紫陽花悲哀(作者 柊透胡
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 その幽世は、永遠に続く真夏の黄昏。
 緑滴る田園風景に水音も涼やかな小川の辺に、鄙びた茅葺の茶屋が1軒。縁台の緋毛氈と赤い野点傘が目にも鮮やか。一幅の絵画のように長閑な光景だ。
「ごっそさん、お代はここに置いておくよ」
「はい、ありがとうございます」
 冷やし飴とおはぎを平らげたナマズの東洋妖怪は、小銭を置いて席を立つ。
 暖簾の向こうから顔を出したのは、清楚にして可憐な美少女。艶やかな黒髪を振り分け、流水文様の小袖も涼やかに。
「またお越し下さいませ」
 客の後ろ姿がなくなるまで見送って、縁台に残されたお代と、びいどろの茶器と菓子皿を片付ける。
「……嗚呼、そろそろ打ち水をしないと」
 永遠の黄昏にも頃合いがあるのか、小袖をたすき掛けすると、柄杓と水桶を手に小川に近付いた少女は――ハッと、切れ長の眼を見開く。
「お前様、は……」
 其れは、紫陽花柄の装束も凛々しい、若武者。だが、半ば透き通り今にも消え失せそう儚さでゆうらりと浮遊する。
 その存在は、少女もよく識っている。骸魂は、生前に縁のあった妖怪を呑み込み、オブリビオンと化す。そうして、幽世を滅ぼすのだ。
「嗚呼、嗚呼……」
 けれど、どうして、逃げる事など出来ようか。遥けき古に、只管に希ったのは大輪の花。全てが枯れ果てた世界で、命を削って水を与え続け――最期の最期に、見捨てた花の精から。
 2つの影が、1つに重なり――少女の視界は、虹色に充たされる。
 時よ止まれ、お前は美しい――。
 其れは、世界の終わりを告げる「滅びの言葉」。ひび割れ、崩れゆく田園風景の欠片が、雨の如く降り注ぐ中、1つの影は姿を変える。
 果てなく果てなく、広がり続ける紫陽花畑は、何れ真夏の黄昏を呑み込み外なる幽世をも蝕むだろう。
 虹色の花畑に遊ぶように、禍々しき死蝶の群れが一斉に舞い上がった。

「生きていれば、誰だって1つや2つ、胸の奥に隠した痕は持っとるやろ。それが、長生きした妖怪さんやったら尚更やな」
 神妙な面持ちで、各務・瞳子(七彩の聴き手・f02599)は溜息1つ。
「今回は、カクリヨファンタズムの事件や。このままやと、幽世が紫陽花に呑まれる」
 住人も1人の小さな幽世だ。永遠に続く真夏の黄昏の中、緑滴る田園風景――水音も涼やかな小川の辺に、鄙びた茅葺の茶屋が1軒。
「『川姫』の女の子が切り盛りしとってな。冷やし飴やら水出し茶やら、手作りの和菓子やら、幽世を訪れた『お客』に振舞ってくれる。隠れた名店やね」
 本来『川姫』は、水辺に現われてはその美貌で若者を惑わし、精気を抜いてしまう恐ろしい妖怪だ。しかし、彼女にそんな魔性はなく、茶屋を営みながら打ち水を日課とする穏和な性情であったという。
「カクリヨファンタズムの妖怪になる前は、日照りに苦しむ村に住んどったって話や。水を大事にしたくて『川姫』になったんかもしれへんなぁ」
 そんな少女の、唯一の心残りが――紫陽花の花。
「紫陽花に雨乞いの願を掛けて、自分が飲む為の僅かな水も削って水やりを続けて来た少女は、紫陽花の精と情を交わした。けれど……日照り続きで起きた山火事から、紫陽花を守る事が出来んでな。結局、彼女は紫陽花の株を見捨てて逃げるしかなかったんや」
 その山火事を消したのが、何ヶ月も希い続けた雨であったのは、皮肉としか言いようがない。
「それから、長い長い時が過ぎて……『川姫』となった少女と、『骸魂』となった紫陽花の精が出逢ってしもた。幽世を埋め尽くして、外の世界まで浸食しようとする『紫陽花』を倒すには……2人を引き裂かんとあかん」
 それはきっと世界の為でも、『彼女』の為でも、望まずに骸魂となった『彼』の為でもあると信じて。
「まず、崩壊中の幽世を乗り越えて、紫陽花畑の中心に行くんや」
 ひび割れた田園風景の欠片が雨の如く降り注ぐ中、淡く光る翅が美しい蝶の大群が、周囲一帯を乱れ飛んでいる。
「見た感じは幽玄の情、ってヤツやけど……この蝶の鱗粉は、触れたり吸い続けたりすると、死の眠りに落ちる危険な毒なんや。上手い事、蝶を避けて進んでな」
 紫陽花畑の中心には、大輪を幾つも咲かせた大きな株がある。
「オブリビオンの攻撃自体は……少女の分身が現れるくらいや。けど、物理的に紫陽花全てを刈り取るのはもう不可能やし、『願い』が続く限り、崩壊の雨が止む事は無い。妖怪と骸魂が分かれて初めて、斃す事が出来るさかいな。彼女の心残りを、何とかしてあげて欲しいんよ」
 今度こそ、彼女が、長らく胸の奥に沈めて来た後悔を昇華出来るように。


