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邂逅の果てに紡がれし、世界崩壊の言の葉

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●カクリヨファンタズム・某所
 ――それは、幾星霜の時を超えての男女の再会から、始まった。

 無数の蓮の葉が浮かび、月が映し出されている池のほとりで。
 純白の鎧に身を包んだ青年の退魔騎士は、赤きドレスの吸血鬼の少女と邂逅する。

 この世界に流れ着き、幾星霜。
 再会は決して叶わぬと思っていた青年の前に、懐かしき記憶と寸分たがわぬ姿で現れた少女を見て、
 青年は思わず少女を強く抱きしめ、耳元で囁く。

 ――ずっと、ずっと待っていた。
 ――もう、離さない。

 青年の囁きに対し、少女が耳元で何かを囁く、
 青年が小さく頷くと、青年の姿が霞のように掻き消え、少女に吸収された。

 恋焦がれた少女に吸収された青年は、己が心が満たされていくのを感じ。
 思わず、少女の口を借りて言の葉を零す。

 ――時よ止まれ、お前は美しい。

 それは、吸血鬼の少女との永遠を願い、紡いだ言の葉。
 だが、その言の葉を紡いだ瞬間。

 ――ガラガラガラ……。

 少しずつ、しかし激しく地を揺らしながら。
 大きな音を立てて、世界が……崩れ始めた。

●グリモアベース
「……やりきれねぇな」
 グリモアベースの片隅で、目を伏せ大きくため息をつくグリモア猟兵森宮・陽太。
 彼のため息交じりの呟きを聞きつけ、集まってきた猟兵たちを前に、陽太はグリモアが齎した予知を話し始める。
「カクリヨファンタズムで世界が崩れ落ちそうになっている。なんとか崩れ落ちる前に食い止めてほしいんだが……まずは話を聞いてくれねえか?」
 妙に歯切れ悪く話す陽太に、その先を促すように猟兵達が頷いた。

「今回の世界崩落のきっかけは、青年退魔騎士が、かつて手にかけた吸血鬼の少女の骸魂と再会したことからだ」
 そう前置きして陽太が語る伝承は、UDCアースの一角に伝えられていた、青年退魔騎士と吸血鬼の少女の伝承。

 遥か昔、ふとしたきっかけで偶然出会ったふたり。
 最初はお互い戸惑っていたものの、数度の邂逅を重ねるうち、退魔騎士は少女に惹かれ、吸血鬼は青年に恋焦がれるようになっていた。
 だが、その相容れぬ立場故、退魔騎士が恋心を押し殺して吸血鬼を斬り……ふたりの恋は終わりを告げた。
 それは悲恋の伝承として長年伝えられてきたが、いつしか失われてしまい。

 ――ふたりは生きるための糧を得られなくなり、幽世へ逃れた。

 退魔騎士は幽世へたどり着いたものの、吸血鬼は失意と負傷が原因で死して骸魂に。
 以後、退魔騎士は吸血鬼との楽しい思い出を胸に、数百年の時を過ごしてきたが、つい先日、骸魂と化した吸血鬼が退魔騎士を発見、再会。
 ひとつとなった満足感から、退魔騎士は永遠を願う言の葉を零すが。
「……それがまさか、世界の崩落を招く言の葉とは思わんかったんだろうな」
 だから、一刻も早く止めてほしい。
 そう告げた陽太に対し、猟兵等は各々の想いを胸に頷いた。

 現在、世界はその端から急速に崩れ落ち、いずれふたりをも巻き込んで完全に崩壊してしまう。
 世界崩落を待つふたりの下に辿り着くためには、まず蓮の花や葉が随所に浮かび、煌々と輝く月が水面を照らす荒れ狂った池を抜けなければならない。
 普段は静謐な池なのだが、世界崩落の余波で荒れ狂っているため、抜けるためには一工夫必要だろう。
 池の対岸まで渡り切ったら、待ち受けるのは狂気の笑みを浮かべ、世界崩落を受け入れるかのように静かに佇んでいる吸血鬼の少女。
 ふたりの想いに寄り添い、事の次第を説明すれば理解を示してくれるかもしれないが。
 それでも、世界崩落を止めるためには……吸血鬼の少女を骸の海に送るしかない。
「……辛いけどよ、それしか世界崩落を止める方法はねえんだ」
 断言する陽太だが、その表情は苦悩に満ちていた。

「想いってのは尊いかもしれねえがよ、カクリヨファンタズムって世界はひとつしかねえんだ。何を、誰を尊重するのか……それぞれが答えを出した上で臨んでくれ」

 ――それは、世界のためなのか。
 ――あるいは、青年退魔騎士のためなのか。
 ――もしくは……骸魂の吸血鬼の少女のためなのか。

 誰のためなのか、何のためなのかは、それぞれ異なるだろうけど。
 確実なのは「骸魂を倒さなければ世界が滅ぶ」ことだけ。

「皆には苦しい選択を強いるが……ふたりのこと、頼んだぜ」
 喉の奥から無理やり絞り出すように告げながら。
 陽太は愛用の二槍で転送ゲートを描き、猟兵たちを送り出した。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 カクリヨファンタズムで、言の葉により世界崩壊が引き起こされようとしております。
 猟兵の皆様、時を止める言の葉により引き起こされている世界崩壊を止めて下さい。

 プレイング次第ですが、心情寄りになる可能性が高いです。

●本シナリオの構造
 冒険→ボス戦→日常です。

 第1章は冒険です。
 本来ならば蓮と月影が調和する静謐な池も、崩落の余波で激しく荒れております。
 随所に浮かぶ蓮の葉をうまく利用すれば、素早く通り抜けられるでしょう。

 第2章は吸血鬼の少女とのボス戦です。
 青年と少女の思い出に関わるようなアプローチをして下されば、プレイングボーナスが与えられます。

 第3章は日常です。
 詳細は第3章開始時に。

●青年退魔騎士(西洋妖怪)
 ある吸血鬼の少女と相思相愛であったにもかかわらず、立場の違いから止む無く少女を斬りました。
 その後、存在を忘れ去られた彼はカクリヨファンタズムに落ち延び、少女の思い出を胸に生きていましたが、数百年後に少女と再会したことが今回の事態を引き起こします。
 本来は生真面目な性格であり、退魔騎士としての使命にも忠実ですが、少女への愛は本物です。

●吸血鬼の少女(西洋妖怪)
 青年退魔騎士に恋焦がれていましたが、青年に斬られたのを機に別れることになりました。
 その後、カクリヨファンタズムに向かうも、失意と負傷が祟り辿り着く前に死亡、骸魂と化しました。
 本来は気弱な少女ですが、骸魂と化した際に正気を失い、世界を永遠の闇と赤い雨で閉じ込めることを願っています。青年とひとつになっても、その想いはおそらく変わらないでしょう。

●プレイング受付開始日時について
 全章、冒頭へ導入文を追加した後、受付開始。
 締め切りはマスターページ及びTwitterにて告知致します。

 なお、本シナリオはゆっくり目の運営になると思います。
 また、サポートプレイングとおまかせプレイングは採用せずお返しさせていただきます。

 全章通しての参加も、気になる章のみの参加も大歓迎です。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『蓮華と月の池』

POW   :    勢いのままに通っていく

SPD   :    周囲を探りながら通る

WIZ   :    敢えてゆっくり進んでいく

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●カクリヨファンタズム・蓮の花咲く池のほとりにて
 転送された猟兵達の目にまず入ったのは、視界を覆い尽くさんばかりの大きな池だった。

 蓮の花が咲き乱れ、無数の葉が浮かび、水面に月を湛える澄んだ池。
 それは、普段なら静謐を保ち、ただ静かに美しく、水面に月明かりを煌めかせながら存在しているのだろう。

 ――しかし、崩落の余波で、池の水面は激しく波打ち、荒れている。

 池の対岸には見えるのは、赤いドレス。おそらく、吸血鬼の少女の骸魂だろう。
 一刻も早く少女の下に向かいたいが、荒れる池が猟兵達の行く手を遮っている。

 池の縁に沿って迂回できないこともないが、かなりの時間を要するだろう。
 どうにか池を渡って最短距離で向かえないか……そう考えた猟兵達の目に入ったのは、蓮の花と連なる無数の葉。

 岸に最も近い葉に試しに乗ってみると、波に揺られはするものの、思ったより頑丈で沈まない。
 この頑丈さなら、ウォーマシンや巨人が乗ったとしても簡単には沈まないだろう。橋や飛び石代わりに利用するには十分だ。

 猟兵達は、岸に最も近い蓮の葉に足を乗せ、渡り始める。
 ――一刻も早く、青年と少女の下に辿り着くために。

※マスターより補足
 第1章は、波打ち荒れる池を渡り、青年と少女の下に向かっていただきます。
 POW/SPD/WIZは一例ですので、自由にプレイングをおかけくださいませ。

