Ding-Dong Ying-Yang
横濱市、中華街。
帝都に程近い港湾都市として繁栄するこの都市は、それ故そこかしこに異国情緒溢れる景観を有している。
この中華街もその一つ。華人達が住み着き、故国の文化色濃い街を築いたのに始まり。紆余曲折の末、今では帝都に名高き観光名所の一つとなっている。
それ故、行き交う人々も華人や帝都の民に限らず、欧州、亜米利加、露西亜…世界各地の人々が集い、帝都のそれと習合せし中華の食や文化を楽しんでいるのだ。
街の外れ、中華仕込みの絡繰仕掛けで稼動し時を告げる時計塔。そんな文化の融合が生んだ、この街の象徴である。
だが、集うは善き人々ばかりと限らぬ。
見よ、今しがた路地裏に消えようとする、欧州の者と思しき金髪碧眼の男を。
その首に巻かれしは鉄の首輪――その装いが意味する処は、即ち。
●
「――幻朧戦線のスパイが、帝都に紛れ込んでいるのです」
グリモア猟兵、蓮見・津奈子(真世エムブリヲ・f29141)は静かに、然しはっきりとそう告げた。
「実の処、元より帝都はスパイ大国――世界各地の国や都市が、自分達の権益を確保するべくスパイを送り込み、他国を出し抜くための情報戦に明け暮れているのです」
帝都のもと統一の成ったサクラミラージュではあるが、世界各地に人々が暮らしている以上、其々の地域単位での緊張関係や利害関係は常にある。そうした競合相手に対し少しでも優位を確保するべく、或いは純粋に帝都での高い地位を確保ないし維持するために。帝都には世界各地から送り込まれたスパイが犇めいているのだという。
「純粋に自国や自都市の利益の為に行動しているスパイなら、問題はないのですが…」
その活動が行き過ぎないよう、時々取り締まりを行う程度の対処で、帝都の治安は充分に維持できてはいるのだが。
「これらのスパイの中に、幻朧戦線に協力している人物が混じっているようなのです」
本来所属している国や都市の利益ばかりでなく、幻朧戦線の活動を支援するべく活動する者。そんなスパイを見つけ出し、捕らえること。それが此度の任務の目的となる。
「予知において、横濱市の中華街に、そうしたスパイの一人が潜伏しているらしいと分かっております」
しかし当然ではあるが、スパイがそうだと分かる装いをしているはずがない。一般人に紛れられるよう身を装っていることだろう。
「とはいえ、スパイですので情報収集を目的とした何らかの活動があるのは間違いありません。その痕跡をもとに、スパイを割り出してください」
それらを証拠としてスパイに突き付け、抵抗の意思を削いだ上で捕縛するのだが。
「ただ、敵もただでは捕まらないでしょう。あの手この手を用い、逃亡するものと思われます」
なので、それを追跡して捕まえる必要がある。
「中華街の外れに、数十年前からある古い時計塔が建っておりますので、敵が逃げ込むならここでしょうか」
内部は中華仕込みの絡繰仕掛け。当然の如く入り組んでおり、追跡者を撒くにはうってつけの構造だ。敵を見失わないよう注意が必要だろう。
「とはいえ、相手は一般人。猟兵としての身体能力を活かして派手に追い立てれば、怯みと焦りで墓穴を掘る可能性も高いかと」
時計塔の絡繰仕掛けを活用すれば尚良いかもしれない、と言い添えて。
「ですが、それだけでは恐らく終わりません…何らかの影朧兵器を持ち出してくる様子も、予知には見えました」
かのスパイの切り札ということだろう。戦の備えも必要となりそうだ。
「かのスパイを捕らえ、情報を得られれば、幻朧戦線の背後に居る存在にも、もしかしたら手が届くやもしれません」
元より封印された筈の影朧兵器を多数擁し、あれだけ派手にテロルを繰り返す組織である。何処かの大きな組織のバックアップがあると考えるのが自然であろう。
「その為にも、皆さんのお力で何とかスパイの捕縛をお願いします」
丁寧な一礼の後、津奈子はその手にグリモアを輝かせ。
一行を、サクラミラージュの中華街へと送り出してゆく。
五条新一郎
中華的シティアクション。
五条です。
さて此度のシナリオの舞台はサクラミラージュの横濱中華街。
かの街に潜む、幻朧戦線に協力するスパイに対する大捕物でございます。
●舞台
サクラミラージュ、横濱市中華街。
中華風の建物や店舗が並ぶ大通りと、入り組んだ裏路地とから成ります。
人気の観光名所ですので人は多いです。
●第一章
中華街を舞台とした「日常」です。
色々食べたり見て回ったりしつつ、スパイを探しましょう。
「こんな痕跡があったからあそこにスパイがいる!」ぐらいのノリでOKです。
●第二章
スパイが逃げ込んだ絡繰時計塔での「冒険」です。
絡繰仕掛けを突破しスパイを追い詰めましょう。
絡繰を利用する等して派手にスパイへ迫るプレイングにはプレイングボーナスがつきます。
●第三章
スパイが切り札として影朧兵器を繰り出してくるので、これに対処する「ボス戦」です。詳細は第三章移行時に。
●プレイングについて
第一章はOP公開直後から、第二章以降は章移行後に断章を投稿しますのでそれ以降からプレイングを、受け付けさせて頂きます。
それでは、皆様の華麗なプレイングお待ちしております。
第1章 日常
『桜舞うチャイナタウン』
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POW : 美味しいものを食べ歩く
SPD : 色々な店を見て回る
WIZ : 中華街の雰囲気を満喫する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎
■行動
スパイ、ですかぁ。
確かに厄介ですねぇ。
『幻朧戦線』の方々は『鉄の首輪』を嵌めているみたいですから、此方で判別出来るかもしれません。
晒して歩いてはいないでしょうが、『外すことは出来るが最近まで着けていた』なら『首元の日焼けの跡』で判別出来るでしょう。
また、その『跡』を隠したいか『外せない理由が有る』なら『夏場の気温に関わらず首を隠している』筈ですぅ。
【饒僕】を使用、該当する方々を捜索し見張らせれば、誰かしら当たる可能性は高そうですねぇ。
中華街なら色々と美味しい品が有るでしょうし、[大食い]で食べ歩きやお土産の物色をしつつ『僕』からの報告を待ちましょうかぁ。
昼下がりの横濱中華街。平日であれど行き交う人々の数は多く。
「やっぱり人気の街なのですねぇ」
その賑わいは、UDCアースにもある同名の街に勝るとも劣らぬ。実感を込めて呟くは、和洋折衷のドレスで豊満極めた肢体を包む美しき少女。夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)である。
「この街でスパイ探索…これは厄介ですねえ」
これだけの人出、そして複雑な裏通りにまで至る広い街区。虱潰しに探すばかりでは到底スパイを見つけるなど叶わないだろう。
ならばどうするか。答えは簡単である。そしてるこるには、それを為すに適したユーベルコードがある。
「――大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、女神の僕達よ、私の元へ」
己の奉ずる女神への祈り。其を以て発動したユーベルコードに応え、空から無数の小さな影が舞い降りる。それは雀や鳩といった小型の鳥達。総計89羽。集い来たる彼らはるこるの周囲の電線や屋根の上へと止まり、彼女を見つめ指示を待つ。
「お集まり頂きありがとうございますぅ。皆さんにお願いしたいのですが…」
幻朧戦線の構成員であれば、何と言っても黒い首輪が特徴である。だがその特徴も知れ渡って久しい現状、堂々とその姿を晒していることは有り得まい。ならば。
「首を隠しているか、或いは首に日焼け跡のある人を探して、追跡をお願いしますぅ」
首輪自体を隠すか、首輪を外すか。その二択であろうと踏み、るこるは指示を出す。それを受けて、鳥達は一斉に飛び立ち中華街の各所へ散ってゆく。
彼らはただの鳥ではない。情報収集に必要な能力を有する女神の僕である。故にこそ、何かを見出すことができれば間違いなくそれを伝えてくれることだろう。確信をもって、るこるは頷く。
「…さてぇ、私も行きましょうかぁ」
無論、彼らに任せきりというわけにはいかない。るこるもまた、中華街へと足を踏み入れてゆく。
「…ん、肉汁がじゅわっときて…美味しいですねぇ」
それから小一時間。るこるは色々な店を見て回りつつ、色々な食べ物を食べ歩いてきていた。
小籠包、胡麻団子、フカヒレスープ、シウマイ。どれも甲乙つけ難い美味なるものであった。そして今は唐揚げ――彼女の掌よりも大きな鶏の唐揚げを食しているところだ。この間、絶えず何かを食べ続けていたるこるであるが、元より健啖な彼女である。まだまだ食せる量には余裕がある様子であった。
「それにしても…流石に目立つところには姿を見せないみたいですねぇ」
無論、任務を忘れて食べ歩きに興じていたわけではない。色々食べている間にも、行き交う人々の姿に目を光らせ、その首元を確かめていたわけであるが。彼女の見た範囲内に、これといって不審な人物の姿は見受けられなかったようだ。
唐揚げも食べきり、この先の行動について考えを巡らせ…ようとした処に、一羽の鳩が舞い降りてきた。先程放った女神の僕の一羽だ。
「っとぉ、何か成果があったでしょうかぁ」
腕を掲げ、そこに止まるよう促するこるに応え、鳩が着地。そして何かを告げるかのように、嘴を震わせてみせて。
「――おぉ。裏通りの…なるほどぉ」
僕からの情報を元に、裏通りの一角、雑居ビルの密集する区域に踏み入ったるこる。情報によれば、そこにスパイが潜んでいるということであったが。
「…あれは」
目の前を横切った、金髪碧眼の男。この残暑厳しい時期にも関わらず、ハイネックのシャツ。
「…怪しいですねぇ」
そこへ更に、一羽の雀がるこるの肩へ降りてくる。そこから齎された情報は。
「…間違いない、ですねぇ。あの下に、首輪があるということなら」
確信を以て頷き。彼を捕縛するべく、準備を開始するるこるであった。
大成功
🔵🔵🔵
花澤・まゆ
華やかなチャイナタウンに目を奪われがちだけど
この人々の中にスパイが紛れ込んでいるわけだよね
さて、痕跡は見つかるのかな
でもまずは腹ごしらえから
あたし、中華風の本格あんまんって食べてみたい!
ほかほかのあんまんを食べながら痕跡をたどるよ
あそこに書いてある文字、異国の文字みたい
まるで暗号のよう
あっちにもこっちにも書いてある
ん?それを消そうとしてるあの人は、まさか?
あの、お話を聞きたいんですけど、と【コミュ力】使用
でもあんまん食べつつだから威厳ないかも
逃げればスパイの可能性は高くなる
待って、あまり手荒なことはしたくないんだけどなあ
アドリブ、絡み、歓迎です
中華街へと向かう通りを颯爽と駆ける、桜色のダルマ自転車。サドルに跨るは、黒のツインテールと白の翼を風に靡かす娘。花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)。
「よっし、到着っ」
駐輪スペースに自転車を停め、見上げるは中華街入口の大門。その先を見遣れば、処狭しと人が行き交う様と、鮮やかな色合いの建物群が視界に満ちる。その様、思わず目を奪われそうな程の華やかさであるが。
(でも、この人々の中にスパイが紛れ込んでいるわけだよね)
東洋系、中東系、欧州系、阿弗利加系。様々な人種の、様々な年代の人々。この中に紛れたスパイを見つけ出すとなると、並大抵の業ではなさそうだ。
果たしてスパイの痕跡を見つけ出すことはできるのか。否、見つけ出すのだ。まゆは頷き、表情を引き締めて。中華街へと足を踏み入れてゆく。
(…でも、まずは腹ごしらえからだね)
思い直したまゆ。中華饅頭を売る店舗の店先にてあんまんを買い求めていた。中華風の本格的なあんまんを食べてみたい、と思っていた彼女としては丁度良い機会であったが故に。
「わ、おっきぃ…」
店主より手渡されたあんまんを受け取れば、まずその大きさに驚く。まゆの掌に収まりきらないそのサイズは、他の処で食すそれより一回り以上は大きいだろうか。
残暑厳しい九月の日差しの中でも湯気が見えそうな程に、ほかほかと熱を漂わすあんまん。小さな口をいっぱいに広げてかぶりつけば、熱気と共に口中に伝わる、もっちりと豊かな弾力を帯びた皮の食感。次いで広がるは、しっとりとした漉し餡の甘み。
「…ん~っ、美味しい…!」
蒼穹の瞳を細め、感じる豊かな味わいに浸る。これ程に美味なあんまんは、或いは初めて食べるかもしれない。存分にこの味を堪能したいところではあったが。
(っと、そろそろお仕事もしていかないとね)
あんまんを食べながらでも、痕跡の探索は可能だ。店主に礼を残し、まゆは歩き出す。
大通りから枝葉じみて伸びる裏道。その一本に足を伸ばす。入り込んですぐの壁に、チョークで書いたような文字が見える。
(これは…異国の文字みたい?)
アルファベットのようにも見えるが、少し形が違うようにも見える。もしや暗号の類だろうか。只の落書きの可能性もあるが、意味が通りそうなその文字は気になる。
半分程を食べきったあんまんを更に食べ進めつつ、歩を進めてゆく。同様の文字が、壁面の随所に見える。中には、短い文字列の下に違う色のチョークで別の文字列が書かれたものも。
(連絡を取り合ってる…?)
