これは旅団シナリオです。
旅団【Dies】の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです。
「縁日とは、有縁(うえん)の日――神仏と関わる縁の有る日の事だそうだ」
神仏の降誕、示現、或いは誓願。
仏や菩薩を訪ね、教えを聞く縁に結ばれる――この日に参詣すると、より御利益があるのだと告ぐは枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)。
縁日には自ずと参拝客が増え、その人の多さが更なる賑いを呼び、軈て祭りが催され、露店等が出るようになったのだろうと、紅脣は澱みなく語る。
「既に人類が滅びたキマイラフューチャーにも縁日の名残はあって、参拝客は軽やかに本坪鈴を鳴らし、颯爽と賽銭を投げ入れ、神仏に挨拶をした後に屋台を巡るんだそうだ」
帷が言うには、和洋中がちゃんぽんになった少し風変りな神社で縁日が行われているらしく、人類滅亡後も脈々と受け継がれてきた風習が、キマイラフューチャーの住民らに親しまれていると言う。
「そこで、どうだろう、この縁日を楽しみに行かないか」
縁に結ばれよう、と切り出す帷。
声色も語調も幾分か和らげた彼女は、楽し気に言を足して、
「其処の縁日は随分とイカしていて、虹色を纏うリンゴ飴やら、七つの味を詰めたベビーカステラ、七つの輝きを放つ肉の串焼き、鮭サイズのアイスたい焼きなど、風変わりな屋台も出ている」
焼きそばや焼きトウモロコシ等の定番を売る屋台もあれば、見た事のない色を冠に頂くかき氷、バナナじゃないものを潜らせたチョコなにか屋、この盛況に便乗したと思われるピザ屋にケバブ屋などが、我こそが一番の味と袖を引く。
飲食物の他には遊戯もあって、よく見かけるヨーヨー釣りや射的の他にも、オタマジャクシすくい、バンジージャンプくじ等があるらしいのだ。
少し驚く店もあるが、何事もグルーヴで乗り切るのがオーサムな世界。
此処ではイイネ! と愉しんだ者がハッピーなのだ。
「折角なら浴衣で行こうじゃないか。他の参拝客も浴衣を着ているから、この景色に馴染み、雰囲気から愉しんでいくと佳いだろう」
と付け足した帷は、ぱちんと弾指して、
「キマイラフューチャーにテレポートする。賑わっているから、迷子にならぬよう」
と、馴染みのメンバーを光に包んだ。
夕狩こあら
いつもお世話になっております。夕狩こあらです。
旅団「Dies」専用のシナリオをお届けします。
●シナリオの舞台
惑星全てが都市リゾート化したキマイラフューチャー。
和洋中をちゃんぽんにしたエキセントリックな神社で縁日が開かれる事になったので、浴衣に袖を通して出掛けましょう。
●シナリオ描写について
キャラクター同士の会話をメインに描写致します。
馴染みのメンバーならではの深いお話が出来ます。
どうぞ、特別な一日をお楽しみ下さい。
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
先ずは神社に参拝する。
土地神さまに挨拶を済ませ、後向きに賽銭を投げ入れたなら、ちゃりんと箱を叩く音は少し風変りな祭囃子の笛音に掻き消される。
其は和風の旋律を微かに残したロックなお囃子。
ギラギラと飾燈(ネオン)提灯が連なる先には、エネルギッシュな看板を掲げた露店の店主が大声で客を呼び込んでいて、原色鮮やかな浴衣に袖を通したキマイラやテレビウム達が、わた飴や串焼きを手に大通りを漫歩く――殷賑。
そんな賑いの中にはチリンチリンと鈴の音が潜って、小さなアイス屋が涼を売っているらしく、キッズがわらわらと群がっている。
迷子にならぬよう、揃いのお面を付けようか。
それとも最後に向かう場所を――花火を見る場所を約束しておこうか。
笑顔と笑聲の溢れる大賑わいの中、囁く脣に耳を寄せて話し合った猟兵は、まだ太陽の熱を手放さぬ石畳に下駄を鳴らす。
「ヘイヘーイ、コンコンコンに飽きた奴にゃ、この“チョコなにか”がお薦めさ!」
チョコバナナではなく、何かをチョコに潜らせた「チョコなにか」屋。
「今は釣りがキテるよ! 海はないけど海釣り気分が味わえるよ!」
通常サイズの釣り竿に磁石を付けて、大きな天板で吻(くち)を開けて回る魚を釣る、「巨大おさかな釣り」はジャージャーと電動の音を立てて。
「いらっしゃい! この銃でコンコンコンにアクセスしてみないかい?」
遊戯銃で景品を撃ち落とすでなく、コルク弾でコンコンコン、何が出てくるかは店主も知らない射的は、刺激を求めるキマイラ達で大行列。
さぁ、どの店に行こうか。
何から愉しもうか。
周囲の熱気に急き立てられるように、爪先が、動いた。
夏目・晴夜
帷さん、此方へ
揃いのお面か、同じ袋のわた飴
目印兼お土産として何方か買っておきません?
