#アポカリプスヘル
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●ある奪還者たち
これで三ヵ所に増えた。相棒の呟きに奪還者の男は腕を組んだ。
「子供を攫う事件はどこの拠点にもあるものだが、数が異常だ。レイダーが組織立って動いてるのは間違いない」
カラン、と氷が鳴るグラスを揺らして。相棒である奪還者の女はそれに首肯する。
「そうね。でもこの辺りにレイダーの根城なんてないわ、地下水路だって今はモンスターが蔓延ってて侵入経路には使えないもの」
「実はルートを確立していたりは」
「ないわね、定期的に町の組合でモンスターの間引き依頼が出てるんだから」
「……そうなると奴等は何処に潜んでるんだ」
25人。
三つの町で攫われた子供の人数は多く、既に各拠点で大騒ぎになっていた。
中には武装した家や、奪還者の家族が攫われたという話もある。下手人はただではすまないだろうが、まずその下手人を見つける段階で関係者達は頭を抱えている様だった。
無精髭の男、奪還者のアルタイルは携帯端末で地図を開く。
「事件があった三ヵ所の町はいずれも交易のある中規模拠点だ、つまりこの辺りにアジトを設ければ連中は定期的に稼げるわけだな」
「そんなの不可能よ」
「でも実際に奴等は人攫いを成功させてる。人間業じゃない」
「……せめて現場で何かを見た人がいれば」
そんな分かり易い手掛かりがあれば苦労しない。二人は顔を見合わせてそう笑った。
――だが彼等の話を聞いていた、黒ずくめの男は笑えなかった。
金属製のコップに並々と注がれた化学ミルクを飲み干しながら、男はそのまま酒場で暫く二人の奪還者の様子を見張り続ける。
爛々と、深く被った鍔付き帽の下で眼を光らせている。
かくして奪還者の二人は自らに注がれていた眼光に気付かず。程良く酔いが回ったころに店を出て行った。
男は……店主に握り潰したコップを投げ渡し、鋭い視線を送って黙らせる。
奪還者たちが開いた扉が閉まるより先に風が飛び出して行った。
●奪われたモノ
深夜、彼等がいる拠点は広く栄えている方ではあったが、しかし資源は多い方ではない。
高い金を支払わなければ夜間の灯りを点けるだけの電力を回して貰えないのだ。それゆえに拠点外周の下町などは夜闇に深く閉ざされていた。
そんな暗闇の中でも、奪還者の二人はほろ酔いだろうと関係なく進んでいた。ひとえに装備のおかげだ。
「……!」
夜風を感じながら程良く酔いを醒ましつつ自分達の居住地へと帰ろうとしていた時。
アルタイルよりも先に、奪還者の女……シャリテーが頭上から襲い来る気配に勘付いた。
相方を蹴り飛ばし自分も路地裏の狭い壁際にまで下がった直後、その場に破壊の波が起きる。
拳か、ハンマーか、正体は不明だが突然の強襲者に奪還者たちは冷静に懐から抜いた銃を構えた。
同士討ちを避けての弾幕。
跳弾が路地裏を埋め尽くす。が、その中に在っても闇に降り立った襲撃者は壁や鉄パイプなどを足場にしたり掴んで空中機動を行いながら全て躱していく。
「くそ! なんだこいつ!?」
「退くわよ!」
人間業ではない曲芸に冷や汗を浮かべたアルタイルの泣き言にシャリテ―は撤退を促す。
弾をバラまきながら撤退しようとするシャリテ―の前に、もう一人。黒ずくめの襲撃者が立ちはだかる。
「もう一人……!?」
体を強張らせたのも束の間。
トントン、と爪先を打ち合わせた新たな襲撃者は鋭い眼差しを夜闇に光らせる。そしてシャリテ―が銃を構えようとした瞬間に突風が叩きつけた。
それは風などとは違う。実体を持った、神速とも呼べる目にも止まらぬ連撃だ。
瞬く間に銃口を刻まれ、弾かれ、胴体の防護服を切り裂いて打ちのめされる。シャリテーは堪らず吹っ飛んで路地裏の壁に突っ込み、そのまま寂れた飲食店の厨房へ投げ出されてしまう。
「シャリテ!!」
嘘だろう。応戦するアルタイルが相棒の姿を視認しようと首を回した直後、その視界を頭上から飛来した無数の黒ずくめたちで埋め尽くされてしまうのだった。
――黒ずくめの襲撃者たちはアルタイルの身柄を確保すると、その場を後にした。
●"奪還者"
シック・モルモット(人狼のバーバリアン・f13567)はアポカリプスヘルに向かって欲しいと猟兵達に頭を下げた。
「アポカリプスヘルの西部三都市を荒らしているレイダー組織がいるみたいなんだ、現地の奪還者と連携ないし調査を経た後。この事件を起こしている奴等を蹴散らして欲しい」
シックがそう言うと、事の詳細を説明し始める。
彼女が言うには数日に渡り中規模の拠点都市を駆け巡る子供の誘拐騒動が巻き起こっているらしい。
誘拐された奪還者の男はその事件を追っている最中で連れ去られたということだ。
これから向かう先、拉致された奪還者の相棒の端末信号を追っている女性の姿が見つかる。彼女の救出を手伝うか、あるいは彼女が侵入しようとしているレイダー達のアジトへ先行して事件に関係しているかどうか、調査ないしは引っ掻き回す事が目的となる。
猟兵達はシックに何か予知している事は無いか訊ねた。
「……これといって特にはない。強いて言えばアジトにはアサルトライフルなんかで武装した雑魚が沢山いる、他には……やたら強いのが複数いるのは確かだな」
果たして事件にどれだけ関連しているのか。
シックは曖昧な言葉と共に、とりあえず首肯した猟兵達を連れて移動するのだった。
やさしいせかい
初めましてやさしいせかいです、よろしくお願いします。
「シナリオ詳細」
『第一章:冒険』
奪還者の女性が仲間の手掛かりを追って行った先に発見した、地下水道から続く謎の地下拠点です。
レイダー達のアジトとみられ、直接的な事件への関与は不明です。
皆様にはこのアジト内を探索したり物資の流通経路を塞いだり、何らかのアクションを誘うプレイングが求められます。
ちなみにぶっちゃけどう見てもカタギの拠点ではないので、思い切って乗り込んで雑魚を蹴散らしながら内部を探索するのもOKです。
なお、場合によってアジト内部で『子供』を発見する可能性もあります。
『第二章:集団戦』
少し手強いミュータント系の敵が集団で現れます。
数が多く。さらに手数でもゴリ押してきます。
環境に応じて戦闘に工夫を加えると判定に+あったりします。
『第三章:ボス戦』
集団戦を終えてから進む先で現れるブレイズフレイム使いのクローンと戦闘になります。
基本的に敵は単騎ですが、猟兵たちで連携・同行者などある程度協力していたりすると相応にクローンが増えて戦力が拮抗しそうです。
前章参加済みの方など、希望があればダメージや疲労が蓄積している状態を描写します。(【疲労orダメージ有】などの表記のあるプレイングに対応します)
●当シナリオにおける描写について
三章全てにおいて描写(リプレイ)中、同行者または連携などのアクションが必要な場合はプレイング中にそういった『同行者:◯◯』や『他者との連携OK』などの一文を添えて頂けると良いかと思います。
以上。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 冒険
『敵の地下拠点に潜入せよ!』
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POW : 正々堂々と真正面から乗り込む
SPD : 物資の流通を抑え込んで兵糧攻めにする
WIZ : 情報戦で敵を撹乱する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラブリー・ラビットクロー
また弱いヒト達が犠牲になってる
【緊急時は防犯アラームを使いましょう】
商売も潜入も交渉が大事
救出作戦だ!
【了解しました】
おいモヒカン
今日は良い物を持ってきたぞ
凄い端末ビッグマザー
とっても貴重なAIなん
お代に中の子供達を見せて欲しーのん
次はヴォーテックスの街で商売なん
ししょーがドレイが欲しいってうるせーのん
ねーおねがい
居た
皆無事なんだ?
よしモヒカン
マザーに話し掛ければもうモヒカンの物なんな
【未登録の声紋です。防犯アラームを発動。5カウント後にGPS信号を発信します。5、4】
敵が慌ててる隙にバットで襲撃だ
次はらぶが地獄へ案内する番!
【3、2、1―】
【ネットワークに接続出来ません。作戦は終了しました】
●
一通りの話を聞き終え、現地奪還者のシャリテーはラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)を協力者と認めた。
「味方は多ければ多いほどいいわ。期待してるわよ、小さな奪還者さん」
「言われてるぞマザー」
【そうでしょうか?】
マザーは見た目はビッグじゃないのんな。
そんな事を言い合いながら、拠点傍でどう攻めに行くか思案している女奪還者から離れて行ったラブリーはぽんと手を叩く。
彼女は小さな握りこぶしを作って頷く。
「また弱いヒト達が犠牲になってる」
【緊急時は防犯アラームを使いましょう】
震える端末を覗き込み、名案だとばかりにラブリーが笑みを溢した。
「商売も潜入も交渉が大事。救出作戦だ!」
【了解しました】
……そんな二人のやりとりを知る由も無い、一人の男が口を半開きにして空を眺めている。
正確には空なんてものは無い。ここは地下であり、天井には何も無い。
ただ暇を持て余しているのだろう。
「おいモヒカン」
「んあ? ……いやモヒカンじゃねーし、トサカヘッドだから。なんだてめえ、施設から逃げて来たのかぁ」
そこへ姿を現したラブリーの姿にモヒカンの男は訝し気に覗き込んだ。
薄暗くてじめじめとした地下水道沿いの通路脇にずっといたせいか、男はラブリーのピンクでハイカラなフード姿に目がチカチカしているような反応をしていた。
特に、ラブリーの着けているガスマスクが物珍しいようだ。
「今日は良い物を持ってきたぞ。凄い端末ビッグマザー」
「……すごいたんまつ?」
「とっても貴重なAIなん」
えーあい。その言葉を聞いたモヒカンがその単語が金になると思い出し、ラブリーに近付いた。
差し出されたタブレット端末を手に取り、表裏を繰り返し覗き込む彼は「どー使うんだこれ?」と何度もモヒカンを撫でている。
それに対しまてと言わんばかりにラブリーが手で制止をかける。
「お代に中の子供達を見せて欲しーのん。次はヴォーテックスの街で商売なん、ししょーがドレイが欲しいってうるせーのん」
すると、そこで場の空気が変わる。
ようやくラブリーがただの迷い子ではなく、組織の客だと判断した様だった。
だがそれはそれ。ラブリーは言った、端末をお代にして商品を見せろと。それはつまり、案内料だ。
モヒカンの男はニンマリと笑うとラブリーを引かせた。なんで歯をカラフルに染めてんのかと。
「……ねーおねがい。それの使い方も中で教えてあげるからー」
「へへへ、こりゃあきっちりと案内しなきゃな! どうぞこちらですぜ、おーい! お前ら! ボスの客だ!」
あっさりと中に通されたラブリーは背負った工具入れのバッグをガチャガチャと鳴らしながら辺りを見回す。
他の猟兵はまだ来ていないのだろうか。
「ふむふむ」
「すいやせんね! へへ、散らかってやしてね!」
「おいルード、お前なんだそのガキ。ボスの客ってそいつなのか?」
「口に気いつけろ馬鹿やろうがよ! 上客だぜオイ!」
モヒカンの男がいきなり激怒したことで仲間のチンピラ達は眉根を上げて不思議そうな顔をする。
嫌な予感がしたラブリーだったが。
おそろしいことに、どうやらこれは慣例らしい。やはりそのままあっさりと通されてしまう。
(……ザルすぎぃ)
もしかして何も言わずに歩き通そうと思ったらそれでも行けたのでは?
