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欲望渦巻く黄金船 ~大金争奪ゴールデンフェスティバル~

#スペースシップワールド

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#スペースシップワールド


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 知る人ぞ知る黄金の園、娯楽船「ゴールデンヤード」。
 宇宙有数の巨大歓楽街を有し、外装から内装まで、目に入るもの全てが黄金に彩られた煌びやかなこの船は、日夜、銀河帝国のもたらす恐怖から目を逸らしたい、少しの間でも現実を忘れたい、そんな人々の憩いの場となっていた。
 欲望渦巻くこの船に、今日は特に、多くの小型宇宙船が列をなす。
『皆様、ようこそおいで下さった! 本日正午より、予定通りゴールデンフェスティバルを開催致しますぞ!』
 船内に響くアナウンスに、詰めかけた人々は待ってましたと大きな歓声を上げた。
『さあさあ誰も彼も、大金を手に帰って頂きますぞ! 種目ごとに収めた成績で、諸君らのクレジットに即座に入金! 今日だけで何人の大富豪が生まれることか、我々も興味が尽きませんなぁ!』
 スピーカーから流れるのは、あおり文句に美辞麗句。立て板に水と並べ立て。
『それでは、第一種目のバーチャルエリアへ急ぐのだ!』
 その言葉と共に、人々は我先にと走り出す。金欲に、目をギラギラと輝かせながら。


「ってな感じの予知、見ちゃったんだよねー」
 グリモアベースで猟兵達を待っていたのは、六本の腕を持つ真っ黒な骸骨、シャレイン・コーベック。彼は大きな身振り手振りで、軽い雰囲気で事の顛末を話し始めた。
「まーお察しの通り? これ、帝国のオブリビオンが仕組んだことなワケだ。ゴールデンなんちゃらって宇宙船乗っ取って、周囲に適当な通信流して人集めて。んで目的は、”人間の観察”だってよ。一般人と、たまにいるユーベルコード使えるような強い奴らのな」
 無差別な周波数で通信をばらまき、オブリビオンは人集めを行った。その内容は、「大金を賭けた一大イベントを開催する」というもの。その額は相当なもので、怪しむ人間も大勢いたが、ネガティブな世界情勢も相まって半ば自暴自棄に、若しくは過度に娯楽を求め、多くの人々が集まってしまった。
「要は、船に集まった全員が人質ってこった、無茶は出来んね。だからあんたらには、暫く敵さんの思惑通りに動いて欲しいのよ。こっちを観察したいってんなら、させてやりゃいいのさ。どうせ、最後にはボッコボコなんだからよ。たっくさん金稼いでりゃ、油断して出てくっから」
 大事なことは、あくまでも「金稼ぎ」が目的だと思わせることだ。それを装うことで、敵を引き摺り出すことが容易になる。
「今んとこ、研究優先なのか敵はこっちに危害加えるつもりもないみたいだからよ。何も考えないで、無邪気にイベント楽しみゃいいってこった。とりあえず一個目のゲームは、バーチャル空間でのバトルだと。AIの特殊部隊やらロボットやらを、倒せば倒すほど金が増えるってルールらしいぜ。銃やナイフなんかの貸し出しあり。自前のものを持ち込むのも自由。んで、フィールドはランダム。グループ毎に分かれて三十人くらいが同じフィールドで戦うっぽいから、ま、競争だな」
 そこまで言って、シャレインはうつむき言葉を切る。そして、肩を落としながら大きく溜息をついた。
「……なーんで、俺様が見ちまったんだろうなぁこの予知。他の奴らが見たんならさー、真っ先に俺様が乗り込んでって、がっぽがっぽ稼いでやんのによー。いや分かってんよ? 奴らの言う”大金”なんて、ホントに貰えるわけないよ? でもさ、気分だけでもセレブ味わいたいじゃん。大金持ちになって、ハーレム作る夢とか見たいじゃん! 分かる? この気持ち!」
 大きな机の上にだらんと溶けて、シャレインはグチグチと妄想を垂れ流した。


灰々
 お金に関する話がやりたかったので、こんな感じのシナリオになりました灰々(はいばい)と申します。今回こそはコメディをやりたい。
 血生臭いことが何もないので、気軽に金の亡者になりきってもらえればと思います。なお、WPの獲得は通常通りですのであしからず。

 それでは、ご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『スペースサバイバー』

POW   :    高火力で制圧するパワープレイ

SPD   :    ステルスを活かしたスニーキングプレイ

WIZ   :    地図や情報を駆使した頭脳プレイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナミル・タグイール
き、金ピカにゃ…金ピカすぎるにゃ!!!
やばいにゃ!天国にゃ!!ここに住みマスにゃああ!!
(金ピカ大好きで超ハイテンション猫)
これで勝てば金ピカ貰えるにゃ!?本気出すにゃー!!
・行動
いっぱい倒せばいいんだにゃ!任せるにゃ!
【堕獣の腕輪】で最初から暴走モードにゃ!(ケモ度が上がって欲望のままに動く)
動くものは全て飛びかかって倒してナミルの得点デスにゃー!
他のプレイヤーなんて知らないにゃ!一緒に倒してナミルの金にするデスにゃ!
金ピカのためならどんなことだってやってやりマスにゃー!!
(完全にゲーム世界だったら斧で目に入った者全てを倒しに行く)



 船に足を踏み入れた途端、辺りを包む黄金の光をその身に浴びて、ナミル・タグイールは目を丸く輝かせた。
「き、金ピカにゃ……金ピカすぎるにゃ!!!」
 見渡す限りの黄金に気分は超ハイテンション。たむろする人々を掻き分けて、ナミルは船内を駆け回る。
「やばいにゃ! 天国にゃ!! ここに住みマスにゃああ!!」
 どこもかしこも金、金、金。
 夢のような光景に、ナミルはゴロゴロと恍惚に喉を鳴らした。


 エレベーターで下層に運ばれたナミルの前に広がったのは、残念ながら灰色のジャングル。市街をバーチャル技術で再現した、近代的なエリアだった。
 三十人の参加者に紛れ、渡されたヘッドギアを被ったナミルは、キョロキョロと辺りを見渡す。
「金ピカじゃないにゃ……」
 がっくりと肩を落とすナミルの耳に、アナウンスが届いた。それは改めて、第一ステージの内容を説明するものだったが、
「――これで勝てば金ピカ貰えるにゃ!?」
 敵を倒すほどに賞金が加算される。その言葉に、ナミルの闘志が一気に燃え上がった。
『それでは、ゴールデンフェスティバル開幕である!』
「本気出すにゃー!!」
 ゲーム開始の合図と共に、ナミルは開幕一番ユーベルコードを発動した。その姿がより獣に近く、筋肉は膨れ上がり、剥き出しの牙に野生が宿る。そして理性は溶け、頭の中は金ピカ一色に染まっていった。
「うおおおお! なんだこいつ!」
 周囲の参加者たちが驚く中、ナミルは大きく咆哮を上げると、強靱な後ろ足で地面を蹴った。
「いっぱい倒すにゃー!!」
 金欲の使徒と化したナミルの体が、砲弾のように飛び出して、ビルの陰から現れた無機質な兵士をすれ違いざまに壁ごと引き裂く。次いで視界に入ったドローンへと止まらず飛びかかって空中から引き摺り下ろすと、その中心に斧の一撃を叩き込んだ。
「一匹も渡さないにゃ、ぜーんぶナミルのものにゃ! 全部倒してナミルの金にするデスにゃー!!」
「な! ふざけんな、こっちは人生賭けて来てんだぞ!」
「そうだー! 少しは寄越せー!」
「知らないにゃあああ!!」
 他の参加者達の抗議をよそに、ナミルはビルの上から襲う砲撃を弾き飛ばすと、その壁面を駆け上がって多脚戦車をバラバラに破壊した。
 そこに無数のドローンから機銃の掃射。データ上のダメージは、ヘッドギアからリアルにナミルの痛覚へと訴えるが――しかし、そんなことはどうでもいい。
「金にゃー!!」
 嬉々としてナミルは、ドローンの群れへと飛びかかっていった。
 空中でいくつもの爆炎が咲き、猛煙を破って飛び出したナミルが地上を歩く人型ロボに向けて斧を投げ放つ。その破壊されるを見る前に、ナミルは新たな敵影に向けて牙を剥いていた。
 ――そのあまりの暴れぶりに、他の参加者達はもはや手も出せず。ナミルのスコアが爆発的に増えていくのを、見守るほかないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

苧環・つづら
夢見ないかと言われれば迷うわよね大富豪。
でもいざ大金を前にしたら逆に悩みそうだわ、使い道に……
この金ピカ船程悪趣味にはならないけど。

本物の荒事じゃないから暫くはアタシが楽しんでおこうかしら。
自前武器は不使用。……万が一迦河稚ちゃんが興味持っちゃうとね……
銃とナイフをお借りして、いざ二刀流。
ふふ、滅多に見せない勝負師の本気、一寸だけご照覧!