アイスも適量欲しいですね
このチョコなにか、実はアイスだったりして
…何だコレは
食べても判らない…
何だったんですか、今食べたの
これは何ですか?串焼き!?
あ、美味い。帷さんもどうぞ
オタマジャクシ掬い?また今度で
…蛙、苦手なんです
あの子達、アイス持ってますね
もしやこの店でアイスが…!
よし、アイスを二つ下さい
まさかの既製品!
っと、花火が始まりそうです
空いてる所へ急ぎましょう
ダメですねえ。余裕を持って動く筈が
帷さんといると嬉しくて時間を忘れてしまいます
ハレルヤの悪い所ですね
で、この花火の下で食べるアイスは何方がいいですか?
神社が和洋中のちゃんぽん仕様なら、境内は種のサラダボウルだ。
今日は縁日とあって人が多く、やっとの思いで後向きに賽銭を投げ入れた枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)は、後続から押し寄せるキマイラの波に揉まれ、あらぬ方向へ流されそうになる。
「帷さん、此方へ」
蓮葉なサーバルのギャル達に埋もれる瞬間、差し伸べられる手――。
慌てて臂を伸ばし、手繰る様に指に触れれば、聢と手首(たなくび)を摑まれた帷は、強く引き寄せられた先の夏目・晴夜(不夜狼・f00145)に安堵の表情を浮かべた。
「晴夜」
「凄い盛況ですね。来て早々に生き別れる處でした」
「ありがとう、助かった」
危うくギャルの一員なる處だったと手を握り返した帷は、大混雑から頭一つ抜け出した晴夜のエスコートで進路を得る。
広い視野を得る晴夜とて、膝下をたったかと過ぎるテレビウムのキッズ達を避けるのに苦労しながら、何とか鳥居を潜り、神社を出て直ぐにある屋台に目を留めた。
スッと差向ける白磁の繊指は玲瓏の聲を連れ立って、
「迷子防止の為に、あれを付けては如何でしょう」
「お面か。目印になって佳いな」
帷が「成る程」と首肯いたのは、白犬の面。
口を開いた「阿形」の獅子と、口を結んだ「吽形」の狛犬が隣り合うのを見た二人は、これなら離れるまいと一対の面を取り、互いの額に付けることにする。
すると、屋台に飾られた面の一つが大声で喋り出し、
「ヘイ、毎度あり! 序でに隣の『ゴー☆ジャスわたあめ』も買ってっておくれ!」
「!! ここの店主はヒーローマスクでしたか」
「隣もオレの店なのよ。お土産にピッタリの国産品だから、お揃いでどうだい」
其はふわふわ耳のついたアルパカの特製わたあめ。
可愛らしいフォルムを崩さぬよう袋はバルーン型に、更にヘリウムを入れてあるので、リングを手首に通すだけで持ち運べる仕様だと、天狗面の店主は自慢気に語る。
「これウチだけの技術だから。注目度バッチリ、イイネ間違いナシよ」
「慥かに目立って良いかもしれない」
帷が店主のプレゼンに耳を傾ける傍らでは、晴夜が帷の頭に添えられた狗面をまじまじと見詰めていて、
「……これは……喋りませんよね……?」
「うん、大丈夫」
喋るのはオレだけだよ、という聲を聽いて安心したようにスマートフォンを取り出し、テロリン♪ と電子決済を完了させた。
斯くしてお揃いの面を付けて綿飴風船を揺らした二人は、それから飾燈(ネオン)提灯の連なる参道を、ゆっくり、じっくり観て回る事にした。
†
かろり石畳を打つ跫音に、ロックな祭囃子が混ざる。
何より店々より発せられる聲が威勢よく、縁日の門前町は楽し気な音に溢れていた。
そんな喧噪に掻き消されぬよう、額を寄せ合って話す狛犬が二匹。
「傾いた多寶塔を利用したバンジージャンプくじか……当たったら死ぬな」
「向こうの流しそうめん、流れるのはすべり台に乗せられた客の方みたいですね」
中々に刺激的だ、と互いに指を差した先に視線を注ぐ帷と晴夜。
キマイラフューチャーの縁日は予想した以上にファンキー&キテレツで、二人は喧伝に袖を引かれながら、斬新と殷賑を愉しむように漫歩く。
