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慈愛の霊獣

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 アックス&ウィザーズのとある高山地帯の村。
 主に放牧と畜産で生計を立てるこの村の人々は、長く外敵に晒されることもなく平和な日々を過ごしてきた。
 時折、村を囲う崖下に広がる森林地帯から大型の有角獣が上ってきては、夜のうちに家畜を襲うという事件もあったが、その頻度も年に1度あるかどうかというもの。
 村人達も家畜が襲われて暫くの間は罠を張るなどの対策を施したが、その後に被害が続くということもなく、村人達は運が悪かっただけだと諦めるのみだった。
 
 しかし、近頃になって状況は一変した。害獣被害が2か月に一度、1か月に一度、週に一度とその頻度を急激に増やしているのだ。
 そしてある晩、遂に悲劇は起こった。
 獣の雄叫びと男の叫びが夜の帳を切り裂き、赤い飛沫が牧草を揺らす。四つ足の有角獣が、その晩、初めて人間を襲ったのだ。
 襲われた村人の男は、その晩、家畜小屋の見張り当番だった。騒ぎを聞きつけた男衆が家畜小屋に駆けつけた時には既に獣の姿はなく、新鮮な肉を引きずった鮮血の道筋が、崖下へと伸びるのみだったという。
 この衝撃は村中を大いに震撼させ、村長に獣の討伐依頼を出させるには十分すぎるものだった。


 ここはグリモアベースの一角。丸サングラスをかけ、更に額に白磁の仮面をひっかけた胡散臭い風貌の男が、茶色いスーツケースを広げてその場を占領していた。
「よく来てくれたな。この珈琲は俺からのおごりだ。飲みながらでいいから聞いてくれ」
 猟兵の姿を見るや否や、丸サングラスの男―枯井戸・マックス(サモナー・ザ・アーティファクト・f03382)は淹れたての珈琲を集まった者達の前に並べた。
 どうやらスーツケースの中には携帯用のドリップツールが詰め込まれていたらしく、香ばしく温かい湯気が集まった者達の頬を優しく撫でる。
「今回、猟兵諸君に向かってもらうのはアックス&ウィザーズのとある辺境、周囲を深い谷や崖に囲まれた高山地帯の村だ。その村を襲う大型の有角獣の討伐、それが今回の任務になる」
 そう言って、マックスは村と辺りの地理状況を書き込んだ簡易的な地図を広げて見せた。
「獣は村を囲う深い崖の下から登って来て家畜を襲っていたようだが、遂に人間まで襲い始めたらしいな。村人達も色々と対策はしているようだが、残念ながら効果はなさそうだ。もし獣が人間の味を覚えて襲ってくるようになったら、この村はそう長くは持たないだろうぜ」
 どこか他人事めいた口調で淡々と状況を説明する彼は、続いて地図上の村の一点を指さし、ついで指先を崖下に向けて動かす。
「で、猟兵諸君にはここから崖下に降りて獣を捜索するところから始めてもらいたい。突入開始は正午。真昼間で足元がはっきり見えるとはいえ、この崖は急こう配だ。諸君らなら大丈夫だとは思うが注意して臨んでくれよ。以上、説明終わり!」
 説明を終えて、手回しミルで珈琲豆を挽き始めるマックス。崖へのアプローチ方法や獣の詳細情報を語らない事から、本当に説明すべきことはもう無いのだろう。逆を言うと、後のことは現場で調べるしかないという事だ。この男、丸投げである。
「成功した暁にはとびきり美味い珈琲を用意して待ってるぜ。それじゃあ諸君らの健闘を祈る!行ってこい!」


Naranji
 初めまして。新人MSのNaranji(ナランジ)と申します。
 この度は当シナリオをお目通しいただき、ありがとうございます。
 皆様の素敵な冒険譚のお手伝いをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 第1章でやるべきことはオープニングにある通り、崖下の天然ダンジョンへのアプローチです。村への被害は既に発生してしまった後なので、村人への被害を事前に防ぐことはできません。
 また、崖の下に何が待ち受けるかは物語が進むごとに追って公開していきます。
 章が進んだ際は冒頭に注意書きを記しますので、それを読んでからプレイングを行なってください。
 それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『下へ下へ駆け降りろ!』

POW   :    体力に任せて豪快に駈け降りる

SPD   :    器用さを駆使して美しく駈け降りる

WIZ   :    不思議な力で楽チンに駈け降りる

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ロッタ・ロッツァライネン
ふゥん、ま、獣狩りなら得意分野さ――…報酬の珈琲、楽しみにしとくよ――…

崖下に向かって飛んだら【祖霊招来】を発動。
狒々の背に乗って駆け下りてくよ――…と、余裕があればお仲間も背に乗せてやれればいいねえ。
狩りの手前で躓いてたんじゃ笑い話にもならないからね、ちゃっちゃっと下に向かおうか!

アドリブ・絡み等は一任するよ、好きに弄ってやってくれ。


指矩・在真
下に駆け抜ければいいんだね?
そういう事なら、ちょうど得意な子がいるよ
召喚コマンド展開!

【ライオンライド】で、ライオンのレオくんがひとっ走り!
野生動物が力強く駆け抜ける姿ってかぁーっこいいでしょ?

ぼくは…そんなレオくんを応援したりサポートするのがお仕事
何もしなくていいやラッキーなんて思ってないよ!?
ほらあれだよ、脆そうな岩とか草が生えて滑りやすいところとかあったら記録してあとから来る人に教えたりとかね!?
レオくん怒らないでよぉー!!

絡みアドリブ等大歓迎



 遥か山並みの彼方まで見渡せる高山地帯。鳶が頭上を飛んでいき、弧を描きながら眼下に広がる樹海へと降下していく。
 牧歌的な雰囲気を色濃く残す長閑な景色であったが、ふと足元に目をやると、どす黒く乾いた血痕が崖下へ点々と続いている事をロッタ・ロッツァライネン(燎火の蛮人・f01058)は見逃さなかった。

「ふゥん、確かに人食いの獣っていうのは本当らしいね。ま、獣狩りなら得意分野さ」
「うっわー!高いなー!こんな崖を登ってくるなんて、どんな動物なんだろ?」
 この先に出会うであろう猛獣に恐れる事もなく、むしろその姿を早く知りたいといった無邪気な様子で、指矩・在真(クリエイトボーイ・f13191)は崖下を覗き込んだ。

「下に駆け抜ければいいんだね?そういう事なら、ちょうど得意な子がいるよ」
「へェ、奇遇だね。アタシの相棒もそうさ!一つ競争でもしてみるかい?」
 ロッタがそう言って在真と顔を見合わせる。そして2人が駆け出すのは同時だった。

