Operation Yellow Umbrella(作者 ユウキ
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● Into Each Life Some Rain Must Fall

 夜の静けさ。
 だが、そんな物は表向きだけ。
 昼間から閑散とした街路に佇む、古いメトロの出入口。
 これがこの街の本当の入口だった。
 昼夜を問わず日々の仕事に疲れた者は酒を買い、異性を買う。
 買われた者達は高い金を払って自分を買った連中に、極上の癒しを提供する。
 そんな街だからだろう。
 この街は荒くれ者が多かった。
 些細な事が火種になって、街中巻き込んでの大喧嘩になった事だって一度や二度じゃ済まない。
 金さえあれば、好きなものが手に入る。
 金がなければ、好きなことで稼げば良い。
 あんたは、この街に何を求める?
 金?
 酒?
 それとも情報?
 あるいは、疼く身体を癒す異性?
 まぁ、どうせもうすぐ無くなるけどね。
 この街の荒くれ連中は、今まで何度も化け物やレイダー共を追っ払ってきた。
 でも、もうおしまいさ。
 どうにもならないくらいの群れが来る。
 一晩で、こんな街は泡沫の夢に変わるのさ。
 ……逃げないのかって?
 ……。
 今さら逃げてなんになる?
 それに、誰の人生にだって雨は付きものさ。
 分かるだろ?
 俺は堪らなくこのくそったれな街を愛してる。
 くそったれな街とくそったれな連中に、心底惚れちまってどうにもならない。
 だから……手を貸してはくれないかい?
 誰にでも付いて回る雨だけど、必ず太陽は昇るだろ?
 ただ、それまでの傘が必要なのさ。

● グリモアベース 作戦会議室

「緊急……というほどでも無いが、少し力を借りたい」
 ユウキがそう話す。
「色々と便宜を図ってもらっている情報屋からの頼み事でな、とある街を守ってもらいたい」
 ユウキの広げたのは地下鉄の路線図だ。
 だが、一区画だけどの路線とも分断された奇妙な駅が描かれている。
 そして、ユウキが指差したのはその奇妙な駅だった。
「Yellow Umbrella(黄色い傘)そう呼ばれる古い駅だ。実際の名前は知らないが、所々に黄色い傘が描かれている事からそう呼ばれているらしい。ストーム前に建築中だったこの場所はストームの直撃から作業員達を守り、そして今も人々を守っている。まぁ、守ってる奴らは必ずしも善人という訳じゃないがね」
 レイダーなのだろうか?
「いや、基本的に金さえ払えば味方になるが気質が荒い。善人ではないが悪人にもなりきれない。日々の暮らしに酒と女。腕っぷしは確かだが、かといって何処の拠点でも歓迎はされない鼻摘み者達の楽園。そんな街さ、ここは」
 ただ、この位置はストームの影響が強く、昔から度々攻撃を受ける場所でもあった。
 暮らす人々の気性もあり、普通の奪還者達はあまり近付かないが、隔絶された地下空間という立地ゆえ、レイダーの襲撃は多かった。
 そして、その他の外敵も。
「が、今回は流石に守りきれない程の数が来るらしくてな。こいつらを片付けてほしい」
 ユウキの見せた写真は、ゾンビの群だった。
「入り口が1つしかない立地の関係から防衛そのものは容易いはずだ。まず、街に着いたら予定時刻まで自由に待機してもらって構わん。最初に言ったが、連中も金を払う客には牙は剥かん。予定時刻になったら入口付近に展開、近付く死に損ない共を撃破してもらう」
 だが、地下の街もそうだが地上に関してもこの一帯は非常に薄暗い。
 そしてなによりも。
「この街には黒い雨が降る」
 強烈なストームの影響なのか、あるいは別の要因か。
 ただでさえ薄暗く視界の悪い中で黒く淀んだ雨が十数メーター先の人影さえ搔き乱すような劣悪な環境。
 それが最大の問題だと言う。
「丁度、襲撃予定時刻にこの雨が重なる。こうなると長距離狙撃が難しい上にただでさえゾンビ相手じゃ役に立たないサーモグラフィや、ナイトビジョンまで何の役にも立たない始末だ」
 だが、それでもやってもらわねばならない。
「なんだかんだ、あの街を好きな奴は多い……俺も含めてな。レベッカと糞不味いムーンシャイン(密造酒)が楽しめなくなるのは困る……おっと、今のは聞かなかった事にしてくれよ?」
 おどけたようにそう言いながら、ゲートが開かれた。
「以上だ、猟兵。Operation Yellow Umbrella(黄色い傘作戦)を発令、開始する。よろしく頼む」


ユウキ
 はじめましてこんにちわ。
 (´・ω・)bはじめちわ!!
 ユウキです。
 非常にアングラな街を守るため、酷く視界の悪い黒い雨の中で戦ってもらいます。
 また、各章始めに雰囲気等の細くリプレイが入ります。

 一章。
 アングラな街で時間を潰します。
 微妙に長いので、お酒や異性(いや、同性でも構いませんが)を買って景気付けをしても良いかもしれません。
 ダーティな雰囲気をお楽しみ下さい。

 二章。
 強い雨が降ってきました。
 ユウキさんの話した通り、黒く淀んだ雨が降ります。
 視界も聴覚も満足に働かない劣悪な環境下での動く死体との戦いになります。

 三章。
 雨が止みませんね。
 雨自体は特に身体に悪いわけでもないですし、まぁ、別に帰っても良いのですが。
 もし、この街の雰囲気が気に入ったのなら少し滞在していくのもいかがでしょうか?
 あるいは、雨に打たれてみるのも悪くないかもしれません。
 もちろんユウキさんを呼べば来ます。
「それでは皆さま、良い狩りを」
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第1章 冒険 『夜の街』

POW潰れるまで酒を飲む
SPD大人の遊戯を楽しむ
WIZ路上でパフォーマンスする
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 狭い入口を降りれば、アルコールとヤニ、そして女達の香水の匂いが満ちていた。
 そこかしこに居る客引きと、酔い潰れて路上で寝転がる大男。
 少し入り組んだ路地に耳をすませば、小さく女の喘ぎが響く。
 この街にモラルは無いが、客人には寛容だ。
 客人である間は。だが。
 欲望を満たせる街、欲望に塗れた人々。
 【Yellow Umbrella】
 人々の欲望を庇護し覆い隠す黄色い傘の街へようこそ。
化野・花鵺
「酒のあるぷち悪徳の都かなぁ。おつまみの需要がありそぉだよねぇ。違法陸タコの栽培とかしちゃいそうな感じぃ?それはそれでふぃさりすと業務提携できそうだよねぇ」
狐、真面目に販促考えた

「パッケージは幸せの黄色い陸タコジャーキー…イケるかもぉ」
狐、陸タコ(フィサリスの触手)使ったジャーキーと試作陸醤持参し大人の姿で酒場へ

「ここって商業組合的なものはあるぅ?」
狐、バーテンダーに酒奢った
「最近作り始めたのぉ。しょっぱい方が酒が進んで店の利益も上がると思うんだけどぉ」
狐、陸タコジャーキーと陸醤渡した

「食と命の危機が結び付くと忘れられない味になるからぁ。味覚ジャンキーがたくさんでていいと思うのぉ」
狐、酒呷った


秋山・軍犬
あらやだ、お盛ん
女性の喘ぎ声が普通に聞こえてくるなんて
焔ちゃんの教育に悪いっすわぁ…

焔「あ、あたいはヒャッハーの精霊だから
こ、こんくらい、よよ、余裕だし!」

…さて、仕事まで
良い感じの飯屋とかで黒い雨について
情報収集したいとこっすけど初見の街だし…

…信用できそうな案内人でも雇うか
こーいう街だし、そういうので稼いでる
子なんかも居るでしょ?

問題は、この街の通貨がどの程度
支給されてるかだが…まあ
通貨代わりに、ストームが発生しない程度の
保存食や嗜好品・医療品なんかもバックパックに
詰めてきたから大丈夫やろ

という訳で
こちら仕事帰りで懐の暖かい猟…奪還者でっす!
案内人してくれたら、ご飯も奢るし報酬も弾むのよ?