銃は牽制射撃と狙撃出来そうな時に絞って、
メインは見切りと残像で惑わしながらの近接ナイフ攻撃。
硬い外見なら鎧無視攻撃も活かせるかしら。
囲まれそうで危ない時はマヒ攻撃と衝撃波も使って離脱。深追い厳禁。
さあアタシと競れるサバイバーが居るならいらっしゃい!、なんてね。



「夢見ないかと言われれば、迷うわよね大富豪」
 苧環・つづらは、煌びやかに輝く船内を見渡して呟いた。この輝きに、思うところのない人間は早々いないだろう。
 しかし大金を前にして、使い道に悩む自分の姿も想像できる。
「ま、この金ピカ船程、悪趣味にはならないけど」
 目が痛いほどの目映さは、つづらには合わない光だった。


 つづらは渡されたヘッドギアを身につけながら、景色に意識を向ける。柔らかな風の吹く、長閑な森林がそこには広がっていた。
「へえ、いい場所じゃない」
 降り注ぐ陽光、鳥のさえずり、緑の香り。とても今から、ここで戦闘ごっこが始まるようには思えない。
 他の参加者一同は、虚を衝かれて動きを止めていた。しかし、頭上から響いたアナウンスが、彼らを現実へと引き戻す。
『それでは、各々武器を取るがよい!』
 気付けば背後に、武装ラックが現れていた。つづらはそこから、銃とナイフを拝借する。
「……万が一、迦河稚ちゃんが興味持っちゃうとね」
 別人格の事を考え、つづらは自前の武器をこの時ばかりは封印することにした。
「本物の荒事じゃないから、暫くはアタシが楽しんでおきましょ」
 借り受けた銃とナイフの感触を確かめ、虚空に構えて脳内に動きをシミュレート。
 そうして戦闘の準備を進めていると、再びアナウンスが響き渡った。
『それでは、スタートである!』
 同時に、森の中にいくつもの新たな音が現れた。
「ふふ、滅多に見せない勝負師の本気、一寸だけご照覧!」
 つづらは他の参加者に混じって森の中に踏み入れる。
 頃合いを見て一気に前進。迷彩の軍服に身を包んだ兵士に銃撃で牽制しながら、返報の銃弾を残像の残るほどの速度で躱し。滑るように肉薄すると、音もなくナイフで首元を切り裂いた。
 つづらはそのまま前方の木の陰に跳び込む。その背後を、機銃の掃射が薙ぎ払った。
「急に危ないじゃない」
 ドローンが枝葉の合間からこちらを狙っている。
 銃撃の合間を見て、つづらは銃で狙い撃つ。一発、二発。甲高い金属音に続いて、何かの割れるような音。更に一発。致命的な悲鳴を上げて、ドローンが爆散した。
 ――そのとき、参加者達の怒号と悲鳴が、一方向から聞こえ始める。
「あら、あれは稼げそうね」
 歩行戦車と随伴歩兵の団体が、こちらに向かってきていた。
 つづらは迷わずそちらへ向かう。
 兵士を狙撃し、隙を見て接近、ナイフを振るい。敵の動きに包囲を見れば、深追いせずに衝撃波でそれを崩して後ろに下がる。
「さあ、アタシと競れるサバイバーが居るならいらっしゃい!」
 気付けばつづらは、相当な数の敵を倒していた。
 歩行戦車の関節部にナイフを突き刺しながら、周りの参加者を挑発してみる。とはいえ猟兵の動きに付いてこられる一般人がいるはずもなく――つづらは歩行戦車の高ポイントを独り占めにすると、次の敵へと向かっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイツ・ディン
【POW】
『まやかしな財など腹も満たせぬわ!』
「まあまあ、暴れて発散しようぜ。」
猛る竜槍『ディロ』を宥めつつ。でも勝負事は負けられないよな!
借り物なし、槍一本。
ダッシュで一番槍、フラッシュニードルで突っ込み敵軍をなぎ払う。
「この程度か!金は貰っていくぞ!」
と串刺ししつつ周囲を煽る。妨害が飛んでくるようならそいつに盾受け、カウンター、盗み攻撃で武器を奪い捨てる。
「てめえらにやる金はねーよ!」と強欲を装いつつリタイヤを出して被害者を減らす算段。
怪しまれるといけないから他猟兵と戦闘になっても手は抜かないぜ。
『我以上に負けず嫌いなだけだろうが。』とディロが言ってくるがそんなことないぞ!
アドリブ/共闘可



 ナイツ・ディンが借り受けたヘッドギアを身につけた途端、強烈な風が全身に吹き付けた。
「おお、これはすごいな」
 雲を貫き伸びる幾本ものビル群の、その一つの屋上にナイツは立っている。
 舞台となるのは上空数百メートルの空中回廊。そして回廊に繋がれた、無数のビル群だ。
『それでは、諸君らの健闘を祈ろう!』
 更に上空から降り注ぐアナウンスに、ナイツ以外の参加者達は困惑気味だ。
 バーチャルとはいえ、これほどの高空に慣れた人間はそういない。落ちれば当然ゲームオーバー。一銭も持ち帰ることが出来ないおまけ付き。
「ま、その点、俺らなら問題ないな」
『いくら集めようと、まやかしな財など腹も満たせぬわ!』
「まあまあ、暴れて発散しようぜ」
 猛る竜槍『ディロ』を宥めつつ、ナイツは上空へと飛び上がった。
 開幕の合図が鳴り響く。それと同時に吹き荒れる風の向こう、無数の黒点がわらわらと召喚され始めた。
「あれか。よし、行くぜディロ!」
『まあよい、まやかしに付き合うも一興か』
 ナイツは槍を構え、一度大きく羽ばたいた。
 翅で風を叩き、弾丸のように飛び出したナイツは空中に群れたドローンへと槍一本で突撃すると、鈍色の機体がこちらを向くよりも早くこれを貫く。そして群れの中に飛び込むと、周囲を大きく薙ぎ払った。
 弾き飛ばされたいくつものドローンが、空中で炎の花を咲かせる。
「この程度か! 金は貰っていくぞ!」
 槍を一閃、爆炎を吹き飛ばし、ナイツはニヤリと不遜な笑みを見せた。
 眼下では、ようやく動き始めた参加者達とAI兵士達の戦闘が始まっていた。遮蔽に隠れ、回廊を挟んでの屋上同士の撃ち合いは中々進展を見せることなく、泥沼の様相だ。
 ――目的を違えるナイツにとって、これは好機だった。
「てめえらにやる金はねーよ!」
 ナイツは再び羽ばたくと、参加者達の方へと飛び込んでいった。
 高速で飛び回り、すれ違いざまに銃を奪って虚空へ捨てる。そのまま正面の男を蹴り飛ばしてビルから落とすと、男は落下の途中で何処かに消えた。
「ち、何だてめえ!」
 参加者達の敵意が一気にナイツへと集中する。同時に、無数の銃口がこちらを向いた。
「だーから、金は全部、俺のだって言ってんだよ!」
「馬鹿が、この人数を敵に回す気か!」
 バーチャル故か、参加者達は躊躇わず一斉に引き金を引いた。
 ナイツは殺到する弾丸の雨を盾で躱し、合間を縫って滑るように肉薄すると、次々に銃を狙って鋒を翻した。
 手元で銃が二つに割れて、参加者達はおののき震える。
「言っとくが、手は抜かないぜ」
『我以上に負けず嫌いなだけだろうが』
「いやそんなことはないぞ! 俺は一人でも被害者を減らそうとだな」
 そうして槍と言い合いながらも、ナイツは流れるように参加者達の戦意を削いでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御狐・稲見之守
星の海に漕ぎ出す世界にあってもやはり世の中金とはなんとも。正直身の丈にあった金があればいいんじゃがのう……まあよい、とりあえずはバトルとやらに参加するとしよかの。

それで30人がひとつにフィールド上でどれだけ倒せるかの競争、と。よろしい。UC荒魂顕現、「炎の竜巻」で全てを燃やしつくし、「氷の津波」で全てを凍てつかせ、「雷の雨嵐」で全てを消し炭にしてくれようゾ。制御などせん、暴走するままに全てを平らげよ。

ま、金もそうじゃが…力を持て余すとロクなことにならないもんじゃの。



「星の海に漕ぎ出す世界にあっても、やはり世の中金とはなんとも」
 周囲にごった返す人々を眺め、御狐・稲見之守は呆れた様子で呟いた。
 エレベーターで下層に向かう参加者達は、各々目にギラギラと炎を灯している。欲とは如何に人を動かすか、その証左を見ているようだった。
「正直、身の丈にあった金があればいいんじゃがのう……まあよい、とりあえずはバトルとやらに参加するとしよかの」
 目的地に到着すると、参加者達は我先にとエレベーターから飛び出していった。

 一歩を踏み出すごとに、足首までもが砂に沈む。乾いた灼熱の風が辺りを薙ぎ払い、舞い上がった砂埃が砂塵と化した。
「ほう、これはまた壮観じゃのう」
 稲見之守の目の前に、黄色の大地がどこまでも広がる。
 砂に埋め尽くされた世界。それが、今回選ばれたフィールドだった。
『さあ、思う存分稼いでいくがよい!』
「……必要以上に煽りよる」
 個人の欲望にも非はあれど、それを利用しようとする意思こそが悪だろう。
 砂塵の向こうに無数の気配が現れると、稲見之守は手に霊符を構えた。
「どれだけ倒せるかの競争、と」
 稲見之守は参加者達を一瞥する。様々な武器を手に、彼らは緊張に息も荒く。ヘッドギアのスクリーン越しに乾いた眉根を寄せていた。
「さて、わしに敵うかのう」
 駆け出す参加者達の中、稲見之守はその場を動くこともなく、ユーベルコードを発動する。
「我成す一切神事也、天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし」
 朗々と声が響くと同時――フィールドに変化が起こった。
 砂漠の熱など比較にもならない、圧倒的な熱量が渦を巻く。砂塵を引き裂き、炎の竜巻が現れた。
 全参加者達が、慌てて足を止める。
「制御などせん、暴走するままに全てを平らげよ」
 竜巻は唸りを上げて、展開するAI部隊を纏めて飲み込んでいく。
「次じゃ、全て凍てつくが良い」
 稲見之守が霊符を振ると、続いて冷気が押し寄せる。
 砂塵すらも凍てつかせ、氷の津波が砂漠を襲う。歩行戦車や大型鎧装騎兵など巨大な敵を、それすら小さく見える程の規模で、全て押し潰していった。
「お、おい……これ、どういうことだ?」
「こっちが聞きてえよ! こんな中で何を倒せってんだ!」
 もはや参加者達は、遠くフィールドを眺めるしか術がない。誰も、この天変地異の中に飛び込んでいく気概のある者はいなかった。
「ほう、まだ残っておるか。最後じゃ、全てを消し炭にしてくれようゾ」
 そしてまた稲見之守が霊符を翻す。――その瞬間、空から紫電が雨と降り注いだ。
 凶音を響かせて、幾条もの雷電が縦横無尽に吹き荒れる。ドローンに戦闘ヘリ、VTOLに浮遊機雷。生き残れるものがあるはずもなく、次々にショートし爆散すると――ようやく、稲見之守のスコアの上昇が止まる。
「ま、金もそうじゃが……力をもてあますとロクなことにならないもんじゃの」
 誰もいなくなった戦場を前に、稲見之守は事も無げに呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ライカ・モンジ
◆作中クライアントとしてディー・ジェイに共闘依頼

「野蛮〜♡血湧き肉躍りまくりのすけ〜♡」
銃弾の雨の中露出度高めのパーティドレスで登場しちゃう♡注目度バッチリでしょ〜♡
じゃ、手筈通りアタシは後衛から悠々と遠距離攻撃展開させてもらいますから肉壁役ヨロシク傭兵さ…えっ。うそココめっちゃ敵陣ド真ん中なんですけど!!話がちっがーう!