そんな事を思って目を細めるラブリー。
しかし、薄汚い通路を進んだ先で彼女はモヒカンの男に急に白く清潔感のある空間へと通される。
そこは一面がガラス張りになった部屋だ。ガラスを覗いたラブリーの視界には数人の子供達がいた。
「――居た。皆無事なんだ?」
「ここは割と最近来た奴の教育部屋でしてね、ぐふ。ほんとは教育済みの奴にしか通しちゃいけねぇんだが……まぁまずはこれ見てから部屋の扉横にある有線で受付に話しかけてくれや」
「よしモヒカン。マザーに話し掛ければもうモヒカンの物なんな」
「うほぉ!? よしきた、あーなんだっけか? マミー……じゃねえ、おいマザー! 俺様はルードだ!」
手にしていた端末に顔を近付けて唾を飛ばして叫ぶモヒカンゴリラ。露骨にイヤそうな顔をしているラブリーの前で、マザーと呼ばれた端末が点灯する。
だが次に出て来た音声にモヒカンの男は顔を歪めた。
【未登録の声紋です。防犯アラームを発動。5カウント後にGPS信号を発信します。5、4……】
「はぁ!? ちょ、なんだ防犯ってなんだこれどうすりゃ……」
モヒカンの背後でガチャンと鳴る。
工具バッグからするりと取り出された金属バットを握り締めたラブリーが、天高く舞い上がってぶんぶんする。
「次はらぶが地獄へ案内する番!」
【3、2、1――】
「ごふぁあああああああ!!?」
ドガバキゴシャァ! と振り下ろされ、叩きつけられ、フルスイングで滅多打ちにしてかかるラブリーがモヒカンの大男を前に蹂躙して行く。
辺りにカラフルな歯が飛び散る最中、部屋にビッグマザーのカウントが流れ……やがて一拍間を置いてから淡々と告げた。
【ネットワークに接続出来ません。作戦は終了しました】
崩れ落ちるモヒカン。
ラブリーは、ひとまず最初に拾い上げた相棒の画面を念入りに拭きまくるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
子供を攫う組織というだけで滅殺対象ですね。
あっさりと奪還者が拉致されているところから考えると、相手も腕は確かなようです。
ならば、相棒の女性がアジトに進入する前に、ある程度、雑魚は片づけておいた方が良いですね。露払いです。
地下水道の様子はスマートグラスでモニターしていきます【情報収集】。
レイダー達が現れたら、銃は【念動力】で軌道を曲げて回避します。
そして、UC【墨花破蕾】で壁などを蟻に変換して、レイダー達を蟻の波で襲います。
子供たちの居場所を早く言わないと、蟻のエサになりますよ?
●
黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は暗い地下水道の中に張り巡らされたダクト内を通り、人の出入りが殆ど無さそうな位置に出た。
天井部から飛び降りた事で足音が暫し反響する。が、近くに人がいない事は確認済みである。
摩那の掛けているスマートグラス、その多機能な性能を更に押し上げている補助プロセッサによって拡張表示された電子画面を前に。数十m先で屯している男達の姿を壁越しに見遣りながら息を吐く。
(子供を攫う組織というだけで滅殺対象ですね。あっさりと奪還者が拉致されているところから考えると、相手も腕は確かなようです)
だが目の前にいる男達は件の下手人ではなさそうだ。
差し当たり、アジト内外周囲を警戒する為に配置された人員。それが警報装置代わりにせよ、警邏役にせよ、潤沢な人材がなければ無駄に人数を割けるとは思えない。
組織の規模をそれとなく計りながら、摩那は周囲をマッピングしモニターしながら発見済みの敵構成員を如何に排除するかに思考を割く。
(相棒の女性がアジトに進入する前に、ある程度、雑魚は片づけておいた方が良いですね。露払いです)
行動が早い。スマートグラスから的確に指示を受け、それらを参考に摩那が即席のルーチンを組む。同時に通路を駆け抜ける彼女はその足音が何者かの接近を男達に報せると共に、僅かに警戒を誘った後に一枚の壁越しに背を寄り添わせる。
通路内に反響していた音が、一瞬だけ消える。
「地に潜みし精霊よ。物に宿りて我に従え。姿さずけよ」
ここは地下水道であり人々の営みの下に作られた格好の『遊び場』だ。摩那の呼び掛けに応じた精霊は、彼女が意図するままに意思を以て地下水道のコンクリート壁を作り替える。
壁の向こうにいた男達が叫び出す。
「あ、蟻だぁあ!? くそ、おい下がれ! 下がれ!」
後退し逃走しようとする男達だが、もう遅い。
回り込んだ摩那が彼等の行く手を遮った瞬間、蟻の群れに向かっていた銃口が彼女に向いた。
通路内に反響する発砲音。連続する銃撃は見えない壁に遮られ、軌道を曲げられてあちこちに跳弾して終わる。
瞬く間に数人の男が一人を残して蟻の絨毯に飲まれ、断末魔を響かせながら銃撃が止まった。
生き残った男は、溶かされた銃器を棄てながら摩那の方へ視線を上げる。
「な、なんなんだよお前……!?」
しー、と細い指先が柔らかな唇に触れる様を見せる。
男はその仕草に一瞬見惚れている間に、背後で蠢く蟻のタワーを目の当たりにして呼吸を止めた。
「ひっっ……!?」
「子供たちの居場所を早く言わないと、蟻のエサになりますよ?」
さて。
すぐにベラベラと洗いざらい話始めた男の情報を精査しながら、摩那は後ろから向かって来ている増援をどうしようかと思考を巡らせるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ジャック・ロストマン
奪還に来た
当然を装い堂々と入って、正面から乗り込む
気付かないか、迂闊にも通すなら子供たちの居場所を聞く
言わないか、どうであれ通さないならクイックドロウでサンダーショットを撃つ
「パンドラ、機銃に変形し制圧射撃せよ」
わからないなら突破して虱潰しだ
コンバットアクスで体勢を崩して倒し、踏みつけて、子供たちの居場所を尋問する
答えないか知らないなら撃って次だ。いずれ辿り着くだろうか、あるいは情報が入るか
硬い隔壁、纏まった数の援軍、強力な武器持ちなどがいれば、デッドマンズ・スパークだ。電撃で纏めて蹂躙する
片腕くらいなら問題ない。すぐに直る
戦車が持ち込めれば楽なんだが、通路が崩落しても困るからな
●
微かに慌しさが伺えるようになったアジトを訪ねる者がまた一人。
大人数が駆け行く最中を平然と歩き通そうとするジャック・ロストマン(デッドマンズ・トラベラー・f24613)は、しかし背後から声を掛けられてその足を止めた。
ゆっくりと何でもない事のように、彼は振り返る。
「おい若いの! お前イイ装備してんじゃねえか、加勢に来い。妙なサイキック持ちの女が暴れてるらしい」
強面の機械眼の男はそう言うと先行するように走り出す。
ジャックは暫しその後ろ姿を見送ると、振り返らずに勝手にどこかへ行ってしまったレイダーの男が戻らないのを確認してから一息入れ、通路の奥へ向かう。
まるで清掃が行き届かず、黴や水垢から派生して生まれた粘着いたミミズの様なものが蠢いている通路を進んで行った先。
ジャックが角をひとつ曲がると、白い電子扉を中央にして数人の男たちが銃を構えて警備している。
「……」
辺りを見回してから真っ直ぐに男達へ視線が戻る。
「……なんだ、てめえ?」
「ここは俺らが今は警備してる。『商品棚』にいきてーならボスからカードキーを貰って来るんだな」
「俺らも入れないから無理だろうがな」
男達は口々に引き返せと言わんばかりの事を言う。
ジャックは、その白髪の下で灰色の瞳をゆるく、目を回す。
これは、考えるまでもなかった。
直後。一瞬にして空気が変わったジャックに警戒を強めた男の頭が電撃を浴びて吹っ飛んだ。
電子レンジが爆発したかのような音に驚き、殺意を露わにした男達が傍に用意していたトーチカに素早く身を隠す。
「パンドラ、機銃に変形し制圧射撃せよ」
銃身を切り詰めたサンダーショットを収めながらジャックが駆ける。
男達が遮蔽物から腕や銃を出して威嚇射撃して来る最中を走り抜け、彼の意思に呼応した『偽神兵器パンドラ』が背部から怒涛の制圧射撃を加えて行く。
短い弾幕によってトーチカの裏側に抑え付けられたレイダー達は、遮蔽物を飛び越えて来たジャックに驚愕の表情を浮かべた。
振り放たれる手斧。
投擲されたコンバットアクスがレイダーの肩のプロテクターごと打ち抜くと同時、転がり込み滑らせた蹴り足でレイダー達が怯んだ。
至近で、抜き撃ちのサンダーショットが嘶く。吹き飛んだ仲間を目にして叫ぶ男を一人、ロングコートを翻し突き出した脚で踏みつけにし、ジャックがまだ電気がパチパチ鳴っている銃口を向けた。
「この先以外に子供達の居場所は? 無いなら、中に入る方法は?」
「し、しらねえ! オレは何も知らねえ!!」
電撃が通路に轟き響いた。
容赦のない姿に怯え、銃を乱射した他のレイダーを背中のパンドラが蜂の巣にしながら。ジャックは他の男達に目を向けた。
「……どこだ?」
二度、同じことは言わない。
複数の銃口がゆっくりとそちらへ向かいながら、ジャックはただ男達を見つめるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・オブライト
先行して暴れる分にゃ構わんが
拉致された奴の無事までは保証出来ねえ
奪還者の女に、裏口かダクトか何か、調べがついてるなら別経路から侵入し表が騒がしい間に相棒や手掛りを探すよう話をつけておく
ああ、こいつも持って行っていい
【Undead】片腕を渡しておく。いざとなれば『勝手に』殴って爆発くらいする
オレは表口から邪魔するぞ
扉はなんなら破る。住人は『覇気』で威圧、尚向かってくれば格闘。オブリビオンでもない、只の人間の命まで取る気はない、が
出方次第だな
…あんたたちに言ってるんだが?
