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誰が為に剣は煌めく

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者

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 騎士叙任式、それは一人の人間が一振りの剣となる瞬間。
 大聖堂では、今まさにその儀式が執り行われていた。
 壇上には姫が立ち、その背後からはステンドグラスで彩られた光が差し込んでいる。そんなどこか神々しくもある主君に、一人の若人は跪き頭を垂れる。
 そして姫から授けられた剣を手に、騎士となった若人は誓う。
「闇を掃う剣となり、人々を守る盾となりましょう」
 金と銀に輝く鎧をまとい、騎士は宣誓と共に煌めく剣を天高く掲げるのであった……。

●名もなき小さな村
「おー、大漁大漁!」
 川から網を引き揚げた青年は、ビチビチと跳ねる魚に満足げな笑みを見せる。青年の言う通り、大漁だ。
「村のやつらも喜ぶぞー」
 青年が言う村とは、この川の下流にある小さな村のことで、人類砦と呼ばれるものだ。
 それは、夜と闇に覆われた世界に射す一条の光。
 ヴァンパイアの支配から逃れた人類が人並みの生活を営み、未来を育む。そんな当たり前の希望に満ちた場所である。
 ともすれば、誰かがうそぶいた絵空事のような話であるが、それは確かに存在しているのだ。
「さーて、急いで帰るか」
 青年は手早く荷物をまとめると、かごいっぱいの魚を背負い、山を下っていく。彼の眼下には険しい山々が生み出した渓谷と、そこにひっそりと佇む小さな村が広がっていた。
 人口50人にも満たぬほどの小さな村であるが、そこには簡素ながらきちんとした家屋が立ち並び、作物が実る畑も存在している。人々が汗を流し、協力して日々の生活を送っているのだ。
 まだ名もなき小さな村であるが、そこには確かに明日へと向かう活力が満ちていた。
 ……しかし、闇に浮かぶ光ほど目立つものはない。
「ん? なんだ、あの煙……?」
 青年が見下ろす先には一筋の黒煙が立ち昇っていた。
 それは村から出ているようで、時間が経つにつれてどんどんその数を増やしていく。
「――まさかっ!!」
 青年は背負っていたかごや荷物を放り出し、急いで山を駆け降りる。
 自分の勘違いであってくれ。そう願いながら、村へと走る青年。だが、その願いも空しく、村では予想通りの惨劇が巻き起こっていた。
 真っ白な外套と覆面に身を包んだ怪しげな集団が村を取り囲み、火矢をけしかけ、逃げ惑う人々を切り伏せていたのだ。
 家屋は赤々と燃え、畑は踏み荒らされ、人々は血の海に沈んでいく……。
 そう、青年が見た黒煙は、オブリビオンの襲撃を告げるものであったのだ。
「ちくしょう! どうして! やっと……やっと掴んだ幸せだってのに!!」
 村にたどり着いた青年は、目を覆いたくなるような惨状を目の当たりにし、この世界を呪う。そして、この集団のボスであろう存在に憎悪の目を向ける。
 そいつは朽ちた鎧を身にまとい、折れた剣を手にしながらも、周りの兵隊たちとは一線を画す、まるで強靭な騎士のような風格をまとっていた。
「……お前たちさえ、いなければ!」
 地面に落ちていた鍬を拾い、青年は眼前の騎士へと跳び出した。
 そしてその勢いのままに鍬を一気に振り下ろす……が、人間の力がオブリビオンに通じるはずもない。
 くすんだ金と銀の鈍い光を放つ鎧に阻まれ、鍬はいとも容易く砕け散る。
 そして、騎士は背中から闇の翼を広げ、剣を天高く掲げた。
「クソ、何なんだよ……お前は!!」
 青年がそう叫ぶのも無理はない。あろうことに、騎士の剣は眩いほど真っ白な光を放っていたのだ。
 そして、天高く掲げられた煌めく剣は、世界に抗わんとする者へと振りかざされるのであった……。

●グリモアベース
「……というわけで、この渓谷の小さな村を救ってほしい」
 自分が視た予知を語り終えたノイッチ・メイア(引籠りの妖精・f26108)は集まってくれた猟兵たちを見渡し、改めて今回の目標を説明する。
「正確には、ヴァンパイアによって送り込まれたオブリビオンの撃退、それが今回の目標だね。まずは白い外套の兵隊共を倒し、その後ボスと思われる騎士との戦闘、という流れになると思う」
 つまりは敵のせん滅。作戦としてはいたってシンプルだ。
「村の人たちにはあらかじめ避難しておいてもらうから、周りは気にせず思う存分戦えるし、特に難しいことは何もない。……けど敵の素性は少し複雑かもしれないね」
 ノイッチはそう言いながら小さくため息をつく。
 人類砦の一つがオブリビオンに襲われるというだけでも憂鬱な話だというのに、まさかその襲撃者が、かつてダークセイヴァーを守ろうとしていた兵隊や騎士たちの姿で現れるとは……。
「……この世界は本当に皮肉だよ」
 過去があるから未来がある。それは当たり前のことだ。
 世界は時間を消費することで流れ、今は過去と化し、そして未来が紡がれる。
 そうやって過去を積み重ね、受け継ぎ、人々は生きているのだ。
 世界に抗わんとする者たちの意志が脈々と受け継がれ、いつしか人類砦という希望を紡ぐに至ったように。
 ……だが、この世界は、時にその過去が未来を否定する。
「きっと彼らは、失ったモノで世界を埋め尽くしたいんだろうね」
 それはオブリビオンの本能か。それとも守れなかったものをもう一度守るためか。
 その真意は分からない。
「けど、相手が何であろうと、誰であろうと。ボクらのやることは変わらない」
 未来を守るために闘うのだ。
 例えそれが、かつては同じ志を有していた相手だったとしても……。


マヨナカ
 初めまして、マヨナカと申します。
 今作が初投稿となります。よろしくお願いします。

●概要
 第一章『集団戦』
 統率の取れたオブリビオンの兵隊たちが相手です。
 村に進軍する兵隊たちの前に立ちふさがり、蹴散らしてください。

 第二章『ボス戦』
 兵隊を蹴散らすとボスが登場します。
 光と闇の相反する属性を使う騎士が相手です。

 第三章『日常』
 戦闘終了後、周囲の警戒と村のケアのために猟兵は滞在します。
 そして見回りをしていると、忘れ去られたかつての戦士たちのお墓を見つけます。
 過去となった者たちに、何か弔いをしてみるのもいいかもしれません。

 ※第一章・第二章ともに指定がない限り村の外で闘いますので、周りを気にする必要はありません。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『信仰し進軍する人の群れ』

POW   :    人の群れが飲み込み、蹂躙する
【槍を持ち一斉突撃を行うこと】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    全てを焼き払い、踏みつけ進軍する
【持ち帰られた弓から放たれる斉射】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【火矢】で攻撃する。
WIZ   :    守るべき信仰の為に
対象のユーベルコードに対し【集団による防御結界】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 険しい山々を越え、道なき道を歩み、白の軍団は渓谷にある小さな村へと進軍を続けていた。
 目標が近づくと、白の軍団はいくつかの隊に別れ、それぞれ村を取り囲むように広がりながら進軍していく。
 その動きに遅滞はなく、一つの大きな軍団は、行軍を続けながらスムーズに分隊へと別れていく。
 陣形を保ちながら行軍する様を見ていると、これは集団で一つのオブリビオンなのではないかとすら思えてくるほどである。
 それほど、白の行軍は一糸乱れぬものであったのだ……。
 もっともそれは、彼らの行く手に猟兵が現れるまでの話であるが――。
サンディ・ノックス
なるほど、確かに複雑な素性だね
でも俺は生前の彼らもこの仕組み…過去が骸の海に排出されて、染み出すものが脅威になるというのを知っていても変わらず剣を取ったと思うよ
守るために戦うってそういうものだと思うんだ
俺の独りよがりかもしれないけれど、生前の彼らを尊重するためにも俺はこのオブリビオン達を滅ぼす

彼らへの敬意も込めて黒い衣装を着て戦場へ
俺が故郷を守りたいと願って生まれた暗夜の剣で、ずっと頼ってきた力を振るう
UC解放・宵の攻撃回数を重視して、敵の数に対抗
彼らの進軍を【見切り】、統率のとれた動きをするという予想を確かめる
規則正しい行動ならばこちらは【ダッシュ】で不規則に戦場を走り一人ずつ斬り伏せていく



 進軍する白の隊列。その一つに、黒衣の青年が立ち塞がっていた。
 白の兵隊たちはその歩みを止め、眼前の黒き敵に槍を構え、じりじりとその間合いを詰めるように取り囲んでいく。
 そんな状況にもかかわらず、黒衣の青年、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、黒剣をゆっくりと引き抜き、白の兵隊たちを待ち構える。
 今回は敵を欺くことも、挑発することも、しはしない。
 彼らに対しては悪意ではなく敬意をもって接したい。そんな想いがあるからこそ、黒衣に身を包んで戦場に来たのだ。
 ……彼らを滅ぼす者として。
「さぁ、宴の時間だよ」
 その言葉をきっかけに、白の兵隊たちは爆発したように一気に間合いを詰める。そして最前列にいた兵隊たちは、一斉にその槍をサンディへと放った。
 四方から放たれる鋭い槍の一撃。
 しかし、その渾身の一撃は虚しく空を切る。サンディは跳躍し、空中で身を翻すことで、四方から襲い来る槍をかわしたのだ。
 サンディは着地の勢いそのままに、黒剣を手近の兵隊へと走らせる。そして、敵を切り裂いた黒剣の勢いはあえて殺さず、流れるように次の敵へとその刃を向ける。剣に振り回されるのではなく、舞うように。そうして、彼は戦場を駆け抜けていく。
 守るための黒き剣を煌めかせて……。

成功 🔵​🔵​🔴​

左衛門三郎・白雷
アドリブ大歓迎!