内容が気になるところであるが、生憎とまゆの知らぬ言語である。それに恐らくは暗号だろう。そもそも、本当に意味のない落書きである可能性も消えてはおらず…
(…ん?あの人、文字を消そうとしてる…?)
何やら黒板消しじみた道具で壁を擦っている一人の男。金髪碧眼、欧州系の人間であろうか。明らかにこの中華街とは深い縁のありそうにもない人物だ。
その行動を見るに、何かを知っている可能性は高いか。意を決し、まゆは男へと近づいて声をかける。
「あの、そこのお方。少しお話を聞きたいんですけど…」
声をかけた瞬間、男の背がびくり!っと大きく震えたように見える。そして振り向いた男。あんまんを食べながら声をかけてきたその少女の様子に、一瞬毒気を抜かれたかのように呆けた顔をするが。
「………!!」
すぐに我に返ると、弾かれたように駆け出して。
「あ、ちょっと待って!」
このタイミングで逃げるとなれば、スパイの疑いは濃厚だ。追跡を開始するまゆ。
「あんまり手荒なことはしたくないんだけどなあ…」
幻朧戦線と関わりあるものとはいえ、今を生きる人間。その命を散らすは忍びないし、何より情報を得なければいけない。
路地を駆け抜けるスパイを見失わぬよう慎重に、しかし大胆にまゆは駆ける。かのスパイを追い詰め観念させるために。
大成功
🔵🔵🔵
アストリッド・サンドバック
【SPD 永劫線の観測者】
あまり、猟兵として動くのは好きでは無いのだけれどね。これも星の導きだろうから、少し手伝わせてもらおうかな。 【永劫線の観測者、占星術57】で、中華街の路地に占い屋台を出させて貰おう。近くのお店から胡麻団子や小籠包を買ってきて食べつつ、座って街行くヒトたちを眺めたりするよ。もちろん、お客が来たら占うけれど……スパイか。ボクの星占いは、生年月日を正確に教えて貰わないといけないんだよね。可能なら、何時に産まれたのかまで。 ……教えてくれるなら、正確に占えるのだけれど。偽られてしまったら、それはそれで仕方ない、かな。 一応、本職占い師なので真面目に答え、軽く忠告もしておくよ。
中華街の大通り、種々様々な露店が並ぶ一角。その中にあって一軒、他とは少々趣の異なる露店が、その日は立っていた。
「アナタ見慣れない人ネー?今日からココで商売するカ?」
「いや、ボクは流れの占い師でね。ここでの商売は今日だけだよ」
物珍しさに目を瞬かせつつ声をかけるのは、隣の露店の中年女性。応えるは、波打つショートヘアとその声音が中性的な雰囲気を醸し、そこに由来する神秘性を纏う女性。アストリッド・サンドバック(不思議の国の星占い師・f27581)だ。猟兵であると同時に占い師でもある彼女。その技を活かしてスパイを探り出さんと、こうして占いの屋台を出した次第である。
しかし中華街にも占いを行う店は少なからずあるが、やはり中国由来の易や風水といったものが主。対してアストリッドの占いは、どちらかと言えば西洋のものに近い占星術。それ故、周囲の人々には物珍しさを感じさせたようだ。
(あまり、猟兵として動くのは好きではないのだけれど――)
己を『観測者』と定義するアストリッド。運命を視る者であるが故に、運命へ干渉するを良しとしない身。それ故、普段はグリモア猟兵としての活動に徹しているのだが。
(――まあ、これも星の導きなのかな)
此度の任務に、そんな星の巡りを感じたが故に。その信念を、少しだけ曲げて。自ら運命を掴むべく、こうしてこの地に降り立った次第である。
「それよりその胡麻団子、美味しそうだね。幾つか買ってもいいかな?」
「アイヤ、お上手ネ!でもこれも何かの縁ネ、ご挨拶ついでにサービスヨ」
然し折角降り立ったからには、楽しむべき処は楽しみたい。丁度かの中年女性が営む屋台は、胡麻団子を商う店だ。買い求めれば、出した額より少し多めの胡麻団子を渡される。
「――さて」
出来立ての胡麻団子を頬張りながら、占い露店の座席につくアストリッド。行き交う人々を眺め、スパイと思しき人物が居ないか視線を走らせる。
「――ふむ。その生まれだと…そう遠くないうちに、良い出会いがありそうだね」
「え、ホントですか!?ど、どんな人が…」
「流石にそこまでは。ただ、何事があれど落ち着いて対応すれば、悪い結果にはならないはずだよ」
「お、落ち着いて…ですね。分かりました!ありがとうございます!」
帝都から来たという若い少女が去っていくのを、アストリッドは手を振って見送る。店という体裁である以上、客が来れば普通に占ってみせる。そうして何人かの客を占う合間に人々を眺めていたが、怪しい人物は見受けられなかった。
(でも…そろそろ来そうだ)
それは星の巡りからの予感か、或いは別の要因か。少し冷めた小籠包を口に運びつつ、アストリッドは思案する。そして。
「星占いか…珍しいな。一つ、占って貰っても良いか?」
アストリッドの前に現れ、声をかけてきた金髪碧眼の男。一大観光地である中華街だ、彼のような西洋人も珍しくはないが。
「良いとも。では…まずは生年月日を教えてもらって良いかな?出来れば、何時に産まれたまで」
穏やかに微笑みながら応えるアストリッド。男は頷き、己の生年月日を告げる。産まれた時刻までは知らないと言うが、アストリッドはそれでも良しとした。
「――なるほど」
ややあって、占いの結果が出る。アストリッドの表情が一瞬、険しくなるのに男が気付いたかどうか。
「…そうだね。極めて近い未来…君の身を、大きな災いが襲う。容易には回避し得ない、大きな災いだ」
「…災い…?それは一体…」
男の視線が一瞬彷徨う。無理からぬ反応である、とアストリッドは内心に思う。まして、彼は。
「そこまでは分からないが…ただ、誠実に、正直であれば。最悪の結果は回避できると思う」
続けての言葉に、男は怪訝そうな表情をしたが。理解したかのように頷いてみせた。
礼を述べて去ろうとする男。その背中に、アストリッドはもう一つ言葉をかける。
「あと、これは忠告なのだけど…君にとって無価値なものが、万人にとってそうとは限らない。己の在り方を、一度見直す時かもしれないよ」
その言葉は届いたかどうか。そのまま、男は去っていった。
(さて…彼はどう動くのだろうね)
心中、アストリッドは一人ごちる。先の占いが導き出した事実――彼こそが、幻朧戦線のスパイであったという事実を思い返しながら。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
「帝都に近いですけれど、此方まで足を延ばしたことはなかったので…お仕事とは言え楽しみです。今の流行はなんでしょう」
観光マップ手にウキウキ歩く
焼き小籠包、珍珠奶茶、肉饅、欲張り串、パンダ饅、お焦げ入りフカヒレスープ等々、食べ歩き用点心をひたすらパクパク
歩き疲れたら点心専門店に入って水餃子、フカヒレ餃子、海老餃子、威化紙揚げ、胡麻団子、ココナッツ団子、タピオカ入りココナッツミルク等々パクパクしつつUC「蜜蜂の召喚」
視点だけ外に飛ばして探索しなが中華街の食を堪能する
「中華街に政庁はありましたでしょうか…それとも貿易公司?でも関帝廟はお参りしたいですね…ふぅ」
満腹解消に歩き出しつつハリネズミ饅を齧った
中華街の入り口たる大門の下、桜色と菫色を装った桜の精のパーラーメイドが、門の先の街並みを見つめている。カフェーの仕事合間に抜け出してきたのかと思うが違う。それは彼女――御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)の常の装いであるのだ。
「中華街。来たのは初めてですし…お仕事とはいえ楽しみです」
その大きな翠の瞳は、羨望できらきら輝いていた。何しろ帝都に近いここ横濱だが、だからといって普段帝都に住まう者なら皆行ったことがあるとは限らないのだ。彼女も、訪れたことのない側である。
「さてさて、今の流行は何でしょうか」
片手には最寄り駅で仕入れてきた観光マップ。その記述と実際の街並みとを交互に見比べながら、桜花は中華街へと足を踏み入れてゆく。
「ん~!肉汁がじゅわっときて…あつっ」
焼き小籠包を一口食べて、その濃厚な肉味に感嘆しつつも、溢れた肉汁の熱さに悶える桜花。慌てて傍らに置いていた珍珠奶茶――タピオカティーで口内を冷やす。程よい甘みに弾力溢れるタピオカの食感が加わるのが、何だか心地よさを覚える。
「はふはふ…お饅頭にするとまた違った味わいがあって…」
それらを食べたら次は肉饅だ。大きな饅頭生地は食べ応え抜群。
「…ふう、この温かみ、ほっとしますね…」
一通り食べきれば、フカヒレスープを啜って口中を潤す。高級食材たるフカヒレだが、それを使いながら安価に提供されるこのスープもまた人気のメニューだ。そして安くとも味わいは確か。一緒に入っているおこげが良いアクセントとなっている。
「そろそろ休憩しましょうか」
そうして食べ歩きを続けていた桜花だが、やがて歩くのにも疲れが出てくる。観光マップを見れば、丁度付近に点心専門店があるらしい。そう見れば足はそちらへと。
「うーん、水餃子もフカヒレ餃子も海老餃子も美味しくて…贅沢な食べ比べですね」
そうして入った点心専門店にて、様々な点心を注文しては次々と食してゆく。他にも香ばしい胡麻団子やぱりっとした威化紙揚げなど、この店で扱う点心の一通りを食べきってしまいそうな勢いだ。
「…っと、あの人は…」
一見純粋に食べ歩きに来ただけとも見える桜花だが、本来の任務も忘れてはいない。今、彼女の視界は目の前の点心を見ていない。代わってその目に映っているのは、中華街の裏通りの風景。ユーベルコードで放った蜜蜂の視界である。
蜜蜂の目が、息を切らせて何処かの建物に入ってゆく金髪碧眼の男を捉える。未だ残暑厳しいこの時期にありながら、首を丸ごと隠すハイネック姿。焦っているかのような挙動と併せ、明らかに怪しい。
視界は建物の中へ。窓から室内へと入り込めば、乱雑な部屋の光景が視界に広がる。デスク上に無造作に置かれた書きかけの書面。目を凝らしてよく見れば――
『うわっ、蜂だ!?』
「!」
男の驚く声。慌てて上昇すれば、元居たところを丸めた雑誌が振り下ろされ通過してゆく。叩き落とされるところであった。一旦建物の外へと退避。
「危ないところでしたね…ですが、あの書面は動かぬ証拠になりそうですね」
相変わらず点心を堪能しながら、確信を以て頷く桜花。何しろあの書面は、幻朧戦線の者へと己の調査内容を報告する内容であったのだから。
お腹いっぱいになったところで店を出る桜花。男は未だ蜜蜂を以て監視中。ならば、行動に出るまでまだ余裕はある。
「中華街に政庁はありましたでしょうか…それとも貿易公司?でも関帝廟はお参りしたいですね…」
次に向かうべき場所の目星をつけつつ一人ごちる。今はまだ、もう少しだけ。中華街を堪能する桜花であった。
大成功
🔵🔵🔵
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
(POW)
(観光客に扮して周りを見ながら)
何だか親近感湧く場所だな。
シャーリーのドレス姿も、その……似合ってるし(照れたようにそっぽ向いて)。
【料理】の知識で美味しそうなお店を探し、シャーリーと一緒にあちこち食べ歩き。
そして料理に舌鼓を打ちながら店の人と世間話。
「やっぱ活気あるよな、この街。どこもかしこも色んな国から来た人でいっぱいだし」
「でも大変じゃないか? 中には変わった人もいたりしてさ」
外国からのスパイなら観光客を装いその中に紛れるのが一番手っ取り早い。
けど、客商売やってる人なら逆にその中で不自然な動きをしている人がいれば違和感に気づくだろう。
その客についての情報を聞き出す。
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
(POW)
うわあ、すっごーい!
街全体がお祭りみたいだね!
せっかくだからボクもそれっぽい格好に
ねぇねぇ、似合う?