必要とあれば『属性攻撃(電気)』段階的に電圧を上げ、何かしら吐くよう促す。あまり器用じゃあないんで早めを勧めるが
※アドリブ他歓迎
●
レイダー達のアジトから響き渡る慌しさに微かな喧騒と交戦の気が混ざり始めた頃。
望外の結果をもたらした猟兵達を前に、女奪還者のシャリテーは強かに笑みを浮かべた。
「敵の規模が思っていたよりもずっと大きい……けど、先行してくれた人達から送られた内部の情報や遊撃による攪乱が効いてる。今なら私でも行けるわね」
ただ、と。
彼女が振り返った先で他の猟兵から届いた情報の閲覧を終えたレイ・オブライト(steel・f25854)と目が合う。
ある程度の事情を把握したらしき彼は視線を受け、シャリテーが言わんとしている事を察して軽く肩を竦めて見せる。
「先行して暴れる分にゃ構わんが、拉致された奴の無事までは保証出来ねえ」
「そこまでは高望みよ。勿論最悪のケースは想定しているつもり、そう簡単にくたばってはいないとも信じてるけどね」
意図を読まれた上で彼女は、この荒野によくある『昔の相棒の話』となり得る状況もあるのだと考えて眉根を顰めながら苦笑した。
「何にせよオレたちも無駄足だったとは言わせるつもりはねえよ。
こっちの奴が侵入した時に使ったダクトから伸びている安全なルートを辿れ、オレは表口から邪魔する」
表から行く。そう言われたシャリテーが真剣な表情に変えて頷いた。
「任せたわ」
「面倒な情報収集や手掛かり探しはそっちでやった方が早いってだけだ……ああ、こいつも持って行っていい」
「~~!??」
ひらりと手を振って背を向けるレイを見送り、同時にシャリテーもいよいよアジトへと向かおうと別口を目指した。
しかし、そこでいつの間に戻って来たのか彼女の前にずい、と逞しい腕を差し出されて悲鳴を上げそうになった。
それが爆発物の代わりにもなると言われても、かなり引き攣った顔でシャリテーは首をブンブン振った。
「じ、自前の武装で対処できるわ……」
「そうか」
慣れた物の方がいいのだろう。そう考え、レイは一度切り離した腕をぐりりと肩に押し当てながら去って行く。
まったく見慣れていなかったシャリテーは心臓が口から出ないように深呼吸してからその場を後にする事にした。
●
電子扉が大きくひしゃげたまま砲弾の如く吹っ飛ぶ。
野太い悲鳴が続き、巻き込まれたレイダー達の銃が暴発する中。威嚇のつもりで覇気を纏っていたレイが溜息と共に、背負っていたオーラを鎮ませた。
「お前……何だどういうことだコラぁ!」
「そういうことだろうな」
レイは既に、目の前で尻餅をつきながら銃口を向けて来ている男達が覇気に屈しないと分かっている。
しかしそれは男達が相応の精神を持っているからではない。何かしらの影響下にあるものは反発し、牙を剥く。獣と変わらない相手だと知っているからだった。
"枷"を使うまでもないとばかりに首を回してゴキゴキと鳴らすレイを前に、男達が無線で増援を呼び始める。
「こちらC3! こっちに人を……」
「あんたたちの出方次第だと、そう言った筈だがな」
自分達に言ってるのだと分かってないのか。こめかみに指をトンと当てながら問うレイを無視して、ついさっき蹴り飛ばされた事も忘れた男達が一斉に銃の引き金に指を掛けた。
重い音と共に通路を形作る鉄板が凹む。
大きく踏み込んでから腕を振り抜いたレイを中心に奔る衝撃、近くで機関銃を構えていたレイダーが錐揉みして吹き飛んだ直後に紫電が狭い通路内に吹き荒れる。
放射された電流が無線機器を破壊する。鋭い眼光が向く度に男達が次々に一蹴され転がる中、少し離れた場所の扉が開いて駆け付けた増援が惨状を目の当たりにして発砲する。
「デリバリーなら頼んでねえぜ」
ドンと足元の鉄板を蹴り上げて銃撃を一時躱したレイが、まだ空中にあったそれを殴りつけてオーラを流す。
弾ける電撃。衝撃波を伴い吹き飛んだ鉄板が何度も跳ねてレイダー達に突っ込んだ直後、外骨格スーツを着ていた数人が回避と同時に応戦して来た。が……駆け抜けた弾丸は空を切り、男達の視界からもレイは消える。
数瞬の困惑。
だがすぐに、レイが天井と壁を蹴って自分達の懐に入り込んだのだと。眼下から繰り出されたアッパーで吹き飛びながら身を以て知らされる。
「ぐはぁあああ!?」
「ひ、ひぃぃっ!」
凄まじい音と共に天井のダクトにぶっ刺さる強化服を纏ったレイダー達の末路に、雇われの雑魚レイダーが悲鳴を上げて逃げ出そうとした。
しかし逃げる男の首根っこを掴んだレイがそれを引き摺り戻すと、低い声が彼の耳元で囁かれた。
「ウチに帰る前に教えて貰いたいんだが、構わねえよな?」
「へ、へへっ! なな、なんでもおききくだささいな!!」
バチバチと爆ぜるように鳴り響く電光がレイの胸元から視えると、男は歯を打ち鳴らしながら洗いざらい喋った。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ワイルドにゃんこ』
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POW : にゃんこ爆砕拳
単純で重い【肉球】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : にゃうザンドアーツ
自身の【瞳】が輝く間、【にゃんこ真拳】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : ワイルドハント
【敵の真の姿を模したビハインド】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
白い部屋に辿り着いた猟兵達。
そこに捕えられていた子供達はいずれも不安を懐きながら、もしくは"あなた"の対応に安堵して同行することになった。
来た道を引き返せばすぐ外に出られる。
そう思った瞬間、アジト全体を流れる警報がその足を止める。嫌な予感は的中し、地下水道へ続いていた筈の通路を分厚い隔壁が閉ざしてしまう。
子供達は。捕まった奪還者の男が暴れた時と同じだと口々に騒ぎ始めた。
「どうしよう、またあいつらが来る……捕まっちゃうよう!」
「うわぁぁあん……!」
猟兵達は周囲を見回し、脱出路を探りながら警戒する。
泣き叫び、あるいは動揺に震え始める子供達。その一方で猟兵達は各々どこからともなく聞こえて来る軽快な足音を感知していた。
通路。白い部屋。ダクト。何も無いように見えていた壁から次々に現れる、黒ずくめの巨漢。
ぬるりと動くその影は、大柄な体躯とは裏腹に高い機動性能を見せつけている。
脱ぎ捨てられるコートと帽子。
露わとなったその正体は猫型の獣人だ。だがその愛らしくもユルい見た目とは違い、奪還者の二人組を一方的に返り討ちにした実力を秘めている事は既に知っている。
駆け上がって来る集団。
ワイルドな風貌のにゃんこどもが猟兵を排除する事を目的としているのは、明らかだった。
ラブリー・ラビットクロー
みんなはその場から絶対に“動いちゃダメ”だぞ
なにがあっても“物音立てちゃダメ”なんな
だいじょーぶ
絶対らぶがなんとかするなん
これらぶのウサたん星人のぬいぐるみ
終わるまでモフモフしてていーのん
きた!にゃんこ!らぶが相手だ!
煙幕の入ったタンクに換装したラビットブレスでこの場をモクモク埋めつくしちゃえ
真っ白でなんにも見えなくなっちゃった
でもそれは敵もおんなじ
ウサ耳を生やして音を取りながら敵の場所を掴んでくぞ
念の為足下にビー玉をばら撒いちゃうなん
足場を悪くして転ばしちゃえ!
らぶも転ばないよーに気をつけないと
武器は音の出ないバットを使うぞ
聞き耳を使うのは敵もおんなじ
ガラスの壁を叩き割って陽動もするなんな
●
辿り着いた白い部屋。
少し冷えたその中に囚われていた子供達は一様にラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)を見上げていた。
最初こそラブリーも自分達と同じく捕えられたのかと思い、その視線には同情の意が籠められていたが。しかしそれも彼女が入って来た扉の外で倒れているレイダーの男を見るやいなや、わっと子供達が集まって来る。
「たすけにきてくれたの?」
「お父さんとお母さんに会いたいよう」
やっと来てくれた助けに湧いた歓喜と涙。
ラブリーはそれにガスマスク越しに笑みを見せながら強く頷いて見せた。
【付近の端末に受信反応】
そこで突然。ラブリーのポーチからビッグマザーの音声が鳴り響いた。
【メッセージ受信……開封します】
『侵入者あり! ワイルドハント隊全員出撃! 位置情報を送る! 侵入者を発見し次第速やかに抹殺せよ!』
部屋に響き渡る男の声は、それまで笑顔になっていた子供達の表情をあっさりと消してしまう。
そして同時にラブリーがごそごそとビッグマザーを取り出して画面を見下ろしている。
「おいマザー、ここにも来るのん?」
【添付された画像を開きます】
「みんなこっちに来るのん。あっちの部屋きたないけど、あったかいなんな」
落ち着いたラブリーの声音に子供達が涙目のまま頷いて部屋を移動する。
レイダーの男を倒した部屋の隅に子供達が集まった。
「みんなはその場から絶対に“動いちゃダメ”だぞ。なにがあっても“物音立てちゃダメ”なんな」
不安そうに見上げて来る子供達。
中にはラブリーと同じ程度の背丈の少年少女もいたが、彼等も同様だ。
ラブリーはビッグマザーを仕舞いながら、今度は別のものを取り出そうとポーチに手を深く伸ばしている。
のんびりしている間にもアジト内には警報が流れていた。
「だいじょーぶ」
ぴょこん。
子供達の前に差し出されたウサギのぬいぐるみ。不安を煽る警報の騒音が遠くなったような気がした。
「絶対らぶがなんとかするなん。これらぶのウサたん星人のぬいぐるみ、終わるまでモフモフしてていーのん」
「……いーの?」
「いいのん!」
らぶにはこれがあるなん。そう言いながらラブリーが頭の上にいつの間にか生やしたウサ耳を揺らして見せた。
ぬいぐるみを手に取った女の子が思わず笑顔になった。
●
白い部屋の奥の壁がスライドして開かれた瞬間、ラブリーが部屋の扉を閉めながら声を上げる。
「きた! にゃんこ! らぶが相手だ!」
既にビッグマザーから『何が来ているのか』は知らされていた彼女は敵の正体を把握していた。
ずんぐりとした、言い換えればもふっとしてそうな着ぐるみ。ラブリーの懐いた印象はそんな感じだった。
隠された電子扉が開いたのと同時に、白い部屋に振り撒かれる煙幕。
普段は延焼剤を振り撒く『ラビットブレス』のタンクをスモークに換装したものだ。その勢いは噴き出す様で、あっという間に襲撃者のワイルドキャットたちの視界を白く染めてしまう。
(真っ白で見えなくなっちゃった。でもそれは敵もおんなじ……だいじょーぶ、足音はちゃんと聴こえてるなん)
チラ、とポーチからはみ出したビッグマザーの画面が『マナーモード』と表記されて光る。
ラブリーは摺り足で、足音を殺して部屋を速やかに駆ける。
「ニャ……ッ!? ニャーッ!」
「あにゃあ!?」
白煙に塗れた空間で複数の影が転倒していた。
カラコロ。コロコロコロ。部屋中に転がされていたビー玉が、まるでワイルドキャットたちの動揺を表すように揺れ動いている。
(転んでるころんでる……♪)
部屋に突撃するのと同時にラブリーがしたことは二つ。
ひとつは、煙幕を張る事。そしてもうひとつは、この視界を遮った空間の中に大量のビー玉を転がしておいたことだった。
口々にニャーニャー喚き散らしては転がり回る猫獣人たちはまともに索敵する事も叶わないようだ。ラブリーはその様を聞きながら、傍で倒れ込んだワイルドキャットに滑るように近付いた。
鈍色に塗られたバットをラブリーが振り上げる。
「んっ!」
「ニャーッ!?」
フルスイングでホームランヒットした。
床にバウンドする勢いで叩きつけられたワイルドキャットの悲鳴が上がった瞬間、部屋中のワイルドキャットたちが一斉に動き出す。
「ニャ!」
「ウニャァッ!」
(ふお……いま、らぶの頭掠った!)
もはやなりふり構わない様子で大暴れし始めたワイルドキャットたちが、天井や壁を足場にして跳ねまくる。
風を切る爪音に反応してラブリーが身を低くしながら、偽神兵器でもあるウサ耳をぴょんと跳ねさせて。周囲の音を探り当てる。
(こっち!)
