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恋色淡く想い灯る

#サクラミラージュ #幻朧戦線 #スパヰ甲冑

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#サクラミラージュ
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#幻朧戦線
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#スパヰ甲冑


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●恋色灯楼
 空が黄昏を纏い、幻朧桜も影を帯びる頃。
 横濱から遠く離れた、片田舎。小さな街並みであれど、目に見える活気は都会と相違無い。
 街灯はあれど、其処は田舎故か。間隔が大きく設置された街灯では、明かりとしては頼りないのだろう。
 道往く人の手にはカンテラが吊り下げられている。
 よくよく見れば、炎の色そのままに橙の光を灯す物と、硝子が色付いているのか鴇色を湛える物がある。
 善き縁を紡ぐ為の、一つの伝承。
 鴇色の、”恋色灯楼”と呼ばれるカンテラを手に、街はずれの神社へ練り歩き、鳥居の下で火を吹き消せば、願い叶うと言う。
 恋を、善き縁を結ぶ、小さな祭。名を、恋結ひ祭。
 新たな恋の成就を、永久の愛の祈誓を、亡き思いの供養を。
 神社へ通じる道は幾通り。秘めた想いを胸に、人々は今日も恋色灯楼を片手に暗き道を進む。
 けれど、其れ故に。昏き顔をした人の姿は目立つ。でも、誰も気付かない。疑問に思わない。
 だって、恋とは盲目だから。

●恋とはどんなものかしら
 ぱたん、と小さな手が本を閉じる。タイトルを見れば”スパイ実践~これであなたも一流スパイ~”とある。何とも胡散臭いタイトルである。
 小さなため息一つ、神宮時・蒼(終わらぬ雨・f03681)の色彩の異なる瞳が猟兵たちを真っ直ぐ射抜く。
「…報告。…サクラミラージュの、とある街に、スパイが、潜んで、いるよう、です」
 世界統一の裏に、各国の思惑がある。すなわち、他国よりも優位に立ちたいという、欲である。
 けれど、其れ等は優位な立場に居たいという、世界には害のないものである筈だったのだが。
「…懸念。…どうやら、ただの、スパイ、ではないようで、幻朧戦線に、携わる、者の、ようです」
 ―幻朧戦線。
 大正の世を終わらせる、戦乱こそが人を進化させるという思想を持った何とも危険な人たちである。
「…情報。…人数は、一人。…どうやら、小さな街の、祭りで、情報を、交換する為、落ち合う、ようです」
 其れがどのような情報であるかまでは不明であるけれど、サクラミラージュに害成す情報である事だけは確かである。
「…依頼。…皆様に、お願いしたいのは、スパイの、捕獲、です」
 ちょうど、街は恋結ひ祭の真っ最中。普段にも増して、人の往来は多い。
 こい、ゆひって、と何処からか戸惑いの声が上がる。
「…恋を、結う、と書いて、恋結い。…鴇色の、カンテラ、恋色灯楼を手に、街外れの、神社の、鳥居の、下で、想い人を浮かべながら、火を消せば、想いが成就する、とか、なんとか」
 皆様も、想う方がいるなら参加してみては、と蒼は告げた。幾人かの頬に朱が走る。
 何処にスパイが潜んでいるかは分からないけれど、祭に乗じて身を隠しているのは確かだろう。
 それに。
「…恋焦れる、表情、と言うのは、きっと、熱に、浮かされる、ものだと」
 昏い色を浮かべたスパイは、きっと顔を見ればすぐに分かるだろう、とも。

「…スパイを、見つけるのが、優先、ですが、折角の、機会、です」
 大きな戦が終わって間もない。僅かな気分転換になれば、と。
 告げた言葉は紛れもなく、心配の色が滲んでいて。けれど、其れも一瞬。
 グリモアの蝶が、ふわりと舞う。
 転送の準備を始める蒼の頬が、告げた言葉に照れたのか、僅かに朱に染まっていた。


幽灯
 幽灯(ゆうひ)と申します。
 今回は、サクラミラージュのお話をお届けします。
 マスターページの雑記部分にプレイング受付日と締め切り日を記載させていただきます。
 お手数ですが、一度マスターページをご確認くださいませ。

●一章
 街を練り歩き、神社を目指します。
 家が立ち並ぶ細い路地か、小川流れる橋か、幻想的な桜降る公園か。
 好きな道をお選びください。最終的に向かう場所は一緒です。
 スパイ発見につきましては、
「あの人なんか怪しい、きっとスパイだ!」程度で大丈夫です。

●二章、三章
 二章は、逃げるスパイを追いかける「冒険」
 三章は、裏に潜む何かとの「戦闘」になります。

 ご一緒する方は「お名前」か「ID」を記載してください。

 それでは、良き冒険となりますよう。
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第1章 日常 『灯桜浪漫譚』

POW   :    狭い裏路地へ

SPD   :    川にかかる橋へ

WIZ   :    桜咲く公園へ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●恋色灯る
 橙の灯火と鴇色の灯火が入り混じる光景は、何処か幻想的だった。
 神社に向かうにつれて、橙の灯火は少なくなる。
 此処は、都会から離れた片田舎。神社に近付くにつれ、道はどんどん暗くなる。
 ぽつぽつ灯る鴇色が標となって、神社への道を繋ぐ。

