イビルゴッド・イン・スクールフェスティバル
#UDCアース
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●狙われた学園祭
UDCアースのとある学園には、ある噂話があった。
学園祭中、全ての催し物をめぐるスタンプラリーを制覇すれば、その一年の学園生活は薔薇色のものになるという噂というより伝説があった。
その薔薇色のスタンプラリーを誰かに手渡してもいい。大切な人、恩義を感じている人。そんな人達のために懸命に走り回る行為こそが、青春を薔薇色のものへと変えるのだと。
けれど千人規模以上ののマンモス校である学園が催す学園祭での出店、劇、展示物、それらは到底、学園祭の二日間で回りきれるものではない。
ゲリラ的に行われる有志の催しや、学園祭中に思いついたことを勝手にやり始める者たちさえも、そのスタンプラリーに計上されるというのだから、そのジンクスを達成することがどれだけ難しいかを物語っていた。
「けれど、ああ。それでも。人は薔薇色を求める。例えば、己ではない誰かのためにこそ、人は途方も無い力を発揮する。自己犠牲ほど尊いものはなく、天道は開かれ、人は薔薇色の極楽浄土へといざなわれることでしょう」
学園の何処かで、邪神が微笑む。
誰かのために何かをしたいという献身。そうすることが素晴らしいことであると伝える教え。その純粋なる心が生み出す奉仕。
それら全てが己のためではなく、誰かのために。
己の薔薇色をなげうってでも、誰かのために事をなすのは、まさしく天道。
それが例え命を絶ちかねない厳しいものであれば、あるほどに尊い。
「さあ、参りましょう。命を懸けて、誰かのために。その身を擲つ献身こそが、天道への唯一にして絶対の道なのです」
邪神は微笑む。
静かに、けれど確かに存在し続け、人の善意に浸け込み、己の信徒をふやさんとするのだ―――。
●灰色薔薇色
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件は、UDCアース。とある学園において、二日間に渡って行われる学園祭の最中に怒るUDC怪物―――邪神の召喚を阻み、これを撃破して頂きたいのです」
どことなくソワソワした雰囲気のナイアルテがもじもじとするものだから、集まった猟兵達は違和感を感じていた。
UDCアースは邪神やその眷属が跋扈する世界だ。
表向きは平和な世界では在るが、その裏―――闇ではいつとも知れずUDCが暗躍している。今回の事件もその一つであるのだ。
「はい……皆さんは学園祭、ご存知ですか? 生徒の自主性を重んじた素晴らしい催しです。催し物や演劇、様々な展示や交流……同年代の少年少女たちがお互いの青春を謳歌する……素晴らしいですね」
だが、そんな学園祭の中にあるスタンプラリーがどうやら邪神に目をつけられたようなのだ。
学園祭の催し物や展示、演劇などを巡ってスタンプを押すスタンプラリーカードが邪神召喚の儀式として組み込まれてしまっているのだ。
「スタンプラリーを全て制覇するのはとても難しく、またその学園では噂、伝説の類として薔薇色のスタンプがいっぱいになったスタンプラリーカードを持っていると一年間の学園生活が素晴らしいものに成るというジンクスがあるそうなのです。それはカードを持っている生徒に有効であり、お世話になった先輩や、こ、恋人などに手渡したりする、慣習があるそうなのです」
その年若い生徒たちの純粋なる願いを邪神召喚の儀式に組み込んだのが、今回の事件の首謀者である邪神であるというのだ。
「ただ、スタンプラリーのスタンプは、全てが邪神召喚の儀式に組み込まれているわけではないようなのです。この邪神召喚の儀式に組み込まれたスタンプを持つ催し物や展示している場所などを皆さんに探って頂き、これを阻止していただきたいのです」
となると猟兵達は学園祭にやってきた一般客や生徒、臨時の教師などとして入り込み、UDC邪神の調査を行わなければならない。
ただ、すでに学園は怪奇に飲み込まれているため、調査する猟兵達を阻むように出店や展示物会場に容易近づけぬように、学園を迷宮へと変えてしまっている。
「皆さんがまずやるべきことは、時間とともに展示会場や出店の位置が様変わりする学園祭会場を調査し、邪神召喚の儀式のピースであるスタンプを排除すること。また生徒たちに聞き込みを行い、スタンプラリーカードを邪神召喚の儀式に使う条件を探ることです」
スタンプラリーカードにスタンプが全て押されていても、それで邪神召喚の儀式が完遂するわけではないようなのだ。
ならば、そこに邪神召喚の儀式を完成させるための最後の鍵が学園祭会場に隠されているはずだ。
「せっかくの青少年たちの青春の一ページに、邪神の企みが利用されるのは赦しておけることではありません。どうか、皆さんの手で、生徒の皆さんの青春を救ってください」
そう言ってナイアルテは頭を下げて猟兵達を見送る。
そんな彼女が転移直前にポツリと漏らした言葉が、いやに猟兵たちの耳に残った。
「メイド喫茶……メイド服、着てみたいですね……」
きっと予知した事件から紐付いた知識を得たのだろう。
確かにメイド喫茶は学園祭にあってほしいものであろう。だが、大抵それはフィクション上のものであると、猟兵達は心の中でツッコミながら転移していったかもしれない―――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はUDCアースにおいて、学園祭の闇に蠢く邪神召喚の儀式を阻止し、青少年たちの青春を護るシナリオになります。
●第一章
冒険です。
学園祭当日の学園に様々な身分として入場し、『UDC発生の原因』であるスタンプラリーカードの出所と、それを為す本物とダミーのスタンプの排除、またUDC出現の最後の鍵を推理し、邪神召喚の儀式を阻止しましょう。
また学園はすでに怪奇に飲み込まれ、時間とともに出店や展示物会場の場所が入れ替わったりする迷宮と化し、猟兵たちの調査を邪魔してきます。
●第二章
集団戦です。
前章の結果、召喚の阻止を果たした皆さんに召喚途中であった邪神が召喚を完遂させるために無数の配下たちを呼び寄せます。
皆さんは配下たちと学園祭会場で戦う事になりますが、邪神は『学校』という場所に詳しくはありません。
『学園であることを活かしたプレイング』があると、邪神と配下たちは戸惑い、こちらの戦いを有利に進めることができるでしょう。
●第三章
ボス戦です。
召喚途中にあるボスでしたが、中途半端な状態の不完全なまま皆さんとの戦闘に突入します。
ただ、中途半端な状態であっても、邪神の力は凄まじいです。普段皆さんが戦っているオブリビオンと遜色ない強さをもっています。
ただし、前章でそうであったように『学園であることを活かしたプレイング』に邪神は戸惑いますので、戦いを有利に運ぶ事ができるでしょう。
それでは、邪神跋扈するUDCアース、学園祭の裏に跋扈する邪神召喚の儀式を阻止し、邪神を討ち果たす物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『UDC召喚阻止』
|
POW : UDCの発生原因となりそうなものを取り除く
SPD : 校内をくまなく調べ、怪しげな物品や痕跡がないか探す
WIZ : 生徒達に聞き込みを行い、UDCの出現条件を推理する
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
その日は学園祭当日。
いつもとは違う日常の中の非日常。毎日通う学園であっても、その二日間だけは様相を異なるものにしていた。
ウェルカムゲートは学生らしい風船や飾りで彩られ、広場や校舎の間には出店が連なる。
教室は様々な展示物に溢れ、お化け屋敷や喫茶など学園祭のステレオタイプとも言うべき光景が広がっている。
体育館は演劇の呼び込みや、自身の所属するクラスや部活の出し物を宣伝するサンドイッチのように看板を掲げた者たちで溢れていた。
猟兵達は各々がそれぞれの学園での立ち位置を装って入り込んでいく。
少し位学園祭というものを楽しんでもいいだろう。そんな風に思わせる学園は、今や怪奇に呑まれ、時間が過ぎる度に催し物の全ての位置が入れ替わっていくのだ。
何処を見ても活気があり、生徒の皆々は手にしたスタンプラリーカードを手に学園祭という非日常を、青春を謳歌していた。
だが、この学園祭の何処かに邪神復活の儀式が企てられ、刻一刻と邪神復活の刻限が近づこうとしていた。
誰も彼もが学園祭の噂、ジンクスを信じ、誰かのために奔走する。
それを邪神は利用する。
薔薇色の青春。
それを騙る者の企みを阻止し、猟兵はUDC邪神を打ち倒さなければならない―――!
ルイス・グリッド
アドリブ・共闘歓迎
学校の催し物に儀式とは無粋だな
スタンプラリーのカード探しているんですけど何処で貰えますか?
ゴール場所とか分かりますか?転校してきたのでよく分からなくて
他にも知っていることがあれば教えてください
【変装】で最近転校してきた生徒という設定で校内に侵入して生徒達から【情報収集】
生徒達には基本的に敬語を使う
スタンプラリーのカードを見つけたらそれを行なっているように【演技】をしスタンプ台を【失せ物探し】
何か違う点などがないか義眼のメガリスの【視力】【暗視】をこっそり使って探る
生徒の噂話も【聞き耳】で確かめる
必要なら【鍵開け】【忍び足】【迷彩】【追跡】【早業】も活用
学園祭の空気は独特なものがある。
通常であれば閉鎖的な空間。学生と教師、出入りの業者以外が立ち入ることはなく、如何にマンモス校と言えど、人の往来は限られている。
だが今はどうだろうか。
何処を見ても人だかりである。音楽な鳴り響き、生徒たちはどこか浮かれたような様子で学園の敷地内を思い思いに在るき回る。
「水泳部で~す! 伝統の大学芋はこちらで~す!」
学生の呼び込みが多い。
だが、次の瞬間、水泳部と名乗っていた学生たちの姿が消え、立ち変わるようにして『3年G組~お化け屋敷』というプラカードを持った生徒が立っている。
これが邪神召喚の儀式の怪奇に飲み込まれた学園の今の姿であった。
一般人たちには知覚できぬ怪奇。
このままでは邪神召喚の儀式は滞りなく進み、復活した邪神はUDCアースを混沌へと落とすだろう。
「学校の催し物に儀式とは無粋だな」
そんな怪奇も猟兵であるルイス・グリッド(生者の盾・f26203)には通用しない眼帯の奥で光るメガリスの義眼が捉えているのは、この会期に呑まれた学園のあるべき姿であり、その際を見極めるのは造作もないことであった。
「さて、学生として潜り込むというのは案外使える手だな」
ルイス自身はその容貌からも学生と間違えられてもおかしくはない。
学園指定の制服に身を包み、学園祭に入り込めば一人の学生として周囲からは認識されるだろう。
「……すいません。スタンプラリーのカード探してるんですけど、何処でもらえますか?」
そんな風にルイスは学園祭のウェルカムゲートの付近に設置された学園祭運営委員の生徒に尋ねる。
最近転校してきたのだと伝えると、運営委員は快くスタンプラリーカードを手渡してくれる。
なるほど、と思う。
この学園祭の入口とも言うべきウェルカムゲート付近は怪奇に飲み込まれた学園であっても時刻が過ぎるほどに迷宮のように催し物の配置を変える怪奇に影響されていない。
儀式に使うスタンプラリーカードを配るためには、此処でなければならないというわけだ。
「ゴールって何処まで行けばいいんですか?」
ルイスは普段の彼を知る者であれば、少し違和感を感じる言葉遣いをしていた。基本的に生徒たちには敬語で喋っているのだ。
親しみやすいというよりも、どちらかというと転向したての不慣れな雰囲気に捉えられただろう。
「ああ、それならスタンプラリーのスタンプを押し終わったら屋上の方へ向かってね。屋上でスタンプラリーカードが全て押してあると景品を上げることになっているから」
そう教えてくれる。
屋上。そこがゴールであるというのなら、そこに邪神が居るのは間違いないだろう。
義眼のメガリスによって見通してみて、確かにウェルカムゲートと屋上だけが怪奇の影響を受けていないようである。
「ありがとうございます。それじゃあ、行ってみますね」
頭を下げ、ルイスは学園祭の陽気な雰囲気に包まれた学園の中を歩いていく。
ふと周囲を見回せばルイスと同じ様に生徒たちは皆一様にスタンプラリーカードを手に、あちこちでスタンプを押している。
彼らは学園祭のジンクスである、全てのスタンプを押したカードを大切な人の学園生活のために贈り合うという目的のために笑い合いながら、スタンプを押している。
誰かのためを思って行う行為が尊いのはわかっている。
けれど、それが邪神の企みに利用されているというのは、どうにも我慢ならない。
ルイスは自分もスタンプラリーカードのスタンプを押すために、聞き耳を立て、同じカードを持つ生徒たちの後を追う。
「まったく―――本当に無粋極まりないな。こんなにもみんな楽しそうにしているのに」
生徒たちの気分が高揚したような笑顔が眩しい。
もしかしたら、自分にもあのような時期があったのかもしれない。過去の記憶がない己であっても、そうであったらいいと素直に思える。
そんな彼らの青春を灰色のものへと変えさせはしない。その決意を新たにルイスは邪神召喚の儀式の痕跡を追い求めるのであった―――。
成功
🔵🔵🔴
須藤・莉亜
「あ、どーも。学園祭に迷い込んだ普通の猫です。」
まあ、側から見たらにゃーにゃー言ってるだけだけど。
UCで眷属の蝙蝠達を召喚し、僕は猫に変身。後はMorteも呼んで、手分けしてスタンプを探しに行こうかな。
一応、蝙蝠達の魔法で戦闘能力だけ強化してから仕事にかかる事にしよう。
それと情報取集もしとこうか。狙い目はスタンプラリーに疲れて、休憩している生徒かな?
ヒトには話せなくなくても、言葉がわからないはずの猫になら自分の目的をポロっと言っちゃうかもしれないしね。その話を聞いてちっと考えてみる事にしよう。
あ、去り際に【動物と話す】の技能を使って挨拶するのも忘れずに。
「参考になったよ、ありがとねー。」
学校生活にイベントはつきものである。
それは入学式、試験、夏休み、部活……そして学園祭である。運動会と違って、学園祭は生徒の自主性が大いに発揮されるイベントであろう。
学舎の飾り付けや、何をするかまで自分達で決めていく。学園祭実行委員会はあれど、それも生徒たちが一斉に団結して行うがゆえに楽しいのだ。
そんな学園祭というイベントにおいて、さらなるイベントが生徒たちを迎える。
スタンプラリーカードである。
この学園に置いて学園祭のスタンプラリーカードは特別な意味を持つ。そう、ジンクスがあるのだ。
様々な催しの度に押されるスタンプの朱肉の色が薔薇色のようにカードを染め上げるほどに押されると、そのカードを送られた者は一年間、学園生活が薔薇色のものになるというものだ。
それは噂に過ぎないことであるけれど、それでも生徒たちは誰かのために二日間という短い期間をスタンプを求めて走るのだ。
「あ、どーも。学園祭に迷い込んだ普通の猫です」
と、今回は特別に翻訳すると、そんなことを猫がにゃあにゃあと言っているのだ。
女生徒たちが一斉に可愛らしい黒猫に群がるようにして囲い込む。
思った以上に食いつきいいな、とユーベルコードに寄って猫に変身した須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は苦笑いした。
また、にゃあと猫の声が鳴いた。
そう、莉亜は今学園祭に猫として潜入しているのだ。
すでにユーベルコード、眷属召喚【魔蝙蝠】(ケンゾクショウカン・マコウモリ)によって呼び出された眷属と蝙蝠たちは学園の中を飛び回り、あちこちから情報を収集している。
「にゃあにゃあー」
今の適当に言っただけである。
それでも女生徒達はスマホを向けたり、なでたりと大忙しである。なにか情報を得られたいいと思っていたけれど、これは構われるだけで得るものはないな、と早々にその場を離れ、情報を得られそうな生徒たちを探す。
時折、猫の姿をした莉亜に食べ物で釣ったりしようとする生徒たちもいたが、あいにくと莉亜の好みは厳しいのだ。
「さて……狙い目としては、スタンプラリーに疲れて休憩している生徒とか……と」
広場のベンチにやや憑かれた顔でスタンプラリーカードを手に持つ生徒を見つける。
男子生徒だが、とことこ近づいていくと猫になった莉亜に気がついたのだろう。視線が合うと、僅かにため息を付いたように男子生徒から言葉がこぼれ出る。
「はあ……ジンクスに頼ってみたけど、こんなんで本当に大丈夫なんだろうか……先輩に屋上で告白しようと思ったのに、屋上がスタンプラリーのゴールだなんて……」
がっくり肩を落とす生徒。
どうやらスタンプラリーカードのジンクスと共に気のある先輩に告白しようとしていたのだろう。
ネクタイの色から察するに一年生だろう。今年が初めての学園祭。ならばジンクスのことを間際になって知ってもおかしくはない。
「なるほどにゃー……じゃなかった、なるほどなー」
ゴールは屋上。
わざわざそこにスタンプラリーの目的地を設定するということは、そこが邪神召喚の儀式の本丸であるのかもしれない。
学園のあちこちで情報を集めている蝙蝠たちの動きも気になる。
「スタンプ自体はあっちこっちにあるみたいだし、だれ方のために何かをする、ということを邪神召喚の儀式に組み込んでいるのなら……」
莉亜は考える。
ならダミーも用意しているのは何故だろうか。
もしかしたら、自分たち猟兵に嗅ぎつけられることも織り込み済みなのか……?