・美肌とおニューのネイル(鬼長)が傷付かないように立ち回り。逃げ惑ってる風を装いDJの射線上狙い易いポジションへ敵を誘導、鬼高ヒール靴の足技主体の格闘技で応戦。なるべく敵数揃った所でbrinicleで一気に仕留めちゃう
背中ってか全身預けてっからね〜アタシが傷付いたらコロス!


ディー・ジェイ
「ハッハァ、パワープレイ上等ォ!まどろっこしい戦術なんぞここじゃ意味はねぇなぁ!!」
※ライカ・モンジに雇われた傭兵として参戦

シャイレンに代わって俺らが金持ち気分で楽しんでやろうじゃねえの!
今回は力推しで行ける状況が揃ってるからな、ガンガン行こうぜライカ!

・開幕と同時にフルバーストを展開して会場を沸き立たせてやる。派手に行こうぜブラザー。ついでに敵参加連中の混乱を引き起こせれば上々、動揺しなかろうと変わらず腰撃ちで中距離からの制圧射撃を敢行。
・前衛タイプのライカをサポートする立ち位置で射撃を継続。視野を広めにもち、他チームからの横槍が入らないよう牽制も加えてライカが敵を仕留められる場を形成。



「さあ、派手に行こうぜブラザー!」
 開幕の合図が響くと同時、ディー・ジェイの機関銃が火を噴いた。フルバーストで鉛の雨を撒き散らす突然の行動に、周りの参加者達が俄に慌て、手に手に急いで武器を構える。
 しかしそれを待たず、攻撃を感知した敵AIが狙撃を敢行。互いの間を火線が結ぶ。
「野蛮〜♡ 血湧き肉躍りまくりのすけ〜♡」
 そしてそんな銃弾の雨の中、パーティドレスに身を包んだライカ・モンジが、露出度の高さを見せつけるようにくるくる回りながら、ディーの元へと駆け寄った。
「じゃ、手筈通りアタシは後衛から悠々と遠距離攻撃展開させてもらいますから、肉壁役ヨロシク傭兵さ……えっ」
 次の瞬間、空中から鎧装騎兵の降下が始まった。無数の鎧が高空から落下し、地面を砕いて着地する。
「おっと、こりゃ楽しめそうだぜ!」
「めっちゃ敵陣ド真ん中なんですけど!! 話がちがーう!!」
「ハッハァ、パワープレイ上等ォ! ガンガン行こうぜライカ!」
 ディーは暴れるライカの手を引くと、入れ替わるように前に出る。そして落下の衝撃を受け流す騎兵の正面から、機関銃の掃射を浴びせかけた。
 瞬時に騎兵の鎧は削れ、砕け、露わになった中身に銃弾が吸い込まれると、甲高い音を立てて敵はデータの藻屑と化した。
「まどろっこしい戦術なんぞここじゃ意味はねぇなぁ!!」
「もー、まじあり得ないんですけど~!」
 フォースセイバーの一振りを潜って躱し、ライカは不平を口にしながらその持ち手を蹴り上げる。
 セイバーが弾かれ宙に浮いた。その瞬間、ライカが飛び上がりざまそれを蹴ると――光の刃が、騎兵の胸部を貫いた。
「ヒュー、やるじゃねえの」
「いいから、ちゃんと仕事してよねDJ! アタシが傷付いたらコロス!」
 次々と敵の押し寄せる中、二人は一度背中を合わせた。

 戦闘のフィールドはスポーツスタジアム。競技用トラックと観客席が同心円に広がったこの場所に、参加者達とAI部隊がひしめき合っていた
「ちょっと、アタシの美肌とおニューのネイルが傷付いちゃうでしょ!」
 ライカを狙う敵部隊が、逃げ惑う彼女を追ってトラックへと降りてくる。放たれた銃弾をすんでに躱し、転がるようにライカが走り、
「オーケー、いい釣りだぜライカ」
 ある地点に辿り着いた瞬間、 ディーの機関銃が唸りを上げた。腰だめに構えた銃から面に向けて弾幕を張り、敵の動きを縫い止める。
 タイミングを計ってライカが反転、敵部隊へと刹那に肉薄。鬼高ヒールが空を切る。
「痛いじゃ済まないからね!」
 切っ先鋭い刃のような蹴りが、流れるように叩き込まれる。纏めて数人を蹴り飛ばし、ライカは大きく息をついた。
「ねえ、何人倒したっけ?」
「さぁな、覚えてねえ」
 ディーは途切れず周囲に目を配る。頻繁に入る他チームからの妨害が、存外にうっとうしく、隙を見せるわけには行かなかった。
 何せ、彼らは一般人だ。銃で撃つわけにも行かず、威嚇射撃で撃退するしか術がない。
 しかしその参加者達も、徐々に姿を消していた。皆、倒されてしまったのだろう。
 ――そんなとき、俄に周囲がざわめいた。そしてディーの眺める先、客席という客席に、最後の敵部隊が現れた。
「もう、まだ来るのー?」
 無数の狙撃が降り注ぐ。それを跳んで躱しながら、ライカは不満げに口を尖らせた。
「いや、そろそろ打ち止めだ」
 ヘッドギアに映る情報によると、もう残り時間が少ないようだ。
 もう一踏ん張りとライカが駆ける。
 逃げる風を装って、敵の関心を引きながらその動きを誘導。ディーの射線に飛び込ませると、ディーはライカをサポートするように制圧射撃で場を支配する。
 それはすべて、ライカが敵を仕留められるように。
 戦場をライカが駆け回り、ディーの機関銃が火を噴いて。そして敵がある程度揃ったところで、
「アタシを撃ったこと、高く付くわよ」
 ライカは攻撃の意思を、彼らに向けた。
 次の瞬間、無数の海氷柱が亜空間から飛び出した。瞬きの間に伸びた氷柱が、敵部隊を纏めて貫く。やがて氷柱の消えた後には、データの一片さえ残っていなかった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

榛・琴莉
一獲千金のロマンは何処の世界でも魅力的なものなんですねぇ。
残念ながら、上手い話には裏があるわけですが。
…それにしても、観察されているというのは中々に不気味な話です。
学習する敵は厄介と相場が決まってますし、逃したくはないですね。

【戦闘知識】で敵の動きを予想しながら、【迷彩】【地形の利用】を活用して潜みつつ移動。
【情報収集】で戦闘の痕跡を探し、常に周囲を警戒します。
敵を見つけたら出来る限り離れた距離から攻撃。【スナイパー】活用。
仕留めても仕留め損ねても、1発撃ったらすぐ移動ですね。
銃声で居場所を特定されないように。

「…本業より楽に稼げるじゃないですかヤダー」
なんて。
本当に貰えるならの話ですけど。



「……それにしても、観察されているというのは中々に不気味な話です」
 黄金の船内を見渡す榛・琴莉の目には一見して、カメラのようなものは見当たらない。それでも、何者かにまんじりと見つめられるような居心地の悪さを琴莉は感じていた。
「学習する敵は厄介と相場が決まってますし、逃したくはないですね」
 そのためにも、今は流れに乗るしかない。

 バーチャルエリアに降り立った琴莉たち参加者三十名の前に、苔むした石の壁がそびえ立つ。それは四方周囲も同様で、そこは時代がかった遺跡のような場所だった。
 視界が悪い。参加者達は我先にと、早足に散らばっていく。
「一攫千金のロマンは、何処の世界でも魅力的なものなんですねぇ」
 彼らの妙な行動力に、琴莉は半ば呆れた風に呟いた。
 残念ながら、うまい話には裏がある。琴莉は僅かな憐憫と共に、自らも戦場に向かった。
『こまめな端末のチェックを推奨致そう。見る間に残高の増える喜びを、存分に味わってくれたまえ!』
 開始の合図が、周囲に反射し木霊する。
 琴莉はアサルトライフルを手に、まずは地形の把握に掛かった。入り組んだ遺跡だ。しかしそこかしこに銃撃を通しそうな穴が空いており、意外と視界が通ることに気付く。所詮はゲーム用の、疑似空間ということか。
「……銃声。既に交戦している方がいるようですね」
 遠く聞こえる破裂音に、琴莉は警戒を厳にする。
 壁など遮蔽に潜みながら、じりじりと索敵。転がる薬莢、壁の弾痕……それら戦闘の痕跡から敵の位置、動き、規模を推測する。
 ――目の前に足音、予想通り。
 琴莉は身を屈め、銃を構える。一歩、二歩……遠く角から敵兵士が顔を出した瞬間、琴莉は引き金を引いていた。
 直撃。銃創からデータを噴き上げ、兵士が沈む。
 琴莉はそれを最後まで見届けることなく、銃声で位置を特定されないよう素早くその場を離れた。
 響く戦闘の音に紛れ、琴莉は駆ける。哨戒するドローンの動力を撃ち抜きながら、滑るように次の遮蔽へ。
 隠れ潜み敵の視界に琴莉は入らない。敵の闇雲な銃撃をひらりと躱し、お返しにとその胴体に一発。
 ダメージに怯みながら敵が銃口を向けた先には、既に琴莉はいなかった。
「あまり強くはないようですね」
 別の場所から琴莉が引き金を引けば、敵は容易に地面に倒れた。

 そうして戦うこと暫く、敵鎧装騎兵の頭を吹き飛ばして琴莉は息をつく。
「そういえば、端末を見ろとか言ってましたね」
 琴莉はアナウンス……恐らくはオブリビオンのものだろう声を思い出す。そして何気なく、ヘッドギアを操作した。
「……本業より楽に稼げるじゃないですかヤダー」
 破格の数値が画面に映されていた。
「なんて。本当に貰えるならの話ですけど」
 敵を倒す度に増える数字に若干の虚しさを覚え、琴莉は表示をオフにした。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『アイスバーグレンジャー』