「金面の狒々よ!我が呼び声に応え給え!」
「召喚コマンド展開!おいで、レオ君!」
 剃り立つ崖の更にその上空に二つの金色の光が明滅し、崖から飛び降りた二人の元へと飛来する。
 一つは黄金の面をつけた約十尺もの大猿。一つは金色の鬣を振り乱し疾駆する獅子。
 二頭の猛獣はそれぞれの主に空中で追いつくと、そのまま背に乗せて風のように崖を駆け下りていく。

「やるじゃないか坊や!」
「うん!お姉さんの相棒も大きいね!やっぱり動物が力強く駆け抜ける姿ってかぁーっこいいな!それに楽ちん♪」
 まるで絶叫マシンを楽しむかのような気楽さを見せる在真。
 しかし、それをよく思わない者もいた。他でもない黄金獅子のレオである。
 余りに緊張感のない主人を見かねたレオは、気つけ代わりに一際大きく跳躍する。当然、小さな体にはその衝撃は計り知れなかったようで……。

「うわわー!レオくん怒らないでよぉー!!」
 ついぞ在真は目を回しながら、その金の鬣に必死にしがみ付く事しかできなかったのであった。

「あっはは、狩りの手前で躓いてたんじゃ笑い話にもならないよ。さて、アタシ達もちゃっちゃっと下に向かおうか!」
 ロッタはまだまだ未熟な一人と一頭を眩し気に見つめると、自身の守護神たる金面の狒々の背に掌を添える。
 それに応えるように狒々も豪快に土煙を上げながら滑るように崖を下り、気付けば獅子と少年すらも追い越して、危なげなく樹海への一番乗りを果たすのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴェル・ラルフ
仕事終わりの珈琲、楽しみだなぁ。
僕は動物は好きなんだけど…いったいどうしちゃったんだろ。

SPD
また急な崖だね…一応シーフだもの、まだらに生えてる木を利用して降りていくとしよう。
[ダッシュ][早業]でロープを投げ縄みたいにして降りていこう。
苦戦してる人がいれば、[手を繋ぐ]で協力してもいいかな

このくらいの崖ならさくっと降りられるね。
さて、有角獣はどんなもんかな。


霧島・クロト
【氷戒装法『貪狼の狩人』】の【氷の波動】で氷の足場を作りながら降ってくぜェ。
使えそうなトコは【地形の利用】をするということで、
なるべく天然の足場を利用しながら勾配に気をつけてゴー、って奴だなァ。
(バイク使っても良いならバランス取りの為の【騎乗】も含める)

もしも移動中に魔物や獣に狙われそうなら【属性攻撃】と【2回攻撃】乗せて凍らせとく。

「ビル登りならやったことあンだが、崖下りは……ひょっとして同じ要領でいけんのかァ?」


フィロメーラ・アステール
「おー、なんだか危なそうな場所だなー!」
せっかくだから、ついていって応援するぜ!

あたしは飛べるから、降りるのにはあまり苦労しないと思う!
その分の余裕を使ってみんなをサポートしていくぞ!
崩れそうな場所とか滑りそうな場所とか、【第六感】にビビっと来る危険があれば教える!

万が一、落っこちるようなヤツがいたら【全力魔法】の魔力障壁を張って受け止めるから安心していいぜ!
ちょっと疲れるかもしれないけど……いきなり大ケガするのはマズいもんな!

みんなが応援を必要としないようなら、獣の痕跡でも探しながら行くか!
崖を行き来してるみたいだし、何かあるんじゃないかな?
この後の捜索がラクになるかもしれないぜー!



「僕は動物は好きなんだけど…いったいどうしちゃったんだろ」
 続いて高山地帯に降り立ったのはヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)。言葉のいらない動物達との触れ合いを好む彼にとって、此度の事件は引っかかるものがあったようだ。
 しかし、その原因を確かめる為には切り立つ崖を降りなければならない。
 手持ちの装備を再確認する彼の横に、白い短髪の青年―霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)が軽く冷や汗を流しながら並ぶ。

「これ落ちたら洒落にならねェよな?ビル登りならやったことあンだが、崖下りは……ひょっとして同じ要領でいけんのかァ?」
 クロトは愛用の改造宇宙バイクも用意してみたが、重力下では降下しか出来ない宇宙バイクでは使えそうにないか、と逡巡する。

「僕は一応シーフだもの、このくらいはきっと。ほら、まだらに木も生えてるし」
「ちいせーが足場に使えそうな所もあるな。よし、協力して下ってみるかァ」
 しかし崖の傾斜と高度に気圧されたのも一瞬。猟兵として確かな実力を持つ二人は、いち早く突破口を模索し始めた。
 そして、そこに新たな協力者が現れる。

「おー、なんだか危なそうな場所だなー!」
 意気揚々と飛んできたのは、小さな体で癒しと幸運の奇跡を振りまく妖精少女(?)フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。
 彼女は光の粉を振りまきながら、ふわりとヴェルの肩の上に降り立った。

「あたしは飛べるから簡単に降りられるけど、折角だからついていって応援するぜ。あたしに手伝ってもらえるなんてラッキーだぞー!」
「ふふ、これは心強いね。それなら一つ考えがあるんだけど、どうかな?」
 ヴェルは新たな協力者の姿に一つ策を思いついたようだ。
 早速段取りを確認し合うと、まずは氷雪の魔力をその身に纏ったクロトが崖際に歩み出る。

「面白いな、それ。やってやろうぜ!我が身に北天に座す『貪狼』の加護を!」
 氷戒装法『貪狼の狩人』―氷の波動を放つ彼の十八番の氷魔法だ。
 クロトが放った氷の波動は、足場になりそうな岩の突起や小さな木を核として繋ぎ合わせ、即席のゆるい坂道を作り出したのだった。
 
「おーい、ここ滅茶苦茶ツルツルだぞー!あ、こっちは道が途切れてるー!」
 クロトを先頭に道を作り足しながら、ヴェルも続いて慎重に歩を進める。
 更に空を飛ぶことが出来るフィロメーラが先回りして、氷の道の特に危険そうな部分を指摘し注意を促す。

「うん、この分ならだいぶ順調に進めそうだね。良かった良かった」
「おい。よく考えたら働いてるのは俺とあのチビだけで、お前は何もやってねえんじゃねェか?まさか自分だけ楽しようトワァッ!」
 あ、ばれた?と悪戯っぽく微笑むヴェルに食って掛かろうと、キリトが立ち止まり背後を振り返る……ただでさえ勾配がかかった不安定な氷の足場の上で、だ。
 そうなれば滑ってバランスを崩してしまうのも当然というわけで。

「やだなー。僕は万が一の為にこうやって投げロープを持って待機してたじゃないか」
「……はい」
「もー、なに遊んでるだよー!」
 間一髪のところでヴェルのロープの早業がクロトの手に巻き付き、事なきを得るのだった。

「それよりこっち、なんか蹄の足跡っぽいのがあるぞ?この足跡を辿ってみようぜ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

グァーネッツォ・リトゥルスムィス
人々が悲しまずに明るく生活出来る様にオレらが頑張らないと!
笑顔を見る為ならこんな崖怖くなんかないぜ!