ここがダークセイヴァーか、初めて来たが噂通り少し暗いな。
そして奴らが敵の… 足軽?信仰戦士だろうか?

奴らがどう生き、どう死んでいったのか… 拙者には分からない。
だが、放置すれば犠牲が増えるのは想像に難くない。
済まぬが、ここで倒れてもらうぞ!

〈行動〉
正面から斬り込みたい所ではあるのだが、そうしては返り討ちに遭うのが目に浮かぶ。
ここは《竜神飛翔》で完全竜体と成り、雷を放ち続ける事で機動力なり戦闘力なりを削って味方の手助けをする事にしよう。
これもまた竜神としての務めだろうか?


ルパート・ブラックスミス
死に。堕ちて。されど尚、一糸乱れぬ隊列は見事だが…
かつての同志たる者たちの罪過の道行きを、見過ごす黒騎士はいない。
来い。汝らが死の行進、此処をその果てとしよう。

蒼く燃える鉛の翼で飛翔、【空中戦】だ。
敵の槍が飛んでくるなら大剣の【武器受け】で凌ぐ。

斬り落とせ、ニクス。

爆槍フェニックスをに回転【投擲】、【誘導弾】として地を這うよう飛ばし突撃する敵たちの脚を【部位破壊】。
隊列乱し動きが止まったら敵陣上空から
UC【燃ゆる貴き血鉛】を纏わせた短剣の【弾幕】と大剣の【なぎ払い】、
撒き散らした燃える鉛による【範囲攻撃】だ。
村人が避難済みである以上遠慮無用、一気に【焼却】する。

【共闘・アドリブ歓迎】



「奴らが敵の……足軽か? 随分と面妖な格好を……」 
 左衛門三郎・白雷(竜神の剣豪・f29303)は白の軍団の行軍進路上で待ち構えていた。じーっと敵の姿を観察していたが、このままいけば数分後には衝突するだろう。
「しかし、どうしたものか。正面から斬り込みたいところではあるが、あの数では返り討ちに遭うかもしれん」
 何か良い策はないか? 白雷は、これから共闘する無口な仲間に、暗にそう尋ねた。
「……空中から一気に焼却する」
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)はそう応えると、鎧の肩口から流れ出た流動鉛を操り、その背中に蒼き炎の翼を宿した。
「なるほど、ならば拙者は敵を足止めしよう」
 白雷はルパートの意図を察し、その身を竜体へと変えてゆく。そして完全竜体となった白雷は、その体躯に見合った高速で飛翔し、敵の隊列へと先行した。
 竜と化した白雷は、一瞬で敵集団の頭上を通過し、雷を放つ。威力そのものは弱いものの、その雷は常に戦場に放たれ続け、兵隊たちの行軍を妨げる。
 そして白雷の目論見通り、敵は陣形を組み始め、その場で迎え撃つ構えを見せた。槍の投擲によって頭上の竜を落とすつもりのようだ。確かに、幾本もの槍を一斉に投げられては、竜体化しているとはいえ無事では済まないだろう。
 だが、実際にその陣形が完成することはない。
「斬り落とせ、ニクス」
 ルパートが操る蒼炎の槍が、敵の足元から陣形を斬り崩し、隊列を崩壊させる。
 そして、その間にも雷は絶え間なく降り注ぎ、敵の混乱は加速する。
 体勢を立て直そうともがく敵の姿には、もはや統率された動きなど見る影もない……。
「ルパート、今だ!」
 白雷はそう叫びながら上昇し、さらに地上から距離を取る。
 そして、その叫びに応じるように、ルパートは蒼き炎を纏った大剣を構え、宣告する。
「……汝らが死の行進、此処をその果てとしよう」
 ルパートは宣告とともに、地上に向かって大剣を勢いよく薙ぎ払った。
 唸りをあげて薙ぎ払われた大剣からは、細かい液状の粒子が飛散し、地上へと降り注ぐ。
 そして、その粒子を浴びた兵隊たちは一斉に蒼き炎に包まれ、飲み込まれた。
 大剣から放たれたのは、ルパートが操る流動鉛だったのだ。一度触れたが最後、彼らにその炎を振り払う術はない。
 そしてこれだけ大規模な攻撃だ、ここら一帯の地上の敵は、すべて蒼き炎に焼き消されたであろう……。
「意外と、熱い男なのだな」
 蒼炎に包まれる地上を見下ろしながら、白雷はぼそりとそう呟くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第四『不動なる者』 まとめ役であり盾役
一人称:わし/我ら 古風
対応武器:黒曜山

本当に皮肉よな。護る者が狩る者になるなどと。
だが、それを嘆いたままにしておくわけにもいかぬ。

我らとて、簡単に言えば『過去の者』であるが。何の因果か悪霊で、今をまた生きる者になっておる。

このような集団には、指定UCが一番向くか。…怒りは貴殿らではなく、差し向けたヴァンパイアに向いておるが。
高速起動での撹乱、それに呪詛をつけた弱い雷での行動阻害を狙おう。

なあ、過去は戻らぬのだよ。決して、戻らぬのだよ。


ミラン・アレイ
なんだか業の深そうな雰囲気だねー。
そんな感慨じみたのって、きっといらないんだろうけど。

とにかくまずは兵隊さん達の殲滅ね!村は絶対守るんだから!!

まずは小白竜[エルマ]の【ブレス攻撃】で敵先陣に牽制を行うよー。
それから【怪力】で敵を押し分けつつ、敵陣突入して混乱を狙う感じ。
敵の攻撃は神竜の鎧の【オーラ防御】で弾いていくね。
敵陣深くまで突入したら、雷霆剣を抜き放って、雷を刃に収束させてからのUC【雷迅剣】を放って敵を一網打尽にするんだよ!

絡み、アドリブ大歓迎です!


九石・纏
戦士達のオブリビオン。か…まったく世界ってのは、どうしてこう意地が悪いのかね……よう、兵隊共。殺しにきてやったぞ。

怪力で大剣を振るい、槍をなぎ払い早業、踏み込みながら
大剣を振り二回攻撃。敵兵を纏めて切り倒す。軽いねぇ…

空を見上げれば、火矢の群れ。
…防ぐのはどうってことないが、下手な処に延焼されても困るな
『妖念変化』土塊だいだらぼっちへ変化。巨体で火矢を受け止める。

土くれに火矢なんてきかねぇよ
大地操作、敵集団の地面を陥没。
その上から土塊の身体で兵隊共に圧し掛かり、潰して地面をならす。

骸は骸に、土塊は地面に戻るのが筋ってもんだ。…眠ってな。



 馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)は、戦場の中心ともいえる場所に立っていた。
 前方からは敵の主戦力が迫ってきており、規則正しく踏み鳴らされる足音の大きさからも、その数の多さがうかがい知れる。
 だが、後方には守るべき小さな村がある。ここを突破されるわけにはいかないのだ。
「……本当に皮肉よな。守る者が狩る者になるなど」
 義透は迫りくるかつての守り人たちに想いを馳せ、そっと囁くように言葉を紡ぐ。
「なあ、過去は戻らぬのだよ。決して……、戻らぬのだよ」
 それは彼らに向けられた言葉なのか、それとも自分自身に向けられたものなのか……。その真意は、自分ですら図りかねるものなのかもしれない。
 だが、彼の……いや、彼らの怒りがどこに向いているのかは明白だ。
「我らの怒りを――!」
 ヴァンパイアに。
 そう心の中で叫びながら、義透はその姿を翼の生えた虎へと変貌させる。そして、超高速で戦場を飛翔し、迫りくる白の軍団に幾発もの雷を放った。
 戦場に放たれ続ける雷は、行軍を続けていた白の軍団の足並みを乱し、確実に混乱をもたらしている。
「さあ、お二方。今です!」
 その合図と共に、後方に控えていた、ミラン・アレイ(ドラゴンガール・f29182)と、九石・纏(人間の咎人殺し・f19640)は勢いよく跳びだした。
 ミランは隊列前方に元気よく跳びだし、勢いそのままに敵を押しのけながら一気に敵陣奥深くへと突き進んでいく。
「なんだか業の深そうな雰囲気だねー」
 敵陣の中まで来たせいか、ミランは戦場に流れる重たい空気を感じ取っていた。
 しかし、彼女にそんなものは関係ない。
 村を守りたい。目の前の敵を倒すのに、それ以上の理由など必要ないのだ。
 そしてそれは、隊列後方へと跳びだした纏も同じであった。
「よう、兵隊共。殺しにきてやったぞ」
 纏はそう宣言すると、慌てて槍を構えた兵隊たちに大剣を振るい、薙ぎ払う。直撃した兵隊はもちろん、周囲にいた兵隊までもが、その膂力が生み出す風圧に吹き飛ばされる。
 そして纏はさらに踏み込み、豪快に大剣を振るう。さらにまた一歩、また一歩と踏み込み、敵を次々と薙ぎ払ってゆく。
 当然、その斬撃に迷いはない。敵だから斬る。眼前の敵を斬り捨てるのに、それ以上の理由など必要ないのだ。
 もっとも、敵の素性に何も思うところがないわけではない。ただ、それでも彼が迷うことは決してない。左腕の義手が、彼の心から情け容赦を切り捨てさせるからだ……。
「軽いねぇ……」
 纏はまた一歩踏み込み、敵陣を削り取る。前方ではミランがスピードで敵陣をかき乱し、上空からは義透の雷が降り注いでいる。
 前方・後方・上空からの包囲攻撃。このまま押し切れるかと思われたが……、そう甘くはない。
「上です!!」
 そう叫んだのは義透だ。ミランと纏は彼の警告通り上空を見上げ、迫りくる火矢の雨を確認する。しかし、この攻撃はすでに予測済みだ。
 ミランは竜神の鎧から発せられるオーラで矢を弾き飛ばす。
 そして反撃すべく、一振りの剣を天高く掲げる。雷を自在に操るとされるその剣は、義透が放つ雷を引き寄せ、刃に収束させていく。
 一方の纏は、土塊と融合し巨大なダイダラボッチへと変化していた。火矢の雨をその巨体で受け止めたのだ。
「土くれに火矢なんてきかねぇよ」
 そう言いながら、纏はダイダラボッチの力で地面を陥没させ、兵隊たちの自由を奪う。そして、その陥没した地面に自らの巨体を放り出し……、押しつぶす!
「骸は骸に、土塊は地面に戻るのが筋ってもんだ。……眠ってな」
 ドォォン!!! という轟音と共に土煙が舞い、その風圧で辺りの兵隊たちも吹き飛んでいく。
 そして、その轟音をきっかけに、ミランも動く。
「雷刃よ疾れ――」
 振り下ろされた剣から雷の刃が駆け抜け、周囲の敵を一瞬にして切り刻んでゆく。
 その範囲はすさまじく、ミランが敵陣深くに入り込んでいたこともあって、敵兵の大半が雷刃の餌食となっていた。
 前方と後方からほぼ同時に放たれた強大な一撃を受け、白の軍団は壊滅状態だ。
 しかし、それでもまだ、敵は全滅したわけではない。
 猟兵たちは敵を殲滅するべく、再び戦場を駆け抜ける。
 それぞれに、想いや信念を掲げながら……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ニール・ブランシャード
あの人…ぼくの鎧の前の持ち主くらい立派な騎士だったら…
兵隊さん達の生前の良い行いに報いる方法で還してあげられたかもしれない。
でも、今鎧に入ってるぼくは、騎士でもなんでもない…ただのタールだ。


