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花薫る街の追走劇

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #スパヰ甲冑

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#スパヰ甲冑


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●カフェー『オリヴェ』の裏メニュウ
 金銀砂子の花薫る、秋の街の片隅のカフェー。
 どこにでもあるようなこの店には、少し風変わりな裏メニュウがあるのだ。

「さぁお嬢さん、カードを捲ってご覧なさい。そこに君の答えがあるはずです」
 客席のひとつを陣取るのは、仕立ての良いスーツ姿の色男。
 舶来のカードをテーブルに並べ、訳知り顔で頷いている。
「君には少しだけ一人の時間が必要と、カードが言っていますね」
 彼は占い師『木蔦』。
 半年ほど前からこの街に居着き、毎日こうしてカフェーの客を占っているのだという。
 当たるか否か、実際に占われた者の間でも意見は分かれるが――女学生の憩いの場にいつも現れる色男とは、それだけで注目を浴びるもの。
 そういうわけで、彼に占いを頼む者は後を断たないのである。

 ある薄曇りの日。
 占い師を訪ねたのは、女学校帰りの少女で賑わうカフェーに似合わぬ出で立ちの男であった。
「男性のお客様とは珍しい。今日はどのような用向きでしょう」
「次の秋晴れの日を知りたい」
 その言葉を聞いた瞬間、占い師の目つきが変わった。
「……漁港近くの公園で、良き出会いがあるだろう。幸運の鍵はラムプ……いや、特製のスーツだろうか」
 手繰るのはカードではなく、黒革張りの手帳。
 ちぎり渡した頁には、かつて武器庫だった地区の住所が記されている。
「耐久性は保証しよう。それこそ超弩級戦力が束にでもならない限り倒れないほどに、ね」
 そう、占い師とは仮の姿。
 木蔦の正体は、影ながら幻朧戦線へと兵器を横流しするスパヰだったのだ……!

「超弩級戦力、か。まさか……ね」
 ふと嫌な予感を覚え、木蔦は答えを探すようにカードを捲る。
 その占いの内容は――。
「あぁ、今日は一時休業だ! 少し気分転換をしよう」
 早々に荷物をまとめ、木蔦はカフェーを後にしたのだった。

●グリモアベヱスにて
「なるほど、占い師ならば内緒話をしていてもおかしくない。なかなかに考えたものだ」
 クロード・キノフロニカ(物語嗜好症・f09789)が感心したように頷き、予知の概要を説明する。
「近頃、帝都で幻朧戦線絡みの事件が起きているだろう? 彼らに武器を提供しているスパヰの潜伏場所が判明したんだ」
 スパヰは占い師を装い、ある街のカフェーの一角に居着いているのだという。
 彼を捕えることが、今回の任務である。
「スパヰはカフェーを一旦出て、気分転換に街をぶらつくつもりのようだ。闇雲に探しても仕方ないだろうから……今回は、これを使って彼をあぶり出すのはどうかな」
 懐から札束の如きサアビスチケットを取り出し、クロードは思いついた作戦を語る。
「君たちには、このチケットを湯水のように使って街で遊んできてほしい。この世界でそんなことができるのは超弩級戦力だけと相場が決まっているだろう? 疚しいことがある人間ならば、警戒心から挙動がおかしくなるはずさ」
 豪勢に飲み食いするのも良い。大通りに行けばカツレツと南瓜スゥプの美味しい洋食屋がある。
 思う存分買い物をするのも良い。金銀の木犀香る雑貨類や化粧品がこの季節のおすすめだ。
「タイミングが合うようならば、カフェーで占い師としての彼に接触することも勿論可能だよ。占いの内容は……正直デタラメだと思うけどね」
 説明を終え、クロードは改めて猟兵たちに向き直った。
「彼はいったいどのくらいの事件の裏で暗躍してきたのだろうね。まったく……虫唾が走る。痛い目を見せてやろう、絶対にだ」
 強い意志を込めた瞳で、クロードは帝都への道を拓くのだった。


椿初兎
 椿初兎です。
 よろしくお願いします。

●第一章の舞台について
 金木犀と銀木犀の並ぶ街並みが美しく芳しい街。
 ハイカラな店の並ぶ大通りは、観光地として名高いそうです。
 OPで例示したようなお店の他、スパヰが居着いているカフェーのプリンアラモードもオススメです。

