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終末世界の少年は、神に祈りを捧げない

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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 タキが暮らす村は、幾人かの孤児が集まって出来た村である。
 いや、果たしてそれを村と呼んでいいほどのモノなのかどうか――。
 要は行き場のない者達がたまたま身を寄せ合っているだけで、やがて食料が尽きれば死を待つばかり、というひどく脆弱な集まりである。
 忘れ去られたような商業施設の廃墟に住み着き、這いまわりながら缶詰やネズミを探す……そんな毎日。
 たまたま年長だったという理由でリーダーに祭り上げられたタキは、灼けつくような焦燥感を抱えながら日々を過ごしていた。
「……畜生……」
 嗚咽の交じりの悪態が口をつく。

 ここ数日、食料が全く手に入っていない。
 ついに来たのだ。その時が――。

 儚い「家族ごっこ」が終わりを告げ、やがて仲間同士で食料を奪い合う地獄の門が開く。
「……」
 たとえ、その生存競争に『勝った』としても、死ぬのが数日先延ばしになると言うだけ。
 結局のところ、根本的な解決にはなりやしない。
 だが――。
「……あの場所なら、もしかしたら」
 タキには、この絶望的な状況を打開しうる心当たりが一つだけあった。
 北に数十キロ行った場所にある干上がった海岸線。
 そこに、巨大な漂流船がある。
 これまで、幾人かの仲間が探索に行って、誰一人として帰ってこなかった曰く付きの場所だ。
「……奇跡を祈りながら万が一にかけてみるってか?」
 クックッと苦笑するタキ。
 このクソ約体も無い世界で、神様がそんな慈悲深く、都合よく、タキの願いを叶えてくれるとは到底思えなかった。
 だが――。
「……まぁ、どうせ死ぬなら同じこと、か」
 自分を兄と慕ってくれる弟妹たち。
 彼らと殺し合いになることよりは、それは幾分かマシな選択に思えた。
 覚悟を決めて、タキは漂流船を目指す。
 その場所に絶対的な「死」が潜んでいることを予感しながら――。


 予知を語り終えた嬉乃・抹茶子が静かにその瞳を開く。
「アポカリプスヘルに暮らす奪還者(ブリンガー)の少年が、オブリビオンの犠牲になろうとしています」
 転送扉の準備を進めながらも抹茶子は猟兵達に状況の説明を開始してゆく。
 要約すると、おおよそこうだ。

 まず転送先は巨大な漂着船の直ぐ近くとなる。
 猟兵達は少年・タキよりも3時間ほど先に現地に到着することになるので、彼を避難させる必要はない。
 巨大な漂着船は入り組んだ構造をしており、先ずは内部を探索してゆくことになるだろう。
 もし船内に物資が残っていれば、一先ず確保しておいて後ほど少年に渡してあげるといいかもしれない。
 なお、船内は怪しげな教団の施設と化しており、探索の際には罠なども考慮する必要があるとのことである。
「探索で見つかるものによっては、少年の村が死の運命を免れることが出来るかもしれません――。幼い子供達を救うため、皆さんの力を貸してください」
 そう説明を結び、抹茶子は猟兵達に深く一礼するのだった。


河流まお
 河流まおと申します。精一杯努めさせて頂きますので宜しくお願いします。
 プレイングの受付に期間は設けておりません。第一章の開始には断章も挟まないので即募集開始となります。

 第一章は巨大な漂着船の内部探索です。
 もし、「こんな物資が残っているかも!」とプレイングで重点的に探索していただければ、偶然それを見つけてしまうかもしれません。
 物資の近くには罠が仕掛けられているかもしれませんのでご注意ください。

 それでは、皆さまのプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『漂流船へ行け』

POW   :    船室を一つ一つ声をかけて確認

SPD   :    救命艇の様な緊急用設備を確認

WIZ   :    機関室の様な重要部分の確認

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルイス・グリッド
アドリブ・共闘歓迎

干上がった海か、こうなると船が哀れだな
食糧や水があるならキッチンか、あとは救命ボートの辺りか
あとは加工しやすい容器があればいいんだがな

左目の眼帯を外してメガリスを使用しながら船内を【忍び足】【ジャンプ】【足場習熟】で進み【視力】【暗視】【失せ物探し】で食糧や水を探す
加工しやすい容器は水の濾過をする為の道具として持っていきたい
覚えている範囲の【船上戦】での経験と【情報収集】した船の内部構造を予想して罠がどこにあるか予想を立てて進む
非常時は銀腕を【武器変形】させたり【怪力】で対応する


カルロス・エルウラカン
【POWで行動】
この世界は努力に見合う奇跡の幸があまりにも薄すぎますからね…同情的な感覚を持ってしまいますね…。
偽りの希望にしないために、タキと言う少年が心を折ってしまう前に奪還者として全力で頑張らねばなりませんね。

残念ながら私は探索系の技能を持ち合わせていないので、船の下層部に目星を付けて【情報収集】しながら物資を探すことにします。

入り組んだ船内を探索する際、荒らされて教団員の根城になっている居住空間を通らねばならない可能性が有るので【地形の利用】で隠密行動を心掛けて無用な戦闘を避けなければいけませんね。

不測の事態に備え、反撃の為に【大連珠】を武器として所持しておきます。

連携アドリブOKです




 切り立った崖の上から、地平の先を見渡す男の姿がある。
 「成程、ここが北の海岸線ですか」
 異形の仮面と、シャーマンを思わせるその風貌。依頼を引き受け、この地へと転送されてきたカルロス・エルウラカン(復讐の仮面・f06567)その人である。
 荒野となった現在では想像しにくいが、かつてはこの場所で波の浸蝕があったのだろう。この断崖がその痕跡というわけだ。
 と、すれば――。
「見つけました。あそこですね」
 見下ろす視界の先、荒野のただ中に茶錆びた豪華客船が佇んでいるのが見て取れた。
 あれがグリモア猟兵の言っていた漂流船に違いない。
 ふわり、と重力を感じさせない跳躍で崖を飛び降り、音も無く着地するカルロス。
 同じく転送されてきた猟兵達も、彼に続くように崖を各々で攻略してゆく。


