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トリガーハッピーに祝福を

#カクリヨファンタズム #宿敵撃破

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#カクリヨファンタズム
#宿敵撃破


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●狂気の願い
 ある悪戯者には、相棒がいた。
 ふわりふわふわ、風船のように掴みどころのない"何か"。
 それは、誰もが認める正体不明な不気味さを余すこと無く発揮して。
 はるか昔に色んな妖怪をほぼ一方的に驚かせ、驚かぬ妖怪を狂気の海に沈める悪事を何度も働いた。
 病院送り?人間不信?狂気に発狂。
 相棒となんでもした。なんでも楽しく過ごせた。

 あれがなんだったのか。一体何という名の誰だったのか。
 相棒がする"遊び"を、悪戯者の化けガラスは好んでいた。
 しかし、カラスにもどの様な姿だったのか……置き土産に残された強い相棒の狂気に埋もれ、忘却の中に置き去りにしてしまっている。
「覚えているが……覚えていない。オレはそれが口惜しい。また月か登る、また、祭りの夜が来たのに」
 カクリヨファンタズムで大きな月があがる日。
 誰の記憶からも狂気の淵に沈められた"奇祭"が行われる。
 古い古い、奇妙な風習から生まれた古の祭り。カラスは相棒と、たった二人で開催していたが……途絶えさせてしまって何年経っただろう。
「そんな顔をしなくて大丈夫!相棒、今宵久々に祭りを行おう!」
 いつか失われた大切な"何か"からの声。
 カラスが聞き間違えるはずがない。
 例え相棒が骸魂に成り果てて、自らを呑もうとしていても。
 一緒に遊べるというなら、カラスには色鮮やかな世界にしか映らなかった。
「……このまま"時よ止まれ、お前は美しい"」

●狂気の風船祭
「滅びの言葉、なんて呪文みてえのを唱えた奴がいるんだッてよ」
 フィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)はカクリヨファンタズムの崩壊を音で聞いた、という。
 あくまで比喩表現だが、予知した内容はカタストロフに相違ない。
 一人の選択が世界の秩序を簡単に壊す。それが不安定な世界の在り方だ。
「……てめェは祭とか、好きか?」
 秋の祭り。
 骸魂に飲まれた化けガラスとオブリビオンは"古い祭"を蘇らせたいと常々願っていたそうだ。開催地は仄暗い水底を足場に存在させる広い広い沼地が如き池。
 陸地に近ければとても浅く、靴底が水辺に沈むかどうか。
 池の中央は無制限に底がなく、水底に何がいるか誰も知らない。
「祭はそうだな……灯篭流し?それに近くて…………何かしら遠い、夜空へ風船を飛ばす、そんな祭だッたらしいがね……。無事世界を救えたら考えてみてくれよ」
 崩壊を許せば何もかも無くなるので、祭に夢を見るのは後回し。
「さあ、世界そのものが揺らぎ崩壊が始まッてるんで、カタストロフを始めたオブリビオンの元へ行くにもおかしな空間を通らなければならん」
 猟兵の前に立ちふさがる壁は、不知藪(しらずやぶ)。
 遠巻きに見れば、青々茂る竹林だが……入り込めば方向感覚を狂わされる。
「普通に進もうとすれば、何度も同じ場所に戻ッてしまうんだよ。オブリビオンの狂気に同調した、イカれた竹藪だ」
 出る時は速やかに出口まで戻れるが、進ませない。これが空間の異常だ。
 竹藪を通り抜けるために、一計を案じる必要があるだろう。
「竹藪さえ抜ければ、オブリビオンがいるはずだ」
 憑依する形で存在する"何か"は、狂気に酷く満たされている。
 痛みと恐怖が好物で、誰かが訪れる気配をワクワクしながらまっているだろう。
「てめェの抱える恐怖は、格好の的になる。……恐怖に沈められる、恐怖で彩れる。オブリビオンにとッては堕としやすい存在に見えるだろうからな」
 見た目は黄色いレインコートの少女だが、祭りの準備に赤い風船を永遠膨らせている。
 ふわふわ揺れて浮かぼうとする、特殊なガスを含んだ風船。
 猟奇的な数が並ぶ。赤だけが、沢山。
「化けガラスは長く離れていた相棒と祭を開催できることを喜んでいたようだが……骸魂は倒さなければならん」
 見過ごしていれば、世界が崩壊する。
「……強く心を持て。ようやく再会できただろう二人を再び裂くことになる。だから、オブリビオンを無事に退けて、化けガラスを救えたら…………祭に参加してやッてくれ」
 祭の開催まで、奪うのは忍びない。
 宣伝する時間こそないから集まる人数は、化けガラスと猟兵だけになるが――。
「奇祭だからな。成功したら――噂話でも広げて、来年以降の開催を祈ッてくれれば」
 妖怪たちの間でも認知が広がって規模を大きく開催されるかもしれないから。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 カクリヨファンタズムからイカれた奇祭を紹介するぜ。
 その名も【風船祭(ふうせんさい)】。ふわふわ~。
 今回は、基本的に狂気まみれな雰囲気。イカれたギアを上げていこうぜ。
 ――だれもがわかれを、さみしく、しないように。

 冒険の舞台は、方向感覚を狂わせる竹藪。
 右も左もすごい立派な竹が一杯。

 ボス戦と日常の舞台は、仄暗い水底を足場に存在させる広い広い沼地が如き池。
 さっくりいえば、湿地。じめじめ。
 足が沈まない程度の水たまりばっかり。転んだら泥だらけです。

 このシナリオに出てくる妖怪は化けガラス。
 八咫烏って感じか、有翼人って感じかは、参加者さんの想像次第。
 多そうな方を採用します。
 ちなみに骸魂(ボス)との関係性は相棒。狂気に遊ぶフレンズでした。

●日常の補足――風船祭は、願いを(風船に乗せて)空に飛ばす祭です。
 それだけです。誰かといっしょに願うとか、そういう雰囲気の内容になります。
 途中から参加、大丈夫。
 色とりどりの風船を沢山準備してますが、現地で始めからふわふわしてるのはボスが死ぬほど準備していた血のように赤い色だけです。お祭りで使うのは赤以外でもいいので好きな色を持ち寄って膨らまして飛ばす系、OK。

●日常でお声掛け頂いた時だけ、フィッダが一緒に遊んだり手伝ったりします。
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第1章 冒険 『不知藪』

POW   :    ひたすら歩いて法則性を見出す。

SPD   :    竹を伐って一直線に道を切り拓く。

WIZ   :    印や痕跡を頼りに同じ場所を避けて進む。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

無明・緤
ああ、祭は好きだ
だから行くのさ
噂の不知藪、おれが破ってやろう

最初は少し迷ってみてもいいな
なんだこれ、本当に進めないぞ!
(竹藪を出たり入ったりして笑う)

…さて
古くから狂気を破るのは「科学の光」と相場が決まっている
ただの猫だと思うなよ

UC【キャットビーム】で竹や茂みを遠くまで切り開き
焦げた草土の感触と匂いを肉球と鼻で確かめながら
レーザー光の通った道をなぞるように直進することで
竹藪を通り抜けられないか試みる

おれの相棒(からくり人形)は
操縦電波が狂わされてどっか行ったら困るし
糸で繋いで、直に操って連れてくよ
ふとおれの気が狂ってバックし始めないとも限らないから
戻り路を塞ぐよう背後にぴったり付いてきてくれ



