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夢の舞台へ -ONE&ONLY-

#UDCアース

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#UDCアース


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●原石は輝きを湛える前に
 私達は、ついにこの日を迎えた。
 数ヶ月前、突如としてインターネット上に現れた、月日と時刻のカウントダウンと、世界屈指の芸能プロデューサーの名前だけが乗ったティザーサイト。
 そのヴェールの向こうで、彼に見初められた私達は血の滲むような日々を過ごし、私達自身を磨き上げてきた。
 今はカウントダウンを見ていられる状態ではないけれど、その数字が間もなくゼロになることは私達全員が知っている。数字がゼロになった時、私達はこのステージに「本番」の衣装を着て立つのだから。

 着替えるために控え室に戻った私達は誰もが緊張していて、言葉が出なかった。
「――ねぇ」
 その静寂を破ったのは、ドアに寄り掛かった――自らを「みみみ様」と名乗る――美佳子。気は強いが優しくて、私達は自然と彼女を中心にまとまっていた。
「みみみ様は、あのステージ、一人で立ちたい。みんな、ここでいなくなって。邪魔しないで」
 控え室が凍り付いた。
 緊張で気が動転していたとしても到底出てくる言葉じゃない。出していい言葉じゃない。嗚咽と怒号が控え室に響く。
「じゃあ、言い方を変えるね。これはプロデューサーの決定なの。悪者にはしたくなかったけど、そうでしょ?」
 問い掛けるような美佳子の言葉に応えるように、彼女が寄り掛かる扉の四方から毒々しい色の液体が飛沫を上げて、美佳子に掴み掛かっていた子に降り掛かる。その液体はスライムの玩具みたいに彼女の身体を伝い――彼女を石像に変えて床に広がった。
 控え室は、私自身のも含んだ悲鳴に満ちた。すぐそこにある夢の舞台へ、悪夢に呑み込まれた私達の「意志」は、立つことができなかった。

●禁忌の幕が上がる前に
 猟兵達の控え室とも言える世界・グリモアベースでは、一人の少女を猟兵達が扇状に囲んでいた。
「皆さぁん、お集まりいただき、ありがとうございますぅ。それではぁ、わたしが視たオブリビオン事件の予知をお話ししますぅ」
 猟兵達に――その衣装から観客の前でイリュージョンを披露するように――囲まれている少女はミント・キャラメル(眠兎キャラメル・f25338)。先の言葉を発した予知能力者――グリモア猟兵である。彼女は掌の上に浮かべたエネルギー体――グリモアにコンサートホールを映し出し、語り始める。
「UDCアースの日本で、邪神の眷属がアイドルとしてデビューライブを行なおうとしていますぅ。このライブは全国的に注目を集めているプロジェクトになっていてぇ、このライブがUDCアースに与える影響は計り知れないものになりますぅ。ですので、ライブの前に眷属の撃破をお願いしますぅ」
 グリモアの映像は、エントランスから″STAFF ONLY″の看板を越えて通路を進む。その通路には、スライムのまとわりついた「石像」が何体も見えた。
「眷属はスライム状のUDC怪物を従えていて、眷属以外のアイドルグループメンバーやスタッフを襲って石像にしてしまっていますぅ。まずは、このスライムが開場待ちのお客さんを襲う前に排除をお願いしますぅ」
 グリモアの映像は切り替わり、観客のいないステージで自己リハーサルに励む、トレーニングウェアの少女を映す。
「スライム怪物の排除後、UDC職員がスタッフに成り代わって開場待ちのお客さんを相手しますので、その間にこの子――眷属の『みみみ様』の撃破をお願いしますぅ。可愛いですけど紛れもなくUDC怪物で、オタクという熱狂的ファンの幽霊を操るユーベルコードを使う強敵ですので、充分気を付けてくださいねぇ」
 グリモアの映像はエントランスに戻り、開場待ちの待機列を映し出した。
「『みみみ様』を倒す頃にはスライム怪物に襲われた人達の石化は解けて、UDC職員が被害者を収容し、記憶処理などで事態を隠蔽してくれますぅ。ですけど、『このコンサートホールで間もなく、数ヶ月前から全国的に注目を集めてきたアイドルのお披露目ライブが行なわれる』事実を書き換えるには、いくらUDC組織でも時間が足りないですぅ。『幸い』、ライブを行なうアイドルの詳細は一切公表されていないですぅ」
 隠蔽が利かないと言い切って何が「幸い」なのか、と思った一部の猟兵に答えるように、ミントは満面の笑みで続けた。
「なので、皆さんがアイドルになってライブをやりましょお☆ 『伝説の始まり』を観ようと集まったオーディエンスを満足させるのも、立派な猟兵のお仕事ですぅ☆」
 それは立派なパフォーマーのお仕事である。
「ライブは必要があればわたしも協力しますので、眷属の撃破をよろしくお願いしますぅ☆ それじゃあ行きますよぉ。グリモア・イリュージョン☆ ワぁン・ツぅー・スリぃー!」
 ミントが声を弾ませると、コンサートホールのスタッフ側通用口を映したグリモアは大きくなり、猟兵達より一回り大きい映像になると、彼らはグリモアの中に進んでいく。
 「控え室」を出た猟兵達の、「幕を上げさせないためのステージ」の幕が上がる。


鷹橋高希
 ようこそこのシナリオへ。遊ぼうよプレイバイウェブ。

 オープニング公開次第プレイングを受け付けます。リプレイ執筆に割ける時間は金(木曜日32時30分以降)~日曜日に多くなります。
 また、必要に応じてプレイングを採用せずリプレイ文章を執筆する可能性(幕間等)があります。
 リプレイの進捗(特に、完成させられずの不受理)はマスターページで随時更新します。

 第1章:集団戦 Vs. 『変質粘液『ストーンスライム』』
 例え一般人と遭遇しても、猟兵達は特別な変装(スタッフTシャツ等)を必要とせず運営関係者や大道具等と見なされるため、遠慮なく暴れて下さい。
 通路、控え室等、屋内での戦闘が想定されますが、よっぽどの大暴れでなければUDC組織がどうにかしてくれるはずです。
 また、原則として被害者の石化回復は第2章クリア後となりますが、猟兵が石化した場合、本章クリア後に(ご希望であれば本章での次回プレイングによっても)石化は回復し、問題なく第2章に参加可能です。

 第2章:ボス戦 Vs. 『来世系アイドルみみみ様』
 ホールでの無観客ライブとなりますので、遠慮なく暴れて下さい。よっぽどの大暴れでなければUDC組織がどうにかしてくれるはずです。

 第3章:日常 『ドリーム・イェーガー・ステージ♪』
 アイドルに扮してパフォーマンスを行ない、ステージを盛り上げて下さい。POW,SPD,WIZの内容は例であり、行動はお客様のプレイングになります。
 また、本章では「お客様が誘ってくれるプレイングをかけてくれた場合のみ、オープニングに登場したグリモア猟兵を、リプレイに登場させる事も可能」です(※シナリオフレーム補足情報より抜粋)。
 なお、本章に参加したがためにお客様のキャラクターが今後の私のUDCアースでアイドルとして認識されることは、原則としてありませんのでご安心下さい。
 (※アイドル設定のキャラではないけど私のUDCアースでだけはアイドルでいたいという方は、プレイングにその旨を明記下さい)

 それでは、しゃかりきイェーガーズのご参加をお待ちしております。
 よろしくお願い致します。
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第1章 集団戦 『変質粘液『ストーンスライム』』

POW   :    粘液散布
レベル×5本の【石化】属性の【石化粘液】を放つ。
SPD   :    粘液分裂
【分裂したストーンスライム】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    粘液強襲
【石化した犠牲者】から【潜んでいたスライム本体】を放ち、【触れ包まれた箇所から石化する事】により対象の動きを一時的に封じる。
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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ノインツィヒ・アリスズナンバー
アドリブ・絡み歓迎

アイドルってさ。華やかなステージの裏では、体育会系も真っ青な血のにじむような努力してるわけ。
私ちゃんもよくわかる。私ちゃん、アイドルだもん。
だからこそ、越えていいライン越えてきたなてめえ。

