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星の水辺で花摘み遠足

#アルダワ魔法学園 #戦後

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#戦後


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●先生、ちょっといいですか?
 アルダワ地下迷宮に、星夜空に満ちたフロアがあるのだそうだ。
 宇宙にも似た景色は見た目だけの幻想空間。
 浮かんだ光る星は小さな鉱石、月もないのに闇を照らして瞬くという。

 流れて落ちた星は、川になる。
 さらさらと、流れる音は水と砂の間に似て。
 淡く発光する星屑で出来た幻想の川。

「その川をゴンドラで渡って、"星の花"を摘みにいくんです」
 生徒曰く。
 小さな金平糖に似たその花は、薬草になるのだそうだ。
 生徒たちは年に数度、迷宮へ潜り群生地へ赴くのだという。
 あまり危険な場所ではないので、のんびりした探索らしいが。

「ね。猟兵先生も、ご一緒しませんか」
 とっても綺麗な景色なんです。

●グリモアベース
「アルダワ魔法学園の生徒から、薬草採集の誘いがあるのだが、興味はないか?」
 クック・ルウは猟兵達へ話を切り出した。
「迷宮に咲く"星の花"という薬草の群生地へ行くのだそうだ。なんでも、きれいな景色だそうでな。危険も少ないし、お出かけ気分で赴いても問題ないと思う」
 その場所へは、生徒たちが案内してくれるので迷う心配もない。
 猟兵達は、先生として同行するという形になる。
 要するに遠足、という訳だ。

「危険が少ないとはいえ、一応は災魔(オブリビオン)も現れる」

 モリフクさま、というフクロウに似たもふもふが出るらしい。
 夜の世界に住む空飛ぶもふもふである。
 翼でびんたしたり、胸がふかふかの、羽ばたくもふもふ。

「人を駄目にしてしまう程のふかふかもふもふなので、適度にもふもふして帰るのも良い。追い払えば簡単に飛んでいくので、あえて生徒達に任せるのでも良いと思う」
 生徒の頑張りを見守るのも、師の役割かと思うのでな。
 それでは先生、よろしく頼む。
 クックが頭を垂れるとグリモアが輝き、移送の準備を始めた。


鍵森
 舞台はアルダワ魔法学園。
 遠足です。先生気分でお出かけしませんか。
 全体的にのんびりした雰囲気になると思います。

●構成
 1章:日常。
 星屑の川『アルダワ・ミルキーウェイ』を渡ります。
 ゴンドラに乗ったり、泳いだり、宙を飛んだりできます。
 2章:冒険。
 『星の花』の群生地で過ごします。
 植物採取が目的なので、のんびりとお花摘みは如何でしょう。
 ちなみに薬草の効能は『安眠効果』のようです。
 3章:集団戦。
 『モリフクさま』が現れますが、強くはありません。
 もふもふしています。
 ガチ戦闘でなくて大丈夫です。

 ここまでお目通しありがとうございます。
 皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 日常 『アルダワ・ミルキーウェイ🌌』

POW   :    川の流れに身を任せ泳いで渡る。

SPD   :    小舟やボートでゆったりと渡る。

WIZ   :    宙に浮かび星屑の川を眺めながら渡る。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 吸い込まれそうな程に澄んだ夜空を溶かし込んだような空間だ。
 天井は随分高いようで、本物の空と変わらないような気さえしてくる。
 足下は土の感触がして、辺りには草花の影もある。

 迷宮内のフロアを横断する天の川は瞬き光り、サラサラと流れていく。
 岸辺には旅支度をした生徒たちが集まって、
「猟兵先生ー、私達は先に乗って先導しますからー!」
 機械じかけのゴンドラに乗り込んでいるところのようだ。
 色硝子の瓶に天の川から掬った星を注いで作ったランプを、ゴンドラの先に吊るしている。目印の為だろう。

 あなたは生徒達と一緒の船に乗るのもいいし、空いたゴンドラに乗ってもいい。
 機械仕掛けのゴンドラは、漕手がおらずとも自動で運転される仕組みだ。

 川を泳ぐのなら、流れに身を任せてみるのもいいだろう。
 天の川を満たす星屑は小さくサラサラで、怪我をすることはない。
 濡れたり汚れたりはないだろうけれど、星の欠片があなたに輝きを纏わせるかもしれない。

 星と共に宙を漂いたいと思うなら、思い切って地を蹴ってみるといい。
 重力から解き放たれたように、身体が軽くなるだろう。
 ここは魔法で満ちた空間だから。

 さあ、船が出た。
ジェイミィ・ブラッディバック
心情:星が川になっている……驚きですね。私が知っているのは星の大海原、しかもビームや砲弾が飛び交う世界でしたから。こういった光景は心が穏やかになりますねぇ。折角ですし、生徒の皆さんと一緒の船に乗って、この光景を楽しみながら語らうとしましょう。教師という立場ですが、若者から学ぶことも多いものです。
行動:「あぁ皆さん、差し支えなければ私も同乗して良いでしょうか」と声をかけて、生徒が乗るゴンドラに同乗します。風景を眺めながら目についたものについて尋ねてみたり、生徒の相談に乗ったりします。細かい内容はお任せします。


九条・春
【アドリブ連携歓迎】
【面白そうな展開であればプレイング無視OK】

【SPD】
ほあー! ほほう! アルダワも何度か訪れていたはずじゃが…いやはや、なんとも素晴らしい光景じゃなあ。なあなあ、これは触っても大丈夫なやつかの?
と、生徒達と一緒に船に乗り、大はしゃぎで身を乗り出しては答えも聞かずに天の川に手を伸ばします。
引率のつもりが、小さな身体も相まってはしゃぐ子供にも見えるでしょう。
乗員(他の猟兵が居るならその猟兵にも)秘蔵の羊羹を配り、もふもふとの激戦を前に気を落ち着けよう、などと歓談タイムを設けましょう。
流石に自分から泳いだりはしないと思います、あとは雰囲気でいい感じに楽しくまとめていただければ!



 ゴンドラが天の川を滑るように出発した。
 数人の生徒と"先生"達を乗せて、船上はすこし賑やかだ。
 どれだけ世界を廻れども、珍しい光景には好奇心が刺激されるもの。
 それが美しく素晴らしい光景なら尚更。
 九条・春(風渡り・f29122)の瞳はキラキラと輝く星に満たされた川を見詰めて。
 ほあー! と、思わずはしゃぐような声を上げた。
「アルダワも何度か訪れていたはずじゃが……いやはや、なんとも素晴らしい光景じゃなあ」
 童女めいた容姿の春が喜ぶ姿は、あどけない少女のよう。
「星が川になっている……驚きですね」
 興味深そうにそう言ったジェイミィ・ブラッディバック(脱サラ傭兵・f29697)も、物珍しそうに辺りの景色を見回している。
 彼の知る星の大海原といえば、果てなき宇宙でありビームや砲弾が飛び交う世界だ。それとは掛け離れた星の光景は、新鮮なものに映る。

「なあなあ、これは触っても大丈夫なやつかの?」
 春が言うなりゴンドラの縁から身を乗り出して、川に手を触れた。細かな砂粒の感触が、指の間を零れるように流れていく。
「ほほう!」
「春先生、落ちないようにね!」
「大丈夫じゃ、わしは鍛えておるからの」
 心配する声に朗らかに答えると、一掴みの星を手に掬いあげる。
「思ったよりもひんやりとして、柔らかくて軽いような、不思議な感触じゃ」
 春が落ちそうになればいつでも掴めるようにと、傍で見守っていたジェイミィも、その手の中にある光をしげしげと見て。
「私も触ってみていいですか」
 尋ねるのへ、
「うむ、どうぞ」
 差し出された掌に、春は星をさらさらと分けて落とした。

 そんな一幕を経て。

「さて、到着までまだ時間があるようじゃし。皆、小腹は空いておるかの」
 乗り合わせた面々が打ち解けた雰囲気になってきた頃、春が取り出したのは、秘蔵の羊羹。
 とっておきのお菓子の登場に、生徒達は目を輝かせた。
 さっそく船の上の全員に羊羹が配られると、
「わわわ。おいしい、こんなの初めて食べました!」
「上品な風味に、なめらかな食感ですねえ」
 次々と喜びの声が上がる、春も嬉しそうに微笑んで。
「うふふ。喜んでもらえたかのう」
 たんとお食べ、と子供を見守る瞳はやさしい。
 そこへ、今度は生徒達が、
「春先生、私のおやつもあげる! 交換こしよ」
 そんな風に、自分が持参した菓子を差し出してきて。
 ちょっとしたおやつタイムが始まるのだった。

「ふむ……。私も菓子折り等、用意した方が良かったでしょうか」
 菓子持参も遠足のマナーなのだろうかと、気になったのは元サラリーマンの性だろうか。
 悩ましげに首を傾げたジェイミィに、近くの男子生徒が軽い調子で声をかける。
「いーのいーの、気にしないで。あれって皆、隠して持ってきてるんだよ」
「おや、そうなのですか」
「そうそ。厳しい先生だったら没収されたりするもんね」
 一応授業の一環だから、と笑う男子生徒だが、その笑みにはルールを守る生徒ばかりではないのだと解る悪戯っぽさが覗いている。
「ねえ、ジェイミィ先生はメカとか詳しい?」
「そうですねぇ……一応、知識はありますが」
 機械についてはそれなりに知識はあるものの、この世界の技術ではない事もふまえて、ジェイミィは控えめにぼかした返事をすることにした。
 異世界の人間の目には、猟兵の姿は普通に見える。ジェイミィがウォーマシンだからこういう質問をしたという訳ではないのだろう。
 男子生徒の服には、ところどころ機械油の染みなどが見てとれた。
「あなたはメカニックの勉強をしているようですね」
「そうなんだよ」
 男子生徒は頷くと、機械の発明や改造が好きなのだと語り、
「このゴンドラもさ、ジェット噴射で加速できるようになったら面白いと思うんだけどさー、誰も話を聞いてくれないんだよね」
 と、ため息を吐いた。
 先生としてよく話を聞いてみたジェイミィは、暫し考え。
「機械技師としてのスキルも、勿論大事でしょう」
 ですが、と続ける。
「君に必要なのは、プレゼンテーション能力ですね」
「プレゼン――?」とは、なんだろうか。
 聞き慣れない言葉に目を丸くする男子生徒を真っ直ぐに見詰め。
「企画への賛同を得るためには、発案したプランの魅力を如何に伝えられるか? それが重要なのです。良ければ、プレゼンの基本を教えましょう――」
 企業勤めで培われたノウハウを語る口調は重く、大きな説得力があった。
 将来とても役立ちそうな話が始まって、男子生徒も真剣に耳を傾けるのであった。

 それぞれに生徒達との交流を重ねながら、ゴンドラが進む。
「もふもふとの激戦にも備えておかねばのう」
 先の戦いに触れた春の言葉に、おずおずと生徒の一人が手を上げた。
「実はちょっと、緊張してます。一応災魔との戦いだし……」
 無理もないこと、先に不安がある事を聞けたのは良いことだろう。
「気を落ち着けて挑むこと、それを忘れぬようにな」
 それから、
「楽しむことが大事じゃよ」
 と、笑ってみせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

遠吠・狛
先生って言われるにはそんな年でもないし妙な気分だったり。
まあでもそれはそれでいっか。友達感覚の先生感覚の。

地下迷宮やのに綺麗な夜空だね。それに星の川。
めっちゃ不思議な場所。これも魔法ってやつなのかな。

とりあえず、この川どうやって渡ろっか。
せっかくだし、普段できないことやってみようかな!

とんと地面を蹴って宙を飛んでみるよ。
慣れないせいでちょっとぎこちなく犬かき風で泳いでみてる感じになりそう。
まあそれも楽しいかもね。楽しんだもの勝ち。

それに上から見下ろす星屑の川はなんていうか……ほんま綺麗だね。
たまにはこういうのもいいかもしんない。

絡み、アドリブ大歓迎だよ。


キトリ・フローエ
折角だもの、生徒達と一緒のゴンドラに乗りましょう
…本当にきれい!
迷宮の中なのに、本物の夜空みたいって思うわ

あたし、先生としてはちいさいけれど
精霊術くらいなら少しは教えられるはずよ(えっへん)
…っていっても、相性のいい子を見つけるところから
始めるのが一番だと思うのよね
風を受けて進むゴンドラも心地よいけれど
何より傍を流れる天の川の煌めきに魅せられて…
そのままえーい!と川の中へ
天の川のお星さま、あたしも拾えるかしら?
ちゃんと水着に着替えてきたし、泳げるからたぶん平気よ
流れに身を任せて、煌めきの中を進んでいくわ

水から上がったら、あたしもきらきらしてるかしら?
そのまま地を蹴って、空へ

*アドリブ、絡みOK



 広がる夜空は本物のよう。
 闇の中に小さな星達がきらめいて。
「地下迷宮やのに綺麗な夜空だね。それに星の川」
 遠吠・狛(野生の狛犬・f28522)は、不思議な光景に瞳を瞬く。
「……本当にきれい!」
 妖精の少女キトリ・フローエ(星導・f02354)も、感嘆の吐息を零した。
 あの輝く星の中に、つい、いつも眺める星座を探してしまいそうだ。
 美しい翅を広げてふわりと宙を舞いながら、
「あたしはゴンドラに乗るわ、あなたはどうする?」
 そう尋ねるのへ、
「うちはせっかくだし、普段できないことやってみようかなって」
 ニッと牙を見せて笑った狛は地面を蹴った。
 とん。とーん。
 ふかふかの毛に覆われた足先が、地面を離れて飛び上がる。
「おお、本当に浮かんだ! これも魔法ってやつなのかな」
 体の中に風が流れ込んできたみたいだ、軽くて、どこまでも行けそうな心地がする。とはいえ、空を飛んだ経験はないもので。
「うあっ、なんか体の重心がとりにく、い」
 ぱたぱたと腕を振ってバランスを取り、なんとか体勢を整えながら宙を泳ぎだす。
 まずは感覚を慣らしていく必要がありそうだ。
「ううん、空を飛ぶのって難しいんかな?」
「大丈夫よ、コツを教えてあげる」
 狛の顔の傍へ飛んでいって、キトリが優しくアドバイスを送る。
「風を感じて飛ぶのよ、こうやってね」
 ふっ、と背を押すような穏やかな風が吹いた。
 狛の体はさらに地上を離れて、前へと進む。
 その背を見送り、翻ってキトリは星屑の川へ向かって飛んだ。

 流れ星のように降り立ったキトリが着地したのは、ゴンドラの舳先。
 そのまま小さく跳ねるように、ゴンドラに乗った生徒達の前へ。
「あれ、キトリ先生。いつの間にいらしたんですか」
 急に現れたキトリの姿に、生徒達が目を丸くする。
「空を飛んできたのよ」答えながら驚く面々に笑みを返し、ゴンドラの縁に腰掛けた。
「キトリ先生は空を飛ぶのが得意なのですか? それともこの場所だから飛んだって事です?」
 常人の目には猟兵の姿は違和感のないものに映るので、キトリの言葉には純粋な好奇心と関心が寄せられる。
「あたしは普段から飛べるのよ」
「すごい! それって私達にもできますか?」
「うーん、それはちょっと無理ね」
 でも、あたしから何かを習いたいというのなら。と付け加えて。
「精霊術くらいなら少しは教えられるはずよ」
 えっへん。胸を張った。
 先生としてはちいさいけれど、自信はある。
 ……っていっても、相性のいい子を見つけるところから始めるのが、一番だと思うのよね。そういう子はいるかしら。
「わっ、猟兵先生から直々に教えてもらえるのですか」
「精霊術なら私達も少し、心得があります!」
 学ぶ意欲はあるようで、生徒達は嬉しそうに声を上げている。
 きっと、キトリの教えから頑張って学ぼうとするはずだ。
「それじゃ後で特別授業ね」
 キトリは微笑むと、立ち上がってゴンドラの縁から飛び上がった。
 ゴンドラに乗っているのも楽しいけれど、輝く星の川に身を委ねてみたい。この為に水着だって用意したのだもの。
「えーい!」
 まるで風に遊ぶ花弁のように舞い、星満ちる川へと飛び込んだ。
 さらさらとした細かい、砂にも水にも似て異なる柔らかいような感触が、キトリをやさしく包む。体の半分を沈ませても、溺れるような感じはないようだった。
 緩やかな川の流れに漂い、きらきらとした輝きを腕に抱くようにして泳いでみる。
「星の光を抱きしめているみたいね」
 このまま川から上がれば、自分も星のように輝いているだろうか。
 キトリは輝く飛沫を上げて空へと舞い上がる。
 その姿はまるで、夜を過る一条の尾を引く彗星のようだった。

 犬かきから始まった空中遊泳も大分様になってきた。
 今なら空に浮かぶ星も掴んでこられるんじゃないだろうか。
「がんばれ、狛先生ー。もうちょっとで着くよー」
 時々、下のゴンドラからそんな応援が飛んでくる。
「ちょっと変な感じだな」
 年の頃の近い、中には年上の子もいる。
 そんな生徒達から「先生」と呼ばれるのは何だか擽ったくて。
 まだ十三歳、そんな年でもないし妙な気分なのだけれど。
 まあそれはそれでもいっか。なんて、小さく笑う。
 先生感覚の、友達感覚で、過ごしてみようか。
 挨拶をしてきた生徒へ軽く手を振って、
「ありがとうなー」
 同じ様な調子で、声を返した。
 空から星屑の川を眺めれば、光はどこまでも遠くまで伸びて、夜の世界に輝いていた。
「……ほんま綺麗だね」
 その光景を瞳一杯に映して、狛はそっと呟いた。
 ちょっとだけ、のんびりとした時間。
 たまにはこういうのもいいかもしんない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
せっかくのお誘いだもの、喜んで同行させてもらうよ
(行くなら先生の勤めもしっかり果たさないと)という考えは胸に秘めて

