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紅茶の空におかわりを

#アリスラビリンス #戦後

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#アリスラビリンス
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#戦後


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 ポットにカップにティースプーン、ミルクピッチャーはどこへ消えた?
 ここはティーバードが暮らす『紅茶空の国』。
 翼の生えたティーセットの鳥たちが毎日お茶会を開いている平和な国のはずなのに。
 いつもなら紅茶色の夕焼け空をかき回している鳥の影がひとつも見当たらない。
 ふあ、あ……。
 静まり返る国の何処かで、一仕事を終えた眠り猫が大あくびで空を仰いでいた。

 アリスの一番おいしい食べ方を知っているかい?
「……僕は全く興味ないんだけど、気狂い帽子が煩いから……」
 寝言のようにむにゃり。たくさん働いたからもういいよねおやすみなさい。
 不思議の国の中央広場には、眠り猫たちが集めた鳥籠がズラリと並んでいた。
 ティーバードはまとめて大きな籠で、アリスはそれぞれの籠で縮こまっている。
 聞こえて来るのは、終わらぬ悪夢に囚われた悲鳴や呻き声の寝言ばかり。
「……悪夢から醒めても、待っているのは最悪の現実……そんなとっておきの絶望の底に堕とされたアリスが一番おいしいんだってさ……」
 もうすぐ気狂い帽子がやってくる。
 いくらでも空から紅茶が注がれる国なんて、お茶会好きにとっては天国だろう。
 そしてお茶会にはかかせないお茶菓子、おいしいアリスの下準備も万全だ。
 猫も鳥もアリスも眠る中、絶望のお茶会の時間は刻一刻と迫っている。


「オウガ・オリジンを倒したってのに、まだアリスが召喚されるってどういうこったい」
 戦争を終えたアリスラビリンスの予知を見てしまったグリモア猟兵メリー・アールイー(リメイクドール・f00481)は、猟兵へその内容を告げながら溜息を漏らす。異世界召喚が続く謎の解明が出来ないうちは、見つけた悲劇をひとつずつ解決していくしかない。
「早速だけど『紅茶空の国』に向かってくれるかい? この国に迷い込んだアリスも愉快な仲間のティーバードも、広場の鳥籠の中に囚われて眠っているって状況だ。皆悪夢に魘されてるから、籠と悪夢から解放してやっとくれ」
 全てのアリスと鳥を解放する頃には、彼女たちを捕らえた眠り猫『微睡み・ダウナーキャット』に見つかってしまうだろう。
「悪夢から目覚めたばかりだと、アリスも鳥も混乱してるかもしれんが……上手くやれば、眠り猫と戦う時くらいは手伝ってもらえるかもね」
 そうして猟兵達が眠り猫を相手取る間に、気狂い帽子『ピーター・ハッタ』のお茶会の時刻となるはずだ。
「気狂い帽子にアリスを丸呑みされるわけにはいかない。そいつからはアリスを遠ざけて、猟兵のみで戦う必要がありそうだ。なあに、あの戦争を乗り越えたあんたたちならきっと大丈夫さ」
 ティーバードの国を脅かすオウガは、お残しせずに全部倒し切ってしまおう。
 メリーはティースプーンで紅茶をかき混ぜる仕草をして、グリモアの光を回転させた。
「あの国の夕焼け空は紅茶色で美しい。空からいただく紅茶も絶品らしいから、余裕のある人は楽しんできてもいいんじゃないかい? それじゃあ今日もよろしゅうにー!」


葉桜
 OPをご覧いただきありがとうございます。葉桜です。
 アリスラビリンス、消滅しなくて本当に良かったですね。
 これからもアリスと不思議の国を守っていきましょう!

 第1章。冒険『籠の鳥のアリス』
 第2章。ボス戦『微睡み・ダウナーキャット』
 第3章。日常『ピーター・ハッタ』

 状況はOPの通りです。
 アリスはユーベルコードを使えるので、上手く救助すれば、猟兵の指示によって共に戦うことが可能です。ボス戦では足手まといになるので戦えません。
 お茶会パートは無いのですが、望めばティーバードが飛んできて、紅茶の空からお好みの紅茶が注がれるでしょう。

 ユーベルコードは指定した1種類のみの使用となります。
 プレイングはOP公開から募集開始、締切はマスターページでご連絡致します。
 第2・3章の募集で日程調整が必要な場合があれば、そちらもマスターページでご連絡致しますので、お手数ですがご確認のほど宜しくお願い致します。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『籠の鳥のアリス』

POW   :    力ずくで籠を破壊する

SPD   :    錠前を針などで開ける

WIZ   :    鍵を探して開ける

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エンティ・シェア
とりあえず手近な籠から当たろうか
錠前は壊せるかな
いけそうなら、空室の住人達に叩き壊してもらおう
あまり強く揺さぶっては可哀想だけれど
悪夢からの、少し刺激的な目覚ましだと思ってもらおうか

戸惑う子らには優しく微笑みかけようね
怖がらなくていいよ。助けに来たんだ
悪い夢は終わらせて、この鳥籠から逃げ出そう

声をかけている間に、ぬいぐるみ達に飴を配ってもらおうかな
Sweetをまぶしたくちどめを
甘くておいしいロリポップ
嫌な夢も、きっと忘れられるだろう
合法だよ?

元気そうな子が居たら、他の子を助けるお手伝いを頼もう
散らばるのは危ないから傍にいてね
皆で力を合わせて、逃げ出すんだ
大丈夫。怖いものからは、私達が守るからね




 紅茶の空を映したような赤髪の青年が、自分の身の丈よりも大きな鳥籠の前に立っていた。檻の中で眠る囚われの少女は、カタカタと震えながら小さく縮こまっている。
「悪夢と鍵付きの鳥籠。厳重に閉じ込められて、可哀想なアリス」
 籠の錠前を指先なぞり、「私」は口角を上げた。
「おいで、仕事だ」
 エンティ・シェア(欠片・f00526)が喚んだのは、黒熊と白兎のぬいぐるみたち。
「この程度の鍵ならすぐに……」
 ――ガッ……シャン!!
 エンティが全てを言い終わる前に、黒熊と白兎は錠前を両側から挟むように殴り、破壊していた。錠前はひしゃげた鉄くずと化し、鳥籠は衝撃でグワングワンと揺れている。
「あまり強く揺さぶっては可哀想だろう? 仕方ない、悪夢からの少し刺激的な目覚ましだと思ってもらおうか」
 肩をすくめたエンティは、鉄くずの錠前を放って籠の中を覗き込む。
 激しい揺れか轟音か、それとも開錠と共に魔法が解けたせいかは不明だけれど。とにかく悪夢から叩き起こされたアリスは、血の気の引いた顔で人形のように固まっていた。
「怖がらなくていいよ。助けに来たんだ」
 戸惑う子には優しい笑みを、怯える子には甘いお菓子を。
 エンティが微笑みかけたアリスに、ぬいぐるみたちは星型のロリポップを差し出す。
 アリスはまだ怯えているけれど、可愛い熊さん兎さんに促されて恐る恐る飴を舌に乗せた。すると、口に広がる甘さはしあわせを招き……。
 ――ほら、いやなことなんてわすれてしまう。
 甘さの秘密は、『くちどめ』にまぶした『Sweet』。……安心して、合法だよ?
「嫌な夢は置き去りにして、この鳥籠から逃げ出そう」
 エンティに導かれて心も体も軽くなったアリスは、ぴょんと鳥籠から飛び降りた。

「気分は悪くない? それなら一緒に他の子も助けよう」
 はぐれないようにエンティとアリスは手を繋いで、ぬいぐるみたちは次の檻を壊しに向かう。他の鳥籠に捕まっているアリスや愉快な仲間たちを解放して、皆で逃げ出そう!
「大丈夫。怖いものからは、私たちが守るからね」
 ぎゅっと手を握り返し、アリスは甘い笑顔で頷いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネーヴェ・ノアイユ
籠の中に捕らわれるのみならず……。悪夢にまで……。同じアリスとして見逃せませない事態ですので……。せめて悪夢から覚めたら希望があるよう……。立ち回れたらと思います……!

そのためにもまずは籠をどうにかせねば……。ですね……。強引に破壊も出来そうですが……。大きな音を立てて眠り猫様を起こすと大変ですし……。かと言って手近にある鍵は眠り猫様のお傍にあるので奪うのもリスクがありそうですね……。
ですが……。そっと近づき、UCの応用にて鍵を複製することは可能かもしれませんので……。その方向にて試してみましょう。
そのためにも鍵に近づく際には物音を立てず慎重に……。そして鍵もじっくり観察するように致しますね。




 だらだらごろごろ、むにゃむにゃすやり。眠り猫はまだまだ夢の中。
 鳥とアリスを捕まえた眠り猫は、この紅茶空の国に何匹か潜んでいるみたいだけれど。草陰に隠れるネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)は、木に寄りかかり無防備に眠っている一匹の眠り猫に狙いを定めて、作戦を実行しようと集中力を高めていた。
 時は少しだけ前に遡る――。

「籠の中に捕らわれるのみならず……。悪夢にまで……」
 籠と悪夢、二重に囚われたアリスの眠るそこからは苦悶の寝言が漏れてくる。
 誰か、お願い、助けてと。手を伸ばしても、冷たい檻に阻まれてしまう。
「同じアリスとして見逃せませない事態です……」
 ネーヴェはアリス適合者だ。同じ境遇のアリスたち……彼女たちは私だったかもしれないのだ。今自由でいられる私なら、彼女たちを助けられる。
「そのためにもまずは籠をどうにかせねば……。強引に破壊も出来そうですが……。大きな音を立てて眠り猫様を起こすと大変ですし……」
 それならば……。ネーヴェは思い浮かんだもう一つの策を実行することにしたのだ。

(いましたね、眠り猫様……。そしてあの手元に落ちているものが恐らく鳥籠の鍵束でしょう……)
 そうしてネーヴェはお目当てのはぐれ眠り猫と鍵を発見した。
 しかし、このまま鍵を奪えば、途中で目を覚ました眠り猫に襲われて戦闘が始まってしまうかもしれない。アリスたちが囚われたまま戦闘を開始すれば、気狂い帽子に食べられてしまうかもしれないので、それだけは避けなければならないだろう。

 だから――ネーヴェは白い箒に跨って少しだけ浮遊し、そっとそっと、音もなく眠り猫に近づいた。手を伸ばせばすぐ届く位置にオウガが居る緊張感の中、ネーヴェの氷の瞳はじぃっと鍵束を観察していた。そのまま鍵束に左手を翳し、右手に放つ自身の魔力から【ice create】で氷の鍵を複製していく。
(出来ました……! ……っ!?)
 その直後、ふああと眠り猫が大きく伸びをした。

