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雲は王笏の旗を手折って

#グリードオーシャン #七大海嘯 #彩雲丸 #グロウ・ブルー(S12W19) #宿敵撃破 #輝縁

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#七大海嘯
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#グロウ・ブルー(S12W19)
#宿敵撃破
#輝縁


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 グロウ・ブルーという名を持つ島へと向かった鉄甲船『彩雲丸』の前に、コンキスタドールの艦隊が姿を現した。
「教えてあげる。ここから先は『七大海嘯』の縄張り……」
 掲げる海賊旗の柄は『王笏』。
 その甲板に並ぶのは、子供の姿をしたコンキスタドール達。
「そして、あたしたちの親殺しの場よ」
 血にまみれた黒髪の子供『琵蕾・喪輝』は、悲哀の中でにたりと笑っていた。

 グリードオーシャンには、七大海嘯と呼ばれる強大なコンキスタドールが存在する。
 最近判明したその情報には、その七大海嘯の縄張りでもコンキスタドールの支配に苦しむ人々がいる、という予知が付随していた。
「そこで、そんな島の1つ、グロウ・ブルーへと向かってほしい」
 集まった猟兵達へ、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は話し出す。
 アックス&ウィザーズから落ちてきたと思われるその島は、中央に洞窟が張り巡らされた冒険の島だったのだが。
 七大海嘯の1人、王笏の旗印を持つ者の配下によって支配されてしまったらしい。
「既にグロウ・ブルーへ向かって彩雲丸は舵を切っている。そこに皆を送り出すよ」
 何度か猟兵達を転送させたことのある、馴染みの鉄甲船の名を口にして、夏梅は、だからまずは海上戦だ、と続けた。
 こちらを迎え撃つように、島から4隻の大型木造船が出て来るらしい。
 もちろんそこにはコンキスタドールの群れが乗り込んでいる。
「彩雲丸を壊されちまったら、戦い続けるのも難しくなるだろうからねぇ。
 船を守りながら、もしくは、相手の船を何とかしながらの戦いになるだろうね」
 そうして敵の艦隊を撃破し、島へと上陸したならば、この島を支配するコンキスタドールが居る場所へと向かうことになるのだが。
「島民の1人……男の子のようだね。
 その子が港近くで海戦の様子を伺っていて、上陸すれば接触してくれそうだ。
 それでコンキスタドール居場所などの情報が得られるだろうよ」
 予知では他の島民の姿は見えなかったと夏梅は語る。
 閉じ込められているのか、その子以外はもう誰もいないのか。
 それは分からないけれども。
「圧政の島を、救い出してやっとくれ」
 まだ間に合うはずだと信じて、夏梅は猟兵達を彩雲丸へと送り出した。

「ああ、今度の実験も失敗です。またコンキスタドールになってしまうとは」
 青い長髪の男はどこか芝居がかったような大仰な仕草で天を仰いだ。
「私の望む手駒として充分な者どころか、覚醒者自体がここまで生み出せないとは。
 実験の方向性を考える必要があるかもしれませんねえ」
 黒手袋に覆われた手で額を覆い、もう片方の手を無駄に上に伸ばして。
 嘆きの仕草を見せる男は、コンキスタドール『ギメイ』。
 七大海嘯の1人から、王笏の海賊旗と共にこのグロウ・ブルーを与えられた者だった。
 だが、ギメイにとって島は、統治するものでも支配するものでもなく。
 1つの実験場でしかなかったから。
 島に船が近づいていることも、それを迎撃すべく大型木造船が出港したことも知らず。
 いや、実験以外の全てに興味を持たないゆえに気付かず。
 大きくかぶりを振ったギメイは、両腕を広げて白衣を翻しながら嗤う。
「気を取り直して、参りましょう。
 次こそは、面白い覚醒者ができると信じて」
 にやりと妖しく歪む青瞳を向けた先には、子供ばかりを閉じ込めた檻があった。
 視線を受けた子供達は、びくりと身体を震わせ、その身を寄せる。
「さあ、次は誰にメガリスを与えましょうかね」
 無理矢理メガリスを与え覚醒者を求めるギメイの次の犠牲者が選ばれようとしていた。


佐和
 こんにちは。サワです。
 陸生ホタルも一度見てみたいなと思いながら。

 今回の舞台となるグロウ・ブルーには、鉄甲船『彩雲丸』で向かいます。
 特に変わった装備のない普通の鉄甲船です。
 船の様子が少し分かる、初出のシナリオはこちら。未読で問題ありません。
 『雲は紫の光を追って』(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=21864)

 第1章は、海上での集団戦となります。
 敵の大型木造船は4隻。それぞれに数人ずつ『琵蕾・喪輝』が乗っています。
 木造船には大砲もあり、戯れのように撃たれる可能性もあります。
 彩雲丸を破壊されてしまうと継戦が難しくなるため、彩雲丸を守る、あるいは敵の木造船を奪うなどのプレイングにはプレイングボーナスが発生します。

 海上戦を制したら、第2章では『ギメイ』とのボス戦。
 それに勝利すると、第3章はグロウ・ブルーの島名の由来である、淡い光の漂う洞窟へと向かう冒険となります。
 それぞれ詳細は、各章の冒頭にて。

 それでは、圧政の島に希望の光を、どうぞ。
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第1章 集団戦 『琵蕾・喪輝』

POW   :    あはははははっ!!壊せ、壊れろ、壊して!
自身が戦闘で瀕死になると【もう1人の琵蕾 喪輝 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    あなたにとって、親って何?
対象への質問と共に、【自身の影や血 】から【かつて殺した異形の父の亡霊】を召喚する。満足な答えを得るまで、かつて殺した異形の父の亡霊は対象を【刀術や体術】で攻撃する。
WIZ   :    ほら、こうやってあたしを殺そうとしたんだよっ?
自身が【悲哀・痛み・激情 】を感じると、レベル×1体の【かつて殺した異形の父の亡霊】が召喚される。かつて殺した異形の父の亡霊は悲哀・痛み・激情 を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「さあ、来たよ。折角教えてあげたのに」
 近づく鉄甲船『彩雲丸』を見て、『王笏』の海賊旗を掲げた4隻の大型木造船の上でそれぞれに、感情の壊れた声が飛び交った。
 その声の主は全て子供で。
 ボロボロに破れた黒い和服も、短く揃えられた黒髪も、白かった肌も、全てに赤黒い血の色を被った『琵蕾・喪輝』。
 親殺しのコンキスタドール。
「あはははははっ! 壊せ、壊せ!」
「親は子を殺すものだからね」
「子連れの親は殺さないとね」
「あたしの父さんのように」
 にたりと嗤った口元から零れるのは、思考すらも壊れたような声ばかりで。
 木造船をおもちゃのように操りながら彩雲丸に迫る。
「子供を殺そう」
「甘いこと言うやつも殺そう」
「博愛なんてないんだ」
「愛したら殺すんだ」
 右の目は閉じたまま。
 左の目から止まることのない涙を流しながら。
 琵蕾・喪輝は鋭い爪の伸びた血塗れの手を伸ばす。
「あたしの父さんのように」
 殺してしまった最愛の人のように。
 また誰かを殺すために。
セシル・バーナード
彩雲丸から大型船の縁が見えるようになったら、空間転移でオブリビオンの一体の死角に飛び込み、「暗殺」でまず一人。

降伏してくれないかなぁ。そうしたら一杯愛してあげるのに。君たち、犯し甲斐がありそうだ。
一杯一杯、気持ちよくしてあげるんだけど。

拒否されちゃったなら仕方ない。討滅あるのみ。
フォックスファイアで木造船に火を放ち、火と煙で視界が悪化していく中を空間転移からの「暗殺」で一人ずつ仕留めていく。

異形の父の亡霊とか面倒くさい。押し寄せてくる前に転移して、こちらを見失わせる。

この船はもうじき燃え尽きるね。次の船に支援へ向かおうか。最後に、船全体を空間裁断で微塵切りにする。これで後腐れは無くなった。



 風を受け揺れる海賊旗は『王笏』の印。
 4隻の木造大型船は、ほぼ横一列に並んで島を背に進み。
 そして、鉄甲船『彩雲丸』と対峙した。
「さあ、来たよ。折角教えてあげたのに」
 少しずつ大きくなっていく彩雲丸を見て、壊れた笑みを含んだ声が上がる。
 その声の主は、血塗れの子供。
 短い黒髪から男の子のようにも、愛らしい顔立ちから女の子のようにも、どちらにも見えてしまうほどに幼い子供は、左の紫瞳から涙を流しながら、嗤う。
 その周囲にも、同じ姿をした子供が何人もいて。
「あはははははっ! 来たよ来たよ」
「殺されにきたよ」
「また殺すんだ」
「あたしの父さんのように」
 誰もがボロボロの黒い和服と赤黒い血を纏って。
 壊れたように、嗤う。
 嗤い続ける。
 その、1人の後ろに。
「こんにちは、可愛いコンキスタドール」
 不意に、セシル・バーナード(セイレーン・f01207)が現れた。
 彩雲丸から、空間のひび割れを利用して空間を渡り、木造船にと空間転移した少年は、その外見に不相応なほど妖艶な笑みを浮かべて。
 死角から繰り出した手刀で1人を背後から切り裂きながら。
「降伏してくれないかなぁ」
 熱い吐息と共に、零すように子供達へと語りかけた。
「そうしたら一杯愛してあげるのに。君たち、犯し甲斐がありそうだ」
 深い傷を負い、倒れかけた1人を愛おしそうに抱きしめながらも、その緑色の瞳は、残る子供達を舐めるように眺めていく。
 敵であることも、子供であることも、セシルには何ら問題ではない。
 自身の性愛が、一般的な倫理観とかけ離れていることを自覚し、むしろ面白がっている節もある彼にとっては、血にまみれ、罪にまみれた姿も愛おしく。
「一杯一杯、気持ちよくしてあげるんだけど」
 腕の中の、セシルより尚幼い子供に。
 その和服の間に手を差し向けながら、誘い惑わすように笑う。
 けれども。
「来たよ来たよ。壊されにきたよ」
「殺すんだ。また、壊すんだ」
「あたしの父さんのように」
 子供達は変わらず、狂気めいた壊れた嗤いを上げ、セシルの誘いを拒絶した。
 嘲笑のような声の中で、腕に抱きしめていた子供が身をよじり、その鋭い爪をセシルへ突き立てようとしてきたのに気づき。
「おっと」
 手を離したセシルは、また空間を渡って子供たちから一度距離を取る。
「あーあ、残念残念」
 さほど落胆した様子もなくそう呟いて、改めてセシルは子供達を見やった。
 傷だらけの壊れた子供。
 琵蕾・喪輝を。
「あなたにとって、親って何?」
 そんなセシルに琵蕾・喪輝は問いを投げかける。
 同時に、その影から、その血から、亡霊が現れた。
 大人の男性の姿をしたそれは、かつて琵蕾・喪輝が殺した、異形の父親。
 それらは答えを求めるように、セシルへと襲い掛かった。
「んー、面倒くさい」
 けれども、セシルはひょいと肩をすくめると。
 押し寄せてくる亡霊の前で、また空間を渡り、姿を消す。
 移動した先は、誰も居ない、木造船の内部。
「木ならよく燃えるよね」
 妖狐であるセシルはにっこり笑うと。
 生み出した狐火を無造作に周囲へと放っていった。
 狙い通り、次々と広がる炎と煙を眺め。
「さて、燃え尽きるまでは、遊んであげようかな」
 もう一度空間を渡り、セシルは琵蕾・喪輝たちの元へと戻っていく。
 火と煙とで視界が悪くなっていく中ならば、空間転移での惑わしはより効果的。
「1人ずつ、じっくり愛してあげるよ」
 燃えて沈みゆく木造船の上で。
 その背後を狙って移動しながら、セシルは着実に、琵蕾・喪輝を暗殺していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

生浦・栴
【壁】で
攻撃は最大の防御作戦で同意だ
砲台を落とせば危機も減ろう
操舵はまた後の課題だな

俺も自前の翼で行こう
第六感及び情報収集で攻撃を想定し直撃を避け、オーラ防御で適度に攻撃を相殺しつつ砲台の位置や威力の情報を探る

砲台の破壊を優先しようと思う
ノックスのは敵の相手を…
やる気は有難いが、ちらと目を向ける
其れ等は影朧や憑かれた妖怪共とは違う
救済の道無き唯のオブリビオンだ
骸の海に戻るが理
あまり耳を貸さぬが良いのでは

往く手を阻む敵は全力魔法の範囲衝撃波で叩きのめす
砲台を見つければUCを発動
複数合体で強化し形も残らぬようにしてやろう

そうそう、俺の美人で天才で矢鱈にパワフルな母上は壮健だ
お主らと一緒にするな


サンディ・ノックス
【壁】で参加
守るより攻めろって言うよね
木造船の1隻に乗り移り制圧狙い
攻撃を止められて予備の船まで手に入ったらラッキーだ

UC【解放・日蝕】で背を竜に変化、翼を生やして船に向かって飛ぶ
弾の軌道を【見切】って避けながら少しずつ接近し敵の前へ

…この子達の言っていることがわからない
早く殺して本来の状態に、してあげなきゃ
…ありがとう、栴さん
こういうのを見るとつい、救いがないとわかっていても心の救済を考えてしまう悪い癖だよ

脚を竜に変化させて身体能力の底上げ
甲板を駆け竜の力と【怪力】を乗せた暗夜の剣で斬る
敵の攻撃は機動力を生かして召喚主(敵)を盾にしてみよう

親?
俺を産み育ててくれたヒト達
それしか理解してないよ



 彩雲丸の船縁から、迫り来る大型の木造船を見たサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、ふっと微笑みながら振り返り。
「守るより攻めろって言うよね」
「同意だ」
 にやりと笑みを返す生浦・栴(calling・f00276)に頷いてから、海へ飛び込むかのようにその身を宙に躍らせた。
 落下感が生まれるよりも早く、ユーベルコードを発動させたサンディの背には、真の姿を思わせる赤い竜の翼が生えて。
 瞳と同じ澄んだ青色の空を、鮮やかに飛んでいく。
 栴も、こちらはドラゴニアンとしての黒い翼を広げ、続くように空を舞った。
 向かうは、木造船の1つ。
 近づいて来る2翼に気付いたのか、木造船の大砲がゆっくりと動き。
 放たれた砲弾を、サンディは余裕でひらりと躱す。
 というよりも、どこを狙っていたのかと疑う程に、砲弾はサンディから逸れていて。
 ちゃんとした砲手はいないのかもしれないと思う。
 それでも、大砲の威力は侮れるものではなく。
 的が小さく尚且つ動き回るサンディの後ろには、各段に的としては大きく、ゆえにサンディよりも動きが鈍重な鉄甲船がある。
 だから栴は、砲弾の飛んでくる元を見極め、大砲の配置を解析し。
 その破壊を優先するべく、木造船へと降り立った。
「来たよ来たよ。殺されにきたよ」
 砲台の傍らに立つのは、壊れた嗤いを浮かべた血塗れの子供。
 ボロボロになった黒い和服の袖を揺らしながら、汚れた手で何やら操作をすると。
 どんっ、と重い音を響かせて、適当な方向に砲弾が撃ち出される。
 幼い子供が撃っていたから狙いがでたらめだったのか、と納得しつつ。
 とはいえ、下手な鉄砲も何とやら。
 好きに撃ち続けさせてやる気はないと、栴は大砲を見据えて。
「ノックスのは敵の相手を……」
「任せて、栴さん」
 すぐ傍に降り立った気配は、応えるや否や、砲台の元にいる子供へと駆け出した。
 サンディは、その優し気な外見には不釣り合いと思える暗夜の剣を振るい、その刀身に朱を増やす。
 だが子供は、与えられた痛みに笑みを深め。
「ほら、こうやってあたしを殺そうとしたんだよっ?」
 その周囲に、数多の亡霊を呼び出した。
 大人の男性のようだが、異形となったその姿を、子供は涙の止まらぬ左瞳で見上げ。
「あたしの父さんのように」
 悲哀に。激情に。
「親は子を殺すの」
 嗤う。
「だから親を殺さないと。子供を殺さないと」
「……何を言っているのかわからないよ」
 そんな壊れた様子に、サンディは顔を顰めた。
 穏やかだった表情に暗い影が落ち、柔らかな笑みを浮かべていた青瞳が細められて。
 真っ黒な剣を握る手が、ぎりりと絞られて。
「早く殺して本来の状態に、してあげなきゃ」
「やる気は有難いが」
 そこに、凛とした栴の声が響いた。
「其れ等は影朧や憑かれた妖怪共とは違う。救済の道無き唯のオブリビオンだ。
 骸の海に戻るが理、あまり耳を貸さぬが良いのでは」
 肩越しにちらとこちらを見る紫色の瞳と、淡々と紡がれる言葉。
 いつも通りの響きは、サンディの中へとすとんと落ちて。
 知らず強張っていた肩の力が抜ける。
「……ありがとう、栴さん」
 ふっと、サンディは苦笑するように、でも元の穏やかな笑みを浮かべた。
 こういった相手を見ると、つい心の救済を考えてしまう。
 救いがないとわかっていても。
 救いがないとわかっているからこそ。
「悪い癖だよ」
 サンディは呟くと、ユーベルコードで今度は脚を竜に変化させた。
 強化された脚力で、子供との間を一気に詰める。
 立ちはだかる亡霊を剣で切り伏せ、また、その間を縫うようにして躱して。
 迫るサンディを見上げて、子供が問いかけた。
「あなたにとって、親って何?」
 質問と共に、子供の影から新たな亡霊が召喚され、サンディの前に立ちはだかると、血塗れの日本刀を振り上げる。
 それは子供を守るようでもあったけれども。
 サンディを子供と誤認して殺そうとしているようでもあって。
「親は子を殺すんだよ」
 泣きながら嗤う子供の……琵蕾・喪輝の悲鳴のような声に合わせて、亡霊はサンディに斬りかかってきた。
「親?」
 だがサンディは、今度は穏やかな笑みを浮かべたままで。
「俺を産み育ててくれたヒト達。それしか理解してないよ」
 さらりと答えると、振り下ろされる刀を素早く躱す。
 空振りとなった刃を、亡霊はすぐに切り返してくるけれども。
 サンディはより素早く走り動き、亡霊の攻撃を惑わせて。
 亡霊が再び振り下ろした日本刀は、サンディが盾にした琵蕾・喪輝を斬る。
「あはははははっ! ほら! ほら!」
 嘲笑のような壊れた嗤い声を聞きながら。
 サンディは日本刀ごと亡霊を切り割き。
 甲板を駆け抜けながら、群がってくる他の亡霊達も次々と切り消していく。
「こうやってあたしを……
 だから、親は殺すんだよ。子に殺されるんだよ」
 崩れ落ちていきながら尚も嗤う琵蕾・喪輝に、栴は歩み寄るように近づいて。
 阻むように動いた亡霊達を、範囲衝撃波で叩きのめしながら、呟くように唱えた。
「疾うに失せし胸を未だ焦がすその呪詛、その怨念。
 我が声に応え現世にて晴らして見せよ」
 生み出されるのは、闇色の炎。
 小さなそれは、2つ、4つと合わさっていき、大きな大きな炎に強化されて。
「そうそう、俺の美人で天才で矢鱈にパワフルな母上は壮健だ」
 手の上の炎を放つ直前、栴がにやりと笑う。
 倒れ伏した琵蕾・喪輝を、闇色に照らされた顔で見下ろしながら。
「お主らと一緒にするな」
 栴の言葉と共に放たれた炎は、琵蕾・喪輝と大砲を焼き尽くしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御剣・刀也
むごいな
心が壊れたか。いや、それが最後の自衛だったか。まともではいられないから
お前らの体の痛み、砕け散った魂の痛み、分からせてやろう!!

