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禍津炎が謳歌する

#アポカリプスヘル #ヴォーテックス・シティ

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#アポカリプスヘル
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#ヴォーテックス・シティ


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●狂炎の宴
 サブマシンガンが男へと向けられる。
 向けられた男は臆すこともなく笑って銃の掃射を待つ――臆しているのは、銃を持っている方の男だった。
 すっかり腰が引けていて、銃口も狙いが定まっていない。
「オラ、どうした、撃てよォ!」
 威勢のいい声に戦慄いて、震える指が引き金を引いた。
 バラ、バララララ……そんな音を立てて、男へと弾丸が吸い込まれていく。
「……ふ、は、はははははッ!」
 男が腕を振るうと、紅蓮の炎がぶわりと舞い上がってマシンガンの銃弾を包み込む。
 銃弾は炎の中で焼け熔け、男に一発も当たることなくその燃え残りだけが地に落ちた。
「ヒッ、ひぃっ……!」
 遂に銃を持っていた男は腰をついた。恐怖のあまりか失禁もしている。
「――なんだァ? もう終わりか。……じゃあ、もうお前に用はねえな」
 呆気ねえ、ブリンガーの中でもやる方だって聞いたから高く買ったってのに。
 がちがちと歯の根の合わなくなった男の肌に、炎の点った指が近づいてくる。
「あっ、あ、あぁ、やめてくれ、やめて……ぎぃ、ぎぃあああああアアアア!!」
 服が、体が、燃えてゆく。生きながら焼き肉になった犠牲者に、男は興味をなくした様子で背を向けて――けっ、とつまらなさげに息を吐いた。
「どっかにいねぇのかよォ、俺を満足させてくれる強い相手ってのはよぉぉ!!!」

●グリモアベース、午後三時
「皆様、もう『ヴォーテックス・シティ』の事はご存知でしょうか」
 フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は緑色に光る右目を弓なりにして微笑むと、呼びかけに応じて集まった猟兵たちに語りかけた。
 アポカリプスヘルに存在するという、悪徳の都「ヴォーテックス・シティ」。悪と狂気のキング・オブ・キングス、華麗で巨大なる「ヴォーテックス一族」が支配すると言われる超々巨大都市。そこには「髑髏と渦巻」の模様の紋章が掲げられているという。
 日夜各地のレイダー・キング(野盗の王)から大量の物資や奴隷が上納され、レイダー達が暴虐と快楽に耽るその街に連れてこられた奴隷たちの命は米の一粒よりも軽く、気ままに暴漢どもに弄ばれる――そんな街が、アポカリプスヘルの各所に存在するという。
「皆様にやっていただきたいのは、この『ヴォーテックス・シティ』に潜入し、とあるレイダー・キングに買われた奴隷たちの解放。そして、そのレイダー・キングを倒すことです」
 少年が言うには、『ブレイズフレイムのガルバ』という男が、自らの「好敵手」となり得る奴隷をヴォーテックス・シティで買い集めているのだという。
「ガルバはその通り名の通り、炎の技を極めることに燃え上がるような執着心を抱いている男。そして、自分を満足させることの出来る強者を求めているようなのですが」
 オブリビオンのレイダー・キング相手に、まともに戦える奴隷がいるはずもない。
「そしてガルバは、奴隷が自分を満足させられなければその炎で焼き殺してしまうのです。まるで、そう……遊べない玩具だとわかって苛立ちまぎれに壊してしまうのと一緒ですね」
 少しでも戦えそうだと買われたが最後、刃が立たぬ相手に藻掻くか、そうすることも出来ずに生きたまま焼き焦がされるか。いずれ奴隷たちには結局は同じ、ガルバの炎による死が待っている。
「ですから、皆様にはシティでガルバに売られようとしている奴隷たちを助け出していただきたいのです。今からならば、ちょうど奴隷市が開かれる時間に間に合うでしょう。……売られてきた奴隷に扮して「強い」ところをアピールすれば、ガルバの興味を引くことが出来……他の奴隷たちを逃がす時間も稼げるでしょうか」
 奴隷たちを逃せば、当然レイダーの配下たちが追いかけてくる。戦車やバギーなど、クルマに乗った集団が襲いかかってくるだろう。都市の中でカーチェイスをしながらの戦いにになると少年は言った。
「ちなみに都市の中には、そこら中に鍵のかかっていないクルマが転がっている様子。利用できれば役に立つことでしょうね」
 配下を倒せば、猟兵たちを真の強者と認めたガルバとの戦いになるだろう。ガルバにはその炎だけでなく、ヴォーテックス・シティが所有する恐るべき「モンスターマシン」を所持し、それに乗り込んで襲いかかってくるようだ。
「ガルバとの戦いは、都市の建物を破壊しながらの戦いになります。逃げ遅れた奴隷がいたなら、助け出して差し上げると良いでしょう」
 皆様にご武運がありますよう、とフェイトは言う。にっこりと、綺麗な笑みを浮かべながら。
「シティまでの転送は僕が承ります。準備が整いました方から、僕にお声掛け下さいませ――……」


遊津
 遊津です。
 アポカリプスヘルのシナリオをお送りします。
 第一章冒険、第二章集団戦、第三章ボス戦の構成となっております。

 「第一章」『セーブ・ザ・スレイブ』
  専用フラグメントです。悪徳の都の中に潜入し、開かれようとしている奴隷市から売られようとしている奴隷たちを解放して下さい。
 奴隷たちはそこそこに「腕が立つ」と見込まれて買われてきた、多くはブリンガー(奪還者)を中心とした者たちです。武器さえあればある程度の自衛は出来るようです。
 彼らよりも「腕が立つ」事を証明して見せれば、彼らが逃走する時間稼ぎをすることができます。

 「第二章」集団戦となります。
  詳細は第二章の追記でいたしますが、都市の中をカーチェイスしながら戦うこととなります。

 「第三章」ボス戦『ブレイズフレイムのガルバ』
  詳細は第三章の追記で致しますが、レイダー・キング「ガルバ」との戦いとなります。

 当シナリオのプレイング受付開始時刻は、9/24(木)の8:31~となります。
 それ以前に送られてきたプレイングは申し訳ありませんが都合上一度流させていただきます。前もってご了承下さい。
 プレイングをお送りいただきます際には、必ずマスターページを一読して下さいますようお願いいたします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『セーブ・ザ・スレイブ』

POW   :    レイダーを腕力で成敗する

SPD   :    逃走経路を探し、秘密裏に奴隷を逃がす

WIZ   :    自身もあえて奴隷となり、現地に潜入する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

春乃・結希
周りを見てみると自身有り気な人もいますね。さすがブリンガーです
私も負けないようにアピールしないと…!
と、自己アピールの場に挑むような前向きな気持ちで市場に立ちます
…なるべく目立った方が、時間も稼げると思いますし

はい!エントリーナンバー……何番でしたっけ?
とにかく見てくださいこれ!大剣!超かっこよくないですか
あ!そこの方!どうせおもちゃだろって思ってますね?
じゃあちょっと持ってみてください
ひょい、と片手で差し出します
…ね?本物やったじゃろ?

あとあれ!炎!ここのボスは炎使いって噂で聞きました
いいですよね、炎。
だからあなた達も、私の焔で灰にしてあげようと思ってますっ
当然のことのように言い放ちます


月隠・望月
※アドリブ歓迎

強い者と戦いたい、という気持ちはわかる。だが、なぜ弱い者を殺すのか。
戦えない者を相手取っても意味がない、だろうに。

まず、奴隷に扮して紛れ込むところから、かな。
「腕が立つ」事の証明には、誰かと戦うのがわかりやすい。喧嘩が起きていたら仲裁に入る形で戦うか、あるいは奴隷たちの見張り役がいれば喧嘩を売ろう。
戦う際は目立つよう派手に。相手を【吹き飛ばし】、無力化を図る。相手がオブリビオンでなければ、落ちても怪我をしないような場所に飛ばそう。