「まあ、ともかく」
莉亜は猫の姿のまま、にゃあと鳴く。
割りと貴重な情報を齎してくれた一年の男子生徒に一応礼を言おうと思ったのだ。人の言葉で告げる。
「参考になったよ、ありがとねー」
え?! と男子生徒が驚いたように肩を跳ね上げさせる。
空耳かと周囲を見回す姿は、莉亜にとって新鮮なものであったし、彼の恋心が叶うといいとも思えた。
その戸惑う男子生徒を尻目に莉亜は軽やかな動きで校舎の中へと掛けていく。
彼のように他の生徒たちも誰かのためにスタンプラリーカードのスタンプを満タンにしようとしている。
その誰かのために何かをしたいという純粋な願いを踏みにじろうとしている敵さんを、追い詰めるために莉亜は校舎の中を駆け上がっていくのであった―――。
成功
🔵🔵🔴
佐伯・晶
UDC組織に制服を入手して貰って生徒として潜入するよ
私も一緒に行きますの
晶だけだと調査に来ているのが丸わかりですの
遊ぶ気満々じゃないのかそれ…
止めても出てくるだろうし双子として振る舞うよ
あのおばけ屋敷おも…怪しいですの
入ってみますの
単に興味があるだけだろう
というか強力なUDCである邪神より怖いものって
そうそう無いと思うんだけど
…まあいいか
奉仕という言葉が気になるね
ボランティアとかメイド喫茶とか
そういうのがあったら気をつけて見てみようか
何か怪しいものを見つけたら
他の猟兵達とデータを共有しよう
ランダムに見かけた出し物の位置を固定しますの
一部が動かせなくなるだけでも
組み換えの邪魔にはなると思いますの
その楽しげな雰囲気につられたのか、邪神の恩返し(ガッデス・リペイメント)とは名ばかりのお為ごかしではないのかと佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は訝しんだ。
ここはUDCアースのとある学園。
今日はその学園祭の初日なのだ。マンモス校である学園において人の往来は少なくないものであるが、今日は大勢の人々で混雑していた。
通う生徒たちの保護者たちだけではなく、近隣住人たちも訪れているのだろう。
学園祭と祭りの文字が付いているせいで、晶の中にある邪神分霊がひょっこりを顔を出したのだ。
晶はこの学園祭の裏で動く邪神召喚の儀式の黒幕を打倒するためにやってきたのであって、遊ぶためではない。
「私も一緒に行きますの。晶だけだと調査に来ているのが丸わかりですの」
そういう分霊はすでに学園制服に着替え終えている。
はぁ、と晶は溜息を吐く。どうせ止めても出てくるであろうことはわかりきっていた。
「遊ぶ気満々じゃないのかそれ……」
明らかに浮足立っているような雰囲気がまるわかりな邪神の分霊の姿はUDC組織によって用意された己の姿とそっくりだった。
学生制服を身にまとえば、双子ととうした方が何かと不便をしなくてすみそうなほどにそっくりなのだ。
仕方ない、と晶と邪神の分霊は学園祭を調査すべく足を踏み出す。
途端に自分たちの肌で直感できる。
すでにこの学園は怪奇に飲み込まれている。時間とともに催し物の位置が入れ替わっているのは、こちらの調査を躱すためであろう。
用意周到な邪神というべきか。
「これは気を引き締めていかないと―――」
「あのおばけ屋敷おも……怪しいですの。入ってみますの」
そう決意を新たにしようとした晶の腕を掴んでずんずんお化け屋敷の催しをしている教室へと入っていこうとする邪神の分霊。
まじか。
そんな風に思ってしまう。
単に興味があるだけだろうと内心つっこむ。口に出したところで止まるようなものではないとわかりきってるからだ。
「というか、強力なUDCである邪神より怖いものってそうそうないと思うんだけど……」
そう、分霊と言えど、己と融合している邪神の分霊にとって怖いものとは、この世界にそうそうあるものではないだろう。
だというのに怖いもの見たさのスリルを味わうお化け屋敷に興味があるというのは、なんともおかしみのあるものであった。なんなら、自分のほうがよほど恐ろしい存在であるのだが……。
「……まあいいか」
晶は深く考えること無くお化け屋敷に連行される。
邪神の分霊は子供だましのような暗がりとライトを使った、如何にも学生が作った、というようなお化け屋敷を堪能している。
自分もこれくらいの余裕を持ったほうがいいのだろうか。そんな事を思うほどに満喫している邪神の分霊と共に次なる場所へと向かう。
「奉仕という言葉が気になるね……ボランティアとかメイド喫茶とか……」
そう思って晶が視線を向けた先にあったのは、まさしくメイド喫茶。
学生たちがパーティーグッズのメイド服に身をまとい、楽しげに客引きをしている。やっぱり、女の子はああいうのが好きなんだろうなぁ、と晶は微笑ましげに思う。
けれど、少し引っかかるのだ。
違和感と言ってもいい。猟兵としての自分の勘がそう言っている。
「晶。あのメイド服は怪しくはないですけれど、もしかしてフリフリに興味が?」
「違うから」
すでに邪神の分霊は固定の権能において、一部の怪奇を固定し、位置の入れ替えを阻害している。
他の猟兵達も来ているであろうから、その手助けになればと晶が頼んでいたのだ。故に調査もしやすくなっているのだが、そのメイド喫茶の教室だけが固定の権能から逃れて晶の目の前から入れ替わる。
「―――……今のは、手を抜いたとかではないよね?」
分霊はもちろん、と頷く。
晶は今、邪神召喚儀式の一端、その尾を掴みかけた。スタンプラリーカードも学生たちは自分の学園生活を薔薇色にしようとしているのではなく、誰かのために奔走しているとグリモア猟兵は言っていた。
それは言わば奉仕の心と同じであろう。
そして、今まさにメイド喫茶の催しの教室が入れ替わった。
権能で固定していたのに、それを嫌うように強引に入れ替えられたのだ。
「……明らかにメイド喫茶だけ、おかしい扱いを受けてる」
晶は即座に他の猟兵たちとデータを共有すべく連絡を入れる。メイド喫茶が怪しい、と。
「文面だけみたら、なんのこっちゃだね、これ……」
だが、邪神の、UDCの尾を掴みかけたことは大きい。
その成果を持って、晶はメイド喫茶を追うのであった―――。
成功
🔵🔵🔴
杓原・潤
学園祭かぁ、うるうなら普通の服着てれば簡単に潜入できるよね。
学校の事は詳しく知らないけど、将来ここに進学したいから見学に来たよ!って言えば怪しくない……と思う!
ついでにスタンプラリーの事も聞いちゃえばいいよね。
学園祭の案内係の人とか、進学希望者に優しい人とか、誰かは教えてくれるはず!
ユーベルコードで頑張ってスタンプ集めてるっぽい人を追跡してみるのもいいかな。
その人がスタンプ押しちゃう前に、片っ端から念動力でスタンプ台とかスタンプ自体を隠しちゃえば儀式出来なくなるかもだし。
後はメイド喫茶が怪しいのかな?
情報収集がてら寄って、ジュースでも飲もうっと!
その学園は千人規模のマンモス校と呼ばれる大勢の学生たちが日々過ごす学び舎であった。
今日は学生たちだけではなく、保護者や近隣住人たちも訪れる学園祭である。いつも以上に人でごった返す学内は活気というのはあまりにも人が多く、しかし、それは今回のような事件において猟兵は更に違和感なく潜入できるまたとない機会であった。
UDCアースの小学校に通う杓原・潤(人間の鮫魔術士・f28476)もまた、そうした猟兵のうちの一人だ。
「学園祭かぁ、うるうなら普通の服来てれば簡単に潜入できるよね」
彼女は小学生であるが、常日頃は魔女のコスプレ衣装に身を包んで行動している。日常生活であればひと目を引く姿であるが、日常の中の非日常である今回のような学園祭の場にあって、彼女の姿はむしろ好意的に捉えられたことだろう。
「きゃぁ、かわいー!」
「ねえ、みてあの子。コスプレかな?」
そんな風に行き交う学生たちが手を振ってくれる。彼女たちにとって潤は年下のかわいい女の子がコスプレをして学園祭にやってきてくれたのだと思ったのだろう。
「うるうね、将来此処に進学したいから見学に来たよ!」
怪しまれないように潤は告げると、いよいよもって女学生たちは盛り上がってしまう。
かわいいかわいいとあんまりにも連呼されるものだから、潤は上手くいったと胸をなでおろす気持ちであった。怪しいと思われていないのなら、彼女にとって今回の事件への潜入は大方成功したようなものだった。
「あのね、スタンプラリーのカードって……」
「ああ、入り口でもらわなかった? ……じゃあ、はいこれ。お姉さんのあげる。まだスタンプ一つも押してないから……がんばって集めてね」
女学生の一人からスタンプラリーのカードを受け取る。
本当はスタンプを集めている人がいないかとか、そういうのを知りたかったのだがしようがない。現物が手に入ったのは大きい。
「みんな集めてるんだね……よし!」
こっそりとコスプレ衣装に馴染む短い杖をふるってユーベルコード、影の追跡者の召喚がなされる。
影の追跡者がスタンプを集めているであろう学生たちを追いかけていく。
邪神召喚の儀式を為しているのがスタンプを押すという行為であるのなら、そのスタンプ自体を隠してしまえばいいのだ。
潤は未だ学園に訪れて時間が浅い。
何処に何がどう在るのかまでは把握できていないのだ。ならば、スタンプを探している学生たちを追うのが一番手っ取り早く確実であるのだ。
影の追跡者が一人の学生を追っていく。
どうやらその女学生も誰かに薔薇色の学園生活を送ってほしいと願うからスタンプを探しているようだった。
その思いは純粋なものであるのだが、それを邪神召喚の儀式に組み込まれているせいで、世界の危機になるのならば、潤はためらわない。
「……あっ! それっ!」
スタンプを女学生が見つける寸前に念動力を使ってスタンプ台を物陰に隠す。
少し心苦しいけれど、仕方のないことだ。
それは不器用な振る舞いであったのかも知れないけれど、年若い彼女にとってはそれが精一杯のことだった。
けれど、それで救われるものだって確実にある。
邪神が召喚されてしまえば、それこそUDCアース自体が危ないのだ。他の猟兵からメイド喫茶が怪しいという情報が共有される。
それならばメイド喫茶の教室に向かおう。
「でもちょっと喉が乾いたし、ジュースでも飲もうっと!」
見れば園芸部の出し物である果汁100%ジュースの出店がある。ちょうどよかったと、潤は駆けていく。
「くださいなー!」
その様子は猟兵と言えど、年相応の少女そのものであった。けれど、それを咎める者などだれも居ない。
どれだけ中二病だとか言われても、今や潤は本物の魔術を使う者であり、猟兵なのだ。
甘い果汁のジュースを飲みながら、ご機嫌で潤は学園祭を満喫するのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
アドリブ・連携歓迎です
青少年の純粋な想いを利用するなんて許せません!
邪神の企みを打ち砕いて見せましょう。
UDC組織に学生服を用意して頂き、転校予定の学生として参加。
外見は18歳ですからギリギリセーフですよねっ(と、誰に言うともなく言い訳して行動開始。アウトと誰かに言われたら、しゃがんで、のの字書いていじけ始めます。)
神使(今回は小鳥や蝶)を放ち、スタンプラリー中の学生達の会話を聞いて【情報収集】。
それと演劇や演奏会も学園祭の目玉になる事が多いので、鑑賞しつつ怪しい部分を【第六感】で【失せ物探し】。
見つけたスタンプは排除。
その際、周囲の目は【催眠術】で『ここには何も無かった』とごまかしますよ。
「外見は18歳で固定されているのですから、ギリギリセーフですよねっ」
それは誰に言うともなく言い訳するように自分を肯定するセリフであった。
アウトと言う者はいなかったけれど、もしも言われてしまっていたらしゃがんで地面にのの字を描いてイジケてしまいそうだったのが、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)その人であった。
彼女は神たる身であるが故に実年齢は18歳を遥かに越えているであろうが、その姿形は18歳のまま固定されているが、学生たちが楽しげに通う学び舎にあっても、別段違和感を覚えるような容姿はしていない。
それどころか、学内にあんな美人がいたか!? と男子学生たちが色めきだつほどであったのだが、詩乃自身は気がついていなかった。
知らぬは本人だけ、というものであろう。
彼女はすでにUDC組織から用意された学生服を身にまとい、学園祭の中に溶け込んでいた。
「アシカビヒメの名によって召喚す、我が元に来りて命を受けよ」
小さく呟き、ユーベルコード、神使召喚(シンシショウカン)に寄って召喚した眷属神である蝶や小鳥を学園に放ち情報を収集していく。
「スタンプラリーのカードがジンクスと相まって、邪神召喚の儀式に組み込まれて利用されている……青少年の純粋な想いを利用するなんて許せません……!」
ジンクスはいわゆる験担ぎである。
お百度参りのように誰かのために何かを願い、それを成就させるために己に課すものを横入りするように己の召喚へと組み込んだ邪神は許せなかった。
眷属神である小鳥たちが広場のベンチで一人、清楚な雰囲気を放ち座る詩乃の元に戻ってくる。
一見すれば、可憐なるお嬢様めいた容姿をしている彼女の肩に小鳥が停まって、囀れば、それは絵画の如き絵になる光景であっただろう。
「な、なんだあの子……あんな……!」
「天使……いや、女神!」
男子学生たちが彼女の様子を伺っていたのだが、そんな囁きが校舎の影から聞こえてくる。
みんな彼女を学園祭を共に回らないかと誘おうと気を伺っていたのだ。
けれど、眷属神である小鳥が詩乃の肩でさえずる様子を見れば、そんな風に呟いてしまうのだ。
そんなある意味で神であることを看破されてしまったような形になっているとはつゆ知らず、詩乃は眷属神からの報告を受けて立ち上がる。
「―――わかりました。では、参りましょう」
眷属神たちが発見した邪神の力の痕跡残るスタンプのある場所へと詩乃は駆け出していく。
そんな背中を見送る男子学生たちは、皆一様に、その可憐に駆けていく姿を見送ることしか出来なかった。
「……?」
本当に知らぬは本人だけである。
詩乃はなんとも言えないよくわからない感情を向けられていながら、眷属神の報告に合ったスタンプ台を排除する。
だが、場所が悪かった。
スタンプ台があったのは体育館の入り口。今は演劇が行われており、そこには立ち見になる観客たちの姿もあった。
そんな衆目のある場所でのスタンプの排除は、目立って仕方ない。それ以前に彼女の容姿もまた整っているがゆえに注目を浴びやすいのだ。
「え、えっと……ここには何もなかった、ですよ……?」
明らかに嘘である。
けれど、彼女の力で詩乃に注目していた一般人達は、こくこくと頷く。
なんとかごまかしが効いたのは助かったが、まだまだ邪神の力が残っているスタンプは多々あるようだった。
「邪神の企みを私が打ち砕いて見せましょう……!」
張り切る姿もまた可愛らしく、周囲の人々の視線を集めまくってしまう。
けれど、詩乃は気が付かずに、次なるスタンプを排除しようと駆けていく。彼女はこの先、スタンプを排除する度に彼女の後を付いてくる男子学生たちを催眠術で『何もなかった』と処置し続ける憂き目にあうことを、まだ知らない―――。
大成功
🔵🔵🔵
ソナタ・アーティライエ
誰かのための思いや行動が報われないのは悲しいです
ましてやそれを利用しようとするなんて……
遊びに来た他校の生徒ように振る舞います
学園祭を楽しむ人たちの明るく楽しさに満ちた感情のうねり
その圧倒的ともいえる想念に触発されてヴァイオリン演奏を始めます
お祭りを盛り上げるような陽気な音色に
楽しい一時を恙なく過ごせるようにとの祈りと破魔と浄化の力を乗せて放ち
邪神の影響を排するよう働きかけてみます
この場は邪神を復活させるにはまるで似つかわしくない、正反対の気に包まれています
それを逆転させる……
儀式……生贄
己を擲っての献身……ゴールは屋上
杞憂であれば、それで構いません
けれど備えはしておきましょう
アドリブ歓迎です
ミレナリィドールであるソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)の姿は、猟兵である以上、異世界に住まう人々にとっては違和感ない存在として瞳に映るものである。
言ってしまえば、3mを超える巨人たちであっても、巨人なき世界に移動したとしても、『大きい人だなぁ』くらいにしか思われないのである。
人形であるソナタもまた同様である。見目自体は普通の人間と同じようにしか認識されないのだが、その整った容姿はあまりにも男子学生たちの目を惹く。
「此処ですね……邪神の企みに飲み込まれた学園は」
ソナタは学園祭に遊びに来た他校の生徒という体で学園祭に訪れていた。
青い瞳が学園祭のウェルカムゲートをくぐれば、彼女の麗しい姿は、否応なしに人目につく。
彼女自身は誰かのための想いや行動が報われないのは悲しいと思っていた。
邪神召喚の儀式に誰かのためを思ってスタンプラリーのカードを全て埋めようとしている学生たちの思いが利用されているという事実は許されざるものであった。
そこにどんな理由があろうとも、どうしたって許せない。
人の想いは純粋であればあるほどに尊いものだ。
誰かのためにと願う心は祈りとなり、祈りは力となって世界をキラキラと輝かせる。
「それを利用しようとするなんて……」
ソナタは手に持った銀竜アマデウスが変じたヴァイオリンのケースを握り締めた。
彼女の瞳には学園祭を楽しむ人々の笑顔があった。
学生たちは楽しげに学友たちと語らい、共に催しを成功させようと張り切っている。何処を見ても、この学園は薔薇色の青春に満ちていた。
楽しいという感情がうねりをあげて、ソナタの心を満たしていく。それは圧倒的とも言える想念であった。
「なんて、素晴らしいのでしょう―――」
心が踊りだすような感情がこみ上げてくる。本来であれば、猟兵として邪神召喚の儀式を阻止すべく潜入し、調査しなければならない。
けれど、今の彼女には、温かい感情に溢れた学生たちが邪神の影響を受けて、知らずうちに邪神召喚の儀式を行うことを見過ごすことなどできようはずもなかった。
故にヴァイオリンケースを開き、アマデウスの変じたヴァイオリンを奏で始める。
それは即興の催し物だと勘違いした学生や訪れた人々の耳を楽しませる。
「この歌、この心は、神に捧げられしものなれば……」
そう前置いた。
奏でられるは、いと高き天の恩寵(ムクナルヒトミニウツルモノ)。
「お祭りを盛り上げましょう。陽気な音色は、皆様の心の御鏡なれば」
旋律が奏でられる。
穏やかにして、ゆったりとした心癒されるメロディは、その曲を知らずとも心の中に染み入ってくるものがあった。
ソナタの演奏には破魔と浄化の力が上乗せされている。彼女の音色が届く範囲では、邪神の力の影響は薄れ、払われていく。
そう、この場―――学園祭は邪神を復活させるにはまるで似つかわしくない正反対の気に包まれている。
ソナタは考えた。
本来であれば邪神召喚の儀式とは、もっとおどろおどろしい感情に塗れているものである。だが、学園祭は、全く別物だ。正反対と言っていい。
そんな場所が邪神召喚の儀式に用いられるとは考えにくい。
ならば、こうも考えられるのだ。
「それを逆転させる……」
そう、儀式。生贄。己を擲っての献身。そして、他の猟兵から共有された情報……それらの全てが導くのは、邪神のおぞましき思惑。
それが己の考えすぎであればいい。杞憂であってほしいとソナタは願う。
けれど、それでも備えはしなければならない。
そのためにソナタは浄化と破魔の力を込めて、旋律を紡ぐ。
それは後日、学園祭の新たなる伝説となって語り継がれる素晴らしい演奏となって、学生たちや来場者たちの心に暖かなものを灯すことに成るのだが、それはまた別の話である―――。
大成功
🔵🔵🔵
久遠・翔
アドリブ絡み歓迎
学園祭は学生が頑張って開催するものっす
それを台無しにする邪神は退場してもらうっすよ?
