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屍律討魔學園聖斗会執行録

#UDCアース #学園伝奇ジュブナイル

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#UDCアース
#学園伝奇ジュブナイル


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●噂
 誰もがまず耳を疑い、そして笑うだろう。
 それは無論、正式名称であろうはずはない。
 しかし、嗤いながらも微かに怖気を覚えるのだ。
 「あの学園なら、あるいは」と。
 私立東真学園(しりつとうまがくえん)――そんな平凡な名の学園には、けれど。
 影から影へ、闇から闇へと、まことしやかに言い伝えられる噂がある。
 その秘められた姿と名は――『屍律討魔學園(しりつとうまがくえん)』だと。

●聖斗会
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前……縛ッ!」
 裂帛の気勢と共に九字を切った少女の声の下、その「もの」は苦しげに呻いて動きを止めた。少女の丸い瓶底眼鏡の奥に光る眼差しは鋭く、普段ならだらしなくも見えるボサボサ髪は、今は風に逆らう雄々しき獅子のたてがみのようにさえ見える。
 彼女が今動きを止めた「もの」。それこそは人にあらず獣にあらず、蟲にあらず鳥にあらぬもの。まさに――怪異、とでも呼ぶしかない「もの」であった。
「止めましたのよ! ボーナス弾んでもらいますのよッ!」
「っしゃあ、ここは俺様がカッコよく決める場面だぜッ! 聞け怪異、俺様こそは天部一式流正統後継、第四十四代……」
 少女の声に応じ、軽そうな外見の少年が踊るように前に進み出る。無意味な格好をつけたポーズを決めながら、しかし、心得のあるものが見ればわかるだろう、その姿のどこにも隙がないと。
「あー、めんどくさい。んなこと言ってる間に、とっとと終わらせようよ。んじゃ、燃やすから」
 滔々と少年が口上を述べ始めようとした隣を、すたすたと歩み出た、もう一人の小柄な少年が、ものぐさそうにパチン、と指を鳴らした。と同時、「怪異」が紅蓮の炎に包まれ、夜の闇を斬り裂くような苦悶の声を上げる。
「あッ、小鳥、お前、人の出番をだな……!」
 軽そうな少年が、小柄な少年に喰ってかかろうとした時、柔らかでかつ凛としたもう一人の少女の声が戦場に響いた。ロングヘアの、目を見張るような美しい少女である。
「拳護くん、言い争っている時間はないわ。私と二人で、浄化しましょう」
「……チッ、わーったよ。行くぜ、会長ッ!」
「ええ。……霊光よ、清めの輝きを!」
「天部一式流・絶天ッ!」
 少女と少年の声が宙で交わる。少女が祈るように胸の前で組んだ手に力が入り、その全身から眩い白銀の輝きが放射された。同時、少年の掲げた拳には燃え上がるような黄金の光が宿る。その光を流星の軌跡の如く流しながら、疾風のように突き進んだ少年の拳が「怪異」へと叩きこまれた、それと同じ刹那、少女の放った銀光が「怪異」を包み込んでいた。
 人の世に在ってはならぬ悍ましき悲鳴を放ちながら、やがて「怪異」はゆっくりと夜の闇に溶けて消えていく。
「――討魔學園聖斗会執行録第99号案件、これにて完了します」
 静かな少女の声が、怪異の消えていく闇の中へと通る。
 その姿を見つつ、常人ではあり得ない戦いを見せた少年少女たちはほっと吐息をついた。
「ひと段落ですのよ。でも、手強かったですのよ」
「だね、めんどくさかった。っていうかさ、最近の怪異はなんだかみんな手強くない? めんどくさいんだけど」
 瓶底眼鏡の少女と小柄な少年が漏らした意見に、軽そうな少年が唇を尖らせる。
「へッ、なぁに弱気になってンだよ。どんな相手だろうと、俺様がいる限り、どってこたぁねえぜ」
「でも、拳護くん。二人のいうことにも一理あると思うわ。自信は大事だけど慢心は禁物よ。……私たちには大事な使命があるのだから。學園を護るという、ね」
 拳護と呼ばれる少年の態度を物柔らかに、しかしきっぱりとたしなめたロングヘアの少女の声は、自ら胸中に溢れる不安に言い聞かせるかのようだった。

●予知
「……あたしもUDCアースの人間だし、ちょっとした噂は聞いたことあったのよ、「討魔學園」と、その「聖斗会」の話は。……半信半疑だったけど、でも、ほんとだったんだ」
 ふわふわと浮かぶシャボン玉の向こうから、ユメカ・ドリーミィ(夢幻と無限のシャボン玉・f18509)は感慨深げに口を開いた。
「あ、ごめんね、話の順序が逆で。今回あたしのシャボン玉が映し出したのは、東京都新宿にある「私立東真学園」。そこでUDCが復活するかもしれないの。……で、その学園っていうのは」
 ユメカは手元のメモ帳を繰りながら言葉を継いでいく。
「今言った名前――『屍律討魔學園』とも呼ばれている、らしいわ、裏の世界ではね。……大袈裟な名前と思うかもしれないけど、UDC組織の調べでは、実際にその学園とその周囲で超常事件が頻発しているらしいの。猟兵の出動が要請されるほどのものではなくて、下級の憑き物や弱い妖魔が暴れる程度だけど、それだってやっぱり大問題よね。そして、それらの事件を密かに解決していたのが――」
 ユメカは顔を上げ、猟兵たちを見回して、唇を開いた。
「『聖斗会』と呼ばれる学生たちらしいの。彼らは……『本物』よ。実戦レベルの霊能力や超能力、あるいは氣功を使う武術を身に付けているらしいわ。猟兵ほどじゃないんだけど、すごいわよね」
 彼らはいわば、ヒーローズアースの猟兵以外の一般ヒーローや、アルダワの戦闘訓練を受けた学生たち、またサクラミラージュの一般ユーベルコヲド使いのような基準の能力者だと思えばいいらしい。
「UDC組織はすべての事件に大袈裟に首を突っ込むことはしたくないから、在野の能力者に任せられる規模ならそれで、っていうスタンスで、「討魔學園」と「聖斗会」のことは監視だけにとどめていたみたい。でも、どうやら今回はそれでは済まないと思う」
 ユメカは言葉を切って厳しい面持ちを浮かべる。
「今までの相手とは比べ物にならない敵――本当のUDCが現れる。残念だけど、「聖斗会」さんたちとは格が違うわ。だから、皆にお願いしたいの。どうかそのUDCの復活を阻止して、學園を護ってあげて」
 シャボン玉を舞わせながら、ユメカは最後に付け加えた。
「直接戦闘には向かないとしても、「聖斗会」は情報面なんかの支援では協力してくれると思うし、逆に言えば「聖斗会」の力なくしては事件の真相に近づくのは難しいかも。『何故この學園に怪異が多いのか』『この學園の由来は』『何故最近怪異たちが力を増しているのか』『何故、UDCが復活しそうなのか』『そもそもUDCの正体は一体』それに……『何故この學園に多くの在野の能力者が集まったのか』などなど。謎は多いわ。みんな、彼らと協力して、真実を探ってみてね」


天樹
 こんにちは、天樹です。
 今回は学園伝奇ジュブナイル系のお話で、私が愛してやまないある作品シリーズへ捧げるリスペクトであり、オマージュでもあります。ニヤリとしていただける方がいらっしゃれば嬉しいかも、です。
 一章は冒険です。『聖斗会』メンバーに接触し、情報を収集してください。うまく関係を築ければ、プレイングボーナスが発生します。
 そこで得た情報をもとに、二章、そして三章のバトルが繰り広げられることでしょう。
 『聖斗会』たちの信頼を得られれば、二章・三章でも彼らは戦闘準備や後方支援、また一般生徒の避難誘導などに役立つと思われます。
 では皆さんのご参加をお待ちしています。
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第1章 冒険 『UDC召喚阻止』

POW   :    UDCの発生原因となりそうなものを取り除く

SPD   :    校内をくまなく調べ、怪しげな物品や痕跡がないか探す

WIZ   :    生徒達に聞き込みを行い、UDCの出現条件を推理する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 UDC組織によって、猟兵たちには私立東真学園への「転校生」あるいは「新任教師」のアンダーカバーが用意されている。好きな立場で学園へ潜入し、調査を行ってほしい。
 「聖斗会」メンバーの誰かと接触することが最も簡単だろう。彼らは「表の生徒会」と同じメンバーであるので校内では有名人であるためだ。もっとも、それぞれ性格が異なり、信頼を得るには工夫がいるだろう。

 生徒会長・結川真里亜(ゆいかわ・まりあ)は優しく強い信念を持った霊能力者の少女で、生徒会室で会えるだろう。しかし彼女は優しいが故に、自分たち以外を戦に巻き込むことを好まない。猟兵たちも真里亜と同じような、「強い信念」を持って戦っていることを示せば、話が通じやすいかもしれない。

 副会長・天部拳護(てんぶ・けんご)はお調子ものかつ自信家の武術家。だいたい校舎屋上でサボって昼寝をしている。試合を挑んで猟兵たちの実力を示すのが分かりやすいかもしれないが、女性の猟兵なら色仕掛けでたらしこんでも効果的だ。

 書記・赤居小鳥(あかい・ことり)は小柄で華奢、面倒くさがり屋の超能力者の少年で、炎を操る。パソコン室でPCをいじっていることが多い。持って回った話は好まないので、彼に対しては直接用件を切り出した方がいいだろう。ただしもちろん、猟兵たちの力と立場を示す何らかの証拠は必要だ。

 会計・白倉みるく(しらくら・みるく)は法術を使う瓶底眼鏡にボサボサ頭の少女。図書室で本を読んでいる姿が見られる。報酬にこだわるため、取引に応じやすいだろう。ただし単に金銭を積めばそれで頷く、というわけではない。彼女が最も高価な報酬だと思っているのは、「學園の平和と安全そのもの」であるのだから。
レン・ランフォード
私たち猟兵がいうのも何ですが
この世界にも力をもっている人はいたんですね
まぁ間違った使い方をしてないならいいのです
協力してもらい事件を解決しましょう

情報収集はやはり数です
UC使用で分かれた錬には街の図書館等で
この町や学校の地理や歴史について
れんにはPCで
…場合によっては学校へのハッキングも許可してます

私は協力を求めに転校生として潜入、結川さんと接触します
生徒会長、一番情報を持ってそうですからね
他に人がいない時に組織からのエージェントである事を伝え
前から監視してた事だけは伏してこちらの事情を伝え頭を下げ協力を願います
私の目的は事件の早期完全解決
そうすれば理不尽によって失う事を減らせるのですから


九重・灯
生徒会長を訪ねます。
「九重 灯といいます。わたし達は猟兵。常識から外れた怪物を狩るものです」
強力なDUCの出現を察知した事、その討伐のために来たと事を話し、協力をお願いして頭を下げます。

こちらを心配してくれるからこそ拒絶されるかも知れない。だけど、
「わたし達は怪異を前にして、守るべき人達を置いて引き下がったりはしません。あなた達と同じように」

情報収集
UC【世界図書館】。手の中に古びた本が現れる。
UDCと関係ありそうな学園とその周辺の歴史や伝説、あとこの地に能力者が多い事情を調べます。
「聖斗会」の成り立ちを結川さんや、もし居るなら事情に詳しそうな先生などに話しを訊きます。
『世界知識、情報収集』


大町・詩乃
高校生…神々の時代から生きてはいますが、(外見)18歳ですからギリギリでしょうか<汗>。
と内心の葛藤を秘めて転校生として情報収集。

腹の探り合いはやりたくないので、「学園に邪悪な存在を感じたので、世の為、人の為、討ちに来ました。」と結川真里亜さんに申し出てみます。
退魔士又は政府の特殊工作員(UDCエージェント)と思って貰えれば通じるかな。

怪異の発生条件や不穏な気配を感じる場所等を教えて貰えば、UCで神使を放って調査します。

自然体でほんわか優しい振る舞いですが、「年上っぽい」というキーワードを聞くと、「そうですよね~、学生服は似合いませんよね~。」としゃがみこんで、床にのの字を書き始めます<笑>。



「ようこそ、我が私立東真学園へ、転校生の皆さん。歓迎します。私が生徒会長の結川真里亜です」
 にっこりと花の咲き誇るような笑顔を見せた少女は、しかしそのあと、細い指を顎に当てて、少し首を傾げた。
「……それにしても、ずいぶんたくさんの方が同時期に転入していらっしゃいましたね。珍しいこともあったものです」
「は、はは……」
 居並ぶ『転校生』たちは互いに顔を見合わせ、苦笑するしかない。
 三人の少女の『転校生』。そう、彼女たちは「ただの転校生」ではないのだから。
 彼女たちこそは──

【第壱話『転校生』】

「それはともかく、困ったことや分からないことがあれば、何でもおっしゃってくださいね」
 優しく微笑みかけた真里亜の声に、レン・ランフォード(近接忍術師・f00762)がすいと手を挙げた。
「あ、それでは。私たちにも会長さんのお仕事、お手伝いさせてもらえませんか?」
「え?」
 戸惑う真里亜に、レンの隣の九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)がそっと生徒会長の役机に視線を向ける。そこには、未処理と思われる書類が山のように溜まっていた。
「そちらを拝見しますと、どうやら会長さんも、『たくさんのお仕事でお忙しい』ご様子です。お力になれるのでしたら」
「それはいいお考えですね」
 二人の言葉に大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)も、柔らかく手を叩いて賛意を示し、それに頷き、想いを馳せる。
(そうですね、会長さんはきっと、「表」と「裏」の仕事を両方抱えておいでなのですものね。それは忙しいでしょう……)
「ですが、今日おいでになったばかりのみなさんに、そんなことをお願いするわけには……」
 困惑する真里亜を見て、三人は事前情報が正しかったことを知る。彼女は責任感が強く、安易に他者を巻き込みたがらないのだと。
「でも、」
 と、レンは眼鏡の奥から優しい光を真里亜に向けた。
「一人で大変な時は、他の力を借りることは決して悪いことではないと思います。特に──『やらなければならないこと』があるときにはね。私はそれを、とてもよく知っています」
「かえったよ。そっち、どう?」
「こっちも帰ったぜ」
 そのレンの声に応じるかのように、生徒会室の扉が開かれ、二人の人影が入ってきた。
 ──レンと瓜二つの姿を持つ二人の人物が。
「……えっ!?」
 真里亜は思わず声を飲み込み、レンと、その隣に立つ二人の姿を見比べる。
 同じ姿、同じ声、けれど少しずつ異なる雰囲気を持つ、「三人のレン」を。
「ラ、ランフォードさんは三つ子さんでしたか? でもそんな話は聞いていませんでしたが……」
「三つ子ではありませんが、似たようなもので、そしてそれ以上のものですね、私たちは」
 真里亜は今度こそ声を喪う。くすりと微笑む三人の姿が融け込むように輪郭をにじませ、そして一人のレンとなった光景を目の当たりにして。
「こ、これは……」
「こういう『力』を持っている者が世界にはいるんですよ。会長さん、あなたたち以外にも」
 驚きで思わず後ろによろけた真里亜は、その弾みで机にぶつかりかけた。衝撃で机上に山積みになっていた書類が散らばりそうになった時、
「あら、一度散らかると片付けるのは大変ですよ」
 ふわりと真里亜の背後に移動した詩乃が彼女を庇っていた。同時、軽やかにうごめかした詩乃の手に従うように窓際から吹き込んできたそよ風が書類を拾い集めるようにまとめ、何事もなかったかのように机の上に戻していた。
「えっ!?」
「えっと、簡単な天候操作、というところです」
 少し恥ずかしそうに可憐に、詩乃は微笑む。
「あ、もう一枚、棚の上に引っかかっていましたよ」
 その背後で、灯がこともなさげに「空中を歩き」、少し高い棚の上に一枚だけ残っていた書類を回収して戻る。宙に浮かび空中で戦を行うことさえ灯には容易い。ましてやこの程度、どうということもない。
 だが無論、そのすべてが真里亜には驚愕の連続だった。
 能力者である真里亜にとってさえ、三人の少女たちの「力」は想像を絶していたのだから。
「あ、あなたたちは一体……!?」
「はい、先ほど申し上げましたように」
 灯がその端正な表情をやや改め、艶やかな唇を開いた。穏やかな声がその唇から紡がれていく。
「私たちは、あなたに……会長さんに「協力」をさせていただきたいと思っているものです。私たちの力をお見せした以上、その「意味」はお分かりになるかと思いますが……私たちもまた、常識から外れた怪物を狩るものなのです」
「……!」
 真里亜ははっと胸を突かれたように黒目がちの瞳を見開き、次いでやや身を退けるようにして構え、まっすぐに三人に視線を送った。輝く宝石のような、透き通った視線を。
(……なるほど、会長さん、こちらの心に触れようとしていますね。正邪を見極めようと。聞いていた通り、確かな力をお持ちのようです)
 真里亜の「力」を感じ取り、詩乃は心中に感心する。無論、詩乃の能力──オーラでの防御能力や結界を展開する力を使えば、真里亜のその霊力を完全に遮断することもできるだろう。真里亜が能力者とはいえ、猟兵との力の差はそれほどに大きいのだから。
 だが、あえて詩乃は心をガードすることなく、己の胸襟を率直に素直に、真里亜に明かすことにした。自分の、隠すことない真情を。そしてそれは、灯もレンも同様だった。
「……世のため、人のため……それが皆さんの御心、ですか」
 ややあって、真里亜はほっと吐息をつき、安堵したように肩を落とした。そこには、猟兵たちへの疑義が晴れたことを物語る穏やかさが漂っていた。
「確かに皆さんには邪気は感じられませんでした。申し訳ありません、思わず皆さんの心を除くような真似をしてしまって。失礼の段、幾重にもお詫びいたします」
「いえ、構いませんよ。事件の早期解決につながるのなら。こちらも驚かせるようなことをしてしまいましたし、あなたの「力」の使い方は間違っていません」
 深く頭を下げる真里亜に微笑みかけるレンの言葉に、灯もしっかりとうなずく。
「会長さん、あなたは責任感の強いお方です、ですから私たちの身を案じられるかもしれません。でも、……わたし達は怪異を前にして、守るべき人達を置いて引き下がったりはしません。あなた達と同じように」
 灯の口調は静かで、しかし力強いものだった。真里亜の心に深く沁みとおっていくように。
 真里亜はその言葉に打たれたように、改めて三人を見回す。
「……わかりました。では、お話させていただきます。……この学園……いえ、この「學園」周囲に出現する「怪異」のことを」
「「怪異」──私たちが「UDC」と呼ぶものですね」
「そうなのですか? とにかく、私たちは古くからそれを「怪異」と呼んでいました。そしてそれに脅かされる学園の生徒や、周囲の人々を護ってきたのが私たち、『聖斗会』なのです。それゆえに、この学園は別名『討魔學園』とさえ呼ばれるようになっていきました」
「ん、古くから、ですか。……では、怪異が現れるようになったのはずいぶん前からだということですね?」
 レンの問いかけに、真里亜は厳しい顔つきで頷く。
「そうですね、怪異と、『聖斗会』との戦いはもう何代にもわたって続いています。今は私が会長ですが、いずれ他のものに後を託す時が来るでしょう」
「いえ、問題を解決してしまえばその必要はなくなるでしょう。おそらく強力な怪異……UDCが背後で糸を引いています。私たちはそれを打ち滅ぼすために来たのですから」
 詩乃のはっきりとした声に、真里亜は顔を上げる。
 この學園を覆う黒い影がなくなり、美しく澄み渡った空を見上げることができる日が来る……そんな可能性に、真里亜は今まで憧れはしても、現実になると考えたことはなかったのだ。
 だが、目の前の少女たちは、さほど自分と変わらぬ年齢に見えるにもかかわらず、明確に未来への希望を抱いてそれを疑わない。
 それは、単に真里亜と少女たちの持つ「力」の差だけではないのだろう、と真里亜は感じた。たとえ「力」がなくとも、彼女たちは同じように未来への歩みを止めないのだろうと。
 真里亜はそんな少女たちの姿に目くるめくような眩さを覚え、思わず瞳を細めて微笑んだ。
「……皆さんは……お強いのですね。なんだかとても、私より大人っぽく見えます」
 ──まあ、その言葉は詩乃にとって禁句だったのだが。
「あうう……そ、そうですよね~、私に学生服は似合いませんよね~……!」
 神代の時代から生きる詩乃にとって自分にセーラー服が似合うかどうかはかなり切実な問題なのだった。かくして、しゃがみこんで床にのの字を書き始めた詩乃を立ち直らせるのに、少女たちは結構な時間を掛けることになる。頑張れ詩乃、たたかいはこれからだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アネット・レインフォール
▼静
ふむ…彼女達の意思は尊重したいが
今回は相手が悪いか。

だが、今の俺は教師でもある。

生徒を見守り背中を押す事も仕事の一つ。
それ故に、此度の一件は良い社会勉強になる筈だ

…しかし怪異に能力者達、か。
不自然なほど『集まり』過ぎている気もするな。
敵の思惑が働いていなければいいが――

▼動
臨時教師の肩書で参加。

接触時の建前として進路希望の紙を用意。
未提出を理由に渡すか印刷を頼んで交流用に。

校内を見回り気配や間取りを確認しつつ生徒会室へ。

他の猟兵がいれば話を合わせるが
いなければ謎の昏倒事件を追っているなど
適当な理由で協力を仰ぐ。

怪異で気付いた事や出現パターン・傾向など
敵に繋がる情報を重点的に収集

アドリブ歓迎


トリテレイア・ゼロナイン
(新任教師として潜入)
屋内は膝を付くとして、最大の懸念はドアを通れるかですが…
スタンスの近しい結川様と接触しましょう

『裏』の案件についてお話が

強さを増す敵、投入された私達
お気づきかと思われますが此度の戦いの規模は大きくなることが予想されます
内々で処理できれば最善ですが、一般の方に累が及ぶ可能性は出来る限り無くしておきたいのです

ノブレス・オブリージュ…騎士として、無辜の人々の為に力を振るう生徒会の皆様を好ましく思います
どうかお力添えを頂けますか

具体的には防衛、避難計画の立案協力へのオカルト的見地からの助言要請
校内にUC仕掛け簡易シェルターも用意
センサー探知と彼女の情報も元に學園の構造なども調査


アルトリウス・セレスタイト
素直に話すほうが面倒があるまい

会長に接触し、学園守護に協力したい旨を伝える
理由は自分としては当然だからの一言に尽きるが、納得させるには難しいか
嘘をつかず、となれば

俺は守るものの範囲が多少広い。くらいが理由になるか
此処もそれに含まれるということだ

知るも知らぬも、無辜のものも犯罪者も、猟兵も
オブリビオンが関わるなら俺が守るべきものに含まれる
学園も聖斗会も例の外に漏れぬ

力を証せと言われるなら、多少悩むが実体験で
魔眼・封絶で本人の行動と能力発露を封じる
魔弾を披露するよりは穏当だろう。ごく短時間で解除

納得を得られたら過去の聖斗会の活動記録や怪異について知れている内容など聞いておく



 ごん、と、何かがぶつかる重い音がした。
 『聖斗会』会長、結川真里亜は驚いて音のした方向、生徒会室の戸口に眼をやる。
「測定の結果はギリギリ入れるはずだったのですが……センサーの精度が微妙に狂っていたでしょうか。これももしや怪異の影響……」
 よくわからないことを口にしながら、信じがたいほどの長身を窮屈そうにかがめ、半ば膝行するようにして男性が入ってきた姿を見て、真里亜は慌てて彼を出迎えた。
 確か、新任教師だと朝礼で紹介があったはずだ。外国出身なのだろう、少し難しい名前だった。外国文学、特に騎士道物語の研究が専攻だという話だった、と真里亜は思い出す。
「ええと、ゼロナイン先生、でしたね。生徒会室に御用でしょうか」
「ああ、生徒会室に、というよりは」
 と、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はまっすぐにセンサーアイの光を真里亜に向ける。
「あなたに用があったのです、結川さん……いえ、結川様」
 呼び方を変えたのは、トリテレイアのモードの切り替わりをも示していた。教師から、猟兵へと。 

【第弐話『教師』】

「私に?」
「ああ、そうだ」
 問い返した真里亜の声に答えたのは、トリテレイアではなくもう一人の別の声。
 トリテレイアからやや遅れて生徒会室に現れた青年は、漆黒の髪と瞳、という外見上の点だけでは、トリテレイアほどには生徒たちと異質ではない。けれど、その内面から感じ取れる、抜身の剣のように鋭利な「氣」──それは明らかに、常人を超えた域の者のみが放ちうるもの。真里亜の仲間にも「氣」を使う者はいるが、彼はそれを遥かに上回る。
「レインフォール先生……?」
 彼も確か、朝礼で紹介された臨時教員で、全国大会を控えた剣道部の指導に当たると聞いていたが、朝礼ではこれほどの「氣」を放ってはいなかった、と真里亜は想起する。では、自らの「気」を抑えていたのか。あたかも結界を張るかのように。
彼こそは、アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)──そう呼ばれる一流の猟兵だと、無論真里亜が知る由もなかったが。

「なんとも千客万来なことだ。打ち合わせて同道すべきだったかな、御同輩」
 さらに現れたもう一人の声が重なる。姉妹校との交流のためだと真里亜も説明は受けていた。多くの外国人の臨時教員が来校した理由は。
 外国──そう、確かに「外」と関わりのある存在だ。アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は。だがそれは、外の「国」ではなく、そのさらに彼方、概念の外側にさえある『原理』であるのだが。
「ええと、先生の御名前は、セレスタ……」
「アルトリウスで構わない。素直に話すほうが面倒があるまい。皆も、そうだろう」
 アルトリウスは手を挙げて真里亜の言葉を制すると、室内にいるもう二人を見回した。苦笑気味にセンサーアイを明滅させるトリテレイアが頷き、アネットは手に持っていた紙束を軽く叩いて肩をすくめた。
「進路指導のために来た、という言い訳も用意していたんだがな。まあ、確かに事は急を要するようだ。校内を巡察してみたが、異変の予兆は事実あちこちに感じられる。「怪異」という奴、意外に勢力を伸ばしているな」
「え、まさか……?」
 真里亜はその言葉に、はっとした表情で三人の「教師」たちを見つめる。
 つい先ほど出会った三人の少女たち──凄まじい「力」を持った少女たちのことを思い出す。もしや、彼らも、また。
「ええ、おそらく結川様が御想像されている通り」
 トリテレイアが重々しい声で真里亜の考えを首肯した。
「私たちは『猟兵』と呼ばれるもの。──『裏』の案件についてお話をしに来たものです」

「君たちの意思は尊重したいと思っている。自分たちの学園を自分たちの手で守ろうとするのは尊い勇気だ。だが」
 アネットは淡々と言葉を継ぐ。
「だが今回は、相手が悪い」
「ノブレス・オブリージュ……それが騎士のあるべき姿。同じように無辜の人々の為に力を振るう生徒会の皆様を、私は好ましく思います。ですが、おそらく今回の戦いの規模は大きくなることが想定されるのです」
 アネットに和し、トリテレイアも真里亜に声を掛ける。その言葉の重みを実感したかのように、真里亜は力なく椅子に座りこんだ。
 先ほどの少女たちに「力」を見せられたこと、そしてさらに彼女たちと同じような存在が現れたことに、真里亜は動揺を隠せないでいたのだ。
「先生たちはそこまで強く、そして私たちはそこまで無力なのでしょうか。自分たちの学園さえ自分たちでは守り切れないほどに」
 彼女の言にアルトリウスは軽く首を振る。大事なものを護りたいという真里亜の気持ち自体はアルトリウスもよく理解できるのだから。
「そうではない。俺たちはあくまで、君たちに協力させてほしいという立場だ。だが、俺たちの力を知りたいというのなら……」
 アルトリウスは一歩真里亜に近づくと、その眼前に手をかざし、軽く力を籠めた。同時、低い声が唇から漏れる。
「淀め──『魔眼封絶』」
「っ!?」
 一瞬、びくりと真里亜の身体が跳ねるように反応する。己の中の「力」が、目に見えぬ何かによって強力に抑え込まれた感覚を覚えたのだ。
「すまん、もう解除した。……だが、これが『猟兵』の力だ。そして、その俺たちが現れなければならないのが今回の事件だ」
 アルトリウスはそう言いながら、だが、己の手を見つめていた。ほんのわずかに行使しただけのユーベルコード。だが、そこに伝わってきたものは……。
(今の感覚は──?)
 一方、アネットは椅子に座りこんだ真里亜に目線を合わせ、言葉をかける。
「俺たちはこの學園の教師だ。仮初めにでもな。教師は生徒の背中を押し、そして生徒は教師を利用するものだ。あまり考えすぎず、俺たちをうまい具合に使って學園を守る手段にする、くらいに思えばいい。……お前くらいの年齢からあまりなんでも背負い込むと、将来小じわが増えるぞ」
「えっ?」
 驚いて顔を上げた真里亜に、アネットはニヤリと笑みを送る。それは「教師」らしい彼の一面でもあった。
「おっと、今のはセクハラ、という奴になるかな? 教育委員会には内緒にしておいてくれ」
「……まあ、先生ったら」
 口に指を立てて片目をつぶったアネットの言葉に、真里亜はくすっと小さな笑みを漏らす。
「それにな」
 と、幾分気を緩めた様子の真里亜に、今度はアルトリウスも言葉を添えた。
「お前たちが大事な學園を護ろうとするように、俺も守るものの範囲が多少広い。此処もそれに含まれるということだ。学園も聖斗会も例の外に漏れぬ」
「ええ、だからこそお力添えを頂きたいのです。私たちも『聖斗会』の皆さんも、立場は近いのですから」 
 トリテレイアも頷き、同意を示す。
 真里亜は自分の頬を軽く叩くと、顔を上げた。曇りの晴れた美しい顔を。
「ありがとうございます、先生方。では、『聖斗会』として、先生方の御力、お借りします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします、結川様。では、より詳しいご相談をさせていただきましょう。──「怪異」の出現に何らかのパターン、法則性などはあるでしょうか」
 トリテレイアの問いに、真里亜はこくりと頷いて、傍らの金庫へと向かう。
「どうでしょう……でも、こちらに『聖斗会執行録』がありますので、そこにこれまでの怪異案件はすべて記録されていますが」
「それはお見事。では執行録を拝見して、私が分析してみましょう」
 トリテレイアと真里亜は執行録と学園周辺地図を突き合わせて検討を開始する。
 その傍らで、アルトリウスがやや不審な表情を浮かべていたことに、アネットは気づいた。
「どうかしたのか?」
「いや、先程彼女の「力」を軽く封じた時に……少し違和感があった気がする」
「違和感?」
「はっきりとしたものではないのだが……」
 言葉を濁し、アルトリウスは考え込む。その表情に、アネットもまた今回の案件に関する懸念を想起していた。
(……確かに、今回の事件……怪異に能力者、不自然なほど『集まり』過ぎている気もするな。敵の思惑が働いていなければいいが――)
 その時、トリテレイアが声を上げた。
「ふむ。やはり校舎の……この一点を中心に、同心円状に事件が発生している傾向がありますね」 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ブラミエ・トゥカーズ
妖を幽世に追いやった者達の裔であろうかな。

【POW】攻撃力
副会長に接触。
吸血鬼であることは隠さない。
彼の協力を要請する。

推測:
異能が集まる要がある。
病に発生源があるように。
学内の古い建造物を中心に調査。

昼間だと吸血鬼の為、燃える。
化粧品と日傘で煙が出る程度。
従者も妖怪のため、昼間の吸血鬼なら追随する力はある。

今の余は貴公達の味方である。
とはいえ、腕は試させてもらうぞ?
正面から技も無い素手。
傘狙い等全ての手段を許容。
それは人の特権であるがゆえに。
怪我は従者に治させる。

古典的吸血鬼として優雅に噛もうともする。

おっと、今は猟兵の仕事中で会ったな。
余の口づけが欲しくば事が終わった後に相手をしてやろう。


幻武・極
へえ、聖斗会か。
UDCアースにもそんなところがあったんだね。
でも、相手がUDCじゃ分が悪いか。
ボクは副会長に会ってみるかな。
武術家らしいし興味があるよ。
軽く手合わせをしてみれば、互いの実力が分かるかな。
まあ、この世界にはUDCという組織があるわけだし、もっと実力を伸ばせるんじゃないかな。
ただ、そのUDCより格上のボク達が動いている意味は分かるよね。


テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可

事件の真相に近づけるためにまずは「聖斗会」メンバーの誰かと接触…そうですね…副会長さんが会いやすそうかも…?
と、言うことで来てみたのですが…えっと…試合を挑めばいいのですね…?
しかしただ攻めるのが戦いではありません!ユーベルコード【兎少年黄金像】を使って相手が疲れるまでひたすら防御なのですっ!
ただの黄金像に変わったわけではないですよっ!やれるものならどんどん来ちゃっても良いのですよ~?