●スパヰの挙動について
 猟兵たちが街に着いてしばらくした頃、カフェーを出て街をぶらつくようです。
 調査の流れ次第ではもう一度カフェーに戻るかもしれません。

 プレイングお待ちしております!
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第1章 日常 『金銀砂子』

POW   :    出店やカフェでスイーツ巡り

SPD   :    出店やカフェでお茶を楽しむ

WIZ   :    出店で木犀を使った小物を探す

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
当たり前だが、趣味趣向は違うところがあるので、小物が増える。
オルタナティブ・ダブルで二人になって、景色楽しみつつ買い物中。

第一『疾き者』のほほん唯一忍者
一人称:私

第四『不動なる者』まとめ役で盾役な武士
一人称:わし

不「各人の小物を揃えつつ、か」
疾「私たち、個人的に(幻朧戦線を)追ってましたしねー」
不「ある意味は、渡りに船か…。目立つためにもUC使っているしな」
疾「そうですよー。…それにここの景色、なかなか見られませんよねー」
不「桜と同時というのがまた、な。…我らは、相手の顔がわかればいい」
疾「ええ、追いかける手段は、いくらでも」



 逃げるようにカフェーを後にしたスパヰが、何とはなしに街道をぶらついていた。
「あぁ……こういうときの気分転換は買い物に限る。仕事道具でも新調しようか」
 しかし彼が出会ったのは、心休まらぬ光景であった。

●馬県・義透(f28057)たちの昼下がり
「ここの景色、なかなか見られませんよねー」
「桜と同時というのがまた、な」
 桜と木犀。
 鮮やかで不思議なコントラストに目を奪われながら、かつての戦友は肩を並べ街道をそぞろ歩く。
「各人の小物を揃えつつ、か」
 品定めをするように、『不動なる者』は賑やかな店先に目を向ける。
 怪しげな風体の人物がいないか目を凝らしてみるが――見るからに浮いているような者は見当たらない。
「私たち、個人的に追ってましたしねー」
 一見して呑気そうな、しかし今ひとつ本心の見えない調子で『疾き者』が応える。
 二人とも――否。四人それぞれに、幻朧戦線に対して思うところはある。
 彼らが起こした悲痛な事件の鍵を、今から追う者が握っているかもしれないのだ。
「ある意味は、渡りに船か……」
 話しながら、二人はある扇子屋に目を留める。
 女学生好きするようなファンシヰショップに囲まれた古めかしい店の奥に架けられた品々は、一見しただけでも熟練の技術で染められたものと分かる見事な品だ。
「ほう。これは中々……」
「少し季節外れですが、良いものですねー」
 各々思い思いに扇子を手に取る。
 なにしろ今日はサアビスチケットを山ほど持っているのだ。値札など気にする必要もなく、二人はそれぞれ一番気に入ったものを買うことにしたのだった。
「この色、余程腕の立つ染屋が染めたものとみた」
 『不動なる者』が選んだのは、紺地に桜吹雪が染め抜かれた一柄。
 確かな藍染めの技術を感じさせる、深みのある濃紺が美しい。
「私はこれが気に入りましたねー。この街らしくてー」
 桜色に金木犀が散らされた扇子を広げ、『疾き者』が微笑む。
 ともすれば女性的になってしまいそうな色合いの扇面を黒の骨で引き締めた、デザイン性の高い一柄だった。
「皆は、どれが良いだろう?」
 身体はひとつでも趣味嗜好は四人分、ならば他の二人のぶんも買うべきだろう。
 和気藹々と、『四人』は商品をあれこれ選ぶのだった。

「支払いはこれで足りるだろうか?」
 大量に出されたサアビスチケットを見て、ぎょっとした表情を浮かべる者がいた。
 その仕草にいち早く気付いたのは『疾き者』であった。
「おや? どうしましたー?」
「何か気になることでもあったのだろうか?」
 ただの双子とは思えぬほどにそっくりな笑顔で、義透たちは男に声を掛ける。
「い、いや……君たちは観光で来たのかい? ならば今だけの景色も楽しんでいくといい」
 逃げるように、男は店を後にした。
 明らかに、怪しい挙動であった。
「流石に証拠もなく捕まえるわけにはいかないが……だが、顔はしっかりと見た」
「ええ、追いかける手段は、いくらでも」
 頷き合い、彼の逃げた方向へ目を向ける。
 必ず追い詰める。『四人』の意志はひとつであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

