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地底の紅きヴェルヴェット

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章 #番犬の紋章 #地底都市

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 仄暗い地の奥底に、誰も知らない街がある。
 一度も陽が差すことはなく、希望が照らすこともなく。
 人々はただ虚ろな顔で、死に至るための生を続けている。

「ん、ご苦労さま。こいつが今日の血袋ね」
 巨大な装置を背負った華奢な少女の前に、処刑人達が一人の男を引き立ててくる。
 男は少女の前にうずくまると、紅く染まった地面に頭を擦り付けて懇願を始めた。
「……お、お願いしますスティロヴァニエ様! どうか、どうか命だけは……!」
「あのさ、人間風情が私らヴァンパイアに意見できると思ってんの?」
「め、滅相もございません! 貴女様に血液を提供できるのは望外の栄誉でございます!
 ですが、私には妻も、まだ幼い娘もおります! 家族を置いて先に逝くわけには……」
 恥も外聞もなく頭を下げる男を睥睨し、少女は気怠げに口を開く。
「ま、いいよ。分かった。私にも吸血鬼なりの人情ってやつがあるからね」
 思いがけぬ言葉に、男の顔が驚きから歓喜へと変わる。それを見下し、少女は続けた。
「だから先に絞っといたよ。そっちのボロ雑巾があんたの妻子。これで安心でしょ」
 その時初めて男は、傍らのカラカラに干からびた二人分の死骸に気がついた。
 そして足元にヴェルヴェットの絨毯めいて広がる血の跡が、まだ新しいことにも。
 絶望の叫びを上げる前に処刑人が斧を振るい、ヴェルヴェットに更なる紅が加わる。

 ☆ ☆ ☆

「ダークセイヴァーを影から操る者共が、あんなところに潜んでいようとはな……」
 玉座にて物思いに耽っていたツェリスカ・ディートリッヒ(熔熱界の主・f06873)は、猟兵達が集まったのに気付いて顔を上げた。その表情には僅かに陰りが見られる。
「……済まんな、憂いのあまりに我が美貌を曇らせては世界の損失というものである。
 とはいえ此度はあまり愉快な予知でないのもまた事実だ。まずは、これを見てくれ」
 ツェリスカが指を弾くと魔導書が独りでに開き、空中に都市の映像を投影した。猟兵達は違和感を覚え、すぐにその正体に気付く――この都市には、天井があるのだ。

 ツェリスカはすらりとした指で空中の映像を指し示し、説明を続けていく。
「これは『辺境伯の紋章』から得られた情報を元に発見された『地底都市』である。
 ダークセイヴァーの各地には広大なる地底空洞があるが、その中にはこのような数多くの地底都市が、我ら猟兵や地上の民には一切知られることなく存在し続けていたのだ」
 地底空洞内には発光するコケ類や魔導ガスが存在し、地上とさほど変わらない明るさが確保されている。とはいえ当然の疑問が浮かんでくるだろう……この都市の住人とは?
「汝らも察しがついているだろうが、これらの地底都市を支配するのは吸血鬼どもだ。
 だが、それだけではない……人間だ。地上を知らぬ人間達がここで暮らしている。
 彼らは隷属するために生まれ、消費されて死ぬ。尊厳など生涯手にすることはない」
 人知れず繰り返されてきた非道。やり切れない話だが、終止符を打たねばならない。

「汝らの任務は、地底都市にて支配された人々を開放し、地上へと誘導することだ。
 幸い、既にいくつかの『人類砦』が地底の民の受け入れを表明してくれている」
 だが、そう容易く事が運ぶはずもない。地底都市には『門番』がいるのだから。
 ツェリスカが指を弾くと映像が切り替わる。続いて投影されたのは華奢な少女の姿。
 名は『機血姫』リオ・スティロヴァニエ。この地底都市の門番たる吸血鬼である。
「ヴァンパイアは己の肉体や能力を誇り、テクノロジーを軽視する傾向があるが……このリオ・スティロヴァニエは例外的に優れた技術力を有し、自ら開発した『吸血兵装』を纏って身体能力の低さを補っている。『機血姫』と渾名されるだけのことはあるようだ」
 その優れた頭脳と知識欲が造り上げた『吸血兵装』は、地底都市の人間から抽出した血液を背後のタンクに蓄え、それを魔力に変換することで爆発的な戦闘力を発揮する。
「兵装自体も堅牢な防御力を持つが、加えて『機血姫』には『番犬の紋章』がある。
 胸元に装着したこのブローチ状の部位を除き、ほぼ攻撃は通らないものと思ってくれ」
 敵に弱点があるとすれば『タンク内の血液は有限である』ということぐらいか。
 危険な作戦だが、成し遂げなければ地底都市に暮らす人々の未来はない。

「門番を撃破し地底都市に突入した後は、速やかに内部のオブリビオンを一掃してくれ。
 無論、都市には多くの住人達も暮らしている。巻き込まない戦い方を徹底するように。
 汝らの活躍次第では人々に勇気を与え、のちの説得にも有利な材料となるだろう」
 そう、今回の作戦はオブリビオンを掃討すれば終わりではない。他の吸血鬼がこの地底都市を支配下に置こうとする前に、人々を地上へと脱出させなければならないのだ。
「地底の民は陽の当たる世界を知らぬ。ゆえに汝らは、彼らに地上のことを語ってくれ。
 ダークセイヴァーは未だ平和とは程遠い。だが地底で吸血鬼どもの家畜として一生を過ごすより、僅かでも自由と希望を得るほうが、遥かに人間らしい生き方であるはずだ」
 隷属を強いられてきた地底の民は、それを運命として受け入れてしまっている。光差す世界への一歩を踏み出した先に一体何が待つのか、それぞれのやり方で伝えてほしい。
「これは命の尊厳を取り戻す戦いである。汝らの奮戦に期待しているぞ」
 ツェリスカはそう言って微笑みかけ、猟兵達を地底都市へと送り出した。


滝戸ジョウイチ
 ご無沙汰しております、滝戸ジョウイチです。
 今回はダークセイヴァーの地底都市へと皆様をご案内します。
 血塗られた地底に囚われた人々を、どうか救い出してください。

●シナリオ概要
 ボス戦→集団戦→日常の全三章構成です。
 第一章で戦う『門番』は、『同族殺し』すら容易く屠る恐るべき吸血鬼です。
 『番犬の紋章』以外への攻撃はほぼ通らないため油断せず挑んでください。
 第二章は地底都市に突入後、街を管理するオブリビオン達を掃討する集団戦。
 第三章は地底の人々を地上へ避難させるために交流を試みるパートになります。

●『機血姫』リオ・スティロヴァニエ
 第一章のボスである地底都市の門番。華奢な少女の姿をしたヴァンパイアです。
 ダークセイヴァーの吸血鬼としては珍しく技術力に優れ、自ら開発した吸血兵装を装備して門番を務めると共に、街の人間をエネルギー源や実験材料にしています。
 気怠げな口調ですが頭の回転は早く『機血姫』の異名に相応しい戦闘力を有します。
 唯一の弱点といえるのは、戦闘のたびにタンク内の血液を消費することです。

●プレイングボーナスについて
 本シナリオでは章ごとに特別なプレイングボーナスがあります。
 第一章:「胸元の『番犬の紋章』を攻撃する」及び「タンクの血液を浪費させる」
 第二章:「地底都市の人々を巻き込まないように戦う」
 それぞれ戦闘時の判定が有利になりますので、参考にしてみてください。

●シナリオ進行について
 各章の最初に導入が追加された時点からプレイングを受け付けます。
 厳密な締切は設けませんが、おおむね章開始から三日が目処になると思います。
 第二章以降から参加される方はグリモアベースからの援軍として描写しますので、途中からでも気後れすることなく参加してみてください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『『機血姫』リオ・スティロヴァニエ』

POW   :    近距離攻撃
自身の【吸血兵装のタンクに溜めた人間の血液 】を代償に、【莫大な魔力】を籠めた一撃を放つ。自分にとって吸血兵装のタンクに溜めた人間の血液 を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    遠距離攻撃
【タンクに溜めた人間の血液を消費すること 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【吸血兵装の腕を分離し飛ばすこと】で攻撃する。
WIZ   :    燃料補給
【吸血兵装の攻撃 】が命中した対象を爆破し、更に互いを【血液を強制的に奪うチューブ】で繋ぐ。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


ダークセイヴァーの地底奥深くに位置する大空洞。
 そのスケールは、猟兵達の想像を遥かに凌ぐほどに巨大なものだった。
 街一つが収まるだけの広さがあるだけでなく、ドーム状の天蓋も相応の高さがある。
 上方には雲すら漂っているように見える……あれが発光する魔導ガスなのだろうか。
 そして目指すべき地底都市は、刺々しく縁取られた強固な城壁で囲まれていた。
 内部の状況が把握できない以上、あの城壁を乗り越えての侵入は危険過ぎる。
 やはり門番を排除して正面から突入するのは、無謀なようで理に適った作戦に思えた。

 視線を下に落とせば、地底都市の門へと続く地面が赤黒く染まっていることに気付く。
 まるでヴェルヴェットの絨毯を敷き詰めたような色合いだが、これが何かは明らかだ。
 何度も繰り返しこびり付いた血の色。人々の犠牲の色にして吸血鬼の暴虐の色。
 この紅きヴェルヴェットこそが、猟兵達がこの先へと進む理由になる。

「……ふーん。随分と大勢でまぁ、ご苦労なことで」
 門の上から気怠げな声が響く。視線を向けた先には、奇妙な装置を背負う少女の姿。
 リオ・スティロヴァニエ。『機血姫』の異名を持つ地底都市の番人にして吸血鬼。
 吸血兵装の巨腕で何か枯れ木のようなものを弄びながら、番人は猟兵達を睥睨する。

「ま、いっか。『同族殺し』相手の性能テストも飽きたしね。いいよ、付き合ったげる」
 リオ・スティロヴァニエは面倒そうに立ち上がると、持っていた何かを投げ捨てた。
 その時になって猟兵達は気付く――あれは、血を吸い尽くされて干からびた死体だ。
 門の上から飛び降りた機血姫はその死体を何の感慨もなく踏み潰し、口を開いた。
「安心してよ。あんたらの死体は大事な研究材料だしさ。杜撰に扱ったりはしないって」
 その語調には似つかわしくない莫大な魔力が、血液タンクから吸血兵装へ供給される。
 かの『同族殺し』すら容易く屠るという実力は、決して誇張などではない。
 もはや道は二つに一つ。絨毯の染みと成り果てるか、それを踏みしめて進むかだ。
ハロ・シエラ
なるほど。
あの武器の原理は分かりませんが、存在を許しておけないと言う事は分かりました。
とは言え武器もその主も強敵です。
慎重にかかりましょう。

まずは剣を抜いて接近戦を挑もうとします。
敵は遠距離攻撃でこちらを近付けずに倒そうとするでしょう。
ユーベルコードと【第六感】を駆使してそれを回避し、可能な限りその動きを【見切り】ます。
重要なのは、私が接近戦を挑もうとしているが敵の遠距離攻撃の為に近付けないと言う【パフォーマンス】をして敵の攻撃を【おびき寄せ】る事。
血液を浪費させ、それに反応してくれれば何か隙を見せるでしょう。
一瞬で構いません。
それを見逃さず【早業】でレイピアを【投擲】して紋章を攻撃します。


キリカ・シノノメ
うーん、めちゃくちゃでっかいタンクだね!地上でも地底でも、やってることは一緒みたいだし……じゃ名乗りあげるとしましょーか!

貴女がここの門番さん?じゃあちょっと付き合ってもらおーかな!

予め『パワーフード』を食べて『力溜め』、『怪力』強化するよ!その力と真っ向勝負……っていきたいんだけど、私の強化した怪力でも厳しそうだね!
UC発動、構えたと同時に火薬機構を開放してその爆発で超速の接近だよ!防御のタイミングに、2段階で火薬機構を開放してハンマーの疾さを調節、フェイントをかけて『鎧砕き・爆撃』の一撃をブローチ目掛けてどっかーん!
タンクにも被害が出れば上出来かな!