最近は色々なことを経験したいと考えているんだ
だからゴンドラも体験しよう、ゴンドラで川を渡る
空の星を見上げて、月の無い夜に別の世界(アックス&ウィザーズ)で見た星空も思い出してみる
少し違いはあるかもしれないけれどどちらもそれぞれ綺麗だ

同乗している生徒が居たら話したい
俺達を誘ってくれた理由とか、薬草の使い道とか、星に見える物のこととか

この星が輝く鉱石なんて不思議だけれど素敵だね
鉱石が落ちてこの川になっているのなら少し持って帰れないかな
難しいかな?
(ふとした思いつきを言って微笑んでみる)



 月のない夜めいた空間に輝く星は、静かに輝いて。
 ゴンドラに揺られて眺めている内に、別の世界で見た夜空を思い出していた。
 星空というものはそれぞれ違っていても綺麗なものだと、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は穏やかに笑む。
「この星が、輝く鉱石なんて不思議だけれど素敵だね」
 小さな流れ星が星屑の川に落ちていくのを目で追って、
「少し持って帰れないかと思うけど、難しいかな?」
 そう尋ねれば。
「ああ、大丈夫ですよ。別に禁止されてないですし、研究用に持って帰る人もいますから」
 ゴンドラには他に生徒が三人乗っていて、サンディの言葉にその内の一人が答えた。
 口ぶりから察するに中々真面目そうな、タイプらしい。
「へえ、研究用か。どんな事を調べるのかな」
 話の切っ掛けをつくれば、他の二人も会話に加わろうと向こうから話しかけてくる。
「大体は鉱石自体の性質だとか、利用方法の模索ですかね」
「この間は薬草学の子が『星の花』の栽培ができないか実験していました。『星の花』がこのフロアに群生地を作るのは、ここの土壌とこの鉱石が関係しているんじゃないかって、そう考えたらしくて」
「なる程、中々面白いね」
 この様子なら、こちらが知りたい事にも答えてくれそうだ。
 幾つか訊きたい事もあって、質問をしてみる。
 すると生徒達から、サッと手が挙がった。
 まるで授業中の光景だ。
 先生と生徒、という間柄になるとこういう遣り取りになるのか。
 少し面白がるような面持ちを漂わせて、
「それじゃあ君、『星の花』について教えてくれるかな」
 サンディが目を向けると、生徒が口を開いた。
「『星の花』は安眠の効能を持っているので、魔法薬の材料にする他、蜜漬けにして飲み物に混ぜて飲むことが多いです」
「睡眠薬にして使うということかな」
「どちらかといえば、睡眠の質を良くする為に使いますね。花を飾っておくと夢見が良くなるとも言われています」
 なるほど、よく予習された答えだ。
 それならば次は、教科書には載っていないことを尋ねてみようか。
 もう一つ訊きたいのだけど、と前置いて、
「俺達を誘ってくれた理由を聞いてもいいかい」
 何気ない調子でそう言った。
「理由……ですか?」
 戸惑ったように生徒達が目配せをし合う、なんと答えたものか考えているのだろう。
「特に無いなら、それでもいいんだけどね」
「いえ、面白いです。漠然とした考えを、具体的な言語にするのは思考の甲斐がありますから……ちょっと待ってもらえますか?」
「ああ、もちろん」
 意外にも、何か理由があるらしい。
 軽いディスカッションを始めた生徒達を見守りながらサンディは耳を傾ける。
 どうやら何か裏があるというよりは、思いつきとノリの側面が強そうだ。
「猟兵の人達に興味があったからかな」
「魔王戦争への感謝とかもありますよね」
「でもやっぱり誘ったら楽しそうだったから、ってのが一番強いかもです、先生」
 結局、そんな結論が返ってきた。
 平和な理由ならそれに越したこともないだろう。
 そうか、と頷く。
「私からも質問よろしいですか」生徒が手を上げた。
「うん、どうぞ」
「先生はどうして誘いに応じてくれたんですか?」
 逆に尋ね返されて、サンディは暫し考えを巡らせる。
「最近は色々なことを経験したいと考えていてね」
 行くのなら先生の勤めもしっかりと果たさないと、という考えは胸に秘めて。
 今のは面白い質問だったよ、と微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニーナ・アーベントロート
SPD
ロラン(f04258)と

ダークセイヴァーはずっと夜だけど
夜空から零れ落ちるくらい沢山の星を見るのは初めてかも
…そうだねぇ
あたしたちが住んでる町でも、こんな空を見られる時が来たらいいな
できれば、そう遠くないうちに

ゴンドラに揺られて星河を渡ろう
操縦なしで進む船、確かにすごい
ゆっくり過ごすには持ってこいだねぇ

ふと思い立って、そーっと手を伸ばし
ひと掬いの星灯りをロランの頭上からさらさら降らせる
どうだ、びっくりしたかー!
夜空の色にも少し似た髪や瞳をきらきらさせて
よく動く尻尾の先で弾ける光も綺麗
差し出された星屑は触れれば明るさを増して
心臓の炎が、それに応えるように穏やかに揺れた
…あったかい


ロラン・ヒュッテンブレナー
【SPD】
人間形態
感情が尻尾や耳によく表れる

おねえちゃん(f03448)とお出かけなの

星でできた川、月のない星空、満ちる魔力
とっても不思議な場所なの
いつか、ダークセイヴァーの闇を払えたら、こんな星空、見れるのかな?

機械仕掛けのゴンドラも、面白いね
おねえちゃん、見てみて
こんな風に、ゴンドラって、進むんだね

振り返ったらキラキラしたものが降ってきたよ?
あれ、ぼく、光ってる?
ふふ、ぼくの魔力に、反応してるみたいなの
星屑を纏ってキラキラのしっぽをふりふり

おねえちゃん、ちょっと大きくて、きれいな形の星屑があったよ
はい、あげる
手渡ししたら、ちょっとだけ魔力を流して光らせてみるの
お守りにしても、良さそうだね



 かすかに聞こえるのは、歯車の音だろうか。
 機械仕掛けのゴンドラが、星屑の川を滑り出した。
「あっ、動いたよおねえちゃん」
 その瞬間を、そわそわと待っていたロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)はゴンドラの端に座ると身を乗り出すように景色をながめて。
「おねえちゃん、見てみて。こんな風に、ゴンドラって、進むんだね」
 ぱたたた。と、楽しそうに尻尾を振った。
「ゆっくり過ごすには持ってこいだねぇ」
 柔く細めた目元に穏やかなものを漂わせて、ニーナ・アーベントロート(埋火・f03448)も微笑む。
 二人を乗せたゴンドラは、さらさらと緩やかな川の流れに沿って進む。
「操縦なしで進む船か、すごいな」
「機械仕掛けのゴンドラも、面白いね」
 動くのに人の手を必要としないということは、のんびりと景色を眺めることが出来るということ。
 燦めく星が散りばめられた天を見上げたニーナはその澄み渡る風景に驚いていた。
 夜空から零れ落ちるくらい沢山の星を見るのは、初めてかもしれない。
 一方のロランも、やはり星空を見上げていた。
 星で出来た川、月のない夜空、そしてこの場に満ちる魔力の気配。
 とても不思議で、遠い世界。
「ねえ、おねえちゃん」
「どうしたの」
「いつか、ダークセイヴァーの闇を払えたら、こんな星空、見れるのかな?」
「……そうだねぇ」
 二人は暫し、遠くを見るような目をして星天を眺めた。
 故郷の世界で見る空は、どんよりと雲に覆われて。
 闇が、僅かな明かりも、隠してしまうから。
 暗雲を払い太陽を取り戻した時にそれは叶うのだろう。
「あたしたちが住んでる町でも、こんな空を見られる時が来たらいいな」
 できれば、そう遠くないうちに。
 その時はまたロランとこうやって星を眺められるだろうか。
 ふ、と。ニーナは頭の中を切り替えるように、ゴンドラの縁から手を滑らせた。
 口元に浮かぶのは悪戯な笑み。
 川を満たす星灯に手を伸ばして一掴み。
 星の川を見ている無防備な背へ、そーっと手を伸ばした。
 ロランの頭上でパッと開いた手から零れ落ちた星屑が雪のように舞い落ちて。
「どうだ、びっくりしたかー!」
 いたずら大成功。
 黄昏色の瞳は、さあ弟がどんな反応をするかと見守る。
 振り返ったロランはきょとん。と目を丸くすると、
「あれ、ぼく、光ってる?」
 体を確かめて不思議そうに首を傾げた。
 自分に起こったことがよく解っていない、無垢な子犬のような反応に、ニーナは小さく笑ってしまう。
 ロランは、特に気にする様子もなく。
「ふふ、ぼくの魔力に、反応してるみたいなの」
 みてみて。と両腕を広げてみせる。
 魔力への反応か星屑はキラキラと強く輝き、尻尾を振ると辺りに煌きが舞った。
「はは。綺麗だよ、ロラン」
 よく動く尻尾を見詰めて、ニーナは微笑ましげに頷いた。
「あれ、何か落ちたなの?」
 ロランは足元から小さな石を拾い上げた、表面に幾つも突起がある星の鉱石だ。
 掌に乗せて、そっと眺めてみる。
 それから、とても良い事を思いついたという顔をした。
「おねえちゃん、ちょっと大きくて、きれいな形の星屑があったよ」
 屈託のない笑顔を浮かべて、見つけた宝物を渡そうと。
「はい、あげる」
 差し出された手に、ニーナは目をしばたく。
 それはとても純粋な想いなのだと感じて。
 伸ばした指先で、幼く小さな手の中にある星屑に触れる。
 ロランは自分の中にある魔力を、少しだけその星屑に流し込んだ。
「……」
 手渡された星屑が迸るように明るく輝き、ニーナは自分の胸の中で心臓の炎が、穏やかに揺れるのを感じた。
 受け取った星屑を手の中に大事に握りしめて、まぶたを閉じる。
「あったかい」
 そっと息を吐くような呟きに、ロランの犬耳が揺れた。

 やがて魔力が安定したのか、星屑の光量は落ち着いたものへと変じていた。
「お守りにしても、良さそうだね」
「うん、そうだねぇ」
 零れ落ちた流れ星を手に入れたのなら、願い事も叶うかもしれない。
 姉弟は嬉しそうに笑みを交わした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月待・楪
氷月(f16824)と
アドリブ等歓迎

MilkyWay…星の河を渡るなんて経験
簡単に出来るもんじゃねーな

…そうだな
泳ぐのも念動力で漂いながら行くのもいいが
せっかく浴衣着てきたんだ
ゴンドラに乗ってこーぜ

すげー綺麗…
氷月、見てみろよ
星屑が集まって河になるとか
ありえねーはずなんだけどな
とか話ながら手を星屑の河へと入れて氷月を見て

…これ、掬えると思うか?
ベッドに撒いたら星の中で寝てるみてーになって楽しそーだし
話しながら氷月と一緒に掬う

掃除は確かに
なら、案内の奴らみたいにランプに入れるか
真っ赤な星形ランプに入れて
飾っておきてーかも…
赤い星が手元にあり続けるみたいだろ?
あー…おう
(恥ずかしいから視線を外す)


氷月・望
楪(f16731)と
アドリブ等歓迎

星屑の川、ってロマンチックだねー?
SNS映えしそう……っていうのも、今日はお休みで

ゆーくん、どうする?
泳ぐコトも出来るみたいだケド
……りょーかい、それじゃゴンドラに乗ろっか?

ゴンドラの中で普段よりも
はしゃいでいる姿と共に、星屑の川を眺めてみる
ベッドに撒くと、掃除とか大変そうだケド……
少しなら持ち帰ってもいいかも?
せーの、って一緒に掬ってみようかな

きらきらとした星々
とても綺麗だと思うケド、ね……
さっきのゆずの眼差しの方が一層輝いて見えた、なんて
勿論、ゆーくんにはナイショだケド

いいね
それじゃあ、隣に黒猫のランプ置かせてくれる?



 夜の帳に、散りばめられた星々が瞬いて。
 さらさらと流れる川は、星明りにあふれて迷宮の旅人を導く。
「星屑の川、ってロマンチックだねー?」
 光景に心躍らせながら氷月・望(Villain Carminus・f16824)が、隣を歩く月待・楪(Villan・Twilight・f16731)へ笑いかける。
 深い色彩の濃淡に染まる赤と青の浴衣。それぞれに着こなして川べりを歩けば、情趣溢れた風情が漂う。
「MilkyWay……星の河を渡るなんて経験、簡単に出来るもんじゃねーな」
 見上げるばかりの星が足元にある、なんてお伽噺のようだ。
「ゆーくん、どうする? 泳ぐコトも出来るみたいだケド」
 泳いでみるのも面白そうだし、念動力を使って星と漂うのも楽しそうだ。
 けれど、どうせなら。
「せっかく浴衣着てきたんだ、ゴンドラに乗ってこーぜ」
「りょーかい」
 二人でのんびり船旅、というのも悪くない。
 乗り込んだゴンドラが微かに歯車の音を立てて動き出す。
 緩やかな川の流れに合わせて、速度はゆっくりと。
「なんか、遊園地の乗り物みたいだね」
 この景色もゴンドラも、SNS映えしそうだけど。
 今日はそういうのはお休み。
 望はゴンドラの席に座りながら、楽しそうな様子の楪を眺める。
「すげー綺麗……」
 川面を見詰める楪の表情は普段よりもはしゃいでいて。
 輝く瞳は星を映しているからというばかりでもないのだろう。
「氷月、見てみろよ」
 振り向いた眼と眼が合う。
「うん」
 軽く頷いて横へ行く。
 星屑が集まって河になるなんて、ありえねーはずなんだけどな。
 不思議そうに、けれど楽しそうに語る声。
 煌々と輝く川へ伸ばした手の先に触れる星屑の飛沫は、柔らかな砂のような感触がした。悪戯猫のように、チョイチョイとつついて。
「……これ、掬えると思うか?」
「持って帰りたいの?」
「ベッドに撒いたら星の中で寝てるみてーになって楽しそーだし」
 なあ? と秘め事めいた眼差しで楪が同意を求める。
 望は少し考えるような素振りをして、
「掃除とか大変そうだケド……少しなら持ち帰ってもいいかも?」
 そう、返した。

 せーの。

 互いの合図で同時に川の中に手を入れる。
 重みはそれ程感じない、指先をすり抜けていく細かな粒は肌にあたっても柔らかで、ひんやりとしていた。泳いでも大丈夫なほどに、肌触りは良いのだろう。
 零さぬように両手で掬い上げた星屑はキラキラと輝いて。
「きれいだねー」
「これなら持って帰れそうだな」
 掃除は確かに大変そうだ。
 けれどそれなら、なにか入れ物に詰めておけばいい。
 学園の生徒達がやっていたように、硝子の容れ物なら丁度よさそうだ。
 ふ、と浮かんだ思いつきに唇が笑みの形になる。
「真っ赤な星形ランプに入れて、飾っておきてーかも……」
 彼だけの赤い灯り。それが示すのは、唯一つだけ。
「赤い星が手元にあり続けるみたいだろ?」
 手の中の星が二人を照らす中、真っ直ぐと望を見詰める。
「いいね」
 望はその瞳を覗き込むように、少しだけ顔を近づけて、
 ――それじゃあ、隣に黒猫のランプ置かせてくれる?
 慕情を仄めかせた囁きを返した。
 それを指すのも、唯一。
「あー……おう」
 視線を反らした楪の頬に、熱いものが上がってくる。
 その様子を見て望はニッと笑んだ。

 きらきらとした星々。
 とても綺麗だと思うケド、ね……。
 さっきのゆずの眼差しの方が一層輝いて見えた、なんて。

 ゆーくんにはナイショだケド。
 胸の中で、想う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【証人】
はは、先生だって
匡、ゴンドラに乗ろう
最近寝てなかったから、お目当ての薬草は楽しみだなあ
寝てもたびたび夢で起きちゃうからさ。――ゆりかごみたいで、いいねえ

匡、宇宙は好き?
ううん、星屑の川がきれいだなって思ってさ
――静かで好きなんだ、星空も、宇宙も
起きてると最近はいろんな音がうるさく聞こえて困る
命の音も、喋り声も、草木の揺れる音も。全部「証拠」っぽく聞こえて
そこに命がある、と思うと――ちょっと、疲れてしまう
今はどれも遠いし匡の音は不快じゃない
ほら、私達、鏡合わせのようだから

……なんだか、金平糖みたいに見えてきた
食べれそうじゃない?食べたら口の中が光ったりして
はは、うん、しないしない


鳴宮・匡
【証人】


ハティは呼ばれ慣れてるんじゃない? 「先生」っての
そうだな、体動かすよりはぼんやりしてたい気分
俺も、相変わらずあんまり眠ってないし

好き――どうかな、わからない
ちゃんと空を見上げることってあんまりないんだ
でも、この一面の星空は吸い込まれるように深くて
見上げてるとなんとなく落ち着くような気がする
――ほら、俺、目も耳もいいだろ
普段は色んなものが視えすぎて、聴こえすぎるから
たまに何もないところに行きたくなる
だから今は、ようやく息を吐き出せたみたいな気分で
ハティも落ち着けてるなら、よかったと思う