きゅむ。と踏み込んだラブリーが再びフルスイングでバットを振り回した直後、ワイルドキャットがまた一匹殴り飛ばされる。
続いてラブリーはそのままの勢いで振り上げ、近くの花瓶を叩き割って破片を撒き散らしてから、更に横合いの壁……マジックミラーとなっていた部分を砕き割って大きな音を立てる。
いよいよなにが起きているのか分からず混乱し、あるいは脆くなったガラスの壁に着地しようとして転倒したワイルドキャットたちがまた叫ぶ。
隣の部屋に避難していた子供達が悲鳴を押さえる中。転がり込んで来たワイルドキャットに飛び掛かるラブリーの姿が子供達の目に一瞬だけ映った。
(よっし。もうすこしがんばるぞ!)
隣の部屋に流れ込んだことで薄れてきた煙幕の変化に気づいて、すぐに新しくモクモクと煙を注ぐラブリーはガスマスクの下で小さく笑顔を作るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・オブライト
泣くな叫ぶな、疲れてんだろうが
9発撃ち込める、ってな様子だが。そいつは9発まで腕が動いてればの話だ
1発目、枷を覇気の念動制御で眼前に展開し殴るよう仕向ける。オレごとでもいい
【Lava】発動。電流の鎖で敵腕部を多方向から串刺しにし、僅かでも動きが止まれば格闘で本体を穿つ
もう片腕での妨害があれば、そうだな。都合良くオレにも二本ある、一本くれてやったって一向に構わねえぞ
チビの前だからと戦法を変えたり力を調整するほど器用じゃないが。地形破壊をも起こせるらしい敵の振り下ろしには、蹴りまたは打ち上げの拳を合わせ相殺狙い
この後も自分の足で歩いてもらわにゃならん。精々、ビビる要素は減らしてやるとするか
●
奇しくもレイ・オブライト(steel・f25854)が捕まっていた子供達を見つけたのと、アジト内に警報が流れたのは同時だった。
既に複数の猟兵が暴れているのを鑑みれば遅いくらいだが、レイにしてみれば傍らの幼子たちが泣き叫ぶ方が厄介だ。そう考えれば嫌がらせとしては最大の効果を生んでいるだろう。
「びゃああああああ!」
「泣くな叫ぶな、疲れてんだろうが」
帽子を気持ち深めに被り直して目線を隠すレイ。
この手の対応は目を逸らすに限る。少なくともうっかり眼を合わせるより良い。
辛うじてレイの思い通りに子供達は静かになったものの、彼が通った通路には既に敵の気配が充満している。
道理だ。
恐らくレイが暴れたルートはかなり敵の構成員がいた所謂『正面口』だ。敵がいるかどうか不確実な裏のルートを探るより、痕跡を辿らせた方が早いに決まっている。
そうなると迂闊に子供を連れて戻るのは得策ではない。すぐにそう判断したレイは、ひとまず"客"の相手をする事にした。
白い部屋の前にある通路を集団が突っ切るように駆けて行く音がする。
ウサ耳らしきものを生やしたガスマスク姿の少女が駆けて行ったのに続いて子供達が追う姿をレイは扉の隙間から確認しながら、それを追う様に走って来た文字通り面妖な集団の先頭の横っ面を金属扉で弾き飛ばした。
「ギニャッ!?」
「なるほどな」
一瞬で。吹き飛ばされた者とその後続が一様に同じ顔、獣人のクローンだと見たレイはそれらがレイダー達の有する戦闘員だと次いで判断し。同時に金属扉を引き剥がして蹴りつけ、砲弾の如くそれを放った。
初動の不意打ちに反応した後の追撃。ワイルドキャットたちが即座に回避行動に移る。
「身のこなしに自信あるようだが。そいつが俺に届くかは別の話だ」
床に天井や壁、空中の仲間とも腕を組み、蹴りつけ、変則的な三次元機動を描き襲い来る敵を前にレイは白い部屋から更に数歩躍り出た。
レイの体から念動力に導かれて伸びる銀の鎖。『枷』が花の如く瞬時に展開した所へ、ワイルドキャットたちの鋼の肉球と爪が殺到する。
"盾のつもりか"。
"ならば引き千切り、切り裂く"。
ただ単純な思考の下に動かされた高速の連撃が猫獣人から繰り出された。だが、それらは直後に鎖のジャラッとした音が鳴り響いた瞬間に止められてしまう。
「!?」
ズバン! という激しい電流が生じる。それは無数の楔となり、ワイルドキャットたちが足場としていた壁や天井、床などから伸びてレイの『枷』を中心に敵の体を宙に縫いつけていた。
刹那の停止。
足止めの成功と同時に踏み込んだレイの拳が紫電を放出してワイルドキャットたちを一打で吹き飛ばしていた。
鋭い眼光は揺るがず、前を見据えたまま。
鉄板を砕きひしゃげさせて踏み込んで来た複数のワイルドキャットたちを前に、レイ自ら駆け出て行く。振り下ろされた肉球、その拳、爪が先よりも硬質化していると見抜いたレイは敵が放とうとしている技の威力を相殺すべく胸元の電流を激しく奔らせた。
蹴り足が枷を振るい投げ、敵の胴を打つ。
電流が地を走る。紫電が散った刹那に加速したレイの逞しい剛腕がワイルドキャットの肉球を正面から打ち上げ、次いで薙ぎ払われた爪を膝蹴りで折ってから肘打ちで地に落とす。
敵の胴に打ち込んでいた枷が離れず、後から遅れて吹き飛ばされたワイルドキャットに体勢の崩れていたレイが引き寄せられる。
電流を流して磁石と化した敵によってレイは前に、水平に跳躍したのだ。
変則的過ぎる挙動で距離を詰めて来たワイルドキャットたちの眼が見開かれた直後。凄まじい電撃が撒き散らされながらレイの暴力が砲撃の如く爆発した。
(チビどもにはこの後も自分の足で歩いてもらわにゃならん。精々、ビビる要素は減らしてやるとするか)
通路奥から湧いてくるワイルドキャットを睨みながら、レイは静かに紫電のオーラを溢れさせた。
大成功
🔵🔵🔵
ジャック・ロストマン
心配不要だ。俺たちは強い
子供たちを下がらせ、牽制にサンダーショットのクイックドロウ
「こちらのコピーか。数も多い」
ならば蹂躙だ。一網打尽にしよう
「パンドラ、一斉発射。花火を上げろ!」
ミサイルポッドに変形したパンドラから大量のミサイルを放ち、網目の如き模様を描かせ敵を狙う
同時に、サンダーショットで制圧射撃だ。狙うのは地面や壁、天井のパイプ、金網、隔壁などの金属部分と、放置されているだろう銃
感電と銃の暴発により体勢を崩し、ミサイルで撃破する
「雷よりも速いのか?」
俺も被害や攻撃を受けるかもしれんが、激痛耐性があるし、装甲でジャストガードする
言ったはずだ。俺たちは強い、と
アドリブ改変連携歓迎
●
鳴り響く警報にざわめきが走った瞬間。ジャック・ロストマン(デッドマンズ・トラベラー・f24613)は白い部屋の隅で震えていた子供達に声を挙げた。
「心配不要だ。俺たちは強い」
短い、ただ力強い言葉。
一喝されたに等しい子供達は一様にそんなジャックの言葉を受けて静まる最中、ジャックは即座に部屋の外へ避難を促す。
行け、と揮われたその手に従い走る子供達。
「……」
数秒の間。
白い部屋の壁際で僅かに電子音が鳴ったのと同時にジャックが抜き撃ったサンダーショットの電撃音が轟いた。
精密な機械扉が派手な音を立てて吹き飛び、扉の向こうにいた猫獣人らしき者達が黒いコートを脱ぎ捨てて駆ける。
先頭にいたワイルドキャットが扉に巻き込まれて吹き飛ぶ間。ジャックは冷静に、寡黙に戦場を俯瞰する。
「こちらのコピーか。数も多い」
恐らくはクローン体だろうと迅速な判断を下したジャックが背の『パンドラ』を後退と共に変形させた。
数は多く。相手は閉所の戦いに向いた近接タイプ。
――ならば蹂躙だ。
「パンドラ、一斉発射。花火を上げろ!」
ガシャンと金属が崩れる様な音を鳴らしたのも一瞬。ジャックの背から伸びていた機銃が一斉にミサイルポッドへと変貌し、彼の声に応じて大量のミサイルを室内に向けて放出した。
無数の弾頭が網目状に拡散され、ワイルドキャットたちに突き刺さる。
狭い室内に吹き荒れた爆風は半ば天井や壁を崩落させ、アジト中に響き渡るほどの爆発音を連続させた。
まるで絨毯爆撃のような面制圧を以て一陣を撃破したジャックは子供達を追う。
「ニャーッ!」
しかし第二陣が迫る。
爆散した仲間を飛び越え、崩壊した瓦礫を使いアクロバティックに距離を詰めて来る集団をジャックは一瞥すると同時にサンダーショットを撃ち鳴らす。
奔る電撃が突っ込んで来た敵を吹っ飛ばしながら。今度は銃口をあちこちに向け射撃する。
闇雲に狙ったかと侮ったワイルドキャットたちの視界の外で小さな爆発が起こり、次に足場となっていた床や瓦礫が爆ぜ飛んできた衝撃に体勢を崩してしまう。
たった一瞬。
その隙を衝くように宙へ置かれていた、偏差射撃ならぬ偏差ミサイルが炸裂した。
黄金と紅蓮の花火が狭い通路を埋め尽くす。ジャックは、あえてその爆風を自らの体躯で浴びて敵の方へ突っ込んで行った。
ボロボロになった鉄板を更に踏み抜いて駆ける彼の背からは絶え間なくミサイルが降り注いで、第二陣の撃破時に生じた爆発による空間に身を隠している次なる襲撃者達を駆逐していく。
確かに相手は早い、だが。
「雷よりも速いのか?」
彼の動きは徹底して逃走している子供達への追撃や二次被害を防ぐ物でもある。
サンダーショットが天井の向こうにあるダクトを通っていたワイルドキャットを撃ち貫く。激しい噴煙の最中を駆け、鈍く揺らいだ眼光が捉えた敵を破壊する。
途中、その背に刃が奔る。だがジャックは止まらず、切先が装甲を滑るように身を捻りながら電撃を放った。
次々に襲い来る襲撃者を蹴散らして行く。
その様は遠目に観ても圧倒的で、装備だけでは為し得ない覇気がそこに在った。
子供達が走り続けた先。一体いつの間に先回りしたのか、あるいは初めからこのアジト内は『そういう作り』になっていたのか。突き当りの角を曲がった所にジャックがワイルドキャットを踏みつけて立っていた。
驚き、言葉を失いながらも。安堵の表情を浮かべる彼等は、ジャックの目を見た。
「――言ったはずだ。俺たちは強い、と」
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
確かに見た目はかわいいですが、腕は確かなようです。
しかし、子供達を守るため、ここを引くわけにはいきません。
相手の方が数は多いし、こちらは背後に守るべき者たちがいる立場です。
ここは機動力で勝負します。
魔法剣『緋月絢爛』で戦います。
UC【月光幻影】を使って、相手に接近されない内にテレポートで仕掛けます。
背後や死角から現れて、【先制攻撃】や【衝撃波】を駆使して切り伏せていきます。
スマートグラスのAIで見出した最適経路でにゃんこ達を片づけることで少しでもUCの起動時間を短くするようにします。
にゃんこ真拳は【武器受け】と【第六感】で勝負です。
●
アジト内の様相が変わり始めたのと、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)が奪還者の女性を見つけたのはほぼ同時だった。
「役に立てたようですね」
「ええ。本当に助かったわ……その子達は?」