(アドリブ等歓迎)



リオ・スティロヴァニエは猟兵達を遠目に値踏みして、真剣味に欠けた口調で呟く。
「んー、まぁ悪くないんじゃない? 絞ればそこそこ良い血が取れそうって感じ」
 まるで既に勝敗が決しているかのように淡々と、兵装に魔力を充填していく機血姫。
「んじゃ、始めますか。あんまりすぐに死なないでよ、拍子抜けしちゃうからさ」
 その余裕は吸血鬼の性か、力への慢心か、それとも実力に裏打ちされた振る舞いか。

「貴女がここの門番さん? じゃあちょっと付き合ってもらおーかな!」
 パワーフードを食べ終えて口元を拭い、キリカ・シノノメ(底無し在庫・f29373)は愛用の超爆撃ハンマーを軽々と構えてみせた。機血姫はそれを見て僅かに顔をしかめる。
「いや勘違いしないでよね。私が付き合う側なわけ。この吸血兵装のテストも兼ねてさ」
「吸血兵装? うーん、めちゃくちゃでっかいタンクだね」
 スティロヴァニエが背負う巨大な装置、その中に充填された何人分のものとも知れない大量の血液。見れば否応無しに、あれがどうやって補充されたのかを想像してしまう。
「地上でも地底でも、吸血鬼がやってることは一緒みたいだし……」
「ええ。武器の原理は分かりませんが、存在を許しておけないと言う事は分かりました」
 妖力を纏ったレイピアを手に、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)が隣へ一歩進み出た。視線の先には燃料として抜き取られたのであろう足元の死体がある。あろうことか、それを先ほどあの吸血鬼は事もなげに踏みつけてみせた。柄を握る手に力が籠もる。
「とはいえ、兵装もその主も強敵です。キリカさん、ここは慎重に……」
「まかせて! そして大胆に、だね!」
 ハロが言い終えるより先に、キリカは赤黒く染まった地を蹴って駆け出していた。

「パワーフードで強化した私の怪力、受けてもらうよ!」
 全速力で突進しながら振り下ろしたキリカのハンマーを、リオ・スティロヴァニエは無造作に吸血兵装の片手で受け止めた。同時にタンクから血液が魔力となって供給される。
「受けてみたけど。ま、これくらいは想定内ってわけよ」
 ハンマーを握ったままの腕が肘の部分から分離し、魔力の爆発的噴射によって撃ち出される。無論ハンマーとそれを握るキリカごとだ。彼女の怪力をしても押し返せない。
「わーっ飛ばされるー!」
「キリカさん、私が隙を作ります! その間に!」
 空中で振り回されるキリカを案じながらも、ハロはレイピアを構えて一足飛びに機血姫目掛けて突進した。射出した腕の側は守りが手薄になっている。その方向から懐に飛び込み、弱点の『番犬の紋章』を狙うための動き。それを察知し、機血姫は淡々と対処する。
「だから無理だって。腕は二本あるし、仮に三人目が来ようがどうにでもなんだよね」
 直後、ハロの斜め後方から死角を突いて吸血兵装の巨腕が迫る。残っていたもう一方の腕を射出し、供給された血液を代償にして驚異的な加速で背後へ回り込ませていたということだ。本来避けられるはずのない奇襲――だがその目論見はあっさり崩れ去る。

「――ふぅ。なんとか躱せましたが、これではとても接近が……」
「いや躱せましたがじゃなくてさ、何で躱してんの。やめてよタダじゃないんだから」
 対処困難であるはずの超高速の拳。それを避けることを可能としたのはハロの第六感であり、ユーベルコード『絶望の福音』による近未来予測。スティロヴァニエの顔に初めて僅かながらも焦りが生まれる。ハロが飛来する拳を躱すたび、タンク内の血液が徐々に目減りしていく。些細に見えて、その事実は機血姫を攻め急がせるには十分だった。
「ほんと勘弁してよ、ちょろちょろすんの。もう一思いに始末するっきゃない――」
(守りが緩んだ! 今なら……!)
 ハロの愛剣『リトルフォックス』が、持ち主の精気を喰らい霊力と炎に包まれる。元よりこの細剣で直接敵を斬りつけるつもりはない。これまでの「回避することに精一杯」という動きは全て演技。敵の動きが攻めに偏重する、その隙を突くためのフェイクだ。
「この一瞬だけで構いません!」
 渾身のスピードでハロはレイピアを投擲した。両腕を射出して同時攻撃を仕掛ける気でいた機血姫に防御の術はなく、切っ先は胸元の『番犬の紋章』へ確かに突き刺さる。

「ちょっ……ねぇ、ちょっと何してくれてんの……」
「ナイス、ハロさんっ! 一気に畳み掛けるよ!!」
 胸に細剣を突き立てたまま狼狽えるスティロヴァニエへと、巨腕の拘束から開放されたキリカが砲弾めいて突撃する。その加速は愛用の超爆撃ハンマーに内蔵された火薬機構の爆発によるもの。爆風で自分自身を吹き飛ばし、文字通り爆発的な加速を生んだのだ。
「だからさ、パワーじゃ勝てないって……!」
「ここで火薬機構の第二段階をドーン!!」
 血液の魔力を再充填された巨腕を射出しての同時攻撃。だが直前で振りかぶった状態の超爆撃ハンマーが再び炸裂、キリカの軌道をずらし間隙へと押し込むように加速させる。両腕を掻い潜った先にあるのは無防備な胴体、そして急所に突き刺さった細剣。
「どっかーん!!!」
 怪力によって振るわれた渾身のハンマーが『番犬の紋章』の奥深くへとレイピアの刃を打ち込み、そのままフルスイングで機血姫の体を吸血兵装ごと浮かせて吹き飛ばした。
 轟音を立てて門に激突した機血姫は、やがて苦々しげな顔で立ち上がる。
「……ふーん、やるじゃん。意外とさ。褒めたげよっか」
 だが胸のレイピアを引き抜く姿は、言葉ほどには余裕を感じさせないものだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

肆陸・ミサキ
アドリブ絡み怪我苦戦OK

この世界にこんな場所があったなんて知らなかったな。
随分と悪趣味な所だ、ただでさえ明るくないのに、わざわざ潜るかね。

まぁ、いいさ。
直ぐに地上までブッ飛ばしてあげる。

WIZ判定

吸血兵装、だっけ。ヴァンパイアが吸血の簡略化に走るとかお笑い草だよ。
とは言え、爆破されたくはないんだよね。黒剣を槍に変化させて、間合いを取りつつ牽制して一撃入れる隙を探そうか。
UCが発動すれば、胸の紋章も狙えるし。

僕みたいなか弱い存在がチューブで繋がれちゃったら、あっという間に血なんて無くなっちゃうし、うん。
そうなる前に、全力でチューブごと引っ張って、振り回してやろう。
僕には力と熱と、捨て身しかない。


リーヴァルディ・カーライル
…ふむ。同族殺しを倒すというから如何ほどの獲物かと思ったら…

…絡繰りに頼らねば、血も満足に扱えない木っ端とは

…冥土の土産に教授してあげる。血の操り方をね

UCを発動し地面から紋章を狙い血杭を乱れ撃ち挑発
敵の殺気や気合いを見切り易くして攻撃を先読み、
大鎌を怪力任せになぎ払うカウンターで迎撃

…その兵装も血で動いているのならば、
当然こうなる事も予想しているはずよね?

ご自慢の絡繰りの性能を試してあげるわ、機血姫とやら

吸血鬼化し限界突破した魔力を溜めUCを再発動
兵装に干渉し内部から血杭を放つ血属性攻撃を試み、
敵の意識が逸れた隙に懐に切り込み大鎌を武器改造
傷口を抉る呪詛を纏う手甲剣で紋章を貫く二回攻撃を行う


メリー・スペルティナ
安心も何もないですわね。もうテストの必要はなくなるのですから

相手の攻撃は第六感や武器受け、闇に紛れたりして凌ぐことに専念し、隙を伺いますわ
隙を見つけられたら胸元の紋章へ剣による《呪詛+傷口を抉る+吸血》付きの斬撃を

でも、最大の狙いは相手のUC、血の補給を狙ってきた時
初撃は防ぎますが、敢えて幾らか吸わせますわ
流血は慣れてますし、それにわたくしの血は、それ自体呪詛を帯びる
その血なんか吸って、ご自慢のそれに何も起きないといいですわね?

そしてUCを使用、流れたわたくしの血を代価に、
無念を抱えた死者達にそれを晴らすための力と体を与え再生、総攻撃ですわ!

血を、命をただの燃料と侮ったこと、後悔なさい!



 門が軋み、瓦礫が飛び散る。轟音が地下空洞を反響し、遠雷めいて鼓膜を震わせる。
 ここは隠されし地底都市。ダークセイヴァーの民ですら存在を知らない奈落の街。
「随分と悪趣味なところだ。ただでさえ明るくないのに、わざわざ潜るかね」
 薄明かりに照らされた大空洞を改めて見渡し、肆陸・ミサキ(DeityVamp・f00415)は呆れ半分に呟いた。この空間の明るさは、単純な比較でいえば鉛色の雲に陽の光を遮られた地上とそれほど変わらない。だが、立ち込める空気はこの地底のほうが幾分陰鬱であるように感じられた。その理由は恐らく、地下世界ゆえの閉塞感だけではないだろう。
「まぁ、いいさ。直ぐに地上までブッ飛ばしてあげる」
 ミサキの視線の先でリオ・スティロヴァニエが立ち上がり、胸に刺さった細剣を引き抜いた。傷はその場で修復され、少なくとも外見上は元通りであるかのように見える。
「……ま、テスト相手があんまり弱くてもつまんないしね。安心したよ、うん、ほんと」
「安心も何もないですわね。もうテストの必要はなくなるのですから」
 ミサキの隣で波打つ刀身の黒剣を構え、メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は平静を装うリオ・スティロヴァニエの呟きを一言で切って捨てた。相手の表情が僅かに歪んだのを見るに、猟兵達の初撃は彼女のプライドを随分と傷つけたらしい。これまで互角に戦える相手がいなかったからこそ、屈辱に慣れていないのか。
「……あのさ、まぐれ当たりが入った程度で調子こかれても困るんだよね」
 普段通りの淡々とした口調の裏から、隠しきれない感情が滲み出している。リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)それを聞き、溜息をついてみせた。
「……ふむ。同族殺しを倒すというから如何ほどの獲物かと思ったら……」
 リーヴァルディはスティロヴァニエの吸血兵装を一瞥し、言葉を続ける。
「……絡繰りに頼らねば、血も満足に扱えない木っ端とは。程度が知れるわね――」
 突如、地底空間を激しい衝撃が揺さぶった。激情を籠めたリオ・スティロヴァニエの巨大な拳が赤黒く染まった地面に叩きつけられ、硬い岩盤を砂糖菓子のように砕いている。
「――あまり純血のヴァンパイアを舐めるなよ、混ざり物のダンピール共が」
 充填された血液が爆発的な魔力を生む。三人のダンピールは頷き合い、散開した。

「ご自慢の絡繰りの性能を試してあげるわ、機血姫とやら」
「偉そうなんだよね、さっきから。ま、すぐに何も言えなくしたげるよ」
 射出された吸血兵装の片腕が、猛烈な加速でリーヴァルディを襲う。直撃すればただでは済まない質量の暴力を、リーヴァルディは力任せに振るった黒い大鎌で軌道を逸らし回避した。そのまま瞬間的に吸血鬼の血を限定解放させ、地面に染み込んだ血液を媒介として『血の魔棘』を創り出す。無数の血杭が剣山めいて突き上がり、敵へ殺到する。
「だからさ、そんな小技で何とか出来るわけ……」
「その割には注意が逸れているようですわね!」
 血杭をもう一方の巨腕で薙ぎ払った隙を狙ってメリーが接近し、愛剣シュバルツシュテルンの波打つ刃で胸元の紋章を狙う。届くかと思われたその切っ先はしかし、咄嗟に蹴り上げたスティロヴァニエの爪先で弾かれた。兵装で覆われていない部分もタンクからの魔力供給でスペックが上昇しているようで、装置の重量を物ともしないほど素早い。
「私が造り上げた吸血兵装、ダンピールごときにどうにか出来るわけないっての」
「それはやってみなければ分かりませんわ!」
 振り下ろされた巨腕を、メリーは刃で滑らせて紙一重で受け流した。機血姫は追撃の拳を放ちながら、一方の腕を遠隔操作してリーヴァルディを執拗に狙う。そしてその目は、どちらの獲物でもない三人目――距離を保って機を伺うミサキへと向けられていた。
「吸血兵装、ね。ヴァンパイアが吸血の簡略化に走るとかお笑い草だよ」
 己の血を代償に形状変化する武装『DeicidaMan』を槍状に変形させて構えながら、ミサキは機血姫を名乗るヴァンパイアを睨んだ。事実、ダークセイヴァーにおいて絡繰仕掛けを好む吸血鬼は殆どいない。歴史と格式を誇りにする種族だ、当然のことではある。
「そんなものを作るくらい、吸血鬼としての自分に自信がないのかな?」
「……いい加減その口閉じなって、流石の私もキレちゃうからさ」
 スティロヴァニエが背負うタンク内の血液が目に見えて減少した。その直後、彼女は爆発的な加速により一瞬にしてミサキに肉薄する。血液を変換した魔力を両脚に集中させて限界を超えた機動力を発揮したのだ。禍々しい魔力を籠めた吸血兵装の巨腕が迫る。
「私を怒らせた罰。あんたは血を吸って殺すから、よろしく」
 拳に込められた殺気。連続で繰り出される重い一撃を、ミサキは槍を駆使して捌き続けるが……技量を力で補うにも限界がある。遂に巨腕が彼女を捉え、爆風で吹き飛ばした。
「今の流れで一撃入れたのは大したもんだけど、もう終わりだね」
 爆破する直前に『DeicidaMan』の切っ先が僅かに刺さった胸元をさすりながら、機血姫は吸血チューブで繋がれたミサキを一瞥した。その血を一瞬で絞り尽くすつもりか。
「……やるしかないか。どのみち僕には力と熱と、捨て身しかないんだから」
 血を抜き取られるよりも一瞬早く、ミサキは決断した。持てる怪力の全てを発揮してチューブを引っ張り、浮き上がった敵を強引に吸血兵装ごと振り回していく。
「ミサキさん、続きはわたくしが!」
「ん、じゃあよろしく」
 メリーの声に合わせてミサキが手を離した。既にいくらか吸い上げていた血を撒き散らしながらチューブが抜け、巨大な吸血礼装が軽々と宙を舞う。地面に叩きつけられたスティロヴァニエが我に返った時には、既にメリーが愛剣を手に懐へ飛び込もうとしていた。咄嗟に振るった吸血チューブの先端が食い込もうとも、その疾走は止まりはしない。
「血を吸うならばご自由に。流血は慣れていますし、それに……」
 チューブを介して血液を吸い上げられながらも、メリーの振るう黒剣シュバルツシュテルンは『番犬の紋章』へと確かな一太刀を見舞った。その斬撃に込められたのは呪詛。そしてリオ・スティロヴァニエは気付く――吸った血にも同様に呪詛が混じっていると。
「ちょっと、何吸わせてくれてんの! 混ざる前に排出しなきゃ――」
「……メリー、少し借りるわ。これで冥土の土産に教授してあげる、血の操り方をね」
 呪詛混じりの血をタンク外へと放出するスティロヴァニエの試みは無駄に終わった。何故ならその血は、タンク内で血の杭と化していたのだから。リーヴァルディのユーベルコード『限定解放・血の魔棘』――緒戦では地面の血液を使って発動させたこの能力を今度はメリーの血を媒介に発動させ、その鋭い穂先が血液タンクを内側から攻撃する。
「……はっ、ちょっと焦ったけどさ。タンクの強度を甘く見すぎでしょ」
「……いいえ? 甘く見てるのは貴女のほうね」
「急所ががら空きってこと。空を仰げ、血に伏せろ――『全生命に注がれる陽光』」
 直後、『番犬の紋章』にミサキが放つ巨大熱球による連撃が叩き込まれた。吸血チューブの一撃を受ける直前に突き刺した槍で、既にスティロヴァニエの体には熱球を誘導する「発光する印」が刻まれていたこと……その事実に今更気付いたところでもう遅い。
「痛っ……! いい加減にしなって、ダンピールの分際で!」
「……だから、木っ端だと言ったのよ。半人前の吸血鬼さん」
 熱球の直撃でよろめいた機血姫の胸元に、大鎌が姿を変えたリーヴァルディの手甲剣が食い込んだ。その切っ先が抉るのは紋章の傷口であり、吸血鬼の心の傷口でもある。
「地底都市の死者たちよ……その想い、果たして見せなさい!」
 そして刃を引き抜いたリーヴァルディが飛び退いた直後、無数の影がスティロヴァニエへと殺到した。『偽・死の先を往く者よ』……血液を媒介に蘇った、この紅きヴェルヴェットの大地に染み込んだ死者たちの無念。それらが呪詛を纏って一斉に襲いかかる。
「血を、命をただの燃料と侮ったこと、後悔なさい!」
 血とは単なる液体ではない。命の力だ。彼女達の戦いが、それを証明している。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ユーイ・コスモナッツ
罪なき人の生き血を吸うだなんて、
外道の行いというほかはありません
この剣で天誅をくだします!

