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逝き去りし雪月花

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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「皆様お集まりいただきありがとうございます」
 大神・狼煙(コーヒー味・f06108)は集まった猟兵にアイスコーヒーを振る舞い、嫌な予感がして口にしないもの、意を決して口にすれば意外に香り高くゆっくり味わうもの、そして無警戒に飲んで撃沈するもの。多様な猟兵を前に眼鏡を押し上げたグリモア持ちが言うことには。
「満月の夜に雪兎を従えたオブリビオンが桜の木の下に現れる事が分かりました。目的は桜の枝を折ろうとした輩をぶっ殺すためです」
 じゃあそいつ止めればええやんって話になるのだが、そもそも勝手に桜の枝を折るような奴に「死にたくなければ枝を折るな」と言ったところで、別の桜の木に手を出すだけ。故に、一回死にかけなければ気持ちを入れ替える事はないだろう。
「まぁ、相手は家で病に伏せた親に桜を見せてあげたいお子様ですからね。適度に怖がらせて代わりのお土産でも持たせてあげれば勝手に帰ってくれるでしょうから、細かい事は気にしなくていいでしょう」
 問題は、その子ども一人を殺す為に雪のように白い兎の軍勢が迫ってくる事である。
「まずは季節外れのお花見をお楽しみください。そのうち雪っぽい白い兎がわんさか湧きますから、これをぶっ殺すなり鍋にするなり餌付けするなり、どうぞ。ほっといたらくだんの子どもはおろか、周りの民間人を肉団子にしてしまいますから、しっかりお願いしますね」
 稀によく見るヤベー兎だった。
「それでは皆様、ご武運を」
 胡散臭い眼鏡は転移門を開く。血と狂気の気配を感じて引き返してもいいし、ネタネタしていると信じて突っ切ってもいい。


久澄零太
ひゃっはー!!季節外れのお花見だぁ!!

若干テンションのおかしい久澄です

僕はもう疲れてしまったよイェーガー……

地雷を踏み抜きでもしない限りは『ネタ依頼』です


初回執筆は29日の予定

28の深夜までにプレくれると嬉しいな!!
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第1章 日常 『月見とうさぎとお団子と』

POW   :    数なんて関係ない。倒してしまっても構わんのだろう?

SPD   :    罠を仕掛けて分断し、各個撃破を狙う

WIZ   :    団子が欲しいなら食べさせてあげればいいじゃない。餌で誘惑

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

四季乃・瑠璃
UCで分身

瑠璃「この時期にお花見って変わってるね~」(グツグツと地獄の池の様な真っ赤な鍋を煮ている)
緋瑪「…瑠璃、それなーに?」
瑠璃「瑠璃特製の具材(とザ・ソース一瓶)たっぷり使ったチゲ鍋だよ。新鮮な兎肉も捕れるみたいだし、親思いの子にお土産で持たせてあげようと思って。病に伏せてる親御さんにしっかり栄養つけて元気になってほしいからね」
緋瑪「トドメさしちゃわないかな、ソレ…」
瑠璃「いっぱいあるから、猟兵のみんなも(勿論地の文も)たくさん食べてね!」(みんなに振る舞い、謎空間にも鍋を押し込む)

(緋瑪はにげだした)

緋瑪「最近涼しくなってきたし、お外でみんなで鍋っていうのも良いよね。…アレ?緋瑪~?」


筒石・トオル
もふもふは好きなんだけどね……流石にこの数はヤバイかな?

花見に団子は欠かせないよね。
沢山作って行って、他の人達と一緒に食べよう。
食べ物の匂いに釣られて来るかもしれないし、楽しく騒いでいれば油断するかもしれない。
※技能【料理・誘惑・だまし討ち】使用。
近付いてきた敵を『極楽鳥花嵐』で纏めて攻撃。
倒し切れなかったら、熱線銃で撃ち倒していくよ。

惜しいなぁ、数が少なくて凶暴じゃなかったら愛でまくるのに。


ミカエル・アレクセイ
此処は季節問わず桜が見れていいな
アイツが喜びそうだ
最も、アイツが好きなのは桜というより桜っぽい誰かさんだったがね…
やれやれ、勿体無え女が死んだもんだ…

んで、馬鹿な餓鬼が何するって?
桜は傷が入ると其処から腐るからなぁ…
造花とかでは駄目なのか……?

それはそうと兎か…鍋が美味しい季節になってきたな?
取り敢えずそうだな、もっと肥えろ
餌なら好きなだけ持って……集るな、他にも餌をくれる猟兵なら居るだろう
なついても無駄だ、俺は喰うぞ(ほしょくしゃのひとみ)


夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
取り敢えず、出発前にいただいたコーヒーに関しては横に置いておくことにしまして。
まずはお花見しましょうかぁ。

途中のお店で、『お弁当』や『お飲み物』を色々と購入して参りますねぇ。
この後で交戦になることを考えますと、少し『しっかりした品』をご用意しておきたいところですぅ。
不足しそうな分は『鞄』から探しますねぇ。

後はゆっくりとお花見をしつつ、件の『桜の枝を折りに来た方』を警戒しましょうかぁ。
【饒僕】を使用し『女神の僕』を召喚、見張りをお願いしますねぇ。
発見しましたら『僕』に話しかけて脅かしつつ時間を稼いでもらい、その間に駆けつけましょう。
間に合うと良いのですが。


アリス・トゥジュルクラルテ
同じ、兎、なので、悪い兎、放って、おく、ない、です!

わー!桜、綺麗、です…!
ロクローくん、たくさん、キャベツ、入った、荷車、引く、もらう、して、一緒、お花見、です。
枝、折る、子、いたら、守る、できる、ように、近く、いる、です。
兎、来る、したら、その子、結界術、守る、して、動物と話す、です。

キャベツ、あげる、ので、帰る、して、ほしい、です。
1枚、食べる、です。
うん、美味しい!
ところで、みんな、どうして、人、襲う、です?

説得、できたら、狙う、された、子、キャベツ、あげる、です。
野菜、体、良い、ですよ!家族、あげる、して、下さい!
説得、できる、ない、だったら、ロクローくん、食べる、もらう、です。


オーガスト・メルト
花見と言われてもな…この世界ならどこを向いても桜が咲いてて珍しくもないだろ。

【POW】連携・アドリブ歓迎
殺人兎ねぇ。また義妹が殺しにくそうなのが出てくるか。
アイツが新世界のマシンカタログ見てハァハァしてる間に俺が片づけておこう。
【八色鋼糸の蜘蛛竜】に命じて問題の桜の周辺に色んな属性の鋼糸を張り巡らす。
枝を折りにきた子供が引っかかっても大丈夫なように殺傷力は無しだ。
無茶苦茶に痛かったり熱かったり痺れたりはするが、怪我はしないんで問題ない。
ただし、兎たちがかかればその糸を媒介にしてUC【糸砦】を発動させる。
【罠使い】の【見切り】で取りこぼす事はないはずだ。
…味方が変な事しなければ、だがな。


涼風・穹
満月と夜桜の組み合わせというのもそれはそれで風情があって良いもんだ
サクラミラージュ以外では一年に一度しかお目にかかれないだろうしな
近所の茶店で購入した団子を食べながら暫くは季節外れの花見を楽しみます

兔は…一羽二羽なら兎も角大軍は怖いものがあるな…
……この肉食兎達に襲われると集られて少しずつ齧られて生きながら食われる事になるのか…?
そんな死に方は御免被りたいし此方を食べようというのなら遠慮なく多兔を返り討ちにします
《贋作者》で一部の世紀末な方やヴィランに人気な火炎放射器を模造、纏めて薙ぎ払います
飛んで火に入る秋の多兔、ってな
無益な殺生をするのもなんですので多兔の丸焼きは食べたい方にでも提供します



 サクラミラージュに広がる薄紅の華。その一つの下に、猟兵達と奇妙な代物が集う。
「この時期にお花見って変わってるね~」
「……瑠璃、それなーに?」
 四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)がゆっくりとかき混ぜる深紅の鍋の中身を前に、四季乃・緋瑪("1人で2人"の殺人姫・f09675)は半眼ジト目で十分な距離を取ったままに問う。なお、この二人は多重人格者の別人格。つまり同一人物であるため、緋瑪は瑠璃が何を作っているのか分からなくて聞いたというよりは、分かってはいるけど間違っていてほしいという切実な願いの下に質問を投げたのだが。
「瑠璃特製の具材たっぷり使ったチゲ鍋だよ。新鮮な兎肉も捕れるみたいだし、親思いの子にお土産で持たせてあげようと思って。病に伏せてる親御さんにしっかり栄養つけて元気になってほしいからね」
「トドメさしちゃわないかな、ソレ……」
 ここで唐突ながら、るりるりの三ターンクッキーング☆
「まずはお野菜だよね。後で兎肉が手に入るから、お野菜をたくさん使わないと……」
「ぴぃ!?」
 アリス・トゥジュルクラルテ(白鳥兎の博愛者・f27150)落ち着け、お前の肉じゃないから。
「白菜、ニラ、キノコ、春菊、お豆腐……この辺はまだわかるんだけどさ、なんで唐辛子と鷹の爪があるの?瑠璃絶対この後辛味調味料使うよね?」
 姉妹であるはずの緋瑪から「この人マジで何考えてるの?」って視線を向けられて、瑠璃はちっちっち、指を振ってこれだから素人はって顔を返す。
「今回使うのは例のソース(正式名称が商標登録っぽいから、この呼称から察してください)なんだよ?これから来るお子様とか、辛味に慣れてない猟兵のみんなとか、この前三途の川で舟が撃沈されて帰ってきた地の文とかに合わせた世界一『じゃない』辛さのソースなんだよ?」
「……だからなに?」
 まだ件のソースを使っていないにも関わらず、唐辛子をふんだんに使った事で既に辛さの権化と化している真っ赤な鍋を「うわぁ……」とドン引きして見つめる緋瑪へ、瑠璃ドヤッ!
「足りない辛さを他の辛さで補うことで、世界一に近い辛さを持ちつつも誰でも食べられるお鍋になるんだよ!!」
「……地の文、一つ言っていい?」
 どうした緋瑪?
「私、あんまり頭がいい方じゃないけど、それでも時々、瑠璃ってすっごいおバカなんじゃないかなって思うんだ……」
 安心しろ、お前は何も間違ってない。
「花見と言われてもな……この世界ならどこを向いても桜が咲いてて珍しくもないだろ」
 瑠璃が地獄の血の池めいたサムシングをかき混ぜる傍ら、猟兵側の真っ赤な奴、オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)はヘヴン状態になった妹(なお、血のつながりはないから実際には義妹らしい)の見るも無残な?姿を思い返す。
「殺人兎ねぇ。また義妹が殺しにくそうなのが出てくるか。アイツが新世界のマシンカタログ見てハァハァしてる間に俺が片づけておこう」
 恐らく、あの建築お嬢はヤベー薬でも打ったみたいにはぁはぁぐへぐへしてるんだろうな……それはさておき、オーガストは風の流れでも見るように指を立て頭上の花弁を示す。すると袖からメカメカしい蜘蛛がカサカサ……指先まで来ると尻を突き上げて、糸を出した。やがて風に運ばれて飛んでいく糸、それに引っ張られてそよ風の旅に出る蜘蛛……しかし、オーガストの指に残された糸が光を受けて煌めき、飛んでいった蜘蛛は彼と周辺地形を無数の糸でつなぎ合わせているようだ。
「何、単純な通電鉄線だ。怪我はしないが、生き物が触れれば派手な音はするし、地味に痛い。とりあえず罠だけ張っておけば何とかなるだろう……味方が変な事しなければ、だがな」
 遠い目をして、くいっと逆の手の親指で後方……魔女の劇薬作りかな?って状態の瑠璃を示すオーガスト。まぁ、十中八九何かやらかすだろうね!
「満月と夜桜の組み合わせというのもそれはそれで風情があって良いもんだ。サクラミラージュ以外では一年に一度しかお目にかかれないだろうしな」
「花見に団子は欠かせないよね。たくさん作ってきたからどんどん食べて欲しいな」
「それはありがたいんだが……」
 怪しい練成儀式や、張り巡らされた糸にフクロウがずらりと留まって、開いた口が塞がらないオーガストを放置した涼風・穹(人間の探索者・f02404)と筒石・トオル(多重人格者のマジックナイト・f04677)は二人で団子を頬張っているのだが。
「なんでそんなに距離があるんだ……?」
「ソーシャルディスタンス」
 などと供述しており……いや冗談は置いといて。トオルは人を警戒する癖があるからじゃないかな……。
「なんで俺が?さすがに野郎に手を出す趣味はないぞ!?」
 うるせーお前らのフレンドリストにはお互いが載ってない(メメタァ!?)からきっと仲間ですらない扱いなんだよぉ!!
「ひ、人付き合いは……苦手だから……」
 なんかヤバいお兄さんと組まされてしまったなぁって顔でそっとそっぽを向くトオル。その視線はずらりと並んだモフみ、フクロウを見つめて。
「うちの子たちが申し訳ありませぇん」
 ガラゴロガラゴロ、フクロウを呼び出した張本人こと夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が荷台と共に到着。引っ張ってきた中身は大量の弁当と飲料……信じられるか?これ、るこる一人で食うんだぜ……。
「るこる、さん、お腹、空く、すごい、です?」
 相棒の白いワニに、荷車いっぱいにキャベツを詰め込んで運ばせてきたアリスが首を傾げると、るこるは苦笑して。
「私は戦い方にもよりますがぁ、魔力の代わりにカロリーを消費しますからぁ……この後の事を考えると、できる限り食べておきたいのですぅ」
「かろ、りー?」
 動き回って戦うんだから、カロリーを消費するのは当然といえば当然。るこるの場合は食事でため込んだカロリーに比例して戦闘能力が変わったりするのだが、実際の光景を見たことがないアリスは。
(お姉ちゃんみたいな戦い方するのかな……)
 服を脱ぎ捨てて高速機動を展開したり、肉体をアニマルにして神速の一撃を放ったりする、ウサネコな姉をイメージするのであった。いや確かにカロリー消費しそうだけども、そういうことじゃねぇぞこいつの場合は!?
「此処は季節問わず桜が見れていいな。アイツが喜びそうだ」
 団子を頬張る穹と弁当をかきこむるこるに挟まれて、退路を失ったトオルが追い詰められた猫のように震える様を横目に、ミカエル・アレクセイ(山猿・f21199)は黒い着物に青い羽織を肩にかけ、袖内に手を隠す形で腕を組み風に揺れる桜を見上げる。
「最も、アイツが好きなのは桜というより桜っぽい誰かさんだったがね……やれやれ、勿体無え女が死んだもんだ……」
 目蓋を降ろし、吹き抜けるそよ風が運ぶ桜の香りに、当時を振り返るミカエル……だったんだけど、まぁこの手の依頼でそんな感傷に浸る暇なんてないよね!!具体的には。