あはははははっ!!壊せ、壊れろ、壊して!で瀕死になって二人に増えても特に焦ることなく、見切り、第六感、残像で攻撃を避け、カウンター、捨て身の一撃で斬り捨てる
思考は氷のように冷え、心は怒りと言う炎で燃え滾り、収まるところを知らない
外道の所業のオブリビオンにこの子達の魂の痛みを僅かでも味会わせ、供養とする
「いてえよな。痛いのは嫌だよな。お前らの魂の痛みは、俺が叩きつけてやる。だから、もう眠れ」



 近づいて来る4隻の大型木造船。
 その様子を御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)はじっと見据えていた。
 うち1隻が、煙を上げて進むのを止め。
 もう1隻に2つの翼が降り立っていく。
 しかし残る2隻はそのままの速度で刀也の乗る彩雲丸へと近づいてきて。
 まばらに、大砲による砲撃が届き始める。
 刀也は、逸る心を抑え、静かに機を伺っていた。
 その背には翼もなく、飛翔の能力もないから。
 じっと、焦らずに、ただ正確に戦況を見据えて。
 接近してきた2隻のうち1隻に、彩雲丸からフック付きワイヤーが放たれ、ぴんっと細い道が作られたのを見逃さずに気付くと。
「使わせてもらう」
 刀也は一気に駆け出し、海の上を渡った。
 どこかで見たことのある気がする蝙蝠の羽を持つ赤髪の男が、にやりと面白がるようにこちらを見下ろしているのに軽く手を挙げて。
 当たらない砲弾に怯えることどころか気にすることすらなく。
 鉄の甲板から木の甲板へ、変わった感触を踏みしめた。
 刹那、剣刃一閃、不屈の獅子のように煌めく日本刀が抜き放たれ、目の前に立った子供を美しい程に鋭く切り断つ。
 その姿は、刀也の刃を受けるその前から傷だらけで。
 身に纏った黒い和服も、何も履いていない白い足も、こちらに伸ばされた手も。
 全てがボロボロで、血に汚れていた。
 よく見れば、短くも艶やかな黒髪の下で、右目にも傷が一閃刻まれているのが見え、ゆえに右の紫色は閉ざされたまま開かれることはなく。
 反対に、こちらを見つめる左の紫色からは、止まることなく涙が流れ続けている。
「あはははははっ!」
 けれども、傷だらけのその顔に浮かぶのは、笑み。
 刀也の刃に膝を折り、崩れ落ちながらも、歪んだ嗤い声を上げ続けて。
「壊せ、壊れろ、壊して!」
 もう1人、同じ姿の子供が傍らに現れる。
 2人となった子供は、2人の琵蕾・喪輝は、揃って刀也に襲い掛かり。
「あはははははっ!」
「あはははははっ!」
 嗤いながらその手の鋭い爪を振るってきた。
 だが刀也は慌てることなくその動きを見切り、残像を残す程の素早さで躱すと。
「むごいな」
 ぽつり、と短く呟く。
「心が壊れたか」
 目の当たりにした、正気とはとても思えない姿。
 未だ幼いその身に何をされて心を壊されたのか。
 いや、もしかしたら、それが最後の自衛だったのかもしれない。
 心を壊さなければ、まともなままではいられないから。
 存在するために自ら心を壊したのか。
「親は子を殺すものだから」
「子連れの親は殺さないと」
「あたしの父さんのように」
 その原因が何なのか、琵蕾・喪輝の壊れて支離滅裂な言動からは、刀也には理解しきれなかったけれども。
 琵蕾・喪輝がいた島には、グロウ・ブルーには、七大海嘯『王笏』配下の強大なコンキスタドールがいることは分かっていて。
 そいつが、メガリスを用いて実験と称した何かを島民に強いていることを、予知から聞いて知っている。
 コンキスタドールは、メガリスを手にした者の末路の1つ。
 となれば、その2つを結びつけるのは刀也には容易く。
 氷のように冷えた思考と。
 怒りという炎で燃え滾る心が。
 刀也の中に、生まれていた。
「いてえよな。痛いのは嫌だよな」
 だから刀也は、子供たちに語りかけながら。
 獅子吼の名を持つ日本刀を迷いなく振るう。
 鋭いその剣閃で、与える痛みを最小限にして。
 収まるところを知らない炎を、今この時は抑えて。
「その痛みは、俺が叩きつけてやる。だから、もう眠れ」
 外道の所業を成しているコンキスタドールに、たとえ僅かでも、子供たちの痛みを苦しみを味わせてやると誓い。
 それが供養になればと願い。
 煌めく刀身を、翻す。
「お前らの体の痛み、砕け散った魂の痛み、俺が代わりに分からせてやろう!」
 そして、2人の琵蕾・喪輝を切り伏せ、倒すと。
 同じ木造船の上に新たに姿を見せた琵蕾・喪輝へと、刀也はまた、獅子吼を構えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フリル・インレアン
ふええ、私は戦闘に参加しないで船の補修をしろって、アヒル船長ひどいですよ。
大砲だって飛んでくるんですよ。
ということで私は船の補修や掃除までやらされることになりました。
不思議なことに大砲があんなに飛んできたのに補修の邪魔になることなくスムーズに行うことができました。
そういえば、補修している最中に親がどうとかいう言葉が聞こえたのですが
私はアリスなので親とか聞かれても分かりませんと答えましたが、何かありました?



 彩雲丸から木造船へ、次々と戦いに向かっていく猟兵達の中で。
 フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は彩雲丸の甲板をあっちへこっちへ落ち着きなくうろうろしていた。
「ふええ、私はこの船に残れって、どうしてですかアヒル船長」
 いつも被っている帽子を片手で押さえながら。
 もう片方の手に、海賊帽を被ったアヒルちゃん型のガジェットを持って。
 その鳴き声に、右へ左へおろおろするフリルだったが。
「砲撃がくるぞ!」
「駄目だ、出鱈目すぎて避けられねぇ!」
 船の男達の慌てた声が飛び交ったと思うと、衝撃が来た。
「ふ、ふえぇ?」
 ガジェットを取り落とさないように握りしめながら、ころころと転がるように甲板を移動したフリルは、ぺたんと座り込んでしまい。
 顔を上げると、船の一部が破損しているのが見えた。
 航行に大きな支障はなさそうだが、そのままにもできないと、男達が道具を資材を手に集まってくる。
 フリルは大きな赤い瞳を瞬かせて、その様子を眺めていたけれども。
 不意に、手の中でガジェットが鳴いた。
「ふええ、私も船の補修を手伝うんですか?
 でも、みんな戦いに行っているのに……」
 破損個所と、戦う猟兵達の後ろ姿とをおろおろ見比べるフリルに、その迷いを断ち切るように、力強く響くガジェットの声。
「私は戦闘に参加しなくていいって、アヒル船長ひどいですよ」
 戦いでは役立たずと言われた気がして、涙目になるフリルだが。
 ガジェットの態度は変わらぬままで。
 肩を落として、フリルは男達へと近づいた。
 ん? と振り向く男に、人見知りなフリルはびくっと身体を震わせ、帽子のつばを引き寄せるようにしてちょっと顔を隠しながら。
 でも、また鳴いたガジェットの声に背中を押されるように、声を絞り出す。
「ええと、その……私も手伝い、ます……」
「助かるよ嬢ちゃん。手が足りなくてな」
「ちょっとこっちを頼まれてくれるか?」
 おどおどしていたフリルは、だが男達に歓迎され引き込まれ。
 あっちへこっちへと次々に作業を頼まれていく。
 時折ガジェットの声を響かせながら、フリルは1つ1つ、それをこなしていき。
 もはや周囲を気にする余裕もなく、人見知りも忘れて、働いていた。
 その間にも大砲の弾は飛んできていて、また、接近した木造船の1隻からコンキスタドールが彩雲丸に乗り移って来たりもしていたけれども。
 フリルには何ら影響を与えることはなく、鉄甲船の修復は滞りなく進んでいく。
 実はそれはフリルのユーベルコードによるもので。
 フリルが参加することで、修復作業を妨げる全てのものが遮断されていたのだ。
 それこそが、ガジェットの狙いだと。
 フリルを戦闘に参加させないことで彩雲丸を守っているのだと。
 作業に没頭していたフリルはもちろん知らず、そして知らされぬまま。
「嬢ちゃん。あと、こっちの片づけも頼むわ」
「ちゃんとしとかねぇと、いざって時に邪魔になるからな」
「わ、わかりました」
 補修が終われば掃除にと、フリルは次々と非戦闘行為に駆り出されていた。
 モップ片手にぱたぱたと走り回る最中。
「あなたにとって、親って何?」
 血に汚れた手を伸ばし、その血から亡霊を召喚する琵蕾・喪輝の前を通ったけれども。
「私はアリスなので親とか聞かれても分かりません」
 フリルは掃除に夢中なまま、コンキスタドールと気付くことすらないままに、見向きもしないで答えると。
「それよりお掃除を手伝ってくださ……
 ふわぁ!? 何だかここすごく汚れてます」
 あわあわと、黒ずんだ血の汚れを落とすべく、取りかかっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエン・イロハ
シノ(f04537)と

『ロープワーク』でウィ―ティスを敵船へ渡る足場に
自身は『空中戦』にて上空から先行し『船上戦』
『先制攻撃』『2回攻撃』『投擲』で【シーブズ・ギャンビット】
回避は『見切り』

大砲に近づければ『メカニック』『戦闘知識』等で他の敵船へ撃ち込んでおく

親って何、ねぇ?

脳裏に過るのは家族の身体を繋ぎ合わされて造られた化け物

親殺しの被害者、とでも言えば満足かぁ?
両親もジジイも、ヒスイも…殺したのは他でもねぇ俺だからな

てめぇらを理解するなんて甘い事は言わねぇよ
“復讐”なんてやめろと、的外れの甘ちゃんどもは切り捨ててきたからな
だがだからこそ、俺はお前らにも甘くはねぇ、とっとと眠れクソガキども


シノ・グラジオラス
シエン(f04536)と

水を得た魚みたいになってんな。
敵船に渡る途中の妨害は銃の『援護射撃』でフォローしておこうか
そっちは任せた

上はシエンに任せて俺は船への攻撃を最優先で『見切り』『武器受け』で『かばう』で防衛戦
【襲咲き】で大砲などには『2回攻撃』『重量攻撃』で相殺狙い
自分自身のダメージは『激痛耐性』

親は親。子って存在がいるのが親って分類。それだけだろ
親子の絆とかも人間同士の関係の延長
(自分の両親は常識人だからこその築けた関係だし、そこは家族の個体差)
…って、問答するほど時間もアンタへの興味もねぇな
同情して欲しいならしてやるよ。
だが、やられる覚悟がないなら引っ込んでな餓鬼と亡者が



 木造船が接近し、その大きさを体感できる距離となったところで。
 シエン・イロハ(迅疾の魔公子・f04536)は、短い赤髪の下に、にやりと深い笑みを浮かべて、背中の蝙蝠の羽を広げた。
 そのまま飛び立とうとしたところで、ふと、赤い瞳が肩越しに後ろに流れ。
 思い直したように取り出したのは、フック付きワイヤー・ウィーティス。
 頑丈なそれを、無造作にも見える仕草で投げつければ。
 彩雲丸と木造船の間に、ワイヤーの細い道ができた。
 そうして戦場を結び付けておいてから。
「先行くぜ、シノ」
 シエンはようやく、待ちかねたかのように飛び立つ。
 もう振り向きすらしないその後ろ姿を見送りながら、左目に眼帯を付けたシノ・グラジオラス(火燼・f04537)は肩を竦めた。
「水を得た魚みたいになってんな」
 酒と並んで大好物の戦闘を目の前に、我慢するとも思えなかったし。
 むしろいつもの如き姿ではあるのだけれど。
 あっさりと飛べない自分を置いていく、親友のらしすぎる行動に苦笑しかない。
 ワイヤーで道を作ってくれた辺りがシエンなりの譲歩なのかともまた笑いながら。
 シノは、アサルトライフル『KBN18-Svarog00』を手に、海上を飛び行く赤が無事に木造船にたどり着けるよう、援護の姿勢を取った。
「使わせてもらう」
 そこに、知らぬ声がかけられて。
 見やれば、日本刀を携えた黒髪の男がワイヤーの上を渡っていく。
 シエンもその動きに気づいたようで、空から振り向くように見下ろすと、一瞬の驚きの後に面白がるような笑みを浮かべたから。
 シノは、赤と黒が共に木造船へ辿り着けるよう、銃を構えた。
 そして木造船の上で戦闘が始まっていく。
 シエンは空を飛んだまま、ナイフの投擲や、猛禽類を思わせる急降下からの一撃離脱を見せ、雨のように攻撃を降らせて。
 相手が子供の姿であることを欠片も厭わずに、襲い掛かっていった。
 空からの攻撃に、傷を増やし、血を流す子供たち。
 ボロボロの和服を身に纏い。
 ボロボロの心で壊れた笑みを浮かべて。
 その鋭い爪で襲い来るシエンを捕えようとするけれども。
 素早いその動きに、空という手の届かない場所からの攻撃に、子供たちは、琵蕾・喪輝は、やられるがままだった。
 しかし、そんな中で。
「ねえ、教えて」
 歪んだ笑みと共に、シエンに問いが紡がれる。
「あなたにとって、親って何?」
 同時に、琵蕾・喪輝の血から亡霊が現れた。
 大人の男性を思わせる体格の亡霊は、だが普通の人間とは思えない異形で。
 その手に握った血塗れの日本刀を振り回し、シエンを迎撃する。
 赤黒い刃を避けながら、シエンは口の端を歪め、自嘲気味に笑った。
「親って何、ねぇ?」
 呟いたその脳裏によみがえるのは、かつての自らの家族の姿。
 だが、共に暮らし、過ごしていた穏やかな時間ではなく。
 その体を無理矢理つなぎ合わされ造られた、化け物。
 それが最期に見た姿だからというのもあるだろうが。
 そもそもシエンには、過去の記憶が欠けているのだ。
 思い出せたものだけを辿り、琵蕾・喪輝の問いかけに答えるならば。
 親とは、自分が殺した相手。
 シエンと琵蕾・喪輝は、その一点に関して、同じだった。
(「両親もジジイも、ヒスイも……殺したのは他でもねぇ俺だからな」)
 化け物となり自分を襲ってきた家族を殺したのも。
 その攻撃から自分を庇った双子の兄の死も。
 すべては自分の成したことであり。
 自分のせいであると。
 シエンは考え。
 だからこそ、自分は被害者ではないと。
 殺した側なのだと、心に刻み込んでいたから。
「親殺しの被害者、とでも言えば満足かぁ?」
 琵蕾・喪輝にわざとそう答え、シエンは嘲るような笑みを浮かべた。
 その答えを得た琵蕾・喪輝は、壊れた笑みを深く深く歪めて。
 見開かれた左目から、涙を流し続ける。
 だが、生み出された亡霊は、満足する答えを得れば消えるはずの存在は、消えることなく残ったまま、シエンに向けてその手の刃を振るってきたから。
 シエンは引き抜いたタガーでそれを受け止め、また嘲笑を向けた。
 刃と刃がかみ合って、動きが止まったそこに。
 黒剣『燎牙』を携えたシノが走り込んで来る。
 気付いたシエンは無言のまま、日本刀を弾くように上へと跳ね上げ。
 無防備に胴体をさらしたその空間を狙って走った燎牙の黒い軌跡は、深く亡霊を切り裂き、打ち消していた。
「親は親。子って存在がいるのが親って分類。それだけだろ」
 そしてシノは、燎牙の黒い刀身を琵蕾・喪輝に向けながら、答える。
 親子の絆は血縁で生まれるものではなく、人間同士の関係の延長でしかないと。
 だからこそ、親だから、という理由だけで出来上がる絆はないと、思う。
 シノがその絆を得られたのは、シノの両親が常識人だったからで。
 シノと両親とがその関係を望んだからこそ。
 それを望まない家族もあるだろうし。
 目に見えない、感じられない形で絆を持つ時もあるだろう。
 家族の数だけ絆の形はある。
 だからこそ、親とは。
 子という存在がいる、というだけのものであり。
 大切に思い合う絆とは別の、ただの血縁という事実だと認識する。
 そう、思ってはいるけれども。
「……って、問答するほど時間もアンタへの興味もねぇな」
 シノはそう打ち切ると、琵蕾・喪輝との間を詰める。
「同情して欲しいならしてやるよ。
 だが、やられる覚悟がないなら……引っ込んでな餓鬼と亡者が」
 振りぬいた黒い刃は、深く深く、琵蕾・喪輝の涙ごと、その姿を切り裂いて。
「あははははは!」
 壊れた嘲笑すらも断ち斬っていく。
 そんな悪友の背を見て、苦笑を零したシエンは。
「てめぇらを理解するなんて甘い事は言わねぇよ」
 別の琵蕾・喪輝へと、タガーを向ける。
 シエンに『復讐』なんてやめろと言ってきたやつは何人もいた。
 家族はシエンが殺したのではなく、シエンに救われたのだと。
 的外れのことを言う甘ちゃんどもは、入れ替わり立ち代わり現れた。
 でもその甘言を、シエンは切り捨ててきたから。
 自分は、親殺しの加害者なのだと、刻み込んできたから。
「だがだからこそ、俺はお前らにも甘くはねぇ」
 にやり、と笑うその顔に、琵蕾・喪輝への同情やら憐れみやらは欠片もない。
 それこそがシエンの望むもので。
 それこそが琵蕾・喪輝の満足する答えだと。
 そう、思うから。
「とっとと眠れクソガキども」
 シエンは心を壊して嗤い続ける琵蕾・喪輝を切り伏せ、倒していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんにき】
彩雲丸、良いお名前
今回はよろしくね
彩雲丸に向かって一礼し海上を見据える
……んむ?お祖父さん達どうかした?(真琴の声に一緒に首傾げ)

帆に上がり、拠点である船全体をオーラで包み防御を施す
ん、上からなら皆の動きが把握しやすい
うさみん☆、負傷した人に早業で回復薬の小瓶をどんどん投げ渡していって

お祖父さんがお父さん?
真琴…も、よくわかってないみたい

殺されたの?
それは、きっととても悲しくて苦しい
大好きだったから

貴方(異形の亡霊)、間違えないで
哀しみも痛みも辛い気持ち、全部貴方があの子に与えたもの
攻撃対象はわたしではない、貴方自身
幅広の大剣にした灯る陽光で、怪力使って思いっきり叩く


木元・祭莉
【かんにき】だよ!

ぐろうぶるー島かー。
七大海嘯って、どんな奴らだろうね?(舳先で見張り)
あ、そろそろお出ましだよ。船が四隻!

ん、威力偵察行ってきまーす!
安定した船を狙うより、動き回る的を狙う方が面白いでしょ?
さあ、砲撃来いー!

砲撃は勘で躱したり、拳で打ち落としたり。
如意な棒から衝撃波撃ちながら、一番遠くの木造船に接近。
派手に降り立って、注目を集める!

親? ぎゅってしてくれる人のことだよ。
キミのトコは、違ったんだ?
でも、父ちゃん大好きなんだよね?(そう見えた)

瀕死にしちゃうと増えちゃうから。
注目を集めたら、別の船目指して、また飛び立つ!
彩雲丸が囲まれないよう、足止めに努めるね。

みんなは無事かな?


鈍・小太刀
【かんにき】

真琴!
影の獅子が飛び出し真琴を庇い護る
母から受け継いだ獅吼影牙は
喪輝に何かを感じる模様

嘗て殺した異形の父?

真琴の片翼人形を見れば
お祖父ちゃんも何か知ってる様で
状況を察して
だからこそ
真琴には敢えて言わず
刀を構え対峙する

攻撃を見切り武器受けし
カウンターで斬る
弟も彩雲丸も絶対に護るよ

何度倒しても放たれる殺意は届かぬ愛情そのままで
亡霊達にも喪輝を護ろうとする意思を感じて、痛いよ
彼らの苦しみを終わらせたくて

私にとっての親?
そうね、大嫌いで大好きで
追いかけても追いつけなくて
それでもいつかは届く様に

だから私の攻撃は
桜花鋭刃

真琴には聞こえない声で
消えゆく喪輝達を送り出す
「おやすみなさい、お母さん」


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

コンキスタドール・七大海嘯の一角「王笏」か…。
あの子供たちは何者だ? 見たところ、ゴーストキャプテンか
死霊術士のようだが。
いや、今は考えても仕方ないか。よし、出撃!

海中から現れたマン太の背に飛び乗り、彩雲丸を庇うように
《水中機動》で前衛へ。
ん、真琴の様子がおかしいな。小太刀、真琴のフォローを頼む!

マン太の背に乗ったままで【パイロキネシス・α】を発動。
エナジーの炎を《念動力》で操作し、
彩雲丸に向かってくる敵の妨害を行おう。
炎の半分は彩雲丸の守備に。もう半分は味方の援護に回す。
旋回する炎で牽制しつつ、包囲するように敵を追い込み、
クロスグレイブによる《レーザー射撃》で一体ずつ仕留めるぞ。


シリン・カービン
【かんにき】

故郷の森では部族で子育てをするので、
両親と言う概念が薄いのですよね。
部族は全員が父母で家族。
皆が分け隔てなく、子を慈しんでいました。

船に接近する敵を迎撃するため、帆柱から狙撃しようと
【シルフィード・ダンス】で駆け上がりますが、
途中、真琴の様子がおかしいことに気づきます。

「真琴」
傍に降り立ち声を掛けますが、取り乱している様子。
真琴を狙って殺到する敵を躱すため、
彼を抱えて宙を駆け上がります。
「小太刀、後を頼みます」

帆柱の杏の元に真琴を降ろし、小太刀の援護に向かいます。
小太刀もなにか気づいているようですね。
話は後で聞かせてもらいましょう。
今は敵の掃討を。宙を駆けながら敵を狙い撃ちます。


琶咲・真琴
【かんにき】
今回も頑張っていきましょう!

