じるのも致し方ないだろう。そして、小さな密室を占める大きな存在感が故に、余計にキャバリアの駆動音が大きく響いて聞こえるのも。
「もしもーし! こちらロキ、ニルズくんおーとーせよー!」
 駆動音を押し退け、代わりにと響いた声は笑みを含んだと分かる声。ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)の特徴的な。
 きっとと言うまでもなく、ニルズの搭乗するキャバリアの隣――そこにあるもう一機のキャバリアから届いた声であろうことは明白。
「おう、聞こえている……が、どこを押せば良いんだ、これ……?」
「操作方法? 適当に押したらなんとかなるって、たぶん」
「第六感を信じろというやつであるな!」
 己の勘に従って、どれにしようかそれにしようか、パネルをタッチ。
「やっほー」
「おぉ、繋がったか。私の第六感は流石だな」
 偶然か、はたまた必然か。
 空気の揺れるような音と共に、モニターへと開く小窓。そこには褐色肌の青年――ロキがひらりひらりと手を振り、遊ばせて。
「ふふー、こういうのアニメとかで見たことあるけど、実際に体験することになるなんてね。面白いよぉ」
「自分で動かせるとなると、猶更にな。ふふふ、中々にこれで格好良くもある!」
 まるで気分は物語のロボット乗り。
 この世界のヒトからすれば当たり前のことも、他の世界の出身からすればそうではないからこそ。
 そして、それは逆もまた然り。
「娯楽が狙いなんて酷いよね」
「全く、娯楽なしで生きていくなど屍と同じよ」
 二人にとってはキャバリア一つを動かすも楽しきではあるが、この世界の住人にとってはそうではない。それは生きるための手段であり、遊びとは縁遠いもの。
 だからこそ、今、狙われていると聞く運搬トレーラーの積み荷がどれほど大切なモノとなるであろうかは、言うまでもない。

 ――遠く、戦いの音が聞こえてくる。

「それじゃ、真打登場といこうか」
「増援の類が来る可能性もあると聞く。なら、それも含めて纏めて叩き潰してやろう」
 アイドリング状態であったキャバリアが二人の意思に従って、アクティブへと移行する。
 そして、吐き出す焔が轟音を立て、二機の身体を押し出すのだ。
 ヒトの夢を圧し潰さんとする戦場へと向けて。

 押し寄せる黒は打ち砕けども、撃ち砕けども、諦めることは知らずとその内に囲んだ猟兵と護衛機達へと襲い掛かる。
 だが、逆を言えば、それは背後への意識が全くされていないということ。
「ビーム、ビーム、ビーム!」
「ははは! 存外、動かせるものではないか!」
 敵量産機の壁へと撃ち込まれる銃弾の楔。
 着弾と共に敵の足を吹き飛ばし、腕を吹き飛ばし、身体を吹き飛ばし、敵機の群れを穿っていく。
「狙いをつけるまでもないって、楽でいいね!」
「その分、数が多いと言うことなのであろうがな」
 引き金を絞り続けるロキの声は愉悦の彩。それもまた楽しむという一つの形か、とニルズヘッグは納得と共に。
「生命には楽しみというものが必要だ」
「娯楽がないとひとは死なないけど死んじゃうからねぇ?」
「ま、オブリビオンには関係ない話であろうが」
「娯楽を知らないってのなら、可哀想な話……って、ああ、なるほど」
 乱射も残弾があればこそ。
 モニターの示す残弾の数が零を示し、携帯していたカートリッジを入れ替える間、モニターに映しだされるは――。
「そもそも、楽しむための中身がなかったのか」
「増援にしても、その操縦者をどこから調達しているかとも思えば、そういう絡繰りであったか」
 砕かれた装甲の合間、操縦席に本来ある筈のヒトの姿はどこにもなし。晒されているのはただ伽藍洞の中身だけ。
 事前の情報では三十と聞いていた敵機の群れが、それを優に越える数で現れている絡繰りは、つまるところ、マシンだけで動いていたからに他ならない。それであれば、機体さえ用意できれば、幾らでも増援として送り出すことが出来よう。
 ――無人の量産機達がようようと態勢を整え、二人へと牙を剥かんと。
 放たれるはその肩に搭載したミサイルキャリアの牙。
 一斉に爆発すれば、絨毯爆撃もかくやの紅蓮があちらこちらと咲く事であろう。
 それは、如何な二人であってもただでは済むまい事。
 故に。
「無人なら遠慮は必要なさそうだね」
「人が乗っていたとして、遠慮はしたのか?」
「あはは、まさか」
「であろうな」
 その終わりを受け入れるなど、論外。

「――ねぇ、遊んであげるね?」

 ロキのキャバリアが脚元より伸びる影。
 蠢き、羽ばたきの音を戦場に響かせれば、地の底より飛び立つ歪の鳥。
 放たれた牙を迎撃するように、その命を啄まんとするかのように、群がっていく。
「うーん、もっと鳥ゴツくならないかなぁ」
 ぶつかり、弾け、影鳥と爆炎とが喰らい合い、呑み込み合う。
 ぎゃあぎゃあ、ドカンドカン。
 まるでパーティのような騒々しさ。それに気を良くしつつも、ロキはまだまだ遊び足らぬと鳥を喚び続ける。

「賑やかなことであるな。だが、そろそろ冷や水を馳走してやろう」

 熱狂と熱風とが混じり合う戦場の最中、吹き抜けるは呪氷の冷たさ。
 それはロキの鳥に注意惹かれる間、ニルズヘッグの生み出した凍てつく刃。
 パキリパキリと周囲を凍らせ、それは物音静かと敵機の足元に忍び寄っていたのだ。
「では、貴様らの舞台はここまでだ」
 そら、凍りたくなければ避けてみよ。避けられるものであればな、と。
 大地に潜んだ霜は広く深くと浸透し、それに触れたモノを逃がす筈などないのだけれど。
 脚が凍り、関節が凍り、身が凍り、全身が凍る。
 樹氷の森ならぬ、凍てついた機体の乱立する人工の。
 戦場の騒がしさはどこへやら。少なくとも、彼ら二人の傍ではまるで何事もなかったかのように静か。
「さっすが、ニルズくん」
「当然であろう」
「でも、もうちょっと遊んでいたかったかも」
「安心しろ。まだまだおかわりはあるようだ」
 氷像の向こうに感知するは、似た様な量産機の群れ。
 中身の要らぬマシンであればこそ、その代替が数多と控えているであろうことは必然。いや、もしかすれば、それ自体がまだ姿見せぬオブリビオンマシンの能力であるのだろうか。
 だが、どうにしたとしても、まだまだ戦いの時を終わりと片付けるには早いことは確か。
「よぉし、残りも世界の愛と希望のために殲滅しちゃおうよ」
「おうとも!世界の愛と希望を、証明してやろう!」
 戦いの時は、まだ今暫し。
 駆動の音が二つ、雪崩来る新たな波へと抗うかのように荒野へと響き渡っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
※護衛

プラント…コアマシンを彷彿とさせます
技術体系含め親近感ある世界、星すら失った故郷の二の轍を踏んで欲しくはありません

その為にも騎士として戦うのみ
ロシナンテⅣ…キャバリアすら乗りこなしてみせましょう

センサーでの●情報収集で戦況や敵味方位置を確認し適宜味方やトレーラーを●かばい援護

サブアームの二丁のRSライフル
頭部、肩部格納銃器での●乱れ撃ちスナイパーでナパーム●武器落とし

UCで敵を牽きつけ突撃
機体を直接●ハッキング
●操縦の追従性高めた●推力移動で敵の懐に潜り込み剣で装甲継ぎ目を●怪力で両断
味方の追撃援護

高速飛翔体…!

指揮官機接近を●見切り●盾受け

鋼の騎士として、味方に手出しはさせません



 プラントの技術は遺失技術だと聞く。であれば、それは。
「……コアマシンを彷彿とさせますね」
 スペースシップワールドのそれとも通ずるところがある。
 いや、それだけではない。
 キャバリアと言い、武器技術と言い、この世界の技術体系はトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にとって馴染む感覚を与えていた。
 だからこそ。
「星すら失った故郷の二の轍を踏んで欲しくはありません」
 銀河帝国との戦いで全ての居住可能惑星を失った生まれの世界の過去と、この世界を重ねてしまうのは致し方のない事だろう。
 全てが同じではないけれど、たた歩む道筋が違うだけで、同じ結末に辿り着かない保証は出来ないのだから。

 ――焼夷弾の熱から身を退ける。

 地を蹴った姿は、まさしくトリテレイアそのもの。
 だが、彼の姿を見慣れた者からすれば、それは一つの大きな違いを認めることだろう。
「ロシナンテⅣ……駆動は順調のようですね」
 それこそは、その体躯である。
 トリテレイアの身体は元より3m弱もあったけれど、今の彼はそれより一回りと大きい。
 そう。彼は今、キャバリアをその身に預け、それを繰ることで戦場を駆けているのだ。

 ――敵の位置を見、護衛対象の位置を見、巧みにと己が立ち位置をその間へ。

 まるで手足、まさしく自身の如くとトレイテレイアの意思に追従するそれ。
 副腕に掴む二挺のライフルが火を噴き、頭部と肩の銃器が短い明滅と破裂音を繰り返す。
 その度、飛来する敵量産機より飛来する焼夷弾は、宙にて解れ、キャバリアの装甲を抜くには至らぬ火の粉となって、地に降り注ぐのみ。
 勿論、トリテレイアとその乗機が如何にと奮戦しようとも、四方八方より来る波を防ぐには足りない。
 それを補うこそが仲間の猟兵達の存在であり。
「敵を近づけさせるな!」
「おい、右からも来てるぞ! フォロー!」
「火力をばらけさせるな! 俺達はあいつらみたいな英雄じゃねえ! 一つ一つ、確実に落とすんだよ!」
 他の猟兵達からの薦めもあり、トレーラーの護衛に専念する本来の護衛機達の姿。
 猟兵達が大半を受け持っているというのもあるだろうが、その数は九―― 一つは他の猟兵と共に動いているが故――にして、猟兵の防衛網を抜けてくる僅かの敵を着実に討ち取っている。
 その姿は泥臭く、英雄には程遠い。だけれど、まさしくと今を生き、死に抗う者達の姿であった。
「ならば、一層の奮起を見せねばなりませんね」
 掌から零れた数多を覚えている。一つ足りとて忘れてなどいない。そこに、彼らの存在を加えることなど、トリテレイアには絶対に出来ない。
 ――パスを開く。
 トリテレイア自身とその機体とを繋ぐ経路。
 元より繋がっているトリテレイアとロシナンテⅣではあるけれど、その繋がりをより深く、より鋭敏に動けるようにと。
 戦場の熱、空気の流れ、ロシナンテⅣの外殻が拾い上げる情報が、それらすらもがまるでトリテレイア自身が感じるの事のように。

「――参ります!」

 風が後ろへと吹き抜けたのは、トリテレイアが前に進んだから。
 前進の意思にロシナンテⅣが応え、その身を運ぶ。波と打ち寄せ、壁と聳える敵機の群れの直前へと。
「ぬん!」
 推進の力は元の己の比ではなくとも、深く繋げた今であれば、対応するに困難などなし。
 熱風を越え、榴弾の雨を抜け、踏み込んだ懐の内。その勢いのままに振り抜くは、専用の剣。副腕ではなく、その本来の腕でもってして。
 振り抜く腕に掛かる抵抗は、きっと獲物にその刃が喰らい付いたから。
 その抵抗ごとと振り抜き切れば、後に散るは鉄屑の。
 敵量産機の中身が晒されれば、そこには操縦者の姿もなく、それが無人であると知れるモノ。
「なるほど。物量の正体は、無人機であればこそでしたか」
 ならば、敢えてと装甲の継ぎ目を狙い、人道に配慮する必要性も皆無。
 刃の冴えは、機体の動きは一層の冴をもって。

 ――そして、それは遂にと繋がる。

 敵機の向こうにて轟く雷鳴、吹き散る氷雪、舞い跳ぶ影鳥。
 それこそは敵量産機の囲いの外より、この戦いに参じていた猟兵達の。
 それが見えたと言う事は、つまり。
「終わりが近い証拠ですね。そして――」
 ゴールが見えた瞬間こそが、安心を無意識にでも抱いた瞬間こそが、最も隙の出来る瞬間でもある。
 ――風の嘶きが、トリテレイアの聴覚センサーに届いていた。
 嗚呼、ならば、この時を置いて、『ソレ』が来たる時は他にあるまい。かつての仲間の残骸を蹴散らして、まだ健在たる仲間を盾として、単眼の機体が攻め来たるのは。
 それは奇襲として正しく機能していた。終わりが見えた瞬間、一瞬の気の緩みを的確と捉え、そこを突き殺す一撃として、確かに。
 ――ただ、そこに猟兵が、トリテレイアが居なければ、であったが。

「鋼の騎士として申し上げましょう。味方に手出しはさせません」

 その進路に割り込むは、守護騎士の吶喊。
 敵指揮官機のソレを最も警戒していた彼であればこそ、対応を可能としたのである。
 大質量同士がぶつかり合い、盾とバリアとが激しく火花を散らす。そして、互いに弾け飛ぶは許さぬ代わり、空気が激しくと揺れ動く。
『狙撃もそうだが、これも読まれていたとは……やる者があるようだな』
「そちらにはヒトが乗っているのですね」
『……ふん。防がれたとあっては、長居は無用か』
 奇襲はその一手で相手を混乱に陥れてこそ意味がある。だが、それを防がれたとあっては、単騎突出の結果として袋叩きと合うのは目に見えていること。
 だからだろう、転進鮮やかと単眼は踵を返し、残る黒の量産機を盾として退いていく。
「追うのは……こちらを片付けねばですか」
 抑え込むことは不可能ではなかった。しかし、それをするということは、今迄トリテレイアが担当していた区域の敵機を見逃すことに他ならない。それをしてしまえば、後ろに控える護衛機達への負担が増えることは明らかで、それ故、彼はそれを選択しきれなかったのだ。
 だが、トリテレイアの、他の猟兵達の活躍があればこそ、既に囲いを崩しきるにそう時間は必要ないことだろう。
 これより始まるは防衛戦ではない。追撃戦こそが始まるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『モノアイ・ゴースト』