 バサバチグァバブショワァアアア……!

「きゃぁああああああああ!?」
「……風情もへったくれもないな」
 響き渡るお子様の悲鳴に、ミカエルはめんどくさそうに、実にめんどくさそうに(大事なことなので二回言いました)、瑠璃に追い詰められたお子様の救助に向かう。そうだ、何がどうしてそうなったのか分からない人の為に、今の一瞬をリプレイしておこう。


「お母さん、桜を見たら元気になるかな……」
 宴会しているのかな、と勘違いするほど騒ぎ立てる猟兵達。その一団に見つからないよう、反対側から回り込んだお子様は低い位置に伸びた枝を狙う。しかし、低いとはいえ大人ですら手を伸ばして届くような位置ではない。まずは木に登ろうと近づいた瞬間、バサバサバサバサ!
「ひぇっ!?」
 電線にカラスの集団が留まってるノリで無数のフクロウが羽休めしていたが、子どもを発見した瞬間一斉に飛び立った!しかもそれがお子様に向かってフライング!!迫りくる羽音に腰が抜けてしまった子どもは通り過ぎていくフクロウの群れに煽られてフラフラ……周りに張り巡らされた電線に触れてしまい、バチィ!!
「ひゃんっ!?」
 激烈な静電気染みた衝撃にビックゥ!?弾かれるように飛び跳ねてしまったのだが、その飛びのいた先で木の陰からでっかい白鰐がこんにちワニ。「なんじゃワレェ、桜に手ェ出す言うんなら食い殺してまうぞオラァ」みたいな顔で顎をガパァ。
「きゃぁああああああああ!?」
 驚愕と恐怖が入り乱れてペタン、かーらーの。
「み ぃ つ け た」
 いろんな意味でトドメの瑠璃である。
「大丈夫だよ、怖くないよ、食べればきっと元気になるよ……」
 ぐつぐつ、煮えたぎる鍋の中身はどう見ても人の血と見まごう鮮やかすぎる赤。お肉の入っていないその鍋は、自分を最後の食材として待ち構えているようで……。
「ごめんなさい、お母さん。私はもう、帰れないかもしれません……」
 絶望のあまり、年端もいかぬうちに自らの最期を悟った。


「完全にビビっちまってるじゃねぇか」
 一周回って諦観の表情で夜桜を見つめるお子様を前に、ミカエルは瑠璃の頭を掴んでブレーキ。
「なーにーすーるーのー!?」
「いや瑠璃、さすがにこの状況でその鍋は私もないと思うよ……?」
 緋瑪に瑠璃と危険物を押し付けて、ミカエルはへたり込んだ子どもに目線を合わせる。
「んで、馬鹿な餓鬼が何しようとしてんだ?」
「え、あの、お母さんに、桜の枝を……」
 ミカエルは微笑んだつもりなのだろうが、普段自堕落な分、こういう時笑うと影ができる顔を前に泣き出した子どもを眺めてため息を一つ。
「桜は傷が入ると其処から腐るからなぁ……造花とかでは駄目なのか……?」
「私、お金持ってなくて……」
「だからって桜の枝を折っていいと思ってるウサ!?」
 突如響く奇妙な声に、ビクッと震える子どもを背に庇うミカエル。振り返れば迫りくるはウサギの軍勢。
(今の声は上か……?どこかで見てる奴がいるな)
 しかし、その姿を確認する余裕はない。目の前には雪崩と化した白い兎が迫っているのだから。
「とりあえず、避難しちゃいましょうねぇ」
「あーれー!?」
 るこるが指を鳴らせば、飛び立っていったフクロウが帰ってくる。再びお子様めがけてバードタックル!からの、服を掴んで夜空の彼方へ……。
「……あれ、大丈夫なんだよな?」
「あのフクロウさんたちは女神様の僕ですぅ。もちろん、人類に仇なすような事はしませんよぅ」
「避難、終わる、したです?同じ、兎、なので、悪い兎、放って、おく、ない、です!」
 守る必要がなくなったことで、アリスはロクローくんこと白鰐を前へ。昔話のように兎の皮をはぎ取らせるのかと思いきや。
「ロクローくん、お願い、する、です!」
 ワニが引っ張ってきた台車を尻尾でバシーンッ!横倒しになった荷車から転がり散らばっていくのが、キャベツ。最近相場が安定しなくて高騰するキャベツをゴロゴロと……UDCアースでやったら怒られそうな大胆な作戦に!!
「キャベツ、あげる、ので、帰る、して、ほしい、です。一枚、食べる、です」
 転がるキャベツに、ウサーッ!と群がる兎の群れ。一羽一枚とはいえ、瞬く間に消費されていくキャベツを横に、もっと寄こせとアリスの前で鼻をぴすぴす鳴らす兎。
「ところで、みんな、どうして、人、襲う、です?話、する、くれたら、もっとあげる、です!」
 荷車から転がり切らなかったキャベツを掲げるアリスが交渉に臨むと……。

 ※ここからはアリスによる兎語の翻訳と合わせてご覧ください。

「襲うだと?我々は人間を襲うなんて無益なことはしない」
「そう、これはただの『食事』だ」
「貴様ら人類が、野山で平穏に暮らす我々を、狩りなどと称して弄ぶのとはわけが違う!」
 この兎ども、結構お怒りですね。
「兎さん、人類、嫌い、です?」
「当たり前だ!我々とて、ジビエとして美味しく頂かれるのなら納得もいく」
「全ての生き物は、他の生き物を殺して食う。それが自然の摂理というものだ」
「だが貴様ら人間はどうだ?我々を売り物にするためにむやみやたらと殺しては、皮をはぎ、肉を捨てて……!」
「せめて食えよぉ!殺したんなら食ってくれよぉ!!俺たちの命が無駄になるだろうがよぉ!!」
 人類のエゴを見てしまったアリス、一瞬、遠くを見つめてから。
「はうぅ」
 ぷしぅ、思考回路がショートした!
「えっと、兎さん、食べられる、仕方ない、だから、人、食べる、でも、人、傷つける、よくない、けど、兎さん、お腹すく、だから、仕方ない……?」
 何が正しくて何が間違っているのか、アリスの頭では処理しきれなかったようだ。放熱の為に、うさ耳から白煙を上げるアリス。おめめがぐるぐるし始めた彼女に穹が問う。
「で、兎はなんだって?」
「美味しく、食べる、欲しい……?」
 よりによってそこ拾っちゃった!?口下手なアリスだから仕方ないといえば仕方ないのだが、猟兵達の反応は。
「もふもふは好きなんだけどね……流石にこの数はヤバイかな?」
 そもそもモフみに意識を取られて話聞いてないトオル。
「一羽二羽なら兎も角、大軍は怖いものがあるな……この肉食兎達に襲われると集られて少しずつ齧られて生きながら食われる事になるのか……?そんな死に方は御免被りたいし此方を食べようというのなら遠慮なくやらせてもらおう……!」
 人を食おうとしてるっていう事前情報と照らし合わせて、臨戦態勢に入った穹。そして。
「じゃあお望み通り兎鍋だね!!」
「うわぁ……」
 テンション大爆発の瑠璃と、冷え切ってお団子食べてる緋瑪。戦闘開始でーす。
「それはそうと兎か……鍋が美味しい季節になってきたな?取り敢えずそうだな、もっと肥えろ、餌なら好きなだけ持って……」
 兎用に持ってきた野菜を広げるミカエルに、兎の目がキュピーン。
『飯だぁああああ!!』
「足りない!!」
「もっと寄こせやおらぁあああ!!」
 一瞬にして食い尽くした兎が、ミカエルを襲う!!
「集るな、他にも餌をくれる猟兵なら居るだろう。なついても無駄だ、俺は喰うぞ」
 言ってる(鳴いてる?)事は分からないが、敵意めいた何かということは何となく察したミカエル。捕食者の眼で兎を見つめると、左右にコンテナが落ちてくる。
「何言ってるかよくわからん奴には、意味の分からねぇ奴をぶつけるのが定石ってな」
 ドアバァン!からの飛び出して来たのは。
『にゃっはー!!』
 大型バイクに乗った、総勢百六十三匹の赤目黒にゃんこ×二台。なお、一匹だけ乗り損なってミカエルヘッドにライドオンしたのはご愛敬。
「うさぴょん共を根絶やしにするにゃー!」
「おめーらのうさ耳、爪とぎダンボールみたいに穴だらけにしてやるにゃー!」
「ぴぃ!?」
 だからアリス、お前のことじゃねぇって。
「惜しいなぁ、数が少なくて凶暴じゃなかったら愛でまくるのに」
 ルーンが刻まれた長剣を取り落すトオル。その切先が地面に触れた途端、剣は砕け散り、空を舞う鳥を模した花弁に姿を変えて、渡り鳥の如く戦場を駆ける。
「せめてゆっくり眠ってもらおう……」
 モフモフへの愛を込めてか、トオルの放つ花吹雪は兎の群れをすくい上げるようにして上空へ。巻き上げられた兎は落下して、苦しむ前に最期を迎え……。
「よし、ナイスパス」
 る前に、オーガストの張り巡らせていた糸が収束。
「この周囲一帯に広げていたんだ……取りこぼしはしない」
 宙を舞う兎の群れを蜘蛛の巣が取り込み、されどその糸ははたんぱく質合成物ではなく、金属繊維。
「じゃあな!!」
 別れの一言と共に兎の群れが一瞬にして小間切れに。えって顔したトオルだったが、猟兵のターンはまだ終了していないぜ!
「飛んで火に入る秋の多兔、ってな」
 穹が腰を落とし、両腕の肘を曲げて構えれば、生成されたのは機関砲。しかし、接続されたのは弾帯ではなく、背負った大型タンク。
「オブリビオンは焼成だァ!!」
 噴き上げられるのは灼熱の酸化現象。両手に構えた火炎放射器から噴き出す業火が兎を瞬く間にバーベキュー。落下する焼肉へ向かって。
「緋瑪!今だよ!!」
「これ私が動く意味ある……?」
 瑠璃が鍋を構えてサッ、ササッ、サササッ。真っ赤な鍋に肉が沈み、調理が完了。
「チゲ鍋完成!!いっぱいあるから、猟兵のみんなもたくさん食べてね!」
「お鍋ですかぁ?」
 瑠璃が掲げる鍋を、るこるがパク、もぐもぐ……。
「……独特なお味ですねぇ」
 ふるふる、あまりの激辛具合に震えながら、必死に笑顔を作るるこる。それを美味しさゆえと勘違いした瑠璃が目を輝かせて他の猟兵に迫る!
「……おっと、次のお客に備えるか」
 死を予感したミカエルがすっと物陰消えて。
「野菜、体、良い、ですよ!家族、あげる、して、下さい!」
 アリスは遠方に避難させられていた子どもにキャベツを届けに遠征中。
「あ、僕はお団子でお腹いっぱいだから」
 トオルはナチュラルに回避。
「そっかー。じゃあ、まだ余裕がありそうな人だけでも、最近涼しくなってきたし、お外で鍋っていうのも良いよね……アレ?緋瑪~?」
「そっと、そぉーっと……」
 おっと、どこに行こうというのかね?
「ひぃえ!?」
 逃走を試みる緋瑪を確保!テメェ逃げられると思ってんのかあぁん?
「私は甘党なんだってばぁ!!」
「あ、地の文も食べるよね?」
 やっべ逆にマークされた!?
「……おい」
「あぁ、分かってる」
 オーガストと穹は頷きあい。
「「逃げるっきゃねぇ!!」」
「待ってー!おいてかないでー!?」
 猟兵達が一斉に逃げ出すと、一片の曇りもない善意満開の笑顔を浮かべた瑠璃が鍋を抱えたまま。
「みんなー!ご飯だよー!!」
 こんな時ばかりやたら足が速く、凄まじい勢いで猟兵を追い回すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ルールー』