奴は炎の技を扱う、なら、同じく炎を使えばより関心を惹ける、かもね(【属性攻撃】)
周りのヒトに怪我をさせてはいけない、から、炎は見せるだけになりそうだが。



●商品としての立場
 そこは、悪徳の都ヴォーテックス・シティに連れてこられた奴隷たちの中でも――他よりわずかに力ある者たちが集められた場所。
そこを利用する客は、殆どが闘奴を買おうとするレイダーたちだ。
ヴォーテックス・シティにおいて、闘奴以外に「強い」奴隷の使い途はない。
レイダーたちは自分で暴力を行使することが出来る。自分に向けられた暴力にも対応することが出来る。他の世界で貴族がそうするのと違って、奴隷に身を守らせる必要など無い。自分に歯向かってくる可能性のある奴隷など殺してしまうに限る。
シティ内にあるコロシアムで戦わせ合う以外に、力ある奴隷の使い途などないのだ。
……だから。闘奴候補の商品として並べられている奴隷たちは、買い手がつかなければ等しく殺される運命にある。それに比べれば、闘奴の身に落ちて死にものぐるいの戦いを鑑賞される立場になるほうがずっとマシだ。
故に彼らは、必死になって自分が「強い」事をアピールする。
(私も、負けないようにアピールしないと……!)
 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)の目に映った、「自信有りげな奴隷」とはそういうことだ。彼らの無為に殺されたくはないという死にものぐるいの胸中を知ってか知らずか、結希は彼らをさすがブリンガーだと称賛する。
 やがて、市には彼らを「商品」として買い上げようとする者たちが集まってくる。その中にはガルバも混ざっているのだろう。
(強い者と戦いたい、という気持ちはわかる。だが、なぜ弱い者を殺すのか……戦えない者を相手取っても意味がない、だろうに)
 「商品」に紛れている月隠・望月(天稟の環・f04188)は、ガルバの事を考えて眉を顰めた。
やがて奴隷市が始まり、並べられた「商品」たちは自分がいかに役立てるかを買い手候補たちに必死になって見せていく。
「よぉし、次!」
「はい!エントリーナンバー……何番でしたっけ? 春乃結希です!」
 華奢な少女にしか見えない結希がそう言う姿に、下卑た笑いが客席から巻き起こる。おいおい、ここはコロシアムの奴隷を買う場所じゃあなかったのか? 夜の相手にしてもいいんじゃないのか……野盗たちは汚い言葉でそう言うことを憚らない。
その不躾な視線を浴びるのは、望月も同じだ。
――「商品」に武器を自由にさせておく奴隷市があるわけがない。けれど、闘奴の強さを……如何に闘技場で長持ちするかを見定めるには、外見だけではわからない時もある。
見た目がか弱そうな闘奴が勝ち抜くことは、賭けの場において大番狂わせになる。大量のカネ……金券相当になる物資がやり取りされることになるだろう。だから。自己アピールの間だけ、奴隷には武器を持つことが許される。
結希の相棒である大剣「with」も、それまでは彼女から取り上げられていた。青褪めた顔をした市の主がwithを運んでくる。それを受け取り、軽々と振り回して、結希は笑顔で言う。
「とにかく、見て下さいこれ!大剣!超かっこよくないですか!……あ!そこの方!どうせおもちゃだろって思ってますね? じゃあ、ちょっと持ってみてください!」
 ひょい、と片手で差し出された剣をつい手にとった客がその重量に驚いて大剣を取り落とす。やおらざわめき立つ客たちの中、店主の制止も聞かずに愛剣を腕の中に取り戻した結希は言った。
「ね? 本物やったじゃろ?」
 臆すことなく、結希は言葉を続ける。
「あと、あれ!ここには強い炎使いの人がいるんですよねっ!いいですよね、炎。……だからあなた達も、私の焔で灰にしてあげようと思ってますっ」
 当然のように言い放った結希。その言葉に、客たちの中から怒号が飛ぶ。ふざけんな、ここをどこだと思ってやがる、身の程を知れ奴隷が、殺しちまえ――
およそ奴隷としての「商品」らしくない奔放な振る舞いに、示しをつけるために店主が結希の頬を強かに撲った。無理矢理に縄をかけられ、一発二発と殴られて客の前から下げられていく結希。こんなもの痛くはない。しかし、腕の中の剣「with」も無理矢理に引き剥がされる。それは辛いことだった――だが。
「今はおとなしくしてなよ、全部台無しにするつもりじゃないだろう」
 そっと囁いた望月の言葉に、結希は抵抗をやめる。withはいずこかへと運ばれていった。必ず再会することを誓って、彼女は拳を握り、引きずられていくに任せるのだった。
次は望月の番だった。筋骨隆々の見張り役に向かって、望月は言い放つ。
「わたしの腕がどのくらいか見たいなら、かかってきな」
 二人続けて躾のなっていない商品だと客の中から野次が飛ぶ。しかしそれは、彼らにとっては退屈しのぎのスパイスでもある。目の前で乱闘騒ぎが起こるなら、それを彼らは望んでいるのだ。
中性的な容姿の望月には、見張り役も「女」を感じて遠慮する――売れなかったときには、女の奴隷は肉欲のはけ口となるための奴隷としての市に回されるからだ――こともなく、丸太のような腕を振り回して殴りかかってくる。その腕をがっしりと受け止め、軽く捻って、炎を纏いながら吹き飛ばす。わざと大袈裟に、派手に、落ちても怪我をしないような場所に、吹き飛ばす。筋肉達磨の体が宙を舞った。
 おおおおお、と客の中から歓声が上がる。望月のパフォーマンスは多くのレイダーの心を掴んだようだった。幾らで買おうか、幾らまでなら出せるかと具体的に検討し始める客もいる。
それだけすると、望月は静かに下がった。自分の役目はこれで終わりだと、奴隷としての領分を弁えていると見せつけるように。吹き飛ばされた見張り役もそれに機嫌を直した様子だ。
 その後も奴隷市は順調に進んでいく。集まった客は商品のパフォーマンスに歓声を上げ、野次を飛ばす。
その中で。顔に龍の入れ墨をいれた男は、結希と望月に熱い視線を送っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と。
私はロベルタさんと協力し市場の内側から崩します。
なので私は奴隷となって潜入しようと思います。
サムライエンパイアからの奴隷ということにします。
どれだけ時間を稼げるかが勝負…ですね。

奴隷の市場というのは初めてで緊張しますね。
緊張しながらどの人がガルバさんなのか観察します。
彼を発見したら…実力を主張しようと…思います。
ガルバさんは炎の属性の技を極めようとする方…。
ならば私も炎の技を『国綱』の一刀で【蓑火】を。
人を斬るのは極力避けたいので何か物を斬ります。
もし人を斬る場合には裾などを少し斬り消火します。
興味を惹かれればいいのですが…。
「ひゃい?! …あ、浅間…墨…です」


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と。
僕はスムーズに奴隷さん達を逃がす為に尽力するじぇ!

ゴーグルを使って電脳世界から逃走経路を探そうと思う。
ついでに街のセキュリティーも解除しておくじょ♪
(パフォーマンス、早業、暗号作成、ハッキング、学習力)
余裕があったら逃走経路を実際にその道をみようと思うよ。
みる時は怪しまれないよう旅人に変装して街を散策するね。
もし職質された場合はコミュ力を発揮して難を逃れるじぇ。

そうそう忘れていたじぇ。露ねーのことも心配だねぃ。
心配だからハッキングで市場の様子もみておこうかな。
もしかしたら活躍してる露ねーがみれるかもしれない。
これは本当に余裕があった場合に…だけどね~♪



