7
花知らぬ君たちへ

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章 #番犬の紋章 #地底都市

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#辺境伯の紋章
🔒
#番犬の紋章
🔒
#地底都市


0




●命を弄ぶための疫病
 暗い、暗い、地の底。
 魔法ガスのうすら明かりに浮かび上がる陰気な地底都市を、紅い目をした少年は満足そうに見渡した。
 人々は重い荷を運び、あるいは鉱山の掘削に従事し、誰もがなにかしらの重労働に明け暮れている。
 そしてその誰もが、皆一様に顔色が悪い。明らかに健康状態に問題があるとわかるほどに。
「……いいね。いつものいこうか」
 一人血色の良い少年の言葉を受けて、傍らに控えていた絵画の如き楽師が、返答代わりの目礼と共にリュートをつま弾いた。
 と同時、街中を思い思いに闊歩している楽師達が、各々の楽器を奏で始めた。
 弦楽器、金管楽器、打楽器……古今東西のありとあらゆる楽器が、各々に旋律を紡ぎ出す。悲壮な曲、忙しい曲、愉快な曲。まったく違う曲調なのに、なぜか互いを邪魔せず調和し街中に響き渡る重奏。
 音色自体は確かに美しいはずなのに、逆再生を聞かされているような違和感、不快感が付きまとう。
 楽師達の奏でる曲に合わせて、街のあちこちから苦しみ悶える声が連鎖し始めた。
 この都市に蔓延する疫病が、急速に悪化しているのだ。
 高みよりその光景を眺めやる少年の紅眼が、一組の父娘を捉える。
「ゴホッ、ゴホゴホゴホッ……!」
「お、おとうさん、しっかり!」
 身体を折り曲げ激しく咳き込む父親と、けなげに父を心配する娘。
 瞬間、少年の両眼が妖しく輝くと同時、忽然と現れた夥しい黒い獣が街に解き放たれた。
 一帯に、獣の吼え声と父娘の凄惨な絶叫が響き渡る。
 ひとしきり何かを貪り食った後、獣達の姿は煙の如く掻き消え、後に残ったのは地面にわだかまる二人分の血だまりだけ。
 少年は愉悦と充足に顔を歪めた。
「あースッキリしたっ。じゃ、あとはいつも通りほどほどによろしくね~」
 上機嫌で踵を返す少年の背中を、楽師の奏でる疫病の音色が見送った。

●グリモアベース:ゲネ
「ダークセイヴァーの寄生虫型オブリビオンの話に進展だ。捕獲した「辺境伯の紋章」から重大な情報が得られた」
 ゲネ・ストレイ(フリーダムダイバー・f14843)がホロモニターに映し出したのは、猟兵達がこれまで見てきたダークセイヴァーのどの街とも異なる、暗い都市。
 それもそのはず、この都市は地底にあるのだ。
「ダークセイヴァーの世界各地には広大な「地底空洞」が存在し、中には広大な「地底都市」が多数存在することが判明した。これらは地上の都市とあらゆる意味で似通っている。都市の形式や文明レベルはもちろんのこと、吸血鬼の支配下にあり、なおかつ、そこに住む人々が奴らに隷属させられている、という点もだ」
 地底都市に暮らす人々は、地上との交流を断たれ、地上の存在すら知らずに日々を生きているという。
 紋章を配布した者達は、地上世界に加えこの地下都市の数々をも版図に置きながら、さらなる地下深くに棲息しているようだ。
「すぐにでもとっちめに行きたいところだが、残念ながらまだその手立ては見えていない。ここはまず、地下都市で絶望の日々を送る人々を救ってやろう! 一つずつ地道に地下都市を解放していけば、その過程でさらなる深層への手がかりを得られるかもしれないしな」
 ゲネはさらに二つのモニターを展開し、今回立ちはだかるであろう敵の姿を映し出した。
「最初の敵は「門番」。『供花伯・ミカ』。こいつがこの都市を支配しているボスだ」
 門番は、かの「同族殺し」さえも、ともすれば一太刀で屠れるほどの凄まじい手練れだ。そのうえ「番犬の紋章」という寄生虫型オブリビオンを身に着けて強化しており、紋章に対する攻撃以外はろくにダメージが通らない。
 番犬の紋章は現在、ミカの両眼の内部に寄生し、眼球そのものと同化している。おかげでミカは直接的な目潰しや視覚への攻撃を受けても視力だけは失わないが、逆を言えば、その部分を上手く突けば確実にダメージを通せる、ということになる。
 また、ミカは「強い絆で結ばれている者」を見ると嫉妬に駆られ、ターゲットをその者に絞るようになる。そこを上手く突ければ戦いを有利に運べるかもしれない。
「門番を倒したら地底都市に突入だ。内部には『疫病楽団の幽霊楽師』がわんさと襲い掛かってくる」
 幽霊楽師達はミカの命に従い、適度に疫病を操ることで人々の支配を円滑に運ぶ役目を担っている。奏でる音色で疫病を振り撒き心身を攻撃してくるだろう。
 住人を苦しめてきた先兵たる連中だ。彼等を倒すさまを見せることで、人々に勇気を与えることができるかもしれない。
「楽師達も倒したら……あとは、地底都市の人々を連れ出すための準備だな」
 人々に蔓延した疫病は楽師を倒したとしてもすぐには快復しない。この特効薬は、実は敵が所持している。ミカが所持する特殊なアネモネの花弁だ。
 ミカを倒せばアネモネは枯れ、大量の種を残すだろう。これを地底湖の周囲に上手く撒ければ、瞬く間に花が芽吹き、特効薬を作れる。人々の体力も回復し、地上へと連れていくことができるだろう。
「地下も地上も似たような地獄……とはいえ、隷属を絶対とされる地下よりは、地上のほうがなんぼか希望が持てるはずだ。いくつかの「人類砦」が受け入れを表明してくれていることだしな」
 ゲネは三枚のモニターを一つに統合し、転送術式を燦然と輝かせた。
「いざ征かん、ダークセイヴァー! 歪んだ地下帝国の独裁を終わらせ、地上を知らない人々に希望を与えてやってくれ……!」


そらばる
 ダークセイヴァー、地底都市の探索。
 地下の隷属的支配から人々を解放しましょう!

●地底都市
 苔類や魔法のガスによって薄ぼんやりと光る、ダークセイヴァーの地上とそれほど変わらない都市です。
 疫病が蔓延しています。

●第一章:ボス戦『供花伯・ミカ』
 元奴隷。一見穏やかそうに見えるがサディストで、強い絆で結ばれている者を見ると嫉妬し仲を試したり引き裂こうとします。

 「同族殺し」さえ一撃で屠れるほどの手練れ。
 寄生虫型オブリビオン「番犬の紋章」で強化しています。
 紋章は両目の眼球と同化しています。
 どんな攻撃や妨害を受けても視力を失いませんが、目潰しや視力を奪う系統の攻撃で大きなダメージを負います。
 その他の箇所を狙った攻撃はほとんどダメージが通りません。

●第二章:集団戦『疫病楽団の幽霊楽師』
 楽師の亡霊。集団で演奏し、疫病を撒き散らします。
 喋りません。演奏で受け答えします。

 この戦いの活躍次第で、地底都市の住人達に勇気を与え、第三章にプレイングボーナスがつくかもしれません。

●第三章:日常『花を咲かせよう』
 人々の疫病を治すため、第一章のボス『供花伯・ミカ』の落としたアネモネの種を植えて、地底湖の周囲に花畑を作ります。

 第二章での活躍によっては、人々がより好意的だったり協力的になってくれるかもしれません。

 執筆の進捗やプレイング締め切りなどは、マスターの自己紹介ページで呟いております。目安にどうぞ。
 それでは、皆さんの自由なプレイングをお待ちしています!
76




第1章 ボス戦 『供花伯・ミカ』

POW   :    はいまわる虫
命中した【アネモネ】の【花弁】が【鋭い口針を持った猛毒の暗殺虫】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    夜がはじまるとき
【影から吸血蝙蝠の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    黒犬の舞踏
自身が【嫉妬心や痛み】を感じると、レベル×1体の【黒妖犬】が召喚される。黒妖犬は嫉妬心や痛みを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は城島・侑士です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●アネモネの番人
 暗く閉ざされた洞穴の、入り組んだ複雑な分岐を幾度となく乗り越えた先に、広大な地下空洞は姿を忽然と現した。
 猟兵達が初めに到達したのは、地底都市をぐるりと囲い込む堅牢な壁の南端、街の内部に唯一繋がる大門の前だった。
 その上部、見張り台の胸壁の上に紅い瞳の少年が佇み、猟兵達を見下ろしている。
「もう見つかっちゃったんだ」
 少年は何気ない仕草で胸壁を蹴って、猟兵達の前に軽やかに降り立った。掌の花束から、鮮やかな紫色のアネモネの花弁がわずかに散る。
「この地底は僕らの領域。君ら猟兵に荒らされたら困るんだ。見られたからには容赦はできないよ」
 柔らかな物腰、口調。だが見た目のわりに賢しげな言動の奥には棘がある。隠しようのない、性の悪さとでも言うべきものが。
 花束を微笑みを浮かべた口許に寄せて、少年は紅い両眼を輝かせる。
「僕の遊び場を奪おうとする悪い子たちにはオシオキしないとね。……ふふっ、君たちはどんな声で鳴いてくれるのかなぁ?」
 蕩けるような嗜虐の光が、「番犬の紋章」と一体化した眼球に溶けた。

 『供花伯・ミカ』。この地底都市の支配者にして番人たる吸血鬼である。
 この少年の姿をしたオブリビオンを倒さねば、都市の解放はもちろんのこと、猟兵は都市の内部に足を踏み入れることすら敵わないだろう。
 見た目に反し、番犬の紋章により強化された能力は絶大。唯一攻撃を受け付けるのは両目だけと言って過言ではない。視力を奪うことはできないが、ダメージを与えるためには眼球や視覚への攻撃が効果的だ。
 陽の光の閉ざされた地の底で、猟兵達は死力を尽くして強大な敵へと立ち向かう。
木霊・ウタ
心情
明けない夜はないってこと
吸血鬼に思い出させてやる
皆を救おう

戦闘
迦楼羅を鷹サイズで召喚
頭上から舞い散る炎の羽
無数の炎の輝きや瞬きが
その良すぎる目には効くだろう

迦楼羅が狙われたら庇うけど
そんな暇与えやしない

噴出する爆炎の勢いで刹那に間合いを詰め
刃に纏う炎を一気に燃え上がらせ
更に視界を焼きながら
薙ぎ払い紋章砕く
炎が眼球へ延焼

花弁や虫は炎渦で灰に
刺されたら
毒や虫を噴出する炎で滅菌焼却

ミカ
命を弄ぶとは哀れな奴だ
未来は命の重みだってのに

過去の化身に言っても無駄だよな
海へ還してやるぜ
土竜野郎

事後
鎮魂曲
ミカとその犠牲者への鎮魂曲

そして楽団への宣戦布告として
内部の民を勇気づける勇壮な調

すぐに行く
もう大丈夫だ



●勇気の炎を灯して
「明けない夜はないってこと、吸血鬼に思い出させてやる」
 堅牢な門と幼い姿の吸血鬼を見据えながら、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は力強く頭上に手を掲げた。
「皆を救おう」 
 応えて頭上を燦然と輝かせたのは、炎の羽根散らす金翅鳥。
 忽然と現れた鷹ほどの大きさの迦楼羅に、ミカがわずかに顔をしかめたのがわかる。
「その良すぎる目には効くだろう」
 ウタの挑発に合わせ、迦楼羅が大きく飛翔する。撒き散らされる炎の輝き、瞬きが、視界一面を賑やかに彩った。
「この目のことをよくわかってるみたいだね……」
 ミカはきつく目を細めながら舌打ちし、炎に照らされ色濃く落ちた自身の影を激しく波打たせた。
 ──が、その瞬間、新たな炎が爆発した。
 噴出する爆炎を推進力として、ウタの全身が一気に突出する。蝙蝠を召喚する暇さえ与えず、紅蓮の炎が刹那の間合いを詰める──
「命を弄ぶとは哀れな奴だ。未来は命の重みだってのに」
「──っ」
 咄嗟に技を切り替え大量の花弁を解き放つミカ。しかしウタを取り巻く炎渦はこともなく花弁から変わりゆく中途の夥しい暗殺虫を灰へと帰した。
「過去の化身に言っても無駄だよな。海へ還してやるぜ、土竜野郎」
 ウタが大剣を振りかぶる。刃の纏う炎が一気に燃え上がり、ミカの視界が灼熱する。
 獄炎の刃が、真紅の瞳を神速で薙ぎ払う。紋章に罅入る軽やかな手応え。
 燃え上がる眼球を抑えて絶叫するミカ。
 迦楼羅がウタの肩に留まる。炎の隙を縫って首元に取り付いていた暗殺虫が、体内から噴出する炎によって毒素ごと滅菌焼却され、黒々とした灰となって散り果てた。
 ウタは鎮魂曲を奏でる。これから死ぬ供花伯へとその犠牲者への哀惜の調べ。
 そして、疫病振りまく楽団への宣戦布告として、壁の向こうにいる民を少しでも勇気づける、勇壮なる調べを。
「すぐに行く。もう大丈夫だ」
 決然とした眼差しは、すでに壁の内側を見据えている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
あなたは、誰を愛することも、愛されることもないんですね
…なんて可哀想なんだろう
私が、何よりも信じて、誰よりも愛してる、『with』との絆
妬むことしか知らないあなたに、切れるはずがない