基本的には【覚悟】を持って石化粘液は拳で受ける。
拳を石化して、更にUCの威力を増すように仕向ける。
一気に接近したのなら、UCを起動。
スライムの野郎をぶっ飛ばす。

アイツだけは許さねえ。
だから、あと少しだけ待っててね。被害者の皆。
アイドルの誇りを踏みにじったアイツだけは、この手でケリつけてやる。



●アイドルの誇り
「アイドルってさ。華やかなステージの裏では、体育会系も真っ青な血のにじむような努力してるわけ。私ちゃんもよくわかる」
 あと少しで眩い光を浴び、ひた隠しにしてきた努力が報われるはずだったアイドルデビュー前の少女達。石像と化しても、その魅力がアイドルである自分と比べても遜色ないことをノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)は理解していた。
「――だからこそ」
彼女達の表情は、混乱・恐怖・絶望等の感情に引きつり、そのまま石化してしまっていた。彼女達は努力の対価として笑顔にならなければならないはずだ。これは「越えていいライン」を越えた、アイドルへの冒涜に他ならない。そして、彼女達の笑顔を奪った「実行犯」は、次はこいつだと言わんばかりに、不快な水音を立ててノインツィヒ目掛けてにじり寄る。その様を、ノインツィヒの瞳は射抜くように見つめていた。
 ストーンスライムは一斉に自らの身体の一部を、何本にも分けて放った。ノインツィヒは、拳を握り込んで一つステップ。ひらりと躍る金色の髪は、アイドルである彼女が纏うオーラのように煌めいた。粘液は彼女がいた空間でぶつかるだけで、彼女は無傷――ではない。握ったままの拳は粘液に塗れ、石と化していく。しかし、ノインツィヒは一切の動揺を見せない。彼女は敢えて、握り拳だけを粘液の軌道に残したのだ。
「この子達は全てを石にされたんだ。今までの全てを。だから」
――拳程度が石になったところで何ともない。そして、その「石」でなければ、この子達の無念はぶっ飛ばせない。
取り付こうと飛び掛かるスライムに、その石の拳に乗せた覚悟とユーベルコード「一撃必殺」を叩き込む。スライムの放物線に真正面からぶつかった拳は、その毒々しい粘液を殴り散らし、散らばる粘液は空気中に溶けるように色と形を失っていった。
――アイツだけは許さねえ。
ノインツィヒは、振り切った拳の向こうに、この事態の元凶を睨み付けている。別のスライムが次々に飛び掛かるが、それらも「アイツ」を殴り付ける拳に消えていった。
「だから、あと少しだけ待っててね」
 群がるスライムを消し飛ばしたノインツィヒは、彼女達が憧れ、ついにそう呼ばれるはずだった存在――アイドルとして、優しい笑顔で語り掛け、控え室を後にした。
――アイドルの誇りを踏みにじったアイツだけは、この手でケリつけてやる。
ノインツィヒは、その「石」の拳で、スライムを殴り散らしながら進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミリア・プレスティール
【人形館】で参加
ミリアはアイドルの衣装を借りて通路を巡回することで囮となり、スライムを誘き寄せようと試みる。
相棒の手袋型UDC『ミトン』はミリアの近くに身を隠して、スライムが現れるまで待機する。テフラさんが固めたスライムを積極的に『ミトン』が砕いていく。
【ミリアの心情】
怖いし、(人前でアイドルとして振る舞うことが)恥ずかしいけど、囮役として役目を果たさないと…!

※アドリブOK


レムル・ガルム
アドリブ・絡み歓迎【人形館】

自分一人だけが輝けば良いなんてスタイルはアイドルであってアイドルでないのデス……。
まずは被害にあったアイドルの安全を確保しないとデスね。

ミリアさんが囮になって、テフラさんが凍結でスライムを止めてる隙に、私は石化したアイドルの皆さんを安全なところに運ぶデス。
石像は重いのでUCで体を強化して持ち上げて、【蒸気式アンカーガン】で移動して待避させていくのデス!

もしスライムに石像の運搬を妨害されたなら【予告状(発煙タイプ)】で足止めデス。それでもダメならこの身を盾にして石像を守るデス!
たとえ私まで石像されてしまったとしても罪のないアイドル達は守りきってみせるのデス!!


テフラ・カルデラ
【人形館】で参加
※アドリブ可

ミリアさんと一緒にアイドルの衣装を借りつつ通路を巡回による囮でスライム達をおびき寄せます
その間に【全てを凍てつかせる小さな妖精】を発動させつつも妖精さん達はミトンさんと一緒に待機させておきます

それにしても…色んなアイドル達がいるのですね~…とまじまじと石像を見ていたら、その隙間からスライムが現れてわたしの身体に…さらに次々とスライムが這い出てミリアさんにも危険が及びかけます
妖精さん!頼みました!スライムであるが故に水分がある…つまり凍らせてしまえば簡単なのです!
しかし…張り付いたスライムはわたしを…い…し…に…
(兎アイドルの石像ができあがる)



●人形館の少女達
 シャーッ、という音を重ねて、二枚のカーテンが開いた。
「こんな感じでどうでしょう……?」
一枚目のカーテンから現れたのは、ステージ衣装に身を包んだテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)。
「ど、どうですか……?」
二枚目のカーテンからは、同じ衣装のミリア・プレスティール(被虐少女と手袋守護霊・f16609)。
「お二人とも可愛いデスヨー♪ 特にミリアさんはスタイルが良くて衣装が映えるデス♪ ホラ、並んでポーズ取るのデス♪」
二人を見比べて太鼓判を押す金髪のツインテール少女、レムル・ガルム(XGMN01:護衛型魔法騎士人形試作一号機・f25125)に言われるままに、二人は次々とポーズを取る。背格好はテフラが小さいが、ウサギのキマイラである彼――彼女ではない――の白い耳はミリアとの身長差を補い、乳白色と漆黒の長髪に、黒と白の脚線美が魅せるシンメトリーは、レムルもぐへへと大満足の可愛い美少女姉妹アイドルの誕生である。片方男の子だけど。
 この三人の少女達は、何もアイドル体験に来たわけではない。少女達はいずれも猟兵で、この衣装を纏ってステージに上がる直前で石像にされてしまった少女達の救出に来たのだ。そのために、ステージ衣装でアイドルとして振舞い、スライムの囮となるのがテフラとミリア、その隙に石像を屋外に運び出してUDC組織に引き渡すのがレムル、というのが三人の布陣である。三人は通路に出てアイドル達の控え室の方へ進んでいく。通路はしんと静まり返っていて、拍子抜けなほどあっさりと控え室に辿り着いてしまう。レムルは待機し、テフラとミリアが入ったその部屋には、二人と同じステージ衣装を纏うはずだった少女達の石像が佇んでいた。

「この子達ですか……色んなアイドルがいるのですね~……」
 石像にさえされなければ、猟兵の少女達にも負けず劣らずの魅力でスターダムに駆け上がっていただろう少女達。彼女達の石像をまじまじと見ていたテフラの野生の勘は、何かを感じて振り返る。すると、少女の石像から毒々しい色のスライムが新たな獲物を愛でようと、次々と這い出ていた。その中には、もう一人のアイドル――ミリアに狙いを定めたものもいる。
「作戦通り行きます! 妖精さん! 頼みました!」
 テフラの指に嵌められた指輪が青く輝くと、その光――ユーベルコード「全てを凍てつかせる小さな妖精」はミリアに飛び掛からんとするスライムに触れた。その瞬間、スライムは凍り付き氷像と化す。妖精は次々とミリアに群がるスライムを凍らせていく。
「み、ミトン!」
 足がすくみかけたミリアだったが、作戦の続きは彼女の役目だ。彼女のユーベルコードにして相棒の手袋型UDC『ミトン』に呼び掛けると、その名の通りの手袋が彼女のステージ衣装から飛び出し、凍ったスライムより一回り大きくなりながら床に叩き潰す。その氷片は融けることもなく色と形を失った。
「怖いし、こんなにひらひらのスカートは可愛すぎて恥ずかしいけど、囮の役目を果たさないと……!」
 氷の妖精と大きな手袋がスライムを骸の海へ還していく中、レムルはユーベルコード「トリニティ・エンハンス」による炎と水と風の魔力を纏い、強化された身体能力で石像を持ち上げて控え室の外へ運び出していく。
「自分一人だけが輝けば良いなんてスタイルはアイドルであってアイドルでないのデス……!」
 少女達が纏うはずだった衣装で闘う二人、そして少女達を盗み出す怪盗。一人だけではないからできる連携プレーで救出活動は進む。
「あぁっ……!」
「きゃっ……!」
 しかし、囮役の戦線が崩壊した。ついに粘液を避け損なったテフラとミリアは足を石にされ、バランスを崩して粘液の上に尻餅をつき、反射的に床に突いた手も石化を始めていた。
「くっ……! 二人とも、辛抱デス! 後で必ず助けに行くデス!」
少女達の救出はまだ全てではないが、二人が無力化され自分も狙われ始めたことで、レムルは今運び出している石像までで撤退せざるを得なかった。水の魔力を緩衝材にして蒸気式アンカーガンのワイヤーで石像を束ね、風の魔力で石像を浮かせ、引っ張って通路を進む。