「帷さん、西の寺町で打ち上げ花火が見られるそうですから、我々も其処へ――」
街頭広告に麗眸を注いだ晴夜が言いかけた時だった。
スン、と香味に反応した鼻梁が美し弓型の横顔を見せる。
「これは……」
「晴夜?」
小さく語尾を持ち上げる帷の手を引き、喧噪を滑り抜ける。
聡い嗅覚は直ぐにも方向を辿って屋台を突き止めるが、然しそれに勝って飛び込む視覚情報に、最初は混乱か胡亂臭さを覚えたろう。
「これは……これが……まさか、串焼き!?」
「おうおう、ツンドラオオカミの兄ちゃん。お目が高い、お鼻が鋭い!」
ぬう、と身を屈めて出てきたのは、ベンガルトラの店主。
晴夜をキマイラと勘違いした主人は、食欲を煽るように説明して、
「この串焼きは特別さね。牛肉をA5から肉質等級順に刺したシャイニングゴールデン串焼きで、肉の輝きがより判然るよう金箔を振ってあるんだ」
「きんぱく」
「シャイニングゴールデン串焼き……」
余計な演出をしたな、と帷が言葉を飲み込む傍ら、驚愕を飲み込む晴夜。
彼には上質な肉の色沢が見えるか、薫香に誘われる儘に手に取った晴夜がギザギザの齒でガブリと屠れば、其は名の通りゴールデンな美味を咥内に広げた。
「あ、美味い。帷さんもどうぞ」
金箔の味はほぼしない、と差し出された串焼きを、彼を信じて食す。
ダークセイヴァーでは余程ありつけぬ肉、しかも美味の極致をゆくA5の牛肉は、赫緋の瞳を丸々と、ぱちくりとさせた。
「これは……言うに違わぬ絶品だな。舌が恍惚(とろ)けそうだ」
「二本目(おかわり)確定じゃないですか?」
二人が肉の旨味を堪能していると、その様子を隣の店からじいぃぃいっと見詰めていたオタマジャクシ達が、恨めしそうに話しかけてくる。
「ホッキョクオオカミのにーちゃん……うまそうに食べるねぇ」
「オイラ達の事も、楽しそうに釣ってくれよう」
「お客を呼び込めるでな」
ちゃぷんとビニルプールで水を転がすは、『オタマジャクシすくい』の働き手たち。
中には手が生えてきたメンバーも居るらしく、プールの縁を掴んで此方の様子を伺っている。
何ともお行儀よく並ぶ黒い壁に、一瞬、瞠目した晴夜は、葵色を湛える佳瞳を細めるや続く会話を体良く躱して、
「にーちゃん、オイラ達すくってな」
「……いえいえ、皆さん兄弟を離ればなれにしては申し訳ないので」
「すくってな」
「また今度で」
パシャパシャと尻尾を揺らす過渡期の彼等から距離を取り、「では」と会釈する。
肩に掛けた羽織が颯爽と飜るのを追った帷は、彼が長躯を屈めるに合せて耳を寄せ――そうっと零れる「聲」を聽いた。
「だって、育つじゃないですか」
「――?」
「…………蛙、苦手なんです」
内緒話をするように、小さく囁(つつや)く。
自信家で自信家で自信家の晴夜が、苦手なものを口にする時は斯くも可憐(しおら)しくなるのかと目を瞬(しばた)いた帷は、喫驚に引き結んだ花脣をゆるゆると緩めて、
「……そうか。これは秘密にしておこう」
眉間に皺を寄せる柳葉の眉も、双眸に宿る玲瓏の翳りも。
幽かに零れる佳聲が連れ立つ、歯切れの悪い下駄の音も。
齢十八を迎えて男らしくなった彼の、幾分にも子供っぽい部分を映した帷は、そのいじらしさは全てこの瞳に閉籠(とじこめ)ておこうと、真紅の瞳を細めるのだった。
†
グリードオーシャンのモフリス島でアイスを堪能してからというもの、晴夜と帷は其の美味の虜になっていた。
チョコバナナならぬ『チョコなにか屋』に設けられた大きな冷凍庫を見るに、アイスが使われていると洞察を鋭くした二人は、じっと動かないハシビロコウの店主が「説明不要」と立ち尽くすのを前に、一本ずつ買い求める。
中身がアイスなら当たり。
同時に食べたら面白かろうと、「せーの」で齧り付いた二人は、暫し咀嚼した後に感想を言い合う事に決めていた。
「……。…………」
最初に首を振って「ハズレだ」と表情を固めたのは帷。