●奴隷市、その内と外で
 三十六あるというそれぞれの世界。それらの世界が複数あると知っているのは、今発見されている世界のうちでは基本的には猟兵だけだ。
 無論、世界を渡った一般人もいて、このアポカリプスヘルにも、アックス&ウィザーズから来たエルフの末裔がいても何もおかしくはない。けれどそれを認識しているのは一握りだ。
アポカリプスヘルに住む人間は普通、世界はこの一つだけしか無いと考えている。そうでなければとっくに、こんな地獄のような世界からもっと良い環境の別の世界へと逃げ出そうとしているだろう。レイダーになるような人間ならばなおさら、自分の住む世界の外に
世界があるなんて事は考えようとしていない。
「サムライエンパイアぁ? なんだそりゃあ、どこの拠点(ベース)だ? モールか何かか?」
 浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)を異世界からの奴隷としようとしたその試みは、この世界の人間の無知によって失敗した。かといって、墨が奴隷に扮することができなかったわけではない。ただ墨は、和装の奴隷として囚われただけだった。
この悪徳の都ヴォーテックスシティで女の奴隷が売られる市場は、二つに分けられる。一つはその肉体、夜の奴隷として扱われる女達が送られる市場。もう一つが、闘奴とするために、地下闘技場に送られる奴隷を買わせる為の市場だ。
危うく前者に送られるところだった墨はこっそりと抜け出し、後者の奴隷を売るテントへと潜り込む。
 商品として自らが紹介される番を待ちながら、墨は集まった客たちを長い前髪の下から観察する。果たして、どの男がガルバなのか――。
ずらりと並んだレイダー達の奥に、顔に龍の入れ墨をした男を目に止めた時。
ぴしりと鞭の音がして、墨の膝が叩かれる。
「次、お前の番だ!」
「ひゃい?! ……あ、浅間……墨……です」
「名前はいい、お前には何が出来るか、見せてみろ!」
「は……ぃ、……ぁの、刀……を」
「ああ、お前は刀を使うんだったな」
 当然のことだが、奴隷に武器をもたせっぱなしにしておく奴隷商などどの世界にもいるはずがない。武器は取り上げられていた。墨の刀は粟田口の国綱、値打ちの張る業物と見抜かれていれば勝手に売り払われていても仕方のない環境だったが、どうやら誰も彼もその目は節穴でしかなかったようで、国綱は無事墨の前に運ばれてくる。それと、襤褸布団のようなもので作られた巻藁代わりが一つ。
 国綱を握り、墨は精神を集中させた――。

 ――ヴォーテックス・シティは普通の都市ではない。
ヴォーテックス一族が取り仕切る「悪徳の都」。その入口にはそうと一目で分かる紋章が掲げられ、出入りしているのはレイダーばかりだ。
 普通の人間が、気軽に立ち寄るような場所ではない。 
ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は自らを旅人と偽ろうとした。けれど、ヴォーテックス・シティにそうと知らずに入った旅人などいれば、たちまち捕まって荷物を剥ぎ取られ、それこそその身は奴隷として競りにかけられているだろう。
この都市に「旅人」など存在するはずがないのだ。だから、平気な顔で街を歩くロベルタを、この街の者たちはこう解釈した。
 ――あの娘は自分たちと同じ、レイダーだと。
「なんだ、この街。セキュリティなんてあってないようなもんなんだじぇ」
 それも当然のことだ。この街に出入りするのはレイダーだけ。野盗たちだけ。このヴォーテックス・シティはならず者たちだけが出入りする悪徳の都市。お上品なセキュリティなど在るはずもない。盗まれれば、盗まれたほうが悪い。ここで命の価値が易いのは奴隷たちばかりではなく、レイダー同士もまだいざこざになれば平気で命を奪い合うだけだ。
それでもロベルタは逃走経路を探り、洗い出していくことに成功していた。奴隷たちを逃がす道程ならば割り出した。あとは、内側に入り込んだ者たちが動き出すのを待つだけだ。
「そうそう忘れていたじぇ、墨ねーのことも心配だねぃ」
 監視カメラなどその殆どが徒にレイダーたちに壊されている。ロベルタは歩いて奴隷市へと向かう。我が物顔で街を行き、レイダーだと思われている彼女は、客が集まる中に紛れ込んだ。

 墨は、襤褸布団で出来た簡易巻藁を前に刀を抜く。
超高速の抜刀術。抜き放たれた刃が鞘に収められたときには、襤褸布団は胴から真っ二つに斬れ、そして燃え上がる。
上がった派手な炎に沸き立つ客たち。その中で、奥に立つ男がぺろりと唇を舐めたのをロベルタは目にした。顔に龍の入れ墨のある男だった。
 やがて火は消され、墨は奥に下がるように命じられる。その言葉に従った墨をそのままに、次の奴隷が商品として紹介されていく。しかし墨の一刀の前には、哀れにも彼のパフォーマンスは観客には響かないようだった。
 ロベルタの横を、龍の入れ墨の男が通り過ぎていく。その男の背中を見送って、ロベルタもまた奴隷市を後にし、内側から猟兵たちが動き出すのを待つのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木々水・サライ
[アドリブ・連携歓迎]
強い奴が欲しい、か……。
それは単純な腕力なのか、心の強さなのか。そのへんで変わってくる気もするんだがなあ。
まあいい、まずは奴隷達を助けるところからだ。

そういや別に1対1じゃねぇんだろ? なら多人数でかかってこいよ。こっちは2人になるからよ。

UC【強化された白黒人形】発動。複製義体には黒鉄刀、白銀刀で戦ってもらう。オイルを献血一回分失うから若干動きが鈍るが、俺本体は拷問具による補助を行う。
対処しづらい攻撃には黒い目の四白眼で算出される戦闘知識をフル活用だ。

ついでに拷問もしてやるよ。こう見えて俺は結構サディストなんだぜ?表に出さないだけでな。

……あ。奴隷のこと忘れてた。


ジェイミィ・ブラッディバック
【共闘・アドリブ歓迎】
ふむ。ガルバ氏は強者をご所望で。では私が最高のプレゼンをご用意しましょう。「イレギュラー」な形ですが。

まずはシティへ空路で向かいましょう。索敵+情報収集で彼我の戦力、及び敵戦力と奴隷の位置を確認。IFFに奴隷と猟兵を味方登録した上で、監視の薄い場所から潜入します。

見張りをグラップルで気絶させ、武器を奪います。奴隷市の会場に到達したらUC起動、敵戦力に向けてこちらの保有する武器を一斉射撃。騒ぎに乗じて奴隷のうち何名かに見張りから奪った武器を渡し他の奴隷の護衛を依頼しつつ、奴隷たちをホットゾーンから脱出させます。私は陽動に徹しますが、ここで敵戦力を減らせればベストですね。


エスタシュ・ロックドア
※アドリブ歓迎

やれやれ、とんだオイタの過ぎる野郎がいたもんだ
直接突っ込んで殴りに行きてぇとこだが、こっちが先か
OK、わーった

自由を奉ずる俺が奴隷に扮するとか業腹だが、
気をひくのに向いてるのは分かる
しばらく枷に繋がれるとか檻に入れられるとかしていようか
……やっぱわかってても腹立つな
奴隷の逃走が始まったらここぞって時に【怪力】を発揮する
檻とか枷とか引きちぎって脱走してみせるぜ
はっ、ご丁寧に送迎とかして下さるもんだから大人しくしていたがよ
こんなはした金で売っ払うたぁ、
さすがにおもてなしがなってねぇんじゃねぇのか?
【存在感】をいかんなく発揮して気をひこう

奴隷の先導とかそーいうのは他の猟兵に任せる



●奴隷市の裏側で
 アポカリプスヘルの空を、一騎のマシンが飛んでいく。オブリビオンストームが発生するようになってから、この世界の空をまっとうに飛ぶようなものは耐えて久しく――オブリビオンとなった存在でなければ、それは、異世界から来た存在、猟兵の駆るものか、あるいは猟兵そのものだ。
 その猟兵――ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵・f29697)は上空からヴォーテックス・シティを見下ろす。どこにも整然としたところなど無い、悪徳に狂った都市。その中で、今奴隷たちを助けようとしている猟兵たちはどこに潜んでいるのか、己を含めた彼らと、ヴォーテックス・シティの戦力差はどれくらいかを計算していく。
仮にシティに存在するレイダー全員を敵に回すことになった場合――それは、既にシティ内部に潜んでいる猟兵を仲間に付けたとしても勝機は薄いだろうと言うだけのレイダーがこのヴォーテックス・シティ内部には存在していた。
IFF――敵味方識別装置に猟兵と奴隷とを味方として登録し、ジェイミィは機を待つことにする。

