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引き裂くよ、ディアレスト

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●引き裂くよ、ディアレスト
 その村は崩壊していた。
 けれど村人たちに命はある。それはこの村を襲った者の、この後の楽しみのために。

 ここにはちょうど良い物があるね。
 あの塔にしよう。
 あの塔の上で待っているから、大事な、親愛なるものたちが大切なら迎えにおいで。

 笑って、それは告げたのだ。

 僕が襲った時、君と君は手を繋いで互いを守ったね。
 じゃあ、片方は僕が預かっていくから迎えにおいで。何があってもね。
 君と君は一緒に逃げたね、仲良しさんだね。
 君は一方が連れ去られたら助けにくるのかな、それとも逃げるのかな。

 どうなるか楽しみだ、と笑って。
 古い時計塔の上で待っているよと、捕まえた何人かを引きずって連れていく。
 連れていかれるものも、残して行かれるものもこの先には絶望しかないと直感で感じていて悲壮な表情を浮かべていた。

●予知
 ダークセイヴァーに向かってほしいのだと、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は告げる。
 そこに倒さねばならないものがいるのだと。
「すでにひとつ、村は滅んで……いや、ほとんど、か」
 それはもう、どうしようもないことなのだ。
 しかし村人は誰一人として命を失ってはいない。怪我をしているものはいるようだがそれよりも、突如襲われた事。そして村を壊された事と現状が飲み込めずといったところでもあるようだ。
 いや、認めたくないといったところかもしれない。
「じゃが、まだ村を襲ったものは近くにおってな」
 その脅威は去っていないのだと嵐吾は言う。
 近くの時計塔に、村人数人を連れて篭っているようなのだ。
 助けたければくればいいと。大切ならこれるだろうからと――試すように。
 嵐吾は詳細は、現地で村人に聞いたり調査してほしいと紡ぐ。
 ここではわからぬことのほうが、やはり多いのだから。
「では、村まで送る」
 あとは頼む、と言って――嵐吾は猟兵たちを現地へと送るのだった。


志羽
 お目通しありがとうございます、志羽です。
 プレイング締め切り、受付方法などはお手数ですがマスターページの【簡易連絡】をご確認ください。
 全章、冒頭公開後からプレイングをいただければ幸いです。

●シナリオについて
 第一章:冒険『滅ぼされた村』
 第二章:冒険『時計塔』
 第三章:ボス戦『???』
 以上の流れとなっております。

●一章について
 惨事のあった滅ぼされた村でのこととなります。
 詳細は、サポートさんを数名およびし、少しだけ調査状況を描いた上で、さらに調査していただくこととなります。

●お願い
 お二人様の場合はご一緒する方がわかるように互いに【ID】を記入していただけると助かります。また、失効日が同じになるように調整していただけると非常に助かります。(続けて二章、三章参加の場合、IDについては必要ありません)
 ご協力よろしくお願いします。

 以上です。
 ご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『滅ぼされた村』

POW   :    村をくまなく歩いて調べる。

SPD   :    殺され方、壊され方を調べる。

WIZ   :    時間や場所に関連性や規則性がないかを調べる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

数宮・多喜(サポート)
『アタシの力が入用かい?』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」

基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。

探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。

情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。

戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。



 村――とは、もう言えなかった。
 家は崩れ、壊され。人々は肩を寄せ合いこれからどうするかを投げている。
 特にひどいのは、入ってすぐなぎ倒された家だろうか。その傍で老人がうずくまっていた。肩を押さえているのは、そこにけがをしたからだろう。そこには血がにじんでいた。
 暴虐を尽くされ、人々は寄り添い呻くばかりだ。
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は瓦礫をどうにかどかそうとしている女と、その傍に駆け寄る少女の姿をみつけた。
「おばちゃん! ユーリィは!?」
「ここ、ここにいるのよ!」
 粗末な家だったのだろう。簡単に壊されたであろうそれは今はただの邪魔なもの。慌てて瓦礫をどかそうとしてもうまくいかず、さらに焦りは募るのだ。
 多喜は無暗に掘り返すと逆に危ないと女と少女を止めた。土を掘り返すその腕をつかみ、目を向ける。その手は、指先は――瓦礫をどかそうとして。そして土をひっかいて血が滲んでいた。
「は、はやく助けないと……ああ、ああ……!」
「ユーリィ!!」
「ユーリィ、って名前なんだな」
 その名を呼びかけ、テレパスを使い多喜は探る。この瓦礫の下、どこにいるのか。
 その呼びかけに答える声があった。だれ、と弱弱しく。けれど生きている。
 いた、と多喜は呟いて多喜は女と少女の手を握り、心配はないと紡いで瓦礫を浮き上がらせる。
 サイキッカーである多喜にとってこれくらいは何のこともない。
 瓦礫を排して――白い手が見えた。
 飛び出しかける二人をまだと制し丁寧に、けれど早くそれをどかしていく。
 そして、ふたりを止めていた手の力を緩めた。
 途端、二人は瓦礫の中にいいた少女を助け起こし良かったと安堵を漏らす。
 あの少女ふたりは友人同士なのだろう。泣きながら再会を喜んでいる。
 この悲哀に悲しみ、負に浸された村の中で温かさがある。
「大丈夫だっただろ」
 少女と視線があった多喜は笑いかける。三人は感謝の言葉を多喜へと向けた。
 多喜はひとつ頷くだけで、長く礼を受け取ることはなかった。
 まだ、同じように瓦礫に埋もれているものたちがいるようで、助けたその様を見た者達が力を貸してくれと書けてきたからだ。
 助けようとしている。そうしようとしている者達はこの崩壊した村の中にあって、前向きな者たちだ。
 多喜は一人でも多くと。そういった者達へと力を貸す。
 まだ生きる気力のあるものたちが、ここにいるのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

アウル・トールフォレスト(サポート)
(基本好きにお任せします)
「今日はどんなところに行けるのかな?」

楽観的で感情豊か、夢見る乙女な性格の少女
年相応に無邪気であり、根本が人でない故に残酷

神出鬼没に出現し、気まぐれに歩き回り、楽しげに爪を振るう
猟兵の役割は理解し依頼も一応遵守しようとするが、それはそれとして楽しそう、面白そうで物事を判断し、それを優先して行動する

バイオモンスターの特徴として、肉体は植物の性質を持つ

戦闘では怪力の発揮や身体の巨大化、鋭い爪での引き裂き、捕食等の野性味溢れる攻撃スタイル
理力の扱いも得意で、体表で自生する蔓や苔植物を操り、防御や隠密に罠等サポートも行わせる



 今日はどんなところに行けるかな? ――と、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)が足を延ばした先は人々の嘆きばかりが募る。
 ここには森はなく、荒れた土地ばかり。その中でか細く人々が生を繋いでいたところに、突然の嵐のように現れたものがいる。
 アウルはその視界の端にしゃがみ込み、抱き合って。そして声を上げて泣いている兄弟をとらえた。
 痛い、悲しい。こわい。そしておねえちゃんと、姉を呼んでいる。
 泥だらけの二人だった。傍には崩れた家だったものがある。いや、小屋だ。
 その中から這い出てきたのだろう。そして二人の周りに血の跡があるが彼らは傷ついてはいない。
 アウルは何があったのかは、聞かない。
 己は猟兵であるから、この近くにいるオブリビオンを倒すのだということは、わかっている。
 わかっているけれど――それに興味はわかなかった。
 おねえちゃん、どこと言うのなら探しに行けばいいのに。
 つれていかれたと言うのなら、連れ戻しに行けばいいのに。
 そんな嘆きに満ちた場所であるけれど、どうして嘆くのかとアウルは思う。
 だって、死んでいない。だから何も終わっていない。
 何を嘆くことがあるのだろうか。
 けれどここには楽しいと思うことがない。
 だって皆、下をうつむいている。泣いている、嘆いている、悲しんでいる。
 中には、瓦礫に埋もれたひとびとを助けようとしている者達もいる。いるが、焦りが滲みうまくできていないようだ。
 そして大切なものが連れていかれていったというもの達は――ここで蹲っている。助けにいけない、どうしたらいいと吐き出すだけだ。
 高き森の怪物は――わからない。
 折れた人の心は、暗澹に沈むだけだ。
 ここから這い上がれるものであるならば、もうきっと立ち向かっているだろうとうことも。
 けれど、連れ去られたと嘆く村の者達はそれができない。村の中にいるものは助けようとしているが、村の外に出てしまった者には、救いの手は伸ばせない。
 ふたりの兄弟の嘆きから『時計塔』という言葉が零れた。
 そんなものがどこに、とアウルが見回せば――薄暗い、枯れた木々の先にぼうとそびえる影があった。
 鐘の音などはしないけれど――あれが時計塔なのは間違いない。
 ここより、あそこのほうが楽しそうとアウルは瞳を向けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​


 村のひとびとは二つに分かれていた。
 崩れた瓦礫の下からひとびとを助けようとする者達。
 彼らは、生きる気力を失っていなかった。
 助けてほしいと、彼らは猟兵達に声をかけるものもいる。まだ、生きようと前を向いている。
 そのために借りれる力は借りようとしているのだ。
 そして――今、生きる気もなくうなだれ、戸惑い。そして泣いて嘆き続けている者達は、大切なもの達を連れていかれたもの達だ。
 姉を連れていかれた兄弟。
 長年連れ添って、この世界で厳しくとも肩寄せ合って生きてきた老人。
 これから共に生きようと誓った男を連れていかれた女。
 ほかにも――子を連れていかれた、親を、恋人を。
 逃げようとして、互いを守ってなど、その別れの状況は様々だった。
 しかし、彼らは立ち上がることができない。
 助けにきたいならくればいいと言われたけれど――助けられるわけがないと思っているのだから。
 それは薙ぎ払われたこの村を見れば一目瞭然。
 猟兵ならば、彼らのかわりに連れ帰ることもできるだろう。
 けれど求められているのは――彼らが、大切な相手を助けに来ること。
 連れていかれたもの達もあきらめているかもしれない。いや、生きていてほしいから来ないでほしいと願うものもいるかもしれない。
 けれど、連れていかれたもの達の心は誰にもわからない。
 しかしきっと――心の奥底では、助けに来てほしいと願っている。来てくれたならば、どれほど嬉しい事か、幸せなことか。その気持ちをきっともっているはずだ。
 時計塔の傍まででもいい。
 危険に飛び込むことなどは誰もしたくはないだろう。しかし事情を知ることができたなら、猟兵も力を貸しやすい。
 話してくれる者もいるだろう。己を失って、何もしゃべれぬものもいるかもしれない。
 そして、誰かひとりでも動くことができたなら――オブリビオンはその心の内を零すこともあるかもしれない。
 もしくは、猟兵たちが――オブリビオンの欲するものを、見せることができたなら。
 けれど、それが何かは猟兵達にはわからない。
 オブリビオンの姿も、知らぬのだ。
 それを見ているのは、この村人たちだけなのだから。
シェーラ・ミレディ
ミス日下部(f25907)と同行。
どこかで見たような程度の、ほぼ初対面。

物静かな雰囲気の女性に声を掛けられ、警戒もせず手伝いを了承する。
僅かな呻き声を聞き分けて助けが必要な人を見つけ出し、救助。
瓦礫を苦も無く持ち上げる彼女に違和感を抱きながらも、猟兵だったらこれぐらいできるだろうしなぁ、と理性で納得。見た目と中身が乖離しているなど、この業界ではよくあることだ。

気力をなくした者には声をかける。
「この先、ずっと後悔していたいのなら蹲るのも良いだろう。
けれど、君の傍にいるべき人の為に。何ができるかなんて瞭然じゃないのか?」
活力を取り戻す糧になれば良いが、と思いながらお茶を受け取る。

※アドリブ歓迎


日下部・舞
ミレディ君(f00296)と参加

美しい少年だった
夜のような漆黒の髪、紫水晶を思わせる瞳
何かデジャブを覚えながら、

「手伝ってくれる?」

私は少年に声をかけた
簡単な自己紹介を済ませると、村人の手当て、瓦礫に埋もれた人たちの【救助活動】

手は多いほうがいい【影身】を発動

救助は彼のほうが慣れていた
私は助けた人の背中をさすったり、手を握って安心させるように
あとは【怪力】で廃材などを除く力仕事を主に務める

「飲めば少しは落ち着くわ」

助けた人に温かいお茶を振る舞い、良かったらとミレディ君にもコップを差し出す
またデジャブを感じる
以前、似たようなことがあったのか
記憶を遡っても『no data』の文字が脳裏に浮かぶだけ



 惨憺たる光景だ。
 今、この村であった所にいる者達を前にシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)はただ静かに立ち尽くした。
 その様を目にして、日下部・舞(BansheeII・f25907)の視線が止まった。
 美しい少年だ。
 夜のような漆黒の髪、紫水晶を思わせる瞳――どこかで、出会っただろうか。
 いやそんな記憶はない。無いはずだが何かデジャブを覚えながら、舞は彼へと近づく。
 此処にいるということは彼も猟兵だ。この場で人々を助ける力は十分に持っているはず。
「手伝ってくれる?」
 その声にシェーラも視線向ける。
 どこかで見たような――と思うけれど、知らない人だ。
 物静かな雰囲気だと思い、シェーラは警戒もせず頷く。
 舞は、簡単に名乗る。シェーラも名前を告げて、二人は人手の必要なところへと向かった。
 やれることはたくさんある。村人たちの手当てに瓦礫からの救助。
 このあたりにいるはずなんだとわめいている男を舞が宥めて、シェーラは耳を澄ます。
 僅かな呻き声をシェーラは聞き分ける。助けが必要な人は、こっちだと男が持ち上げようとしていた瓦礫の、その傍のものを示す。
 舞はわかったと頷くと同時に、手が多い方がいいともうひとりの自分を呼び出し手伝ってもらう。
 怪力で、自分たちよりも大きな瓦礫をどかしていく舞。
 難なく持ち上げたその姿にシェーラは違和感を抱きながらも、猟兵だったらこのくらいできるだろうしなぁ、と理性で納得する。
 見た目と中身が乖離しているなど、この業界ではよくあることだ、と頷いて。
 人々を助けていく。無事を喜ぶ者もいれば、肩を落とすもの達もいるのだ。
 舞は火をおこし、そして茶を淹れ始める。あたたかなそれを、うつむいている者達へと渡していくのだ。
「飲めば少しは落ち着くわ」
 どうしたらいいのか、どうすればいいのか――わからない者達は多くいる。
「この先、ずっと後悔していたいのなら蹲るのも良いだろう。けれど、君の傍にいるべき人の為に。何ができるかなんて瞭然じゃないのか?」
 シェーラは言葉を向ける。そこへ舞が茶を淹れたのと差し出した。
 声向けた男と、それに良かったら、とシェーラにも。
 シェーラは活力を取り戻す糧になれば良いが、と思いながら舞に礼を言って茶を受け取る。
 あたたかさが、指先から伝わってくる。それがこの男にも何かを与えればと見詰めていた。
(「またデジャブ」)
 以前、似たようなことがあったのか――舞は己の記憶をたどるが『no date』の文字が脳裏に浮かぶだけだ。
 何が、自分の心に引っかかっているのだろうか。
 舞はじっとシェーラを見詰める。男の話を聞いていたシェーラはそれに気づいて顔をあげ、どうしたのかと尋ねる。
 舞はそれに、なんでもないわと返すだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネウ・カタラ
ヒトもモノもみんなみんな
どこもかしこも傷だらけ
残された爪痕を記憶にやきつけつつ
「何か聞こえたり気づいたらおしえて」と用件伝え、
喚びだした兎達といっしょに村を見て回る

泣いている声がきこえたら、
そっと近づき声をかけてみる
答えがなくても、何度も問うて
怯えているなら兎の力も借りながら

俺達ね。みんなの傷をなおすために、きたんだよ
いたいのもかなしいのも良くないことだから

だから、ね?
なみだをとめるお手伝い、俺にもさせて
きみたちのおはなし。きかせて
きみの大切なひとのこと
連れて行ったやつのこと
どんなちいさなことでも構わない

まだ、あえるよ。さいごにはさせない
こわいものからは俺達が守るから
いっしょに、がんばろう…?



 ネウ・カタラ(うつろうもの・f18543)の、青い瞳に映る光景。
(「ヒトもモノもみんなみんな、どこもかしこも傷だらけ」)
 これを引き起こしたものは、今はここにいない。
 けれどそれの残した爪痕は深い。ネウはその様を記憶にやきつけつつ、紡ぐ。
 とんで、はねて、きみのもと――羽の生えた兎の精霊たちが跳ねまわる。
「何か聞こえたり気づいたらおしえて」
 その長い耳で音を、小さな体で狭い場所を。
 ひとびとを助けるために力を貸してほしいとネウは紡ぐ。
 ネウの周りではねて、兎の精霊たちと一緒に壊された村を回る。
 と、兎たちがこっち、こっちと一ヶ所に集った。
 積み重なった瓦礫。その小さな隙間からまず一羽、奥へと乗り込んでいく。
 ネウも――その下から泣いている声がしているのに気付いた。
「だいじょうぶ?」
 いま、助けるよと声をかける。答えがなくても何度も何度も問うていると――助けて、と細く聞こえた。
 ネウは重なっている瓦礫をどかしていく。トンネル堀りで兎たちも手伝ってくれた。
 ネウが瓦礫の中から救い出したのは親子だった。
 小さな子はすんすんと泣きながら震えている。命に別状はないようだが、それでも子を守っていた父親はその腕にけがをしているようだ。
 それを見て、子供はまた泣く。そしていない母親を求めて、また激しく泣くのだ。
 そんな子供へとネウは柔らかに、声向ける。
「俺達ね。みんなの傷をなおすために、きたんだよ」
 いたいのもかなしいのも良くないことだから――ふわりと、柔らかに微笑めば子供も少しずつ安堵を得る。
「だから、ね? なみだをとめるお手伝い、俺にもさせて」
 きみたちのおはなし。きかせて、と紡ぐ。
 きみの大切なひとのこと、と。
「おかあさんが」
 つれていかれたと、泣きながら。けれど弱弱しくともはっきりと紡いだ。
 ネウは頷いて、教えてという。
「連れて行ったやつのこと。どんなちいさなことでも構わないから」
 その言葉は父親にも向けられていた。
 彼は青ざめて、諦めている。簡単に連れていかれてしまった妻、守れなかったことをわかっているからだ。
 けがの手当てをしても、子供を抱えてそこから立ちあがれぬまま。
 その不安を、子供がまた感じていたのかもしれない。
「まだ、あえるよ。さいごにはさせない。いっしょに、がんばろう……?」
 こわいものからは俺達が守るから、とネウは紡ぐ。
 力を貸すからと。
 すると、子どもが話し始めた。
 おかあさんを連れて行ったのは、男の子だったと。
 おにいちゃんよりも小さな、綺麗な身なりの男の子だったと。
 けれどその見た目からは想像できないほどに力があり、村が壊されるのもあっという間。
 何もできなかったと、その時のことを思い出したのか涙ぐむ。しかしすん、と鼻鳴らして子供は泣くのをこらえたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
降り立てば目に入る人々の痛々しい姿
駆け寄らずにはいられない
けれど、かけるべき言葉もわからない
見ているのが辛い──まるであの日の僕のようだ

それでも、だからこそ
僕にできることを考える
力無く座る人のそばへ片膝ついて声をかける
君の心に寄り添いたい
君の心を閉じてしまったものを解きたい

大切なものを失って
どうしていいかわからないのかな
心に従えば、願いは只ひとつなんじゃないかな、と推測する
できるかわからないだけ
恐怖が、後悔が、見えなくしているだけ

そっと提案する
僕にできることは、君を守りながら連れていくこと
大切な人を取り戻すために、力を貸すこと
…君が、取り戻したいと望むなら
君の心に聞いてみて
君は、どうしたい?



 ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)はこの光景に僅かに、表情を痛ましげに歪めた。
 人々の痛々しい姿――足は自然と動く。駆けよらずにはいられなかった。
 けれど、かけるべき言葉はわからない。
 力になりたい、どうにかしたい。けれどどうすればいいのだろうか。
 見ているのが辛い。この光景は――まるで。
(「まるであの日の僕のようだ」)
 己の内にくすぶる光景と重なる。
 それでも、だからこそ――僕にできることをと、考えられた。
 嗚呼、と嗚咽零し項垂れて頭抱えて小さくなっている青年がいた。
 彼から誰もが距離を置いている。心配はしているのだが、誰も力になれるぬから遠巻きにしているようだ。
 ひそり、近くにいたものがかわいそうに、と紡ぐ。ああ、彼は誰か大切なものが連れていかれた、そのひとりなのだとヴェルは察した。
 ヴェルは彼の傍に片膝ついて、声かける。
「君の心に寄り添いたい」
 君の心を閉じてしまったものを解きたい。だから、話してほしいと。
 大切なものを失って、どうしていいかわからないのかなとヴェルは心の内を思う。
 心に従えば、願いは只ひとつなんじゃないかな、と推測するのだ。
 それはできるかわからないだけ。
(「恐怖が、後悔が、見えなくしているだけ」)
 確かに表れたものはオブリビオンで強大な力をもつものだ。少なくとも、普通の人間である彼にとっては。
 彼はヴェルへと、ぽつりと零す。恋人が連れていかれたのだと。
 もうすぐプロポーズするつもりだった、恋人がと。
 ヴェルは彼にとって、どんな大切なものが奪われたのかを知る。
 連れ戻しにきたいなら、来て良いとこの村を襲った者は言っていたと続けて。
 ヴェルはそれなら、とそっと提案する。
「僕にできることは、君を守りながら連れていくこと」
 大切な人を取り戻すために、力を貸すことと告げる。
「……君が、取り戻したいと望むなら」
 君の心に聞いてみて、とまだ迷いのある視線へと問う。
 彼の唇が僅かに動いて、けれど音にはならない。
「君は、どうしたい?」
 ヴェルは再度、問うた。
 まだ弱弱しいが、目の前の彼にはひかりがある。
 望めば、ヴェルは力を貸す。望まないのならば――きっとそこまでだ。
 これはきっと、己で決めねばならぬことと思うから。
 少し、逡巡して。けれど青年は震える声で紡いだ。
 力を貸して、欲しいと。
 震えていても、十分だ。ヴェルは手を差し出す。
 君の恋人を一緒に取り戻そうと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダグラス・ミーティア
こりゃひでぇな

まず救助活動
声や気配を頼りに動けぬ者を救い出し応急処置

話せる者から情報収集
敵はどんな姿だった
目立つ特徴はあったか
妙な動きはしていなかったか

破壊状況や建物の傷跡などからも敵の痕跡確認
得た情報は仲間と共有

…で、そこで項垂れてるアンタはどうしたい?

嗚呼、誰かに託すのは無しだ
そういった甘えは嫌う手合いだろ

ま、無理する事はねぇさ
アンタの相方も
危険を冒してまで助けて貰おうなんて
思っちゃいねぇかもしれない

…そんな奴を見捨てられるかって話だよな
そんな奴ほど、孤独も恐怖も
独りで全部背負っていっちまうんだ

独りに、させて良いのか

…俺には救えない
だがアンタの武器に
盾になってやる事は出来る

さぁ、どうする?



「こりゃひでぇな」
 ダグラス・ミーティア(ROGUE STAR・f22350)は何もかも、元の形をとどめていない家を眺めて零す。
 あの中に埋もれている者達はまだいるようだ。
 手を貸してくれという声に応え駆けつける。瓦礫を抱え上げ、動けぬものを背負って安全な場所へ。
 そういったことをしていると、ダグラスにありがとうと感謝の声がいくつも重ねられていく。
「ばあさん、どんなやつだったかわかるか?」
 助けた老婆を下ろしながらダグラスは問いかける。
 子供だった、と老婆は告げた。小さな子供、無邪気に笑ってあっという間に壊して。
 そして――何人かを連れて行ってしまったと。
 そう例えば、あそこでみんなを率いて作業をしている男の娘もそのひとりだ。
 大事な一人娘を連れていかれたというのに、今は村の者達のためにああして動いていると。
 ダグラスは老婆から色々なことを聞いた。
 その、現れたものはどうやら縁を大事にしているのだろうと。
 大切なら、助けにきたらいいと言っていたのはきっとそうだろうと。
 長年生きていると、そういうことはわかるのだと紡ぐ。
 なるほど、と聞きながらダグラスは男を視線で追う。男は、少し休んでくると言って――みんなから離れていく。
 その背中は、先ほどまで売って変わって沈んでいるようだ。
 老婆もその姿は見ていたらしく、ダグラスをちらりと見る。
 そして、あの男は私の息子なのだと、告げた。
 ダグラスは成程、となんとなく老婆の言わんとしていることを察した。
 大切な孫が、連れ去られてしまったと。しかし、この老婆がそこに助けに行くことは難しいのだろう。そして行くのなら、きっとあの男だ。
 ダグラスは男を追う。すると物陰で項垂れ苦々しい表情を浮かべていた。
「……で、そこで項垂れてるアンタはどうしたい?」
 声を掛けられ、男ははっとして顔を上げる。
「あんたは……助けてくれているひとりか」
 そう言って、話を誰かから聞いたのかと問う。ダグラスは婆さんからなと短く答えた。
 そして、男が口を開こうとする前に。
「嗚呼、誰かに託すのは無しだ。そういった甘えは嫌う手合いだろ」
 何を紡ごうとするかはもうわかっていた。
 自分ではかなわない相手だ。もしその力に敵う相手ならと、いうように。
「俺では……」
「ま、無理する事はねぇさ。アンタの……娘か」
 危険を冒してまで助けて貰おうなんて、思っちゃいねぇかもしれないと紡ぐ。
 男はぐっと歯を食いしばっていた。思い当たる事があるのだろう。
「……そんな奴を見捨てられるかって話だよな」
 そんな奴ほど、孤独も恐怖も――独りで全部背負っていっちまうんだとダグラスは続ける。
 そして、改めて問いかけるのだ。
「独りに、させて良いのか」
「いいや、よくない! けどなぁ、俺には無理だ!」
 でもあんたなら、もしかしてと男は言う。
 懇願だ。もし助けられるのなら――かわりに、と。
 けれど、ダグラスは拒絶する。
「……俺には救えない」
 なら、最初から思わせぶりなと男は思っているのだろう。
 その表情は苦い。そんな様子に、取り戻したい気持ちは本物なのだなとダグラスは思う。
 だから、言葉を向けることができた。
「だがアンタの武器に、盾になってやる事は出来る」
 救いにいくのは、この男でなければいけないのだろう。
 しかし、ひとりでこいとは言われてはいない。
 オブリビオン相手、ひとりで迎えば――いや、たとえ村の者すべてで向かったとしても勝てぬ相手だろう。
 しかしここには、猟兵達がいる。
 さぁ、どうする? ――問いかけた言葉に、男は強い視線を向けて、武器に、盾になってくれと言って手を差し出した。
 ダグラスは笑って、もちろんだとその手を強く握り返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
うーん、動機がわかんねえよな。
殺したいわけでも、壊したいわけでもねえ。何かを身代に要求してるってワケでも無さそうだし。
……これはアレか、“愉快犯”ってヤツなんかもな、案外。

とりあえず、どんな奴が襲ってきたのか訊かねえとな。
姿容、特徴、表情。
あとは、村の人が攫われていったっていう時計塔について、知ってることを何でもいいから。
その辺を聞けば、ちょっとはこの後やりやすくなるかもしれねえし。
何をするかって? そりゃあ、奪われたモンは取り返さねえと、だろ?

ともかく〈コミュ力〉を活かして打ち解けながら、そのあたりを聞き込み。
手に入った情報は、わかりやすくまとめた上で他の仲間とも共有する。



 ひとびとの間に入って、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はその話を聞いていた。
 自分たちに何が起こったのか――整理するように話すものもいるのだ。
 そうして、自分たちの今の現状を飲み込んでいくために。
「うーん、動機がわかんねえよな」
 その話を聞いてやりながら嵐は零す。
 話していたものは動機? と首を傾げた。
「殺したいわけでも、壊したいわけでもねえ。何かを身代に要求してるってワケでも無さそうだし」
 嵐はしばし考えて、ひとつ思い当たるところがあった。
「……これはアレか、“愉快犯”ってヤツなんかもな、案外」
「愉快犯? そ、そんな……面白いというだけで?」
「そうだな」
 ああ、なんてことだというように嘆く。
 嵐はその男をなだめながら話を聞くのだ。
(「とりあえず、どんな奴が襲ってきたのか訊かねえとな」)
 姿容、特徴、表情――それらから読み込めることもある。
 小さな子供だという。身なりは良く、ぱっとこの村に現れて目を引いたのだと。
 どうしてこんな身なりのいい子供がと思った時には近くの家が壊されて。
 それからはわけもわからない間に襲われたといったところだ。
「捕まったもの達は引きずられてあの時計塔に」
 時計塔、と嵐は見詰める。
「あの時計塔は、どんなとこなんだ?」
 知ってることを教えてくれと嵐は言う。何でもいいから、と。
 その辺りを聞けば――ちょっとはこの後やりやすくなるかもしれねえし、と嵐は言う。
「時計塔の事……?」
「ああ。何をするかって? そりゃあ、奪われたモンは取り返さねえと、だろ?」
 嵐が時計塔を問うたことで、何をするんだという表情を向けてくる。
 それに言葉として返して、笑ってみせた。すると驚いたような顔をして、しかし奪われたひとびとが戻ってくるならと思ったのだろう。
 時計塔について、話し始めた。
「あれは昔からあるもので……中は壁伝いに階段がある」
 上まで登ると開けた場所に出る。そこに鐘はあったのだろうが、今はない。
 時を刻むという機構は失われているが、目立つし村の目安にもなるのである程度手入れはしているという。古いものではあるので崩れたりなどがないよう確認しているのだ。
 よく、手入れをしに行っている者がいるから教えようと話聞いていたものは言う。
 嵐は、それは助かると礼を告げた。
 あそこの情報があれば、これから助けに行く上で有用なものとなるだろう。
 あとで他の猟兵にも教えようと、嵐は色々な話を聞いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】

これ、は
ひどい。なんて、ひどい
ね、パパ……

いつになくその身体が強張っている気がして
何が見えているの
いえ、それより
そっと声をかけるわ

――ゆぇパパ?どうしたの?

ええ
ルーシーはパパのそばにいるからね
何時もより強めに、ぎゅっと手を握り返す

まだ生きている人のお話を聞きにいきましょう
ちいさな子は特に、ルーシーみたいな子供ならばお話しやすいかも
それでもまだ怖いままの人には『ウサギのぬいぐるみ』

ぴょっこりごあいさつをさせて
抱きしめてあげて
少しでも緊張がとけるといいのだけど

お話きかせて
何があって
どんなこわいものが来たのか
どんな人をさらって
どこへ連れて行ったのか

ええ
助けましょう
まだ間に合うはずだわ、ね?


朧・ユェー
【月光】

滅ぼされた村
その光景に少し足が止まり身体が硬直する
あの時の光景を想い出す

彼女の声が暗闇から光へと我にかえる
あっ、えぇ、大丈夫ですよ。

微笑んで隣の小さな子の手を握る
ルーシーちゃん僕から離れないでね。

生きた村人を発見して安堵する

ルーシーちゃんらしい姿にくすりと微笑んで
村人の声掛けと情報集めは彼女に任せましょう
ベラーターノ瞳でここに何があったのか、そして村人は何処へ行ったのかを

えぇ、助けましょうねぇ。
悲惨な事にならないように、まだ命があるうちに



「これ、は」
 ひどい。なんて、ひどい――ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)は瞳に映る光景にきゅっと唇を引き結んだ。
「ね、パパ……」
 ルーシーが見上げたのは、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)だ。
 ユェーは目にした光景に少し足が止まり、身体は硬直していた。
 あの時の光景を思い出す――ユェーの、その強張りをルーシーは感じていた。
 何が見えているのだろう。その金色の瞳に。
(「いえ、それより」)
 そう思う前に――そっと、ルーシーは声かける。
「――ゆぇパパ? どうしたの?」
「あっ、えぇ、大丈夫ですよ」
 ユェーの心は沈んでいた。暗闇の中に、この光景に引きずり込まれるように。
 けれど――掬い上げてくれる声があった。
 ルーシーへとユェーは微笑み向ける。
 そして繋いだその小さな手を握った。
「ルーシーちゃん僕から離れないでね」
「ええ、ルーシーはパパのそばにいるからね」
 ルーシーはぎゅっと、手を握り返す。
 何時もより強めに――なんだかそうしたくて、そうしなくちゃと思って。
 そして二人で一緒に歩み始める。
 ユェーは安堵していた。生きた村人がいる――誰もまだ、死んでいないというのが彼らの話からわかるからだ。
 親は村人を助けるので離れてしまっているのだろう。不安そうにしている子供を見つけて、ルーシーはユェーを見上げた。
 ユェーは頷いて、ルーシーの好きなようにと言う気持ちを伝える。 話を聞いて情報を、という気持ちもあるけれどなにより不安そうな様子が気になって。
 ウサギのぬいぐるみをもってルーシーは子供へと話しかけた。
 小さな子は自分みたいな子供なら話しやすいはずと。
 ぴょっこり、ぬいぐるみと一緒に挨拶をして。
 不安そうな顔をしているからぎゅっと抱きしめてあげた。
 びくりと体は硬直するけれどゆっくりと肩の力が抜けていくのを感じる。
 少しでも緊張がとけるといいのだけど、ルーシーはがんばったねと頭を撫でてあげる。
「お話きかせて。何があって、どんなこわいものが来たのか」
 どんな人をさらって、どこへ連れて行ったのか――問えば、子供は、おねーちゃんよりちょっと大きいくらいのおにーちゃんだった、と言う。
 綺麗な服を着ていて、楽しそうにしていたと――そう言って思い出して、怖かったと泣く。
 ルーシーはだいじょうぶよ、と声をかける。
 もうそのこわいものは、ここにはいないからと。
 そして、友達のおねーちゃんが連れていかれたみたいだと子供は言う。
 その、ルーシーらしい姿にくすりと微笑んで、ユェーは周囲を見回す。
 村人への声かけと、情報集めは彼女に任せれば良さそうだ。
 ユェーはベラーターノ瞳の力をもって、ここに何があったのか、そして村人は何処へ行ったのかを調べていく。
 荒らされる瞬間。それをなしたものの姿――ユェーは僅かに眉を寄せていた。
 そして話を聞き終わって、ルーシーの手はまたユェーと繋がれる。 きゅっと少し力が強まったその手にユェーは頷く。何を言いたいのか察して。
「えぇ、助けましょうねぇ」
 悲惨な事にならないように、まだ命があるうちに――
「まだ間に合うはずだわ、ね?」
 ルーシーは、あっちと指さす。
 その先には時計塔がそびえていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
深く深く絆を紡いだ相手と引き裂かれるのは
しんどいだろうな……
俺だって、夜彦と引き裂かれるのは
真似事で装うんだとしてもしんどかったし

立ち上がれないで居る、絶望の淵に居る相手に
その時の事を想い出させるのも胸が痛むから
まずは生きようとしている人達に声を掛けて
敵についての情報を収集

ついでに夜彦と2人、手伝える作業は手伝う
力仕事なんかは怪力も使えば多少は貢献出来るだろ
尋ねるのは、相手の詳細な容姿や言動について
憶えてる事でいいから聞こう

復興の手伝いをしながら聞き耳も使って
嘆く声からも有力な情報を掬いあげてく

嘆き悲しんでる相手に直接問うのは最終手段として
その場合の対応は主に夜彦に任せる
俺はフォローを


月舘・夜彦
【華禱】
別れは起こり得るものです
事故であれ、戦いであれ……ですが、今回ばかりは違う
娯楽のように弄ばれたということ
許される行為ではありません

逸る気持ちは抑え、今は此処に居る彼等から情報を集めましょう
会話が出来そうな方を探しながら瓦礫の撤去等、作業を手伝いましょう
力が必要なもの、運搬に関しては東雲を呼び出して手伝って貰います

思い出させてしまうのは、申し訳ありませんが
連れ去られてしまった方達も助けを待っているはずなのです
ですが、彼等はもっと苦しい状態であり、不安なはず
私達ならば連れ去った者と戦える術がある
貴方達の大切な人を助けられる

相手の特徴でも、僅かな情報でもあれば私達に教えては頂けないでしょうか



 人々の様子を篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は見詰めていた。
 嘆いているものもいる。そういったものに、無理に力を貸せと村人たちは言わず、自分たちの出来ることをしていた。
 月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)も痛ましげに表情歪める。
「深く深く絆を紡いだ相手と引き裂かれるのは、しんどいだろうな……」
 俺だって、と倫太郎は思う。夜彦と引き裂かれるのは真似事で装うのだとしても、しんどかったのだ。
 だから、大切なものを奪われたひとびとの気持ちは想像できる。
「別れは起こり得るものです。事故であれ、戦いであれ……ですが、今回ばかりは違う」
 娯楽のように弄ばれたということ――それは、許される行為ではありませんと夜彦は言う。
 気持ちが流行る。けれどそれを抑え夜彦は動き始める。
 会話が出来そうな人は、と目を向ければ瓦礫の撤去をしている者達がいた。
 そこは手が足りてない様子。倫太郎へと視線向けると、頷いてその意をくみ取る。
 倫太郎も、彼らならと思っていた。
 立ち上がれないで居る、絶望の淵に居る相手に――その時の事を想い出させるのも胸が痛む。
 まずは生きようとしている人達に声をかけていこうと。
 道を塞ぐように崩れた瓦礫を片付けていた。手伝う、とその大きな一つを倫太郎も共に支える。
 夜彦は赤毛の馬、東雲を召喚する。台車に乗せて運ぼうとしているところを、代わると告げて。
「馬に運んでもらったら、早そうだな」
「ええ。どこに運べば?」
「ああ、村の端にまとめておく場所がある」
 夜彦は案内するという男と共にそちらへ。おろす作業もあると倫太郎も一緒にいく。
 積み重なった廃材。けれど、使えそうなものはまたあとで使うのだと言いながら台車から降ろしていく。
 共に作業をする男は、疲弊はしているが確りとしているようだ。
 思い出させてしまうのは、申し訳ないと思う。
 しかし何も知らぬままではと二人は切り出す。
 この村を襲ったものはどんな姿をしていたのかと。
「子供だ。身なりの良い子供が突然あらわれて」
 訳も分からないうちに、瓦礫の山だ。
 男はそう言って肩を落とす。誰も何もできなかったと。
「何人か連れていかれたと聞きましたが……」
 夜彦はさりげなく尋ねてみる。
 連れ去られてしまった者達も、助けを待っているはずだ。
「彼等はもっと苦しい状態であり、不安なはず――私達ならば連れ去った者と戦える術がある」
 貴方達の大切な人を助けられる、と問い掛けた。
 それを聞きながら倫太郎は周囲の声にも耳を傾ける。
 嘆く声からも、有力な情報があるかもしれないと拾い上げるために。
 嘆き悲しんでいる相手に直接問うのは、最終手段だ。
 聞かれて、嬉しいものではないだろう。もしそうなるなら、自分よりも夜彦の方が上手に聞くだろうなと思いながら。
「ああ。俺達ならやれる。他にも強いやつはいるし」
 と、夜彦をフォローするように倫太郎は言葉続けた。
 ここに来たものたちは、何もできないものたちではないと伝われば良いと。
 その言葉に男は、周囲を見回す。
 たしかに、村の子の惨状をみて手を貸してくれるもの達が多い。
 もしかしたら――と信じてみようと思えたのだろう。
 男は、時計塔へと連れていかれたのだという。
 指さして方向を示すそれは、ぼんやりと見えた。
 壁伝いの階段を昇っていく、その時計塔。昔は鴇を知らせる鐘があったのだが、今は無いという。
「子供だが、力も強くてな……」
 あれは何者なんだろうと男は言う。しかし、いいやと首を振る。
 きっと知らない方が、これ以上不安を感じなくていいだろうと――何者か、気づいているけれど言葉閉じた。
 夜彦と倫太郎は、彼からはそれ以上聞かなかった。
 そしてもうしばらく――彼らの村が落ち着くまで、手伝いを続けるのだった。
 もちろん、情報を得ながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
敢えて残された者達へ。

時計塔は?
あぁ、あれ。
中に入った事は?
行き方はご存知で?

問い、
彼等が“行ける”事を確認しつつ。


助けたいです?
それとも、もういい?
君は、誰を、生かしたい?

命はないかもしれませんね。
逆に目の前で殺される事とて。
或いは…死んだ方がマシとさえ思えるかも?

逃げても諦めても良いんです。
態々絶望する必要は無い。
自分を守るのは当たり前なんですから。


向き合わせ、
可能性を述べ、
当然を説く。

唯。
それでも『助けたい』と立ち上がる方が居るなら…
その願いを叶えましょう。

貴方と、貴方の想う人の帰還――
生還特化の戦場傭兵が、
そのオーダー、承りました。

手を伸べて、参りましょう、と。
道案内だけは頼みますね?