奪還者の女性。シャリテーが目を向けた先には数人の子供が摩那の後ろに隠れるようにして居た。
摩那は彼等もまた囚われていたのだと説明すると、奪還者の女性は唇を噛んで顔を顰めた。
「本当なら私たちも救出に回る筈だったのにね」
彼女の肩に担がれているのはボロボロになった奪還者の男、相棒のアルタイルだ。
いまは意識が無く。何らかの薬物を投与された事で当分それが回復する見込みがないようだった。
治療に関して摩那は触れない。
まだやるべきことがあるのだ――奪還者たちはともかく、摩那は引けない。
「既に侵入口は敵で固められています。私はこれから子供達を連れて外に出られるルートを行くつもりです、この先はそちらで脱出を」
「データはそちらの端末から受け取ってあるわ。恩に着るわね……どうか武運を、そして出来ればその子達は……」
メガネの下にある摩那の目が、奪還者の続けようとした言葉を遮った。
無言のまま首肯したシャリテーはその場を去りながら目を伏せる。自分にはとても子供を守りながらレイダー達と渡り合うなど不可能だと、それを理解しながらもその眼には悔しさが滲んでいる。
すれ違い。立ち去った後から続く戦闘音。
子供ひとりさえあの中から救い出せない自分を、女奪還者は苦渋の表情を浮かべて呪うしかなかった。
●
なるほど見た目は可愛い。摩那は静かに微笑を浮かべながら子供達を整備されていないボイラー室にまで下がらせ、大人しくしている様に告げた。
いまのアジトは一部の猟兵が暴れている事で騒乱の渦が巻き起こっている。
複数の、捕えた子供達を隔離していた場所を襲撃された挙句に捕虜も奪還されてしまったのだ。彼等のバックに就いているスポンサーの存在を思えば、失態では済まされないのだろう。
現在の追跡者。ワイルドキャットと仮称されているクローンたちはこのアジト内では最大の戦力だ。数は多く、並みの奪還者よりも強力、その能力を最大限に利用して彼等がアジトに蓋をしているのが現状だった。
摩那はあえてそれを言わない。
逃げられる見込みはかなり薄い、それこそ単独で警戒網の隙間を潜らなければならないのだから、恐らくいまのアジトから子供達を引き連れて逃走するのは不可能だ。
ゆえに。とっくに彼女は別のプランを立てていた。
拡張表示されたAR画面内にはワイルドキャットのデータ以外に何らかの超能力者のオリジナルデータが浮かんでいた。
それが示すは、このアジトにおいて管理者権限を委託された最高戦力。つまるところの『ボス』に該当する人物だった。
(……これが出て来るのも時間の問題ですね)
悟られぬように笑みを崩さず。摩那は後ろをついて来る少年少女たちに視線を向ける。
彼女の眼鏡には演算予測された敵の動向マップが小さく表示されている。このルート上には、もう暫くすれば自分達と接敵することが確定している場所もあった。
蠢く無数の赤いマーカーは驚くほどの速度で駆けているのが分かった。そしてある場所では停滞し、突然消えてしまう。これは猟兵によるものだろう。
中には何らかの端末機器を有している猟兵もいるのか、なぜかウサギのアイコンで表示されている反応もあった。
何にせよ、これは裏を返せばどの猟兵も交戦は避けられなかったという事だ。
相手は数が多く。機動力もある。
そしてこちらには守るべき存在がいる状況――最適解ではなく最善手を選ばねばならない。
ならば。
(ここは機動力で……)
白く染められた通路の端。階段下に摩那は子供達を集めて口元に人差し指を立ててみせる。
それが何らかのサインだとわかり一様に頷きながら声を潜めたのを見届けた摩那は、静かにそこから数歩離れる。
「――"セーフティ解除。サイキック使用上限解放。機動可能時間カウント始め"」
スマートグラスの拡張表示画面にカウントが刻まれる。敵勢力との彼我の差を考慮して導き出された時間は数秒だ。
風もない空間に、摩那を中心とした突風が生まれる。
吹き荒れる風は次第に静まり、収束し、彼女の肢体が動く毎に後から燐光が残像を描いた。
――瞬間。
通路を駆け抜けていたワイルドキャットたちの頭上にテレポートした摩那が、その手に掴み取った細剣『緋月絢爛』を閃かせた。
一閃が通路ごと獣人の一人を切り裂く。
走る視線を避ける様に姿を消した彼女は次いで、警戒から爪を剥き出した敵の一人の懐に入り込み剣の柄で顎を打ち上げる。鮮やかな燐光が彼女の軌跡を描くことでワイルドキャットたちの視線がそれを追っているうちに、彼女の細剣は万華鏡の如き輝きを降す。鮮血が散るよりも早く、黒髪は刃の切先のように弧を描いている。
天井へ跳躍したワイルドキャットが肉球を振り下ろす。
崩れる通路。
地下水路から続く、初期の設計図はおろか如何なるデータバンクにも載っていない謎のアジトはさらに下の階層を秘めていた。
崩落。その刹那に数多のコピーキャットどもは瓦礫や鉄板を駆け上がり、跳躍して中空の摩那を捉え、仕留めに行こうとしている。
摩那も中空から敵の一人の頭上にテレポートする。緋月絢爛が煌めき、念動力による衝撃波で彼女の背に迫っていた敵が下方へ撃墜されたのと同時に華麗な一突きがワイルドキャットを穿つ。
「落ちて下さい」
スマートグラスからのロケーションサーチが終わった報せを一瞥し。次なる演算予測結果を目に焼きつけ、記憶した、彼女がその場から消失する。
剣閃の嵐が吹き荒ぶ。
ドーム状に繰り広げられるは、テレポートを連続させながら放つ一閃だ。刹那にカウンターを放つワイルドキャットたちもまた限界を越えた可動による連打を繰り出しているが、彼女の毛先にすら触れることなく打ち落とされ。或いは死角からの攻撃を摩那は直感で身を捻り、刀身で防ぎ躱していた。
崩れ落ちた通路上に伸びたパイプの上に摩那が着地する。辺りには凄絶な破壊音とワイルドキャットたちの断末魔が響き渡り、それはアジトの中に轟いた。
長い、一瞬が終わる。
僅かに疲労を感じさせる呼気を漏らした後に摩那は、スマートグラスに映し出された次なる経路を眺めて不敵に微笑んだ。
「――行きましょう」
緩やかに万華鏡のような刀身を回した彼女は、最後にそう言ってテレポートする。
後に残された燐光は静かに消えていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
樋島・奏弥(サポート)
一人称 俺
二人称 貴方、名前+さん
基本的に言葉尻は「〜だ」「〜だな」「〜(言い切り)」
基本的にはサポートに徹し、補助、情報収集、戦闘時の索敵や手助けを行います
その際己の怪我は気にせず、攻撃を行うこともあり。
ユーベルコードもその為に使用。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
《寡黙だが人見知りではなく、人の役に立ちたい系》
「…こっちか?…いや、あっち…
「…情報収集してきた。共有しよう
「…無理するな。
「…無事?…なら、よかった
「大丈夫っ、まだいける!
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
佐那・千之助(サポート)
「手が要るか?」
入り用ならば、なんなりと。
ダークセイヴァー出身のダンピール
困った人を放っておけない
いつも人への敬意と好意を以て接する
よく言えばお人好し。たまに騙されていることは秘密。
可愛い動物や甘いものに懐柔されやすい
戦闘は前衛、盾役向き。治療も可能。
焔(他の属性は使えない)を黒剣に宿し斬り込んだり、遠くの敵でも焔を飛ばして燃やしたり。
負傷は吸血や生命力吸収で持ち堪える
平和主義なので戦わずに済む敵なら平和的解決
かわいい敵は抱いてもふりたい
想い人がいるので色仕掛けは効かない
物語に合わせて諸々お気軽に、どうぞご自由に。
よき手助けができれば嬉しいです。
四王天・焔(サポート)
『こんにちは、焔だよー。』
妖狐の人形遣い×ガジェッティアの女の子です。
普段の口調は「無邪気(自分の名前、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、家族には「甘えん坊(自分の名前、相手の名前+ちゃん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
無邪気で感情の起伏が激しい性格の少女、
武器はからくり人形とドラゴンランスを主に使います。
植物、特に花が好きです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
アジト内に響き渡る轟音が一際増した頃、佐那・千之助(火輪・f00454)は寂れて埃の被ったワインセラーを覗いて溜息を吐いていた。
「つくづくこの世界の酒はひどいのぅ」
「……飲むなよ?」
「飲みはせんが、これは酷い」
千之助が煤の混じり入ったウォッカの瓶を掲げて言った。その後ろで、罅の入っていた壁がビシャリと音を立てて崩れる。
壁の向こうから寄り掛かっていたワイルドキャットが転がる。その意識は既に刈り取られた後で、壁の向こうで倒れ伏せている他のレイダーや獣人もまた同様だった。
樋島・奏弥(ノイズ・f23269)は小さく息を吐いて、それから千之助の傍で一休みしている少女へ目を向けた。
目が合い。奏弥の前でぴこん、と耳が跳ねた。
「焔はもうだいじょうぶだよー! 行こう、ここ出口よくわかんないけど!」
「そこよな。想像していたよりも敵が多くて離脱もかなわん」
「……少し、見て来よう」
索敵を兼ねた情報収集のつもりで奏弥が提案する。四王天・焔(妖の薔薇・f04438)はそんな様子を眺めながら鼻歌をうたっている……と、そこへ微かな地響きが伝い落ちて来る。
天井が崩れ、無数の鉄板やパイプなどの残骸がその場に殺到した。
すぐさま青い炎がそれら残骸を突き破り、黒き大剣が焔を宿して衝撃波を撃って弾き返していく。
奏弥は冷静に頭上の惨状を見ながら視線を走らせる。『黒剣』奮う千之助が応じるように頷いた。
粉塵が辺りを満たす最中に狐耳をぴんと立てた焔を千之助が抱え上げ、その場から開いた頭上の穴から上階へと飛び退る。
千之助に続いた奏弥は周囲を見渡して無言のまま警戒を強めた。
どうやら更に上の階で誰かが戦っていたらしく、その場に落ちて来た残骸はその先頭による余波だったようだ。
同時に。その誰かを追っていたワイルドキャットたちの後続、つまり増援が奏弥たちを見下ろしていたのだ。千之助と焔が臨戦態勢に入った瞬間にやはりというべきか上から無数の獣人が飛び込み、降りて来た。
「愛らしいツラをしおってからに。暫し小さくなってから出直して来い」
力強く笑い。踏み込みからカウンターに突き上げた剣先が降下してきたワイルドキャットを弾き飛ばした。
千之助の懐から飛び出した焔が、ゴシックパペットを繰り出し操りながらドラゴンランスを出す。からくり人形は巧みな動きのまま近くにいた奏弥を守り、ランスを手にした焔は敵を炎と共に薙ぎ払う。
