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希望まで続く道~略奪者達の狂躁曲

#アポカリプスヘル #希望へと続く道 #ロージスシティ

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#アポカリプスヘル
#希望へと続く道
#ロージスシティ


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● アポカリプスヘル ロージスシティにて
 ある晴れた日の昼下がり。平和な街角に、警報音が鳴り響いた。
 避難を促す声が響き、街が不穏な空気に包まれる。ロージスシティの市長は執務室での事務作業を放り出すと、駆け寄ってくる警備隊長に鋭い声を上げた。

「何事だ!?」
「オブリビオンの急襲です! 今警備隊が、街の外にいる住民を避難させています!」
「急げ! 街の住人の避難と退避の準備を……」
 一言叫んだ市長は、いくつか指示を飛ばした後、弾かれたように顔を上げた。
「メルは? メルはどうした?」
「それが、作物にうたを聞かせに行くと言って街の外へ出たきり……」
「探せ! あの子をなんとしてでも……」
 言いかけた市長の胸が、赤く染まる。割れた窓ガラスの外から響いた銃声に周囲が騒然となる。

 そんな様子をドローンで見ていたオブリビオンの狙撃兵は、楽しそうに肩を震わせると銃を手に立ち上がった。
「キヒヒ、頭を潰せば街は混乱する。楽しいねぇ」
 気まぐれに銃口を向けた外道の狙撃兵は、気まぐれに数人を撃ち抜くと巻き起こる混乱を楽しそうに見下ろした。
「さあて。お楽しみの時間だ。連中が門を破るのが先か。俺が殺し尽くすのが先か。どっちが早いか競争だな!」
 口元を歪めた狙撃兵は、獲物を求めてその場を後にした。

● グリモアベースにて
「仕事だよアンタ達」
 一際険しい表情で猟兵達を見渡したパラス・アテナは、地図の一角を指差した。
「ロージスシティっていう大きな拠点が、オブリビオンの襲撃を受けた。突然の襲撃で、街の外にいた連中が幾人も取り残された。安否の確認をしなけりゃならないが、それよりも市中に紛れた狙撃兵を何とかするのが先決だ」

 指揮をすべき市長は撃たれて瀕死だ。拠点の中に紛れた狙撃兵は、市中に混乱を巻き起こすように移動しながら市民を狙撃して回っている。
「このままだと、市民はパニックに陥って内部から崩壊する。アンタ達は市民を宥めながら狙撃兵の居場所を割り出して、これを排除するんだ」
 狙撃兵を排除し終えれば、次は街の外のオブリビオンを倒す番だ。以前猟兵達と交流があったフラスコチャイルドの少女・メルはこの時街の外にいて、その安否は分からない。

「もっと早くに予知が追いついていれば良かったんだがね。ま、悔やんでも仕方がない。今は一刻も早く、この街を取り戻しておくれ。頼んだよ」
 自責の笑みをわずかに浮かべたパラスは、グリモアを発動させた。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 マスターの三ノ木咲紀です。
 今回はアポカリプスヘル三部作の第一部になります。
 なるべく続けてお送りする予定ですが、諸事情により遅れるかも知れません。
 以前のシナリオと同じ舞台で同じNPCが出ていますが、読まなくても問題ありません。

 希望へと続く道~危険地帯踏破行
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=21023
 希望へと続く道~取捨選択の狂躁曲
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=22075
 希望へと続く道~自由と尊厳のために
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=22787

 希望から続く道~命の糧を得るために
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=25390

 第一章は、市中を混乱に陥れる狙撃兵の排除をお願いします。市民を無差別に狙撃しているため、街中は既にパニックが起こりかけています。
 市民を避難させたり狙撃兵を発見するプレイングにはプレイングボーナスが付きます。
 第二章以降は断章にてご連絡致します。

 プレイングは承認後すぐから12日午前中にお寄せください。それ以降はロスタイムとなります。

 それでは。皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『外道の狙撃兵』ミスタースコープヘッド』

POW   :    「一方的に撃ちまくってやる!」
【頭部スコープが狙撃モード 】に変形し、自身の【機動力と防御力】を代償に、自身の【ステルス性能と狙撃の命中精度】を強化する。
SPD   :    「てめぇがどう動くのかは分かってるんだよ!」
【偵察ドローンで敵の情報を得ること 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【大口径狙撃銃から放たれる銃弾】で攻撃する。
WIZ   :    「動けねぇまま死んじまえ!」
【光学迷彩が搭載されたドローンの拘束攻撃 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【急所を狙った銃弾】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリン・ベルナットです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※断章追加の予定はありません。
オープニング直後からの描写予定です。
須藤・莉亜
「へぇ、ここがアポカリプスヘル。けっこう楽しそうな場所じゃんか。」
この世界は初めてなんだよねぇ、僕。

さて、観光は後にして、仕事を始めようか。
UCで狼化、更に周囲に狼の群れを召喚。
んでもって、狼の嗅覚を駆使して敵さんらの位置を把握し、群れをいくつかのチームに分けて敵さんらを襲撃。的を絞られないように、動き回りつつ攻撃していく事にしようかな。
「獲物は君らの好きにすると良いよ。でも、食べ過ぎて動けないとかは無しだからね。」

僕は遠吠で狼達と連絡を取りつつ、やばそうなチームのフォローに回る。
もちろん、血の味見もするよ。どんな味がするのかなぁ。楽しみだね。


リグ・アシュリーズ
都市を治める人がまともって事もあるのね。
助かってほしいけど、考えるのは後。
まずは皆の安全を確保するわよ!

開けた箇所を渡る間護衛して、まずは信頼を得るわ。
私、守りに長けてるわけじゃないから、どなたかと協力したいところ。

一緒に逃げながら、狙撃ポイントの割り出しを。
性根の曲がった敵と分かれば、対策の立てようもあるわ。
パニックを起こさせるには、軽く希望を与えて取り上げるのが効果的。
つまり安全そうなルートを残して、集まったところを――撃つ。

飛び出しそうな人を呼び止め、代わりに前に出て。
銃弾の来た方へ剣で瓦礫を弾き、ビルごと足場を砕くわ!
銃撃が止むのを確かめ、移動を促す。
安全な道を探す?ううん。作るのよ!



● 無事を祈りながら
 降り注ぐ銃弾から市民たちを守ったリグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)は、市民たちを守りながら避難場所である教会への誘導に当たっていた。
 教会まではあと少し。極力建物の中を通りながら進むリグは、外の様子を警戒しながらドアの外の様子を伺っていた。
「……ねえ、市長や天使様は無事かしら?」
「大丈夫さ。まずは俺たちが無事に教会まで避難しなきゃだな!」
「そうね」
 不安そうにつぶやく女性に、同行の男性が力づけるように頷く。どこかで響く銃声に肩を竦める二人の会話に、リグは内心感心した声を上げた。
(「都市を治める人がまともって事もあるのね」)
 こういう都市では、市民のことなど後回しにして保身に走る市長が多い。そんな中、この拠点の市長はまともな神経の持ち主であると言えたし、まともな神経のまま市長をやれる状況だったとも言えた。
(「助かってほしいけど、考えるのは後」)
 意識を切り替えたリグは、改めて周囲の状況を確認した。混乱する市民たちをまとめ上げてここまで来た。敵は動向をクローンで監視しているのだというが、今までのところ目立った襲撃もなくここまで来れている。
「静かすぎるわね」
 リグと同じことを思ったのだろう。狼の姿に変化した須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は、リグの隣に経つと首を巡らせると遠吠えをした。
 よく伸びる莉亜の声が響いてしばし。市内のあちこちから聞こえる遠吠えの声に返事を返した莉亜は、一つ頷くとリグを見上げた。
「市民たちの避難は完了したみたいだね。僕はこの世界初めてだけど、手慣れてると言うか危機感があるというか。狼達や他の猟兵達が避難誘導に当たったとは言え、なかなかできないよね。けっこう楽しそうな場所じゃんか」
 楽しそうな莉亜に、リグも頷く。オブリビオンやレイダー達の襲撃に常に晒されるこの世界では、危機意識も高いのはうなずけた。
「でも、それは敵もわかっているはず。性根の曲がった敵と分かれば、対策の立てようもあるわ」
「対策? どうするんだい?」
 首をかしげる莉亜に、リグは作戦を説明した。

● 狙撃手封じに最適な一手
 教会前の広場に、二つの人影が躍り出た。
 周囲を警戒しながら駆け出したリグは、人の気配が無いことを確認すると大きく手を振る。布を被った人影が広場を横断しようとした時、銃声が響いた。
「一方的に撃ちまくってやる!」
 声と同時に降り注ぐ無数の銃弾が、布を被った人影に襲いかかる。自身の機動力と防御力を代償に放たれた銃弾はしかし、そのほとんどが鋭い動きに回避された。
 激しい動きに、布が落ちる。その下から出てきた狼達は、嗅覚と野生の勘で銃弾を察知し、散開しながら狙撃ポイントに向けて駆けた。
 向かいの建物の屋上から放たれる銃弾が、リグの肩を撃ち抜く。痛みに眉を顰めながらも剣を手にしたリグは、足元の瓦礫を鋭く弾いた。
「目も開けられなくしてあげる!」
 リグが放った攻撃はしかし、屋上の狙撃兵には届かずに建物に当たって砕ける。その姿に嘲笑が響いた。
「は! どこを狙っていやがる! そんな攻撃届かねぇ……何!」
 言いかけた狙撃兵の声が止まる。リグの攻撃は狙撃兵の足場を崩し、崩落に巻き込まれた狙撃兵を地上へと落とす。
「安全な道を探す? ううん。作るのよ!」
 瓦礫に埋もれた狙撃兵の攻撃が止んだのを確認したリグは、固唾を飲んで見守っていた市民たちを教会へと誘導した。