……ハティ、腹減ってる?
ああでも、何か甘いものでもあればよかったかな
その方が、もっとのんびりできたかも



 小鳥がさえずるような子供の声が、そう呼んだ。
「はは、先生だって」
 漫ろ笑み、ヘンリエッタ・モリアーティ(悪形・f07026)は、鳴宮・匡(凪の海・f01612)の一歩先を進む。
 背中からは表情を伺えないが、自嘲にも聞こえる言葉に含むものはあっただろうか。
「ハティは呼ばれ慣れてるんじゃない? 『先生』っての」
 匡が尋ねると、軽く肩を竦めて、
「匡、ゴンドラに乗ろう」
 そう答えた。

 滑るように動き出したゴンドラの上で、二人は向かい合うようにして席に腰掛ける。他に乗客はいない。
「最近寝てなかったから、お目当ての薬草は楽しみだなあ」
 ヘンリエッタが呟くように言った。
 幻想の夜が安眠の花を育てるというのも寓話めいているけれど。
 静かな眠りがあれば、少しぐらい楽になれるだろうか。
「……寝てもたびたび夢で起きちゃうからさ」
 そうか、と頷いて、
「俺も、相変わらずあんまり眠ってないな」
 互いに似たようなものだ。
 ふ、と匡の口元に笑みが漂う。
 疲れは見せないようにしているが、少し楽な体勢をとった。
「体動かすよりは、ぼんやりしてたい気分」
 そんな様子にヘンリエッタも、意識して肩の力を抜いた。
 胸の上で手を組んで、背をゆっくりと船に傾ける。
 川面を流れるゴンドラは、ゆぅらりと時折揺蕩うように揺れていて。
「――ゆりかごみたいで、いいねえ」
 このまま微睡むことは出来なくとも、心地よいような気がした。
 どこまでも続くような天蓋を見上げれば。
 澄み渡った景色に在る星々は、夜闇の中で標のように燦めいている。
 星屑の川も、きれいだ。
「匡、宇宙は好き?」
「好き――どうかな、わからない」
 まるで。
 ブランケットに包まってする内緒話のよう。
「ちゃんと空を見上げることってあんまりないんだ」
 自分でも不思議に思える。
 目を逸らしたくなるような事もなく、
「でも、この一面の星空は吸い込まれるように深くて、見上げてるとなんとなく落ち着くような気がする」
 こんな風に誰かと星を眺めているなんて。
「ほら、俺、目も耳もいいだろ」
 鋭い感覚は、戦いの中でこそ必要なものだけれど。
「普段は色んなものが視えすぎて、聴こえすぎるから」
 一度、言葉を切った。
 短い沈黙がゴンドラに落ちる。先を促すような気配もない。ただ其処に在る。
 それを無意識に確かめてから、
「たまに何もないところに行きたくなる」
 溜めていた息を吐き出すように言った。
「……ハティは、星が好きなのか?」
 うん。
 落ち着いた返事がある。
「――静かで好きなんだ、星空も、宇宙も」
 求めているものはきっと似ているのだろう。
「起きてると最近はいろんな音がうるさく聞こえて困る」
 眠りの中にも逃げ場はなく。
「命の音も、喋り声も、草木の揺れる音も。全部『証拠』っぽく聞こえて」
 苦笑交じりに、
「そこに命がある、と思うと――ちょっと、疲れてしまう」
 溜息を零した。

 それから二人は短い船路の間に、いくつか言葉を交わしながら過ごした。
 何事もない穏やかな時間だっただろう。
 不意に、星屑の川を見ながらポツリと、
「……なんだか、金平糖みたいに見えてきた」
 ヘンリエッタが呟く。
「食べれそうじゃない? 食べたら口の中が光ったりして」
「やめておけよ」
「はは、うん、しないしない」
 やんわりとした静止に、冗談めいた笑みで首を振る。
 匡はその様子に考えるような顔をして。
「……ハティ、腹減ってる? 何か甘いものでもあればよかったかな」
 そうすればもう少し、のんびり出来たかもしれない。
 試しにジャケットのポケットを探ってみようかと、してみる。


 厳密には、此の場所も静謐とは言えないだろう。
 機械仕掛けの船は動くのに微かな音を響かせたし、川の流れはサラサラと音を立てていて、本当はそれすら煩わしいのかもしれない。
 それでも地上より好ましく思えるのは此処が土深くにある空洞だからだろうか。
 地下を流れる川に、アケローンを想像するのは無粋だろうか。
 箱の中で、迷宮で、密室だ。墓穴に埋めた棺桶だ。
 肌を撫でるのは、ひやりとした地下の風。
 夜の帳は暗闇で、星々は土に埋まる石だ。
 『証拠』になるものも今は遠くて。
 傍らにいる人の気配だけ。
 けれど。
「匡の音は不快じゃない」
 ヘンリエッタはその理由をこう語るだろう。
「ほら、私達、鏡合わせのようだから」
 互いに落ち着いていられるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶/2人】
おぉー綺麗な天の川…
今の時期に七夕みたいな気分が味わえるなんてね
後ろにひっくり返りそうなくらい首を曲げて
どこまでも高い天井を見上げ

しばらくはゴンドラに運んでもらっていたけど
ねぇ梓、ちょっと泳いでみない?
コートだけ脱いで、躊躇なく川にドボン

「星の中を泳ぐ」だなんて
ロマンチックなシチュエーションだよねぇ
すーいすいと平泳ぎをしてみたり
星屑を両手で掬い上げてみたり
これ、川の中はどうなっているのかなぁ?
好奇心で、えいっと中に潜ってみる
…うーん、どこまでもキラキラでよく分からなかった

うわ本当だ
自分の身体を見たら星屑がくっついて輝いていて
でもそう言う梓もキラッキラだよ?
ぷっと笑い返してやる


乱獅子・梓
【不死蝶】
ここは地下迷宮のはずなのに
こんな見事な星空が再現出来るとはなぁ…
本当に天井なんてあるんだろうか?と
届くわけないが何となく手を伸ばしてみる
何だか魔法のよう…って
ここはリアルに魔法の世界だったな
じゃあ何でもありなのかもしれない

は?泳ぐってお前
まぁ本物の水じゃないから濡れることは無いだろうが…
もう飛び込んだ!?ったく、仕方ない奴だな
自分もコートを脱いで、綾を追いかけるようにドボン
焔と零にゴンドラの留守番を頼み

はしゃぐ綾が勝手に一人でどこかに行って
はぐれないようにと後ろをついていく
まるで親と子どもみたいだな…
でもそんな様子を微笑ましくも思う

川から上がった綾を見れば…
ぷっ、お前星屑まみれだな



「おぉー綺麗な天の川……」
 燦めく星の夜が広がっている。一体何処まで続いているのだろうかと、ひっくり返りそうなほど首を後ろに曲げながら、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は星空を眺めた。
 そんな様子を隣で見守りながら、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)も、思わず燦めく星へ向かって手を伸ばした。あまりにも近くて、零れ落ちてきそうだと感じる。けれど、遠い。
「こんな見事な星空が再現出来るとはなぁ……」
 美しいが本物ではない幻想の星夜。本当に天井があるのかと思う程に夜の闇は深くて、澄んだ空気に星々は静かに輝いている。
「何だか魔法のよう……って、ここはリアルに魔法の世界だったな」
 じゃあ何でもありなのかもしれない。
 迷宮に創られたこの空間には、如何なる魔法が使われているのだろう。
「ゴンドラに乗ろうよ、梓」
「おう、どれにする?」
 岸辺に並んだ中から一艘を選んで乗り込むと、微かに歯車の音がしてゴンドラが動き出した。機械仕掛けのゴンドラは自動的に動くので、川の流れに沿ってゆるやかに進む景色をのんびりと眺める事ができる。
 さらさらと微かな音を立てる星屑の川は光に溢れて、ゴンドラから身を乗り出して指を浸せば、水とも砂とも似て異なる感触が指先をすり抜けていく。
 この星の中に飛び込んでみたのなら、どんな心地がするのだろうか。
「ねぇ梓、ちょっと泳いでみない?」
「は? 泳ぐってお前……まぁ本物の水じゃないから濡れることは無いだろうが」
 抑えきれない好奇心のまま、コートを脱いで綾はゴンドラから飛び降りた。光る飛沫を上げて、川の中を泳ぎだす。
「もう飛び込んだ!? ったく、仕方ない奴だな」
 梓もコートを脱ぎ捨てて後を追う。
「焔、零。悪いが、留守番を頼む」
 泳ぐ背を追いかける前に、一度振り返って声をかければ、ゴンドラの舳先に止まった二匹の仔竜が「キュキュー」「ガウ」と鳴き声を上げて返事をした。

 星屑の感触は不思議と柔らかく、細かい砂のようだった。肌を傷つけることもないようで、これなら泳いでも大丈夫だろう。
 川は泳げるほどに深く、足がつくような感触はない。けれど何らかの浮力が働いているのか、じっとしていてもプカプカと体は浮いて流れに乗って漂っていく。溺れる心配はなさそうだった。
 川面から顔を出して泳いでいる綾の後ろを追いかけながら、まるではしゃいで走り出した子供を追いかける親のようだな、と梓は苦笑していた。
 けれど、光り輝く星を両手に集めては楽しげに笑う。そんな綾を慈しむように見詰める気持ちはどこかあたかかく。微笑ましいのだ。
 距離が縮まると、綾は振り返ってほころぶような笑みを浮かべる。
「『星の中を泳ぐ』だなんて。ロマンチックなシチュエーションだよねぇ」
 川遊びに掌に星屑を集めて掬い上げる。さらさらと零れ落ちる星はどれも細かな粒、天から降る星は川の中で磨り潰される内にこうなるのだろう。
 手の中から溢れて落ちる星を目で追う内、この川底には何があるのだろう、とそんな疑問が湧き上がり。
「これ、川の中はどうなっているのかなぁ?」
「おい、綾」
 待て、静止する間もなかった。
 えいっ、と一息に綾の姿が川の中へ沈む。
 光の中へ泳いでいくその姿は、澄んだ水とは違って影を追うことも難しく、追いかけることも出来ない。
 事態にひやりとした梓だが、すぐに綾が顔を出したので、二人は一度岸に上がることにした。仔竜を乗せたゴンドラも、そういう仕組なのか岸の近くで停まる。
 綾の腕を引いて岸辺に立たせてやりながら、
「お前な」と、小言の一つも出そうな梓だったが。
 上から下まで星屑を被り、きらびやかに輝く綾の姿を見て、ぷっ、と思わず吹き出して笑い出した。爪先から艷やかな黒髪にまで、小さな星の灯りが散りばめられて。
「お前星屑まみれだな」
「うわ本当だ」
 自分の様子に気がついて驚いたけれど、すぐに綾も笑い声を漏らす。
「でもそう言う梓もキラッキラだよ?」
 可笑しそうに笑って、ゴンドラへと戻ろうと歩き出した。
 星屑は軽く払えば思えば簡単に落ちるだろう。
「で、どうだった」
 と、梓が尋ねたのは星屑の川へ潜った時の光景だ。
「……うーん、どこまでもキラキラでよく分からなかった」
 何が見えたということもない、光に包まれて不思議な心地はしたかもしれないが。
 ああでも一つだけ、見つけた物がある。
「ほら、梓。星をあげるよ」
「ん?」
「さっき、手を伸ばしていたからさ」
 梓は少し驚いた顔をした。
 掌を差し出すと綾が小さなものを摘んでそっと乗せる。
 潜った時に拾ったのか、重ねた手の上には小さな星の礫。
 ありがとうな、と呟き。
 梓は綾の輝く指先を握った。
 星灯を纏って並ぶ二人の姿はまるで双星のよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『迷宮の中の植物採取』

POW   :    休まず元気に採取する。

SPD   :    丁寧に素早く採取する。

WIZ   :    効果が高そうなものを目利きしながら採取する。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「着きましたよ、先生」
 生徒が色硝子のランプを振って目的地の到着を報せる。

 ゴンドラを留めた岸辺からポツポツと花の影。
 少し歩くと仄かに光る白い小さな花々が咲く野原が広がっていた。
 これが『星の花』。地上に落ちた星が花になったら、こんな姿だろうか。
 葉や草の形は、シロツメクサにも似ていて。
 細い茎の上に咲いたコロリと丸い花弁の形は、なるほど金平糖のようだ。

 花に灯る光は摘んでしまうと消えてしまうらしいけれど。
 足元の灯りには充分な量の花が咲いている。

 『星の花』は安眠の効能を持つ薬草だという。
 睡眠薬と言うよりは、睡眠の質を上げるといった性質を持つらしい。
 香りは穏やかなもので、風味はほんのり甘く感じるのだとか。
 調合の心得がある者なら、薬の材料に使えるだろう。
 蜜に漬けた花を飲み物に入れて飲んでも効果があるそうだ。

「採った花は、籠に入れて集めますからね」
 生徒達はめいめい編み籠を持って、花を摘み始めた。
 しかしよく見ると、花冠や花束を作っている者もいる。
「これは自分用のです。部屋に飾っておくと良い夢をみられるって、おまじないがあるんです――実はプレゼントにも人気なんですよ」

 先生も如何かですか?

●プレイングご案内
 9/24(木)の8:31から受付開始となります。
 よろしくお願いします。
尭海・有珠
レン(f00719)と

魔法とかでなしに星と宙を漂うように飛べたのは面白かった
ああ、流石レンだ

ここでの星は、地上に落ちて花になった星
摘んだら消えてしまうのが少し勿体ないが。
同じ星巡りは二度となく
レンとの思い出と増えていく、星巡りの記憶は
どれを振り返っても胸が温かくなる

この花、安眠効果があるんだって
レンは眠れないこととか、あったりするのか?
眠りの深さの差が激しそうだな、とは。
私は…いつも寝てる私だって眠れないときも、あるからな

苦笑と共にちょっと首を傾げてレンを見上げ
すいすいと慣れた仕草で作った花冠を、レンの頭へ
「これで、レンも良い夢見られるように、な」
温かさをくれる君に、心地好い夢と眠りをどうか。


飛砂・煉月
有珠(f06286)と!

オレは飛んだりすること自体無いからなー
宙を選んだの正解だったでしょ?
なんて、

宙の星巡りの次は
地上に降った花たちの星巡り
摘んだら消えちゃうけど
オレたちの記憶にも想い出にも残るからさ
一緒に残して行こうよ

へぇ…安眠効果かー
効能にふむふむと興味有り気に
うん、眠れない期間ってのはやっぱあるよ
…有珠も?
そっかって頷きを返す
眠れぬ理由は自身も云えぬ以上、聞ける筈もなく

視線に気づけば察し少し下げた頭
置かれた花冠と届く言の葉に擽ったそうに
なら、キミにも
花を摘む
想いを編む
「有珠にもイイ夢が来るようにおまじない!」
祈りひとつ込めて有珠の頭に花冠を
オレに煌めきをくれるキミに
優しい眠りを、どうか



 手を繋ぎ、二人で宙に寝そべるようにして眺めた星空は、縦横無尽のパノラマ。
 綺羅星は、すぐそこに感じるほどに近く、夜の帳には澄んだ空気が廻る。
 繋いだ手から伝わるぬくもりは、心地よくて。
 二人で重ねた星巡りの旅を思い出しながら、でも新しい光景を見つけた喜びを分け合うようにして、しばしの空中遊泳を楽しんだ。
「もう着いたみたいだね」
「あれが、『星の花』か」
 輝く星の川を空から辿り、列なすゴンドラを追って、灯されたランプが目的地への到着を報せているのを見る。
 宙から眺めれば、淡く発光する花の光はどこか優しく感じるだろうか。
「行こう」と、飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)が笑う。
「ああ」共に、と頷く尭海・有珠(殲蒼・f06286)も微笑んでいて。
 羽根のように軽くなった身体は、ゆっくり下へ、下へと。
 寄り添う流星のように、地面へ降りていった。

 着地した足元で、草花が、そっ、と揺れる。
 楽しかった、と顔を見合わせて、
「魔法とかでなしに、星と宙を漂うように飛べたのは面白かった」
「オレは飛んだりすること自体無いからなー」
 喜んでいる有珠の言葉に、煉月も嬉しそうにしている。
「宙を選んだの正解だったでしょ?」
 なんて、冗談ぽく、付け足すと。
「ああ、流石レンだ」
 こくこく、頷きながら有珠はきっぱりと答えるのだった。

 宙での星巡りの続きは、地上に咲いた花の星々に囲まれて。
「まるで地上に落ちて花になった星だな」
「摘んだらこの灯りは消えちゃうんだって」
「少し勿体ないな」
 残念そうに眉尻を少し下げて、有珠が呟く。
 でもさ、と煉月は言葉を続けた。
「オレたちの記憶にも想い出にも残るからさ。一緒に残して行こうよ」
「うん、そうだな」
 二人で観たこの景色を忘れないように、双眸に映そう。
 この瞬間が思い出の中で永遠になるように。
 増えていく思い出、星巡りの記憶はどれも有珠の胸を温かくする。