村と敵の間に立って、敵を正面に捉えるよ。
村の人達に住む所を無くす絶望を味わわせたくない。敵を倒すだけじゃなくて村も守らないと。

槍での突撃は近距離まで引き付ける。
そして、UC「環境改変」で地面の土をタール状の泥から成る底無し沼に変化させる。
ぼく自身は沈まないように操作するよ。
越えて突撃してくる人がいたら、その時は武器で受けて対処しよう。

騎士流の方法で還してあげられなくて、ごめん。これが…ぼくのやり方なんだ。


トリテレイア・ゼロナイン
彼らとの戦いは初めてではありません
生前、吸血鬼に立ち向かった勇気ある戦士達…

『今』を生きる者を護り、それを脅かすモノを討つ
それが彼らの生前の奮闘に私が騎士として応えられる唯一の方法です

機械馬に●騎乗
UCを起動し敵中へ突撃
大型ウォーマシンの●怪力で振るうはSSW艦船装甲用の機械槍
馬と合わせた推進力とリーチは人用の槍衾で止められるものではありません

突き出される槍を槍のバリアの●武器受けと●盾受けで防御しつつ機械馬の●踏みつけも併用し当たるを幸い●なぎ払い敵中突破

そのまま敵陣を突破し後背につけば反転して再度突撃
『人類砦』に累が及ばぬよう確実に殲滅

…このような形でしか応えられぬ我が身をお許しください…



 ニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)は村を背に、迫り来る白の隊列の前に立ち塞がっていた。
 敵も既にニールを視認しており、攻撃陣形を取りながら行軍している。その圧倒的な物量で立ち塞がる全てを飲み込み、そのまま村へとなだれ込むつもりなのだろう。
 しかし、その攻撃的な陣形を見ても、ニールがその場から動くことはなかった。ここが最終防衛ライン、これより後ろには一兵たりとも通すつもりはないのだ。
 そんな姿を見て、避けるつもりがないと悟ったのか、敵兵たちは一気に加速してニールめがけて突撃を開始する。
 幾十もの兵が大地を踏み鳴らす轟音を伴いながら、鋭角に尖った陣形がニールへと襲い来る。だが、それでもニールは動かず、回避する姿勢すら見せない。
 そしていよいよ、先頭の兵士がその槍の穂先が届く範囲まで踏み込んだ……そのとき、敵兵は急に姿勢を崩し地面へと倒れ込んだ。
 当然だが、それは兵隊のミスではない。地面をよく見ると、先ほどまでしっかりとした大地であった場所が、ぬかるんだタール状の泥へと変質していた。
 ニールが瞬時に変質させたこの泥が、突撃してきた敵兵の足を絡めとったのだ。
「騎士流の方法で還してあげられなくて、ごめん。これが……ぼくのやり方なんだ」
 突撃したのではなく、踏み込まされたのだ。そう気が付いたときにはもう手遅れであった。その底なしの泥沼は、兵隊たちの足を絡めとり、もがこうとする者から先に先にと飲み込んでゆく。
 しかし、敵も甘くはない。なんとか泥に足を絡めとられずに済んだ後方の兵隊たちは、即座に再編成し、今度は防御陣形を取る。そして、集団で足元に結果を張り、タール状の泥を弾きながら再度の突撃を敢行する。
 槍を構え、まるで泥沼の上を走るように突撃する兵隊たち。再度の突撃は成功するかに思われた。
 だが、『彼ら』はそれも予測済みであった。
 ニールの後方から突如現れたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、巨大な機械の槍を手に機械馬に騎乗し、突撃してくる敵兵に突撃で返す。
 ロケットブースターを搭載した槍は超加速し、敵兵めがけ一直線に突き進む。
 艦船強襲用超大型突撃機械槍。そんな物騒な名前の槍とも知らず、敵兵は槍を構え迎え撃つ。だが、足元の結界にエネルギーを割きながら放つ不格好な槍に、トリテレイアの一撃を防ぐ力などありはしない。
 構えられた敵の槍は、巨大な機械槍の穂先から展開されているバリアに弾かれ、砕け散る。その圧倒的な破壊力で兵隊たちをも砕き、吹き飛ばし、トリテレイアは敵集団の後方へと駆け抜けた。
 そして反転し、また泥の沼を抜けようとする敵兵へと突撃する。
 泥の上で彼の一撃を防げる敵などこの場に存在するはずもなく、敵兵は次々に各個撃破されてゆく。
「……このような形でしか応えられぬ我が身をお許しください」
 二人の猟兵は、己の戦い方を嘆き、それぞれに謝罪の言葉を口にする。
 罠を張り、かかった敵を確実に倒していくのは、確かに騎士流ではないのかもしれない。
 だが、彼らが騎士を名乗ったとしても、異論を唱えるものはきっといないだろう。
 村を守らんと必死に戦うその姿と、その意志が、彼らの魂を証明しているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…かつて、この世界を護ろうとした者達、ね

…彼らとて今を生きる人々を傷付けるのは本意ではないはず

…必ず止めてみせる
それこそが、歪められた彼らの魂を慰める手向けになると信じて…

"写し身の呪詛"に魔力を溜め複数の残像で撹乱し、
"血の翼"を広げ空中戦機動の早業で敵陣に切り込みUCを発動
火属性攻撃のオーラで防御ごと敵陣をなぎ払う"火の流星"を落とす

…来たれ、世界を焼き尽くす大いなる力よ

敵の防御陣形を見切り戦闘知識に加えて同じUCを再発動
術の最中に銃撃を乱れ撃ち防御を乱して"火の流星"を放つ2回攻撃を行う

…貴方達と同じような存在と闘うのは初めてじゃないもの

同じ術を何度も使えば、必ずそう動くと思っていたわ



 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はその戦場を完全に支配していた。
 白銀の髪をなびかせ戦場を舞う彼女を、敵兵たちは隊列を組み取り囲む。そして一斉にその槍を放ち、彼女の身体を貫く。完全に包囲しての一撃。しかし、そこに手ごたえは全くなかった。
 貫かれたはずの彼女は、空気に溶けるように揺らめき消えていく。兵隊たちが取り囲んだのは、リーヴァルディが作り出した幻影だったのだ。戦場にはそんな幻影の少女が他にも何人も舞い踊り、兵隊たちをかく乱している。
 敵兵は幻影を各個撃破しているが、彼らが駆け回る地上に、既に彼女はいない。リーヴァルディは血の翼を広げ、敵陣中央の上空まで飛翔していたのだ。
 未だ幻影に翻弄される敵を眼下に、彼女は火属性のオーラを纏い、吸血鬼化を限定解放する。
「……来たれ、世界を焼き尽くす大いなる力よ」
 静かに、そして厳かに発せられる宣告。その静謐さとは裏腹に、彼女の上空から幾発もの巨大な火球が地上へと降り注ぐ。
 火の流星。空を見上げた敵兵たちはその超常現象に気づくと同時に、着弾した炎に飲み込まれ灰と化す。そして地上に降り注いだ火球は、業火となって燃え広がり、敵を焼き尽くしてゆく……。
 既に半壊している敵陣に、リーヴァルディはさらに追い打ちをかけるべく、再度の詠唱を始める。今度は敵も気がつき防御陣形の構えを取る……が、この戦場の支配者たる彼女に死角はない。
 リーヴァルディは陣形を組もうとする敵兵に銃撃を見舞い、防御の構えを取らせない。
「同じ術を何度も使えば、必ずそう動くと思っていたわ」
 そしてまた、彼女はその業火で地上を焼き尽くす。
 彼らの魂を、あの世へと送り返すように……

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『深淵に沈みし騎士』

POW   :    蝕まれし聖光の剣
【聖剣の力を解放し、極光放つ聖剣のなぎ払い】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を崩壊させながら深淵が広がり】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    闇に翳る残光
レベル×5本の【破魔の光】属性と【深淵の闇】属性の【朽ちた聖剣から剣閃】を放つ。
WIZ   :    今は歪みし聖裁
【触れたすべてを蝕む深淵の闇】が命中した対象に対し、高威力高命中の【闇に蝕まれた者を滅する聖なる光】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルトリンデ・エーデルシュタインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミラン・アレイ
守るべきものももはやなく、血に染まったその魂と聖剣はすでに闇に堕ちたんだね。
もしその身の奥にまだ心が残るとしたら、その苦しみは……。
わたしも同じく騎士の名を冠する身。
その名をこれ以上汚さないよう、ここで葬る事をせめてもの手向けに!