 導入では蓮の葉をつたって渡る前提ですが、もちろん別の方法を試していただいても構いません。
 ただし、水面は激しく波打っておりますので、それだけはお忘れなきよう。

 ――それでは、良き邂逅のための行動を。
鹿村・トーゴ
んー…確かにやるせない
敵同士って解ってんのに好きあったり…
好きあってんのに結局は手にかけて死に別れたり、てなァ
この二人みたいにきれいな話じゃねーがオレにも似たよーな事あったし

それに
出逢えたと思えばこんな事態なんてなァ
あのお嬢さんも静かに狂っちゃったのか…切ないねえ、上手くいかないもんだ
や、同情ばっかしても始まんねー

蓮を渡って、か
【地形の利用】で足場を確認しながら助言通り蓮から蓮へ確実に
距離があれば縄をくくり付けたクナイを【念動力/ロープワーク/投擲】活用、手近の蓮に刺し少し寄せて飛び移る
あんまりにも荒れてたり次の蓮まで距離があるときはUCも使って荒れた波の頂点と蓮を飛び継いで進むよ

アドリブ可



●己が苦い記憶を同情の糧として
「んー……確かにやるせない」
 荒れた水面に目をやりつつ、どこかやりきれない感情を胸の裡に抱えながら、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は大きく息をつく。
「出逢えたと思えばこんな事態なんてなァ……」
 決して相容れぬはずのふたりが出逢って恋に落ち、しかし別れを余儀なくされ。
 幾星霜の時を経て、幽世で再会を果たしたものの。
 ――それが世界崩落の危機を招くとは、誰が予想しえただろうか?
 そして、もうひとつ。
「あのお嬢さんも静かに狂っちゃったのか……切ないねえ」
 上手くいかないもんだ……と愚痴るように零しながら。
 トーゴは水面に目を凝らした。

 足場となり得る蓮の葉の位置を、目を凝らしてつぶさに確認し。
 助言通りに大きな蓮の葉を慎重かつ軽快に、かつ確実に渡り歩いてゆく。
 それでも、時折一度の跳躍で届かない程、葉と葉の間隔が開いていることもあるけれど。
 トーゴは慌てず騒がず縄付きのクナイを取り出し。
「ていっ!!」
 狙いの葉の近くにある蓮の茎にクナイを投げつけ、突き刺す。
 念動力も併用して確実に当てられたクナイと縄は、離れた蓮の葉に渡るための手掛かりとなり。
 二、三度軽く縄を引いてクナイが抜けぬことを確かめた後、トーゴは蓮の葉を蹴って飛び、縄を手繰り寄せつつ一気に飛び移った。

 飛び移りながら、トーゴはこの池の対岸にいるであろう2人に想いを馳せる。
「敵同士って解ってんのに好き合ったり……好き合ってんのに結局は手にかけて死に別れたり、てなァ」
 トーゴもふたりとよく似た経験をしたことがあるが、伝承ほど綺麗な話ではない。

 ――それは、拭えぬ苦い記憶として、今も心に焼き付いているから。

 トーゴは、気づかぬうちに恋心を抱いていた幼友達を自らの手にかけたことがある。
 その行為に、責や咎は誰にもなかったのだけど。
 幼友達の墓を前にし、初めて己が本心に気づいたその時。

 ――全てが手遅れであったことを、悟ってしまったのだ。

 傷心のうちに村を出奔し、様々な世界を彷徨う今。
 あの時の傷が癒えたかどうかは、トーゴ自身にもわからないけど。

 ――だからこそ、あのふたりを手遅れにはしたくない。

 その想いに至ったところで、ふたりに感情移入しすぎたと気づき、大きくため息をつくトーゴ。
(「や、同情ばっかしても始まんねー」)
 少し情を移し過ぎたか、と軽く反省するも、それでも確実に対岸への距離は詰まっていた。

 対岸が近づくに連れ、水面の荒れはより激しくなり、大きく波打つようになる。
 ――それは、崩れ落ちる世界の嘆きなのか。
 やがて波はトーゴの背丈を超える高さに達し、クナイを投げようものならトーゴごと呑み込んでやると大きな咢を開いて待ち構えている。
 ――ならば。
「寄せの術……うかみの渡り足、ここへ」
 小さく呪を唱え、さて行くかな? と呟き波に足を踏み出せば。
 不思議と足裏が丸く形を変え、波に足を踏み入れたとしても決して呑まれぬ水蜘蛛のようになる。
 波に取られぬ足を手に入れたトーゴは、波の頂点や蓮の葉を軽やかなステップと共に飛び継ぎ、一気に対岸に接近した。

 やがて池を渡り切ったトーゴは、波の頂点から一気に飛び降り、対岸へ着地。
 足裏をもとに戻しつつ、地に足をつけたトーゴが目にしたものは――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
立場の違いから、斬らざるを得なかった吸血鬼…
悲しいです
種族や立場というものはどうしても超えがたい壁です
敵対しているのならばなおのこと
悲しい結末を迎えたお二人がせっかく二人一緒になれたのです
祝福したいですが…

お二人に声を届けるためにも
カクリヨファンタズムをお救いするためにも
まずはこの蓮の池を渡らなければなりません
荒れ狂う蓮の葉の上を歩いて渡りまして
葉の端まで来ましたら【スカイステッパー】でジャンプ
空中をジャンプしながら先へと進みます
ダンスで鍛えた体幹と空中戦を駆使して先へ先へ
届かなければ蓮の葉に着地して再びUC発動
飛行能力の補助も受けながら蓮の池を駆け抜けます

…今はただ、一刻も早くお二人の許へ



●悲しき結末の果てに待つものに終止符を
 荒れ狂う池の水面に目を落としながら、アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)は対岸で待つであろう青年と少女に想いを馳せながら、荒れる池の水面を見下ろしていた。

 ――その荒れる水面は、崩れ落ちつつある世界があげる悲鳴か。
 ――それとも、嘆く誰かの心の裡を表しているのか。

「立場の違いから、斬らざるを得なかった吸血鬼……」
 水面に映り揺れる己の姿を見て、悲しいです、と目を伏せるアカネ。

 種族や立場というものは、当事者たちが許容していたとしても、周囲の環境が超えがたい壁となって立ちはだかる。
 ましてや、ふたりが生きた年代を考えれば、それは立場だけでなく、お互いの思想すら縛る強固な束縛となり得る。
 ――お互いの種族の立場が「敵対」ならば、尚の事だ。
 アカネ自身も、オラトリオに覚醒したことが原因で殺されかけたことがあるため、種族の違いによる悲劇は身に染みるほど痛感している。
 ――だからこそ、ふたりには幸せになってほしいのだけど。
「悲しい結末を迎えたおふたりが、せっかく一緒になれたのです」
 本来なら駆けつけ、ふたりの新たな門出を祝福したい。
 だが、それは……決して叶わない願望であることも、わかっている。

 ――祝福の果てに待つのは、世界の崩落なのだから。

 だから今は、ふたりのところへ向かおう。
 ふたりに声を届けるために。
 この世界――カクリヨファンタズムを救うために。
 そのためには……。
「……まずは、この蓮の池を渡らなければなりません」
 改めて心を引き締めたアカネは、池の縁に接した蓮の葉にそっと足を下ろした。

 見た目以上に荒れ狂う水面の影響を受けているのか、足を下ろした蓮の葉は激しく揺れている。
 波に揺れる蓮の葉の上を、転ばぬ様慎重に歩いて横断し。
 葉の端に辿り着いたら、丈夫な葉の縁に足をかけ、虚空へジャンプ。
 身体が自然落下を始めたら、空中を強く踏みしめつつもう一度ジャンプ。
 ダンスで鍛えた体幹と空中戦の経験を頼りに、何度もジャンプを繰り返しながら巧みに身体のバランスを取りつつ、次の葉に降り立つ。
 徒歩とジャンプを繰り返し、確実に連なる蓮の葉を渡り歩き、少しずつ対岸へ近づいてゆくけれど。
 対岸が近づくにつれ、水面の荒れは激しさを増してゆき。
 池の中央付近でアカネが蓮の葉から空へジャンプした、その瞬間。
 ――ザバーン!!
 空中を踏みしめさらに高く跳ぼうとしたタイミングで水面が激しくうねり、アカネの頭上を超す高波となって襲いかかる。
 アカネも波から離れるように跳ぼうとするが、大量の水が頭上から落ちてくる方が早く。
「きゃっ!」
 大量の水に押し流されてバランスを崩し、落下する。
 この荒れる状況で波にのまれたら、猟兵とて無事では済まないが。
 アカネは水面に叩きつけられる寸前に背中の翼を羽ばたかせ、難を逃れた。

 そのまま近くの葉に降り立ち、小休止するが、長くは止まってはいられない。
 全てが手遅れになる前に、辿り着くためには……。
(「……今はただ、一刻も早くお二人の許へ」)
 移動を再開したアカネは、その後も何度も虚空を踏みしめ、空を舞い、荒波をものともせず蓮の葉をつたって渡り切った。

 無事対岸まで渡り切ったアカネは、翼を羽ばたかせながら、ゆっくりと地に足を下ろす。
 そこでアカネが、目にしたものは――。

成功 🔵​🔵​🔴​

シル・ウィンディア
愛とかはまだまだわかんないけど…
でも、好きって気持ちは、わたしでもわかる
二人の好きが世界を崩壊に導くなんて
そんなのやるせないよね…

でも、世界の崩壊を止めるためには…
うーん、難しいよね…。

さて、二人の所に行くならこれを超えて、か
うーん、どうしよ…

波の動きを【見切り】少しでも収まるタイミングで飛び移っていくけど
うん、完全に見切れるわけじゃないよね
それなら…

【高速詠唱】でエレメンタルドライブ・エアリアルで飛翔!
波が襲って来たら…
本命はこれっ!
エレメンタルドライブ・エアリアルで強化した風精杖の風の力
【属性攻撃】の風で波を割るよっ!