(ブルーのチャイナドレス姿でくるくる回って見せる)
ウィーリィくんにエスコートしてもらって中華街巡り
独特の雰囲気の街並みを眺めながら美味しい料理を楽しむ
やっぱり料理のことは料理人に任せるのが一番だね☆
っと、本題を忘れちゃいけないね
ボクはスパイのターゲットについて調べる
情報収集が目的なら、偉い人とかの贔屓のお店とかに行きそうだよね
そういったお店を探して不審な人がいないか調査する
行き違いになっちゃっても目撃情報があれば特徴を聞き出せるしね
「うわあ、すっごーい!街全体がお祭りみたいだね!」
数多の人々で賑わう中華街を見回し、シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)は感嘆の声を上げる。
「ああ、それに何だか親近感の湧く場所だな」
頷きつつシャーリーに応えるのはウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)。偶然か必然か、彼の普段の装いは中華風に近い意匠のものであるためだ。しかし今は一般人に紛れ込むべく、それっぽい装いに変えていた。
「しかし…」
「ん?」
そんなウィーリィの視線がちらり、とシャーリーの方を一度見て、再び逸らされる。ウィーリィの顔は妙に赤い。
「…そのドレス姿、その…似合ってるな」
「えへへー、せっかくの中華街だしねっ」
一方、今のシャーリーの容姿は、青いチャイナドレス。この街の風景に合わせて用立てた品だが、彼女の発育良好な肢体を包み切るには少々不足。割とあられもなき姿となってしまったが故に、ウィーリィも戸惑っているようであった。
気を取り直し、二人は中華街を歩む。
「お、あの店は良さそうだな。ちょっと待ってな、買ってくる」
「はーいっ。よろしくねっ」
露店の一つに目星をつけたウィーリィ。自分も料理人を志しているが故か、良い食べ物を見分ける目は既に確かな領域である。故に手あたり次第食べて回りはせず。己の感覚で良いと感じた店を選んで、購入へと赴くスタイルであった。
目についた肉まんを扱う屋台。ここは『良い』と判断したか、早速財布片手に購入へ向かう。シャーリーに見送られながら。
「おばさん、肉まん二つくれないか」
「あいよ」
初老と思しき女性の営むその屋台の前まで来たウィーリィ、早速注文。女性は頷き、早速蒸し器から熱々の肉まんを取り出そうとする。
「それにしても、やっぱ活気あるよな、この街。どこもかしこも色んな国から来た人でいっぱいだし」
そんな女性に話しかけるウィーリィ。世間話じみた話題から情報収集を試みる構えだ。
「そうさね、亜米利加やら英吉利やらからもいっぱい客は来るねえ。商売してる身としちゃ有難いことだよ」
「でも大変じゃないか?中には変わった人もいたりしてさ」
代金を出しつつ、ウィーリィは続ける。
「まあね。でもまあ慣れたもんさ。たまに何だかこそこそした奴とかもいるけど、客なら誰であれ平等さね」
お釣りを返しながら女性は応え、食べ歩き用に包装した肉まんを渡す。
「…そのこそこそした奴のこと、聞かせてもらっていいかな」
「あ、ウィーリィくんお帰り!なんか遅かったね?」
「ああ、悪かった。有力っぽい情報が聞けたものでさ」
待っていたシャーリーに肉まんを渡しつつ、ウィーリィは先程店主の女性から得られた情報を伝える。
「うーん、やっぱりこの街にスパイがいるんだね…んっ、美味しい♪」
頷きながらもシャーリーは肉まんを一口食し、皮のもちもちした食感と中の肉の味わいを楽しむ。やはり料理のことは料理人に任せるに限る、と改めて認識しつつ。
「そうだな、連中がどういう人を狙ってくるか、までは分からなかったが…お、確かに美味いな」
一通り話し終えたウィーリィも肉まんを齧り、その味わいに舌鼓を打つ。
「んー、それならボクにちょっと当てがあるかも。任せといてっ☆」
そしてシャーリーが訪れたのは、中華街の外れにある中華料理店。それも大衆向きのものではなく、上流階級向けの高級店だ。
「不審な人物、ですか。胡乱な輩は大体門前払いにはしていますが…」
それ故に、入り口には警備員が立っていたりもする。その警備員に、不審な客の情報を尋ねていたのだ。
「ボクらが捜してる人は、少なくとも見た目はちゃんとしてそうなんだよね。お店には入れたけど怪しい人、っていなかった?」
「…ああ、それならいましたね。欧米人っぽい人でしたが」
続くシャーリーの問いに、警備員は暫し考え込む仕草をしてから、何かを思い出したように答えた。
「え、その話詳しく!!」
思わず食い気味に返すシャーリー。警備員は快く頷き、己の知る様々な情報を伝えたようだ。
「おう、お帰り。どうだった?」
そして戻ってきたシャーリーをウィーリィが出迎える。その手には、近くの店で購入してきた小籠包。蓋を開ければ、豊かな湯気と共にそれら小籠包が姿を現す。
「うん、色々教えて貰えたよ。あのお店で、偉い人の動向とかを調べて回ってたっぽい」
小籠包の一つを取りながらシャーリーが告げたのは、如何にもスパイといった風な行動。
「そうやって情報収集して、テロで狙う先とかを決めてたのかな。幻朧戦線が」
そして容姿の特徴に関する記述も共有したところで、シャーリーは小籠包を口に含み。
「…あっつぅ!?」
溢れた肉汁のあまりの熱さに、思わず呻いてしまったとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩波・いちご
幼馴染の美琴さんと
「中華街は初めてです?人も多いですし、はぐれないように…」
ひとまずは2人で中華街を探索してみましょう
美琴さんが迷子にならないよう、手を引きながら
…料理好きとしては、中華街の料理屋も気になるところですが…
「何か食べながら行きますか?」
とりあえず屋台で肉まんを買って渡します
料理解説しつつ、美味しさに目を輝かせる妹分を微笑ましく見てます
「美味しいですか?それはよかった」
その後もいくつか食べ歩きしつつ…スパイ探しも忘れないようにですね
すっかり食べ歩きが気に入った美琴さんに、色々料理紹介しながら…
…まぁ、スパイがどこかの料理屋で活動してたら、味に違和感とかあるかもしれませんしね…?
月読・美琴
いちごお兄様と
「ここが中華街……ですか?
こんな雰囲気の街、初めて見ました」
巫女装束姿で呆然としているところを、いちごお兄様に手を引かれます。
そ、そうですね。
人が多いのではぐれないようにしないと!(憧れのいちごお兄様と手を繋いで赤面しつつ
「いちごお兄様、この食べ物は一体?」(屋台で買った肉まんを手にして
お料理に詳しいいちごお兄様に解説してもらいつつ、手を繋いだまま肉まんを食べて美味しさに目を輝かせます。
「そ、そうでした!
斥候を探すのが今回の任務でした」(ゴマ団子を食べつつ
きっと斥候の人も、どこかで食事はするに違いありません!
「いちごお兄様。
このまま食べ歩きを続けていけば、きっと手がかりが……」
「ここが中華街…ですか?こんな雰囲気の街、初めて見ました」
グリモアベースより転移を果たした先、呆然と街並みを、行き交う人々を眺める巫女装束姿の少女が一人。月読・美琴(月読神社の退魔巫女・f28134)。UDCアースにて生まれ育った彼女、なれどかつてはずっと修行に打ち込んでいたというのもあり、こうした娯楽の類は基本的に初めてな事物ばかりであったのだ。
「中華街は初めてです?人も多いですし、はぐれないように…」
そんな美琴の手を取る、青い髪と瞳の少女――のような少年。彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)。幼馴染の彼女が迷子になってしまわぬよう、手を繋いで行こうという意図。
「そ、そうですね、いちごお兄様…人が多いので、はぐれないようにしないと!」
その頬を朱に染めて、鸚鵡返し気味に応える美琴。彼女にとっていちごは、兄のような存在であると共に憧れの存在でもある。故に、手を繋ぐとなるとどうしても照れが入ってしまうようだ。
「…?では、行きましょうか」
しかし当のいちごはそうした彼女の心境をイマイチ把握できていないようで。そのまま、いちごに手を引かれるまま、中華街の中へと入ってゆく。
年齢層も人種も様々な人々の合間を歩みつつ、大通りの左右に立ち並ぶ店舗を眺める二人。
料理好きであるいちごは、その中に幾つも点在する中華料理屋が気になっている様子ではあるが。任務の手前、あまり腰を落ち着けて食事というのもよろしくない気もしていたようで。
「美琴さん、何か食べながら行きますか?」
「食べながら…ですか?」
そう美琴に提案するも、当の美琴は今一つピンときていなかった様子。
「ええ、食べ歩きです。丁度そこに肉まんの屋台がありますので、買いましょうか」
ならば実践も交えて、と。いちごは付近にあった肉まんの屋台へ美琴を連れてゆく。
「いちごお兄様…この食べ物は一体?」
「これが肉まんです。細かくした豚肉を味付けして、生地の皮で包んで蒸した食べ物ですね」
解説と共に、購入した肉まんを渡すいちご。物珍しそうに暫し肉まんを見つめていた美琴だが、やがて意を決したように、手元のそれへとかぶりついた。
「…!美味しい、です…!!」
直後、口中に広がる濃厚な味わい。美琴、思わず目を見開いて驚愕と喜びの声を上げる。
「それは良かった。では、他にも食べ物がないか見て回りましょう」
いちごの言葉に、肉まんを咥えたまま頷く美琴であった。
そうして幾つかの料理を購入し、食べてゆく二人。
「どれもとっても美味しくて…食べ歩きとは、楽しいものですね」
いちごの解説と共に料理を味わっていった美琴は、すっかり食べ歩きが気に入った様子であったが。
「…そういえば、何か忘れている気がします」
ふと呟く。食べ歩きは本来の目的ではないのではないかと。その一言を受けたいちごも。
「…そうでしたね。忘れるところでした」
そう、本来の目的はスパイの捜索である。しかし如何にして手掛かりを掴んだものか。
「いちごお兄様。このまま食べ歩きを続けていけば、きっと手掛かりが…」
「そ、そうでしょうか…?」
それは単純に食べ歩きを続けたいだけではないだろうか、との言葉を飲み込むいちごであった。しかし実際、どうしたものかと思案していたところに。
「アイヤッ!?な、何ねアナタ!?」
響く破砕音。いちごと美琴がそちらを見れば、露店の一つが店内に積まれていた木箱を崩され、中身の野菜が散乱する事態になっていた。怒声を上げる店主と思しき男性の視線の向こうには、そんな店主に罵声を返しつつ何やら焦った様子で走る金髪碧眼の男。明らかにただ事ではない。
「…怪しいですね、追いかけましょう!」
「は、はい!」
何かあると判断し、即座に二人は男を追う。しかし人波を掻き分けながら走る男になかなか追いつけない。
「そ、そういえばいちごお兄様!」
「何でしょうか…!」
その時、不意に美琴が声を上げる。何かといちごが問えば。
「件の斥候は幻朧戦線の間者と聞きます、そして幻朧戦線の者は皆首に鉄輪を嵌めていると。あの男、もしかして…」
その答えに、いちごは改めて男を見る。黒のハイネックを着た姿。未だ暑さ緩まぬ今の時期には明らかに暑すぎる装い。それでもあのような服を着ているということは、もしや。
「…あの男がスパイである可能性は高いですね…!何とか追いつきましょう、美琴さん!」
「は、はい!」
そして路地裏へと消えていった男を追って、二人は駆けてゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カイム・クローバー
猟兵としての身体能力を駆使して、街を一望できる時計塔に外壁から登っても構わないか?別にスパイを探そうとかって訳じゃない。中華街を広々と見渡してみたいだけさ。
街を見下ろすなら高い所から。…基本だろ?