POW   :    るーるるーるるーるるー
単純で重い【シャベル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    るーるるるーるる
【死者の国の王の力】を籠めた【シャベル】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【猟兵としての在り方】のみを攻撃する。
WIZ   :    るるるるるるる
戦場全体に、【骸骨】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「うわぁあああ!来るなぁああああ!!」
「その鍋、明らかに猟兵ですら食えるか怪しい色をしてないか?」
「ていうか毎回犠牲者出してない!?」
「大丈夫だって、ちょっとピリ辛なだけだって!!」
「るーるー」
 逃げる猟兵、追う辛党。壮絶な鬼ごっこを横目に。
「モフモフ……」
「兎さん、難しい、問題、だったです……」
「るー?」
 兎を想い、満月を見上げる猟兵に肩ポムしてみたり。
「うぅ、まだ口の中がひりひりしますぅ……」
「るるー」
 涙目の猟兵にお茶を差し出してみたり。
「で、お前ら何してんだ?」
「るるっ!?」
 すっげーナチュラルに一団に混ざってたから、逆にツッコミがあったことに驚くオブリビオン。
「るーるー、るるー!」
「……駄目だ何言ってるかさっぱり分からねぇ」
 記録閲覧者にも意味が分からないと困るため、最後の一言を翻訳しておこう。
「桜の根元には死体が埋まっているもの……桜に仇なす者共め、お前たちも埋め立ててやろう!!」
 思いっきり敵でしたね。

※次回執筆は十月二日の予定。一日の深夜までにプレくれると嬉しいな!あ、全く関係ないけど、一日は十五夜らしいから満月に絡みそうなプレだったらボーナスが……え、ネタ依頼にそんなもん関係ない?そっかー。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
出遅れたので指定UCで満月から降臨。ピンチの者?そこに問題児に頭抱える担当官(地の文)がおるじゃろ?
狂言回し。あると嬉しい舞台装置。
収拾がつかなくなった時のデウス・エクス・マキナ。
猟兵としての在り方をざっくりやられたので異端の神『夜(デモン)』としての性質で動いています。

ごにゃーぽがごにゃーぽなのでごにゃーぽにしてごにゃーぽごにゃーぽそれはごにゃーぽなのですべてはごにゃーぽでしかしてごにゃーぽなればおそらくはごにゃーぽたりえやがてはごにゃーぽにいたりかくしてせかいはごにゃーぽにみたされるでしょう。
え?私が一番の問題児?はは、何をおっしゃるやらご自由に


四季乃・瑠璃
瑠璃「あれ?顔白いし、寒いのかな?それに、身体細いし、栄養足りてないみたい。そんな貴女にはこの鍋が最適!身体も温まるし、栄養も摂れるよ!ほら、食事の時間だからそんなの置いて座ってね~」(いつの間にかルールーの背後からシャベルぽいっと。一般人と勘違いして善意100%でお鍋を食べさせる)
緋瑪「瑠璃ー、その子、人じゃないよー」
瑠璃「みんな酷いよね~。折角作ったお鍋から逃げるなんて…」(ぐすん)

暴れ出したら【クリエイト】で捕獲用ドローンを生成。敵(も味方も)捕まえて鍋へ

緋瑪「ちなみに、わたし達って仇成すどころか枝を守ったのになんで襲われるのかな?おかしくない?」(ボムで迷路破壊)

※細かい諸々はおまかせ


オーガスト・メルト
るー?何言ってるか分からんが、さっきの少々あざとい喋り方のやつとは別の敵か。

【SPD】連携・アドリブ歓迎
とりあえず、デイズ、ナイツ、周辺警戒!敵も味方も含めてヤバそうなものは回避するぞ。
『うきゅー!』『うにゃー!』
俺自身の【見切り】と召喚した【竜鱗飛甲】による【盾受け】にUC【トライリンクモード】も併用しておこう。
攻撃は【焔迅刀】で斬りながら【吹き飛ばし】を入れる。
…今回のメンバー的に上空の警戒も忘れずにな。
いざとなったらナイツに【騎乗】して【ダッシュ】で逃げる。

激辛無効化用としてスキットルにスピリタスも入れてきたが…これを敵にぶっかけて燃やすのもありかな?骨みたいだし。


ミカエル・アレクセイ
暴れると桜の木が痛むぞ…

そういやぁさっき何か変な声したな…
そっちを警戒しておこうかな
嫌な予感半分、後はま、懐かしい予感だが

言っとくが、俺だって桜を痛めるのは好きじゃねぇんだぞ?
俺が使えるユーベルコードなんざあれ由来の物騒なもんなんだから…
あとルールーうるせぇな調子狂うんだよ
おっと八つ当たりしたら人生の迷路かな???出口は勘で何とかするか…
迫ってきた奴等は猫が何とかするだろ
閉じ込められたんなら遠慮なくぶっ放せばいいんじゃないのか?
傷つくのも無いんだし

長年指揮の位置に立ってたのに統率出来る気がしねぇよフッシギー


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
一体何を仰っているのか解りませんねぇ?
これは私も着ぐるみに着替えて、何を言っているか解らなくする流れです?

何かに止められた気がしますから、一旦それは横に置いておきまして。
【白翼衣】を使用し飛行し『シャベル』の届かない高さに配置、摂取した『カロリー』を『F●S』3種に充填し強化しますねぇ。
『FSS』は『桜』が近くにあるなら『流れ弾』等の対策に其方のガードに、無ければ通常の防御に使いつつ『FRS』の[砲撃]と『FBS』の斬撃でお相手しましょうかぁ。

ところで『鞄』にも『言語が自動的に変換される以外強化効果の無い着ぐるみ』なら入っておりますが、『うさぐるみ』あたりに着替えても?


筒石・トオル
【SPD】
もふもふ出来なかったのは悔やまれるけれど、気持ちを切り替えてちゃんとお仕事しよう。幸い危険な食べ物に巻き込まれずに済んだしね。
敵の攻撃は【視力・第六感・見切り】で回避。
更に『オルタナティブ・ダブル』で上空に移動。ちょうど満月を背にする形で。周囲を見回しても当然居ないわけで…ただ影は映るから気付かれるかもしれないけど、その前に急降下して、重力をプラスしたルーンソードをその身に喰らわす。【早業】使用。
余裕があれば熱線銃で【援護射撃】して仲間のフォローするよ。
無理矢理食べさせられたアレで本調子じゃない人もいるかもしれないし。
僕はスルーしたから無傷だけどね。


アリス・トゥジュルクラルテ
そう、です、よね…。
食べる、したい、時に、食べる、悪い、ない、です。
お腹、空く、辛い、です…。
…わかった、です!
兎さん、ロクローくんと、一緒に、悪い人、食べる…あれ?もう、いる、ない?