 一方、シティの内部、奴隷市のテントの中には木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)が奴隷たちの救出の為にひっそりと乗り込んでいた。
(強い奴が欲しい……か。それは単純な腕力なのか、心の強さなのか。そのへんで変わってくる気もするんだがなぁ)
 さほど入り組んでいるわけでもないテントの中、目当ての場所にはすぐに着いた。アポカリプスヘルの其処此処から集められた奴隷たちのなかでも、例外的に「強さ」を買われる奴隷――コロシアムで戦わされる「闘奴」として売られることになる奴隷たちが、今は武器を奪われて檻の中に詰め込まれている。その中には、奴隷に扮したエスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)もいた。
「……おい、お前、猟兵か?」
「ん? ああ、お仲間か。ああそうだ、待ってたぜ」
 自由を奉じるエスタシュである。奴隷の身など業腹でしかなかったが、しかしレイダーたちに不審に思われずにシティに入り込むには奴隷に扮するか、さもなくばレイダーに扮するかのどちらかだろう。何せ、このヴォーテックス・シティにはその二種類の人間しか存在していないのだから。
「やっぱわかってても檻に入れられるってのは腹が立つもんだな」
 メキメキと音を立て、エスタシュが自らを収容していた檻を捻じ曲げる。
「ご丁寧に送迎とかして下さるもんだから大人しくしていたがよ、はした金で売っぱらわれるなんざ、おもてなしがなってねぇよなぁ」
「おい、お前、何をして……!?」
 檻を壊されたことに気づいた見張りが声を上げるやいなや、サライの呼び出した複製義体が二体、それぞれに黒鉄と白銀の刀を手にして暴れまわる。エスタシュは次々と檻を開けていき、檻の中に閉じ込められていた奴隷たちを解放する。
その機は熟したとジェイミィが加わった。あらかじめ見張りから奪っておいた武器を開放された奴隷たちの中でも特に腕のたちそうな者たちに渡す。
「どうぞこれを。他の奴隷の方々の護衛をお願いいたします」
「あ、ああ。やれるだけはやってみるさ」
 奴隷たちは散り散りになってテントの外へと逃げ出し、そのままシティの外を目指して走り出してゆく。慌てて彼らを追おうとしたレイダーたちに向かって、ジェイミィは射撃形態となってレーザーキャノンを発射し、マシンガンの弾丸を掃射していった。
「待ててめぇら、待ちやがれ……ぐぅっ!」
「待つのはてめぇだよ」
 奴隷たちを追おうとした見張りの一人の後ろから、サライがロープを鞭のようにしならせ巻き付ける。そのまま気道を圧迫して締め付けながら体重をかけ、サライはにたりと笑った。
「追いかけられちゃあ困るもんでな。……このままついでに拷問もしてやろうか? こう見えて俺はけっこうサディストなんだぜ」
 最初にエスタシュが派手なパフォーマンスを見せた分、見張り達の視線は彼に惹きつけられていた。そこをサライの複製義体たちが斬りかかり、ジェイミィがレーザーと弾丸の雨を浴びせていく。捕らえられていた奴隷たちがシティの外にたどり着くまで、彼らの乱闘は続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『改造屍人『インテグラルアーム』』

POW   :    暴虐たる捕縛者
【巨大化能力】を使用する事で、【全身に触手】を生やした、自身の身長の3倍の【第二形態】に変身する。
SPD   :    マルチプルインテグラル
【無数】【の】【触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ポイズンテンタクルス
【触手】から【粘液】を放ち、【それに含まれる麻痺毒】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


========================================
 奴隷たちの解放は上手く行った。
しかし、楽しみを邪魔されたレイダーたちが猟兵たちを放っておくはずがない。
彼らは走って、次第にバギーや改造車などに乗って、猟兵たちを追ってくる。
やがて、その中から一際巨躯の、体から触手を生やしたオブリビオンを乗せたクルマが迫ってきた。
クルマの機動力に対抗するには、此方も機動力を得るしか無い。
幸い、グリモア猟兵が告げた通りに、ヴォーテックス・シティの中には無人のクルマが無数に転がっている――!
========================================
 ・集団戦 改造屍人『インテグラルアーム』が現れました。

 奴隷市に捕らわれていた奴隷の解放に成功しました、おめでとうございます。
ヴォーテックス・シティのレイダーたちが猟兵を追いかけてきています。
敵オブリビオン「インテグラル・アーム」もまた、改造車などのクルマに乗ってフルスロットルで追いかけてきています。
 第二章の戦闘は「逃げながら戦う」ことになります。
都市の中をカーチェイスしながらのバトルになりますので、ご注意下さい。
 ※敵の機動力に対抗する手段をとれば、プレイングボーナスを得ることが出来ます。
シティ内部にあるクルマに鍵をかけるようなマナーの良い人間はこの都市には存在しません。よって、乗り放題です。自動運転装置がついているので車両運転技術を気にすることはありません。どうぞご活用下さい。
もちろん、自前の逃亡手段が存在する方はそれを使用してくださって構いません。
タイヤを狙うなどの足止め攻撃は効果がありません。先に述べたとおり、シティ中にクルマがある為、敵も脚を潰されれば乗り換えて来ます。
一章で逃した奴隷については、現時点で気にする必要はありません。
今は追ってくるオブリビオンとのカーチェイス戦に集中すると良いでしょう。
 第二章の戦闘は集団戦です。通常のレイダーたちも追ってきていますが、彼らに対する特別なプレイングは不要です。
また、第二章に「ブレイズフレイムのガルバ」は登場しません。

 第二章の受付は9/30(水)朝 8:31~となります。
受付時刻前に受け取ったプレイングは申し訳ございませんが失効日の都合上、一度流させていただきますので、お気をつけください。
雑記欄を更新しました。プレイング送信前に、今一度マスターページを確認くださると助かります。
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木々水・サライ
[アドリブ・連携歓迎]
奴隷達は開放したから一旦逃げるしかないな(建前)
個人的にはもう少しお仕置き楽しみたかった(本音)

さてそれじゃ、UC【複数の白黒人形達】で呼び出した10人に頼んで、一人一つの車に乗って逃げるぞ!
本体の俺がバレないよう、隊列はぐちゃぐちゃにしながら走る!!
いわゆる暴走族スタイル!!アポヘルらしさあるだろ!

と、相手の方が機動力高いな。
仕方ねえ、[黒鉄刀]の闇も利用しよう。視覚を奪うため、闇をまき散らしながら逃げるぞ。
こういう時は脚を潰すより目を潰したほうが手っ取り早いし、何より視覚を奪われることで俺自身が見つかりにくいからな。
ついでにどっかぶつかってくれねーかなぁ…。



●末法地獄の追いかけっこ
「よし、奴隷達は開放できたが……ここは一旦逃げるしかねぇみてぇだな!」
(個人的にはもう少しお仕置きを楽しみたかったんだがなぁ……)
 既に泡を吹いて青褪め気絶していた見張り役から拷問器具をしぶしぶ放し、サライはテントの外へと駆け出した。
レイダーたちが自分たちだけの野蛮な楽しみを台無しにした無作法者を私刑に処さんと、猛スピードで、幾台もの改造車に乗って追いかけてくる。その最前線にいるのが、片腕を触手に改造した巨躯のオブリビオンだった。
 サライに呼び出された複製義体たち十体と、そしてサライ本人はまさにそこら中に打ち捨ててある改造車にそれぞれ乗り込み走りだす。
どこに本体のサライが居るかわからないようぐちゃぐちゃに入り乱れて走りながら、合計十一台の改造車は走る。それが悪徳の都市たるヴォーテックス・シティの道路を駆け抜けるさまは、まさにアポカリプスヘルというこの世界に溶け込んだような有様だった。
「ちっ、相手の方が機動力が高いな……!」
 苦々しい声でサライは呟いた。仕方ねえ、と取り出したのは彼の身長よりも長い刀身を持つ刀、黒鉄刀。刀身から常に闇を溢れさせ続けているその刀を掲げ、めちゃくちゃな軌道で走り続けることで追っ手の視覚を奪う。
(こういうときは、脚を潰すより目を潰したほうが手っ取り早いからな)
 無軌道に走ったためか、黒鉄刀から生み出された闇による一定の大きさのダークゾーンがサライたちと追手の間に出来上がった。そのダークゾーンに無策で突っ込んでいった追手の乗ったクルマが暗闇によってハンドル操作を誤る。後方で轟いた急ブレーキの音と激突音を聞きながら、十一人のサライ――十一台の改造車たちは更にスピードを上げて逃走経路を走っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希
あのっ、ちょっと!『with』返して貰ってないんですけどっ?
むー、返してくれないなら、自分で呼びます!
『with』…私はここだよ
UC発動
あははっ、おかえりなさい!

恋人を取り返したら車に乗り込みます
屋根はない方が動きやすいけど…あった!今日の相棒は君にしますっ
ごめん、ちょっと触るねー…と配線を弄り【リミッター解除】
これでよし。運転は任せたよ!