「……この増援は敵の時間稼ぎだ。囲まれる前に離脱する……俺のことはいい、敵を殲滅する事に集中してくれ」
「はーい!」
続いて「応」と答えた千之助が舞うように剣を振り抜いた。
青い炎が揺れるかの如く、千之助の陰から躍り出た焔がワイルドキャットたちに特攻する横で奏弥がつかず離れずの距離感を保ちながら戦闘の手助けに徹する。
――地下に響き渡る戦闘音はリズミカルに、そして瞬く間に終わる。
彼等が進む先に何が待ち受けているのか……それはまだわからない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『ブレイズフレイムのガルバ』
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POW : ブレイズフレイム・デストロイヤー
レベル×1tまでの対象の【体すら吹き飛ばし、焼き尽くす紅蓮の炎】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : ブレイズフレイム・ランバージャック
【なぎ払うように】放たれる【紅蓮の炎】が命中した対象を切断する。
WIZ : ブレイズフレイム・クリムゾン
【体から噴出し、敵を焼き尽くす紅蓮の炎】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ガトウ・ガドウィック」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●現れる紅蓮
地下アジトの正体は過去の遺物。遺跡を改造したものだった。
いずれは地上の『拠点』へ侵攻する事も視野に入れた中継基地計画。それはとある都市に住まうレイダー・キングの意志に依るものだ。
しかしよりにもよって、まだ前段階の今この時を狙って猟兵達に襲撃されたのは完全に想定外。既に壊滅に近いほどの被害を与えられ、ワイルドキャットたちも残す所僅かとなってしまっていた。
「……緊急なのは言うまでもねえか。オイ、都市にいるキングに報告しておけ」
「はッ、しかしボスはどちらに?」
「決まってんだろ」
騒乱のアジトの一画で炎が渦巻いていた。
ヴォ―テックスに携わる計画の管理者でもある、ボス――ブレイズフレイムのガルバをかつて名乗っていた男のクローンだった。
オブリビオンでもある彼は獰猛な笑みを浮かべて扉へと向かう。
既に侵入者……猟兵達の動向はワイルドキャットを総動員した人海戦術によるサーチによって把握していたのだ。ボスの男は全身から炎を湧き立たせながら、ちらと隣へ視線を移す。
「……ぶっ潰す。とっとと終わらせるぜ」
「場合によっちゃ挟み撃ちにしてやればいい……この俺を舐めたツケは、払わせてやる」
まったく同じ言動口調。同じ戦闘服を纏い炎を纏う彼等は、互いを見合いさらに笑みを凶悪なものへと変じさせた。
「確かガキどもと行動を共にしてる奴等もいたな……場合によっちゃそっちを狙って諸共こんがり焼いてやれ!」
「ヒャッハハハハ! 燃えて来たぜぇッ!!」
今宵、最後の戦闘が各所で始まろうとしていた。
黒木・摩那
炎使いのサイキッカーとは厄介な相手が出てきました。
普通に周囲が焼け野原ですから、子供達を連れた状態では非常に危険な相手です。
しかも、こちらは連戦続き。先ほどは無理した後ですし。
猫相手は機動戦でしたが、今度は防御を固めてカウンターを狙います。
広い空間では炎の広がりは防げないので、通路のような狭い空間に陣取ります。
そして、UC【暗黒球雷】でエネルギー吸収球を通路に展開し、ガルバからの炎を球に吸収させていきます。
たっぶりと吸収したエネルギーは魔法剣『緋月絢爛』でお返しします。
【衝撃波】を増強して、【なぎ払い】の剣撃でガルバを斬っていきます。
●
見覚えのある姿だった。
ワイルドキャットの集団を撃退し、後続も躱して来た黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)はスマートグラスに拡張表示された画面に浮かび上がった数値に目を見開いた。
サーモレンズに切り替わった彼女の視界内で膨れ上がった白い靄。1500度を越える摂氏温度を爆発させた炎が、幾重にも連なる鉄板を破って摩那たちの方へ殺到して来ているのが見えてしまったのだ。
咄嗟に背後にいた二人の子供を抱えて数メートル後方へテレポートした彼女たちの眼前を焔の渦が通過する。
念動力をも交えた炎は地獄の炎とも称されるものだ。ユーベルコードに類するオブリビオンの能力、そしてそれらはかつて何度か目にされたものであり摩那もまた対峙した経験があった。
「――【ブレイズフレイムのガルバ】。
データベースにはサイキッカーとありましたが、厄介な男が複製されていますね」
不安気に見上げて来る子供達を摩那は無言でハンドサインを出して下がらせる。下手にルートを逆走してもワイルドキャットの残りに補足される可能性もある、なにより広い場所はガルバの炎に有利性を持たせてしまう恐れがあった。
あれは周辺環境を焼け野原にするだけの力がある。
それを知っているか否か。その違いは彼女の次行動を最善手へと移させた。
「励起。昇圧、反転――空間転移を確認」
スマートグラスにも表示される自らのサイキックUCの数値変化を確認し、僅かな間に完成させたそれらエネルギー球を摩那は自らの周囲と子供達の前に展開させる。
ゴボッ、という凄惨な音が鳴り響く。
『拠点』の地下水路を利用してアジトを設置させた上でその管理者兼最高戦力をガルバにしたのは、こうした周囲への被害を"最悪のパターン"を想定した上でのものだったなら。
摩那は、疲労と急な温度上昇に伴う代謝による汗を額から流して考える。子供達を連れている現状ではこれほど危険な相手も中々いないだろうと。それも連戦続きだ。下手に迎え撃つのもリスクが大きすぎる。
「感じるぜ……てめぇ、どっかでやり合った事があるだろ? ニューロンが足りてねぇせいか朧気だがァ、ここで再会したのは運が悪かったなぁ!!」
「この狭い中で暑苦しい事です」
冷静な切り返しに溶けた鉄板を潜って来たガルバが口の端を吊り上げて歪めた。
「炭になっちまえばもっと涼しくなるぜぇ?」
瞬間。通路のあらゆる面に向かって莫大な熱が奔る。
摩那の『暗黒球雷』が更に数を増して展開された。渦巻く炎の津波を前に幾何学模様を描く掌大の球体は互いの吸収し損ねた炎熱を後方へ漏らさぬよう吸い合い、僅かに勢い負けしてまるで押されるかのように後退しつつも、ガルバのブレイズフレイムを全て消していた。
だが周囲の温度が更に上昇している。彼女の展開した暗黒球雷の周囲で炎に当てられた鉄板やダクトから漏れる熱風は既に人を殺めるほどの熱を帯び、子供達の周囲に展開された球体が忙しなく蠢いていた。
静かに細剣を抜いた摩那の首筋を雫が伝う。
「どうしたぁ! 来いや女ァ!」
二度目の熱波を放出し、ガルバの周囲がドーム状に溶けて消え去る。それにすら耐えた摩那に怒りを発露させながらも余裕の笑みを浮かべた男は、三度目にして完全に周辺環境を顧みないエネルギー量を有した爆炎を放った。
叩きつけて来た爆炎にエネルギー吸収球が大きく後退させられた。
だがそれでも自らは下がらず、焔を噴き出しているガルバから目を逸らさない。摩那は細剣を構えた。
「では――エスコートに応じるとしましょうか」
摩那のエネルギー球が大きく膨張した。その瞬間に彼女の身が残像を残してブレる。
膨張した球体がそれまでに吸収していた莫大な熱エネルギー。魔力さえも籠めて、摩那は己の手にしている細剣の刀身へありったけの念動力を纏う。
ガルバの炎が波を引く。常時放出し続けるには大きすぎるエネルギーだ。だが、微かに息を切らしたように目を伏せた彼の眼前で駆け抜けた万華鏡が如き色彩の"波"は男の纏うエネルギーをも切り裂いて余り有る威力を以て吹き飛ばしたのだった。
「な、にィィ……ッ!?」
奔る衝撃波が炎上していた通路を吹き消す。次いで、赤く染まったガルバが砲弾の如く吹き飛んで通路突き当りの壁を破って行ったのだ。
「……ふぅ」
何とか退けましたか。そう呟いて摩那はスマートグラスの開いた拡張表示へ指を滑らせて確認する。
吸収させたエネルギーによるカウンターは成功した。
そして敵は……
(……まだ!)
ガルバが吹き飛んで行った方向から迫る、莫大な熱量を一瞬早く感知した摩那が新たな暗黒球雷を操り放つ。吸収できず炎に一瞬飲まれたが、即座に子供達の方から回した球体を動員して防いだ彼女の眼前で更に炎の波が一閃された。
通路を切り裂く炎の刃。
天井が崩壊した直後に襲う追撃。瓦礫やパイプさえ飲み込んで摩那に叩きつけて来る炎の暴力は、僅かでも触れれば人間の体をドロドロに溶かしてしまう脅威を秘めている。
摂氏二千に届こうかという爆炎は更に立て続けに叩きつけに来ている。
これは、摩那のカウンターを許さないという確固たる意志によって繰り出されている僅差攻撃だ。そしてそれを理解した時、摩那本人はこれが決着の場面であると悟った。
(恐らく計算させないため、彼自身の意図に応じて形を変えずにただ息の続く限り撃って来ている。これは……私に対する挑戦ですね)
やれるものならやってみろ。
これはガルバの挑戦状だ、子供達を守り抜いて自らを降して見せろという。一種の自棄だ。
先のカウンターで確実に致命傷を入れたのだ。本来なら動く事も出来ないはずだ、ゆえに今こうしている間も摩那の掛けているスマートグラス『ガリレオ』からは想定外のエラーが度々吐き出されていた。
「いいでしょう」
余りの激しい攻勢に子供達の方から悲鳴が上がり始めている。それを理由にするつもりはないが、悪戯に怯えさせるつもりもなかった。
礫のように炎弾が降り注いだ後に一瞬の静寂が訪れた刹那、摩那は暗黒球雷を通して自らの魔力、念動力にガルバから得たエネルギーを上乗せして躍り出た。
見透かしたようなタイミングで通路奥から薙ぎ払われる爆炎。
怨嗟の声が聴こえるかのようなその轟音を耳にしながら、摩那は自らの肌がじりじりと焼ける感覚を抱いたまま細剣を――『緋月絢爛』を一閃させた。
居合斬りと同じ動作で薙ぎ払ったその斬撃は莫大な衝撃波を纏って爆炎を、崩壊しかけた通路をも切り裂き巻き込んでガルバの方へ津波となって襲い掛かって行った。
アジトの一画に破壊の嵐が吹き荒れた後、凄まじい衝撃が地上にまで届いた。
濛々と辺りを満たす白煙。
上気した水分が延焼を食い止め、僅かに残された脱出路の残り火を消していく。
「……終わりました。行きましょう」
子供達の下へ戻った摩那は「ここは暑いでしょう」と言うと、煤の着いた頬を拭うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ジャック・ロストマン
【ダメージ有】
アドリブ歓迎