樹・さらさ
アドリブ連携歓迎

スパヰとは見過ごせないね。
今までの行いに相応しい対応が必要になるだろう。

目立てば良いというのはまあ、苦手ではないから良かったよ。
折角だから買い物をさせて貰おうかな、練り香水や香り袋……金木製の花を模した黄水晶の装飾品も綺麗だろうね。
誰かに渡すにしても良いし可愛らしいものは好きだからね、色々と楽しめそうだ。
勿論買い物中も周囲の観察、調査は怠らずにね。

買い物を終えて、一息つく感じでカフェーに向かうとしよう。
派手に振舞って目を引いた方が他の猟兵たちが動きやすくなるかな?
状況に合わせて判断する事にするよ。



 逃げるように辿り着いた裏通りで、スパヰは人心地ついたように溜息をつく。
「はは、超弩級戦力だと? ありえない」
 何も超弩級戦力ばかりがサアビスチケットを使えるわけでもあるまい。
 考えすぎだ。ただ、嫌な予感に囚われていただけだ。
「平常心、平常心……。さて、そろそろカフェーに戻ろうか」
 敢えて日常に戻るように、スパヰは仕事場へと戻る。
 だが時を同じくして、同じカフェーへと足を向けるひとりの猟兵がいたのだった。

●樹・さらさ(f23156)のプライベヱトタイム
「折角だから買い物をさせて貰おうかな」
 女学校帰りの少女たちで賑わう雑貨店で、さらさは可愛らしい小物を物色していた。
 店内に愛らしく並ぶのは、金木犀の香る練り香水や香り袋。
 芳しく、しかし嫌味のない自然な香りは、この街に咲く花から採った天然由来だからだろうか。
「へぇ、こんな可愛らしいものもあるのか」
 素敵な雑貨たちの中でひときわさらさの目を惹いたのは、きらきらと輝く黄水晶のブローチ。
 繊細なカッティングを施された黄褐色の石を惜しみなく使ったそのデザインは、満開の金木犀をモチーフにしているのだろう。
「身に着ける機会は、あまりないのだろうけどね」
 鏡の前で、ブローチを胸元にあててみる。
 普段は紳士的で王子様然としたさらさだが、その心の内には女性的な憧れを強く抱いているのだ。
 似合わないかな、と苦笑しつつ、季節の花を象った少女趣味な水晶細工には強く惹かれてしまう。
「あ、あの方は男役スタアの……!」
「可愛らしいお花を飾っても映えるなんて、流石だわ!」
 どうやら、女学生たちの中に歌劇団のファンがいたらしい。
 優雅な目礼で応え、さらさは買い物を済ませるのだった。

「ずいぶん色々と買い回ったなぁ」
 カフェーで一息つきながら、さらさは買い回ったものを振り返る。
 歌劇団の団員たちに贈る練り香水、花びらの形をした目にも楽しい文香。
 一目惚れしたブローチも、結局買ってしまった。
「さて、このカフェーには裏メニュウがあると聞いたのだが……」
 窓際の一角へ、さらさは流し目を送る。
 そこには予知通りにカードを広げた、身なりの良い男の姿。
「次の秋晴れの日。それが合言葉なのだろう?」
 声を掛けた男の挙動が、明らかにおかしい。
 何かを誤魔化そうとしているような、こちらを無視しようとしているような――ひと目で怪しいと分かる態度だ。
「おや、どうしたんだい?」
 気付けばさらさの周りには、色めき立った女学生が集まっている。
 図らずも、スパヰ疑惑の男を衆目監視の下で追い詰める形となった。
「くっ……こうなってしまっては仕方ないか」
 悔しそうに歯噛みした男が、不意に仕事道具のトランクを窓へ投げつけた。
 呆気にとられる一同を尻目に、男は割れた窓から身を乗り出す。
「占いは今日で廃業だ! じゃあな!」
 捨て台詞のような言葉を残し、男は一目散に逃げていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『列車上の追走劇』

POW   :    狙いを定め、全力疾走で追跡する

SPD   :    進路上の建物や逆方向へ向かう列車の上で待ち伏せ、すれ違いざまに飛び移る

WIZ   :    トンネルやカーブなど、相手が動きにくそうな瞬間を狙う

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 逃げるスパヰの目的地は、街境の駅。
 一足先に列車に飛び乗ってしまえば、追いかけることは難しいだろう――そう判断してのことであった。
「よし。このまま埠頭へ行けば……」
 だがスパヰは知らない。
 超弩級戦力――猟兵たちならば、走る列車に追いつく術などいくらでもあるのだ、ということを。