私の血、欲しいならどうぞ
大剣を抱きしめ、蝙蝠の群れに抗わず攻撃を受ける【覚悟】
『with』…私の心、護ってね【激痛耐性】【勇気】

UC発動
…ごめんね、私、血なんて出ないんだ
私の焔は、傷が増える程強くなる
あなた達が私に与えた痛み、お返しします【カウンター】

蝙蝠達を焔の杭で貫き
敵意をミカに向ける
数え切れない程の杭の雨、わざわざ目を狙う必要もない
防げるものなら、防いでみろ【焼却】

消えてください。希望へ向かう、この世界から。



●黒を切り裂く焔
 他者の絆を羨み憎しむ歪んだ感性。
 その根底にあるものは何か。春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は考える。
「あなたは、誰を愛することも、愛されることもないんですね」
「──……」
 花弁に彩られた柔和な少年の顔立ちに、明らかな険が走る。
 結希はその眼差しをまっすぐに受け止めて……憐れむように、目を伏せた。
「……なんて可哀想なんだろう」
 ざわり、と。風もないのにミカの手の中でアネモネが揺れる。その足元で、ミカの影が激しく波打ち始める……
 結希はかぶりを振る。どんなに恐ろしげな威圧を放ったところで無意味だと、諭すように。
「私が、何よりも信じて、誰よりも愛してる、『with』との絆。妬むことしか知らないあなたに、切れるはずがない」
「大した自信だね。なら、試してあげるよ……!」
 ミカの影が沸騰し、爆発的な数の吸血蝙蝠が解き放たれた。妖しく輝く無数の光点が狙うは、結希一人。
「私の血、欲しいならどうぞ」
 結希は漆黒の大剣を抱き、しかと蝙蝠を見据える。それは、抗うことなく攻撃を受けようという覚悟の証明。
「抵抗しないつもり? 馬鹿だね!」
 嘲笑うミカの哄笑に追い立てられて、大量の蝙蝠が襲い来る。
「『with』……私の心、護ってね」
 大剣と勇気を抱きしめる結希の姿は、夥しい黒の大群の内にあっけなく没した。
 蠢く巨大な繭と化した結希だったものへ、ミカの冷めた眼差しが眺めやる。
「あっけないな。大口叩いてこの程度──」
 ──瞬間、赤々と燃える焔の杭が黒い繭玉を内側から突き破った。
「……ごめんね、私、血なんて出ないんだ」
 燃え尽きる蝙蝠たちに謝罪を告げて、剥がれゆく繭玉の中から結希が現れる。
「私の焔は、傷が増える程強くなる。あなた達が私に与えた痛み、お返しします」
 二本目、三本目の焔杭が繭玉を完全に焼き焦がし、その中央に佇む結希はミカへと静かに敵意を向ける。
「消えてください。希望へ向かう、この世界から」
 無数の傷口から噴出した炎は、瞬く間に数えきれないほどの焔杭となり、横殴りの雨となってミカへと打ち付ける。
 防げるものなら防いでみろとばかりに周囲を埋め尽くす焔。咄嗟に掲げた片手だけでは瞳を庇いきれない。
 視界を焼かれた少年の苦鳴は、降り注ぐ炎にかき消された。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウィンディ・アストレイ
残念ながら…遊びの時間は終わる物です。
少々、おイタも過ぎる様ですしね。

フライトシステムを待機状態にシフトしてユニットを折り畳み
被弾面積を下げると共に接地状態での反応速度を確保
【無念無想】の境地に没入し、己が内と外とを捉えて
蝙蝠の群れを時に戦闘勘と見切りで躱し、時に最小限の動作でいなして
敵の懐にゆったりと、しかし逃れ難く確実に入り込み
それまで出力を高め続けていたバニシング・フィンガーを起動
容赦呵責無しの二本貫手で彼の眼球を撃ち貫き、紋章ごと破砕します
(戦闘知識&見切り&第六感&グラップル&力溜め&鎧無視攻撃)

「戦う為に生まれた妖精を、この程度で止められるとお思いですか?」

※アドリブ&絡み連携OK


リーヴァルディ・カーライル
…成る程。確かに前評判に違わぬ強さのようね
同族殺しを一撃で…というのも頷ける

…だけど、此方も退く訳にはいかない理由がある
お前達を討ち果たし、この地の人々を解放する

推し通らせてもらうわ、供花伯

今までの戦闘知識から敵の殺気を暗視して攻撃を見切り、
大鎌を乱れ撃つ早業のカウンターで迎撃
多少の被弾は激痛耐性と気合いで耐え、
自身の生命力を吸収して治癒する

…随分と良い目を持っているのね
ならば、この手はどうかしら?

両手を繋ぎ破魔の魔力を溜めてUCを発動し光剣を武器改造
限界突破した光のオーラで防御を無視して目潰しを行い、
第六感を頼りに敵の迎撃を避けて懐に切り込み、
両目を狙い光剣をなぎ払い浄化する光属性攻撃を放つ



●大群を征して
「あいたた……まったくひどいなぁ」
 ミカは目許をしかめつつ、未だ十分な余力を残しているように見える。
「残念ながら……遊びの時間は終わる物です。少々、おイタも過ぎる様ですしね」
 ウィンディ・アストレイ(W-ASTRAY・f09020)は静かに、しかしきっぱりと言い放った。
「残念だけど、僕はまだまだ遊び足りないんだ。ヒトのテリトリーを奪おうっていうんだから、無事に済むとは思わないでほしいな……」
 ミカは穏やかさの中に苛立ちを潜めて、己の影から大量の吸血蝙蝠を放ってきた。視界を埋め尽くす、黒い霞の如き大群。
「……成る程。確かに前評判に違わぬ強さのようね。同族殺しを一撃で……というのも頷ける」
 牙剥く小動物の一羽一羽に込められた力と殺気を見取り、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は神妙に眼差しを据わらせた。
「……だけど、此方も退く訳にはいかない理由がある。お前達を討ち果たし、この地の人々を解放する」
 きたるべき瞬間に備え、構える大鎌に力が入る。
「推し通らせてもらうわ、供花伯」
 決然としたリーヴァルディの言葉に、ミカは、ふふっ、と小さく失笑した。
「──やってみなよ」
 艶やかな笑みと共に、一斉に襲い掛かってくる蝙蝠達。
 その軌道の全てを見極め、リーヴァルディは無言で大鎌を薙ぎ払った。湾曲した刃から繰り出される目にも止まらぬ乱れ撃ちが、蝙蝠の群れを豪快に掻っ捌いて墜としていく。
「っ……」
 時折討ち漏らした蝙蝠の牙が掠める。しかし多少の痛みは気合いで無視、無心で大鎌を振るうリーヴァルディ。刻みつけられる傷は、斬り裂いた蝙蝠から吸い上げた生命力で瞬く間に塞いでみせる。
(「フライトシステムを待機状態にシフト、ユニットも折り畳み済み。被弾面積を極力下げると共に、設置状態での反応速度も確保……戦闘準備完了」)
 ウィンディは瞬間的に自身の状態をシステムに叩きこむと、視界を広く保ったまま、思考から一切の雑念を切り捨て無念無想の境地へと没入した。
 透明な意識が、己が内と外とを明晰に捉える。無数の蝙蝠の羽搏き、それによって生じる気流の動き、互いにぶつかり合わぬよう発する超音波。一切合切が明瞭に知覚に吸い込まれてくる。
 そして身体は、最適解を描いて動く。取り入れた情報と直感が、夥しい群れを難なく躱す。時に最小限の動作でいなし、じわり、じわりとその源流へと距離を詰めていく……
 大量の蝙蝠の一陣を捌き終え、ようよう拓かれた視界に真紅の両眼を捉えた瞬間、リーヴァルディは両手をきつく繋ぎ合わせた。
「……随分と良い目を持っているのね。ならば、この手はどうかしら?」
 掌中に溜めた破魔の魔力が、太陽の力を紡いだ光剣を現出させ、燦然とした輝きでミカの視界を焼いた。
「くあっ……!」
 ミカは反射的に目を庇いながら、視界を埋め尽くさんばかりに蝙蝠の第二陣をけしかけてきた。
 リーヴァルディは光剣に眩い光のオーラを纏わせながら、構うことなく突撃した。直感頼りに大群を躱し、間隙を縫って敵の懐へ。大群を置き去りにする一点突破。
 無数の黒に霞んでいた目の前が急速に晴れ、瞠目する真紅の眼差しが、内側の紋章が見える距離にまで迫る。
「……奥義、抜刀」
 眩い残光を描いて、一閃する光剣。
 浄化の光がミカの両眼を薙ぎ払い、体内の吸血鬼因子を蹂躙した。絶叫を上げ、浄化の痺れに目を覆うこともままならずに、ぎこちなく後ずさるミカ。
 急速に消滅していく蝙蝠達の必死の抵抗を躱しながら、ゆったりと、しかし逃れ難く確実にミカの懐へと飛び入る影が、もう一つ。
「──っ」
 虚を衝かれ、瞠目するミカの目前に入り込んだのは、琥珀色の、透徹の眼差し。
「戦う為に生まれた妖精を、この程度で止められるとお思いですか?」
 出力を高めたまま沈黙させ続けていたバニシング・フィンガーが、ウィンディの指先で起動する。
 容赦呵責無しの二本貫手が、浄化に硬直するミカの両眼を貫いた。
 真紅の眼球の奥で、ピシリと、罅の広がる音がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシア・アークライト
こんな閉じた世界で何十年も同じ遊びを繰り返して、よく飽きないわね
その見た目と一緒で、頭の中も成長していないのかしら

あ、ひょっとして
ずっと一人遊びばかりで、実は寂しいとか?
だから、強く結ばれた人達を見ると引き裂きたくなる――

試しに、誰か友達になってって叫んでみたら?
その結果が今の貴方なのかもしれないけど

――なんて軽口は叩いてみたものの
敵は同族殺しをも簡単に屠るような存在
一瞬たりとも気は抜けない

3層の力場を情報収集用に展開し、敵の動きを把握
残りの力場で自分や味方への攻撃を防ぐ

敵が向かってきたら、UCを使用
ゆっくり流れる時間の中で集束した力場を目に叩き込み、中で炸裂させる

悪趣味な遊びは今日で終わりよ



●花束は届かない
 ミカは肩で息をしている。眼球の傷は取り繕われ、見た目は無傷のままだが、その奥には確実にダメージが蓄積されているのだ。
「ひどい。ほんっと、ひどい。もっと僕に気持ちよく戦わせてよ」
 優雅な仕草で振るわれる花束。震えるアネモネから質量に合わない花弁が嵐となってミカの周囲を吹き荒れる。
「こんな閉じた世界で何十年も同じ遊びを繰り返して、よく飽きないわね。その見た目と一緒で、頭の中も成長していないのかしら」
 アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は三層の力場を展開しつつ、挑戦的な言葉を投げつけた。
「あ、ひょっとして、ずっと一人遊びばかりで、実は寂しいとか? だから、強く結ばれた人達を見ると引き裂きたくなる――」
 ひくり、と花束を持つミカの手が震えた。
 当たらずとも遠からず、か。情報収集のための力場を密かに張り巡らせつつ、アレクシアは言葉を重ねる。
「試しに、誰か友達になってって叫んでみたら? その結果が今の貴方なのかもしれないけど」
「馬鹿だなぁ。そんな有象無象……いらないよ」
 紅い瞳に何者かへの強い希求を宿して、ミカは花嵐を猟兵へとけしかけてきた。
「――なんて軽口は叩いてみたものの……」
 即座に防御のための力場を自分と仲間達の前に張り巡らせるアレクシア。無色透明の力場に弾かれ、花弁と暗殺虫は悉く消し飛ばされていく。
 敵は同族殺しをも簡単に屠るような存在。一瞬たりとも気は抜けない。
 花弁が絶え間なく力場を叩き、視界一面が紫色に染まった。
 ──瞬間、横合いに、殺気。
 大量の花弁に紛れ、力場を迂回し裏側に回り込んだミカが、花束を直接押し当ててくる──
 しかし、その行動は力場によって把握されている。
「──悪いけど、私だけの時間よ」
 小さな呟きと共に、時間の流れが緩やかに狂う。
 ゆっくりと流れゆく時間の中で、アレクシアは花束を躱し、新たな力場を集束させた。
「悪趣味な遊びは今日で終わりよ」
 力場が叩き込まれたのは、ミカの眼球内部。
 力場の炸裂が眼球を潰す生々しい破壊音と、小さな罅の音。
 両眼から血を噴き出し、少年は絶叫した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
えくるん(f07720)と参加

事前にアマービレでねこさんをたくさん召喚して、タイミングを見て敵の眼球に【多重詠唱】【全力魔法】【一斉発射】を【スナイパー】でよく狙って行ってもらうように【動物使い】でお願いしておきます。
おそらくわたしとえくるんは良い囮になるでしょうから。

えくるんが戦いやすいようにサポートを。

【果実変性・ウィッシーズラブ】を発動。えくるんへの愛を胸に、【第六感】と【野性の勘】で敵の動きや攻撃を【見切り】、回避や【オーラ防御】で対処。
オラトリオとセプテットと自身の魔法の【一斉発射】で【範囲攻撃】でアネモネを撃ち落とします。

万が一刺さったら【浄化】で解毒。

えくるんには触れさせない!