明るい内に崖下に辿り着きたいから
腰に着けてる武器を落とさない様に、
また強風に煽られて転落しない様に気をつけつつ
真下真下へ最短で崖を掴みながら降りていくぜ
「オレの筋力を活かす時だぜ!」

体力の限界が来る前に一定時間ごとに
グラウンドクラッシャーで崖に攻撃して
窪みを作って休憩していくぞ
攻撃の衝撃や崩落にオレや他の人が
巻き込まれない様に、攻撃する場所を確認してからな
「休憩できないのなら、できるように作ればいいんだぜ」
……村人達は攻撃の振動に驚くと思うから、
獣討伐が終わった後にちゃんと謝りに行かないとな……


シエナ・リーレイ
「お友達候補の気配がする。とシエナは崖を見下ろしながら呟きます。」

今日もお友達を求めて彷徨うシエナ
今回のお友達候補は崖の下にいるようです

「お願いね?とシエナはイソギンチャク怪人さん達にお願いします。」

シエナはスカートの中から少し前の依頼でお友達となったイソギンチャク怪人達を呼び出します
そして、呼び出された怪人達は互いに手を繋いでゆくではありませんか
どうやらシエナはイソギンチャク怪人達をロープ代わりに崖の下へと降りる事にした様です

「あはははは!とシエナは風に揺られる事を楽しみます。」


蛇塚・レモン
<WIZ>

崖の下に降りればいいんだねっ!
楽勝、楽勝~っ!

あたいの超霊力オーラを【気合】を入れて全開放!
【念動力】で自分の身体を浮かせて【空中戦】で降下していくよっ
さてと、アイテム魔法の辞典を開いて、この崖の地形や深さを調べるよ
【世界知識】【学習力】【地形の利用】もフル活用
獣が登り下りしてるなら、どこか痕跡が残ってるはずだよね?
【第六感】を働かせて【情報取集】をしながら【追跡】してみるよ
霊能力探偵レモンちゃんの本領発揮だねっ!
判りやすいのは血痕や被害者の所持品が崖の途中に落ちていないかな?

多分、崖の下に【視力】を凝らして、
暗所は【暗視】で注意深く観察するよ

噂の獣のお肉、食べられるかなぁ……?


クラム・ライゼン
んー、頻度が上がった…崖下に飯が無くなったのかな。
……腹減っても食うものが無いって、しんどいからなぁ…

えっうわたっか!?予想以上に高いなここ!
これ上まで登ってこれるもんなのか、すげーな……!?


・対崖/ユーベルコード
「よっし、頼むぜー!
……今日は悪戯禁止な?いやフリじゃなくて。死ぬから。
ここから落ちたら普通の人間は死ぬからマジで」
《召喚:四属の導き》使用。
もし精霊たちが何かしら欲しがったらとっときの蜂蜜菓子を対価にして手伝ってもらおう
土の精霊たちに手伝ってもらって崖に階段を作って降りていく。
風の精霊たちも呼んでおいて落下時には崖下に強い上昇気流起こしてもらおうかな


絡み、アドリブ等大歓迎っす!




 剃り立つ崖の上に新たな挑戦者が現れる。
 少女の名はグァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)
「村の皆の笑顔を見る為ならこんな崖怖くなんかないぜ!」
 ドワーフの小さな体に熱い闘志を滾らせ、グァーネッツォは意気揚々と崖を降り始めた。
 その手段は単純明快。命綱無しのロックフォーリングだ。
 命知らずの行動であるが、強者を求め日々鍛錬を重ねる彼女自慢の筋力は自身の体重と腰に装備した大斧の重量を見事に支えきっていた。
「ふぅ、けっこう降りてきたな。そろそろどこかで休憩もしないと」
 真下へと最短ルートで向かうグァーネッツォだったが、しかし体力は無限には続かない。
 腕に乳酸が溜まってきたのを感じると、彼女は竜骨の大戦斧を片腕で持ち上げ……。
「どりゃあああっ!!」
 渾身の力で岩肌に斧を叩きつけた。
 その一撃は崖を震わせ、ドワーフの彼女ならば腰を下ろせる程度の窪みを穿つことに成功する。
「よっし、ちょっと休憩……」

「あはははは!とシエナは揺られる事を楽しみます」 
 突如上方から聞こえた笑い声は少女のもの。
 何事かとグァーネッツォは上を見上げ、そのまん丸な目を更に大きく見開いた。
 斧の衝撃が災いしたのだろうか。ヌメヌメとした触手のロープを握りしめた少女人形が、振り子のようにその身を大きく揺さぶっているではないか。
 しかも当の本人―シエナ・リーレイ(年代物の呪殺人形・f04107)は至って楽しそうに、どこか乾いた印象を感じさせる笑い声を上げている。
「頑張ってイソギンチャク怪人さん。離しちゃだめですよ?とシエナはイソギンチャク怪人さん達にお願いします」
「ちょっ、何なの今の揺れ!早くあたいに捕まって!」
 そこにもう一人、快活そうなポニーテールの少女が飛んでくる。
 そう、『飛んで』きたのだ。
 この飛行少女の名は蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)。
 生まれながらに超能力を会得している彼女が崖下りに選んだ方法は『気合と根性の空中浮遊』。
「あたいにかかれば楽勝楽勝…む、むううぅ!」
「助けてくれるのは嬉しいですけど、このままだと二人とも落ちてしまいますよ。とシエナは不安を露わにします」
 揺さぶられるシエナを助けようとその手を握ったレモンだったが、二人分の体重を浮遊させるには相応の精神力を要するようだ。
 レモンは渾身の力で空中に制止するが、それでもプルプルと震えながら高度を維持するのが精いっぱい。
 そして次の瞬間。

「なんでええええええええ!!」 
 三人の少女達の眼前を長髪の男が猛スピードで落下していった。
「……どういうことなの?」
 ここまでが、ほぼ一瞬の間の出来事である。
 あまりの情報量の多さ目を回したのはグァーネッツォにとって初めての経験だったかもしれない。


「ぜーっはーっ!もう死ぬかと思った俺はっす!」
 長髪の男―クラム・ライゼン(つぎはぎフリークス・f02003)は不自然に生えた岩の出っ張りの上に座り込み、激しく肩を上下させ呼吸を整える。
 彼は落下によるショック状態に陥る寸前の所で『召喚:四属の導き』の高速斉唱に成功していたのだ。
 精霊たちに働きかけることで風の精霊の力で上昇気流を発生させその身を浮かせたクラムは、次いで地面の精霊の力で足場を作ることで事なきを得ていた。
「おーい!大丈夫かー!」
「危うく明日は我が身でした。とシエナは胸を撫でおろします」
 そこにシエナ達が下りてくる。グァーネッツォが慌ててシエナとレモンの助けに入ったことで窮地を脱していたのだ。
「はぁ~、やっと落ち着いてきた。君達も大丈夫だった?」
「なんとかねぇ。お兄さんは精霊使いの人?すごい早業だったね!」
 ふわふわとクラムの前に降り立ったレモンが興奮気味に語り掛ける。
「ああ、そうっすよ!さっきも土の精霊の力で階段を作りながら降りてきてたんだけど、急にスゴイ地震が起こって足を滑らせちゃったんっすよねぇ。精霊の悪戯なら慣れたもんっすけど、いやー自然は怖いなー」
「うん。その。なんかごめんな」
 それは地震ではなく自分が原因だ、と今更言うに言えないグァーネッツォはただ視線を泳がせるしか出来なかった。
 