風の精霊よ、愛しあう二人の元へわたしを導いて…



●「愛」も「好き」も唯一無二の感情だから
 世界の崩落が進むにつれ、池の水面はますます激しくうねり、荒れる。
 ――それは、まるで青年と少女への道を、池そのものが阻むかのよう。
(「愛とかはまだまだわかんないけど……」)
 荒れる池の縁に立つシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は、「愛」という感情が如何なるものなのかわからないし、縁もまだないだろうと思っている。
 だが、何かを「好き」になるという気持ちは……わかるのだ。
「ふたりの『好き』が世界を崩壊に導くなんて、そんなのやるせないよね……」
 不慮の形で別れ、再会したからこそ、好き合う関係が永遠であれと願った、青年。
 ――ふたりを引き裂いたのが、お互いの「立場」であるなら、なおさら。
 しかし、皮肉にも青年の純粋な願いが、世界そのものの在り方が不安定なカクリヨファンタズムでは、世界崩壊の引き金を引く破滅の願いと化してしまっている
 ――あまりにも、やるせなさすぎる。
 だが、世界の崩壊を止めるためには……ふたりの間を再び永遠に引き裂かねばならない。

 ――果たして、それでよいのだろうか?

「うーん、難しいよね……」
 しばし考えるも、すぐに答えは出ない。
 ふたりの愛を選び、世界を崩壊させるか。
 それとも……世界を選び、ふたりを再び引き裂くのか。

 ――究極の選択は、シルの肩に重くのしかかっていた。

 だが、如何なる結末を選択するにせよ、まずは池を渡り切らないと答えを突き付けることすらままならない。
「さて、ふたりの所に行くならこれを越えて、か」
 シルは再び荒れる水面に視線を落とし、池の大きさと蓮の葉の位置を確認する。
 うーん、どうしよ……と、しばし思案し。
 ひとまず蓮の葉に乗り、波の動きが収まるタイミングを見切って次々と蓮の葉を渡っていくが、何度も見切れるものではなく、すぐに激しい波に行く手を遮られた。
 無理に潜り抜けようとすると、波にさらわれ池の底に引きずり込まれる危険性もある。
 シルは風精杖『エアリアル』を手にし、波に向けてかざしながら呪文を詠唱。
「風の精霊、エアリアル……。わたしに力を……」
 高速詠唱と共に杖に宿った淡い新緑の光は翼の形に広がり、風精の翼となってシルに纏いつき力を与え。
「さぁ、一緒に舞おうかっ!!」
 掛け声と軽いステップと共に翼を大きく羽ばたかせ、波を避けるように空を舞い、高速飛翔で一気に突破しようとする。
 だが、シルの真正面の水面が急激に持ち上がり高波と化し、風精の翼ごと波に呑み込もうと待ち構える。
 まるで、波が明確に意思を持ってシルの行く手を遮ろうとしているようにも見えるが……。
「本命はこれっ!」
 シルが新緑の光が宿ったままの風精杖を大上段に振り上げ、一気に振り下ろすと。
 ――ゴウッ!!
 風精の力で威力が増強された風精杖の先端の宝石が激しく光ると共に衝撃波にも等しい速度と威力を持った風を生み出し、波を縦に両断した。
 ふたつに断ち切られた波は、新たに押し寄せた波とぶつかり打ち消し合い、ほんの一瞬だけ波が治まり、水面が凪ぐ。
 水面が再び荒れ始める前に、シルは風精の翼を大きく羽ばたかせて飛翔速度を上げ、一気に池の上空を駆け抜けた。

(「風の精霊よ、愛し合うふたりの元へわたしを導いて……」)
 シルの純粋な祈りを聞き遂げた風精とともに対岸へたどり着き、ふわりと着地した彼女が目にしたものは――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『狂乱の吸血姫』バージニア・ネクタリア』

POW   :    血雷の蛇(ブラッディ・ヴァイパー)
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【闇+雷属性の、刀身を分割した蛇腹剣】で包囲攻撃する。
SPD   :    敵意穿つ魔符(マリス・カード)
自身が【敵対心や恐怖心】を感じると、レベル×1体の【攻撃魔法&能力弱体魔法を発動するカード】が召喚される。攻撃魔法&能力弱体魔法を発動するカードは敵対心や恐怖心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    憧憬と恐怖の狭間で(ラブ・アンド・フィアー)
【生前恋心を抱いていた退魔騎士の青年の衣装】に変身し、武器「【蛇腹剣&魔法カード&ハイヒール】」の威力増強と、【マント】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は薙沢・歌織です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●「ずっと一緒にいたい」だけなのに
 池の対岸まで渡り切った猟兵達が目にしたのは、池を背に静かに佇む紅いドレスの吸血鬼の少女だった。
 右手に魔符を、左手に蛇腹剣を手にした少女は、猟兵達が声をかけるより早く気配を察したか、静かに振り返り狂笑を浮かべ、呟く。

「アハハ……あなたたち、私を殺しに来たのね」

 それは、最初から妨害されることを予感していたのだろうか。
 ――あるいは、青年退魔騎士と別れた時の記憶が蘇っているのだろうか。

「ようやく誰にも邪魔をされないこの地で、彼と一緒になれたの」
 右手でそっと胸を押さえながら呟く彼女の声は、幸福に満たされたそれ。
「彼も私との永遠を望んでいた。でも、彼の立場上、それは許されなかった」
 色白の頬をうっすらと紅に染めながら、待ち望んだ幸福を存分に享受する彼女の声に籠められているのは、彼への深い愛情。
「私も失意に落ち込んだけど、彼も斬りたくて私を斬ったわけじゃない……ひとつになってようやくそれがわかったの」
 それはどういうことか、と猟兵が叫ぶが、彼女はそれには答えず。
「もう、誰にも私たちを引き裂かせやしない」
 崩れ落ちる余波で揺れる地に足をつけながら、はっきりと宣言する。
「彼と永遠にいられるなら、私は世界を永遠の闇と血の雨で閉ざしても、世界を壊しても構わないわ」

 ――それは、世界よりふたりの愛を取る、という彼女の意志表明。

「もう私たちの邪魔は誰にもさせない、誰にも妨害させないわ」
 吸血鬼の少女――『狂乱の吸血姫』バージニア・ネクタリアは、これ以上の会話は無用とばかりに蛇腹剣を地面に叩きつけるように一振りし。
 青年退魔騎士との思い出とその存在を胸に、猟兵達に襲い掛かった。

 ――その瞳から、無意識に一滴の涙を零しながら。

※マスターより補足
 第2章の成功条件は【『狂乱の吸血姫』バージニア・ネクタリアの撃破】となります。
 吸収されている青年退魔騎士は、バージニア・ネクタリアを撃破すれば自動的に救出されますので、救出のためのプレイングは不要です。

 なお、青年と少女(バージニア・ネクタリア)の思い出に関わるようなアプローチをして下さった場合、プレイングボーナスが付与されます。
 おふたりにかけたい声や伝えたい想いがございましたら、存分にプレイングに詰め込んで下さい。

 ――それでは、最良の結末を。
鹿村・トーゴ
…吸血鬼の姫さん、自分らの行末が成就しないと解ってんだね

立場のせいで食い違って
気の遠くなる年月越しにやっと叶ったのに
そりゃ手放したく無いよな
オレ騎士の気持ちはすげー判る
好きな子殺めるのって正気でやれるもんじゃねーや
だからね
この世界があんたら二人だけの物なら破滅を見送ってもいいと思ったよ
でも、な
他にもここで暮らす連中いるもん
心中に巻き添えはご法度だぜ、姫さん

敵対感より同情を感じるが任務への義務に切り替え討伐への容赦しない
UCは流血を代償に強化し敵UCカードを【野生の勘】で躱し
【地形の利用】【追跡】も活用し足場の悪い中接近しながら敵攻撃に【カウンター】クナイで刺し斬り攻撃【串刺し/暗殺】

