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明日、世界が滅びるとしても

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●旅立ちの理由――bravery for love
「行くのですか?」
「ああ、行く」
 屈んで靴紐を結んでいた少年は、背中に聞こえた馴染みのある少女の声に、振り向かずに頷いた。
「兄の銃なんて似合わない物まで持ち出して――ロファルに使えるのですか?」
「ガイさんほどは使えないな。まあ、何もないよりマシだろう?」
 何処か憮然としたような少女の声に、少年はやはり振り向かずに返す。

 ――嘘である。
 何もないよりマシ?
 それどころか、弾丸を込めた拳銃を持つこと自体が初めてだ。
 拳銃が見た目よりも重いのだと、初めて知った。
 それでも、嘘と虚勢で己を塗り固めて、少年――ロファルは住み慣れた拠点の外、アポカリプスヘルの荒野へ向かおうとしていた。

 ロファルのいる拠点は、3ヶ月ほど前から謎の病に悩まされていた。
 病なのかも、良く判っていない。
 原因も不明なので、取り敢えず謎の病と言う事になっている。
 下痢や嘔吐程度の軽い症状から、身体が麻痺する場合もあれば、死んだように眠りこけてしまう場合まで、症状は様々。
 幸い、命を落としてしまった場合はない――まだ。
 だから人々は、まだ動ける内にこの拠点を捨てて、どこか別の土地へ行くべきだと言う考えに傾きつつあった。

「奪還者だった兄が帰ってこなかったのです。ロファルが1人で行ったって――」
「明日、あの竜巻が起きて滅びるかもしれない。だから、何もしないでいたくは無いんだ、エル。それに、当てはある。西に何かがあるんだと思う」
 引き留めようとする少女――エルの言葉に、ロファルは軽く頭を振って背中で返す。
 西風の中に、今まで嗅いだことのない微かな匂いが混ざる様になったのは、丁度3ヶ月程前からの事だ。それも、強い西風が吹いた時だけ。
 だからだろうか。
「何かって? 西に何があるですか」
 エルが首を傾げたように、その匂いに気づいているのはロファルだけだ。尤も、ロファルもその匂いが何なのかは判っていない。
 それが怪しいと確信しているが、勘と言われても否定はできない。
「何かは判らない。こんな言い方じゃ信じて貰えないと思うけど、何かある筈なんだ」
 こんな曖昧な言い方では、エルでなくとも信じては貰えまい。
 それはロファル自身も判っている。
 だから行くのだ。荒野へ。答えを求めて。
 己の正しさを自分自身で信じられる勇気を求めて。

●フラグと言うなかれ
「そんな……そんな曖昧な事より、他に言う事は無いのですか?」
「ああ、うん。皆に、拠点を出るのはもう少し待ってと言っておいて」
 やはり背中に聞こえたエルの声に、ロファルはそう返しながら、いよいよ歩き出そうとしていた足を止めて振り向く。
「~~~~~~~~~っ!」
 何故か、エルはこれ以上ないほどに膨れていた。
「もう知りませんっ!」
「ええと……行ってくるよ」
 エルの怒りの理由がわからないまま、ロファルは踵を返し拠点を出ていった。

(「帰ってこられないかもしれないのに、これで最後かもしれないのに……やっぱり私の事なんて、好きでも何でもないのね!」)
(「帰ったら、エルに好きだと言う……! もしかしたら、エルに好きだと言って貰えるかもしれない! ガイさん言ってたし! 奪還者はモテるって!」)

 互いの胸中が絶妙にすれ違っている事に、2人とも気づいていなかった。

●ブレイブ・クエスト
「と言うわけで、謎の病の原因と告る勇気を求めて旅立った少年ロファルだけど、このまま放っておくと帰って来れない」
 ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は集まった猟兵達に、ロファルに待ち受ける厳しい現実を告げた。
 って言うか、ブレイブってそこかよ。
「リーダーなんて、一朝一夕でなれるものでもないからね。その第一歩が個人的な動機だって、私は別に構わないと思うよ」
 人が変わるきっかけなんて、案外そんなものかもしれない。
「それに件のロファル君の、リーダー候補として素質は確かだよ。まだ15歳と若い事もあって、拠点の誰も――当人すら気付いていないけれどね」
 件の拠点の西には、農園の跡に未知の毒性植物が群生してしまっている。
「元々そこにあった植物が、環境汚染の影響で変異してしまったもののようだね」
 その花粉こそが、謎の病の正体。
「ロファル君が感じていた西風に混じる微かな匂いは花粉のものだ」
 風に混ざるそれを感じ取れたと言う感覚が、彼がリーダー足り得る素質だ。
 アポカリプスヘルの荒廃と汚染が広がった世界で、僅かな環境の変化にも機敏に気づける感覚と言うのは有用な才と言えよう。
「と言うわけで、今回はロファル君の将来のリーダーに育てるお仕事だ。告るとかその辺の事は、取り敢えず二の次でいい」
 具体的には汚染植物を見つけて、それをどうにかして、帰りに遭遇するオブリビオンで戦闘経験も積ませる。
「あとは、無事に連れ帰った後も少し面倒を見てやって欲しい」
 ロファルが謎の病に対処したと知れば、拠点の人々もその素質を知るだろう。もう彼が大人に守られるだけの少年ではないと、知るだろう。
 ロファルにリーダーの素質があると知れば、拠点を放棄する必要もなくなる。
 第三者の言葉があれば、説得力が増す筈だ。

「ちなみに恋愛事情の方だけど、ぶっちゃけ両片思い。拠点の人々も大体知ってて『さっさとくっついちまえよ』って思っている人、多数」
 おい待て。二の次で良いんじゃないのかよそこ。
「アポカリプスヘルだからね。野暮をしたっていいんじゃないかな」
 世界を切り裂き破壊した暗黒の竜巻は、今もなお収まっていない。
 だからこそ――いつかでは、遅いかもしれないから。
「まあ、どうするか任せるよ。彼を無事に帰せれば最低限の目標は達成できるからね」


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 今回は、アポカリプスヘルで未来のリーダー候補のNPCを、3章通して実地でビシバシ育てるお仕事です。ラブコメ?何のことだ。

 1章は未知の汚染植物を何とかする冒険パート。
 拠点で起きている謎の病の原因を取り除きつつ、探索系の経験を積ませるパート。
 2章はその帰り道に遭遇するオブリビオンとの集団戦。
 戦闘関係の経験を積んでもらいましょう。実地で。実戦に勝る経験なし。
 3章は拠点帰還後の日常です。
 1章で見つかる予定の花の種や苗を植えつつ、自信とか心構えとか色々芽生えさせたりどうぞ。ラブコメ?何のことかな。

 1章のプレイングは明日9/22(火)8:30からの受付です。
 締切、次章以降の予定は、いつも通り都度、ツイッター、マスターページ等で告知の形となります。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 冒険 『汚染植物対策』

POW   :    汚染植物を摂取し、症状に耐えながら植物の研究を行う

SPD   :    汚染植物の観察や実験を行い、植物の研究を行う

WIZ   :    汚染植物の生えている現地を調査し、原因を探る

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●荒野を往く
「…………」
 厚いブーツの底が砂を蹴る乾いた音が、風に流されていく。
 履き慣れたと思っていた靴だったけれど、どこまでも続く荒野を歩いていると、それが随分と重たい足枷の様に感じられた。
「……徒歩で来たのは、失敗だったかな」
 誰に言うでもなく、ロファルは独り言ちる。
 拠点に車がないわけではない。
 けれど貴重な乗り物である車に、一度もハンドルを握った事がないままぶっつけ本番で乗り込んで出かけるほど、ロファルは無謀ではなかった。
 それに、徒歩でも辿り着ける計算なのだ。風が匂うと言う事は、風に乗って匂いが届く距離に何かがある筈なのだから。
 まあそれでも、車を出した方が速いのは確かだったのだけど。
「戻ったら、車の運転を覚えるか」
 早くも後悔を感じるロファルの鼻に、拠点で感じた匂いがより強く届いていた。

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●1章について
 ロファル少年が拠点を出て荒野にいるところからのスタートです。
 遭遇イベント的には、荒野の何処か~問題の汚染植物がある農園跡、までのどこかで出会う形になります。

 問題の汚染植物は、花粉以外にも花も茎も根も、全部ヤバいやつです。
 猟兵の介入が無かったらロファルが帰れない原因その1。
 でもまあ猟兵なら耐えられますよ、多分。最終的に根絶しちゃってOK。
 汚染植物の対処に重きを置くも、ロファル少年の育成に重きを置くもご自由にどうぞ。

●リーダー候補生NPCについて
 ロファル。15歳の少年。
 主な装備は拳銃と手榴弾。荒野向けのブーツとガスマスク。
 水と食料、サバイバル道具はリュックに持てるだけ。

 人を疑う事は知っていますが、この世界にしてはお人好し。
 環境耐性2、世界知識3、第六感2、学習力3。
 以上の4つの技能を取得しており、この4つは放っておいても育つ素質があります。
 リーダーとしては指揮官タイプが向いてそうですが、プレイング次第で他の技能が生える可能性があります。その為の学習力だ。

※OPでロファルを見送っていた少女、エルですが、本人は3章まで登場しません。
 それはそれとして、ロファルが彼女をどう思っているかとか、そう言う探りを入れる分には構いません。取り敢えず、同い年の所謂、幼馴染とだけ。

 MSコメントの通り、プレイング受付は9/22(火)8:30からとなります。
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シャーロット・ゴッドチャイルド
「ねえステファニー、この植物、植物学の授業で習ったやつにそっくりじゃない?」

魔法学園の教科書とにらめっこしながら、植物の調査を行う。傍らにいるのは、親友の白フクロウ・ステファニー。特に能力を持った子ではないけれど、アーティファクト「精霊のペンダント」の魔力により、シャーロットとステファニーは互いに意思疎通を取ることができる。

問題の毒性植物について、ステファニーとその分布を調査。大地の汚染に原因があるとすれば、その大地をスティグマから発する聖なる光(UC:生まれながらの光)で浄化することはできないか。・・・などなど、調査を続ける。

「貴方誰?・・・私?私はシャーロットだよ。魔法学園からきたの。」


外邨・蛍嘉
15歳ね…私がクルワを宿した歳だ。

ま、あとで野暮もするとして。今は汚染植物対処だね。
たぶん、会うのは荒野かな?歩きだし。私も奪還者ということにしておこう。
同じく西が気になってやってきた。同道してもいいかい?とね。そのときに自己紹介増しておこうか。
…気になる女の子とかいるのかい?

さて、ロファルさん。ああいうのは、風に乗る花粉だけじゃない。植物全体が危険だと思いな!
おいで、クルワ。あれを完膚なきまでズタズタにするよ!
「わかりました、ケイカ!」
私は藤色蛇の目傘、クルワは影刀を武器にするよ。
あ、手榴弾って、植物ばらばらにできそうだね?(実物見るの初めて)

※クルワは男で、髪が水みたいになっています。


シリン・カービン
近づくにつれ、風に含まれる毒花粉の濃度が上がっている。
風の精霊に周りの空気を浄化してもらい、
ロファルを助けます。

汚染植物が原因であること、根絶が目的であることを説明。

現場を確認したら【Shape of Memory】を発動。
風の精霊の声を降らせて一帯を故郷の森の空気で満たし、
毒を薄めている間に汚染植物を刈りつくします。

続いて火の精霊を招き、火山を再現して積み上げた汚染植物を
超高温で焼き尽くします。

仕上げは水の精霊による浄化。
清浄な滝の水を降らせ、汚染物質を洗い流しましょう。

ロファル。
あなたの感覚を信じなさい。
力があっても、それを信じられなければ意味が無い。
体の、心の声に耳を傾けるのです。


黒沼・藍亜
ほほう、「さっさとくっつけよもう」案件っすね!大丈夫大好物です

アポヘルは初めてだけど関係ないっす
さっさと解決して少年少女の告白シーンを堪能させてもらおうっと

合流タイミングはお任せ。
少年に対してはコミュ力(レベル2)を駆使してまあ当たり障りなく接し、
もちろん本音は隠すっすよ

現地ではUCを使って、UDCの落とし子『奈落這う黒群』を召喚、情報収集をさせるけど、
その際何体かを彼の言う事を聞くよう指示。
彼自身に「他者を指示を出して動かすこと」「集まった情報から次の計画を立てる事」に慣れておいてもらうっすよ

対処自体はボクには荷が重いっすから、情報集めに徹して後は他の人へお願いするっすね
※アドリブ歓迎です


陸郷・める
☆める:多脚戦車乗りの少女。
★7号:戦車搭載の偽神兵器の生体コアにされたヒャッハー。

★リーダーの育成ィ?気は乗らねぇがしょうがねぇ
戦車のまま道中で合流。一応最初は俺様は喋らねぇようにする。ヒャッハー戦車とか警戒される未来しかねぇからな
☆ん……必要なら、戦車から出てあいさつするよ?7号はおでかけモード
★げェ……まじかよ
※おでかけモード:兵器のコア部分が分離した7号の車外活動形態
外見は鶏冠がモヒカンなメカ鶏

☆現場では、UCの火炎放射をやってみるよ
★一応《環境耐性・毒耐性》付き戦車だからな。必要なら他の連中より前に出るぞ。後ガキが何か気付いたなら聞くぜ、第六感とかは侮れねぇからな

※アドリブ歓迎です


ガーネット・グレイローズ
自分以外の誰かのために勇気を出して行動する…まさにそれがリーダーに必要な資質だな。だが、自分一人で出来ることと出来ないことを見極めなくてはいけない。ここは少しだけ、私達が手を貸すか。

ロファルの頭上を、メカたまこEXが甲高く鳴きながら飛び回る。
驚かせてすまない、私は猟兵のガーネット。この辺りの異変を調査しに来たんだ。君もかい?
なら、私と一緒に行こう。
待機させていたマシンウォーカーを起動。ロファルを乗せて、がしょんがしょんと農園を目指す。
戦車の操縦に興味が?ならば《操縦》のコツを少しだけ教えよう。

たまこは植物を《撮影》し、《情報収集》してファイルに保存。…あとで付着した埃や花粉を洗浄しないとな。



●荒野の出会い――その1
「ちょいと、そこの少年」
 荒野を1人歩いていた少年――ロファルは足を止めて、聞き慣れない声が降ってきた背後を振り向いた。
 かつて戦闘があったのか、不自然に隆起した岩の陰に、雪の意匠を凝らした和服姿と言う見た事もない年配の女性――外邨・蛍嘉(雪待天泉・f29452)が佇んでいた。
「キミも奪還者かい?」
「そう――いや、正式にはまだ違うんだけど」
 蛍嘉の問いに頷きかけてから、ロファルは首を横に振った。
(「15歳。こんなものかね――私がクルワを宿した歳だけど」)
 奪還者だと名乗る事に、特に資格がいるわけでもあるまい。名乗ってしまえばいいものを、態々『まだ』と言い直すロファルの正直さと若さに、蛍嘉は胸中で呟く。
「キミも、と言う事はあなたも?」
「ああ、そうさね」
(「気は小さいが頭は回る――育て甲斐のありそうな子じゃないか」)
 長くない沈黙の間に蛍嘉の言葉から立場を推測して来たロファルに、頷きながら蛍嘉は胸中で笑みを浮かべる。
「私は蛍嘉と言う。キミも西に向かっているんだろう? 私も西が気になってやってきたんだ。同道してもいいかい?」
「僕からお願いしたいくらいですよ」
 同行を申し出る蛍嘉に、ロファルは二つ返事で頷いた。

●荒野の出会い――その2
「ほう。ロファルさんの拠点でそんな症状が」
「それで、風の匂いから西に何かがあると思って――」
 道すがら、蛍嘉はロファルの近況を訊ねる。
「それで1人で飛び出して来たってことは……気になる女の子とかいるのかい?」
「ふぁ?」
 やや飛躍した蛍嘉の質問に、ロファルが固まり、目を丸くする。
「なななな!? 突然、なにを言って――」
 ――ガッシャン。
 顔を赤くしてロファルが狼狽えた所に、無機質な音が響いた。
「この音――多脚戦車!?」
 緩んだ表情を引き締めて、ロファルが音のした方に顔を向ける。
 ガション、ガションと鉄の足音響かせて、1台の多脚戦車が近づいてきて――ロファル達の前で、足を止めた。
「ロファルさん。あれは敵じゃない」
「そうそう。敵じゃないから、安心して?」
 猟兵だと気づいていた蛍嘉の声に、戦車の中から少女――陸郷・める(死念動力実験成功体6号・f26600)が顔だけ出してコクコク頷く。
「ほら。やっぱりおでかけモード必要だよ」
『クソッ、仕方ねぇか……』
 まだ緊張した様子のロファルを見て、めるが促すと、また別の声が響く。
『あー、あー。おい、ガキ。警戒すんのもわかるが、するな! 敵じゃねえ、俺らも奪還者みてえなもんだ!』
「ニワ……トリ?」
 その声は――戦車の脇から飛び出した、鶏冠の代わりにモヒカンが生えたニワトリメカから響いていた。

●戦車の中で
 ――時は少し遡る。
『リーダーの育成ィ?』
 荒れ地をいく多脚戦車『実験兵器6号』の中で、操縦しているめる以外の、荒っぽさが残る声が響いた。
「そうだよ、7号。今説明したのが今回のお仕事」
『……気は乗らねぇがしょうがねぇ』
 渋々と言った風に返した7号と呼ばれた声は、めるが乗っている多脚戦車のものだ。
 正確には、多脚戦車に搭載された偽神兵器の生体コア――にされた(おそらく)人間のの人格。当の7号曰く、昔は所謂ヒャッハーなモヒカンだったらしい。
『ってことは、最初は俺様は喋らねぇようにするか。ヒャッハー戦車とか警戒される未来しかねぇからな』
 とは言え7号がヒャッハーだったのは昔の事で、今となっては口調はともかく結構気遣いも出来るし、意外と頭も回るのである。
「必要なら、めるが戦車から顔を出して挨拶するよ?」
 めるが保護用外殻を兼ねている多脚戦車を降りる事は、あまりない。とは言え、別に降りられないわけではないのだ。居心地がいいから降りないだけである。
「7号はおでかけモードね」
『げェ……まじかよ』
 めるの言葉に、すごく嫌そうな7号の声が車内に響いた。
 そのおでかけモードこそ、ロファルの目を丸くさせたニワトリメカである。

●interlude
 蛍嘉、めると続けて猟兵と出会ったロファルは、2人と共に西を目指して歩き出す。
 それからしばらくして、彼が見た事もない車が通りがかった。
 別に猟兵達が運転する車である。
 乗って行くかと問われれば、先を急ぎたいロファルに断る理由はない。蛍嘉にも、めるにも、それを止める理由もない。
 こうして、最終的なロファルの移動手段は車に落ち着く事になる。
 その車内で何があったか――と言う事を語るのは後回しとしておこう。

●農園跡地
 アポカリプスヘル某所――農園跡地。
 乗せて貰った車の窓に付くほどに花粉が濃くなったそこに、ガスマスクを着けたロファルが車から降りた。
(「ガスマスク……こいつが『さっさとくっつけよもう』案件の片割れっすか」)
 その姿を見て、黒沼・藍亜(人間のUDCエージェント・f26067)は胸中で呟く。
 ガスマスクで風貌は良く判らないが、背丈からして歳の頃は一致するし、ガスマスクを必要としている時点で、間違いないだろう。
(「さっさと解決して、少年少女の告白シーンを堪能させてもらいたいっすね」)
 ここが初めて訪れる世界である事も、ロファルがそんなものを付けている原因である花粉が満ちていると言う環境も、藍亜にとっては割とどうでもいい事であった。
 藍亜が最も気になっているのは、ロファルが拠点に戻った後の事。

 『さっさとくっつけよもう』案件――二の次で良いと言われたその手合いの話は、控えめに言って藍亜の大好物なのだから。

「あの……」
 向けられる視線に気づいたか、ロファルがガスマスク越しに藍亜に視線を向ける。
(「おっと、危ない危ない」)
「ボクも奪還者みたいなもんっすよ。よろしくー」
 内心の本音――もとい萌えと、普段のダメな大人っぷりを押し殺し、藍亜は精一杯のコミュ力でロファルに笑顔を向ける。
 大丈夫。笑顔になっている筈だ。――多分。

●信じると言う事
 ――コケー! コケー!
 突如響く、けたたましい鶏の様な鳴き声。
「ここの風は、酷く淀んでいますね」
 その音にロファルがはっと振り向くと、道中に見た多脚タイプとは違う、二足歩行型の戦車――の上に腰掛けたシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)と目があった。
「メカたまこのセンサーも、結構やばい数値を叩き出してるな」
 戦車の中から、別の声が響く。
「驚かせてしまったならすまない、私は猟兵のガーネット。此方はシリン」
 開いたハッチの中から、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が顔を出してロファルに声をかける。
「この辺りの異変を調査しに来たんだ。君もだろう?」
「あ、ああ。僕はロファル……それで、風が淀んでるって……?」
 ガーネットの言葉に頷きながら、ロファルは名乗るのもそこそこに、その視線はシリンに向いていた。
 先ほどのシリンの一言が、気になって仕方がないようだ。
「あなたも風が変だと感じたのですね?」
 シリンの問いに、ロファルは真っ直ぐに頷く。
「ここの風には、毒を持つ花粉が混ざっています。近づくにつれて、濃くなっているのを感じていましたが――この一帯は、特に酷い」
 シリンの言葉に、ロファルが目の色を変える。
 拠点で幾ら言っても誰も感じず信じて貰えなかった話を、自分以上に感じている人がいたと言う現実に。

「ロファル。あなたの感覚を信じなさい」
 その表情を見たシリンは、ロファルの目を見て告げる。
「あなたが風に感じたものは正しかった。力があっても、それを信じられなければ意味が無い。周りの声に流されず、自身の体の、心の声に耳を傾けるのです」
 諭すようにロファルに告げながら、シリンは風の精霊の力を借りていた。
 2人の周りの空気が、少しずつ毒の花粉が追いやられて清浄な空気に変わっていく。
「体と心の声……」
 シリンの言葉を反芻するように呟いて、ロファルはガスマスクを少しだけずらして毒が薄れた空気を吸い込む。
(「シリンらしいアドバイスだな」)
 またすぐにガスマスクを着けたロファルに、今はそれでいいと微笑むシリンの姿を、ガーネットは二足歩行戦車の座席から黙って見守っていた。

●白い翼
 毒の花粉が風に乗っている。
 猟兵達の教えもあって、ロファルもそれを自覚した。
 では、その花粉を出している植物は何処に――?
「うーん……」
 その答えに辿り着いていたのが、シャーロット・ゴッドチャイルド(絶望の福音・f23202)である。
 シャーロットは眉根を寄せた難しい顔で、片手に開いた植物学の教本と周囲に見える花との間で視線を行ったり来たりさせていた。
「ねえステファニー」
 シャーロットが呼びかけると、肩に乗った白いフクロウが『ホゥ』と小さな鳴き声を上げる。
「この植物、植物学の授業で習ったやつにそっくりじゃない?」
 訊ねるシャーロットの声に、ステファニーと呼ばれた白フクロウは、その言葉を肯定するようにバサリと翼を広げてみせる。
 実際、そこにある植物はシャーロットが広げた頁にある、鮮やかな紫色の花を持つ植物に良く似ていた。
 ――大きさを除けば。

「フクロウと、話せるんだ?」

 そんなシャーロットの様子に、ロファルが驚いた様に目を丸くする。
「貴方誰?」
 その声で初めて、シャーロットはガスマスクを着けたロファルに気づいた。
 それほどに、観察に集中していたと言う事だ。
「僕はロファル。貴方も、猟兵……何ですか?」
「私? 私はシャーロットだよ。魔法学園からきたの」
 その言葉の意味が解らなかったのだろう。『まほうがくえん?』と首を傾げるロファルの前で、シャーロットが肘を曲げて腕を掲げる。
「ステファニー、ご挨拶を」
 シャーロットが名を呼ぶと、白フクロウはその肩から掲げた腕にひょいと飛び移り、挨拶するように『ホーゥ』と鳴いた。
「すごい……本当に話せてる!」
「親友だもの」
 興奮した様子のロファルの声に、シャーロットが少し誇らしげに微笑む。
 そんなシャーロットの首元で輝くペンダントが――動物と意志疎通できる魔力を持つアーティファクト『精霊のペンダント』であった。

●ニワトリ・ミーツ・ニワトリ
 風に乗っているのは花粉だとわかった。
 花粉が放たれている植物もわかった。
 あと必要なのは、それが何処にどのくらいあるか。
「出番だぞ、メカたまこ」
 ガーネットが、ニワトリ型のドローンを空に放つ。
 毒舞う大空へ飛んで行く鋼の翼を、ロファルもじっと見上げて見守っていた。
「気になるか? あれはメカたまこ――ドローンは判るか?」
「ドローン? 小型の飛行機械の事?」
 ガーネットに訊ねられ、あまり自信がなさそうにロファル返す。
「そのドローンだ。あれは、にわとり型のドローンだ」
 本来はガーネットの宇宙船内セキュリティ強化のためのドローンだった筈だが、最近はもう普通に屋外で使われている。
(「今回は、特に念入りに洗浄しないとな……」)
「ニワトリ型……流行っているんですか?」
 後の処理が苦労しそうだと胸中で呟くガーネットに、ロファルが予想外の事を訪ねて来た。
「どういう事だ?」
 ガーネットが首を傾げた所に、ガッシャンッ、ガッシャンッと多脚戦車の足音が聞こえて来た。
「ロファルさん。追いついたよ」
 追いついてきた蛍嘉とめる――そして。
『待たせたなぁ、ガキ! ……って、何だよの顔』
 多脚戦車の上でモヒカンと翼を広げたおでかけモードの7号が、ロファル以外にも他の猟兵から視線を浴びて、じりっと後退る。
 そこに、コケケコケケと鳴きながら、メカたまこが降りて来た。

●拠点作成
 まさかのニワトリメカの出会いは、一旦置いておいて。
「うげ」
 メカたまこに上空から撮影させた周辺画像――空からの視点のデータを確認したガーネットは、思わず眉を顰めていた。
 広いのだ。シャーロットが見つけた植物の分布範囲が。
 なんちゃらドーム何個分、で表すのが手っ取り早い範囲のあちこちに、問題の毒性植物が分布してしまっている。
「皆さんがいなかったら……これを……1人で……」
 その空撮データをガーネットに見せられ現実を知ったロファルも、思わず遠い目になるレベルである。
「これだけの人数がいるのです。根絶すれば良いではないですか」
 しかしシリンは、事も無げに口を開いた。
「先ずは――清浄な空気の拠点を作りましょう」
 ――♪
 シリンが告げると『音』が降ってきた。
 弾むような、笑うような音――否。これは声。精霊達の、本来誰にでも聞こえるものではない声が、辺りに降り注ぐ。

 キオクノカタチ――Shape of Memory。

 それはシリンの風の精霊の声。降り注ぐその声が響く範囲の空気が、シリンの記憶にある故郷の森の空気に変わっていく。
 即ち――毒に侵されていない、清らかな空気へと。
「続いて……火の精霊よ」
 風の精霊の声の降る範囲をどんどん広げていきながら、シリンはその一角に火の精霊の声を集中的に降らせる。
 そこに溜まった炎の力は、火山の火口の様な炎溜まりとなった。
「少なくとも、私が肉眼で見える距離ならば、その奇妙な形状のマスクを使わずとも毒に侵される事はないでしょう。刈った植物は、そこに入れて燃やして下さい」
「こ、これは一体……」
 あっという間に安全地帯と焼却炉を作り上げたシリンの業に、ロファルが目を丸くして驚きを露わにする。
(「森の空気は判るが……あれは火山か? シリンの故郷、もしかしたらハードな環境だったのだろうか」)
 ガーネットも、シリンが再現した環境に内心、驚いていた。

●斬撃舞台
 一先ず、ある程度の範囲の空気が浄化された。
 だが、その範囲の中にも、毒性植物は変わらずに生え聳えている。
「さて、ロファルさん」
 それを傘の先で指しながら、蛍嘉が口を開いた。
「ああいうのは、風に乗る花粉だけじゃない。植物全体が危険だと思いな!」
 強い口調でロファルに向けて言いながら、蛍嘉は藤色の蛇の目傘を、まるで鞘に納めた刀の様に腰溜めに構える。

 植物全体が危険だと思えと言うのならば、その対処はどうするべきか。
 簡単だ。
 根こそぎ刈ればいい。
「おいで、クルワ。あれを完膚なきまでズタズタにするよ!
『わかりました、ケイカ!』
 蛍嘉の傍らに現れたるは、水の様に揺らめく蒼い髪を持つ男。
 それは人を守る稀有な『鬼』――雨剣鬼クルワ。
 クルワの影刀と剣に変化した蛍嘉の蛇の目傘が、同時に横薙ぎに振るわれる。

 斬撃舞台:雨剣鬼――ハゲシキアメノオニ。

 その剣閃は、ロファルに見えていただろうか。
 バラバラに斬り飛ばされた毒性植物も、その中からばふっと飛び散った花粉や茎の中の樹液の飛沫も。
 横殴りの雨のごとき斬撃が、蛍嘉とクルワの目の前の全てを斬り飛ばす。
「中途半端に斬ると、何が出るか判らないからね。このくらい、一気にやるんだよ」
「わかったけど……まずこんな事、出来ない」
 蛍嘉の教えに、ロファルは諦め顔で首を横に振った。

●奈落の黒
「さーて、次はボクのお仕事の時間っす」
 バラバラになった毒性植物の残骸を前に、藍亜がゆらりと進み出る。
「出てくるっすよー」
 だらーんと両手を下げたまま、やる気があまり感じられない声音で藍亜が告げる。
 ややあって――下げたままの藍亜の両腕の袖の中から、ボトボトと黒い球体が幾つも幾つも現れた。黒い球体、と言うのは正確には正しくない。
 それらは、球体が幾つか連なった蟻の様なモノなのだから。
 藍亜に憑いた【昏く暗い黒い沼】なる不定形存在の落とし子。
 その数、77体。

 奈落這う黒群――サモンブラックワーカーズ。

「戦闘能力はないっすけど、危ないもの運んだり情報収集は中々っすよ」
 藍亜の呼んだ落とし子の群れは、斬り散らされた毒性植物の破片に這い寄ると、その下に器用に潜り込んで背負う様な形で持ち上げた。
「運ぶ力はあるっすからねー」
 落とし子は自身以上に大きな破片を平然と持ち上げると、シリンが作った疑似火口へ運んで行って、ぽいっと投げ捨てる。
「あ、そうだ」
 77体の全てを破片回収に回しかけたところで、藍亜はやろうとしていたもう一つの事を思い出した。
「んーと、そこの5体でいいか。こっち来るっす」
 藍亜の呼びかけで、落とし子の一部が寄って来る。
「アンタらは、ボクがいいって言うまで彼の言う事を聞くっす」
 自分ではなくロファルを指さして、藍亜が告げると、蛇が鎌首を擡げる様に身体を持ち上げていた落とし子達は、頷くように先端を上下に動かした。
「――え?」
 驚いたのは、ロファルである。
 突然に見た事もない生物を押し付けられれば、無理もない。
 無論、藍亜とて、ただ唐突にロファルの指示を聞くようにさせたのではない。
「こいつらなら毒を気にせず、情報収集できるっすよ。破片になってる今なら、生えてる時じゃ判らない情報もあるかもっすよ」
 藍亜は落とし子を操らせる事で、『他者を指示を出して動かすこと』と『集まった情報から次の計画を立てる事』をロファルに慣れさせようとしていたのだ。
 だが――。
「情報収集……どうやって、情報受け取るんで?」
 UDCに憑かれていないロファルに、落とし子との意思疎通は難題であった。

●燃やせ燃やせ
「形状、外観分析――汚物認定、完了」
 多脚戦車の中で、めるの指が目まぐるしくコンソールの上を滑って叩く。モニタには外部センサが捉えた情報がびっしりと並んでいた。
『おい、ガキ。あぶねえから下がって――』
 めるが動かす多脚戦車の砲塔の中から、7号が戦車の外に向けた声は、しかし言い終わる前に途切れた。
 多脚戦車に向けられたロファルの視線に、7号が何かを感じたのだ。
『言いてェ事があるなら、言ってみろ』
「え、ええと……自信はないのだけど。ここ、汚染されていない植物が残っている気がするんだ! だから、あまり派手な事は――」
「そういう事なら、大丈夫」
 ロファルの疑問に答えたのは、めるの声。
「これからするのは汚物認定した毒性植物以外には無害な事。だから、安心して?」
 告げながら、めるは完成した特殊薬剤を装填する。
 そして――。

『ヒャッハー! 衛生面から汚物は消毒だぁー!』
 戦車の砲口から、特殊な薬剤が放たれる。
 薬剤を浴びた毒性植物が次々と燃えていく。毒性植物だけが。
 特殊兵装:焼却薬剤散布――またの名を『オブツショウキャクシステム』。消毒するのは、汚物と敵だけで十分だ。

●未開惑星程ではない
 まず清浄な空気を作った。
 続いて、その中の毒性生物を刈りつくした。
 そして、その空気の外の毒性植物を焼いていく。
 少しずつ行動範囲を広げていく猟兵達。
『さて。私も奥の方を刈って来るとするか』
 そんな中、ガーネットも行動範囲を広げようと、待機させていた二足戦車『マシンウォーカー』に再び乗り込んだ。
 もしも奥に更に毒性の強い植物が残っていたとしても、『マシンウォーカー』に乗っていれば、活動に支障は出ないだろう。
「これって……二足戦車ですよね? しかも、すごく状態がいい……」
 改めて見たその機体に、ロファルが驚いた様にぽかんと口を開く。
『戦車の操縦に興味が?』
「あ、ああ。ある……けど」
 その視線の中に驚きだけではなく好奇心もあるのを感じて、ガーネットが『マシンウォーカー』の中から声をかけた。
「こんな立派な機体、うちの拠点には――」
 『マシンウォーカー』はガーネットが未開惑星探査用に開発した機体だ。
 全く同じものは、この世界のどこを探しても存在はしていまい。
『なに。それでも経験があれば、何かの役に立つだろうさ』
 ガーネットが『マシンウォーカー』のハッチを開く。
「君は拠点の人々と言う、自分以外の誰かのために行動した。その勇気に敬意を表するのも兼ねて、操縦のコツを、少しだけ教えよう」
 ガーネットが伸ばした手を、ロファルがおずおずと取る。
 その手を引っ張り上げながら、ガーネットは操縦技術だけでなく、ロファルが自分一人で出来ることと出来ないことを見極める事を覚えてくれればと願っていた。

●その光が癒せるもの
「ううん。この農場跡の広さもすごいけど、毒性植物の広がりも凄いわね」
 ――ホゥ。
 植物学の教科書を片手に、シャーロットは巨大トリカブトとでも言うべき毒性植物の分布を調べていたのだが、農園跡のそこかしこに生えている、としか言えなかった。
 規則性などなく、殆ど雑草の様に生えている。
 ただよく見ていると、その中で直線状に分布している箇所が見受けられる。
 ――その直線状の分布の意味が明らかになるのは、もう少し後の事である。

「ここの地面が汚染されている……のなら、浄化できないかな?」
 シャーロットはスティグマから生まれながらの光を大地に放ってみるが、毒性植物の抜かれた地面の様子は変わらなかった。
「だめ……なのかな」
 疲労を覚えて、シャーロットがぐらりと膝に手を突く。
 ――実の所、効いていないわけではないのだ。
 ただ、範囲が広大過ぎる上に地面と言う対象が、人体を治療した時の様な目立った効果が現れず、シャーロットにも『今は』効果が見えなかっただけである。

●ロファルの成長――その1
 自分の感じていたものが間違いでなかったと悟った事で、第六感3に上がった。

 喋るニワトリロボ。フクロウと会話する姿などから、動物との意思疎通が必ずしも不可能な事ではないと知った。動物会話1取得。

 風による浄化の術。大地を癒そうとする術。それらを目にした事で、浄化について少し理解した。浄化1取得。

 植物を斬る技の一端を目にした事で、斬ると言う事を少し理解した。切断1取得。

 汚物消毒と称して焼却する姿から学んだ。焼却1取得。

 二足戦車の操縦技術を学んだ。操縦1取得。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
【電脳の箱庭A】
WIZ
手持ちの改造車で現地へ。
車の運転は自信ないので緋薙さんに代わってもらう。
件の彼は…徒歩か。過酷な世界だから車は貴重品、なのかな?
ロファルさんが車に興味があるなら、メンテナンスの手解きを試みる。
出先でのトラブルに対処が出来ると助かるだろう。
唐突に話を振られ思わず吐血「そこで俺に振る?!」(吐血

植物探索は他の人にお任せ。
道中で石ころを拾っておき、それを媒体に固有結界・黄昏の間を発動。
風の疑似精霊に指示し神代さんの周囲に風の防護膜を形成、直接花粉に触れずに済むよう援護。
植物根絶の際は火の疑似精霊に指示し火球を生成、焼き尽くす。
キリがなければシエルさんの援護受ける。

アドリブ大歓迎


神代・セシル
【電脳の箱庭A】
(車の中に)
「ロファルさんも色んな本を読むのはどうでしょうか?」(本を読みながら)

 頼もしいリーダーになるため、色々な知識を身につけなければならないと考えている。

「万里の道を行き,万巻の書を読むという諺もあります。」

(農園跡の手前)
 緋薙先輩はなにをしているんですかと思ってハットのつばで目を隠す。

(調査)
「私は飛べますので、上空から調査させてくれませんか?」

ここで、UCの『3rd Chapter of Grimoire』を使って出来るだけ早く状況を把握する。

状況を理解しても情報のみ報告する。

【アレンジ・アドリブ歓迎】


シエル・カーネリアン
電脳の箱庭A
WIZ
アド・連携可
なんていうか漫画で見るベタなフラグ回収しそうな予感!はぁ、しょーがない、人貢献してきますかー
わわっ、緋薙さん魅惑のたわわボディを使ったお色気テク…う、羨ましくなんかないぞぉ…!

