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狐狗狸の祭は冷え冷えぶるぶる?

#カクリヨファンタズム #狐狗狸のシリーズ

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#カクリヨファンタズム
#狐狗狸のシリーズ


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 ――こんこ、こんこと。
 雪が降っている。

 年中通して、冬の気候である雪女の里で。幼い雪女は、とあるチラシを見つけた。
 真っ白なかまくらの壁に、ぺたり貼り付けられた。青々とした大きな木の葉には、このように書かれている。

『秋祭りをやるコン!
 ぼくたち、狐の里でお祭りをするんだコン。
 こんこん踊ったり、出店もいっぱい出すコン!
 ぜひ、遊びにきてほしいコン』

「お祭りでちかっ、行きたいのでち!」
 きらりん、と。幼い雪女の目が輝いた。

 妖怪世界のお祭りは、人間の世界のそれとは、似ているようで少し違う。
 金魚すくいのお店では、金魚の精霊がふわふわと空中を泳いでいるし。輪投げのお店では、客に投げられた輪入道が、雄たけびを上げながら転がっていくのだ。
 それに確か、狐の里に住む妖狐たちは、料理が大好きであったはず。
 屋台には、美味しい料理も沢山並ぶ事だろう。
 しかし、幼い雪女の目をいっとう引き付けたのは、チラシの最後の一文だった。

『なんと、あの猟兵たちもやって来る! ……かもしれないコン』

「猟兵って、あの猟兵でちか!?」
 猟兵と言えば、今、妖怪たちの間で話題沸騰中の存在。
 妖怪たちの事が見えて、しかもすごく強くて。
 どこかの妖怪が猟兵を見かけた、猟兵に助けてもらったといった噂は、辺境にある雪女の里にも毎日のように届いている。

 だが幼い雪女は、その幼さゆえに一人で里の外に出た事がなく。
 猟兵にも出会ったことがない。

「きっと、カッコいい人たちなのでち」
 会ってみたい。せっかくなら、握手もしたい。
「それに、雪氷(かき氷)をプレゼントしたら、猟兵に褒めてもらえるかもしれまちぇん!」
 あわよくば「すごいね」と、頭を撫でてもらえるかもしれない。
 幼い雪女の夢は膨らむ。

「決めまちた! 猟兵に会いにいくのでち!」

 そうと決まれば、即実行。
 特に何の準備もせず。幼い雪女は、その身一つで雪女の里を後にした。
 狐の里なら、両親と一緒に何度か行った事がある。
 だから、きっと大丈夫だと。自信満々に、歩いて。歩いて……。

 ……数十分後。
「あ、あついでち。とけるでち……」
 狐の里まで、あと数百メートルといった所で。幼い雪女は行き倒れていた。

「だれでちか。もう秋だから、里の外も涼しいとか言ったのは……」
 まだまだ世間知らずなこの幼女、残暑の暑さを甘く見ていた。
 熱にはめっぽう弱いその体を、今だ衰えを知らない陽光がじりじりと焼いていく。

「も、もうダメでち。雪女とは儚いものなのでち……」
 瞼が重たくて。頭がぼんやりとして。
 せめて最後に、母様の氷苺が食べたかったと。幼い雪女の脳裏に走馬灯がよぎる。

「……まったく、今時の若いもんは情けないのう」
 知らない声が降って来たのは、その時。
 しわがれた、どこかのんびりとしたその声に、覚えはない。
 けれど、相手が一体誰なのか。確認する力は、幼い雪女には残されていなかった。

「どれ。少しばかり冷やしてやるとするかのぅ」

 不思議な声が、そう言って笑った。その日。
 カクリヨの世界から『夏』が消えた――。


「ずっと『ふゆ』のせかいに、なってしまったのですよ」

 ぶるぶるなのです、と。集った猟兵たちを見回して。
 キマイラのグリモア猟兵――琴峰・ここね(ここねのこねこ・f27465)は、のんびりとした口調で事件の説明を始めた。

「それで、たすけてほしいと『おてがみ』がきているのです」
 そう言って、ここねが取り出したのは一枚の葉っぱ。
 萎れかけたその葉っぱには、震えた文字でこのように書かれていた。

『さ むい……コ 、
 雪 るま、が、 やってき た……ら、
 この まま  、み な こごえて……。
 たす、 け ……(――この後は葉っぱが萎れていて読めない)』

 この手紙を送ってきたのは、カクリヨファンタズムに住む妖狐たち。
 狐そのものの姿をして。二本の足ですたすたと歩き、言葉を話す妖狐たちは、以前も『満腹が消えた世界』の危機を、猟兵たちに救われたばかりだったのだが。

「こんどは、『なつ』が消えてしまったみたいなのです」

 世界を温める『夏』が消えてしまえば、季節の巡りは停滞し、『春』と『秋』も連鎖消滅してしまう。
 そして世界に残ったのは、全てを冷やす季節――つまり『冬』のみ。
 容赦ない降雪と、プリンで釘が打てる程の冷たい空気が、妖怪たちを襲っているのだ。

「げんいんは、『へきれい』さんという、『ゆきおんな』さんなのです」

 『碧麗』は、老齢の雪女の骸魂であったが、それが幼い雪女に憑りついた事でオブリビオンと化した存在だ。
 元は、幼い雪女を助けよう憑りついたのだが、オブビリオンと化した事で、その目的が『世界の全てを冷やす事』に捻じ曲がってしまったらしい。
 氷雪に強い妖怪たちを次々とオブリビオンに変えて、『剣客雪だるま』という配下を増やしながら、各地を襲わせているようだ。

「このままだと、きつねさんの『おまつり』も、こわされてしまうのです」

 オブリビオン達は、特に熱を発するもの。あるいは、暖かそうなものを優先して攻撃してくくる。
 その為、ちょうど秋祭りが開かれていた狐の里は、真っ先に狙われる事となってしまった。
 祭りの提灯や、ほかほかの料理を提供する屋台が、今まさに壊されようとしている。
 このままでは、ふかふかの毛皮を持つ妖狐たち自身も、無事では済まないだろう。

「できれば、『おまつり』もまもってほしいのです。だって……」

 猟兵たちに、よく見て欲しいのだと。ここねは、妖狐からの手紙を差し出す。
 しわしわで、酷く読み取りづらいけれど。
 よく目を凝らせば、手紙の冒頭には『招待状』と書かれていたのが見て取れた。

「このおてがみ、ほんとうは、おまつりの『しょうたいじょう』だったのですよ」
 猟兵たちに、ぜひカクリヨの祭りを楽しんで欲しいと。
 妖狐たちのそんな心が込められていたはずの招待状は、残念ながら助けを呼ぶ手紙に変わってしまった。
 だから、楽しい時間を取り戻して欲しいのだと、ここねは言う。

「りょうへいさんたちなら、きっとだいじょうぶなのです」
 だから気を付けて、いってらっしゃいなのですよ、と。
 どこかのんびりした声で、ここねは、猟兵たちを送り出すのだった。


音切
 音切と申します。
 途中からでも一部の章のみでも、気軽にご参加いただけましたら幸いです。

【1・2章】戦闘
 敵は、熱を発するものや暖かそうなものを優先して攻撃する性質を持ちます。
 オブリビオンを倒す事が出来れば、憑りつかれている妖怪は無事解放されます。

【3章】お祭り
 お祭りの舞台となる『狐の里』は、
 過去シナリオ『狐狗狸の厨においでませ!』に登場した妖狐たちの里です。
 特に過去シナリオの知識等は必要ありませんので
 気軽にご参加いただければ幸いです。

主な出店:
『金魚(霊)すくい』
 ふよふよと空中を泳ぐ金魚の精霊を、虫取り網のような道具ですくいます。
『輪(入道)投げ』
 並び立つ唐傘たち(アルバイト)に向かって、
 輪入道(アルバイト)をボーリングのように投げます。
『(早撃ち)射的』
 動く景品のぬいぐるみと、早撃ち勝負をします。
『たこ焼き・わたがし・りんご飴…他』
 食べ物の屋台は、かなり充実しているようです。
 お酒が飲める場所もありますが、
 飲酒描写はステータスシートに記載されている年齢が
 20歳以上の方のみとさせていただきます。

【その他】
 筆はかなり遅い方です。
 再送になりそうな場合など、進行に関する連絡事がある場合は
 マスターページにてご連絡させていただきます。
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第1章 集団戦 『『剣客』雪だるま』

POW   :    雪だるま式に増える
自身が戦闘で瀕死になると【仲間】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    抜けば玉散る氷の刃
【その手でどうやって持つんだかわかんない刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    雪合戦
レベル×5本の【氷】属性の【雪玉】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

篝・倫太郎
今年の夏は暑かったけど……
確かに暑かったけど!
でも消しちまう事ぁ、ねぇんじゃねぇの……
なんでそう、両極端かなぁ

何にせよ、夏毛の妖狐達にゃ
この寒さは厳しかろうよ……
さっさと片しますか

寒さには環境耐性で対応
攻撃力強化に篝火使用
焔の神力に惹かれてくれれば御の字!

ダッシュで接近
鎧砕きと生命力吸収を乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃

召喚させなきゃ怖くねぇ
瀕死なんで優しい状態にしなきゃ召喚もねぇ
オーバーキル狙いで確実に

つーか……
ここにいない、俺の刃よりも遅ぇのどーなのサ
仮にも剣客名乗ろうってンなら
俺の刃と同等かそれ以上になってからにしな

尤も、あの領域にゃ早々到達出来ねぇだろうけど
あ、惚気じゃないデス



 グリモアに導かれ、大地に降り立つと……そこは、雪国でした。

「さっむ!?」
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が妖狐たちの里を訪れたのは、ついこの前の事。初夏の頃に訪れたばかりだと言うのに。
 積もる雪に、里は白く染められて。今や、全く知らない場所のように見える。

(今年の夏は暑かったけど……)
 何も、消してしまう事は無かっただろうに。

 この身に流れる血は、山岳の厳しい自然の中で鍛え、受け継がれてきた羅刹の血筋。
 しかしその環境への耐性を以てしてなお、この寒さは中々に堪える。
(なんでそう、両極端かなぁ)
 オブリビオンだから……と言う以外に、適切な答えは無いだろうと分かっていても、疑問符を付けずにはいられない。

 倫太郎は視線を巡らせて、住人たちの姿を探してみるけれど。
 初夏の頃には、こんこん元気に駆けまわっていたはずの妖狐たちの姿は、何処にも見えず。
 恐らく、いずれかの建物に閉じこもっているのだろうが。

(何にせよ、夏毛の妖狐達にゃこの寒さは厳しかろうよ……)

 急激な気温差に、鼻先がむずむずするのを感じながら。
 倫太郎の手は、薙刀を握る。

「むっ……怪しい奴らが居るでゴザル」

 消え失せてしまった妖狐たちの代わりに、この里を闊歩しているのは。共にやって来た猟兵たちを除けば、オブリビオンしかありえない。
 こんこと降る雪の中、徐々に大きくなる白玉団子のような真ん丸の影に、切っ先を向けて。
 気を高め、その身に宿すのは。禍つ闇を払う、焔の力――。

「ややっ、何やら熱そうな気配っ!」
「曲者でゴザル。であえー、であえー!」

 わらわらと姿を現した、雪だるまたちが一斉に刀を抜く。
 枝そのものの腕でどうやって刀を握っているのか、全く理解できないが。雪だるまが刀を振り上げる、その前に。
 
「さっさと片しますか」
 飛び込み、突き出したその切っ先が、雪だるまの一体を貫いた。
 薙刀を通じて、命の息吹が流れ込むのを感じながら。そのまま、横凪に降り抜けば。
 編み笠がひらりと宙を舞い、雪だるまたちが砕かれていく。

「なんと手強いっ。みなのもの、囲むでゴザル!」
「遅ぇ」
 くるりと体勢を返して、後ろ蹴りを放てば。
 防御もままならぬまま、雪だるまの頭がごとりと落ちた。

 遅い。遅すぎる。
 刃を振るう間もなく。こうもあっけなく倒れていく。
 その手の刃は、一体何のためにあるのか。
 倫太郎の知る刃は、雪だるまたちのそれとは比べ物にならぬほど速く。鋭く。そして重い。
 仮にも、剣客を名乗ろうと言うのなら……。

「俺の刃と同等かそれ以上になってからにしな」

 降り落ちる、真白の雪の中。焔を躍らせ、薙刀を振るえば。
 間合いの外で攻めあぐねる雪だるまが「ううむ」と唸る。

「何か知らぬが惚気られたゾ」
「あ、惚気じゃないデス」
「自分で惚気てないと言うヤツは、大抵惚気ておるのダ!」

 倫太郎のツッコミに、全く納得しない雪だるまたちが「さよう、さよう」と声を荒げる。

「つまりこやつ、アツアツという事でゴザルな!」
「しからば斬る!」
「ヲイ」

 おかしい。仲間を召喚する隙など、与えていない筈なのだが。
 何故か、倫太郎へと迫る雪だるまの数が増えていく。

 もっとも、数ばかりが増えたところで。振るう刃が鈍ければ、何の意味もなく。
 倫太郎の振るう薙刀が、冷たい空気を切り裂く程に。
 澄んだ冬の空に、剣戟は高く響くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
「夏」は別に好きではないのですが…(自分の名前をあまり好んでいないため)
しかし、ずっと「冬」でいいかと問われるとそれもまた否
……それにお祭りも気になりますし……。
元の時間を取り戻すために、自分にできることをさせていただきます。

敵は熱源に反応しているようですし『燻り狂った赫の灯檻』を囮に使いましょうか。
洋燈を燃やして敵を【おびき寄せ】
敵が攻撃してきたところを回避しつつ、「お茶会セット」内のナイフを【投擲】して砕く(【カウンター】)
敵に囲まれたら【何でもない今日に】で周囲の敵を一斉に攻撃して回避する



 薄曇りの空から、こんこ、こんこと。
 雲よりも濃い灰色の影を落として、白い雪が降っている。

 ここは、妖狐たちの里だと。そのように聞いている。今日はここで、祭りが行われるはずだという事も。
 それなのに、囃子の一つも聞こえなければ、妖狐たちの姿も見えない。
 ただ、全てが白く染められて。有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)が吐いた吐息もまた、白く染まって……ゆっくりと、消えていった。

「やや。こちらにも怪しい者がいるでゴザル」

 見渡す限りの冬景色の中、動くものと言えば。共にやってきた猟兵たちを除けば、オブリビオンのみ。
 奇妙な口調の主を誘うように、洋燈を灯せば。灯火は赤々と、なだらかな雪面に陰影を映した。

「明かりでゴザル!」
「なんと熱いっ。許すわけにはいかぬでゴザル」

 わらわらと集まって来る、それは。丸い頭と体を持つ、冬の象徴――雪だるまたち。
 何とも愛嬌のある姿をしているが、しかし。編み笠から覗く目は、半月型に。キリリと、夏介を睨みつけてくる。

 その細い手が、刀を掲げて。
 やーやーと、勇ましく向かい来る一体を、後方へ飛びかわして。
 くるりと体勢を返しながら、夏介の手は『お茶会セット』を探る。

 こんな寒い日には、生姜のお茶でも振舞えば喜ばれるのかもしれないが。相手が刃で挨拶をしてきた以上、同じものを返すのが礼儀というものだろう。
 抜き放ったナイフは、降り落ちる雪の合間を縫って。銀の煌めきが、雪だるまを捉えた。

「こやつ、忍びの者か!?」
 ぐはっ、と倒れ伏す仲間の姿に、雪だるまたちに動揺が広がる。
 正確には、処刑人なのだが。わざわざ訂正する間も惜しい。
 夏が消えてしまったこの世界で、容赦のない冷気は刻一刻と、猟兵たちの体温を奪ってゆくのだ。

 自分の、名の一文字でもある『夏』は、正直あまり好きではないし、音の響きにも違和感を拭えない。
 しかしだからといって、夏が消えたこの世界に降り立って。喜びを覚えたかと言えば、そうでもなかった。

 むしろ、世界を染めた穢れの無い白さは、どこか落ち着かない気分にさせられて。
 投げ放つナイフさえ冷たくさせる気温に、指先はかじかみ。呼吸するほどに、肺が痛くなる。

「ぐっ、手練れか……ものども、であえー!」
 指先の震えが、狙いを逸らしたか。
 仕留め損ねた雪だるまが、更に仲間を呼ぶ。
「覚悟するでゴザルよ!」
 もしもこのまま、オブリビオン達に押し切られてしまえば。
 妖たちの世界は、降り積もる雪に隠されて。真白に閉ざされてしまうのだろう。
 
 その手のナイフを、強く握り込む。
 失くしかけている指先の感覚を、呼び起こすように強く。強く。
 猟兵たちを招きたいと願った、妖狐たちの祈りを守るために。
 穏やかに、当たり前に明日へと繋がる、何でもない今日―祭り―を取り戻すために。

「自分にできることをさせていただきます」

 息を詰め、意識を凝らして。
 力強く放った無数のナイフは。いっそう速く、振る雪の間をすり抜けて。
 無粋な破壊者たちを、速やかに骸の海へ送るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

水無月・ゆえと
どちらかといえば寒い方が好きだけど…ずーっと寒いのは流石に嫌だなぁ
妖狐さんたちのためにも、おまつりを楽しむためにも夏を取り戻すぞー

相手の動きを【水気感応】で良く見ながら回避行動をとるね
避けられない時は【流水鞘】の「盾受け」で防御しよう
隙を見て【蒼影兎】の斬撃を入れていくよ
とりあえずは切ってみるけど…どこまで切れば倒したことになるのかねぇ

可能であれば、布や乾いた小枝、マッチを事前に準備しておきたいな
他の猟兵と協力できそうな時に燃やして、雪だるまの注意を引きつけたいところ

※アドリブ/連携歓迎



 はぁ、と。吐き出した息が、白く染まる。
 しんしんと降る雪も白くて。冷たい空気に、水無月・ゆえと(月兎の剣士・f29534)の耳の先から。指の先から、じんわりと体が冷えていく。