アドリブ可



●世界はふたりだけのものではないのだから
「……吸血鬼の姫さん、自分らの行く末が成就しないと解ってんだね」
 まるで猟兵達がここに来た目的が最初からわかっているかのようなバージニア・ネクタリアの叫びに、鹿村・トーゴはやりきれない想いを言の葉でこぼす。
「立場のせいで食い違って、気の遠くなる年月越しにやっとかなったのに、そりゃ手放したくないよな」
 風切り音とともに振るわれる蛇腹剣をクナイで逸らしながら、トーゴはバージニアの想いに共感しつつ、言の葉を綴り始める。
「オレ、騎士の気持ちはスゲー判る」
「あなたに彼の何がわかるの?」
 いつもの雑な口調で共感を示すトーゴに、バージニアが非難の声を上げるが。
「……好きな子殺めるのって、正気でやれるもんじゃねーや」
 続けて呟かれたトーゴの言を耳にしたバージニアの瞳が、驚きで大きく見開かれる。
 ――今の言の葉に籠められたトーゴの悔恨を、察したのだろうか。
「まさか、あなた……」
 確かめるべく、バージニアは喉の奥から掠れる声を絞り出すが、トーゴは意識的に答えず、想いを言の葉で優しく綴り続ける。
「だから、この世界があんたら二人だけのものなら、オレは破滅を見送ってもいいと思ったよ」
 ――繋がりかけていた恋心を引き裂いて終わらせた経験を、何度も繰り返してほしくないから。
 それもまた、トーゴの経験から来る本心ではあるのだが。
「でも、な……ほかにもここで暮らす連中、いるもん」
 崩れ落ちつつある周囲を見渡しながら綴り続ける言の葉は……徐々に葛藤を含み始めていた。

 この場にはバージニアとトーゴ達猟兵しかいないが、この世界――カクリヨファンタズムには、多数の妖怪や竜神が暮らしている。
 ――UDCアースで伝承が途絶え、生きるために逃れた者。
 ――信仰が途絶え、居場所すら奪われ、命を繋ぐために幽世に辿り着いた者。
 ――そして、バージニアや騎士のような後悔を抱え、生きている者。
 皆、それぞれの想いを抱えて幽世に流れ着き、生きている。

 この世界で生きる者が騎士とバージニアだけでない以上、全ての生きとし生ける者を巻き添えにした世界の破滅は、どうしてもトーゴには許容できない。
 ――ふたりの想いは成就させたいが、世界の破滅と引き換えにはできないのだ。
 
 だから、トーゴは心の葛藤を抱えながらもクナイを構え、バージニアの意を否定する。
「心中に巻き添えはご法度だぜ、姫さん」
 任務への義務に思考を切り替えたトーゴは、悪鬼を身体に降ろし、己が身体能力を強化。
 強大な力を宿した代償として耳や鼻から絶えず血が滴り落ちるが、トーゴは意に介さず地を蹴り、揺れる地面をものともせず、バージニアとの距離を一気に詰めた。
 バージニアが至近距離からトーゴの額に、腕に、胴に、次々とマリス・カードを投じ、動きを封じようとするが、トーゴは勘も頼りにしながらカードの雨をクナイでいなしつつ回避、一気に接近しクナイを突き出す。
 カウンターの如く突き出されたクナイは、吸い込まれるようにバージニアの左肩に突き刺さり、深く抉る。
「うあ、あ、あ……」
 左肩に走る激痛に、視線を虚空に彷徨わせつつ呻くバージニア。
 だが、その瞳からは、愛ゆえの狂気は失われていない。
「この愛が世界に受け入れられないなら……壊れてしまえばいい」
 瞳に宿す狂気を深め、涙を流しながら、バージニアは世界に呪詛をかけるかのように言霊を響かせる。

 ――世界に破滅を齎す永遠の愛だけが叶うように。
 ――世界が滅びても、ふたりの愛だけを残せるように。

 言の葉による呪詛を撒きちらさせぬために、トーゴがさらに追撃を行おうとしたその時。
「誰か……誰かこの子を止めてくれ」
 突然、バージニアの口から洩れたのは、青年男性の声音。

 ――トーゴの経験と悔恨が乗せられた言の葉は、退魔騎士の心を揺さぶっていたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アカネ・リアーブル
バージニア様
あなたの気持ちはよく分かりました
種族を超えた愛が世界を超えてようやく成就する
こんなに幸せなことはないでしょう
ですがその思いは世界を滅ぼすのです

退魔騎士様
あなたはそれで良いのですか?
あなたは本当に自分達の愛の為に他の全てが犠牲になっても良いとお思いですか?
世界が滅んでしまったら
二人の愛を祝福してくれる人々も受け入れてくれる世界も無くなてしまうのに?

指定UC
状態異常として幻覚を上乗せ
美しい花が舞う景色を再現してみせましょう
バージニア様の思い出にある
この蓮の池のように美しい風景が現れるように
退魔騎士様の心を揺さぶり
守りたかったものを思い出していただけるように

どうか目をお覚ましくださいませ



●懐かしき記憶を呼び覚ますために
 突然己の口から零れた青年の声に、驚き戸惑うバージニア・ネクタリア。
 その間に先んじた猟兵と交代したのは、アカネ・リアーブルだった。
「バージニア様、あなたの気持ちはよく分かりました」
 アカネに向けられるバージニアの視線の先は、顔ではなく、背の純白の翼。
 ――アカネが、天使に見えたのだろうか。
 バージニアの視線の先を指しつつ、アカネは己が想いを綴り始める。
「種族を越えた愛が世界を超えてようやく成就する。こんなに幸せなことはないでしょう」
「なら、このまま私たちの想いを叶えさせて?」
 自由に動かぬ左肩を右手で押さえながら懇願するバージニア。
 その声音は少女のそれだったが、アカネは静かに首を横に振って拒否。
「ですが、その想いは世界を滅ぼすのです」

 ――だから。

「まずはおふたりのために、この蓮の池のように美しい花が舞う景色を再現してみせましょう」
 アカネは手にした舞薙刀を無数の茜の花びらへと変化させ、バージニアの周囲に舞わせ始める。
 それは最初は穏やかに、徐々に激しさを増し。
 花びらの色も薄い紫から純白へと変化し、バージニアを包み込む。
「これは……!」
 バージニアは咄嗟に顔面を腕で覆うが、純白の茜の花びらは腕の隙間からするりと滑り込み、幻覚を誘発する匂いを発する。

 その匂いが鼻をついた直後。
 ――バージニアの意識は、過去へと誘われた。

●それは遠き邂逅の記憶
 ――遠い遠い昔、穏やかな小春日和のある日。

 バージニアと退魔騎士は、人目を忍びながら小さな川のほとりに腰掛けていた。
 他愛ない話をしながらふたりで静かに川面を眺めていると。

 ――さあっ……。

 吹き抜けた柔らかい風に乗った白い花びらが、ふたりを祝福するかのように舞い。
 その風に身を任せると、花びらのほのかな甘い匂いが鼻腔をくすぐり、ふたりの心を穏やかに溶け合わせてゆく。
 だが……。
「――様」
 ふと不安を感じたか、バージニアは傍らの退魔騎士の名を呼ぶ。
「いつか、――様と人目を憚らずにお会いできる日が来るでしょうか?」
「……わからない」
 目を伏せ首を横に振る、退魔騎士。
 闇に生きる吸血鬼と、闇を狩る退魔騎士は、不倶戴天の敵同士。
 ゆえに、今は人目を避けて逢瀬を重ねるしかないが……。
「でも、いつか理解してもらえる日が来る。僕はそう信じたい」
「――様……はい」
 バージニアは安心したかのように微笑みながら、退魔騎士の胸に顔を埋め。
 退魔騎士もそっと彼女の背中に手を回し、彼女を抱き抱えた。

●真に守りたい想いは何か
「あ、あ……」
 優しい記憶を呼び覚まされたバージニアの腕が下ろされ、視線が白き茜の花に釘付けになる。
「そう、私は(僕は)……彼女を(彼を)……」
 ひとつの口から洩れる声音は、少女と青年のふたつの声音。
 ――退魔騎士の記憶も呼び覚ましたのだろうか。
「お二方、どうか目をお覚まし下さいませ!」
 しかし、アカネの鋭い一喝に、バージニアが身体をピクッと震わせる。
 いつしか彼女の緋色のドレスを包み込むように、純白の鎧が現れていた。
 ――それは、青年退魔騎士が身に纏っていた、鎧。
「ああ……これは彼の……」
 彼と一体化したことで陶然となったバージニアが、蛇腹剣を片手にアカネに迫り、大きく一振り。
 咄嗟に頭を下げて剣を躱しながら、アカネは臆することなく呼びかける。
「退魔騎士様、あなたはそれでよいのですか?」
 アカネの声が向く先は、バージニアではなく退魔騎士。
「あなたは本当に、自分たちの愛のために他の全てが犠牲になっても良いとお思いですか?」
「黙って! 彼を惑わせないで!」
 バージニアが蛇腹剣でアカネの口を狙うが、アカネはその軌道を見切って避けて。
「もし、世界が滅んでしまったら、ふたりの愛を祝福してくれる人々も、受け入れてくれる世界も、何もかも、無くなってしまうのに?」
 アカネの呼びかけに対するバージニアからの返事は、蛇腹剣の鋭い音。
「退魔騎士様、あなたが守りたかったものを、思い出してください!」
 しかしアカネは蛇腹剣を茜の花びらで逸らしながら、鋭く切り込むように呼びかけ続けた。

 アカネの呼びかけが重ねられるごとに、バージニアの目から零れ落ちる涙が徐々にその量を増している。
 ――それは、バージニアを案ずる退魔騎士の涙なのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
愛は、わたしにはまだわかんないけど
好きだから、ずっと一緒にいたい
それはわかる
でも、だからといって
ほかの人を犠牲にしていいってことはないよ

それは、あなた達みたいな悲しい思いする人が出ちゃうから
だから…
とめさせてもらうから

対UC
速いだけじゃなくて強い…
通常の空中戦では負けるからここは防御だね
【第六感】を信じて
致命個所を【オーラ防御】で防御してっと

UCの効果が切れたら
敵の動きを【見切り】
精霊電磁砲で敵の動きを制限して…

本命は【オーラ防御】の裏で【多重詠唱】していた
ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト
攻撃・防御の合間も詠唱は続けてるんだ
さすがに痛いと思うよっ!

