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ブリンガー/ノービス(作者 やさしいせかい
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#アポカリプスヘル 


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#アポカリプスヘル


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●ある奪還者たち
 これで三ヵ所に増えた。相棒の呟きに奪還者の男は腕を組んだ。
「子供を攫う事件はどこの拠点にもあるものだが、数が異常だ。レイダーが組織立って動いてるのは間違いない」
 カラン、と氷が鳴るグラスを揺らして。相棒である奪還者の女はそれに首肯する。
「そうね。でもこの辺りにレイダーの根城なんてないわ、地下水路だって今はモンスターが蔓延ってて侵入経路には使えないもの」
「実はルートを確立していたりは」
「ないわね、定期的に町の組合でモンスターの間引き依頼が出てるんだから」
「……そうなると奴等は何処に潜んでるんだ」
 25人。
 三つの町で攫われた子供の人数は多く、既に各拠点で大騒ぎになっていた。
 中には武装した家や、奪還者の家族が攫われたという話もある。下手人はただではすまないだろうが、まずその下手人を見つける段階で関係者達は頭を抱えている様だった。
 無精髭の男、奪還者のアルタイルは携帯端末で地図を開く。
「事件があった三ヵ所の町はいずれも交易のある中規模拠点だ、つまりこの辺りにアジトを設ければ連中は定期的に稼げるわけだな」
「そんなの不可能よ」
「でも実際に奴等は人攫いを成功させてる。人間業じゃない」
「……せめて現場で何かを見た人がいれば」
 そんな分かり易い手掛かりがあれば苦労しない。二人は顔を見合わせてそう笑った。

 ――だが彼等の話を聞いていた、黒ずくめの男は笑えなかった。
 金属製のコップに並々と注がれた化学ミルクを飲み干しながら、男はそのまま酒場で暫く二人の奪還者の様子を見張り続ける。
 爛々と、深く被った鍔付き帽の下で眼を光らせている。
 かくして奪還者の二人は自らに注がれていた眼光に気付かず。程良く酔いが回ったころに店を出て行った。
 男は……店主に握り潰したコップを投げ渡し、鋭い視線を送って黙らせる。
 奪還者たちが開いた扉が閉まるより先に風が飛び出して行った。

●奪われたモノ
 深夜、彼等がいる拠点は広く栄えている方ではあったが、しかし資源は多い方ではない。
 高い金を支払わなければ夜間の灯りを点けるだけの電力を回して貰えないのだ。それゆえに拠点外周の下町などは夜闇に深く閉ざされていた。
 そんな暗闇の中でも、奪還者の二人はほろ酔いだろうと関係なく進んでいた。ひとえに装備のおかげだ。
「……!」
 夜風を感じながら程良く酔いを醒ましつつ自分達の居住地へと帰ろうとしていた時。
 アルタイルよりも先に、奪還者の女……シャリテーが頭上から襲い来る気配に勘付いた。
 相方を蹴り飛ばし自分も路地裏の狭い壁際にまで下がった直後、その場に破壊の波が起きる。
 拳か、ハンマーか、正体は不明だが突然の強襲者に奪還者たちは冷静に懐から抜いた銃を構えた。
 同士討ちを避けての弾幕。
 跳弾が路地裏を埋め尽くす。が、その中に在っても闇に降り立った襲撃者は壁や鉄パイプなどを足場にしたり掴んで空中機動を行いながら全て躱していく。
「くそ! なんだこいつ!?」
「退くわよ!」
 人間業ではない曲芸に冷や汗を浮かべたアルタイルの泣き言にシャリテ―は撤退を促す。
 弾をバラまきながら撤退しようとするシャリテ―の前に、もう一人。黒ずくめの襲撃者が立ちはだかる。
「もう一人……!?」
 体を強張らせたのも束の間。
 トントン、と爪先を打ち合わせた新たな襲撃者は鋭い眼差しを夜闇に光らせる。そしてシャリテ―が銃を構えようとした瞬間に突風が叩きつけた。
 それは風などとは違う。実体を持った、神速とも呼べる目にも止まらぬ連撃だ。
 瞬く間に銃口を刻まれ、弾かれ、胴体の防護服を切り裂いて打ちのめされる。シャリテーは堪らず吹っ飛んで路地裏の壁に突っ込み、そのまま寂れた飲食店の厨房へ投げ出されてしまう。
「シャリテ!!」
 嘘だろう。応戦するアルタイルが相棒の姿を視認しようと首を回した直後、その視界を頭上から飛来した無数の黒ずくめたちで埋め尽くされてしまうのだった。