 眺めの良い場所へ歩いていって、二人は柔らかい草の上に並んで座った。
 そうしてしばらくは、目の前にある光景を眺めていた。
「この花、安眠効果があるんだって」
 指先で花の光に触れてみながら、有珠が囁くような声で言う。
 静かな夜めいた景色の中で、その声は一層まろやかな音に聞こえて。
 煉月の目が心地よさそうに細められた。
「へぇ……安眠効果かー」
「レンは眠れないこととか、あったりするのか?」
 煉月の興味を引かれた様子に、眠りの深さの差が激しそうだな、と思いつつ。
 それとも他に、なにかあるのだろうか、ほんのりと伺うように視線を向ける。
 柔らかく微笑んだ表情のまま、煉月が軽く頷いた。
「うん、眠れない期間ってのはやっぱあるよ。……有珠も?」
「私は……いつも寝てる私だって眠れないときも、あるからな」
「そっか」
 眠れない夜の訳を互いに、深くは語らない。
 自身がもつ理由を語れない、だから、それ以上訊くこともできない。
 花を、やさしく手折る。ポツリ、ポツリ。
 指先に絡めた茎を、しなやかな仕草で巻きつけては、編んでいく。
 花の一本一本へ、密やかなおまじないのように、祈りを込めながら。
 できあがった淡く輝く星の花冠を両の手に持って。
「レン」
 苦笑を浮かべ、少し首を傾いで有珠は煉月の顔を見上げた。
 宝石のごとく煌く花を持つ彼女の姿に、煉月は一度まばたき。
 おずおずと頭を垂れれば、花の冠が乗せられて、
「これで、レンが良い夢見られるように、な」
 慈しむような声が、降ってくる。
 花冠の感触と耳に響く声が、みょうに擽ったいのは、どうしてだろう。
 キラキラと煌く星が、胸の中を満たしていくようだ。
「キミにも」
 と、煉月も自分が編んだ花冠を背中の後ろから取り出した。
 祈るように花を挿し、想いを編むように丁寧に輪を編んだ。
 そうして作られた花の冠は優しい光を宿している。
 瞳を丸くしている有珠の頭上へ、花の冠をそっと乗せた。
 艷やかな長い黒髪を飾り立てる星の彩。
 きれいだ。と声に出さずに胸の中で呟くと、にっこり笑って。
「有珠にもイイ夢が来るようにおまじない!」
 明るく、そう言った。

 温かさをくれる君に、心地好い夢と眠りを、どうか。
 煌めきをくれるキミに、優しい眠りを、どうか。

 それぞれに想いを込めた花冠を乗せて二人は微笑み合う。
 星の花の持つ光がやがて消えても、情景は心の中に残るのだろう。
 二人で紡いだ、いくつもの思い出と一緒に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェイミィ・ブラッディバック
※アドリブ共演歓迎です
【POW】
これが星の花ですか。名は体を表すとはよく言ったものですね。
では私も生徒たちと花を集めますか。
おっとその前に。レーダーの索敵+情報収集で一帯をスキャン、地形を把握しつつ生徒・猟兵の反応をIFFに味方情報としてマーク。これで迷子が出ても安心です。

何名かの生徒を引率しつつ花を摘んでいきます。おや、生徒さんの一人が花冠を2つ作ってますが…む、1つを私に被せてきましたか。「先生の見た目に愛嬌を足してみた」? ははは、まるで普段の私に愛嬌が足りないみたいでは…こら、審議を始めるんじゃありません。
あ、折角ですから皆さん(猟兵の同行者がいればご一緒に)で写真でも撮りませんか。



「さあ皆さん、はぐれないように」
 引率するジェイミィ・ブラッディバック(脱サラ傭兵・f29697)に連れられて、数人の生徒達がその周りを従いて回る。
 彼はまず、レーダーで辺り一帯の地形をスキャンし、採集に的確なポイントを割り出した。更に、内蔵されたIdentification Friend or Foeを用いて味方情報をインプットし、大体の動向を把握する。
 これならば災魔による奇襲があったとしても、即座に反応ができるだろう。
 そして迷子が出ないようにと、細やかなところにまで配慮が行き届いている。
 ジェイミィ先生の仕事振りは、実に素晴らしいものであった。
「この辺りが良いでしょう」
 そうして彼が選んだのは、花が多く咲き、ゴンドラへの退路が確保できる場所だ。
 目の届く範囲に散っていく生徒達を見守りつつ、ジェイミィも花の採集を手伝うために地面にしゃがんだ。
 淡く光る小さな白い花、レッドランプの目が物珍しさに瞬くように明滅する。
「これが星の花ですか。名は体を表すとはよく言ったものですね」
 見慣れた宇宙の景色にも、これに似た星を見たことがあるだろうか。
 じっくりと観察しながら花を摘む手は素早く、効率よく。
 生徒達が用意した籠の中には、あっという間に大量の花が集まった。
 これは勿論、最初の場所選びが良かった為だろう。
 そろそろノルマ達成でしょうか。と収穫量を確認して頷く。
 生徒達ものんびりと、遠足を楽しんでいる様子だ。
 一人の子がジェイミィに駆け寄ってくる、手には二つの花冠。
「おや、それは誰かへの贈り物でしょうか」
「こっちは先生の分。先生、頭を失礼してもよろしいですか?」
 その言葉に少し驚きながらも、巨躯を縮めるように屈んでジェイミィは頭を垂れた。
 よいしょ、と背伸びをした生徒の手からジェイミィの頭へ花の冠が乗せられる。一つ、ではなかった。次々と生徒達が周りに集まってくる。
 今日の感謝が込められた花飾りがジェイミィを彩る。迷宮での採集を安心して行えたのは先生が気を配り、守ってくれたからだと、皆感じているのだ。
「ふふ、これはこれは。ありがとう、皆さん」
「先生の見た目に愛嬌を足してみました!」
 しみじみと嬉しそうに、自分に乗せられた花飾りに触れるジェイミィへ。
 ドヤ! と胸を張る生徒達。
「ははは、まるで普段の私に愛嬌が足りないみたいでは……こら、審議を始めるんじゃありません」
 ただいま審議中……。と肩を寄せ合って、さえずる小鳥のような笑い声を立てている子供たちは実に楽しそうだ。
 やれやれ。苦笑しつつも、気を害した様子もなく。
 ジェイミィは思い出したように、カメラを取り出した。
「先生、それなんですか?」
「ああ、折角ですから、皆さんと写真でも撮ろうかと」
「写真? 撮りたい撮りたい!」
 にわかに燥ぎだした生徒達をやんわりなだめつつ。
 全員が収まるようにカメラをセットして、さてどのようなポーズで撮ろうかと尋ねれば、すぐに元気の良い挙手があった。
「ジェイミィ先生、腕にぶら下がってもいいですか!」
「あ、私もやりたいそれ!」
「ふむ……こうですか?」
 広げた腕に生徒達がしっかり掴まったのを確認して、ゆっくりと持ち上げる。
 頑強なボディは両腕に生徒を数名ぶら下げたところで、ビクともしない。
 きゃーっと歓声のような笑い声が上がった。

 パシャリ。カメラはその瞬間を捉える。

 カメラに収められた写真には、星の花畑で戯れるジェイミィ先生と生徒達の姿。皆、それぞれ頭や服に花飾りをつけて、笑っている。
 この写真を見た者は、彼等が和気あいあいとした時間を過ごした事を知るだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
摘むと光が消えてしまうそうだから
光が宿っている姿を覚えておこうとしばらく観察

記憶に焼きつけたらお手伝い
「摘むときは根元からがいいのかな?」なんて生徒に話しかけながら丁寧に、心の中で命を貰うことに「いただきます」と唱えながら摘む

自分用も詰んでいいんだ?
さっきの生徒も飾っておくと夢見が良くなるって言ってたっけ
俺も夢見が悪い日があるし少し戴こう
プレゼントにしてもいいのなら…花が好きな親友と、星のモチーフを渡したら喜ぶ親友、二人もきっと喜んでくれる
小さなブーケを3つ作ろう

「植物で作るものってどれくらい持つのか知らないんだ
長持ちさせるコツとかあるのかな」
コツを遠慮なく聞きながらブーケ作りと交流を楽しもう



 夜めく野原を彩るように明かりを灯す花が、地面を照らしている。
 川の中にあった星屑とは違って、触れただけでも消えてしまいそうな。
 小さく儚なさえ感じるような淡い輝きだった。
「これが、星の花か」
 深い色をした青の瞳が、その花を見詰める。
 光を宿した姿を覚えておこうと、そっと撫でるような視線を注いで。
 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、しばらく辺りの光景を眺めた。

 本日は、先生らしく振る舞おうと決めているから。
 その足は、生徒達が集まっている方へと向かう。
「摘むときは根元からがいいのかな?」
「あっ、サンディ先生」
「俺も手伝うよ。あの籠に入れればいいんだよね」
「ええ、あそこでOKです。ありがとうございます」
 嬉しそうに生徒は笑った。
 星の花の摘み方を教わりながら、サンディは生徒達に混じり草の上に座って作業を始める。
 採集は花の部分を中心に集めるけれど、葉や根の部分も薬や研究に使うので持って帰ると喜ばれるのだという。
 そうした利用方法も雑談ついでのように詳しく尋ねてみれば、なかなか面白い内容が返ってきて、相槌を打ちながら耳を傾けた。
 その間も、手は休まずに動く。
(いただきます)
 頂く。戴く。命をいただく。胸の中で唱えて、花を手折る。
「先生の手つきは、丁寧というか、やさしいですね」
「そうかな」
 柔和な笑みを浮かべて、少し逡巡する。
 胸裏にある思いを説明する必要はないが、今日は先生だから、
「俺は、命を貰う。と意識するようにしている」
 それだけを言った。
 それ以上多くは語らない。聞いた生徒がどう受け取っても、それは自由だ。
 考え込むような沈黙があって、それから各々、花を摘む手つきに変化があったかもしれない。生徒達は、学んでいる。

「へえ、自分用も詰んでいいんだ?」
「プレゼントにも喜ばれますよ」
 それなら、とサンディは思案する。
 飾れば夢見が良くなる。その話が本当なら少し戴いていこう。
 夢見の悪い日は、自分にもあるものだから。
 そして、脳裏に浮かんだ顔がある。一人は花が好きな親友。もう一人は星のモチーフを好む親友。
 それぞれの為に三つのブーケを作る。
 金平糖にも似た花を束ねたブーケは可愛らしく。光が消えても星の名残があるだろう。二人共、この星の花を渡せばきっと喜んでくれる。
「植物で作るものってどれくらい持つのか知らないんだ。長持ちさせるコツとかあるのかな」
 それなら、と生徒達が口々に水への活け方や、乾燥させてドライフラワーにする方法の説明を始めた。
 そうしたやり取りにもしっかりと耳を傾けるサンディに、皆よろこんで自分の知っていることを伝えたがるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九条・春
【アドリブ連携歓迎】
【面白そうな展開であればプレイング無視OK】

「……迷宮の中に空があるとはなあ。地下迷宮とは言え悪いことばかりではない、ということじゃろうか……」

感心しながらあたりを見渡して、生徒達の見様見真似で摘んでみたりします。光が消える事を少し物悲しく思いますが、風情があるとも感じるでしょう
むやみやたらと摘み散らかしはしませんが、一つ二つ、髪飾りになる程度の花を摘んでは生徒達に訪ねながら作ってみたりします
幻想的な風景に、大はしゃぎするというより感動的な感情が湧き上がります。前回の天の川とはまた違う感傷です



「……迷宮の中に空があるとはなあ」
 見上げた天蓋は果てを感じぬほどに遠くて、深い夜に瞬く無数の星も本物のようにも見える。
 あどけないような大きな瞳一杯にその光景を映せば。
 キラリ、小さな光が煌く尾を引いて遠くに落ちていくのが見えた。
「流れ星、か」
 あの星もまた、星屑の川の一粒になるのだろう。
「不思議な眺めじゃの」
 地上に目を移せば、花咲く野原、のような場所だ。
 夜めいた場所だけれど、ここは夜に生ずる不気味さよりも、のどかさが似合うようにも感じる。
 天に輝く星のせいか、川から届く明るさのせいか、それともこの花に宿る星灯がほんのりとやさしいせいだろうか。
 ふっ、と溜息とも笑みともつかぬ吐息が零れる。
「地下迷宮とは言え悪いことばかりではない、ということじゃろうか……」
 九条・春(風渡り・f29122)が知る迷宮といえば、命の危険と隣り合わせの場所であった。――その認識は間違っていない。
 少し場所を変えれば、なにが待ち受けているかもわからないのが、迷宮というものだ。ゾッとするような罠や仕掛け、凶暴な災魔がどこに潜んでいるとも限らない。
 アルダワの地下迷宮には、この世界全ての災魔が封じられているのだから。

「花飾りをつくっておるのか?」
 と、声を掛けたのは先程ゴンドラで一緒だった女生徒だ。災魔との戦いを少し緊張していると答えた子。どこか大人しい雰囲気が印象的だった。
「はい。綺麗でしょう、この花」
「そうじゃな、わしも見惚れてしまった」
 和らいだ表情でそう答えながら、傍に座る。
「わしにも作り方を教えてくれるかの、小さなのを、髪に挿してみたいのじゃ」
「素敵ですね。きっと、春先生に似合います」
 うんうん、首を縦に振って女生徒が微笑む。
 長めの茎をした星の花を一本、ポツリと手折り。
「一本目はこうして、指に掛けて輪を作るんです。茎を折らないようにして……」
「ふむ、ふむ」
 手本に倣って、花を摘んでみると少しして、花に宿っていた光が失せていった。
 ぼんやりと溶けていくような儚さに、目を細める。
「消えてしもうたのう……」
 なにか、終わりのようなものを感じるようだった。
 小さな花の愛らしさは変わらずとも、それはもう別物になってしまったような。
「先生? どうかされましたか?」
「ん、いや。ちょっと考え事じゃ」
 出来た花飾りを髪に挿せば、まるで零れ落ちた星を髪に添えたよう。
 かわいい。と喜ぶ女生徒へ、春はもう一つ花飾りを差し出した。
「こっちは、おぬしの分じゃ。ほれ、髪を結ってやろう」
「わ、春先生? ……ふふっ、くすぐったいです」
「今日は楽しい遠足じゃからの、これぐらい良いじゃろう」
 ふ、ふ、と柔らかい笑みを立てながら。
 幼い子供にしてやるような手つきで、髪を束ねて結ってやる。
 このまま穏やかに、時が過ぎればいいと。
 星に願うように、小さな花飾りを揺らして。

大成功 🔵​🔵​🔵​

比野・佑月
【月花】
最近なんだか花に縁がある。
聞こえてきた依頼内容にそう思いながら目を向けたその先
見知った顔があって思わず追いかけた。
「や、香鈴ちゃん。俺は趣味の散歩だったんだけど…君は?」
風情に興味のない俺にとって、花の思い出に結びついている少女。
猟兵の仕事でしか会ったことが無かったし、普段の姿を知れるのは少し嬉しい。

「へぇ、材料。それって君が選んだものが巡り巡って
誰かを笑顔にするわけだろ?」
「いいな、そういうの。――ね、お仕事見ててもいいかな」
こんなに穏やかな気持ちで過ごすのも久しぶりで。
この花たちがそうさせるのか、彼女と過ごしているからなのか
それはわからないけれど。
こうして過ごす時間も存外悪くない。


花色衣・香鈴
【月花】
籠ではなく瓶を幾つか持って花を集める
落としても割れないし特殊な術がかかった栓で封をすれば中の物を劣化させずに保存できる特別な物
そう
猟兵だから来れたけど、猟兵として以外のお仕事の為に此処へ来た
「…?」
突然名前を呼ばれて振り向くと
「佑月くん」
わたしをいつも助けてくれる人
でも何となくこういう所に来るイメージはなくて首を傾げた

「物作りの為の材料集めが普段のお仕事なんです」
工房に籠ってばかりの店主さんは素材を卸してくれれば誰でもと言う人で
年齢も性別も種族も関係なく雇ってくれた
「依頼で稼げる様になるよりも幼い頃、日陰者の家出娘でも暮らせたのはあの人のお陰だから」
今も続けてるんです
「どうぞ(にこ)」