るるるー?
歌う、してる、です?
じゃあ、アリス、愛聖歌で、浄化、できる、ないか、試す、です!
アリスたち、桜、傷、つける、ない、です!って祈り、込める、して、歌う、です。
歌う、間、ロクローくん、守る、もらう、です。
一般人、近く、いる、だったら、結界術で、守る、です!
浄化、できる、ない、だったら、ロクローくん、食べる、もらう、です。
(骨まずい。肉食いたい。という目のロクローくん)


水島・可奈
実際桜の木の下に埋めても構わないよとかいうミームこそあるものの、桜はちゃんと鑑賞したい派で折るなんて論外と個人的には思うというか…月に叢雲花に風と思うたちというか…(金属シャベル持ちながらしれっと混ざっているかも)
え?ダメ?なんかパーフェクトコミュニケーション取れるかと思ったんだけど無理かー。オブリビオンだから無理かー。そっかー。

おっけー、じゃあ消えちゃえ(地面に突き刺したシャベルに銃弾を当てて反射銃撃で攻撃)

ああ、今日はこんなにも、月が、綺麗ーーあ、これ言うならボス戦とかさっきの子供たちへの脅しの時の方がよかったかな?(申し分程度の満月要素)


涼風・穹
ルールーなら掘り出す方で埋める側ではないだろう
銀誓館学園…ではないけど一介の学生として、これ以上の犠牲者を出させる訳にはいかないな
起動!(イグニッション!)と戯言を吐きつつ《贋作者》で大剣を模造
大剣の重さも利用してシャベルごと斬る勢いで振ります

シャベルとの鍔迫り合いのような状況になれば足払いを狙ってみます
骨の足で踏ん張りが効くとも思えませんし、下半身が軽い骨だけで上半身には肉があって手に重いシャベルを持ったりすれば身体の重心のバランスも悪そうだしな
……まあ常識を無視するオブリビオンも多いけど…

猟兵としての在り方が破壊されればおっぱいダイバーになるとか、逆に真人間になったりする…のか…?(適当)



「るー?何言ってるか分からんが、さっきの少々あざとい喋り方のやつとは別の敵か」
 オーガストは素早く後退。その両肩から白黒二匹の饅頭生物が飛び立つ。
「とりあえず、デイズ、ナイツ、周辺警戒!敵も味方も含めてヤバそうなものは回避するぞ」
『うきゅー!』
『うにゃー!』
 ここで敵も味方もとか言うあたり、彼も大分ネタに染まりつつあるのかもしれない。
「はっはっは、ネタに染まろうが染まるまいが、確実に痛い目に遭うのなら、それを回避しようとするのが人の心というものだ」
「ルールーなら掘り出す方で埋める側ではないだろう」
 シャベルをぶん回す半白骨化した少女を、半眼で眺める穹は懐から一枚のカードを取り出した。
「銀誓館学園……ではないけど一介の学生として、これ以上の犠牲者を出させる訳にはいかないな」
 裏向きだったカード。翻せば描かれるのは武装した穹の姿。
「るーるー」
 シャベルの先端で穹の心臓を狙い、白骨少女が迫りくる。されど男は引かず、叫ぶのだ。それは、死と隣り合わせの青春を過ごした若者たちの、覚悟と犠牲の象徴。
「起動【イグニッション】!!」
 紡がれるそれは赤き運命の糸。過去に縛られた怨霊、その縁を断ち、未来を紡ぐために結ばれゆくその姿は大剣。
「さぁて、鈍器対決といこうじゃないか……!」
「るー!」

 ッガァン!!

 衝突した二つの金属。地面を抉るために鋭角的なデザインをしつつも、その力の伝達を効率化された鈍器。切れ味を捨てて、多量の金属を繋ぎ合わせて鍛えることで、硬度と重量による圧壊を目的とした鈍。二つの切れ味持たぬ得物がぶつかり合い、月光照らす中、薄紅の花弁に深紅の斬光を散らす……信じられるか?このシーン、バトルに見せかけて分かる人にはわかる盛大なネタシーンなんだぜ……。
「そう、です、よね………食べる、したい、時に、食べる、悪い、ない、です。お腹、空く、辛い、です……わかった、です!兎さん、ロクローくんと、一緒に、悪い人、食べる……あれ?もう、いる、ない?」
 今の今までずっと考え事してたアリス。きょろきょろ、兎がいなくなっていることに気づいた瞬間、先ほどの金属音が、兎なお耳をダイレクトアタック!
「ぴぃ!?」
 突然の衝突音にびっくりしたアリスが耳をふさいでしゃがみ込み、ぷるぷる。
「大丈夫?お鍋食べる?」
「い、いる、ない、です……!」
 心配そうな顔して、地獄の色彩を放つ鍋を差し出す瑠璃。彼女(ていうか鍋)を自らが危険だと認識するよりも速く、生存本能が運動神経を刺激して距離を取らせた。
「不人気だなー……美味しいのに」
「それを美味しいと感じられるのは瑠璃だけなんだってばー……」
 今までずっとそばで見ていたはず緋瑪ですら、危機感を覚えて身震いするレベルの瑠璃鍋。自分で一口食べて、心底不思議そうに首を傾げる瑠璃を隙だらけと判断してか、白骨少女がスコップを振りかざした途端、瑠璃が憐れむような目に。
「こんな子どもまで働かされるなんて……これもこの世界の時代のせいなんだね……」
 スコップ持ってたから炭鉱労働者か何かと勘違いした瑠璃は、振り下ろされるスコップをすり抜けると白骨少女、ルールーを抱きしめ頬を撫ぜる。
「顔白いし、寒いのかな?それに、身体細いし、栄養足りてないみたい。そんな貴女にはこの鍋が最適!身体も温まるし、栄養も摂れるよ!ほら、食事の時間だからそんなの置いて座ってね~」
「瑠璃ー、その子、人じゃないよー」
 スコップを横に突き立てて、レジャーシートにルールーを座らせるなり手に箸と茶碗を持たせて鍋を注ぐ瑠璃。緋瑪は警告したいんだけど近づきたくはない、というジレンマで揺れながらとりあえず声をかけているものの、自分の世界に入ってしまっているのか、瑠璃にその声は届かない。
「みんな酷いよね~。折角作ったお鍋から逃げるなんて……あ、でも美味しくないわけじゃないんだよ!むしろ美味しくできてるからね!!」
 ぐすん、涙を拭う瑠璃に押し付けられた鍋を見つめて、ルールー達はお互いを顔を見合わせる。
「るー?」
「るーるー」
 鍋を渡されてしまった個体が、毒見薬として食べる事が決定したらしい。
「るるー」
 ぱくっ、ぼんっ!どさっ……。
「あれ?お鍋熱かったかな?」
「あまりの辛さに倒れちゃったんだと思うよ!?」
 一口食べただけで小爆発を起こし、ぶっ倒れたまま涙と白煙を垂れ流しにするルールー。
「るーるー!?」
「るー!……るー?」
 倒れた個体を抱き起し、揺さぶって語り掛ける個体に周りのルールーがスコップを振りかざす。
「え、あれなんで!?スコップ持ってるーるー言ってたらパーフェクトコミュニケーションじゃないの!?」
 やたら肉付きのいいいルールー、ていうかまだ生きてる水島・可奈(姉を名乗る聖職者のフリをした不審者・f01117)が、自らに迫る危機を前に慌てて距離をとった。抱いてたルールー?地面に投げ出されて顔面からゴッ!
「オブリビオンだから無理なのかなー……っていうか、今私の称号おかしくなかった!?」
 うるせー!新世界も出たばかりの今日この頃、こんなネタ依頼に来てる時点で貴様も救いようのないネタ枠なんだよぉ!!
「うそだー!私はまだシリアスなんだァー!!」
 両手で耳をふさぎ、残酷な現実から目を背けて頭を振る可奈。その様子を眺めていたるこるが首を傾げて。
「一体何を仰っているのか解りませんねぇ?これは私も着ぐるみに着替えて、何を言っているか解らなくする流れです?」
 るーしか言えないオブリビオンに、意味不明な発言を繰り返す水島・可奈(少女自由に夢幻を掴め・f01117)。
「意味不明なんかじゃない!あ、待って。カメラさん待って!私の発言をスルーさせないで!!」
 二種類の謎言語で混沌としてきた現場でるこるは首を傾げるが、頼むからやめろください。ここでかもかもしか言えない奇人が増えたりしたらマジで収拾つかないし、後で見返した時用に翻訳が必要になってくる。
「えぇー……では大人しく、砲撃戦しておきますねぇ」
 白い闘気の翼を広げてるこるが飛翔。上空から戦場を俯瞰すると、ミカエルと目が合った。
「そういやぁさっき何か変な声したな……そっちを警戒しておこうかな。嫌な予感半分、後はま、懐かしい予感だが」
 恐らく先ほどの『声』は桜の花弁を遮蔽物にして、木の上に潜んでいる。ならば、下手に飛行戦に持ち込むのは死角からの一撃を警戒する必要性が出てくるのだが。
「まぁ、その時はその時で、それこそ俺が対処すればいいか」
 フッと笑って、視線を外したミカエルの意図を図りかねたるこるが首を傾けるが、今は戦闘中。味方の不思議な行動にまで気をかける余裕はない。
「スコップが武器なら、上空からの一斉射撃でお相手しますぅ!」
 るこるの左右に八台ずつの浮遊砲台。自身の両腕に搭載した砲門も構えて。
「全員纏めて薙ぎ払いますぅ!!」
「おっと、やはりこうなるか」
 真下に向けて砲撃を開始し、空間を舐めとるような絨毯砲撃。回避しようにも戦場全域を薙ぎ払う砲撃とあっては回避も何もない。まぁ……。
「デイズ、ナイツ、集中防御!!」
「ちょ、待て待て待て待て!?」
 オーガストは陰陽盾を重ねて砲撃を反射し、穹はルールーからバックステップ。スコップの射程から離れてから大剣を斜に構えて砲撃をいなす。まぁ、敵味方入り乱れる場所で砲撃なんか叩き込んだらそうなるわな。
「もふもふ出来なかったのは悔やまれるけれど、気持ちを切り替えてちゃんとお仕事しよう。幸い危険な食べ物に巻き込まれずに済んだしね」
 などと冷静に気を持ち直している頃がトオルにもありました。武器を構えてルールーと対峙した途端に後ろから聞こえる悲鳴と轟音。
「えっ」
 振り向いたら、戦場を焼きながら迫る砲撃の雨。
「なんで!?」
 分身して跳ぶと、現れたもう一人の自分に両手を組ませ、それを足場にしながら投げ飛ばしてもらい、空高くへ跳躍。月を背にして砲撃をやり過ごし、大急ぎで穴を掘り、地下へ退避していた敵の再出現を確認。
「こっちに気づく前に……!」
 頭を下に、切先を大地に。月光を遮る影は獲物を見据えるターゲットサイト。色素のない肌をした少女が空を見るが、もう遅い。その口に飲み込まれた刃は喉を貫き、途中から妙に感触が軽くなる。肉を穿ち、骨しかない下半身に到達した瞬間に足を振って着地姿勢を取りながら剣を返し、肉の残る上半身を引き裂いた。
「無理矢理食べさせられたアレで本調子じゃない人もいるかもしれないし……」
 霧散していく敵を見送り、刃を振るって血を払うと鍋の被害者を見遣ろうとするが。
「るーっ!?」
「大丈夫!一口、一口だけ食べたらこの美味しさが分かるから!!」
 浮遊するアームに四肢を捕まれた個体に、瑠璃が真っ赤な鍋を食べさせていた。もちろん、口にしたルールーは火炎放射器と化して灰と散る。
「私ね、瑠璃って実は爆弾より強烈な武器を持ってると思うんだ……」
「お団子、食べる?」
 遠い目をする緋瑪へ、トオルは甘いお団子を差し出して労うのだった。
「るーるー!るるー!!」
 さぁて敵さんの反撃タイム。荒ぶる猟兵に大体滅ぼされたルールーもこのまま終わってなるものかと、戦場全体を白骨による迷宮で飲み込んでしまう。厄介なのは、生き残った自分たちも取り込んで、この迷宮そのものが巨大なルールーと化していることか。
「おいおい何の冗談だ、これは?」
 るーるーるるーるっるるー……壁から床から天井から、ルールーの声が響き渡る狂気の白骨迷宮の中。大剣を構えて咄嗟に振り向き、背後に出現したルールーと鍔競り合う。
「あっぶねぇ……!死角からはさすがに卑怯だろう!?」
 得物の重量で押し返し、骨しかない脚部を蹴り飛ばして体勢を崩したその時、背後から肉体を穿つ激痛に襲われた。
「ガッ……!」
 されど血は流れない。肉体の形状はそのままに、猟兵としての根幹のみを破壊する一撃。オブリビオンを倒すという義務感を失い、人々を守るという正義感を失い、UCの維持が解けて大剣が崩れ去る。勝利を確信したルールーがスコップを引き抜き、頭蓋をたたき割ろうとスコップを振るった……しかぁし!!
「ヒャッハー!おっぱいだぁ!!」
「るぅううううううぅうぅうぅううううう!?」
 カチ割ろうとした頭蓋でむしろスコップをへし折られたばかりか、煩悩の権化と化した穹に押し倒されたルールー。ノースリーブのワンピース、その袖口から手を差し込まれて上半身に残っていた『肉』を撫で回されては揉みしだかれて。
「る……る……」
 じたばたじたばた、びくっ、びくっ……ぱたっ。
「るー……!?」
 先に穹に倒されていた個体は、目の前で痙攣しながら舌を伸ばし、白目をむいて崩れ去っていった同胞を目の当たりにして、違う意味で身の危険を感じた。気づかれないよう、ゆっくりと床を這って逃げようとして、足の骨を掴まれた感触に振り向けば。
「へへへ……どこへ行こうというのかな?」
「るーるー!?」