POW   :    バリアチャージ
【バリアを纏った】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【支援機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    パルス・オーバーブースト
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【オブリビオンマシン】から【光学兵器による一斉攻撃】を放つ。
WIZ   :    ゴーストスコードロン
自身が【敵意】を感じると、レベル×1体の【支援キャバリア】が召喚される。支援キャバリアは敵意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 道となるは残骸の列。それは猟兵達が拓いた血路。囲いを食い破った証。
 未だ残る敵量産機も散発的に襲い来るが、それは先程に比べれば僅か。護衛機だけでも十分に対応できる数でしかない。
 だが、だからこそ、その程度の抵抗しかないことが、沈黙が、不穏を漂わせる。
『当然ではあるが、来たか』
 そして、単眼の指揮官機はその向こうに悠然と佇んでいた。傍に十機の量産機――先程のモノと武装こそ同じであるが、その佇まいを異とする――を侍らせて。
 あれこそがこの襲撃の首謀者にして、首魁たるオブリビオンマシン。名をモノアイ・ゴースト。かの量産機、そして、今傍に侍させる支援機とは異なり、確かに中へヒトの気配がする機体。
 レーダードームを肩に乗せた片腕が、指し示すように持ち上がる。その手の内には、厳つい砲口。恐らくは、輝きの矢を生み出したその正体。
『――言葉は要るまい。往け』
 自身の身には怨念を、その砲口には輝きを、そして、指し示す先には支援機を。
 その敵意を明確に示し、猟兵とその彼らが守るモノを破壊せんと、今、脅威が解き放たれる。
ハロルド・リード
なァンか騒がしいと思ったら、こんな所で遊んでいやがったのかよ。
遅れちまった。己れの相手もしてくれよなァ。

オブリビオンマシン、己れの機体に搭乗して戦う。
【アドバンテージ・アンサー】
先に戦っていた奴等の残骸を利用する。
足場?武器?
使える物は使うだけよ。

中に乗っている奴をどうにかするのは戦場にいる誰かに任せる。
いっちょ前に敵意は感じるのか。
邪魔な支援キャバリアは順番に撃つ。

邪魔、邪魔、邪魔!
隙を作ってなぎ倒してやる。


藤守・響
さぁさぁ、ラストステージの始まりだ!勿論、途中退場はなしだぜ!!

戦場(ステージ)を盛り上げるべく声高らかに歌い出す。悪意は一切なく、どこまでも陽気に誰もが癒される様に歌う。

相手からの攻撃はまるで踴っているかのような動きで躱し続ける。


クラウン・アンダーウッド
何がキミをそこまで駆り立てるのかな?大変興味深いね。ボクと存分に語り(殴り)合おうじゃないか♪

全身にUCの炎を纏い、単身敵に突っ込む。肉体の限界を越える程の怪力を発揮しつつ攻撃はオーラで受け流して近接戦闘を行い、炎に焼かれるクラウンや相手の心身を癒していく。



 開幕を告げるは、銃火の声。
 弾け、穿ち、傷痕を大地のそこかしこにと刻んで。
 そして、その後に続けと軍靴の足音が大地を叩き、その震動が荒野に木霊する。
「さぁさぁ、ラストステージの始まりだ! 勿論、途中退場はないぜ!!」
 ならば、それに抗うべくと奏でるこそが猟兵であろう。
 その声高らかと宣言し、謳いあげるは藤守・響(騒がしい木霊・f28361)。その名に抱く音の如く、己が声を戦場に響かせて。
『その歌こそが邪魔なのだ。人に安息は必要などない。終わらぬ戦いこそが、人を更なる高みへと導くのだから』
「それがキミを戦いに駆り立てる理由なのかな? なら、ボクとも存分に語り合おうじゃないか♪」
 単眼の指揮官機は、その命令により動き出した支援機の後ろ。
 それを迎え撃つように動き出す猟兵達の中、クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)もまた、同じくと。
 その身を包むは、単眼が纏う怨念の障壁とは相反するような、燃ゆる地獄/慈愛。
『必要なのは矛を交えることのみ。お前達と語り合うことは何一つとてない』
「つれないことを言わないでよ♪」
「そうだぜ! 歌の良さってもんを響かせてやるからな!」
『出来るものならな』
 向かい来るは敵意の証――支援機とその突撃に合わせて新たに召喚されたと思しき量産機の姿。
 支援機の一つを核として来たる群れは、その言葉が示すかのように、その先にある単眼へと辿り着くを困難と思わせるもの。
 だがしかし、だ。
「響の歌は、そんな足音じゃ消せないぜ!」
「いいBGMだね、心が躍るよ♪」
 それに呑み込まれるようであれば、彼らはここにありはしない。
 風が火を煽り強め、火の勢いが更なる風を生むように、響の歌声がクラウンの魂を鼓舞し、その燃ゆる慈愛が歌声の彩りをより鮮やかと。
 肉体の枷を外し、敵意を受け止めるはクラウンの身のこなし。時にその四肢で、時にその懐に潜ませた刃で、量産機の進撃を捌いては打ち砕く。
 だが、肉体の限界を超えるということは、その四肢に負担を抱えると言う事に他ならない。しかし、彼が倒れることは無い。
 何故か。
 その身に宿した地獄の性質もありはするが、その背中から響く歌声がクラウンの身を癒していればこそ。
 押しては寄せる量産機の波。
 銃撃が、鋼の突進が、二人を前にして飛沫と消えていく。
 とは言え――。
「……流石に、さっきまでと同じとはいかないよね」
「はは、それはまだまだ歌えるってことだよな!」
 如何に敵を押し留めようとも、その先へと進む一歩は重い。
 量産機の中に混じった支援機の存在が、先程までであれば烏合の衆であった量産機に統率というものを与えていたのだ。

 ――ソレが現れるまでは。

 荒野を、散らばる鉄屑を足場と踏み越えて、太陽を背にと群れの只中へ降り立ったは一機のキャバリア。
 その気配はまるで単眼の指揮官機――オブリビオンマシンのそれと似た、否、同一のそれ。荒々しく、禍々しきがそこにはあった。
 まさかの増援かと猟兵達の間に緊張感も奔るが、誰よりも速く、ソレは動いたのだ。
「邪魔、邪魔、邪魔ァ!」
 降り立った勢いもそのままに、その荒々しく、禍々しき気配のまま、支援機をその手に握った鉄塊で殴りつける。
 砕け散った装甲は支援機のものであり、ソレの握った鉄塊――荒野に散らばる量産機の残骸から拝借した腕。
 そして、破片が散って、散って、散って、鉄塊が鉄屑となる頃には、支援機もまた同じくと。
「軟っちぃなァ、おい」
 投げ捨てるは鉄屑。響くは青年――ハロルド・リード(scrap・f30129)の声。
 その機体から滲み出る危うさに反し、そこには確かな理性の灯火。
「同じ猟兵ってことで良いのかな?」
 中核たる支援機が機能を停止したことに統率乱された量産機達。その隙を突き、軽やかとなった一歩を進めるはクラウン。新たなる参戦者に、そう問うはある種の必然か。
「なァンか騒がしいと思って来てみれば、ってヤツだ」
 その答えは是。少なくとも、敵ではないという意味での。
「しっかし、こんな所で遊んでいやがったのかよ」
 ハロルドがあるは、跳び込んだ先である敵機の真っ只中。支援機による統率は失えども、それでも、ハロルドが敵であると量産機達にも理解は出来る。
 ガシャリと一斉にスコープ越しの敵意が向いた。
「――遅れちまったが……己れの相手もしてくれよなァ」
 一丁前の敵意を受けて、危険の中でマシン乗りとしてのハロルドが嗤う。
 ――引き金が、引かれた。
 遠く響く響の歌を掻き消さんとする程の銃声が轟いて、棚引く硝煙がまるで煙幕のようにハロルドとその機体を覆った。
 回避は不可能。硝煙が晴れれば、きっとそこには――。

「それだけかよ」

 ――敵機達の望む答えなど用意されてはいない。
 硝煙を貫いて飛び出すは、油脂焼夷弾。着弾した端から燃え広がり、それに巻かれた量産機に誘爆を引き起こす。
 響の歌声が風となりて硝煙を吹き散らせば、そこには鉄屑――となった支援機の装甲を盾と利用し、健在を保つハロルドが姿。そして、その手に握るは焼夷弾を吐き出したであろうライフル。それもまた支援機から拝借としたもの。
 武器が足らずとも、己が身だけでは耐えられずとも、その場にあるを利用するにおいてハロルドの右に出る者はこの場にはいない。思考の瞬発力こそが、彼の武器であればこそ。
「まるで奇術の類のようだね♪」
「なあ、一緒にステージを盛り上げてこうぜ!」
「……使える物は使うだけだよ」
 それはきっと、周囲の仲間もすら含んで。
 気付けば、ハロルドの隣にはクラウンがその足を進めて。
 気付けば、響の声は随分と近くで響いて。
「それじゃあ、まずは邪魔なコイツらからなぎ倒してやるか」
 即席の共同戦線。だけれど、それが量産機達のような烏合の衆であろう筈がないのは明白。
 そして、敵機の海に拓かれゆくは単眼の指揮官機への道。
 その突撃だけではまだそこへとは到達せずとも、それが確かな楔となって撃ち込まれたことは間違いない。
 進撃の狼煙は彼らの手によってあげられ、勝利への橋頭保はここに築かれたのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
速やかに終えるか

破界で掃討
対象は召喚物含む戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を多重に連ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬刻で星の数の魔弾を生み周囲全方向へ無差別に射出
空間を魔弾の軌跡で埋め尽くし全目標を残らず撃ち抜く

数も機動も超える飽和攻撃を叩き付け押し潰せば問題ない
攻撃も全て飲み込んでしまえば味方の脅威にならん
乗員は戻れる状態なら無事、そうでなくば対象内
火力と物量で全て圧殺する

戦況は『天光』で常時把握
自身への攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎



 コートの裾が戦場の風にはたりと遊ぶ。
 ――ゆるり。
 急ぐでもなく、止まるでもなく、緩やかな歩みにて他の猟兵達が築き、今も広げんとする橋頭保に足を踏み入れたは、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)。
「速やかに終えるか」
 言葉はその歩みと相反するかのように、端的。
 そして、その言葉へと反応示すかのように、アルトリウスの周囲で仄かと揺蕩う原理の輝き。
 くるりくるりと循環せよ。
 ぐるりぐるりと加速せよ。
 万象を照らし、巡る輝きは廻る度、加速する度にと宿す力を増やし、蓄え、解き放たれる時を待つ。

 ――火薬の破裂が、耳を劈く。

 それはスコープ越しの射撃であり、燃ゆる紅蓮が弾ける音。
 猟兵達の築いた橋頭保を再び敵意の波で埋めんとする者達――単眼の指揮官機に命じられた支援機と量産機達の牙。
 穿たれた大地は抉れ、紅蓮に覆われた大地は生者を拒む地獄と変わる。
「だが、その理は俺には届かない」
 ここに在るはヒトの形すれども、原理の端末たるモノ。
 世界を灼く地獄であろうと、生者を拒む如何なる場所であろうと、それが原理に及ばざるものであれば、アルトリウスに影響及ぼすには至らない。
 淡き輝きの中で、蒼の瞳が淡々と地獄を見つめる。酷く、つまらないモノを見るかのように。
 コートのポケットに入れた両の手。その一つをするりと掲げ、翳す。
「――呑め」
 その視界を淡き輝き宿す手でするりと撫でれば、まるで逆再生。いや、最初から何もなかったかのように。
 抉れた大地はその前の姿を取り戻し、紅蓮の熱風は荒野吹きわたるただの風へと。
 原理の端末として、アルトリウスはソレを用い、オブリビオンの齎した影響を世界から排除したのだ。
 理外の力ではある。だが、アルトリウスという端末を介さねばならない以上、その出力には限界というものがある。それ故、影響の大元たる敵機の姿は未だ健在。
 ならば、根競べ。幾度と掻き消されようとも、幾度と染め上げるのみと駆動の音が響く。

「いいや、お前達はもう行き止まりだ」

 何のために力を廻し、増やし、蓄え続けていたのか。
 それは、行使できる力の限界を増やす為。
 視界を撫でた手をそのまま天へと掲げれば、そこには陽の中にてなおと輝く、星の輝き。
 ――正確を期すのであれば、空間を埋め尽くすほどの蒼光の魔弾。
 目標は言うまでもない。
 視界に捉えた支援機の、量産機の全て。
 数も、機動も、火力も、全てそれ以上の飽和攻撃で圧し潰せばいい。
 それが、アルトリウスの持論。そして――。
「――絶えるがいい」
 それを叶えるだけの力が、彼には確かにあるのだ。
 星の瞬きが落ちてきて、その視界の全てを呑み込み、消える。
 後に残るは、幸運にもその視界の外にあった敵機の群れが一部。それと、消え去った大多数とその一部の後ろにて控えていた単眼の機体が姿。
 ――ゆるり。
 変わらぬ歩みがまた一歩、彼我の距離を確かに詰めた。
 もう、それに手は届く。