● Fox&Dog

「あらやだお盛ん……」
「酒のあるぷち悪徳の都かなぁ。おつまみの需要がありそぉだよねぇ。違法陸タコの栽培とかしちゃいそうな感じぃ? それはそれでふぃさりすと業務提携できそうだよねぇ?」
 なんで初手でお前らなんだ?
 というか、違法も何も法そのものが何の価値もない世界だぞ?
 そんな神の声が聞こえた気がしたが、この世界の神はとっくに死んでいるだろう。
 誰が来ようが戸口はいつでも開いているのである。
 秋山・軍犬、化野・花鵺。
 そして、軍犬の使い魔(?)ヒャハ崎・焔
 少し耳を澄ませば響く嬌声に、一番動揺しているのは……
「あ、あたいはヒャッハーの精霊だから……こ、こんくらい、よよ、余裕だし!」
 仮にも世紀末の精霊を自称している焔である。
 彼女の世紀末はR-18お断りらしい。
「さて、まずは良い感じの飯屋辺りで情報……収集でも……あれ?」
 先ほどまで隣に居た花鵺の姿は既に無く。
「……まぁ、大丈夫でしょ」
 少々危ない気はしたが、腐っても猟兵だ。
 何かあっても自分でなんとかするだろう。


 サッととんぼ返りに飛び上がれば、いつもの幼さ漂う顔が妖艶な妙齢の色気漂うそれに早変わり。
 ユウキから盗……
 貰った軍服を着込めば、腕利きの奪還者と言われて疑う者も少ないだろう。
 カランと小さな音を立てて扉が開くと、既に幾人かの男達が寝息を立てていた。
 何の躊躇も無しにカウンターへと進むと、これまた何の躊躇も無く店主らしき薄汚い男に声を掛けた。
「ムーン……ムーン…………シュガー?」
 ユウキの言っていた、ムーンシャインなるものを頼んでみようとしてみるが、何故か浮かばない。
 見た目は幻術でなんとでもなるが、悲しいかな中身は変わらないのだ。
「……あいよ」
 しかし、酔っ払いの相手に慣れているのだろう。
 多少の言い間違えなどを気にする素振りもなく、薄汚い瓶からグラスへと注がれる薄く黄色に色付いた酒。
 月下の元、秘して作られた黄金の輝き。
 ムーンシャインとは概ねそういった意味だ。
 店主にも奢る旨を伝えると、すぐに話を切り出した。
「ねぇ、マスター?」
 カランとグラスを一振り。
 懐から小さな包みを取り出すと、店主へとその包みを差し出す。
「……なんだい?」
 こういった取り引きも慣れている。
 ……と、思ったのだが。
「……ん?」
 手にとって包みの異様な感覚に首を傾げると、静かに包みを開いた店主。
「最近作り始めたのぉ。しょっぱい方が酒が進んで店の利益も上がると思うんだけどぉ?」
 間延びした話し方が見た目のお陰で色っぽく聞こえた。
 が、やってることが店主からすれば意味不明である。
「ここって商業組合的なものはあるぅ?」
 その言葉に店主はおおよその当たりを付けた。
 おそらくこの品をこの街で捌き、利益を得たいのだろう。
「……売るなら勝手にしな。毒でもなきゃ、この街の連中は気にやせんよ」
 そう言って自分の酒を呷る。
 相変わらず薄味で不味い酒だが、こんなものを喜んで飲む連中だ。
 多少味が悪くとも、誰も気にはしない。
「食べてみてよ?」
 そう言われて一口齧る。
 なるほど、確かに塩気が強く、酒に合う。
 これならば、金を払う奴がいくらでもこの街にはいるだろうと思った。
「いくらだ?」
 この店で纏めて仕入れ、売り捌く。
 お互いに利益を出すならこれが公平だ。
「そうだなぁ……」
 試すようにグラスを持ち上げる花鵺。
 が、例の如くそこまで考えていなかっただけともいう。
 そのままとりあえず酒の味を見てみようと呷った。
「ブゥゥゥゥゥッ!!」
 不味い。
 調子にのって一気に喉に流し込んだ瞬間、喉に激痛。
 なんだかんだ神の使いの血筋である。
 酒の旨い不味いは良くわかるのだ。
 見た目は少し薄いウィスキーだが、味は酷いの一言に尽きた。
 薄い癖に雑味が強く、やたらめったら度数が高い。
「げほっ……ごほっ!!」
 文字通り喉が焼けるように痛む。
「こんなものお酒じゃないよ!!」
 そう叫んだ花鵺であったが、道具も材料も、ましてや大した知識もなく作られた密造酒などえてしてそんなものである。
 呼び名の美しさとは裏腹に、酔えればなんだって良いのだ。


 花鵺が密造酒の味に難癖を付けている一方、誰か信用出来る案内人はと探していた軍犬は適任に出会っていた。
「お前らが、猟兵って奴か?」
 そう話しかけて来た男に聞けば、ユウキに依頼をした張本人だと言う。
 男は、リックと名乗った。
「おぉう……」
 渡りに船。
 こういった場所では、信頼できる相手以外には名前すら明かさないのが常識である。
 ユウキの名を知っているという事は、それだけ信頼出来るという事だ。
「あいつらとやりあうのに必要な情報なら提供する。それ以外は……ま、こんな所だ。相応の対価は貰うぞ?」
 まぁ、当然と言えば当然か。
「まぁまぁ、今はそれなりに懐も暖かいっすから、何か食いながらでも……」
「そいつはやめといた方が良いぞ?」
 軍犬の提案を即座に否定したリックによれば、ほとんどの店が酒も含めて低品質な品しか取り扱っていないらしく、信用以前の問題として、どの店で食事をしても"当たり"を引く可能性があるらしかった。
 誰が当たりを引くのかなんて賭けを日常的に行うような場所で、外の人間が食事をするべきではないという。
 一瞬、なんて場所なんだと憤慨し再び自身で料理をと考えたのだが、よくよく考えてみればまともな食事自体が珍しい世界だ。
 最近は特に自分の腕を振るい新鮮な食事を提供してきた事で感覚が麻痺していたのだろう。
「最近は農業や畜産を考えだす拠点が出始めたらしいが、ここじゃあ無理だろうな」
 リックの言葉にふと思い出す軍犬。
「黒い雨っすか?」
 しかし、黒い雨とはいったいなんなのだろう。
 何か情報は無いかと問うてみたが、リックは首を降った。
「俺達にも良く分からない。ストームで舞い上がる埃や塵が雨に溶けているんじゃないかという推測くらいさ。少なくともそのままでは飲めたものじゃないし、植物もあまり育たなかった」
 故に、この街では密造酒作りが盛んなのだという。
濾過煮沸した黒い雨に酵母を加え、アルコール殺菌させる。
 こうして出来上がるのがこの街の密造酒だった。
「薄黄色いのは濾過した段階でそうだからさ。見た目はウィスキーみたいだが味は程遠い」
 自嘲気味に笑うが、悲壮感はあまり感じない。
 どんなに劣悪な環境でも、この街が好きなのだろう。
「……これ、情報料っす」
 そう言って差し出せたのは、少量ではあったが室内の良い食料だ。
「ありがとう、俺はこの辺りに居るから、何かあればまた探してくれ」
 立ち去るリックを見送り考える。
 彼等に、安全な水と食料を届ける方法は考えればすぐに思い付いた。
 建設中に放棄されたとはいえ、ここはメトロなのだ。
 少し手を加えれば、既存の路線との接続も充分可能だろう。
 そうすれば、以前ユウキが話していた流通経路にこの街を加える事も出来る。
「けど、それをこの街の人たちが喜ぶのかって所っすかね」
 他者と隔絶されたが故に保証された自由。
 それを手前勝手な親切心で奪っても良いのか。
 ……と、珍しくシリアスな思考に耽っていた所。
「ぐ……軍犬…………」
 自称世紀末の精霊。
 真っ赤な顔で口をパクパク。
 ……金魚かな?
 そんな言葉が喉元まで来たがグッと飲み込む。
「男の人が……女の人に覆い被さって……それで……それで……」
「あぁ~……」
 おおかた声が気になって路地裏を見に行ったのだろう。
 この子には刺激が強すぎたらしい。
 ……そもそも自分はなんでこの子をこんな子供の教育に悪そうな場所に連れてきてしまったのか?
 そんな事を考えながら、軍犬は首を捻る。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ジョン・ディー
適当に女でも買うかとあてもなく歩いていれば
不意に『お兄さん』と掛けられる声。絡みつく温度。
見下ろせばそこには年若い薄着の女。
媚びるような猫撫で声と視線、
一緒にイイコトしない?

…なんて、
こういう商売は初めてなんだろうな。その薄い体も声も僅かに震えている。

いいぜとこの女を買って、適当な部屋のベッドに組み敷く。
このまま抱いてやってもいいんだが…
ハアと溜息を吐いて女の上から退く。
「…気が変わった。代わりに何か話せ」
こんな怯えた目をされちゃあ抱く気も失せる。
驚いておずおず身を起こした女の肩にコートも掛けてやる。

…金?チップを付けて払ってやったよ。
これで暫くは暮らせンだろ。

_
(アドリブ、マスタリング歓迎)


 ぷらぷらと、ただ影のように歩く。
――しみったれた街だ。――
 そんな風に思いながらジョン・ディーはポケットの煙草を取り出して咥えた。

 キンッ!