勝負をかけるのは【変光星の第三法則】
まずは攻撃回数重視のそれで牽制しつつ間合いを詰め、
隙をみて攻撃力重視の剣筋に変化
「ジャンプ」で頭上をとり、
背後のタンクを叩き割ります!

……しかし残念、
タンクには傷ひとつ付けられないことでしょう
ここまでを見せ技とします

機血姫の側からみれば、
この時の私は、
必殺の策と渾身の一撃に失敗した、
あわれな獲物に見えるのではないでしょうか

そうして油断をみせた時こそが、
私の狙っていた一瞬です
近距離攻撃を紙一重でかわして懐に飛び込み、
狙い澄ました命中率重視の突きで、
『番犬の紋章』を貫きます


神々廻・カタケオ
よぉ、穴倉に篭って家畜育てて。食っちゃ寝食っちゃ寝のいいご身分じゃねぇか吸血鬼野郎。
付き合うっつったのはてめぇなんだ。死ぬまで付き合ってけよ。

『番犬の紋章』…あのブローチ以外は殴っても大したダメージはねぇっつったな。なら、あの一点だけはあいつも必死こいて護んだろ。

バカでけぇ腕は剣じゃねぇと捌けそうにねぇな。剣で受け流しつつUCで剣から蒼炎を放って牽制。底上げした機動力で一気に斬り込んでく。

腕さえ掻い潜っちまえば…あんだけでけぇ腕だ。懐に入っちまえば思うように捌けねぇだろ。ブローチが特別なモンでもなけりゃァ…引っ掴んで蒼炎で丸焼きにしてやるよ。
腕力には自信あっけど、握り潰せっか?これ。



「どいつもこいつも、この私をコケにして……ふざけんじゃないっての」
 死者の群れを兵装の巨腕で薙ぎ払い、リオ・スティロヴァニエは身を起こした。既に血液は半分近くを消耗し、胸元の『番犬の紋章』の修復も間に合っていない。何より、余裕ぶった気怠げな態度を保てずにいるのが、今の彼女の状況を端的に表している。

「よぉ、穴倉に篭って家畜育てて。食っちゃ寝食っちゃ寝のいいご身分じゃねぇか」
 鉄塊剣を担ぐように構えながら、神々廻・カタケオ(羅刹のブレイズキャリバー・f29269)は躊躇いのない歩調で吸血鬼の方へと足を進めた。敵がもはや殺気を隠そうとすらしなくなっていても、一切臆することはない。ただ望む戦場へと近づいていく。
「あのさ、人聞きの悪いこと言わないでくれる。家畜育てんのも楽じゃないんだよ」
 リオ・スティロヴァニエは不機嫌な口調で言い返し、再び吸血兵装に魔力を充填した。血液の残量が減っているとはいえ兵装自体は未だ健在、戦闘力は落ちてはいない。
「それにさ、人間にとっては家畜のほうが幸せじゃない? 地上は辛くて苦しいことばっかりでしょ。私らが手間暇かけて管理してるから、ここの人間は平和に暮らせてんだよ」
 機血姫は悪びれもせずに言い放つ。それは詭弁か本心か、あるいはその両方か。
「罪なき人の命を弄び、その生き血を吸っておきながらいったい何が平和ですか!
 もはや外道の行いというほかはありません。この剣で、天誅をくだします!」
 白銀に輝く剣を掲げ、ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)ははっきりと宣言した。その瞳に宿る曇りなき騎士道を見て、スティロヴァニエは眩しそうに目を眇める。
「あー、やだやだ。天誅ったってさ、この地の底に天の光は届かないっての」
「そのぶん地獄に近いだろ。俺らが斬る、てめぇはくたばる。どのみち変わりゃしねえ」
 カタケオが鉄塊剣を振りかぶり、そして地を蹴り加速する。狙いは胸元、ただ一点。

「燃え尽きる刹那の輝きこそ我が生の証明……! 喰らいやがれ!」
 蒼い炎が地底空洞を照らす。煌々と燃え上がる火を纏い、カタケオは渾身の力で剣を振るった。間合いの外のスティロヴァニエ目掛けて、衝撃波のように蒼の炎が放たれる。
「だからさ、そんな火じゃ私も吸血兵装も燃やせないって」
 機血姫が分かり切ったことを口にする。そんなことは百も承知だ。懐に飛び込み、ブローチ状の『番犬の紋章』を直接叩く。元よりそれ以外に決定打を与える方法はない。
「ならば、これならどうです! 見切れますか、『変光星の第三法則』を!」
 カタケオの炎が牽制している隙に距離を詰め、軽やかに振るわれるユーイのクレストソード。重力の軛から解き放たれたかのような連撃で、敵から反撃の余裕を奪っていく。
「よし、そのまま引きつけといてくれ。俺が寄って斬る!」
 残像のように蒼い炎の軌跡を残し、カタケオが限界を超えた機動力で一気に機血姫へと迫る。その代償として己の寿命を削り続けているが、そんなことは気にすらしない。生と死を分かつのは今この瞬間だけだ。死は戦いの中にあり、終えた先に待つのではない。

「いや、寄らせるわけないでしょって」
「腕を飛ばした……今ですっ!」
 スティロヴァニエが射出した巨大な腕をカタケオはスピードを落とすことなく剣で受け流し、同時にユーイが大地を蹴って飛び上がった。片腕を撃ち出したその隙を突き、全力を込めた斬撃を吸血兵装の血液タンクへと叩き込む。このタンクは敵の戦略を支える全ての要。破壊さえ出来れば相手の優位は瓦解するだろう……破壊できればの話だが。
「……傷ひとつ付きませんか……!」
 甲高い衝突音だけを残し、血液タンクはユーイの剣を弾き返した。見た目とは比べ物にならない堅牢な防御力。更に着地したユーイ目掛けて、吸血兵装の腕が振り下ろされる。
「お生憎さまって感じ? 残念無念また来世、なんてね」
 渾身の一撃に失敗したユーイへの追撃は、彼女を無慈悲に粉砕する。少なくともスティロヴァニエはそう考えていた。しくじった彼女に反撃の手はない。この場で叩き潰し、続いて蒼い炎の男、そして他の猟兵達を片付けよう、と。だが、それは慢心に過ぎない。
「――油断しましたね! 今こそ『変光星の第三法則』、その真髄を!」
 ユーイは反撃の手を失ったわけではない。いや、本命をしくじってすらいない。全てはユーイをあわれな獲物と誤認させ、油断を誘うための布石。振り下ろされる巨腕の動きも読み通りだ。紙一重で回避し、正確に繰り出した一突きで『番犬の紋章』を貫く。
「くっ……私が、出し抜かれたっての……!?」
「いいえ、貴女が私を侮ったのです。 ……カタケオさん!」
 白銀の剣を引き抜き、ユーイが飛び退いたその瞬間には、既に蒼い炎がスティロヴァニエの目と鼻の先まで迫っていた。鉄塊剣で迎撃を掻い潜り、もう一方の腕に炎を纏って。
「大した度胸じゃねえか。次は俺の戦いを見せる番ってな」
 ユーイの勇気を讃えつつ、燃える腕で『番犬の紋章』を鷲掴みにする。そのまま引き剥がそうとしたが離れない。紋章自体がオブリビオンで、肉体に食い込んでいるようだ。
「握り潰すのも難しそうだな。だったらこのまま丸焼きにするだけだ」
「ちょっと、そんなことしてただで済むと――」
「おいおい、付き合うっつったのはてめぇなんだ。死ぬまで付き合ってけよ」
 己自身をも焦がさんばかりの炎が、吸血鬼もろとも紋章を飲み込んでゆく。
 その蒼い炎のゆらめきは、この地底には似つかわしくないほどに鮮やかな輝きだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

七那原・望
随分貯めたようですね。一体何人分の血液なのか……

【第六感】と【野性の勘】で相手の動きや攻撃を【見切り】、【継戦能力】で回避に集中しながら血液切れを狙った戦闘を。
余裕があれば胸元の紋章に【咄嗟の一撃】を加えます。
万が一血液を奪われたら水の泡なので、そちらにも注意しておきましょう。

やっと血液切れですか……
血液が切れたら攻勢に転じます。
【魔力を溜めて】攻撃力を強化した【全力魔法】の【Lux desire】を【クイックドロウ】【スナイパー】で胸元の紋章に放ちます。
同時にセプテットとオラトリオの【一斉発射】で追い打ちを。

そんなに血液が欲しいなら床に散らした自分の血液でも舐めていなさい。


ナギ・ヌドゥー
吸血兵装……業深き兵器よな
だがオレのソウルトーチャーとて極悪を成す兵器
禍つ呪獣にて機血姫の命脈を断ってやろう

ソウルトーチャーを嗾けつつ掌より放つ光弾【誘導弾】で牽制
この【2回攻撃】で紋章を狙う隙を伺おう
この呪獣は屍肉骨を【呪詛】で繋ぎ合わせたモノ……破壊されてもオレの血を与えれば復元可能
先にオレを全力で倒さないとタンクの血が無駄になるぜ!
と敵を【おびき寄せ】UC攻撃を誘いUC「無驍反衝」で受ける
この近距離で反射すれば回避不能
一瞬でも隙を作れたらそれで充分
ソウルトーチャー、番犬の紋章にを喰らいつけ!
穢れた咎人の血肉は最上の贄
紋章ごと喰らい啜り機血姫の命を取り込むのだ【捕食・吸血・生命力吸収】



「……はぁ、最悪。せっかく貯めた血が減ってんじゃん。どうしてくれんの、これ」
 横目で背後のタンクを確認し、リオ・スティロヴァニエは忌々しげに溜息をついた。
 戦闘が始まった時にはほぼ上限まで蓄えられていた血液は、既に残り三割を切るほどに消耗してしまっている。これは猟兵達が回避と防御に徹し、血液の浪費を強いる戦いを繰り広げてきた成果と言えた。今や傷を塞ぐための魔力すら潤沢には使えない有り様だ。
「……これだけ消耗させても使い切らないなんて。一体何人分の血液なのか……」
 七那原・望(封印されし果実・f04836)はタンク内で揺れる血液の僅かな水音から残量を把握し、思いを巡らせる。人の血液は体重の8%ほどを占め、普通の成人であれば総量はせいぜい数リットルほど。その血液であの吸血鬼自身を遥かに凌ぐ大きさのタンクを満たすなら……望は小さく頭を振って思考を打ち切った。あまり愉快な想像ではない。
「吸血兵装……業深き兵器よな」
 ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)もまた同様の思考に至り、小さく呟いた。あのタンクに満たされていた血液は、死すべき咎人のものですらない。ナギが何とか踏みとどまっている一線を、軽々と越えた先の兵器。これを業と呼ばずして何と呼ぶのか。
「……勝手に感心してるとこ悪いんだけどさ。あんま余裕ないし、速攻で潰すから」
 機血姫は不機嫌そうに宣言した。血液が更に消費され、魔力へと変換されてゆく。

 再び始まった戦闘は、更に苛烈さを増す一方だ。血液タンクの残量だけでなく、リオ・スティロヴァニエ自身も精神面での余裕を失いつつある。異端であろうとも吸血鬼、そのプライドを傷つけられたことへの怒りが隠し切れていない。これまで以上の消耗を強いられようとも、全力をもって一気に片を付けなければならないと考えているのだろう。
「あちらもそれだけ焦っているということ……正念場なのです」
望は白い翼を羽ばたかせ、一定の距離を保ちながら黄金の王笏を振るう。両目が封印されていようとも、吸血兵装の駆動音を聞くだけで敵の位置は手に取るように分かった。それに加えて血液のすえた臭い。不快感が募るが、おかげで見失いようもない。
「流石にもう魂胆見えてんだよね。私が血を使い切るまで待とうってんでしょ」
「だが、それでも付き合わざるを得まい。それとも我が呪獣が相手では力不足か?」
 反撃を仕掛けようとする機血姫の眼前に、剥き出しの肉と骨とで形成された四足の獣が割って入った。ソウルトーチャー――ナギが使役する、咎人の骸で錬成した自立駆動の拷問兵器。それは機敏な動きで敵の行く手を遮り、主が放つ光弾との連携で足を封じる。