学園の制服を調達…何で女子の制服かなぁ?(汗)
職員の人、俺男なんっすけど…でもここまで来たら着るしかないか(溜息)
とりあえずパンフレット片手にスタンプラリーに参加
って、なんか周囲の目が向いているの気のせいかな?(誘惑146+特徴:女性に好かれる)
気にせずスタンプのある展示物を見回りスタンプを手に取って選択UC発動
今現状のスタンプの状態を確認し邪神の儀式が組み込まれた場合は無害な物に
普通の場合は概念変更せずにそのまま押します
そうして進んでいるが…なんか、めっちゃ見られてる
その後女生徒に連れられます
学園祭。
それは薔薇色の青春の象徴たるイベントの一つであろう。
体育祭の花形が運動部であるのなら、学園祭は文化部が花形になるものである。と言っても、そんな垣根など第三者が見たものであって、当人である学生たちにとっては関係のないことである。
学友たちと協力し、何かを為す。
それは普段の学園生活では得られぬカタルシスを生み出すことであった。
だが、そんな学園祭を狙う邪神がいる。
邪神に学園生活を、青春を解することはできないかもしれない。けれど、その有り余る若さという衝動を己のものとして扱おうとする知恵はある。
スタンプラリーカードを邪神の儀式に組み込もうとしたのがその証拠であろう。
「学園祭は学生が頑張って開催するものっす。それを台無しにする邪神は退場してもらうっすよ?」
そう意気込んでUDC組織が用意してくれが学園の学生服を手にとった久遠・翔(性別迷子・f00042)は、その勢いのままに制服を着ようとして手が止まった。
彼女の―――元々は男性である彼にとって、今手にとった学生服は。
「……なんで女子の制服かなぁ?」
それはもちろん、呪いのせいとはいえ女性の姿をしている翔には男子制服であるというのは諸々困ったことになりそうであるからだ。
UDC職員も気を使ったに違いない。
男装の麗人というジャンルもあるだろうが無用な混乱を避けようとしたのだろう。
「職員の人、俺男なんっすけど……でもここまで来たら着るしかないか」
ため息をつく。
本当は渋々とであるが、今から男子学生の制服を用意するとおそらく事件の解決に間に合わない。
しょうがない、と深い溜め息を何度もつきながら、翔は女学生の制服に身を包んだ。
そんな翔がウェルカムゲートをくぐると、学園祭の実行委員からスタンプラリーカードとパンフレットを手渡される。
ありがとう、と礼を告げる翔の姿は無自覚ながら女学生たちの目を否応なしに引いてしまう。
「……?」
無用な視線を集めていることに無自覚な翔は、ふしぎに思いながらもスタンプの置いてある展示教室を訪れる。
服飾の歴史。
そんなふうな展示物が置かれており、この学園の生徒が手作りしたであろう様々な衣服が飾られている。
「へぇ……こんなんあるんすね」
興味深げに眺めている翔へと刺さる女学生たちの視線。
けれど、そんなことはつゆ知らず翔はスタンプを手にとって万能の指(マスターキー)たるユーベルコードを発動する。
邪神の力が込められたスタンプであれば、その概念を変化させることのできるユーベルコードによって、邪神召喚儀式に組み込まれたスタンプを無害なものへと変えていくのだ。
「これで、よしっす! ……なんか、めっちゃ見られてるっすね」
ようやく自分に突き刺さる女学生たちの視線に気がついた翔。
まだ一つしか邪神のスタンプを無力化できていないから、そさくさと展示教室を後にしようとして翔は肩をがっしり掴まれた。
え、と思った瞬間、振り返るそこにあったのは複数の女学生たちのギラギラした目であった。
無自覚に誘惑するような雰囲気があった翔にとって、それはあまりにも驚愕なる光景であった。
邪神の力の類だろうかと訝しむが、それは感じられない。
「え、え、え? な、なんすか? なんなんすか―――!?」
有無を言わさぬ勢いで翔は女学生たちに服飾展示のバックヤードへと連れ込まれてしまうのだった。
翔の運命は如何に―――!!
大成功
🔵🔵🔵
姫川・芙美子
制服を【化術】で変化させ在校生に化けます。
こんな姿ですけど学校に通った事はないのです。少し嬉しいですね。
【狐狗狸さん】に協力して貰います。様々な姿の学生に化けて学生から【情報収集】をお願いします。【催眠術】で顔馴染みの友人と思い込ませてスタンプラリーについて詳しく聞き込みして下さい。その間戦準備の為に学内を見て回ります。
集めた情報を統合した後屋上へ。
これは御百度参りや八十八ヶ所巡りの類いの術なのですね。
特徴的なのは、他者に効力を譲渡するのが望ましいと設定されている点です。
そういう風習だから利用されたのか、そう誘導されたのか。どちらにせよ許せません。
ここに儀式の鍵があるかもしれません。調べます。
どろん!
そんな風変わりな音がマンモス校たる学園の片隅に響き渡る。それはカクリヨファンタズムにおいては、もっともポピュラーな効果音であり、誰かが化術を使ったと分かる音であったが、ここUDCアースにおいては馴染みのない音であったことだろう。
姫川・芙美子(鬼子・f28908)は化術によってセーラー服を学園制服に変化させ、あたかも在校生のように学園の片隅から歩み出る。
「こんな姿ですけど、学校に通ったことがないのですが……」
深呼吸する。
学び舎の空気を肺一杯に吸い込んで芙美子はこころなし嬉しそうに微笑む。
「少し、嬉しいですね」
セーラー服姿の彼女にとって学校という施設は馴染みのあるものであるとだれもが思ったかもしれない。
けれど、彼女は東方妖怪である。
姿形はレトロちっくな昭和の面影を残していたとしても、実際に学生であったことはないのだ。故に馴染み、というよりも憧憬のほうが強かったのだ。
「どうぞおいでください―――狐狗狸さん(コックリサン)」
ユーベルコードが輝き、人を誑かす変幻自在の妖怪、狐狗狸さんを無数に呼び出して、情報を収集してもらう。
細い狐のような姿をした妖怪たちがうなずき、一斉に広大な敷地を持つ学園へと飛んでいく。
そんな妖怪たちが化術によって学生に变化すれば、様々な学生たちからスタンプラリーについての情報を聞き出していく。
「不審に思われないように催眠術で顔なじみの友人と思い込ませておけば、後々の記憶の障害にもならないでしょう」
せっかくの楽しい学園祭というイベントなのだ。
いくら邪神が裏でうごめいていようとも、その調査のために自分たちが彼らの青春の記憶の中に刻まれてしまうのは好ましくないと芙美子は感じていたのだろう。
それが正義の味方ゆえの優しさであることは言うまでもない。
妖怪たちに情報収集を頼みつつ、芙美子は学内を見て回る。学生たちの表情は活き活きしているし、これが本来の学園生活というものなのであろうと、自分が経験したことのない光景に芙美子は眩しいものを見るように目を細める。
「……こんな風に友人たちと過ごす時間は、掛け替えのないものでしょう」
その青春の1ページを邪神は汚そうとしている。
正義の味方として容認できるものではない。次々と狐狗狸さんが情報を集めて帰ってくる。
芙美子は決意を新たにして、集めた情報を統合していく。
「スタンプラリーのゴールは屋上……それに他の猟兵の方々が集めた情報も合わせていくと……これはお百度参りや八十八ヶ所めぐりの類の術なのですね」
メイド喫茶が怪しいという情報には首を傾げてしまう。
この催しだけが怪奇に呑まれた学園の中にあって、唯一位置が変わることなく存在し、猟兵に寄る妨害から逃れようとしていた。
それを一端、頭の隅に置く。
「特徴的なのは、他者に効力を譲渡するのが望ましいと設定されている点です。そういう風習だから利用されたのか、それともそう誘導されたのか。どちらにせよ、許せません」
おそらく卵が先か鶏が先か。
そんな難題なのであろう。元より、そういうふうなジンクスであったのか、それとも邪神が付け加えた儀式の産物なのか。
それはわからないけれど、ゴールが屋上であるというのならば、屋上にその儀式の鍵となるものがあるだろう。
そう思い芙美子は屋上へ向かうのだが、一向に階段が終わらない。
「―――……これが怪奇。なるほど。特定の条件を満たした者……つまりはスタンプラリーカードを全て終わらせた者しか屋上に進ませないように迷宮のように位置を変える怪奇が生まれたのですね」
芙美子は、そのからくりに気がつく。
そして、次に己に迫るものがなんであるのか、検討が付いた。
つまり、この邪神の企みに気がついた者の排除である―――!
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
【心境】
学園ねぇ…。
オレはどんな学園生活してたのやら…。
寧々はどうなんだ?妖怪にも学校ある。古事記にも書いてある(注:書いてない)
【行動】
判定:SPD
さて、どう学園に潜入するかねぇ。
邪神の動きも気になるし、陰月を使用。
ぬらりひょんの力だ。見つけれるものなら見つけて見な。
さて、学園は初めてだが『世界知識』で世界共通事項もあんだろう。
オレの『第六感』と寧々の『野生の勘』を頼りに校内を調査する。
陰月の効果でオレのことに気が付いてないな。生徒の噂話に耳を傾けて『情報収集』
うん、オレはあの出店がちょっと怪しいと思う。
(寧々「むしろカード配っとる風紀委員関係も怪しくないかのぅ。」)
調べてみるか…。
青春の1ページ。
それは人生の中の僅かな記憶であったとしても、輝かしくも薔薇色に染まる時間であったことだろう。
人によってその意味は様々であろうが、それでも人の生の中にあっては、特別なものであることには違いない。
けれど、記憶を失ったものにとってはどうであろうか。
「学園ねぇ……オレはどんな学園生活をしてたのやら……」
記憶喪失の猟兵である、黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)にとって、それは探っても見つけることの出来ない1ページであったことだろう。
そもそも学園に通うことがあったのだろうか。
そんな風に考えてしまうのは、今まさに自分が学園祭の真っ只中に在るからではないだろうか。
「寧々はどうなんだ? 妖怪にも学校ある。古事記にも書いてある」
彼の頭の上に乗る喋る蛙『寧々』が陽気にうとうととしつつも名捨が呼びかけるものだから、若干眠そうに答える。
「書いとらんわ。まあ、夜の運動場で運動会くらいはやるだろう。走り幅跳びは得意であった。伊達に蛙ではないわ」
ぺちん、と額を叩かれて、調査に乗り出す名捨はなんだか釈然としないお叱りを受けたようで、渋々といった体で学園の中へと向かう。
怪奇人間である名捨は、それ以前に猟兵である。
それ故に彼独特の風貌も違和感なく学園に溶け込んでいるのだが、それでも調査をする以上、無用に目立つのもよくない。
「さて、隠れて進むぞ。ぬらりひょんの力だ。見つけられるものなら見つけてみな!」
妖怪『ぬらりひょん』の描かれたメダルを額に貼り付けて、妖怪メダルに秘められた力―――陰月(インゲツ)、ユーベルコードの力によって『やること全てがだれからも相手にされなくなる』効果を得た名捨は、だれからも認識されること無く学園祭の中へと入り込んでいく。
邪神の動きも気になるがゆえの対策であった。
それにしても学園という施設に入り込むのは初めてであったが、数多の世界を股にかけてきた猟兵たちにとっては、アルダワ魔法学園がまっさきに頭に浮かぶことだろう。
野生の勘を頼りに学び舎へと入り込む。
学生たちが楽しげに、それこそ思い思いに学園祭を楽しんでいるのを尻目になにか気になる情報がないかと聞き耳を立てる。
「なぁ、なんかどこかのクラスがメイド喫茶やるとかって話あったっけ?」
「いや? ていうか、メイド喫茶て。そんなアニメや漫画じゃあるまいし」
そんな男子生徒の話す声が聞こえてくる。
メイド喫茶。
メイド服を来た女学生たちがもてなしてくれる催しなのだろう。男子学生たちは、興味がありつつも、友人に気取られぬようにと繊細なる注意をはらいつつも、興味がないふりをしていた。
けれど、その顔は興味あるというのがありありと見て取れる。
だがおかしな点がある。
大抵の場合、ウェルカムゲート付近で来場者たちはみなパンフレットをもらい、寧々が怪しいと思っていたカードを配る風紀委員や学園祭実行委委員たち。
彼らはどこにも怪しいと思える部分はなかったのだ。
「怪しいと思ったのだがのぅ……だが、メイド喫茶。旦那様はフリフリがお好きか?」
「いや、そういことじゃなく。パンフレットに乗っていない催しがあるっていうのがおかしくないか」
そう、委員会が把握していない催しが、学園の中にあるはずがない。
それは学園祭の秩序を乱す行為であり、それを許すはずがないのだ。ならば、メイド喫茶は―――。
「これも邪神の怪奇の一つなのか?」
なら、調べてみる価値はある。
そう思い名捨は、男子学生たちが噂していたメイド喫茶を探ろうと校舎の中を駆け巡る。
妖怪メダル『ぬらりひょん』の効果によって自身に干渉することができるものは存在していない。
ならば、この学園を飲み込んだ怪奇もまた名捨に干渉することができようはずもない。
「―――! あれか!」
本来であれば、迷宮のように位置を次々と変える催し。
けれど、名捨には、そのたぐいの怪奇は今効かない。位置を変えること無く存在するメイド喫茶。
あれこそが邪神召喚の儀式を執り行う者たちの巣窟。名捨は駆け出す。あれがスタンプラリーカード最後の一つ。
誰かの為に何かをしたいと願う心を歪な儀式に組み込んだ醜悪なる者が仕組んだものだ。
「なら、ぶっ飛ばす―――!」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『フライングメイド服』
|
POW : メイド格闘術
自身の【布地 】を代償に、【自身が憑依する一般人】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【肉体言語】で戦う。
SPD : 萌えメイド拡散術
召喚したレベル×1体の【憑りつかれた一般人メイド達 】に【ケモミミ】【モフ尻尾】【萌え口調】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
WIZ : メイド普及術
非戦闘行為に没頭している間、自身の【憑りついている一般人 】が【普及活動や奉仕活動している間】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
イラスト:猫月みらい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
学園祭は猟兵たちの調査と、スタンプの排除、そして学園を覆う邪神の力を振り払う演奏によって、その儀式は中断を余儀なくされた。
それは邪神召喚の儀式を執り行う者たちにとっては、あまりにも予期せぬ出来事であった。
猟兵の邪魔は予見できたとしても、ここまで徹底的に儀式を妨害できるとは思っていなかったのだろう。
メイド喫茶。
そう、学園祭のパンフレットには書かれていなかった催し。
そこには邪神の力に寄って拐かされた女学生たちがUDC怪物『フライングメイド服』に憑依され、偽りのメイド喫茶として働かされていたのだ。
「いらっしゃいませご主人さま、お嬢様」
来ているメイド服は確かにUDC怪物『フライングメイド服』であるが、憑依されている一般人たちは、学園に通う生徒たちに違いはない。
中には女の子にしか見えない男の子も取り憑かれているようであるが、彼女たちを傷つけるわけにはいかない。
確かに此処は正しくメイド喫茶であったのだろう。
だが、ここは学園である。
本格的なメイド喫茶は浮くばかりである。学生たちが拙いながらも一生懸命、来場者をもてなす姿勢こそが、『学園祭のメイド喫茶』であろう。
学園生活というものを詳しく知らぬUDC怪物たちであるからこその行き違い。
ならば、猟兵達は知らしめなければならない。
本当の学園生活がどんなものであるか。学園という場所を活かした戦いというものを、猟兵達はUDC怪物たちに叩きつけ、その戸惑いの隙を付いて、取り憑かれた学生たちを救出しなければならない。
さあ、猟兵たち―――いやさ、ご主人さま、お嬢様、旦那様に奥様、今こそ戦いの時―――!
ルイス・グリッド
アドリブなど歓迎
普通の建物とかでやれば違和感とかも少なかったろうに...
学園祭を回ったから分かるが、ここ、浮きまくってる
学園祭の出し物であるからこそ、本格的には出来ないんだよ!
メイド喫茶だったことに戸惑うし、記憶がない俺がいうのはおかしい事だろうが頑張る
【世界知識】で得た学園の知識を話しながら【挑発】【言いくるめ】して戸惑ったところを【気絶攻撃】【マヒ攻撃】【救助活動】で操られた生徒を気絶させ避難させた後、銀腕を【武器改造】で剣に変え【怪力】【鎧無視攻撃】でメイド服にUCで攻撃
その空間は学園という施設の中にあって、異様なる雰囲気を放っていた。
メイド喫茶。
それはメイド服に身を包んだ淑女たちが、お客様を御主人様、お嬢様としてもてなす社交場である。
確かにそこは正しくメイド喫茶であった。
メイド服に身を包んだ女学生たちがにこやかに笑い、出迎えてくれる。どこに出しても恥ずかしくないメイド喫茶であったのだが―――。
「学園祭を回ったから分かるが……此処、浮きまくってる!」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は思わず叫んでしまった。
そう、この学園祭で催されているメイド喫茶はあまりにも本格的であった。
それこそ街中にあるメイド喫茶と遜色のない完璧なる対応。それこそ己が本当に御主人様、お嬢様になってしまったかのように錯覚してしまうほどの、完璧なメイドたちが出迎える。
そこに初々しさはどこにもなく、お祭りに浮かれたような熱もなかった。
ルイスは普通の建物とかでやれば違和感なども少なかったのに、と思ったが、そこが邪神の眷属たちの落ち度である。
「学園祭の出し物であるからこそ、本格的には出来ないんだよ!」
対峙する女学生のメイド達は皆洗脳されている。
そして、UDC怪物『フラングメイド服』が操る儘に猟兵であるルイスへと襲い掛かるのだ。
見る見る間にロングスカートであったメイド服が、まるでフレンチメイドのように丈の短いスカートに変わっていく。
それこそが『フライングメイド服』のユーベルコードである。
「ああ、もう! なんでそこから布地が減っていくんだ! 記憶がない俺が言うのもおかしい事だろうが!」
己の本体とも言うべきメイド服の布地を消費することに寄って、底上げされた女学生の格闘術が格段に跳ね上がり、ルイスを襲う。
彼女たちの拳や蹴りが繰り出される度に、ルイスはヒヤヒヤしてしまう。
「ああ、もうやりづらいな―――!」
女学生たちは操られているとは言え、その業のキレは本小野田。
「わかるか、何も本物ばかりが全て良いものであるとは限らないんだ。まがい物であるからこそ、生まれる初々しさ。それを尊ぶ者たちだっている。なのに、お前たちUDC怪物は、その『良い』ところを潰してしまっているんだ!」
世界知識によって得た学園の知識。
そこから導き出され、感じたままに言葉を紡ぐ。そう、学園祭の出し物のメイド喫茶は、言わば飯事のようなものであろう。
けれど、それを咎める者がどこにいるだろうか。
飯事であっても、それは確かに彼女たちにとっては大切な掛け替えのない青春の思い出なのだ。
「だから、お前たちは―――間違っている!」
銀の腕が剣の形へと変貌し、ユーベルコードが輝く。
それは一撃必殺なる剣閃となって、凄まじき剣速と共に放たれた。
フライングメイド服が散り散りになって切り裂かれ、学生服の上から無理やり着せあられていた女学生たちには傷一つつけずにルイスは抱える。
銀の腕が姿を変えた剣は、放つ瞬間は刃のない非殺傷の剣となって放たれ、メイド服を切り裂く時には刃をつけた剣となってUDC怪物たる『フライングメイド服』を切り裂く。
それはあまりにも絶技。
最早、己の腕と寸分たがわぬ動きを再現する銀の腕は、己の肉体の一部以上となっている。
「よし……やはり、メイド服だけを切り刻めば、憑依された人は無事か。なら―――!」
抱えた一人の女学生をメイド喫茶と化した空き教室から運び出す際に襲い掛かるメイド達を次々とみねうちで気絶させる。
憑依した宿主が気絶してしまえば、如何なUDC怪物といえど、無力化される。
「本当になんでメイドなんだ……!」
フィクションの中の学園ならばいざしらず。
けれど、確実に巻き込まれた女学生を救出し、ルイスはなんとも言えない気持ちの儘、彼女たちを助けるために戦い続けるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
メイド服!?