 クラムが生み出した岩の出っ張りの上で暫しの休憩をすることにした4人。
 話題は今回の依頼に参加する理由だ。
「お友達候補の気配がしたからです。とシエナは崖を見下ろしながら呟きます」
 クラムが提供してくれた蜂蜜菓子をつまみながら、シエナは微笑む。
 彼女にとっての友達がどういった『物』なのかを知る由もない三人はその言葉に少し首を傾げる。
「あたいは有角獣のお肉に興味があって!自分の世界に無い食べ物って興味あるでしょ?」
「ははは、確かにそうっすよね。分かる気がするっす!」
 屈託なく笑うレモン。何を隠そう彼女は大の肉好きなのだ。
 それを聞いてクラムは素直に納得の表情を浮かべる。そんな理由で、などと笑い飛ばしたりしないのは、彼自身ひもじさを身に染みて知っているからだ。
「あ、肉といえばもしかして、その有角獣が現れる頻度が上がったのって崖下に飯が無くなったからなのかな。……腹減っても食うものが無いって、しんどいからなぁ…」
 自身の過去を思い出し、これから対峙するであろう獣に対しわずかに憐れみを覚えるクラム。
「それもあるかもしれないな。でも、どんな理由があってもやることは一つ、だろ?」 人々が明るく喜べる世界を。確固たる理想を掲げるグァーネッツォに迷いはない。
 自分の分の蜂蜜菓子を一気にほうばると、小さな歴戦の女戦士は仲間達を見回し、大斧を掲げるのだった。
「人々が悲しまずに明るく生活出来る様にオレらが頑張るんだ!」
「ええ、それではそろそろ行きましょう。と、シエナはまだ見ぬお友達に期待を膨らませます♪」
「あ、あたい皆と合流する前に獣を痕跡を見つけたんだった!近くに血痕っぽい染みもあったし、きっと間違いないよ!」
「それなら俺が岩の階段を作って先導するよ。レモンちゃんは痕跡の追跡を頼むっす!」
 
 グァーネッツォに続いて、次々に立ち上がる猟兵達。
 それぞれの決意を新たに、目指すは遥か崖下の樹海。
 待ち受けるは残忍な猛獣か。それとも……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『大量の暴走角獣』

POW   :    殴って気絶させて治める

SPD   :    技量を駆使して治める

WIZ   :    原因を調査しながら治める

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ひたすら 生きるためだけに
 
 猟兵達が辿り着いたのは鬱蒼とした樹海。
 枝葉の間から陽の光がまばらに差し込んではいるが、それ以外に光源は無く見通しは非常に悪い。
 その上、足元には木々の根が複雑に絡み合っており、水平な場所を探す方が困難な程に不安定だ。
 猟兵達はそんな樹海の中を、各々が集めた痕跡を頼りに少しづつ進んでいく。
 痕跡が示す先はただ一点。それぞれの手段で探索をしていた者達も自然と合流し、木々を掻き分けること数刻。
 一行はやっとのことで樹海の奥地の開けた場所まで辿り着いた。

 そこで初めて違和感に気づく。
 荒々しい息遣いが聞こえる。それも一つや二つでは無い。
 猟兵達が辺りを見回した時には既に遅く、額から角を生やし黒い毛皮を纏った獣達が辺りを取り囲んでいた。その数、およそ20頭。
 これがグリモア猟兵が言っていた有角獣なのか?
 いや、違う。話しが確かならばその有角獣は人間や家畜を襲った後に、その肉を引きずって持ち帰る事が出来るほどの体躯を持っているはずだ。
 しかし今自分達を取り囲んでいる獣は皆、せいぜい大型犬ほどの大きさしかない。
「もしかして、これみんな、有角獣の子供?」
 誰かが言葉を漏らす。その瞬間。
「ブルルルル……グルゥァァアアア!!」
 見慣れぬ生き物の鳴き声に反応したのか、一頭の獣が大きく嘶いた。
 それに呼応し、周りの獣も次々と雄叫びを上げる。

 ―縄張りに外敵がやってきたぞ―
 ―今のままではみな飢え死ぬぞー
 ―飢えを満たす肉がきたぞー
 ―渇きを満たす血がきたぞー
 ―喰らえ!喰らえ!喰らえ!―

 獣達の声なき声を、そこにいる猟兵達全員が理解した。理解出来てしまった。
 しかし、今ここで命を捧げてやる義理は残念ながら無いのだ。
 一行は各々の武器を手に、今にも飛び掛かろうと身構える獣達に対峙するのだった。
ロッタ・ロッツァライネン
ふゥん…どうにも張り詰め方が妙な具合だね――…
…ま、やる気だってんならそっちの流儀で付き合おうじゃないか…弱肉強食でね!

【祖霊招来】を発動。まずは後衛向きの連中を抱えて樹上に退避させようか。
斧振り回すのにも気が散って仕方がないからね。

それが済んだら樹上から仲間のカバーに入ろう…折角立派な足場があるんだし使わにゃ損だ。
狒々と一緒に【クライミング】【ジャンプ】辺りで樹上からの急襲と退避を繰り返してヒットアンドアウェイで攻撃するよ。

最優先は仲間を狙っている相手。
狒々に掴ませた獣を投げ飛ばしてやってもいいかもしれないね。

以上。
絡みやアドリブ、苦戦の描写なんかも歓迎するよ


シエナ・リーレイ
【POW】
「わぁ、皆可愛いの!とシエナは元気に吼える獣達を微笑ましく見守ります。」

沢山の獣の愛らしさに思わず抱きしめたくなるシエナ
ですが、その前にこの周辺に潜んでいるであろうお友達候補とお友達にならなければなりません

「沢山可愛がってあげてね?とシエナは怪人さん達にお願いします。」

シエナは動物たちの相手をイソギンチャク怪人達に任せるとユーベルで友達を作る為に森の探検を始めます
そして、探検から戻ったシエナは気絶している獣たちもお友達に加えると人形化の【呪詛】に満ちた【スカートの中の人形世界】の中へ彼らを仕舞い、完全に『お友達』とするでしょう

