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猟兵諸国漫遊譚~巳津羽の地、風祭り~

#サムライエンパイア #戦後

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 カラカラと。
 数百の風車が、秋の涼んだ風に吹かれて羽音を鳴らす。
 高原の最中、豊かな丘陵がもたらす豊かな水と土地によって、山間農が盛んな小国、巳津羽国の一町。風見。
 今年も来る冬の安寧と、来年の豊穣を願う風祭りが行われる。
 さて、この祭り。起源を遡れば千年程前。神様がこの地に姿を見せていた頃。生まれた赤子を、美しい衣に包み神へと祈りを捧げる風習があった。
 どうか寵愛を、障り無き生涯をと。
 そうして、神は、民に健やかな生活を与えていた。
 だが、それでも縁というものは悪しきものと結ばれる事もある。そういった赤子を蛇は静かに引き取って、子とするようになっていた。
 神の傍らで、悪しきものとの縁を浄化する、その為に。
 やがて、神は姿を消した。だが、しかし、不思議なことに、時折赤子が姿を消すのである。
 包んでいた衣を残し、風に吹かれるように、ふつ、と消えるのだ。
 神拐いに、はてと、民は思う。我らのもとをお離れになったと嘆いていたが、もしや高原の風となって我らを見守ってくださっているのではと。
 そうして、民は神に祈りを捧げる祭りを秋ごろに行うようになった。
 まみえる叶わずとも、感じることは出来るように、と風車を回す。
 いつしか、神の子となった赤子にも祈りが届くようにと、その赤子が残した衣の柄を風車に刻むようになったのだ。
 そうして時は経ち、この風祭りにはさまざまな色の風車が高原の町に飾られるようになった。
 最後に加えられた柄は、白に薄桜。実に数百年ぶりの神拐い。
 それは、この日の十余年前の出来事だった。
 

「何か怪しげな気配があってね」
 そうルーダスは言う。
 高原の町、その祭りの日に何かが起きると、そう彼は言う。
「とはいえ、はっきりとした予知ではない、何も起こらないかもしれない。気楽に向かってくれて構わないよ」
 丁度浴衣を新調した者も多いだろう。息抜きには良いかもしれない。村人達もそれぞれに浴衣を纏っているので、溶け込むには最適だろう。
「さて、秋口とはいえ、高原の風は冷える。という事で、屋台も体が暖まるものが多いようだ」
 かき氷などもなぜか売られているが、まあ汁物や辛めの焼き串、甘酒や熱燗。そういったものが多い。探せば他にも色々とあるだろう。
 風車の屋台なんてものもある。
 風光明媚な高原の中にある町だ。風車に彩られた道を行けば、雄大な自然が暮れゆく日に照らされる様が喧騒を遠ざけてくれる。
 好きに過ごしてくれたまえ、とルーダスは良いながらも最後に。
「でも、何か異変を見つけたのなら、警戒するに越したことはないだろうね」
 そう告げていた。


オーガ

 浴衣っぽいシナリオです。戦闘も出来るだけ浴衣での描写をします。

 第一章は、夕暮れの高原の自然豊かな町で、風車の祭りを散策する場面です。
 僅かな異変はありますが、それに対するアクションが次章に影響はしません。

 第二章集団戦、第三章ボス戦は、同時展開として、どちらかの参加のみとしています。

 各章に断章を挟みます。
 よろしくお願いします。
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第1章 日常 『秋空時雨の鈴の唄』

POW   :    食べたり飲んだりしながら祭りを楽しむ。

SPD   :    買ったり作ったりしながら祭りを楽しむ。

WIZ   :    涼んだり聴いたりしながら祭りを楽しむ。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 風車が回っている。
 人々が行き交っている。
 手に風車を持つ者も多い。
 道の傍に座り手にした甘味に頬を綻ばせている者も、辛い肴を当てに酒をあおる者もいる。
 往来は、多種多様に、しかし、一様に平和な色に満ちていた。


 
シキ・ジルモント
祭りの邪魔をしたくはない、周囲に合わせられるように浴衣を着ていく(紺地の雪花絞り、黒い帯)
武器やら何やら戦闘に必要な物も隠し持ってはいるが、ぱっと見ただけでわかる物々しさはおそらく無いだろう

せっかく屋台があるのだし酒と串焼きを…と行きたい所だが、ひとまず今はやめておく
この匂いにはもちろん大いに惹かれる
しかし気楽にと言われてはいるが仕事は仕事、その最中に呑むわけにもいかないからな
少しの口さみしさは、甘酒でも飲んで紛らわす
…酒の代用品のつもりだったが、これはこれで悪くないな