成功 🔵​🔵​🔴​

草野・千秋
あと一息、というところに敵ボスも来ましたね
任務前に知ったんです、オブリビオンマシンのパイロットさんは
生かしておけば正気に戻ってくれるって
このチャンス逃しはしない

敵に対して勇気で立ち向かう
散発的に来る敵量産機は戦闘知識で警戒
支援機は発見し次第スナイパー、一斉発射で撃ち落とそうと
敵バリアは炎の属性攻撃を込めた弾で打ち破る

UC【Fly me to the Moon】で飛び回り空中戦
部位破壊、怪力で敵オブリビオンマシンの
攻撃する手、厳つい砲口を重点的に狙う
パイロットのコクピットがありそうな部位には気絶攻撃
敵攻撃は戦闘知識、視力、第六感で見切り
味方をかばう、激痛耐性で耐え抜く



 量産機の波を踏み越え、橋頭保を踏み越え、視界に納めたるは単眼の。
「ようやく、その姿をはっきりと拝見出来るところまで来ましたね」
 その装甲にゆらりゆらりと立ち昇らせるは、まるで怨念の如き障壁。その禍々しきは見る者を威圧し、萎縮させるに十分。
 されど。
「任務前に知ったんです。オブリビオンマシンのパイロットさんは正気に戻すことが出来るって」
『必要ない。私は正気であり、この行為は正当なるモノである』
「そんな危険なモノに乗っておいて、そうでないと言い張ること自体がもう語るに落ちているですよ」
 それに怖気づくでは、ヒーローなどとは名乗れまい。弱きを助け、悪を挫くこそが草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)であるのだから。
 脅威を前にして握り込んだ鋼の拳。
 その強さこそが勇気であり、千秋という存在を何よりも物語っていた。
 だが、単眼のとてただそれを受け入れるなど出来よう筈もなく、その返答は一発の銃声にて返されるのみ。
 正面から飛来するは、拒絶の弾丸。
 ――火花が、散った。
 飛び散る破片は弾丸のそれ。
 千秋の身を穿つ筈の拒絶は、迎えうった千秋の拳によって弾道を逸らされたのだ。
 その拳に響くはジンとした衝撃。
 痛みがないと言えば嘘になる。だけれど、その痛みすらも今は糧と変え。
「それが答えだとしても、このチャンスは逃がしはしない!」
 月の彼方へ。拒絶の海を越え、その魂を取り戻すために。
 再びと拒絶の銃声が、今度は一度ではなく、その単眼のと合わせて周囲からも。
 四方八方より響いたそれは、まるで世界そのものが千秋へと敵するかのよう。
 だけれど、勇気を踏み出す一歩に宿し、意思の力を紅蓮の炎と吹き上げて、その身を運ぶ宙の世界。自由なる世界へ。
 重力の軛を振り払い、追いかけてくる銃弾の牙を影も捉えさせずと置いていく。
「お前達には、これだ!」
 横槍入れる量産機達に差し向けるは紅蓮の――ならぬ、その秩序を崩壊させんとする銃の嘶き。
 吐き出されたそれは宙に筋を描き、吸い込まれるようにと量産機達の胸を穿っていく。
 地を這うしかない者達に、翼得た虎へと届く牙は非ず。
 故に。
『そうだ。闘争こそがヒトを押し上げるのだ』
「いいえ、戦いばかりがそうではない筈!」
 同じステージに立たんと、怨念の障壁を燻らせて、同じくと宙踊るは単眼の。
 地より銃弾を撃つでは千秋を捉えられぬと判断してのであったのだ。

 ――拳、打、蹴、斬。

 紅蓮と怨念。
 二つの属性が拳と唸り、脚の軌跡が空を裂く。
 衝撃が弾けて、弾けて、互いの隙を突かんと描く機動が宙のキャンパスに螺旋と描かれる。
 だが。
「ぐ、うぅ……!」
 次第に押され始めるは千秋の方。
 拳は空を切り、蹴りは虚空を断つばかり。その隙を突くかのように、単眼のそれが逆襲とばかりに千秋の身を打つ。
 それもその筈であろう。
『狙いが偏り過ぎているな。そんな甘さで、よくここまで来たものだ』
 千秋が狙うは、単眼の腕や武装ばかり。
 まるで無力化を狙っているかのそれは、気付きさえすれば如何様にでも対処出来、逆に利用するも容易きことであるが故に。
 それでもと繰り出す拳は、紅蓮の尾を引いて空を燃やし、逆撃の拳に身を震わせる。
『来るのなら、本気で来るがいい。それでは――』
 それでは、私の求めるところには至らない。そう、言葉にしようとした刹那、単眼の機体――その操縦者の背中を駆け抜けたは戦慄。
 単眼の拳は確かに千秋の身を捉え、その臓腑を震わせるが如くと打撃を与えた筈であるのに。
「僕は、いつだって、本気だ!」
 単眼のそれを捉える千秋の瞳には、些かの怯みもない。
 自身の身を打った拳を握り返し、紅蓮は更にと燃え上がる
 戦慄に従うまま、気圧されたかのようにその腕を振り払わんと単眼のが動く。
 ――だが、狙いはその腕ではない。

「最初から言っていた筈だ。正気に戻すためのチャンスを逃がしはしない、と!」

 狙いは始めから、それ。
 四肢を狙い続けたのも、武器を狙い続けたのも、そうと理解されながらも同じ行動を続けたのも、この瞬間を生み出すためにこそ。
 紅蓮が拳に咲き誇り、目掛けて突き出されるは――単眼の胸元、コックピットの在るであろう。
 狙われていないと刷り込まれていたが故に、腕を引くのに意識を割かれていたが故に、単眼はその一撃を無防備に受け入れる他なく。
『――ぐっ、ああぁ!?』 
 機体を内部からかき混ぜるような衝撃が奔った。
 それはまるで脳震盪を引き起こさせるかのような揺れであり、パイロットの命ではなく意識を奪うための。
 強き衝撃に揺さぶられて、単眼の機体が地に堕ちていく。
 肉を切らせて、骨を断つ。
 まさしく、その一撃が見事なまでに決まった瞬間であった。
 だが、地に墜ちゆく機体はまだその機能を残し、パイロットもダメージを負ったとは言っても倒れ伏す程ではない事だろう。
 他の猟兵達と更なる追撃を行使するべく、千秋は傷重ねた身体ながらも、墜ち行く機体を追いかけるのだ。
 彼の望んだ未来をその手へと掴み取るために。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
人々の明日の安寧のため、過去の亡霊を打ち砕く!

装甲と【オーラ防御】を頼りに光学兵器を防ぎながら吶喊(ダッシュ)
穿たれたダメージが乗り手にも伝わって来るが、【激痛耐性】で耐える
――まだだ
陸戦型では機動力で劣るが、諦めず追い縋り跳躍で捕らえようとする
――まだだ!
一斉射撃で滅多打ちにされても、地を砕く勢いで踏み込み、【怪力】で殴りつける
――まだだッ!!(因果超越・永劫の勇士)

そもそも機械に疎く、その道のプロとは比較にならない操縦能力
しかし、だからこそ、得意分野では負ける気はない
つまり、気合いと根性
十二の功業​を成し遂げたヘラクレスと私が合わされば、乗り越えられない試練などありはしない!


トリテレイア・ゼロナイン
そう易々と通す訳には参りません
搭乗者も解放していただきます

護衛機やトレーラーを●かばいやすい位置取りで敵を牽制

センサーの●情報収集で位置把握
●瞬間思考力で攻勢●見切り
機体の直接●ハッキング●操縦での細やかな●推力移動の足捌きで躱し●盾受け●武器受けで突進や支援機の攻撃防御
同時並行で全銃器の●乱れ撃ちスナイパー射撃や接近戦で支援機破壊しつつバリア強度計測

機体性能の差が響いてきましたか
ですが、戦艦に帝竜に宇宙の獣…この身一つで相対してきたのです

乗機から飛び出し迫る敵へ●だまし討ち
戦闘開始から内部で充填したUCをコクピット避けバリアごと●なぎ払い

言った筈です
『鋼の騎士』として、手出しはさせないと


祇条・結月
巨大ロボ、とか男の子だったら憧れのシチュエーションだよね
……それが現実じゃなかったらの話
あれは野放しにしとくわけにはいかないモノ
行こう、できることをする

【スナイパー】の視点で、絶えず移動して位置取りしながら敵へ銀の弓で射かけていくよ
その間にも【情報収集】は怠らない
敵機体の火器や攻撃のインターバル、パイロットの癖、そういうのを【見切り】、【情報収集】して……
隙を見て、一気にいくよ

キャバリアに乗ってないんじゃ防御を考えたって仕方ない
なら、一気に。加速して攻撃を躱しながら素早く、オブリビオンマシンの懐へ飛び込む
残骸や敵の量産機、そういうのを足場に跳躍してコックピットに一撃を叩き込みに行くよ



 高くと舞い上がった土煙。
 それは地に墜ちたる衝撃の強さを物語るもの。
 機体の胸部――コックピットを打たれた衝撃に加えてのそれは、単眼の機体が如何に衝撃を吸収しようともしきれぬ。
 故に、土煙の中、コックピットの奥にて操縦者もまた、単眼のと同じく苦悶にその身を捩っていた。
「人々の明日の安寧のため、過去の亡霊を打ち砕く!」
 その耳に飛び込んでくるは、目も醒めるような鈴の声。凛と勇ましく、されど、澄んだその声こそはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)のもの。
 土煙の向こう、大地に己/ヘラクレスの存在を高らかと響かせ、単眼の機体こそを討ち取らんと。
 それは単眼の機体にとって、その操縦者にとって、明らかなる脅威の接近に他ならない。
 だからこそ。
『エネルギー充填。パルス、オーバーブースト!』
 その身はまだ動かせずとも、周囲一帯を薙ぎ払うことは出来る。それをもって、近付く脅威を討たんとするのだ。
 単眼の周囲に揺らぐ怨念が渦を巻き、その手に握った、その腕に搭載された有線射撃装置から、全身から、輝きが溢れ出し、周囲を照らす。
 周囲。そう。周囲を、だ。それはつまり、無差別に全てを薙ぎ払う光に相違ない。
「この程度であれば!」
 まだ耐えられる。オリヴィアの言葉の意味はそれでもあり、そして、もう一つばかりの意味を含む。
 鬩ぎ合う輝きとオリヴィアの放つオーラが、彼女の搭乗機たるヘラクレスの視界を白と染める。だけれど、彼女は決して振り返りはしない。この程度であれば、その必要がないと知っているから。

「そう易々と通す訳には参りません」

 周囲を薙ぐ輝きに立ち塞がるは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
 その後ろにトレーラーを、護衛機をと背負いながら、光の中に呑み込ませまいと。
 常に戦場を把握し続けるセンサーが、それを受け止めることの危険性をがなり立てる。
 だが、退けない。退く訳にはいかない。その胸の奥、電子頭脳に刻んだ矜持がある限り。
 大地に突き立てた大楯は、ロシナンテⅣの身の丈程。だが、それは既に単眼の突撃を一度受け止めている。その代償として、その堅固さは十全には足らぬだろう。
「いざとなれば、この身を持ってしてでも」
 そして、輝きはオリヴィアの視界を染めたのと同じく、トリテレイアの視界をも。
 熱が、圧力が、その大楯越しに圧し掛かり、どろりどろりとその身を削りゆく。警報は相変わらずなり続けている。だけれど、害意は確かにその後ろへと届くことはなく、大楯の前に散って、乱れて、か細き線を宙に描いて消えていった。
 そして、輝きの消えたそこには、傷付きながらも健在を示す二機の姿があったのだ。

「巨大ロボ、とか男の子だったら憧れのシチュエーションだよね」
 輝きを受けてなおと立ち続ける猟兵の二機。晴れた土煙の中より態勢を整えたと思しき単眼の一機。その姿を残骸の影より見つめるは、祇条・結月(キーメイカー・f02067)。
 彼ら彼女らの繰り広げた一瞬の攻防は、物語の内にて語られるものであれば、きっと心躍るものであったことだろう。
 だけれど――。
「……それが現実じゃなかったらの話だけどね」
 これは現実だ。
 あの輝きに何もせずと触れていれば、その身は蒸発していたことだろう。
 輝きが名残りと残した熱は今も周囲の温度を上げ、結月の服の内側でじわりと汗を浮かばせる。
「あれは野放しにしとくわけにはいかないモノだ」
 単眼の機体。オブリビオンマシン。世界を危機へと陥れる者。
 物語であれば、きっと主人公がなんとかしてくれるに違いない。でも、ここにその主人公はいない。
 居るのは結月であり、仲間の猟兵達であり、この世界に生きる者達。
 自らが、彼ら彼女らが、誰に頼るでもなくと抗う以外に、生存への道はないのだ。
「いつもと同じ。できることをする」
 さあ、行こう。
 銀の鍵を携えて、結月の足は物音を立てず、灼けた大地の上へとその歩みを刻む。

 輝きの斉射は消え去り、世界は再びと彩を取り戻す。
「そちらは」
「まだ動くに問題はありません」
 シュウシュウと、熱の名残が機体の装甲表面から立ち昇っていた。
 痛みはある。傷もある。だけれど、オリヴィアも、トリテレイアも、まだ動ける。ならば、動かぬ道理はなし。
 ずしりと踏みしめた二機の一歩は、重たい一歩。
 受け止めた代償はそれぞれにあれども、幸いと言うべきは、単眼のそれは仲間である筈の残る支援機や量産機の多くをも巻き込んでいたこと。
 それ故に、オリヴィアとトリテレイアの歩みを妨げる者はない。――単眼の機体、それ自体を除いては。
 二人の前で、怨念が再びと渦を巻く。輝きの兆候が零れ出る。
「――まだだ!」
「自動照準が死んでいたとしても、私が代わりをなすだけです」
 ヘラクレスがその鋼の体躯を翻し、ロシナンテⅣがまだ機能を残す銃器を動かす。
 距離を詰めよ。その身を捉えよ。
 駆ける脚の力強さに土が抉れ、吼えた銃器の軌跡が空に線を描く。
『――まだ、こちらの方が速いようだ』
 しかし、単眼の機体はするりと脅威より抜け出でる。跳びは出来ても、継続して飛ぶには至らぬ両機を嘲笑うかのように、その身を宙へと逃して。
 手は届かず、弾丸は虚空を奔るのみ。