●猫と和解せよ

「相棒。少々此処にいてくれるか。なに、噂通りならすぐ戻るさ」
 不知藪で無明・緤(猫は猫でしかないのだから・f15942)の操縦電波が狂わされるのを考慮し、あえて、からくり人形を直に操る事を選んでいたが、思いついたそれは緤の戯れ。
「"出口に戻る"。そう聞いた。ならば相棒がいれば一目瞭然だろう?」
 人の気配も妖怪の気配も近くに音として感じない。
 留守番を、相棒に任せる。
 よく知るものを目印にしたほうが、"戻ってきてしまった"という理解も深まるし、なにより突然現れた地元妖怪に化かされる心配もない。
「ああ、祭は好きだとも。不思議の祭も、知らずの祭も」
 冒険心を携えて、緤の歩みは迷いなく竹藪に踏み込む。
 小柄な背丈の緤にとっては、青々茂る竹の群れはひたすら長く多く、固い壁だ。
「だから行くのさ、どこへでも。ははあ、これぞ噂の不知藪……」
 ――おれが破ってやろう。
 ゆらゆら猫の髭を揺らしながら、軽い足取りは適当に右側を選択肢。
 兎に角まっすぐ"進む"という意志を持って歩いてみると、暫くして、がさりと藪の向こう側に出た。
「……おお、相棒。すぐの再会だったな」
 たたっと、やや別の場所から不知藪へ侵入し、今度はずっと左に竹藪を抜けるまで走り続けると――やはり同じ場所に出た。
 相棒が、同じ場所で待っている。
「なんだこれ。本当に進めないぞ!」
 おかしな絡繰りだ。
 これで世界の終わりが近いというのだから、実はあまり遊んでいる時間もない。
 不思議な不思議な磁場が発生しているのを、緤はよく理解した。
 ふふふと思わず笑いが止まらなくなるくらい。
「……さて、そろそろ行こう。待たせたな」
 傀儡を操る糸を繋ぎ、今度こそ相棒と緤とで二人で行く。
「古くから狂気を破るのは"科学の光"と決まっている。――ただの猫と、思うなよ」
 ぴったりと、自身の後ろにからくり人形を従えて。
 戻り路を塞ぐように配置し、準備は万全。
「……ニァアァャー!!」
 少しの間目を伏せて、気合の一声と共に開いたが最後。
 カッ、と爆発するように。
 一瞬発生した輝かしい色が不知藪を激しく一直線に焼いた。
 そう、文字通り"焼いた"のだ。
 科学の光が緤真っ直ぐ竹も茂みも貫通して、遠くに見えるものは――湿地。
 確かにふわあと沼特有の匂いが仄かに香った。
「焦げたぶん、そのうち修復してしまうんだろうが……」
 猫目から放たれたレーザー光の通った道を、緤は行く。
 肉球に感じるものは生気を断たれたカラカラの枯れ草。
 固い筈の、半ば焼け焦げて折れた竹は半分以下に壊れて転がっている。
 緤の鼻が拾うのは、焦げ臭い匂いばかりだ。
 それはまあ、自分がやったことなので、半ば当然のことでは在るが。
 ――ヒュウゥウウウウ――――。
 かこん。
「……にゃあ!?」
 緤が物音に驚いて、相棒にぶつかる。
 事前に背後に配置していたことで、想像以上に飛び上がらずに済んだ。
「ああなんだ……これも竹じゃないか」
 音を立てたのは、高いところより落ちてきた竹。随分高いところにあったものが、"道に迷いながら"ようやく下まで落ちてきたのだろうか。
「……竹でさえ迷う……?兎に角おれは、このままこの道を進もう」
 科学の光が焼いた道を直進し続ければ、竹藪ではなくその道の上は荒れ地。
 藪の向こうへ行くことが出来る。
 緤はイカれた藪の向こうへ脱出した。

 がさがさとざわめく音がして――。
 竹藪は焦がし焼かれた場所を隠し始める。
 次来たものが、直ぐに抜け出してしまわぬように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神羅・アマミ
此度の戦場、何やら妾には因縁めいたものを感じる…!
例えこの先何が待ち受けていようとも、その歩を止めることは許されぬ!

とは言えこの竹藪、猟兵を拒むとはなかなかに厄介じゃな。
ならばUC『操演』にて召喚した蜘蛛型ドローン、オクタビアスくんの助けを借りよう!
藪を三次元的にサーチ&スキャン、トレースすればどこでループさせられているか把握するのも時間の問題であろう。

しかし本当の壁として立ちはだかるは、機械には理解も処理もできぬ領域!
上述の方法を用いれば、妾自身が備えた【野生の勘】が本能的に訴える、恐怖へと続く道もいずれ発見されよう。
本来ならば絶対に避けるべき選択を敢えて選ぶ矛盾…そこを【覚悟】で押し通す!


ルカ・ウェンズ
風船祭?……よくわからないけど、お祭りなのね。なら、わっしょい!わっしょい!祭りだ!祭りだ!風船祭~。

方向感覚を狂わせる竹藪、なら空を飛べば迷わない!……と思うわ。
なので竹藪には入り込まずに相棒の宇宙昆虫に【騎乗】して空を飛んで目的地まで進むわ。敵に襲われたら【空中戦】もできるし、これなら迷わずに進んでいけるわね。

なにか不思議な力で空を飛べなかったり、空を飛んでも迷うようなら変身しないけど変身!これでパワーアップした私の【怪力】で竹をオーラ刀で切り裂いたり、拳や蹴りで叩き折りながら一直線に道を切り拓いて進んでいくわよ。


クレア・フォースフェンサー
ふむ、アマミ殿が何かを感じ取っておるようじゃな
とすれば、無視するわけにはいかぬのう

しかし、これは随分と見事な竹藪じゃ
八幡のものであれば、わしの一太刀で刈ることもできたかもしれぬが、これはちと無理そうじゃ

件のオブリビオンは、この迷いの森の奥におりながら、誰かが訪れることを待っておるのじゃな?
それは随分と、性根が歪んでおるようじゃのう
いや、その矛盾こそがそやつの狂気を表しておるのかもしれぬの

さて、どうするかじゃが――
奥におる者は誰かが来るのを待っておるのであろう
ならば、手段は二の次。そやつに会いたいという気持ちを持つことこそが肝要なのかもしれぬな

ならば、光剣で藪を切り拓きつつ進むとするかの



●妾たちの進む先に壁など無し

「此度の戦場、何やら妾には因縁めいたものを感じる……!」
 神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)は竹藪の前でドーンと構える。彼女の背丈よりも長く長く伸びる竹がかさりと揺れた。
「ふむ……アマミ殿が何かを感じ取っておるようじゃな」
 ――とすれば、無視するわけにはいかぬのう。
 クレア・フォースフェンサー(UDCエージェント・f09175)はアマミより前に僅かに進みでる。威圧感のある竹が、微かに風に揺れた。
「しかし……これは、随分と見事な竹藪じゃ」
 ひとりでに生い茂り、すごい勢いで生え揃う。
「八幡のもの……に似た雰囲気があるのう。あれであれば、わしの一太刀で刈ることもできたかもしれぬが、これはちと無理そうじゃ」
 不知藪は、隣接するUDCアース各所でにも歴史の中に発生し見たものがあるという。伝承に通じるものだ。つまり、カクリヨファンタズムにも、それに通じる物があってもおかしくはない。人気のないこの場所にあるこれらもまた、誰からも忘れられた藪なのかも知れないが。
「例えこの先何が待ち受けていようとも、その歩を止めることは許されぬ!策は思い浮かぶが……」
「件のオブリビオンは、この迷いの森の奥におりながら、誰かが訪れることを待っておるのじゃな?」
「でも失われた"風船祭"が開かれてるって話なんでしょう?」
 すぅ、と同じ旅団の仲間の声を聞きルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)が近寄ってくる。
 わっしょいわっしょい、祭りだ!祭りだ!
 そういう雰囲気ではもしかしたら無いかも知れないが、祭なら心持ち楽しい気分を持ち込んだとしてもいいだろう。
 主催者が喜んでくれなくては困る。それがルカの主張だ。
「そうじゃなあ。招きたいわりには随分と性根が歪んでおるようじゃのう」
 ――いいや、その"矛盾こそが"そやつの狂気を表しておるのかもしれぬ。
 竹藪の前で持ち寄る会話は、"み★ちゃんねる"でするそれとルカは多少、同じようで微妙に違う気がした。
 戦場にてこんなに話す時間があっていいものか、それが違う原因だろうか。
「さて、どうするかじゃが……」
 クレアが思うに竹藪はとても性根が捻くれている。
 そういう意味では、不知藪はその性質を存分に主張していると言えるだろう。
 崩壊のときが迫り一刻を争うこの状態では、迷惑な性質ではある。
「入った者の方向感覚を狂わせる竹藪、なら話はスマートに……空を飛べば迷わない!…………と思うわ」
「此処はあえて、手段は二の次。そやつに会いたいという気持ちを持つことこそが肝要と思うのじゃが」
 ルカの主張はあえて入り込まずに空から回り込む。竹が伸びる可能性もあるが、竹は、竹だ。クレアの主張は強い気持ちをもって突き進む。妖怪絡みだ、信じて存在感を増してやれば答えは導かれるのでは。
「どちらの――では推測が合っているか、とりあえずやってみるのもよいかの。ルカ女史からどうぞじゃあ!」
 アマミの声を聞くやいなや、ルカは相棒の宇宙昆虫に騎乗し、ふわあと空へ舞い上がる。長い竹の上空を取ろうにも、竹の成長速度が恐ろしく早かった。
 ――ん。竹を躱し続ければ、目的地にまで行けそうな気はするのだけれど。
 宇宙昆虫と空の旅をしてみて理解した。
 "仕掛けなどはないのに、竹は異常な成長で進むのを妨げるのに全力だ"。
 どうしても、藪の中を通って欲しい様子。
「……どうやらこちらは本当に迂回路ね。時間があれば試してもいいけれど」
 ひらりとアマミたちの元へ舞い戻り、少しだけ乱れた衣服の主にスカートの裾をわずかに正しながら心に想う。
 ――変身。
 ルカの姿は、なにも変わった部分はない。
 握るオーラの刀身が、普段よりも長く鋭く硬質で。
 竹に触れれば竹輪のようにすぱんと音もなく切り裂いたりする。そんなパワーアップがもたらされていた。
 通ろうとする意志を邪魔するように竹が手足を存分に伸ばしてくるが、ルカは躊躇いなく蹴り折り真っ直ぐ進んでいこうとする。意志よりも強気パワー。ねじ伏せて進めば、確かに竹藪から出口まで迷わず抜けられそうだ。
「やはり進むは、直接が良いものじゃろうて」
 クレアが並びたって、振るう刃にもまた迷いはなく。
 法則性を無視して進むルカと同様に、障害を破壊しながらただ歩き突き進むこともまた、正解と読んだのだ。
「ならば、光剣で藪を切り拓きつつ進むとするかの」
「これこれ。そうしてまーーっすぐでは、最短ではないやも知れぬ」
 これまで様子を見ていたアマミ。
「猟兵を拒むのに、来訪者を拒むとはなかなかに厄介……じゃが」
 ――天網恢々疎にして漏らさず。
 ――世に蔓延るあらゆる悪事をこの妾が余さず絡め取り、尽く駆逐してくれようぞ。阻む道、偽りの道を示す藪。真実を、此処に示しすのじゃあ!
 つらつらと詠唱する言葉に、蜘蛛型ドローン、オクタビアスが召喚に応える。
「助けを借りよう、オクタビアスくん。藪を三次元的にサーチ&スキャン、トレースを!」
 ドローンの目が怪しく光りを放ち、竹藪に索敵の光を伸ばす。
『ジ……ジジ…………』
 読み込むような、声のような。オクタビアスが導く計算は、そう時間を掛けずにはじき出される。
 ある一定の方向を、ドローンは向いて上下に動いている。
「ほう。そこが因果律を狂わせるループ地点といったところかの?……答えが一つ示されれば、あとは進むのは簡単じゃ」
 アマミがクレアとルカより先に駆け出していく。
「なにか他にも分かったことが?」
 ルカの尋ねる言葉にアマミはにっかりと悪戯っ子の表情で笑って返す。
「なあに、"本能的に訴える恐怖へと続く道"。それを勘で追ってみているだけじゃよ」
「成程。避けるべき選択を、あえて推し通り"会いに行く"と。いいじゃろう、違えた道はわしらが斬って折って進めば良い」
 破壊を繰り返す三人組。
 三人寄ればなんとやら。竹藪の抵抗も虚しく、迷宮入りに誘えぬまま生者を奥へ奥へ――出口に通してしまうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『仄暗い水の底から這い寄る恐怖・ソレミ』