 その船は、近づいてみればまるで鋼鉄の巨人が横たわっているかのような存在感を放っていた。
「干上がった海か――」
 まるで巨大な墓標を思わせる漂流船を見上げながら、ルイス・グリッド(彷徨う海賊・f26203)は吐息を一つ。
 今では見る影もないが、きっと名のある豪華客船だったのだろう。
 茶錆びた船体に船名表記の名残と思われる白ペンキがこびり付いていたが、残念ながらそれを読み取るには至らない。
「こうなると船が哀れだな」
 記憶のほとんどを失っているとはいえ、船と共に生きる『海賊』の一人であるルイスにとっては、どこか物悲しさを感じずにはいられない光景だ。
「……と、感傷に浸っている時間はないか」
 あまり探索に手間取っていると、被害者になると予知された少年・タキが現地に到着してしまう可能性がある。
「こんな世界だが……いや、だからこそ、か――。
 できる限り力になってやりたいもんだ」
 冷静沈着な性格とその強面が相まって、割と人から誤解されやすいが、ルイスの本質は相当なお人好しなのだ。
 もはや死を待つばかりとなった子供たちの話をグリモアベースで聞き、居ても立っても居られなくなってしまい、こうして現在に至る。
 そんなルイスの独り言を耳で拾ったのはカルロス。
「この世界は努力に見合う奇跡の幸があまりにも薄すぎますからね……。
 同情的な感覚を持ってしまいますね……」
 その仮面のせいでカルロスの表情を窺うことは出来ないが、声色から感情を推し量ることは可能である。
 子供達を心配する優しさと、この過酷な世界に対する悲哀を感じさせる声。
「偽りの希望にしないために、タキと言う少年が心を折ってしまう前に奪還者として全力で頑張らねばなりませんね」
 その言葉に、ルイスは思わずカルロスを見つめる。
「なんでしょうか?」
「いや、なんか怖そうな仮面付けてるから、一体どんな奴かと思っていたんだが……。
 見かけに寄らず、お人好しなんだな~、と」
 仮面の裏から、小さく笑う気配が伝わってくる。
「この依頼を引き受けている時点で、あなたも私と同じなんじゃありませんか?」
 肩を竦めるしかないルイス。
「さて、それじゃ乗船と行こうか」
「ええ、了解です。ですが――」
 カルロスが困ったように小首を傾げる。
 見たところ、外からは入り口らしきものが見当たらないのである。
「恐らく、教団関係者の方々は甲板から梯子を降ろして乗り込んでいるのでしょうね」
 そして、それは今は取り外されているようである。
「安心しな。こいつがあるさ」
 と、ルイスが取り出したのは『ロープが付いた鈎フック』である。ヒュンヒュンと廻して勢いをつけ、鉤フックを頭上に放り投げるルイス。
 狙い通り、カンッと鉤フックが甲板の縁を引っ掛けた。
 何度かロープを引っ張り、しっかりと掛かっていることを確認したのちルイスは素早くとロープを登ってゆく。
 カルロスが見上げていると、ルイスが此方に手を振るのが見えた。甲板には敵が居ない、という合図である。
 安全を確認し、猟兵達は船の甲板へと乗り込んでゆく。


 茶錆びた扉は鍵が掛かっていたものの、思いっきり蹴り飛ばせば何とかなった。
 甲板から船の内部へと侵入してゆく猟兵達。
「重要なものを保管するとしたら、やはり入り口から最も遠い船の下層部でしょうかね」
 と、目星をつけてゆくカルロス。
 ルイスも頷きを返す。
「あとは……食糧や水があるならキッチンか救命ボートの辺りか。
 ついでに加工しやすい容器があればいいんだがな」
 加工しやすい容器があれば、水を濾過するための道具を作ることが出来るはずだ。
 この過酷なアポカリプスヘルの世界では、それはきっと重宝するだろう。
 右目の眼帯を外してメガリスを使用しながら、ルイスは慎重に船内を探索してゆく。
 地図なんて気の利いたものは勿論持って無いので、船の外観から内部構造を推察してゆくしかない。
 海賊として、様々な船を見てきたルイスの経験が活かす時がきたというわけだ。
「……自分自身の記憶はさっぱり思い出せねぇのに、なんでこういう知識的なことは覚えているんだろうな……」
 絶賛記憶喪失中の俺が『昔取った杵柄』を活かす……なかなか皮肉が利いた冗談だ。
 とはいえ、活かせることはトコトン活かすしかない。
「船の構造にはセオリーってのがある。きっとこの漂流船も、そのセオリーに従って建造されているはずだぜ」
 構造から空間の位置が予想できれば、そこに罠が仕掛けられているかも、と推察することが可能になる。
 慎重に進むルイス。そして、それに続くカルロスは情報収集しながら歩を進めてゆく。
「ルイスさん。右の通路の先には『生活痕』が見られます。敵の居住空間になっている可能性があるので避けておきましょう」
 そして、隠密行動を心掛け、無用な戦闘を回避してゆくカルロス。
 共に協力して知識を活かし、そして、使えそうな物資を回収しながら、二人は薄暗い船内の奥深くへと進んでゆく……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

政木・朱鞠
行動【wiz】
手始めに船内の状態を調べるため『忍法・繰り飯綱』を放ち、確保されている物資の分布と敵の配置を把握した後、本来の使い方じゃないけど、拷問具『荊野鎖』を登はんのアンカーにして【グラップル】の技能を利用し潜入、情報を基に【忍び足】で探索を進めていこうかな。
もし、情報共有が可能なら他の人にも知らせておきたいかも。
気持ちは急くけど…発見されて敵が自棄を起こして大事な物資を壊されでもしたら、本来の目的から逸脱しちゃうから確実にターゲットを【追跡】しないとね。