あれが問題の植物、いかにも怪しさ1000%。迂闊に触るわけにはいかないし…レッツ、チェンジアップ、モードY!【クラスターtheビットくん】でビットくん大量召喚、広範囲に探索と原因解明しますよっと
危ない地形でこそドローンを使ってなんぼ!はい、ロファルさんここテストに出ますからねー、メモメモ!

処理の方は他に任せても…え、やっぱいる?仕方ない…以下略、モードX!【属性攻撃(炎)】で焼いちゃうよ


緋薙・冬香
【電脳の箱庭A】
まずはひりょさんの改造車を運転(操縦)
皆を乗せてロファルさんに合流ね
見つけたら「乗ってく?」と声かけ
どんな返事でも
セシルさんがお話できる環境を整えるわね

農園跡の手前で止まって下準備
私は運転を教えるわ
「で、エルさんってどんな子なの?」
と質問は忘れずに
「じゃあこういう事は興味あるかしら?」
とロファルさんの腕を取って抱きしめ&挟んでみようかしら?
あら?ひりょさんも興味アリ?
これが誘惑の仕方よ、セシルさんシエルさん参考になった?

ま、冗談よ
でも想いの強さは力になるわ、しっかりね

セシルさんは順調かしら?
万が一セシルさんが昏睡して落下してくるようなら
【スカイステッパー】で救出に行くわね



●電脳の箱庭Aチーム
 荒野を行く2人と1台の多脚戦車。
 そこに、土煙を立てて1台の車が迫って来た。
「こっちに来るな……」
 車の接近に気づいて、ロファルが身構える。
 1台の車とは言え、この世界では油断はできない。まして、見た事もないフォルムの車となれば猶更だ。
 だが土煙を立てる程の速度で迫っていた車は、車は次第に速度を落とし、ロファルの前にゆっくりと停車した。
 運転席の窓が開いて、長い黒髪が荒野の風に流される。
「歩いているのが見えたのだけど――乗ってく?」
 窓から顔を出した緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)が、微笑を浮かべてロファルに視線を向ける。
「あ、お構いなく。同乗者もいるようだし、僕は徒歩で――」
「大丈夫だよ。この車でかいから!」
 車内に冬香以外の姿もあるのに気づいて首を横に振るロファルに、助手席から降りた鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)も同乗を促した。
「何処まで行くのか知りませんが、辿り着いても疲れ切ってたら意味ないですよ?」
 とんがり帽子がぶつかるのか、神代・セシル(夜の読書も大事です・f28562)は後部座席の窓だけ開けて、ロファルに同乗を促す。
「いやでも、乗れても僕だけだろう? それは流石に――」
『あ? こっちの事なら気にすんな!』
「気になる女の子もいるのに、荒野で野垂れ死になんてしたくないだろ。乗って来な」
 自分だけ車に乗るのを躊躇うロファルの背中を、同行していた着物の女性とメカニワトリが掌と翼で押した。
「そうだった。僕は、何としても帰らないといけない……乗せて下さい」
 それで決心がついたロファルが、冬香に向けて頭を下げる。
 その様子を、シエル・カーネリアン(通りすがりのぐうたらひぃろぉ・f28162)は後部座席の真ん中から黙って眺めていた。
(「……今のも若干、フラグっぽいですねー……」)
 シエルがフラグっぽいと感じたのは『何としても帰らないといけない』と言う先のロファルの一言だ。
 往々にして、そんな事を言った人から襲われたりするものだ。
(「漫画で見るベタなフラグ回収しそうな予感しかしない! はぁ、しょーがない」)
 今回は少しだけぐうたら控えて働こうかと、シエルは胸中で溜息を吐いた。

●悪路を行く車は揺れる
 後部座席に乗り込んだロファルの口から、これまでのあらましが4人に伝えられる。
「なるほど、ロファルさんは拠点の為に1人で旅に出たと」
 それを聞いたセシルは、読んでいた本をぱたん、と閉じると、身体の向きを変えて後ろの荷物に手を伸ばした。
「ならロファルさんも、今の内に色んな本を読むのはどうでしょうか?」
 セシルが取り出したのは、傍らの読みかけとは別の本。
「拠点の人達に説明しきれなかったと言う事ですが、ロファルさんにもっと色々な知識があれば、違ったかもしれません」
「そ、それは……確かに。エルにも、あんな半端な説明じゃなくて、もっとちゃんとした事を伝えられたかも……」
 セシルの言葉に、ロファルが神妙な顔で頷く。
「万巻の書を読み万里の道を行く、という諺もあります」
「万巻の書、か。それじゃあ、読まさせて貰うよ」
 セシルから本を受け取ると、ロファルは開いたページに視線を落として――すぐに真剣な表情になった。
(「これが頼もしいリーダーになるための一助となってくれれば良いのですが」)
 セシルが読書を勧めたのは、『頼もしいリーダーになるためには色々な知識を身につけなければならない』と考えていたからだ。
「……」
「……」
 やがてセシルも読みかけの本を開き直すと、2人とも一言も喋らなくなった。
 世界と共に文明も壊れかかったこの世界では、書店の類も残っていないだろう。読める書物自体、貴重と言えるのかもしれない。
「「「……」」」
 他の3人も読書の邪魔をしないようにと口を噤むようになり、しばらく、車内にはガタゴトと悪路に揺れる音だけが響いていた。
(「随分と真剣に読んでるみたいだな」)
 2人の集中力に感心しながらひりょが振り向くと、そこにあったのは蒼い顔になっているロファルの姿だった。
「緋薙さん、停めて! なるはやで、ゆっくりと!」
「どっちなのよ……って、そう言うことね」
 ひりょが突然上げた声に一瞬眉を顰めた冬香も、すぐにロファルの状況を察して、なるべく車を揺らさないようにゆっくりと停車させた。

 揺れる車内で活字を追っていると、車に酔うタイプっているよね。

●車と言うのはある種の密室で起きていた事
「お騒がせして、すまない」
 顔色が戻ったロファルが、車の外で頭を下げる。
 荒野を行く車が、揺れない筈がない。その中で、慣れない読書をしていれば、酔う事だってあるだろう。
 幸い、早めに車を停めた事で、少し休むだけでロファルも回復した。
「私も失念していました。車で酔う事があるのを」
「初めて読む本に熱中しすぎたのは僕だし、自分の弱点を知ったと思えば安いよ」
 車内で本を読ませたことを気にするセシルに、ロファルは首を横に振る。
「助手席に来てみたら?」
 再び後部座席に戻ろうとしたロファルに、冬香がそう声をかける。
「前で景色を見ていた方が酔い難い人もいるわ。ロファルさん、そのタイプかも」
「車に乗り慣れてないみたいだし、色々試してみるといい」
 冬香の言葉に頷いて、ひりょは自ら助手席を空けると後部座席に乗り込んだ。
 こうして、助手席にロファルを乗せて、車は再び走り出す。

 それからしばらくして――。
「で、エルさんってどんな子なの?」
「ふぁっ!?」
 冬香の口から飛び出た一言に、ロファルの顔が一瞬で真っ赤になった。
(「うわー、判り易っ」)
 酔いもせずに平然とゲームしていたシエルも、その反応に胸中で呟く。
「な、ななな、なんでエルの事を!? 僕は一言も――」
「さっき本読む前、エルって名前を呟いてたわよ」
 慌てたロファルの声を、冬香はあっさりと遮った。
「あと車に乗る前に、気になる女の子がいると言われてたし。エルさんがその子じゃないかと思ったのは、女の勘ね」
 何か言おうと口をパクパクするロファルが、もう言い繕えないと悟るのに時間はあまりかからなかった。
「どんなと言っても……同じ歳の子ですよ。ずっと同じ拠点で育って、彼女の兄さんが奪還者で、その人にも色々教わってたから良く話してて――」
 兄妹みたいなものだったのがロファルの中で変わったのは、そのエルの兄の奪還者が帰ってこなくなってから。
 兄を案じて気を落とすエルを慰めている内に――。
「好きになった、と」
 訊ねても黙って頷くロファルの様子に、冬香の中にちょっとした悪戯心の様なものが湧き上がった。
 周囲に視線を送り、荒れてはいるが大きな障害物がないのをちゃんと確かめて――冬香はハンドルから片手を離すと、やおらロファルの腕を掴んだ。
「ずっと一緒だった子に、異性を感じてしまったと言うことね。じゃあ、こういう事は興味あるかしら?」
 そして冬香はロファルの腕を引き寄せて――豊かな胸部の間に、ぎゅっと挟んだ。
「――――!?」
 突然の出来事に、ロファルは声も出ない。
「わわっ、緋薙さん魅惑のたわわボディを使ったお色気テク……」
 その代わり――と言うわけではないが、冬香が聞き出していた話に耳を傾けていたシエルが、その光景に思わず声を上げる。
 グラビアの類のお仕事もこなすモデルとしての顔を持っているだけあって、冬香のプロポーションは同性から見ても見事なものであった。
「これが誘惑の仕方よ、セシルさんシエルさん参考になった?」
「う、羨ましくなんかないぞぉ……!」
「緋薙先輩は、なにをしているんですか……」
 ロファルの手を谷間にホールドしたまま視線を向けて来る冬香に、シエルは思わず拳を握り締め、セシルは愛用ハットを目深に被り直す。
「緋薙さん。そろそろ腕を離してやりましょう。で、前見て安全運転を――」
 ロファルを不憫に思ったか、安全運転を理由に、ひりょは冬香にロファルの腕を離す様に促す。だが、それは藪蛇と言うものだった。
「あら? ひりょさんも興味アリ?」
「そこで俺に振る?!」
 予想外の方向から話を振られたひりょが、血を噴いた。どこからかは言うまい。

 車が他の猟兵達が既に揃っている農園跡地に着いたのは、そのすぐ後の事。
 車を降りる前にガスマスクを着けるロファルの顔は、その時、まだ赤くなったままだったりした。
「想いの強さは力になるわ、しっかりね」
 その背中を、顔を赤くさせた張本人である冬香がそっと押した。

●整備と運転は別
 清らかな空気の拠点から、猟兵達が毒性植物を刈っていく。
「車、乗ってみてどうだった?」
 そんな中、ひりょはガスマスク着けたままのロファルにそう訊ねていた。
「そうだな……やっぱり、あると便利」
 徒歩で来ていたら、ロファルは今頃疲れ果てていただろう。
「そうかそうか。じゃあ、車の整備、メンテナンスの基本を教えてあげるよ」
「え?」
 ひりょの言葉に、ロファルがガスマスクの向こうで目を丸くする。
「車は貴重品なんだろう? 運転できるようになって、出先でのトラブルに対処が出来ると助かるだろうと思って」
「それはそうだけど……」
 ひりょの言葉に頷きながら、ロファルは困惑したように言葉を切って――。
「整備、出来るんだ?」
「そりゃ出来るよ。あれ、俺の改造車だから」
 そう。さも当然の様に最初から冬香がハンドルを握っていたが、ロファルが乗って来た改造車はひりょの、ひりょ専用の改造車なのである。
 ――専用とは一体。
「自分の車なのに、運転しないの……?」
「緋薙さんの方が運転上手いんだ……」
 不思議そうに首を傾げたロファルから目を逸らして、ひりょはぽつりと告げた。

●このままだと、ただの賑やかドライバー集団になってしまうので
「レッツ、チェンジアップ、モードY!」
 声を上げたシエルの周りに、何処からともなく飛んできた300体ほどの小型ドローン『ビットくん』が集う。
「いいですか、ロファルさん。こういう時はドローンです」
 ロファルに向けて、シエルのドローン講座が始まっていた。
「あの問題の植物、いかにも怪しさ1000%です。あんなもの、迂闊に触るわけにはいきません。そんな危険な環境でこそ、ドローンを使ってなんぼ!」
 ここテストに出ますよー、メモメモ、と言うシエルの言葉に素直に頷いて、ロファルは貰ったメモに何やら書き込んでいく。
「さーて、何であんなのが生えちゃったか、調査しますか」
 自分に出来る説明は終えたと、シエルはロファルから視線を前に戻して、毒性植物が茂る方へドローンを飛ばしていく。
 ビットくん、はただの小型ドローンではない。

 ――クラスターtheビットくん。

 シエルのユーベルコードで呼ばれた、戦闘用ドローンだ。耐久力はないが、毒の花粉程度にやられるほど脆くはない。生身よりは、安全に調査出来るだろう。
「あの。私に上空から調査させてくれませんか?」
 だが、セシルは自ら、空からの調査を申し出た。
 確かに、電脳の箱庭以外の猟兵達も調査をしているが、空からの確認は機械的なもののみで、まだ肉眼では行われていない。
 肉眼だからこそ見えるもの――と言うものもあるかもしれない。
 そんなセシルの主張に反対意見は出なかった。
「飛んで行くなら、神代さん。これ持ってって」
 ひりょがその辺で拾った小石を受け取ると、セシルは吸血鬼の翼を露わにし、空へと飛び上がっていく。
「さて、やりますか。夕方の読書は必要です」
 充分に高度を取った所で、セシルは吸血鬼の力を解放し――更に増強した。

 ――3rd Chapter of Grimoire。

 吸血鬼の能力を高める事で、全ての能力を6倍に高める業。
 全ての能力が高まるのなら当然、視力も高められる。モノクルはかっこいいと思って駆けているだけであり、元々セシルの目は悪くない。
 今のセシルは、空から遥か遠くまで見通せていた。
(「何か……何かある気が」)
 しかし見渡すセシルの胸中にあったのは、焦り。
 全ての能力を6倍にする業、例え猟兵でもいつまでも使える筈がない。今のセシルであれば、1分と少し。それを過ぎた時――セシルはしばし、意識を失う。
 空を飛んでいるままそうなれば、あとは落ちるだけだ。
 降りる時間を考慮すれば、使える時間はあと僅か。
「? あれは――え?」
 そのぎりぎりの時間が迫る所で、視界に映った『それ』にセシルは気を取られた。
 セシルの背中から、翼が消える。

「ひりょさん、落下地点の確保を」
 それを見た冬香が、地を蹴って、更に空を蹴って跳び上がった。
 空中を蹴って跳ぶ業――スカイステッパー。

「場よ変われ!」
 そしてひりょは、落ちて来るセシルが射程に入った瞬間、小石を握って声を上げた。
 直後、ひりょの握っていた小石が火の玉の様な疑似精霊に変わった。

 ――黄昏の間。

 無機物を地・水・火・風の四大元素の疑似精霊に変換する固有結界。今のひりょが作れる結界の効果範囲は、76m。
 その範囲に入ったセシルの持っていた小石が、風の疑似精霊に変わり、ふわりと落下速度が緩やかになる。
 そこに追いついた冬香が、セシルの身体を抱きとめた。
「よし、あとは2人の下の植物を――シエルさんも手伝ってくれない?」
「仕方ない……チェンジアップ、モードX!」
 ひりょの疑似精霊と、変形したシエルの『ビットくん』が放つ2つの炎が、降りて来る2人の眼下にある毒性植物を焼き尽くし、灰の上に冬香が降り立つ。
 そして――目を覚ましたセシルから告げられた話を聞いた3人は、迷わず火力に長じたメンバーの多いBチームに連絡を入れた。

●ロファルの成長――その2
 今まで読んだ事がない種類の本に触れた事と、車内で本を読むと酔う体質である事を知った事で、学習力6に上がった。

 大人の誘惑を受ける恥ずかしさを知った事で、恥ずかしさ耐性1を取得。

 車の運転と整備を教わった事で、運転1とメカニック1を取得。

 ドローンの使用に適した環境を知った。操縦2に上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

電脳導師・アイザック
【電脳の箱庭B】
〜ロファルと合流後、道中〜
「ロファルよ、自分等の拠点を守りたいが故に嘘までついて飛び出したその意気や良し。」
モニター越しに話しかける。
「これは御主等の問題、カタは御主が決めろ。危なくなったら頼っても良いぞ。その為の儂等猟兵じゃ。」
「ほれ使うと良い、些かその拳銃だけでは心持たまい。」
自身のアイテム【腐食銃】を手渡そうとする。(持つか持たないかはロファルの判断に任せる)

〜戦闘〜
なるだけロファルの近くにい、ロファルに危険が及んだら【焼却波】で焼き払う。

〜アイザックの方針〜
ある程度の戦闘経験を積ませる為にあえてロファルを前線に向かわせようとする。


天星・雲雀
【電脳の箱庭B】
若きリーダーの卵が、1人では生きて帰れぬ地へとおもむく。
成長に必要な冒険であるなら、御守りいたしましょう。

【行動】ロファルさんの警護。

第六感が告げている、この先に異質ななにかが有ると。

自分は、『オトモ』達に自分が戻らなくても、ロファルさんの護衛は拠点に戻るまで続けるように伝えると、茂みの奥へ入っていきます。

茂みに入ってすぐに、動くタイプの汚染植物の群れに遭遇。

捕食者のそれらは数が多い。

「ロファルさん、こっちは危険です!近づいてはいけない!!」

苦し紛れにUC狐火を放って、敵の足を止めます。

四方八方に引火した炎は、あたりを囲み、【火炎耐性】で耐えますが、合流には遠回りが必要ですね。


シャルロット・シフファート
【電脳の箱庭B】
相変わらず無茶苦茶な二人(アイ、フィーナ)ね……そのフォローをするのも私の義務ね。
と、ユーベルコードを使って星霊炉運用技術で汚染植物を取り込み解析する装置を作って汚染植物に纏わるこの文明が崩壊した世界を基準とした有効な汚染植物などに対するマニュアルを作り出すわ。

さて、汚染植物に纏わる対処はここまでとして……そうね、「アンタ自分はどうしたいの?」と切り込んでおく。
その返答に対して受け止めた後、「アンタに足りないものは「相互理解」を目指し形にする力よ」と、グリモア猟兵から告げられた一幕から延ばすべき技能を告げる。
「誰かを理解し、理解される力。それを伸ばしてみなさい」


アイ・リスパー
【電脳の箱庭B】
「ロファルさんに欠けているもの……
それは勇気です!」

帰ったら気持ちを伝えるという軟弱な心だから死亡フラグにしかならないのです。
告白してから出発すれば『俺たちの未来はこれからだ!(泰月先生の次回作にご期待ください)』と、いきなりエンディングだったのに!(打ち切り感

……こほん。間違えました。

「いいですか?
無謀と勇気を履き違えてはいけません。
どんなときも周りをよく見て状況判断をするのです」

そう。周りさえ見えていれば恋愛フラグを拾うことも容易いのです!

「ここは私がお手本を……
って、きゃあっ」

花粉から身を守るために展開していた【バタフライ効果】の風でスカートがめくれ悲鳴をあげるのでした。


フィーナ・ステラガーデン
【電脳の箱庭B】
(大きなリュック所持、一章では中身は明かされない)
同じ臭いの出所を探すものとして同行を促すわ!
で、そこで自分の能力について話したり、身の上話を根掘り葉掘り聞くわよ!
はぁー。何でもうじうじしてるよりスパスパ決める方がモテるわよ!

アイの下着を見たロファルに無言の理不尽な鉄拳を喰らわせてから引きずり起こすわ!

寝てる場合じゃないでしょ!
次はあんたの番よ!スパスパ決める練習よ!私が焼いてあげるから私に指示をよこしなさい!

ロファルの指示を聞きつつ植物を【属性攻撃】で焼き払って人を使う事を覚えさせるわ!
(アレンジアドリブ歓迎)



●電脳の箱庭Bチーム
 ――毒を持つだけでなく、動き出しかけている群体が見えました。

 吸血鬼の少女が上空から見た光景が、電脳の箱庭のBチームに伝えられる。
「まだ根は張っていた様子でしたが、いつ動き出すか――」
 つまり、他よりも優先的に叩くべき。
『ふむ。ロファルと言ったな。御主も行ってみるかね?』
 その時、ザザッと砂を払うような音の混ざった声が響いた。
 モニタの中に、緑色の老人の顔が浮かび上がる。
 かと思えば、その老人――電脳導師・アイザック(電脳世界のバグ・f28407)の姿が、モニタの中から浮かび上がってきた。
 よく見れば緑色の全身は、ところどころ輪郭がぶれている。
 アイザックのその姿は実体ではなく、ホログラムであった。
「これは……立体映像か」
「うむ。まあ、わしのことなどどうでも良い。それよりも、御主じゃ。自分等の拠点を守りたいが故に、嘘までついて飛び出したその意気や良し」
 ホログラムと気づくロファルに一つ頷いて、アイザックは話を続ける。
「此処の事は、御主等の問題でもある。幾らかのカタは、御主が決めろ」
 アイザックは、ロファルに戦闘経験を積ませておこうと考えて、敢えて危険な場所へ行くように告げていた。
 それは、アイザックが人間に可能性を求めるが故か。
 だが、アイザックとて、死んで来いという気はない。
「危なくなったら頼っても良いぞ。その為の儂等猟兵じゃ。だが、ずっと後ろで見ているだけで――御主、良いのか?」
「い、行くさ!」
 アイザックの言葉に表情を変えて、ロファルが声を上げる。
「良う言った。ほれ、使うと良い。些かその拳銃だけでは心許無いじゃろ」
 そんなロファルの手に、アイザックは自分の銃を乗せる。
「ええと、使い方は?」
「撃てばわかる」
 肝心な説明をぶん投げたアイザックに、ロファルがえぇーと眉間を寄せる。
「大丈夫よ。私も行ってあげるから!」
 その肩を、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)がバシッと叩いた。
「同じ臭いの出所を探してきたものとして、やばい草は全部燃やしてやるから!」
 何が入っているのか、やたら大きなリュックを背中から降ろして、フィーナはバシバシとロファルの肩を叩く。
「その代わり、あんたスパスパ決める練習しなさい! 私が焼いてあげるから、私に指示をよこしなさいよ!」
 フィーナもどうせ危険な場所に行くならと、指揮を出す練習をロファルにさせようと考えていた。
「フィーナも行くなら火力が足りない事は無いと思うけど……」
「これは、私達も行くしかないですね」
 そんなフィーナの様子に、シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)とアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)が顔を見合わせ、小さく溜息を吐いた。
 フィーナの事は、2人ともよく知っていた。
 その実力も、性格も。
 少なくとも、緊張しているロファルに扱いきれるとは思えない。
「大丈夫。自分が御守りいたしましょう」
 フィーナにバシバシ叩かれたロファルの肩を、今度は天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)の手がそっと叩く。
「オトモ達をつけておきます。だから、大丈夫」
 自分の傍らに漂う赤と青の狐火を、雲雀はロファルの護りに憑かせる。
 こうして、それぞれの思惑を胸に――電脳の箱庭Bチームとロファルは、毒を撒く以上の危険性のありそうな植物を探しに向かった。

●火力担当の火力
「大気中の気体分子の運動、解析完了。初期運動量コントロール。ローレンツ・アトラクタ・プログラム起動します――これで良し!」

 ――バタフライ・エフェクト。

 空気分子の運動ベクトルの加速でアイが起こした風が毒の花粉を巻き上げて、フィーナの魔術炎が花粉を放つ植物を一瞬で消し炭に変えていく。
 そうして、サクサクと道を拓いて進んでいた一行だったが――。
「っ! ロファルさん、皆も。止まって!」
 常に先頭を歩いていた雲雀が、鬱蒼とした茂みの前で足を止め、後ろを制する。
 雲雀の第六感が告げていた。
 この先に、これまでとは違う異質なものがいると。
「先ずは自分が行きます」
 言うが早いか、雲雀は周りが何か言う前に茂みを掻き分けようと手を入れた。

 若きリーダーの卵が、拠点の者の為にここまで来た。
 その上で、1人では生きて帰れぬ地へと赴く。それが成長に必要な冒険であるのは、雲雀も判っている――だから護る。
 ロファルよりも先に危険へと飛び込む事も厭わず茂みを掻き分けた雲雀の手に――シュルンと何かが巻き付いた。
「これは……わっ!?」
 次の瞬間、何かに引っ張られた雲雀の姿が茂みの中に消えた。
「くっ、これは……ロファルさん、こっちは危険です!」
 茂みの向こうから、雲雀の声が響く。
 狐火を放ったらしい、炎の光と共に。
「雲雀さん!?」
「ちょい待つのじゃ」
 慌てて追いかけようとしたロファルを、アイザックのホログラムの腕が止める。
「いきなり飛び込もんではないぞ。さっきわしが持たせた銃を、茂みに使ってみろ」
「茂みに……?」
 アイザックが何をさせようとしているのか掴めないまま、ロファルは言われるがままに預かっていた銃を構えると、雲雀が消えた茂みに向けて、引き金を引いた。
 パンッと乾いた銃声が響いて――。

 茂みが消えた。

 枝も葉も、一瞬で枯れたように萎れて、そのまま崩れて消えた。
「……は?」
「そいつの弾丸は、あらゆるものを腐食させるんじゃ」
 予想外の結果に目を丸くするロファルに、アイザックがさらりと告げる。
「え? これ、誤射したら大変なんじゃ……」
「うむ。使わないときは安全装置をかけ忘れるなよ」
 頷くアイザックに、ロファルはなんて危ないものをと言いたかったが、状況はそれどころではなかった。
 茂みの向こうは、炎が燃えあがっていた。
 燃えているのは、蔦をくねらせ捕食器官に変容した花を持つ植物の群れだった。
「ロファルさん! 近づいてはいけない!!」
 駆け寄ろうとしたロファルを、雲雀が狐火を放ち続けながら止める。
「此処は自分が止めます。半妖と言えども、自分の狐火でやられはしませんから」
 時間はかかるだろうけれど、必ず戻るから――。
 だから戻れと雲雀は言うが、ロファルは動こうとはしなかった。
「そんな。だって、その植物は、まだ燃えていないのも――」
 雲雀の狐火は、変異した植物の全てに届いたわけではない。まだ燃えていない個体がいるのが、ここからでも見えている。
 残しても大丈夫なのか?
 あの植物がこっちを狙って来ることは?
 雲雀を犠牲にするという選択肢を選べる筈も無く、考えれば考えただけ可能性がロファルの頭をよぎり、選択肢だけが増えていく。

「はぁ……あんた、もう忘れたの」
 その背中を、溜息交じりのフィーナの声が叩いた。
「言ったでしょ。焼いてあげるから、指示をよこしなさいって!」
 力強いフィーナの言葉に、ロファルの口から「あ……」と短い声が漏れた。
「思い出したら、早くよこしなさいよ。あれを焼けって」
 焼けるのか――と言う疑問を、ロファルは飲み込む。
 自信に満ちたフィーナの顔を見れば、聞くまでもない。
「火力、加減しなさいよ。あの程度なら、アンタが本気出したら、オーバーキルになるんだからね」
「わーってるわよ」
 背中に聞こえた自重を求めるシャルロットの声に振り向かずに返して、フィーナは愛用の杖を構える。
「其は全てを飲み込む黒き炎――加減ってことで、以下省略!」
 雑に詠唱すっ飛ばしたフィーナの杖の先に、漆黒が生まれる。
「どれ。わしももうちょい働くか」
 事態を見守っていたアイザックの手の中に、何か金属の塊が現れた。

「汚物は消毒だー! 焼きつくせえぇぇええ!!」
「汚物は消毒じゃあ……!!」

 2人して殆ど同じことを叫びながら、フィーナの杖から漆黒の光が溢れ出し、アイザックは金属の塊――ナパームを放り投げる。
 ――喰らう灼熱の黒炎。
 ――焼却波。
 光すら飲み込む漆黒の炎と無差別に焼却するナパームの炎が合わさり、捕食植物の群れをあっという間に飲み込んでいく。
 捕食植物と言う燃料を得た炎が轟々と燃え上がり――その勢いが収まった後には、捕食植物は、葉の一枚、枝の1本すら残っていなかった。
 文字通り根こそぎ、跡形もなく焼き尽くされたのだ。
 残った灰の中に立っていたのは、顔が煤けた雲雀だけだった。

●一番足りないのはツッコミ役ではなかろうか
「相変わらず無茶苦茶ね……」
 焦土と言って良い有り様になった地形に、シャルロットの溜息が零れる。
「灰でも解析できるかしら……まあ、やってみるしかないわね」
 もう一度溜息交じりに零して、シャルロットは軽く手を掲げて唱えだした。
「人は神世の御業を鋳造する」
 シャルロットが加減しろと言ったのは、自身の目的の為でもあった。
「されば真贋の境界は両断、超越は証明された」
 シャルロットは欲しかったのだ。変異した捕食植物の残骸程度が。
「ここに全てを行う作り手よ、我が成就と完成の前に跪け」
 星造の言葉を唱えたシャルロットの掌から、光が溢れ出し――光の中から、謎の機械が現れた。
「な、なんだ、その……機械。いや、機械なのか?」
「何と言われても、解析装置としか」
 見た事もない機械に目を丸くしたロファルに訊ねられ、シャルロットが困った様にくるくると巻いた髪を指に巻き付ける。