雷霆剣を抜き放ち対峙するね!
相手との間合いを図りつつ、距離を詰めてからの【なぎ払い】による刃の打ち合いを狙うよ!。
そして機を見て、相手の剣を【武器受け】からの鍔迫り合い、【怪力】で相手の【体勢を崩し】数歩後ろによろめかせるね!

そこで、大きく後ろに跳んで間合いを取ってからの、UC【蒼竜の光翼】で高速で飛んで間合いを詰めてからの相手の胴を両断!

絡み、アドリブ大歓迎だよー!


馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。引き続き『不動なる者』。
一人称:わし/我ら

UC使いっぱなしなので、翼の生えた虎のまま。怒りはヴァンパイアへ。

行き着いた果てか。…さて、『我ら』との違いは何だというのか。
貴殿にも誇りはあったのだろう。守るものがあったのだろう。
だが、今や貴殿は世界に仇なす存在である。
故に、『我ら』は戦う。

高速で移動しつつ、弱い雷に呪詛を纏わせ、少しでも行動阻害できるように。
そう、この者に村を荒らさせてはならぬ。それは彼のかつて思いすら汚すことになる。
そうはさせんよ…!

アドリブ連携歓迎。



 深淵に沈みし騎士は闇の翼を広げ、地面を這うように低空を飛翔していた。
 敵に邪魔されぬよう低空かつ高速で、最短最速で村を目指し移動する。
 ……その村を、折れた聖剣で滅ぼすために。
「そうはさせんよ……!」
 頭上から発せられたその言葉が届くよりもわずかに早く、何かを察知した騎士はその身を翻し、強引に進路を横方向へとずらす。
 その数瞬後、本来の騎士の進路上に一筋の雷が落ち、ドォン! という破砕音と共に、地面焦がす。
 バランスを崩した騎士は足で地面削りながらなんとか着地し、上空を見上げる。
 そこには、翼の生えた虎が騎士を見下ろしていた。
 先ほどの落雷は、翼の生えた虎へと変身した馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)が放った一撃であったのだ。
 先兵を片付けた義透は、眼前の騎士を足止めすべく、その姿のまま高速で飛翔してきたのだ。その目的を達成すべく、義透は再び一筋の雷を騎士へと放つ。
「……ワタシの邪魔を……するな!!」
 騎士は折れた聖剣を煌めかせ、上空の義透めがけて振り払う。
 剣から発せられた聖なる光は巨大な刃となり、極光の斬撃が空を駆け抜ける。
 眩い光は雷を容易く切り裂き、その先の義透をも飲み込む……その寸前で、義透は急加速し、何とか極光の斬撃を回避した。
 はっきり言ってギリギリの戦いである。だが、それでも義透が引くことはない。絶対にここで足止めするのだ。
 村を守るため、そして、騎士の尊厳と魂を守るために。
(……この者に村を荒らさせてはならぬ)
 その強い思いに応えるように、一人の竜騎士が戦場へと駆け付ける。
 ミラン・アレイ(ドラゴンガール・f29182)は、義透に大振りの一撃を放ち隙ができた騎士の懐に潜り込み、一振りの剣を抜き放つ。
 咄嗟に反応した騎士の剣がそれを防ぎ、刃がぶつかり合う甲高い音をあげる。
 ミランはさらに剣の連撃を見舞う。上段から振り下ろし、返す刃で振り払い、突き、勢いそのままに回転して横に一閃。
 しかし、流れるようなその攻撃に騎士も同じように返し、刃は交じり合うばかり。
 そしてとうとう騎士たちの剣は完全に拮抗し合い、鍔迫り合いを演じる。
「くっ!! 次から次へと――!」
 苛立つ騎士の隙をみて、ミランは一気に力を籠め、騎士を押し退ける。僅かによろめく騎士。さらにそこに義透の雷が落ちる。
「ぐっ!!」
 騎士は落雷に込められた呪詛に苦痛の声を漏らす。
 その好機に、ミランは詰め寄るのではなく、後方に跳び間合いを広げた。
(何が狙いだ……?)
 騎士はミランの行動を疑問に思いつつも、すぐに迷いを捨て、ミランが構える剣へとその注意を向ける。
 しかし、その注意が仇となった。
 ミランは竜翼を広げると、その翼に蒼き光を纏わせる。
 そしてそれは蒼く輝く大きな翼となり、剣となる。
「光翼よ煌めけ――!!」
 ミランは高速で飛翔し、一気に間合いを詰める。
「しまっ――!」
 騎士は剣を煌めかせ、慌てて迎え撃つ。
 しかし、予期せぬ攻撃に、呪詛に蝕まれた身体で放つ一撃が追いつくはずもない。
 ミランの煌めく光翼は騎士の剣を掻い潜って胴に命中し、その鎧を穿つ。
「グォォォォ!!!!」
 鎧の下にも多大なダメージを与えたことは言うまでもなく、騎士は吹き飛び壁に激突する。
 ……しかし、それでも騎士は片膝をつきながらも起き上がる。そして、ミランの蒼く煌めく翼に対抗するように、再度その折れた聖剣を煌めかせるのであった。
 いったい、誰が為に剣は煌めくのか……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

左衛門三郎・白雷
アドリブ大歓迎!

彼奴は先程の足軽達の大将だろうか?
しかしこの気配… 強いな。
これは本気で掛からねばならないが…
やはり戦はこうで無くては!

行動
奴の聖剣から放たれる攻撃を喰らうのは避けたい所だからな…
拙者は〈神罰〉を合わせた《怒槌》で遠距離から竜雷を放ち攻撃する事にしよう。
これで討ち取れ無くとも、広がった深淵の〈浄化〉や竜雷を鎧に帯電させて〈継続ダメージ〉を与える事が出来れば味方の助けになるだろう。

まぁ、成功すればの話だがな…


リーヴァルディ・カーライル
…一度だけ聞いておきましょう、聖剣の騎士よ

…いまだその胸に騎士の誓いが残されているならば、剣を納めなさい

…これ以上、その聖剣が血に染まり闇に翳る前に…

UCを発動し過剰に自身の生命力を吸収して感覚を暴走させ、
今までの戦闘知識と経験から気合いで身体動作を補正する

…これ以上の言葉は不要か。ならばここから先は、
吸血鬼狩りの業にてお相手させてもらう

限界突破した第六感で敵の殺気の残像を暗視し、
光と闇属性攻撃の乱れ撃ちを超感覚で見切る早業で懐に切り込み、
魔力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払うカウンターでUCを再発動
敵の感覚を暴走させて行動速度を鈍化させる