食料系は居座っている教団がもう消費しちゃっていると思うから、もう一つのライフラインである医薬品を重点的に探したいね。

アドリブ連帯歓迎




 荒野の真ん中に、朽ち果てた巨大な客船が漂着している。
 今では見る影もないが、かつては大海原を旅した豪華客船だったのだろう。
 まるで巨人の亡骸のようなそれを見上げながら、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は吐息を一つ。
「うーん、船内に入り込むには甲板に上がるしかなさそうね」
 見たところ、地面に接している部分には入り口らしきものは見当たらない。
 きっと、必要に応じて甲板から梯子を降ろしているのだろう。
「と、なると――」
 ことは慎重に運ぶに越した事は無い。甲板に見張りが居る可能性も考慮して、朱鞠は一計を案じる。
『我が魂魄の欠片よ。目覚め……力を行使し見聞きせよ……急急如律令』
 朱鞠が印を結ぶと、背後から子狐がクルクルっと華麗に飛び出してくる。
 隠密性に長けた朱鞠の分霊『忍法・繰り飯綱』だ。
 朱鞠に一撫でされると、子狐は満足そうに目を細める。
「それじゃ、お願いね」
 朱鞠の言葉に頷きを返して、子狐は垂直に切り立った漂着船の外板を駆け昇ってゆく。
 音も無く甲板へと到達し、すぐさま物陰に身を隠して周囲に視線を奔らせる子狐。
 その子狐の瞳を通して、朱鞠は安全を確認してゆく。
「甲板には敵は居ないみたいね」
 周囲に居た猟兵達に情報を伝えて、朱鞠は再び甲板を見上げる。
「本来の使い方じゃないけど、ま、いっか」
 取り出したのは拷問具『荊野鎖』。蔓薔薇の様にスパイクのついた鎖である。
 これを登攀のアンカーにして、甲板の縁に引っ掛ける。
「よっと――」
 鎖を引くと同時にトッと跳躍する朱鞠。
 まるで忍者のような身のこなし――。というか、実は忍者そのものなのだが、それはともかく。
金髪を揺らしながら甲板に降り立ち、子狐が探し当てた船内への入口の一つへと急ぐ。
 ダメもとで取っ手に手を掛けると――
「あれ? 鍵は掛かっていないのね」
 すんなりと扉が開いて些か拍子抜けする。どうやら錆による劣化が酷くてデッドボルトが抜け落ちているらしい。これは素直にラッキー。
 ガコッと力を込めて錆び付いた扉を開くと、茶錆びた鉄の匂いが鼻腔をつく。
「むむ……」
 ぽっかりと開いた闇の中へとその目を凝らすと、そこが思っていたより明るいことに気が付く。蝋燭が等間隔に並べられ、船内を煌々と照らしているのだ。
 それはまるで――。
「……侵入者を手招きしてるかのようね」
 警戒心を高める朱鞠。事前の情報では船内はどこぞの宗教集団の施設になっていると聞いたが――。
「潜入任務らしくなってきたわね」
 血がスーッと冷えて、意識が研ぎ澄まされていくかのような感覚がある。
 それを良好だと感じて、思わず苦笑する朱鞠。
「……何だかんだで身に染み付いたものがあるってことなのかな~……?」
 とある忍者集団の次代のリーダーとして期待されている朱鞠。
 その責務を何だかんだで繰り越しにしながら、自由気ままな生活を楽しんでいるものの――。
 こういうときばかりは自分自身の『血』というものを感じずにはいられない。
 子狐を先行させながら、忍び足で船内へと乗り込んでゆく朱鞠。
蝋燭が作り出す僅かな陰影や、炎の揺らめきに身体を隠しながら、朱鞠は薄闇の通路を進んでゆく。


 朱鞠のもうひとつの眼である子狐が、十字のマークのついた部屋を発見して朱鞠に報せてきた。
 「よしよし、良い子良い子~」
 食料系は教団がすでに相当消費しているはず、と目星をつけて、もう一つのライフラインである医薬品に的を絞っていた朱鞠。
 まさにビンゴだ。
「気持ちは急くけど……発見されて敵が自棄を起こして大事な物資を壊されでもしたら、本来の目的から逸脱しちゃうから確実にターゲットを追跡しないとね」
 目的地はかなり深い場所にある。再び気を引き締め直し、朱鞠は不気味な船内を慎重に進んでゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サーラ・ビアンコ
アドリブ連携歓迎

うむうむ、妾も場所は違えどこの世界の出、追い詰まった現状理解できるのじゃ。
仲間内での殺し合い、見たくはないのう。
まずは食料、衣類等も探してみるのじゃ。
大体そういうのは脱出設備的なものの近くに纏めておいてある事が多いはずじゃ。
【足場習熟】してるのでとっかかりを探して船内に侵入。
小さい体なのを活かして【偵察】、昔取った杵柄というのかのう、【鍵開け】も出来るのじゃぞ。
【医術】的観点から健康を保つのに必要そうなものも探しておこうか。