 ――輝きの第二射が、放たれた。

 此度のそれは斉射ではあれども薙ぎ払うではなく、二機へと照準を合わせたもの。
 収束されたそれは、拡散して放たれたそれの比ではない圧力を持ってオリヴィアとトリテレイアへと圧し掛からんとするのだ。
「まだ、まだァッ!!」
「いいえ、オリヴィア様。ここは私にお任せを」
「トリテレイアさん、何を!?」
 一歩。
 それの到来に備えて身構えるヘラクレスの前へ、ロシナンテⅣが気負いなくと出る。だが、その身にはもう大楯の姿はない。
 何を、とオリヴィアが問うは当然であった。
「――これこそが、まさにいざともなればの時ですから」
 我が身を盾に。
 そして、ロシナンテⅣは全ての代わりにと、輝きをその身にて受け止めるのだ。

「――隙だらけだ」

 先の戦闘で積み上がった残骸の上、見通し良く、見晴らし良く、邪魔の入らぬそこに結月はあった。
 その手の中には銀の弓。
 目一杯に引かれた弦、三日月の如くと曲がったリムは、そこに込められた力を推し量るに余りある。
 その視界の先、射かけるべくと視る先には、輝きを放ち続ける単眼の姿。宙にて姿勢制御を行い続ける姿は、縫い留められたかのようにとピタリ。
 意識は微塵もそれ以外に割かれている様子もなく、ならば、それを隙と言わずして、なんと言うべきか。
 今迄の戦闘で、輝きの先にある二人を相手どる中で、単眼の動きは充分に見させてもらっていた。
 ならば、隙に乗じた上でこの一撃を外すなど、あり得ざること。
「これは逃げるためのモノじゃない」
 量産機との戦いの中での一射は牽制であったが故に。
 だが、これは――。

「速く、迅く、どこまでも翔んでいけ」

 ――必殺の意思を込めた。
 そして、張り詰めた弓はその身を解き放ち、反動を受けた矢はどこまでもと加速して宙を駆ける。単眼の機体、その推進器が一つにそれは吸い込まれるように。

 ぐらりと揺れる単眼の。
 その身より放たれていた輝きは急速に衰え、圧力は減じていく。
 今、この場において動けるは一人のみ。
「ヘラクレス!」
 その一人――オリヴィアが名を呼ぶは己が乗機。
 駆動の音を咆哮と応え、その脚に力を籠めて、その身を重力の軛から解き放つに備える。
 確かに、操縦の腕はこの場の誰にも劣るだろう。
 確かに、機体を通して苛む痛みは己を縛るだろう。
 だが、それで諦めてしまう程、オリヴィア・ローゼンタールという女傑は諦めが良くない。
 操縦の腕がどうした。痛みがどうした。
 そんなもの、気合と根性があればどうにでもなるものだ
 意思の力を原動力と変えて、そして、それに応えるからこその、ヘラクレス/スーパーロボット。
「アナタと私が合わされば、乗り越えられない試練はありません!」
 先に逃れられた時よりも高くと跳んだその身。
 ――今度こそ、手が届いた。
 宙にておぼつかぬ単眼へと向けて、その拳は怨念の衝撃の上から轟音と共に叩き込まれたのだ。

「さあ、地の底で歓待を受けるがいい!」

 拳捉えられた単眼は、その衝撃に二度目の墜落を味わいゆく。
 だが、此度はそれで終わらない。
 何故なら――。
「……充電中断、刀身解放!」
「さあ、一気にいくよ」
 墜落する地のそこに、機能を停止したロシナンテから跳び出したトリテレイアと大地を駆け抜けた結月が待つ故に。
 キャバリアなど比にはならぬ大きさの相手――戦艦を、帝竜を、宇宙の獣をすら、相手にしてきたトリテレイア。その手の内で、エネルギーの刃が輝き放つ。
 その身一つで戦場を駆け、己が身をすら矢の如くと変えた結月が手の内で、弓から鍵へと戻った銀が輝きを放つ。

「言った筈です。『鋼の騎士』として、手出しはさせないと」
「できることをするって言ったんだ。なら、逃げないよ」

 そして、二つの輝きと単眼の怨念とが交差する。
 ――ザクリ。
 交差に遅れて、大地に突き刺さる音の一つ。
 それこそは、二人のもぎ取った単眼が片腕。それであったのだ。
 猟兵とオブリビオン。両者の天秤が大きく揺らいだ瞬間であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リンカ・コーデリア
明らかにこれまでとは違う、“私達の敵”が来たね
こちらはキャバリア初心者の付け焼刃、熟練のキャバリア乗りにどこまで届くかだけれど
そこは猟兵としての腕でカバーしてみせる!

慣らしてきた高速ホバー機動に磨きをかけ、緩急つけて狙いを定めさせず
一方でライフルで量産機や支援機から優先的に的確に撃ち抜いていく

敵指揮官機への射線が開けたら狙い撃って注意を引く
目障りだと思わせたならしめたもの
強者であればこそ見逃さないであろう僅かな隙をわざと見せ、敵の大技を誘う
そしてそれを『コード・リフレクト』で展開した巨大な障壁で総て吸収
そこからそっくりそのまま撃ち返し、連発して敵の僚機も巻き込んでの飽和攻撃をお見舞いしてやる!



 千切れ飛んだ単眼の片腕。
 そこから噴き出る液体は、まるで血液の如く。
 更には推進器の一つも喪っているというのに、その身より溢れ出る敵意は衰えを知らず。
 それは機械の特性を持つが故に痛みを知らぬからか。はたまた、障壁を兼ねる怨念が突き動かすからか。
「それだけ損傷を負って、それでもやるんだね」
『やらねばならない。平穏など、人を堕落させるだけのものなど、あってはならないのだから』
「そっか。なら、やっぱりあなたは……いや、その機体は“私達の敵”だ」
 リンカ・コーデリア(タイニーガジェッティア・f02459)のキャバリア搭乗歴はまだ浅い。故に、その機動が熟練とは程遠いのも無理からぬこと。
 だが、単眼のとて他の猟兵との交戦を経て、その機能を低下させていることは間違いない。
 ならば、その差は五分とまではいかずとも、随分と埋まっている筈。
「そこは猟兵としての腕でカバーしてみせる!」
 そして、その僅かの差を更に埋めるものがあるとすれば、それはきっと経験だ。
 クロムキャバリアの世界が如何に戦争を続けた世界であっても、様々な世界で様々な経験を積んできた猟兵に勝るものではないだろう。

 ――機体各部の推進器が一斉に炎を吐き出すは、同時。

 吐き出される炎が打ち消す重力。それによって生み出した機動力は、リンカがその身を持って得た技術の賜物。
 面舵一杯、取り舵一杯、機体を振って、荒野散らばる残骸を盾として。遅く、速く、緩急を付けて。その度、慣性によって操縦席に押し付けられる重圧は、ここ数時間で随分と馴染んだ感覚。
 単眼がその片腕を失ったとはいえ、まだ残る腕には、身体には、光学兵器そのものは残っているのだ。その照準に合わせられぬようにと。
 そして。

 ――Fire,Fire,Fire!

 動き続ける両者の銃口が互いを睨み合い、吐き出す銃弾と輝きが行ったり来たり。
 リンカの機体の真横を、通り抜けた軌跡の後を、向かわんとして急制動を掛けた先で、輝きが弾けて土が舞う。
 跳ねた土砂がその都度とビシャリビシャリ。リンカの機体を叩いて、汚す。
 単眼のそれより吐き出される輝きが圧するようなそれでないのは、単眼の速度が本領を発揮していないのは、損傷からの機能が追い付いていないからか。
 だが、どうであれ、この時はリンカにとっての値千金。
 撃ち、削り、掻き乱し、かの操縦者より余裕を奪うために。
『そうだ! この闘争こそが全てのヒトに必要なのだ!』
「それを他人に圧しつけること自体が間違いなんだって、なんで解らないかな!?」
『理解は必要ないからだ!』
 正気なき者への説得は意味をなさず。
 ならば、言葉で語るというまだるっこしいことはもうお終い。殴り飛ばして、正気に立ち返させることこそが単純明快なる解決策。

 ――ほんの僅か、リンカの機体が石礫を蹴った。

 ガクリと落ちる、一瞬の減速。
 とは言え、それも僅かの事。次の瞬間にはアクセルを吹かした機体は、その失速を取り戻す――筈であった。
 ――銃口に輝きが満ちる。
 キャバリアに乗り続けてきた熟練であればこそ、その僅かな瞬間を見逃さない。
 単眼の機体はその手に残された光学兵器へ機体動かすためのエネルギーをすら注ぎ込み、その瞬間を撃ち抜かんとするのである。
 そして、輝きは銃口より溢れ出し、リンカへと目掛けて――。

「この瞬間をこそ、私は待っていたんだよ!」

 それは駆け引きであったのだ。僅かな隙という餌を撒き、本命の一撃を釣り上げるための。
 リンカの失速――減速は、そのまま機体を停止させ、その右腕に搭載したガジェットでそれを受け止める。
 まるで、いつかの焼き直し。狙われて/狙わせて、防いだあの時と。
 だが、違うことがただ一つ。
「この力、そっくりそのまま返すよ!」
 以前の時では吹き散らすにとどめたそれであったけれど、今は周囲に力の奔流が逃げることもなく、全てがガジェットの展開する障壁に呑まれて、消えた。
 ――採取、解析、模倣。
 ガジェットを通して流れ込んでくる情報の濁流を、捌き、その本質を掴み取る。
 そして、生み出されるはリンカの言葉そのもの。
 リンカの機体、その右腕より生じたは――輝きの矢。単眼の撃ちだしたそれと、同種の。
「――Fire!」
 解き放たれた輝きは、稼働のエネルギーをすら使用した代償に動きとめていた単眼を容易くと呑み込んでいく。
 リンカの生み出した輝きが、その射線上の全てを浚っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロキ・バロックヒート
ニルズくん(f01811)と

へぇちゃんとひとが乗ってるやつだ
でもそうだね
遠慮は要らないね

ひとが居るなら【祝福】し甲斐もあるよなんて
障壁に守られて権能の光を喚ぶ
ニルズくんから戦意はあれど殺意がないのは感じ取って
操縦者は殺さぬように
UCと神罰の光で灼くのは邪魔になるものだけ
どうせソレ(支援機)も無人でしょ?
そいつらとはもう遊んであげなーい

わぁ、
竜が見えて眼を見開く
画面からじゃよく見えないし操縦席から急いで出る
キャバリアの肩から見下ろして
影でも相手を捕縛して手伝ってあげるよ

ふふ、地上から見るよりずっと良く見えてたよ
ああーそれは好いね
ぱっと破顔一笑
今度はと云わず遠慮なくキャバリアから飛び降りちゃうかも


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ロキ/f25190と

言葉は要らんと
ふはは、潔くて良いな
やりやすくて助かる

呪詛の天幕を展開、氷の属性攻撃を織り交ぜ障壁と成す
ロキと私を守るように
即席といえど充分であろう
なに、ロキの攻撃が決まるまでで良いのだからな

封ぜられればこちらの番よ
きゃばりあの操縦席より飛び降りる
着地の心配は要らない
――幻想展開、【怒りに燃えて蹲る者】
慣れない機械では操縦席ごと撃ち抜いてしまいそうだからな
慣れた爪と牙ならば、攻撃を封じられた操縦者を殺さぬようにするなぞ造作もないこと
さァ来るが良い
操縦席より引きずり出してやる

そこからの眺めはどうだ、ロキ
そうだな……今度は、私の背中に乗ってみるというのは?
ふは!では共に行くか!