●マスターより
 第二章は冒険パート。
 走る列車を追いかけて、スパヰを追い詰めてしまいましょう。
 このパートでは、冒険活劇っぽく格好よく立ち回ることでプレイングボーナスが入ります。
 つまり……格好よければ多少無理めな大立ち回りでもOKってことです!
 皆様のプレイングをお待ちしております。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。

疾「なるほどねー、そう逃げましたかー」
不「こうなれば…頼むぞ」
疾「わかりましたー」

第一『疾き者』のほほん唯一忍者

顔しっかり見ましたから、【それは陰のように】で追尾しつつ。
建物の屋根、屋上などを通って最短距離で追いかけましょう。
乗り換えても目眩ましも無駄。見ている・聞いているのは私だけではないですからねー。
私たちから逃れられるとは、思わないことですよー。
というか、埠頭ですかー。そこに何かあるのかもねー。

悪霊は、どこまでも追いかける。それを思い知れ。


樹・さらさ
おやおや、逃げるというのは疚しい事があると言っているようなものじゃないか。
それに、店のガラスを割るというのも頂けないね……まあ、逃げられるわけはないと思うんだけれど。
列車位では、大した障害にはならないな。
【Aspetto del cavaliere】
先行している猟兵の近くに移動するとしようか。出来れば列車の屋根などが良いね、このUCを使うなら花吹雪も舞うから足止めもしやすいだろう。
ゆったりと、但し隙を見せずに。剣を抜いて突きつけようか。
「どこに行こうというのかな。この先に君の道は存在しない……諦めたまえ」



「おやおや、逃げるというのは疚しい事があると言っているようなものじゃないか。それに」
 呆れたように溜息をつきながら、さらさは男の背を追いかける。
「店のガラスを割るというのも頂けないね……」
 男が一直線に駆けるのは、大きな鉄道駅から伸びるメインストリヰト。
 列車に乗って逃げるつもりなのだろうと、丸わかりの逃走であった。
「まあ、逃げられるわけはないと思うんだけれど」
 わざとらしく姿を現したカラスに手振りで合図を送ると、さらさは男を追い駅へと向かうのだった。

「なるほどねー、そう逃げますかー」
 どこか呑気な声音の『疾き者』――馬県・義透(f28057)が、列車と並走するようにビルヂングの屋上を飛び移り駆ける。
 使役するカラスの視界越しに受け取ったハンドサインは、「まっすぐ駅へ向かえ」という主旨のもの。
 お陰で、人混みに目を眩まされることなく男の逃走経路を予測することができた。
「頼むぞ」
「わかりましたー」
 内側より語り掛ける『不動なる者』に軽い調子で応えると、不意に義透は線路から離れるように方向を転換する。
「……? あぁ、なるほど」
「乗換駅までは一本道ですからねー。先回りするのが得策ですー」
 男が目指す埠頭へ行くには、ターミナルで特急へ乗り換えるのが一番早い。
 ならば、先にそこを目指してしまえば良い、ということだ。
 屋根から屋根へ飛び移りながら、義透は目標の駅への最短距離を往くのだった。

 一方、こちらは埠頭へと続く豪華特急の客室。
 ソファに深々と沈み込み、逃走したスパヰはゆっくりと煙草の煙を吸い込んだ。
「ふぅ……なんとか逃げおおせたか。あいつらが超弩級戦力とはいえ、まさかこの経路が読まれるはずは――」
 そう独り言を呟いた、瞬間。
 走る車両の窓の外に、急にぬっと人影が現れた。
「ひっ……!?」
 腰を抜かしながら、スパヰは必死に頭を巡らせる。
「私たちから逃れられるとは、思わないことですよー」
 あぁそうだ、今にも窓を無理やりこじ開けようとしているこの男は――扇子屋で見た、あの双子によく似ていた。

 窓から後ずさりしたスパヰの背後をとるように、さらさが姿を現す。
 優雅に剣を抜き、静かに切っ先を突き付ける。
「どこに行こうというのかな。この先に君の道は存在しない……」
 余計な騒ぎは起こさぬよう、然し隙は消して見せず。
 スパヰの視界を奪うように花吹雪を舞わせながら、冷静に様子を伺う。
「き、貴様……一体どこから……」
「花の導き……といったところかな」
 味方の元へ瞬時に移動できる、ユーベルコヲド。
 王子様のように颯爽と駆け付けるための力は、優れた追尾能力を持つ仲間と共に使うことで攻めの一手にも成り得るのだ。
「さぁ。諦めたまえ。君はもう逃げられないんだ」
 さらさの剣が、シャンデリアの揺らめきを受け鋭く光る。
「悪霊は、どこまでも追いかける。それを思い知れ」
 花吹雪の途切れ目から、義透の眼光が覗く。
 身動きひとつとれぬまま、スパヰは何か手段を探すように目を泳がるしかない様子であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニニニナ・ロイガー(サポート)
ど〜も~
要請を受けて参りました、UDC職員のニニニナとドビーちゃんっす。
よろしくっすよ〜