「言っとくが、俺だって桜を痛めるのは好きじゃねぇんだぞ?俺が使えるユーベルコードなんざあれ由来の物騒なもんなんだから……あとルールーうるせぇな調子狂うんだよ」
 穹が敵のUCの前に撃沈した(あと、物凄い暴走してる)頃、ミカエルはるーるー響く迷宮の中、鬱陶しそうに頭をかく。その背後からスコップが振り下ろされるが。
「おっと八つ当たりしたら人生の迷路かな?」
「るっ!?」
 スコップの柄を掴み受け流しながら相手を引き寄せて顎に膝蹴り。武器を投げ捨てながら肩と腕を掴んで背負い投げると、頭から床に叩きつけて顔面を破砕する。流れ作業のように片付けたミカエルはどこまでも続く迷宮を眺めて。
「出口は勘で何とかするか……迫ってきた奴等は猫が何とかするだろ」
『にゃっはー!!』
 さぁ再び現れましたにゃんこライダー!先ほどと違うのは五匹で一台のバイクを操縦しており、狭い迷宮内を単車で突っ走る暴走族と化していることか。
「よし、まずは適当に突っ走る!」
『にゃいにゃいにゃー!!』
 ミカエルを先頭ににゃんこ暴走族が迷宮内を爆走!道中オーガストに遭遇すると。
「そこの赤いの、乗ってくか!?」
「いや、結構だ!」
 黒饅頭を漆黒の二輪車に変換し、飛び乗るなり暴走族に加わってミカエルと並走するオーガスト。
「なんだ、お前もバイク持ちなのか」
「まぁな……って言っても、俺の技術はライダーはライダーでも、ドラゴンライダーだが」
『うにゃー!』
「……しゃべるバイク、だと?」
 ちょっとだけ、ミカエルの目が丸くなったとかなんとか。さぁてここで問題が一つ。
「るーるー」
「にゃー!」
「うにゃー?」
 迷宮内に鳴き声がエコーしてうるっせぇ!!
「るるるー?歌う、してる、です?」
 それをアニマルとスケルトンの大合唱と勘違いしたアリスが小首を傾げて。
「じゃあ、アリス、愛聖歌で、浄化、できる、ないか、試す、です!アリスたち、桜、傷、つける、ない、です!」
 平和主義のアリスらしい発想である。大合唱をバックコーラスに、胸を膨らませて息を吸い込むと。

 ――嗚呼 愛しき女神 我らの想いを夢見た彼の者に 届け給え 愛に飢えた子どもに無償の愛を 愛を知らぬ我らに女神の愛を……

 普段の口下手な少女とは思えぬ、朗々と響き渡る歌声。狭い迷宮内でその旋律は反響して、遠く、遠く迷宮の端まで届いていく。その声に帰ってきたものは。

 カン、カン、カン、カン、カン、コーン……。

「……点数、低い、です?」
 ちょっとしょんぼりしたアリスに、罰ゲームという名の追い打ちとして迫りくるのは。
「バイク、いっぱい、来る、です!?」
 はい、にゃんことドラゴンの暴走族です。さらに、その後ろ。
「迷宮、崩れる、する、です!?」
 あわあわし始めたアリスを、白鰐ロクローくんがかぷ、ひょいっと背中に乗せて、ダッシュ!しかしさすがに動物よりバイクの方が速いのだろう。アリスを取り囲む暴走族、そのヘッドが問う。
「おいアリス、お前何かしたか?」
 ミカエルの問いに、アリスは首をふるふる。
「アリス、何か、する、ない、です。浄化、する、できるかな、思う、して、歌、歌う、しただけ、です」
「……それだな」
 黒竜の単車に乗ったオーガストが片手で目を覆い天を仰ぐと、すぐさま前を向き。
「構成するオブリビオンが浄化されたせいで、迷宮が端から順に崩壊を始めている。速いところ脱出しないとぺしゃんこだぞ!」
「道はあってる気がするが……」
 ミカエルは顎をもみ、ふと思う。
「他の猟兵どこいった?」
 上空に逃げたるこる、及び同様に分身大ジャンプで迷宮入りを回避したトオルはさておき、その他の猟兵はっていうと。
「交渉不可ってところかな……」
「るー!」
 右から左から、足を止めれば前から後ろから。迷宮の全方位からの攻撃に冷や汗を流す可奈は、ダイブロールすると道のど真ん中……ほんの数メートルとはいえ、壁から最も離れた位置で片膝をつき片目をつむる。
「おっけー、じゃあ消えちゃえ」
 リボルバーに込められた弾は六発。その全てを一斉に放てばカンカンカンカンカンッコーン!!骨で構成された迷宮は銃弾を跳ねさせるのに十分すぎるほど歪な形状をしている。まっすぐ、同じ位置に撃ち込んだ弾丸は各々が散らばるように跳ね、オブリビオンの顎骨の隙間を通して頭を吹き飛ばした。
「ふぅ、これがシリアスなお姉ちゃんの実力だよッ!」
 と、可奈が決め顔でドヤッ!としてたのが約一分前。そう、アリスの歌に帰ってきた評価の鐘っぽいあの音は、可奈の跳弾の音。だがしかし、その音が遠くから聞こえるって事は。
「って、なんか迷宮が崩落を始めてるー!?」
 全力で逃げてる暴走族から大分離れた位置なんですよねー。さて、可奈は逃げ切れるのか!?残るは例の爆発激辛姉妹だが。
「私は激辛じゃなーい!!」
 プンスコしながら爆弾をばらまき壁の発破を試みる方が緋瑪で。
「ここがお仕事の現場?さ、みんなどんどん食べてねー」
 壁から発生して不意打ちしようとしたルールーに、先制で激辛鍋食わせて撃沈させてる方が瑠璃。
「ちなみに、わたし達って仇成すどころか枝を守ったのになんで襲われるのかな?おかしくない?」
 緋瑪、お前の後ろを見てみろ。
「後ろ?」
「まだまだあるよー。あ、待ってどこ行くの?遠慮しなくていいんだよ!?」
「……瑠璃がお鍋で敵を殲滅してるね」
 だろう?桜を大切にしてるのに、その桜の下で湯気ですら猛毒感漂うあの鍋をふるまわれてるんだぞ?どう思う?
「全部瑠璃のせいじゃん!!」
「え、何?緋瑪もやっぱりお鍋食べたいの?」
「そうは言ってなーい!!」
 輝く笑顔で追いかけてくる瑠璃から、緋瑪は逃げ切れるのか……!?次回、『緋瑪、深紅に沈む』来週もレッツグリモア♪
「待って不穏な次回予告しないで!?」


 さーて、視点を暴走族に戻すか。
「……もう、だめ、です」
 ロクローくんを走らせていたアリスがだんだん遅れ始めている!?まぁ、一人だけ生き物に乗ってるから、疲労で減速してきたんだろうな……。
「ガキ一人ならまだしも、鰐も載せるとなると……」
 黒にゃんこに目配せするミカエルだが、んなもん乗っけたらバランス崩して横転するにゃーって顔を返された。ロクローを見捨ててアリスだけ拾うか、相棒と共に力尽きる道を歩ませるか、猟兵達に選択の時が……。
「おっとそのシリアスは面白くないわね」
 何奴!?
「ピンチの者?そこに問題児に頭抱える地の文がおるじゃろ?そんな気配を感じて私、降臨」
 戦場照らす満月より、影を落として顕現するは異端の女神。
「狂言回し。あると嬉しい舞台装置。収拾がつかなくなった時のデウス・エクス・マキナ……」
 発言だけ見ると、コイツまっとうな猟兵に見えるだろう?やってることは一番ヤベーからな。何故ならこいつが……。
「ごにゃーぽがごにゃーぽなのでごにゃーぽにしてごにゃーぽごにゃーぽそれはごにゃーぽなのですべてはごにゃーぽでしかしてごにゃーぽなればおそらくはごにゃーぽたりえやがてはごにゃーぽにいたりかくしてせかいはごにゃーぽにみたされるでしょう」
 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)だから。って、アリスが二人いるじゃねぇか!?くっそどうやって表記すればいいんだ……!
「頭を抱えるべきはそこじゃないでしょう?」
 すっとアリス(セカカラ)が取り出したのは、満月のような黄色い水晶玉。
「見える……見えるわ……地の文なんかよりピンチの猟兵が……!」
 俺にはガラス玉にしか見えないが、アリス(デモン)には何かが見えているらしい。
「ま、こんな時にはコレよね」
 闇を孕んだ赤い宝石を取り出すアリスだが……それ、戦闘中は使えないんじゃなかった?
「そうね。グリモアの転移能力は便利だけど、えげつない集中力が要求されるから戦場では使えない……つまり」
 つまり。
「私が、私自身がグリモアになればいいのよ!」
 ……ちょっと何言ってるか分からないんですが?
「まぁ見てなさい」
 言い残してパッと消えたアリス(トラペゾヘドロン装備)はにゅっとアリス(ライダー)の下へ湧き出し。
「はぁい、アリスのよしみで助けにきてあげたわよ」
「ぴぇ!?アリス、さん?どうする、して、ここに?」
 過程も道程もすっ飛ばして、突如現れたアリス(浮遊)にアリス(ライドオンロクロー)は驚きを隠せないが、先行するオーガストとミカエルは何となく察して、声をそろえる。
「「なんだ、いつもの理不尽でギャグ補正のかかった救済能力か」」
 本当それね。こいつ桁が一個ずれてるアホやる割に、こういう時役に立つから地味に困るのよね。
「ふふふ、もっと感謝して蒼汁の定期購入してくれてもいいのよ」
 断固拒否するッ!!
「あら残念……さて、そっちの白い子も限界みたいだし、私達は一足先にお暇しましょうか」
「ロクローくん、運べる、です?」
 首を傾げるアリス(騎乗)の背中にアリス(転送術)が同乗すると、パッと二人の姿が消える。そして迷宮の外に姿を再顕現させた数分後、暴走族が脱出。その後を追うようにして迷宮が崩れ去るのだった。
「間一髪だったな……」
 ふぅ、と額を拭うオーガストの傍ら、ここまでの戦況を想い返してミカエルは夜空を見上げる。
「長年指揮の位置に立ってたのに統率出来る気がしねぇよフッシギー」
 激辛ボンバーシスターズに、浮遊兵器満載のカロリーウェポン、ネタ沼に片足突っ込んだシリアス聖女、道理を踏み砕いて理不尽を敷くカオスの権化……これをまとめられる方がどうかしてるからお前は何も間違ってない。
「尊い、犠牲だったわね……」
「るるさん……浄化、する、できた、かな?」
 アリス(聖)が両手を重ねて祈りを捧げる一方、アリス(性)が言ったのはそっちじゃなくて。
「ああ、今日はこんなにも、月が、綺麗――あ、これ言うならボス戦とかさっきの子どもへの脅しの時の方がよかったかな?」
 ピンチなのはわかったんだけど、二人同時には助けられないから放置され、骨の瓦礫に埋まった可奈の事だった。
「とりあえず、誰か助けてー!」
 可奈の声は、夜桜を揺らす風にさらわれていった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヴィクトリア・リリィ』