「……ん? ……冷たい風が吹いた気がしたけど……気のせいか……」
 むにゃりと呟いて、もう一度丸くなって眠る猫。その頭上には急いで退避したネーヴェが、バクバク跳ねる心臓を押さえつけて息を殺していた。
 そうして、無事に複製した鍵を手に入れたネーヴェは、急いで広場へと飛んで戻る。
 アリスが悪夢から目覚める為の、希望を握りしめて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤・美雨
空はこんなに綺麗なのに、地上では可哀想な子達が苦しんでいる
嫌な光景だねぇ
そんなのはさっさと壊してしまうに限るのさ

でもこういう状況で私に出来ることって……
籠を壊すことくらいだな!うん!
猫達は熟睡してるだろうし
最悪起きてもアリス達を逃がす間の盾くらいにはなれるさ

刻印を起動して身体に力を籠める
ヴォルテックエンジンも滾らせ【限界突破】
ひたすら【怪力】で籠を壊していこう

ああ、でも少しくらいは工夫しようか
籠全体を壊すんじゃなくて、例えば鍵だけ壊したり
籠を左右に開いてアリスが出入りできるようにしたり
音を立てない工夫くらいはしよう

うまくいったら中の人に声かけ
悪夢はもう終わりだよ
助けに来たから安心してくれってね




 どこまでも透き通る綺麗な紅茶空の下、地上では可哀想な子たちが苦しんでいる。
 オウガが食べる為にヒトを悪夢に閉じ込めるなんて、腐ってるよね。
「嫌な光景だねぇ。そんなのはさっさと壊してしまうに限るのさ」
 黒髪と大きな袖を揺らして。キョンシー擬きのデッドマン、藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)は鳥籠が集まる広場をぐるりと回って状況を把握していた。
「こういう状況で私に出来ることって……籠を壊すことくらいだな! うん!」
 幸い、広場の近くで寝ている眠り猫はいないようだ。壊す時に多少大きい音が出たとしても、熟睡している猫はそうそう起きてくることはないだろう。
「最悪起きてもアリス達を逃がす間の盾くらいにはなれるさ」
 だから、ちょっとばかり頑張ってみようか。
 美雨は体内に埋め込まれた刻印を起動して、一度は死んだ身体に鞭を打つ。更にヴォルテックエンジンを滾らせたバチバチの電流を纏い、やる気も限界突破で準備万端だ。

 美雨は【ブラッド・ガイスト】を袖の中で発動し、お気に入りの匕首を殺戮捕食形態に変化させた。袖で錠前を包み込んで、怪力でグシャリとひと握り。まるでクッキーを噛み砕くように鳥籠の鍵を壊していく。籠全体を粉々にするよりかは、こちらの方が小さな音で済んだはずだ。
 しかし、鍵を開けても、一向にアリスは籠の外へ出てこなかった。
 ――起きちゃだめ、目を開けちゃだめ……目覚めたらあの化物に食べられちゃう。
 アリスは悪夢から抜け出せずに、籠の隅で縮こまって震えている。
 美雨はトントンと軽い足取りでアリスが留まる方へ移動すると、
「悪夢はもう終わりだよ」
 格子越しに明るい声をかけた。恐る恐る見上げた昏い瞳にニッコリと笑って。
 籠の格子を掴むと飴細工のようにグンニャリ! 怪力で左右に開いてやった。
 華奢な少女の予想外の行動に、アリスは思わず目をまんまるくする。
「ほら、悪夢なんてこんな風に捻り潰せるんだよ。だから、安心してくれってね」
 美雨のお茶目な灰の眼のウインクに導かれて、アリスは籠の外へと出る。
 久しぶりに見上げた紅茶空はキラキラして眩しくて、水面のように揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安寧・肆号
スミン(f25171)と遊びにきたのよ。
まあ、まあ!綺麗な空の色!
まるでアップルティに蜂蜜をたらしたような空!
もちろんクッキーだってタルトだって持って来ているわ。
ねぼすけアリスたちはまだ寝ているの?

それじゃあ、楽長さんお願いね。
UCで楽長さんを呼び出すの。怪力を込めてどんどん錠や籠を壊してもらうわ。
スミン、くれぐれも一緒に眠らないでね。
優しく起こしてあげて!

ずーっと眠っているなんて!
ほら、起きて!こんなに綺麗なお空だもの。お茶会をしなきゃ損よ。
ねぼすけ鳥はどこかしら。
籠の中のアリスはどこかしら。
檻のベットはもうたくさんよね!


スミンテウス・マウスドール
アンネ/f18025

紅茶空の国。良いね。
でもそう呑気にいってるけどね、アンネ。
スミンは茶菓子はクッキーがないといやだからね。

アンネの楽長さんに鍵を開けてもらお。
アンネは鍵係でスミンは目覚まし時計係。
ティーバードってことは紅茶が好きだよね。
紅茶をぶっかける。優しいからクッキーもそえてね。
起きろ。
眠いネズミだって起きてるんだ。起きてお茶会をしよう。

アリスにはもうちょっと優しくしようね。
おはよう。早くないからおそよう?
早く起きないと猫だって来ちゃうし、頭のおかしい奴も来るかもしれないよ。

待ちくたびれたアンネとティーバードに茶菓子食べられちゃうちゃうかも。




「まあ、まあ! 綺麗な空の色! まるでアップルティに蜂蜜をたらしたような空!」
 不思議の国には、空は青くなければならないなんて法律はない。紅茶色の空は爽やかな朝焼けよりもとろりと甘く、星に縫い付けられた夜空よりもゆらゆら自由だった。
 歓声を上げる安寧・肆号(4番目の人形・f18025)は今にもくるくる踊り出しそうだ。
「それなのに、アリスはずーっと眠っているなんて! 檻のベットはもうたくさんよね! こんなに綺麗なお空だもの。お茶会をしなきゃ損よ」
 起こしましょう! みんなでお茶会を開きましょう!
 安寧肆号の案に、眠り猫に負けず劣らず眠たそうな瞳でスミンテウス・マウスドール(だれかが視てる夢・f25171)も同意する。が、ここだけは譲れないよと注文を付け足した。
「紅茶空の国。良いね。でもそう呑気にいってるけどね、アンネ。スミンは茶菓子はクッキーがないといやだからね」
「もちろんクッキーだってタルトだって持って来ているわ」
 安寧肆号だってお茶会の国の仲間だ。スミンテウスとのお茶会の作法は抜かりなく。
 さあ、ねぼすけ鳥と籠の中のアリスを探しに行きましょう。

 広場に置かれた一際大きな鳥籠の中には、ティーバードたちがまとめて捕らえられている……のだと思う。羽が畳まれた鳥はただのお茶会セットとして、籠の中のテーブルに並べられていた。ポットもカップもティースプーン、ミルクピッチャーも大人し過ぎる。
「ねぼすけさんはまだ寝ているの? それじゃあ、楽長さんお願いね」
 まぎあ・むーじか・るちーふ!
 安寧肆号の魔法の呪文で【少女行進・骸骨楽長】がこんにちは。スーツ姿とシルクハットがキマっている紳士的な骸骨はとっても怪力、鳥籠の錠前を1・2・3で破壊した。
「アンネは鍵係でスミンは目覚まし時計係」
「スミン、くれぐれも一緒に眠らないでね。優しく起こしてあげて!」
「分かってるよ、アンネ。ティーバードってことは紅茶が好きだよね」
 バトンタッチで開錠した籠の中に入るスミンテウスは、無口なお茶会セットに紅茶をぶっかけた。ついでにクッキーもそえてやる。優しいだろ?
「起きろ。眠いネズミだって起きてるんだ。起きてお茶会をしよう」
 足りないなら紅茶空におかわりをもらおうか。
 続けてスミンテウスがテーブルのカップに触れようとすると、
 ――カタカタカタカタ――バサァ!!
 お茶会セットたちから羽が生えて、檻の扉から次々と外へ飛び立っていく。
 自由の身になったティーバードたちは、紅茶空を気持ちよさそうにかき回していた。

「まあ! おかえりなさい、紅茶空の鳥! 楽長さん、あとはあちらよ」
 骸骨楽長は姫抱きにした安寧肆号の命を受けて、アリスの籠の前へと行進する。そして、彼女をそっと下ろして無敵の力を振るえば、籠の檻がぽきぽきと折られていった。
「どうぞ、スミン。アリスにはもうちょっと優しくね」
「そのつもり。おはよう、アリス。早くないからおそよう?」
 早く起きないと猫だって来てしまうし、頭のおかしい奴も来るかもしれない。
 けれど、アリスは寝ぼけたまま悪夢から中々帰って来られないみたい。
「アリス、お茶会をしよう」
 ――お茶会の時間になったら、食べられる。
 たっぷりと沁み込んだ悪夢にアリスはビクリと震えるが……その時、籠の外からティーバードたちが飛んできた。ティーカップの鳥の紅茶の中に、スプーンの鳥がジャムを溶かした。パニックする子には、ジャムが効く。
「猫やおかしい奴とじゃなくて、スミンたちとね。ほら、早くしないと、待ちくたびれたアンネとティーバードに茶菓子を食べられちゃうかも」
 甘い紅茶であたたまったアリスは、今度こそ導かれるまま籠の外に出る。
「見て、スミン! とっても素敵なお茶会になりそうよ!」
 スミンテウスと安寧肆号にも空の紅茶が届けられた。シュガーポット、ジャム瓶、シナモンスティックもどうぞお好みで。ティーバードより感謝を込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サティア・レンズ
なんて恐ろしいことでしょう…!