● 58点の狙撃兵
 時は少し遡る。
 リグの作戦を聞いた莉亜は、遠吠えを空に放つと狼達を教会前へと集めた。
 チーム分けはそのまま。狙撃兵に見つからないように潜伏させて、最も機動力に優れる一チームを自分の許へと集める。リグや市民たちの手で布のフードを被せられたリアは、ドアの向こうを伺った。
(「パニックを起こさせるには、軽く希望を与えて取り上げるのが効果的。つまり安全そうなルートを残して、集まったところを――撃つ、ね。よく考えた作戦だよ」)
 合理的な作戦だが、誘導する市民たちを囮に使う訳にはいかない。囮役を引き受けた莉亜は、準備ができたチームに言い聞かせた。
『いいかい? 敵は必ず狙い撃ちをしてくる。命中率はかなりのものだが、絶対じゃない。攻撃はいらない。銃弾が来たらとにかく回避に専念するんだ。襲うのは敵が足場を失ってからで十分だからね』
 莉亜の指揮に、狼達が低く唸って了解を伝える。頷き返した莉亜は、リグの合図に駆け出した。
 なるべく人間に見えるように走る。狙い通り放たれる銃弾に、莉亜と狼達は一斉に散開した。直ぐ側を撃ち抜く銃弾を踊るように回避。直後に響く轟音と建物の崩落を確認した莉亜は、近づく敵の匂いに遠吠えを空に投げた。
 狼達が一斉に狙撃兵に喰らいつく。体勢を崩した狙撃兵は、襲い来る狼達に闇雲に銃を放った。
「この、畜生どもめ邪魔だ!」
「獲物は君らの好きにすると良いよ。でも、食べ過ぎて動けないとかは無しだからね」
 莉亜の指示に、狼達が狙撃兵に波状攻撃を仕掛ける。別のチームも駆けつけては牙を立てる攻撃は、確実に狙撃兵の体力を奪っていった。
 動きが徐々に鈍くなる。必死に狼達を振り払う狙撃兵の背後に回り込んだ莉亜は、鋭い犬歯を剥き出しにすると首筋に牙を立てた。
「な、何だ貴様!」
 怒声を上げて身を捩る狙撃兵には構わず、血を吸い上げる。口の中に広がる血の味は卑怯者の味がしたが、広がる苦味はこれはこれで悪くない。
「どけ!」
 銃身で強かに打ち付けてくる狙撃兵の攻撃を回避した莉亜は、口の端から流れる血を手の甲で拭う。
「大して美味しくはないけど、珍味と言えば珍味だったよ。58点ってところかな」
「何をふざけたことを抜かしやがる!」
 首筋を押さえた狙撃兵は、瓦礫を撃ち抜き煙幕を張る。狼達に追跡させた莉亜は、口の中に残る血の味に笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

影見・輪
メルの安否も気になるけれど、
まずは市民が優先か

恐怖で我を忘れてしまったら、それこそ敵の思うつぼだ
大丈夫、僕ら猟兵がいる
だから落ち着いて動くんだ

避難場所があるなら市民を誘導
ない場合は、身を隠せる物陰に市民を避難させ
[オーラ防御、結界術]を掛け合わせて敵の狙撃から防御する
必要なら[見切り、かばう、激痛耐性]で身体をはることも忘れない

光学迷彩を使用して視覚的には見えない状態であっても
実体はあるし気配も消えないよね
結界術の結界で敵の気配を可能な限り探知
"誘"と"闇色桜"による[援護射撃、範囲攻撃]で攻撃を当てに行くよ

攻撃の手応えつかめたら【祝宴の桜舞】を発動させて
敵が倒れるまで追加攻撃を与え続けようか


ユディト・イェシュア
メルさんのことも気になりますが…
まずは人々を守り避難させなければいけませんね

無差別の銃撃にパニックになっています…
けれどあてもなく逃げてはますます敵の的になってしまいます
まずは人々を落ち着かせましょう
助けが来たとわかれば少しは安心するでしょうか

狙撃兵がどこから狙っているかわかりませんから
銃弾の届かない物陰や安全な場所にいてもらいましょう
やむなく的にされるようであれば
自分が囮になって引きつけUCで耐えましょう

弾の出どころから狙撃兵の居場所を割り出せれば
仲間に伝えます

この街はこれからなんです
作物が実り営みが続いていく
メルさんもきっとどこかで歌っているのでしょう
人々の希望を決して奪わせはしません…!


ジフテリア・クレステッド
※アドリブ・連携歓迎
この町に来るのも三回目か…この町、好きじゃないんだけど…でもなー、メルがいるし…あーあ。(溜息)

スピーカーの移動範囲と毒音波の【範囲攻撃】を活かして市民を狙撃から助ける【救助活動】。
死人が多いとメルが悲しむだろうからね。仕方なく。
救助活動中に狙撃されたら【第六感】で狙撃されたと感じた瞬間に毒音波の【衝撃波】を全方位に放って銃弾を防ぎながら【念動力】を使って勢いよく回避運動。
自分を撃ってきた方角を把握したら【スナイパー】としての知識で狙撃場所を特定。スピーカーと共に【ダッシュ】で向かう。

君、狩りは楽しいってタイプでしょ?
何故分かるかって?私も『そう』だからだよ!
じゃあ死ね!!



● 襲撃
 続く銃声と破壊音に息を潜めるように身を寄せ合う避難民達を見渡した影見・輪(玻璃鏡・f13299)は、オーラ防御を乗せた結界術で住人たちを包み込んだ。
 避難所は数箇所ある。その内の一箇所であるこの教会は、街の中でも信心深い人たちが集まっていた。
 顔を上げた輪は、かつて祭壇があった場所を見上げた。破壊された教会は綺麗に修復され、大きな祭壇があった場所は瓦礫も綺麗に撤去されている。かつてメルが封じられていた天使像を模した像が祭壇に安置され、人々はそこに向けて一心に祈っていた。
「メル、大丈夫かな……」
 ぽつりと呟いた輪に、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は祭壇へと視線を移した。
「メルさんのことも気になりますが……。まずは人々を守り避難させなければいけませんね」
「それは分かるけど……この町、好きじゃないんだよね。でもメルがいるし……」
 二人につられて祭壇跡へ視線を送ったジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は、久しぶりに来た教会の様子にかつての戦いを思い出したのだろう。苦虫を噛み潰したように眉根を寄せると、住人たちが唱える聖句に頭を振った。
「見てよあの天使像。あんな悪趣味な像をまた立ててるしさ」
「信仰は、そう簡単に変えられるものではありませんからね」
 宥めるように言ったユディトの声に、ジフテリアは納得できないように住人たちを見る。ジフテリアの視線に気付かない住人たちの祈りの言葉に口を開きかけた時、輪が小さく鋭い声を上げた。
「静かに。ーー気配がする」
 輪の一言で敵の襲撃を悟ったジフテリアとユディトは、臨戦態勢を整える。住人たちを刺激しないように静かに、確実に散開した二人を見送った輪は、結界術に触れる敵意に神経を尖らせた。
 狙撃兵のドローンは光学迷彩を搭載している。視覚に頼っていたのでは発見することは困難だが、実体はあるし気配も消えない。わずかな駆動音に"誘"を構えた輪は、熱心に祈る住人たちに声を掛けた。
「お祈りは終わった? ならこれからは現実の時間だよ。声を掛けたら焦らずその場に伏せて。ーー伏せて!!」
 輪の声と同時に、ガラスが割れる音がする。住人たちの悲鳴には構わず、輪は"誘"を侵入したドローンに向けて放った。

● 迎撃
 輪の警告に偽神兵器オーバードーズを構えたジフテリアは、割れるガラスに致死毒性の毒音波をばら撒くスピーカーを召喚した。
「耳押さえて伏せてて! 顔上げたりしないで邪魔だから!」
 警告したジフテリアは、住人たちを囲うようにスピーカーの音が外側に向けて配置し、全方位に向けて音波を発射する。致死毒性の毒音波をバラ撒きながら宙を駆け、敵を追跡するスピーカーは激しい音でドローンを追い立てる。内側に立つとそうでもない音の波に、ユディトは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「色々言ってらっしゃいましたけれど、ちゃんと住人の方々を考えてくださっているのですね」
「別に。死人が多いとメルが悲しむだろうからね。仕方なく」
「はい、仕方なく」
 ぶっきらぼうに言い放つジフテリアに、ユディトが天然の笑顔を向ける。なんだか調子を崩されそうなジフテリアは、輪の声に振り返った。
「ジフテリアさん、ドローンが右側に固まってる! 手伝って!」
「右ね。見えないって厄介ね!」
 輪の指示にスピーカーを集中させたジフテリアは、そこにあった三体のドローンを撃墜する。再び全方位モードに切り替えようとした時、ユディトが駆け出した。
「危ない!」
 その瞬間、重い銃声が教会に響く。ドローンを集中させることによりできたわずかな隙を突いて放たれた銃弾は、耳を押さえてうずくまる住人の眉間を狙っていた。
 続けざまに響く銃声に、住人の悲鳴が響く。開始された狙撃に、猟兵達の行動は早かった。
 銃弾の前に立ちふさがったユディトは、無敵城塞を発動させる。必殺の一撃はユディトの眉間を正確に撃ち抜かんと放たれたが、貫き通すことはできない。
 ならばと別の住人に放たれる銃弾の前に、輪が躍り出た。銃弾は輪の腕を、腹を、足を撃ち抜く。致命傷に近い傷だが、ヤドリガミである輪の本体には傷一つついてはいない。
 襲う激痛を堪えた輪は、口の端から流れた血を拭うと昏い笑みを浮かべた。
「そこだね。捉えたよ。……君の逝く路に、祝いの花を送ってあげる」
 "誘"を構えた輪は、狙撃体勢に入った狙撃兵を撃ち抜いた。輪が放った一撃は致命傷には遠かったが、続けざまに血に染まりし玻璃の欠片の花吹雪が舞った。
 玻璃の花吹雪が舞う。桜と言うにはあまりにも鮮やか過ぎる花弁は狙撃兵を包み込み、鮮やかな赤へと染め上げる。
 まるで今まで殺してきた人間の血で染め上げたような花弁の攻撃に、狙撃兵はたまらず転げ回った。
「な、なんだこれは! クソ、邪魔だ!」
「君、狩りは楽しいってタイプでしょ?」
 スピーカーと共に狙撃兵の側に駆け寄ったジフテリアは、のたうち回る狙撃兵を昂然と見下ろすと全てのスピーカーを狙撃兵に向けた。
「小娘が、何を知ったふうな口を利きやがる! テメェに狩りの何が分かるって……」
「何故分かるかって? 私も『そう』だからだよ!」
 獲物を確実に追い詰めたジフテリアは、スナイパーライフルを向ける狙撃兵をあざ笑う。スナイパーライフルは長距離の狙撃には向いているが、近距離への攻撃には向いていない。照準が合う前に手を上げたジフテリアは、殺人スピーカーを狙撃兵に向けた。
「じゃあ死ね!!」
 冷徹な声と同時に、致死毒性の毒音波が放たれる。集中攻撃を受けた狙撃兵は、音波に合わせるような酷い声を上げると砂となって消えていった。