POW   :    フォーメーション『霜』
【冷凍ビーム】が命中した対象を爆破し、更に互いを【氷の鎖】で繋ぐ。
SPD   :    フォーメーション『霰』
【隊長ペンギンの特攻体当たり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【隊員ペンギン達の連続体当たり】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    フォーメーション『雹』
【隊員全員のパワーを合わせて巨大氷山】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――無数の画面を見つめながら、オブリビオンは意外そうに声を上げた。
「ほーう、妙に動ける者が紛れ込んでいるではないか」
「これはこれは、想定外の収穫であるな」
「しかし如何な能力を持とうとも、人である以上欲望には逆らえぬものと見える」
「然り然り。であれば、恐るるに足りぬということよ」
「否、慢心はデータに予測困難な振幅をもたらす。しばし観察を続けるべきだ」
「やれやれ、我々は気の長い事よ……しかし理はある、しばし観察を続けようぞ」


 数百もの参加者達が、続々と黄金のエントランスへと帰還する。
 端末を手に狂喜に叫ぶ者、静かに肩を落とす者。その様相は千差万別で、猟兵達はそれに混じって次の展開を待っていた。
『さあさあ諸君、存分に稼いでくれただろうか!』
 アナウンスが始まった。途端、全員が口を閉ざす。
『あまり稼げなかった者達も、絶望するにはまだ早い。次なるステージには、更なる富が待っている! 顔を上げよ! 胸を張れ! 我々は諸君らに、無限の富を約束する!』
 ――その瞬間、エントランスが沸きに沸いた。
 そして次のステージが示されると、参加者達は追い立てられるようにそちらへと向かっていった。

 辿り着いたのは歓楽フロア。
 見渡す限りに黄金の町並みが広がり、上空には空の代わりに広大な宇宙が投射されている。そして街頭などいらないとばかりに、建物から放たれる黄金の光が周囲を照らしていた。
 そして何より特徴的なことに――エリアに踏み込んだ瞬間、全員が、あらゆる重さから解放されていた。
『第二ステージのテーマは無重力! この不自由な空間で、襲い来る敵を倒すのだ! 例によって武器とスラスター付きスーツの貸し出しを行うぞ。ご所望の諸君は、お近くの窓口まで』
 参加者達が戸惑う中、猟兵達だけは気付いていた。
 オブリビオンの気配。先ほどまでのバーチャルとは違う、本物の脅威。それが彼方から、高速で接近してくる。
『――彼らを倒すごとに、莫大な富が諸君に転がり込むことだろう。命を惜しむな、勇気を見せよ! 第二ステージの開幕である!』
ナミル・タグイール
今度はちゃんと金ピカエリアにゃ!!
キラキラピカピカにうっとりデスにゃー。幸せにゃ。
にゃ!ふわふわしてるにゃ!楽しいにゃ!…でも動きにくいにゃー!
・行動
またいっぱい倒すにゃー!いっぱい稼ぐにゃ!
【呪詛】を纏った斧を力任せにブンブンして戦うにゃ。無重力は不慣れだから振り回されちゃうかもにゃ。
ふわふわしすぎにゃ!どっちが床デスにゃー!
勢いに任せてグルグルブンブンにゃー!きっとどうにでもなるデスにゃ!
敵に近づけたら勢いのまま【グラウンドクラッシャー】でドッカンにゃ。
金ピカ壊れちゃうかもだけど仕方ないにゃ!破片は持って帰るにゃ。
【氷の鎖】で繋がれたら逆に引っ張ってザックリ狙いにゃ!ありがたいデスにゃ!



「今度はちゃんと金ピカエリアにゃ!!」
 周囲を染める黄金の光に、ナミルのテンションは再び急上昇。喜び勇んで飛び出すが、
「にゃ! ふわふわしてるにゃ!」
 飛び出したその高さのまま、ナミルは空中を滑って突き当たりの壁へとぶつかっていた。
 ナミルは首を傾げて、しばらく浮遊感に身を任せふらふらと飛び回る。
「動きにくいにゃー! ……でも、楽しいにゃ!」
 しかし本来の目的は賞金稼ぎ。
 ナミルは遠くから近づく敵の気配に気が付くと、背負った斧をその手に構えた。
「ふわふわで力が入らないにゃ……でもまたいっぱい稼ぐにゃー!」
 まるで水中にいるように高速で、ペンギン型オブリビオンが隊列を組み、その中の一体が口を開いた。

「――我らアイスバーグレンジャーが、貴殿らのお相手を務める!」

 戦闘が始まる。
 空中を縦横無尽に飛び回るレンジャー部隊が、口から青白いビームを吐き出した。
「よーし、行くにゃー!」
 呪いを纏い禍々しく輝く斧を振りかぶり、ナミルは強く地面を蹴った。
 豪風のように体ごと斧を振り回し、一直線に部隊へと襲いかかる。――が、途中でナミルの意図しない方向に回転を始めた。
「どっちが床デスにゃー!」
 勢いよく斧を振りすぎた。
 ナミルの体がぐるぐると、こんがらがるように振り回されて。

 ――に゛ゃ゛!!

 顔から天井へと突き刺さった。バチバチと反射パネルの一枚が明滅し砕け散る。
「無重力への理解が足りん!」
「にゃー! 冷たいにゃ痛いにゃ寒いにゃ!!」
 背中に冷凍ビームを受けて、ヒゲまで凍り付くような冷気が爆発する。
 ナミルは咄嗟に天井を蹴り飛ばし、冷気から逃れようと身を捩るも、しかし大きな抵抗に体が上手く動かないことに気付く。視線を上げれば、宙に浮くペンギンと自分が、氷の鎖で繋がれていた。
「さあ、無重力化での動きを伝授しよう!」
 そう言うと、ペンギンは一気に加速した。ナミルを繋いだままに高速で飛び回り、これでもかとナミルを振り回す。
「いい加減にするにゃ!!」
 振り回されること暫く、ナミルが鎖を引っ掴んだ。そして思い切り、自分の方へと引き寄せる。
「く、何というパワー……!」
 抗いきれずにペンギンが制御を失うと、二人は揃って小高い建造物へと衝突していった。
「ふー、繋いでくれて良かったにゃ」
 黄金の砂埃を振り払い、ナミルが立ち上がる。転がるペンギンを見るその目には、金の文字が浮かんでいるようだった。
 ナミルは高々と、斧を振りかぶった。

「金ピカ、寄越すにゃー!!!」

 轟音。衝撃。
 爆撃のような一撃が、建造物ごと粉砕した。
 建物が慣性のままに弾け飛ぶ。その中でナミルは、目を輝かせた。
「き、金ピカのシャワーにゃ……幸せにゃー!」
 舞い散る黄金の破片に包まれて、ナミルはうっとりと目を細めた。……こっそりと、大きめの破片を懐にしまい込みながら。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

苧環・つづら
……はあ、この額が本物ならあのお店のアンティーク大人買いしてもまだ余……
一寸待って一般人に嗾しかけちゃいけない奴来ちゃった!?
どの辺が観察だってのよ黄金都市に血痕とか呪いにしか見えないわー。

「逃げろ!今ばかりは命を惜しめ!!」
参加者へガチの足止め一喝してから状況開始!

手数増やすわ、迦河稚ちゃん(オルタナティブ・ダブルで)来て!
魂燈預けるから存分に掻っ捌いて頂戴!
アタシは衝撃波・マヒ攻撃・鎧無視攻撃で迦河稚ちゃん&周辺猟兵さん援護、
身体の制御は建物掴む蹴る引っ掛けるで流用、
迦河稚ちゃんの足場代わりも請け負おうじゃないの。
向こうの突撃は見切り残像で回避、無理ならだまし討ちよ只じゃやらせない!



 苧環・つづらは手元の端末に目を落とし、数字を眺めて溜息をついた。
「……はあ、この額が本物なら、あのお店のアンティーク大人買いしてもまだ余……」
 しかしそこで、遠くから近づく不穏な気配に気付く。つづらは瞬時顔を上げ、漆黒の向こうに目をやった。
「一寸待って、一般人に嗾しかけちゃいけない奴来ちゃった!?」
 ぴりつく空気につづらは慌て、困惑する参加者達に声を荒げた。
「逃げろ! 今ばかりは命を惜しめ!!」
 一喝。
 大気震える本気の怒号で、参加者達がたじろぐ内に、つづらは強く地面を蹴った。

「迦河稚ちゃん来て!」
 ふわりと空中に飛び出して、つづらは内なるもう一人の自分を実体化させる。
「存分に掻っ捌いて頂戴!」
「つづら殿、下がってください」
 彼女に刀を預けたその瞬間、迦河稚は前に躍り出た。――ペンギンの一体が弾丸のように襲い来る。
 迦河稚は敵の突撃を刀で受けると共に弾き、返すように刃が閃く。
 ペンギンはそれを、器用に宙を滑って躱した。
「ふん、我らにそんなものが」
「甘いわよ!」
 迦河稚の背後から、つづらが霊符を放った。それは過たずペンギンの眉間に突き刺さり、その動きを縫い止める。
 刹那、ひゅんと風を裂いて刀が走る。ばっと赤い血が広がった。
「これ、どの辺が観察だってのよ。黄金都市に血痕とか呪いにしか見えないわー」
 つづらの視線の先、黄金の光に照らされて、青いペンギンの群れが空中を泳いでいた。

 縦横無尽に飛び交う敵の中、つづらと迦河稚は街を行く。
 壁を蹴り柱を掴み、青白い光線を躱しながらペンギンの突進を見切って躱し、迦河稚がその背を一刀のもとに斬り伏せた。
「――我らの連携を見るがよい!」
「何か来るわよ!」
 朗々と、渋い声が響き渡る。それと同時、群体が巨大な生き物のように、猟兵達を襲い始めた。
 つづら達の元にも小隊の一つが迫り来て、
「迦河稚ちゃん、飛んで!」
 この無重力下では、敵の動きが機敏に過ぎる。
 咄嗟に身を屈めたつづらの体を迦河稚が駆け上がって飛び上がると、つづらはあたかも逃げ遅れたかのように身を反らし――突撃に合わせて、麻痺を伴う衝撃波を叩き込んだ。
「ただじゃやらせない!」
 まともに食らったペンギン達が動きを止めて、そこに上空から尖塔を蹴った迦河稚が降り注ぐような斬撃を放った。
 いくつもの悲鳴が鳴り響き、黄金の都市が血に染まる。
「ふう、どうにかなったわね。……さて、一般人は無事かしら」
 赤みがかった明かりを浴びて、つづらと迦河稚は踵を返した。

成功 🔵​🔵​🔴​

榛・琴莉
猟兵はともかく、他の人達はマズいですね。
「バーチャルではない以上、死傷者も出るのでは…」
なんでしょう、選別のつもりでしょうか?