アリスたちへの扱いや籠に恐怖心を感じ、バロックレギオンを召喚してしまいました。籠の破壊を試みましょう。

バロックレギオンは召喚した自分ですら怖いですから、彼女たちが目にしたら最悪な目覚めになってしまうでしょうね。籠を壊した衝撃で目覚める前に、すぐそばに駆け寄り手を引いて逃げましょう。

もしも空から紅茶が降ってきたらせっかくなので飲みます。




 解き放たれたティーバードが紅茶空を飛び回っている。猟兵達の活躍により、アリスも続々と保護されているようだ。
 サティア・レンズ(雪と闇の占い少女・f26073)もまだ開放されていない鳥籠の前へ向かうと、頑丈で冷たい鳥籠の中、アリスは小さく縮こまって恐怖に震えていた。
 ――助けて。お願い、この夢はもういや……誰かっ……!!
 悪夢に追われ続ける痛ましい叫び声が、サティアの耳に届く。
 幼い少女をこのような悪夢に閉じ込めるなんて……っ!
「……なんて恐ろしいことでしょう……!」
 オウガに虐げられているアリスを目の当たりにしたサティアは、その扱いと悪夢を強要する鳥籠に抱いた恐怖心を爆発させ、【リアライズ・バロック】を発動した。
 召喚されたおどろおどろしいバロックレギオンは、恐怖の対象である鳥籠を破壊する。
 衝撃音に激しい揺れ。悪夢から無理矢理剥がされるように起きたアリスの目の前には、檻の周りを飛び回る悍ましき怪物――そんな最悪の目覚めとなってしまった。
「きゃ――! いや、いやっ、食べないで……っ」
「アリス、こちらへ。急いで共に逃げましょう」
 速やかに救助に向かったサティアは、パニックに陥るアリスの手を取り籠の外へと引きずり出した。そのまま、安全な場所まで誘導しながら駆けて行く。
「化物が、追ってくるの。ずっとずっと、私を食べるまで……」
「悪夢はおしまいです。その為にわたしたち猟兵が助けに来ました」
「あなたは、怖くないの……?」
 サティアは木陰に身を隠しながら、アリスの質問にいつも通りの無機質な声で答える。
「怖いですよ。あなたを助けるためとはいえ、自分で召喚したバロックレギオンも怖いですし、いつも不安でいっぱいです」
「それなのに、どうして助けてくれるの……?」
 それは……と、サティアが口を開く前に。やさしい紅茶の香りが二人を包み込んだ。
 お疲れさま。よく逃げて来たね、アリス。
 二人を労わるように、ティーバードが空の紅茶を届けに来てくれたのだ。
 ほのかな甘みが広がる紅茶で心身を温めながら、サティアは覚悟を決めて時を待つ。
 この国の悪夢を本当に終わらせる為には、オウガを倒さなければならないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

乱獅子・梓
【不死蝶】
オウガ・オリジンも「はじまりのアリス」という
元々は一人のアリスだったらしいし
オブリビオンフォーミュラが生まれる前に
異世界召喚のシステムが出来ていたのかもしれない
もしかして更に大きな黒幕が居るのかと勘ぐってしまうな
…と、まぁ、今はそれを考えている場合じゃないな

鳥籠や錠前を無理やり壊すと
派手な音で敵に気付かれてしまうかもしれないし
破片でアリスが怪我する不安もある
というわけで、錠前を別の物に変化させることにしよう
UC発動し、無機物…錠前をドラゴンへと変化
これで錠前は無かったことになる
あとは普通に開けてアリスを救出

仔竜の焔と零を綾に預け、アリスたちのケアを任せる
その間に俺は次の鳥籠へ


灰神楽・綾
【不死蝶】
ラスボスを倒しました、はい全部解決
…なんてゲームみたいに単純にはいかないってことだね
猟書家もすべて倒したわけじゃないし
この世界に真の平和が訪れるのはまだ先かもねぇ
ま、難しいこと考えるのはあとにして
まず目の前のことからコツコツとね

俺だと力技で壊すことしか出来なさそうだし
解錠作業は梓に任せて
俺は焔と零と一緒にアリスを救出しよう
多分「自分の外見じゃ余計にアリスを怖がらせる」って
思ったんじゃないかな梓
根はいい人なんだけどねぇ

アリスが目覚めたら仔竜たちが
顔を舐めたりすりすりしたり
可愛い小動物で気持ちを落ち着かせようって作戦さ
俺もいつも以上に笑顔と柔らかい話し方を意識して
比較的安全な場所へと案内




 アリスラビリンスを舞台とした迷宮災厄戦の勝利はまだ記憶に新しいが、今もなお不思議の国にはオウガによってアリスが召喚され、新たな美しい地獄が生み出されている。
「ラスボスを倒しました、はい全部解決……なんてゲームみたいに単純にはいかないってことだね」
「オウガ・オリジンも『はじまりのアリス』という元々は一人のアリスだったらしいし。もしかして更に大きな黒幕が居るのかと勘ぐってしまうな」
 紅茶空の下で語り合う黒と白。灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)と乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の上空を、猟兵により解放された愉快な仲間、ティーハニーとスライスレモンのティーバードが旋回している。
 今回の戦争では様々な謎が残されたままだ。オブリビオンフォーミュラが生まれる前に、異世界召喚のシステムが出来ていたのかもしれない。行方を眩ませている残りの猟書家たちは次なる計画を企てているかもしれない。
「この世界に真の平和が訪れるのはまだ先かもねぇ」
「……と、まぁ、今はそれを考えている場合じゃないな」
 まだ救けを求めているアリスがいるのだろうか。ティーバードは二人に訴えかけるようにぐるぐると、まざり合ってハニーレモンになりそうな勢いで飛び回り続けていた。
 あの鳥たちのようにぐるぐるするだけの考察は、一旦ここまでだ。
 目の前のことからコツコツと。まずは手の届くこの世界のアリスから救いに行こうか。

 二人は広場へ辿り着くと、早速まだ開放されていない鳥籠へ向かった。籠の中には悪夢に魘され続けるアリスが小さく蹲っている。
「鳥籠や錠前を無理矢理壊すのも可能だが……派手な音で敵に気付かれてしまうかもしれないし、破片でアリスが怪我すかもしれないな」
「そうだね。俺だと力技で壊すことしか出来なさそうだし、解錠作業は梓に任せるよ」
 それじゃあ任されたと前に出た梓は、錠前に向けて【万物竜転】を発動させる。
「誇り高き竜と成れ」
 すると、梓に命じられた錠前はドラゴンへと変化した。小さなドラゴンは悪夢の番などという仕事はすぐさま放り投げて、紅茶空へ飛んで行く。キィッと音を立てて開いた鳥籠を背にして、一丁上がりだと梓は綾と場所をチェンジした。
「ほらよ、後は任せた。焔、零。お前らも綾と一緒にアリスのケアをよろしくな」
「うん、それじゃあ俺と行こう」
 ぽす、ぽす、と。梓の元から綾の肩へ移った炎竜と氷竜の仔竜を連れて、綾は背を丸めて鳥籠の中へとお邪魔した。

 ぺろぺろと頬を濡らす涙を舐められた。すりすりと何かに頬を撫でられる。
 アリスは顔に感じる不思議な感触で、オウガに追われる悪夢から目を覚ました。恐る恐る開いた視界を埋めたのは、アリスの顔を覗き込んでいるトカゲのような生き物だ。
「あ、起きた? おはよう、アリス。可愛い子たちだよねぇ。とっても優しいし人懐っこいから噛んだりしないよ。良かったら可愛がってあげて?」
 綾は糸目を細めて、いつも以上に優しい笑顔を意識しながら語りかける。はじめは吃驚したようだけれど、小動物のように愛らしい仔竜とアリスは、あっと言う間に打ち解けたようだ。
「この子たち、お兄ちゃんのペットなの?」
「ううん、俺じゃなくて、あっちのお兄ちゃんの相棒だねぇ」
 綾が指さす先では、梓が別の鳥籠の錠前をドラゴンに変化させている所だった。
「君の檻の鍵も、彼が開けてくれたんだよ」
 こっちも終わったからなー。はーい、今行くよー。
 梓に返事をした綾は、一先ず安全な場所へ移動する為にアリスと共に鳥籠の外へ出た。アリスには丁度良い木陰に隠れてもらい、零を護衛に付けて置く。クールな氷竜が少女の腕の中に大人しく収まっていることを確認すると、綾は愛嬌のある焔を連れて他のアリスも迎えに行くようだ。
「……あっちのお兄ちゃんは、起こしに行かないの?」
「アリスたちを起こすのは僕の役割なんだ。……多分『自分の外見じゃ余計にアリスを怖がらせる』って思ったんじゃないかな梓。根はいい人なんだけどねぇ」
 確かにちょっと大きいかな? でも起こしてくれたお兄ちゃんも大きいよね。
 アリスを浸蝕していた恐怖の感情は、いつの間にかすっかり綺麗に溶けていたようだ。
「怖くないよ。黒のお兄ちゃんも白のお兄ちゃんも優しいよ」
 その通り!と言わんばかりに。焔も零も声を合わせて鳴いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『微睡み・ダウナーキャット』

POW   :    …煩い、邪魔するなら容赦しないよ…
自身が【眠りやダラダラの妨げられ】を感じると、レベル×1体の【両手ダガーナイフを持った自分の分身】が召喚される。両手ダガーナイフを持った自分の分身は眠りやダラダラの妨げられを与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD   :    …お布団くん達、ふかふかで気持ち良いよ…?
【眠りたい、ダラダラしたい】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【重ねられた干したての布団と枕の山】から、高命中力の【ふかふかの布団と枕、更にはクッション】を飛ばす。
WIZ   :    …ネズミくん、よろしく…
無敵の【催眠術と菓子召喚が得意なネズミの魔法使い】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「……ふあ、あ……そろそろかな……え、嘘でしょ……」
 漸く昼寝から目覚めた眠り猫が広場へ戻って来た頃には、空っぽの鳥籠だけが並んでいた。ティーバードは紅茶空へ帰り、囚われのアリスは全て猟兵達に保護されたのだ。
「……逃がしたのは君たち?……また集めないと僕が怒られるじゃないか面倒臭い……」
 猟兵たちへ不機嫌な視線を送ると、その後ろには解放されたばかりのアリスの姿が。
「……ああ、まだいたんだねアリス……もう一度探しに行くより、君たちを捕まえた方が早そうだ……」
 おいで、アリス。もう一度、僕らと一緒に夢を見よう。

 悪夢が過ぎり再び恐怖に陥りそうになるアリスへ、猟兵は大丈夫だと声をかける。
 ここにはオウガを倒せる猟兵が集まっている。それに、君にも力があるのだ。
 悪夢を振り払うユーベルコードで共に戦おう。
 籠の鳥でいる時間はおしまいだ。応援するようにティーバードの鳴き声が空に響いた。
紫野崎・結名(サポート)
音は、こころ。こころは、ちから。
今はたぶん、この音が合ってる…と思うから

音によるサポート、妨害、撹乱が好み
攻撃や運動は苦手、特に腕力はほとんど無いです
なので、キーボードも肩にかけます

ピンチは黒い天使、歩くのはセブンリーグブーツ、Float on soundをふわっと浮かべてキーボードを演奏
キーボードはスマホとつないで音源を自由に設定変更できるよ
動物の鳴き声にしたり、管楽器の音にしたり、弦楽器の音にしたり

食は細くてすぐお腹いっぱい
そして人見知り気味

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません


藤・美雨
おや、お目覚めかい?
それじゃあもう一度眠ろうか
今度は一人で眠るんだよ

そりゃあ私も眠るのは大好きさ
ふかふかのお布団でずーっとうとうとしていたい
でも……それじゃあ勿体ないよ
ずっと眠っていたかったらデッドマンになんてならないのさ

召喚されたふかふかの寝具は匕首で切り裂いてしまおう
すごく勿体ないけど……!
飛び出した綿や羽毛に紛れ相手に急接近
猫達はさくっと【暗殺】してしまおう

ああ、味方は攻撃しない
勿論アリスもね
ちょっと胸が苦しいけれど平気、平気
仲間を傷つけて生きるくらいなら私は私の身を削ろう
それが私の『生き方』だから

平気で誰かを傷つけ苦しめる鬼達とは違うのさ
さあ、悪夢はお終いだ
ぜーんぶ弾けて消えてしまえ!