 ――黒ずくめの襲撃者たちはアルタイルの身柄を確保すると、その場を後にした。

●"奪還者"
 シック・モルモット(人狼のバーバリアン・f13567)はアポカリプスヘルに向かって欲しいと猟兵達に頭を下げた。
「アポカリプスヘルの西部三都市を荒らしているレイダー組織がいるみたいなんだ、現地の奪還者と連携ないし調査を経た後。この事件を起こしている奴等を蹴散らして欲しい」
 シックがそう言うと、事の詳細を説明し始める。
 彼女が言うには数日に渡り中規模の拠点都市を駆け巡る子供の誘拐騒動が巻き起こっているらしい。
 誘拐された奪還者の男はその事件を追っている最中で連れ去られたということだ。
 これから向かう先、拉致された奪還者の相棒の端末信号を追っている女性の姿が見つかる。彼女の救出を手伝うか、あるいは彼女が侵入しようとしているレイダー達のアジトへ先行して事件に関係しているかどうか、調査ないしは引っ掻き回す事が目的となる。
 猟兵達はシックに何か予知している事は無いか訊ねた。
「……これといって特にはない。強いて言えばアジトにはアサルトライフルなんかで武装した雑魚が沢山いる、他には……やたら強いのが複数いるのは確かだな」
 果たして事件にどれだけ関連しているのか。
 シックは曖昧な言葉と共に、とりあえず首肯した猟兵達を連れて移動するのだった。





第3章 ボス戦 『ブレイズフレイムのガルバ』

POW ●ブレイズフレイム・デストロイヤー
レベル×1tまでの対象の【体すら吹き飛ばし、焼き尽くす紅蓮の炎】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD ●ブレイズフレイム・ランバージャック
【なぎ払うように】放たれる【紅蓮の炎】が命中した対象を切断する。
WIZ ●ブレイズフレイム・クリムゾン
【体から噴出し、敵を焼き尽くす紅蓮の炎】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ガトウ・ガドウィックです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●現れる紅蓮
 地下アジトの正体は過去の遺物。遺跡を改造したものだった。
 いずれは地上の『拠点』へ侵攻する事も視野に入れた中継基地計画。それはとある都市に住まうレイダー・キングの意志に依るものだ。
 しかしよりにもよって、まだ前段階の今この時を狙って猟兵達に襲撃されたのは完全に想定外。既に壊滅に近いほどの被害を与えられ、ワイルドキャットたちも残す所僅かとなってしまっていた。
「……緊急なのは言うまでもねえか。オイ、都市にいるキングに報告しておけ」
「はッ、しかしボスはどちらに?」
「決まってんだろ」
 騒乱のアジトの一画で炎が渦巻いていた。
 ヴォ―テックスに携わる計画の管理者でもある、ボス――ブレイズフレイムのガルバをかつて名乗っていた男のクローンだった。
 オブリビオンでもある彼は獰猛な笑みを浮かべて扉へと向かう。
 既に侵入者……猟兵達の動向はワイルドキャットを総動員した人海戦術によるサーチによって把握していたのだ。ボスの男は全身から炎を湧き立たせながら、ちらと隣へ視線を移す。
「……ぶっ潰す。とっとと終わらせるぜ」
「場合によっちゃ挟み撃ちにしてやればいい……この俺を舐めたツケは、払わせてやる」
 まったく同じ言動口調。同じ戦闘服を纏い炎を纏う彼等は、互いを見合いさらに笑みを凶悪なものへと変じさせた。