「後退してください、今度は本当に殺されます」
戸惑っているとはいえ、素直に聞いてくれない人もいますよね。あー…
その場合は脅します、仕方ないですね。
かすめる様に【CODE:ブライニクル】
「邪魔しないでいただけますか」

オブリビオンが接近してくる方向に向かい、迎撃態勢。
無重力は不慣れで…動き辛い、先手は譲ります。
【オーラ防御】【氷結耐性】で対応。
「これでもう、逃がしません」
氷の鎖で繋がれた敵に【属性攻撃】【スナイパー】【全力魔法】で【CODE:ブライニクル】
もちろん【2回攻撃】



「バーチャルではない以上、死傷者も出るのでは……」
 猟兵はともかく一般人が、オブリビオンに襲われて無事に済むはずがない。
 敵の目的は観察のはずだが、対象を選別でもするつもりだろうか。だがどちらにしろ、彼らを放っておく訳にはいかないのだ。
 榛・琴莉はざわつく参加者達に向き直り、声を掛ける。
「後退してください、今度は本当に殺されます」
「は、殺され……? 何言ってんだ、これはただの祭りで」
「あー……それ、本気で言ってます?」
 琴莉は躊躇うことなく、ライフルを彼らに向けて、そして力を込めて引き金を引いた。
 ――頬を掠める弾丸が彼らの背後にあった彫像に突き刺さり、追って放たれた氷槍が、圧倒的な冷気がそれを粉々に砕いていった。
「邪魔しないでいただけますか」
 参加者達は、去りゆく琴莉に口を開くことさえ出来なかった。

 遠く空から迫るオブリビオンに、琴莉は照準を合わせようとする。
「これは……動きづらいですね」
 しかし、普段と全く勝手が違う。無重力への不慣れが、一時的に琴莉のパフォーマンスを落としていた。
 そして迎撃態勢が整わないうちに、ペンギンたちの口が大きく開かれ、その奥に光が生まれるのが見えた。
「仕方ない、先手は譲ります」
 青白いビームが一斉に放たれる。
 爆発的に周囲を冷気に染めるビームを浴びて、しかし琴莉はオーラを纏ってそれを受け流す。凍り付いた空気に耐えながら、琴莉は自分の体に氷の鎖が巻き付いた事に気が付いた。
 ペンギンが宙を泳ぎ、体がぐんと引っ張られる。
「なるほど……これでもう、逃がしません」
 逆らいながら、琴莉はライフルを構える。
 無重力にはもう慣れた。いつものような速度で瞬時に照準を合わせると、琴莉は鎖で繋がれたペンギンに向けて引き金を引いた。

 ――装填、ブライニクル。

 全ての力を込めた冷気の魔弾が、まるで導かれるよう真っ直ぐにペンギンへと突き刺さる。更に一発、決して仕留めきれないことのないようにダメ押しと叩き込む。
 それらが命中した瞬間、空中に二本の氷槍が現れた。
「どういうつもりか分かりませんが、襲い来るなら迎撃するまでです」
 絶対零度の氷の槍が、弾丸の後を追うように射出され――そして、ペンギンの体を貫いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイツ・ディン
スラスター借りようかな。ディロ用のあるかな?両翼につけておけば早くなるかも。
「ディロ、装着できるか?」
『むう、なんかやり辛いが……我なら使いこなして当然だ!』

エアライド・ディロを使い、ディロに乗る。スラスターで超高速で動けるように(ただし不安定)。騎乗と空中戦なかったら即死だった。
「落ち着け、尻尾でバランス取るんだ!」
『ええい、喚くな小僧!』

なんとか乗りこなせたらダッシュ(スラスター)で敵陣に突っ込みなぎ払いで一掃。
冷たそうな攻撃は氷結耐性でどうにか耐えられる。あとは突撃してくる敵を敵を盾にするで防ぎつつカウンターで槍投げ(投擲)で応戦。

アピールは忘れずに。
「1羽でいくら儲けられるかな?」



「お、これなんかいけるんじゃないか?」
 ウォーマシン用の追加スラスターを手に、ナイツ・ディンはディロの元へと戻っていく。貸し出し用の装備の中にドラゴン向けのものはなかったが、工夫次第でどうとでもなりそうだ。
「ディロ、装着できるか?」
『むう、なんかやり辛いが……我なら使いこなして当然だ!』
 金具をベルトで固定して、両翼にスラスターを取り付ける。
 ディロは僅か不快げに身を捩るも、すぐさまその制御に取りかかった。スラスターから吐き出される白い光によたよたと振り回されながらも、徐々に科学の力に順応していった。

「なるほど、結構な数が来てるみたいだ。ディロ、行けるか」
『愚問!』
 力強い返答を受け、ナイツは飛竜にひらりと飛び乗る。
 頭上に広がる漆黒の宇宙を背景に、青白い敵の群れが一直線に向かってきているのが見えた。
「よし、行くぞ!」
 気合い一閃、その紅い背を軽く叩く。ディロが大きく羽ばたくと同時にスラスターが火を噴いて――二人は空中に勢いよく飛び出した。
 無重力のおかげで反動は小さいが、それでも地上とは比べものにならない衝撃が二人を襲う。
 進路がぶれて定まらない。速度を制御しきれず両翼の同期が僅かにでもぶれると、一気に体勢が崩れ推進の力に任せて上下左右に振り回された。
「落ち着け、尻尾でバランスを取るんだ!」
『ええい、喚くな小僧!』
 ナイツに空中戦と騎乗の心得がなければ、黄金のシミと化していたかもしれない。
 ディロは大きく尻尾を振って反動を付けると、余った速度を受け流して何とか体を水平に戻す。
「ディロ、前だ!」
『分かっている!』
 無数の青白いビームが迫ると、ディロは咄嗟に翼を畳み急降下で回避。余波の冷気が襲うも気合いで耐え、スラスターの出力も全開に、顔を敵の群れに向けた。
『突っ込むぞ!』
「おう! ――さあ、一匹でいくら儲けられるかな?」
 風を切って、弾丸と化した二人がペンギンの群れへと一気に肉薄。瞬時ナイツは槍を手に、すれ違いざまに大きく鋒を薙ぎ払った。
「く、我らに速度で挑もうとは!」
 ペンギンの群れが隊列を組んで、次々と二人目がけて飛び込んできた。
 ディロは巧みにスラスターを操り、先ほど斬り裂かれ落下していくペンギンの陰へと潜り込んだ。
「いいぞ、ディロ!」
 生々しい衝突音。死骸とぶつかりよろめくペンギンへ向け正面から、ナイツが槍を投げ放った。
 ――速度の乗ったカウンターの一撃が、ペンギンの眉間から尾までを貫く。
 空中に飛び出した槍に追いつき、受け止めながら、二人は意気揚々と次の敵へと向かっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ライカ・モンジ
◆作中クライアントとしてディー・ジェイに共闘依頼

スラスター付きスーツ借用
「毎度思うけどホンットコレ可愛くない!テン下げなんですけど〜!」
文句の割に2、3度操作確認程度で使用感は把握

下品な金ピカ街で有難いわぁ、アタシの美しさがより引き立っちゃう♡オーケーDJ、フロアのテンションぶち上げてくよ!

エリア内の地形を利用(回避・方向転換・遮蔽)

敵SPD技の展開狙い隊長鳥の注意を引いて囮役に
【誘導弾】のスキルも使ってこ〜っと
後続の隊員鳥諸共突っ込んで来た所でbrinicleの氷柱を檻状に展開・包囲
DJの火喰蛇との連携で沢山上手に焼けました〜♡狙い

※ライカの危なっかしい場面の有無はお任せ
アドリブ描写歓迎です


ディー・ジェイ
「飛べないペンギンも宇宙にあがりゃ立派な鳥ってか。んじゃお望み通りチキンにしてやるよ、こんがり仕立てにな!」
※ライカ・モンジに雇われた傭兵として参戦

宙間戦闘は俺の十八番だぜ?
せっかくだ、宙に浮いたパーティー会場で派手に踊ろうぜライカ!

・S1-sp1の砲身を背後に向けて警戒。
敵の上空を奪う動きを基本戦法にしつつ、不規則な軌道を予測しやすくなるよう銃で弾幕を張り、回避行動を終えた瞬間を狙って火喰蛇を発動。

・祭り気分は抜かず、宙を舞うような動きで回避行動。
ライカに敵の攻撃が当たりそうな時は彼女の手を掴み、ダンスを踊る様に引っ張りこむのもあり。せっかくなら楽しまなきゃな。



「毎度思うけどホンットコレ可愛くない! テン下げなんですけど〜!」
 借り受けたスラスター付きスーツに袖を通しながら、ライカ・モンジはぶつぶつと不満を口にする。
 実用性重視なのは分かるのだが、それでももう少し何とかなるはずで。そうしないのはただの怠慢に思えた。
「まあそう言うな。見た目より中身、防弾性や機動性ってな」
 その声を背に、ディー・ジェイは素早く装備の点検を終えていた。他の猟兵達によって次々と落とされていくペンギンに照準を合わせ、引き金を引くフリをしながらほくそ笑む。
「飛べないペンギンも、宇宙にあがりゃ立派な鳥ってか」
「今度もちゃんと守ってよ! アタシ、氷漬けになんかなりたくないし」
「へいへい、りょーかい」
 ライカとディーは、共に準備を終えて街へと向かう。悪趣味に輝く街並みの上で、無数のペンギンが宙を駆けていた。