何分妾は戦い向きではないからのう、何かあっても隠れる、跳び逃げる等して回避なのじゃ。
「妾にかかればちょちょいのちょーいじゃぞー」




 荒野の真ん中に佇む、朽ち果てた客船を見上げる白猫が一匹。
「うーむ、おっきな船じゃのう」
 まるで巨人の遺骸が横たわっているかのような圧倒的な存在感。
 その巨大な廃墟を見上げながら、サーラ・ビアンコ(La fanciulla del gatto・f27059)は息を飲む。
 人間に比べればずっと小柄であるサーラにはとっては、その船はひときわ巨大に映っていることだろう。
 見上げているとだんだん首が痛くなってきそうなので、サーラは視線を船の外板へと移してゆく。
「……入り口らしきものは、見当たらぬのう――」
 地面と接している部分。隙間なく繋ぎ合わされた鋼鉄の板は、かなり錆び付いているものの、今だ強固に船体を支え続けている。
 きっと必要な時だけ、甲板から梯子を降ろして昇り降りしているのだろう。今現在、どうやらそれは取り外されているらしい。
 「むむ、致し方なし――」
 再び、聳え立つ壁のような船体を見上げるサーラ。幸いなことに、船体は激しく錆びており、とっかかり探しには不自由しなさそうである。
 梯子が無ければ、よじ昇ってしまえばよい。至極単純明快なサーラの解答。
シャキーンと自慢の爪を立てて、錆びた鉄板をガリガリと引っ掻きながらよじ登ってゆく。あとは根性あるのみだ。
「ゼハー、ゼハ~……!」
 ようやく甲板の縁を掴み、最後の力を込めて身を引き起こす。
「……しばらく爪とぎはしなくて済みそうじゃのう」
 削れてすっかり丸くなった爪先を見ながらサーラ。
「さて――」
 息を整えながら甲板から周囲を見渡せば、そこには一面の荒野が広がっていた。アポカリプスヘルではひどく一般的な、退廃的で、寂しい光景だ。
「うむうむ、妾も場所は違えどこの世界の出、追い詰まった現状理解できるのじゃ」
 グリモアベースで聞いた少年の話。
 神様に見捨てられたような、ろくでもないこの世界で、生きるために必死に抗おうとする少年。
 同郷のよしみというわけではないが、サーラは彼に力を貸してあげたくなったのだ。
「仲間内での殺し合いなど、見たくはないからのう」
 そんなサーラの言葉を、乾いた荒野の風がかき消してゆく。
 うむ、と気合を入れ直し、サーラは船内に潜り込むための入り口を探し始める。
「むむっ」
 と、見つけたのは通気口である。
 人間にはとても入れる隙間では無いが、サーラのサイズなら行けそうである。
 ムニッと顔を突っ込んで、身体を揺すりながら通気口に押し込んでゆく。
「ぐぬぬ! 今こそ、小さい体なのを活かす時ぞ!」
 あとは根性あるのみだ。
 狭い通気口内を強引に進むと、やがて部屋に辿り着く。
「ふむ、どうやらキッチンのようじゃな」
 まずは食料、衣類等も探してみようと思っていたのでこれは幸先がいい。
 しばし聞き耳を立てて安全を確認したのち、配膳台へと降り立つサーラ。
 探し当てた貯蔵庫には錠が掛かっていたが――。
「昔取った杵柄というのかのう。このような安物の錠、妾にかかればちょちょいのちょーいじゃぞー」
 鼻歌交じりで器用に鍵開けをこなすサーラ。一体どんな過去があるというのか――。
 さて、中にはレーションといった保存食がたんまりと入っており、遠慮なくゲットである。
「あとは、健康を保つのに必要そうなものも探しておこうかのう」
 と、サーラがキッチンを後にしようとしたその時である。

「――あれ? 今、何か物音がしませんでしたか?」

 聞きなれない女の声が通路の先から響いてきて、サーラの毛が総毛立つ。
 認識と同時に、即隠れる。
 キッチンの中に入ってきたのは、修験僧のような怪しげな法衣を纏った若い女達である。
「ああ、貯蔵庫の鍵がッ!」
 一体誰が、と歯を噛みながら教団員。すぐ足元の隙間に犯人であるサーラが隠れているわけなのだが――。
 敵もまさか鍵開けを体得した猫がいるとは想定していなかったらしい。
「いつぞや忍び込んできた孤児どもの仲間でしょうか……」
「侵入者です。方舟内に警報を」
 やがて、教団員たちは足早にキッチンを後にしてゆく。
 見つからなかったことにホッと胸を撫で下ろすサーラ。
「さて、慌ただしくなりそうじゃのう」
 避けられぬ戦いを予感しながら、サーラはもう少し保存食をかき集めておくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『破邪顕正宗の信者』

POW   :    世の平穏のために
自身の【配下の命】を代償に、【召喚した鬼の亡霊】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【物理攻撃無効の炎の肉体】で戦う。
SPD   :    破邪顕正のために!
【命を賭して戦え】という願いを【自身の配下】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
WIZ   :    死にたくない!
【命を賭して私を助けろ】という願いを【自身の配下たち】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 シャラシャラとした鈴の音が船内を伝播してゆく。
 施設内の物資が持ち去られていることに気が付いた教団員たちが警戒の報を伝えたのだ。 「罪深き侵入者に、死の救済を」
「救いの方舟に、魂を」
 うわ言のように呪言を唱えながら法衣を纏った狂信者達が船の底から次々と這いあがってくる。
偽りの救済を植え付けられ、狂気に染まった『破邪顕正宗の信者たち』。
4、5人ほどでチームを組み、狂信者達は船内を荒らした侵入者……すなわち猟兵たちを探し出すために行動を開始してゆく。

●第2章の補足説明
 ここからは船内に狂信者達が徘徊するようになります。
 引き続き船内の物資を回収することは可能ですが、狂信者と戦闘になった場合の備えも必要になってきます。
 ササッとズラかってしまうも良し、あえて敵を蹴散らして船内の奥底に進んでみるも良し、戦闘は他の誰かに任せして物資の回収に専念してみるのも良しです。

それでは、皆様の楽しいプレイングをお待ちしております。
火土金水・明
「それでは、他の方が物資の回収を引き続きできるように、狂信者達の注意をこちらに引き付けましょうか。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【高速詠唱】で【破魔】と【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『破邪顕正宗の信者』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「確実にダメージを与えて、逃がさないように。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。