…ごめんね、こんなことしかできなくて



●悲しい思いの連鎖は止めなければ
 ――涙が、止まらない。
 ――彼とひとつになったはずなのに、なぜか涙が止まらない。

 バージニア・ネクタリアが猟兵達と邂逅する前から、この涙はずっと流れ続けている。
 彼とひとつになり満たされているはずなのに、涙が止まらない。
 さらに先んじた猟兵達の声が耳に入るたびに、多くの涙で視界が霞む。

 ――この涙は、誰の、何のための涙なの?

 止まることを知らぬ涙に戸惑うバージニアの前に現れたのは、シル・ウィンディア。
「愛は、わたしにはまだわかんないけど」
「わからないなら……放っておいて!」
 純白の鎧姿のままのバージニアが叫びと共に地を蹴り、地面スレスレを飛び蛇腹剣を振り下ろす鋭い音を響かせながらシルに迫る。
 既に純白の鎧を纏っている以上、蛇腹剣もマリス・カードも強化済み。
 さらに飛翔能力をも得ている以上、空中戦は分が悪いし、おそらく負ける。
 シルは現状を冷静に分析し、防御に専念するが、代わりに言の葉は止めない。
「でも、好きだから、ずっと一緒にいたい。それはわかる」
 バージニアに呼びかけながらも、シルは鞭のように振り下ろされる蛇腹剣を、至近距離から投げられるマリス・カードを、己の第六感を信じつつギリギリ見切りながら躱し。
 常に呪文を言の葉の欠片に乗せながら新緑のオーラを展開し、四肢や頭等、致命的な部位を蛇腹剣でズタズタに斬り裂かれぬように守りながら、なおも真摯な想いを伝え続ける。
「でも、だからといって、ほかの人を犠牲にしていいってことはないよ」
「どうして?」
 ふたりだけの世界を求めるバージニアにとって、それは当然の疑問。
 しかし、それに対するシルの答えは……単純かつ明確。
「それは、あなたたちみたいな哀しい思いをする人が出ちゃうから……」
 シルの明確な答えを耳にしたバージニアの肩が、ピクッと震えた。

 ――あなたはなぜ、悲しく、悔しい目をしているのですか?
 ――なぜ、騎士長の命に従って私を斬ったあなたが、涙を滲ませているのですか!?

 バージニアの脳裏に蘇ったのは、あの日、青年退魔騎士に斬られた際に抱いた疑問。
 哀しみに彩られたそれに戸惑いながら、バージニアはシルの死角を取ろうとするが、シルは精霊電磁砲を続けざまに撃って牽制、死角への回り込みを許さない。
 やむなくバージニアは真正面からシルに再度接近するが、シルは避けようとはせず、バージニアに指を突き付ける。
「止めさせてもらうから!!」

 ――闇夜を照らす炎よ
 ――命育む水よ
 ――悠久を舞う風よ
 ――母なる大地よ
 ――暁と宵を告げる光と闇よ……。

 シルの力強い呼びかけとともに、新緑のオーラを維持するための呪に忍ばせながら同時に詠唱していた魔術が発動。シルの眼前に火・水・風・土・光・闇の6属性を象徴する光が現れ、六芒星を描き出す。
 その六芒星の中心からバージニアに指を突き付け、シルは魔術を完成させた。
「六芒に集いて、全てを撃ち抜きし力となれっ!」
 六属性を宿した六芒星の魔法陣から放たれた光が、シルの指先に導かれるように一点に集結し、膨大な魔力を宿した魔力砲撃となって発射。
 それは、シルが得意とする四属性の魔力砲を六芒増幅術で強化し、さらに直線上を薙ぎ払うように術式を変更した、巨大魔力砲。
「きゃあああああ!!」
 バージニアの至近距離から轟音と共に撃ち出された魔力砲撃は、彼女の全身を容易く呑み込み、膨大な魔力でその全身を蹂躙、純白の鎧を徹底的に破壊する。
「……ごめんね、こんなことしかできなくて」
 小声で謝るシルの前で、ボロボロになった純白の鎧はその役割を失い、崩れ落ちた。
「ああ、ああ……彼の、彼の……」
 バージニアも必死に鎧の欠片をかき集め、己が身につなぎとめようとするも。
 既に鎧の役割を果たさなくなったそれは砂となり、バージニアの腕の中からひとかけらたりとも残さず零れ落ちる。

 そして。

 ――もう、やめよう。

 シルとバージニアの耳に、現状を憂える青年の声が、はっきりと届いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

夫と駆け落ちして、死に別れたアタシにはバージニアの願いは良く分る。女として、全てを引き替えにしても想い人と一緒にいたいと。

でもアタシは将来を誓った人が重すぎる罪を犯して世界を滅ぼすことは認められない。果たして、青年退魔騎士はバージニアが重い罪を犯すのは認められるだろうか?

バージニアの解放を願って、攻撃するよ。【残像】【見切り】【オーラ防御】で敵の攻撃を回避、真紅の騎士団と【二回攻撃】【衝撃波】【範囲攻撃】で敵のカードを迎撃しながら攻撃していくよ。1人の男を想う女として。バージニア、アンタを止めるよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加

愛する人と、あらゆる困難を越えて、結ばれた、一緒にいるなら世界が滅びてもいいと。お気持ち、良く分ります。

でも私達家族は、カクリヨファンタズムで多くの妖怪さん達と出会いました。色んな得難い体験をしました。ここは妖怪さんの世界でもあります。個人の気持ちで滅ぼしていい世界ではありません。

だから、バージニアさん、貴女の気持ち、全て受け止めましょう。白銀の騎士を発動、移動距離を減らす代わりに装甲値をあげ、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で足をしっかり踏ん張って、攻撃に耐えます。人を想う気持ちは良く分りますので・・・・最後に、想いを込めて、【グラップル】で拳の一撃を。


神城・瞬
【真宮家】で参加

僕はヴァンパイアと人間の間に生まれました。だから、種族の違いを乗り越えて結ばれたお二人は、ぜひ祝福したいですし、引き裂くには本意ではないのですが・・・

でもここはバージニアさんと退魔騎士の方が再会し、想いを育み、将来を誓った場所でもあります。両親が隠れ里で将来を誓ったように。その思い出の場所をお二人自らの手で壊す。僕はそれを認める訳にはいきません。

だから、バージニアさんの解放の為に、全力を。【マヒ攻撃】【目潰し】【武器落とし】を仕込んだ【結界術】で動きを縛り、【鎧無視攻撃】を併せた氷晶の槍で攻撃します。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。



●想いある地だからこそ、壊してほしくなくて
 ――ああ、あの方の想いが、崩れてゆく。
 ――時を止めることを望んだのはあなた様なのに、なぜ!?