「あ、あわわわ……!」
 ミリアの顔は青ざめていた。目の前にある自分の膝は既に石となって動かせず、その動けなくなっていく感覚はスライムと共に身体を這い上ってくる。これが少女達の味わった絶望なのだろう。無論、この感覚はテフラも味わっている。
「せ、石化なんかに、絶対負けません……!」
しかし、テフラは絶望に屈しない。そもそも絶望とは違うベクトルの感情を抱いていそうだが。
「負けないって言っても……このままじゃ……!」
二人とも、既に首から下は全て石化してしまっている。最早、為す術はない。
「い……し……に……」
 そして、二人の意識までも、全身と同じく石となって固まった。床に座って仲良く並んだステージ衣装の美少女姉妹アイドルの石像は、やはり恐怖に表情を歪め――兎の耳を生やした方だけは、どことなく恍惚としている様にも見えた。

 一方、怪盗少女の脚もまた、徐々に石と化していた。レムルの前にもスライムの群れが立ちはだかり、飛び掛かる多数の粘液を捌ききれなかったのだ。
「この身に替えても……罪のないアイドル達は、守りきってみせるのデス!!」
レムルは一枚のカードを取り出す。それは怪盗の矜持をしたためた「予告状」。投げ放たれたそれは一体のスライムに突き刺さると、発火し発煙する。煙はさらに炎の魔力を帯びて燃え上がり、全てのスライムを焼き払っていく。レムルは石化していく身体の最後の力を振り絞り、炎の煙に向けて石像の束を投げ飛ばした。水と風の魔力に護られた石像達は通路に沿って搬入出口の前まで駆け抜け、一切の物音を立てず床に降りた。ここまで運ぶことができたら、UDC組織による回収も容易だろう。
 そして、予告通りアイドルの石像を盗み出した怪盗少女は、スライムを焼き尽くした炎が鎮まると共に石像と化していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。



自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
                      プロデューサーより



●鬱るな!鬱詐偽さん スライム退治でアイドルライブ応援SP
 音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)。『鬱るな!鬱詐偽さん』という冠番組を抱えるアイドルである。今回の仕事は、アイドルグループメンバーやスタッフを襲ったスライムの退治。鬱詐偽は早速、アイドル達の控え室――を過ぎ、会議室に向かった。
 アイドルというのは、数多くの「裏方さん」のおかげで輝くことができるのだ。それを知るアイドル・鬱詐偽は、会議室に広がる光景も知っている。これから売り出されるグッズの詰まった段ボール箱の山、机の上に広げられた何枚もの紙、黒や赤や青で色々と書かれたホワイトボード等。
「世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上」
ポーズを決めてローテンションに名乗り口上。しかし、室内のスタッフに逃げ延びた者はなく、全員石像と化していて、誰からもリアクションは得られない。
(うう、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ……)
見事に空振った恥ずかしさに『鬱り』そうになるが、一拍置いてスタッフの石像から毒々しい粘液が這い出てきた。誰も聞いていなかったわけではなくなったが、明らかに自分を害そうとにじり寄るスライムに、『鬱って』いる場合ではないほどの恐怖心を感じた。
「うう……!」
 鬱詐偽の恐怖心をトリガーに、ユーベルコード「リアライズ・バロック」が発動し、60体のバロックレギオンが彼女の周囲に召喚される。バロックレギオンは彼女の指示もなくスライムを攻撃し、その全てを跡形もなく消し去っていく。
「番組の為とはいえ……こんな怖い思いをする猟兵なんて無理よ……」
 その後も触られれば即石化の恐怖のスライム退治は続き、出遭ったスライムの全てはバロックレギオンに阻まれ鬱詐偽に一滴も触れられず消えていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ポーチュラカ・ハイデルベーレ
●心情
でぃざー?でびゅーらいぶ?
……よく知らない言葉ではありますが、それらを楽しみにしてた人たちが害されるという事でありますね?
ならば、ポーチェのやる事はただひとつであります!

●戦闘
【生まれながらの光】で人々の石化を治療し、こぐまの[コカブとフェルカード]に避難誘導をしてもらうであります!
自分が攻撃を受けて一部石化しても、自分で治療できますからね。

そしてスライムたちはポーチェが引き付け、[聖者の陽光]で灼くであります。

疲れていても、苦しくても、いつだって陽光はここにあるのであります!

アドリブ等◎



●陽光の花道をパレードはゆく
 ポーチュラカ・ハイデルベーレ(日輪の聖者・f01720)は、机の上に広げられた紙に視線を落としていた。
「でぃざー? でびゅーらいぶ? ……よく知らない言葉ではありますが」
顔を上げ、室内――会議室で石像と化した人々を見やって、
「それらを楽しみにしてたこの人たちが害されたという事でありますね?」
ならば、ポーチェのやる事はただひとつであります! と意気込んだポーチュラカは、オラトリオ――異世界・ダークセイヴァーにて天の御使いとも呼ばれ、自身が『日輪の聖者』と崇められる証である六の翼を広げ、聖なる光とも呼ばれる「生まれながらの光」を放ち、部屋の全ての石像を照らす。光を浴びた石像の表面はヒトの肌へと変化して――戻って――いく。
「うわあああ……あ?」
石像から回復した人々の時間は再度流れ始め、一瞬は石化への悲鳴を上げるが、暖かな光を浴びている彼らはすぐに正気を取り戻す。彼らが浴びている眩い光はやがて収まり、天使の翼を持った、「彼女達」と同年代の、オレンジ色の髪の少女を見た。
「君は……?」
「ポーチェであります! 皆様を助けに来たであります!」
「君、ここは危険だよ! 何というか、スライムみたいな化け物が」
「そのスライムから皆様を助け、お守りするのがポーチェであります!」
「君! 後ろ!」
む? と振り返ったポーチュラカは、通路から入り込んだスライムと対峙する。スライムは飛び掛かるが、ポーチュラカもほぼ同時に聖者の陽光を放ち、スライムは蒸発した。周囲の人々は、おお、という声しか上げられなかった。
「このようにお守りするのであります! では、出発であります! コカブとフェルカードについて行くであります!」
いつの間にか現れた、まるでぬいぐるみのようなふわふわもこもこの毛並みを持つ双子のこぐま――コカブとフェルカードの手招きに、人々はついて行く。殿は天使――ポーチュラカが務め、恐怖に満ちた世界を塗り替えるファンシーなパレードが進み始めた。
 パレードはポーチュラカの聖者の陽光に守られ、時折現れるスライムを焼き払い、時折見つける石像のスタッフやアイドルを「生まれながらの光」で救い出して加え、黄金の福音が奏でる音色と共に賑やかに進んでいく。そして、パレードは終着地――搬入出口に辿り着き、そこに佇む石像も元に戻した。パレード隊長の疲労はさすがに無視できないものになっており、彼女を労う感謝の声に支えられ、立っている状態である。
「皆様が混乱なく進んでくださったおかげで、皆様をお救いできたであります。ポーチェの方こそ感謝であります」
 そして、搬入出口のシャッターが上がる。そこには多数のUDC職員が待機していた。パレードに参列したアイドル達は、この世界――UDCアースが孕む「禁忌」に曝露してしまっているのだ。彼女達は一刻も早く「それ」にまつわる「全て」を忘れなければならない。パレードは、舞台に立つことのなかった彼女達への、彼女達を陰で支え続けた彼らへの、花道でもあったのかもしれない。
「疲れていても、苦しくても、いつだって陽光はここにあるのであります!」
 彼女達が忘れなければならない「天使」は、そう言って微笑んでいた。