POW   :    桜盾
全身を【超防御モード 】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    桜告
【亡き友からの警告を聞き 】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    紅桜
「【対象と一対一の決闘をする 】」という誓いを立てる事で、真の姿に変身する。誓いが正義であるほど、真の姿は更に強化される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミカエル・アレクセイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「「せーの、ドカーン!!」」
「わきゃー!?」
「何故非リアの俺が爆破されるのかッ!?」
 大爆発を起こして瓦礫を吹き飛ばし、生き埋めになっていた猟兵が脱出すると、ついでに二人ほど吹き飛んでいった。その様を眺めていた猟兵がはっはと笑う。
「ここまでカオスでも、なんだかんだで何とかなるモノだな」
「ほんと、困った人達……」
「!?」
 突如背後にあった気配に、猟兵が飛び退く。身構えた先にいたのは、夜桜を切り取ったように、薄紅の鎧に身を包み、星の煌きを放つ髪を夜風に躍らせる少女。
「桜の木に手を出す悪い子に、『お仕置き』しようと思ったらこんなにぞろぞろついてきちゃって……」
 ため息をついた少女に、猟兵は問う。
「どうして、お仕置き、する、ですか?」
「口で言えばわかることじゃないかしら?」
「あなた達、人類に汚さを知らないの?口で言っても自分の愚かさは分からない。痛みを以て分からせても逆恨みしかしない。そんなロクでもない生き物なんですもの。じゃあお仕置きして、『片付けて』しまうしかないでしょう?」
 クスクスと、モノを知らぬ子どもたちに言い聞かせるように少女は微笑む。
「それで、命を奪うことになったんですかぁ?」
「子ども相手にそれはさすがにやりすぎなんじゃ……」
 怪訝な顔をする猟兵に、少女は首を振った。
「大人も子どももないわ。人類皆平等、でしょ?」
「……めんどくせぇ」
 猟兵の一人が、長い、長い溜息を零す。
「言いたいことはそれだけか、ヴィクトリア」
「あなたはあなたで相変わらずね……あ、あと私はヴィクトリアじゃないわ。ヴィクトリア・リリィ。ちょっとだけ若返って桜色の青春を謳歌するヴィクトリア・リリィよ!」
 バーン!と背景に文字が見えるポージングをした少女に、猟兵……ミカエルは頭を抱える。
「お前、変わったな」
「もちろん、せっかく若返って顕現したんだもの。新しい人生を楽しまないと損でしょう?それこそ……」
 不意に突きだされる槍を、ミカエルは目視もせず躱して見せた。交錯する二人の視線に、冷気が漂う。
「『あの時』とは、違う未来を目指して、ね」


※次回執筆は十月七日の予定!六日の深夜までにプレくれると嬉しいなッ!!あ、割と丸わかりかもしれないけど、地雷を踏むと大変な事になっちゃゾ☆
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
あのUC、乙女座を助ける不死鳥座ごっこの為ので理不尽ギャグ補正はコマ移動ワープの方、あ、もう次の章入ってる?

あ、やばい、普通にプレかけると地雷踏み抜きそう。こんな時は執筆者クズmeを私の身に降霊して行動を委ねましょ。大丈夫、おまかせはルールで許可されている正しいプレイングよ、事件を解決に導きつつネタ行動をするにはこれが最善と判断したわ☆
「私達の知覚を離れた客観的真理などない、ゆえに、あらゆることは真実であり可能である」
魔術的パラダイムシフト、恣意的に信念を変え、フィクションも含めた既存の技術から借り、混ぜ、自作するケイオスマジックで自由にやりたまえ♪


夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
成程、どうやら『縁』の有る方がいらっしゃるみたいですねぇ。
であれば、ここは援護に回りましょうかぁ。

暫くは『FSS』を『桜の木』のガードに回し、流れ弾等で傷つかないよう護衛することで自由に戦い易いよう支援、お弁当をいただきつつ様子見しましょうかぁ。
そして『彼女』が『桜盾』を使用したら【煌箍】を使用、『光刃の網』で彼女を捕えますねぇ。
ダメージは入らない代わり『彼女』も動けなくなっておりますから、先程の方のスコップで『埋める』なり、危険な何かを口にねじ込むなりは可能ですし、それを避ける為『盾』を解除すれば『刃』のダメージが入りますぅ。

何か有りましたら、それ以上の協力も色々と?


ミカエル・アレクセイ
うるせぇガキ
何色気捨ててきてくれちゃってんだ勿体無ぇな
真の姿で元に戻れる?
まぁ、その誓いを立てられちゃぁ元軍神としては滾るものがあるから俺も受けて…
(相手のユーベルコードのコピーをした結果超防御VS超防御になり)
まぁほら…な?
お前も解ってた事だろう
膠着状態にしかならんから
紅茶でも入れろ
クッキーなら焼いて……買ってくるから
全く、とっとと先に死にやがるからお前の桜がろくなことにならなかったぞ
俺が文句言いたい位だ
そんだけ心配やら文句やらで沸いてくるならな、最初っから死ななきゃ良かったんだよ
また何度でもやりあおうって約束もしただろう?
嘘つきはお前だよ
最後はユーベルコード無しでの一対一
本当にこれが最後か


アリス・トゥジュルクラルテ
うう…アリス、足、引っ張る、気、する、です…。
あの子、ミカエルさん、知り合い、みたい、だし、二人の、邪魔、する、ない、ように、大人しい、する、です。

とりあえず、ロクローくん、いっぱい、走る、して、疲れる、だし、吹っ飛ぶ、した、人も、ケガ、ある、かも、なので、楽園の華で、回復、する、です。

え?決闘、です?する、ない、です。
それより、ミカエルさんと、お話、する、いい、思う、ですよ?
結界術、攻撃、防ぐ、して、ロクローくんに、ヴィクトリアさん、ミカエルさんの、方、行くように、攻撃、する、もらう、です。
二人とも、後悔、ない、ように、なる、いい、です、けど…。

ケガ人、鼓舞、する、ように、歌で、回復、です。


四季乃・瑠璃
緋瑪「んー?ミカエルさんのお知り合い?」
瑠璃「鍋食べる?」(期待の眼差し)
緋瑪「それはもう良いよ、瑠璃…」
瑠璃「えー…〆のうどんもあるんだよ!」
緋瑪「誰も食べれないよ!」

UCで分身&武装・能力強化
桜を傷つけない様に注意して戦闘。そっちも傷つけるのは本意じゃないでしょ?少し離すよ

若干本気(シリアス)モード
瑠璃がK100の銃撃で牽制しつつ、緋瑪が機巧大鎌で一気に接近し、一撃と同時に時限式ボムを置き土産に放って機巧で一気に離脱、等連携して戦闘。


瑠璃「最後はミカエルさんにお任せかな」(〆のうどんを食べ、他の猟兵に配りながら)
緋瑪「知り合いに手を掛けるのが辛いとかなら、わたし達で殺るよー」

※諸々おまかせ


病院坂・伽藍
芳醇なネタの香りと微かなシリアスの匂いに惹かれて参上っすよー。
因縁も無ければ、思うところもないっすけど、オブリビオンだしサアビスチケットの為に殺すとかそんな感じの心情っすよー。

UCで相手を取り巻くように360°全方位同時攻撃を仕掛けるっす。
でも突破されそうな気配が濃厚なんで、いつでも「構わん、俺ごとやれ」って言う準備はしておくっす。

それにしても、かっこつけて「桜のように散れ」とか言ってみたいっすねー。序盤に言ったら咬ませ、中盤に言えば相手の強化フラグになりそうっすけど。
しかもここの桜は年がら年中咲いてるっすけど。

アドリブオッケー。


オーガスト・メルト
こういう流れの時はどうしたらいいんだろうな?
ネタをやれと言われてもよく分からないが、中途半端にシリアス求められても対処に困るというか…

【POW】連携・アドリブ歓迎
まぁ、因縁があるヤツがいるなら相手は任せよう。
他人の事情に首を突っ込んでも良い事なんざ全くないのは故郷での経験上良く知ってる。
だから…最小限の支援と、おかしな茶々を入れそうな味方がいたら止めるようにしとくさ。
こういうのは執事の兄貴の方が得意なんだがなー。
敵味方の動きは【見切り】で予測し、【竜鱗飛甲】も用意しておく。
敵の防御UCや味方の暴走UCはこちらのUC【赤光断雷】で無効化を狙う。

あぁ、桜が綺麗だなー(現実逃避)


水島・可奈
そっかリリィかー。じゃあオルタとかサンタとかいたりするのかな?どうでもいい?あっそ…
さてさて、地雷ね…まあアレのことだろうけど…私はそこを敢えてつく。
クルーエル・ヒート…悪夢でトラウマを与える私のあまり使いたくないコード。
これを撃ち込めばきっと色んな意味で暴走するだろうね。
せっかくだし、ネタ堕ちしたくない思い(負の感情)を込めてあげるか!
さて、どうなるか…『観測』させてもらおうかな。

【戦闘】
ルクス・ブレイカーと銃弾を織り交ぜて攻撃しつつ、トドメは宿敵主さんにお任せしようかな!
【宿敵主さんがいなかったら】タイマン張ってくるところをルクス・ブレイカーで撃つ!
遠距離使えないのが悪いんだよ!


涼風・穹
……人類に汚さについては一理あるだろうな…
それを完全に否定できる方は余程の幸せ者か、世間に関わっていないかのどちらかだろうな…
まあ俺はそこまで世の中に絶望してはいないし殺されたくもないから邪魔させて貰うけどな
ルールーに猟兵としての在り方を破壊されたままですがそれは俺の人間としての在り方ですので
俺はグリモア猟兵である以前に"人間の探索者"だからな

しかしまあそんなシリアスさんは多分第4の壁の向こうにでも置いてきたと思われます
迷わずヴィクトリア・リリィにおっぱいダイブを敢行
どうせなら俺と桃色の青春を謳歌すべく一夜の間違いを犯して…
なお鎧は《空斬裂破》で破壊します
物理的なものだろうと心の鎧だろうと、な


筒石・トオル
【SPD】
桜色の青春を謳歌するって言い方が、何か年寄りくさ……いえ、なんでもないですよー。
わざと地雷を踏んで攻撃を仕掛けさせれば回避されないかもしれない。
地雷が何かよくわからないけど。
もし攻撃してきたら【視力、見切り、フェイント】で回避しつつ、気付かれ難い死角にUCのメダルを貼り付ける。
対象が認識出来なければ、こちらの攻撃を予測出来なくなるんじゃないかって。
以降はルーンソードで敵の攻撃を【武器受け】し、隙を見て熱線銃で攻撃してる。仲間が攻撃し易いように【援護射撃】を主として。

でもさ、思うんだけど。今回一番の破壊力あったのは鍋だったんじゃないかな?