「仲間はずれにはしないよ。とシエナは獣たちに微笑みます。」



 獣の威嚇に四方を取り囲まれ、否が応でも緊張が加速する。
 戦場は今や一色触発の状態であった。
 少しでも身じろぎをすれば、威嚇の声を上げる獣達は一斉に飛び掛かってくるだろう。そうなればその先に待つのは混沌とした乱戦だ。

 自分一人なら立ち向かい叩き伏せる事も容易いが、非力な者や後衛向きの者を乱戦に巻き込んでしまっては、仲間を守りながら戦うこちらが不利になる。
 そう案じたロッタは祖霊への祈りを胸の内に唱え、腕を高々と天へ掲げた。
「頼んだよ、猿王イルクトリ!派手に暴れな!」
 呼びかけに応じ、差し込む陽光の中から召喚されたのは金面の大狒々イルクトリ。
 土飛沫を上げながら地に降り立った大狒々は辺りの獣たちを見回すと、大きく息を吸い込み……。
「ギャァオオオオオオオォォォ!!」
 小さき獣の嘶きかき消すほどの雷声を轟かせた。
 飛び掛かろうと身構えていたもの達もこれには面食らったのか、たじろぎ、その身を固くする。
 そのチャンスを逃すまいとロッタは近くの年若い見た目の猟兵達を抱え上げる。
そして驚くべき脚力で跳びあがり、木の幹を蹴って更に上へ上へと駆け上っていく。
「よし、ここなら大丈夫だろ。あんた達はここから支援してくんな」
「ここからならお友達候補さん達がよく見えます。とシエナは目を凝らします。わぁ、皆可愛いの!とシエナは元気に吼える獣達を微笑ましく見守ります」

 樹上に避難した一人であるシエナが眼下の獣達を眺め頬を緩ませる。
 危機が目前まで迫っていたことなど、シエナは露とも思っていないのだろう。
 一方、地上の獣達はというと萎縮から立ち直り、大狒々イルクトリに向けて果敢に突撃を開始していた。
 しかし自身の力で狩りをした経験に乏しいのか、獣達は力任せに角を振りかざして突進するばかり。
 これを黙って受けとめるはずもなく、イルクトリは巨木のような腕を振り回し迫りくる獣を次々と吹き飛ばしていた。
「それなら下の事はイソギンチャク怪人さんに任せてしまいましょう」
 そう言うとシエナはおもむろにスカートの裾を持ち上げ、不自然なほどに白い脚を露出させる。
 そしてスカートの布の間に隠された異空間から赤黒い触手の束をいくつも生み出しては、地上へと次々と降下させるのだった。
 地に落ちたイソギンチャク怪人達はというと、手近な獣に狙いをつけては集団で飛び掛かり、獣を絞め殺さんばかりの勢いで拘束していく。
「沢山可愛がってあげてね?とシエナは怪人さん達にお願いします。私はその間に周りの探検をもっとしましょう。子供達があんなに可愛いのなら、本命さんはもっと可愛くて凛々しいに違いありません。とシエナは瞳を輝かせます♪」
 シエナはその薄い胸に手を当ててルンルンと飛び跳ねると、軽い足取りで枝を伝い樹海の中へと消えていった。

「おいおい、下の皆はいいのかい?って、もう行っちゃったよ。マイペースというか、掴みどころのない子だなぁ」
 その背を呼び止めようとした時にはシエナの姿はもうどこにもない。
 彼女はきっと哨戒の任についてくれたのだろうと自分を納得させると、ロッタは頬を両手でパチンと叩き気合を入れ直した。
「さあて、アタシも好きに暴れますかぁ!!」
 雄叫びと共に跳びあがり、恐れることなく乱戦へと身を投じるロッタ。
 跳躍の最中、仲間の背後に獣が迫っていることに気づくと、屈強な女戦士は空中で体を大きく捻り。強引に軌道を修正。そのまま獣に向けて重力をも力に変えた跳び蹴りを射ち放った!
 更にその反動で跳びあがると、大木の幹を掴んで素早く樹上へ。
 そして枝葉の間から、すかさず再びの急降下攻撃。
 
 かくして、乱戦は縦横無尽に敵味方が入り乱れる大乱戦へと発展していく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴェル・ラルフ
このサイズ…大人しければ可愛らしいサイズだね。
…子どもなら、親は育てるために餌を探していたのかな。子だくさんだし。
餌の減少の背後には、オブリビオンが絡んでそうだなぁ

SPDをいかしてとりあえず足止めを試みる
【残光一閃】で有角獣たちを捕らえ、足止めを試みる。
なにか食べ物あればいいんだけど…僕は水しか持ってないなぁ。誰か食べ物もってないかな?

オブリビオンてもない生き物を殴るのは気が進まないな…

他の猟兵と連携して、なるべく傷つけない方法をとりたいな。
獣の数も多いし、暴れまわって仕方ないときは僕も殴るけど。

お腹すくと、心も荒むよねぇ…


グァーネッツォ・リトゥルスムィス
誰だって生きたい、だからこそ人の味を覚えるのはダメだ
人も獣も殺し合っちまう
ここは制させて貰うぜ

すぐにアースジャイアントで大地の巨人を召喚し包囲網を突破するぞ
四方八方から攻撃なんて捌ききれないからな
獣達が前方だけにいるような位置につけたら、襲ってくる獣にだけカウンターで反撃するぜ
突破する時もカウンターも獣を殺さない様に気絶させていくぜ
「しばらくおねんねしててくれ!」

襲ってくる獣がいなくなったら気絶している獣を介抱するぞ
救護方法とかわからないが、起きるまで膝枕して、敵じゃないアピールしてみるぞ
ダメだったら何度だって気絶させて力関係を示すぞ
敵意には拳を、善意には友情を、だぜ


フィロメーラ・アステール
ずいぶんと数が多いみたいだなー!
崖下りといい樹海歩きといい、みんな少し疲れが溜まってきた頃だろ?
ここら辺で少し回復しておくぜ!

【生まれかわりの光】を使ってみんなに元気を与える!
光の粒子を踊りの【パフォーマンス】でちりばめて【鼓舞】しつつ、ついでに周りを明るくするぞ!
この辺りは開けてるみたいだけど、獣が暗い樹海の中で生活してるなら、明るいものを相手にするのは苦手かもしれない!
これで少しでも怯んでくれたらいいんだけどな!

それと、囲まれてるから、死角から狙われないように【第六感】と【失せ物探し】の感知力でフォローもしていくぞ!
前に立てない分、いろいろと気を回していきたいぜ!