こんなオブリビオンもいるんだなぁ……着てるのは一般人だから戦いにくいけど、負けないぞ!
学校で強いのはやっぱり先生だよね。
化術で先生に化けてメイド喫茶に突撃だ!
それで、この出し物は本格的すぎて学生らしくないから、メイド服から学生服に着替えて控えめの接客をしなさい!って言ってみる!
言う事聞いてくれれば勝ったも同然!
聞いてくれなかったら、それはもう学校との戦闘行為見たいなもんだし無敵じゃなくなるはずだよね。
戸惑わせたにしても非戦闘行為に没頭は出来ないはず。
その隙に高速詠唱したユーベルコードで倒しちゃえ!
この魔法剣は敵を攻撃するんだから、このメイド服だけ切る事も出来る、はず!
メイド喫茶は猟兵の突入に寄って騒然としたものに―――なっていなかった。
このメイド喫茶に訪れる者たちは皆、御主人様、お嬢様である。本格的なメイド喫茶を邪神が用意したのであれば、この程度の騒動で取り乱すメイドなどいようはずもなかった。
故に、どれだけの猟兵たちがメイド喫茶に突入しようとも、UDC怪物『フライングメイド服』に憑依され操られている女学生たちは取り乱すことなく整然と御主人様、お嬢様に奉仕をすべく己の責務を淡々と執り行うのだ。
「メイド服!? こんなオブリビオンもいるんだなぁ……着てるのは一般人のおねーさんたちだから戦いにくいけど……負けないぞ!」
杓原・潤(人間の鮫魔術士・f28476)は、あまりにも突飛なUDC怪物が姿を現したことに驚愕していた。
オブリビオンとは過去の化身であり、怪物でも在る。
どんな姿のオブリビオンが出てきても動じるつもりはなかった潤であったが、流石に『フライングメイド服』と呼ばれるオブリビオンが相手になるとは思っても居なかった。
「学校で強いのは、やっぱり先生だよね」
未だ小学生である潤にとって、学校という環境における最強の存在と言えば教師に他ならなかった。
学校というものをろくに知らぬ邪神たちを戸惑わせるには、その最強を持って当たらなければならないと化術によって己の知る一番強面の先生―――田淵先生へと変身するのだ。
「コラ―――! この出し物はなんだ! 本格的すぎて学生らしくないから、メイド服から学生服に着替えて非亀の接客をしなさい!」
その怒号の如き咆哮は、まるで龍の息吹の如く。
メイド喫茶となった教室を震撼させるには十分すぎるほどの声量であった。いるよね、何処の学校にも異常に怖い先生。
潤の通う小学校にも居る。それが田淵先生(46)である。潤も正直言うと化術で変身するのも、ちょっと気が引けたけれど、UDC怪物に憑依されている女学生のおねーさんたちを助けるために背に腹は代えられない。
びくっ! と宿主である女学生たちはよくわからないプレッシャーを受けて動きを止めてしまう。
けれど、UDC怪物である『フライングメイド服』達は違う。
戸惑いつつも、その言葉の意図を測りかねるように、次々と潤の化けた田淵先生へと襲い掛かる。
けれど、その動きは精細に欠いたものであり、動揺が完璧なるメイド術を阻むのだ。
「狙いどうり! なら!」
田淵先生から潤の姿に一瞬で戻ると、即座に詠唱が奏でられるようにして紡がれる。手にした短い杖バブルワンドが魔力伴う幾何学模様を描く魔法剣を次々と虚空より召喚する。
それこそがユーベルコードの輝きであり、ミゼリコルディア・スパーダの力である。魔法剣が宙を舞い、一斉にメイドたちのメイド服を切り刻んでいく。
「魔法剣は、うるうの敵だけを攻撃するんだから、おねーさんたちは傷つけない!」
圧倒的な物量で持って次々と『フライングメイド服』が魔法剣によって切り刻まれていく。
それは憑依した女学生たちを傷つけずに、散り散りと舞うようにして霧散させていく。
「わっ! お洋服刻んじゃったら、裸に……あれ? 制服着てる……」
しまった、と潤は思った。
メイド服を攻撃しなければ、憑依された女学生たちを開放できない。けれど、メイド服を刻んでしまえば、彼女たちの素肌を顕にしてしまうと慌てたのだが、どうやら無理やりメイド服が着せられたのは、学生服の上からだったのだ。
「ああ、よかったぁ……流石に裸のまま帰すわけにはいかないもんね。でも、いいことわかっちゃった! 遠慮はいらないってことだよね!」
潤のバブルワンドが再び魔力の軌跡を描く。
攻略法はすでに掴んでいる。ならば、一刻も早く囚われている女学生たちを開放しなければならない。
どれだけの女学生たちがメイド服の虜になっているのか、まだわからない。けれど、潤の操る魔法剣は、そんなこと関係ないと言わんばかりに、美しい軌跡を描きながら、メイド服を散々に切り裂き続けるのであった―――!
成功
🔵🔵🔴
須藤・莉亜
「じゃ、頼んだよ、Morte。」
Morteに教師の姿で学園の放送室に行ってもらい、僕が戦うタイミングに合わせて校内放送でメイド喫茶をやっている人らを呼び出してもらう。
「(Morte教師)メイド喫茶の学生は、至急職員室まで来るように。」
僕聞いた事あるんだよねぇ、生徒にとって職員室に呼び出されるのはめっちゃ嫌な事だって。
…これで動きが鈍ると良いなぁ…。
んでもって、僕はUCでメイド服の敵さんの動きを見極め、的確にメイド服だけを切り裂きにかかる事にしようかな。
敵さんの攻撃は殺気を感じとり動きを見切って回避。武器受けで防御するのも忘れずに。
「めんどーな敵さんだなぁ…。」
「じゃ、頼んだよ、Morte」
そう須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は己の血を分け与えた特別な眷属Morteに指示を出して、目の前の空き教室にて繰り広げられるUDC怪物『フライングメイド服』に憑依された女学生たちがひしめくメイド喫茶に向き直った。
すでに先行した猟兵たちが憑依された女学生たちを何人も教室の外へと運び出しているが、未だ教室内のメイドたちは数を減らすどころか、バックヤードとなっている別の空き教室からなだれ込むようにして現れている。
「一体どれだけの人数をメイドにしたのやら……めんどーな敵さんだなぁ……」
それにオブリビオンを敵さんと呼んで、己の抑えた吸血衝動を発露する相手と見定めている莉亜にとって、吸血できないオブリビオンは面倒この上ない相手である。
まさか憑依した女学生たちの血を吸うわけにもいかない。
だから、とても面倒であるのだが……。
「おかえりなさいませ、御主人様わん!」
「にゃんやん、御主人様! こっちだにゃん!」
猫耳と犬耳、ふわふわしっぽを生やしたケモミミメイドたちが莉亜に殺到する。それは萌メイド術!
猫耳と犬耳としっぽをつけたメイドたちが、如何なる原理か飛翔し莉亜へと迫る。
その光景は最早メイド喫茶だとか、学園祭の、だとか、そんなのを超越した何か別の催し物になっているではないかと莉亜はツッコまずにはいられなかった。
けれど、その動きはユーベルコードによって強化されている。
莉亜であっても、その動きは面倒この上ないものであり、憑依された一般人である女学生たちを傷つけることは憚られた。
「ほんとっ、めんどーな敵さん!」
繰り出される猫ぱんちや犬ぱんちを躱しながら、莉亜は時を待っていた。
こうちょこまかと動かれてしまうと、狙いがずれて大惨事になる。己の眷属であるMorteに出した指示が早く果たされることを祈るしかなかった。
そして、その時は唐突にやってきた。
学内に響き渡るピンポンパンポーンという気の抜けた音。莉亜にとっては馴染みのないものであったけれど、この学園に通う女学生たちにとっては違う。
それは呼び出しのチャイム。
「メイド喫茶の学生は、至急職員室まで来るように。繰り返し、メイド喫茶の学生は、至急職員室まで来るように」
そのアナウンスを聞いたメイド達は一様にビクリと肩を震わせ、立ちすくむ。
その一瞬の隙を逃す莉亜ではなかった。
「やっぱりそうなんだね。僕聞いたことがあるんだよねぇ。生徒にとって職員室に呼び出されるのはめっちゃ嫌なことだって。だから、みんなビクってしたんでしょう」
その刹那、二振りの大鎌から放たれる圧倒的な速度の剣閃が女学生に憑依したUDC怪物『フライングメイド服』を切り刻む。
学生服の上から無理やり着込まされたメイド服が散々に切り裂かれ、霧散し消えていく。
アナウンスの音が聞こえた瞬間、メイド達は何かに怯えるように体を竦ませた。
その理由を莉亜は知識として知っていたが、ここまで顕著にでるとは思わなかったのだろう。少し以外そうなかおをして、『フライングメイド服』から開放された女学生たちを抱えて外へと飛び出す
莉亜はそのまま外に居た教師へと彼女たちを預ける。
「よくやってくれたね。上出来だったよ」
そう言って呼びかけるのは教師の姿に变化した眷属Morteであった。そう、あのアナウンスは莉亜が仕込んだものだ。
眷属であるMorteに教師へと变化してもらい、学園の職員室から放送をしてもらったのだ。
学園祭を楽しんでいる他の学生や来場者たちは、本来無いはずのメイド喫茶を咎めるようなアナウンスがあったことに訝しむが、それでもパンフレットにないメイド喫茶へとたどり着くことはできない。
「じゃあ、ボクはもうちょっと敵さん切り刻んでくるから、その子らの保護はよろしくね」
そう言って莉亜は再びメイド喫茶へと飛び込んでいく。
抑えた吸血衝動を発散できないオブリビオンへの八つ当たりもあったが、その凄まじき活躍は、まさに切り裂き鬼(ヴァンプ・ザ・リッパー)の如く。
次々と『フライングメイド服』を切り裂き、そのユーベルコードの名の通りの活躍を続けるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
アドリブ・連携歓迎
メイド喫茶に執心のようです。邪神のくせに俗っぽいですね。
正体はどのような存在なのでしょう。
学校らしい行動といえば、スタンプラリー中に巡回している風紀委員の方がいたので、【催眠術】で「巡回当番を交代します。」と言って、風紀委員の腕章をお借りしました。
(学生服に腕章を付け、伊達メガネを掛けて、風紀委員っぽい感じになります。)
布地を代償に襲ってくるメイド喫茶の皆さんには「そのきわどい服装は、校則上、問題があります。風紀委員としてメイド服の着用を禁止します!」と指示します。
相手が怯んだところに煌月によるUC:霊刃・禍断旋でメイド服の邪神の力を断ち斬って、囚われた学生さんを解放します。
学園祭中、催し物は全て学園祭実行委員会によって管理されている。
それは不測の事態を見据えてのことであったし、ゲリラ的に、と言われている催しですら事前に申請をしてあるのだ。
故に学園祭のパンフレットの中に『メイド喫茶』はない。
それがゲリラ的に行われていることはありえない。故に、怪奇に呑まれた学園にあって、迷宮のように位置が変わる催し物の影響を受けていないメイド喫茶こそが邪神召喚の儀式を目論む邪神の眷属たちの巣窟であるのだ。
すでに何名もの女学生や女の子のような可愛らしい顔立ちの男子学生たちが学生服の上からメイド服を着せられ、UDC怪物『フライングメイド服』に憑依されており、その全てが猟兵達の邪神召喚の儀式を阻止する行動を妨害しようと動いていた。
「メイド喫茶に執心のようです。邪神のくせに俗っぽいですね。正体はどのような存在なのでしょう」
だが、邪神と言えど学校というものに関しての知識はあまりないようであった。
それ故に本格的メイド喫茶を催しとして学園祭に紛れ込ませたからこそ、そこを糸口にして猟兵から看破されてしまったのだが……。
大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は即座に駆けつけ、他の猟兵たちが次々とメイド喫茶が催されている空き教室から囚われていた女学生たちを担いで飛び出す光景に出くわす。
どうやら学校らしい行動がUDC怪物『フライングメイド服』たちを動揺させる鍵になることを伝え聞くと、スタンプラリー中に巡回していた風紀委員の女学生に神たる力のオーラと共に催眠術により、『潤解凍版を交代します』と申し出て、メイド喫茶の空き教室から遠ざけると共に、受け取った風紀委員の腕章を身に着けたのだ。
「さあ、正義の神……いえ、風紀委員が参ります!」
学園制服と風紀委員の腕章。
そしていつの間にか伊達眼鏡をかけ、髪型もみつあみにしてしまえば、これぞTHE委員長とも言うべき詩乃が爆誕する。
踏み込んだメイド喫茶は異様なる雰囲気に包まれていた。
そこにいたのは、すでに猟兵たちから、かなりの数の女学生たちが救出されたにも関わらず、ひしめくように存在するメイド、メイド、メイドの数々。
彼女たちは一様に布地を代償にして、少々露出の多いメイドさんへと大変身を果たしていたのだ。
「おかえりなさいませ、お嬢様! 御覚悟なさってくださいね!」
ハートマークが飛びそうなほどにピンクな雰囲気に包まれるメイド喫茶。けれど、詩乃には通用しない。
「そのきわどい服装は、校則上、問題があります。風紀委員としてメイド服の着用を禁止します!」
詩乃はびしぃ! と指差しし、布地の大変少なくなったメイド達に校則違反であることを突きつける。
学生証の入った生徒手帳を突き出し、服務規程の項目を指差すのだ。
当然、困惑と共に動揺するのはUDC怪物『フライングメイド服』に取り憑かれた女学生たちだ。
その困惑の意味も、何故動揺するのかも理解できぬUDC怪物はたじろぐ。
その一瞬の隙を逃さず、詩のは己の神力を込めたオリハルコンの刃煌めく薙刀、煌月を一閃させる。
「この一刀にて、その邪心を断ち斬ります! ―――霊刃・禍断旋(レイハ・カダンセン)!」
放たれた薙刀の一撃は肉体を傷つけずに、女学生たちを捕らえ続けている邪神の眷属たるフライングメイド服のみを切り裂く。
見事な一撃によって女学生たちは散り散りになって霧散し、消えていくメイド服から開放され、学生服のまま倒れ込もうとするも優しく委員長ルックの詩乃が抱える。
「さあ、次はどなたです。そのような節だらな格好は目に余ります。風紀の乱れは心の乱れです。邪神の眷属と言えど、容赦はいたしません」
煌めく月の如く薙刀の刃が輝き、溢れ出る神力と共に詩乃の委員長ちからがUDC怪物たる『フライングメイド服』たちを次々と切り裂き、囚われの学生たちを開放していくのであった―――!