甘酒を楽しみつつ風車の飾られた道を歩いてみる
異変には十分警戒しておき、何か見つけたら追ってみる
できるだけ早い内に対処したいが…



 つう、と温かさが喉を伝い落ちていく。
 綿のような軽やかな甘みが舌を休めるようだ。体の内側から仄かに膨らむ柔らかい熱を感じながら、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、ふとその口端を綻ばせた。
「……悪くない」
 一口飲んで、唇を離した彼は思わずに零す。
 竹を輪切りにしただけの杯は、香りよく甘みを感じさせてくれる。
 酔うわけにはいかないと、遠慮した酒の代わりのつもりだったが、これはこれで。と冷える秋風に思う。
 紺地に絞った藍染めの白花が咲く浴衣を緩やかに吹いた風に揺らして、カラカラと鳴る風車の合唱に耳を傾けた。
 背を預けていた道の柵からシキはゆったりと身を起こした。浴衣を挟んで黒い帯の下に差し込んだ拳銃が、硬い感触を返して僅かに緩みかけていた警戒を思い起こさせる。
 甘辛い香りと、僅かな酒精の苦み。あれは串焼きだろうか。聞きかじりの話によれば、この高原で畜産も行っているらしい。良い肉が育つのだという。
 息を吸えば、屋台から微かに感じるそれに後ろ髪を引かれながら、暫く未練を残していた証拠の柵の温もりに別れを告げた。
 あの香りが秋風に乗るのすら客引きとしているのだとすれば、中々にやり手だと益体も無く考えながら、色とりどりの風車の間を抜けていく。
 遠くに傾く斜陽は、ここが山であるからか長く尾を引いて残る。ともすれば、落ちる陽を見下ろしているような気さえする。そこから放たれる穏やかな熱射で、風に冷えた体を少し溶かしながら、人の声を聴く。
 疑念や憎悪を感じない雑踏。音を広く聞きながら、こういう時ばかりはこの耳も自慢できるような気がしてくるから不思議なものだ。
 そんな音を背に、高原を望む道を歩く。空になった器を揺らして、温まった息を吐いた。風が車を回す。
 夕陽に照らされて、点滅するように輝く色とりどりの朱色。
 黄みがかった夏草が揺れる景色に町の屋根が映える。
 ふと、赤く染まる世界の中で、シキは視線を感じた。だが、周囲に人はいない。
 振り向いた先。柵の上に小さな蛇がシキを見つめていた。眠たげに、もしくは眩し気に。それは数秒、シキと見つめ合うとちろりと舌を出し、柵の向こうへと身を躍らせた。
 敵意は感じない。だが。
「……来い、という事か」
 シキは何故かそう感じて、蛇のいた柵を風車ごと乗り越えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
わーい、久々のお祭りだー!
うーん…お供は嘆きの金糸雀でいいかな、武器には見えないだろーし(笑)
「初めてお任せで浴衣を仕立てて貰ったけど…これはこれで良いねぇ♪」
さて、と…まずは汁物を食べて身体を暖めたら、焼き串と熱燗で…
「くぅ~っ…これこれ~!」
いやー…お酒と串物の組み合わせって最高だよねぇ…!
串物は多めに注文して全部食べるけど、一応お仕事だからお酒は程々にして(空腹耐性)…
「さ~て、次は何にしようかな~」
甘酒に舌鼓を打ちながら指定UCを使って、情報を集めながら他の屋台をひやかしますかー!