「確かガキどもと行動を共にしてる奴等もいたな……場合によっちゃそっちを狙って諸共こんがり焼いてやれ!」
「ヒャッハハハハ! 燃えて来たぜぇッ!!」
 今宵、最後の戦闘が各所で始まろうとしていた。
黒木・摩那
炎使いのサイキッカーとは厄介な相手が出てきました。
普通に周囲が焼け野原ですから、子供達を連れた状態では非常に危険な相手です。
しかも、こちらは連戦続き。先ほどは無理した後ですし。

猫相手は機動戦でしたが、今度は防御を固めてカウンターを狙います。

広い空間では炎の広がりは防げないので、通路のような狭い空間に陣取ります。
そして、UC【暗黒球雷】でエネルギー吸収球を通路に展開し、ガルバからの炎を球に吸収させていきます。

たっぶりと吸収したエネルギーは魔法剣『緋月絢爛』でお返しします。
【衝撃波】を増強して、【なぎ払い】の剣撃でガルバを斬っていきます。



 見覚えのある姿だった。
 ワイルドキャットの集団を撃退し、後続も躱して来た黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はスマートグラスに拡張表示された画面に浮かび上がった数値に目を見開いた。
 サーモレンズに切り替わった彼女の視界内で膨れ上がった白い靄。1500度を越える摂氏温度を爆発させた炎が、幾重にも連なる鉄板を破って摩那たちの方へ殺到して来ているのが見えてしまったのだ。
 咄嗟に背後にいた二人の子供を抱えて数メートル後方へテレポートした彼女たちの眼前を焔の渦が通過する。
 念動力をも交えた炎は地獄の炎とも称されるものだ。ユーベルコードに類するオブリビオンの能力、そしてそれらはかつて何度か目にされたものであり摩那もまた対峙した経験があった。
「――【ブレイズフレイムのガルバ】。
 データベースにはサイキッカーとありましたが、厄介な男が複製されていますね」
 不安気に見上げて来る子供達を摩那は無言でハンドサインを出して下がらせる。下手にルートを逆走してもワイルドキャットの残りに補足される可能性もある、なにより広い場所はガルバの炎に有利性を持たせてしまう恐れがあった。
 あれは周辺環境を焼け野原にするだけの力がある。
 それを知っているか否か。その違いは彼女の次行動を最善手へと移させた。
「励起。昇圧、反転――空間転移を確認」
 スマートグラスにも表示される自らのサイキックUCの数値変化を確認し、僅かな間に完成させたそれらエネルギー球を摩那は自らの周囲と子供達の前に展開させる。
 ゴボッ、という凄惨な音が鳴り響く。
 『拠点』の地下水路を利用してアジトを設置させた上でその管理者兼最高戦力をガルバにしたのは、こうした周囲への被害を"最悪のパターン"を想定した上でのものだったなら。
 摩那は、疲労と急な温度上昇に伴う代謝による汗を額から流して考える。子供達を連れている現状ではこれほど危険な相手も中々いないだろうと。それも連戦続きだ。下手に迎え撃つのもリスクが大きすぎる。