「ああ、ああああぁぁぁぁ……」
 彼と一体化した証であるはずの純白の鎧が砂となり、風に乗って何処へと消え。
 涙を流しながら悲嘆に暮れるバージニア・ネクタリアの目の前に、突如紫の音符が舞い始める。
 ――それは、グリモア猟兵が新たに猟兵を転送する前触れ。
 舞い始めた音符が形成したゲートから姿を見せたのは、【真宮家】の3人だった。

「愛する人と、あらゆる困難を越えて、結ばれた……」
 真宮・奏(絢爛の星・f03210)がバージニアに向ける視線には、困難を乗り越え結ばれた2人に対する若干の羨望が含まれている。
「一緒にいるなら世界が滅びてもいいと……お気持ち、よくわかります」
「ああ。夫と駆け落ちして、死に別れたアタシにはバージニアの願いは良く分かる」
 奏の母である真宮・響(赫灼の炎・f00434)が、奏に相槌を打ちながらバージニアに示す感情は……共感。
 放浪の戦士に恋し、名家の令嬢の立場を捨てて駆け落ちした時。
 夫と共に世界を駆け巡る最中、一人娘の奏を授かった時。
 そして……ヴァンパイアに最愛の夫を殺された時。
 いずれも、先日の出来事のように思い出せるゆえに、バージニアの感情に理解を示せる。
 ――女として、全てを引き替えにしても想い人と一緒にいたい。
 その想いは、夫と死別した今でも、夫の想いを胸に、一人娘の奏を女手ひとつで育て上げることで貫いている響には、痛いほど理解できた。
 そしてそれは、ヴァンパイアと人間のハーフ――ダンピールである神城・瞬(清光の月・f06558)も、同じ。
 ――世界に圧政を強いるヴァンパイアと、それに抗う人間。
 決して交わることがないはずの種族同士が出会い、そして隠れ里で将来を誓い合い、瞬が生まれた。
 だから、瞬は種族の違いを乗り越えて結ばれたふたりのことを是非祝福したいし、引き裂くのは本意ではない。
 だが……それでも。

 ――このふたりは、引き裂かざるを得ないのだ。

「でも、ここはバージニアさんと退魔騎士の方が再会し、想いを育み、将来を誓った場所でもあります」
 ちらり、と蓮の池に目をやり、見逃せぬ悔しさを若干滲ませながら告げる瞬。
 この蓮の池の畔は、骸魂と化したバージニアと、妖怪のまま生き永らえ辿り着いた退魔騎士が、奇跡の再会を果たした場。
 二度と再会が叶わぬと思っていたからこそ、双方ともに再会の喜びは言葉で言い尽くせない程だったはず。
 ……だからこそ、この地をも破壊してしまう彼らの望みを受け入れることは、できない。
「その思い出の場所をお二人自らの手で壊す。僕はそれを認める訳にはいきません」
「アタシもだね。将来を誓った人が重すぎる罪を犯して世界を滅ぼすことは認められない」
 響の舌鋒こそ鋭いが、その言の葉に籠められた想いと問いかけは、極めて重い。

 どちらかが世界崩落の罪を背負わねばならないのなら。
 ――どちらが背負えば、事が収まるのだろうか。

 響たちはその答えを持っているが、バージニアは持っていない。
 いずれかひとりを選べ、と言われても、青年との永遠と、闇に閉ざされた永遠の双方を願うバージニアには、到底選べない。
「あ、ああああああ!」
 青年と己の想いの狭間で戸惑うバージニアの纏う衣服が、見る見るうちに変化する。
 それは、先ほど別の猟兵に見せた純白の鎧ではなく。上品なキルティングの刺繍が施された純白の上衣――ダブレット。
「なぜ……どうして……」
 非戦時に着用する衣服に身を包んだバージニアは、しかし逆に困惑を隠せずにいる。
 ――彼は、もはや戦いを望んではいないのか?
 だが、バージニアの胸の裡からは、世界の破壊を望む想いが溢れ出し、彼女を戦いへと駆り立てる。
「ああっ、あああ……っ」
 彼女が手にする蛇腹剣が明確な戦意を持って振るわれるが、守るという信念の剣、ブレイズセイバーを手にした奏が、己が得物に絡め取るようにしてそれを止めた。
「私達家族は、この世界で多くの妖怪さん達と出会いました。色んな得難い体験をしました」
 ――だから。
「妖怪さんたちの暮らすこの世界を守る為に、バージニアさん、あなたを解放します!」
 純真な奏の叫びが、崩れ落ちる世界を守る戦いの火蓋を切る、最後の合図となった。

●望みはひとつ、解放のみ
 困難を乗り越えたふたりに「羨望」を持つ奏。
 一途な想いを貫き通したバージニアに「共感」する響。
 種族の壁を越え結ばれたふたりを「理解」する瞬。

 バージニアに対する瞬たちの想いは、それぞれ異なる。
 けど、いや、だからこそ。

 ――家族全員が「バージニアを解放する」という想いでは、一致している。

 根底となる感情は異なれど、解放を願う想いは同じゆえに。
 真宮家の3人の連携は、最初から緊密に機能し、確実にバージニアを追い込む。
「ここは妖怪さんの世界でもあります。個人の気持ちで滅ぼしていい世界ではありません」
 バージニアが鋭い音を立てて振り切った蛇腹剣は、奥の手を発動し刀身を固くしたブレイズセイバーを手にした奏が斬り払うように受け流して逸らし。
「1人の男を想う女として。バージニア、アンタを止めるよ」
 響が真紅の騎士団と共に、吹き荒れるマリス・カードを斬り捨てながら接近する。
 それでも無数の刀身に分割され帯電した漆黒の蛇腹剣が、足掻きとばかりに崩れ落ちる空間ごと3人を斬り刻むように舞うが、それも奏のエレメンタル・シールドとブレイズセイバー、瞬の銀のオーラと響の紅のオーラに全て絡め取られ。
「バージニアさんの解放のためなら、全力を」
 瞬が450本の氷の矢を降らせ、麻痺と目潰しを兼ねた結界術を併用してバージニアの目を眩ませた上、動きを鈍らせて制約すると。
 響も合体させて精鋭と化した真紅の騎士団とともに、蛇腹剣の刀身を繋ぐワイヤーをブレイズランスの穂先で片っ端から切断、分解しながらバージニアに迫った。
「…………!!」
 蛇腹剣をバラバラに砕かれたバージニアの動きが、一瞬止まる。
「これで……!」
 その隙を縫うように、響は手にしたブレイズランスを力強く突き出した。

 ――炎の穂先は、吸い込まれるようにバージニアの胸を貫いていた。

 その場に崩れ落ち座り込んだバージニアは、溶けるように消える純白のダブレットを手放すまいと両手で抱えつつ、響たちにすがるような目を向ける。
「ああ、ああ……」
 バージニアの口から洩れるのは、強気な言の葉でも、滅びを求める意志でもなく――。
「彼が、大罪を犯さないようにするには……私が彼の分まで罪を背負うしかない……」
 ――世界崩壊を止めるための、唯一の術。
「……わかったんだね」
 最早バージニアに敵意が無いと判断した響は、真紅の騎士団を還し、見守る。
 その傍らでは、瞬が同じように見守っていた。
「彼はこの世界を壊したくない、私に罪を背負わせたくないって言っている」
 ――世界崩落のきっかけは、青年退魔騎士の言の葉だから。
「けど、私はどうしても世界を壊す、世界を赤い雨で支配する……その想いが捨てきれない」
 ――既に骸魂と化した己の想いは、己自身では変えられない。
「でも、彼はそれを望んでいない、壊さないでって願っている……」
 いつしか、バージニアの目から零れ落ちていた涙は、止まっている。
「だから、彼の願いを叶えるために……」

 ――私を、骸の海へ送って。

 それは、バージニアが罪を背負うことを選んだ、証。
「……はい」
 奏は静かに頷き、エレメンタル・シールドとブレイズセイバーを納めて近づく。
 そして、渾身の祈りを込めた拳を、バージニアの胸に叩き込んだ。

 ――トス…………ッ。

 祈りの拳を胸に受けたバージニアが地面に頽れつつ、けほっと咳き込みながら吐き出したのは、純白の優しい光。
 そのまま、バージニアは地面に横たわり、視線を彷徨わせる。
「――様」
 愛しい人の名を呼ぶバージニアの声は、儚く空気に溶け込み、響や瞬の耳には届かない。
 涙で滲む彼女の目が止まった先には、先ほど吐き出した優しい光が、まるでバージニアとの別れを惜しむように揺蕩っていた。
「どうか……」

 ――私の分まで、生き永らえて下さい。

 かろうじて優しい光に届く程度のか細い声で願いを伝えたバージニアの目は、そのまま静かに閉じられる。
 そして、その姿はゆっくりとかき消えて行った。

 バージニアの口から吐き出された優しい光は、ゆっくりと地に落ちると大きく膨らみ、優しく弾ける。
 弾けた光が消えたその場には、純白の鎧を身に付けた青髪の青年が倒れていた。

 バージニアの消滅と共に、世界の崩落は止まる。
 ――世界は、テープをゆっくりと巻き戻すかのように元の姿を取り戻していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『不思議な喫茶店』

POW   :    客を驚かせるハプニングに遭う

SPD   :    不思議なメニューを注文する

WIZ   :    不思議な店員と仲良くなる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●世界崩落は止まれど、心の傷は埋められなくて
 世界の崩落は、バージニアの消滅と共に止まった。
 崩れ落ちつつあった世界は、ビデオテープを巻き戻すかのように、ゆっくりと元ある姿を取り戻して行く。

 しばらくすると、世界は完全に元の姿を取り戻す。
 ――まるで、最初から崩落なんぞなかったかのように。

 一報、バージニアと一体化していた青髪の青年は、猟兵達の手で介抱されると、直ぐに意識を取り戻す。
「彼女を……バージニアを止めてくれて、ありがとうございます」
 青年は丁寧に頭を下げ、猟兵達に礼を述べるも、どこか寂しそうな表情を浮かべていた。