柊透胡
 こんにちは、柊透胡です。
 今回はカクリヨファンタズムにて、紫陽花畑に呑まれつつある幽世を救って下さい。戦闘系より心情寄りになるかと思います。

 『永遠に続く真夏の黄昏』の中、緑滴る田園風景――水音も涼やかな小川の辺に、鄙びた茅葺の茶屋が1軒。そんな小さな幽世です。
 唯一の住人である『川姫』は、茶屋を営み打ち水を日課とする静かな刻を過ごして来ました。
 『川姫』となった少女と縁あって、骸魂となった紫陽花の精が1つとなった事で、崩壊の雨降りしきる紫陽花畑が広がり続けています。

 第1章は冒険『死蝶の回廊』。淡く光る美しい蝶の大群が、紫陽花畑を乱れ飛んでいます。この蝶の鱗粉は死の眠りを齎す危険な毒であるので、上手く回避して紫陽花畑の中心に向かって下さい。
 第2章はボス戦『紫陽花』。紫陽花畑の中心にある1番大きな花株が、妖怪と骸魂が1つとなった姿です。攻撃手段はほとんど持っていませんが、物理的に紫陽花全てを刈り取るのは不可能。『願い』が続く限り、幽世崩壊の雨が止む事はありません。妖怪と骸魂が分かれて初めて、オブリビオンを斃せるようになりますので、『彼女』の心残りを何とかしてあげて下さい。
 第3章は日常『打ち水の夕べ』。骸魂を倒せば、幽世は元に戻ります。喩え後悔が昇華したとして、彼女もすぐに立ち直るのは難しいでしょう。
 茶屋で休憩したり、打ち水したりしながら、彼女を慰めてあげたり、故人を想ってあげたりして下さい。

 それでは、皆さんの熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『死蝶の回廊』

POW息を止め、鱗粉を吸わないように駆け抜ける
SPD蝶のいない高所や脇道を探し、そちらを通る
WIZ蝶の嫌う匂いや色等を身に付け、蝶を避ける
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ちらちらきらりと、雨が降る。
 それは、幽世の欠片――紫陽花の『願い』が続く限り、崩壊の雨も降り続ける。
 ひらひらはらりと、蝶が舞う。
 それは、死への誘い――淡く輝く鱗粉は、永久の眠りへ堕とす毒。

 ちらちらきらり、ひらひらはらり――雨降りしきる中、死の蝶の軌跡を躱し、猟兵達は一心に目指す。
 虹色に咲き乱れる紫陽花畑の中心を。妖怪と骸魂を――川姫と花の精を分かつ為に。
春乃・結希
長い長い時間が経っても、忘れていなかったくらい大事な人…
そんなに想ってた人とひとつになれる事は
やっぱり嬉しいのかな?
私も、誰よりも愛してる『with』とひとつになれるなら
世界がどうなろうと、拒むことが出来ないかもしれない
…お話、聞いてみたいな

この世界に来たの初めてなんやけど、すごく素敵な所ですね
雨に濡れる紫陽花も、ひらひら舞うあなた達も、すごく綺麗
…でも、今日はあなた達やなくて
この花を育てて、愛した人に会いに来たんだ
邪魔するなら、灰にしてあげる

UC発動
周囲を焔で満たしながら、のんびり歩いていく【焼却】
雨は嫌いじゃない
雨の音は、聞いてると落ち着く
それに…雨上がりには虹が、見られるかもしれないから


 真夏の黄昏を染める橙――幽世の彩りはまだ変わっていないというのに、ちらちらきらりと降りしきる、雨。
「天気雨、なんかな?」
 雨は嫌いじゃない。雨の音を聞いていると、何だか落ち着く。
(「それに……雨上がりには虹が、見られるかもしれないから」)
 けれど、手で受け止めれば判る。これは、雨粒ではなく、欠片。ひび割れ剥がれ、砕け散り、紫陽花を潤し続ける、幽世そのもの。
 それでも、すごく素敵な処だと、初めてカクリヨファンタズムを訪れた春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は思う。
 見回せば、一面そぼ濡れる紫陽花畑。喩え、死蝶舞うカタストロフの光景であっても、結希の瞳にはとても美しく映る。
「……でも、今日は『あなた達』やなくて、この花を育てて、愛した人に会いに来たんだ」
 そう、絶望なんて、全部全部、消えてしまえばいい――広がる緋色の翼。毒の鱗粉を撒き散らす蝶を、次々と焔で灼きながら、結希はゆっくりと花畑を往く。
「邪魔するなら、灰にしてあげる」
 今は『彼女』に会って、話を聞いてみたい。
(「長い長い時間が経っても、忘れていなかったくらい大事な人……そんなに想ってた人とひとつになれる事は、やっぱり嬉しいのかな?」)
 ふと、漆黒の大剣を、大切に大切に抱き締める結希。
(「私も……誰よりも愛してる『with』とひとつになれるなら」)
 世界がどうなろうと、拒む事が出来ないかもしれない――。
成功 🔵🔵🔴

花澤・まゆ
…切なくて、悲しいおはなし
別れさせなくちゃいけないのは、やっぱり辛いよね
それでも、この崩壊の雨を止ませないと

【花符】で自分の周りに【結界術】で守りの結界を張るよ
【破魔】と【浄化】の【祈り】を込めて
これで少しは息が楽になればいいのだけど
あとは【毒耐性】や【環境耐性】でなんとかしのぎます