色々聞きたいことはありますが…まずはUDCの正体が一番気になるのでそのあたりを中心に聞いていきましょう~
そういえば副会長さんの見る目が変だと思ったのですが…え…えっと…わ…わたし男の子ですよ…?



「な、なんて運命のいたずらなんだッ! せっかく出会えた美しいおねーちゃんが、よりによって怪異なのかよッ!」
 屋上に響き渡る慟哭の声に、ブラミエ・トゥカーズ(”妖怪”ヴァンパイア・f27968)は優雅な身振りで、しかしうるさそうに細い指で耳をふさいだ。眼前では、先ほどまでガッつく勢いで自分をナンパしかけていた男が、男泣きに泣いている。
「やれやれ、話を聞かぬ男よ。泣くほどなのか、それは? そもそも、余は「怪異」とやらにあらず。まあ確かに吸血鬼ではあるがな」
「見ろッ、やっぱ怪異じゃねーかよッ! 哀しいがこれも仕方ねえ。愛は切ないものってこういうことなんだな!」
「……わけのわからぬ理論を振り回すのう。余には貴公の方がよほど怪異に思えてきたわ」
「本来俺様はおねーちゃんを殴る拳は持たねえが……怪異となれば容赦はしねえ。天部一式流正統後継、第四十四代、天部拳護、行くぜッ!」
「だから怪異ではないというに……」

【第参話『怪異』】

「おや、先客がいたようだね」
 屋上へ足を踏み入れた幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は、眼前で繰り広げられようとしている戦いに眼を止めた。
 現れた極の気配に、ブラミエと拳護も動きを止め、その姿をまじまじと見つめる。
「ほー……ガキ、おめーも相当の使い手だってのは一目でわかるぜ。何故なら俺様だからな」
 拳護は顎を撫でながら極みを頭から爪先まで眺め、感心したようにうなずく。自ら吸血鬼であると明かしたブラミエと違い、羅刹である極の異形に拳護が気付かないのは、猟兵ではない以上仕方がない。
(けど、ボクの腕前を一目で看破したあたりはさすが、かな)
 と、極がひそかに評したのも、そこまでだった。
「だが、順番は後だ。たとえ怪異でもレディーファーストってのが俺様の流儀でな」
「だから余は怪異ではないと……」
 言いかけたブラミエを遮って、眉をひそめた極が口を出す。
「いや、ボクも女の子なんだけど」
「何ッ!?」
 思わず極を二度見した拳護はもう一度彼女を頭から爪先まで見回すと、今度は目の前のブラミエをガン見し、もう一度見比べるように極へ視線を戻すと、小さな吐息をついた。
「……うん、まあ、気を落とすな。世の中にはそういう体形が好みって男もきっといるさ。希望、捨てんなよ?」
「ちょっと! どういう意味だよ!? ボクはまだ12歳だし、まだまだ成長するんだよ!」
 極、珍しくキレた。
「そ、そうです、今の言い方は、良くないと思います!」
 そのとき、背後からひょこっと可憐な姿を出したのは、テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)。人形のように可愛らしい顔を多少怯えさせながらも、毅然とテフラはか細い声を出す。
「女性を体形とかだけで判断するのは、いけないの、ですよ!」
 テフラは全く悪くない。あえて言うなら巡り合わせが悪い。というかまあ、ここで考え出した拳護が悪い。
「むッ、またしても美少女が登場だと!? いや、多少俺様のストライクゾーンよりは年が下だが……ここは将来性を見込んでおくべきか……?」
「ふえ……えっと……わ……わたし男の子ですよ……?」
 深刻に考え込んだ拳護を意識の外からぶん殴るようなテフラの一声。
 もう一度言うが、テフラは全く悪くない。
「何ッ!? 馬鹿な……今日は一体俺様の常識が何度揺さぶられるんだ!? だってよ、どう見比べても……」
 何がいけないと言って、拳護がそこでもう一度極を見たことである。
「またなんか言おうとしたね! 多少手加減してあげようと思ったけど、ちょっともう保証できないよ!」
「あー……まあ、これは貴公に譲るべきであろうな、女として。思い切りやってよいぞ、治療は従卒にさせるほどにな」
 暴風のように拳護へ突っ込んでいった極に優雅に道を開け、ブラミエはのんびりと屋上から學園全景を見渡す。背後から凄まじい勢いでなんかドカバキボキグシャと音がしているが、気にしないでおく。テフラもあわわという顔をしているようだが、やっぱり気にしないでおく。
「ふむ……あのあたり、なんぞ匂うのう。病に発生源があるように、な」
 視野に入ったある個所に、ブラミエは目を細めて独白を漏らした。

「あ、あの……終わったみたい、なのですよ」
 半ば目を覆いながらそっと声を掛けてきたテフラに、ブラミエは振り返り、眼前の惨状に、くすりと笑みを浮かべた。
「ほう、羅刹に殴られても何とか原形をとどめておるか。なかなかのものではないか?」
「まあ……ね」
 多少不満そうな顔を浮かべながら、それでも極もうなずく。一時の怒りで完全に目を曇らせるほど、極も未熟ではない。
「氣の使い方もそれなりだし、ちょっと強引で粗削りな技だけど将来性はあると思うよ。UDC組織に正式に入って研鑽すれば、伸びしろはあるんじゃないかな」
 ちらと目をやった極の声が届いたかのように、その時、襤褸雑巾のようだった拳護が大声を出した。
「……あー、ちきしょー! 負けた負けた! どんくらいぶりだ、負けたの!」
 ブラミエの従卒に治療を受けながら、拳護は大の字になってひっくり返り、大空に向かって叫んでいた。だが、その声に含むものはない。悔しさはあったとしても、どこか、さっぱりした声音だった。
「あ、そしたら、次はわたしもお相手してもいいのですよ。いくら殴っても平気です。多分、効かないので」
 おそるおそる聞いたテフラの全身が、眩く輝く黄金色に変化していく。あたかも、日を浴びてもう一つの太陽が昇るかのような輝き。驚くべきその光景を目に映しながら、拳護は苦笑を浮かべ、起きあがって胡坐をかいた。
「は、おめーもただの美少女……いや、美少年じゃねーってわけか。いや、もう十分だ。おめーらの強さはよく分かったぜ。んで、……俺を殺さねえってのは、どうやらほんとに怪異じゃねェんだな」
「だから幾度もそう言うたであろうに」
 呆れたようにブラミエが零し、極も小さな肩をすくめる。
「ま、拳を合わせないとわからない人ってのもいるからねえ」
「ちッ、それで、わざわざここまで俺様をボコりに来たわけじゃねェんだろ」
「は、はい。あの、わたしたちじゃない本物の「怪異」……わたしたちは「UDC」って呼ぶんですけど、それの情報が欲しくて」
「何のためにだ?」
「もちろん……ぜんぶ、ぜんぶやっつけて、すっきりさせるためです! もう誰も危ない目に遭わなくなるように!」
 しっかりとテフラは言い切る。態度こそまるで子兎のようなテフラだが、その決意と覚悟は揺るぎなくためらいもない、確かなものだった。
 純朴なテフラの言葉に、拳護は少し考え込む。夢のようなその言葉、しかし。
今までの自分たちでは対処療法しかできなかった。だが、今知った目の前の相手たちの桁外れの実力なら……あるいは根本的な対応ができるのかもしれない。
 自分にはできないそれを認めるのは悔しいことだが、同時に、頼もしいことでもあった。
 拳護はもう一度三人を見まわすと、ポツリポツリと話し出した。
「怪異ってのは……この學園やその周りによく出るバケモンどものことだ。──どうせおめーらは『聖斗会』のことも知ってんだろうが、その俺様たちみたいな「力」がないと歯が立たねえ。もっとも、一度に大量に出てこられたらさすがにまずいが、今んとこそういうことはねェんで助かってるがよ」
「ふむ……どのくらいの被害が出ているのかの?」
「一般人が襲われることも多いが、手遅れになったことはまだねェな。会長の「力」は傷も治せるしよ」
「キミは」
 と、極も拳護に問いかける。先ほどの戦いで極が得た感覚を元に。
「最初からそういう『力』を持ってたのかい?」
「まあ、多少は「氣」を練る修行はしてたが、このガッコにくるまではそこまでじゃあなかったな。ただ、「怪異」どもと戦ってる間にどんどん練れていった。他の『聖斗会』のやつらもそうだと思うぜ。へッ、天然の修行っつーか、RPGのレベルアップみてーな話だとも思うがよ」
 そこまで話すと、拳護は立ち上がって学生服をパンパンと叩き、指を一本突き出す。
「よォし、思い切って、カレー焼きそばパン一個だ。それで手を打ってくれ」
「……何が?」
 きょとんとした猟兵たちに、拳護は唇を突き出す。
「何だ、知らねェのか? ここの購買のカレー焼きそばパンは絶品なんだぜ。そんじょそこらじゃお目に掛かれねえ。特別に、そいつを一個ずつ奢る。だから」
 ニヤリと笑みを浮かべ、拳護は言葉を継ぐ。
「だから、面倒ごとが全部終わったら、もう一本ずつ、手合わせしてくれ。こんないい稽古相手、簡単に逃がすわけにゃいかねェからな!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

備傘・剱
学園組織、ねぇ
力を持った奴のはけ口にゃ、丁度いい遊び場って所か?

生徒って年でもないし、教員ってがらでもないからな…
用務員って事で潜入させてもらおう

さてと、白倉とか言う奴に接触してみるか
で、単刀直入に俺が来た理由、お前らじゃかなわない敵が現れて、その対処に来たってのを告げるぜ
勿論、その手伝いを、してほしいってのもな

で、報酬、ねぇ…
そうだな、この依頼が終わったら、生徒会全員にこのレベルの飯を御馳走する事を約束しよう
ちょいと家庭科室を借りて、持ち込んだ材料で、調理開始、発動!
あ、今回はオブリビオンは使わず、普通の材料バージョンだ

一仕事終えた後にみんなで食う飯は格別だぞってな

アドリブ、好きにしてくれ


エメラ・アーヴェスピア
まぁ、他にもいるのだからUDCでも戦える人達が居てもおかしくはないわね
私の古巣(UDC)にも居そうだし色々考えられるけど…今は仕事ね
時間よ、猟兵の仕事を始めましょう

潜入時の立場は…どちらでも確実に目立つわよね…教師を選択
とりあえずは図書室での【情報収集】よ、この土地にある伝承を調べたいわ
UDCなら大抵その辺りに何かあったりするのよね
同時に会計の人にお話を聞いてみましょうか…情報料ありで、ね
私のような者を教師として送り込める組織が動く案件よ?
今後を考えるとそう言う力を持った場所との繋ぎ、欲しくないかしら?
当然それが報酬の一つよ
…安心なさい、こちらも仕事である以上、結果は出すわ

※アドリブ・絡み歓迎


黒影・兵庫
異能の力を操り世の平和を影ながら護るなんて超カッコいい!
そう思いません!?せんせー!
(「黒影も同じような立場じゃない?」と頭の中の教導虫が答える)
いや、俺は虫さんの協力がないと全然ですよ...
(「そうかなぁ?まぁいいや、誰に接触する?」)
白倉さんに協力を仰ぎましょう!
(「ほぅ、どうやって?」)
まずは表のお仕事をお手伝いをしながら
こっそり『念動力』とか『第六感』を使って異能性をアピールし
折を見て裏の仕事に協力させてほしいと話を持ち掛け
UC【誘煌の蝶々】を発動して見せ、俺には虫さんという
無限の戦力がいるのできっとお役に立ちます!と売り込みます!
(「うーん、いけるかな?まぁやってみるか!」)
おーっ!


リューイン・ランサード
「転校生」として学園内で行動します。
漢字で龍院・藍茶道と達筆で書いて自己紹介。
ただし、その後は礼儀正しく、というか若干ヘタレ気味な対応で。
彼女の荒谷ひかるさん(f07833)とは別行動です。

怪異が暗躍したり、生徒会が鎮圧したりと、様々な動きが有るのですが、
元になるきっかけがあるはず。
ここは図書館で学園創設の経緯を追うのが近道かなと。

多分、学園にUDCを封印していると思われるので、学園の履歴や学園創設前後の新聞記事や地域伝承の本を読んで把握。
会計・白倉みるくさんに会えば、調べて判った疑問をぶつけてみます。
答えてもらう報酬に、自分の「全力魔法・多重詠唱・破魔・結界術・式神使い」の知識を伝授します。



「ずいぶん、いろいろとお探しですの?」
 背後から声を掛けられ、やはりか、と感じながら猟兵は振り返る。
 そこには、瓶底眼鏡をくいと上げ、レンズの奥から目を光らせた少女が立っていた。
「ここにはいろんな本がありますのよ。でも、ある特定の種類の本を調べようとすると、私にはわかるようになっていますのよ。大事な本ですので、放っておくはずはないのですのよ。確か、転校生の……龍院さん、ですのよ?」
「あ、はい。龍院・藍茶道、です」
 リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)は素直に答える。彼女は、とりあえず図書室でこの學園と怪異に関する情報を集めようとしていたのだが、行動を始めようとした途端、彼女の感覚に引っかかるものがあったのだった。
(あら、なるほど。術式……どうやら特定の情報収集活動に反応する術式が組み込まれていますね)
 確か、とリューインは思い出す。
(この図書室にいつもいるのは、法術使いの会計、白倉みるくさん。ならば、その程度の仕掛けはあるということですね……なら、いっそのこと、掛かったふりをしてお会いしてみましょうか)
「理由を伺ってもいいですの?」
「それはこちらから」
 横から静かに歩み寄り、答えたのは、黄金に波打つ髪を煌めかせた美女、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)だった。

【第四話『往古』】

(なるほど、術は本物というわけね。まぁ、他にもいるのだからUDCでも戦える人達が居てもおかしくはないわね。私の古巣にも居そうだし色々考えられるけど……今は仕事ね)
 想いを馳せながら、エメラはみるくに向き直る。
「確か、新しく来られた、アーヴェスピア先生、ですの?」
「ま、そういうことになっているわね。でも、おかしくない? 自分で言うのもなんだけど、私のような教師だなんて」
 エメラの言葉に、みるくはまじまじと彼女を見つめる。
 世界の加護により、一般の住民は猟兵たちの姿に違和感を抱かない。だが、猟兵自ら意識をそちらに向ければ、「気づく」ものもいる。
 エメラの、教師としての年齢にそぐわぬ人形のような外見、そして名前通りエメラルドのような緑色の瞳に、みるくは瓶底眼鏡の奥の目を光らせた。
「……でも、先生と伺っていますのよ」
「そういうこと。つまり、私のようなものを、教師として送り込める「何か」あるいは「誰か」が動いているということよ」
「……それを、御自分でおっしゃっていいんですの?」
「単刀直入に言った方が話が早いからな」
 図書室の入り口からぶっきらぼうに一人の男の影が声を掛けた。
 その男、備傘・剱(絶路・f01759)のことを、確か、用務員としてみるくは記憶していたが、その自分の感覚を疑い出す。何かの問題が起き掛けている……そう感じ、みるくは密かに踵を軽く浮かせ、さりげなく動きかけた。
「きちんとした禹歩です。お見事」
 だがその刹那、にっこりと笑ってリューインが声を掛ける。歩法によって術を掛ける禹歩。陰陽師でもある彼女からみても、みるくの行動に卒はなかった。しかしその彼女の言葉に機先を制され、みるくは動きが取れなくなる。
「だからまあ話を聞け。害を加えるつもりならとっくにしてるってことはわかるだろ?」
 剱の声に、大きなはきはきとした声で、もう一人が加わった。
「そうです! 害どころか、むしろ超カッコいいです! 異能の力を操り世の平和を影ながら護るなんて!」
「……はっきり言うなあ。単刀直入にも加減ってもんがあるが……」
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の裏表ない明朗快活な言葉に、剱は眉間を抑えながら肩をすくめたのだった。

「で。結局あなたたちはどなたなんですのよ?」
「はい! 俺はこのたび転校してきました黒影兵庫と言いまして……」
(黒影。そのシークエンスはもう終わってると思う)
 兵庫の脳に寄生する、彼の師であり慈母のような存在でもある「せんせー」ことスクイリアがツッコむ。
「でも、自己紹介をきちんとしておこうと思いましたから! 礼儀は大事です! せんせーにもそう教わりました!」
(いやそう教えたけどね……)
「先ほどからどなたとお話してますのよ?」
「はい! それは俺の脳の中にいる蟲さんで、せんせーという……」 
「の、脳!? 蟲!?」
(黒影黒影、どんどん話がややこしくなってる。いったん仕切り直そう?)
 スクイリアが軽く脳を刺激し、兵庫はがくりと糸が切れたように椅子に座りこむ。
 少々気まずげにその様子を見ながら、こほんと咳払いし、改めて剱がみるくに向き直った。
「あー。つまりだ。お前さんの術を見破ったり、明らかに普通じゃない者をこの學園に送り込んだり、そういうことができるのが俺たちってことだ。逆に言えば」
「そういう私たちがここに来なければいけない危機的な状況になっている、と言うことよ」
 剱の言葉をエメラが引き取る。
「……先ほどの黒影さんの言葉と言い、どうやらあなたたちは、この『學園』のことを、そして……私たち『聖斗会』のことをご存知のようですのね」
 みるくは混乱する自分の思考を纏めようとするかのように言葉を絞り出す。
「その通りです。そして、あなたたちに協力して、迫る危機からこの學園を護りたい。それが私たちの目的でもあります」
 リューインの言葉に、みるくは眼鏡を光らせた。
「……それに対する……」
「報酬? もちろん用意しているわ。例えばここに私たちを赴かせた組織へのコンタクトなんて、かなり大きいものじゃない? 今後を考えると損はないはずよ」
 エメラの答えにリューイン、そして剱も続く。
「みるくさんの術はお見事です。同じ術師として、それをさらに充実させる様々な知識や技術のお手伝い、させていただけますよ」
「俺は、まあ、飯だな。自慢じゃないが俺の飯を一口でも食った奴ぁ一生忘れられないぜ。それを生徒会全員に振る舞おう。一仕事終えた後に全員で食う飯はさらに格別だぜ」
 猟兵たちの言を黙って聞いていたみるくは、くいと眼鏡を掛け直し、静かに口を開いた。
「確かに皆さんの、『私たちへ対する報酬』は素晴らしいものに思えますのよ。……でも。『皆さんへの』報酬はどうですの? 危険な戦いだと先ほど皆さん自身がおっしゃいましたのよ。それなのに、何の代償もなく、この學園のために力を貸そうと、そうおっしゃってくれるのですの? 私は、無料奉仕を信じませんのよ」
 猟兵たちが一瞬言葉に詰まった時、ぽつりと傍らから声が漏れた。
「無料じゃありませんよ?」
 その素朴な声の主は、兵庫だった。
「だって、何よりすごいものを、価値のつけようがないくらい高価なものを、俺たちは貰うわけじゃないですか。──この學園の平和、っていう」
「……この學園の生徒でもないあなたがそうおっしゃるのですの?」
「さっき自己紹介しましたように、俺はこの學園に転校してきた生徒ですよ。短い期間でも。そしてそれは、他の皆さんも一緒です!」
 にっこりと笑う兵庫の白い歯の輝きが、みるくの心に沁みとおるようだった。

「……わかりましたのよ。では、私の知る限りのことをお話しますのよ」
 みるくは書架から一冊の本を抜き取ると、居住まいを正して猟兵たちに向き直った。
 猟兵たちも机を囲み、みるくの言葉に耳を傾ける。
「事件の元になるきっかけがあったはずですよね」
 リューインの問いにミルクは頷いて、ページをめくっていく。
「この本によりますと、とても昔から、この學園はあったそうですのよ。もちろん、昔は学校ではなかったそうですが、学問所など、とにかく『人の──それも若い人の集まる場所』として存在はしていたそうですのよ」
「……そこにこだわるわけね。それ自体に何か意味があるということかしら。んー、若い人か……生命エネルギーの強い人を集めた?」
 首を傾げながらのエメラの言葉に、みるくもこくりと頷く。
「実は、さらにそれを遡ると──この場所で、ある「怪異」が退治されたという話もありますのよ。いえ、完全には退治されず、封じられただけという異説もありますのよ。この學園は、その跡地に立っているということですのよ」
「つまり封印の場所としてこの學園が成立した……、その封印を保つために、若く強い生命力を常に供給している必要があった、と考えられるでしょうか」
 人差し指でとんとんと白い頬を叩きながら考えつつ言うリューインの声に、剱が疑問を投げかける。
「だが、そいつがUDCだっていうなら、何故復活しようとしているんだ? よくある話では、封印の祠とかを工事やら何やらでうっかり壊しちまった、とかいうこともあるだろうが、この學園には『聖斗会』が目を光らせている。そんなうっかりミスを起こすとは思えねえな」
「……私たちもそこで考えが行き詰ってしまいましたのよ。何度調べても、別に何か手違いがあったような記録はありませんのよ」
 困惑したように沈むみるくの声に、ドン、と胸を叩いて兵庫が立ち上がった。
「じゃあ、もう一度調べましょう! 100回調べて分からないことでも、101回目でわかるかもしれません!」
 明るく率直な兵庫の声に、猟兵たちもみるくも苦笑し、けれど新たな力を得る。常に下を向くことなく前に進み続ける、それが過去ではなく未来へ生きる人の強さでもある。
「確かにな。その封印の場所ってのがもっと詳しくわかれば、そこに実際に行ってみるのもいいかもしれねえが、どうだ?」
「では、もう一度史料をいろいろ調べ直してみますのよ」
 剱の言葉に、みるくは強く頷くと、悪戯っぽく微笑み、唇を開いた。
「それはそれとしまして、先ほどお約束頂いた報酬、お忘れなく、ですのよ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
この世界では珍しい、能力者が一堂に会する学園……何やらきな臭いですね。
ともあれ、UDCを見過ごしてはおけません。
行きましょう、精霊さん達。

向かう先はパソコン室、書記の赤居さんの所へ
簡単に挨拶と名乗りの後、単刀直入に怪異の話を切り出しましょう
肩書は「転校生」……勿論わざわざこの学園に来る、怪異を知る存在ですからただ者ではない証拠になるでしょう
(身分証や制服等必要な物はUDC組織に依頼して揃えてもらう)
力を示す必要があるなら【氷の精霊さん】にお願いし、425本の氷の槍を作り出して自在に動かして見せますね
これ以外にも、8種(炎水風地雷木光闇)の精霊さんの力を借りられます
それらも全て、お見せしますか?



「……それって、どうやんの?」
「はい?」
 『聖斗会』書記、赤居小鳥の、思いもかけない反応に、荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)はきょとんと大きな瞳を瞬かせた。椅子の上に小さな体を押し込んで胡坐を描いている小鳥だが、その眼は輝いて、興味津々といった様子が見て取れる。
「なんてかさ、コツとか。練習するときに気を付けることとか」
「いえ、コツは特に……精霊さんたちとしっかり意思を通じるということくらいしか」
「そうかー。……精霊さんねえ。それは「怪異」とも違うみたいだけど」

【第伍話『変化』】

 あれこれ語るよりも手っ取り早く自分の力を見せた方が早い。そう判断し、ひかりは小鳥に面会すると、氷の精霊の力を呼び出して見せたのだ。小鳥の炎を凍らせるほどの力を。
 それに対する小鳥の反応が、「それ、どうやんの?」であった。
「もちろん、精霊さんは「怪異」とは違いますよ。もっと私たちに近い、心を触れ合える関係のものです。そして多分、普通の人には精霊さんと意思をかわすことは難しいでしょう……ああ、もちろんあなたが「普通」の人ではないことは知っていますが、それでも」
「そっか。残念。そういうの覚えれば、戦うのも、も少しめんどくさくなくなるかと思ったんだけど」
 おや、とひかるは改めて小鳥の小柄な姿を見直す。事前情報では、彼は面倒くさがり屋だと聞いていたのだが。
「もし可能なら、自分でも覚えようとしたのですか?」
「だって、そのほうが面倒臭くないじゃん。色々な引出しを自分の中に持ってた方がさ、いざというときに慌てて他の手段を探し回らずに済む」
「まあ……確かに」
 なるほど、とひかるは心中で頷いた。
 小鳥の「面倒くさがり屋」というのは、つまり。
(「自分が後で楽をするために今の苦労を惜しまない」という意味での面倒くさがり屋、なんですね、ふふ)
「んで、そんな力を使う君が、たまたま偶然この學園に来た、なんてことはないわけだよね。わざわざ制服まで作って、用意周到に」
「え、に、似合いませんか?」
 ひかるは小鳥の指摘に、慌てて自分の姿を見回す。ふわり、とスカートが翻り、スカーフが踊る。東真学園の制服は清楚なイメージのセーラー服、いまどき逆に珍しいオーソドックスなスタイルのものだ。
「いや、そんなことは全然ないけどさ。君、ちっちゃいでしょ。俺とおんなじで。だから、制服のサイズ合わせる苦労分かるなーって」
「あー……ですね……」
「だよね……」
 小鳥もまた、学ランをだぶだぶに余らせているほどに背が小さい。二人は意外な点で共通項を見出し、しみじみと頷きあうのだった。
(もしかしたらUDC組織の方、このサイズの制服用意するの、大変だったのでしょうか、うう……)
 忸怩たる思いを噛みしめたひかるに、小鳥は頭の後ろで腕を組み、のんびりと尋ねる。
「じゃあ、ちびっ子同盟の君に、改めて目的、聞こうかな」
「いつの間にそんな同盟が……。まあいいのですが。私たちは今お見せしたような「力」を持つものです。そして、あなた方と同じような境遇にあるものでもあります」
「……「怪異」と戦う?」
「はい。そのために、あなたのお持ちの情報を聞かせていただければ」
「情報かあ。つっても、結構アプデが頻繁なんだよね、「怪異」。「怪異」の中のSEの人は良くやってると思うよ」
 くすくすと笑いながら、小鳥はUSBメモリを取り出し、PCへと接続する。軽やかな指の動きにつれ、モニタに情報が映し出されていく。
 それは、「怪異」の生態、能力、外見、攻撃範囲などを詳細に記録した一覧だった。
(これは……すごいです。なるほど、「あとで楽をするために苦労を惜しまない」小鳥さんの性格が現れていますね)
 ひかるが感心して眺める中、小鳥はマウスポインタでいくつかの項目を指して見せた。
「例えば、こいつと、こいつ。外見も攻撃方法もよく似てるけど、でも、より強化されている。単なる個体差かっていうと、そうでもない、出現時によって多少の上下幅はあるんだけど、全体的に力が底上げされて行ってる傾向があるんだ」
「つまり、「怪異」が強くなっている……」
 ひかるは考え込み、グリモア猟兵の予知情報と合わせて想いを馳せた。
「やはり本体というか、黒幕のUDCの復活が近い、ということなのでしょうね。だからそれにつられて怪異も強くなっていって……」
 そこまで呟き、しかし。
 ──いや、そうだろうか、とふとひかるは考えを止めた。
 もちろんUDCにもいろいろな個体がいる。故に一概には言えないだろうが、
(……とにかく復活したい、という前提なら、下手に怪異などを放って力を漏らすより、自分の内側にため込んだ方がよくはないでしょうか……? もちろん、自分でも制御できないほどの力が放出されている、という可能性もあるでしょうけれど、逆に、復活が間近いほどに目覚めかけているのなら、かえって力を制御できるのでは……?)
 では、──あえて力の強い怪異を放つ理由は何なのか。
 そんなことをすれば『聖斗会』たちに目を付けられ……。
 ぴしり、と軋んだようにひかるの思考が凍る。
(『聖斗会』に……能力者たちに、あえて「目を付けさせる」のが目的だとしたら……!?) 
 ひかるの表情が固まる姿を、小鳥は不思議そうに見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

叢雲・源次
【煉鴉】

目標:結川真里亜との接触及び協力関係構築
偽装身分:新任教師。担当科目は数学
手段:適当なオカルトの噂をでっち上げそれを探っているという体で聖斗会の目を引き接触する

…教師…俺が教師か
まぁいい…UDC案件ならば四の五の言ってられん
UDC組織へ情報操作を要請。「空飛ぶラーメン天使の謎」とかいう訳のわからん噂をネット経由で学園へ流し、それを探っているという体で聖斗会の目を引きあわよくば接触する

「…そんな馬鹿げた噂など真面目に探すものか。俺達の目的は、お前達聖斗会だ。単刀直入に言う…協力を要請する。そちらと同様にこちらも相応の覚悟を以て事に臨んでいる。全てはUDC殲滅の為だ。それ以上の理由はない」


グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
Hi, My name is Gwendolen Grainger.
Please call me Gwen.
ハジメ、マシテ、ヨロシク、オネガイ、シマス
ロンドンから、の、転入生、装う
喋るの、苦手、誤魔化せる……学校、通ったことない、から、頑張る

目標、真里亜との、コンタクト。それと、友好関係

『空飛ぶラーメン天使の謎』ザルから、生まれた、無原罪の生物
を、本気で信じて、探してるフリ

「ごめん……あなた、と、話したくて」
真里亜……に、接触できたら、第六感……で、一つ、探りたい
私と『何か』同じ所、似た所……あるか、ないか
信念と……戦う力、私にもある
UC、発動だけ、させて、見せる
どうか、協力、して