 偽典星造・漸進せよ人の承たる鋳の証――スワンプマン・オブ・ヴィシュヴァカルマン。

 電脳魔術と精霊術を融合させた電脳精霊術を操るシャルロットの、創造の術。
 星霊炉運用技術に関わるもののみ精巧に作れるという術だが、ではその『星霊炉』と言うものが何なのか。
 魔獣的な知識のないロファルに伝えるのは、シャルロットにも容易ではなかった。
「ロファルさん。シャルロットさんはこれから忙しいので、他の話をしましょう」
 そこに、アイが助け舟を出した。
「私、判りましたよ。ずっと見ていて、ロファルさんに欠けているものが」
「え? それは本当か!?」
 アイの話題に食いついて、ロファルが謎の機械から視線をアイに向ける。
「ええ。ロファルさんに欠けているもの……それは」
「それは?」

「勇気です!」

 まだガスマスク着け続けているロファルを指さし、アイがきっぱりと告げた。
「ガスマスクは良いとします。それよりも、さっき、フィーナさんに言われるまで、全然指示を出せなかったじゃないですか」
 アイの言葉に、うぐっとロファルが呻く。
「雲雀さんを残すと言う選択も出来なかったですよね? 時には非情な決断を迫られると言う事も、あり得ますよ?」
 アイの言葉に、ロファルはぐうの音も出なくなり――。

「エルさんとの事だって、帰ったら気持ちを伝えるという軟弱な心だから死亡フラグにしかならないのです!」

「ちょっと待って!?」
 予想外の方向に話題を飛ばしてきたアイに、流石にロファルが声を上げる。
「何でエルの事――」
「聞きましたから! 運転してた人から!」
 何故と訊ねるロファルを遮ったアイは、息つく暇を与えずに続ける。
「勇気を出して告白してから出発すれば良いじゃないですか! それなら『俺たちの未来はこれからだ!』と、いきなりエンディングだったのに!」
「!?!?!?」
 アイの言っている事が半分くらい判らないのと恥ずかしさとで、ロファルの頭の中は?でいっぱいになっていた。
「アイ。フラグとかエンディングとか言っても、多分この世界の人、判んないわよ」
 エンターテイメントなんてものが殆ど残っていないであろうアポカリプスヘルでそんな事を言っても通じないと、解析装置から顔を上げずに、シャルロットが告げる。
「……こほん。間違えました。とにかく、ロファルさんは勇気をもって決断することが足りないと思うのです」
 その一言で自分が脱線していた事に気づいて、アイは話を戻した。
「でもいいですか? 無謀と勇気を履き違えてはいけません。どんなときも、周りをよく見て状況判断をするのです」
 確かに周りを炎に包まれ逃げ場がない雲雀の状況を見た時、ロファルは自分の前しか見えていなかった。
 自分の後ろに力を貸してくれるものがいるのが、見えていなかった。
「そうだね。指揮をするのなんて、初めてだったけど……それにしても、あの時の僕は周りが見えていなかった。これじゃ、ダメだな」
「はぁー。うじうじしない!」
 ロファルの落ち込み様に溜息零して、フィーナが声を上げた。
「何でもうじうじしてるより、スパスパ決める方が、モテるわよ!」
「やっぱり、女性から見てもそうだよね……」
 フィーナとしては発破かけているのだが、ロファルは落ち込んだままだ。
「アイの言うように勇気も足りないと思うけど、アンタには『相互理解』を目指し形にする力も足りないと思うわよ」
 そこに、やはり視線は解析装置に向けたまま、シャルロットがロファルに告げる。
「誰かを理解し、理解される力。それを伸ばしてみなさい。自分で自分を決めすぎず、自分がどうしたいのか、そこにもっと素直になりなさい」
 ロファルはその言葉に、はっと顔を上げた。
 エルから見た自分を、勝手に決めていなかったかと。
「そう。周りさえ見えていれば、活路はあります」
 ロファルの表情が変わったのを見て、アイがその肩をぽんと叩き――。
「周りさえ見えていれば、恋愛フラグを拾うことも容易いのです!」
 あれー。
 話がフラグに戻ったぞー?
「そのフラグって一体……」
「ここは私がお手本を……」
 ロファルの疑問をさらっと無視して、アイは笑顔で再びバタフライ・エフェクトのプログラムを展開する。
 全力を出せば、空気分子のベクトル操作で竜巻まで起こせる業だが、アイは花粉から身を守れる程度の小規模な風にも出来る。
 そのコントロールを見せようとしたのだが――。

 ビュォゥッ!
「って、きゃあっ」

 それはまさに風の悪戯と言うべきか。
 ほんの一瞬、思わぬ突風が吹いて、アイの短いスカートが捲れてしまった。
 その下にあったのは何色だったのか――果たしてそれが、ガスマスク越しにロファルに見えていたのか。
「ふんっ!」
「ふげっ!?」
 それが判明する前に、フィーナの理不尽な鉄拳がロファルを吹っ飛ばした。
「よし、解析完了! 今マニュアルを出すから――」
 ようやく解析装置から結果が出て、シャルロットが顔を上げる。
 これでこの世界の技術でも有効な汚染植物対策をまとめてロファルに渡す事が――。

 シャルロットが目にしたものは、哀れにも倒れているロファルと、私がやりましたが丸見えな殴ったポーズそのままのフィーナと、頬を赤くして困った様な笑みを浮かべるアイと言う光景だった。
「ちょっと目を離した隙に、アイもフィーナも、何やってるのー!?」

 本当に、どうしてこうなった。

●ロファルの成長――その3

 腐食銃と言う未知の銃を使った事で、銃の扱いに少し慣れた。制圧射撃1取得。

 変異した植物を焼き尽くす炎。そしてその炎に耐える猟兵の姿から、火に対する知識と経験を得た。火炎耐性1取得。

 自分に勇気が足りないと自覚した。勇気1取得。

 理不尽な一撃だったが格闘の事が少しわかった気がした。グラップル1取得。

 目を覚ましてマニュアル読めた。世界知識4に上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

UDCでみた西部劇のカウボーイな格好して
農園跡近くでロファルと合流

わたしはカウボーイ・杏
そう、美味しいの風に誘われ世界を巡る食べ物猟兵(ハンター)…て、まつりん。わたしそんな食いしん坊じゃない(むうっ)

でも厳しい世界で食物を嗅ぎ分けるは大事
嗅覚を研ぎ澄ませ、第六感を働かせ
そして何より大切なこと
(自分の胸に手を当て)
技能だけでなく己の本能を信じる
そう、わたしの場合、大食いは技能ではなく本能…
本能が告げる、この匂いは危険!
【鎌鼬】を放ち、素早く汚染植物を刈り取る
うさみん☆、根こそぎひっこ抜いて?

集めた植物…少し待って?
毒と薬は紙一重
もしかしたら病に効く薬になるかも


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。

(荷車屋台引いて)
やほー!

兄ちゃん奪還者ってヤツ?
おいらたち、猟兵っていうんだって♪
乗っていくかーい?(荷車を指さし)

うーん。毒ぽい。(野生の勘)
へえ、風の匂いでわかるの?
兄ちゃん、食いしん坊さんでしょ!
でも、ウチのアンちゃんだって負けないよ!(じまんげ)

あ、毒に近付くときは、コッチ(風上)からだよ。(サバイバル)
生きてる獲物が相手のときは、アッチ(風下)の方がいいケド。

毒マスクすると長くは動けないから、短期決戦だね!
こういうときは、安全な場所から……
メカたまこ、GO! じゅうりん!!
(コケコケコケっと)

ん、お持ち帰り分も収穫しといたー♪
あげたい人、いる?(にぱ)



●屋台風荷車は急に止まれない
 捕食器官を持つ変異型を駆除した後。
 他にも変異型がいるかもしれないと、ロファルは1人での探索を始めていた。
 その耳に、ガラガラと言う音が聞こえてくる。
「やほー! やっとみつけたよー!」
 ガラガラと言う音はあっという間に近づいてきて、屋台の様な荷車を引いて走って来た木元・祭莉(かしこさが暴走したかしこいアホの子・f16554)が、ズザッと靴底を擦らせてロファルの前に止まった。
 しかし屋台風の荷車はすぐに止まり切れず、横滑りになってガガガッと車輪と地面が擦れて硬い音を立てる。
「おいらは祭莉。で、屋台にいるのが……あれ?」
 訊かれる前に名乗った祭莉だが、後ろにいるべき人がおらずに首を傾げる。
「アンちゃん? おーい?」
「まつりん、こっち」
 声に視線を向けると、木元・杏(マスター縁日・f16565)が屋台から数m離れた所で、服についた土埃を払っていた。
「わたしはカウボーイ・杏」
 きりっとロファルに視線を向ける杏の出で立ちは、UDCアースの西部劇を思わせる服装になっている。西部劇、見たんだって。
「えっと……もしかして、君達も?」
「うん! おいらたち、猟兵っていうんだって♪」
「そう、美味しいの風に誘われ、世界を巡る食べ物猟兵(ハンター)」
 にぱっと笑って返す祭莉と、立てた指でカウボーイハットをくいっと押上げながら告げる杏に、ロファルはやっぱりと頷く。
 聞くまでもなく、猟兵だろうと思っていたのだ。
 だって、ロファルは見ていたから。急停止の反動で屋台風荷車が横滑った瞬間、その勢いに振り回された杏が、ぽーんっと屋台から飛び出して行ったのを。
「ロファル兄ちゃん、乗っていくかーい? 2人乗りオッケーだよ?」
「それは遠慮する」
 だからロファルは祭莉の申し出に、迷わず首を横に振った。

●本能を信じて
 屋台に乗りはしなかったけれど、ロファルと木元家の2人は、共に毒性植物の群生地を探して歩く。
「花粉の匂いが強くなってきた。毒性植物が近いな」
 毒性植物の気配に、ロファルが腰のガスマスクを取る。
「兄ちゃん、待った」
 そのままガスマスクを着けて進もうとするロファルを、祭莉がストップをかける。
「確かに、毒っぽい。だから、コッチじゃなくて、アッチから」
 屋台荷車を引く手を離して、『コッチ』『アッチ』と指で方向を示す祭莉は、野生の勘で毒の気配と風の流れを感じていた。
「ええと、コッチは風が来る方で、アッチは風が行く方。生きてる獲物が相手のときは、アッチの方がいいケド、毒の時はコッチのほうが流れてこない」
 祭莉の言うコッチ、アッチ、はそれぞれ風上、風下の事だ。
「成程、風の向きか。考えてなかったな」
「でも兄ちゃんも、風の匂いで毒がわかるんだ?」
 感心したように頷くロファルに、祭莉は屋台荷車を引く体勢のまま視線を向ける。
「自信を持てたのは、ついさっきだけど」
「さては兄ちゃん、食いしん坊さんでしょ!」
「んん――!?」
 祭莉の一言に、ガスマスクの中からくぐもった声が漏れた。
「でも、ウチのアンちゃんだって負けないよ!」
「まつりん。わたしそんなに食いしん坊じゃない」
 何故か自慢げな祭莉の横に、杏が少し頬を膨らませて屋台荷車の上から飛び降りた。
「いやいや、僕はそんなんじゃ――」
「隠さないでいいの」
 慌てて否定しようとするロファルの声を、杏が穏やかに遮った。
「この厳しい世界、食物を嗅ぎ分けるのは大事だと思う。嗅覚を研ぎ澄ませ、第六感を働かせて――そうすればきっと、おいしいお肉が見つかる」

 ――ね、アンちゃん、食いしん坊でしょ?
 ――成程。

 食欲に忠実な杏の様子に、祭莉とロファルがヒソヒソと小声で話す。
「それに、何より大切なこと。それはここにある」
 そんな2人の様子に気づかず、杏はは自分の胸に手を当てて、目を閉じる。
「技能だけでなく、己の本能を信じること」
「己の本能、か……」
 杏の言葉に何かを感じたのか、ロファルも同じように自分の胸に手を当てていた。
「感覚を信じろ、自分を信じろってのは、何人かに言われたよ。最初に聞いたのは、耳の尖った銀髪の女性だったかな」
 ロファルの言葉に、そう言う事を言いそうで、外見も良く似た知人を思い浮かべて、祭莉と杏が思わず顔を見合わせる。
「君達の本能は、なんて言ってる?」
 2人のその仕草を気にした風もなく訊いてくるロファルに、杏が視線を戻す。
「わたしの場合、大食いは技能ではなく本能……」
(「アンちゃん、自分で大食いって言っちゃった!」)
 杏の気配が攻撃に移りつつあるのを察して、祭莉は声に出さずにツッコんでいた。何故かって、祭莉は、食いしん坊、としか言っていない。
 大食いと言い出したのは、杏自身だ。
「本能が告げる、この匂いは危険! 刈り取るべし!」
 杏の手が、うさ印の護身刀に伸びて――。
「わぁ! 待って!」
 杏が毒性植物を切ろうとしていると気づいて、ロファルが慌てた声を上げた。
「切り倒すと、花粉とか色々飛び散るって――」
「あ、それなら大丈夫だよ」
 少し前に言われた事を、ちゃんと覚えているが故に不安を覚えたロファルに、祭莉がにぱっと笑いかける。
「兄ちゃん、毒マスクだと長くは動けないもんね。だから、こういうときは短期決戦! メカたまこ、かもん!」
 ―――――ドドドッ!
 祭莉が元気よく声を上げた直後、地響きのような鳴り出した。
 ――ドドドドドドドッ!
 次第に音が大きくなり、土煙がすごい勢いで近づいて来る。
「あれは――?」
「アンちゃん、いいよ!」
 訝しむロファルを他所に、祭莉が杏にGOサインを出した。
「ん。刈り取る」

 ――鎌鼬。

 瞬きするほどの瞬間で、杏の護身刀は鞘から抜き放たれていた。素早い斬撃が、毒性植物の群生の一部を斬り裂いた。
 斬られた毒性植物が、ゆっくりと傾いていく。
「メカたまこ、GO! じゅうりん!!」
 ――コケーッ!
 そこに祭莉の掛け声と、甲高いニワトリの鳴き声が響いた。

 守護神降臨。

 ――コーケッ、コケコケコケクォッケー!!!
 喧しく鳴きながら、86体の戦闘用ニワトリ型ロボの群れが、毒性植物の中に突っ込んで行った。切り倒された毒性植物も、まだピンピンしてる毒性植物も、毒性の花粉も、戦闘用メカたまこの群れが片っ端から踏みつけていく。
 ドドドドッと言う地響きのような足音が遠ざかると、毒性植物は、まさに蹂躙されて押し流されていた。
「…………」
 その光景を前に、驚きに声も出ない様子で、ロファルは立ち尽くしている。
 しかも――だ。
「兄ちゃん、これ上げる。お持ち帰り分も収穫しといたー♪ あげたい人、いる?」
 祭莉がロファルに渡したのは、綺麗な花だ。
 メカたまこの数に任せて雑に押し流していたように見えて、あの中でも毒に染まっていない花を見つけていたとは。
「こっちは根っこ。毒と薬は紙一重。もしかしたら病に効く薬になるかも」
 杏は、うさみん☆に抜かせた毒性植物の根を掲げる。
 根っこなら、花粉の様に飛び散るものもなく、保管して調べる事も可能だろう。
「すごいなぁ……」
 本能と言いつつちゃんと考える部分は考えてる祭莉と杏に、ロファルは感心したように溜息を零し――。
「それとニワトリメカ――メカたまこ? 流行ってるんだな?」
 ロファルの言葉に、祭莉と杏が揃って首を傾げる。
「他にも使ってる人いたよ。赤い髪の女性が」
 ロファルの言葉に、今度こそ知人だと確信して、祭莉と杏は顔を見合わせていた。

●ロファルの成長――その4
 自分の感覚と、本能を信じる事を聞いた事で、第六感4に上がった。

 勢いの中でも、綺麗な花を見逃さない方法があると知った。宝探し1取得。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡みも歓迎!

えーん、えーん、迷子になっちゃったよー!
とか言って何知らぬ風で絡みにいきたいけど荒野に迷子とか素直に信じられちゃったらそれはそれでどうかと思う!

クソガキを演じてひたすらロファルくんの足を引っ張るよ!
成長には忍耐を学び責任感を見に付けないとね!
それは探索だって同じだよ!
ちょっとうまくいかないからって投げ出すようじゃ困るよね!
え、素じゃないのって?フフフ…!

あ、[餓鬼球]くんついでに行く先々の汚染植物はほどほどに食べておいてね!彼に有害過ぎない範囲で残す感じで!

ねーお腹すいたよー!
ボク疲れたー!
帰りたいよう!
けほっけほっ苦しいよう!

と対処を促して成功体験を味わわせるよ!



●神の悪戯
「えーん、えーん」
 これ以上ないくらい判り易いウソ泣きの声が、乾いた風に響いている。
「えーと……」
「えーん、迷子になっちゃったよー!」
 ヤバい感じに変異した植物を探していたロファルが遭遇したのは、そんなウソ泣きで迷子を主張しているロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)だった。
「……本当の迷子じゃ、ないよね?」
「あ、バレちゃったか」
 ロファルの一言で、ロニはケロッとウソ泣きを止めて顔を上げる。
「ま、いっか。こんな荒野に迷子とか、素直に信じられちゃったらそれはそれでどうかと思っていたからね!」
 もしもロニが何日も荒野を彷徨った後のような薄汚れた格好や、疲れ切って息も絶え絶えと言った演技をしていれば違ったかもしれないが――。
 さすがにウソ泣きでだませるほど、ロファルも愚かではない。
「もしかして、猟兵?」
「ああ、そっか。もう他の人にも会ってるんだ」
 それに、ロファルはもう他の猟兵を知っていた。その年齢層が、親より大人から自分より年下の子供まで様々である事も。
「それじゃあ、バレる筈だよ。でも満点正解とは言えないかな」
 ロニはロファルの目を下から覗き込んで――。
「だって、ボクは神様だからね!」
 ニマリとした笑みを浮かべて、告げた。

●神の試練
「ねーお腹すいたよー!」
「携行食糧ならあるよ」
 後ろから聞こえるロニの声に、ロファルがポケットから棒状の食料を渡す。
「ボク疲れたー!」
「僕も疲れてる」
 またまた後ろから聞こえた声に振り向けば、ロニが地面に座り込んでいた。
「帰りたいよう!」
「僕は帰らない」
 段々、駄々っ子じみてきたロニに、ロファルが振り向かなくなってきた。
「けほっけほっ苦しいよう!」
「……」
 苦しくなさそうな咳に、ついにロファルが無言になる。

 ロファルの邪魔をしているようにしか見えないロニだが、事実、邪魔をしていた。
 敢えてクソガキを演じて、足を引っ張り続ける。そんな自分に対処させる事で、忍耐と成功体験を覚えさせる――と言う狙いがあっての事である。
 成功体験。それを得られれば、確かに自信に繋がるだろう。
(「成長には忍耐を学び、責任感を身に着けないと。探索も、ちょっとうまくいかないからって、投げ出すようじゃ困るよね!」)
 忍耐と、責任感。
 確かにそれは探索にも通じるものだ。
 だが――ロニのやり方には、ひとつ大きく足りない部分があった。
 どんな対処を成功とするのか、ロニの中にもはっきりとしたものがなかったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

祓戸・多喜
こういう話いいじゃん!応援したいじゃん!
でもすれ違いっぱなしでほら来た!な展開はお断り!
そうならないようビシバシ鍛えてあげるわよ!

農園跡近くでロファルを待つ。
近くに来ると結構匂うわね…(体デカいのでダメージの回り遅い)
少年来たら奪還者仲間よ!貴方も何か凄い感覚でここのヤバさを察知してきたわけね!とかさり気なくヤバい事アピールしつつヨイショ。
互いに自己紹介した後にどうするのかを窺って近づこうとするならストップ!近づかずに慎重に行くならいい感じね!
手段として狙撃のコツを教えてみるわ。弓も銃も狙い定めるのは似たようなもの!
これができれば大体の相手はイチコロよ!カッコいいし!

※アドリブ絡み等お任せ🐘


ミネルバ・レストー
わたしの手札は氷、ロファルの武装は銃と手榴弾…
参ったわね、相手が植物なら燃やすのが手っ取り早いのに
下手に撃ったりされたら花粉をばら撒きかねないし…

威力偵察程度ならできるかしら、ちょっと声をかけてみましょ
ねえあなた、そろそろ歩き疲れてる頃じゃなくて?
目的地まで、正確にはそのちょっと手前まで乗せていってあげてもいいわ
【氷竜天翔・六花繚乱】で喚んだ氷竜に飛び乗って手を差し伸べる
さあ、乗ってくるかしらね?

死なない程度に遠目から汚染植物を見せましょう
アレに考えなしに攻撃してたら…わかるわよね?
とりあえずわたしにできるのは凍らせることくらいだからと
アブソリュート・ウィッチでそうしてみせるわね
トドメは譲るわ



●氷晶より出ずるは
「ねえあなた」
 また1人で歩いているロファルに、桜色の髪の少女――ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)が後ろから声をかけた。
「ずっと歩いて、そろそろ歩き疲れてる頃じゃなくて?」
「実はとっくに疲れてる」
 軽いステップで追い越して、目の前でくるりと回ったミネルバに、ロファルは思わず足を止めて頷いていた。
「その素直さに免じて、ちょっとくらいなら乗せていってあげてもいいわ」
 物言いこそ不愛想で冷たい感じのミネルバだが、態々追いかけて追い越して、多少強引に足を止めさせている辺り、冷たさの奥にあるもの既に見え隠れしている。
「それはありがたい話だけど、乗せるって何に?」
 ロファルもそれを感じているのか、ミネルバを警戒するでもなく、むしろ乗り物が見えない事に首を傾げていた。
「いいわ、見せてあげる」
 少し悪戯っぽい笑みを浮かべて、ミネルバは手を掲げた。
「来なさい、クソダサドラゴン! わたしを乗せる栄誉をあげるわ」
 ミネルバの掌から、幾つもの氷の結晶が生み出される。
 目に見える程くっきりとした氷の結晶が、吹雪の様な勢いで吹き荒れ、渦を巻く。氷の渦は次第に収束し――深い青の鱗と氷に覆われた竜となった。

 氷竜天翔・六花繚乱――ドラゴンライド・ライトバージョン。

「これに乗る気はあるかしら?」
 氷竜の背中の上から、ミネルバが手を伸ばす。
(「さあ、乗ってくるかしらね?」)
 ドラゴンに乗る勇気があるか、それとも――。
 これはミネルバなりの試金石。
「これが――ドラゴン! 伝説の生き物!」
「あ、あら?」
 ミネルバが思った以上に、ロファルは氷竜に食いついていた。
「どこが、ダサいのさ! 乗せて!!!」
 ドラゴンって、少年の心をくすぐる生き物だよね。

●氷の竜の、背に乗って
「あ、あれだ。あれ、今までに見た事がない」
「……あんなのもあったのね」
 ロファルの指が示す先にあるものを見て、ミネルバが表情を曇らせる。
 氷竜の背からでも見える程に大きく育った植物は、いずれも丸い実をつけていた。
(「参ったわね……植物は燃やすのが手っ取り早いのに」)
 ゆっくりと高度を下げていく竜の上で、ミネルバは内心どうしたものかと思考を巡らせていた。ミネルバが持つ手札は氷の属性に偏っている。
 そしてロファルが持っているのは、拳銃と手榴弾のみ。
 火力不足は否めない。
(「ま、まあ、わたしの問題じゃないんだし? わたしに出来る事をしてあげて、トドメ(ラストアタック)を譲ってあげるのだから、充分ってものよね?」)
 胸中でそう折り合いをつけたミネルバは、掌に冷気を集める。
「アレに考えなしに攻撃したら……わかるわよね?」
「……攻撃するなら一気に、根こそぎ。そう教わったし、実の中がどうなっているかもわからない。やるなら一撃で壊すべきかな?」
 冷気を結晶と変えたミネルバの問いに、ロファルは少し思案して頷く。
「上出来。下手に撃ったりされたら花粉をばら撒きかねないからね。だから、凍らせておいてあげる!」
 ロファルの答えに満足気に頷いて、ミネルバは結晶を植物に向けた。
 アブソリュート・ウィッチ――雪と氷の結晶が、ミネルバが望むままに、雪と氷の吹雪を起こして、実を持つ植物を凍りつかせる。
「あとは、あなたがやりなさい」
「……わかった。やってみる」
 ギリギリまで高度を下げたミネルバの氷竜の背から飛び降りて、ロファルは腰のホルスターから拳銃を抜いて、構える。
 慎重に狙いをつけて――パンッ!
 乾いた銃声の後に、カァンコォンキィンと甲高い音が幾つも響いた。
 凍った植物の中で跳弾しまくった挙句に返って来た銃弾が、ミネルバの桜色の髪を掠めて飛んでった。
「…………どうしてそうなるの?」
「僕にもわからない……」
 ミネルバの氷の視線に、ロファルは震える声で返すしかできなかった。

●花の女子高生
「もー、ダメよ! あんな狙い方じゃ!」
 とても気まずい空気を、底抜けに明るそうな声が打ち破る。
「やーっと見つけたわ! 貴方がロファルくんね!」
 ノシッ、ノシッ、と静かだが重たい足音を地に響かせて現れたのは、セーラー服着た白い象――祓戸・多喜(白象の射手・f21878)だ。
「あら、あなた――大丈夫。味方よ」
 多喜の姿に見覚えのあったミネルバが、ロファルに告げる。
「そうそう。アタシも奪還者仲間みたいなものよ!」
 視線でミネルバに礼を伝えながら、多喜はロファルの頭に大きな手を置いた。
「貴方も何か凄い感覚で、ここのヤバさを察知してきたんでしょ。すごいじゃん!」
「は、はぁ……駆除は全然だけど」
 褒めているらしく、頭を撫でて来る多喜の、文字通り力強いヨイショに翻弄されながらロファルは頷く。
「そう? 近づこうとしないで、遠くから狙撃で破壊しようとしたのは、慎重で良い感じだと思うわよ!」
 そう。多喜の目から見ても、そこは良かったのだ。
「撃ち方がダメよ! 今から、アタシが狙撃のコツを教えてあげるわ!」
 言うなり、多喜は背負っていた波打ち湾曲したものを手に取った。

●弓道
「……曲がったこん棒?」
 多喜が構えたものを見て、ロファルが思わず首を傾げる。
「面白い冗談ね。弓に決まってるじゃない!」
 ロファルにツッコミながら、多喜は次に必要な物を手に取った。
 弓を取ったのならば、次に来るものは決まっている。
「……槍?」
「矢でしょ! どう見ても!」
 多喜が取った矢は、ロファルには槍にしか見えなかった。
「僕の知ってる弓矢と違う……」
 ロファルも弓矢を知ってはいた。人類が石器を使っていた頃から、弓矢は存在していたのだ。この世界であってもおかしくない。
 だが、多喜のそれは和弓と呼ばれる、やや特殊な形状の弓である。ロファルが見た事もないのも、無理はないだろう。
 まあそれを差し引いても、弓も矢も身長が2m50cmを超える多喜が持って丁度いいと言う規格外の弓なのだ。
 矢が尽きても、敵を弓で殴り倒せそうである。

「まず大事なのは、立ち方と姿勢よ。足を少し開いて、背筋を伸ばして」
 言いながら、多喜は二足に分けて足を踏み開く。
「で、弓だったらこう構えるんだけど……この時、身体の中心を意識するの」
 弓を膝頭に乗せておいて、多喜は矢を持つ手を腰に当てる。
「銃だと構え方は違うと思うけど、正しい姿勢で構えて、それから標的を見る」
 弓の弦に手をかけて、そこでやっと、多喜は凍り付いた植物の方へ視線を向けた。
 多喜が説明してみせたのは、足踏み、胴造り、弓構え、と呼ばれる、弓を射る手順。

 さらに打起こし、引分け、会、離れと続いて残心に終わる――即ち、射法八節。

「この辺は銃にはない手順だろうけど、こうして弓を引いて――」
 弓ごと両腕を掲げ、弓を押して弦を引き、弓を開き切る。その状態を維持したまま、番えた矢の先をピタリと標的に向け――弓を開く力が頂点に達した所で、放つ。
 多喜の放った矢は、真っ直ぐに飛んで、凍った植物に突き刺さった。

(「こういう話いいじゃん! 応援したいじゃん!」)
 この世界に転移する前。話を聞いた多喜の心は踊っていた。
 見た目は象の獣人だが、多喜の中身は普通の女子高生。こう言った、所謂恋バナは、とても好みだったようだ。
 だからこそ――すれ違いっぱなしとか見たくない。
 ほら来た!な展開はお断りしたい。
 だから多喜は、ロファルをビシバシ鍛えてあげようと思っていたのだ。

 そんな熱意が、弓を引く腕に籠っていたわけで。
 そもそも、多喜の和弓の名は『剛弓ハラダヌ』。八台の荷車がなければ運べなかったという、とある世界の伝承の弓と同じ名に相応しい大きな弓だ。
 それほど巨大な弓で、槍と見紛う矢を放つ。それは最早、弓道のレベルではない。

 バリスタ級の多喜の一矢は、凍った植物を一撃で粉々に撃ち砕いていた。
「狙い定めれば、当たるのよ。それは、弓も銃も似たようなもの! これができれば大体の相手はイチコロよ! カッコいいし!」
「確かにカッコ良かったけど、できる気がしない!」
 良い笑顔で親指立てる多喜に、ロファルは同じ声量で返していた。

●ロファルの成長――その5
 氷の竜に触れて乗った事で、氷の冷たさを身体で覚えた。氷結耐性1取得。

 とても真似できない狙撃だったが、狙いが大事という狙撃のコツは少し理解できた気がした。スナイパー1取得。


●刈りつくしました
 色々あったが、これほどの人数の猟兵が集まって、オブリビオンでもない毒性植物の駆除が出来ない筈がない。
 農園跡一帯は、いつの間にかほぼ更地になっていた。
 土地に残った毒素も浄化されつつある。
 それに、毒性植物がある中でも、汚染されていない植物も僅かに採取されたのだ。
 すぐは難しいが、またいつか、農地として蘇る事も可能かもしれない。

 そして嬉しい追加が一つ。
 毒性植物を刈りつくした事で、地下貯蔵庫が発見されたのだ。中には様々な種子が残されていて、その多くは汚染を免れているのが確認された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『タンブルアーチン』

POW   :    噛み付く
【牙の並んだ口】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【習性と味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    ごろごろ転がる
【棘だらけの身体で転がっての】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【追い風や下り坂等、有利条件】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ   :    棘ミサイル射出
【身体に生えた棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●転がり来るもの
 タンブルウィード。
 そのまま訳せば、転がる雑草。
 文字通り、枯れてちぎれた草がまるで玉の様になって、風に吹かれるがままに、コロコロと転がっていく主に低木の植物だ。
 転がる事で種を落とし、撒き散らして、種としての分布範囲を広げていたと言う。

 このアポカリプスヘルにも、昔はそんな植物も生息していたのだろうか。

 だが、今この荒野でタンブルの名を持っているのは、枯草ではない。
 ゴロゴロと、ゴロゴロと。当てもなく、大群で荒野をあっちへこっちへ転がるウニの怪物――タンブルアーチン。
 元は鉱山資源を食べて回収するための生体機械だったと言う。
 有毒なガスが出るリスクのある鉱山での活動を想定されていたのならば、毒の花の花粉や種をその身に纏っていたとしても、平然と転がり続けている筈だ。

 確たる証拠はない。
 証拠はないが、タンブルアーチンが毒性植物の種や花粉をこの農園跡に運んでいたとなれば、直線状の分布が多かったのも説明が付く。
 そして新たなタンブルアーチンの群れが、南から迫って来ていた。
 このまま、タンブルアーチンの進行を許せば、また毒性植物が生えてしまうかもしれない。折角発見された地下貯蔵庫も、汚染されてしまうかもしれない。

「拠点の方には行かなさそうだけど、放置は出来ないな。あれの駆除も、手伝って貰えますか?」

 猟兵たちに、ロファルが頭を下げる。
 ロファルの中に自然と芽生えた猟兵たちへの畏敬の念は、素直に頼る言葉遣いに現れていた。

 農園跡に、タンブルアーチンを進入させない防衛戦。
 この戦いは、ロファルに拠点防御を学ばせる、良い機会になりそうだ。
==================================
●2章について
 タンブルアーチンとの集団戦にして、拠点防衛戦です。
 タンブルアーチンの群れは、南から転がってきます。
 南側は農園跡から見て緩やかな上り坂になっていて、タンブルアーチンは下り坂を転げ落ちて来る感じになりそうです。

 今回も、タンブルアーチンの撃退を優先するも、ロファル少年の育成に重きを置くもご自由にどうぞ。

●ロファル君のステータス
 1章で猟兵の皆さんから様々な事を学んで、こうなりました。

 環境耐性2、世界知識4、第六感4、学習力6、動物会話1、浄化1、切断1、焼却1、操縦2、恥ずかしさ耐性1、運転1、メカニック1、制圧射撃1、火炎耐性1、勇気1、グラップル1、宝探し1、氷結耐性1、スナイパー1、団体行動1、礼儀作法1。

 増えたなぁ……。
 団体行動と礼儀作法は1章全体の結果です。

 今回の戦闘を生き残れば、拠点防衛2くらい生えそうです。
 それ以外に、戦闘経験や指揮経験を積ませてみると、今回も技能が生える可能性があります。

 プレイング受付は10/1(木)8:30~とさせてください。
==================================
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡みも歓迎!

👼👼👼ロニは自分の落ち度を棚に上げた!👼👼👼

えー!彼ほんとにビギナーなの?
いやチュートリアルもまだレベルって思わないじゃん!
ほんとにアポヘルの子?

●肩に手をポン
ねえ、ロファルくん……
●と深刻な顔をして……からあっけらかんと
キミってダメダメだったんだね!
用意したクエストも気付かないし…
●ちょびと残した毒草の察知・処理、ないし状況回避
よくそれで出てきたね!
●餓鬼球または他の猟兵が処理しました

●ついでにUC発動してその間に授業
もう薄々自覚してるだろうけど
キミほっとかれたら何度も死んでるからね!
キミ向きで必要な知識をいろはから教えておくよ!ほらみんなも手伝って!