余談であるが、学園祭の後、どこからともなく風紀の乱れを感じ取って現れる謎の薙刀委員長の伝説が、この学園に残ったとか残らなかったとか―――。
成功
🔵🔵🔴
姫川・芙美子
「黒いセーラー服」を護符に戻して自身の周囲に展開し、【結界術】で攻撃から身を守ります。
「鬼髪」を伸ばして先端を刃に変え、生徒達を傷付けずにメイド服だけを攻撃しましょう。。
少しでも間合いを間違えると、生徒まで怪我をさせてしまいます。助力を請いましょう。
護符に封印された妖怪「蝶化身」の【封印を解き】その力の一端を解放。蝶化身とは死者の魂が蝶と化した、生と死の狭間を操る妖怪。その力で、私と同じく、産まれる事が出来ずに学校に通えなかった赤子達の霊を【降霊】します。学生達を救い、この学校を守る為に力を貸して下さい。
生徒達に取り憑いて動きを止めて貰った隙に髪の刃を【なぎ払い】メイド服を切り裂きます。
誰よりも早く屋上へといたろうとした姫川・芙美子(鬼子・f28908)へと迫っていたのは、メイド服を来た女学生たちであった。
「お嬢様、いけません。こんなところにいては。此処より先は誰かのために何かをしたいと願い、それを成就させるべく証を持った者しか進むことの出来ない道」
「残念ながらお嬢様には証がありません」
「とてもとても残念なことなのですが、お嬢様にはご退場願わなければなりません」
彼女たちは一様に恭しい態度で芙美子に接しているが、互いにもうわかっている。
自身が対峙するのは互いに滅ぼし合うべき存在。オブリビオンと猟兵である。この問答を続けても芙美子の得たい答えは引き出せないだろう。
見ればわかる。
「喋っているのは宿主である女学生の方々……操っているのが、オブリビオン。ならば、そのメイド服がUDC怪物ですか!」
黒いセーラー服が護符へと姿を変え、芙美子の周りへと展開される。妖怪『蝶化身』を封じたセーラー服は芙美子を護る結界術の礎となって、飛びかかるようにして襲い掛かるメイド達を押し止める。
しかし、彼女たちのメイド服が次々と布地を減らしていく。
それこそがUDC怪物『フライングメイド服』のユーベルコードである。女学生たちに寄生するようにメイド服を無理やり纏わせ、その肌の露出が増えれば増えるほどの彼女たちの戦闘力は増していく。
「本体であるメイド服の布地を犠牲にして戦闘力を上げましたか……!」
鬼の封印された髪の先端を刃に変え、女学生たちを傷つけずにメイド服だけを攻撃する。
すこしでも間合いを間違えてしまえば、女学生たちもまた怪我を負ってしまう。その事に芙美子は僅かにためらった隙を突くように結界術の綻びから『フライングメイド服』を身にまとったメイドたちが殺到する。
「ふたつやみつやよついつつ……」
護符の封印がほどかれる。
妖怪『蝶化身』。それこそが芙美子の黒いセーラー服に封じられた妖怪であり、その封印を解くということは、その力の一端を持ってユーベルコードを発動させるのだ。
「蝶化身は、死者の魂が蝶と化した、生と死の間を操る妖怪……」
それは物悲しい言葉の響きであった。
自分と同じく生まれる事ができずに学校に通えなかった赤子達の霊を己へと降霊させる。
芙美子にとって、このユーベルコードは言わば水子供養(ミズコクヨウ)であった。
本来であれば当たり前のようにあったであろう掛け替えのない未来、その可能性を失ってしまった者たちの心に報い、その力を持って借り受けるユーベルコード。
「学生たちを救い、この学校を護るために力を貸してください」
在り得たかも知れない可能性。
その赤子のまま亡くなってしまった者たちの在り得た人生の時間に応じた力の増幅は、圧倒的なものであったことだろう。
人一人分の在り得たかもしれない時間は途方も無いものである。
「ありがとうございます」
ただ、小さく芙美子は礼を告げ、その可能性の力を持って鬼髪の伸ばした先の刃が次々と『フライングメイド服』だけを超絶為る技巧で持って切り刻む。
薙ぎ払うように振るった鬼髪の一撃は、一瞬で彼女に追いすがったフライングメイド服にとりつかれた女学生たちを開放する。
散り散りになって霧散していく『フライングメイド服』たち。
後に残ったのは、囚われたいた学生たちである。
芙美子は屋上への階段を一歩踏み出す。先程まではまるで芙美子を拒むようにして進むことのできなかった屋上への階段が開かれている。
「―――……やはり、最後の戦いの場所は屋上ですか。ですが、今は彼女たちを安全な場所に保護すべきですね」
芙美子は自分を追ってきたUDC怪物に取り憑かれ、開放された女学生たちを抱える。
そんな彼女から降霊した水子の霊たちが抜けていく。
彼らの助力がなければ、襲い掛かるメイド達をいなしつつメイド服だけを切り刻むことはできなかったであろう。
芙美子に告げられた礼を受けて、彼らは輪廻転生へと向かうのだろう。
供養と名のつけられたユーベルコード。
その優しいユーベルコードの輝きが、彼らの次なる生を明るく照らすことを芙美子は願わずにはいられなかったのだ―――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
いい事思いつきましたの
学園祭の出し物ならずっと働いてる事はありえませんの
当番で交代するはずですの
女神降臨でメイド服っぽいドレスに変身しますの
もちろん可愛らしいものですの
って僕もかよ
この作戦なら人数多い方が良いですの
交代を申し出て相手が奉仕活動をやめた隙に
横に立って二人で自撮りしますの
折角可愛い服着たのですから残しておくべきですの
撮影と同時に彫像に変えて固定しますの
こっちはお盆を受け取って気が逸れた隙に石化させようか
後でUDC組織の人に回収して貰わないとね
もったいないですけど仕方ないですの
でもこの騒ぎの間はこのままの方が安全ですの
邪神の施しの様な感じで強化し壊れないようにして
じっくり堪能しますの
「いい事思いつきましたの」
そう邪神の分霊が明るい笑顔のまま言い放った時、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は少しだけ嫌な予感がした。
何故ならば、邪神の分霊が思いつく良いことというのが、どうにも晶にとって良いことであるのかどうか判別が付かなかったこともあるし、大抵の場合、よくないことが起きるのだ。
「学園祭の出し物なら、ずっと働いている事はありえませんの。当番で交代するはずですの」
それは言われてみれば、確かにそうであろうと晶は思った。
変に勘ぐってしまって申し訳なかったな、と思ったのはほんの一瞬だった。
「女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)ですの」
邪神の分霊がメイド服っぽいドレスに変身を遂げる。
見事なメイドドレス姿は、言わばお嬢様メイドと言えばいいだろうか。立場がごっちゃになっている名称であるが、そう呼ぶのが相応しいという程に見事なメイドドレスであった。
「って、僕もかよ!」
当然のようにユーベルコードの影響を受けるのは邪神と融合している晶自身である。
晶もまたメイドドレス姿にドレスアップさせられてしまい、小っ恥ずかしいのを我慢する。本当なら脱いでしまいたのだけれど、脱いでしまうとそれはそれで風紀委員に取り締まられるだけであるから、ぐっと堪えるのであった。
ほらやっぱり悪い予感が当たる、と晶は天を仰ぐ。
「この作戦なら人数多いほうが良いですの」
天を仰ぐ晶の腕を引いてぐいぐいと邪神の分霊がメイド喫茶へと吐いていく。
「はいはい、交代の時間ですの。あ、最後に自撮りもしておきましょう」
そう言って意気揚々と邪神の分霊が、UDC怪物『フライングメイド服』に憑依されている女学生と並び立った瞬間、スマホのシャッターが切られる。
その瞬間、直後に邪神の権能が発動する。
彫像に変える権能。それはフライングメイド服を着ていたとしても変わりなく効果を発揮し、女学生を彫像へと変える。
「折角可愛い服を着たのですから残しておくべきですの」
そんな可愛らしいことを言いながらもやっていることは女学生を次々と彫像へと変えていく邪神らしい行為そのものであった。
異変を感じ取ったメイドたちが続々と二人の元へと殺到してくる。
あの勢いを見れば、彫像化したメイドたちが誤って倒されて破損してしまいかねない。
「……後でUDC組織の人に回収してもらわないとね」
晶は受け取ったお盆のままにフライングメイド服だけを石化させ、そのUDC怪物の本体である衣服だけを砕き破壊する。
これならば、敵を固定しつつ、本体だけを叩くことができる。
憑依され囚われた女学生たちの体を傷つけずに、UDC怪物である『フライングメイド服』だけを骸の海へと還すことが容易であった。
「確かにこれのほうが効率的でいいんだろうけど……なんていうか、邪神の趣味も入ってるよなぁ……」
そんな晶を尻目に次々と邪神の分霊はメイド達を彫像化していく。それは最早戦いというよりは、可愛いものを集めるだけの実に女の子らしい動機に駆られた行動にしか見えない。
「あ~……砕くなんてもったいないですの。でも、この騒ぎの間は、彫像化していた方が安全ですの」
邪神の施したる彫像の強化を加えながら、壊れないようにして邪神の分霊はうっとりするように、じっくりと堪能する。
「……後でって言ったけど、今のうちにUDC組織の人に保護してもらおう。一体くらいいいでしょうとか言い出しそうだし」
晶は決断早く、すぐにUDC組織へと連絡を入れる。
ほどなくして到着したUDCエージェントたちによって彫像化されたメイド達は保護されていく。
そんな彼らの背を晶に捕まえられながら、ご無体なと追いすがろうとする邪神の分霊の姿があったとかなかったとか―――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
【心境】
「いや、猟兵オブビリオン問わずいろんなメイドを見てきたけど…さすがに空飛ぶメイド服ってのは…。いや普通か。」
オブビリオンと猟兵だしなぁ…。
【行動】
捕まって利用されてる学生さんを助けるのが最優先だなっと。
『破魔』+『優しさ』を込めた神砕でユーベルコードとメイド服を攻撃するわ。
わりぃーが、簡単にその子達を利用できると思うなよ。
『早着替え』でメイド服を学生たちからひっぺ替えして、学生服に交換したら、逃げられる前にメイド服を『踏みつける』とアーラーワルを『串刺し』てトドメだ。
ん?なんだ寧々。
『女性の服脱がすなど…女体を見たいなら妾で不満足というのか。』
「誤解だよ…。」
学園祭のパンフレットに乗っていないメイド喫茶。
それは街中にあるメイド喫茶と遜色ないものであり、本職のメイドさんもかくやというほどの奉仕スキルを発揮している。
それは学園祭……学生主体のメイド喫茶にしてはあまりにもレベルの高いものであり、だからこそ催し物の中で際立つどころか、浮いてしまっていた。それによって猟兵達に邪神の眷属であると看破されたのは皮肉としか言いようがない。
「いや、猟兵オブリビオン問わずいろんなメイドを見てきたけど……流石に空飛ぶメイド服ってのは……。いや普通か」
猟兵とは数多の世界を渡り歩く者である。
故に異世界の文化を様々と見る機会は多いであろう。そんな中にあってメイドとは、比較的よく目につくものであったのかもしれない。
黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は、UDC怪物『フライングメイド服』と名付けられたオブリビオンを前にして、そんな感想を漏らした。
けれど、今のUDC怪物『フライングメイド服』たちは学園祭に参加していた女学生たちに憑依し、その身を操り猟兵たちへと襲い掛かるのだ。
「とはいえ、捕まって利用されてる学生さんを助けるのが最優先だなっと」
本体である『フライングメイド服』の布地を消費し、とっても布面積の少ないメイド服に身を包んだメイドたちの拳や蹴りをいなしつつ、名捨は肉体言語の如き格闘術に真っ向から対抗する。
名捨も徒手空拳にて戦うことを得意とする猟兵である。
ユーベルコードによって強化された女学生たちの格闘術を前にしても、何も遜色のない動きを見せつける。
「わりぃーが、簡単にその子達を利用できると思うなよ」
言ってしまえばUDC怪物にとって女学生たちは宿主である以前に猟兵に対する人質なのだ。
本体がメイド服である以上、その中身である助学生たちを傷つけまいと猟兵達は立ち回るだろう。その善意に付け込むのだ。
けれど、名捨にとってそれは無意味なことであった。
「オレの意思が悪を討つ…神砕ッ!!」
放たれたるは七つの美徳と気合を込めた覇気による拳の一撃。
それは肉体を傷つけず、七つの大罪と邪心、そしてユーベルコードのみに作用する拳。
それこそが、ユーベルコード神砕(シンサイ)である。
その一撃で『フライングメイド服』が霧散することはなかった。
だが、次の瞬間、目にも留まらぬ素早き手腕でもって名捨はメイド服を学生たちから引っ剥がし、学生服に早着替えを行う。
こうすれば、学生たちは開放され、メイド服だけにすることができる。
引っ剥がされた『フライングメイド服』が飛んで逃げようとした瞬間、短槍アーラーワルが直上より降り注ぎ、その『フライングメイド服』を床に釘付けにする。
「逃げられると思うなよ―――」
そこへ名捨の踵落としが炸裂し、今度こそ『フライングメイド服』は霧散して消える。
「ん?なんだ寧々」
次々と襲い来るメイドたちをその要領で無力化していく名捨であったが、頭の上に座る喋る蛙『寧々』が不機嫌そうなかおをしているのが気になった。
どちらかと言えば、今の名捨の手腕は見事なものである。
人質であり『フライングメイド服』に寄生された女学生たちを傷つけることなく撃退しているのだから、褒められこそすれ不機嫌な顔をされる言われないはずだ。
「女性の服を脱がすなど……女体を見たいなら……妾で不満足というのか」
……。
「誤解だよ……」
名捨はあまりのことに肩をがっくりと落として弁明する。
一番穏便なやり方を選んだはずであったのに、寧々にあらぬ曲解を招いたのは、この戦いにおける唯一の失策であったのかもしれない―――。
大成功
🔵🔵🔵
久遠・翔
アドリブ絡み歓迎
もう勘弁してください…
服飾部の人がUDCに操られたのかと思ったらただの一般人でしかも服も着替えさせられて…うぅ、恥ずかしいっす(服装はMS様にお任せ)
そんなこんなで遅れながらも参戦…って、なんかすごくデジャブなんっすけど!?(誘惑146&女性に好かれる)
バックヤードに引きづり込まれ複数人から攻められます
痛いとかよりも色々当たっているからー!?離れてー!?と言うけどますます強く押し付けられる上に普段気ない服をうっとり見られて羞恥心増大
その結果無意識に選択UCが発動してメイド服の力が弱まり最後は消えていきます
その結果残ったのは満足げに倒れる女生徒と服が乱れ肩で息をする俺と言う結果に
そして、時は少しだけ遡る。
猟兵たちが学園祭のパンフレットに記載されていない、在るはずのないメイド喫茶を発見した時、服飾の歴史という展示を見ていた久遠・翔(性別迷子・f00042)は無自覚なる己の魅力によって魅了された女学生たちに連れられて家庭科準備室へと連れ込まれていた。
彼女たちは皆、一様に学園制服に身を包んだ翔のスタイルの良さ、素材の良さに目をつけ、彼女ならばと様々なデザインの洋服を着せ始めたのだ。
「もう勘弁して下さい……」
てっきり最初はUDCに操られてしまった学生たちであるのかも知れないと翔は下手に強気に出れずにいたのだが、時間が経つに連れ、2着、3着と様々な衣装に身を包んでの撮影会が強行される段になって漸く、彼女たちがUDCも怪奇も関係のないただの一般人であることに気がついたのだ。
「……うぅ、恥ずかしいっす」
そんなこんなで盛大にきせかえ人形にされてしまった翔であったのだが、他の猟兵たちが見つけた怪奇であるメイド喫茶へと突入し、囚われの女学生たちを次々と救出しているのを聞きつけ、急ぎ駆けつけたのだが……。
「そこまでっす!」
メイド喫茶と化した空き教室のドアを勢いよく開け放って現れたのは、同じくメイド服な翔の姿であった。
アニメやフィクションに出てきそうなデザインのメイド服に身をまとった翔は、何処からどう見ても立派なメイドである。
ただ、羞恥心が限界に着ているのか、恥ずかしげな表情で赤面しているのがご愛嬌というやつであろう。
一斉にメイドたちの視線が自分に突き刺さる。
なんとも言い難い感覚。見られているという感覚だけが翔の頭を熱でみたしていく。
「……やっぱり見るのだめっす! ……ってなんかすごくデジャブなんっすけど!?」
あー!