そんなわけで、どんな触手がご入用っすか?
長い触手に太い触手、幅広触手に細触手。
鋸歯つきのゴリゴリ削れる触手にヒトデみたいな手裏剣触手、
ドリル触手に粘着触手に電撃触手その他色々行けるっすよ。
あるいは溶解液を吐く触手とかご所望っすかね?
麻痺触手に毒触手に石化触手になんなら自白用の催眠触手とか…
後は耐熱耐冷耐衝撃触手に再生触手なんかもOKっす。

マニアックな所だと按摩触手に美肌ローション触手、電脳アクセス触手とかも便利っすね。
あ、触手本体は見えないようになってるので、
一般人が狂気にとか気にしないで大丈夫っすよ~。


アルタ・ユーザック(サポート)
ダンピールの16歳女性です。
ユーベルコードを使える場面では『吸血鬼には触れられない(アルタニハコウカガナイヨウダ)』を使用し、自身へのダメージをなくしたうえで依頼遂行のために行動します。
一人称は「わたし」(ひらがな)です。口調は「~だわ」や「~だな」の様なものではなく、「○○…。」の様に…で終わり語尾に何もつけない口数少な目のクールタイプの話し方です。
服装・体型・容姿・持ち物などは、ステータスシートの参照お願いします。

上記内容以外は全てアドリブなどOKです。
よろしくお願いします。



「くそっ、こうなったら……」
 一か八か、スパヰは包囲の薄い先頭車両側へと走る。
 機関士を人質にでもとってしまえば、いかに超弩級戦力の集団といえど迂闊に手を出せはしまい――そう考えての行動であった。
 しかし、客車と機関部とを繋ぐ連結を守るように、先頭車両ではアルタ・ユーザック(クール系隠密魔刀士・f26092)が待ち受けていたのだった。
「やっぱり、こっちに逃げてきた……」
 読みどおり……と言わんばかりに、アルタは冷静にスパヰを見据える。
 腰に携えた刀には手も触れず、ただ棒立ちになり邪魔をするような格好である。
「大人しく投降するなら、危害は加えない……。どうする……?」
「お生憎様。こちとら帝都なんぞに捕まる気は更々ないんでね……っと」
 スパヰが素早く懐からピストルを抜き放ち、アルタめがけて引き金を引く。
 護身用の小銃とはいえ、無防備に食らえば手痛い傷を負うはずの一撃である。
 だが。
「き、効かない……だと……!?」
「この先にいる人たちを守るって、決めたから……」
 冷ややかな眼差しで、アルタが呟く。
 喉元に当たったはずの弾丸はあっけなく跳ね返り、白い首筋には傷ひとつ付いていない。
 攻め込まず、ただ守ることに専念するというアルタの意志に、吸血鬼としての肉体が応えた結果であった。
「ぐぅ……っ」
 狼狽するスパヰの身体が、不意に見えない何かに絡め取られる。
「こ、今度は何だ……?」
「ど~も~。要請を受けて参りました、UDC職員のニニニナとドビーちゃんっす」
 飄々とした様子で後方車両から現れたニニニナ・ロイガー(一般UDC職員・f17135)が、スパヰへと歩み寄る。
「くっ、何だこれは! 何やら目に見えない気色悪いモノが……」
「気色悪いとは失礼っすね。その口を塞ぐ触手も必要っすか?」
 なんとか逃げようともがくスパヰを絡め取るように、ニニニナの使役する触手『ドビー』が形を変える。
 脚を縛る蛸状の触手はヌルヌルと滑る粘液を床に吐き出し、スパヰの逃げ脚を封じる。
 蔓のように細い触手は腕に複雑に絡み付き、ふたたび銃を撃つことを許さないよう繊細に指まで絡め取る。
 空中に磔になるように、スパヰの身体は完全に拘束されていた。
「さて、この後はどうするっすかね~。電撃触手で意識を飛ばすか、自白剤で今までの悪事を吐かせるか……」
 諦めず暴れ続けるスパヰを前に、ニニニナは次の一手を考える。
 もっとも、こうまで激しく抵抗するのでは、動きを封じることにドビーの全力を傾けざるを得ないのだけれど――。
「……今だ! 私はまだ……終わるわけにはいかないっ!」
 不意にスパヰが窓際へ重心を傾け、ドビーもろとも窓の外へと身を翻す。
 そのまま、触手まみれの男は線路へと落ちて行ったのだった。
「は!? 何やってるんすかアイツ!?」
「自殺……にしては、冷静だったけど……」
 窓の外を覗いた二人は、男が地面に衝突した形跡がまるでないことに気付いた。
 次の瞬間――線路を揺らすように、機械の駆動音が響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『スパヰ甲冑』