って、あれ?
お祖父ちゃん達どうしたんですか
妙に浮かない様子だけど

あ、敵さん来た

詠唱系技能でUC発動
UCの効果と技能フル稼働で彩雲丸を守る

お祖父ちゃん達は援護射撃や皆のフォローお願い!

親は何?
ボクにとってお母さんは憧れで目標です
親父は…い、一応尊敬してるし
好きだけどっ(ツンデレ

って出てきたあの人って…

祖父ちゃんっ?!
何か姿形はちょっと違うけど
俺がたまにUCで呼んでる祖父ちゃんと似てる…?!

うわ、一斉にこっち来たぁ!

何で父さんをお祖父ちゃんって
俺は琶咲・真琴!祖父ちゃんは祖父ちゃんだよ!

あれ、『琶咲』と聞いてもっと来たァー?!

だ、誰か助けてー?!


アドリブ歓迎



 鉄甲船がグリードオーシャンの海を駆ける。
 それはサムライエンパイアの瀬戸内に沈んだのを引き上げられ、修復されたうちの一隻で、その時に、縁起のいい雲の名前をもらっていた。
「彩雲丸、良いお名前」
 その名を呟いた木元・杏(マスター縁日・f16565)は、ふんわりと微笑みながら、ぴしっと一礼を送る。
「今回はよろしくね」
「一緒に頑張っていきましょう!」
 並んだ琶咲・真琴(今は幼き力の継承者・f08611)も、ぐっと両手を胸の前で握って、可愛らしいやる気を見せると。
 振り向いた杏と顔を見合わせ、どちらからともなく、柔らかく笑い合った。
 仲の良いその様子に、真琴の姉である鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)は、小さく苦笑気味に口の端を緩ませて。
 そういえば、と杏の双子の兄の姿を探す。
「ぐろうぶるー島かー」
 木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)は、杏とは反対に、船の進む先を眺めて、好奇心たっぷりに銀色の瞳を輝かせていた。
 シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)もどんな島だろうかとその名から想像しながら、祭莉と視線を揃える。
 灯りを示すグロウの名はどうしてついたのか。
 青い海が広がる中で、わざわざブルーと名付けたのは何故なのか。
 考えるだけでも楽しいものだけれども。
 今、グロウ・ブルー島には『王笏』の旗が掲げられている。
「コンキスタドール・七大海嘯の一角『王笏』か……」
 島を支配していると聞いた相手の情報を繰り返し呟いて、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は気を引き締めて、向かう先を見据えた。
「どんな奴らだろうね?」
 それは好奇心から零れた問いであるとともに。
 どんな相手でも負けないという決意も込めたもので。
 ざあっと吹いた海風が、ガーネットの長い赤髪を広げるように揺らしていった。
「あ、そろそろお出ましだよ。船が四隻!」
 そこに、祭莉の声が凛と響く。
 それぞれの視線が向けられた海の上に確かに見えてきたのは、4つの船影。
 はためく旗に、王笏の印が刻まれているのは予想通りだったのだが。
 甲板からこちらを見る小さな姿をいくつか認めたガーネットは、ん? と首を傾げる。
「あの子供たちは何者だ?」
 敵の船に乗っている以上、コンキスタドールではあるのだろう。
 様子からして、ゴーストキャプテンか死霊術士といった雰囲気だなと、どことなく感じる人間との違いから考察を重ねるけれども。
 自問しているだけでは、どれが答えと分かるわけもないから。
「いや、今は考えても仕方ないか」
 苦笑しながら、ガーネットは一旦、思考を打ち切った。
 しかし、敵に思いを馳せていたのはガーネットだけではなかったようで。
「あれ? お祖父ちゃん達どうしたんですか?」
 いつも持ち歩いている2体の片翼人形を覗き込むようにして、真琴が首を傾げる。
 人形ゆえにその表情は変わらないけれども、妙に浮かない様子が感じられて、特に男女のうち男の人形を気にして見つめる。
「……んむ? 真琴、お祖父さん達どうかした?」
 気付いた杏も真琴と同じように人形を見つめ、一緒に首を傾げるけれども。
 人形は何も語らぬままで。
 真琴と杏は顔を見合わせるしかない。
 そんな変化にガーネットも目を留めて、そっと小太刀に近寄ると。
「小太刀、真琴のフォローを頼む」
 囁くように、気遣う声を残してから。
 バッと大きな仕草で振り向き、船の進行方向へと手を掲げて声を張り上げた。
「よし、出撃!」
「おー!」
 元気よく拳を突き上げた祭莉が、その勢いのままに船から飛び出す。
「威力偵察行ってきまーす!」
 テンション高く、燃え上がる白炎にその身を包み込んだ祭莉は空を飛び。
 近づいて来る木造船へと向かっていく。
 どうせ飛ぶのだからと一番遠くにいる船を目指してみたけれども。
 そこからもくもくと煙が上がり、どうやら船が燃やされているようだと見て取った祭莉は、目標を次に遠い船へと変更。
 僅かに方向を修正したところに、その船から砲撃が飛んできた。
「来た来たー」
 だがそれは祭莉の予想の範囲内。
 勘に任せてひらりと躱し、迫り来る弾を拳で撃ち落とし。
 阻まれることなく、木造船へと近づいていく。
 そして、如意な棒から衝撃波を撃ち出し、派手に演出を加えながら甲板に降り立てば、周囲にいた子供たちの視線が一斉に祭莉へと向いた。
「さあ、誰から来る?」
 如意な棒をびしっと構えて決めポーズを取ると、襲い掛かってくる子供。
 ボロボロの黒い和服に、傷だらけで血に汚れた身体。
 祭莉より尚幼く、そして痛々しい見た目とは裏腹に、その動きは素早く。
 繰り出された鋭い爪に、祭莉は気を引き締め、油断なく如意な棒を振るった。
 身に纏った白炎の効果も加わった、鋭く重い一撃は。
 子供を見事に捉え、叩き伏せるけれども。
「あはははははっ! 壊せ、壊れろ、壊して!」
 動けなくなった子供のすぐ傍らに、元の子供と同じ姿がもう1人現れる。
「わっ、増えた?」
 驚く祭莉に、入れ替わった子供の爪が迫り。
 祭莉が慌てて飛び退くと。
 サイキックエナジーの炎が壁のように立ちはだかって、子供を押しとどめた。
「私の前に立ち塞がるものは、すべて焼き払ってやろう」
 振り向いた海の上には、巨大なオニイトマキエイのマン太がいて。
 その上に乗ったガーネットが、こちらに向けて手を掲げていたから。
「ガーネット姉ちゃん、かっこいー」
 にぱっと輝くおひさま笑顔の賛辞に、ガーネットがふっと笑って見せた。
 そのままガーネットは、炎を念動力で操ると旋回させて、祭莉の元へと迫る他の子供の動きを牽制する。
 炎に囲まれた子供は、だがそれにより生み出された影を嗤いながら見下ろして。
「あなたにとって、親って何?」
 影の中から亡霊を呼び出した。
 それは、異形ながらも人間の男の姿をしていて。
 子供を守るかのように、炎をものともせずに襲い掛かってくる。
 祭莉はその姿をしっかりと見据えながら。
「親? ぎゅってしてくれる人のことだよ。
 キミのトコは、違ったんだ?」
 子供の問いかけに答えていく。
 父ちゃんも母ちゃんも、いつだって祭莉を抱きしめてくれた。
 言葉で、動きで、大好きだよと伝えてくれていた。
 今は会えないその姿を思い出しながら。
 祭莉は、左目から涙を流し続ける子供をじっと見る。
「でも、ぎゅってしてくれなくても、父ちゃん大好きなんだよね?」
「……え?」
 そう見えるよ、と告げる祭莉に、嗤い続けていた子供の表情が一瞬消えた。
 祭莉に迫ってきていた亡霊の動きも、ふと止まって。
 そこに、マン太の背からガーネットが構えたクロスグレイブが火を噴く。
 放たれたレーザー射撃は、まずは亡霊を撃ち抜き、かき消して。
 そのまま動きの止まった子供を仕留めていった。
 敵の姿が消えるとともに、サイキックエナジーの炎も消え去って。
 祭莉の近くに誰もいなくなったのを、ガーネットはしっかりと確認した。
 一旦の戦いの終わりを感じて、ほっと一息ついて。
 でもまだ他に、船も敵もいるからと前を見て。
「祭莉、次の船に行こう」
「うん」
 声をかければ、いつもの元気な笑顔が振り向いた。
 彩雲丸1隻に対して、敵の木造船は4隻。
 その全てに囲まれてしまえば、不利は否めないから。
 1隻でも近づく木造船を減らそうと、2人は頷き合って。
 再び白炎を生み出し纏い、空へと飛びあがった祭莉の下を、マン太が海面を泳ぐかのように飛んでいった。
「みんなは無事かな?」
 ふと、祭莉が思いを向けた彩雲丸では。
 4隻のうち1隻に接近され、乗り移ろうとする子供たちの迎撃戦が始まっていた。
「ん、上からなら皆の動きが把握しやすい」
 帆に上がった杏は、呟いた通りに戦況をじっと見極めながら。
 拠点である彩雲丸全体をオーラで覆い、ガーネットが遊撃に向かう前に残してくれた炎と共に、守る。
「うさみん☆」
 呼びかければ、傍らのウサミミメイドさん人形がくるりと回って。
「負傷した人に回復薬の小瓶をどんどん投げ渡していって」
 指示にこくんと頷いた人形は、早速、早業を見せていった。
「風に舞い、空に踊れ」
 そこに、空中を蹴り、シリンが帆柱を駆け上ってくると。
「お邪魔しますね」
「ん」
 杏のすぐ横で、シリンは猟銃を構えた。
 杏と同じく、上からの戦場把握を狙い。
 杏と反対に、攻撃へとその情報を使っていく。
 彩雲丸へと迫ってくる子供を、シリンの正確な狙撃が撃ち抜き、牽制。
「……神羅畏楼・天鷹氣弾」
 真琴がその身に炎を纏って宙に舞い、シリンが押しとどめた相手へと、白銀の鷹を象った闘気を弾丸のように撃ち出した。
 ボロボロで血塗れの身体にさらに傷を増やした子供は、それでも尚、壊れたような笑みを浮かべて嗤い。
「あなたにとって、親って何?」
「ボクにとってお母さんは、憧れで目標です」
 問いかけに、真琴は迷いなく即答した。
 けれどもその答えに、子供はさらに問いを重ねる。
「父さんは?」
「親父は……い、一応尊敬してるし、好きだけど……っ」
 先ほどの真っ直ぐ前を見て断言した姿はどこへやら、目を逸らし、言いにくそうに言葉を紡ぐ真琴。
 でもそれは嫌悪ではなく、見事なまでのツンデレで。
 父親を大切に思ってはいることが伝わってきていたから。
 子供は……琵蕾・喪輝は、口元の笑みをにやりと深めた。
 そして流れる血から、亡霊を呼び出す。
 異形化しながらも、若い男性の姿を象るその亡霊を見た真琴は思わず叫んでいた。
「祖父ちゃんっ!?」
 とっさに振り向いて見やるのは、片翼人形のうち1体。
 男女で対になった人形の、男の方で。
 真琴はその人形に、祖父の姿を重ね見てから、また亡霊へと視線を戻す。
 真琴のユーベルコードには、祖父を呼び出すものがある。
 見れば見るほど、亡霊の姿はその時の祖父の姿によく似ていた。
 周囲から見たら、祖父というには若すぎる外見なのだが。
 真琴の祖父母は、真琴の母が幼いころに亡くなっている。
 ゆえに、真琴が知る祖父母の姿は、父母と言っても通るくらい若く。
 目の前に現れた亡霊も、そうだったから。
 あれは祖父だ、と真琴は認識する。
 ゆえに。
「殺して、父さん」
(「何でお祖父ちゃんを父さんって呼ぶの?」)
 琵蕾・喪輝の呼びかけに、違和感と動揺を隠せない。
「あたしが父さんを殺したように」
「父さんも殺して」
「違う、違うよ」
 嗤う琵蕾・喪輝に、真琴は思わず叫び返していた。
「俺は琶咲・真琴! 祖父ちゃんは祖父ちゃんだよ!」
 祖父は渡さないと。
 祖父にそんなことはさせないと。
 必死に声を上げたのだが。
「琶咲……?」
 琵蕾・喪輝は、真琴の思いよりも、真琴の名そのものに反応する。
「琶咲!」
 目の前の敵を反射的に襲っていたかのような無差別なものから。
 明確な真琴への殺意を露わにして。
 日本刀を手にした亡霊が、真琴へ襲い掛かった。
「うわ!?」
「真琴!」
 だがその直前、影の獅子が真琴の前へと飛び出し、亡霊から庇い護る。
 未だ混乱する中で、見覚えのある獅子を見た真琴は。
 ゆっくりと自分の名を呼ぶ声がした方向へと振り返り。
「姉さん……」
 そこに立つ小太刀を、見た。
「真琴」
 その傍らに、帆柱から降りてきたシリンが駆け寄り、声をかけるけれども。
 真琴はそれが聞こえないかのように、揺れる紫瞳で小太刀を見たままだったから。
 シリンは、尚も真琴を狙うように集まってくる琵蕾・喪輝たちを一瞥して。
 真琴の小柄な身体をひょいと抱え上げた。
「小太刀、後を。すぐ戻ります」
 短く告げると、先刻と同じように空中を蹴り、元いた帆へと駆けあがっていく。
 心配そうに出迎える杏に、真琴の身体を寄り添わせて。
「杏、頼みます」
「ん」
 シリンは小太刀の元へと、また空を駆けた。
 その間も、小太刀はじっと琵蕾・喪輝たちを見据えていた。
 牽制するように。そして、その正体を探るように。
 真琴を庇った影の獅子が、自分の傍らに戻ってくるのをちらりと見れば。
 獅子も琵蕾・喪輝から視線を離そうとしていなかった。
 獅吼影牙。小太刀が母から受け継いだ、影の獅子。
(「お前も、感じる?」)
 心の中で問いかけながら、小太刀は、真琴の片翼人形も思い出す。
(「お祖父ちゃんも、何か知ってるようだった」)
 祖父とうり二つの亡霊。
 それを父と呼ぶ琵蕾・喪輝。
 そこに片翼人形と獅吼影牙のこの反応が加われば。
(「あのコンキスタドールは……」)
 小太刀にとって、状況を察することはさして難しいことではなかった。
 でも。だからこそ。
 真琴にはあえて言わず。何も言えず。
 静かに、小太刀は『片時雨』の銘を持つ古びた日本刀を構えた。
 それを待っていたかのように襲い掛かってくる亡霊と切り結び。
 斬り伏せ倒した傍から、次の亡霊が襲ってくる。
 何度倒しても。何度倒しても。
 小太刀に放たれ続ける殺意。
 それはまるで、届かぬ愛情そのままで。
 亡霊が琵蕾・喪輝を護ろうとする意思、そのものだったから。
(「痛いよ」)
 避けきれずにひっかけた切っ先が小太刀の腕に刻んだ小さな傷が。
 そして何より、向けられ続ける愛情と殺意が。
 苦しくて、痛い。
 だからこそ、それを終わらせたいと願って。
「弟も彩雲丸も絶対に護るよ」
 誓いと共に、小太刀は刃を振るう。
 また1体、亡霊を切り伏せた小太刀の背に、琵蕾・喪輝の爪が迫るけれども。
 そこに舞い降りたのは、シリン。
 爪を受けながらカウンターを放ちつつ、小太刀の背に自身のそれをつけた。
 とんっ、と軽く伝わる存在感。
 真琴とは違い、迷いのない背中に。
(「小太刀も、なにか気づいているようですね」)
 より真実に近くにいることを感じながらも。
 今は、敵の掃討が先だとわかっているから。
「話してもいいと思えたなら」
 背中越しに、シリンは言葉だけを届ける。
「後で聞かせてもらいましょう」
 そして、駆け出したシリンは、再び宙を舞いながら敵を狙い撃っていく。
「ねえ、親って何?」
 そこに琵蕾・喪輝の問いかけが重なり。
 また亡霊が増えるけれども。
「故郷の森では部族で子育てをするので、両親と言う概念が薄いのですよね」
 シリンは攻撃の手を止めずに、淡々と答える。
「部族は全員が父母で家族。皆が分け隔てなく、子を慈しんでいました」
「あはははははっ!」
 だが、そんな家族の形が琵蕾・喪輝に届いたのか届かなかったのか。
 壊れた嗤いを響かせながら、琵蕾・喪輝の左目から涙が流れ続けていた。
 そんな戦いの様子を見下ろして。
 杏はそっと、真琴の肩を支える。
(「お祖父さんがお父さんで、お父さんがお祖父さん?」)
 多分真琴と同じように、杏も混乱して、よくわからないけれども。
 1つだけ確かなことは、ここで真琴を殺させたりはしない、ということ。
「うさみん☆」
 だから杏は、回復に飛び回っていたウサミミメイド人形を呼び寄せて、片翼人形と共に真琴に寄り添わせると。
「真琴、待ってて、ね?」
 よいしょ、と帆を降り、戦場へと向かっていった。
 立ちはだかるのは、異形の亡霊。
 お祖父さんだかお父さんだか、その存在はよく分からないけれども。
「殺されたの?」
 問いかけながら、杏は、陽光のように柔らかく白銀の光を灯す剣を構える。
「それは、きっととても悲しくて苦しい。大好きだったから」
 たとえお祖父さんだとしても。
 たとえお父さんだとしても。
 その気持ちはきっと変わりないものだと思うから。
「貴方、間違えないで」
 杏は語りかける。
 琵蕾・喪輝を護るように立ちはだかっている亡霊に。
「哀しみも痛みも辛い気持ち、全部貴方があの子に与えたもの。
 攻撃対象はわたしではない、貴方自身」
 そして、変幻自在の剣を幅広の大剣にすると。
 花弁のように暖陽の彩を舞い散らせながら、思いっきり亡霊を叩いた。
 そんな仲間の援護の中で。
 小太刀も日本刀を振り続けて。
「私にとっての親?」
 その合間に、琵蕾・喪輝の問いかけへと答えていく。
「そうね。大嫌いで大好きで、追いかけても追いつけなくて……」
 どうしても素直にその思いを紡ぐことはできないけれども。
 まだまだその背中は大きく、遠いけれども。
「それでもいつかは届く様に」
 一気に琵蕾・喪輝の目の前へ飛び込むと、振り上げた刀に願いと祈りを込める。
「願いよ、届け」
 桜花鋭刃。
 肉体を傷つけず、邪心だけを斬る一撃。
 ゆえに、ボロボロの和服はそれ以上の破損を見せず。
 傷だらけで血塗れの身体にそれ以上の傷は増えず。
 静かに。ただ静かに。
 琵蕾・喪輝は倒れた。
 涙の止まらない見開かれた左目を。
 見覚えのある傷でふさがれた右目を。
 小太刀はただじっと見下ろして。
 他の誰にも、特に真琴には絶対に、聞こえない程の小さな声で。
「おやすみなさい、お母さん」
 咲かぬ蕾のまま輝きを喪った、あり得たかもしれないある女の子の姿を、送った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ギメイ』

POW   :    デイム・ブランシュ
【戦闘モード】に変形し、自身の【蓄積した魔力】を代償に、自身の【物理・魔法攻撃】を強化する。
SPD   :    アヴェク・トワ
【装飾具】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、装飾具から何度でも発動できる。
WIZ   :    クー・ドゥ・フードル
【武器】を向けた対象に、【落雷】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシエン・イロハです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 大型木造船団との海上戦を制し、グロウ・ブルー島へと向かう鉄甲船『彩雲丸』。
 それを島側から見ている目があった。
「あの船、すごいや……」
 歳の頃は7、8歳。まだかっこいいよりも可愛い印象の強い男の子。
 くるくるとクセのある短髪も、見開かれた大きな瞳も、綺麗な赤色だけれども。
 活動的な軽装も、そこから伸びる手足も、どこか薄汚れている。
 身なりに気をつかう余裕がないかのように。
 必死で何かから逃げてきたかのように。
「あの船なら、もしかしたら皆を……」
 仄かに灯った希望に、赤瞳を輝かせる男の子だったけれども。
「ああ、こんなところにいましたか」
 背後から聞こえた、わざとらしい声にびくっと身体を震わせた。
 振り向いた先に立つのは、芝居じみた大仰な仕草で笑う青髪の男。
 グロウ・ブルー島を狂気の実験で支配するコンキスタドール・ギメイ。
「赤い髪、赤い瞳……そう、貴方です。
 次の実験は、貴方で行いましょう!」
「ひぃっ!?」
 大仰に両腕を広げ、天を仰ぐかのような仕草で台詞を読み上げたギメイに、男の子は表情を引きつらせて走り出した。
 捕まったら、次は自分が実験台にされる。
 次は自分が……殺される。
 恐怖に背中を押され、男の子は必死に走る。
 それは、元々、男の子が行こうとしていた道。
 皆を助けて欲しいと、頼みにいこうと。
 コンキスタドールはここにいるのだと、案内しようと。
 進もうとしていた、港へと続く道。
「助けて……助けて……!」
 その道を、男の子は必死に走る。
 皆のために。
 自分のために。
 そして。
(「兄ちゃんが作ったアイツの弱点を、教えるから……!」)
 男の子は彩雲丸を目指して、走り続けた。
御剣・刀也
真の姿、いしはま絵師のJC参照

てめぇがそうか
あのガキどもの心と体を壊したのは
全部、全部てめぇのせいかぁぁぁぁ!!!