 乾いた金属音に続けて、フリントを回す音。
 何者かが差し出したオイルライターの火が、ジョンの咥えた煙草を炙る。
「……」
 ちらりと視線を腕にそって動かせば、そこにあったのは女の顔だった。
「ねぇ、イイコト……しない?」
 見たところまだ10代だろう。
 けばけばしく化粧で見繕っては居たが、あどけなさが化粧の奥に微かに残る。
 品定めをするように女を見た。
 身体付きは悪くない。
 多少薄いが細すぎず、女らしい身体。
 ブロンドの髪はしっかりと手入れされているようで、薄く吹き込む風に靡いてサラサラと舞っている。
「……いくらだ?」
 まぁ、時間潰しには上等といった所か。
 どうせ、一服ついた後は女でも探そうかと思案していた所だった。
 手間が省ける。
 小汚ない部屋に連れられて、女は有り体な世間話を始めようとする。
「で、お兄さんはどこから……キャッ!?」
 わざわざ下らない話などするつもりもない。
 いちいち面倒なプロセスを省いて獣欲を満たせるのが商売女の良い所だ。
 ただ、身体だけ愉しませてくれればそれで良い。
 慣れた動きで女を押し倒し、組み敷いた。
 そのまま乱暴な手付きで乳房に手を伸ばし……
 ジョンはそのまま止まった。
 女の目だった。
 翡翠の光が恐怖に揺らぎ、薄い身体は微かに震えている。
「てめぇ……」
「ひっ……」
 興醒めだ。
「客とった事ねぇだろ」
 すっと退いて溜め息を吐く。
 勿論、そういうのが好みの奴はごまんといるだろう。
 だが。
「興が醒めた。怯えた女を抱く趣味はねぇ」
 驚き立ち上がる女に、コートを着せて言った。
「が、金は払ったんだ。そうだな……何か話せ、子守唄代わりにはなるだろ」
 ボスンとベッドに倒れて、戸惑う女の言葉に耳を傾けながら目を閉じる。
 無駄な出費だったような気はするが、まぁいい。
 少し寝よう。
大成功 🔵🔵🔵

エメラ・アーヴェスピア
はぁ…依頼としてはあまり興味は無いのだけれど…
黒い雨、か
…何か心に来るものがあるわね…過去に何かあったのかしら
…いいわ、この依頼受けましょう…何かわかるかもしれないから

雨のせいで遠くが見えなくなる、と
とりあえず『ここに始まるは我が戦場』、【偵察】して地形の【情報収集】だけはしておくわよ
これがあるだけでも大分違う…遠距離攻撃が基本な私だと、用意はしておかないと困るもの
その後は…まぁこういう所なら何が転がっているかわからない物よね
猟犬を護衛に、何か面白い機械が無いか回って見ましょうか

※アドリブ・絡み歓迎


 依頼内容として、興味をそそるものであったのかと問われれば、エメラ・アーヴェスピアはNOと答えたろう。
 ただ一点の単語を除いては、だが。
 【黒い雨】
 何故か心に突き刺さって、離れない。
「ハァ……」
 最初は断るつもりだった。
 街の雰囲気、人々の気性。
 どれを取っても自分の肌には合いそうにない。
 それでもここに来てしまったのは、黒い雨がタールのようにベッタリと心に張り付いて離れなかったからか。
「行きなさい」
 ばらまいた缶型のドローン達が、地上の雲行き怪しい廃墟をカシャカシャと進んでいくのを見届けて街へと入っていく。
 薄暗く、薄汚く。
 やはり、自分には合いそうもない。
 加護がある以上、相手に違和感は覚えさせない筈だがそれでもこの見た目だ。
 万全を期して自身の身長程はあろうかという猟犬を侍らせ街を歩く。
「……」
 静かに響く嬌声や臭いだけで酔いそうな強いアルコール臭から逃げるように店へと転がり込む。
 ガラクタを修理して売っているのだろう。
 外とはうって変わり鉄と油とが混じった独特の臭いが充満していた。
「ま、外よりは幾分マシよね」
 並ぶ……というより、ほとんど雑多に放られた品々を見て回る。
 確かにほとんどは文字通りのガラクタなのだが。
「へぇ……」
 中にはなかなかお目に掛かれないような品も転がっている。
 まだ使えそうな赤外線追跡装置に、軍用品のレーダー基盤。
 ……どこから拾ってきたのだろう?
「……近くに古い軍の飛行場がある」
「きゃっ……!?」
 不意に響いた声に驚き、悲鳴をあげてしまった。
「嬢ちゃん、目は良いな。この街じゃ、そんなもんに興味を示す奴はほとんどおりゃせん」
 エメラの横に屈んで、油塗れの老人は基盤を見せた。
「何に見える?」
 驚いた事を謝罪しつつ見せられた基盤をしばらく眺めたが、見たことの無い物だ。
 静かに首を振って降参する。
「こいつは、開発中だった無人型歩行戦車のAIユニットの基盤だ……Autometion Electric Lady Ai【A.E.L.A.】本物の女みたいに話す奴だったんだがね。開発中のこいつを飛行場から空輸する時にあのくそったれな大嵐が来て、今じゃガラクタ程の価値も無い」
 基盤があっても、それが制御する機体が無ければ意味がない。
「……もしかして」
 老人は静かに笑いながら言った。
「古い話さ。昔は俺もこいつの体をこしらえてやろうと足掻いたが、とうと上手くいかん。ま、設備も人間も皆死んじまったこんな世界じゃ、二度とこいつは喋らないだろうさ」
 そして、何か考えるようにエメラと、そしてそのそばに佇む猟犬を見る。
「……もう俺は…………いや。お嬢さん、技術者だろう? そいつを貰ってはくれないか?」
 まっすぐにエメラを見つめてそう言った。
 自身の死期はもう近い。
 そしてこの街には他に技術者も居ないのだ。
 彼女をもう一度動かす事を半ば諦めていた所に現れた、機械の犬を引き連れ、軍の基盤に興味を示した少女。
 馬鹿らしいと笑われるかもしれないが、運命だと思った。
「ありがとう」
 受け取ってまじまじと眺めるエメラに、他に何か欲しければ言ってくれと話して立ち上がる。
 少なくとも、何もせず諦めるよりずっと良い。
 誰かに夢を託して死ぬのなら、それも悪くはない。


「どうしたものかしら……」
 店を出てメトロ入り口近くの崩れかかったビルの一室にまで移動すると、断るに断れず、結局受け取ってしまった基盤を眺めながら呟いた。
「ま、何かの役に立つでしょ」
 丁寧に基盤をしまって、先に展開したドローンから集まった情報を整理する。
 T字路の丁度中心に位置するこの入り口に侵入するには、三方向に伸びるいずれかの道を通るか、あるいは今エメラが居るビルの一階を突っ切るより他は無い。
 他の家の隙間等はほとんどが崩れており、通れない事は無いがそこまで気にする必要もなさそうだった。
 相手はただ食欲のみに突き動かされる歩く死体だ。
 身を隠したり忍び寄ったりといった知能は働かないとなれば、最悪視界が効かなくとも当てずっぽうに道を撃てば粗方は片付くだろう。
 不意な接敵にのみ警戒すれば良い。
「さて……」
 エメラは迎撃の用意を開始する。
 まだ、雨が降るまでには時間がある筈だ。
大成功 🔵🔵🔵

アビー・ホワイトウッド
アドリブ、連携歓迎

なるほど、退廃的。せっかくなら少しくらい遊んでもいいかもしれない。
とはいえ仕事は仕事。街の地形を把握するために情報屋を探そう。地図くらい扱ってるはず。
対価?お金ならある。それに明日の晩もここで商売が続けられる事じゃだめ?

街にはゴロツキにジャンキーにレイダーモドキ。ロクな奴らがいない。
何にも縛られない自由な街。言い換えれば無秩序な街。腕があれば楽ができそうだけど…。
適当なお店で飲み物でも飲んで冷やかしがてら街を歩き回ってみる。
ゴロツキが絡んでくるなら容赦はしない。

ガキだと思って舐めたら駄目。軟弱野郎にどうにかされるほど私は安くない。


三角・錐人
・方針:SPD

・キマフュにもならず者ってのはいてね。ま、俺もその1人ではあったわけだが、それを思い出させるような街だな、ここは。んじゃ、その頃みたいに「遊ぶ」とするか。

・そこのカード遊びに興じてる兄さん姉さん、俺も仲間に入れてくれねぇかな、と「半端に知ってる人間」を装った「だまし討ち」で近づき、遊びの輪に入れてもらおう。

・最初はカモを演じ、場の人間の手癖や視線、その裏の思考を探る。「第六感」や「見切り」も使ってな。頃合いを見て反撃開始。「第六感」「見切り」「フェイント」「だまし討ち」「盗み攻撃」……本当のイカサマとバクチを見せてやるぜ。ま、焦土にはしねぇ。あくまで「遊び」さ……楽しめ高い?


● アビー・ホワイトウッド

 薄汚れた階段を降りた先。
 ちらと周囲を見渡せば、倒れている者も居れば女を路地裏へ連れ込もうとする者、なにやら挙動不審に周囲を絶え間無く見回している者も居る。
「なるほど、退廃的」
 ゴロツキ、ジャンキー、レイダーモドキ。
 血統書付きのロクデナシ共があちこちにいる。
 確かに退屈はしなさそうだ。
「さて……」
 少しばかり遊ぶのも悪くは無いが、こんなところでできることと言えば賭博か男か。
 探せば男娼も居るだろうし、なんなら男で括ればそこらじゅうにいる。

 バシンッ!!