 大地に衝撃を響かせるは、これで幾度目か。
 だが、その度にと単眼に刻まれた傷は増え、装甲は脱落していく。
 先の一戦では片腕を、次の一戦では――。
「へぇ、ちゃんとひとが乗ってるやつだ」
 コックピットカバー、その一部をも。
 そこから垣間見えるは、壮年の男性。
 オブリビオンマシンの影響を受けているからだろう。その隙間より見える表情は、どこか鬼気迫るものを感じさせていた。
 だが、その威圧などどこ吹く風、ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)の声はどこまでもマイペース。
 それはそうだろう。隙間から垣間見える深淵など、彼にとっては見慣れたモノでしかないのだから。
『戦いの果てに終わるのなら、構いはしない』
「だってさ」
「ふはは、潔くて良いな」
「だね。これなら遠慮も要らないね」
 だが、だからといって単眼の操縦者が諦めに身を任せた訳ではないことは、その表情を見れば明らか。
 故にこそ、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)もまた、その顔に不敵の笑みを浮かべつつも油断の二文字を表しはしない。
 そして、その想像は正しい。
「――ほお」
 満身創痍の機体で何をするのか。その僅かな興味は、目の前で結実する。
 怨念を糧として、欠損した部位より爆ぜる火花をものともせずに単眼は立つ。その傍に再起するは、身の砕けた残骸達。それは最早、支援機などとは到底言えぬ。
「私を前に、死者の如き怨嗟を持って、生者を騙るが如き情念を持って立つと言うのか」
 であれば、ロキの言ではないが、遠慮はいらぬ。
 血と泥に塗れた己を知るが故にこそ、光求めるニルズヘッグであれば、その所業は目にも余る。
『――往くぞ』
 突撃指令は淡々と。
 単眼の命令。そして、その行動へと共にするかのように、亡者が動いた。
 ならばこそ、ニルズヘッグはこう言おう。
「辿り着かせる筈がなかろう」
 ニルズヘッグとロキ、単眼と亡者。その両者を隔てるは、凍てる天幕。
 かつてにて振るった霜の世界に比べれば、随分と和らかなそれ。
 荒野の風に吹かれて、迫りくる亡者の行進に煽られて、はたりはたりと舞い踊る。
 されど、それがただ日差し除けるためのそれであろう筈はない。
 それは、魂すら凍らせる呪氷の結界であるのだから。
「わーお、これまた壮観だねぇ」
「だが、近付けさせぬには十分であろう?」
「もっちろん!」
 視界の先には手足凍り付かせ、その歩みを遅くとした亡者達。ただ唯一とその速度を落とさぬは、単眼の機体のみ。
「ふふふー、勇敢なひとは祝福し甲斐もあるよぉ」
「ロキ」
「わかってる」
 それは妙なる祈りとは言えぬ。されど、確かに形ばかりの祈りの所作。
 だって、それは当然だ。それは神に祈るものではなく、自分自身へと語り掛けるためのものなのだから。
「祝福するのはひと限定でーす。無人の方々はお還りくださーい」
 遊んでなんて、あげないよ。むしろ、邪魔だからどっかに行って。
 そんな子供の無邪気が混じったような、言の葉。
 だが、そこより引き起こされるは、子供の無邪気と言うにはあまりにも。

 ――光が、墜ちた。

 呪氷の天幕の向こうより、輝き墜ちるは救済と滅びの。
 天より降り注いだそれは、ロキの言う邪魔者――凍てつく亡者のみを灼く。二度と立ち上がらぬように、と。
「こんなもので十分かな?」
「応さ。役目十分と云う物よ!」
 ならば、これよりは己が役目の果たす時。
 そう語り、飛び出た先はキャバリアの外。
 火花を散らして迫りくる単眼を前にして、ニルズの単身で何をするのか。

「――幻想展開」

 氷の天幕が解けて、荒れて、荒野に吹き荒ぶは雪の嵐。
 そして、それが解けた時には、そこに――。
「わぁ!」
 全長50mにもなろうと言う程の、黒き蛇竜。
 その巨大さはキャバリアがまさしく玩具と見える程であり、幻想の王者としての格を見せつけるに余りある。
 最早、単眼の機体が特攻をしたとしても、そこに及ぼせる影響など、微塵しかあるまい。
『な、な、ああ……』
 推進器の火は力尽きるが如くと萎み、それに合わせて単眼の機体も速度を緩め、最後にはその歩みを止める。竜と成ったニルズヘッグの前にて、その身を捧げる生贄の如くと。
「お手伝いは……いらなさそうだね」
 いざともなれば、自慢の影で捕縛をとも思っていたロキであったが、その必要性もなさそうだ。
 それよりも、だ。そんなことよりも、だ。
「こんなの、狭っ苦しい此処で見るものじゃないよ!」
 急げ、急げ、急げ。
 キャノピーを開けて、装甲を一息に跳び、キャバリアの肩の上からかの雄姿を少しでもと。
「少しばかり痛いかもしれんが、我慢するがいい」
 ゆるりとしたニルズヘッグの動作。
 しかし、それは巨大さ故に、彼はゆるりとした動作のつもりでも、実際には思う以上に速い。
 それを理解し、より繊細にとその指を、爪を、最早抵抗出来ぬ単眼のコックピットへと突き立てる。
 ――ゴキリ。
 砕ける音は装甲の破砕音。繋がるコードを引き千切り、固定するボルトを砕き、コックピットそのものを単眼の機体より引き摺りだしたのだ。
 操縦者を失えば、いかなオブリビオンマシンと言えども、それはもうただの中身なき入れ物に過ぎぬ。
 ぐしゃり。と、コックピットを抜き取られた後の機体が、潰される音が響いた。
 それが、この戦いのあまりにも呆気ない終わりであった。

「さて、どうであった?」
「うんうん! すっごくカッコ良かったよ!」
「はは、そこからであれば良く見えたであろう」
「ふふ、地上から見るよりずっと良くね」
 そろりと荒野の地に置いたコックピット。
 そこから憑き物が落ちたかのような顔の壮年の男性が救助され、トレーラーの中に運び込まれる様子が見えた。
 きっと、これから彼は事の顛末を聞かれることになるのだろうけれど、それはもうニルズヘッグとロキのあずかり知らぬところ。
 故に、彼らは二人――猟兵を見つめる視線を感じながらも、雑談に花を咲かせていたのだ。
「そうか。なら、今度は、私の背中に乗ってみるというのは? 更に、より一層とよく見えると思うが」
「ああー! それ、とっても好いね!」
 花と咲いたはやはり無邪気の。
 破顔一笑と咲いた勢いのまま、ロキはぴょんとキャバリアの肩から飛び降りる。
 5m程度の高さだ。それでどうにかなるものではないけれど。
「ふは! せっかちなことだ!」
「思い立ったらってね! 今度とは云わず、今がその時でしょ!」
「良かろう! では、共に行くか!」
「おー!」
 羽ばたきは思いの外静かに。
 しかし、その浮上はまさしく物語の一枚絵を思わせるような雄大さをもって。
「さて、どこに行くとしようか」
「思うままでいいんじゃない?」
「では、そうするか」
 戦いの荒野を後として、ゆるり旅立つ二人旅。
 目的はなく、しいて言うのなら、共にと巡るがそれであろう。
 どこへ辿り着いて、何をしたかは、彼らのみぞが知るところ。
 ただ、もう戦いの音が響くことはないことだけは確か。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『熱情の旋律』

POW   :    魂を込めた歌声を響かせる

SPD   :    巧みな演奏テクニックを披露する

WIZ   :    他のアーティストを応援し、盛り上げる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 年に数度のお祭り騒ぎ。
 届いた物資を開け放ち、あちらこちらのどんちゃんどんちゃん。
 酒を飲め飲め、子供にゃジュース。
 かつてのプラント産流行歌が鼻歌と響けば、合いの手混じってコーラスとなり、即席ライブ会場の出来上がり。
 そんな光景が市街部のどこでもかしこでも繰り広げられていた。
 勿論、そんな道端の即席ライブ会場だけでなく、公式の場として用意された大きなホールだってある。
 そこでは運搬されてきたプラントからの生産品――音楽CDや本や嗜好品の類もあり、求めるヒトビトによって長蛇の列も。
 一仕事を終えた猟兵達には、今、散策をするだけの時間が与えられている。
 どこかの会場に参加するもよし、お祭りの空気に溶け込んで歩き回るもよし、音楽ばかりが娯楽ではないと新たな娯楽をヒトビトへ提供するもよし。勿論、それ以外だって時間の許す限り可能だ。
 運搬トレーラーとそれを護衛していたパイロット達によって、猟兵達の活躍はあっという間に広がっている。そんな現状であれば、どこに行こうときっと歓迎されることは間違いない。
 だから、猟兵達は――。
リンカ・コーデリア
ジュース片手に街をのんびり散策
各所でお祭り騒ぎの盛り上がりを微笑ましく眺めつつ
こうして皆の活き活きしてる様を見ると、頑張って良かったなぁ、って思えるよね
やっぱり、生きてるからには娯楽がなくちゃ

ハーバニーの姿を見かければ、駆け寄って導きへのお礼を
ついでにキャバリアに乗った感想なども興奮交じりに語って、ふと我に返って苦笑い
この世界ではキャバリアは戦争のための兵器
初めて乗って思わずはしゃいじゃったけれど、ちょっと不謹慎だったかも
でも、まあ……、魅力的だったのは事実だし、ね!

そういえば、トレーラーの護衛をしていた人達も居るのかな?
良い機会だし、後でキャバリアの操縦や整備の手解きをお願いしてみようかな!



 ざわりざわりと喧騒は小波のように。
 新たなる娯楽の到来に、市街地はどこもかしこもと浮かれているのが見てとれる。
「――ふふっ」
 その様子に、くすりと優しきを浮かべるは、リンカ・コーデリア(タイニーガジェッティア・f02459)。
 己の護ったモノに、それが齎したモノに、満足気にと。
「頑張って良かったなぁ」
 生きている。というのは、こういうことだ。
 なんて、娯楽に興じる人達の中でリンカ自身も、その娯楽の片鱗――人工甘味料入りのジュースをごくり。
「あっまいね、これ!」
 思った以上のパンチ力に、目も白黒。
 だけれど、それもまた楽しからずやというもので、リンカの顔から朗らかさが消えることはなかったのだ。
 そして、そんな彼女が揺蕩う人波の中、どこか見知った兎耳がちらり。
「ハーバニー!」
「はぁ~い。あ、リンカさぁん」
 トトッと駆け足、人波の隙間を駆け抜けて。
 その声に応え、振り向いた声は間延び。
「ハーバニーも来てたんだね」
「ええ、ええ。皆さんの活躍を色々とお聞きしたくてですねぇ~」
 娯楽と言っても様々あれど、最も簡単なものと言えば――。
「――あ、それを聞いちゃう?」
 そう、井戸端会議ならぬ世間話に花を咲かせる行為である。
 とは言え、リンカも話をしたくて仕方がなかった訳ではない。訳ではないのだけれど、水を向けられたとあれば話は別。今日という日の初体験の興奮を――キャバリアを自在と動かした話をせねばというものだ。
「いやぁ、初めてキャバリアに乗ったんだけれど、やっぱり技術が違うだけあって、中々手足のようにとはいかないものだね」
「ほうほぅ~。その中々上手くいかなかったと言う割にぃ、楽し気にも見えますがぁ」
「あ、分かっちゃう?」
「分かりますよぅ! その笑顔を見ればぁ」
「そっかぁ……うん、でも、まあ……魅力的だったのは事実だし、ね!」
 ガジェットとはまた違う技術の産物であるキャバリア。それを思う存分と動かし、体験を通してデータを蓄積も出来たのだ。それを楽しいと思わぬ技術屋が居るであろうか。
 少なくとも、リンカは心の底からそれを楽しいと思えていたことは間違いない。
 それを示すだけの、太陽のような笑顔がそこにはあったから。
「あ、でも……」
 太陽が僅かと翳る。
 それは喋ったことで乾いた口の中に、人工甘味の濁流を流し込んだからか。
「でも、ですかぁ? なにか懸念が?」
「ん、んー。この世界ではさ、キャバリアって戦争のための兵器でもある訳だよね?」
「そうですねぇ。警備用……と言うにはぁ、此処では少し物騒が過ぎるかもですよぅ」
「なら、あそこではしゃいじゃったのは、不謹慎だったのかもなって、今更ながら」
「あー」
 いや、違う。ジュースの味は慣れれば案外にいけるもので、実際は少しばかり、我に返ったからこそ。
 この戦争の続く世界において、キャバリアとは戦うための力であり、その象徴とも言える存在であろう。
 それを持って楽し気にと、はしゃいでとしたのは、護衛の者達にh会を与えたのではないか。
 それを懸念してのリンカの表情の翳りであったのだ。
「うふふ~。懸念は最もではありますけれどもぉ、案外、心配しなくてもいいんじゃないですかねぇ?」
「そうかなあ?」
「そうですよぅ。それは――」
「おう、あんたも楽しんでるかい!」
「誰かと思ったら、一番はしゃいでたあの機体の!」
「――実際に、皆さんに聞くのが一番かとぉ」
 気安い声は、聞き覚えのある声。
 それは別段と導かれた訳でもなく、ただの偶然の再会ではあったのだろうけれど、タイミングとしてはバッチリな。
 チラリとリンカはハーバニーを見て、ハーバニーはリンカをチラリと見て。
「じゃ、行ってくる!」
「ええ、行ってらっしゃ~い」
「ん? なんだなんだ?」
 アイコンタクトで連絡とって、踏み出す一歩は顔見知りの彼らへ向けての第一歩。

「――迷惑じゃなければでいいんだけれど、良ければキャバリアの操縦や整備を教えて貰ったりって出来るかな? あれにすっごく興味があって!」

 リンカの提案に顔を見合わせる男性二人。そして、ニカリと笑って――。
 その後、キャバリアの整備場から賑やかな声が、楽し気な声が響き始めることとなるのは、そう遠くない未来の出来事である。
 その頃には、リンカの抱いた懸念というものは、もうどこにもありはしないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
おお、この世界にもお祭りですか
勢いがいいですねぇ(にこにこ)
これが僕が想像していた光景です
人々が歌や音楽に癒やされて笑顔になる未来

僕も少し歌を披露しますか
なんだか歌いたくなってしまいました
いつもネットで歌を披露していて……この世界ネットはありますよね?
(群青色のギターと白薔薇のマイクを取り出し)

(長いまつげを伏せつつ語る)
これはUDCアースでの任務の時に
邪神の用意した闇に囚われそうな人達に披露した歌です
この世界にも邪悪というのは存在すると思いますし
また戦乱にも相まみえる時が来るでしょう
ですが今このときこそは皆さん笑顔でいてほしいのです
今はヒトがヒトであるための、優しい希望の唄を