最後は息を止めて、一気に駆け抜ける!
道をこじ開けるかのように

この先が別れに繋がっているかと思うとやっぱり切ない
守れなかった人と再会できるなら
たとえ世界が滅んでも、と願う気持ちもわかるから

アドリブ、絡み歓迎です


 何時とも何処とも知れぬ、昔話――雨乞いの願を掛けて紫陽花を慈しんだ少女と、その想いに応えようとして業火に果てた花の精の、別離の顛末。
(「……切なくて、悲しいおはなし」)
 いつもは勝気を覗かせる面に憂いを浮かべ、花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)は小さく溜息を吐く。
(「別れさせなくちゃいけないのは、やっぱり辛いよね」)
 それでも、降り続ける崩壊の雨は止めなければ。
(「兎に角、行かないと」)
 花符を取り出し、まゆは急ぎ守りの結界を張る。遮断の内に、破魔と浄化の祈りを込めて。
(「これで少しは、息するのも楽になればいいのだけど」)
 目を凝らせば、蝶が舞い飛ぶ一群に靄が煌めく。毒鱗粉の只中を突っ切るのは……1歩を踏み出す思い切りが必要だ。
「……」
 やるせなさが、込み上げる。
 守れなかった人と再会出来るなら、喩え世界が滅んでも、と――願う気持ちは、まゆも判るから。
 だが、このままでは、この幽世は確実に滅ぶ。救える命は救いたい――猟兵としての意気が、まゆに決意を促す。
「……すぅ」
 深呼吸。息を止め、一気に駆け抜ける。まるで道をこじ開けるかのように――この往く先が、『別れ』に繋がっていようとも。
成功 🔵🔵🔴

リスティア・サフィス
……大切なものを一度奪われ、再度目の前に。
手にしたいという気持ち……わからなくはないです。
でも……彼女が出会ったのはもう同じではない。きっと、本人もわかっているはずです。
だから……代わりに、言葉にしましょう。

素敵な風景…お二人の世界はとても綺麗だったのでしょう。でも足を止めるわけにはいきません。
出来るだけ蝶のいない道を探します。
向かってきた分は離れた場所で足止めしましょう。
蒼玉華刃……相手の動きを止めて近付かないように。
手を祈りの形に組み、歌うのは鎮魂の歌。
「…この声を力に変えて、咲く華が私の想い……どうか安らかに」


「素敵な風景……お二人の世界はとても綺麗だったのでしょう」
 ほぉと零れる感嘆の吐息。リスティア・サフィス(クリスタリアンのシンフォニア・f14866)は植物が好きだし、綺麗なものも好きだ。故に、一面の紫陽花畑は好ましく映る。忌まわしき死の蝶が、其処彼処に舞っていたとしても。
(「……でも、足を止める訳にはいきませんから」)
 今回が初陣とも言えるリスティアは、出来るだけ蝶のいないルートを探す。
 シンファオニアである彼女の武器はその美しい歌声であるが、毒鱗粉の只中での発声は流石にリスクが高い。
 それでも、近寄る蝶の気配には、先手を打って蒼玉華刃を唄う。
(「……この声を力に変えて、咲く華が私の想い……どうか安らかに」)
 歌声の波動が蒼玉の結晶と花咲くや、儚き羽を貫く。ヒラと舞う蝶は標的と定めるには軽く、ユーベルコードの威力も強いとは言い難い。それでも、蝶が警戒する間に、リスティアは小走りに駆け抜けていく。
(「……大切なものを1度奪われ、再度目の前に。手にしたいという気持ち……わからなくはないです」)
 思いやるのは、骸魂に呑まれた川姫の事。滅びの言葉を口にしてしまった時、果たして彼女は充たされたのだろうか。
(「でも……彼女が出会ったのはもう同じではない。きっと、本人もわかっているはずです」)
 だから、代わりに、言葉にしよう。シンフォニアの歌声は、魔法の根源を直接制御する。言霊もきっと届く筈。今のリスティアは、祝祭の時だけ歌う籠の鳥ではないのだから。
成功 🔵🔵🔴

月舘・夜彦
【華禱】
生きている限り、様々な事があります
嬉しい事であれ、悲しい事であれ
蓄積されていく中で消えるものもあれば残るものもある
後者は意思に関係なく、深く、深く残るもの
……そして、私にも

それが悲しみだったとして、それを抱えて生きていくとしても
誰もが前を向いて歩いていける訳でもない
ですが……誰かの命を奪うような、同じ思いをさせてはならないのです
必ずや此処で止めなくては