一斉にUDC怪物『フライングメイド服』に憑依された女学生たちが翔へと飛びかかる。複数人から飛びかかられ、為すすべなくバックヤードに引きずり込まれてしまう翔。
「ちょ、ぁ! 痛いとかよりも色々当たっているからー!? 離れてー!?」
もはやバックヤードはもみくちゃ状態である。
どれだけ離れてと言っても、離れてくれないし、益々強く押し付けられてしまう。
さらに普段着慣れない服に身を包んでいるせいで、あちことが危ない危ないやつになってしまっているが故に、ギリギリの表面張力で保たれていた翔の羞恥心が限界を越えてこぼれ果ててしまう。
「だから、だめっす! だめったらだめー!」
それは、無自覚の誘惑術(リジェネテンプテーション)。
無自覚に女性を誘惑する怪しいフェロモンが翔の体を覆う。無自覚ゆえの絶大なる誘惑の術。それが翔の持つユーベルコードである。
しかして、その無自覚の誘惑たるフェロモンは結果としてUDC怪物たちの力を弱め、最後には霧散し消え果てるのみである。
「はぁ―――! はぁ―――!」
肩で息をするようにしながら、翔は乱れた着衣をもとに戻しながら、バックヤードに重なるようにして倒れ伏す学生服姿の女学生たちを見やる。
きびしいたたかいだった。
なんと形容していいかわからない惨状の中、翔は一人熱っぽい吐息を吐き出して。
「―――……勝ったっす」
静かに勝利宣言をしてから、ずりおちそうになったメイド服の肩がけを元に戻すのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
ソナタ・アーティライエ
お祭りの時間はもう終わりです
さあ、帰りましょう
楽しい時間は限りあるもの
学生の、一行事の時間ともなれば尚更に、ほんの瞬きの間と言えるでしょう
(それ故に、とても眩い宝石のように尊いものだと思います)
【聖櫃】の結界によって、この教室は周囲の時間と隔離させて頂きました
皆様が健闘しておられるうちに、とても早く時は過ぎ去り
すでに学園祭も終了の時間と相成りました
仮初の衣装を脱ぎ、いつもの制服姿へと戻らなくては……
UCによって作った偽りの学園祭終了時間という状況と
説得と、浄化・除霊などの力を纏ったお着換えの手伝いで
憑依の解除を試みますね
無事対処できましたら、忘れず時間を元に戻しますね
アドリブ・弄り歓迎です
永遠に続いてほしいけれど、永遠には続かないものがある。
それは楽しいと感じれば感じるほどに、儘ならぬもの。皮肉にも長い人生という旅の中で青春とは、ほんの刹那の輝きにも似たものであろう。
それ故に尊いのだ。
だが、その尊さをも邪神召喚の儀式に組み込み利用しようとするのが邪神というものである。
「お祭りの時間はもう終わりです。さあ、帰りましょう」
怪奇に呑まれた学園、その空き教室の一室はメイド喫茶へと変貌を遂げていた。
本来であれば無いはずの催し。
けれど、邪神の企みに寄って拐かされた女学生たちがいるのであれば、猟兵たちが駆けつけられないわけがない。
ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は静かに言い放つ。
「楽しい時間は限り在るもの。学生の、一行事の時間ともなれば尚更に。ほんの瞬きの間と言えるでしょう」
UDC怪物『フライングメイド服』に憑依されたメイドたちが、次々とソナタを取り囲む。
彼女たちは操られているが故に、UDC怪物である『フライングメイド服』たちの思惑のままに、その奉仕の術を使ってソナタからの干渉を受けつけまいと、その包囲網を狭める。
すでに多数の猟兵によって拐かされた女学生たちは救出されている。
もう、このメイド喫茶に残っているのは、ソナタを取り囲むメイド達だけだ。
「お嬢様。お茶でございます」
「お嬢様。まだまだ時間はたっぷりとございます。私達の奉仕を―――」
「お嬢様。お嬢様。お嬢様―――」
彼女たちのUDCに取り憑かれているとはいえ、その様子を見てソナタは瞳を伏せた。
楽しい時間。
学生時代という刹那。けれど、それ故にとても眩い宝石のように尊いものであるとソナタは感じていた。
それをこんな風にUDC怪物によって塗りつぶされることは許されていいものではなかった。
「暖かな明日を希い……」
聖櫃(ソレデモワタシハキボウヲウタウ)。
それは空き教室であったメイド喫茶をすっぽりと覆い隠す、時を統べる結界であった。
窓に映る風景はいつの間にか夕暮れ。
何が起こったのかメイドたちにはわかるはずもない。学園祭はまだまだ盛り上がっているはずだ。
だと言うのに、この静けさは一体なんなのであろうか。まるで、これでは―――。
「みなさまが健闘していおられるうちに、とても早く時は過ぎ去り、すでに学園祭も終了の時間と相成りました」
それはソナタのユーベルコードの力。
青い瞳が輝く。それはこの結界の中において彼女が時を統べる絶対者たる証。時の流れは彼女の指先一つで瞬く間に、飛ぶように加速する。
「仮初の衣装を脱ぎ、いつもの制服姿に戻らなくては……制服とはいつか脱ぎ去るものではりますが……この刹那故に今しか着ることのできないもの。衣装に貴賤はないでしょう。けれど、今一度、制服の意味を知って下さい」
彼女の言葉は歌うように響いた。
確かに非日常たる学園祭で着飾るメイド服もまた魅力的なものであろう。
UDC怪物『フライングメイド服』に憑依されているとは言え、女学生の彼女たちもまた日常において非日常を求める思春期の子供に変わりはない。
故に、ソナタは歌う。
「お祭りはもう終わりです。日常の中の新たな輝きを見出す時……」
彼女の戦いに力はいらない。
歌い、言葉を尽くして説得を試みるのみである。故に彼女は歌う。己の力は後押しをするだけであり、本来の力を持って邪神の眷属を制するのは、女学生たち本人であるのだと。
ソナタの言葉は浄化と除霊の力が籠もっている。
それはUDC怪物『フライングメイド服』たちの力を弱めるだけにとどまる。彼女の微笑みの前に邪心は薄れ、女学生たちが本当に望むものを齎すのだ。
「ええ、それでいいのです」
次々と女学生たちが無理やり着込まされていたメイド服を脱ぎ去り、その下にあった本来の学生服を顕にする。
今だけしか着れない学生服。
「今は少し窮屈に感じるかもしれない学生服でも、いつの日にか振り返った時に、懐かしさとともに今日という一日を思い返す……そんな思い出に変わることでしょう」
そして、時は戻りだす。
彼女のユーベルコードが解除され、フライングメイド服たちは次々と宿主自ら脱いだことによって、存在を維持できなくなって消滅していく。
此処に本来の学園祭に在るはずもない異物、メイド喫茶は閉店を迎え、ソナタは女学生たちと共に、本来の学園祭の時間へと戻っていく。
「さあ、日常にお戻りください。まだまだ楽しい時間は残っていますから」
そう微笑んでソナタは掛け替えのない日常へと女学生たちを送り返すのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『天道菩薩』
|
POW : 大いなる救い
【技能名【捨て身の一撃】を使用して自爆し、】【自身からレベルm半径内の全員を高威力で】【無差別攻撃する。自爆し自ら傷つくこと】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 不滅の救い
技能名「【捨て身の一撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : 永遠の救い
戦場全体に、【自身を崇拝する信者の成れの果て】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:塒ひぷの
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「虚偽・うつろぎ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
遂に開かれたるは屋上への道。
そこは邪神召喚の儀式の要であるスタンプラリーカードの終着点。
学園祭における全ての催し物のスタンプを押したカードを持っていき、最後の捺印を持って『薔薇色の学園生活』を贈るための切符となるのだ。
学生たち皆、誰かのために学園祭を奔走していた。
それが例えジンクスにすぎないものなのだとしても、誰かを思い、誰かのために何かをしたいという願いは、偽りなどではない。
確かな絆として、贈ったものと贈られたものとの間に生まれるものであった。
「ええ、ええ。そのとおりでございます。それこそが自己犠牲の本分。自己犠牲は尊く、もっと広まらなくてはなりません。此処より飛び降りて、貴方の滴る血によって『薔薇色の学園生活』を贈るためのスタンプとなさねばならないのです」
その奇妙なる姿のUDC―――邪神の一柱である『天道菩薩』が言う。
この屋上よりスタンプラリーカードを持って飛び降りることこそが、ジンクス最後のひと押し。最後のスタンプなのだと。
自己犠牲の最たるものをもってして、儀式は完遂となり、邪神召喚の儀式は進んでいく―――はずだった。
「だというのに、猟兵達は皆、この貴き行いに否を突きつける。人は誰かのために命を懸けて行うからこそ、天道への唯一にして絶対の道であるのです」
邪神『天道菩薩』は微笑む。
それが歪なものであるとわかっていない。それこそが本来あるべきものであると、生命とは自己犠牲の果に連なっていくものであると説く。
凄まじきプレッシャーが屋上に広がる。
猟兵たちの活躍に寄って邪神召喚の儀式は中途半端な状態でとどまっている。
今いる邪神『天道菩薩』もまた中途半端な召喚によって、本来の力を十全に発揮できていない。だというのに、この重圧の凄まじさは、かの邪神の力の凄まじさを物語っている。
「さあ、儀式を完遂しましょう。この学舎のすべてを使って、すべての生命を使って、あらゆるものを薔薇色に染め上げましょう―――」
だが、此処は邪神の本拠地ではない。
此処は学園だ。年若い者たちが共に学び、共に生活し、切磋琢磨しながら成長していく場所だ。
故に邪神は未だ知らない。
学校というものを。青春というものを。
ならば猟兵は見せつけなければならない。刹那のときであろう青春を生きる者たちが、どれだけの懊悩と向き合い、どれだけの勇気を持って困難に立ち向かうのかを―――!
ルイス・グリッド
アドリブ・共闘歓迎
犠牲になった者は満足かもしれないが、残された者は悲しむし果てしなく重い物が肩に乗る
自己犠牲は勇気と覚悟を持った人が己の意志で行う物
笑い合う未来の為に生きる生徒達に強いる物じゃない
なるほど、メイドは奉仕の精神だからか
【勇気】【覚悟】して挑む
【オーラ防御】で頭部を保護し敵のUCに合わせて【早業】【足場習熟】【ジャンプ】を使い、相手の頭上に移動
そのまま銀腕を【武器改造】で鋭い針状にして敵を【串刺し】てから【属性攻撃】【マヒ攻撃】【捨て身の一撃】を伴いUCを使用
UCは生身の腕を犠牲にする
邪神『天道菩薩』は高らかに宣言する。
学園祭の最中、かの邪神は屋上よりスタンプラリーカードを完遂した者の身を投げることに寄って儀式を完成させようとしたのだ。
最後にスタンプラリーカードを薔薇色―――血の色に染めるのは己の体に流れる血潮いである。それこそが邪神『天道菩薩』の導く教義であり、あまねく全てを救う自己犠牲の精神であると説くのだ。
「犠牲になりましょう。あらゆる者たちの苦しみ、哀しみを救うために、その咎を、罪を、背負う人身御供が必要なのです。誰かの罪をなくするためには、誰かの生命でなければなりません」
合掌した姿の儘、空へと舞い上がる邪神『天道菩薩』。その光背を背負いし姿は確かに救済を齎す者の姿に見えたかも知れない。
「だが、犠牲になったものは満足かもしれないが、残されたものは悲しむし、果てしなく重い物が肩に乗る」
ルイス・グリッド(生者の盾・f26203)は邪神と対峙する。
邪神から放たれる凄まじき重圧は、邪神召喚の儀式を不完全なまま顕現させたことを感じさせないほどに強烈なものであった。
その重圧は対峙する猟兵たちの足を止めさせるには十分過ぎるほどに強大なものであった。
けれど、ルイスは立ち止まらない。
その理由がない。
どれだけ強烈な重圧に晒されようと、立ち止まる理由にはならないのだ。
「自己犠牲は勇気と覚悟を持った人が己の意志で行うもの。笑い合う未来の為に生きる生徒たちに強いる物じゃない!」
記憶なき者である自分にとって、それは完全に理解できたものではないかもしれない。
邪神『天道菩薩』が上空より捨て身の一撃の如くルイスへと垂直に落下してくる。その一撃は凄まじき衝撃となって校舎の屋上を穿つ。それを間一髪で避けたと思った瞬間、凄まじき爆風がルイスを襲う。
全身をしたたかに打ち据えられ、己の身から噴き出す血をルイスは見ていた。体を動かす度に激痛が走る。
「いいえ。笑い合うなど、全ての救済の前には些事。互いに、ということはありえない。同一の人間がいないのと同じ様に、天秤が釣り合うように互いが互いのことを同じ様に思う者などいないのですよ、猟兵」
ゆらりと爆風の中心から『天道菩薩』が相変わらず合掌したままルイスを見据える。
その瞳に合ったのは狂気すら感じる眼差し。
なるほど、とルイスは思い至る。メイドが眷属であるのは、誰がためにという奉仕の精神だからであったのだ。
「当たり前だ、そんなことは。完全なる平等なんて無い。わかっている。だが、邪神。人は何故誰かのために走るか知っているか」
立ち上がる。
激痛が走り、血が傷口から噴出する。けれど、ルイスは立ち上がる。咄嗟のオーラの防御で頭だけは守れたのは僥倖であった。
再び空へと上がっていく『天道菩薩』。
またあの自爆攻撃の如き凄まじき捨て身の攻撃が着てしまえば、今度こそルイスは動けなくなってしまうだろう。
痛みは忘れる。
この身はすでにデッドマン。不死の体現者である。ならば、痛みは一時のものであり、忘れていいものだ。
「それは献身、奉仕の精神が人の本質だからですよ、猟兵」
微笑むような声色。けれど、ルイスはわかっていた。それはただの絵空事だ。
「違うな、邪神。人は繋ぐために誰かのために走るんだ。つないで、つないで、連綿と受け継いで、誰かのためになりますようにと願ったからこそ、人々の歴史は紡がれてきた。お前の言うそれは、奉仕でもなければ、献身でもない。ただの犠牲だ―――!」
鉄槌の如く降り注ぐ邪神の捨て身の一撃。
けれど、ルイスはカウンターのように屋上から紙一重で飛び上がり、邪神の頭上を取る。
ルイスは身体が軋む音を聞いた。
己の生身の片腕―――がひしゃげる。だが、その犠牲こそが、己の力を底上げする。デッドマンたる力の所以。犠牲にする物があるからこそ、その力は際限なく強化されていく。
メガリスである銀腕が鋭い針のように変化し、屋上へと落下した『天道菩薩』の体へと突き刺さる。
「針の如き一撃……この程度では、我が献身、奉仕の精神はいささかも揺らぎは―――!?」
邪神『天道菩薩』は見ただろう。
かの邪神の頭上に飛び上がったルイスの片腕……生身である片腕がひしゃげ、圧倒的な力の奔流が電流となってほとばしる光景を。
その明滅は天地開闢の如き光景であり、全てを照らす光であった。
―――デッドマンズ・スパーク。
それは失う物が大きければ大きいほどに凄まじき力を齎すもの。
己の片腕を犠牲にしても構わぬと放たれた一撃が、雷撃の明滅と共に放たれた。
空気の壁を突き破る轟音が響き渡り、『天道菩薩』の体を打ち貫く力の奔流が、その邪神として顕現した肉体を灼き焦がす。
「―――此処で終わってもいいと、お前は思わないだろう。だが、俺の片腕はこれで使い物にならなくてもいいとさえ思っている。これは犠牲ではない。献身でも、奉仕でもない。この一撃が誰かに繋がれるための鎹としての一撃だ」
デッドマンの持つ雷撃の如きほとばしりが、ルイスと『天道菩薩』を包み込み、凄まじい爆発を引き起こす。
爆風と共にルイスは傷だらけのまま屋上から堕ちていく。
けれど、銀の腕が校舎にあった雨樋を掴み、その体をゆっくりと地面へと下ろす。片腕はすでに潰れたように吹き飛んでいる。
だが、それはデッドマンであるルイスにとって、痛みこそ伴うものの、直に再生するものだ。
たしかにルイスは繋いだのだ。
後に続く猟兵達がきっと『天道菩薩』を打倒してくれる、その鎹たる一撃を以て―――。
大成功
🔵🔵🔵
ソナタ・アーティライエ
己を棄ててもという献身を否定はしません
(正直、身に覚えがありすぎて……)
しかし献身とは、当人の心の内から湧き上がるもの
けして他の誰かから、その形を決められるものではないのです
目の前に広がる固く閉ざされたような迷宮
吹き抜ける風の音は、まるで悲痛な叫びのよう
己の認めるたった一つの形しか望まなかった神に
捧げた献身を受け取ってもらえなかった悲しみなのでしょうか
それはあまりにも悲しくて……凍えるように冷たくて
温もりを取り戻してほしいという思いが胸に溢れます
奏でられるのは、学園を訪れて最初に弾いたあの曲
あの時、自分が受け取った温かく楽しい感情を
今度は、この人たちに伝えるために奏でます
(UCは変えています)
空が明滅するほどの光を放つほどの一撃を持って猟兵は、邪神『天道菩薩』を屋上に釘付けにする。
かの邪神が屋上より学園の敷地へと飛来すれば、その力によってさらなる犠牲が増えてしまうであろうことは想像に難くない。
故に猟兵は屋上で邪神『天道菩薩』を討ち果たすほか無いのだ。
凄まじい一撃元にくだされた『天道菩薩』が体を起こす。その体は焼け焦げてはいるが、未だ健在であることは疑いよう無い。
「愚かな猟兵。私の道行きこそが、人々の救世であることを何故理解しないのです。天道とは即ち正道よりも格の上のなる道にして絶対なるもの。故に人は天道を往くことで心の迷い、恐れ、不安から開放され、誰がために奉仕することができるのです。己を捨てることこそが、誰かの救いになるのですから」
微笑みを湛えながら邪神『天道菩薩』が言う。
それは自己犠牲が見せる人という生命の煌きそのものであったかもしれない。けれど、それは一時的なもの。刹那のものであろう。
周囲に迷宮が組み上げられ、これまで犠牲になったであろう邪神『天道菩薩』の信者たちが溢れかえる。
その迷宮の中にあって、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は瞳を伏せた。
己の心の中に見に覚えのある献身に彼女は思い至るのだ。
誰かのために。
いつだって、ソナタは誰かのために何かを為してきた。音楽を奏でるのも、歌うのも誰かのために。そうであるべきと作られたからであると言われたのならば、それこそが己の存在意義であろう。
「己を棄てても、という献身は否定しません」
ソナタは伏せていた瞳を前に向ける。
迷宮の高度は凄まじいものであったし、溢れかえる信者たちの顔は、本当に自己犠牲という名の献身を信じ切り、己を棄ててでもソナタや猟兵達を『天道菩薩』から排除しようと彼女に襲い来る。
それは確かに献身的、奉仕といっていいのだろう。己を顧みない行為は確かに美しいものに見えたかも知れない。
けれど、とソナタは顔を向ける。
「しかし献身とは、当人の心の内から湧き上がるもの。決して他の誰かから、その形を決められるものではないのです」
迷宮を吹き抜ける風が、彼女の白い髪をさらう。耳をつく風の音は、まるで悲鳴のような叫びのようであると彼女は感じて、また悲しくなった。
「さあ、お行きなさい。かの猟兵を捕らえ、諸共この場から落ちればよいでしょう。これこそが自己犠牲。誰かのために何かを為すということ」
邪神『天道菩薩』の命ずる儘に信者たちはソナタへと掴みかからんと駆け出す。
その姿を見て、ソナタは身構えることをしなかった。
「己の認めるたった一つの形しか望まなかった神に捧げた献身を受け取ってもらえなかった哀しみなのでしょうか……それはあまりにも悲しくて……凍えるように冷たくて……」
それはソナタの心から溢れた言葉であった。