…この感覚は初めて?一時間そこらで慣れるとは思わない事ね



「……一度だけ聞いておきましょう、聖剣の騎士よ。いまだその胸に騎士の誓いが残されているならば、剣を納めなさい」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、武器を持たずに騎士の正面に立ち、警告する。
「……これ以上、その聖剣が血に染まり闇に翳る前に……」
 その堂々とした立ち振る舞いは、在りし日の姫を彷彿とさせたが……深淵に沈みし騎士にその想いが届くことはなかった。
 騎士は折れた聖剣をリーヴァルディに向け、交戦の意志を示す。
 もはやこれ以上の言葉は不要であろう。
 彼女は黒き大鎌を構え、極限までその集中力を高めていく。
 そして敵がその剣を振りかざした瞬間、リーヴァルディは弾けるように跳び出した。
 敵の剣から発せられる、幾百もの剣閃。光と闇が入り混じったその斬撃の嵐の中を、リーヴァルディは駆け抜ける。
 普通ならば即座に切り刻まれるであろう空間の中で、彼女は舞うように駆け抜けてゆく。
 吸血鬼狩りとしての知識と経験から敵の殺気を捉え、斬撃が放たれるよりも僅かに早く回避行動をとることで、幾百もの剣閃を誘い流しているのだ。
 その動きはもはや未来予測とすら言える域である。彼女の豊富な経験と胆力がなせる業であろう。
 しかし、いくら彼女でもすべての斬撃を回避し続けることは容易ではない。動きに慣れてきた敵はリーヴァルディの逃げ道を塞ぐように剣閃を放ち続け、そしてとうとう直撃の一撃を放つ。
「くっ――!」
 闇の剣閃を、大鎌でガードするように身構えるリーヴァルディ。
 しかし、その斬撃が彼女を傷つけることはなかった。突如、彼女の横から飛来した雷が闇の剣閃とぶつかり合い、対消滅したである。
 僅かに戸惑う彼女の後方から、男の叫び声が聞こえる。
「助太刀致す!!」
 その声の主、左衛門三郎・白雷(竜神の剣豪・f29303)は、竜の尾から幾発もの雷を放ち、次々と剣閃を撃ち落としていた。
「……協力に感謝する」
 リーヴァルディは一言そう告げると、一度敵から距離を取り、体勢を立て直す。
 そしてリーヴァルディに放たれた、幾百もの剣閃が織りなす斬撃の嵐もとうとう止み、束の間の静寂が訪れる。
「しかしこの気配……、強いな」
 かなり距離を取っているにもかかわらず、白雷は敵の騎士のプレッシャーをひしひしと感じていた。それほどの強敵であるのだ。
 これは本気で掛からねばならないが……。そう思案していると、騎士は聖剣を掲げ、再び幾百もの剣閃を走らせた。
 そして光と闇が入り混じった斬撃の嵐は、今度は白雷とリーヴァルディの両方に降り注いだ。
 再び雷で応戦する白雷。
 しかし、徐々に競り負け、撃ち落とし損ねた剣閃が彼の身体を切り裂いてゆく。
「ぐぬっ……!」
 紙一重で致命傷は避けているが、肩口や足からは少なくない血が流れ落ちていた。
 だが、そんな局面でも白雷は笑って見せる。
「やはり、戦はこうで無くては!!」
 白雷はあえて騎士の真正面に立ち、雷で応戦し続けた。そうすることで、彼女が動きやすくなるからだ。
 リーヴァルディは斬撃の嵐を悠々と駆け抜ける。剣閃を分散させた状態で、彼女を止められるはずがない。
 騎士の懐へと潜り込んだリーヴァルディは、黒き大鎌を薙ぎ払う。
 魔力の篭った一撃は、騎士を吹き飛ばし、そのエネルギーは鎧の内部へと浸透する。
「グッ……、な、なんだ? これは?」
 起き上がろうとする騎士の身体は鉛のように重く、思うように動かない。
「……この感覚は初めて? 容易に慣れるとは思わない事ね」
 彼女らがつけた傷は、まるで呪いのように騎士の身体を蝕み続けるのであった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

九石・纏
こいつはまた一段と酷い姿だ。
吸血鬼にでもやられたのかい、騎士様。

大剣を怪力で振るい騎士と激突、弾かれても早業で切り返し、
何度も斬撃を振るう。
そんな痛ましい姿じゃあ、お姫様と会うのも難しいだろうに!!

相手の攻撃を残像を残してジャンプ、回避と同時にリボルバーでクイックドロウ、からの前方へダッシュ。上から下へ、覇気を込めた大剣を振り下ろし重量攻撃。

怒りで剣筋が鈍ってくれりゃやりやすいもんだが……
『銀狼の聖剣』相手の剣の輝きを見て、こちらも剣を光らせる。

光にも闇にも染まりきらず。中途半端なもんだ。
どっちつかずか、本来のあんたが抵抗してるのか、見せてもらおうか!

力溜め、浄化の力を集約、光刃の一撃を放つ。



「こいつはまた一段と酷い姿だ。吸血鬼にでもやられたのかい、騎士様」
 九石・纏(人間の咎人殺し・f19640)は銀の大剣を手に、深淵に沈みし騎士を挑発する。
 とは言え、確かに騎士の姿は酷いものであった。折れた聖剣に朽ちた鎧。おまけにその鎧は胴の右側が砕け、中の騎士は動きにキレがないときている。
「そんな痛ましい姿じゃあ、お姫様と会うのも難しいだろうに!!」
 纏はそう叫びながら、まずは銀の大剣を力任せに振るい、眼前の騎士と激突する。
 騎士は聖剣で何とかその一撃を弾き返すが、纏の連撃は止まらない。
 弾き返されたエネルギーをそのまま利用し、勢いよく回転しながら刃を返す。そしてまた弾かれては、そのエネルギーを刃に乗せて打ち返すように、大剣の連撃へと繋げていく。
 一人の戦士として、纏はその騎士を圧倒していた。
 幾度となく振るわれる大剣の斬撃は、徐々に騎士の鎧をそぎ落とし、後退させていく。
 騎士も僅かな隙を狙って聖剣を走らせるが、纏はそれを容易くかわし、聖剣は彼の残像を虚しく切り裂く。
 そして開いた距離をそれ以上開けさせないよう、纏はリボルバーによる銃撃で騎士の足を止め、その隙に一気に間合いを詰める。
 最上段に構えられた銀の大剣は、纏の覇気と共に勢いよく振り下ろされ――。
 ゴゥンン!!! という金属が金属を叩き潰す鈍い音が響き渡る。
 騎士は纏の強烈な一撃を辛うじて防いだものの、その衝撃は凄まじく、騎士の鎧にピシピシと亀裂が走ってゆく。
「グッ……、まだだ!!」
 深淵に沈みし騎士はそう叫ぶと、その身から闇の力を引き出し、鎧へと纏わせた。
 闇の力を纏うことで、鎧の強度を補っているようだ。
 そんな騎士の姿を見て、纏は思わずため息をこぼす。
「光にも闇にも染まりきらず、中途半端なもんだ」
 纏は騎士を蹴りつけ、あえて間合いを広げる。
 そして銀の大剣に浄化の力を集約し、一振りの聖剣へと変貌させてゆく。
「……輝け、あいつの様に」
 その呟きをかき消すように、騎士は煌めく聖剣を振るい、幾百もの光と闇の剣閃を解き放つ。
「どっちつかずか、本来のあんたが抵抗してるのか……、見せてもらおうか!!」
 纏も騎士に対抗するように、銀色に煌めく光刃の一撃を放つ。
 超大な白銀の刃は、彼の意志を示すように光も闇もすべて打ち払い、深淵に沈みし騎士に大きな斬撃を刻むのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
真の姿解放、金眼の赤い竜人と化す
解放するといつもは敵の悪しき部分を刺激し、嬲り、喰らいたい欲望が溢れ出る
流石にゼロではないけど今は戦いを通じて彼を知りたい気持ちのほうが強い

地を蹴り翼を広げ空中から暗夜の剣で斬りかかる
避けるか、受けるか、それとも攻め返してくるか
俺が防御行動をとろうとすると彼はどうするか
剣を交わし彼の戦法を【見切る】、確実に彼の攻撃を一発受け止めるために

深淵の闇の侵蝕と滅びの聖光は魔力を高め【オーラ防御】しながら黒剣で受ける
俺の悪の魔力と相性悪そうだけれどやらないよりはいい
そしてUC魂喰らい発動
普段は技を奪い嗤うために使うけど
今日は力を通してキミを少しでも感じ取るために喰らうんだ



 深淵に沈みし騎士は、一人の男と激しい剣戟を繰り広げていた。
 その男は頭に角を生やし、赤き竜の翼と尾を携え、黒と朱を基調としたどこか禍々しさを感じさせる鎧を身に着けていた。
 そして金色の瞳で騎士を捉え、黒と朱の大剣を振るい、光り輝く聖剣と切り結ぶ。
 そんな、竜騎士かあるいは悪魔かと思わせるようなその姿こそ、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)の真の姿であった。
「ほら、もっとキミの力を見せてよ!」
 サンディは微笑を浮かべながらも冷静に騎士の聖剣を見切り、その斬撃をかわし、刃を打ち付け合う。そして、騎士の上段からの大振りを紙一重でかわし、一瞬できたその隙にサンディは大地を蹴り、翼を広げて空中へと飛び出した。
 サンディは騎士の頭上めがけ、鋭い刺突を放つ。
 黒き大剣から放たれた鋭い突きを、地上の騎士は聖剣の腹で何とか防いだものの、重力と翼のエネルギーを乗せた一撃は力強く、じりじりと押し込まれてゆく。
「クッ! ワタシは……、負けるわけには、いかないのだ!!!」
 騎士は雄叫びと共に、全身から闇の波動を放ち、サンディを吹き飛ばす。威力自体は大したことはないが、その闇はサンディにまとわりつき、深淵へと誘うように蝕んでいく。
 さらに騎士は聖剣を煌めかせ、闇を滅する聖裁の一撃を振り下ろす。
「ぐっ――!!!」
 サンディはその身を蝕む深淵の闇と共に聖なる光の刃に飲み込まれた。
 しかし、眩い光の斬撃に襲われながらも、サンディは全身から悪の魔力を放出することで、何とかその一撃に抵抗していた。
 彼にも負けられない理由があり、そのために得た力もある。そしてどんな手段をもってしてでも守りたいという気持ちも、分からなくはない。
 だが、闇を掃わんとする者が、その闇の力に手を染めるのは……違うだろう。
 かつての騎士が宿していた魂ならば、そんな力になど頼らなかったはずだ……。
「はぁぁぁ!!!」
 サンディは闇の波動を全身から解き放ち、騎士が放った聖裁の光を吹き飛ばす。
 それは騎士が放った一撃と同じものであった。しかし、その威力は明らかに騎士のものを凌いでいる。
 波動に触れた騎士は、自分が鎧に纏っている闇の力よりもさらに濃い深淵の闇に蝕まれ、苦痛の声を漏らす。
 そして、サンディは黒き大剣を天高く掲げ、純白に煌めく聖なる光を振り下ろす。
「キミが手に入れた力じゃ、俺は倒せないよ」
 魂なき力に、真の強さが宿ることはない。深淵に沈みし騎士に、光も闇も扱う資格はなかったのだ。
 騎士は聖裁の光に飲み込まれ、光の斬撃に闇の鎧ごと切り刻まれてゆく。
 ……その手に、闇を掃う聖剣を握りしめて。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
あの鎧と剣の意匠…やはり吸血鬼と戦った騎士のなれの果て
破損して尚、手に持つ剣を使い続けているようですが…

…可能性は低いですが、試してみましょう
骸の海に還る最期の瞬間まで己を見失っていたなど、同じ騎士として看過できません

剣閃を●武器受け●盾受けで防御しつつ脚部スラスター起動
大地を滑走する●スライディング移動で間合いを詰め接近戦

剣戟を交わし●怪力シールドバッシュで攻め手を乱し、UC使用
此方の剣持つ手首の回転で聖剣を●武器落とし奪取

余程、執着があるようですね
何故、この剣を握り振るったのか…
それを思い出せぬ限り、貴方が握る資格はありません!