七那原・エクル
七那原・望と参加

地下都市のボス自らが門番とはね、よほどボクら猟兵を中に招きたくないとみえるね

共に戦う望との仲の良さをアピールして敵の攻撃をボクが引きうけるよ

視界を万全に確保するためにバイザー型の暗視装置を装着、中距離からクンバンダG2搭載の六連装機関砲の弾幕射撃を『供花伯・ミカ』の両眼へ直線的に撃ち込む。回避させた弾丸は時間差で「誘導弾」へ切り替え、大きく弧を描き再び両眼を目掛けて撃ち込まれるように「武器改造」召喚した「ハイドフェザー」はステルス迷彩で射撃攻撃に併せて潜行、隙があったら両眼に熱線砲を撃ち込む

「黒妖犬」は盾を叩きつける重量攻撃やシールドバッシュで攻撃、包囲されないように立ち回るよ



●互いを補い合って
「地下都市のボス自らが門番とはね、よほどボクら猟兵を中に招きたくないとみえるね」
 七那原・エクル(ツインズキャスト・f07720)はバイザー型の暗視装置を装着しながら、パートナーを庇うように前へ出た。
「敵の攻撃はボクが受けるよ。望は下がってて」
 愛する人に促され、しかし七那原・望(封印されし果実・f04836)は決然とかぶりを振る。
「ううん、わたしも戦う。えくるんが戦いやすいように全力を尽くすよ」
「……わかった。でも、絶対に無茶はしないで」
 望とエクル、幼い二人の互いを見つめる眼差しには、冒しがたい深い愛情が充ちている。
 その様子を眺めやるミカの口許に、薄らな笑みが浮かんだ。細められた目はしかし、決して笑っていない。
「ずいぶんと仲がいいんだね、キミたち。僕そういうの大好きだよ。──ぐちゃぐちゃに壊してやりたいぐらいにッ!」
 真紅の両眼が輝き、局地的な黒い嵐を巻き起こして多数の黒い獣を現出させた。ミカの嫉妬心を体現させた黒妖犬の群れだ。
「わたしは望む……ウィッシーズラブ!」
 強き愛は力となる。望はエクルへの愛を胸に、その全身を爆発的に増大した魔力でくるんだ。研ぎ澄ませた感覚で黒々とした獣の動きを見極め、襲い来る黒妖犬の爪を、牙を、紙一重で躱し、オーラで弾き、的確に捌いていく。
「こっちだ!」
 エクルも敵の注意を惹きつつ、重量ある盾を叩きつけ、さらに自ら突撃をかけてシールドバッシュで撥ね飛ばし、包囲されないようにめまぐるしく立ち回った。
 バイザー越しの視界は明瞭。エクルは黒妖犬を適度に片付けつつ、召喚主である少年の両眼へと照準を定め、周囲を浮遊する一対の大型機械掌に六連装機関砲を掃射させた。
 正確に目を狙って追いかけてくる激しい弾幕射撃を、ミカは吸血鬼の身体能力で疾走しながら躱し続け、同時に夥しいアネモネの花弁を解き放ってくる。紫色の花嵐が渦を巻き、最大の障害と判断したエクルを襲う──
「──えくるんには触れさせない!」
 瞬間的に沸騰したかのように望の力が爆発した。実体持つ柔らかな色合いの影達が、自律して宙を舞う超大型合体銃が、そして望自身の魔法が、暗殺虫へと変じゆく紫の花弁のことごとくを撃ち落としていく。
「っ……いい加減、死になよッ!!」
 ミカが弾幕に追いかけられながら、苛立ちも露わに目を輝かせ召喚動作に入った。
 意識と力は殺戮に全振り、身体能力は弾丸の回避に全力。──これ以上の隙はない。
「ねこさんたち、今です!」
 掠めた暗殺虫の毒を即座に浄化しながら、望が声高に合図を放った。
 応えて地底の暗がり一斉に輝いたのは、数多の猫の目。戦闘前にあらかじめ召喚しておいた、大量の魔法猫だ。
 にゃーにゃーにゃにゃーにゃーなぉぉぉぉぉん!!
 辺り一帯の物音をかき消すほどの猫の多重詠唱が轟き、猫の全力魔法が一斉発射された。気まぐれな軌道を描く光の弧が花弁も黒犬も蹴散らしながら一斉に目指すのは、ミカの眼球。
 目を庇う暇も防御に力を割く余裕もなく、光の直撃を受けて絶叫するミカ。足を止めてのけぞるその眼球に、これまで回避され続けてきたエクルの弾幕が大きく弧を描き、誘導弾となって時間差で叩きこまれていく。
「──ハイドフェザー!」
 追い打ちとばかりの高らかなエクルの呼び声に応えたのは、翼の音。
 一対の目が闇の中で輝き、集束するエネルギーの輝きが何者にも視認し難い鳥獣機の姿をあえかに浮かび上がらせる。
 熱線砲の輝きが赤々と地底の闇を一閃し、ミカの眼球を焼く。
 少年の絶叫に紛れて、番犬の紋章を蝕む罅が、宿主の命を侵食するほどに進行する音がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
アヤネさん(f00432)と

アヤネさんはヴァンパイアと戦うのは初めてでしたっけ
大丈夫
私達ならやれますよ

こんにちは
そこ通して貰えます?
まぁ無理ですよね
では実力行使で!

UC発動
ダッシュとUCでの飛翔能力を組み合わせ
超高速の突きを喰らわせる
見た目が少年な子の目を部位破壊するのは気がひけるけど
相手は強敵
攻撃の手は緩めません
アヤネさんの援護を貰って…って何か怒ってる?
頭に血が上ってるならチャンス
そこを突きましょう
猛毒の暗殺虫は気持ち悪いけど毒耐性である程度なら耐えられるはず
虫を衝撃波で弾き飛ばしミカの紋章へと斬り込む

紫のアネモネが視界に入る
綺麗な花だとは思う
花言葉は何だったっけ
まぁいいか
じゃ、さようなら


アヤネ・ラグランジェ
ソヨゴf00669と

ソヨゴはヴァンパイアの血を受け継いでいる
この敵に対して感情を抱くのだろうか?
口にはせず様子を伺う
いつもと変わらない様子に安堵する

僕は経験があるよ
でも二人で相手にするのは初めてだネ

敵に見えるようにソヨゴのおでこにキス
気をつけて行っておいで

PhantomPainを電脳ゴーグルとリンク
敵の回避を予測して動きを牽制するように射撃する

敵の死角から間合いを詰める
敵のソヨゴに対する攻撃に対してUC発動
触手で攻撃を止める

僕らの連携に割り込もうなんて甘いネ

ソヨゴが攻撃に移ると同時に
武器をSilverBulletに持ち替える

彼女の攻撃後にもう一方の目を標的に射撃

この銀の弾丸は悪を滅ぼす
アーメン



●両の目を貫いて
 敵は吸血鬼。
 その事実を知った時、アヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)の胸中には一つの懸念が宿っていた。
(「ソヨゴはヴァンパイアの血を受け継いでいる。……この敵に対して感情を抱くのだろうか?」)
 口にはせずに、さりげなくパートナーの様子を窺う。
 そんな不安を知ってか知らずか、城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は溌溂とした眼差しでアヤネを見返した。
「アヤネさんはヴァンパイアと戦うのは初めてでしたっけ」
 いつもと変わらぬ冬青の様子にアヤネは内心で安堵しつつ、小さくかぶりを振った。
「僕は経験があるよ。でも二人で相手にするのは初めてだネ」
「大丈夫、私達ならやれますよ」
 笑顔を交わし合ったのち、アヤネは冬青の額に口づけを一つ落とした。……こちらをひたと見つめる視線に、あえて見せつけるように。
「気をつけて行っておいで」
 アヤネに優しく送り出され、冬青は気合い十分に敵へと立ち向かう。
「こんにちは。そこ通して貰えます?」
 ミカは薄ら笑いを浮かべて沈黙している。馬鹿にするように肩を揺らしながら、召喚の力を発動させるばかり。相変わらず、目だけは笑っていない。
 その態度を拒否と受け取り、冬青は愛刀を構えた。
「まぁ無理ですよね。では実力行使で!」
 瞬時にして冬青の全身が黒蘭の花弁に覆われ、爆発的な速度で飛び出した。音速にも等しいスピードで駆け回り、周囲で急速に実像を結んだ黒妖犬の群れを引っ掻き回していく。
 主の嫉妬心を顕現させた黒犬達は諦めも疲れも知らず、数の優位でもって冬青を追い立ててくる。冬青が頭上に飛翔してもなお、そもそもが実体を持たぬ影であるがゆえに、その追跡の手は空中にまで執拗に途切れない。
 必然として、回避にかかりきりになる冬青。それが敵にとって格好の的であることを、アヤネはとうに予測済みだ。
 電脳ゴーグルにミカの動きが映し出される。花束を振るおうとする仕草を、沸騰する影を、ゴーグルに連動した中距離制圧用アサルトライフルが回避動作すら予測した弾道で牽制していく。
 ミカは苛立ちを鋭い舌打ちに変えて、牽制の隙間に散らした花弁で嵐を巻き起こし、壁の如く展開してアヤネの視線と射線とを断った。一度身を隠し機を窺うつもりか。
 しかし完全に射線を断つということは、死角を作り出すということ。アヤネは敵の動きの予測を立てつつ、あえて一気に間合いを詰めた。
 花嵐の壁が晴れた瞬間、アヤネの視線の先、遥か頭上に跳躍する少年の姿があった。
「UDC形式名称【ウロボロス】術式起動。かの者の自由を奪え」
 アヤネの影から蠢く蛇の如き触手が溢れ出し、宙を跳ぶ少年の手足を捉えて一気に下方へ引きずり下ろした。鈍い音と共に少年が叩きつけられた地面が、もうもうと砂煙を上げる。
「僕らの連携に割り込もうなんて甘いネ」
「──ふざけるなッ!!」
 激高するミカの全身からアネモネの嵐が吹き荒れた。触手もあっけなく引きちぎられる。
 当然、ミカ自身にダメージはない。虚を衝いたがゆえに瞬間的には捕縛できたものの、やはり物理的拘束は効果が薄い。
 しかし主が地に叩きつけられた影響で、黒妖犬の陣営には明確な乱れが生じた。その瞬間を捉えて冬青は高々と敵頭上に飛翔する。
「見た目だけでも子供の姿の子を相手にするのは気が引けますが……って何か怒ってる?」
 吹き荒れる紫色の嵐の無軌道さに目を瞬く冬青。しかし頭に血がのぼってくれているのならチャンス。相手は強敵、攻撃の手を緩めていられる状況ではない。
 冬青の全身が音速を超えて急降下する。花弁の嵐が暗殺虫へと変じて襲い来るが、超音速の衝撃波に弾き飛ばされことごとく消し飛んでいく。
 人ならざるスピードの中で、思考が細切れに零れていく。
 紫のアネモネが視界に入る。
 綺麗な花だとは思う。
 花言葉は何だったっけ。
 まぁいいか。
「じゃ、さようなら」
 着地、からの急速な水平突撃。
「この銀の弾丸は悪を滅ぼす」
 大型ライフルの引き金が引かれたのはほぼ同時。
 刀の切っ先が、一瞬で距離を吹き飛ばす超音速を乗せて、少年の紅い右目をまっすぐに突き貫く。
 銀色の弾丸が紅い左目に着弾したのもまた、同時。
「アーメン」
 両眼が噴き出す紅い飛沫と、紋章の破綻へと食い込む涼やかな音色へ、アヤネは静かな祈りを捧げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
彼の者の心は激しい怒りに満ちあふれている。
持つ者への嫉妬だけではなく、全ての破滅を望んでいる
ような激しい怒り。

