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狐狗狸の祭は冷え冷えぶるぶる?(作者 音切
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 ――こんこ、こんこと。
 雪が降っている。

 年中通して、冬の気候である雪女の里で。幼い雪女は、とあるチラシを見つけた。
 真っ白なかまくらの壁に、ぺたり貼り付けられた。青々とした大きな木の葉には、このように書かれている。

『秋祭りをやるコン!
 ぼくたち、狐の里でお祭りをするんだコン。
 こんこん踊ったり、出店もいっぱい出すコン!
 ぜひ、遊びにきてほしいコン』

「お祭りでちかっ、行きたいのでち!」
 きらりん、と。幼い雪女の目が輝いた。

 妖怪世界のお祭りは、人間の世界のそれとは、似ているようで少し違う。
 金魚すくいのお店では、金魚の精霊がふわふわと空中を泳いでいるし。輪投げのお店では、客に投げられた輪入道が、雄たけびを上げながら転がっていくのだ。
 それに確か、狐の里に住む妖狐たちは、料理が大好きであったはず。
 屋台には、美味しい料理も沢山並ぶ事だろう。
 しかし、幼い雪女の目をいっとう引き付けたのは、チラシの最後の一文だった。

『なんと、あの猟兵たちもやって来る! ……かもしれないコン』

「猟兵って、あの猟兵でちか!?」
 猟兵と言えば、今、妖怪たちの間で話題沸騰中の存在。
 妖怪たちの事が見えて、しかもすごく強くて。
 どこかの妖怪が猟兵を見かけた、猟兵に助けてもらったといった噂は、辺境にある雪女の里にも毎日のように届いている。

 だが幼い雪女は、その幼さゆえに一人で里の外に出た事がなく。
 猟兵にも出会ったことがない。

「きっと、カッコいい人たちなのでち」
 会ってみたい。せっかくなら、握手もしたい。
「それに、雪氷(かき氷)をプレゼントしたら、猟兵に褒めてもらえるかもしれまちぇん!」
 あわよくば「すごいね」と、頭を撫でてもらえるかもしれない。
 幼い雪女の夢は膨らむ。

「決めまちた! 猟兵に会いにいくのでち!」

 そうと決まれば、即実行。
 特に何の準備もせず。幼い雪女は、その身一つで雪女の里を後にした。
 狐の里なら、両親と一緒に何度か行った事がある。
 だから、きっと大丈夫だと。自信満々に、歩いて。歩いて……。

 ……数十分後。
「あ、あついでち。とけるでち……」
 狐の里まで、あと数百メートルといった所で。幼い雪女は行き倒れていた。

「だれでちか。もう秋だから、里の外も涼しいとか言ったのは……」
 まだまだ世間知らずなこの幼女、残暑の暑さを甘く見ていた。
 熱にはめっぽう弱いその体を、今だ衰えを知らない陽光がじりじりと焼いていく。

「も、もうダメでち。雪女とは儚いものなのでち……」
 瞼が重たくて。頭がぼんやりとして。
 せめて最後に、母様の氷苺が食べたかったと。幼い雪女の脳裏に走馬灯がよぎる。

「……まったく、今時の若いもんは情けないのう」
 知らない声が降って来たのは、その時。
 しわがれた、どこかのんびりとしたその声に、覚えはない。
 けれど、相手が一体誰なのか。確認する力は、幼い雪女には残されていなかった。

「どれ。少しばかり冷やしてやるとするかのぅ」

 不思議な声が、そう言って笑った。その日。
 カクリヨの世界から『夏』が消えた――。


「ずっと『ふゆ』のせかいに、なってしまったのですよ」

 ぶるぶるなのです、と。集った猟兵たちを見回して。
 キマイラのグリモア猟兵――琴峰・ここね(ここねのこねこ・f27465)は、のんびりとした口調で事件の説明を始めた。

「それで、たすけてほしいと『おてがみ』がきているのです」
 そう言って、ここねが取り出したのは一枚の葉っぱ。
 萎れかけたその葉っぱには、震えた文字でこのように書かれていた。

『さ むい……コ 、
 雪 るま、が、 やってき た……ら、
 この まま  、み な こごえて……。
 たす、 け ……(――この後は葉っぱが萎れていて読めない)』

 この手紙を送ってきたのは、カクリヨファンタズムに住む妖狐たち。
 狐そのものの姿をして。二本の足ですたすたと歩き、言葉を話す妖狐たちは、以前も『満腹が消えた世界』の危機を、猟兵たちに救われたばかりだったのだが。

「こんどは、『なつ』が消えてしまったみたいなのです」

 世界を温める『夏』が消えてしまえば、季節の巡りは停滞し、『春』と『秋』も連鎖消滅してしまう。
 そして世界に残ったのは、全てを冷やす季節――つまり『冬』のみ。
 容赦ない降雪と、プリンで釘が打てる程の冷たい空気が、妖怪たちを襲っているのだ。