「……俺が教師か……まぁいい……UDC案件ならば四の五の言ってられん」
 叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は放課後の学食で眉間にしわを寄せながら、それでも自分に言い聞かせるように呟いた。
「でも、似合って、た。授業、分かりやすい、って、みんな、言ってた」
 向かい側に座るグウェンドリン・グレンジャー(Pathetic delicate・f00712)が小さな笑みを浮かべる。
 彼女自身、学校という環境に身を置くのは初めてだった。調査と戦闘、それ自体が重要な任務であることは承知していても、つい物珍しさに視線がさまよいそうになる。身に纏うセーラー服も、他愛ない話で盛り上がる休み時間ごとの喧騒も、生徒たちの、バレていないつもりで実はバレバレな授業中の内職も。すべてがグヴェンドリンにとっては鮮やかに目に映っていた。
「数学は理論だからな。理論は明快なものだ。明快なものは理解しやすい」
 世の中の文系諸氏が聞いたら目を回しそうな理屈を吐いて、源次は立ち上がる。
「さて、そろそろ種も芽吹いたころだろう。短い間だったが、堪能したか? ……では、仕事だ」
 低く抑えたような源次の声に、グヴェンドリンも表情を改め、こくりと頷く。
 二人が連れ立って赴いた先は──。

【第禄話『焦点』】

「そ、空飛ぶラーメン天使……ですか?」
 多くの怪異を真正面から見据えて動じることのない『聖斗会』会長、結川真里亜の瞳がはっきり動揺している。まあ無理もないが。生徒会室に訪れた新任教師と転校生が、都市伝説を研究しているという名目で、いきなりそんな謎のパワーワードを浴びせかけてきたのだから。
「ザルから、生まれた、無原罪の生物、と、聞きます。すばらしい、ですね? 会長さんも、ラーメン、お好きではない、ですか?」
 グヴェンドリンの無垢な瞳に見つめられ、真里亜は思わずこくりと頷いてしまう。
「え、ええ。ラーメンは、好きですが。ラーメン天使、というのは、でも……」
 普通ならいくら優しい真里亜でも、さすがに、何を言っているのだろうか、と首を捻るところだが、そうはいかない理由があった。源次とグヴェンドリンがその謎の名を口にするよりも早く、真里亜の耳にも、どこからともなくその噂が届いていたからだ。「空飛ぶ」「ラーメン」「天使」、そんな、決して結合するはずのない単語同士が結びついた存在の噂が。
(も、もしかしたら、そんな新しい「怪異」が現れたのかしら?)
 危うく真里亜が真面目に考察しかけた時、ぽつりと源次がつぶやいた。
「……まあ、そんな馬鹿げた噂など真面目に探しはしないがな」
「え!? でも先生は、その噂を研究していると、先程……」
 真里亜が目を白黒させた姿を不愛想に見つめ、源次は広く尖った肩をややすくめた。
「つまり、俺たちはそう言う「噂」を故意に流させ、お前たちの耳に届かせることができる……そういう立場にいる、ということを簡単に実証して見せたかった。それだけだ」
 源次の言葉に、真里亜は表情を硬くする。
 すでに何人か出会った、自分たちさえはるかに上回る、超越した能力の持ち主たち。
 では、……この眼前の二人も、また。
「あなた方も……『猟兵』なのですか」
「yes. ごめん……あなた、と、話したくて。こういう力、ある、です」
 居住まいを正した真里亜の前で、グヴェンドリンがふわりと手をかざす。と、そこには純白のドレスを身にまとった虚ろにして朧な姿の美姫が一瞬にして顕現していた。
 思わず息を飲む真里亜に、源次が言葉をかける。
「ま、こいつなりに、話のきっかけを作ろうと努力した結果だ。そこは認めてやってくれると嬉しいが」
 源次のぶっきらぼうな、しかし労りを込めた言葉に、真里亜は表情を和らげて微笑んだ。
「ふふ、少し驚きましたが、でも、確かにきっかけにはなりましたね。でも……ふふ、ラーメン天使ですか、ふふ。可愛らしい発想をなさる方なのですね」
「カワイラシイ? ……そうなの、ですか?」
 グヴェンドリンは少し不思議そうに首を傾げ、しかし、楽しそうな真里亜の姿に、自らも微かに、唇を緩める。普段は無表情のはずのそんなグヴェンドリンの姿を、源次は静かに目に映していた。

「では、先生方も、「怪異」に関しての情報をお求めということですね」
「うむ。多少、出遅れたようだが」
「いえ、実は先ほど、他の猟兵の方々とお話をして……」
 と、真里亜は校内マップを広げてみせ、その一点を細い指先で示した。
「この地点を重点的に調査する必要があるのではないか、ということになったのです」
「そこは?」
 源次とグヴェンドリンが地図上で目にしたのは、学園の外れにある、周囲からぽつりと取り残されたような何らかの構造物。そこに眼を据えながら、真里亜は言葉を続ける。
「旧倉庫、と私たちは呼んでいます。赤レンガ積みの大きな建物で、文字通り、かつての……かなり以前からもう使われなくなっている、かなり大きな倉の跡です。いえ、そもそも、倉庫であったのかどうか。そこを実際に使用したことがある人はもう誰もいないのです。そのくらい古くから、この學園にあって、取り壊しもされないままに今に至っています」
 源次は真里亜の言葉に腕を組んで考え込む。
「なるほど。そこが「焦点」になっている可能性があるということか。……ならば、次の目的地はそこだな。乗り込む前に少し視察をしておくか」
 感情を見せずに言い切った源次の言葉に、真里亜は少し眩しそうな目を向けた。
「先生方は……戦いに臨まれることに躊躇いはないのですね。……私はいつも、少し、怖いです。……震えることも、あります」
「だが、逃げない、そうなのだろう? 怯えるのは当たり前で、それでも進む。それが覚悟だ。……そしてお前たちと同様に、こちらも相応の覚悟を以て事に臨んでいる。全てはUDC殲滅の為だ」
 源次は立ち上がりながら真里亜に深いまなざしを向ける。真里亜はその視線を受け止め、自らの中でしっかりと噛みしめているようだった。
「では、私、も、行きます。会長さん、また」
 源次に連れ立って立ち上がったグヴェンドリンが細い手を差し出す。真里亜はその手を取り、二人を見送った。
 生徒会室を後にしながら、けれど。
 グヴェンドリンは、小さく考え込んでいた。
 彼女の鋭い感覚──第六感ともいえる超常の感覚が放つ、微かなアラート。
「何か、あったのか」
 源次の問いかけに、グヴェンドリンは堅い声音で応える。
「……会長さん、私と。『何か』同じところ、ありました。……UDCの体組織と刻印を持つ、私と、何か、同じところが……」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アイ・リスパー
【PPP】
「生徒会……聖斗会、でしたっけ?
彼らへの接触は仲間たちに任せて私は外部から情報の収集と整理をおこないましょう」

ホロディスプレイとキーボードを展開し【チューリングの神託機械】で電脳空間の万能コンピュータに接続。
ネットに接続して調査を開始します。

「UDC組織のデータベースを検索。
あとは新聞やネット記事、学校の裏サイトなどもチェックですね」

学園内部の情報だけからは分からないような情報にもアクセスし、仲間たちからの情報と統合。
学園の謎と復活しつつあるUDCについて調べます。

「それにしても、潜入したフィーナさんとシャルロットさん、大丈夫でしょうか?
あの二人が張り切ると碌なことにならないような」


フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
屋上へ副会長のとこに行くわ!拳で語りあった方が早そうね!
目的は認めてもらうとかじゃなく無駄な自信とか驕りをへし折りにいくのよ!

寝てるなら【殺気】を放って起きてもらって挨拶をするわ!
名乗る程のもんじゃないわ!私は謎の転校生フィーナ・ステラガーデン!
身の程を教えにきたわ!
出来る限り派手に学校を破壊しない程度にUCで爆破して【恐怖を与える】!
隙あらば【怪力】で殴る蹴るの暴行を行って強い相手はいるってことを身をもって知ってもらうとするわ!
ほら!あんた強いんでしょ!?立ちなさいよ!
やり過ぎちゃったら、まあその時はその時ね!私は気にしないわ!

後は仲間と合流かしら!
(アレンジアドリブ大歓迎!)


シャルロット・シフファート
PPP

書紀が一人きりのPC室、そこに少女が現れる。

アンタが赤居小鳥ね?
(タブレットに文を表示し)『屍律討魔學園 聖斗会』の書紀。
私はシャルロット・シフファート、『猟兵(イェーガー)』という組織の構成員よ。

単刀直入に言うわ。次に出会う怪異はアンタたちの手には負えない。
その為今回はバックアップを担当してほしいの
(UCで最上位の炎属性魔術、空間を炎の異世界に変換するのを見せながら)

そして彼らのプライドを傷つけないようUDC組織のデータなどを参照させて説得を行う。
今は実力不足でも、その先に大輪の華となれる可能性を示しながら。
「いつか、アンタたちが私達の位階に来れるのを守りたい。そういう事よ」


アリシア・マクリントック
【PPP】
私は転校生として会長さんとお話を。
生徒会長と貴族では規模も意味も違うとはいえ、人を治めるものであることは同じ。私は私が治める人々とその友を、そして一時とはいえ縁を結んだ人々を守りたいのです。貴女もその志は同じであると信じています。どうか力を貸していただけないでしょうか?
ここでは怪異が多く見られると聞きましたが、私はここに来て日が浅いですから……何が「よくあること」の範疇なのかがわかりません。ですので「よくあること」はいつもどおりそちらにお任せして、普段とは違ったり、違和感を覚える……いわば「変わったこと」がありましたら教えていただいて、それの対応を任せていただけないでしょうか?



●フィーナ
 校舎屋上。
 その戸口に背をもたれさせ、『聖斗会』副会長、天部拳護は、ひたすらに青い空を見つめながら、ゆっくりと流れていく白い雲に思いを馳せていた。
「へっ、空は広いなァ。……そして、世界も広い。強え奴らがいるもんだぜ……」
 先ほど手合わせした猟兵と名乗る者たちを思い浮かべる。強い奴らがいる、それは少し悔しく、そして胸が躍ることでもあった。もっともっと、自分も高みへ昇れるだろうか。いつか、あの高い空に手が届くほどに──
「謎の『転校生』の時間よコラァ!!」
 背後から戸口もろとも蹴り飛ばされながら、拳護は遠い自分の夢を見つけたように思って……
「って、思うかッ! そんなのんびりしたことッ!」
 ごろごろどっかん。戸口の残骸と共に勢い余って屋上端の鉄柵まで吹き飛んだ拳護は、逆さまになりながら、そこに現れた人影を睨みつける。
「何だ、てめェは!?」
「何だとは御挨拶ね! 名乗るほどのものではないけど目を見張るほどのものよ! この可憐な容姿が目に入らないのかしら!?」
 それこそはフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)。彼女がドヤッとした表情でセーラー服(けっこう似合っている)の胸を張っている姿に、拳護はジト目を向けた。
「すまねェ、いつの間にか俺の知ってる日本語と『可憐』の意味が変わったみてェだ」
「なら覚えておくといいわ! 可憐とは私のこと、そして私とは可憐のことなのよ! 可憐と書いてフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす)と読むのも許可してあげるわ!」
「そうか、いい頭の病院を紹介するからなるべく急いだほうがいいぜ?」
「ケンカ売ってんの!? いいわ、言い値で買ってあげるから感謝しなさい!」
「ちょ、ま、最初にケンカ売ってきたのはそっちの──」
 単純で重い【火力の大爆発】の一撃を叩きつける。
 直撃地点の周辺地形は破壊される。
 あと、拳護も破壊される。
「……えっと、何しに来たんだったかしら? まあいいわ、私は気にしない!」
 一通り暴れて満足したのか、惨状を後に、颯爽とセーラー服(けっこう似合っている)を翻して階段を下りていくフィーナを、背後から弱々しく拳護の声が追うのだった。
「気にしろよ! ってか、せめてストーリー進めろ!」

【第七話『集結』】

●シャルロット
「アンタが赤居小鳥ね?」
「他に該当者がいなければ、多分そうだろうね」
 PCの画面から目を離さずに答えた小鳥に、シャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)はおもむろにタブレットを突きつける。
 私立東真学園生徒会書記、ではなく──『屍律討魔學園聖斗会書記』と表記された文字列を見せつけるように。
「……へえ。『そっちの方』の用事か」
 椅子をくるっと回してシャルロットに向き直った小鳥に、シャルロットは縦ロールをふわりとなびかせ、艶やかな唇を開く。
「アンタ、ストレートな言い方が好きだそうだから。こっちも単刀直入に言うわ。──次に出会う怪異はアンタたちの手には負えない」
「は、いいね、そのはっきりした言い方。わかりやすくてさ」
 小鳥もニヤリと笑みを浮かべ、チェアの背もたれにその小さな体をゆったりとあずける。
「もっとも、こっちもこっちで、これまで學園を護ってきたって気持ちはあるけどね。確か、猟兵、とかいうんだろう、さっき会った子もそう言っていたよ。強いんだろうさ。だから俺たちは用済みってわけだ」
「……そうじゃないわ」
 シャルロットは少し物悲しげな光をその瞳に宿し、小さく首を振った。
 やや投げやりな小鳥の言葉から、彼の自尊心が微かに傷ついていることを、シャルロットは察している。
 誰もが否定しようのないツンデレであるシャルロットだが、それは、彼女が人の心の痛みを分からぬことを意味しない。むしろ、人の傷つきやすい心を知るが故の、華麗で繊細な鎧こそが、シャルロットのその態度でもあった。
「アンタたちがこれまで學園を護ってきた実績は確かなものだし、それは尊重されてしかるべきだと思うわよ。でも、今回だけは、『まだ』アンタたちだけじゃ無理。今は、ね。そして同時に、私たちだけでも無理なの。この學園を実際に護り、この學園の実態を知り、詳しい情報を持っているのは、私たちじゃなくアンタたちなんだから。お互いにお互いの力を必要としてるのよ」
「Win-Win、かい?」
「ええ、そうね。そして、いつかアンタたちが、大輪の華となれるように……私たちと同じ位階に来られるように、今はアンタたちを護らせて」
 願うような、シャルロットの声。それは決して表面を取り繕うだけのものではなく、彼女の魂の奥から滔々と流れ出る真摯な言葉でもあると、小鳥にも伝わっていた。
「……言葉が上手いね。……ま、そう言ってもらえばこっちの気分も良くはなる。あんた、どっかのお嬢様? 人の使い方をよく知ってるよ、悪い意味じゃなくね」
 くすくす、と笑みを漏らして、小鳥は納得したようにうなずいた。
「さて、そんじゃ、少し話すけど……「怪異」だけじゃなく、この學園の伝承についても、もう少し調べてみたんだよ。だけど、正直、よく分からない。だって、そこに浮かんできたキーワードは──」
 小鳥の漏らした次の言葉に、シャルロットは思わず己の耳を疑い、慄然とした。
「……『女神』だったんだから」 

●アリシア
「普段と変わったこと、ですか」
 『聖斗会』会長、結川真里亜の、少し困惑したような声が漏れる。それは、アリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)の問いかけに応じてのものだった。
「ええ、ここでは怪異が多く見られると聞きましたが、私はここに来て日が浅いですから……何が「よくあること」の範疇なのかがわからないのです」
 すでにアリシアと真里亜はお互いの素性──猟兵と『聖斗会』であることを明かしている。
 貴族と生徒会長、規模は違い、意味も異なる、それでも、人を治め、その安心を齎すものとしての立場は、ある意味共通するものがあった。アリシアと真里亜は、世界も種族も越えて、一種の共感をお互いに覚えていたのだった。
 ……ついでに、多少手を焼く仲間がいる苦労、という点でも、二人の立場は共通していたりもしたが。
「悪いひとではないんです、悪いひとでは。ただ、突っ走るとどうにも……」
「そうなんですよね……どうにも……そのあとの始末とか……」
 はあ、とため息をつき、かくして苦労人コンビはここに固く手を結ぶ。
 その上で、「よくある怪異」という、やや語義矛盾のような要素を取り除き、異変の本質が何かを、アリシアは探ろうとしていた。
「難しいですね……「よくあることではないこと」が全て怪異だともいえますし、あとは、……でも」
 最後の方で独白のように言葉を飲み込みかけた真里亜の声を、野生動物並みの感覚を有するアリシアは鋭く聞きとがめた。
「『でも』何かある、のですか?」
「あ、いえ、大したことではないと……」
「いえ、それでも、何か気にかかることがあるのでしたら、教えてくだされば助かります」
 言いにくそうにしている真里亜にアリシアは食い下がる。勘──とでもいうべきだろうか、些細なことでも大きなきっかけになるかもしれないと、アリシアの内奥が告げていた。
 そのアリシアの真摯さに打たれ、真里亜は少し恥ずかしそうに、やっと口を開く。
「……私個人のことなので、多分「怪異」とは関わりないとは思うんです。でも、気のせいなのでしょうが、……誰かに呼ばれる気がするんです、時々」
「呼ばれる……?」
「疲れているんだとは思います。それとも、ちょっと自意識過剰でしょうか、ふふ」
 少し強がったように自嘲してみせる真里亜の姿を見ながら、アリシアは考え込む。
 真里亜は──「ただの少女」ではない。
 猟兵には及ばずとも、霊能力者、それも、相当に強い霊力を持つ少女なのだ。
(真里亜さんの霊力に直接干渉してくるというのなら……それ自体、十分大きな問題になり得ます……!)
 
●アイ
「学園外部から俯瞰した情報を得るのも重要でしょうね、内部の情報収集はみなさんにお任せするとして……電脳空間への接続を確認。万能コンピューターへログイン。オペレーション開始します」
 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は電脳空間に万能コンピュータを展開し、広範囲の検索で、東真学園──いや、討魔學園に関する情報を収集しようと試みていた。それこそがアイの誇る能力、【チューリングの神託機械】。
 UDC組織はこれまで學園に直接介入せず、監視にとどめてきた。だが。逆に言えば、監視自体は長い年月にわたり、行ってきているともいえる。そのデータベースに蓄積された資料は膨大なものに及ぶだろう。
「取捨選択が大変ですが、ポイントを絞りましょう。おそらく、過去──學園の過去、いえ、もっともっと遡った過去から、事件の端緒が現れていたはずです」
 グリモア猟兵の予知に現れるほどの強大なUDC、という時点で、それは完全に歴史の影に消えることはないはずだ。どれほど微かな、霧の彼方のようにぼやけた姿であったとしても。
「伝承……昔話……伝説……ファジーな情報も視野に入れて……」
 と、不意にアイの検索の手が止まる。紅い瞳が、僅かに大きく見開かれた。
「『女神』……古の女神? いえ、それは力の源そのもの……それを人は女神と呼称して……力そのものは正にも邪にも作用する……」
 アイは、いつしか額に浮かんだ汗を拭う。電脳空間で流れるはずのない汗。それは脅威の概念が形を為したものと言えた。
「……どうやら、概要がつかめてきたようですね。いったん、皆さんと合流しましょう」
 アイは現実空間へと復帰し、足早に仲間たちの元へと向かう。長い髪をなびかせながら、彼女はUDCとは異なるもう一つの懸念について思いを巡らせていた。
(……それにしても、潜入したフィーナさんとシャルロットさん、大丈夫でしょうか?
 あの二人が張り切ると碌なことにならないような……)
 そこまで考えた時、どこか上の方……具体的には校舎の屋上付近で爆音が聞こえ、アイはがっくりと細い肩を落とす。
(……碌なことにならなかったようですね)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『呪われし精霊『アンウンディーネ』』

POW   :    ドロドロ抱擁
【直接抱き着き】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鍾乳石化する体液】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ドロドロ噴射
自身の身体部位ひとつを【鍾乳石化する体液を噴射する散水ノズル】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ   :    ドロドロ降雨
【鍾乳石化する体液】を降らせる事で、戦場全体が【鍾乳洞】と同じ環境に変化する。[鍾乳洞]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かくして、それぞれに情報を集め終わった猟兵たちは、今、『聖斗会』メンバーに案内され、集結を完了していた。
 目の前にそびえるのは「旧倉庫」と呼ばれる巨大な、そして古い建物。
「怪異」の事件はこの地点を中心に発生しているようだとの分析が完了したのだ。
 だが、「怪異」はその強さを増しているという。あたかも……「怪異」に対抗する『聖斗会』の力を引き出すように。
 そして、『聖斗会』の中心である会長、真里亜の内部にも、異変を感じ取った猟兵は多い。
 彼女に何が起きようとしているのか。
 そして、『女神』──それがUDCの正体なのだろうか。
 猟兵たちはすべての謎を解くため、「旧倉庫」へと足を踏み入れる。
「旧倉庫」の奥深くにぽっかりと空いた大穴……そこは地下深く続く大洞窟の入り口でもあったのだ。
 だがそこはすでに、UDCの巣窟と化している。これを殲滅しつつ、奥へと進まねばならない。

 なお、『聖斗会』メンバーは支援のため同行している。事態の真実を見極めるのが、学園の守護者である彼らの務めでもあるのだから。
 彼らが前線に出ることはないが、念のために敵の攻撃が向かないよう、注意しつつ戦ったほうがいいだろう。
(『聖斗会』を護るような戦い方をすることでプレイングボーナスが発生します)
備傘・剱
お、肩慣らしにゃ、丁度いい奴が出てきたな

聖斗会ズには万が一の為に、護霊亀のメダルをこっそり張り付けておくぜ
あっちも、守られてるって思われたら、癪だと思うしな

って事で、呪殺弾、衝撃波、誘導弾、ブレス攻撃と、頭の上の一足りないによるダイス攻撃で一気に吹き飛ばしてやるぜ
ゲル状の奴だからな、単純打撃よりも、この手の攻撃の方が効果あるだろう

俺自身はオーラ防御で攻撃を防ぐし、近づいてきた奴には、結界術で動きを封じて、念動力ですりつぶしてくれるわ

聖斗会諸君よ、今後の戦い方の参考になる様なものはあったかな?
戦闘に格好良さなど、愚の骨頂、出し惜しみのない飽和攻撃は非常に有効なのだよ

アドリブ、絡み、好きにしてくれ


レン・ランフォード
鬼が出るか蛇が出るか…「女神らしいぞ」
まぁ、それが害をなすものなら殲滅するだけです
まずは目の前の敵を蹴散らして最奥へむかいましょう

刀は石化しそうなのでオーガスラッシャーを起動
選択UCを使用し前に出ます
「残像」分身を多数発生させつつ手裏剣「投擲」も混ぜ「フェイント」攪乱
手裏剣の中に数秒後声を出すように仕掛けたスマホを
聖斗会の位置とは真逆の方向に投げておいて攻撃を誘います
引っかかったら死角からの「騙し討ち」「暗殺」で葬っていきましょう

敵の攻撃は「第六感」も合わせて「見切り」回避
もし聖斗会へ攻撃が向かった時のため
その近くに隠れていた、実現符で実体化したれんが
「結界術」の障壁で防ぎます


九重・灯
「よーし、出番だな!」
戦いを前に人格が「オレ」に代わる。
ヒト(人格)には向き不向きがあるからな。

UC【眠りの砂霧】。小瓶を取り出し開封、放たれた砂が霧のように広がる。
寝なくても動きを鈍らせれば聖斗会のヤツらもやりやすくなるだろ。
『範囲攻撃5、催眠術5』

魔力で能力をブーストして攻撃を回避。
『ドーピング5、見切り5』
剣、アザレアで散水ノズルを粉砕。返す刀で真っ二つにしてやるよッ!
『部位破壊5、2回攻撃5、なぎ払い8、怪力7』

(「UDCは聖斗会の力を成長させようとしています」)
もう一人の自分の声が頭の中に響く。
(「力のある者はより良質の贄にもなる……」)
ふん、アイツらを太らせてから喰うつもりかねえ?



「校内の一般生徒の皆さんや教職員の方々の避難は完了しました」
 『聖斗会』会長、結川真里亜が、「旧倉庫」の前に集った猟兵たちに報告する。緊張のゆえか、その清楚な顔は蒼褪めていたが、しかし同時にしっかりとした決意の色も浮かんでいた。
「こちらも、アルバイト先……こほん、UDC組織に手を回してもらいまして、警察に付近を封鎖してもらいました。……まあ、ガス漏れとか何とか、適当に口実を作ってくれるでしょう」
 九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)も口にし、空を見上げる。
 陽は陰り、闇がほくそ笑みと共にその足音を忍ばせ始める時刻。
 明るい「学園」の時間は終わり、昏き『學園』の刻がやってくる……。

【第八話『旧倉庫』】
 
 赤レンガ積みの外見はおそらく明治以降に装われたものだろう。「旧倉庫」の内部はそれよりさらに古く旧いたたずまいを見せていた。
 「危険・立ち入り禁止」と書かれた封鎖の看板をくぐり奥へ進み、地下室へ降りる、その片隅には、レンガや石隗で雑に覆われた一角があった。
 頷き、猟兵たちと『聖斗会』メンバーは協力して石榑を取り除ける、そこには、大地の底までも続くのではないかと思われるような巨大な洞窟が口を開けていのだった。
「……ちッ、自分たちの足元に、こんなあからさまに怪しいところがあったことに気付かねェとは、我ながら情けねェぜ」
 奥へと進みながら、副会長・天部拳護が苦々しく零す言葉に、備傘・剱(絶路・f01759)が振り返る。
「ま、気にすんな。おそらく、意識を逸らされていたんだろうさ。そういうことをできる相手も珍しくはない。それが「こっち側」の世界だ」
「鬼が出るか蛇が出るか、といったところですねー」
 レン・ランフォード(近接忍術師・f00762)が小さい肩を細め、それに「もう一人の彼女」が答えた。
「まあ、鬼ってか、『女神』らしいけどな。……けど、その前に、お出迎えだ。ご丁寧だな」
 洞窟の中一面に、蠢く影と声。
 その込めた感情は悲嘆と苦痛、そして、仲間を増やしたいという望み。
 それは形を取った泥濘なのか、それともすでに泥濘に近くなってしまった何かなのか。いずれにしても悍ましく、そして怖ろしい、はっきりとした──敵だった。

「呪われた精霊、ってところか、やれやれ。ま、肩慣らしにゃ、丁度いい奴が出てきたな」
 剱は小さく不敵に笑むと、身構える。その背後から、炎がランプのように無数に燃え上がり、暗い洞窟内を赤々と照らし出した。
「ま、こんなの、アンタらにはお節介かもだけど、一応灯りは付けとくよ」
 発火能力者である書記・赤居小鳥の声に、剱は頷いて見せる。もとより、高い暗視能力を有する剱に、この程度の暗さはそれほどのハンデにはならない。だが明るい方が楽なのは事実、確かであるし、それに、『聖斗会』メンバ―たちに共に戦っているという充実感を抱かせたいという配慮もあった。
(結局、今後もこの學園を護っていくのはこいつらなんだしな)
 小さく胸中で呟くと、剱は敵に向き直る。
 おそらくかつては美しかったであろう姿を目に映し、剱はつぶやく。
「すべて失くしちまったか、お前たちも? ──俺のように。だが、だからと言って……」
 剱の腕の先に、轟、と黒い炎が燃え上がる……いや、それは呪いだ。目に見える形となったほどに……物質に近いほどに凝縮された、剱の呪殺弾!
「……他の奴からも同じように奪おうとするのは頂けねえな!」
 虚空を斬り裂いて形ある呪いが忌まわしき精霊たちに降り注ぐ。あたかも地獄の番犬の咆哮のような残響を洞窟内に響かせて。
 その勢いは衝撃波さえ生み出して周囲を圧し、今しも襲い掛かろうとしていた精霊たちの機先を制してその身体を撃ち砕いてゆく! 空間さえ揺らぎ震えるほどの威力をもって、精霊たちを真正面からすりつぶすように。
「こういう手合いにゃ、細かいこと考えず、出し惜しみもなしの、面制圧の飽和攻撃が非常に有効だ。よく覚えとくといい」
 声もなく、自らの戦闘を見つめる『聖斗会』のメンバーたちに、剱は振り返りもしないまま言葉をかける。彼らの周囲でほのかに輝く光が何度か閃いたことに、『聖斗会』たちは気づいていないだろう、それが剱の施した護霊亀の力だということも。
(……こいつらの明日を開く礎とならんことを、だな)

「よーし、「オレ」の出番だな! こいつ、預かっといてくれ、同じ眼鏡仲間の会計くん」
 両手をパンと打ち合わせると、灯も前へ進み出る。外した眼鏡を、戸惑った様子の、白倉みるくに預けて。
「……そ、それは構いませんが……さっきまでとキャラ違うですのよ?」
「ヒト(人格)には向き不向きってのがあるからな。荒事は……オレの持ち分だ!」
 ニヤリと笑うと、灯は駆けだす。可憐にして嫋やかな姿はそのままに、触れるものを破壊し尽くす暴戻の嵐と変ずる、それこそが灯の多重人格の力!
 疾駆しながら、灯は取り出した小瓶の栓を抜く。その一瞬の隙を見逃さず、すかさず襲い掛かってきた精霊たちの体液、それが情け容赦なく灯の身体に降りかかり、彼女を無残にも物言わぬ石に化さしめた、……と見えた時。
「悪いがそいつは幻だ」
 精霊たちの頭上から声が降る。明暗移ろう洞窟内の光と影、その地形を利用し、化術を持って迷彩を施した灯の、己の身代わりにしたのは単なる鍾乳石に他ならぬ!
 はっと身構えた精霊たちだったが、もう遅い。灯の放った小瓶からさらさらと風に乗り、舞い散った『砂』は、強烈な催眠効果をもたらすのだ。異形の精霊たちと言えどもその効果から完全に逃れきることはできぬ、同じく妖精たるサンドマンの砂なれば!
(動きを鈍らせれば聖斗会のヤツらもやりやすくなるだろ……)
 灯の意図通り、動きを制された精霊たちは、『聖斗会』たちへと向かうことはできない。のろのろと、それでも攻撃を仕掛けようとした精霊たちの動きを容易く見切り、斬鎧剣アザレアの分厚い刃が真っ向から精霊たちを叩き切っていく。
(でも、気になります)
 縦横無尽に刃を振るいながら、しかし、灯はぴくりと眉をうごめかす。彼女の頭の中で語り掛けてきた声。「もう一人の自分」が発した、それは警告。
(……UDCは、聖斗会の力を成長させようとしているように思えます)
「……つまり?」
(嫌な想像ですが……力のある者はより良質の贄にもなる……)
「ふん、アイツらを太らせてから喰うつもりかねえ? ……だが、そいつは分の悪い賭けだったってことを教えてやるとしようか、人はいつも喰らわれてばかりじゃないと!」

「女神であろうとそれが害をなすものなら殲滅するだけです。……まずは目の前の敵を蹴散らすとしましょうか」
 淡々と呟き、レンも行動を開始している。縦横に立体機動を展開できる薄暗い洞窟内、そこはまさに忍びの者たる彼女の独壇場! 
 光に惑わし陰に欺き、レンの姿がおぼろげな廻り灯籠のように夢幻の世界めいて洞窟内に映し出される。それは虚なのか、実なのか。見切れるものなどいるだろうか。ましてや、己が何者かさえ見失った精霊たちなどに。
 分身殺法・陽炎の舞。そう称される名を知るものはレン自身のみだろう。その技を目にして生き残った者はいないのだから!
 百に千に踊る幻影を相手に目標を見定めることもできず、ただ手当たり次第に体液を噴出する精霊たちの攻撃を、レンは軽々とかわしていく。その通り過ぎるところには空気の焦げた匂いだけが僅かに漂い、あとには精霊たちの成れ果てだけが残される。碧緑に輝く光線剣オーガスラッシャーの軌跡さえ、精霊たちが見知ることはなかっただろう。
「そして、もうひとつ。この洞窟は、……良く、響きます」
 混乱を極めたところへ、さらに不意に背後から聞こえてきた声に、精霊たちは驚愕に驚愕を重ねて周囲を見回した。囁くように誘うように、レンの声が全方位から精霊たちを包み込む。
「響きます……響きます……響きます……」
 いくつもの声が多重唱のように洞窟内に木霊する。それこそがレンの仕掛け、己の声を囮に使う惻隠の術。古の術技はスマートフォンという現代科学の力を借りて新たな威を生み出すのだ。古きを温め新しきを知る、それこそが未来へ進む猟兵の忍びたる在り方に他ならない。
 気を取られて右往左往する精霊たちを、影に潜んだレンが密やかにひめやかに葬っていく。一切の痕跡を残さず、ただ刃を閃かせて。
「こっちもへいきだよ」
 『聖斗会』メンバーたちを密かにガードしていた「れん」が、ぱたぱたと手を振る。その足元には、迷い込んできた精霊たちの骸が積み重なっていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
潜むものが何であれ、辿り着く必要があるな
速やかに終えよう

破界で掃討
対象はオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬刻で星の数の魔弾を生み目標へ均等に斉射

更に射出の瞬間を無限循環
常時斉射し続ける飽和攻撃で圧殺する

仮に何かをして来ても魔弾に飲み込んで消し飛ばせば問題ない
戦場を変化させても術者が消えれば解除される類のもの
全て討っていれば聖斗会に害が及ぶこともない

自身への攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

※アドリブ歓迎


黒影・兵庫
この大穴、数年程度では形成されないレベルですね...
(「この先が目的地なのは間違いないわね。黒影、厳重警戒よ」と頭の中の教導虫が指示をする)
わかりました!せんせー!
(自分と聖斗会の面々を『限界突破』レベルまで厚くした『オーラ防御』壁で覆う)
防護壁構築しました!
(「よし、次は迎撃態勢を整えなさい」)
はい!では強襲兵の皆さん!お願いします!
(UC【蠢く霊】を発動し羽虫の幽霊を霊体状態にして『目立たない』よう隠れさせ敵が襲ってきたら視覚から攻撃するよう指示する)
後は俺の『衝撃波』で攻撃を弾き『念動力』で{錨虫}を操作して遠隔攻撃します!
これで迎撃態勢の構築完了です!
着実に一歩ずつ進むとしましょう!


テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可

こ…これはまた癖のある敵です…
ともあれ、【サイキックブラスト】で相手の動きを止めつつ、他の猟兵さんの支援になれば良いと思います!

もし倒しそびれて『聖斗会』に狙いを定めたらこの身を挺して庇います!
大丈夫!こういうのは慣れてますのでっ!お気にせずっ!
(そう言いながらもいつも通りの展開)



「この大穴、数年程度では形成されないレベルですね……」
 コツコツと己の足音が残響を持って、まるで己自身を追走している誰かがいるような錯覚をさえ覚えながら、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は改めて周囲の状況を確認していた。
 敵の第一陣は討ち滅ぼしたものの、洞窟はあたかも階層構造を為すように下へ下へと広がっており、奥を見通すことはできないほど深く、その最果てはうかがい知れない。
 その様は確かに兵庫の言う通り、はるけき時を閲した遠い刻の彼方より現れた亡霊であるかのような悍ましさを纏ってもいた。
「な、なんだか、すごい場所ですね……目に見えない何かに取り囲まれているようで、ぞっとします」
 テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)が周囲をおずおずと見回しながら呟く。まるで物質化した不浄という概念そのものが彼を取り囲み、のしかかり、押し固めようとしているようにさえ思えて……。
「はう、なんか、す、すごいです!」
「……気のせいでしょうか、テフラさんは何か悦んでいるように思うのですが、せんせー?」
(……あー……ともかく、この先が目的地なのは間違いないわね。黒影、厳重警戒よ)
 何故か身をよじっているテフラをあえて見ないようにし、兵庫の脳内のスクイリアが下した指示に、兵庫は素直に頷いた。
「わかりました! せんせー!」

【第九話『深奥』】

「いずれにせよ、こんなところで立ち止まってはいられないな。速やかにたどり付き、そしてすべてを終えるとしよう」
 アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)が足を止めぬまま、冷ややかに呟く。その瞳は、己の先に待ち受けるものの姿を冷徹に映し出していた。──先刻猟兵たちと戦ったものと同種の、それは、呪われた精霊。
 だが、先程の精霊たちと異なる点があるとすれば。先刻の精霊たちは悲嘆と苦痛をその身に纏っていたのに対し……眼前の相手が醸し出すものは「憤怒」。
 それは、果たして何に対する怒りなのか。己をこのような境遇へ貶めたものへの怒りなのか、それとも、……自分は呪われてしまっているのに、猟兵たちや『聖斗会』たち、地上の生き物たちだけが健やかであることへの怒りなのか。
 いや、あるいは、もうそのどれでもないのかもしれぬ。
(怒ること自体に飲まれ、怒りゆえに怒る、という永劫の循環そのものと化したか。……憐れみなどを感じるつもりはないが、な)
 アルトリウスは胸中で小さく呟くと、無造作に手を差し伸べた。怒りの雄叫びを上げながら殺到してくる大群に向けて。
(……それでも、その怒りだけは本物なのかもしれん。……残骸にして模倣である俺とは異なって)
 僅かな一瞬、目を閉じる。それは感傷などであろうはずはなく、祈りでさえもなく。ふと、ただ遠き彼方へ泳いだ想いのひとひら、それだけにすぎぬ。
 けれど、それも刹那。
「俺は、止まらん。そして、……ここがお前たちの、行き止まりだ」
 紡いだ短い言葉と共に、──紺碧の光が迸った。
 おお、それこそは……漆黒の洞窟を蒼く浮かび上がらせるその光こそは、先ほどアルトリウス自身が口にした「永劫の循環」を具現したものに他ならぬ!
 光弾を撃ち出す時間そのものを、ウロボロスの蛇の如くはじめも終わりもない円環と為し、永遠と一瞬を等しくせしめた、世の理さえ踏み越える力。
 事実、その力の源泉は、世界を超えた場所からくみ上げられるもの。
 洞窟を劈く音響は、あたかも己を蹂躙された世界そのものの怒号のように。
 世の果てすら欺くその青く輝く光は、瞬く間に呪われし精霊たちを粉砕していく。

 それでもなお仲間たちを盾にし、あるいは地に伏せ、潜りながらも精霊たちは前進をやめない、それが「憤怒」の「憤怒」たる所以でもあるだろうか。周囲の環境を作り変え、鍾乳洞として覆いつくしながら。
 だが。
「鍾乳洞ですか。でもそれって……」
 兵庫は得たりと頷く。精霊たちの能力は、鍾乳洞という環境に適応した者たちに高い能力を付与するもの。……そうであるのなら。
「蟲さんたちにとっても、問題ない場所です!」
 兵庫の頭髪がピクリと動く。仲間たちを指揮するその号令一下、無数の蟲たちが乱舞する。然り、兵庫の仲間である蟲たちにとっても敵と同じく、この環境が忌避するような場所などと言えようはずもなし……ならば条件は同等!
 蟲たちもまたその力を強化させ、精霊たちに襲い掛かる。石化させんと精霊たちが迸らせる体液も、蟲たちには意味がない、何故なら彼らは既に──死んでいる!
 それはスクイリアの細胞をベースとした強襲兵たちの霊体。彼らは死してなお、友であり、仲間であり、家族たる兵庫を守るために飛翔するのだ。その牙に鋼鉄をも砕き、呪いさえ喰らい尽くす鋭さを秘めて!
 群がる蟲たちが精霊に喰いつき、屠っていく。その呪いも、憤怒さえも虚無に帰して。それはある意味、哀れな精霊たちへ手向ける葬送の調べでもあっただろうか。
(黒影、後ろにも気を配って!)
 スクイリアの指示が飛ぶ。兵庫は頷くと、眩いオーラを張り巡らせ、衝撃波を放って防御領域を形成する。後方で待機する『聖斗会』たちを護るために。
 
「わ、わたしも、ここにいますから、大丈夫です!」
『聖斗会』メンバーたちの傍らで、テフラが小さく手を振った。テフラは『聖斗会』たちをガードするために後方へ残っていたのだ。無論、彼も猟兵、ただ手をこまねいているわけではない。
 パンと両手を地面に着き、テフラは気合を込める。
「し、支援なら、できますから……。行きます……サイキック・ブラスト!」
 そう、この戦場は環境に適応したものが優位を取れる。
 故に、環境を、テフラもまた利用したのだ。 
 しっとりと濡れた鍾乳洞の地面を──青白く光る電撃が奔る!
 迫り来ようとした精霊たちに、大地を駆け抜けた電撃が襲い掛かった。
 悲鳴を上げてのたうつ精霊たちの足が止まり、そこをアルトリウスと兵庫の攻撃が容赦なく刈り取っていく。
「やりましたっ!」
 ぴょん、と可愛らしく飛び跳ねるテフラ。だがしかし、そのように一瞬浮かれてしまったことが、テフラの失策だっただろうか。
 息も絶え絶えになりながらも一体の精霊が、残る力を振り絞って石化の体液を降り注がせてきたのだから。
「あ、危ない!」
「ああっ!」
 声が重なった。
 テフラの声と、そして。
 とっさにその身をもって自分をかばったテフラの姿を見た『聖斗会』メンバーたちの声が。
「あ、あうううううっ! で、でも、皆さんがご無事、なら……わたし、は……」
 おお、何たる惨劇か。テフラの可憐にして清楚な肢体が少しずつ、しかし確実に──無情な冷たい石へと化していく!
 苦悶の表情の中、それでもテフラはにこと微笑む。誰かを護るための犠牲となれるのなら、この程度のこと、どうということも……。
 ああ、それに、身動きが出来ず、冷たく、硬くなっていくこの感覚、何かに変えられてしまうというこの絶望と隣り合わせのエクスタシー。高まる昂揚が冷たい石の下で身体の奥深くを焦がすかのようで、癖になりそうな……。
「問題ない」
「え?」
 だが、なんたることか。ぽつりと声が響くと、すでに半分以上石と化しかけていたテフラの姿が、急速に元の柔らかさと温もりを取り戻していくではないか。
 きょとん、とテフラが見上げた先には、アルトリウスがその長身を佇ませていた。
 ほの蒼く輝きを身に纏うアルトリウスは、時を循環させ、テフラが呪いに侵食される前の状態に復帰させていたのだ。
 同時に、兵庫も呪詛に耐性を持つ力をテフラへ注ぎ、その浄化に力を貸していた。
「大丈夫ですか、テフラさん!」
「え、ええ。まあ、はい。ありがとうございました……でも、もうちょっと後でもよかったような……」
「え?」
 テフラが口中でぼそぼそと呟く声を聞き逃し、アルトリウスと兵庫は怪訝な顔をする。その姿に、テフラは慌てて小さな手を振り、誤魔化していた。
「あ、あはは、なんでもありません!」
 ……そう、奥は深く、その最果てはうかがい知れない。それは洞窟だけではなく、人の性癖もまた同じ、なのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アネット・レインフォール
▼静
ふむ…学校に洞窟があるとは興味深いな。
真っ先に思いつくのは避難先等の用途だが…
(場に満ちた気配を読み)
今は眼前の問題に集中するとしようか。

…しかし存外、彼女の霊能力は強いのかもしれない。

概念を満たす器となっているケースなら
敵を倒し過ぎるのは考えものだが…
一応、彼女の様子は気に掛けるとしよう

▼動
予め念動力で刀剣を周囲に展開。
空中時の足場と、重ねて盾代わりに使い
生徒達や他の猟兵が狙われた際のフォロー用に。

霽刀と式刀を手に【流水戟】の速度を活かし
高速連撃で斬り結ぶ。

数が多ければ闘気を込めて範囲攻撃も検討するが、
敵の動きは冷静に把握。
狙いが特定の生徒に集中するなら情報共有で警戒を促す。

アドリブ歓迎


大町・詩乃
アドリブ・連携歓迎

敵女神の狙いは『真里亜さんが自分の依り代になれるまで強くさせて憑依する事』に思えます。
適格者が現れるまで、ずっと続けていたのかな?
なら同じ女神として、今までの聖斗会全員の純真な想いを利用した報いを受けさせてあげます!
尚、上記は憶測なので胸に秘めます。

【結界術】で聖斗会の皆さんの周囲に防御結界を。

(学生服のまま)詩乃は響月を携え、UC使用。
【楽器演奏・音の属性攻撃・浄化・破魔・祈り・高速詠唱・範囲攻撃】を上乗せして、厳かな楽曲の吹奏により呪われた精霊さん達に安らかな眠りを与えます。

相手の攻撃は【第六感と見切り】で読んで、【オーラ防御】を纏わせた天耀鏡による【盾受け】で弾きます!


トリテレイア・ゼロナイン
…丁度、彼らと同じ年頃でしたね…
(UDCアースで護衛していた少女が邪神に覚醒、止む無く殺害した経験あり。偶然であれど聖斗会の力引き出す「怪異」や真里亜の内部の異変の情報にそのメモリーを刺激され)

いえ、何でもありません
『聖斗会』の皆様は敵の足止め等の援護をお願いします
前に出るのは騎士の務め、お任せ下さい

UCで突撃
槍を●ハッキング
バリア直径を広げ体液を●盾受けしながら●串刺し
バリア解除と同時●なぎ払い張り付いた鍾乳石を質量武器として利用

センサーの●情報収集で周囲の地形と敵の温度差計測
敵の●だまし討ちから彼らを直ぐに●かばえるよう注意を払っておきましょう

この先に何が在ろうと、皆様をお守りいたしますよ



「学校に洞窟か。これほど大規模でなければ、戦時中の防空壕のようなもの、ということも考えられたが……」
 アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は深淵と永劫に続くように思える洞窟内を見回しながら、ふと視界の端に入った『聖斗会』メンバーの姿に気付いた。
 猟兵たちの後ろからついてきながら、彼らはしきりに話し合っていたのだ。
「……んー。俺だったらさっきのあそこ、もう一歩突っ込んじまってたかもなあ……そうすっと反撃を喰らってたか」
「俺は逆に半歩手前で止まってたかもね。そしたら威力が足りなかったかな」
 なるほど、とアネットは胸中で微かに微笑む。これまでの猟兵たちの戦いを目の当たりにして、『聖斗会』のメンバーたちも学んでいたのだ。
 もとより、個々人に適した戦い方は、体格、技能、力量の違いもある以上、己自身が見出し身に着けるものであり、他者の戦いをそのまま真似ても意味はない。とはいえ、そこに何かを求めようとする意欲と熱意は、アネットにとっても好ましいものだった。
(……俺も、学んだものだったな。かつて……強さを求めて。……ふっ、あいつらのようだったのかも、しれん)
 修行に明け暮れた日々の記憶がアネットの脳裏に微かに浮かぶ。それは遠く色褪せたフィルムの中をよぎる思い出のようでもあり、あるいは逆に、ほんの一瞬前の出来事のような錯覚さえ起こさせるものでもあった。

【第拾話『追憶』】

 ──だが、今は紛れもない戦場のただ中。
 思いの中に沈むのは、生き延びた後からすればよい。
「今は眼前の問題に集中するとしようか……来るぞ」
 アネットは短く言うと、身構えた。
 いわば第三階層とでもいうべきその地に伏せていたのは……『悔恨』。
 悔み、無念、その感情が高ぶり、その身を覆い尽くした、呪われし精霊の群れだった。
「悔恨のあまりに冷たく固まったか、精霊ども。だが、それでも進むものだ、人はな」
 アネットは淡々と呟きながら、13の刀剣を周囲に展開する。渦巻く念動力が、すべての剣を手足の如く操るその神業を現実のものとする! 
 瞬時──閃光が舞う。音をも置き去りにして、踊る。それは死の顕現、あらゆるものを寸断し斬り裂き屠る、激流の斬撃!
 襲い掛かろうとしていた精霊たちは、その速度を追うことすらできない。もし触れさえすれば、精霊たちはアネットを石に化すことができただろう。だが浮かぶ剣それ自体を足場として宙から宙へ駆けるアネットを抱きしめられるものなどいようものか。
 ……しかし。優位に戦況を展開しつつも、アネットは微かに浮かぶ懸念に眉をひそめてもいた。
(仮に概念を満たす器となっているケースなら、敵を倒し過ぎるのは考えものだがな……)
 その視線の先には、心配そうに自分たちを見守る少女の姿がある。
 そう、見守っている。常人なら把握もできないであろうアネットの動きを、視覚ではなく感覚で追えているのだ、彼女は。
(……やはり存外、彼女の霊能力は強いのかもしれない……)

(悔恨──そう、私の中のメモリを再生するたびに回路が焼き切れるような感覚にとらわれるのは、おそらく、悔恨なのでしょうね)
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)もまた眼前の敵に対し、自らの得物を構えながら、微かに思う。
 「護る」。……そんな短い言葉の重みが、手にする巨大な突撃機械槍よりもはるかに、ずしりとその身に掛かって悲鳴を上げさせるかのようだった。
 無論、あの時も、決して安易な気持ちで口にしたわけではない。それは騎士としての真摯な誓い、果たすべき誓約であったはずだった。……けれど。
 嗚呼、一体幾度の戦場で、「彼女」のことを思っただろう。
 嗚呼、一体幾度の戦場で、その哀しいまなざしを幻視したことだろう。
 ……「護れなかった」その少女のことを。
 ちょうど、『聖斗会』のメンバーたちと、ほぼ同じ年代だった、彼女のことを。
 彼女にも、取り戻すべき自由が、未来が、青春があったはずだった。
(そう、これは悔恨です。……ですが、だからこそ、今度こそは)
 爛、とトリテレイアのセンサーアイが薄暗い洞窟の中に雄々しき輝きを迸らせる。
「この先に何が在ろうと、──皆様をお守りいたします!」
 はっきりと言葉に出す、それこそがトリテレイアの覚悟。もう二度と己に偽りの誓いは立てさせぬと。
「御してみせましょう、この重鎗も、……そして運命でさえも!」
 ウォーマシンらしからぬ、と人は笑うか、その感傷的な物言いを。
 だが、そこにこそトリテレイアの真髄在り。機械の冷たさの中に騎士の熱い魂を宿すものこそが!
 世界が爆裂するような重轟音が洞窟内に響き渡る。トリテレイアが巨大鎗もろとも、自らを一振りの刃と化して撃侵する爆音、居並ぶすべての敵を駆逐する激音が。
(「希み」は我が胸中にありて、折れず、砕けず──ええ、私自身がそれを捨てぬ限り、希望は常に私を導くでしょう!)
 それはただのバリアにすぎぬと、データ上では断ぜられるだろう。
 だが、輝く光に包まれたトリテレイアの姿は、──あたかも希望の名をもって傍らで見守る姫君を伴って戦場を壮麗に進む騎士であるかのように、見えたのだった。

「悔恨、ですか。そうですね、さぞ悔しいでしょう、無念でしょう……」
 襲い来ようとする精霊たちの凄惨な姿を捉えながら、大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は微かに吐息を漏らす。澄んだその瞳は悼みと哀しみに彩られ、長い睫毛が震えていた。
 心優しき女神には、相手を滅ぼすべき敵と単に割り切ることはできぬ。討たねばならぬものであるとしても、せめて。
「……せめて、心安らかに。私の調べが、あなた方を眠りの彼方へ送るよすがとなりますように……」
 龍笛『響月』をその艶やかな唇に当て、詩乃はそっと想いを凝らす。嫋々と、詩乃の神気を吹きこんだ笛が啼く。洞窟に響き渡る静かな、そして厳かな曲は、野辺に送る弔いの歌に似て。
 狂気に震えていた精霊たちの攻撃が、鈍る。魔に堕ちたはずのその定かではない眼差しに、それでもほんの一瞬、慰めにも似た光が宿ったと見えたのは、詩乃の錯覚ではないはずだった。
 夏の夜に舞う蛍の光のような朧な光が精霊たちを包み、虚空に溶けるようにその姿は消え失せていく。
「……ああ……」
 と、背後から微かに漏れた声に、詩乃はふと心を止めた。
 それは会長、真里亜の哀しげな、しかしどこか安堵したような溜息だった。
「……苦しんでいたのでしょうね……でも、これであの精霊たちも、ようやく眠れるのですね……」
 詩乃は微かに目を細め、真里亜の姿を伺い眺めた。
(感じ取ったのですね、真里亜さん。私の力……『女神』の力を)
 それは真里亜の力が確かなものであり、同時に、『女神』の存在に対して強く反応することもまた意味している、と詩乃は思慮する。
(ならば、敵の……『女神』の狙いは、真里亜さんが自分の依り代になれるまで強くさせて憑依する事、なのでしょうか。……適格者が現れるまで、それをずっと続けていたの?)
 思いを馳せつつ、きゅっと唇を強くかみしめ、詩乃は首を振った。射干玉の髪が揺れて乱れる。
 敵が、自分と同じ女神であるというのなら。
 ……それだからこそ、赦すわけにはいかない。
(同じ女神として、──今までの聖斗会全員の純真な想いを利用した報い、受けさせてあげます!)
 暗い洞窟の奥深くに嗤う敵の姿を、詩乃は微かに、しかし確かに、感じたように思えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

リューイン・ランサード
【竜鬼】
呪われし精霊…邪神に歪められたのかな?
(精霊と深い絆を結んでいるひかるさんを思い)相手の救済には倒すしかないのかな?ならば、ひかるさんが思う通り動けるようサポート。

前衛に立ってひかるさんを【かばい】、敵のドロドロ降雨に対し、【結界術】の防御結界と、フローティングビームシールドを空に浮かべてビームを傘状に最大展開して防ぐ。

敵近接攻撃は【第六感と見切り】で躱し、【オーラ防御】で体液の付着を防ぐ。

ひかるさんの準備が整えばUC:アドヴェンドパストで敵UCを使用前に戻して効果消滅。
ひかるさんに決めてもらいます。

必要に応じて【氷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃】で凍らせて復活させません!


荒谷・ひかる
【竜鬼】

これ、多分会長さん達を誘き寄せるのが目的ですよね。
復活の依代にでもするのでしょうか……?

(呪われた精霊の姿に心を痛めつつ)
……なんて、惨い。
リューさん、精霊さん達、力を貸してください。
あの子達を倒し……呪いという軛から、解放します。

後ろに下がり、リューさんを「鼓舞」しながら二丁の精霊銃で援護射撃
盾の隙間を埋めるように竜巻弾を撃ち飛沫を吹き飛ばして防ぐ
リューさんが近接戦闘に入るなら冷凍弾に切り替え、敵体液を凍らせて付着を防ぐ

ある程度引き付けたら【本気の水の精霊さん】発動
水の精霊さんにお願いして範囲内の敵全てに纏めて水塊を付与
高速で攪拌してもらい、ドロドロを薄めて溶かし尽くしてもらいます



「喜び」。
 ……なんと奇怪なことだろうか、第四階層に置いて猟兵たちを待ち受けていた精霊たちがその身に纏っていた感情は──まぎれもない「喜び」に他ならなかった。
 笑う、嗤う。狂気の笑いが精霊たちから漏れていく。
「ああ、なんて、惨い……」
 荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)は白い歯を噛みしめ、細い肩を震わせて、硬い声を零した。可憐な貌は蒼褪め、薔薇色だった唇からは血の気が失われている。
 精霊と心を通わせることができる彼女は、その力ゆえに、──その在り様が分かってしまったのだ。精霊たちが、もう救えないほどに穢れ果ててしまったことが。
 それは殺戮の喜び? 破壊の喜び?
 いや、そうではない、そうであったなら、まだしも良かったのだ。
 精霊たちの喜びとは──
 「相手の純粋無垢な心を踏みにじる悦び」であったのだから。

【第拾壱話『決意』】

「……ひかるさん。救うためには……それしかない?」
 リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)が愛するものを慮るようにそっと尋ねる。
 その宝石のように青く澄んだ瞳に浮かんだ問いかけを察し、ひかるはこくんと頷いた。
 小さく、けれど……はっきりと。
「ええ。……倒すしか。……倒して、呪いから解放してあげることしか」
 呪われし精霊たちは、ひかるが精霊たちと心を通わせられることを察した。
 故に。
 故に、喜んだのだ。
 ひかるの美しい心を踏みにじることができると!
 そこまで完全に汚染され尽した精霊たちは、ひかるの友である精霊たちの力をもってしてさえも、救うにはすでに手遅れだと、ひかるは哀しみの中で明確に知った。
 だからこそ……もはや、倒すしか、ない。
 けれど、もし、とひかるは思う。
 もし、少し前の自分であったなら。
 その言葉を告げることができただろうか。
 怯え、震えたまま、たった一つの方法と知りながら、それでも、いつまでも心を決めることができないでいたかもしれない。
 けれど、今は、違う。
 たとえそれがどんなに悲しく酷薄に聞こえる言葉でも──今のひかるは自らの言葉にはっきりとした責任を負い、その意味を自らの手で引き受けるのだ。
(それが──「私」を倒した私の、覚悟)
「そう、なんだね」
 短くリューインも応じると、凛然たる面持ちで敵軍へ眼差しを向けた。
 ひかるの小さな姿はリューインにとって眩しく輝き、そしてそれゆえに、全霊をもって彼女を支え、力となろうと思い定める。
(それが、僕の覚悟だ)
 二人は視線を絡め、頷きあうと、次の瞬間、敵軍へ向けて猛然と疾駆した。

「ひかるさんが思い通りに動けるように──!」
 リューインの声に応じ、その腕の動きに反応する浮遊光盾が自在に乱舞し、同時に展開した結界と相まって、降り注ぐ精霊の体液を弾き返していく。もし僅かでもその飛沫が降り掛かれば、リューインの身は石と化すだろう。
 そんな綱渡りの危険を、けれどリューインは恐れない。それは無謀でも諦めでもなく、確固たる決意の証。
 ──かつてのリューインであれば、その恐怖に耐えきれなかったかもしれない。
 だが、今のリューインは違う。ひかると同じように、己自身を乗り越えた戦士の姿がそこにある。
 あの大魔王との戦いは、あくまできっかけに過ぎない。
 本当の勇気は、確かに──リューイン自身の中に眠っていたのだ。
 嘲笑いながら手を伸ばしてくる精霊たちの攻撃を紙一重で見切りながら、リューインは剣を振るう。
(本当は、君たちの中にもあったのかもしれないのに、その心が。君たち自身がそれを潰してしまわなければ……)
 ……そんな、微かな痛みを刃の先に感じながら。 

 だが、それでも敵は多数であり、リューインの剣撃をもってしても、僅かに手数で押され始める。
「でも、私たちも二人います!」
 背後から毅然とした声が響き、同時に銃声が轟く。
 精霊銃による連射は、ひかるの支援。だがそれは、驚くべき効果を生み出した。
 ひかるの銃が放った竜巻弾は──リューインを目標としたのだ。いや、正確にはリューインの剣を。
 そう、激しく凄まじい旋風に乗ったリューインの剣は──恐るべき超加速を伴った! 無数に蠢く精霊たちの攻撃すら上回って斬り裂き切り伏せるほどの!
 思わず笑いを凍らせ、精霊たちが怯む、その一瞬を、ひかるは見逃さない。
「今です、水の精霊さん……本気で、呑み込んでしまいましょう!」
 凛とした彼女の声が響くところ、時空を斬り裂き、波濤煌めく原初の大海が顕現する。万物の根源、それゆえにこそあらゆるものを飲み込む、容赦なき荒海が。
 同時、
「『世界に遍在するマナよ──時の流れを遡り穏やかなる過去を再現せよ!』」
 リューインの詠唱が波音に和するように木霊した。
 見よ、降り注がんとした精霊たちの石化液が……なんたることか、戯画のように還りゆく! 精霊たち自身の体内へと!
 これこそが相手の能力を過去へと戻す、リューインのユーベルコード。
 ともに己の過去を乗り越えたひかるとリューインの連携攻撃が、相手を過去に戻すことだとは、運命の皮肉であったかもしれぬ。
 ……呪われし精霊たちは、まだ笑っていた。自分たちに降りかかった、その運命の皮肉を、自嘲と自虐のの笑いとして。
「アクア・エレメンタル・──オーバードラーイブッ!」
 最期を告げるひかるの凛冽たる声は、渦巻く曝流を導いて洞窟内を埋め尽くし、呪われた精霊たちを包み込んで消し去っていく。その身に帯びた呪いごと溶かし、流し、清めていくかのように。
 黙然とその光景を見送るひかるの隣に、そっとリューインが寄り添う。
「……あの精霊たちも、邪神……『女神』とやらに歪められたのかな」
「……かもしれません。会長さんたちを誘き寄せるのが目的におもえますけど……復活の依代にでもするのでしょうか……?」
 ひかるの声は、滔々と逆巻く水の流れの中にそっと飲まれ、答える者はいなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリシア・マクリントック
【PPP】
貴族の戦いをお見せいたしましょう……扉よ開け!スカディアーマー!
護りはお任せを!私が全て受け止めてみせます!
生徒会のみなさんを文字通りこの身を盾にして守り抜きます。マリアは攻撃に!
守っているだけでは勝てない?いつまでも耐えるのは無理?……ええ、もちろんそのとおりです。ですが、全て計算内です!
私へのダメージが十分に蓄積したところで、こちらに接近戦を仕掛けてきた相手に『傷こそ我が力なり』で反撃です!
過剰火力ですし性質上一発だけの切り札ですが、一罰百戒。これで引いてくれればいいのですが。
もし動けなくなったりまだこちらに来るのならティターニアアーマーにチェンジ、巨大な壁にします。


シャルロット・シフファート
【PPP】
「攻撃は任せなさい――『無垢であると謳う世界全ての無機』!!」
と、周囲の鍾乳洞が純然エーテルへと変換。
あらゆる属性魔術の属性へと変換する触媒となる。
「『鍾乳石化する体液』というならば有機物だけど、こちらにはふんだんと鍾乳洞の鍾乳石という弾薬替わりがいくらでもあるのよね……!!」
と、風と火の属性魔術で体液を焼き払い、水と地の属性魔術で生徒会の面々を守る結界を張る。

「覚えておきなさい、これが最前線で怪異……UDC、そして『オブリビオン』と戦う『猟兵』の戦いよ」
そう背後の生徒会の面々に語る。この戦いが、彼らにとって良い薫陶となることを祈って。


フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
この洞窟の中のやつを一掃すればいいわけよね?洞窟ごと崩しちゃえば良いんじゃないかしら!え?だめ?面倒くさいわね!
とりあえずちまちま付いて行くわ!
戦闘になったらまずはアリシアが盾になってくれてる別方向からきた敵を【属性攻撃】による火球で落としていくとするわ!
生徒会の生徒が狙われそうならー、んー。攻撃ね!攻撃は最大の防御ってやつよ!
やるこたあ変わんないわ!火力を上げていくわよ!
アリシアがティターニアアーマーに変化したら本番よ!皆を守る壁が出来れば待ってましたとUCを発動するわ!
なんか振ってくる体液も敵もまとめてUCでぶっ飛ばせば万事解決ね!!