「綺麗な空……ぼんやり眺めて、お昼寝したくなる気持ちもわかるよ」
 でも、無理矢理眠らせて、悪夢に閉じ込めるのは駄目です。
 何時でもティータイム、いつでも紅茶色の空が美しい不思議の国の広場で、紫野崎・結名(歪な純白・f19420)は寝ぼけ眼で現れた眠り猫のオウガ『微睡み・ダウナーキャット』の前に立ち塞がった。結名の小さな背の後ろには、鳥籠と悪夢から解放されたばかりのアリスたちが身を寄せ合っている。

「おや、お目覚めかい?」
 そんなアリスたちの背後からひょっこりと顔を出したのは、鳥籠の鍵を壊し終えた藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)だ。道士服の長い袖越しに、大丈夫ーとアリスの頭を撫でながら結名の隣に並び、眠り猫よりも大きなアーモンドアイでニィっと笑う。
「それじゃあもう一度眠ろうか。今度は一人で眠るんだよ」
「……そうしたいのは山々だけど、アリスがいないと気狂い帽子が煩いからね……」
 お茶会のお茶菓子が逃げたなら、取り返さなくちゃ。
 オウガの猫にとって、アリスはお茶菓子でしかない。

「ダメ……アリスだって食べられるのはきっと悲しいです。分からないなら、音で感じて……悲しむことは、忘れてはダメ」
 ショルダーキーボードを肩にかけて五つのFloat on soundを浮かべれば、演奏の準備は万端だ。結名は子守歌のようにせつない歌声を小型スピーカーに乗せて、キーボードの鍵盤をそっと押し下げた。紅茶空の国に【哀愁のリュートエア】が響き渡る。
「う……煩い……邪魔するなら容赦しないよ……誰か、止めるんだ……」
 それは決して耳障りな音量でも音色でもない。胸を締め付けられるほど美しい音楽だった。けれど、結名の奏でる曲を聴いていると、何故か些細なことでさえ悲しく感じられる。分身を増やした眠り猫のそれぞれの心へ、悲しみの感情をピンポイントに刺していく。分身たちはダガーナイフで結名やキーボードをぐちゃぐちゃにしようとするけれど、みんな道半ばで力尽き倒れていった。
 眠れない……。悲しみの炎に包まれた眠り猫は、先程悪夢に囚われたアリスのように蹲り魘されている。

「……う、う……それならみんなで、ふかふかのお布団くんで眠ればいい」
 悲しみの子守歌を止めつつアリスを眠りに落とす一手として、眠り猫は眠気の魔力をたっぷり染み込ませた布団と枕の山を召喚した。
 干したてふわふわの寝具から優しく香る陽だまりの匂いが、お昼寝しようと誘惑してくる。しかし、
「すごく勿体ないけど……!」
 ひゅんっと飛び出した美雨が、寝具の山に匕首振るって切り裂いた。布団や枕の切り口から、ぶわっと飛び散る綿と羽毛。真っ白に舞うそれらは、お砂糖やミルクのように紅茶空へ吸い込まれていく。
「そりゃあ私も眠るのは大好きさ。ふかふかのお布団でずーっとうとうとしていたい。でも……それじゃあ勿体ないよ」
 ずっと眠っていたかったらデッドマンになんてならないのさ。なんて、キョンシージョークにひとり笑って、美雨は灰の瞳に光を宿した。
「一思いにやらせてくれるかい?」
 踊れや踊れ、徒手空拳の暗殺【九の舞】。
 道士服の袖や耳飾りの札を揺らしながら、悲しみの炎渦に舞い、鎮静の波を送るように消していく。それは悲しみが無くなったからではなく、命の灯を断ったから。
 九度の軌跡は全て、眠り猫の心の臓へと捧げられたのだった。

 舞いを終えた後、胸を押さえる美雨に結名とアリスが寄り添った。
「大丈夫ですか……もしかしたら、寿命が……」
「ああ、ちょっと胸が苦しいけれど平気、平気。これが私の『生き方』だから」
 殺人鬼の才に体を踊らされそうな時もある。けれど、例え寿命が対価に必要だとしても、仲間を傷つけて生きるくらいなら、美雨は迷わず自分の身を削る道を選ぶ。
「平気で誰かを傷つけ苦しめる鬼達とは違うのさ」
 もう能力は発動していないはずなのに、一度は亡くした命のはずなのに。
 心まで死にたくないと語る美雨の瞳は、誰よりも輝いて見えた。
「さあ、悪夢はお終いだ。ぜーんぶ弾けて消えてしまえ!」
 眠り猫が襲う他の戦場にも届くように、美雨は紅茶空に向かって高らかに叫んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エンティ・シェア
可愛らしいアリスを守らねばね
技を使えるようならどんどん使ってもらおうとは思うけど…
まぁ、怖ければ無理をしないでいいよ
守ると言ったのは私だからね

さてさてネズミ殿、お相手願おうか
盾ともなり刃ともなる橘の花を展開して
催眠もお菓子も私には効かないよと強気に出よう
何故って?可愛らしいお姫様の加護があるからさ
アリスが力を貸してくれるのに、まやかしなどが通じるとでも?
それに私は猫の人だからね
ネズミに負ける道理はないね
ま、自称だがね

眠たげな猫殿も、なんならそのまま眠らせてあげようか
そら、可愛いアリス。彼らに教えておあげ
君達の鳥籠が見せる悪夢よりも、もっと素敵な夢を見たのだと
君達の付け入る好きなんて、無いんだよ




「可愛いアリス。怖いかい?」
 ヘビに睨まれたカエルのように、ネコに追われるネズミのように。捕食者への恐怖がアリスの瞳の中で揺れていた。エンティ・シェア(欠片・f00526)はアリスの緊張をほぐすように、小さな頭をそっと撫でてやる。
「まぁ、怖ければ無理をしないでいいよ。守ると言ったのは私だからね」
 無理を強いるつもりはないのだ。けれど、すぐにアリスは首を振る。そして、精一杯の虚勢で目の前の『微睡み・ダウナーキャット』に飴玉の瞳で反抗の意思を見せた。

 勇敢な子には祝福を。盾ともなり刃ともなる橘の花で君を守ろう。
「追憶よ、刃たれ」
 しらかみの本がバラバラに散れば、無数の橘の花びらに姿を変えた。爽やかで優しい柑橘の香りは紅茶空によく似合う。白花がエンティとアリスの周りに舞うと、眠り猫は酷く面倒臭そうに手招いて、夢に見た中で一番魔法が上手いネズミに後を託した。
「……君の魔法は無敵だからね。ネズミくん、あとはよろしく……」
 想像から創造されたものは強い。夢見がちな猫の夢から生まれたなら猶更だろう。

 しかし、それでも尚、エンティは余裕の笑みを浮かべたままだ。
「さてさてネズミ殿、お相手願おうか。催眠もお菓子も私には効かないよ」
 ネズミがくるくるとステッキを回して召喚した、ぐるぐるクッキー。
 くるくるぐるぐる、眠りに誘う催眠術を放つのだろう。
「……何故って? 私には可愛らしいお姫様の加護があるからさ」
 エンティのお姫様、アリスの頭の上でも、目の前にいるネズミと全く同じ姿のネズミが同じように魔法を放っていた。敵のユーベルコードを真似るアリスの技だ。
「そら、可愛いアリス。彼らに教えておあげ。君達の鳥籠が見せる悪夢よりも、もっと素敵な夢を見たのだと」
 夢には夢を、魔法には魔法を。互いに催眠術を掛け合ったネズミたちは眠りに落ちる。後はクッキーを橘で壊して、崩れた欠片はティーバードが美味しくいただきましたとさ。

「アリスが力を貸してくれるのに、まやかしなどが通じるとでも?」
 守る者がいなくなった眠り猫へ、続けて白き刃を吹雪かせた。
 そんなに眠りたいなら、骸の海で永遠に眠っていればいい。
「君達の付け入る隙なんて、無いんだよ」
 そもそも、私がネズミに負ける道理はない。だって私は猫の人だからね。
 言葉の意味が分からないアリスに向けて、エンティは茶猫のぬいぐるみストラップを悪戯に揺らして見せた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユージィーン・ダイオード(サポート)
『目標確認。これより殲滅(ターミネイト)を開始する。』
『状況終了(ゲームオーバー)通常モードに移行する。』
〇性格
自称:くそ真面目の男
鉄面皮の無表情キャラ。
本人は笑ったつもりでも周りからムスッと怒っているように畏れられる系。
子供や動物好きだけど好かれない。
推理のできない鉄面皮脳筋。

〇行動
戦闘:武装を展開し、武器の使い捨てながら【一斉発射】と【制圧射撃】の【爆撃】で殲滅する火力バカ。


スピネル・クローバルド(サポート)
『お姉ちゃんに任せておいてね♪』
 妖狐のクレリック×アーチャーの女の子です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、兄弟姉妹には「優しい(私、~君、ね、よ、なの、なの?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は温厚で人に対して友好的な態度をとります。
滅多に怒る事はなく、穏やかです。
怖そうな敵にも、勇気を持って果敢に挑む一面もあります。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 お茶会セットに羽根が生えたティーバードは鳥籠から解放されて、紅茶色の空を掻きまわすように飛んでいる。鳥籠に囚われていたアリスと鳥たちは、猟兵によって自由の身となった。しかし、オウガの眠り猫『微睡み・ダウナーキャット』は逃げたアリスを再び捕まえようと、寝ぼけ眼を擦りながら追いかけてきたのだ。