「俺の後ろに下がれ。前に出るな」
子供たちを退避、できれば頑丈そうな部屋内へ誘導
ダメージはある。だが継続戦闘だ
さて、炎使いか……火葬の手間が省けるな
サンダーショットのクイックドロウ、さらに拡散性を上げ連射する
「パンドラ、制圧射撃」
機銃形態で弾幕を張り敵に防がせ、あるいは回避する
防げる火力だと誤認させ、電力を蓄える
話しかけてくるならそれなりに返事をしよう、時間稼ぎだ
「例え地獄の炎に包まれようと、俺たちは死なない」
トドメはデッドマンズ・スパーク
両手でサンダーショットに全電力を込め、収束した一撃で炎を貫きガルバを撃つ
片手で銃をしまい、子供たちを連れ出そう
心配不要だ。さ、帰るぞ
●
爆風が鉄板や割れたガラスを吹き飛ばす。
強化樹脂で造られたサバイバルアーマーが表面を焦がし、溶かされるのを感じながら、ジャック・ロストマン(デッドマンズ・トラベラー・f24613)は銃身を切り詰めたサンダーショットを抜き撃ちする。つい数秒前まで立っていた通路が崩れ落ちる。その様を目の当たりにしながら遂に出る物が出てきたかという思いで見下ろす彼は、そのまま爪先で地を蹴り後退を続けた。
しかし軽くブーツで蹴っているだけにしか見えないにも拘らず、その速度は背後から様子を見ていた子供達の全力疾走に匹敵する速さがあった。
急なジャックの挙動に困惑を隠せずにいる子供達へ、低い声が一度投げられる。
「俺の後ろに下がれ。前に出るな」
手の中のサンダーショットを振り回して瞬く間に照準器を直したジャックが振り向きもせずにその銃口を後方へ向ける。
奔る稲光が子供達の逃げる先の通路脇にあった扉を破壊する。入れ、とジャックが指示するより先に子供達は一斉にその部屋の中へと駆け込んで行った。
ジャックの眼前で赤い炎が膨れ上がる。
正確には、背から莫大な熱量を放出して加速した一人の男がこちらへ突っ込んで来る様が視界に映っていた。
「さて、炎使いか……」
視界に映る紅蓮が大きくなっていく最中。彼は不敵に火葬の手間が省けると鼻で笑う。
噴き出す爆炎が通路を飲み込む。
ふう、と深く息を吸い込んで喉が焼けるのを感じながら。ジャックは手近な鉄板を片手で引き剥がして子供達の逃げ込んだ部屋の入口へ叩きつけた。
そしてついに数十メートルはあった距離を詰めて来たブレイズフレイムのガルバがジャックの目前に到達した瞬間、ガルバが狂気的な笑みを露わにしてジャックを爆炎で飲み込もうとする。
そこで弾ける電撃。再度の調整を施し拡散性を増したサンダーショットを連射するジャックは目元を腕で庇い、衝撃波に押され地を滑る体を踏み締めその場に縫い止めながら背負う自身の偽神兵器へと指示を飛ばす。
「パンドラ、制圧射撃」
「この期に及んで制圧だあ!? 嘗めんじゃねぇぞ、ネズミがァ!」
一瞬、ジャックの全身を爆炎が飲み込んだ。
だが僅か数瞬の後に続いた電撃と機銃入り乱れた弾幕が炎の勢いを殺し、さらに面制圧で挑んで来たジャックの攻撃にガルバは防御行動を取らざるを得なかった。
一度は膨れ上がった紅蓮の炎がガルバの下へ収束する。
照りつく炎の光を前に、ジャックが焦げ付いたロングコートを叩いて前に出る。
感情を表には出さない灰の瞳にはガルバが数歩退く姿が映っていた。質量を伴った波状攻撃には弱いと見抜いたジャックは、更なる弾幕を張りながら強く踏み込んで炎の中へ飛び込んで行く。
ガルバの声が炎の中から響く。
「なッ――んなんだ、てめえは!? 死にたがりがこの野郎!!」
例え耐熱を有した装備だとしても、それが炎の中へ飛び込んで平気でいられるような物ではないのは明白。サンダーショットとパンドラの機銃が唸りを上げ、超高温に達した各部が赤々と熱を帯び始めていた。
しかしそれでもジャックは止まらず。
眼と瞼が焼けても尚進み続ける。肌が焼け肉が炭化しようと、デッドマンである彼の肉体は朽ちずに胸部から溢れ出す電光を道標にして歩みを続けていたのだ。
「例え地獄の炎に包まれようと、俺たちは死なない」
ガルバが逃げないのは、ひとえにプライドが邪魔をしているのだろう。
分からないでもない。ジャックにも近い矜持はある、だがガルバのそれと異なるのはそれが……自らの躰を立たせるに足る力となるか、否かである。
ジャックの身が不意に前へ砲弾のように吹き飛ぶ。
背部のパンドラがミサイルを放った直後に起爆した爆風で炎の壁を破ったジャックはそれが自らの意図に依るものかどうかは考えず。熱され赤く燃えるサンダーショットを両手で握り、全身を駆け巡る全電力を銃身に注ぎ込んで引き金を引いた。
刹那に奔る莫大な閃光。
それまで視界を埋めていた紅蓮の炎を破って放たれた白光は一条の矢となって突き進み、ガルバの肉体を貫いて余り有るエネルギーを持ったままアジトの壁を射抜き破壊して見せたのだ。
数瞬の遅れを以て轟く雷鳴にも似た炸裂音に次いで。その場に暴風が吹き乱れて炎が消し飛んだ。
「……ぐ、ガッ……」
蝋燭の火を吹き消されたかのように。
ガルバは信じられない物を視るような眼でジャックを睨みつけたまま、その場に倒れ込んだ。
「……」
肉が焼けた臭い。
だが、アーマーの損傷やコートの消耗に加えて自らの片腕を代償に得た勝利は揺るがない。
何よりも。ジャックの表情には辛勝や圧勝のどちらとも読めない『無』が浮かんでいただけだった。
片腕が掴むサンダーショットを焼け爛れたホルダーに収めながら、ジャックは踵を返して子供達の下へ向かう。
焼け焦げていた瓦礫を彼は片手でどかすと、中の部屋から子供達が不安そうな視線が集まって来る。
「……っ! おじさん!? 大丈夫なのそれ……」
しかしそれでも、ジャックは変わらずに「心配不要だ」と答えて。
それからすぐに腕を振って手招きしながら続けた。
「さ、帰るぞ」
本当に、何でもない事の様に言った彼の言葉に子供達は顔を見合わせ。それからジャックの下へ駆け寄って行ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アレクシア・アークライト
お兄さん、こんにちは♪
急いでいるみたいだけど、私と少し遊んでいかない?
ここには子供達もいないから、周りを気にせずに暴れることができるわよ?
――子供達のところには行かせない
そう言っているのよ
貴方には子供を攫った理由を訊きたいところだけど、所詮は中間管理職
いえ、クローンってことは、鉄砲玉とか使い捨てのマッチ棒とか言った方が適切かしら?
どうせ大したことは知らないんでしょうから、そのまま骸の海に還ってもらって結構よ
2層の力場を情報収集用に、残りの力場を防御用に展開
力場で炎を逸らし、又は防御しつつ、敵の動きや攻撃を把握
リミッターを解除し、力場で加速して一気に接近
雷霆を直接叩き込む
UC指定:属性攻撃
●
濛々と、地下を埋め尽くさんばかりの勢いで噴き出す白煙は、今も一人の男の歩みと共に湧き出し続けている。
クローン体の一人であるガルバは崩れた壁や天井を見回しながら敵を探していた。
見つかる見込みは無さそうだ。そう自身の下した判断と共に沸々と湧き上がる怒りの感情はそのまま、全身から業火を撒き散らす形で発露してしまう。
「……クソガキ共が。ちょっと焦がすだけじゃ済まさねえ」
怨嗟を交え、ガルバはまだ破壊されていなかった施設内部に設置されている連絡用端末に向かう。
侵入者とそれに奪取された『商品』の子供達が向かった先は、地上に繋がる連絡通路だ。しかしそこに今から駆け付けても対象は遠く離れているに違いなく、ガルバはこれ以上のタイムロスを嫌った。
そこで彼は自身の能力を活かしてどうにか追い付けないかと画策した。
要は外部の拠点に助けを求められる前に取り押さえれば良いのだ。忌々しい奪還者達よりも先に、ガルバは地上へ最速で抜けられるルートを割り出そうとする。
しかし。
白煙の向こうから軽い声が弾んだ。
「お兄さん、こんにちは♪」
続く足音は強かに床を打ち、それはまるでノックのように辺りに響いていた。
ガルバの全身から噴き出していた炎が一瞬鎮まり、直後に男の拳が強く握り締められると同時に火球が宿る。
何者だとは問わない。
女の姿を捉える前から、ガルバにはその声が侵入者のものであると察知していたからだ。
「なんか急いでいるみたいだけど、私と少し遊んでいかない?
ここには子供達もいないから、周りを気にせず暴れることができるわよ?」
白煙の中。緋色の髪を僅かに掻き上げて、アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は続けた。
明確に引き止めようとする彼女の意図に気付いたガルバは一層警戒を強め、更に手の中の炎を粘度の高い物へと錬成させる。アレクシアの周囲に視線を巡らせるが、少なくとも彼女は単独でこの場にいると分かった。
付き合う必要はない。怒りはやがて鎮まり、萎み落ちるように炎が途絶えた。
そこで突如――白煙が不可視の力によって掻き消され、アレクシアがガルバの前に現れる。
「――子供達のところには行かせない。そう言っているのよ」
「ッ……!?」
一瞬の空白が命取りとなる。
息を飲むと同時にガルバとアレクシアの両者が取った行動は奇しくも同じ。体表面を自身の能力で覆う事だった。
もっとも、その性質と効果は異なるものだ。アレクシアによって感度別に張られた数枚の念動力場は情報収集や防御に回したものだが、ガルバは攻防一体の爆炎を纏い、前方に流すといったものだ。
距離を詰めた所で指一本触れられる筈は無い。だがそれを覆し得るとすれば、それは――
(このまま女ごと一帯を燃やし尽くして……いや、待て! なんだこれは!?)
不可視の壁――ガルバの眼前で炎が割れる。空気を焼く中で轟く凄まじい熱風の音が左右に開かれた時、淡く光を放ってアレクシアの姿がその場に残っていた。
その表情は涼し気で、しかし瞳に確かな火を灯している。
「貴方には子供を攫った理由を訊きたいところだけど、所詮は中間管理職……いえ、クローンってことは、鉄砲玉とか、使い捨てのマッチ棒とか言った方が適切かしら?」
ドン、という衝撃音が鳴った。
床の鉄板が大きく物理法則を無視した動きで弛んだ直後。ガルバの体躯が宙に弾かれ、アレクシアの右手が前に突き出されたのと同時に不可視の衝撃が彼を襲ったのだ。
「ぐ、ぉおお……!! てめェッ!?」
「あら、気に障った?」
吹き飛ばされたガルバが空中で反転しながらその手から業火を吹き荒れさせ、反動で自身を通路上に縫い止めるとアレクシアに歯を剥いた。
激昂するガルバを前にやはり涼し気な彼女は、しかし暑そうに手を顔の横でひらひらと振って見せる。明確な挑発、それが意味する所はガルバも察しはつく――アレクシアは強いのだ。
現れた強者を前にガルバは怒りの感情もそのままに思考を止めない。
(今のはサイコパワーってやつか……超能力。念動力? 知った事か。技量において差があろうが……この俺の敵じゃねえ!!)