 さあ、道すがらに貴方の想いを聞かせておくれ。
ベルカ・スノードロップ
レモンさん(f05152)と共に、桜咲く公園へ

鴇色を灯すカンテラを手に並び歩きます
「綺麗な色の光ですよね」
恋の色は、やはり淡いピンク色の印象なのですね

周囲を見ても、期待や不安がないまぜになった人が見受けられます
なんとなく、このイベントにはそぐわない表情の人もいますが、おそらくスパイはあの人でしょう

この祭祀へ誘われた以上、ちゃんとしないといけない事もあります
「レモンさんは、私で良かったのですか?」
鳥居の下で聞きます

レモンさんと蛇神様“だけ”のモノにはなれません
二人きりの時は、レモンさんの事しか見ませんけれど

灯火を消す際の想いが『決意』となるか『願い』となるかは
レモンさんと蛇神様の応え次第ですね


蛇塚・レモン
ベルカさん(f10622)一緒に

恋色灯楼を手に持って参道をゆく
「そうだね、鳥居まで鴇色一色……っ!」
カップルばかりかと思いきや、周囲と違って負の空気を纏う人物がいる
「うわ、分かりやす……っ!」
スパイとしては失格だよね、とベルカさんに耳打ち

ベルカさんの問いに、あたいはクソデカ溜息をこれ見よがしにする
「……どうせ、その女癖の悪さは生涯治らないでしょ?」
「それでもあたいは、ベルカさんを選んだんだよ」
「今でも、あたいはベルカさんの1番になる野望は今も変わらないよ」
強い意志を瞳に込めて炎を吹き消す
今は無理でも、先の未来は分からない
現状維持
この先、長い戦いになりそうだ

ベルカさんの横はあたいの指定席だよっ!



 はらはらと、ひらひらと。風に吹かれて、淡い花びらが舞う。
 一年中咲き誇る桜は其の装いを変える事は無いけれど、空を見上げれば瀟洒な満月が優しい光を湛えていた。
 月の光を浴びた桜は、僅かに青みを帯びて静かにあった。
 そんな桜咲き誇る公園を目指すのはベルカ・スノードロップ(Wandering Dream Chaser・f10622)と蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)の二人。
 それぞれの手には、鴇色のカンテラがしっかりと握られていた。
 桜とは違う鴇の光を見て、ほう、とベルカが小さく感嘆の息をひとつ。
「綺麗な色の光ですよね」
 恋を湛える、可憐な色。其れは一筋の光になって、神社への道を彩っていた。
「そうだね、鳥居まで鴇色一色……っ!」
 同じ色のカンテラを持つ人々の表情はどことなく共通している。
 ―熱に浮かされた、焦れたような。恋に恋する、そんな表情。
 勿論、恋に焦れる人だけではない。叶う恋もあれば、当然破れる恋も在る。
 故に。たくさんの不安と、一筋の期待。そんな表情を浮かべる人も、多数見受けられた。
 けれど。
「うわ、分かりやす……っ!」
 恋に恋する乙女、レモン陰気な空気を纏う一人の人間が目に留まった。
 全くもって此の雰囲気にそぐわないのだから、少し笑ってしまう。
 隣を歩くベルカを見上げれば、同じ事を思ったのか、頷きが一つ返された。
 此のまま、真っ直ぐ鳥居までスパイの道筋も同じよう。
 恋色灯楼を揺らして、其の姿を見失わないように、隣に並び二人は進む。
 でも、スパイを追う以上にベルカには、為さねば鳴らぬ事がもう一つ。
 決意を胸に顔を上げれば、目の前にはしっかりと聳え立つ鳥居の姿。
 鳥居こそ赤かったが、集った人々のカンテラに照らされて、鴇色の光を帯びているように見える。
 ごくり、と喉を鳴らし、傍らを歩いていたレモンへと向き合う。
「あの。…レモンさんは、私で良かったのですか?」
 其れは、ベルカがずっと胸に秘めていた一つの疑問。
 恋も愛も、一つに絞れない、愛多き男で、本当に良かったのかと。
 其の言葉を聞いて、レモンは一瞬きょとんとするが、告げられた言葉の意味を反芻して、これ見よがしに大きく溜息を吐いた。
 吐いた溜息の大きさに、思わずベルカが一歩後ずさる。其の姿をレモンが、じとりと睨んだ。
「……どうせ、その女癖の悪さは生涯治らないでしょ?」
 ぽつりと落とされた言葉に、「ぐっ」と小さく呻く声。けれど、気にせずにレモンは続ける。
「それでもあたいは、ベルカさんを選んだんだよ」
 僅かに染まった頬、浮かぶ可憐な笑み。―ただただ、可愛らしいと。愛おしいと、ベルカの胸に熱が灯る。
 彼女は何時だって蛇神様と共に在る。
 でも、自分は…。
「私は…、レモンさんと蛇神様“だけ”のモノにはなれません」
 あ、勿論二人きりの時は、レモンさんの事だけのモノですけれど!と慌てて補足するベルカの姿が、何処か面白くて。
「今でも、あたいはベルカさんの1番になる野望は今も変わらないよ」
 にんまりと笑って、じっとレモンがベルカの瞳を覗き込んだ。左右色の違う瞳は、決意に満ち溢れていて、暗闇だというのに、何処か眩しかった。
 かちゃり、とカンテラの扉を開けて、火を吹き消す。
 今は無理でも、先の未来は分からない。
 このままかもしれないし、変わっているかもしれない。
 でも、彼の隣を譲る気は毛頭ないから。とりあえず今は現状維持で!
 同じく、ベルカもカンテラの火を吹き消す。
 カンテラを持たない方の腕に、レモンがぎゅっと抱き着く。
「ベルカさんの横はあたいの指定席だよっ!」
 いつかの未来。二人の関係がどうなっているのか。
 其れはきっと、レモンの努力次第なのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブOK

鴇色はきれいだが、持つのは何となく気恥ずかしいな。
恋と限らず善き縁結びと思えば、まぁなんとか。
多分俺の性分なんだろうな、恋は盲目とはいってもさすがに限度はあると考えてしまう。
それに…盲目になれるのはその想いに何も憂いがない時だけだと思うし…。

橋を渡るなら小川沿いを歩いていくか。
ちょいちょい周囲を見渡して、件のスパイがいないか確認して。
つくづく考えれば無粋な連中だよな。それとも奴らは奴らなりに何かの縁結びに掛けたんだろうか?
…なんか川面をじっと見てるやつがいるんだが、もしかしてあれか?