あ、情報が集まってきたら、一応周囲の警戒ぐらいはしとこー
【第六感】で何か感じたりなんかしちゃったりして(笑



「お祭りなんて、久々だなー」
 ううーん、と背伸びをしながら、インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は町の空気を吸い込んだ。
 胸を透くような空気に、活気のある雑多な香り。雑踏は絶えず騒めき色を変えている。祭りの光景。空気。
 始めてきた土地ではあるがどこか懐かしい感覚になりながら、相反して真新しい心地にインディゴは包まれていた。
 浴衣である。
 墨色に深い黒で模様を入れた浴衣に、透けるような青を流した羽織。蒼と白の帯に組紐を合わせたそれは、インディゴ自身なら選ばない、幾らか選考には残るだろうが最終的には選ばないだろうデザインであった。
 だが、袖を通してみると、藍の髪に映える設えなのだ。気に入った仕立てに気分を上々に手にした串を肴に、酒の入った竹杯を傾ける。
 甘い肉の脂を、酒の鋭い香りと冷ややかさが押し流していく喉の快感に、「くう、ぅ」と無意識に上がる口角から声を漏らす。
 警戒を怠らないように、と少なく頼んだ酒量が惜しくなる。多めに買った串も平らげてしまい、むしろ胃が動き始めて空腹を覚えだしてしまう。もし、冷えた風で熱酒に火照る体を冷やせたなら、どれだけ心地いいかと考えれば、切なさすら覚えて、インディゴは口を慰める為に通りがけの屋台から甘酒を買っていた。
「ありがとー」
「あいー、まいど!」
 明るく手を振って、インディゴは風車の並びを見る。
「……確かにねえ」
 彼とてただ飲み食いしているわけではない、歩きながら情報を集めてもいたのだ。
 曰く伝承にある初めの神隠しは、紅色が主な錦の赤子。次が黒で、藍、黒、橙。全てが残っているわけではないし、記憶違いもあるだろうが。
 その色は軒並み濃い色合いをしている。だが、数年前の神隠しは、殆ど白色。成程、見れば風車の中で、白に薄桜の三つ羽は浮いて見える。
 冷えた風が頬をすぎる。
「ふんふん」
 と頷くように鼻を鳴らして、インディゴは徐に吹いた風の先に目をやった。
 遠くの空は濃い夜の色。
 まだ紅が染める下で、僅かに風が変わったような気がした。
 何かが起こるかもしれない、と言っていた記憶の中のグリモア猟兵の言葉に、残っていた甘酒を呑み込んで、どこか楽し気に笑って見せた。
「キミが気にしてた通り、なにか来るみたいねぇ」
 血のように赤い、暮陽に藍色が揺れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『編笠衆』

POW   :    金剛力
単純で重い【錫杖】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    呪殺符
レベル×5本の【呪殺】属性の【呪符】を放つ。
WIZ   :    呪縛術
【両掌】から【呪詛】を放ち、【金縛り】により対象の動きを一時的に封じる。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 紅い空に、一人の女が立っていた。
 白い絹に薄桜の朱を差した女が立っていた。
「ああ、ここが私のふるさと」
 知らぬはずの景色に懐かしさを覚えるような口ぶりに、しかし、その瞳は、邪悪な光を湛えた蛇に似ている。
「みんな、私と一緒に蛇になりましょう?」
 弧を描く笑みから覗く口の赤が、いやに燃えるようだった。


 その影は、いつしか祭りの中にあった。
 笠を被るその人影が、ゆらめくように錫杖を鳴らし、叫ぶ。
「さあ、我らが蛇神様の復活の時! 貴様らにはその礎となってもらおう!!」
 

 街の中に編笠衆、外から蛇女です。
 ギミックなどもない戦闘なので気軽にプレイングください。

 よろしくお願いします。
 街の外から
サンディ・ノックス
縦縞柄の灰色の浴衣、風呂敷の中に黒剣
焼き串は少し買っただけ、今は買った風車が回る姿に夢中
…だったんだけど

不穏な言葉が聞こえたから思わず表情を歪めてしまう
――ああ、お腹減ってたんだよね

風呂敷から黒剣を出して
風呂敷は目印の風車と共に道端へ置き
声を上げた奴をUC解放・宵(攻撃力重視)で斬る
センテヒッショウ、って言うでしょ?

町人を巻き込まないためと趣味を兼ねて
「礎にしたいなら俺を倒してごらんよ? それもできないんじゃ目的を叶えるなんて無理無理」
と嘲笑って気を引いて、交戦しつつヒトの少ない場所に誘導していく
UCの攻撃力と命中率は敵に当たるか次第で変更