 暑さと寒さならば、寒い方が好きだけれど。背筋が震えて、身が引き締まるようなこの感覚は、夏の暑さを知っているからこそ、悪くないと思えるのだ。
 永久に冬が続くのは、流石に嫌だと。そう思う。
 それはきっと、この里の妖怪たちも同じだろう。

 世界に選ばれて、猟兵として立つこの場所は、慣れ親しんだ隠れ里ではなく、妖狐たちの里。
 その命運は、これから始まる戦いに掛かっているのだ。

(妖狐さんたちのためにも、おまつりを楽しむためにも夏を取り戻すぞー)
 猟兵としての戦いが始まる予感に、心臓は高鳴って。
 漲る気合が、寒さを吹き飛ばしていく。

「むっ、曲者か!」
「こちらにもおるぞ。みなのもの、であえー!」

 聞き慣れぬ声に、振り返れば。
 丸々としたいくつもの影が、猟兵たちへと近づいてくる。
 妖狐たちも身を隠しているこの状況で、動くものと言えば、猟兵たちを除けば一つ――オブリビオンしかあり得ない。 

「ややっ、何やら熱そうな気配っ!」

 共にやってきた猟兵たちが、各々に敵を引きつけながら戦いの構えを取る中で、ゆえともまた、布を巻いた小枝に火を灯す。
 いかに猟兵たちが戦いに慣れているとはいえ、大勢の敵に囲まれてしまうのは危険だ。だからこそ、少しでも分散させるのだと。
 松明を掲げて見せれば、ゆえとの意図通りに。幾体かの雪だるまが、こちらに近づいてくる。

「火を灯すなどっ、許せぬ!」

 ずんぐりと丸い雪だるまの姿は、何とも愛嬌があるものだけれど。
 その手に握っているのは、抜き身の刀。一太刀でもまともに喰らえば、ただでは済まない。
 対して、ゆきとの握る刃は刀身が短く。不用意に斬りこめば、武器の間合いで競り負ける。
 だから、慌ててはいけないと。ゆきとは、戦場の空気に意識を凝らす。

 こんこ、こんこと。
 静かに降る雪が。雪の放つ水気が、伝えてくれる。
 断ち切られていく水の流れが、視覚よりも鮮明に、明確に。刃の軌道を描き出す。

 見えていれば、避ける事は容易い。
 水流の消えるその場所を、ぴょんと避ければ。雪だるまの刀は、空を切って過ぎていく。

「こやつ、中々やりよるゾ」
「みなで囲むのだ!」
 雪だるまたちが、ぐるりとゆきとを囲んで。
 今度は三体が、同時に仕掛けてくる。 

 めちゃくちゃに断ち切られる水の流れに、逃げ場はなく。
 咄嗟に掴んだ鞘で、辛うじて受けた。
 腕に、衝撃が走って。力任せに、刃が押し込まれてくる。

 切っ先が、首筋に触れる――その前に。
 流れが途絶えたその場所に、もう一度水を流すように。鞘を滑らせて、受け流しながら。
 勢いのままに、その白い体へと刃を繰り出した。

 青みを帯びた残像を残して、振るった刃は。あまりにも軽い手応えで、さっくりと雪だるまの体を割いた。

「見事……ナリ」
「倒せた、のかな?」

 あまりの手応えなさに、今一つ自信が持てないけれど。
 倒れた雪だるまは、沈黙したまま。動く気配はない。
 思い描く華麗な騎士の戦い方には、まだ遠いけれど。
 その最初の一歩としては、良いスタートが切れただろうか。

 振るった刃は、確かにオブリビオンに届いた――その手応えを力に変えて。
 こんこと降る雪の中、蒼い兎の影はぴょんぴょんと。
 いっそう力強く跳ねるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

林・水鏡
前に行った場所の狐達の危機だと聞いた…。
本来ならば秋祭りに招待しようとしてくれたこともな。ならば我は行くしかあるまい。
助けにも行くしもちろん秋祭りだって楽しむぞ!

まずは雪だるま達が相手じゃな。
お主らが現れるにはまだはやいぞ!
雪合戦も冬までおあずけじゃ!
UC【破魔の白剣】
雪玉を剣で砕きながら雪だるまを攻撃じゃ!
流れ雪玉には【オーラ防御】でガードじゃ。

冬は秋の次じゃしばし待て。


アリス・フォーサイス
おまつり、守らないとね。

火の矢を降らせて注意を引きながら、攻撃するよ。

へえ。雪合戦か。じゃあ、キミたちの雪が勝つか、ぼくの火の矢が勝つか、勝負だね。

雪を打ち落としたり、本体を狙ったり、1本、1本を効果的にそれぞれ操って、攻めるよ。

むこうは本体のぼくより、熱を発する火の矢を狙ってるみたいだね。これなら魔法に集中できるってもんだよ。全力の魔法をお見舞いしてあげるからね。



 前に狐たちの里を訪れたのは、ついこの間の事。
 その時は、草木の緑は濃く、元気な蝉の声が聞こえていたというのに。
 グリモアに導かれ、地に降り立った、その瞬間。身を切られるような寒さが、猟兵たちを襲う。

「うわぁ、真っ白だね」
 こんこ、こんこと。
 止む気配のない雪に、狐の里はすっかり白く染められて。
 がらりと変貌してしまった里の様子に、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は目を丸くした。

「これ程の寒さでは、あの狐たちも難儀していようの」
 林・水鏡(少女白澤・f27963)もまた、ふるりと体を震わせて周囲を見回す。
 楽しそうに賑やかに料理をしていた、あの元気な子狐たちの姿は、未だ記憶に新しく。本当ならば、お祭りの会場で、またあの笑顔会えるはずだったというのに……。
 今はきっと、皆でどこかの建物に閉じこもっているのだろう。
 里の中に、狐たちの影はなく。動くものと言えば、共にやって来た猟兵達を除けば――。

「やや。何やら怪しい奴が!」
「曲者でござる! であえーであえー!」
 何とも真ん丸な姿をしたオブリビオン――『剣客雪だるま』たちだけだ。

「狐たちの顔を見る前に、まずは一仕事じゃな」
 猟兵たちに助けを求めた、あの葉っぱの手紙は。本当は、祭りの招待状であったことは聞いている。
 一生懸命に準備をして、招待してくれた。そのおもてなしの心を受け取らずして、どうするのか。

「おまつり、守らないとね」
「もちろん、秋祭りだって楽しむぞ」

 その為には、とにかくこの困った雪だるまたちを素早く倒してしまわなくては。
 アリスが、ロッド型の端末を空へと掲げて。魔力を籠めれば、炎の矢が空へと上る。
「それっ!」
 アリスの合図で、花火の様に散り広がった矢が、くるりと方向を変えて。
 雪だるまたちへと、次々に降り注ぐ。

「こやつ、火を放ったでゴザル!」
「しからば、我らも遠距離で戦うでゴザルよ」

 激しい炎の雨にたじろぐ雪だるまたちは、その細い手で雪を握り始める。
 両の手に、不格好な雪玉を握りしめて。その目を半月状にキリリとさせた雪だるまたちが、雪玉を振りかぶって……。
「放つでゴザルぅ!」
 おぉぉー! と、鬨の声を上げながら。雪だるまたちが一斉に、雪玉を放つ。

「じゃあ、キミたちの雪が勝つか、ぼくの火の矢が勝つか、勝負だね」 
 放物線を描いて飛んでくる、数え切れない雪玉に。
 しかしアリスは一歩も引かずに、再び炎を呼び出した。

「お主らが現れるにはまだはやいぞ」
 雪玉と炎の矢が交差する中、水鏡は呼び出した白き剣を宙に並べて。
 文様を描く様に指を滑らせれば。応じて動き出した剣が、雪玉たちを斬り伏せる。
 くるり、くるりと。
 剣たちが舞う程に、砕けて飛び散ちる雪の欠片が、キラキラと輝いて。
 降り落ちてくる冷たい欠片を、纏うオーラで払い除けながら、水鏡は幼子を諭すように、雪だるまたちへと声を掛けた。

「冬は秋の次じゃしばし待て」
「否、今が冬でゴザル。我々の天下でゴザルよ!」
「熱いのは斬り捨て御免でゴザル!」 
「……まるで駄々っ子じゃな」

 オブリビオンとなったゆえ、聞き訳がないのか。それとも、元から頭の固い妖が憑りついているのか……。
 やれやれと嘆息する水鏡の隣で、雪だるまたちの様子を見ていたアリスは、はたと気付く。

「あの雪だるまたち、火の矢ばっかり狙ってる……?」

 確かに、熱を発するものを攻撃するという話であったが。
 あの雪だるまたち、それに固執するあまり術者を狙うといった戦略を何処かに置き忘れてしまったらしい。
 ならば、それを利用しない手はないだろう。

 握りしめたロッド型端末を、勢いよく振るって。
 派手に燃え上がる炎の矢を、明後日の方向へ撃ち出せば。

「また火矢が来たでゴザル! 打ち落とすでゴザル!」

 アリスの読み通りに。
 雪だるまたちの視線は、火の矢へと集まって。雪玉を投げる事に夢中で。
 アリスたちの動きを警戒するものは、一体も居ない。

「今だよ!」
「うむ。雪合戦も冬までおあずけじゃ!」
 敵の攻撃が逸れている、今。
 猟兵たちの全力の攻撃を、阻むものは何もない。
 気合と共に高めた霊力が、魔力が。術式を通して更に強くユーベルコードを発現させる。

 水鏡の号令の下、雪よりもなお白く、霊力の輝きに包まれた剣たちが雪だるまへと飛んで。
 その勢いを後押しするように、アリスの放った炎の矢が、火の粉を散らして飛ぶ。

「なんとっ。こちらからも矢がっ……!」
「熱いでゴザルぅぅぅぅ!!」

 突き刺さる火の矢が、編み笠を。枝の腕を燃やして。
 畳みかけるように、剣が弧を描けば。炎を巻き込んで、斬撃は赤く輝く。

 炎熱纏う剣の舞は、白い雪面に見事な文様を描いて。
 熱く、赤く。雪だるまたちを斬り伏せていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リゼ・フランメ
四季は巡り、その彩と美しさを変えていく
移ろい往く儚さが、世界の美のひとつだと私は思うの
巡り、巡って
失われても、なお先へと
切ない程に白く、冷たい冬は美しいのは確か
でも、優美なる春の桜には辿り着けないそこは終わってしまったもの

ならば、私は切り拓きましょう
熱を、想いを、季節を
そこで過ごした記憶を、魂の欠片として携えて

「永遠などないから、ひととき、という美しさを尊ぶの」

構える劫火剣に、破魔の炎を宿して相手の注意を引きつけるわ
瀕死になれば増えるというのなら狙うは一撃必殺
相手の動き出す瞬間、攻撃の隙を見切り、全身を用いた早業にて、踊るように

優美なる火の舞踏の如く、迅く、鋭く

魂と雪の世界を焼却する炎舞として



 こんこ、こんこと。
 静かに、雪が降っている。

 初夏の頃に訪れた妖狐たちの里は、緑も鮮やかで。
 子狐たちが黄色い尻尾を揺らして、元気に駆けまわっていたけれど。

 夏が消え去った里に、妖狐たちの姿は見えず。
 リゼ・フランメ(断罪の焔蝶・f27058)がその手に握る、剣と同じに。
 穢れの無い白が、全てを覆って。吐息さえもが、白に染まる。

 その白さは純粋で、無垢で。
 触れる事を躊躇う程に、美しく――切ない。

 それでも。
 冷たい空気を揺らす、騒がしい声を耳にして。
 リゼの足は、前へと進む。

 白く、なだらかな雪面を踏み崩して。赤い髪を揺らして。
 構えた剣に込めた祈りは、白の世界を赤々と照らした。

「やや。怪しい奴らでゴザル!」
「炎を灯すとは、許せぬでゴザルよ」

 姿を現した、雪そのものの体を持つ敵――剣客雪だるまたちは、正しい冬の中で出会えたのなら、可愛らしい人の営みを感じさせてくれたのだろう。
 けれど、その手が構えているのは、人を傷付ける為の武器。
 彼らが存在する限り、この世界の冬は終わらない。

 空気の冷たさに、かじかむ指に力を籠めて。
 剣を握り直せば、灯る炎がいっそう高く燃え上がる。

「ものども、かかるでゴザル!」
 雪だるまたちが、刀を振り上げる。
 その動きに合わせて、リゼは雪を蹴る。

 降り落ちる、雪の白さを。
 真っ白に染まり行く世界を美しいと思うのは、色づく季節を知っているから。
 過ぎ去った季節を想って。次の季節に、期待を膨らませて。
 巡り、巡る。移ろいこそが、美しいのだから。

 永久に終わらぬ冬は、ただの終焉。
 リゼは、それを望まない。
 白く染まった故郷を背に、歩き出した時のように。

 間合いを詰めて、更に一歩。力強く、足を踏み出す。
 雪だるまの刃が、振り下ろされるその前に。
 赤き祈りを宿したリゼの剣が、雪だるまを貫いた。

 雪の冷たさに負けず、燃え続ける刃を振り抜けば。
 雪だるまの体が、瞬く間に解けていく――。

 ――こんこん、と。
 初夏の頃に訪れたこの里では、元気な子狐たち声が響いていた。
 青い野菜の香りと共に、賑やかに駆けまわっていた姿を想い描いて。
 彼らの身軽さを真似るように、軽やかに。リゼは、雪の上を掛ける。

 半端な攻撃では、返って数が増えてしまう。
 ならば、一刀のもとに斬り伏せるのだと。

 迫る横凪の攻撃を、高く飛び、かわして。
 両の手で、しかと剣を握る。

「永遠などないから、ひととき、という美しさを尊ぶの」

 花の彩も、雨の匂いも。実りの恵みも、葉が落ちる音も。
 あの子狐たちから、世界から、奪わせはしないのだと。

 炎は赤く燃えて、白き雪と共に降り落ちて。
 白く閉じ行く世界に、さよならを告げた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
寒さに耐えながら文を認めた子狐達が健気で不憫だ
早く助けてやりたい

子狐達や幼い雪女も楽しみにしてた
楽しい祭りの一時を守るぜ

碧麗だって自分の善意で誰かが悲しんだり
ましてや世界が滅ぶなんて望んでない筈だ
止めてやろうぜ

でまずは雪だるま達を還してやろう

戦闘
UCで急行
上空から爆炎噴出で一気に急降下
空気を裂き化鳥の嘶きめいた音を響かせながら突撃し
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

飛んでくる雪玉は剣で払ったり
剣風を炎の奔流と変え溶かしたり

必要時は仲間を庇う

敵の数が多い時は
全速で雪だるまの群れの間を低空飛行し
軌跡を炎の渦とし纏めて溶かす

雪だるま
幽世に辿り着けず悔しいよな
可哀そうに
今解放してやる

事後
骸魂へ鎮魂曲
安らかに



 ぎゅう、と。
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が地に降り立った、その瞬間。
 柔らかく足が沈むと同時に、何とも奇妙な音がした。

 以前この里を訪れた時には、木々は青々として。
 眩しく煌めく陽光の中、子狐たちが元気に駆けまわっていたと言うのに……。

 今や里は、雪に白く染められて。
 足を踏み出すたびに、ぎゅうぎゅうと。踏みしめられた雪が音を立てる。
 いずこかに隠れているのか、狐たちの姿は見当たらず。
 不気味なほど静まり返った里の姿が、そこにはあった。

 まだ里の中が荒らされた形跡はなく、妖狐たちは無事だと思うのだが。
 思い出されるのは、あの葉っぱの手紙……したためられた文字は、震えていた。
 今も、あの子狐たちは寒さに耐えながら、猟兵たちが来てくれるのを待っているのだろう。

 己に喝を入れるように。ウタは大きく息を吸い込んで、吐く。
 冷たい空気が、体の中を駆け抜けて。思考をクリアにしていく。
 寒さにぶるりと震えた体は、それでも背筋が伸びたような気がして。
 早く、あの子狐たちを安心させてやるのだと。
 高めた気合と集中が、炎となってウタの体を包み込んでいく――。

 一息に、上空高く舞い上がり。地上を見下ろせば。
 真白に染まった世界の中で、ぽつぽつと見える茶色い点は、倒すべき相手――剣客雪だるまたちの編み笠だろう。

「すぐ止めてやるぜ」
 前傾姿勢に、巨大剣を構えて。
 ウタの纏う炎が、高く嘶く。

 空から降り落ちる、この雪は。弱ってしまった幼い雪女を、助けようとして降らせたものだと知っている。
 だからこそ、確信がある。
 この冷たい世界のせいで、誰かが悲しんだり。まして、世界が滅ぶなど。
 絶対に、彼ら――彷徨える骸魂たちの本意ではない。

 だから、止めるのだ。
 降る雪よりも速く、真っ直ぐ。一直線に。
 突き出した巨大な剣が、雪だるまの一体を捉えて。
 激突する衝撃と共に、獄炎は燃え広がる。

「奇襲でゴザルか!?」
「あぢぢぢぢぢっ、熱いでゴザル!」

 雪だるまたちが、慌てふためく中。
 足を踏ん張り、雪を跳ね上げながら何とか止まったウタは、そのまま体を切り返して、飛ぶ。

「今解放してやる」 
 雪玉を振りかぶる、あの雪だるまたちの中に居るのは、この世界に辿り着く事の出来なかった魂たち。
 体を失って尚、この世界を彷徨い続ける。
 その無念は、この白い雪と共に解かそう。

 翼のごとく広がる炎を纏って。雪面を滑るようにウタは飛ぶ。
 速さを増す体に、巨大な剣を落さぬように。両の手で、しかと握って。
 炎の尾を靡かせて、一閃。振るえば。

 投げつけられる雪玉たちを飲み込んで。炎は渦を巻く。
 雪だるまたちを包み込みながら、熱風は上昇気流を生んで。
 天へと還る竜のごとく、炎は空高く舞い上がった。

「無念、ナリぃ……」
 炎に包まれて、雪だるまたちが溶けて消えていく。
 彼らの魂は、無事に骸の海へと昇れただろうか。

 見上げた空からは、静かに雪が降り続けて。戦いも、まだ終わってはいない。
 彼らに送る弦の音色は、この空が晴れるその時に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
エリシャ様・f03249と

その通りです!
夏にも冬にも良さがあるのです
夏だけ、冬だけというのはいけません!