POW   :    みんな浮くんだ!ぶくぶく浮かぶんだよ!
【恐怖・痛み・驚き・狂気いずれか】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【レベル×5の赤い風船の束が破裂した中】から、高命中力の【対象のトラウマや潜在的恐怖を覚える存在】を飛ばす。
SPD   :    何が飛び出すのかな?その目でよく確かめてごらん!
戦闘力が増加する【対象が潜在的恐怖を抱えている生物】、飛翔力が増加する【対象が潜在的恐怖を抱えている物体】、驚かせ力が増加する【対象が潜在的恐怖を抱えている人物】のいずれかに変身する。
WIZ   :    こっちにおいで!とっても楽しいよ!
戦場全体に、【対象の過去のトラウマを無限に映し出す鏡】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は神羅・アマミです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ソレをミたら終わり

 猟兵たちが竹藪を抜けると、黄色いレインコートが赤い風船を並べていた。
「相棒今回幾つの風船を用意しようねえ!」
 その顔はよく見えない"ソレ"。世界の終わりにもずっと赤い風船を並べ続ける。
 何かが赤い風船に絡みつき、ふわふわと一緒に浮いているようだ。
 アレは一体なんだろう――。
 世界の崩壊に乗じて見える、骸魂のなり損ない。
 あれは誰にも成れないし、形を得ずに消えゆく定め。
 ただ、訪問した"誰にでも"風船越しに語りかけてくるのだ"ソレ"は。
「こっちにおいで!とっても楽しいよ!」
 などとピエロのような白塗りの顔、裂けた赤い口で誘う。
 此処が"風船祭"その会場。湿気だらけの沼地だ。
「……その目に何を映しているの?教えて教えて、ね。順番に!ね、お祭りの日こそ、遊ぼう!」
麒・嵐(サポート)
商い好きの青年妖怪
仲間に対しても敵に対しても人当たりよく初対面でも物怖じしません
日常の場合は珍しい商品を楽しんだりお喋りに興じます

いろいろな世界を見てみたいしね、どこへなりと
客から預かった大事な銭が戦いの共さ
まあ、あまり期待せずによろしくどうぞ

基本は『クリーピングコイン』による一網打尽
こいつらは嵐のためならなんだって頼みを聞いてくれる
例えばこうやって目くらましに全体へまき散らしてから――目や喉なんかの露出した急所を狙って射抜いてやるとか

相手の気が削げたらうちの特製手投げ弾『庚玉』を放り投げてやる
全員、巻き込まれちまいなよ

銭の舞、爆薬の花
その銭はどこまでだって追いかける
さ、最期に言い残すことは?



●商売人の悪夢
 黄色のレインコートを翻し、裸足で沼の水を蹴る音がぽたり。ぽたり。
 "ソレ"が発した言葉に、商人が問いかける。
「遊ぶぅ?珍しい体験を、言い値で売りつける商売か?」
 麒・嵐(東方妖怪の冒険商人・f29276)の金の目には、"ソレ"の言葉動き、一挙一投足が意味在るものであると映っていた。
 一瞬表情が無くなったかと思うと、満面の笑みに加えてニィと笑うその顔は裂けた口をもっと割いて、手を叩いて称賛を浴びせる。駄菓子を与えられて子供がおおはしゃぎで喜ぶ姿によく似ていた、とふと嵐は思う。
「成程成程!キミが"ソレ"と望むならそうかもね!さぁさぁあ此方の背後に広がりますは、仄暗い水の底があるだろう大沼!見なきゃ損だよ!」
 此方へどうぞ、と招く姿はまるで喜劇を演じる道化のよう。この様な場所に喜劇役者がいるものだろうか。見るからに怪しい"ソレ"の誘いに嵐は――。
「まずは現物を見てから。掛け引きを持ちかけるならそうだろ?"内容次第"ってね」
 物珍しさに、興じる。
 崩壊寸前のカクリヨファンタズム。
 ふよふよと揺れ動く数え切れない風船に囲われた、沼の湖面に何が見えるというのだろう。浅瀬の沼が映すのは、同じ色の底ではないのか。
「さあ何が飛び出すのかな?その目に何が、見えるかな」
 隣からワクワク心を踊らせる"ソレ"の声が掛かるがお構いなし。
 嵐は暗い水の底を覗き込むように、水面に顔を覗かせる。
「……ほお、濁りはあるけど、水自体はとても澄んでいるようだね」
 底がどれか、とはっきり見渡せる色ではなかった。
 背の低い草木が生えてる様子もなく、素直な感想を述べただけだった。
 ケラケラ笑う声を背景音楽としながら眺めていると、ゆらあと不可思議に揺れる水辺に何かが映り、何かが像を結ぼうとしている。
 "ソレ"はその瞬間を見過ごさない。
 像の輪郭を朧げに、今の姿を溶かして"写し取る"。
「恐怖の沼が何を映した?ねえなにをみたの?」
 嵐が瞬間的に、潜在的恐怖を抱えた朧げな何か。
 それが目の前に広げて見せれば、嵐がどんな返事をするか。"ソレ"の楽しみは"そこ"にあった。
「"何に見える?"」
「……姿を変える店主なのかい。だがそれは、少々、――いやとても、悪趣味だ」
 声はふよふよ浮かぶ大量の群れからした。
 "ソレ"は姿を変えて、ひとつひとつが"ソレ"だとでもいうようにぐるりぐるぐるとその場に旋回を始める。
「悪趣味!いいね、ところでコレの名を知っているの?教えて教えて!知りたいな!」
「わからずに変身してみせているのかい?これはおかしな商売人もいたものだよ。それはね、鉄銭さ」
 嵐からすれば、見慣れた代物――庚屋謹製の鉄銭。
 ただし、流通には乗せられない大量の壊れ、破損し価値のない銭だ。
 山程の蜂のように群れて飛び、歪んだ銭がいまかいまかと、傷つけるタイミングを伺うように周囲を飛び回る。
 換金レートが変わっても、壊れてしまえば銭としての価値がない。
 これまで、これほど多く破棄されたこともない――。
 まさしく"悪夢のような光景"だ。
 もしもそんな事があれば店の経営は……。
「ねえ、コレが怖いんだよね!その水面には映るんだよ"瞬間的にでも恐怖に思うものがさあ"!!ハハハハハ!!」
 キィイイン。冷静に、ひとつ深めの息を吐き出して。
 指で弾く音が一つ。
 嵐が跳ね上げた、意志ある金のコインのひとつだ。
 クリーピングコインが、ざわざわと何処からともなく集まって、対象的に歪み曲がり壊れて歪な"ソレ"の群れに対峙した。
「身に起こったら嫌ではあるけれど……金は天下で回るもの。留まるものではないのさ、廻すものだからね」
 一斉に振って積もるは金の雨。
 鈍い銀の"ソレ"は金に埋もれる定めとなる。
「銭の雨では支払い額が足りないですか?お客様御冗談を……此方が見合う代金でございましょう」
 嵐の頼みで振る金は、銀の"ソレ"の再飛翔を拒んだ。
 接近も。営業も。クリーピングコインがこぼれ落ちる音と質量で妨害される。
「怖がるどころか、強気じゃない、か……」
 "ソレ"が金の雨の中で呟いた声は、誰の耳にも届かなかったことだろう。
 曰く――対に跳ねようとする銀の金目の音が途絶えるまで。
 湖面に見た悪夢を洗い流すかのように、ジャラジャラと誰かの胸が高鳴る音は響いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベッジ・トラッシュ(サポート)
◆戦闘時
戦うのは怖い!
なのでボス戦ではだいたい逃げ回っている。
(味方の手助けになる行動や、囮になるなどの功績を得ることはあるがだいたい無意識)
「こ、ここ…怖いのではないゾ!ベッジさんは様子をうかがってイタのだ!!」