 最近、なんだか花に縁がある。
 依頼の話を訊いた時にも、そう思ったものだ。
 ちょっとした散歩と、子供のお守り。番犬が必要なら出向いていみようかと、足を向けたのはそんな理由だっただろうか。
 ゆるりと尾を揺らして、比野・佑月(犬神のおまわりさん・f28218)は夜めいた花野を歩いていた。
 悠々としながらも、星明かりだけの夜闇のなかで、その眼は隙のない獣のような光を湛えている。
 景色をなぞっていた視線が、止まる。
 淡く輝く星の花を、一人の少女が摘んでいた。
 ――ああ、やっぱり"花"に縁がある。
 密やかに笑んで。
 こちらに気がつく様子もなく、歩きだした後ろ姿を追えば、気配に気がついたのか少女が振り返った。
「……?」
 少女の金木犀色の瞳が、驚いたように見開かれる。
 佑月は朗らかに笑いかけた。
「や、香鈴ちゃん」
「佑月くん」
 表情を和らげて、花色衣・香鈴(Calling・f28512)は佑月を見上げる。
 わたしをいつも助けてくれる人。
 けれどこんなところで会えるなんて思っていなかったから。
 香鈴は、不思議そうに首を傾げた。
 どうして? と尋ねるような仕草に、佑月は軽く頷く。
「俺は趣味の散歩だったんだけど……君は?」
「わたしは、」
 集めた花を入れる瓶を見せながら、
「物作りの為の材料集めが普段のお仕事なんです」
 そう、説明をした。
 特殊な術を施してある瓶は、落としても割れず、中に入れた物を劣化させずに保存できる特別なもので。摘んだばかりの星の花は、光を宿したまま、瓶の中を淡い灯りで満たしている。
「へぇ、材料」
「昔からお世話になっている工房があって、そこで取引して頂くんです」
 素材を卸してくれるなら誰でもいい。
 店主はそうした人物で、年齢も性別も種族も関係なく香鈴を雇ってくれたのだという。
 とはいえ、商売だけの関係とは言えない。
 金銭を稼ぐだけなら、他の仕事だってもうあるのだけれど。
「依頼で稼げる様になるよりも幼い頃」
 昔を思い出すように、ポツポツと言葉を継ぐ。
「日陰者の家出娘でも暮らしていけたのは、あの人のお陰だから」
 今もこの仕事を続けているのだ。
 言葉を止めて、香鈴は背筋がそわりとした。
 つい、身の上の話までしてしまったけれど、怪訝に思われたりしていないだろうか。なんて、思い至って。
 けれど。
「そっか」と、相槌を打った佑月の声はさっぱりとしている。
 猟兵の仕事でしか会ったことのない彼女の、日常的な一面に触れられたのは、少し嬉しく。その気持は和やかな笑みになって現れていた。
「いいな」
「え?」
 なにが「いい」のだろうと、香鈴は瞳を瞬く。
 佑月は短く喉を鳴らして、黒い眼で見詰め返した。
「物を集める為の材料集め。それって君が選んだものが巡り巡って、誰かを笑顔にするわけだろ?」
 取って、集めて、必要な人の手へ届ける。
 与える、仕事だ。
「いいな、そういうの」
 零すように呟いた、その顔には変わらず笑みがある。
 なのにほんの少し、声に寂しそうなものを感じたのだとしたら、それは夜の気配がそうさせたのかもしれない。
「――ね、お仕事見ててもいいかな」
 伺いにそっと頷き、
「どうぞ」
 香鈴は口元をほころばせて微笑んだ。
 彼は自分の仕事を、そんな風に思ってくれる人なのだ。
 嬉しいような恥ずかしいような、擽ったい気持ちになりながら。

 星の花の中に座り、ほっそりとした指で静かに花を手折っていく。
 コロリとした小さな花を、透明な瓶の一つ一つに丁寧に詰めて。
 その作業を何度も繰り返す。
 傍らに座って、佑月はじっとそれを眺めた。
 風情なぞに興味はないのに、それでもずっと見ていたくなるような気持ちになる。
 ここに咲く花がそうさせるのか、それとも彼女と過ごしているからなのか。
 それはわからないけれど。
 こうして過ごす時間も存外悪くない。
 心は、不思議なほど穏やかだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【証人】
安眠効果ね
眠れても長く寝れないから助かる、本当に
夢って、記憶を整理してるんだってさ。匡
その日にあったこともだけど、ずっと前にあったことなんかも
脳は処理をしてくれるみたい
心は、追いつかないことが多いけど

でも、夢も見たくない日もあって
私はそういうのが続いてる
何にしようかな。アロマキャンドルにしようか、飲み物にいれるのもいいね
――金平糖みたいだから、甘いんじゃない?小瓶に入れよう
兄さんにも持って帰ってあげようかな
匡は?
――夢も見ないくらい、眠ってほしい人はいる?
……私が言うとちょっと物騒かも
そう、熟睡してほしい人。気持ちよく休んで、明日を元気に過ごしてほしい人とか

……探偵社に飾ろうかな。これ


鳴宮・匡
【証人】


長く眠れない、か
俺もそんな感じ
夢で見る昔の景色は、昨日のことみたいにまだ鮮やかで――
それこそ、心が追い付いてないのかな
整理して、手放したくはないのかも

甘いなら、飲み物に入れるのはいいかも
俺もそうしようかな……砂糖漬けとかにしても大丈夫だと思う?

なんかその言い方だと永眠させるみたいじゃない?
まあ、眠れてなさそうなやつにはぽつぽつ覚えがあるよ
でもそういう括りでいくと、籠いっぱい摘んでも足りなさそうだ

……そう、案外、世界が広がった気がするんだよ
大事にしたいと思うものとか、守りたいものとか
昔は、自分の手には余るって思ったけど
最近は少し――前向きに受け止めてる

そうだな
俺も、宿に飾っておこうかな



「眠れても長く寝れないから助かる、本当に」
 細長い茎ごと摘んだ花を指につまんで、ヘンリエッタ・モリアーティ(悪形・f07026)は言った。
「俺もそんな感じ」
 小さな灯りが散らばったように咲くのを眺めながら、鳴宮・匡(凪の海・f01612)も静かにうなずく。
 昔の、過去の、記憶は。
 夢の中でつい昨日のことのように鮮やかに現れる。
 長く眠れば、余計に深く、夢の中で思い出してしまうから。
 深い眠りを無意識に拒むような日々だ。
「夢って、記憶を整理してるんだってさ。匡」
 湖面に落ちる水滴のような声でヘンリエッタが言い。
 さく、さく、草を踏む音を立てて。
 未だ誰も踏み入れてない場所へ、二人は入っていく。
「その日にあったこともだけど、ずっと前にあったことなんかも、脳は処理をしてくれるみたい――心は、追いつかないことが多いけど」
 整理。
 ごちゃごちゃと散らかした部屋を掃除するように。
 モザイクじみたジグソーパズルを並べ直すみたいに。
 脳髄に染み付いた鮮やかなあの景色は、いつかきれいに片付くのだろうか。
 そうすれば眠れるだろうか。
 けれど。まだ、その時ではないという思いもある。
「それこそ、心が追い付いてないのかな」
 若しくは。
「整理して、手放したくはないのかも」
 匡は淡々として呟く。
「手放しくたくない、か」
 鸚鵡返しに言って。
 刹那、軋むような笑みがヘンリエッタの口元に漂った。

 淡く輝く白い花を集める。
 コロリと丸い星のような花粒を小瓶に詰めてみようかと考えながら。
「アロマキャンドルにしようか、飲み物にいれるのもいいね」
「甘いなら、飲み物にも合いそうだな」
 薬にするというのだから、口に入れても大丈夫なのだろう。
 眠るために飲むのなら、甘いものの方が好ましい。
「……砂糖漬けとかにしても大丈夫だと思う?」
「金平糖みたいだから、甘いんじゃない?」
 口に放り込んで確かめてみようか、なんて冗談交じりに言ったら。
 やはりなにか食べたいのか? と思われてしまうかな。
 指先で花をもてあそびながら、ヘンリエッタは少し考えて。
「学園に戻れば調べられるんじゃない、ここは学び舎だから」
「それもそうか」
 帰るついでに、学園に立ち寄る時間ぐらいはあるだろう。
 簡単な利用法ぐらいなら、本の一冊にでも書いてあるかもしれない。
 "本来"の教師に詳しい話を尋ねてもいいだろう。
 自分達で使う分量を集めるとして、どれくらいの量が必要だろう。
 多めに採っておけば、誰かへのお裾分けにもできるだろうか。
 と、考えれば。
「兄さんにも持って帰ってあげようかな」
 一番にその名が出る。
「匡は? ――夢も見ないくらい、眠ってほしい人はいる?」
「なんかその言い方だと永眠させるみたいじゃない? そういう意味じゃないんだろうけど」
 もっと優しいニュアンスなんだろう。
 首を傾げて凪いだ視線を向ければ、頷きが返ってくる。
「そう、熟睡してほしい人。気持ちよく休んで、明日を元気に過ごしてほしい人とか」
 問いに、俯くように足元の花を見詰めながら。
 脳裏に浮かんでくる面影は、一人や二人ではなかった。
「まあ、眠れてなさそうなやつには、ぽつぽつ覚えがあるよ」
 屈んで、花を摘む。こっちはあいつの分、これはあの子に、なんて思いながら。
 でも。
「そういう括りでいくと、籠いっぱい摘んでも足りなさそうだ」
「随分、大勢なんだ」意外、ではなかった。
「……そう、案外、世界が広がった気がするんだよ」
 ふ。息を吐くようにひっそりと笑って。
「大事にしたいと思うものとか、守りたいものとか。昔は、自分の手には余るって思ったけど」
 匡は屈んだ姿勢から、ヘンリエッタを見上げると静かな瞳で言葉を継ぐ。
「最近は少し――前向きに受け止めてる」


「……探偵社に飾ろうかな。これ」
「俺も、宿に飾っておこうかな」
 収穫したものを抱えながら、夜めいた花野を並んで歩く。
 果たして、安らいだ眠りは得られるだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロラン・ヒュッテンブレナー
●感情がしっぽや耳によく表れる
狼並みの嗅覚持ち

おねえちゃん(f03448)とお花採集なの

すごい、このお花、光ってるね
草原が星空みたいの
うん、大事に集めるの

このお花、気持ちよく眠れるお薬になるんだって
(くんくんにおいをかいでみる【聞き耳】)

ふぅわ…、あれ、眠くなってきちゃったの…
はーい、がんばるの

(くんくん)
あっちの方が、たくさんありそうだよ?
ふふ、いっぱいあるから、たくさん集めるの

においが濃くて、きれいな形のを探して集めるね
種はあるかな?
ダークセイヴァーでも、咲くかな?
(うとうと)

(密集地帯で採集してる間にコロンと寝てしまう)
むぅ…、おねえちゃん……
(手には編みかけの花の輪を持ってる)


ニーナ・アーベントロート
ロラン(f04258)と

ぼんやり光る砂糖菓子みたいな花は
摘んじゃうのがちょっと勿体ない
星の花、大事に使おうね

興味津々なロランの様子が微笑ましい
つられて花に顔を寄せて、くんくん嗅いでみれば
優しい甘い香りが心地好い
気付けば、すぐ隣で狼耳が眠たげにとろんとする気配
…はは、効果てきめんだ
でも寝ちゃうのは、うちに帰るまで我慢ね

ロランの並外れた嗅覚に野性味を感じつつ
【第六感】で効きそうなものを採取
確かに、うちの庭に植えたら皆喜びそう

気付くと、語りかけた先に返事はなく
どうしたの、と覗きこめば
…ね、寝てるの?
仕方ないなぁと苦笑して
まだまだ小さな身体をおぶって移動
(編みかけの花輪に気付くのは、もう少し後)



「すごい、このお花、光ってるね」
 淡く輝く小さな白い花を見て、ニーナ・アーベントロート(埋火・f03448)は不思議そうに瞳を瞬いた。
「草原が星空みたいの」
 隣を歩くロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)も、地上に広がるその光景に見入っていた。
 灯りを宿した砂糖菓子みたいな花は、摘んでしまうのが勿体ない。
 ニーナは内心で残念がりながら。
 これも学生のため、薬を作るため、と心を引き締めた。
「星の花、大事に使おうね」
「うん、大事に集めるの」
 二人は顔を見合わせると、頷きあった。

「このお花、気持ちよく眠れるお薬になるんだって」
 ロランはしゃがんで花に顔を近づけると、花の匂いを嗅いみる。
 微笑ましいその姿につられて、ニーナも同じようにしてみると、優しくて甘い香りを感じた。彼女はふんわりと漂う程度にしか感じなかったが。
 狼の嗅覚を持つロランには、効き目が出てしまったらしい。
 ふぅわ。と欠伸をして、狼耳がとろんと垂れてくる。
「……、あれ、眠くなってきちゃったの……」
「はは、効果てきめんだ。でも寝ちゃうのは、うちに帰るまで我慢ね」
「はーい、がんばるの」
 目をしぱしぱさせながら、ロランは頷くと、眠気を覚ますように頭を振る。
 そして何かに気がついたように右の方向を向いた。
 じっと研ぎ澄ませるような気配をさせて。
「あっちの方が、たくさんありそうだよ?」
 てててっ、と駆け出す。
 その背を追いながら、狼の野性味を感じるニーナだった。

 少し歩いた先に現れたのは、固まるように集まって咲いている星の花。
 これだけあるなら、必要な分を採っても沢山残るだろう。
 二人はさっそく草の上に座って花を摘み始めた。
 ふと、ロランは手の上に載せた花を注意深く眺める。
「種はあるかな?」
「種?」
 大きく頷いて、ロランは尻尾を大きく揺らした。
 この花を咲かせたら、星空を知らぬ人にも見せてあげられるかもしれない。
 この美しい綺羅星の景色を。
「ダークセイヴァーでも、咲くかな? おねえちゃん」
「確かに、うちの庭に植えたら皆喜びそう」
 帰ったら、試してみようか。
 そんな話をして、微笑み合う。
「ふふ、いっぱいあるから、たくさん集めるの」
 籠の中にいっぱいの花を集めて、それから。
 ニーナから見えないように背を向けて。
 ロランはせっせと手を動かしていた。花を集めて、束ねて、茎を曲げて編んでいく。その顔は一生懸命だ。
 けれど、たくさん花のある場所にいたからだろうか。
 うとうとと、頭が揺れてくる。
 瞼がふさがってきて、閉じた目が段々開かなくなってきて。
「だめなの……寝たら……むぅ……」
 と、がんばってはいたのだが、次第に意識は夢現へと。

 効き目の有りそうな花を選んで採集をしていたニーナは、ふと弟の声が聞こえないことに気がついた。
「ロラン?」
 呼びかけても返事がない。急いで弟のいる方向を見る。
 ロランはさっきと同じ場所に座ったままだ。
 けれど。
 こくん、こくん、と頭は船をこぎ、見ている内にゆっくりと柔らかい草の上に崩れるように横たわると、コロンと丸くなっていった。
「え?」
 驚いて近寄ってみると、どうやら寝てしまったらしい。
 スヤスヤと小さな寝息を立てて、気持ちよさそうな顔で目を閉じている。
「……ね、寝てるの?」
 返事の代わりに大きな耳が、ぴょこっと揺れる。無意識の反応なのだろう。
 じっと様子を見ていても、起き出すような様子もなく。
 起こそうか迷ったものの、あまりにもその寝姿が心地良さそうなものだから。
 仕方ないなぁ。なんて苦笑して。
 ニーナは起こさないようにゆっくりと、ロランの小さな体を背中におぶった。
 眠る子供の体温は普段よりも温かく、背中に熱が伝わってくる。

 星の花が明かりを灯す草野を歩く。
 ゴンドラの近くか、他の仲間のいる場所へ向かえば安全だろう。
 生徒に尋ねれば、毛布の一つも貸してもらえるかもしれない。
「よく寝ているなぁ……」
 案外、疲れが溜まっているのだろか。と、心配も浮かぶのは"おねえちゃん"だからなのかもしれない。
 星の花にその力があるのなら。
 良い夢を見ているといい。と思う。
 すると。
 くうん。と鼻を鳴らすようにして、ロランが寝言を漏らした。
「むぅ……、おねえちゃん……」
 ニーナの胸の中にある炎がその声を聞いて揺れる。
 そうか、あたしの夢を見ているのか。
 いつもよりも甘えてくるような声に、口元をほころばせて。
「ここにいるよ、ロラン」
 そうっと、囁いた。

 姉の背に揺られながら、ロランの顔には柔らかい笑みが浮かんでいた。
 ふかふかの毛に覆われた手の中には、つくりかけの花の輪。
 落とさぬように眠っていても離さない。
 渡したらびっくりするかな。喜んでくれるかな。
 尻尾が、そわりそわり、揺れている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
白く光る花畑にほう、と溜め息をつき
ここの花は物理的に光っているのか

ふと思いつき、焔と零を野原に降ろしてみる
花の光に照らされながら
ごろごろと楽しそうに遊ぶ二匹の姿は
うむ、思った通り、映えるな
すかさずスマホを取り出しシャッターを切りまくる
ふふふ、写真フォルダがまた潤うぞ

…っと、ついつい熱中してしまった
戻ってきたら綾から花束を渡され一瞬きょとん
お前にちゃんと眠れているか心配されるとはな…
危険な依頼に向かう前日とかは
寝付けないこともあるかもしれないな
いやいやいや、お前が無茶しないか
不安で寝付けないってことだよ!