 何もできない――その心はどこにあるのか。
 膝を抱えて蹲る男の姿を目に、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は近づいた。
 敢えて、残された者達へと足を向けたのだ。
「時計塔は?」
 声をかけられた男は反応が鈍く。再度、クロトは問いかけた。
 すると顔をあげ、あれだと視線で示した。
 この場所より少し離れたところにぼうっと、そびえているのが見える。
「あぁ、あれ。中に入った事は?」
 中に入ったことは、あると弱弱しく返す。
 クロトはそうですかと頷いて、言葉をまた投げかける。
「行き方はご存知で?」
 その言葉に――やっと、その男はクロトを見たのだ。視線はぼうっとしている。
 不安や恐怖といったものが詰まった視線だ。そこに希望は見られない。
 けれど、この男は『行ける』とクロトは思った。
 何にも応えることもできず、顔を伏せたままであれば無理だっただろう。
 弱弱しいが、答え、顔を上げたのだ。そして今、クロトと視線があっている。
 その瞳に、希望が――今は、見られないけれども。
「助けたいです?」
 希望を宿すことは、できるだろう。
「それとも、もういい?」
 クロトは問いかける。その心を何も言わずに組んでやるほどやさしくはない。
「君は、誰を、生かしたい?」
 クロトは、ただ問うのだ。
 男は――何か言おうとして、そして口を一度閉じ。
 けれど、弱弱しく――妻を、と答えた。
「なるほど。あなたは奥さんを連れていかれたのですね」
 そう言って、命はないかもしれませんねと。男の思考の端にあった言葉を突き付ける。
 男はぐっと言葉を飲み込んで――様々な可能性に目を瞑っているのだ。
 もう死んでいるかもしれない。生きているかもしれない。
 それは可能性からも、顔を背けているのだ。
「逆に目の前で殺される事とて。或いは……死んだ方がマシとさえ思えるかも?」
 そしてクロトへとさらに言葉向けるのだ。
 ひどいことを言っているのだろう。けれど、この男はまだ立ち上がれそうだから、言っている。
「逃げても諦めても良いんです」
 けれど――態々絶望する必要は無い。
「自分を守るのは当たり前なんですから」
 オブリビオン相手に、ただのひとが立ち向かう事が難しいことはわかる。
 今、男がうずくまってしまったのは当然の事なのだろう。
 けれど全てから目を背けているのは――いけない。
 クロトは、現状と向き合わせ可能性を述べ、当然を説く。
 それを男がどう感じるかは、彼次第とわかった上で。
 それでも――『助けたい』と立ち上がるなら、その願いを叶えるためにここにいる。
「行っても……無駄かも、しれないだろう」
「そうですね」
「でも、生きているなら……」
 たとえどんなことになっていようとも、最後まで沿いたいと。
 最悪のうちの少しだけの可能性を見て男はゆらりと立ち上がった。恐怖は勿論あるのだろう。膝が笑っているのが見えた。
 だが男は、妻が恐怖の中でひとり、逝くよりもと小さく零した。
 けれどクロトは、まだそこまで思う必要はないのだと思っている。楽観は勿論できないのだが――わざわざ連れて行って助けにきてもいいというようなオブリビオンなのだから、きっと生きている筈だ。
「貴方と、貴方の想う人の帰還――生還特化の戦場傭兵が、そのオーダー、承りました」
 猟兵が向かうのならば、命を落とすような状況を許すことはない。
 クロトは手を差し伸べて、参りましょうと紡ぐ。
「道案内だけは頼みますね?」
 あとは――貴方も、貴方の大切な人の命も。
 守って、そして再びここへと約束して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
嘆きの中を歩み
蹲ってる子たちの前にしゃがむよう

ねぇ
探しに行かないの?助けに行かないの?
できないよね、こわいもの
折角命が助かったんだ
連れてかれたのは可哀想だけど
諦めてこのまま生き延びたらいい
しょうがないよ
足掻いてもどうにもならないものね
助けに行ってどちらも死んだらお終いだから
代弁するようにうたうように

ひとりでも反論する子が居れば
居ないなら嘆きが一番強い子を誘う
祈りと願いを言ってごらん
そうすれば神様が叶えてあげる
ほらこの手を取って
一緒に助けに行ってあげる

不平等で不公平な選抜
きっと連れて行った者とそう変わらない
見たいモノは似ているのかな
それは話してみないとわからないけれど
かれらに救いが一筋あればいい



 命はあれども、その心は沈んでいる。
 ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)はひとびとの嘆きの中を歩んでいた。
 誰もかれも、沈んでいて――ひとびとを助ける間はどうにか気を持たせていたのだろう。
 それが終わったのちに、誰がいないのか気付き始める者もいる。
 村の端に蹲っている子たちの前に、ロキはしゃがむ。
 幾人かの子供たちは肩を寄せ合って泣いているのだ。
 おにいちゃんがいない、と。
 その子供たちは――似ている、とは言えなかった。血のつながりは無いようでで、年長の少女と少年が他の子たちを抱きしめ、宥めているのだ。
「ねぇ、探しに行かないの? 助けに行かないの?」
 問いかけると――苦しそうな表情を浮かべている。
 この子たちがいるから、と年長の二人は返す。
 けれど、そうじゃないよねとロキは思うのだ。
「できないよね、こわいもの」
 折角命が助かったんだ、と神様は笑う。
 連れてかれたのは可哀想だけど、諦めてこのまま生き延びたらいい。
「しょうがないよ、足掻いてもどうにもならないものね」
 助けに行ってどちらも死んだらお終いだから、と彼らが思っている心の底の言葉を掬い上げる。
 思っていることを、誰も口にはしていないのだろう。
 ロキの言葉は、彼らが思って――そして言い訳として抱えている思いのかたちをうたうように代わりに、言の葉にする。
「そうだよ! 俺が、にいちゃんを助けられるわけがない!」
 けれど、弾けるように立ち上がって叫んだ小さな子供がいた。
 泣きじゃくった瞳を乱暴にぬぐって。いや、今も泣きそうではあるのだろうがどうにか堪えた顔をロキへと向けている。
 ロキはしゃがんだまま、少し首を傾げて微笑んだ。
「祈りと願いを言ってごらん。そうすれば神様が叶えてあげる」
 そして、手を差し伸べる。
「ほらこの手を取って、一緒に助けに行ってあげる」
 その手をばしっと叩くように少年は握った。
 その意気とロキが立ち上がる。
 己の身の、半分にも満たない程度の身長のやせ細った子だ。
「そのにいちゃん、っていうのはどんな子なの?」
「にいちゃんは、俺のほんとの、にいちゃん」
 なるほど、とロキは察する。
 この子供たちは親無しの子たちの集まりなのだろう。その中で、血のつながった己の兄。
 この子供にとって世界で唯一の相手なのがわかる。
 不平等で不公平な選抜だとロキは思うのだ。
 きっと連れて行った者とそう変わらない。
「見たいモノは似ているのかな」
 ぽそりと、ロキは零す。
 それは話してみないとわからないけれど――かれらに救いが一筋あればいい。
 本当に行くのかと、少年へと他の者達が問う。
 代わりに自分がと、年長の少年が言うが彼は首を振った。
 それは、自分でなければいけないのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
冷静に状況分析
どうやら厄介な相手みたいだネ
他人の苦しみを楽しむ輩だ
非効率的で僕には理解できない
目の前で悲嘆に暮れているだけの人々も分からないけど
本当に助けたいならそんな暇は無いはず

ソヨゴに言われて手を貸す
ソヨゴは優しいネ
UC発動
触手で次々と地面を掘り返す
時間が惜しい

村人の話を聞く
やはり悪趣味な敵だ
そんな奴の好きにさせるのも
そうさせている人々も嫌い

イラつきながら大声で話しかける

大切な人が連れ去られたなら
行動はひとつだろう?
泣いている余裕は無い
すぐ助けに行こう
僕が力を貸してやる
このSilverBulletに賭けて
そいつの脳天に風穴開けてやるネ

誘いに乗った上で
予想と異なる結末を突きつけてやる


城島・冬青
【橙翠】

アヤネさん
先ずは手遅れになる前に瓦礫の下にいる人を助けましょう!

誰がこんなことを…
怒りが込み上げるけど今は救助に集中
無事を喜びあう村人達を見て
ホッとする

ふと視界の端に紫色の花弁が落ちているのが目に入る
…何だろう?
ううん、今は救助が先決!
まだ困ってる人がいるだろうから
探索しましょう

絶望してる村人に話しかける
警戒されないよう優しく(コミュ力)
気力が少しでも湧くように(鼓舞)
此処で何があったんですか?

そうです
アヤネさんの言う通りです
私もお手伝いしますよ
大丈夫
これでも私達強いんですから!

あれ?また花弁が落ちている
流石に気になって拾ってみる
枯れても萎びてもいない瑞々しい花弁だ
どこかで咲いてるの?



 この村がどうなっているのか。
アヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)は冷静に状況分析をしていた。
「どうやら厄介な相手みたいだネ」
 他人の苦しみを楽しむ輩だと、アヤネは零す。
 非効率的で僕には理解できない――それは、ひとびとを連れ去ったオブリビオンに対しても、そして。
(「目の前で悲嘆に暮れているだけの人々も分からないけど」)
 本当に助けたいならそんな暇は無いはずと思うのだ。
「アヤネさん」
 村の様子を見て瞳細めるアヤネを城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は呼んで。
「先ずは手遅れになる前に瓦礫の下にいる人を助けましょう!」
 うん、とアヤネは頷き返した。
 冬青はひとびとを助けるために動き出す。
「誰がこんなことを……」
 その姿を見詰め、アヤネは笑み零す。
「ソヨゴは優しいネ」
 怒りがこみ上げる。けれど、冬青はひとびとを助けるために動く。
 それを見て自身の影から複数の、蛇に似た異界の触手を放った。地面を掘り返し、瓦礫を払ってひとびとを助けるために。
 時間が惜しい、と思いながら。
 瓦礫を押しのけて、その下から助かった者達が手を取り喜び合う。
 その姿に冬青はホッとして――ふと、瞬いた。
 視界の端に紫色を見つけ、なんだろうと視線を。
 ひらりと僅かに風に舞ったのは紫色の花弁だった。
「……何だろう?」
 それに首を傾げつつ、歩み寄ろうとしたが手を貸してほしいと声がかかれば、そちらへと顔が向く。
 あの花弁も気になるけれど、ふるりと首を振って。
「ううん、今は救助が先決!」
 まだ困ってる人がいるだろうからと踵を返す。
 頼まれたのは、困っている者達の手助けだ。
 親の元へ子供を連れて行ってやったり、怪我をしていれば治療をしてあげたり。
 冬青は、彼らに警戒されないように優しく接し、気力が少しでも湧くようにと声かける。
「此処で何があったんですか?」
 そしてアヤネも一緒にこの村に現れたもの似ついての話を聞いた。
 現れて、家を払い飛ばして崩し。何人かを連れて行ってしまったもの。
「やはり悪趣味な敵だ」
 そんな奴の好きにさせるのも、そうさせている人々も嫌い――と、アヤネの声は響く。
 イラつきを隠さず、大声で。その声は近くの人々に届き、彼らは痛いところを突かれたというように縮こまる。
「大切な人が連れ去られたなら、行動はひとつだろう?」
 目の前に妹が連れていかれたという青年がいた。けれど、自分では助けられないとがたがた震えている。
 その様子にアヤネは、それでいいのかと問うのだ。
 泣いている余裕は無い――すぐ助けに行こう。
 アヤネの言葉に冬青も大きく頷く。
「そうです、アヤネさんの言う通りです」
「僕が力を貸してやる。このSilverBulletに賭けて」
 そいつの脳天に風穴開けてやるネ、と重量10kgを超える大型ライフルを掲げてアヤネは口端を上げて笑う。
「私もお手伝いしますよ。大丈夫、これでも私達強いんですから!」
 少女ふたりが、何を――と、一瞬思いはしたのだろう。
 けれど先ほどまでの救助の手際を見ていれば、自分たちよりも腕が立つことは想像に容易い。
 アヤネは誘いに乗ろうという。
「誘いに乗った上で、予想と異なる結末を突きつけてやる」
 それが、僕たちにはできると言って。
 その強い言葉に青年は、一緒にいってくれと頭を下げる。
 力を借りたいと願ったのだ。
 もちろんとアヤネが頷き、冬青は行こうと告げる。
「あれ?」
「ソヨゴ?」
 冬青が立ち止まったことに、アヤネも歩み止める。
 また花弁が落ちていると、流石に気になって冬青は拾い上げる。
 本物の花弁だ。
 枯れても萎びてもいない瑞々しい花弁。こんなところにあるのは、不思議だ。
「どこかで咲いてるの?」
 知ってる? と村人に問えば――彼は顔色をさっと変えた。
 それは、この村を襲っていたものが――と、その先の言葉を飲み込んで。
 冬青が瞬く間に、その紫色の花弁は風に攫われてふわりと、時計塔の方へと踊る。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・レインフィール
予め用意した焼き菓子を配り歩き
必要に応じて手当を始めとした救助活動を行いながら
襲った者や時計塔についての情報収集をし
良ければ村の中央まで来て欲しいと声を掛けます

活動後、村の中央でこれから私も含め
攫われた人々を助けに行く事と
時計塔の傍まででも良いので
付いて来て欲しいとお願いをします

全ての人に届くようにと
シンフォニック・キュアで歌うのは、ある物語

想い合う少年と少女を引き裂く、悪の領主
嘆き悲しみながら、愛する人の助けを待つ少女
絶望し、涙を流し、それでも愛する人の為
勇気を出して立ち上がる少年の場面で終えます

歌い終わった後、再度同行のお願いを
物語の結末を、救い出した大切な人と共に聴く為に



 どうぞ、とティア・レインフィール(誓銀の乙女・f01661)は柔らかな声と共に、用意していた焼き菓子を配り歩く。
 多くの者が瓦礫の下から救われて、ここで命を失ったものは誰もいない。
 ティアは必要に応じ、手当などもしつつ彼らの話を聞いていた。
「大変な思いをされましたね」
 傷は手当したので大丈夫ですと微笑み、何があったのかを問う。
 話すことで、苦しみが和らぐものもいるのだ。
 上手に言葉にはならないのだろう。ぷつりぷつり、途切れる言葉で紡がれる想いを、ティアは頷いて受け止める。
 それがまた、何があったのかを知ることにもなるのだ。
 襲ったのは子供だったという。何があったのか、あっという間でわからないままだ。
 その子供は身なりが良く、なぜこんなところにと思わせたのだ。
 そして、目についただけで選んだのだろう。仲の良いものの片方を連れて行ってしまった。
 その時計塔へと。
 助けに行こうとするもの、無理だという者。ひとびとの心は様々だ。
 その話を聞いて、ティアは人々に、村の中央まで来てほしいと声をかけていく。
 人々を助け、これから自分も含め、攫われた人々を助けに行くことをティアは告げた。
 その言葉に集った人々はざわめく。助けに、そんなのは無理ではというように。
 ティアは、もうすでにそちらへ向かった者もいるのだと話す。
「時計塔の傍まででも良いので、付いて来て欲しいのです」
 オブリビオンは――猟兵が相手をする領分だ。しかし捕らわれたひとびとの心を本当に救うのは、きっと共に過ごしてきたものしかできない。
 そして全ての人に届くようにと、ティアは歌う。
 歌うのは、ある物語だ。
 歌声は癒しの力も持ったものだ。

 想い合う少年と少女を引き裂く、悪の領主。
 嘆き悲しみながら、愛する人の助けを待つ少女。
 絶望し、涙を流し、それでも愛する人の為――
 勇気を出して立ち上がる少年。

 そこで、ティアの歌声は止まった。
 耳を傾けていた人々の中にはその歌に心をふるわせたものもいる。
「一緒に、きてください」
 物語の結末を、救い出した大切な人と共に聴く為に――その言葉に数人、戸惑いや恐怖などはまだあるのだろうが、出来ることはないかもしれないがと向かうと告げる。
 時計塔の中まではいけるかどうかはわからないが、せめてその場所までは、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と

村人たちに話を聞きましょう
先行した猟兵たちの得た情報、そして村人の様子から察するに
彼らは皆一様に、愛する人、縁の深い人を奪われ
絆を引き裂かれた様子
もしや、敵の目的は……

人々の傷心を慰めるように聖歌を歌って聞かせ
必ずや攫われた人たちを取り戻すと誓いましょう

或いは既に、敵はわたくしたちの様子をどこかで見ているのかもしれません
もし敵の目的が「遠深き二人の絆を引き裂くこと」ならば
わたくしとヴォルフもまた、その標的となり得ることでしょう
事実、これまでに何度も狙われ引き裂かれそうになったのだから

それでも逃げるわけにはいかない
二度と悲劇を繰り返さないために……


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と

蹂躙された村の人々の救助活動と情報収集
重い瓦礫は撤去し、動けぬ者には手を貸そう

村を襲った敵、そして恐らくは攫われた人々も、
あの時計塔にいるのだろう
騎士として誓おう
必ず人々を救い出して見せると

何より俺たち夫婦が、過去に幾度かオブリビオンの標的となり、
記憶を、命を、そして絆を狙われかけた
その度に魂を引き裂かれる苦悩を味わった
だからこそ、今ここにいる人々の嘆きを他人事とは思えぬのだ

これ以上の悲劇は繰り返さない
悪意に満ちた支配と蹂躙は、必ずこの手で終わらせる。

……待っていろ。まだ見ぬ時計塔の主よ
貴様に俺たちの、否、人の絆を引き裂くことなど決して叶わぬと思い知らせてやる



 重い瓦礫をヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は撤去して、その下からひとびとを助ける。
 これで、崩れた家からはすべての人が助けられたようだ。
 目の前で無事を喜ぶひとびとの姿に、良かったと込みあがる想いがある。
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は、怪我をした人々を治療していた。
 幸いなことに死に瀕するような怪我をした者はいなかった。数日休めば、皆いつも通りの生活が――肉体的には、送れるようになるだろう。
 突然襲われ、抱えた恐怖や不安といったものはすぐに掻き消えることはないことはわかるが、それも僅かでも癒されてくれたならとヘルガは願う。
 動けぬものには二人で手を貸しつつ、彼らから話を聞いていく。
 そして他の猟兵達からも、ふたりは離しを聞いて――ぼんやりとだがこの件の姿が見えてくる。
 ヘルガはヴォルフ、と名を呼ぶ。
「彼らは皆一様に、愛する人、縁の深い人を奪われ、絆を引き裂かれた様子」
 もしや、敵の目的は……と、ヘルガは瞳伏せる。
 ああ、とヴォルフガングも頷いて返した。
「村を襲った敵、そして恐らくは攫われた人々も、あの時計塔にいるのだろう」
 ヴォルフガングとヘルガは視線を合わせて、やることはひとつと心に定める。
 ヘルガは歌う。ひとびとの心を慰めるように聖歌を。
 そして。
(「必ずや攫われた人たちを取り戻します」)
 歌に誓いを込めて。
 そしてヴォルフガングは己の持つ刃を地に突き立て、騎士として誓うのだ。
 ヘルガと同じく、必ず人々を救い出して見せると。
 何より――ヴォルフガングとヘルガは、過去に幾度かオブリビオンの標的となり。記憶を、命を、そして絆を狙われかけたのだ。
 その度に魂を引き裂かれる苦悩を味わってきた。
 だからこそ、今ここにいる人々の嘆きを他人事とは思えないのだ。
 ヘルガはヴォルフガングを見詰めて。
「或いは既に、敵はわたくしたちの様子をどこかで見ているのかもしれません」
 もし――敵の目的が『遠深き二人の絆を引き裂くこと』ならば。
「わたくしとヴォルフもまた、その標的となり得ることでしょう」
 事実、これまでに何度もも狙われ引き裂かれそうになったのだから――そしてそれを乗り越えてきた。
 それでも、逃げるわけにはいかないのだ。
 ここへ来なければ、かかわらなければ――そんな危険もなかっただろう。
 しかし、足を運んだのは心に抱いた想いがあったから。
「二度と悲劇を繰り返さないために……」
「これ以上の悲劇は繰り返さない。悪意に満ちた支配と蹂躙は、必ずこの手で終わらせる」
 そう言って、ふたりはぼんやりと見える時計塔の方へと視線向ける。
 そこにいるというオブリビオンを倒すことは、またこの地に暮らす人々にとっては安堵にもなるだろう。
「……待っていろ。まだ見ぬ時計塔の主よ」
 貴様に俺たちの――否、人の絆を引き裂くことなど決して叶わぬと思い知らせてやる、とヴォルフガングは強い視線を向けていた。
 その上で待っている者へと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『時計塔』

POW   :    大胆に進む

SPD   :    慎重に進む

WIZ   :    アイテムを活用

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 薄暗い、森の先――時計塔はそびえていた。
 石造りの塔だ。入口の扉にあった鍵は壊されている。それはオブリビオンがやったことなのだろう。
 手招くように開いたままの扉。その中は壁伝いに階段が連なっている。見上げたその中が見た目より狭くみえるのは、部屋があるからのようだ。
 そして――ひらり、はらり。
 上から紫色の花弁が落ちてきた。

 ああ、迎えに来たんだね。
 ふふ、いいね、絆がある。それは僕が少し邪魔したぐらいでは、断ち切れないか。
 連れて帰っていいよ、けど君たちの大事な人は――帰りたがるかなぁ?