彼もまた救われぬ者なのだろうか。

■闘
相手の力は大幅に強化されている故、下手をうてばやられる。
なれば、此方も力を高めるとしよう。
【剣宿・現】で剣の神霊を宿し【空中戦】だ。

先ずは飛んでくる花弁の軌道を【見切り】つつ命中しない
ように立ち回り、接近の好機を伺うぞ。
逃げるのが難しい場合は花弁目掛けて【衝撃波】を放ち
相殺を狙うのだ。

好機が来たら『心切』に【破魔】の力を込めてミカの懐へ上空から
一気に【ダッシュ】、紋章が存在する眼球めがけて正確な一太刀を
放ち大ダメージを狙うぞ。

※アドリブ歓迎・不採用可



●剣神の一太刀
「ッは……はぁっ、はぁっ……くそ……ッ」
 白い湯気を立てて眼球の形状を再生させながら、肩で息つき悪態をつくミカの様子を、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は注意深く見定める。
(「彼の者の心は激しい怒りに満ちあふれている」)
 持つ者への嫉妬だけではなく、全ての破滅を望んでいるような激しい怒り。
 そして……決して潤うことのない渇き。
(「彼もまた救われぬ者なのだろうか」)
 ならばせめて、あるべきところに還さねば。
 清綱は、刃を構える。
(「相手の力は大幅に強化されている故、下手をうてばやられる。なれば、此方も力を高めるとしよう」)
 両の瞼を下ろす。
「剣の神は、我と共に在る……」
 何者かが我が身に宿る感覚。全身が淡く輪郭を溶かし、剣の神霊と一体となる昂揚が剣気となって身の内より溢れ出す。
「愛久山・清綱、参る」
 一息に空中へと躍り出る清綱。
 ミカは咄嗟に花弁を飛ばしてくる。
 清綱は花弁の軌道を見極め、剣神の加護を得た肉体と反射で巧みに躱す。あまりにも流麗で、あまりにも理に適ったその動きは、他者からはまるで消えては現れるように知覚される。
 敵は消耗を積み上げている。花嵐の制御は荒っぽく単調だ。
「浅はかな!」
 ミカの苛立ちが無軌道に化ける瞬間を待って、清綱は喝破した。
 衝撃波が波及し、多方向から直線的に襲い掛かってきた花弁の群れを、一瞬にして相殺する。
 間髪入れず、剣神と化した清綱は急降下を開始した。心切の刃が内側からにじむような淡い輝きを発して、地底の闇に垂直の白い光の帯を引く。
 ミカは咄嗟に自身の影を波立たせるが、消耗激しい身には、決して反応できる速度ではない。目を庇う仕草さえ、間に合わない。
「ひと時の安らぎへと還れ」
 頭上から正確に振り落とされる、正確無比の一太刀。
 視界を焼く一閃が紅を裂き、致命の罅を紋章の中心部にまで届かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と

忘れられた地下都市……ここでも人々は吸血鬼に虐げられているのか
待っていろ、必ず奴らの支配から救い出してやる

いくぞ、ヘルガ
これまで何度も凶悪な敵に立ち向かってきた
何も恐れることはない
俺たちの力を見せてやろう

敵の放つ黒妖犬と暗殺虫の攻撃から身を挺してヘルガをかばう
受けた苦痛は毒耐性、激痛耐性、継戦能力、覚悟で耐え抜く
この程度の傷、人々が長きに渡り甘んじてきた支配と屈辱に比べたら……!

敵の油断を野生の勘で察知したら、その隙を突き傷口から【ブレイズフレイム】の炎を噴出
纏わりつく虫や犬を焼き払いながら眼球目掛けて解き放つ

俺なら大丈夫だ、ヘルガ
その光と意志で、邪悪を打ち祓え……!


ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と

地上だけでなく、地下にも人々の嘆きが、オブリビオンの悪逆が溢れているなんて……
行きましょう、これ以上虐げられる人々、失われる命を増やさぬために

地下都市の人々を虐げ、命を踏み躙り、そして今ヴォルフを傷つけた……
ミカ、わたくしは決して貴方を許さない!

ヴォルフ、あなたの作ってくれた好機、決して無駄にはしません
歌うはレクイエム【怒りの日】
解き放つ無数の神罰の光は、黒妖犬の群れを穿ち、敵の視界を眩き光輝で満たし、その邪眼を焼き払うでしょう

夜の闇の中にあっても、ただ一つの星の光があれば、
人はその導きに希望を見出せる
仮初の力に溺れ、人の絆を侮った愚を思い知りなさい



●我が身を呈し、邪悪を滅す
 地下都市を囲んで聳え立つ堅牢な壁を、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は険しく仰ぐ。
「忘れられた地下都市……ここでも人々は吸血鬼に虐げられているのか」
「地上だけでなく、地下にも人々の嘆きが、オブリビオンの悪逆が溢れているなんて……」
 ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)もまた、塀の内側の民草の苦衷を想い、眼差しを伏せる。
「待っていろ、必ず奴らの支配から救い出してやる」
 誓いを胸に、ヴォルフガングはヘルガを見た。
「いくぞ、ヘルガ。これまで何度も凶悪な敵に立ち向かってきた。何も恐れることはない。俺たちの力を見せてやろう」
 応えて、ヘルガは毅然と瞳を上げる。
「行きましょう、これ以上虐げられる人々、失われる命を増やさぬために」
 二人の眼差しが翻る。供花伯・ミカ、その姿を同時に捉える。
 ミカは白い蒸気を上げる紅眼にもはや隠しもしない敵意を漲らせ、二人を睨み据えている。
「また二人……? またそんな仲良しこよししてさあ……馬鹿の一つ覚えみたいに……」
 小さく肩を震わせてひとしきり罅割れた笑い声を響かせたのち。
「──うざいんだよッ!!!!」
 一喝と共に黒い嵐が爆発的に渦巻き、大量の黒妖犬を産み落とした。
 黒い獣が地を駆け襲い来る。紫の花嵐が追い打ちをかける。
 身構えるヘルガの眼前を、見知った立派な体躯が立ち塞がり、そのまま全身で覆いかぶさってきた。
「ヴォルフ!?」
 懐にかくまった少女の驚きの声に構わず、ヴォルフガングはただ己が身を挺して、全ての攻撃からヘルガを守り抜く。その身を夥しく襲う毒、激痛。それら全てを耐え抜くことを選択したのだ。
「この程度の傷、人々が長きに渡り甘んじてきた支配と屈辱に比べたら……!」
 騎士としての忍耐と覚悟が、痛みすらをも凌駕する。
 そんなヴォルフガングを、ミカはせせら笑う。
「防戦一方? この程度で手も足も出ないって? 何から何までサムいなぁ、キミ」
 花束を手に悠然と歩み寄ってくるミカ。その足取りには余裕というには迂闊にすぎる侮りがある。根底には、ここまで虚仮にされ続けてきた鬱憤もあっただろう。
 だからこそ、通常の判断力ならば避けていたであろう危険な間合いに、ほんの一歩だけ、余計に踏み込む愚を犯した。
「────!」
 その瞬間を待って、ヴォルフガングは切り裂かれた全身の傷口から地獄の炎を噴き出した。纏わりつく大量の暗殺虫や黒妖犬を瞬時にして黒焦げに焼き払うと同時、ミカの眼球へと高熱の紅蓮が殺到する──
「ぐぁ……ッ」
 隙をつかれて焼かれた目を抑え、よろめくように後退するミカ。
 同時にヴォルフガングの膝が落ち、無傷のヘルガの姿が現れる。
 崩れ落ちるヴォルフガングを咄嗟に支えようとしたそのたおやかな腕を、ヴォルフガング自身が掴んで引き離す。
「俺なら大丈夫だ、ヘルガ。その光と意志で、邪悪を打ち祓え……!」
 つらそうに顔を歪めて、けれど想いを受け取って決然と頷き返し、ヘルガは敵前へと歩を進める。
「ヴォルフ、あなたの作ってくれた好機、決して無駄にはしません」
 ヘルガとてただ守られていただけではない。術を発動させる条件はすでに整っている。
「地下都市の人々を虐げ、命を踏み躙り、そして今ヴォルフを傷つけた……」
 真白い全身からにじみ出るような輝きが、その輪郭を淡く溶かしていく。
「ミカ、わたくしは決して貴方を許さない!」
 歌うはレクイエム『怒りの日』。
 透明な歌声が地底を震わせる。他者の尊厳を踏みにじる邪悪を滅せよと、裁きの光を紡いでいく。
「無辜の願いを冒涜し命を愚弄する者よ。何者も因果応報の理より逃れる術は無し。今ここに不義は潰えん。悪逆の徒に報いあれ」
 解き放たれた無数の神罰の光が、黒妖犬の群れを穿ち、ミカの、決して失われない視力を焼く。
「や、やめろ……やめろぉぉぉぉぉ──ッ!!」
 必死に目を塞ぎ、光から逃れようとするミカ。しかし強烈すぎる神聖な輝きは、手で覆う程度では防げない。
「夜の闇の中にあっても、ただ一つの星の光があれば、人はその導きに希望を見出せる」
 まるで光と一体化するように輝きながら、ヘルガは苦しみ悶えるミカへと厳粛に告げた。
「仮初の力に溺れ、人の絆を侮った愚を思い知りなさい」
「アアアアアアアァァァァァ──!!」
 少年の絶叫の果てに、紋章の粉々に砕ける音が、猟兵達の耳に確かに届いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『疫病楽団の幽霊楽師』

POW   :    その疫病と演奏は人々の感情を狂わせ
【狂気に陥らせる演奏と疫病】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    世界を憎み蹂躙させる
【疫病を振りまく演奏】を披露した指定の全対象に【猟兵や世界に対し強い敵対】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ   :    そして虜になった者は人を止め、肉の怪物と化す
【疫病にかかりつつ、狂気に陥った人々】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●供花伯の最期
 目を抑える少年の手の中で、眼球は完全に蒸発した。
 守るべき両眼を失った手が呆然と下ろされる。
 紅い瞳があった場所は眼窩が覗け、今はもう虚ろな闇がわだかまるばかり。
「どうして僕が……僕ばかり……僕、だけ……どうしてぇ……」
 誰かを求めるように虚空に伸ばされた手が唐突に白化し、それは瞬く間に全身へと進行した。
 吸血鬼の習いに従って、『供花伯・ミカ』は最期は灰となって地の底に散った。
 唯一形の残るアネモネの花束は、花弁から鮮やかな色彩を失い、多くの種子を残して儚く枯れ果てた。

●初めてのよそ者
 戦いの気配と幾度か響いた供花伯の絶叫は、壁の内側にも届いていた。
「……静かになった」
「なんだったんだ、あれは」
「わからん。どうせ吸血鬼のお遊びだろう」
「静かにおしよ。仲良しこよしは見咎められたらまずいよ」
「そりゃ供花伯だけだ。楽師どもは楽器が弾ければ満足なのさ」
「迷惑な……ゴホッゴホッ」
 ひそひそと声を潜める街の人々。
 事実、楽師達は思い思いに歩き回りながら旋律を奏でるばかり。疫病を広げるのが目的というより、絶対に逃げ出せない聴衆を囲っておきたいだけなのだろう。
 その時、人々の諦観を裏切って異常事態が発生した。
 彼等が知る限り……それこそ父母や祖父母、それより前の代からずっと閉ざされ続けていた大門が、開け放たれたのだ。
 そこに佇んでいたのは供花伯ではなく、複数の人影。一人として見たことのない……彼等が想像したことすらない「よそ者」が、初めてこの地底都市をおとなったのだ。
「なんだ? あいつら……」
「わからん、わからんが……ヤバい感じだぞ……」
「皆、屋内へ! なるべく頑丈な建物に集まれ!」
 普段巡回するだけの楽師達が一斉に大門へと駆け寄っていくのを見て、危機を察知した人々が次々に家屋へ避難していった。

 猟兵の目前に広がるのは、息を潜める街。あちこちから固唾を呑んで様子を窺う視線を感じる。
 そう、地底生まれ地底育ちの彼等にとっては、猟兵すら未知の存在であり脅威なのだ。
 彼等はミカの死を知らない。猟兵がミカを倒したことを告げても、やすやすと信じてはくれないだろう。
 猟兵に害意がないこと、猟兵が協力者であること、吸血鬼の支配から逃れることは不可能ではないこと。
 それらを伝え、彼等の心に勇気を喚起するため、為すべきは一つ。
 今まさに人々の脅威として厳然とそこにある楽師達を、完膚なきまでに打ちのめせばいいのだ。
 疫病振りまく狂気の音色を奏でる数多の楽師へと、猟兵は立ち向かう。
木霊・ウタ
心情
絶望と隷属が当然の日々か
その心に希望の光を灯してあげたいぜ
楽団を倒そう

住人
屋外へ出て来ぬ様声掛け
供花伯は倒した!
楽団もすぐに倒す
そのまま隠れていてくれ


狂気に陥った人いれば声掛けし勇気づけ
破魔の調で呪詛を打ち払う

すぐに助ける
諦めるな!
希望は絶対ある!