棒アイスの形状をした中身は魚のすり身で、チョコレートの風味とは凡そ合わないと、嶮しい顔貌をした儘の彼女が訴えてくる。
一方の晴夜もアタリとは言い難い様で、
「……何だコレは……食べても判らない…」
味も食感も掴み切れぬと、訝し気な視線を店主に注ぐ。
暫し無言で見つめ合った店主は、彼が全て食べ切った後に固く結んでいた嘴を開き、
「……何だったんですか、今食べたの」
「かき」
「えっ」
「牡蠣」
「……海のミルクはチョコレートとは合いませんよ……」
海産物の鮮度を保つ為の冷凍庫だったと気付くのは遅かったか、長い睫をそっと伏せて消沈を示し合った二人は、別の店で再挑戰するか――いや、ここにキッズ達が作る行列を捉え、勘を研ぎ澄ます。
「子供達がビッシリと並び、列の先頭からアイスを持った子達が走り出している……」
「若哉(もしや)この先の店でアイスが……!」
鋭利い緋瞳を射る帷の隣、晴夜が狼の耳をピンと立てる。
チリンチリンと爽涼を感じる鈴の音を拾った彼は、炯眼を絞って行列の先に掲げられた「あいすくりん」なる文字を読み、帷と頷き合って最後尾に立つ。
近付く程にキボシイシガメのお婆さんに達人の風格を、小さなリヤカーに老舗の風情を感じた二人は、順番が回ってきた時にドキドキしながら口を開いた。
「アイスを二つ下さい」
代表の晴夜が言えば、「あいよ」と頷いたお婆さんが徐に……屋台をコンコンコン。
すると、冷凍室の中からふたつ、牛皮に包まれたアイス饅頭(二個入り)と、チューブ型フローズンスムージー(二本入り)が包装紙ごと取り出された。
「これは、『雪見おもち』と『ペポコ』……凄まじい既視感だ」
「……まさかの既製品!」
おばあちゃんがやってる老舗風の屋台って、手作りの味じゃないのん……?
何とも殺風景な商売を見てしまった二人は、後続に押される儘に列を出るしかない。
この言い様のない気持ちをどうしようと、指に引っ掛けたレジ袋をブラブラして見せるが、不図、頭上のスピーカーから降り注ぐ案内放送が二人を我に返した。
「――っと、花火が始まりそうです。空いてる所へ急ぎましょう」
「!! そうだった。少し走ろう」
慌てて時計台の針を見れば、慥かに打ち上げの時間が迫っている。
時計ウサギのような慌しさで移動した二人が、丁度のスペースを見つけて腰を落としたその時、ひゅうと風を切る笛音が立ち昇り、ぱぁんと大きな花火が夜空に広がった。
「――よし、間に合ったな」
透き通るような白皙を花火の彩に染めた帷が、取り出した『ペポコ』を割る。
「夜穹に咲く大輪を見ながら、戰利品を分け合おうじゃないか」
「帷さん」
仲良く半分こだと、二つに分かれた片方を渡された晴夜は、硬質の指を項へ、七色の光を映す艶髪に櫛と入れると、苦笑を溢して云った。
「……ダメですねえ。余裕を持って動く筈が、ギリギリになってしまって。どうも帷さんといると嬉しくて、時間を忘れてしまいます」
「晴夜――」
「ハレルヤの悪い所ですね」
困った様に竊笑する芙蓉の顔(かんばせ)が、花火に照り輝く。
淡く細めた瞳が払暁よりも黄昏よりも輝かしく、タンザナイトの煌めきを放つ。
綺麗だと言うのも憚られる粋美に帷が時を止めれば、『ペポコ』を受け取った晴夜は、レジ袋から『雪見おもち』を取り出し、微笑して指差した。
「ラムネか何かで乾杯する心算(つもり)でしたが、代わりになるでしょうか」
「アイスで乾杯か。面白いな」
「で、何方がいいです?」
楽し気に語尾を持ち上げる悪戯な表情も眩かろう。
帷はスッと瞳を細めると、「勿論」と佳聲を滑らせて、
「両方でお願いしたい」
「ですよね」
須臾に重なるハイ・バリトンに淡い艶笑を溢す。
斯くして莞爾と微咲(えみ)を結んだ二人の頭上に、大輪の花が燦然を広げた――。
大成功
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