 そして響く、笑い声。
 少年の声だ。最上階で待っていると言って、それ以上は何も聞こえなくなった。
 けれど視線の気配がある。見ているのだ。
 試すような物言いの理由は何なのだろうか。
 猟兵達と共に助けに来た人々は時計塔を上がっていく。
 その階段を上がることは、村人たちにとっては恐怖だろう。その足取りは重い。
 思うこともきっと沢山、あることは間違いない。
 猟兵であればこのような危険な場に足を踏み入れることは常だが彼らにとってはそうではない。
 そして、己の絆繋いだ大切なものがどうであるかという心配も、あるのだ。
 時計塔の壁に巡る階段が突然崩れたり、何かが飛び出したりというような罠はなかった。すんなりと、上階へと行かせてくれる。
 そして途中には小部屋がいくつかあり、ひとの気配があった。
 それはここへと、連れてこられた者達がいる部屋だった。
 猟兵と共に、己の大事なものを取り返しに来た者達は、助けにきた者がいる部屋の前で足を止め中へと入る。
 無事でよかった、さぁ帰ろうと喜べたなら――良かったのだ。

『おかあさん』は――震えていた。私が帰ってはお前を不幸にしてしまうと。ぽろりと涙を流して。
『恋人』の、彼女は泣きじゃくって怖い怖いと言っている。一体何が怖いのか、問うても答えはない。
『娘』は帰れないのよと青ざめた表情で、ここからは出ない。帰って、と父親へと言うだけだ。
『男の妻』はごめんなさい、ごめんなさいと謝り、わたしを置いて帰ってと言う。
『にいちゃん』はくるな! と追いかけてきた弟を拒否した。しかし、強く握りこんだ拳が震えており何かを、堪えている。
『妹』は力なく笑うのだ。私だって帰りたい――でも、帰れないと震えて。

 ほかにも、村から連れてこられた者達はいる様子。
 しかし誰しも帰れないというのだ。
 なぜ帰れないのか――考えられることは一つ。あのオブリビオンが『何か』を彼らに吹き込んだのだ。
 何を言ったのか、いくつかは想像ができる。
 此処から出たらあの村を滅ぼそう。逃げたらお前の大切な相手を見つけて今度こそ殺そうか――そういった所だ。
 あとは、ふたりの絆を試すような、崩すようなことも言っているかもしれない。
 どうして、そんなことを言うのか問い詰めることはできるだろう。
 共にここへ来た村人がそれを問うて、聞きだしてくれるかもしれない。
 いや、そんなこと問わずとも、このさらに上にいるオブリビオンに問えば早い話でもある。
 ここで、村人から話を聞くのもいいだろう。
 その姿をそっと目にしつつも、上へと向かうこともできる。
 上へはまた壁伝いに階段を昇っていくだけ。オブリビオンのいる最上階までは、あと少しだ。
日下部・舞
ミレディ君(f00296)と参加

「ハッキリしてるのは、このままだと絶望しかないということ」

オブリビオンの望む通りにしても、いずれ全てが奪われる
彼がその気になれば何もかも引き裂くに違いない

「この世は弱肉強食ね」

ある意味でわかりやすい敵だ
怒りや嫌悪といった感情は湧いてこない
ただ、村人たちは心配だった

「力には力を。でも、それがない時はミレディ君ならどうする?」

嘆き悲しみに暮れるのか
自らの無力に怒りを抱くだろうか
あるいは現実から目を逸らすかもしれない

「裏切られてもいいと思える相手こそが、信じるに値する……」

ふと思い出した言葉だった
村人たちの絆がどうであれ、彼らは独りじゃない

「羨ましいは不謹慎かしら?」


シェーラ・ミレディ
ミス日下部(f25907)と同行

希望を仄めかしながらも絶望を煽るとは
全く、非道な真似をするものだ
子供特有の無垢なる悪意か、吸血鬼ゆえの残虐性かは判断しかねるが……
どちらにせよ
「人間は玩具ではないのだと、教育する必要がありそうだな」
少年の声が聞こえる上の方を見やって呟く

質問に
「助けを呼ぶ。僕に力がなかろうが、力のある人の手を借りれば良いだけだ。
 少し意味は変わるが、先程の君だってそうしていただろう?」
手が足りないと思ったから、僕に助力を願ったのではないのだろうか?

力がないと嘆くものに、手を差し出すのも猟兵の役目だ
たとえ猟兵でなくても、良識あるものなら誰だってそうするさ

※改変、アドリブ歓迎



 大切なひとを、連れて帰りたい――猟兵達の言葉や行動によって、その気持ちを奮い立たせてきたのだ。
 だというのに――ここに連れ去られたものたちは帰らないという。
 なぜかを問うても言葉を濁して何も語らない。誰もかれも、何かを飲み込んだような表情を浮かべるばかりだ。
 その様を、日下部・舞(BansheeII・f25907)は見詰めていた。
 彼らはいったい何を言われたのだろうか――シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)はゆっくりと瞳を伏せる。
 舞の視線はひとびとの上を撫でて。
「ハッキリしてるのは、このままだと絶望しかないということ」
 オブリビオンの望む通りにしても、いずれ全てが奪われる――それは簡単に想像できることだ。
(「彼がその気になれば何もかも引き裂くに違いない」)
 村を襲ったというオブリビオンの少年――姿形に決して、惑わされてはいけないのだろう。
 シェーラも村人たちのこの様子と、聞いた話を重ね合わせまた思う。
(「希望を仄めかしながらも絶望を煽るとは――全く、非道な真似をするものだ」)
 何を吹き込んだか。
 決して良い事ではないのは確かだ。オブリビオンにとっては楽しい事なのだろうが。
(「子供特有の無垢なる悪意か、吸血鬼ゆえの残虐性かは判断しかねるが……どちらにせよ」)
「人間は玩具ではないのだと、教育する必要がありそうだな」
 シェーラは上へと――くだんの少年がいるであろう方を見やった。
「この世は弱肉強食ね」
 ある意味でわかりやすい敵だと舞は思う。
 怒りや嫌悪といった感情は――湧いてこない。
 ただ、村人たちは心配だった。
 舞は改めて、村人たちを見詰める。
「力には力を。でも、それがない時はミレディ君ならどうする?」
 嘆き悲しみに暮れるのか――それとも、自らの無力に怒りを抱くだろうか。あるいは現実から目を逸らすかもしれない。
 その問いかけにシェーラは、しばし考えて。
「助けを呼ぶ。僕に力がなかろうが、力のある人の手を借りれば良いだけだ」
 そう言って、舞を真っすぐ見詰める。視線合えば、シェーラは言葉続けて。
「少し意味は変わるが、先程の君だってそうしていただろう?」
 手が足りないと思ったから、僕に助力を願ったのではないのだろうか? と瞬いて紡ぐ。
 その言葉に舞はそうね、と小さく笑ってみせた。
「裏切られてもいいと思える相手こそが、信じるに値する……」
 そしてふと、その言葉を舞は思い出し彼らへと、村人たちへと視線を向けた。
 村人たちの絆がどうであれ、彼らは独りじゃない。
 たとえ首を横に振っていても、そばにいて声をかけて、その心を己のもとに引き寄せようとしているもの。
 ここで自分たちが声をかけることも、もちろんできる。
 けれどそれは響くのだろうか。共に過ごしてきた者達があれだけ言葉を向けている。今日、出会ったばかりの自分たちでは聞いてもらえないかもしれない。
 だが、村人たちは――互いを思ってこそ、今の態度なのだろう。
 そんな風にさせるほどの、縁がある。
「羨ましいは不謹慎かしら?」
 舞はほとりと零してしまう。
 思いあっている者達の姿に、心は――僅かに揺れて。
「力がないと嘆くものに、手を差し出すのも猟兵の役目だ」
 たとえ猟兵でなくても、良識あるものなら誰だってそうするさとシェーラは言う。
 君だって、そうだろうと。
 そうしていたのだからと、シェーラは紡いで歩み始める。
 上へ――この現状を生み出したものと、相対するために。
 舞もゆっくり、それに続いていく。
 猟兵としてできることを、成すために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

こりゃ酷ぇ。
見るからに「とんでもないもので脅されました」
って分かるじゃねぇか。
多分、口にするのも憚られるような事なんだろうね。
ああ、無理して喋らなくてもいいよ。
「喋るな」という脅しも入ってるんだろうからね。

だから、直接心に聞かせてもらうよ。
【超感覚網】のテレパスを広げ、ついて来てくれた村人みんなと
囚われてる皆を念話で繋ぐ。
これも上で待ってる「ヤツ」の思うつぼかもしれないけれどね、
ここにはアタシら猟兵がいる。
今この度なら、襲ってきやがった理不尽を退けられる連中がね。
そう周囲を『鼓舞』して、立ち上がる気力を奮い立たせる。

さあ、偉そうなアイツをぶん殴りに行こうじゃねぇか。



 散々な光景だ。
 それは誰かがけがをしているだとか、命の灯が消えかかっているなんてことはないけれど、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が「こりゃ酷ぇ」と言葉落とすには十分なものだった。
 ひとびとの様子は、ただ事ではないと言えるのだから。
(「見るからに『とんでもないもので脅されました』って分かるじゃねぇか」)
 声をかけることも、できる。
 けれどそれで、初めて会った余所者である自分が何か得られるかと言えば、そうは思えない。
 日頃共に過ごしている者達にすら、口にしないことを抱えているのだろうだから。
「多分、口にするのも憚られるような事なんだろうね」
 近くで、どうしてだと問い掛ける男に、それくらいにしておくといいと声かける。
 声向けられている女は男の勢いに委縮してしまったようだ。
「ああ、無理して喋らなくてもいいよ」
 多喜は何も聞かないと告げる。
 それは何故か――『喋るな』という脅しも入ってるんだろうからね、と視線の下に含んで向けて。
(「だから、直接心に聞かせてもらうよ」)
 多喜が広げるのは超感覚網――テレパスを広げ、ついて来てくれた村人たちと、囚われてる皆を念話で繋いだ。
 けれど、皆は――突然すぎて戸惑いを見せているようだ。
 ひとまず目の前の、二人から。
(「これも上で待ってる『ヤツ』の思うつぼかもしれないけれどね、」)
 ここにはアタシら猟兵がいる――多喜は繋がった女と男へと声向ける。
(「今この度なら、襲ってきやがった理不尽を退けられる連中がね」)
 あんたは、それを知っているだろうと男に問いかける。
 人々を助けた力――それを伝えてほしいと。
 周囲を『鼓舞』し、立ち上がる気力を奮い立たせるように多喜は声を――想いを伝えてくる。
「さあ、偉そうなアイツをぶん殴りに行こうじゃねぇか」
 多喜は人々の前に立つ。
 何も、ここで悲嘆して蹲ることはないのだと伝えるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
連れて来られた者は生きているという意味では無事ですが
精神的には良い状況ではありません
帰れば報復を、罰を
己だけ残ったとしても二度と戻れぬ、と

助けにきた者も含め彼等の状況を改めて確認します
……彼等の悲痛や苦痛が、表情や体の震えから伝わる

此処から出られないというのであれば、今は此処に居てください
目の前に大切な者が居るというだけでも気持ちは異なるもの
怯えていても、心に響くのはかけがえのない人の言葉

後は、元凶である彼を倒す
猟兵である私達だからこそ、奴に対抗出来る

この先の戦いは私達に任せてください
此処で彼等を癒せるのは、貴方達であるように
私達は、私達の出来る事をやります

倫太郎、往きましょう


篝・倫太郎
【華禱】
迎えを喜ぶよりも、怯えて震え
戻れないと訴える……
その様子を見れば、凡その見当はつくけどな

夜彦の真っすぐな視線にあるのは……憤り、かな
怒りよりもなお深く、けれど内に籠る感情

ま、そんな訳でちょっくら塔の天辺まで行って来るからさ
傍に居てやれよ

あんただってここまで来るのは一筋縄じゃなかっただろ?
今は寄り添って過ごせばいいんじゃね?

恐怖よりも、取り戻したいと
傍にありたいと想う相手への気持ちがあるから
ここに来たんだろ?
なら、今は傍に居てやれよ

迎えに来た村人の肩を叩いてそう声を掛けてから
天辺へと夜彦と向かう

あぁ、往こうぜ、夜彦

そもそも、紫の花弁とか……
俺としては、既に、かなり、不愉快だからぶっ飛ばす



 生きている――そういう意味では無事なのだ。
 五体満足にそこにいる。それは、幸いではあるのだ。
 だが、と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は人々を見詰め瞳伏せた。
 精神的には良い状況ではない。
 帰れば報復を、罰を――己だけ残ったとしても二度と戻れぬ、と。
 人々の心が向けられた先はそういった所だろう。
「戻れないと訴える……凡その見当はつくけどな」
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は歯噛みするように零す。
 そして夜彦を伺い見た。
 真っすぐな視線だと、倫太郎は思う。
 その視線にあるのは――その感情は。
(「……憤り、かな」)
 怒りよりもなお深く、けれど内に籠る感情を倫太郎は感じていた。
 夜彦は、助けに来た者達も含め、ここに連れてこられた者達の状況も改めて確認していた。
(「……彼等の悲痛や苦痛が、表情や体の震えから伝わる」)
 彼らがここから動くことはままならないだろう。引きずって連れて帰ることもできるだろうがそれはきっと誰も望まない。
「此処から出られないというのであれば、今は此処に居てください」
 目の前に大切な者が居るというだけでも気持ちは異なるもの、と夜彦は近くにいた夫婦へと告げる。
 怯えていても、心に響くのはかけがえのない人の言葉でしょうから、と。
「ま、そんな訳でちょっくら塔の天辺まで行って来るからさ」
 傍に居てやれよと倫太郎は告げる。
「あんただってここまで来るのは一筋縄じゃなかっただろ? 今は寄り添って過ごせばいいんじゃね?」
 そうですね、傍にと夜彦も頷く。
「後は、元凶である彼を倒す。猟兵である私達だからこそ、奴に対抗出来る」
 すると、そんな事できるのかというような視線を投げかけられた。
 そして――共に行った方がいいのだろうかというような顔をする。
「恐怖よりも、取り戻したいと傍にありたいと想う相手への気持ちがあるからここに来たんだろ?」
 なら、今は傍に居てやれよと言って倫太郎は肩を叩く。
 そして、倫太郎と夜彦は共に同じ方に――上へと、歩み始める。
「この先の戦いは私達に任せてください」
 此処で彼等を癒せるのは、貴方達であるように――私達は、私達の出来る事をやりますと夜彦は告げる。
「倫太郎、往きましょう」
「あぁ、往こうぜ、夜彦」
 夜彦と共に進みながら、倫太郎は思う。
(「そもそも、紫の花弁とか……」)
 それは、倫太郎にとって傍らの男の持つ花の色だ。
 花はきっと、夜彦の花とは違うものだ。それでも。
(「俺としては、既に、かなり、不愉快だからぶっ飛ばす」)
 夜彦がどうかしましたか、と向ける言葉に何でもないと笑って、二人の足は上へと向かう。
 階段をのぼる――その先に居るものを倒すために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

手を繋ぎ登る時計台

嗚呼、震えて泣いている人達
助けに来た者達と帰れない人達

きっとこの人達に何かしたかそれとも告げたか

可哀相に、本当はきっと帰りたいでしょうに
でも気持ちがわからないでもない

自分が非力で大切な人を傷つけるくらいなら犠牲になろうと
でもそれでは迎えに来た人が今度は哀しんでしまう

ありがとうねぇ、僕も同じだよ
ねぇ、ルーシーちゃん
上に行く前にこの人達に語ろうか
大丈夫だときっと無事に帰れると伝えよう

君の優しい言葉と優しい笑顔にきっと皆救われるね。

えぇ、そうだね。行こうか、ルーシーちゃん


ルーシー・ブルーベル
【月光】

ゆぇパパと手を繋いで時計塔をのぼっていく
ええそうね、パパ
村で聞いた「おねーちゃん」はどなたかしら
探してお話をきいてみましょう
迎えに来た方がいらっしゃったら、ごいっしょに

村であなたの話をきいたのよ
ここにも、村にも
あなたの事を想っているひとがいる
あなたの帰りを待っているひとがいる
ねえ、何を言われたの?

大事な人が傷ついてほしくない気持ちはルーシーにもよく分かるもの
もしパパががルーシーのせいで何かあったら
……って思うと、こわいわ
だから、あなたの心配をなくすお手伝いをさせてほしいの
みんなで帰るために
ルーシー達は来ているの

いいえパパ
救うのはこれから
いっしょに助けるのよ

ひらり紫の花びら
今行くわ



 手を繋いで、階段を一段ずつ上がっていく。
 手すりも何もない、危険な階段。朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)はルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)を壁の方に。ユェーは自分が危ない方を歩んでいた。
(「嗚呼、震えて泣いている人達。助けに来た者達と帰れない人達」)
 村を襲ったという少年――その彼がきっとこの人達に何かしたか、それとも告げたか。
 ユェーはひとびとの状況を目に、心を痛ませていた。
「可哀相に、本当はきっと帰りたいでしょうに」
 でも気持ちがわからないでもない。
 自分が非力で大切な人を傷つけるくらいなら犠牲になろうと――でもそれでは迎えに来た人が今度は哀しんでしまう。
 ユェーはそのどちらの気持ちもわかってしまう。
 だからこそ、どちらも引けぬのだろうということも。
「ねぇ、ルーシーちゃん。上に行く前にこの人達に語ろうか」
「ええそうね、パパ」
 そして、ユェーをルーシーは見上げて。
「村で聞いた『おねーちゃん』はどなたかしら」
 探してお話をきいてみましょう、と首傾げて。
 人々が集う――その中で、聞こえた声がある。
 村で弟も待っているだろうと。その声にあの人たちかしら、とルーシーは向かう。
 その二人は恋人同士のようだ。連れてこられて女が、『おねーちゃん』のようだ。
 その傍に行って、ルーシーは彼女を見詰め声かける。
「村であなたの話をきいたのよ」
 ここにも、村にも。あなたの事を想っている人がいる。
「あなたの帰りを待っているひとがいる。ねえ、何を言われたの?」
 問いかけると――彼女は泣き崩れる。帰りたい、でも帰れないと何度も言うのだ。
 それを男が宥めながらずっとこの調子なのだという。
 けれどその言葉から少しずつ、零れ落ちる。
 帰れば不幸になる。もう一度、村に戻れば追って、滅ぼそう。
 自分のせいで、大切な人が傷ついていいのか――そんな事はできない、というところ。
「大事な人が傷ついてほしくない気持ちはルーシーにもよく分かるもの。もしパパががルーシーのせいで何かあったら」
 きゅっと、繋いだ手に力がこもった。
 そんな事起こりはしない。起こらせはしない。
 けれど絶対はないのだから――
「……って思うと、こわいわ」
「ありがとうねぇ、僕も同じだよ」
 その言葉にルーシーは、ふふと小さく笑い零し、彼女を真っすぐと見詰めた。
「だから、あなたの心配をなくすお手伝いをさせてほしいの。みんなで帰るために」
 そのために――ルーシー達は来ているのと告げる。
 そしてユェーも、微笑んで。
「大丈夫だ、きっと無事に帰れる」
 その想いに言葉を添えた。
 君の優しい言葉と優しい笑顔にきっと皆救われるね――と、ルーシーへと向けた視線に気持ちを、言葉を込めて。
 けれどルーシーはふるりと首を横にふった。
「いいえパパ。救うのはこれから」
 いっしょに助けるのよ、とルーシーは紡ぐ。
 ユェーは瞬いて、頷いた。
「えぇ、そうだね。行こうか、ルーシーちゃん」
 ひらり、ふわり――紫の花びらが上から落ちてくる。
 それを見つけ、ルーシーは射抜くような視線を向けて呟いた。
 今行くわ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
――おれは、あの目を知ってる。怖いものに出くわしたときの目だ。
おれも、きっと戦ってるときはああいう表情を出さねえように、必死になって……でも瞳に浮かんだ恐怖の光は、きっと消せてねえと思うから。

ならせめて、その恐怖を拭い去る手伝いを。
基本的には連れてきた人たちが言うに任せる。大事そうなトコだけ横から手助けをする。

何を言われたのかはわからねえ。でも、この人たちはアンタたちを大切って思ってるから、ここまで来てくれた。
……帰れないなら、無理強いはしねえ。でも、これだけは信じてほしい。
今までもこれからも、「大切に思われてること」は嘘じゃねえって。