倒した敵の魂は全て貰うよ
生きる糧だから美味しさも格別だ



 礎。
「……」
 暮れる陽の中、風に乗って聞こえた言葉に、嚙んだ肉を抜いた串を摘まんだ手を、落とすように揺らした。
 カラカラと風に揺れる風車が鳴っている。肉の繊維に牙を通して、良く漬かった味が口に広がっていく。
 縦縞柄の灰色の浴衣に身を包んだ赤髪の男は、腕に提げた風呂敷をそのままに地面を蹴っていた。サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)。その口に浮かぶのは紛れもなく笑みだ。
 随分と派手に声を上げてくれた。おかげで場所は見えずともわかりやすい。
 壁を蹴り、屋根を蹴り、宙へと跳び出したサンディは身をよじり、手に残った串を擲っていた。その切先が向かうのは、編み笠の男。
 ただの木串とは思えぬ鋭さで飛んだ矢弾は、しかし、掲げた編み笠の手に触れる直前に黒い土くれへと変わり地面へと崩れ落ちる。
 だが。
「――っ」
 一閃。
 空中から舞い降りたと同時に、サンディが振るった剣の一撃に男の上体が千切れて跳んだ。
「――ああ、お腹減ってたんだよね」
 刃が肉を、魂を食い破る感覚に、思わずに舌なめずりをして、与えた絶命の傷から目を上げる。
 腕に提げていた風呂敷を舞わせ、その手に握るのは黒き剣。反動を殺すように体をばねに数度揺らしたサンディは、鋭い笑みで周囲の編み笠をじろりと睨めまわした。
「礎にしたいんだって?」
 風呂敷を丸めて近くの柵に軽く括りつけて、手の中の黒剣を回してそう問いかけた。
 逃げる町人の背を僅かに見やって、
「なら俺を倒してごらんよ? それもできないんじゃ目的を叶えるなんて無理無理」
「……っ、殺せ!!」
 一斉に、サンディに飛び掛かった編み笠の錫杖の攻撃を、彼は隙間を抜けるように躱す。三体。それらの錫杖が地面を打ち、衝撃が爆発する。全身を滅多打ちにして、骨を粉々に砕けるような衝撃の挟撃。抜ける隙間もないそれに。むしろ一つの衝撃に身を任せ吹き飛ぶ自分の体を制して、その勢いを生かし一閃。
 引きちぎるように切断した首が地面に落ちるよりも早く。
 サンディの体は地面を跳ね返るように駆け、残った二体、いや、最後の一体の胸へと、黒い刃を突き立てていた。
「ぬ、ぐ……っ!?」
 傍に立つ編み笠が、ぐらりと体を崩れさせた。初めの錫杖の一撃、その際に既に斬り捨てていたのだ。故に、最後の一体。
 いや、風に乗る音を聞けば、まだ残っているのだろう。貫いた刃を抜き、編み笠を蹴り離して、まだ息のあるそれに逆手にした剣を振り上げた。
「残しちゃあ、勿体ないよね」
 舌に、唇に残っていたのか串の甘辛い旨味が広がる。
 編み笠の中心。そこへと刃が落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
蛇神様、と
……どうにも縁があるらしい
初めて訪れる幽世を眺めて回っていた足を止め、戦いに参加する(浴衣に関しては場に合わせるが諸々お任せ)

神隠しが起源の祭ってあたりで怪しい話だが。今現在、楽しんでいる奴らにゃ知ったこっちゃねえだろう
店や飾り、住民の被害を減らす立ち回りを意識
錫杖の攻撃を覇気+格闘でいなし手応えを掴みつつUC相当の一撃を『怪力』で受け止める。折角の日だ、平和的に力比べも悪かないが
まあ、他に見て回りたいもんもあるんでな
『属性攻撃(電気)』を伝わせ直に雷撃を叩き込み、怯むようなら持ち主の方を【一撃必殺】で圧し折れたら上々だ
そうだな
纏めて来てもらえるか?



 放たれた錫杖に、夕陽が跳ねて警告を放つ。
「……っ!」
 触れれば容赦なく腕を千切り捥いでいくだろう呪いの渦を、覇気を纏わせた脚撃で打ち上げれば、彼らを中心に膨れ上がった衝撃が暴風となって風車がやかましく暴れ狂う。
 店先の金鈴が嘶き、家々が軋む。
「邪魔を、するな……ッ」
「悪いが――」
 手を軽く振り、レイ・オブライト(steel・f25854)は拳を握る。
 神隠しが起源の祭。そりゃまた随分と怪しい話だが、今それを祭りとして楽しんでいる住民には関りは無い。伝説は伝説で、ただの飾りに過ぎない。
 故に、復活がどう、などは知ったことではない。
「取り合う気はない」
 言葉を待つことなく突き出される錫杖を躱し、突き出した拳はしかし空を切る。僅かに身を反らし、錫杖をそのまま振るった薙ぎ払いを後方へと体を跳ねさせて躱せば、控えていた編み笠の錫杖が襲い来る。
「ぐ――!」
 体を無理によじり、地面に打ちつけられながらも回避し、腕のバネで体を跳ね上げると同時に捻じった裏拳を編み笠の胸へとぶち当てる。
 バ、ゴア!! と盛大に吹き飛んだ方向に民家が無い事を咄嗟に確認したレイは、背後から降り抜かれた錫杖に拳を打ち合わせた。
 互いを破壊せんとする衝撃が吹き荒れるが、怯みはしない。舞うように放たれる錫杖を掌底で弾き、勢いを削いだそれを掴み取り。
 ――閃光が爆ぜた。
「ゴ、ガ!?」
 レイの内から溢れる、鼓動が、雷轟が、身を裂き溢れる雷撃となって錫杖を伝い編み笠を貫いていた。機能不全。全身がそれぞれの接続を放棄するような、瞬きの隙にレイの拳が容赦なく叩き込めれていた。
 衝撃を逃す事も出来ず、覇気に強化された拳が編み笠の体に風穴が開いた。
「……さて」
 死した骸を眼下に、レイは千切れた浴衣の袖を見て、息を吐いた。
 真新しい物ではあったのだが、仕方がない。むしろ邪魔にすらなると、諸肌を脱いで冷えた風に身を晒す。
 内から焼けた痛みの熱を汗が攫っていく。風車は戦闘の余波にも耐えて、からからと音を鳴らしている。斜陽は紅く、影は暗く、街を包んでいる。
 蛇か。つくづく縁がある。そう僅かに口元を緩めた。
「そうだな」
 周りを見渡す。見えるのは全て編み笠のみ。民家から少し離れたここなら遠慮も要らない。
「纏めて、来てもらえるか?」
 挑発。燃え滾るが如く獰猛に笑んだ目に、紫電が瞬く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水鏡・多摘
蛇ではなく龍ではあるが…不穏な気配に言葉、見過ごす訳にはいかぬ。
幸せを願う祭りを邪悪に穢そうとする愚か者共には罰を。
礎になどさせぬぞ。