※アドリブOK



「うるせぇガキ。何色気捨ててきてくれちゃってんだ勿体無ぇな」
「あら、本来の私の姿の方がお好み?一対一でやりあってくれるなら、真の姿ってことであの頃の姿に戻れるわよ?」
 くすくす、からかうように笑うヴィクトリアに、ミカエルは眉一つ動かさず。
「決闘か。そういう話なら元軍神としては滾るものがあるから俺も受けてやりたいが……」
 踏み込んだミカエルに対して、ヴィクトリアはノーガード。放たれる拳を眉間で受け返して見せるが、その腕を伝って赤目の黒竜がとててて……突如頭部を風船のように膨らませると、ヴィクトリアの頭をバクッ。
(私を窒息させる気かしら?この程度で倒せると思っているなら舐められたものね……)
 れるん。
「ひゃん!?」
 咥え込んだヴィクトリアの頭を、黒竜がぺろぺろれるれる。
「え、ちょ、何この子!?舐め……めっちゃ舐めてくるんだけど!?」
「諦めろ、そういうUCだ」
 首から上だけ捕食されたヴィクトリアがジタバタしながら引っぺがそうとするが、黒竜はぺろぺろれるれる、じゅるぅ……最後に思いっきり吸われてからようやく解放されたヴィクトリアは唾液まみれで大惨事である。
「くっ、何よそれ!?人を舐めまわして不快にするUC!?」
「いや……」
 ミカエルの肩に黒竜が戻り、その主人は不敵に笑う。
「食った相手のUCをコピーするUCだ……!」
 黒竜が輝き、一切の攻撃を無力化するヴェールがミカエルを包み込む!!
「……えっ」
 しかし、対するヴィクトリアもまた、敵からの干渉を無視するUCなわけで。
「まぁほら……な?お前も解ってた事だろう。膠着状態にしかならんから、紅茶でも入れろ。クッキーなら焼いて……買ってくるから」
「えぇ……?」
 戦場に微妙な空気が流れ始めたところで、視点を変えてみようか。
「あのUC、乙女座を助ける不死鳥座ごっこの為ので理不尽ギャグ補正はコマ移動ワープの方……」
 アリス(淑女)、その話今する必要ある?
「え、そりゃ使ったものの解説はしておかないと、後で記録を閲覧した猟兵が扱いに困って……あ、もう次の章入ってる?」
 今気づいたの!?
「実際問題として、こういう流れの時はどうしたらいいんだろうな?ネタをやれと言われてもよく分からないが、中途半端にシリアス求められても対処に困るというか……」
 得物を構えて(呆れかえってたり、半眼ジト目だったりする目で)睨みあうミカエルとヴィクトリアを前に、オーガストも困惑を隠せない。ていうかこの状況で対応してきたら怖い。
「まぁ、因縁があるヤツがいるなら相手は任せよう。他人の事情に首を突っ込んでも良い事なんざ全くないのは故郷での経験上良く知ってる。だから……」
 すっと、立てた親指で後方を示して。
「最小限の支援と、おかしな茶々を入れそうな味方がいたら止めるようにしとくさ」
「ヒャッハー!おっぱいダイブの時間だぜぇ!!」
 ねぇ、なんで穹はあんなバーサークしてんの?
「……人類に汚さについては一理ある……それを完全に否定できる方は余程の幸せ者か、世間に関わっていないかのどちらかだろうな……まあ俺はそこまで世の中に絶望してはいないし殺されたくもないから邪魔させて貰うけどな」
 急に真顔になったかと思ったら、口角を上げて目が怪しくシイタケモード。
「俺流のやり方、即ちおっぱいダイブでなッ!!」
 うわぁ……さっきの戦闘で正義感とか倫理観をやられたっぽかったけど、どうしてこんなことに……。
「馬鹿め!!理性を砕かれれば残るのは本能!人たりえるものが全て持っているはずの欲求……それこそが、おっぱい!!」
「……まぁ、あれだ」
 半眼ジト目で、穹へ食卓に並んだ生ごみを見る目を向けていたミカエルへ、オーガストは片手をひらり。
「こっちのバカはこっちで片付ける。あんたはあんたのやりたいことをすればいい」
「あ、やばい、普通にプレかけると地雷踏み抜きそう」
 クールに笑ったオーガストの隣、アリス(淑女)はスマホをタップ、プレイングなる作戦行動を書ききって、読み直して、赤い丸が三つ並ぶ未来を予知(非グリモア)した。
「こんな時は執筆者クズmeを私の身に降霊して行動を委ねましょ。大丈夫、おまかせはルールで許可されている正しいプレイングよ、事件を解決に導きつつネタ行動をするにはこれが最善と判断したわ☆」
「……すまん、前言撤回だ」
 バックスペースキーを押しっぱなしにして、真っ白になった空白のページ。そのまま『送信』の項目を押せば、発生するエラーを無視してアリス(邪神)のスマホは情報を伝達する。その様を横目に、オーガストは防御姿勢を取った。
「コイツが暴走するんじゃ、俺の手には負えないんでな……!」
「うふふ……あはははは!!」
「月が……」
 アリス(邪神)の高笑いと共に、アリス(少女)の見上げた夜空を照らす満月が雲に隠されていく。降り注ぐ月光を失った戦場は町の喧騒も今や遠く、されど視界は奪われない。それこそが、物理的に光を遮られたのではなく、概念としての闇に閉ざされた証。
「私達の知覚を離れた客観的真理などない、ゆえに、あらゆることは真実であり可能である」
 ふわり、舞い上がり虚空に腰かけるアリス(邪神)。その身は時をすっ飛ばしたかのように成長しており、発育した肉体は少女の象徴ともいうべきエプロンドレスから、漆黒のナイトドレスに様変わり。夜の戦場の中、薄紅の桜と赤い瞳だけが怪しく煌いて……。
「この状況で水を差すなんて、無粋にもほどがあるわ……代わりに相手してあげるから、かかってきなさい、ボウヤ?」
「おもしれぇ!お前からひん剥いてそのきょぬーにダイブしてすりすりぷにぷにしてやるぜぇ!!」
 人差し指を揺らして誘うアリス(邪神)に、穹は抜き放つアーティファクトを携えて、石畳を蹴る。猟兵同士の戦闘開始に、アリス(少女)はおろおろ。
「うう……アリス、足、引っ張る、気、する、です……あの子、ミカエルさん、知り合い、みたい、だし、二人の、邪魔、する、ない、ように、大人しい、する、です」
 一度距離を取り、槍を構えなおすヴィクトリアに対し、「来いよ」と両手を広げて笑って見せるミカエルを眺めてしゅん、と落ち込むアリス(少女)だが、別にもう片方の戦闘に参戦してもいいのよ?
「もう、かたほう?」
 浮遊するアリス(邪神)に白兵攻撃はそのままでは届かない。鞘を地面に投げうち、倒れるまでの一瞬に飛び乗った穹はそのまま鞘を足場にしてさらに跳躍しながら、飛び上がる際に腰ひもに引っ掛けて鞘を回収。刀と鞘の二刀流にてアリス(邪神)へ挑む。対するアリス(邪神)は振るわれる斬撃を指二本で受け止めて、側頭部を狙う鞘の打撃を裏拳で迎える。されど穹は止められた得物を軸にして体を丸めてアリス(邪神)の腹部へ両足をそろえたドロップキック。体重をかけて地面に撃墜すると手放された得物を翻し、服を引き裂くように斜に振るうが、アリス(邪神)は両脚で穹の腰に絡みつくと体重と腹筋をバネに彼を地面に引き倒して、更に股間と腰に足を通し、両腕で膝を取った関節技へ移行。
「アリス、接近戦、する、ない、です!!」
 全力で首を横に振られてしまった……。
「桜色の青春を謳歌するって言い方が、何か年寄りくさ……」
「ん?」
 一方、ずっとヴィクトリアVSミカエルの方を眺めていたトオルがぼそっと溢した瞬間、ぎゅるっとヴィクトリアがトオルの方を向く。
「年が、なんですって?むかーしを生きてた私が、一回死んで、生まれなおしてる関係上若いを通り越して幼女と言っても差し支えない私が、なんですって?」
「いえ、なんでもないですよー」
 わざと地雷を踏んで、攻撃を誘発することで正確性を欠かせれば回避も容易い……と、思ったまではよかったものの。
「何だろう、違う地雷を踏んでしまった気がする……」
 ゴゴゴゴ……と圧を感じる笑顔を浮かべたままのヴィクトリアに背後を取られ、振り向くことができなくなったトオルは冷や汗を流しながら、困ったように頬をかく。
「そっかリリィ(幼女)かー。じゃあオルタとかサンタとかいたりするのかな?」
「なんで幼女がいるとオルタ(別人格)とサンタが出てくるんですか?」
「え、わかんない?そっかー……」
 しまった、こっちにかまけてる間にネタ堕ちした可奈が暴走しかけてやがる!?
「私はまだ堕ちてなーい!!」
「……」
 トオルは思った。こんな言動をしている時点でとうの昔にネタ堕ちしている気がする。でも、それを口にしたらきっともっと面倒なことになる、と……。
「と、とにかく、今回はこれでいくよ。悪夢でトラウマを与える私のあまり使いたくないコード……!」
 既にネタキャラ臭半端ない可奈は銃を構えて。
「この堕ちたくない感情を弾に込めて、あえて地雷を踏みに行く……なぜなら私は、シリアスだから!!」
 やべぇ、コイツ真正のバカだ……!放たれた弾丸はヴィクトリアに到達する前に霧散する。それは金属の塊などではなく、向けられた対象の悪夢という古傷を抉り、脳髄の奥にしまい込まれた過去の惨劇【トラウマ】を引きずりだす外道の弾丸。人にただ、精神的苦痛を与える事だけを目的としたその一撃は、ヴィクトリアの最も知覚したくなかった『記録』を歴史から彼女の記憶へと送り込んでしまった。
「あ、あぁ……」
 膝をつき、虚空を見つめる少女の瞳は虚ろ。涙もない、悲しみもない、ただひたすらに、虚無。
「さて、どうなるか……『観測』させてもらおうかな」
 余裕をこいていた可奈の体が、折れた。
「こふっ!?」
 理解した時には腹に深々と槍が刺さっており、手にした銃を向けるより先にその身を薙ぎ払われる。
「あぁ、桜が……私の桜が……!」
 石畳に叩きつけられた可奈の体を、穿ち、抉り、槍の先端は貫通して無機質な足場にすら穴を掘り始める。最も触れてはならない記憶を引きずり出してしまった可奈へ、振るわれる得物は留まることを知らない。
「……やってくれたな」
 対峙していたはずの自分を無視して、可奈のはらわたを引きずり出す事に夢中になっているヴィクトリアの凶行に、ミカエルは可奈が『やらかした』のだと察した。
「成程、どうやら『縁』の有る方がいらっしゃるみたいですねぇ。であれば、ここは援護に回りましょうかぁ」
「悪い意味で地雷を踏んでいったみたいだね……!」
 可奈の首めがけて突き出される槍の前に、浮遊する盾が割り込んでくる。得物の切っ先を弾かれて、動きが止まった瞬間にトオルは可奈に駆け寄ると額にメダルを貼り付けた。それは、触れた対象に認識阻害の効果を与え、自ずと敵のターゲッティングを自身から外させるもの。あくまでも意識から外させる、存在を気づかれにくくする程度であり、真正面から向き合っていては効果が薄い事は否めない。
 しかし、複数の猟兵入り乱れる戦場とあっては、その『多少』が大きな意味を持つ。なぜなら、周囲に複数の敵があるのなら、『なんかわかりにくい奴』よりも『明確に邪魔な奴』から始末するのがセオリーというもの。深く考える時間がない以上、いつ何をしてくるか分からない敵より、目の前の脅威になる敵を始末するのが心理というものだから。ヴィクトリアの殺意もまた、認識し辛くなった可奈から、るこるへと対象を変える。
「あらぁ、見境がないんですねぇ」
 突っ込んでくるヴィクトリアへ浮遊砲台が向かうが、直線に飛ぶ光学兵器の弾道を見切られてかすりもしない。身のこなし、観察眼にるこるは目を丸くして。
「生前は軍人さんか、護衛のお仕事でもしていたのでしょうかぁ……」
 驚きはせども、恐れはしない。自分に注意が向いている隙に。
「芳醇なネタの香りと微かなシリアスの匂いに惹かれて参上っすよー」
 桜の陰から姿を見せたのは新手の猟兵。病院坂・伽藍(敗残兵・f29759)は突進を仕掛けるヴィクトリアに垂直に踏み込むと、鎧に覆われていない首めがけて居合を放つ。
「ッ!」
 急停止は叶わずとも、制動をかけながら身を逸らして回避した彼女の足元へ瑠璃が発砲。牽制に放たれた弾丸ではあるが、その銃身は怪物の外殻を粉砕することを目的に作られた特製品。ただのカットされた石ころなぞ撃ち砕き、礫の散弾を足元から打ち上げた。鎧を纏っていようとも、その衝撃までは殺しきれない。直撃を回避すべくヴィクトリアが後方に飛んだ瞬間。
「緋瑪、いって!」
「オッケー任せて!!」
 左右に分かれていた、半身が動く。後方へ跳び、滞空中のヴィクトリアへ迫るは緋瑪。手にしたのは大鎌であるが、柄に仕込まれた引金を引けば、内部に装填された手榴弾のピンが排出され、半ば吹き飛ぶ鎌に引きずられるように肉薄。爆破推進の慣性のままに得物を振るえど、槍に刃は防がれたが鎌の刃のつなぎ目からボムを排出。対ショック姿勢を取って爆風に乗って離脱する。その際、爆煙に紛れてもう一つ爆弾を置き土産。咄嗟に距離を取ろうとするヴィクトリアだが。
「ごめん、逃がせないんだ」
 トオルの熱線銃が火薬の塊を撃ち抜き、即座に起爆。逃げ損ねたヴィクトリアは宙へ打ち上げられるが、その姿を地上から見上げるのは薄っぺらい微笑みに似た糸目の男。
「我が刃は黒百合なれど、汝を桜の花と散らすには事足りる」
 刃を地面と水平に、鍔に指を添えて。
「貴様が愛した桜の如く、散るがいい……!」
 伽藍の指先が切先へと滑る。撫ぜられた刃は黒百合の花弁へ姿を変えて、夜風に吹かれて空へと舞った。ヴィクトリアの全身を包み込み、鎧を無視して皮膚を侵食しようとする黒い花弁。それを桜色のヴェールに包まれてUCの干渉を跳ね返しながら着地する少女を前に、伽藍はあちゃー、と片手で目元を覆って空を仰いだ。
「やっぱ変にかっこつけるとキマんないっすね!?」
「ですが、隙は作られましたぁ!」
 シャラン。軽やかな音色と共に伸びたそれはきめ細やかな光の鎖。ヴェールに覆われて、その維持の為にそこから動けなくなったヴィクトリアの周りで交差したそれは、一息に彼女に絡みつき、光の投網として動きを完封してしまう。
「UCで防御している限り動けませんしぃ、解けば光の刃に体を刻まれますよぉ?」
 るこるの言葉を証明するように、鎖の目を見れば一つ一つが棘を持っており、絡みつかれればただでは済まないだろう。
「ッ!」
 ヴィクトリアが全身を切り刻まれるのを覚悟でヴェールを解こうとした時だった。