 そら、男の方からやって来た。
 背後から伸びてきた腕を叩き払う。
「……私は娼婦じゃない」
 静かにそう呟きながら振り返ると、男がへらへらと笑いながら立っていた。
「固いこと言うなよ……なぁ?」
 再び、今度は乳房へと直接伸びる腕。
「くどい」
 確かに体格には恵まれているようだが、フラフラになるほど酔っている相手に負ける訳がない。
 いや、たとえ素面でもこの男がアビーを好きに出来る可能性など那由多の彼方だろう。
 伸びた腕を掴んで捻り上げる様に組み倒す。
 こんな男共に身体を許す程、アビーは安くはなかった。
 男は悲鳴を上げるが、周囲はまたかといった視線でちらと見るばかり。
 おおかた、日常茶飯事なのだろう。
「イテェって! 悪かった!! 降参だッ!!」
 さてどうしてやろうかと思ったが、あまり大きな騒ぎを起こしたくはない。
「信頼できる情報屋を探してる。素直に教えれば今回は見逃しても良い……言わないなら…………」
 更に腕を捻り上げる。
「分かった! 分かった!! 酒場に行け、マスターに言えば紹介される!!」
 腕の力を緩めると、這いつくばるように逃げていくセクハラ男。
 情けない姿だった。

 他と比べて幾分か盛り上がっている店内では、どうやらカードを使った賭博の最中のようだ。
「いやぁ、お兄さん達強いねぇ!」
 そんな風に笑う猟兵が、輪の中にいる。
 どうやら見え透いたイカサマで絞られているようだが、今は助けている暇はない。
「マスター、ここに来れば情報屋を紹介してもらえると聞いた」
 適当にアルコールの無いものをと注文しつつ、単刀直入に聞いた。
「……リック、客だ!」
 そう呼ばれてやって来た男に話を切り出す。
「対価はある。地上の地理の情報が欲しい」 
 対価はなんだと聞く情報屋に答える。
「多少のお金と……明日の晩もここで商売が続けられる事じゃだめ?」
 リックは静かに笑った。


● 三角・錐人

「いやぁ、お兄さん達強いねぇ!」
 まったくどうして見え透いたイカサマだった。
 街に入ってさて暇を潰すかと入った酒場でポーカーに混じれば、いかにもな連中が新参者に洗礼のつもりなのだろう。
 錐人は、ニコニコとした笑顔を取り繕ったまま、ゴロツキ達の洗礼に"付き合って"いた。
 彼の生まれ故郷は、言ってしまえばこの世界とは真逆だと言っても良い。
 豊富な食糧に飽和した娯楽。
 皆が日々お気楽自堕落に好きなことをやって生きる世界。
 だが、そんな場所だろうとならず者やゴロツキの類は存在するのだ
――ま、俺もその1人ではあったわけだが――
 ゴロツキ連中は、錐人が必ず損をしつつも要所で勝たせるようにカードを配っていた。
 公平になるようにと順にカードを配らせるが、たとえ錐人の番になろうとその時は懐からカードを出して盤面を狂わす。
 少し注意していれば、各々の動きは手に取るように分かる。
 伊達に目が多い訳ではない。
 そして、そんな風な"半端に知った"者を巧みに演じつつ、錐人はどんどんとゴロツキ達を自分の糸に絡めていく。
「へへ、悪いな兄ちゃん。でも、なんだかんだ負けてるんだ。今日はそろそろやめた方が身のためだぜ?」
 ゴロツキの一人がそう笑った。
 良心の呵責……というよりは、心配するフリだろう。
 確かに錐人は全体から見れば負けていたが、要所では勝っていたためにパッと見は負けたという感覚は薄い。
 そして、そういう奴はのめりこむ。
 次は勝てると続けて、じわじわと絞られていくのだ。
――確かに、潮時かな?――
 ちらと自分の下準備の成果を見る。
 手札は揃った。
「じゃあ今日は最後の人勝負といこうか」
 仕方無いなとへらへらしながら少しばかりベットを上げてカードを配るゴロツキ達だが、たとえどんな役を出そうが錐人には敵わないだろう。
「レイズ」
 錐人の役はストレート。
 これなら勝てると思わせるのに丁度良い。
 全員がベットを終えた。
 当たり前のようにゴロツキ達の中から
錐人のストレートより強い役を並べる者が出た。
「悪いな」
 もはや結果が分かっているとばかりに錐人のベットに手を伸ばしたゴロツキに自分の役を見せた。
「あ……あぁ!?」
 スペードのロイヤルフラッシュ。
  文句無しの最高役。
「はは、悪いな。焦土にはしねぇが、負け分くらいは返して貰うぜ?」
 してやられたと笑うゴロツキに錐人も笑った。
「楽しめたかい……?」


 時間は、刻一刻と迫っていた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 集団戦 『ゾンビの群れ』

POW ●ゾンビの行進
【掴みかかる無数の手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD ●突然のゾンビ襲来
【敵の背後から新たなゾンビ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ ●這い寄るゾンビ
【小柄な地を這うゾンビ】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 T字路の丁度中心に位置するメトロの入り口。
 背にした大きなビルの残骸を除いて倒壊した建物に囲まれたこの場所。
 ぽつりぽつりと降り始めた雨は、やがて街を飲み込んだ。
 粘り気のあるタールのような黒い雨がザァザァと音を立てて世界を漆黒に染める。
 ゆらゆらと雨に打たれる人々は、傘を求めた。
 ずぶ濡れになりながら、黄色い傘に潜り込もうと歩みを進める。
 黒い雨が降っていた。
秋山・軍犬
基本、他の人の戦略を阻害しない様
設置場所などは配慮しつつ

まず、指定UCで作成した
適切な大きさのまな板でメトロの入り口にバリケード

で、空中戦を阻害しない程度の上空に
戦場をある程度カバーできる程の
超巨大なオーラの鍋を傘代わりに設置

これで鍋がカバーできる範囲は雨に悩まされない筈

さらに、炎と厨房は親友という事は以前の戦い
(参照:アースクライシス2019⑮~Òp シャドウハント)
でも証明されてる訳なんで

大技で消耗した自分に代わって
攻撃役&照明役の【UC:世紀末精霊伝説『焔の拳』】
こと焔ちゃん!

男のロマン、キン〇マンばりの炎のツープラトン頼んだで!

ま、調理じゃなくて火葬だけどな…ゾンビ達を楽にしてあげて…


エメラ・アーヴェスピア
…託されてしまったわね
考えるのは後にしましょう、幸いにもその時間はありそうだし、ね
今は…猟兵の仕事を始めましょう

ビルね…高所を取れるのはいいけど今回はメリットが…いえ、面白い手を思いついたわ
『我が紡ぐは戦装束』、対象はビルよ
様々な重火器と崩れなくなる程度の補強を仕掛ける事で要塞と化し、近づいてくる相手を徹底的に撃滅するとしましょう
そして上方にシールドを複数それなりの範囲に展開する事で簡易的な傘としましょう、これで近い所の雨の影響を減らすわ
そうすれば誤射も無くなるし、防衛ラインとしてならこれで十分でしょう
今はただ、戦うのみよ…私自身が戦ってはいない、と言うのは気にしないで頂戴

※アドリブ・絡み歓迎


アビー・ホワイトウッド
アドリブ、連携歓迎

何も見えない…これは厄介。そしてゾンビは本当に厄介。
地上に隠しておいた装甲車をメトロ入口から敵の進軍ルート上の大通りに停車、車載ライトを点灯してゾンビの群れを待ち受ける。
街の地形は集めた情報通り…なら、この場所がメインの進軍ルートになるはず。

まずは積んでおいた無反動砲を用意。装甲車のハッチから上半身を乗り出して待機。
肌に当たる雨が黒い。舐めてみる。おかしな味はしない?

ライトに浮かび上がる集団の影を捉えたら攻撃開始。無反動砲を発射したら後はUC発動、装甲車の12.7mm機関銃で撃ちまくる。
んー…数が多すぎる。マズい。

いざとなれば装甲車を放棄、小火器を持って他の猟兵と合流しよう。


 ザァザァと降りしきり、肌に当たれば纏わりつくような粘り気に顔をしかめた。
 即席で作られたバリケードでメトロの入口は封鎖され、各方向へと投光器の明かりが向けられていたが、ほとんどの明かりが黒い雨を照らすばかりでその先を映す事は無い。
「ま、だけど少しはマシかしら」
 複数のシールドを天に張り巡らせて、降りしきる雨をいくらか遮っていたのはエメラだ。
 メトロの入口ではなくその背後のビルに陣取り要塞化する事でゾンビ達の侵入経路を一つ潰し、更に真正面の道を撃ち下ろす形で複数の砲塔を展開することで、たった一人で二つの経路を断って見せた。
「まぁ、勿論一匹も取り逃がすなと言われたら無理でしょうけど」
 そう呟いたエメラの背後から声が響く。
「大丈夫。その為に私達が居る」
 アビーだった。
 布陣が整った事を知らせに来た彼女にそっと微笑むと、自分は濡れない位置で高みの見物だという事を謝った。
「……適材適所。少なくとも、エメラはただでさえ負担が大きい……気にしないで」
 作戦は至極単純。
 要塞化したビルと前方の大通りをエメラが一人で抑え、側面の通りを他の猟兵が分担して防御する。
 また、軍犬とアビーは、最悪エメラと他の猟兵が撃ち漏らした際にそちらの片付けに回れるようメトロ入口付近で迎撃に当たる。
「……それは?」
 ふと、エメラの手元にあった何かの基盤に目を映したアビーが聞く。
「あぁ、これ?」
 託された……と言えば聞こえは良いか。
 ふらりと立ち寄ったジャンク屋で、なかば押し付けられるように受け取ったただの部品。
 捨ててしまえばそれまでなのだが、どうもまた何かが心に引っ掛かるのだ。
「だけれど、今は考えるべき時間じゃない……でしょう?」
 襲撃予定時刻まではもう数刻の時間もない。
「もちろん。今は何も考えずに戦う時間」
 だが、これが終わってしまえば時間はたっぷりある。
「また、無事に帰りましょう」
 背を向けたアビーに、そう呟いた。