UC起動し空へと飛翔、打倒すべき敵を把握し神罰の雷を降らせ攻撃。
特に一般人を襲おうとしている相手を優先して潰す。
可能なら一般人の周囲に護符で結界を作り出して巻き添えにせぬように細心の注意を払う。
直接錫杖の一撃を叩き込もうとしてくるのには飛翔速度を上げ回避、その直後に切替し纏う装束より呪詛の力を込めた護符を数枚、もしくは祟り縄を放ち拘束、そのまま墜落させる。
此方はどうにかできそうじゃが…蛇神とやらは他の猟兵がどうにかしてくれる、そう信じよう。

※アドリブ絡み等お任せ



 ヒュ、カッ。走る錫杖は、それが女子供であろうと容赦なく、いや、むしろ殺しやすいとばかりに打ち振るわれる。
「……っ!!」母が子をかばい、自らの体を盾にする。己が死ねば次は我が子、だとしても、その身を捧げる事を止められない。大地ごと彼らの命を砕かんと。
 だが、錫杖が大地を割ることも、血に染まることもなかった。 
「それを、見過ごす訳にはいかぬ」と小さな声が風に乗る、次の瞬間。
 音もなく、その錫杖は何もない空中で留まっていた――いや、錫杖のほんの数寸の距離、母子を護る様に護符がそこに浮かんでいる。
「ッ、な……!?」
 目にはそこに何もないとしか映らない。いや実際に、何もないのだろう。錫杖を留めたのは物理的な障壁ではなく、護符に込め、世界へと命じた『穢させるな』という意思。世界そのものが物理法則よりも、編笠衆が振り下ろした錫杖よりも、その意思を優先させたのだ。
「幸せを願う祭りを邪悪に穢そうとする、か」
「……っ!」
 編笠衆が、気配に気づき振り返る。一瞬、神々しい蛇の化生と見紛いそうなその出で立ちは、しかし、明確に蛇とは違う姿だった。
 水鏡・多摘(今は何もなく・f28349)は竜神である。その瞳は、荒む色で編笠衆を呆れるように睨んでいた。
「愚か者共め」
「邪魔をするなッ!! 殺せェッ!」
「応!!」
 ダダン、と四方から息を合わせた編笠衆が、一気に襲い掛かる!
「貴様も、礎となれ!!」
 今度こそ、その錫杖は振り下ろされた。護符はそこにはなく、他にそれを阻むものはない。
「……、どこに――」
 そう、狙った多摘の体すら、その錫杖の軌道を妨げない。もちろん、錫杖が彼の体を容易く引き裂いたという事もなく。
 声は空から降る。
「罰を下そう」
 見上げれば、そこには宙を泳ぐ龍があった。朱空にあり、しかし水底に浮かぶ泡を思わせるその龍は、変化こそすれど多摘という存在を保ちながらも、そう告げた。
「……ッ、避け」
 編笠衆が発した号令にそれぞれが動くよりも早く、天が応えた。
 紅を裂いた稲妻、六枚の護符を起点に描かれた雷輪が多摘を中心に揺れる。直後、風が巻かれる熱量を孕む雷撃が多摘を狙った編笠衆へと振りそそいだ!
「ッ、ぐあ、……この」
 一撃でオブリビオンを葬り去るような威力ではない、だが、だとしても。それが絶え間なく、その雲から放たれるとすれば、無視しうるものではなく。
「……っ!!」
 故に、選択肢は、空へと届かぬ筈の手を伸ばすまで。編笠衆は仲間を雷撃の盾としたその一瞬で屋根へと跳び上がり、更にそこから多摘のいる空へと。
「届かせはせんの」
「こ、の――」
 その大跳躍は、確かに多摘に錫杖を届かせるに足る高さではあった。彼が更に高度を高めなければ。
 跳躍の頂点から落下に入る浮遊の瞬間に、全力をぶつけるはずだったがゆえに、僅かに高度を上げた多摘には、その杖は届かない。
 宙返り、海獣が遊むように体を舞わせた多摘は、竜神の力を滾らせた祟り縄をその無防備に落下せんとする編笠衆へと、叩きつけた。
「此方はどうにかできそうじゃが」
 落星のごとく吹き飛ばされた編笠衆が、集落の外の平原に衝突する音を遠くに聞きながら、彼らの言っていた蛇神とやらに意識を遣った。
「ま、他の猟兵がどうにかしてくれるじゃろうて」
 多摘は、いまだ住民たちを脅かす不届き者たちへとその雷撃を放っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『白蛇憑かれ』