 ――楽園の華 咲き乱れ 君を癒したい 楽園の華 舞い散って 君を守りたい

 ざわめき揺らぐ桜の木。その花弁をバックコーラスに、アリス(少女)の歌声がヴィクトリアの耳を打つ。
「決闘、する、ない、です。それより、ミカエルさんと、お話、する、いい、思う、ですよ?」
 届けられた歌声は、己の免疫と再生を促す旋律。肉体的な損傷を癒すはずのUCだが、可奈による弾丸が幻覚型とはいえ、『脳という肉体の一部』に干渉する呪詛のようなものであったが故の功績と言えるだろう。
「目は覚めたかクソガキ」
「あたっ!?」
 呆けていたヴィクトリアをミカエルが小突き、やれやれと首を振るとヴィクトリアの頭から水をぶっかけて竜の唾液を流してからタオルを乱雑に乗せて。
「三度目は言わん。頭拭いたら紅茶でも淹れろ。焼き菓子ならそこで買ってきた」



「くっ、なんだかんだで変に実力はあるわね……」
「ぐへへ、いい姿になってきたじゃないか!」
 服の半分を斬り飛ばされ、胸を隠すために片手が封じられたアリス(邪神)を前に、下種顔を浮かべる穹。だが、彼もまた片腕は脱臼して、肘関節から先がねじれ逆方向を向いており、お互い隻腕状態での戦闘と化している……っていうやばそうなのを背景にして、ミカエルが買ってきたキャンプキットでヴィクトリアが紅茶を淹れると、レジャーシートには紅茶と乾パンとキムチチゲが並ぶ。
「……あなたクッキー買ってくるって言ってなかった?」
「動ける範囲にあった店がアウトドア用品店くらいだったんだ、氷砂糖入ってて甘いからビスケットみたいなものだろう」
 ヴィクトリアのじとーっとした視線をものともせず、ミカエルは紅茶を啜り、月が見えなくなった夜空の下、風に揺れる桜を眺める。
「ずっと気になってたんだけど、ミカエルさんのお知り合い?」
「……あぁ、昔ちょっと、な」
 緋瑪が興味本位でヴィクトリアの事を尋ねれど、彼は静かに桜を眺めるばかり。その一方で瑠璃は。
「鍋食べる?シメのうどんもあるよ!」
「紅茶にキムチって、共通点は赤いだけじゃない?」
「ただ飯っすか?これはラッキー!」
 口元に指をあてて、頭の中で紅茶と唐辛子の食べ合わせについて味の足し算をするヴィクトリアに対して、伽藍は喜んで飛びついた。というのも。
「師団からすっとばされて、太陽機も見えなきゃ組織と連絡もつかなくなった時はどうなるかと思ったっすけど、こうして飯が食えるのはありがたい事っす……」
 アリスラビリンスのアリス(犠牲者)みたいな事になっており、経済的に割と追い詰められていたからだ。しかも、この戦闘からの初参戦とあって、瑠璃の鍋がどういうものなのかを知らなかった彼はそのままパクッ。
「かっるぁああああああ!?」
 口から盛大に火炎放射すると最後に爆発、真っ黒こげになって力尽きてしまった……。
「まだうどん入れてないのに伸びちゃだめだよー、それこそ煮込んでる間にうどんが伸びちゃうでしょ!」
「そもそも辛すぎて誰も食べられないよ!!」
 一撃(一口)でKOされた伽藍の頬を叩き、完全に意識を失っていることを確認した緋瑪からのツッコミに、瑠璃は不満顔。その傍ら、ロクローに鍋の肉を与えなくて正解だったと、ほっと胸を撫でおろして紅茶を嗜むアリス(少女)は膝枕して可奈の容態を見遣る。
「うーん……お腹が……店長やめて……今その珈琲を飲まされたら私は……」
「お腹、壊す、した、夢、見てる、です?」
 まぁ、今でこそアリス(膝枕)のUCで傷は塞がってるけども、お腹の中身をぐちゃあってされたからねぇ……さて、この惨状を前に、トオル君のコメントは……。
「思うんだけど。今回一番の破壊力あったのは鍋だったんじゃないかな?」
 ででーん、瑠璃、あうとー。
「なんでー!?」
「全く、とっとと先に死にやがるからお前の桜がろくなことにならなかったぞ。俺が文句言いたい位だ」
 猟兵達の喧騒を背後に、ミカエルがぼそり溢せばヴィクトリアは頬を膨らませてミカエルをじー。
「なによぅ。だからって私の桜をぶちコロコロした事は許さないんだからねー?」
「そんだけ心配やら文句やらで沸いてくるならな、最初っから死ななきゃ良かったんだよ。また何度でもやりあおうって約束もしただろう?」
「じゃあ聞くけど、いいの?本当に死ななかったら、どうなってた?」
 反撃、とばかりにミカエルに質問を投げ返して煽るように首を傾げるヴィクトリア。同時、ミカエルの脳裏によぎるのは二人の人影。
 一人はカソックに似たロングコートに身を包み、薄っぺらい笑みと自己否定で塗り固めた聖職者面のペテン師。もう一人は黒い着物に白い肌と彼岸花の瞳が映える、抑え込んだ狂気から滲みだす殺意を振りまく狂人。その時、ヴィクトリアが死ななければ、こちらが……当時のミカエルの知人が、どうなっていたか分からない。
「ねぇねぇどうなの?私には口出ししておいて、自分は口を出されるとだんまりしちゃうの?ん?」
 答えないミカエルの正面に回り込み、額を突き合わせてぐりぐり、挑発するヴィクトリアの耳をつまんで引き剥がしたミカエルがため息。
「黙れ、クソガキ」
「痛い痛い痛い!?」
 耳をつねり上げ、涙目のヴィクトリアを放り出すと金髪の男は腰を上げた。
「噓つきはお前だよ」
「え、何?」
 ぼそり、小さな呟きは悲鳴を上げていたヴィクトリアには届かない。何かを察したオーガストも腰を上げると、紅蓮の小太刀に手をかけて。
「ちょっと待っててくれ。『掃除』してくる」
 言い残し、彼が向かったのは服のほとんどを切り裂かれて、もはや布を巻き付けているといった方が正確な有様になり、局部を隠すために両手がふさがったアリス(邪神)と、片腕はねじ曲がり、両脚のかみ合わない関節を筋力で強引に支えて、鞘を杖代わりに刃を振りかざす穹の間。
「ふふふ、そろそろ諦めておねんねしたらどうかしら?」
「ほざけ!俺が眠るのはおっぱいダイブの向こう、胸の谷間だけだ!!」
「よーしお前ら、その辺にしておけー?」
 鞘走る一閃は両手が使えぬアリス(邪神)に反応を許さず斬り捨てて、ぼふっと煙を残し、元の少女の姿に戻ったアリス(元邪神)はすやすや、寝息を立てている。獲物を横取りされたと判断して、背後から斬りかかってくる穹に対してバックステップ。自分から突っこみながら反転、内側から抉りぬくようにして武器を弾き上げ、もう一歩。袈裟懸けに斬り捨てれば斬痕を残すことなく、意識だけを斬り捨てる。
「ま、UCによる強化さえ奪っちまえばこんなとこだろ」
 眉根を寄せて、かったるそうに肩をすくめたオーガストは気絶した二人をコロコロ、レジャーシートに転がして再び腰を下ろした。
 邪魔者のなくなった桜の下、ミカエルとヴィクトリア。向かい合う二人の内、先に動いたのはヴィクトリアだった。しかし、その瞬間にミカエルは察してしまう。
「お前、また……!」
「選びなさい。私の未来を決めるのは、あなたよ」
 突き出されるのは槍、狙いは心臓。対応しなければ確実に死ぬが、ミカエルにとってそれは、実に容易いことである。というのも。
「俺が当て身投げするって、分かってただろうに……!」
 ミカエルには才能がなかった。権能がなかった。血統がなかった。だが、その全てを努力と知恵で補ってきた。さすれば、戦術は自ずと弱者が強者に打ち勝つためのカウンターとなる。それを知らないヴィクトリアではない。しかし、彼女は『先に動いた』。
「あーあ、結局最後はこうなっちゃうのね……」
 突き出した槍をいなし、突進力をそのまま自身の腕力代わりに背負い、駆け抜けていくヴィクトリアの体を掴むと受け身もとらせず脳天から叩き落す。それこそ、相手を殺そうとした全力疾走の、その勢いのままに。石畳に叩き落された衝撃は兜を貫通して彼女の頭蓋を割り、滴る血が白い頬を濡らして。
「本当にこれが最後か」
「……さぁね」
 それだけ言い残して、ヴィクトリアの体は華と散る。風にさらわれて飛んでいく桜の花弁が、再び顔を出した月に向かって消えていく様を、ミカエルはずっと眺めていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月07日
宿敵 『ヴィクトリア・リリィ』 を撃破!


挿絵イラスト