蝶は距離を離せるのならばダッシュで移動
離せないのならば数の少ない方へ移動して二刀流剣舞『襲嵐』
狙いを定めた一体を起点に周囲を巻き込むようにして攻撃

鱗粉は衝撃波を使って払う、または毒耐性にて耐えて戦闘を継続


篝・倫太郎
【華禱】
もしも、後悔を償う事が出来るとしたら
その時、隣に立つこの人は……どうするだろう

過去は過去、変えられないもの
変えられないから過去
変えられないからこそ抱く後悔

人は生きてる限り
色々なものを見て経験して……
思考も変わってく

その時は後悔しなくても
やがて後悔に変わる事だってある
俺にだって、あるし
多分、夜彦の方が多くあるだろう

それでも世界は生者のものだから
今はこの世に居ないものが世界を好き勝手して良いはずもない
後悔は生者だからこそのもの
だから、ちゃんと別たないとな

蝶対策
視力を用いて距離が十分ある時点で迂回
忍び足で移動

迂回が間に合わない場合は篝火を使用
篝の焔で蝶を焼き払う
念の為毒耐性と生命力吸収も使用


 生きている限り、様々があろう。
 嬉しい事であれ、悲しい事であれ――蓄積の内に消えるものもあれば、意志に拘わらず残るものもある。
 人は其れを、思い出と呼ぶ。
 過去は過去、けして変えられぬもの――変えられないから過去であり、変えられないからこそ抱く後悔がある。
(「その時は後悔しなくても、やがて後悔に変わる事だってある……俺にだって、あるし。多分、ヤドリガミの夜彦の方が多くあるだろう」)
 ちらと篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が窺った、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の横顔は、物思いに沈んでいるように見えた。
(「もしも、後悔を償う事が出来るとしたら。その時、隣に立つこの人は……どうするだろう」)
 気に懸れども、今は幽世の崩壊を止めなければならない。だが、2人が何より止めたいのは、『彼女』だろう。
「悲しみが深く深く残って、それを抱えて生きていくとしても……誰もが、前を向いて歩いていける訳でもないでしょう」
 想いの丈が零れ出た、そんな風情の夜彦に、倫太郎は小さく肩を竦めて見せる。
「まあな……それでも、世界は生者のものだ」
 既にこの世にいない、骸の海から還ったものが、世界を好き勝手して良い筈もない。
「後悔は生者だからこそ抱ける。だから……ちゃんと別たないとな」
「ええ。誰かの命を奪うような、同じ思いをさせてはならないのです」
 毒の鱗粉を警戒して、死蝶の対策は基本、迂回策。間合いを詰められそうになって、初めてユーベルコードを放つ。
 振るう刃は、嵐の如く――夜彦の二刀から迸る飛斬が1羽に命中するや、嵐の如き鎌鼬が数多を刻む。
 祓い、喰らい、砕く、カミの力は、篝の焔、西賀の水、そして斎雁の風。倫太郎は篝の焔で、飛来する蝶を焼き払う。
 2人共、毒には幾らか耐性がある。最悪、息を止めて駆け抜ければ、紫陽花畑の中枢に至れそうだ。
 刃と盾は肩を並べ、降りしきる雨の――幽世の欠片が剥がれ落ちる中を往く。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴


第2章 ボス戦 『紫陽花』

POW ●愛情
【命あるものに等しく降り注ぐ恵みの雨】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
SPD ●清澄
全身を【雨を乞う願いを叶える為だけの純粋な存在】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ ●憧憬
【雨の降らない国で、水を与え花を育てた少女】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は春乃・結希です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 雨の降らない世界で、雨に焦がれて紫陽花に水を与え続けた少女と――その願いに応えようとした花の精。
 今は1つとなって、其処に在る。
 紫陽花畑の中心にある1番大きな花株の前で、やつれた風情の村娘が、大きく腕を広げて通せんぼする。
 邪魔をしないで! 放っておいて! 『私達』はやっと巡り合えたの!

 時よ止まれ、今はまだ――。
春乃・結希
邪魔なんてしないから、私とお話してくれませんか
…剣を持ってて何言ってるんだって思いますよね
絶対に使わないって約束するから、傍にいさせてください
あなたが紫陽花を愛したように、
この剣を私は、愛しているから

…ひとつになれたの、幸せですか?
私も、『with』と一緒にいられるなら、世界がどうなってもいいと思います
…だけど、世界がなくなると、思い出が集められなくなる
ずっと雨の思い出より、澄んだ青空、燃えるような夕陽、いろんな空の下の思い出を集めた方が楽しくないですか?

あなたが覚えてる限り、紫陽花も心の中に生き続けると思うから
人間の私より、ずっと長く生きて、一緒に居られるんですよね
すごく、羨ましいな


「邪魔なんてしないから……私と、お話してくれませんか」
 雨降りしきる中、通せんぼの少女に、春乃・結希は静かに声を掛ける。
「……あ、剣を持ってて何言ってるんだって、思いますよね」
 少女の視線は、結希が大事に抱える漆黒の大剣に注がれる。その警戒緩めぬ面持ちに、困った表情を浮かべる結希。
「でも、絶対に使わないって約束するから、傍にいさせてください」
 あなたが紫陽花を愛したように、私はこの剣を、愛しているから――分身の少女の向こうの、紫陽花の株にまで聞こえるように。
「あの……ひとつになれたの、幸せですか?」
 その幸福を、結希はけして否定しない。彼女自身、大剣と――『with』と一緒にいられるなら世界はどうなってもいいと、思ってさえいるのだから。
「だけど……世界がなくなると、思い出が集められなくなる」
 雨降りしきる光景は、きっと『彼女』が望んだ世界。けれど、澄んだ青空、燃えるような夕陽……色々な『空』の思い出を集める方が楽しくないかと、結希は問う。
「あなたが覚えてる限り、紫陽花も心の中に生き続けると思います。だから……人間の私より、ずっと長く生きて、一緒に居られるんですよね」
 すごく、羨ましいと。その言葉は、結希の心底からの本音だろう。
「……」
 分身の少女は何も言わない。けれど、拒絶の言葉は、発しなかった。
大成功 🔵🔵🔵