デイム・ブランシュで戦闘力を強化されても、怒りで理性の鎖が外れ、獣のように一直線に、本能的にダッシュで突っ込む
が、それでも体に無意識で反応するまで叩き込んだ武術の動きで見切り、第六感で反応し、残像で避ける
自分の距離に持ち込んだら、渾身の捨て身の一撃で斬り捨てる
「お前に刻んでやる!肉体の痛みと砕かれた魂の痛みを!」
感情のままに刀を振るのは未熟者のすることとわかっていても今この瞬間だけは、激情のままに


セシル・バーナード
! オブリビオンに追われてる子がいる。助けなきゃ!
空間転移を繰り返して、誰よりも早くそのこのところへ。
目眩ましに火の「属性攻撃」を放って、爆炎で視界を塞ぎ、その隙に子供を連れて仲間の方へ空間転移。

こういう時でなかったら、たぶらかしたいなぁ。
なんて下心は今は隠して、「コミュ力」で少年に尋ねよう。あのコンキスタドールの弱点、分かる?
まあ、分からなくても叩き潰すけどね。

基本的には空間転移を繰り返し、コンキスタドールの死角から貫手を放ち続ける。「暗殺」「なぎ払い」「カウンター」「激痛耐性」「見切り」で攻防を行う。

ぼくのユーベルコードをコピー? 残念、空間渡りにしか使ってないよ。この攻撃は全部無手だ。



 はあっ。はあっ。
 荒い息遣いと必死の形相で、男の子は港を目指して走る。
 真っ赤に燃えるような赤い短髪を、もともとのクセ毛以上に乱しながら。
 見開いたその赤い瞳に、今まさに港に入ってきた鉄甲船が見えた。
「助……た……けて……!」
 乱れた息で聞き取れない中で、すがるようにつぶやくけれども。
 開けた道の先にあるとはいえ、鉄甲船まではまだまだ距離がある。
「逃げられるとでも思っているのですか?
 私が、大切な実験体を逃がすとでも?」
 後ろから聞こえた、余裕と笑みとが含まれた声の方が近いくらい。
 それでも、男の子には走るしかなくて。
 かすかに見えた希望に手を伸ばすしかなくて。
「助けて……!」
 かすれた声で、叫びにならない叫びを上げた。
 その時。
「おっと」
 どんっ。
 急に何かにぶつかって、男の子は後ろにひっくり返りかける。
 すぐにぐいっと手が引かれ、後ろから前へ、倒れる方向が変えられると。
 ぽすんっ。
 先ほどぶつかった何かに、今度は優しく受け止められた。
「大丈夫?」
 かけられた声に男の子がおずおずと顔を上げる。
 そこにあったのは、男の子より少しだけ年上と思われる少年の微笑。
 肩口で揃えられた柔らかな金糸の髪が揺れ。
 綺麗な肌を魅せる整った顔立ちの中で、緑色の瞳が優しく笑いかけていた。
 思わず見とれるように、ぽかんと赤い瞳を見開く男の子。
(「可愛いね。たぶらかしたいなぁ」)
 そんな男の子の様子に、狐耳を小さく動かしながら、少年は……セシル・バーナード(f01207)は思わずそんなことを考えていたけれども。
(「でも、今はそんな場合じゃないよね」)
 心の中でだけ苦笑して、下心を見せないままに、男の子を抱き寄せた男の子を背後に庇うようにすると、道の向こうへと手を伸ばした。
 放たれるのは、火の属性攻撃。
 爆炎で、追って来る者の視界を塞いでから。
 セシルは空間を渡った。
 それこそが、セシルが男の子の前に急に現れた理由。
 空間のひび割れを利用した空間転移で、来た道を戻るように、鉄甲船の側へと、より仲間の猟兵達に近い位置へと移動する。
 鉄甲船までは戻らなくてもいいだろうと、適当に開けた場所に現れると。
 急に変わった景色に驚いたように、きょろきょろ辺りを見回している男の子に、くすりと笑ってから話しかけた。
「あのコンキスタドールの弱点、分かる?」
 はっとして、男の子はセシルに向き直る。
 じっとセシルを見つめる大きな赤い瞳は、戸惑いに揺らいでいるようだった。
 猟兵を知っているかは分からないけれど、今しがた見せた空間転移で、セシルが覚醒者ではないかとは思ってくれただろう。
 しかしセシルは、男の子より年上とはいえ、未だ子供。
 それも、荒事には不向きそうな、繊細で中性的な、貴族のような雰囲気だから。
 話していいのだろうか、というような男の子の迷いが見える。
 そんな男の子に、セシルはにっこりと笑いかけて。
(「あまり見つめられたら、口説きたくなっちゃうなあ」)
 宝石みたいに綺麗な目だね、なんて思ったのをそっと隠しながら。
 安心してもらえるように。頼ってもらえるように。
 笑みを絶やさず、揺らぐことなく、男の子の視線を受け止めた。
 そして、もう少し言葉をかけた方がいいかな、と思ったその時。
「この程度で逃げおおせたと思っていたのですか?」
「もう来ちゃったの?」
 かけられた声に、あーあ、とセシルは肩を竦めて、男の子から視線を外した。
 道の向こうに見えたのは、両手を広げた大仰な仕草を見せつつ、こちらにゆっくりと歩いてくるコンキスタドール・ギメイ。
 男の子を追いかけてきて、そして追いついてきた、この島の支配者。
 そっと抱えるように庇うセシルの傍らで、男の子が悲鳴を飲み込んでいた。
 このまま男の子を護りながら戦うのでは不利と思える状況で。
 しかし、セシルは不敵な表情のまま、にっこりと笑って見せる。
「でも、こっちも来たよ」
 その言葉に、ギメイの眉が大げさに持ち上がった、刹那。
 セシルの後ろから、鉄甲船の方向から、黒い影が飛び込んできた。
 黒いジャケットに短い黒髪。
 美しい日本刀を煌めかせて、ギメイに斬りかかったその姿は御剣・刀也(f00225)。
 力強い一撃は、鋭くギメイへと振り抜かれ、その右腕を切り裂いた。
 傷を押さえるようにしてギメイは一歩下がり。
 こちらも一度間を空けた刀也が、セシルと男の子を庇うように立ちはだかる。
「おや、猟兵ですか」
 ギメイはにやりと笑ったまま、刀也を、そしてセシルを見て。
「しかも片方は子供。これは実験のしがいがある」
 右手に持った乗馬鞭でセシルを指し示しながら、左手を大きく広げて見せた。
 どこか説明するような口調。無駄な動作。
 それらは芝居を演じているかのようで、セシルは少し不快だなぁと思ったけれども。
 それ以上に、そして芝居がかった言動の内容そのものに。
 刀也は怒りを露わにしていた。
「……てめぇが、そうか」
 低く暗い、重い声は、押し殺して尚怒りに染まり。
「あのガキどもの心と体を壊したのは……全部、全部てめぇのせいかぁぁぁぁ!」
 青い瞳を怒気に染め、そこに収まらない感情で右目を炎のように燃やして。
 想うのは、先ほど船の上で斬った子供の姿。
 コンキスタドールに成り果ててはいたものの。
 心を壊した笑みを浮かべ、止まらない涙を流していた、傷だらけの小さな身体。
 蒼い闘気を纏った真の姿となった刀也は、再びギメイへ向けて地を蹴った。
「まずは貴方のお相手をしないといけないようですね。
 早く実験を行いたいというのに……仕方ありません」
 迫り来るその姿に、一度無駄に天を仰いだギメイは。
「デイム・ブランシュ」
 蓄積した魔力で自身の攻撃を強化する。
 雷を纏い、威力を上げた乗馬鞭が迫る刀也を狙い振り下ろされた。
 獣のように一直線に走り込んでくる刀也は、怒りに我を忘れているかのように見え。
 そんな単純な攻撃ならば、如何に威力があるとはいえ、迎え撃つなど容易いと。
 ギメイは笑みを深くして……
(「感情のままに刀を振るのは未熟者のすることとわかっている」) だが、振り下ろされた乗馬鞭が叩き消したのは、残像。
(「それでも、今この瞬間だけは」)
 例え理性の鎖を外しても、身体に叩き込まれた天武古砕流が失われることはなく、無意識のうちに刀也は最適な動きを生み出す。
 乗馬鞭を躱した刀也は、獅子吼を振り上げて。
(「激情のままに!」)
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!」
 持てる力を振り絞り、上段から雲耀の太刀を振り下ろした。
「お前に刻んでやる! 肉体の痛みと砕かれた魂の痛みを!」
 刃に乗せた怒りが。
 刀身すら覆う蒼い闘気が。
 鋭く煌めく獅子吼に、ユーベルコード以上にも思える威力を与える。
 一撃必殺の剛剣は、深く深く、ギメイの左肩を、その左腕を切り落とす直前にまで斬り裂いて、その白衣を真っ赤に染めた。
 けれども。
「ああ、痛い痛い。これは大変です」
 どこか他人事のようにそう口にしたギメイは、取れかけた左腕を支え。
 再び手を離した後、何事もなかったかのように両腕を広げて見せた。
 そう、本当に何事もなかったかのように。
 その肩には、そして腕にも、刀也がつけた傷は1つも残っておらず。
 切り裂かれた血に汚れた白衣だけが不自然に揺れている。
 この速さで負傷を回復したのか。
 驚きながらも日本刀を構える刀也に、ギメイはにやりと嗤いかけ。
 その背後に、セシルが姿を現した。
 空間を渡って死角を取ったセシルは、そのまま手刀を繰り出して。
 だが、その一撃は振り返ったギメイの腕に、そこについた大きな翡翠の輝く金属の装飾に受け止められ。
「貴方の力をいただきましょう」
 にやり、とまた面白がるようにギメイが嗤う。
「アヴェク・トワ」
「ぼくのユーベルコードをコピー?」
 その能力を感じ取って、セシルはまた空間転移でギメイから距離を取ると。
 ひょいと肩を竦めて笑って見せた。
「残念、空間渡りにしか使ってないよ」
 本来、手刀にも次元断層を纏うことができるユーベルコードだけれども、セシルが今放った手刀はただの体術。
 部分的なユーベルコードのコピーでは不完全だろうと告げたセシルだが。
「それで充分ですよ」
 ギメイの姿が消え、男の子のすぐ前に現れた。
「てめぇ!」
 咄嗟に刀也が割り込み庇い、男の子を浚うようにその場を離れるけれども。
 回避の動きに向けて放たれた乗馬鞭が、刀也の防御の刃をかいくぐり、したたかにその腕を打ち付けた。
 痛みに、そして増した怒りに、刀也の瞳の炎が蒼く輝く。
「まだガキを狙うのかぁぁぁ!」
 そして男の子を退避させた刀也は、またギメイへと向かう。
 何度も何度も、重い一撃を叩きつけ。
 その傍から傷を消されても。
 一方で自身の負傷は消えず、重なりつつも。
 何度も何度も、その身を顧みぬように、斬り続ける。
 男の子は、座り込んだままそんな刀也の姿を見上げ。
 傍らで、空間転移を警戒するかのようにその戦いを見据えるセシルを見上げ。
『あのコンキスタドールの弱点、分かる?』
 先ほど聞かれた問いが、蘇る。
「……ひすい」
 ぽつり、と男の子の口から零れ出たのは。
「アイツのつけてる宝石を……翡翠を壊して」
 ギメイを倒す、突破口。
 伝えようと思っていた、弱点。
「翡翠を壊せば、アイツを倒せるから!」
 男の子は必死に、ギメイの身体のあちこちを飾る宝飾品を指差して。
 頼まれた伝言を、叫んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、あんなに激しく動いている人の宝石を狙って攻撃なんて無理ですよ。
動いていなければ・・・
そうです、動いているのはギメイさんなんです。
宝石自体は動いているわけではないんです。
あの、アヒルさん、何を当たり前のことをって目で見てますけど、重要なことなんですよ。

見た感じですと、あの装飾具の翡翠がギメイさんを強化しているみたいです。
つまり、強化効果ですね。
お洗濯の魔法は効果をはたき落とすことができます。

アヒルさん、私が翡翠を地面に落としますから、翡翠をつついて壊してください。



 アヒルちゃん型のガジェットに怒られながら、一生懸命戦場へと辿り着いたフリル・インレアン(f19557)にも、男の子の声が届く。
「翡翠を壊して」
「ふえ?」
 大きな赤い瞳を瞬かせ、ギメイへと視線を向けたフリルは。
 その胸元に、腕に、脚に、腰に。
 至る所に飾られた金属の装飾に埋め込まれた緑色の宝石を見た。
(「あの装飾具の翡翠がギメイさんを強化しているみたいです」)
 見た目の印象から、そして男の子の言葉から、そう推測したフリルは、ならばと指示通りに翡翠を狙おうとしてみるけれども。
「ふええ、あんなに激しく動いている人の宝石を狙って攻撃なんて無理ですよ」
 繰り広げられる戦いを目の当たりにしたフリルは、大きな帽子のつばを引き寄せ、顔を隠すようにして蹲る。
 宝石を壊すという行為自体はそう難しくはないけれども。
 戦いの動きの中でそれを行うとなれば、難易度は上がる。
 せめて、ギメイがその場でずっと止まっていてくれるなら……
「そうです」
 そこで、はっと気付いて、フリルは顔を上げた。
「動いているのはギメイさんなんです。
 宝石自体は動いているわけではないんです」
 表情を輝かせて立ち上がったフリルだが。
 その手元のガジェットが、何か言いたげな空気を醸し出しています。
「……あの、アヒルさん。
 何を当たり前のことを、って目で見てますけど、重要なことなんですよ」
 手元を見下ろしたフリルは、しかし負けまいと表情に力を入れた。
 ギメイが身に着けているから、ギメイの動きに合わせて宝石も動く。
 でも、ギメイの身から離れてしまえば、宝石は、ギメイが動いても動かない。
 当たり前のことだけれども。
 それを狙って、フリルはギメイへと飛び込んだ。
 雷を纏い強化された鞭の一撃を何とか躱し、手を伸ばした先にあるのは、袖口の翡翠。
 それを壊す程の攻撃を、回避で不安定な態勢から繰り出すことはできないけれど。
 ぽんぽん、と軽く叩くことならできるから。
 そして軽く叩いたその動きで、ユーベルコードが発動する。
 身嗜みを整えるお洗濯の魔法。
 しつこい汚れもどんな効果も軽くはたき落とすその能力で、至極あっさりと、袖口についていた翡翠がぽろりと落ちた。
「アヒルさん、今です。翡翠をつついて壊してください」
 地面に落ちた翡翠はもう動かない。
 ギメイの前から飛び退いたフリルの手から、ガジェットが飛び出すと。
 ころころと道の端に止まった宝石へ、くちばしの一撃が炸裂した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

生浦・栴
【壁】で
宝石に魔力を込めて増幅やサポートに使うのは定番だが
あの数あの配置は本体の無力さ故か

無限に再生されては徒労であるのと
痛いと云い乍も脳内麻薬の作用を楽しんで居るようにも見えるので
俺からの無駄な攻撃は控えるか

少年の事は、気に掛ける他の者に任せよう
俺自身は近接戦に向かぬので先ずはサポートを
呪詛を練り魔力に変え高速詠唱にものを言わせ、風の魔法でヤツの行動を絡め取る
石の配置等を手掛かりに行動を予測
より動き辛いようにと

俺も禁呪を扱う口だが
未来のある者を悪戯に弄びながら潰す趣味の悪い者は野放しに出来ぬでな
広範囲のUCで全てを砕くは難しくとも衝撃は広く伝わろう
さて、次撃に耐えられる石はどの程度かな?


サンディ・ノックス
【壁】で

あれだけ負傷させても回復できるのは翡翠の効果ってところかな
敵のわざとらしい動作や発言には興味なし
あぁ、でもそれが崩れる瞬間はちょっと楽しみ

回復するならそれだけ何度でも痛くしてあげられるねと微笑んで
黒剣を抜き真正面から斬りに行く

余裕たっぷりな敵は俺が近づいても余裕を見せているだろうし
栴さんが動きを止めてくれるから狙いやすい
攻撃手段は剣だけと思わせておいて至近距離でUC解放・夜陰を発動
翡翠も体もまとめて串刺しにする