陸郷・める
☆める
★7号

★さて、戦闘前にだ、おいガキ。てめえ自衛の心得は?それと特技は?
銃はいい武器だが、残弾、距離と使えねぇ状況なんざいくらでもあるぜェ?

というわけでだ。UC【万事は拳の道に通ず】。
ガキと望む奴に「そいつの特技と拳法が融合した謎武術」の心得を与えとくぜ
何も前出て殴り合えってわけじゃねェ、護身用だ
……それにてめぇならそういう経験や知識も他に活かせるんじゃねぇか?


(前へ出る)
☆……7号、今日、どうしたの?
★別に何もねェよ。どうせ鍛えるなら何にも負けねぇリーダーが良いってだけだ
☆……ん。……!きたよ……!
★ヒャッハー!近場は戦車の脚で踏み蹴り蹂躙し、遠くには砲撃だァ!

※アドリブ連携歓迎です



●伸ばし方
『さて、戦闘までまだ時間はありそうだ――ってことで、ガキ』
 タンブルアーチン到達まで猶予があると計算し、陸郷・めるの多脚戦車の生体コアであるモヒカンニワトリこと7号は、ロファルに声をかけていた。
『てめえ自衛の心得は? 特技はあるか?』
「特技?」
『おう。見た所、拳銃しか持ってねェだろ。他にねェのか? 銃はいい武器だが、残弾、距離と使えねぇ状況なんざいくらでもあるぜェ?」
「特技……特技……」
 7号に訊ねられたロファルだが、特技が思い当たらずに首を傾げる。

「ねえ、ロファルくん……」
 そんなロファルの肩を、ロニ・グィーの掌が、ポンッと叩く。
 その表情は、深刻そのもの。先ほど、それはもう判り易いウソ泣きしていたのと同一人物とは思えな――。
「キミってダメダメだったんだね!」
 その深刻な表情も長くは続かず、普段通りの顔に戻ったロニの口から、ド直球なダメ出しが飛び出した。
「7号より言葉に遠慮がない……」
『歯に衣がなさすぎだろ……』
「えー、そんなことないよ?」
 めると7号の声に、ロニは心外そうにあっけらかんと返しながら片腕を上げる。
「折角、用意したクエストも気付かないし……」
「クエスト?」
 ロニの伸ばした指の先に、ロファルが視線を向ける。
 その先には、見覚えのある草が少しだけ茂っていた。
 毒性植物だ。
「ちょびっとだけ毒草を残しておいたんだよ。ちゃんと察知して、処置するなり状況回避の手を打つなりするかなーと思って。でも、気づきもしないなんて!」
 黙して頷くロファルの目の前で、ロニが放った浮遊球体群『餓鬼球』が、きゅぽんっと残っていた毒性植物を吸い込んだ。

●ファーマー真拳爆誕(なお詳細不明)
 ドドドドドッ!
 タンブルアーチンが転がる地響きが、耳に届くようになってきた。
「ええと、特技なんですけど」
 そんな中、何か思いついたような顔になってロファルが7号に向き直る。
「畑仕事は得意です!」
『……』
 本当に、自信があったのだろう。今まで以上に張りのある声で言ってきたロファルに、しかし7号は沈黙していた。
「ああ。普段から植物とか育ててたんだ? だから、おかしな花粉の匂いに気づけたのかもしれないね」
「そうなんですかね? 枯らした方が多いんですけど」
 多脚戦車の中から聞こえためるの声に、当のロファルは自信なさそうに首を傾げる。
『き――聞いたことが有る!』
 そこに、押し黙っていた7号が大声を上げた。

『かつて畑仕事と武術を融合させた全く新しい格闘技――ファーマー真拳の使い手が存在したと……』

 何言ってんだ、このニワトリ。
 そんな空気が辺りに広がった。
「7号、それほんと?」
 戦車の中でめるが訝しむ――のだが、これは一種の『仕込み』だ。
『ああ。本当だ。考えてもみろ。武術は足が大事だ。踏み込みがへなちょこだと、大概のの技は威力がでねェ。だから畑仕事で土に慣れ親しむ事で、足が大地を掴む感覚を養ってだな――』
 7号は鉄の翼を広げ、農業と武術の親和性を尤もらしく演説する。
「農業と武術……」
 それを横で聞いたロファルの中には、畑の土いじりを模した武術のイメージと言うものが、ぼんやりと浮かんでいた。
 そのイメージこそが、めると7号の力。

 万事は拳の道に通ず。
 またの名を、セカイトンデモブジュツハクランカイ。

 7号の演説は、それを聞いて異論を抱かなかった者に、その者の特技と組み合わせた新たな武術の心得を与える、ある種の創造の業。
 まあ、その新たな武術と言うのが、今回の様に謎の武術になる事もあるのだが。
「強いんですか、それ?」
 ロファルのイメージも、決して強そうなものにはならなかった様だ。
『何も前出て殴り合えってわけじゃねェ。護身用だ』
 7号だって、いきなりロファルに戦わせるつもりはない。
 心得がイメージとなって生まれたとは言え、元々心得の無かったロファルでは、付け焼刃も良いところだ。
『まァ護身用の術は、多くても困らねェし……それにてめえなら、そういう経験や知識も他に活かせるんじゃねェか?』
「成程……やってみます。何に活かせるかは、まださっぱりですけど!」
 その言葉に、ロファルが拳を握って頷いた。

●歪んでいるのは
「やっぱり、ダメダメだね」
 そこに、ロニの声が少し離れた所から響いた。
「心得を覚えても戦えないって、本当にチュートリアルもまだレベルじゃないか!」
 傾斜の上から、ロファルを見下ろしロニが告げる。
 その角度が欲しかったのだが、ロニのすぐ後ろには先頭のタンブルアーチンが、もうすぐそこまで迫っていた。
 巨大ウニの棘が、ロニの背中に突き刺さ――らなかった。
「もう薄々自覚してるだろうけど、キミほっとかれたら何度も死んでるからね!」
 指一本動かしていないロニの背中で、タンブルアーチンが止まった。
 当のロニは受け止めた後ろを気にした風もなく、ロファルに対してマウントを取りにかかっている。
 クエストとして残しておいた毒性植物も気づかれなかったとか、そう言う事は丸っと棚に上げて。
「そんなレベルだなんて、良くそれで荒野に出てきたね!」
 マウントを取ると言う事は、精神的に上に立つ事だ。
 ロファルがどう感じたにせよ、ロニにとってはそうだ。

「そんなの、歪みが大きすぎる。修正しないと!」

 敵を無視してロファルと言う人の子の上に立つ行為に専念することで、ロニは暴風の象徴たる神として持っていた全知全能の力を一時的に取り戻していた。
 あらゆる攻撃を遮断し、生命維持すら不要になるほどに。
「この機会に、キミ向きで必要な知識をいろはから教えてあげるよ。みんなにも教しえて貰うといい! ほら、みんなも手伝って!」
『それどころじゃ――』
「ないね」
 ロニの後ろにどんどん迫っていたタンブルアーチンを、横から飛び込んだめるの多脚戦車が踏み潰す。
「……7号、今日、どうしたの?」
 多脚戦車を操縦し、潰したタンブルアーチンを群れの方へ蹴飛ばしながら、めるは戦車の中だけに聞こえる様に呟いた。
 自らヒャッハー戦車とか言う生体コアには、少し珍しい言動に思えたのだ。
『……別に何もねェよ。どうせ鍛えるなら何にも負けねぇリーダーが良いってだけだ』
 7号の真意はどうあれ、ロファルに与えた心得を一言で置き換えるなら、こう呼ぶべきだろう。
 ――可能性。
「……ん」
 めるもそれ以上追求せず、戦車の操縦に専念する。
 どうせ、今はもう話しをする時間ではない。
「……! きたよ……!」
『ヒャッハー! 近場は戦車の脚で踏み蹴り蹂躙し、遠くには砲撃だァ!』
 多脚戦車の足がタンブルアーチンを踏み潰し、砲口が火を吹いた。

●ロファルの成長――2の1
 謎の武術の心得をイメージと言う形で得た。グラップル2に上昇。
 1人だったら死んでいるという言葉で、死の危機を乗り越えた事を自覚した事でロファルの中に生への情熱が生まれた。情熱1取得。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒沼・藍亜
うーん、さっきは悪いことしちゃったから、せめてこっちで汚名返上っすかね

農園前の広めのスペースにスカート内からUDCを滴らせ広げ、
領域侵入者に足場の悪さとそこから延びる触腕で捕縛しての足止めを
……そもそもここまで来られないようにしたいっすけど

事前にUCで落とし子パンジャンドラムをぶん投げ爆撃、
と言っても本命は爆発時にぶちまける「ボクの体内のUDCと同じ黒い粘液」

ぶちまけ分から触腕を伸ばして近くのウニを捕縛+生命力吸収し
接敵前の数減らしと、動きを封じてロファル君にも狙いやすくするっす

ああいう大軍は他の人達みたいに一気に減らすか
罠とかで足並みを崩し一度に相手する数を減らして各個撃破、がおすすめっすよ


外邨・蛍嘉
ウニと栗って、違うものだよね?(内陸出身なので、ウニをあまり見たことがない)

ま、放置できないのは同意見さ。張り切ろうじゃないか、クルワれ
「デスネ。あとで拠点への土産話にもできそうデス」

うん、ロファルさん。私はさっきと同じUCを使うけど、どうしたらいいと思う?と問いかけてみよう。
相手は転がってくる。私とクルワは相手を視認さえすればいい。
…こっちに近づかれる前に、斬って捨てよう。大丈夫さ、私たちはそれができるんだから、どんと頼りな!
「指揮官は、出来る人に頼るのも大切デスヨ。アナタはその一歩を踏み出せてマス。自信もってクダサイ」



●滅びかけた世界だから
 最初の攻勢は凌いだが、タンブルアーチンの群れはまだまだ残っているようだ。
 連中が転がっている証の土煙が、遠くに砂嵐の様に見えている。
「ふむ……ありゃ、ウニかい?」
 そんなトゲトゲ怪物ゴロゴロ大行進を前に、外邨・蛍嘉の表情には警戒よりも物珍しさの方が先に表れていた。
 蛍嘉の生まれは内陸部だ。
 ウニを知らないわけではないが、海産物はあまり入らない土地であった。むしろ、あのようにトゲトゲと言えば浮かぶのは――。
「ウニと毬栗って、違うものだよね?」
「毬栗って……なんです?」
 振り向き訊ねる蛍嘉に、ロファルが首を傾げて返す。
「栗って言うのは、ああいうトゲトゲな木の実っすよ。見た事ないっすか?」
「トゲトゲな木の実……ないですね」
 横から口を挟んだ黒沼・藍亜に、しばし考え込んだロファルの答えで、蛍嘉は此処がどういう世界であるか、改めて思い出した。
「そうか……この世界じゃ、栗も珍しいんだね」
 滅びかけの世界だ。一度滅びる寸前までいった世界だ。
 探せば何処かに、栗の木は残っているかもしれない。
 だが、蛍嘉の生まれた世界ほど、栗の木は――自然は残っていないのだ。

●大群の乱し方
「秋の実りとか、なさそうっすねぇ」
 毒性植物とは言え緑がなくなって殺風景になった農園跡を見回しながら、藍亜はタンブルアーチンが転がり来る方へと歩いて行く。
 その足跡は『黒』かった。
 黒い何かが、藍亜のスカートの中から滴り、足を伝って流れ落ち続けている。遠目には血の様にも見えるそれは、血ではない。

 昏く暗い黒い沼。

 藍亜に憑いている黒い粘液状のUDC。滴り続けるそれは、藍亜の足元に、その呼称通りに沼の様に広がっていく。
(「これで最終ラインOK……そもそも、ここまで来られないようにしたいっすね」)
 足元に広がった黒を見下ろしながら胸中で呟いて、藍亜は手を広げる。
 沼の中から飛び出した黒い球体が、藍亜の掌に収まった。
「行くっすよパン子! 爆破っすよ!」
 そして藍亜は飛び出した黒い球体――沼の落とし子を、ぶん投げた。

 廻る冒涜の車輪――パンジャンドラムオトシゴ。

 放物線を描いて飛んだ落とし子は、その名を借りた兵器の様に地面に落ちても勢いを失うことなく坂を転がり上って――ビシャッ。
 タンブルアーチンとぶつかって、黒い粘液となって爆ぜた。
 タンブルアーチンが一瞬ふわりと浮き上がる。だが、それまでだ。転がる勢いを殺せたものの、タンブルアーチンは再び転がり続け――。
「そうはさせないっすよ」
 藍亜が呟いた瞬間、黒い粘液から伸びた触腕が、それを浴びたタンブルアーチンと近くのタンブルアーチンに絡みついた。
『――! !!!』
 転がる事も身体に生えるトゲを放つ事も出来ず、触腕に捉えられたタンブルアーチンは文字通り手も足も出なくなる。
 落とし子が爆ぜた黒い粘液は、藍亜の足元に溜まっている沼と同じだ。
「大群の怖さってのは、数にあるんすよ」
 次々と落とし子を投げながら、藍亜はロファルに告げる。
「一気に数を減らす火力なしに大群を相手にするなら、こうやって罠とかで足並みを崩して、一度に相手する数を減らして各個撃破、がお勧めっすよ」
「成程。例えば、網を投げるだかでも足並みは崩せますね……」
 藍亜と同じ事は出来ないにせよ、その落とし子の使い方に、ロファルは自分に出来るやり方を見出していた。

●真骨頂
「それじゃあ、その各個撃破は私が手本を見せようかね」
 藍亜の言葉を引き継いで、蛍嘉が蛇の目傘を手に進み出る。
「ロファルさん。どう倒したら――ああ、いや。どんな距離で倒せばいいと思う?」
「距離? ……近づかれる前に倒せればいいのでは……」
 蛍嘉からの問いに、ロファルはしばし考えて、そう答えを出した。
「正解だ。こっちに近づかれる前に、斬って捨てればいい」
 頷き、軽く身構える蛍嘉の姿に、ロファルが首を傾げた。
「――斬る?」
 確かに蛍嘉はそう言った。
 その位置から――どうやって?
「ああ、そうか。うん、ロファルさん。キミは私とクルワの剣を、目の前を薙ぎ払う剣か何かだと思っているようだね」
 その表情で、蛍嘉はロファルの自分の業に対する思い違いを悟った。
 まあ無理もない。ロファルは猟兵ではないのだ。奇跡の力を一度見ただけで、全容を理解できる筈も無い。
「見せた方が早いね。張り切ろうじゃないか、クルワ」
「デスネ。あとで拠点への土産話にもできそうデス」
 百聞は一見に如かず。
 蛍嘉が蛇の目傘を、水のような蒼い髪を持つ鬼――雨剣鬼クルワが影刀を構える。
 藤色と影の剣閃が迸った。

 斬撃舞台:雨剣鬼――ハゲシキアメノオニ。

 それは毒性植物を前にロファルが見たのと、同じ業。
 だが――ロファルは二度目で初めて知った。
 蛍嘉の目が届く範囲が、斬撃舞台となり得る事を。
 即ち、雨剣鬼の間合いも同じである事を。
 横殴りの雨のごとき斬撃が、まだ遠くにいたタンブルアーチン2体を真っ二つに両断するのを目の当たりにして
「とまあ、こんな感じさ」
 蛍嘉が振り向くと、ロファルは驚きに目を丸くしていた。

●訓練
「あれ? もしかして、3人の技って相性が良いのでは?」
 驚きが落ち着いたロファルが上げた声に、藍亜と蛍嘉が思わず顔を見合わせる。
 確かにそうだ。
 投げて設置できる罠で足並みを乱し、遠くも斬れる斬撃で罠にかかっていない敵から斬っていく――と言う戦い方ができる。
「じゃあ、指示を頼むっすよ。ボクは指示通りにパン子投げるんで!」
「えぇぇぇぇぇぇっ!?」
 藍亜の提案に、ロファルから驚きの声が上がる。
 だが、藍亜は本気だ。
 先ほどの事――ロファルに落とし子と意思疎通できないのを失念していた事を――藍亜は内心気にしていた
 『沼』に憑かれてからもう長いために忘れていたが、藍亜だって、どうして落とし子と意思疎通できるがと問われれば、説明が難しいのだ。
 けれども、藍亜自身ならばそう言う事にはならない。
 今度こそ、『他者を指示を出して動かすこと』に慣れて貰う事が出来る。
「ほらほら。迷ってる暇はないっすよ!」
「大丈夫さ、私たちはそれができるんだから、どんと頼りな!」
『指揮官は、出来る人に頼るのも大切デスヨ。アナタはその一歩を踏み出せてマス。自信もってクダサイ』
 藍亜の意図を察して、蛍嘉とクルワもロファルに発破をかける。
「……わかりました。それじゃあ――」
 それで意を決したロファルは、最初は少したどたどしいながらも2人に攻撃位置の指示を出し――見事、タンブルアーチンの先頭集団を駆逐した。

●ロファルの成長――2の2
 大群を崩すのに罠が有効だと知った。罠使い1取得。
 指示を出す事に、少しだけ慣れた。集団戦術1取得。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シエル・カーネリアン
【料理】【POW】アドリブアレンジ可

栗が転がってますねー。秋の味覚、栗ご飯が食べたくなって…え、ウニ?へぇそうなんだ…食えます?

食べる気はないですけど、手伝いくらいならやりますよー、以下略モードZ!向こうから来ますし、間合いに入ったら衝撃波でバシバシ斬ってきますよ。セイッ、ハッ、トォゥ!
お、フィーナさんのコンボ面白そうですね~。それならあたしは、UCに炎の属性攻撃付与しちゃお、「あたしの必殺技、パートワン、炎スペシャル!」焼き栗…もとい焼ウニにしてやりますよ!

ミッションコンプリート。え、やっぱ食べる流れすか!?いやだ~!変なの食べておなか壊したくない~!(※本当に食べるかどうかは流れに任せます


天星・雲雀
【料理】

外殻の過剰硬化は、中身が和らい種族の特徴です。きっと食べれる箇所が有るかと思われます。狩りましょう!

庭園の南側の坂から来るという事なので、南側に防壁と火炎放射器の罠をズラァ~っと、設置して、迎え撃ちましょう。

火炎放射器の火力とUC獅子の座流星弾で、ウニを一箇所に集めて棘で同士討ちさせましょう。

調理方法は、炎で炙った踊り食いです!

動かなく成ったら、殻を取り除いて、フィーナさんに試食してもらいましょう。

食材を無駄無く使うためにいろんな調理法を試すのも良いですね。サバイバルの基本です。

実食?自分ですか?(※本当に食べるかどうかは、状況次第で。よろしくおねがいします。


フィーナ・ステラガーデン
【料理】
(大きなリュックから調理セットを取り出し)
・・・ウニって高級食材らしいわよ?
毒性植物の種を運んでるとか!生体機械とか!んなこたあどうでもいいのよ!
大きいウニが転がってきたなら割ってご飯にかけて食べる!それが冒険者ってもんよ!!勇気を思い出すのよ!!

というわけでどんときなさい!調理準備は出来ているわ!
転がってきたら足止めにUCにて炎の壁を展開
飛んでくる針には多重詠唱による属性攻撃の火球で焼き払っていくわ!(本気)
針さえ焼き払えば後はこっちのものよ!

さあ解体よ!ご飯の上に乗せて一瞬の覚悟を決めた後食すとするわ!
(なんか色々お任せします)

(アレンジアドリブ大歓迎!)


アイ・リスパー
【料理】
「ウニですねっ!
いいですか、ロファルさん、よく覚えておいてください!
……ウニは美味しい、と!」

あ、間違えました。訂正です。

「こほん。戦場で重要なのは、生き残るための糧食です。
時には泥水をすすってでも生き延びねばならないのです……」

というわけで、おかず(ウニ)の用意は仲間に任せ、私はご飯を炊きましょう!

ここは農園跡地。
探せばお米ぐらい見つかるかもしれません!(ないかもしれませんが!)

というわけで、お米をといで、【マックスウェルの悪魔】の炎でご飯をたきます。

「さあ、みなさん、ご飯の用意ができましたよ!」(お米がみつかったかによります

……えっと、味は保証しないので、そのつもりで(料理下手


神代・セシル
【料理】
「食事前の掃除もメイドの勤です」
(いつのまにかメイド服に着替えた)

UCを発動し、炎属性ルーンソードでウニを斬り、ウニ肉を取る
念のために、【浄化】を使う

(フィーナ先輩が食べる前)
「お言葉ですが、そのまま召し上がる事、美味しくないと思いますよ。」
フィーナ先輩からフライパンとスパチュラをいただく。まずはウニを切り刻み、炒める(魔法で)
「いいですか、ロファルさん。人の心をつかむには胃袋から…です」
その後、臭みを取る、風味を高めるために(どこから取り出す)ガーリックパウダーなど調味料入れて、ご飯と一緒に炒めて………

「皆様、ウニチャーハン(仮)できました。よろしければ、召し上がってください」



●電脳の箱庭『料理』チーム~ストッパーいなくない?
 タンブルアーチンは、大群を作る習性を持っているという。
 群れが大きくなればなるほど、群れの規模は縦にも横にも大きくなる。
 故にひとつの所で群れを駆逐しても、他の箇所ではまだまだ土煙が起きていた。

 土煙上げて転がって来る、トゲトゲの大群。
「栗が転がってますねー」
「ウニですねっ!」
 それを前にしたシエル・カーネリアンとアイ・リスパーが、同時に別々の食材の名を口走っていた。
「秋の味覚、栗ご飯が食べたくなって……え? ウニ?」
「ウニですよ?」
 栗じゃないの、と首を傾げるシエルを、どう見てもウニじゃないですか、とアイも首を傾げて見上げる。
「あれはウニよ」
 フィーナ・ステラガーデンも、ウニ派に加わった。
(「栗って、猟兵さん達には有名なものなんだなぁ」)
 栗か、ウニか。
 先ほど他の猟兵も抱いていた疑問が此処でも再燃しているのを、合流したロファルはぼんやり眺めていた。
 一度、同じような話を聞いていたからこそ――ロファルは、これがそんなに大事な議論なのだとは思っていなかった。

「ウニって高級食材らしいわよ?」

 フィーナのこの一言を聞くまでは。
(「んん――?」)
 聞き間違いかな、とロファルが向けた視線に映ったのは、巨大なリュックの中から、フィーナが包丁やらフライパンやら、調理器具を次々と取り出している姿だった。
 毒性植物を燃やしに行く前に、その巨大なリュックをフィーナが背中から降ろすのはロファルも見ていた。
 見ていたが――まさか調理器具のセットだとは。
「フィーナ先輩。良い道具ですね。あとで幾つかお借りしても」
「いいわよ? セシルもウニで何か作る?」
 更にはいつの間にかメイド服に着替えた神代・セシルも、フィーナのリュックからフライパンやスパチュラ取り出し、しげしげと眺めている。
「あれ? 誰かと思ったら、セシルさんですか」
 それがセシルだと気づいて、ロファルは驚いていた。
「はい。料理と聞いたので、着替えました」
 料理はメイドの務めですから、と返すセシルの頭には、愛用のハットの代わりにホワイトブリムが乗っているし、いつものモノクルもかけていない。
 車の中で話をして本を勧めて来た時とは、印象ががらりと変わっている。
 ロファルがすぐにセシルと気づけなかったのも、無理からぬと言うものだ。
「というか、料理ですか……まさか、アレを?」
「そうだけど?」
「そうですが?」
 アレ、とタンブルアーチンの群れを指さしたロファルに、フィーナとセシルが『それが何か?』と言った様子で返してくる。
「いいですか、ロファルさん」
 後ろから聞こえた声にロファルが振り向くと、アイが真面目な顔で立っていた。
「よく覚えておいてください! ……ウニは美味しい、と!」
 アイも、食べる気満々だった。
「へぇ、ウニはそうなんだ……でもあれ、食えます? 硬そうだけど」
 タンブルアーチンを食べると言う事にあまり乗り気でなさそうなシエルに、ロファルがコクコク頷く。
「あんな風に転がり続けて棘も折れてないのです。そうした外殻の過剰硬化は、中身が柔らかい種族に多く見られる特徴です」
 雲雀の説明は、ロファルも頷ける。
 だからこそ、食べられるのかと疑問に思うのだが。
「だから狩りましょう!」
「どうして!?」
 いっきに飛躍した雲雀の論理に、溜まらずロファルがツッコミの声を上げた。
「きっと食べれる箇所が有るかと思われます。狩りましょう!」
「柔らかいと食べられるって、イコールじゃないですよね!?」
「いいですか、ロファルさん」
 ツッコミ続けるロファルの肩を、再び真面目な顔になったアイがそっと叩く。
「戦場で重要なのは、生き残るための糧食です。時には、泥水をすすってでも生き延びねばならないのです……。それに比べたら、ウニの怪物くらいなんですか」
「そ、それは確かに……」
 アイの言葉に、ロファルがはっとする。
「でも、ウニだけでは味気ないというのも判ります」
 あれ?
「というわけで、おかずの用意は皆に任せて、私はご飯を炊きます!」
 雲雀以上に、アイの結論も飛躍していた。
「ご飯? 炊けるの?」
「ふっふっふ。さっき地下倉庫でお米を見つけたんですよー!」
 首を傾げたフィーナに、アイが得意げにお米を見せる。
「……」
 ロファルはもう、ツッコミを諦めていた。

●間引き
 食べる為に駆逐する。
 方針が決まった頃には、タンブルアーチンの群れは先頭集団のトゲトゲが見えるくらいまで迫っていた。
「流石に数が多すぎますね」
 結構な数の群れに視線を向けて、セシルがルーンの刻まれた剣『レオナルソード』を手に取った。
「食べきれませんね。減らしましょう」
 ちょっとそこまで買い物に行くような足取りで、セシルはタンブルアーチンの群れに向かって進んでいく。
(「え? 食べきれる量だったら、全部食べる気なんですか?」)
 その背中を見送りながら、シエルは内心驚いていた。
(「もしかして……あたしも食べることになる流れ?」)
 シエルは他のメンバー程、タンブルアーチンに食材としての魅力を感じていない。というか、お腹壊しそうで嫌だ――と言うのが素直なところだ。
「少し気合入れて、手伝いした方がいいっすね」
 うっかり間引き過ぎて、自分の分がなくなるのは――仕方ないだろう。
「チェンジアップ、モードZ!」
 プロテクタースーツをレッドカラーに変えて、シエルはフォトンセイバーZを構え、セシルを追ってタンブルアーチンの群れへと駆け出した。

 研究によると、ウニは視覚器官に類するものを持たないという。
 その代わり、全身で光を感知して周囲の状況を把握しているのだと言う。
 タンブルアーチンが同じであったとしても、セシルに視力で勝っているのは視野の広さくらいのものだろう。
「目、心の窓よ……」
 視る力は、セシルの方が勝っている。
 遠くを見るのも、心を視るのも――それが、セシルの強みとなる。

 ――Windows of Heart。

 敵より視力が良い事を条件とした、強化術式。
 迫るタンブルアーチンの棘を避けて、セシルがレオナルソードを振り下ろす。
「これは……」
 思わぬ手応えに顔を顰めながら、セシルは剣を振り切った。半ばまで斬り裂かれたタンブルアーチンが、動きを止める。

「そんじゃいっちゃいますか、あたしの必殺技パートワン!!」
 そこに駆け込んできたシエルが、別のタンブルアーチンに飛び掛かった。
「セイッ、ハッ、トォゥ!」
 左薙、右切上、再び左薙。
 フォトンセイバーZの光の刃が三度閃く。

 Zスラッシュ。

 『Z』の字を描くような斬撃が、タンブルアーチンを3枚に降ろしていた。
「本当に、硬いですね」
「中々骨が折れそうです」
 1匹斬ったシエルの感想に、セシルも首を縦に振る。
 攻撃が通じない程の硬さではない。充分に斬れる。ただ、2人がいる距離はタンブルアーチンのあらゆる攻撃も届き得る距離だ。
 少しでも手間取れば、手痛い反撃を受けかねないリスクを抱え、2人はタンブルアーチンの群れの前に立っていた。

●炎の饗宴
「2人ともー!」
 そこに、後ろの方からフィーナの声が聞こえた。
「適当にやり過ごして良いわよ!」
 なんとも頼もしい声である。
「調理準備は出来ているわ!」
 食べる気が如実に表れている声でもある。
 その声に呼ばれたわけではなかろうが、一部のタンブルアーチンはセシルとシエルの横を通り過ぎて、フィーナの方へ転がって行った。

「どんときなさい! 飛んで火にいる秋のウニよ!」

 轟!
 フィーナが愛用の杖を掲げた瞬間、フィーナの前に炎が広がった。
 炎は広がり続ける。されど、それ以上前には進まず、そこに留まり燃え上がる。
 フィーナとタンブルアーチンの間に、炎の壁が現れた。

 ――炎ハ衝撃ヲモ喰ラウ。

 転がって来たタンブルアーチンを、質量を持つ炎の壁が食い止める。
 そしてそのまま、こんがりと焼いていく。
『!!っ!!』
 フィーナの炎を脅威と見たか、タンブルアーチンが転がりながら棘を飛ばす。ミサイルの様に飛んだ棘が炎の壁に突き刺さり――貫く前に燃え尽きた。
「それがどうしたって言うのよ!!」
 それでも後ろのタンブルアーチンが棘を飛ばすのを見て、フィーナは多重詠唱で、炎壁を維持しながら炎を放ち、棘を焼き落としてく。
「撃ちたいだけ撃ちなさいな! 棘がない方が、後で食べ易いしね!」

「あの棘、無差別なんですね」
 フィーナが景気よく棘も本体も焼いていく一方で、雲雀はタンブルアーチンが放つ棘が別のタンブルアーチンに刺さったのに気づいていた。
(「それなら一ヶ所に集めれば、同士討ちを狙えますね」)
 胸中で呟いた雲雀の周囲に、80を超える狐火が現れた。
「行きますよ、オトモ」
 狐火を呼ぶ雲雀の赤い左眼――機械式の義眼が明滅する。
「――撃ち抜けぬもの無し!」
 後ろで見ていたロファルには――狐火の『オトモ』が消えたように見えた。
 正確には違う。狐火は消えていない。雲雀はただ飛ばしたのだ。光速超重力推進装置を生やした狐火の『オトモ』を。

 獅子の座流星弾。

 常人の目には捉えられぬ速さで飛んだ狐火が、まるで流星の様にタンブルアーチンの群れに降り注いで行く。
 ただ速いだけではない。
 2,3発も直撃させれば、タンブルアーチンを充分倒せる火力がある。
 だが雲雀は、敢えて狐火を直撃させないように放っていた。義眼の視力でタンブルアーチンの周りを狙って狐火を落とし、熱と衝撃で群れを追いやっていく。
 フィーナの炎の壁が待つ方へ、転がって行くように。

「お、フィーナさんたちのコンボ面白そうですね~」
「雲雀さんの炎も正確です。成程、炎ですか」
 前でタンブルアーチンの群れを間引いているシエルとセシルも、後方で起きていることは勿論把握していた。
 自分達の業に足すべきが、炎である事も。
 セシルの指がレオナルソードの刀身のルーン文字に触れ、炎と浄化の力を付与する。
 シエルはフォトンセイバーZの出力を調整し、熱を強化した。
「食事前の掃除もメイドの務めです」
「必殺技、パートワン、炎スペシャル! 焼き栗、もとい焼ウニにしてやりますよ!」
 炎の属性を付与した刃で、セシルとシエルはこれまでより効率良く、タンブルアーチンを間引いていった。

●料理も戦い
 一方、その頃。
「エントロピー・コントロール・プログラム、起動します」
 アイの周りには、幾つもの電脳術のウインドウが浮かび上がっていた。

 マックスウェルの悪魔。

 アイのウインドウに走っている文字列は、熱を制御する電脳空間のプログラム。
「さて。まずは水ですね」
 その力で発生させた氷をフィーナから借りた鍋にぶち込んで、今度は炎を起こして火にかける。
 氷が溶けて水になった所で、アイはその中に――お米をぶち込んだ。
 そして、シャカシャカとお米を研いでいく。
 先に宣言した通り、アイは刃が閃き炎が燃え上がる戦いに背を向けて、1人真剣な顔でお米に向き合っていた。
「えっと……良いんですか。皆さん戦ってますよ?」
「大丈夫ですよ。あの程度の敵なら」
 戦わないで良いのかと訊ねるロファルに、アイはお米から顔を上げずに返す。それは仲間たちに対する信頼の表れ――なのだろう。多分。
 決して、お米の方が大事なのではない筈だ。
 初めチョロチョロ中パッパ、のお米に適した火力になる様に、コントロールプログラムを調整するのに忙しいからではない筈だ。
 多分。

「さあ、みなさん、ご飯の用意ができましたよ!」

 タンブルアーチンが転がって来る音が聞こえなくなった頃、アイの前の鍋の中には、見た目は美味しそうなご飯が炊けていた。

●ウニだって、割ってみるまで良し悪しは判らないから
「アイ! 大盛で頼むわ!」
「はいはい」
 フィーナの差し出した丼に、アイが縁ぎりぎりまでご飯を盛りつける。
 二人の傍らには、焦んがり焼かれた上に真っ二つに解体されたタンブルアーチンが転がっていた。
「こちらはどうします?」
「勿論、ウニも大盛よ!」
 ご飯が入ったフィーナの丼に、今度は雲雀がタンブルアーチンの中にたっぷり詰まっていた、ウニっぽい色合いのものを山盛りに乗せた。

 完成――アポカリプスヘル風、焼きウニ丼。

(「本当に食べるんですねぇ……」)
 感心しているシエルの前に、空の丼が差し出された。
「え、やっぱあたしも食べる流れすか!?」
「当然でしょ! 皆で食べるのよ!」
 驚くシエルに、丼差し出したフィーナがきっぱりと言い放つ。
「でもこれ毒性植物の種運んでたかもしれない、生体機械ですよね!?」
「毒性植物の種を運んでるとか! 生体機械とか! んなこたあどうでもいいのよ!」
 シエルの精一杯の抵抗は、どうでもいい、というフィーナの一言に一蹴された。
「いやだ~! 変なの食べておなか壊したくない~!」
「大きいウニが転がってきて焼けたなら、割ってご飯にかけて食べる! それが冒険者ってもんよ!! 勇気を思い出すのよ!!」
 躊躇うシエルに、フィーナが力説する。
「そうですよ。勇気をもってチャレンジです!」
 そこにアイも乗っかった。
 無謀と勇気を履き違えてはいけないって言ってなかったでしたっけーと言いたげな視線を、ロファルが向けているのはスルーですか。
 そこに、ふわりと香ばしい香りが漂って来る。
「気になるのでしたら、加熱処理したこちらは如何でしょう」
 匂いは、セシルの持つフライパンから漂っている。中には、パラパラに炒められた黄金色のご飯があった。
「ウニチャーハンです。ガーリックパウダーで臭みを取り風味を付けてありますので、ウニの風味が苦手な方にもお勧めできます」
「あ、こっちの方があたしは良いかも……」
 焼きウニ丼には抵抗があったシエルも、これならと頷く。
「いいですか、ロファルさん。人の心をつかむには胃袋から……です」
 シエルの丼にウニチャーハンを入れながら、セシルがロファルに告げる。
「限りある食材を無駄無く使うために、色々な調理法を試すのも良いですよ。サバイバルの基本です」
 雲雀もウニチャーハンを選びながら、ロファルにサバイバルの心得を告げていた。
 そう言う事は言いながらも――誰もロファルに、丼を渡していなかった。
 何故だろうか。
 5人とも、心の中で予感があったのではないか。

「さあ、頂くわよ!」
 意を決した――そんな表情で、フィーナが焼きウニ丼を勢い良く掻っ込む。それを見た他の4人も、それぞれの丼から口に運んで――。
 その手が止まった。
「こ、これは……」
「こんなはずでは……」
 雲雀とセシルの顔色が、良くない感じに変わっていく。
「あ、これやばい感じ……」
「味を保証するとは言ってません……から……」
 シエルの声が弱々しくなり、アイの輪郭が何だかぼやけていく。
「味は美味しいのよ……味は……」
 フィーナの手から落ちた丼が、乾いた地面に当たって――割れた。

 こうなる予感が、5人ともどこかにあったのではないか。
 そしてその時――ロファルが無事でないと、もう1つのチームを救援に呼んで貰えないと言う事も。

●ロファルの成長――2の3
 敢えて前衛に出る戦い方を目の当たりにした。遊撃1取得。
 攻撃を直接当てない戦い方がある事を知った。爆撃1取得。
 炎の壁の様に炎を罠と使う方法があると知った事で、罠使い2に上がった。
 屋外でお米を炊いたり料理するのを見て、料理に理解が深まった。料理1取得。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

電脳導師・アイザック
【消毒】
「なんじゃあの毬栗の様な物体は。まぁ良いわ、丁度試したいUCがあるのでな。」
【パンジャン=パレード】を展開。ロケットの推進力で多少の坂なら登れるが。
(尚、ご存知パンジャン=ドラムは真っ直ぐ進むのも有れば途中で横転したり脱線したり最悪Uターンしてくる。更にロケットが枯れたら推進力がなくなりこっちに戻ってくる危険性あり)

〜戦闘後〜
「ロファルよ、彼奴らアレを食おうとしてるみたいだがまず毒味させておけ。とは言えここに居るのはバーチャル、妖怪、吸血ハーフ、人間は御主と他二名…だったか?忘れたがまず他の者の様子を見るといい。とは言え普通の人間と猟兵とはでは身体の作りが違うかも知れんがな。」


シャルロット・シフファート
【消毒】
「まったく、陸ウニがゴロゴロと……オブリビオンは消毒よ!」
とUCを起動。空間を火炎に変換して棘が存在する空間ごと空間を火炎に変換する要領で空間断絶で防御。
更に【オーラ防御】で安全に四肢に火炎をエンチャントし身体能力を強化。そこから接近したタンブルアーチンを火炎を纏った蹴りや拳で砕く。
何ロファル?下着が蹴りの時に見えた?蒼生地の紅のレース?不可抗力よ、それより戦闘に専念しなさい!