花澤・まゆ
…気持ちは、わかるんだ
あたしの胸も張り裂けそうなくらい、わかる
大事な存在を失って、でも奇跡的に巡り会えて
世界が滅んでも構わないと思って

でも、でもね
ありきたりな言葉だけど
その紫陽花は貴女が本当に守りたかったものとはもう違う
守りたかったものは守れなかったもの
その事実は重いけれど、受け止めなくちゃ

貴女は生きている
花の精は…死んでるんだよ
それは骸魂だ

現実は残酷だよね
わかってる
でも、貴女はそれを理解しなくちゃいけない
貴女が罪もなき大勢の人を危機に晒していることも

花の精
もし、心あるならば貴方が身を引いて

攻撃は納得してもらえたら、UCを使用して一撃を

アドリブ、絡み歓迎です


「あたしも……気持ちは、わかるんだ」
 胸を押えるように両手を組み、花澤・まゆは沈痛な表情で吐息を零す。
(「あたしの胸も張り裂けそうなくらい、わかる」)
 大事な存在を失って、でも奇跡的に巡り会えて……世界が滅んでも構わないと思ってしまって。
「でも、でもね」
 そっと1歩、躊躇いがちに2歩、踏み込んで。分身の少女越しに、花株へ訴え掛けるまゆ。
「ありきたりな言葉だけど……その紫陽花は、貴女が本当に守りたかったものとはもう違う」
 守りたかったものは守れなかったもの――その重い事実は、受け止めて欲しい。
「『貴女』は生きている。でも、『それ』は骸魂だ」
 花の精が既に亡きものだと、まゆははっきりと残酷を突き付ける。
「貴女は、理解しなくちゃいけないんだ。貴女自身が、罪もなき大勢を危機に晒している現実を」
 もし、骸魂に……花の精に、心が残っているならば。
「『貴方』が、身を引いて」
 果たして、骸魂に心は在るのか――祈るようにまゆが見詰める花株から、やはり言葉は聞こえない。それでも、確かに。身を震わせるように、しどとに濡れる緑が揺れた。
大成功 🔵🔵🔵

月舘・夜彦
【華禱】
逢いたいと願うからこそ
例え目の前に居る者が偽りであったとしても、真だと信じていたい
その願いは私にも似ていて、主にも似ていて
他人事とは如何にも思えない

貴女も本当は判っているはずです
「それ」が本物であるか否か
強く記憶に残っているからこそ違和感や齟齬が生じ、貴女を苦しめる

……口先だけではありません
時は止められず花の如く散る命を、どれだけ惜しいと思ったか
愛しい者に一度でも言葉を交わせられたのなら、どれだけ心は変わろうか

叶わぬ想いの末、私が生きているのは
その人達が生きてきた世界を、守りたいと思ったから
貴女にはこの世界で守りたいものはもう無いのですか

刃を抜くは霞瑞刀
抜刀術『断ち風』にて、病みを祓う


篝・倫太郎
【華禱】
この二人の有り様は
なんだか夜彦と主、もしくは主とその想い人のそれにも似てて
少しだけ、切なくて哀しい……

そんな事を想うけど、終わらせないとな

後悔した過去の事象は変わらない
それは『今』一緒に居られたって
何一つ変わらない、過去に起きた事実だ

長く悔やんで、悔やんで
自分を許せなくて、責めて……

でも、だからって、やり直せない
こんなやり方でやり直せるものなら
永く後悔なんてしてないだろ

俺の不在が故郷の、一族の、滅びを呼んだように
あんた達は世界に滅びを呼び込んで
それで、全く後悔しないと言えるのか?
違う形の後悔を呼ぶだけだ、こんなのは……

夜彦の攻撃にタイミングを合わせ
篝火で攻撃力強化した一撃に破魔を乗せて


 逢いたいと願うからこそ、喩え目の前に居る者が偽りであったとしても、真だと信じていたい。
「他人事とは……如何にも思えない」
(「だろうな……」)
 月舘・夜彦の呟きに、篝・倫太郎は気遣わしげに眉根を寄せる。
 川姫と紫陽花の精、或いは妖怪と骸魂の有様は、夜彦と主、もしくは主とその想い人にも、何処か似通っていて。
(「少しだけ、切なくて哀しい……けど、終わらせないとな」)
「後悔した過去の事象は、変わらない。『今』は一緒に居られたって、それは何1つ変わらない、過去に起きた事実だ」
 長い間、悔やんで悔やんで、自分を許せなくて、責め続けて……それでも、やり直せないのが、『過去』なのだ。
「こんなやり方でやり直せるものなら、永の後悔なんてないだろ」
「貴女も本当は判っているはずです」
 倫太郎に続き、夜彦も畳掛ける。
「『それ』が本物であるか否か、強く記憶に残っているからこそ、違和感や齟齬が貴女を苦しめる……違いますか?」
 夜彦は思い知っている。時は止められず花の如く散る命が、どれだけ惜しいか。愛しい者と再び言葉を交わせられたのなら、その一度で、どれだけ心が救われようか。
「……口先だけではありませんよ」
 かつて、再会の約束たる竜胆の簪と共に恋人を待ち続けた老婆の死に際に顕れたのは、贈り主と同じ姿のヤドリガミ。彼女の再会の願いは叶えられたと言えるのか、夜彦は未だに判らない。
「叶わぬ想いの末、私が生きているのは……その人達が生きてきた世界を、守りたいと思ったから。貴女には、この世界で守りたいものはもう無いのですか」
「俺の不在が故郷の、一族の、滅びを呼んだように……あんた達は世界に滅びを呼び込んで、それで、全く後悔しないと言えるのか?」
 壊れ逝く幽世は、永遠に続く真夏の黄昏。緑滴る小川の辺に、鄙びた茅葺の茶屋が1軒。住まうのは独りであろうと、その崩壊は訪う妖怪達が暮らす外なる世界をも侵蝕しよう。
「違う形の後悔を呼ぶだけだ、こんなのは……!」
 胸の内に凝る痛みを敢えて開示して、倫太郎は切なる思いを言の葉に乗せる。
 『彼女』にとって、未だ愛しきは喪われた花のみか――否。嗚呼、虹色の彩りが、はらりはらりと、涙の如く散っていく。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