敵からの攻撃は痛いけど
お前の実験で壊された子達に比べたらこれくらいなんてことないよ
攻撃の手は緩めない

できるだけ多くの翡翠を壊し決着をつけたいヒトにバトンを渡す…悪くない役目だよね



 大仰な動きに揺れる白衣が、黒髪の男の日本刀に何度も切り裂かれ。
 しかしその傷の全てが刻まれた傍から消えていく。
 サンディ・ノックス(f03274)は、その様子に、へぇ、と声を上げて。
「あれだけ負傷させても回復できるのは、翡翠の効果ってところかな」
 穏やかな青い瞳を緑色の宝石へと向けた。
 その傍らに並ぶように立つ生浦・栴(f00276)も、紫色の瞳をふっと細め。
「宝石に魔力を込めて増幅やサポートに使うのは定番だが」
 視線で追うのは、敵そのものではなく、随所に飾られた緑色の輝き。
 胸元や肩口に。腰のベルトに。袖口のカフスに。太腿や膝下に。靴の留め具にも。
 意匠を揃えた金属の装飾に埋め込まれた、幾つもの翡翠。
「あの数あの配置は本体の無力さ故か?」
 その多さに、栴は半ば呆れているかのようだった。
 そうだね、とサンディも苦笑を零すと。
 暗夜の剣を携えて、翡翠を散りばめた敵へと……ギメイへと足を踏み出した。
 栴も、一度ちらりと情報を与えてくれた男の子が、金糸の妖狐だけでなく、年の近そうな少女達に守られているのを確認してから、ギメイへ向き直り。
 では、と呪詛を練った。
「逃ること能わず」
 迸るは雷。
 それに高速で詠唱を重ね、風の魔法も併せて放ち、狙うはその動きの阻害。
(「無限に再生されては徒労であるし」)
 そもそも栴自身が近接戦に不向きなのは自負しているし。
(「痛いと云い乍も、脳内麻薬の作用を楽しんで居るようにも見えるのでな」)
 無駄な攻撃は控えようと、サポートに徹する。
 翡翠が回復や防御を担っているのなら、と想定を元に、装飾品の配置や大きさなどを手がかりとしつつ、ギメイの動きを予測し。
 より動き辛いようにと呪詛を紡ぐ。
 そうすれば後は、と見送るのは、茶色の髪の後ろ姿。
 引き抜いた暗夜の剣を構え、真正面からギメイへと近づいていくサンディ。
「回復するなら、それだけ何度でも痛くしてあげられるね」
 穏やかに微笑んで告げるその様子に、ちらりとギメイが視線を向けるけれども。
 線の細い、優し気な印象にか。
 構えた黒剣がどこか不釣り合いに感じられるからか。
 そもそも見せていた余裕からか。
「おやおや。何度も私を痛くできると?」
 ギメイは大仰に肩を竦めて見せ、嘲るような苦笑を浮かべながらゆっくりと首を左右に振り、近づくサンディにも余裕の態度を貫く。
 そのわざとらしい動作に、無駄な発言に、サンディの興味はないけれども。
(「あぁ、でも」)
 ふと思い至って微笑むと、黒剣を振り斬りかかった。
(「これが崩れる瞬間は、ちょっと楽しみだね」)
 死角から狙うでもなく、正攻法で繰り出される剣技を、ギメイは、余裕の態度が嘘ではないと証明するかのように、手にした乗馬鞭であしらっていく。
「いいですねぇ。純粋で真っ直ぐな、子供のような剣」
 サンディの剣を捌くのは片手間で十分と言いたげに、やたら身振りを大きくして、ギメイはにやりと口元を歪めた。
「しかし、私を何度も痛くしてくれると言ったのに、いつになったら……」
 だが、その余裕の態度が、ふと、歪む。
 はっと気づいたように眉根を寄せるギメイに、サンディはにっと笑いかけて。
「あぁ、見えちゃったんだ?
 気付かず『俺』に染まっていれば幸せだったのにねぇ」
 その身の周囲に漆黒の水晶が無数に生み出された。
 それは、同化を渇望する悪意を源とした、闇属性の魔力。
 サンディの中に秘められた悪意の欠片が具現化したもの。
 剣技に意識を引きつけておいたそこに、至近距離で放たれた水晶は。
 ひとつひとつが獲物を求めるように、ギメイへ喰らいついていった。
 怒りか苛立ちか、表情を歪ませたギメイは、水晶を叩き落とすべく動くけれども。
 風雷の魔法がその行動を絡めとる。
「俺も禁呪を扱う口だが」
 そこにかけられた声に、ギメイは思い出していた。
 サンディの後ろに、栴がいたことを。
 この程度の呪詛、と思っていたものが、今ここになって厄介なほどに絡みついていることにも気づいて。
「未来のある者を悪戯に弄びながら潰す趣味の悪い者は野放しに出来ぬでな」
 にやりと笑い、尚も呪詛を紡ぐ栴を、ギメイは睨み付け。
「この程度で、私に勝てると思わないことです」
 乗馬鞭をサンディへ向けると、紫がかった落雷が、その細身を撃ち抜いた。
 けれどもサンディは、倒れることなく踏みとどまり。
「お前の実験で壊された子達に比べたらこれくらいなんてことないよ」
 さらに周囲に漆黒の水晶を生み出して。
 真っ直ぐに見据えた青い瞳に、ギメイは不満気にまた表情を歪める。
 そして、もう一度と乗馬鞭を振るおうとしたところで。
 袖口の翡翠に、ぴしっと小さくヒビが入った。
「俺の呪詛では全てを砕くは難しくとも、衝撃は広く伝わろう」
 栴が、その答えを婉曲に伝えれば。
 サンディの剣が、今度は水晶を囮にするようにして振るわれて。
 完全に翡翠を斬り割り、落とす。
 そう、最初から2人の狙いはギメイではなく翡翠。
 男の子が教えてくれた弱点を確実につくことで。
(「できるだけ多くの翡翠を壊して、決着をつけたいヒトにバトンを渡す」)
 朱の差した黒剣を改めて構えたサンディは、反対側の袖口にはもう翡翠がないことを確認し、次の翡翠へと狙いを定める。
(「……悪くない役目だよね」)
 くすり、と微笑みながら、攻撃の手は緩めないと、またギメイに斬りかかっていく。
 そんなサンディの背を押すのは、頼もしき呪詛と、聞きなれた声。
「さて、次撃に耐えられる石はどの程度かな?」
 ふわりと茶色の髪を揺らした風の中を、サンディは小さく微笑みながら、駆けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シリン・カービン
【かんにき】

ヒスイが弱点と知った以上、そこを狙うのは当然です。
急所を知られた上でも私たちと戦うと言うのならば、
ギメイは相当な自惚れ屋か実力者なのでしょう。
侮ることは出来ません。

私は、ヒスイを狙っていく皆をアシストをしながら
奴の実力を測ります。
乗馬鞭を撃ち落とし、足元を牽制し、蓄積した魔力を霧散させる。
ヒスイを狙えるチャンスがあれば遠慮なく狙い撃ちますが。

…同時に切り札の仕込みを。

【シャドウ・ダブル】を発動。
影を放ち、密かに離れた位置に潜ませます。

追い込まれたギメイが見せる最大の隙。
思わぬ反撃に私たちが陥る最大の危機。
いずれであっても、影がその機を逃さず狙い撃ちます。

「あなたは、私たちの獲物」


木元・杏
【かんにき】
男の子!…くせ毛の赤髪、短髪。少しまつりんに似てる気がする
「実験」の言葉にぴくり
以前に行ったダークセイヴァーで行われていた
人狼の子供を使った、実験
…実験は駄目、許さない

男の子も含めて【あたたかな光】
そう、わたしのUCは「味方」へ与えられるもの
貴方の装飾具では受け止められない
さ、小細工無しの力勝負
大野太刀にした灯る陽光を構え一気に近接
ん、鞭が来るなら刀で武器受けし巻き付け、鞭自体を封殺
わたしも攻撃出来ないけど、大丈夫
だって、わたしには仲間がいるもの
怪力でそのまま鞭を奪い取れば
野太刀で弱点を狙う

無事?
落ち着けば男の子のお名前お聞きしたい
あと、お兄さんの事も、よかったら教えて?


木元・祭莉
【かんにき】だよ!

あの子を助ければいいんだね。
オッケー、任せて!

ヒスイ?
ヒスイを狙えばいいんだね!
ん。きっとあの緑のヤツ、のはず!

あの子は、真琴が守ってる。だいじょぶだ。
よし。突っ込む!

おっちゃん!
コドモの実験体が欲しいんでしょ? おいらなんてどう!?
あの子より元気だし、きっと立派なコンキスタドールになるよ!

迎え?に来てくれたら、ニッコリして。
ね、おっちゃんって、おいらより強い?
じゃあ、アンちゃんよりは?
真琴より? コダちゃんよりも?

だよね、無理だよね!
伸ばしてきた手を、軽くぱしんと払って。
至近距離からベルトのヒスイを打ち抜き、飛び退く!

残念でしたー。
子供を舐めたのが、おっちゃんの敗因だよ!


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】
…おや、あちらから子供が走って来るぞ。
癖のある赤い髪…確かにまつりんに雰囲気が似ている。
あの顔色の悪い白衣の男が、コンキスタドールだな。
貴様はここで、必ず倒す。その子に触れるな!

杏のあたたかい光の援護を受け、前へ。体術による接近戦だ!
ブラックバングルから《衝撃波》を放って牽制しながら、
ダッシュで距離を詰める。
突きと蹴りの《二回攻撃》に《フェイント》を交え、
小太刀の海の仲間や真琴のお祖父ちゃんと連携をかけて攻撃継続。
敵に分からぬ程度の《念動力》で攻撃の軌道をズラし、
《カウンター》で【烈紅閃】を翡翠の装飾へと叩き込むぞ。
グレイローズ家秘伝、宇宙カラテの一撃を食らえっ!

※アドリブ絡み歓迎


琶咲・真琴
【かんにき】
祖父母は空中系技能適用

さっきの子
気になることはあるけど
目の前の事に集中、集中!


男の子を護りますよ!
詠唱系技能をフル稼働でUC発動
杏姉さんと力合わせて確実に保護

もう大丈夫です!
あなたは絶対、ボク達が護りますよ

ボクは少年の護りに専念
常にギメイの武器の先にいるように動いて
攻撃から少年をかばい続けます

落雷は薙刀のカウンターやグラップルの衝撃波などで相殺したり
第六感や勘などで少年と一緒に避けたりする


お祖父ちゃんはまつりん兄さんたちのフォローしつつ体術の接近戦で(グラップル・怪力など
お祖母ちゃんは光線で前衛組のフォローをしつつ(援護射撃・スナイパーなど
ギメイに攻撃
隙あらば弱点狙い


アドリブ歓迎


鈍・小太刀
【かんにき】

少年は無事みたいね、良かった
走り抜いてくれた少年の勇気
無駄になんてしないから、絶対に!

少年と保護役の真琴達を背に庇い
勿忘草色のオーラ防御を盾の様に展開
海水を含ませる事で避雷針に仕立て
落雷のエネルギーも地中に流して回避する

桜雨(メガリス竜宮の玉手箱)を手に
ウサミミな海の仲間達を召喚
ホワイトランス(巨大イカ)に
グレートアンコウ(巨大アンコウ)
サメにマグロにウミヘビにシャチ達も
色んな仲間達にウサミミを生やしてパワーアップ!

正面から派手に攻撃する彼らに陽動役をお願いしつつ
その陰で私も戦場を駆け距離を詰め
片時雨と暗殺技能で翡翠を斬る

メガリスの実験なんてもうさせない
大人しく骸の海に還りなさい!



 新たな戦場へと向かう道の途中、琶咲・真琴(f08611)はふと、後ろを振り返った。
 そこには、少し遠くなった港と、そこに停泊する彩雲丸が小さく見えて。
(「さっきの子……」)
 降りたばかりの鉄甲船の上での戦いが、真琴の頭をよぎる。
 琶咲という自分の名に酷く反応していた、子供。
 祖父に似た異形を父と呼んでいた、子供。
 血塗れで傷だらけでボロボロで、嗤いながらも泣き続けていた……女の子。
(「一体、あの子は……」)
 他のコンキスタドールとは違う、と思う。
 何か自分との縁のようなものを感じる気が、する。
 でも、その『何か』が何なのか、真琴には分からなくて。
 どこか様子のおかしかった2体の片翼人形は、今はもう、いつもと変わらず真琴の周囲に寄り添うように飛んでいて。
 すぐ前を行く、姉の鈍・小太刀(f12224)も、振り向くことなく前へと進んでいて。
(「気になることはある……けど」)
「……無事みたいね。良かった」
 そこに聞こえた小太刀の呟きに、真琴は、改めて前へと向き直った。
 進む先に見えたのは、また子供の姿だったけれども。
 鮮やかな赤い色のくせのある短髪と、怯えたように見開かれる大きな赤い瞳。
 先ほどの子供達とは全く違う容姿の男の子に、真琴は迷いを振り払うように首を左右に振ってから、ぐっと胸元で両手を握りしめる。
(「今は、目の前の事に集中、集中!」)
 頑張って顔を上げた真琴へ、片翼人形が見守るように寄り添った。
「男の子……少しまつりんに似てる気がする」
 木元・杏(f16565)も男の子の姿を見つけ、こちらは双子の兄を重ね見る。
「ん?」
 呼んだ? と首を傾げたのはその木元・祭莉(f16554)で。
 元気に跳ねている赤茶の短髪を見たガーネット・グレイローズ(f01964)も。
「確かに、まつりんに雰囲気が似ているね」
 くすりと微笑みながら、賛同して頷く。
 祭莉の方が明らかに年上だから、どちらかというと兄弟のような印象だけれど。
 大好きな兄に、見知った友に、似ているとなれば親近感も覚えて、守らなければならないとより強く思えるから。
 そうかな? と首を傾げる祭莉に、シリン・カービン(f04146)も淡く微笑みながら、男の子の元へとたどり着いた。
 金色の妖狐に庇われた子供は、近づくこちらへ振り向き。
 その赤瞳に怯えの色がまだ残っているのが見えたから。
「無事?」
 杏は安心させるように柔らかく微笑んで、男の子の近くに寄り添う。
「もう大丈夫です! あなたは絶対、ボク達が護りますよ」
 真琴も声をかけながら、男の子の手を取り、ぎゅっと握りしめて決意を告げれば。
 同じ年頃の見た目は可愛い女の子を見上げた男の子の頬が少し赤く染まった。
 でもそこに、にょっと祭莉が覗き込んで。
「この子を助ければいいんだよね?」
「ええ、そうです」
 驚き思わず仰け反った男の子が目を瞬かせるのを見下ろしながら、シリンが静かにうなずいて見せる。
「オッケー、任せて!」
 にぱっと目の前で咲いたひまわり笑顔に赤瞳を見開いた男の子の前で、祭莉はくるりと踵を返し、シリンと共に駆け出した。
 その2人と入れ替わるように、小太刀が現れ、男の子をちらりと見やると。
「走り抜いてくれた勇気、無駄になんてしないから。絶対に!」
 告げるや否や、ふいっと視線を反らして、小太刀も2人の後を追う。
 そして。
「あの顔色の悪い白衣の男が、コンキスタドールだな」
 祭莉が、シリンが、小太刀が向かった先を、ふむ、と眺めるガーネット。
 細身ながらも力強い、漆黒の外套に覆われた背を男の子に向けたまま、長い赤髪を真っ直ぐに揺らして、コンキスタドール・ギメイを見据えると。
「貴様はここで、必ず倒す。この子に触れるな!」
 手首につけたブラックバングルに手を添えつつ、地を蹴った。
 そんな皆を見送った真琴は、護りは任されたと薙刀を構え。
 発動させるのは、神羅畏楼・加籃菜。
 男の子と自らを中心に、鉄壁の白炎を幾重にも作り上げる。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん」
 そして、自分の代わりにと、2体の片翼人形を仲間の補助へと飛ばした。
 目まぐるしく動く猟兵達を見てか、男の子の怯えはいつの間にか驚嘆に変わり。
 気持ちが少し落ち着いたように見えたから。
「わたしは、杏。木元・杏。
 あなたの名前、聞いてもいい?」
 杏はこくんと首を傾げ、男の子に問いかけた。
 ゆっくりと傍らへ振り向いた男の子は、杏の金瞳を見つめて、おずおずと口を開く。
「……ルビ」
「ん、ルビ。
 教えてくれて、ありがとう。名前も、コンキスタドールの弱点も」
 ふわりと微笑むと、ルビの表情がくしゃっと歪む。
「頼まれた、から……グルナ兄ちゃんに」
「お兄さん? ルビの?」
「うん。オレの、たった1人の……」
 答えながら次第に俯いてしまったルビだけれども、杏は変わらぬ笑顔を向けた。
「ありがとう。わたし達に、託してくれて」
 はっと顔を上げたルビの瞳から、ぽろぽろと涙が零れる。
 それは、どこかホッとしたようなものであり。
 嬉しそうにも哀しそうにも見えるものだったから。
 真琴は一度、紫瞳を伏せてから、また力強く前を見据えて、告げる。
「託された情報、無駄にはしません」
 構えた薙刀の先で、シリンの放った精霊猟銃がギメイの胸元の翡翠を狙って放たれた。
「弱点を知った以上、そこを狙うのは当然です」
 振るわれた乗馬鞭に銃弾を落とされながらも、シリンはまた猟銃を構え。
 それを見た祭莉が、なるほど、と首を縦に振る。
「ひすいを狙えばいいんだね!」
「おっ。まつりんは、宝石もよく知ってるんだね」
 感心感心、と褒めるガーネットに、祭莉はにぱっと笑うと。
「もちろん! きっとあの緑のヤツ、のはず!」
 合っているけれどもちょっと不安に感じる回答をしてから。
 拳を硬く握りしめて、ギメイへと殴り掛かっていった。
「光よ、皆を守れ」
 その背に杏の声が響き、あたたかな光が広がっていく。
 支えてくれる力を感じて。
 そして、男の子を護ってくれる姿を見て。
(「あの子は、だいじょぶ」)
「よし。突っ込む!」
 祭莉は迷いなく飛び出した。
 男の片翼人形が並走するようにぴたりとその動きにつき。
 接近までの牽制に、シリンの銃弾が、ガーネットの衝撃波が、そして女の片翼人形から光線が放たれて。
 元気に灰燼拳が繰り出される。
 だが、ギメイはその拳をひらりと躱し、その動きから大きく腕を振るいつつ、戦闘モードで威力を増した乗馬鞭で祭莉を狙う。
 しかしそこに男の片翼人形が接近し、鞭を持つ腕を狙うと。
 それを躱すべく動きが乱れ、その隙に祭莉は一度距離を取った。
 攻防を見ていた小太刀は、勿忘草色のオーラを真琴やルビの前に盾のように展開してから、すっと1つの箱を取り出し、差し出す。
 黒漆に螺鈿細工の桜が舞うその美しい箱は、潮騒と共に懐かしき友を呼ぶ、メガリス竜宮の玉手箱。
「行くよみんな!」
 かけた声に応えるように、海の仲間たちが召喚された。
 ホワイトランスにグレートアンコウ、サメにマグロにウミヘビ、シャチ達も。
 様々な種類の仲間たちが喚び出され。
 そのことごとくにウサミミが揺れている。
 どこかミスマッチのようで、不思議としっくりきてしまう可笑しな姿の海の仲間たちだが、ウサミミはその戦闘能力を上げていて。
 さらに飛翔能力も付与され、海ではなく空を泳ぎ、一斉にギメイへと襲い掛かった。
 だが、種類が違えばスピードも違い、また攻撃方法も異なるから。
 ウサミミ巨大イカの脚がにょろりと回り込み、ウサミミウミヘビがその身体をくねらせて、ウサミミ巨大アンコウが足元から突き進めば、上方からウサミミサメが急降下。
 タイミングも方向も多様な波状攻撃となっていく。
 鞭を振るい、雷を放ち、何とかそれを凌ぐギメイだけれど。
 そこに今度はガーネットが飛び込んだ。
 ウサミミシャチの影になるようにしつつ、ダッシュで一気に距離を詰めると。
「多少手荒にいかせてもらうぞ」
 紅いエーテルを纏った手で突きを繰り出す。
 鮮血のような、酷く目を惹く紅い軌跡は、しかし紙一重でギメイに躱されるけれども。
 その流れから、間髪入れずに繰り出された蹴りが、かろうじてガードに立てたギメイの腕を強打する。
 そこにウサミミマグロが体当たりするように突っ込んで。
「グレイローズ家秘伝、宇宙カラテの一撃を食らえっ!」
 態勢を崩した所を見逃さず、ガーネットがさらに追撃を放った。
 しかしギメイもその動きを見切り、またギリギリで躱そうと動いていく。
 けれども、ガーネットは自身へと念動力を向け、攻撃の軌道をわずかにずらして。
 予測より僅かにズレた徒手空拳は、カウンターとなって、避けきれなくなったギメイの胸元の翡翠を1つ、叩き壊した。
「次から次へと……これ以上私の大切な実験の邪魔をしないでいただきたい!」
 苛立った声を上げ、ギメイは乗馬鞭を大きく振るう。
「クー・ドゥ・フードル」
 その動きに合わせ、落雷がルビを狙うけれども。
 小太刀が展開していたオーラの盾には海水が含まれていたから。
 避雷針の役目を果たした盾は、落雷のエネルギーのほとんどを地中へと流し。
 その余波を真琴の白炎と薙刀がしっかりと防いだ。
 ルビが無事なのを見て、ホッとした杏は。
「実験……」
 ギメイの言葉に顔を顰め、振り返る。
 思い出すのは、ダークセイヴァーで行われていた、人狼の子供を使った実験。
 元気な狼耳とふかふかの狼尻尾を揺らす祭莉を視界の端に映しながら、灯る陽光を大野太刀へと変形させて。
「……実験は駄目、許さない」
 ギメイへその切っ先を向け、構えた。
 しかし、その杏の前に割り込むように、祭莉がもう一度飛び込む。
「おっちゃん! コドモの実験体が欲しいんでしょ? おいらなんてどう?」
 そして、ギメイの気を惹くように声を上げた。
「あの子より元気だし、きっと立派なコンキスタドールになるよ!」
「まつりん……」
 杏が非難するような、複雑な表情を見せていたけれども。
 祭莉はギメイににぱっと笑いかけてみせる。
 しかしギメイは、やれやれ、といったように大仰に首を左右に振ってから。
「何を勘違いされているのか。
 私が欲しいのはコンキスタドールなどではありません。覚醒者ですよ」
 両手を広げ、芝居がかった仕草で力説した。
「私の望むように踊らされ、世界を滅亡に導く覚醒者……そう、塵造魔王死縁です!」
「よくわかんないけど……
 で、おいらはどう?」
 こくん、と首を傾げながら祭莉がもう一度問えば。
 ギメイは、ふむ、と考える仕草を見せながら祭莉へと近づいてきて。
「そうですね。今までにはない実験にはなりそうですから……」
 迎え入れるようなギメイを見上げた祭莉は、ニッコリと笑った。
「だよね、無理だよね!」
 そして伸ばされた手を、軽くぱしんと払うと、至近距離で繰り出される灰燼拳。
 それは祭莉のほぼ眼前にあったベルトの翡翠を殴り砕いて。
「残念でしたー。子供を舐めたのが、おっちゃんの敗因だよ!」
 悪戯を成功させた子供のように笑いながら、祭莉はその場を飛び退いた。
 入れ替わるようにそこに割り込んだのは、杏。
「まつりんを実験体になんて、させない」
 陽動と分かっていても、不本意な祭莉の言動から生じた怒りも乗せて。
 大野太刀を大きく振り下ろす。
 だがその軌跡の先に、ギメイの腕がガードするように差し出され。
「アヴェク・トワ」
 切っ先は、装飾の金具で受け止められた。
「……それは、ユーベルコードのコピー?」
 杏はその効果を察し、にやりと嗤うギメイをじっと見据えると。
「駄目。わたしのユーベルコードは『味方』へ与えられるものだから」
 大野太刀に、写し取られるものはないと告げる。
「さ、小細工無しの力勝負」
 顔を歪めたギメイへと、杏はさらに大野太刀を振るった。
 暖陽の彩を花弁の如く舞い散らせ、幾筋もの軌跡を刻むけれども。
 その全ては乗馬鞭に受け止められ、阻まれる。
 大人と女の子との体格差は如実に攻撃の重さに出るから。
 怪力でカバーしても、杏にギメイを押し切ることはできず。
 だから杏は、乗馬鞭の攻撃を刀で受けるとともに、巻き付けるようにして封じる。
「おや、これはこれは器用なことを。
 しかし、これでは貴方も……」
「ん。わたしも攻撃出来ないけど、大丈夫」
 面白がるように、嘲るように、見下ろしてくるギメイを、だが杏は慌てず見返して。
「だって、わたしには仲間がいるもの」
 その背後から、ガーネットが飛び出した。
「穿ち、砕く!」
 放たれた紅い拳は、太腿を飾っていた翡翠の1つを叩き壊し。
 その衝撃に動揺するギメイから、鞭を大野太刀に絡め取り奪い取った杏は、そのまま太刀を切り返し、もう1つ、ガーネットが壊したものと並んで輝く翡翠を斬り断った。
(「大分、翡翠が減りましたね」)
 飛び退き間を空ける杏に追いすがるギメイへと、牽制の銃撃を入れながら、冷静にシリンは状況を認識する。
 数多く輝いていた緑色の宝石も、もはや指を折らずに数えられる程。
 それでもシリンは油断なく、精霊猟銃を構える。
(「急所を知られた上でも私たちと戦っているのですから、ギメイは、相当な自惚れ屋か実力者なのでしょう」)
 前者であればよいが、後者なら侮ってはいけないと。
 取り落とした乗馬鞭をさらにギメイから遠くに飛ばすよう、銃弾を放った。
(「それにしても、急所である翡翠を庇わなすぎです」)
 まるで、翡翠が急所であるとギメイが気付いていないかのようにも感じられるから。
 何かの誘いかと警戒しながらも、シリンはさらに数を減らしていく宝石を見据える。
(「侮ることは出来ません」)
 ゆえにシリンの影は、静かにギメイの足元に広がっていて。
 猟銃で狙うとともに、別のチャンスをも狙っていた。
 そして、その時がやってくる。
 ギメイの真正面から一気に押し寄せるウサミミな海の仲間たちと、その左右を並走する祭莉とガーネット。
 その全てを陽動にして、小太刀が片時雨を手に死角から迫る。
「メガリスの実験なんてもうさせない」
 切っ先以上に鋭い紫の瞳が、ギメイを強く睨み付けて。
「大人しく骸の海に還りなさい!」
 古びた外見からの印象を打ち砕く鋭い刃が、ギメイの肩口を翡翠ごと切り裂いた。
「くっ……これは、どういうことです!?」
 傷はさほど深くないものではあったけれども。
 回復せずに残った傷口に、ギメイが動揺を見せる。
「何故、何故傷が消えない!?」
 傷口に触れて赤く染まった手を、上を見上げた顔の前に掲げて、信じられないものを見るように大仰な驚愕の表情を浮かべたギメイに疑問を覚えながらも。
「闇よ来たれ、影よ行け」
 シリンは闇の精霊が形作った自身の影を、ギメイの背後に現した。
 影は完全にギメイの隙をつき、至近距離で精霊猟銃の影を構え、突き付ける。
 合わせてシリンも精霊猟銃の狙いをギメイの靴に向けて。
「あなたは、私たちの獲物」
 銃弾は、靴についた翡翠を撃ち落とすと共に、ギメイにも傷跡を刻み。
 シリンは、影に戻っていく闇の精霊と共に、猟銃を下ろした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シノ・グラジオラス
シエン(f04536)と