座席の上に立ち、大剣を構える
足元は『wanderer』が支えてくれる
限界を超えた車の性能と、大剣で振り払うことで触手を防ぐ
距離が詰まって来たら車に合図し、急ブレーキ
速度差を利用して、大剣を叩きつける
よくも私の恋人をベタベタ触ってくれましたね…絶対許さないから



●CONNECT With
「あのっ、ちょっと……!『with』、返して貰ってないんですけどっ!?」
 抗議の声を上げる結希。しかし、それを聞き届けてくれる者はこの場にはいない。
そもそもの話。もしも結希が本当に奴隷として売られ、そして買われていたならば、彼女の恋人――愛剣「with」は彼女の買い主によって奪われ、戦いの見世物にされるときだけにしか返してもらえず、その興行が終わればまた奪われることになっていただろう。奴隷に剣を渡したままにしておくなど、危険で仕方がないからだ。
すなわち、結希に彼女の恋人を返そうという者は最初からいなかったに等しい。
「むーっ、返してくれないなら、自分で呼びます!……『with』!私はここだよ!」
 結希はしばらくむくれていたかと思うと、自らのユーベルコードを発動させる。
【コネクション】。恋人たるwithを愛し、信じる思いによって発動する、本来はwithを結希の手から離して別々に動かすユーベルコード。それを彼女は、愛しい恋人と再会するためだけに使ったのだ。
「あははっ、おかえりなさい!」
 愛剣を抱擁する結希の表情は、幸せに満ちていた。その顔も、抱擁も再会さえも、見る者はいなかったが――。
 withを手にしてテントの外に出た結希は、ヴォーテックス・シティ中に放置されているバギーや改造車両の中から屋根のないものを探し出す。
「あった!……今日の相棒は、君にしますっ!ごめん、ちょっと触るねー……」
 配線を弄りながら、運転は任せたよ、と言って。
動き出した改造車の後部座席に乗り込むと、その上に立って結希はwithを構えた。
結希の施した細工によって限界を超えて走り続ける改造車。舗装の剥げた道、揺れる足元は蒸気魔導により脚力を強化するブーツが支える。
後ろからは同じく改造車に乗った、半身を触手に改造した異形のレイダーたちが追いかけてくる。その後方にはオブリビオンでない普通のレイダーもいてわめき騒いでいるが、彼らは二の次、相手にするべきは異形のオブリビオンだ。
異形のレイダーたちは無数の触手を前をゆく結希のクルマへと放ってくる。それを次々と斬り裂きながら、結希は彼我の走行速度と距離とのタイミングを図り続ける。
レイダー達の改造車が距離を詰めた瞬間、結希の乗るクルマが急ブレーキをかけた。
その衝撃と速度差を利用し、結希はwithを手にしたまま飛ぶ。
「よくも私の恋人をベタベタと触ってくれましたね……!絶対、許さないから!」
 異形のレイダーを頭頂部から真っ二つに斬り裂いて、結希は高らかにそう宣言したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイミィ・ブラッディバック
車ですか……ふむ、しかし機動力ならこちらが上です。

【指定UC】を生身で発動。これで一気に距離を稼ぎます。さらにミサイル(誘導弾+爆撃)やマシンガン(制圧射撃+弾幕)などで周囲の建築物を破壊し、雪崩を起こして足止めを図ります。あぁ、どうせなら直接攻撃もしましょうか。

余裕があれば、他の猟兵の皆さんのアシストもしておきたいところですね。
レーダー(情報収集+偵察)で最適なルートを割り出し、猟兵の皆さんを誘導します。
一番遅れている車があるならば、彼らのためにレーザーキャノン(砲撃+鎧無視攻撃)で迫る追手の狙撃をしましょうか。

さて……ガルバさん、出てきては如何ですか? ここには強い相手がごまんといますよ?


エスタシュ・ロックドア
こんな末法極まる街に愛するシンディーちゃんを置いておけなくてなぁ
っつーわけで『羽鉄火車』発動
子分のカラスとシンディーちゃん召喚して【騎乗】しつつ、
UCで適当な猟兵(望月(f04188)※初対面)ンとこに行こうかぁね
よう同族、お困りかい?

後ろに乗せたら即【ダッシュ】、振り落とされんなよ
はっ、そいつぁ重畳
頼もしいこった!
烏どもに空からナビさせつつ(【動物と話す】)、
【落ち着き】ながら【運転】に集中
車が通れなさそうな隘路や連続急カーブを駆使して【地形の利用】
敵を翻弄する
行く手を阻む障害物はドリフトしてシンディーちゃんとダンス、
【怪力】でフリント振るって【なぎ払い】【吹き飛ばし】だ

※アドリブ歓迎


月隠・望月
(ロックドア殿(f01818)と ※初対面)
この世界で同族に出会うとは、奇遇。そう、困っている。ご明察。
この鉄の駕籠……クルマ、にはあまり馴染みがなくて、ね。乗せてもらえると助かる。

振り落とされるほど柔ではない、ので、心配ご無用。敵への攻撃はわたしにまかせて。
【百剣写刃】で刀を複製。念力で操り、敵を攻撃する。敵は見たところ筋骨隆々、筋肉が薄そうな顎の下辺りを狙おう(【串刺し】)
攻撃に使う刀は数本に留め、敵の攻撃に備えたい。

敵のユーベルコードに対しては、触手を【切断】することで対応。
無数の触手に対して複製できる刀は有限、だが刀を展開する範囲を自分たちの周囲に限れば対処可能、と考える

※アドリブ歓迎



●此処は地獄の果て、悪徳栄える背徳の都
(皆様追いかけて来られますが……車、ですか。ふむ、しかし機動力なら、此方が断然上ですね)
 ジェイミィはおよそ時速740キロの猛スピードでヴォーテックス・シティの空を駆け、
一気に距離を稼ぐ。ジェイミィから発射されるミサイルとマシンガンとが周辺の建築物を破壊し、追ってくるレイダー達の足を止める。それだけに留まらず、降り注ぐ弾丸と爆撃とが戦闘を行く異形のレイダーに直撃し、幾体かをぐちゃぐちゃに引き裂いてみせた。

「はぁー……こんな末法極まる街に、愛するシンディーちゃんを置いておくことなんざできねぇなぁ」
 エスタシュは後頭部をがしがしと掻きむしり、はぁ、とため息を付く。
「“此処に示すは我が配下、六道駆ける火の車。以て辿るは此の縁”――」
 途端、エスタシュの姿が消えた。無論そこから永遠に消失したのではない、彼が現れたのは別の奴隷市テントにいた望月の元。 
三十七の地獄の烏、そして愛機たるバイク「シンディーちゃん」に乗ったエスタシュが、軽い口調で望月に話しかける。
「よう、同族。お困りかい?」
「……この世界で同族に出会うとは、奇遇」
 エスタシュと望月、ともに羅刹であることは、互いの額から生えた黒曜石の角が雄弁に語っていた。互いにサムライエンパイア出身である二人が、その世界から遠く離れたこの地獄のような世界で出会うことは、如何に世界を行き来する猟兵が数多く居るとしてもたしかに奇遇なことだったであろう。特に、今回の任務は参加する猟兵が格別多いというわけではない。
「……そう、困っている。ご明察」
 エスタシュに対し、望月は淡々と語る。
「この世界の鉄の駕籠……クルマ、には。あまり馴染みがなくて、ね。乗せてもらえると、助かる」
「オーケイ、任しておきな」
 後部座席に望月を乗せた「シンディーちゃん」がエンジンを噴かす。エスタシュが悪戯っぽく笑って言った。
「振り落とされんなよ?」
「振り落とされるほど柔ではない、ので、心配ご無用」
「はっ、そいつは重畳!頼もしいこった!」
 二人を載せたバイクが、アクセル全開でテントから飛び出す。追いかけてくるレイダー達の車両を上空から撃ち落としたのはジェイミィによって空から撃ち放たれる弾丸の雨だ。
「空からのアシストは私にお任せを!」
 ジェイミィのレーダーが、そして空を行く烏たちが、逃亡に最適なルートを割り出す。お陰でエスタシュは運転に集中することが出来た。
バイクのフットワークは軽く、クルマでは通れなさそうな隘路や連続急カーブを駆使してレイダー達の改造車両を翻弄し、引き離していく。
それでも距離を詰めてくるのは、先頭を走る異形のレイダー、半身を触手に改造したオブリビオンたちを載せた改造車両。幾度も幾度もジェイミィのレーザーキャノンによる爆撃を受けながらも、数に物を言わせて追い縋ってくる。
「ちっ、先頭の奴らは振り切れそうにねーな……」
「大丈夫。攻撃は、わたしにまかせて」
「そりゃあ頼もしい!」
「“刃圏拡大。斬り刻む”」
 頑丈さが取り柄の無銘刀、破魔の紋様が刻まれた小太刀――手入れされた暗器に至るまで、望月の所持する刀剣類が七十一、複製されて彼女の意のままに踊る。
(相手の武器は無数の触手。対してわたしが複製できる刃は有限。だが。刀を展開する範囲を自分たちの周囲に限れば、対処可能と考える)
空を舞う刀が異形のレイダーの触手を断ち切り、筋肉の薄い顎の下を次々と狙って貫く。びしゃりと周囲に赤い血が撒き散らされ、搭乗者を喪ったクルマがスリップを起こして炎上する。それに巻き込まれ、後続の改造車両も次々と爆発炎上していく。そこに追い打ちをかけるのが、ジェイミィの爆撃だ。
 触手を伸ばしてきた異形は次々と屠られてゆき、最後の一体であろう半身触手のレイダーが喉から後頭部にかけてを望月が操る刀に貫かれる。そのまま刀は異形の体内で一回転し、頸を落とす。切り離された頭部がその場に落ち、巨躯がぐらりと揺らめいて斃れる。
それらを乗せたクルマが、ジェイミィのレーザーによって火柱を上げた。
「さて……ガルバさん。出てきては如何ですか? ここには強い相手が、ごまんといますよ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ブレイズフレイムのガルバ』