神社についたら折角だし鳥居の下でただ一人を想って火を吹き消そう。
いや「折角」というのは言い訳だな。



 ―同時刻。
 神社の方へ向かうにつれて、だんだんと鴇色が増えていく。
 一人でカンテラを持つ者も当然いるけれど、断然誰かと共にカンテラ片手に歩む者の方が多かった。
 そんな光景を眺めてか、黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は小さな居心地の悪さを感じる。
(鴇色はきれいだが、持つのは何となく気恥ずかしいな…)
 恋の部分が大きく謳われているけれど、本来は善き縁を結ぶ為のお祭り。
 と言うか、そう思わないとちょっとやってられない、かもしれない。
 恋は盲目。―目の前の恋以外、何も見えない、軽い暴走状態のようなもの。
 瑞樹の性分故か。目先の事が見えなくなる恋と言うのは、果たしてそんなに良い物なのだろうか。
(それに…盲目になれるのはその想いに何も憂いがない時だけだと思うし…)
 カンテラに鴇色を灯し、物思いに浸りながら、瑞樹は小川沿いを歩む。
 本来の目的は、この場に紛れ込んだスパイの捕縛。
 そう、今の自分には恋に浮かれている暇など無い。其れに―。
(…盲目になれるのは、その想いに何も憂いがない時だけだと思う)
 人の想いは移ろい変わる。ヤドリガミ故、永い時を過ごしてきた瑞樹にとって、憂の無かった時はきっと、それほど多くない。
 物珍しく周囲を見回す振りをして、例のスパイを探す。
 けれど。
 善の感情に浮かれる人々に紛れて、スパイは何をしたかったのか。
 縁を結ぶ何かに肖りたかったのか。其れとも、ただ人が多いから紛れられると思ったのか。
 其れはきっと、瑞樹には分からない。もしかしたらスパイだって分かっていないのかもしれない。
 ふと、川面をじっと見つめる人物を見つける。表情は昏く、恋色灯楼を持ってはいるけれど、恋に溺れている様子もない。
 けれど、川面を見つめていたのも一瞬だけで、其の足取りは神社へと向かっていく。
(あんなに分かりやすいスパイがいるのか…。…とりあえず、後を追うか)
 付かず離れず。絶妙な距離を保ちながら神社へ移動するが、件のスパイは瑞樹の尾行に一切気付く様子が無い。
 うまく紛れていると思っているのか、そのまま神社へと辿り着く。
 鳥居の下には、いくつもの恋色灯楼を持った人の姿が見える。
 一つ、また一つと、鴇色の灯火が消えていく。
 此処まで来たのも、一つの縁。
(ならば、その風習に倣って、俺も火を消そうか)
 その時、彼が誰を思って灯楼の火を消したのか。―其れは、彼だけが知る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

落浜・語
【狐扇】

狐珀と一緒に、鴇色のカンテラを片手に橋を回って神社へ。
いいんじゃないかな?似合っているよ。
俺も浴衣着てくればよかったかな?(いつもの洋装)

道行く人の会話なんかも【聞き耳】を立ててみたりしながら、怪しいのがいないか時々確認。
こんな空気の中で真逆の事を考えて動いていれば、きっと何かしら周囲から浮いてしまうだろう。
そう言ったのに気づくことができればいいけれど。

ん?ああ、もちろん。手、繋いでいこう。
神社で願うのは、これからもずっとこうして手をつないで、一緒にいられるように


吉備・狐珀
【狐扇】

鴇色のカンテラを持って橋を渡りながら神社へと
田舎道とカンテラに合うかと思わず浴衣(ステシ参照)を着てしまいましたけれど…
お仕事なのに浮かれすぎ…?

浮かれてスパイを取り逃がすわけにいきませんからね
UC【狐遣い】を使用し、黒狐のウカと白狐のウケに協力をお願いしましょう
鳥と猫の姿にそれぞれ変えてもらい上空と地上から(偵察)と(情報収集)をお願いします
道行く人たちに紛れて「戦乱こそが人の進化」と考えるような人はどんなに顔をかくしても貴方達なら不穏な気配で気付くはず
よろしくお願いしますね