 樹海の乱戦は続く。戦況は、僅かにだが獣達の方が優勢だ。
 飢えと渇きにより力の加減を失った獣達が繰り返す捨て身の突撃は、猟兵達にとって予想以上の打撃となっていたのだ。
 それに対し、猟兵達の多くには、獣にとどめを刺すことに躊躇いを持つ者が多い。
 その躊躇いは攻撃から重さを削ぎ、あと一歩のところで決定打を逃す場面が相次いだ。
 その結果、数に勝る獣達により、戦線は次第に押し込まれる事となった。

 そしてこの戦場の一角でも、二人の猟兵が周囲を囲まれる状況に陥っていた。
 その一人であるヴェル・ラルフは愛用の如意棒をトンファー型に変形させ、腰の高さから突き上げてくる角撃をはじき返す。
 しかし追撃の一撃は加えない。剥き出しの殺意を向けられてもなお、彼の動物達を思う心に揺らぎはなかった。
「このサイズ……大人しければ可愛らしいサイズだね。この獣達が子どもなら、親は子を育てるために餌を探していたのかな。子だくさんだし」 
 彼が突発的に背中を守る形となった小さな相棒―グァーネッツォ・リトゥルスムィスにそう語り掛けたのは、彼女もまた自分と同じ考えの元に行動していることに気づいたからだ。
「そうかもな……誰だって生きたいんだ。でも、だからこそ人の味を覚えるのはダメだ!」
 じゃないと人も獣も殺し合っちまう、と締めくくり、グァーネッツォは迫ってくる獣だけを対象に掌底による吹き飛ばし攻撃で対抗する。
「……でも、いつまでも囲まれてるわけにもいかないよな。もう一回アレをやるにも……くっ!ちょっとくたびれてきたよ」
 実はグァーネッツォは戦闘が始まって早々にとある大技を用い、一度は単身で敵の包囲を掻い潜っていた。
 しかしその後の敵からの追撃を捌き切れず、再び包囲されてしまっていたのだ。
 獣の注意を自身に向けて群れを分割させる事には成功していた事、幸運にもヴェルと合流できた事で苛烈な猛攻を防ぎ切れているが、このままでは押し切られるのも時間の問題だ。
 真綿で首を絞めるような戦況が続く。そんな中、一条の希望が天から降り注いだ。

「明日を導く新しい光になれ、ってなー!」
 フィロメーラ・アステールが翅から発する光の粒子を振りまきながら、ヴェルとグァーネッツォの頭上に舞い降りる。
 樹海の闇を振り払うかのような光のヴェールは、暗所に慣れた獣達の目を眩ませ、同時に消耗した二人の体力を癒していく。
「こっちもずいぶんと数が多いみたいだなー!崖下りといい樹海歩きといい、少し疲れが溜まってきた頃だろ?ここら辺で少し回復しておくぜ!」
 絶妙なタイミングで二人の元に現れたフィロメーラ。
 彼女は最初のロッタのサポートによって、一旦樹上に退避していた一人であった。
 そしてその後は戦場を飛び回りながら戦況を観察していたため、危機一髪の場面にいち早く気づくことが出来たのだ。
「また助けられちゃったね、フィロメーラ。でも、これならもうひと頑張り出来そうだよ」
「ああ、体が羽みたいに軽い!これなら行けるぜ!協力してくれる?えーっと……」
 この局面でようやくお互いに自己紹介を交わしていなかったことに気づいたグァーネッツォが少し言い淀む。それにヴェルは微笑みをもって答えた。
「ふふ、僕のことはヴェルでいいよ。よろしく」
「ああ、オレはグァーネッツォ!超極の肉弾戦竜とはオレのことだぜ!」
 背中合わせに名を交わし、拳を合わせ互いの戦意を確かめ合う。
 そこから先にもう言葉は不要。互いを信じ、眼前の獣達に集中するのみ。
「もう一回頼むぜ!ここは制させて貰う!」
 グァーネッツォが力強く大地を踏みつけると、苔むした地面を光の亀裂が駆け巡り、木々の根を引きちぎりながら大地の巨人が姿を現す。
 巨人は未だに視力が回復しない獣達を掴みあげては軽々と放り投げ、包囲網を強引にこじ開けた。
「今だ!走れ!」
 号令の元、三人は包囲の穴に目掛けて走り出す。
 しかし、いち早く混乱状態から回復した獣が中空を舞うフィロメーラの背後を狙い跳躍する。
「尾を引く茜、影落とせ……」
 あわやと思われた次の瞬間、鎖のように伸びたオーラが飛び上がった獣を雁字搦めに縛り上げ、地面に叩き落としていた。
 『残光一閃』―ヴェルのユーベルコードが獣から徐々に力を吸い上げ、昏倒させていく。
「さすがヴェルの早業!二人ともいいぞー!」
 負けじとフィロメーラも声援を送りながら回復の光を振りまき戦士達を鼓舞する。
 そうして三人は見事な連携を果たし、危機を脱することに成功したのであった。


「オブリビオンでもない生き物を殴るのは気が進まなかったんだけど、ごめんね……ん?」
 少し暴力的過ぎただろうか、と獣を拘束する鎖を弱めるヴェル。
 しかしその手応えに若干の違和感を覚え、彼は先ほど拘束した獣振り返った。
「へぇ……」
 そして背後を見やるその瞳が、次第に冷たく、鋭さを帯びていく。
「どうかしたのか、ヴェル?」
「いや、なんでも。でも一つ分かったことがあるよ。聞いてくれる?」

 戦場に響く嘶きも次第にその数を減らしていく。
 乱戦の終わりは近い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

指矩・在真
あわわわわ、ぼくを食べても美味しくないよ!?
もしかしたら予知の有角獣のせいでうまく狩りができなくなっちゃったのかもだけど、ごめんっ!

獣は【エレクトロレギオン】に任せるよ!
『チームレジスタ』召喚、ぼくと仲間を守って!
レジスタの電気ショックによる「属性攻撃」を獣軍団に「範囲攻撃」だ
もし誰かが襲われそうになったらその獣を「衝撃波」と「スナイパー」で確実に「援護射撃」していこうね

その隙に獣以外に生き物がいないか痕跡を含めて確認したいな
狩りをする生き物の縄張りの中なら、餌となる生き物がいるはずだよね
もしくは生き物が集まる水場とか
そこに何か飢えちゃったヒントがあるかも

絡みアドリブ等大歓迎


クラム・ライゼン
子供…それは、飯も無くなるっすね。
…人の味を覚えてる可能性があるなら…倒さなきゃいけない、んだよな。……やだなぁ。
(学園来る前の実家と状況が似てて気が重い。
母さんと妹たち元気かなぁ……)


【WIS】
・戦闘/ユーベルコード
「現実再編。各種要請を承認…以下省略!ーー顕言。『光あれ!』」
《追随する光精》使用。
〈高速詠唱〉〈全力魔法〉併用
複数ターゲットに取れるなら巻き込んで広範囲にばら撒く感じ