桜井・乃愛(サポート)
 桜の精のパーラーメイド×咎人殺しの女です。
 普段の口調は「元気(私、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は明るく天真爛漫で、少し天然ボケな感じの少女。
一番好きな花は桜で、その他の植物も好き。
強敵にも怖気づく事は少なく、果敢に挑む。
人と話す事も好きなので、アドリブ歓迎。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 朽ちた漂流船の船底から狂信者たちが次々と溢れ出してくる。
「罪深き侵入者に、死の救済を……」
 シャンシャンと鈴を鳴らしながら、部屋を一つづつ確認してゆく『破邪顕正宗の信者たち』。
「……なんだか、ホラー映画みたいな感じになってきちゃったね~」
 手近な倉庫の一室に身を隠していた桜井・乃愛(桜花剣舞・f23024)がピョコンと顔を出して困り顔で微笑む。
「このままだと、見つかるのは時間の問題ですね」
 同じく、この倉庫に隠れていた火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)が乃愛に頷きを返す。
 徐々に、だがしかし確実に、鈴の音はこちらへと近づいてくる。どうやら、あまり迷っている時間はないらしい。
 乃愛と明はお互いの顔を見合わせる。
「じゃあさ、いっそのこと派手に暴れちゃうっていうのはどうかな?」
 薄闇の支配する船内で、場違いなほど明るく、乃愛の天真爛漫な笑顔が咲く。
 その大胆な提案に、明は一瞬だけ面食らったものの――。
 案外、その作戦は悪くないのではないかと思い直す。
 もはや戦いが避けられないのなら、いっそ討って出るほうが先手がとれるというものである。
 それに、もうひとつ――。
 今回の依頼では、オブリビオンを倒すことも重要だが、どれだけ船内の物資を回収できるかもまた重要である。
「それでは、他の方が物資の回収を引き続きできるように、狂信者達の注意をこちらに引き付けましょうか」
 明と乃愛が暴れれば暴れるほど、船内の狂信者どもはこの場所に殺到してくるに違いない。
 二人の受け持つ敵は多くなるが、これも全体としてみれば立派なチームプレイとなるはずだ。
「よーし、私に任せてよ!」
 提案した作戦が採用されて、乃愛はにっこりと微笑みを返す。手に持った桜の枝を軍配のように振るいながら「いざっ!」と敵が徘徊する通路を指し示す。
「では、行きましょうか」
 隠れるのを止め、先手を取って通路へと躍り出た二人。
「――!?」
 通路の先で5人の狂信者達がぎょっと身を強張らせるのが見て取れた。
 鈴のついた錫杖を構え直し、隊列を整えようとする狂信者たちだが――。
 遅い、とばかりに明は高速詠唱を完了させる。
『我、求めるは、冷たき力』
 大気中の空気が瞬時に凍り付き、無数の氷の矢を生み出す。冷たく、鋭利な刃が敵の前衛を一瞬にしてなぎ倒した。
「侵入者発見ッ! 侵入者を発見!!」
 すぐさま大声で応援を呼ぶ狂信者たちだが、これも二人の目論見通りである。
「私はここにいるよ! さー、かかってこい!」
 怖気づくことなく、むしろ果敢に大声で敵を呼び寄せてゆくスタイルの乃愛。
 やがて敵は次々と集結し、通路の正面からだけでなく――。
「後ろも来たよ!」
 互いに背中を合わせるように、通路の両方向の敵をそれぞれで受け持ってゆく乃愛と明。
『さぁ、これでお終いにしてあげるよ!』
 乃愛が取り出したのは軽機関銃『ブルーミング・ファイア』。
 必殺の弾丸豪雨。銃口に数えきれないほどの烈火の華が咲き誇る。
 雪崩のように迫り来る敵を、鉄弾掃射が打ち倒してゆく。
「確実にダメージを与えて、逃がさないように」
 狂信者たちの足を氷の矢で撃ち抜きながら明は背中越しの乃愛に語り掛ける。
「おっけーだよ!」
 まさに獅子奮迅とばかりに大暴れする二人に、敵が次々と群がってゆく。
 船内の警備も、これで幾分か手薄になるはずだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

源・ヨーコ(サポート)
『悪い子はお仕置きっすよー!』
人間のブレイズキャリバー × ビーストマスター
年齢 16歳 女
外見 158.4cm 金の瞳 ピンクの髪 色白の肌
特徴 胸が大きい 八重歯 ギャル ハイテンション! 運動が好き
口調 体育会系(自分、~先輩、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?)

悪いヤツは鉄拳制裁!
あまり難しいことは考えず、敵に向かって猪突猛進するタイプ。全ては拳で解決できると信じていて、とりあえず接近して殴るが基本戦術。
硬そうな相手にはカウンターでの一撃必殺を狙い、素早そうな相手には連撃と使い分けぐらいはする。

単独行動を好み、調査などは苦手。
基本は戦闘オンリーな感じですが、よろしくお願いします。




 蝋燭の炎が煌々と照らす船内に、シャンシャンと鈴の音が鳴り響く。
 終末世界で『偽りの救済』を植え付けられた狂信者たちが、『救済の方舟』を荒らす不届き者を処罰するため、船内を探し歩いているのだ。
「いや~、なんか気軽に依頼を受けたつもりが、とんでもないことになってきたっすね~」
 物陰に身を隠しながら、「あはは~」っと内心で微笑む源・ヨーコ(鉄拳制裁・f13588)。
 この場所はどうやら昔はレストランだったらしい。かつての栄華を思わせる豪華な調度品と、固定されたテーブル。
 ヨーコはその下に隠れて、敵をやり過ごさんと試みる――。
「きっと、すげー豪華客船だったんすね~」
 なんだっけ? そう、タイタニック号的な? まあ、この船は沈まないどころか干上がった海に乗り上がっちゃってるっすけど。
 
 ヨーコがそんなことを考えていたら、敵の一団がレストランへと入ってくる。
(割とテキトーに隠れちゃったし、きっとすぐ見つかっちゃうっすね。
 ま、そうなったら拳で万事解決するだけっす!)
 と、ウズウズとした思いで身を潜めていると――。
 突然、機関銃を乱射するような激しい戦闘音が船内の何処かで鳴り響いてきた。
「――!?」
 レストランの中を探索しようとしていた狂信者達は、途中で踵を返して戦闘音が鳴り響いてきた方向に応援に向かおうとしてゆく――。
(って、おーい! 引き返しちゃうんすか~!?」
 すでに心が戦闘態勢に入っていたヨーコとしては、肩透かしをくらった気分である。
(やっぱり隠れてるなんて性に合わね~っすね! 悪いヤツは鉄拳制裁! これに限るっす!)
 と、自分を納得させるヨーコ。
「悪い子はお仕置きっすよー!」
 無防備に背中を晒し、走り出そうとする敵を助走をつけてぶん殴ってみんとす。
「ぐほあっ!?」
 テーブルをなぎ倒しながら、狂信者が吹っ飛んでゆく。
「く~……。やっぱりコレっすね!」
 痺れるような拳の快感に酔いしれながら、ヨーコは満面の笑みを浮かべる。
「さ、次に相手してくれるのは誰っすか!」

成功 🔵​🔵​🔴​

カルロス・エルウラカン
【チームお人好し】ルイスさん(f26203)と共闘します。

【WIZで行動】
正直言いますと破戒僧の私には盲目的に神を信じる信者たちが羨ましいですね…。
しかし、あなた達から見れば理不尽かもしれませんが、大きな厄災が起こって苦しむ人々を見捨て、信者だけが救われるというコミュニティーを良しとする教義は少々疑問が有りますね。