「状況は把握した。目標確認。これより殲滅(ターミネイト)を開始する」
 不思議の国の危機を救いに転送されてきた猟兵のひとり、サイボーグのユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)は機械的に殲滅を宣言した。両手に構えたアサルトライフルとデザートイーグル、そして内臓兵器の銃口を全て眠り猫へ向け、攻撃回数を極限まで高めた【ヴァリアブル・ウェポン】の一斉発射をお見舞いしてやる。
 怒涛の爆撃音が広場に轟く。爆風を正面から受けながらも、ミラーシェード越しのサイバーアイは瞬きもせずに視覚情報を分析していた。弾丸で捕らえたはずの眠り猫のシルエットが増殖している。
「……煩い、邪魔するなら容赦しないよ……アリス、君もこちらへ来るんだ……」
 爆煙が薄れた先で、ダガーナイフがゆらゆらと揺れている。同じ顔の眠り猫たちがダルそうにユージィーンへ刃を向けて、ずらりと並んでいた。
 アリス、と呼ばれて。ユージィーンの背後の草むらがガサリと震えた。そこには鳥籠から逃げて来た少女たちが隠れていたのだ。
「心配無用。危険物は全て排除(デリート)する」
 大丈夫だと。ユージィーンはアリスに安心させるように笑みを作った……つもりだった。しかし、笑顔要素を微塵も表に出せない鉄面皮ではアリスを怯えさせることしか出来なかった。やはり、どうしても子供には好かれないらしい。

「とっても怖かったでしょう? 頑張りましたね、アリス。後は私たちが守るので、安心して下さい」
 殺伐とした戦場へ、砂糖のように甘い声が投入された。蜂蜜色のふわふわな髪と耳と尻尾を携えて、スピネル・クローバルド(家族想いな女の子・f07667)がアリスの頭を優しく撫でると、彼女たちの緊張と恐怖は穏やかに溶かされていく。
「アリスの保護は任せて下さい。私も精一杯お手伝いします」
 見ていて下さいね? アリスに向けて微笑んだスピネルの薔薇色の瞳は、苛烈な炎のように揺らいで【フォックスファイア】の狐火を周囲に灯した。小さな狐火でも合わされば激しい火炎の渦と化す。ダガーでは切れない炎に包んで眠り猫を焼いて行った。

「追撃確認。こちらも援護(サポート)する」
 先程一斉発射した銃はとっくに放り捨てられていた。次なる銃を構えたユージィーンも狐火に合わせて、眠り猫のダガーが届く前に弾幕で押し返していく。
 一体二体、二人は続々と数を減らしていくが、今度は今までにないシルエットが前方へ飛び出してきた――マジカルハットをかぶったネズミの魔法使いだ。
「……ネズミくん、よろしく……」
 眠り猫が喚んだネズミは、魔法の杖を振ってグルグルクッキーの無敵シールドで炎と弾丸を防いでいく。あのぐるぐるを見続けていたら、催眠術によってこちらが眠りに落とされてしまうだろう。
「困りましたね。でも、無敵なのは創造されたネズミさんだけで、眠り猫さんへの攻撃は通るはず……」
「俺が注意を引く。後はいけるか?」
「はい、任せてください!」
 二人は小声で作戦を交わすと、まずはユージィーンが前へ出た。催眠術の放射よりも防御に集中させるように、超兵器(オーバーテクノロジー)であるビームキャノンの光線をクッキーへ放つ。眩い閃光に、眠り猫は迷惑そうに顔を顰めていた。
「……うう、眩しい。そんな攻撃無駄なのに……」
「いいえ。無駄なことなんて、何ひとつありません!」
 後方では、スピネルが聖樹の大弓を構えていた。極限まで絞られた弓から、聖なる魔力を乗せた矢が天へと放たれる。クッキーの盾のずっと上空、紅茶空へ光の矢は美しい軌跡を描き――弾けた白光が落雷した。その光景は、まるで眠り猫が犯した罪を空が裁いたようだった。激しい雷光は眠り猫を穿ち、骸の海へと強制的に送り還した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ネーヴェ・ノアイユ
助け出すことの出来たアリス様達を再び恐ろしい目に合わせるわけにはまいりませんので……。アリスが必要だというのであれば私がお相手致します。

眠り猫様にとって私は眠りの妨げとなると判断させるように動き……。分身様を作り出すことで私を狙ってきましたらその分身様の攻撃を空中浮遊などで上手く躱しつつ……。眠り猫様の本体がアリス様の元へと移動しないよう氷壁を作り続けて進路を妨害し続けることでアリス様を守ろうと思います。
眠り猫様の本体も私を狙ってきましたら……。本体と分身が同時に近接してきたタイミングを狙いリボンの魔力を7割使用して作り上げた氷の拳にて纏めて攻撃を行うことで一掃することを狙ってみようかと。




 鳥籠の鍵を開けてアリスを解放した少女は、自分もアリスなのだと告白した。
 私たちは抗う。例え元の世界の記憶がなくても、自分の過去さえなくしていても。
 自分だけのたったひとつの扉と真実が、この世界のどこかにあるはずだから。
 だからこんなところで、オウガの悪夢になんて負けないで。
 しかし、少女に導かれたアリスたちに、更なる悪夢、眠り猫が来襲する。
「……アリス様を再び恐ろしい目に合わせるわけにはまいりません」
 アリス適合者、ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)の強い決意で魔力が放たれ、溢れた冷気が周囲の空気を包み込む。
「……アリスが必要だというのであれば私がお相手致します」

「……相手になるって言ったのに……全然捕まってくれないじゃないか……」
 眠り猫『微睡み・ダウナーキャット』が億劫そうに伸ばす手から、ネーヴェは小柄な体をふわりと浮かせて悪戯な妖精のように逃げていく。
「……ええ、眠り猫様の思い通りにはさせません。……お昼寝も当分おあずけですね」
「……それは困る、大人しくしないなら容赦しないよ……」
 ゆらりと身体を揺らした眠り猫は、自分と同じ姿の分身を召喚して見せた。今度こそ捕まえてやる、と。分身の数だけダガーが鈍く光る。
「……まとめて捕まえれば、早く仕事が終わるね……」
 本体が指示を出すと、分身たちはネーヴェとその後ろに隠れているアリスに狙いを分けて、それぞれの獲物に飛び掛かった。
「……あちらもこちらも手を出すのはいけません。まずは私からどうぞ……」
 ネーヴェは自分を襲うダガーを先程と同じように浮遊魔法で躱すと。続けて氷壁を生成する。アリスの隠れる草むらの前へ連続して氷壁を立て、眠り猫が迂回しようとするなら、その道も遮るように更に通せんぼをして妨害を行った。

「……邪魔だなあ。みんな、先にこいつを一思いに仕留めよう……」
 すると、痺れを切らした眠り猫の本体が、分身と協力してネーヴェを囲った。
 それこそが、ネーヴェの狙いだったということにも気付かずに。
「この一撃の威力には……。自信があるのです」
 頭上へ飛んだネーヴェは、眠り猫の集団に【ice of destruction】の氷の拳を振り下ろした。消費する魔力は、リボンに溜めていた七割程度に止めておく。眠り猫は巨大な拳によって殴り飛ばされる。本体も分身もまとめて、紅茶空の彼方まで。
 時に可憐に、惑わせるように逃げて。時に過激に、正面から打ち砕く。
 それはまるで悪夢へ立ち向かうお手本のよう。ネーヴェの美しい勇姿はアリスたちを魅了し、勇気を与えたようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

安寧・肆号
嫌だわ、スミン(f25171)。
そんなに怯えちゃって!あたしまで困っちゃう。
タルトを食べて落ち着きなさいな。

あたしのUCと、スミンの毒のお茶で大人しくさせてから攻撃をしていくわ。
ーお昼寝から醒めたようなネコさんたち!お仕事の邪魔しちゃってごめんなさい。
お詫びにタルトはいがかしら?

ゆっくり、ぐったりしていても、念の為ね。
ワルツカードから[弾幕]を放って、動ける範囲を制限させるの。
最後の攻撃はプリンセスハートを[一斉発射]よ!

あら、あら。
スミンはまだ落ち着かないのかしら?
無理もないわね。こんなに素敵な紅茶空!
もっともっとお茶会を楽しみたくなっちゃうもの!


スミンテウス・マウスドール
アンネ/f18025

ひどいや。ほんとに猫がくるなんてさ。
落ちついてるって。ほんとだよ。
ウソじゃないけど…タルトは食べる。ありがとアンネ。

UCでティーセットを。
毒使いでたっぷり毒をいれる。なんて美味しそうな色のティー。

巨大ティーポットに入って近づく。顔は出さないよ。
やあ、災難だったね。
ここは紅茶空の国なんだ。
お茶をどうぞ。お茶を早く飲んでくださいよ。

ティーポットから早業で脱出。
短剣を武器に、アンネと一緒に攻撃してくよ。
猫とネズミは相容れないからね。

…それにしても怒られるって誰に?嫌なかんじ。
ユーは楽しそうだけどね、アンネ。
アリスを茶菓子にしようとするなんて、とんでもないやつさ。




 なぜ猫の代わりにハサミではいけないのだろう。
 アリスを鳥籠に入れたのは猫だとは聞いていたけれど。
「ひどいや。ほんとに猫がくるなんてさ」
 それでも、ヤマネのスミンテウス・マウスドール(だれかが視てる夢・f25171)は、猫と顔を合わせる準備なんて全然出来ていなかった。
「嫌だわ、スミン。そんなに怯えちゃって!あたしまで困っちゃう」
 そんな時には、しーめいどさむたると!
 ハートの女王が一日かけて焼いたタルトはご存じ?
 安寧・肆号(4番目の人形・f18025)は【「女王のタルト」】を手にしてクルリとまわる。つやつや真っ赤な林檎の薔薇タルトをカットして、飛んできたディッシュのティーバードに乗せてスミンテウスへ届けた。
「はい、タルトを食べて落ち着きなさいな」
「落ちついてるって。ほんとだよ。ウソじゃないけど……タルトは食べる。ありがとアンネ」
 羽付きフォークに口元まで運んでもらったタルトは、瑞々しくて甘酸っぱい。ジャックがすっかり平らげてしまうのも頷ける美味しさだ。