POW   :    ブレイズフレイム・デストロイヤー
レベル×1tまでの対象の【体すら吹き飛ばし、焼き尽くす紅蓮の炎】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    ブレイズフレイム・ランバージャック
【なぎ払うように】放たれる【紅蓮の炎】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    ブレイズフレイム・クリムゾン
【体から噴出し、敵を焼き尽くす紅蓮の炎】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ガトウ・ガドウィックです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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「……邪魔だ、退け!!」
 猟兵たちを追いかけて改造車を走らせるレイダー達の後方から、その声が響いた。
顔に龍の入れ墨を入れた男。レイダー・キング、ブレイズフレイムのガルバ。
男が乗るのは、まさにモンスター・マシンと呼んで差し支えないようなトゲだらけのバギー。前を走るレイダー達の改造車両を轢き潰さんとする勢いで――実際、轢き潰された者もいるかもしれなかった――周囲の建物の崩壊など気にせんばかり、むしろ崩壊させながら、紅蓮の炎を撒き散らして走る。
 モンスター・マシンはまたたく間に猟兵達の乗った車両に追いついてくる。しかし、もはや逃げる理由もない。この男こそが、倒すべき敵なのだから――!
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 ・ボス戦 「ブレイズフレイムのガルバ」 が 現れました。

レイダー・キング、「ブレイズフレイムのガルバ」を登場させることに成功しました。
ガルバはヴォーテックス・シティの建物を出鱈目に崩壊させながら走るモンスター・マシンに乗って、猟兵たちを追いかけてきます。
この崩壊の余波により、まだ安全圏に到達していない逃亡中の奴隷が崩落する建物に巻き込まれかけてもいます。
 ※モンスター・マシンに対抗する、奴隷を救助しながら戦う、などすれば、プレイングボーナスを得ることが出来ます。

 第三章の戦闘はボス戦、相手はガルバ一体となります。
第二章に引き続きクルマに乗りながらの先頭にもなりますが、後続のレイダーは既に追いついては来られない状態になっています。
彼らに対する特別なプレイングは必要ありません。
ガルバの乗るモンスターマシンの出鱈目な機動力に対抗することが出来るならば、地面に降りて戦っても問題はないでしょう。
 モンスター・マシンに乗っている方が有利な限り、ガルバはマシンから降りてくることはありません。

 第三章の受付は10/4(日)朝 8:31~となります。
受付時刻前に受け取ったプレイングは申し訳ございませんが失効日の都合上、一度流させていただきますので、お気をつけください。
第三章からご参加の方は、プレイング送信前にマスターページを一読いただけますようお願いいたします。
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木々水・サライ
[アドリブ連携歓迎]
引き続き【複数の白黒人形達】で呼んだ10人の複製義体で1人1台の車を動かしながら戦おう。

5体は奴隷の救助をしつつマシンを牽制し、残る5体は俺と共にガルバへ向かう。
武器は黒鉄刀、白銀刀、拷問具、ピンポイントレーザー……使えるのはこのへんか。臨機応変に対応していく。
武器までは複製出来ないから、それぞれの担当みたいになると思うが。

俺の持てる技術は全て使う。無論、複製義体達もだ。
戦闘知識、2回攻撃、空中浮遊……あっ空中浮遊。
ってことは俺ら別に車乗らなくていいじゃん。気づくの遅れた(全員運転途中で車ポイ捨て)

そっちがモンスターマシンに乗ってるなら、俺は俺自身がモンスターマシンだよ!!



●イレブンズ・アサルト
 サライとその複製義体、計十一名を乗せた車両は走り続ける。その後ろから追いかけてくるは、ガルバの乗ったモンスター・マシンだ。火器こそ搭載されていないものの戦闘用にフルチューンナップされたその改造車両は、周囲を破壊することを一切躊躇わずにヴォーテックス・シティの道路を爆走してくる。
――と、サライの目に映ったのは崩落していく鉄骨。それが落ちるであろう地点には、まだ安全地帯への避難が終わっていない解放された奴隷たちが必死に走っている。このまま放っておけば、彼らに被害が出ることは必須。そしてそれを放っておけるサライではなかった。
「五体、あいつらを助けろ、そんでマシンの牽制も頼んだ!残りの五体は俺と一緒に来い!」
 サライが叫ぶ。その司令に従いって複製義体たちの乗る車両が半分、解放奴隷達の救助に向かった。鉄骨を跳ね飛ばし、落下地点より大幅に反らして、難を逃れた奴隷たちを車両に乗せて安全圏へと疾走していく。それを見送る間もなく、サライは残りの複製義体を引き連れ、Uターンしてガルバの乗るマシンへと向かった。
(黒鉄刀、それに白銀刀、拷問具、それからピンポイントレーザー……使える武器はこんくらいか……!?)
 武器を持たない複製義体がその拳でモンスターマシンを穿つ。レーザーが照射され、ロープが撓り、白銀と黒鉄の刃が踊る。しかし車両を足場としたままでは、攻撃は上手くガルバへと届かない。
『はっ、どうしたどうしたァ!一丁前なのは気合だけかよ!!』
 ごう、音を立てて迫るはガルバの炎、全てを切断するブレイズフレイム・ランバージャック。
その業炎は、黒鉄刀を掲げたサライが車両から飛び上がった瞬間に放たれた。空中にあっては放たれる炎を躱せない――サライ自身もそう思っていた。炎に焼かれるのを覚悟したとき。サライの体が、空中で一歩後方に退がる。鼻先スレスレを、紅蓮の炎が通り過ぎていく――
ここで彼は思い出す。どうして忘れていたのかも不思議なくらい唐突に――
「あっそうだ。俺飛べんじゃん――だったら、車に乗ってる必要ももう無ぇなぁ!!」
 木々水サライと、そしてその複製義体五体、救助を終えて戻ってきた五体も含めた十一が車両を捨てて翔び上がる。制御を離れた車両がぶつかり合って爆炎を上げ、ガルバの乗るマシンへと激突し、その進路を塞ぐ。
「そっちがモンスターマシンに乗ってるってんならなぁ……俺は俺自身がモンスターマシンだよ!!」
 一体何を言っているのかちょっと意味がわからない。それはなにかの暗喩なのか。いや、多分、心のままを言葉に出した結果がこれなのだ。よし、それじゃあ仕方ないな。
十体の複製義体が拳で、蹴りで、武器を持つものはそれぞれの武器を持ってガルバに接敵し、相次いで撃ち出される炎を躱しながら一撃を仕掛けていく。
サライもまた、黒鉄刀を手にガルバへと躍りかかっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月隠・望月
移動と陽動はあなた(ロックドア殿(f01818))にまかせる。わたしでは奴の乗り物について行けないから、ね。
乗り手を潰す……わかった、やろう。まかせてほしい