「感じるぜ……てめぇ、どっかでやり合った事があるだろ? ニューロンが足りてねぇせいか朧気だがァ、ここで再会したのは運が悪かったなぁ!!」
「この狭い中で暑苦しい事です」
 冷静な切り返しに溶けた鉄板を潜って来たガルバが口の端を吊り上げて歪めた。
「炭になっちまえばもっと涼しくなるぜぇ?」
 瞬間。通路のあらゆる面に向かって莫大な熱が奔る。
 摩那の『暗黒球雷』が更に数を増して展開された。渦巻く炎の津波を前に幾何学模様を描く掌大の球体は互いの吸収し損ねた炎熱を後方へ漏らさぬよう吸い合い、僅かに勢い負けしてまるで押されるかのように後退しつつも、ガルバのブレイズフレイムを全て消していた。
 だが周囲の温度が更に上昇している。彼女の展開した暗黒球雷の周囲で炎に当てられた鉄板やダクトから漏れる熱風は既に人を殺めるほどの熱を帯び、子供達の周囲に展開された球体が忙しなく蠢いていた。
 静かに細剣を抜いた摩那の首筋を雫が伝う。
「どうしたぁ! 来いや女ァ!」
 二度目の熱波を放出し、ガルバの周囲がドーム状に溶けて消え去る。それにすら耐えた摩那に怒りを発露させながらも余裕の笑みを浮かべた男は、三度目にして完全に周辺環境を顧みないエネルギー量を有した爆炎を放った。
 叩きつけて来た爆炎にエネルギー吸収球が大きく後退させられた。
 だがそれでも自らは下がらず、焔を噴き出しているガルバから目を逸らさない。摩那は細剣を構えた。
「では――エスコートに応じるとしましょうか」
 摩那のエネルギー球が大きく膨張した。その瞬間に彼女の身が残像を残してブレる。
 膨張した球体がそれまでに吸収していた莫大な熱エネルギー。魔力さえも籠めて、摩那は己の手にしている細剣の刀身へありったけの念動力を纏う。
 ガルバの炎が波を引く。常時放出し続けるには大きすぎるエネルギーだ。だが、微かに息を切らしたように目を伏せた彼の眼前で駆け抜けた万華鏡が如き色彩の"波"は男の纏うエネルギーをも切り裂いて余り有る威力を以て吹き飛ばしたのだった。
「な、にィィ……ッ!?」
 奔る衝撃波が炎上していた通路を吹き消す。次いで、赤く染まったガルバが砲弾の如く吹き飛んで通路突き当りの壁を破って行ったのだ。
「……ふぅ」
 何とか退けましたか。そう呟いて摩那はスマートグラスの開いた拡張表示へ指を滑らせて確認する。
 吸収させたエネルギーによるカウンターは成功した。
 そして敵は……
(……まだ!)

 ガルバが吹き飛んで行った方向から迫る、莫大な熱量を一瞬早く感知した摩那が新たな暗黒球雷を操り放つ。吸収できず炎に一瞬飲まれたが、即座に子供達の方から回した球体を動員して防いだ彼女の眼前で更に炎の波が一閃された。
 通路を切り裂く炎の刃。
 天井が崩壊した直後に襲う追撃。瓦礫やパイプさえ飲み込んで摩那に叩きつけて来る炎の暴力は、僅かでも触れれば人間の体をドロドロに溶かしてしまう脅威を秘めている。
 摂氏二千に届こうかという爆炎は更に立て続けに叩きつけに来ている。
 これは、摩那のカウンターを許さないという確固たる意志によって繰り出されている僅差攻撃だ。そしてそれを理解した時、摩那本人はこれが決着の場面であると悟った。
(恐らく計算させないため、彼自身の意図に応じて形を変えずにただ息の続く限り撃って来ている。これは……私に対する挑戦ですね)
 やれるものならやってみろ。
 これはガルバの挑戦状だ、子供達を守り抜いて自らを降して見せろという。一種の自棄だ。
 先のカウンターで確実に致命傷を入れたのだ。本来なら動く事も出来ないはずだ、ゆえに今こうしている間も摩那の掛けているスマートグラス『ガリレオ』からは想定外のエラーが度々吐き出されていた。
「いいでしょう」
 余りの激しい攻勢に子供達の方から悲鳴が上がり始めている。それを理由にするつもりはないが、悪戯に怯えさせるつもりもなかった。
 礫のように炎弾が降り注いだ後に一瞬の静寂が訪れた刹那、摩那は暗黒球雷を通して自らの魔力、念動力にガルバから得たエネルギーを上乗せして躍り出た。
 見透かしたようなタイミングで通路奥から薙ぎ払われる爆炎。
 怨嗟の声が聴こえるかのようなその轟音を耳にしながら、摩那は自らの肌がじりじりと焼ける感覚を抱いたまま細剣を――『緋月絢爛』を一閃させた。
 居合斬りと同じ動作で薙ぎ払ったその斬撃は莫大な衝撃波を纏って爆炎を、崩壊しかけた通路をも切り裂き巻き込んでガルバの方へ津波となって襲い掛かって行った。