POW   :    モヲド・零零弐
【マントを翻して高速飛翔形態】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【目からのビーム】を放ち続ける。
SPD   :    影朧機関砲
レベル分の1秒で【両腕に装着された機関砲】を発射できる。
WIZ   :    スパヰ迷彩
自身と自身の装備、【搭乗している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 スパヰが列車から飛び降りた直後、鳴り響いた地響き。
 何事か? と猟兵たちが外を見た、その瞬間。

 地を割り現れたのは、人の身長の2倍はあろうかという鋼鉄の機体であった。
「これも立派な売り物だったのだがな……まぁ背に腹は代えられん。さっさと逃げよう!」
 列車から次々飛び降りる猟兵たちに背を向け、甲冑はこの場から逃走すべく蒸気エンジンを唸らせた。
 だが皆の力を合わせれば、逃走を防ぐことは可能だろう。
 何処とも知れぬ海の向こうへ逃げられてしまう前に、ここで逃走を阻止するのだ……!
樹・さらさ
アドリブ連携歓迎

おやおや、こんなものを持ち出すとは。
只、この状況では……良い的となるな、としか思えないのだけれども。
此方以外に被害を出すわけにはいかない……全力でお相手しないとならないね。

【Tuono verde alla fine】
列車から飛び降りたら一度、軽く襟元を整え。
真っ直ぐに腕を伸ばし、雷の標的を剣先で示そう。
鋼鉄製ならばこの攻撃は大分有効のはず。
逃走劇ももう限界だろう。この舞台もそろそろ幕を下ろそうか…勿論、退場するのは君さ。
我々からは逃げられる等と思わない事だね。



「おやおや、こんなものを持ち出すとは」
 ひらりと列車から飛び降り、さらさが軽く襟元を正した。
 そうしている間にも赤色の甲冑は蒸気エンジンを唸らせ、猟兵たちのいる地点からどんどん距離をとっている。
「只、この状況では……」
 随分離れた地点にいるのに、大きな機体はよく目立つ。
 何か身を隠す仕掛けでもない限り、逃げるには逆効果だと思うのだけれど。
「まぁ、良い的となるな」
 躊躇わずまっすぐに、さらさはスパヰ甲冑の背を指すように剣を向けた。
「さぁ、この舞台もそろそろ幕を下ろそうか……」
 刀身の煌めきに誘われるように、翠色の稲妻が天に輝く。
 散り際を彩るように紙吹雪が舞い、終幕を告げるファンファーレのように爆音が甲冑を撃った。
「勿論、退場するのは君さ!」
「貴様……!」
 歩みを止めた隙をつき、さらさは甲冑と距離を詰める。
 伝声管を通じて聞こえたスパヰの声に、焦りの色が滲んでいた。
「君が諦めるまで、全力でお相手するとしよう」
 舞台口上を述べるように、さらさが高らかに告げた。
 周りに被害を出さぬよう、スパヰの注意を引き付けるよう華麗に立ち振舞う。
「諦めるものか!」
 スパヰが叫ぶと、鋼鉄の巨体がみるみるうちに透き通る。
 やがて甲冑は完全な透明となり、もはやその姿を目で追うことは難しいだろう。
 だが。
「我々からは逃げられる等と思わない事だね」
 翠の雷が、不可視の甲冑を撃った。
 蒸気機関の熱気と駆動音。そして紙吹雪の軌道が、甲冑の居場所をはっきりと現していたのだ。
「どれだけ足掻いても、これが逃走劇のフィナーレだ。覚悟!」
 悪しきものを穿つ雷は、スパヰを決して逃がそうとはしないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『疾き者』
対応武器:漆黒風