戦闘
住人が人質に取られたり
被害が及ばぬよう戦う
必要時は庇う

破魔込めて旋律奏で
楽師の音色を阻害

同時に獄炎を炎渦と化し
疫病を焼却滅菌&炎が生む気流で吹き飛ばす

そのまま楽師を炎で滅する

楽師
音楽で人を苦しめるなんて
楽師なら絶対に望まないぜ
そんなことも喪っちまってるとは可哀想に
海へ還してやる

事後
楽団や
是までの犠牲者へ鎮魂曲

住民を勇気づける勇壮な調も


ウィンディ・アストレイ
まあ此方も、勝手且つ唐突に押しかけた訳ですから…
この扱いも止むを得ませんか(苦笑

フライトシステムを起動して『Blanches Aile』展開
虚喝と示威を兼ね、空中から戦闘を仕掛けます
「さて、吉と出るか凶となるか…」

基本的に一体ずつ相手取り、各個撃破を累積して数を減らします
残像を囮にしつつ戦闘勘と見切りによる回避運動で攻撃を躱し
ファングで足止めしつつ傷を負わせた後
装備した火器で仕留めます
「的は大きい方が、当てやすいという物です」

他の猟兵が手間取っている様なら
空中からの狙撃とファングの幾つかによって支援攻撃も行います

(以上、空中戦&戦闘知識&第六感&見切り&残像&一斉発射&スナイパー&援護射撃)



●道を切り拓く光と炎
 あちこちから息を潜めてこちらを窺う視線を感じる。警戒、恐怖、不審……少々の好奇心。
「まあ此方も、勝手且つ唐突に押しかけた訳ですから……この扱いも止むを得ませんか」
 ウィンディ・アストレイ(W-ASTRAY・f09020)は小さく苦笑した。
「絶望と隷属が当然の日々か」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は数多の視線を受け止めながら、門前から一歩踏み出し、決然と声を張り上げた。
「供花伯は倒した!」
 痛いほどの沈黙が返ってくる。言葉の意味が、人々の腑に落ちていない手応えがわかる。
 すぐには信じられないかもしれない。それでも、わずかなりとその心に希望の光を灯してあげたい。
 だからウタは、真実を、決意表明を、しかと告げるのだ。
「楽団もすぐに倒す。そのまま隠れていてくれ」
 やはり応えはない。だが、楽師達の集結速度はそれ以上の猶予を許してはくれなさそうだ。
「楽団を倒そう」
「ええ。では、『空』は任せてもらいましょう」
 ウィンディは沈黙させていたフライトシステムを起動し、背部推進ユニットを展開した。まるで白翼を広げる天使の如く、その身は空中へと舞い上がる。
「さて、吉と出るか凶となるか……」
 見下ろした直下には、駆けつけた楽師達の先触れがオーケストラの如き布陣を敷き始めている。
 各々が手に持つ楽器が各々に美しい音色を響かせ、バラバラの曲調を不思議と調和させる。
 旋律は語る。
 ──ここは我等の楽園。
 ──地の底しか知らぬ無知な聴衆は、永劫我等の虜。
 ──供花伯死すともこの街は渡さぬ。
 旋律は狂気を帯び、疫病を運ぶ。空気が重く濁っていく。
 明確な言葉など持たずとも、彼等の奏でる音楽には想いを伝える力がある。たとえそれが、捻じ曲がった身勝手な執着であろうとも。
「音楽で人を苦しめるなんて、楽師なら絶対に望まないぜ。そんなことも喪っちまってるとは可哀想に」
 音を力として振るう者として、ウタは彼等を素直に憐れんだ。
「海へ還してやる」
 かき鳴らされるギターの弦から風が吹き抜けた。狂気を浄化する破魔の旋律。
 同時に全身から噴き出した獄炎が炎渦と化し、疫病を焼却滅菌しつつ、炎によって生じる気流で吹き飛ばしていく。
 楽師達も負けじと狂気の旋律を重ねていく。音楽にとって数は力だ。互いの音色を塗り潰さんとする攻防は……楽師側が優位か。
「なかなかに厄介そうですね。ですが頭上からなら……」
 上空から的確に戦況を見て取り、ウィンディは短剣の形状をした純エネルギー体を周囲に紡ぎ上げた。燦然とした頭上の輝きに、楽師達の演奏がどよめくように乱れる。
「Exterminate……行きなさい、ファング!」
 大量に降り注ぐ光の短剣が楽器を持つ楽師の手元を貫き、あるいは足や背に突き立つ。そのうえ重ねられる支援狙撃。
 上空の狙撃手の存在に気圧されて、ウタと拮抗していた楽師達の布陣が後ずさるようにじりじりと後退を開始した。併せてウタも前進を開始、獄炎の火勢を強めて疫病の焼却範囲を広げていく。
 ……楽師の音色を聞いた者は、猟兵だけではない。
「ぐあああぁぁ……っ!」
 間近の家屋から男の声が上がった。
 視線を翻せば、粗末な民家の戸を蹴破って、突如として粗末な衣服の男が戦場に身を晒した。この街の住人だ。狂気の音色に侵食されて、尋常な様子ではない。
「くそっ……どうせみんな死ぬ、オレももう……死ぬんだぁぁぁ!」
 徒手空拳でウタに襲い掛かろうとする男。
 ウタは咄嗟に奏でる旋律を切り替えた。
「すぐに助ける、諦めるな! 希望は絶対ある!」
 破魔の調が呪詛を打ち払う。男は殴り掛かってきた姿勢のまま、前のめりに昏倒した。
 男の乱入によって拮抗に生じた綻びに、楽師達の旋律が盛り返し始めた。ウタとウィンディへと襲い掛かる狂気と疫病の旋律。
「……っ、音を避ける、というのは現実的ではありませんが……っ」
 ウィンディは目に見えない音の波動の、分厚い部分、薄い部分を直感的に嗅ぎ分け、残像を描きながら幾多にも回避していった。
 同時に光の短剣を楽師の足元を狙って飛来させ、動きを阻害したところを的確にロックオンする。
「的は大きい方が、当てやすいという物です」
 まずは身の丈にも及ぶコントラバスの奏者から。
 バスターライフルの精密射撃が、極太のエネルギー光線を照射し、コントラバスの楽師を塵も残さず蒸発せしめた。
 宙を自在に舞う天使が、光線で、ガトリングで、理力刃で、楽師を各個撃破していく。
 気勢を失った楽師達をウタの演奏が凌駕し、獄炎で一体一体滅していく。
 炎と光に彩られる戦場。
 疫病の旋律がやんだ頃、楽団と街の犠牲者への鎮魂曲が響き、それはやがて、人々の心に勇気を喚起する勇壮な調べへと転調していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

七那原・エクル
七那原・望と参加するよ

「ベイルアウト・イマージュ」で病魔や疫病の「毒性エネルギー」を吸収して機械内部でろ過、蒸気に変化して排出して浄化する機能のスチームエンジンをボクの想像から構築

あらら、あまり小型化できなかったか…まぁ背負って移動することはできるからいっかな

「疫病楽団」は楽器を演奏して病を拡散させるなら楽器を狙い撃ちするかして優先的に破壊してみよう。

もし楽器を「弾くこと」で疫病を発生させるのではなく、楽器の音色に疫病を載せて拡散させているのであれば楽器の音色を遮断するのもアリかも

都市の中だから住居を極力破壊しないように大火力の武器は使用を控えないとね、住民を怖がらせしまうかもしれないしね


七那原・望
えくるん(f07720)と参加

狂気にはアニマルセラピー!
アマービレでねこさんをたくさん呼び出して、家屋に閉じこもった人々の元へ派遣、可愛らしい外見で癒やしを与えつつ、ねこさん達の【全力魔法】【オーラ防御】【結界術】で住民達を護ります。

供花伯が支配してた集落……アネモネの印象、もしかしたらあんまり良くないかもしれない?
悲しい花言葉も多いけど、良い花言葉もいっぱいのステキな花なのに。
あれらを倒したら教えてあげたいかな?

【第六感】と【野性の勘】で敵の動きや攻撃を【見切り】、回避しつつ【浄化】の【魔力を溜めた】【全力魔法】【フローラ・テンペスタ】で【範囲攻撃】。蹂躙します。

えくるん、トドメは任せるの!



●アネモネと弾丸
 門前の楽師達を蹴散らした猟兵達は、街の内部へと踏み込んでいた。
「うぅ……ぐぁぁ……」
「あ、は……アハハハハハハハッ!!」
「うっうっ、もういやぁぁ……」
 疫病と狂気が蔓延し、熱に浮かされたような苦鳴、狂った笑い声や泣き声があちこちから響いている。楽師の曲に操られて猟兵に襲いかかるのも時間の問題か。
 七那原・望(封印されし果実・f04836)は先手を打って、白いタクトを振った。
「狂気にはアニマルセラピー!」
 涼やかな鈴の音と共に現れた大量の魔法猫達が、街中に散っていく。一匹一匹が人々が頑なに閉じこもっている家屋の中へ。苦しむ子供を、今にも暴れ出しそうな大人を、死に瀕した老人を、心身とも分け隔てなく癒し加護を与えていく。
 徐々に収まっていく狂気の声、家屋の一軒一軒を包み込む淡い輝き。猫達に全力で魔力を注いで状況を維持しながら、望はひとまずほっと胸を撫でおろした。
 ただし、懸念が一つ。
「供花伯が支配してた集落……アネモネの印象、もしかしたらあんまり良くないかもしれない? 悲しい花言葉も多いけど、良い花言葉もいっぱいのステキな花なのに」
 そもそも花という存在を、彼等は理解しているだろうか。未知の存在を受け入れてくれるだろうか?
「あれらを倒したら教えてあげたいかな?」
 その為に、まず為すべきは、敵の掃討。
 街を見渡した望の視線の終着点には、七那原・エクル(ツインズキャスト・f07720)の姿がある。
「毒性エネルギーの吸収・濾過・蒸気変換・排出機能を持つ浄化スチームエンジン──ベイルアウト・イマージュ!」
 燦然とした輝きがエクルの足元に溢れた。光の中で複雑な機構が形を成し、輝きが退くと共に実体を得て蒸気機関が顕現した。
「あらら、あまり小型化できなかったか……まぁ背負って移動はできるからいっかな」
 武骨なスチームエンジンを背に担ぎ、エクルは望の視線に頷いて応えた。準備完了だ。
 楽団も望とエクルの動きに気付き、楽器をかき鳴らしながら包囲を狭めてきた。旋律が重なり広がり、音の範囲にいる者をことごとく狂気と疫病で冒してくる。
 が、その効果もエクルの背負うスチームエンジンを前にしては形無しだ。絶え間なく毒素を吸収し蒸気へと浄化して排出する機関が、エクル自身はもちろん傍らの望も、ひいては周辺の住民達さえ音の侵食から守ってくれる。
 手応えのなさに気づいた楽師の一人が顔色を変え、転調しようとしたその瞬間、手元でマンドリンが乾いた音を立てて破裂した。ハープが、サキソフォンが、アコーディオンが、ボンゴが、連続する銃声に合わせて次々に破壊されていく。
 演奏が乱れ、音の厚みが失われていく。同時に、疫病と狂気の猛威が薄らいでいくのがわかる。
「思った通り……!」
 手応えを感じて、エクルは途切れることなく小銃でピンポイントに敵の楽器を狙い撃っていく。
 楽師達は楽器を「弾く」という行為自体によって病を拡散しているわけではない。奏でた音色そのものが、疫病を載せて伝播しているのだ。
 ならば、楽器そのものを壊して、音色が出なくさせてしまえば良い。
 エクルの狙いは見事に的中し、楽師達は徐々に無力化されていった。欲を言えば重火器も使いたいところだが、住民の安全を脅かしたり怯えさせないためにも、取り回しの利く必要十分の威力の銃で各個に対処していく。
「ぐぎ……ああああああああああああ──ッッッ!!」
 突如として奇声が上がった。楽器を失った楽師の発狂だ。
 仲間達の演奏に感情の爆発と戦闘力強化を後押しされ、壊れた楽器を掲げて次々に襲い掛かってくる。肉弾戦に慣れた身のこなしではないが、数が多い。
「させない……! 愛と希望を込めて、舞い踊って!」
 自身に向かってきた楽師の攻撃を直感的に躱しながら、望は最大限に溜めた魔力をエクルへと殺到する楽師へと一気に解放した。
 吹き溢れ視界を埋め尽くす赤と白。それは、鮮やかなアネモネの花弁。
 人々を苦しめてきた供花伯と同じアネモネが、人々を苦しめてきた楽団を、押し流すが如く蹂躙していく。襲い掛かってくる者達は花弁に取り巻かれ身動きと方向を失い、後方の奏者達の旋律は大いにかき乱された。
「えくるん、トドメは任せるの!」
「ああ!」
 銃声が高らかに連発し、楽師達の額に次々と風穴が穿たれていく。
 噴き出す鮮血が、白の花弁を赤く染め替え、赤の花弁を艶やかに塗り替え、真紅の花嵐が戦場を美しくも残酷に彩っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と
・アドリブ、他猟兵との共闘歓迎

歌は人の心に寄り添い、癒すもの
疫病を撒き散らし不幸と絶望をもたらすなど、あってなるものですか

わたくしたちの手で、人々に希望と祝福を……!