ところで語さん
神社まで…その、手を繋いでもいいですか?
神社について願うのは、これからも一緒にいられますように



 街の外れを流れる小さな川。普段は澄んだ青空を写す水面は、鴇色のカンテラが放つ淡い光をそっくり写す。
 淡い光が漏れる川沿いは、何処か幻想的な雰囲気が滲み出ていて。ついつい引き込まれそうになる。
 そんな川沿いを落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)と吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)がカンテラ片手に静々と歩いていた。
 恋結ひ祭に合わせたのか、狐珀の装いも可憐な鳥の子色の浴衣だった。一歩進む度に、しゃらしゃらと頭の花飾りが涼やかな音を立てる。
 よくよく見れば、周囲を歩く人々の中にも浴衣で着飾った人の姿も在った。
 鴇色のカンテラを片手に、狐珀の隣を歩く語も狐珀の装いを見てにこりと微笑む。
「いいんじゃないかな?似合っているよ」
 其の言葉に、お仕事なのに浮かれすぎていたかと、暗い影を落としそうになっていた狐珀の心はほんのりと温かくなる。
「俺も浴衣着てくればよかったかな?」
 淡く笑う語の装いは、普段と変わらぬ緑のベストと白シャツ。互いに浴衣であったらば、彼女に憂いを与えなかっただろう、と。
 祭の特性上か、周囲は賑やかでは無かったけれど、其れでも祭に浮かれて人々の会話も小さく弾む様子。
 道往く人々の会話に聞き耳を立て、件のスパイがいないか語はゆったりと周囲を見回す。
 視界の端を、白猫がすっと横切った。
 そっと語を見上げた狐珀の視界の端に、此方も黒い鳥が空を舞ってる姿が映った。
 今は変化で姿を変えているけれど、白猫も黒鳥も、狐珀が操る眷属の狐たち。
 上空から、道往く人々から。怪しい人物がいないか偵察と情報収集をお願いしていた。
 ふわふわ、きらきら。
 恋に焦れる人々の、甘酸っぱいような、くすぐったいような。きっと、中には勇気を出して、此の祭に誘った人もいるのだろう。
 共に歩く幅は、ゆったりとしている。
 周囲を警戒しながら、此方の歩幅に合わせてくれる語の優しさに、狐珀の顔に小さく笑みが浮かぶ。
「ところで、語さん」
「ん?」
 今もほら。カンテラ片手に、互いの手を繋いだ恋人たちが前を歩いていく。
 うろうろと彷徨う狐珀の視線を、語が正しく追って。今し方通り過ぎて行った恋人たちへと視線を向けた。
 ほんのりと頬を染めながら、狐珀があいている手をそっと語へ差し出す。
「神社まで…、その、手を繋いでもいいですか?」
 其の言葉に、一瞬、きょとんとするけれど、告げられた言葉を正しく酌みとって。
「ああ、もちろん。手、繋いでいこう」
 ぎゅっと手を握る、語の手の大きな事。上背は変わらないけれど、こういう所が男の人なのだな、と狐珀は常々思う。
 繋いだ手が熱を帯びる。
 ―勿論、周囲への警戒は怠らず。けれど、今は、此のままスパイが見つからなければいいのに、とも思う。
 互いに、一度は離してしまった、離れてしまった”手”がある。
 だから。きっと、心の奥底で二人が願うのは、きっと同じ事。
 歩く道のりに、怪しい人影は見られなかった。
 ならば、もうすでに神社に向かっているか、神社にいるのだろう。
 けれど、二人の足取りはゆったりと、今この時を大事にするかのように進む。
 そうして辿り着いた神社の鳥居には、火の吹き消えたカンテラを持つ人の姿がちらほらと見えた。
 鳥居の赤に、鴇色の光が揺らめいて、鳥居自体が光っているようにも見える。
 今なら、どんな願いも叶うような気がする。
 繋いだ手が、一度離れる。
 其れが名残惜しいと思ったのは、果たしてどちらか。
(これからも一緒にいられますように)
(これからもずっとこうして手をつないで、一緒にいられるように)
 きぃ、とカンテラの扉を開けて、鳥居に誓うように火を消す。
 火を吹き消した後、自然と視線が交わる。
 きっと、躱した願いは同じだと、不思議な確信があった。
 どちらからともなく手を伸ばし、再び繋がる。
 そんな視線の端、何処か苛ついたような男の姿が映る。
 ―ああ、きっと、彼がスパイなのだろう。
 此の時が終わってしまうのが、名残惜しくて。けれど、手は離れず。
(今度は、任務関係なしに、二人で)
 語がそっと告げた言葉に、狐珀が笑みを浮かべるまで、後―。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『桜色の朧路』

POW   :    何がいようと関係ない。登り続ける。

SPD   :    何がいようと惑わされはしない。登り続ける。

WIZ   :    何がいようと振り返らない。登り続ける。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●花降る廻廊
 等間隔に並ぶ鳥居を、一人の男が駆けて行く。
(何故だ、何故バレた…)
 己はうまく擬態していた筈だと。―そう思っていたのは、当人ばかりだけれども。
 はらはら降る幻朧桜が男の肩に、頭に、石階段へと散る。
 散った花弁が、ふわりと消える。
 ―ひとつ、謂れがある。神社まで続く鳥居回廊には、振り返りたい、取り戻したい過去が見えるのだと。
 其れは桜に引き寄せられた影朧の残骸が見せた泡沫の夢なれど。
(上に、神社へ行けば、まだ)
 けれど、其れに男が気が付く事は無い。
 破壊という夢に憑りつかれた者に、振り返りたい過去は、きっとないのだから。
 男の頸に見える黒い戒めが、鈍く冷たい光を放った―。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
SPD

振り返りたいと思わせる過去か。
そりゃあただのナイフだったころだな。
人の身を得るどころか、そもそも意識自体あったとははっきりと言えない頃。
ただ主の元で振るわれるだけの日々。何も考えなくとも、感じなくてもよかった。
考えればある意味楽な日々だったな。

だけど振り返りたいと思っても取り戻したいとまでは思わない。
どんなことがあったとしても過去の積み重ねで今の自分がいるんだし。
取り戻そうと積み重ねてきたものを崩したら、きっとバランスを崩してすべてが倒れてしまう…そんな気がする。
俺という存在になった以上、感じたもの考えた事は大事な自分である証拠。



 はらり、ひらり。降り落ちた桜の花びらを踏み締め、スパイの男はひたすら石階段を駆け上がる。
 踏み締める度に巻き上がる花弁が、静かに空に消える。
 塵となった桜の香りが、瑞樹の鼻腔を僅かに掠める。
 知らない香りなのに、何処か懐かしさを感じるのは。周囲に舞う桜の幻影か、はたまた傷が癒えた影朧の残滓か。
 ―思い出す。無意識に、己が本体へと手を伸ばす。
 黒鵺・瑞樹は、ナイフのヤドリガミである。
 はっきりと覚えてはいないけれど、悪しきナニカを断ち切る為に使われていた事だけは、朧げに記憶に残っている。
 道具として使われる日々は、楽だった。ただ、使われるだけでいい。物事を考える事も、感じる事も無い。
 主へ、身を任せるだけで良かったのだから―。
 駆けた戦場は、多くはない。でも、其れで良かった。
 過去を懐かしむ事はあれど、あの日々を取り戻したいとは、思わないし、思えない。
 流れに身を任せるだけの日々も、きっと悪くはないのだろう。
 けれど、こうして人の身を得て、人として生活をして。
 様々な経験を経て、瑞樹は此処に立っている。今の自分が、ある。
 もし。
 ―もしも。もしかしたら。
 ふわりと落ちてきた淡い花弁に、そっと手を伸ばす。
 取り戻そうと手を伸ばすのは簡単だけれど、其の行為は今までの在り方を根底から崩す要因へと成り果てるのだろう。
 過去にはない、今しかない繋がりも、願いも、思いも。
 全部崩れて、倒れて。全て、無かった事になるのだろう。
 ぐしゃり、花弁を握り潰す。
(俺が、俺という存在になった以上。…これまでに感じた事や考えた事は、きっと自分である証拠だから)
 一振りのナイフだった自分が、こうして人として過ごしている事に、きっと意味はある。
 だからもう、過去なんて振り返ってらない―。
 花弁を握り潰した手を開けば、其処には何もなかった。
 ぐっと、瑞樹が前を見据える。
 目の前を走るスパイの背中は、やや遠い。けれど、追いつけない距離ではない。
 石階段を踏み締める脚に力を込め、瑞樹はスパイを追うべく大地を蹴った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
【狐扇】