 一度きりのパレードを終えた役者が舞台を降り、物語は進む。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『来世系アイドルみみみ様』

POW   :    みみみ様が世界に飛び出す…!
【ビームペンライトとみみみ様ライブTシャツ】で武装した【オタク】の幽霊をレベル×5体乗せた【完全武装型重装甲自律機動ライブ会場】を召喚する。
SPD   :    みみみ様のライブが始まる…!
【Overture】を使用する事で、【全身にビームペンライトとペンライトガン】を生やした、自身の身長の3倍の【オタクをレベル体召喚、自身はステージ衣装】に変身する。
WIZ   :    みみみ様親衛隊(飛行型)が現れた!
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【ビームペンライトを構えたレベル体のオタク】で包囲攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラヴ・フェイタリティです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●伝説の舞台の語られぬ伝説
 猟兵達は、スライム状のUDC怪物を全滅させ、石化したアイドル達の救出に成功した。彼女達がケアを受けるためにコンサートホールを後にするのと入れ替わるように、「STAFF」と書かれたTシャツに身を包んだ多数のUDC職員が現場に入り込み、開場時間を待ち侘びる客に呼び掛ける。
「皆様、お集まりいただき、誠にありがとうございます! 大変申し訳ありませんが、今回のライブは開場時間まで当施設への出入りをご遠慮いただきたく存じます! 伝説の瞬間に立ち会っていただける皆様のご協力を、よろしくお願い致します!」
 UDC職員による人払いが済んだ、扉一枚を隔てたホールでは、ステージの上で一人の少女と猟兵達が対峙していた。
「あの子達は確かに良い子だったわ。友達としても、ライバルとしても。だけど、どうしてもこの舞台には上げられなかった。だって、『みみみ様』は、あの子達の分まで推されなきゃならないもの」
アイドルが推される。それは「偶像が信仰を集める」と言い替えていいだろう。信仰を集めるほど偶像――神は強くなる。その神がUDC怪物だとしたら?
「「「みみみ様! みみみ様!」」」
 チャントと共に、誰も入れていないはずの客席にペンライトが点り始める。猟兵達はすぐに、ペンライトの持ち主達が既にこの世に亡き者と判った。そして、彼らは「推し」のために生き、志半ばで「推し」より先にこの世を去った無念を喰われているのだろうことも。彼らの纏うグッズのアイドルはバラバラで、かつ――デビュー前の――彼女のものは何一つ無い。
「このリハーサルを仕上げて、あなた達にも私を推す幸せを噛み締めさせてあげる。未来永劫、ね」
 猟兵達は、たった一つの「頂点」の椅子を賭けて、「ライブ」のリハーサルを始める。
テフラ・カルデラ
ミリア(f16609)と同行
※アドリブ可

お約束とは言え石化されてしまいました…
そして次は…アイドルと名乗るUDC怪物ですね…

ミリアさんが相手とアイドル対決を仕掛けているのでわたしは応援している…振りしつつ敵の死角まで移動…
確実に当てれる隙を見せたら【黄金呪術球】を思い切りぶつけます!
過激派アイドルはアイドルらしく偶像(黄金像)になってください!
大人しくなれば美術品としての価値はあると思いますよ~?


ミリア・プレスティール
テフラさんと参加
ミリアは再び囮としてみみみ様の注意を引くことに…。
相棒の守護霊『ミトン』の提案でアイドル対決をすることになったが、人前に出ることを恥ずかしがったミリアの代わりに『ミトン』がミリアの身体に憑依してアイドルとして振る舞うこととなった。
『ミトン』はミリアのふりをしてパフォーマンスをしつつ、手袋を操って会場中を飛び回り観客にアピールする。
【ミリアの心情】
ミトン、人の体だからって変な行動はしちゃだめだからね!
変なことしたダメだって言ったのにっ…!
【ミトンの心情】
アイドルってのはあれだろ?ファンに媚びればいいんだよな?(偏見)
『キモオタの皆さんもそうでない皆さんも応援よろしく!☆』



●アイドルは飛ぶ、アイドルは固まる
「皆さぁーん! 今日は私のステージに来てくれて、本当にありがとー!」
 その声はステージの遥か上から聞こえた。みみみ様が見上げた視線の先には、大きなミトンが浮かんでいて、白い脚が垂れ下がっている。その脚――ミトンに腰掛けているのはミリア・プレスティール(被虐少女と手袋守護霊・f16609)。ステージ衣装に身を包む、新たなアイドルの登場である。
「アイドルってのはあれだろ? こんな感じでファンに媚びればいいんだよな?」
小声のこの喋り方は、ミリアのユーベルコード「魔神降霊」により肉体に憑依した、相棒の守護霊『ミトン』。『ミトン』はアイドル対決を提案したが、可愛すぎるステージ衣装で人前に出ることを恥ずかしがったミリアの代わりに『ミトン』がアイドルとして振る舞うこととなったのだ。
「ちょっと……このステージはみみみ様のものなの。あなたみたいなアイドルは、お呼びじゃない!」
ミリアの姿を見上げたみみみ様は、芝居がかったアクションで腕を薙いでみせる。それに合わせて、客席がそこに座る熱狂的ファン――オタクの幽霊と共に浮かび上がる。数百席に及ぶそれらは複雑に組み合い、キャノン砲やスパークといったステージ演出装置もが備わり、その砲撃手はビームペンライトをサーチライト代わりにした、みみみ様ライブTシャツのオタクの幽霊が務める。そうやって組み上がった「ステージ」にみみみ様は跳び乗り、
「だから、あの手袋を撃ち落とすの!」
と宣言する。それと同時にテンポの速いイントロが会場に響き、オタクの幽霊達の歓声が上がる。
「盛り上がってるなぁ……」
(ミトン、人の体だからって変なことしちゃだめだからね!)
楽しそうなミトンに釘を刺すミリア。
「それじゃ、キモオタの皆さん応援よろしくー☆」
刺さってませんでした。即座にキャノンの砲口が向いて、ビームペンライトが散弾状に撃ち出される。
(あわわ、変なことしたらダメだって言ったのにっ……!)
「『本命』のためにはこれくらい気を引かなきゃな。じゃあ、やるか!」
 自身が座る手袋を思い切り振り上げ、ミリアの身体は宙に舞った。空中で捻りながら回転する様は、最早アイドルというよりはサーカスのパフォーマンス。『ミトン』は滞空時間で「本命」――テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)の姿を確認する。
「あそこか。なら――」
ビームペンライトの散弾をやり過ごしたミリアの身体は手袋がキャッチし、すぐさま斜め上に放り投げられる。ミリアの軌跡をスパークが僅かに遅れてなぞって、その先には既に着地用の手袋が先回りしている。ぽふん、と受け止められた身体はまたも宙へ。
「とっておきのファンサービスだ!」
砲撃音と共に色とりどりのテープが目の前に広がるが、絡め取られることもなくすり抜ける。ミリアの身体はまっすぐステージを飛び越え、みみみ様とオタクの幽霊の真上を通り過ぎる。自分達の頭上を「白い脚を包むスカート」が飛び越えていく光景は、オタクの幽霊の視線を釘付けにした。
(ちょっと……!)
「動き回る前提のスカート型なんだから自分のが見えるわけないだろう」
そういう問題じゃないと反論したいミリアの身体で手袋に埋まる『ミトン』。
「あんなアイドルのアピールに負けないでよ! 今はみみみ様のライブなの!」
 急に攻撃の手が緩んだ自身のTシャツ集団に苛立つみみみ様。その時、ステージの縁を越えて黄金色の球体が飛び込んで、みみみ様の肩に当たる。当たった感触は軽いゴムボールのようなもの。しかしそのボールはステージ上に落下せず、ペンキのように肩を黄金色に染めていた。
「なっ……!?」
徐々に硬くなる身体でステージ縁から下の舞台を見下ろすと、そこには兎の耳を持つテフラ。
「お約束とは言え石像にされてしまいましたから、お返しに黄金像にして差し上げますよ~」
ボールの正体は「黄金呪術球」。テフラのユーベルコードであり、全てを黄金に変える呪いの球である。
「ちょっと、やだっ、みみみ様は、まだ何も……!」
黄金像に変わりゆく推しの姿に、オタクの幽霊にも動揺が広がり、幽霊も消滅を始め、ステージが瓦解し始める。
「UDCですけど美少女ですからね~。大人しくなれば美術品としての価値はあると思いますよ~?」
UDC怪物を使用した像は紛れもなくUDCオブジェクトでありおいそれとは一般公開できなさそうだが、テフラは恐らく気にしていない。彼にとって状態変化は芸術なのだ。
「まだ……何も……!」
客席で組み上げられたステージは崩れ落ち、その中心に鈍い音を立てて黄金像が落下する。テフラが駆け寄ると、そこには助けを乞うようにも、歌を届けるようにも見える、腕を前に伸ばしたアイドルの像があった。
「いいですねぇ~。このしなやかな造形美、この細い指なんてもう……」
「――まだ何も成し遂げてないもの。像が立つほどのみみみ様の伝説は、まだこれからなのよ」
 背後から響く声にテフラは振り返り、『ミトン』もまた声の先を見下ろすと、舞台の上で、スポットライトを浴びてみみみ様が立っていた。
「なかなかいい演出だったわ。それじゃ、MCはこの辺にして、次のパート行きましょうか」
 黄金像の周囲にペンライトの光とオタクの幽霊が浮かび上がる。『ミトン』はミリアの座っていない方の手袋でテフラを拾い上げ、テフラは名残惜しそうに黄金像を見下ろしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ノインツィヒ・アリスズナンバー
……これがあんたのやりたかったアイドルか。
虚しいもんだね。そこの客は誰一人としてアンタを推してない。
グッズもバラバラ。ただ単に、アンタを名前を呼んでるだけ……
UDCの邪神としてなら1流なんだろうけど、アンタアイドルとしては3流だよ。