リスティア・サフィス
アドリブ連携歓迎

……引きはがす、のは……悲しいですね。
でも、このままだと……どちらも不幸になってしまう。
断ち切らなければ…。
別れは悲しいですが……川姫さんは紫陽花さんが貴女と同じような存在として生まれて来る事を願い続けることも出来るのではないでしょうか。
勿論私も…祈ります。お二人の為に。
「……このままでは、全てを巻き込んで……世界を不幸にしてしまいます……そのような事は、望まないですよね……?」

首飾りの瑠璃石の花を軽く握って、祈ります。
祈力白輝……葬送の想いを祈りに込めて。


 続く世界の中で新たな思い出を作って欲しいと、今共に在るのは守れなかったものだと。
 後悔について問い、この世界で守りたいものはもう無いのかと。
 紫陽花の花株へ、猟兵達は武器を構える代わりに、言葉を掛け続ける。
「……引きはがす、のは……悲しいですね」
 そうして、リスティア・サフィスも又、おずおずと口を開く。
「でも、このままだと……どちらも不幸になってしまう」
 川姫と花の精――妖怪と骸魂の合一を断ち切らなければ、この幽世は崩壊してしまうのだ。
「紫陽花さんが、川姫さんと同じような存在として生まれて来る時を……貴女は、願い続ける事も出来るのではないでしょうか」
 幽世に辿り着けず死んだ妖怪の霊魂、それが「骸魂」だ。「鎮魂の儀」を成せば、骸魂は花や樹の糧となって浄化されるという。
 だが、サクラミラージュのように「転生」の概念が通念となっている世界もあるのだ。
 2度目の別れは、きっと悲しい。それでも、リスティアは未来を信じたいと思う。
「……このままでは、全てを巻き込んで……世界を不幸にしてしまいます……そのような事は、望まないですよね……?」
 自分も2人の為に祈るから、と――翡翠の勾玉と瑠璃石の花の首飾りを握り、リスティアは瞑目する。
 ――祈りよ、届け。
 此処には、闇雲に2人を分かたんとする猟兵はいない。真心を尽くす彼らの言葉が静かに途切れて、暫時の静寂の後――ザワリと、緑が揺らぐ。
「川姫さん!」
 まるで、花株から吐き出されるように地に崩れ落ちた華奢な少女に、思わず駆け寄るリスティア。
 ――――。
 花株に重なるのは、哀しげな眼差しの若武者の幻。だが、抗う様子も無く、静かに頷くその影に、ユーベルコードが奔った。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 日常 『打ち水の夕べ』

POW豪快に水を打つ
SPDまんべんなく水を打つ
WIZ夕焼けを眺めながら涼む
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ありがとうございました」
 振り分け髪を揺らし、川姫は猟兵達に深々と頭を下げる。
 紫陽花の散華の後、程なく、崩壊の雨は止む。まるで、時間が巻き戻るように、幽世の欠片も元通りに収まって。何事も無かったように、真夏の斜陽が橙に染める。
「皆様のお陰で……この幽世は、救われました」
 感謝を述べる川姫の表情は、穏やかなものだ。穏やかに、過ぎた。
「粗茶で恐縮でございますが……宜しかったら、茶屋で一服なさって下さいませ」
 申し出に応じで、冷やし飴やら水出し茶やら、手作りの和菓子やらで、休憩するもよし。
 永遠の真夏の黄昏刻に、打ち水で涼むのもよし。
 或いは――川姫と話したい者もいるかもしれない。

 斯くて、時は動き始める――。
篝・倫太郎
【華禱】
夜彦と2人で冷やし飴と和菓子を堪能
なんとなく、さっきまでの川姫と花の精の事が
頭に、心に、残っているから……
そっと夜彦に寄り添う

当事者じゃない俺ですら、こんなにも心が乱されるんだから
当事者の川姫や他人事に思えないと言った夜彦の
その胸の内は複雑だろうなぁと思いながらも
冷やし飴の甘い後にぴりっとくる感じにほっとして

美味い……

深く語らないなら聞かない
語らせたい訳でもなければ
語った所で過去の後悔は消えない
そんなのは俺だって知ってる

だから、深く話す事もせず
些細な事を話しながら
寄り添って、夜彦と2人
触れただけの手の熱を分け合う

過去の後悔は消せなくても
そうする事で少しは癒えればいい

あ、うん……お裾分け


月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎と茶屋で冷やし飴と和菓子を頂きます
戦い終えた後だからか、戦う相手の想いを理解できるからか
胸の奥が少しざわついていて、冷たい飲み物で気持ちを落ち着かせたかった

それを知ってか、倫太郎は何も言わず傍に居てくださるのが救いで
器を持っていない方の手で彼の手を握る
……川姫殿に少しでも声を掛けられたら良かったのですが
私がこうではいけませんからね

心の拠り所が在ったとしても過去までは忘れられない
時折思い出してしまうのは、その時の悲しみや苦しみを二度としないように
同じ思いをしないようにする為の戒めなのかもしれない
私は彼が居てくれるから、大丈夫

……倫太郎、お互いの和菓子交換してみませんか?