うわ、ウっザ。事前にシエンに話聞いてて助かったわ
にしてもシエン、かなり好かれてんな。あの子、アンタそっくりだぞ
(カラリと笑って)いいんじゃね?その分、周囲を気にせずやれそうだ
ヒスイへの攻撃がし辛ければ…って言うだけ野暮だったみたいだな

ネーミングセンス最悪だな
あんまり人の相棒苛立たせんの止めてほしいんだが

シエンへの攻撃は『かばう』が『見切り』『武器受け』でダメージは最小限にしつつ、
『2回攻撃』『生命力吸収』を乗せた命中率を重視の【紅喰い】で常に万全近くを保って
翡翠を狙い、『マヒ攻撃』も乗せて徐々に相手の自由も奪う

最後は必ず、シエンに譲る。アンタ自身で引導渡してやんな


シエン・イロハ
シノ(f04537)と

翡翠を壊せ、ね
クソウゼェ性格は相変わらずみたいだな

シノてめぇ、考えないようにしてたのにわざわざ言うんじゃねぇ
好かれてたまるかよ

最高傑作だの、塵造魔王死縁だの、うるせぇんだよ一々
死の縁だって言うんなら…紡がれんのはテメェの死だ

『先制攻撃』『2回攻撃』『投擲』『部位破壊』で【シーブズ・ギャンビット】
翡翠の装身具を壊す事を優先
回避は『見切り』

トドメはベスティアで
20年以上前にテメェから奪ったもんだ
借りも、こいつも、ようやく返せるってもんだ

ギャーギャーうるせぇよ
これは復讐じゃねぇ
ただ俺が、テメェを殺したかった、ただそれだけだ



「何故です!? 何故私が、こんな傷を……こんな血を!」
 血塗れの手を戦慄かせ、愕然とした表情を見せながらも、どこかまだ芝居じみた大仰な仕草と台詞を見せるギメイ。
 振り乱す青い長髪も、大きく広がる白衣も、狂気に染まった表情も。
 その全てが、シエン・イロハ(f04536)の記憶にあるそのままだった。
 ……あの日。
 シエンの家族を化け物に変え、シエンの故郷を滅ぼした原因。
 やっとたどり着いた、宿敵、と呼ぶべき存在。
 そのギメイを前にして、シエンは。
 酷くウンザリした、疲れたような顔を見せていた。
「クソウゼェ性格は相変わらずみたいだな」
 仇を見つけた高揚感も、戦いの前の興奮も何もなく。
 ただただひたすらに嫌悪感だけを感じているかのようなシエンに。
「うわ、ウっザ。事前にシエンに話聞いてて助かったわ」
 傍らに立つシノ・グラジオラス(f04537)も、揃ってげんなりしていた。
 そして、ふとシノが視線を向けたのは、妖狐や女の子達に守られた男の子・ルビ。
 その容姿は、傍らのシエンと同じ、赤髪赤瞳だったから。
「にしてもシエン、かなり好かれてんな。あの子、アンタそっくりだぞ」
「……てめぇ、考えないようにしてたのにわざわざ言うんじゃねぇ」
 シノがひょいと指で示した方向を振り向きも一瞥もせず、好かれてたまるかよ、とシエンが呻いた。
 今は見ないようにしているけれども、ちゃんとその特徴を把握している辺り、ルビが無事かどうかしっかり確認していたのかと、シノは気付かれないように苦笑して。
「いいんじゃね? その分、周囲を気にせずやれそうだ」
 眼帯をしていない右目でにやりと笑い、ギメイを見た。
 気付けばギメイは手元から顔を上げ、さらに驚いたような表情を見せ。
 その狂った瞳をにやりと歪めると、シエンに手を差し伸べる。
「ああ、これは何という僥倖か。
 私の最高傑作が戻ってくるとは」
 まるで舞台の上で喜びを表現するかのように両手を広げ。
 そのまま近くに来ればシエンを抱きしめんばかりの勢いで。
「さあ、私の塵造魔王死縁。最高の手駒。
 手始めに、この島を滅ぼしましょう!」
「うるせぇんだよ、いちいち」
 歓喜の表情に、シエンはさらなる嫌悪を示しながら、プラエドーの1本を握りしめた。
「死の縁だって言うんなら……紡がれんのはテメェの死だ」
 使い慣れた形のタガーを手に、ギメイへ迫るシエン。
 だが、ギメイの身体には、かなり数を減らしたとはいえまだ翡翠の装飾が残っていて。
 弱点という情報がある以上、そこを狙うべきではあるのだが。
(「ヒスイ……だったよな。シエンの兄の名は」)
 ふとそれを思い出したシノは、躊躇いながらもシエンの背に声をかける。
「翡翠への攻撃がし辛ければ……」
「あぁ?」
 しかし、振り向きもせずにシエンはギメイへとタガーを振るい。
 何の抵抗もなく、ギメイの膝に輝く翡翠を叩き割っていたから。
「……って言うだけ野暮だったみたいだな」
 シノは苦笑を噛み潰した。
「塵造魔王死縁! さあ、あの時のように!
 親も子も全て殺し尽くして見せなさい!」
「ギャーギャーうるせぇよ」
 そして、傷を負い血にまみれながらも笑みを浮かべ、高揚した声を上げるギメイへと、さらに苛立った様子のシエンを追うように、シノも戦いに加わり。
「ネーミングセンス最悪だな」
 狼化しながら、牙を見せるように笑いかけた。
「あんまり人の相棒苛立たせんの止めてほしいんだが」
 赤茶色の毛並みの人狼と化したシノは、その太い爪を振るい、襲い掛かる。
 攻防の最中、最後の翡翠が狙撃で砕かれたのを見て。
「シエン」
「だからうるせぇ」
 知らせるように名を呼んだシノにも、シエンの怒声が飛んだ。
 だがその声には、戦いを楽しむような響きも含まれていたから。
 シノは苦笑してシエンの援護へと回る。
(「アンタ自身で引導渡してやんな」)
 乗馬鞭を手放し、装飾具を壊されたギメイの攻撃は、体術と雷。
 落雷の的になりにくいよう、動き回りギメイを撹乱し。
 タガーを投げ、また遠吠えによる音波で、その体術を封じながら。
 黒剣が、日本刀が、拳が、呪詛が、狙撃が、ウサミミが。
 ギメイに傷を重ねていく。
 翡翠を失ったギメイの傷は、癒えることはなく。
 だんだんとその動きが鈍くなっていくけれども。
「やはり塵造魔王死縁、私の最高傑作に間違いはない。
 ああ、もっともっと、壊して壊れていく様を見ていたいというのに」
 ギメイはもう、傷や血に取り乱すこともなく。
 ただシエンの動きだけをじっくりと眺め、追っていた。
「本っ当にクソウゼェ」
 シエンは、タガーを投げ捨て、黒塗りのシンプルな槍を手にすると。
「20年以上前にテメェから奪ったもんだ」
 かざして見せるような動きから、思いっきり捻り突き出し。
 ギメイの胸板を穿ち貫いた。
「はは……ベスティア、ですか……」
「借りも、こいつも、ようやく返せるってもんだ」
 血を吐きながらも嗤うギメイに、シエンはにやりと笑い返す。
「これで……復讐は終わり……だと……?」
 何故か愉悦のこもった声で、かすれながらもギメイが問うけれど。
「いや。これは復讐じゃねぇ。
 ただ俺が、テメェを殺したかった、ただそれだけだ」
 シエンはあっさりと告げ、槍から手を放し。
 支えるものがなくなり、倒れ込むギメイを見下ろす。
「偽の命に死の縁だ。これ以上の終わりはねぇだろ」
「ふははは……はは……」
 そうして、いつもと変わらぬ笑みを浮かべて消えゆくギメイを見送るシエンを。
 シノは、静かに見ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『蒼海の蛍』

POW   :    己の直感を信じて進め!

SPD   :    現地住民からの情報で向かう!

WIZ   :    地図を書き起こし目的地へ!

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 島を支配していたコンキスタドール・ギメイを倒してから。
 助けた男の子・ルビの案内で、猟兵達は囚われていた島民達を解放に向かった。
 島の中央にある、神殿だったと思しき古い建物がギメイの実験場だったらしく。
 まずはそこに集められ、閉じ込められていた子供達を解放。
 続いて、神殿の地下室へと押し込められていた大人達の元へと赴く。
「アイツは、子供ばっかり実験に使ってたんだ」
 猟兵達にお礼を告げながら、島民達は島の置かれていた状況を語りだす。
「子供がコンキスタドールになると、その親を引きずり出していった」
「そして、目の前に突き出して、殺させたんだ」
「何人も何組も……親子が死んだ。殺された」
「1人だけ、覚醒者になれた子がいたんだよ」
「でも、これは違うって言われて、グルナはアイツに殺された」
 しんみりとした雰囲気が、古神殿に満ちる。
 その中で、1人の大人がはっと気づいたように声を上げた。
「そうだ! 海賊旗のメガリスを壊さないと!
 あれがあると、どこからともなく増援が出現してしまう!」
 ざわめく島民達に、猟兵達は申し出る。
 そのメガリスを破壊に行くと。
「あれは、島の中央にある。洞窟の中に置いていた」
 島民達が示したのは、神殿のすぐ近くに大きな入り口を開けていた洞窟で。
 かなりの規模を持つ天然の迷路のようになっているとか。
「……あのね」
 話の最中、おずおずと声をかけてきたのは女の子達。
 こんなこと言っていいのかな、と互いに顔を見合わせながら、それでもと口を開く。
「洞窟はね、壁とかに魔力石が埋まってる場所なの。
 それでね、その魔力石からはね、光が滲み出て、ふわふわと辺りを照らすのよ」
「小さな虫が飛んでるみたいに、青い光が幾つも浮かんでね。
 すごく綺麗で、幻想的で、みんなのお気に入りの場所なの」
「だから……もしよかったら、こんな時だけど、楽しんでもらえたらなって」
「私達のお気に入りを、気に入ってもらえたら嬉しいなって」
 その話を聞いて、猟兵達は思い出す。
 この島の名前。グロウ・ブルー。
 それはきっと、その洞窟で見れる光景から付いた名なのだろう。
 島の名前になるほどに、島の民に愛された光景なのだろう。
 大変な事があった時でさえ見知って欲しいと願う程に、誇れる光景なのだろう。
 そして、猟兵達は。
 島民に見送られて、洞窟の中へと足を踏み入れていった。
御剣・刀也
POW行動

洞窟か
蛍みたいで幻想的だな。これはこれで良い
俺は自分の勘を信じて進むだけだ

直感と第六感でズンズン進んでいく。行き止まりに当たったらそれはそれ。戻って違う道を進んで旗を目指す
蛍のように幻想的な洞窟の情景を楽しみながら、足は止まることなくズンズン進む
旗を見つけたら両手で持って無造作にへし折る
(親子の絆を弄んだ外道が。親は子供を守るもんだ。無念だったろう。成仏しろよ)



「洞窟か」
 御剣・刀也(f00225)はゆっくりと周囲を見回しながら、そこを進んでいた。
 天井は長身の刀也が苦も無く歩ける程に高く、大人が2人並んで歩いても余裕があるくらいの横幅もあって、道は広く。
 緩い下りの傾斜や分かれ道がかなり頻繁にあることからも、全体はかなり大きなものと推測される。
 もしかしたら島全体の地下に広がっているのではないだろうか。
 そんな巨大な洞窟は、だがとても歩きやすくなっていて。
 もちろん、壁も天井もごつごつの岩肌が露出しているし、足元に起伏はあるけれども、進むのを断念せざるを得ないようなものは1つもなく。
 道として最低限整備されているかのような印象もあった。
『みんなのお気に入りの場所なの』
 はにかむように言った女の子達の言葉が思い出される。
 多くの島民がここを通り、踏み均したのだろう。
 幾度も通い、奥へ奥へと道を広げていったのだろう。
 そうするだけのものが、この洞窟にはあったから。
「確かに。蛍みたいで幻想的だな」
 穏やかな青い瞳を細めて、刀也はゆっくりと周囲を見回す。
 そこにふわりと漂うのは、淡くぼんやりとした青い光。
 指先程の小さな光は、地面に落ちることなくふわふわと漂っていて。
 小さな虫か何かが飛んでいるかのようにも見えた。
 その青い光が、数えきれない程無数にある。
 まるで、星空の中を歩いているかのように、青い光は刀也を取り囲み。
 他に何の光源もなくとも、道行きを淡く照らし出す。
「これはこれで良い」
 ふっと口元に笑みを浮かべた刀也は、光の中を進んでいった。
 迷いなく足を踏み出すけれども、刀也は道を知っているわけではなく。
 自らの感覚だけでずんずんと歩いていく。
 当然、行き止まりに当たることもある。
 同じ分かれ道に戻ってしまうこともある。
 けれども、それはそれ、と道行きを楽しんで。
 戻ってはまた進み、次は別の道を選んでまた進み。
 足を止めることなく、青い光の中を進んでいく。
 そうして辿り着いたのは、少しだけ開けた場所。
 道よりもちょっとだけ天井が高く、ちょっとだけ横幅の広い、小さな小さな部屋のようなその場所の中央に。
 1本の海賊旗が突き立っていた。
 旗に描かれた柄は、王笏。
 七大海嘯と呼ばれる強大なコンキスタドールの印であると共に。
 その配下であり、この島を支配していたコンキスタドールを表すもの。
(「親子の絆を弄んだ外道が」)
 部屋の入り口で足を止めた刀也の脳裏に、先ほどまでの戦いが思い出される。
 うすら笑いを浮かべ、芝居がかった大仰な仕草が癪に障る相手が。
 そして、悲痛に嗤いながら泣き続けた子供達が。
(「親は子供を守るもんだ」)
 我知らず、刀也の両手は強く強く握りしめられていて。
 険しくなっていた表情で、海賊旗を見据える。
 そして、止まっていた足を踏み出して、手を伸ばしかけたそこに。
 不意に横から飛んできたアヒル型のおもちゃのようなものが、見事に旗をへし折った。
 思わず目を瞬かせる刀也の前で、倒れた旗の布がアヒルの上に被さって。
 もぞもぞと蠢く王笏の柄を、何とも言えずにしばし見下ろす。
 そのうちに、刀也の肩から力が抜け。
 ふぅ、と大きく大きく息を吐いてから。
 刀也は、洞窟の中からは見えない天を仰ぐように、上を向く。
(「無念だったろう。成仏しろよ」)
 見上げたそこにも青い光は漂っていて。
 淡く優しく、刀也を見下ろしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわあ、すごく綺麗な洞窟ですよ。
こんな時でなければ、ゆっくり見ていきたかったですね。
でも、もっと凶暴なコンキスタドールさんが現れたらここも壊されてしまうかもしれないから、急いでメガリスは破壊しないといけませんね。

ふええ、止まれません。
って、今回はそのまま直進でいいんですけど
ふえ、いたた、もうすぐでメガリスって所で転んでしまいました。
このままではまたコンキスタドールさんがここに来てしまいます。
あ、転んだ勢いで投げ出されたアヒルさんが旗を突き破ってくれたんですね。
ふえぇ、間に合ってよかったです。



「ふわあ、すごく綺麗な洞窟ですよ」
 フリル・インレアン(f19557)はきょろきょろと落ち着きなく辺りを見回しながら、青い光の中を進んでいく。
 淡く輝くその光景はとても美しく、幻想的だったけれども。
「こんな時でなければ、ゆっくり見ていきたかったですね」
 フリルは自分の役目を思い出し、苦笑しながら前を向いた。
 目指すのは、コンキスタドールの海賊旗。
 新たな敵を招き寄せてしまうメガリス。
 この洞窟の中のどこかに置かれているというそれを、フリルは壊しに来たのだから。
「もっと凶暴なコンキスタドールさんが現れたら、今度はここも壊されてしまうかもしれませんからね」
 島民を守るべく。
 そしてこの美しい島そのものを護るために。
 両手で掬うようにアヒルちゃん型のガジェットを持ったまま、フリルは走り出した。
 やっと島に戻った平穏のために。
 次の敵を呼び寄せてしまう前に。
 急がなくてはとはやる心のままに、全力で洞窟を走って、走って。
「ふええええ、止まれませーん」
 気付けばフリルのユーベルコードが発動していた。
 その効果もあって、フリルはただただ真っ直ぐに、分かれ道に迷う暇も、道を選ぶことすらもできずに突進していき。
 運よく行き止まりに突き当たらないまま、走って、走って。
 その目の前が開けた。
 いや、開けた、といっても、これまでの道より少し広い場所、というくらいで。
 幾つかの道が合流しているだけの、かろうじて小部屋と言えるくらいの広場。
 そこにも、他の場所と同じく青い光が漂っていて。
 そして、その中央に『王笏』の海賊旗が突き立っているのが見えた。
「ありましたよアヒルさん」
 探していたものを見つけたフリルは、手に持ったガジェットに話しかけながら赤い瞳を輝かせるけれども。
 途端、その視界が大きくブレる。
 踏み出そうとしていた足に伝わってきた、何か硬いものを蹴ったような感触と。
 足が前に出なくとも、勢いのままに前に進もうとする身体。
 遠くに見えていた壁が急に目前に迫ったと思えば、それは床で。
 身体全体に伝わってくる、衝突したかのような衝撃。
 そう。
 フリルは見事に、転んでいた。
「ふえぇ、痛いです……」
 受け身を取ることもなく、それこそ、びたんっ、という効果音が似合うくらい見事に顔面からすっ転んだフリルは、両手で鼻の頭を押さえながら何とか起き上がり。
 地面にぺたんと座った格好で、しばし、全身の痛みに耐える。
 そして、ちょっと落ち着いたところで、はっと気付き。
「そうです。メガリスを……」
 ばっと顔を上げると。
 海賊旗が立っていた場所には、折れた棒と、いつの間にか手の中からなくなっていたガジェットと同じくらいの大きさに膨らんでいる王笏柄の布の塊が、転がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシル・バーナード
グロウ・ブルー。いい響きだね。そう思わない、プラチナちゃん?