狐の避難場所へと参ります
部屋の中では妖狐様方がきつねだんごになって寒さを凌いでいるに違いありません(断言)
ペンギンの群れのように少しずつ場所を入れ替えながら
自分達の体温で真ん中の子どもたちをくるむように守っていることでしょう
ああもふもふにダイブしたいです!(ときめき)

エリシャ様の声に我に返り
もふりたい衝動を抑え
妖狐様をオーラ防御でお守りしつつ
属性攻撃で炎属性にした薙刀を振るい指定UC
きつねだんごより熱くなって攻撃を引きつけます

終わりましたら温かいおうどんが食べたいです
きつねうどん…(ほわわ)


エリシャ・パルティエル
アカネちゃん(f05355)と

子狐さんのピンチとあらば駆けつけないとね!
夏が消えた世界…どの季節がなくなっても困るわ
季節ごとの花や旬の野菜
暦を感じる行事も四季の移り変わりがあってこそだもの
子狐さんと一緒に秋祭りを楽しむためにも頑張るわね

毛皮があっても寒いわよね…
だんごになる妖狐たちを微笑ましく見つめながら
でも暖かい場所を敵は狙ってくるって言うから
もふもふおだんごをしっかり守らなきゃね

アカネちゃんが敵を引きつけてくれているわ
妖狐たちを雪玉から守りながら
頃合いを見計らってUC使用
まだ雪の季節には早いのよ
次の冬までおやすみなさい

こうも寒いと温かいものが欲しくなるわね
おうどんはやっぱりきつねうどん?



 見上げた空からは、こんこ。こんこと。雪が降っていて。
 ぐるりと、周囲を見渡してみても、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)の瞳に映るのは、一面の白色ばかり。
 これが、正しく巡り来た『冬』の景色であったなら、美しいと思う事もできただろうけれど。

「夏が消えた世界……どの季節がなくなっても困るわ」
 眉根を寄せて、エリシャが溜息をつけば。
 吐息は瞬く間に白く染まって、ゆっくりと消えていった。

 確かに、このような冬の冷たさや、夏の暑さを苦手だと思う人もいるだろう。
 だが、季節がもたらすものは、そればかりではない。
 変化していく気候の中で、咲き誇る花々は色や姿を変えて。野菜たちは栄養を蓄え、豊かな味と香りを届けてくれる。

「暦を感じる行事も、四季の移り変わりがあってこそだもの」
 巡る、季節の色彩に思いを馳せるエリシャの隣で、「その通りです!」と。
 アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)もまた、目元をキリリとさせる。

「夏にも冬にも良さがあるのです」
 子狐たちと共に、満腹の消えた世界の危機を乗り越えて。
 ぷにぷにの危機も乗り越えて、纏ったぴかぴかの水着で。コンテストだとか、カニが美味しい島だとかを駆け抜けた、今年の夏。
 その楽しい思い出は、また巡りくる次の夏への期待に変わるのだ。
「夏だけ、冬だけというのはいけません!」

 それは勿論、春や秋にも。
 その季節だからこそ作る事の出来る、楽しい思い出が待っているのだから。

「子狐さんと一緒に秋祭りを楽しむためにも、頑張らないとね」
「はい。きっと……」

 きっと、妖狐様方は今頃……、と。
 そう言いかけて、アカネははっと顔を上げた。
 今、途轍もなく重大な事に気付いてしまった。

「エリシャ様、妖狐様方の事が心配です。様子を見に参りましょう!」
 唐突に言い切って。
 アカネは、エリシャの返事を待たずに、雪を踏みしめ歩き出す。

 積もった雪の中に残る、僅かな足跡を辿った先。
 他の家よりも、一回り大きな建物の扉を開いた瞬間。
 そこに広がっていた、期待通りの光景に。アカネの目は一等星のごとくキラリと輝いた。

「ああっ、もふもふにダイブしたいです!」
「アカネちゃん……?」

 考えてみれば、簡単な事だった。
 突如現れたオブリビオン達が、熱を発するものを攻撃してくる以上、この寒さの中でも火を灯したりする訳にはいかないのである。
 ならば妖狐たちは、いかにして寒さに耐えているのか。

 もふもふな体を、もふもふと寄せ集め。
 バームクーヘンのごとく、もふもふを重ね合わせ。もふもふの層を作る。
 ひしめき合うペンギンの群れのように。あるいは、身を寄せ合うサルの群れのごとく。
 屋内に広がるもふもふの黄金絨毯こそ、まさに『きつねだんご』と呼ぶに相応しきもふもふ。
 アカネの夢と理想と、少しばかりの欲望を添えた。完璧なもふもふの光景が、そこにはあった。

「毛皮があっても寒いわよね……」
 事前に話を聞いて、しっかりと防寒対策をしてきた猟兵たちでさえ、震えるような寒さなのだから、それも当然の事。
 とは言え、この見事なもふもふ団子っぷりには、思わず口元が緩んでしまう。

「その声……猟兵、コン?」
 零れた笑い声が、妖狐たちに届いたのだろうか。
 きつねだんごの真ん中あたりから、ぴょこんと。子狐の一体が顔を覗かせれば。
「ほんとだ、猟兵コン」
「本当に来てくれたコン!」
 こんこん、ざわざわと。きつねだんごが騒めく。

「もう大丈夫よ」
 安心させるように、エリシャが子狐の頭を撫でれば。
 その手に、暖かなぬくもりが伝わってくる。
 幼い妖狐たちは、きつねだんごの真ん中で、しっかりと大人たちが守ってくれていたらしい。
 思っていた以上に元気そうな様子に、エリシャの心もぽかぽかしてくる。

 しかし、この場所まで敵に踏み込まれてしまったら。
 この、もふもふぽかぽかな光景は、瞬く間に破壊されてしまうのだろう。

「もふもふおだんごをしっかり守らなきゃね」
「……はわっ!? そ、そうですねエリシャ様」

 迎撃のため、きつねだんごに背を向けて。
 どこか慌てた様子で出て行くアカネの姿を見つめて。エリシャは、首を傾げた。

 何だろう。いま、一瞬。
 妖狐たちを見つめるアカネの目が、潤んでいたような気がする。
(アカネちゃん。そんなに妖狐さんたちの事が……)
 心配だったのね、と。そう結論付けたエリシャは知らない。
 アカネが、あのもふもふで、ふかふかで。ぬくぬくで、ぴょこぴょこな。
 きつねだんごの誘惑と、どれ程の激闘を繰り広げていたかを。

 許されるのならば、今すぐあの尊きもふもふに埋もれたかった。それでも。
 心で涙を流しながら、アカネは愛しきもふもふを背にして立つ。

 決して、彼らを傷付けさせはしないのだと。
 その手に構えた薙刀に、炎の力を宿して。解き放てば。
 はらり、と。
 薙刀は、無数の小さな花へと姿を変えて。
 炎の力を以て、熱を放って空気を揺らす。

 多くの猟兵が、里の入り口でオブリビオンを迎え撃ってくれている。
 しかし相手は、雪の体を持つ雪だるま。
 この雪景色の中、目立たずに里の中まで入り込んでくるものが……はやり、いた。

「さぁ、こちらです!」
「やや。何やら熱そうでゴザル!」
「あれは近寄らない方がよさそうでゴザルよ」

 声を張り上げたアカネの周囲で、降り落ちる雪が解けてゆく様に。雪だるまたちも、ただならぬ気配を感じ取ったらしい。
 距離を開けたまま、ぎゅっぎゅと雪玉を握り始めたその隙に、エリシャが前に進み出る。

「まだ雪の季節には早いのよ」
 冷たい空気の中に、右手を晒せば。
 瞬く間に、指先から体温が奪われていく。
 その切りつけられるような痛みに負けないように。右手を突き出し、力を込めれば。
「次の冬までおやすみなさい」
 溢れ出る光が、雪だるまたちを包んだ。

 ぼたっと。雪だるまたちの手から、握りかけの雪玉が落ちていく。
 深い眠りの中に誘われて、幾体かは頭を落して倒れ込んでいた。

「エリシャ様、ありがとうございます」
 アカネがすかさず花たちを手繰って、追撃を掛ける。
 雪だるまたちの白い体を、小さな白い花たちが彩れば。
 花たちの纏う炎熱が、雪だるまの体をみるみる小さくして――。


「……それにしても、こうも寒いと温かいものが欲しくなるわね」

 すっかりと、雪だるまたちは解け切って。
 戦闘に張り詰めていた気持ちを少しだけ緩めると、冬の空気の冷たさを改めて感じて。エリシャが小さく言葉を零す。

「終わりましたら、温かいおうどんが食べたいです」
「おうどんはやっぱりきつねうどん?」
「きつねうどん……!」

 まだ、倒すべき相手は残っているけれど。
 ほっかほかの白い湯気と、漂う出汁の香りを想像して。
 寒さという敵を蹴散らし、気合を入れ直すアカネとエリシャなのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『雪女』碧麗』

POW   :    さ、動けぬうちにとどめでも刺すかの。
予め【対象を氷で動けなくする】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ほれ、踊ってみせい。
【絶対零度の爆発を起こす氷柱の弾幕】を降らせる事で、戦場全体が【絶対零度の氷弾が舞う氷の花畑】と同じ環境に変化する。[絶対零度の氷弾が舞う氷の花畑]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    少し本気を出すとしようかの。
【器となった妖怪が未来に得る筈の力】に覚醒して【大人の妖艶な雪女】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「全員揃ってやられておるとは、全く情けない」

 これだから、今時の若者は……と。
 聞き慣れぬ声が、狐の里に響く。

 いつの間に、そこに居たのか。
 狐の里の入り口にちょこんと佇み、猟兵たちを見つめていたのは、一人の女の童。

「まぁよい。まずは邪魔者を片付けて……若者を鍛え直すのは、それからよ」
 幼い容姿に反して、吐き出す言葉は妙に大人びていて。
 この冷たい空気の中、全く寒がる様子を見せないあたり、彼女が只者ではない事を物語っている。

「猟兵、気を付けるコン!」
「あいつが来てから、急に冬になったコン」

 今度は里の中から聞こえてきた声に、猟兵たちが振り返れば。
 こんこんひょこり、と。
 妖狐たちが家の影から、顔を覗かせている。
「雪だるまも、あいつが呼んだコン」
 どうやら、猟兵たちの到着を知って、様子を見に来てくれたらしい。

「戦ってくれるなら、俺たちも手伝うコン」
「料理以外はあんまり得意じゃないけど……」
「狐火なら出せるコン!」

 どうやら妖狐たちは、猟兵たちの戦いを手伝うつもりのようだ。
 直接オブリビオンと対峙できるほどの実力はないけれど、狐火による牽制攻撃や、冷えた猟兵たちの体を温めると言った支援ならば可能だろう。
 猟兵たちが声を掛ければ、もっと細やかな連携攻撃も出来るかもしれない。

 だが、そんな妖狐たちの声に、現れた雪女――オブリビオン『碧麗』は、くしゃりと表情を歪めた。
「やれ。こんこんと煩い狐じゃな。せめて冬毛になってから出直すがよい」

 ひやり、と。
 狐の里を包む空気が、いっそう冷えていく。
 先の戦いで解けかけていた雪が、パキパキと音を立てて。
 何もかもが凍り付いていく、その中で。雪女『碧麗』は笑う。

「せっかくだ、猟兵とやらがどこまで耐えられるのか。わらわに見せてみよ」
篝・倫太郎
確かに冬毛でないと、この状況はしんどいだろ……
それは俺も思うけどさ……思うけどさー
この状況作った奴が言うのもちっと違わね?
でもまぁ、無理無い範囲で狐サンらは一つヨロシク

引き続き環境耐性
ついでに氷結耐性も使って状況に対応

状態異常力強化に篝火使用
氷で動けなくなる前にダッシュで接近
衝撃波と鎧砕きを乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃

敵の攻撃は見切りと残像で回避
狐サンらに攻撃が行かないよう注意して立ち回り

その身はあんたのモンじゃねぇだろーが
返してやれよ
んでもって、あんたは還れ
ここはあんたの居て良い場所じゃねぇよ

ウチの娘と同じくらいかちと小さいくらいか……
ホント、さっさと還れ?

……還れつってんだろ!



「やれ。こんこんと煩い狐じゃな」
 声色は幼く。
 しかし古めかしい言葉と共に、冷たい風が駆け抜けていく。
「せめて冬毛になってから出直すがよい」
「寒いコン!」
「やめるコン!」
 その、身を切られるような冷たさに。妖狐たちが抗議の悲鳴を上げる。

 確かに、妖狐たちの見事な狐色の体は、通気性のよい夏毛の証。
 人間に例えるならば、この極寒の中を、タンクトップに短パンで突っ立っているようなものだろう。いかに彼らが妖とはいえ、限界と言うものがある。
 冬毛になれるのならば、その方が良いと。

(それは俺も思うけどさ)
 言葉だけ見れば、まぁごもっともな意見だと。
 そう、思うのだが……。
「この状況作った奴が言うのも、ちっと違わね?」
 よりにもよって、いきなり冬にした張本人がそれを言うのかと。
 半眼でツッコミを入れる倫太郎に、しかし碧麗は「何を申すか」と口をとがらせた。

「ここは我ら雪妖怪の世界よ。なれば夏毛の妖狐は敵じゃが、冬毛であるならば同胞ではないか」
「基準そこか……」
 何というか、絶妙に理屈が通っているようで全く破綻している。
 実にオブリビオンらしい、とんでも理論を振りかざして、碧麗が胸を張る。

「何より、冬毛の方が可愛いではないか」
「夏毛でも冬毛でも変わらねーコン……」
 好き勝手に物を述べる碧麗に、ぷるぷると震えながら妖狐たちもツッコミを入れるけれど。これは良くない流れだ。
 往々にして、女性の可愛いを否定すると碌な事がないと。倫太郎の勘がそう告げている。

「でもまぁ、無理無い範囲で狐サンらは一つヨロシク」
 半ば強引に、話を切り上げて。倫太郎は薙刀を構え直す。
 こうしている間にも、確実に体は冷えていくのだ。
 既に髪先が、まつ毛が。霜を纏って白く染まり始めていた。

 ザグザグと音を立て、凍てついた雪を踏みしめて。
 その身に再び、神の力を呼び起こす。
 その力には、災魔を喰らう力も、砕く力もあるけれど。
 今、必要な力は――。

「その身はあんたのモンじゃねぇだろーが! 返してやれよ」
「ふふっ、猟兵は威勢が良いの」

 幼き雪女に巣食った、世界を壊す力を――災いを打ち払う力をのせて。
 振るう薙刀が、衝撃の波を放つ。

「あんたは還れ。ここはあんたの居て良い場所じゃねぇよ」
「異なことを言う」
 燃え立つような神の力を、ふわりと飛びかわして。
「この冬に、わらわが居らずしてなんとする」
 氷柱を放つ雪女が、幼い娘の器で笑う。

 鋭く突き立つ氷が、駆け抜けるより先に。
 倫太郎の体は、氷柱をかわして雪女へと迫っていた。

 目の前に立つ雪女は、本当に小さい。
 愛娘と同じか……いや、もっと。
 それこそ、生まれたばかりの……人の器を得たばかりの頃と同じくらいに。

 可愛い娘の体を、知らぬ者が好き勝手に使っているなどと。
 頭に浮かぶ、嫌な想像を。そこから湧き出す感情を、他人事だと割り切る事は、今の倫太郎には難しい。

「……還れつってんだろ!」

 荒ぶる言葉よりも、なお激しく。燃ゆる神力が、薙刀を満たして。
 倫太郎の振るう刃は、雪女の体へと吸い込まれていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リゼ・フランメ
煩いのだと、貴女はそういうのね
冷たく、凍てつくのが最良だと信じて疑わない姿は雪というより氷像

語り合い、触れ合い、微笑み会う温もりと幸せなんて、認めないのでしょう

だからこそ、世界からその心の温度も失わない為にも

「貴女を斬るのに、ぬくもりを求める、以外の理由はいらないわ」

まずは身を封じる氷と冷気への対策ね
属性攻撃で周りに破魔を乗せた火炎の蝶を産み、周囲に放射して動きを止めようとする氷を相殺するわ

迅く、そして、鋭く
私の理想を求める舞踏は止まらないのだと、氷雪が相殺か減衰した瞬間に、早業で舞い踊るように切り込む

心に秘めた理想という炎と蝶
そして、それを宿す剣舞は、この雪の世界でも優雅さも強さも失わないわ



 頬を撫でる風が、冷たい。
 猟兵たちの前に立ちはだかる、あの雪女――碧麗が、冷風を起こしているのだろう。
 静かに降っていた雪が、斜めに白い線を描いて。
 何もかもが凍てついていく……。

「猟兵、気を付けるコン」
「いくら猟兵が強くても、凍らせられたら動けないコン!」

 背中から聞こえた妖狐たちの声と共に、リゼの視界の端に映るのは、赤い煌めき。
 妖狐たちの放つ炎が、赤々と輝いて。
 不思議と、熱すぎる事もなく。燃え移る事もなく、リゼの髪を撫でていく。

 この優しい炎の温もりも。
 初夏の頃に、リゼの手を引いた。子狐たちの手の柔らかさも。
 こんこん、と。元気な賑わいも。

(煩いのだと、貴女はそういうのね……)

 切っ掛けは、幼い雪女を助けようとしたのだと。そう聞いている。
 だが、幼子に差し伸べるはずだった、その温かな手で。オブリビオンと化した彼女が成すのは、世界を冷やす事だけとは。

 皮肉なものだ。
 今やその存在は、吹きつける風よりも、降る雪よりも冷たい。氷そのもの。
 ここまで存在を捻じ曲げられてしまった以上、どれ程心を砕いても、熱く言葉を語っても、オブリビオンである彼女に届く事はないのだろう。
 ならば、その歪みを正す方法を、リゼは一つしか知らない。

「貴女を斬るのに、ぬくもりを求める、以外の理由はいらないわ」
「ほぅ。猟兵とやらは威勢がいいのぅ」
 真白の剣を構えるリゼに、碧麗がくすりと笑みを返せば。
 放たれた不可視の力が、リゼの周囲――その空気を、急激に冷やしていく。

 その冷たさに痛みを覚えるリゼの耳は、パキパキと。何かが凍りゆく音を聞いた。
 深く鮮やかな髪が、その毛先から霜に覆われて。白く染まっていく。

 足まで凍り付いてしまう、その前に。
 碧麗へと向かって、リゼが駆け出せば。その道を阻むように、積もる雪を割り裂いて、氷の柱が次々と姿を現す。
「猟兵、危ないコン!」 
 妖狐たちが懸命に飛ばす狐火さえも、その温もりを感じる前に、熱を奪われて――。

 いや。
 その熱を、温もりを。奪わせはしないと。
 鋭く突き立つ氷柱を前にしてなお、リゼの足は止まらない。
 炎の力を込めた、白き刃を。一息の元に振り下ろせば。
 吹きつける冷風諸共に、両断された氷柱がぐらりと傾ぐ。
 同時に、剣より溢れ出た炎が象る姿は――。

「……蝶々が飛んでるコン」

 ひらり、舞い飛ぶ。炎の蝶。
 狐火と共に、戯れるように。ひらひらと、羽を動かして。
 けれど、その優雅な姿とは裏腹に。
 凍てつく空気さえ焼き焦がす、その炎熱が。残る氷柱を、みるみる融かしていく。

 強く蹴った。雪上の舞台に刻み込むのは、この胸にある理想。
 冷たく、白く染まり行く世界でも、鮮やかに熱を持ち続ける。
 その優雅さも、強さも。失う事はないのだと。
 白の斬撃は、舞い飛ぶ蝶と共に。氷の主の元へと、駆け抜けていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七詩野・兵衛(サポート)
『アルダワ魔法学園応援団『轟嵐会』団長 七詩野兵衛である!』
アドリブや他の猟兵との連携と絡みは歓迎だ。

多少の怪我は厭わず積極的に行動する。
よほどの事情でやらなければいけない時以外は、
他の猟兵に迷惑をかける行為や、公序良俗に反する行動はしないぞ。

戦闘は応援団としてバーバリアンの力強さと、
スカイダンサーの身のこなしを駆使して応援するのだ。
我輩の「ダンス」と「パフォーマンス」で皆を「鼓舞」するのだッ!