ユベコ以外の攻撃は
主にディア(ドラゴンランス)で〈薙ぎ払い〉たり〈串刺し〉にする。
至近距離まで近づかれたらルフェ(短剣型ロッド)に持ち替え

※他猟兵は◯◯センパイ呼び
猟兵と喋るときは〜っす、〜っすよ等の崩れた敬語




「あの子達は予知に出てきた有角獣のせいでうまく狩りができなくなっちゃったのかな?」
 避難した樹の上から戦いを眺めていた指矩・在真は、後を仲間達に託し、枝を伝って戦場を後にする。
 まだ幼く単独での戦闘力に乏しい在真は、他に生物がいた痕跡がないか探すことで、仲間に貢献することを選択したのだ。
「狩りをする生き物の縄張りなら、餌になる生物がいるはずだよね。もしくは生き物が集まる水場とか、そこに飢えちゃったヒントがあるかも」
 在真は危なっかしい足取りで木々の間を飛び移る。
 そして程なく、彼は奇妙な物を発見した。

 それは力尽き、半ば白骨化が進む獣の亡骸。
 大きさから自分達に襲い掛かってきた小型獣の兄弟だろうかと予想した在真は、更なる痕跡を求めて亡骸に近づいた。
「なにこれ、何かが死体に群がってる。これって……っ!」

 ●
「子供……それは、飯も無くなるっすね」
 クラム・ライゼンは憂鬱な気持ちを隠そうともせず大きな溜息をついた。
 故郷に残してきた家族達の境遇と、目の前の小型有角獣達に相似したものを感じてしまい、余計に戦いづらさを感じているのだ。
「でも、人の味を覚えてる可能性があるなら……倒さなきゃいけない、んだよな。……やだなぁ」
 クラムは悲痛な覚悟を胸に、彼は飛び掛かってくる獣に向けて炎型の刃が付いた槍、グレイブを突き出す。
 小竜ディアが姿を変じたそのグレイブは獣の角を弾いて軌道を逸らし、すれ違い様に足元を薙ぎ払い転倒させる。
(嫌だけどやらなきゃいけない。でも……)
 しかし、最後の一撃を繰り出す寸前にクラムの手が一瞬止まる。
 その隙をつき、密かに背後に迫っていたもう一匹が獲物の首筋を噛みちぎろうと、電光の如き速さで飛び掛かった。
 
 『シュパァアンッ!』
 しかし、さしもの健脚も本当の電の速さには敵わない。
 思わぬ方向から射出された電気ショックの一撃は、獣の身を焼き焦がしその場に叩き伏せた。
「召喚『チームレジスタ』!ぼくと仲間を守って!」
 クラムが声のした方向に目を向けると、そこに立っていたのは鉄の装甲に覆われた四つ足の小型機械兵器。
 そして召喚主である在真は同型の機械兵器を次々と召喚し、獣達を取り囲むように散開させていく。
「お兄さん!手加減は必要ないよ!思いっきりやっちゃって!」
「それってどういう……いや、分かったっす!センパイ!」
 きっと何か考えがあるのだろう。仲間の言葉を信じ、クラムは自慢の高速詠唱を開始する。
 力ある言葉と共に、彼の周りにいくつもの光の粒が沸き上がり、スパークする。
「現実再編。各種要請を承認…以下省略!ーー顕言。『光あれ!』」
 
『バリバリバリバリバリバリ!!』

 ユーベルコード『追随する光精』を全力展開!
 100本にも及ぶ追従する光矢が広範囲にばらまかれる。
 そして獣達を取り囲むように布陣した機械兵器の軍勢も負けじと高圧放電を放出し、各機体を繋ぐように紫電が駆け巡る。
 辺り一帯は二色の眩い閃光に覆われ、光が治まる頃には、真っ黒に焼け焦げた獣達が地に伏していた。

「本当に、これでよかったんすか?あの攻撃じゃ獣達はもう」
「うん、大丈夫だよ。だって、ほら」
 在真の指さす先を見て、クラムは目を見開いた。
 なんと獣の体が突如として木の葉と土塊の山となり、崩れ落ちていくではないか。
 そして土塊から次々と半透明な妖精が飛び出ると、慌てた様子で樹海の奥へと走り去っていく。
「やっぱり……。ぼくはさっき、小さな獣の死体を見つけたんだ。そして、それに群がるあの妖精達も」
 在真は先ほどの探索の成果を説明する。
「もしかして、ここの動物達は全部?」
「うん。理由は分からないけど、妖精はきっと獣の亡骸を真似して、子供のふりをしていたんだと思う。そして親だった有角獣は、たくさんに増えた子供達全員に餌を上げる為に、樹海中の動物を狩りまくって」
「ついには崖の上の人間の村まで襲うようになったってことっすか……なんだかやりきれないっすね、センパイ」
「そうだね……。えーっと、ところでそのセンパイって呼び方、なに?」

 気づけば、辺りから戦いの音は止んでいた。
 他の場所で戦う猟兵達も上手く獣の群れを鎮圧したのだろう。
 在真とクラムはこの戦いの真実を告げる為に、仲間の元へと急ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヒューレイオン』

POW   :    ディープフォレスト・アベンジャー
【蹄の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自在に伸びる角を突き立てて引き裂く攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チャイルド・オブ・エコーズ
【木霊を返す半透明の妖精】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    サモン・グリーントループ
レベル×1体の、【葉っぱ】に1と刻印された戦闘用【植物人間】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミレイユ・ダーエです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●無垢なる元凶
 
 ―もうすぐ、あの子死んじゃうね―
 ―うん、死んじゃうねー
 ―お腹が空いたならご飯食べればいいのに―
 ―病気だからご飯も食べられないんだー
 ―死んじゃったら、あのお母さん、悲しむよねー
 ―うん、悲しむよね―
 ―そうだ、ぼくたちが子供になろう―
 ―そうだね、子供になろう―
 ―それならお母さん悲しまない―
 ―子供になったらいっぱいご飯たべよう―
 ―お母さん、きっと喜ぶ―
 ―元気になったって喜ぶ―
 ―そうしよう― 
 ―そうしよう―
 ―そうしよう―


●慈愛の霊獣

 静寂を取り戻した樹海中心部。
 獣の群れを撃退しなんとか合流を果たした猟兵達は、真実を知った二人と共に情報共有を行っていた。
 ある者は憤りに拳を打ち付け、またある者は手加減が徒労だったのかと肩を落とす。
 中には、図らずもたくさんの妖精とお友達になれた、とスカートをなびかせ喜ぶ者もいたがそれはさておき。
 
 『ザワザワ……ザワザワザワザワ……』
 ふいに木々がざわめく。
 看過できない存在感を感じた猟兵達が振り向くと、そこにはいつの間にか、静かな双眸を称えた巨大な有角獣が立っていた。
 凶暴な牙がのぞく顎に加えているのは猪であろうか。
 有角獣は近くに転がっている小型の獣の前まで歩み寄ると、狩果を愛する我が子の鼻先に近づける。
 しかし、我が子はピクリとも動かない。
 猪の肉を放り出し、鼻先で我が子を突くと、その小さな体は目の前で土塊となって崩壊した。

「グゥゥ……グルゥァァアアア!!!!」

 有角獣はその場で空高く雄叫びをあげる。
 嘆くように。怒るように。
 そして彼女は怒りの形相で猟兵達を睨みつけると、一層激しく嘶いた。
 気付けば有角獣の足元には、先ほどの半透明の妖精達が母を労わる子のように集まり、外敵に立ちふさがっている。
 最早、衝突は避けられない。
 猟兵達は各々の思いを胸に、最後の戦いへと身を投じるのであった。
蛇塚・レモン
他の猟兵と連携歓迎!