周囲から浮いていたあの方がやはりスパイだったようですね
語さん追いかけましょう

石階段を登り、鳥居回廊くぐり男を追いかけ神社を目指す
見失わないようにと見上げて視界に入ってきたのは―
神社の境内でよく遊んでいた子供達…?
いつも優しく話しかけて下さったお婆さんに
あぁ、子供が生まれたと見せに来てくれたご夫婦…
どうして…

兄の魂を人形に閉じ込めて力を使い果たさなければ
守れたかもしれない命
村が滅んだ日に消えた笑顔を目の前にして呆然と立ちすくむ

泡沫の夢から引き戻してくれたのは
差し出された手の温もり
そうでした
ここで立ち止まっていてはまた繰り返すことになりますね
今を生きる人達を守る為に
行きましょう、語さん


落浜・語
【狐扇】
あれで紛れる訳ないよなぁ。うん、行こうか

狐珀と一緒に回廊を駆け抜ける
ここに猟兵以外は…狐珀?
立ちすくむ彼女に声をかけようとして、そこにいる人の中によく知った二人
よく知った、なんて言ったら失礼だ。主様と、あの人なのだから
あぁ、じゃあ。ここにいる人は、狐珀と面識がある、この世にいない人達、かな

目を閉じて一つ深呼吸して。左目を常盤に染めて
お二方、俺、愛おしい人ができました。だから、ちゃんと前に進みます
りゆうをしったから。だからぼくはもう、うらみはしませんから

ねぇ、狐珀。先へ行こう。失われる命が、増えないように
ずっと過去を引きずっていた俺が言えた義理じゃないけれど
動けないというなら、手を引くよ



 突如、弾けたように走り去るスパイの男を驚いたように狐珀が見つめるが、其れも一瞬の事。
 けれど、あれで紛れる訳がないよなあ、と語は苦い顔で笑う。そもそも、何故あれでバレないと思ったのか。疑問は尽きない。
「語さん、追いかけましょう」
 鳥居を潜り、上へ上へ駆ける男へ視線を向けながら力強く紡がれた狐珀の言葉に、語は小さく頷く。
 そうして二人、鳥居を潜る。無数に連なる鳥居回廊、周囲を彩る幻朧桜。ふと、空を見上げれば、煌めく星の数々。
 まるで、別の世界に入り込んでしまったような、そんな錯覚を起こしそうな幻想風景。
 前を駆けるスパイを見失わないようにと、上げていた視線は、突如吹き荒れた風に一瞬、鎖される。
 ぶわりと舞う桜の花びらに驚き、思わず目を閉じる。
 風が収まり、次に目を開いた時。其の瞳が写したのは―。

「……え」
 ゆっくりと狐珀が目を開くと、其処はもう、鳥居回廊ではなく。
 知っている神社の境内を、笑顔で駆ける子供たち。
―賑やかな声が、木霊して。明日は何して遊ぶ?と無邪気な笑顔が眩しかった。
 呆然と立ちすくむ琥珀を見て、淡く、優しい笑みを称える老婆の姿。
―あらあら。今日の風は少し冷たいですねぇ。心配を滲ませた労りの声が嬉しかった。
 其の腕に、小さな命を抱く、若い夫婦。
―良い子ね、坊や。きゃっきゃと笑う赤子の、輝く命の光が、愛おしかった。
(あぁ…、どうして…)
 頭一つ分高い、兄のように慕っていた彼の本体が、戦火で壊れてしまったから。
 優しく笑って、頭を撫でてくれた、そんな兄を諦めたくなくて。魂を人形に移すのに、力を使い果たさなければ。
 今も共に笑いあっていた未来が、あったかもしれない。そんな、たらればがいくつも狐珀の頭を過ぎる。
 全部、村が燃えた日に亡くしてしまった。
「…ぁ」
 ひゅ、と小さく喉が鳴る。狐珀の手が、思わず伸びて―。

「ここに猟兵以外は…狐珀?」
 共にスパイを追っていた彼女が、突如立ち止まって、驚きに目を見開いて。たまらず声を掛けようとした瞬間に、視界が花びらで覆いつくされる。
 思わず、腕で顔を覆う。次に、語の瞳が写したのは、今しがた登っていた鳥居回廊ではなく。
(…神社?)
 彼にとっては見知らぬ神社。幾多の人に囲まれる彼女の姿。
 傍へと駆け寄ろうとして、其の中に知った顔が在るのに気が付く。
 知った顔、と言うのはいささか語弊がある。そんな言葉では形容しがたい、主様と、あの人。
 瞬間、語は全てを理解した。
(あぁ、じゃあ。ここにいる人は、狐珀と面識がある、この世にいない人達、かな)
 穏やかで、優しい人たち。溢れる笑顔が、幸せだったであろう日々を連想させる。
 もう二度と、逢えない人たち。一瞬の、奇跡。
 気付けば、大切な二人の前に立っていた。高座にのぼる時よりもずっと、緊張する。
 瞳を閉じて、大きく深呼吸。真っ直ぐに、二人を見つめる其の左の瞳は、藤ではなく、深い常盤の色。
「お二方、俺、愛おしい人ができました。だから、ちゃんと前に進みます」
 あの日から、立ち止まっていた青年はゆっくりと前へ進む。
「りゆうをしったから。だからぼくはもう、うらみはしませんから」
 あの日から、ずっと恨み続けた少年はようやく赦しを得た。
 其れは、過去ではなく未来を歩むと決めた一つの決意。
 そうして―。