誰かのために存在するのがソナタの存在意義であるとするならば、目の前の信者たちにだって、何かを為したいと思う。
彼らの慟哭のごとき叫びは風にのって迷宮の中を駆け巡る。そんな彼らにソナタは何ができるだろうか。
彼らが自己犠牲という名の献身を持って、自分に相対するのであれば、優しい世界でありますようにと祈りを込めるのがソナタという猟兵であった。
―――幻想小夜曲第140番『夢絃の琴』(セカイヲナダメルコモリウタ)。
全てをなだめる優しい歌声が響き渡る。
それは迷宮というユーベルコードを打ち消す。だが、信者たちは止まらない。迷宮を打ち消したことに寄ってソナタと信者たちを遮るものは何一つ無く、彼らはソナタを屋上から突き落とさんと駆け出す。
「ぬくもりを取り戻してほしいという願いは、私の―――」
自己満足であろうか。
しかし、その手にあるのは銀竜アマデウスが变化したヴァイオリン。そう、今日この日に学園祭へと訪れた際に最初に演奏した演目であった。
奏でるは、いと高き天の恩寵。
それはあの時、ソナタ自身が受け取った温かく楽しいという感情を乗せた演奏であった。
「誰もが心に温かいものを持っています。誰もが心に冷たいものを抱えています。それは誰しもあるものであって、他の誰でもない貴方自身のもの。それを投げ出さないで下さい―――」
きっとその瞳は無垢なるものであり、鏡のようであった。
青い瞳の中に映る信者たちの姿。それはきっと鏡写しのようにソナタの心の中にある温かいものが流れ込んでいく。
伝えたいとソナタは願った。
その青い瞳の輝きはユーベルコードの輝き。
あの時自分が受け取った暖かな感情。
学園祭を楽しむ学生たちの感情。それは刹那の感情であったのだとしても、きっと思い返す度に心に暖かなものがこみ上げてくるだろう。
「だから、泣かないでいいのです。きっとあなた達の献身は、誰かのためになるのですから―――」
ソナタの歌声とともに信者たちは立ち消えていく。
ぬくもりを彼らは取り戻しただろうか。そんな風に思いながら、ソナタの歌声がいつかの誰か……嘗て在りし日の信者たちを慰め、屋上に響き渡るのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
姫川・芙美子
邪神相手ならば全力で行かせて頂きます。【妖魔夜行】。妖怪達の【封印を解き】現出。
周囲を四体の鬼が囲み、熊と犬の混ざった姿の妖獣に跨がります。
「雲外鏡」の能力を放出。学園祭の様子や、楽しそうにスタンプを集める生徒達の姿を周囲に投影。
貴方は勘違いしてます。彼等は自分を犠牲になんて考えてもいません。自分がしたい事をしたい様に行っているだけです。だから皆あんなに楽しそうなんです。
自分と他人の境界が曖昧なのが青春時代です。儀式が成功していたとしても、望む程の効果はなかったと思いますよ。
秩序を破壊する妖獣「渾沌」の【結界術】で空間をねじ曲げ敵の攻撃を反らしつつ、鬼達の【怪力】の鉤爪で包囲攻撃して貰います。
鎮魂の歌声が屋上に響き渡る。
それは嘗て在りし日の邪神の教徒たちの心を慰め、霧散させるものであった。
「―――……私の信者たちを、救済した……? 自己犠牲もなく?」
ぶるぶると邪神『天道菩薩』の身体が震える。
それは怒りに震えていた。そう、癒やしとは、救いとは自己犠牲の果に訪れるものであるはずなのに、猟兵は自己犠牲無く彼らを救ったのだ。
それは己の掲げる教義に反するものであり、受け入れがたい事実であった。
「あってはならない! あってはならない! ならば、何故この学園の人間たちは自分を犠牲にして誰かのために走るのです! あってはならない! こんなことあってはならない! 教義に反する! 天道に悖る……!」
怒号のような声が響く。
それは常に微笑みを湛えていた『天道菩薩』の表情が崩れ去り、邪神というに相応しい憤怒の表情に成り代わっていた。
「貴方は勘違いをしています」
姫川・芙美子(鬼子・f28908)の声が響く。
それは屋上に響き渡る邪神『天道菩薩』の怒号の如き声をかき消すほどに、凛と響き渡った。
彼女は黒いセーラー服を風になびかせながら、邪神『天道菩薩』と対峙する。その瞳に迷いはなかった。
彼女のユーベルコード、妖魔夜行(ヨウマヤコウ)によって封印が解除され出現した四体の鬼、熊と犬が混ざった姿の妖獣に芙美子は跨る。
テニスルは雲外鏡。
そのタブレットに封印されていた妖怪の能力に寄って、学園祭の様子や、楽しそうにスタンプを集める生徒たちの姿を周囲に投影させる。
「―――何を見せようというのです。これが一体なんだというのです!」
邪神『天道菩薩』のちからが増していく。
それは凄まじきプレッシャーを周囲に撒き散らし、その邪神としての力が徐々にましていくのを感じる。
自己犠牲を厭わぬ教義であるからこそ、その本尊たる『天道菩薩』こそが、己を顧みない攻撃を可能とし、その一撃一撃が猟兵にとって致命的なものであるのは言うまでもない。
けれど、芙美子はひるまずに言い放つ。
「彼らは自分を犠牲になtんて考えてもいません。自分がしたいことをしたい様に行っているだけです。だから、みんなあんな―――」
またがった熊と犬の混じった妖獣が駆け出す。一斉に四体の鬼が『天道菩薩』に掴みかかり、その動きを封じる。
その力の凄まじさは、芙美子の普段封印をして抑えている妖怪たちの力が如何に危険であるかを示していた。
本来であれば、複数の封印された妖怪たちを開放するのはリスクが高いのだろう。けれど、今、彼女はそれすらいとわない。
そうしなければ、勝てぬ相手。それが邪神『天道菩薩』なのである。
「かんなに楽しそうなんです! 自分と他人の境界が曖昧なのが青春時代です。例え儀式が成功していたとしても、望むほどの効果はなかったと思いますよ」
「おだまりなさい! 効果が少ないのであれば、数を重ねるのみ。何度でも、己を犠牲にする者たちを育て上げ、積み上げていけばいい。そうするだけの価値しか人の生命にははないのだから―――!」
吼える『天道菩薩』が放つ爆発が掴みかかっていた鬼たちを吹き飛ばす。
その捨て身の攻撃たる爆発は無差別に引き起こされ、当然のように芙美子へと襲い掛かる。
「妖獣『混沌』! 空間を捻じ曲げなさい!」
芙美子の言葉と共に結界術によって空間をねじまげ、無差別に放たれた爆風を反らす。もしも、空間を操ることができなければ、芙美子は為すすべもなく爆風に晒され、痛手を追っていただろう。
けれど、芙美子は思うのだ。
空間に投影される学園祭を楽しんでいる学生たちの笑顔。
あの笑顔を守りたいと思った。それは己が正義の味方であると規定している以上に、こみ上げてくる感情があるからだろう。
それが学校に通うことなく死んでいった水子たちの願いでもあり、誰かのために何かを願う尊さを芙美子はもう知っているからだ。
だからこそ、芙美子は複数の妖怪たちの封印を解くことを恐れなかった。
それはある意味で自己犠牲とも言えたかも知れない。献身とも呼ぶのかも知れない。けれど、そんな言葉に意味はない。
言葉だけでは何も為すことなどできようはずもない。その言葉に込められた力を感じ取れるからこそ、芙美子はそれを力に変えることができる。
「封印開放! 鬼達よ、その封ぜられし膂力を持って―――敵を引き裂きなさい!」
封が開放される。
その力の奔流を感じ取って、ふきとばされた鬼達が雄叫びを上げる。
四体の鬼たちが、その鋭き鉤爪を振るう。その威力は今までの比ではない。邪神『天道菩薩』と言えど、彼らの鉤爪を受けて無事ではいられない。
四方から放たれた鉤爪が過たず、邪神『天道菩薩』の身体を引き裂く。
「―――、何故、こんな―――!」
「わかりませんか。それは、私が『正義の味方として、そうあるべきと思ったからです。戦うことで誰かが守られるのなら、私は私が傷つくことを恐れはしないのです!」
芙美子の言葉に呼応するように鬼たちが咆哮し、再び鉤爪を振るう。
その一撃は邪神『天道菩薩』を引き裂き、溢れ出る力が、その身を討つ。
芙美子はそれを見届け、封印を再び施す。
思った以上に力の消耗が激しいのだろう。荒い息を吐き出しながら、それでも心の中に去来するものがある。
空に未だ『雲外鏡』が見せる学園祭の様子が映し出されていた。
彼らは屋上での戦いに気がついていない。けれど、それでいいのだ。
だって、正義の味方とは、人知れず戦うものであるのだから―――。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「血も吸えない敵さんの相手はストレス溜まるね…。」
…ちょうど良い所に八つ当たり出来るヤツがいるじゃねェか。つー事で、死ね。
真の姿を解放し、更にUCで吸血鬼化して戦う。
悪趣味な迷路はオレが全て喰らい尽くしてやんよ。とっとと死んで、天国にでも行けや。
信者共の生命力を喰らい尽くしながら自身の強化を限界を超えてし続ける。
んでもって、ダメージを喰らった生命力で回復しながら、第六感で感じ取ったデカい気配の所まで突っ走る。
敵を見つけたら全力で殴る。そうだなァ…、天使っぽい羽がムカつくから引きちぎってやるか。
「くだらねェ事に若ェヤツらを巻き込むんじゃねェよ。」
とっとと、オレに喰われろ。
鬼たちの鉤爪が邪神『天道菩薩』の身体を引き裂く。
その痛みは耐え難いものであり、如何に邪神と言えども絶叫を響かせるには十分過ぎる威力を持っていた。
ほとばしり邪神の血潮。
そして、怨嗟の如き絶叫が、どれだけ天道と己の教義を取り繕おうとも、その歪なる心根を露呈させる。
「許されぬ。許されぬ。我が天道が、このようなことで終りを迎えることなどあってはならない。天道に背きし行為が、どれだけ人の世を悪世に導くか猟兵達はわかっていない。他者を慮ることができなければ、己だけのためにしか人は動かない」
それはある意味で真理である。
また別の側面では過ちである。
「故に自己犠牲が必要なのだ。他者の姿を知らしめるからこそ、人は人の理を理解し、律するなれば―――!」
その咆哮が響き渡る屋上に須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は降り立つ。
「血も吸えない敵さんの相手はストレス溜まるね……」
その顔は苛立ちに塗れていた。
彼にとって吸血衝動とは常に抑え込まなければならないものである。抑制に抑制を重ね、敵さん―――オブリビオンにおいてのみ、その衝動を開放すると、己を律する。
だからこそ、彼は猟兵として戦い、その衝動のままにオブリビオンを滅する。
けれど、今回の時間に置いて彼の吸血衝動を開放する機会は今まで訪れることはなかった。
学園祭に潜入し、オブリビオンであるUDC怪物『フライングメイド服』に至ってはただの布地である。
血を吸う場所など何処にもない。けれど、募る吸血衝動は発散するどころか、より一層高まるばかり。
そんな折に邪神の姿を見れば、己の欲するところのものが漸く目の前に現れたと、その凶悪なる衝動が発露する。
「……ちょうど良い所に八つ当たりできる奴が―――いるじゃねェか。つー事で、死ね」
莉亜の身体を取り巻く蝙蝠の眷属たちが一斉に飛び立つ。
それはあまりにも禍々しき真なる姿。
猟兵一人ひとりに存在する、真の姿。規則性はない。そこに意味を見出すのだとすれば、猟兵自身に他ならず、他の誰も理解できない姿であった。
「さあ、遊ぼうか。どっちが先に死ぬのかな?」
此処に在りしは、不死者の血統(イモータル・ブラッド)にして、世界の選んだ戦士。
圧倒的な力の解放はいつだって、心地よい感覚を齎してくれる。渇き、未だ潤すことのできぬ喉が脈動する。
「血を欲するか、吸血鬼。どこまでも利己的な生き物!」
邪神『天道菩薩』が迷宮を展開する。
けれど、そこに在りし日の信者たちの姿はない。すでに彼らは猟兵に寄って全てが開放され、暖かな光の元に還っていった。
「悪いが、此処にいるのはオレとてめぇだけだ……たっぷりと―――」
その他者の生命力を奪うオーラが凄まじい勢いで迷宮の中を疾走する。
それは猟犬の如きオーラであった。迷宮の最奥と、入り口に両者が存在しながらも、莉亜の持つ圧倒的なオーラは迷宮全土を包み込むほどに強大であるのだ。
「―――なんたる! やはり生かしてはおけぬ! 他者を顧みない! 自己犠牲と対極にある存在は赦しておけぬ!」
邪神『天道菩薩』が駆ける。けれど、そのあゆみは即座に止まる。
莉亜のはなった生命力を奪うオーラが邪神『天道菩薩』の足元に絡みつき、その圧倒的な生命力を吸い付くさんばかりの勢いで、吸収していくのだ。
「悪趣味な迷路はオレが全て食らい付くしてやんよ。とっとと死んで、天国にでも逝けや」
強化されていく身体能力。
吸い上げた生命力は邪神『天道菩薩』がこれまで奪ってきた人々のものであろう。それを吸い尽くす。
例え、それが誰かに利用され続ける運命であった生命なのだとしても、莉亜は奪わずにいられなかった。
圧倒的な速度で迷宮の壁という壁をぶち抜いて疾駆する莉亜。
今や真の姿を開放し、邪神の生命力を吸収した彼にとって、この迷宮の壁など無意味なものであった。
「脆い! 脆すぎる! くだらねェ事に若ェヤツらを巻き込むんじゃねェよ」
待て。
そう邪神『天道菩薩』の口が言っているのがわかる。
すでに眼前には吸血鬼と邪神のみ。
間に立つはずであった信者の姿はなく、互いの距離は完全なる莉亜の間合いであった。
待たねェよ。
「とっとと、オレに喰われろ」
天使の羽根を掴み、莉亜は力任せに引きちぎる。
鮮血がほとばしり、むしられた羽根からほとばしる血液を煽るよにして飲み干す莉亜の姿は、まさしく破壊の権化であった。
邪神『天道菩薩』は恐れ慄いた。
これまでどんな存在であろうとも、他者の存在を認める生命であるのならば、彼の教義にうなずける部分は確かにあったのだ。
けれど、『今の』莉亜は違う。
真なる姿、吸血鬼としての姿を顕現させる彼は、吸血鬼。
他者の生命を奪い続ける存在にして、その象徴である。対極に位置する者同士が相対すれば、そこにわかりあうという選択肢などあろうはずもない。
故に、邪神『天道菩薩』は逃走する。
振り返った先にある、己の片翼を貪るように、吸血衝動の赴くままに啜る莉亜の姿に怖気を走らせ、そして、己の運命が此処で潰えることを未だ知らぬまま。
莉亜はその存在をして邪神『天道菩薩』が背を向けて走るに値するのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
黒髪・名捨
【心境】
「いや、だから誤解だって…そもそもガキはあんま興味ねぇなぁ。もっとこう…いや、そうじゃなくて…。」
(まだ喧嘩中らしい/ぉぃ)
【行動】
おっと、邪神がお出ましか。
話は後だ。オレが暇で暇で死にそうになるぐらい暇になるまで阿斗な。
って自爆―ッ。
阿呆な邪神も居たもんだ。
そんなのに付き合いきれるか。
自爆する瞬間を『見切り』『カウンター』で『破魔』と『覇気』を込めた拳の一撃―ッ神砕!!
ユーベルコードの爆発を破壊しながら邪神をぶん殴る。
いてぇッ!!
さて、自爆のダメージは『激痛耐性』と愛用の合法阿片の『ドーピング』で耐えて『限界突破』で頑張る。
自爆した邪神に追撃のぉ『頭突き』の一撃。
迷惑な爆発駄目絶対。
「いや、だから誤解だって……そもそもガキはあんま興味ねぇなぁ。もっとこう……いや、そうじゃなくて……」
そんな話し声が屋上の片隅から聞こえてくる。
それは戦いの場においてはあまりにも似つかわしいものであり、はたから見ればそれは痴話喧嘩というやつなのだが、当の本人である黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は気がついていなかった。
喋る蛙『寧々』と先ほど戦ったUDC怪物とのやり取りが非常に気に食わなかったようで、彼女の機嫌を損ねた理由もわからぬままにたしなめようとしていたのだ。
理由もわからずに窘められるものこそ、寧々にとっては非常に腹立たしいものであったので、一向にご機嫌がなおらないまま屋上へとやってきていたのであった。
「知らぬ」
ぷん。
そんな風にそっぽを向かれたままでは戦いどころではないのだが、先行した猟兵達による攻撃で邪神『天道菩薩』もまたその力を弱めながらも、逃走を図ろうとしていた。
「退け―――!」
これまで猟兵たちの攻撃にさらされた邪神『天道菩薩』に最早余裕はなかった。
もがれた片翼の天使の羽根が痛々しいが、その形相はすでに名が示すとおりの『菩薩』とはいい難いものであった。
それだけ猟兵に追い詰められたという証拠でもある。
「おっと、邪神がお出ましか。話は後だ。オレが暇で暇で死にそうになるぐらい暇になるまで後な」
名捨はこれ幸いとばかりに痴話喧嘩を切り上げ、逃走を図ろうとする邪神『天道菩薩』と対峙する。
こういうときばかりは邪神に感謝してもいい。
ちょうどいい具合に話を切り上げる理由ができたのだから。だが、そんな名捨の目論見は、天道菩薩の捨て身の自爆攻撃に寄って阻まれる。
凄まじい爆風が周囲に吹き荒れ、名捨と名捨の頭にしがみつく寧々をふきとばさんとする。
「私はまだ自己犠牲を終えていない。私はまだ私という存在を持って救世を果たしていない。猟兵ごときに私の天道を阻まれる言われなどないのです」
爆風の中心に合って、傷つくほどに威力が上がっていく邪神『天道菩薩』の苛烈なる捨て身の攻撃。
それは凄まじい威力を持って名捨に中途な半端な段階で復活した邪神ながらも、その力の一端が強大なものであることを知らしめたのだ。
「って、自爆……阿呆な邪神も居たもんだ。そんなのに付き合いきれるか」
だが、名捨は吐き捨てるようにしてつぶやく。
自己犠牲を語る邪神『天道菩薩』の行為は、名捨にとって理解ができるものではなかった。
再び空へと舞い上がり、急転直下で名捨へと捨て身の攻撃を放つ『天道菩薩』であったが、猟兵である名捨にとって、一度見た技を何度も食らう理由など無い。
「オレの意思が悪を討つ…神砕ッ!! そう何度も放っていちゃぁな!」
見切り、その爆風が起こる瞬間破魔と覇気のちからの込められた拳の一撃が放たれる。
それこそがユーベルコード、神砕(シンサイ)。
悪を砕き、神をも砕き、その邪心をも打ち砕くユーベルコードの拳は、邪神『天道菩薩』の身体を自爆攻撃を起点とするユーベルコード毎打ち砕く。
「いてぇッ!!」
爆風が名捨の肌を灼く。
けれど、それは我慢のできないものではなかった。これくらい痛み農地には入らない。打ち出した拳が邪神『天道菩薩』の胴を捉える。
けれど、名捨は己の拳が砕けていくのを感じた。如何に中途半端な状態で顕現した邪神と言えど、その力は未だ強大そのものである。
こちらの拳が保たないかもしれない。
だが、そんなことに頓着するほど名捨は、柔ではない。
ユーベルコードの爆風の中から名捨が飛び出す。限界を常に超えるからこそ、猟兵であるというのならば、まさしく名捨は猟兵であった。
「捨て身の攻撃なんてのはなぁ―――! あとに続く者がいるからこそ、意味があんだよ!」
渾身の一撃。
それは名捨の放った頭突きであった。拳が砕けたのならば、常に寧々に叩かれている硬い頭がある。
その一撃は凄まじい衝撃を伴って、邪神『天道菩薩』の顎を砕く。
吹き飛んでいく『天道菩薩』を見やりなながら、名捨はぼそりとつぶやく。
「その程度で捨て身なんて、笑わせるぜ―――」
大成功
🔵🔵🔵
杓原・潤
自己犠牲とかは難しくて良く分かんないけど、こんなに楽しい学園祭をぶち壊しにするのは許せない!
うるうは平和を守る魔法使いなんだから!
……でもこの迷路気持ち悪いよー!とにかく早く抜けたい!
ここはユーベルコードでびゅーんだ!
真っ直ぐの道ばかりじゃないだろうけど、しっかり箒を操縦すれば空中戦の要領で上手く動けるかな。
迷ったら周りに雷の属性攻撃を込めた泡を罠代わりに撒いて、占星術で正しい行き先を占う時間稼ぎをするよ。
上手く抜けたらこっちのもん!
ウィッチーズミーティアを使って、破魔の力を込めた魔力の流れ星を出して……うるうの全力魔法を思いっきりぶつけてやる!