● 救助
 狙撃兵の撃退を確認したユディトは、安堵の息を吐くと無敵城塞を解除した。振り返り、安否を確認する。無事を確認したユディトは、立ち上がった女性に視線を送った。
「どうしましたか?」
「敵はもう、倒れたのよね? なら天使様を探しに行かないと! あなた達何しているの? 早く外に向かうわよ!」
「落ち着いてください! 今はまだ危険です!」
 慌てて座らせようとするユディトからも逃げるように立ち上がった女性は、聞く耳を持たないと言うかのように声を上げ続けた。
「天使様は今、外にいるのよね? なら早くお迎えに行かなければ! ご無事を確認して、この災厄を払ってくださるようお願いしなきゃ!」
「……それどういうこと?」
 叫ぶ女性の声に、ジフテリアは眉をピクリと上げた。この女はこの期に及んで、メルを災厄よけの天使像としか思っていないのか。
 この街は、メルの犠牲で平和が保たれていた街だ。天使像に封じられていたメルは解放され、自分の道を歩みだした。だがそれは、オブリビオンの脅威に晒されるということでもある。メルのことをよく知らない住人の中には面白く思わない人もいるかも知れないが、これ以上のことを言おうものならジフテリアも黙っていない。
 臨戦態勢を整えるジフテリアの隣から歩みだした輪は、女性を落ち着かせるように声を掛けた。
「大丈夫。落ち着いて。今はまだ外に敵が沢山いる。外に出るのは危険過ぎる。恐怖で我を忘れてしまったら、それこそ敵の思うつぼだ」
「我を忘れてなんかいないわ! ねえみんな、早く天使様をお救いしましょう! 天使様がいらっしゃらなければ、いずれ皆殺しにされるわ!」
「今外に出たら、ますます敵の的になってしまいます。まずは落ち着いてください」
 避難した市民を無自覚に扇動する女性に、ユディトは落ち着いて語りかける。聖者としての落ち着いた物腰と静かな声に、女性が声色を落とす。だがやはり不安を処理しきれないのだろう。ユディトの声を否定するように頭を振った女性は、早口に言い募った。
「何をのんきな! 天使様がいらっしゃらなければ、この街は終わるのよ!」
「終わりません。この街はこれからなんです」
 真摯なユディトの説得に、女性は口を再び開こうとする。その言葉が出るのを遮り、ユディトは続けた。
「作物が実り、営みが続いていく。メルさんもきっとどこかで歌っているのでしょう。大丈夫です。メルさんは必ず、この街に戻ってきます。人々の希望を決して奪わせはしません……!」
「大丈夫、僕ら猟兵がいる。だから落ち着いて」
 ユディトと輪の説得に、息を詰めて成り行きを見守っていた市民たちが顔を見合わせる。猟兵達はこの拠点が襲撃された時、幾度も救ってくれた。立ち上がった市民は、興奮する女性を宥めるように声を掛けた。
「そうだよ。やけっぱちになっちゃダメだよ」
「まずは街の中を落ち着かせなきゃ。けが人がいるはずだ。早く助けてやらなきゃな」
「そうだな。行こう」
 口々に言った住人たちは、女性を宥めると天使像へと向き合った。
「この地に坐す我らが天使様。どうかメル様をお守りください。あの方は私達の希望なんです」
 口の中で呟かれていた聖句が、人々の斉唱として教会に響く。驚きに目を見開いたジフテリアに会釈した住人たちは、狙撃兵が倒されたことを伝えながら救護へと走っていく。
 その背中を見送った猟兵達は、頷き合うと街中へと駆け出していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ケンタウロス・リサイクル』

POW   :    天馬彗星キック
【仲間達と一緒に、敵に飛び膝蹴り】による素早い一撃を放つ。また、【マントを脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    猛烈せんとーる
レベル分の1秒で【他の仲間達を蹴り飛ばす事で、敵に仲間】を発射できる。
WIZ   :    人馬ノ天翔
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※ 第二章のプレイングは断章追加後の受付とさせていただきます。
 白い砂と化した狙撃兵の山の中から、鋭い電子音が響いた。
 砂に埋れた通信機を拾い上げた猟兵は、ノイズと共に響く男の声に耳を澄ませる。
「スナイプ。目的は手に入れたから、中の人間は半分までなら殺していいよ。僕も今から向かう。今回の目的の一つは奴隷の収穫なんだから、くれぐれも殺し尽くさないように……スナイプ?」
「……」

 情報を得ようと沈黙する猟兵に、あらぬ気配を察したのか。通信機の向こう側に入る男は小さな笑い声を上げた。

「もしかして、スナイプ倒されちゃった? あれはあれで手練だったんだけど。そんなことができるなんて、ひょっとしてお前たち猟兵? 前に汚泥の……わっ!」

 驚いた声と同時に、雑音が入る。揉み合う気配の後、通信機の向こう側からメルの声が響いた。

「皆、お願い! 街の皆を守って! メルは大丈夫だから……」
「……痛いな、この小娘!」
「きゃあっ!」
 悲鳴と同時に響く鈍い音。少しの沈黙の後、あざ笑うような男の声が響いた。

「ま、スナイプを倒してくれたのなら好都合。収穫する奴隷の人数が増えるってものさ。……じゃあね猟兵。ケンタウロスを置いていくから後はよろしく。僕の研究の残り滓の寄せ集めだけど、命令に忠実で可愛い奴らでね。相手してやってよ」

 からかうような声と同時に、通信機が沈黙する。沈黙が落ちた教会内に、避難した市民の不安そうな声が響いた。

「……メル様、つかまっちゃったの?」
「お願い、メル様を助けて!」
「街には守備隊もいる! 大丈夫だから!」

 口々に言い募る市民を宥め、猟兵達は外へ向かう。街の外を見渡した猟兵は、門を破ろうと攻撃を仕掛けるオブリビオン達の後ろから数台のジープが走り出すのを確認する。

 あの内の一台に、メルがいる。今ならばユーベルコードや乗り物を使えば、追い縋り奪還することも可能だ。ここで逃してしまえば、メルがどんな目に遭うか分からない。

 閉じた門には、無数のケンタウロス・リサイクル達が群がっている。守備隊が何とか守っているが、長くは続かない。猟兵達の手助けが無ければ、遠からず門は破られ市街地への侵入を許すことになる。そうなれば、多くの犠牲は避けられない。

 メルを追うか。街を守るか。

 猟兵達は選択を迫られた。

※ 第二章では、メルを追うか街を守るかのどちらかを選択してください。
 プレイングの冒頭に、以下の記号をお書きください。

○ ……メルを奪還する
● ……街を守る

 記載が無い場合は「● 街を守る」が選択されたと判定します。
 メルの奪還が成功するかどうかは多数決で決定します。

 ○を選択した猟兵が多かった場合は、メルの救助は成功し、第三章の開始時の状況が悪化します。
 ●を選択した猟兵が多かった場合は、門は守られますがメルは連れ去られ、第二部開始時の状況が悪化します。
 同数だった場合は、プレイングの優れていた方の結果が優先されます。
 サポート参加を採用した場合、街を守りますが投票には含めません。

 プレイングは9月17日(木) 8:31から9月19日(土)午前中までにお送りください。
 それでは、良き選択を。
※追記
通信の男はメルを連れて立ち去ります。
追いかけた場合、話はできますが倒すことはできません。
須藤・莉亜

「んー、追うか、守るか。さて、どうしようかな?」
うん、喉が渇いて来たし、目の前の敵さんで渇きを癒す事にしようか。

UCで右腕を悪魔化し、周囲の重力を操って敵さんの動きを鈍らせて血を奪う事にしよう。
それに敵さんを高重力でぶっ潰しとけば、守備隊?の人らもちっとは戦いやすくなるんじゃないかな?

んでもって、動きが鈍った敵さんに全力で吸血。なんか色々混じってそうだから味は微妙そうだねぇ…。
活きが良い敵さんは、二振りの大鎌で斬り刻んでから血を奪う事にしよう。
あ、悪魔の見えざる手には僕のサポートをしといてもらいます。

「救出なんて、僕が最も苦手なものだしねぇ…。」
皆殺しの方がまだ得意だよ。


ユディト・イェシュア

メルさんを取り戻すか街を守るか…
難しい問題です
けれどメルさんはこう言いました
街の皆を守ってと
もちろんメルさんのことは心配ですが
その代わりに街の人々が傷ついたのでは
彼女の心を苛んでしまうことでしょう
敵もメルさんをすぐに傷つけるつもりはないようです
ならば俺は街を守ります
メルさんを諦めるわけではありません
仲間と協力すれば彼女もきっと取り戻せる

門は破らせません
彼らの狙いは住民を連れ去ることでしょうか
住民の方には門から離れて避難してもらいましょう
守備隊の皆さんを励ましながら侵入を阻止します
メイスでの気絶攻撃を交えながら門の破壊を阻止
あとは一体一体確実に倒していきます

メルさん…どうか無事でいてください


ジフテリア・クレステッド
●アドリブ・連携歓迎
メルっ!すぐ助けに―――でも。

メルの願いは、望みは……っ!あ゛あ゛ーっ!!!もうっ!!畜生っ!!
下がってろ守備隊!!お前らが死んだらメルが悲しむだろうが!!