充分に満足してから、中華街を練り歩くか。
片手で食える物…中華街と言えば肉まんか?食い歩きしながら、合間、合間にUCで情報収集。
裏路地。人目に付かねぇような場所を歩けば、ゴロツキ、もしくはチンピラぐらいには出くわすだろ。
そこでもUCで情報収集。タダとは言わねぇさ。多少の金額なら持ってる。売ってくれねぇか、その情報。
もしくは――美味い肉まん屋の情報を知ってる。交換ってのでどうだ?(片手の肉まんを持ち上げ)
中華街の外れに建つ、一際高く大きな木造建築。それは絡繰仕掛けの時計塔。中華の技術と、西洋の設計思想とがこの横濱の地で融合し生まれた、この街の象徴と言うべき建物である。
その頂上近く、大きく張り出した横木の上。本来ならば人が居る筈の無いそこに、腰を下ろす人影が一つ。白銀の髪を風に靡かせ、中華街を見下ろす青年が一人。
「良い眺めだな。思った通り、街を一望できる」
観光客で賑わう大通り。雑然とした生活感の滲む裏路地。それらの眺望を独占する彼――カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、街を広々見渡し感嘆の声を漏らす。
最初に街を見渡してみたいと思った彼は、街で一番高い建物であるこの時計塔を登ることとした。猟兵としての身体能力を活かし、外壁から飛び出した横木を跳び渡りながら登ること数度。その身は時計塔の文字盤よりも更に上まで至っていた。
「しかし、流石に人の顔まではよく分からないか」
行き交う人々の姿は、この距離では豆粒程度の大きさにしか見えぬ。大まかな背格好を基に、年の頃を推察するが精一杯だろう。尤も、カイムとしてもここからスパイを探し出そうという意図で登ってきたわけではない。
「まあ、この景色を堪能できるだけでも充分価値はあるってものだな」
純粋に、中華街を一望するこの景色を楽しみたかった。それだけのことである。
一通り塔上からの景色を堪能した処で時計塔を降り、改めて中華街へと足を踏み入れる。
見回せば、立ち並ぶ種々様々な店舗や露店、屋台。それらへ入れ替わり立ち代わり観光客が出入りしていく。実に賑々しい光景だ。そんな営みを眺め、カイムの口元が綻ぶが。
(だが、この街にスパイがいるって話だな)
此度の任務目的を再確認し、一つ頷く。如何にして探すか。彼は既に一つの解を得ていた。
「お兄サン、肉まん一つどうネ!美味しいヨ!」
「お、確かに美味そうだな。一つ貰おうか」
肉まんを売る屋台からの売り込みに応え、買い求めに行くカイム。屋台の主である初老の男性が愛想の良い笑みを見せる。
「アンタ、この店は長いのかい?」
「そうネ、もう20年はやってるヨ。人生是肉まん一筋ネ」
カイムが代金と共に問いをかければ、男性も応えつつ、傍らの蒸し器から肉まんを取り出してくる。
「そいつは大したモンだ。ところで、ここ最近で何か変わったコトがあったりしないか?」
「変わったことカ?そうネ…」
食べ歩き用に肉まんを包む手は止めず、店主は暫し思案。包み終えたそれをカイムに渡すまで考え込んだままであったが。
「最近この街に住み着いた、欧羅巴の人がいるネ。この街に住むのは大体華人だし珍しいヨ」
ふと思い至ったその情報を、口にしてみせた。
「中華街に欧州人か。確かに珍しいな…。有難うよ」
肉まんと情報と。双方に礼を告げ、カイムは踵を返し歩き出す。
「…お、これは美味い…。肉がたっぷり入ってるな」
道中齧った肉まんの味わいに、そう漏らしながら。
その後もカイムは中華街を練り歩きつつ、気になった店舗を覗いて回り。店員と言葉を交わせば、スパイと思しき人物の情報を集めてゆく。
UDCアースにて便利屋を営む彼。その仕事は派手な大立ち回りばかりでなく、地味な調査や情報収集に及ぶこともある。その経験はユーベルコードとなって、現在のカイムの確かな助けとなっていた。
(ここまでの情報だと、例の男はこの辺に住んでるらしいが…)
大通りを一通り巡り、集まった情報を基に。カイムは路地裏へと入ってゆく。
歩くこと暫し。密集する建物群の狭間、前方に二人組の若い男。見た処華人、値踏みするようにカイムを睨む。地元のチンピラというところか。
「おっと、邪魔して悪いな。ちょいと知りたいコトがあってな、知ってたら教えてくれないか」
「余所者が何を知りたいってんだ?」
両手――片手にはまだ肉まんが残っている――を掲げ戦意が無いことを示しつつ問うカイムだが、チンピラ達は敵意も露に近づいてくる。
「何、タダでとは言わない。相応の礼はするさ。…それか、これならどうだ?」
そんな彼らに、カイムは肉まんを差し出してみせる。この店の情報を対価に、という意図であったが。
「…その肉まん、林のオッサンのか。余所者にしちゃ良い舌してんな」
包み紙から店を察したらしく、チンピラ達の表情が緩む。偶然にも彼らの好みと合致したらしい。
「で、何が聞きてぇ?」
「ああ、この辺に欧州人の男が住んでるって聞いてな。そいつについて知ってることを聞きたい」
質問を促すチンピラ達にカイムが問えば、彼らの表情が再び険を帯びる。尤も、それはカイムに対してのものではなく。
曰く、かの男はこの街に住み着いて以降近所付き合いも全く無く、数日自宅を空けたかと思えば思い出したように帰ってくる。一度仲間が礼儀を教えに行ったものの病院送りになったため、迂闊に手出しもできず苦々しく思っていたらしい。
「そういや、時々あいつの家に客が来てたな」
「客?どんな奴だ?」
語るうち、思い出したようにチンピラの一人が言う。カイムが仔細を問えば。
「なんかこう…首に、黒い鉄の輪っかを嵌めた連中だよ」
その答えに、カイムの口元が笑む。――ビンゴだ。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『古き時計塔の攻防』
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POW : 広大な吹き抜け構造を飛行したり落下したりしながらチェイス&バトル
SPD : 入り組んだ歯車機構や機械仕掛けのカリヨン等を巧みに利用しながらのチェイス&バトル
WIZ : 塔内部に満ちる霊力を借りたり自らの感覚を研ぎ澄ませたりしつつチェイス&バトル
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「はぁ、はぁ、はぁ…!な、なんなんだあいつら…!」
その男――金髪碧眼、年の頃不惑に至るかどうか。某国のスパイである男は、今、猟兵達に追われる最中であった。
最初に自分を追ってきた連中を撒いたかと思えば、また別の一団が己の前に立ち塞がり。彼を、その母国ではなく、幻朧戦線のスパイであると糾弾してきたのだ。
「バレちまった以上は仕方ない…何とか逃げ切らないと…!」
スパイとして活動するために鍛え上げた肉体は、チンピラ程度は軽く捻ってしまえるが、帝都の超弩級戦力たる猟兵達の前にはあまりに分が悪い。逃げようにもあちらの方が足も速い。今は土地勘を駆使して裏道を駆け抜け、どうにか追いつかれずにいるが、このままではいずれは。
「どこかでどうにか撒くしか…あそこか!」
駆ける男がやがて行き着いたのは、この街の象徴たる絡繰時計塔。その内部は無数の絡繰――歯車や梯子、回転柱が、複雑なアスレチックを形成している領域だ。
「いくら猟兵と言えど、ここで俺に追いつけるはずがない…!このまま逃げ果せさせてもらうぞ!」
男はこの塔の構造もまた熟知している。その差を活かし、今度こそ猟兵を振り切る構えだ。
だがそうはいかない。敵が塔の絡繰を駆使するなら、猟兵達もまた用いるのみ。寧ろ敵より派手に使ってみせて、敵の度肝を抜いてしまうが良いだろう。
花澤・まゆ
ふわぁ、これが絡繰時計塔!
さすがこの街の象徴になってるだけあって立派だね
さあ、観光がてらスパイさんを追い詰めましょうか!
UCを使用、黒猫を召喚してスパイさんを追わせるよ
あたしは黒猫の後を追いかけるんだ
待て待て、幻朧戦線と聞いては黙ってられない!
梯子から脇の歯車へ飛び、次の歯車へ
【空中戦】を利用して、飛び上がっていくよ
回転柱もうまく利用
次の歯車への足がかりにしてジャンプ!
黒猫のクロは足場なんて気にせず登って行くから
時々見失うこともあるかも
その度にまたたびでよびもどさなくちゃ
アドリブ、絡み歓迎です
カイム・クローバー
良い逃げ足してんな。一般人が猟兵相手に鬼ごっこで粘るなんざ初めて見たぜ。…折角だ。食後の運動も兼ねて、もう少し付き合うか。
【追跡】を用いて逃げたスパイの行方を追う。複雑に入り組んでるとはいえ、痕跡を完全に消すなんざ出来ねぇ。足音、僅かな汗の匂い、街路を歩いた後の靴跡…ま、絡繰の駆動音は多少、邪魔だが、これぐらいで音を上げてちゃ、便利屋は務まらねぇさ。
UCで空中を駆け上がる。合間に出っ張った回転柱を蹴飛ばし、歯車に足を乗せて、梯子など使わず。
姿が見えたら、よぅ、お疲れさん。ぐらい言うべきかね。
銃も剣も使うつもりはねぇ。相手は一般人。
怪我させるつもりはねぇよ。――最も、見逃すつもりもねぇけどな?
絡繰時計塔へと駆けこんでゆくスパイの男。追跡を続けてきた猟兵達は、その背に次いで、眼前に聳えるその塔を見上げる。
「ふわぁ、これが絡繰時計塔!流石に立派だね…!」
この華やかな中華街の象徴となるだけはある、と驚嘆の声を上げる花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)。見上げるばかりのその威容、果たして頂上はどれ程の高さなのだろうか。
「ああ、それに頂上からの眺めは絶品だぜ。この中華街を一望できるくらいだ」
先程の自身の体験を踏まえて応えるカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。微笑を浮かべつつも、その目は真剣に引き締まり。
「しかしあのスパイ、良い逃げ足してんな」
鍛えているだろうとは言え一般人、よもや猟兵相手の鬼ごっこでここまで粘るとは。数々の仕事をこなしてきたカイムにとっても初めての事態だ。
「…だが、折角だ。食後の運動も兼ねて、もう少し付き合うか」
「ええ、観光がてらスパイさんを追い詰めましょうか!」
逃がすわけにはいかない相手、なれどその心中に過剰な気負いは無く。まゆもまた同じく。あくまでも自然体の足取りで、時計塔の内部へと踏み入ってゆく。
「ふわぁ、外も立派だけど中はもっと凄いね…!」
無数の歯車や木柱が噛み合いながら回転する絡繰仕掛けの音が響く時計塔内部。所狭しと密集した仕掛けが稼働し続けるその様相に、まゆは再度驚嘆の声を上げる。
「…いるな。奴さん、上に向かっていってるようだ」
絡繰の稼働音に紛れて聞こえる、木造の道を駆ける足音。絡繰の音と紛いそうな僅かな差異を聞き分け、カイムは告げる。
「登りきられると追いつけなくなりそうだね…よし!」
それを聞いたまゆ、袖の中から一枚の札を取り出す。花色のそれにユーベルコードで念を込めれば、札はみるみるうちに形を変えて。やがて一匹の黒猫へと変ずると、ひらり、と床へ降り立った。
「お願い、クロ。スパイのおじさんを追いかけて!」
まゆがそう願えば、クロと呼ばれた黒猫は、にゃあ、と一声鳴くと絡繰の間を駆け上り始める。階段の手摺から梯子、壁面の横木を巧みに跳び渡り、一気に上へと。
「さ、あの子を追いかけよう!」
「ああ、こここそ猟兵の身体能力の見せ処…ってな」
カイムも頷き、二人は時計塔の登頂を開始する。
絡繰の隙間を巧みに抜け、跳び、どんどんと上へ向かっていくクロ。
「流石に高いところはお手の物ってところだな」
その素早さに感心しつつ、カイムも負けてはいない。ユーベルコードで宙を蹴り、出っ張った回転柱の軸を蹴り前方の歯車に足をかける。回転が頂点に達したら再び跳躍。階段も梯子も使わずともスムーズに、そしてそれ故に迅速に駆け上ってゆく。
「と、見えてきた!」
階段の途中から歯車を跳び渡りつつ登るまゆの目が、スパイの背を捉える。再度跳躍、傍らの回転柱を蹴り更に上昇。歯車へと跳び移り更に上へ。梁の通路へと飛び出せば、一気にスパイの前まで回り込むことに成功した。
「なっ!?お、お前は…!?」
「待て待て、幻朧戦線と聞いては黙ってられない!大人しく縄についてもらうよ!」
まさか先回りされるとは、と驚愕するスパイに啖呵を切ってみせるまゆ。だがスパイの男はまだ諦めていない。
「くそっ、捕まるわけにいくものか…!」
徐に跳躍すると、歯車同士の間に張られた綱を掴み上昇。その先を歯車を使って更に上へ。
「うぅっ、往生際の悪い!クロ、また追いかけ…って、クロー?」
再び黒猫に追跡を頼もうとするまゆだったが…クロの反応がない。もしや先行しすぎて見失ったか。だがこれだと男を見逃してしまう。どうするか。
「……クロー」
再び袖から取り出してきたのはマタタビだ。猫を蕩かすというその匂いは、一気に時計塔内を満たして…程無くして、何処からともなくクロが現れまゆの足に擦りついてくる。ユーベルコードからなる存在の猫とはいえ、マタタビに弱い点は変わらないようで。合流を果たせばまゆは再度指示を出し、スパイの追跡を再開する。
「ここまで来れば、後は俺の感覚で追いかけていくだけだな…!」
一方のカイムは、引き続きユーベルコードを発動。歯車の回転軸、回転柱から飛び出した足場、僅かな出っ張りや安定した部位を的確に蹴り上げ、登ってゆく。
(…匂うな。あっちか)
途中、歯車群の間に残る匂い――スパイの汗の匂いを嗅ぎ取り、匂いの続く方向へ。本当に僅かな痕跡ではあるが、これを察知できなければUDCアースで便利屋は務まらない。己の経験を糧に、カイムはスパイを追う。
「はあ、はあ…こ、ここまで来れば…なっ!?」
梯子を登り切り通路に至ったスパイは驚愕する。
「よぅ、お疲れさん」
褐色肌に銀髪の男が、いつの間にか先回りしていた。
「言ったよね、幻朧戦線と聞いて黙ってはいられないって!」
後ろを見れば、黒猫を伴う黒髪の娘も追いついてきた。絶体絶命。
「もう一度言うよ、大人しく縄についてもらうってね!」
ずびしとスパイを指さしながら宣言するまゆと。
「安心しな、怪我させるつもりはねぇよ――勿論、見逃すつもりもねぇけどな?」
腰を落とし両手を構えるカイム。捕らえんとするタイミングを計りつつ、距離を詰めていく。
「…くそっ、こうなったら!」
追い詰められたスパイ、何と足場から徐に落下。一度下に降りることでの撹乱を図ろうというのだ。
「ちっ!…だが他の連中も、まだいるはずだ」
「そっちの皆がきっと見つけてくれるはず…!」
どうやら見失ってしまったようだ。悔し気な様子を見せつつも、後からスパイを追いにきた猟兵達に、後を託すこととする二人であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎
■行動
成程、厄介な場所ですねぇ。
それでは、参りましょう。
『効果やや低め・効果時間長め』の『秘薬』を摂取し【霊結】を使用、『身体能力』と『知覚力』を強化しますねぇ。
これで『相手の追跡』と『時計塔の絡繰の動き』の両方への対応力を上げられますぅ。
『FBS』は四肢に嵌め、必要に応じて飛行出来るようにすることで『落下の危険』への対処に加え、『吹き抜け』等の開けた場所を一気に抜けられるように出来ますぅ。
破壊しても問題なく、移動の邪魔になる品は『FRS』の[砲撃]で対処、後はアスレチックの要領で抜けて参りましょう。
体形的に『引っ掛かり易い』ですし、其方にも気を付けませんと。
「と、見つけましたよぉ、捕まえさせてもらいますねぇ」
降りてきたスパイの男、着地の直後にかけられた声。見ればそこにいるのは和風のドレスで豊満に過ぎる肢体を包んだ娘。夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)だ。
「くそっ、まだいるのか…!」
身を翻し、歯車群が稼働する通路へと逃げ込む男。動く歯車をも巧みにすり抜け逃げてゆく。
「成程、これは厄介な場所ですねぇ…」
それを見て取り、るこるの表情が一瞬不安げとなる。何しろこれだけの豊満な体型だ、何処かに身体を引っかけてしまうとも限らない。ならば。
「大いなる豊饒の女神、その鴻大なる知と力をお貸しくださいませ――」
祈りと共に胸元から取り出した陶器瓶、その中身の秘薬を飲み下す。ユーベルコードによって成るその秘薬を摂取したるこるの視野が、透明感を増したかのようにすっきりとする。身体能力と知覚力を強化する効果の秘薬だ。
「では、参りましょうかぁ」
四肢に戦輪を嵌め、いつでも飛行可能な状態となって駆け出す。逃げる男の背を捉えつつも、周囲の歯車群の動きもまた確実に把握し。巧みに身をくねらせ反らし屈み、歯車群をかわしてゆく。
「くそっ、まだ追ってくるってのか…!」
無数の高速回転する歯車群で床の大半が埋まった区域を通り抜け、振り返った男は想定外に素早いるこるの追跡に驚愕。しかしそれでも逃げ果せんと、通路の入口を何等かの木材で塞ぐ。どうやら老朽化したために交換した木材が、何等かの理由で置かれたままになっていたらしい。
「バリケードというわけですねぇ、それにこの床…」
床から半分はみ出た大小様々な歯車が所狭しと並び、迂闊に触れる者を粉々にせんと稼働する。この間を抜けるのは手間がかかりそうである――が。
「それなら、飛行するのみですねぇ」
四肢の戦輪を稼働させ、るこるは飛翔する。無数の歯車は大半が小型で、飛翔を妨げられるほどのものは見受けられない。一気に歯車群を飛び越え、先の通路へ。
「それでは、吹き飛ばさせて頂きましょう~」
合図と共に何処からか現れるのは、十六基の浮遊砲台。これらが一斉に砲撃を行えば、木材の障壁は一撃で木っ端微塵となり果てる。
そしてその先の通路へと飛び込めば、スパイの男はあっという間に目の前に。
「何ぃ!?」
「残念ですが、お縄についてもらいますよぉ」
一気に肉薄、捕縛しにかかるるこるであった――が、途中で捕まえんとしたスパイの姿がすり抜ける。何処へ消えたか。
見回すこと2~3秒、通路の側面を見れば、回転する大きな歯車の間に微妙な隙間が。そしてその向こうに男の姿。
「…ここを通り抜けるのは、ちょっと厳しいですねぇ」
どう通っても、確実に発育過剰な肉体が干渉する。普段はそこまで難儀しないが、こういう時に不便であると改めて実感したとか。
「後は他の皆さんにお任せするとしてぇ、別経路を探しましょうかぁ」
あわよくば迂回して男に再度迫れれば。男の逃走経路の予測を立てつつ、別経路を探し始めるるこるであった。
成功
🔵🔵🔴
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
(SPD)
アスレチックは得意だよ!