 夏の和菓子と言えば――例えば、水まんじゅう。つるんと口触り良い葛皮の中は、甘さ控え目の餡。笹の葉に包まれて、見た目も涼やか。
 或いは――水ようかん。やはり甘さ控えめに炊き上げた小豆を丁寧に濾して、口当たりも滑らか。冷たくさっぱりとして、暑い中でも食べ易い。
 共に供された飲み物は、生姜の風味を利かせた冷やし飴。黒盆に並ぶびいどろの茶器を取り上げ、月舘・夜彦は喉を潤す。
 胸の奥が少しざわついているようで、冷たい飲み物で気持ちを落ち着かせたかった。
(「……川姫殿にも、声を掛けられたら良かったのですが。私がこうではいけませんからね」)
 茅葺の茶屋に戻る華奢を見送るストイックな横顔を見やり、篝・倫太郎はそっと寄り添う。
(「当事者じゃない俺ですら、こんなにも心が乱されたんだからな」)
 何となく、川姫と花の精の姿が、頭に、心に、残っている。
(「川姫にしても、他人事に思えないと言った夜彦にしても、胸の内は複雑だろうなぁ」)
 冷やし飴を一口。優しい甘さに続いて、ぴりっと来る後味にほっとする。
「美味い……」
 倫太郎がしみじみと呟けば、空手に滑り込んできたのは夜彦の掌。
(「深く語らないなら、聞かない」)
 語らせたい訳でもなければ、語った所で過去の後悔は消えない。そんな事は倫太郎とて、よく知っている。
「冷やし飴ってさ、温かいままだと、飴湯っていうんだってな」
「製氷技術が発達していない世界では、飴湯のまま暑気払いに飲んでいるそうです」
 他愛無い世間話に興じながら、触れただけの手の熱を分け合う2人。
(「過去の後悔は消せなくても……この温もりで、少しでも癒えるならそれでいい」)
 そんな倫太郎の気遣いこそが、夜彦にとって何よりの救い。彼がいてくれるから、大丈夫と思う。
 それでも……喩え心の拠り所が在ったとしても、忘れられない過去はある。
(「時折思い出してしまうのは……その時の悲しみや苦しみを2度としないように。同じ思いをしないようにする為の、戒めなのかもしれない」)
 己の中で筋道を立てて、漸く夜彦は一息を吐く。
「……倫太郎、和菓子交換してみませんか?」
「あ、うん……お裾分け」
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

春乃・結希
わぁ!私、旅人って自称するからには
こういうところでお茶してみたいって思ってたんですっ
昔話に出てくるお茶屋さんの本物が、今ここに……!
と感動しつつ何にするか考えて
うーん、どれも美味しそう……冷たいのでお勧めを一つください!

のんびりと夕日を眺めたり、蝉の声に耳を傾けたり
んー、夏の夕暮れは何だか切ない気持ちになります……どうですか?

これからも、ここで大切な人の思い出と一緒に、
お店をやって行くのかな。すごく素敵です
川姫さんは紫陽花を忘れないから、本当にまた生まれ変わって、会えるかもしれないですね

想いが力になるこの世界なら、きっとまだ見られるはず
……ね、夕暮れの虹も、綺麗じゃろ?


(「わぁ! 昔話に出てくるお茶屋さんの本物が、今ここに……!」)
 ジーンと感動しているのは、春乃・結希。
 旅人を自称するからにはこういう所でお茶してみたいと思っていた、と目を輝かせる結希に、川姫はほんのり唇を綻ばせる。
「何に致しましょうか」
「うーん、どれも美味しそう……冷たいのでお勧めを1つください!」
 お品書きとにらめっこする事暫し。迷いに迷ってのお任せは、見た目も涼やかなびいどろの器で供された。黒蜜に泳ぐのは葛切りだ。
 発汗作用があるとされる葛は、夏の定番。しっかりと煮詰めてコシのある葛切りは、つるっとした喉越しも心地好い。
 カナカナカナカナ――ヒグラシの鳴き声が、黄昏に響く。
「んー、夏の夕暮れは何だか切ない気持ちになります……どうですか?」
「それは……」
「これからも、大切な人の思い出と一緒に、お店をやって行くのかな。すごく素敵です」
 小首を傾げる川姫に、結希の言葉は屈託ない。
 川姫が紫陽花を忘れる事は無いだろう。ならば、本当に生まれ変わった『彼』と、また会えるかもしれない。
「ううん、想いが力になるこの世界なら、きっとまだ見られるはずです」
 打ち水を勢いよく撒けば、斜陽が小さな虹を掛ける。
「……ね、夕暮れの虹も、綺麗じゃろ?」
 大輪の虹花が咲いても、きっと――。
大成功 🔵🔵🔵