すぐに増援が来るで無し。天然の迷路を左手法で進んでいこう。
ああ、これが魔力石からにじみ出る光の球かぁ。うん、実に綺麗。

この魔力石、プラチナちゃんは制御出来る? 光の球はどう?

この場所が戦場にならなくてよかったよ。あれだけ激しい戦いをここでやってたら、岩盤が崩壊してたかも。そうしたら、この光景は見られなくなってた。

普段と違う場所ってだけで、気分が盛り上がるね、プラチナちゃん。
探索は充分やったし、もういいんじゃないかな?
さっき通り過ぎた枝道、大人には狭すぎて、入ってくる人居ないよね?
そこでまた想い出作ろう? ぼく、プラチナちゃんがほしい。



「グロウ・ブルー……いい響きだね」
 島の名を体現する淡い輝きを見上げて、セシル・バーナード(f01207)は微笑んだ。
 魔力石から滲み出ているという光の球は、ふわりふわりと周囲を漂って。
 セシルの隣から伸びた繊手も青く照らし出していたから。
「そう思わない? プラチナちゃん」
「はい、素敵ですね綺麗ですね。私今めっちゃ充実してます」
 振り向きながら問いかけると、セシルのユーベルコードで呼び出されていた銀髪の少女が、文字通りに銀瞳を輝かせて満面の笑顔を見せていた。
 自由最高! と喜ぶその様子に、セシルも嬉しそうに笑みを深めて。
「この場所が戦場にならなくてよかったよ。
 あれだけ激しい戦いをここでやってたら、岩盤が崩壊してたかも。
 そうしたら、この光景は見られなくなってた」
「あっ、そうでしたね戦いがあったのでした。
 私何もしていませんけど大変でした」
 あわあわする少女の手を右手で引きながら、セシルは左手を壁につけた。
 時折青い魔力石が顔を見せる、ごつごつした岩肌を感じながら歩き出すと。
「何をしているのですか?」
 少女が不思議そうに首を傾げながらついてくる。
「こうやって壁に手をついたまま進むのが、迷路の攻略法なんだ」
「そうなんですか。私初めて知りました。まだまだ知らないことがいっぱいです」
 感心した少女も、セシルを真似るようにその右手を壁につけた。
 この方法は、特殊な仕掛けがない限り、迷路を漏れなく探索でき、必ず目的地に辿り着くことはできるものだけれども。
 遠回りしてしまう可能性も充分にある手法。
(「すぐに増援が来るで無し」)
 しかしセシルは気楽に考えて、焦ることなく洞窟を行く。
 この美しい景色を見続けられるなら、むしろ遠回りは望むところ。
「この魔力石、プラチナちゃんは制御出来る?」
「どうでしょう……鉱物、ではないようですし……」
「光の球はどう?」
「うーん……」
 他愛のない会話も楽しみながら、手をつないだまま並んで歩く。
 そうしていくらか進んだところで、セシルはぴたりと足を止めた。
「さて、探索は充分やったし、もういいんじゃないかな?」
「えっ!? 確か旗を探すんですよね? まだ見つけてないですけど……」
 おろおろする少女に、セシルは妖艶に微笑むと、ふっと近づいてその耳元に唇を寄せ。
「普段と違う場所ってだけで気分が盛り上がるよね、プラチナちゃん」
 囁いた声に、少女の顔が真っ赤に染まった。
 先ほど通った道の右手に、狭い枝道があったのをセシルはしっかりと見つけていて。
 子供なセシルと少女ならともかく、大人には狭すぎるその道なら、入ってくるような人はまずいないだろうと踏んで。
「また想い出作ろう? ぼく、プラチナちゃんがほしい」
 熱く甘い囁きを紡ぐと、セシルは踵を返し。
 青く照らし出された少女の手から美しい裸身を想像してまた微笑むと。
 誘うようにそっと手を引きながら、元来た道を戻り始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
【かんにき】だよ♪

あの赤い髪の子も誘った方がよかったかなあ。

へえ、メガリスのある洞窟、お気に入りなんだ。
おおー、キレイだね♪

ん?(しっぽ)
どしたのアンちゃん。コワイ?
だいじょぶ。ぼんやりだけど明るいよ?

わあー、ホタル。生きてるみたいー♪
光を追いかけて、ぱたぱた走る。
捕まえて、虫籠に……ちぇ、持って来てなかったっけ。

あれ、いつのまにかみんないなくなってる。
もー、すぐはぐれるんだからなあ。
ま、メガリスの方角に行ったら合流できるよね!(気にせずずんずん)

あ、いたいた。(ぱたぱた)
みんなも見た? こんなの!(白楼炎で再現)
蛍みたいなのが、いっぱいいたね?

島の名前になるホタル。
自慢なんだろうね!(にぱ)


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

ここがグロウ・ブルー…青い光の洞窟か。
なんと美しい、神秘的な光景なんだ。

さあ、忌まわしい海賊旗を取り除きに行こうか。
この美しい島に、征服者のシンボルは相応しくないから。

洞窟の中は、迷ったり転倒すれば危険だ。
メカたまこEXを飛ばし、暗視機能で探索をサポートしてもらう。
…おや、子供たちがいないぞ。どこに行った?

シリン、一緒に杏たちを探そう。
私は体にブラッドエーテルの光をまとわせ、
洞窟の壁に反射させて居場所を知らせよう。
…ああ、こっちにいるよ。きっと青い魔法石の輝きに見とれていたのだね。
石のひとつを手に取ってみる。小さな青い輝き。ルビに見せてあげたら喜ぶかな。


琶咲・真琴
【かんにき】
わぁっ
本当に島の名前通りの幻想的な風景ですね

流石にスケッチは難しいから
写真をたくさん撮ろうっと

あれ、気が付いたらはぐれた?
でも大丈夫です

UCで蛍の妖精さんを呼んで
皆さんと海賊旗を探してもらいましょう

綺麗なこの光の景色が
曇らない為にも海賊旗は見つけないといけませんから

下手に動かず
スケッチしながら待って
妖精さんの誘導で皆さんと合流です

わわ、むにーってしないでよ
姉さんっ


ルビさん以外にも
この洞窟をオススメしてくれた子達の分の魔力石もできたら持ち帰りたいですね
さっき撮った洞窟の写真は無理だろうけど、それをスケッチしたものもできたら配ってあげたいです


アドリブ歓迎


木元・杏
【かんにき】
ルビにありがとうと挨拶
わたし達を頼ってくれて
あともう一息、行ってくる

青の洞窟
…暗くはない。大丈夫
でも少し怖くてまつりんのしっぽの先をつまみ、歩みを進める

ふわり目の前を過ぎる青い灯り
ひとつ、ふたつ…沢山
綺麗で嬉しくなって、ふわふわ光を追いかけて

…ん、迷子(がくり)
でも大丈夫。だって周りは青
そこに浮かぶ赤が青に混じり紫に揺れる、これはガーネット
こちらの緑青色の光は、シリン
頼もしい二色に向かい駆けて合流

魔力石、幾つか持ち帰れるかな?
戻ったらルビに渡したい
グルナに見せてあげて欲しいから

海賊旗のメガリス
洞窟の青の中だと、海を進む海賊の旗みたい
でも、海賊には本当の海が似合う


シリン・カービン
【かんにき】

「…これは」
夜目の利く私の目にも魔力石の光は美しく映る。
漂って来た光に手を伸ばし、
舞うように体に纏わせてみれば、零れる笑み。
島の宝、なのですね。

となれば、この場に海賊旗は相応しくはない。
最後の後始末、きちんとつけましょう。

どうかしましたか、ガーネット…?
ふと気づけば、姿が見えない子供たち。
そうそう心配は無いでしょうが、探しに行きましょう。

光の精霊に呼びかけ、グロウ・ブルーの光を纏えば、
目印としては申し分ないでしょう。
駆け寄る杏を受け止め、蛍の妖精の導きで真琴を見つけます。

メガリスの崩壊を見届け、増援の気配が無いことを確認したら、
島の人へ報せましょう。島の宝はあなた方の手に戻ったと。


鈍・小太刀
【かんにき】

ふわり舞う光はとても綺麗で
島の皆が誇りに思う気持ちがよく分かる
大切な場所だからこそ
旗を何とかしないとね

柔らかな光のお陰で足下も見易くて有難い
杏も真琴も迷子にならないでよー…って、もうなってるし!?(苦笑

ガーネットとシリンが目印なら
私はホタルイカな海の仲間を呼び出して
迷子組を探すの手伝って貰うね
蛍の妖精の気配を感じたら迎えに行くよ
見つけたら、ほっぺたむにーってしてやるんだから!

大切な家族と仲間
グルナもこんな風にルビや島の皆を大切に思っていたのかな
コンキスタドールになってしまったあの子達も
殺されてしまった親達も、きっと

ルビを通して託してくれたその想いを破魔の力に込めて
海賊旗を破壊するよ



「……これは」
「ここがグロウ・ブルー……青い光の洞窟か」
 その光景に、シリン・カービン(f04146)もガーネット・グレイローズ(f01964)も思わず息をのんだ。
 ごつごつした武骨な岩肌に囲まれた、かなりの規模と思われる洞窟は、おそらくただそれだけだったなら暗い闇を抱いていたのだろう。
 だがその壁から、天井から、床から、小さな青い宝石のような魔力石が幾つも幾つも顔を出していて。
 魔力石自体が青く淡く輝き。
 そして、そこから零れたかのように、ふわりふわりと、青く淡い光が周囲に漂う。
「なんと美しい、神秘的な光景なんだ」
 それはどこか宇宙船から見た景色を思い出させるけれども。
 宇宙の星々よりも近く、多く、そして優しい煌めきに、ガーネットは表情を綻ばせた。
 シリンも、漂ってきた光にそっと手を伸ばし。
 ゆるりと大きく舞うように動くと、光はそれを追ってシリンの身体に纏われて。
 穏やかに光と踊れば、零れる笑み。
「島の宝、なのですね」
「島の皆が誇りに思う気持ちがよく分かるよ」
 シリンの舞いに目を細めていた鈍・小太刀(f12224)も、そこから自身の元へ流れてきた光をそっと受け止めるように手を差し出して。
 掌の中の青を見下ろしていると、シャッター音が響いた。
「本当に島の名前通りの幻想的な風景ですね」
 カメラを構えて微笑むのは、琶咲・真琴(f08611)。
 いつもならスケッチにと動くところだけれども、流石にこの景色を描き写すのは難しいから、と鉛筆を持ち替えて。
 青を抱く姉を。青を見上げるガーネットを。青と共に舞うシリンを。
 そして、青と共に漂う少年少女の片翼人形を、フィルムに収めていく。
「おおー、キレイだね♪」
 そんなカメラレンズの前に、木元・祭莉(f16554)が飛び出してきた。
 青の間をあっちへこっちへ、忙しく走り回って。
「島の人達のお気に入りなんだよね。
 島の名前にもなるんだもん。自慢なんだろうなあ!」
 淡い光と一緒に遊ぶように、元気に動き続ける祭莉を、カメラが慌てて追いかける。
「祭莉兄さん、1枚」
「ん? あ、おっけー真琴」
 声をかければ、振り向いた祭莉がにぱっと笑い。
 それなら、と木元・杏(f16565)の元へと駆け戻ってから、はいポーズ。
 響き渡るシャッター音に満足そうに頷いて。
 そんな祭莉のふさふさ狼尻尾の先が、つんっとつままれた。
「どしたのアンちゃん。コワイ?」
 振り返った祭莉は、双子の妹の顔を覗き込む。
 暗いところも狭いところも苦手な杏だけれども、洞窟は走り回れるくらいには広いし、淡い輝きは至る所にあるから。
「だいじょぶ。ぼんやりだけど明るいよ?」
「……ん。大丈夫」
 気遣う祭莉に、杏はこくりと頷いて見せた。
 その顔が少し青く見えるのは、周囲の光のせいだけだろうか。
 大丈夫と言いながら、俯き気味の顔に、尻尾から離れない手に、祭莉は笑って。
 小さなその手を振り払わないように気を付けながらも洞窟を進んでいった。
 でも、せっかくの綺麗な景色。
 怖がったままじゃもったいないなと、祭莉は少し考えて。
「あの赤い髪の子も誘った方がよかったかなあ」
 独り言のように、でも杏に聞かせるように大きく呟けば。
「……ルビ?」
 狙った通り、杏がはっと顔を上げた。
 脳裏に蘇るのは、洞窟の入り口でこちらを見送ってくれた男の子の姿。
『ありがとう、ルビ。わたし達を頼ってくれて』
 改めてお礼を言った杏に、驚いてから、少し憂いを帯びた笑みを見せてくれて。 
『あともう一息、行ってくる』
『……うん。気を付けて、姉ちゃん達』
 最後には笑顔で送り出してくれた、くせ毛の男の子。
 双子のやりとりに、小太刀も思い出す。
『グルナ兄ちゃんは、自分だけじゃアイツを倒せないって言ったんだ。
 覚醒した力は、1人で戦えるものじゃなかったから、って』
 赤い瞳に涙を溜めて、でも頑張って前を見ていた男の子を。
『だから、繋いでくれってオレを逃がしてくれた。
 兄ちゃんが翡翠にアイツの魔力を集めるから、それを壊してくれる人を待てって。
 そうすればアイツを倒して、みんなを助けられるから、って……兄ちゃんは……』
 弟と同じ歳くらいの男の子の、悲痛な覚悟を。
 思い出して。紫色の瞳を伏せて。
 ルビを通して託されたその想いを感じながら、小太刀は真っ直ぐに顔を上げた。
「海賊旗を破壊するよ。
 大切な場所だからこそ、守らないとね」
(「海賊旗のメガリス……」)
 ああ、そのために洞窟に来たのだと、杏も思い出して。
 祭莉の尻尾から手を放し、ぐっと握りしめて、前を向く。
 洞窟の青は、海のようにも見えるけれども。
 そこに立つというメガリスは、本当の海賊の旗のようだろうと想像する。
 でも、海賊には本当の海が似合うから。
 同じ青でも、もっと広い青の下で風を受けている方がいいから。
 敵を呼び寄せる間違った海賊旗は、壊さないといけない。
「頑張りましょう」
 杏の決意を感じ取ってか、真琴もふわりと笑いかけ。
 くるくると回りながら祭莉も、がんばろー、とにぱっと笑い。
「さあ、忌まわしい海賊旗を取り除きに行こうか。
 この美しい島に、征服者のシンボルは相応しくないから」
「ええ。最後の後始末、きちんとつけましょう」
 ガーネットとシリンも揃って決意を見せた。
 そうして洞窟を踏破していく一行。
 使命感を胸に、役目を果たすべく、足を進めていくけれども。
 その周囲の美しき青い光景は変わらず、いやむしろさらに美しさを増して。
 完全に恐怖心を忘れた杏も、目の前を通り過ぎた青い灯りに目を奪われた。
(「ひとつ、ふたつ……沢山」)
 ふふっと微笑みながら、綺麗な青に嬉しくなって。
 ふわふわ、ふらふらと、光を追っていく。
「何枚撮っても足りませんね」
 真琴もカメラを構えたまま、次々とシャッターを切り。
「わあー、生きてるみたいー♪」
 祭莉は、ホタルみたいだと追いかけてぱたぱた走り回る。
「捕まえて、虫籠に……ちぇー、持って来てなかったっけ」
 残念そうに言いながらも、それでも光の合間を駆け抜けた。
「祭莉、あまり離れないで」
 その動きに、小太刀が声だけを投げかける。
 柔らかな青い光のお陰で、周囲は見やすくなってはいるけれども。
 入り組んだ洞窟はまるで天然の迷路。
 ごつごつした足下も、照らし出されて見易いとはいえ、動き回り続ければ転びそうでもあったから心配して。
「杏も真琴も迷子にならないでよー」
 小太刀は姉らしく弟や弟分達を心配し。
 でも、その目の前にふわりと漂ってきた青い灯りに、ふっと表情を綻ばせた。
「そうだな。迷ったり転倒すれば危険だ。
 サポートしてもらおう」
 ガーネットはメカたまこEXを飛ばすと、その暗視機能での探索を命じ。
 探すは海賊旗のメガリス。
 そして、皆の安全へも補助をと思えば。
「……おや?」
「どうかしましたか、ガーネット?」
 首を傾げたガーネットに、シリンが振り向く。
 ガーネットが答えるよりも、シリンがそれに気付くよりも早く。
「言った傍から迷子になってるし!?」
 小太刀の叫び声が響き渡った。
 先ほどまで6つあった人影が、今は3つしか、ない。
 ちょっと目を離したらこれだと、小太刀は苦笑して。
「そうそう心配は無いでしょうが」
「ああ。シリン、小太刀、一緒に杏たちを探そう」
 大人組も、仕方ないと笑い合いながら動き出す。
 とはいえ、むやみやたらに探しても、行き違いになる可能性があるから。
 それなら向こうに見つけてもらおうかとガーネットは提案。
 その身体にブラッドエーテルの赤い光を纏わせると、洞窟の壁に反射させて、居場所を知らせる。
「光の精霊よ、我が声に応えよ」
 シリンは周囲に呼びかけ、青い光を集め纏う。
 1つ1つは淡い輝きも、沢山集まれば他よりかなり目立つから。
「目印としては申し分ないでしょう」
「なら、私は探す方にするね」
 輝く目印に頷いた小太刀は、ユーベルコードを発動させ。
「おいでおいでー」
 召喚するのは、ホタルイカな海の仲間。
 青い灯りの中に違う光を混ぜながらも、同じようにふよふよと、辺りを漂い始めた。
 一方、探される側の方はというと。
「……ん、迷子」
 青い光を数えるのに夢中になっていた杏は、ようやく周囲の状況に気が付いて、がっくりと膝をついていた。
 漂う淡い灯りがどこか慰めるように寄って来る。
「でも、大丈夫」
 杏はすぐに立ち上がると、きょろきょろと辺りを見回した。
 周りは暗闇ではなく、優しい青色。
 そして、そのうちの一角に、少し違う色が見える。
 赤が混じって紫に揺れる光と。
 緑がかって灯る光。
(「ガーネットと、シリン」)
 離れた場所に、でもしっかりと見つけた頼もしい2色。
 杏は迷うことなく駆けだして、緑がかった光へと飛びついた。
「あれ、いつのまにかみんないなくなってるー。
 もうー、すぐはぐれるんだからなあ」
 一方、自分以外が迷子なのだと、にぱっと笑っていたのは祭莉。
 虫捕りのように青い光を追い駆けまわっていたことは棚に上げて。
 仕方ないなあ、と肩を竦める。
「ま、メガリスの方角に行ったら合流できるよね!」
 でも、はぐれたことは特に気にせず。
 祭莉は、ずんずんと、本来の目的通りに足を進めていった。
「ふええええ、止まれませーん」
 途中、泣き声と共に、アヒル型のガジェットを抱えた少女がすごい勢いで祭莉を追い抜いていったりして。
 おおー、と感心しながら尚も進むと。
 目の前に、紫と緑青の灯りが、見えた。
 そして最後の1人、真琴も。
 はぐれてしまったことに気づいて、しかし双子とは逆にその場に座り込んでいた。
 まず呼び出したのは、蛍の妖精さん。
「皆さんと海賊旗を探してくださいね」
 妖精さんにそうお願いすると、青い光に似た印象の、白い灯りが漂って。
 お願い通りにあちらへこちらへと、ふわふわ飛び立っていく。
 それを見送ってから、真琴はスケッチブックを取り出して。
「下手に動かない方がいいですよね」
 ささっと周囲の景色のスケッチを始めた。
 ごつごつした岩肌から除く、青い宝石を。
 そこからゆっくりと染み出てくる青い灯りを。
 じっくり観察して、描き止めて。
(「魔力石から生み出される光は、そんなに多くはないのですね」)
 そのことに、気付く。
 青い灯りを零した魔力石は、一旦その輝きを失って。
 そしてどれだけ見ていても光を取り戻さないまま。
 でも、光っていない魔力石は見つけるのが難しいくらい少なく。
 光の強弱は魔力石毎にかなり違ったから。
 きっと、一度光を零したら、また輝くまでには大分時間がかかるのだろう。
 数日かかるのか、数か月なのか。もしかしたら年単位かもしれない。
 だとすると、周囲をこれだけの光が漂っているこの洞窟は。
 どれだけの時間をかけて作り上げられたものなのか。
「この景色が曇らないためにも、海賊旗を見つめないといけませんね」
 ふわりと微笑んだ真琴は、愛おし気に青い光を見上げる。
 片翼人形達も、大切に慈しむように、青い光と共に浮かびあがって。
 そこに、ふわりとホタルイカが混ざった。
「……姉さん?」
 召喚主にすぐに思い当たったところで。
「あ、真琴いたよ。いたいた」
 たたたーっと走ってきたのは、祭莉。
 その後ろから、他の皆も真琴の元へとやってきて。
 ずんずんと歩み寄ってきた小太刀は、その頬に手を伸ばす。
「わわ。むにーってしないでよ、姉さんっ」
「うるさいっ。心配かけてっ」
 むにむにと小太刀の手はしばらく真琴の白く柔らかい頬から離れなかった。
「ねえねえ、みんなも見た? こんなの!」
 そんな中で、にぱっと笑った祭莉は、自身の白炎で光を模して。
「蛍みたいなのがいっぱいいたね! 今も、ほら!」
 嬉しそうに笑いかける。
「ああ、小さいけれど、綺麗な青い輝きだね」
 示された光に、そして嬉しそうな祭莉自身に、ガーネットも微笑んで。
 近くの壁から顔を出していた、小さな魔法石に手を伸ばす。
「ルビに見せてあげたら喜ぶかな」
 そしてふっと思い出すのは、思いを託してくれた男の子。
 洞窟の外で待つ、どこか祭莉に似た印象の彼を、杏も思って。
「幾つか持ち帰れるかな?
 持ち帰れたら、ルビに渡したい。グルナに見せてあげて欲しいから」
 そっと足元の魔法石へとしゃがみ込む。
 真琴も、この場所をオススメしてくれた女の子達の姿も思い起こして、皆へのお土産と考えたけれども。
 ああそうだ、と思い直す。
 この美しい光の光景は、長い年月をかけて作られたもの。
 きっと島の人達が大事に保って、守ってきたからこそ見れるもの。
 だから真琴は、自分が気付いた魔法石の光についての考察を皆に説明して。
 そのままにしよう、と提案する。
 お土産には、写真は間に合わないだろうから、スケッチを渡そうと思う、とスケッチブックを掲げて見せて。
 ……反対する者は誰もいなかった。
「変わらずにここにあって、大切に思われている。
 それを壊しちゃいけないよね」
 小太刀も近くの魔力石に触れながら、少し寂し気に微笑む。
 その様子に、少し心配そうに見上げてくる真琴。
 振り返って安心させるように、弟に笑いかけながら。
(「グルナもこんな風に、ルビや島の皆を大切に思っていたのかな」)
 その気持ちを、思う。
 コンキスタドールになってしまった子達も。
 殺されてしまった親達も、きっと。
 変わらず一緒にいて、大切に思い合えることを願っていたのだろうと。
 いつ来ても美しい景色が見える、この場所のように。
 大切な家族と仲間が、幸せな時間をいつまでも過ごせるようにと。
 想い、願って、逝ったのだろうと。
 微笑む小太刀の頭を、ガーネットの手が優しくくしゃっと撫でて。
 真琴が手をぎゅっと握り締めた。
「メガリスの崩壊をしっかりと見届けて」
 姉弟を優しく見守っていたシリンが微笑みかける。
「島の人へ報せましょう。島の宝はあなた方の手に戻ったと」
 言って、ホタルイカと蛍の妖精が指し示す洞窟の先へと視線を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
【壁】で