【ダッシュ】で敵に突っ込んで【先制攻撃】の【範囲攻撃】!
【毒使い】の毒弾を巨大化させた偽神兵器から【一斉発射】の【乱れ打ち】。
敵の攻撃を喰らっても【激痛耐性】で耐えて【継戦能力】で無理矢理にでも暴れ続ける。

よくも…よくも私に…人間なんかのために同族を見捨てる選択をさせたなぁっ…!!
メルの望みとはいえ、見捨てちゃったし、今までのこともあるし…もうこれじゃ絶対にメルと友達になれないじゃんかよぉ…。

うがーっ!!ぶっ殺すっ!!!



● どれだけ胸が痛んでも
 通信が切れるのが早いか真っ先に駆け出したジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は、矢のように門へと向かった。
「メルっ! すぐ助けに――」
 門の前にたどり着いたジフテリアは、制止する守備隊には構わず門を開けようとする。閂に手を掛けたジフテリアの耳に、通信機越しに聞いたメルの声が響いた。
『皆、お願い! 街の皆を守って! メルは大丈夫だから……』
 脳裏に悲痛な叫びが聞こえる。雷に撃たれたようなジフテリアは、手にかけた閂を外すことができすに動きを止めた。
 これまで深く関わってきたのだ。同じフラスコチャイルドで、他人に利用されるだけ利用されて、解放されてからも苦しみは続いていて。
 ようやく普通に生きていけるようになった矢先にこの事件だ。本当ならこんな街、見捨ててメルを助けに行きたい。
「ーーでも。メルの願いは、望みは……っ!」
「メルさんを取り戻すか街を守るか……。難しい問題です」
 立ちすくんで動けないジフテリアに、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は静かに声を掛けた。弾かれたように振り返ったジフテリアの視線を受けたユディトは、迷いを見せるジフテリアと視線を合わせると憂いを帯びた目で頷いた。
「俺も、本当ならメルさんを助けに行きたい。けれどメルさんはこう言いました。『街の皆を守って』と」
「そうだよ! でも、だけどメルは今頃どんな目に遭っているか……!」
「もちろんメルさんのことは心配ですが、その代わりに街の人々が傷ついたのでは彼女の心を苛んでしまうことでしょう」
「……ッ!」
 まるで心を見透かされたかのようなユディトの声に、ジフテリアは唇を噛む。自分の気持を優先させるとメルの意思を踏みにじってしまう。二律背反に俯いたジフテリアの隣に、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)が立った。
 気配に顔を上げたジフテリアに首を傾げた莉亜は、難しい問題に直面したように腕を組んだ。
「んー、追うか、守るか。さて、どうしようかな?」
 考えてしばし。パッと明るい顔になった莉亜は、ジフテリアが手を掛けた閂をひょいと持ち上げた。
「うん、喉が渇いて来たし、目の前の敵さんで渇きを癒す事にしようか」
「え、ちょっと!」
「立ち止まって考えてたって、状況は良くならないよー。じゃ、お先!」
 軽々ドアの向こう側に駆け出した莉亜を見送ったジフテリアは、一歩踏み出すユディトの背中に目を見開いた。以前の戦いでも共に同じ戦場に立ったユディトも、メルのことを大切に思ってくれているのは経験で知っている。心配でないはずがない。
「敵もメルさんをすぐに傷つけるつもりはないようです。ならば俺は街を守ります。ーー守備隊の皆さん! 市民の方々を門から離れて避難させてください! 彼らの狙いは住民を連れ去ることです!」
 叫びながら市民を避難誘導するユディトの背中が遠ざかる。守備隊と共に避難誘導に当たるユディトの姿に、ジフテリアは拳を握りしめた。

● 乱戦乱舞のダンピール
 蝶のように軽々と戦場に駆け出した莉亜は、襲い来るケンタウロス・リサイクルの群れに口の端を歪めた。
 馬の頭に人の足。アンバランスでグロテスクで冒涜的なケンタウロス・リサイクルは、守備隊の牽制攻撃をいなしながら口々に呟いた。
「収穫」
「収奪」
「奴隷」
「実験」
「機械」
「待機」
「殺害」
「されたいの? じゃあ遠慮なく!」
 不気味なケンタウロス・リサイクルの声に応えた莉亜は、開いた門を合図に襲い来るケンタウロス・リサイクルに向けて右腕を突き出した。
「一欠片でも現世に出してあげるんだから、僕に感謝してよねー」
 詠唱と同時に、ケンタウロス・リサイクルの動きが鈍る。召喚された悪魔を奪い……もとい宿した腕を振り下ろした莉亜は、鋭い犬歯を煌めかせるとケンタウロス・リサイクルの首筋に食らいついた。
「いただきます♪」
 莉亜が噛み付いた瞬間、ケンタウロス・リサイクルからみるみる間に水分が抜けていく。一瞬で干からびた馬を吐き捨てた莉亜は、口の端から流れる血を手の甲で拭った。
「なんか色々混じってそうだから味は微妙そうだって思ってたけど、意外といけるじゃん。その馬面で人間の血の味が濃いって、どれだけ冒涜的なんだか」
「敵襲」
「接敵」
「攻撃」
「殺害」
 口々に叫んだケンタウロス・リサイクルは、一斉に膝を抱えてしゃがみ込む。丸くなったオブリビオンを後列のケンタウロス・リサイクルが蹴り飛ばす。次々に発射される猛烈せんとーるが、莉亜を踏み潰す勢いで迫りくる。
 一点めがけて飛来するケンタウロス・リサイクルの弾丸が、ふいに地面に叩きつけられた。さっきとは比べ物にならないほどの高重力がケンタウロス・リサイクルを地面にめり込ませるように展開する。地面に押し付けられ、すり潰されるケンタウロス・リサイクルの姿を見下ろした莉亜は、襲い来る大きなケンタウロス・リサイクルめがけて血飲み子と黒啜ーー白と黒の大鎌を振り上げた。
「手応えありそう! 切り刻んでから血を吸い尽くしてあげるよ!」
 莉亜との交戦を巨体のケンタウロス・リサイクルに任せた他の個体は、善戦する守備隊にその矛先を変えた。
「排除」
「殺害」
「収穫」
「邪魔」
 いななきと共に口々に言い募ったケンタウロス・リサイクルが、守備隊に向けて発射される。飛来する馬の弾丸に銃で応戦するが、その勢いを止めることなどとてもできない。
 それでも街を守るのは自分達だという意思を示すかのように立ちはだかった守備隊員が死を覚悟した時、猛烈せんとーるに無数の穴が穿たれた。
「っ! あ゛あ゛ーっ!!! もうっ!! 畜生っ!! 下がってろ守備隊!! お前らが死んだらメルが悲しむだろうが!!」
 魂からの叫びを上げながら駆け出したジフテリアが、偽神兵器アウトブレイクを乱れ撃つ。巨大化したライフルから乱射される銃弾は猛毒を帯び、撃ち抜かれた猛烈せんとーるを侵食し勢いを殺す。
 守備隊を守ったジフテリアは、怒りと苛立ちのままにケンタウロス・リサイクル達の只中へと駆けると全方位に向けて攻撃を仕掛ける。
 巨大な顎が、ジフテリアに喰らいつく。表情の見えない馬面に毒の銃弾を叩き込んでは、痛みを無理やり無視して戦いを継続させる。
 痛みと苛立ちのままに戦い続けるジフテリアに迫る馬の姿が、ふいに引き裂かれた。
 ズタズタに裂かれたケンタウロス・リサイクルの姿に、他のオブリビオンが警戒する間もなく引き裂かれていく。その隙に攻撃を叩き込むジフテリアの隣に立った莉亜は、苛立つジフテリアに笑みを浮かべた。
「なんだ、来たんだ」
「来たくなんか無かったわよ!」
「ま、でも来てくれて助かったかな。血が吸い放題なのはいいんだけど、多勢に無勢なものでさ」
「うがーっ!! ぶっ殺すっ!!!」
 腹立たしげに敵に向かっていくジフテリアを見送った莉亜は、迫るケンタウロス・リサイクルの首筋に牙を立てた。

● 彼女の気持ちを知るためにも
 街の人達の避難誘導を終えたユディトは、戦場に出ると満身創痍のジフテリアに駆け寄った。
「ジフテリアさん! 大丈夫ですか?」
「よくも……よくも私に……人間なんかのために同族を見捨てる選択をさせたなぁっ…!!」
「落ち着いてくださいジフテリアさん!」
 ユディトの声に少しだけ落ち着いたのか。肩で息をしたジフテリアは、数を減らしたケンタウロス・リサイクルの姿に偽神兵器アウトブレイクの銃口をわずかに下にした。
 数を減らされたケンタウロス・リサイクルは、こちらを警戒するばかりで襲いかかる様子はない。この機会に、猟兵達も少し体勢を立て直すべき時だった。
「メルの望みとはいえ、見捨てちゃったし、今までのこともあるし……。もうこれじゃ絶対にメルと友達になれないじゃんかよぉ……」
「ジフテリアさん……」
「こうなったらあの馬面、徹底的に叩き潰してやるわ!」
 再び敵に向けて駆け出すジフテリアを援護するため、ユディトも駆け出す。襲い来るケンタウロス・リサイクルを払暁の戦棍を振るい、ジフテリアから遠ざける。防御を捨てて己を罰するように戦うジフテリアを、これ以上傷つける訳にはいかない。
 猟兵達の猛攻に、敵の数がようやく減ってくる。ずっと駆けていたジフテリアが、射程範囲外でじりじりと警戒するケンタウロス・リサイクルの姿にようやく立ち止まる。その隣に立ったユディトは、肩で息をするジフテリアに声を掛けた。
「メルさんがジフテリアさんをどう思われるのか。俺には分かりません。ですが、嫌われると決めつけるのは早計ではないですか?」
「あなたに何が分かるのよ!」
「分かりません。それに、メルさんを諦めるわけではありません。仲間と協力すれば彼女もきっと取り戻せる。取り戻した後、メルさんに聞いてみるのはどうですか?」
「……」
「救出なんて、僕が最も苦手なものだけどねぇ……。皆殺しの方がまだ得意だよ」
 肩を竦めた莉亜も、ジープが去った方角へ視線を向ける。その一瞬の隙を突いたケンタウロス・リサイクルが後ろを振り返った。
「収穫」
「収奪」
「門扉」
「破壊」
 言い終わるのが早いか、足に力を込めたケンタウロス・リサイクルが大きくジャンプする。咄嗟に放ったユディトのジャッジメント・クルセイドが叩き落とすが、手数が足りない。射程外を弧を描いてジャンプするケンタウロス・リサイクル達が高い壁を軽々と超えていく。
「しまった!」
 叫んだ直後、門が内側から破壊される。急いで街中へと戻る猟兵の後ろから、巨大な姿と大きな足音が迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リグ・アシュリーズ

命の重さは同じ、優劣はつけられない……でも。
私、メルちゃんを助けてくるわ。
守備隊には、門が破られる間際には逃げる事、
余裕があれば非武装市民と違う所に逃げ込む事をお願い。
大丈夫、って言ったからには生き残ってよね?