〜戦闘後〜
「皆……骨は拾うわ……」
十中八九お腹を壊すだろうからグレムリンに自律内蔵したトイレとメディカルセンターを開設する。
「あ、空間属性で車内の空間は四次元的な広がりがあるのよ、これ」


鳳凰院・ひりょ
【消毒】
WIZ
アドリブ歓迎

生体機械、という事だけど…
外殻が機械で中身は生物(ナマモノ)なのだろうか?
…お腹が空いてきちゃうな

とりあえず農園跡に進入させないように防衛戦だね
小石を媒体に固有結界・黄昏の間を展開
農園跡の手前に地の疑似精霊による岩の壁を形成しバリケードに
風の疑似精霊に自分達の周りを覆うように小規模の竜巻を生成させ、飛来する棘を弾き返す
さらに地と水の疑似精霊を連携させ、敵が転がり落ちてくる坂の下へ沼を生成
転がって来た敵の移動を封じ、その間に味方に攻撃してもらう算段

防衛戦はいかに敵をこちらの土俵まで引っ張り込めるか
それと戦闘においては役割分担は重要、全てを一人でこなそうとしない事、だね


緋薙・冬香
【消毒】
さて、チーム入替完了っと
よろしく、ひりょさん、アイザックさん、シャルロットさん

ってこのチーム私やることないわね!
攻撃も防御も広範囲だし
バリケードより前に出たら巻き込まれそうだし
私、単騎仕様なのよね

というわけでロファルさんお喋りしましょう
ちなみにこの局面でロファルさんに出来ることって何だと思う?
作戦指示、後方支援、あるいは応援?
ふふ、前に立つリーダーもいれば、後ろから支えるリーダーもいるわ
戦い方は立場によって変わるのよ

というわけで本邦初公開
とっておきのユーベルコード見せてあげる
【生命讃歌・輝】いくわよ!
これはひとつの後方支援の形
場合によって味方を鼓舞することも、ね?
あなたはどうする?



●電脳の箱庭『消毒』チーム~救助お願いします
 慌てた様子のロファルに呼ばれてみれば、白目でピクピクしてたり、ヤバ気な顔色だったり、何か輪郭ぼやけてたりする料理チームの5人がぶっ倒れていた。
「ふむ。彼奴らアレを食ってああなったわけだ」
「そうです……」
 あらましを伝えたロファルが、電脳導師・アイザックの前で肩を落とす。
 何故止めなかった――とでも言われると思ったのだろうか。
「それでよい」
「え?」
 アイザックの言葉が予想外だったのか、ロファルの目が点になった。
「未知の食材の場合は、まず他の者の様子を見るといい。率先して毒味役を買って出ると言う者がいるのなら、毒味させておけ」
 アイザックの言葉は、間違っていない。生き残る為にはそうした慎重さと、犠牲を厭わないと言う方針も時には必要であろう。
 ――倫理的にロファルが受け入れられるかは、また別の話だが。
「心配では、ないのですか?」
「彼奴らとて猟兵じゃ。それに、バーチャル、妖怪、狐、吸血ハーフ……だったか? まあ人外揃い。御主と同じ人間もいるが、猟兵と普通の人間とでは身体の作りも違うかもしれんしのう」
 自身もホログラム装置から出ている立体映像と言う大概人外である事を棚に上げて、アイザックはロファルにニヤリと笑いかける。
 心配するな、と言いたいようだ。

「でも実際、何でなのかな?」
「そうね。人外揃いで食中りするなんて」
 鳳凰院・ひりょと緋薙・冬香も、料理チームの心配よりも、食中りの原因の方が気になっていた。
 放っておいても復活してくるだろうと、判っているのだ。
「生体機械という事だけど……別に毒々しくもなさそうだな」
 料理チームが二つに割って焼いてあらかた食べたタンブルアーチンの残骸を、ひりょが覗き込む。残留物も、ウニに似ているが――。
「生体機械……それじゃない?」
「外殻が機械で中身は生物(ナマモノ)じゃないのか?」
 冬香の言葉に、ひりょが顔を上げる。
「外殻『だけ』が機械とは限らないでしょ?」
 冬香のその言葉に、ひりょと、横で聞いていたロファルも「あっ」と目を丸くさせた。 生体機械とは読んで字の如く、生体――生き物をベースにした機械だ。
 つまり、タンブルアーチンは巨大ウニサイボーグのようなもの。その体内に、外から見ただけでは判らない微小な機械構造があったとしても、おかしくないのではないか。
 断言はできないが、食中りの原因にはなり得るだろう。
 さもありなん。

「大体の事は判ったし、十中八九こうなるだろうと思っていたわ」
 当たって欲しくなかった予想が当たった光景に溜息を零しながら、シャルロット・シフファートは倒れた料理チームを1人ずつ、足を掴んで引きずっていく。
 そして、『電霊炉心装甲車・グレムリン』の中に放り込んだ。
「えと、大丈夫なんですか?」
 それを見ていたロファルが、シャルロットに声をかける。
「車で休ませるなら、ひりょさんの車と分けた方が……」
 1台の車で5人は狭いと思ったのだろう。
 確かに、それが並の車ならそうだ。
「いいのよ。この中、外から見るより広いから――見てみる?」
 最後の1人を放り込んだシャルロットが、閉じようとしたドアをそのままに、ロファルを手招きして中を覗き込ませた。
「……? え!? えぇぇぇぇぇぇっ!?」
 顔を入れたロファルの口から、驚愕の声が上がる。
 外から見たら広い、程度の話ではない。
 グレムリンの中は内蔵のメディカルセンターと、所謂レストルームも展開されていて、5人が悠々と入る病室と言った様相になっていたのだ。
「空間属性で車内の空間は四次元的な広がりを……まあ、そう言うもんなのよ」
 どういう原理でそうなっているのか説明しかけたシャルロットだが、振り向いたロファルの全く分かってなさそうな顔を見て、説明を諦めた。
 それに――長い説明をしている余裕もなさそうだ。
 足元から響く震動。
 視線を向ければ、土煙がこちらに向かってきている。
 タンブルアーチンの次の群れの、襲来だ。
「……皆……骨は拾うわ……」
 そちらに対処すべく、シャルロットはパタンッとグレムリンの扉を閉めた。

●地、水、風
「さて、ロファルさん。防衛戦は、防衛するラインを越えさせない事と、いかに敵をこちらの土俵まで引っ張り込めるかだ」
 農園跡と外の境界を踏み越え、ひりょが背中でロファルに告げる。
「ラインを越えさせないのは簡単。壁を作ればいい」

 固有結界――黄昏の間。

 ひりょが後ろに放った小石を起点として、地の疑似精霊による岩の壁が農園跡と外の境界の上に聳え立つ。
「こちらの土俵は色々あるけど――例えばこう」
 ぽかーんとした顔で岩壁を見上げるロファルに、壁の向こうからひりょの声が届く。
 見れば、通り抜けるには狭いが向こう側を伺うには充分な隙間が、岩壁の間に空けられていた。
 ロファルが隙間から覗くと、ひりょが2つの小石を放り投げるのが見えた。
 黄昏の間で変換された疑似精霊の元素は、水と地。
 水の力でぬかるんだ土を、地の力で深く広げていく。
 ゴロゴロゴロ――ドプンッ。
 転がって来たタンブルアーチンは、ひりょの作った沼にはまって沈んでいった。
「とまあこんな感じかな。敵の移動を封じるのも土俵の内だよ」
 沈みつつあるタンブルアーチンが苦し紛れに放つ棘ミサイルを、風の疑似精霊の力で吹き飛ばしながら、ひりょは笑顔でロファルに告げる。
「それと戦闘においては役割分担は重要、全てを一人でこなそうとしない事、だね」
「「え?」」
 そう続けたひりょに、シャルロットとアイザックの視線が向けられた。

●万象を灼す
「御主、バリケードと進行不能トラップを1人で作りよったのう」
「それで、全て一人でこなそうとしない事って――ねえ?」
「そうかな? 攻撃は頼ってるじゃないか」
 説得力に欠ける――とでも言いたげなアイザックとシャルロットに、ひりょが苦笑を浮かべて返す。
「まあ、良いけどね」
 短く告げて、シャルロットが前に出る。
 その口元に小さくも不敵な笑みを浮かべて。
「其れは、異なる灼滅。其れは異なる生きる真」
 唱え紡ぐは、炎の言葉か。
「炎産霊が捧げる全ての理を焼く邪炎にして聖火」
 シャルロットの前に、炎が産まれる。
「それ即ち創造と終焉司る神話の起源なり」
 産まれた炎が、広がっていく。

 ――違う。
 バリケードの向こうから伺っていたロファルは、そう感じていた。
 電脳の箱庭の猟兵達だけでも、幾つもの炎の業を見て来たが、シャルロットの炎はこれまで見た炎とは、何かが違うと。

 万象を灼す未踏級の理たる聖火世界。
 バーニング・ナインワールド・レーヴァテイン。

 燃えているのは、シャルロットの前の空間。空間が、万象が炎属性で構築される異界へと変わっていた。燃えているのは、即ち異界の炎。
『!?!?!!!!』
 炎の異界となり断絶された空間を越えられず、しかし越えようとタンブルアーチンが転がり藻掻く。
「まったく、陸ウニがゴロゴロと……オブリビオンは消毒よ!」
 放っても置いても燃え尽きるだろうが、シャルロットはそれを待たず、オーラで覆った四肢に炎を纏わせ――まずは飛び蹴りを叩き込んだ。

 バリケードの向こうで見ていたロファルは、シャルロットのスカートの下の蒼生地が見えた気がしたのだが――理不尽な鉄拳を思い出し、口を閉ざした。

●過去から来りて駆け上る
「ぞろぞろと来よるな。毬栗の様な物体どもめ」
 シャルロットに焼かれる向こうに、後続のタンブルアーチンの群れが上げる土煙を見とめて、アイザックが目を細める。
「まぁ良いわ、丁度試したい術式があるのでな」
 アイザックがパチンッと指を鳴らすと、周囲に謎の機械が大量に現れた。
 2つの巨大な車輪が間に筒を挟んでくっついているようなデザイン。
「転がれ、爆ぜろ」
 アイザックが短く告げると、車輪につけられた幾つもの小さなロケット推進機構が火を噴いた。

 UDCアースの兵器に詳しいものなら、アイザックが呼び出したものが、とある過去の兵器に似ていると気づいただろう。
 ――パンジャンドラム。
 かつて存在した、昨今では『失敗作』扱いされている兵器だ。
 車輪にロケット式の推進装置を備えた、言わば『自ら走って当たりに行く爆雷』と言ったものだったらしいが、様々な欠陥があったという。
 真っ直ぐ進むものは殆どなく、横転したり脱線したり、最悪Uターンして来た事もあったと言うようなハズレだらけだったそうだ。
 もしもかつてのそれをこんな傾斜で使えば、推進器の燃料が切れた時点でタンブルアーチンと一緒に転がり落ちて来ただろう。
 かつてのそれであったなら――だが。
 別の場所で別の猟兵がその兵器をUDCで再現していたが、アイザックの術式は、かつて存在したという兵器にとても近く――そして、恐らくはそれを超えるもの。

 パンジャン=パレード。

 車輪と共に回り出した本体が、荒野の坂を駆け上がる姿を、かつてその兵器を作った者達が見ていたら何と思っただろうか。
 そんな感慨も、転がり落ちたタンブルアーチンとぶつかったアイザックのパンジャンドラムが爆ぜた爆音がかき消した。

●後方支援のお手本
 岩壁がせり上がり、空間が炎の異界と変わり、自走爆雷が爆発する。
「うん、このチーム私やることないわね!」
 次々と超常現象やら超兵器を披露する仲間を頼もしく思いながら、冬香はバリケードの内側で清々しい笑みを浮かべていた。
「というわけでロファルさん。お喋りしましょう」
「え。良いんですか?」
 冬香のお誘いに、ロファルが目を丸くする。
「私、単騎仕様――1対1が得意なのよ」
 意外そうなロファルに、冬香は穏やかな笑みを浮かべて返した。
「皆、攻撃も防御も広範囲だし。下手にバリケードより前に出たら巻き込まれそう」
 そう言う気を遣わせない方が、向こうの3人も動き易いだろうと冬香は考えていた。
「攻撃だけが戦いじゃないわ。この局面でロファルさんに出来ることって何だと思う? 作戦指示、後方支援、あるいは応援?」
「指示……は音がすごくて聞こえそうにないですし、何が起きているのか実のところ理解できていないので……応援でしょうか」
 冬香に訊ねられたロファルは、あまり悩まずにその答えを出した。
 自分に出来る事が、少しずつ把握できている証だ。
「ふふ、そうね。それでいいの。前に立つリーダーもいれば、後ろから支えるリーダーもいるわ。戦い方は立場によって変わるのよ」
 安全圏にいる事が、戦わない事とイコールではない。
 冬香がロファルに示すのは、後方での戦い方。

「というわけで、後方支援のひとつの形を見せてあげる」
 微笑を浮かべて立ち上がった冬香が、バリケードの隙間に腕を入れる。
「本邦初公開! とっておきのユーベルコード、いくわよ!」
 手首の先だけ出した冬香は、開いた掌を外へと向けた。
「現在(いま)を歩む力を、未来(りそう)を切り開く力を讃えましょう! 解き放て、生命の輝き!」

 生命賛歌・輝――ライフイズビューティフル。

 冬香の掌から、生命力の光が解き放たれる。
 暖かくそれでいて力強い光が、溢れ出して広がっていく。
「すごい……」
 ロファルの見ている前で、光はタンブルアーチンには何もせず、電脳の箱庭の仲間の3人に力を与えて、小さな傷も逃さず癒していく。
「場合によって味方を癒し、鼓舞することも、ね? あなたはどうする?」
「そうですね……」
 治療と増強を兼ね備えた後方支援のお手本のような業を見せた冬香の問いに、ロファルは今度はしばらく考え込んで――。

「その光、食中りは治せないんでしょうか?」
 ロファルはぶっ倒れた5人が収容されたままの装甲車、グレムリンを指さした。

(きっと3章始まる頃には復活するさ)


●ロファルの成長――2の4
 救助を呼ぶことに成功。救助活動1取得。
 何だかんだ言いつつちゃんと助ける姿に、優しさを見た。優しさ1取得。
 沼地が罠になると知った事で、罠使い3に上昇。
 何か見えても敢えて言わないことを覚えた。コミュ力1取得。
 転がる爆弾を見たことで、爆発に対する理解が少し深まった。爆撃2に上昇。
 後方支援のひとつの形を知った。鼓舞1取得。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

まつりん、ロファル、美味しそうな外見に騙されちゃ駄目
あれは、食せない。何よりウニは海洋生物……
一瞬惑わされた恨みも込めて、しっかり倒す

ん、わたしはウニもどきを倒すアドバイス

まず相手の動きをよく見て法則を確認
理屈で考えるより体感大事
音や風の動きを感じ取り、リズムで覚え
そして、突撃
うさみん☆、ミュージックスタート【Shall we Dance?】
踊るようにジャンプ、逃げ足でウニもどきをひらり避け
そして軌道に向けダッシュ、灯る陽光で叩き割り、破片はそのまま武器で受け、怪力で跳ね返す!

戦う緊張感を忘れず、でも楽しく
その場を盛り上げる事もリーダーのお仕事
さ、やってみて?


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!

おー。兄ちゃん、ヤル気だね! カッコイイ!
ハイ、これあげる!(ハチマキ)

うん。
食べちゃダメだね。
……ふつう、食べないケドね?

うーん。
アッチから来そうだね。
上取られると面倒だから、おいら陽動に出てくるね♪

ぴょんぴょんと目立つ動きで跡地を出発。
歌ったり踊ったり、避けたりいなしたり。
ときどき小突いたりして、ウニを惹き付けるように。
傾斜のきつくない方角へ誘導してみるね。

うさみん☆も踊ってるから、同じリズムでぴょーんぴょーん。
へへへ、捕まえてごらんなさーい♪

そこそこ距離を取ったら。
まつりん、オンステージ!
いっきまーす。おいらの歌、聞いてね♪(かわゆく)

『ぼえぇぇぇぇー!』



●美味しいの風は吹いていない
「あれは、食べちゃダメです!」
 『木元村』の旗が揺れる屋台風荷車の前でロファルは、木元家の双子の顔を見るなり、まだ遠いタンブルアーチンの群れを指さし告げた。
 思い出したのだ。
 タンブルアーチンを食べた事による惨事の、少し後で。
 美味しいの風に誘われ世界を巡ると言い、食いしん坊を完全に否定しなかった木元・杏の事を。

「そっか……ロファルも気づいたんだね」
 ――大丈夫、わかってる。
 そう言いたげにカウボーイハットをくいっと押上げ、杏は木元・祭莉に向き直る。
「まつりん。美味しそうな外見に騙されちゃ駄目。あれは、食せない」
「うん。食べちゃダメだね。……ふつう、食べないケドね?」
 その表情に思わず頷きながら、祭莉は内心で首を傾げた。
(「おいら、アレ食べる気ないんだけどな?」)
 ――食べる気だったの?
 と言いたげな祭莉の視線をスルーして、杏は続ける。
「ウニは海洋生物……あれはにせもの」
 杏の言う通り通りである。
 普通の、食べて美味しいウニが陸地を転がっている筈がないのだ。
「一瞬惑わされたけど、私の目は誤魔化せない」
「少しは惑わされちゃったんだ……」
「ん。恨みも込めて、しっかり倒す」
 ボソリと呟いた祭莉に、杏はこくりと頷き返す。
 そんな2人の隣で――。

「え。ウニって、海の生き物なんですか?」

 ロファルは、ずれた所に驚いていた。

●陽動と突撃の違い
「来ました! 別の群れです!」
 声を張り上げたロファルの指先で、土煙が巻き起こっている。
 タンブルアーチンの群れが坂を転がり出していた。
「兄ちゃんヤル気だね! ハイ、これあげる!」
 そんなロファルの額に、祭莉が屋台の中から取り出した真新しい白帯――ハチマキをぎゅっと結ぶ。
「兄ちゃんカッコイイ!」
「うん、似合ってる」
「あ、ありがとう……じゃなくて!」
 祭莉と杏に褒められ、ロファルが照れている間にも、タンブルアーチンの群れは坂を転がり続けていた。
「このまま上取られてると面倒だから、おいら陽動に出てくるね♪」
 言うが早いか、祭莉は屋台風荷車から飛び出して行く。
「当たらないよー♪」
 一気にタンブルアーチンの群れの鼻先まで駆けた祭莉は、衝突ギリギリで足元を強く蹴って斜め後ろに跳んだ。
「へーいへいへーい! こっちこっち」
 挑発するように狼の尻尾を揺らし、祭莉はぴょんぴょん飛び跳ねる。
「ゴロゴロとっ♪ 転がるウニ♪」
 更に、祭莉は跳ねながら歌い出した。
 タンブルアーチンがどう感じたにせよ、音として聞こえてはいたのだろう。
「へへへ、捕まえてごらんなさーい♪」
 タンブルアーチンの群れは、祭莉を追って向かう先を変えていた。
 傾斜が緩やかな方へと。

「ね? まつりん、当たるぎりぎりで曲がったでしょ」
「本当だ、すごい身のこなしです」
 後ろでは、祭莉の動きを杏がロファルに解説していた。
「ああ言う風に、まず相手――ウニもどきの動きをよく見て法則を確認するの。周りの音や風の動きも感じ取り、リズムで覚える」
 杏とて、知っている。敵を視る、周りを視る大事さを。
 そう、勢いで突撃するだけが戦いでは――。
「そして、突撃」
 まあ、最後は突撃するんだけど。
「あ、突撃はするんですね」
「待ってるだけじゃ狩れない」
 ひょっとして、杏の話ってば戦いと言うより狩りなのだろうか。
「理屈で考えるより、体感大事」
「己の本能を信じること、ですね」
 しかしロファルはそんな事を気にした風もなく、毒性植物の折に聞いた杏の言葉も思い出して素直に頷く。
「そうというわけで、うさみん☆、ミュージックスタート!」
 そんなロファルに満足気に頷いて、杏はウサミミメイド人形をけしかけた。

●戦いに、楽しさがあっても良い
 ――Shall we Dance?

 ウサミミメイド人形うさみん☆が、タンブルアーチンの群れに並走しながら、踊るように動き出す。
「あ、うさみん☆きた。じゃあ、おいらもー♪」
 祭莉の花狼咆哮から音楽も流れだし、辺りは一気に華やかな空気に包まれる。
「さ、やってみて? レッツ、ダンス」
「――え?」
 そんな空気の中、杏に踊りを促されたロファルの目が点になった。
「時に踊ったりして、その場を盛り上げるのもリーダーのお仕事」
 しかし杏は真顔である。
「同じリズムで、ぴょーんぴょーんってやってればいいんだよー♪」
 うさみん☆と一緒に飛び跳ねながら、祭莉も笑顔でロファルに告げる。
「それに楽しまないと、動けないよ?」
「――え? あ」
 そこまで言われて初めて、ロファルは自分の身体が重くなっている事に気づいた。
 うさみん☆のダンスこそが、杏のユーベルコード。
 うさみみメイドさんがダンス楽しんでいない相手の動きは、5分の1に遅くなる。
「戦う緊張感を忘れず、でも楽しく。ね?」
 杏はうさみん☆を戻すと、ロファルの手を取らせた。

 まるで1人のメイドさんの様に踊るうさみん☆だが、その正体はメイドさん人形。
 糸で操られ舞っている。
 操っているのは、杏だ。
 つまり、うさみん☆のパワーは、杏のパワーに比例する。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 怪力60相当の力で文字通り振り回されて、ロファルの身体が宙に浮いた。

 動きが遅くなったのは、ロファルだけではない。
 踊れる筈もないタンブルアーチンの群れに至っては、元々勢いも弱まっていた事もあって、動いていないも同然になっていた。
 そうなれば、群れを止めるのも難しくない。
「よっ、ほいっ!」
 祭莉が小突いて回るだけで、地面に刺さった棘が杭となる。
「んっ!」
 要所要所で、杏が恨みも込めて白銀の大剣でぶっ叩いて深く根付かせれば、後ろの群れの重みにも動かされない塊となる。
 そうして塊となったタンブルアーチンの群れの前で、祭莉が足を止めた。
「まつりんオンステージ、いっきまーす! おいらの歌、聞いてね♪」
 すぅっと大きく息を吸い込む祭莉の後ろで、杏がこっそり耳を塞ぐ。
 そして――。

『ぼえぇぇぇぇー!』

 祭莉の口から響き出す、何とも言えない歌声――もとい、人狼咆哮。
 その衝撃で、タンブルアーチンが粉々に砕けて崩れていった。

●ロファルの成長――2の5
 ぴょんぴょん跳び回る動きを見てジャンプのコツを掴んだ気がする。ジャンプ1取得。
 ダンスを楽しむと言う事を知った。ダンス1取得。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シリン・カービン
ガーネット(f01964)と共にロファルの指揮下へ。

【ピクシー・シューター】を発動、複製猟銃を宙に浮かべます。
「ロファル。この銃1挺1挺をあなたの拠点の戦士と思って下さい」
無論、求められれば助言します。
専門家の言葉に耳を傾けるのもリーダーの大事な資質。

「見たところ、突進が大きな武器のようですね」
ならば相手にとっての好条件を逆手にとればよい。
風向きに注意し、地形を把握し、突進力を殺す場所に獲物を追い込む。
「そう、そこが正解です」
すり鉢状の窪みに誘い込み、団子状態で勢いが殺されたウニ達を
一斉射撃で蜂の巣に。(地形の利用)

「最後まで気を抜かない様に。第二波が来ます」
成長に目を細めつつも、一言窘めを。


ガーネット・グレイローズ
シリン(f04146)と二人で

次はロファルに戦い方を教えようか。
といっても、銃の使い方ではなく、拠点を守るための
知恵を身に着けてもらおう。
農園の中で、ロファルが定めた陣地を守るんだ。
地形を利用する作戦を考えたうえで、私達二人を指揮してもらおう。
敵を一匹も陣地に入れずに全滅させるぞ!

南から攻めてくる敵に対し、私とシリンは西と東に別れて敵を迎え撃つ。
【念動武闘法】を使い、クロスグレイブを複製する。
これだけあれば撃ち漏らすことはないだろう…さあ、敵が来たぞ。
死角から敵の様子を窺える場所。
非戦闘員を避難させるのに要する時間。
罠を仕掛けるのに適したポイント。
そういったことを考えながら指示を出して欲しい。



●フォローは大人の役目
「さて、ロファルよ。次は私達から戦い方を教えよう」
「は、はい」
 真剣な表情のガーネット・グレイローズの前で、ロファルも神妙な顔を――してはいたのだが、その足はふらついていた。
「大丈夫でか?」
「だ、大丈夫、です……ちょっと、まだ目が回ってる感じがする……だけで……」
 シリン・カービンに返すロファルの声は、まだ少し張りが弱いまま。
(「さっきの杏のアレでしょうね……」)
(「私よりも力あるからな……」)
 そんなロファルの様子に、シリンとガーネットは思わず顔を見合わせ小声で話す。
 シリンとガーネットは、一部始終を遠目に見ていた。
 ロファルが、ジャイアントスイング状態で振り回されるのも。
 その反動が抜けきっていないこのタイミングでシリンとガーネットの番になったのは、ロファルにとって僥倖と言えよう。
(「あまり身体を動かさないで済むように、指揮に慣らさせましょうか」)
(「そうだな。それが良いだろう」)
 シリンもガーネットも、そう言う戦い方に慣れているのだから。

●軍を為す
「羽根妖精よ、私に続け」
「神殺しの力の一端をお見せしよう」

 ピクシー・シューター。
 念動武闘法――サイキックアーツ。

 シリンとガーネットが同時に行使したのは、装備複製の業。
 シリンの精霊猟銃と、ガーネットのクロスグレイブ。大きさも性質も異なるが、射撃武器と言うカテゴリだけは共通している2つの武器が、それぞれ80個以上も、ロファルの周囲の空中に浮かんでいた。
「ロファル。猟銃は私の、十字架のような大砲はガーネットの意のままに動きます」
 驚くロファルの前で、シリンは精霊猟銃を操り、空中で円陣の様に組ませる。
「ロファル。こいつらを使って戦う方法を考えるんだ」
 ガーネットもクロスグレイブを個別に回転させながら、ロファルに告げた。
 シリンもガーネットも、銃の使い方を教えようと言うのではない。
「戦士として使うのです。この銃1挺1挺をあなたの拠点の戦士と思って下さい」
「私達二人を指揮してもらおう」
 シリンとガーネットがロファルに身に着けさせようとしているのは、拠点を守るための戦いの知恵。
 自ら戦うのではなく、人を指揮する立場としての戦い方だ。

●議論が踊り、銃火も踊る
「さて。どうする? 敵は南から攻めて来るぞ」
 南に見える土煙に視線を向けて、ガーネットはロファルに訊ねる。
「今はいないが、非戦闘員がいてもここでは隠れる場所もない。避難させるには、時間が足りないぞ?」
「……お2人は、どう思いますか?」
 まるで急かすようなガーネットの言葉を聞きながら、ロファルは土煙に視線を向けて考えて――逆に2人に意見を求めた。
(「少し焦らせるつもりだったが……他の猟兵にも鍛えられたか? 最初にあった時よりも、場慣れしてきているな」)
(「「良いですね。専門家の言葉に耳を傾けるのもリーダーの大事な資質です」)
 若人の成長に、ガーネットとシリンはそれぞれ胸中で笑みを浮かべた。
「定石なら、私とシリンが西と東に別れて敵を迎え撃つ、だろうな」
「どうでしょう? それでは万が一抜けられたら、正面を止められません」
 ガーネットの提案した方針に、シリンがやんわりと穴を指摘する。
「合わせれば160以上だ。これだけあれば撃ち漏らすことはないだろう」
「見たところ、突進が大きな武器のようです。勢いは馬鹿にできないと思いますよ」
 ガーネットが反論すれば、シリンもさらに意見を返す。
 無論、2人とも本当に意見が食い違っているのではない。
 そう言う場面を、敢えて演じているのだ。

 ロファルがリーダーとなるのなら――例えならなくても――今後この世界で生きていくのなら、こうした場面は起こり得る。
 偏った武器しかない状況で、戦わざるを得ない事が。
 初めて見る武器を持つ同士と組んで戦う事も。
 そして、仲間内で意見が異なる事も。

「突進力を逆手に取るのです。勢いを殺せる場所に追い込めばいい」
「罠でも張るか? それには時間が――」
「ああ、そうか。ありますよ」
 ガーネットとシリンの偽論争を聞いていたロファルが、ぽんっと掌を打つ。
「向こうに爆撃で窪んだ地形があります」
 ロファルが指さしたのは、他の猟兵の爆撃で形の変わった地形。中心の方が深い、すり鉢状のクレーターの様な窪みになっている。
「もう少し深さがあると望ましいですが――いいですね。正解です」
 その地形は、ロファルが気付かないなら、シリンが言い出そうとしていた候補のひとつであった。
「ガーネットさんだけ、二手に分けられますか? 大砲で窪みに追い込んで、シリンさんの銃で仕留めるのが良いかと思うのですが」

 結論から言って、ロファルの思い付いた作戦は充分に及第点だった。
 ガーネットがクロスグレイブを二手に分け、左右からビームを浴びせれば、タンブルアーチンに空からの光砲撃を避ける術はない。
 吹き飛ばされ、押し流され、否応なくすり鉢状に窪んだ地形に転がり落ちていく。
 窪地の中で団子状態となり、勢いが殺されたタンブルアーチンに、シリンが精霊猟銃の一斉射撃を浴びせれば、棘を放つ間もなく群れは沈黙した。

 爆撃で追い込むのは、他の猟兵達がやってみせた戦術である。
 使った事はないとは言え、砲と銃の区別がつくくらいの最低限の銃器の知識はあったのだろう。それに、今回の経験を合わせて、ロファルはガーネットの武器の方が追い込むのに適していると判断するまでに至っていた。
「三日合わざれば、どころではないな」
「良い事ではないですか」
 ロファルの成長に、ガーネットの口元に笑みが浮かび、シリンも目を細める。
「ですが、最後まで気を抜かない様に。第二波が来ます」
「そうだな。もうその窪地は満杯だぞ?」
「でしたら、向こうの――」
 油断をしないよう窘めるシリンとガーネットに、ロファルは次の作戦を提案した。

●ロファルの成長――2の6
 戦いで変わった地形を利用する事を覚えた。地形の利用1取得。
 多数の戦士を動かす戦い方を学んだ。集団戦闘3に上昇。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャーロット・ゴッドチャイルド
「・・・うん、こっちね!」

ホーリーボルト

光の精霊を呼び出し、光の矢を放つ、精霊呪文。シャーロットが魔法学園で覚えた最初の魔法だ。

「ステファニー、あとはどう?」

上空の白フクロウ、ステファニーに向かって話しかける。シャーロットの持つアーティファクト「精霊のペンダント」の魔力により、互いの言葉を理解し、意志疎通がはかれることができる。あとは上空から親友に敵の位置を知らせてもらう。

「私はもう誰も傷つけさせたくないの」


ミネルバ・レストー
ふぅん、未来のリーダーたる素質はまちがいなさそうじゃない
自分自身の能力ももちろんだけど、人を使うってことも上手くなきゃ
集団が大きくなればなるほど手が回らなくなるわよ、頑張りなさいな

という訳で、わたしに指示を出す栄誉をあげるわ、光栄に思いなさい
わたしの手札は氷の召喚術、これを使いこなして見せて

見て、敵は身体の棘をぶっ放して無差別に攻撃する気よ
わたしはどうしたらいいかしら?
…そう、わたしたちへの攻撃だけ防いで勝手に自滅してもらえばいいわ
「アブソリュート・ウィッチ」の半分を六花の盾に変えて
「オーラ防御」の力を纏わせ味方を守りつつ
自在に宙を舞いもう半分を氷柱に変えて突き立ててあげる

他にも指示はある?