歌うは【シンフォニック・キュア】
祈り、優しさ、慰めを込めて
敵に立ち向かうヴォルフや仲間たちを援護しながら
今も病に冒され絶望に心沈む人々を浄化して

明けぬ夜はない、止まぬ雨はない
敵を焼き尽くすヴォルフの焔が反撃の狼煙となるならば
わたくしは、長い夜の終わりと朝の訪れを告げる
明けの明星となりましょう

喜びを分かち合い、悲しみは半分に
この世界に住まう遍く人々に、希望の歌声届けと


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と
・アドリブ、他猟兵との共闘歓迎

門番たる支配者は倒れた
あとはこの街に蔓延する疫病と悪しき亡霊を一掃するだけだ

ヘルガや仲間達を敵UCの効果範囲外に留まらせ
勇気と覚悟、そして【守護騎士の誓い】を胸に突入
狂気に陥らせる演奏と疫病の苦痛は呪詛耐性、激痛耐性、狂気耐性で耐え抜く

俺の背後には、恐怖に怯え救いを願う無辜の民がいる
盾として人々を守り支えるは騎士の務め
この程度で倒れてなるものか
何よりヘルガの歌声が、俺を癒し支えてくれる
恐れるものは何もない!

鉄塊剣に炎の属性魔法を纏わせ、2回攻撃で敵を一気になぎ払い焼却
この炎は邪悪を焼き払う地獄の業火
そして俺達人類の、反撃の狼煙だ!


春乃・結希
with!今日はBGM付きなんやって
ちょっとお得な気分やね
みんなと一緒に種蒔くために、もうひと頑張りしようね!

いくら音色で惑わそうとしても
私が狂気に陥るなんて有り得ません
私の心は、愛する『with』が護ってくれるから【勇気】
疫病が身体に回って動けなくなる前に
みんな叩き潰してあげる

『wanderer』の出力を全開【ダッシュ】
素早く距離を詰め、蹴り飛ばし、拳で殴りつけ【怪力】、大剣を叩き付ける【重量攻撃】
全身を武器にして、身体が言う事を聞かなくなるまで、ひたすら敵を過去に還していく【覚悟】

この世界に、希望を結んでいく人達。猟兵を信じてくれるかな…
うん。大丈夫だよ、with。まだまだ…戦えるから…!


リーヴァルディ・カーライル
…今日この時をもっお前達、疫病楽団の演目は終了よ
かつての過去と同じく、お前達の支配者と同じ道を辿るが良い

UCを発動して早業の●防具改造で各種呪詛を乱れ撃ち、
敵の演奏は強化した病●毒耐性と●狂気耐性で聞き流し、
全身を●存在感を消す●迷彩の●オーラで防御して●闇に紛れる

…これ以上、お前達の馬鹿騒ぎに付き合うつもりはないもの

…何が起きたかも分からない内に片付けてあげるわ

●地形の利用した疑似●空中戦機動の●ダッシュで死角に切り込み、
大鎌を武器改造した手甲剣を●怪力任せに突き刺して、
●生命力を吸収して●盗み体●力を溜め●暗殺して回る

…頭上注意よ。なんて、もう聞こえていないでしょうけど…



●守る者、闘う者
 戦線は徐々に街の内部へと食い込んでいく。
 広場に陣を敷いて展開する楽団の前へ、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)は力強く踏み出した。
「門番たる支配者は倒れた。あとはこの街に蔓延する疫病と悪しき亡霊を一掃するだけだ」
 仕草でパートナーと仲間達を制して後方に留まらせたまま、ヴォルフガングは独り、走り出す。複雑に綾なす楽団の旋律のさなかへと。勇気と覚悟、そして『守護騎士の誓い』を胸に。
 重なる音色が心を揺さぶる。狂気を煽る。病で冒す。ヴォルフガングはただ耐える。呪詛も激痛も狂気も全てを耐えて耐えて耐え抜いて、ひたむきに敵陣へと突撃する。
 愛する者、無辜の民を守るのだ。その確たる決意のもと、我が身が窮地に追い込まれるほどに、ヴォルフガングの肉体は力を漲らせていく。
 迷いのないヴォルフガングの背を、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は様々な感情の入り乱れる眼差しで見送ったのち、静かに目を伏せた。
「歌は人の心に寄り添い、癒すもの。疫病を撒き散らし不幸と絶望をもたらすなど、あってなるものですか」
 瞼が持ち上がり、再び現れたその双眼には、毅然とした決意に輝いている。
「わたくしたちの手で、人々に希望と祝福を……!」
 歌うは『シンフォニック・キュア』。
 祈り、優しさ、慰めを籠めて響く美しい旋律が人々の心に届く。各々の戦場で戦う猟兵達、家屋に隠れて息を潜める住人達、そして、孤独な突撃を敢行したヴォルフガングにも。
 戦う者には疫病を癒す加護を。病に冒され絶望に心沈む人々には、浄化を。
「っ……俺の背後には、恐怖に怯え救いを願う無辜の民がいる……っ」
 ヘルガの歌を背に受けながら、ヴォルフガングの突進は重奏の深部へと至ろうとしていた。
「盾として人々を守り支えるは騎士の務め。この程度で倒れてなるものか……」
 疫病と狂気の重奏の分厚い力場に阻まれ、全身は酷く重い。激しい悪寒に脂汗がとめどなく噴き出てくる。
 だが、足を止めるなどという選択肢は、はなからヴォルフガングの辞書にはないのだ。
「何よりヘルガの歌声が、俺を癒し支えてくれる。恐れるものは何もない!」
 心に響く歌声に勇気と覚悟を奮い立たせ、肉体を癒す柔らかな輝きに最後の踏み込みを後押しされて、ヴォルフガングは振りかぶる鉄塊剣に炎を纏わせ敵陣へと突っ込んだ。楽師達がどよめきたたらを踏むが、もう遅い。
「この炎は邪悪を焼き払う地獄の業火。そして俺達人類の、反撃の狼煙だ!」
 炎の残像が弧を描いたのは、二度。
 身を寄せ合うように演奏していた楽団の一塊が、猛火に巻かれて塵も残さず焼却された。
 楽師と疫病を焼き払った炎が、禍々しいまでの黒煙を立ち昇らせる。あたかもそれが、反撃の狼煙であるかのように。
「明けぬ夜はない、止まぬ雨はない」
 燃え盛る炎を背景に屹然と佇むヴォルフガングの背を見つめるヘルガは、いつの間にか微笑んでいた。
「敵を焼き尽くすヴォルフの焔が反撃の狼煙となるならば。わたくしは、長い夜の終わりと朝の訪れを告げる、明けの明星となりましょう」
 喜びを分かち合い、悲しみは半分に。
 この世界に住まう遍く人々に届けと、希望の歌声は絶え間なく街を満たしていく。
「with! 今日はBGM付きなんやって。ちょっとお得な気分やね」
 楽団の演奏も、ヘルガの歌声も、皆ひっくるめて楽しんでしまうのが春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)だ。
「みんなと一緒に種蒔くために、もうひと頑張りしようね!」
 最愛の恋人である大剣さえ共にあれば、彼女は決して揺るがない。いくら音色で惑わそうとしても狂気になんて陥らないと、信じている。
「私の心は、愛する『with』が護ってくれるから」
 withがいるだけで無限に湧いてくる勇気。人に言わせればそれはもうとっくに狂気なのかもしれないけれど。
 心に一つ芯が通っているから、決してぶれることはない。
 だから、あとはもう、疫病が身体に回って動けなくなる前に、
「みんな叩き潰してあげる」
 前傾気味に低く重心を取った瞬間、出力全開にしたブーツの吐き出す蒸気を推力にして、結希の身体は大量の砂塵を上げながら敵陣へと飛び出した。
 距離を詰めるのはほんの一瞬のこと。直前まで演奏に没頭していた楽師達は、とてつもない衝撃に蹴り飛ばされるまで、あるいは拳の怪力に殴り飛ばされるまで気づかなかっただろう。立て続けに大剣を叩きつけられた楽師に至っては、何が起きたかすら理解できぬまま真っ二つに叩き割られ、煙の如く消滅し果てた。
「この世界に、希望を結んでいく人達。猟兵を信じてくれるかな……」
 居並ぶ数々の家屋は、未だ沈黙したまま。
「うん。大丈夫だよ、with。まだまだ……戦えるから……!」
 倒し、倒し、倒し尽くす。
 結希にとっては全身が武器。肉体が言うことを聞かなくなるまで、乱闘を演じ続ける。覚悟をもってして、ただひたすら敵を過去に還していく。
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)もまた、歌声を耳にしながら敵群と対峙していた。
「……今日この時をもって、お前達、疫病楽団の演目は終了よ。かつての過去と同じく、お前達の支配者と同じ道を辿るが良い」
 瞬間、リーヴァルディの纏う装束が刹那にして切り替わった。闇に溶け込もうかという黒々とした黎明礼装へ。
 多種多様な呪詛が黒き衣から解き放たれ、敵陣を乱れ撃つ。楽団に降り注ぐ禍々しい黒雨。
 楽団は回避するでもなく呪詛を耐え、演奏で対抗してくる。気が狂いそうなまでに大量の音を重ねに重ねた多重奏。
 リーヴァルディは強化された病そのものである演奏を耐性任せに聞き流しながら、建物の影に滑り込んで闇に紛れた。
「……これ以上、お前達の馬鹿騒ぎに付き合うつもりはないもの」
 追いかけてくるきらびやかな音色に向けて独りごちつつ、家屋の裏から裏へ、屋根から屋根へと駆け上がり、瞬く間に敵群の頭上へと躍り出た。
「……何が起きたかも分からない内に片付けてあげるわ」
 頭上を駆け抜ける人影に気づいた様子の楽師はいない。
 リーヴァルディは瞬時にして大鎌を手甲剣に変じさせ、真下に向けて一息に斬り込んだ。怪力任せの一突きが、一体の楽師の頭蓋をあっけなく割る。
「……頭上注意よ。なんて、もう聞こえていないでしょうけど……」
 蒸発していく楽師から生命力を吸い上げて、リーヴァルディはさらなる音の暴力に襲われる前にその場から離脱した。
 黒々とした暗殺者の影が戦場のあちこちを飛び回り、楽師達の命を順々に脅かしていく。
 希望の歌声が続く限り、あるいは全員が滅びるまで、楽師達の悪夢は終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
街の人々はあの楽団のみならず、我々にも怯えていた。
彼等を救うには、強き力が求められる。
……いつも通りのことか。
■闘
常時【落ち着き】を保ちつつ戦闘へ。

演奏を自身の【狂気耐性】で聞き流し、疾病を【オーラ防御】で
遮断しながら敵の集団にゆったりと接近する。
接近時は常に平然とした顔で接近し『力が効いていない』という
【恐怖を与える】ことで混乱を誘ってやろう。

距離を詰めたら『心切』を抜いて【夜見・慈】の構え。
刀に【破魔】の力を込めありとあらゆる雑念を振り払い、
敵の集団を流れるような【範囲攻撃】の太刀で一気に
斬り伏せ、自身の強さを見せつけるのだ。

此の地の闇を、斬り祓ってみせん。

※アドリブ・連携歓迎



●剣豪にはただ一刀あれば良い
「街の人々はあの楽団のみならず、我々にも怯えていた。彼等を救うには、強き力が求められる」
 愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は小さく独白したのち、わずかに口許をくつろげた。
「……いつも通りのことか」
 尋常でなく落ち着き払った鷹揚な足取りで、清綱は敵集団へと歩み出す。
 楽団が威圧するように派手に音をかき鳴らす。高らかに鼓膜を叩くシンバル、下腹に響く数多の木製打楽器。鉄琴とチェンバロが狂ったような超絶技巧の音を重ねてこめかみをやかましく刺激する。
 だが清綱は揺るがない。その足はゆったりと、しかし確実に敵陣との距離を詰めていく。
 ……オーラで防いでいるとはいえ、疫病を完全に遮断できるわけではない。狂気には耐性があれど、影響を皆無にまで落とし込むには至らない。
 しかし清綱は足を留めない。のしかかるプレッシャーを心胆でもって撥ね退けて、常に平然として見せる。
 顔色を変えない清綱の様に、楽団に動揺が走る。
 ──我等の力が効いていない……?
 ──馬鹿な、これほどの音を浴びせているというのに!
 疑念は恐怖を呼び、混乱を伝播させる。演奏が乱れ、じりりと押し負ける空気が漂う。
 音の層の最も濃い深みに踏み入り、清綱はゆるりと太刀を構える。
「秘伝……夜見」
 刃に宿るのは、純然たる破魔の力。
 楽団の演奏が思考をかき乱すような騒音となって襲い来る。重力さえ感じる疫病の力場の中を、清綱はしかし、一切の躊躇もなく太刀を振るう。
「此の地の闇を、斬り祓ってみせん」
 ありとあらゆる雑念を拭い捨てた斬撃が、流れるように楽団を横薙ぎに斬り伏せる。敵意も、使命も、何もかも振り捨てて。
 ただ、清綱の強さだけが、そこに残った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『花を咲かせよう』