(アレンジアドリブ大歓迎!)


アイ・リスパー
【PPP】
「旧倉庫……ここが怪異の発生源ですね」

『女神』と聖斗会長の間の関係を考えつつも、まずはUDCの撃退です。
直接戦闘は仲間に任せ、私は後方支援に周りましょう!

「電脳魔術【ラプラスの悪魔】、起動!
敵の行動をシミュレーションし、皆さんをサポートします!」

シミュレーション結果を仲間たちと情報共有し、効率的に連携して敵の攻撃から聖斗会メンバーを守ったり、反撃したりできるようにしましょう。

「私たちの連携、聖斗会の皆さんにも劣らないことをみせてあげましょう!」

聖斗会の皆さんに攻撃が来そうなら回避方法を指示します。

なお、戦闘中、聖斗会長さんに不自然なことが起こらないか、それとなく観察しておきます。



「いいこと考えたわ!」
 フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が考えるのはだいたいよくないことである。
 それを知る仲間たちはギクッとした表情でフィーナを見つめたが、案の定、フィーナの口から漏れた言葉は滅茶苦茶であった。
「この洞窟の中のやつを一掃すればいいわけよね? ってことは、洞窟ごと崩しちゃえば良いんじゃないかしら! せーの……」
「ちょっ! 被害が甚大で地上が大変で皆さんが大概なことになりますっ!」
「『いいこと』の概念を定義し直してくださいー!」
 アリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)とアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)が飛び掛かる勢いで、今しもユーベルコードを盛大にぶっ放そうとしていたフィーナを押さえつける。そこへ、すいとシャルロット・シフファート(ツンデレの国のアリス・f23708)が優雅に縦ロールを揺らして立ちはだかった。
「そうよ、それはよくないわ」
 シャルロットもちゃんと常識で判断してくれた、とアリシアとアイはほっとした顔になり、一方、フィーナは不満そうな表情を浮かべる。だが。
「洞窟を崩すんじゃつまらないでしょう! 偉そうに奥でふんぞり返ってるUDCは、直接この手でぶっ飛ばして身の程を知らせてあげないと気が済まないわ!」
「なるほど! それもそうね! 直接ブン殴ったほうがスカッとするわね!」
 そういう理由かー、とアリシアとアイは疲れた顔になる。だがまあ、とにかくフィーナが止まったのだからヨシ! とすべきなのかもしれない。御安全に!

【第拾弐話『仲間』】

「……それはさておきまして、みなさん、どうやらこの階層の敵が現れたようです」
 ふと口調と表情を厳しく改めたアリシアが眼前を見据える。
 そこには、悍ましく蠢く呪われし精霊の群れ。だが、その身に纏う感情は──
「……ええと。行動シミュレーションの結果、なんだか、……『親近感』を抱かれているように観測するのですが」
 アイが演算結果に首を捻りながら推論を示す。いや実際、精霊たちは、その濁った視線の中にどこか親しみを漂わせて彼女たちを見つめており、悪夢のような半粘状の身体で、まるで友達が来たようなしぐさを見せながら近づいてくるではないか。
「失礼な化け物どもね。私たちと自分たちの、どこが同類だっていうのよ」
「全くだわ! ムカつくわ! ぶっ飛ばすわ!」
 シャルロットとフィーナが口々に不平を漏らすのに、アリシアはそっとうつむき、眉間を抑える。
(……そういう攻撃的な姿勢が同類だと思われたんじゃないでしょうか……)

 だが、確かにある意味、それは当たらずとも遠からずかもしれない。
 シャルロットはすべての不条理を破壊するもの。
 アリシアは貴族のお嬢様としての運命の枠を打ち砕き、自由の旅へと赴いたもの。
 アイはバーチャルキャラクターとして生まれながら、生身の人間と同じ命を得てその概念を越えていったもの。
 そしてフィーナはフィーナ。
 すべてがある意味「破壊者」であり、それは破壊という概念においてオブリビオンと親和性を持つ。
 ──けれど、無論。
 彼女たちの破壊は新たな可能性へつながるもの、閉ざされた絶望を砕き、無限の未来と希望へと導くためのもの。
 その決定的な点において、呪われし精霊たちと彼女たちは明確に異なるのだ。

「ふん、そのドロドロした身体に、私たちとの違いを教えてあげましょう。攻撃は任せなさい!」
「そう、攻撃は最大の攻撃って言うわ! ……なんか違ったかしら! まあいいわ!」
 不敵に言い捨てると、シャルロットとフィーナは大地を蹴り、猛然と敵軍の中へ突っ込んだ。薄暗い洞窟の中にたちまち轟然と火柱が立って壁面を染め上げ、爆音が響き渡って岩肌を揺らしていく。

 一方後方にあってアリシアとアイは揺るがず退かず、しっかりと立ちはだかって不動不落の城塞と化す。『聖斗会』のメンバーたちを守り抜くための。
「貴族の戦いをお見せしましょう……扉よ開け!スカディアーマー!」
 凛としたアリシアの声が宣せられ、見守る『聖斗会』たちは目を見張る。アリシアの清楚で可憐な姿が、鈍く輝く、巨大にして重厚な鎧に包まれた光景を見て。
 おお、それはなんという威圧感、そしてなんという信頼感であろうか。その重装甲は堅牢無比、あらゆる攻撃を阻み、遮る!
「マリア、前衛の二人を支援して!」
「え、私……ですか?」
 アリシアが鎧の中から飛ばした声に、生徒会長の方の「真里亜」が戸惑った様子を見せ、思わずアリシアはくすりと笑みを漏らした。
「あ、いいえ、あなたではなく……私の友のマリアです。いえ、もちろんあなたも私の友の真里亜さんですが……ええと……尻尾がある方のマリア、ですね、ふふっ」
 きょとんとしている真里亜をしり目に、アリシアの友にしてその相棒である狼「マリア」が走り出し、瞬時に装甲を身に纏って敵軍へと突入した。蒼い閃光が尾を引いてきらめき、「マリア」の口にくわえた刃が呪われし精霊たちを斬り裂いて行く。
「あれが、マリアちゃん……すごいですね。終わったら私もお友達になりたいです。同じ名前として、ふふっ」
「ええ、きっと仲良くなれると思いますよ」
 戦場にあって、ほんの僅か、心の和む一瞬が流れた。

 その光景をじっと見つめながら、アイは注意を怠らないでいる。彼女の展開した電脳魔術は既に膨大なデータを記録し、蓄積し、分析に掛かっていた。
(ここが怪異の発生源なのは間違いありませんね。……ということは、推論上、怪異をもたらしたものはこの最奥にいるはず。……『女神』と呼ばれるものが)
 マクロな戦況について沈思黙考しながらも、同時にアイの冷静な視野はミクロの脅威をも見逃さない。
「左2時の方向、距離30mから1体……次いで左10時から1体です!」
 シャルロット、フィーナ、マリアの奮戦にもかかわらず、数の多さに拠って敵軍は往々にしてその前線を潜り抜けてくる。だがアイは即時にその行動を算出予測し、的確な回避の指示を飛ばしていく。さらに、
「最初の敵は傷ついています。左胸下に攻撃を。その次の個体は右肩に大きな負傷、そこを突いてください」
 精霊たちは前衛の猟兵たちとの戦闘によって既に傷を負っている。アイは瞬時にこれを見抜き、指示を行って、戦況を優位に進めていたのだ。
(……真里亜さんの反応は)
 アイは思考を分割しながら引き続き推論を行う。無限の電脳空間を支配するラプラスの悪魔の絶大な能力は、戦闘と観測の平行実行と同時演算を容易いものとしているのだ。
(……私の指示が聞こえるとほぼ同時にそちらに注意を向けていますね……)
 それは、いかに霊能者であっても、早すぎる反応だった。猟兵には無論及ばないとはいえ、それにかなり近いほどの。
(他の『聖斗会』の皆さんも、この一連の戦いで全体の能力向上が計測されています。が、特に真里亜さんにそれが顕著ですね……)
 
 アイの計算が行われている中、アリシアはひたすらに敵の攻撃を受け止め、それを最低限度の動きでいなすことに注力している。『聖斗会』たちを護るために。さしもの重鎧も度重なる攻撃に軋み、時にぐらつく。
「す、すまねェ。でもよ、守っているだけでは勝てねェんじゃ? いつまでも耐えるのは無理じゃねェのか?」
 副会長・拳護の当然の疑問に、アリシアは重厚な鎧の奥で春風のように微笑んで見せた。
「……ええ、もちろんそのとおりです。ですが、全て計算内です!」
 同時、アイが鋭い指示を飛ばす。
「各自、散会を!」
「おっけーよ!」
「待ってたわ!」
 その声に応じて前線のシャルロットとフィーナ、マリアも瞬時に左右へ飛びすさる、刹那。
「そう、私はすべてを受け止める……それこそがスカディアーマーの力! 行きます──『傷こそ我が力なり(スカー・バスター)』っ!!」
 アリシアの声は爆音とともに響き渡る。
 一閃。ただ一閃。
 その剣の一閃に、これまで受け止めたすべての力、ひたすらに防御し続けたあらゆる攻撃の力を蓄積し……さらに呪力を上乗せして、起死回生の反撃として敵の元へと叩き返す! それこそがアリシアの秘技、スカー・バスターの真髄!
 見よ、洞窟内を空間ごと引き裂くような凄まじい力の奔流が敵軍の真ん中を焼き尽くす!
 精霊たちが大きく動揺し、その体勢を崩した隙を、シャルロットとフィーナが見逃すはずもない。
「無垢なる基礎よ、汝は原初の荘厳。その無色は万華の如き色彩となり、万の元素を流出する!」
 シャルロットの美しい紫の瞳が眩い宝石のように煌めいて、その力の充満を示す。
 詠唱に応じて、洞窟内の鍾乳石が光と化し、その姿を変えていく。質料も形相も組み替えられた、ただ一つの零基として。
 純粋なるエーテル……あらゆる魔術師が渇望してやまぬ万能にして万有なる力の源泉。それをシャルロットは、一時的にとは言え軽々と使いこなすのだ。
 今ここに、無限のエナジーが供給されたシャルロットの、全開の魔法が唸りを上げる!
「『無垢であると謳う世界全ての無機(ハウリング・エーテルブリング・アルケミスト)』っ!!」
 風が、火が、大地が水が、すべてが精霊たちに牙を剥いて狂奔し、荒れ狂う。そこへ。
「さあ、本番よ! さっきからずっと本番だけど、もっと本番よ! 火力を上げていくわ!」
 痛快そうに笑んだフィーナの能力が、シャルロットの能力に加算……いや、乗算される!
「捻じ切れなさいよ!! 『荒レ狂ウ火炎流(モエルタツマキ)』!!」
 フィーナの力は自然現象の組み合わせで嵐を呼ぶ火炎旋風。制御が至難のその技は、むしろ制御を放棄すれば無限に等しい破壊力を産むことを意味するのだ。
 今まさに暴威を振るうシャルロットの四大元素の嵐が、フィーナの力を受けて、さらなる狂乱の叫びをあげた。あらゆるものを破壊し尽くすそれは、まさに滅びの名をほしいままとする終焉の顕現に他ならぬ──!

 凄まじい威力が精霊たちを、悲鳴を上げさせる間さえ与えず滅却していく。
 その恐るべき余波が戦場から溢れ後方へと及ぼうとしたものの、アリシアがさらに変幻したティターニアアーマーと、アイの計算し指示した適切な角度により、『聖斗会』のメンバーたちは安全に守られていた。

「……すげェ。アンタら、皆好き勝手に戦ってるように見えたがよ」
 驚嘆を隠さない拳護の声が、一切の終幕を告げた戦場あとに響く。
「それでいて、信じられねェくらい息が合ってんだな……!」
 くすり、とアイが優しく微笑んで見せる。
「仲間、とは、そういうものですものね。私たちの連携も、聖斗会の皆さんに劣らないでしょう? ふふ」
 ゆっくりと歩み来るシャルロットも、ふわりと輝く黄金の縦ロールをなびかせた。
「覚えておきなさい、これが最前線で怪異……UDC、そして『オブリビオン』と戦う『猟兵』の戦いよ」
 『聖斗会』のメンバーは息を飲み、声もない。
 だが、アリシアも、アイも、シャルロットも、そしてフィーナもわかっている。
 彼らはこの驚くべき経験を受けて、けれど萎縮はすまい。むしろ、さらなる明日へ、さらなる未来へ自らを磨き続けるための、良き薫陶となるだろう、と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

エメラ・アーヴェスピア
生命エネルギーの強い人を集めた学校
だんだんと強くなる怪異
それを倒す事で強くなる聖斗会
その聖斗会を誘う気…そして女神
…もし学園の設立の理由が「封印」ではなく「解放」だとしたら…
…これ、相手の所に聖斗会を連れて行くのはかなり拙い気がするわ
はぁ…まぁそれはできそうにない、と
仕事で来ている以上どうにかするしかないわね…杞憂で終われば良いのだけれど

UCで召喚、聖斗会の護衛として【集団戦術】で運用
大盾を構え、接近された時に盾で弾き飛ばしなさい、大盾の替えは沢山あるから多少固まっても問題ないわ
兎に角聖斗会に触れさせない様に、後に拙い事になりそうな気がするのよ
攻撃は同僚さん達にお任せするわ

※アドリブ・絡み歓迎


幻武・極
さてさて、いっぱい湧いて出てきたね。
見た感じ物理攻撃は効きにくそうだけど、自分の身ぐらいは自分で守れるよね?
聖斗会もこれまで怪異と戦い続けてきたんだし、相手に合わせた戦闘ぐらいはできるよね。
さて、鍾乳石か。
固まると厄介だよね。
なら、固まりにくくするかな。
トリニティ・エンハンスの水の魔力をオーラ防御に付与し、風の魔力で流れを作ることで鍾乳石化しづらくさせるよ。
残りの炎の魔力で攻撃するよ。

さて、聖斗会の方はどうかな。
きつそうなら、助けに行くけど、本当ならボクの戦いからヒントを得てくれているといいんだけどね。



「さてさて、いっぱい湧いて出てきたね」
 幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は小さな肩をグルグルと回し、手首を軽く捻って体を慣らしながら、不敵な笑みを浮かべて前方の敵軍を見つめた。
 群をなす、半ば溶け果てたような不気味な姿の精霊たち、その身に纏う感情は「怨み」だと極は見て取る。
「誰を怨んでいるのかな? この封印の場所を作った者たちならもういないよ。そしてそんな姿に変えるような影響を及ぼしたものを恨むなら、それは相手が違うね。……まあ」
 一瞬、長い睫毛を揺らして、哀れむように極は敵を打ち眺めた。
「そんな判断さえできないほどに、もう怨みで浸食され尽しているんだろうけどね……」
 それならば、と極は自然体に身構える。あとはもう、滅ぼすしかないのだと。
 ちらりと後ろを振り返り、彼女は『聖斗会』のメンバーたちに声を掛けた。
「基本、ボクが戦うけど。でも、キミたちもこれまでいろんな戦いを潜り抜けてきたんだ。そのこと自体をボクはきちんと評価してるつもりだよ。だから、相手に合わせて、自分の身は自分で守れるはずだ、とも思ってる」
 極のその言葉に表情を改め、『聖斗会』たちも各々戦闘態勢に入った。……いや、入ろうとした。だが。
「ちょっと待って。もしかしたらそれは、拙いことになりそうな気もするわ」
 美しい眉根を寄せて、そう声を掛けたのは、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)だった。

【第拾参話『聖斗会』】

「……どういう意味だい?」
 不審そうに問う極に、エメラは翠玉の瞳を煌めかせて答える。
「もうここまで来たら、聖斗会さんたちに隠してても仕方ないでしょう。ここまで得た情報を……ああ、ちょっと黙っててね」
 そう言った相手は極でも聖斗会でもなく、ゆっくりと迫りつつあった呪われし精霊の群れ。
 それに対して指を鳴らすと、エメラは無数の魔導蒸気重装兵を召喚した。巨大にして重厚な盾を構えた魔導兵たちは整然と整列し、盾を舞わせた重い一撃を叩きつけて、精霊たちの群れの勢いを止める。
 その光景を尻目に、エメラは改めてゆっくりと、細い華奢な指を折りながら言葉を継いだ。
「生命エネルギーの強い人を集めた学校、だんだんと強くなる怪異、それを倒す事で強くなる聖斗会。どう考えても仕組まれてるわ。そして、もう一つ言えば」
「……『女神』とやらが、『聖斗会』の皆を誘ってる、ってことだね」
「……ええ」
 無論、極もその現状は把握し、認識していた。
 いや、極のみならず。『聖斗会』のメンバーたちも、その言葉にさほど大きく動揺した様子は見せない。無論、全員が蒼褪め、きゅっと唇を噛み、拳を握りしめながら、それでも。
 薄々とではあったが、彼らもまた、さすがにここまで来て何も気づかないほどの愚物でも、そして──覚悟もない集団でもなかったのだ。
 その姿に素直にエメラも敬意を払う。払いはするが。
「だから、相手の所に聖斗会を連れて行くのはかなり拙い気がするわ。百歩譲っても、なるべく直接接触は──」
 再び怒涛の如く押し寄せてきた精霊たちを、重装魔導兵たちが巨大盾で叩き返す、その音が洞窟内に響き渡るのを聞きながら、エメラは結句する。
「──避けるべき、だと思うわよ」
「確かに、一理あるね。でも、考え方次第じゃないかな」
 極はゆっくりと踵を返し、自らも前線へと向かいながら、言葉を残す。
「いずれにせよ、怪異は強化されていく。この後のUDCをボクたちが必ず倒せる保証もないし、もし倒せたとしても、それですべての事件が終るかどうかもわからない。……この世界にUDCが無数にいることは、誰よりもボクたちが良く知っていることだからね。だから」
 涼しい瞳を敵に向けて、極は淡々と言葉を継いだ。
「……だから、彼らは強くならなきゃいけない。それは力を与えられたものの責任でもあるんじゃないかな」
 極の後ろ姿に、エメラは小さな肩をすくめた。
 どちらが正しいということも、間違っているということもないのだろう。それぞれ一面の真理であり、理屈でもある。
 強いていうなら、技術者であるエメラは安全マージンを大きめに取ろうとしたのであり、対して武術家である極は苦難の中の克己に重きを置いた、とは言えるかもしれないが。
「……まあ、今回はキミの言う通り、聖斗会の皆には見取り稽古をしていてもらおうか。それでも十分なはずさ」
 極はくすりと笑みを浮かべると、ひらりと軽い風が踊るように、敵の中へと突っ込んでいった。

(固まると厄介だよね。……なら、固まりにくくするかな)
 ただ無謀に猛進するだけが「武」ではない。それは単なる「暴」にすぎない。
 ゆえに極は工夫を凝らす。
 水の魔力を使って精霊たちの石化液を中和する、それは相手の力を十全に働かせないようにする受けの原理。
 風の魔力を使って攻撃自体を流す、それは相手の威を意から逸らす払いの原理。
 火の魔力を使って一気呵成に攻め立てる、それは相手を制し圧する撃ちの原理。
 聖斗会たちは魔力を使えるわけではない、だが、そこに寓意された武の真髄を、彼らなら汲み取ってくれるだろう、と極は信じていた。

「まあ、杞憂で終わればそれに越したことはないのだけれど」
 重装兵たちを操り、敵の波状攻撃を喰い止めながら、エメラもひとりごちていた。
「あの……すみません、私たちのことでお気を使わせてしまって」
 背後から、真里亜が小さく声を掛けるのに、エメラは軽く振り返る。
「いえ、私も、あなたたちを信じていないわけではないのよ。でも、因果な商売ね、情報戦要員なんてやってると、つい物事の裏の裏まで読みたくなってしまう」
 エメラは自嘲気味に呟きながら、敵を殲滅しつつある極に最後のサポートをするため、蒸気兵たちを前進させていく。
「それに」
 と、小さく彼女は微笑んだ。
「ふふ、生徒の安心と安全を図るのも、教師の役目だもの」
 短い間だけの教師役。けれどそれは、決して心地の悪いものではなかったと、エメラは不思議な温かさの中で思い返していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

叢雲・源次
【煉鴉】
(どうやら真里亜に対し勘が働いたようだが……邪教…依代…刻印…マキナ教団は無関係か…であるならば…偶発的な適格者か)…グウェン、様子を見よう…今は不確定だ…『事』が起きてから対処する。

戦闘行動:聖斗会に被害が及ばぬよう前衛にて道を切り開く
使用兵装:攻性防壁展開機構
使用UC:蒼炎結界

半液体状のオブリビオン、且つ触れた物を石化する特性を持つのであればこちらから不用意に近付かん方が得策か。
(抱き着きに対し、斥力場によるバリアを展開。気勢を削いだ瞬間に蒼炎結界を眼前に展開。蒼き煉獄の炎を見舞う)
…熱を食らわせれば、固まる。塵と還れ。
(邪魔だ、と言わんばかりに蹴りで固形化したオブリビオンを砕く)


グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
ねえ、真里亜。
貴女、ブリテン……の、ハーフや、クォーター……だったり、しない?
私……と、同じ、先祖を、同じミトコンドリアDNA……
ごめん、変なこと、聞いた。忘れて
(本当に同じ血筋なら、邪教組織がほっとかないけど……極東にケルトの末裔なんて気が付くわけないし、取りこぼし……?)

ゆこう、源次
(背中から生やすのはクランケヴァッフェの黒い翼と鞭のような尾羽)
液体……に、近くて、石化する……厄介
(第六感と空中戦で避けつつ、当たりそうなときはオーラ防御で防いで)
だとしたら、遠距離攻撃……灯して、ブリギッド
全力魔法と、属性攻撃、重ねて、強化した、炎属性……で、彼女らを、熱し、念動力で砕く



「お爺様が、確か外国の方だったと聞いています。詳しくは私も知らないのですが、女の子が生まれたら、と言われて、私の名を用意してくれていたと聞きました。そのあと、女の子は私の代になるまで生まれなかったのですが」
 不思議な問いに、真里亜は細い首を傾げなら答える。
 まさか、という思いで、グウェンドリン・グレンジャー(Pathetic delicate・f00712)はそれを聞いていた。彼女が問いかけたのは、本当に答えが返ってくるなどと期待したわけではなかったのだから。
「ねえ、真里亜。……貴女、ブリテン……の、ハーフや、クォーター……だったり、しない?」
 そんな、問いを。
 だが、答えは返ってきた、確たるものではない、朧げなものではあったが。
「貴女、の、……名前……?」
「はい、真里亜。……お爺様の名前を、女の子らしく少し変えたものということでした。お爺様は、日本に帰化してから名を変えましたが、もともとの名は」
 真里亜は、何気ないように、口にした。
「マーリン。……そう、聞いています」

【第拾四話『縁(えにし)』】

「……ケルト系の名、だな。……マーリン」
 その答えに、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)も傍らで、鋭い刃のようなまなざしを細めた。その答えの意味の重さを、源次も無論知悉はしている。
(先ほど、グウェンはどうやら真里亜に対し勘が働いたようだが……邪教……依代……刻印……マキナ教団は無関係か……?)
 脳裏に様々な条件を網羅しながら、慎重に源次は現状を分析し、口を開く。
「無論、ただそれだけで可能性を決めることはできん。……他の状況を考えると、単なる偶発的な適格者、という可能性の方が高いといえるだろうからな……」
源次は低く呟くと、案ずるようにグヴェンドリンを見つめた。
「……グウェン、とにかく様子を見よう……今は不確定だ……『事』が起きてから対処する」
 こくり、とグヴェンドリンも頷く。やや血の気の薄れた唇をきゅっと噛みしめて。
(本当に同じ血筋なら、邪教組織がほっとかないけど……極東にケルトの末裔なんて気が付くわけないし、取りこぼし……?)
 だが、自分はどちらを望んでいるのだろう、とグヴェンドリンは己の心に戸惑う。
 「そうであることを」だろうか、それとも「そうでないことを」だろうか。
 意外な地で逢えた縁を懐かしみたいと望む?
 それとも、過酷な運命に巻き込みたくないと望む?
 小さく息をつき、グヴェンドリンは首を振った。
 わからないし、最後までわからないままかもしれない。
 だが、「今」為すべきことは、源次の言う通り、思い惑うことではない。
 ここはあくまで、自分の戦場なのだ。
「そう、……ね。……ゆこう、源次」
 グヴェンドリンは顔を上げ、眼前に迫る精霊たちの大群を瞳に映した。
 呪われし魔性たちがその身に纏う感情は──「絶望」。

 漆黒の翼を大きく広げ、グヴェンドリンは飛翔する。
 同時、源次もまた疾風のように大地を駆けた。
 大きく腕を広げ、抱き着こうとしてくる無数の精霊たち。その身に満ちた絶望を僅かでも癒すことができるのはその抱擁だけだとでもいうかのように。
 だが冷ややかに、源次は拒絶する。
「貴様たちの絶望は貴様たちだけのものだ。救いを求めるのならば、己が運命に抗ってからにするがいい」
 言い捨てた源次の張り巡らせたバリアが近くに寄ってきた精霊たちを纏めて弾き飛ばす。精霊たちが大きくよろめいた瞬間、源次の周囲には青白い炎が世界を染め上げるかのように燃え上がった。それこそは煉獄の炎、暴嵐のように荒れ狂い、眼前の敵を焼き払う断罪の焔に他ならぬ。
 悲鳴を上げて悶える精霊たちは、それが単なる苦痛を齎すだけでないことをすぐに知る。
「……半液体状であっても、熱を食らわせれば、固まる」
 淡々と呟く声より早く、源次の槍のような蹴りが虚空を裂いて、固形化した精霊たちを撃ち砕く。それはあたかも、邪魔だ、とでもいうように、無造作に。
「絶望か。……ならば貴様たちはかつて、……希望を抱いていたのだな」
 眉一つ動かすことなく、しかし微かに抑揚をつけた源次の声が、塵と化した精霊の残骸の上に静かに降り積もった。

「液体……に、近くて、石化する……厄介」
 精霊たちの液体攻撃を高速で回避しながら、グヴェンドリンは考える。洞窟内は広大だが、それでも高度に限界はあり、彼女の得意な空中戦の技術が完全に活きるとは言えない。時折直撃しそうになる石化液をオーラを展開して防ぎながら、ふう、と吐息をついて、グヴェンドリンは結論を下した。
「……だとしたら、遠距離攻撃……『闇に、光を……雪解けの、春を』」
 呟くグヴェンドリンの前に輝く三重弧が浮かび上がる。三位一体の神秘的にして美しいトリニティノット、その意味するものは──古の女神の顕現!
 見よ、洞窟の暗渠を圧して輝く光が人の形を取ってゆく。高貴にして知性に満ちた美しい姿を。それは『女教皇』の名で呼ばれる神々しきシルエットに他ならぬ。
 『女教皇』の麗しい瞳が呪われし精霊たちを睥睨した。神秘と英知を宿す女教皇の荘厳な表情は、精霊たちの身に充満した絶望を射すくめる──。
「Brigid of Kildare……灯して、ブリギッド」
 グヴェンドリンの言に応じて、女神は闇に灯りを齎した。ぽつんと輝く一点の光から、やがてそれは一気に洞窟内に荒れ狂う、浄化の炎、邪を滅する紅蓮の光となる!
 源次と同じように、グヴェンドリンもまた加熱による凝固を戦術として選んだのだ。
 その効果が覿面であることは既に立証されている。
 呪われし精霊たちは次々に、己自身の体液によって己自身を固められ、悍ましき立像へと変じていく。……ああ、だが既に精霊たちは、自分たちの絶望そのもので、魂の奥底までも、冷たく硬く、固まってしまっていたのだろう。
 ためらわず、グヴェンドリンはこれを撃ち砕いた。絶望を撃ち砕く、それがグヴェンドリンの想いの力なのだから。
 
 かくして──
 ついに猟兵たちは洞窟の深奥にまでたどり着いた。
 そこに待つ『女神』を求めて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『戦いの女神モリガン』

POW   :    黒いドレス
【虚空に描いたトリケトラの紋章】を使用する事で、【黝い羽根と鋭い蹴爪】を生やした、自身の身長の3倍の【輝かしい大鴉】に変身する。
SPD   :    恐ろしの呪歌
【魔力を帯びた呪いの歌声】を披露した指定の全対象に【自分を傷付けたい、あるいは同士討ちしたい】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ   :    三相女神
戦闘力が増加する【威厳ある戦女神の姿】、飛翔力が増加する【赤い髪の妖精の姿】、驚かせ力が増加する【湖の魔女の姿】のいずれかに変身する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠グウェンドリン・グレンジャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「定めとは、かく測りがたく移ろうものか。故にこそ、私は愉しくあると知るが良い」
 静かに美しい笑みを浮かべ、そしてそれゆえに果てしない恐ろしさを宿して──
『女神』はそこに佇んでいた。
 この世のものならぬ美貌と威厳、侵し難い高貴さ。しかし彼女の眼は、相手に価値を見出さぬ──命としての価値などは。
 そこに認めるのは、ただ……『器』を求める値踏みにすぎぬのだ。

 その女神はかつて、「力」を与えた。分け隔てなく、神として平等に。
 「力」には正邪の区別はない、使い手の意思で決まるのだ。
 故に。
 ……邪に与えられた力は怪異と呼ばれ、正に与えられた力は聖と呼ばれる。
 それは確かに平等。だがしかし、そのこと自体が、女神への尊崇を穢すことに他ならなかった。人の敬意を喪った女神は地の底へ堕ち、今は自らが邪と呼ばれるに至った。
 ……邪神、と。

「『器』「たち」よ、よくも育った。どの代になればそなたたちが我が元へたどり着くか、それが私の唯一の愉楽であった。幾年月、はるけき年が我が身の上に降り積もったが、それも一興であった。だが今こそ、私はそなたたちの身をもって顕現しよう。再び人の世に授けるために、災いも祝福も共に、無尽蔵に無際限に無限定に!」
 女神は高らかに哄笑する、清く美しい笑いを、醜く壊れた笑いを。
「さあ、今こそ許そう、我が名を知ることを! ──戦女神モリガンと知ることを!」
  そう、女神が名乗った瞬間。
『器の資格者』たちが苦悶の表情を浮かべた。紙のように白く変わった顔色、噛みしめた端から血を流す唇、震え痙攣する全身。
 ……モリガンが、器に己を委ね、顕現しようとしているのだ。
 だが。
 女神は彼らの名を想起すべきであった。
 彼らこそは『聖斗会』。力足らず及ばずと言えども、抗う覚悟を備えたもの。
 そう、『器』たちは、己を侵食しようとしているモリガンに全力で抗っている。
 ここまでの経験は、すべての戦いは、決して無駄ではなかった。彼らの力と心を成長させるためには!
 本来の女神の力を取り戻したモリガンならば、その威はオブリビオンフォーミュラやその幹部たちにも伍するかもしれぬ。
 だが、今の女神は、『聖斗会』たちの抵抗に逢い、隙がある。
 今こそ女神を討つ時だ。
 だが、『器』たちの抵抗にも限りがあることは忘れてはならない。
 彼らの抵抗を、猟兵たちよ、無にしてはならない!
(『聖斗会』たちを励まし、勇気づけながら戦うことでプレイングボーナスが発生します)
黒影・兵庫
(「迷惑な存在ね」と頭の中の教導虫が呟く)
俺もせんせーから力を授かりましたが
迷惑と思ったことはありません!
(「ありがと!...さて、どうする?」)
俺だけなら攻撃は回避するのが最適ですが...
(先ほどと同様に自分と聖斗会の面々を『限界突破』レベルまで厚くした『オーラ防御』壁で覆う)
(「守るだけじゃジリ貧よ?」)
はい!ですから...せんせー!助けてください!
(UC【教導姫の再動】を発動すると「助けましょう!」の掛け声と共に教導虫の抜け殻が召喚される)
俺は『衝撃波』や『念動力』で岩をぶつけたりして敵の邪魔をするので攻撃をお願いします!
せんせー!がんばれー!
(黒影の呼びかけにサムズアップして応える)


レン・ランフォード
こう来ましたか…!
モリガン…ケルト神話で見た名前です

あれがそうかは分らんが、だが底は見えた

気休めだろうけど…結界術使うね…
皆抵抗できてる…あれは相当弱ってる…

皆さんが力を正しく使い成長してきたのもあります
少しだけ待っててください、すぐにアレを片付けますから

真っ向から行きましょう
鴉…飛ぶという優位性を保つなら
この子を呼ぶ十分な空間があるはず

大鴉何するものぞ
私が呼ぶのは人の業が創りだした、機械仕掛けの刃!
一閃せよ、飛将覇王・大典太光世!行くよ、私たち!