POW   :    白霊咬
【白蛇の霊体】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    白霊群波
【無数の白蛇の霊体】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    白霊情欲牙
レベル分の1秒で【牙に欲情の毒を宿す白蛇の霊体】を発射できる。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は燈夜・偽葉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ああ――私を欲して」
 白い蛇に憑かれた女は、太陽に愛を囁くように風に声を乗せた。
「私に、もっと……もっと寵愛を」
 町に言う。
 人に言う。
 そして、蠢く邪悪にすら言う。
「ありがとう、産んでくれて。ありがとう、育ててくれて」
 全部飲み込んでみせると。
「全部、全部――私に捧げて」
 紅の光に染まらぬ白が、燃えるような草原に歪に浮かんでいた。
シキ・ジルモント
小さな蛇を追った先で見つけた人影に、何をしていると問いかけて出方を窺う
祭りの起源の蛇神を連想させる姿だが、これが怪しげな気配の正体だろうか

相手が行動を起こしたら即座に反撃
どんな理由があろうと、オブリビオンの求めるまま与えるわけにはいかない

しかし、あの白蛇の霊体は厄介だな
霊体の群れを確認し、ユーベルコードの効果と目視で比較的数の少ない場所を見極めて退避
回避しきれないダメージは割り切り、蛇を振り払いつつ銃で本体へ攻撃を試みる
…浴衣は軽くて動きを阻害しにくいが、防御力は期待できないな

こちらのダメージが蓄積する前に、
それからオブリビオンの脅威が迫っていると住人が気付いてしまう前に、片をつけたいところだ



 夕暮れに抗うように、ともすれば、そこから夕陽の色が抜け落ちた合成写真のように、白い女が蛇を纏っている。
「何をしている」
 小さな蛇を見失ったシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、代わりに見つけたその人影へと、短く声を放つ。
 眩い夕陽が、冷えた風に揺れている。
 白い女が口を開いた。獲物を狙うように。唇が割れて見えた瑞々しい赤の口内は、艶かしく澄んだ声色を奏でた。
「風を感じているの」
 拒むように、風が彼女の体を揺らす。それでも彼女は、一歩とも動きはしない。
 祭りの起源。
 蛇神。
 懐に腕を差し込み、寛いでいるようにして銃を握るシキは、それを連想した。
 ルーダスの告げていた気配。それが目の前のこれなのだろう。
「あなたは、何をしているの?」
 ざわり、と風が蠢いた。
 まるで、これから起こる何かを予見したように、騒ぐ。
「教えて、くださる?」
「――ッ!」
 躊躇いなくシキは、銃を引き抜き、草原の土の上に身を投げた。ゾブ、ッ! と湿った土が抉り取られる。
 シキの体に遅れて動きを追った浴衣の裾が、突如襲来した白に僅かに切り込みが入っていた。
「……、食らう。全部、飲み込んであげる」
 飛び込む最中、弾いた引き金に駆け抜けた弾丸が女の胸の中心を食い破っている。
 赤い肉が花咲いても血は溢れず、痛みすらその表情に出しはしない。
 全部飲み込む。と言ったか。
 村から生け贄を選ぶのではなく、そのまま、村人全てを贄とするつもりか。
 シキは、詰めた息を吐き、振りかえる。
 頭上から降った白。無数の蛇が束なった無数の牙持つ槍が、ほどけて受け身を取り立ち上がったシキへと、再び襲いかかる。
 半透明な蛇の連撃を、獣の感覚に身を委ねて回避する。
 幸い連携は疎ら。知能も経験も高くはない。フェイントを入れれば、面白いように食い付いては回避の隙を与えてくれる。
 とはいえ、数は暴力だ。避けきれない牙が浴衣を軽々と貫いてはシキの肌を破り、血を溢れさせる。
 紺の浴衣に黒い染みが広がる。
 動きやすいのはいいが、防御を考えるととても頼れるものではない。
 視界に蛇の群れ。聴覚が背後に食らいつく鱗と草の擦れる音を聞く。
「――」
 鋭敏化した感覚が本能に結び付いて、生存への最短距離を直感として導きだす。背後に跳び、距離を誤った蛇が体制を建て直すより早く、掻い潜り銃を、白い女へと向ける。
「悪いな」
 いや、悪い。とも思いはしない。
「お前の願いはここで阻む」
 銃声が響く。
 早く終わらせなければいけない。
 傷が増えるより先に。なにより、住民が危機を感じとるよりも早く――そう考える最中に、町から衝撃が響く。
 町で何かが起きた。そう直感しながらも、シキはその白い女から視線は外さない。
 ただ変わったことは一つ。
「理由が、増えたようだ」
 シキは銃口を鋭く、白い女へと向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