「まさかとは思うけど、引火しないよな、これ」
 黒い雨はどこかタールのようで、そんな疑問が軍犬の精霊である焔の口から漏れた。
「もし引火したら、確実に街どころかここいら一帯何も残らないっすね」
 さらりと恐ろしい事を言って見せたが、もちろんそんな事は確認済みだ。
「軍犬」
 背後の装甲車から上半身を覗かせたアビーが声を掛けた。
「はっきり言って、私には何も見えない。そうなるとここでありったけ撃ちまくる以外に出来ることもない」
 用意された武器の装填を確かめながら、ふと腕に付いた黒い雨をぺろりと舐めたアビー。
 そして、分かりやすい程に顔をしかめた彼女を見ながら軍犬は笑った。
「……ともかく」
 それが少し恥ずかしかったのか、ばつが悪そうに話を続ける。
 だが、言いたいことは至極単純。
 "当たって痛い思いをしても恨むな"という事だけだ。
「なんてこった」
 軍犬はおどけたように続ける。
「もし、自分がアビーさんに撃たれて死んだら……」
「安心して」
 だが、アビーは軍犬の言葉を遮った。
「貴重なたんぱく質は無駄にしない」
 どちらからともなく笑い出す2人。
 今がどんな状況なのか忘れてしまいそうだった。

 ……だが。

 遠くで響いた爆発音。
 エメラが動いていないとすれば、それはおそらくアビー達とは別方向の足どめに向かった猟兵達だろう。
『アビー、軍犬、来るわッ!!』
 エメラから届いた通信に短く返事を返すと、すぐに真剣な表情を取り戻した2人は、正面の暗闇に集中する。

 ゆらり。

 ゆらりと静かに姿を表した、スーツ姿の男。
 それだけではない。
 破れた衣服から片方の乳房が見えているにも関わらず、気にする素振りすら見せない女。
 顎が砕けてその口を閉じられなくなった太った中年に、まだ親から離れられないような子供。
 なにひとつとして一貫性の無い多様な人々。
 ただ一つ、彼らに言えることがあるならば。
「Let's Rock!!」
 それは、既に死んでいる筈という事だけだ。
 アビーが掛け声と共に放った無反動砲の爆炎と、背後のエメラの砲塔群の射撃。
 軍犬と焔は、それと同時に一気に彼らへと詰め寄った。
「ウオォォォオオオッ!!」
 放り投げた無反動砲に変わって握った機銃のグリップ。
 その引き金を引いて背後から撃ちまくるアビーの12.7mmの銃撃。
 暫く撃てば、銃身に当たった雨がジュウと音を立てて嫌な臭いを放つ煙になる。
 少なくとも、銃身が焼け付く心配はない。
「……やっぱり見えないか」
 あんなふざけた事を言ってはみたが、それは2人への信頼と言っても良い。
 寸分の迷いの無い2人の突撃。
 ただ背後から飛び込む銃撃を当たり前のように避けながら、目の前のみに意識を払う。
 2人には、それが出来るのだと。
 そして、確かにそれをやってのけた軍犬の渾身の一撃が吹き飛ばした群れを、焔が最大級の爆炎で焼き払う。
 降りしきる雨に、消せる物なら消してみろと挑むのだ。
 料理人としてでは無かった。
 だが、人としてではあった。
 死してなお、祝福から外れてこの世を彷徨う哀れな魂を弔う救済の炎。
「消せるもんなら消してみやがれ!!」
 それは激しく慈悲深く。
「見えたッ!!」
 そして、敵の位置を味方に知らせる照明となる。

 3方向で上がる炎が、戦いの始まりを告げた。
 始まってしまえば、エメラに出来る事はもうあまり残ってはいない。
 適宜指示を送る事も、この雨の中で戦場の様子が分からなければ不可能だ。
「すこし……歯痒いわね」
 そう呟きながら、せめて仲間の無事を祈った。

 黒い雨は、まだ降り続く。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

三角・錐人
・ただでさえ視界最悪なとこに黒い雨っと。ほぼほぼ暗闇の中での戦闘になるな。で、熱源探知もさして効果はなし、か。それならそれでいくらでもやりようはあるさ。

・UC発動。触手共を俺の周囲に蜘蛛の巣状に配置。こうすれば見えない相手でも触手の反応で感知できるし、飛び越えようとすれば音で判別できる。「第六感」も総動員だ。
また、カードセイバーはある程度は照明としても使える。頼り切ることは厳禁だが、役には立つさ。

・後は地道に駆除作業。触手で絡め取り、剣で斬り捨て、あるいは銃やカード魔法で撃ち抜く。場の広さにもよるが、ブラッディアイにレックスを運転させて街の入り口を塞いでおいてもらえば少しは安心だろう。


化野・花鵺
「管狐は鋼も喰らうが、腐肉を喰わすは妾が嫌じゃ。これでも我が眷族として、目をかけておるのでな」
狐、管狐の封入具を撫でてうっそり嗤った

「この世には、目に見えぬほど小さな機械もあるそうじゃ。ならばただ祓っても、あの腐肉どもは止まらぬやもしれぬ。ゆえに、その機械共々滅してくれようぞ!」
「フォックスファイア」で欠片も残さず焼き尽くす
狐火を抜けて近寄って来た敵は破魔の属性込めた衝撃波で弾き飛ばす
「寄るな下郎が、小賢しい」
狐、鼻にシワを寄せた

発見しにくい敵も野生の勘で何となく察知して攻撃する
敵の攻撃は野生の勘で避けオーラ防御で防ぐ

「早々風呂に入った方が良さそうじゃ」
狐、医術で黒い雨を診断し仲間を誘った


ジョン・ディー
…ようやくお出ましか。
雨も降ってきたことだし──さっさと終わらせるぞ。

▼戦闘
目に付いたところは庇ってやるが、基本的には前線で焔を振るう。
…視界が暗く悪いなら、明かり代わりにも多少はなるだろ。

脚や拳を用いてゾンビ共の頭や心臓を的確に部位破壊を併用するが
やはり数が多い。
だが数が多いだけだ。
大太刀──『無銘』に獄焔纏わせ、猛る本能のまま知らず獰猛に微笑む。
そして、戦場を蹂躙する様、一閃。

「──眠れ、」
此処にお前らの安息は、無い。


 雨が降り始めた街。
「湿気っちまったな」
 ジョンは咥えたタバコを放り投げると、黒い視界を睨み付けた。
「逃がすなよ、それだけ後ろの連中の負担になる」
 錐人が特徴的な兜を被り、鉈のような剣を担ぎ上げてそう釘を刺す。
「ヌシこそ、そんな視界を狭めるような兜をしおってからに……逃がすな等とのたまったその本人が逃すまいな?」
 今回はふざけるつもりもない。
 いや、本気になっているのか。
 既に半ば狐の化生と化した花鵺がカカと嗤う。
「おい、狐ババァ。間違っても俺たちを攻撃すんじゃあねぇぞ」
 本来は彼女の方が若いのだが、漂う雰囲気は老練した化け狐のよう。
 ジョンの軽口も、今の彼女にはただの戯れ言でしかない。
「ふん、あまりチョロチョロしておると誤って焼いてしまうやも知れぬ。何せ歳だからのう」
「まぁまぁ、お互い仲良くしようぜ……少なくとも、あれを片付けるまでは……テラーカード、セット」
 肩に担いだ大鉈が輝き、伸びた光が刃となる。
 錐人が事前に張り巡らせていた罠に感があった。
 いまだにその姿見えずとも、位置は手に取るように分かる。
「何匹だ?」
 ジョンがそう聞くが、錐人は静かに首を振った。
「……聞いて後悔しないって約束できるなら教えてもいい」
「はいはい、黙って手当たり次第にぶっ殺せってか。シンプルで良いな」
 抜いた無明の大太刀に朱が差した。
 朱く、赤く、一際紅く。
 燃え盛る炎は、救済など知らぬ。
 ただただ乱暴に、目の前を焼き払うだけの暴力でしかない。
「……待て、そう猛るな」
 2人から引いた位置で、今にも飛び出しそうな管狐達を花鵺は諌める。
「貴様等が鋼すら喰らうは我が誇り。なれば、誇り高き眷属に腐肉を喰らわせたとあれば妾の恥よ。誉れ高き我が眷属よ。今は妾を信じて待たれるがよい」
 薄く微笑み、封入具を撫ぜる。
 そうして腕に灯るは紅蓮の業火。
「この世には、目に見えぬほど小さな機械もあるそうじゃ。ならばただ祓っても、あの腐肉どもは止まらぬやもしれぬ。ならば、その機械共々滅してやれば良い話」
 操る業火は骨すら残さず焼き付くすだろう。
「来るッ!!」
 錐人が鬨の声を上げ、ジョンがそれに続いて飛び出した。
「ふん、面白くもない」
 薙ぎ払う無明の業火には、寸分違わぬ正確さをもって、敵の首を切り落とす。
「さぁ、滅してくれようぞ!!」
 そして花鵺の放った狐火は、着弾するとまるで爆弾のように大爆発を引き起した。
 全ての狐火を集めた最大火力の一撃は、開戦の一撃に相応しいだろう。
「あー……ははっ、少し嫌になるな」
 飛び出し、切り払いながらそんな事を呟く。
 向かって来る敵の数が分かるのは錐人だけだ。
 だが、だからこそ感じる敵の大群に辟易とする。
「テラーカードオープン!! フリーズボルト!!」
 切り刻むだけでは埒が明かぬと、セットしたカードを発動した。
 するとカードが浮き上がり、光と共にクロスボウを構えた軍勢が空に現れて、一斉に放たれた氷を纏った太矢が地上へと降り注ぐ。
 無造作に放たれたそれは致命的な部位に命中せずとも相手を凍てつかせ、動きを封じる。
「オマケだ!!」
 続いて放つ拳銃弾が凍てついた相手に命中すると、凍りついた身体はその衝撃で粉々に粉砕された。
「うわ、えげつねえ……」
 視界のすみでそんな光景を目にしたジョンが笑う。
 笑いながら、目に付く相手を切り刻む。
「寄るな下郎が、小賢しい」
 2人が前衛を務め、花鵺が援護。
 ああは言ったが数が多い。
 どうしても抜けてくる敵を、衝撃波で吹き飛ばす。
 元々脆い体は、その衝撃に耐えられなかった。
 刻み、穿ち、焼き、砕き。
 もはや何も気にする事など無かった。
 数が居るならそれだけ殺せば良いだけの事だ。