UCで出来た門を通ってきた2機に搭乗・合体
高速接近・体当たりからのグラップル叩きつけ
飛ぶなら空中戦、刀でなぎ払います

愉快犯、ここで消え失せなさい!


備傘・剱
要するに、復活の為に子供の思いを長年、利用して復活しようとしてる子悪党ってやつだな
…力には、それに伴うリスクがある、よく覚えておきな

オーラ防御発動して、ダッシュで接近しつつ、ワイヤーワークス投擲してロープワークでからめとる
取れようがとれまいが、一瞬の隙ができたら、結界術で封じて、グラップルで天高くぶん投げる
落ちてきたら、念動力で空中に固定しつつ、最接近して黒魔弾を叩き込んでやる

おい、聖斗会共!
これからも戦い続ける気があるのなら、これ位の事は自分達で乗り越えられる位には強くなれ
襲い掛かってくる敵は、そっちの事情なんか、鑑みてはくれないぜ?
…自分と、その大切なものを守る為には、そうするしか、ないぞ



(……迷惑な存在ね。勝手に大きすぎる力を与えて施し顔をする女神なんて)
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の脳内で、恩師であり慈母でもある教導虫・スクイリアの声が響く。だがその声は、どこか翳りを帯び、濡れた色を伴っていた。
 彼女の心中には、かつての戦いの中での出来事が想起されていたのだ。
 アックス&ウィザースで起きた巨大な戦乱──帝竜戦役での一幕が。
 そこで出会った帝竜の姿が纏わりつくように彼女の心で嘲笑する。悍ましく忌まわしいその名を──ドクター・オロチ。
「人を実験台にし、勝手に改造し、命を軽視し、死んでからさえも使い倒す邪悪な科学者! それってつまり、──君たちのことだよねえ、蜂皇族!」
 オロチのあの時の声がいまだにスクイリアを苛立たせる、そんなことはないとどれだけ否定しても。
 そして、今眼前に対峙する敵も、また。
(……勝手に人に力を与えて運命を狂わせた女神……アタシとどう違うの……)
 スクイリアの想いが螺旋のようにねじ曲がり、苦悶を齎しかけた時。
 兵庫の明朗な声が、はっきりと響いた。
「俺もせんせーから力を授かりましたが、迷惑と思ったことはありません!」

【第拾伍話『女神』】

(……黒影)
 兵庫の躊躇いのない、そして裏表のない朗らかな声が、スクイリアの心を鮮やかに蘇らせる。
 兵庫はスクイリアがそこまで深く想い惑っていたと気づいたわけではないだろう。ただ彼は、思ったことを口にしただけだ。素直に、正直に、感じたこと、思ったことを、心のままに。ことさらに労わるわけでもなく、褒賞しようとするわけでも、媚びるわけでもなく、ただひたすら真っ直ぐに。
「この力のお陰で俺は大切な人たちを、仲間を、家族を、護れます。そして自分の正しいと信じたことを貫くことができ、進むべきだと信じた道を歩んでいくことができます! それはせんせーに力を与えてもらったからです!」
(……ありがと、黒影)
 スクイリアは微かに口惜しく思う、自分に涙が浮かべられないことを。歓びの、幸福の涙が流せないことを。 
(ふふ、でも、いいわ。そのぶん、パワーが湧いてきた!)
 
「……こう来ましたか……! モリガン……確か、ケルト神話で見た名前です」
 レン・ランフォード(近接忍術師・f00762)は眼前の女神を名乗る存在に厳しい視線を向けた。その身に漂う威圧感と風格、そして美貌の奥の眼差しに浮かぶ、無限の年月を感じさせる悪意を。
 まさしく神代の芸術品めいた美身に纏う、どす黒い色さえ見えるような呪力、凝縮し形さえ浮かぶような魔力、──それは確かにただの敵ではなかった。生易しい敵では。
 けれど、同時に。
(あれが確かに神話上のものかは分らんが、……だが、もう底は見えたな)
 不敵に笑む「錬」の声が心中に木霊し、蓮はしっかりと頷く。なぜなら。
(皆抵抗できてる……あれは相当弱ってる……)
 術式を得意とする人格「れん」が、それゆえに鋭敏に察する。女神が、明らかに今は、その本来の力を出し切れていないことを。それは『聖斗会』のメンバーたちによる強い抵抗、女神に、太古の意思に敢然と立ち向かう若き意思と魂!
 後方を振り返り、蓮はふわりと声を投げかけた。必死で戦う同胞、苦しみながら、それでも前を向き、戦う意思をその瞳から消さない『聖斗会』メンバーたちに。
「皆さんは確かに、力を正しく使い、成長してきたんですよ。女神の力にさえ抗えるほどに。……ですから、少しだけ待っててください、すぐにアレを片付けます!」
 
「……要するに、復活の為に子供の思いを長年、利用して復活しようとしてる小悪党ってやつだな」
 備傘・剱(絶路・f01759)もまた、眼前の脅威に臆することなく身構えた。その口元には侮りの笑いが浮かぶ。
 確かに強敵と認めはする、剱は敵の力を軽率に過小評価するようなことはしない。敵の恐るべき力そのものは、はっきりと感じ取れるほどの圧となって剱の身に襲い掛かっているのだ。
 だが同時に、過大評価もせぬ。女神、軽んずべからず、されど──恐れるに足りず!
 左様、すべてを失くした彼にしてみれば──何も失っていない女神など恐れるに足りぬのだ。全てを喪ったあとの喪失感と絶望を知らぬものなど、そこから這いあがり、血を啜り泥を喰らっても立ち上がるだけの強さを持ってはいないと明かすことに等しい。
 女神が自分でばらまいた力で買い取ろうとした信を奪われたごときしかないのなら。女神はもとより……『何も持ってはいなかった』のだ。大切に抱き締め、愛おしむべきものを。故に、何も失ったことはなく、故に、そこから再起する強靭さも、また、ない!
 剱はニヤリと笑みを保ったまま、告げる。
「……力には、それに伴うリスクがある、よく覚えておきな」
 それは女神に対する宣戦布告であり、同時に、自らの後輩たち──『聖斗会』メンバーへの教えでもあった。

「愚昧なるものども──我が威を知るが良い!」
 女神の声と共に、夜の闇そのものを切り取ったかのような漆黒が広がる。虚空に浮かぶは神秘なる三重角、古の秘技を示すトリケトラ。
 その輝きに照らされて、モリガンは自らの身を変異させたのだ。叡智と運命、そして死を告げるもの、大いなる鴉へと。
 虚空を斬り裂いて羽ばたく鴉が飛翔し、その風がまともに猟兵たちを撃ちすえる。鋼の重さと刃の鋭さを兼ね備えて。
「ふん、やるな。だがこっちも!」
「一人じゃありませんよ!」
 剱と兵庫が傷を負いながらも同時に叫ぶ。その身に輝く光を纏って。
 二人が同時に展開した、それこそはオーラの二重障壁。兇器と化して吹き荒れる暴風を光の壁が遮り止めた。一人ならば押されたかもしれぬ女神の力を、しかし二人の力がしっかりと。
「大鴉何するものぞ! 空はあなただけのものではありません!」
 その一瞬の隙を突き、レンの声が響く。そう、鴉の翼が世界に闇を齎すのならば、レンの翼は輝く光を招くもの!
 天空に構築された『門』が煌めき、裂帛の機動音が大空をしろしめす。飛来した巨体が大地を揺るがせ土煙を上げ、風を切って鋼が舞う。
 見よ、これこぞがレンの操る絡繰覇王・大典太と、その無敵の翼。
 蓮、錬、れん、三人の声が一つの心と重なって、今こそ叫ぶ! その名を!
「行くよ、私たち! 飛将合体! ──飛将覇王・大典太光世っ!!」
 二体の機甲兵器は吹きすさぶ嵐と閃光の中に重なり合い、雄々しき新たな姿を顕現させる。それこそが古の女神に対する、人の技が作りだした 翼持つ機神の姿! 
「愉快犯、ここで消え失せなさい!」
 巨大な鋼は漆黒の大鴉に空中で真正面から喰らいついた。荒れ狂う神威たる暴風と鋭い爪に打たれ、そのさしもの重装甲も軋みを上げる、けれど人の祈りに機神は応える!
 外装を傷つけられながらもフルパワーを振り絞った大典太の拳が鴉を殴りつけ、虚空から大地へと叩き落とす。そこへ。
「飛べない鴉か、ただの襤褸布だな、女神とやら! ゴミ箱でも漁っているのが似合いだぜ!」
 剱の放ったワイヤーが風を切って飛び、大鴉をがっきと拘束する。無論、女神もただおとなしくはしていない、激しくもがき暴れ、ワイヤーを切断しようとする。だが、女神たるものを単に物理で締め上げようなどとは剱ほどの戦士が思うはずもなし。
 ワイヤーに纏わせた結界術の力が、同時に大鴉を絡め取ろうと輝いていたのだ。
 剱のそれだけではない、れんの結界、そして兵庫の念動力、三重の力が女神を縛り上げる。
 そう、太古の神秘、トリケトラの三重の力を持つ女神に対し……三人の猟兵がその三つの力を封じるかのように!
「今ですっ、せんせー! みんなの……助けを!」
「助けましょう!」
 呼応したのは兵庫、そしてその声に返答した、長身の美女。
 それこそはスクイリアの「抜け殻」に他ならぬ。彼女の本体は兵庫の脳内にあるが、抜け殻は今、自在に操る分身として女神に急迫する。抜け殻であっても、その眼に燃える闘志をたぎらせて。
「アタシは……あなたとは違うわ、女神! あなたにないものを、アタシは持っている!」
 スクイリアはその3mにも及ぶ長身から叩きつけるような一撃を放ち、女神を撃ち抜く!
「それは、相手との……絆! 信頼! そして、愛! だからこそアタシは、胸を張って誇れる! 黒影に力を与えたことをっ!」
 下方から大地を走り天空へと突き抜けるような蹴りが鴉をまともに捉え、女神は無数の黒い羽を撒き散らしながら宙へ吹き飛ばされた、そこへ跳躍する影──。
「『漆黒の魔弾はいかな物も退ける。罠も、敵も、死の運命も──そして女神、お前さえもだ!』」
 暗黒に滾る魔力の超結晶が──剱の黒魔弾(ルイン)が、今こそ女神に真正面から撃ち込まれた!
 引き裂かれるような悲鳴を上げ、大鴉は錐揉みしながら大地に激突し、濛々たる噴煙を上げる。
「……おい、聖斗会共!」
 自らも死力を振り絞ったことで大きく息を荒げながらも、剱は「後輩」たちを振り返り、鋭い声を向けた。
「これからも戦い続ける気があるのなら、これ位の事は自分達で乗り越えられる位には強くなれ。襲い掛かってくる敵は、そっちの事情なんか、鑑みてはくれないぜ?」
 強くなれ。
 厳しい口調、けれどその言葉を与えたということは、つまり。
 強くなれるのだから、の意を込めて。
「……自分と、その大切なものを守る為には、そうするしか、ないぞ」
 そう、自分のように、──何もかもなくす前に。
 剱のその険しい優しさは、確かに、しっかりと。
 『聖斗会』たちに伝わって行った。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ(サポート)
あらあら、盛り上がってるわねぇ
お忙しい所、お邪魔しまーす!
新しい販路を求めてやってきた花屋です
宜しくお願いしまーす(ぺこりんこ)

~なの、~なのねぇ、~かしら? そっかぁ
時々語尾がユルくなる柔かい口調
商魂たくましく、がめつい

参考科白
んンッ、あなたって手強いのねぇ
えっあっヤダヤダ圧し潰……ギャー!
私も気合入れて働くわよー!
悪い子にはお仕置きしないとねぇ
さぁお尻出しなさい! 思いっきり叩いてあげる!

乗り物を召喚して切り抜けるサポート派
技能は「運転、操縦、運搬」を駆使します

広域では営業車『Floral Fallal』に乗り込みドリフト系UCを使用
近接では『シャッター棒』を杖術っぽく使います

公共良俗遵守


スピネル・クローバルド(サポート)
『お姉ちゃんに任せておいてね♪』
 妖狐のクレリック×アーチャーの女の子です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、兄弟姉妹には「優しい(私、~君、ね、よ、なの、なの?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は温厚で人に対して友好的な態度をとります。
滅多に怒る事はなく、穏やかです。
怖そうな敵にも、勇気を持って果敢に挑む一面もあります。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 猟兵たちはまぎれもなく重く強烈な一撃を与えはしたが、相手は古の女神。簡単に倒れるような相手ではない。
 大地に落ちたモリガンは、しかし、しばしの後、乱れ切った長く艶やかな髪を撫で直し、唇にこびりついた血をぬぐいながらも、ゆらりと立ち上がった。息を荒げつつも、その美しい眼には、はっきりと怒りの色がある。自分が力を与えた者たちが自分に抗う姿に。そして神に逆らう猟兵たちに。
 『聖斗会』メンバーは、その凄まじい怒気に、思わず後ずさった。女神が、その彼らに向かって白い手を伸ばし、捕らえようとした──その時だった。
「あらあら、盛り上がってるわねぇ。お忙しい所、お邪魔しまーす!」
 土煙を蹴立てて爆走してきた一両の車が、大地をえぐるような急ドリフトで女神と『聖斗会』たちの間に走り込んだのは。

【第拾録話『爆走』】

 おお、それは悪鬼を討つ装甲車か、それとも魔獣をも滅ぼす戦車か。
 いや、そうではない。それは──誰もが信じがたいことに、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)の営業車に他ならなかった。
「あ、あなたも……猟兵、ですか?」
 どもりながら尋ねる真里亜に、運転席からニコリネは満点の営業スマイルで応える。
「新しい販路を求めてやってきた花屋です。宜しくお願いしまーす!」
「お花屋さん……」
「皆さんは、生徒会さんでしょう? ほら、学校って、色々な行事でけっこうお花を使うと思いまして。入学式に卒業式、学園祭に体育祭! うふふ、ここをお得意先にできたら当分安泰ね~。もし何か御用命がありましたら、どうぞよろしく!」
 ニコリネがぺっこりとお辞儀をしたと同時、車両に乗り込んでいたもう一人の少女が風のように降り立つと、モリガンに向けて満月のように引き絞った弓を連射する。
 大いなる聖樹によって作られたその弓といえども、戦女神に容易く攻撃が通じるわけではない、しかし、時を稼ぐには十分な威力。ほんの僅か、女神が怯む、その機を逃さず。
「あの女神さまにあまり近づいているのは良くないようです。とりあえずここは間合いを取りましょう。大丈夫、お姉ちゃんに任せておいてね♪」
 人形のようにふわりとした黄金の髪をなびかせたスピネル・クローバルド(家族想いな女の子・f07667)が、素早く『聖斗会』メンバーたちを車両へと押し込んだ。
「みなさん、乗りましたかぁ? では、……発進です!」
 勢いよくアクセルを踏み込んだニコリネの言葉が、激烈な加速によって、風に乗りはるか後方へと置き去りにされる。花を運ぶだけにしてはあまりに過剰な営業車、その馬力は大地を引き裂く速度を生み出し、4WDの荒々しいタイヤは荒野を捉えて己が道を切り開く!
「小賢しい……『器』たち、我が意に背くこと能わぬと知るが良い!」
 苛立たし気に女神は吐き捨てると、艶やかな唇をそっと開き──大気を震わせた。
 おお、その、銀鈴を振るような声。繊細に煌めき輝くかとも思える、それは歌に他ならぬ、月さえもときめかせ、星さえも瞬きを止めるような、この世ものならぬ妙なる調べに。
 だが誰ぞ知ろう、その歌を聞いた者はことごとく、女神に魂を捉えられることに。友と、味方と、仲間と殺しあいたいという残虐な衝動に捉えられてしまうことに!
「くっ! そうは……いかないんだからっ!」
 一瞬思わずその狂気に飲み込まれかけながら、しかしニコリネは、己の手腕をもってこの呪歌に立ち向かう。舞手のようにギアが巧みに入れ替わり、残像さえ生み出すようなハンドル捌きと共に、超高速の──ドリフトが展開されたのだ!
 GYARHAAAAAAAA!!
 岩盤を断ち割り泥濘を撒き散らし、砂塵を蹴立てるようなそのスピンは、凄絶な爆音と衝撃を生み出し──女神の「歌」を遮った!
 「歌」が心を震わせなければ呪いは効かぬ。猟兵と聖斗会たちは危ういところで我に返り、体勢を立て直す。
「機械ごときが──!」
 怒りを含んだモリガンは真紅の髪に変じ、空を舞って猟兵たちを追随に移る。その憎悪に満ちた形相、稲光のように輝く瞳、地獄の焔のように靡く髪は、まさしく戦場を統べる恐るべき女神の姿。
「……っ……! 怖い、けど」
 車両の後部から猛追してくる女神の姿を視野に捉え、思わず身震いしつつ、それでもスピネルは退かず、たじろがない。今、迎撃できるのは自分だけしかいないことをスピネルはしっかりと認識している。
 誰よりも優しいスピネルの優しさとは、弱さでも脆さでもない。それは真に護るべきものを護るため、脅威から目を背けぬ勇気の異名に他ならないのだから。
「あなたの姿、十分観察させてもらいました。……ならば! この矢で防ぎます!」
 スピネルの弓が再び弾き搾られた。敵の力を見定めることが出来れば、それに応じて彼女の弓は力を増す。恐ろしい女神の姿から決して目を逸らさなかったスピネルの勇気のゆえに──『力絶の森矢』は今、確実に相手を捉える!
「あなたの未来を切り開く力、信じてる!」
 スピネルの背中にニコリネの声が掛けられる。同時に、スピネルの矢が放たれた。
 しかも──見よ、スピネルの矢は、風を斬り裂いて飛翔しながら、同時に幾つもの数に分裂したのだ。これぞニコリネのユーベルコードの威力。
 いかに女神とてたまるものではない、スピネルとニコリネの合体技は、回避する間も与えず、女神の身体に深々と突き刺さっていた。
 失速する女神を尻目に、ニコリネの車は激走し、ひとまずの距離を取ることに成功する。
 ……もっとも、座席では、その凄まじいドライブに、『聖斗会』たちが目を回し、コブを作っていたが。
「だ、大丈夫ですか?」
 あわてて手当てを始めるスピネルに、ニコリネはぺろりと舌を出す。
「あは、ごめんねぇ。まあ、だからこそ今の攻撃は成功したっていうか。……『味方を攻撃する』のが私の力の条件なのよ」
「……ずいぶんすごい運転だとは思っていましたが、これ、『攻撃』だったんですか」
 治療をしながら、スピネルは小さく苦笑するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
神という輩にはいつも言うのだが
俺は不信心で、付け加えれば不敬でな
蹂躙するぞ

自身への攻撃は『絶理』『刻真』で触れた瞬間終わらせ影響を回避
必要魔力は『超克』で“世界の外”から汲み上げる

絢爛を起動
起点は目の前の空気
因果と破壊の原理で戦域の空間を支配
オブリビオンとそのユーベルコードを対象に、破壊の原理を斬撃と為し空間を斬撃で埋め尽くす
因果の原理で対象外へは無害に

高速詠唱を幾重にも重ね『刻真』『再帰』で無限に加速・循環
瞬く間も与えず起動、ユーベルコード諸共「常に斬り続けて」封殺を図る

戦うのなら力あるに越したことはない
ついでに奪い取って、乗っ取るつもりでいるらしい其処の自称女神の面を殴り飛ばしてやると良い


大町・詩乃
(慈しむ眼差しを聖斗会の皆さんに向け)
貴方達には意志があります。
貴方達が『聖斗会として為すべき事を為したい』なら、願って下さい。
人は道具ではありませんし、私は悪しき願いには力を貸しません。
『貴方達は人として聖斗会として、何を願いますか?』

聖斗会の願いが正しければ、女神としてUC神事起工発動。
願いと想いを受け入れ、詩乃の神力と天地の力を上乗せして、聖斗会メンバーに力(攻撃力強化)を注ぎ、モリガンの力を排除。

聖斗会は神の力を受け入れる器の才を持つ者達。
「私は貴方達が為したい事を応援します。」

同時に【結界術】で聖斗会メンバーを護る防御結界を張り、【オーラ防御】を纏わせた天耀鏡で【かばい・盾受け】する



「神という輩にはいつも言うのだが……俺は不信心で、付け加えれば不敬でな」
 吹きすさぶ風に髪を流しながら言うアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)のぶっきらぼうな言葉に、傍らの大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)はくすりと破顔した。
「あらあら、どうしましょう」
 ん、と顔を向け、アルトリウスは気づく。そこに嫋やかに佇む詩乃もまた──「神」と呼ばれる存在であったことに。
「ああ……悪いな、今の言葉は事実だが、別にお前に対し含むところがあるわけではない」
「ふふ、もちろんわかっていますよ。それに……」
 詩乃は美しい表情を改めると、再びゆっくりと迫り来ようとしているモリガンに対し、鋭い視線を向けた。
「……それに、彼女と私が同じとは思いたくありませんからね……」

【第拾七話『神威』】

 そう、詩乃とモリガンは共に女神と称されるもの。しかし、人ならざる美しさと気品を除いては、その在り様はあまりにも異なる。人を想い、人を愛し、その営みの中に優しい安らぎを覚え、それを護ろうとしている詩乃とは。
(……それでも、もしかしたら)
 と、モリガンの姿を見つめながら、詩乃は小さく心の片隅で思う。
(彼女の在り方もまた、ひとつの愛ではあるのかもしれません。全てに均等に力を分け与え、すべてに平等に強さを与えようとするのは。……でもそれは、己が存在を、他者を通じて誇示するものでしかない。真に他者の存在そのものを──尊重するものでは……ありませんね……)
 微かに長い睫毛を伏せ、詩乃は僅かに残ったためらいを振り切る。同じ『女神』としてのためらいを──最後の、優しさを。

 その詩乃の姿を静かに見やり、アルトリウスは言葉を残して進みゆく。
「では、俺は行く。蹂躙にな。合わせても良いし、せずとも良い……それと」
 ちらと、アルトリウスは『聖斗会』たちに目を向けた。深い影が一瞬、その瞳に刷かれる。
「今後も戦うのなら、力あるに越したことはない。それが誰から与えられたものであってもな」
 自分の力もまた、残滓にすぎぬからこそ。虚空に遊ぶ陽炎よりも儚い一瞬の泡沫にすぎぬからこそ。アルトリウスは口にする。力の在り方、その使い方を、自分自身に淡々と言い聞かせるように。ほんのひとときであれ、彼は……『教師』であったのだから。
「……ついでにその力、奪い取って、乗っ取るつもりでいるらしい其処の自称女神の面を殴り飛ばしてやると良い」
 ふっと笑みを浮かべた彼の、らしからぬ戯言は、静かに風に乗って消えた。

 詩乃もまた、『聖斗会』のメンバーたちに向き直る。見通すように深く、抱きしめるように慈愛深いまなざしは、女神の女神たる証として煌めく。
「貴方達には意志があります。貴方達が『聖斗会として為すべき事を為したい』なら、願って下さい。人は道具ではありませんし、私は悪しき願いには力を貸しません」
 口を開いた彼女の、それは女神の試しであるとともに、仮初めの『同級生』としての、小さな問いでもあったかもしれぬ。
「『貴方達は──人として聖斗会として、何を願いますか?』」

「……っ!」
 アルトリウスはたたらを踏み、半歩後ずさる。
 浅手ではあったが、斬り裂かれたその肩から微かに血が滲んでいた。
 自分への攻撃は、因果を断ち、時を循環させることにより刹那を繋ぎ合わせ、触れた瞬間終わらせていたはず……しかし。
「時と因果を多少操るか、人の子よ。……それで? よもやとは思うが、神たる私がその程度のことをできぬとでも思っていたか?」
 冷酷に美しい唇を歪めるモリガンの視線に嘲りの色が浮かんでいた、その威圧的な姿を見、アルトリウスは小さく息をつく。
「……なるほど。確かにお前は女神のようだな」
「今更怖気ても遅いというもの。悔みつつ死ぬが……」
 そこまで口にし、モリガンはしかし怪訝そうに眉をしかめる、アルトリウスの口の端にもまた笑みが浮かんでいることを認めて。
「……何がおかしい?」
「つまり、俺の勝ちだからだ」
 アルトリウスが言い終わるよりも早く、モリガンの白く豊かな胸から大量の鮮血が噴き出し、虚空を朱に染めあげる!
 おお、これこそがアルトリウスの秘技『絢爛』に他ならぬ!
「何っ!?」
 驚愕するモリガンに、アルトリウスは冷ややかに言い放つ。
「お前は女神だ。……つまり、その存在概念は世界内に規定されたものだ。神とは世界に対する関係性の上でそう呼ばれるのだからな。言い換えれば、お前は世界に縛られている、だが」
 アルトリウスの周囲に、蒼白い光球が無数に浮かび上がり、女神を包み込むように照らし出す。
「だが俺の力は、世界の外側から来るものだ。故に、お前はそれを測ることができない」
「馬鹿な……そのようなこと、が」
 愕然としたモリガンが言い終わる前に。
「天部一式流・絶天ッ!」
 轟く叫びが旋風を引き連れ、空を割った。
 刹那、モリガンの白い腹部が大きく凹み、遅れて凄絶な衝撃が女神の体をくの字に歪ませる。
「がっ……!?」
 信じがたいという表情で相手を見る。それは紛れもない『聖斗会』メンバー、天部拳護による一撃に他ならなかったからだ。
 猟兵なら、まだわからなくもない、だが猟兵ですらないただの『器』に、このようなことが……!?
「き、さま、か。何を、した!?」
 モリガンの狂気のような瞳は、静かに歩み寄る姿を憎悪に満ちて見つめる。……嫋やかな詩乃の姿を。
 対し、詩乃はあくまでも穏やかに、朱唇を開く。
「女神として、願いを受け入れ、その力を一瞬だけ増加させました。自分たちを弄ぶ運命を真正面から殴り倒したい、だそうです。……宿命に決して屈せず自ら道を切り開こうとするその強い想い、私は是としました。……代表として誰が一撃入れるかで、少し揉めましたが、ふふ」
「貴様、それでも私と同じ女神か。神は宿命を司るもの、宿命に抗うものを許容するなど、女神としての自己否定に他ならぬぞ!」
 髪を振り乱し叫ぶモリガンに、詩乃はそっと首を振った。哀れむように、悲しむように。
「違います、かつては同胞かもしれなかったものよ。……神は確かに宿命を用意します。けれど人がそれを乗り越える姿を確かめることで、そこに世界の新たな可能性を見るのです」
「……なるほどな。俺は神に信心を捧げないが、今の言葉は覚えておこう」
 自分の置かれた境遇もまた宿命ならば、それを越えていくのも可能性か。詩乃の言葉に薄く笑み、アルトリウスは静かに腕を差し伸べる。その手先に輝きが集中していく。
 アルトリウスと同時、詩乃もまたその繊手に輝きを集めていく。魂命霊気──彼女の神としての気そのものを。
「……これより神としての務めを果たします」
「煌めけ──」
 二人の言葉が重なった次の瞬間、世界は眩い輝きで包み込まれ満たされて。
 そこに遺されたものの僅かな怨嗟の叫びさえも、清らかな光の中に、ただ、飲み込まれて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
そうね!器にしようとしていたようね!・・ええ!?そうだったの!?
で!なんだったかしら?そう!女神モリリンね!
こんな奥地で姑息なことして何偉そうなこと言ってんのよ!
女神が笑わせるわね!他人の力を奪わなきゃ自信も持てないあかんたれにびびることは無いわ!

最後も力を合わせていくわよ!
ふふん!そんな呪歌屁でもないわ!私はいつだって仲間への誤爆は気にしなごぶぁあっ!!
(後頭部に氷の弾丸がヒット)
アイイイ!何か今回は良識枠に入って大人しいと思ったら最終章でそれなの!?
後で覚えておきなさいよ!?何かの限界チャレンジしてやるわ!

最後は仲間の攻撃に合わせてUCを投げつけるわ!
(アレンジアドリブ大歓迎!)


アイ・リスパー
【PPP】
「やはり予想通り、聖斗会の皆さんを器にしようとしていましたね!」

ですが、聖斗会の皆さんがここまで抵抗できるのは、正直予想外です。
彼らを見直しつつも、応援しながら敵を撃破しましょう。

「聖斗会の皆さん、意志を強く持ってください!
これまで皆さんが戦ってきた経験を、チームワークを今こそ活かす時です!」

私達もチームワークで負けるわけにはいきません!
アリシアさんの歌を聞いて敵の呪歌に対抗し、電脳魔術【マックスウェルの悪魔】で炎の矢や氷の弾丸を撃ち出して攻撃です!