――そういう〈鼓舞〉が、届くといいんだけどな。



 目の前のひとびとの様子に、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は覚えがあった。
(「――おれは、あの目を知ってる。怖いものに出くわしたときの目だ」)
 震えている者もいる。
 その姿を見て嵐はわずかに表情歪めていた。
(「おれも、きっと」 )
 戦ってるときはああいう表情を出さねえように、必死になっているんだろうと嵐は思う。
 けれど、無理やり作った表情。その奥底――瞳の中までは上手に隠しきれていないようだ。
(「……でも瞳に浮かんだ恐怖の光は、きっと消せてねえと思うから」)
 そんな村人たちの姿を見て、きっと自分もそうなのだろうと嵐は思う。
 ならせめて、その恐怖を拭い去る手伝いをここで。
 村人たちは互いに声を掛け合っていた。けれど、大事なところでは手を貸すようにしていく。
 帰りましょうと長年連れ添った夫へいう老婦人。
 いいや、いいや帰るなら一人でと首を振る老人は頑固そうだ。
 その横へ嵐は向かい、なぁじいさんと声かける。
「何を言われたのかはわからねえ。でも、この人たちはアンタたちを大切って思ってるから、ここまで来てくれた」
 そう言うと、その気持ちはわかっているのだろう。
 老人は否定の言葉を紡ぐのをやめた。
「……帰れないなら、無理強いはしねえ。でも、これだけは信じてほしい」
 嵐は、何かあるのかはわかっているのだというように紡いで。
「今までもこれからも、『大切に思われてること』は嘘じゃねえって」
 なぁ、そうだろと笑いかける。
 この鼓舞が、届くといいんだけどなと思いながら。
 思うところはあるのだろう。けれど、老人の様子は先ほどよりは少し、柔らかになっているように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネウ・カタラ
随分とたのしそうな、声
ゲームでもしているつもり?
…うん。真意を問うのはまたあとで

兎達といっしょにおかあさんのもとへ
村で家族に会ったこと伝えながら
ゆっくりおはなししてみる

…不幸?そうなるって、誰がきめたの?
仮に用意された未来があったとしても
それはいくらでもかえられるんだよ
(だってそのために。俺達はきたんだから)

…あのこ達も、がんばってる
さみしくて不安な思いを抱えながら
それでもなみだをこらえて、信じてる
あなたのかえりを、ふたりで

あのこともしたけど
さいごにはさせないって、約束する
こわいのもかなしいのも終わらせる

だから。あなたの本当のおもい
心から願うこと。きかせて
あのこが信じてくれた俺を、どうか信じて



 上から降ってきた声に――ネウ・カタラ(うつろうもの・f18543)は僅かに眉顰めていた。
 それは随分とたのしそうな、声だったからだ。
「ゲームでもしているつもり? ……うん。真意を問うのはまたあとで」
 ぴょんぴょんと跳ねる兎達といっしょにネウは、聞いてきた『おかあさん』のもとへ向かう。
 兎達は迷いなく、進んでいた。
 そしてひとりの女性の下へと向かう。彼女は、皆の様子を見つつただ静かに――けれど、諦めたような表情を浮かべていた。
「あなたが、おかあさん?」
 ネウは彼女へと近づく。村で会ったあの子と――瞳の色が同じだ。その髪色も、顔立ちも似ている。
「帰ってきてほしいって、いっていたよ」
 ネウは、村でのことを伝える。そして待っているよと紡いだ。
 けれど、ふるりと彼女は首を横に振る。
「帰れないの……帰ってはいけないの。あの子が不幸になってしまうから」
「……不幸? そうなるって、誰がきめたの?」
 仮に用意された未来があったとしても、それはいくらでもかえられるんだよとネウは紡ぐ。
(「だってそのために。俺達はきたんだから」)
 ネウはそのことはまだ紡がず。ただ、己が見てきたことを告げる。
「……あのこ達も、がんばってる。さみしくて不安な思いを抱えながら」
 それでもなみだをこらえて、信じてる――真っすぐに、言葉向けるだけだ。
「あなたのかえりを、ふたりで」
 そしてネウは、あのこともしたけど、と話す。
 村でした、約束のことを。
「さいごにはさせないって、約束する。こわいのもかなしいのも終わらせる」
 だから、とネウはまっすぐに。
「あなたの本当のおもい――心から願うこと。きかせて」
 何をと、不思議そうな顔を彼女はしていた。
 信じていいのか、どうなのか。
 あの村を襲ったもの。その行動を自分の目で見てしまった。
 そして、帰ればまた襲うと言われ、子供たちを危険にさらせないと思っている。
 迎えに来るものはいるかもしれないけれど、そうしちゃいけないと村を襲った少んに言われたのだ。
 それに反して、村を助けたと思うものの言葉。
 どちらに心傾ければいいのかと、彼女は揺れているのだ。
 本当に信じていいのだろうかと。
「あのこが信じてくれた俺を、どうか信じて」
「あ……」
 ネウが向けたその言葉に彼女は瞬いてそうね、と頷く。
 あのこが信じたのなら――私もそうしましょうと。
 ゆっくりと、彼女は言われたことを紡いでいく。
 ほかの者達の耳に入れば、彼らは神経質になるだろうからとそっと、静かに。
 ネウだけに聞こえるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
子どもたちとその『にいちゃん』に対して
ただの気紛れな興味だけじゃなくなっちゃった
最近きょうだいたちのことをやけに思い出すから

みんな消えてしまったけど
私はみんなが消えることを受け入れた
止めようとはしたけど止められなくて
最後の―兄のような唯一の相手が消えそうになっても
仕方がないって諦めた
だって世界がそうすると決めたんだから従うしかないよね

後悔とかそんなものじゃないけど
この子がこうして立ち上がったことが
棘みたいに引っ掛かる

ねぇなにを言われたの?とは聞くけどさ
きっと上にいるヤツに聞いた方が早いよね

ふたりの手を取ってそっと繋がせる
このままいっしょに居たらいい
猟兵たちがなんとかするまでか
ふたりの終わりまで



 階段を上がっていく。
 ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)の胸中にくすぶるのは――子どもたちと、その『にいちゃん』の事だ。
「ただの気紛れな興味だけじゃなくなっちゃった」
 最近きょうだいたちのことをやけに思い出すから、と小さく笑い零しながらロキは進む。
 何か言った? と振り向く子どもたちに何も、とロキは返す。
 子どもたちは、この時計塔に連れていかれた『にいちゃん』を確かに思っていた。
 ロキは、思い出すのだ。
 みんな消えてしまったけど――私は、と。
(「私はみんなが消えることを受け入れた」)
 止めようとはしたけど止められなくて――ロキは瞳閉じる。
 その瞼の裏に描く姿は一人。
(「最後の――兄のような唯一の相手が消えそうになっても」)
 仕方がないと、諦めたことを思い起こす。
 諦めたのは――従うしかなかったからだ。世界がそうすると決めたのだからと。
 けれど今、己の一歩先を行くこの子どもの姿が、己の瞳によく映る。
(「後悔とかそんなものじゃないけど」)
 この子がこうして立ち上がったことが、棘みたいに引っ掛かる。
 これからどうするのだろう。どうしたいのか、思うままに動いているのだろう。
 そうして――大切な『にいちゃん』の姿を見つけたその子は彼の下へと走っていく。
 にいちゃん、と呼んで手を伸ばすけれど、くるな! と言われて動きは止まる。
 ロキは二人の姿を見詰める。ぎゅっと手を握りこんでいる兄の姿は、何かをこらえているようだ。
「ねぇなにを言われたの?」
 ロキの声に兄はさっと顔色を変える。けれど、ロキはそれ以上聞かなかった。
 きっと上にいるヤツに聞いた方が早いよねと言って、ロキはしゃがむ。
 ふたりの間にしゃがんでその手を取り、そっと繋がせた。
「このままいっしょに居たらいい」
 手のぬくもりがある。連れてきた子どもがぎゅっと兄の手を握ったのを感じてロキは小さく笑い零した。
 そして兄も――僅かに、繋ぐ手に力を籠める。
「猟兵たちがなんとかするまでか、ふたりの終わりまで」
 必ず助ける、とはロキは言わないのだ。蜜の色をとろかして告げることもできるだろうに。
 そう言っても良いのだけれども――なんとなく。
 ささった棘の行方も、知りたくて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西院鬼・織久
この場にいる人々が何を思うかなど俺には理解できません
俺に在るのはただ狩るべき敵を求める怨念のみ
ここにも敵の存在を知って来たまで
話せる事がないなら先に進むだけです

【行動】POW
常に武器と己をUCのような怨念の炎(殺意+呪詛+各耐性)で満たしているため揺らぐ事がなく狂戦士でありながら思考を放棄する事はない
代わりに感情の揺らぎもなく人の心の機微も理論的に学習できても共感できない
情報収集+言いくるめで話を聞き吸血鬼の思考や行動パターンの推測を試みる
手掛かりにならないと判断すれば深入りはせず先に進む事を優先



 帰ろうと、言葉を向ける者たち。その言葉を、受け取れぬ者達。
 どちらも引かずの一進一退という様に西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)は瞳細める。
 だれもかれもが、そんな風だ。
 彼らがどうしてそのようなやりとりをするのか。何を思うかということを、織久は理解できないのだ。
 情報としては、もちろんその身には入っているがその心は理解できない。
(「俺に在るのはただ狩るべき敵を求める怨念のみ」)
 ここにも、敵の存在を知って来たまで。
 何を言われたのか、何を抱えたのか――それを人々は、話す気はないのだろう。
 話したくとも堪えているのかもしれない。そのあたりは、人それぞれなのだろうが、織久へと話せる事がないなら先に進むだけだ。
 まだ、階段は続いている。
 織久の周囲で怨念のようは炎が揺らめく。それは自信に宿る怨念と殺意の炎だ。
 戦う、という意志は揺らがない。狂ったように戦えるが思考を放棄することはないのだ。
 けれど――感情の揺らぎもない。人の心の機微を理論的に学習できても共感できないのだ。
 だから、人々がどうしてそうしているのか、わからない。理解できない。
 人々の紡ぐ声は情報として入ってくる。しかしそれだけなのだ。
 これから戦う敵の思考や行動パターンの推測をしてみるが――己にとっては何にもならなさそうだと織久は思う。
 手掛かりにはならなさそうだと思い、織久は足を進める。
 深入りよりも、先に進むことを優先して。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と

村人たちを守りつつ時計塔を進む
敵の監視の目を、第六感を働かせて警戒しながら

攫われた人々の言葉から感じたものは悲嘆と恐れ
そして何よりも「罪悪感」
考えられる可能性はいくつかある

醜い化け物の姿に変えられた
再会することで発動する死の呪いをかけられた

……だけど、ひとつだけ救いがあるとするなら
「彼らは迎えに来た相手を非難していない」
自分一人が耐えることで、傷を最小限に抑えようとしている
絆は、愛情は失われていない

今は「呪いの可能性」は告げず
(既に他の猟兵が告げていた場合は「あくまで可能性のひとつ」と付け加え)
人々の無事を祈りましょう
この上に控える黒幕を倒せば、光明は開けると信じて


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と

村人を護衛しつつ時計塔へ
行く手に罠がないか、野生の勘で警戒しながら
もっとも、敵の狙いは侵入者を肉体的に傷つけること以上に
「絆を引き裂き、心を折って、絶望する様を眺め嘲笑う」ことだろうが
……全く、胸糞の悪い話だ

ヘルガの感じた「可能性」について思いを巡らせ
今は下手に引き合わせたり、言葉を交わさない方が良いのかもしれない
いずれにせよ、塔の上で待つ黒幕に聞けばわかることだ
恐らくは力ずくで解決することになるだろうが

村人たちを鼓舞し勇気づける
どうか、今は耐えてくれ
奴が仕組んだ理不尽は、俺たちが必ず打ち砕いてみせる
全てが終わった時、彼らを迎えてやれるのは君たちだけなのだから



 敵の監視の目はあるのだろうか。
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は上へと一瞬視線を向け警戒しつつ、人々へと微笑む。
 大丈夫、私たちがついていますから、と。
 その言葉にヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)も頷くのだ。
 一歩先を進み、行く手に罠がないかどうかをみつつ安全を確認して、人々に大丈夫だと告げて前へと進ませる。
(「もっとも、敵の狙いは侵入者を肉体的に傷つけること以上に」)
 ――『絆を引き裂き、心を折って、絶望する様を眺め嘲笑う』ことだろうが、とヴォルフガングは僅かに表情歪める。
 いつも思うのだ。そういう趣味なのか、それともそういう性質なのか。
 なんにせよ、気分の良くなる相手ではない。
「……全く、胸糞の悪い話だ」
 ひそりと零れたそれは、ヘルガの耳には届いていた。
 そして、再会する人々の声も大切な相手を見つけては響く。
 しかし喜び合うことはなく、帰ろう、帰らないと問答が聞こえてくるだけだ。
 ここへ連れていかれていた人々の言葉をヘルガは拾い上げていく。
 それから感じたのは悲嘆と恐れ。そして何よりも『罪悪感』だ。
 それらより考えられる可能性は――と考えてヴォルフガングへと告げる。
 醜い化け物の姿に変えられた。
 再会することで発動する死の呪いをかけられた。
 ほかにも、何かあるかもしれない。
「……だけど、ひとつだけ救いがあるとするなら」
 彼らは迎えに来た相手を非難していない、ということ。
 自分一人が耐えることで、傷を最小限に抑えようとしているように見えるのだ。
「絆は、愛情は失われていません」
 そのことを感じ取れ、ヘルガはヴォルフガングを見詰める。
 彼女が感じた『可能性』を、ヴォルフガングも思うのだ。
 今は下手に引き合わせたり、言葉を交わさない方が良いのかもしれない――だがいずれにせよ、塔の上で待つ黒幕に聞けばわかることだ。
 恐らくは力ずくで解決することになるだろうと、ヴォルフガングは思っていた。
 そして村人たちへと声をかけていく。無理に連れ帰ろうとはせず――どうか、今は耐えてくれと。
「奴が仕組んだ理不尽は、俺たちが必ず打ち砕いてみせる」
 全てが終わった時、彼らを迎えてやれるのは君たちだけなのだからと鼓舞をする。
 そしてヘルガも今は――何も告げず、人々の無事を祈りましょうと言葉向け、ヴォルフガングと共に歩む。
 この上に控える黒幕を倒せば、光明は開けると信じて――二人もまた、最上階を目指す。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
全く。
『連れて帰っていいよ』なんて、どの口が抜かしやがりますかね?
ま、遠慮無くそうしますけど。

奥方とのお話は、同道頂いた彼へ任せ。
…理由は、話さないだろうし、話せないだろうと踏んでますが。
共に居れば、安心もあるでしょう。
僕からは何も聞きませんし、説得もしません。

あ、でも。
置いて帰る、はしませんよ?
『喩えどんなことになっていようとも、最後まで添いたい』
彼は、そう仰いました。

彼には、共に来ても、奥方の側に残って居てあげても良いと告げ、
僕は最上階へ。
朗らかに、この上無く気軽に、
その元凶、サクッと倒して来ます♪と。

此処までの案内という対価を、僕はもう受け取った。
ならば…
承ったオーダー、完遂致しますとも



 全く、とクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は嘆息する。
『連れて帰っていいよ』なんて、どの口が抜かしやがりますかね? と笑って、共にここまで来た男と共に進んでいた。
「ま、遠慮無くそうしますけど」
 クロトは傍ら、先に連れてこられた村人たちがいる部屋にはいれば男は妻の姿を見つけて駆けていく。
 その行く先を視線で追って、どうやら無事なようですねとクロトは思うのだ。
 しかし、彼女と話をするのは己の役目ではない。
 それは夫である彼の役目だ。
 帰ろう、帰れない。どうしてだ、どうしても。
 ごめんなさい、帰ってと繰り返し――彼女は泣くだけだ。
(「……理由は、話さないだろうし、話せないってとこかな」)
 それはクロトの想像の範囲に収まっていた。
 無理に聞くこともせず、ただ言葉を向けるなら男にだろう。
「共に居れば、安心もあるでしょう」
 此処にいてください、と告げて――クロトは何も聞かないし、説得もしない。
 そして踵を返し歩み始める。すると、何処へいくんだと男が投げかけた。
 クロトは小さく笑い零して。
「置いて帰る、はしませんよ?」
 そして、彼から妻へと視線を向ける。
「『喩えどんなことになっていようとも、最後まで添いたい』」
「! お、おい!」
「彼は、そう仰いました」
 僕が言えるのはこれだけですと言う。
 男はそっぽを向いて苦そうな顔をしているが照れているようだ。
 その様子に妻は、泣くのをやめて瞬いて――僅かに笑みを向ける。
 クロトはその様を目に、大丈夫そうだと思うのだ。
「共に来ても、奥方の側に残って居てあげてもどちらでも、お好きに」
 僕は最上階へいってきますと朗らかに、この上無く気軽にクロトは言葉続けるのだ。
「その元凶、サクッと倒して来ます♪」
 男は、その場にとどまった。いや、そうせざるを得なかったのだろう。
 妻が服の端を掴んでいたのだから。
 その姿を視界の端に映しながら、クロトはひらりと手を振った。
 此処までの案内という対価を、僕はもう受け取ったと。
 ならば――すべきことは一つ。
「承ったオーダー、完遂致しますとも」
 その足取りは軽く。上へと続く階段を、クロトもまた進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
少しでも急いで上階に向かいたいと気が急くけれど
ソヨゴは優しいからそうしないだろう
わかってる
まずは彼女に任せよう

敵はこの状況をどこからか観察しているに違いない
罠や仕掛けがあってこの場の人々を殺す可能性もある

ライフルを手に
電脳ゴーグルで何か変わったところがないか周囲を確認

妹さんには
僕らが来たからには安心して
あいつは僕らが倒す
お兄さんからも言ってあげて

君たちには手を触れさせない
だから再会を素直に喜んでくれるとうれしいネ
そう微笑みかける

それが敵の望まない結果だから
少しでも感情を揺さぶって隙を突きたい

ソヨゴ
敵はこの場で仕掛ける気はなさそうだ
でも来てしまうと厄介だから
こちらからやっつけに行こう


城島・冬青
【橙翠】

はい
先ずは安心させないとですね

妹さんに声を掛ける
初めまして
私の名前は冬青
貴女の名前は?
貴女を攫った奴が何を吹き込んだのかは
大体予想ができるよ
恐怖で人の心を縛るのは彼らの常套手段
でも言うことを聞いて此処に残ったとしても
彼は約束なんて守らないよ
貴女を殺した後は
お兄さんを
お兄さんの次は村の人を…
殺戮を繰り返すだけ
なら言うこと聞くなんて馬鹿馬鹿しくないかな?

妹さんの恐れは否定しない
でも生きたい気持ちを諦めないで
ここに誰よりも貴女に生きていて欲しいと願う人がいるから
私にも兄がいるんだ
優しくて大好きな兄で
2人を見てるとその兄を思い出す

よし!
そいつをぶん殴って
みんなで帰ろう!
アヤネさんと私に任せて!