仲間と手分けして別の車を全力で追跡。
万一にもメルちゃんに危害が及ばないよう、刺激しすぎない距離を保つわ。
狙いは曲道など、ハンドルを切る時。
できれば湿地帯みたく、柔らかい地面だと尚いいわ。

剣の切っ先で気流の刃を飛ばし、タイヤをパンクさせ。
そのまま座席から投げ出された敵へ、一気に剣で飛びかかる!
一人で大丈夫なんて言い張られたら、助けない訳には行かないじゃない。
少々荒っぽいけど、我慢してね!


影見・輪

街の防衛は仲間にお願いし
僕はメルの救出へ

メルを奪還できなければ
それこそ街の皆の士気が下がってしまうし
何より僕が納得いかないからね
生憎とこういう時の諦めは悪い方なんだ

【錬成カミヤドリ】使用
鏡を操作し組み合わせて
ジープと同じくらいの大きさの鳥を作り出す

可能なら作り出した鳥の背に乗って移動を試みよう
うまく行くならジープに飛び乗り
[捨て身の一撃、催眠術]で運転手を無力化させジープを止める
メルが乗っているジープの場合はメルの救出優先
メルに攻撃がいかないよう[かばう、オーラ防御]で守りながら
"誘"と"鮮血桜"で攻撃

移動ができない場合は鳥のみ操作
可能な限りジープへ攻撃を加え、他の仲間のメル救出を支援するよ


桜雨・カイ

何の目的でメルさんを…でも何であろうと彼女の意思を無視して連れて行かれる訳にはいきません、彼女は取り戻します!

【錬成カミヤドリ】発動。半数は敵の対処に。錬成体を狙わせて他の猟兵達への攻撃を減らす、及び盾となるようにします。
残りはメルさんたちのジープ近くに錬成。(自分も【ダッシュ】で移動)
錬成体が派手に動いている間に【念糸】をジープの運転手に有り巡らせて運転を妨害し、車をとめます。

メルさんを連れて何をしようとしているんですか!

救助できたら【聖痕】で怪我を回復
色々ありそうですが、まずはメルさんが無事でよかったです。



● 例え危険を冒してでも
 時は少し遡る。
 通信機の沈黙と同時に駆け出したリグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)は、先行した猟兵とは別の門へ向かうと躊躇なく閂に手を掛けた。
 外へ出ようとするリグの姿に、守備隊の一人が慌てて駆け寄った。リグと門の間に強引に割って入り、両手を広げて開門を阻止している。
「お、おい! 外はオブリビオンでいっぱいで……」
「君達、守備隊? 私達が外へ出たらすぐに門を閉めて。ここを守って欲しいけど、門が破られる間際には逃げる事。余裕があれば、非武装市民と違う所に逃げ込んでね」
「な!? 君達こそ危ない! ここは大丈夫だ。俺たちに任せて避難を……」
「私達は大丈夫。君達こそ大丈夫、って言ったからには生き残ってよね? 私、メルちゃんを助けてくるわ」
「そんな! 門の向こうにはオブリビオンの大軍がいるんですよ! 危険すぎます!」
「危険なんて百も承知。それに一人で大丈夫なんて言い張られたら、助けない訳には行かないじゃない」
「そんな無茶な……!」
「無茶でも何でも、メルを奪還できなければそれこそ街の皆の士気が下がってしまうし……何より僕が納得いかないからね。生憎とこういう時の諦めは悪い方なんだ」
 言い募る守備隊員の前に出た影見・輪(玻璃鏡・f13299)は、真剣な目で守備隊員を見据える。そこをどくよう促す静かな圧力に押されるように黙る守備隊員に、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)もまた言い募った。
「敵が何故メルさんを狙うのかは分かりません。ですが彼女の意思を無視して連れて行かれる訳にはいきません、彼女は取り戻します!」
「……分かった。天使様を頼んだぞ!」
 三人の熱意に、守備隊員がドアの前から身を引く。ドアを開け放った三人は、直後に襲い来るケンタウロス・リサイクルの攻撃に即座に応じた。
 記憶消去銃"誘"で牽制したところを、カイのからくり人形「カイ」が叩き伏せる。活路を開いたカイは、リグを振り返った。
「行ってください、リグさん!」
「ありがとう! ーー私に、力を」
 詠唱と同時に、リグは先を行くジープを見据えた。これに追いつくにはスピードが必要。しかもオブリビオンの大軍を抜けなければならない。この窮地を抜けるための力を己の奥深くに眠るものへ強い力を希(こいねが)ったリグは、湧き上がる黒風をその身に纏わせた。
 黒風を纏ったリグは、一陣の風と化す。街を守る猟兵達が押し返した空間を抜け、寿命と引き換えに手に入れた爆発的なスピードで先行するジープを追いすがる。
 遮蔽物もろくにない乾いた岩砂漠では、速攻を仕掛けるのが得策だ。射程に捉えたリグは、くろがねの剣を振るう。巻き起こる衝撃波は地を這い鋭く駆け抜け、最後尾のジープをパンクさせた。
「少々荒っぽいけど、我慢してね!」
 転倒したジープに、先行するジープがブレーキを掛ける。ジープの中を覗き込むリグに、車中から影が踊りだす。凶暴な牙を剥き出しにしたケンタウロス・リサイクルは、肩に固定させた布袋を担ぎ直すと先行するジープへと向けて走り出した。
「待ちなさい!」
 追いすがるリグに、先行するジープから放たれたケンタウロス・リサイクルが仲間を蹴り飛ばして応戦する。直撃を覚悟し防御姿勢を取るリグの前に、一羽の鳥が舞い降りた。

● 追跡の行方
 先行するリグを追いかけた輪は、走りながら詠唱を開始すると本体の鏡の複製を作り上げた。輪の周囲を飛ぶ63枚の鏡を操り、ジープと同じくらいの大きさの鳥の形に整える。鏡で作った鳥の上に騎乗した輪は、滑るように飛ぶ。念動力でバラバラに動かしている鏡に体重を預けているためスピードはあまり出ないが、体力を消耗させることなく追跡することができた。
 追いすがる輪は、先行したリグがジープを転倒させるのを見た。ジープからケンタウロス・リサイクルが飛び出していくのを見た輪は、鏡の鳥から飛び降りた。
「鏡たち! リグさんを援護して!」
 輪の指示に、鏡の鳥が舞い上がる。飛び降りた輪に速度を上げた鳥は、踊り出たケンタウロス・リサイクルの前に舞い降りた。
 集中攻撃を受けるリグを、鏡が援護する。その隙を突いて駆け出した輪は、自分に向けて突進してくる猛烈せんとーるに舌打ちを打った。
 メルを抱えたケンタウロス・リサイクルを援護しようと次々に発射される猛烈せんとーるを受け止めた輪の腕から、血が溢れ出す。大地を濡らし深紅の花を咲かせる血はしかし、ふいに宙に浮いた。重力に逆らう血は、右掌に刻まれた刻印"鮮血桜"に吸い込まれその色を濃く、鮮やかに染め上げる。
「邪魔だよ馬面! どいて!」
 鮮血桜に力を得た輪は、誘を手にケンタウロス・リサイクル達を撃ち抜くがどうしても動きを阻害されてしまう。足を止めかけた輪の前に、人形が躍り出た。
「援護します!」
 カイが操る人形達が、輪に迫るケンタウロス・リサイクルを排除に掛かる。隙を見た輪は、再び誘を構えた。
「止まれ!」
 催眠術を乗せた"誘"を構えた輪が、記憶消去銃の弾丸を放つ。威力を最大にして鮮血桜の力も込めた攻撃がケンタウロス・リサイクルの足を撃ち抜く。スピードを緩めながらもなお駆けるケンタウロス・リサイクルに、輪は捨て身の体当たりを仕掛けた。頭が大きくバランスの悪いケンタウロス・リサイクルは、輪の不意打ちに大きく転倒する。切れたロープに投げ出された身体を抱え上げた輪は、気を失った少女に目を見開いた。
 メルによく似ているが、メルじゃない。脈と呼吸を確認した輪は、まだ生きている少女の姿に安堵の息を吐くと軽く頬を叩いた。
「ねえ、大丈夫? しっかりして!」
 うっすら目を開けてすぐに気を失った少女を抱き上げた輪は、ジープを追いすがるカイの姿を見送った。