応援する相手がいなければ仕方ない、自分で戦闘する。
後はおまかせだ。よろしくおねがいしよう!



「猟兵、頑張るコン!」
「負けるなコン!」

 こんこん、ここんっ!
 グリモアに導かれ、七詩野・兵衛(空を舞う熱血応援団長・f08445)が大地に降り立ったその瞬間。
 何やら随分と、元気な声が聞こえてくる。

 眼前に広がったカクリヨファンタズムの地は、降り積もる雪に白く覆われていて。身を切られるような空気の冷たさが、この地に異常が起きている事を告げていた。

 冷風の吹きつけてくる方向に視線を巡らせれば、事の中心となっているのは、どうやら小さな雪女であるらしい。
 それと対峙し戦っている者たちこそ、今回、兵衛が鼓舞するべき同胞たちだとして……。

「危ないコン」
「猟兵、上手くかわすコン!」

 こんこん、と。
 先ほどから猟兵たちを応援している、この狐たち――この世界に居るからには、おそらく妖怪なのだろうが――は、一体何者なのだろうか。
 助っ人として、急遽駆け付けた兵衛には、分からない。分からないが……。

 これほど懸命に猟兵たちを応援している姿から、敵でない事はハッキリしている。
 ならば、共に応援する事に、一体何の躊躇いがあろうか。
 凍りかけた雪を、ザクザクと踏みしめて。兵衛は、狐たちの前へ立つ。

「え。何者コン……?」
 始めて見る顔に、戸惑いを見せる狐たちに。
 兵衛は堂々と胸を張り、声を張り上げた。

「俺は、アルダワ魔法学園応援団『轟嵐会』団長、七詩野兵衛……猟兵である!」
「お前も猟兵なのコン?」
「本当に、みんなで助けに来てくれたコン」
「俺たち、応援ぐらいしか出来ないけど、負けないで欲しいコン……」

 こんこんと騒めく狐たちに。
 しかし兵衛は、「否」と突き付ける。

「応援ぐらい……ではない。応援の持つ気合と情熱は、必ず仲間に届くのである」
「コン?」

 愛用の鉢巻を額に。
 硬く縛れば、その真紅の色が寒風の中にひらりと舞う。
 空気に晒した腕は、瞬く間に体温を奪われて。体が震えそうになるけれど。
 同じ冷たさの中で、仲間が戦っているのだ。
 鼓舞する者である自分が、先に負けていては話にならない。

 拳を握り、腹の底に力を溜めて。
 前線で戦う仲間へと、届くように。兵衛は声を張り上げた。

 ――押忍っ!

「コン!?」
 空気を震わせるような、その声の大きさに。
 狐たちが、目を丸くする。
「さぁ、共にみなを応援するのだッ!」
「お、押忍っ……だコン」

 腕を交差させて、応援の構えを取る兵衛に。
 狐たちがあわあわと並び、兵衛の構えを真似る。

「行くぞッ!」
「押忍だコン!」

 兵衛の音頭に続いて、狐たちがこんこんと、共に声を張り上げる。
 即席の妖応援団の声援は、冷たい戦場の中も力強く響いて。
 共に戦う猟兵たちに、力と勇気を届けるのだった――。

成功 🔵​🔵​🔴​

水無月・ゆえと
何とか雪だるまは倒せたけど、まだ崩壊は終わってない
幼い雪女ちゃんを助けて皆でお祭りを楽しむよっ

とはいえ善意が切っ掛けで起きた崩壊現象だよね
碧麗さんにも敬意を持って戦おう

「悪いですが、お祭りと雪女ちゃんのためにも帰ってもらいますよぉ!」

まずは[雪華乃纏]をしっかり巻いて環境耐性/氷結耐性を高めておくよ
相手からの攻撃は[蒼影兎]で幻影を繰り出しながら【水気感応】で周囲の状況を感じ取り可能な限り回避しよう
避けながら距離を詰めて斬撃を仕掛けていくよ
避けられない時は[流水鞘]で受け流したいね

骸魂を引き離せたら[うさぎ印のお菓子袋]のお菓子を雪女ちゃんにあげて気持ちを落ち着かせたいなぁ
アドリブ/連携◎



●白い冬の日~跳ねる剣~

 吐き出した息が、白く染まって消えていく。

 沢山の雪だるまに囲まれて、無我夢中で剣を振るって。
 胸はまだドキドキと、大きな音を立てているけれど。
 ひとまず、静けさを取り戻せた事にほっとする。

 けれど、それもほんの一時の事。
 舞い落ちる雪が、やむ気配はなく。
 ようやく姿を現したこの事件の元凶――雪女『碧麗』は、いっそう冷たい風で、猟兵たちを包み込む。

「うわ……」

 吹き付ける冷風が、先の戦いで少しばかり戻って来ていた体温を、容赦なく奪っていく。
 呼吸するほどに、肺まで凍り付いてしまいそうな風に。花柄のマフラーで、しっかりと口元まで覆えば。

「猟兵、頑張るコン!」
「負けるなコン!」
 声援と共に飛んできた炎が、ゆえとの体を優しく包む。
 自分たちも、寒いだろうに。
 逃げる事なく、猟兵たちを支援してくれる妖狐たちの姿が、ゆえとに力を与えてくれる。

(皆でお祭りを楽しむよっ)
 妖狐たちは勿論の事。お祭りを、楽しみにしていた妖怪も――幼い雪女も、共に笑えるように。
 今一度、剣を手に。
 兎の本能を全開に、ゆえとは雪上を駆ける。

「ほぅ、そなたはウサギかえ」
 ゆえとの軽快な動きを目にとめて、碧麗が口元に笑みを浮かべる。
「なれば、もっと軽やかに踊ってみせい」
 碧麗の呼び起こす冷気が、氷柱の形を成してゆえとへと飛んだ。

 鋭い先端を不気味に光らせ、氷柱が真っ直ぐに突っ込んで来る。
 だが、この単純な射線ならば……。
 雪を蹴り、ゆえとが真横へ飛びかわした直後――雪に刺さった氷柱から、絶対零度の風が爆ぜる。
 パキパキと音を立てながら、雪を割って咲くのは氷の花たち。

 それは、瞬く間にゆえとの周囲を、氷の花畑へと描き換えて。
「猟兵、危ないコン!」
 その花の美しさに、見惚れる暇もなく。
 花たちが次々と、氷の礫を吐き出してくる。

 四方八方からの攻撃に、心は焦りを覚えるけれど。
 落ち着けと、己を叱咤して。ゆえとは意識と集中させる。
 目では見切れぬ攻撃ならば、感じればいいのだ。
 氷もまた、水が姿を変えたものなのだから。

 向かい来る、氷の礫――その水流を、ぴょんとかわして。
 余計な流れは、左手の鞘でするりと方向を変えてやりながら。
 ゆえとは徐々に、碧麗との距離を詰めていく。
 さながら、飛び石を渡るように、ぴょんぴょんと。ステップを踏んで。

 最後の一歩は、力強く雪を蹴って。
 その身は宙に飛び出した。

「うむ、見事な舞いであった。褒美に……」
 頭上へと剣を構えるゆえとの視線の先で、碧麗が笑う。
「少し本気を出すとしようかの」

(まだ強くなるの……!?)
 幼い少女の姿は、瞬き一つの間に妖艶な女性の姿へと変わって。
 ゆえとを指差す、その動きで呼び出される氷柱は。その質量も、鋭さも、先ほどの比ではない。

 いくら動きが見えていても、空中では身をかわせない。
 迫りくる氷柱を前に、ゆえとの全身が総毛立つ。

 痛みを覚悟した――その時。
 天より落ちた一条の光が、氷柱を貫き砕いた。

 一体誰が、氷柱を砕いたのか。確認している暇はない。
 今、自分に出来る事は。振り上げたこの剣を、全身全霊で振り下ろす事だけ。

「悪いですが、お祭りと雪女ちゃんのためにも帰ってもらいますよぉ!」

 ――此度の事件は、善意が切っ掛けで起きた事。
 だからこそ、握りしめたこの剣には、敵意ではなく敬意を込めて。

 碧麗へと振り下ろした刃は、蒼く煌めいて。
 飛び込んで来た赤い斬撃と交わり、十字の軌跡を描いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
動くことで多少はマシにはなっているとは思うのですが……。
吸い込む空気が冷たくて痛い。……これは、寒いな(首に巻いている布を口元まで引き上げ)

妖狐たちにはあまり無理をしてほしくはないですが、手伝ってくれるというのならありがたい。
「……体を温めてもらえると、助かります」
冷えで固まったままでは、剣も満足に振るえないですから。
それに……冬毛じゃなくても、もふもふ……(もふもふ)

いろいろと回復できたら戦闘再開
敵の攻撃は【聞き耳】で音を頼りに、時に【野生の勘】で回避
敵に近づきすぎないように【執行者たるトランプ兵】で攻撃し、怯んだところを追撃する。



●白い冬の日~現に見た夢~

 吐いた息が、白く染まる。
 その白さが、ここに降り立ったばかりの時よりも、濃くなっているような気がするのは。先の戦いで、少しは体が温まった証だろう。

 とは言え、一時の静けさを取り戻して。こうして、動きを止めてしまえば。
 容赦のない冷気は、すぐさま体温を奪い取りに来る。
「……これは、寒いな」
 一呼吸ごとに、体の奥まで入り込んで来ようとする冷気に。
 首元を覆う布を、ぐいと口元に引き上げていると……。

「猟兵、大丈夫コン?」
 妖狐たちが、心配そうにこんこんと駆け寄ってくる。
「無理するのは良くないコン」
 夏介の周囲に灯された狐火は、不思議と熱すぎる事はなく。
 何かを燃やす事もなく、ふわふわと漂いながら夏介の体を温めてくれる。

 本当ならば、妖狐たちにあまり無理をして欲しくは無いのだ。
 先んじて動いた猟兵たちが、既に碧麗との戦端を開いている。
 少し距離を開けているとはいえ、ここにもいつ攻撃が飛んでくるか分からない。
 家に閉じこもっていてくれるのならば、そちらの方が安全なのだけれど……。

「助かります」
 狐火の優しい光に、指先に熱が戻ってくるのを感じる。
 何もよりも、猟兵たちの力になろうとしてくれる事が、ありがたい。
「それに……」
 あの雪女――碧麗は、妖狐たちに「冬気になって出直せ」などと、言っていたようだが。

「どうしたコン?」
「やっぱり、毛皮じゃないから寒いコン?」

 言葉を途切れさせた夏介の様子に、どうやら狐火だけでは足りないと思ったらしい妖狐たちが、もふもふの手を夏介の手に添えて。
 ふかふかの体をぴたりと夏介に寄せて、包み込んで来る。

 実に、ふかふかである。
 そして、ぬくぬくである。

 思わず、その頭にそっと手を伸ばせば。
 さらさらの毛並みが、夏介の指を撫でていく。
 夏毛だから何だと言うのだ。
 もふもふ。もふもふ……よき。

 体だけでなく、胸の内からぽかぽかしてくるようだ。
 しかし、カクリヨの世界に平和を取り戻さなければ、この温もりも遠からず失われてしまう。
 少しばかり、名残惜しいと思う気持ちもあるけれど。

 妖狐たちに触れていたその手を、剣の柄に。
 取り戻した感覚を確かめるように、強く握れば。
 夏介の意識は、戦いのそれへと切り替わる。

 妖狐たちに短い礼を告げて、あえて碧麗の方には向かわずに。
 立ち並ぶ家々に、身を隠しながら進む。
 そばだてた耳に聞こえてくる戦闘音を頼りに、方角と距離を測りながら。
 回り込み、徐々に碧麗との距離を詰めていく。

 ザクザクと、力強く凍った雪を踏みしめる仲間の足音を頼りに、踏み込んだ先。広がっていた光景に、一瞬、呼吸を忘れた――。

 幼かった筈の雪女は、妖艶な大人の姿に変わっていて。
 彼女が呼び出したのだろう巨大な氷柱が、鋭利な先端を一羽の白兎に――白い兎の耳を持つ猟兵に向けている。
 空中高く飛び、剣を掲げたあの体勢では、氷柱を避ける事は出来ないと。
 誰の目から見ても、明らかだった。

 感情を閉じ込めている夏介の瞳が、一瞬見開かれて。
 考えるより先に、その手は一枚のカードを掴む。

 そのスートは、剣であり、死を意味するもの。
 ここに判決は下り、一条の光が氷柱を貫き砕くのと、同時。
 夏介は赤い剣を手に、碧麗へと迫る。

 飛び込むように、碧麗へと降り抜いた刃は、赤く。
 降り落ちる蒼い斬撃と交わり、十字の軌跡を描いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

林・水鏡
おお、狐達。無事であったか。
手伝ってくれようとするのはありがたいんじゃが危険な目には合わせたくないしのう。
そなたらは凍えぬように狐火で暖をとっておれ。
雪女の言うように冬毛でないそなたらにはこたえよう。

しかしだな冬毛になる前にお主が来てしまったからこの様になったんじゃ。
いますぐ季節の順番をもどすぞ。
あまり骸魂に憑かれとる方に負担はかけたくはないがしかたあるまい。
【オーラ防御】と【結界術】で身を守りつつ
【全力魔法】でUC【陰陽五行の理】じゃ!


木霊・ウタ
心情
祭りが楽しみな娘と
娘を助けようとした刀自と
共にこんなこと望んじゃいない

雪童女を救い
碧麗を還してやろう

妖狐
ありがとな
狐火は自分達を温めるのに使うんだ
一番の任務は元気でいる事
是から一緒に祭りを楽しむんだからな(ぐっ

狙われたら庇う

戦闘
その力も厄介だけど
もし童女の寿命が奪われちまうんなら
許せねぇ
速攻で仕留める

爆炎噴出
刹那に間合い詰め
その勢いのせて獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払い
刃から炎の奔流放つ

体中の獄炎を全て放つ勢いで
敵や氷の世界を燃やし尽くす

碧麗
その子の未来を奪ったら
あんたが辛くなるだけだ
紅蓮に包まれ眠れ

事後
碧麗へ鎮魂曲
熱くて悪かった
あんたのせいじゃない
安らかに

童女
よく頑張った
祭りを一緒に楽しもうぜ?