「げんいんは、『へきれい』さんという、『ゆきおんな』さんなのです」

 『碧麗』は、老齢の雪女の骸魂であったが、それが幼い雪女に憑りついた事でオブリビオンと化した存在だ。
 元は、幼い雪女を助けよう憑りついたのだが、オブビリオンと化した事で、その目的が『世界の全てを冷やす事』に捻じ曲がってしまったらしい。
 氷雪に強い妖怪たちを次々とオブリビオンに変えて、『剣客雪だるま』という配下を増やしながら、各地を襲わせているようだ。

「このままだと、きつねさんの『おまつり』も、こわされてしまうのです」

 オブリビオン達は、特に熱を発するもの。あるいは、暖かそうなものを優先して攻撃してくくる。
 その為、ちょうど秋祭りが開かれていた狐の里は、真っ先に狙われる事となってしまった。
 祭りの提灯や、ほかほかの料理を提供する屋台が、今まさに壊されようとしている。
 このままでは、ふかふかの毛皮を持つ妖狐たち自身も、無事では済まないだろう。

「できれば、『おまつり』もまもってほしいのです。だって……」

 猟兵たちに、よく見て欲しいのだと。ここねは、妖狐からの手紙を差し出す。
 しわしわで、酷く読み取りづらいけれど。
 よく目を凝らせば、手紙の冒頭には『招待状』と書かれていたのが見て取れた。

「このおてがみ、ほんとうは、おまつりの『しょうたいじょう』だったのですよ」
 猟兵たちに、ぜひカクリヨの祭りを楽しんで欲しいと。
 妖狐たちのそんな心が込められていたはずの招待状は、残念ながら助けを呼ぶ手紙に変わってしまった。
 だから、楽しい時間を取り戻して欲しいのだと、ここねは言う。

「りょうへいさんたちなら、きっとだいじょうぶなのです」
 だから気を付けて、いってらっしゃいなのですよ、と。
 どこかのんびりした声で、ここねは、猟兵たちを送り出すのだった。





第3章 日常 『百鬼夜行のお祭り騒ぎ!』

POW縁日のごちそうに舌鼓!
SPD幻想的な情景を堪能する!
WIZお祭りグッズを見て回る!
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――何処からともなく、弦の音色が聞こえてくる。
 その音の中に、こんこん、ここんと。妖狐たちの元気な声が響いていた。

 猟兵たちの活躍によって、多くの妖怪たちが解放されて。
 降り積もった雪も、雪女や雪鬼たちが手際よく片付けてくれた。
 すっきりと整えられた狐の里を、吊り下げられた提灯たちが明るく照らしている。

「えぇと、これはどこに置けばいいコン?」
「あっちの屋台だねぇ」
 よく目を凝らして見れば、並ぶ提灯たちの中には、顔が付いているものもいて。
 妖狐たち以外にも、多くの妖怪たちが集まってきているようだ。

「ここのお掃除は、かんりょーなのでち」
 解放された幼い雪女もまた、妖狐たちとともに右に左にと走り回っている。
 目を覚ました直後は、混乱していたけれど。
 猟兵たちに優しく声を掛けられて、うさぎ印の美味しいお菓子を一口頬張れば、すぐに落ち着きを取り戻して。
 どうやら、お礼とお詫びを兼ねて、かき氷屋さんのお手伝いをする事にしたらしい。

「猟兵のみなさまは食べ放題なのでち。良かったら食べに来て欲しいでち!」
 そう伝えにやって来た雪女の表情は、とても元気そうで。楽しそうだった。

 徐々に日も傾いて。
 程よく涼しい風が吹き抜ける中を、ひらりひらりと。
 ゆったりとヒレを揺らして泳いでいるのは、金魚霊たち。
 赤に、黒に。目の大きなものや、コブのあるもの。
 様々な金魚霊を虫網のような道具で救うのが、狐のお祭りの金魚すくいなのである。

 大通りを足並み揃えて行進しているのは、大小様々なぬいぐるみたち。
 肩に射的銃を担いでいる彼らは、射的屋の景品たちだ。

 その後ろをごろごろと転がっている輪入道たちは、輪投げの屋台へと向かっていて。
 ボーリングの様に、立ち並ぶ唐傘たちに向かって輪入道を転がす輪投げは、気前のよさそうな輪入道を選ぶのがコツであるらしい。
 得点に応じて貰える景品も、『黄金の変身葉っぱ』やら『動物の声になる飴』など、怪しい物からおかしな物まで、色々とあるようだ。

「お面持ってきたコン!」
「ここに並べるコン」
 せっせと妖狐たちが並べているお面は、狐に狸に、それから猫に……動物たちのお面だけれど。
 何故か見るたびに、表情が変わっているような……?

 そうこうしているうちに、漂ってきたのはソースの香り。
 たこ焼きに、お好み焼きに。もう少し先に進めば、りんご飴やわたがしなどの、甘味系の屋台も並んでいる。
 きゅっと一杯やりたい者は、おでんやうどんの屋台へ向かうといいだろう。
 
 里の中央に櫓が組まれて、太鼓が運び込まれれば、準備は万端。
 遊び倒してもよし、食い倒れてもよし。
 狐の里のお祭りが始まる――。