綾を小突いてやりつつ
この花を部屋の何処に飾ろうか考える
きっと今日はよく眠れそうだ


灰神楽・綾
【不死蝶】
『星の花』か、言い得て妙だよね
夜の空間に優しく輝く白い光は
本当に地上に落ちてきた星みたいだなって

あらら、また梓が親ばか発動してる
でもこの星の花の光は
此処だけでしか見られないものだから
写真に残しておきたくなる気持ちも分かる
撮影も良いけど、採集も忘れちゃ駄目だよ?
と梓に笑って声をかけつつ、丁寧に摘んでいく
いいこと思いついた、と
生徒からリボンを譲ってもらって
自分の摘んだ花をリボンできゅっと結び
小さな花束の完成

戻ってきた梓にプレゼント
星の花は安眠効果があるらしいからね
梓は毎日よく眠れているのかな?と思って
あー分かるよ、明日はどんな敵と戦えるのかなって
ワクワク興奮して寝付けなくなるよね



 輪郭を象るような淡い輝きが、花の一つ一つに宿っているようだった。
 小さな花が野原に点々と散らばるように咲いている光景は、まるで地上に星空を映したようでもあった。
 ほう、とため息を漏らした乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はその灯りが幻想からではなく、物理的な働きによって現れることに感心したようだった。
「『星の花』か、言い得て妙だよね」
 隣を歩く灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)も、ゴンドラから眺めた光景とはまた違った星の景色をのんびりと眺める。
 どこか優しい光に、地上に落ちてきた星のようだな、という印象を抱く。
「これを集めればいいんだよな?」
「そうそう。……ああ、ほら梓あの辺は花が多そうだよ」
 光が集まっている場所があれば、そこは花が多く咲いているという事。
 綾が示した場所へ行ってみれば、其処に手つかずの花が咲き乱れていた。
 密集する花は、まるで小さな星雲のようだ。
 その時、梓の脳裏に閃きが奔る。
「焔、零」
 二匹の名を呼びかけて腕に抱き上げると、草の上に二匹の仔竜を降ろしてやる。
 ぬいぐるみのように小さな体が、花に囲まれるようにちょこんと座った。
 キュー? と鳴いて焔が首をかしげる。
「ちょっと休憩だ。好きにしていいぞ?」
 遊んでも良いと言われて、好奇心のままに淡く輝く花に顔を近づける焔。
 最初はじっと様子を伺いながらも、慣れてくる内にちょっとずつ遊びはじめる零。
 対象的だからこそ、反応の違いが楽しい。
 星の光と戯れるような仔竜の姿を見守りながら、梓はすかさずスマホのカメラを構えた。
「うむ、思った通り、映えるな」
 パシャパシャパシャ、と素早いシャッター音が鳴る。
 聞けばこの花の光は摘むと消えてしまうのだという。
 この光景がここでしか撮れないならば、今しかチャンスはないのだ。
 ごろごろと二匹で寝そべる姿は愛らしくて、一瞬一瞬が尊い。
「いい顔だな、よしよし」
 梓の体が徐々に地面に這うような姿勢へとなっていく。
 被写体の目線にまでカメラを下げることでベストな構図が撮れるのだ。
 ふふふ。と満足げな笑いが口から漏れる。
 写真の枚数はどんどんと増えて、こうして彼の写真フォルダは更に潤っていくのだった。

 あらら、また梓が親ばか発動してる。
 見慣れた様子に、綾はのほほんと微笑んで。
 此処でしか撮れない光景だし、写真に収めたくなる気持ちはわからないでもない。
 そんな気持ちで梓を見守っている。
 でも。
「撮影も良いけど、採集も忘れちゃ駄目だよ?」
「おう」
 声をかければ返事はあるれけど、すっかり夢中な様子。
 多分聞こえてないな。
 と思いつつも、放っておいてあげる優しさだ。
 こちらはこちらで仕事をしよう、と花を摘んでいく。
 丁寧な手つきで、一輪ずつ。
 目についた花を求めて、あちらへこちらへ。
 その姿はまるで花から花へ飛んでいく蝶のよう。
「きれいなのが集まったな……」
 手の中の花を見て、満足げに綾は目を細めた。
 そのまま、じっと星の花を見詰めて。
「いいこと思いついた」
 と、綾はフラリと、どこかへと歩いていく。

 しばらくして。

「はい、プレゼント」
「ん?」
 差し出された小さな花束に、梓は首をかしげた。
 まるで星のブーケのような花束だ。
 丁寧に茎には生徒から譲ってもらった白いリボンを巻いて束ねてある。
 なぜこれを自分に? と怪訝な面持ちを浮かべてみれば。
「梓は毎日よく眠れているのかな? と思って」
 星の花には安眠効果があるらしいよ。
 そう付け足された言葉を聞いて、梓はおずおずと花束を受け取った。
「お前にちゃんと眠れているか心配されるとはな……」
 いつも心配するのは自分の方だと、親目線めいたそんな意識があるものだから。
 なんだかジーンと胸に響くものがある。
 誤魔化すように、咳払いを一つ。
「危険な依頼に向かう前日とかは、寝付けないこともあるかもしれないな」
「あー分かるよ、明日はどんな敵と戦えるのかなって、ワクワク興奮して寝付けなくなるよね」
「いやいやいや、お前が無茶しないか不安で寝付けないってことだよ!」
 軽く小突きながら、その顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいる。
 大事に飾ればきっと良い夢が見られるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月待・楪
氷月(f16824)と
アドリブ等歓迎

金平糖が花になってんのか…?
さっきの星の川といい、本気でなんでもありだな…

ふーん…見た目も金平糖なら、味も金平糖みたいなんだな
光るのはさっきのでじゅーぶんだろ

蜜に漬ける……氷月、どっかでそのレシピ調べて作ってくんねェ?
代わりに紅茶は淹れてやるから

にしても、こんだけあるなら少しくらい持って帰ってもいいだろ
確かストックポーチに小さい空き瓶があったから、そこに少し摘んで持って帰る
…おやつ代わりにな

…安眠と睡眠の質の向上か
っし、やるか
(氷月に内緒で小さなブーケタイプの花束をいくつか作る)

眠りネズミの蜜も家にはあるが…ひづを悪夢になんざ譲ってたまるかっての


氷月・望
楪(f16731)と
アドリブ等歓迎

金平糖の形をした花、って感じかな?
花を摘んじゃうと光らなくなっちゃうのは
少しだけ残念な気がしないでもない
まあ、折角だし……俺達もちょっと貰うとしよっか?

花の蜜漬け……(サイバーアイでざっと【情報収集】)
うん、金木犀の蜂蜜漬けとかのレシピを
アレンジしたらいけそうかな?
ゆーくん謹製の紅茶の為にも、俺頑張っちゃうよー!ってね

安眠効果、ね
ゆーくんが摘んでいる間、こっそりと
短時間だと小さな物しか作れないだろうけれど
花冠作りにチャレンジしてみるよ

おまじない、とやらに頼りきりなんてコトはしない
まあ、でもさ……
俺の大切な唯一に良い夢見てほしい、って意思表示……なんて



 掌に載せたコロンと小さな白い花は、花弁が不揃いの凹凸がある形をしていて。
 話には訊いていたけれど、見覚えのある砂糖菓子のような見た目に月待・楪(Villan・Twilight・f16731)は不思議そうに瞳を瞬く。
「金平糖が花になってんのか……?」
 ツン、と指先でつつけば、花の柔らかい感触がする。
「金平糖の形をした花、って感じかな?」
 摘んだばかりのそれが淡く輝くのを眺めながら、氷月・望(Villain Carminus・f16824)も目元を和らげる。
 川の中にあった煌く星屑とはまた違う、ほわりとした輝き。
 消えてしまうが、少しもったいない。と思ってしまう。
「光るのはさっきのでじゅーぶんだろ」
「ん。そうだね」
 楪の言葉に頷いて、望も気を取り直す。
 浴衣で二人、綺羅星のような花野を歩けば、祭りに訪れたような心地がしてくる。
 いつもゆったりとした歩みで、景色を眺めながら。
 ポツン、と花を摘んでみる。
「ほら見てゆーくん、綺麗なの見つけた」
 指に摘んだ星の花を、よく見えるように近づければ。
 楪は、ぱくりと花を口で受け取って食べてしまった。
「あ」
「ふーん……見た目も金平糖なら、味も金平糖みたいなんだな」
 花蜜のような風味が仄かにする感じだろうか。
 優しい甘さに、ふわっと穏やかな花の香りが合わさって、口の中を漂う。
 あっさりとして、後味も悪くない。
 これなら、色々な使い道が浮かんできそうだ。
「お前も食ってみな」
 摘みとった一粒を、氷月にも食べさせてやる。
 どれどれ。とゆっくり味わいながら、望はちょっと考えて。
「花の蜜漬けにしたら美味しいかも」
「いいな」
 楪の灰色の光がきらめいた。
「……氷月、どっかでそのレシピ調べて作ってくんねェ? 代わりに紅茶は淹れてやるから」
 もちろん、断る理由もない。
 望はサイバーアイを使って素早く情報を集める。
 花を使った甘味は意外と多いようで、すぐに幾つか参考になりそうなレシピが見つかった。
「うん、金木犀の蜂蜜漬けとかのレシピをアレンジしたらいけそうかな?」
 これならきっとすぐ作れる。
 ざっくりと必要な材料や手順を記憶しながら。
「ゆーくん謹製の紅茶の為にも、俺頑張っちゃうよー! ってね」
 そうぐっと気合を入れ。楽しみにしててね、と望は笑む。
 今日の思い出が籠もった花でつくる蜜ならば。
 きっと素敵なティータイムになる。
 その時はとびきり美味い紅茶を淹れてやろう、と楪も眦を緩めて。
「それじゃ、必要な分だけ貰っていこうぜ」
 そう言うと、荷物から空き瓶を取り出してみせた。
 群生地というだけあって花は数え切れないほど咲いている。
 これだけあるなら、少しぐらい持って返っても構わないだろう。
 ……おやつ代わりにもなるかもな。
 なんて、冗談めかして。
 さり気なく背中を向けながら、楪は花を摘む作業に取り掛かる。
「折角だしね……少しだけ貰おう」
 そそそ、と望も背中合わせになるような態勢になって。
 二人は柔らかい草の上に座り、しばし自分の手元に集中する。

 楪は小さなブーケをいくつか作りを。
 望は花冠づくりにチャレンジしているのだ。

 眠りネズミの夜糖蜜もまだ家には残ってはいるが。
 廻る夜に星の花が穏やかな眠りを与えてくれるなら悪くない。
 ひづを悪夢になんざ譲ってたまるかっての。

 楪が思う、傍らで、望もまた。

 おまじない、とやらに頼りキリなんてことはしない。
 俺の大切な唯一に良い夢見てほしい、と願っているから。
 この花冠はその意思表示……なんて。

 互いに内緒で、相手への贈り物を拵えながら。
 込める想いはそれぞれに。
 相手が受け取る瞬間を想像すれば、小さく密やかな笑み。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『モリフクさま』

POW   :    翼びんた
単純で重い【翼】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    人をダメにするもふもふ
【胸部のモフモフ】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    うぉーみんぐあっぷ
予め【羽ばたく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 採集もそろそろ終わりだろう。
 帰り支度を始めた頃に。
 羽音も立てずに飛んできたのは、ぬいぐるみのような姿をした災魔の群れ。
 『モリフクさま』である。
 ホー、ホー。胸を膨らませて鳴く姿は愛らしいけれど。

 強襲に生徒達も戦闘態勢をとりながら、
「くっ。可愛い、ふかふかのオーラを感じます」
「なんて試験疲れに効きそうなもふもふなんだ」
「相手は災魔だ。気をしっかり保て!」
 少し惑わされている者はいるものの。
 生徒たちは互いを叱咤激励しながら退却の準備を整えている。

 ほどほどにもふもふしてから追い払うのは簡単だけれど。
 今日のあなたが先生ならば。
 生徒達に手本を示すように戦ったり、
 戦い方にアドバイスを送るのも良いかもしれない。

 兎にも角にも、もふもふの誘惑に打ち勝って、学園へ帰還しよう。
 無事に帰るまでが遠足です。

●プレイングご案内
 10/1(木)の8:31から受付開始となります。
 よろしくお願いします。
九条・春
【アドリブ連携歓迎】
【面白そうな展開であればプレイング無視OK】

「惑わされるでない。あれは災魔、わしらの敵じゃからな」

生徒達の目を冷まさせる様な言葉を、モリフクさまを刺激させないように小声で呟きます
帰りつくまでが遠足、敵を前にして生徒達を逃がすことが最優先でしょう
うずうずしながらゆっくりと前に出て盾になるように進みます。が、途中で我慢できず走り寄っては抱きつこうとします
もふもふに逃げられるか、抱きつくことに成功するか分かりません……だめだった場合、生徒たちを動員して捕まえようとするかもしれません

「持って帰ってはだめかの?」



 武器に手を掛け、生徒達は攻撃態勢をとる。
 まるっとしたフォルムのモリフクさまに揺れる心を抑えながら。
 もっふもふの感触を想像しないように律するほどにその顔は険しくなって。
 そうした動揺を感じ取れば、九条・春(風渡り・f29122)はゆるりと生徒たちの前に立つ。
 モリフクさまの群れは、星空を飛びながらこちらの様子を伺っている。
「惑わされるでない。あれは災魔、わしらの敵じゃからな」
 小さな声でささやくと、落ち着かせるように言葉を継ぐ。
「そう浮足立ってはならぬ」
 肌身に感じる気配と様子を鑑みて。
 生徒達は硬くなるばかりで、柔らかさが足りぬ、と見て取る。
「無論、警戒すべき場面じゃ。しかし、下手に刺激すれば挑発ともなる。敵に狙ってくれと言うようなものじゃ……」
 まずは呼吸を落ち着けよ。と語りかける声は穏やかで、頼もしい。
 徐々に、生徒達を包んでいた緊張が解けてくる。
「うむうむ、良い感じじゃぞ……と」
 戦うだけが敵に対抗する手段ではない、この場は退却とそう決めているのなら尚更。
 そのまま、この場を去れるならそうしてやりたかったが。
「……やはり、来るか」
 ホホー。と間延びした鳴き声をさせながら、一羽のモリフクさまが空中から向かってくる。
 避ければ、背後にいる生徒達に当たる軌道である。
 迎え撃ってモリフクさまの群れを刺激し、乱戦となるのは避けたいところ。
 ならば、盾となって守ろう。
 生徒達をこの場から安全に逃がすことを最優先とした春に、迷いはない。
 春は両腕を広げ、衝撃に備えた。
 生徒達を庇い、滑空する災魔を腕に抱きとめて攻撃を食い止める。
 胸の中に飛び込んで来るのは、もふーん。と柔らかい羽毛の感触。
 その抱き心地の良さたるや、想像をはるかに凌駕する。
 モリフクさまとしては、これも攻撃であるから一生懸命もっふりしてくる。
「む……!」食いしばる口元から、苦悶にも似たうめきが漏れた。
 この状況は、不可抗力である。
 春は攻撃に耐えながら他に被害が及ばぬよう、敵を捕縛している訳で、ぎゅっと抱きしめる手は力強く決して緩むことはない。
 うずうずとするのを堪えて、撫でたくなるのを耐えて。
 しかし、我慢にも限界というものが在るのだ。
「わあ、もふもふじゃあ」
 と、春の口から出たのは、童女のようなあどけない声だった。
 先程までの凛とした、威厳を感じさせる姿とのギャップとも相まって。
 生徒達にちょっと衝撃が走る。
 しかし、程よく力みすぎた身体も軽くなったようだ。
 もー春先生ー、とゆるい突っ込みなぞも入る。
 ふくふくと満足げな笑みを顔に漂わせながら、春はモリフクさまをぎゅっとして。
「持って帰ってはだめかの?」
 モリフクさまを両腕に抱いて、こてんと首を傾げながらの上目遣いはおねだりのような愛らしい仕草。
 生徒達の目もつい優しくなる。
 しかし、ここは心を鬼にしなくてはいけない。
 うっかり「いいよ」と言いそうになるのをぐっと堪えて。
「春先生、放してあげましょうね」
「あともうちょっとだけじゃから……」
「いけません。元の場所に戻してきなさい」
「うぅ……なぜモリフクさまは災魔なんじゃろうか」
 切なげに呟かれた言葉には、無言の同意が返ってくる。
 そうして。
 楽しかった遠足の最後は、ちょっぴり寂しい出会いと別れがあった。
 春先生の授業によって、様々な学びを得た生徒達。
 可愛いもの&幼子のおねだりにも揺るがぬ強き精神を鍛えられて。
 いつかこの経験が、役立つ日がくるだろう。
「良いもふもふじゃった」
 モリフクさまとは潔くお別れをして、帰路についたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
何だかぐっすり眠ってしまったような気がするけれど…
おかげさまで元気いっぱいよ!
さあみんな、一緒に戦いましょう!
大丈夫、あたしたちがついてる
何も恐れることなんてないわ

あたしは高速詠唱
夢幻の花吹雪で範囲攻撃を仕掛けて
モリフクさまの動きを封じるわ
みんな、今よ!
攻撃しやすいように雷の精霊魔法でぴりっと痺れさせたり
氷の精霊魔法で凍らせたり、色々サポートに回るわね
もふもふはただそこにあるだけで抗いがたい誘惑となるでしょう
でも、彼らが災魔であることに変わりはないの
どんなに素敵な誘惑があっても負けずに、倒さないといけないわ
まあ、そうね、もふもふを少し楽しむのもいいわ
けど、それはみんながもっと強くなってからね?