手の届かない相手にはパチンコで苦し紛れに絵の具弾を飛ばすこともある。

◆冒険時
基本的に好奇心が強く、巻き込まれ体質。

敵味方関係なく、言われたことには素直に従う。
怪しいような気がしても多少なら気にしない。
後先考えずに近づいて痛い目を見るタイプ。

◆他
口癖「ぎゃぴー?!」
お気に入りの帽子は絶対にとらない。
食べ物は目を離した隙に消えている系。
(口は存在しない)
性能に問題はないが濡れるのは嫌い。



●黒い絵の具

「ねえ?何して遊ぼうか」
 まさか自分が、"得体の知れないナニカ"に話しかけられる。
 想像するに易い応答を、考えながら、もぞもぞと顔を隠すのに相当な時間を使うベッジ・トラッシュ(深淵を覗く瞳・f18666)。
 トンガリ帽子を深く被ってはベッジの瞳は、"ソレ"を正しく認識しない。
 見えるのは、鐔から見える僅かに、どことなく血まみれの幼そうな足……。
「ひ、あ、……ぎゃぴーーー!?」
 気づいてしまった。確かにこんな沼地で、血まみれだったのだ。
 ああ見ないほうが幸福だっただろうものを、目にしてしまった。
「ああ、これね?さっきサックリと殺ったのさあ。みんな遊びたいって顔をしていたからね。嘘かホントかは内緒だけれど!」
 "ソレ"は目ざとくベッジの視線が何処へ向いているのかを悟って答える。
 いいや、ベッジは別に応えて欲しいわけではなかったのだが……。
「あ、あそびでそんなことになるわけないんだゾ!そしてオレはこ、怖いなどとは思ってないんだゾ!ベッジさんはあまりに突拍子もないものが見えたから、素直な反応をしてしまったダケなのだ!」
 早くもテンパり始めたベッジの心境を、"ソレ"はコロコロ鈴を転がすように笑って。今度は聞こえるように、道化が如き大げさな動作で手を叩いて、笑う。
「そうか、そうなんだね。じゃあ此方へおいで!とっても楽しいモノを見せてあげるよ!」
 手招くように、誘ってみるがベッジは大げさな動作で嫌と拒絶する。
 ついでに駆ける足はとても軽く、一目散に逃げ出した。
「楽しいものなら大歓迎だが、なんだかどことなく怖い気しかしナイのだ!」
「それは残念。でもねえ、残念だねぇ……」
 ずぉおお。何かがベッジの頭上を超えて、通り過ぎていく。
 恐る恐る見上げると、ぽつんと見えるのは、逆さまのトンガリ帽子。
 ベッジ自身であると、気づくのにそう時間はかからない。
 なにしろ、左右にもまた、ベッジの姿が鏡写しで反映されていたから。
「鏡……?」
 どのベッジも、深々と帽子を被り表情は伺えない。
 当然だ。本人を映すだけの姿が、鏡の本質なのだから。
 しかし――。

「本当に鏡かな?こっちこっち!声のする方へおいでよおいで!」
 触れてみて、身の丈より大分大きな鏡であることが分かり、声のするほうへ好奇心に負けて掛けていく。"ソレ"の姿は何処にも見えなかったが、言われたことを素直に聞いてみたほうが、これは得策と思ったのも確か。
 後先考えるのをやめて、たたたと駆けていくベッジが見たものは――。

 鏡の中で、ずぶ濡れになっている自分。

 鏡の中すべての自分が濡れている。
 どういうことか、わからないがとてもぞわぞわとする気分になった。
 ベッジ自身、濡れているわけがないのに、だんだんと濡れている気がして思わず服を擦る。
 もちろんカラリと乾いていて、濡れている要素はまったくない。
 でも心が落ち着かなくなる。ああ、なんだか今、濡れている気分。
 ――どうしようもなく嫌な気分だ――。
「今どんな顔してるの?帽子を上げて、顔を見せてよ。ねえねえ!」
 ぺた。ぺた。
 薄い水の上を歩く裸足の音が近づいてくる。
 血塗れの足がトンガリ帽子の鐔、視界に入り込んでくる。
「ねえ?聞いてる?」
 どんどん近づいてくる声は、覗き込もうとしてるのか?
 どんな顔で覗き込んでくる?これはどんな恐怖体験?
 あまりの恐怖であったからかベッジの全身をじわりじわりと覆う粘液があった。
 手ぎゅっと握るそれは、パチンコ。構えて、絵の具を構えて即座に放つ。
「聞いてるぜ?だからこうして、見えなかったことにす、スルんだぜ!」
 覗き込んで来た顔に、びしゃあと苦し紛れのダイレクトアタック。
 嫌な気持ちをバネに密かに強化されていた黒い絵の具は派手に、飛び散った。
「……おっと目が見えない!」
「鏡に映るオレも、みんなみんな見えなくしたら!」
 "ソレ"の気配を無視して、生命力を僅かに吸収し所構わず鏡に黒を打ち込んだ。
 するとあら不思議。
 鏡の迷路はインクに混じってどろりと溶けて、出口をぽかりと開けているではないか。"ソレ"は嘘を憑いていなかったのだ。トラウマに怯える姿を見て愉しむ為には、やはり通せんぼが、と考えていたに過ぎない。
「嫌だなって思えるものはもう見えない!……じ、じゃあオレはこれで!」
 たたたと思い出したように。
 出口から逃げていくベッジの姿は直ぐに見えなくなった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユージィーン・ダイオード(サポート)
『目標確認。これより殲滅(ターミネイト)を開始する。』
『状況終了(ゲームオーバー)通常モードに移行する。』
〇性格
自称:くそ真面目の男
鉄面皮の無表情キャラ。
本人は笑ったつもりでも周りからムスッと怒っているように畏れられる系。
子供や動物好きだけど好かれない。
推理のできない鉄面皮脳筋。

〇行動
戦闘:武装を展開し、武器の使い捨てながら【一斉発射】と【制圧射撃】の【爆撃】で殲滅する火力バカ。


鬼桐・相馬(サポート)
羅刹の地獄の獄卒×ブレイズキャリバー
口調:冷静な男性口調(語尾に「!」がつく喋り方はしません)
「冥府がお前の後ろで口を開けているぞ」
「この程度の傷、炎で補える」

冷静で感情の起伏がほぼなく、常に淡々としています。

[冥府の槍]全体を使った攻撃法で、槍の炎は負傷した場合に身体から滲む炎と同じ紺青色です。
攻撃は武器に[怪力をのせ、部位破壊・串刺し・傷口をえぐり]、その後に武器や身体から滲む冥府の炎で[焼却]します。[ヘヴィクロスボウ]による遠隔攻撃も可能です。防御は[戦闘知識と野性の勘]を駆使し、攻撃を[見切り、武器受け]します。
苦戦している味方は[かばう]。炎が補うので怪我をすることに無頓着です。