 真白に染まった狐に里に、ふりふりと揺れる黄色い色は。
 妖狐たちの、もふもふな尻尾。

「おお、狐達。無事であったか」
「大丈夫だコン」
「猟兵も、怪我とかしてないコン?」
 きっと無事でいてくれると、水鏡も信じてはいたけれど。
 こうして、自分の目でそれを確認できれば、やはり安心する。

「あいつの氷、中々解けなくて手強いコン」
「猟兵も、気を付けるコン」

 こんこん、と。
 猟兵たちの周囲に狐火を飛ばす妖狐たちは、碧麗との戦いを手伝うつもりなのだろう。
 猟兵たちを包む狐火は、熱すぎる事もなく。
 何かを燃やす事もなく、かじかむ指先に熱を取り戻してくれる。
 それは、とても暖かくて。
 妖狐たちの想いも、無碍にしたくはないのだけれど。

「手伝ってくれようとするのは、ありがたいんじゃが……」
 水鏡の表情は、今一つ晴れない。

 素早く斬りこんだ者たちによって、既に戦端は開かれて。
 激しい戦闘の音が、こちらにまで伝わってきている。
 この場所にも、いつ攻撃が飛んでくるか分からない。

 安全な場所に居てくれるならば、そちらの方が良いとも思えて。
 ううむ……と唸る、水鏡の隣。ウタが妖狐たちに視線を合わせて、口元に笑みを浮かべる。

「ぽかぽかになったぜ、ありがとな!」
 だから、もう俺たちは大丈夫だと。妖狐の頭に、ぽふぽふと手をのせて。
「だから狐火は、自分達を温めるのに使うんだ」
 ウタがそう言えば、水鏡もまた「うむ」と頷く。
「そうじゃな。雪女の言うように、冬毛でないそなたらにこの寒さはこたえよう」
 妖狐たちが元気で居てくれなければ、ここまで駆け付けた意味がなくなってしまう。
「そなたらは凍えぬように狐火で暖をとっておれ」
「是から一緒に祭りを楽しむんだからな!」
 笑顔と共に、ウタが親指を立てて見せれば、妖狐たちが、ぱぁっと表情を明るくさせて。
「雪がやんだら、すぐにお祭りの準備をするコン」
「沢山お店も出すコン。覚悟するコン」
 こんこんと、元気な声に、心までぽかぽかしてくるような気がする。
 だが――。

 ――やれ。何やら暑苦しい気配がするのぅ。

 ひやり、と。
 氷の様に冷たい敵意を感じたのは、その時。

「なれば少し、本気を出すとしようかの」
 背筋を掛ける悪寒に、武器を構えた猟兵たちの目に映ったのは、見慣れぬ雪女の姿。
 幼かった少女の手足は、すらりと伸びて。
 切れ長の目を細めて、くすりと笑みを浮かべる妖艶な雪女が、氷の礫を猟兵たちへと放つ。

 ウタは咄嗟に、大剣を突き立てて。
 水鏡が解き放った符によって、結界を結ぶ。

 礫がぶつかった瞬間に感じた手応えは――尋常でなく、重たい。
 水鏡が、守りの加護でウタの大剣ごと結界を覆えば。何とか、礫を弾く事は出来たけれど。

「おぬし、その姿は……」
「うむ。この娘も、中々の実力であろう?」

 水鏡の見つめる先、くつくつと、大人びた雪女が笑う。
 その姿は、憑りつかれてしまった幼い雪女の、成長した姿なのだろう。
 だが、未来に得るはずの力を強引に引き出す事は、器たる幼い雪女の命を確実に蝕んでいく事を、果たして知っているのか――。

 ……いや。
 巨大剣を強く握って、ウタは込み上げそうになる怒りをぐっと堪える。
 それは、憑りついた骸魂の――刀自の望みではないはずだ。
 彼女は、祭りを楽しみにしていた娘を助けようとした。

 その彼女が、オブリビオンとなった事で、歯止めが利かなくなっているというのなら。
 一分でも、一秒でも早く、止めてやらねばならない。

「速攻で仕留める」
 ウタの感情を表すように、右腕の炎が騒めく。
 湧き上がる怒りは、碧麗ではなくオブリビオンという『歪み』に向けて。
 その手に構えた巨大な剣を、炎が包み込んでいく――。

「少々手荒くなるが、しかたあるまい」
 ウタの放つ炎熱に、白い髪を揺らしながら。
 水鏡の詠唱が、結界の中に響いていく。

 妖狐たちも、幼い雪女も。
 妖怪たちの未来を作っていく、若い命なのだ。
(そもそも冬毛になる前にお主が来てしまったから、この様になったんじゃ)
 年長者が若者を守り、導いてやらずして何とするのかと。

「いますぐ季節の順番をもどすぞ」
 水鏡が翳す、その札に。静謐な気が満ちて行く。
 準備は良いかと、声を掛ければ。
 小さくウタが頷き、重心を低く構えた。

「己が相克が力を受けよ!」
 青葉のような鮮やかな光が、碧麗へと走る。
 同時、雪を蹴ったウタの体は、炎を纏って。
 猛る、炎の嘶きと共に、光を追って飛び出した。

「無駄な事を……!」
 身を守らんと碧麗が呼び出した氷の壁に、水鏡の光線がぶつかって。
 防がれたかに、見えたけれど。
「なんじゃと!?」
 氷の壁が、高い音を立てて粉々に砕け散っていく。

「水では木に勝てぬが道理よ」
 どれだけ分厚い氷であろうとも、相克の力を以て相殺してしまえば、薄氷と変わりなく。
 守りを砕かれた今、猟兵たちと碧麗を隔てるものは何もない――。

「その子の未来を奪ったら、あんたが辛くなるだけだ」
 水鏡が作り上げたその道を、炎の尾を引いてウタが飛ぶ。

 ――紅蓮に包まれ眠れ。

 降り抜いた、巨大な剣から放たれた炎は。
 ウタの感情の発露。
 世界を歪める過去だけを焦がして。
 正しき姿となった魂が、安らかに眠られるよう、灯火にならんと。
 氷の世界を、鮮やかに赤く照らして
 高く、燃え上がるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
エリシャ様・f03249と

碧麗様にはまずはお礼を
行き倒れた雪女様を助けてくださったのですね
あなたが助けてくださらなければ
雪女様は溶けてしまったでしょう
ですが世界をこのままにできません
雪女様を返してくださいませ
一緒に祭りを楽しみたいのです

…とはいえ妖狐様方
本当に寒いのでその…抱っこさせていただいても?
抱き上げたふかもふと鼓動に元気百倍
肉球をほっぺに感じれば絶対に負けません!
名残惜しいですが安全な場所に降ろします

ぬくもふで暖を取ったアカネに隙はありません!
エリシャ様と妖狐様の援護で敵UCを溶かします
火鉢の熱と狐火
何よりエリシャ様達の応援の声で力を得て接近
碧麗様の手を取りUCを
寒い時にはダンスです!


エリシャ・パルティエル
アカネちゃん(f05355)と

そうね、あなたは暑さで倒れていた小さな子を助けてくれた
若い子に対して面倒見がいいのね
でもこの世界をこのままにしておけないわ
その子を返してもらうわよ

アカネちゃん…?
あんなに幸せそうな顔をして
ほんとはずっと我慢してたのかしら?
ふふ、でも何よりも力強い応援ね

妖狐たちも手伝ってくれるのね
心強いわ
きちんと季節を取り戻して
楽しい秋祭りをしましょうね

UCで火鉢を作るわ
聖人が凍える民の為に作った
ちょっとやそっとじゃ火が消えないものよ
狐火と合わせて寒さを和らげるわ
妖狐たちにはアカネちゃんの支援もお願いするわね
隙を作ってあげれば
あとはもふもふ充填したアカネちゃんがなんとかしてくれるわ



 此度の事件の元凶――碧麗が姿を見せてから。より一層、空気が冷たくなったような気がする。
 吐く息は、更に濃い白に染まって。
 しっかりと防寒着に身を包んでいても、確実に体が冷えてきているのが分かる。

「もっと寒くなってきたコン」
「猟兵、気を付けるコン」

 それでも。
 こんこ、こんこと降る雪の中。こんこんと、元気な声がすれば。
 家々からひょこりと顔を覗かせる妖狐たちの姿に、アカネの表情は緩む。

「……妖狐様方」
「どうしたコン?」
 剣客雪だるまたちを退けた今、妖狐たちも元気を取り戻してくれた。
 それはつまり、アカネのよくぼ……夢を阻む障害は、無くなったという事である。

「本当に寒いのでその……」
「アカネちゃん……?」
 祈るように手を組んで、もじもじと言いよどむアカネの姿は、まるっきり恋する乙女。
 はて。一体どうしたのかと、首を傾げて。見守るエリシャの前で、アカネは意を決したように、妖狐たちを真っ直ぐ見つめて――。

「抱っこさせていただいても?」
「コン?」
 キラキラと。期待に満ちたアカネの目が、朝日に煌めく湖のように眩しい。

(……ほんとはずっと我慢してたのかしら?)
 思い出してみれば、狐の里に到着した時から。アカネは妙にせかせかしていたような気もする。

「やっぱり毛皮がないから寒いコン?」
「それはいけないコン」
「あっためるコン!」
 そんな、エリシャの心の声を知ってか知らずか。
 妖狐たちが、もふもふの体を、ぴたりと寄せて。
 さながら、きつねだんごの再来のように、二人の体をもふもふと包み込んでくる。

 アカネが、そっと一体を腕に抱けば。
 その毛並みがさらさらと、手を撫でて。
 もふもふな感触の向こう側から、妖狐の鼓動と温かさが伝わってくる。

「……ふか、もふ」
「猟兵、意識が遠のいているコン? 寝たらダメコン!」
 もふもふぽかぽかのお裾分けに、アカネの表情はとろとろに蕩けて。
 妖狐が慌ててぺちぺちと、その頬を叩くけれど。
「あぁ、ぷにぷにが……」
(アカネちゃん、あんなに幸せそうな顔をして)
 しかしながら、頬を襲う肉球の弾力に、アカネの表情はますます蕩けていく。

 エリシャもそっと、妖狐たちの毛並みに手を伸ばせば。
 そのふかふかの体は、指先にも、心にも、熱を分けてくれる。

「何よりも力強い応援ね」
「元気になったならよかったコン」
「はい。元気百倍です。これなら絶対に負けません!」
 最後にむぎゅっと、その体を抱きしめて。
 そっと、妖狐を降ろしたアカネは、戦場へと向かう。

「む。一体何人居るのじゃ、猟兵とやらは……」
 アカネの接近に気付いた碧麗が、むすっと眉を顰めたのは。猟兵たちの攻撃が、確実に碧麗を弱らせているからなのだろう。
 碧麗が呼び出した氷柱が、積もる雪を貫いて。瞬く間に、周囲を凍らせてゆくけれど……。

 アカネの足は、止まらない。
 体にも、心にも。妖狐たちから分けて貰った温もりが、しっかり残っている。
 そして何よりも、背中にはエリシャが居てくれるのだから――。

 極寒の、凍てつく戦場を駆けるアカネの背中を見つめながら。
 エリシャが具現するのは、聖人の軌跡。
 凍える者たちを救いたまえと、祈りを捧げれば。
 重ねた手の中から、パチパチと火の粉が爆ぜて。
 その手に現れた火鉢が、穏やかな炎で周囲を暖かく包み込む。

「アカネちゃんの支援をお願いできるかしら?」
「わかったコン」
「この火を一緒に飛ばすコン!」

 元気な返事と共に、妖狐たちの灯す狐火が、火鉢の炎と混ざり合って。
 こん、ここん!
 妖狐たちの掛け声のもと、アカネの方へと飛んでいく。

「狐め、小癪な真似を……!」
 碧麗が、氷の礫を飛ばすけれど。
 聖人の炎と交じり合った狐火を消す事は、容易くはなく。

「……うぅ、熱いのじゃ」
 周囲の氷さえ、徐々に解けだす暖かさに、碧麗がたじろいだその隙。
 距離を縮めていたアカネが手を伸ばし、碧麗の手を掴む。

「碧麗様には、まずはお礼を」
「何じゃと?」

 そのまま、一緒にダンスを……と、誘うその前に。
 アカネが述べるのは、幼い雪女を助けようとしてくれた。その事へのお礼。

「あなたが助けてくださらなければ、雪女様は溶けてしまったでしょう」
「そ、そうじゃ。ゆえにわらわは、もっと世界を冷やさねばならぬのじゃ」

 魂だけの存在となっても、幼い雪女を助けようとした。
 本来の彼女は、面倒見がよい性格だったのだろうと。二人の会話を聞きながら、エリシャは思う。

「でもこの世界をこのままにしておけないわ」

 一度、坂道を転がってしまった雪玉が、止まる事が出来ないように。
 オブリビオンと化した碧麗は、自分の意思では止まる事もできずに。力を振るい続けて、世界を壊してしまうのだろう。
 それを止める事が出来るのは、猟兵たちだけなのだ。

「このままだと貴女、その子が楽しみにしていた、お祭りまで奪ってしまうのよ」
「なっ、わらわはそんなつもりは……」
「でしたら、雪女様を返してくださいませ」

 楽しいお祭りを、共に過ごしたいのだと。
 しっかりと碧麗の手を掴んだまま、アカネはステップを踏んで舞う。

 そう。お祭りは、美味しい食べ物も、楽しい遊びも沢山あるけれど。
 何より皆で手を打って、ステップを踏んで。
 一緒に踊る催しでもあるのだ。

「その子を返してもらうわよ」
 エリシャの祈りを受けた炎が、いっそう赤く燃え上がり。解けゆく氷の舞台は、キラキラと輝いて。
 くるり、くるり。
 テンポを上げて、アカネは舞う。

 碧麗の小さな体は、ぶぅんと振り回されて。
 やがて、くるりと目を回して――。

「こ、これが狐のお祭りなのでちかぁ~……」

「えっ?」
「あら」
「コン?」

 アカネの腕の中で、目を回している雪女の姿は、今まで特に変わりはないけれど。
 響いた声は、先ほどまで聞いていた碧麗の声よりも随分と高く、幼くて。
 敵意のようなものは、もう感じられない。

 急激に周囲が明るくなっていくのを感じて、エリシャが空を見上げれば。
「雪、やんだわね」
 夏の名残を感じさせる太陽が、キラキラと輝いていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『百鬼夜行のお祭り騒ぎ!』

POW   :    縁日のごちそうに舌鼓!

SPD   :    幻想的な情景を堪能する!

WIZ   :    お祭りグッズを見て回る!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――何処からともなく、弦の音色が聞こえてくる。
 その音の中に、こんこん、ここんと。妖狐たちの元気な声が響いていた。

 猟兵たちの活躍によって、多くの妖怪たちが解放されて。
 降り積もった雪も、雪女や雪鬼たちが手際よく片付けてくれた。
 すっきりと整えられた狐の里を、吊り下げられた提灯たちが明るく照らしている。

「えぇと、これはどこに置けばいいコン?」
「あっちの屋台だねぇ」
 よく目を凝らして見れば、並ぶ提灯たちの中には、顔が付いているものもいて。
 妖狐たち以外にも、多くの妖怪たちが集まってきているようだ。

「ここのお掃除は、かんりょーなのでち」
 解放された幼い雪女もまた、妖狐たちとともに右に左にと走り回っている。
 目を覚ました直後は、混乱していたけれど。
 猟兵たちに優しく声を掛けられて、うさぎ印の美味しいお菓子を一口頬張れば、すぐに落ち着きを取り戻して。
 どうやら、お礼とお詫びを兼ねて、かき氷屋さんのお手伝いをする事にしたらしい。

「猟兵のみなさまは食べ放題なのでち。良かったら食べに来て欲しいでち!」
 そう伝えにやって来た雪女の表情は、とても元気そうで。楽しそうだった。

 徐々に日も傾いて。
 程よく涼しい風が吹き抜ける中を、ひらりひらりと。
 ゆったりとヒレを揺らして泳いでいるのは、金魚霊たち。
 赤に、黒に。目の大きなものや、コブのあるもの。
 様々な金魚霊を虫網のような道具で救うのが、狐のお祭りの金魚すくいなのである。

 大通りを足並み揃えて行進しているのは、大小様々なぬいぐるみたち。
 肩に射的銃を担いでいる彼らは、射的屋の景品たちだ。

 その後ろをごろごろと転がっている輪入道たちは、輪投げの屋台へと向かっていて。
 ボーリングの様に、立ち並ぶ唐傘たちに向かって輪入道を転がす輪投げは、気前のよさそうな輪入道を選ぶのがコツであるらしい。
 得点に応じて貰える景品も、『黄金の変身葉っぱ』やら『動物の声になる飴』など、怪しい物からおかしな物まで、色々とあるようだ。

「お面持ってきたコン!」
「ここに並べるコン」
 せっせと妖狐たちが並べているお面は、狐に狸に、それから猫に……動物たちのお面だけれど。
 何故か見るたびに、表情が変わっているような……?

 そうこうしているうちに、漂ってきたのはソースの香り。
 たこ焼きに、お好み焼きに。もう少し先に進めば、りんご飴やわたがしなどの、甘味系の屋台も並んでいる。
 きゅっと一杯やりたい者は、おでんやうどんの屋台へ向かうといいだろう。
 
 里の中央に櫓が組まれて、太鼓が運び込まれれば、準備は万端。
 遊び倒してもよし、食い倒れてもよし。
 狐の里のお祭りが始まる――。
アリス・フォーサイス
わあ、賑やかだね。

これが輪入道の輪投げ?面白そう!やらせて。

さあ、雪女ちゃんは、と。
あ、キミだね。雪氷をもらえるかな?