「これが……私達の信頼の証です!」

敵の歌に抵抗できなくなったら、フィーナさんあたりを攻撃!
……一発くらいなら誤射ですよね?(信頼


アリシア・マクリントック
【PPP】
戦の神が相手であれば神の名を冠するスカディアーマーで相手を、といきたいところですが連戦にはあまりにも不向き。
そうなると次の手は……これです!扉よ開け!セイレーンアーマー!神話形態!
貴女の武器に歌があることは先刻承知です!それならばこちらも歌で応えるまで!
「♪さぁ手を 取り合い開いた 世界を映すのは――」
歌いながら敵の注意を分散させるために私は空中へ。セイレーンスピアを手に応戦程度はしますが、基本的に攻撃はみなさんにおまかせしましょう。
さて、こちらばかり気にしていていいのですか?ほら……
逆にこちらを無視するのであれば、歌いながらにはなりますが攻撃を仕掛けてこちらにも目を向けさせます。


シャルロット・シフファート
PPP

「冗談じゃないわ。確かにアンタがあいつらの力のきっかけだったのかもしれない。けれど、その力を得て積み重ねた彼らの足跡と運命は功罪含めて全てがアイツらのものよ!アンタごときが収穫して良い物じゃ決してないのよ!」
そう告げると同時にUCを起動。
四つの武装が顕現。それは四人の霊能力、武術、発火能力、法術をUCの域に昇華させた四連式武装を展開。
「『屍律討魔兵装・聖斗』、私はアンタたちと共に、戦う。だから力を貸しなさい!!」
そう言って思念伝播機能を使って四人と思念を同調。四人の優しさが、求道が、誇りが、安寧が精神を癒し四人の力をそれぞれ対話を用いて引き出しながら感覚を同調し、共に戦う。



「やはり予想通り、聖斗会の皆さんを器にしようとしていましたね!」
 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)の怒りを込めた鋭い声に、アリシア(旅するお嬢様・f01607)が、そしてシャルロット(ツンデレの国のアリス・f23708)が、傍らの仲間たちが次々と頷き、凛然たる表情を眼前の恐るべき敵に向けてゆく。古の脅威、戦場を司る恐怖と破壊と死の代名詞たる女神に、臆することなく。
「予想はしていたことですが、やはり許せません! アリシア・マクリントック、参ります!」
「予想はしてたけど、ムカつくわね!このシャルロット・シフファートが直々に成敗してあげるわ!」
「そうね!予想通りね!……え、何が!?」

【第拾八話『賛歌』】

 しかし最後のフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が周囲をきょろきょろと見回しながら首を捻り、仲間たちはがっくりとうなだれた。
「せっかく、こう……決める流れだったじゃないですか」
 むー、と眉間を抑えながらアイが大まかな経緯を説明し、フィーナはポンと手を叩いた。
「なるほど、分かったわ! つまりあいつをぶっ飛ばすのね! ……別に説明がなくても最初からその予定だった気がするけど!」
「まあ、そう言えばそうね。なら、さっそく……」
 シャルロットが今しも大地を蹴り、女神に向かおうとした、時。
 モリガンの瞳が妖しく輝いた。
 その煌めきは不動のままに領域を圧し、押し潰さんとするほどの……忌まわしき意思!
「いけません、呪歌が来る……!」
 はっとアリシアが身構えた時、モリガンの艶めく唇は、既に開かれていた。
 いかに女神と言えども、ここまでの度重なる猟兵たちとの戦いで、その再生は完全には間に合っていない。
 だが、だからどうだというのか。
 我が身に傷を負っているというのなら、敵に同士討ちをさせればよいだけのこと。
 ほくそ笑むようなモリガンの「歌」は滔々と戦場の隅々にまで流れ、響き、あらゆるものの心に沁みとおり汚染していく……!
「愚劣蒙昧なる人の子らよ、互いに相討ち相克し滅びるが良い……」
 耳を塞いでもそんなモリガンの言葉が嘲笑を伴って聞こえるかのようで、猟兵たちは歯を食いしばる。女神の呪歌はあたかも魂の奥底から妖艶な誘いをもって凶暴な衝動を齎すようで、猟兵たちの身体は抗うことのできない闘争心に充たされて行ってしまう……。

「いけません、このままでは同士討ちを始めてしまいます……」
 アリシアが苦しげな声を漏らし、一方、古き女神はもう一息で仕留められる、と余裕を見せた。
 ……が。
「このままでは、仲間同士で争ってしまう……『せっかく』『私が』『女神に一番最初に攻撃するつもりだったのに』」
 蒼褪めながら、しかしアリシアは口にした──くすり、と、花のように微笑みながら、その言葉を。
 彼女に続き。
「『いいえ』『私が』『最初に女神へ攻撃します』」
「『そうはいかないわ』『私が最初に』『女神へ攻撃するに』『決まってるじゃない』」
「『私が』『とにかく全部』『ぶっ飛ばすわ!』」
 アイが、シャルロットが、フィーナが。
 次々と声に出し、立ち上がる。目の奥にぎらつくような闘志を燃やし睨みつける、その相手は──仲間ではない、他ならぬ、女神!
「な、何……っ!?」
 一瞬戸惑いうろたえて、さしもの女神も怯む、そこへ。
「「「「そぉぉぉぉぉれぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」
 4人全員が一斉に突撃し吶喊した! その勢いは嵐にも似て、大地を揺らし烈風を引き連れ、砂塵を巻き上げて!
 早業! 吹き飛ばし! 全力魔法! カウンター! 砲撃! 制圧射撃! ダッシュ! 捨て身の一撃!
 ……そう。
 それは『誰が一番最初に女神へ攻撃するか』の功を争う、という意味での『仲間同士の争い』であった。
 即ち結果的に──4人全員での女神への凄まじい同時集中攻撃をもたらす!! あえて言おう、フルボッコであると!
 これが4人の策に他ならなかった。どうせ仲間内で争わされるなら、あえて乗ってやれば良い。むしろ敵の力を逆に、こちらに都合よく利用してやれば良いのだと!

 立て続けの乱射乱撃、連撃乱舞に、モリガンは血反吐を吐いて身を翻し、辛うじて間合を取る。
「ふざけた真似を……もはや、容赦せぬ」
 爛々と怒りに満ちた眼差しを向ける女神に、猟兵たちも改めて身構える。もちろん、ここまではあくまで小手調べに過ぎない。だが、機先を制し、女神の戦意をこちらへ向けることはできた。
(そう、聖斗会の皆さんから女神の気を逸らし、私たちに怒りを向けさせること。それがこの作戦の二番目の意味だったのですから!)
 アイが小さく頷き、作戦の成功を暗に仲間たちへ伝える、あとは改めて──女神を打ち破るのみ!
「なんていったかしら? そう! 女神モリリンね! まあなんでもいいわ!」
 フィーナが髪をなびかせ、ずいと指を突きつけて激しく言い放つ。
「こんな奥地で姑息なことして何偉そうなこと言ってんのよ! 女神が笑わせるわね! 他人の力を奪わなきゃ自信も持てないあかんたれにびびることは無いわ!」
 ドヤァ! とまくし立てたフィーナに女神は凄まじい憎悪の視線を向け、一方アイは顔を隠して苦笑する。
(……なんか、フィーナさんをけしかけておくだけでも、私たちに怒りを向けさせる作戦は成功したような気がしなくもないですね……)

「塵芥ども、同士討ちなどともはや生易しいことは言わぬ、己の手で己の命を断つが良い!」
 再び女神の唇が開かれる。相手を舐め、猟兵たちを侮っていた先ほどの攻撃とは異なり、今度は紛れもなく──古き女神の真の力を乗せた呪歌が来る!
「それならばこちらも歌で応えるまで!」
 凛と言い放ったアリシアの眼前に光の輝きが満ちる。煌めきの中に現れたものは、清冽なる波濤の飛沫を装いに変えて、星の海をも泳ぎ渡る鮮やかな人魚の姿、セイレーンアーマー!
「小賢しい……女神の歌に対抗できるつもりでいるのか。呪いと憎悪と誘惑の歌に」
 嘲りの色を浮かべた女神に、アリシアはにっこりと微笑み返す。
「あなたは歌のことを何も知りませんね。歌とは心を、思いを、願いを伝えるもの。魂の奥底からの強い祈りで相手を抱きしめるものです。人であれば、そんなことは子供でも知るものなのに、女神を誇るあなたはそんな歌の本質さえ知らない──」
 アリシアの深く澄んだ瞳が大きく見開かれ、決意の色が女神を射すくめる!
「ゆえに、お聞かせしましょう、触れたものすべてを未来にする歌の力を!」
 呪いの歌と祝福の歌が、今真正面からぶつかり合う。片や、世界を闇に塗りつぶし悪意に染め上げんと。片や、友たちと手を取り合い、開いた世界を映し出す希望の扉を開こうと……!

 二人の歌はほぼ拮抗しており、猟兵たちへの呪歌の影響は今のところ軽微だった。
だが、女神の注意から逸れていたことで直撃を免れていたとはいえ、『聖斗会』のメンバーたちには強い影響を及ぼしていたのだ。漏れ聞こえる女神の呪歌に、必死で彼らは立ち向かおうと拳を握りしめ、脂汗をにじませる。
 だが、逆に言えば。
 彼らは、……そのまますぐに飲み込まれるほど弱くはなかったと言うことに他ならない。
(聖斗会の皆さんがここまで抵抗できるのは、正直予想外です。見直しましたよ)
 アイはにこりと微笑みを浮かべながら、彼らに声を掛ける。
「聖斗会の皆さん、意志を強く持ってください! これまで皆さんが戦ってきた経験を、チームワークを今こそ活かす時です!」
 アイは示唆する。示唆だけで十分理解するはずだと認識して。
 そしてアイの期待に、聖斗会は正しく答えた。
 みるくの展開した法術が結界を形作り、その周囲を小鳥の炎が取り巻いて空気を揺らす。揺れた大気の中ならば呪いの歌も正しく流れぬ道理。その二人の心に真里亜の霊力が勇気と希望を与え、一方拳護の氣の力は二人の身体に力を与える。
「正解、です!ではこちらも……お見せしましょう! エントロピー・コントロール・プログラム、起動します!」
 電脳空間が光を帯びて展開され、制御された熱が形を変えて邪悪を討つための刃と化していく。
「これが……私達の信頼の証です!」
 アイの声と同時、無数の火炎弾と氷結弾が、女神めがけて降り注いだ!

「じゃあこっちも力を合わせていくわよ! だいたい私はいつだって仲間への誤爆は気にしなごぶぁあっ!!」
 ……なんか物騒なことを言おうとしたフィーナの後頭部に、そのうちの一発がぶち込まれていたが。
「アイイイ! 何か今回は良識枠に入って大人しいと思ったら最終章でそれなの!? 後で覚えておきなさいよ!?」
 涙目で叫ぶフィーナに、アイは胸の前で手を組み、そっと首を振る。
「いいえ、フィーナさんなら大丈夫だと信じていたのです、ほら、見てください」
 アイが指差す先には、宙に浮かぶ女神の姿。女神はアイの打ち出した火炎弾や氷結弾を鮮やかに撃ち落としていく、だが。
「うぐううっ!?」
 一発が、女神の死角から彼女の身体を深くえぐった! それこそ、フィーナの後頭部にぶつかってバウンドし、軌道を変えて跳弾となり女神に襲い掛かった一撃に他ならない! アイはすべて計算していたのだ、角度とか。
「ほら、うまくいきました。 全部フィーナさん(の頑丈な頭)を信頼したおかげです」
「そ、そうかしら? だったら、まあいいわ。じゃあ追撃、行くわよ! 貫けええぇぇぇえええ!!」
 まあ、フィーナ本人が納得しているのだからそれでいいのだろう。
 とにかくフィーナの放った紅蓮の槍は、燃え盛り大気をも焼き尽くさんばかりの勢いで女神を襲う! 『仲間の攻撃が命中すること』──その条件は既に成就! っていうかフィーナの石頭が成就させた!
 鮮血が舞う──フィーナの槍が女神の美しい身体を深々と刺し貫いた証が、霖雨となって大地に降り注ぐ!

「お、の、れ……我が、器を……我が収穫の時を……邪魔立てする愚か者どもっ……!」
 ごぼりと美しい唇から大量の血を吐き、それでも女神は血走った眼で獲物を見据える。それは自分のものだと、それは己の血肉とならねばならぬのだと。
「冗談じゃないわ。確かにアンタがあいつらの力のきっかけだったのかもしれない。……けれど」
 その女神の視界を遮り、優美なる姿が立つ。シャルロットの姿が。毅然たる意志、譲らぬ決意を華奢な体躯に充ち溢れさせて。
「……けれど、その力を得て積み重ねた彼らの足跡と運命は、功罪含めて全てがアイツらのものよ! アンタごときが収穫して良い物じゃ決してないのよ!」
 言い放つ、それと同時に、呼応する! 
 今こそシャルロットの鮮やかな意思が伝わる、聖斗会のメンバーたちに、その雄々しい覚悟が。強く、そして優しく差し伸べられた手が。
「私はアンタたちと共に、戦う。だから──力を貸しなさい!!」
 そこに逡巡もなく、躊躇いもなく。ただ共に輝き、共に燃え盛り、共に猛り、共に守らんとする強い意思だけが、世界に満ちる!
「『暴虐の終焉は告死と鏖殺を宣する人の造りし神滅の剣にして弾丸。それは神界を砕く夕闇に染まる聖光に満ちている』……」
 然り、ここに暴虐は終焉を告げる! シャルロットが呼ぶ、その輝かしき名に置いて!
「『屍律討魔兵装・聖斗』──!!」
 それは拳護の武技が超絶の域に昇華した武装。
 それは小鳥の炎が概念の域に届いた兵装。
 それはみるくの術が神域に達した霊装。
 そしてそれは、真里亜の祈りが天をも覆った、静かなる証。
 シャルロットの力は聖斗会の力と共鳴し、その能力を引き上げて顕在化させたのだ。光に満ちた次のステージへ、希望に満ちた次の次元へと。
 女神の瞳が見開かれる。何が起きたのか、彼女が理解することはない。ただの器にすぎぬ者たちが、一瞬だけとはいえ──己を越えていくことなど、理解できようはずもない。わからぬ、わからぬ、理解できぬ!
「ええ、アンタは知らないことばかり。そして、それを学ぼうともしなかったわね。……ここは「学園」。──学ぶものの場所、なのにね」
 シャルロットのつぶやきと同時に、全兵装が一斉に雄叫びを上げ、古きものの姿を紅蓮と暴風と衝撃の中に、深く深く包み込んでいく。
 その場にはただ、明日への祈りを捧げる希望の賛歌のみが残り、美しく清らかな残響を、いつまでも響かせていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

幻武・極
へえ、キミが女神か。
完全な状態のキミと戦ってみたいと思うけど
それはキミに抗っている聖斗会の努力を無駄にすることだから諦めておくよ。

さて、女“神”が相手だけどキミの力を使わせてもらうよ。
告死武装の生命力吸収の力で女神から生命力を吸い取り、聖斗会への負担を減らしていくよ。
だからといって、油断したらダメだからね。
最後の最期まで気を抜くんじゃないよ。

さて気になったんだけど、キミが強化に使ったこの紋章だけど破壊したらどうなるのかな?
ゲームだとこういったところに弱点があったりするんだよね。


アネット・レインフォール
▼静
顕現のために生徒を狙った、か。

かつて大神と呼ばれる存在と相対した事もあるが
それと比べれば随分と行動が稚拙に感じる

神にはヒトの倫理・尺度は通じないと言うが
アレは神でも有象無象の類と見るべきか(勘だが)

とは言え腐っても女神。
これも彼女らの糧になる筈だ

さて――課外授業を始めよう

▼動
敵の攻撃には葬剣を無数の鋼糸状にし
絡ませる事で足止め用に

(安心させるように宿題でも)
1人では逆立ちしても勝てない敵を前に
撤退が出来ず、かつ勝利したい時…どうすればいいと思う?

霽刀で【雷刃六連舞】を叩き込むが数発は翼等を狙い態勢を崩す。
生徒4人分と近所迷惑分の計5つを一撃毎に込め
最後に教育的指導(居合)を放つ

アドリブ歓迎


エメラ・アーヴェスピア
ああもう…案の定よね…
まぁ予測で来ていたから驚く程でもないわ
あなた達もそれを承知で来たのだから…頑張りなさい

鴉に変身…?私の前でただ飛ぶだけなんて舐められたものね
彼らに手は出させない…叩き落としてあげるわ、『我が砲火は未来の為に』
大型の対空砲を呼ぶわ
役割としては対空・接近への牽制・同僚さん達の援護【砲撃】と言った所ね

あなた達も気張りなさい、今までの頑張りはここで乗っ取られる為じゃないでしょう
そして目を見開いて前を…周りを見なさい、あなた達は独りではないのだから
私も少し位は助けになるといいのだけれど
…この砲火は決して自称女神の野望の為では無く…希望ある若者達への未来の為に…!

※アドリブ・絡み歓迎



「へえ、キミが女神か。……完全な状態のキミと戦ってみたいとは思うけど」
 くすり、と幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は、無邪気な、そしてそれゆえに怖ろしい笑みを漏らす。
「ま、それはキミに抗っている聖斗会の努力を無駄にすることだから諦めておくよ」
 極の瞳が妖しく輝く。時として、武術家である極の本能──より強い相手、より完成された相手と戦いたい、という彼女の望みは、己の中からどうしようもなく強く噴き出してくることがある。
 今はそれを制御できている、けれど。もしかしたらいつの日か、その願望がとめどなくあふれ出して、己を飲み込んでしまう日が来るのかもしれない、と、小さな悪夢が浮かぶこともある。
(……昔が昔、だからね)
 極は小さく胸中で苦笑する、だが、それは決して、「昔」の轍を踏まないという自負から来るものでもあった。
 その上で、あえて、そんな危うい綱渡りのような日々を送ることすらも──極にとっては甘いスリルのひとつだとも、いえるかもしれなかった。
 極は武術家であると同時に──ゲーマーでもあるのだから。

「顕現のために生徒を狙った、か。……かつて大神と呼ばれる存在と相対した事もあるが、それと比べれば随分と行動が稚拙に感じるな」
 アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は冷淡に敵の行動を分析する。
 無論、知と暴は別の話だ。特に「神」の名を冠するほどのものであれば、まともな理も論も通用するものではあるまい。未熟な理で動くものではあっても、そこに秘められた力は想像を絶するということはあるだろう。しかし、アネットは小さく肩をすくめた。
「神にはヒトの倫理・尺度は通じないと言うが……アレは神でも有象無象の類と見るべきか、勘だがな」
「ほう……人の子よ、ずいぶんと思い上がった口をきくな。私の力がいまだ十分ではないとはいえ、そこまでの増上慢、許し難い。百千に引き裂かれてから悔やむが良い」
「ああ、聞こえていたか、すまないな。まあ聞こえるように言ったのだが」
 どろりとまとわりつく重い憎悪がのたうつような、物理的な圧力さえも感じる悍ましい視線を向けた女神に、アネットは平然と、涼しい表情を返す。
「貴様……!」
「俺はこの學園に教師として来たのでな、ちょうどいい、お前にも課題をやろう、女神よ。……『俺がお前を取るに足りぬと判断するのは何故か?』だ」

【第拾九話『未来』】

「ああもう……案の定よね……」
 エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は小さく吐息を漏らす。
 ここに若者たちを連れてくることがどんな意味を持つのか、それについては十分に予測できていたことだ。だからこそ驚きはないが、同時に、分かりきっていた結論にまともに向かい合ってしまった、という思いもある。
「とはいえ、まあ」
 エメラは、アネットと激しい視線を戦わせている女神をじっくりと観察した。
「なるほど、女神の力はまだ抑え込まれている状態。それは、聖斗会がここまで成長できたから。なら、必ずしも悪手ではなかった……ということね。そして」
 エメラは後ろを振り返り、自らの生徒たちに目を向ける。
「あなた達もそれを承知で来たのだから……頑張りなさい。ここで乗っ取られる為に来たのではないでしょう。目を見開いて前を……周りを見るのよ、あなた達は独りではないのだから……。けれど」
 エメラは一瞬言葉を切り、瞑目して、再び静かに唇を開く。
「教師は生徒を導くけれど、赤子をあやすわけではないのよ。自分の脚で立てるのなら、立って歩きなさい。転んだら手を差し伸べてあげるから、まず転びなさい。転ぶことで身体は上手な転び方を覚えていくの」
 エメラの言葉は、どこか悲しい。彼女自身が機械化されたサイボーグであるがゆえに。「上手な転び方」を、彼女が学ぶことはあったのだろうか。そんな小さな自嘲を十分自覚しながら、それでもエメラは言う、「まず転ぶ」ことの大切さを。

「愚かな! 『問い』とは常に、神が人に与えるものだ! その領域を踏み越えたこと自体、罪咎と知るが良い!」
 漆黒の翼が天空を圧するかのように広げられ、炎のような瞳は破滅を呼ぶかのように呪いに満ちた輝きを放つ。モリガンはその身を漆黒のドレスに纏う、すなわち、巨大な鴉へと変じる!
 僅か羽ばたきひとつで地上全てが消し飛ぶのではないかと思うほどの暴風が吹き荒れ、猟兵たちは大きくよろめいた。風そのものが鋭利な刃となり、猟兵たちを斬り裂き、鮮血を舞い散らせる!
 けれど、猟兵たちの表情に動揺はない。恐怖もない。皆、分かっているからだ、戦いとはどういうものかを。……そしてそれを、今、若者たちに伝えねばならぬということを。
「聖斗会たち、課題だ。……抗うことができない強い力に対した時は?」
 アネットの声が凶風に乗って教え子たちに届く。若者たちは必死でそれに答える。
「さ、逆らわない、ですの!?」
「正解だ」
 アネットはみるくの答え通り、ふわりと抵抗をやめ、自らの鋭い身体を風に任せて宙へと泳がせる、そのままでは岸壁に叩きつけられる、と見えた時、撃ちだされた鋼の糸がその身体をしっかりとつなぎ止めていた。同時、その反動で大きく体を揺らし、アネットは暴風域から脱して宙を飛翔する!
「SYAAAAAAAAAAA!!!」
 とはいえ、アネットの体勢は無防備に近い。大鴉が高く吠え、鈍く輝く狂猛な嘴をもってアネット体を貫こうとした時。
「では次の課題よ。敵をもっとも攻撃しやすい状況は? そしてその状況を作るためには?」
 今度はエメラの涼やかな声が教え子たちへ向かった。
「えっと、敵の意識が他へ向いた時、かな! そのためには、陽動を行う!」
「正解ね」
 くすりと笑むと、エメラの周囲に無数の光が浮かび上がる。見る間に鈍く輝く砲身を形成したそれこそは、圧倒的火力を有し領域を絶対の火力で制圧する魔導蒸気砲!
 そう、小鳥の答え通り、アネットが囮となって作った隙を、エメラが見逃すものではない。無数の魔導砲が一斉に火を噴き、天地を揺るがすほどの猛火が炸裂した!
 大鴉の巨大な体躯が大きく歪み。その闇より深い黒い羽が、大地を埋め尽くすほどに散り舞う。
「じゃ、ボクの番か。ボクは生徒だけど、まあ先達としてね。……敵は強大だ。弱っていても、まだまだ力を残してる。そんな相手に、どう戦う?」
 宙で必死に体勢を立て直そうとして苦悶している大鴉に、高く跳躍して向かいながら極が問う。
「急所だッ!」
「うん、武術の定石だね。あと、ゲームでも、弱点狙いってセオリーだし、さ」
 拳護の答えに極はくすっと笑い、独楽のように小さな身体を回転させながら──大鴉の眼前に位置取った。
 おお、鴉の額、そここそはまさに、女神が変幻した際の紋章……眩く輝く古の秘技を示す三重角、トリケトラの紋章が揺蕩い続ける場所に他ならぬ!
 ……そこへ。
「ザラキエル、キミの告死の力を使わせてもらうよ──『告死武装』ッ!」
 極の声が響き、同時に朧のように姿を現した少女の幻影が、ただそっと、柔らかく優しく……その紋章に、触れた。
「SYHAAAAAAAAAA!!!」
 刹那、鴉は絶叫し、悶絶して大きく体勢を崩したかと思うと、天空そのものが崩れ落ちるかのように、大地へ激突した。
 トリケトラの紋章の輝きは、今しも儚く消え失せようとするほどに淡く薄らいで明滅している。それこそがかつての極の宿敵にして今の同胞、告死天使ザラキエルの駆使する生命力吸収の力であった。
「この砲火は決して自称女神の野望の為では無く……」
 地に堕ちた鴉に、いや地に堕ちた女神に。
 エメラの、葬送のような言葉が突き刺さる。
 無数の銃口が、十文字に狙いをつける、女神を今、忘却の時の彼方に送り返すために。
「──希望ある若者達への未来の為に! オープン・ファイアッ!!」
 宣告が、下る!
 轟然と爆音が大地を揺るがし、岩壁をわななかせ、烈火と衝撃、爆煙と閃光が世界を埋め尽くす! あらゆる不浄を、あらゆる忌まわしき宿命を、その砲火は殲滅し破壊し葬り去るためだけに、荒れ狂う!
「……さて、これが最後の課題だ」
 ふわり、と大地に影のように降り立って、アネットは教え子たちに語り掛ける。
「こいつは腐っても神だった。そんな、1人では逆立ちしても勝てない敵を前に、撤退が出来ず、かつ勝利したい時……どうすればよかった?」
「……はい、先生」
 真里亜が、嫋やかな微笑を浮かべ、これに答えた。
「仲間を。友を。信じる者の力を、束ねることです」
「正解だ。……そして」
 アネットは居合腰の構えを取り、気息奄々としている鴉に向き合う。鯉口を切る小さな音が響き、鞘の中で、刃に浮かぶ蒼い漣の文様が静かに揺れた。
「そして、女神よ。俺がお前を取るに足らぬと言ったのは、そんな単純なことにさえ気づいていなかったからだ。──では、これにて課外授業を終了する」
 それは最後を告げる言葉。そして、最期を告げる言葉。
 アネットの秘太刀──『捌式・雷刃六連舞』が容赦なく叩きこまれる合図に、他ならなかったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
WIZ

人間に都合の良い物が正とされ
悪い物は邪とされる。
神は人間に力を与え過ぎたのです。
信仰を忘れ、自分達が生命の頂点だと思い上がる程に

人の敬意を喪い、邪神とされた彼女と
生まれながらに邪とされてきた私。
通じるものを感じつつ
守護霊の【ドーピング】で戦闘力を高め
『快楽の檻』で更に445倍の強さの群体淫魔に。
【オーラ防御・気合い】で攻撃や驚かせに耐え
445km/hの速度で【空中戦】も可能

私達が貴女を敬愛致します。
代わりに力を下さい。
人類から邪とされた者達を救う力を

【念動力・マヒ攻撃】で金縛りにして
無数の裸体の中に取り込み
【誘惑・催眠術・全力魔法】で愛を囁き
奉仕するように【慰め・生命力吸収】



「あなたは、きっと優しすぎたのです、女神よ」
 連戦に傷ついた身を休めていた女神モリガンの前に、ゆらりと黒い影がゆらめくように、揺蕩った一人の声が降る。
 長い睫毛を上げ、女神は見据えた。その姿を──ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の姿を。
「人間に都合の良い物が正とされ、悪い物は邪とされる。そのこと自体、傲慢で身勝手な価値基準ではありませんか。……女神、あなたは人などに、そこまで情けを掛ける必要はなかったのです。人などに……力を与える必要は、なかったのです」

【第弐拾話『渇愛』】

 切々と訴えるドゥルールの姿を、モリガンは座したまま、じっと見つめる。その流麗で妖艶な、そして同時に、──何処かひどく寂しげな、姿を。
「そなたは……半魔、ヒトの側に立たぬものか」
「はい、私は生まれながらの「邪」とされてきたものですから──人の狭量な概念によって」
「狭量か、そうであろうな。……だが、故にこそ、私はすべてのものに力を与えてきた。力を得れば、その分だけ視野が広がる。視野が広がれば、この世界にあるものが己たちだけではないと知るであろうと、な」
「ですが、人にはその力を使いこなすだけの……!」
「半魔よ」
 モリガンは、小さく優雅な首を振る。それはしかし、冷たい拒絶ではなく、あたかも……震える幼子を優しくあやす慈母のような姿にさえ、見えた。
「こだわるのだな、半魔よ。だが私にとっては人も魔もないのだ。全ては同じく思う。全て、私が与えた力の前には等しく思うのだ」
「……だから、貴女は人の敬意を喪って地に堕ちてしまわれたのに、ですか」
「失ったのならまた手に入れればよいだけのこと。そこに絶対の意味はない」
 ふっと影を揺らめかすかのように、女神は微笑み、ドゥルールはその艶やかさに息を飲んだ。
 モリガンのその在り方は、確かに女神だった。モリガンは、己が地に堕とされたこと自体に対しては何の怨讐も抱いていないのだと、ドゥルールは悟る。そして、だからこそ、人と魔に、何の区別も持ってはいないのだと。
 それは、自分にはできない考えだった。鮮やかすぎ、眩しすぎるほどに。
 無論、「人」の猟兵からしてみれば、それは人も魔も等しく見下しているからだと答えが返るだろうし、それは決して間違いでもないだろう。だが、それでも。
 それでもドゥルールにとって、モリガンは確かに、遠く仰ぎ見るほどの大きな存在に、感じたのだった。
「近く寄るが良い、半魔よ。……名は、何と言ったか」
「ドゥル―ル・ブラッドティアーズと申します」
 小さく自らの隣を指で叩いた女神に素直に応じ、ドゥルールはことりと細い腰を下ろした。
 二人の長い髪が、宙でふわりと微かに絡み、戯れるかのように触れる。
「ドゥルールよ、そなたも私を討つために来たのだろうな」
「僭越ながら……貴女に敬愛を捧げるかわりに、貴女から力を戴きたいと。……人類から邪とされた者達を救う力を」
「そうか。討つことで一つになる。それがそなたのやり方なのだな」
 モリガンは瞼を閉じ、そっと唇に小さな笑いを浮かべる。その深い横顔に、ドゥルールは見惚れた。
「力は与えよう、それが神たるものの在り方なれば。……されど、ドゥルールよ。そなたが魔をばかリ救うのであれば、私はそなたの中で寂しく思うであろうな。私にとっては人も魔も同じなのだから」
 ドゥルールは辛さを隠して俯く。それだけは、決して彼女の中で譲れない一線だったのだから。
 モリガンはそんな彼女の頭を、細い手を伸ばしてそっと撫でた。我儘を言う愛し児をなだめるように。掌から、魂の奥底をそっと包んでくれるような温かみを感じるような気がして、ドゥルールはその手に身を委ねる。
 女神には三つの相があることはドゥルールも知っている。今の女神の姿もそのうちの一つに過ぎないのだろう。けれどそれでも、ドゥルールにとって、今のモリガンは感じられる、激しく燃える炎のように。……そして自分はその傍らに立つ繊細な蝋細工のように。
 モリガンの指がドゥルールの細い顎の下を撫でる。風に誘われて舞う小さな花弁のように、ドゥルールの顔がモリガンの顔に近づいて行った。
 いつしかその吐息は交わり重なって、ひとつの柔らかい色となる。
 体の奥で大きくときめく魂の昂ぶりは、熱く溢れて滴り落ちるかのように、ドゥルールの心をかき乱した。
「……お慕いします」
 小さく囁いたその言葉に、何故涙がこぼれたのだろう。
 確かにユーベルコードを使いながらも、ドゥルールは、──大いなる愛に包み込まれていくのは自分の方であるかのように思えてならなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
大鴉の蹴爪を防御しつつ『聖斗会』をかばい

あの女神が聖邪問わずこの學園の力の源泉であるならば、倒した後で影響が出るやもしれません
ですが、躊躇う理由はありません
皆様が何の為に戦ってきたか…それを胸に立ち上がる時です!