戦闘
多勢ゆえ簡単ではありませんが、『サウンド・オブ・パワー』で戦闘力底上げのため仲間を鼓舞する曲を演奏します。
その後、私は【神獣殺しの銃】を使用して、ルイスさんの攻撃をサポートする【援護射撃】に移らせて頂きます。
共闘者が敵に背後を取られない様【2回攻撃】で包囲を解除よう心掛けます。




 闇の深まる下層部へと、より多くの物資を求めて進み出たカルロス・エルウラカン(復讐の仮面・f06567)とルイス・グリッド。
「これだけ集まれば、十分ですかね」
 食料をはじめとして、使えそうなものを一通り集め終えてカルロスは頷く。この物資があれば少年の村は当面の間は食い繋ぐことが出来るはずだ。
「まあ、それでも、この世界では根本的な解決にはならないのかもしれませんが……」
 荒廃したアポカリプスヘルの世界。
 この世界において、脅威はオブリビオンだけではない。
 今回のケースのように、限られた食料を人間同士で奪い合うことは決して珍しいことではないはずだ。
 神に見放された荒野、それがアポカリプスヘルなのだ。
「神、か……」
 どこか渇いた様な、ポツリとした言葉がカルロスの口から洩れる。
 それは自嘲のようでもあり、怒りのようでもあり、呪詛のようでもあり――。
 仮面の下に隠れたその表情は、誰にも推し量ることが出来なかった。

 と、その時である。

 シャンシャンと鈴の音が、カルロスたちの方へと迫ってきているのが聞こえてきた。
「……戦うしかないようですね」
 覚悟を決めて構えるカルロス。
 やがて、通路の先から浮かび上がるように、狂信者たちの一団が現れる。
「おお、なんということでしょう。異教の神の信徒ですか」
 リーダーと思われる女がジャラジャラと鈴のついた錫杖を鳴らしながら呟く。
 カルロスの姿を見て、そう判断したらしい。
「おお、この世界を真に救済するのは破邪顕正宗に他なりませぬ!」
 大仰なそぶりで腕を広げる狂信者の女。自らの言葉をまるで疑わない、狂気のような信仰心が見て取れる。
「正直言いますと、破戒僧の私には盲目的に神を信じる信者たちが羨ましいですね……」
 皮肉でもなんでもなく、心からの本心でカルロスは狂信者に返す。
「しかし、あなた達から見れば理不尽かもしれませんが、大きな厄災が起こって苦しむ人々を見捨て、信者だけが救われるというコミュニティーを良しとする教義は少々疑問が有りますね」
 狂信者の恍惚の表情が強張り、緊とした空気が流れる。教義の痛いところを突かれたということだろう。
「異教徒に、死の救済をッ!」
 リーダーの号令で狂信者たちが迫ってくる。
「響け、歌声よ」
 『サウンド・オブ・パワー』。ゆるりとした風を纏いながら、カルロスは聴くものの魂を揺さぶるような歌声を響かせる。
 共闘者を鼓舞しながら、カルロスは古びたライフル銃を構える。
部族の伝説で『誤って神獣を殺めてしまった』と伝えられる神獣殺しの銃だ。
「さて、道を開けていただきますよ」
 正確無比な射撃が敵の心臓を穿つ。
 息の合った連携で敵の陣形を崩しながら、二人は帰路を突き進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

政木・朱鞠
可哀想に…心酔状態にさせられて自分の命をも軽んじて神に準じちゃうのか…。
でもさ…自分勝手にもっともらしい教義を振りかざし、信ずる者以外は眼中に無い教えなんて本当の神様の言葉じゃないと思うんだよね。
寄る辺無い人達の為にこの閉じた『方舟』を解放させて貰うよ。

戦闘【SPD】
犠牲を強いる『破邪顕正のために!』での捨て身の構えの攻撃は厄介だね。
機動性を狙って真の姿を前借りして足部分に重点的に再現して『忍法・狐龍変化身』で強化状態で牽制しながら隙を作りたいね。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】で防御を緩めて【傷口をえぐる】→【生命力吸収】で信者達を絞め潰してダメージを狙うよ。

アドリブ連帯歓迎




 闇の底から這い出すように溢れ出てくる狂信者達。
 その動向を政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は忍法・繰り飯綱(ニンポウ・クリイヅナ)で把握していた。
 このまま戦闘を避け、華麗に物資だけを頂いて船を去るというのも朱鞠には可能であったが――。
「忍びに徹するのなら、それが一番なんだろうけどね~……」
 里の長老たちが知ったら、きっと怒られるに違いない。
 だが、朱鞠はあえて敵を討ち倒し、この狂信者の教団施設と化した船を解放することを選んだのだった。

 蝋燭が照らし出す通路の先から、瞳を狂気に染めた破邪顕正宗の信者たちが現れる。
「さあ、罪深き侵入者に罰を与えるのです! 行きなさい!」
 一団のリーダーと思われる狂信者の女が、錫杖を鳴らしながら部下たちに号令をかける。
「破邪顕正のために!」
 その自らの身を顧みることの無い、捨て身のような突撃に朱鞠は哀れむような表情を浮かべる。
「可哀想に……心酔状態にさせられて自分の命をも軽んじて神に準じちゃうのか……。
でもさ……」
 個々の価値観を塗り潰し、教団にとって都合よく仕立て上げるそのやり口。
 信仰と言えば聞こえはいいが、こんなものはただの洗脳である。
「自分勝手にもっともらしい教義を振りかざし、信ずる者以外は眼中に無い教えなんて本当の神様の言葉じゃないと思うんだよね」
 迫り来る敵を前にしながら、小さく吐息する朱鞠。
 その足に、狐火のような蒼炎が浮かんだ。
『抑えし我が狐龍の力…制御拘束術第壱式にて…強制解放!』
 忍法・狐龍変化身。部分的に真の姿を解放し、身体能力を爆発的に向上させる技が発動される。
「――なッ!?」
 狂信者達の錫杖が地面を打つ。
 きっと彼女らの眼には、朱鞠の姿が突然消失したようにしか映らなかっただろう。
 そして――。
「こっちだよ」
 最後方に控えてリーダーの女は、背中越しに『その声』を聴いた。