「冗談でしょ、私の最高傑作がこんなケダモノに劣るかっての!」
 研究者としての逆鱗に触れたのか、憤激したスティロヴァニエが力任せにソウルトーチャーを殴りつけた。莫大な魔力を籠めた拳は爆発的な威力を生み、呪獣は一撃で骨格を粉砕されて地に転がる。ナギはすかさず刃で自らの肌を切り、斃れた獣に血を滴らせた。
「オレのソウルトーチャーとて極悪を成す兵器。主の血があれば復元など容易い」
 主の血を啜って屍肉が蠕動し、再び四足の獣が形作られる。先ほどのダメージなど無かったかのように動き始めたソウルトーチャーを睨み、スティロヴァニエは舌打ちした。術者が健在である限り無限に再生する兵器……対抗手段は、自ずと限られるだろう。
「要はさっさと術者を潰せばいいってこと……単純過ぎて癪だけどさ!」
 血液供給で身体能力を向上させ、リオ・スティロヴァニエは跳躍する。もはやソウルトーチャーなど眼中にない。距離を取り牽制する望を一瞥したものの、行く先はそちらでもない。狙いはナギ・ヌドゥーただ一人。この状況ではそれが最善で――それ故に。
「見事に乗ってくれたものだ。さっきのは大した威力だったが……そのまま返すぜ!」
 轟音。炸裂する魔力。一撃にてソウルトーチャーを粉砕した拳が、絶大なエネルギーを開放する。だが、吹き飛んだのはナギではない。吸血兵装を背負ったスティロヴァニエの体が軽々と宙を舞う。『無驍反衝(コードリフレクション)』――己の肉体に与えられた攻撃を反射するユーベルコード。敵の攻撃が強力であるほど、その威力は絶大となる。
「ふざっ……けんな! どれだけコケにしてくれれば気が済むって……」
 地面に叩きつけられながらも、機血姫は瞬時に体勢を立て直す。そして魔力で再強化しようとして……彼女は一瞬だけ躊躇った。血液を補充できていないこの状態で、更なる消費を行って勝てるのか。その疑問は判断を鈍らせ、そしてその一瞬が命取りとなる。
「やっと血液が尽きてきましたか……攻勢に転じるなら今なのです!」
 黄金に輝く勝利の果実を掲げ、望が叫んだ。限界まで高めた魔力が一瞬にして収束し、輝ける光の奔流となって一直線に迸る。『Lux desire』。威力を高めたその光条は機血姫の胸元、急所である『番犬の紋章』を寸分違わず正確に狙い撃った。
「そんなに血液が欲しいなら、床に散らした自分のものでも舐めていなさい」
 光が紋章を灼き、実体を持つ影と宙を舞う銃とが追撃する。スティロヴァニエは呻きながらも巨腕を盾に攻撃を遮ろうとして、ようやく目と鼻の先に迫ったそれに気がついた。
「穢れた咎人の血肉は最上の贄。ソウルトーチャー、喰らいつけ!」
 光の奔流に紛れて接近していた禍つ呪獣が、凶悪な牙を剥いて紋章に齧りつく。引き裂かれた血肉は紋章のものか、それとも機血姫自身のものか。ソウルトーチャーはそれを確かめることなく己の血肉に変え、深手を負った機血姫は血溜まりの中で膝を突いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雨音・玲
【POW・アドリブ歓迎】
命を弄ぶ奴を見るのはマジで胸糞悪い
今、無念を晴らしてやる!!

選択UCを使用
技能は「見切り」「貫通攻撃」「鎧無視攻撃」「鎧砕き」「限界突破」を選択解放
限界以上に自身の能力を引き上げ

武装の攻撃を「見切り」で紙一重でダンスを踊るように避けつつ
「貫通攻撃」「鎧無視攻撃」「鎧砕き」の効果を付与した
「限界突破」の「属性攻撃」で業火を宿した拳の攻撃で
自慢の『吸血兵装』の完全破壊を狙います

自力も馬鹿に出来ないだろうが、タンクを使えなくすれば戦力激減
俺の怒りの業火はそう簡単には消えない!!
燃え尽きて地獄で懺悔して来な!!!


メフィス・フェイスレス
地下にまで押し込めて
どこまでもヒトに自由を与えないつもり?血吸い共…!

霧状にした「飢渇」を体から噴出させ『闇に紛れる』
囮の「飢渇」を背後から襲わせ奇襲すると見せかけ
正面から『ジャンプ』で敵の肩の装置の上に飛び乗る

正面からは来ないと思ったでしょ?お生憎様
足場にしやすい構造で助かるわ

「微塵」の爆発で突貫力を増した『捨て身の一撃』の鉤爪の貫手でタンクを貫いて穴を開け、タンクに「飢渇」を潜り込ませ血液を『吸血』で奪いつつ「微塵」化させた「飢渇」による『爆撃』で内部から破壊する

相手が此方を振り払おうとしたら振り向きざまに鉤爪で相手の腕を捻り上げ、体勢を崩した上体のブローチに向かって右のドリルを叩き込む



「はぁーっ……はぁーっ……」
 地底空洞に荒い呼吸が響き渡る。血溜まりから立ち上がったリオ・スティロヴァニエだが、その姿は限りなく満身創痍に近い。自身と一体化した『番犬の紋章』に蓄積したダメージが肉体にまで影響を与えている。タンクに蓄えた血液も残り僅かとなっていた。
「……せっかくここまで来たってのにさ……私のことを機械頼りの小物呼ばわりしたクソ吸血鬼どもを、後ちょっとで見返してやれるのにさ。『下』の奴らから『紋章』を手に入れて、この人間畑も任されて。ぶち壊しにされて、たまるかっての……!」
 怨嗟の言葉を吐きながら、スティロヴァニエはじりじりと猟兵達から距離を取る。今更間合いを測っているわけではない。その意図は、誰の目にも明らかだった。
「門の中へでも逃げようっていうのかしら?」
 メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は吸血鬼を睨みつけた。逃げるという言葉を聞いてスティロヴァニエが不愉快そうに顔をしかめ、その足を止める。
「……人聞きの悪いこと言わないでよ。ちょっと収穫してくるだけなんだからさ」
 収穫という表現が何を意味しているのか、この場の誰もが即座に察する。彼女の望みは血液の補充……考えるまでもない。門の中には地底都市があり、数多の人間達がいる。
「本当にモノみたいに扱うのね。地下にまで押し込めて、自分の都合で殺して……。
 そうやってどこまでもヒトに自由を与えないつもり? アンタたち血吸い共は……!」
「……自分で手間暇かけて育てた血液袋を、私がどう扱おうが勝手だっての」
 この期に及んでなお悪びれもせず、リオ・スティロヴァニエは吐き捨てた。
「もう十分だ。命を弄ぶ奴を見るのはマジで胸糞悪い。どのみち逃がしはしねえよ」
 雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)は拳を強く握り込み、身構えた。隣でメフィスもまた戦闘態勢を取る。これ以上、罪なき人の血を流させてたまるものか。
「決着をつけようぜ、吸血鬼。今、無念を晴らしてやる!!」
 血の染み込んだ赤黒い大地を蹴り、走り出す。機血姫は舌打ちし、兵装を起動した。

「あーあ、私としたことが日和り過ぎてた。血はこいつら殺して吸えば済むし……!」
 吸血兵装の巨腕が唸り、掠っただけでも吹き飛びそうな拳打を放つ。燃料切れが近付いているとは思えない威力の一撃を、玲は超人的な反応速度で踊るように回避してみせた。ユーベルコード『一握りの焔』は、自分が身につけている技能に対して限界を超えた能力を引き出す。玲は引き上げられた力を駆使し、敵の猛攻を紙一重で捌いていく。
「呆れるくらい楽観的ね。吸えるかどうか試してみればいいわ」
 自在に操作可能なタール状の粘液を体から噴出させながら、メフィスは一気に距離を詰めた。散布された「飢渇」は霧状になって薄暗い周囲の空間に広がり、相手の視界を封じる目くらましとなる。メフィスは自ら作り出した闇に紛れて身を隠し、更に接近する。
「不意討ちでもするつもりってわけ? 馬鹿にして……!」
「余所見してる余裕があるのかよ!」
 一瞬の隙を突き華麗な体捌きで懐に潜り込んだ玲が、炎を纏った鉄拳を放つ。狙いは胸元の『番犬の紋章』ではなく、背後の血液タンク。破壊さえ出来れば決着は近いが……。
「流石にそう簡単にはいかないか……いや」
 外観以上に堅牢なタンクは、玲の拳をあっさり弾き返した。既に猟兵達の攻撃を幾度となく防いできた鉄壁の防御力。だが玲が拳を通じて感じたのは、それだけでは説明のつかない違和感だった。そして気付く。これまでタンクの内外に与えられた負荷の蓄積、番犬の紋章が損傷したことでの弱体化、燃料不足による魔力減少。それらの要因が重なり合って、今のタンクは本来の強度を発揮しきれていない。破壊は、不可能ではないと。
「一人じゃ無理でも、同時に叩き込めば!」
 玲の叫びに応えるように、周囲に漂う黒霧が敵の背後で結集した。「飢渇」の遠隔操作による死角からの奇襲攻撃。スティロヴァニエはその気配に視線だけを向け、笑う。
「だから無理だっての。背後からの攻撃に備えてないわけ――」
「でも正面からは来ないと思ってたでしょ? お生憎様」
 黒い霧が晴れる。跳躍したメフィスの姿は、まさしく敵の真正面にあった。裏の裏を掻いた真っ向からの奇襲。その動きに合わせ、玲は敵の拳を躱して背後へ潜り込む。
「構造上の弱点は見切った! これで!!」
「飢渇変じて微塵……爆破!」
 タンクの最も脆い部分に玲の鎧をも砕く拳が打ち込まれ、間髪入れずに爆発で加速したメフィスの鉤爪が貫く。負荷が限界を超えた血液タンクが遂にひび割れ、その壁が砕け散ってゆく。タンクを破壊されれば、吸血兵装といえど本来の力を発揮できはしない。
「この血はアンタには勿体ないわ。代わりにこれでも喰らいなさい!」
 吸血兵装の肩に飛び乗ったメフィスはタンク内の血液を奪いつつ、代わりに爆薬と化した「飢渇」を流し込んだ。そして起爆。爆風がタンクを内側から打ち砕く。
「私の最高傑作が! ちくしょう、よくも……!!」
 半狂乱となったリオ・スティロヴァニエの胸元に、ドリル状に変化したメフィスの骨刃が突き刺さった。吸血兵装の魔力供給を失い、満身創痍の機血姫に守る術などない。
「ただの吸血鬼に戻った気分はいかが? でも、後悔したところでもう遅いわ」
 メフィスがドリルを引き抜き、肩から飛び降りた。リオ・スティロヴァニエは悔しさと屈辱に歯を噛み締め、それでも生身の腕で掴みかかろうと手を伸ばして――。
「俺の怒りの業火はそう簡単には消えない! 燃え尽きて地獄で懺悔して来な!」
 灼熱の拳が『番犬の紋章』を打ち砕き、今度こそその存在全てを焼き尽くす。自身と一体化していた核を破壊され、スティロヴァニエは糸の切れた人形のように倒れ伏した。
「ちくしょう……私の血が、染み込んでく……」
 地面の紅いヴェルヴェットに更なる赤が加わる。これが機血姫の最期だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『異端の神に捧げる処刑人』

POW   :    幸あらんことを
自身の【肉体】を代償に、【斧に歪んだ信仰】を籠めた一撃を放つ。自分にとって肉体を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    神は希望を与えて下さる。神は、神は、かみかみか
【自己暗示により限界を超えた筋肉】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
WIZ   :    救いを、救いを、救いを成す為。立ち上がれ
【心や身体が壊れても信仰を果たす】という願いを【肉体が破損した者、昏倒した者】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 壮絶な戦いの果てに、機血姫リオ・スティロヴァニエは斃れた。
 激戦を乗り越えた猟兵達はそれぞれ息を整える。だが、休む余裕は無さそうだった。
 門番が倒されたことを知られれば、時間と共に状況は不利になる一方だ。
 無用な犠牲を出さないためにも、速やかに地底都市へと突入するしかない。
 機血姫に紋章を渡した存在など謎はまだ残るが、今は考えても仕方ないだろう。

 地底都市を囲む城壁に存在する唯一の門は、戦闘に巻き込まれながら未だ健在だった。
 しかし造りこそ強固なものの、魔術的な仕掛けがしてあるわけではなさそうだ。
 猟兵達は互いに目配せして頷き合い、息を殺してタイミングを合わせる。
 そして一斉に門へと衝撃を与え、力押しで打ち破って壁の内側へとなだれ込んだ。

 都市の内部には石造りの建物が並び、表向きは人の営みが為されているように見える。
 だが突入した猟兵達へ向けられた人々の目は一様に生気がなく、驚きすら薄い。
 生まれた時からこの地底で吸血鬼どもに隷属させられてきた人間達。
 今から避難誘導に徹する時間は無いだろう。極力巻き込まないように戦わなければ。

 門前の広場で今まさに母親と少女に斧を振り下ろそうとしていた存在が顔を上げた。
 ズタ袋で表情は分からないが、悍ましい気配と血塗られた斧が嫌悪感を掻き立てる。
 この者達が地底都市を管理し、吸血鬼へと血を献上していた処刑人か。
「おお、哀れな子羊たちに血の救済あれ。神は死によって全てを清めたもう」
 奇妙な文言を呟きながら、集まってきた処刑人たちは虚ろな動きで斧を振りかざす。
 さあ、立ち向かえ。地底の人々を開放し、希望という概念を伝えるために。 
ハロ・シエラ
こんな光景は何度も見せられてきました。
今更動揺はしませんが……何度目であっても、怒りが湧かなくなる事はありませんね。

まずは【先制攻撃】。
敵の誰かにワイヤーを【投擲】し【ロープワーク】で絡めとります。
それを【怪力】で引き寄せつつも、それで精一杯と見せます。
その姿を【フェイント】とし、敵を【おびき寄せ】攻撃を誘い【捕縛】した【敵を盾にする】としましょう。
肉体を犠牲にする攻撃を防げば一石二鳥です。
後は盾にした敵に止めを刺して集まりつつある敵集団に【グラップル】で投げ込み【早業】でその場を離れます。
ユーベルコードによる爆発を【全力魔法】で【範囲攻撃】とし、まとめて【吹き飛ばし】てやります。


雨音・玲
【POW・アドリブ歓迎】
チッ、休む時間は―…取れそうに無いなッ!!