来る攻撃は【パフォーマンス】【見切り】でステップして躱しつつ、【カウンター】を狙うよ。
逆にペンライトを持ったオタクを【吹き飛ばし】て敵に当てる。
そして本物のアイドルって物を見せてやる。UCを発動!
【情熱】【歌唱】【ダンス】でそこの客も召喚されたオタクも魅了しつつ、攻撃する。

みんなー☆ノインちゃんを推して推して推しまくれー☆
絶対に後悔させないからな☆

アドリブ・絡み歓迎


音駆螺・鬱詐偽
そう、あなたも周りのみんなをただの引き立て役の道具としてしか見てないのね。
私と同じね。
あなたがではなくて彼女たちがだけどね。
私もかつてはただの引き立て役でそのまま番組が終了して過去になってしまったけど、お節介焼きな人たちのおかげで救われ、こうしてアイドル兼猟兵になれたのよ。
だから、あなた達にも聞かせてあげる。
ネガティブソングに宿るサウンド・オブ・パワーをね。
アイドルは歌い続けなければいけないのよ。
どんな妨害に遭い続けても、歌を聞いてくれるわずかな人たちの為に。


ポーチュラカ・ハイデルベーレ
そういう事でありましたか。
信仰や崇拝は、私たち信仰される対象が信者に強いる物ではありません。
推されなきゃいけない、等と信者の心を縛るような悪しき信仰は灼いてしまいましょう。

●戦闘
少々手荒ではありますが、[コカブとフェルカード]と一緒に現れたオタク殿達を気絶させていくであります。
偶像(アイドル)に触れてはいけないのでありますよ?

そして彼らを[聖者の陽光]で癒しながら鼓舞を試みるであります。

しっかりするのであります!
貴方達の推しというのは彼女ではないのでしょう?今、貴方達が抗わずして、誰がその気持ちを守れましょうか!
彼女の蛮行を止める為、力を貸してほしいであります!
(無意識にUC発動)

アドリブ他◎



●アイドルは歌う、願う、そして魅せる
 客席に浮かぶペンライトの光。自らが魅せられた「主」の名を呼ぶ者達。その様相は、教団とも称することができるだろう。その教団を率いる者は、この世界に棲む怪物――UDCの少女。
「……これがあんたのやりたかったアイドルか」
 ペンライトの光を冷めた瞳で見下ろしていたアイドル、ノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)は呟いた。
「虚しいもんだね。誰一人としてアンタを推してない。グッズもバラバラ。ただ単に、アンタの名前を呼んでるだけ……いや、呼ばせてるだけか」
ノインツィヒは冷めた瞳をみみみ様に向ける。
「アンタ、邪神としてなら一流なんだろうけど、アイドルとしては三流だよ」
「確かに今はまだ三流ね。だけど間もなく、みみみ様が皆の頂点に立つの。皆が、みみみ様だけを推す世界になるの」
「……そう、あなたも周りのみんなをただの引き立て役の道具としてしか見てないのね。私と同じね……あなたがではなくて彼女たちが、だけどね」
 ノインツィヒの隣に並び立つのは、音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)。鬱詐偽は、「彼女たち」を舞台に立てなくさせたUDCを真っ直ぐ見つめている。
「私もかつてはただの引き立て役で、そのまま番組が終了して過去になってしまったけど、お節介焼きな人たちのおかげで救われ、こうしてアイドルにも、あなたを討つ猟兵にもなれたのよ」
 鬱詐偽の言葉を肯定するように前に出たのは、ポーチュラカ・ハイデルベーレ(日輪の聖者・f01720)。
「信仰や崇拝は、信者が見出した救いであって、私たち信仰される対象が強いるものではありません。推されなきゃいけない、等と信者の心を縛るような悪しき信仰は、あってはならないのであります」
ポーチュラカは「アイドル」ではないが、『日輪の聖者』という偶像として崇められる経験を持つ。しかし、彼女は自身の信仰を強いたことはない。強いてしまえば、それはかの世界の怪物の所業――ヴァンパイアが敷く圧政と変わりないことも知っている。

「勝手な事を……! お願い、あの子達からみみみ様を守って!」
 新たな邪魔者の登場に業を煮やしたみみみ様だが、即座にアイドルの笑顔を作り、客席にウィンクを投げる。すると、ペンライトを構えた熱狂的ファン――オタクと呼ばれる――が次々に飛翔する。気分の高揚の例えでなく文字通り舞い上がった彼らは、親衛「隊」と呼ばれるに相応しい、みみみ様への愛を示すかのような幾何学模様をペンライトの軌跡で空間に描きながら、三人に殺到する。ノインツィヒは軌跡を見切り、ステップを踏み躱していく。色鮮やかな彼女の衣装は、ペンライトにも負けず劣らずの煌めきを見せていた。
「あなた達にも聞かせてあげる。ネガティブソングに宿る『サウンド・オブ・パワー』をね」
 迎え撃つように鬱詐偽がユーベルコードで歌い上げるのは、彼女の衣装のようにモノトーンに心を塗り潰しかねないほどのメロディと歌詞。今日の世界でネガティブな印象を持たれることの少なくない「オタク」達は、彼らが内包する罪の意識や業を映すようなその歌声を止めるべく、幾何学模様を乱してまで、鬱詐偽の「兎」の耳に向けてビームペンライトを振り上げる。しかし、その全ての刃はふわふわもこもこの毛並みで双子の「熊」――コカブとフェルカードが殴り飛ばした。
「アイドルに触れてはいけないのでありますよ?」
と、彼らの友達・ポーチュラカ。ありがとう、と呟いて鬱詐偽は続ける。
「アイドルは歌い続けなければいけないのよ。どんな妨害に遭い続けても、歌を聞いてくれるわずかな人たちの為に」
アイドルとは決して華やかなだけでは済まない。希望を与えるために、絶望を覚えるほどの闇の中で努力をするのだ。その闇の暗さはノインツィヒもポーチュラカも知っている。その共感は三人の身体からオーラとして発せられ、アイドルの輝きを体現していた。