聖剣を振るい怪力任せに●串刺し

さあ、答えていただきましょう


ルパート・ブラックスミス
青く燃える鉛の翼で飛びながら短剣を一当てし敵を【挑発】。

どうした腑抜け、向けられた刃に背を向け無力を殺戮するのが騎士の所業か?
誓いを叫べ。剣を掲げろ。
黒騎士ブラックスミスは汝に【決闘】を挑む!

折れた魔剣の刀身を【指定UC】で精製、【空中戦】に引き込む。
小細工無しの真っ向勝負だ。

この魔剣の刃は我が精神、騎士として魂の具現。
『堕ちた騎士』という敵に!
同じ騎士であるが故に対峙する我が【覚悟】は!
断じて折れず曲がらず!汝を滅ぼす必殺の一太刀となる!

人々の希望の未来と、汝らの栄光の過去を蝕むその深淵に!
粛清宣告!
【共闘・アドリブ歓迎】


ニール・ブランシャード
あなたは…もう、変わってしまったんだね、「世界の敵」に。
…この世界は皮肉だよね。本当に。
でも、あなたがどんな人であれ、ぼくたちは過去には負けないよ。

あの人が剣の力を解放する前に間合いを詰めて先に攻撃したいけど…
間に合わない場合はいっそ、相手のUCにぼくのUCをぶつけてなぎ払いを止めるよ。
単純な力と力のぶつかり合いだ!(怪力、武器受け)
ぼくが競り負けても、他の人が攻撃できるチャンスを作れればそれでよし!

あなたには、まだ心があるの?
守ろうとした人達を殺そうとするのって、どんな気持ちなの?
…応えてくれるわけないか。



●騎士として
 森を行く一体のオブリビオン、その姿は痛ましい程にボロボロであった。
 数々の猟兵との闘いによって、その身に纏っていた鎧はほとんどが砕け散り、もはや鎧としての用を成してはいない。
 右側の腕と足に至っては消失しており、闇の力で補うことで、何とか元の形状を保っているような状態だ。
 まさしく、満身創痍である。
 しかし、そのオブリビオンに撤退はない。闇の翼を広げ、大空へと飛翔する。
 そしてとうとう、その眼下に小さな村を捉えた。
 猟兵たちに阻まれながらも、僅かずつではあるが、村の方へと徐々に移動していたのだ。
「これで、終わりだ――」
 村を滅ぼす一撃を放つべく、オブリビオンは折れた聖剣を掲げる……が、その剣を振り下ろさせる猟兵たちではない。
 空気を裂いて放たれる一本の短剣。オブリビオンは後方から放たれたそれを、振り返りざまに迎撃し、憎々しげに敵を睨みつける。
 その視線の先には、蒼き炎の翼を携えた騎士、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)の姿があった。
「……どこまでも、ワタシの邪魔をする気のようだな」
 そう言いながらオブリビオンは目の前の騎士に聖剣を向けつつ、村にも意識を向けていた。隙あらばいつでも村に一撃を放てるように。
 しかし、ルパートはそんな相手の浅ましい思考を読み取り、挑発する。
「どうした腑抜け、向けられた刃に背を向け、無力を殺戮するのが騎士の所業か?」
 ルパートは一振りの折れた剣を取り出し、眼前の敵へと向ける。
「誓いを叫べ。剣を掲げろ」
 その折れた剣はルパートの意志を体現するように、剣の欠けた部分が蒼き炎と共に創造され、一振りの魔剣へと変貌する。
 そして、ルパートはその切っ先を相手に向け、声高らかに宣言する。
「黒騎士ブラックスミスは、汝に決闘を挑む!」
 それは騎士としての宣告であり、最期は騎士として屠るという宣言であった。
 その言葉に、深淵に沈みし騎士は、折れた聖剣を構える。
 どこかに残っていた騎士としての魂か、あるいはオブリビオンとして猟兵は倒すべき敵であるからか……。その剣が向けられた真意は分からないが、ルパートの為すべきことは変わらない。
 小細工無しの真っ向勝負だ。
 二人の騎士はそれぞれの翼を広げて加速し、一瞬にして互いの間合いを詰める。
 闇を掃う聖剣と神殺しの魔剣、二振りの剣は交じり合い、辺りの雲や木々を吹き飛ばすほどの激しい衝撃波を生み出す。
 バチバチと火花が舞いスパークが生じるほどの拮抗……しかし、それはほんの僅かの間であった。
 ルパートの騎士としての覚悟に、堕ちた騎士が敵うはずもない。
「グ、オォォォォ!!!!」
 深淵に沈みし騎士は競り負け、衝撃波と共に吹き飛ばされる。
 闇の翼は魔剣のエネルギーによってかき消され、ドゴォン!! という強烈な破砕音と共に地面へと叩きつけられた。
「……あとは任せるぞ」
 ルパートはそう呟き、地上へと目を向ける。
 そこには予定通りニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)と、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の二人の猟兵が待ち構えていた。

●守りたいもの
 二人の猟兵は粉塵舞う地上で、落下してきた敵を補足する。
 バキバキに砕けた地面の中心には、もはや闇の力ですら鎧を保てなくなったオブリビオンがいた。
 息も絶え絶えといった様子で起き上がってくるが、既に決着はついている。あとはトドメを刺すだけだ。
 だが、彼らはただトドメを刺すために待ち構えていたわけではない。
 このオブリビオンの最期を、『騎士』として飾ろうとしているのだ。
「……可能性は低いですが、試してみましょう」
 トリテレイアはそう呟くと、オブリビオンから少し距離を取るように後方へと下がった。そして入れ替わるようにニールが飛び出し、柄の長い大きな戦斧をオブリビオンへと振りかざす。
 ギンッ! と金属がぶつかり合う音が鳴り響き、聖剣と戦斧の刃が交差する。
 その二つの刃は鍔迫り合いを演じるようなことはなく、互いに弾き合い、そしてまたぶつかり合う。そのたびに甲高い金属音が鳴り響いていた。
 そんな力任せの打ち合いの中で、ニールは語りかけるように言葉を紡ぐ。
「あなたは……もう、変わってしまったんだね、『世界の敵』に」
 火花散る戦場に似つかわしくないほど、やさしい声で、その言葉は紡がれる。
「あなたには、まだ心があるの? 守ろうとした人たちを殺そうとするのって、どんな気持ちなの?」
 問いかけるニールに、オブリビオンはただ聖剣を煌めかせ、極光の一撃を放つ。
「……応えてくれるわけないか」
 ニールは少しだけ悲しそうな声を漏らす。
 しかし、身体は既に攻撃のモーションに入っていた。ニールはその場で一回転し、戦斧の遠心力も加えた強力な一撃を放つ。
 どんな相手であろうと、過去に負けるわけにはいかないのだ。
 聖剣と戦斧は再びその刃を交差させ、互いの必殺の一撃を相殺し合う。
 その衝撃波は辺りの地面を粉砕し、大地に大きな亀裂を走らせ、オブリビオンをよろめかせた。
 そしてその隙に、後方で機をうかがっていたトリテレイアが、オブリビオンへと一気に間合いを詰める。
 ひび割れた地面を脚部のスラスターで滑るように疾走し、咄嗟に振るわれた敵の剣閃を手にした剣で受け流す。
 スライディング移動で至近距離へとその間合いを詰めたトリテレイアは、人間ではあり得ない方向に手首を回転させ、剣の一撃をオブリビオンへとお見舞いする。
 その一撃は、闇の力で創られたオブリビオンの右腕を容赦なく斬り落とす。
 そして、その右手に握られていた聖剣が宙に舞う。
「破損して尚、使い続けているようですが……。余程、執着があるようですね」
 トリテレイアは手にしていた剣をワイヤーで自分と接続し、空中に放り投げる。
「ですが、何故、この剣を握り振るったのか――」
 空いた手で聖剣を掴み、固く握りしめ、トリテレイアは叫ぶ。
「それを思い出せぬ限り、貴方が握る資格はありません!」
 折れた聖剣は僅かに光を放ち、そして――!
「そんな……バカな」
 聖剣はオブリビオンの胸に深々と突き刺さっていた。
 オブリビオンは残った左腕で聖剣を引き抜こうとするが、そんな力はもはやない。
 力を込めた左手は砂のように崩れ、消滅する。この聖剣がトドメとなったのだ。
 トドメを刺すだけなら他にも方法はあったろう。だが、骸の海に還る前に、騎士としての魂を思い出してほしかったのだ。
 それはもしかすると傲慢な考えなのかもしれない。しかし、それでも、彼らは守りたかったのだ。
 今を生きる者だけでなく、過去を生きた者の想いや、尊厳や、魂を……。
「くっ……、ワタ、シは、負けるわけにはっ――!?」
 ボロボロと崩れていくオブリビオンは、その原因に気がつき、言葉を失う。
 その身体は、聖剣の光に焼かれて崩壊しているのだ。
「な……ぜ?」
 そう口にした瞬間、すぐに気がついた。己の身体が、闇に包まれているからだと。
「…………そう、か。ワタシは――」
 その最期の言葉は、肉体と共に砂と化し、音になる前に消えてゆく。
 砂塵は風と共に去り、後には一振りの折れた聖剣だけが残されていた……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『忘れ去られた墓で』