 安寧肆号は、眠り猫『微睡み・ダウナーキャット』のタルトも切り分け給仕する。
「お昼寝から醒めたようなネコさんたち! お仕事の邪魔しちゃってごめんなさい。お詫びにタルトはいがかしら?」
「やあ、災難だったね。ここは紅茶空の国なんだ。お茶をどうぞ。お茶を早く飲んでくださいよ」
 どこからかスミンテウスの声もするけれど、どうにも姿が見当たらない……【Mad Tea-Party】の巨大ティーポットに引きこもり中のようだ。
「……生憎、食欲より睡眠欲の方がだ……いじ……で……ね……」
 眠り猫たちはタルトもお茶も断り、ある猫は干したてふわふわの寝具で人形とヤマネも睡眠欲に傾くように誘惑しようとした。ある猫は分身を呼んで夢の中にいる子らを料理してやろうと思った。
 けれど、ダメ。女王様のタルトを食べない重罪猫は時間を奪われてしまうのだ。
「とってもとってもしつれいですね。せめて紅茶くらいは飲んでいきなよ」
 ゆったり動く眠り猫に、スミンテウスの特製紅茶が注がれる。
 たっぷり毒の溶けた、なんて美味しそうな色のティーだろう!
 じっとりまわる毒にぐったりしちゃうね。あとはお仕置きと反省の時間だ。

「とっても楽しい音と、綺麗なハートを見せてあげるわね!」
 安寧肆号が「The Queen of Hearts」を口ずさむと、『Waltz*Score』の楽譜から音符が踊って眠り猫を閉じ込める。ぐるぐる回って籠のように。
「猫とネズミは相容れないからね」
 でも、籠の中の猫が相手なら、スミンテウスもティーポットから顔を出せた。しゅぱっと早業で飛び出たその手に握る短剣と、自我を持つティーセットがオウガを狙う。
「いけ、カトラリー。今日の茶菓子はオウガだよ」
「とっても楽しいわね。心も躍るわ!」
 スミンテウスの刃と安寧肆号の『Anne*Coeur』がキラキラ、夢のよう?
 ……いいや。居眠りや転寝、いくら微睡んでも、重ねたカルマは夢にはならない。
 だからもういい、帰れ。骸の海でお眠りよ。
 眠り猫たちのカラダはバラバラ、ハートもコナゴナ。みんな残さずいただいた。

「……それにしても怒られるって誰に? 嫌なかんじ」
 アリスを茶菓子にしようとするなんて、とんでもないやつだ。
「あら、あら。スミンはまだ落ち着かないのかしら?」
 スミンテウスはビター過ぎるチョコを齧ったような表情をしているけれど、安寧肆号は歌い出しそうな笑顔で空を仰ぐ。
「無理もないわね。こんなに素敵な紅茶空! もっともっとお茶会を楽しみたくなっちゃうもの!」
「ユーは楽しそうだけどね、アンネ」
 きっとスプーンを放り投げたくなる。気狂いどもにはうんざりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
ふぅ、眠り猫が起きる前に
アリスたちの救出が間に合って良かった
解放したアリスをもう一度捕まえた方が早いだなんて
随分と舐められたもんだ

焔の頭突きやブレス攻撃で普通に戦いつつ
アリスたちに被害が行かないようにも気を配る
綾による捕縛完了したらニヤリと笑い言い放つ
さぁアリスたち、チャンスだ
「最悪な夢見させやがって!」と
今のうちに眠り猫にビンタの一発でも喰らわせてやれ

まぁ、この眠り猫たちは黒幕のオウガに
命令されて従っただけに過ぎないんだろうが…
だから、トドメは少しだけ情けをくれてやる
仔竜の零を成竜へと変身させUC発動
戦場に零の咆哮を響かせる
そんなに眠たいなら
ご希望通りずっと眠らせてやるよ、ってな


灰神楽・綾
【不死蝶】
うん、これで心置きなく戦いに集中出来るね
猫さん猫さん、アリスの方ばっかり
気にしている場合じゃないよ?

まずはこっそりとPhantomの紅い蝶を戦場に放つ
この蝶たちの真の狙いを悟られないように
しばらくは普通に戦って時間稼ぎ
向こうがナイフ使いなら
こちらも同じくナイフで応戦しようじゃないか
時間稼ぎ抜きにしてもやっぱり戦いは純粋に楽しいなぁ

…蝶たちは戦場に満遍なく散っていったね
さぁ種明かしの時間だよ
UC発動、紅い蝶は紅い鎖へと変化し
眠り猫たちを一斉に捕縛

わざわざ縛り上げたのは
アリスたちに攻撃のチャンスを与える為でもある
この鎖は絶対に壊せないから
安心して引っ叩いてやるといいよ




 パタパタ飛ぶ焔と零に挟まれて、救出されたアリスは乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)と灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)の後ろに付いてくる。
「ふぅ、眠り猫が起きる前にアリスたちの救出が間に合って良かった」
「うん、これで心置きなく戦いに集中出来るね」
 そんな彼らの前にも眠り猫『微睡み・ダウナーキャット』が、アリスを狙って姿を現した。怠慢な動作で歩みながら目の前のアリスを回収すると言い放つオウガの台詞を、梓は鼻で笑い飛ばす。巫山戯てるよな? 黒と赤のサングラスの奥で、視線が一瞬交差した。
「解放したアリスをもう一度捕まえた方が早いだなんて随分と舐められたもんだ」
「猫さん猫さん、アリスの方ばっかり気にしている場合じゃないよ?」
 ひらひらと綾の背から紅い蝶の群れが舞う。オーラの蝶は紅茶に浮かべた花びらのようにゆらゆらと空に揺蕩った。ただ美しいだけの無害な蝶のふりをして。

「……大人しくアリスを渡してくれればいいのに、邪魔するなら容赦しないよ……」
 面倒事は分散するに限る。眠り猫は召喚した自分の分身たちに、猟兵との戦闘もアリスの回収も任せるつもりのようだ。
「いけー! 焔!」
 横着なオウガと正反対の激しさで、炎の仔ドラゴンが弾丸のように飛び出した。
 ガツン! とまず一匹、強烈な頭突きで昏倒させる。すると周りの分身に囲まれてしまうが、胸いっぱいに吸い込んだブレスを吐いて炎を撒き散らす。
「ほら、こっちも相手してね」
 焔に気を取られていた眠り猫は綾の『Jack』に急所を突かれる。動作は怠慢でも眠り猫のナイフの腕は一流のはず。けれど、同じナイフ使いである綾の方が一枚上手なようで、数では有利な筈の猫たちを手玉に取るように刃を躱し、上機嫌に笑みを浮かべていた。
「やっぱり戦いは純粋に楽しいなぁ」
 ――時間稼ぎ抜きにしても、ね。
 紅茶空を舞う蝶は戦場に満遍なく散っていた。そろそろ頃合い。
「さぁ種明かしの時間だよ」

 下準備に時間をかけた分、それは一瞬で広範囲の獲物をまとめて捕らえる罠となる。
「離してあげないから、覚悟してね」
 【ロンサム・ファントム】の発動により、戦場全体を覆う紅い蝶は紅い鎖と化した。持ち主の意思でしか破壊出来ない魔の鎖は、眠り猫たちを一斉に突き刺し、捕縛する。この状況を生み出すことが、蝶を放った真の狙いだったのだ。

 綾の作戦が完璧に決まって、今まで零と共にアリスを守りながら戦闘していた梓もニヤリと笑った。そして、アリスの方へ振り向いてゴーサインを出す。
「さぁアリス、チャンスだ! 『最悪な夢見させやがって!』と、今のうちに眠り猫にビンタの一発でも喰らわせてやれ!」
 突然の無茶振りに戸惑うアリスに、綾もにこにこ顔でその背を優しく押した。
「この鎖は絶対に壊せないから、安心して引っ叩いてやるといい」
 ガウ! キュー!
 仔ドラゴンたちにも促されると、アリスも覚悟を決めたようだ。
 自分が想像し得る一番強そうなもの……氷砂糖で出来たドラゴンを創造する。
「……私も、他のアリスも……もう、いじめないで!」
 ビタンッ――と。鎖で動けない眠り猫の顔に、ドラゴンは強烈な尻尾ビンタを喰らわせる。二人と二匹はやるじゃんアリスと笑いながら手を叩き、その勇気を称えたのだった。

 それでも、アリスの力ではオウガを消滅させるまでには至らないので、仕上げは猟兵たちが行う必要がある。
「まぁ、この眠り猫たちは黒幕のオウガに命令されて従っただけに過ぎないんだろうが……だから、トドメは少しだけ情けをくれてやる」
 梓は仔竜の零を成竜へと変身させた。氷砂糖のドラゴンに負けないくらい格好良くて綺麗、とアリスは瞳を輝かせる。それを見て口角を上げた梓は、零に【葬送龍歌】の合図を送った。
「歌え、氷晶の歌姫よ」
 氷竜の神秘的な咆哮が――響く。胸の奥を揺さぶる美しい鳴き声は、抗えない眠気を誘うのだ。その歌を聴く者の心を奪い、意識を奪い……そして命をも奪っていく。
「そんなに眠たいなら、ご希望通りずっと眠らせてやるよ、ってな」
 そうしている内に、紅い鎖は捕らえるものを見失う。眠り猫の本体も分身も、夢見る間もなく骸の海の寝床まで沈められたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ピーター・ハッタ』

POW   :    「おめでたい日 万歳!」
【飲んでいる紅茶】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【帽子を殺戮捕食態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    「砂糖は2杯だ ありがとう!」
【紅茶】を給仕している間、戦場にいる紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    「なぜカラスは机に似ているのか?」
自身が【疑問】を感じると、レベル×1体の【ティーセット】が召喚される。ティーセットは疑問を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はスミンテウス・マウスドールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 お茶会。そう、お茶会が出来ればそれでいい。
 空のティーカップを空高く掲げると、濃い紅色のお茶が注がれる。
 何て素晴らしい国なんだ。おめでたい日も何でもない日も好きなだけ祝えるだろうね。
 ガパリと開いた帽子の口にカップをひっくり返した。
 ベロリと大きな舌が舐める舐める。足りない足りない足りないねえ!?
「まさか茶菓子が逃げ出すとはね。でも足のはやい茶菓子はおいしいんだよ」
 君たちもそう思わないかい? もぬけの殻の鳥籠をステッキでココンと叩いて、気狂い帽子『ピーター・ハッタ』は後ろを振り返る。鳥籠からアリスとティーバードを解放し、眠り猫を倒した猟兵たちが、今回の事件の首謀者を取り囲んでいた。

「ようこそ、私のお茶会へ! 生憎茶菓子を切らしているんだよ。猫に準備を頼んだはずだったんだけどね。猫はどうにも気まぐれで、眠いと姿を消してしまう」
 ピーターは猟兵の話など聞く気もない。頭も帽子もお茶会のことでいっぱいなのだ。
「けれど、君たちがお茶会へ参加してくれて本当に助かったよ。感謝感激、キャンディークッキー、ケーキにタルト、ご希望はあるかい?」
 どれが食べたいか? 違う違う――何役がいいか、だよ。
 さあ、茶菓子はここに在る。ティーパーティーのはじまりだ!
エンティ・シェア
やぁやぁ楽しそうな帽子殿だ
お茶会の美味しい茶菓子をお探しかい
それなら務めてしんぜよう
君の好みはどんな味だい。甘いの?辛いの?しょっぱいの?
私はねぇ、紅茶が良いな
夢と理想に囲まれて、どろどろに甘やかされて溶かされて
美味しく腹に収めてほしいね

――まぁ、その後に君の身体を食い散らかして奪ってあげるんだけど
なんてね
お茶を濁すには物足りないかな
それなら君も茶菓子になるといい

さて、後は任せたよ
「俺」に転じて猛獣殿を呼び寄せよう
童話宜しく腹ペコの狼なんて如何かね
群れで押し寄せて紅茶をねだろうか
ついでだから俺も頂こうかね
獣なもんで粗相は勘弁してくれよ
給仕殿があんまりにも美味しそうだから、噛み付いちまうんだわ




 紅茶空の国を襲うオウガによって、強制的に開催されたティーパーティー。
 だけど、ここにいるのは一筋縄ではいかないお客様ばかりのようで……?