あとパズルゲームもね
スパイがここの構造を熟知してるならボクたちはそれを逆手に取る
塔内のカラクリ構造を【見切り】そこから逆算してスパイの逃走ルートを割り出して、吹き抜けを利用して【ロープワーク】で鉤爪ロープを引っかけたりしてショートカットして先回り
【罠使い】で逃げ込む先にトラップ(足場や回転柱に蝋を塗って上に乗ったり掴んだりしたら滑って落下して下にある網に捕まる)を仕掛けてウィーリィくんにスパイをそこへ追い込んでもらって挟み撃ちだよ!
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
(SPD)
シャーリーと協力してスパイを追い詰める。
地の利は向こうにあるだろうけど、だったら奴よりうまく絡繰を使いこなせばいいんだよな。
かなりややこしい絡繰だけど、こいつが一定の時を刻むためのものならそれぞれの動く方向とタイミングは決まっているはず。
それを【見切り】、【地形の利用】で歯車の回転を利用して【ジャンプ】や【ダッシュ】の勢いを増したり、【地形耐性】で不安定な足場や障害物だらけのカリヨンの隙間を縫ったりしてスパイを追いかけてシャーリーが仕掛けた罠の方向へと誘導する。
「くそっ、こっちにも居たか…!」
狭路を駆使して先の猟兵を振り切ったスパイの男だが、そこにも別の猟兵が迫ってきているのに気づき、慌てて駆け出す。手近な梯子を上り、素早く上へ。
「判断が早いな、この場所を知り尽くした動きだ」
彼を追う猟兵は二人。その片割れ、ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は男の動きをそう評する。逃げ切るための最善手を知っていると。
「でも、ボクだってアスレチックは得意だよ!」
だから追いつけない道理は無い、と今一方の猟兵、シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)が声を上げる。
「スパイさんがこの場所を知り尽くしてるっていうなら、それを逆手に取れればいいんじゃないかな」
敵が最善手を知っているなら、そこに先回りして手を打つことも可能。パズルゲームも得意なシャーリー、これはまさにパズルと告げれば。
「ああ。奴よりうまく、この場を活かしきってみせるとしようぜ」
何より自分達は猟兵なのだから。ウィーリィは頷いて。早速、二人はそれぞれにスパイを追う行動に出た。
「ふう、ここまで来れば一先ずは…」
何階分か登った先の足場の上、一息つくスパイの男。下の様子を見ようと、吹き抜けのようになった足場下の空間へ視線を向けたその時。
「……!!?」
視界に飛び込んできた光景に、思わず言葉を失う。それは。
「このまま!」
高速で回転する歯車、その歯に足をかけ跳躍。
「逃がすわけが!」
その速度を跳躍する力に乗せて。繰り返すこと数度。
「ないだろうが!!」
より速く、より高く。常人では有り得ない速度で跳び迫る影――ウィーリィの姿であった。
「うわぁぁぁぁぁ!!?」
如何に超弩級戦力たる猟兵といえど、あそこまでの機動が可能であるとは。己の想像を遥か超越するその動きに、半ば恐慌を来したかのように。男は走り、通路の先の階段を駆け上る。
「っ、待て!」
後を追うウィーリィ。上階に広がるのは大きな絡繰人形が密と置かれた空間。定刻になると外に迫り出し、その動きを以て人々の目を楽しませるものだ。その密度は高く、踏み入れば減速は避けられない。
「こっちに誘い込まれてくれれば…!」
男は人形達の合間に入り込み、比較的抜けやすい間隙を通って脇道へ抜け出る。ウィーリィが人形の合間を抜けるに苦慮するならその間に逃げられるだろう、と踏んでの行動だが。
「逃げられると思うなよ!」
後を追って人形達の合間へ突入したウィーリィの足は殆ど鈍ることなく、何ら障害物がないはずの男とぴったり並走する。あまりにも巧みな体捌きに、男は再度驚愕させられ。
「な、何だってんだお前は…!!」
人形群の先の階段を上り上階へと逃げ込む男。足場を駆け抜け、その先のT字の分岐点を右へ――
「来ると思ったよ!」
曲がろうとした刹那。足場下の空間から飛び出してくる影。足場に引っ掛けた鉤爪ロープを思い切り引っ張り、その勢いを以て飛び上がり足場へと着地したのは――シャーリーだ。
ウィーリィが歯車を駆使して跳躍していったのに対し、彼女は鉤爪ロープを駆使してここまで登ってきたのだ。そして、それだけではない。
「くそ…っ!」
踵を返す男。元来た道からはウィーリィが迫る。ならばもう一方の道を選ぶより他に無い。そちらへと駆け出し――
「…うわぁぁ!!?」
踏み出した足が一気に滑り、バランスを崩す男。そのまま、足場の切れた更に先の空間へと飛び出し、真っ逆様に落ちていく。男が踏み出した足場の上には蝋が塗られ、滑りやすい罠と化していたのだ。
落ちてゆく男。そのまま最下層の床へと激突する…かと見えた自由落下が、中途にて中断される。
「ぬおっ!?く、こ、これは…!」
驚く男。だがすぐに理解する。落下途中の空間に張られた網に飛び込み、そのまま拘束されたのだ。
上の通路の蝋共々、ウィーリィが男を追っていた間にシャーリーが仕掛けた罠。蝋で足を滑らせたところをこの網へ落とす。それが二人の策であったが故に。
「ぐ…っ、くそっ、捕まるわけには…!」
男を確保せんと、二人が降りてくるのが分かる。だが彼にも策は残っていた。
「…あーっ!?ウィーリィくん、あれ!」
「くそっ、網を切る手段を持ってたか!」
男を捕らえていた網のところまで降りてきた二人が見たものは、網目を切られ穴の開いた網と、そこから抜け出し再度逃げてゆく男の後ろ姿だった。
「流石にスパイだな、一筋縄じゃいかないってワケか…!」
「往生際が悪いのも納得だね…!ともあれ追いかけないと!」
驚異的なその粘りぶりに驚きつつ、二人は再度男を追跡し始める。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御園・桜花
「ずる、と言われればそうなのかもしれませんが。もしも何方かが足を踏み外した時には、飛行している方が何人か居た方が安心です」
「機械にソニックブームは故障のもとでしょう?人命が関わらない限り安全飛行です」
UC「精霊覚醒・桜」使用
飛行しながらスパイを追う
ソニックブームが起きそうな高速飛行はしない
第六感や見切りで障害物や罠躱す
躱せない場合は盾受け
追跡方向に迷った時も第六感使用し進路を決める
「普通に追っていると思われる方が、あの方も無茶しなさそうですから」
明らかに飛行しているとわかる高度での飛行は極力避けて飛行
「追い詰めすぎてグラッジ弾を使われたりしないように、です。怪我をさせたい訳ではありませんもの」
猟兵の仕掛けた罠からどうにか脱出したスパイの男。並行して回転する二枚の歯車、その間の空間に身を潜め、息を整えていた。
「はぁ、はぁ…あいつらは俺を見失ったようだな…」
歯車の音に紛れて聞こえる足音は遠く。これなら後は見つからぬよう脱出するだけ――男がそう算段し、歯車の間から足を踏み出したその時。
「…?なんだ、これは…?」
視界に舞い散る桜の花。幻朧桜が年中咲き誇るサクラミラージュでは珍しくもない光景だが、それが屋内となれば話は別だ。明らかなる異常。
「ええ、ええ。逃げられる…とお思いのご様子でしたが、残念ながら」
「なっ!?」
突如背後からかけられた声。振り向けば、そこに居たのは正しく桜の化身たる桜の精。尤も、彼女――御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が桜吹雪を纏う理由は、単に彼女が桜の精であるが故ではないが。
「…ば、馬鹿な、いつの間に…!?」
驚愕する男。何しろ、ここまで近づかれるに至るまで、彼女の足音にも気配にも気が付かなかったからだ。決して気が緩んでいたなどではない。ないのだが。
「あまり手荒な真似はしたくありません、どうか抵抗せず、私達と共に――」
「く、くそっ…!」
桜花の降伏勧告も皆まで聞かず、踵を返し駆け出す男。近くの細い通路へと身を滑り込ませ、駆けてゆく。
「…やはり諦めて下さいませんか。致し方ありませんね」
小さな嘆息の後、桜花は一歩、足を出して――そのまま、その身はふわりと浮き上がり、床面僅か上を浮遊しながら男を追い始める。
それは彼女のユーベルコードの作用。渦巻く桜の花を纏い飛翔する、桜の精としての秘めたる力を呼び覚ました様。本来ならばマッハ7をも超える速度にて自由自在に飛行が可能であるが、床面からそう離れぬ高さを飛ぶ彼女の速度は、己の足で駆ける速度より僅か上程度。その理由は二つ。
(機械にソニックブームは故障のもと。人命がかからぬ限りは安全飛行です)
全力で飛翔すれば、それは衝撃波――ソニックブームを生み出しかねない。そうなれば、周囲の絡繰群への影響も避けられぬ。
(――と、上に逃げましたか)
男を追って角を曲がればそこには梯子。見上げれば、梯子から通路へ駆けだす男の姿。飛翔すればその先へ回るのも容易いが。
(普通に追っていると思われた方が、あの方も無茶しなさそうですね)
飛行する存在に追い回されるとなれば、より逃げ切るのが困難となる。無茶のあまり、転落して負傷されてはよろしくない。そして、そればかりではない。
(追い詰めすぎてグラッジ弾を使われても叶いません)
何しろテロルの際には構成員一人一人にまで行き渡る程、幻朧戦線は多くのグラッジ弾を確保しているらしい。スパイが何等かの目的のもと、携帯している可能性も充分考えられるのだ。
それ故。桜花は梯子に沿って飛翔し上昇する。あたかも普通に走って追っていると見えるように。
「く、くそぉ…っ!ぴったり追ってきやがる…!」
男は時折振り向き、ぴったりと彼を追ってくる桜花の姿に驚きながら尚も逃げる。
(今のところはまだ大丈夫、そうですね)
追われる立場故に相応の焦りは見えるが、男の様相は未だ冷静さを保っているように、桜花からは見えた。
万一彼が足を踏み外すことがあれば、飛翔して受け止めにかかる予定ではあったが。これなら大丈夫か。
(怪我をさせたい訳ではありませんもの…)
幻朧戦線のスパイとてこの世界に生きる人。何よりその黒幕へと繋がる重大な事実を握り得る存在であるのだ。何としても、極力負傷少なく捕らえねばならない。
(ですので、せめて)
巧みに位置を取り、男の逃走経路を誘導する。逃げ場無き場所へと。そこに至った時こそ、決着の時となるだろうか。
成功
🔵🔵🔴
月読・美琴
いちごお兄様と
「いちごお兄様、密偵はあそこのようです!」
絡繰時計塔内部の階段を登っていく密偵を追い、いちごお兄様と一緒に階段を駆け上っていきます。
歯車や回転柱が阻みますが、退魔師として修行をした私には無意味です!