POW   :    墓石を修理する

SPD   :    墓石に花を添える

WIZ   :    周辺を掃除する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●名もなき小さな村
 猟兵たちの戦いは終わった。
 人類砦は守られ、夜と闇に覆われた世界で輝く小さな希望は、一片の陰りなく輝いていた。
「ほんっっっとうに、ありがとうございました!!!」
 村の青年は深々と頭を下げ、もう何度目かも分からない感謝の言葉を口にする。
「よかったら、これ食べてください。俺が獲ってきたんです!」
 そう言って青年は丸焼きにした魚を差し出す。
 闘いが終わった後も、猟兵たちはオブリビオンの残党がいないか見回りを続けていた。そして、村の人たちはそんな猟兵を見つけては、村でとれた作物などを調理して差し入れしているのだ。
 その度に、猟兵たちは戸惑いつつも感謝の気持ちを受け取り、人の営みを守り抜いたのだと実感する。
 オブリビオンとの闘いから数日が過ぎ、こうして村も安定している。そろそろ引きあげても大丈夫だろう。
 引き上げる前に、一人の猟兵がその青年に尋ねた。何か変わったことや変なものは見ていないかと。
「変なもの……そういえば――」

●忘れ去られた墓地
 それは川の上流、青年がいつも漁をする場所から森の方へと入っていった場所にあった。
 そこには、開けた土地に、真っ黒な石碑が円を描くようにいくつも並び立っていた。そして、その中央には一際大きな石碑が存在している。
 どうやら、ここは墓地のようだ。
 青年の話を聞いて一応確認しに来たが、敵の気配はもちろん、特に怪しいところもない。
 強いて言うのならば、手入れもされていない墓地は所々朽ちて壊れており、雑草も生い茂っていて、どこか寂しい雰囲気を漂わせているぐらいだ。
 それでもせっかくここまできたのだと、一人の猟兵が中央の石碑を確認する。
 そこには文字が刻まれていた。
『すべての戦士たちに、この剣を捧げる』
 だが、その石碑の周りに剣は見当たらない。
 きっと長い年月の中で、剣も朽ちて失われてしまったのだろう。
 調査に訪れた猟兵たちは、思い思いに辺りを調査し始めるのであった――。
サンディ・ノックス
このお墓…もしかして彼らの?
あの騎士のことがまず頭に浮かぶけど、兵隊たちも思い浮かぶ
同じ装束と覆面をしていた…でも、彼ら一人ひとり別のヒト
戦う理由もそれぞれの想いや理由があったのだと思う
名前どころか顔も知らないけれど、彼ら一人ずつのために祈りたい

それから朽ちた墓を少しでも綺麗にしよう
名前、見つけられるかな
見つかるのは一部分だけとか捧げられた言葉だけかもしれないけれど、それでもこれは確かにそのヒトが存在した証
壊さないようにそっと撫でて、ありがとうと呟く


この世界は確かに敗北していた
でも滅んでいなかったし、今なんて人類砦のような希望さえ生まれている
それは彼らのように戦ったヒトが居たからだ
そう思うから



「このお墓……もしかして彼らの?」
 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、見覚えのある意匠を見つけ言葉を漏らす。
 石碑に僅かに残っていた意匠が、あの騎士や兵隊たちの武具に施されていたものと酷似していたのだ。
 少なくとも、彼らと同じ魂を持つ者たちに向けて作られた墓であることは間違いない。
 サンディは腰に帯びた黒剣に触れ、その刃を交わした者たちに思いを馳せる。
 そして石碑の中央で片膝をつき、瞳を閉じて、彼らへ祈りを捧ぐ。
 彼らの名前どころか顔も知らない。それでも、サンディは一人ひとりに祈りを捧げる。それぞれに、戦う理由や想いが存在していたと思うからだ。
 それは、あの騎士の力を喰らい、そこに秘められていた想いに触れたからこそ、余計にそう思うのかもしれない……。
「……名前、見つけられるかな」
 サンディは立ち上がると、そう呟き、墓の掃除を始めた。
 石碑についた苔を取り除き、それから一つずつ丁寧に磨いてやる。
 さすがに壊れた部分まで元に戻すことはできなかったが、それでも墓らしい清らかさを取り戻すことはできた。
「結局、ほとんど見つけられなかったな」
 石碑に刻まれていたであろう名前は、長い年月の中で風化し、掠れて、ほとんど読むことができなかったのだ。
 けれど、サンディはそんな文字の断片も心に留めておくことにした。
 それは確かにそのヒトが存在した証であり、未来への系譜だからだ。
 この世界は確かに敗北していた。だが、滅んでなどいない。どころか、今では人類砦のような希望さえ生まれている。
 ……それは、彼らのように戦ったヒトが居たからだ。
 サンディはすっかりきれいになった石碑を見渡し、その一つをそっと撫で、呟く。
「……ありがとう」
 その言葉に応えるように、一陣の風が吹いた。
 柔らかくも少し荒々しい風は、サンディの頬を撫で、名もなき小さな村へと吹き抜けてゆく。まるで、彼を外へと誘うように。
 青年は笑みをこぼし、戦士たちの墓を去る。その腰に、黒き剣を携えて……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。
引き続き『不動なる者』。
一人称:わし/我ら

墓の周辺を掃除しつつ。…他の人格も手伝いを、と言ってきたが。一人でやりたくなった。
…ああ、そうか。貴殿らには墓があり、眠れる場所があったのだな。つまり、弔ってくれる人が当時はいたのだな。
…村に被害が出ず、よかった。村人にも、貴殿にも。
やはり、仕掛けたヴァンパイアへの怒りは尽きぬ。

※オブリビオン大量発生につき、弔われてない自分たちと故郷の人々。骨も朽ちかけ。



「……ああ、そうか。貴殿らには墓があり、眠れる場所があったのだな」
 墓を訪れた馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)は息を零し、安堵の表情を見せる。
 墓があるということは、弔ってくれる人が当時はいたということだ。そして、綺麗に磨かれた石碑を見るに、今も彼らを偲ぶ者がいるということだろう。
 それは純粋に、とても素晴らしいことだと思う。
「わしが貴殿らにしてやれることなど、これくらいしかないが……」
 そう言って義透は墓の周辺を掃除し始めた。
 雑草を取り除き、荒れた大地を均して綺麗にしていると『私たちも手伝いますよー』と、義透の中にいる戦友たちが語りかける。
 しかし、彼は断ることにした。今回は自分一人でやりたくなったのだ。この墓の戦士たちを弔うために……。
 戦場に散った者たちに何かしてやりたい。義透がそう強く思うのは、彼らには還る場所も、安らかに眠れる場所もないからかもしれない。
 彼らは……四人の戦士たちは戦場で死んだ。故郷と共にオブリビオンに屠られたのだ。
 そして、その肉体は野ざらしのまま朽ちていった……。
 彼らは四人で一人の悪霊となって再び現れたが、未だに、故郷の人々はもちろん自分の骨すら拾えていないのだ。
 ……そんな彼らにとって、弔いとは少し特別なものなのかもしれない。
 義透は掃除を終えると、遠い昔に戦場で亡くなった者たちに思いを馳せる。
「……村に被害が出ず、よかった。村人にも、貴殿らにも」
 義透の言う通り、村に被害は出ていない。皆元気に汗水を流し、協力して日々の生活を送り、闇に抗い続けている。
 そして、そんな希望の光を摘み取らせるような真似を、ここに眠る者たちにさせずに済んだのだ。
「……我らは、これで失礼する」
 かつての騎士たちの想いや尊厳を守り抜いた彼らは、墓地を後にする。
 その心に、ヴァンパイアへの怒りの炎を燃やして――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニール・ブランシャード
お墓って、生きてる人が過去になった人のことを未来に繋いでいく
過去を忘れないための場所だと思う。
だからこの世界が平和になったとき、村の人達がここに来やすいようにしてあげたいな。
お墓で眠ってる人達や、あの騎士さんのこと
ぼくら以外の人にも知ってほしいんだ。