 そして、実に3時間の時が経った。
 戦いの轟音が止み、響く雨音が戦場に帰ってくる。
 誰も死ななかった。
 誰も傷付かなかった。
 ただ、街に死体が増えただけのこと。
 それだって、元々死んでいたのだ。
 なにも気にする事はない。
 なにも、気にする事はない筈なのに。
 雨が死体を濡らしていた。
 その死体は、どこから来たのだろう。
 どんな人生を歩んで、どうしてこんな末路を辿ったのか。
 黒い雨が、強く降る。
 もう、誰にも分からぬ事だった。




 ただ空だけが……黒い涙を流していた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 日常 『黒い雨の降る街』

POW雨の中を歩く
SPD雨具を使う
WIZ雨宿りをする
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 雨は止まぬ。
 黒い雨は降り続く。
 街はあれだけの戦闘があったにも関わらず、何一つ変わった様子もない。
 あるいはいつ終わりが訪れようとも、彼らは変わらないのかもしれない。
 はじめからいつ終わるとも分からぬ世界で、ならばこそと選んだ自由だ。
 いつ無慈悲な終わりを遂げようと、それすら自由なのだ。
「が、今回は君達がそれを防いだ」
 ユウキがふらりとやって来て言う。
「ご苦労だったな。帰りは言ってくれ。私は……そうだな、酒場にでも居るとしようか。不味い安酒で良ければ、奢るぞ?」
 戦いは終わった。
 この街で、少し過ごしても良い。
 帰っても良い。
 残る時間は、自由だ。
秋山・軍犬
仕事も終わったんで
ユウキさんと、この街の食糧事情について
少し駄弁ってから帰るべ

とはいえ、流通経路に関する事はユウキさんが
考えない訳ないし…

まあ、そういう話が無いって事は
ここの住人の…人の心は複雑怪奇って事よね?

焔「な、なぁ、もう帰ろうぜ~
…だってここ、ほら…あ、アレだし…」

はいはい、もうすぐ帰…ん? 携帯に着信?
…はい、もしもし

きの子(電話)『その拠点、私なら三日で安全安心の
キノコパラダイスn…(軍犬、おもむろに通話遮断)

…ま、住民の協力が得られないと根本的な解決も
難しい話だし

とりあえず黒い雨のサンプルでも
持って帰ってUDCやアルダワあたりに分析依頼でも
してみようかな?


……キノコパラダイス…か


● 酒場の者達【秋山・軍犬】

「ま、難しいだろうな。力付くでやっても反感を買うだけだ」
 この街を流通経路へ追加する事について、ユウキに質問すると一切の戸惑い無くそう答えられた。
「そうっすよね~……マズっ」
 呷る酒の味に素直な感想を漏らせばユウキが笑う。
 質問への回答は分かりきっていた事だ。
 今さら驚く事でもない。
「でも、基本的に食料はどこから?」
 閉鎖的な空間にしては、当たり外れはあれど食料に困っている様子は無い。
「あぁ、それは、基本的には他の街と変わらない。古い缶詰等の文明の遺産か、あるいは"食えそうな"生物の屠殺だな」
 "食えそうな"という曖昧な表現に眉間を潜めると、吹き出すようにユウキは笑う。
「考えてもみろ、ただでさえ元々の生物と姿形がまったく違うバケモノだらけなんだぞ? 実際に食ってみなきゃ食えるかどうかの判断なんてつくか?」
 言われてみればそうだ。
 古い知識は役に立たず、それを調べる器具もない。
「存外、胃袋が頑丈なんすね……」
 再び吹き出すユウキを見ていると、不意につんつんと肩をつつかれた。
「な、なぁ、もう帰ろうぜ~……だってここ、ほら……あ、アレだし……」
 そういえば居たなと焔の存在に気付く。
 まぁ、彼女の言いたい事は分かる。
 あまりこういう空間に長居をさせるのも……
「なんだ、そんなことなら部屋ならいくらでも用意するぞ?」
 ユウキが―多分分かっていて―そう言った。
「な!?」
 焔の反応もずいぶん分かりやすい。
「いやはや、すみに置けないねぇ……三人……いや、四人だったか?」
 秘水、焔、美食姫、キノ子の四人の事か。
 彼の依頼に呼んだ事があるのは確かにこの四人のはずである。
 いや、実はまだ一人(現段階で)居るのだが、余計にからかわれそうなので言わないでおいた。
「逆に聞くっすけど、ユウキさん、これ抱けるっす?」
「なぁ!?」
 ちょんと焔を指差しそんなことを聞く。
「御免被る」
「でしょ?」
 お互いに大人である。
 というか軍犬の方が年上であるし、飲んでいればこの手の冗談も常だ。
 スマートな切り返しなど心得ていた。

 りりりりり♪

 焔がギャアギャアと騒ぐ中、ふと軍犬の携帯が鳴る。
「はい、もしも……」
『あぁ、軍犬さん、聞いて下さいよ、ねぇ!? その拠点、私なら三日で安全安心のキノコパラダイスn………つー。つー。つー』
 キノ子だった。
 しかしながら、なんでアポカリプスヘルに電話出来るんだとか、なんでこっちの状況把握してるんだとか突っ込み所満載である。
「まぁいいや、雨のサンプルだけ回収して、自分は帰るっすからね」
 なおも騒ぐ焔に置いていくぞと告げながら、つい先ほどのキノ子の言葉を思い出す。
「キノコパラダイスか……」
 確かにキノコ……菌糸類であれば、この空間でも栽培が出来そうである。
 種類によっては肉厚で食べ応えも充分……
「軍犬、それはダメだ」
 ユウキが、真面目な顔でそう言った。
「何が……」
「確かに、売れそうではあるが、マジックマ……」
「誰が売るかッ!!」
 この街の雰囲気を鑑みれば、そういう考えに至るのも無理はない。
 だが漢、軍犬。
 その程度の倫理観を無くした覚えはない。
大成功 🔵🔵🔵

化野・花鵺
「不味い酒には不味い酒なりの楽しみ方がある。ヌシとなら不味い酒でも楽しめそうと思ったまでじゃ」

「妾と言葉を交わすは初めてであろ、ユウキ殿?何しろ表が随分懐いておるようじゃからの」
狐、マスターに合図しユウキ氏へムーンシャインを滑らせた

「ヒトにアカギツネの雌雄の区別がつくか?同じじゃ。妾もヒトの区別など殆どつかぬ。グリモア殿達は光が違うのでな、グリモア殿達であることは分かる。その中でもきちんと個の区別がつくのは数人じゃ。勿論ユウキ殿はその1人」