POW   :    土を耕したり掘り返したり、重い物を運んだりの力仕事をする。

SPD   :    種や苗を植えやすいように整えたり、植える場所の飾りを用意したりする。

WIZ   :    土地にあった花を考えたり、花を植える場所を考えたりする。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●種を撒こう
 弦が飛び、金管がひしゃげ、鍵盤が飛散する。
 街を占拠していた楽師達は猟兵の力に屈し、次々に蒸発して消えていく。
 最後のトランペット吹きが断末魔代わりに上げたひずんだ音色が、そのまま終戦の合図となった。
 街中が、耳が痛いほどの静けさに包まれた。楽団に占領されてからこちらほとんど味わうことのなかった静寂に、住人達も戸惑っているようだ。
「……楽師どもが……死んだ……?」
 誰かがぽつりと呟いたのを皮切りに、ざわめきが街中に広がっていく。信じられない。でも少し楽になったかも。じゃあ供花伯のことも……。
 ぽつぽつと家屋の中から人々が姿を現し始める。
 何人かの勇気ある者達が猟兵の前へとおずおずと歩み出て、こう訊ねた。
「供花伯を倒したってのは、本当か」
 そうだ、と猟兵は答え、どよめく住人にかいつまんで状況を伝えた。
 供花伯もその手下も倒したこと。しかし吸血鬼は他にもおり、またいつこの地底都市を支配しようとするかわからないこと。地底の遥か上には地上の世界があり、ここよりは幾許かマシな生活ができるだろうこと。
 そして、自分達がこの都市の住人を地上へと誘うために駆けつけたことを。
 彼等の常識に照らせばにわかには信じがたい事柄ばかりだったが、先の戦いの猟兵の活躍を目撃し、そのさなかに施された少なくない治癒や加護を実体験した人々は、猟兵達を疑うことをしなかった。
「……そんなことが……いやしかし、今の我々ではその、「地上」とやらにたどり着けるかどうか」
 疫病楽団は滅んだものの、人々の病は未だ癒えていない。
 病を根治するためには、街の片隅にある地底湖に、供花伯の残したアネモネの種子を植え、花を咲かさなければならない。猟兵がそう説明すると、人々は不思議そうに首を傾げた。
「花……? なんですか、それ?」
 そう、この地底では、花という概念すら知られていないのだ。彼等にとって、「供花伯」はただの固有名詞、ミカの持っていたアネモネは「一風変わった植物」でしかなかったようだ。

 ピンときてはいない様子ながらも、住人達は全面的な協力を申し出てくれた。疫病の症状の浅い子供や少年少女、若者達を中心に、種まきを手伝ってくれるらしい。
 ミカの残した種子は大量にある。不思議と多種多様な形状をしていることから、紫だけではなく、様々な色形のアネモネが咲くことだろう。
 また、種を撒けば数分から数十分で花が芽吹くらしい。その花弁が疫病の特効薬となり、人々の体力も回復するはずだ。
 過酷な地底から人々を地上へと連れ出すため、凄惨な戦いから一転、猟兵達はアネモネの種まきに精を出すのだった。
木霊・ウタ
心情
花という存在も知らないとは
支配の苛烈さが判るってもんだ
吸血鬼め

住民達には体の健康と
心には希望をもってもらいたい

白いアネモネの花言葉は「希望」だっけ?
発芽や開花
湖畔で咲き乱れるさまも楽しみだ

行動
地底湖の畔で種まき

花が咲くまでの間
そして花が咲いてからも
ギターを爪弾く

住民への慰撫と
未来への祝福として

ゲネの言う通り
地上の世界も過酷だけど
此処よりはきっと
未来への希望が確かにある

希望を心に未来へ進む第一歩
今日をその日としよう

湖の碧に色とりどりの花
綺麗だよな

今までは
この地底が世界の全てだった分
これからはきっと
沢山の美しいものと出逢えるぜ
俺達もそんな世界になるように頑張る(ぐっ


春乃・結希
お花が何なのかと言われると…
見て癒されたり、貰ったら嬉しかったりで…
えーと…とにかく実際に見て貰うのが1番です!
すぐ咲くみたいですしっ…ね?

簡単ですよ、土をちょっと掘って、種を…これは球根かな?ここに植えてー
…あっ、じゃあ種を見るのも初めて?
この小さいのが、すごく綺麗な花を咲かせるんです
この闇の世界にあっても、これから希望を咲かせていく、あなた達みたいに
…なんて。いま私かっこいい事言ったと思いません?
まだ沢山あるから、どんどん植えていきましょー

凄い凄い!ほんとにすぐ咲いちゃった…!
地上だってまだ光は届かないけど
いつか絶対、お花畑の広がる世界になるから
それまで、絶望に負けたりしないでくださいね


ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と
・アドリブ、他猟兵との連携歓迎

植物の存在は知っていても『花』の概念が分からない
ミカの持っていた花を見ても、その美しさが分からない
嗚呼、これこそが、オブリビオンの支配が齎した歪み……

人々の快癒を祈り、幼い頃に聞いた懐かしい歌を口ずさみながら
アネモネの種を蒔きましょう

瑞々しい若葉、色鮮やかな花弁、芳しい香り
だけど最もうつくしいものは、可憐な姿に秘められた強く優しい命の巡り
花はやがて実を結び、新たな種となって芽吹き、地に満ちる
それはいと尊き生命の輪廻
時を超えて受け継がれる命と想い

咲き誇る花々が、傷ついた人々を癒しますように
そして綾なす命の巡りが、とこしえに続きますように…


ヴォルフガング・エアレーザー
●プレイング
・ヘルガ(f03378)と
・アドリブ、他猟兵との連携歓迎

ヘルガや皆と共にアネモネの種を蒔こう
街の人々はまだ本調子ではない。無理をさせてはいけない
何か人手が入用なら遠慮なく言ってほしい

……ヘルガと出会う前、戦うことしか知らなかった俺は
「花の美しさ」を顧みることはなかった
花はただ花として、そこにあるだけ
ただ己が生き延びることに必死で、過酷な世界の運命に抗うだけ

だが今は……
ちいさな命に秘められた力強さを、優しさを知り、守りたいと願う
ヘルガ、お前がそれを教えてくれた

もう開花したのか……不思議なこともあるものだな
地上についたら、更にたくさんの種を蒔こう
人の手で育て、共に時を歩む、命の巡りを


ウィンディ・アストレイ
『花』の概念は無くても『植物』という概念はあるんですね…
その辺の価値基準は興味深いですが、今は置いておきましょう。

然るべき場所に種を蒔けば。後は芽吹いてくれるそうですが…
一応は耕して整えた土壌に撒いた方が良いでしょうから
耕された土壌を整えて、ある程度場所毎に播く種を選別

種蒔き自体は現地の手伝って頂ける方々にお任せして
ボク自身は薬研や天秤といった、薬草を薬にする道具を揃えておき
必要なら自身も、この世界や医学の知識を使って調薬に参加します
(世界知識&情報収集&医術&奉仕)

「本来なら。こんなに早く咲いて、散る物では無いのですが…
ご覧下さい。これが『花』という物です」

※アドリブ&絡み連携OK



●未来への希望の花
 街の子供らと若者達に連れられて、猟兵達は地底湖の湖畔にやってきた。
 水に魔法のガスと同様の成分が混ざりこんでいるらしく、湖全体が水底から淡く発光しているような神秘的な光景だ。しかし湖畔は剥き出しの岩や地面で覆われており、植物どころか苔一つ生えていない殺風景でもある。
「ねぇ、それで「はな」ってなんなの?」
 子供達の無邪気な瞳が猟兵を見上げる。楽師との『カッコイイ』戦いっぷりを目の当たりにして、すっかり猟兵になついてくれている。
「お花が何なのかと言われると……見て癒されたり、貰ったら嬉しかったりで……」
 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は返答に窮した。あまりにも常識的な事柄を改めて説明しようとすると、意外と言葉が出てこないものだ。
「えーと……とにかく実際に見て貰うのが一番です! すぐ咲くみたいですしっ……ね?」
「さく?」
「ってどうすればいいのー?」
「簡単ですよ、土をちょっと掘って、種を……これは球根かな? ここに植えてー」
 突如として始まる湖畔ガーデニング教室。結希は子供らの視線に合わせてしゃがみこみ、一つ一つ丁寧に説明してやる。
 ちなみにアネモネは種からも球根からも植えられる。ミカが残した大量の種子の中には少々の球根も混じっていたようだ。
「たね?」
「きゅーこん???」
「……あっ、じゃあ種を見るのも初めて?」
 初歩的なポイントで躓く子供達。年かさの少年少女や若者達も疑問符を浮かべているところを見ると、年齢経験の別なく、住人全体の知識そのものに偏りがあるのだとわかる。
 結希は改めて種子を手のひらに載せて皆に見せまわした。
「この小さいのが、すごく綺麗な花を咲かせるんです。この闇の世界にあっても、これから希望を咲かせていく、あなた達みたいに」
 手元で掘り返した土に種子を一粒植え、柔らかく土をかぶせ、湖で汲んできた水をたっぷりと撒いてやる。
「……なんて。いま私かっこいい事言ったと思いません? まだ沢山あるから、どんどん植えていきましょー」
 明るい結希の掛け声に、元気いっぱいとまではいかないものの、若人達は真面目に頷き、さっそく作業に取り掛かり始めた。
 その様子を見やり、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は歯がゆいような感覚を覚えていた。
「花という存在も知らないとは、支配の苛烈さが判るってもんだ。吸血鬼め」
 同じく胸を痛め、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は深い吐息を零す。
「植物の存在は知っていても『花』の概念が分からない。ミカの持っていた花を見ても、その美しさが分からない。嗚呼、これこそが、オブリビオンの支配が齎した歪み……」
 ウィンディ・アストレイ(W-ASTRAY・f09020)は土地の具合を見ながら、論理的に思考を巡らす。
「『花』の概念は無くても『植物』という概念はあるんですね……まあそれはそうか、苔やら蔓性の植物なんかは暗い場所でも育ちますしね。花弁を広げるタイプの花らしい花は確かに、暗い地底ではなかなか育たないでしょうし」
 ともあれ、地上も陽の光とは縁遠くとも花は咲くし、魔法が公然と存在するこの世界ならば地底に咲く花ぐらいあってもよさそうなものだ。この辺りの土壌にたまたま花が根付かなかっただけか、吸血鬼によって意図的に排除されていたか、あるいはその両方か。
「その辺の事情は興味深いですが、今は置いておきましょう」
「だな。体の健康を取り戻して、心には希望をもってもらいたい」
 ウィンディの言葉に頷くウタ。
「然るべき場所に種を蒔けば。後は芽吹いてくれるそうですが……一応は耕して整えた土壌に撒いた方が良いでしょうね」
 多種多様な種を選別しつつウィンディが提案すると、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)が名乗り出た。
「耕すのは俺がやろう。他にも人手が入用なら遠慮なく言ってほしい。まだ本調子ではない街の人々に無理をさせてはいけないからな」
 方針を定めて、猟兵達は各々の手に種子を持ち湖畔に散開した。ヴォルフガングが湖畔の固まりきった土を耕し、その後に続いてウィンディが土壌を整えていく。
 花を知らない地底都市には当然のように本格的な農耕の習慣は根付いていないようだったが、苔取用の熊手や採鉱用の掘削器具などを流用することで問題なく作業は進んだ。
 耕作に没頭しながら、ヴォルフガングは過去に思いを馳せる。
(「……ヘルガと出会う前、戦うことしか知らなかった俺は、「花の美しさ」を顧みることはなかった。花はただ花として、そこにあるだけ。ただ己が生き延びることに必死で、過酷な世界の運命に抗うだけ」)
 荒んだ境遇がもたらす、美への無理解、儚いものへの無関心。かつてのヴォルフガングと、劣悪な環境の中で醸造されたこの街の歪みは、とてもよく似ている。
(「だが今は……」)
 耕作の手を休め、ヴォルフガングは自分が耕してきた土地を見渡した。
 視線の先には子供達を引き連れて種を蒔くヘルガの姿がある。
 その美しい唇から絶えず紡ぎ出されるのは、透明な歌声。幼い頃に聞いた懐かしい歌。

“瑞々しい若葉、色鮮やかな花弁、芳しい香り
 だけど最もうつくしいものは、可憐な姿に秘められた強く優しい命の巡り
 花はやがて実を結び、新たな種となって芽吹き、地に満ちる
 それはいと尊き生命の輪廻
 時を超えて受け継がれる命と想い”

 人々の快癒を祈って歌声を響き渡らせながら、視線に気づいたヘルガが顔を上げ、ヴォルフガングへとにこやかに手を振った。
 応えて手を上げるヴォルフガング。
(「ちいさな命に秘められた力強さを、優しさを知り、守りたいと願う。ヘルガ、お前がそれを教えてくれた」)
 その口許にもまた、穏やかな笑みが宿っていた。
 一方、手持ちの種子を早々に蒔き終えたウタは、湖を一望する岩場に腰かけ、ギターを爪弾いていた。ヘルガの歌声に合わせて、住民への慰撫と、未来への祝福を籠めて。
「白いアネモネの花言葉は「希望」だっけ? どんな風に咲くか、楽しみだ」
 発芽の様子、開花の瞬間、湖畔に咲き乱れるさま。その時を待ちわびて、弦をはじく指も軽くなる。
「あの……それって、楽器……ですよね?」
 十代後半と思しき少女が恐る恐る訊ねてくる。
 楽器がわかるのかと聞き返すと、少女は曖昧に頷いて、ここまで精巧なものは見たことがないと返してくる。……吸血鬼はびこる地上でも、これほどまでに閉塞した環境はそうそうないだろう。
 ゲネの言う通り、地上の世界も過酷だが、此処よりはきっと未来への希望が確かにある。
「希望を心に未来へ進む第一歩。今日をその日としよう」