 その輝きに引き寄せられる蛾のように、親衛隊の殺到は止まらない。ノインツィヒは脳内でワン・ツー・スリー・フォーと手拍子を鳴らした振付で彼らをいなしては吹き飛ばし、ポーチュラカはコカブとフェルカードに自身と鬱詐偽を守らせ、傷付いた親衛隊を聖者の陽光で癒していた。
「しっかりするのであります! 貴方達の推しというのは彼女ではないのでしょう? 今、貴方達が抗わずして、誰がその気持ちを守れましょうか! 彼女の蛮行を止める為……!」
――力を貸して――!!
ポーチュラカの翼が大きく広がり、六枚の翼から放たれる聖者の陽光は強烈な輝き――ユーベルコード「陽光に灼かれし信徒」となってホールを埋め尽くした。この場にいた猟兵達も、みみみ様も目が眩むほどの陽光が収まると、毅然とした光を緑の瞳に湛えるポーチュラカと同じ光が、全てのオタクの幽霊に宿っていた。彼らは敬い崇める「彼女」の願いに応え、一斉にみみみ様に襲い掛かる。四方八方から降り注ぐ、躱しきれないビームペンライトが当たる度に、みみみ様の姿はテレビの砂嵐のように揺らいだ。

「どうしたの……? どうして、みみみ様に楯突くの!?」
 砂嵐の走る身体で狼狽するみみみ様。その悲鳴のような言葉に答えるのはノインツィヒ。
「推す・推されるっていうのは情熱なんだ。誰に強制されなくても、そうせずにはいられないんだよ。だからこそ、誇りに思うんだ。推される側も、推す側も」
「っ……! あの子を黙らせて!」
最早アイドルの笑顔を作ることもなく歯軋りのまま、みみみ様は新たにオタクの幽霊を喚び出し、ノインツィヒに仕向ける。
「本物のアイドルって物を見せてやる!」
オタクの幽霊とみみみ様を見据えたまま、ノインツィヒは真上に腕を伸ばして天を指差し、叫んだ。
「私ちゃん――アイドルターイム!」
それと同時に、舞台上にバンドメンバーが、客席には「ノインちゃん」の親衛隊が現れ、アップテンポの曲と眩い照明効果によるカタルシスでホールの空気を塗り替えた。彼女のユーベルコード「私ちゃんのゲリラライブ☆」である。歌って踊るノインちゃんのパフォーマンスに熱狂が巻き起こり、鬱詐偽もポーチュラカも思わず身体が動き出す。
「みんなー☆ ノインちゃんを推して推して推しまくれー☆ 絶対に後悔させないからな☆」
「「「「ノインちゃーーーーん!!!!」」」」
間奏でさらに煽っていくノインツィヒの輝きは、みみみ様の親衛隊をも虜にした。渦を巻く熱狂は、UDC怪物の少女の姿に多くの砂嵐を走らせ、アップテンポのメロディはアウトロを走り抜ける。
「ああ……。これが……アイドル、なのね……」
曲の終わりに巻き起こる歓声に掻き消えていくように、少女の姿は砂嵐となって舞台の空気に溶けていき、ファンの霊もペンライトを振りながら消えていく。

 舞台の上で少女が見た「アイドル」達は、誰もが唯一無二の輝きを湛えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ドリーム・イェーガー・ステージ♪』

POW   :    ファンサービス!

SPD   :    ダンス!

WIZ   :    歌!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●伝説の幕が上がる
 コンサートホールは当然のように満員だった。この日のために造られたグッズも完売し、「STAFF」と書かれたTシャツの人々が物販ブースを片付けては、″STAFF ONLY″の看板を越えて通路の奥に消えていく。その奥では、同じTシャツを着た人々が、中が空洞の黄金像などUDC怪物に関連する物品の検査や搬出、あるいは猟兵達とのステージ演出の打ち合わせを行なっていた。
 全国的に注目を集めてしまっている「誰も知らないアイドル」のデビューライブは、例えUDC怪物の企てがきっかけでも、最早中止できるものではない。そのために、「誰も知らない」猟兵達はアイドルを務めるのである。
 無論、UDC組織もバックアップは惜しまない。戦闘後の現場処理にとどまらず、歌唱、ダンス、服飾、音響、ライティング等、一流のコンサートスタッフが務まる職員が集められている。さらに猟兵達のユーベルコード等を組み合わせれば、アイドルのライブに留まらない超一流のステージも実現可能だろう。
 だが、あくまでこのステージは、本来ここに立つはずだったアイドル達の代役に過ぎない。必然的に、猟兵達が演じるこのステージは「最初で最後」となる。
 これほどの大掛かりな舞台も、時が円滑に前に進むための潤滑剤でしかない。それでも――いや、だからこそ、猟兵達は「一回限り」の夢の舞台に立つ。
ポーチュラカ・ハイデルベーレ
翼なし
アド他◎

●楽屋
まさかアイドルがこのような物とは…(知識不足

ん?楽譜にマル秘ノート?
絶対に笑顔で…?
これは、助けた彼女達の…

●本番:歌
「自分はポーチュラカ!みんなさんに笑顔を届ける為、遠い国からやってきました!」

彼女達が使う予定だった曲と衣装をお借りするであります
歌に自信はありますが練習不足ゆえどうなるか…


この曲は今日、トラブルでここに立てなかったアイドルから借りた歌であります。
この日の為に頑張ってきた彼女達にとってそれはとても悔しく無念だった事でしょう。
けれど、いつかきっとみんなさんを笑顔にするため彼女達がステージに立つ日は来ます。
それまでどうか彼女達の事を、待っててほしいであります!



●Backstage side. ポーチュラカ
 ポーチュラカ・ハイデルベーレ(日輪の聖者・f01720)は、楽屋でタブレットを見つめていた。
「なるほど……。まさかアイドルがこのような物とは……」
タブレットはUDC職員から渡された物で、その薄い板の表面では、煌びやかな衣装に身を包む少女達が、眩い光と声援を浴びて歌い踊っている。つまり、先程まで共闘していた猟兵達と同じく、歌って踊るのが、これからの役目であると理解した。
「歌に自信はありますが、この彼女達のようには……」
その時、傍を通り掛かったUDC職員の運んでいた荷物から、数冊のノートが落ちた。ポーチュラカはそれを拾い上げ、職員に渡そうとするが、その前に落ちて開いたページの中身が目に入った。蛍光色のインクで強調された書き込みのある五線譜、色とりどりのくたびれた付箋で装飾された「復習する振付のポイント」「予習で観ておくライブ・感情の込め方編」などの文字が躍るノート。
(これは、助けた彼女達の……)
今日これから舞台に立つはずだった彼女達の、積み重ねた努力の結晶。紙に染みてもまだ熱さの残るような文字で埋まったページをめくり進めていくと、急に文字が大きく、見開きの2ページを使った構図になる。その中央には、
『絶対に笑顔で!』
の文字。その周りには、インクの色も言葉選びも筆跡も違う、「明日のライブ」に向けた抱負が書かれていた。インクの熱が指先から胸の中に伝わるのを感じたポーチュラカは、UDC職員に自身の歌唱力を活かせる演出を提案し、簡単な歌唱指導を受ける。付け焼き刃なのは知っている。だが、彼女達の努力の熱さで焼き付けた刃でなければ、その無念は晴らせない。代役の「アイドル」は、身丈の近いステージ衣装をUDC職員に調整してもらい、舞台に向かった。