 ライカは二三度、スラスターを軽く噴かす。
「なーる、こんな感じね」
 それだけで使用感を大体把握。無重力に適応したように、優雅に空中へ飛び上がった。
 それを追って、ディーも手慣れた様子で地面を蹴る。
「せっかくだ、宙に浮いたパーティ会場で派手に踊ろうぜ、ライカ!」
「オーケーDJ、フロアのテンションぶち上げてくよ!」
 二人は舞うように上空へと向かう。
 ペンギンの群れが彼らに気づき、一斉に口を開いて青白いビームを吐き出した。
「はっ、大したエイムじゃねえな!」
 ビルの合間を縫うように、襲い来るビームをひらりと躱し、ディーは小銃で牽制すると共にライカから敵の視線を外れるように誘導する。同時に背後に向けておいた背負いの兵装が、二人を包囲しようとしていたペンギンに向け火を噴いた。
「下品な金ピカ街で有難いわぁ、アタシの美しさがより引き立っちゃう♡」
 ディーの攻撃によって閑散とした頭上に向けて、ライカは思い切り急上昇。眼下に黄金の街並みを見ると、周囲に目を凝らす。
「えっとー、隊長鳥はー……」
 ペンギンの群れの頭には、一際強力な固体がいる。ライカは遠く、摩天楼の周りに目を付けた。狙いやすい位置に、隊長格が飛んでいる。
「みっけ。さ、こっちにおいで!」
 敵の眼前を狙って、誘導弾を撃ち込んだ。
 弾ける砲撃に、びくりとペンギンが翼を止めて――そして二もなくライカへ向けて、一直線に宙を滑る。
「来た来た。DJ、頼んだわよ!」
「任せろ! こんがりチキンにしてやるぜ!」
 そのときだった。
 ペンギンの隊長が大きく鳴いたかと思うと、群れが隊列を変更――隊列で描いた円の中に、巨大な氷山が現れる。
「何それ聞いてないんですけど!」
 狙いはライカ。正面にいた彼女に向けて、砲弾としては巨大すぎる一撃が放たれた。
 慌ててスラスターの出力を上げる。だが、間に合わない。
「――宙間戦闘は、俺の十八番だぜ?」
 高速でビルを駆け上がったディーが、ライカへ向けて大きく跳ねた。すれ違いざまにその手を掴み、ダンスを踊るように胸元へ引き寄せ飛び上がる。
「耳塞いでな!」
 背を向けたまま氷山へと砲撃を撃ち込んだ。その衝撃を背に受けて、押されるようにさらに上空へ。その瞬間に、氷山が足下を通り過ぎていった。
 氷山が、ビル群をなぎ倒しながら街を破壊していく。
 それを見て隊長ペンギンが、憤るように大きく鳴いた。そして群れを率い、今度こそ二人へ向けて突進を繰り出す。
「DJ、今度こそ!」
「おうよ!」
 ディーから離れ、ライカは真正面からペンギンを見る。その口元には、小さく笑みが浮かんでいた。
 タイミングを計る。決して避けられない距離まで引きつけて。
「今!」
 ユーベルコードを発動する。亜空間から無数に飛び出した海氷柱が、まるで檻のようにいくつも交差しペンギンたちを包囲した。
「袋のペンギン、ってのは初めて見たぜ」
 ディーは懐からライターを取り出し、火を付けた。その瞬間、小さな炎は瞬く間に膨れ上がり蛇と化して空を這う。
 そして氷に閉じ込められたペンギンたちに襲いかかった。

 ――氷柱を炎が巻き、膨大な熱量が辺りを焦がす。

 ライカは端末を手に取ると、賞金額を知らせるアプリを起動する。見る間に増える数字の羅列に、ライカはニヤリ口角を上げ、
「ん~、沢山上手に焼けました〜♡」
 満足げに、ディーの肩を強く叩いた。
「ハッハァ、こりゃ黒焦げで食えないかもな!」
 炎が収まり、黒い塊が落下していく。
 二人はそれに背を向けて、次のターゲットへと意識を向けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ドクター・ジェミニィブレイン』

POW   :    喰らえ!ブレインコントロール!
見えない【超強力な脳波】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    出でよ!ビッグブレインロボ!!
自身の身長の2倍の【戦闘用殺戮巨大ロボ】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    喰らいつけ!メカニカルバグズ!
レベル×1体の、【体】に1と刻印された戦闘用【昆虫型ロボ(昆虫の種類は毎回変わる)】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は暴星・メテオです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「何とも、人の欲望の尽きぬ事であるか!」
「愉快なり愉快なり。如何な力を持とうとも、逆らえぬ愚かさよ。いっそ愛おしくも思えるであるな」
 オブリビオンはゆっくりと立ち上がる。
 もはや、画面に映る光景だけを見ていても仕方がない。やはり最後は実地を以て、確実に検証すべきだ。


『――素晴らしい時は矢のごとく過ぎゆく。このゴールデンフェスティバルも、終幕が近づいているようだ』
 黄金の街並みに重さが戻り、呆然と空を眺めていた参加者達は、はっと我に返った。
 そして思い出す。
 目の前で行われていた戦いを。人智を越えたそれは、もはや祭りの粋など越えていたことを。
 エレベーターエリアへと帰還した猟兵達に、彼らは無言で道を空けていた。
『さあ、勇者達よ。最終ステージへと向かうのだ! そこには、巨万の富が待っている!』
 そんなアナウンスが響いても、――猟兵達を除いて――動くものは何処にもいなかった。

 そして、案内に従って猟兵達が辿り着いたのは、広大に広がるカジノエリアだった。
 ここもまた黄金に彩られ、あらゆる機器が光を放つ。空間の中央には、ガラスで出来た巨大な円筒形の柱が鎮座し、その中には、溢れんばかりの黄金のコインが詰まっていた。
 ――そしてその正面に、異形のオブリビオンが佇んでいる。
「……うん? かなり、数が減っているようであるが」
「然り然り、彼らが一番乗りであろう。すぐに後続も追いつくはずである」
「おお、よく見れば主らは、特に顕著な能力を見せた者どもであるな! 他が追いつけぬも道理である!」
 それは一体のオブリビオンであったが、奇妙なことにそれは、二つの声で交互に会話しているようだった。その頭に浮かぶのは二つの脳で……そういうことなのだろうか。
「しかし、富は時を待たぬもの」
「疾く疾く、動くもののみが好機を得られよう」
 オブリビオンの背後で、円筒形が嫌な音を立てた。
 びしり、びしり。見る間にヒビが入っていく。
「――最終ステージである」
「我々に、その欲を見せてみよ!」
「それを以て、我が研究は結果を見るであろう!」
 ガラスの容器が砕け散った。雪崩のようにコインが広がり、カジノの床を埋めていく。
「金に弱い貴様らよ、金に埋もれて滅ぶがよい!」
 そしてオブリビオンの周囲で、サイキックエナジーを浴びて大量のコインが宙に浮かび上がった。

 ――精神的な欲への弱さは実証された。残るは、物理的に叩きつけて測るとしよう。
ナミル・タグイール
金ピカにゃ!ジャラジャラにゃ!
埋もれるにゃ?最高デスにゃー!
あいつを倒せばコレが全部貰えるにゃ!?
頑張っちゃうにゃー!本気だすにゃ!
金ピカは全部ナミルのものにゃ!!
・真の姿を解放してケモ度と強欲度がアップ

・行動
突撃にゃー!ハイテンションにゃ!
あのグロいのを倒せばいいんだにゃ!【呪詛】纏った斧でブンブンにゃ!
【グラウンドクラッシャー】で頭?をかち割ってやるマスにゃー!
コインぶつけられても【捨て身の一撃】狙いで突撃にゃー!
金ピカシャワーにゃ!こんなのご褒美デスにゃー!!

金欲に身を任せたパワーを見せてやるマスにゃ!
・なんでも大歓迎



「金ピカにゃ! ジャラジャラにゃ! これに埋もれるなんて最高デスにゃー!!」
 両目を宝石のように輝かせ、ナミル・タグイールは足下に転がってきたコインをすくい上げた。
 ずっしりと重く、冷たい感触。指を広げれば、まるで水のように零れだしキラキラと煌めいた。
 溜息が漏れる。
 目の前の敵を倒せば、これが全て手に入る――テンションの上がらない理由がない。
「頑張っちゃうにゃー!!」
 金ピカは全て、余さず自分のものだ。
 欲望をさらけ出し、ナミルは真の姿を解放した。

 コインの海を掻き分けて、ナミルはオブリビオンへと突撃する。
 策も何もない。ただ金欲に身を任せ、呪いを纏った斧を力任せに振り上げる。
「ナミルの本気、食らってみるにゃー!!」
 そうしてナミルが斧を振り下ろそうとしたその瞬間、足下のコインが爆発するように噴き上がった。
「にゃー!?」
 真下から突き上げられ、ナミルの体が宙に浮く。
「獣のごとき猛進よな! 欲というものは、思考力さえ奪うと見える!」
 体勢を崩したナミルに向けて、散弾のようにコインが降り注いた。
 怒濤と襲うコインを受けて、しかしナミルは笑みを堪えきれず――
「グラウンド、クラッシャーにゃー!!」
 飛び交うコインを蹴りつけて、回転しながら地面に斧を叩きつけた。
 空間全体が揺れるような衝撃が走り、直撃地点からコインが放射状に弾け飛ぶ。数千の雨が周囲に叩きつけられて、黄金の光が乱反射し揺らめいた。
「キラキラジャラジャラ金ピカシャワー……こんなの、ご褒美ですにゃー!!」
 まるでダメージを受けていないように、ナミルが歓喜に吼えた。
「そのグロい頭みたいなとこ、かち割ってやるマスにゃー!!」
 ナミルは再び力を込めて、単純で重い一撃をオブリビオンへと叩きつけた。
「驚嘆なり驚嘆なり。まさか物理的な耐性まで得ようとは!」
 敵の周囲のコインが動く。それは瞬時に敵の頭上で膜と化し、斧の猛撃を受け止めた――しかし、ナミルの金欲パワーを、敵は侮っていた。

「全部、ナミルのものにゃあああああ!!」

 獣の膂力が爆発し、斧の柄が軋みを上げる。禍々しい呪詛が噴き上がるように刃を包み、より強く、より大きく、ナミルの欲望は膨れ上がる。
「は、は、予想以上である!」
 その一撃はやがて、サイキックパワーを引き裂くと――コインの壁を押し通った。
「ぬ、う! この程度で、我々を破壊など出来ぬよ!」
 頭部に刃を叩き込まれ、ふらつきながらもオブリビオンは脳波を飛ばす。そして再び、膨大な量のコインが浮き上がっていた。
 ナミルは咄嗟に飛び退る。
 一刻も早く金ピカを手に入れたかったが、そう簡単に、思い通りにはさせてくれないようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

御狐・稲見之守
金も力なれば溺れて鬼となるのも道理よの。ま、金は天下のなんとやら。金も力も使うてこそよな。

[WIZ]荒魂顕現、此の場を陰陽五行に治めむ。五行金気の津波、コインの津波で奴を埋めようぞ。そら、これがワシの「金の使い方」じゃ。これで三途の河の豪華クルージングなんぞ如何かな。