 少しでも急いで上階に向かいたいと気が急くけれど――アヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)は足を止めた。
 それは共に居る城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)がここで足を止めることがわかっていたからだ。
(「ソヨゴは優しいから」)
 このまま進むことはないだろうと思って。
 そう思いながら視線向ければ冬青ははいと頷いた。
「先ずは安心させないとですね」
「わかってる」
 まずは任せようと、アヤネは冬青を見守ることに。
 此処まで共に来た彼が妹の姿を見つける。
 そこへ冬青も共に。
 帰ろうという兄に、私だって帰りたいと言いながら彼女は首を横に振る。
 そこで、冬青は彼女と視線を合わせて。
「貴女の名前は?」
 その声に彼女は小さく、自分の名を紡ぐ。
 その名を冬青は紡いで、真っすぐ見詰め。
「貴女を攫った奴が何を吹き込んだのかは、大体予想ができるよ」
 恐怖で人の心を縛るのは彼らの常套手段――冬青の言葉に彼女はびくりと震えた。
「でも言うことを聞いて此処に残ったとしても、彼は約束なんて守らないよ」
 きっと――ではなくて。
「貴女を殺した後は、お兄さんを。お兄さんの次は村の人を……」
 殺戮を繰り返すだけ。
 冬青は、これから起こるであろうことをただ告げる。
 そしてふっと、笑って。
「なら言うこと聞くなんて馬鹿馬鹿しくないかな?」
 そんな、会話の合間もアヤネは周囲に視線を向けている。
 こうしている間もどこからか観察しているに違いない。
 罠や仕掛けがあって、この場の人々を殺す――その可能性がないとは言い切れないのだから。
 ライフルを手に、電脳ゴーグルで何か変わったところがないか、周囲を確認する。
 ここには何もしかけられてないようで、大丈夫そうだ。
 そして、アヤネもまたここに捕らわれた妹と、その兄へと視線を投げた。
 冬青は彼女の心をほだそうとしていた。
 彼女の恐れは否定しない。でも、否定しないでほしいものがある。
「生きたい気持ちを諦めないで」
 ここに誰よりも貴女に生きていて欲しいと願う人がいるから、と冬青は彼を示す。
 そして私にも兄がいるんだ、と言う。
「優しくて大好きな兄で、2人を見てるとその兄を思い出す」
 そう告げる冬青。けれど、やはり不安はぬぐえないのだろう。
 彼女に言葉は、響いているのだろうけど一歩が踏み出せないのだ。
 その理由は――オブリビオンがいるからだ。
 アヤネはそれを見越して。
「僕らが来たからには安心して。あいつは僕らが倒す」
 お兄さんからも言ってあげて、とアヤネは言って。
「君たちには手を触れさせない――だから
 再会を素直に喜んでくれるとうれしいネ、と微笑みかけた。
 それが、敵の望まない結果であることもわかっているから。
 少しでも感情を揺さぶって隙を突けたらいいと思って。
「よし! そいつをぶん殴って、みんなで帰ろう!」
 まだ戸惑いはあるのだろう。
 けれど――彼女はもう、ごめんなさい、帰ってとは言わなかった。
「ソヨゴ。敵はこの場で仕掛ける気はなさそうだ」
 でも来てしまうと厄介だから、こちらからやっつけに行こうとアヤネは言う。
 冬青は頷いて、アヤネさんと私に任せて! と胸を張る。
 この先行きが決して不幸なものではないと思わせる様な声色で。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
不用心な扉
仕掛けのない不気味さ
挑戦的だね

彼が大切な人に会えて良かったけれど
再会を喜べる雰囲気ではない、か

震える貴女
恐ろしい何かを見たのか、聞いたのか
どちらにしろ、きっと理由を話せはしないだろう
でも、どうか
傍らに寄り添う彼の手をしっかりと繋いでいて
きっと少しずつ思い出す
隣にいるその人と
「共にいたい」という想いを
そしてそれが、きっと貴女の勇気になるよ
彼もそうだったように、ね

ここから先は僕らの仕事
必ず貴女と貴方を無事に此処から連れ出すから
どうか、もう離れないように
君たちの、その姿が
僕の戦う理由になる


★アドリブ歓迎



 いつでも、だれでもどうぞと言うように開かれていた扉。
 ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)はそれを目に、不用心な扉と零した。
 そして中を進めば――仕掛けがなにもないことが不気味でもある。
「挑戦的だね」
 ヴェルは呟いて、上を見上げた。
 この最上階にいる者は一体どのような心づもりなのだろうかと。
 そしてヴェルと共にきた彼は――己の大切な人を見つけてその傍に。
 会えて良かったのだろう。けれど――
(「再会を喜べる雰囲気ではない、か」)
 泣いて、震えて。
 一体何が彼女をそうさせているのか。彼は問うけれど、自分の意志の方が先走ってしまっているようでもある。
 ヴェルは二人の傍によって、彼女へと訊ねる。
 恐ろしい何かを見たのか、それとも聞いたのか――言葉にしなくていい。
(「どちらにしろ、きっと理由を話せはしないだろう」)
 そう思った通りで、彼女は返す言葉を持ち出せないようだ。
 でも、どうか――願うように、ヴェルは紡ぐ。
「傍らに寄り添う彼の手をしっかりと繋いでいて」
 きっと少しずつ思い出す。
 隣にいるその人と、『共にいたい』という思いを。
 その手のぬくもりもきっと伝わるだろう。
「そしてそれが、きっと貴女の勇気になるよ」
 彼もそうだったように、ねとヴェルは紡ぐ。
 すると、ぎゅっとその手が僅かに込められた。彼はそれを握り返し、しっかりと彼女を見詰めている。
 その様に大丈夫だろうと、ヴェルは思って僅かに笑み零すと二人に背中を向ける。
 どこに、という視線を感じてヴェルは二人を振り返った、
 ここから先は僕らの仕事、と。
「必ず貴女と貴方を無事に此処から連れ出すから、どうか、もう離れないように」
 君たちの、その姿が――僕の戦う理由になる。
 ヴェルは再び階段を進む。
 上へ、上へとその先に居る相手と見えるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティア・レインフィール
……余程、酷い目に遭わされたのでしょう
体を傷付けずとも、心を傷付ける事は容易に出来ます

皆様の会話の邪魔にならないよう
タイミングを見計らってシンフォニック・キュアで歌うのは聖歌
そして村で歌った同じ物語と、そのほんの少しの続き
体の痛みは無くとも、心の痛みが少しでも和らぐように祈って

想い合う少年と少女を引き裂く、悪の領主
嘆き悲しみながら、愛する人の助けを待つ少女
絶望し、涙を流し、それでも愛する人の為
勇気を出して立ち上がる少年
そんな彼に手を差し伸べたのは
力無き人々を救ってきた英雄でした、で締めます

大切な人を守る為に、己を犠牲にしないでください
私達は村の人々全てを救う為に、此処に来たのですから



 優しい微笑も曇る。
 ティア・レインフィール(誓銀の乙女・f01661)は目にしたひとびとの様子に胸を痛めていた。
(「……余程、酷い目に遭わされたのでしょう」)
 体を傷付けずとも、心を傷付ける事は容易に出来る。
 そのことをティアは知っているのだ。
 ここに集められた人々もきっと、心無い言葉を。その心を恐怖に浸すに十分な言葉を向けられたのだろう。
 何を言われたのか、問いただせばその記憶が蘇るのは想像に易く、それはしてはいけないと思えた。
 ティア自身に、彼らへと向ける言葉がないわけではない。
 でも一番は、今まで近くにいた者達の言葉だろう。だから今は見守るのみ。
 ティアはその邪魔にならぬようにそっと、タイミングを見計らって歌い始める。
 この歌が癒しになるように、聖歌を。
 さきほど、村で歌った物語。そしてそのほんの少しの続きを。
(「体の痛みは無くとも、心の痛みが」)
 少しでも和らぐようにティアは祈り歌うのだ。

 想い合う少年と少女を引き裂く、悪の領主。
 嘆き悲しみながら、愛する人の助けを待つ少女。
 絶望し、涙を流し、それでも愛する人の為、
 勇気を出して立ち上がる少年。
 そんな彼に手を差し伸べたのは――力無き人々を救ってきた英雄。

 歌が終わる。
 しん、と一瞬の静寂と人々からの視線を感じて、ティアは皆をくるりと見回した。
 言葉を向けるなら今だろう。
「大切な人を守る為に、己を犠牲にしないでください」
 私達は村の人々全てを救う為に、此処に来たのですから――すべて終わったら、歌の続きをと微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダグラス・ミーティア
―全部嘘だった―なんて最悪の想像よりはマシだな
声には出さずに安堵し

人を試して何がしたいのやら
何かを期待をしているのか
それとも逆か

敵を追いかけたくはあるが
盾になると約束したからな
まずは村人の無事を確認

折角顔が見られたのに浮かねぇな
助けを拒むのは…相手の為、か

それは優しさで、強さで
間違っているとは、俺には言えないが

だが
それじゃ、誰も救われないだろ

なぁ、此処に来た皆はあんた達を助けに来たんだ
生きていて欲しいと
一緒に生きたいと、そう願って
…あんた達は違うのかい?

『でも』と『だけど』は要らない
一番の願いは何だ?
その為に、まだ出来る事がある筈だ

言っただろ
武器ならある
俺達がいる

さぁ、悪ガキを懲らしめにいこう



(「――全部嘘だった―なんて最悪の想像よりはマシだな」)
 生きている。
 連れていかれて、もうすでに命がないという可能性もあった。
 そういう輩もいることをダグラス・ミーティア(ROGUE STAR・f22350)は知っているからこそ、声には出さずに安堵した。
 此処にいる者は優しい――なんてことはない。
(「人を試して何がしたいのやら」)
 何かを期待をしているのか、それとも逆か。
 なんにせよ、この上にいるものの考えは、今はわからぬところだ。
 ダグラスは階段の上へと視線を向ける。
 敵を追いかけたくはあるが、ひとりでここにいるわけではない。 盾になると約束したからな、と男と共にあるのだから。
 そして人々が集められている場所で男はすぐさま、娘を見つけていた。
 帰ろう、助けにきたという男の手を娘はとらない。
 男はどうしたらいいのだろうかと苦い顔だ。
「折角顔が見られたのに浮かねぇな」
 助けを拒むのは、とダグラスは娘へと目を向ける。
 本心はきっと、共に帰りたいだろう。けれどそうできない、そうしない。
 その理由があるならひとつだ。
「……相手の為、か」
 それは優しさで、強さで――間違っているとは、俺には言えないとダグラスは思う。
 それもまた、ひとのとる正しさの一つなのだろう。
 だが――
「それじゃ、誰も救われないだろ」
 そう言って、肩の力を抜くといいと娘へと紡ぐ。その身が強張っているのが目に見えて明らかだからだ。
「なぁ、此処に来た皆はあんた達を助けに来たんだ」
 生きていて欲しいと。一緒に生きたいと、そう願って。
 村の人々の姿。父親のようにやってきたものはほかにもいるのだと娘はやっと、他の者達を見た。
「……あんた達は違うのかい?」
 その言葉に娘は首を横に振る。
 けれどその唇が言葉をとかたどるのをダグラスは止めた。
『でも』と『だけど』は要らないと。それよりも、必要なのは。
「一番の願いは何だ? その為に、まだ出来る事がある筈だ」
 ダグラスは娘と男を交互に見る。
 男へと向かっては、言っただろと軽く笑って見せて。
「武器ならある、俺達がいる」
 恐れる事は何もないのだと。
 そして、僅かの間をおいて――娘は帰りたいと、ほろりと涙一粒落とした。
 また一緒に、決して楽な生活とは言えないけれどあの日常に戻りたいと。
 その言葉にダグラスはわかったと頷いて二人に背を向ける。
 向かう先はひとつ。
 さぁ、悪ガキを懲らしめにいこうと、その足を最上階へと向ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『供花伯・ミカ』

POW   :    はいまわる虫
命中した【アネモネ】の【花弁】が【鋭い口針を持った猛毒の暗殺虫】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    夜がはじまるとき
【影から吸血蝙蝠の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    黒犬の舞踏
自身が【嫉妬心や痛み】を感じると、レベル×1体の【黒妖犬】が召喚される。黒妖犬は嫉妬心や痛みを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は城島・侑士です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 階段を上がっていく――その先は、外であった。
 いや、建物の中ではあるのだが四方は壁で囲われているわけはなく、大きくひらけた窓のようになっている。
 かつては、時を知らせる鐘があったと思われる作り。
 そこでこの件を仕組んだものは――供花伯・ミカは薄く笑ってみせた。
「たくさんの人がやってきたなとは思っていたんだよね」
 だれも来ないときだってある。僕は、迎えに来たらちゃあんと帰してあげるつもりなのにねと、本当にそう思っているのかどうかはわからぬような声色で紡ぐのだ。
「先に連れてきた人たちは見た? 僕の言葉にしっかり毒されてる彼らはどうだった?」
 勝手に帰ったら、またあの村に言って残っているものを殺すよ、とか。
 君が逃げたら君が村を、大事な人を滅ぼすんだよ、とか。
 うまく逃げてもどこまでも追いかけて行って、殺してあげるね、とか。
 紡いだ言葉はいくつかで、そんなにひどいことを囁いてはいないんだけれど――と、彼はうなる。
 あれくらいの言葉で心縛れちゃうんだよね、人はと。
 それは恐ろしい思いをした後だからというのもあるのかもしれない。恐怖の中で己より強いものが向ける言葉、悪意に立ち向かえるものは少ない。
 けれど、そんな中からも――ただのひとが、大切な人を取り戻したいとやってくる様はいとおしささえある。
 その者達が持つ絆を思ってミカは瞳細める。
「迎えにきたひとたち、絆があるんだね。いいな、とてもいいね……」
 しかし、嗚呼――なぜだろうか。
 それがとても羨ましく妬ましく。
 邪魔したく、なってしまう。
「――君たちも、そういう相手がいたりする?」
 此処には一人できたの? それとも誰かと一緒?
 どこかに、大切な人をおいてきてる?
 君がいなくなったらその大切な人はどんな顔を、するのかなぁ――と、新しい楽しみを見つけたような表情を浮かべる。
 その絆を、頂戴とは言わないのだ。ただそれを壊してしまいたいとうっそりと紡ぐ。
 お揃いの、苦痛の表情を浮かべてもらうのもいいかもしれないなんて言いながら。
 身なりの良い少年の恰好の、供花伯は子供の無邪気さのままに試してあげるという。
 その絆が、僕の目にかなうものかをと。君の持つそれを教えてと、言って。
西院鬼・織久
俺に、我等に如何なる言葉を弄しても無駄ですよ

我等に必要なものは唯一つ
我等が怨念滾らす糧、狩るべき敵の血肉のみ

【行動】POW
戦闘知識を活かす為五感+第六感+野生の勘を働かせ敵の行動を把握し予測、常に隙を狙う

先制攻撃+ダッシュで接近、二回攻撃+なぎ払いで斬撃に加え纏った怨念の炎(殺気+呪詛+生命吸収+継続ダメージ)を与える

敵の攻撃を残像+フェイントや武器受け+体術を利用したカウンター+なぎ払いで体勢を崩す。
体勢を保つなら早業の夜砥で捕縛し二回攻撃+なぎ払い
、串刺しでとどめ

敵UCが回避できなければUCで焼き尽くし、突き刺さった物も同じく
痛みは各種耐性と精神系技能で耐えられるのでダメージに構わず反撃



 供花伯・ミカと向き合う。
 西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)はただ、静かに言葉を向けるのだ。
「俺に、我等に如何なる言葉を弄しても無駄ですよ」
 西院鬼の怨念と共にある織久。個を捨てた織久は殺意と狂気を見の内で渦巻かせながら視線を向けている。
 我等に必要なものは唯一つ。
 我等が怨念滾らす糧、狩るべき敵の血肉のみ。
 目の前のものは、狩るべき敵だ。
 ミカは我等? と首を傾げ、そして微笑んだ。
 一人なのに――誰かが一緒にいるんだねと。
 その言葉を向けられたのと、織久が走りこんだのはほぼ同時だろうか。
 ミカが攻撃を仕掛けてくる前に。
 織久は隙を見つけて動いたのだ。己の五感のすべて――それ以上のものを働かせて仕掛ける。
 大振りの攻撃は避けられそうだ。
 射程を伸ばす。百の異形の血肉で鍛えた赤黒い槍を突き出し、そのままなぎ払い斬撃を。
 その上には怨念の炎を纏わせて二度、払う。
 それを紫色の花びらで受け止めだ。
 その花弁は猛毒の暗殺虫と、焼けながらもなり織久へと襲い掛かる。
 その数は多く、完全にかわし切る事はできなかった。
 織久は痛みを感じながらも、炎を一層激しく燃え上がらせ焼き尽くしていく。己の身に刺さったものも、同じように。
 痛みは、ダメージは受けている。
 織久は無念の死を遂げた者の髪と血を撚り合わせて加工し砥上げた超極細の糸、夜砥を放ってミカを捉える。
 その糸が動きを制し、織久はさらに攻撃をしかけ、百貌でもってミカの身を突き刺した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
貴方が彼等に出れぬよう吹き込んだのですね
人の心を弄んだか否か、それさえ判れば良い
刃を抜くにはそれだけで十分

刃を構え、駆け出す
早業の2回攻撃から先制攻撃、その後は刃が届く範囲で距離を維持
花弁はなぎ払いと衝撃波にて対抗
虫にも同じ方法で攻撃すると見せ掛けて、そのまま攻撃を受けて反撃に転じる
猛毒は毒耐性、針は激痛耐性にて耐え、全ては覚悟の上
そのまま攻撃力重視の抜刀術『風斬』にて虫ごと敵を斬る

彼等の痛みを、悲しみを思えば、些細なもの
戦えぬ彼等の代わりに、この刃を振るえるのならば

それでも私は消えるつもりはありません
どちらも失いはしない
奪えるものならば、奪ってみるがいい

痛みを知らぬ、持たざる者よ


篝・倫太郎
【華禱】
問う言葉の端々に怒りが滲んでる
憤りのまま、胸の内にあったなら……
その怒りは夜叉を呼んだだろう

けど、怒りとして発露しているならいい
怒りをちゃんと相手への怒りとして示すのは
この人の変化の一つだから

防御力強化に篝火使用
花弁と虫は衝撃波と吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払い
風の神力も使えるなら使ってく

なぁんで、受けようとするかな
あんたの刃は俺の刃でもあるんだぜ?
花弁と虫は俺に任せて、そいつに集中してくれよ

俺の神経、無茶苦茶逆撫でしてンだよ、そいつは

敵の攻撃はオーラ防御で防ぎ
毒耐性と激痛耐性で凌ぐ

夜彦の言葉に笑う
そうだな、奪えるモンなら奪ってみな?
てめぇ如きにどうこう出来るほどヤワじゃねぇからよ



 もう、戦っている。
 その姿を目にし、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)はその双眸を細めた。
 少年だ。身なりの良い少年。けれどそれは、オブリビオンなのだ。
「貴方が彼等に出れぬよう吹き込んだのですね」
 ミカは、その言葉に瞬く。
 吹き込んだ? と首を傾げて――笑うのだ。おかしなことを言う、というように。
「ただ思ったことを言っただけだよ」
 どうとるかは、その人次第でもある。そんな返しに夜彦はひとつ、息を吐いた。
 人の心を弄んだか否か――それさえ判れば良い。
 刃を抜くにはそれだけで十分と、瞳はまっすぐにその姿を捉えていた。
 夜彦の言葉の端々に怒りが滲んでいる。それを篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、彼の視線を追いつつ感じていた。
(「憤りのまま、胸の内にあったなら……」)
 その怒りは夜叉を呼んだだろうと、倫太郎は思うのだ。
 けれど、怒りとして発露している。それなら、いい。
 怒りをちゃんと、相手への怒りとして示すのは――そうできるのは、夜彦の変化の一つなのだ。それは己が与えた変化でも、あるのだろう。
 刃を構え、夜彦は駆ける。言葉を交わす必要などなかった。
 ひらり、ひらり――アネモネの花弁が躍って猛毒の暗殺虫となる。
 その花弁の中を縫うように一閃、夜彦が攻撃放つ。衝撃波で薙ぎ払って刃を届かせるのだ。
 そして、それがひとりでは弱いならと倫太郎も同じように華焔刀を振り払った。
 倫太郎は己の守りを堅めつつ、風の神力で吹き飛ばす力を強めた。
 それは――夜彦が、虫たちをそのまま受けて突っ込もうとしたからだ。
「なぁんで、受けようとするかな。あんたの刃は俺の刃でもあるんだぜ?」
 それを、止めて倫太郎は問う。
 彼等の痛みを、悲しみを思えば、些細なもの――そう、夜彦は思っていた。
 戦えぬ彼等の代わりに、この刃を振るえるのならばと己の身の痛みなどと。
「花弁と虫は俺に任せて、そいつに集中してくれよ」
 倫太郎は夜彦に言葉向ける。
「俺の神経、無茶苦茶逆撫でしてンだよ、そいつは」
 その苛立ちを感じ、貴方の分も、乗せて戦いましょうと夜彦は返す。
 再びミカは毒虫を飛ばす。それを倫太郎は振り払った。
 かわして、おそってくるものもいるが――それくらいは、絶えられる。
「君達も仲良しだね。その絆、消してしまいたいね」
 硝子のように砕けたら、花のように散ったらとてもきれいだろうね、とミカは笑う。
 奪ってしまおうか、と。
「それでも私は消えるつもりはありません。どちらも失いはしない。奪えるものならば、奪ってみるがいい」
 夜彦の向ける言葉に倫太郎は笑う。
「そうだな、奪えるモンなら奪ってみな? てめぇ如きにどうこう出来るほどヤワじゃねぇからよ」
 痛みを知らぬ、持たざる者よと、倫太郎が作った道を夜彦は駆ける。
 放たれる刃の一閃。風の如く――それはミカの体の上を走り抜け傷を刻んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
……どうせ黙っててもバレるんだろうな。
確かにおれにとっちゃ、祖母ちゃんは大切だ。おれが故郷に二度と帰らねえなんてことになったら、そりゃあ悲しむだろうし、そんな想像もしたくねえ。……だからこそ、テメエみたいなやつにはおれと祖母ちゃんの絆は壊させねえ。
怖ぇけど……いや、怖ぇからこそ、テメエには負けられねえんだ!