 まさか、そんな――。

 と、振り返ろうとするものの、それは叶わない。
『荊野鎖』が獲物を捕らえ、一瞬の間で締めあげたのだ。
「ぐ……がはッ」
 血飛沫の華を咲かせながら、狂信者が倒れる。
「寄る辺無い人達の為に、この閉じた『方舟』を解放させて貰うよ」
 荊野鎖を振り、血を払いながら朱鞠は薄闇の中で冷たく宣言するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ソーシャルノーカ爆誕』

POW   :    力仕事を手伝う

SPD   :    素早くこなしていく

WIZ   :    農業の技術を教える

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 自らの死を覚悟しながら、意を決して漂着船の甲板によじ登ったタキはひどく困惑することになった。
 求めてやまなかった食料などの必要物資が、まるでタキを出迎えるように甲板上に並べられていたからである。
「……こ、これは……一体、どういうことなんだ?」
 眼を丸める少年に、オブリビオンの討伐を終えた猟兵達が話しかける。

 他人を信じるということがきっとこれまでの人生で無かったのだろう。少年タキは最初は猟兵達に警戒心みせたが――。

 ぐぅ、と素直な腹の音が鳴って、タキはバツの悪い表情を浮かべる。
「とりあえず、食べたら?」
 と、猟兵の一人が優しく促すとタキはその表情をくしゃっと崩しながら「うん」と頷くのだった。


 結局、この大量の物資をタキ一人では運びきれないということになって、猟兵達はタキの村までの道中を付き合わされることになった。
 タキが乗ってきた廃車寸前のトレーラーにはみ出しそうなほどに物資を乗せて、猟兵達は荒野を眺めながら相乗りとなる。
「あそこです」
 やがて、遠くに廃墟と化した商業施設が見えてくる。どうやら、この場所がタキの村らしい――。
「タキ兄ちゃん!」
 幼い声が響いた。廃墟の中からボロ着を纏った小さな子供たちが駆けだしてくる。
 彼らは抱き合いながら再会を喜び、漠々とした荒野に無垢な泣き笑い声を響かせるのだった。
サーラ・ビアンコ
何ができるかのう。

……農業、役に立てるじゃろうか。
石を避けるか、種をまくための穴をあけるくらいしかできない気がするのじゃぞ。
そもそも妾、猫じゃしのう。
もふもふで疲れた時の癒しになる位かもしれん。
後、【世界知識】で育ちやすい植物の種類を教えるくらいはできるのじゃ。

そういえば、知識は武器じゃの。
【医術】で簡単で安全な手当の仕方なんかを教えておくのじゃぞ。
慣れないうちは農具で手を切ったりなぞあるかもしれないのじゃ。

折角頑張っているのじゃし、このまま暮らしていけるようにしてあげたいのじゃ。




「これで一先ず、依頼は達成じゃの」
 生きて無事に再会することが出来た子供達を見ながら、サーラ・ビアンコ(La fanciulla del gatto・f27059)は満足げに頷く。
 しかしながら、これで「めでたしめでたし」とはいかないのがこのアポカリプスヘルという世界である。
 これだけ大量の食料を運んでくれば、当面子供たちが食い繋ぐには問題は無いだろうが、やはりそれも有限であることには変わりはないのだ。
「何ができるかのう」
 不幸にも、この過酷な世界に生まれてしまった子供たちに対して、自分自身が出来る事は無いかと思い巡らせるサーラ。
 金色の尻尾をユラユラさせながら、考えに耽っていると小さな女の子の孤児が興味を惹かれたのかサーラの元に寄ってくる。
「白い、ふわふわ……とってもきれい」
 これまで、少女は可愛いものとか見る機会がなかったのだろう。初めて見るぬいぐるみのようなフワフワに少女は眼を輝かせている。
「ふむ、仕方がないのう。今回は特別に触ってもよいのじゃぞ?」
 もふもふが癒しになればとサーラはツンデレ気味に許可を出す。
「ふわあああ……! すごい、タキ兄ちゃん、このこ手触りすごいよぉ!」
 サーラを抱きかかえながら、タキの元に走り寄る少女。
「ばっ、お前。その人は俺たちの命の恩人なんだぞ……」
 と、そんなサーラと少女を見たタキは気が気ではない様子であったが、それはさておき。
 
 ゆりかごのように少女に愛でられながら、サーラは先程の考え事を再開させる。
「……農業、役に立てるじゃろうか」
 やはり持続的な食料確保と言えばそれしかないだろう。漂着船で得た物資の中にも、いくら穀物の種があったはずである。
 だが――。
「石を避けるか、種をまくための穴をあけるくらいしかできない気がするのじゃぞ。
 そもそも妾、猫じゃしのう」
 サーラは知識はあっても、農業には身体のサイズ的に向いていないのである。
「タキと、えーとお主」
「ミヤだよ」
「うむ、ではタキとミヤ。これから大事なことを教えるから、心して聞くのじゃぞ」
 知識は武器じゃ、と前置きして、サーラは二人に自らの知識を伝授してゆく。
 荒野でも多少の水さえあれば力強く育つ植物の種類。農具の使い方。
 怪我をした時の簡単で安全な手当の仕方などなど……。
「なるほど、やってみます」
 生きるための知識を必死に頭に叩き込みながらタキは頷く。

「折角頑張っているのじゃし、このまま暮らしていけるようにしてあげたいのう」
 サーラはもふもふされながらも、必死にこの世界を生き抜く子供達に心からのエールを送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カルロス・エルウラカン
【POWで行動】
主に力仕事でのお手伝いをさせて頂きます。
この地に合った技術でなければ嵐を呼びこんでしまう恐れがありますからね。
まずは、簡素ながら畑の様なものを作り幼い者たちが自らこの世界と戦う地盤を作ってもらいたいですね。

もし、タキ少年との接触があるなら、私はその場に居合わせた奪還者として振舞います。
変に肩入れして、自分の猟兵としての経験から安易に抽出したアドバイスしても彼の答えに結びつくとは限らないでしょう。
ヘタをすれば、教わった答えではこの厳しい世界観ではかえって危険な選択をさせてしま討恐れすらあります。
素っ気ない行動かも知れませんが、飽くまで次の仕事のため明け渡す事にしておきたいですね。