 伸ばされた手を、大きな手が包み込む。
 弾かれたように、狐珀が視線を向ければ、語の優しい笑顔が其処に在った。
「ねぇ、狐珀。先へ行こう。失われる命が、増えないように」
―もうきっと、俺も間違わないから。過去に囚われ続けた俺が、言えた義理じゃないけれど。
 だって。もう一人じゃない。二人なら、絶対大丈夫。
(…そうでした)
 失ってしまったものはもう戻らないけれど。忘れる事は決して出来ないけれど。
(今を生きる人たちを、護る為に)
 今の狐珀は、護る為の力がある。あの日の後悔は、決して無下には、しない。
「動けないというなら、手を引くよ」
 強く握られた手は、暖かい。
「行きましょう、語さん」
 繋いだ手を握り返し、狐珀が真っ直ぐ語を見つめ返す。
 今を、未来を護る為に、為し得る事を。

 夜明けはきっと、近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『スパヰ甲冑』

POW   :    モヲド・零零弐
【マントを翻して高速飛翔形態】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【目からのビーム】を放ち続ける。
SPD   :    影朧機関砲
レベル分の1秒で【両腕に装着された機関砲】を発射できる。
WIZ   :    スパヰ迷彩
自身と自身の装備、【搭乗している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●桜と神社と合金ロボと
 石階段を昇りきった先。ぽつりと佇む小さな神社が見えた。
 其の隣には、場に似つかわしくない、緋色の甲冑。
 追ってくる猟兵なぞ、脇目も降らず、スパイは一目散に甲冑へ駆け寄る。
『…はぁ、…これで…。…これさえあれば…!』
 乗り込むと同時、スパイの身体に、緩やかに影朧の侵食が始まる。
 けれど、そんなの一切気にする素振りは非ず。
 必要なのは情報のみ。新たな火種を起こす為の―。
 そう、持ち帰ればいいのだ。
『お前らを排除して、俺は!』
 命を賭す事も厭わず。
 互いの信念の為に、今戦いの火蓋は切って落とされた―。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
WIZ
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

情報を持ち帰るのが仕事だというのなら、なんで矛盾した行動をとるんだろ?
初めから命を賭すなんて愚策。それでは使い捨て、捨て駒と変わらん。影朧甲冑の乗り手と何が違う?

敵の動きは第六感で感知したり音で判断、攻撃は見切りで回避。
甲冑とつくからには全くの無音での駆動は難しいだろう、と思いたい。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、もしくはあえて受けて動きを止めカウンターを叩き込む。
攻撃時にはマヒを乗せ多少なりともあとの戦いが楽になるように。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。

でもあの甲冑ってどういう構造なんだろ?



 突如、咆哮を上げたスパイ―今は、スパヰ甲冑と呼ぶべきか―を、瑞樹は心底理解出来ないといった表情でぼんやりと見つめる。
 スパイとは、秘密裏に情報を持ち帰るものではなかったのか。
 確かに、任務や情報の精度によっては、命を賭す事もあるのだろう。
 ―けれど、此れは。
(初めから命を賭すなんて愚策)
 果たして、彼の者が持ち得る情報は命をかけるに相応しいのか。
 黒い刃輝く、瑞樹の本体たる黒鵺と、鈍色の刃が淡く光る、嘗ての姿を喪った太刀を構えながら。
 じわり、じわりと周囲に溶け込むように姿を消すスパヰ甲冑を睨みつける。
「アンタのそれはな、世間では使い捨てっつーんだよ。…捨て駒と変わらん」
 ほんの一瞬、浮かべたのは憐憫か同情の色か。
 空気を切る音が瞬間、刹那に響く。耳に届いた音と、己が第六感を頼りに大きく前方へ跳べば、硬い地面が拳の形を刻む。
 機械仕掛けの甲冑は、キリキリと歯車の駆動を小さく響かせる。
 其の身を影朧の呪いに蝕まれて尚、目指す物はそれほどの価値があるものなのか。
 猟兵たちだって、これまでに大きな戦いを経験してきた。瑞樹だって其の一人である。
 けれど、それは生き残る為であって、決して命を棄てる行為では無かった。
 咄嗟に胡を眼前へと翳せば、火花と共に重い衝撃が加わる。此のまま競り合いになれば、胡が折れる可能性が高く、咄嗟に打ち払う。
 小回りならば此方が優位ではあるが、重量では向こうに分がある。
 戦いは素人なのだろうか。スパヰ甲冑の動きは統一性が無く、無駄が多い。
 故に、動きが読めない部分もあった。紅い腕が薙ぎ払われ、瑞樹の身体は神社の鳥居の一つに、背面から叩き付けられる。
「いってぇ…」
 咄嗟に、背中にオーラを纏わせ衝撃を軽減したけれど。瑞樹が痛みに耐性があったとしても、痛い物は痛い。
 ―けれど、得た物もある。
 機械の駆動音を拾う為に、一つ息を吐き、耳を澄ます。
 腕を振り上げる時に、一瞬、歯車が軋む音が響く、其の時を狙って。
 相手は未だ見えないけれど、攻撃を受け、喰らって、大まかな動きは予測出来るようになっていた。
 スパヰ甲冑が腕を振り上げた瞬間、瑞樹の持つナイフが一閃煌めく。
 其の一閃は、片腕の配線を幾つか斬り落とした。
 ぱちぱちと、紫電が弾け、重苦しい音を立てて片腕が地面へと叩き付けられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蛇塚・レモン
ベルカさん(f10622)一緒に

敵前逃亡は銃殺刑……なんだっけ?
その損傷具合で立ち向かってくる胆力は見上げたものだねっ?