●道化vs鉄面皮

 黄色いレインコートのフードを深く被って、口が裂けるほど口角を上げる。
「……はあ、はあ。そちらのお二人さんも遊ぼうよ。ねえ、笑って笑って?」
 言葉巧みに話しかける"ソレ"は、次の標的を二人の猟兵に絞った。
「笑らわれない道化は、哀しいよ。ねえ、笑ってよ」
「目標確認。これより殲滅(ターミネイト)を開始する」
 ――……笑っては、いるんだが。
 子供らしい外見の"ソレ"がいうように、ユージィーン・ダイオード(1000万Gの鉄面皮・f28841)はお手本のような鉄面皮で目を光らせていた。
 本人が思うより笑っているつもりだったのだが、無表情の面はとにかく厚い。
「お前笑えないほど怒ってるのか。まあ、この状況……わからなくもない」
 冷静で感情の起伏のない、これまた別の鉄面皮が男の表情を指摘してくる。
 名を鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)。羅刹の男の顔にも、笑うという概念は存在しないようにしか、ユージィーンには見えなかった。
「見掛け通りではないかも知れないが、子供の言うことだ。最低限聞いてやれ」
「そちらが実行するなら従おう。そちらも相当怖い顔をしているようだが、な」
 2つの鉄面皮の語り合い。
 "ソレ"が愉快そうに左右に身体を揺らしながら聞いている。
「お話終わった?ニコニコ遊ぶ準備はできた?じゃあ――」
 手の内にふわふわぶくぶく浮かぶ風船を束ねて、"ソレ"はお祭り騒ぎを呪いと狂気に染め上げる。
「そんな怖い顔してないで、みんな浮くんだ!浮かぶんだよ!」
 殺意を色濃く目に宿し、湿った水音を足元に弾ませて"ソレ"が急接近を試みる。
 軽い水音はすぐに近づいてくるが、猟兵たちに驚きはなかった。
「よくもまあふわふわと……」
「どうする。こちらに来るようだが」
「応答(レスポンス)は単純(シンプル)だ」
 どちらが行動に移すのが早かっただろう。
 重爆撃体制へと移行するユージィーンは、接近する個体を敵として超接近を禁ずるようにその場からの射撃で黙らせる方針を取った。
 移動速度など、足を止めさせてしまえば意味はない。
 武装を冷静に、冷酷に展開開始。
 弾切れを同時に愛用武器でも戦場内に破棄する事を辞さない。装填する時間を限りなく減らし、ただ只管制圧を目標として、ユージィーンは火力をぶち撒け続ける。
 一斉射撃の雨が、"ソレ"に降り注ぐ。ぱちん、ぱちんと割れる風船の音。
 被弾するのは風船ばかり。
 破裂したら、膨らませて。壊されたら元通りの数を準備して。
 まるで妖術のように、視線の先に赤い風船は存在した。レインコートの"ソレ"は雨の中を踊るように避けながら、きゃらきゃらと笑ってみせる
「風船が怖いのかい?近づかれるのが嫌なのかい?おかしいなあ楽しいね!」
「傘も無しに雨を避けるな。笑い遊ぶのも今のうちだ」
 相馬の手には冥府の槍。
 紺青の炎が沼の水の上に、冥府の炎を展開していく。
 湿り気の在る沼地で、黒槍から溢れる冥府の色は、破滅の一途を辿るカクリヨファンタズムで輝ける色を彩る。
「上がダメなら下からも?ハハハいいね!酷いショーだよこれは!」
「見世物にされてる自覚があるなら、滑稽なことだな」
 身体から滲むにも紺青を散らす相馬は槍を握る手に、渾身の怪力を乗せて小柄な標的の腹に、大きな風穴を開けんと突撃槍の要領で刺突を試みた。
 刺さるならば相応に。刺さらなければ、ユージィーンの縦断爆撃の雨を避け損なうだけ。相馬にも時々弾丸が身に降り注いでいるが、気にした素振りはなく"ソレ"の隙を虎視眈々と狙うに務める。
「愉快滑稽大歓迎!最後は拍手と楽しかったと笑って見せて!」
 猟兵たちの感情が動かない。
 "ソレ"は狂気にも染まりそうにないと、風船の破裂音に紛れて笑い飛ばしている。
 こんな"人"もいるのか、と。狂気に陥れたなら、絶対楽しいだろうに、と。
 相馬の狙い通り、冥府の槍は腹を射抜き串刺しにして縫い止めた。
 炎に巻かれ、レインコートが燃えるような臭いが周囲に広がる。
「……燃えて撃たれて笑う子供を、笑えるやつが何処にいる」
「全くだ。狂気(クレイジー)な状況終了(ゲームオーバー)を認識する身にもなれ」
 猟兵の言葉に"ソレ"からの返答は――。
「目の前にあるじゃない。面白くて愉快で、狂気でおかしい状態が!」
 大量の火力を身に浴びて、はしゃぐようにする声に彩られていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神羅・アマミ
またしても立ちはだかるは妾を思わせるオブリビオン!
そして竹藪の次に迷い込むはミラーハウスか!

鏡に映り込む過去のトラウマとは…そう!
当然、様々な世界を渡り歩き、貴様と同じように遭遇してきた数々の写し身よ!
妾は一体何者で、何処から来て何処へ行くのか…?
猟兵として戦を重ねるほど謎と疑問は深まるばかりじゃ。

なればこそ、その歩を止めること叶わぬ!
貴様もまた躯の海へと還し、なんとしても真実へ辿り着いてみせよう!
発動せしUCは『明転』よ!
鏡に映り込む幻影など、無数の刃で刻み、破壊し尽くしてくれるわー!
敵はこの機に乗じ、写し身に紛れ込み不意打ちをかけてくると睨む。
発狂したように見せかけ、本体への一撃を狙う!


ルカ・ウェンズ
あら?ほかの世界のアマミさんだわ。くらえ【怪力】パンチ!

【恐怖・痛み・驚き・狂気いずれか】の感情を……なら理性を失えばいいと思うわ!なので開幕からユーベルコードを使い【オーラ防御】でさらに超耐久力が上がった私が逆に【恐怖を与える】ことができないか試してみるわ。

まずはオーラ刀を銃に変形させて攻撃しながら敵に近づいて、間合いを詰めたら怪力任せに仕事人の拷問具を叩き付けてやらないと。
次は怪力パンチ!怪力パンチ!ついでに【暗殺】キック!からの【グラップル】私の怪力で押さえ込み腕や足を曲がらない方向に曲げてから、オーラ刀で怪力任せにぶった切る。これを狙って戦うわよ。


クレア・フォースフェンサー
アマミ殿と同じ二本の角――
なるほど、また何かが始まっておるようじゃな

さて
何事かをおぬしに話すことでこの世界の崩壊が止まるというのであれば考えもするが――
その赤き風船を見るに、あまり良いことにはならなそうじゃのう

いや、そもそも、今回の事件の主役はおぬしじゃ
語るべきことがあるとすれば、それはおぬしの方ではないかの?
刑事に追い詰められた犯人が境遇を語りだす……それがドラマの定番であろう