 星の花を詰めた籠の中で、妖精の少女が目を覚ます。
 毛布の代わりに掛けられていたのは、柔らかなハンカチ。
 生徒の誰かのものだろうか。
 花畑で過ごした楽しい時間を思わせるように、白い花で作った花輪も一緒に入れてある。
「ぐっすり眠ってしまったような気がするけれど……」
 うーんと背伸びをして、キトリ・フローエ(星導・f02354)は背中の羽根を広げた。
 周りは夜の景色に包まれていて、そこへ安眠の効果があるという優しい花の香りに包まれては眠りに誘われてしまうというもの。
「おかげさまで元気いっぱいよ!」
 戦いの気配にすぐさま飛翔し、惑う生徒達の元へと一飛び。
 不安を払うように凛とした声を響かせる。
「さあみんな、一緒に戦いましょう!」
「キトリ先生!」
 とん、とん、肩から肩へ飛び移るように一人一人の様子を確かめて。
「大丈夫、あたしたちがついてる。何も恐れることなんてないわ」
 素早く語りかけながら。
 安心させるように、頼もしい笑みを浮かべる。
「来るわよ!」
 ぬいぐるみのようなモリフクさまが次々と滑空してくる。
 剣や杖を持つ者が応戦するが、可愛い見た目に武器を振るう手が鈍っているように感じられた。
 飛び回りながら、キトリは次々と魔法を詠唱し、生徒達をサポートする。
 直接的な攻撃は行わず、あくまでサポートに徹するのは、生徒を思ってのこと。
 振るう杖の先から光り輝く花弁が吹き出して、辺りを覆うほどに舞い遊ぶ。
 光はモリフクさまの動きを鈍らせて、生徒達の導きとなる。
「もふもふはただそこにあるだけで抗いがたい誘惑となるでしょう」
 それは猟兵として様々な世界で戦ってきたからこその重みを持った言葉。
 ここで教えなければ、彼等はいつか命を危険に晒すだろう。
 キトリの声は真剣な響きを帯びている。
「でも、彼らが災魔であることに変わりはないの。どんなに素敵な誘惑があっても負けずに、倒さないといけないわ」
 雷の精霊、氷の精霊、その力を借りて。
 ビリリと痺れる電流が走り、凍てつく冷気がモリフクさまの翼を凍らせる。
 軽やかで鮮やかな精霊術に、感嘆の眼差しが向けられていた。
 これも授業となっただろう。
「みんな、今よ!」
「はい!」
 各自の方法を使って、魔力が練られて放たれる。
 まだまだ拙さがあるような術だけれど。
 合格点は与えられただろう。

「まあ、そうね、もふもふを少し楽しむのもいいわ」
 ただし、と指を立てて。
 キトリは片目をつぶって微笑みかけると、
「けど、それはみんながもっと強くなってからね?」
 最後に、そう付け加えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
もふもふで可愛い
確かにそう認識できるけど俺はそれはそれと思うんだよね
でも生徒達に限らず、他の依頼では同業者が油断するなと言われていたりするし誰でもできる考え方じゃないのかも
それなら…

生徒を庇うように前に出てからアドバイス
「可愛いとかもふもふしたいとか、感じている気持ちを無理やり抑えて戦うと、我慢できなくなったときが危ないんだ。だからまず自分の気持ちを自覚しよう」
「次にこれは災魔だって考えるんだ。放っておいたらいつか誰かの害になる。それを止めるために戦おうって考える…ここは俺のやり方だから無理には言わないよ。大事なのは自分の気持ちに気付くところ」

話し中に動く悪い子(敵)は解放・小夜で止めておくね



 つぶらな瞳に丸々としたフォルム、その外見はまるで子供の玩具を思わせる。
 全てのオブリビオンが、禍々しい姿をしている訳ではない。
 もふもふで可愛い。
 確かにそういう認識もできるだろう。
 けれど、それはそれだ。
 オブリビオンである限り、あれは人を襲う。戦いは避けられない。
 唯、こうした割り切った考えを誰もが出来るわけではない事も、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、なんとなく理解している。

 モリフクさまの群れを前にして、生徒達の動きはあまり良くない。
「下がって」
 サンディは腕で制しながら自ら生徒たちの前に立つと、瞳を見開いて力を発露させる。深い色を湛えた青い瞳は静かに淡々と、災魔を捉える。
 魔力の籠もる鋭い視線にモリフクさま達は、縫い止められたように動かなくなった。
「倒しづらいかい」
 呆れるでもなく、叱るでもない口調。
 だからこそ、間違いを指摘されたようにうなだれて、
「サンディ先生……。頭では解ってるんです。あんな外見に惑わされるのは、自分が弱いせいだって」
 恥じ入る様子で生徒の一人が唇を噛んだ。
「思い詰めるのは良くないね」
 それこそがあの災魔の術中だろう。
 良くない方向に考えが及ぶ前に、アドバイスを送ろうとサンディは語りかけた。
「可愛いとかもふもふしたいとか、感じている気持ちを無理やり抑えて戦うと、我慢できなくなったときが危ないんだ。だからまず自分の気持ちを自覚しよう」

 まずは認めて、それから対処法を考える。
 これは案外難しくて、けれど大事なことだ。

「次にこれは災魔だって考えるんだ。放っておいたらいつか誰かの害になる。それを止めるために戦おうって考える……」
 そうすれば、ためらわずに刃を振るえる。
 心に浮かぶのは見知らぬ誰か、それとも近しい人だろうか。
 贈り物にと星の花輪をつくるような者達に、サンディの言葉は重く響く。
 けれど。
「これは俺のやり方だから無理には言わないよ」
 決して、やりなさいとは言わない。
 意見を押し付けず、相手の気持ちに沿いながらサンディは教える。
 いいかい。と一つ言葉を置いて。
「大事なのは自分の気持ちに気付くところ」
 考えることを促しながら、術(すべ)を説く。
 伝える時間は充分あった。
 さあ、そろそろ相手も動き出す頃だろう。
「できるかい」
 訊ねれば、覚悟を決めた力強い返事があった。
 頷いて、サンディは術を解く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
わ、可愛い子たちだねぇ
ぬいぐるみが動いているみたい
まぁまぁ、最終的に追い払えばいいわけだし
ちょっとくらい誘惑に負けてもいいんじゃない?

というわけで、おいでー
止り木のように手を伸ばしてみたら
モリフクさまが羽ばたきながらやってきた
結構人懐っこいのかな?
そっとそのもふもふの羽毛に触れてみる
あっ、気持ちいい
今度はもふもふに頬を寄せてみる
あー…これは人をダメにしてしまうのも分かるね
このまま枕にして寝ちゃいたいくらい
さっき採った星の花も使えば
ぐっすり眠れそうー…

ハッ、いけないいけない
うっかり寝ちゃうところだった
さすがは災魔、恐るべし

満足したらUCの蝶で追い払う
災魔じゃなければ連れて帰りたかったな


乱獅子・梓
【不死蝶】
ふむ、可愛らしい見た目とふかふかの身体で
相手を惑わせるわけだな
綾、油断せず行くぞ!
いや軽いなお前!?

まぁそんなに強くないらしいし
俺も少しくらいなら…
ほら、こっちこーい…いてぇっ!?
俺にだけビンタ喰らわしてきやがったこいつ…!
すると焔と零が興味津々そうに顔を覗かせてきて
自分たちと同じくらいの大きさの
モリフクさまが気になるのだろう
ちょっと遊んでみるか?
と放つと、モリフクさまを追いかけ始める焔と零
必死に逃げるモリフクさま
まぁ何か楽しそうだし、追い払えるし一石二鳥か…?
何より可愛い光景だしな、うん

おいこら綾!寝ーるーな!
ここで寝たら永眠しかねないぞ!
すっかり誘惑に負けてる綾を叩き起こす



 ぽてんと丸いと可愛らしい見た目と、ふかふかの羽毛。
 あれで相手を惑わせるのだと解っているだけに。
 現れたモリフクさまを前にしても、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は心を乱さず鋭い視線を向けて。
「綾、油断せず行くぞ!」
 そう、隣へ声を掛けたのだが。
「わ、可愛い子たちだねぇ。ぬいぐるみが動いているみたい」
「いや軽いなお前!?」
 のんびりとした様子の灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は悠々とした笑みを口端に浮かべて、首を傾ける。
「まぁまぁ、最終的に追い払えばいいわけだし」
 ――ちょっとくらい誘惑に負けてもいいんじゃない?
 いたずらっぽい呟きには、スリルを楽しむような危うさもあっただろうか。
「おいでー」
 誘うように伸ばされた腕に、一羽のモリフクさまが降りてくる。
 意外にも人懐っこささえ感じるような仕草だ。
 そのままちょこんと乗ったまま大人しいので、身体を撫でてみると、その触り心地は温かい羽毛布団を思わせ、手が沈むほどのふっくらさがあった。
「あっ、気持ちいい」
 思い切って腕を持ち上げて、頬を寄せれば頭を包み込むもふみの境地。
 ホー。ホー。穏やかな鳴き声も耳にやさしく響いて、良い具合に癒やされる。
「このまま枕にしちゃいたい」
 素直な感想が漏れる。
「……そんなに気持ちいいのか?」
 気持ちよさそうにもふもふを堪能する綾の姿に。
 様子を見守っていた梓も、興味が湧いてくるというもの。
 強くもない敵だしちょっとだけなら……と、腕を伸ばしてみる。
「ほら、こっちこーい……いてぇっ!?」
 なぜなのか。
 勢いよく滑空してきたモリフクさまは、その翼で思い切り梓の頬をぶった。
 激痛耐性が20もあるからその威力はそれ程でもない。
 しかし、野良猫に引っかかれたぐらいのショックはある。
「俺にだけビンタ喰らわしてきやがったこいつ……!」
 腕に止まったモリフクさまは荒ぶるモリフクさまと化し、まったくジッとせずに翼をばたつかせた。
「こいつ元気がよすぎんだろ!」
 大人しくないのは個体差だろうか。
 撫でるどころか、触れる余裕すらない。
「がんばれ梓ー」
 奮闘する様子を眺めながら。
 ふくふくと体を丸めた自分のモリフクさまに頭を乗せて、綾も声援を送る。
「くっそ、なんでだお前……ん?」
 いつの間にか二匹の仔竜が梓の肩に登って、モリフクさまを見詰めていた。
 興味津々の、まるで新しいおもちゃを見つけたように、瞳を輝かせている。
 ふっ、と梓は笑って。
「ちょっと遊んでみるか?」
「ガウ」「キュー!」
 焔と零が同時に嬉しそうに鳴いた。
 ホ!? とモリフクさまの声もした。
「ほら、行っていいぞ」
 お許しを出せば。
 ピョンッと飛び降りた二匹の仔竜と、モリフクさまの追いかけっこが始まった。
 花畑の上を飛び回るその姿は元気一杯、モリフクさまが必死に逃げ回っている。
 楽しそうな上に追い払えるのだから一石二鳥……。
 そしてなにより、はしゃぐ二匹は可愛い。
 一方。
「あー……これは人をダメにしてしまうのも分かるね」
 モリフクさまのもふもふを堪能する綾は目を細めていた。
 安眠効果のある星の花も使えば、ぐっすり眠れそう―……。
 意識は段々ふわふわと、心地よい眠りに誘われていく。
「おいこら綾! 寝ーるーな! ここで寝たら永眠しかねないぞ!」
 気がついた梓が綾の背中を叩く。
「――ハッ、いけないいけない」
 寝ちゃうところだった。と目を覚ましてみれば。
 腕の上にいたモリフクさまも、ハッと飛び起きて。
「え? この子も寝かけてたの?」
「のんびりしすぎだろ」
 そのまま飛び立ったモリフクさまの後を紅に光る蝶が追った。
 蝶々の群れは痛みを与えずにモリフクさまを遠ざけるだろう。
「災魔じゃなければ連れて帰りたかったな」
 本気とも冗談ともつかない呟きに、梓は肩を竦めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

飛砂・煉月
有珠(f06286)と

モリフクさま
めっちゃふかふかしてそうだなー
はは、有珠眠い?
寝ちゃってもイイよなんて云うのは
安眠の薬草を手にあるから?
ううん、オレがその寝顔を見たかっただけかなって戯けて
でも今夜はオレの方が眠れそうかも
だってキミが優しい祈りをくれたから

帰るまでが遠足だからさ
有珠を背負って帰ってもイイくらい思ってたけど
やっぱ一緒が嬉しいよな!
もふもふしたら槍のハクの名前を呼んで
さ、バイバイの時間だ

耳に届くキミの聲
オレの眠れない理由…は
言の葉が一瞬喉で引っ掛かるけど
普段はしない歳相応の顔で静かに笑んで
――帰ったら聞いてくれる?って
噫、なんて狡い聞き方だろう
…けど
有珠、キミにならって思ったんだ


尭海・有珠
レン(f00719)と

ふかふかで埋もれたらとても寝心地良さそうと
ふらふら寄っては行くのだが
はしゃいで、安眠の薬草を手にしたので、正直少し眠いけれど
大丈夫、もう少し頑張れる
私の寝顔を見ても面白くはないだろうと笑って返すが
今日はぐっすりと心地好く眠れるだろう自信があるのは
君の祈りがあったからこそ

ふふ、遠足というならば
楽しい遠足にレンだけに重労働させるわけにもいくまい
一頻りふかふかさせて貰ったら
風の塊で押し返してモリフクさまとはさよならだ

レンの戦う姿を見ながら
レンの眠れない理由は、と訊きかける
ごめん、聞き流してくれ
でも聞いて欲しいとなったら
――ああ、私で良ければ聞かせてくれ、と穏やかに目を細めるんだ



 見た目にもふかふかしているのが解るその姿。
 埋もれて眠れば、きっと気持ちいいだろう。
 まるで干したばかりのお布団に誘われているよう。

 ふらふら、と近寄ってしまう足を止めて尭海・有珠(殲蒼・f06286)は眠気を堪える。
 穏やかな心地良さは、手に入れた安眠の薬草の効果か、はしゃいだせいだろうか。
「はは、有珠眠い?」
「ん、」
 隣の飛砂・煉月(渇望の黒狼・f00719)が柔く笑いかけると、有珠は頭を振ってみせた。
「大丈夫、もう少し頑張れる」
「寝ちゃってもイイよ」
 もちろんそれで頷くような彼女ではないと知っているけれど。
 つい、そんな事を言ってしまう。
「――なんて、オレがその寝顔を見たかっただけかな」
「私の寝顔を見ても面白くはないだろう」
 戯言めいた言い方に、笑って返して。
 飛んできたモリフクさまを一羽、腕に抱きとめて撫でてみる。
「やっぱり、やわらかいな」
「おっ、上手に掴まえたね」
 レンも触ってみるか? と両手に持って差し出せば。
 しばし二人で、もふみを堪能する。
 ぬいぐるみのようなモリフクさまは、ホーホーと時折擽ったそうに鳴いた。
 そうした時間もやはり楽しくて。
「有珠を背負って帰ってもイイくらい思ってたけど」
「ふふ、遠足というならば。楽しい遠足にレンだけに重労働させるわけにもいくまい」
「帰るまでが遠足だもんな」
 きっと帰り道も一緒が嬉しい。
 星巡りの思い出の一つとして、後で思い返すなら最後まで覚えていたい。
 眠るのなんて、きっともったいないだろう。
 それで、今日という日をたっぷり楽しんで締め括ったのなら。
「今日はぐっすりと心地好く眠れるだろうな」
 有珠は自信たっぷりに、そう言い。
 君の祈りがあったからこそだと微笑んだ。
「今夜はオレの方が眠れそうかも」
 煉月も慈しむような眼差しを返す。
 だって、キミが優しい祈りをくれたから。
 だから今日は、きっと大丈夫。

 その言葉も、笑顔も、きっと本心からのものだから。
 なおさら有珠のなかで膨らむ、迷うような想い。
 思わず声を上げそうになった、瞬間。
 ――さ、バイバイの時間だ。
 煉月がやんわりと告げる。
 それは戦いの合図。
 腕から放したモリフクさまを、有珠が起こした風が塊となって綺羅星の天蓋へ高く押しやる。
 ハク。と煉月の呼びかけた槍は天へ向かって投げられて。
 奏でる葬送曲が災魔の群れを穿つ。
「レン」
 風を操りながら、小さく呟く。
 応戦するモリフクさまの群れと戦う煉月の姿に目を向けて。
 どうしても、訊かずにはいられなかった。
「レンの眠れない理由、は」
 囁きも聞こえる距離だ。
 煉月の唇が言葉を紡ごうとして、止まる。
 その様子を見て、有珠も言葉を切った。
「ごめん」聞き流してくれと、わずかに目を伏せる。
「有珠」
 声に顔を見上げれば。
 煉月は、普段とは違う歳相応の大人らしい静かな微笑みを浮かべている。
 ほんの少し、決意するような間があって。

「……帰ったら聞いてくれる?」
「ああ、私で良ければ聞かせてくれ」

 穏やかに目を細める有珠に、狡い言い方をした。と煉月は胸裏で思う。
 彼女ならそう答えてくれると、解っているからこその聞き方。
 けど。
 有珠、キミにならって思ったんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
【証人】


……ああ、うん
俺たちだと蹂躙とか、虐殺とか、そういうのになるよな

ひとに教えるのはどうしても苦手で
育てる、っていうのは初めてだ
でも、俺の世界にだってたくさんの助けがあったみたいに
世界を助けられる手は多ければ多いほどいいって
今はちゃんとわかってるから

教えられるのはただひとつのこと
「よく“視て”撃つ」ということだ

相手の動きと、そこから読み取れる癖や、思惑、感情
あらゆるものを読み取って、その先を制する
自分が教わったそれを、丁寧に伝えるよ

怖がらないでやってみな
今日なら、失敗したって頼れる先生がいる

大丈夫だよ
誰にだって自分の世界を拓く力があるんだって
俺はそう教わったから
……そこにいる「先生」に、さ


ヘンリエッタ・モリアーティ
【証人】
可愛い子たちに可愛い「問題」か
ねえ、匡。ここで見てようよ
――私たちが戦うと、彼らに悪夢を見せるだろうし
次世代を育てるって、結構大事
だって、私と匡は確かに強いしどんな敵にも立ち向かう手段も技術もあるけど
私達は私達しかいないでしょ
今この世界にいるけど、別の世界にはいないように