●Stage part. ポーチュラカ
 オープニングから圧倒的な歓声の止まないライブは、ポーチュラカをメインとしたパートに移る。
「自分はポーチュラカ! みんなさんに笑顔を届ける為、遠い国からやってきました!」
マイクを通じて響く自己紹介に、客席は歓声で返答する。僅かながら、彼女の名前を呼ぼうとする声も聞こえた。そしてスピーカーが奏でる「聴かせる系」のイントロに自然と客席は静まり、ポーチュラカは「彼女達」の表現したかった感情――彼女自身が今ここで感じた感情を併せて――を歌い上げていく。歌い終えた彼女には、タブレットの表面の少女達と遜色ない歓声が送られた。
「みんなさん、ありがとうございます。そして、みんなさんにお伝えしなければならないことがあります。……この曲は、今日、トラブルでここに立てなかったアイドルから借りた歌であります」
ポーチュラカの言葉に客席はどよめきを見せる。これほどまでのパフォーマンスを見せた、誰も知らなかった彼女が代役だと言うのだ。その反応を意に介さず、意外性を狙ったわけでもなく本当のことを伝えたい彼女はさらに続ける。
「この日の為に頑張ってきた彼女達にとって、それはとても悔しく無念だった事でしょう。けれど、いつかきっとみんなさんを笑顔にするため彼女達がステージに立つ日は来ます。それまでどうか彼女達の事を、待っててほしいであります!」
 ポーチュラカの言葉は、どよめきではなく歓声で受け止められた。彼女の頬に浮かぶ汗が、重力に逆らえない大きさになり、肌を伝い落ちる。陽光のようなスポットライトを浴びる彼女は、翼を隠しているにも関わらず天使のようだった。

 いつだってスポットライトは――アイドルのために――ここにある。

成功 🔵​🔵​🔴​

テフラ・カルデラ
ミリア(f16609)と同行
※アドリブ可

ミリアさんと一緒に観客さんに歌を届けるのですよー!
途中、ミリアさんがパフォーマンスの間、わたしは【兎少年黄金像】によって眠るようなポーズで黄金像に♪
そして…ミリアさんが戻ってきたタイミングで解除!かわいく決めポーズをするのですよ~♪
素敵なステージをみんなにお届けするのですっ!


ミリア・プレスティール
テフラさん(f03212)と参加
※アドリブ可
ミリアはステージでテフラさんと共に観客に歌を届ける。
コンサートの途中で『ミトン』の手袋に乗って観客の頭上近くを浮遊して、観客とハイタッチしていく。
先程の『ミトン』の様な派手なパフォーマンスではないが、自分なりに観客に対して出来る限りのパフォーマンスをしていく。



●Stage part. ミリア&テフラ
 ステージライトが消えると共に客席も小休止に入っていた。その闇の中、スポットライトが二つ点る。一人は、黒髪の美少女――ミリア・プレスティール(被虐少女と手袋守護霊・f16609)。もう一人は、兎の耳を着けた美少女……に見えなくもない美少年、テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)。ミリアがスカートなのに対し、テフラは少年らしさをアピールするために短パンのステージ衣装を選んでいた。美少年の姿を認めた客席からは、所々で黄色い歓声が上がる。女性客も少なくないことが、このライブがどれだけ注目を集めていたかを改めて物語る。
 二人は、挨拶代わりと言わんばかりにそれぞれの魅力を活かしたダンスと息の合ったハーモニーを響かせる。代役であろうとも二人のパフォーマンスが通用していることを、返礼のように間奏で沸き起こる歓声が証明した。だから二人は代役でなければできない演出プランに移行する。ステージを彩るオブジェクトだった大きな「ミトン」――ミリアのユーベルコード――が、曲に合わせた単調な動きから突然浮遊し、二人の方へと向かっていく。ミリアはミトンに乗って観客席の上へ。テフラも、もう片方のミトンに乗って進む。想定外の演出に観客は一際沸き上がる。ミリアは歌いながら身を乗り出し、観客達とハイタッチを交わしていく。彼女の守護霊のようなUDCの方の「ミトン」であればもっと派手で刺激的なパフォーマンスも可能だが、彼女達の代わりに観客と触れ合うパフォーマンスを選んだのはミリアだ。彼らの手は照明を浴びて歌い踊るミリア達でさえも熱く感じた。舞台への熱意は役者も演出家も観客も等しく熱いのだ。
 テフラを乗せたミトンは、歌詞に応じてテフラを握り込んだ。そのミトンがまた歌詞に応じて開かれると、テフラは――ユーベルコード「兎少年黄金像」によって――眠るようなポーズで黄金像になっていた。最早マジックやイリュージョンの領域に入る演出に、観客のボルテージは留まるところを知らず上がっていく。それぞれを乗せたミトンはステージの上へと戻っていき、合わさったミトンの上でミリアがテフラに触れると、テフラは触れられた箇所から黄金像化を解除し、曲に合わせてポーズを決める。集めた注目を裏切らないここ一番のかわいいポーズは、曲の世界観を完璧に表現した幻想的な演出プランを締めるに相応しい大歓声を浴びた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ノインツィヒ・アリスズナンバー
ライムちゃん(f30196)と一緒に

そうだよね。今回立つべきだったのはあの子たち。
私ちゃんが本来立つべきステージじゃない。
まだ立つべきじゃない場所だ。

最高のステージ、最高のコンサート環境、最高の客員数。
舞台はは整った。後は私のコンディション。

無論よ、最高のライブにしてやんよ。

みなさ~ん!私ちゃんは、新人アイドルのノインちゃんで~す!
今回の代役としてこの舞台に上がってきました~!
それでは聞いてください。此処に立つはずだった彼女たちの歌を!

私には夢がある。
私の曲で、私の歌で、私のダンスで。
いつか、自分の力でこのホールを満員にすることだ。

だから、いつかまた会いましょう。ステージで!

アドリブ・絡み歓迎


蛇塚・ライム
芸能プロダクション「Alices」所属、新人アイドルの蛇塚・ライムよ
事務所の社長であり先輩アイドルのノインさん(f29890)に誘われて駆け付けたの
アイドル活動は初めてだし、そもそも歌も歌も踊りも素人同然なんだけど、一生懸命、皆さんの前でファンサービスを頑張るわ!

私は炎の扱いが得意よ
他の猟兵アイドルの後ろで踊りながら、炎を操ってステージを盛り上げようかしら?
特に、ノインさんの時は情熱的かつ幻想的に炎を舞わせてみせる
UDCアースの人々には手品だと思ってくれるかしら?
もっとも、私の場合は種も仕掛けも本当にないんだけども

これがアイドルライブの熱量なのね……!
私、もっと此処で輝きたい……!

アドリブ◎



●Backstage side. Alices
 楽屋でモニターを眺めているのは、ノインツィヒ・アリスズナンバー(90番目のアイドル・f29890)と蛇塚・ライム(その罪名は『憤怒』・f30196)。モニターに映るのは、今をときめくメジャーシーンのトップアーティストのものと比べても遜色ない大仕掛けと大盛り上がりのステージ。二人がこれから立つステージであり、アイドルのデビューライブには規格外とも言える大舞台だ。
「凄い……。これから、私達が、此処に……」
「さすがの私ちゃんも、この規模は凄いと思う。だけど何とかなるっしょ☆ ライムちゃんも、さっきのレッスンは上出来だったし☆」
二人は芸能プロダクション「Alices」所属のアイドルで、ノインツィヒは社長を兼務している。つまり今回の出演は事件の一環であると同時にビジネスである。そしてライムはアイドル業界に飛び込んだばかりの新人である。
「初めてのステージが、こんなに大きくて……本当に、大丈夫かしら……」
「大丈夫大丈夫☆ UDCが誇る一流コーチだってライムちゃんのセンスを褒めてくれてたから、あとはライムちゃんが楽しめば皆喜んでくれるって☆」
「……ありがとう。私、楽しむわ!」
ライムの笑顔を見て、ノインツィヒも笑顔を見せた。
(最高のステージ、最高のコンサート環境、最高の客員数、最高の仲間。舞台は整った。後は私のコンディション)

 ――無論よ、最高のライブにしてやんよ。

「『Alices』さん、スタンバイお願いしまーす!」
「「はい!!」」
二人は楽屋を後にし、舞台袖へ向かった。


●Stage part. Alices
「みなさ~ん! 私ちゃんは、新人アイドルのノインちゃんで~す! 今回の代役としてこの舞台に上がってきました~!」
 ステージに立ってスポットライトが当たると同時に、歓声にかぶせて名乗るノインツィヒ。忙しなく揺れ動くペンライトの海から響くワアアアアアという歓声はさらにボリュームを上げ、ノインちゃーん、と名前を呼ぶ声も混じる。代役であると告げても受け入れてくれる好環境は、ライムにも乗りやすい波だった。
「ら、ライムよ……。よろしく……ね……!」
少しどもってしまったが、どんなに狙っても表現できない本物の初々しさは新人アイドルならではの魅力である。ノインツィヒと同じようにペンライトの海が揺れ、その光の中には彼女の名前から連想される緑系の色に切り替わるものもあった。ノインツィヒはライムを和ませようとジョーク混じりのMCで笑いを取ってから、曲の開始を宣言する。
「それでは聞いてください。此処に立つはずだった彼女たちの歌を!」
イントロが鳴り響き、二人を照らすスポットライトは赤く染まる。歓声の波音と共に揺れるペンライト。