 年に数度のざわめく市街地。
 あちらこちらからと歌声あがり、あちらこちらから歓声あがり、戦争に乾いた心を潤されていく。
「これが、僕が想像していた光景です」
 そんな賑わう街並みの中、その音の波を身体全体で感じ取るは草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)。
 にこり、にこり。と、擬音も聞こえてきそうな程の上機嫌。
 ヒトビトから溢れだす心の勢いへ押されるかのように、心躍るまま、千秋の脚もその場でくるり。視界もくるり。
 そんな彼の視界――360度のどこを見ても、そこには笑顔が溢れていて。
「いい未来です」
 歌に癒され、音楽に心躍らせ、誰もが笑顔となる未来。
 そのためにこそ、千秋はその鋼の拳を握ったのだから。

「ああ、なんだか僕も――」
 ――歌いたくなってしまいました。

 そう思った時には、もう鼻歌は口を衝いて零れだす。
 即興の歌声が風へと乗って。
 そして、音の伝わる度、ざわめき消えて、一つ、二つ。
「――おや?」
 一つの鼻歌が終わる頃には、衆目の視線は千秋へと。その視線に千秋が気付くのと、鼻歌の終わりに拍手喝采が降り注ぐは同時。
 突然の万雷に、千秋と言えども目をぱちくり。
「まだ聞いていないけれど、今回の新作の曲なのかしら?」
「さてな? だが、俺ぁ、あいつの声が気に入ったな!」
「ねえ、もう一回聞かせておくれよ!」
 それはアンコールの雨霰。
 最初こそ戸惑いはしたけれど、それも時間を置けば元通り。いや、むしろ、歌い手としてアンコールを求められたとあらば、応えねば名が廃ろう。
 残念ながら、このクロムキャバリアの世界では広域通信網――UDCアースのインターネット等のようなものは、暴走衛星の影響により絶えて久しい。故に、歌い手としての「radu」の名は、まだヒトビトの口に乗ってはいない。そう、『まだ』である。
「では、僭越ながら――」
 取り出り、身に着けるは白薔薇と群青。
 その名がまだ誰にも届いていないのであれば、荒野の地平線の彼方までと、これから響かせればいいのだから。
 滑らかな手つきが弦を弾き始め、それに応えて群青色が静かにと声を零す。その後に続く、千秋の声を彩るために。

「背伸びして太陽の光に焦がれる花よ、君に名前をつけてあげよう」

 それは闇の中へと光を齎す歌。齎した歌。
 厳しき荒野の片隅に、そっと咲いた一輪の花を思わせるようなその歌は、聞く者の心を震わせずにはいられない。
 心の澱が洗い流され、陰が掃われ、自然と口元浮かぶは微笑みの。

「この世にたったひとつしか存在しない名前を」

 その微笑みこそが、千秋の願い。百年と続く戦争の中、それでも心に咲く花を枯らさずにいて欲しいという願い。
 それはきっと儚い願いなのだろう。誰しもがと願いながら、それでも戦火の前に燃え尽きる願いなのであろう。だが、だからこそ、それはヒトの夢なのだ。誰しもが無意識に、潜在的に見たいと願うものなのだ。

 ――優しき希望が、広がっていく。

 気付けば、千秋を中心とした輪の誰もにそれは浮かんでいた。心の内にて一輪の花が揺れていた。
 千秋が歌を歌い終わった後も、きっとその感情は観衆の心に残り続けることだろう。儚くとも、脆くとも、優しき希望がその心に、きっと。
 だが、その儚きが戦火に晒されようとも、心配はない。もしもその時が訪れたとしても、そこにはきっと彼が駆けつけるであろうから。ヒトビトの前に立ち、その儚きを守るヒーローが。

 ――歌の終わりに弦の音が余韻と残り、再びの万雷がそれを塗りつぶしていく。

 それを一身に受け、千秋は静かな一礼でもって応えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハロルド・リード
お祭り会場をぶらぶら歩く。

皆が騒ぐ様子を眺めるのも楽しい。
知らない音楽も多くて聞いているだけでも雰囲気に飲まれる。

己れは屋台に行く。
食べたいモノは思い浮かばなかったが
祭りの空気を楽しむだけでも。

ハーバニーだったか?
何をすれば良いか分からなくてだな……。
音楽は知らねェ。
己れは聞いているだけでも楽しめるンだよ。

屋台は沢山あるだろ。
今まで出されたモノを食ってたからな。
ハーバニーの好きなモノとかねェの。
ソレを食いてぇ。
甘いとか苦いとか辛いとか何でもイイ。

……美味い。
屋台の飯も悪く無いかもなァ。



 お祭り騒ぎの中をふらりふらり。
 歌が聞こえる。
 賑わいが聞こえる。
「まあ、悪くないもんだ」
 だけれど、己の身体――ハロルド・リード(scrap・f30129)の皮膚を叩いて通り過ぎるそれは、不思議と不快ではなかった。
 自身と同じ名を冠する機体を降りて、鍛冶屋としてのハロルドとなった今の彼であっても、それを楽しいのかもしれない、と感じられる程度には。
 ふらり、ふらり。
 耳馴染みの無い音楽に身を任せて人波を揺蕩い、喧騒を揺蕩う。
「――ん」
 歩き歩いて、動き続ければ腹も減る。まして、戦いの一つも終えた後であれば、それも当然か。
 だから、その足は自然と屋台の集まる場所へ。
「あいよ、お待ち!」
「一杯、頼むよ」
「あ゛ー! この日のために生きてんだよ!」
「なあなあ、今回の、どうだった?」
 騒がしきのあちらこちらは、歌のそれとは違う音。だけれど同じ、生きた音。
 その輪に自身も加われと、ハロルドの身体もくぅくぅと鳴くけれど、さて、どこへと足を運んだものか。
 腹は満たしたい想いもあるけれど、特別これが食べたいと思い浮かぶモノもなし。
 故に、その辺りの適当に目の付いた屋台に足を向けてもいいけれど――。
「ハーバニーだったか? どこがいいと思う?」
 折角なのだと、案内役を頼んでいた兎に声を掛ける。
「そうですねぇ。まずは軽くジャブをお腹に決めましょ~」
 その応える兎こそはハーバニー。
 案内役にと張り切って、お腹が空いている時ならば、と。まずは軽い食べ物からのお誘いを。
「ほぅ、そういうもんかい」
「いきなり肉類に飛びつくのもいいですけれどぉ、足らない程度に満たした方がぁ、一層にお腹も空こうというものでしてぇ」
 それが彼女なりの持論なのだろう。
 だから、ハロルドも敢えてとはそれ以上を踏みこまず、案内を頼んだのだからとその流儀に従うのみ。
 そして、購入のお礼を背中に聞きながら、手にした飲み物――温かい野菜スープをこくり。
「あったけェ」
「身体に沁みますねぇ」
 ハロルドのお腹に落ちたそれは、胃の辺りからじんわりと温かさを身体に広げる。
 だが、それだけでなく、舌の上に薄っすらと残る味の名残が、僅かばかりと満たされた胃が、身体の主に次を求めて騒ぎ出すのだ。
「良い感じに温まってきたところでですねぇ、本命と参りましょ~!」
「本命ってのは、何だ?」
「お肉ですよぅ!」
 ババーン! と指し示すは、じゅうじゅうと音立てる合成肉の串焼き屋。
 広がる香ばしき薫りが食欲を刺激して、身体は賛同と期待を示す。
 それもまた受け取り、食せば口の中で広がる肉汁の良き。舌の上に残ったスープの味を上書きしてあまりある程の濃き。
 本来の生活の上であればもっと質素なのかもしれないけれど、今日という日のために拵えられたそれは、この世界においてはまさしく贅沢と言えるもの。
「美味い。屋台の飯も、悪くないかもなァ」
「そうでしょ~、そうでしょ~?」
「……だが、だ。これは俺に合わせてくれたもンだろ? ハーバニーは、好きなモノとかねェのか」
 屋台が沢山あるのだからソレも食ってみたい、とハロルドは言う。それが甘いであろうが、苦いであろうが、辛いであろうが。
 ジッと見透かすような視線に、ハーバニーも暫しの思案。
「では――」

 ――口の中で、小さな玉がころりころり。

 それは人工甘味料を固めた飴玉。ハーバニーの言葉の後、案内された屋台で買った飴玉だ。
 口の中の温かさに少しずつ溶けていくそれは、優しい甘さを広げていく。
 もしかすれば、濃い味付けの最後にと気を使ったのでは。なんてハロルドも勘繰るけれど、目の前で楽し気に兎耳を揺らすハーバニーを見れば、まあ、いいか。と。
「そう言えばぁ、音楽の方はお聞きになったりぃ、参加されたりはよろしいのでぇ?」
「ああ、音楽はよく知らねェからな」
 ――それに第一。
「己れは聞いてるだけでも楽しめるンだよ」
 歌や音楽だけではない。ヒトビトの奏でる生きる音の全てを含めて。
 ころり、ころり。
 口の中に転がる飴玉は随分と小さくなって。
「ああ、悪くないもんだ」
 始まりの感想をもう一度。
 飴玉が口の中で溶けきるまで、ハロルドは静かに聞こえ来る全てへと耳を傾けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・アンダーウッド
響さん(f28361)と連携

さぁ、ショーの始まりさ♪盛り上げていこうじゃないか!

カバンから人形楽団を呼び出して展開、喇叭にバイオリン、パーカッション等の沢山の楽器を用いた人形楽団による楽器演奏をBGMにして響さんの歌を会場全体に響かせる。クラウンも人形楽団と一緒になって笛を吹く。

(聴くだけじゃなくて、見ても楽しませようかな♪)

笛を吹きつつ、会場の演出として展開した癒しの業火の形を蝶の形に変えて操作する。

あっ、ボクは歌わないから悪しからず。


藤守・響
クラウン先輩(f19033)と連携

響の歌を聴けぇぇぇ!!

クラウン先輩の演奏を伴奏にして、UCの効果で観客の気分を高揚させ会場を盛り上げる。
一曲歌った後MCを行う。

みんなぁぁぁ!盛り上がってるかぁぁぁ!!
伴奏はクラウン先輩、歌は響がお送りしたぜ!

ソロもいいけどデュエットやディオもいいよな♪クラウン先ぱ...いには振られてしまったぜ。他には...

周辺を見渡し一緒に歌ってくれそうな相手を探す。ハーバニー先輩を見つけたら、ステージに呼んで「皆の日常を守った影の功労者だぜ!」と紹介した後で一緒に歌おうと誘う。
他に立候補者がいたらその方をステージに呼び、紹介した後で一緒に歌う。



「さぁ、ショーの始まりさ♪ 盛り上げていこうじゃないか!」
 ステージ上の掛け声を合図として、呼び出し、飛び出し、溢れ出す。
 それこそはクラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)の人形楽団。
 喇叭にバイオリン、パーカッション、その他木管楽器に打楽器も。種々様々な楽器を伴って、クラウンの持つ小さな鞄から、明らかにその容量以上に出てくる出てくる。
 それ自体がまるで奇術のようでもあり、この娯楽少なき世界では、まず一目からして観客の度肝を抜くには十分すぎた。
 あちらこちらから不思議の声があがり、興味の声があがり、歓声があがる。ただ、クラウンの視界の中でチラリ。どこかで見た――具体的に言えば、トレーラーの運転席で見たことのあるような――男性は一人、楽しみにしていたと言わんばかりの顔。
 だけれど、人形達の反応は粛々として、クラウンの指揮に従ってそれぞれがそれぞれの立ち位置に素早くと移動をしていく。
 そして――。

「響の歌を聴けぇぇぇ!!」

 マイクを通して会場の空気震わす大音声。
 歌の祭りが開始を告げるは人形達のそれでなく、藤守・響(騒がしい木霊・f28361)が第一声。響き、木霊し、反響し、会場全てを揺るがし、跳ねる。
 誰もが人形達の奏でるを始めるのだろうと集中し始めていたところでのそれは、ヒトビトの意識を衝撃で塗り潰す。
 いったい誰が――などと誰何の声は必要ない。
 その声の主たる響は発声と共に舞台袖から駆け出して、既に舞台の中央――クラウンと人形楽団に囲まれる中心にあり、その存在を高らかと謳いあげているのだから。
 その響が指定の位置に到達するや否や、今度は人形達の演奏が始まるのだ。
 それは前奏であり、伴奏。響がこれより奏でる歌声を、より一層と高めるための。だけれど、同時、生半可な歌では逆に観客の意識を持っていくぞと言わんばかりの。
 クラウンの笛音を先導に、響く人形楽団の音色の伴いは心強くも手強き相手。
 それに、響はペロリと小さく唇を舐め、湿らせて、息を吸う。その次の発声にと備えて。
 ――歌の力を、今此処に。
 魂を震わせるだけの力を持った声は、会場全てを覆うに足りる。
 どちらがイニシアチブを握るか。どちらもイニシアチブを握るか。
 互いを高め合う歌声と音の響きは、宙でほろりと儚く解けることもなく、確かに観客の耳の奥――心へと響いていく。
 響とクラウン達の一曲が締めとなる頃には、誰もがその心に高揚を抱いていたのだ。
 故に。

「みんあぁぁぁ! 盛り上がってるかぁぁぁ!!」
 ――オオオォォオォ!