わあ、面白い食感。すごいね。



「わあ、賑やかだね」
 赤い提灯が、ずらりと並んで。
 妖狐たちの里を、明るく照らしている。

 その赤々とした光の下、里の奥から響いてくるのは、太鼓と笛の音色で。
 並ぶ屋台から、こんこんと。妖狐たちの客引きの声が賑やかだ。
 そして、何よりも――。

「あの、冷たいたこ焼きはありますかしら?」
「これは冷ましてあるコン!」
 買ったたこ焼きに、ふーふーと息を掛けて。冷やして頬張るあのお姉さんは、きっと雪女なのだろう。
「あ、かつお節ましましでお願いしますニャ」
 その向こうの屋台では、尻尾が二本ある猫がお好み焼きをお買い上げ。

 祭りを楽しむお客さんたちは、みんなみんな妖怪ばかりで。
 まるで、一足早くやってきたハロウィンがやってきたかのようで。
 賑やかな景色の中を、興味津々に視線をキョロキョロさせながら、アリスは進んでいく。
 そんな、アリスの目に留まったのは――。

「これが輪入道の輪投げ?」
「いらっしゃいだコン! やっていくコン?」

 カララ、カカラと。音を立てながらたむろしているのは、炎を纏う車輪たち。
 その中央に位置する顔が、アリスの視線に気付いて。
 ウィンクしてくる者や、笑顔を浮かべる者もいれば。無表情のまま、頑固そうな者も居る。

 祭りの中央路に沿って、長く伸びたレーンの奥には、唐傘たちがピラミッドの陣形に整列していて……なるほど、あそこに向かって輪入道を投げればいいらしい。
 
「面白そう! やらせて」
「まいどだコン。投げる輪入道を選ぶコン!」

 さてさて、どの輪入道を選んだものか。
 性格も、車輪の大きさも。ずいぶんと個体差があるようだけれど。

「キミにしようかな」
「おう、その体格であっしを投げれますかい?」

 アリスが直感で選んだ凛々しい眉毛の輪入道は、車輪もなかなかの大きさだけれど。
 華奢な少女に見えても、アリスは情報世界の妖精であり、猟兵なのだ。
 自分の身長よりも大きな輪入道を、ひょいと持ち上げて。

「勢いよく投げてくだせぇよ」
「任せて!」
 狙いを定めて、力一杯えいやっと輪入道を投げれば。
 火の粉を飛ばし、ガラガラと車輪を鳴らして。輪入道がコースを転がっていく。

 パッカーンと、勢いよく輪入道が突っ込んで。
 ひらりと空を舞った唐傘お化けの本数は――。
「八点。中々の高得点だコン!」
「わーい」
 景品としてもらったお菓子の箱には、『お揚げ煎餅』と書いてある。
 どうやら、狐の里の名菓らしい。

 はて、どのような味のお菓子なのか。
 名菓と言うくらいだから、きっと美味しいのだろう。
 そうそう、美味しいものと言えば……。

 もう一カ所、寄らねばならないお店を思い出して。
 お揚げ煎餅をわきに抱えて、アリスの足は甘味のエリアへ。

「雪女ちゃんは……と。あ、キミだね」
「猟兵の方、来てくれたのでちか!」

 かき氷の屋台に、元気に働く小さな雪女の姿を見つければ。
 声を掛けられた雪女は、ぱぁっと表情を明るくさせて。
 注文するのは勿論、雪女ちゃん特製の『雪氷』。

「お任せくだちゃい!」
 元気な声と共に、雪女ちゃんの呼び出した真っ白な雪が、器に積もって。
 おすすめのイチゴシロップを、たっぷりとかけて。
 スプーンで一掬い。口に運べば――。

「わあ、面白い食感。すごいね!」
 柔らかなふっかふかの氷が、口の中ですっと溶けて。
 心地よい冷たさと、シロップの香りが口の中を満たしていく。

 ――妖怪たちのお祭りは、こんなにも美味しくて、面白くて。
 さぁ、次はどんなものに出会えるのかな、と。
 アリスの屋台巡りは、好奇心の赴くままに。まだまだ続くのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
支度が整っていく様子を見回ってから屋台へ

おでんの屋台で一杯は判るけども!けども!
うどんの屋台でも酒イケんの?マジで?

そんなことを思いつつ、おでんの屋台で一杯
燗じゃなくて冷やで、酒はオススメを頼む

おでんは玉子に大根、蒟蒻は鉄板で頼むとして……
後は適当に見繕って貰おうか……
あ、後、餅巾着とがんもどきも!

酒とおでんが揃ったら1人慰労会と洒落込む
るっせ、ぼっち言うな

あ、辛子チョーダイ辛子
おでんつったら辛子と味噌だれ
味噌で煮込んだスジとかすげぇ美味いんだけどな
え?そりゃモツ煮だろうって?

細かいことは良いじゃねぇか
美味けりゃ呼び方なんて些細だろ?

近いうちに家でもおでん作るかなぁ……
そろそろ良い時期だしさ



 こんこん、ここん。
 狐の里に、賑やかな声が響いている。
 ほんのついさっきまで、この里は真っ白に染まっていたと言うのに。

 お祭りが始まるには、あともう少し時間がかかるのだろう。
 そこかしこを妖怪たちが走り回っている様子は、随分と賑やかで。
 祭りの準備もまた、祭りようなものだと思いながら、歩いていれば。
 ふんわりと漂ってきた、出汁の香りに。倫太郎の足は、自然と屋台の方へ。

「あ、猟兵! 良かったら一杯やっていくコン!」

 広場に並び立つ屋台には、『おでん』と『うどん』の文字。
 ずらりとテーブルが並べられたそこは、腰を据えて食事を楽しみたいものたちのためのスペースなのだろう。
 何人かの妖狐たちが、テーブル席でうどんを……ん?

「うどんの屋台でも酒イケんの? マジで?」

 当たり前のように、うどんとワンセットで猪口と徳利が置かれている様子に、倫太郎は首を傾げる。
 おでんなら分かる。だが、うどんは〆に食べるものじゃないのかと。
 怪訝な顔をする倫太郎に、近くの妖狐がケラケラと笑う。

「このお揚げを齧ってからの一杯が、たまらねーんだコン」
「猟兵も試してみるといいコーン」
「沁みるんだコン。お揚げだけに!」
 こーん、こんこん。上がる笑い声に。
「既に出来上がってるな……」
 さては、祭りの準備を始める前から飲み始めてたな……と。
 人間とそう変わりない、妖狐たちの姿に和みつつ。

 おでんの屋台を覗けば、ねじり鉢巻きの妖狐が「なににするコン?」と。
 お玉杓子を片手に尋ねてくる。

「卵と大根と……あと蒟蒻たのむわ」
 おでんの鉄板はしっかり抑えるとして。
 さて、あとは何を頼もうか……。
 透き通った出汁の海から漂う香りが、倫太郎の胃袋を刺激してくる。
「あ、後、餅巾着とがんもどきも!」
「わかったコン。それで、こっちはどうするコン?」

 こっち……と。
 妖狐が猪口を呷る真似をしてみせれば、はてさて。
 妖怪たちの世界には、一体どんな酒があるのやら。
「じゃあ、オススメを頼む。燗じゃなくて冷やでな」
「分かったコン。猟兵は恩人だし、とっておき出しちゃうコン」

 あつあつの大根を、染み出す出汁ごと腹に納めて。
 冷えた酒を、ぐいと呷れば。
 清涼感が駆け抜けた後、腹の底にじんわりと酒気が染み入って来る。

「あ、辛子チョーダイ辛子」
 おでんの第二陣に挑もうと、辛子に手を伸ばす倫太郎だが。
 服の裾を、誰かにくいくいと引かれて。
 視線を向けて見れば、そこに居たのは小さな妖狐……どうやら子狐のようだ。

「猟兵。今日はあの黒い子は居ないコン?」
 裾を引く小さな子狐は、以前里を訪れた時に長男と話をしてくれた子だろうか。
 残念ながらその長男は、今日は留守番なのだけれど。
「そう、なのコン……」
 今日は倫太郎一人なのだと告げれば、子狐はぺたりと耳を下げる。

 ……可愛い長男が人気者なのは、嬉しいのだが。
 そう盛大にがっかりされると、こうして駆け付けた自分の立場が無いと言うか、何と言うか。
「今のヒトの世界だと、ぼっち呑みというのも流行りと聞くコン」
「るっせ、ぼっち言うな」

 そういう言い方されると、おとーさんちょっと傷付いちゃう。
 心なしか、辛子も沁みるし。
 こうなってくると、味噌も欲しくなるところ。

「味噌で煮込んだスジとかすげぇ美味いんだけどな」
「それはモツ煮と言う気がするコン」
「細かいことは良いじゃねぇか」

 美味しければ、呼び方など些細な事。
 日一日と涼しくなってゆく、この時期に。
 妖狐たちは元気だったと報告する、その席に。
 おでんの香りが漂っているのも、いいかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶/2人】
黒系の浴衣姿

いくつになってもお祭りのこの空気は
ワクワクしてくるね

梓、梓、あの射的やってみたいな
銃を担いだ可愛らしいぬいぐるみ達を指差し
どっちが多く取れるか勝負して
負けたほうが買ったほうに
屋台で何か奢るっていうのはどう?

そして熱い戦いが繰り広げられ(中略)
見事俺が勝利したのでした
ふふ、ぬいぐるみ達にも得意不得意や
その日のコンディションがあるんだよ
それらを見極めるのも勝負のうちさ
などと、実際は特に何も考えてなかったけど
それっぽいこと言いながら
くまさんぬいぐるみの頭を撫でる

それじゃ、何奢ってもらおうかなぁ
たこ焼きとー焼きそばとー
デザートにかき氷とりんご飴とー
あっ、うどんも気になる


乱獅子・梓
【不死蝶】
綾と色違いの浴衣姿

はしゃぎすぎて転ぶなよ
まるで小さな子供に言うように
綾に注意を促し

ふむ、この射的屋は景品自体が動くのか…
ほほう?いつもいつも俺にたかってくるお前が
負けたら俺に奢ると?
良いだろう、その勝負受けて立つ!

……で、結果
綾の手には3つのぬいぐるみ
俺の手には1つのぬいぐるみ
クッ、負けた…!!
なんだか俺の相手するぬいぐるみばかり
やたら速くなかったか?
などと愚痴をこぼす
まぁ一番の狙いだったドラゴンのぬいぐるみを
ゲット出来たからそこは満足
肩に乗る焔と零にも見せびらかす

おい、いくつ買わせる気だ!
堂々と奢ってもらえるからって
調子に乗っているなこいつ…!
ったく、俺にも半分食わせろよ



 リズムよく空気を震わせる、太鼓の響きに。
 軽やかに駆け巡る笛の音色の中では、人々の騒めきも祭囃子へと変わる。
 最も、祭りを楽しんでいる者たちの大半は、人ではないのだけれど。

「いくつになってもお祭りのこの空気は……」
 ワクワクしてくるね、と。
 宵闇を舞う、蝶の浴衣を纏って。灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)の視線は、それこそ蝶のように。
 あちらにひらり、こちらにひらりと。少しばかり忙しなく。

「はしゃぎすぎて転ぶなよ」
 そんな綾の背中を、ゆったりと追いながら。
 保護者のように声を掛ける乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は、月の光のような白地の浴衣を纏って。
 肩に捕まっている小竜たちを、宥めるように撫でた。

 ああ言ったものの、はしゃぎたくなる気持ちも分からないではない。
 提灯に照らされて、並ぶ出店に彩られて。
 力強い呼び込みの声や笑い声が響く空間は、日常を少し離れた、特別な時間を感じさせてくれる。
 ましてこの世界は、妖怪たちの住む世界。

 出店の店主も、その客も妖怪ならば。
 並んでいる商品さえ、知っている祭りとはどこか違う。
 間違い探しをするように、視線は巡って。足は自ずと速くなる。

「あ。おにいさんたち、もしかして猟兵コン?」
 その足が、ようやく止まったのは。
 一体の狐――当たり前のように二本の足でたち、言葉を話しているのでこの狐も妖怪なのだろう――に、声を掛けられた時。
「よかったら、一勝負していかないコン?」
 狐の指差す先にいたのは、沢山のぬいぐるみたち。
 ふわふわもこもこの可愛らしい見た目とは裏腹に、その手に抱えているのはどう見ても銃だ。

「あのぬいぐるみとの勝負に勝てたら、連れて帰れるコン」
 二人の視線の先、まるで「かかってこいくまっ!」とでも言うように。クマのぬいぐるみが、ちょいちょいと手招きをしてみせる。

「梓、梓、あの射的やってみたいな」
 きらり、と。
 先に目を輝かせたのは、綾の方。
「この射的屋は景品自体が動くのか……」
 対して梓は、勝負よりもぬいぐるみたちが動く不思議の方に、気が向いているようだけれど。
「どっちが多く取れるか勝負して、負けたほうが買ったほうに屋台で何か奢るっていうのはどう?」
「ほほう?」
 綾の言葉に、梓の眉尻がぴくりと動いた。

 負けた方が奢ると言う事は、それは、つまり……。
 いつも、大抵、毎回、ほとんど。梓にたかってくる綾が。
 負けたら、梓に奢る……と。

 黒いサングラスの奥で、梓の目に静かな闘志の火が灯る。

「その勝負受けて立つ!」
「二名様、ご案内だコーン!」

 射的銃を手に、梓は集中を高める。
 何せ祭りだ。
 たこ焼きに焼きそばに、かき氷。奢らせるものには事欠かない。

 しっかりと水平に、射的銃を構えて。
 開始の合図と共に、狙いを定める梓の視線の先。
 牽制の射撃と共に、わらわらと動き出したぬいぐるみたちが。
 綺麗な陣形組んで――。

(しまった、こいつら――)

 統率が取れていやがる、と。
 思っている間に、スパパパパーンと、派手な銃声が響いて。
 ゴム弾の飛び交う勝負の結果は――。

「クッ、負けた…!!」

 唯一仕留めた、ドラゴンのぬいぐるみをむぎゅっと抱きしめて。
 がくりと膝を折ったのは、梓の方。
 勝者となった綾は、両肩と頭にぬいぐるみたちを乗せて。いつの間にか周囲を囲んでいた観戦者たちに、ひらひらと手を振る。

「なんだか俺の相手するぬいぐるみばかり、やたら速くなかったか?」
 何故、ぬいぐるみが陣形を組んだり、うつ伏せ体勢で銃を撃ったりしてくるのか。
 完全に勝負慣れしているとしか思えない、ぬいぐるみたちの動きを思い出すと、ちょっと目が遠くなる。
「ふふ、ぬいぐるみ達にも得意不得意や、その日のコンディションがあるんだよ」
 けらりと笑う綾は、その実、何も考えてはいないのだけれど。
 まるで、「その通りだくまぁ」とでも言うように。綾の肩の上では、トリコロールカラーな三体のクマぐるみたちが、ニコニコ顔でうんうんと頷いている。

 ……ペットは、主人に似るというけれど。
 このクマぐるみたち、さっそく綾に似てきているような気がする。

 対して、梓の元にやってきたぬいぐるみは、たった一体。
 それでも、手ぶらで帰る訳にはいかないと。最後の弾で射止めたその子は、一番の狙いだった小さな西洋竜。
 ぬいぐるみゆえに、ふわふわと柔らかな体を抱き上げて。焔と零に――小竜たちに見せてやれば。
「キュッ?」
 自分たちと同じ姿をしていながら、しかし生き物ではないぬいぐるみに。小竜たちは首を傾げてみたり、すんすん匂いを嗅いでみたり。不思議そうにしているけれど。
 いきなり喧嘩にならないあたり、相性は悪くなさそうだ。
 これから少しずつ、仲良くなってくれるだろう。

 小竜たちの可愛らしい様子に、ささくれ立った梓の心も少しばかり癒された矢先。
「それじゃ、何奢ってもらおうかなぁ」
 勝者の無慈悲な一言が、梓に突き刺さる。

 祭りはまだ、始まったばかり。言うなれば射的は、準備運動のようなもの。
 程よく体も動かして、活発になった胃袋が美味しいものを求めている。
「たこ焼きとー焼きそばとー」
 指折り数える綾の姿に、梓は気が気ではない。
「デザートにかき氷とりんご飴とー」
「おい、いくつ買わせる気だ!」
 勝負は勝負。
 堂々と受けて立った結果なのだから、そこに文句は言えない。
 しかし、あれもこれも奢ってもらおうと。勝負前に考えていた事がそのまま、自分へと跳ね返って来ているこの状況は、何とも悔しいものがある。

「あっ、うどんも気になる」
「……ったく、俺にも半分食わせろよ」

 軽やかな足取りで綾が大通りへと進んでいけば、「ゆけゆけ」とばかりに、クマぐるみたちが元気よく手を挙げて。
 少し遅れて、やれやれと肩を竦めた梓が、後を追う。
 赤い提灯の下、賑やかな団体となった猟兵たちの姿は。香ばしいソースの香りが漂う方へと、消えていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リゼ・フランメ
【WIZ】

変わる、変わるお面ね
……移り変わるのが季節の素敵さで、世界の美しさとはいったものの
微笑む顔、悲しむ顔、安心した顔
それらの「変わる表情」というのも、人の心で、素敵さの筈よね

妖狐たちが並べているお面の中から、一枚、此処は子狐のお面を頂いて、被ろうかしら?

面を被るというのは、その面の名、役割を被るということ
仮面舞踏会では素性を隠すように、舞台ではその仮面になりきるという事なのだから
能楽においてはだけれど、ここは、子狐のフリをしてお祭りを回らせて貰いましょうか

ただ無邪気に
軽やかなステップを踏んで
届いた秋の祭と、その風に身を翻して

ただ子供のように、何もかも忘れて、今はただ、ただ

「……コンっ!」



 ふわりと髪を揺らす風が、心地よい。
 包み込むような暖かさと、駆け抜けるような涼しさを持つ風は、これから日一日と。ゆっくりと、冷たくなって。
 秋から冬へと、変化していくのだろう。
 そして――。

 祭りの大通りを、リゼは進んでいく。
 すれ違う妖怪たちは、みな楽しそうで。
 この賑わいの声もまた、巡る季節と共に、色を変えていく。
 あるいは、秋の実りを喜ぶ声に。
 あるいは、遠い春を焦がれる祈りに。

「かつお節ましまし、おまちどーだコン」
「待ってましたニャ!」
 ふーふーと。
 一生懸命に息を掛けながら、お好み焼きを頬張る猫又がいるかと思えば。
「うぅ、完敗だコン……」
 少し進んだ射的の店では、がっくりと肩を落としている小さな妖狐の姿も見える。

 そんな、妖怪たちのお祭りを眺めながら。
 のんびりと歩いていたリゼの足が止まったのは、ずらりと並ぶお面の前に来た時。
 笑う狐に、眠そうな狸に……。
 ふと、視界から外れたその隙に、何故か表情の変わる、不思議なお面たち。

「おひとついかがコン」

 店主の声に、一つ一つゆっくりと。お面たちを見比べてみれば。
 微笑む顔に、悲しむ顔。安心した顔……そこにあるのは、人の心。
 人にも、妖怪にも。そしてリゼの胸にもある。
 目には映らぬはずの、心の形を示すもの。

「それなら、これを……」
 リゼが手にしたのは、狐のお面。
 凛々しさのある、大人のものではなくて。
 丸みのある輪郭にあどけなさの残る子狐のそれを、そっと撫でる。

 世の中には、役者が面を被り、その役を演じる舞台があるという。
 仮面舞踏会では、素性を隠すように。
 面と言う物は顔だけではなく、人そのものを包み隠してしまうもの。

 そっと、面を顔にあてれば。
 ここに居るのは、もう――。

「……コンっ!」

 可愛らしい鳴き声を一つ。
 子狐がぴょこぴょこと、祭りの中を掛けてゆく。
 涼やかにな風に、赤い毛並みを揺らしながら。
 響く太鼓の音に、人々の賑わいに。弾む心のままに。

 それはきっと、どこかの猟兵が守りたいと祈り、願う。
 何処までもまっさらな、心の在り方のままに――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
目一杯楽しむぜ

序に好意や愛情も
沢山感じてもらいたいな

行動
たこ焼き
やっぱ狐火で焼いてんのかな?
手伝って偉いコン(笑
ふぅふぅしながら食べ歩き


向かうのはお面
これは何だろ?
ヒーローマスクみたいなもん?
睨めっこ?
密を気にしなくていい話し相手?