門前の広場の母親と少女に向けて手をかざし即座に詠唱

『骸の海から生まれし者に手向けの炎を、我が内に燃える業火に今仮初の姿を与えん!!
さぁ仕事の時間だ!!行ってこい!!俺の軍勢!!』

自身の背後に炎の翼と炎の甲冑を纏った戦乙女の軍勢を呼び出し
街の人たちの保護の指示を飛ばし無用な犠牲を極力抑えつつ
一気に距離を詰めて接敵

『大事なものは自分で守る主義なんでな、押し付けられる死の祝福なんて真っ平ごめんだ!!』

市街地の乱戦は得意だからな、「武器受け」「野生の勘」で攻撃を捌きつつ
拳を強く握り業火を宿した「咄嗟の一撃」を顔面に叩き込みます



「おお、人の子に幸あれ。人の世に救いあれ」
 血のこびり付いた大斧を振り上げ、処刑人たちは呻くように呟きながら集まってくる。
 地下都市に暮らす人々のことなど気にも留めず、ただ侵入者を処刑することだけを考えているような動きだ。戦闘になれば、彼らは周囲の人間を平然と巻き込みかねない。
「チッ、休む時間は……取れそうに無いなッ!!」
 雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)は一触即発の状況に思わず舌打ちした。地底都市の門番リオ・スティロヴァニエとの戦いは、前哨戦とするにはあまりに苛烈だった。その傷と疲れも癒せないままだが、作戦は一刻を争う。無理を承知でやるしかない。
「骸の海から生まれし者に手向けの炎を、我が内に燃える業火に今仮初の姿を与えん!」
 門前の広場でうずくまる少女と、彼女を庇うように覆いかぶさる母親へ、玲は即座に手をかざして詠唱を開始した。それに呼応し、燃え盛る業火が主の意のままに動く形ある火群に姿を変える。『炎神の軍勢』――現れたのは炎の翼と甲冑とを持つ戦乙女の一団。
「さぁ仕事の時間だ! 行ってこい、俺の軍勢! 無用な犠牲は防ぐようにな!」
 号令に従って炎を纏う戦乙女が一斉に散開し、突然の事態に戸惑うばかりの人々の元へと向かってゆく。自発的に避難してくれれば有り難いのだが、住民は外敵の侵入という異常事態を受け入れられていないようだ。それは支配体制が盤石だった証左でもある。
「だが、どのみちそれも今日で終わりだ!」
 戦乙女の一体が広場の母子を護るように立ちはだかり、襲い掛かる処刑人を炎で迎撃する。玲は怯んだ敵の懐に飛び込み、拳打を叩き込んだ。続けて別方向から迫る一体に対処しようとしたところで、背後から伸びたワイヤーが瞬時にその敵を絡め取った。
 すでに他の猟兵たちも戦闘を開始している。どうやら目の前の敵に集中できそうだ。

   ▼  ▼  ▼

 処刑人に巻き付いたワイヤーを怪力で引きずりながら、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は今一度周囲へと目を走らせた。この門前広場はどうやら処刑場でもあったようで、地面には幾度となく撒き散らされてきたのであろう赤黒い血の跡が残っている。
(……このような光景は何度も見せられてきました。今更動揺などはしませんが……。
 ……たとえ何度目であっても、怒りが湧かなくなるなんてことはありませんね)
 吸血鬼に虐げられる無力な人々。このダークセイヴァーでは当たり前のように存在する悪夢だ。この世界で少年兵として戦っていたハロにとってはあまりに身近で、しかし決して見慣れることはないだろう景色。怒りに衝き動かされるようにハロは力を籠めた。
 しかし力一杯ワイヤーを引いてみせても、捉えた処刑人の巨体はそれ以上動かない。
「おお、幼さゆえの愚昧なるや。神の刃によって悔い改めるべし」
 ワイヤーを掴んだまま身動きの取れないハロの元へ虚ろな足取りで歩み寄った別の一体が、血のこびり付いた斧を振り上げた。力を入れるあまりに全身の骨が軋み、皮膚が裂けて体液が流れ落ちても気にする気配すら見せない。異常な信仰の為せる技なのか。
「不気味ではありますが、好都合です。これで一石二鳥ですね」
 ハロは斧が振り下ろされる直前、今度こそ本気でワイヤーを引いた。その先に繋がる処刑人が、魚でも釣り上げるかのように軽々と引き寄せられる。最初から力負けしていたわけではない。隙を作って他の敵からの攻撃を誘い、纏めて仕留めるための作戦だ。
「おお、同志。血の祝福は汝には不要であろうに」
 敵が自身の肉体すら犠牲にして放った大斧の一撃は、ワイヤーで手繰り寄せられ盾にされた仲間の頭をズタ袋ごとかち割った。同志を手に掛けた処刑人の嘆きの声に引かれたのか、他の処刑人たちが広場の中心へと集まってくる。危機であり、同時に好機だ。
「一網打尽にします! 皆さん、離れて!」
 ハロは盾にした処刑人を背後からレイピアで一突きにして一気に魔力を流し込み、そのままワイヤーのフックで釣り上げて敵の群れの中心へと投げ込んだ。

   ▼  ▼  ▼

「あれは……よし、任せろ!」
 何らかの魔力を帯びて広場の中心に投擲される瀕死の処刑人。玲はそれを一目見て意図を理解した。そのまま即座に、周辺に展開している炎の戦乙女たちに命令を飛ばす。
「街の人たちを出来るだけ遠ざけて、そのまま壁になれ!」
 市民の対比を炎神の軍勢に任せ、玲は目の前の敵へと拳を打ち込んだ。
「迷い子よ、救われぬ魂よ。汝にこそ血の祝福は与えられるべし」
 なおも踏み留まり、玲へと斧を振り上げる処刑人。その肉体は力を入れ過ぎた代償で張り裂けている。玲は拳を強く握り、渾身の力を籠めた。その拳に猛る業火が宿る。
「大事なものは自分で守る主義なんでな、押し付けられる祝福なんて真っ平御免だ!」
 熱情の炎を纏った鉄拳が処刑人の顔面を一撃で粉砕し、最大威力の炎がズタ袋ごとその頭部を灼く。玲は全力で拳を振り抜き、そのまま真っ直ぐに殴り飛ばした。処刑人が吹き飛んだ先は広場の中心、すなわちハロが魔力を籠めて敵を放り込んだ集団の只中。
「『陥落(ダウン・イン・フレイム)』――吹き飛びなさい!」
 ハロが叫び、ユーベルコードを起爆させる。投げ込まれた敵に注がれた魔力が炸裂し、周囲の標的もろとも爆散する。それは玲に殴り飛ばされた処刑人も例外ではなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キリカ・シノノメ
人の死を決めるのは神様でもあなた達でもないよ!いつだって選択肢はその人自身にあるんだから!

『超爆撃ハンマー』で『怪力』『爆撃』で地面を打ち付けてばっかーん、ってさせるよ!地面で出来た壁を作って人間たちと敵を分断させてみる!
人間たちに被害が出ないようにある程度加減はしようかな!

うわー……全然見境ないし自分の体犠牲にしてまでも戦うんだね……
私と同じように、斧の一撃って動作にかなりの鈍重さがあるとみたよ!
UC発動、火薬機構を使ってその勢いで相手よりも先に攻撃をしてみようかな?『怪力』『鎧砕き』『爆撃』をその隙を狙ってどっかーんってね!

さ、こんな寂しいところはおさらばして、もっと楽しい場所に行こうよ!


神樹・鐵火
ただでさえ日の無い世界なのに、地底に民を住まわせるとは

数の暴力には此方も同等の手段を使わせてもらおうか
貴様ら!出番だ!!(UC【神使来襲】)
余の忠実なる戦士達よ、民に絶望を与える者共に更なる絶望を与えろ!

戦士には民を襲おうとする敵を優先的に排除させ、
炎龍には敵の行動を妨害する軌道で飛ぶ様指示する

私か?高みの見物をするワケが無かろう
【激痛耐性・残像・見切り】で攻撃の防御・回避を行い、
【魔力溜め】で威力を増した『聖拳』『魔拳』の打撃や、
『霊拳』の気功弾による【衝撃波】で攻撃する



「ただでさえ陽の差さぬ世界なのに、地底に民を住まわせるとは……」
 グリモアベースから地下空洞の外れに転移した神樹・鐵火(魔法(物理)・f29049)は、地底都市での戦闘に加勢すべく足を早めた。都市唯一の入口である門の周囲には激しい戦闘の痕跡が残り、むせ返るような血の臭いがまだはっきりと残っている。
「敵は多数か。民に絶望を強いる輩め」
 躊躇うことなく門の中へと飛び込むと、既に状況は混戦の様相を呈していた。数で勝る処刑人の群れに対して猟兵達は善戦しているようだが、市街戦ゆえに戦況が把握し辛い。

「おーい、こっちこっちー!」
 加勢の到着に気付いたキリカ・シノノメ(底無し在庫・f29373)が、被っていた大きなウィッチハットを振って合図を送る。鐵火は散発する戦闘の合間を縫って駆け寄った。
「待たせたな。して、状況は?」
「街の人達を逃がすのは間に合いそうにないかな。巻き込まないように戦わなきゃ!」
 ここはオブリビオンが支配する都市。事前に避難誘導など出来るわけもなく、地の利は完全に向こう側にあり、更に処刑人達は一般市民を巻き込むことに一切躊躇がない。
 周囲を見渡すだけでも、逃げ遅れた市民があちこちにいるのが確認できた。
「なるほどな。数の暴力には数で対抗するとしよう……貴様ら! 出番だ!」
 鐵火は頷き、虚空に号令を発した。その声に応え、燃え盛る炎を纏った獰猛なる龍が姿を現す。ユーベルコード『神使来襲』――召喚された炎龍に跨るのは、紅炎の刀を携えて赤黒い強化外骨格を装着した、荒々しくも勇ましい神界の狂戦士達だ。
「余の忠実なる戦士達よ、民に絶望を与える者共に更なる絶望を与えろ!」
 主の命を受けて、狂戦士達は炎龍の上から民を巻き込もうとする処刑人にそれぞれ狙いを定め、空挺部隊さながらに次々と降下していく。炎龍は戦士達を輸送しながらも燃え盛る炎で敵の行く手を分断し、民を傷つける者を鐵火の指示通りに追い詰めていった。

   ▼  ▼  ▼

「よし、あっちは任せて大丈夫そう! 私も頑張らなきゃ!」
 キリカは愛用の超爆撃ハンマーを担ぎ、気合を入れ直した。鐵火のようなグリモアベースからの援軍で状況が多少好転したとはいえ、未だに危ない状況なのは間違いない。
 ハンマーを全力で振り抜いて、手近な処刑人を思い切り殴り飛ばす。キリカ自身の怪力も乗せた文字通り爆発的なパワーは、相手が屈強な肉体の処刑人でも押し負けはしない。
「それにしても……うわー、自分の体を犠牲にしてまで戦うんだね……」
 処刑人は全身を砕かれながらも痛みを忘れているかのように立ち上がり、自分自身の骨をへし折りかねないほどの力を込めて斧を振りかぶった。キリカは火薬機構の勢いを利用してその斧を真下から跳ね上げ、そのまま脳天に振り下ろす。敵は今度こそ沈黙した。

「おまけに全然見境無いし、気をつけて戦わないと!」
 正面に立ちはだかった新たな敵を横殴りにふっ飛ばして壁に激突させながら走る。その視線の先に、キリカは道端でうずくまる少女の姿を捉えた。年格好は自分と同じくらいだろうか、腰を抜かして動けないようだ。あれでは自分の身を守ることすら出来まい。
「おお、怯える娘よ哀れなり。慈愛をもって汝を恐怖から開放せん」
 少女の姿を認めた処刑人の一体が、おもむろに斧を振り上げた。猟兵という敵と戦っている彼らにとって、今この時に一般人を殺めることには一切の合理的理由がない。つまりあれは処刑人自身が口にしている通り、彼女を恐怖から救うための行動だというのか。
「――人の死を決めるのは、神様でもあなた達でもないよ!」
 キリカは渾身の力でハンマーを振るい、その火薬機構を起動させた。敵を直接殴るには距離があり過ぎて間に合わない。ならば殴りつけるのは、敵ではなく地面。キリカが爆発の全エネルギーを叩き込むと、隆起した地盤が強固な壁となって敵と少女を分断する。
「いつだって、選択肢はその人自身にあるんだから!」
 斧を頭上にかざしたまま、処刑人がこちらへ振り返る。キリカのハンマーと同様に強烈にして鈍重な一撃が放たれる直前、超爆撃ハンマーが再び火を吹いた。爆圧を利用して懐に飛び込むと同時に槌頭を加速させ、敵に直撃させたと同時に更なる爆発!
「どっかーーーん! ってね!」
 狂える処刑人を一撃で吹き飛ばしてから、キリカは道端の少女へ手を差し伸べた。

「大丈夫? 立てそうかな?」
 キリカが手を握って少女の体を引き起こしたその時、背後の瓦礫を崩して別の処刑人が現れた。咄嗟に少女を背後に庇い、ハンマーの柄を握る。だが斧による攻撃が放たれる前に、打撃音と共にその巨体が揺らいだ。そのまま続けざまに二発、そして三発。
「下がっていろ。こいつは私が直々に殴る」
 割って入ったのは鐵火。その両拳には莫大な魔力が集中している。聖拳、そして魔拳。肉体強化に全ての魔力を回す戦法こそ神樹・鐵火の真骨頂。魔法という名の物理攻撃が処刑人の肉を破り、骨を割り、斧の柄をへし折って、とどめのアッパーが頭を粉砕した。
 敵が成すすべなく沈黙したのを確認し、鐵火はキリカの方へと向き直る。
「二人とも無事で何より……どうした、呆気にとられた顔をして」
「いやー、まさかグーで戦う人だとは思わなくて……」
 そのやり取りを聞いて少女がくすっと笑みを漏らし、二人も釣られて口元を緩める。
「さ、こんな寂しいところはおさらばして、もっと楽しい場所に行こうよ!」
キリカの言葉に、少女は躊躇いながらも確かに頷いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーイ・コスモナッツ
ツェリスカ様は、私達の戦いぶり次第で、
人々に勇気を与えられるかもしれないといっていた