● 黒幕と陰謀
 布袋を抱えて走るケンタウロス・リサイクルの姿を見たカイは、奪回に走る輪の姿に錬成した人形の半数を援護に残すと先を走るジープに追いすがった。
 最後尾のジープが止められ、先行する2台のジープは頻りにケンタウロス・リサイクルを飛ばして攻撃を仕掛けている。しばらくはメルの回収を待っているようだったが、形勢が不利と見ると再び走り出した。
 その様子に、カイは違和感を感じた。これほど大掛かりな攻勢を仕掛けてまで手に入れようとしたメルを、あっさり諦めるものだろうか? もしあの布袋に入れられているのがメルでないならば、ここで逃してしまっては元も子もない。
「何の目的でメルさんを……」
 執拗にメルを狙う敵の姿にカイは考えを巡らせるが、考えても答えなんて出る筈もなく。頭を一つ振って雑念を捨てたカイは、ジープに追いすがると残りの人形の複製体の錬成を開始した。
 先行するジープの近くに錬成された43体の人形は、次々に踊りかかってはジープの走行を妨害する。派手に動いて敵の注意を引きつけたカイは、静かに指を繰った。この位置からだと運転手は狙いづらいが、それならそれでやりようはある。
 細い念糸が陽光に輝き、スピードを落としたジープのタイヤに絡みつく。片輪に念糸を巻き込んだジープは、その場に円弧を描くようにスピンすると動きを止めた。
「メルさん!」
 駆け寄ったカイは、ジープの中から聞こえる鈍い音に足を早める。転がり落ちるように飛び出したメルは、カイの姿を見つけると縛られたまま何とか近づこうともがく。
 メルを奪い返そうと動くケンタウロス・リサイクル達を、カイの人形が押し止める。その隙に駆け寄ったカイは、メルを縛るロープにナイフを入れた。
「カイさん!」
「メルさん! 無事ですか?」
「メルは大丈夫だよ」
「あーあ。追いつかれちゃった。二兎を追う者は一兎をも得ずってね。残念」
 大して悪びれた様子もなく先頭のジープから降りてきたのは、白衣を着た青年だった。強大なオブリビオンの気配を察知したカイは、メルを背に守ると鋭い声を上げた。
「メルさんを連れていって、何をしようとしているんですか!」
「何って。科学だよ」
 あっさり言った青年は、肩を竦めるとメルを見た。視線に怯えたようにカイにすがるメルの姿を鼻で笑った青年は、遠くに見える拠点に視線を移した。
「前に迎えにやった汚泥の娘も言ったと思うけど、メルは一連の研究の唯一の成功例なんだ。同じレシピで何度も作ってるんだけど、なかなか同じように機能しなくてね。再現性のないものはただの偶然で、科学じゃない。僕は科学者だからね。再現性を担保してこそなのさ。あの土地が特別なのかメルが特別なのか。調べなくちゃ、分からないだろう?」
「そんなことのために! そんなことのために、メルさんや拠点を襲ったんですか!」
 叫ぶカイに、青年は楽しそうな笑い声を上げた。
「そうさ! 研究所の教授はどうやってかオブリビオンを使って抵抗してるから、資料が揃わないんだ。連中に先んじるには、現物をバラさないと。恨むなら教授を恨んでよ。ーーさ、メルを渡して。オブリビオン避けの結界は、君達にとっても有益なはずだよ」
「断る!」
「言うと思ったよ。ーーメル」
 ため息をついた青年は、意外にもあっさりと引き下がる。肩を竦めてメルを見据えた青年は、厳かに口を開いた。
「君は必ず、僕のもとに来る。例え君が望まなくてもね。予言しておくよ」
 言いおいた青年は、最後のジープに乗ると遠ざかっていく。メル奪還に成功した猟兵達は、急いで拠点へと引き返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ローズ・ベルシュタイン(サポート)
『さぁ、楽しませて下さいますわよね。』
 人間のマジックナイト×電脳魔術士、17歳の女です。
 普段の口調は「高飛車なお嬢様(私、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」、宿敵には「薔薇の棘(私、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は高飛車なお嬢様風の偉そうな感じです
花が好きで、特に薔薇が大好き
武器は、主にルーンソードや精霊銃で戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


主・役(サポート)
ゲームアバターと人格と同期させて戦う多重人格者のバトルゲーマー。
同期したゲームアバターの技をその身で再現するべくエクストリームスポーツ(地形の利用/地形耐性/環境耐性/空中戦/パフォーマンス)を習得しておりスタミナ(継戦能力)も高いです。
調査系は勘(第六感/野生の勘/見切り)頼り。同期したアバターの人格次第では探偵の真似事ぐらいはできるかも?
基本的には行動はアバター依存。

素の一人称はえにっちゃん。
人格はアバターによります。
アバターと人格の同期の演出は憑依でも変身でもお好きなように。ゲームアバターにはTRPGやPBWも含みます。



● 薔薇の乙女と四番打者
 一方、その頃。
 街中への侵入に成功したケンタウロス・リサイクル達は、抵抗する守備隊たちに向けて牙を剥いた。強靭な脚でジャンプして銃弾を回避しては守備隊に飛びかかり、巨大な顎で襲いかかる。
「逃走」
「阻止」
「収穫」
「収奪」
「させませんわ!」
 守備隊に向けて巨大な口を開けたケンタウロス・リサイクルが、声と同時に響いた銃声に弾かれたように距離を取る。
 ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)が構えたプリンセス・ローズから放たれた銃弾は精霊の力を宿し、ケンタウロス・リサイクルに友好な打撃を与える。歯をむき出しにしたケンタウロス・リサイクルは、ローズに向けて宙を蹴った。
「障害」
「排除」
「障害」
「排除」
 何の感情も見せずに繰り返し嘶きながら空中をジャンプするケンタウロス・リサイクルにプリンセス・ローズを放つが、空中を蹴り回避されて攻撃を当てることができない。
 上空を蹴ったケンタウロス・リサイクルは、矢のように突撃するとローズに向けて体当たりを仕掛けた。
 ダメージを覚悟し身構えたローズの前に、主・役(エクストリームアーティスト・f05138)が駆け込んだ。デバイスから流れる軽快な音楽に合わせて金棒バットを構えた役は、迫るケンタウロス・リサイクルに向けて解説者口調で言った。
「さぁピッチャー振りかぶって第一球……投げた! 打った!」
 野球ゲームの最強の四番打者に同期した役は、鋭い体当たりを仕掛けるケンタウロス・リサイクルの鼻面を金棒バットで強かに殴りつけた。
 力強く振り抜く役の攻撃にカウンターを食らったケンタウロス・リサイクルが遥か彼方へと飛んでいく。
 その様子に牙を剥き出しにしたケンタウロス・リサイクル達は、一斉に仲間を蹴り飛ばすと二人に向けて放った。
 飛んでくるケンタウロス・リサイクル達に笑みを浮かべた役は、再び金棒バットを構えると次々にケンタウロス・リサイクル達を打ち抜いた。
「千本ノック? いいねいいね野球の醍醐味だよ!」
「さぁ、楽しませて下さいますわよね。ーー我は纏う薔薇の気高さに等しき極みの鎧!」
 襲い来るケンタウロス・リサイクル達にユーベルコードを詠唱したローズは、全身をアルヌワブランの薔薇で彩られた甲冑で覆うと夕の憩いを抜き放った。あらゆる魔法属性との親和性の高い剣に、魔法も用いて作り出されたケンタウロス・リサイクル達が次々に引き裂かれていく。
 隙を突いて噛み付いたケンタウロスの牙に、ローズはにっこり微笑むと夕の憩いを振り抜いた。
「痛いですわね!」
 さっきよりも攻撃力を増した斬撃が、ケンタウロス・リサイクルを葬り去る。襲い来る一団を退けた二人は、援護射撃をしてくれた守備隊に声を掛けた。
「さ、皆の避難急ごう!」
「援護をお願い致しますわね」
「あ、ああ。ありがとう!」
 頷いた守備隊を連れた二人は、人々の避難誘導に走る。避難所への避難完了を見届けた二人は、大通りに響く足音と強敵の気配に顔を上げた。 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『暴走する生産プラント』

POW   :    対象ヲ捕獲ホカク捕獲ホカク
【ナノマシン】を注入し、対象の【肉体】【神経】を過敏にし、改造を【肉体】【精神】に施すカプセルへ捕獲する【機械腕】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    ナノマシン注ニュウチュウ入
【機械腕】で捕獲した対象に【注入器】から【対象の体内にナノマシン】を放ち、【カプセル内で改造処置を施す事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    改造カイゾウ改ゾウカイ造カイゾウ改造
攻撃が命中した対象に【カプセル内でナノマシン】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【追加ナノマシン注入と改造機械】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクレア・ハートローズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※ 第三章は断章追加後、9月25日(金)朝8:31以降より受付開始の予定です。
● 進軍
 拠点へと侵入した生産プラントは、収穫すべき人間を探して街の大通りを闊歩する。
 猟兵達による避難誘導の結果、市民のほとんどは避難所への避難を完了していたため、街中にほとんど人影はない。
 熱源をサーチした生産プラントは、避難所へ狙いを定めると一直線に駆け寄る。守備隊が応戦するが、銃弾などものともせず伸ばされた手に掴まれ、「収穫」されてしまう。
『収穫・収穫。人間ヲ収穫セヨ』
 無機質な声を上げながら避難所へ迫る生産プラントは、一瞬立ち止まると高い電子音を上げた。
『優先収穫対象、了解。優先収穫対象、了解。めるヲ発見次第、速ヤカニ帰還。ソレマデハ収穫。収穫。収穫』
 無機質な声を上げた生産プラントは、大きな足音を立てながら市民が数多く避難する避難所へと足を進めた。


 第二章の結果、メルとメルに似た少女の救出は成功しました。現在この拠点のどこにも安全な場所は無いため、猟兵と共に行動しています。
 二人は猟兵の指示に従います。指示が無ければ物陰に隠れていますが、生産プラントのサーチ機能を逃れることはできません。
 街の中に侵入した生産プラントは、避難所へ向けて歩みを進めています。猟兵たちよりも先に街中に侵入したため、何の対策もせず放置すれば避難所襲撃は必ず成功します。
 敵はメルの「収穫」を最優先にするため、メルを囮にしておびき寄せることもできます。
 避難所襲撃を成功させるか、メルを捕獲した時点で撤退を開始します。
 暴走する生産プラントが街の外へ出たらシナリオは失敗となります。
 町の外へ出る前に撃破に成功すれば、捕らえられた人は解放されます。

 プレイングは9月25日(金)朝8:31から9月27日(日)朝8:30までにお寄せください。
須藤・莉亜
「なんかデカいのが出て来たなぁ…。」
走って追いかけるのもめんど、じゃなくて時間が掛かりそうだし、一先ず彼に足止めを頼んどこうか。

UCで腐蝕竜さんを召喚。彼には空から敵さんに近づいてもらって、とりあえず体当たりでもしてもらう。
そのあとは牙や爪での攻撃、尻尾でのなぎ払いなんかで攻撃しといてもらっとくかな。
腐蝕竜さんもデッカいからねぇ、敵さんを前に進めない為の壁にするには十分じゃない?