まぁ、なんにせよじゃ
カラスと二人で遊んでいたのなら、おぬしが憑りついているその少女は無関係であろう
解放してもらうぞ

まずは光弓で風船の糸を射抜く
続けて光剣へと持ち替えて接近
UCの力を込めて骸魂のみを狙おうぞ

※恐怖お任せ



●"ソレ"は何かに似ていて

『ああ、ああ!面白い人がいるね!此方へおいでよ遊ぼう!』
 "ソレ"が誘う呼び声に、神羅・アマミは進み出る。
 ……が、声に反応したのは別の猟兵だ。
「あら、ほかの世界のアマミさんだわ」
 不意打ち先制攻撃、ルカ・ウェンズの怪力パンチが横から突き刺さる。
 ぐっ、とレインコート越しだろうがお構いなしに顔面に渾身の拳を叩きこみ、小柄な身体を吹っ飛ばすといとも容易く吹っ飛ぶ"ソレ"。
「そらゆくぞ、ルカさんの怪力パンチ」
「やってから言う奴があるか!」
 ぷらぷらと使った手を振るルカの顔に、悪びれた様子はない。
 差も当然のように不意打ちから失礼しただけなのだ。
「アマミ殿と同じ二本の角――……成程、また何かが始まっておるようじゃな」
 クレア・フォースフェンサーが幻視するのは、いつかの光景。
 何故か、何度か記憶に残る気がする二本の角を持つ存在。
 果たしてそれが何なのかは曖昧だ。気安く接しすぎているようなルカのあの対応も何も間違っていないような気さえしてくる。
『痛い痛い痛いねえ!?何の話かな、一体……』
 ニコニコした表情が一気に冷める。
『ああ……"ソレ"が混ざっていたんだねえ』
 気風の道化な装いが剥がれ落ち、より一層狂気的な笑顔を猟兵に向けた。
『妾の前に立とうモノがどうして"アマミ"だと思えるのじゃ?其奴こそ、真のオブリビオンやも知れぬぞ!』
「立ちはだかるは妾を思わせるオブリビオン!果たしてコレをどう見ゆる!」
 "ソレ"がアマミと似た口調で喋りだす。
 アマミも喋りだすとおかしなことに、まるで目の前存在が本当に"アマミ"のような気さえしてくる。もちろん、錯覚だ。声を似せられても服装が異なる。
「そうねぇ……理性を持っていると感情に引きずられてしまうし、いっそのこと感情を失うと良いと思うの」
 良いことを思いついた、と言いたげに相対している"ハズ"のオブリビオンに向ける意志を一つに定める。
 ルカ曰く――オブリビオン滅すべし。
「だから、特に思うところはないわ」
 意思を固め、殲滅のために動こうとする意志で拳と護りを大い上げたルカがするのは自身の首をこきりと鳴らすこと。
「オブリビオンならどっちでも対して変わらないもの」
「……いやいやいや大分違うんじゃが!?」
 ずずいと"ソレ"の前に進み出て、見下ろすルカの目に迷いはない。
 威圧的で、本当に言ったとおりに滅しそうと思えるほどで――。
『じゃ、じゃあ"ソレ"から先でも良いんじゃないかの?』
 声色が激しく上ずり始めた。ルカの目論見通り、恐れを含む様々な感情を与えられるよりも早く、逆に恐怖を与えることに成功したらしい。
「まずはあなたから。違ったらその時よ、"こちら"のアマミさんを討つだけね」
 接近すると同時にオーラ刀を銃に変形させて、加減のなく蜂の巣にしてやろうと撃ちまくる。
「何事もやることやってから考えれば完璧なのよ」
 小柄な"ソレ"が脅かしてこないようだと確信すると、突然銃から手を離して唸らせる拳。パンチ、パンチ!そして間に突然挟まる蹴りの連続で隙を生み出し仕事人の拷問具を叩きつけて動くことを封殺した。
 湿地の水面に転がして、ルカが見下ろしてくる。
 逃さないように怪力で抑え込まれ、立ち上がることすら出来ない"ソレ"。
『か、完璧すぎると笑えんし、できれば笑える事をじゃな……』
「あら。私の表情はどう見えていて?」
 "ソレ"が見上げたアマミの表情。
 とても満面の笑みだった。狂気的と言っても差し障りがないほどに。
 感情を意図的に失ったものが、正気と誰が言えただろう。
「バキバキに折るのは少々待ってもらってもよいかの?」
 此れは丁度いい、とクレアが話しかける。
「何事かを話すことでこの世界の崩壊が止まるというのであれば考えもするが――」
 ――赤い風船を見るに、あまり良いことにはならなそうじゃのう。
 ゆらゆら揺れる赤い風船に、悪意ある意志を見て取る。
 攻撃として破裂すれば良いことなどまずありえず、"ソレ"から受け取る事があれば今度は何が起こるか予想できない。
「此処までしておいて、いうのは少々悩ましい部分なんじゃがの。そもそも、今回の事件の主役はおぬしじゃろう」
 "ソレ"は訪れたモノを客として扱って……今か今かと崩壊していくカクリヨファンタズムの世界の中で、破壊と終わりをもたらそうとしていた。
 遊ぶと称して客の精神を壊そうとしていたのは間違いない。
「語るべきことがあるとすれば、それはおぬしの方ではないのかの?」
 捕らえた"ソレ"が露骨に嫌そうな顔をした。
 クレアの感情もまたルカとは別次元に動きそうに無く、言葉巧みに引き込めないと骸魂の底から悟ってしまったようだ。
「証拠はあがっておるんじゃぞ!」
 ばしゃあ、と水面の水を足で跳ね上げて無言の時間を邪魔するクレア。
 ルカに抑えられて"ソレ"には語る以外の道が選べなくなっていた。
『……もう一度、カラスと遊ぶ機会が出来た事は真実素直に喜ぶべきことじゃよ?しかし、妾が来たことで世界が終わろうとしておるというのじゃ。これでは元々の祭にしたところで、願いなど何処にも届かぬじゃろう。故に故に!人の心を派手に狂気に落として世界の終わりに手向け代わりに添えて殺ろうと思っただけなのじゃ』
 重要なのは、"ソレ"の目的は祭の先。殺す事に趣を置いていた。
 世界の崩壊など、元々気にしていなかったのだ。
 狂気に彩られた世界ほど、この魂にとって望む世界に近づいていたのだろう。
 カラスの純粋な狂気的期待、その想いとは関係なく――。
「ほう。その様な思惑でこのようなことが……まあ、なんにせよじゃ。カラスと二人で遊んでいたのなら、おぬしが憑りついているその少女は無関係であろう。開放してもらうぞ」
 語る言葉を聞いて判断した今するべきと思った表情が"ソレ"をみた。
 背筋が凍りつくほどの、クレア渾身の笑みである。要望通りに笑う猟兵たちの笑みがこんなに、意味深なものになると"ソレ"は全く想像していなかった。
「あれ。そういえば……あっちのアマミさんは?」
「トイレ休憩でも挟んでおるのではないかの?」
 囚われているが、世間話を挟みだした猟兵たちは気にしないだろう。
 "ソレ"はルカの拘束に逆らうように立ち上がる。
 ――肩あたりからごきりと外れたような音がするが気にするものか――――。

●一方その頃
 アマミは"ソレ"がルカに動きを封じられた辺りから、摩訶不思議な迷宮に閉じ込められていた。動けないことを利用して、密かに作り出した空間に強引に引きずり込んだとでもいうのだろうか。
 周囲を見渡して、見えるものは何故か鏡。
「むう……いいところじゃったのに水をさしおって…………」
 時折、耳を澄まさなくても聞こえるこぽこぽと水が動くような音。
 この迷宮は何処にあり、どこへ引きずり込まれたものだというのだろう。
「ええいそういう水音も求めておらん!竹藪の次に迷いこむはミラーハウス!趣向は凝っておるがこんな世界の終わりでやることかの……?」
 マジマジと鏡を覗き込んで見ると、合わせ鏡に映る"アマミ"がこちらを――。
 見ていない。誰だ此れは。
 あまり似た外見ではない、背丈背格好様々な幻影。
 いいや、いくつかは見覚えはあった。
 先程もちらりと目視したモノにもあった。鏡の中に写り込んだ像は、皆一様にアマミと同じ場所に二本の角があり、夢幻と姿を消したものだ。
 いたかも知れないしいなかったかも知れない残像。
「追いかけてくるかの?仕方ないのう、道案内せい」
 鏡に映る"ソレ"らはただアマミの動きを、影のようになぞるだけだった。
 とにかく不気味な光景だ。
 上下右左、それぞれの奥に映り込む合わせ鏡の向こう側。
 何処に映るものも同じ存在がない。
 鏡面世界に此れほど幅広く分散した写し身の影。
 アマミが渡り歩いた数だけ増えた過去の歴史(トラウマ)だ。
「妾は一体何者で、何処から来て何処へいくのか……謎は深まるばかりじゃの。こんなにあるとか妾希望と夢と悪夢の権化じゃったか?」
 へらへらと陽気に笑ってごまかすが、鏡の向こうの"ソレ"ら皆一斉に笑い出す。
「お主ら全員が平和に笑っていられるのも今のうちじゃ。むしろ陽気に笑えるのは今しか叶わぬ!」
 鏡に向かって言い放ち、迷宮の外側もしくは内部の音が聞こえるだろう創作主に対して告げる。
「貴様もまた骸の海へと帰還し、なんとしても真実にたどり着いてみせようぞ!」
 発動するのはアマミの刃を展開し、鮮やかに姿形を亡き者へと変えていく舞踊。
 鏡に恐れなく切りかかり、映り込む幻影を刻み、刻み、時に勢いだけで張り倒し、割れ砕けるまで迷路の壁を直線上に破壊しながら突き進む。
 迷路だというなら、出口なんぞ破壊の果に作れば良い。
『真実にたどり着いてどうするというのかの……滑稽な姿を目にするだけかもしれんぞ』
「たどり着いた後に考えれば良いことじゃな、それは!」

●そして時はうごきだす
「…………そ ん な わ け あるかー!」
 がしゃああんと派手に鏡を砕きながら、上下逆転した仄暗い水の底から飛び出してきたアマミ。迷宮は、沼の中にあったようだがそんな事はお構いなし。
 クレアとルカの話の終わり辺りから聞こえていたから、そんな事を言いながら飛び出してきたようである。
 発狂したように見せかけて"ソレ"目掛けて無数の刃を展開した武器を手に、ひと睨み。"ソレ"が何かを言う前に、機敏な動きで破壊の一撃を突き立てた。
 レインコートを突き抜けて、刺さる手応え。
『なんじゃ……しぶといの』
「お主に言われとうないわー!!」
 致命的な穴を胸に穿たれた"ソレ"。
「ああ、じゃあもう手加減とかも無しでいいわね」
 クレアが光弓で今すぐ精神攻撃に転用されかねないモノを狙い撃ち、射抜く。
 遠くの風船がばぁん。ばぁんと、よくある大きな音が響き渡った、……のだが。
「……ん…………?」
「どうかしたのかの?」
「……?なんじゃあれは」
 今更のことをクレアは気がついて、瞬間的にわけもわからない恐怖を覚えた。
 ふわふわ浮かぶモノの名称が認識できなくなり、得体のしれないものに思えたのだ。"ソレ"が用意したぶん、赤いふわふわは沼地には点在していた。
 なにこれ(驚き)、こわい(恐怖)。
『なにがどうして"ありえない"?それは驚きか、恐怖かの……?そうこなくては!』
 ボロボロの身体で感情を与える事に成功し、"ソレ"は耳まで裂けた口で笑う。
 その場にあった赤い風船の束が、笑いに合わせ自動的に破裂する。
 怖いと思えてしまったものが近場で破裂する。音に驚き、破裂風船の束に驚く。
 クレアの動きがピタリと止まり、潜在的恐怖が加速する。
 曰く――硬直して、恐怖に捕らわれる。
『怖く思えるのに名前がわからぬのかの?ハハハハハ!!』
「笑ってる所悪いけれど、失礼するわよ」
 ばきり。ルカは言うが早いか、足を曲がらない方向に怪力で曲げて、オーラ刀で怪力任せにぶった切り拘束を解く。
 肩が外れ、足が折られ。
 破壊の力が直撃しては身動きなどもうこの魂は満足にできない。
『ハハハ、ハハ……鬼じゃな、お主』
「妾の方が鬼じゃ、たわけ」
「……失礼。何故風船に恐怖したものかのう。不覚とはまさにこの事」
 正気を取り戻したクレアが光剣へと素早く持ち替えて、"ソレ"の悪あがきを目にした。ほとんど動けない身体で、まだ遊ぼうとするのだ。風船へと手をのばす手が、その証拠だ。
「楽しい遊びもどきは此れでおわり。さあ、骸魂は戻るべき場所へ帰る時間じゃよ」
 足元に転がる小柄な身体に、光剣を突き立てる。
 オブリビオンの魂だけを砕き、彷徨える魂に帰る道を示すのだ。
『まだ……帰りたくは…………』
「しぶといのう。しがみついて生き様を晒すのは生者の仕事じゃと知るがよいわ!」
 飲み込んだカラスの妖怪から魂が離れるのすら拒もうとする悪霊を、アマミの武器が関係性を見事な一刀で絶つ。
 滅びを喚ぶような不気味な音も。
 狂気に落とし込もうとする、"ソレ"の面影は。
 足元に転がる黒い黒い羽毛を目にした時点で、――消え去っていた。