迫る大鴉に破損した大盾を投擲し目潰し
陰からUCを伸ばし拘束
ワイヤーを巻き取り空中の大鴉に飛び乗り●騎乗
UCのロープワーク手綱を怪力で握り
脚部スラスターのパイルで串刺し姿勢固定

人々に力授けた女神の背に乗る不敬、お許しを
ですが…
私情も含め、彼らの身を侵すのは騎士として極めて許容しかねますので

全格納銃器を乱れ撃ち、剣で滅多刺し

彼らが真に貴女と対峙する為…私と共に地に墜ちて頂きましょう


九重・灯
引き続き人格は「オレ」のままだ。
(「女神が復活の時のために残した種、それが聖斗会の力だった。ですが――」)
もう一人の自分の声が頭の中に響く。

ああ、分ってねえな。
コイツらは努力を怠らず、傷つけられる痛みと恐怖に耐え、誰かのために戦う意思がある。
オマエが押しつけた力だけで戦ってるんじゃない。ナメてんじゃねえぞッ!

UC【朱の王】。自らの血を代償に喚んだ炎を四肢と剣に纏う。
鴉になって飛んでも黒縄カゲツムギを放ち、天井なり直接相手なりに撃ち込んで一気に収縮させ、反動で跳ぶ。
『ロープワーク6、地形の利用5、空中戦3』
朱の魔炎を纏う剣、アザレアで翼を裂いて地に落としてやる
『属性攻撃15、怪力7、部位破壊5』



「あの女神が聖邪問わずこの學園の力の源泉であるならば、倒した後で影響が出るやもしれません……」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は静かにシミュレートを行う。無数の、無限のifを導く演算が瞬時にトリテレイアのCPUを駆け巡る。
「力」が残った場合、人の身にそれは余るものではないか? 
「力」が消えた場合、超常災害危機対応の力を失くした彼らの在り方は? 
源たる女神を喪い、不安定に陥った場合は? 制御しきれなくなり、暴走した場合は?
 もし『聖斗会』が「力」を拒否したら、怪異のみに力が溢れることはないのか?
 ──数限りなく、考慮すべきことはある。
 それは、だが。
 不安という名の翳りではなく、可能性という名の灯で呼ぶべき希望。
 それを、トリテレイアは見た。『聖斗会』の若者たちの瞳の奥に、輝く炎の明るさとして。
 ならば騎士は導こう、若き命たちのために先陣を掛けゆこう、薫風に雄々しく翻る旗印を手に、──希望の旗印を手に!
「そう、躊躇う理由はありません。皆様が何の為に戦ってきたか……それを胸に立ち上がる時です!」

【第弐拾壱話『赤子』】

(女神が復活の時のために残した種、それが聖斗会の力だった。ですが――)
 九重・灯(多重人格者の探索者・f17073)の脳裏で呟く声。それは、もう一人の彼女。
 その静かな、しかし決意に満ちた声に、灯もしっかりと頷く。
「ああ、分ってねえな。コイツらは努力を怠らず、傷つけられる痛みと恐怖に耐え、誰かのために戦う意思がある……」
 そうだ。『聖斗会』は、今日の今日まで、「知らなかった」。それを想起した時、灯の心は震える。
 その力が女神によるものだったとは知らなかった、ということではない。
『聖斗会』は、──「自分たち以外に能力者がいることを知らなかった」。
 同じような存在が、……いや、もっと頼れる、力強い者たちがいることを知らなかった。その孤独はいかばかりのものだっただろう。世界に自分たちしかいないと思っていた時の苦しみはどれだけのものだっただろう。
 灯にはわかる、彼女もまた似たような境遇だったのだから。嵐の中を歩みながら、普通でいたかったと、そんな小さな、しかしもう許されない願いを抱く少女なのだから。
 だが、知らなかったにもかかわらず、彼らは戦ってきた。逃げなかった。大切なものを護るために。恐怖に震えて涙した時も、不安に押しつぶされそうになった夜も、幾度となくあったに違いないのに。
 だからこそ──灯は吠える。傲慢な女神に、小さな人間の大きな勇気を、誇りを、知らしめるために。邪神に勝手にはさせぬと、自分自身が証を立てるために!
「その、『心』は。……こいつらの心は、オマエが押しつけたものじゃねえ。自分たちの中にあって、自分たちが育てたものだ。そうだ、こいつらは……力だけで戦ってるんじゃない。ナメてんじゃねえぞッ!」
 
「身の程を知らぬ者ども──「心」だと? 赤子に心を期待して自由にさせる親がいるというのか」
 冷ややかに言い放ったモリガンの背後から、どす黒い闇が膨れ上がる。翼と呼ばれるその闇は、だが同時に、女神自身の内側から漏れ出る闇黒。その輝くばかりに美しい身の中に、確かに淀む泥濘があると自ら明かすに等しき悍ましき力!
 天空にはためく巨大な翼は女神の神体を神鳥に変ぜしめ、生ける災厄と呼ぶに相応しき強大な呪力が天地に荒れ狂う。
 その黒き業魔の力はトリテレイアの純白の外装を引き裂き、灯の小さな体を無に帰さしめんと襲い掛かる。
「ちっ!」
 暴乱の中で髪を振り乱した灯の柔肌は既に疾風の刃で鮮血に塗れている。だが、それでも灯の瞳は輝きを失わぬ。爛と輝いたその決意は口元に笑みを浮かばせる。
「オレに傷を負わせたな、女神。そいつがてめぇの敗因だ。──『骸の海に沈み眠る朱の王よ、その力の一端を顕現せよ!』」
 見よ、その宣言が為された瞬間、灯りの全身から流れる鮮血があたかも炎のように揺らめき立つ。腕に、脚に、手にする刃に……いや、それはまさしく、焔に他ならない、神の魂さえも焼き焦がす魔炎に!
「『“我ら”、狂気を以って狂気を討つ! ──朱の王(アカノオウ)っ!』」
 漆黒の闇を斬り裂く真紅の炎が真正面から大鴉に向かう!
 だが心せよ、まだある、脅威が。鴉の鋭い嘴が!
「私の一部を破壊しましたね、女神。それが貴女の敗因です」
 鴉の嘴が灯りを迎え討たんとした時。暴風にも抗って飛翔した巨大な鉄塊が鴉の体躯を直撃した。それこそはトリテレイアの巨体が全力を持って投擲した大盾。鴉によって引き裂かれ、それが故に鋭利な刃と化した盾!
 灯のゆらめく炎に幻惑され、鴉は一瞬、トリテレイアへの反応が遅れた。飛来した巨大な兇器にその身を切り裂かれ、鴉は苦悶の叫びを高く上げる。
 同時、灯の紅蓮の刃は鋭くその身を抉っていた。深く深く、己に纏わりつく忌まわしき呪いさえも断ち切らんとするかのように。
「語るに落ちたな、女神。……赤子に心があることを期待しない親がどこにいるかよ」
 怒りを込めて灯が呟き、捻じりこんだ刃が呪いに満ちた神の身体さえ焼き尽くさんと吠え猛る。
 さしもの女神も悶絶する、その隙を逃さず、トリテレイアのワイヤードサブアームが唸りを上げた。鋼のラインは決して逃さぬ硬い意思の顕現ともなって女神の身体に巻き付く。銀河帝国の叡智の結集と言える機体がそのポテンシャルの極限までを発揮し、女神の神体を拘束した!
 大きく怒りの絶叫を上げ、鴉は無理やりに飛び立つ。翼ではなく呪いの力そのものをもって舞い立つように。だが、遥か高く上空に達しても、まだトリテレイアは離れない、あたかも勇壮に騎乗する騎士の如く、神魔の背中にまたがって、その身をスラスターパイルで刺し貫いたままで。
「人々に力授けた女神の背に乗る不敬、お許しを。ですが……私情も含め、彼らの身を侵すのは、騎士として、極めて許容しかねますので。ええ……赤子と言えど、いつかは歩くのですよ」
 おお、既にトリテレイアの白銀の鎧は赤く染まっている、女神の呪われた血潮、剣で何重にも切り裂いた傷から噴き出る旧き血で。
「貴様……もろともに堕ちる、つもりか」
「それが騎士の在り方でもありましょう」
 呻く女神に、平然と、淡々と。短く答えたトリテレイアの声が聞こえたか、どうか。
 女神は再び、天から地へと、轟音とともに叩き落されていった。
 ……だが、その一瞬。
「黒縄カゲツムギ──!」
 飛翔した漆黒の縄、それは影。灯の放った影の縄に他ならぬ。
 その黒い縄がしっかりとトリテレイアを受け止め、大地への激突から免れさせていたのだった。
「騎士かもしれねえ、だがこの学園では、まだあんたは「先生」でもあるんだぜ。教え子の前で、命を軽く扱うような教え方をしちゃあいけねえな」
 ニヤリと笑う灯に、トリテレイアは面目なさげに辞儀をする。
「……確かにおっしゃる通りですね。これは私も、生徒として潜入するべきだったかもしれません」
「学ランを着てかい? 似合ったかも、な。ははは……」
 傷だらけになりながらも、灯の笑い声は明るく、透き通って響いて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
【竜鬼】

大方の予想通りでしたか……!
ですが、お陰である程度は対策も立てられました。
聖斗会の皆さん、大丈夫です。気を強く持ってください。
リューさん、精霊さん達、行きましょうっ!

リューさんに前に出てもらい、わたしは聖斗会の皆さんの手を握り「鼓舞」し励ます
それと並行し【星の息吹/世界の祝福】発動のため詠唱
聖斗会の皆さんにもご一緒にお願いします
(皆で詠唱に参加することで団結を強め抵抗の意志を高める狙い)

皆でしっかり詠唱出来たら、よーく狙って「聖斗会の皆さんやリューさんごと」巻き込んで発動
敵味方識別可能で味方へは祝福効果ありですから、攻撃と強化を纏めて仕掛けます!


リューイン・ランサード
【竜鬼】

UC使用と共に真の姿解放。

UCによる高速飛翔能力と【空中戦】で、空からモリガンを攻撃。
遠距離では【多重詠唱・炎と光の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・スナイパー・2回攻撃】で全てを燃やす炎と全てを貫く光の魔弾を連射。
近距離ではエーテルソードと流水剣の二刀流による【風の属性攻撃・2回攻撃】で斬り裂く。

相手の攻撃は【第六感・見切り】で読んで【空中戦】で躱すか、【ビームシールド盾受け・オーラ防御】で防ぐ。

リューインの行動は全て、モリガンの注意を引き付ける為の囮。
その間にひかるさんが準備を整えて、反撃に転じる為の時間稼ぎ。

ひかるさんと聖斗会が攻撃に転じれば、リューインも上記の魔法攻撃で連携します!



「大方の予想通りでしたか……! ですが、お陰である程度は対策も立てられました」
 荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)はきゅっと艶めく唇をかみしめながら、それでも真っ直ぐに前を向く。大気を歪め、大地を侵食する翳のように、幽玄に迫りくる女神の恐るべき姿を目にしながら、それでも。
 それでもひかるが退くことは、ない。
「大丈夫です」
 にこり、と、彼女は百万の薔薇が風に揺れるように艶やかに、微笑みさえする。その短い言葉を、未熟ながらも果敢な戦士たちに掛けながら。
 ……「大丈夫」と、たった一言、しかし盤石のような鼓舞の言葉をかけながら。
 触れたら壊れそうにさえ見えるひかるのその可憐な姿から零れるたった一言が、けれどなんと頼もしく、なんと力強く、響くことかと、『聖斗会』たちは感嘆した。
 女神の呪力は既に物理的な力をも纏い、嵐のように吹き荒れつつある。その暴威に髪をなびかせながら、ひかるははっきりと、戦端を開くべく口を開く。
「気を強く持ってください。……では、リューさん、精霊さん達、行きましょうっ!」

【第弐拾弐話『絆』】

 ひかるの言葉と同時──地下深いはずの洞窟内に眩く太陽が輝く。いや、あたかもそうであるように思えた。しかしそれは翼、陽の輝きさえもしのぐほどに煌めく、黄金色なる美しき翼。リューイン・ランサード(竜の雛・f13950)の真なる姿に他ならない。
「『我が裡に眠る竜神よ、今こそ覚醒(めざめ)の刻です──竜神人化(リュウシンジンカ)!』」
 少女の強い期待と深い信頼はリューインに無限とも思える力を齎す。滾々と湧き出る泉のように、清く澄んだ、それでいて尽きることない力の奔流を、リューインはしっかりとその身に感じている。
「女神、あなたが人に与えた「力」なんて、それに比べたらどうということはないんです。ただの形骸、ただの殻でしかありません。本当に、誰かに力を与えるというのは……」
 大きく弧を描き、風を身に纏いながらリューインは高く飛翔する。真紅の髪を紅蓮の炎のようになびかせつつ、自分と同じく天空に舞ったモリガンを相手取って。閃光の連速射が女神を急襲し、燃え上がる炎がモリガンの神体を包み込まんと渦を巻く。
「ええ、本当の力は──心の内側から湧き出すものなんですよ!」
 だが、爆煙と火炎の中から女神はその神々しき姿を悠然と現わした。朱唇に優艶な笑みを浮かべて。
「ならば知らしめて見せよ、雛なる龍よ。その言葉が私にどれほどの意味を持つかを。……それができるものならばな!」
「言われずともっ!」
 リューインの剣が閃き、旋風となって女神を襲う、だがモリガンは、柔和な手の一閃でその刃さえも払いのけ、ふわりと舞わせた髪の一束で、龍の戦士をしたたかに大地へと打ち付けた。
「ぐうっ!」
 土煙が上がり、塵芥が舞う。大地をひび割れさせるほどの強烈な衝撃に、体はおろか魂の奥まで穿たれたような感覚を覚え、リューインは呻いた。
「見よ、所詮その程度ではないか、龍の子よ。それでもまだ、己の力を誇るのか」
「ごほっ……ええ……誇りますね」
 嘲り笑う女神に、しかし動じることなく、リューインは立ち上がる。ふらつく足をしっかりと踏みしめ、霞む視界でも逃がすことなく敵を捉え、そして唇の端に笑みをこびり付かせながら。
「……なぜなら、僕の力は、僕一人のものではないからです。だからこそ僕はまだ立てる、いくらでも立ち上がれる。……だからこそ僕はこの力を誇り、この力を慈しみ、愛おしむ。女神であるあなたには不要な言葉でしょうけれど……それが」
「それが」
 リューインに和した、声。
 それは、ひかるの声だった。
 彼女の小さな手は、しっかりと『聖斗会』たちを握りしめている。彼女は『聖斗会』と力を束ね、共に思いを詠唱に変えていたのだ。
 故に、『聖斗会』たちにははっきりとわかる。ひかるが、己の祈りを蓄積するために、どれほどの思いで眼前の光景に耐え続けていたかを、どれほどの想いで、時を稼いでくれている少年の苦戦を見守っていたかを。
 そして──それでも必ず、彼なら成し遂げてくれると信じていたことを。
 そう、今、時は──満ちた。

「……それが、──絆と呼ばれる力なんです!」

 ひかるとリューインの声が重なった。同時、ひかるの周囲に眩い光の柱が屹立する、天を貫き地に迸るかとも思える、壮麗なる輝きの九つの柱、地炎風水木氷雷光闇の力を漲らせた輝きの柱が──虚空を遥かに超えて天の彼方へと!
 それこそはひかるの力、彼女の詠唱は反響を繰り返し、威を重ね、増加を続けて無窮なる共鳴へと至る、──無限にまでも届くほどに!
「『天の二精、地の七精……世界に集いて通せ。至るは星、万物の始まり。命を育む星よ、汝が威を示し給え。いざ……!』」
 凛冽たる声が、今、告げる。創世と終焉の刻の到来を、祝福と破滅の開幕を!
「星の息吹/世界の祝福(ブレス・オブ・ザ・ワールド)──っ!!」
 絢爛たる光の嵐が舞う。存在の根源に直結した夢幻の色が踊る。戦女神を包み込み、その威を消し尽くさんものと。抗う女神の神威さえ、その輝きの前に意味をなさない。なぜならそれは無限であるのだから、そして嗚呼、何たる語義矛盾であることか、神は神であるがゆえに──無限に至り得ないのであるから!
「……馬鹿な……」
 輝きに飲み込まれながら、女神は低く呟いていた。
 ひかるの力は敵を討ち、同時に味方を強化する。だが、女神が驚愕し絶句したのはそれだけではない。
 理解できぬ力の源泉、そのものにであった。
 絶対であり……完全であり……不壊であり……不滅であり……。
 ──ゆえに、常に一者であった。
 女神は、常に。
 そこに、他者と結ぶべきなにものも、ない。
 女神は絆を不要としていたのではなく。
 ……もとより、それを知らず、そして決して得られぬものだったのだ。
 神が、神である以上、決して得られず、それがゆえに決して無限には届かないもの。
 ──それこそが、「絆」であったのだ。
 精霊が囁く声に、それを微かに感じ取れたような気がして。
 ひかるは小さく、悼みを耐えるように、瞑目した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

叢雲・源次
【煉鴉】
邪神『モリガン』を確認…炎獄機関…制御コード解除…対神義装…構築開始…
(右義眼から蒼炎が溢れ、身を包み…やがてそれが晴れればオブリビオンを、邪神を殺す為の、真の姿となる)

邪神は殺す…それが俺の戦いだ。グウェン、お前はお前の戦いやれ。宿業を断ってみせろ。
(対神太刀を抜き払い、地を蹴り踏み込む。こちらが前に出ればグウェンが攻め、グウェンが前に出ればこちらが斬り込む。太刀を振るう度に蒼炎が舞い上がり女神の逃げ場を塞がんとする。特に示し合わせたわけではない、お互いが勝手に戦っているにも関わらず、意志の通じ合ったコンビネーションで女神を攻撃する)

『授ける』…と言ったな…お節介が過ぎるぞ、邪神。


グウェンドリン・グレンジャー
【煉鴉】
うっ……
(意図していないのにも関わらず、真の姿に変化する。収縮する瞳孔に、涙のように流れる血)

(以前源次から貰った抗浸食剤をポケットから取り出し、すかさず首に打つ)
これが、私達の、ご先祖様……そして、私の、何もかもを、変えた、宿敵

(UC発動、目の前の宿敵と酷似した大鴉に変身)
『真里亜、あなたは、巻き込ませない』
念動力で、加速
空中戦で、ドッグファイト、地上、叩き付ける、怪力で、先制攻撃、体当たり
源次が、斬ったとこ、蹴爪と嘴で、傷口をえぐる

変身解除、限界突破
腰から生やした、クランケヴァッフェの翼、で、最後の一撃、叩き込む

(一層色が濃くなった刻印に気が付き)
私……自分の、運命には、負けないよ



「血が……!」
 息を飲む真里亜の悲鳴に、グウェンドリン・グレンジャー(Pathetic delicate・f00712)は己の体の異常を察した。
 いつの間にか、漆黒の大翼を纏った真の姿を顕現させていたこと、だけではなく。
 涙のように。……滂沱と流れる涙のように。
 鮮血がその眼を染めて、滔々と流れ落ちていたことに。
 駆け寄ろうとする真里亜を手で制し、グウェンドリンは自らの身を探り、取り出した薬剤を注入する。身を焼くような感覚が体内を経めぐり、小さく呻きながら、それでも魂を喰らうような忌まわしき感覚だけは微かに薄まったとグウェンドリンは感じていた。
(抗侵食剤……今だけ、でも、効けば、……それで、いい)
 紅い視界を手で拭いながら、グウェンドリンは蒼白な真里亜の顔を見つめる。
 ……ん。彼女は、まだ、大丈夫。
 そう、グウェンドリンは結論を出す。
「やっぱり、……私の方、に、……強く影響、……出てる」
 ならば、……良かった。真里亜を巻き込まずに済んだのだから。
 自分がこの場にいられたことに、グウェンドリンは感謝する。さもなければ──真里亜がこの影響を受けていたのだろうから。
 ……感謝、か、……と、そこでグウェンドリンは小さく乾いた笑みを浮かべた。
 何に、あるいは誰に感謝を捧げようというのか。この悍ましき運命にか、それとも。
 それとも──神に、か。
 
【最終話『討魔學園』】

 ……その「神」は。
 今しも、蹌踉とした足取りで、ゆっくりと間合いを詰めようとしていた。
 一足ごとに、その歎ずべき美しい身が変じていく。
 漆黒の翼がとろりと溢れ堕ちるかのように体から零れ。
 繊細な手には鋼の輝きを宿す爪が伸びる。
「……これが、私達の、」
 グウェンドリンもまた、冬の湖面にゆらめく幻影のように立ち上がる。
 一歩、また一歩と。
 グウェンドリンもまた、更なる転変をその身に現わしつつ、なおも彼女は……止まらない。

「……私達の、ご先祖様……そして、私の、何もかもを、変えた、宿敵──!」

 その言葉を、真里亜は夢の中のように聞いていた。
 ……自分の中で、黒い「何か」が蠢く予兆を感じながら。

「邪神『モリガン』を確認……炎獄機関……制御コード解除……対神義装……構築開始……」
 傍らで、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)もまた冷ややかな視線を貫くように向け、相手へとためらいなく向かう。
 グウェンドリンの瞳から赤い血が溢れたように、源次の右目からは、今、蒼い輝きが漏れ出していた。
 その輝きはやがて勢いを増し、身を包む。揺らめき、猛る、あたかも焔のように……いや、それはまさしく、邪なるものに対して執念にも似た狂おしい戦意を、そして殺意を表す青い炎!
 やがてその炎が消えた時、源次はその身を漆黒の攻殻に包んだ異形の姿へと変じていた。
 対神義装。邪神を屠る刃。そして、限りなき殺意。
 ……それだけで良い。源次の戦いには、それさえあれば良いのだ。
「邪神は殺す……それが俺の戦いだ。グウェン、お前はお前の戦いをやれ。……宿業を、断ってみせろ」
 死を告げるように言い捨てると、源次は大地を蹴立て、女神へ向け猛然と疾駆した。

「定めとは、かく測りがたく移ろうものか。故にこそ、私は愉しくあると知るが良い」
 女神は妖艶な唇に笑みを浮かべて相手を見やる。グウェンドリン、そして、真里亜を。
「縁(えにし)の端に連なるものに力を授け、育むつもりでおったものを……。はからざりき、我が愛し児よ、そなたまでもがこの地に姿を見せるとは。……我が元に戻ってくるとは、な」
 歌うような玲瓏の美声が冷徹な運命を宣告する。グウェンドリンに──己の血脈を最も色濃く伝えるものに。
 対してグウェンドリンは応える、滾る決意を低く宿した声で。
「そう、私、……は、ここに、現れた。……神、を、……討つために」
「一興である。神は人を試すもの。そなたが多少は抗えるほどであることを望もう。……我が器となるのである以上はな!」
 女神の眼前に鮮やかに紋章が煌めく、古の神秘を伝える三重角、トリケトラの文様が。
 おお、だが……。ありうべきことか、グウェンドリンの面前にもまた、トリケトラの紋章が浮かび上がる。
 すでに人ならざる姿へと変異していた両者は今、完全にその姿を異形へと変えて、天空へと飛翔した。漆黒の翼で闇をも欺き、煌めく爪と嘴は星をも貫く神威の姿へと。それは太古より数多の神話で叡智と運命の象徴と謳われるもの、天をしろしめす大鴉!
 虚空を引き裂いて翼をはためかせた神と人は、音も光も置き去りにして、大地の底で激突した。漆黒の羽に混じって鮮血が舞い散り、虚空を鮮やかな色彩で染め上げていく……!

「『授ける』……と言ったな……。お節介が過ぎるぞ、邪神」
 地獄の底から響くような声が黒い閃光の交錯した軌跡を追う。青い炎は空気をも焼くように熾烈に猛り叫んで、漆黒の翼のうちの一つにその怒りを叩きつけていた。
 同じ姿と言えども、まがうことはない、源次が過つはずもない。邪神を斬る刃そのものと化した彼が。
「く……おのれ下郎、邪魔な!」
 黒い羽を地上に雪のように降らせながらいらだたしげに吐き捨てた鴉の声が、それを物語っていた。
「そしてもう一つ、……『試す』……と言ったな。それも余計な世話だ、邪神」
 飛燕を切り捨てるかのごとく還った剣閃が鴉を追撃する。上段から下段へ、下段から上段へ、前後循環して円環の如く、迸る蒼い炎の剣は神でさえも──いや、神だからこそ、その存在そのものを滅せんと迫る!
「推参なっ!」
 憎悪と呪詛に満ちた神の声が雷霆のように響き、鋭い爪が源次の眉間めがけて襲い掛かった。が。
「ぼんやり、してる……ね」
 刹那さえ刻む超高速の戦闘で、一瞬の注意の逸れは命取りに他ならぬ。グウェンドリンの容赦ない一撃が音よりも早く、女神の首筋を深く引き裂く!
「くあああっ!」
 猛り狂う女神はその巨翼をはためかせ、神威の一撃と化しグウェンドリンを撃ちすえようとする、しかし。
「悪く思え」
 冷ややかに燃え上がる源次の一閃がその黒く輝く体躯に食い込んでいた。
 連携ではない。示し合わせたわけでもない。グウェンドリンも源次も、相互が勝手に戦っているに過ぎない。いや、むしろ、仮に付け焼刃の共闘であったなら、女神の叡智はそれを嘲るように退けたかもしれぬ。
 しかし──あくまで、意のままに。思うままに。そしてそれでも、相手の存在を信じて。そんな二人のコンビネーションは、本来ならば世界を圧する女神さえも相手取り、その身に証を刻みつけていったのだ。己の定めを切り開こうとする証を、その身の地獄を撃ち砕かんとする証を。

 無論、相手は神であればこそ、易くは破れぬ。
 翼が風を呼び、爪が空を裂き、刃が閃いた。
 天を翻し大地を覆さんとするような激闘はしばし続き、グウェンドリンも源次もその身は既に血に塗れ、傷つかぬ場所とてなく、……それでも。
 ついに力尽きたと見えた女神の翼はその威を喪い、大地へと深く堕ちていった。

 ──大地へと?
 猟兵たちに気の緩みがあったわけでは決してない。女神がそれほどの相手だったのだ。
 女神が堕ちて行った先には──
 真里亜がいた。

「もはやそなたでも構わぬ、器よ! 極東の果てに紛れ込み血が薄いとて、我が受肉の妨げにはならぬ!」
 真里亜に向けられたその感情は、いわば、死に物狂いと言えた。皮肉なことに、女神はここにきて初めて、人のみが為しうる技の一つ──必死という感情を覚えたのだ。
『聖斗会』のメンバーたちが咄嗟に進み出、真里亜を庇おうとする。だが、死力を振り絞った女神の神威は人の子らの身体を容易く縛り、自由を奪う。
「真里亜……!」
 グウェンドリンは掠れた声で叫ぶ。遠い遠い国で、ほんの僅かな偶然で出会えたのかもしれない、小さな縁(えにし)。遥かな時の彼方でいつか重なっていたのかもしれない、末裔──家族。
 刻が嘲笑うかのように緩やかに、グウェンドリンの瞳に映った。悪夢の中のように、もどかしく、重く、ゆっくりと。
 真里亜の身に、女神の爪牙か掛けられる光景を、グウェンドリンに見せつけるかのように……。

 次の瞬間、起きた悲鳴。
 それは。

 ──女神のものだった。
 目に深く、黒い羽を突き立てられた、女神の。
 ……真里亜の眼前に、古の三重角トリケトラが浮かび。その手には、たった一本だけ、黒い羽が生えていたのだった。

 思う間も、惑う間もない。今度こそ、グウェンドリンは瞬間を引き裂いて飛ぶ!
 すでに限界は越えている、変身は解ける、けれど、だからどうだというのか。
 半ば自らも大地に落ちるような勢いのまま、──あらゆる想いを込めた一撃が、唸る。
 時の果て、定めの彼方、人の思い、絡みつく因縁、そして、無限の未来。
 クランケヴァッフェの翼は、そのすべてを乗せて。
 ──女神の心臓を深く、貫いていた。

 唇が、微かに動いたようだった。
 女神は、嗤ったのか。何を?
 自分が力を与えた存在に討たれた自分をか。それとも、無駄に足掻いた末裔たちをか。
 それを伝えることはないまま、女神モリガンは、塵と化して、ただの古く朽ち果てた言い伝えの中へと、消えて行った。

「……デバイスにも、破邪の守り石にも反応はない、な。グウェン、お前の感覚は?」
「……感じ、ない。……多分、さっきの、が……最初で、最後」
 源次とグウェンドリンは、困惑した表情の真里亜の体の反応を調べていた。
 だが、霊能者としては従前通りだが、先程のような力は──女神の力を色濃く残した反応は、もう真里亜からは感じられなかった。
 グウェンドリンの言う通り、最初で最後の力を、真里亜は使い切ったのだろう。
「……グウェンドリンさん……グウェン」
 真里亜は躊躇いがちに、それでも微かに優しく微笑んで、そう口にする。誰に対しても礼儀正しかった真里亜の砕けた口調に、周囲はやや驚きの色を浮かべた。
「あなたも最初は余所行きの態度だったでしょ? ふふ。……それでね、私の家の家紋、──『結び三つ柏』っていうらしいの。形で書くと、こう」
 真里亜が宙に指で描いてみせたその紋様に、グウェンドリンは微かに目を見張る。
 それは、……「トリケトラ」に他ならなかったのだから。
「だからどうだっていうかはわからない、私とあなたが本当に遠い血で繋がっているのかどうかも、さっきの力も、たまたま女神の影響が私に強く出ただけなのかもしれない、でも」
 真里亜はそっと、グウェンドリンの手を取り、その眼差しを見つめた。
「それでも私は、あなたを……『家族のように』思うわ。もしこれからも、また会えるなら……」
 グウェンドリンは、ただそっと、相手を見つめた。
 結論は、まだ出ない。逢いたいと言ってすぐにいつでも会えるような環境に、自分はいないのだから。
 けれどそれでも、いつか。いつかは、素直に頷ける日が来るのかもしれない。
 グウェンドリンは、一瞬、小さく目を伏せる。
 先ほど気づいた事実──刻印の色が一層濃くなっていた事実に思いを馳せながら。
 それでも。彼女は強く心を奮い立たせる。
(私……自分の、運命には、負けないよ)
 
 ──かくして。
 学園における怪異の事件はひとまずの終結を見た。
 生徒たちは再び、日常へと戻っていく。屋上でサボり、図書室で資料を読みふけり、パソコン室に入り浸り、そして真面目に生徒会長を続けるような日常に。
 それでも拳護は少しだけ仕事をするようになり、小鳥は少しだけ投げやりな態度を直し、みるくは少しだけがめつさを改め、……真里亜は少しだけ、年齢通りの無邪気さを見せるようになった。
 まだ怪異の残滓や残敵がいるかもしれない。だが、それでも猟兵たちとともに己の運命に立ち向かった経験は、彼らを間違いなく成長させ、新たな事件を克服させていくことだろう。
 ゆえに──この事件は「学園」の事件だったのだ。少年少女たちを育むための。

 「屍律討魔學園聖斗会執行録──第百号案件、これにて完了します」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月23日
宿敵 『戦いの女神モリガン』 を撃破!


挿絵イラスト