 まずは、にんまり微笑む『私』、エンティ・シェア(欠片・f00526)が前へ出る。
「やぁやぁ楽しそうな帽子殿だ。お茶会の美味しい茶菓子をお探しかい?」
「やぁやぁごぎげんよう! 大丈夫さ、代わりの茶菓子はすぐに用意出来るよ!」
 気狂い帽子『ピーター・ハッタ』はペパーミントグリーンの燕尾服を翻してくるりとまわると、お気に入りのティーセットを召喚した。ティーバードは帽子がお気に召さないようで、紅茶空から降りて来そうにない。
「君の好みはどんな味だい。甘いの? 辛いの? しょっぱいの?」
「私は甘いスコーンも甘くないスコーンも大好きだよ」
 ああクロテッドクリームを舐めたい! 帽子の舌がべろりと伸びた。
「スコーンな気分のお口なんだね。私はねぇ、紅茶が良いな」
「なんと、主役になりたいとはすばらしい!」
 ティーセットが拍手をするようにカチャカチャ騒ぐ。空っぽのカップがエンティに寄って来たので、指先を取っ手にひっかけ、ダンスのリードをするように戯れた。

「夢と理想に囲まれて、どろどろに甘やかされて溶かされて。美味しく腹に収めてほしいね――まぁ、その後に君の身体を食い散らかして奪ってあげるんだけど」

 ティーシロップの言の葉は、内側から身を溶かす甘い毒。
「……なんてね。お茶を濁すには物足りないかな」
 おしゃべりはそろそろおしまい。私の出番もこちらまで。
「さて、後は任せたよ」
 その最後の台詞で、エンティの顔から笑みが消える。『俺』にチェンジしたのだ。

「童話宜しく腹ペコの狼なんて如何かね――全力で、喰らってこい」
 ティータイム? 召喚された猛獣の幼体にとっては【餌時(ゴハンノジカン)】だ!
「賑やかなお茶会は大歓迎さ! 紅茶空におかわりを! 甘い毒紅茶も此方へおいで!」
 空から注がれる紅茶をカップが運んで来たけれど、猛獣達は遠慮なくカップごとバリンと丸呑みしていく。足りない足りないもっともっと!
「獣なもんで粗相は勘弁してくれよ。給仕殿があんまりにも美味しそうだから、噛み付いちまうんだわ」
 猛獣の牙と帽子の牙がガチガチ、食っては食われて食い合って、どちらも譲らない。
 その光景を冷めた目で眺めながら、エンティも紅茶を口に含む。お茶会に合うようにブレンドされたアフタヌーンティーは、やはり茶菓子が欲しくなる味わいだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
気狂い帽子はお茶会をご希望か
じゃあ…俺たちもやろっか、お茶会
どうやら気狂い帽子のお望み通りにしないと
思うように動けないっぽいし
郷に入れば郷に従えってやつだよ

ティーバードさんティーバードさん
俺はロイヤルミルクティーがいいなぁ
おぉ、本当に紅茶が出てきたすごい
これでお菓子があれば完璧なんだけど
梓、なんか持ってきてないの?
わっ、流石だね
相変わらず梓の作るお菓子は美味しいなぁ
しかも桜の型とは、やっぱり女子力高い…
アリスたちも呼んで振る舞ってあげたいけど
今は危ないからまた別の機会にね

さて、十分楽しんだからもう恐いものなしだよ
UC発動、強化したスピードを存分に活かし
無数のナイフを連続で投げつける


乱獅子・梓
【不死蝶】
は??
こんな状況でなんて提案をしてくるんだこいつは
と思ったが、敵のUC効果なのか身体が重く
このまま攻撃しようとしてもひらりと躱されるだろうし
ここは綾の言う通りにした方が良いのか…

じゃ、じゃあ俺はストレートティーを頼む
お前なぁ、そんな都合良く菓子が出てくるわけ…
……ああ、あったわ
焔や零の腹が減った時用にクッキー(アイテム)を
作って常備していたことを思い出す
折角の機会だ、皆で食うか
綾、焔、零にクッキーを分けつつ自身も紅茶を飲む
おぉ、素人目にも上質な紅茶だと分かるほど美味い
クッキーの甘みとよく合う
別の紅茶も貰おうか

よっしゃ、気を取り直して!行くぞ焔!
UC発動し、高火力のブレス攻撃を浴びせる




「は??」
 ようやく親玉が出て来たかと思えば、戦場でティーパーティーを開くって?
 頭のおかしい提案に、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は思わず眉を顰めて聞き返す。しかし、目の前で嗤うオウガは本気のようで、ミントグリーンのお気に入りのティーセットを宙に広げた。そして、空に白手袋の手を上げれば、彼のカップに望みの紅茶が注がれていく。
「砂糖は二杯だ、ありがとう!」
 気狂い帽子『ピーター・ハッタ』。二つ口から出てくる提案がまともであるはずがない。けれど、呆れる梓に対して、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)はいつもの笑顔でその誘いに応えた。
「じゃあ……俺たちもやろっか、お茶会」
「綾まで、どうし……た……」
 気が付けば、梓は既に自分の身体を思うように動かせなくなっていた。
 ここはもう気狂い帽子のティータイムの領域。紅茶を楽しまない者の時間は奪われてしまう。茶菓子役の君たちをゆっくり味わって食べてあげよう。帽子の舌がべろんと垂れた。
「ほら。どうやら気狂い帽子のお望み通りにしないと、思うように動けないっぽいし。郷に入れば郷に従えってやつだよ」

 綾は自分もお茶会に参加すると表明する為、紅茶空に向かって呼びかけた。
「ティーバードさんティーバードさん。俺はロイヤルミルクティーがいいなぁ」
「じゃ、じゃあ俺はストレートティーを頼む」
 オウガを怖れて空高くに避難していたティーバードも、猟兵に呼ばれたらお役に立ちたいと直ぐに飛んで来る。お揃いのヴィクトリアンシェイプが彼らの前に届くと、注文を受けた紅茶が空から注がれた。ストレートではベルガモットの香りが誇り高く広がり、ミルクと合わさるとよりデリケートな味わいになる紅茶、アールグレイだ。
『おぉ』と同時に感嘆の声を漏らして、二人はカップに口を付けた。
「本当に紅茶が出てきたすごい」
「素人目にも上質な紅茶だと分かるほど美味い」
 ティータイムを楽しめば、押さえつけられていた身体が軽くなる。
「これでお菓子があれば完璧なんだけど……梓、なんか持ってきてないの?」
「お前なぁ、そんな都合良く菓子が出てくるわけ……ああ、あったわ」
 言われて思い出したと梓が取り出したのは、焔や零用に作って置いた零レ桜のクッキーだ。プレーン、桜、抹茶味。どれも可愛らしい桜型のそれを皆の前に広げる。
「折角の機会だ、皆で食うか」
「わっ、流石だね。相変わらず梓の作るお菓子は美味しいなぁ」
 型に桜を選ぶ辺りもやっぱり女子力高い。本当ならアリスたちも呼んで振る舞ってあげたかったけれど。帽子に食べられては困るから、また別の機会にあげられるといいね。
 二人と二匹は、クッキーと紅茶を存分に味わいながら、そんな雑談に花を咲かせる。
「クッキーの甘みとよく合う。別の紅茶も貰おうか」
 カップを掲げれば、勿論おかわりも注がれた。そうして、今度は紅茶のシャンパンとも呼ばれるダージリンのフレーバーを皆で楽しんだ。

「お茶会を楽しんでいるようなだね! でも、私は悲しいよ。そちらだけで茶菓子を楽しんでしまうなんて! ほら、帽子から紅茶の涙が零れてしまう!」
 かぱかぱと紅茶のおかわりばかり続けていた帽子のぐるぐる目には、確かに紅茶が滲んでいた。――茶菓子が欲しい。もっと違う、赤が欲しいと!
 茶菓子に飢えた気狂い帽子の貪欲な舌が二人に迫るが、存分に茶会を楽しんだ彼らにもう恐いものはない。
「お前に分けてやるクッキーはねぇよ。行くぞ焔! 紅き竜よ、世界を喰らえ!」
 梓から【為虎添翼】の合図を受けた焔は、高火力のブレスで帽子をクッキーみたいに焼いてやる。紅蓮の炎に飲み込まれた帽子が、あちちあちちと自分を舐めて消火していると、今度は綾が自身の血を付着させたナイフを構えていた。
「そんなに赤を食べたいなら、少しだけ味見させてあげるよ。その代わり――ちゃんとついてきてね」
 なんてオウガを誘うが、【ヴァーミリオン・トリガー】で強化したスピードに付いて来られるなんて、角砂糖のように甘い考えだとその身に叩き込んでやる。綾の血が付いたナイフは帽子の舌に確かに届いた、ぐっさりと。そしてその赤を味わう間もなく、無数のナイフが次々と大きな的に突き刺さる。
 ナイフのおかわりなんてしてない? 遠慮するなよ、それなら炎を追加しよう!
 あっちにいけば串刺しで。こっちにくれば丸焼きだ。さて、同じ問いを返そうか。
 どうやって調理されたいか――ご希望はあるかい?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

藤・美雨
私は食べても美味しくないよ?
それとも発酵食品みたいなものだと思われているのかい
……それなら食べてみればいい

最初は普通に応戦しよう
あの帽子がオウガの武器だね
してくるとしたら噛みつきとか、あの舌での攻撃かな
しっかり見切って回避しよう
オウガ本体にも気をつけないとね

多少の怪我は厭わず相手の懐に突っ込み、拳や蹴りで応戦だ
でもこのままじゃ分が悪いだろう
それなら――【捨て身の一撃】さ!