凄まじい轟音が響き渡る。
邪神『天道菩薩』はすでに片翼をもがれていた。その顎にもろにヒットしたのが猟兵に寄る頭突きの一撃であった。
どれだけ邪神『天道菩薩』が強大な力を持っていたとしても、猟兵達に退くという選択肢はない。
例え拳が砕けようとも、己の五体が在る限り戦うのが猟兵である。
「―――ッ! 私が、っ、圧される。圧されている、などありえない。天道に在りし私が、自己犠牲のために教義を広めようとする私が―――!」
邪神『天道菩薩』は未だ戸惑いの中にあった。
猟兵は個としては、邪神に叶うべくもない。けれど、度重なる猟兵たちの攻撃は確かに中途半端な復活を遂げた邪神であっても退けようとする力があった。
「自己犠牲とかは難しくて良くわかんないけど、こんなに楽しい学園祭をぶち壊しにするのは許せない!」
吹き飛ばされてくる邪神『天道菩薩』を待ち構えるのは、杓原・潤(人間の鮫魔術士・f28476)であった。
すでに屋上へとたどり着き、邪神を討ち果たそうと気合をみなぎらせていた。
「うるうは平和を守る魔法使いなんだから!」
それは彼女の精神が幼いから出た言葉ではない。
今日一日、学園祭を巡ってわかったのだ。誰かのために何かをするということ、自分が何故魔術を扱えるようになったのかを。
それは彼女が誰かを守りたいと願ったからだろう。その誰かに言われたからではない、自分の心から湧き出す感情に従うのと、誰からかに言われて己の身を捧げるのとでは、その本質から決定的に違っているのだ。
「ならば、その身を捧げよ。己の身を、何もかも犠牲にして誰かのために―――!」
邪神『天道菩薩』が迷宮を生み出す。
すでに先行した猟兵によって迷宮のあちこちは一直線に壁がぶち抜かれたように破壊され、本来であれば現れるはずであった信者たちの姿も今はない。
けれど、潤はその類まれなる感覚で、この迷宮が在っていいものではないと感じ取っていた。
「……この迷路気持ち悪いよー! とにかく早く抜けたい!」
潤の身体がユーベルコードの輝きに包まれて、星の魔法使いへと変身する。魔女帽子に飾られた星のアクセサリーが輝き、その手にした祖母から譲り受けた魔法の箒に跨る。
まさにそれは、ウィザーズ・マニューバと呼ぶに相応しい圧倒的な速度と軌道で持って迷宮の中を駆け巡る。
彼女の周囲には手にしたバブルワンドから放たれる泡が溢れかえり、彼女の姿をくらます。
「どこだ、猟兵―――! 我が教義を、我が自己犠牲を否定する輩―――!」
怒号の如き咆哮が邪神『天道菩薩』から響き渡る。
すでに潤は占星術によって正しい道行きを知っていた。
どこをどれくらいのスピードでもって駆け抜ければ、『天道菩薩』を躱し、迷宮の外へと出ることができるのか。
それはもう潤の頭に浮かぶビジョンが教えてくれる。
「そこか―――!」
邪神『天道菩薩』が潤に追いすがろうとするが、雷の属性の込められた泡たちに阻まれ、彼女に追いすがることが出来ない。
泡が彼女が跨る箒から次々に溢れ出し、どれだけの速度で追いすがろうと彼女を追い詰めることすらできないのだ。
「あとはこっちのもん! うるうは魔法使い!星の魔法使いなんだから!」
迷宮より脱した潤が掲げるワンドに星の魔力が集まっていく。
破魔の力が込められし魔力が呼び込むのは、天より降り注ぎし星の鉄槌。一つの大きな流れ星が分裂し、流星群のように邪神『天道菩薩』を討つ。
学園祭を楽しむ学生たちは空を見上げたことだろう。
誰ともなしに空を指差す。未だ空は明るいけれど、潤の放った魔力の流れ星による全力の魔法は、空に煌めく無数の流星群となって、彼らの目を楽しませた。
「きっと、これも楽しい思い出になるんだから! うるうの目が黒いうちは、誰にも、みんなの楽しさを邪魔させないんだから―――!」
降り注ぐ流星に学生たちは何を願っただろうか。
自分の願い、誰かの願い、それらすべてを叶えることは出来ないかも知れない。
けれど祈る心は誰かの心に寄り添うことができる土壌に他ならないだろう。いつかきっと、それが誰かを助け、そして自分も救うことになる。
潤の魔法は、きっと正しく星の魔法であった―――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
引き続き風紀委員長モード(学園制服と風紀委員の腕章。伊達眼鏡を掛けて髪型三つ編み。)で邪神を倒すべく頑張ります!
UC:神性解放で強化。
その上で「私が、当学園、風紀委員長の大町詩乃です!!」と(某男塾塾長ばりに)毅然とした名乗りを挙げ、「学園は生徒が人と出会い、学び、切磋琢磨して成長する場所。貴方の私利私欲で自己犠牲を強要する行為は、当学園の校則の精神に完全に反しています。よって私が風紀委員長として断罪します!」と宣告。
敵攻撃は【結界術】の防護結界と【オーラ防御】を纏った天耀鏡の【盾受け】で防ぎ、【光の属性攻撃・神罰】を籠めた煌月による【なぎ払い・貫通攻撃】で一刀両断してのけます!
綱紀粛正です!
星の魔法が邪神『天道菩薩』を討つ。
それは圧倒的な力でも在り、願い祈る者たちの力の象徴でもあった。次々と流星が邪神『天道菩薩』を穿ち、その体を屋上に叩きつける。
「―――っ、まだ……我が教義は終わらぬよ! 自己犠牲が全てを、全ての正道であるのならば、猟兵ごときに負ける言われなど何処にもないのだ―――!」
片翼をもがれた邪神が立ち上がる。
もはやどこにも微笑みを浮かべる余裕などなく、その表情は菩薩というよりも、修羅の如く。
そんな邪神の前に立ちはだかるのは、学園制服に風紀委員の腕章、伊達眼鏡につややかな黒髪を三編みにした大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)―――否!
神性解放(シンセイカイホウ)されし力は、危害ある全てを浄化消滅する若草色のオーラを身に纏う光背背負いし者にして風紀委員!
「私が、当学園、風紀委員長の大町詩乃です!!」
背後に見慣れぬ劇画調の効果音が響き渡りそうに為るほどに、詩乃姿は有無を言わせぬ迫力を持っていた。
それが彼女の神性を開放した姿であるのだと言われれば、頷くことは難しかった。けれど、彼女の心にある人々と世界を守りたいという想いは本物であった。
毅然とした表情で相対するは、互いに神の名を持つもの。
「な、なにを―――」
邪神『天道菩薩』は邪神と言えど、神たる者である詩乃の放つ神性のオーラを前にたじろぐ。
それは圧倒的なオーラの奔流であったからだ。それだけ詩乃の心にある人々と世界を守りたいという想いは、邪神をしてたじろがせるほどに大きい。
「学園は生徒が人と出会い、学び、切磋琢磨して成長する場所。貴方の私利私欲で事後犠牲を強要する行為は、当学園の校則の精神に完全に反しています!」
彼女が掲げるは生徒手帳、校則の頁。
指差すは、第一条、二項目!
『清く、正しく、逞しく』
それは心が清くなければ、正しさを導くことはできず。正しくなければ、その体は健全なものではなく。逞しくなければ、清く在るための心を守ることはできない。
そんな理念を持った学園の校則精神に邪神『天道菩薩』の教義は外れている。
「ば、ばかな……! 我が教義が、そんな、一学園の校則程度に遅れをとるなど―――」
たじろぐ邪神の言葉を遮って詩乃が叫ぶ。
「よって、私が風紀委員長として断罪します!」
若草色のオーラが戦場となった屋上を包み込む。
それは柔らかであり、優しさ、慈愛に満ちたものであった。けれど、対峙する邪神にとっては、鬱陶しいことこの上ないオーラであったことだろう。
悪しき心を持つものには理解できない暖かさを、詩乃は力としてその身に纏う。
それこそが彼女の持つ神性。
彼女の心から溢れた思いが、彼女を強くしていく。
どれだけ捨て身の攻撃を邪神『天道菩薩』が放とうとも、今の詩乃には通用しない。若草色のオーラが爆風を完全に防ぎ、天耀鏡を前面に押し出して、あらゆる攻撃を無効化するのだ。
「人々を世界を護る為、全力でお相手致します! 貴方の行いは自己犠牲などではありません。貴方のエゴ、それが至上のものであると他者に押し付けるだけの教義、それを私が許すわけには参りません!」
放たれるは光の力が込められしオリハルコンの刃。煌めく月の如き斬撃の軌跡を描きながら薙ぎ払われた一撃が、邪神『天道菩薩』の身体を切り裂く。
それは神罰の如き一撃。
あらゆる不浄を許さぬ一撃で持って、詩乃は高らかに宣言する。
「綱紀粛正です!」
薙刀の一撃の後、彼女の背後で邪神『天道菩薩』が詩乃の神性に当てられ、爆発する。それは他者のためという偽りもって、他者に自己犠牲を強いてきた報いであろう。
この若草色の神性満ちる中にあって、かの邪神の力は一切が減ぜられる。
詩乃の心から溢れる人々と世界を守護するという思いこそが、本当の献身であり、奉仕であったのだ。
故に、偽りの献身を説く者に、詩乃が負ける道理は無い。
―――否、薙刀風紀委員長、大町詩乃が風紀の乱れに負ける理由など、一片もないのだった―――!!
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
献身は自ら行うから美しいのであって
強制させたらこれほど醜悪なものはないね
美しく無いですの
これを永遠にしたいとは思いませんの
誰かの為に走り回っている学生は多いけど
命を捨てて成し遂げたい人はそうはいないと思うよ
大半はその誰かと共に居たいだろうしね
だから集まる祈りは不完全じゃないかな
そして、この非日常がずっと続いたらいいのに
と思う人も多いですの
そういう祈りなら私も力にできますの
ガラスから創った使い魔で迷路をガラスに変えますの
いくら固い壁でもガラスにしてしまえば簡単に壊れますの
それを僕がガトリングガンで壊しながら進むよ
迷路を抜けたら蜂の巣にしてしまおう
メイドさんらしく学園祭を邪魔するものをお掃除ですの
邪神『天道菩薩』は圧倒的な力を持つ存在であった。
だが猟兵たちの活躍に寄って、かの者が持つ力の大半は喪われたまま顕現することになった。その中途半端な存在であったとしても、強大な存在であることは変わりない。
故に此処まで数多の猟兵達が立ち向かい、その力を減じてきたからこそ、猟兵達に勝利の天秤が傾きかけているのだ。
「天道、我が天道が、何故猟兵達に阻まれる。献身こそが、救世なる原理。自己犠牲こそが他者に善なる者を知らしめる唯一にして絶対であるというのに。何故それを理解しない」
その咆哮は、己の教義の尽くを否定されたことによる憤怒か。
もはや、その顔に微笑みはない。あるのは怒りに染まった異形の邪神としての顔だけだった。
「献身は自ら行うから美しいのであって、嬌声させたらこれほど醜悪なものはないね」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、対峙する邪神の姿を見あげて、そう呟いた。
すでに天使の片翼はもがれ、切り裂かれ、穿たれている。だというのに、未だ己の教義にしがみつくようにして自己犠牲たる献身を説く姿は醜悪という言葉以外、表現する言葉がなかった。
「黙れ―――!」
晶を中心にして周囲に張り巡らせられるは迷宮。
それはすでに猟兵達によって踏破され、現れるであろう信者すらも浄化されてしまった不完全なるものであった。
「美しく無いですの。これを永遠にしたいとは思いませんの」
晶の中で邪神の分霊がつぶやく。
彼女の邪神としての美的感覚は、『天道菩薩』とは相容れぬものであったのだろう。同じ邪神と言えど、その性質や有り様は全て同一であるとは限らないのだ。
故に、美しくない。
その醜悪さを手に入れたいとは思わない。
「誰かのために走り回っている学生は多いけど」
どれだけ迷宮に囲われようとも晶は慌てなかった。女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)によって、既に彼女の姿は、可憐なる宵闇メイドドレス姿になっていることのほうが、十分恥ずかしい動揺すべきことではあったけれど。
それでも魔力の翼でもって彼女は浮遊する。
「生命を捨てて成し遂げたい人はそうはいないと思うよ。大半は、その誰かと共に居たいだろうしね。だから―――集まる祈りは不完全じゃないかな」
それは、すでに邪神と猟兵の戦いは、始まる前から運命として決定づけられていたことを意味する。
「馬鹿な。それでは始まる前から不完全であったと? 我が教義が、浸透していなかったと? ありえない。ありえない。ありえない」
そんなことは在っていいはずがない。
人間は誰しもが誰かのために奔走することを美徳とするはず。ならば、己の身を顧みないはずだ。
だというのに、そうではないと晶は言ってのける。
「そして、この非日常がずっと続いたらいいのに、と思う人も多いですの」
邪神の分霊が囁く。
それは学園祭という日常の中、その刹那に現れる非日常の空間を惜しむ気持ちを現していた。
ずっと楽しいことが続けばいいのに。
そんな風に願う祈りであれば、停滞と固定の権能を持つ邪神の分霊にとっては、願い聞き届けるべき祈りであった。
「そういう祈りなら私も力にできますの」
瞬間、邪神『天道菩薩』が生み出した迷宮がガラスへと変じる。それは彼女たちが放った使い魔による物質の変質であった。
全ての迷宮の壁という壁がガラスへと変貌し、晶の放つ携行ガトリングガンが放つ弾丸に寄って、どれだけ強固な壁であろうと容易に打ち砕かれていく。
「メイドさんらしく学園祭を邪魔するものをお掃除ですの」
「だから、この格好にしたのか―――!」
晶の叫びとともにガトリングガンから放たれる弾丸が打ち砕いて開く迷宮の外へ飛び出し、邪神『天道菩薩』へと強化された弾丸が雨のように降り注ぐ。
「誰だって、今日という一日が永遠になってほしいと願うものだろうけれど―――それでも、人は明日を望むものなんだよ。誰かのためでもあり、自分のためでもある。そんな矛盾を抱えたのが人間なんだから」
晶の言葉と共に邪神『天道菩薩』は、己の目論見が始まる前から負けていたことを、思い知らされるのであった―――。
大成功
🔵🔵🔵
久遠・翔
アドリブ絡み歓迎
ふざけんなよ
誰かの為に懸命に願う事、それを叶える為に動く事は素晴らしいさ
ただ、最後に死を持ち出すな。それは命への冒涜だ
誰かの為の先が死ならば、残る者は誰も求めぬ生者のみ…そんな世界まっぴらごめんっす
と、真っ赤な顔で荒い息を吐き着崩れしかけ汗で張り付くメイド服姿で登場
当然ながら無自覚の誘惑フェロモンは駄々洩れだが…それがUCの増強に繋がる
雷光を身に纏い一瞬で駆け抜け斬りつける
黒焦げになった相手を掴んで、献身自己犠牲がお前の掲げる言葉だよな?
だったら真っ先にお前がスタンプにならないのは何故だ?
答えは単純だ
お前はそれを見て愉悦に浸るただの屑なんだよ
上空に投げて更に細切れにして倒します
弾丸の雨が邪神『天道菩薩』を打ち貫く。
中途半端な状態であったとしても邪神は邪神である。その力の強大さの一端であったとしても、その力は驚異的なものである。
「わが、教義が、負ける……? 自己犠牲の後にこそ、人の世の救世がなされるというのに、人は死ぬことに寄って完結する生き物であるはずなのに、それが間違っていると?」
それは許されることではない。
己の教義、邪神『天道菩薩』にとって、それは受け入れがたい事実であった。
人である以上、生命である以上、死せる運命こそが終着点である。
「ならば、死せることが最大の救世。人の生命に意味があるのだとすれば、その死を持ってしてはじめて、他者に悪世のなんたるかを説くものであれば―――」
「ふざけんなよ」
それは静かなる怒りの声であった。
久遠・翔(性別迷子・f00042)はその瞳を真っ直ぐに邪神『天道菩薩』へと向ける。その瞳に宿るのは明確な怒りであった。
「誰かのために懸命に願うこと、それを叶えるために動くことは素晴らしいさ。ただ、最後に死を持ち出すな。それは命への冒涜だ。誰かのための先が死ならば、残るものは誰も求めぬ生者のみ……そんな世界まっぴらごめんっす!」
彼女の顔は赤い。
それは怒りに震えているから―――ではなくて、いろいろな事情が重なってのことであった。息は粗く、きくずれしかけ汗で張り付くメイド服のままであったことが、少し残念な口上であった。
その身寄り溢れ出るは無自覚なる魅惑のフェロモン。
自分でも制御できぬ魅惑の力は、翔にとって力の源泉である。
「一瞬で、決めます」
翔の身体から紫電と自身の魅惑のフェロモンが溢れ出し、その身を包み込む。ユーベルコードの輝きは、まさに雷光一閃(セツナ)の如く。
―――。
邪神の視界がずれる。ずれる。
刹那の煌きの後、何が起こったのかを邪神『天道菩薩』は理解できていなかった。そう、その刹那の最中に翔の一撃が放たれたのだ。
頭を掴まれる。
それすらも遅れた感覚となって邪神『天道菩薩』に伝わる。
「献身、自己犠牲がお前の掲げる言葉だよな? だったら真っ先にお前がスタンプにならないのは何故だ?」
自己犠牲、献身が己の教義であるというのならば、それを統治すべきものは存在してはならない。
その教義の主として、存在し続けることこそが、自己犠牲を理念として掲げる教義が矛盾をはらんだものであることは自明の理である。
「答えは単純だ―――お前はそれを見て愉悦に浸るただの屑なんだよ」
翔の強化された力が邪神『天道菩薩』の身体を中に放り投げる。瞬間、紫電がほとばしり、その身体を穿ち、焼け焦げさせる。
放たれる剣閃は一瞬の明滅。
次の瞬間、邪神『天道菩薩』は細切れの如く切り裂かれ、その身を骸の海へと還す。
その光景は誰の瞳にも映ることはなかった。
学園祭を楽しむ人々にも、誰の目にも。
ただ、猟兵だけが知っている。この事件を引き起こした邪神『天道菩薩』の最後はあっけないものであった。
自己犠牲、献身、奉仕―――。その言葉のどれもが耳障りの良いものであったことだろう。
誰もが心の何処かに持つ気持ちであるがゆえに、それを善性と信じる事ができる。
いつだって誰かのために。
それは正しいことであり、人間は正しいことを愛するがゆえに、無条件で受け入れる。
そこに付け込んだ悪意があるのならば、猟兵達はいつだって駆けつけるだろう―――。
「―――あ。俺の服、ちゃんと返してもらわないとっす!」
着崩れたメイド服のまま、屋上に至ったことを今更ながらに翔は思い出して、服飾展示の行われていた教室へと慌てて駆け出す。
けれど、翔はまだ知らなかった。
これが、翔にとっての学園祭一日目の終わりであって、女学生たちに押しに押されて事件が終わっても尚、二日目の学園祭にも服飾の等身大きせかえ人形のように、いろんな衣装に着せ替えられてしまうことを―――。
大成功
🔵🔵🔵