バイクの後ろに乗せてもらって移動しつつ、建物の崩落に巻き込まれているヒトを見つけ次第、【呪符壁展開】を使いそのヒトの周囲に陰陽呪符で防御壁を張ろう(【オーラ防御】)
同様に、自分と味方の周りに【火炎耐性】を付与した防御壁を張ることで敵の攻撃に対処。完全に防げずとも攻撃を回避する時間を稼ぎたい

味方が敵の気を引いている隙に、青い炎と周囲の建物の崩壊に紛れて敵の乗り物の後ろに飛び乗り(【足場習熟】)死角から刀で一撃加えたい(【暗殺】)

※アドリブ歓迎


エスタシュ・ロックドア
引き続き嬢ちゃん(望月(f04188))を後ろに乗せて【騎乗】中
奴さん、来やがったな
アレに立ち向かうとなりゃ、
乗り手を潰しにいくのがいいか
嬢ちゃん、できるか?
OK、そんじゃ任せな

『群青業火』発動
ブルーフレアドレスに点火
シンディーちゃんもろとも火炎弾になって【存在感】バシバシに走るぜ
無駄に【範囲攻撃】で業火撒いたりな
もちろん嬢ちゃんや奴隷たちは燃やさねぇように適宜消火するが
炎を極めることに執着してんなら、無視できねぇよな
嬢ちゃんが【地形の利用】をしやすいように【運転】
足場になる瓦礫が残りやすそうな、頑丈な建物に近づく

敵の攻撃は回避してぇが当たったら、
【火炎耐性】【激痛耐性】で耐える

※アドリブ歓迎



●俊敏なること雀蜂の如く、蒼焔は紅蓮を塗り潰す
「奴さん、来やがったな……」
 舗装の半ば剥げたヴォーテックス・シティの路地。その僅かに残ったアスファルトを削ぐようにギャリギャリと音を立て、モンスターマシンが迫る。
愛機の後部に望月を乗せ、エスタシュはひゅぅ、と口笛を吹いた。
「移動と陽動はあなたにまかせる。わたしではやつの乗り物についていけないから、ね」
「了解だ。アレに立ち向かうとなりゃぁ……乗り手を潰しに行くのがいいか。嬢ちゃん、できるか?」
「乗り手を潰す……わかった、やろう。まかせてほしい」
「OK、そんじゃあ……こっちも任せな!」
 悪路も何のその、エスタシュの愛機「シンディーちゃん」が疾駆していく。
「――“此処に示すは我が血潮、罪過を焙る地獄の炉、以て振るうは臓腑の火”!!」
 エスタシュの全身に刻まれた大小の傷跡から噴き上がるは、紅蓮ならぬ群青色の炎。それはエスタシュ自身や望月を焼くことはなく燃え上がる。「シンディーちゃん」のジェットエンジン「ブルーフレアドレス」の排気口から巻き上がる炎は、その名の通り青いドレスの裾を翻したよう。
「炎を極めることに執着してるってぇんなら……この蒼炎、無視できねぇだろぉッ!?」
『……はッ、ははははは!!』
 気に入った、とばかりに笑うガルバ。エスタシュの後方から迫りくる紅蓮の炎。それはエスタシュに近づくにつれ巨大化し、蒼炎を飲み込もうとする。一度、二度。紅蓮の腕がシンディーちゃんを掠め、エスタシュはそこから躍り出るように炎を躱す。
「くっそ、やっぱり熱っちぃなァ……!」
「――!前、」
 望月が声を上げ、疾駆するバイクの後部座席から器用に立ち上がった。彼女の見る先には紅蓮の炎が建造物を焼き、コンクリート片が脆くも崩れ落ちていく。その落下予想地点にいるのは、粗末な服を着て走る男女――未だ安全圏へと至っていない、逃亡途中の解放奴隷だ。
 望月は懐から取り出した陰陽呪符を投げた。燕の如き速さで飛来した札は解放奴隷たちの周囲でくるくると踊り、呪法による防護壁を張る。崩落する建物、コンクリート片、礫、その全てが防護壁に弾かれて、彼らの体には傷一つつかない。あちらからはこちらは見えていないだろう、不思議そうに首を傾げながらも解放奴隷たちは再び走り出していく。
 再び後方のモンスターマシンからガルバの炎が迫る。炎、否、此れは既に紅蓮の爆風。その勢いはエスタシュの愛機を容易く飲み込み吹き飛ばしそうに見えた――だが、望月の張った簡易結界、防護壁が炎の熱を弱めた。文字通りの爆風に煽られたエスタシュが自ら青い炎を噴き出してその勢いに乗り、愛機を踊らせて爆風からの転倒を免れる。
『……? 後ろの女、どこへ行った……振り落とされたか? いや……』
 シンディーちゃんの後部座席から、望月が姿を消していた。それに気づいた瞬間、男の背筋に走ったのは氷のように冷たい感覚。
エスタシュが爆風を避けているように見えたのは、フェイクだ。愛機の機体を派手に動かし、望月が飛び移れそうな場所へと近づいていた。そこから望月は飛び降りて――建物の屋根、崩落するコンクリート片を飛び移り、エスタシュの蒼い炎に紛れてモンスターマシンに飛び乗り飛び越え、ガルバの背後へと迫っていた――
 ――暗器、一閃。
ガルバの頸が裂かれ、真紅の血が周囲に撒き散らされた。びしゃり、望月の頬に紅が飛び散る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と共闘。連携と協力必須。
【地擦り一閃『伏雷』】を『兼元』で使用します。
限界突破と属性攻撃と破魔で技の威力と速度を底上げを。
同時に元奴隷さんも助けたいので継戦能力で速度の維持を。
身体への負担は承知ですが…見て見ぬふりは嫌ですから。

ガルバに向かう際は鎧砕きと鎧防御無視を乗せた二回攻撃を。
正直に真正面から攻めると炎の餌食なのでジグザグに移動します。
移動中や懐に飛び込んだ時にも警戒と集中力は切らしません。
見切りや残像や第六感でガルバの攻撃を極力回避してみせます。

ダッシュで駆け抜けて元奴隷さんを攫う形で一人ずつ救助です。
助けたあとはそのまま移動して私達が乗車する車へ乗せます。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と協力連携。
基本行動は墨ねーが狙われないようにすることだね。
ガルバの気を逸らす為に銃で【黒の腐食】を使うよ。

誘導弾とスナイパーで腕や顔の…頬辺りを狙ってみようかな。
弾いてもカスってもうっとおしいと思える部分なのが理由だ。
うん。回避されたりダメージ少なくてもいいんだ♪援護だし。
でも弾に破魔の力と鎧砕きと鎧防御無視は含ませておくじぇ。
そうそう。クイックドローで弾の装填を無駄なく素早くする。

後は車の運転。救助した人が危険にならないようにしたいじぇ。
墨ねーがスムーズに元奴隷さんを助け出せるようにしないとね♪
…墨ねーの身体が心配だから墨ねーの移動に合わせて運転するよ。