祓戸・多喜
ウニ…いや毬栗?
どっちでもあんまり違わないけど頑張って撃退しなきゃね!
アタシ達がいない時でも戦えるよう教え込んだ上でね!

ちゃんと教えた事は学んでるわねーと感心しつつ拠点防衛のコツを教える。
拠点防衛で重要なのはまず敵を見極める事。
飛び道具、特に壁とか砕いてくる奴は真っ先に潰さないときつくなるわ。
接近狙いの敵は一撃必殺が理想だけど数が多かったらそうもいかない、取捨選択ね。
倒さずとも足止めできればその間に次弾を準備できる、仲間がいるなら連携して任せる事もね。
それを基本に転がってくるのをいい感じに迎撃しよ!
UC発動し無理気な所は支援、それ以外はロファル君にできるだけ任せるわ!

※アドリブ絡み等お任せ🐘



●白い翼
 荒野の空に、白い翼が羽搏いていく。
「フクロウって、昼間も飛べるんですね」
 シャーロット・ゴッドチャイルドの腕から飛んだ白フクロウ、ステファニーが空に舞い上がっていくのを、ロファルは不思議そうに見送っていた。
 一般に、フクロウは夜行性と知られているが、昼間に飛べないと言う事もない。
 ましてステファニーは、ただのフクロウではない。
 親友のシャーロットの『お願い』を受けて、ステファニーは空からの目となる為に、空に翼を広げていた。

●素質は確かでも
 最初はユーベルコードも知らなかった少年が、猟兵達の能力に理解を深め、それなりの指示を出せるようになっている。
「凄いじゃない。教わったり見たりした事、ちゃんと学んでるわねー」
 ロファルの成長ぶりに、祓戸・多喜の口から賞賛の言葉が出ていた。
「ふぅん? 未来のリーダーたる素質は、まちがいなさそうじゃない」
 正反対に、ミネルバ・レストーはロファルに素質を感じたからこそ、手放しで褒めようとはしない。
「でも、まだまだよ。自分自身の能力をもっと磨くのは勿論、人を使うってことも、もっと上手くならなきゃだめよ」
 ロファル自身の戦力的な強さは、殆ど変わっていない。
 猟兵達は程度や方向性の差はあれど、ロファルに協力的だった。それは、とても特別な状況だ。
「集団が大きくなればなるほど手が回らなくなるわよ、頑張りなさいな」
 拠点のリーダーとなれば、今回集まった猟兵以上の人数を使う事もあるだろう。
 言い方はキツいが、ミネルバの言葉も一理ある。
「そうね。アタシ達はずっとはいられない。今回ほどうまくいくのは中々ない、って思っておいた方がいいと思うわ」
 だからこそ――多喜は、自分達が帰った後でもロファルが戦えるように、出来る限りの事を教え込んでおこうと考えていた。

●再臨、常勝の女神
「ステファニー、どう?」
 『精霊のペンダント』を握り締めて目を閉じ、シャーロットが呟く。
 ややあって、上空から「ホーゥ」と梟の鳴き声が微かに響いてきた。
「そう……ありがとう」
 『精霊のペンダント』を握ったまま、シャーロットは短く呟いてから目を開いた。
「もうすぐ大きい群れが来る。けどこれが最後だよ。他の群れはもう見当たらない」
 アーティファクトである精霊のペンダントを通して知った、ステファニーの視点からの情報を、シャーロットは他の猟兵に伝えた。

「これが最後なら、頑張って撃退しなきゃね!」
「そうですね」
 多喜に頷くロファルの顔も、自然と表情が引き締まる。
「最後なら、少しだけ本気出してあげる」
 そしてミネルバの口元にも、小さな笑みが浮かんでいた。

「ランキング上位常連、不敗の化身、常勝の女神――かつてのわたしを、特別に見せてあげるわ!」
 パチンと指を鳴らしたミネルバの姿が、足元から伸びた筒状の光に包まれる。
 十数秒ほど経って光が消えると、ミネルバの出で立ちが変わっていた。
 まず目を引くのが、背中から伸びている氷の妖精の様な翼。
 派手ではないが煌びやかなローブ。氷を削ったようなハイヒールと腕のリング。小さいが精巧そうな髪飾り。
 どれもこれもゲームアバター時代の全盛期のミネルバの最高レア装備。
 所謂レアドロップ品と呼ばれる、ゲーム内で幾つもないであろうアイテムだ。かつてのミネルバの『中の人の努力の結晶』と言えよう。

 あいつがわたしにくれたもの――リメンバー・オールマイティ・ミー。

「という訳で、このわたしに指示を出す栄誉をあげるわ、光栄に思いなさい」
 まあ、ミネルバが光栄に思えと言った所で、そのゲームを知らないであろうロファルには、『なんかすごそうな装備』としか映っていないのだけれど。
「わたしの手札は氷の召喚術。この翼も飾りじゃないから、少しは飛べるわ。さあ、わたしを使いこなして見せて?」
「ちなみにアタシは、また弓矢のつもりだからね!」
「光の精霊を喚び出して、光の矢を撃てる」
 ミネルバと多喜とシャーロット。
 3人の手札を活かす作戦を出そうと、ロファルは腕を組んで考え込む。
 だが、タンブルアーチンが黙っていなった。

●未熟さと成長の証
「あ。みんな、気を付けて。ステファニーが、撃って来たって」
 シャーロットが白フクロウからの情報を告げた直後。
 風を切る音を立てて、タンブルアーチンの棘ミサイルが飛んできた。
「させない」
「ふん」
 シャーロットは光で撃ち落とし、ミネルバは氷の盾を張って止める。
「もう。危ないじゃない!」
 多喜に至っては、素手で掴んでペキッと掌で折っていた。
「見た? 敵は身体の棘をぶっ放して無差別に攻撃する気よ」
 凍らせた棘ミサイルを放り捨てながら、ミネルバがロファルに訊ねる。
 迷っている時間は無い。
「わたしはどうしたらいいかしら?」
「今の盾を、皆にお願いします」
 決断を促すミネルバに、ロファルは答えを告げた。
「撃って来るだけなら、防衛しているだけでも、多分勝てます。あの棘、確かウニ同士にも刺さるんですよ」
 他の猟兵が追い込んで同士討ちを狙ったのを、ロファルは覚えていた。
「……そうね。わたしたちへの攻撃だけ防いで勝手に自滅してもらえばいいわ。でも、それだけで充分かしら?」
「拠点防衛で重要なのは、まず敵を見極める事よ!」
 言外に不足していると告げるミネルバに続いて、多喜が口を開いた。
「飛び道具って厄介よ? 特に壁とか砕いてくる奴は真っ先に潰さないと、倒した後がきつくなるわ。どこを抑えるのか、取捨選択ね」
 敵の同士討ちを待つことで抑えられるリソースもあるが、時間をかける分、消耗が激しくなるリソースもある。
「それに、接近狙いの敵がいないとも限らないでしょ?」
 多喜が指さした先に見える、土煙。
 それはつまり、全てのタンブルアーチンが棘ミサイルを撃っているとのではなく、転がっている個体も少なからずいると言う事。
「あ――」
「ステファニーが、こっちに向かってきている敵もいるって」
 ロファルが気付いた判断ミスを、シャーロットが告げた情報が裏付ける。
「……よし!」
 ミスを悟った事が、ロファルに作戦を決めさせた。

「飛べるミネルバさんに後ろの棘を撃って来る敵を凍らせて貰って、多喜さんとシャーロットさんで、転がって来る敵を迎撃。……で、どうでしょう?」
 敵が別れて動くなら、こちらも別れて迎撃する。
「良いんじゃない?」
「おけまる! いい感じに迎撃しよ!」
「うん、シャーロットもそれでいいよ」
 ロファルの出した答えに、ミネルバも多喜もシャーロットも異論はなかった。
「おまけ。さっき盾が欲しいって言ってたから」
 ミネルバの指が、『アブソリュート・ウィッチ』の角を弾く。飛び散った小さな氷の結晶が、氷のオーラとなって残る3人の盾となった。
「ありがとうござ――」
「それじゃ行くわ」
 ロファルがお礼の言葉を言い終わる前に、ミネルバは氷の翼を広げて――飛び立ったと思ったら、もうその姿は見えなくなった。
「……少しは飛べる?」
 想像以上の速さに驚くロファルの掌の上で、ミネルバの残した雪の結晶が溶けて消えていった。

●氷柱と、剛弓と、光矢と
「見えた」
 時速400キロ超で飛んだミネルバは、あっという間にタンブルアーチンの群れ後方、棘ミサイルが飛び交う空に辿り着いていた。
「折角この姿になったんだから、少し暴れさせて貰うわよ!」
 速度を維持したまま自在に宙を舞い、棘ミサイルを避けながらミネルバが『アブソリュート・ウィッチ』を掲げ、念じる。
 アブソリュート・ウィッチが少しずつ小さくなり、代わりに幾つもの氷柱が空に生まれて――タンブルアーチンに降り注いだ。

 一方その頃。
「多喜さんが先に撃って下さい」
 ロファルの声に頷いて、多喜が『剛弓ハラダヌ』を構える。
 その身体には先ほどまでなかった黄金の装飾が増えている。
 それだけではなく、何か、神々しさのようなものを感じる光も纏っていた。

 其は障害を除くもの――ヴィグネーシュヴァラ。

 UDCアースのとある神話に、ガネーシャと言う多喜に似た象頭の神がいる。
 その名は群衆の長と言う意味だが、障害除去の神と言う別の顔も持っている。
 障害を退ける神の力を行使した多喜は、殆ど動けなくなる代わりに、棘ミサイルを浴びてもびくともしない護りの力を得ていた。
 そしてもう1つ――剛弓ハラダヌの強化。
「邪魔者は全て跳ね飛ばしてやるんだから!」
 放たれた槍のような矢が、転がって来るタンブルアーチンに突き刺さり、貫いて、その後ろの個体に突き刺さり、貫いて――次々と貫いていく。
「一撃必殺が理想だけど、あんなに数が多かったらそうもいかないわね!」
「あれだけ貫ければ充分だと思いますけど!」
 やっぱり同じことは出来る気がしないと思いながら、ロファルはシャーロットに視線を向けて、小さく頷いた。
 頷き返したシャーロットが、多喜の前に出る。
「光の精さん、力を貸して!」
 片手を掲げて、シャーロットが声を張り上げる。
 それは、シャーロットのはじまりの魔法。
 魔法学園で覚えた最初の魔法。
 今やシャーロットの声に応えた光の精霊の力は、200を超える光の矢を為す。
「もう誰も傷つけさせたくないの」
 シャーロットが掲げた手を下ろすと、光の矢が雨となって、中央をぶち抜かれたタンブルアーチンの群れに降り注いだ。

 多喜の弓矢は、1発1発を撃つのに少し時間がかかる。
 その穴をシャーロットに埋めて貰う形にするのが、ロファルの考えた2人の連携。

 前では剛の矢と光の矢、後ろでは氷柱。3つの矢が、タンブルアーチンの最後の群れを沈黙させるまで、あまり時間はかからなかった。

●ロファルの成長――2の7
 空からの、高い視点からの索敵の有用性が身に染みた。索敵1取得。
 指揮経験が続いて、猟兵の連携を考えられるに至った。集団戦闘6に上昇。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『この荒廃した世界に花を植えよう』

POW   :    花を植える為に荒れ地を耕したり瓦礫を撤去する

SPD   :    花を植えるのに適した場所を探したり、花壇を整えたりする

WIZ   :    花の種や苗を植えたり、水やりなどをしてお世話をする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●帰るまでが冒険です
「見えました! あそこです!」
 荒野に、弾んだ調子のロファルの声が響く。
 少年が指さした先には、大きな廃墟が見えた。

 ――時間があるなら是非、僕の拠点に来てください。物資の余裕はないので大した事は出来ませんが、エルや他の拠点の人達に、皆さんの事を紹介したいので。

 そうロファルが猟兵達に申し出たのは、件の農園跡を出る直前の事。
 猟兵達に断る理由はない。
 ――むしろ、こっちが本番。
 顔には出さないものの、そう思っている猟兵もいたかもしれない。

 ともあれ、道中に特筆すべき危険もなくロファルの拠点に辿り着いた。
「ロファル? ロファルじゃないか!」
「お、おお……帰って来たぞ! 心配させやがって!」
 拠点の広場に集まっていた大人たちが、帰って来たロファルに気づいて声を上げる。
 声を聞き付け、廃墟の中から人々が飛び出して来た。
 皆、一様にロファルの無事を喜び――そして猟兵達に気づいて、驚く。
「彼らは奪還者のようなもので、僕の恩人だよ。実は――」
 かくかくしかじか。
 ロファルから顛末を聞いて、二度目の驚きに周囲がまたざわついた。

 アポカリプスヘルでは、優秀な奪還者は歓迎される存在だ。
 奪還者のようなものである猟兵が、ロファルの招待でこの拠点を訪れた。
 その事実が、人々のロファルに向ける評価を変えさせる。
 ――良く帰って来た。
 ――もう立派な大人だな。
 ロファルを囲む人の輪から、賛辞の声が次々と上がっていた。

●帰ってからも少しだけ続くんだ
 それはそれで、喜ばしい光景だ。拠点の人々の認識を変えると言う部分は、もうこれで達成していると言えるだろう。
 だが、その渦中にいるロファルは――心中穏やかではなかった。

(「嬉しいけど、告白なんて出来る空気じゃなーい! っていうか、エルは何処!? 何でどこにも……もしや、あんなこと言って出ていったから、愛想尽かされた!?」)

 いつかではなく、帰ったら言おう。
 ロファルが密かにしていた決心は、早くも鈍りつつあった。

 そして、もう一人。
(「む、むむむむ……!」)
 拠点の中から様子を伺い、人の輪に加わっていない少女がいた。
 その少女こそ、ロファルの幼馴染のエルであり――その心中も穏やかではなかった。
(「なんなの、なんなの! 帰って来たと思ったら、知らない人たちを連れて! しかも女性も多いし! どういう知り合いなんですか!」)
 本人は決して認めないだろうが――要はこれ、嫉妬である。

 少年と少女の明日は、果たしてどうなるのだろうか。

●拠点情報
 彼らの拠点について、もう少し見て回っておこう。
 近くで良く見てみると、廃墟は一つの建物ではないのが判る。
 3~4階建ての建物が、幾つか密集しているのだ。それぞれの建物は、2階か3階で短い通路の渡しで繋がっているののが確認できた。
 そんな渡しの下には、中庭のような広場が見える。
 外からは見えないが日当たりは悪くない。農園跡で見つけた種や苗や米を植えるスペースに良さそうだ。
 もうひとつ特徴的なのが、1階部分だ。玄関に当たる出入り口が、1つの建物に複数ある。しかも、いずれも複数人の出入りが出来る規模だ。
 一部の猟兵達は、ここがどんな建物の廃墟なのか見当がついていた。

 渡り廊下を持つ建物、と言うだけなら幾つかある。
 だが、大人数が出入りできる玄関を複数持っているとなると、答えは1つ。

 恐らくは――元学校。

==================================
●3章について
 何故拠点を元学校の廃墟にしたのかって?
 ラブコメと言えば学校でしょう。(偏見)

 猟兵の皆様の尽力で、ロファルは無事どころか大きく成長して、拠点に帰って来ることが出来ました。
 農園跡で見つけた種とか苗とか米を、持ち帰って来ています。
 人々の心の癒しとなる花々や未来の食料を植えつつ、ロファル君に将来のリーダーとしての心構えとか、最後のレッスンをしてください。

 以上、建前終わり。

 本音?
 拠点壊したりとか公序良俗に反するような事しなければ、どうぞお好きに。

●新NPC情報
 エル。15歳の少女。ロファルと同い年の所謂、幼馴染。
 兄がロファルに色々な事を教えていた奪還者でした。数ヶ月前に荒野に出たきり、帰って来ていません。(故人)
 そこが少しネックになっています。
 同じ道を辿って欲しくない故に、ロファルが奪還者となる事には抵抗があるとか。
 あと異性に求める基準が兄準拠になってしまっているとか。

「ええ。兄と比べたら、ロファルはまだまだです。昔は私の方が駆けっこ速かったくらいなんですよ。……でもずっと頑張ってたのは知ってるし、頑張ってる時の表情は、時々カッコ良……それにロファルにはロファルの良さがあるのも知っているし……でも兄と比べたらまだまだなんだから! だからロファルから告白してくれたら……とは……」

 という感じで、素直になれずに待ちの姿勢です。
 いざとなると逃げるかもしれない。

 エルの兄について少し触れておくと、ロファルとはタイプの違う人でした。
 ノリと勘と身体能力で何とかする系。知性よりパワー。

●ロファル君のステータス
 1,2章通して猟兵との様々な経験で、団体行動2、学習力7に上昇。
 車に酔ったり竜に乗ったり物理的に振り回されたりして三半規管が鍛えられた。悪路走破1取得。
 猟兵と共に拠点に帰還して、人々から一目置かれた。存在感1取得。

 以上を踏まえまして、3章開始時点ではこうなりました。

 環境耐性2、世界知識4、第六感4、学習力7、動物会話1、浄化1、切断1、焼却1、操縦2、恥ずかしさ耐性1、運転1、メカニック1、制圧射撃1、火炎耐性1、勇気1、グラップル2、宝探し1、氷結耐性1、スナイパー1、団体行動2、礼儀作法1、拠点防衛2、情熱1、罠使い3、集団戦術6、遊撃1、爆撃2、料理1、救助活動1、優しさ1、コミュ力1、鼓舞1、ジャンプ1、地形の利用1、索敵1、悪路走破1、存在感1。

 一般人ですよ?

●プレイング
 当方のスケジュールの都合と、日常章で成功度が少なめの為『全員に一度再送して頂く』という形にさせて頂きたいと思います。
 というわけで、最初の送信はいつでもどうぞ。
 再送のタイミングは、こちらからツイッター、MSページで告知します。プレイングは最初の送信で保存してますので、再送は1度で大丈夫です。
 あまり伸ばしてもなんですので、今の所は10/13か14まで受け付けて、16か17辺りに再送受付、揃い次第公開、というくらいに進められればと思っています。
==================================
ミネルバ・レストー
うっわ、やめてよね
めんどくさいのはご免よ、わたし先帰るから

……ああもう! つまんない誤解されたままなのはもっとめんどくさい!
明日、世界が滅んでも後悔ないようにして頂戴
つまんない意地とか照れとか、そういうのいいから!

エルを探すのは大変そう、ロファルを焚きつけた方が早いかしら
でも下手に二人きりになるとまた勘違いされそうで面倒だから……
敢えて人が多いところで堂々と話を振ってやりましょ

ねえあなた、好きな人はいる?
いるならさっさと告白しちゃった方がいいわよ
他の男に取られたり、そもそも世界が滅んだり、ないとも限らないし
それにね、女は基本的に男の方から告白してもらいたいものなの
……で、いるの? 好きな人は


シャーロット・ゴッドチャイルド
「・・・ええと、ロファルさんでしたっけ?」

白フクロウステファニーを肩に乗せながら、挨拶をするシャーロット。

「・・・私は何も守れなかったから・・・だから、ロファルさんは大切な人を守ってあげて。」

ステファニーにえさをあげながら、少し寂しそうに話すシャーロット。
シャーロットはかつて、自分の生まれ故郷をオブリビオンの襲撃により失っている。あの時、今の力があったら・・・そんなことを思うこともあった。

「そちらの人は彼女さんですか?・・・大切にしてあげてくださいね。」

子供らしい、無邪気な笑顔を見せるシャーロット。


シャルロット・シフファート
良い、ロファル。アンタは今回の旅路で色々なものを培った。
その中で学習力と集団戦術は飛びぬけているわ。
そして、個人的な見解になるけど、アンタはエルの兄のようになるには相当な時間がかかるわ。
なら別のアプローチとしてエルの願いを叶える英雄にでもなってみなさい。
エルの願いは「誰にも死んでほしくない」というものだと思うのよ。
ならば、その願いを叶える英雄というのは『一人一人の力を理解し、適切な指揮を行って多くを生かす指揮官』という存在……それって、カッコいいと思わない?


アイ・リスパー
【お花を育てたい】
「フィーナさん、あなたのことは親友だと思っています。
……ですが親友相手でも譲れないことはあるのです!」

【高機動型強化外装】でパワードスーツを装着し高速で学校の廊下を飛翔。
フィーナさんを追い抜いてトイレに飛び込み、個室のドアをロック!

そして、しみじみと呟きます。

「ロファルさん、エルさん、よく覚えておいてください。
この世界では、明日を無事に迎えられるかも分かりません。
なので、そうなる前に想いの丈をぶつけておくべきなのです」

フィーナさん、あなたのことは忘れません。
私のために犠牲になってください。
この世界は無情。神はいないのです。

……そして個室に紙がないことに気づき絶望するのでした。


黒沼・藍亜
――呼ばれた気がする。(ここからが本番だと思ってる猟兵)

さっそく目立たないように気を付けつつもUC【12/24×2/14】!!!
幻の雪を降らせてこの拠点を「思わず想いを告白したくなるあの日」のロマンチックな雰囲気に突き落とすっすよ!
……彼らにこの日のネタが通じるかという疑問は残るっすけど、状況に適応した者の行動成功率が上がるのは世界の真理だから問題なし。ついでに雪は幻だから積雪とか気温とか気にする必要もなし!

あ、そんな空気に突き落とした本人は遠くから他の人のやり取り含めニヤニヤしながら眺めてるっすかね
……まあボク自身にアドバイスできることないし(その手の実経験0)
※アドリブ等歓迎っすよ


陸郷・める
★7号

(めるは戦車で農作業の手伝いまたは疲れてすっかりおねむ)

(一方その頃)
★……よし、唐突だがテメェら何か特技はあるか
あァ?拠点の防衛もどっかに探索に行くのも一人より大勢の方がやり易いだろうが。何より、「生き残るために使えるもんは何でも使え」ここはそういう世界だろォ?
(ご高説ぶち始めUCまで使う7号(お出かけ形態))

……ん?ヒャッハー!(ロファルを見つけて蹴りを入れる)おいガキ!テメェが何に迷ってんのか知らねぇけどな、この世界、それが明日も残ってるとも限らねぇ
……終わる時後悔しかねぇような生き方だけはすんじゃねェぞ、ロファル。

(蹴りいれたので住人達の謎武術の餌食になる)
※アドリブ他歓迎です


フィーナ・ステラガーデン
【お花を育てたい】
(ロファル、エルの二人がちょっとでも良い雰囲気になりそうなタイミングでトイレ前からけたたましく響く会話)

アイイーー!!早くそこを開けなさい!!(ドンドンドン!)
私から!私からウニがでちゃううう!!
いいの!?このままだとこの拠点のド真ん中に直下型ボム(隠語)を放つことになるわよ!?
ぎゅーきゅるるる(腹部から奏でられる不穏なシンフォニー)
ふぐうぅぅうッッ!!(限界までの内股と滝のような脂汗)
はやく!ハリーアップ!!はやくううう!!!
世界が明日まで持たないわ!今日世界が滅びるわあああ!!(半狂乱でガチャガチャ!)

(あ、なんか本当にすみません。アレンジアドリブ大歓迎です)


神代・セシル
適当なタイミングでロファルさんにはなしかける。
「年下の私が言うのはおかしいかもしれませんが。一つを教えてあげましょう」
「愛は理解とケアの別名です」
「ロファルさんなら、きっとわかると思っています」
 
エルさんのところへ
「エルさん、良ければこれをぜひ…」
『男の子を落とす方法』という本をあげた後、すぐにその場から逃げて、花を植えて行く。

【アレンジ・アドリブ歓迎】


外邨・蛍嘉
さてと、ロファルさん。リーダーは内心不安でも、堂々としていた方がいいのさ。
リーダーはね、皆の『後ろにある支え』なんだよ。

この持ち帰った種と苗なんだけど。
日当たりのいい場所に植えた方がいいみたいでね、クルワと一緒に中庭に埋めるけれど…。
好きな女の子、探した方がいいよ。そして正直に伝えるといい。
…また今度、って思ってたら伝えられなくなるもんだよ。
「野暮デショウガ、これも事実デス。ワタシたちは、それを知ってイマス」
…そうでなくても、フラグ立てそうなんだよね、ロファルさん…。

私たちの野暮はここまで。あとはお手伝いでもしていようか。


鳳凰院・ひりょ
エルさんが一人のタイミングに接触試みる
今回、道中でのロファルさんの様子を知っている範囲で話す
彼は道中で驚異的な学習速度を見せて色々な事を吸収していった
才能が開花したように

だが、その一方で俺は心配だ
彼はまだ15歳
今後も俺達がいない所で沢山の困難に直面するはず
その際には辛い選択肢を迫られる事もあるだろう
そんな彼を支える者、誤った道へ進もうとした時に正せる者
そう言った存在が彼には必要だと感じる

エルさんは彼の幼馴染と聞いている
今まで彼の事を傍で見守って来た存在だ
彼の心の支えになれるのは、君なんじゃないかと俺は思う
拠点の全ての人達が生き延びて行く為にも…支えになってあげて欲しい

後は彼と彼女の絆次第、かな


シエル・カーネリアン
【緋薙・冬香/f05538と行動】アドリブアフレコ歓迎


やっと帰還ですよ~。もうドロンしていいですか~?え、花植えやるだって?はぁ…まぁここまで来たら最後まで付き合えってやつですか。しょーがないですな

あ、彼女が噂のエルさん。ちょっと可愛いじゃないですかー。あー冬香さん!今修羅場を作りそうな行為はちょいヤバですぞー!(引っ張って連れてこうとする)

まぁ、ロファルさんはあれですね。変にカッコつけないでありのままの自分で接した方がいいんじゃないですかねー?こういう時にドジ踏んじゃうと、気になるあの子の好感度ガタ落ちしちゃうよ☆…なんてね。

あ、これあたし特製のドローン。今後の調査に役立ててね、それじゃ。


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)、いよいよ本番だね!

畑仕事は得意!
手伝うー♪(荷車から道具出して)

ロファル兄ちゃん、ちゃんとお花届けに行けてるかなぁー♪
行けてない、に一票!(らんらららん)

いたー。
兄ちゃん、こっちこっち。
お花渡したい人、紹介してー♪(にへ)

ね、どんな人?
やっぱ、ばいんばいんなのー?(じぇすちゃー)

あ、アンちゃん。と、ばいん姉ちゃん。
あのね、ロファル兄ちゃんが、お花あげるって。
あとね、毎朝たまごかけごはん作ってほしいんだって!

兄ちゃん、危なっかしいからねー。
姉ちゃん、目を離さず守ってあげないと。(にへ)

ヘタレの告白は意味不明だけど、許してやらなきゃって。
母ちゃん、言ってた!(きらん☆)


天星・雲雀
「ロファルさんの気になる子は、エルさんですか?モテれば振り向いてもらえると思ったかもしれませんが違います。モテるから付き合えるのではなく、付き合ってるやつがモテるんです。彼女がほしいならまず作りましょう。話はそれからです。気持ちを伝える努力をしましょう!この旅で成長した今のロファルさんなら、きっと出来ます!二人っきりに成りたいなら、自分に策が有ります。御任せあれ!」

【行動】アーチン神社を各所に簡易設置、ウニのきぐるみを着た自分がオトモの神前楽師と共に祈祷を行い。人だかりの囮と成って、エルさんとロファルさんが2人っきりになれるように誘導します。

正気にもどった後、「ウニは敵です」とか言ってみる。


木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

拠点の廃墟、…んむ、UDCのらぶこめなる映画で観た形状
ならば、よし居た、恋するお嬢
まつりん、わたしは恋の成就を得んとする恋の狩人(ハンター)
まずは馬から…、エルの本心聞き出したい

研究者肌の方に根っこを渡して調査を依頼
ん、これはロファルが手に入れたもの
皆の病状に効く薬にならない?

エルもお誘いし、調査のお手伝いする
煮たり、切ったり、干したりしながら、エルにロファルの活躍を報告する

ロファル、とても頼もしかった
けど、少し押しに弱い
こういうの何といったかな…へたれ?(首傾げ

ふふ、ロファルはエルのお兄さんとは少し違う
そこが好きなんだという事、エルが再認識出来ればいいな


緋薙・冬香
【シエルさん(f28162)】と一緒に

無事帰還ね
シエルさんあと少しがんばりましょ(微苦笑

で、ロファルさん
エルさんってどこの子?(ド直球
えー…一緒に戦った仲としては修羅b…こほん
どんな子か気になるじゃない?

え、ヤバい?じゃ加減して…ダメ?(シエルさんに小声で

エルさんのところで自己紹介
どんな関係かって、そうねぇ
寄り添って戦った仲?(誤解を招く表現

あらら、逃げちゃった
怒らないでよ、あれは嫉妬よ
脈ありじゃない
さ、追いかけて誤解ときなさい
そして勢いで押し倒せ
嘘よ冗談

魅力を磨いたら振り向いてくれるなんて大間違い
どんなに大切に思っていても言葉にしなきゃ伝わらないのよ?
だからしっかり伝えてきなさいあなたの想い


祓戸・多喜
んー凄くいい感じに学んだみたいね!
でも大切なのは慎重さ、油断とかは絶対ダメよ!
…とまあ仕事的に言っとく事はその位に。
楽しい青春話よ!

屋内のエルに接触。
こーいう時に近づかないのは逆に脈アリ!と甘酸っぱい気配を察知しごー。
挨拶は元気よく、奪還者の一人と名乗って警戒を解く。
荒野で沢山頑張ってきたロファル…さんの所に行かないの?
…何なら呼ぶ?こっちから呼べば案外何とかなるものよ!
矢文で。
手紙括って先を丸めた矢を近くの地面に撃ち込んで…えっそこまでしなくて大丈夫?
結構ロマンティックだと思うけどなー。
まあとにかく、言いたい事は今伝えるのがきっと吉!
頑張る子を応援するのも奪還者よ!

※アドリブ絡み等お任せ🐘


ガーネット・グレイローズ
引き続き、シリン(f04146)と一緒に

農園で回収した、野菜や花の種を校庭に植えている。
ロファル、逞しくなったな。拠点の皆も、君の勇気ある行動を評価しているぞ。これで君は、名実ともにここのリーダーになる。これからしっかりな。
どうした、たまこ…おや?
柱の影からこちらを窺う少女がいるぞ。シリン、おそらくあの娘が…(ひそひそ)
シリンのUCで透明化して、彼の背中を押して送り出す。
最後の課題だ、男としての覚悟を示してきなさい。さあ!

…エル、ロファルは見事に奪還者としての仕事を果たしてきた。将来は、君のお兄さんにもひけをとらない立派な青年になるだろう。…君からは、ロファルに伝えたい言葉はあるのかい?