ならば、ただ勝つだけでは駄目だ
瞬く間に敵を殲滅する「完全勝利」を見せつけて、
地底都市の人々に勇気と希望を届けたい

反重力シールドで突撃、
「ランスチャージ」で次々に処刑人を突き崩し、
何もさせないまま一掃することを狙います……が、
このまま処刑人に接近すれば、
強化された筋力で振われる斧の、
格好の餌食になってしまうでしょう

なので、
斧の間合いに入る直前でUCを起動
一瞬の超急加速で、
斧を振り下ろすタイミングを外します
そのまま無防備な上半身を一撃!
同じ要領で、
できるだけ多くの処刑人を、
できるだけ早く倒してしまいたいです



 生まれた時から搾取され続けてきた地底の人々は、今まで抗うことを選べずにいた。
 与えられた運命をただ享受する以外の生き方を、誰一人として知らなかったからだ。
 だが固く閉ざされた門が開かれたこの日、確かに変化がもたらされようとしていた。

 石造りの建造物の合間を縫うようにして、反重力シールドが空中を疾駆する。
 ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は高速飛行する盾の上から地上に目を走らせながら、グリモアベースからこの地底空洞へ転移する直前のやり取りを回想した。
(ツェリスカ様は、私達の戦いぶり次第で人々に勇気を与えられると言っていた……)
 地底都市の門を開いた直後、住民たちがこちらを見た時の目を思い出す。あれは自分の未来を諦めたままこれまで生きてきた人の目だ。彼らの心に勇気を与えるということは、ただ励ますだけに留まらず、彼らの価値観を根底から引っくり返すことに他ならない。
(ならば、ただ勝つだけでは駄目だ。人々に勇気と希望を与えられる勝ち方でないと)
 ユーイの卓越した動体視力が、逃げ遅れた人々を脅かす処刑人の姿を捉えた。即座に急制動を掛けて方向転換、その敵を目標と定めてシールドを加速させる。
「――『流星の運動方程式』、ブースト・オン!」
 ユーイの接近を察知した処刑人が、自己暗示によって身体能力を増幅する。平時の6倍に至る反応速度だ。だが敵がその増幅された能力を活かして迎撃を試みるよりも僅かに早く、ユーイは反重力シールドを超急加速させた。斧を振り上げた敵の無防備な上体へと、最大速度でのランスチャージがさながら銀の流星のように突き刺さる。
「もっと疾く、勇ましく! 心に焼き付くような完全勝利を!」
 次の目標を見定めて空中で反転、突進、急加速。敵の反撃を掻い潜ってヴァルキリーランスで一突きに仕留め、更に次の目標へ。ユーイは反重力シールドの性能を限界まで引き出し、立て続けに突撃を敢行した。地上でその一連の戦闘を目にした者にとっては、複数の処刑人がほとんど間を置かず同時に貫かれたようにすら思えただろう。
「……ふぅ。騎士物語の英雄みたいに、少しは人の心を動かせたかな……?」
 この一帯における最後の敵を貫いて、ユーイはようやく一息をついた。一瞬遅れて、周囲の人々から歓声が上がる。彼女の戦いは確かに人の心を動かしたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

メフィス・フェイスレス
この世界じゃ神はヒトを救わない
分かりきってるわよ、生前から

「飢渇」を展開して敵の足止めに使い、隙を突いて「骨身」で切り捨てていきながら住民の身体を包んで運ぶことで戦場から避難させる

!? 背後に逃げ遅れた子供が…
この糞野郎、私がこの位置に来るよう誘導したわね!
だったらお望み通り避けないであげる
敢えて振り下ろされる斧を胴で受け
自分の体に斧を食い込ませた所で傷口から「骨身」を出し斧と腕に絡め拘束

悪いわね 私神に仕える奴って嫌いなの
特にアンタ達みたいな奴らが

子供の周囲に硬化した「飢渇」を展開して保護しつつ視界を塞いでおく

――私の「顔」は子供には刺激が強いから

虚しいものね、狂った信仰の成れの果てなんて


七那原・望
血の救済?そんなもの救済でもなんでもないです。
カルト宗教にハマるのは勝手ですけど、そういうのに他人を巻き込まないでもらいたいですね。

アマービレで呼んだねこさん達にお願いして、【全力魔法】の【オーラ防御】【結界術】で住民を護ってもらいましょう。

【第六感】と【野性の勘】で敵の動きや攻撃を【見切り】、能力が6倍になっている前提で行動を先読みしながら回避しつつ敵の攻撃の勢いを利用して【カウンター】で【世界】の【スナイパー】【乱れ撃ち】で飲み込みます。

そんな信仰を抱いている時点で、お前達にはわたしを満足させる回答なんて絶対にできません。どうぞ、満足いくまであらゆる苦痛に苛まれて救われなさい。



「罪深き者どもよ、汝らの咎は血によってのみ清められよう」
「血は救いなり。死は救いなり。神の御名において万人を救うものなり」
 理解し難い文句を呟きながら、処刑人達は血塗られた斧を片手に都市を徘徊する。
 既に相当数が猟兵によって倒されているが、それによって残った者が動揺したり戦意を失う様子は見受けられない。歪んだ信仰心がその精神を不変のものとしているのか。
「この世界じゃ神はヒトを救わない。分かりきってるわよ、生前から」
 手首から突き出した骨の刃を処刑人の急所にねじ込みながら、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は吐き捨てた。吸血鬼の屍体玩弄の果てに生み出されたデッドマンである彼女は、このダークセイヴァーの無慈悲さをこの姿になる前から知っている。そもそも死が救いなら、メフィスは既に救われていなければならないはずだ。
「カルトにハマるのは勝手ですけど、他人を巻き込まないでもらいたいですね」
 七那原・望(封印されし果実・f04836)も頷き、鈴のついた白いタクトを振るった。たちまち召喚された魔法猫の群れが、望の周りをぐるりと取り囲んで鳴き声を上げる。
「ねこさん達、逃げ遅れた人を探して結界で守ってあげてくださいね」
 望がお願いすると、猫達は思い思いに鳴きながら猫ならではの身軽さで街のあちこちに消えていった。既に都市の内部は敵味方が入り乱れて混沌としており、住民の一人ひとりを猟兵が直接守るのは困難だ。文字通りの意味で、ここは猫の手も借りておきたい。
「動ける人は今のうちに退避して! 途中までは運んであげるから!」
 メフィスの操るタール状の粘液が住民を包み込み、そのまま移動させてゆく。緒戦で敵が一掃された門前広場は猟兵達の召喚した兵によって守られ、即席の避難所として機能していた。その広場へと住民を届けてから、メフィスは改めて市街へと視線を向けた。
「建物の中にまだ逃げ遅れた人がいるかもしれない。確認してくるわ」
「敵が潜んでいるかもしれません。お気をつけて」
「その時は私に出会ったことを後悔させてやるわ」
 手元に「飢渇」を呼び戻し、メフィスは街の中心部へと走っていった。

   ▼  ▼  ▼

 遠ざかる足音を望は見送ってから、改めて耳を澄ませた。卓越した聴覚が封印された両目の代わりに敵の位置を捉える。位置は望の斜め後方。不意を打ったつもりだろうか。
「教えてやりましょう。血の救済など、救いでもなんでもないと」
 直感で背後からの一撃を回避する。血まみれの大斧は勢い余って地面に激突し、石畳を微塵に粉砕した。この威力といい、望の背後に回り込んで接近するだけの脚力といい、敵が何らかの身体強化を使っているのは間違いない。信仰の賜物とは思いたくないが。
「お前に問います。真の救済とは何か。その信仰の果て、本当に希望はあるのか」
 限界を超えた速度で再び振るわれた大斧は、しかし望に届くことはない。その動きに先読みで合わせる形で発動したユーベルコード『世界(レ・ミゼラブル)』――この世のありとあらゆる悪意に満ちた疑似世界が、処刑人を一呑みにしてしまったからだ。
「もしもお前の信仰が正しきものならば、問いに答えることはできるでしょうが……」
 疑似世界の內部に取り込まれている限り、絶え間なく苦痛と絶望とが対象を苛み続けるだろう。あの処刑人にとっての苦痛と絶望とは、恐らく信仰の根底を揺るがしかねないもの。だがその歪んだ信仰が強固であるがゆえに、世界を見つめ直すことなど出来ない。
「そんな信仰を抱いている時点で、お前達にはわたしを満足させる回答なんて絶対にできません。どうぞ、満足いくまであらゆる苦痛に苛まれて、存分に救われなさい」
 望は疑似世界の入口に背を向けた。中で何が起こっているかは想像するまでもない。

   ▼  ▼  ▼

 同時刻、市街地の入り組んだ路地裏で、メフィスは敵と対峙していた。
「このクソ野郎、私がこの場所に来るよう誘導したわね!」
 メフィスの背後には幼い子供がうずくまっている。足を怪我しているのか、自力で逃げることは出来ないようだ。この子の声で路地裏に誘い込まれ、そして今、庇いながら戦わざるを得ない状況に陥っている。恐らくこの敵が餌として子供を利用したのだろう。
「さあ、幼子と共に血の救済を受け入れ、神の御前で跪くがよい」
 子供を庇って躱せないと知った上で、処刑人の斧が無慈悲に振り下ろされる。メフィスはズタ袋に覆われた顔を睨みつけ、真正面からその凶刃を受けた。血がしぶき、肉が裂けて、それ以外のものにまで刃が届いた感触がある。だが、その程度が何だというのか。
「悪いわね。私、神に仕える奴って嫌いなの。特にアンタ達みたいな奴らがね」
 傷口から飛び出した骨刃が、斧とそれを握る腕に絡みつき拘束する。死地に追い込まれたのは敵も同じだ。この斧が食い込んでいる限り、どうやっても決して逃さない。
「目は塞いでおくわ――私の『顔』は子供には刺激が強いから」
 その言葉は背後の子供に向けたもの。同時に「飢渇」が子供を保護するように覆い、視界を遮っていく。完全に目を塞いだのを確認した直後――メフィスの頭部が変貌した。無数の牙を持つ、顔と呼ぶのも憚られるようなただ捕食するためだけの器官。その口に当たる部分が大きく開き、次の瞬間、処刑人の胸から上は一瞬にして消失した。
「虚しいものね、狂った信仰の成れの果てなんて」
 崩れ落ちる処刑人の体を見下ろし、メフィスは淡々と呟いた。
 信仰がその者を救うとは限らない。それが歪みを孕んだものであれば、尚の事だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メリー・スペルティナ
血の救済……貴方達にそれが為せるようには見えませんけれど

携えたもう一つの武器、剣の形をしたわたくしの血の凝集体『ブルートヴァッフェ』を媒介に、高速詠唱、限界突破でUC【偽・死の先を往く者よ】を使用

わたくしの血を元に仮の器とし、可能な限りの死者達に形と力を与え、さらに降霊でしっかり生前の姿まで再現してこの地に再生しますわ

必要なら彼らには住人の護衛を優先させます
死者達にも住人達にもそっちの方がいいですわよね?

後は、闇に紛れ第六感を駆使し、必要なら武器で斧を弾き回避し、
片端から剣で切り付け、呪詛を浴びせ、血と生命を奪い、斃すだけ
多少の傷はどうせ血の呪詛の罠に使うので無視ですわ

※アドリブ連携歓迎です



 終わりの見えない地底都市での戦闘も、いよいよ正念場を迎えつつあった。
 物量で遥かに勝っていたはずの処刑人は、猟兵達の奮戦で着実に数を減らしている。
 それだけの激戦を繰り広げながら、市民の犠牲者を出さずにこれたのは奇跡的だ。
 だが最後まで守り切れるとは限らない。今のうちに少しでも安全を確保しなければ。

「この都市……至るところに死者の無念が染みついていますわね」
 メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)はこの地に宿る思念を感じ取り、小さく呟いた。死霊術士であると同時に死者の想いを受け止める力を持つ彼女に対して、この地底都市はあまりに雄弁に語りかけてくる。それはこの街における人の生がどれだけ死と隣り合わせか、どれだけ無念と悔恨に満ちているかを示していた。
「これ以上犠牲を出すわけにはいきません。死者達もそれを望まないでしょう」
 自身の血液を凝集させた呪血の剣『ブルートヴァッフェ』を介し、メリーはユーベルコードを発動させた。先の機血姫リオ・スティロヴァニエとの戦いでも使用した『偽・死の先を往く者よ』は、血を糧として無念を抱えた死者に仮初めの肉体を与える。長い年月をかけて死者の思念に満ち満ちたこの地とは、悲しいくらいに相性が良かった。
「その遺志を遂げるための姿を授けます。守るべき人を、守ってみせなさい」
 だが、今はその力を戦いではなく人々のために使わせる。この街に染みついている無念とは、残された人達への強い想いに他ならない。メリーは降霊の技術までも駆使して、戦闘時ならば不要であろう生前の精巧な似姿までも与え、生者の元へ送り出した。
 この日限りの肉体を得て、死者は今を生きる人々を危険から守り、安全な場所へと避難させていく。中には大切な人の姿を見つけ、固く抱き合う光景もあった。親と子、妻と夫、恋人や友人……仮初めの時であろうとも、彼らには幾許かの救いとなっただろうか。

 死者と手を携えて戦場から逃れていく人々を見送り、メリーは改めて前を見据えた。
「頑迷なる愚者よ、我が刃にて啓蒙されるべし」
 目の前では、処刑人が歪んだ信仰心を膨れ上がらせている。死者の護衛がいなければ、すぐにでも救済と称して人々を殺めるつもりでいたのだろう。血の救済……そんなもので人が救われるのであれば、あれだけの死者が無念を抱えて甦ったりはしない。
「救いとは心に寄り添うこと。貴方達にそれが為せるようには見えませんけれど」
 振り抜かれた斧がメリーの柔肌を掠める。深紅の返り血を浴びながら追撃の刃を構えた処刑人は、それ以上何も為すことができない。メリーの血が帯びている呪詛が敵を蝕み、血と生命とを奪っていく。その巨体が崩れ落ちるまでそう時間は掛からなかった。  

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…そこまでよ。これ以上、誰一人奪わせはしない

…狂った信仰、虚無への供物には、お前達自身を捧げるがいい

"黎明礼装"に限界突破した魔力を溜めUCを発動し、
"飛翔、御使い、魔動鎧、岩肌、操縦、盾、軍略"の呪詛を付与

…容易に限界を越える信仰心。それこそがお前達の敗因と知れ

●防具改造した多量の浮遊盾を●操縦して●団体行動を行い、
●空中戦機動の早業で住民や味方を●追跡して●かばい、
攻撃を跳ね返すカウンター●オーラで防御する●盾で受け、
自身は●存在感を出して住民達に避難を促す

…私達は貴方達を吸血鬼の支配から解放しに来た者よ!