 留め置かれた骸魂は――。
 身体を失って、煙のように蒸発して消え去ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『奇祭を蘇らせろ!』

POW   :    祭りの由来と伝統を忠実に再現する

SPD   :    祭りに由来した商品を開発する

WIZ   :    斬新な発想で新しい要素を祭りに加える

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●月夜の風船祭(ふうせんさい)

 短い呻き声が、ひとつ。
「オレ、は……」
 黒い羽をばさりと広げ、立ち上がるカラスの妖怪。
 猟兵が負わせた怪我の数々は、一つもありはしなかった。骸魂が支配した妖怪の身体に、本来在るべき姿を重ねて存在していた以上……あれらを身に受けて行ったのは紛れもなくカラスにとっての相棒、その存在。
「相棒は、準備を済ませていたはずだが……こんなに人間に囲まれて。まさか妖怪だけでは飽き足らず、人間相手に酷い悪さでもしたのか?」
 身を払うように自身の羽を撫で、狂気的に赤い風船を見て尋ねる。
「……そうか。では相棒は、オレの身体を使って一人で遊び倒して、もう行ってしまったんだな?」
 ため息を、長く落としてカラスは首を振った。
「いや……いい。見ればわかるよ、人間が相棒の暴走を食い止めたんだろう。月の出ている夜は狂気が加速するようだったから……」
 寂しげにそう言って、残された風船を手に取る。
 まだ膨らませてないものも、赤い赤いふわふわも。
「相棒の祭はきっと、悪趣味一直線だったんだろ?オレには、想像できなくもない。だが……」
 本来の此処で行っていた筈の奇祭はそのようなものではなかった、とカラスの妖怪は語る。
 曰く――。


『風船に"想い"を書くか。膨らます時に心で願って風船の内側に閉じ込めるか』
 そのどちらかを行った風船を、ただ、空へ流すだけの祭なのだという。
 想いを書くのは、風船から伸びる紐に紙を結ぶのでもいい。
 直接、油性のペンで書き込むのでも良い。
 想いの内容も、千差万別。何を想ってもいい。
 他人に打ち明ける必要はないのだから。

 この沼地は、特殊なガスが一定周期の、月夜にのみ発生する。
 おかしなことに、折り紙でも、風船でもソレ以外のものでも。
 "この場所で膨らませたものは、空へ舞い上がる性質を帯びる"。
 この世界に漂う何処かの誰かの過去の思い出、または追憶が、願いや想いを流す広い広い空へと吸い込むのだ。


「叶えたいいつかの夢でも、打ち明けられない弱音でも。トラウマの懺悔でも。幽世に漂う霊魂への弔い……用途はなんでもいい」
 猟兵たちにはそのようなものに興味はないか。カラスはそう言いながら、赤い風船を手放さす見つめてどこか郷愁を幻視かのようだった。
「オレ一人でも正しい祭を開催しよう。久々の客人を、歓迎する――いくつでも、好きな数願い、そして空へ流すといい」
徳川・家光(サポート)
 基本的に、必要性が無い限りあまり目立たないようにしています。でも頼られると嫌と言えず、人前に出ることにめちゃくちゃなれているので、必要になればそこそこの「コミュ力」技能でそつなく対応します。
 土木系の力仕事は「羅刹大伽藍」、スピード勝負なら騎乗技能+名馬「火産霊丸」を召喚し、活用します。

 異世界の文化が好きで、自分なりに色々調べており詳しいのですが、ときどき基本的な知識が抜けていたりします。

 嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!



●ふわふわ紙風船

 妖怪が、沼地の数の欠けた風船をひとつひとつ添え直し。
 猟兵に祭に参加するのに、必要なものはないかと訪ねて、手元へ示す。
「風船でもよくて……折り紙やそれ以外でもいい、と。ふむ、成程です」
 徳川・家光がカラスから選び受け取ったものは、何十何百という分厚く大量の折り紙だ。鋼鉄製の篭手でがっしり握り込み、沼地の何処に乾いた空間があるかをと探している様子。
「願いと言われると思い浮かぶだけで沢山ですが、此処は嫁ポイントを稼ごうかと……」
 白揃えに泥汚れを作らないよう肩に乗せ直し、沼地の草に括られて空へ飛び出せない風船の上で何かを折り始めた。
 なにを、と問うのは野暮というもの。
 沢山の風船より、家光にはそちらのほうが縁があっただけのことだ。
 作り上げられるものは、紙風船。
 ふうと僅かに空気を入れ込むと、紙はふわりと空へと流されていく。
「これでひとつ。ふふふ、皆ぶん作ろうと思うと一体どれくらい時間がかかるやら……」
 そういいながらも、家光の顔は満足げだ。
 幸せを、幸福を。一人ひとりひっそりと願いながら折り上げるのだから、もし叶うならばそれはそれ。
 留守の間に寂しい思いをさせている可能性を思えば、苦なことは何一つなかった。
 同じ形、別々の色。
 色の種類はさほど多くないがひとつひとつ願いたい顔を思い浮かべて折り続ける。

 ……家光の意図に目ざとく気がついた老中たちは城から暗躍を始めていた。
 折り紙を折り、空へと流し続ける祭に参加する家光の様子は……実は、嫁たち全てが知っている。
 嫁鏡は大奥側から密かに作動させてあり、懐に忍ばせた映像デバイスは暗い暗い衣服の色を映し、起動していた。
 実際のカクリヨでの映像を見れずとも、デバイスの向こう側で嫁たちが家光が何か"自分たちのために"していると想像するだけで、穏やかな空気に包まれていることだろう。
 声を出しては家光に気づかれてしまう――故に、ヒソヒソ話も極力控えめに。

「……よし、これで結構な数を作り上げました!皆に見せてあげられれば、もっとやる気がでるのですが」
 嫁鏡を覗き込みこれが既にライブ中継されていたのだと気がついた家光がどのような反応をするものか。
 それは、絆結ばれし者にしかわからぬことだ。
 想像するに容易い老中たちの大きなため息。
 嫁たちの家光への謁見の順番を巡る声の掛け合い。
 人気の少なく沼地に、黄色い声が響き渡ることになるのだが――。
 老中たちは家光にピシャリと言うだろう。
『上様におかれましては、突然色ボケなさいませんよう』
「……してませんよ!?」
 嘘偽りないことを証明すべく、映像デバイスは空へと向けられる。
 明かりが少なく星々が煌めくカクリヨの夜空に、幾つもの小さなか紙風船がふよふよと浮かんでいく。
 今もまた、またひとつ。
「皆の事を思ってやっていただけです!まだまだ足りないですから、応援してくださいね!」
 家光の言葉で大奥から、声が多くの声が届き始める。
 目標数達成まで大分遠いが、家光ならやり通すだろう。
 なにしろ――嫁と老中に完全に見守られる形になってしまったのだから。
 嫁の数を間違えてはならない。
 今幾つめであるかを数え落としてもいけない。ハラハラする大奥の平和を掛けた家光のリアルタイムサバイバルが、此処に開幕する――!