(たまに語尾伸ばし消失)
逃がすと思いますかー?
先制攻撃の早業にて【連鎖する呪い】つきの漆黒風を投擲。
私たちからは逃れられない。不幸は連鎖する。
…整備不良ですかねー?(すっとぼけ)
あずみ…っていいましたか、あの女性。あの時に拾っておいた呪詛もついてますよ。

姿消えても無駄ですよ。音も気配も熱源も消せてないですから。
それに…UC後なら、付与した呪いが見えるんですよ。
ああ、関節部分にも漆黒風投擲しますか。人間型なら必ずありますから。

…私にはわからない。どうして泰平の世を崩そうとするのか。
戦乱なぞ、起こったらなかなか止まらないものなのに。



「っ……なんとか逃げ切ったか」
 雷撃の雨から逃げ切り、スパヰは安堵したように透明化を解く。
 その瞬間を待っていたかのように、漆黒の棒手裏剣が装甲の隙間に突き刺さった。
「逃がすと思いますかー?」
 『疾き者』――義透が放つ、呪詛を存分に込めた一撃であった。
「その程度で、このスパヰ甲冑が止められるものか」
「さて、それはどうですかね」
 義透の口調が、冷徹な色を帯びる。
 その時。構わず逃げようとする甲冑の足取りが、急激に鈍化した。
「馬鹿な……この甲冑が、あれしきの攻撃を耐えられぬだと……!?」
 プスプスと不完全燃焼のような音を立て、甲冑の動きは次第に鈍いものとなる。
 その挙動を見るに、内部機構にも損傷が生じているのだろう。
「……整備不良ですかねー?」
 機動力と耐久性ならば帝都陸軍の装甲車もかくやと言わんばかりのスパヰ甲冑。
 それがこの大事な局面で故障とは、なんたる不幸――。
 否。
「私たちからは逃れられない。不幸は連鎖する」
 それは義透たちの念を込めた、強い呪いの賜物だった。
 それは一人のヒトに背負わせるには重すぎるが故に、義透は滅多に人を呪わない。
 だが――無辜の人々を唆し、戦乱へと巻き込む悪党相手ともなれば話は別だ。
「仕方ない。復旧まで時間を稼ぐか……」
「無駄ですよ」
 透明化した甲冑を覆うように、目に見えるほどに濃い呪詛が渦巻いていた。
 霧の如きそれを振り払うように鋼鉄の巨体は腕を振るうが……その動きが命取り。
「そこが関節ですね。見切りました」
 不可視の機体の脆い部分を、漆黒の手裏剣が正確に貫いた。
「……私にはわからない。どうして泰平の世を崩そうとするのか」
 戦は悲劇を生み、人の営みに深い爪痕を残す。
 その身をもって体験した義透たちだからこそ、スパヰの意図は理解しがたいものがある。
「戦争で興る産業もある。それで潤う我らのような者もいる、というわけだ」
「……やはりこの男、許してはおけませんね」
 強い強い呪いを込めた手裏剣が、甲冑の膝めがけて飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

遠桜・星黎凪(サポート)
クロムキャバリア世界の小国出身、アンサーヒューマンのキャバリア乗りです
 普段の口調は「明るく丁寧な幼女(わたし、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)」です。