ユーベルコードで自分や味方の能力を強化しつつ、おれ自身も〈援護射撃〉で仲間のサポートをしたり、奴さんの攻撃を〈フェイント〉や〈目潰し〉〈マヒ攻撃〉を仕掛けて妨害したりする。
黒い犬を呼び出して攻撃もされるだろうけど、〈第六感〉で攻撃のタイミングを〈見切り〉、〈オーラ防御〉とかで食い止めるぞ。



 ミカの身の上に走る剣戟。
 仲良く攻撃してきて、とふつふつと彼は何かを心の内に抱いていた。
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はその姿を目に――視線を強める。
「……どうせ黙っててもバレるんだろうな」
 言って、視線を巡らせる。
 そしてミカもまた嵐と対し、ああと瞳細める。
「君もだれかいるんだよね。誰なのかな、教えてよ」
 心の内からふつふつわきあがる――誰か、大切な人がいるということにミカが感じるのは嫉妬。
 それが黒妖犬の姿となって現れる。
「確かにおれにとっちゃ、祖母ちゃんは大切だ」
「ふぅん、祖母ちゃん――」
「おれが故郷に二度と帰らねえなんてことになったら、そりゃあ悲しむだろうし、そんな想像もしたくねえ」
 嵐は紡ぐ。
 大切な祖母。その表情を曇らせるわけにはいかないと知っていることを。
 そして簡単に壊される絆でもないことを。
「……だからこそ、テメエみたいなやつにはおれと祖母ちゃんの絆は壊させねえ」
 怖ぇけど――と、思う気持ちもある。
 けれど嵐はそれを振り払う。
「いや、怖ぇからこそ、テメエには負けられねえんだ!」
 嵐は道化師を召喚する。その道化師は笛を構え、音を奏で始める。
「魔笛の導き、鼠の行軍、それは常闇への巡礼なり。……耳を塞ぐなよ?」
 その音に共感するものは、戦う力を増す。
 その犬たちは何も感じないのだろう。とびかかる、その様がやけにゆっくり見えた気がした。
 嵐は攻撃のタイミングを見切って身体の位置をずらし黒妖犬たちの攻撃の間を抜けた。
 そしてスリングショットにその辺にあった小石掴んで構えミカへと放つ。
 ただの小石だ。けれどそれは速さを得てミカの顔横を削いだ。彼が小さな舌打ちを落とすのが聞こえる。
 嵐は隙を見つけつつ黒妖犬たちを躱して攻撃を続けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……そうかい。
お前さん、「大切な人がいなくなった奴の表情」を見たいってか。
そうか、そうか。
それならしっかり真っ直ぐ拝みやがれ。
アタシを。
人ならざるものとなった無二の友を、
自らの手で葬ったアタシの貌を。

アイツはなぁ、最期も恨み言一つ零さなかった。
「ありがとう」は聞こえたけれど、
涙でぐちゃぐちゃすぎてアタシもよく覚えていねぇ。

だから。直接テメェが聞いてきな。
骸の海で、アタシのダチに。

憤りのままに、周囲に『範囲攻撃』の如く電撃を迸らせ、
蝙蝠どもを痺れ落とす。
その間に朗々と、黄泉送る聖句を紡ぎ上げるよ。
さあ、この世界との絆を手放す時だ。
【黄泉送る檻】に囲われて、逝きやがれ。



 それは楽しそうに笑う子供の姿をしていて。けれど、求めていることはやはり、人の求める幸せとは違うものなのだ。
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)はミカの言葉を己の内でかみ砕いて、静かに掃き落とした。
「……そうかい」
 お前さん、『大切な人がいなくなった奴の表情』を見たいってか――多喜は確認するように、問いかける。
「そうか、そうか。それならしっかり真っ直ぐ拝みやがれ」
 アタシを、と多喜は己の胸に手を当てる。
「人ならざるものとなった無二の友を、自らの手で葬ったアタシの貌を」
 その言葉に、ミカはぱっと多喜の方を見た。
 何があったのか、自らの手で葬った。そこにどんな気持ちがあるのかに好奇心を向けるように。
「自分で? ふふ、絆をきって殺した? もっと聞かせて」
 多喜へと、ミカは擽るように声向けるのだ。
 それは心配や、思う心などなくただ抉るだけの響き。
「アイツはなぁ、最期も恨み言一つ零さなかった」
 多喜は僅かに瞳眇める。
 その時のことをよくは覚えては、いないのだ。
 涙でぐちゃぐちゃすぎて、よく覚えていない。
 冷静でいる。そんなことはまったく、できるはずもない。それだけはわかる。
「『ありがとう』は聞こえたけれど、涙でぐちゃぐちゃすぎてアタシもよく覚えていねぇ」
 だから、と拳を握る。
「直接テメェが聞いてきな。骸の海で、アタシのダチに」
「いいよ。むしろ君が、会いにいきたいんじゃないの?」
 きっとそうだよね。なら、僕が葬ってあげるとミカは影より吸血蝙蝠を無数に呼び出しまずは多喜へと向けた。
 けれど、多喜は――電撃を放つ。
 それは吸血蝙蝠を痺れ落とし、そしてミカの周囲を巡りまわった。
 その間に朗々と、黄泉送る聖句を紡ぎあげる。
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
 さあ、この世界との絆を手放す時だと多喜は視線向ける。
 絆を、ひとびとが大切にしている絆をおもちゃにしていいわけがないのだ。
 この多喜はこの檻に囲われて、逝きやがれと言葉向ける。
 雷撃の檻は激しく光を放ち、爆ぜるように輝いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日下部・舞
ミレディ君(f00296)と参加

猛り吠える彼が放つ銃声が戦いの合図
影を滑るように疾駆、夜帷を【怪力】任せに叩きつける
けど、私はあくまで牽制と援護

ミレディ君の盾として彼を【かばう】
ダメージは【肌】の機能で痛覚を遮断
【継戦能力】を発揮しながら、

「私は大丈夫。あなたは私が守るから」

彼には大切なひとがいるのか
クールな佇まいから一転、感情を爆発させる姿はとても他人事に対するものじゃなかった
吸血鬼も察したのか、複雑な感情が見て取れる

現れる黒妖犬がミレディ君に飛びかかる

「その力ならさっき見たわ」

戦っているのは私たちだけじゃない
手の中の夜帷を呼ぶ

「目覚めなさい」

【抹消】を発動

全ての黒妖犬を闇へと還す


シェーラ・ミレディ
ミス日下部(f25907)と同行

大切な人
僕にとっては例えば姉だ
強くて頼れる姉でも、僕を失えば泣くぐらいはしてくれるだろうが
しかしそれだけでは終わらない人だ
きっと涙を拭って、思い出に変えてくれる
だが、だからと言って

「他人に、安易に壊させるものか──!」

道中助けた人々を思い出す
理不尽に大切な人を奪われて、失って。嘆いていた彼ら
あんな状況を作り出したのはお前だろう──!!

隣に同行者がいるのも忘れ、怒りに任せてUCを発動
精霊銃を乱射する

反撃から庇われて、ようやく彼女の存在を思い出す
「嗚呼、ありがとう」
深呼吸をしてから頼りにしていると伝え、改めて敵と対峙
犬が消えて開けた視界、見えた敵の顔に弾丸をぶち込む



 ミカの言葉は、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)の心に響いていた。
 大切な人。
(「僕にとっては――例えば姉だ」)
 強くて頼れる姉でも、僕を失えば泣くぐらいはしてくれるだろうがとシェーラは思う。
 しかし、それだけでは終わらない人であることも、シェーラは知っていた。
 きっと涙を拭って、思い出に変えてくれる。だが、だからと言って――目の前にいる敵に。
 道中助けた人々を思い出す。
 あんな、理不尽に大切な人を奪われて、失って。嘆いていた彼ら。
 あんな状況を作り出したのはお前だろう──!!
 ふつりとシェーラの心に湧き上がるものは苛烈な熱さをもっていた。
「他人に、安易に壊させるものか──!」
 傍らに日下部・舞(BansheeII・f25907)がいるのも忘れ、怒りのままの声は、戦いに踏み入る合図。
 精霊がシェーラの傍に侍り、纏う衣は変わっていく。そして四丁の精霊銃を乱射してミカを狙うのだ。
 その攻撃を、ミカは楽しそうに受けている。
 けれどその銃弾の間を、影を滑るように疾駆し片刃の長剣を、夜帷というUDCを素材にしたそれを舞が持つ力のままに叩きつけた。
 その一撃になにか、感じたのか。
 ミカは身を引いて受けるのを避けた。地にめり込むそれに、ミカは危ないと笑うけれど銃弾の嵐はやまず。
「怒っちゃうほどの何かがあるんだね」
 それも壊れてしまえばいいのにと、さらりとミカは零すのだ。
 そしてやられっぱなしではと――その心に感じた物より生み出す黒妖犬がシェーラと舞へと襲い掛かる。
 舞は、すぐさま身を翻す。
 シェーラはいま怒りの中にある。彼の盾として――かばう。
 痛みは、肌の機能で遮断して長く戦い続けるための態勢を己の内で整える。
「私は大丈夫。あなたは私が守るから」
 黒妖犬がその牙を、爪を向ける。そして、シェーラははっとするのだ。
 かばわれ舞が傍らにいたことを思い出す。
「嗚呼、ありがとう」
 深呼吸をひとつ――シェーラは頼りにしていると伝え、舞と共にミカへと視線を向けた。
 その底に怒りはあるものの、敵意はあるものの、思うままに仕掛けるというようなことはもうなさそうだ。
 舞はシェーラを見詰める。
(「彼には大切なひとがいるのか」)
 クールな佇まいから一転、感情を爆発させる姿はとても他人事に対するものじゃなかったと、舞は思う。
 今も、感情は抱えて。しかし冷静さが戻っているのはわかるのだ。
 目の前のミカも何か察したのかというところ。
 けれど攻撃をやめるということはなく、再びいけと黒妖犬を差し向けてくる。
「目覚めなさい」
 舞は己の手にある夜帷を呼ぶ。
 夜帷の封印を解除して、放つものは抹消の力。
 とびかかる黒妖犬たちの姿がざらりと消える。闇へと、還したのだ。
 舞は牽制と援護を。この先はシェーラに任せている。
 とびかかる黒妖犬たちの姿が消え去った瞬間にはもう、シェーラは精霊銃を構えていた。
 その顔に向けて放たれた弾丸。狙いは顔だ。その弾丸の軌道をミカは見切っては、いたのだ。
 けれどよけきることはできずその弾丸はミカの顔の一部を抉っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【月光】

僕には何も無い
そう思っていた

君も何も居なかったのだろう
大切に思う人、大切な人達
昔の僕ならきっとその気持ちはわかったかもしれない

僕を虫から護り、僕の手を強く握る小さな手
とても暖かい僕の娘

ルーシーちゃん、助けてくれてありがとうねぇ
あの時の僕の前に居なかなった人達を思い出す

また僕のせいで君が傷つくのは嫌だよ
彼女を傷をつける貴方を許さない

助け助け合うそれが君がいう絆
いや君はどんな絆でも納得しないだろう
だって君にはそんな相手がいませんものね
相手を怒ら嫉妬させて【獄導】の無数の手が敵を地獄へと連れて行く

えぇ、ルーシーちゃん


ルーシー・ブルーベル
【月光】

かわいそうな人

絆がないことが、ではないの
育むことも
欲しがることもあきらめて
ただ壊していることが、よ

ひらり舞う花弁に思考は放って
ゆぇパパと虫の間に身体をねじ込む

鋭い針より頭を占める
村に来た時のパパの強張った手の感触
もう一度あの手を
顔をさせてしまったら

――いや
倒れる訳には

咄嗟に放つ【勇敢なお友だち】
他のぬいぐるみ達も協力して
触れる前に虫達をパパとルーシーから弾いて
それでも針が届いたなら耐性あるオーラで凌ぎましょう

ごめんなさいね
けれど
パパが傷ついたらいやなのはルーシーもなの
でも、今も傍にいるでしょう?
繋いだ手を見せ

あなたが撒いた言葉の毒は
あなたを倒す事でしか解けない
やりましょう、ゆぇパパ



 かわいそうな人、とルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)はぽとりと零した。
 かわいそう、と紡いだのは――絆がないことが、ではない。
 ルーシーは言葉続ける。
 育むことも、欲しがることもあきらめて。
「ただ壊していることが、よ」
 ルーシーのその言葉を、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は傍らで聞いていた。
 僕には何も無い。
 そう思っていた――。
 きっと、あのミカもそうなのだろう。
 君も何も居なかったのだろうと、ユェーは視線向ける。
 大切に思う人、大切な人達。
 昔の僕ならきっとその気持ちはわかったかもしれない――けれど、今は。
 手の温かさが傍にある。
 ひらりと舞う紫色の花弁は暗殺虫と変わった。
 その、虫たちがユェーの方へと向かう。
 ルーシーは傷つけさせないと虫とユェーの間に体をねじ込んだ。
 ルーシーの頭を占めるのは向けられた鋭い針ではなく。
 村に来た時、繋いでいた手から感じた感触。強張った、その感触がルーシーの中に響いていた。
(「もう一度あの手を、顔をさせてしまったら」)
 それは――いや。
 倒れる訳にはいかないと、ルーシーはその手から咄嗟に大きな角持つ羊のぬいぐるみを放った。突進するぬいぐるみに続いていく子たちもいる。
 暗殺虫を弾いて、ルーシーと、そしてユェーを守るのだ。
 きゅっと、繋ぐ手の力が強まる。
 それは小さな手だ。とても暖かい僕の娘、とユェーの眦は柔らかに。
「ルーシーちゃん、助けてくれてありがとうねぇ」
 あの時の僕の前に居なくなった人達を思い出す――そう思い、ユェーはルーシーへと、言葉向ける。
「また僕のせいで君が傷つくのは嫌だよ」
 その言葉にルーシーは、ごめんなさいねと言って。
「けれど、パパが傷ついたらいやなのはルーシーもなの」
 でも、今も傍にいるでしょう? と言って繋いだ手を見せる。
 あたたかな、その小さな手を。その繋いだ手を瞳に映し、ユェーはそうだったねと小さく笑って――ミカへと視線を向け、
「彼女を傷をつける貴方を許さない」
 ユェーは、言い放った。
「助け助け合う。それが君がいう絆」
 けれど、とその視線は冷たい。ミカは、その言葉を、ただそのまま受け止めているかのようだ。
 けれど、受け入れているわけではない。
 納得は、していないのだろう。それがわかってしまう。
「いや君はどんな絆でも納得しないだろう」
 ユェーはふるりと横に首を振ってルーシーへと微笑んだ。
 己には――ちゃんと、と。
「だって君にはそんな相手がいませんものね」
 こくりと、ルーシーも頷いて見せる。
 あなたが撒いた言葉の毒は、あなたを倒す事でしか解けない。
 ルーシーはそれを知っているから、ユェーを見上げて。
「やりましょう、ゆぇパパ」
「えぇ、ルーシーちゃん」
 仲良く、ふたりの間には何かあるのだと――思わせる間でもなく。
 ミカが抱いた気持ちは何だろうか。
 ざわりと、黒妖犬が飛び出し二人へと向かう
 けれどそれを引きずりこむのは、ユェーが召喚した地獄からの使者。無数の手が伸ばされ黒犬たちを掴み引きずり込む。
 そしてミカへもそれは伸ばされるのだった。
 半身、引きずり込まれ――ミカは舌打ちをしつつどうにか逃れる。その身は、纏うものは重ねられた攻撃ですでにくたびれて。
 身なりの良い少年の姿はもうなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と

『あれくらいの言葉』だと……?
あれほどの凄惨な破壊の果てに脅迫めいた言葉をかけられて、心惑わぬ者がどこにいる
愛ゆえに心を殺し、ひたすらに孤独に耐え抜く人々の苦悶を、貴様はそうやって高みから眺め嘲笑ってきたというのか
やはり貴様は生かしておく価値もないクズだ!

【怒れる狼王】は貴様を決して許さない
暗殺虫も、ヘルガを襲う黒妖犬も
俺の体から湧き上がる地獄の業火が全て焼き尽くしてくれよう

共に戦うヘルガや仲間たちの怒りを
そして愛する者のためにここまで来てくれた村人たちの嘆きを
全てをこの剣に込め、貴様に叩きつけてやる
業火を纏い、鎧をも砕く力を込めた魂の一撃で
貴様を骨まで打ち砕く!


ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と

ミカ、貴方は優しさも思いやりの心も『孤独を知るが故の絆の尊さ』も持っていないのね
だからそれらを持つ人々を妬み、奪い、心を壊して、仮初の優越感を得ようとする
なんて悍ましく、浅ましい

【英雄騎士団の凱歌】
敵がいかに卑劣な罠を張り巡らそうとも
共に戦う仲間たちの勇気と覚悟は、決して折れることはない

今日まで孤独に耐え抜いてきた人々の優しさを
彼らを取り戻すために恐怖を乗り越えここまで来た人々の強さを
たとえ戦う力はなくとも、村人たちの絆と願いは確かに受け継いだ
今この調べに乗せて、ヴォルフや仲間たちに力を与えて……!

ミカを倒し、心の枷を解き放って
一緒に帰りましょう
懐かしい場所へ



 猟兵達の攻撃が重ねられミカは傷を負っている。
 舌打ちして、人の心を弄んでいたような表情は今は削り取られていた。
「向きになって」
 本当にあれくらいの言葉で、と零す。
 その音をヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は拾い上げた。
「『あれくらいの言葉』だと……?」
 あれほどの凄惨な破壊の果てに脅迫めいた言葉をかけられて、心惑わぬ者がどこにいる、と怒りを露わにして。
「愛ゆえに心を殺し、ひたすらに孤独に耐え抜く人々の苦悶を、貴様はそうやって高みから眺め嘲笑ってきたというのか。やはり貴様は生かしておく価値もないクズだ!」
 吐き捨てる言葉。傍らでヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は静かに紡ぎ始める。
「ミカ、貴方は優しさも思いやりの心も『孤独を知るが故の絆の尊さ』も持っていないのね」
「なに、それ……」
「だからそれらを持つ人々を妬み、奪い、心を壊して、仮初の優越感を得ようとする」
 なんて悍ましく、浅ましい――ヘルガは言って、一呼吸。
 ヘルガは歌う。英雄騎士団の凱歌を。
 敵がいかに卑劣な罠を張り巡らそうとも、共に戦う仲間たちの勇気と覚悟は、決して折れることはないのだというように。
(「今日まで孤独に耐え抜いてきた人々の優しさを、彼らを取り戻すために恐怖を乗り越えここまで来た人々の強さを」)
 そう思いながらヘルガは、村の人々の姿を思い浮かべる。
 彼らは今まで、戦ってきたのだ。
(「たとえ戦う力はなくとも、村人たちの絆と願いは確かに受け継いだ、今この調べに乗せて、ヴォルフや仲間たちに力を与えて……!」)
 ヘルガは彼らのこれまでに思いを添えて、歌声を紡ぐ。
 そしてその歌を一番近くで、一番強くその身に受けるのはヴォルフガングだ。
「狼は忘れない。血族の誇りを、仲間の絆を。その想いを冒涜し踏みにじる者は、誰あろうと容赦はしない。地獄の炎に焼かれて消えろ!」
 ごう、地獄の業火が燃え上がる。それはヴォルフガングを包み込むが、その身を焼くことはない。
 その豪華は敵を燃やし尽くすためにあるのだ。
 怒れる狼王は貴様を決して許さない、とヴォルフガングは業火巡らせる。吹き上がる炎は、ミカが差し向けた暗殺虫も、そしてとびかかろうとする黒妖犬をも巻き込んで焼いていく。
「ミカを倒し、心の枷を解き放って」
 一緒に帰りましょう――懐かしい場所へ、とヘルガは歌のさなかに僅かに紡ぐ。
 ヴォルフガングは頷いて、そしてミカを見据えた。
 共に戦うヘルガや仲間たちの怒りを。
 そして愛する者のためにここまで来てくれた村人たちの嘆きを――ヴォルフガングは握りこんだ大剣へと込める。
 この思いを、すべてを貴様に叩きつけてやると踏み出した。
 ヴォルフガングは業火を纏い、鎧をも砕く力を込めた魂の一撃をミカへと向ける。
「貴様を骨まで打ち砕く!」
 ヴォルフガングは力の限り叫んで業火を迸らせ踏み込み、その手にある大剣を振り下ろした。
 その一撃はミカを捉え、その身の一部を潰し焼いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネウ・カタラ
絆はそんなに脆いものじゃない
どれだけ傷つけられても、縛られても、壊せない
だって心と心でつながってるから