…危害を加えるつもりはない。闘いに巻き込まれたくなければ、私の後ろに…!



 その処刑人は、オブリビオンとして甦ってから始めて、焦りという感情を覚えていた。
 血の救済を与えるべき無力な子羊たちは自分達の支配を逃れ、代わりに同志達が血と泥に塗れて石畳に横たわっている。まるであべこべだ。死によって祝福されるべきは人間であって自分達ではない。全ては門番を斃して都市に侵入した猟兵達の悪行だ。
 処刑人はズタ袋越しに目の前の人間達を睥睨した。一家三人で自分の家に閉じこもっていたため、皮肉にも猟兵達の援護が届いていない。父親が妻子を庇って前に出たが、その両足は震えている。処刑人は満足げに頷いた。救済を与える相手はこうでなくては。

「……そこまでよ。これ以上、誰一人奪わせはしない」
 だが、振り下ろされた凶刃は、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が操る浮遊盾によって敢えなく受け止められた。それと同時に攻撃反射のオーラが発動し、斧の衝撃をそのまま跳ね返すことで処刑人の巨体を一気に押し戻す。
「あ、あなたは……いや、あなた達は一体……?」
 今まさに命を救われた一家の父親が、躊躇いがちにリーヴァルディへ尋ねた。決して吸血鬼以外によって開かれることはなかった門を破り、長年にわたり人々を管理し続けてきた処刑人を駆逐していく者たち。僅かな恐れとそれ以上の希望が彼の目に宿っている。
「……私達は、貴方達を吸血鬼の支配から解放しに来た者よ!」
 リーヴァルディは凜として宣言し、起き上がる処刑人へと一歩を踏み出した。
「……危害を加えるつもりはない。闘いに巻き込まれたくなければ、私の後ろに……!」
 その言葉を証明するように、多数の浮遊盾が家族の周囲へと迅速に展開する。父親は戸惑いながら何度も頷き、盾に守られながら妻子の手を引いて後方へと待避していった。
「汝、死によって救われるべし。その魂の穢れ、ただ血のみが洗い流せるゆえに」
 立ち上がった処刑人は、リーヴァルディを敵と見定め斧を振りかざした。その歪んだ信仰心が強烈な自己暗示を生み、肉体の限界を超えた力を引き出していく。
「……呆れた。この期に及んで、狂った信仰に身を委ねるなんて」
 その体躯に似合わない爆発的な加速で一気に斬り込んでくる処刑人に対し、リーヴァルディは冷静に片手を掲げた。『吸血鬼狩りの業・千変の型』によって呪詛が付加された黎明礼装が、周囲に展開された浮遊盾を操るための更なる力を引き出す。迅速かつ正確に配置された盾が一斉に反射オーラを展開し、処刑人の限界を超えた一撃をも受け止めた。
「……虚無への供物には、お前達自身を捧げるがいい」
 渾身の力で体勢を立て直す処刑人。だが反撃の機会は訪れなかった。黎明礼装の呪力による飛翔で懐に飛び込んだリーヴァルディが、黒きグリムリーパー『過去を刻むもの』を振るう。かつて自分が処刑した罪無き人々と同様に、処刑人の首が宙を舞った。
「……そろそろ決着ね。それとも、これからが正念場かしら」
 周囲にはもはや動くオブリビオンは見当たらない。リーヴァルディは小さく安堵の息を吐いてから、取り残された人々を助け出すためにまた走り出した。 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『猟兵、語り部になる』

POW   :    懇々と語る

SPD   :    朗々と語る

WIZ   :    粛々と語る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 残敵無し。その事実を確認し、猟兵達はようやく張り詰めていた緊張を解いた。
 門番の吸血鬼を斃し、犠牲を出すことなく地底都市内部の敵の掃討にも成功した。
 不利な状況での過酷な連戦ではあったが、結果として得られたものは大きい。

 顔を上げると、安全な場所に待避していた住民達が帰ってきたところだった。
 彼らは一様に、安堵と喜びと、そして不安が入り混じったような表情をしている。
 無理もない。彼らは皆、生まれた時からオブリビオンに隷属してきたのだから。
 いずれ他都市の吸血鬼も異変に気付くだろう。新たな領主が現れるのは時間の問題だ。
 その時に自分達がどんな扱いを受けるかを考えると、気が気でないのだろう。

「あの……この街の外にも人の住む場所があるって本当ですか?」
 民衆の中から一人の少女が進み出て、祈るように手を組みながら声を絞り出した。
 あの処刑人達との戦いの中で、猟兵達に直接その命を救われたひとりだろう。
 人々の中にも同様に、猟兵達へ感謝と信頼の眼差しを向ける者は少なくなかった。
 絶望を乗り越えられるかもしれないという希望、そして一歩を踏み出すための勇気。
 どちらもこの地底都市には存在しなかった。猟兵達がそれらをもたらしたのだ。

 猟兵達の任務は、この地底都市の人々を地上の人類砦へと避難させることだ。
 だが彼らが希望を手にしたとはいえ、地上への旅は相応の覚悟を必要とするだろう。
 だからこそ、伝えなければ。世界がどれだけ広く、可能性に満ちているのかを。
 彼らが知らないことを言葉で語ってもいいし、それ以外の伝え方でも構わない。
 少しだけ背中を押してやれば、きっと人々は、自分の足で歩き出せるだろう。
ハロ・シエラ
ダークセイヴァーは私の出身地でもあります。
ここの外の事を聞かれるのなら答えましょう。
この世界にも色々な場所があるので、私の住んでいた村みたいな場所ばかりではないでしょうけど……知っている範囲で。

ここの外にも街があり、人がいます。
大部分は決して豊かではありません。
今までのここの様に、彼らに支配されている所もあります。
そうでなくとも命がけでオブリビオンと戦わなくてはいけない時もあるでしょう。
これから皆さんをお連れする場所は、戦う覚悟は必要ですが、少なくとも支配はされていないと思います。
今までの生活よりは……きっと少しは良いでしょう。
きっとたまには日の光も差しますしね。


七那原・望
人の住む場所はたくさんありますよ。
その多くはあなた達と同じようにヴァンパイアに支配されてしまってるけれど、そうした支配から逃れて人間が自分達で統治している人類砦という場所がいくつもあるのです。
そこにヴァンパイアはいません。
住民達はヴァンパイアに隷属するのではなく、誇りを持って戦っているのです。

そこでならあなた達はもう虐げられる事はない。
わたし達はあなた達をそこへ連れて行こうと思ってるのです。

地上には地底にないものがたくさんあるのですよ。
天井のない、どこまでも広がる空とか、わたしの頭に咲いているような色とりどりの花とか。
それに、空気だって、食べ物だってこの地底よりずっと美味しいのです。



住民達の列に混ざって、猟兵達は戦闘が終わった後の地底都市を歩いてゆく。
 人々を巻き込まないような戦闘を徹底していたために、街の被害は思いのほか少ない。
 だが表通りには瓦礫やオブリビオンの骸が転がり、人々はそれを避けて進んでいく。
 この地底都市に立ち込める血の臭いから、少しでも遠くまで離れるように。

「ここは……この街の集会場、でしょうか」
 人々に連れられて石造りの大きな建物に入ったハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は、思わず周囲を見回した。他の建物よりも大きく頑丈な作りで、構造は地上の教会に似ているが、祭壇は見当たらない。代わりに何か奇妙なオブジェが置かれているが、あれが処刑人達の崇める異端の神なのかは、今となってはもう確かめようのないことだ。
「さて……まず何から話しましょうか」
 長椅子の一つに腰を落ち着けると、周囲には自然と集まってきた人々の輪が出来た。他の猟兵達も同様のようで、それぞれが住民達によって囲まれている。現状への不安はあれど、門前の広場で進み出た少女のように、誰もが来訪者の言葉を待っているようだ。
「皆さんも既に御存知でしょうが……ここの外にも街があり、人がいます」
 ハロは周囲の人々の視線に応え、語り始めた。元々ハロはこのダークセイヴァーの出身だ。幼い頃から吸血鬼と戦うため、村で戦闘訓練を受けてきた。この世界の集落がどこもそのような場所というわけではないが、それでもこの世界のことは肌で識っている。
「地上の大部分は決して豊かではありません。吸血鬼に支配されている土地もあります」
 今までのこの地底都市のように――その言葉に、耳を傾けていた住民達の何割かが無意識に体を震わせた。吸血鬼による支配。その記憶は人々の中に深く傷のように刻まれ、そう簡単に癒えるものではない。耐えかねたのか、聴衆の一人が問いを投げかけた。
「あなた方の言うように地上に行ったとして、そこで支配されたら同じじゃないのか?」
「これからお連れする場所は、支配はされていないと思います。戦う覚悟は必要ですが」
 戦う覚悟という言葉が、波紋のように人々の間へと広がっていく。吸血鬼と戦う――彼らに反抗するなど考えもしなかった者達にとって、その概念は大きな衝撃だったようだ。
「その覚悟を持って生きれば、こんな暮らしをしないでいいの?」
 女性の問いに、ハロは小さく微笑んで頷いた。
「今までの生活よりは……きっと少しは良いでしょう。たまには日の光も差しますしね」
 日の光。この地底では決して目にすることの無いものだ。生きる覚悟と同じように。

   ▼  ▼  ▼

「その、日の光というのは……?」
「地上には天井がなくて、代わりにどこまでも広がる空から光が差すのです」
 七那原・望(封印されし果実・f04836)は、太陽を知らない住民に向けて説明した。ダークセイヴァーの地上は雲に覆われて明るいとは言い難いが、それでも日の光は時折差し込んでくる。天井に溜まった発光ガスが辛うじて光源となるようなこの地底とは違う。
「他にも地上には、この地底には存在しないようなものがたくさんあるのですよ。
 空気だって食べ物だってずっと美味しいですし……それから、こんな花だって」
 望は自分の頭に咲いている赤いアネモネの花を指差した。その鮮やかさは、この地底ではなかなか目にすることの出来ない色合いで、目にする人々が思わず息を漏らした。
「……でも、さっき地上にもヴァンパイアがいるって。お花は確かに綺麗だけど……」
 興味を惹かれながらも一歩を踏み出せない人々に向けて、望は頷いてみせる。
「確かに地上の多くはヴァンパイアに支配されてしまっているけれど、人間がそうした支配から逃れて自分達で統治している『人類砦』という場所が、いくつもあるのですよ」
 ざわめきが広がった。人間が人間の手で街を統治するなんてことが出来るのだろうか。だが、目の前の猟兵が嘘を付くとも思えない。戸惑いは、やがて希望へと収束していく。
「人類砦に吸血鬼はいません。住民達は隷属ではなく、誇りを持って戦っているのです。
 そこでなら、あなた達はもう理不尽な理由で虐げられることはありません」
 望の言葉が、凝り固まった人々の心を少しずつ暖めて解きほぐしていく。
 この街の誰もが吸血鬼を恐れ、その顔色を伺って生きてきた。だが、そんな生き方を心から望む者など一人もいないのだ。光が差し花が咲き、誇りを抱ける場所があるのなら。
「…………行ってみたいな」
 誰かが漏らした呟きは、きっと多くの者の頭に浮かんでいた言葉に違いない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キリカ・シノノメ
もっちろん!地底世界と同じで真っ暗だけど、少なくともこんな圧迫感がすごい場所じゃないよー!

そうだなー。私、一応商人で色々な都市回ってるし、アックス&ウィザーズの冒険譚でも語ろうかな!別世界だからちょっと説明難しいけど、素材を確保するためにドラゴンに戦い挑んだり、深い森を右往左往したり、すっごい高い山から絶景を見たり!私、運が悪くってさー、いつも確保する素材間違えちゃったりするんだよね!

そーだ!もし人類砦で足りないものがあったらなんでも言ってね!私が絶対持ってくるから!お代は……うーん、とりあえず世界復興後に、後払いってことで!(冗談交じりに)

『アドリブ・連携お任せします』


メフィス・フェイスレス
ここの人はどんなものを食べていたのか聞いてみたら
お礼に子供が持ってきてくれたけど

なにこれ まっず
食糧じゃない ただ生かす為の飼料じゃない
食う楽しみも許されなかったっていうの?