でも、ベルカさんの言う通り、ここでお縄についてもらうよっ!

敵は自身を透明化するユーベルコードだけど、
破損した腕の火花の音が絶えず聞こえるから方角と距離感は掴める
第六感+戦闘知識+情報収集で敵の位置を予測してベルカさんに伝達

敵の攻撃は黄金霊波動を爆発させてオーラ防御+衝撃波で吹き飛ばす!
鏡盾でも防御!

カウンターでUC発動!
激しい神楽を踊りながら霊光線の飽和火力で貫通攻撃
命中した敵は不幸が付与され、逃げたくても逃げられないよっ!

この神社の神様に代わって、あたい達が神罰を下すよっ!


ベルカ・スノードロップ
レモン(f05152)と共に

情報を持ち帰るというのであれば
排除などと思わず、一も二もなく逃亡すればいいものを
片腕まで落とされてるじゃないですか

「まぁ、逃がさないんですけどね?」

敵が透明になったとてレモンさんからの情報を元に敵を【失せ物探し】
リキッドブラスターで防犯塗料を【援護射撃】

《選択UC》によって魔弾を放つガンランスを召喚

【投擲】【スナイパー】【槍投げ】の応用で嗾けて
【誘導弾】で追尾させ
装甲を無視して砕き【串刺し】にします
(【鎧無視攻撃】【鎧砕き】)

刺さってからが、このUCの本領です
魔弾による【零距離射撃】で【属性攻撃】
内側からも、砕いてあげましょう

まぁ、神罰ってやつですよね



 切り落とされた腕の断面から、ぱちりと紫電が弾ける。
 呆然と、落ちた腕を眺めるスパヰ甲冑は、何が起こったのか理解出来ていないよう。
 そんな様子を一瞥したベルカは、唯々冷たく言い放つ。
「情報を持ち帰るというのであれば、排除などと思わず、一も二もなく逃亡すればいいものを」
 淡く浮かぶ笑みは、うっそりと憐憫の色を含んで。
 ―片腕まで落とされてるじゃないですか。
 其れはまるで、無様だと言われているようで。ひくり、とスパヰ甲冑の米神が引き攣る。
「敵前逃亡は銃殺刑……なんだっけ?」
 其の隣で、小さく首を傾げたレモンが何の事は無いように告げる。
『――は?』
 ぽつりと小さな声が漏れる。
『其れは、俺が今にも逃げ出すと。…そう、言いたいのかああぁ』
 激昂すると共に、景色に溶け込むようにスパヰ甲冑の姿が掻き消える。
 よくよく耳を澄ませば、威嚇のような荒い吐息が漏れているのが聞こえる。
「その損傷具合で立ち向かってくる胆力は見上げたものだねっ?」
 轟とレモンの身体から黄金の霊光が吹き上がる。
 スパヰ甲冑の姿は見れないけれど、小さく紫電が弾ける音は止まらない。
 いくら姿を消そうとも、此れだけ音が響いてしまえば相手の位置を気取るのは容易い。後は此れまでの戦いの知識が、研ぎ澄まされた第六感が、レモンに敵の位置を予測させる。
「ベルカさん、八時方向から気配がするよっ」
 くるりと振り返ったベルカの手には、一丁の銃が握られている。何も映らぬ虚空へと引き金を引けば、軽い発砲音と共に放たれた蛍光色の塗料がばしゃりと何かにぶつかり広範囲に展開される。
『!?!?』
 驚くスパヰ甲冑の視界が、鮮やかな蛍光ピンクへ彩られ、周囲と一体化していた其の体躯をも晒す。
「まぁ、逃がさないんですけどね?」
『く、クソォ!』
 怒りを滲ませるスパヰ甲冑の声には僅かに疲労の色が滲んでいる。
 なりふり構わず近くにある物を破壊せんと、がむしゃらに片腕を、両足を振り上げては薙ぎ払っていく。
 此方へと振り下ろされた足を、黄金の霊光を纏ったレモンが両腕で受け止める。
 同時、纏った力を一気に解放すれば、凄まじい衝撃波と也てスパヰ甲冑を吹き飛ばす。
 ガシャンと重い音が周囲へと木霊し、スパヰ甲冑は地面へと叩き付けられる。
 僅かに生じた隙を見逃す二人ではない。
 しゃらり、しゃらりと緩やかな鈴の音が辺りへと響き渡る。神秘なる銀の刃の短剣の付けられた鈴の音は、次第に激しさを増していく。
 始めはゆっくりだったレモンの神楽が、激しい舞踊へと変じて行く。其れはやがて一筋の光を生み出し、相手の肩を貫いた。
 新たにダメージは負った者の、別段大きい物ではない。急ぎ立ち上がろうとするスパヰ甲冑であったが―。
「命中した敵は不幸が付与され、逃げたくても逃げられないよっ!」
 立ち上がった先、僅かに盛り上がった石ころに足を取られ、前方へと倒れ込みそうになる。
「この神社の神様に代わって、あたい達が神罰を下すよっ!」
 刹那、甲冑の胸へと次々と弾丸が撃ち込まれる。
『ぐっ…』
 ―ぴしっ。
 赤い装甲に、一筋の線が走る。―ベルカが召喚したガンランスが、一点集中、胸部の装甲を打ち抜いたのだ。
「刺さってからが、本領です」
 身を護る甲冑は、無惨にもヒビが入り、砕けた欠片がぽろぽろと地面へと落ちた。
 尚も、ガンランスを構えながら哀れむように視線を向ける。
「神聖な場を汚したんです。神罰ってやつですよね」
 ガシャン、と胸部を護っていた装甲が地へと落ちた。
『こんな、こんな馬鹿な事があってたまるか!』
 男の慟哭が、天へと響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
【狐扇】