琥珀川・れに(サポート)
※人が多いなら流すも自由さ

「貴族たるもの余裕を忘れてはいけないな」
「やあ、なんて美しい人だ」

ダンピール貴族
いかにも王子様っぽければねつ造歓迎さ
紳士的ジョークやいたずらも好きかな

敵も味方も性別か見た目が女性ならとりあえず一言は口説きたいね
ナンパではなくあくまで紳士的にだよ?

実は男装女子で
隠しはしないが男風源氏名レニーで通している
その方がかっこいいからね

戦闘スタイルは
・剣で紳士らしくスマートに
・自らの血を操作した術技
が多い
クレバーで余裕を持った戦いができれば嬉しいよ
早めに引くのも厭わない

説得系は
キラキライケメンオーラやコミュ力で
相手を照れさせてみせよう



「やあ、麗しの蛇君……ああ、なんて美しいのか。雪が自らの熱に溶けて、一足早く春を告げるような美しい真白だ」
 人狼の男性とオブリビオン。その間へと割り込んだのは、この世界にはない西洋のお伽噺に登場する王子様のような人物だった。
「……どなた?」
「どうか僕の事はレニーと呼んでくれ」
 胸に手を当てて礼を示す王子様然とした彼女、琥珀川・れに(男装の麗少女 レニー・f00693)にオブリビオンは、不思議そうに唇を横に割った。
「ありがとうレニー、なら……私に全て捧げてくれる?」
 綻ぶように笑うオブリビオンに、れには、しかし首を横に振る。
「魅力的な誘いだが、すまない。僕は、誰かに助けられながら誰かを助ける。そうして生きていきたいんだ」
「それなら、あなたに死をあげると言ったら?」
 語る言葉は美しい。
 瞬く姿は美しい。
 だが、それと同時におぞましいとも思う。
 言葉には出さないが、れには、確かにそう感じていた。
 それは、その怪物の放つ言葉の一つ一つに、人間の欲望を掻き立てるような音の歪みがあるからか、それとも、その白さが見せる強欲の深さからか。
「――それなら、僕からも死を贈ろう」
 言葉を言い終わるや否や、れにの姿がかき消える。
 一瞬遅れ、キュ、――ァ! と鋭い疾駆の衝撃が音となって周囲に散らす、そのれによりも、早く。
 蛇の霊体その群れが一斉に彼へと殺到する!!
「――ッ」
 一歩、その判断を誤れば幾千もの牙に引き裂かれるだろう刹那、れには前へと踏み込んだ。
 れにへと牙を走らせる白蛇。その牙が彼女の肌を貫く、その寸前。

 ――うっすらと浮かんだ腕の傷から、血の一筋が宙を舞う。

 蛇の首が飛んだ。
 一体ではない。彼女へと襲いかかった蛇全てがその首を切り裂かれていたのだ。
 ゾパ、と禍々しい小さな音を立てて、百程の蛇が首を失い、地面に横たわる。
 宙を舞った血液が集まり、消え失せていた左腕へと変わる。
 血は傷から流れたのではない。腕そのものが血液の糸刃へと変わっていたのだ。
 傷など初めからなかった。
「すまないが」
 彼女の足を阻む物は何もなく、死に絶えた白が導く道をれには駆け抜け。
「僕達は君を止めるよ」
 一閃。
 魔法剣の煌めきが、白の肌を灼いて裂いた。
「ッぁ――ッ」
 怒り。
 受けた傷に発露させた感情が、彼女をまだ倒れ伏しはさせない。
 だがれにはそれ以上オブリビオンを追うことはなかった。
 万全に。
「任せたよ」
 彼は、居合わせた仲間へと信を置く。