ああそうそう。ここ来る前にモールでエステ行ってディナー食ってきたんで支払いこれでしくよろ。



 飛び散るコインを払いのけ、御狐・稲見之守は五行の力をこの場に込める。
「我成す一切神事也。金も力なれば、溺れて鬼となるも道理よの」
 地面に広がるコインがざわめいた。稲見之守の力の元で、波打ちうねり荒天に狂う海原のように、
「ま、金は天下のなんとやら。力と同じく、使うてこそよな」
 煌めくコインが津波と化した。
「ぬう、これもまた欲の力であるか!」
「否、否。力場を検知、正しくユーベルコードである」
 稲見之守は津波をオブリビオンへと叩きつける。黄金の奔流が、カジノエリアを飲み込んだ。
 だが次の瞬間、コインの海から無数の飛翔体が飛び出した。
 虫だ。機械で出来た巨大な虫が何体も、凶悪な顎を開閉させて稲見之守へと襲いかかる。
「ふむ、三途の川の豪華クルージングなんぞ如何かと思うたが」
 噛み付かんと迫る虫を叩き落とすと、一歩下がって稲見之守は眼前にコインの津波を発生させた。それは壁のように虫の突進を受け止めると、そのまま飲み込みこれを封殺。
 分厚い金属の下でくぐもった爆発音が響くと同時、オブリビオンがコインを弾き飛ばしながらグロテスクな頭部を持ち上げた。
「これは、微塵も嬉しくないのである!」
「然り然り。これを喜ぶ人類の、何と倒錯的なことか」
 敵の周囲に無数の昆虫型ロボが召喚される。さらに虫が互いを食らい合い、合体して巨大に膨れ上がった。
「人類を何だと思っておるのかのう。ま、大きく否定もせぬが

 稲見之守は再び場を治め、敵を挟み込むように津波を生み出す。
 昆虫はそれに対し、大きく羽ばたいた。
 ――暴風が巻き起こる。
 それは持ち上がったコインにぶつかり、その動きを僅かに阻害。その隙を縫って突進する昆虫を、稲見之守は屈んで躱す。
「む、途切れたか」
 オブリビオンの脳波に、コインの支配が上書きされた。それを感じ取った瞬間、稲見之守は大きく側面に飛び退っていた。
 大量のコインが滝のように、空中から立っていた地点を打ち据える。余波に飛び散るコインを躱し、体勢を立て直すと、稲見之守は更に強く陰陽五行に力を込めた。
「――天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし」
 見えない力がぶつかり合う。コインの群れが擦れ合い異音を放つ。
 しかし昆虫の制御に割いたリソースが、勝敗を分けた。
「そら、これがワシの『金の使い方』じゃ」
 拮抗に打ち勝った稲見之守が、先ほどよりも激しい津波を引き起こす。
「ぬ、おおおおおお!」
 二つの声が同じく悲鳴を撒き散らし、コインの激流に飲まれていく。同時に稲見之守の背後で、昆虫ロボが瓦解した。
「……ああそうそう。ここ来る前にモールでエステ行ってディナー食ってきたんで、支払いこれでしくよろ」
 大きなダメージを受けてもがく敵の姿を見届けながら、稲見之守は、装束に引っかかっていたコインを弾いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

榛・琴莉
※真の姿
背の翼が巨大化、腕のように扱う事も可能な構造になる。飛行能力は保持

あーあ、ジャラジャラとまぁ…眩しい。
「お金は嫌いじゃないです、あるに越した事はないですし」
ですが、あまり多くても持て余しそうで…貧乏性ですかね。
お給料分貰えれば、それで。

足を取られそうな状態で戦うのは厳しいので、【空中戦】を仕掛けます。
攻撃を【見切り】ながら敵の頭上に飛び、急降下して頭部に【属性攻撃】【全力魔法】で【CODE:グランディニーリ】
あの頭、【鎧砕き】の要領で割れませんかね?
「脳みそって、もっと隠すものだと思うんですけど」
一撃では足りなそうですし【2回攻撃】で再度撃ちます。
逃がさないよう翼で捕らえ、ゼロ距離で。


苧環・つづら
後続……ああ、一般人さん達か。
寧ろ追い付いた時にはアナタが消滅してる事が理想だわ多分来ないけど。
欲を見せろ……ならアタシよりもっと純粋な欲を抱えてる子が相応しいかしら、ね!

――“わたくしを満たす程の荒事、貴殿等は叶えて戴けましょうか?”

然り。なればこの迦河稚、一戦を所望致します。
魂燈を構え一直線に脳髄を狩る――と見せかけたフェイント。
貴殿等を喰らうは一の刃先にあらず、凍てし無数の穂先なり……氷槍陣召喚。
マヒ攻撃と鎧無視攻撃も穂先に仕込みましたので存分に味わって戴きましょう。
邪魔な金貨や鋼の虫は衝撃波で散らし、見切り残像で避け、カウンターで弾く。
貴殿等の知識欲と私の欲、どちらが上か――如何に?


ナイツ・ディン
(本物の金貨ならその依頼の報酬として頂いていきたいところなんだけどな。)
内心思いつつ表に出さないように。欲で動いているように見せかけないとな。

「滅んだら金を使えないだろうが。てめぇが滅んで財宝をよこせ。」
『ふん、まやかしの黄金が。まともな財も集められないとは能無しだな』

検証、検証とデータを集めるのが好みらしい。ならば盗み攻撃で盗れるだろうか。封印を解く、串刺しと組み合わせてあの脳をぶち抜いて『ディロ』のデータを欠損させてみるか。

コインに埋められるようなことがあったら竜化の騎士で巨竜化、コインを崩しながら出現して思うがまま暴れまわろうか。
『全てを制するが我が竜道!潰れろ、下郎が!』



 荒れ狂うコインの波を眼下に眺め、ナイツ・ディンは溜息を飲み込みほくそ笑む。
 これが本物の金貨で、この手にできるのであれば報酬として頂きたいところだが。しかし手にできない以上、敵の油断を維持するために、ナイツは欲に目の眩んだ風を装う。
「滅んだら金を使えないだろうが。てめぇが滅んで財宝をよこせ」
 槍を振り、心から出たものと思わせるように力を込めて言葉を投げる。
「すまぬな、貴殿が欲を満たせぬ事は、我々の検証に何ら振れを起こさぬ故!」
 オブリビオンが腕を振り上げ、俄に持ち上がったコインの塊がナイツへと殺到した。
 大きく羽ばたき、ナイツはそれを悠々回避。続けて飛来するコインの嵐を、その隙間を縫うように躱し、
「検証ね、それこそ俺にはどうでもいい。いいからさっさと滅びやがれ!」
 槍でコインを斬り裂きながら、オブリビオンへと突撃した。
「小さくあっても欲は変わらぬか!」
 真鍮色の腕が振られると、それに合わせてコインが上下左右から襲い来た。視界を黄金が埋め尽くす中を、ナイツは怯まず突き進む。

 榛・琴莉は別の方向から、オブリビオンへの突撃を画策、真の姿を解放した。
 ――背の翼が、見る間に構造を変化させながら巨大化。羽ばたかせると風圧に地面のコインが波紋と揺れる。
「あーあ、ジャラジャラとまぁ……眩しい」
 豪奢に光を照り返すコインを眺め、琴莉は呟く。
「お金は嫌いじゃないです、あるに越した事はないですし」
 これだけの量が手に入れば、それこそ何でも出来るだろう。しかし、大金に埋もれる自分の姿が上手く想像できなかった。
 多くを手にしたところで、きっと自分は持て余す。働いた分の給料が貰えれば、琴莉はそれで十分だった。
 コインに足を取られないよう、琴莉は大きく空中へと飛び出した。数階分にも及ぶ空間に、巨大な翼が影を落とす。
「機能性に富む、素晴らしい翼であるな!」
 それに気付いたオブリビオンが、コインに脳波を送り込む。それは蛇のように固まり首をもたげ、食らいつくように琴莉を襲う。
「……あなたに褒められても」
 コインの動きは流暢だが、二人を同時に狙う動きに隙は多い。
 流れを読み切り、琴莉は宙を滑って敵へと肉薄していった。

「後続って……ああ、一般人さん達か」
 苧環・つづらは思い出すように、ちらりと背後に目をやった。そして、彼らの何とも言えない瞳の色を思い出す。
「寧ろ追い付いた時には、アナタが消滅してる事が理想だわ」
 多分、あの中にそんな根性のある人物はいないだろうが。
 つづらは言葉を投げかけながら、自らの内側に意識を落とした。敵の希望は欲の露見。ならば、それに応えてやるのも一興だろうか。
「アタシよりもっと純粋な欲を抱えてる子が相応しいかしら、ね!」
 そして二人は入れ替わる。その気配は一変し、研ぎ澄まされた刃のように。
 ――“わたくしを満たす程の荒事、貴殿等は叶えて戴けましょうか?”
 直刀を手に、『迦河稚』がオブリビオンへと一直線にコインの海を駆ける。
「然り然り、我々と似た精神構造であるか!」
 迦河稚の目の前で、コインの壁が持ち上がった。それは押し潰すように頭上へと降り注ぎ、
「貴殿等を喰らうは一の刃先にあらず、凍てし無数の穂先なり……貴殿等と一緒にしないで戴きたい」
 しかし直前で飛び退った迦河稚の眼前に着弾。そして溢れるコインを突き破り、無数の氷槍がオブリビオンに襲いかかった。