僕は周囲に飛ばしたArgentaを足場にしながら、空を走って逃げ回りつつ、Ladyでも撃っときます。あの機械の腕に捕まったらダメっぽいしね。
緊急時は悪魔の見えざる手にぶん投げてもらって回避するのも忘れずに。


影見・輪
なかなか厳しいけれど
敵の思うようにさせてやるわけにはいかないんだ

メルと少女が身を隠しても
敵のサーチ機能から逃れることができないなら
いっそ僕達猟兵と一緒に行動してもらった方がよいのかもしれない

怖い思いはさせてしまうだろうけど
共に行動するなら
二人に危害が及ばないよう全力で護衛する

予め二人には[オーラ防御]を施し
戦闘時の流れ弾などが当たらないよう配慮

敵の攻撃は可能な限り[見切り]
必要なら身を挺して[かばう]し[捨て身の一撃]も加えよう
ダメージは[激痛耐性、狂気耐性、生命力吸収]で耐えきってみせるよ

僕からの攻撃は【ブラッド・ガイスト】と[援護射撃]を併用
できるだけ機械腕を壊し尽くせるよう頑張ってみるね


桜雨・カイ
メルさん…とあなた(少女)は隠れていて下さいね。
連れて行かれそうになって怖かったと思いますが、もう少し待っててくださいね。二人はもちろん、この街の人たちだって連れて行かせません

熱で人の居場所を探すのなら、あちこちに熱が上がれば少しは混乱する…?
【花嵐】発動。桜の花びらに火の精霊の【属性攻撃】をのせます。他の精霊達は火事にはしないよう手を貸して下さい。
周囲の温度をあちこちに上げて敵のサーチを誤作動できないかやってみます。

敵の攻撃は桜の花びらで花吹雪のようにしてナノマシンとぶつけて相殺
その後【念糸】を敵の腕に絡ませ動きを制限させつつ腕や配線を攻撃します


ユディト・イェシュア
メルさんは無事だったんですね
本当に良かった…
けれど今度は街に危険が

メルさんはきっと守られるだけを良しとしないと思うので
メルさんが良いというのなら
囮になって引きつけてもらうのはどうでしょう
危険は承知です
けれど人々を連れ去ることが目的なら
きっと相手も必要以上の危害を加えないでしょう
仲間と協力しメルさんも街の人も連れ去らせはしません

囮になってくれたのならメルさんのことは仲間に任せ
俺は街の人々に落ち着いて避難所にいてもらうよう声をかけましょう
またパニックになるといけませんから

人々を「収穫」などさせません
あの機械の腕を減らせば捕獲も困難になるでしょう
優先的に腕を狙って攻撃
物が掴めなくなるように破壊します


ジフテリア・クレステッド
私はメル救出に向かわなかった。救出組よりは敵に近いはず。真の姿になってUC発動。召喚した怪物に【騎乗】して【限界突破】させた【ダッシュ】で敵に向かって突っ込む。スピーカーの大音量で『なぜこんなことをするのか』と質問しながら。

そして召喚した怪物と一緒にプラントに捕まる。質問した時点で私たちの攻撃条件はクリアしてる。ここまでされた相手からの回答に満足するはずもない。【毒使い】と化した世界からの【継続ダメージ】を与え続ける。これなら仮に避難所襲撃を成功されたとしても、街の外に出る前に継続ダメージで倒せるかも。まあ保険だね。このUCなら敵以外にはダメージ与えないし。

メル…見捨ててしまってごめんなさい!



● 巨大な竜 対 巨大な機械
 現れた暴走する生産プラントの姿を確認した須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は、拠点の外からでも見える巨大な暴走する生産プラントの姿に手を目の上に添えた。
「なんかデカいのが出て来たなぁ……」
 収穫だなんだと言いながら街の中心部へ向けて歩く姿は、正しく機械で。機械に流れるのは血液じゃなくてオイルやガソリンで。莉亜にとっては全然、全く、なんにも美味しそうに見えない。
 だがまあ、そうも言っていられない。避難所の人間を収穫されたら面倒だし、何より機械の身体に流れるのがオイルから血液に変わる訳でもない。
「走って追いかけるのもめんど、じゃなくて時間が掛かりそうだし、一先ず彼に足止めを頼んどこうか。ーー全部食べちゃって?」
 詠唱と同時に現れた体長90メートルの巨大な腐食竜は、ところどころ肉が腐り落ち骨が見える首を巡らせると暴走する生産プラントを見つめた。
 値踏みするように見つめてしばし。抗議するように見下ろした腐食竜の視線に言わんとしていることを察した莉亜は、肩を竦めると口を尖らせた。
「あんな硬そうで肉もないオブリビオン、食べたくないって? しょうがないじゃないか。僕だって我慢してるんだから。とりあえず空から近づいて、回り込んで体当たりでもしてやって。ついでに進路でも塞いどいてよ」
 頼んだよ、とヒラリ手を振る莉亜は、腐食竜の骨に足を乗せた。足場を確保するのと同時に大きく翼をはためかせた腐食竜は、砂塵を巻き上げ拠点へと飛び立つ。
 腐食竜が体当たりを仕掛ける寸前空中に身を躍らせた莉亜は、空中に90本の銀の槍を放った。
 周囲に飛んだArgentaに飛び乗った莉亜は、轟音を立てながら体当たりする腐食竜から距離を取る。反撃に出る暴走する生産プラントと格闘を繰り広げる腐食竜を空から見下ろした莉亜は、援護にと白い対物ライフルを放った。銃声と同時に突き刺さる大口径の銃弾にのけぞった暴走する生産プラントは、莉亜の姿を認識するとアームを伸ばす。
「収穫。収穫。猟兵収穫」
「させないよ」
 狙撃直後の硬直を狙って伸びるアームが、莉亜を掴みナノマシンを注入しようと迫る。確信を持って伸ばされたアームはしかし、空を掴んだ。
 悪魔の見えざる手に掴まれた莉亜は、放物線を描きながら空を飛ぶ。アームを回避した莉亜は、再び作り上げた足場に着地するとLadyを構えた。
 血の契約を交わした精霊(?)に捧げた精霊銃が、暴走する生産プラントのアームを一本破壊する。命中と威力が上がったLadyでの援護に隙を見出した腐食竜は、鋭い爪を敵の身体に突き立てる。
 Argentaで作った足場ごと移動した莉亜は、腐食竜と共に確実にダメージを与えるのだった。

● 謝罪と贖罪と
 拠点の中へと侵入した巨大な機械プラントを見送ったジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は、手を握り締めるとメルがいる方を振り返った。
 事態を察した猟兵達が、メルを連れて拠点へと向かっている。怪我は無さそうなメルの姿に安堵の息をついたジフテリアは、彼女を振り切るように背中を向けると駆け出した。
 本当は駆け寄って、メルの無事を確認したかった。だがいくらメルの願いを叶えるためとはいえ、ジフテリアはメル救出には向かわなかった。

 メルを見捨てたのだ。

 そうしてまで街を守ると決めたのだ。最後まで街を守りきれなければ、何のために見捨てたのかわからなくなってしまう。
 胸に襲い来る様々な感情を振り切るように駆け出したジフテリアは、詠唱を開始すると自身の分身である頑固な怪物を召喚した。
 長い尾を持つ狐に似た大きな獣はほとんど骨と皮ばかりにも見えるが、肋骨に覆われた内臓は未だ赤く鼓動とともに常に毒を生産してる。布に覆われた目を赤紫色に輝かせた分身に騎乗したジフテリアは、ガスマスクを放り投げると駆け出した。
 いつも感じていた息苦しさから解放され、肺の中いっぱいに空気を取り込む。大きく吐き出した吐息は毒に侵され世界を汚染するけれど、この姿ならばジフテリアの周囲の『世界』を世界の敵のみ殺す毒に変えることで無効化できる。
 ダッシュで戦場を駆け抜けたジフテリアは、偽神兵器オーバードーズを構えると避難所へ向かう背中に怒鳴りつけた。
「なぜこんなことをするの? お前たちの目的は何?」
 大音量で響くジフテリアの声に、暴走する生産プラントが立ち止まる。応戦し足止めしていた守備隊員の「収穫」の手を止めた暴走する生産プラントは、ジフテリアを振り返ると鋭い機械音を立てた。
『収穫。シュウカク。収奪略奪捕獲。シュウカク』
「お前の蒙昧な答えに、私は決して満足しない!」
『収穫!』
 叫んだ暴走する生産プラントが伸ばす長いアームに掴まれたジフテリアと怪物は、敢えてそのまま暴走する生産プラントの体内へと「収穫」される。カプセル内に入ったジフテリアは、体内に注入されるナノマシンが齎す激痛に歯を食いしばった。

 こいつらに、こんな奴らに悲鳴なんか聞かせてやらない。

 カプセルに満たされた液体の中から見えるぼやけた景色に、メルの姿が思い出される。あの時、ジフテリアは確かにメルを見捨てた。例えそれがメルの望みだったとしても、そんなのは詭弁だ。こんな風に激痛の中、カプセルに……フラスコに入れられていたのはメルだったかも知れないのだ。
(「メル……見捨ててしまってごめんなさい!」)
 身体を襲う激痛よりも強い心の痛みに、強く目を閉じる。同時に解放したユーベルコードが、ジフテリアを収納したカプセルを満たした。
 同時に、怪物もその身から毒を放つ。プラントの内側から侵食する二つの猛毒に、暴走する生産プラントの動きが止まる。
 毒と化した世界の中で、ジフテリアは暴走する生産プラントにダメージを与え続けた。

