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悪志善導デア・アルキネイティオ(作者 まなづる牡丹
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●勧善懲悪すら生温い
 ――この世に悪があるとするならば、それは自らの正義を他者に押し付ける事でしょう。自由という免罪符で他者を侵害することの、なんと恐ろしいこと。そう、わたくしは恐ろしいのです。自分を相手に刻み付けるその行為が! 善で以て悪を為すその心が!
 ――わたくしは誰をも受け入れます。貴方がどんな極悪人であろうとも、偽善者であろうとも。お代は結構! あなたも、わたくしも、幸福になるべきなのです。人は、大小様々な善悪を抱えておりますが、ええ、それは大きな問題ではありません。
 ――大事なのは誰かが犠牲になることを避ける。これだけです。誰もかれもが幸福な世界こそ、唯一にして最高の場所。分かりますね? 誰も傷つかず、誰をも傷つけず、柔らかな善だけがそこにあるのです。さぁ、手を差し出して。わたくしと共に参りましょう。光差す彼方へ……。

 少女は、とある教団で崇められている偶像<アイドル>である。彼女の振舞いひとつで、信者は世界を幸福に導いた。
 例えば、金銭に困る家族を救ったり。例えば、病める者へ医療を施したり。例えば、夢半ばで潰えた小鳥に再び力を与えるような声を掛けたり。彼女に触れた者はみな光ある道をたどっていく。そしてその手は世界の爪弾きものである犯罪者やいわゆる悪人へも延ばされる。
 人を殺したなら、騙したなら、傷つけたなら……それを己のもとで償わせようとした。どうしたことか、少女の威光を浴びた者はすんなりとそれを受け入れ、自らの罪を告白し、他の信者共々日々善行に勤しむようになった。
 少女は、間違いなく人ならざるモノの力を持っている。人であるにはあまりにも清廉で、潔癖で、真っ直ぐで、無垢なまま、人々を世界の極限へと導く存在。至れば其処は眩すぎて、常人では眼が潰れよう。
「遠慮しなくても良いの。わたくしとなら、あなたはあなただけの、幸福な世界を見つけられる。ほら、手を取るだけでいい」
 するりと細い指が、今日も悩める者の心臓を掴む。決して逃がさないその手は、とても暖かくて。ゆっくりと静かに、微笑む彼女の誘惑に従い、善人とも悪人ともつかなかった誰かを信者へと変えた……――。

●グリモアベースにて
 うーん、と。交差させた指の上に自らの顎をのせ、レイッツァ・ウルヒリン(紫影の星使い・f07505)はあまり気乗りしない様子で集まった猟兵に視線を向ける。
「皆、来てくれてありがとー。でも、今回の予知は……あんまり楽しくないかも」
 そう言ってレイッツァが差し出した資料は、UDCアースのとある街で流行っている新興宗教・【遥視への歩み】のパンフレットだ。そこにはどんな罪も痛みもなく、幸福だけがあるという。そんな場所があれば人間苦労しないと思うのだが、実際そこへ行ったものは幸福で満ち、じわじわを信者を増やしているとのこと。
「ただの新興宗教だったら放っておくんだけどね、今回は邪神が関わってるんだ。察しの良い皆ならわかると思うけど、そこの教祖……教祖? 崇められてる女の子が、邪神をその身に宿してる」
 邪神と少女は心身共に完全に癒着してて、引き剥がすのは不可能。彼女がどうしてそうなったのかは今は分からないが、どの道倒してもらう事には変わりないと説明を続ける。
「女の子と戦うその前に、ひと仕事あるよ。出回ってる経典に封じられてるオブリビオンを倒す事。相手はこっちを見たらすぐに敵対者だと判別して、持ち主のことなんて放って襲ってくるし、こっちも見れば明らかにこれだって判る。住人に危害は出ないはずだから安心して。『写本』と呼ばれるそれらは皆の絶望の記憶や、精神を揺さぶる精神攻撃、強烈な幻覚を仕掛けてくるみたいだよ」
 心当たりがある人は気を付けて、と注意を促す。果たして何も心に響かない者が、この世に存在するかは謎だが、一応。
「全てが片付いたら、教団の奥深くに隠されている経典の写本の『原本』が見つかるよ。本質的には『お願いを書いてお焚き上げすることで願いが成就する』タイプの魔導書だったみたい。折角だし使ってみなよ。どうせ誰も使わなくてもUDC組織が回収しちゃうしね」
 資料を捲ると、【遥視への歩み】では『どんな悪でも善へと変えて、誰も傷つかない平穏で温かく優しい世界を目指している』と書かれていた。痛みのない世界はどんなに良いものだろう。しかし、人は全員が善でなくてはならないのか? 傷つくことを恐れ、傷つけることも承知で動く事も悪だと言うなら……。
「誰でも良いよ、彼女に教えてやってくれないかい? 善だけが人の全てではないと、ね」
 幸福な世界は過去には産み出せないよと、レイッツァは乾いた笑いを浮かべて猟兵達を送り出した。


まなづる牡丹
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。まなづる牡丹です。
 今回はUDCアースの街が舞台。邪神を崇める新興宗教を崩壊させて下さい。

●第一章
 『写本・魂喰らいの魔導書』
 記憶に直接干渉するタイプの敵です。何でもお見通しで精神的に攻撃してきます。
 心に疚しい事、苦しみを抱えたキャラクターさんは特にご注意下さい。

●第二章
 『???』
 宗教団体【遥視への歩み】で崇められる少女。
 詳しい事はオープニングの時点では分かりません。

●第三章
 『願掛け』
 お願い事をするくらい、いいじゃありませんか。

●プレイング送信タイミングについて
 各章ごとに断章を執筆します。第一章の受付は【9月19日の8時31分以降】です。
 2章以降はMSページにてプレイング受付期間を告知いたしますので、お手数ですがご確認お願いします。
 (基本的に断章を投下した次の日よりプレイングを受付致します。申し訳ありませんがそれ以前に送られたプレイングは返金とさせていただきますのでご了承ください)

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『写本・魂喰らいの魔導書』

POW ●其方の魂を喰らってやろう
【複製された古代の魔術師】の霊を召喚する。これは【触れた者の絶望の記憶を呼び起こす影】や【見た者の精神を揺さぶる揺らめく光】で攻撃する能力を持つ。
SPD ●その喉で鳴いてみせよ
【思わず絶叫をせずにはいられないような幻覚】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ ●魂の味、これぞ愉悦
自身の肉体を【触れる者の魂を吸い脱力させる黒い粘液】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 宗教にじっとりと染まる街の昼下がり、夕方というには少し早いか。それは何時何処にでも潜んでいた。
 学生の鞄の中に、公園で静かに読書を楽しむ若者の手に、井戸端会議で騒ぐ奥様方の小脇に。さりげなく、しかし赤い表紙のそれは確実に。
 猟兵の最初の目的は写本をもつ人物に近づき、あちらから襲われるか先制攻撃を仕掛けることだ。幸いにも戦闘が発生すれば一般人は写本を置いて逃げてゆく。
 問題なのはむしろこちらだ。なにせ相手の攻撃といったらとても沈むものが多いと聞いている。その罪も、罰も、偽善も、弱さも、君達は乗り越えねばならない――。