「異類同士の認識などその程度よ。妾もそれで構わぬと思っておる」
狐、うっそり嗤った

「ヒトの業と悪徳に。ヌシの見せる未来に期待しておる」
狐、掲げた酒を呷った


● 酒場の者達【化野・花鵺】

 宣言通りにユウキはカウンターで飲んでいた。
 誰かと話すでもなく、ましてや何かを喜ぶでもなく。
 手元のグラスが空になり、新たな一杯をと考えた所に、スッと滑り込む新たな一杯。
「奢られるのは想定外だな」
 そう呟きながら静かに横を見て、一瞬「ゲッ」という顔をした。
「なんと言う顔をする。まぁ、表があれではずいぶん迷惑も掛けておろうか」
 彼の知る花鵺という女とは、姿はともかく雰囲気が違う。
 何かを察したのか、なるほどねと呟くとグラスを受け取り呷った。
「フフ、物分かりが良くて助かる。不味い酒には不味い酒なりの楽しみ方がある。ヌシとなら不味い酒でも楽しめそうと思ったのは正しかったようじゃ」
 クスクスと笑いながら、自身もその手のグラスを傾けた。
 先ほど不味いと大騒ぎしたのがまるで嘘のようである。
「しかし……妾と言葉を交わすは初めてであろ、ユウキ殿?何しろ表が随分懐いておるようじゃからの」
 その言葉に酷く怪訝そうな顔をしたユウキは聞く。
「懐かれてるのか、あれは?」
 なんだかんだと依頼には来るものの、いかんせん初めから制服目当てと公言して憚らぬ彼女。
 懐いているというより、餌に釣られているという印象だと笑った。
「たわけ者……そうじゃの、ヌシ、アカギツネの雌雄は分かるか? それが雌か、雄か。個々の区別はつくかの?」
 それを聞いてしばらく考えた後に首を振るユウキ。
「長く一緒に居れば多少は分かるんだろうが、パッと見で完璧にと言われると不可能だな」
 それを聞いて少し得意気に笑うと、言葉を続ける。
「であろう? それはこちらとて変わらぬ。化けるのは容易いが、ヌシらの平坦な顔はとうと見分けも付かぬ物よ」
 ではやはりとユウキが笑うと、その言葉を遮った。
「ヌシは別よ。ヌシらのグリモアの輝き……それだけでは無い。ヌシを含めた数人の顔は、不思議と見分けが付くのだ」
 それを聞いたユウキが怪訝そうな顔をするが、言葉を続けた。
「先も言ったがの、異類同士の認識などその程度よ。妾もそれで構わぬと思っておるが、故にユウキ殿のように個の区別がつくというその意味……努々忘れん事だ」
 ユウキは小さく笑いながら呟いた。
「責任重大だな?」
 互いに掲げたグラスが小さくぶつかり音を立てた。
「ヒトの業と悪徳に。ヌシの見せる未来に期待しておる」
 呷る酒の薄い黄色が、降り続く雨の中の月を思わせた。
「さて、妾はもう帰るとしよう。ユウキ殿よ、表の妾を……よしなにな?」
 そう言って、ふっと笑った花鵺は、一瞬力が抜けると普段の彼女に戻っていた。
「あれ? 私は何してたんだっけ?」
 そんな彼女に小さく笑うと、ユウキは言う。
「ほら、帰るんだろ? 早くしないと閉じちまうぞ?」
 待って待ってと大騒ぎしながら帰った彼女を見送って、再びグラスを傾けた。
「俺の見せる未来ね……」
 そして、そんな事を呟いた。
大成功 🔵🔵🔵

エメラ・アーヴェスピア
…仕事は終わりね
あとやり残した事は…まぁコレかしら
歩行戦車…あの子が使っている兵器よね…私の兵器に近いものは…巨人兵?いえ、それとも「咆哮」かしら?
…どちらにしろ、大きめの兵器に使うのがいいかしら…あのあたりの試作兵器に使ってみる?
もしくは新たに制作して組み込むのもいいかもしれないわね…使えるかどうかを確認してからだけど
技術者として託されたのなら、叶えてあげたくなるじゃない

…雨に濡れても悲しみを覚えるだけで結局は何も思い出せない
まぁ、数十年前の事だし今更ではあるのだけれど…
それでも私は…一体どこの誰だったのでしょうね?
…本当に…たまには雨に濡れてみるのも…悪くないわ…

※アドリブ・絡み歓迎


アビー・ホワイトウッド
アドリブ、連携歓迎

やっぱり掃き溜めみたいな街。酒に女に賭博に暴力。おまけに不潔。ひどい所だけど、それでも人の営みがある。
それを守れたなら、まあ悪くない。

装甲車の燃料の補給と食糧の調達、食事…後は少しでもまともな宿と汚れた服の着替えの手配。それからガンスミスが居れば愛用の拳銃のメンテナンス。せっかくだから2、3日かけて街を見てみよう。観光。
そう言えばエメラが何だか珍しいパーツを持っていた。どこで手に入れたのか気になる。
可能ならユウキも呼んで見せてもらいたいところ。

次に来た時もここにこの街があるとは限らない。面白い話が聞けそうな人を探してみよう。


● 雨と過去と、そして歩む道。

 相変わらず、この街の不衛生さは変わらない物だ。
「だけど」
 それでも人の営みはある。
 それを守ったのなら、少しは誇らしくしても良い筈である。
 いつものように燃料を買い、弾薬を仕入れ、汚れた衣類の換わりを買った。
 ガンスミスは街の雰囲気に反して口数は少ないが信頼の出来そうな相手を紹介され、そこに頼んだ。
 メンテナンス中の護身にと渡された代わりの銃の作動をみれば、腕に間違いは無いだろう。
「むぅ……」
 しかし、服を買った時の話だ。
 最初、女物を頼んでけばけばしいドレスを出され、支払いは銃弾で良いかと拳銃を突き付けると慌てて普通の服を出してきた話をユウキに話すと、大爆笑されてしまった。
「んで、残るのは構わんが……」
 街の雰囲気を心配しているのだろうユウキに問題無いと軽く告げる。
 ほとんどの武器はメンテナンスに出してしまったが、代わりの拳銃はある。
 まぁ、いずれにせよ彼女に手を出せば痛い目を見るのは間違いない。
「心配する側を間違えてると思う」
 その一言に、確かにと相槌を打ちながら再びユウキは笑った。
 せめて宿と食料はこちらで手配させてもらうと言うユウキに素直に感謝を示し、そういえばと聞く。
「エメラが何か面白そうな物を持っていた。心当たりある?」
 せっかく2~3日滞在するつもりなのだ。
 なにかのパーツのようだったが、それを仕入れた先を見てみるのも面白いかもしれない。
「う~ん……」
 しばし唸り、知らないと言うユウキ。
 だが、気になるなら本人に聞けば良いと言った。
 聞けば、彼女もなにやら広い場所を借りて、そこにしばらく滞在するとユウキに告げていたらしい。
「……むしろ、エメラを心配するべきなんじゃ?」
 実年齢はともかく、見た目や本人の戦闘力は一番危ない気がするのだが。
「歩く機械の兵団の真ん中に居るアレに"ちょっかいを掛けよう"なんて奴が居たら、むしろ敬意を表するね、俺は」
 そう言ってユウキは苦笑いをする。
 まぁいい。
 確かに、本人に直接聞いた方が早いかも知れない。
 アビーは彼女の元へと向かってみる事にした。


「さて……」
 仕事は終わった。
 後は、やり残した用事を片付けるまでだ。
「しかし、どうした物かしら……?」
 魔道工学はともかく、普通の機械に関しては門外漢だ。
 エメラはそんなことを考えながら基盤と向き合っている。
「ねぇ、貴女はどんな身体がお好み?」
 もちろん、基板単体で彼女が何かを反応する事が無いのは分かっているのだが。
「歩行戦車……アビーが乗ってるあれよね? あれに近い物となると……」
 まずは自身の持つゴーレムタイプの巨人兵で考える。
「……あれが、知的な女性の声で喋る姿は想像したくないわね…………」
 いや、ある意味威圧感はあるかもしれないが。
「後は……」
 トゥランライオットのパワードスーツへの組み込み……だが、そうなると、蒸気兵そのものの動作に影響を与えかねず、かといってどれか一体の蒸気兵に搭載するというのも……
「悩ましいわね」
 歩行戦車用となれば、それに近い兵器に搭載するのが一番分かりやすい。
「アビーを捕まえておくべきだったかしら」
 なら、実際に運用している彼女に助言を求めるのが得策なのだが、おそらくもう帰ってしまっただろう。
「まぁ、普通はこんな街に居座りたくはないわよね」
「居座っちゃダメ?」
 諦めの呟きに返ってきた言葉に、エメラの顔に笑顔が浮かんだ。
「アビー! ちょうど良かったわ!!」
 アビー自身、エメラに用があって来たのだが、彼女の反応は想定外だった。
 ポカンとする彼女に事情を話して助言を求めると、アビーはしばらく唸り出す。
 そして、静かにこう言った。
「元が歩行戦車のAIなら、もちろん歩行戦車に搭載すべきだと思う。あるいは、同じ大型の二足歩行出来る兵器。元々の搭載予定兵器の形が分からないから動くのに不具合が出るかも知れないけど、それくらいのプログラミングなら出来ると思う」
 ただ、一から何かを組むとなれば時間も掛かるし、予算も考えねば成らない。
「中古の戦車を元にすれば時間は何とか……って所かしら」
 そういえば、近くに軍事基地があると言っていた。
 あとは、修理や改造用に少なからず掛かるパーツの予算だが……
「はぁ……出せば良いんだろ、出せば」
 いつの間に居たのか、ユウキがそう呟きながら入ってくる。
「アビー、エメラ。今から漁りに行くぞ、面倒だから作るのも現地でだ」
 そんな風に勝手に話を進めだしたユウキ。
「ちょっと! 他の猟兵はどうするのよ!?」
 少なくともユウキが居なければ他の猟兵が帰れなくなる。
「2人はもう帰ったし、もう2人は明日だ。今から現地でパーツ漁り、必要なパーツがあれば明日、残りを送り返すついでに買い出しだ、何か質問は?」
「……異議無し」
 そう言って準備を始めたアビーとユウキ。
「……まったく、どうしてこうも……」
――お人好しばかりなのかしら?――
 そんな思いと共に、エメラは現地へと向かった。





「起動準備完了」
 なんだかんだと時間が掛かり、出来上がるには3日を要した。
「頼むぞ、エメラ」
 三人でパーツを漁り、組み上げた機体。
 せっかく、新たな世界も見つかった事だ。
 そちらの世界の規格を参照しつつ、鋼鉄の騎兵【クロム・キャバリア】と言っても良い形に仕上げて見せた。
 あとは、彼女の魔力を流し込むだけだ。
「……行くわ」
 流れた魔力に、低く唸る関節の駆動音。
「……おはようございます。Autometion Electric Lady Ai【A.E.L.A.】……ユーザーデータ照合……データが破損しています。ユーザーデータの新規登録……可……お名前を」
 機械的ではあるが、確かに知性を感じる女性の声だった。
「……エメラよ、エメラ・アーヴェスピア」
「ユーザー認証完了。よろしくお願い致します。エメラ」
 2人が後ろで笑っているのが見えた。
「えぇ、よろしくね。アエラ」