政木・朱鞠
行動【WIZ】
私自身の考えだと…この世界に平等に暮らせる場所が有るのかはちょっと疑問を持っているんだよね。
でも…一筋の希望って物にここが成るなら、訪れる人の心を折ってしまわぬよう奪還者として全力で頑張らないとね。

難点としてはオブリビオン・ストームを呼んでしまうので種子は持ち込んだりできないのが辛いね。
だから、これが正解かはわからないけど、【世界知識】で比較的この世界に適応した食べれる植物を調べて。
その栽培法を船内の壁に書き記しておこうかな。
タキ君のようにここを目指す人達に丸投げするようで無責任かもしれないけど、この世界の人を信じて任せないと自分で理不尽に立ち向かえないもんね。

アドリブ連帯歓迎




 薄闇の中に血風が舞う。船内に残った最後の敵を屠り、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は小さく吐息をつく。
「これでラストね」
 倒した敵の遺骸が灰のようになって消え去ってゆく。
「私自身の考えだと……この世界に平等に暮らせる場所が有るのかはちょっと疑問を持っているんだよね」
 限られた資源を奪い合うことが日常のアポカリプスヘルの世界。
 ある意味でこの依頼も、その摂理の一環と言えるのかもしれない。
「でも……一筋の希望って物にここが成るなら、訪れる人の心を折ってしまわぬよう奪還者として全力で頑張らないとね」
 しん、と静まり返った船内を歩きながら朱鞠。
「難点としてはオブリビオン・ストームを呼んでしまうので種子は持ち込んだりできないのが辛いね」
 いずれ、この船を訪れる者が現れるかもしれない。その者のために朱鞠は一計を講じる。
「だから、これが正解かはわからないけど……」
 この世界に適応した食料になりそうな植物の栽培方法を船内の壁に記しておく朱鞠。
「タキ君のようにここを目指す人達に丸投げするようで無責任かもしれないけど、この世界の人を信じて任せないと自分で理不尽に立ち向かえないもんね」
 僅かな希望を信じながら、朱鞠は壁に文字を刻むのだった。


 少年タキに連れられて、彼が暮らす村に同行することになった猟兵達。
「ま、これでハッピーエンドかな?」
 トレーラーの荷台からひょいっと地面に降り立ち、朱鞠は「うーん」と背筋を伸ばす。
あの漂着船からこの村までおよそ三時間。舗装もされていないガタガタの荒野にさすがに腰も痛くなるというものである。
「その割には、少し浮かない表情ですね」
 同じく、トレーラーから降りてきたカルロス・エルウラカン(復讐の仮面・f06567)が朱鞠の微妙な感情を察したのか小首を傾げる。
 痛いところを突かれた、と朱鞠は苦笑し――。
「あはは……。まぁ、教団を殲滅したのはちょっとやり過ぎたかな~って」
 過去の幻影であるオブリビオンとはいえ、あの教団もこの過酷なアポカリプスヘルの世界を必死に生き抜いてゆこうとしていた共同体の一つであったことには変わりはない。
そういう意味では、あの「教団」と「この村の子供達」に善悪の差など無かったのかもしれない。
「この方法が最善だったのかな、とか柄にもなく考えていたのよね」
 ポツリと呟いた朱鞠に、カルロスは「ふむ」と頷く。
「甦った躯を過去の海に戻し、現在(いま)を生きる子供たちを護った、今はそれで良しとしてはいかがでしょうか?」
 と、カルロスが指し示した先へと視線を移すと――。

村に帰還したタキの元に、小さな子供たちが駆け寄ってくる。
彼らは強く抱き合い、確かな笑顔を浮かべた。

 「――そうね。それでいっか」
  朱鞠も彼らにつられるようにして、フッと柔らかな笑顔を浮かべるのだった。


 さて、依頼も無事達成しグリモアベースに帰還しようとしたところ、『扉』の準備にけっこう時間が掛かるとのことである。
「では、少しお手伝いをしていきますか」
 力仕事なら任せろとばかりに腕をまくるカルロス。
「そんな! 命の恩人のアンタ達にそんなことまで!」
 と、タキは遠慮しようとするものの、
「気にすることはありませんよ。
君はきっとこれまで、子供達に沢山頼られて生きてきたはず。
ならば君も、たまには人を頼ってもいいのではないでしょうか?」
 子供たちの中で「兄」として振る舞うしかなかったであろうタキを慮るカルロス。
その言葉にタキは虚を突かれたような表情を浮かべ。
「……ありがとう。そうさせてもらうよ」
 目じりに涙を湛えながら、少年は心からの感謝を口にするのだった。

 そのタキの姿に、カルロスは頷きかけ……「あっ」と気が付く。
「ですが、他人を信じすぎるというのもこの世界では考えものです。
親切を装ってつけ込んでくる場合だってあります。そこはちゃんと覚えておくようにしないといけませんよ」
一転して素っ気なく振る舞おうとするカルロスの姿が、タキにはなんだか面白かったらしい。隠しきれない笑みを浮かべるタキ。
「わかったわかった。くく、あはは」
「少しでも不審だと思った相手は、警戒するように」
「き、気を付けるってば。ぶふっ、あははは!」
 怪しげな仮面を付けた男にそれ言われても、とタキはツボに入ったようだ。
 そんなこんなで、まるで口うるさい父親を相手にするかのように、タキはカルロスの言葉に頷くのだった。


「さて……まずは、簡素ながら畑の様なものを作り、幼い者たちが自らこの世界と戦う地盤を作ってもらいたいですね」
 荒野を耕しながらカルロス。
「それに、この地に合った技術でなければ嵐を呼びこんでしまう恐れがありますからね」
「オブリビオン・ストームね。本当に厄介ね」
 朱鞠もお手伝いをしながらカルロスに頷く。
 
 グリモア猟兵が『扉』の準備を終えるまでに、なんとか畑の地盤は完成することが出来た。あとは、これを彼らが育てていくことになるだろう。

 猟兵達の手によって救われた村。これが一時的なものにならないことを祈りながら、猟兵達はアポカリプスヘルの世界を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月09日


挿絵イラスト