歯車を飛び越え、回転柱をひらりとかわし……
「は、梯子は……いちごお兄様が先に登ってくださいね……」(丈の短いスカート状の袴の裾を抑えつつ赤面
いちごお兄様、この巨大な振り子を利用して先回りしましょう!
振り子にひらりと飛び乗りますが、そこで足を滑らせてしまい……
「きゃ、きゃあっ」
危うく落ちそうになったところを、いちごお兄様にしっかりと抱きかかえられて。
そのままお姫様抱っこで先回りします。
彩波・いちご
美琴さんと
「急ぎましょう。今ならまだ間に合うはずです!」
美琴さんと2人で追いかけていきます
時計塔の中の仕掛けをどうにか乗り越えて
身体動かすことには慣れてますけど、このあたりは美琴さんの方が上手でしょうか…なんて思ってたら、あ、はい
「ですね。梯子は私が先に……あとからきてください」
さすがに活劇するのにその巫女装束のスカートの短さは…意識したら見えそうで困りますね
この振り子を使えばショートカットできそうですね
「美琴さん、足元気を付けて……」
って、いった傍からっ
落ちかけた美琴さんを、咄嗟に【異界の顕現】で身体強化して空中で追いついてキャッチして
そのままお姫様抱っこで抱えたまま、跳んでいきましょう
「いちごお兄様、彼方に密偵が!」
絡繰時計塔を上りゆく二人の猟兵。その一方、月読・美琴(月読神社の退魔巫女・f28134)が、絡繰群を挟んだ向こう側の階段を上るスパイの男を見つける。時折焦った様子で背後を振り向く姿、どうやら別の猟兵によってここまで追い込まれたらしい。
「居ましたね…!行きましょう、見失う前に!」
今一方、彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)が応えると共に、二人は駆け出す。階段を一気に上れば、男の姿は真っ直ぐ向こうに。だが、その間には。
「くっ、こんなに絡繰が…!」
床から半分はみ出す形で稼働する歯車、長い横木を振り回すかのように回転する柱。高密度の絡繰群が、二人を阻むかの如く稼働していた。
「ですが、迂回路を探す暇などありません!突破しましょう!」
美琴は決然と告げると共に駆け出す。跳躍して歯車を飛び越え、着地の瞬間に身を屈めて柱の横木を回避。姿勢を低くしたまま駆けて歯車の間をすり抜けつつ木造シャフトを掻い潜る。
「み、美琴さん待って…っ」
その後を追ういちご。彼も身体を動かすことには慣れているが、この辺りは邪神と肉弾戦を繰り広げる退魔師たる美琴の方が上手と見える。尤も、いちごも歴戦の猟兵である。彼女には及ばずとも十二分に追随できていた。
「待ちなさいっ!」
「うわっ!?まだ猟兵がいるのか…!」
ついに男の背中を捉えた美琴が声を上げれば、男は驚きと共に慌てて梯子を駆け上っていく。追って梯子を上ろうとする美琴――であったが。
「…あ、あの、いちごお兄様…」
追いついてきたいちごを、赤面しながら振り返る。
「な、なんですか美琴さ――あ、はい」
問い返そうとしたいちご、彼女が己の袴――丈の短い、スカート状のそれの裾を抑える姿を見て察する。
「その…先に、登ってくださいね…」
「ですね…後から来てください」
先行して梯子を上りながらいちごは思う。流石に活劇するには短すぎる袴、意識したら見えそうで困る、と。尤も、そこで意識から追い出そうとするのが彼ではあった。
上った先には、大きな振り子が揺れる空間。人間二人くらいは楽に乗れそうな大きな錘の振り子、これを迂回するように道が伸び、スパイの男が走ってゆく姿が見える。
「いちごお兄様、この振り子を利用して先回りしましょう!」
振り子を見た美琴が提案する。成程、通路がこの振り子を迂回している以上、直接振り子に乗って行けばショートカットが可能だ。
「ですけど美琴さん、足元には気を付けてくださいね…?」
しかしいちごは心配そうに言う。というのも美琴、結構なドジっ娘気質であるためだ。こんな高さから落ちてしまえば、猟兵と言えどただでは済まない。
「大丈夫です、これくらいは朝飯前ですよ!それっ!」
そんないちごの心配は杞憂とばかり、薄い胸を張って応える美琴。ひらりと跳躍し、振り戻ってきた振り子の錘へ飛び乗る――が。
「きゃ、きゃあっ!?」
案の定というべきか。錘の表面で見事に足を滑らせてしまった美琴。そのまま振れだす振り子に取り残され、身体は宙に浮き。後は下へ向かって真っ逆様――そう見えた刹那。
「美琴さんっ!!」
こうなる可能性に備えていたいちご、彼女の悲鳴を耳にした瞬間にユーベルコードを発動し駆け出していた。その勢いで一気に跳躍、五本の狐尾を靡かせながら落下しかけの美琴へと追いついて。彼女の背と膝を両腕で支えるように、確りと抱き抱える。所謂お姫様抱っこの状態だ。
そして跳躍の勢いで振り子へと追いつき、その錘の上へと着地。そのまま錘の上面を蹴って再度跳躍。その身は瞬く間に、振り子運動の反対側へと跳び至っていた。
「な…っ!?お、お前らどこから…!?」
その時丁度、男が通路を迂回し二人の着地地点まで到着したところであった。振り切ったと思った二人が、いきなり目の前まで先回りしてきたのだ。その驚愕の度合いは大きいだろう。
「さあ、年貢の納め時ですよ。大人しく捕まりなさい!」
美琴を下ろしながら宣言するいちご。男の背後からは他の猟兵達の気配もする。ここまで来れば最早逃げようは無い――そう思われたが。
「ま、まだだ!俺にはまだ…!」
未だ男は諦めない。傍らの窓を破り、その先へと飛び込む。二人が追ってみれば、そこは屋根上に広がる平たく開けた空間。展望台的な場所であろうか。
他の猟兵とも協力し、男を包囲にかかる二人。最早逃がさぬ。中華街から時計塔へと続いた大捕物は、最終局面へと至ろうとしていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『スパヰ甲冑』
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POW : モヲド・零零弐
【マントを翻して高速飛翔形態】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【目からのビーム】を放ち続ける。
SPD : 影朧機関砲
レベル分の1秒で【両腕に装着された機関砲】を発射できる。
WIZ : スパヰ迷彩
自身と自身の装備、【搭乗している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「くそ…っ、もう逃げられないってのか…!」
時計塔の展望台。悔し気に呻く、幻朧戦線のスパイの男。四方を猟兵達に抑えられ、突破する隙も見えない。己が如何に鍛えていると言えど、猟兵と正面から遣り合って勝てるとも到底思えぬ。
――『生身であるならば』。
「こうなったら…最後の手段だ…!!」
猟兵達が反応するより早く、男が懐から取り出したのは、何やら万年筆めいた形状の物体。その先端が紅く明滅すること数度。突如、彼方の空より響き渡る甲高い音。猟兵達が空を見上げれば、何やら赤い人型の物体が、凄まじい速度で飛翔してくる…!
そのまま展望台へと飛び込んできた人型の物体目掛け、男が跳躍。開いた背中に飛び込めば、物体――人型の鎧めいたその存在が身を翻し、展望台の床へと着地。人間の眼めいた頭部の宝飾が、猟兵達を睥睨する。
「これが俺の切り札…『スパヰ甲冑』!影朧甲冑の高機動改良型だ!」
影朧甲冑、それも改良型。幻朧戦線は、或いはその背後にある組織は、封印された筈の影朧兵器を復活させるのみならず、その改良すらも可能としている…というのか。
「こいつなら二度と生きては降りられない、なんてことは無い…!お前達をこいつで蹴散らし、逃げ果せさせてもらう!」
自信満々に言い放つ男。だがその声には苦悶が滲む。改良の結果、元の影朧甲冑と異なり『一度乗ったら二度と生きて降りられない』欠点は克服されているものの、影朧の呪いが搭乗者を苛むという点は変わっていないらしい。破壊されるまでは甲冑のダメージが搭乗者に及ぶことはなさそうだが、長く戦えば男も衰弱は避けられまい。
忌むべき影朧兵器を破壊し、何より彼を生きて確保するべく。スパイ捕縛作戦、最終局面の開幕である。
ケルスティン・フレデリクション(サポート)
人や動物を傷つけたり、道具にしたりする敵には殺意高め。
ひとは、オブリビオンのどうぐじゃないし、きずつけられるためにいきてるんじゃないもん
だから、助けなきゃ!
一人称 わたし
二人称 名前を呼び捨て
口調は幼く
言い切る形や「〜なの」「〜よ」言葉尻を伸ばすことも多い
基本的には皆のお手伝い役
戦闘や情報収集、その他言われた事を行います。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
花澤・まゆ
…生きて降りられるんだね
それは僥倖!
あたし、前の影朧甲冑、本当に嫌いだったんだ
なら、早く倒して甲冑から助けてあげればいいだけだねっ
速攻戦なら、とUC起動
【小夜啼鳥】を引き抜いてスピードで撹乱していくよ
さあさあ、桜のショウタイム!
撃ってくる機関砲をスピードと【武器受け】で避けて
それでもあたっちゃうのは【オーラ防御】で我慢して
おとなしくお縄につきなさーい!
距離を取って衝撃波を放つよ
スパイって自爆したりしないよね…?
それはね、とっても心配なんだ
命は大事だから、どうか変な真似しないでね
アドリブ、絡み、歓迎です
カイム・クローバー
へぇ、取り込まれるって心配はねぇのか。そいつは良い。命を大事にするようになった…って訳じゃないだろうが、個人的には花丸だ。
二丁銃で【クイックドロウ】と【二回攻撃】を放ち、マントの駆動部を狙い撃つ。破壊する必要はねぇ。『マントを翻す』タイミングを遅れさせてやるだけで良い。
同時に指を鳴らしてUC。紫雷の猟犬を放つぜ。喰らい付いてやれば、排除されたとしても、紫雷の鎖で繋がれる。
繋いでやれば飛び立てねぇし、高速形態とやらも脅威は半減だろ?
ついでに改良点も一つ教えてやる。それはな、高機動に改良し過ぎた故に捕まると逃げられねぇって部分さ。要するにパワー不足なんだよ。
【怪力】を駆使して、魔剣で叩き斬る。
絡繰時計塔の展望台。対峙する、スパヰ甲冑に乗り込んだスパイの男と猟兵達。
「切札があるだろうとは思ってたが、まさか新型の影朧甲冑とはな」
眼前のスパヰ甲冑、その威容を見据え、何処か感心したようにカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は言う。なれどその表情はあくまで余裕の笑み。具体的な中身は分からずとも、追い詰められた敵が何等かの切り札を繰り出す可能性には、グリモア猟兵も言及していた。尤も、カイムの余裕はそれ以上に、己の力量への自負。未知の敵であろうと後れは取らぬという自信故。
「新しい影朧兵器…影朧をたたかいのどうぐにする兵器が、まだつくられるなんて」
嫌悪感の滲む幼い声が、カイムの後ろから応える。長い紫苑の髪を風に靡かせる幼いその少女はケルスティン・フレデリクション(始まりノオト・f23272)。人や動物を傷つけたり道具扱いする者へは強い敵意を抱く彼女。影朧――オブリビオンとはいえ救われるべきものという側面も有するかの存在、それを利用する影朧兵器への感情もまた然りと見える。
「…でも、生きて降りることはできるんだよね」
一方、カイムと並び立つ花澤・まゆ(千紫万紅・f27638)は改良された影朧甲冑を前に安堵の反応。たとえ悪しきテロリストとて救える命は救いたいと考える彼女にとり、以前の影朧甲冑は搭乗者の命を確実に奪うという一点だけでも忌むべき嫌悪の対象。その点が改善されていることは、まさに僥倖と言えた。
「そのようだ。命を大事にするようになった…って訳じゃないだろうが、個人的には花丸だな」
まゆの言葉にカイムもまた肯定を返す。何にせよ、命を無為に散らすことがないのは好ましいことだ。
「…こんなどうぐを作る人たち、許すことはできないけど」
それでもこの場で命散らすは好ましいことではないから、とケルスティンもまた賛意を示す。
「うん、早く倒して甲冑から助けてあげよう!」
三者の意を纏めるようにまゆが呼びかけ、腰に差した刀を抜く。清浄なる退魔の霊力を帯びた刀だ。
「…この甲冑に、勝てるつもりでいるのか?」
それらの遣り取りを眺めていた男、忌々しげな声を漏らす。三者の言葉は、この甲冑を破壊できることを前提としている。そう感じたが故に。
「この甲冑には、お前達がこれまで破壊してきた影朧甲冑の戦闘データも反映されている!簡単に破壊できると思うなよ!」
叫ぶが早く、両腕を前へ突き出せば。その手首から伸びる銃口が火を噴き、無数の機関砲弾が撃ち放たれ。秒間百発を超える速度にて速射される弾丸が、横殴りの雨の如く三者を襲う!