 アジトの一画に破壊の嵐が吹き荒れた後、凄まじい衝撃が地上にまで届いた。
 濛々と辺りを満たす白煙。
 上気した水分が延焼を食い止め、僅かに残された脱出路の残り火を消していく。
「……終わりました。行きましょう」
 子供達の下へ戻った摩那は「ここは暑いでしょう」と言うと、煤の着いた頬を拭うのだった。
大成功 🔵🔵🔵

ジャック・ロストマン
【ダメージ有】
アドリブ歓迎

「俺の後ろに下がれ。前に出るな」

子供たちを退避、できれば頑丈そうな部屋内へ誘導
ダメージはある。だが継続戦闘だ
さて、炎使いか……火葬の手間が省けるな
サンダーショットのクイックドロウ、さらに拡散性を上げ連射する

「パンドラ、制圧射撃」

機銃形態で弾幕を張り敵に防がせ、あるいは回避する
防げる火力だと誤認させ、電力を蓄える
話しかけてくるならそれなりに返事をしよう、時間稼ぎだ

「例え地獄の炎に包まれようと、俺たちは死なない」

トドメはデッドマンズ・スパーク
両手でサンダーショットに全電力を込め、収束した一撃で炎を貫きガルバを撃つ
片手で銃をしまい、子供たちを連れ出そう
心配不要だ。さ、帰るぞ



 爆風が鉄板や割れたガラスを吹き飛ばす。
 強化樹脂で造られたサバイバルアーマーが表面を焦がし、溶かされるのを感じながら、ジャック・ロストマン(デッドマンズ・トラベラー・f24613)は銃身を切り詰めたサンダーショットを抜き撃ちする。つい数秒前まで立っていた通路が崩れ落ちる。その様を目の当たりにしながら遂に出る物が出てきたかという思いで見下ろす彼は、そのまま爪先で地を蹴り後退を続けた。
 しかし軽くブーツで蹴っているだけにしか見えないにも拘らず、その速度は背後から様子を見ていた子供達の全力疾走に匹敵する速さがあった。
 急なジャックの挙動に困惑を隠せずにいる子供達へ、低い声が一度投げられる。
「俺の後ろに下がれ。前に出るな」
 手の中のサンダーショットを振り回して瞬く間に照準器を直したジャックが振り向きもせずにその銃口を後方へ向ける。
 奔る稲光が子供達の逃げる先の通路脇にあった扉を破壊する。入れ、とジャックが指示するより先に子供達は一斉にその部屋の中へと駆け込んで行った。
 ジャックの眼前で赤い炎が膨れ上がる。
 正確には、背から莫大な熱量を放出して加速した一人の男がこちらへ突っ込んで来る様が視界に映っていた。
「さて、炎使いか……」
 視界に映る紅蓮が大きくなっていく最中。彼は不敵に火葬の手間が省けると鼻で笑う。
 噴き出す爆炎が通路を飲み込む。
 ふう、と深く息を吸い込んで喉が焼けるのを感じながら。ジャックは手近な鉄板を片手で引き剥がして子供達の逃げ込んだ部屋の入口へ叩きつけた。
 そしてついに数十メートルはあった距離を詰めて来たブレイズフレイムのガルバがジャックの目前に到達した瞬間、ガルバが狂気的な笑みを露わにしてジャックを爆炎で飲み込もうとする。
 そこで弾ける電撃。再度の調整を施し拡散性を増したサンダーショットを連射するジャックは目元を腕で庇い、衝撃波に押され地を滑る体を踏み締めその場に縫い止めながら背負う自身の偽神兵器へと指示を飛ばす。
「パンドラ、制圧射撃」
「この期に及んで制圧だあ!? 嘗めんじゃねぇぞ、ネズミがァ!」
 一瞬、ジャックの全身を爆炎が飲み込んだ。
 だが僅か数瞬の後に続いた電撃と機銃入り乱れた弾幕が炎の勢いを殺し、さらに面制圧で挑んで来たジャックの攻撃にガルバは防御行動を取らざるを得なかった。
 一度は膨れ上がった紅蓮の炎がガルバの下へ収束する。
 照りつく炎の光を前に、ジャックが焦げ付いたロングコートを叩いて前に出る。
 感情を表には出さない灰の瞳にはガルバが数歩退く姿が映っていた。質量を伴った波状攻撃には弱いと見抜いたジャックは、更なる弾幕を張りながら強く踏み込んで炎の中へ飛び込んで行く。
 ガルバの声が炎の中から響く。
「なッ――んなんだ、てめえは!? 死にたがりがこの野郎!!」
 例え耐熱を有した装備だとしても、それが炎の中へ飛び込んで平気でいられるような物ではないのは明白。サンダーショットとパンドラの機銃が唸りを上げ、超高温に達した各部が赤々と熱を帯び始めていた。
 しかしそれでもジャックは止まらず。
 眼と瞼が焼けても尚進み続ける。肌が焼け肉が炭化しようと、デッドマンである彼の肉体は朽ちずに胸部から溢れ出す電光を道標にして歩みを続けていたのだ。
「例え地獄の炎に包まれようと、俺たちは死なない」
 ガルバが逃げないのは、ひとえにプライドが邪魔をしているのだろう。
 分からないでもない。ジャックにも近い矜持はある、だがガルバのそれと異なるのはそれが……自らの躰を立たせるに足る力となるか、否かである。