■性格
明るく天真爛漫
ロマン(キャバリア的な意味で)が好き

■戦闘
愛機のクロムキャバリア「夜桜」に乗り
近距離なら「天桜剣」「桜和剣」で斬り、遠距離なら「閃桜」で狙撃します

生身でも刀を振るって戦えます

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「しつこい奴だ……だがこのコヲドを使えば……!」
 真紅の甲冑がマントを翻し、風を纏う。
 ヒトよりも、列車よりも早い飛翔。
 だが、その逃避行を巨大な黒影が阻んだ。
「良い飛行ギミックですね。小さい機体ながらロマンを感じます!」
 それは甲冑の倍はあろうかという、鋼鉄の巨人。
 遠桜・星黎凪(桜花の機士・f29963)が、愛機『夜桜』を駆り甲冑の行く手を阻んだのだった。
「素敵なマシンですが、乗っている貴方は犯罪者なのですよね。ならば許すわけにはいきません!」
 正義の意志を胸に星黎凪が操縦桿を握りしめれば、夜桜が巨大な刀を抜き放つ。
 飛翔する「小さな甲冑」を巻き込むように、夜桜は薄紅の刀身を横薙ぎに振り抜いた。
「っ……なんとか逃げ切れたか」
「外しましたか……敵ながら、すごい機動力です!」
 目からのビーム光で攪乱しながら、甲冑はひらりと斬撃を避ける。
 ならば……と夜桜が刀を収め、星黎凪は次の一手をパネルに素早く打ち込んだ。
「ちょこまか動く敵にはこれ、ですね」
 ここまでの戦闘データを瞬時に解析し、星黎凪が最後のキーを押す。
 コックピット内のディスプレイに、甲冑の予測軌道図が示された。
 後は……撃つのみ。
「捕捉完了。もう逃げられませんよ!」
 武器をライフルに持ち替えた夜桜が、拡散するレーザーを放つ。
「無駄なことを……何っ!?」
 甲冑を追尾するように、レーザーは軌道を変えていく。
 回避パターンは既に予測済みなのだ。
「何だこの技術は……理解不能だ!」
 苦し紛れに甲冑が目からビームを出すが、攻撃にも攪乱にもなりはしない。
 未知の攻撃を受け、甲冑はその力を大幅に奪われたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

馬県・義透
引き続き『疾き者』唯一忍者
対応武器:漆黒風
のほほん→鬼(口調『複合型悪霊』)

あんたを、逃がすわけにはいかない。その甲冑、徹底的に壊す。
関節部分狙いの投擲(UC+呪詛+風属性つき)は相変わらず。
その不調は、私がこの場にいる限り続く。
排除してみろ。…できるものならな。
呪いでどこにいるか、よくわかる。

私は、乱世だったからこそ必要だった組織の長で、暗殺の才を持つ『外邨義紘(とのむら・よしつな。疾き者の本名)』だけれど。
やはりその考えはわからない。
私は、戦乱を終わらせるために動いていたんだ。
だからこそ、あんたを許さない。

三人(…この男、終わったな…)全員武士

※生前のあだ名が『潜入暗殺の鬼』です。



 潜入暗殺の鬼。それが生前の彼の渾名であった。
 戦乱の時代の影の存在として、人知れず要人を手にかける。
 忍者とはそういうものであり、彼はその組織の長であった。
 すべては、乱世を終わらせるため。そのために、彼は自らの手を汚し生きていた。

 だからこそ――私欲のために戦争を起こす者は決して許さない。
 それが、外邨義紘という男だ。

「あんたを、逃がすわけにはいかない」
「チッ、しつこい奴め」
 甲冑に追いついた義透が、手裏剣を投擲する。
 度重なる交戦に目の前の機体は傷付き、真紅の機体にはところどころ亀裂が入っていた。
「仕方ない……こうなったら、力尽くでいくしかないか」
 義透めがけて甲冑が機銃を向ける。
 だが、遅い。
「排除してみろ。……できるものならな」
 ダメージと呪いを存分に受けた機体は、その機動力を大幅に削がれていた。
 加えて過度のユーベルコヲド使用による疲労――スパヰはもう、戦える状態ではなかったのだ。
「くっ……まだ打つ手はあるはずだ……!」
「その不調は、私がこの場にいる限り続く」
 まるで血管に毒を流し込まれたように、甲冑の動きが次第に鈍っていく。
 消えない呪詛が、搭乗者もろともじわじわと甲冑を蝕んでいく。
「その甲冑、徹底的に壊す」
 手裏剣が、装甲の裂け目に深々と突き刺さった。
 それが、決め手の一撃となった。
「動け……動け!!」
 ガチャガチャと操縦桿を握る音がする。だが、甲冑は動かない。
 かくしてスパヰは逃げる術を失い、猟兵たちに身柄を確保されたのだった。

 官憲に引き渡されたスパヰは、ボロボロの情けない顔にまだ反抗的な表情を浮かべていて。
「俺はまだ、諦めたわけではないぞ……!」
「もう終わりだ。しっかりと罰を受けろ」
 まだ僅かに、男からは呪いの気配が漂っている。
 義透が、わざと残したのだ。
「懲りないなら次はない……というわけで。お巡りさん、あとはお願いしますねー?」
 義紘以外の三人は確信した。スパヰはもう決して「許される」ことはないのだと。

 こうしている間にも、未だ幻朧戦線は帝都を混乱に陥れるべく作戦を続けているだろう。
 だが、超弩級戦力――猟兵はそれを許さない。
 それぞれの意志を胸に、猟兵たちは自らの世界へと帰還するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月15日


挿絵イラスト