(自分の知っている甲冑と見た目が違うせいか少し不思議そうにまじまじと眺め)
目的はあの甲冑?だったようですね
あれが新たな火種を起こすというのなら見逃せません

UC【協心戮力】使用
ウカの宝玉で雪を降らせてもらい、月代の衝撃波をあわせて起こすのは猛吹雪
動きを鈍らせ人形を当てやすくするのが目的ですが
それだけではありません
貴方が姿を消しても、そこに存在するのなら
降る雪が貴方の熱を教えてくれる
不自然に雪が溶ける場所がスパイのいるところ

スパイの居場所を確認したら
ウケと共に結界をはり、周囲に被害が及ばないように配慮しつつ
月代の衝撃波で人形を転がし爆発を誘発

二度と後悔しないために持ち帰るのは断固阻止します


落浜・語
【狐扇】

甲冑。甲冑とは……?
いや、そこを突っ込んでる場合じゃないのはわかってるんだが、うん。甲冑とは。

まぁ、なんにせよ。とりあえずこれを破壊して、スパイを止めればいい話だもんな。
なるべく周りを荒らさない様にはしたいけれど。
UC『人形行列』を使用。なるべく火薬の量は控えめにしておいたが、さてはて。
広【範囲攻撃】かつ炎【属性攻撃】でもって甲冑の破壊を。
関節とかつなぎ目とか、もろそうな気もするしな。そう言ったところから破壊できればいいけれど。
音までは消せないなら【第六感】や【聞き耳】でもって場所を探りつつ、なるべく人形は散開させて配置。
小回り利きそうにないし下手に動いたらすぐ爆破、ってな。



 胸部の装甲は崩れ、片腕は落ちた。けれど、スパヰ甲冑の闘志は未だ衰えず。
 情報を持ち帰る事こそ、彼の悲願を達成するに繋がるのだから。
 そんな相手の想いとは別に、狐珀も語も小さく首を傾げる。
(甲冑。甲冑とは…?)
 だって、甲冑って鉄を何枚にも重ねた防具じゃ?あんな、腹部丸出しの物では―
(いや、そこを突っ込んでる場合じゃないのはわかってるんだが、うん。甲冑とは)
 語の甲冑の概念が、今、覆されそうになっている。
 世界を跨ぐと防具も其の姿を変えるのか、と狐珀も物珍しそうに眺めている。
 ―閑話休題。
「目的はあの甲冑?だったようですね」
 狐珀の言葉に、語も大きく頷く。
「まぁ、なんにせよ。とりあえずこれを破壊して、スパイを止めればいい話だもんな」
 場所は違えど、神社は、琥珀の縁の場所だから。
 既に地面にはいくつかの穴が開いてしまっている。これ以上、此の場所を荒さないようにしなければと、語は独り言ちる。
 戦の無念さも、きっと彼女は痛いほど知っているはずだから。
 どんな火種であろうとも、二人は見過ごせない。
 ボロボロと尚、装甲の破片を落としながら、スパヰ甲冑は吼える。
 先の戦闘で赤の甲冑はところどころ塗料に塗れていたけれど、そんな事は関係なく。
 最早なりふり構わずか。駆動部からはガタガタと軋む音が響くけれど、スパヰ甲冑は其の姿を見えぬよう透明に変じる。
 透明化には代償がいる。声を出す気力はとうに尽きたのか、荒い呼吸だけが場に落ちる。
 ぴょんと狐珀のもとから飛んだ黒狐ウカが手に持つ無色の宝玉を天に翳せば、空は灰に染まり深々と小さく雪が降り落ちる。
 同時に飛び出した月色の竜がくるりと身体を燻らし空気を押し出せば、小さな衝撃波が生まれ―、一体に吹雪が生まれる。
『!?』
 吹き荒ぶ雪が、スパヰ甲冑の放熱でじゅわりと溶ける。
 熱を放出し続ける甲冑の周りに、雪解けの白い靄が現れる。
 例え姿が見えなくても、存在しているのであれば、降る雪が熱を教えてくれる。
「語さん」
 そう呼びかけると、ずらりと並ぶ小型の人形が語の周囲に展開していた。
「なるべく火薬の量は控えめにしておいたが、さてはて」
 大きな爆破でなくても、あの破損具合であれば、小さな衝撃でも甲冑は崩れ落ちるであろう。
 ならば、と人形を周囲に散るよう大きく広げる。
 傍らに立つ狐珀が、被害が広がらぬように結界を展開するのが見えた。
 ―じゃあ、遠慮する必要もないだろう。
 わらわらと迫る人形を、スパヰ甲冑が振り払うが数が数なだけに、全てを振り払う事は叶わず。
 残された片腕で、人形を握り潰せば周囲に爆音が響く。
 ひとつ、ふたつ、みっつ。飛びついた人形が次々に爆破の連鎖を起こす。
 スパヰ甲冑の足元の人形は、月白の竜が放った衝撃波で同じく爆発を誘発させる。
 続く爆破の音は、まるで花火のよう。其れに亀裂音が混じる。
 ぱらぱらと、甲冑が砕け落ち、後に残ったのは満身創痍のスパイのみ。
(二度と後悔しないために持ち帰るのは断固阻止します)
 そっと、狐珀の手が、語の手袋に包まれた手に触れる。
 もう二度と失わない、大切な―。
 其れに応える様に、語の手が力強く握り返される。
 気付けば、周囲は静寂に包まれていた。スパイの脅威は此度は防げた。
 後は、彼の者を引き渡すだけ。
 けれど、今だけは此の温もりを。二人で空を見上げれば、星が祝福するかのように煌めきを放っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月03日


挿絵イラスト