 ジャックの身が不意に前へ砲弾のように吹き飛ぶ。
 背部のパンドラがミサイルを放った直後に起爆した爆風で炎の壁を破ったジャックはそれが自らの意図に依るものかどうかは考えず。熱され赤く燃えるサンダーショットを両手で握り、全身を駆け巡る全電力を銃身に注ぎ込んで引き金を引いた。
 刹那に奔る莫大な閃光。
 それまで視界を埋めていた紅蓮の炎を破って放たれた白光は一条の矢となって突き進み、ガルバの肉体を貫いて余り有るエネルギーを持ったままアジトの壁を射抜き破壊して見せたのだ。
 数瞬の遅れを以て轟く雷鳴にも似た炸裂音に次いで。その場に暴風が吹き乱れて炎が消し飛んだ。
「……ぐ、ガッ……」
 蝋燭の火を吹き消されたかのように。
 ガルバは信じられない物を視るような眼でジャックを睨みつけたまま、その場に倒れ込んだ。
「……」
 肉が焼けた臭い。
 だが、アーマーの損傷やコートの消耗に加えて自らの片腕を代償に得た勝利は揺るがない。
 何よりも。ジャックの表情には辛勝や圧勝のどちらとも読めない『無』が浮かんでいただけだった。
 片腕が掴むサンダーショットを焼け爛れたホルダーに収めながら、ジャックは踵を返して子供達の下へ向かう。
 焼け焦げていた瓦礫を彼は片手でどかすと、中の部屋から子供達が不安そうな視線が集まって来る。
「……っ! おじさん!? 大丈夫なのそれ……」
 しかしそれでも、ジャックは変わらずに「心配不要だ」と答えて。
 それからすぐに腕を振って手招きしながら続けた。
「さ、帰るぞ」

 本当に、何でもない事の様に言った彼の言葉に子供達は顔を見合わせ。それからジャックの下へ駆け寄って行ったのだった。
大成功 🔵🔵🔵