リスティア・サフィス
アドリブ連携歓迎

……感情を殺してしまっているような様子が気になります。
ただ、どう声を掛けたら良いのか……自身で折り合いをつける事かとも思います。
難しい、です。

お仕事のお邪魔をしてはいけないのでお茶を頂いて、暫くぼんやりと周りの景色を眺めていましょう。
手が空いた頃に……少し、休まれてはいかがですかと声を掛けます。

ふと思ったのですが……紫陽花を、植えるのはどうでしょうか。
ここは川の側ですし…今の貴女なら守れるでしょうし。
またお会いできるよう、私も願っています。
……誰かをそれだけ強く想う気持ち、少し羨ましいのです。


 立ち働く川姫の振る舞いは、せせらぎのようにゆったりとしながら淀みない。
 だが、リスティア・サフィスの宝石の眼には、感情を殺してしまっているように映る。
(「心配ですけれど……どう声を掛けたら良いのか」)
 川姫に凝る想いは、彼女自身で折り合いをつけるべきとも思う。難しい。
「……少し、休まれてはいかがですか」
 仕事の邪魔は本意でなく、暫くぼんやりと田園風景を眺めていたリスティアだが、川姫が打ち水の仕度を始めた頃合いで声を掛ける。
「お茶、とても美味しいです」
「ありがとうございます」
 リスティアに勧められて、川姫もお相伴に与る。水出しの緑茶は、茶の旨味を存分に味わえる。苦味が不得手の者でも飲み易いだろう。
「ふと思ったのですが……」
 暫時の沈黙の後、思い切って、提案するリスティア。
「紫陽花を、植えるのはどうでしょうか」
 風景を眺めていて、気付いた。緑滴る中、花の類が一切ない事に。
「ここは川の側ですし……今の貴女なら守れるでしょうし」
 僅かに強張った川姫の表情の変化にたじろぎそうになるのを堪え、リスティアは言葉を重ねる。
「またお会いできるよう、私も願っていますから」
「……ありがとうございます」
 会釈で振り分け髪に隠された川姫の面が次に上がった時には、もう微笑みを浮かべていて。
「彩りが増える方が、お客様も愉しいでしょう。時機を見て、何れ……」
 今すぐでなくとも、川姫の中で、腑に落ちる時が来たれば。彼女の時間は、まだまだこれからなのだから。
(「……誰かをそれだけ強く想う気持ち、少し羨ましいのです」)
大成功 🔵🔵🔵

花澤・まゆ
じゃあ、お言葉に甘えて水出し茶をいただこうかな

お茶を持ってきてくださった川姫さんに
小さな声で「辛いときは泣いてもいいんだよ」と告げます
きっと泣くタイミングも悲しむタイミングも失ってると思うから
世界が滅んでも一緒にいたかったのはわかるもの
…こうして選んだ貴女たちの勇気は尊いもの
貴女たちは悪くないと、あたしは思うんだ

よく我慢したね
でも、もう我慢しなくていいんだよ

泣いてくれるのならその背をさすって黙ってるし
それでも穏やかでいるのなら
代わりにあたしが泣いてあげる
こんな悲しい恋物語
何もできなかった自分がとても悲しくて

ああ、どうか、いつか
世界を滅ぼさず二人が再会できますように

アドリブ、絡み歓迎です


「お待たせしました」
「ありがとっ」
 川姫が運んできた水出し茶を、花澤・まゆは笑顔で受け取る。
 びいどろの茶器は、黒盆ごと縁台に置いて。徐に川姫に向き直ったまゆは、そっと囁く。
「辛いときは泣いてもいいんだよ」
 小さく、息を呑む音が聞こえた。
「あのね……世界が滅んでも一緒にいたかった気持ちは、わかるの。だから……こうして選んだ貴女たちの勇気は尊いし、貴女たちは悪くないと、あたしは思うんだ」
 川姫と花の精は分かたれて、紫陽花畑は幻と消え、幽世は崩壊を免れた。それ自体は重畳だ。猟兵達は、カタストロフを防ぐ為に来たのだから。
(「でも、きっと、彼女は泣くタイミングも悲しむタイミングも、失ってしまってる」)
「よく我慢したね。だけど、もういいんだよ」
「……」
 川姫の眉が八の字になる。唇を噛み、両手で顔を覆って。
「……ありがとう、ございます。その御言葉で、私もあの御方も、救われるでしょう」
 丁寧に謝意を述べるその白い頬は、綺麗なままだ。
 最後の最後に、呑み込んでしまった川姫を、まゆは責めない。
「じゃあ、代わりに……あたしが泣いてあげる」
 言い終わる前に、まゆの碧眼から大粒の涙が盛り上がり、ぽろぽろと零れ落ちた。
「あ、あのっ……!」
 狼狽える川姫に、優しく頭を振るまゆ。
「あたしは、悲しいと思ったもの」
 永の後悔を経ての再会は、世界を道連れにする悲劇――世界を救う為、別れを強いる事しか出来なかった自分が、嘆かわしい。
 ああ、どうか、いつか――世界を滅ぼさず2人が再会できますように。
 切なる祈りに組まれた両手に、繊手が重なる。瞑目する川姫の眦に、うっすら浮かぶものを、まゆは確かに認めた。

 永遠なる真夏の黄昏――その日、打たれた『水』は、これまでよりも優しく深く、幽世を潤した事だろう。
大成功 🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年09月20日
宿敵 『紫陽花』を撃破!
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