成功 🔵​🔵​🔴​

クレア・フォースフェンサー
おぬし達妖怪から見れば瞬きのようなものかもしれぬが、これでも人としてはそれなりに長く生きたでな。
その中で幾度となく剣を振るい、守れた命もあれば、守れなかった命もある。
当然に、屠った命も幾多とある。
そして、猟兵となった今でもその業は断ち切れぬ。

うむ、たまにはそれらを一つ一つ想い出すのも良いかもしれぬな。

風船はたくさんあるのじゃろう?
せっかくじゃ。
遠目からでも見えるように、全てを膨らませ終えてから、一斉に空へと飛ばしてやろう。

ひょっとすると、かつてわしが出会った者の中に、この世界へと迷い込んでいる者もいるやもしれぬ。
これらの風船がその者達の目に止まるようなことがあったとしたら、嬉しいことじゃな。



●黄色いレインコートの化けガラス少女

「ふむ……おぬし達妖怪怪から見れば瞬きのようなものかもしれぬが、これでも人としてはそれなりに長く生きたでな」
 クレア・フォースフェンサーは思わず顔を触る。
 願い。夢。懺悔、弱音。
 どれでもいい。なんでもいいと口にするのは簡単だ。
 では思い浮かぶものは――。
「その中で幾度となく剣を振るい、そしてまた、守れた命もあれば、守れなかった命もある」
「ほう。闘い守り、勇む者なのか。この地にはあまり縁のないものだが……」
「――だが、当然に、合わせて屠った命も幾多とある」
 僅かに拳を握る手に籠もる熱。
 ――そして、猟兵になった今でも、その業は断ち切れぬ。
「故に思うことは……等と、言うべき場面ではなかろう。うむ、たまにはそれらを一つ一つ想い出すのも良いかもしれぬな?」
 妖怪、化けガラスはその言葉に羽毛を揺する。
 人間から忘れられ、どんどん見えなくなっていった存在であるカクリヨの妖怪にとって姿が見えている者は貴重だ。
 猟兵がたとえ、カラスの相棒を知らぬ間に還した存在だとしても。
 存在するだけで世界自体の崩壊を齎すものであった魂を引き剥がし、世界の崩壊と止めた猟兵は、カクリヨ世界全ての窮地を救った者に、変わりはない。
 人間がこれまた忘却の海に沈んでいた小さな奇祭に参加を示すのだ、これに喜ばない妖怪はカラスが認識する中に存在しなかった。
「未だ膨らませておらぬ風船はたくさんあるのじゃろう?せっかくじゃ。わしにも貰えるかの?」
 膨らませていない、黄色や白を含めて幾つかの風船を差し出され、クレアは渡された分を受け取った。
 一つ一つ、ちょうど良い大きさになるまで膨らませて。
 赤以外の彩りの、祭に添える。手を離せば飛んでいってしまうので、空気が逃げないよう紐で括って、足で踏んだ。
「それにしても……相棒がしたことのほぼ全てにオレの意識のしらない事であったがな。ひとつだけ、聞こえていた…………しかしよくもまあ、妖怪の性別を当てられるもんだな。長く生きるとどうでもよくなるが、オレは確かに女だ」
 小柄な化けガラスが、わさわさと羽毛の間に仕舞い込んでいた自分の用の"黄色いレインコート"を羽織る。
 よく見てみれば、この化けガラスもまた裸足だった。僅かに青黒い光沢の黒い羽毛とクチバシ。"ソレ"のようにも見えなくもない、似た姿であるとクレアは感じた。
「不気味、不吉と言われても……こうしなくてはオレが盛り上がれん。相棒以上の悪さは働かけないから…………あまり気にするな」
 そうして、すっぽりとフードを被って、鳥類独特のクチバシでもにやりと笑うさまが見て取れた。
「おぬしにとっては……いや、それも思いの形じゃろう」
 渡された風船、全てを膨らまし終えて。
 色とりどりの風船を、一斉に手放す。
 ふわ、ふわとどれもが一気に飛び立って赤以外の色が、大きな月と暗い暗い夜空の中に飛び込むようにどんどん小さく霞んでいく。
「――ひょっとすると、かつてわしが出会った者の中に、この世界へと迷い込んでいる者もいるやもしれぬ」
「ほう。そんなに希少な体験をしたことがあるのか」
「これらの風船がその者達の目に止まるようなことがあったとしたら、嬉しいことじゃな」
 飛んでいく風船に掛ける願い。
 もしも"迷い込んだ者"がいたならば。
 誰かと誰か、"此処にいる"と示す何かを見つけて"再び逢える"道標となる事もあるだろう。
「こんなにカラフルなんだ。誰かの目には留まるだろうよ」
カラスは相棒の大量に残していった赤い風船を束で手放し、クレアと一緒に見送った。誰かに風船越しに、語りかけられている。
妖怪の中には、この祭の存在を、そうして認識するものも存在するだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神羅・アマミ
妾の故郷、サムライエンパイアにも灯篭流しというよく似た祭りがあった。
その時だけご先祖様が現世へとお帰りになり、そしてまた灯籠に乗って黄泉へと戻っていくという言い伝えじゃった。

ならば妾が念ずるものとは…そうじゃな、此度の戦のみならず、オブリビオンの脅威に晒され散っていった無垢なる人々が、せめて安らかに成仏できるよう祈ろう。
彼ら自身が躯の海に呑み込まれ、オブリビオンとなって新たな脅威とならぬためにも。

そこには、盾キャラたる妾が力至らぬ故に守ることができなかった者たちも含まれよう。
自身の弱さから来る悔恨や恐怖を否定はせぬ。
しかし、なればこそそれらは胸に秘め、しっかと刻み!
新たな戦場へと歩を進めよう!



●新たな戦場へ

 夜空を見上げ、妙に大きなカクリヨの月を見て。
 神羅・アマミには思い浮かぶ別の光景があった。
「妾の故郷、サムライエンパイアにも灯篭流しというよく似た祭りがあった」
「……とうろうながし?」
「そうじゃ。その時だけ、ご先祖様が現世へとお帰りになり、そしてまた灯籠に乗って黄泉へと戻っていくという言い伝えじゃった」
 飛ばす風船を、流す灯籠置き換えて見立ててみればこれはそのような催しだろう。
 静かに何らかを祈るもの。
 想いを別の場所の誰か、または何かに渡すようなものだ。
 どことなくアマミには奇祭というほど縁遠いものではなく、馴染みがあるように思えたものだから、不思議なことである。
 カクリヨはUDCアースの影のように隣接している。
 いつか何処か……過去の歴史や言い伝えが混ざり混ざって無規則に混在した結果、飛ばすものは近代寄りなのにどことなく古い奇祭へと変じたのだろう。
「灯籠は、空に浮かぶか?」
「どうじゃろうのう……。ああでも、妾が耳に挟んだ似た祭に、ランタンを飛ばすものはあったはずじゃ。同様の意味合いを持つ祭でな、これもまた見事なものであるといったかのう」
 話しながら、カラスがそれとなくアマミにも風船を手渡す。 アマミは拒むこと無く受け取って、赤い赤い立派な風船をほんのすこしだけ、撫でる。
「そうか。此処に馴染みがないだけなのだな。知れただけ、オレはこの出会いを幸運に思おう。……なあ、なにを願う?」
「ならば、妾が念ずるものとは……そうじゃなあ」
 風船がゆらゆら揺れるのを見ながら、紐を指に搦めてもて遊ぶ。
「此度の戦のみならず、オブリビオンの脅威に晒され散っていった無垢なる人々が、せめて安らかに成仏できるよう祈ろう」
「……意外だ。見ず知らずのために、祈るのか」
「失敬な。超今しがた、脅威に晒されたものが目の前におるんじゃが?」
 カラスは言葉を失った。少し気まずく思う部分もあるので、羽毛を揺すり居づらそうな雰囲気を出し始める。
「冗談にはならぬが安心せい。妾は彼ら自身が躯の海に呑み込まれ、オブリビオンとなって新たな脅威とならぬためにも……祈るだけじゃとも」
 風船の束から手を離し、浮かんでいく風船を見ながら、アマミは飾られていただけの風船にも手をのばす。
 どうせ祭りの終わりには全て、空へ飛ばす……はずだ。
 では願いの流れ、祈りの流れを盛大にすることに問題はないだろう。
 化けガラスからも静止の声が掛からないので、結び目を解いては浮かぶがる赤い風船が沢山空を彩っていく。
「勿論、そこには、盾キャラたる妾が力至らぬ故に守ることができなかった者たちも含まれよう」
 戦いの最中、起こることは誰にも予想出来ない。
 ――故に、自身の弱さから来る悔恨や恐怖を否定はせぬ。
「しかし、なればこそ!!」
 晴れやかに明るい表情で、アマミは夜空を見上げていた。
 カラスは少なくとも、そう認識した。見た目に相違ないキラキラとした決意のある姿だと。
「それらは胸に秘め、しっかと刻み!祈り、そして口にする!」
 飾り付けられた最後の風船束を、カラスと一緒に空へと放した。
 束がバラバラと解けて、広い夜空に風船が散らばっていく。
「祈り立ち止まった数だけ、また新たな戦場へと歩を進めよう!」


 これは、そのように正しい願いを乗せて空へ流す風船祭。
 主催の化けガラスは、人間たちの祈り願う行動を、微笑ましく見ていた。
 狂気に遊んできた時間はもう終わり。
 祭りの日を境に、カラス主催の祭りから発生した沢山の風船と紙風船が目撃した妖怪たちの手によって回収されて。
 祈りの籠もったそれを、次の祭りの日にまた別の誰かに向けて、またはただ空へと飛ばすことになるだろう。


 この祭りは――元々、知らぬ誰かと誰かを繋ぐ、そんな奇祭だったのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月01日
宿敵 『仄暗い水の底から這い寄る恐怖・ソレミ』 を撃破!


挿絵イラスト