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行燈祭りと白猫のあられ(作者 佐和
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 窓越しに、行燈の灯が揺れる。
 今年も祭りの日が近づく。
 また独りで過ごす祭りの日が。
 そう、思っていた。
「ねえおきて、ごしゅじんさま。そとをみせるやくそくじゃない」
 白猫は、亡くした主に語りかける。
 共に過ごした過去を思い出しながら。
「ねえこえをきかせて、ごしゅじんさま。へんじして」
 白猫は、亡くした主に願う。
 あの優しい声を思い出しながら。
「ねえ、ごしゅじんさま」
 白猫は独り、亡くした主を想い、嘆き続ける。
 にぃあ、にゃあ、と哀しい声で。
 今年も独り、祭りの日を過ごす。
 そう、思っていた。
 けれども。
『おはよう、あられ』
 白猫の前で、亡くした主が動き出す。
 骸魂となって、優しく白猫の名を呼ぶ。
「ごしゅじんさま」
 歓喜の白猫を、主は迎え入れて。
 化け猫となっていた白猫を、主の骸魂は飲み込んで。
 オブリビオンへと変えていく。
「おきてくれた。よんでくれた」
 けれども白猫にとってその変化は些細なことで。
 むしろ、オブリビオンとして主と1つとなれたことに満たされて。
「もうなくさない。もうはなれない」
 白猫は、呟いてしまう。
 世界の終わりを告げる、滅びの言葉を。

 ……時よ止まれ、お前は美しい。

「カクリヨファンタズムが崩壊しようとしている」
 九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)が告げた言葉に、だが集まった猟兵達は慣れた様子で話の先を促す。
 さもありなん。
 UDCアースと骸の海の狭間にあるこの世界は、カタストロフが日常茶飯事、とも言える程に、世界の終わりが幾度も訪れかけている。
 猟兵達に、世界の終わりを防いで欲しい、という依頼が来ることも珍しくなく。
 ゆえに、落ち着いた様子の皆を見回して、夏梅も慌てることなく話を続けた。
「崩壊の中心となっているオブリビオンは、彷徨う白猫『あられ』。
 亡くした主の魂魄に飲み込まれた東方妖怪……化け猫さ」
 主の死を受け入れられず、起きてくれることを待ち続けた白猫は。
 骸魂となっていても、戻ってきた主に喜んで。
 むしろ望んでオブリビオンになってしまったようだと夏梅は言う。
 すでに崩れ始めている世界を元に戻す為には、オブリビオンを倒す必要がある。
 けれどもそれは、骸魂を倒す事と同義。
 やっと大切な主と会えた白猫を、再び主から引き離すことになるから。
「2人の仲を引き裂く……っていうと酷い話だがね。
 でもきっと、こうすることが、あられのためでも、望まず骸魂となったあられの主のためでもあるはずだよ」
 そう信じるしかないねぇ、と夏梅は苦笑を見せた。
 そして俯きかけた顔を、だがすぐに上げると真っ直ぐに猟兵達を見据えて。
「ちょうど、向かってもらう辺りでは、行燈祭りの準備がされている。
 その行燈の灯が、過去を魅せる力を持ってしまっていてね。
 妖怪達が過去に囚われて、さらにオブリビオンが生まれても厄介だから、あられの元へ行くついでに、その灯も消してきておくれ」
 おまけのように、依頼を付け足す。
「全てが終わって、祭りができるようになれば、行燈には改めて灯をつければいい。
 そうだね。行燈祭りを一緒に楽しんでくるのもいいだろうね」
 夏梅は努めて明るく笑いながら。
 その笑顔に少しだけ憂いを混ぜて。
「……よろしく頼むよ」
 猟兵達を送り出した。

 にぃあ、にゃあ。





第3章 日常 『百鬼夜行のお祭り騒ぎ!』

POW縁日のごちそうに舌鼓!
SPD幻想的な情景を堪能する!
WIZお祭りグッズを見て回る!
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオンが消え、世界の崩壊が止まる。
 夕闇が夜闇に変わっていく中で、あられは主を見送ったそのままの姿勢で、じっと空を見上げ佇んでいた。
 その金色の瞳からの涙は止まっていたけれども。
 まだ少し、哀しみを宿したまま。
 でもしっかりと夜空を、前を見つめる。
 そこに、ざわざわと人の気配が集まってきた。
「あれあれ? 何があったの?」
「何だか懐かしい夢を見ていたみたいよ」
「よく分からんが、大変なのは終わったのかい?」
 口々に、首を傾げているのは、カクリヨファンタズムに住む妖怪達。
 行燈の灯が魅せる過去に囚われていた彼らも解放されて。
 元の世界が戻ってくる。
 主のいない、でも主との思い出の残る、あられの世界が。
「大丈夫なら、祭りだ祭りだ」
「そうね。行燈には何度でも火を灯せばいいもの」
「よっしゃ。縁日の準備を急ぐぜ」
 そして、妖怪達は賑やかに行燈祭りを始めていく。
 道の両端に並べられた行燈に、今度は過去を魅せない普通の火が灯されて。
 ゆらり、ゆらりと。再び幻想的な光景を生み出す。
 いつもそこにある辻行燈も。
 祭りのために幾つも幾つも並べられた置き行燈も。
 数多の灯が揺れ、街並みを淡く照らし出す。
 けれども、相変わらず広場には何もないままで。
 夜闇に暗く沈むばかり。
 祭りの中心地のはずなのにと首をかしげていると。
 くすくすと、浴衣姿のろくろ首が笑いながら、道に並ぶ行燈を指差した。
「ここには最初は行燈を置かないの。
 縁日も出ないし、何もない場所にしておいて。
 そして、祭りを楽しんだら、好きな行燈を1つ選んでここに持ってくるのよ」
 1人1つ、行燈を持ち寄れば。
 街中に散らばった行燈の多くが、祭りの終わりに移動することになるという。
 それがこの広場であり、行燈祭りの中心なのだと。
 祭りの楽しい思い出が集まってくる場所なのだと。
「だから、皆さんも祭りを楽しんで。
 そして最後に、ここに行燈を置いて頂戴」
 ろくろ首は楽し気に笑い、ふと、佇むあられに目を向け。
「化け猫ちゃんもね」
 そちらにもひらりと手を振り、街並みへ向かう。
 行燈が灯る、賑やかになってきた祭りへと。
 新たな思い出を紡ぐ場所へと。