● それぞれの立場 メルの意思
 一方、その頃。
 街で起こる戦闘の気配に眉を顰めた桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は、背中で守る二人の少女を振り返った。
 敵の手中から救助したメルと、成り行きで保護した少女は本当によく似ている。メルの方が背が少し高くて大人びた表情をしているため見分けはつくが、無表情にして座っていたら双子かと見まごうほどだった。
 メルに手を引かれた少女は、意識を取り戻したもののまだ口を開かない。黙ってメルに手を引かれて歩く少女は全裸で保護され、猟兵達が慌てて着せたサイズの合わない服にも何の言葉もない。
 立ち止まったカイに首を傾げるメルと目を合わせたカイは、言い含めるように二人の肩に手を置いた。
「メルさん……とあなた(少女)は隠れていて下さいね。連れて行かれそうになって怖かったと思いますが、もう少し待っててください」
「え……?」
 一瞬目を見開いたメルは、隣に立つ少女を見ると繋いだ手をギュッと握りしめた。
「……うん。分かった。ここで二人で待ってる……」
「待って」
 メルの言葉を遮った影見・輪(玻璃鏡・f13299)は、戦闘が続く拠点内を見上げるとカイに話しかけた。
「メルときみが身を隠しても、敵のサーチ機能から逃れることができないなら。いっそ僕達猟兵と一緒に行動してもらった方がよいのかもしれない」
「それは危険です! 万が一にも二人を「収穫」されてしまったら元も子もありません。……それに二人をこれ以上、怖い目に遭わせたくないです」
「怖い思いはさせてしまうだろうけど。共に行動するなら、二人に危害が及ばないよう全力で護衛する」
「ですが……!」
「落ち着いてください二人とも」
 言い合いを始めた二人の間に割って入ったユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、ハラハラしながら二人を見守るメルに静かに問いかけた。
「メルさん、無事だったんですね。本当に良かった。続けてこんなことを提案するのは酷かも知れませんが、敢えて言いますね。メルさんが良いというのなら、囮になって引きつけてもらうのはどうでしょう」
「ユディトさん! いくらなんでもそれは!」
 その提案に、カイはユディトに食って掛かった。戦場に連れて行くだけでも反対なのに、囮として使うだなんてリスクが高すぎる。
 そう言い募るカイの視線が、ユディトの視線で返される。お互い真剣に睨み合ってしばし。口を開いたのはユディトだった。
「危険は承知です。けれどメルさんや人々を連れ去ることが目的なら、きっと相手も必要以上の危害を加えないでしょう。それに勿論、メルさんも街の人も連れ去らせはしません」
「それは当然です! ですが……」
「ふたりとも落ち着いて! ……メルはどうしたい? それが一番大切だよ」
「メルは……」
 輪に問われたメルは、唇を噛むとカイとユディトを見上げた。

● 桜の攻防戦
 行く手を巨大な腐食竜に遮られた暴走する生産プラントは、反応するセンサーに背後を振り返った。
「ピピ……。熱源感知。顔認証サーチ。……98.2%デ適合。優先収穫対象ト断定」
 腐食竜との戦闘で負った外装の破壊と、内部に潜り込んだ猟兵による内側からの破壊と。両方から大ダメージを受けた暴走する生産プラントは、それでも健在な索敵機能を活かして振り返ると、大通りに立つメルに巨大なアームを伸ばした。
 最短距離で伸ばされるアームがメルを掴む直前、払暁の戦棍が迫った。
「あなたの弱点は、アームの関節部分です!」
 暴走する生産プラントのオーラを読み弱点を正確に突いたユディトの戦棍が、伸びるアームを破壊する。アームを破壊された暴走する生産プラントは、別のアームを射出するとメル達を包み込むように短い腕を伸ばす。
 迫る腕に目を見開いて、少女を守り立ち向かうように立つメルにアームが伸びる。凶悪な腕が届く寸前、腕の動きが止まった。
「桜のように舞い散らします」
 念糸でアームを纏めて絡め取ったカイは、空間を満たすように桜の花びらを放った。視界が無数の桜の花びらで埋め尽くされる。視界を封じられた暴走する生産プラントは花びらを避けようとアームを動かすが、払いきれるものではない。
「ピピ……。視界不良につき熱源サーチ開始。……優先収穫対象候補数86体察知。特定不能。特定不能」
「特定なんてさせないよ!」
 桜吹雪の中輪の声が響き、同時に銃声が鳴る。無数の桜が満ちる空間に、紅色桜が花開いた。自らの手のひらを撃ち抜いた輪は、自身の血を吸い力を増した鮮血桜で強化した誘の銃口を暴走する生産プラントへと向けた。
 放たれる銃弾は次々に拘束されたアームを撃ち抜き、無力化していく。動きがひどく鈍くなった暴走する生産プラントが狂ったようにアームを振り回した時、動きが止まった。
 今までとは違う機械音が響く。その直後、一本のアームが鋭く動いた。
「ピピ。捕獲完了」
 隙を突き放たれたアームが、メルを掴み取る。物陰に隠れようとしていたメルを正確に掴んだ暴走する生産プラントは、メルを「収穫」しようとアームを縮める。メルを取り返そうと猟兵達が動いた瞬間、大きな声が戦場に響いた。

● 宿敵の目的
「……博士、聞いてるんでしょ? もうやめて。メルをそっとしておいて! メルは静かに暮らしたいの!」
 悲痛な叫びが戦場に響く。動きを止めた暴走する生産プラントは、わずかなノイズの後に若い男の声で喋った。
「嫌だね」
 にべもなく言い放つ声に、メルが唇を噛む。なにか言うよりも早く、博士の笑い声が響いた。
「きみは世界をオブリビオンの脅威から守りたくないの? 僕が開発している「エンジェルシリーズ」が完成すれば、オブリビオンの脅威から人類は解放されるんだよ。生きたフラスコチャイルドを核にしてるけど、些細な犠牲さ。そのおかげで人々は安心して眠れるし、畑の周囲に置けば収穫も安定する。道に置けば安全に交易ができる。素晴らしいだろう? きみの悪夢が出す特殊な脳波をきみの妹たちにインストールすればあと一息だ。だから……」
「……ふざけないで!」
 暴走する生産プラントを中から毒で弱らせていたジフテリアが、カプセルを破壊して外へ出る。真の姿を開放したジフテリアは、メルを掴むアームの関節部分に向けてジュニアスナイパーライフルを構えた。
「メル。あなたを見捨てた私を許して貰えないだろうけど、せめてデカブツからは守るから!」
 悲痛な叫びと同時に、ジュニアスナイパーライフルから弾丸が連射される。関節部分を撃ち抜かれ、収穫の手を止めた暴走する生産プラントに、上空から銀の槍が降り注いだ。
「博士だっけ? こんな吸血しがいのない敵を送り込んでくるんだから、性悪だよね。さっさと倒して、次のごは……オブリビオンを倒しに行かなきゃ」
 莉亜の足場を形作っていた銀の槍が、一斉に降り注ぐ。アームが破壊され、地上へと落ちるメルをカイが抱きとめた。
「大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」
「メルは大丈夫」
「そうですか。良かった」
 心から安堵の息を吐くカイと元気そうなメルを確認した輪は、誘を構えると二人に迫る腕に銃を放った。晴れゆく桜吹雪の中に再び紅色の桜が咲き誇り、残った腕を叩き落としていく。
「博士だっけ? 高邁な理想があったって、きみの思うようにさせてやるわけにはいかないんだ」
「僕の理想が理解できないなんて、世界の敵だね!」
 アームのほとんどを失った暴走する生産プラントは、最深部から最後のアームを出すとメルとカイへと猛然と伸ばした。外殻は破壊され、アームも失った暴走する生産プラントは、最後のアームを出すとまるで林檎の芯のような形になる。
 メルを捕らえる動きを察知した輪は、二人を庇いアームを受け止める。全身に走る激痛を辛うじて堪えた輪から溢れた血が、ふいに流水紋を描いた。右掌に穿たれた刻印の封印を解いた輪は、至近距離に迫る暴走する生産プラントの巨体に手を突き出した。
「君の世界の敵で十分だよ」
 殺戮捕食形態となった輪の右手が、暴走する生産プラントを捕食していく。攻撃の手が止まったのを見たユディトは、地を蹴り駆けると暴走する生産プラントの中心部へと駆けた。内部に残るおぞましい機械を振り払い、小さなアームを払暁の戦棍でなぎ払いながら真っ直ぐ駆ける。ついに中心部まで辿り着いたユディトは、カプセルの中に収められたコアに払暁の戦棍を振り上げた。
「人々を「収穫」などさせません。フラスコチャイルド達の犠牲の上に成り立つ平和なんて、俺は認めない!」
 顕になったコアが放つ暴食のオーラに目を眇めたユディトは、渾身の力でコアを破壊する。崩壊を始める暴走する生産プラントから急いで脱出を果たした時、暴走する生産プラントは狂った電子音を立てながら沈黙した。

● 最後の足掻き
 敵の沈黙を確認したユディトは、大きく安堵の息を吐いた。避難所を守り多くの人達を守ることができたが、無傷とはいかない。破壊された町並みに、家族や友人の安否を確認する声が響き、怪我人を病院へと運ぶ救護班が忙しなく動き回る。
 犠牲者の名を呼び泣き叫ぶ声が響く。祈りを捧げたユディトは、再び響く電子音に顔を上げた。
「……まあ、今日のところはこんなものかな。目的の全部は達成できなかったけど、及第点ってところか。ーーメル!」
 名を呼ばれて弾かれたように振り返ったメルに、博士と呼ばれた男が楽しそうな声を投げた。
「今日も守ってもらえて良かったね。でも僕は自分の望みを捨てるつもりはないんだ。手駒はいくらでもあるから。何度でも迎えを寄越すよ」
「もう来ないで。それにメルはあなたなんかに負けない! 街の皆も、絶対に守ってみせる!」
「きみは良くても街の人間はどうかな? きみのワガママの巻き添えを食う人間の身にもなって……」
「黙れ!」
 猟兵達の攻撃が、残ったスピーカーを破壊する。今度こそ完全に沈黙した暴走する生産プラントに、街の人々の間に不安が走った。
 またこんなことが起きるかも知れない。得体の知れない空気を感じ取ったユディトは、パニックを起こさないように人々を落ち着け説得して回る。
 平穏を取り戻した街の中で、メルは一人手を握りしめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月29日


挿絵イラスト