 ……おそらく、青年は理屈では納得しているのだろう。
 だが、再び引き離された喪失感が強く、感情では納得できていないのかもしれない。

 ふと、池の畔に目をやると、「喫茶店」の札を掲げる西洋風の小さな家屋が目に入る。
 戦いの後の小休止を兼ねて、あるいは青年退魔騎士の話を聞くために、喫茶店で一息ついても良いかもしれない。

 猟兵達は、青年退魔騎士を誘い、小さな不思議な喫茶店へと足を運ぶ。
 ――つかの間のひと時を過ごし、青年退魔騎士の心を癒すために。


※マスターより補足
 第3章は、不思議な喫茶店で一息つくことができます。
 POW/SPD/WIZは一例ですので、ご自由にプレイングをおかけくださいませ。

 お望みなら、飲み物や軽食も注文できます。
 和洋中問わず、一般的な喫茶店にあるものなら、大抵のものは出してくれるでしょう。

 先程救出した青年退魔騎士も、喫茶店内にいます。
 彼の心のケアも兼ねて、是非、お話を聞いてあげて下さい。

 それでは、良き一時を。
アカネ・リアーブル
連携歓迎

美味しい紅茶を手に退魔騎士様とお話を
退魔騎士様、お名前は何とおっしゃるのでしょう?

お茶とお菓子を前にして
バージニア様を思い出し
どんなことがあっても一緒にいたい
その想いが叶ったのにこんなことになってしまって
お辛い、のではありませんか?

アカネは思うのです
無理に納得なんてしなくてもいいと
例え世界を守るためでも
騎士様にとってアカネ達は大切な人を斬った敵です

憎んでも良いのです
恨んだって構いません
ですがそれに飲まれないでくださいませ
マイナスの心を吐き出して落ち着いたなら
どうか前を向いてくださいませ
バージニア様もきっと
それを望まれる筈です

だって
幸せになれる筈だった時間は
騎士様の未来にあるのですから


シル・ウィンディア
わたし、あなたに聞きたいことがあるの

ええとね…
愛って何だろっておもって…

好きっていう気持ちは、わたしにもわかる、わかってるつもりなの。
一緒にいて、うれしくなったり、ほわーってしたり、そういう感情が出ることなんだなーって。
でも、愛って、どうなんだろって思って…
バージニアさんは、あなたが好きだから、あなただけがいればって思って、世界より、あなたを一緒にいることを取ったんだよね

好きより、とってもすごいことなんだっていうのはわかるけど…
これって、わたしでもわかるものなのかなぁ…

いつかわかる時が来て…
どうなるんだろ?やっぱり、世界よりその人をとっちゃうのかな?
でも、そういう人と一緒になりたいとは思うな


鹿村・トーゴ
向かいに座り名は敢えて聞かず
騎士が名乗れば自分も応え

や、騎士さん
会うのは初めてだな?
…姫さん失くしてすぐに討伐の謝辞が出るなんて痛いぐらい真面目な人だ
…喪失感でいっぱいとは思うけど
…どう?せっかくなら姫様と楽しい話聞かせてくんない?
オレらは悲壮な姿しか知らねーがあんたはもっと可愛いとこや素直なとこ見たでしょ
敵なのに好きになるぐらいだもん

オレもねー好きな子いたけど色々あって…まぁ、なんだ(苦笑
気は強いし裾まくって蹴るし怒ったら牛の糞とか虫とか投げるよーな子だったけど楽しい時もシンドイ時も一緒に居てくれる子で…あ
オレの話より…(騎士を促し
(はちみつ飴を差出し)どう?疲れた時は甘味が効くよ

アドリブ可



●不思議な喫茶店
 ――カラン、カラン。
「いらっしゃいませ」
 来客を告げる鐘の音と落ち着いた店員の声、そしてアンティーク調の落ち着いた内装に出迎えられ、不思議な喫茶店の扉を潜った猟兵たちの想いは、さまざま。

 鹿村・トーゴは普段通りの振る舞いをしつつ、何やら想いがあるようで。
 シル・ウィンディアはどこか考え込むような表情をして。
 そして、アカネ・リアーブルは……笑顔の裏に沈痛さを浮かべて。
 純白の鎧に身を包んだ青髪の青年退魔騎士は、平静さの下に寂しさを抱えて。

 四者四様の感情を抱え、青年退魔騎士と猟兵たちは、ホール係に飲み物を注文した後、席につく。
 案内された木製のテーブルは、4人で向かい合うにはやや大きかったのだが、青年退魔騎士に対するそれぞれの感情を考えれば、これくらい広い方が有難い。
「や、騎士さん。会うのは初めてだな?」
 テーブルを挟んで青年退魔騎士の向かい側に座ったトーゴがややぶっきらぼうに挨拶するのに合わせ、その隣に座ったシルが小さく頭を下げ。
 あえて青年退魔騎士の隣に座ったアカネが優雅に一礼し、先に口を開く。
「そういえば退魔騎士様、お名前は何とおっしゃるのでしょう?」
 バージニアは何度か彼の名を呼んでいたが、その名は儚くかき消えるように囁かれていたからか、猟兵たちには聞き取れていない。
 敢えて名は聞かないつもりだったトーゴの耳がぴくり、と反応するが、他の猟兵が聞くのを止めるつもりもない。
「ああ……クリフォード、さ」
「クリフォード様、ですね」
 よろしくお願い致します、とアカネは丁寧に頭を下げた。

 クリフォードの名乗りの後、トーゴたちがそれぞれの名を名乗ったところで、それぞれの目の前に注文した飲み物が用意される。
 トーゴの前には緑茶と塩あられ、シルとアカネの前には美味しい紅茶とクッキー。
 そして、クリフォードの前には……透明なグラスに注がれた琥珀色の液体。
「……クリフォードさんの飲み物、何だろう?」
 見たことのない飲み物に興味を惹かれたシルの疑問に、答えたのはクリフォード。
「ああ、これはミードだね」
 アルコール分を抑えてあるミード――蜂蜜酒の入ったワイングラスを掲げ、目を細めるクリフォード。
 クリフォードがUDCアースで生きた時代、紅茶やコーヒーはまだ存在せず、衛生上の懸念から水をそのまま飲むのも一般的ではなく、ゆえに腐敗しづらいアルコールを含むワインや蜂蜜酒等が好まれていたとか。クリフォードも例外に非ず、ということなのだろう。
 それはさておき、トーゴとアカネ、そしてシルがそろってミードに興味を示すが、クリフォードが視線で制する。
「飲むと身体が温かくなるけど、たまに気が大きくなりすぎて騒ぎを起こすこともあるから、君たちには無理に勧めないよ」
 お話するなら酒精抜きで冷静にね、と苦笑いを浮かべながら、ミードを一口喉に流し込んだクリフォードの言には、妙な説得力があった。

●過去の追憶は愛の記憶
 緑茶と紅茶、そしてミードで一息ついた後、話を切り出したのはクリフォード。
「君たちは、何か僕に聞きたいことがあるのだろうけど、その前に改めて礼を言わせて下さい」

 ――彼女を止めてくれて……ありがとうございます。

 立ち上がり頭を下げるクリフォードの言葉は、真摯な想いが籠ったものなのだけど。
 想い人を斬った相手に対して頭を下げるのは、あまりにも生真面目すぎないだろうか?
「……姫さん失くしてすぐに討伐の謝辞が出るなんて、痛いぐらい真面目な人だ」
 ぽつり、と呟くトーゴの独りごとは、誰の耳にも乗らず流れゆく。
 ――本当は、胸の裡は喪失感で満たされているはず。
 だが、おそらく、喪失感より世界崩落を引き起こした一因を作った者としての責務が優先され……謝罪が先に口から出てしまうのかもしれない。
 だから、トーゴは喪失感を紛らわせるために、あえて話の方向性を変える。
「……クリフォードさん、どう? せっかくなら姫様との楽しい話、聞かせてくんない?」
「バージニアとの、かい?」
 改めて腰掛けたクリフォードに、ああ、と頷くトーゴ。
「オレらは悲壮な姿しか知らねーが、あんたはもっと可愛いとこや素直なとこ見たでしょ」
 だって、敵なのに好きになるぐらいだもん、と口ごもるように付け足すトーゴの頬は、心なしか赤らんでいるように見えて。
「オレもねー好きな子いたけど色々あって……」
 手にかけた事実はあえて呑み込んだトーゴは、苦笑して誤魔化しつつ、言葉を紡ぎ続ける。
「まぁ、なんだ。気は強いし裾まくって蹴るし怒ったら牛の糞とか虫とか投げるよーな子だったけど、楽しい時もシンドイ時も一緒に居てくれる子で」
 幼馴染ゆえ、気づけば一緒にいるのが当たり前になっていて。
 ……だからこそ、好意が恋に、愛に変わっても気づけなかった。