 三方向からの攻撃に、オブリビオンはコインをドーム状に形成、その中に引きこもると共に無数の昆虫ロボを周囲に召喚した。
「喰らいつけ、メカニカルバグズ! 我々を守るのだ!」
「……防御ですか、繽紛たる一戦を所望するのですが」
  追って迦河稚の氷槍が、矢雨とコインの壁に突き刺さる。それは容易く黄金を貫き、敵の頭部を傷つけると共にその動きを阻害。空中より飛来したナイツと琴莉への対処を遅らせた。
「今だ!」
 昆虫ロボの出現しようというその側を、およそ三十センチの騎士が通り抜ける。構えた槍の鋒は、氷槍の食い破った箇所へと向けられていた。
「何とか、ディロのデータだけでも!」
 掻き分けるように槍を突き出し、その先端が強烈に敵の頭部を打ち据える。力を込めた一撃が、頭部を揺らし、脳を揺らし、電脳の奥まで衝撃を浸透させ、
「ぬううう! 我々の聖域であるぞ!」
 突如、発狂したようにオブリビオンが脳波を乱射した。
「まずい、飛ばされ――」
『く、堪えきれぬ!』
 全身に脳波の奔流を浴びて、大量のコインと共にナイツが大きく吹き飛ばされる。
「まずいですね、援護します」
 空中で昆虫ロボを撃ち落としながら、琴莉はオブリビオンの頭上を取っていた。ナイツに向けて追撃を仕掛ける素振りに琴莉は過たず、その脳天に突撃を仕掛ける。
 加速しての急降下。覆うように、翼でコインの壁ごと敵を捕らえると、氷の魔力を宿したアサルトライフルを透明な容器に突きつけた。
「脳みそって、もっと隠すものだと思うんですけど」
 引き金を引く。――その瞬間、途轍もなく重い打音が辺りを揺らした。
 零距離で大威力の一撃が敵を撃つ。琴莉は更にもう一度、同じ攻撃を叩き込んだ。
「お、ごおおお……! 脳が、揺れるのである……!」
 震える声を発しながら、しかしコインの塊が勢いよく琴莉に叩きつけられる。
 琴莉は思い切り羽ばたいて距離をとった。
 そうして意識の逸れたオブリビオンの側面に、無数の氷槍が凍てつく冷気を放って飛ぶ。
「貴殿等の知識欲と私の欲、どちらが上か――如何に?」
 氷槍を展開し、放ちながら迦河稚は駆ける。昆虫ロボの群れが互いを喰らい、巨大な個体となってそれを追う。
 鋭利な鋏が迦河稚の胴を真っ二つに――したかと思うとその姿が掻き消えて、側面を通り過ぎるように白刃が翻る。
 バチバチと火花を上げて、ロボが落ちる。それを見届けることなく、次なる槍が装填されてオブリビオンの頭部を打った。
「こと戦場であれば、見え透いた弱みを狙うは道理でありましょう」

 琴莉と迦河稚から波状攻撃を叩き込まれて、オブリビオンはゆらゆら揺れる。真鍮色の腕を振るい、脳波を飛ばしてコインを操るも、空中の琴莉は狙いきれず、迦河稚の速度は捉えきれない。
「ぬぐぐぐ、これが欲の力であるか!」
「意外や意外、侮っておったわ!」
 ――そう吼えるオブリビオンの背後で、コインの山が俄に持ち上がった。
 轟音を響かせ、振動を撒き散らし、莫大なコインを崩しながら真紅の竜が姿を現す。
「ディロ、本気で行くぞ!」『全てを制するが我が竜道! 潰れろ、下郎が!』
「な、なんだこやつは!」
 驚愕の声は、巨大な竜――ナイツを取り込んだディロの、衝撃を伴う咆哮に掻き消される。そして琴莉と迦河稚の攻勢により薄まった防御を引き裂いて、鉤爪が振り下ろされた。
 余波にコインが波打つ。強打を受けて、ぴしり、と透明な容器が音を立てた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ディー・ジェイ
「知ってるか、金の亡者製造機共。人ってやつぁ見せびらかされ続けると、逆に欲しくなくなってくるんだぜ?」
※ライカ・モンジに雇われた傭兵として参加

ッハ、あんなもん現物支給でも欲しくはねぇな!品がねぇ!

・昆虫の合体を銃弾の雨で潰しながら、ライカが攻撃を行える最適のタイミングを整えていく。巨大ロボを出現した際は本体含め脚関節部分にS1-spの砲撃を浴びせ、徹底的に機動力を奪いたい。

・あんな剥き出しの頭部が脆いとも思えないが…ライカや他の猟兵の攻撃で損傷を受けているのが確認できた場合、銃撃であえてブレインコントロールによる防御を誘導し、フルバーストで損傷を一点狙い。その後ナイフで抉り開けてやろう。


ライカ・モンジ
◆作中クライアントとしてディー・ジェイに共闘依頼

あの金貨、パチモンじゃないなら現物支給の報酬って渡せたのに〜

第1、2ステージの時とは別人の様に全然お金やコインに興味無さげな素振りでつまんなそうに交戦
とにかく敵には【疑問】の感情を募らせて研究材料にならーんって不満爆発しちゃう機会を作る

お団子髪解いて真の姿解放〜
コレが価値あるホンモノの輝きってやつよ♡
所詮ニセモノじゃぜ〜んぜん満足出来ないんだも〜ん♡(悪女笑顔)
謎を喰らう触手の群れを敵足元から召喚
拘束・転倒を狙いガード固そうな頭部に隙を作る攻撃


ん〜とぉ下の脳ミソに風穴が空く〜♡にDJの報酬全賭けで♡
依頼主の多少の無茶にも報いるのが傭兵でしょ♡



「遺憾である遺憾である! 何故我々がこれほどまでに攻撃されねばならぬのか!」
「いやアンタ、滅べとか言ってたじゃん」
「ったく、品がねえやつは性根までひん曲がってやがるのか?」
 コインの海を踏み越えて、ライカ・モンジとディー・ジェイは、先の猟兵達が切り開いた道を突き進む。
 オブリビオンは、既に大きなダメージを負っている。脳波は弱まり、昆虫の数は減り、さらには減らず口まで弱々しい。この悪趣味な祭りも、終わりが近いようだった。
「これ、現物支給の報酬ってことでどぉ?」
「ッハ、こんなもん現物支給でも欲しくはねぇな! 品がねぇ!」
 無数に飛び交う昆虫ロボの群れを、掃射し合体を防ぎながらディーは吐き捨てる。羽に弾を受け、ふらつく虫をライカが蹴り飛ばし、その残骸をコインの壁が飲み込むように持ち上がった。
「確かにね~……ってかさ、これホンモノ? ここカジノだしパチモンなんじゃないの」
 コインを蹴りつけ波を駆け上がり、飛び越えながらライカは手にした一枚を疑わしげに眺めた。
 ディーはその間に、敵の損傷具合に注目する。ここまでの戦いで、決定的な傷を与えてはいないだろうか。
「どっちにしろ興味ねえな。人ってやつぁ見せびらかされ続けると、逆に欲しくなくなってくるもんだ」
「同感~。つか眩しいしうるさいし、マジ邪魔なんですけど」
 二人は心底つまらなそうに、足下のコインを踏みつけた。その様子は、まるで路傍の石でも見るかのようで、
「……うむ?」
 ここまで見てきた映像との差異に違和感を覚え、オブリビオンは僅かに『疑問』を抱きそうになった。
 ライカは内心ほくそ笑みながら、ダメ押しとコインを蹴り飛ばして昆虫ロボへと叩きつける。追ってディーの銃撃が虫を貫き爆散させると――その瞬間、
「まさか、これを呼ぶことになろうとは」
「然り然り、思わなんだ」
 コインを掻き分けるようにして、黄金色に輝く巨大な人型ロボが召喚されていた。オブリビオンは浮き上がってそれに乗り込み、ガチャガチャと、手足の具合を確かめる。
「……え~と、趣味悪っ!」
「何とでも言うがよい!」
 げんなりと肩を落としたライカに向けて、ロボが腕を振り上げ襲いかかる。
「ッハ、的がでかくなったぜ!」
 ロボの速度は凄まじく、瞬きの内にライカへ肉薄。ディーは急ぎ体勢を変えて背負った兵器をそちらに向けた。
 砲撃。ロボの関節部にダメージを与える。
 僅かに逸れた狙いに合わせ、ライカが身を反らして拳を回避。そのまま接近、膝関節を蹴りつけると反動で距離を取った。
「もう、これ滑るんですけど」
 幾度目か、本気でつまらなそうにコインを蹴り飛ばして呟いた。
 ――そして。
「何なのだ貴様らは!」
「金であるぞ、欲をさらけ出す好機であるぞ」
「検証に揺れが出てしまうのである!」
 腕を振り上げ、力任せにロボが地面を叩きつけた。
 コインの海が炸裂し、散弾のごとく弾け飛ぶ。ライカとディーは飛び退ってそれを凌ぐと、二人はニヤリ、口元を歪めた。
「だ~って、所詮ニセモノじゃぜ〜んぜん満足出来ないんだも〜ん♡」
「何と、正真正銘の金塊であるぞ!」
「だから?」
 ライカは自らの髪に手をやった。結われたそれを解放し、手櫛で梳いてふわりと広げると――エメラルドブルーが、黄金のそれを塗りつぶすように輝いた。
「コレが、価値あるホンモノの輝きってやつよ♡」
 悪女の如く、妖艶に笑んだ。
 それと同時ロボの足下から触手が飛び出す。紫色の触手塊が謎を見つけ、それを喰らうべく腕を伸ばす。それは見る間にロボに巻き付くと、強力に締め付け動きを縫い止めていく。
「ん〜とぉ、下の脳ミソに風穴が空く〜♡に、DJの報酬全賭けで♡」
「おいおい、そこまで狙う余裕はねえぞ!」
「依頼主の多少の無茶にも、報いるのが傭兵でしょ♡」
 そしてロボの動きが止まった瞬間、ディーは敵の膝を蹴ってその体を駆け上がる。狙うはコクピット。持ちうる全ての武装を構え、
「ったく、注文の多いクライアントだぜ。なあ、お前もそう思うだろ? 金の亡者製造機共」
 装甲の隙間にねじ込むように、一斉に発射した。
 爆炎が上がる。ディーはそれが晴れるのを待つことなく、コックピットに飛びつくと、手にしたナイフを隙間に差し込んでこじ開けた。
「待て、待つのだ! ロボと我々は生命力を共有しているからして――」
「そりゃ好都合だ」
 オブリビオンの姿が露わになる。
 そのままディーは、至近距離から銃撃を叩き込む。敵は堪らずコインを呼ぶも、この距離では間に合わず、まともに銃弾を浴びてしまう。
 構えるその銃口は、ただ一点を狙っていた。これまでの猟兵達の与えたダメージが作った、僅かな損傷。小さなヒビ。
 びしり、びしり。
 銃撃の音に重なって、小さな音が耳に届く。紡がれた糸が形となって、ディーの前に現れた。
「そろそろ、お開きと行こうか!」
 透明な容器に白い線が幾条にも広がって。
「やめ、やめるのだ! やめるのだぁっ!!」

 ディーは過たず、亀裂にナイフを突き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月16日


挿絵イラスト