 美しいギターの調べと歌声に呼応するかのように、やがて発芽が始まった。
「あら。本当に早い」
 柔らかな土を割ってひょっこり現れた愛らしい芽に、薬研や天秤などの調剤道具を揃えていたウィンディは、ぱちぱちと目を瞬いた。
 かと思えば、その周囲から無数の芽が一気に発芽して、じぃっと見入っていたウィンディは思わず肩を跳ね上げた。
 やむことのない歌と伴奏に乗って、芽は休むことなくすくすくぐんぐん茎を延ばして、ギザギザとした葉をたくさんつけて、あっという間につぼみを結んでいく。
 小さな緑色のつぼみが少しずつ鮮やかに色づき、歌の佳境にほどけるように花開く。白、青、赤、紫……色とりどりの花々が湖の碧に映える。
「凄い凄い! ほんとにすぐ咲いちゃった……!」
「もう開花したのか……不思議なこともあるものだな」
 結希がはしゃぎ、ヴォルフガングが感心したように一面の花畑を見回した。
「本来なら。こんなに早く咲いて、散る物では無いのですが……」
 驚きを誤魔化すようにこほんと咳払いをして、ウィンディは子供らに花畑を示した。
「ご覧下さい。これが『花』という物です」
「うわぁぁ……」
 幼い子供らの目はすっかり花畑に釘付けだ。
 ウィンディは摘み取った幾輪かの花を手に、年かさの若者達と協力してさっそく調薬の段取りに取り掛かった。
「綺麗だよな」
 傍らで呆けたように花畑に見入る少女に、ウタはラストに向けて旋律を走らせながら語り掛けた。
「今まではこの地底が世界の全てだった分、これからはきっと沢山の美しいものと出逢えるぜ」
 十分な盛り上がりを演出したのち、勢いのある和音で曲を結んで、
「俺達もそんな世界になるように頑張る」
 少女に向けてぐっと力強く親指を立てて見せた。
「地上についたら、更にたくさんの種を蒔こう。人の手で育て、共に時を歩む、命の巡りを」
 ぽかんと花畑に見入っている子供らの頭や肩に軽く手を乗せて、ヴォルフガングは共に花畑へと視線を馳せる。
「地上だってまだ光は届かないけど、いつか絶対、お花畑の広がる世界になるから。それまで、絶望に負けたりしないでくださいね」
 結希も穏やかな笑みで彼等を勇気づけていく。
「咲き誇る花々が、傷ついた人々を癒しますように」
 祈るように目を閉ざし、歌の余韻をたっぷりと聞き届けたのち、ヘルガは静かに目を見開いた。
「そして綾なす命の巡りが、とこしえに続きますように……」
 誇らしげに咲き乱れる花々が、子供らの瞳を色とりどりに輝かせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

七那原・望
えくるん(f07720)と参加

わたしの頭に生えているこれが花……アネモネの花なのです。

花には花言葉というのがあって前向きなものから悲しいものまで色々な思いが込められているのですよ。

アネモネは悲しい花言葉が多いのですけど、前向きな花言葉もいっぱいなのです。
アネモネ全体なら可能性。白は真実、期待、真心、希望。これはこれからのあなた達の未来を指す言葉ですね。
紫のアネモネはあなたを信じて待つ、信じて従う。ピンクは待望。これまでのあなた達の象徴かもですね。

青は固い誓い。これはどちらかというとあなた達を地上へ導くわたし達を指すものかもです。

えくるんに向かって一番の笑顔を。

赤は……君を愛す、なの!


七那原・エクル
アドリブ歓迎

この人たちは疫病楽団による被害がまだ癒えていないから、「地上」に向かうのはそれらの問題を解決してからのほうがいいよね。いまの場所を捨てて新しい世界を見るかは彼らの自由…

まずはアネモネの種を植えて特効薬になる花を咲かせないとね。しかし植えてからすぐ開花するなんてどんな生命力なのか興味あるけど…採集するのは自重しよう。これはいまの彼らに必要なものだからね、それくらいボクだって解るとも

女性人格の「ヒメ」を喚んで手分けして種植え作業を行うよ

え?こんな作業でわざわざ喚ぶなって?まぁまぁそう言わずにさ、今度ホラー映画一緒に視てあげるから…ね?

望のことは大好きだとも、ボクは望限定でロリコンだから



●恋人たちと見届人
 花が何かわからない、と言う子供達に、七那原・望(封印されし果実・f04836)は自身の頭部を彩る一輪を示して見せた。
「わたしの頭に生えているこれが花……アネモネの花なのです」
「へぇぇ……」
 素直な視線が物珍しげに一点集束する。供花伯の持っていた花に似ていると気づいたか、わずかに顔を曇らせる若者もちらほらと見受けられた。
 望は穏やかな笑みで、その悲しみを柔らかく否定する。
「花には花言葉というのがあって、前向きなものから悲しいものまで色々な思いが込められているのですよ」
「はなことば?」
「ええ、人々が花に託した想いのようなものです」
「……どんなものなんですか?」
「アネモネは悲しい花言葉が多いのですけど、前向きな花言葉もいっぱいなのです。アネモネ全体なら可能性。白は真実、期待、真心、希望。これはこれからのあなた達の未来を指す言葉ですね」
 子供らはいまひとつピンとこない様子で、首を傾げたり顔を見合わせたりしている。
「これから花が咲けば、きっと花言葉がある意味もわかると思いますよ」
 望が希望に満ちた眼差しを向けた先には、湖畔で労働に精を出す七那原・エクル(ツインズキャスト・f07720)の姿があった。
 エクルは笑顔で望に手を振り返しつつ、子供らの様子をつぶさに見つめた。年若い者ほど軽症とはいえ、やはり全体的に顔色はくすんでいるし、動作も鈍い。
「この人たちは疫病楽団による被害がまだ癒えていないから、「地上」に向かうのはそれらの問題を解決してからのほうがいいよね。いまの場所を捨てて新しい世界を見るかは彼らの自由……」
 独り言ちつつ、不毛の湖畔に視線を返す。
「まずはアネモネの種を植えて特効薬になる花を咲かせないとね」
 呟くエクルの傍らで、影から立ち昇るように一人の人物が実像を結んだ。
 エクルに生き写しの姿をした少女。エクルのもうひとりの人格、「ヒメ」だ。
「……種まきですか。こんな作業でわざわざ喚ばないでほしいですね」
「まぁまぁそう言わずにさ、今度ホラー映画一緒に視てあげるから……ね?」
 若干渋い顔のヒメをなだめすかして、手分けして種植え作業に取り掛かるエクル。柔らかくした地面に種を適度な感覚で植えていく地道な作業だ。
「しかし植えてからすぐ開花するなんてどんな生命力なのか興味あるけど……」
 こほん。
 頭をもたげかけたエクルの好奇心を、ヒメの咳払いがぴしゃりと制す。エクルは小さく肩をすくめた。
「採集するのは自重しよう。これはいまの彼らに必要なものだからね、それくらいボクだって解るとも」
 ヒメは「まったく」とお小言めいた溜息を零しつつ、喚びだされたからには真面目に作業に勤しんでいる。二つの人格の息の合った種まきで、持ち場の範囲はあっという間に作業終了だ。
 そして、種を蒔き終えた端から、萌芽は始まる。
 最初に植えた辺りから順々に、土から芽が顔を出し、のびのびと生長していく。緑の蕾が色づいて、綻び花開くまで、本当にあっという間。植えた順に色とりどりに開花していく様は、まるで花びらの波だ。
 子供達から感嘆の声が上がる。望はさっそく幾輪かを手折り、子供らに見せた。
「紫のアネモネはあなたを信じて待つ、信じて従う。ピンクは待望。これまでのあなた達の象徴かもですね」
 怯えた様子を見せた少年に、紫のアネモネを差し出して、何も怖くはないと手に握らせる。その傍らで心配そうにしている少女には、ピンクのアネモネを髪に差してやる。
「青は固い誓い。これはどちらかというとあなた達を地上へ導くわたし達を指すものかもです」
 青のアネモネは小さな子供らの手に。
 そして、ひときわ大切に手折った赤のアネモネを、まだ少し離れたところに佇んでいるエクルへと向ける。
「赤は……君を愛す、なの!」
 花も恥じらう一番の笑顔は、彼女の真心そのもの。
「相変わらずお熱いですね」
 小さくぼやくヒメに、エクルは熱を帯びた眼差しを望に注ぎながら、あっけらかんと返す。
「もちろん大好きだとも、ボクは望限定でロリコンだから」
 ……胸を張って言うことか、そもそもそれはロリコンとは言わぬのでは。
 などなど、ツッコミを入れてやろうか軽く逡巡したのち諸々を放棄したヒメは、溜息と「ご馳走様」の一言と共に、影に溶けて消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
此の地の支配者たちは、塵と共に消えた。
最早、長居は無用……ではないな。
まだまだ我々の仕事は残っている。
■行
【POW】
此の花を咲かせ、住民の病を治さねばな。
取り敢えずは、土興しをしよう。これをやらねば
農業は始まらない故……
む、農業は少し違うと?気にしない気にしない。

して、終わったら早速種を撒いてみるが……
本当にすぐ咲くのだろうか?折角なので眺めてみるか。
(眺めてみるが、何も変わらないので背を向ける。だが)
むむ?後ろって……おお、咲いてる。
……何故背を向けた瞬間咲くのだ?

さて、花も咲いたら最後の一仕事と行こう。
(花畑を離れ【祈り】を捧げ始めた)
散っていった魂を鎮めているのでござるよ。

※アドリブ歓迎



●花咲かせ、祈り捧ぐ
「此の地の支配者たちは、塵と共に消えた。最早、長居は無用……ではないな」
 愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)の眼前には、まだ凄惨な現実がある。疫病に冒された人々という、正さねばならぬ現実が。
「まだまだ我々の仕事は残っている」
 自戒するように呟いて、清綱は悲劇の打破に取り掛かった。
「此の花を咲かせ、住民の病を治さねばな。まずは土興しだ。これをやらねば農業は始まらない故……」
 一つまみの種をじっと見つめたのちに一旦懐に収め、代用農具を手に土を耕していく清綱。
 と、傍らで一部始終をじぃっと見つめていた子供が、小首を傾げた。
「のうぎょう? 「たね」を「まく」のをそう言うの?」
「む、少し違う気がしないでもないが……いやしかし花を育て売る農家もあろうな……まあなんだ、詳細は追々知れば良い。今は気にしない気にしない」
 なんやかやと言葉を交わしながらの耕作もほどなく終わり、子供らと共に早速種を蒔き……為すべきことはあっという間に尽きてしまった。
 本当にすぐに咲くのか、折角だからと眺めてみるが、とりわけ変化はない。
「……まあそうであろうな」
 すぐとは言っても即時とはいくまいと、背を向け農具を片付けに歩き出そうとした、その時。
 子供の一人が湖畔を指差し声を上げた。
「あ! 後ろ後ろ!」
「むむ? ……おお、咲いてる」
 振り返れば、湖畔を埋め尽くす一面のアネモネの花畑。
「……何故背を向けた瞬間咲くのだ?」
 なんとも締まらぬ気分でぼやく清綱を、子供らがきゃっきゃと笑う。……まあ、その笑顔を引き出せただけでも、甲斐はあったことだろう。
 さて、清綱には最後の一仕事が残っている。
 一人密かに花畑を離れ、湖が一望できる岩場へ。平らな一枚岩の上に胡坐をかいて座し、静かに瞑目する。
 散っていった命へ、鎮魂の祈りを。
 まるで地底に風が吹き込んだかのように、湖畔の花々が静かに揺れた。

●見送るアネモネ
 湖畔に咲き乱れるアネモネは、都市の住人を救ってあまりあるほどの量だった。
 これを煎じて飲ませると、子供らはすぐにけだるさが解消されたことを訴え始めた。よほど衝撃的で嬉しかったのだろう。ある者は花畑を駆け巡り、ある者は地底湖を泳ぎ、健康な身体を各々に全身で喜んだ。
 走り回る子供の姿に大人達は揃って驚愕したが、薬湯が行き渡ると、彼等もまた信じがたい速度で健康を取り戻していった。横たわり死を待つだけだった重症者さえ、数分で身体を起こし、ほどなく立ち上がれるほどに回復した。
 全員が地上を目指せるほどに快復するのに、小半時とかからぬ勢いだ。まさに驚異的な効果である。
 喜びに沸き立つ街の片隅で、輝く地底湖は色とりどりのアネモネを優しく照らし出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月26日


挿絵イラスト