さっき庇った子供を初め子供優先で怪我人を治療
味を調整してコーヒーゼリー味にして
ついでにコートの袖から携帯した食糧を子供達に分けてあげるわ

怖い黒目のねーちゃん…え 私のこと?ま まあいいわ 子供だし

食欲は生き抜く為の原初の欲求
ここより美味しいものがあると思えば少しは地上に出る意欲も上向きになるかしら

あれ?私の分の食い物がない
全部渡しちゃった!?
ああ 生前もこんなことあったような
バカは死んでも直らないってやつ?あーあ(グー)



 地底都市の中心に位置する集会場で、一時の休息を取ることにした猟兵と住民達。
 その集会場の一角には、先の戦闘で負傷した人々、特に子供達が集められている。
 奇跡的に死者こそ出なかったとはいえ、敵は躊躇わず市民を巻き込もうとしていた。
 その戦闘の余波で傷ついた人々だけでなく、敵に囮として利用された者までいる。
 その治療は応急手当だけでは間に合わず、猟兵の手助けが必要であるようだった。

「あ、あの、食べ物を持ってきました」
「ん、ありがとう。それじゃ、いただいたら治療を始めていくわ」
 メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)は、子供達の一人が持ってきたパンを受け取った。これからユーベルコードを用いて子供達の傷を癒やすところなのだが、連戦を経たメフィス自身の消耗も激しい。それに食べ物を通して人々の暮らしを知ることもできるだろう。メフィスはパンに齧りつき、最初の一口で思わず顔をしかめた。
(なにこれ、まっず……!)
 思わず絶句する。麦の粉で作ったパンのはずだが、その質は劣悪の極みだった。異様に固くてパサパサしており、食べると口中の水分を吸われるような感覚がある上に、僅かな苦味まで感じる。地底育ちの麦だから栄養が足りていない、というだけの話ではないだろう。この都市を支配していた者達にとって、住民の食事などその程度だったのだ。
(こんなのただ生かすだけの飼料じゃない。食う楽しみも許されなかったっていうの?)
 強い憤りを胸に押し留めながら、メフィスは自らのユーベルコードに僅かばかりの手を加えた。先の戦いでは敵の爆破に用いたタール状の粘液に生命力を凝縮させ、饅頭のように整形する。それに加えて変化させたのはその味だ。子供でも食べやすいようなコーヒーゼリー味に調整して、治療のために摂取する住民達が食の楽しさを知れるようにする。
「食欲は、生き抜くための原初の欲求だものね」
 メフィスは最初の子供を呼んだ。奇しくも、自ら路地裏で庇ったあの子供だ。
 生成したコーヒーゼリー味の饅頭を差し出す。さて、味の評判はどうだろうか。

▼  ▼  ▼

 治療の順番待ちをする子供達。だが、往々にして子供は退屈に耐えられないものだ。
 ただ自分の番を待つのに飽きて、お話をせがみ始めるまでそう時間はかからなかった。
「そうだなー。私、一応商人で色々な都市回ってるし、冒険譚でも語ろうかな!」
 キリカ・シノノメ(底無し在庫・f29373)は、興味津々で周りに集まっている子供達の顔を見回してから語り始めた。話すのはキリカが商人として旅するアックス&ウィザーズの体験談だ。ダークセイヴァーの、それも地底空洞の中しか知らない人々に説明するのはなかなかに骨が折れたが、それでも解説を入れたりしながら少しずつ進めていく。
「……それで、商品の素材を確保するためにドラゴンに戦いを挑んだんだけど」
「ドラゴンってなに?」
「あー、でっかくて羽の生えたトカゲみたいな……トカゲは分かる?」
 怪物との戦いの話、深い森の中を右往左往した話、山の上から絶景を一望した話。更には苦労して取ってきた素材が実は必要なものとは別だったという失敗談まで。幸いこれまでのアックス&ウィザーズを股にかけた商人生活のおかげで、話題には事欠かない。
 元々娯楽に飢えていたのであろう地底都市の子供達にとっては、キリカの語る冒険譚は本当に刺激的だったのだろう。語れば語るほど、彼らの目は輝きに満ちていった。
「……ねぇ、『地上』ってところにも、そんなにすごい冒険があるの?」
 ふと子供達の一人が問いかける。キリカはその子と目線を合わせ、頷いてみせた。
「もっちろん! 地上はこの地底と同じように暗くて、危険もたくさんあるけれど……。
 少なくとも、地上には壁も天井もないんだから! 見たことない景色が待ってるよ!」
 どんなに過酷な世界であっても、そこに自由がある限り冒険は生まれるだろう。
 いつの間にか怪我の痛みも忘れ、子供達は語られる物語に聞き入っていた。

   ▼  ▼  ▼

 人々の治療は滞りなく終わった。コーヒーゼリーの味も大好評だったようだ。
 痛みから開放された子供達は、地底では手に入らない携帯食料に夢中になっている。
 メフィスが治療の傍ら、自身の非常食として携帯していたものを配ったのだ。
「怖い黒目のねーちゃん、ありがとう! こんなに美味しいもの、はじめて!」
「え、それ私のこと? ……ま、まあいいわ。子供の言うことだし」
 遠慮がない言葉に翻弄されつつも、メフィスは子供達の気持ちが上向いているのを感じた。この地底よりも美味しいものがあるという事実は、やはり活力になったようだ。
 そんな子供達を見守りながら、キリカはふと思いついたことを言ってみる。
「そーだ! もし人類砦で足りないものがあったらなんでも言ってね!」
「ほんと? 美味しいごはんとかも?」
「いいよー、私が絶対持ってくるから! お代は……とりあえず平和になった後にね!」
 冗談めかして言いつつも、そんな日が早く来ればいいなと願う。ダークセイヴァーから吸血鬼の脅威が去ったその時こそ、キリカのような商人が求められる時代になるはずだ。
 だが、今はひとまずそれよりも。
「自分の分まで渡しちゃうなんて、バカは死んでも直らないってやつ? あーあ……」
 目の前で腹の虫を鳴かせているメフィスのための食糧は、何か在庫があっただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…地上がどんな世界か知りたいの?
…だったら少しだけ見せてあげましょうか?

…流石に全員は無理だけど、そうね
貴方一人ぐらいなら今からでも連れて行ってあげるわ

紋章を手渡して目を瞑るように告げてからUCを発動
地上のアジトにいる吸血鬼狩人達の下へ転移して、
手を繋いでアジトの外に案内する

…お待たせ。もう目を開けても良いよ

…上を見て。此処が地上。貴方達が暮らす地の上にある世界

…今は岩盤のかわりに暗雲に覆われているけれど、
何時か必ず、吸血鬼の支配から人々を解放して、
この世界を覆う闇を取り除き空に光を取り戻す

…少なくとも私はその為に戦っているの

仲間の猟兵を指定してUCを再発動して地下都市に戻るわ



 猟兵達の語る言葉を受けて、人々の心は様々に乱れているようだった。
 地上の世界に希望を見出し、その可能性に賭けようとする人々。この地底と同じように吸血鬼が跋扈しているという事実に怯え、慎重に決断すべきだと考える人々。
 地上行きを躊躇う者達を臆病だと誹ることは出来ないだろう。人々はあまりにも長い期間、吸血鬼への隷属を強いられていた。その記憶は未だに住民達を蝕んでいる。
 ましてや自分達の一生を左右する決断だ。すぐに決断できなくても無理はない。

 住民達の輪から一旦外れて様子を見ていたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、自身に向けられている真摯な眼差しに気がついた。その視線の送り主にも見覚えがある。市街での戦闘が終わった直後、最初に進み出た少女だ。
「どうしたの、そんなに思い詰めた様子で?」
「あ、あの……地上について、もっと教えてくれないでしょうか」
 リーヴァルディの問いかけに、少女は真剣な目で応える。彼女が求めているのは、気休めではない本物の地上の姿だ。その真っ直ぐな輝きに、嘘や偽りなどはない。
「……そうね、貴女一人ぐらいなら、今からでも連れて行ってあげるわ」
 リーヴァルディは少女を連れて他の人々の想いから遠く離れた場所に移動した。そして彼女に、吸血鬼狩りの紋章を手渡す。それは空間転移のユーベルコード『吸血鬼狩りの業・紋章の型』の媒介であり、これから行う特別な行動のための準備でもあった。
「さぁ、目を閉じて――――お待たせ、もう開けても良いよ」
「……そんな……私達、街の中にいたはずなのに……?」
 言われるままに目を瞑り、そして開けた少女が戸惑いの言葉を漏らす。だがそれも無理はないだろう。『吸血鬼狩りの業・紋章の型』は同じ世界の味方を指定することで発動するユーベルコード。それを起動した結果、リーヴァルディと紋章を受け取った少女の二人は、地上に存在するヴァンパイアハンターのアジトへと転移していたのだから。
「外まで案内するわ……さぁ、上を見て。ここが地上。貴女達が暮らす地の上の世界」
 少女をなだめて落ち着かせ、リーヴァルディは一緒にアジトの外へ出た。一気に視界が開け、少女は驚きと共に周囲を見回す。そして遂に、あるはずのものがないと気付いた。
「天井がない……壁もない! 本当に地上なんだ……!」
「ええ……今は岩盤のかわりに、暗雲に覆われているけれど」
 重い雲が垂れ込めた空を一緒に見上げて、リーヴァルディは言葉を繋いでいく。
「何時か必ず人々を解放して、この世界を覆う闇を取り除き空に光を取り戻す。
 少なくとも、私はその為に戦っているの。そして地上で貴女達を待つ人々も同じよ」
 生きる意味、戦う理由。どんな言葉よりも雄弁に、地上の空は少女へと語りかける。
「……私にも、少しだけ分かった気がします」
 心からの笑みを浮かべる少女と共に、リーヴァルディは再び地底都市へと転移した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーイ・コスモナッツ
地上がいかにユメと希望にあふれた素晴らしい世界なのかを語る。

……難題だ、なにしろここはダークセイヴァー
この地底世界よりましとはいえ、
自由も安全も保証されたものじゃない

かといって、言葉を飾って誘い出すような、
無責任な真似は私にはできない

だからせめて、
私は彼らに約束したい

地上世界はけっして楽園ではないけれど、
私は、私達は、そこに自由と正義を取り戻すために戦っています
今日明日には無理かもしれません
だけどいつか……いえ、近い未来、きっと!

だから、そう、一緒に戦いましょう
「人類砦」で、仲間が待っていますよ



 もしもダークセイヴァーが、誰もが危険から遠ざけられた楽園のような世界であれば。
 太陽の光が燦々と降り注ぎ、人々は憂いなく明日を待ち望む、そんな世界であれば。
 この地底都市の住民達を地上へと誘うことは、どれほど簡単な任務だっただろう。
 ただ地上の素晴らしさを語るだけでいい。来たるべき薔薇色の未来を伝えればいい。
 しかし現実はそんなに美しいものではなく、未来は空と同じ灰色をしていた。

「本当のことを教えていただきたいのです。地上に、我々の希望はあるのでしょうか」
 周囲を取り巻く住民達の真剣な眼差しを受けて、ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は思わず言葉に詰まった。猟兵達との交流の中で、既に地上行きへと心を傾けている人々は少なくない。だがその決心に至れない者もまだ多く、そういう人達が今まさにユーイを取り囲んでいた。彼らは待っているのだ。自分達を安心させてくれる言葉を。
(言葉を飾れば、きっと皆さんが望む通りの話は出来ると思うけど……)
 地上はユメと希望に満ちあふれた素晴らしい世界なのだと、そう伝えることは簡単だ。
 人々は少なくとも今だけはその言葉を信じ、地上への旅を決意してくれるだろう。
 後から恨まれるとしても、彼らを今目の前にある危機から救うことは出来るはずだ。
(……でも、都合のいい言葉で誘き出すなんて、そんな無責任な真似は出来ない……!)
 僅かな逡巡ののち、ユーイは決然と顔を上げた。こちらへ注がれている人々の視線と、自分の視線がぶつかり合う。それでも真っ直ぐに前を見据えて、ユーイは口を開いた。
「この地底に比べればましだとはいえ、地上の世界は決して楽園などではありません。
 自由も安全も保障されてはいない、未だ危険と隣り合わせの世界なのですから」
 人々の顔に失望の色がよぎる。だが、これが人々の望む言葉ではなかったとしても、聞こえのいい台詞で誤魔化すよりは余程いい。彼らに対して真の意味で誠実でありたい。
「だからせめて、私は約束します。確かに今の地上は、楽園ではないかもしれません。
 だけど私は……私達は、そこに失われた自由と正義を取り戻すために戦っています。
 今日明日には無理かもしれません。だけどいつか……いえ、近い未来、きっと!」
真っ直ぐな言葉。いつしか人々は、そこに嘘偽りがないことを理解し始めていく。
「……だから、そう、一緒に戦いましょう。『人類砦』で、仲間が待っていますよ」
 最後にユーイがそう言って手を差し伸べた時、それを拒む者は一人としていなかった。

   ▼  ▼  ▼

「皆、揃っているな。では、行こう」
 僅かばかりの荷物を背負い、人々は生まれ育った地底都市を捨てて歩き出す。
 猟兵達の言葉に心動かされて、結局この街に残ろうとする者はいなかった。
 この先に待っているのがただ明るいだけの未来ではないと知りながら、人々は行く。

 猟兵達はそんな彼らを護衛しながら、共に地上へ続く地底回廊を歩んでいった。
 人々は自然と口数が少なくなり、暗く長い旅路が一層過酷なものに感じられる。
 永遠に続くように感じられた地底の細道は、しかし不意に終わりを告げた。

「これが地上……! 本当に、壁も天井もないなんて……!」
 視界が開け、人々は圧倒される。岩盤で覆われていない、どこまでも続く世界に。
 やがて外の環境に人々の目が慣れた頃、猟兵達は遠くに煙が立ち上るのに気付いた。
 人類砦の住民達が新たな仲間を歓迎すべく、狼煙を上げているのだろう。
 自分達は孤独ではない――そう感じたからか、人々の足取りもまた力を取り戻した。

 人類砦へと続く道は、地底のように血の絨毯が敷き詰められた道ではない。
 血に濡れてうずくまるのではなく、前を向いて少しでも先を目指すための道だ。
 狼煙は近い。人として生きられる場所へと、人々は迷いのない歩みで進んでいった。



                      【地底の紅きヴェルヴェット】終

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月22日


挿絵イラスト