 ――そうだよね。今回立つべきだったのはあの子たち。私ちゃんが本来立つべきステージじゃない。まだ立つべきじゃない場所だ。だからあの子たちに失礼がないように――超えてみせる。二人で。

 ノインツィヒとライムのステージは、若干ノインツィヒのパフォーマンスに重点を置いた構成だが、ライムにもソロパートは存在し、つい先ほど身体で覚えたステップと歌詞カードを見ながら聴いた仮歌のメロディを表現していく。セットリストの中で最も「炎」を思わせる情熱的なこの曲はライムが選んでいる。彼女には演出プランがあるからだ。間奏が明けてほぼアカペラになるCメロをライムが歌い始め、まっすぐ見つめた先のノインツィヒが歌い返す。そのわずかな時間で息を整え、
(……ここ!)
 二人の身体を、蛇のように螺旋を描いて炎が駆け上った。これがライムの能力であり、彼女の挙げた種も仕掛けもない演出。曲の最終パートを歌い出す二人の声に被るほどの歓声が沸き上がり、ダンスに躍動する身体のラインに沿って何度も上がる炎は、この曲の情熱を具現化したように幻想的で、二人の肌から弾ける汗を煌めかせていた。曲はアウトロに移り、ノインツィヒとライムがステージ中央で背中合わせになりポーズを取ると、二重螺旋の炎の蛇が駆け上り、スポットライトが消えて音が止む。一拍遅れて、ペンライトの海は大歓声に揺れた。

「「ありがとうございましたー!!」」

 ――私には夢がある。私の曲で、私の歌で、私のダンスで。いつか、自分の力でこのホールを満員にすることだ。

 ――あの炎より、客席の方が熱い。そして、私の身体の中が、胸が、もっともっと熱い……! これがアイドルライブの熱量なのね……! 私、もっと此処で輝きたい……!

――だから、

――いつか、

「「また会いましょう!! ステージで!!」」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

音駆螺・鬱詐偽
ぷ、プロデューサー、この展開はまずくないですか。
私が他のアイドルのライブに出るなんて・・・
って、もう契約は済ませたって早っ。
それじゃあ、私も参加しますよ。

そういえば、私はバーチャルキャラクターだから番組で歌う時もスタッフさんばかりでほとんど観客がいない状態で歌ってきたけど
今日はこんなにも多くの観客がいる中で歌うのね。
アイドルとしては先輩にあたる訳だし、恥は見せられないわね。



●Backstage side. 鬱詐偽
「ぷ、プロデューサー、この展開はまずくないですか。私が他のアイドルのライブに出るなんて……」
 音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)。既にデビューしているアイドルである。彼女は今、代役としてのライブ出演を求められている。しかしそれは彼女の一存で決められない。むしろ他にも代役を務められる猟兵がいるのだから充分ではないか。そこで彼女のプロデューサーに連絡を取っている最中である。
「え? もう契約は済ませた?」
じゃあよろしく、の言葉を最後にプロデューサーはトークセッションから退出した。代わりに彼女の前に現れたのは、タブレットを携えたUDC職員。画面には、出演契約や楽曲使用契約など、一通りの契約書が揃っていた。アイドルが輝くチャンスを確実にものにするワーカホリックなまでのスピード感は、世界を何としてでも守るUDCアースの人類防衛組織と相性が良いのかもしれない。
「早っ……。それじゃあ、私も参加しますよ」
契約が結ばれた以上、出演拒否は鬱詐偽の一存で決められない。鬱詐偽は、スタッフ達との打ち合わせを始めたのだった。

●Stage part. 鬱詐偽
(これがライブ……。こんなにも観客がいるのね)
 鬱詐偽は、舞台袖から覗けた観客席だけでも、かなりの観客数が確認できた。その一角だけで、バーチャルキャラクターである自身の冠番組などで歌を披露する時よりも多いと一目で判るほどだ。
(だけど……アイドルの舞台に変わりはないはずよ)
いつもであれば、うう……と尻込みしていたかもしれない。だが、鬱詐偽はこれが初舞台ではなく、そして初舞台を迎えるはずだった彼女達の代理なのだ。先輩として、かわいい後輩達が立つはずだった舞台を、同じ憧れを抱いた仲間が夢見た舞台を、やがて立つ舞台を、台無しにはできない。
(いつも通りにやればいいの……!)
意を決して、鬱詐偽は兎の耳を揺らしてステージに飛び出した。

 鬱詐偽のライブパートは、演出は控えめなものの、実績に裏打ちされた表現力で観客を魅了し、歓声に加え、ウサギちゃん、ウサちゃんなどと名前を呼ぶ声に満たされた。その歓声の大きさは、自身の番組で歌った後に寄せられる「いいね!」やコメントのポップアップとは比べものにならないほどの――バーチャルでないリアルな――熱量を持っていた。肌に浮かぶ汗は、スポットライトや場内温度だけではない、「生きている」舞台の熱さだ。観客席に手を振りながら舞台袖に退くのが惜しいと思いながら、これほどの熱量が用意されていたはずのかわいい後輩達を羨ましいとも思いながら、代役の先輩は後輩に恥じないライブを完遂してみせたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


●伝説の幕が下りて
 最後の演者が舞台袖へと降り、猟兵達のステージは大盛況のままに幕を下ろした。UDC怪物に襲われ、立つことが叶わなかった少女達の代役を務めた猟兵達。それぞれが様々な思いを胸に演じたステージは、少女達が――あるいはUDC怪物が――立つのとは違う形で、伝説となるのだろう。猟兵達は舞台袖を後にする――その時。

 ――アンコール! アンコール! アンコール……!

 観客席の熱気は、もう一度の幕開けを望んでいた。猟兵達は、舞台の上で「自分達が代役であること」を幾度となく告げていたはずだ。にも関わらず巻き起こるアンコールはつまり、紛れもなく猟兵達に向けられたものである。これだけの熱烈なアンコールに背を向けられる猟兵は誰一人いなかった。猟兵達は一斉にステージに駆け上がる。

『絶対に笑顔で!』

 彼女達が掲げた抱負は、猟兵達の抱負になっていた。幕が上がると、アンコールの連呼は大歓声に変わる。それに応えるかのような疾走感のあるアップテンポのイントロに、猟兵達の笑顔と汗が弾けていく。

「一回限り」だったはずの夢の舞台は、もう少しだけ続くのだった。


●原石は輝き始める
 私は今、カウントダウンを数ヶ月前に終えたあのティザーサイトからオフィシャルサイトに飛んで、ライブの映像媒体の購入予約を完了した。あらゆる検索エンジンやSNSにアクセスしてもグッズの画像すら見つからず、ただただ「最高のパフォーマンスだった」「あれ以来メディアには一切姿を見せず充電中」と評されているだけだったあのライブがついに観られるのだ。私はノートの「予習で観ておくライブ」の一覧に名を連ねるそのライブ名に「購入予約完了」と書き足した。できれば現地で、そしてこれから始まる私達のデビューライブ前に観ておきたかったが仕方ない。
 あのライブの販促用ダイジェストのように大きなステージではないけれど、私達にとっては引けを取らない夢の舞台だ。私達は色々な人達に支えられて、ついにここまで来た。だけど、すぐそこにある夢の舞台も、通過点に過ぎないのだろう。アイドルが成功だけに満ちて華やかなだけじゃないのはテレビを見るだけで判る。だから、私達は決めた。

 ――疲れていても、苦しくても、絶対に笑顔で!

 まばらな拍手とスポットライトに迎えられて、私達は笑顔で舞台へ駆け上っていく。

 ――私達の「唯一無二の」情熱は、例え石ころにつまずいたって止まらない!

最終結果:成功

完成日:2020年10月25日


挿絵イラスト