 それに応える観客の声も、また地響きのように会場を揺るがす。
「おぉ、すげえ盛り上がりだな!」
「これは腕を振るった甲斐もあるというものだね」
「本当、クラウン先輩達の演奏はこっちが呑み込まれると思う所だったぜ」
「結局のところ、良い感じになったみだいだから、結果オーライさ」
 一曲を〆て、束の間の休息。
 ライブの熱に浮かされた身体と心を僅かとクールダウンさせて。
「っと、挨拶が遅れちまったな! まずは一曲をお届けしたけれど、その伴奏はクラウン先輩!」
 さっと手を翻し、響が示す方向にクラウン。
 突然のフリに動揺することなきは道化師としての研鑽と嗜みの結果。優雅に一礼し、その手に持ったままの笛でまた短く心躍らせる音色を響かせる。
「そして、その人形楽団!」
 ジャン! と人形達が銘々に音色をかき鳴らし、されど、それは不協和音に程遠く。
「歌は響がお送りしたぜ!」
 最後に響自身が一歩と前に、大きな身振りで自分を示す。
 そこに存在の希薄さなどあろう筈もなく、確かに存在を認知されているのだという確信が彼の中にはあった。
 そして、そんな紹介に応えるは、やはり轟く歓声の声。
 響とクラウンの声が観客へと届いたように、観客達の声もまた二人の肌をビリビリと叩いて。
「いいね、いいねぇ! ちょっとの休憩もさせてもらったことだし、続いてもう一曲と行きたいところ!」
「そうだね、まだまだ時間はあるんだ。途中で投げ出すのは、宜しくないよ♪」
「なら、今度はソロじゃなくて、デュオってのも――」
「はは、ボクは歌わないから悪しからず」
「――先手打たれちまったなあ」
 まるでコントのような一場面に、曲の感動とはまた違う心の動きが観客達に。さざめきのような笑い声があちらこちらからと。
「あー、ほら、先輩が断るから笑われちまったぜ」
「仕方がないね。笑わせるのは道化師の本懐ってもんだよ、キミ」
「ちぇ、なら、そうだな……」
 しれりと言うクラウンから響は視線を外し、ぐるりと見回す観客席。
 そこに認めた――。
「ハーバニー先輩!」
「……へぇ!?」
 人波に突き出す兎耳。そこを目掛けて、声の一直線。
 ざわりと観客の波が揺れて、視線が集まる兎耳――ハーバニーの姿。
 歌声に惹かれて入った会場であったのだろうけれど、まさかの呼び声に心なしと小さく跳ね跳んで。
 ちょいちょいと手招きする響に誘われて、恐る恐るとステージの上。
「それじゃあ、マイクを持って」
「イヤホンも付けた方がいいのかもね」
「え、え、えぇ?」
 響が渡すマイク。クラウンがどこからかと取り出すイヤホン。
 さささっと準備が整えられ、逃げ場は奪われて。
「それじゃあ、一緒に歌おうぜ!」
「歌詞とか知らないんですけれどぉ!?」
「フィーリングでどうにかなるもんさ!」
「あ、歌詞カードはこれだよ」
 手際の良さは極まれり。
 クラウンが手品と取り出し、カードを渡し、人形楽団が既に前奏を始めていた。
「これは……もう腹を括るしかありませんねぇ」
「歓迎するぜ! それと、他にもって人が居れば、一緒に歌おうぜ!」
「まだまだカードはあるからね♪」
 パンとステージ上で弾ける小さな花火。
 それは色とりどりのリボンと共に、クラウンがハーバニーに手渡したと同じ歌詞カードを観客席にばら撒くのだ
 そして――。
「ははは! いい一体感だ!」
 響き渡るは、誰もがその口々から紡ぐ歌声。
 その一体感が、振るえる空気が、響の心を擽っていく。
 クラウンもまた、笛を吹きながら、その口元には知らずと弧が浮かぶ。

 ――さあ、フィナーレだ。聴くだけじゃなくて、見ても楽しませようかな♪

 クラウンのその心の昂りは、その身に内包する地獄の熱量をあげていく。優しく、温かくと。
 だから、これはその温かさのお裾分け。
 燃える温かきが、曲のフィナーレと共に会場を照らす。
 始まりはクラウンの傍だけを。次第に響を、ハーバニーを。そして、観客達を。
 舞い散る火の粉が文字通りの蝶と変わり、ひらりはらり。辺り一面を飛び交い、舞い遊び。
 その物語でしか見られないような幻想に曲の終焉との余韻とが相まって、先程までの賑わいが嘘のように静寂が響く。だけれど、それも数瞬のこと。
 ――アアアァアァァ!!
 次の時には、割れんばかりの大喝采。
 響に、クラウンに、自分達に。
 会場が一丸となって作り上げた雰囲気に、誰しもが惜しみのない喝采を響かせ、静寂を掻き消したのだ。
 それを生み出す切っ掛けとなった張本人達は、ステージ上から満足気にそれを見つめるのであった。二人の仕掛けは大成功であったのだ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ロキ/f25190と

ふはは、こちらこそだよ、ロキ
快適だったなら良いんだが。少しゴツゴツするだろう?
――おお!そいつは良い!
そうしたら大きさを変えようか
きゃばりあ と同じくらいか、もう少し小さいくらいなら
この世界の住人にとっても慣れているであろうし
ふはは!大丈夫だよ
びっくりされるのは慣れているからなァ!

可愛いというのは初めて言われたな
きらきらしたロキの演出と共に舞い降りて
地に伏せ敵意がないことをアピールしたら、一つ喉でも鳴らしてやろうか
なァに怯えなくとも良い
私は世界の味方であるとも

ロキの話に耳を傾けながら、子供らなどが怪我をしないように身じろぎはせず
……あっ、翼の付け根はやめてくれ!痛い痛い!


ロキ・バロックヒート
ニルズくん(f01811)と

素敵な旅をありがとうねニルズくん
竜の背は結構落ち着くんだよね、ふふ
そうだ良いこと思いついた
竜の姿のままで人々のところへ戻ってみない?
最初はびっくりするかもだけどきっと大丈夫だよ
君の好きな子供たちも居るかな

ちっちゃい君はかわいいねぇ
降りる時には光を喚んで
きらきらいろんないろに輝かせる
背から手を振ったりして警戒心を解いて
猟兵だよと告げようか

注目を集めるさまに人気者だねって笑う
かれだけじゃ人々の相手の荷は重そうだから
ひとつこちらでも気を引こう
手を叩いてこえを張って―さあ聴いて
今から語るは
夢と希望を運ぶ物語
猟兵の活躍をうたうよう

悲鳴にちょっと笑っちゃう
人々に娯楽のひとときを



 荒野の大地に大きな大きな影が落ちる。
 それは陽光遮る雲であろうか。いいや、違う、それは――。
「素敵な旅をありがとうね、ニルズくん」
「ふはは、こちらこそだよ、ロキ」
 空を往く巨竜、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)。その背にとロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)を乗せて。
 びゅうびゅうと流れる風は冷たく乾いたそれではあるけれど、それでも、その風を感じる心は温か。
 先の戦いを終えてより、空のその先、荒野のその先を目指して飛んでいた二人。いつまでも、どこまでもと続く光景であろうとも、二人であれば飽きもなし。
「竜の背は結構落ち着くんだよね、ふふ」
 ロキの褐色が触れた黒の鱗は意外なほどに温かで、そこから凍てる邪竜の冷たさを感じることはない。
 それこそが、その温かさこそが、竜の血を抜きとした時のニルズヘッグなのであろう。
 そう感じ取ったロキは、またふふりと笑う。
「そうか。快適だったなら良いのだが、少しゴツゴツするだろう?」
「ううん。それもまた味ってやつだよ」
「ふはは、物は言いようだな」
 乗り心地がとても良いとは言わないけれど、落ち着くと言ったのは本当のこと。
 その正直なロキの感想に、ニルズヘッグも呵々大笑と空気を震わせる。
 そんな風に笑う蛇竜の姿へ、ロキの脳裏に閃くもの。
「そうだ」
 良いことを思い付いた、と。
「どうした?」
「ねぇ、竜の姿のままで人々のところへ戻ってみない?」
「……おお! そいつは良い!」
 その提案は、光を求める――言い換えれば、ひとの隣にあらんと願う――ニルズヘッグにとっては、宝物にも勝る。
 だが、己の本性を、その身に付き纏うものを知るが故にこそ、一瞬の躊躇があったのだ。
 とは言っても、宝物を前にして血の騒ぐは竜の本性であるからして、躊躇を呑み込むは当然の結果。
「だが、このままの大きさではいけまいな。大きさを変えるとしようか!」
 さて、どの程度にしたものか。
 ニルズヘッグの思案の中、真っ先に思い浮かぶのは――。
「これくらいでよいであろう」
「ふふ、なんだかどこかで乗った乗り心地。ちっちゃい君はかわいいねぇ」
「可愛いとうのは初めて言われたな」
「やったね。初体験だよ」
 瞬き一つで大きさも早変わり。
 50mの大きさがキャバリアと同じ5m程度のそれへと。
 それでも十分に大きいけれど、先程までのようにロキも手足を伸ばしてのびのびとはいかぬ。だが、その窮屈さはキャバリアに乗っていた時のそれとは違う心持ち。
「とは言え、これぐらいであれば、この世界の住人にとっても慣れているであろうしな!」
「それでも竜の登場には流石にびっくりしちゃうかも?」
「ふはは! 大丈夫だよ。びっくりされるのは慣れているからなァ!」
「なら、心配は無用だね。君の好きな子供たちも居るかな」
「それも楽しみとしていよう!」
 ぐるりと船首――ならぬ、竜の頸の向き変えて、目指す先は彼らが守ったトレーラーの行きつくであろう先へと。
 風がまたゆるりと流れて、翼が力づよくとはためいた。
 宙に浮かぶ暴走衛星も、ゆるりとした旅路を撃つだけの無粋はなかったようで、二人の邪魔をするモノはない。

 ――輝きが、雪の如くと。

 市街地の片隅に掛かった影にヒトビトが空を振り仰げば、そこには目を丸くする光景。
 物語でしか見たことのなかった生物――竜がその空を飛んでいるのだから。
 だが、そこに驚愕があれども恐慌がなかったのは、その背にある影――ロキが笑顔で手を振っていればこそ。そして、その飛ぶ姿の勇壮さがあればこそ。
「人気者だね」
「ありがたい演出のお蔭よ」
 ぐるりと空を旋回し、ゆるり螺旋を描いて市街地の広場へと。
 しかし、勇壮とは言え、恐らくは敵意がないとは言え、降り立った二人の姿は遠巻きとみられるのみで、近づく者はなかなかと。
 だから。
「なあ、あれってあの時の竜じゃない!?」
「大きさは違いますけれど、確かにそのようですね」
 彼らの正体を知る者――竜の旋回を見つけ、駆け付けたは護衛の機体を繰っていた誰か。その誰かが、かの者の正体を声高と周囲へ伝えるのだ。
 それが彼らなりの感謝なのかは分からないけれど、護衛を果たし、娯楽を持ち替えたった者達が超常の者と共に戦ったというのはヒトビトに膾炙されている。
 故に、その言葉に端を発したざわめきはとても好意的なもの。
「さ、触っても、いいの?」
「おっきー!」
 そして、相手が好意的な存在としれば、近づくを禁じる雰囲気が緩めば、いの一番と近寄るは、好奇心旺盛なる子供に他ならぬ。
 お祭りの勢いにのって、大人が止める間もなく、わあわあと一斉に。
「おうおう、子供は勢いがあって良いな!」
「ふふ、ニルズくんは人気者だね」
 瞬く間に出来上がるは、子供達の遊び場。
 怖いもの知らずとはよく言ったもので、ニルズヘッグの身体によじ登り、滑り降り、あちらこちらをぺたぺたと。
「ふはは、くすぐったいぞ」
 笑い声が木霊する。それに気を良くした子供達は、一層の事、その黒き竜への好意を持って。
 だけれど、一人で大勢を相手どるでは大変であろう。
 だからこそと言わんばかりに、まだ近付くを躊躇する大人達へと聞かせるかのように、パン! と響かせたロキの柏手。
 なんだなんだ。と視線が集まれば、褐色の彼のにんまり笑顔。
「さあ、どなたさんも飲み物片手に耳を傾けて。これより語るは、とっておきの肴。夢と希望を運ぶ物語!」
 朗々。
 これよりロキが語らんとするは、先刻までの戦いでもあり、また別のお話でもある。
 少しでも、ニルズヘッグがこの場所へと馴染めるように、と。
 そして、良く笑い、喋るロキの語り口は滑らかで、瞬く間とヒトビトはその話の中に引き込まれていく。
 ヒトビトを楽しみの渦に引き込む手腕は邪神の面目躍如か。
 大人達は知らぬ物語に固唾を飲んで、子供達は興奮と共にきゃあきゃあと。
「……あっ、翼の付け根を引っ張るのはやめてくれ! 痛い痛い!」
 援護するつもりの語りで、逆に少し酷い目にもあっている気がするけれど、それはそれで楽しきもの。
 悪いかな。なんて思いつつ、ロキの口元はくすり。
 それでも、滑らかなるは止まらない。惹き込まれた者達の心は捕らえられて離されない。
 だけれど、それはきっと悪い事では無いのだろう。それを証明するかのように、その場所には笑顔が満ち溢れていたのだから。
 人々に愛と希望を。そして、夢を。
 二人が戦いの始まりにて告げたそれを、彼らはこの場にて証明してみせていたのであったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
機械に乗り込むのは惑星ロボ以来でしたが、どうにかなって良かったです
細かい操作が不要で、意思に応えてくれるタイプで助かりました

私が知っている歌は讃美歌くらいなので、この場には似つかわしくなさそうですね
歓迎してくれる子供たちにヘラクレス――筋骨隆々な偉丈夫がモチーフのスーパーロボット――を見せてあげて、肩や腕に乗せてあげたら喜んでもらえそうです

興が乗った子供たちが歌っている歌――ロボットアニメの主題歌を教えてもらい、一緒に歌いましょう(歌唱)
ロケットパンチ? うーん、使えないですね……びーむ、もありません
あ、でも私自身が使えますよ、破壊光線。……そうじゃない?
なかなか需要というのは難しいですね……