確かに迷子になったら笑えないね
(石の色を変えるのを見て)そんなこともできるんだ

石の光は魔力って話だったもんね
確かに武器にできそう
だけどできるのにやらないのは栴さんのいいところだと思う

栴さんって色々できるよね
さっきも思ったけど、攻撃、妨害、前に皆と行った仕事では物の収納もしてたし凄いなって
俺は…要は力を放出して壊すことしかできないから

へえ、教えてくれたヒトが居たんだ
そう、必要なほうに伸び易い、そういうものなんだね
少し安心したよ

この光景を記憶に焼き付けたいな
最近まで周りを見ないで生きてきたから
今は一つでも多くの光景を覚えたいと思ってる

土産話をする相手?
…ああ、そうか
俺はもう一人じゃないんだ


生浦・栴
【壁】
メガリスは見つけたら壊すが
気合いの有る者に任せて楽しんでも大丈夫だろう

とは云え深いなら目印は必要か
魔力石に少しばかり呪詛を加えて色味を変える
帰りに解呪すれば問題無い

珍しいので一つ持ち帰り武器加工でもと考えるが
無粋と云うものだな
手は付けずにおこう

俺は力配分は姉弟子(あねうえ)達に叩き込まれもしたし
必要もあったが「戦士を目指して無い」というのが大きかろう
(散る光を眺めていた視線を戻して
さほど依頼を共にはして居らぬが
ノックスのは常に前線に立っておるし
魔力は必要と思う方に伸び易かろう
我武者羅な時期には特に

覚えて帰って、土産話が出来る相手も今は居ろう?
機会があれば壁の皆をここへ案内したいものだな



 2人並んでも余裕のある、思っていたより広い通路と。
 この洞窟を迷路と表現した島民の説明。
 そして実際に歩いて、少し進んだだけの今でさえ、既に3つの分岐点を経ていたから。
「確かに、かなり深いようだな」
 その規模を想像し、生浦・栴(f00276)は考えるような仕草を見せる。
「迷子になったら笑えないね」
 零れた声を聞き留めて、的確にその心配事を読み取ったサンディ・ノックス(f03274)も、穏やかな微笑みに少し苦笑を混ぜた。
 肩を竦めて見せながら、どうしようか? と栴に青瞳を向けると。
「目印が必要か」
 告げた栴が無造作に、壁に埋まっている青い石の1つへと手を伸ばした。
 それは、この洞窟の特徴でもあるもの。
 壁に、床に、天井に、掘り起こしている途中の鉱石のように、幾つもの同じ石が顔を覗かせていて、それらが淡く輝いている。
 そこから零れるのだと聞いた光が、周囲の空間にふよふよと浮かび。
 その2種類の灯りで、ぼんやりと洞窟内を照らし出している。
 煌めく光の色は、石と同じ、青。
 サンディの瞳と同じ色の輝きは。
 だが、栴が手を向けた石だけ、栴の瞳の色へと変わる。
 青から、紫へと。
「そんなこともできるんだ」
「帰りに解呪すれば問題無い」
 感心するサンディに、栴はにっと笑って見せた。
 青ばかりの洞窟の中で、確かに紫色は目立つから。
 これ以上ない道標に、これなら絶対に帰れなくなることはないと、サンディも微笑む。
 そうして2人は、道行きに紫色を刻みながら、先へ進んだ。
「しかし、珍しき石だ」
 幾つ目かの石を紫色に変えながら、改めて栴はその石を見やる。
「持ち帰り武器加工でも……とは、無粋と云うものだな」
 思い付きを口にしつつも、言い終わる前にもう思い直してしまうのは。
 今見える景色があまりに美しいからか。
 サンディも、近くを漂う光にそっと手を伸ばしながら。
「石の光は魔力って話だったもんね。確かに武器にできてしまいそう」
 これも魔力なのだと思いながら、包み込むように引き寄せた。
 石の色を栴が変えられるのも、魔力に呪詛で干渉できるからこそ。
 でも、この洞窟に満ちた魔力は、人々を和ませ、楽しませるもので。
 島の人たちが大事にしているものだから。
 それを戦いの場に持ち込むのは、確かに無粋。
 でもそんなことを気にもせず、奪っていく者もいると知っているからこそ。
「できるのにやらないのは栴さんのいいところだと思うよ」
 サンディは、手の中の光を覗き込みながら、穏やかに呟いた。
 しばらく見つめていると、光はまたふわりと、サンディの手から流れ零れて。
 周囲の青と共にまた漂い始める。
「でも、栴さんって色々できるよね」
 顔を上げてそれを見送ったサンディは、ふと、話を切り出した。
 それは、この青い光を紫色に変えたのを見た時にも思ったこと。
 この島で見ただけでも、他に、大砲を焼き尽くすような攻撃に、広範囲の風雷による妨害に、とその技法は多岐に渡る。
 そういえば、以前皆と行った仕事では物の収納もしていたか。
 栴にできないことを探す方が難しく感じる程の手腕に、純粋に凄いなと憧れて。
「俺は……要は力を放出して壊すことしかできないから」
 対照的な自身を思い、肩を落とす。
 落ち込んだようなその様子を横目で見た栴は、ふむ、と考えて。
「俺は力配分は姉弟子達に叩き込まれもしたし、必要もあったが『戦士を目指して無い』というのが大きかろう」
「そっか、教えてくれたヒトが居たんだ」
 散る光を眺めたまま、視線を合わせぬままにノックスは繰り返す。
 栴は、自分にもそんな人がいたら違ったのだろうか、と思っていそうなその横顔へと視線を向けて、小さく首を横に振ってから。
「さほど依頼を共にはして居らぬが……
 ノックスのは常に前線に立っておるし、魔力は必要と思う方に伸び易かろう。我武者羅な時期には特に」
 真っ直ぐに見据えて、告げる。
 自分と同じにならなくていいのだと。
 ノックスはノックスらしく在ればよいのだと。
 そして、そんなノックスこそを周囲は必要としているのだ、と。
 全てを言の葉に乗せずとも、ノックスならば分かると信じて。
 端的に栴は告げて。
「必要と思う方……そうか、そういうものなんだね」
 此方へと振り返った青い瞳が、周囲を漂う光にではなく自分自身で輝くのを見て、栴は紫瞳を細めた。
「ありがとう、栴さん。少し安心したよ」
 肩の力を抜いて、いつもの柔らかな笑みを浮かべるノックスに。
 栴も口の端で小さく微笑みを返すと、また周囲へと視線を戻した。
 つられるように、ノックスもまた、青い光を眺める。
 色合いとしては冷たそうな。
 でも、今はとても温かく見える、淡い輝きを。
 眺めるうちに、またふわりと光が1つ、漂ってきて。
 今度は伸ばした手で、一緒に踊るように、ゆるりと絡め取ってみる。
「……この光景を記憶に焼き付けたいな」
 最近まで、ノックスは周りを見ないで生きてきた。
 自身に害も益もないただの景色になど、目を向けてすらいなかった。
 でも、今は。
 1つでも多くの光景を覚えたい、と思う。
 島の人達の宝物を。
 他では見れない、淡く美しい光の乱舞を。
 焼き付けていきたいと、思う。
 ノックスは、くるくると手を回し、追いかけてくるように漂う青い光に微笑んで。
「覚えて帰って、土産話が出来る相手も今は居ろう?」
 かけられた声に、はっと振り返った。
 ノックスと同じように青い光に手を伸ばし、こちらはそっと指先に止まらせるかのようにして眺めている栴。
(「……ああ、そうか」)
 その向こうに、思い浮かぶ幾つもの姿があって。
(「俺はもう1人じゃないんだ」)
 また、気付かされる。
 栴の何気ない言葉から、またノックスは自分を見つめ直す。
 こんな言葉を今日は幾つもらっただろう。
 周囲に漂う青い光が、ノックスの手の動きに引き寄せられて集まっていくように。
 1つ、また1つと、ノックスの心にも光が灯っていった。
(「覚えて、いたい」)
 その景色を目に焼き付けて。
 その言葉を胸に刻み込んで。
 ノックスは、青い瞳で真っ直ぐに前を、見る。
 ちらりとその様子を流し見た栴は。
 指先に止まる青い光へと、話しかけるように囁いた。
「機会があれば『壁』の皆をここへ案内したいものだな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シエン・イロハ
シノ(f04537)と

…こんなもんがあるなら、復興もそう時間かからねぇだろ
見に来れんのは猟兵くらいかもしれねぇがな

ま、違うだろうな
此処がそうなら…あんだけ生き残りがいたわけがねぇ
別にいいさ、七大海嘯の縄張りだってんなら…此処からそう、遠くもねぇだろ

しかし残念だったな、こんな景色見るなら俺とより見たい相手がいるんじゃねぇか?
はいはい、精々妹に出し抜かれないように気ぃつけな(ケラケラと笑いつつ

それがどうかしたか?
…そうかもな(魔力石への呼応か、僅かに熱を持つクラヴィスを指先で弄りつつ
ま、あの野郎が絡んでる時点で悪縁かもしれねぇが

祝杯だってんなら、安酒で済ますんじゃねぇぞ(にやりと笑って


シノ・グラジオラス
シエン(f04536)と洞窟の中をゆっくりと歩く

へぇ、これは凄いな。島の名前になるのも頷ける
で、ここはシエンの居た…島ではなさそうだな
ま、とにかく今はこの景色を楽しもうや

いいんだよ。見せたけりゃ連れてくるさ
その方が島の為にもなるだろ

グルナ、ねぇ。赤い鉱石の名前だな。ルビも
いーや?別に何か言いたいワケじゃないさ
ただ不思議な…悪い縁だけじゃないんだなと思っただけだ
そうか?少なくとも(シエンの…と言って納得しないなと飲み込んで)
ルビとその兄貴のお陰でそうじゃなくなっただろ

とりあえず、家に帰ったらシエンの因縁にケリがついたって事で祝杯でもあげようか
(大いに笑って)奢りますぜ、シエンの旦那



「へぇ、これは凄いな。島の名前になるのも頷ける」
 ゆっくりとした足取りで洞窟を行くシノ・グラジオラス(f04537)は、周囲の青に思わず声を零していた。
 壁に、床に、天井に。ぽつぽつと埋め込まれたかのような小さな青い石と。
 そこから零れ、ふわりふわりと周囲を漂う、石と同じくらいの小さな青い光。
 それらは、暗いはずの洞窟を、ランプなど不要とばかりに淡く照らし出し。
 まるで星空の中へ飛び込んだかのような不思議な景色を作り出す。
「……こんなもんがあるなら、復興もそう時間かからねぇだろ」
 隣に並ぶシエン・イロハ(f04536)も、目の前を浮かび、流れるようにゆっくりと通り過ぎていく青い光を目で追いながら、にやりと笑った。
 コンキスタドールに支配されていた島は、それを倒したからといって何もかも全てが元通りになるわけではない。
 助かった者達も多いけれども、犠牲となった者も少なくなく。
 物理的にも精神的にも、島に刻まれた傷跡は大きい。
 けれども。
 この素晴らしい景色が残っているのなら。
 島民が愛し、大切にしているものが、1つでも残ったのなら。
 きっと、大丈夫。
 この青い光が、大丈夫だと思わせてくれた。
「まあ、島の外から見に来れんのは猟兵くらいかもしれねぇがな」
「あー、この世界は海を渡るのも大変だからな」
 だから2人は。
 UDCアースの観光クルージングといったようなことはできないか、とか。
 せっかく一儲けできそうな観光資源がもったいない、とか。
 冗談交じりに話してみたりもする。
 そんな軽口とともに、のんびりと洞窟を奥へと進み。
「で、ここはシエンの居た島……ではなさそうだな」
「ま、違うだろうな」
 不意に切り出したシノに、シエンはあっさりと首を横に振った。
 この島と同じように『ギメイ』に襲われたシエンの故郷。
 理不尽な実験とやらでシエンが家族を失った場所。
 その記憶は未だ不完全で、具体的な位置も島の名前も覚えていないのだけれども。
 覚えている景色に符合する場所は、この島にはない。
 それに。
(「……あれだけ多くの生き残りがいたわけがねぇ」)
 洞窟へ向かうシエン達を見送ってくれた、助け出した島民の人数を思い出して、それだけでも、此処は違うと確信する。
 そもそも、こんな綺麗な特徴のある島だった覚えもない、と何の気なしに、近くを漂う青い光に無造作に手を伸ばしながら。
 そうか、とどこか気落ちしたように言うシノに、シエンは笑って見せた。
「別にいいさ。七大海嘯の縄張りだってんなら……此処からそう、遠くもねぇだろ」
 見つけられるかどうかも分からなかった宿敵が見つかったのだから。
 きっとそのうち故郷も見つかるだろうと、軽く答えるシエンに。
 そうか、と今度は苦笑しながらシノは言い、ならばと周囲を見回した。
「とにかく今はこの景色を楽しもうや」
 ふわりふわりと漂う青い光。
 淡く優しく辺りを照らし出す魔力石。
 きっと、この場所でしか見れない、奇跡の光景。
「しかし残念だったな」
 その美しさに目を奪われていると、今度はシエンが話しかけてくる。
「こんな景色見るなら俺とより見たい相手がいるんじゃねぇか?」
 ちらりと視線だけで振り向けば、からかうようなにやにやした笑み。
 だがシノは軽く肩を竦めて見せただけで、いつもの笑みを崩さぬまま。
「いいんだよ。見せたけりゃ連れてくるさ。
 その方が島の為にもなるだろ」
「はいはい。精々妹に出し抜かれないように気ぃつけな」
 平静に返したけれども、シエンはケラケラと楽し気に笑っていた。
 確かに、こんな綺麗な場所があったと伝えれば、彼女の親友を自負する妹が動かないはずもないが。
 それならそれで、妹と行ったその後で、改めて2人で行こうと誘ってもいい、なんてシノが考えていると。
 その緩んだ口元を見逃さず、シエンがまたにやりと笑っていた。
 誤魔化すように目を反らし、シノは改めて、周囲の青へと視線を向ける。
 淡く輝く、宝石のように美しい魔法石。
「……グルナ、ねぇ」
 ふと、シノはその名を思い出して呟いた。
 それはギメイとの戦いで、勝機を与えてくれた少年の名。
「赤い鉱石の名前だな。ルビも」
 そして、その勝機を伝えてくれた、彼の弟の名。
 柘榴石。紅玉。
 赤色を特徴とする宝石の名を、シノは並べて。
「それがどうかしたか?」
「いーや? 別に何か言いたいワケじゃないさ。
 ただ不思議な……悪い縁だけじゃないんだなと思っただけだ」
 眉を寄せるシエンに、シノはふっと笑って見せる。
 勝機となったのも、鉱石。
 シエンの双子の兄と同じ名を持つ、緑色の翡翠。
 これを縁と言わずに何と言おうか。
「……そうかもな」
 シエンも小さく頷くようにして、俯く。
 その視線の先にあるのは、紫色の宝石が付けられた武器飾り。
 魔力石への呼応か、ふと触れた紫は僅かに熱を持っていた。
 クラヴィス。鍵の名を持つ宝石。
 始まりにして、ひとつの終わりの見届け人は。
 また新たな終わりを見届けて。
 何となく弄っていたシエンの指先を、周囲の光を淡く反射して紫色に照らしていた。
「ま、あの野郎が絡んでる時点で悪縁かもしれねぇが」
「そうか?」
 ハッ、と笑い飛ばし、嫌そうな表情を作るシエンに、シノは首を傾げて見せ。
「少なくとも……」
 シエンのお陰で、と続けようとして。
(「絶対納得しないな」)
 寸でのところで飲み込んだシノは。
「少なくとも、ルビとグルナのお陰でそうじゃなくなっただろ」
 シエンと同じ赤髪赤瞳の兄弟に名を入れ替えて告げる。
「どうだかね」
 咄嗟の判断が功を奏したか、シエンからの答えは曖昧なものではあったものの完全な否定にはならず。
 その口元に浮かぶ笑みも、皮肉っぽいものではあったけれどもどこか優しかったから。
「とりあえず、家に帰ったらシエンの因縁にケリがついたって事で祝杯でもあげようか」
 シノは両手を掲げて伸びをするような仕草と共に、晴れやかな笑みを零す。
 そのまま頭の後ろで手を組んで、ちらりと隣を振り返れば。
「奢りますぜ、シエンの旦那」
「祝杯だってんなら、安酒で済ますんじゃねぇぞ」
 周囲の光を反射して淡く輝く赤瞳が、分かってんだろうな、と笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年11月09日
宿敵 『ギメイ』 を撃破!


挿絵イラスト