世界には強くなって貰わないとね
例えばあの子たちが強くなれば――この世界は少しだけ良くなるかもしれない
世界を自分たちで守る
その為に人は学んで、明日を作っていく。ここは学び舎だ
そして、導くのが「大人」の仕事
彼らには「私達」に成れる可能性がある

さあ、頑張って
雷の魔術で少しだけサポートを
蜘蛛の巣?いやいや
――カーテンコールだよ



 比べるものではないのだろうけれど。
 多様な世界を渡り歩く者から見れば尚更。
 今回の「ケース」は事件ですら無い。
 可愛い子たちに可愛い「問題」。
 そこに自分達が介入する必要はあるのだろうか。
 彼等の舞台を汚すぐらいなら、カーテンの影にいるほうが良い。
 誰だって、きれいな頁に黒いインクの染みを残したくないだろう。

 星の夜を災魔の群れが飛んでいる。
 戦いは始まっていたが、ヘンリエッタ・モリアーティ(悪形・f07026)はその様子を眺めたまま、その場に佇んでいた。
「ねえ、匡。ここで見てようよ」
 その提案に、隣の鳴宮・匡(凪の海・f01612)は二度ほど瞳をまばたく。
 それがどういう意図で言われたのか、理解するのに少しかかった。
「――私たちが戦うと、彼らに悪夢を見せるだろうし」
 そう言って。同意を求めるようにヘンリエッタは首を傾いでみせた。
「……ああ、うん。俺たちだと蹂躙とか、虐殺とか、そういうのになるよな」
 匡は、あえて、言葉を濁した部分をはっきりと形容する。
 齟齬はないだろうか、確認するように。
「……ハティ、俺達には悪夢しか教えられないって思う?」
 凪いだ口調でそう言い、
「俺は教わったよ『先生』に、それ以外のこと」
 生徒達が戦っている場所へと向かう。
 その後を追うことを、すぐには出来なかった。
「あの子たちの先生にはなれないよ」
 ポツンと呟く。
 次世代を育てることは大事だとヘンリエッタも思っている。
 自分達は強くて、どんな敵に立ち向かう手段も技術もある。
 けれど私達は私達しかいない。
 世界が幾つあっても、ヘンリエッタ・モリアーティも鳴宮・匡も今この瞬間には他のどの世界にもいない。
 唯一の世界しか知らないあの生徒達が強くなれば、この世界が強くなったことになるだろう。そうすれば――この世界は少しだけ良くなるかもしれない。
 それは歓迎すべきことで、応援してやるべきことだ。
 ヘンリエッタは息を吐いた。
 そして少しだけサポートする事を、自分に許す。

 匡は戦いに加わると生徒の後ろに立って、指示を出した。
 武器が銃でも魔法でも、基本は同じだ。
 教えられるのはただひとつのこと。
「よく“視て”撃つ」
 自分が教わったことを、いつかそうしてもらったように教える。
 世界を助けられる手は多ければ多いほうがいい。
 それを今はちゃんとわかってるから。
 自分が生きてきたあの世界にも、沢山の助けがあったのだ。
「いいか、目で視るだけじゃ駄目だ」
 梟めいたモリフクさまは、夜闇に紛れ羽音をさせずに飛んでいる。
 僅かな影を追っているのでは、対応が遅れる。
 相手の動きを観察したなら、そこから情報を読み取らなくてはならない。
 癖、思惑、感情。
 あらゆるものを感覚全てで読み取って先を制するのだと。
 丁寧に穏やかに、時折手本を見せてやりながら説く。
 こういう役割は得意ではないし、むしろ苦手だ。
 でもだからこそ、できるだけ一つ一つの事を心して伝えたい。
 実戦の中で学び、成長できることをよく知る自分だからこそ、湧き上がる不安があることも知っている。
「怖がらないでやってみな。今日なら、失敗したって頼れる先生がいる」
 そう言って向けた視線の先には、ヘンリエッタの姿が在る。
「大丈夫だよ。誰にだって自分の世界を拓く力があるんだって」
 ひとに教えるのはどうしても苦手で。
 育てる、という事も初めてだけれど。
「俺はそう教わったから……そこにいる『先生』に、さ」
 自分がしてもらったようには、できたのではないかと思う。
 匡から学び得た生徒達の動きは研ぎ澄まされていった。
 少しずつでも、なにかが変わったのだと思える程に。

 竜の尾が敵を薙ぎ払い、雷を地面に走らせて。
 必要以上に近づかず、生徒達へ向いた目は、ほんの少し笑んでいる。
「世界には強くなって貰わないとね」
 世界を自分たちで守る。その為に人は学んで、明日を作っていく。
 ここは学び舎だ。
 そして、導くのが「大人」の仕事なら、学ぶのは「子」の役目。
 彼らには「私達」に成れる可能性がある
「さあ、頑張って」
 その声は届かなくても、その姿は生徒達に力強さと安心を与えただろう。
 例えヘンリエッタにそのつもりはなくとも、強者とはそうした影響を与えるものだから。
 地面を走る電流は枝分かれに広がって。
 まるで蜘蛛の巣のようだろうか、いいや。
 ――カーテンコールだよ。
 腕を振って終わりを告げれば。
 星の舞台が一つ、幕を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニーナ・アーベントロート
【第六感】で気配を察知
何か来る…起きてロラン(f04258)!

身構えてその姿をよく見れば
破壊力たっぷりの可愛さたるや
花の香りで安らいだ直後に
胸の柔らか羽毛はもはや禁断…!
つぶらなおめめに見詰められ戦意喪失
ここは穏便かつスマートにいこう
戦うだけが猟兵じゃないのだ(えへん)

【ダッシュ】でモリフク様を追いかけて
ロランを肩に乗せ『Walküre』で上空へ
よーし行くよ、確り掴まってて!
武器を収納し敵意がないと証明しつつ【動物と話す】
もしかしてここ、キミの縄張りだった?
驚かせちゃったならゴメン
星の花は必要なぶん採れたから、すぐに帰るよ
お触りOKならもふもふしちゃう!
今度アルダワに来たときは、また遊びたいね


ロラン・ヒュッテンブレナー
ふぅわ…、おねえちゃん?(f03448)

【第六感】とにおい(【聞き耳】)でこっちに向かってくるものに気が付くよ
伏せて!
パッと狼変身して飛び降りて飛んでく姿を【暗視】で確認なの
わぁ、すごい、もこもこしてるね?

えと、お話しするにしても、けっこう、飛ぶの早いね
でも…(UC発動して動きを【情報収集】と【学習力】で見切ってみる)
おねえちゃん、ぼくの合図で、飛べる?
(肩に乗っかって指示を出す)

近づいたら、自分から胸のもふもふに飛びついてUCを封じて見せるね
そのあと【動物と話す】で呼びかけるの
ぼくたちのお話、聞いて?
あのね、光るきれいなお花、分けてほしかったの

このもふもふ、気持ちいいの…(うとうと)



 二人で摘んだ星の花は籠に入れてゴンドラに置いてある。
 もちろん、花冠も一緒だ。
 柔らかい草の上に寝転んで、ニーナ・アーベントロート(埋火・f03448)は満天に広がる星々を眺めていた。
 ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)は、体をくっつけるようにして眠っている。陽も差さぬ場所だけに、少し肌寒いのかもしれない。
 このまま何事もなく、帰れるのではないかと思うほど、のんびりしていたけれど。
 空気の変化にまず気がついたのはニーナだった。
 音も立てずに素早く身を起こすと、ロランの体を揺さぶる。
「何か来る……起きてロラン」
「ふぅわ……、おねえちゃん?」
 欠伸まじりに眠りから覚めたロランも鋭い嗅覚で異変を察知して。
「伏せて!」
 ほとんど反射的に叫びながら、その姿は狼の姿へと変じさせた。
 ニーナも身構え、丸い影が飛ぶのを睨むように確認する。
 暗い場所を見通すのは、二人共いやというほど慣れていた。
 なので。
 すぐにその飛んでいるものが、ぬいぐるみような姿をしていることに気がついたのだった。
「わぁ、すごい、もこもこしてるね?」
「あれがモリフクさま?」
 まるっとしたフォルムにつぶらな瞳。
 ふかふかと抱き心地の良さそうな羽毛。
 あれが災魔とわかってはいても。
 戦う以外の手段を探したくもなる。
「ここは穏便かつスマートにいこう。戦うだけが猟兵じゃないのだ」
 えへん。と胸を張るニーナにロランも尻尾を振って同意を示した。
「まずは、お話したいの」
「そうだね、どうやったら聞いてくれるかな」
 動物と話すことの出来る二人は、そのように考える。
 けれども空を飛ぶモリフクさまのスピードは案外早く、声を掛けても届かないようで。
 それなら、こちらから近づくしか無い。
「おねえちゃん、ぼくの合図で、飛べる?」
 ロランの意図を理解して、ニーナもすぐに頷いた。
「ああ、いいよ」
 途端、ニーナを光りが包みこみ、その姿はたちまち黄金の鎧を身に纏った戦乙女へと変身する。
 ロランは狼の姿のままその肩へ飛び乗ると、尻尾を振った。
 準備はいい? と背中の翼を広げて、
「よーし行くよ、確り掴まってて!」
 ニーナは地を蹴って空中へと飛び上がる。
 掴めそうなほどに星が近くなって、澄んだ風が流れていく。
「きれいだねえ、おねえちゃん」
「ふふっ。落ちないようにね」
 天駆ける二人の姿は、まるで星座のお伽噺のよう。
 黄金の煌めきが、夜を流れて。
「そこだよ、おねえちゃん」
 ロランがそう言って示した先には、驚いた様子で固まるモリフクさまが一匹。
「もしかしてここ、キミの縄張りだった? 驚かせちゃったならゴメン」
「あのね、光るきれいなお花、分けてほしかったの」
 と、話しかけてもモリフクさまは警戒している。
 翼を広げて威嚇しながら胸のモフモフをアピールして(なにしろこれがモリフクさまの攻撃なのだ)来るなら来いという態度だ。
 それならば。
 思い切って肩から飛んだロランが、モリフクさまの胸めがけてダイブした。
 自らユーベルコードを封じる技を受けることで、敵意がないことを示そうとしたのだ。ニーナが同じことをすれば変身が解けしまう。だからロランがやるしかなかった。
 けれどここは空中、飛びついたモリフクさまもバランスを崩して一緒に落ちていく。
「あっ、ロラン!」
 ニーナは慌てて腕を伸ばし、落ちていく二つの影より先に地上へ降り立ってキャッチした。
「危ないなあ、もう……」と溜息は吐くものの。
 ふかふかの狼ロランとモリフクさまを抱えた感触は、ちょっと安らぐ。
 ニーナの腕の中で顔を見合わせながら、
「ぼくたちのお話、聞いてくれる?」
 そう、ロランは訊ねた。

 相手がオブリビオンであるだけに解り合うのはとても難しい。
 こんなにもふもふなのに一応、人類の敵なのである。
 残念だけれど、この場で解り合うことは出来ないのだろう。

 けれど、モリフクさまとしても精一杯胸のもふもふでアタックしたし、出来ることはやりきったのだ。
 自分を掴まえた姉弟も充分モフモフでダメにしたはずだ。
 頭を乗せて気持ちよさそうなロランの様子に一仕事したなあ。と満足げである。
「星の花は必要なぶん採れたから、すぐに帰るよ」
 ニーナが告げると。
 ホホホー。と返事がある。そうか、と言っているようだ。
「今度アルダワに来たときは、また遊びたいね」
 遊んでるつもりはないんだけどなー、とモリフクさまは視線を送くるが。
 つぶらな瞳に見詰められただけなので、ニーナも曖昧に頷くことにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月待・楪
氷月(f16824)と
アドリブ等歓迎

……もふもふしてんな
とはいえ、倒さないといけねーことに代わりはない、か
時々こーいう気の抜けるオブリビオンが居んだよなァ

教えたりとかそーいうのはパス
氷月、お前どうする?
バァカ…こーしてる時も一緒に居る時間だから減らねーよ

まだコントロール出来てないのか…弾丸にするならもっと硬いのにしとけ

ア゛ー…ようは、触れずに相手すりゃいーんだよ
【念動力】で寄って来るのは弾いて地面に落とす
んで、落ちたとこを【P. granatum】で狙う
こういうタイプの技なら、外れても周りが燃えてるからダメージになるだろ
あとはテキトーに倒す

(氷月に礼を言ってから)
…連れて帰りたくなるから、いい


氷月・望
楪(f16731)と
アドリブ等歓迎

もふもふ、もふもふ……
アルダワには何というか
こういうもふもふしたオブリビオン、多くない?
そんな感想を抱きつつ、倒そうと

うーん、教えるのは良いんだケドさ
実際の戦い方を見て、マネしてもらうとかでもいいかなーって
ゆーくんとの時間が少なくなっちゃうし?

おおー
やっぱりゆーくん、念動力の扱い方が器用だよね
俺がやると、モリフクさまが
もふもふ弾丸になるのは目に見えてるし
あはは……善処シテルツモリ、ダヨ(めそらし

UC:煌花で
ゆーくんの副作用緩和を試みるね
そういや、もふもふしなくて良かった?
確かに……ソレは俺が嫉妬しちゃうかな(小さく噴き出すように笑って



 ぽてんとした丸みのあるシルエット。
 つぶらな瞳にちいさなクチバシ。
 見れば解る、ふっくらした羽毛。
 迷宮の何処からか現れたモリフクさまの群れを目にして思わず呟く。
「……もふもふしてんな」
「もふもふ、もふもふ……」
 月待・楪(Villan・Twilight・f16731)は少し難しい顔をして、モリフクさまと距離を置くように間合いをはかり。
「時々こーいう気の抜けるオブリビオンが居んだよなァ」
「何というか、アルダワには特に多い気がするよね」
 疑問を浮かべつつ、氷月・望(Villain Carminus・f16824)は小首をかしげると。
 ちら、と楪の反応を伺う。
 彼がこういうものを好む事をよく知るがゆえに。
 しかし、若干戦意を削がれはするものの。
「倒さないといけねーことには代わりない、か」
 身体からにわかに立ち上る熱気は、敵は敵と割り切る意志を示して。
 浴衣の袖を翻し、颯爽と仰ぎ見れば、頭上に広がる星満ちる天蓋から次々と滑空するモリフクさまが降ってくる。触れれば、たちまちモフモフの感触だろう。
「ア゛―……ようは、触れずに相手すりゃいーんだよ」
 唸るように言って念じれば、空気が膨張したように揺れ、近寄るモリフクさまを押し返すように弾き飛ばした。
 鮮やかな念動力の使い方に「おおー」と望から感心の声が上がる。
「やっぱりゆーくん、念動力の扱い方が器用だよね」
 ――俺がやると、モリフクさまが、もふもふ弾丸になるのは目に見えてるし。
 そんな望の言葉を聞いて、楪は眉を潜めて睨むような目を向ける。
 その鋭い眼差しは心配の裏返しなのだろう。
「まだコントロール出来てないのか……弾丸にするならもっと硬いのにしとけ」
「あはは……善処シテルツモリ、ダヨ」
 片言交じりに答えつつ、望はぎこちなく視線をそらした。
 その先に映るのは交戦する魔法学園の生徒達の姿。
「あの子たち、どうする?」
 生徒達の方を見やったまま尋ねる。加勢が必要な様子でもないけれど。
 たしか戦い方を教えてあげてほしいとか、そんな話もあっただろうか。
「教えたりとかそーいうのはパス」
 スッパリと楪が言い切るのは、優先するものが別にあるからだ。
「氷月、お前どうする?」
「うーん、教えるのは良いんだケドさ。実際の戦い方を見て、マネしてもらうとかでもいいかなーって」
 ――ゆーくんとの時間が少なくなっちゃうし?
 目を細めて笑いかければ、くっと喉を鳴らして笑う声が返る。
「バァカ……こーしてる時も一緒に居る時間だから減らねーよ」
 低い声で、そう告げて。
 指先から生じた火種を膨らませて、念動力で弾き飛ばしたモリフクさまへ放つ。
 炎の弾丸が、赤く弾けて火花を散らす光景は、鮮やかで、綺麗な、星のきらめきの様だ。
 猛攻に様子を見ていた残りのモリフクさまも散り散りとなって逃げていった。

「ゆーくん、頭こっち向けて」
 戦いが一段落ついたところで、望の手が楪へと伸ばされた。
 掌から花開くように光が生まれて暖かな色をした火花となり、楪に癒やしを施せば、副作用によって起こる頭の痛みが消えていく。
「……ありがとな。楽になった」
 長く息を吐いて、頬の汗を拭う。
「そういや、もふもふしなくて良かった?」
 望がくすりと笑みながら口にすれば。
 見透かされている、と罰の悪いような擽ったさ。
「……連れて帰りたくなるから、いい」
「確かに……ソレは俺が嫉妬しちゃうかな」
 ふ、は。思わず笑みを零し、そうならなくてよかった。なんて。
 楽しげに軽口を交わしながら、ゆっくりと二人は並んで歩き出した。



 そして無事に遠足は終わり。
 みな、それぞれの帰路についたでしょう。
 星屑のせせらぎと、花の香が微睡みに浮かぶでしょうか。
 どうぞ良い夢をみられますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月08日


挿絵イラスト