「わわ…っ!」
ケルスティンは咄嗟に駆け出し射線を逃れる。手にしたきらめき、小さな精霊銃がその輝きを強め、内に弾丸を形作ったかと思えば、それがスパヰ甲冑へと撃ち出され。
「おおっと!」
カイムは大きく横へと跳躍し回避。そのまま腰より二丁拳銃を引き抜く。双頭の魔犬を意匠した銃口が、即座にスパヰ甲冑を目掛け火を噴く。三丁から放たれた弾丸は肩口へと命中、しかし装甲を貫くとはいかず小さな傷だけを残し弾かれる。
「無駄だ!高機動化したとて、その程度の火力で抜ける程薄い装甲ではない!」
誇示するように男は吼え、改めて機関砲を二人へ差し向け…ようとした処で、上方から振り落ちてくるものに対し腕を掲げる。微かに響く小鳥の鳴き声めいた音に続き、金属同士のぶつかり合う音が周囲に響く。
「ちっ、これは…」
追撃を邪魔され忌々しげな男、直後に漂う匂いに顔を顰める。それは地上ならば何処にでも香る、だが此処で感じられる筈のない、幻朧桜の匂い――
「さあさあ桜のショウタイム!桜の香りで惑わせてあげる!」
守る腕の向こうから聞こえてくるは、明朗なるまゆの声。かと思えばその姿は既に地上へ。間髪入れずに振るわれる刀の横薙ぎが甲冑の胴部を浅く裂き、男が機関砲の狙いをつけようと思ったその時には逆側面を取って刺突を繰り出しにかかる。咄嗟に腕を振るうも、掻い潜った少女の刃は太腿部を貫いた。
ユーベルコードにて己の速度を加速したまゆの身のこなしはまさに超越的。猟兵でも影朧でもない男には、反応するのがやっとの領域である。
「くそっ、だがこいつにも速度を上げる機能ぐらいは…!」
牽制に機関砲を乱射し、どうにかまゆとの距離を取った男。その機動の勢いで甲冑は身を捻り、マントを翻さんとする。モヲド・零零弐、スパヰ甲冑に搭載された高速飛翔モードの起動モーションに入る。
だが。
「狙った獲物を、逃がすと思うかい?」
告げると共にカイムが指を鳴らせば、その手から迸る紫雷が地を走り。やがて凝集し形を得ていくそれは、紫の猟犬じみた存在。そのまま地を駆け、一目散にスパヰ甲冑へと迫り行く。
「そんな大道芸で、この甲冑を捉えられるわけが…なっ!?」
それを派手なだけの無意味な行為と断じた男、高速飛翔を以て振り切らんとするが――今まさに飛び立たんとしたその表情が、驚愕に染まる。高速飛翔モードの起動一瞬前に、雷犬の牙が甲冑へと突き刺さったのだ。
「ば、馬鹿な…!?想定より起動が遅い…!?」
その原因は、マントを翻す動作の際に稼働する、肩のマントを保持する部位の損傷。実は先程のカイムの射撃は、元よりこの機関の機能低下を狙ったものであった。ケルスティンが放ったものも含め、複数の銃弾に紛れたその一射。明確な破損に至らなかったのもあり、それが齎した影響は、今の今まで搭乗者たる男自身も理解に至っていなかったのだ。
「ご大層な甲冑だが、不具合に無頓着なのは頂けないな」
追撃せんと再度双銃を構え、射撃を繰り出すカイム。
「ぐぬぬ…っ!だがモヲド零零弐は既に起動した!そんな銃撃程度!」
言葉通り、スパヰ甲冑の高速飛翔モードの起動自体は成った。腕を振るい尚も装甲に食いつく雷犬を叩き潰すと、背中より噴炎を発した甲冑は上空へと飛び上がり、銃撃を回避。三人を上空から攻撃せんと両の眼を輝かす――
――だが、ここにきてまたしても問題が生じた。
「…んなっ!?な、何だ!?高度が…上がらない!?」
操縦席の男は再度驚愕する。何かに引っ張られているかのような感覚に視線を下げると、先程まで雷犬に噛みつかれていた部位から、紫雷の束が迸り――その先は、カイムの手の中に。
「狙い通りだ。繋いでやれば飛び立てねぇし、高速形態とやらも脅威は半減だ」
紫雷の鎖を引きながら、不敵な笑みと共にカイムが応える。
「有難いね!これなら狙いもつけやすい…!」
駆け寄ってきたまゆが刀を振るえば、小鳥の声は増幅、拡大して衝撃波となり、上空のスパヰ甲冑を襲う。
「ぐっ!くそっ、回避がうまく…!」
スパヰ甲冑は空中を右へ左へ機動し衝撃波の回避を試みるが、繋がる紫雷に引っ張られて回避行動が侭ならぬ。直撃こそ避けているものの、衝撃波は確実にスパヰ甲冑の装甲を傷つけ、削り取ってゆく。
「やっぱりな。その甲冑の改良点、一つ教えてやろうか」
「な…何だと…!?」
紫雷の鎖を引きつつ、得心がいったとばかりのカイムに、唸りながら男は訝しむ。この甲冑の何処に更なる改良点があるというのか。
「これ…つくりなおすの?」
忌むべき影朧兵器の更なる改良の提案か、とケルスティンからも訝し気な視線。そんな彼女へは言葉の綾ってヤツだと肩を竦めてみせた後、カイムは続ける。
「高機動に改良したのはいいが、それをやり過ぎたせいで捕まると逃げられねぇって部分さ」
即ちパワー不足。如何にカイムの膂力が秀でているとはいえ、生身の人間との綱引きに勝てぬ程度の出力しか出せぬが故の現状であった。
「くそっ…!良い気になるな…!そんなこと、こうすれば解決だ!」
半ば自棄になったかのような男、甲冑の両腕を下向け、その瞳を以て地上の三人を睥睨し――両腕の機関砲を一斉発射、更に両眼からは光線の連射。弾幕の雨を以て三人を撃ち据えんとする。
「そんなやりかたは、ゆるさないのっ!」
だが、そこで立ちはだかるのはケルスティン。掲げた両の掌に白き光が集ったかと思えば、それは前方の空間へと広く展開。白く透き通る光の壁となって、スパイの男と三人の猟兵とを隔て。
「かがやき、まもって!」
撃ち出された鉛と光の雨は次々と光の壁へと突き刺さってゆくが、その全ては光壁を突破できず弾かれ、或いは霧散してゆく。その様、このままいけば何千発の弾雨が降ろうとも永久に貫通果たされることはなかろうと確信しうる堅固さである。
「何だと…っ!?くそっ、何なんだお前達は…!」
憎々しげに唸る男に、ケルスティンは宣言してみせる。
「かってに世界をかえようとする人たちから、みんなをまもってみせるの…!」
光の壁はまさしく、ケルスティンのその意志の具現。彼女の心に曇り生ぜぬ限り決して破れぬ、限りなく無敵に近い守護の防壁。幻朧戦線のスパイたる男の駆る兵器にては破り得ぬも道理。
「そういうこった!お前には倒される気もしないし逃がす気も無いんでな!」
驚愕の隙にカイムが雷鎖を引けば、甲冑は重力との合力で一気に光の壁へと引き込まれ衝突。そこへ駆け込むのはまゆだ。光の壁を疾走し、甲冑へと肉薄する。
「それより何より、死なせはしないんだから!」
彼女が危惧するのは何よりも、男が自害に及ぶ可能性。スパイたる者、機密保持の為なら最後の手段としてそれを選ぶ者も多いだろう。況や彼は幻朧戦線のスパイ。それが己の奉ずる大義の為と判ずれば、簡単に命を捨ててもおかしくない。
「おとなしく、お縄につきなさーいっ!!」
どうかそんな真似だけはしないように。祈りを込めて霊刀を大上段に構え。下方からは双拳銃に代えて黒銀の炎纏う魔剣を抜いたカイムが跳躍する。
「う、うおおおおお!!?」
退魔の霊刀と、終末の魔剣とが、スパヰ甲冑の装甲に深い、深い斬痕を刻み。確かなダメージを、かの兵器へと齎した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
これは、確かに危険ですねぇ。
対処させていただきますぅ。
『FBS』を四肢に嵌め飛行、【耀衣舞】を使用し『光の結界』を展開しますねぇ。
この状態であれば、然程威力のない『ビーム』は『結界』で防げますし、『光速の突進』を行うことで『高速飛翔』の速度も問題なく上回れますぅ。
『突進』になる分小回りに劣る部分は『停止』→『突進』の繰返しで補いましょう。
『FRS』『FSS』は『エネルギーの供給』に回しつつ、相手が『移動を止める』等の隙を見せたら、一時『供給』を解除し[砲撃]を行いますねぇ。
『遠距離攻撃』『結界強化』の両立が必要な場合は『反動許容』で行いますぅ。
確実に叩いておきますねぇ。
青原・理仁
影朧甲冑の改良型、なぁ
そんな木偶人形で俺らから逃げられると本当に思ってんのか?