成功 🔵​🔵​🔴​

インディゴ・クロワッサン
うーん…持ってくる武器間違えたかも…
ま、大事な浴衣は【オーラ防御】で守りつつお仕事しますかー!
【SPD】
「とは言え」
無数の霊体は、嘆きの金糸雀で呼び出した拷問具とUC:飛翔する黒の刃 で打ち消したり【見切り/残像/第六感】で回避しながら、時々UC製の短剣を掴んで【フェイント】を織り混ぜながら【投擲】してみるけど
「これじゃあ決め手に欠けるよねー」
僕、今は浴衣なんだよねー…その上【暗殺】はあんまり得意とは言えないんだけど…
「仕方ないよね」
拷問具とUCを囮と目隠しにして【目立たない/闇に紛れる/忍び足】で回り込んだら【怪力/鎧砕き/串刺し/鎧無視攻撃】も乗せてUC製の短剣で【だまし討ち】だー!



 新たに現れた人影に、蛇は即座に攻撃を行う。数多の白蛇が波となる。
「――ッ」
「任せた、って言われてもね」
 彼は、扇子を懐へと仕舞い込みながら、放たれた蛇を見据えた。
「持ってくる武器間違えたかも……、でも、まあ」
 殺到した蛇の群れが、彼の姿を覆い隠す。その直後に、骨のかけらすら残らず食い尽くされている光景を予見できる程の怒りと飢えに満ちた喰らいつき。
 だが。その寸前。
 ベルの音が響く。
 その瞬間、虚空から現れた黒鉄の茨が蛇の体を絡め取り、――その頭部へと断首刃が降った。
 ブ、グチュ! と鈍い刃が首を潰し断つ音と共に、蛇の霊体の姿がかき消える。
「やりようは幾らでもある、かな?」
 黒茨が散り、その只中に一人生き残る彼の青い髪。インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は、その苦痛に歪んだようなベルを手の中で揺らして、蛇女へと目を向けた。
「ああ、そうだ。こういう事を言うのは良くないとは思うんだけどね」
「……なにかしら?」
 その先を言ってみろと、更に幾百にも見える蛇の霊体をその体の周囲に従える白い女が唇を開いた。
 ベルを持つ手とは逆の手に、十字を描くような黒い直剣が現れる。
「この浴衣、気に入ってるからダメにしたくはないんだ」
「呑み込め」
 白蛇の群れが、さながら一体の大蛇となってその大顎を開き、インディゴへと迫りくる!
 圧倒的な暴力に、インディゴはただその手にあった直剣を投擲した。
 インディゴを飲み込んでも余りあるその巨大な顎に、短剣とも言える小さな剣がどれほどの意味をなすのか。
 その黒い刃は、あっけなく白の波に呑み込まれた。
 インディゴは、手を揺らす。
 ベルの音が響く。
 瞬間。
 ギュガガッ――! 大蛇の胴から黒い血潮が吹き上がった。
 構成する蛇を吹きちらしながら黒血が――、いや、蛇は霊体で血を流すことはない。血潮のように噴き上がったそれは、剣だ。
 インディゴが放った剣が、数にして七百四十振りもの。それら全てが幾何学模様を描くように、蛇を内側から抉り抜く。
 蛇が剣を喰らい砕き、剣が蛇を切り裂いて、嵐が吹き荒れる。驚異と驚異が互いの領分を喰らい合うような。
 だが、それでも。
「そんな児戯が私に届くと思っているのかしら」
 白い女を貫こうとした黒剣は、しかし足元から伸び上がった蛇がその頭を差し出すことによって、その狙いを外す。
 崩れ落ちる蛇に目もくれず、白と黒がせめぎ合うその光景の向こうに目をやり。

 ――インディゴの姿が、そこに無い事に気付いた。

「どこ――、……に」
 問への答えは、剣によって返された。
 胸の中心から生えた、黒い刃。白い女の背。青い髪の男性が貫いた剣の柄を更に押し込めば、放たれるはずだった言葉が、漏れて溢れる。
「決め手に欠けるのは知ってるよ、だから」
 ――こうして、全力の攻撃を囮にして、不意の一撃に賭けた。
 つぶやきと共に、インディゴは刃を胸に突き刺したままに捻るよう回し、乱雑に引き抜いた。骨も鱗も、その刃を止めるには、硬すぎ、そして軟すぎた。
 血の一滴も流れない。
「終わりだね」
 ただ、醜く割れた肉の断面を覗かせるそれに思うのは、血で浴衣が汚れなくて助かる、程度の事でしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 カラカラと風に車が回っている。
 山の向こうに日が落ちた。
 一匹の茶色の蛇が、鎌首を擡げて遠くに見える猟兵達を見据える。
 それは感謝をするように、あるはずのない瞼を閉じた。

最終結果:成功

完成日:2021年02月06日


挿絵イラスト