 外は雨。
 何度も降ったり止んだりを繰り返す雨の中を、エメラは一人立っていた。
 雨に対するこの胸の違和感。
 本当は分かっていた。
「ま、悲しんだところで、なんで悲しいのか分からないんじゃあね……」
 自身がこんな身体になる前の記憶。
 失った過去。
 それはあまりにも大きな物なのに、このちっぽけな脳はなにも記憶していない。
 もはや数十年も前の話だ。
 たとえ、今更思い出してなんになる?
「それでも……私は何処の誰だったのでしょうね?」
 個人を定義するのは過去だと誰かが言った。
 ならば、もしかしたら自分はとっくに死んでいるのかも知れない。
「いや、そもそも私なんて個人が存在していたのかどうかすら怪しいわね」
 人工知能。
 その存在が、自分という一つの存在を酷く希薄にした。
 もしかしたら、自分は最初からただの機械なのではないか?
 記憶がなければどうしてそれを否定出来る?
「所詮、人間なんて周囲の状況から自身を認識しているに過ぎんよ。珍しくナーバスじゃないか」
 ふと聞こえた声はそう言って、エメラにコートを掛けた。
「風邪をひく……かは知らんが、見てはいられないな」
 ユウキだった。
 自分こそ生身の身体で風邪をひくだろうにと思ったが、黙って受け取る事にした。
「……貴方は、自分をなんだと定義する?」
 そして、その認識の裏付けは何処に……
「俺は人間だよ。そう思い込む事にしている」
 そしてユウキは語った。
 自身の身体の事。
 半分はUDCで埋め込まれたバケモノと、グリモアと、そして機械と。
 一部分ですら人間だった何かが残っているかなど、もはや分からぬと。
「だが……それでも俺は人間だ。俺がユウキという名の人間だと自分を認識し、定義している。だから俺はユウキという名の人間だ……それでいいんじゃないか?」
 それを聞いたエメラは笑った。
「大雑把に過ぎる答えだわ」
 だが。
「そうね、私はエメラ……他の誰でもない、エメラ・アーヴェスピアという名の個人……それでいいのかも知れないわね」
 笑いながら空を見上げた。
 雨は少し、弱くなっていた。
「……たまには雨に濡れてみるのも……悪くないわ」
 そう呟いて、空に笑った。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

三角・錐人
方針:WIZ

・やれやれ、やっと終わったか。キリはあったとはいえ、キリがないような感覚になるような数だったな。ま、依頼は完遂、犠牲者無しの万々歳だな。

・とりあえずはあのバーで祝勝会でもやるかね。安酒とジャンクフードとカード遊びで得たちょっとした友情があれば楽しいひと時にはなるさ。あとは一夜の恋のお相手でもいればパーペキだが、さてさて? 

・一晩経てば黒い雨も上がるか? あのゾンビの群れや黒い雨の発生源を調べるのはまた後日ってとこだろうが、それまでこの街が残ってることを祈っておくか。


 ● 真夜中の宴

「やれやれ……」
「あぁっ、くそッ……参った!! こりゃ勝てんわ」
 なんだかんだとバーに戻れば、先ほどのゴロツキ達がまだカードに興じていた。
 一瞬絡まれるかと思ったが、ゴロツキ達は戻ってきた錐人を取り囲んで卓へと誘ってくる。
「今度こそ負けねぇぞ!!」
 ケタケタと笑いながら勝負を仕掛けるゴロツキ達を完膚無きまでに叩き伏せた錐人はやっと開放されると溜め息を付いて立ち上がった。
「あぁ~あ……まぁ、楽しめたから良いけどさ」
 少なくとも、終わりの見えないスプラッタショーに比べれば、幾分か楽しめたという物だ。
「あとは一夜の恋のお相手でもいればパーペキなんだけど?」
 そんな言葉をゴロツキ連中に聞こえるように呟いた。
 ……ようは、紹介しろという催促である。
「なんだ、兄ちゃん娼館探しか? ベティの店、今日開いてたっけか?」
 仲間にそんなことを聞くゴロツキ。
「あぁ~、サラちゃんに会いてぇなぁ」
「バカ。イザベラちゃんが一番に決まってんだろ?」
 そんな自分のお気に入りを言い合い始めたゴロツキ達。
「……まぁいいや。ベティの店はバーの四軒先だ、兄ちゃん好みの女も居ると思うぜ?」
――四軒先ね……――
 バーを出て、進む足取り軽やかに。
 少なくとも、こういう時は自分がフリーで良かったと思う。
 後ろめたさが無いからである。
 開いた扉の先に待つ女性達を見て思わず声が出た。
「わぉ」
 選り取り見取りの美女だらけ。
 これは正直、目移りしてしまう。
「いらっしゃいませ~♪」
 手を引く女性についつい口元がにやけてしまった。
 だが、今回の仕事は大成功と言っても良い。
 犠牲者ゼロの大団円だ。
 ゾンビの群れの発生源や黒い雨の正体の調査は後日といったところだろう。
 それに、次にこの街があるとも限らないのだ。
「それじゃ、楽しむとしますか!!」
 今日くらい、羽目を外して楽しんでもバチは当たるまい。
 夜はここからが本番なのだ。





「あぁ……ははっ…………」
 遊び過ぎた。
 腰が軋むように痛い。
「帰るかぁ……」
 ゆっくりと伸びをしながら、錐人は帰路に着く。
 今日が終われば明日がくる。
 いつか、本当にゆっくり出来る日が来ることを祈るばかりだ。
大成功 🔵🔵🔵

ジョン・ディー
此処に長居する理由もない

帰ったらやらねばならぬ仕事が山ほどある
猟兵としての仕事含めさして誇りなど無いが雑にしたくはない

今夜も寝れそうにないと溜息吐きつつ
帰るために酒場に向かう途中
「…いくの?」と
振り向けば、そこにいたのは先程の商売女
…寒いのか、その白い肌に粟が立っている
再度溜息吐いて、着ていたコートを女に投げた

「…お前にその商売は向いてねえよ」

コートの中に金が入っている
女が新しい商いを見つけるまでの足しにはなるだろう
余計な世話だと己でも思う
だがこれは慈悲でも同情でも何でもない
俺は俺のやりたいようにしただけだ。

…何にせよ
この女が泣かない未来であればいいと、思う。


● One More Tomorrow To Hold you in my embrace……

 コツコツと響く足音。
 仕事は終わった。
 ならば長居をする理由もない。
 こんな仕事に誇りなど爪の先ほども有りはしないが、雑な仕事は主義じゃない。
 仕事の先はごまんとあるのだ。
 休んでいる暇はない。
「今夜も寝られそうに無いな」
 呆れたような溜め息を一つ付いて帰路を歩む。
 ふと、後ろから走る音が聞こえた。
「まって!」
 振り向くまでも無かった。
「なんだ、用事があるなら手早く済ましてくれ」
 さっきの女だ。
「もう……行くの?」
 躊躇いがちにそう聞いてくる。
 振り向いて女を見れば、あのドレスのままだった。
 肌寒い夜に粟立つその姿に小さく溜め息を付いて、着ていたコートを脱ぐと投げ渡す。
「やっぱりお前、向いてねぇよ」
 色気もなにもあったものではない。
「コートにいくらか入ってる。それでしばらくは暮らせんだろ……早く別の仕事を探すんだな」
 我ながら、随分と優しい物だ。
 余計なお世話なのかもしれないが、どうしても……

 どうしても、母の姿がちらついた。

 慈悲ではない。
 同情なんかでも決してない。
 ただ、そうしたいから彼女に金を渡しただけだと自分に言い聞かせながら言う。
「早く行きな、俺は忙しい」
 それだけ言ってさっさと立ち去ろうとしたジョンの腕を、女が掴んで引っ張った。
「おい!」
「貴方は私を買ったんだ。だったら責任取ってよ」
 そんなむちゃくちゃな事を呟く女は震えていた。
「私は、この生き方に不満は無い。ただ、初めてだから怖かっただけ……だけど…………」
 震えた腕でジョンの腕を強く握りながら、はっきりとこう言った。
「もし、私に選ぶ権利があるのなら……初めては貴方が良い」
 あの時恐怖に揺らいでいた翡翠の瞳が、真っ直ぐにジョンを見つめていた。
「……ったく」
 どうしてこういう事になるのだろうかと頭を掻いた。
「後から止めろと言っても知らないからな」
 彼女の真っ直ぐな瞳を見て、ましてやあんなことを言われてしまえば、ジョンとて黙って帰れるほど出来た人間でもなかった。




 結局、一夜を明かして朝が来た。
 隣で小さな寝息を立てる女の髪にそっと触れる。
 静かに服を着ると、女を起こさぬように部屋を出た。
 たった一夜限りの身体の関係。
 だが、それでもこう願わずにはいられなかった。

「たとえどのような未来がまっているにせよ、だ」
 あの女が泣かない未来であればいい。
 その為に、ジョンは再び次の仕事へ赴いた。
















 女は願う。



 One More Tomorrow(もう一度明日を)






 To Hold you in my embrace……(もう一度、貴方を抱き締めるための……)
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年09月30日
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