 ――それは、トーゴが一生抱えねばならない後悔なのかもしれない。

「おっと、オレの話より……」
 咳払いして、そっちの話を聞かせてよ、と目で促しつつ、はちみつ飴を差し出すトーゴ。
「どう? 疲れた時は甘味が効くよ」
「君の好きな子は、なかなか強気な子だったようだね」
 過去形で話すトーゴの口振りから、彼女の「今」をあえて詮索すまいと決めたか、クリフォードは苦笑と共にトーゴの促しと飴を受け取り、口に含む。
「そうだね、君たちは僕とバージニアの話を聞きに来たのだろうから」
 暫く飴を口の中で転がした後、クリフォードはゆっくりと、バージニアとの思い出話を紡ぎ始めた。

「バージニアは吸血鬼……僕たち退魔騎士にとっては決して交わる余地のない相手だ」
 ――退魔騎士にとって、闇の住人たる吸血鬼は不倶戴天の敵。
 バージニアと出会う前のクリフォードは、それを信じて疑わない、生真面目な騎士だった。
「彼女と初めて出会ったのは、静かな川のほとりだったかな」
 クリフォード曰く、ふたりの出会いは、川のせせらぎをひとり静かに寂しく眺めていたバージニアに、クリフォードが声をかけたことから。
 生来の気の弱さから、吸血鬼の里でも居場所を見いだせなかったバージニアは、しばしば里を抜け出し、川のせせらぎを眺めていたところを、クリフォードに目撃された。
「一目見て吸血鬼とわかったけど、なぜか斬るべきとは思わなかった」
 ――彼女の背中があまりにも儚くて、消えてしまいそうだったから。
「だから、つい声をかけてしまって、ね」
 躱した言の葉は少しだけだけど、それでもバージニアは喜んでくれて。
 ――その時の笑顔が、あまりにも忘れられなくなって。
「それから、時々彼女と川のほとりで落ち合い、話すようになったさ」
 最初は、バージニアの寂しさを紛らわせるだけのつもりで、頃合いを見て斬るつもりだったのだけど。
 逢瀬を、言葉を重ねるうち、いつしかお互いの優しさを知り、惹かれ合うようになっていた。
「僕自身の考えも変わったよ。闇の住人だからと一方的に悪だと決めつけ、斬るのはどうなのか……って」
 だから、いつか闇も光も共存できるよう、ふたりとも願うようになっていたのだけど。
 その考えは、闇を滅すべしとの信条を掲げる退魔騎士団の中では異端そのもので。

 ――そしてあの日、クリフォードがバージニアを斬ったことで終わりを告げたのだ。

●これからの幸せ
 クリフォードの話が途切れたのを見計らい、アカネはクリフォード様、と口を開く。
「どんなことがあっても一緒にいたい、その想いが叶ったのに……こんなことになってしまって、お辛いのではありませんか?」
「辛い、か……」
「アカネは思うのです。無理に納得なんてしなくてもいいと」
 アカネの目には、クリフォードは無理やり己を納得させ、喪失感を誤魔化しているように見えた。
 たとえ世界を守る為でも、クリフォードにとってアカネたち猟兵は大切な人を斬った敵のはず。
 だからこそ、憎まれても良いし、恨まれても構わない。
 ……そう、アカネは考えていたのだけど。
 しかし、クリフォードが静かに首を横に振った。
「無理に納得しているわけでは、ないよ」
「ですが、それに呑まれては……」
 驚くアカネの言葉尻を制し、クリフォードは本音を吐き出す。
「本当は、彼女と再会するのは少し怖かったからね」

 ――彼女は、斬った僕を恨んでいたのではないか、と。

「それまでの関係が好意的なものであっても、斬って身の証を立てるよう上に強いられたとしても……懇意にあった彼女を裏切り、斬ったのは僕だ」
 クリフォードの言の葉は、後悔とともに過去を振り返り紡がれてゆく。
「だから、たとえ生き永らえたとしても、彼女は僕を恨んでいる……そう思っていた」
 それでも、骸魂と化した彼女をこの世界で発見した時、彼女は驚きつつもクリフォードとの再会を喜んでいた。
 思わず抱き抱えたあの時、耳元で囁かれた言葉は、今でもクリフォードの耳に焼き付いている。

 ――私も、もうあなたを離したくありません。
 ――だから、私とひとつになってください。

 骸魂と化したバージニアの懇願を聞いたクリフォードは、もう2度と彼女を手放すまいと心に決め、永遠を願った。
 ――世界の崩壊につながる永遠を、願ってしまったのだ。

「結果的に、それは世界の崩落を招く願いになってしまったのだけどね……」
 寂し気に呟くクリフォードに、アカネはクリフォードのバージニアへの愛情の深さを感じ取っていた。
「心から永遠を願い紡いだ言葉が、世界を壊す言葉になったのですね……」

●「愛する」こととは
「わたし、あなたに聞きたいことがあるの」
 話しが一区切りついたのを機に、聞き役に徹していたシルが徐に口を開く。
 皆の話を聞きつつ、シルはずっと考えていたのだが、いつまでも疑問が脳裏を悶々と回り続けていたので、思い切ってクリフォードに聞いてみた。
「何かな?」
「ええとね……愛って何だろっておもって……」
「愛?」
「『好き』という気持ちはわかる……少なくともわかっているつもり」
 例えば、一緒にいて、うれしくなったり。
 ふと、手と手が触れたら、ほわーってしたり。
「好き」という感情は、そういう「温かい」感情が出ることなのだろう、と思っている。
「でも、愛って、どうなんだろって思って……」
 ――『好き』と『愛』の違いは何なのか。
「バージニアさんは、あなたが好きだから、あなただけがいればって思って、世界より、あなたを一緒にいることを取ったんだよね」
 シルの考えに、クリフォードは同意するかのように一つ頷く。
「そうだね。彼女は僕しかいない世界を望み……僕だけがいればいいって思った」

 クリフォードは、バージニアの美しさを、想いを永遠に止めるために「停滞」を願った。
 一方、バージニアは……クリフォードを自分だけのものにするために「破壊」を願った。

 ――ふたりとも、世界よりも愛する人を取ったのだ。

「愛って、好きよりとってもすごいことなんだっていうのはわかるけど……これって、わたしでもわかるものなのかなぁ……」
 多感なお年頃に差し掛かっているからこそ、シルの悩みは深い。
 だが、クリフォードは、トーゴをちらりと見ながら笑顔を浮かべる。
「わかるのかもしれないけど、実際は『好き』から恋や愛に変わっていたとしても、なかなか気づかないかもね」
 見られたトーゴが軽く目を見開くが、クリフォードはあえて受け流し。
「でも、最初は不安に感じていたのが、お互い会話を重ね、心を通じ合わせれば、そのうち不安に思わなくなる。それが『好き』から『愛』に変わったということなのかもしれないな」
 僕も良く分かっていないけど、と苦笑いを浮かべるクリフォード。
「でも、いつかわかる時が来て……どうなるんだろ?」
 やっぱり、世界よりその人をとっちゃうのかな? と首を傾げるシルに、クリフォードは柔らかい笑みを浮かべながら答える。
「難しい問いだね。僕達みたいに数百年離れていたら、世界よりも愛した人を取ってしまうかもしれないけど、実際は状況によるんじゃないかな?」
「でも、そういう人と一緒になりたいとは思うな」
「そう、思える人が見つかることを願っているよ」
 願いと共にシルに向けられたクリフォードの柔らかい笑みは、心の底からシルを応援するかのようだった。

●前を向いて、生きよう
 ティーカップや湯飲み、ワイングラスの中が空になったのを見計らい、アカネがクリフォードの目を見つめながら願う。
「クリフォード様、落ち着いたなら、どうか前を向いてくださいませ」
 バージニア様もきっとそれを望まれる筈、と続けようとして、アカネはクリフォードの顔を見てその言葉を呑み込んだ。
 ――クリフォードの柔らかな笑顔の下に色濃く宿っていた寂しさは、かなり薄れていたから。
「ありがとう。もう……寂しくはないから」
 猟兵達と言の葉を交わし、バージニアとの思い出を振り返って紡いだことで、喪失感はかなり薄れていた。
 もし、喪失感を埋められなければ、またどこかで世界崩落の言の葉を紡いでしまう可能性はあったが、この様子ではその心配はないだろう。
「寂しさが紛れたなら、安心したぜ」
「ほっ……」
 トーゴが胸をなでおろし、シルも一安心したところで、アカネがどうか未来に目を向けて下さい、とそっと付け加える。
「幸せになれる筈だった時間は、クリフォード様の未来にあるのですから」
「そうだ……ね」
 天井を眺めつつ、アカネの言葉通りに未来に目を向けるクリフォードを、トーゴたちは安堵の息をつきつつ、しばし見守った。

 ――不思議な喫茶店は、彼らの未来と愛をそっと応援するかのように見守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月19日


挿絵イラスト