 天に捧げる言の葉を歌と変え、地に満たすは敬虔なる。
 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の知る歌とは、そういうものだ。
 だけれど。
「それはこの場には似つかわしくなさそうですね」
 行きかうヒトビト、立ち止まり各々の娯楽を楽しむヒトビト。
 それらの生む音は、ともすれば騒々しく、言い方を変えれば賑わいだ。静かなる礼拝堂にて響く、厳かなる歌とでは趣が違おう。
「ですが、こういう音も悪くはありません」
 聞こえ来るのはオリヴィアの知る歌でもなければ、音でもないけれど、ひと時の楽しみに浸るヒトビトの顔を見れば、それが悪いモノではないのだろうとは理解も出来る。
 だから、オリヴィアもまた、それを掻き乱すを良しとせず、それを構成する一人として此処にあるのだ。
「ねえねえ、僕の番はまだー?」
「はいはい、少しお待ちくださいね。順番にですよ。怪我をしないように」
 いや、むしろ、それを構成する一人として積極的にと参加していた。
 声の響いた方向――随分と下から聞こえた子供の声は、オリヴィアがヘラクレスに搭乗しているからこそ。
 そう。彼女は今、戦いではないけれどヘラクレスに乗っているのだ。
 それは何故か。
「きゃー! たっかーい!」
「人がいっぱいいるのが見えるね!」
「皆さん、あんまり乗り出し過ぎないように気を付けてくださいね」
 それは子供達を楽しませるためにだ。
 流れる曲の中には子供向けのもあろうけれど、それでも全ての子供が歌を好むとは限らない。
 ジッと耳を傾け続けることが苦手な子供も居るだろう。身体を動かすことの方が好きな子も居るだろう。
 そういった子供達――勿論、そうでなくても――の相手をするためにこそ、彼女は自身の愛機へと乗っていたのだ。

「ヘラクレスが意思に応えてくれるタイプで助かりました」
 オリヴィアは基本的に機械に疎い。それは勿論、出身の世界であるダークセイヴァーを思えば当然のことである。
 だからこそ、細かい入力を必要とするようなモノであったなら、戦いにも、子供達の相手にも、そう容易くと利用は出来なかったことだろう。
「本当、機械に乗り込むのは惑星ロボ以来でしたが、どうになって良かったです」
 外宇宙を股に掛けた時には操縦を受け持ってくれる仲間も居たが、今回はそうではなかったから、猶更の事。
 そして、ヘラクレスの操作方法がそうであったからこそ、こうやって子供達の相手という繊細なことも出来るのだ。
 そのことにコックピットの中、外部に聞こえぬよう、オリヴィアはそっと安堵の息が零れる。
「まだー?」
「はいはい。では、次の方と交代するために一度下ろしますよー。しっかり掴まっていてくださいね」
「えー、私、もっといたいー!」
「まあまあ、また順繰りに。楽しみは分かち合わないとですよ」
「……はーい」
 子供の相手も、複雑な機械操作と同じ位に大変ではあるけれども。
 しかし、安堵の息とはまた違う、微笑ましい者を見守る慈しみの吐息が零れていた。

「ところで、皆さんの間に流行っている歌とかはないのですか?」
「うたー?」
「そう、歌です」
 遊び疲れて、満足して。
 賑わいもトーンダウンしつつある子供達に、ふと、オリヴィアは気になったことを問う。
 市街地全体を包むように様々な歌が流れているのだ。なら、子供向けのそれもあるのではないのか、と。
「んーと、カッコいい感じの歌とか流行ってるよ!」
「それは男の子の中ででしょ! やっぱり、可愛いのよ!」
「僕はどっちも好き」
「あー、あー、落ち着いて。どちらも聴かせてはくれませんか?」
 それぞれがそれぞれに好きな曲があり、どれが好きだ。これが好きだとオリヴィアに。
 もう、気分は引率の先生である。
 だが、それもまた嫌な気分のするものではなく、一つ一つと丁寧にオリヴィアは耳を傾けていくのだ。
 だからこそ、子供達は一層にと自分の話を聞いてくれるオリヴィアに、話をするのである。
「じゃあ、一つ一つ、折角なので歌ってみましょうか」
 そして、響き渡るは好き勝手な歌声。
 元気一杯であるが故に、音程を整えるとは程遠く、それこそオリヴィアの知る讃美歌にも遠い。
 だけれど、どの子供もが想いを高らかと歌うのは大切なことなのだろう。と、彼女はそれを指摘せず、一緒に歌を紡ぐのみ。
 街に、また新たな、賑やかなるさざめきが生まれ落ちたのだ。

「ねぇ、これって腕が飛んだりしないの?」
「腕……? 整備で切り離しは出来るかもしれませんが」
「いやいや、ちげーよ! こいつが言ってるのは、ロケットパンチだろ」
「ロケットパンチ?」
「その感じじゃ、なさそうだな」
「ビームとかも、ないのかな?」
「びーむ? あ、破壊光線のようなものでしょうか」
「お、こっちはあるのか?」
「いえ、ありませんが」
「えー」
「でも、私自身が使えますよ」
「違う、そうじゃない」
「むむ……なかなか需要というのは難しいですね」

 そんな会話の片鱗も、歌と歌の合間に零しながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(祭りと聞いて準備済みの衣服や着ぐるみを●操縦妖精ロボに装着。自己●ハッキングでスピーカー音声使い分け子供向け人形劇。演目は己の本の御伽噺)

勇者一行に立ち塞がるは赤き竜
顎から噴き出す炎は骨まで焦がさんばかり
(着ぐるみ内部の妖精レーザーで着火)

『勇者殿、私に策が』

仲間の騎士が進み出て…


勇者と姫は結ばれめでたしめでたし

休憩を挟んでの次の演目は槍に変ずる小竜従えた竜騎士の迷宮冒険譚
どうぞお楽しみに…

プラント産と同じく創造物でなく蒐集物ですが…
これが人々の想像力を刺激し、新たな娯楽が生まれる
そうなれば喜ばしいですね

ああ、ハーバニ―様
どうされま…キャバリアの修理で呼び出し?

次の演目終わり次第、すぐに!



 ――開幕のブザーが鳴った。

 幕の上がると共に、そこで観客達を待ち受けるはおどろどろしき赤の竜。
 正面から彼ら彼女らを睥睨し、その姿にあった地を響かせるような声で言うのだ。
『天に昇る月が黒と染まる日、我は再びと訪れる。それまでに生贄の姫を用意しておけ。さもなければ――』
 がぱりと開いた顎の奥、紅蓮の炎がチロリチロリ。そして、轟と音立て観客席の真上に一筋の線を描く。
 焔の残滓が風となり、観客達に緩やかな熱が届いた。悲鳴が、あがった。
『――この焔が、この地の全てを灼くであろう』

 ――暗転。

『どうしたものか。どうしたものか』
 場面は一転して、豪奢なる。
 細部まで作り込まれた玉座の間は、観る者をより一層と物語の世界へと引き摺り込むための装置。
 そこで王様とお姫様――の着ぐるみ――が右往左往。
『……いえ、答えはもう決まっています』
『姫……』
『私が生贄に――』
『いいえ、お待ちください! 私達にお任せを!』
 悲壮なる献身を口にせんとした姫であったが、そこに現れるは新たなる登場人物。
 扉をあけ放つ音を響かせて、玉座の間にと現れるは勇者と騎士と魔法使い。
 御伽噺としてはオーソドックスな。しかし、お約束とはつまるところ、一番ヒトの心を動かしてきたからこその。
 その登場に、ざわりと観客席が悲鳴とは違う声で揺れていた。
 そこからの物語は勇者一行の決意と旅路。王と姫に見送られ、赤の竜住まう火山へと挑む旅路の物語。
 溶岩に呑まれて死んだ大地を越え、ぐつりぐつりと沸き立つ紅蓮の湖を越え、険しき山裾を上り切った先へと。
 ある時は自然そのものが牙を剥き、ある時は赤の竜が配下が牙を剥く。
 困難に次ぐ困難。その連続に観客はその都度と固唾を飲み、掌に汗を握り、その試練乗り越える瞬間に喝采をあげるのだ。

 ――そして、物語はクライマックスを迎える。

 舞台狭しと翼を広げる赤の竜。対峙するは身に纏う盾鎧に無数と試練を越えた証を刻む勇者一行。
 既に剣戟を幾度と交わし、今は互いに睨み合いのひと時。
『その程度で我が前に立ち塞がろうなどと、百年は早いわ!』
 だが、趨勢は赤の竜に有利。
 その巨体の一撃が、その顎から繰り出される炎が、勇者達を彼らの必殺の間合いへと踏みこむことを許さないからこそ。
 ――ごくり。
 物語である以上、結末は恐らくハッピーエンドであろうと予測していた観客達であるが、その迫真があればこそ、まさかの結末を思い描いてしまう。
『――勇者殿、私に策が』
 その苦い結末を覆すための一言がそこに。物語を終幕へと加速させるための一言がそこに。
 竜の巨躯が近付くを妨げるのなら、放たれる紅蓮が近付くを妨げるのなら、それへの対応を行えばよいのだ。
 案を語った騎士が踏み出し、続いて魔法使いが踏み出す。
『行きましょう!』
『応さ!』
 騎士が駆け、魔法使いが駆ける。
 それをゴミでも払わんとするかのような無造作でもって、竜が尾を薙ぎ、紅蓮を吐く。
 ――騎士達の目論見通りに。
『勇者殿、今です!』
『仲間の築いてくれた道だ。必ず辿り着いてみせる!』
 騎士がその身を挺して竜の尾を盾と鎧で食い止めれば、紅蓮を妨げるは魔法使いの氷魔法。
 互いが体力と気力を振り絞り、乾坤一擲たる勇者の一撃を竜へと導くための道を築いたのだ。
 それに応えぬ勇者でなければ、何が勇ある者であろうか。
 熱に晒されながら、仲間の血で濡れる道を駆け抜けながら、遂には勇者の剣が赤の竜が眉間へ深々と――。

「かくして、勇者と姫は結ばれて、その仲間である騎士と魔法使いもそれぞれの道を歩き始めるのでした」
 めでたしめでたし。
 舞台の裏、着ぐるみたちの動きに合わせ、己が内に積み上げた御伽噺を読み終えたは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
 無数の拍手が舞台の向こうから聞こえてくる中で、無事に一つ目の演目が終わった事に息を吐く。
 そう。この舞台装置も、着ぐるみ――その中に入る演者――を用意したのも、全ては彼の手腕。
 この娯楽少なき世界に、少しでもそれを提供せんとその腕を揮った結果であったのだ。
「休憩を挟んでの次の演目は、槍に変ずる小竜従えた竜騎士の迷宮冒険譚。どうぞ、お楽しみに……」
 台詞回しにナレーション、鶯嬢も兼ねながら、それを可能とするは機械騎士である彼であればこそか。
「……ふぅ。これが人々の楽しみに少しでも繋がれば、喜ばしいことですね」
「うふふ~。きっと、そうなっていますよぅ」
「おや、ハーバニー様」
 そろりと舞台裏に入り込んだ兎が一人。
 それをセンサーで理解しつつも、今気づいたと言う風に応えるのはトリテレイアなりの冗句か。
「私も観ていましたけれどぉ、臨場感もあってぇ、皆さん惹き込まれてましたよぅ。それにぃ、今も次回を楽しみにと長蛇の列なのですぅ」
「おぉ、それが本当であれば嬉しい限りというものです。この刺激でプラントからの供給のみでなく、自分達でそれを生み出すようになって下さるでしょうか」
「それはこれからの、この世界の人達次第でしょうかぁ」
「私としては、そうなることを切に願うばかりです……ところで、ハーバニー様がこちらにわざわざと足を運んでくださったのは何かありましたか?」
 用もないのに、彼女がわざわざと姿を見せるとは思えない。
 だからこそとそう聞いたのだけれど、その瞬間、トリテレイアにはその電脳コアに走ったはデジャブ。
 前にも、彼女が、兎が駆け寄ってきた時があった筈だ。
 その時は、確か――。

「ええとですねぇ。劇の鑑賞をさせて頂いたのも本当なのですけれどぉ、こちらのお届けもでしてぇ」
 はい。と渡されたのは、紙きれ一枚。
 葉書にも似たそれには短く一言。
 ――キャバリアの使用方法について問いたきことあり。早急に連絡求む。
 
 ――確か、茨の迷宮に残したパーツの処理であったか。
 その予感に相違なく、彼女が手渡してきたメモを見れば、キャバリア修理工場からの呼び出しであった。
 トリテレイアのキャバリア――ロシナンテⅣは、先の戦闘で随分と無茶な使い方をしたもので、修理は大規模になると予想はされていた。いたけれども。
「早めの方がぁ、怒られるのは短くて済むかとぉ」
「……覚悟を決める他ありませんね」
 そんな修理――最早、オーバーホールといって差支えない――を要するようになるだけの使い方に、整備士からきっとお小言が待っていることだろう。
 急いで行きたい。行きたいけれど、次回予告もしてしまった手前、そちらを放置することも出来ずと板挟み。
 だから、彼はまるで戦場に立っているかのような悲壮籠った覚悟を決めるのだ。物語に登場した騎士のようにと。
「言伝を頼んでも宜しいでしょうか」
「はいはい、承りますよぅ」
「『次の演目終わり次第、すぐに参ります!』」
「うふふ~。なるべく、とりなしておきますねぇ」
「お願い致します」
 そして、そんな舞台裏を感じはさせないまま、開幕のブザーが再びと鳴り響く。第二幕の開演を、と。
 きっと、それが終わった後には再びの喝采があることは間違いない。ヒトビトの笑顔があることは間違いない。
 だけれど、整備場からはトリテレイアの無茶を心配しての怒鳴り声が響くこともまた、間違いのないことであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月10日


挿絵イラスト