●荒廃都市に花の舞う
 猟兵の攻撃によってガルバがその頸を断ち切られたのは、墨とロベルタの目にも入っていた。――しかし、悪路をさらにズタズタにしながら走るモンスターマシンは止まらない。
勿論、その搭乗者であるところのガルバも、まだその炎燃え尽きるさまを見せなかった。
『くっ……くっくくく、効いた、今のは効いたぜ……だが、まだまだだァ!!』
 じゅう、己の喉に負った傷を己の焔で焼き潰して、ガルバは笑う。並の人間ならば声など上げられない筈だ。だが、フレイムブレイズのガルバは――既に、人間ではない。炎の技を極め上げた果てに至った先は、オブリビオン。過去の残滓。猟兵が狩るべき、恐るべき怪物〔モンスター〕。
 墨とロベルタを乗せた車は、モンスターマシンに破壊され、崩落していく建物を足場に、荒廃と悪徳の都市を走る。既にめちゃくちゃであった都市に集ったレイダーたちは、この崩壊劇すらも見世物として愉しんでいるのか、逃げる気配もない。モンスターマシンにレイダーが轢き潰されても、ゲラゲラと笑っている様は頭のネジが外れたよう、いや、もともと外れているのか。逆に、彼らがやんややんやと囃し立てる陰から逃げるのは、未だ安全圏へと脱出できていない解放奴隷たち。
――と。脱出を急ぐ彼らの上から、破壊された建物の一部であった鉄骨が落下してくる。墨はそれを認めると、後部座席から乗り出して一気に翔び、駆け抜けた。解放奴隷の体を掬い上げると、また高速で駆け、車へと戻ってくる。後部座席に彼らを乗せたのを確認すると、ロベルタはリボルバー銃を構えた。
「“Occhi per occhi.Requiem per i peccatori!”」
 狙うは、ガルバの顔。発射された黒色の弾丸はチリリと男の頬をかすめていく。
(うん。それでいい。回避されたり、ダメージ少なくても良いんだ♪ ……僕の役目は、援護だし)
「墨ねー、だいじょぶ? そろそろいけそう?」
「…………もぅ、……し……!」
 そう、ロベルタの役割は援護だ。墨が十二分、十全のポテンシャルを発揮できるよう、時間を稼ぐのが目的なのだから。
 がしゃん。弾倉が回る。再び発射される弾丸。
『ちょろちょろと……鬱陶しいんだよォ!!』
 巨大な炎が襲い来る。まともに当たれば乗っている車両ごと吹き飛ばされかねない。ロベルタは急いでハンドルを切る。ジグザグに路地を移動して、後方から飛んでくる紅蓮の爆風を素早く躱していく。爆風に煽られ、こちらを見物していたレイダーが二、三人吹き飛ばされた。全身を燃え上がらせて喚く野盗たち、それをまたゲラゲラ笑って見ている野盗たち。ロベルタはそれに目もくれない。
「ロベルタさ、ん、……いけ、ます」
「墨ねー!……ほんとにだいじょぶ!?」
 いける、という墨の顔は真っ青だった。墨の用いる、力を溜め込めば溜め込むほど威力の上がる剣技。それを過剰に、墨の体の限界を超えて行使するために、ロベルタはここまで時間を稼いできたのだ。はあ、はあ、荒い息の下からか細い声で墨は呟く。
「だい…………ぶ、で……、い……ます」
「わかったじぇ♪ それじゃあ、いくよ!」
 大丈夫だと、墨が言った。その声はいつもどおりとても小さかったけど、確かに言った!ロベルタはそれを、真っ向から信じることにする!
「………………」
 墨はトランクリッドの上に立ち上がった。長い黒髪が風に煽られて乱れる。
手にするは二尺三寸三分の大刀「兼元」。ゆっくりと刀を抜き、ガルバへと向かって、翔ぶ!
『来るか、女ァ!!』
 ごう、ごおおおッ!!襲い来る紅蓮の炎を、墨は隙間を縫うような的確な足捌きで避けていく。
こうして走っている間にも、体は限界を訴えている。それでも手は柄を握っている。口の中に鉄錆の味がする。それがどうした、自分はまだ刀を振れる、限界まで――限界を超えて高めに高めた一撃、それが放てれば後は良い!後は自分の、頼れる相棒が何とかしてくれる!!
墨は男の元にたどり着いた、そして、今まで溜めに溜めた力を解放する!
巻き起こった風がすべての音を掻き消いた。
振るわれた刃がモンスターマシンをバラバラに破壊し、中にいた男の体を斬り裂く――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
うんうん、いい感じだったよー!
と、車…ううん、『相棒』のボディを叩きつつ、声を掛けます
あともう少しだよ、頑張ろうねっ

では、私の考えた最高の作戦を伝えます…『全力で突っ込む』!
…大丈夫だよ。君と、『with』と、私が一緒なら、絶対に負けないから

あなたがボスですね?私の焔とどっちが強いか勝負です!
逃げないでくださいよ!

【リミッター解除】した車の速度
『with』の【重量攻撃】
私の、『相棒』と『恋人』と共にある【勇気】
みんなの力を掛け合わせて
炎の衝撃を『with』を振るうことで弾き飛ばし
UC発動
ぶつけた火球を火種に焼き尽くす【焼却】

…ありがとう。あとでちゃんと直してあげる
よく、頑張ったね



●そして、最後は「あなたと共に」
「うんうん、いい感じだったよー!」
 結希は車両、否、『相棒』のボディをぽんぽんと労うように叩く。
「大丈夫。あと、もう少しだよ。……頑張ろうねっ」

 ガラガラと、モンスターマシンが崩れていく。溜まりに溜まった猟兵達の攻撃はマシンに確かに蓄積し、そして今、マシンはただの鉄屑に成り果てた。
鉄屑の棺桶から、男が――ブレイズフレイムのガルバが降りてくる。その体は既に満身創痍、猟兵たちがこれまで与えてきたダメージが蓄積している。負った怪我のすべてを、たった今斬り裂かれた胸から腹にかけての重傷ですらじゅうじゅうと肉の焦げる匂いを立てながら炎で焼き塞いで、ガルバはその口元に笑みを浮かべていた。
『……つまらねぇつまらねぇと思っていたが――いるじゃねぇか、強い奴らが!だが……まだまだ満足できねえなァ!!こうなりゃ地獄の底までつきあってくれや!!』
 地獄の炎が己の炎より熱いのか、試してみたくなっちまったぜ。そう男は嘯いて。
笑う、笑う、笑う。夜も更けた悪徳の都、篝火が真昼のように照らすヴォーテックス・シティであっても、男自身がここまで破壊したこの場所では明かりは少ない。
 対して、結希は相棒と認めたマシンに乗ったまま大剣を、愛剣を、自身の恋人たるwithを構えた。
「あなたがボスですね? 私の焔と、どっちが強いか勝負です!逃げないでくださいよ!」
『ははっ、ははははは……おうともよ、俺がテメェらの倒すべき敵だ!!そしてそいつぁ、お互い様だ……誰が逃げるかってんだよ!』
 もはや小細工は不要だ。お互いに。
ブルン、ブルンブルンブルルルルルルルル……結希の「相棒」たる車両がエンジン音を噴かす。結希をその背に乗せたまま。突撃の合図はまだかと問うているように。
(私の考えた、最高の作戦――『全力で突っ込む』!!)
 ――GO!!
指示を言葉に出さずとも、相棒は走り出す。既にリミッターは解除され、そこに限界は存在しない。体当りして、己よりも硬いものにぶち当たって砕けるまで、ガソリンという命の炎を燃やして走り続ける。
 ガルバが拳を振るった。結希を鷲掴みにせんとするような、最後の巨大な爆風を伴う紅蓮の炎。一度飲み込まれてしまえば風に舞う木の葉となって宙に振り回されるその中を、結希はwithを振るって斬り裂き弾き飛ばしながら、ガルバへと向かって突進していく!!
(今の私には――勇気がある!『相棒』と、『恋人』とともに在る勇気が――!!)
「ああああああああああああっ!!」
 呼び出された火球、それはガルバの炎に比べればとても小さなもの。けれどそれは、爆発のための火種。男の懐に、巨大な緋色の翼を広げた結希がwithを構えて飛び込んだ。
 【焔翼のデスティンド】――灼熱の炎が、紅蓮の炎を押し退けて。男の体を包み込んだ。


 ガルバの体が燃えていく。文字通り、体の末端から灰に変わって夜空に溶けながら、男は最後まで笑っていた。
『くっ、くくくくく……はははははは!!はは、ははははははは……』
 その声帯が灰に変わるまで――男はここに、満足を得た。
あんなにも執着して極め続けた炎が敗れた、だというのに。男の心は晴れやかだった。
――ああ。この世界には、俺を満足させられるやつがこんなにいたじゃあねえか。
漸く出会えた。
出会えてそれで、闘り合って終わりってのは物足りねえが……いや、良いか。
今満たされている。それでいい。それで十分だ。
『ああ、満足だ』
 その一言を最後に。
男は、ブレイズフレイムのガルバの体は、この悪徳の都――ヴォーテックス・シティの篝火と一緒に、灰になって燃え上がって、消えていった。

 ガルバが消えても、ヴォーテックス・シティのレイダーたちは消えない。
今もまだ快楽と暴虐の夜に耽り、そして夜が明ければまだ略奪の日々に戻っていく。
そしてこの世界には、こんな悪徳の都が他にもまだあるのだ――

「……ありがとう。あとでちゃんと、直してあげるよ」
 結希は、相棒と呼んだ車を撫でて微笑んだ。
この悪徳の都を抜ければ、それも可能だろう。今はもう少し走り続ける時だ。
「よく、頑張ったね」
 少女の声が、この滅びに抗い続ける世界の風に攫われていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月06日


挿絵イラスト