能力の分析。周囲の状況把握。相手と自らの力量差。
ガルバという男が取った行動のいずれもが、この場においては恐らくベストを尽くされたものだ。念動力に長けた能力だと見当をつけた事を思えば、それが正解であるのだから相当なものだ。
瞬時にガルバが取った選択肢は『力押し』の一点に絞る事だった。
(そう来るでしょうね。あなたの力はガソリンを撒いてそこに火を点けるのと何ら変わらないんだもの)
アレクシアの視界を白煙と紅蓮が埋め尽くす。
ガルバというオブリビオン。この男の過去の交戦記録やアレクシアが現場に到着する以前に受け取っていた一部情報では、元よりブレイズフレイムなるものが主な攻撃方法だった。
ゆえに彼女は二層の力場を張り巡らせ、その網に引っ掛かった感度情報を元に自らの念動力を調整した――結果。既にアレクシアにとってガルバの炎は一部を除き無力に等しかったのである。
彼女の周辺に安否を気にするような人もいない。ガルバがたった今、振り下ろそうとしている巨大な炎の剣を防げばアレクシアに分がある。
「俺を嘗めた事……後悔させてやるぞ女ァッ!!」
「どうせ大したことは知らないんでしょうから、そのまま骸の海に還ってもらって結構よ」
手に生み出した爆炎を掴み取ったガルバが怨嗟を叫ぶ。
文字通りの炎を撒き散らして迫り来る怒気を前に、アレクシアは緋色の髪の下で赤い瞳を揺らす。一念。たったひとつの思念をエンジンキーに、彼女は自らのリミッターを解除した。
刹那。鉄板をも溶かして爆発的に加速したガルバが炎剣を振り被って突進した――その懐にアレクシアの躰が滑り込まされる。
「――――ッ!?」
数瞬の後、衝撃波がアレクシアの立っていた場所から雪崩れ込んで来たのと同時。ガルバの喉元に掌底を通して落雷が打ち込まれた。
断末魔の絶叫をも掻き消す轟雷。念動力場を介して生み出された強烈な電磁波は一瞬でガルバの全身を麻痺させ、炎の動きを許す前に眼前の肉を射ち貫いたのだ。
炭化した肉体がアレクシアの周囲に炎を撒き散らしながら通路奥へ吹っ飛んで行く。
「さて……これで追手は最後かしらね」
アレクシアは、自身の衣服に着いた灰を一度払うと息を吐いた。
大成功
🔵🔵🔵
キャロル・キャロライン
遺跡内を浄化しつつ踏査し……発見
骸の海から湧き出た塵芥がまだ残っていたのですね
貴方がいなくなれば、この地の浄化は終わります
火を操るのであれば自らを綺麗に燃やしていただきたいところですが……あまり諦めは良くなさそうですね
いえ、そもそもその薄汚い炎では燃えかすがこの世界に残ってしまいそうです
神の清浄なる炎をもって、煤も残さず滅してさしあげます
背に神翼を展開し、一息に距離を詰めましょう
敵の放つ炎はUCによって弱体化させ、神盾と神鎧、そして身を覆う神衣で防ぎます
敵が間合いに入ったなら、神剣で貫き、浄火の力を発現させます
骸の海に還る必要などありません
身体も魂も焼かれる苦しみとともにここで滅しなさい
§
地響きが連続していた地下アジトが静寂を取り戻してから暫く経った頃。既に戦闘が終わった筈の、黒煙が渦巻く地下トンネルの中を走る男がいた。
その肌は未だ科学薬品であるゼリーが所々に付着しており、粘つくそれらを無視して上からジャンパータイプの戦闘服を男は羽織っている。割れた硝子片が裸足のまま走る彼の肉を抉るが、後に続くのは血液ではなく。油に引火したように燃え上がる炎だった。
「ゼェ……ゼェ……ッ、クソ。何処も彼処も、全部ぶっ壊されてやがる……畜生が!!」
男は荒い息と共に悪態を吐いて棄てる。
【ブレイズフレイムのガルバ】は、緊急事態コードによって治療中のポッドから吐き出されたばかりのクローン体だった。
本来なら彼が目覚めるのは43通りあるチェックを終えた後だった。体内メンテナンスは不完全だったが、その実幸いにも彼の身体は問題無く稼働してくれたようだった。
数日眠りに就いていたとは思えない程の健康体。
万全にも思えた体調だったが、今のガルバの内で荒れ狂っていたのは他でもない。猟兵達による襲撃だった。
「施設内データは……破棄済だとッ!? どうなってやがんだァッ!!」
何者か……或いは彼と同個体の誰かが、地下アジトに収められていた貴重な情報の全てを削除していた。それが意味するのは自分達の勢力、レイダーの敗北だ。
焦燥感は次第に増して行く。既に施設内での戦闘は終わっている。これは彼が想像しているよりも、遥かに不味い状況だった。
敗残兵など、レイダーの世界にありはしない。
ここは市場だ。レイダー・キングの金庫だ。そしてブレイズフレイムのガルバは金庫番とも謂える。
「く、そ……っ! クソォッ!!」
何もかも失った男に居場所などありはしない、何なら治療用ポッドに自分が眠っていた記録から始末しに刺客が送り込まれてもおかしくない。オブリビオン狩りは奪還者だけの特権ではないのだから。
全身から熱気が湧き上がる。
怒りで血管がはちきれんばかりに膨らんだガルバは踵を返す。
「まだ、できることは……」
万事休したと嘆くにはまだ早いだろうと、彼が思い至ったそこで。黒煙のカーテンの向こう側で何かが動いたのが見えてしまった。
――彼の命運はそこで尽きた。
§
●
薄汚れた荒野世界では殆ど見られない白銀の輝きが瞬く。
それは一対の翼。
「骸の海から湧き出た塵芥がまだ残っていたのですね――貴方がいなくなれば、この地の浄化は終わります」
流麗な仕草で白銀の剣を抜いたキャロル・キャロライン(聖騎士・f27877)は静かに告げる。
小柄な体躯だ。しかし結び編んだ金髪が示す純粋な黄金と両の眼が示す碧とが交互に煌めき、その妖しさと神聖さはガルバの脳裏に警戒の報せを鳴り響かせた。
「――――」
言葉は無かった。
瞬時に膨れ上がった殺意と警戒心は文字通り爆発し、キャロルの眼前で燃え盛る業火と化して地下トンネルの天井を焼き焦がして見せたのだ。
無言のままガルバが眼光を鋭く走らせる。同時に、それは軌跡となる。細く指先から弾き出された炎がキャロルに向かうにつれ巨大化し、数瞬の後にはトンネルを埋め尽くさんばかりの火球が轟き殺到したのだ。
「火を操るのであれば自らを綺麗に燃やしていただきたいところですが……あまり諦めは良くなさそうですね」
対するキャロルは、迫り来る火球を前に白銀の翼を揺らすのみで落ち着いている。
「いえ、そもそもその薄汚い炎では燃えかすがこの世界に残ってしまいそうです――神の清浄なる炎をもって、煤も残さず滅してさしあげます」
爆風がトンネル内を蹂躙する。
キャロルを焼き尽くさんとしていた火球が内側から爆ぜ飛んだ瞬間、白銀の翼が純白の鱗粉を撒き散らして少女の躰を加速させた。
「……ッ!?」
ただの加速。たかが飛翔で己の炎を貫けるはずなど無いと理解しているガルバは息を飲む。
弾かれた様に後退しながら一直線に突撃して来るキャロルに向かい炎を放つ。だがそれらもまた、今度は幾何学模様に広がり展開された白亜の結界が彼女に襲い来る炎を霧散させる。
ユーベルコード。
記憶を探るガルバが気付いたそれは、キャロルの特異性を示しており。それが連発の利く代物であると察すると大きく舌打ちをした。
「畜生が! やっぱりあの連中か!? 俺様の邪魔ばかりしやがってぇッ!!」
怒髪天が如く炎がガルバの全身を覆い、紅蓮の光刃が彼の腕から伸びる。
距離を詰められるのに時間はかからない。
一瞬でガルバの眼前に躍り出たキャロルは振り被った【神剣《グラディオス》】と反対に、左に構えていた盾を横薙ぎに振るって紅蓮の刃を受け流す。次いで、足下の瓦礫を蹴り上げたキャロルが翼を羽ばたかせ。ガルバの頭上へと飛翔しながら神剣を一閃させた。
両者の間にあった空気が爆ぜる。
キャロルの【抹消】によって炎の威力を低減されたガルバは、即座にその特性を見抜き再度の光刃で迎え撃っていた。火の粉が撒き散らされ、白銀の刃に紅蓮が食い込む。だがそれはガルバの炎の密度に対し彼女の刃は今にも容易く両断しようとしている様だった。
汗など湧くはずもないのに、ガルバの背筋を冷たい何かが伝う。
全身から熱波を放ちながら距離を取ろうと動いたガルバを、キャロルは自らの神剣で熱波を斬り払い。神盾で男の顎を打ち上げながら、翼による急加速を用い鎧の肩口で吹き飛ばす。
錐揉みしながら砲弾の如く吹き飛んだガルバは、刹那に奔った銀光を目にした瞬間に全身から力任せに炎を爆発させる。半ばカウンター気味に放った苦渋の一撃だったが、それはキャロルにとってすれば足運びに僅かな逡巡を生むに充分だった。
「ぐッ……クハッ、ゼェ……! ぶっ殺してやる……!」
間一髪で追撃を逃れて距離を取ったガルバは燃え盛る自身の腕をぐるりと回して悪態を吐く。
まるで、ここからが第二ラウンドだとでも言うかのような。そんな余裕を取り戻した様子に対面のキャロルは微笑すら浮かべずに、小さく鼻で笑った。
空気が爆ぜる音。
衝撃波をも纏って飛翔したキャロルはさながら天使が如く。一条の銀矢となってガルバのもとへ急接近して来たのだ。
呼吸を整えるだけの暇を与える筈もない。そう判断したガルバは咄嗟に拳を足下の鉄板に突き刺して炎を噴出させた。迫り来るキャロルを迎え撃つため、彼の首に向け薙がれた神剣に鉄板から引き抜いた拳を打ちつける。
火花に混ざって大量の溶解した金属が赤々と燃えて飛び散る――掴んだ鉄塊を叩きつけ、続く業火の噴射を繰り出そうとした所でキャロルの身を覆う神衣が眩く閃光を放ち、それらを一蹴する。
振り手を弾かれたガルバが目を見開く。
「骸の海に還る必要などありません。
――身体も魂も、焼かれる苦しみとともにここで滅しなさい」
鋭い白銀の杭と化した神剣の一突きが、ガルバを貫いた。
キャロルは苦鳴を漏らす事すら許さない。
神剣で貫いた勢いそのままで翼を羽ばたかせた彼女は更に踏み込み、加速し、自らの正義と神の名の下に剣先に浄化の力を集中させる。
ガルバは……オブリビオンだ。これを浄化すれば、時に何らかの奇跡が彼を負のサイクルから解き放つ事もあるかもしれない。
しかし彼女はそれを赦さない。
直後に発現する、抹消の力がこの場で渦巻いていたガルバという男を消滅させる。断末魔さえも許されず、男は最期に見開かれた眼に昏い焔を灯して消えたのだ。
幾枚かの障壁を破壊してキャロルが足を止めたその頃には、彼女の剣先には塵一つ残されていなかった。
白亜の羽根が舞い散る最中、彼女は背後を振り返り満足そうに――或いは自身に言い聞かせるように。溜めていた息を吐き出した。
「これで……この地の浄化は完了ですね」
全てを終えた事を確信した彼女は暫し地下施設を歩いたのちに帰還する。
――彼女が滅するべき敵は他にもいるのだから。
大成功
🔵🔵🔵
●全てが終わり――
レイダーのアジトは猟兵の手によって完全に制圧された。
囚われていた多くの子供達もまた、既に闇の市場へと出荷されてしまった過去の者を除けば全員救出できていた。
今回の事件の発端となった拠点の奪還者達は、暫しの間この地下施設を自分達で上手く運用できないか悩む事となるが――それはまた別の仕事として、猟兵達の手が必要となるかもしれない。
決して小さくない規模のレイダー・キングの『在庫』だったアジトを落とした事で、当面彼等の拠点で人攫いが横行することも無くなるだろう。
荒野の空の下、人々はまた明日を夢見て生きる日々が続くのだった。
【ブリンガー/ノービス】Fin.