【怪力】を籠めた拳を帽子の口に突っ込んでやる
多少のダメージは与えられるだろうけど、破壊まではいけるかどうか
だから追い打ちの【限界突破】、『デッドマンズ・スパーク』さ
私の腕とそこから放たれる全力の雷
満腹になるまで食わせてやる!




 今日はマナーの悪い茶菓子ばっかりだ!
 傷だらけの舌を限界まで伸ばして、『ピーター・ハッタ』の帽子は怒り狂っていた。
「おやおや困った、帽子が飲み過ぎた紅茶色になってしまいそうだよ」
 ピーターは帽子を落ち着かせようと、おかわりした紅茶をかぱかぱ飲ませ続けている。
「一刻も早く美味しい茶菓子が必要だね。ほら、早くこちらへどうぞ」
 藤・美雨(健やか殭屍娘・f29345)はお茶会の席……ではなく、帽子の口の中へおいでと誘われた。アリスも猟兵も茶菓子扱い。オウガが悪食なのは知っているけれど。
「私は食べても美味しくないよ?」
 死の恐怖の悪夢を見てもきっと怯えない、殭屍娘なんて好みじゃないだろう。
「それとも発酵食品みたいなものだと思われているのかい? それなら、」
 ……食べてみればいい。お腹を壊しても知らないけどね。

「茶菓子が来ないなら、こちらから出迎えに行かないとね。おめでたい日万歳!」
 殺戮捕食形態の帽子は、獲物を捕らえるための巨大な舌を振り回して、フリスビーのように飛んで来る。
「その長い舌の攻撃はお見通しさ!」
 そう簡単にはいかないよ、と。軽やかな跳躍で美雨は帽子の舌を躱した。
 しかし、お茶会の主催者のピーターも大人しく待ってはくれないようで、Uターンする帽子をサポートするように杖を振り回し、言葉の通り茶菓子を力尽くで迎えに来たようだ。
「お前からも目を離すわけにはいかないね!」
 二手に分かれた敵に追われるという分が悪い状況でも、美雨の強気な笑みは崩れない。多少なら怪我を負っても構わないのだ。私はそういう戦い方なのだから。
 槍のように突いては薙刀ように横薙ぎにしてくるピーターの杖を、拳で打ち蹴りで弾いて行く。近接攻撃の応酬をしている内に、特大の飢えが、狂気の圧が、美雨の静かな心臓を握り潰そうと押し寄せて来た。……いいよ、そろそろ食わせてやろう。
 美雨はピーターの腹に重い蹴りを沈めて距離を置き、帽子に向かって拳を構えた。
「ほら! そのデカい口に詰め込んでやるよ!」
 襲い掛かる帽子がインパクトする瞬間。美雨は渾身の一撃を帽子の大口に叩き込んだ。怪力の拳は帽子をミシミシと軋ませるが、破壊までには至らない。
 グギャリ――腕がもげそうなほど牙が食い込んだ。

「……ああ、わかってる。一発だけじゃあ足りないよね。
 腕の一本くらい安い安い! 満腹になるまで食わせてやるよ!」
 片腕を代償にした【デッドマンズ・スパーク】が一番弱い口腔内で爆ぜる!
「おかわりはもう……いらないね?」
 膨大な電流で黒焦げになった物体の口は、もう開かれることはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネーヴェ・ノアイユ
自身のお茶会のためでしたらアリスのみならず猟兵までもが対象とは……。恐れを抱いてしまうほどのピーター様の欲望……。この場にて確実に断たねばないとですね……。
ですので……。申し訳ないですが……。どの役も謹んで辞退をさせていただきます……。

眠り猫様と似たような攻撃をピーター様も……。でしたら……。まずはsnow broom様を手に持ち空中浮遊にて上空へと移動します。
迫りくるティーセットを手に持ったsnow broom様を振るいながら迎撃を行いつつ……。リボンに残された3割の魔力溜めしていた魔力と私自身の魔力を全て使いピーター様へと全力魔法にてUCを。

戦闘後には紅茶をいただければと思います。


安寧・肆号
こんにちは、素敵な帽子のアナタ!
お茶会に遅れてしまってゴメンなさい。
お眠なネズミは気まぐれだから。あたし1人でお茶をいただくわ!

足のないお菓子の方が美味しいと思うのだけど…あたしはうんと甘いものが好きなのよ!
それに音楽が加わったら、もっと楽しいと思わない?

指揮棒を振るって、骸骨さんたちを呼んで。
位置についたら、ワルツカードで[弾幕]を放って演奏会の始まり!
ティーセットさんは銀時計で[武器受け]するわ。
攻撃で隙ができたら、帽子のアナタにプリンセスハートを[一斉発射]。

やだ、まだお茶をいただいてないわ。
あたしったらお茶会に招かれたのに無作法ね。
1杯いただこうかしら!




「なるほど、猟兵を食べ過ぎると焦げてしまうんだね。これでまたひとつ、茶菓子について詳しくなった! 帽子はまた新しく仕立て直さないといけないね」
 気狂い帽子『ピーター・ハッタ』は愛用の帽子を猟兵に黒焦げにされても、お茶会を止めるつもりはこれっぽっちもないようだ。自前のカップを空に掲げて、もう何度目か分からない紅茶のおかわりを頼んでいた。紅いストレートティーが空から注がれる。
 ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)はその狂った光景を目の当たりにして、恐ろしい……と小さく呟いた。
「自身のお茶会のためでしたらアリスのみならず猟兵までもが対象とは……。恐れを抱いてしまうほどのピーター様の欲望……。この場にて確実に断たねばなりませんね……」
「おや、今度は砂糖菓子のように美しい子がいらしたね! 生クリームたっぷりのケーキとなめらかな口触りのパンナコッタ、どちらがお好みかな?」
 きっとそれは食べたいものではなく、なりたいものを尋ねる問いだから。
 話が通じる相手ではないだろうけれど、ネーヴェは静かに首を振って正直に答えた。
「申し訳ないですが……。どの役も謹んで辞退をさせていただきます……」

 遠慮しなくていいんだよ! なんて、案の定ピーターは狂気の笑みを浮かべるけれど。彼に負けないくらいの満面の笑みで、安寧・肆号(4番目の人形・f18025)はティーパーティーの会場にお邪魔した。
「どれも魅力的で迷ってしまうわね! 足のないお菓子の方が美味しいと思うのだけど……あたしはうんと甘いものが好きなのよ!」
「やあやあ、チョコレートビスケットケーキのように魅力的なお嬢さんもようこそ!」
 愛らしくて美味しそう、なんて独特な誉め言葉も喜んで。安寧肆号はクランベリー色のスカートの裾を摘まみ、にこやかに挨拶をする。
「お茶会に遅れてしまってゴメンなさい。……あら、素敵な帽子とははぐれてしまったの? あたしもなの。お眠なネズミは気まぐれだから。ここからは一人でお茶をいただくわ!」

 楽しい楽しいティーパーティー。音楽が加わったらもっと楽しいと思わない?
「まぎあ・むーじかもるてぃす!」
 安寧肆号は指揮棒を振るって【少女指揮・骸骨楽団】を召喚した。
「アナタも準備はよろしいかしら?」
「それでは、私は空で鑑賞させていただきます……」
 巨大な骸骨霊たちがそれぞれの楽器を抱えてオーケストラの舞台を作り出したので、ネーヴェは雪白の箒を手に紅茶空へと浮上していく。
「位置に付いたら、演奏会の始まりよ!」
 スタートの合図で、安寧肆号が拾い集めた楽譜たちが踊り出した。雪崩れてくる音符型の弾幕に、ピーターも両手を広げて召喚したティーセットで応戦する。
「素晴らしい! では、目に見える音符と見えないカップ、どちらがより愉快だろう?」
 そんな疑問から、ティーセットたちはミントグリーンを消して、ひっそりこっそり演者へ忍び寄る。すると、透明なカップにコーンッと頭を打たれて、ヴァイオリニストの骸骨が昏倒してしまった。
「あら、見えないのは困るわ。銀時計で乾杯してあげられない!」
「『snow broom』様で打ち返すのも、限度がありますね……でしたら……」
 せめて目の前のカップは叩き落せるように、雪原のようなさげ緒をたなびかせながら箒を振っていたネーヴェは、瞳を閉じて魔力を集中させた。詠唱が必要なこの間だけ、安寧肆号の『Waltz*Score』の弾幕壁の中にお邪魔して共に守られる。
「束ねるは妬み。放つは憎悪。万象奪う力となれ。総て凍てつく猛吹雪」
 ネーヴェが扱う魔法の中で唯一詠唱を必須とするこの術は、彼女の奥義とも呼べる必殺技だ。青いリボンに残されていた魔力とネーヴェ自身の魔力を全て使用して、猛吹雪が生み出される。そして、オウガを襲う【総て凍てつく猛吹雪】は、透明なカップにも霜を降らせてその姿を露わにさせていく。
「氷菓子みたいで、とっても素敵よ!」
 安寧肆号は自分のときめきも届けるように、『Anne*Coeur』を吹雪に乗せて一斉発射した。激しい魔力のうねりがピーターを飲み込んでいく。
「ああ……名残惜しいけれど、私のお茶会はここまでのようだね。またおめでたい日に、何でもない日に。おかわりをいただきに……来たい、ところだね……」
 あっという間に氷漬けになったオウガの氷像を、ハートのガラスが砕く。
 こうして、紅茶空の国のオウガはみんな片付けられたようだ。

「やだ、まだお茶をいただいてないわ。あたしったらお茶会に招かれたのに無作法ね」
「私も、一杯いただければと思います……」
 すると、カラフルなカップのティーバードが、空から紅茶を届けにやって来た。猟兵がオウガを追い払ってくれているうちに空が作った、紅茶のシフォンケーキもお茶菓子に。
 ここからはアリスの無事を祝い、猟兵へ感謝を贈る、ティーパーティーのはじまりだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月19日
宿敵 『ピーター・ハッタ』 を撃破!


挿絵イラスト