森の入り口からお墓まで簡単な道を作ろう。
邪魔になる木を切り倒して、塵や雑草はUCで弟達を呼び出して【掃除】するよ。
みんな、おいでー。お手伝いの時間だよー。

終わったら大きな石碑の周りに、この世界で集めた日陰でも育つお花の種を植えよう。

ぼくはこの世界の人達にも、
お花の朝露が朝日できらきら光るところ、絶対見せてあげるんだ。

だから、安心して眠ってください。



 ニール・ブランシャード(うごくよろい・f27668)は大きな斧を振るい、森の木々を切り倒していた。
 森の入り口から墓までの道を切り開こうとしているのだ。
 お墓とは過去を忘れないための場所。そして生きている人が過去になった人のことを、未来につないでいくための場所だと、ニールは思う。
 だからこそ、この世界が平和になったときに、村の人たちがここに来やすいよう、道を作りたいのだ。
(お墓で眠っている人たちや、あの騎士さんのこと。僕ら以外の人にも知ってほしい……!)
 そんな願いを込めて斧を振るい、ニールは道を切り開いていく。
 そして、とうとう最後の一本を切り倒す。これでルート上の木々はすべて取り除けた。
 だが、まだ道と呼べるような状態ではない。切り倒した木々が残っているし、辺りには雑草も生い茂っている。
「みんな、おいでー。お手伝いの時間だよー」
 ニールがそう言うと、「はーい」と答える複数の声が聞こえた。
 そして、辺りの草むらからヒョコヒョコと飛び出すように、小さなブラックタールの幼体が現れる。
 何十体と現れたその小さな存在たちは、力を合わせ、掃除を始めた。
 ある者は雑草をむしり、ある者は大きな石を掘り起こして道を均し、ある者は切り倒した木々を森の外へと運び出す。木々は村へと運び込まれ、あとでニールが解体して木材とする予定だ。
 作業はスムーズに進行し、半日ほどで、簡単ではあるがきちんと道と呼べるものが出来上がった。
 ニールは手伝ってくれた兄弟たちを労いつつ、実際にその道を歩いてみる。
 道は森の入り口から墓へと一直線に開けており、起伏もほとんどない。これなら誰でも安心して通れるだろう。
 ニールは中央の大きな石碑まで来ると、その場でしゃがみ込んだ。
 そして小さな巾着を取り出し、中身を手のひらへと広げる。
 それは小さな種であった。
 日陰でも育ち、きれいな花をつける、ダークセイヴァーの固有種。
 ニールはそれを石碑の周りに、一つずつ丁寧に植えていく。
 決して数は多くないが、育てばまた種を残し、その種が辺りに芽吹き、より多くの花を咲かせるだろう。
「ぼくはこの世界の人達にも、お花の朝露が朝日できらきら光るところ、絶対見せてあげるんだ。……だから――」
 その言葉は自分自身への決意として、そしてここに眠る者たちへの鎮魂として送られる。
「だから、安心して眠ってください」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
【弔い】
ルパート様、あの騎士は骸の海に還り罪を清算したと考えます
…あの聖剣を彼に還そうと思うのです
ご協力頂けますか

●世界知識で加工に適した石材を周辺から探し出し●怪力で掘り出し
…どなたか造ってくれた道のお陰で移動が助かりました

折れた聖剣の形状をセンサーで●情報収集し計測
自分の剣を用いたUCで聖剣と同じ形の石碑を制作

金属よりも劣化に強く、誰かに奪われる恐れも無い…
戦士や騎士達を永く称えることが出来る筈です

やはりご負担が…いえ…
お願いいたします

空の聖剣と照らされる剣の石碑に剣を掲げ

その剣を振るった初志は尊きものにして、人々に受け継がれゆくもの
後は私達にお任せください


ルパート・ブラックスミス
【弔い】
承知した。だがその前に、聖剣を模した石碑を造る。
此処に捧げ、奴がかつて騎士として確かにいた証を遺す。

トリテレイア殿の製作した剣の石碑を【武器改造】、燃える鉛の炎でバーナー加工。

建てた剣の石碑の前で、折れた聖剣を【黒騎士呑み込む青き業火】で【焼却】吸収。

属性を考えれば、UCの負担共々この呪いの鋼身に重いが…
大丈夫だトリテレイア殿。これは【覚悟】を示す為でもある。
下がってくれ。

聖剣の【力溜め】た鎧から力を伝わせた大剣を砲身代わりに、天に向かって剣状の光として【砲撃】。

弔砲だ。この剣の煌めきを手向けに眠れ。
お前たちの意は我らが継ぐ。
この先も続く世界の、闇を掃う剣となり、人々を守る盾となろう。



 中央の大きな石碑。その前で二人の騎士、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)とルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は、言葉を交わしていた。
「ルパート様、あの騎士は骸の海に還り罪を清算したと考えます。……私はあの聖剣を彼に還そうと思うのです。ご協力頂けますか」
 トリテレイアがそう尋ねると、ルパートはゆっくりと頷き返した。
「承知した。だがその前に――」
 そう言って、ルパートは一つの案を示した。そして、トリテレイアはそれに賛同し、二人の騎士は計画を詰めていったのである。
 ……それが、先日のことだ。
 一夜明け、トリテレイアは大量の石材を抱えて墓地を目指していた。
 一晩かけて必要な石材を掘り起こしていたのだ。ルパートと共に村周辺の険しい山々を駆け巡り、適した石材を見つけ出して回収したのである。
「……しかし、どなたかが造ってくれた道のお陰で助かりました」
 トリテレイアは森の入り口から墓へと続く道を歩きながら、この道を造った者に感謝する。大量の石材を抱えて森の中を移動するのは困難であったろう。
 墓地でルパートと合流したトリテレイアは、昨日と様変わりした風景に言葉を漏らす。
「これは……、ルパート様が?」
 雑草が生い茂っていた大地は整えられ、苔むしていた石碑も綺麗に磨かれていた。
 昨日まで漂っていた寂しさは、もはやどこにもない。
「いや、自分が来た時には既にこうなっていた」
 おそらく他の猟兵たちが綺麗にしたのだろう。ここに眠る者たちを想って……。
 そして、二人の騎士もまた、その想いに重ねるようにここにやってきたのだ。
「……では、私たちも始めましょうか」
 トリテレイアはそう告げると、並び立つ石碑の一つにセンサーを当て、その形状を計測し始めた。計測はすぐに終わり、今度は石材の山から程よい大きさのものを取り出し、剣で切り裂き加工してゆく。
 そうして形作られた石をルパートが受け取り、石碑の破損した部分へとあてがう。
 トリテレイアが加工した石は寸分違わず、石碑の欠けた部分と一致していた。機械ならではの精密動作で、石碑の欠損部分を作り上げたのである。
 そしてルパートは自らの燃える鉛の炎をバーナーのように使い、その結合部分をしっかりと埋め、墓をもとの形へと近づけてゆく。
 そんな作業を一つ一つ丁寧に繰り返し、彼らはすべての石碑を復元してみせた。
 そしてもう一つ、『復元したもの』がある。
「……こんなところか」
 中央の石碑の前に『それ』を捧げたルパートは、一歩下がり、その出来栄えを確かめる。
 石碑の前には、あの騎士がずっと手にしていた『聖剣』が、その真の姿をもって突き刺さっていた。
 それは折れた聖剣を基にトリテレイアが造ったレプリカであったが、それが本物と違わぬものであることは、周りの修復された石碑が証明していた。
 意匠を凝らした剣は美しく、まっすぐ伸びた純白の刃は、どこか気高さを感じさせる。
 ルパートたちは、かつてこの聖剣を振るった騎士が確かに存在していた証として、ここに遺すことに決めたのだ。
 だが、これはあくまでも石碑だ。その刃は何も斬ることはできないし、それで良いのだ。
 安らかに眠る戦士や騎士たちに刃は必要ない。ただ、彼らの魂を末永く称えることができれば、それで良い。
 彼らが掲げた剣は、今を生きる者が振るえば良いのだから。
「……そろそろ、始めよう」
 ルパートはそう呟くと、トリテレイアから、あの折れた聖剣を受け取る。
 気づけば辺りは薄暗くなっていた。これからさらに深い夜がこの世界を覆うだろう。
 そんな迫り来る闇に抗うように、ルパートは折れた聖剣の表面に青き炎を灯す。
 ルパートの炎が聖剣を燃やしているのではない。聖剣が、青き炎を発する鉛へと変換されているのだ。
 聖剣は瞬く間に、そのエネルギーをすべて燃え盛る鉛へと換え、青き業火を顕現させる。
 その猛り狂う炎はルパートをも呑み込み、彼の青き炎と融合していく。
 ルパートは聖剣が持っていたエネルギーを、すべてその身に吸収しようとしているのだ。
 しかし、限界を超えて力を受け入れることに、何のリスクもないわけがない。それがルパートとは相反する力であればなおのこと……。
「っ――!!」
 自身をも焼き焦がす青き業火に、ルパートは苦痛の声を漏らしそうになるが、それでもじっと耐えて見せる。
「ルパート様、やはりご負担が……!」
「大丈夫だ、トリテレイア殿」
 身体が軋み、命を削っているという実感はある。しかし、それでも止めるわけにはいかない。
「これは覚悟を示す為でもある。だから……」
「……はい。お願いいたします」
 トリテレイアは今すぐにでも制止したい気持ちをぐっと堪え、ルパートの意志を汲み取る。
 そして青き業火に焼かれながら、聖剣の力を吸収したルパートは、その力のすべてを一振りの剣へと伝わせる。
「弔砲だ。この剣の煌めきを手向けに……眠れ」
 ルパートは光り輝く大剣を振るい、聖剣のエネルギーをすべて上空へと解き放つ。
 解き放たれた光のエネルギーは、闇夜を切り裂き、空に輝く聖剣を作り出す。
 その輝きは地上を照らすように、大空で煌めき続けていた。
 全てを解き放ったルパートは、よろめき倒れそうになる……が、その背中をトリテレイアがそっと支えた。彼の覚悟は示されたのだ、もう手を貸しても構わないだろう。
 トリテレイアは剣を引き抜き、空に煌めく剣と、その光に照らされて輝く剣の石碑に、誓いを立てる。
「その剣を振るった初志は尊きものにして、人々に受け継がれゆくもの。後は、私達にお任せください」
 そう言って、トリテレイアはもう一人の騎士へと繋ぐ。
 ルパートは剣を再び天へと掲げ、誓いを立てる。
「……お前たちの意は我らが継ぐ。この先も続く世界の、闇を掃う剣となり、人々を守る盾となろう」
 掲げられた二振りの剣は、過去も未来も関係なく、そのすべての人々を守るために、煌めくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月29日


挿絵イラスト