シリン・カービン
ガーネット(f01964)と共に農園へ。
回収した野菜や花の種を植えたところを回り、
植物の精霊の加護を付与します。
「少しは助けになるでしょう」

ロファル。これからのあなたに必要なのは『覚悟』です。
覚悟とは、己の意思を確かめ、揺ぎ無いものとすること。
皆を護るため。生き延びるため。
そして大切な人を…んん、覚えておいて下さいね。

気づきましたか、ガーネット。
ええ、そうでしょうね。(コソコソ)
まあ、そう簡単に告白できれば苦労は無いでしょう。
ここは背中を押してあげないと。

ロファルを送り出したらガーネットの手を取り透明化。
もじもじするばかりであろう二人の背後に忍び寄り、
ガーネットと背中を押してくっつけましょう。


ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

へー、これがこの世界の学校かー
ボロっちいね!
え、学校だよ学校?お勉強するところ
知らない?

●UCを使ってちょっと未来を見せる(UC終了時に巻き戻る)
主に雰囲気作りの為に花を咲かせたり作物を実らせたり
え、このまま固定できないのかって?キミたちでがんばりなよ!
サクラとかないの?あるんなら数十年分くらい時間を進めるよ!
伝説のサクラの樹(即製)だよ!

この世界の人間たちってもっとたくましいのかと思ってたよ
世界が厳しくても苦しくてもなんとか生きていける
いや、そんな世界に順応してる者だけが生きててたまに死ぬ世界だって
でも、まだ、未熟な若芽が元気でいられるものなんだね
いいこと…だよね?



=================================
 3章は一括公開とさせて頂きました。
 登場箇所検索用に、●の章題にキャラ名を入れてあります。
=================================

●SIDE:R1――いつかではなく(外邨・蛍嘉)
「本当に、よく帰ってきた……!」
「子供だと思ってたのにねぇ」
 拠点のおっちゃん、おばちゃん達に囲まれて、ロファルが喜びと困惑が混ざった表情を浮かべている。
 ――ぱしんっ!
 放っておいたらしばらく納まりそうにない騒ぎの外で、外邨・蛍嘉が掌を打ち合わせて音を響かせた。
「さてと。皆、喜ばしいとは思うけどね。ちょいと私の話も良いかな」
 音で注目を集めた蛍嘉が、拠点の人々に取り囲まれるロファルに視線を向ける。
「ロファルさん。この持ち帰った種と苗なんだけど」
「あ!」
 蛍嘉が持っている容器を見て、ロファルは驚いたように目を丸くして声を上げた。
 容器の中身は、毒性植物を駆除する中で見つけた汚染されていない植物の種。
『……マサカ忘れてマシタ?』
「皆の顔を見たら、気が緩んだみたいで……」
 クルワの指摘に、ロファルが恥ずかしそうに頬をかく。
「話を戻すけどね。日当たりの良い場所に植えた方が良いだろう。中庭辺りを探して、クルワと一緒に植えておくよ。構わないね?」
「ええ。構いません」
 蛍嘉の言葉に、ロファルは迷わず頷いた。
「それならこの広場の一角と、向こうの中庭が良いと思います。僕が案内――」
「いや。案内は要らないよ。そこの人達に頼むさ」
 ロファルの案内の申し出に、蛍嘉は小さくかぶりを振って視線を返す。
「それよりも、探してきな」
「探す?」
 蛍嘉の言葉の意味が分からなかったのか、ロファルが首を傾げた。
「好きな女の子、探した方がいいよ」
「!!!!」
 蛍嘉がはっきりと告げれば、わかりやすくロファルの顔色が真っ赤に変わった。
 それを見た周りの人々は、一斉に何とも生暖かい微笑みを浮かべる。
「あー、そっかそっか。エルの嬢ちゃんと話したいんだな」
「そうだよねぇ。おばちゃんとしたことが、気が付かなくてごめんねぇ」
 自分達の失敗を悟ったおっちゃん・おばちゃん達の反応で、ロファルの顔はますますもって赤くなった。
「ほら。皆もそう言ってくれてんだ。早く探して、正直に伝えるといい」
「……ここにいないと言う事は、エルはまだ怒ってるのかもしれません。だから、また今度でも……」
「何言ってんだい」
 姿を見せない幼馴染の怒りを心配し躊躇うロファルの額を、蛍嘉がぺしんと小突く。

「……また今度、って思ってたら伝えられなくなるもんだよ」
『野暮デショウガ、これも事実デス。ワタシたちは、それを知ってイマス』
 蛍嘉の言葉に、隣のクルワも頷いた。

「それにだ。リーダーはね、皆の『後ろにある支え』なんだよ。内心不安でも、堂々としていた方がいいのさ」
 他人の心がわからない。
 そんな不安は、生きていれば何度だって直面するものだ。
 時には、内に隠して堂々とする事が必要な時もある。まだそういう立場になるという自覚がロファル自身には薄いのかもしれないが、時間の問題だろう。
「堂々とですか……同じような事、他の猟兵さんにも言われてましたね。わかりました。エルがどう思ってるかわからないけど、まず会ってきます」
 やっと踏ん切りがついて、ロファルは幼馴染を探して駆け出していった。

「さて。どうなるにせよ、私たちの野暮はここまでだ」
 遠ざかるロファルの背中を見送りながら、蛍嘉は藤色の蛇の目傘を鍬に変化させる。
「あとは土弄りのお手伝いでもしようか。クルワも、手伝って貰うよ」
『……鬼に畑仕事をさせマスカ』
 クルワも巻き込んで、蛍嘉は拠点の大人たちと種を植える場所を探しに向かった。

●SIDE:Another――トンデモ武術教室(陸郷・める)
 種や苗を植えると言っても、道具にも土地にも限りはある。
 空いている土地の全てを使うわけにもいくまい。
 となると、拠点の全員が新しい種や苗を植える仕事に回れるわけでもない。

『……よし、唐突だがテメェら何か特技はあるか!』

 手の空いている人々の前で、メタルなニワトリ――陸郷・めるの多脚戦車の兵器の生体コアのお出かけモードである7号がメタルな翼を広げていた。
「特技……?」
「というか、俺たちは一体なんで集められて……?」
 集まった人々は、ニワトリに特技を訊かれて困惑を隠せずにいた。

 ――騙されたと思って、教わってみるといいよ。あのニワトリさんも、他の人たちに負けず劣らず、凄いから。

 そんなロファルの言葉もあって、老若男女問わず人数が集まっているのだが、誰も詳しい説明は聞いていなかったようだ。
 まあ、ロファルも説明できなかったのだろう。
『なんでも良いから特技を言え。とにかく言ってみろ。俺様が、それを活かした戦い方の心得くらい与えてやれっからよ!』
 一方の7号は、なんだかやる気に満ちていた。
「あたしゃ洗濯しか得意じゃないよ?」
「火起こしなら得意だけどなぁ?」
 人々が躊躇いがちに返してくる答えは、およそ戦いとは縁遠そうなものばかり。
「俺達より、ロファルみたいに素質のある若いのを――」
『あァ!?』
 特に血の気の少なそうな一人の言葉を、7号は大きく翼を広げて遮った。
『拠点の防衛も、どっかに探索に行くのも、1人より大勢の方がやり易いだろうが。何より、「生き残るために使えるもんは何でも使え」ここはそういう世界だろォ?』
 7号の演説に、人々がはっと顔を上げる。
『大丈夫だ。誰でも戦える! 俺様は聞いたことが有るぜ! 洗濯も、火打石も、それを使った武術があると。テメェらの知らねえ新しい格闘技の使い手は、存在するんだ!』
「ななごう……それ……ほんと?」
『ああ、本当だ!』
 土に混ぜる肥料作りを手伝っているめるの相槌に、7号が自信たっぷりに返す。

 ――万事は拳の道に通ず。

 ロファルにもファーマー真拳なる武術のイメージを与えた業。
『それにだ。少しでもあのガキに生き延びて欲しいなら、テメェらも気張るべきだろ。テメェらはあのガキに、外の危険を全部任せる気かぁ?』
 7号の言葉に、迷っていた人々も、はっと顔を上げた。
「そうだねぇ……あの子だけ外に行かせるわけにはいかないねぇ」
「それじゃ、ガイさんにも顔向けできないもんな」
「ああ。ここは俺達の拠点だ」
 決意を固めた人々の脳裏に、それぞれの得意なことを活かした謎の武術のイメージが生まれていた。

●SIDE:R&E――まだ若い2人(シエル・カーネリアン&緋薙・冬香&神代・セシル)
 一口に『猟兵』と言っても、その立場出自は様々だ。
 気づいたら猟兵になっていたと言う者から、喪失の果てに猟兵になった者まで、猟兵の立場出自は様々である。
 自ら望んで猟兵になったか、望まずに猟兵になったかという観点から言えば、シエル・カーネリアンは後者であった。
 故に、シエルはあまり猟兵活動に乗り気にタイプではない。
 戦わずに生活費と平凡な日常を得られるのなら、そうしたいと答えるだろう。

「え、花植えやるだって? 今から?」

 だから、農園跡で見つけた花の苗や種を拠点に植える作業が始まると聞いて、シエルは思わず面倒くさそうな表情を見せていた。
「ううー。やっと帰還して、もうドロンしていいと思ってたのに~」
「シエルさん。あと少しがんばりましょ」
 不平を零すシエルの肩に、微かに苦笑を浮かべた緋薙・冬香が掌を置く。
「ほら。セシルさんは、やる気よ?」
 冬香が示した先では、神代・セシルが書物片手に拠点の人々に指示を出していた。
「この種はどう植えれば良いかな?」
「そうですね……ほうれん草と言う野菜に近いと思われます。石灰はありますか? 土を耕す時に石灰を混ぜておくと、この種を植えるのに良い土壌になります」
 開いた書物と、青年の掌の上の種を見比べ、セシルは青年に指示を出す。
 セシルが開いているのは、植物図鑑の類。
 万巻の書を読み万里の道を行く――セシルが車の中でロファルに告げた言葉の、万里の道とは、体験を指しているとされる。まさに今は、体験の時だ。
 何よりも書物に対する欲望の強いセシルらしい手伝い方である。
「はぁ……まぁここまで来たら、最後まで付き合えってやつですか」
 しょーがないですな、と愚痴っぽく言いながら、シエルはガジェットツクールとスコップに変化させた。
 周りを見れば、他の猟兵達も思い思いに農具を手に、土を耕したりし始めていた。乗り掛かった舟、というものだろう。
 シエルは猟兵活動に乗り気なタイプではないが、この状況で、それでも帰る、と言う選択肢を選べる性格でもなかった。
 そこに、3人の見覚えのある少年が、何やら険しい表情で向こうから走ってきた。
 何かを探しているのか、視線をあちこちに巡らせている。
「あら、ロファルさん。どうしたの? エルさんには会えた?」
「あ、皆さん。実はその、エルを探していまして……」
 冬香に訊ねられたロファルは、足を止めて事情を告げる。
「そうなの。エルさんって、どんな子? 探すの手伝うから、紹介してくれない?」
「冬香さん?」
 花植えの手伝いは良いのかと、シエルは冬香の顔を伺って――ある予感を感じた。
「エルは薄い緑色の髪で、肩より長く伸ばして左右で束ねていて――」
「あら。珍しい髪の色なのね」
「(冬香さん。訊いてどうするんですか!)」
 ロファルから幼馴染の特徴を聞いて視線を巡らせる冬香に、シエルは小声で尋ねる。
「(一緒に戦った仲としては修羅b……こほん。どんな子か気になるじゃない?)」
 やはり小声で返して来た冬香は、少し悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
(「あ。やっぱり同じ気がする――車の中のあの時と」)
 シエルが同じ気がすると感じたあの時とは、冬香がロファルの腕をその豊かな谷間に挟んだ、あの時である。
「緋薙先輩。そこの廃墟の、中」
「あら、本当ね。ロファルさん、そこの柱の陰に、似てる子がいるけど?」
 シエルがそんなことを気にしている間に、横で話を聞いていたセシルから冬香、冬香からロファルへと、廃墟の中の柱の陰に特徴が似ている少女がいるのが伝わっていた。
「あ、いた! エルです! おーい、エルー!」
 ロファルも気づいて、ぶんぶんと手を振り出した。
「おーい。エルてっばー! 怒ってるなら謝るから、出てきてよ!」
「……。……」
 一度は柱の陰に完全に身を潜めようとした少女だが、二度も呼ばれては誤魔化しきれないと思ったか、不満そうな表情ですごすごと廃墟の中から出てきた。
「エルです。エル、こちらは僕がお世話になった――」
「知 っ て ま すー! 見 て ま し た か らー!」
 自分を紹介するロファルに、エルはぶすっとしたままジトリとした視線を向ける。
「あなたが噂のエルさんですか。ちょっと可愛いじゃないですかー」
「か、かわっ!?」
 シエルの可愛いの一言に、エルは驚いたように目を見開く。
「じゃなくて! 噂って何? ロファルが私の噂って……え? え?」
 それも一瞬の事。エルはすぐに緩んだ表情を引き締め、ロファルの横腹を小さな拳でど突き出す。
(「あらあら。これは思った以上に脈ありそうじゃない」)
(「わーお。判りやすい」)
 明らかな照れ隠しに、冬香とシエルが胸中で呟いていると、エルがぐりんっと首を回して3人に視線を向けた。
「ロファルが世話になったのはわかりますけど、どんな関係なんですか!」
 語気を荒くするエルの視線には、嫉妬のそれが混ざっている。
 特に、冬香に対して強烈に。
 まあ無理もないだろう。
 冬香は見事なスタイルを持つ大人のお姉さんである。対してエルは――同じ年齢の筈のシエルと比べても、とある部分が、やや寂しい。
 そしてさらに若いセシルに対しては、エルの嫉妬は向けられていない――つまりそういうことだ。
「どんな関係かって……そうねぇ」
 エルのわかり易い嫉妬を柳に風と受け流す冬香の表情に、シエルがその袖を掴む。
「(あー冬香さん! 今、修羅場を作りそうな行為はちょいヤバですぞー!)」
「(え、ヤバい? じゃ加減して……)」
 小声でストップかけてきたシエルに、冬香も小声で返してエルに向き直る。微笑みを浮かべたまま、ゆっくりと口を開いて――。

「寄り添って戦った仲?」

 嘘ではない。嘘ではないが――加減してその誤解を招く表現という事は、加減していなかったら冬香は何を言い出していたのだろうか。
「ロ……ロファルぅぅぅッ!?」
「え、あ、ええとその……」
 嘘ではないだけに、エルにどういう事かと言外に問われたロファルも、咄嗟に何も返せなくなる。
「……っ!」
「エル、待って――」
 色々と限界に達したエルは、止めようとしたロファルを振り払い、踵を返して廃墟の中へと駆け込んで行った。
「あらら、逃げちゃった」
「引っ張ってでも離れるべきでしたか……」
 苦笑を浮かべる冬香の隣で、シエルが頭を抱える。
 とは言え、冬香もただ悪戯に状況を引っ掻き回したわけではない。
 敢えて少しくらい引っ掻き回した方が、事が進む場合もある。
「さ、追いかけて誤解ときなさい」
 呆然と立ち尽くすロファルの肩を、冬香の掌がそっと叩いた。
「そして勢いで押し倒せ」
「出来るわけないですよ、そんな事!」
 ぐっと親指立てた冬香の一言に、顔を赤くしたロファルが狼狽えながらもツッコミの声を上げる。
「嘘よ冗談。追いかけなさいってのは、本当だけどね。だって、あれは嫉妬だもの。脈ありじゃない」
 くすりと笑って、冬香は続けた。
「でもそうね。引っ掻き回したお詫びに、真面目にアドバイスしてあげる」
 浮かべた微笑みを一瞬で引っ込めて、冬香はじっとロファルの目を見て告げる。
「魅力を磨いたら振り向いてくれるなんて大間違い。どんなに大切に思っていても、言葉にしなきゃ伝わらないのよ?」
 どれだけ近しい存在でも、他人の心の内は目には見えないものだ。
「だから追いかけて、自分の口で、しっかり伝えてきなさい。あなたの想い」
 本当に真面目なアドバイスに、ロファルはぽかんと目を丸くして冬香を見ていた。
「まぁ、あれですね」
 どうなるのかと気を揉んでいたシエルも、そこで口を開く。
「ロファルさんは変にカッコつけないで、ありのままの自分で接した方がいいんじゃないですかねー? こういう時にドジ踏んじゃうと、気になるあの子の好感度ガタ落ちしちゃうよ☆ ……なんてね」
 どこかの恋愛ゲームの攻略サイトに書いてありそうな事を言いながら、シエルもロファルの肩をパシッと叩く。
「先輩方の言う通りだと思います」
 成り行きを見守っていた神代・セシルも、そこで口を開いた。
「年下の私が言うのはおかしいかもしれませんが。一つを教えてあげましょう」
 セシルはとんがり帽子を取って、ロファルをまっすぐ見上げて告げる。
「愛は理解とケアの別名です」
「理解と、ケア……」
「今のロファルさんなら、きっとわかると思っています」
 自分の言葉を反芻するロファルの背中を、セシルも小さな掌でぽんと叩いた。
 わかったのなら追いかけてください――そんな気持ちも込めて。
「……わかりました。僕、エルを追いかけます」
 冬香とシエルとセシルに背中を押され、ロファルはエルを追って走りだした。

●SIDE:E1――支える者の支え(鳳凰院・ひりょ)
 一方その頃。
「確かこっちの方に……」
 鳳凰院・ひりょは、1人廃校舎の中を歩いていた。
 遠目に見ていたのだ。ロファルと良く知ってる3人の猟兵が話しているのを。そして一緒にいた少女が、1人だけ廃墟の中に飛び込んでいったのを。
 そして、ひりょはロファルよりも早く、別の昇降口から廃校舎に入ったのだ。
 その方が、都合が良かったから。
「えーと……ああ、いたいた。そこの君!」
 探していた少女を見つけて、ひりょは警戒させないよう、わざと声を上げて自分のことを気づかせる。
「……わたしのことですか?」
「そうそう。君がエルさん、だよね?」
 振り向いた少女――エルの瞼が、ひりょの言葉にぴくりと持ち上がった。
「……ロファルと一緒に来た方々の1人ですね。ロファルに聞いたのですね? なんて言ってたんですか?」
 初対面のひりょが名前を知っている理由はロファルだろうと推測し、エルはいくらか訝し気な視線を向けて来た。
 まあ自分の知らない所で噂が広まるのは、あまり面白いものではないだろう。
「心配しなくても、彼から悪い話は聞いていないよ」
 それどころか好きな子だとバッチリ聞いているのだが、それは本人の口から伝えるべきだろうと、ひりょは曖昧な答えに留めた。
「それで――そのロファルさんの事で、話があってね」
「ロファルの?」
 ひりょの言葉に、エルが首を傾げる。
「最初に俺達が荒野の真ん中で会った時には、頼りない少年って感じだった」
「まあ実際、ロファルってちょっと頼りないところありますから」
 ひりょの言葉に同意するように、しみじみと頷くエル。
「でも、今の彼はもう違うよ。驚異的な学習能力で、色々な事を吸収して成長した」
 銃の使い方も覚束なかった少年は、猟兵達と触れ合い、その奇跡の業をいくつも目の当たりにする事で、猟兵達を指揮してみせるまでになった。
「君が彼をどう思っているにせよ、彼は凄いよ。才能が開花したって言うのかな」
「ロファルが……?」
 ひりょから道中のロファルの事を聞いても、エルは半信半疑といった様子だ。

「だけど、その一方で俺は彼が心配だ」

 ロファルが今後、この拠点のリーダーとなるのは間違いないだろう。
 そう導くために猟兵が来たのだから、それでいい。
 ひりょが気にしているのは、ロファルの若さだ。
「彼はまだ15歳。今後は俺達がいない所で沢山の困難に直面する筈」
 ひりょをはじめとする猟兵も、いつまでもいられるわけではない。
「時には、上手く出来ない事だってあるだろう。その際には、辛い選択肢を迫られる事もあるだろう」
 ひりょの話を、エルは黙って聞いている。
「そんな時に、彼を支える者、誤った道へ進もうとした時に正せる者。そう言った存在が彼には必要だと感じているんだ」
 そこまで言って、ひりょは初めて正面からエルの顔を見た。
「エルさんは同い年の幼馴染と聞いている」
「そ、そんな事まで話したの!?」
 エルの驚きに内心苦笑しつつ、ひりょは話を続けた。
「今まで彼の事を傍で見守って来た存在だ。彼の心の支えになれるのは、君なんじゃないかと俺は思う」
 リーダーを、皆の後ろの支えだとロファルに告げた猟兵がいた。
 ならば、リーダーに支えは要らないのか?
 そんな筈がない。
 ひりょに育ての親がいたように、その死後に支えてくれた人々がいたように、ロファルにも必要になる筈なのだ。
「拠点の全ての人達が生き延びて行く為にも……支えになってあげて欲しい」
「そんな、急に支えだなんて言われても……」
 ひりょが真っすぐ向ける視線から、エルが困った様に視線を向ける。
「でも……支えとかそんな事、考えた事はなかったけど。ロファルとはずっと一緒にいられると思ってたんです。なのに、急に外に行くなんて言い出したから……」
「そうか。一緒にいたいと思ってるなら、それでいいよ」
 それでもエルが吐露した想いを聞いて、ひりょはそっとその肩を叩いた。

「なるほど、そういう事でしたか」
 そこに、ひりょにもエルにも聞き覚えのある声が響いた。

●SIDE:E2――恋愛の知識(神代・セシル)
 エルが振り向くと、セシルがそこに立っていた。
「さっきは先輩がすみませんでした」
「……いえ。私も、つい感情的になって……」
 セシルがぺこりと頭を下げると、エルも同じく頭を下げる。
「エルさん、良ければこれをぜひ……」
 そんなエルに、セシルは一冊の本を差し出した。
 表紙には『男の子を落とす方法』という題が書かれている。
「こんな状態の良い本、どこで……」
 受け取ったその本を、エルは興味深げにページを捲っていく。
「……っ!」
 少し捲ったところで、エルの顔が一瞬でゆでだこのように赤くなった。
 どうやら、エルには少し刺激が強い内容も書かれていたらしい。
「わた、私はこんな事まで望んでは……な、なくはないですけど! ここまでの事を私からするなんて事は……あれ?」
 エルが本から顔を上げるも、目の前には誰もいない。
「セシルさんなら、花植えの手伝いに戻るって走ってったよ」
 その背中に、ひりょがぽつりと告げた。

 そして――。
「ふーん……成程。思った通りみたいね」
 ひりょが吐露させたエルの心の内を廊下の先で聞いていたシャルロット・シフファートは、小さく笑みを浮かべていた。

●SIDE:R2――諦めると言う事(シャルロット・シフファート)
「見つけたわ。ちょっといい、ロファル」
「はい? なんでしょう」
 廃校舎に逃げ込んだ幼馴染を探していたロファルは、シャルロットに呼び止められて足を止めた。
「聞いたわよ。ここに前にいた奪還者の事。幼馴染だっていう、エルの兄なのね」
「ああ……はい。そうです」
 ズバリ言うシャルロットに、ロファルはゆっくりと頷く。
「……そうかも、しれませんね」
 シャルロットの追求に、ロファルは曖昧に頷いた。
「憧れていて、あの人みたいになれたら――って思っていたのは事実です」
「ふぅん?」
 シャルロットは目を細めて、ロファルに続きを促す。
「あの人――ガイさんって言うんですけど、ガイさんがもういないからではなくて。今回の事で思い知ったんです」
 少し寂しそうに息を吐いてから、ロファルは言葉を続けた。
「僕は、あの人みたいにはなれそうにない」
 ある種の、諦めを。
 ロファルが抱いていたものは、憧れと言うより『期待』だったのだろう。
 自分では及ばないと、心の何処かで判っていたから。

 諦めを認めるのは、決して後ろ向きな思いではない。
 そうしなければ、進めない時もある。
「そうね。私の個人的な見解になるけど、アンタがエルの兄のような奪還者になるには相当な時間がかかるわ」
 だからシャルロットも、諦観を隠さないロファルにはっきりと告げる。
「だったら、別のアプローチをしてみれば良いじゃない」
「別のアプローチ?」
 シャルロットの言う意味がわからず、ロファルが首を傾げる。
「ずばり、エルの願いを叶える英雄にでもなってみなさい」
「エルの願い……?」
 それがどんな願いかわかっていない――と言うのが顔に出ているロファルに、シャルロットは盛大にため息を零す。
「アンタ、そういうトコは鈍いのね。私が聞いた限り、エルの願いは『もうこれ以上誰にも死んでほしくない』というものだと思うわ」
 シャルロットは、その見立てを確信していた。
 エルは己の兄が未帰還となった事で――兄を喪った事で、身近な人を失うという事がどういう事であるのか、知ったのだ。
 自分の心にどれほど深いところに刺さるのか、知ったのだ。
 そして、それが繰り返される事を恐れている。
「ああ……そうか。だから、あの時あんなに……」
「はいはい。後悔しないの」
 猟兵達と出会う前、拠点を出る直前に交わしたエルとの会話を思い出してため息を零すロファルの背中を、シャルロットがぺしっと叩く。
「アンタは今回の旅路で、色々なものを培った。その中でも、学習力と集団戦術は飛び抜けているわ」
 猟兵との旅路の中で、ロファルは大きく成長した。
 中でも元々高かった学習力と、猟兵の戦い方を見たことで覚えた集団戦術は、一般人の枠の中ではかなりの水準と言えるだろう。
「なら、アンタに出来そうなエルの願いを叶える英雄というのは、『一人一人の力を理解し、適切な指揮を行って多くを生かす指揮官』という存在よ」
 シャルロットが具体的な形を示したのは、ロファルなら可能だと思っているから。
「……それって、カッコいいと思わない?」
「エルも、そう思ってくれますかね?」
 それがエルの目に叶うかは、今後の2人次第であろう。
「そんなの、本人に聞いてきなさいよ」
「そうします」
 もう一度シャルロットに背中を叩かれ、ロファルは再びエルを探して走り出した。

●SIDE:R&E2――らぶこめ・たまごかけごはん編(木元・杏&木元・祭莉)
「……まったく、いざ探すといないってどういう事なの!?」
 少し頬を膨らませたエルの声が、廃校舎の中に響く。
 いない――と言っているのは、もちろんロファルの事だ。お互いに探し回っているから中々会えないのだが。
「見つけた。あなた、エル?」
 その声にエルが顔を上げると、いつの間にか目の前に見知らぬ少女がいた。
「あ、ええ。あなたも確かロファルと――」
「わたしは杏。手伝って」
 少女――木元・杏はエルに近づくと、その手を取って走り出す。
「え、ちょっと――!?」
 見た目よりも強い杏の力に、エルはぐいぐいと引っ張られていく。
(「あれ、ここって――」)
 杏に手を引かれるままに辿り着いた場所は、当然だがエルの知っている場所だった。拠点で数少ない医者がいる部屋だ。
 かつては、保健室だったであろう部屋でもある。
「おう、戻ったか嬢ちゃん――って、エルの嬢ちゃんも一緒かい」
 部屋の中には医者の男の他に、木の根のようなものがいくつか並んでいる。
「これはロファルが見つけたもの。皆の体調不良の原因になってた草の根っこ。皆の病状の効く薬にならないかって、こちらの研究者肌の人に、調べて貰ってる」
 ぐいぐいと、杏が木の根の前にエルの背中を押していく。
「一緒にお手伝い、する」
「……まあ、構いませんけど」
 杏に背中を押されるままに、エルはゴム手袋をして木の根を掴み取る。
 有無を言わさぬ様子の杏の力が強いというのもあるが、エルは特に抵抗もしていなかった。少し頭を冷やすには、丁度良いと思ったのだ。

 そもそも、杏が何でそうまでエルを誘っているのか。
 それは少し話が遡る。

「まつりん。今から、わたしは恋の成就を得んとする恋の狩人(ハンター)になる」
「……はい?」
 農場跡から運び込んだ種や苗を植える――手慣れた畑仕事を手伝う気満々で荷車から農作業の道具を降ろしていた木元・祭莉が、杏の唐突な言葉に目を丸くした。
「んむ。この建物ね、UDCアースのらぶこめなる映画で観た形状」
「らぶ、こめ?」
 廃墟を指さす杏の言葉に、祭莉が首を傾げる。
(「あ。あそこで見つかったお米の事かな?」)
「お米みたいに言わない。恋バナの事」
 流石双子と言うべきか。祭莉の勘違いに的確にツッコミつつ、杏は語り続ける。
「ここには恋するお嬢がいる。だから、まず馬から……エルの本心聞き出したい」
「……つまり、アンちゃんはロファル兄ちゃんがお花渡したい人に会いたい?」
「そゆこと」
 頭の上に?が三つくらい浮かんでそうな祭莉の言葉に、杏はこくりと頷いた。

 と言うやり取りがあって、杏はエルを探して導いた。
 ならば祭莉は――。
「ロファル兄ちゃん、いたー!」
 別行動で、ロファルを探していた。
「兄ちゃんがお花渡したい人、紹介してー♪」
「ぐふっ」
 にへっと笑った祭莉の一言が、ロファルの胸をずばりと撃ち抜く。
「……紹介したいんだけどね……逃げられて……僕も探してます、はい」
(「あ。やっぱりお花まだ届けに行けてなかった」)
 予想通りだったロファルの状況に、祭莉は胸中で呟いた。
「じゃあおいらも一緒に探すよ。どんな人?」
「ええと、薄い緑の髪が肩より長くて、こう左右で束ねてて――」
「やっぱ、ばいんばいんなのー?」
 髪から始めたロファルの説明を遮って、祭莉は腕も使いながら訊ねる。
「ばいん……それエルが気にしてるとこだから、絶対本人の前で言わないで下さいね」
 祭莉のジェスチャーで、いわゆるバストの事を言っているのだと察したロファルは、苦笑を浮かべていた。

「ロファル、とても頼もしかった」
「……そうですか」
 木の根を刻みながら、エルは杏から道中のロファルの事を聞いていた。
「他の方も言ってました。ロファルは凄かったって」
「気になる?」
 杏がそう訊ねると、エルの手がピタリと止まる。
「……少し。なんだか、一日で知らないロファルになってしまったみたいで」
(「……んむ。これは脈あり」)
 エルの答えに、杏の瞳がきらりと輝いた。
「確かにロファルは成長した。でも、まだまだな所もある。例えば少し押しに弱い。こういうの何と言ったかな……へたれ?」
「あ、そこは変わってないですね」
 首を傾げた杏に、エルが少し嬉しそうに頷く。
「ふふ、ロファルはロファルだよ」
 杏がエルに微笑んだ所に、ガラッと勢い良く扉が開かれる。
「あ、いたいた。アンちゃーん!」
 開いた扉以上に勢い良く、祭莉が入ってきた。勿論、後ろにロファルを連れて。
「あれが、ばい――探してた姉ちゃん?」
「エル……」
「ロファル……」
 祭莉が振り向き訊ねるも、ロファルは部屋の入口に立ち尽くしたままエルを見つめ、エルも続けて刻もうとした木の根を落としてロファルを見つめる。

 探し回った末にやっと会えた事で、あっという間に2人の世界に突入した。

「あのね、ロファル兄ちゃんが、姉ちゃんにお花あげるって」
 そんな空気もなんのその。にへっと笑って、祭莉はファルの背中をぐいぐいと強めに押して、部屋の中へと押し込んでいく。
「――お花? ……私に?」
「あ、えと。うん。出かけた先で、汚染されていない花があったから、エルに、せめてお土産をと……思って……ああ――っ!」
 ぽつぽつとエルに返していたロファルの顔が、一気に青くなった。
「しまった! 車に乗せて貰って、外に置きっぱなし――」
 大事なものを忘れていた事に気づいて、ロファルが頭を抱える。
「あとね、毎朝たまごかけごはん作ってほしいんだって!」
 そこに祭莉が差し出した、助け船。
「「たまごかけごはん……って?」」
 それに対するロファルとエルの声が、重なった。
 2人とも、キョトンとしている。
「まつりん。たまごかけごはん、ないのかも」
 杏が、祭莉の袖を引いてぽそりと告げた。
 ニワトリがいないわけではなさそうだが、何しろこんな世界だ。少なくとも、養鶏している様子はない。
「そっかー……えっと、ヘタレの告白は意味不明だけど、許してやらなきゃって。母ちゃん、言ってた!」
「「こくはっ!?」」
 何とかフォローしようと祭莉が続けた言葉に、再びロファルとエルの声が重なる。
 たまごかけごはん=告白、と言う間違った意味が伝わった瞬間である。
「兄ちゃん、危なっかしいからねー。毎日、目を離さず守ってあげないと」
「ま、毎日って――」
「ああああ、えええとおおおおお」
 にへっと祭莉が続けた言葉で、エルは顔を赤くして、ロファルは目を白黒させる。
 そして――。
「お、お土産の花取ってくるから待っててぇぇぇぇぇぇ!!」
「ちょっと、ロファルー!?」
 テンパったロファルが部屋を飛び出したのを追って、エルも部屋を飛び出していく。
「……おいら、なんか間違った?」
「ううん。まつりん、グッジョブ」
 あれ?と首を傾げる祭莉に、杏がぐっと親指を立てる。
 杏がエルに伝えたかったのは『ロファルはエルの兄とは違う』と言う事。そして、エルはそこが好きなのだと――エル自身が再認識出来ればと思っての事。
 心の内まで、完全にコントロールはできない。
 切欠としては、きっと十分だ。