で狐の面を頭にかけてかき氷屋に
苺シロップの雪氷をもらう

美味い!
美味しく食べてもらいたいって思いが
嬉しいぜ

凄いな
と雪女の子をなでなで

ここねも食うといいぜ?
これが楽しみだったんだろ(笑


出店をぶらぶらして
妖狐始め皆の笑顔とか笑い声とか
沢山感じて心がぽかぽかに

その思いを乗せて
太鼓を叩かせてもらうかな
景気よく元気よく
皆の笑い声を乗せて
それはきっと何より碧麗への弔いになる



「あ。猟兵!」

 腰元にぽふっと、柔らかな衝撃を感じて。
 見下ろして見れば、ウタの腰元にしがみついていたのは、小さな妖狐。
 ウタの顔を知っていた事からして、以前共に鍋を囲んだ子狐なのだろう。

「とーちゃんがたこ焼き焼いてるコン! 食べていくコン」
 ウタの返事も聞かずに。
 こっちこっちと手を引かれるまま、大通りを進めば。
 漂ってくる、香ばしいソースの香り。

「これ、やっぱ狐火で焼いてんのかな?」
 くるくるとたこ焼きを返す、店主の手元をまじまじと見つめながらウタが問えば。
「そうだコン。絶妙な火加減が、職人技なんだコン」
「あつあつお待ちだコン!」
 店主の妖狐が、えっへんと胸を張って。
 子狐が、笹の器に乗せられたたこ焼きを差し出してくる。
「手伝って偉いコン」
 お礼の代わりに、ぽふぽふとその頭を撫でれば。
 子狐の尻尾が、嬉しそうに揺れた。

 貰ったたこ焼きは、本当にあつあつで。
 はふはふと、冷ましながら頬張って。
 人の流れのままに歩いていると――。

「お、猟兵の大将。おひとつどうですコン?」
「これは……」
 声を掛けられ、振り向いた先。
 ずらりと並ぶのは、様々な動物たちの顔、顔、顔。
(ヒーローマスクみたいなもん?)
 顔を隠す為の物……のように、見えるけれど。
 何故か表情が変わるようだし、睨めっこをして遊ぶ道具とか?
 あるいは、恥ずかしがり屋な子向けのコミュニケーションツール……。

「現代の人間だと、子供が『なりきり』遊びとかをするみたいですコン」
 首を傾げるウタに、お面屋の店主が言うには。『いつもと違う自分を楽しむもの』らしい。
 色々な文化があるものだと、感心しながら。
 ウタが手に取ったのは、狐のお面。
 立ち上る炎のような隈取の入った狐面を、頭に付けて。
 ウタが次に目指すのは、かき氷のお店……と。

「何やってるんだ?」
 通りの真ん中で、何やらキョロキョロしているでっかい黒猫……を被ったここねの姿を見つけて、声を掛ければ。
「おみせがいっぱいで、どこにいこうか、まよっていたのです」
 全部美味しそうなのですよ、と。ここねが示す先には、りんご飴やわたがしなど、確かに美味しそうなお店が並んでいるけれど。
 猟兵ならば、必ず行っておきたい店が一カ所あるではないかと、ウタが誘えば。ここねが元気よく後に続く。

「来てくれたのでちか、いらっしゃいまち!」
 二人の猟兵を出迎えたのは、小さな雪女。
 早速、イチゴシロップの雪氷を頼めば、「お任せくだちゃい!」と胸を叩いて。
 呼び出す細やかな氷が、器に盛られていく。

「ゆきみたいに、まっしろなのです」
 興味津々にここねが見つめる中、イチゴのシロップで綺麗に彩れば。
「できまちた、どうぞ召し上がれなのでち!」
 雪氷の出来上がり。

 スプーンを口に運ぶ猟兵たちを、今度は雪女の方がじーっと見つめて。
「美味い!」
 ウタの言葉に、雪女の表情がぱぁっと明るくなる。
 美味しいと言ってもらえるか、きっと気にしていたのだろう。
 雪氷が美味しいのは勿論の事、その気持ちが嬉しい。
「ここねも、これが楽しみだったんだろ?」
「はいなのです。ふわふわ、なのです」
 ウタの隣で、ここねも嬉しそうに尻尾を揺らしている。

 碧麗が助けようとした、小さな雪女は。
 こんなにも沢山の人を、笑顔にしている。
 この賑わいを、笑顔を。本来の彼女は、きっと喜んでくれるだろう。

 ――あぁ、それならば。
 耳をすませば聞こえてくる、この太鼓の音に乗せて。
 胸まで届く響きと共に届けてあげるのも、いいかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
【紅蒼】
殺すための服は脱ぎ捨て、藤の模様の浴衣にお着替え。
友人も誘い、お祭りを楽しみます。
「藤彦君、浴衣にあってますね。とっても綺麗ですよ」
俺は別に綺麗では……。
でも、君に言われるのは悪い気はしないな。

屋台…いろいろあって迷ってしまいますね。
(無意識に食べ物系の屋台を目で追ってしまう)
……ええと、まず何か食べませんか?

たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、イカ焼き、焼きとうもろこし、りんご飴、綿菓子、かき氷
……買いすぎでしょうか?2人分だし、まだ足りない気がするけど。
うーむ、と唸りつつチョコバナナを一口ぱくり。あ、これ美味しい。
「藤彦君も、これどう?」
…うん、やっぱり君と食べると美味しいよ。


飛鳥井・藤彦
【紅蒼】
赤い薔薇模様の黒い浴衣にトランプ模様のショールを羽織って、有栖川の兄さんと一緒にお祭りへ。

「なんや、2人で衣装交換したみたいやね」
「兄さんも綺麗やで、よぉ似合っとる」

兄さんに褒められるとちょお照れくさくて、でも凄く嬉しゅうて……頬が緩みっ放しや。
兄さんに同意して屋台巡りはええけど、気がついたら兄さんえらい買いこんで……。

「しゃあないなぁ」

髪を耳にかけながら苦笑して差し出されたチョコバナナにかぷりと齧り付き、チョコで汚れた唇を舐めつつ兄さんにはフランクフルトを差し出し。

「兄さんも、あーん」

うん、兄さんの食べっぷりは今日も素敵やね。
こないに屋台のものが美味しゅう感じるのは兄さんのお陰や。



 遠く響く太鼓の音が、笛の音色が。
 仕事の時間が終わった事を告げている。

 夏介が袖を通した衣は、涼やかに薄雲のたなびく空の色。
 露草色の帯を締めて、下駄をカラリと鳴らせば。
 藤の花がひらりと揺れる。

「なんや、2人で衣装交換したみたいやね」
 そこに現れた、待ち合わせの相手――飛鳥井・藤彦(春を描く・f14531)は。
 夏介の帯と同じ色の髪を靡かせて、くすりと笑った。

「藤彦君、浴衣にあってますね」
 ドレスハットを飾る花は、普段の夏介のそれと同じもの。
 宵闇に花開く薔薇たちに誘われて、髪を飾る蝶がひらりと舞う藤彦の浴衣は、賑やかで何処か妖しい妖怪たちの世界にも、自然に馴染んでいる。

「とっても綺麗ですよ」
 さらりと紡がれた夏介の感想は、とても嬉しくて。
 頬も緩んでしまうけれど。
「兄さんも綺麗やで、よぉ似合っとる」
 何だか、こそばゆいような。少し照れくさい感じもして。トランプ柄のショールを手繰りながら、藤彦は言葉を返す。

「俺は別に綺麗では……」
 思いがけない藤彦の言葉に、つい反射的に否定の言葉が零れるけれど。
 こんなに綺麗な藤彦が、そう言ってくれるのならば。
「君に言われるのは悪い気はしないな」
 本当に綺麗かどうかなんて関係なく、胸が暖かくなる気がする。

 普段とは違う装いで歩くお祭りは、心が浮き立つようで。
「……いろいろあって迷ってしまいますね」
 屋台を見回す夏介の視線も、あちらに、こちらにと。少しばかりせわしない。
 立ち上る白い湯気と、ソースの香りと。元気に踊るかつお節。
 向こうの店では、焦がし醤油がじゅーじゅーと。美味しい音を立てていて。

「……ええと、まず何か食べませんか?」
 夏介の視線が、食べ物のお店にばかり向いていたことに気付かないまま。二つ返事で、藤彦が夏介の後に続けば。

(気がついたら兄さんえらい買いこんで……)
 あれよあれよと、夏介の手に積まれていく。食べ物の山。
 と言うか、食べ物系の屋台は、ほぼ全て制覇していく勢いだ。

「イカ焼きお願いします」
「まいど……って、おにーさんそんなに買って大丈夫コン?」
 ぶら下げた買い物袋が、三袋目になった辺りから。立ち寄る屋台の妖狐たちが、そろって「大丈夫コン?」と聞いてくるようになった。
(……買いすぎでしょうか?)
 心中で首を傾げつつ、夏介は自身の手元を見下ろしてみる。
 右と左に二つずつぶら下げた袋は、既にパンパンで。入りきらない分は、仕方なく積み重ねて抱えているのだけれど。

 ……もしかすると、一人で食べると思われているのだろうか。
 それならば、人によっては多く見えるのかもしれない。
 しかしこれは、二人で食べるものなのだ。当然ながら、まだまだ足りない。
「りんご飴を……」
「大丈夫コン、それ全部食べるコン!?」
 そんなやり取りを、繰り返して――。

 休憩スペースの一角、並べられたテーブルの一つをどどんっと占拠した食べ物の山に、藤彦はくすくすと笑みを零す。
「文字通りの山盛りやねぇ」
「そうですか?」
 山積みの食べ物に、夏介の顔さえも隠れてしまいそうなのに。
 チョコバナナを手にきょとんと首を傾げる姿が、何だかおかしくて。
 もしかすると、まだ足りないとすら思っているのかもしれない。

「藤彦君も、これどう?」
 夏介から差し出された、チョコバナナに。
「しゃあないなぁ」
 藤彦は髪を耳にかけながら、口を開ける。
 屋台の食べ物は、意外と食べづらいものも多い。
 折角の浴衣を汚す事のないように、慎重にかぷっと噛みつくけれど。それでも結局、口元は汚れてしまう。

 なのに。
 ぺろりと舐め取ったチョコレートは、こんなにも甘くて。

「兄さんも、あーん」
 お返しとばかりに、藤彦がフランクフルトを差し出せば。
「……うん、やっぱり友人と食べると美味しくなるね」
 もぐっと、大きく頬張った夏介が、小さく零す。

 その細身の体の、一体何処に仕舞われているのだろう。
 山積みだった食べ物たちが、手品のように夏介の中へと消えていく。
「……そやねぇ」
 空は青く、高くて。風は涼しくて。
 響く祭囃子と、賑やかな笑い声の中。
 どこか嬉しそうな空気を纏って、沢山食べる君の隣で。
 口に運んだかき氷は、甘く、冷たく。こんなにも、美味しい――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

林・水鏡
うむ、一件落着じゃな。
小さな雪女も存分に祭りを楽しんでいくといい。
そなたはこの祭りに来たかったのであろう?
暑いようならかき氷を食べて凌ぐといい。
狐達にはまた困った時は猟兵に頼るといいと伝えておこう。困ったことがないに越したことはないが。我らを頼っておくれ。

ふふ、どこもかしこも楽しげでどこに行くか悩んでしまうのう。
食べ物屋台もたくさんじゃ…おぉ、あのリンゴ飴は可愛らしいなどれ二つもらおうかの。
一つは弟子への土産じゃ。

ふむふむあとは金魚でも救おうか。
我に上手く救ってやれるかのぅ。


水無月・ゆえと
待ちに待ったお祭りだね。美味しい物を食べ歩くよ!
妖狐たちや雪女ちゃんとも交流して、お祭りを楽しむぞぉー!

遊ぶ前にまずは、腹ごしらえ

「んー、いい香り。お腹が空いてしかたないねぇ」

香りが食欲をそそる焼きそばを食べようかな
その後は甘い物を気が済むまで食べ歩こう
変わった食べ物に出会えたりして

一通り回ったら雪女ちゃんが手伝いをしているかき氷屋さんに足を運ぶよ
猟兵が食べ放題ってことはお店は結構忙しいかも
大変そうだったら【指定UC】で兎さん達を呼び出して手伝いでもしようかな
雪女ちゃんにもお祭りを楽しんでもらいたいしね

お店が落ち着いたら、おすすめのかき氷を頼もう
お祭りの雰囲気をゆったり味わうよ

アドリブ/連携◎



 太鼓の音と、賑やかな笛の音と。そして賑やかな声に。
 ゆえとの耳も忙しく、ぴこぴこと動く。

「たこ焼きが食べたいでチュ」
「チュウ!」
 中型犬ほどの大きさもある、化けネズミたちが駆けて行ったかと思えば。
「走ると危ないからね。あぁ、金魚すくいは真っ直ぐいった所だよ」
 頭の上から聞こえた声に顔を上げると、提灯が喋っている。

 妖狐たちだけでなく、多くの妖怪が集まって。
 笑顔のあふれる光景に、ゆえとの胸も高鳴る。
 これは確かに、ゆえとたち猟兵が守り抜いた光景なのだから。

(お祭りを楽しむぞぉー!)

 拳を握り気合を入れて、ゆえともまた賑わいの中に飛び込んでいく。
 やりたい事が一杯あるのだ。どれ一つとして取りこぼしたくはない。
 それにはまず……。

「んー、いい香り。お腹が空いてしかたないねぇ」
 腹が減ってはなんとやら。
 ゆえとの鼻は、すかさずソースの匂いをキャッチして。
 足取りも軽く、祭りの中央路を進んでいく。

 最初はやはり、がっつりと。
 あつあつの焼きそばと、ふーふーと冷ましながら。
 大きな口で頬張れば、香ばしい匂いが鼻から抜けていく。

 しょっぱい味を堪能した後は、やはり甘いものも入れたい所。
 わたあめにチョコバナナに、たい焼きも美味しそうで。
 目につくまま、あっちにふらふら。こっちにぴょんぴょんと歩き回る、ゆきとだけれど。
 ふと、目についたのは、りんご飴。

 屋台ののぼり旗にも、確かにりんご飴とかいてあるけれど。
 他にも、あんずやぶどう。様々な種類があるようで。

 ――ギョロ、ギョロロロローっ!

 何故か、奇妙な声をあげる飴も、一緒に並んでいる。
「あの、これは……?」
「あぁ、トウガラシ飴だコン。見た目の通り激辛コン」
 ……妖怪たちの中にも、激辛好きがいるのだろうか。
 一体どれほど辛いのか、好奇心が刺激されるけれど。
 妖狐いわく「マジでヤバいコン」との事なので、ここは素直にりんご飴を頂く事にする。

 そして、甘味と言えばもう一カ所、忘れてはいけないお店を思い出して。
 りんご飴を手にゆえとが向かうのは、かき氷の屋台――。

「猟兵、来てくれたのでちか!」
 ゆえとの姿を見つけた途端、ぱたぱたと駆け寄ってくる雪女の姿に、ゆえとの口元も自然と緩む。
 おすすめは勿論、雪女ちゃん特製のイチゴシロップがけ雪氷。
 ふわっふわの食感で。口に入れた途端、すっと解けていく不思議なかき氷は、猟兵たちは勿論の事、妖怪たちにも人気があるようだ。

 ゆえとが、雪氷に舌鼓を打つ間にも。小さな雪女は、注文を聞いたり、雪氷を作ったり。みなに喜ばれて、楽しそうにお手伝いをしているけれど。
 折角、楽しみにしていたお祭りだ。ずっとお手伝いだけで終ってしまうのも、勿体ない気がする。

 ……ならばここは、頼もしい助っ人たちの出番だろう。
 ゆえとの招集に応じて、ぴょこんと姿を見せたのは、執事服やメイド服に身を包んだ兎たち。
 その見た目を裏切らず、あらゆる家事やサポートのベテランである兎たちは、ぺこりとお辞儀をして。テキパキと仕事に取り掛かる。

「なんでちか、このうさぎさんたちは……?」
「お店の手伝いは、この兎たちがしてくれるから。雪女ちゃんは……」
 お祭りを見てくるといいよ……と、ゆえとが言う前に。
「かわいいのでちー!!」
 雪女ちゃん、思わず兎の一匹をむぎゅっ。
「ふわふわなのでち。かわいいのでち!」
「賑わっているようじゃのう」
 すりすり、もふもふと兎を抱きしめる雪女に。様子を見にやって来た水鏡も、表情を緩ませた。

 先の戦いで、雪女の体に負担が残っていなければよいがと、少し心配だったけれど。
 先の元気な声を聞けば、その心配は杞憂だったと分かる。

 水鏡もかき氷屋までの道のりで、のんびりと祭りを眺めて来たけれど。
 先の妖狐たちのように、寒さに震えているものは誰もおらず。
 種族の異なる妖怪たちが、笑い合っている。賑やかな光景が広がっていて。

「そなたはこの祭りに来たかったのであろう?」
 そんな素敵な光景は、この世界の未来を担っていく若者にこそ、胸に刻んでもらいたいと。
「存分に祭りを楽しんでいくといい」
 そう言って、水鏡が雪女の頭を撫でれば。
 しかし雪女が、少し困った顔をする。

「でも、そうするとお店のお手伝いが……」
「それなら、この兎さんたちに任せれば大丈夫」
 ゆえとの提案に、執事服の兎が「お任せを」と言うようにお辞儀をして見せて。
「むしろ、兎のおかげでこっちの仕事が無くなる勢いだコン。楽しんで来るといいコン」
 かき氷屋の店主狐も、行っておいでと雪女の背中を押す。