逃がさねぇよ
と、迎撃雷電陣を発動
俺から見えなくなろうが、お前はここにいる
なら、雷電の迷路が自動的に敵を感知し、そこに対して放電するわけで
電気が通るかはどうでもいい、てめぇを見つけられれば十分だ
グラップル、怪力で組み付き、甲冑の腕の一本ぐらいは圧し折ってやるよ
敵の攻撃は覇気によるオーラ防御で受け止める
「ぐう…っ、猟兵達の力、ここまでのものか…」
猟兵達との交戦によって大きなダメージを負ったスパヰ甲冑。その装甲に深く刻まれた斬痕も生々しい。
「だが例え勝てずとも、このまま…」
「…逃げ切れれば、なんて許すと思うか?」
このまま一目散の遁走を選択肢、スパイの男がそう考えた処に浴びせられた声。視線を向ければ、短い金の髪の青年の姿。鋭い眼光が得も言われぬ迫力を感じさせる彼は青原・理仁(青天の雷霆・f03611)、この局面にて到着した猟兵である。
「ええ、勿論許しませんともぉ。確実に叩かせてもらいますねぇ」
別の方面からも声。そちらは先程までも男を追っていた猟兵――夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)のものだ。
「ぐ…っ!だが捕まるわけにはいかん、押し通る…!」
呻く男。だがその言葉と共に、スパヰ甲冑の姿が徐々に薄れてゆき。如何なる原理が働いているのか、搭乗する男の姿もまた諸共に薄れ、やがては完全なる不可視となってその場から消え去る。
「影朧甲冑の改良型だか何だか知らんが…」
だが理仁はあくまで冷静そのものの表情。広げた片手に、黄金色の雷電が迸る。
「そんな木偶人形で俺達から逃げられると思ってんのか?」
そして雷電は展望台全体へと拡散し。雷電の網めいた外壁を有する、疑似的な閉鎖空間を作り出す。彼のユーベルコードによるものだ。
男の反応は無い。その身を全き不可視としている以上、声を出すことでの現在位置の露呈を避けようとしているのだろう。だが。
「逃がすわけねぇだろ」
領域内外を隔てる雷電の障壁が発光したかと思えば、迸る雷電が領域内を駆け巡り。ある一点を貫いた時、男のものと思われる苦悶の呻きが聞こえてきた。
例え姿が見えずとも、その存在までが消えたわけではない。理仁の行使したユーベルコードは、そうして姿の見えぬ者への対策としての性質をも具える。即ち、雷電の放出が領域内を巡り、その内に捉えた敵対者を貫くのだ。
「ぐあっ!?くそ、動きがうまく…!」
そして聞こえるは男の苦悶の声。雷電は内部機関までへは影響を与えていないらしく、動きは然程弱っていないが、やはり迷路ということもあってか甲冑は思い切った動きを行えずにいた。
「見つけたぜ。ボコボコに叩き壊してやろうじゃねぇか」
以て男の居場所を特定した理仁、声のした方へと一気に接近。振るった拳が装甲を凹ませ、或いは罅を入れてゆく。
「がっ!?ぐわっ!く、くそっ、こうなったら…!」
執拗な理仁の攻撃は搭乗する男にさえ影響を伝播させていた。繰り返される衝撃と振動の齎すダメージに呻きつつも、スパヰ甲冑は透明化を解除。と同時にそのマントを翻し高速飛翔モードへと変形。その目から立て続けにレーザーを放ち理仁を、るこるを襲う。
るこるは浮遊盾で、理仁は己の覇気を以て身を守っていたが、男の狙いはまた別のところにあった。乱射されるビームは威力こそ低いものの、それでも全く無視できない威力ではない。それで以て二人を牽制し、そのまま雷電迷宮よりの脱出を図った。
「おっとぉ、そんな危険な機体には対処させて頂きますよぉ」
だが脱出を果たしたまさにその瞬間、横合いから降るはるこるの声。と同時に機体へと激突する大きな物体。ユーベルコードによって光の結界を纏った彼女が、横合いからの突撃を仕掛けてきたのだ。
「うおおおお!!?」
男はそのタイミングで攻撃を受けるなどとは思っておらずまんまと直撃、吹き飛ばされて。
(レーザーの連射能力をお持ちですから、これは結界を保ちつつ戦う必要がありますねえ)
高速飛翔モードへの変化に伴い、スパヰ甲冑は絶え間なくビームを射出する能力を持つ。いくら一撃が弱いとはいえ、立て続けに食らいたいものではない。故に。
「――大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて舞を捧げましょう!」
改めての詠唱と共に浮き上がるは、計16基の浮遊砲台と浮遊盾。それらが一斉に影朧甲冑へと砲口を向け、砲撃準備を整える。
現時点でも過剰なくらいに豊満なるこるであるが、現在使用しているユーベルコードには、その肉体が更に豊満さを増してしまう副作用があった。故に砲台使用時はエネルギーをそちらに回しているのだが、敵の攻撃の合間から砲撃、という業を成功させるべく。肉体への反動を許容し、結界を展開し防御を固めたままに一斉砲撃。
「ぐわぁぁぁぁ!!?ぐ、あ、熱い…!」
着弾、熱と炎が一時その周辺を席捲し。装甲の一部が溶けたり燃え落ちたりする大きなダメージが、スパヰ甲冑へと与えられてゆく。
「だが、まだまだだ。この甲冑の腕、へし折ってやらぁ!」
更にそこへは再び理仁が飛び込んでくる。宣言通り、甲冑の片方の肩から腕へと絡みつき、関節技の要領で腕をへし折りにかかってきた。
「ぐっ、さ、させるか…ぐわぁぁぁ!!」
抵抗する男だが果たせず、ミシミシという軋み音に続いて、ばきりという破砕音。スパヰ甲冑の片腕は、片口から一気に砕け折れ落ちたのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
相手はプロだ。当然自分の命を削る覚悟だって出来てるだろ。
けど、悪いけどこっちはあんたのプロ根性の相手するつもりはないんでな。
俺はただの料理人だ。奪う必要のない命を奪うつもりはない。
【地形の利用】で周囲の建物の屋根伝いに【ジャンプ】と【ダッシュ】でパルクールで移動しながらスパイ甲冑を追いかけ、敵のビームを鉄鍋の【盾受け】で凌ぎながら【飢龍炎牙】で攻撃。
空中のシャーリーと連携し、退路を断ちつつ【飢龍炎牙】の【部位破壊】で甲冑のマントを破壊して奴の機動力を奪う。
地上に引きずり降ろしたら【鎧砕き】で甲冑を破壊し、呪いに命を奪われる前にスパイを引きずり出す。
シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
うわ、このままじゃ逃げられちゃうよ!
これ以上あの人に悪い事させないためにも止めなくっちゃ!
【エクストリームミッション】を発動させて猛スピードで追いかける
【空中戦】+【フェイント】で回り込んで【クイックドロウ】+【乱れ撃ち】で飛行する甲冑の動きを制してウィーリィくんと協力して逃げられない様にして、動きを止めたら【スナイパー】で甲冑のマントを狙撃して高速飛翔形態を解除させてそのまま【リミッター解除】でパワードスーツの出力を上げたまま体当たりして【吹き飛ばし】で地上に墜落させる
まだ生きてるよね?
…よかったぁ
御園・桜花
「それはようございました。スパイたる者、簡単に死を選んではいけませんもの。大逆転の種は、私にも貴方にも均等に転がっているはずですから、ふふっ」
安堵したように笑う
UC「召喚・精霊乱舞」使用
「例え見えなくても武器を振るう音やマズルフラッシュは隠せません。充分追うことが可能です」
発射音や風切音、移動音を聞き耳で
銃火炎への攻撃合わせは第六感で
それぞれ判別して攻撃
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
回避できないと思った場合は盾受け
手足やブースター等破壊して攻撃手段、移動手段を奪い甲冑での逃走防ぎ捕獲
甲冑から引きずり出してスパイ自身の服で縛り拘束
「捕まった以上、貴方と幻朧戦線との関わり、きちんと話して下さいね」
「ぐぬ…っ、くそ、ここまでやられるとは…!」
呻くスパイの男。彼の搭乗するスパヰ甲冑は、既に片腕を破壊され、装甲も随所が剥離し熔け落ちた無残な有様。なれど動力とされた影朧が何らかの作用を齎しているが故か、男の声音には疲労こそあれど、負傷は感じられぬ。
「だが、まだこいつは動く…!何としてもこの場、切り抜けさせてもらうぞ…!」
半分以上焼け落ちたマントを翻せば、その身から噴出するはジェット噴炎めいた黒き瘴気。影朧の力を引き出し、再度高速飛翔モードを起動してみせたのだ。
「流石にプロだな、目的のために命を削る覚悟ぐらいはできてる…ってところか」
気迫すら感じるその有様にウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)は唸る。
「でも命を捨てる、とまではいかないみたいだね。まあ死なれちゃ困るけど」
逃がすわけにも、死なすわけにもいかない。シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)は相棒たる宇宙バイクを呼び寄せる。もし敵が逃走にかかるならば、以て追撃を行う為に。
「ええ、ええ。スパイたる者、簡単に死を選ぶべきものではありませんもの」
命を捨てる選択肢を持たないのは良きことです、と御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は安堵したように笑い、そしてその笑みをスパヰ甲冑と搭乗者たる男に向ける。
「大逆転の種は、私にも貴方にも均等に転がっているはずですから」
「…っ!?」
穏やかに見えるその笑みに、何か只ならぬものを感じたか、男は即座に行動を開始。残る片腕の機関砲と、両眼からのビーム。これらを乱射しつつ上空へと飛び立つ。猟兵達を牽制し、そのまま外へと逃亡する算段であるか。
「くっ、シャーリー!」
「うんっ!このまま逃がしなんてしないんだから!」
背負った鉄鍋を引き抜き盾として己とパートナーを守るウィーリィ、彼の呼びかけに応えシャーリーが動く。鮫を模した宇宙バイクが瞬時に分解し、シャーリーの全身へと着装。パワードスーツとなって彼女の身を鎧う。
「史上最大の凶暴すぎる竜巻、逃げられると思わないでね!」
「な…っ!?くそっ、速い…!」
そしてシャーリーは飛翔する。その速度、実にマッハ7至近。瞬く間に男へと肉薄する。逃亡を試みる男だが、それを制するようにシャーリーの射撃が飛ぶ。ビームで応戦するも、パワードスーツの装甲を抜ける程の火力は無く、機関砲の狙いをつけるには速度が速過ぎる。
「おいで精霊、数多の精霊、お前の力を貸しておくれ」
更に地上では桜花がユーベルコードを行使。呼びかけに応え彼女のもとへ集うは、赤、青、黄色。色とりどりに輝く光球――其々に異なる属性を有する精霊達であった。
光球が明滅すると、それぞれが魔力弾を一斉に発射。上空へと撃ち上げられたそれらは弧を描いて一点を目指し飛翔。そこに在るのは言うまでもなく、スパヰ甲冑だ。
「何だあれは…!?くそっ、逃げられるか…!?」
シャーリーとドッグファイトめいた空中機動戦を演じていた男は、迫るそれらの魔力弾、合計450発にも達する逆向けの雨を前に驚愕。どうにか回避せんと飛翔するも、魔力弾はその後を正確に追従する。桜花が設定した目標を追尾する特性を、この魔力弾は有しているのだ。
「ウィーリィくん!そっちに行くよ!」
更にシャーリーが横合いから牽制の射撃と機動とを繰り返し、男の逃走方向に制約を加えてゆく。そのまま誘導される先へとシャーリーが呼びかければ。
「おう、任せとけ!」
時計塔の最上部、屋根上まで登頂を果たしていたウィーリィが、大包丁を手に待ち構える。近づくスパヰ甲冑を見据えれば、その得物がユーベルコードの炎を帯びる。
「ちぃ…っ!邪魔を、するなぁぁっ!!」
向かう先に己を迎え撃とうとする敵を見出した男、ウィーリィを排除せんとビームを、機関砲を連射する。だがそれらはウィーリィの構えた鉄鍋に遮られ彼へ届かぬ。彼我の距離が瞬く間に詰まる。
「…今だ!喰らい尽くせ、炎の顎!!」
ここが好機と見たウィーリィ、鉄鍋を放り大包丁を振りかぶる。そして一気に振り下ろせば、龍を模した炎が刀身より撃ち出されてスパヰ甲冑を襲う。その顎が真っ先に捉えたのは、高速機動モードの引き金たるマントだ。
「ぐぁっ!?く、影朧ブースタ出力低下…!?」
伴い、付近の噴進器へも炎の影響は至り、噴き出す瘴気の量が目に見えて減る。更にそこへ、追いついた魔力弾が一斉に着弾し。
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!?」
男の悲鳴、砕け落ちる甲冑装甲。それでも尚スパヰ甲冑は空中に留まっていたが。
「これで…落ちろぉっ!!」
駄目押しとばかりに上方から突っ込んできたのはシャーリー。パワードスーツのリミッターを解除し、更に高まった出力を以て突撃、その全速を乗せたタックルを繰り出してきたのだ。
「うわあああああああ!!」
激突、下方へかかる強烈な加速。最早姿勢制御すら叶わず、スパヰ甲冑は真っ逆様に時計台前の地面へと高速落下――激突、盛大な土煙を周囲へ巻き上げた。
「シャーリー!奴はどうだ!?」
時計塔の壁を駆け下りてきたウィーリィが、先だって着陸したシャーリーに問う。
「分からない…もう少ししたら姿が見えるかも」
落下地点を見据えたままシャーリーは答える。未だ土煙に包まれたそこは、周囲の土が抉られているのが見て取れ。やがて吹いた風が土煙を払えば、そこにあったのは――
「…え!?」
「…な!?」
驚愕する両者。そこに在ったのは、墜落したスパヰ甲冑が形成したと思われるクレーターめいたすり鉢状の穴。だが、それが形作られた原因たるスパヰ甲冑、そのものは何処にも見当たらない。
「な、なんで!?まさかやり過ぎた…?」
「いや、そこまで脆い兵器じゃないはずだ。逃げられた…?」
困惑しつつも周囲を探る両者。と、そこに。
「いえ、まだそう遠くには逃げていないはずです」
遅れて到着した桜花の指摘。即ち、スパヰ甲冑の機能――迷彩機能を以て、この付近に隠れているはずだと。
「迷彩は、姿は消せても音や温度は消せません。駆動音や瘴気の噴射――それらは聞こえるし見えるはず」
その意を理解すれば、二人も頷き言葉を止め。それらの感知できる痕跡を探るべく、意識を集中すること数秒。
「――そこです!!」
唐突に桜花が軽機関銃を抜き、発砲。中華街の大通りの方向へと飛んでいく弾丸は、その手前の空間で弾かれた。
「そこか!」
「ホントだ、見えた…!」
その反応と、空間に見えた揺らぎで、そこにスパヰ甲冑が存在することに気付いたウィーリィとシャーリー。素早く迫り、其々の得物で攻撃を加えれば。
「ぐぅ…っ!ち、畜生…!」
悔し気な男の呻きに続いて、迷彩が解け。最早動いているのが奇跡と言える程に損傷したスパヰ甲冑が姿を現した。
「その駆動音、聞き逃していれば或いは分かりませんでしたが。私の耳に届いてしまったのが不運でしたね」
言いながら桜花は軽機関銃を再度発砲。既に壊れかけていた脚部装甲を集中射撃が撃ち砕き、とうとう甲冑は自立歩行不能となる。
「危ないところだったけど、これでお前も年貢の納め時ってワケだ」
そしてウィーリィが大包丁を振るえば、胸部装甲が斬り裂かれ、開かれて。搭乗していた男の姿が露わとなる。かなり衰弱しているようだが、まだ意識はあるらしい。
「な、何とか大丈夫そう…かな。…良かった」
シャーリーに甲冑の中から引きずり出された男は抵抗しない。心身とも、それだけの力を最早失っていると見えた。
「さて、捕まった以上は、貴方と幻朧戦線との関わり、きちんと話して下さいね」
男の着衣を剥ぎ、それを用いて拘束しながら、桜花は語りかける。その表情は、変わらず穏やかな笑みのままであった。
そうして、猟兵達の活躍により、横濱中華街に潜んでいた某国のスパイ――幻朧戦線に協力していたスパイの男は捕縛された。
この後官憲による取り調べが行われ、背後関係の洗い出しが進むことであろう。
幻朧戦線、その背後にいる勢力とは果たして…?
成功
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