――きみも、欲しかった?
俺にはあげられないけど
さびしいなら遊んであげる

大鎌を片手になぎ払い斬り伏せて
舞う花は見切りや起こした衝撃波で吹き飛ばす
虫に食らいつかれても痛みはぐっと堪える
苦しいのは、俺だけじゃないもの

絆を持つヒトたちはみんなきらきらしてて
見ているとあったかいきもちになる
俺は、絆とかもってないけど
だからこそ。それを守りたいって思うのかも
…うん。守るって。あのこたちと約束したから
もうここでおしまいにしよう

零れた血から手向けの刃を少年へ
きみの目にかなうものは見られた?
ねぇ、さいごにおしえて



 その絆、いいなぁと笑う。その身は戦いで傷を負いすでに万全のものではない。
 それでも楽しそうなのだ。まだ何かを、求めているように見える。
「本当に、壊して、決してしまいたい」
 そんなミカの呟きを、ネウ・カタラ(うつろうもの・f18543)は耳にして口を開いた。
「絆はそんなに脆いものじゃない」
 絆は――どれだけ傷つけられても、縛られても、壊せない。
「だって心と心でつながってるから」
 ネウは静かに言葉向ける。ミカは心と心? と首を傾げて問い返した。
 絆。心と心がつながっているからこそ、あるもの。
「――きみも、欲しかった?」
 ネウの言葉にミカは大きく瞬いた。
 欲しかった? それは――いとおしく。しかし己には無いものだから、目につくものは壊そうとしている。
 何か思う事があるのか、彼の動きは止まった。己の事を理解していないのを、しようとしているのか。
「俺にはあげられないけど、さびしいなら遊んであげる」
 その一瞬の合間に大鎌を片手でなぎ払い斬り伏せる。
 己の身を隠すようにミカは紫色の花弁をまき散らしたが、ネウはそれを大鎌で振り払い吹き飛ばした。
 その花弁は暗殺虫となりネウを襲う。突き刺さる針の痛み――けれど、その痛みは耐えられるものだ。
「苦しいのは、俺だけじゃないもの」
 ネウは戦いながらも思う。
 絆を持つヒトたちはみんなきらきらしてて、見ているとあったかいきもちになる。
(「俺は、絆とかもってないけど――だからこそ。それを守りたいって思うのかも」)
 そう思うネウはその姿を思い起こす。
 村で待っている子供たち。そしてその母。
 彼らがまた、寄り添えるように。ミカの向けた言葉が彼らの心に棘を残さぬように。
「……うん。守るって。あのこたちと約束したから」
 もうここでおしまいにしよう、とネウは己の身を削る。零れた血から、手向けの刃を生み出しミカへと向けた。
「きみの目にかなうものは見られた?」
 ねぇ、さいごにおしえてと問い掛ける。
 ミカは問いかけにそれは、と薄く唇開くのだけれども。
「どうだろう」
 はぐらかして答えようとは、しない。けれどそれは、答えとなる言葉がないのだろう。
 ネウはそっか、と紡いで刃をミカへと放った。
 痛みをもって生み出したそれはミカへと突き刺さりその力を削いでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダグラス・ミーティア
期待した何かは見られたかい?

…俺は、迎えに行けなかった側の人間でね
本当はあいつらにもお前にも
偉そうなこと言えねぇんだ
自分に出来なかった事を他人に期待するなんて
馬鹿な話だよな

遠く見る瞳に後悔と
守れなかった人を想う色を乗せ

…お前のそれと
俺のこれが同じとは言わねぇが

もう、引き裂かれるところは見たくねぇし
人の縁はそんなに脆くも弱くもないのだと
そう、信じたいのかもな

…絶望なら俺の顔で十分だろ
ここで終わらせようや

UC使用
攻撃は致命傷だけ避けて自らの力に換え
短期決戦狙いで突撃
会話でも気を引きつつ隙見て一気に距離詰め
戦斧で全力の一撃を

もしもお前も地獄に落ちるなら
いつか会いにいってやるよ

そんな縁も悪くねぇだろ



 刃に貫かれる。それを引き抜いて、投げて。
 ミカはひとつ、長い息を吐いた。痛みはあるのだろう。
 なんでこんなことに、というような表情だなとダグラス・ミーティア(ROGUE STAR・f22350)は瞳細めた。
「期待した何かは見られたかい?」
 軽く投げられた言葉にミカは期待するも何も、という表情だ。
 けれど、ダグラス自身にも何かあるのだとその表情から読み取って、ただただ黙っている。
 言いたいことがあるなら、言えばいいというように。
「……俺は、迎えに行けなかった側の人間でね」
 本当はあいつらにもお前にも、偉そうなこと言えねぇんだとダグラスは紡ぐ。
「自分に出来なかった事を他人に期待するなんて」
 馬鹿な話だよな、と――やけに、大きくその声は響いた気がした。
 ダグラスの、遠く見る瞳にあるのは後悔と、守れなかった人を想う色だ。
 だからこそ人を助け、間に合うのならばその様を目にしたくもあったのかもしれない。
「……お前のそれと、俺のこれが同じとは言わねぇが」
 己のそれは、少なくとも歪んだものではないだろう。
「もう、引き裂かれるところは見たくねぇし」
 人の縁はそんなに脆くも弱くもないのだと――そう、信じたいのかもなとダグラスは零す。
「……絶望なら俺の顔で十分だろ」
 ここで終わらせようや、と紡ぎダグラスはその身に漆黒の粘液を纏う。
 ミカの心を満たしてやる気はない。しかしその心に得たものは黒妖犬として現れ、ダグラスへと向かってくる。
 鋭い牙でかみつき爪を食い込ませ肉を契ろうとしてくるような。
 致命傷だけは避け、ダグラスはその痛みを自らの力へと換える。
 その手にある武骨な戦斧をきつく握りしめ、ダグラスは一気に距離を詰めた。
 それはわずかの隙の事。
「もしもお前も地獄に落ちるなら、いつか会いにいってやるよ」
 全力の一撃を戦斧に乗せてダグラスは振り下ろす。
 そんな縁も悪くねぇだろ、と――絆にこだわるものに、それを与えてやるために。
 戦いの中で紡ぐものもあると、ダグラスは伝えているのだ。
 絆とは違うものではあるがそれでも、何かになればいいと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティア・レインフィール
思い返すのは村の方々が悲しみ、苦しむ姿
湧き上がるのは、怒り

アネモネの花言葉を、ご存じですか
紫ならあなたを信じて待つ、なんて素敵な言葉がありますけれど
他にも色々あるのですよ
例えば儚い恋、恋の苦しみ、そして……見捨てられた

他人の絆が妬ましいのは自分はそれを持たない
もしくは失ったからではないですか
……あなたは誰に、見捨てられたのですか?

微笑を浮かべたまま紡いだ言葉は
村の方々の代わりの報復です

黒妖犬には悲愴の葬送曲を歌って対処をし
供花伯自身が向かってきたのなら
破魔と浄化の力を込めた鮮血のミセリコルディアで貫きます

――悪の領主は、英雄の剣によって打ち倒されたのです
物語の終盤の歌と共に



 敵の、ミカの姿を前にティア・レインフィール(誓銀の乙女・f01661)は思い返していた。
 彼もまた戦い傷を負っているが、それでも戦わねばならない相手。
 村の人々が悲しみ、苦しむ姿――目の前に居る者はそれを与えたものだ。
 そしてティアの心に湧き上がるのは、怒り。
「アネモネの花言葉を、ご存じですか」
 紫ならあなたを信じて待つ、なんて素敵な言葉がありますけれど、とティアは言う。
「他にも色々あるのですよ。例えば儚い恋、恋の苦しみ、そして……見捨てられた」
 ミカは向けられる言葉をふぅんと、興味なさげに聞いていた。
 だがティアは追いうち掛けるように、言葉続ける。
「他人の絆が妬ましいのは自分はそれを持たない、もしくは失ったからではないですか」
 その言葉には、僅かに反応を示し表情顰めたミカ。
「……あなたは誰に、見捨てられたのですか?」
 微笑を浮かべたまま紡いだ言葉。それは村の人々の代わりの、報復だ。
 ミカは、苛立ちは隠せなかった。その心のままに黒妖犬を呼び出しティアへと向かわせる。
 けれどとびかかるよりも早く、歌声は響くのだ。
「主よ。願わくば、彼の者の魂に永遠なる安息を――」
 悲愴な聖歌による魂の浄化を、黒妖犬たちへ。その姿は掻き消えて、ティアは破魔と浄化の力を込めた鮮血のミセリコルディアをミカへと向けた。
「――悪の領主は、英雄の剣によって打ち倒されたのです」
 物語の終盤の歌と共に、と突き出した銀の短剣がミカの身を貫く。
 深く突き刺さったそれが与える痛みは深かったのか。
 身じろいで、ミカは後ろに下がりティアが向けたその刃から逃げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
確かにあの兄弟には絆があったね
弟はひとりじゃ勝てもしない理不尽に立ち向かって
兄は弟を守ろうとして

おまえも引き裂かれたことがあるの?
絆が欲しくないの?
寂しいの?
戯れみたいに投げかける問い

おまえの問いにも答えてあげる
絆があるとすればこの金色の眼
大事なもらいものなんだ
ほかのきょうだいと同じように
『私』から―天使からもらった一部
でもみーんな同じ存在で神様だから
おまえが思うように引き裂いたりはできないかもね
ああ眼でも潰してみる?なんて
気が済むまでお好きなように
どうせ元通りになるけど、とは言わず
その内【影法師】が遊んであげるよ

私が居なくなったら?そうだね
…やっと終わるって思うんじゃないかな
それは願望混じり



 攻撃を受け崩れそうになるのをこらえる。
 絆が欲しい? 自分がというようにミカは零した。
 絆――それはどんな絆。目に見えぬというのに、そこにあるのかと。
 その言葉を、ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)は掬い上げる。
 絆は――様々な形があるのだ。
「確かにあの兄弟には絆があったね」
 弟はひとりじゃ勝てもしない理不尽に立ち向かって、兄は弟を守ろうとして。
 それは目には見えないものだ。けれど行動として、現れていると。
「おまえも引き裂かれたことがあるの?」
 問われて、ミカはそんなことはないと、言う。
 言うけれど――何かは、引っかかっているのかもしれない。
「絆が欲しくないの? 寂しいの?」
 戯れのように、ロキは投げかけて、嗚呼と零した。
 問いかけるばかりではつり合いがとれない? と。
 だから。
「おまえの問いにも答えてあげる。絆があるとすればこの金色の眼」
 大事なもらいものなんだ、とロキは己の瞳を撫でていく。
 ほかのきょうだいと同じように『私』から――天使からもらった一部。
「でもみーんな同じ存在で神様だから、おまえが思うように引き裂いたりはできないかもね」
 何かできることはあるだろうかと考えて、ロキは笑って見せる。
「ああ眼でも潰してみる?」
 なんて――気が済むまでお好きなようにと慇懃無礼に紡いで見せる。
 ミカは苛立ったのだろうか、それなら望みのままにというように花弁を暗殺虫に変えて差し向ける。
 痛みがある。突き刺されていく痛み。
 けれど構わないのだ。どうせ元通りになるけど、とは言わず――ゆらりと、傷負う事で天使を模った黒い影が現れる。
 その姿を金色の端に捕まえて、ロキは遊んであげるよと告げた。
 黒い影はロキの代わりにされたことを返すかのようにミカの身を抉る。
 そしてロキは、ふと思い言葉落とす。
「私が居なくなったら? そうだね」
 それは――きっとこう、思うだろう。
「……やっと終わるって思うんじゃないかな」
 願望混じりの想いを言葉としてぽつり、落として。
 ロキは己が受けた傷を撫でて思う。やっぱり、終われないと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
支配に抗えるか試すとか、
好むと壊したくなるとか…
まぁ解らんでも無いですが。
君と一緒にされますと、ちと不愉快。

無差別攻撃に、応じる此方もUC起動。
一糸を握る傷で己の寿命は守りつつの範囲攻撃。
鋼糸を拡げ、掛け、巻いて、
触れた蝙蝠を引き斬り墜とす。
すり抜けには構わず、狙うは吸血鬼。
…吸血とかこうも不快だった事、暫く忘れてたな。

『恐怖』は支配にうってつけ。
けれど絆を示せば、壊すだけ?

何と“見た目どおり”ガキときた。

秘した刃をも抜き、放つ
――唯式・幻

心縛れるのは、まさか人のみと思うてか?
『目にかなうものか』なんて大口叩いたんだ。
凌駕し得る力を示せよ?

骸の海への逝かせ方…
もっと愉しい大人の遊戯を見せようか



 攻撃が重なって肉を持っていかれる痛みはあるのだろう。
 ミカはその場に膝をつきかけた。
 その様を静かに冷たく瞳に映していたのはクロト・ラトキエ(TTX・f00472)だ。
「支配に抗えるか試すとか、好むと壊したくなるとか……」
 まぁ解らんでも無いですが、とは思うのだ。
 けれど。
「君と一緒にされますと、ちと不愉快」
 クロトは言って、一足踏み込んだ。
 その動きにミカは即座に反応して、足元踏み鳴らし生み出すのは吸血蝙蝠。
 一斉に四方八方に飛び襲い掛かるそれは暴風のようなものだ。
 その中を、鋼糸を拡げ、掛け、巻いて。
 触れた蝙蝠を引き斬りクロトは墜とす。けれどそれも数が多くすべてとはいかない。
 己の身に噛みつき、血を吸い上げられる。その感覚は小さなものだというのにやけに己の身に響く。
「……吸血とかこうも不快だった事、暫く忘れてたな」
 しかしその一つずつを相手どるのも手間だ。クロトは気にせず、ミカを狙う。
「『恐怖』は支配にうってつけ。けれど絆を示せば、壊すだけ?」
 ふ、とクロトは笑い零した。
 安易なと――何と“見た目どおり”ガキときた、と。
「――唯式・幻」
 それは秘した刃。それをも抜き、放つだけ。
 クロトはその瞳を、細めて――ミカへと、告げる。
「心縛れるのは、まさか人のみと思うてか? 『目にかなうものか』なんて大口叩いたんだ」
 凌駕し得る力を示せよ? と、笑って、暗色深まった瞳を輝かせる。
 その瞳、視界にとらえて。この近さだ、逃がす事はない。
 骸の海への逝かせ方……と、口端をわずかにあげて、笑ってみせて。
 もっと愉しい大人の遊戯を見せようか、とその指先を躍らせる。
 ひゅっと、風切る音は細い。けれどクロトの操る鋼糸はその身を斬り裂く一糸。
 どう動くのか――クロトはそれを見ている。
 どんな風に、このミカが崩れ落ちるのか。その一瞬を逃さぬように。
 もう終わりが近いであろうその姿を瞳に映していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

花弁は
貴方のなんだね
その花は…アネモネかな

どうして人の絆を壊したいの?
壊れるのを見て気持ちよくなりたい?
でも不思議じゃない
そんな奴は何度も見てきた
でも
彼は壊すのを楽しむというより羨ましいから壊してるように見える
貴方もそういう人が欲しい?
それともいたのかな?

アヤネさんと合わせて斬りかかる
二対一でごめんね
互いの負傷具合を見て立ち位置を変えて攻撃していくよ

毒耐性があるので虫に刺されても少しは平気…だけど気持ち悪いな
傷が増えてたらピンチをチャンスに変える
この痛みを倍返しってことで
花園の悪魔発動!
彼の一瞬の隙を突き思いっきりぶち当てる
私とアヤネさんの絆は貴方には絶対壊させやしないし壊れないから!


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
絆が欲しいのではなくて
ただ嫉妬して壊したいだけなのかな

意地悪く笑う
じゃあ壊れない絆を見せてあげるネ

ソヨゴ
打ち合わせ通りに

大鎌を袖口からずるりと引き出し構える
飛び込むソヨゴに寄り添い前方へ
ソヨゴが攻撃を受けそうになったら位置を入れ替えて庇う
僕が危なくなればソヨゴが庇い位置を交換
長く一緒に戦ってきたらこその連携で敵を翻弄する

敵が焦れて動きを乱してくれればこちらの思う壺

UC発動
黒犬は触手で縛って片端から刻んでやろう
可能なら敵を拘束して致命傷を与えたいところ

ソヨゴが怪我をしたら傷口に唇を当てて毒を吸い出す

君では僕らには勝てないネ
だって絆を持っていないもの

徒らに人の心を弄んだ報いは受けてもらうよ



 ミカは痛みに表情を顰めていた。猟兵達と戦って傷を負って苛立ちも募りはしているのだろう。
「花弁は、貴方のなんだね」
 城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は言葉向ける。
 ひらひら、紫色の花弁がずっと目についていた。
「その花は……アネモネかな」
 先程もその花の名前を紡がれた。ミカは、紫色の花を見てそんな名前だったかもしれないと思うのだ。
「どうして人の絆を壊したいの? 壊れるのを見て気持ちよくなりたい?」
 どうしてそんな風に思うのだろうかとも、思う。
 けれど――不思議な事ではない。
 そんな奴は何度も見てきた、と冬青は飲み込む。
(「でも」)
 彼は壊すのを楽しむというより羨ましいから壊してるように見える――欲しがっているように、見える。
「貴方もそういう人が欲しい? それともいたのかな?」
 問いかけにミカは歯噛みする。
 そんな相手が欲しい? いたのか?
 それは――わからないけれども、心にさざ波が立ったようだ。
 そしてアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)は冬青の言葉を傍らで聞いていて。
「絆が欲しいのではなくて、ただ嫉妬して壊したいだけなのかな」
 アヤネは意地悪く笑う。
 ミカはむっとしたような顔をして、けれど先ほどまで感じていた何かを手放してしまったようでもある。
「じゃあ壊れない絆を見せてあげるネ」
 ソヨゴ、とアヤネは名前を呼ぶ。
 打ち合せ通りにと、視線を合わせるだけで二人伝えあう。
 アヤネは大鎌を、袖口からずるりと引き出して構えた。
「二対一でごめんね」
 けれどここにはふたりできた。だからふたりでというのは道理だ。
 前に飛び込んで、詰める。
 足並みそろえて、同じ速さで。
 危なくなればかばうように位置を変えて、二人は攻撃畳みかける。
 長く一緒に戦ってきたからこそ、できること。
 それは簡単に成しているようにもみえるけれど、重ねてきたものがあるからこそだ。
 その動きに惑わされてきたのか――募るダメージもあるのだろうが、ミカの攻撃は精彩を欠く。
 舌打ちし、焦れているのもまたわかるのだ。
 黒妖犬を放ったミカ。それを自身の影から異界の触手を放ちアヤネは縛り、捕獲した片端から刻んでいく。
 そしてその黒妖犬たちとともに、暗殺中も細い針をもって向かってくる。
 虫に刺されても少しは平気――だけれど。
「気持ち悪いな」
 ぽつりと冬青は零す。すると向かってくる虫を、アヤネは払い飛ばした。気持ち悪いというなら、払い飛ばして触れ合わなければいいというように。
 冬青に刺さったその針、毒。アヤネはその傷口に唇寄せて毒を吸い出し吐き捨てる。
 そして冬青は、己の身から流れ落ちる血を代償に。
「この痛みを倍返しってことで、花園の悪魔発動!」
 冬青は真紅の翼持つ蝙蝠の大群を纏って――ミカへと踏み込んだ。
 ピンチはチャンスに変えるものだから。
「君では僕らには勝てないネ。だって絆を持っていないもの」
 徒らに人の心を弄んだ報いは受けてもらうよと、先に踏み込んだのはアヤネだった。
「UDC形式名称【ウロボロス】術式起動。かの者の自由を奪え」
 影から伸びていく複数の蛇に似た触手がミカの身を絡め取った。
 そして、代償を払い得た力も重ねて冬青は攻撃かける。
「私とアヤネさんの絆は貴方には絶対壊させやしないし壊れないから!」
 すべての想いを乗せて向けた一撃がミカを捉えていた。
 ただ痛みだけがある。ミカは膝をついて崩れ落ちた。
 何かを求めているのか、それがわからずにその身を散らせていくのだ。
 彼はまだ絆を知らぬまま、ここで何かを得る事はないままに。



 けれど、彼が滅びたことにより――得るものは人々にはあった。
 自分たちを脅かすものがいなくなったことにより、人々は手を取り合い喜び、それは時として涙として溢れて。
 手を貸してくれた、助けてくれた猟兵たちへも感謝し日常へと戻っていくのだ。
 ただの日常は、毎日当たり前にあるものではないと知り、大切ななのだということも知って。
 そしてなによりも、いつも傍らにあるものとの絆を一層深くして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月24日


挿絵イラスト