「しかしまた倒れては大変じゃしの。暑い時は、すぐ戻るのじゃぞ?」
「はい、なのでち!」
 冷たいかき氷ならきっと、残暑も吹き飛ばしてくれるから、と。
 言って聞かせる水鏡と、素直な返事をする雪女の姿は、まるっきり保護者と児童。
「では、いってきまち!」
 その和やかな光景に表情を緩ませる大人たちに、元気に挨拶をして。
 雪女はぱたぱたと、祭りの中に駆けていく。

「子供が元気なのは、いいことだコン」
「おぬしらもまだまだ、子供のようなものじゃがな」
 雪女を見送る妖狐に、水鏡はぼそりと言葉を零す。
 見た目は幼く見えても、実年齢四桁の水鏡からすれは、妖狐たちも雪女も、そう変わらない。

「また困った時は猟兵に頼るとようじゃろう」
 困った事がないのなら、それに越した事はなけれど。
 最近では、猟兵でなければ解決できない規模の事件も増えている。
「我らを頼っておくれ」
 それに、何よりも。
 人の目に、妖怪が映らなくなってしまって。
 この世界に逃げてこざるを得なかった妖怪たちにとって、猟兵と言う存在が持つ意味を、水鏡は良く知っているのだ。
 だからこそ、妖怪と猟兵たちの縁を結ぶことが出来るのならば。
 聖獣としての力を振るうのに、何の躊躇いがあろうか。

「ありがとうだコン。猟兵も、お腹が空いたらいつでも寄るといいコン」
 里のみんなで歓迎するコン、と。店主が胸を叩けば。
 水鏡も、ゆえとも、笑みを零す。
 折角のお祭りだ。早速美味しいもの探しに、巡り歩くのもいいかもしれない。

 店主たちに別れを告げて、のんびりと大通りを歩けば。
 目についたのは、りんご飴。
 兎の目のように、赤く鮮やかで。なんとも可愛らしい。
 それに『飴』ならば――。

「どれ二つもらおうかの」
 一つは、自分の口元に。
 もう一つは、最近できた弟子のお土産に。
 人を喜ばせる事のできる甘酸っぱい『あめ』なら、喜んでくれる気がするから。
 
(ふむふむ、あとは金魚でも救おうか)
 じんわりと、口の中に広がる甘さと。りんごの香りを楽しみながら。
 白き聖獣は、祭りの賑わいの中に紛れていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【金蓮花】

地味目の浴衣
鍵の首飾り
蛇の目の番傘片手に再び狐の里へ

気にして欲しいからンな浴衣着てきたンじゃねェの?
髪型も決めてきてるし(軽く髪に触れ
こうしてっとホントに女みてェだなァ
似合いすぎてる
ンー?奢るだけでイイのか(年下に奢られる気ねェケド

意地悪な笑み浮かべ揶揄う
屋台で腹ごなし

飯モノなら構わねェよ
澪の好きなモン買うつもりだったし
半分ずつにすっか

食べ歩きしつつ射的へ
面白い景品に惹かれ

ハイハイ、欲しいのな
じゃァやってみようぜ!
おら、取れたぞ(渡す

片目瞑り狙い定め
澪が欲しがったぬいぐるみを当てる
別の標的に当ててなし崩しか弾を跳ね返して落とす
途中で前に出会った妖狐達と会いたい

お前らも祭楽しんでるなァ


栗花落・澪
【金蓮花】

浴衣は今年の花魁風参照
クロウさんの後ろに隠れつつ

ぼ、僕の浴衣は気にしないでって言ったじゃん!
これは友達が…その…もーばかぁ!!

恥ずかしさで胸元をぽこぽこ叩き
ご飯はそっちの奢りだからね

どれも美味しそうで目移りしちゃう!
チョコバナナにたこ焼きに…
うぅ、こういう時少食が悔しい…

ね、甘くないの半分こしたいな
ダメ?(おねだり

食べ歩きつつ興味を惹かれた射的…のぬいぐるみ
べっ、べべ別に欲しいわけじゃないよ?
ちょっと気になっただけで…!

僕は銃の重みで一発も当てられずしょぼんとしつつ
クロウさんが取ってくれてぱぁっと笑顔に
あ、ありがと…大事にする…(照

以前会った妖狐さん達とも話したいな
元気そうでよかった



 カラン、コロン。
 乾いた足音をさせて、再び足を踏み入れた狐の里は、赤い提灯に照らされて。
 太鼓の音と笛の音色が、軽快に響いている。

「随分と賑わってんナ」
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が周囲を見回せば。
 纏う浴衣の裾でひらりと、花が舞った。
「以前会った妖狐さんたち、元気かな?」
 初夏の頃に、一緒に料理をした子狐たちの事は気になるけれど。
 何故か、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、クロウを盾にちらりと顔を出しては、直ぐに引っ込めるの繰り返し。
 もっとも、いくらクロウの体格でも、美しく飾った白い翼までは隠しきれていないのだけれど。

 ちらりと、上目遣いにクロウの様子を伺えば。
 振り返る、その異色の瞳と視線がぶつかって。

「ぼ、僕の浴衣は気にしないでって言ったじゃん!」
「気にして欲しいからンな浴衣着てきたンじゃねェの?」
「これは友達が……」
 慌てて視線を外してみるけれど、言葉が続かない。
 夜の帳に、月の光に開く花のような浴衣は、美しくて。
 そんな浴衣に、自分が袖を通しているのだと思うと。緊張か、高揚か。よく分からないけれど、何だか気恥ずかしくて。
 見られていると余計に、心臓がうるさい。
「髪型も決めてきてるし」
「その……」
 なのに、そんな澪の感情を、知ってか知らずか。
 クロウは澪の髪を、ふわりと遊ぶように触れて。
「こうしてっとホントに女みてェだなァ」
 異色の瞳を細めて笑う。
 もう、本当に心臓がうるさいのに。
「似合いすぎてる」
「もーばかぁ!!」
 耳まで熱くなりそうなのを誤魔化すように、ぽかぽかとクロウを叩いてみるけれど。
「ご飯はそっちの奢りだからね」
「ンー?奢るだけでイイのか」
 苦し紛れの反撃は結局、意地悪な笑みと茶化す言葉で返されてしまった。

 祭りを彩る沢山の屋台は、どれもこれも美味しそうで。
 端から端まで全部奢って、なんて。言えたらいいのだけれど。
「うぅ、こういう時少食が悔しい……」
 お腹の容量は有限。どれかを選べば、どれかは選べない。

「ね、甘くないの半分こしたいな」
 半分ずつならば、色々食べられそうだし。美味しいも共有できるから。
 澪はくいと、クロウの袖を引いて。「ダメ?」と小首をかしげて見せる。
「飯モノなら構わねェよ。半分ずつにすっか」
 クロウはと言えば。そもそもこういう場ならば、年下の希望を尊重するし、支払などさせる気もない。
 それじゃあいくか、と。美味しい匂いで一杯の大通りを進んでいけば――。

「あ、猟兵。来てくれたコン?」

 そう言って、ぴょこぴょこと駆け寄ってきたのは、ネコとクマ……ではなくて。
 その面を被った子狐たち。
 その手には、食べかけのイカ焼きとりんご飴が握られていて。
「お前らも祭楽しんでるなァ」
「元気そうでよかった」
 初夏に出会った時と変わらず、元気そうな姿にほっとする。

「猟兵も、いっぱい遊んでいくといいコン」
「あっち射的とかもやってるコン」
 こん、と。妖狐たちが指さす先に目を向ければ。
 ずらりと並んでいる、可愛らしいぬいぐるみたち。
 白黒ウサギに、ネコに。パンダやクマ。
 見た目にもふかふかな、ぬいぐるみの動物たちが二人の視線に気づいて。
 ぴょこぴょこと手を振れば、澪の目がキラキラと。星空のように輝いた。

「ハイハイ、欲しいのな」
「べっ、べべ別に欲しいわけじゃないよ?」
 クロウの言葉を、澪は即座に否定するけれど。
「ちょっと気になっただけで……!」
 その声は上ずっているし、クロウの視線から逃げるように泳ぐ澪の目が、ちらちらとぬいぐるみたちの方に向いているのだから、まるで説得力がない。

「じゃァやってみようぜ!」
 澪の返事も待たずに、射的屋の店主に声を掛ければ。
 ぬいぐるみたちも射的銃を手に、戦場へと散らばっていく。
 その間も、「本当に気になっただけなんだから!」とか、何とか。
 背中の方から飛んでくる、澪の声に「ハイハイ」とてきとーな返事をして。
 クロウの目は鋭く獲物を見定める。

 一方で、澪はと言えば……。
 両手にずっしりと、射的銃の重みを感じながら。少しばかり、困り顔。
 こういう『いかにも武器』といった物には慣れていないし。構え方も、よく分からない。
 見よう見まねで、水平に構えようと頑張ってみるけれど。
 銃の重みに、腕はぷるぷる。銃口はふらふら、右に左に。

「スタートだコン!」
 店主の合図に、引き金を引いてみるけれど。
 ゴム弾は狙いを大きく逸れて。次の弾を込める前に、ぬいぐるみたちの反撃が飛んでくる。
「わわっ……!」
 澪とは正反対に、ぬいぐるみたちの動きは、完全に慣れている者のそれだ。
 連携の取れた攻撃に、ますます照準が定まらない。

 何とか一発だけでも当てようと、必死で引き金を引いて、引いて。
 ……けれど気が付けば、ゴム弾はもう残っていなくて。
「終了だコン!」
 残酷な終了宣言に、澪はしょぼんと肩を落とす。

「おら、取れたぞ」
 そんな澪の頭に、ぽふりと柔らかな感触。
 顔を上げれば、クロウがうさぎのぬいぐるみを差し出してくる。
「あ、ありがと……」
 受け取ったその体はふわふわで。真っ黒で。
 赤い目が、ちょっと凛々しくキリリとしていて。
 何だかクロウさんに似てるな……なんて。気になっていた、うさぎさん。

 よろしくと言うように、澪に手を振って来るうさぎは、可愛くて。
 けれど何だか、胸の奥がくすぐったくて。
「大事にする……」
 誤魔化すように、抱きしめたうさぎの体は。
 かすかに残るクロウの体温が、とても温かかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
エリシャ様・f03249と
浴衣を着て参加を

雪女様お名前は?
一緒にお祭りを回りませんか?
三姉妹みたいですね

金魚霊すくいは初めてです
エリシャ様と一緒にえい!
アカネは狐様のお面に致します
妖狐様方には沢山助けていただきましたから

エリシャ様おうどんです!
きつねうどんの屋台がございます!
雪女様はざるうどんですね
金のお出汁に油揚げがじゅんわりで…はふ
雪女様かき氷をくださるのですか?
ありがとうございます!(頭なで)
アカネはメロンで

櫓に太鼓…踊るのですね!
皆で踊れば楽しさ倍増です

はしゃいで踊っておなかもいっぱい
眠くなってしまいました
できましたらその、妖狐様のもふもふに包まれてひと眠りしてみたいです
もふ…すやぁ…


エリシャ・パルティエル
アカネちゃん(f05355)と

浴衣でお祭りを楽しむわ

お祭りに参加できてよかったわね
お手伝いを抜けてちょっとだけ一緒に楽しみましょう?

金魚すくいやってみたかったの
え、金魚霊? これですくうの?
何か思ってたのと違うけど…えい!
…なかなか難しいわね

お土産も欲しいかな
狐さんと猫ちゃんのお面
あら、さっきと表情が変わってる…?

おうどん食べたかったのよね
暖かくても寒くても美味しいものは美味しいわね
アカネちゃん、すっかりお姉さんみたい
かき氷、あたしはいちご味かな

アカネちゃんはダンスが得意だものね
さっきの続き?
ふふ、みんなで踊ると楽しいわね

アカネちゃんたくさん頑張ったものね
きつねだんごに包まれておやすみなさい



 響く笛の音色と、太鼓の音が響く中。
 ネコとキツネのお面で、頭を飾って歩くお祭りは、とても賑やかで。

「猟兵のみなさま、来てくれたのでちか!」
 人混みの中に、ぴょこぴょこと見え隠れする、小さなお団子頭を見つけて。声を掛ければ。
 お団子頭の女の子――猟兵たちの活躍によって解放された小さな雪女が、ぱぁっと表情を明るくさせる。
 そう言えば、まだきちんと自己紹介も出来ていなかったと。
 改めて、アカネとエリシャが名乗れば。小さな雪女は、真鈴(ますず)と名乗った。

「良ければ、『すず』とお呼びくださいまち」
 その人懐っこく、元気そうな笑顔に、改めてほっとしながら。
「すずちゃん、お祭りに参加できてよかったわね」
「良ければ、一緒にお祭りを回りませんか?」
 お祭りへと誘えば、「いいのでちか!」と。真鈴の目がキラキラと輝く。

「お手伝いを抜けて、ちょっとだけ一緒に楽しみましょう?」
 真鈴と目線を合わせて、エリシャが言葉を掛ければ。
「お店のお手伝いは、ウサギの猟兵さんが代わってくれたので大丈夫なのでち」
 きっと、エリシャたちと同じように、真鈴がお祭りを楽しめるようにと、気を使ってくれた猟兵が居たのだろう。
 猟兵はみな優しいと、真鈴の表情が緩む。

 折角のお祭りだ。
 見ているだけでも楽しいけれど、体験する方がもっと楽しい。
 そして、誰かと一緒ならば猶の事。
「それじゃあ、金魚霊すくいはどうでちか?」
「金魚すくいやってみたかったの!」
 確か向こうのお店だと、エリシャとアカネの手を引いて、真鈴がせかせかと先んじて歩けば。三人並ぶ姿は、まるで姉妹のよう。
「金魚霊すくいは初めてです」
 初めての体験に、アカネも目を輝かせているけれど。
「え、金魚霊?」
 今、何かおかしなフレーズが聞こえたような?

「いらっしゃいだコン。三名様ごあんないだコン!」
「……これですくうの?」
 はて、金魚すくいとは。このような柄の長い道具でするものだっただろうか?
 そして金魚とは、こんな風に宙を泳ぐ生き物なのだろうか?

 思っていた金魚すくいとは、色々と違う気がしてエリシャは首を傾げるけれど。
 アカネと真鈴は気にした様子もなく、「がんばりましょう!」と、渡された網を掲げて気合十分。
「何か思ってたのと違うけど……」
 兎に角、金魚すくいであるならば、金魚をすくえばいいはずだと。
 えいっと網を振るえば。金魚たちは機敏に動いて、網の軌道を避けていく。 
 アカネと真鈴も、えいっと続けて網を振ってみるけれど――。

「……なかなか難しかったわね」
 ずらりとテーブルの並んだ、飲食スペースに腰を下ろして。
 エリシャが深く息をつく。

 網をいくら振るっても、中々金魚はすくえなくて。
 見かねた店主の妖狐が「待ち受けるといいコン」と、アドバイスをくれて。
「この子は、成仏するまで大事にしまち」
 ようやくすくえた一匹が、ひらりと優雅にヒレを揺らして。真鈴の隣を泳いでいた。

 全身運動の後は、やはりお腹が空くもの。
 テーブルの上では、あつあつのうどんが湯気を立てていて。
「……はふ」
 透き通る、金のお出汁はあつあつで。
 良い香りを漂わせている、その中に。ひたひたに染みた油揚げが、じゅんわりと口の中に甘みを広げてくれる。
「おうどん食べたかったのよね」
 狐の里の、お狐様特製のきつねうどんだ。美味しくない訳がない。
 アカネの気持ちを代弁するように、その頭を飾る狐のお面が、ニコニコ顔になっている。

「おうどんのあとは、かき氷も食べて欲しいのでち」
 冷たいざるうどんを頬張りながら、真鈴がおすすめする雪氷は、ふわふわ食感のかき氷。
「アカネはメロンで」
「あたしはいちご味かな」
「おまかせくだちゃい!」

 真鈴特製のかき氷は、うどんでぽかぽかの体を、甘さと共にひやりと駆け抜けて。
「ど、どうでちか……?」
 猟兵たちの表情を窺いながら、そわそわ落ち着かない真鈴に。
「とても美味しいです。ありがとうございます」
 アカネがふんわりと、その頭を撫でる。

「ほんとうでちか! よかったのでち」
(アカネちゃん、すっかりお姉さんみたい)

 喜ぶ真鈴に、優しく微笑むアカネは、何だか本当に姉妹のよう。
 祭りの大通りを歩く時も、自然と手を繋いで。
 真鈴がはぐれないように、優しく手を引くアカネの姿に、エリシャはくすりと口元を緩ませる。

「あ、猟兵。一緒に踊るコン!」
「すず様、参りましょう!」
「はいなのでち!」
 こんこん、ぴょこぴょこ。
 アカネが手本を示すように、舞えば。真鈴がたどたどしく、真似て舞う。
 けれど、上手い下手は二の次。
「ふふ、みんなで踊ると楽しいわね」
 音に合わせて、みんなで手を振って。ぴょんと跳ねて。
 それだけで、踊る事は楽しい。

 円陣をぐるっと一周する頃には、程よく体力を使って、お腹も一杯で。心までぽかぽかで。
「眠くなってしまいました……」
「でち……」
 大きなあくびが、一つ。つられて、二つ。

「今日は色々あったし、一杯はしゃいだら眠くもなるわよね」
 妖狐たちに声を掛けて。
 目をしょぼしょぼとさせたアカネと真鈴を連れて、通された部屋には。並んだお布団で、先客の子狐たちもすやすやとお昼寝中。

「もふ……」
 子狐たちの真ん中に、横になれば。
 お布団からはお日様の匂いがして。ころんと転がってきた子狐の体が、ふかふかとアカネを包み込んで――。
「すやぁ……」
 夢の世界まで、ノンストップに一直線。
 気付けば真鈴も一緒に、静かに寝息を立てている。

「アカネちゃんたくさん頑張ったものね」
 お疲れ様、と。エリシャが二人にタオルケットをかけて。
 一息つけば、何だかエリシャの瞼も重たくなってくる。

 ゆっくりと暮れていく空の下で、提灯の明かりは益々赤く映えて。
 妖怪たちの賑やかな声は、途絶える事もないけれど。
 猟兵たちと小さな妖怪たちのお祭りは、ふかふかとあたたかな夢の中で続くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月05日


挿絵イラスト