●SIDE:E3――ロマンティック(物理)講座(祓戸・多喜)
 慌てたロファルが、拠点の部屋を飛び出していく。
「ちょっと、ロファルー!?」
 間髪入れずに、ロファルを追ってエルが同じ部屋から飛び出すのを、祓戸・多喜は廊下の壁に寄り掛かってばっちりと見ていた。
 飛び出したものの、もうそこにロファルの姿が見当たらずに、エルが思わず足を止めてしまうのも。
(「あらー、あらあらー! 帰ってきた時は近づかなくて、こー言う時はすぐに追いかけるけど、見つからなると足を止めちゃうなんて、これは脈アリね!」)
 多喜の察知していた甘酸っぱい気配は、今や確信に変わっていた。
(「これは応援しないとね!」)
 ふんすっ、と多喜が内心の鼻息を荒くしていると、エルの方から気づいて、小走りに近づいてきた。
「あの、奪還者……ですよね、ロファルと一緒に来た」
「そうよ。アタシは多喜」
 そう名乗るまでもなく奪還者と認識されていたのを好ましく思いながら、多喜はエルの言葉を首肯する。
「ロファルを見ませんでした」
「彼なら、外に飛び出してったわよ」
「そうですか……」
 多喜からロファルの行き先を聞いて、エルはそちらに視線を向ける。
 けれども、その足が動く様子はなかった。
「行かないの?」
「……行っても、またさっきみたいになっちゃうんじゃないかって思って……言いたい事はあるのに、ロファルを前にすると、言ったらどうなるんだろうって……」
 多喜がやんわりと促すと、エルは迷いを口に出した。
「んー……何なら呼ぶ? こっちから呼べば、案外、何とかなるものよ!」
 待つのでも、追いかけるのでもなく。
 呼ぶという行為それ自体が、すでに話があると告げているも同じ。呼び出した側も、そうすることで決まる覚悟があるものだ。
「呼ぶって……どうやって? 外は他の人もいますよ」
「ふふ。他の人には知られずに、2人っきりになりたいってことね!」
 エルの疑問に隠れた真意に気づいて、多喜が笑みを浮かべる。
「ち、違っ……わないけど、違います!」
「うんうん。それなら良い方法があるわよ!」
 エルの否定になっていない否定を聞き流し、多喜は笑顔で続ける。

「矢文よ」
「…………………はい?」

 多喜が告げた良い方法に、エルが首を傾げた。
「知らない? 手紙括って先を丸めた矢を近くの地面に撃ち込んで……」
「えっと、そこまでしなくても――」
 多喜の持つ巨大な弓を見やり、エルは首を横に振る。
「そう? 結構ロマンティックだと思うけどなー」
 槍のように巨大な矢で放つロマンティックとは。
「まあそれなら矢文は置いておくわ。でも言いたい事は、今伝えるのがきっと吉よ!」
「言いたい事……あるんです。でも、ロファルの前だと、思っていた事が思っていた通りに言えなくて」
(「いいわねー! 楽しい青春話じゃない!」)
 言いたい事を言いたいように言えないもどかしさを吐露するエルの両肩を、多喜の大きな掌がそっと包み込んだ。
「そこは――頑張るのよ!」
 ひねりも何もない多喜の言葉に、エルが目を丸くする。
「ロファル……さんも、荒野で沢山頑張ってた! それは、あなたにもう一度会いたかったからだと思うわよ!」
「そう……なんですか?」
 多喜の迫力に気圧されたのか、ロファルの生還の理由を知ったからなのか、エルが呆然と多喜を見上げる。
「ええ。だから、頑張って!」
 有無を言わさずエルをくるりと反転させ、多喜はその背中をそっと押し出した。

●SIDE:R3――覚悟の在処(ガーネット・グレイローズ&シリン・カービン)
「――ふう。こんなところか」
 掘り起こし、耕された土の上で、ガーネット・グレイローズが額の汗を拭う。
 かつて校庭だったであろう広場の一角は、今や立派な畑になっていた。耕したのはガーネットだけではない。
 他の猟兵達も力や知識を貸し、拠点の大人達も、手に農具を持って腕を振るった。
 入念に耕された土の中には、農園跡から持ち込まれた種が植えられている。
「精霊よ……お願い」
 種を植えた畑の前では、シリン・カービンが祈るように両手を組んでいた。
 実際、シリンは祈っているのだ。
 植物の精霊の加護を、種に与えようと。
 シリンの故郷の森に比べれば、一度滅びかけたせいか、この世界は精霊の気配が薄く感じられる。それでも――。
「少しは助けになるでしょう――おや?」
 精霊の加護が土に行き渡ったのを確認したシリンの耳に、足音が聞こえた。
 音の方を向くと、廃校舎からロファルが飛び出してきた所だ。
「ロファルじゃないか。幼馴染の子を探しに行ったんじゃなかったのか?」
「それが、花を忘れてて……取りに――」
 そこまで言いかけて、ロファルが足を止める。
「……違いますね。花を忘れたのを言い訳に逃げたんです。いざエルを前にすると、なんて言っていいかわからなくなって――」
 逃げたのだと認めるロファルに苦笑しつつ、ガーネットはその肩を軽く叩いた。
「ロファル。君は逞しくなった。拠点の皆も、君の勇気ある行動を評価している筈だ」
 ガーネットも改めて言葉にして確かめたわけではないが、畑を作る拠点の人々の顔を見ていれば、そのくらいはわかる。
「これから君は、名実ともにここのリーダーになる筈だ。しっかりしないとな」
「ロファル。これからのあなたに必要なのは『覚悟』です」
 ガーネットの言葉を引き継ぐ形で、シリンが告げる。
「覚悟とは、己の意思を確かめ、揺ぎ無いものとすること。皆を護るため。生き延びるため。そして大切な人を……んん」
 大切な人、と言うなり顔を赤くしたロファルの反応に、シリンも思わず口籠る。
「とにかくですね。己の意思を確かめ覚悟を決めれば、己の意思をどう言葉にすれば良いか、自ずと決まる筈です。覚えておいて下さいね」
 シリンの告げた『覚悟』が、ロファルが想いを伝えるためのピースになるかは――本人次第。
「最後の課題だ。忘れ物を取ってきたら、男としての覚悟を示してきなさい」
「はい」
 シリンとガーネットに頷いて、ロファルは土産の花を取りに駆けていく。

 コケー!
 メカたまこの鳴き声が響いたのは、そのすぐあとの事だった。
「どうした、たまこ……おや?」
 振り向いたガーネットが見つけたのは、柱の陰にいる人影。
「(柱の影からこちらを窺う少女がいるぞ。シリン、おそらくあの娘が……)」
「(気づきましたか、ガーネット。ええ、そうでしょうね)」
 ヒソヒソと小声で話したガーネットとシリンは頷き合い、少女へ近づいていく。2人に気づいて、少女の方も近づいてきた。
「君がエルか?」
「はい」
 ガーネットの問いに、頷くエル。
「エル、ロファルは見事に奪還者としての仕事を果たしてきた。将来は、君のお兄さんにもひけをとらない立派な青年になるだろう。……君からは、ロファルに伝えたい言葉はあるのかい?」
「あるには……あるのですが……本人を前にすると、言ったらどうなるんだろうって考えちゃって、考えてる内になんて言っていいかわからなくなって――……」
 エルの言葉を聞いたガーネットとシリンの胸に去来する、既視感。
 ついさっきも、誰かが似たような事を言っていた。
「(ふむ。脈はあるようだが、うまく行くと思うか?)」
「(この様子なら告白できれば。まあ、そう簡単に告白できれば苦労は無いでしょう。ここは背中を押してあげないと)」
 再びヒソヒソと小声で話して、ガーネットとシリンは頷き合う。
「ロファルなら、花を取ったら戻って来る筈だ」
「待っていた方が、すれ違いにならないと思いますよ」
「そうですか……そうですね、そうします」
 2人に促され、エルは廃校舎の中へと戻っていく。
 その背中を見送って――。

「いたずら妖精いたずら妖精、その手を繋げ」

 スプライト・ハイド。
 シリンと手を繋いだガーネットの姿が――見えなくなった。

●SIDE:R4――愛を知っても伝えるのは難しい(ミネルバ・レストー)
 時は少し遡る。
「めんどくさいのはご免よ、わたし先帰るから」
 ロファル帰還の喜びに、拠点の人々が湧きあがり、それが一段落して種や苗を植えようかと言う話が広まりだした頃。
 ミネルバ・レストーはそう言い放っていた。
 拠点の人々に、それを止める理由はない。ロファルを無事に送り届けてくれただけでも十分と言えたのだから。
 そして――。

 それからかなりの時間が経過しても、ミネルバはまだ帰っていなかったりした。

(「……ああもう! じれったいわね!」)
 それどころか、ロファルとエルのすれ違いをばっちりとウォッチしていたりする。
 そもそも、帰ると言い出したのは、畑仕事がいやだったからではない。まあ向いているとも思わなかったが。
 ご免だと告げためんどくささは、エルが自分達――ロファルと共に拠点に現れた猟兵の女性陣一同――の事を誤解しているのを、察したからだ。
 だけれども、だからこそ帰れない。
(「あー、また離れちゃって! 何やってるのよ! めんどくさいのはご免だけど、つまんない誤解されたままなのは、もっとめんどくさいのよ!」)
 このまま帰ってしまえば、エルの誤解はそのままになってしまうかもしれない。
 それはそれで、ミネルバの中で看過し難い事であった。
 だから、ミネルバはロファルとエルの様子を、こっそり遠くから眺めて、胸中でツッコミを入れ続けて――。

「エルを探すのは大変そうだし、ロファルを焚きつけた方が早いわね」
 ついに我慢できなくなったミネルバの出した結論が、これである。
 色々見ていたと言う事は、すでに他の猟兵達が焚きつけているのも見ていた。
(「焚き付けるのが1人増えるくらい、大したことじゃないわ」)
 問題は、どこでどう焚き付けるかだ。
「でも下手にロファルと二人きりになると、またエルに勘違いされそうで面倒だから……敢えて人が多いところで堂々と話を振ってやりましょ」
 そのチャンスは、意外と早く訪れた。

「ったく。プレゼントなんて大事なもの忘れるんじゃないわよ」
 忘れてた花を取りに戻るロファルの背中に、ミネルバの声がかかった。
「ねえあなた、好きな人がいるんでしょう? さっさと告白しちゃった方がいいわよ」
 あれ? 帰ったのでは?
 と首を傾げるロファルに、ミネルバの冷たい直球が突き刺さる。
「他の男に取られたり、そもそも世界が滅んだり、しないとも限らないし。明日、世界が滅んでも後悔ないようにして頂戴」
「え、あ、はい……」
 矢継ぎ早にまくしたてるミネルバに、ロファルが驚いた顔のまま頷く。
「それにね。女は基本的に男の方から告白してもらいたいものなの」
「……でもそれって、男の方がなんとも思われてなかったら……」
「ネガティブにならない! つまんない意地とか照れとか、そういうのもいいから! さっさと! 告白! しなさい!」
 繰り返しになるが、ミネルバがロファルを焚きつけているのは、エルに自分の事を誤解されたまま帰るのが気になるという、いわば自分のためだ。
 だが、動機がどうであれ――ミネルバの言葉もまた、ロファルの背中を押すピースの1つとなった。

●SIDE:R5――トンデモ武術覚醒(陸郷・める)
『ヒャッハー!』
「!?」
 その声が聞こえた直後、ロファルの背中に衝撃が走った。
 つんのめったロファルが振り向くと、鉄のニワトリ――めるの7号が蹴った足をそのままに翼を広げていた。どうやら滑空からの飛び蹴りを食らったらしい。
 ロファルが痛みを感じてない辺り、ちゃんと手加減はしているようだ。
『おいガキ! そいつの言う通りだ。テメェが何に迷ってんのか知らねぇけどな、この世界、それが明日も残ってるとも限らねぇ。躊躇ってる暇はねぇぞ!』
 突然蹴られて、目を白黒させるロファルに、7号が発破をかける。
『……終わる時に後悔しかねぇような生き方だけは、すんじゃねェぞ、ロファル』
 それはきっと、7号なりのやさしさ。
 だが――蹴ったのがまずかった。
「ロファルに手は――」
「――出させない」
 7号に、洗濯板構えたおばちゃんと、火打石構えた青年が襲い掛かったのだ。
「感謝するよ、ニワトリ! 洗濯歴20年のおばちゃんに、手刀で洗濯板を割るなんて新たな道を拓いてくれて!」
「火打石、武器」
『おいこらテメェら!? 俺様は、いわばテメェらの師匠だぞこら! しかも何でいきなり開眼してやがんだこらぁ!』
 洗濯と火起こしの技を組み合わせた謎武術に、この短時間でなぜか開眼してしまった約2名が、ロファルを守らんと矛先を7号に向ける。
『こりゃやべえな……める! 俺様を戻せ! おい、める? めーるー!?』
 危機感を覚えた7号がお出かけモードの解除を要請するが、めるからの返事はない。
「……すぅ……zzz……」
 慣れない畑仕事の手伝いで体力を使い果たしためるは、防音モードにした戦車の中ですやすやと寝息を立てていた。

●SIDE:R6――神社と神がいるのだから(天星・雲雀&ロニ・グィー)
「はいこれ。女の子に送るなら、このくらいはしなきゃ」
 ロファルが忘れてた花は、気を利かせたおばちゃんが、あり合わせの布で包んで花束にしてくれていた。
「いいぞー、ロファル」
「かまして来い!」
「玉砕すんなよー!」
 青年たちのちょっとやっかみ混じった声援が、ロファルの背中を押す。
「モテモテですね、ロファルさん」
「これ、そうなんでしょうか」
 仲間達の熱い応援(?)を、若干遠い目で受け止めるロファルに、天星・雲雀が声をかける。
「で、ロファルさんの気になる子、エルさんですか? いましたか?」
「いましたけど、すれ違いまくってます」

 雲雀の言葉に、ロファルが肩を落とす。
「ロファルさん」
 そんなロファルの肩に、雲雀はぽんっと手を置いて――。

「モテれば彼女に振り向いて貰えると思ったかもしれませんが、それは違いますよ」
「……あ、はい。冬香さんにも似たようなこと言われました」

 割とロファルの心にグサリと刺さる一言を言い放った。
 だが雲雀はここで終わらない。
「いいですか? モテるから付き合えるのではなく、付き合ってる奴がモテるんです」
「……」
 オブラートのあんまりない雲雀の言葉に、ロファルが押し黙る。
 さっきロファルにやっかみ混じった声援を送っていたのと同じ声で『ぐふぅっ!!!』と聞こえた気もしたが、雲雀は気にせず言葉を続ける。
「彼女が欲しいならまず作りましょう。話はそれからです」
「彼女が欲しいんじゃなくて、エルとそうなりた……あ」
 雲雀に返しかけたところで、ロファルは自分の言葉に驚いていた。
 そう。
 ロファルは誰でもいいから女性にモテたいのではない。
 相手はただ1人なのだ。
 気づいてしまえば、単純なこと。
「だったら、なおさら、気持ちを伝える努力をしましょう! この旅で成長した今のロファルさんなら、きっと出来ます!」」
「そうですね……頑張ってみます」
 雲雀の言葉に、ロファルが頷き返す。
「ロファルさんがエルさんを探し易いように。そして、二人っきりになりやすいように手伝ってあげます。自分に策が有りますから!」
 エルを探す事。告白する事。それはロファルがしなければならない。
 だから雲雀は策を弄する『舞台』を作ったのだ。
「このアーチン神社に、御任せあれ!」
 あり合わせの廃材で作った鳥居っぽいものを示す雲雀の姿は、柔らかいトゲトゲのついた着ぐるみ――ウニ着ぐるみ姿だった。

「皆さん、聞いてください!」
 謎の鳥居の下で、謎のウニ着ぐるみ姿の雲雀が声を上げれば、拠点の人々が何事かと集まってくる。
「自分、荒野でウニの怪物を見ました。そして閃いたのです。ウニの神楽舞を!」
 ウニ姿の雲雀の後ろに、狐火が浮かび上がった。
 ~~~♪
 ――!!
 狐火から、笛や鼓の音が響きだす。
 楽器を奏でる狐火――オトモおーけすとら楽団である。
 揺らめく狐火から響く楽器の音色に合わせて、雲雀はウニ姿のまま踊り出した。
 ゆらり、ゆらぁり、ゆるゆらり。雲雀の動きは、決して早くない。と言うか遅いくらいだが、不思議と人目を引いていた。
 それはただの舞ではない。音を立てる狐火は、神前楽師。
 雲雀の舞は、舞であり祈祷である。
 ――神楽舞。
(「今の内です、ロファルさん――」)
 その不思議で不思議で不思議なウニの舞に、人々は目を奪われた。

「ふぅん」
 それを見ていたのは、拠点の人々だけではない。
「あれは鳥居で、祈祷の舞ってところかな」
 ロニ・グィーもまた、それを離れて見ていた。
 即席だが神社があって、祈祷の舞が舞われている。
 そして――そこに神もいる。
(「それなのに奇跡の1つも起きないなんて、歪んでるよね」)
 それはロニにとって、歪みだ。
 ロニがそう認識すれば、もうそれは修正すべき歪みなのだ。

「本当に、食べられるものが生るのかな」
「種と苗だけだからな……まあ、枯らさないで頑張ってみようぜ」

 そこに聞こえてきたのは、植えたばかりのものを少し疑う声。
「しっかたないなぁー」
 彼らが今後もやる気になる雰囲気だけでも作ってやろうと、ロニがパチンっと指を打ち鳴らす。全知全能の神の力を開放。
 耕した畑から、緑の芽が出てきた。葉が茂り、あるいは蔓が伸びて、花が咲き、果実が実る――そんな、ありえない光景が広がっていく。
 植えたその日の内に果実まで生る植物なんて、ある筈がない。
「こ、これは一体……」
「まさか、ウニの舞の力で……?」
 あり得ない光景に混乱した青年が、ウニの舞を踊り終えた雲雀に視線を向ける。
「ウニは敵ですよ?」
「「「?????」」」
 ここで正気に戻った雲雀の一言が、人々をさらに混乱させた。
「ボクだよボク。ちょーっと未来の幻を見せてあげたんだよ。何が生るかわからないと張り合いがないだろうからね」
 その混乱ぶりに、ロニが手と声を上げる。
 それは歪神の力で、ロニが見せた未来の幻だ。
 人々が本物かと錯覚するくらい鮮明だが、記憶にしか残らない幻。
 或いは――未来への希望。
「幻かぁ……本当にこんなにあっさり成長したならよかったのに」
「いやいや、そこはキミたちで頑張りなよ!」
 喜びと残念さが混ざった笑みを浮かべる男に、ロニはしれっと告げた。

●SIDE:R&E3――災い転じて(フィーナ・ステラガーデン&アイ・リスパー)
 カツンッ。
 エルの背後――廃墟の廊下に足音が響いた。
「エル……!!」
「ロファル……」
 聞こえた声にエルが振り向けば、肩で息しているロファルが立っていた。
 その手には、花束が握られている。
「エル、話が……あるんだ!」
「そ、それは……私も……」
 呼吸を整えるのを待たずに近づいてくるロファルに、エルは思わず逸らしそうになった視線を戻す。2人の視線が交わり、距離が近づいて――。

 ドンドンドンドンドンッ!

 そこに、情緒もへったくれもない音が響いた。
「アイィィィィーー!! 早くそこを開けなさい!!」
 続いて響いてきたのは、何やら切羽詰まった様子のフィーナ・ステラガーデンの声。
「私から! 私からウニがでちゃううう!!
「いくらフィーナさんの頼みでも、こればかりは聞けません!」
 さらにやはり切羽詰まった様子のアイ・リスパーの声も響いてくる。
 声はすれども、2人の姿は見えず。
 だが、フィーナとアイはロファル達のすぐ近くにいた。
 それはこの廃墟の『ほぼ全ての建物の全ての階に存在する』場所。いくつもある部屋の中でも、特に狭いであろうスペース。
 ある隠語を用いると、花畑と言える場所。または雪に隠る場所。
 ぶっちゃけてしまうと、トイレである。

 何故、2人がこんな醜態を晒す羽目になっているのか。
 それはタンブルアーチンを食べてしまった事に起因する。どうやら、他の3人に比べてフィーナとアイだけ、少しばかり症状が重かったようなのだ。
 要するにまだ治ってなかった――と言うのを2人が自覚したのは、病室を兼ねていた車を降りてから、拠点に入って間もなくの事だった。
 ほぼ同時に腹部に感じた違和感。
 そして2人はどちらからともなく、お腹の中から奏でられる不穏な狂騒曲(ラプソディ)に突き動かされるように動き出す。
 お花を摘みに。(今更隠語を使う意味があるのだろうか)
「ねえ、アイ。私たち、今まで何度も一緒に戦ったわよね!?」
「そうですね!」
 フィーナもアイも、歴戦という冠をつけても良い猟兵だ。地力で敵わない強敵と戦った事も何度もある。
「あまりこう言うお願いはしたことないけれど――今回は言うわ! アイ、譲って! そしたらいつか、倍以上にして返してあげるから!」
「フィーナさん、あなたのことは親友だと思っています。……ですが親友相手でも譲れないことはあるのです!」
 けれども今――2人は、過去のどんな強敵を前にした時よりも強い焦りを自分が抱いているような気がしていた。
 焦りは、早足となって表れる。
 それ以上速く走っていないのは――走れないからだ。危ないから。
 だが、ここで技術の差が生じた。

「電脳空間にアクセス。高機動型強化外装を実体化。装着シーケンス開始します」

 歩く速度を緩めないまま、アイが周囲に電脳魔術のウインドウを展開する。
「あ、こら! アイ! 待ちなさい! 待ってお願い!」
 何をやろうとしているのか察したフィーナが待ったをかけても、同じ窮地にいるアイが聞く筈もない。
 高機動型強化外装――パワードスーツ・ライトアーマー。
 どこからか飛来したパワードスーツを装着したアイは、ビームガトリングとミサイルランチャーを迷わず投げ捨てた。
 ただトイレを目指すためだけに高速機動ですっ飛んで、唯一使える個室に飛び込みロックをかけて、ついでにパワードスーツもストッパーに立てかける。
 かくして――現在に至る。

「ふぐうぅぅうッッ!!」
 色々と限界寸前に追い込まれたフィーナの声が、廃墟に響き渡っていた。
 ただの人間だろうが猟兵だろうが、本当に追い込まれると、文字通り恥も外聞もなくなるという良い見本と言えよう。
「ロファルさん、エルさん――そこにいるのですね。何も言わないでいいので、聞いてください」
 多分電脳魔術でなんか把握したのだろう。
 トイレの中の個室の中から、アイの声が聞こえてくる。
「興味本位でウニを食べて、私達はこの様です。この世界では、明日を無事に迎えられるかもわかりません。ですから、こうなる前に想いの丈をぶつけておくべきなのです」
 良い話だ。良い話である。
 トイレの中からでなければ。
「アイィィ!! 良い話してないで早よ! ハリーアップ!! はやくううう!!!」
 そして滝のような脂汗が浮かんでいて限界突破が近いフィーナにとっては、まさにどうでもいい話だ。
「いいの!? このままだと、この拠点のド真ん中に直下型ウニボムを放つことになるわよ!?」
「フィーナさん、あなたのことは忘れません。私のために犠牲になってください」
 半狂乱してドアをガチャガチャ鳴らすフィーナに、アイが静かに告げる。
「世界が明日まで持たないわ! 今日世界が滅びるわあああ!!」
「この世界は無情。神はいないのです」
 世界が滅びるとか、神がどうとか、そんなスケールの話ではない。
 だがそれは客観的に見た時の事であり、瀬戸際のフィーナとアイにとっては、そういうスケールに匹敵する事態なのだ。
 そんな状況に対して、ロファルは1つの決断をした。
「ねえ、ロファル。ウニとかウニボムとかって一体……」
「エル。ここを離れよう! 今すぐに!」
 恥ずかしさに耐えて、困惑するエルの手を掴むという決断を。
「ロファっ……手、て!?」
「明日、世界が滅びるとしても……エルに言いたい事があるんだ。それはここだと言いにくいから」
 驚き、まごつくエルの手を引いて、ロファルが駆け出した。
(「あの時できなかった、逃げると言う選択肢を取れるかどうか……そういうテストなんですよね……わかります!」)
 なんだか凄い曲解をした結果なのだが、何はともあれ、手を繋ぐという行為の最初の一歩を、ロファルはついに踏み出した。
 その後押しとなったフィーナとアイの犠牲は無駄ではなかったと言えよう。

「あ……紙が……ない……」
「かくなる上は……もう、アイを奈落に墜として私も堕ちるしか……!」
「ちょっとー!? なんか赤黒い腕が出てきたんですけどー!?」

 アイの絶望的な呟きにフィーナの精神が限界に達して、なんかやばい感じの大穴が開かれたりしたとしても、無駄ではなかった筈である。
 事態の収拾?
 電脳の箱庭の仲間がきっと何とかしてくれたと思いたい。

●SIDE:R&E4――守って欲しいもの(シャーロット・ゴッドチャイルド)
「……ええと、ロファルさん、でしたよね」
 エルの手を引いて走っていたロファルが、背中から聞こえた声に振り替える。
 シャーロット・ゴッドチャイルドが紅玉のような赤い瞳を向けていた。
「そちらの人は彼女さんですか?」
 小首をかしげるシャーロットに合わせてか、その肩の上で翼を畳んだ白フクロウ・ステファニーも、ぐりんと首を傾ける。
「え、ええと!?」
「か――じょ!」
 慌てるロファルとエル。
「……大切な人なら、守ってあげてください」
 そんな2人を見上げて、シャーロットは告げた。
 シャーロットが生まれたのは、猟兵たちがダークセイヴァーと呼ぶ世界の農村。
 支配された世界でも、それなりに平和で幸せな過去だったと思う。
 もう戻れない過去だけれど。
「……私は何も守れなかったから……ロファルさんは大切な人を守ってあげて」
 シャーロットの力に目をつけたオブリビオンによって、村は世界から消えた。
 もしもあの時、精霊術を使えたら。もしも、今の力を持ったまま、あの日に戻れるとしたら――そんな風に思った事がないと、シャーロットは言えない。言ってしまえば、嘘になるから。
 けれども、時は戻らない。
 これ以上、後悔しいように生きることしか今はもうできない。
 ロファルにはそうなって欲しくないから。
「大切にしてあげてくださいね」
 無邪気な笑みを浮かべるシャーロットに頷いて、ロファルは再びエルの手を引いて走り出した。

●SIDE:R&E5――ほら、さっさと告白しちゃえ(黒沼・藍亜)
(「やっとこの時が来たっすね」)
 黒沼・藍亜は、1人、廃校舎の屋上に座っていた。
 ロファルたちの拠点にある廃校舎の内、ほぼ中心にあって一番高い廃校舎の屋上だ。ここならば目立たないでいられるし、屋外ならほぼ全域が見渡せる。
 藍亜はずっと見ていた。
 ロファルとエルが再会したと思ったら離れたり、お互いに探して走り回ってすれ違ったりしているのを。
 そして――手を繋いだまま、大きな樹のある中庭に飛び出して来るのも。
 あとから恥ずかしくなったのか、慌てて手を放してしまうのも。
「これは、雰囲気が足りないっすね。……ボクにアドバイスできることはないけど、代わりにロマンチックな雰囲気をプレゼントっすよ」
 それを見た藍亜が立ち上がり、小さく指を鳴らす。
 ――パチンッ。

「さあ、勇気を出していっちょ踏み出すがいいっすよ~」

 藍亜が空に告げると、ひらり、ひらりと、季節外れの雪が降り始めた。
 ぽつぽつと空に生まれた白い点は、ひとつふたつと数を増やしていく。
「ねぇ、ロファル。なんです、これ?」
「……もしかしたら、雪かも」
 気づいたエルとロファルが、空から降る雪に手を伸ばす。
 しかし、雪は2人の掌に触れる前に溶けるように消えた。
 2人の周りも、変わらないままだった。
 雪がしんしんと降っているのに、空気は乾いた荒野の風が運んだそのままで、2人の足元も堅い土が剥き出しになっている地面のままである。

 降り続く雪は、藍亜の生み出した幻だ。
 故にいくら降っても周囲の気温は下がらないし、地面に落ちて積もることもない。
 ただ降り続けて、溶けるように消えていく。
 だからこそ幻想的で――人の心に作用する。場の空気を変えていく。
 12/24や、2/14。
 藍亜が『思わず想いを告白したくなるあの日』と思っている冬の日の空気に。
 この世界でもクリスマスの風習くらいは残っていた筈だが、ロファルとエルが、その日を知っていようがいまいが関係ない。
 雪を降らせる藍亜がそう思っている通りに、幻の雪の下は、ロマンチックな雰囲気に突き落とされていくのだから。
 その雰囲気に当てられて――ロファルとエルは見つめ合っていた。

●SIDE:R&E6――見えざる手(ガーネット・グレイローズ&シリン・カービン)
(「この雪……幻ですね」)
(「だが、良い雰囲気になっているぞ」)
 幻の雪が降る下で、妖精の力で透明になったままのシリンとガーネットが、声を潜めてロファルとエルを見守っていた。
 もしもロファルとエルが雰囲気に当てられず冷静でいられたら、すぐ近くで、幻の雪が不自然に消えている場所がある事に気づいていたかもしれない。
 だが2人とも、もうお互いに目の前の幼馴染しか見えていなかった。
 ――押すか?
 ――押しましょう。
 そう視線だけでやり取りして、ガーネットとシリンは音を立てないよう慎重に2人に近づいて、腕を伸ばして――同時に背中をそっと押す。
 見えない手に押されたロファルとエルは、咄嗟にお互いを支え合う。
(「……これ以上は野暮だな」)
(「そうですね。私もだいぶ……疲れました……」)
 ロファルとエルが抱き合う形になったのを見届けて、シリンとガーネットは透明になったまま、その場で踵を返した。

 その瞬間、ロファルとエルの上で――桜が咲いた。

●SIDE:LOVERS――幻の雪と桜の下で(ロニ・グィー&黒沼・藍亜)
「この世界の人間たちって、もっと逞しいのかと思ってたよ」
 拠点の何処かで、ロニが独り呟いていた。
「学校はボロっちいままだし、っていうか学校知らない子もいるし」
 廃校舎は廃墟のままだ。直すような余裕もないのだろう。
 もうあの廃校舎が、学び舎として戻ることは、この世界ではないのかもしれない。
 それでも彼らは、そんな世界で生きている。
 世界が厳しくても、苦しくても、なんとか生きている
 こんな世界に順応している者だけが生きていて、そうでないものからたまに死んでいく世界だと――ロニはそう思っていた。
 けれども、少し違うようだ。
 そういう部分はあるだろう。けれど、個々が順応しているだけではない。
 世界が厳しいからこそ、足りない部分を補い、支えあって、何とか生きている。
 ロファルとエルのように、まだ未熟な若芽は元気でいられる。
「これって、いいこと……だよね?」
 誰に答えを求めるでもなく、ロニは独り言ちる。
 誰かの答えなど、必要ない。
 ロニにとってはいいこと――それでいい。
 だから、神からの贈り物。
「あとはキミたちで頑張りなよ――ダメダメ君」

 拠点の人々に畑に植えた種や苗の、葉をつけ、花を咲かせて実る未来を見せた歪神の力は、ロファルとエルのいる中庭にまで届いていた。
 いつかの未来の幻が、2人の上に花開く。
「……」
「……」
 幻の雪の雰囲気に当てられ、透明な手に背中を押されて抱き合う2人の上に、満開に咲いた幻の桜の花びらも降り注ぐ。

(「誰かわからないけど、桜グッジョブ! いよいよ、いい感じの雰囲気になってきたっすねぇ!」)
 幻の雪と桜を浴びる。
 これ以上はそうないであろう雰囲気の中にいるロファルとエルを、藍亜は屋上でニヤニヤしながら見守っていた。
「――、――――――。――――――」
「―、――」
 2人はやっと縮められた距離を離す事なく、何かを話している。
「――、――――――、――――――――――」
「―――、―――――。――――、――」
 きっと、ロファルもエルも、どちらの心臓も早鐘を打っているだろう。
 その音が聞こえそうな距離で、言葉にすれば吐息もかかるその距離で、もどかしい想いを何とか口に出して――。

●アポカリプスヘル
 猟兵達がアポカリプスヘルと呼ぶ世界は、一度滅びかけた過酷な世界だ。
 今もまだ、滅びの危機は去っていない。
 明日、何処かの拠点が滅ぶかもしれない世界だ。
 そんな世界で――とある拠点があると言う。

 若いながらも優れた学習力と集団を指揮する力を持つ少年と、彼を隣で支える少女。
 まだ年若い恋人たちリーダーとした拠点が。

●ロファルの成長――Final
 エルと手を繋いで廃校舎を走り回って、手をつなぐ事に慣れた。手をつなぐ1取得。
 己の心に素直になって、想いを告げる覚悟を得た。覚悟2取得。
 勇気を出して告ったよ! コミュ力1→2に、勇気1→3にそれぞれ上昇。

 最終ステータス。
 環境耐性2、世界知識4、第六感4、学習力7、動物会話1、浄化1、切断1、焼却1、操縦2、恥ずかしさ耐性1、運転1、メカニック1、制圧射撃1、火炎耐性1、勇気3、グラップル2、宝探し1、氷結耐性1、スナイパー1、団体行動2、礼儀作法1、拠点防衛2、情熱1、罠使い3、集団戦術6、遊撃1、爆撃2、料理1、救助活動1、優しさ1、コミュ力2、鼓舞1、ジャンプ1、地形の利用1、索敵1、悪路走破1、存在感1、手をつなぐ1、覚悟2。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月18日


挿絵イラスト