ちょっと迷っちゃったっ!
事情は把握したよ
これは、食べちゃうのは気が引けるね……
ん、蛇神様?
あとは任せろって、良いけど?
(手元の鏡盾を覗いて人格交代、両目が深紅に染まる)

ふん、妖精が物言えぬ死者の身体を弄び、生者である母親を弄んだ結果がこれであるか
両者に戦う必然などなかろう?

だが、それでも余に逆らうならば……
超霊力オーラを全力解放
神罰が下ると思い知れ!(恐怖を与える

ユーベルコードで先制攻撃
鬱陶しい四肢を霊力鎖で縛って封じよう(念動力+マヒ攻撃+呪詛
その長い角は危険であるな?(第六感+野生の勘
超霊力オーラガンで撃ち砕く!(鎧無視攻撃+衝撃波+クイックドロウ+誘導弾+武器落とし


ロッタ・ロッツァライネン
ふん…悪いね、獲物相手に同情する程ウェットじゃないんでね――…
シンプルにどっちが生き残るか、ケリを付けようじゃないか!

難儀なのは大きさよりも角の方かね、動きを止めるのはお仲間に任せてアタシは角を何とかしよう。
【祖霊憑依】を発動して能力を引き上げた後、接近。【獣の直感】【野生の勘】【ダッシュ】で攻撃を避けつつ、【ジャンプ】で飛び乗って角をへし折るのを狙ってみるよ。
強化した【怪力】でなら何とかなると思いたいけど物は試しだね。

それを試した後は前に出て囮を受け持とう。
体格的にアタシが一番向いてそうだ。弓手連中には一つ頑張ってもらいたいね。

アドリブ・絡みや苦戦の描写は歓迎するよ。



 気づけば時刻は黄昏時。
 木々の間から点々と差し込んでいた光は片手で数えられるほどにその数減らし、郷愁を思わせる橙色に染まっている。
 崖の上に戻れば、きっと目を見張るほどに鮮やかな火灯し頃を目に焼き付けることが出来るだろう。
 
 しかし、目の前の脅威がそれを許さない。
 外敵に縄張りを荒され、あまつさえ我が子の命を奪われた……と思い込んでいる哀れな獣は、深い悲しみの唸りを上げつつ、猟兵達を睨みつけていた。
 母なる有角獣―『ヒューレイオン』の嘶きに呼応するように樹海の木々がざわめく。

「事情は把握したよ。これは、食べちゃうのは気が引けるね」
 合流に一足遅れた蛇塚・レモンであったが、言葉を介さずともその場の異様な空気を感じ取ることは容易だった。
 当初は害獣を狩って逆に食べてやろうと意気込んでいた彼女であったが、獣達の境遇を慮るとそれも気が引ける。
「甘さは命取りだよレモン。ここはとっくに弱肉強食の世界さ」
 弱気を口に出した彼女を奮い立たせようと、ロッタ・ロッツァライネンは獣を見据えながらレモンの横に並ぶ。
 その手厳しい訓戒は、長く野生の世界で生きてきた深い経験からの言葉だ。
 闘争と狩猟を本分とする戦士にとって、獲物への同情は他者の命を喰らう生命の在り方そのものへの冒涜に他ならない。
「ふん…悪いね。アタシは獲物相手に同情する程ウェットじゃないんだ。シンプルにどっちが生き残るか、ケリを付けようじゃないか!」
 ロッタは肩に担いでいたバトルアックスを軽々と勢いよく振りかぶると、その切っ先をヒューレイオンへと突き付けた。

 一方、レモンは未だに踏ん切りがつかない様子。
 そんな彼女の耳元に、彼女にしか聞こえない声が木霊した。
『……余と代われ。彼奴等を相手取るには、主はちと優しすぎる』
「蛇神様、あとは任せろってこと。うん、良いけど……」
 姿なき声に促されるままに、レモンは左腕に装備した鏡型の円盾を見つめる。
 この動作こそが彼女―蛇塚・レモンのスイッチである。
 自身に宿した古き蛇神の魂に身体を委ねると、レモンの細く白い首がガクリと力なく垂れ下がった。

「ふん、妖精が物言えぬ死者の身体を弄び、生者である母親を弄んだ結果がこれであるか。してこの有様とは、是非もなし」

 頭を上げることなく紡ぐ声色は変わらずレモンの物であれど、その言の葉に籠る感情は底冷えするほどに冷たく重い。
「それでも余に逆らうならば……神罰が下ると思い知れ!」
 殺気を露わに顔を上げたレモンの瞳に灯るは深紅。
 その身から迸る超霊力オーラは可視化できるほどに眩く、ヒューレイオンを刹那の間ではあるが圧倒してみせた。
「へぇ、一皮剥けたね、お嬢ちゃん」
「蛇であるからな!」
 短く軽口を交わし、二人の戦士は左右に散開し駆け出した。

「獣頭の戦神グツァルよ!我に力を!」
 絡み合った木の根を飛び越えながら、ロッタも祖霊―戦神グツァルをその身に降ろす。
 体中に力が漲るのを感じ、ロッタは更に力強く地を踏みしめる。
 半透明の妖精達が母に迫りくる敵を妨害しようと飛び掛かるも、それさえも直感と脚力を頼りに強引に振り切り、彼女は疾風の速さでヒューレイオンへと接近する。
 
 一方、戦況を見渡せる位置まで距離を取ったレモン―もとい蛇神は、霊力の籠った紅き蛇眼を獣の足元へと向けた。
 次の瞬間、突如として光の鎖が地面を突き破って出現し、獣の四肢に巻き付く。
「ヒュルゥォォォオオオオ!!」
 唐突な束縛攻撃に叫びを上げてもがくヒューレイオン。
 しかし光の鎖から霊力が毒のように染み出し、荒ぶる獣の運動神経を次第に麻痺させていった。
「ふん、脚を封じてしまえばその御立派な角も飾りであるな。そのまま羊頭狗肉と成り下がれ!」

「仲間が切り開いたこの好機。逃す手はないねっ!」
 ロッタはバトルアックスを大上段に振りかぶり、獣の頭上へと驚異の脚力で一足に跳び上がる。
 肉体強化の代償により体内ではあらゆる筋肉と血管が悲鳴を上げているが、今はその痛みすらも闘志を滾らせる燃料だ。

「せいやあああああああああああああ!!!」
 
 光芒一閃!!
 重量・加速・怪力、その全てを込めたバトルアックスの一撃は見事、ヒューレイオンの右側頭部から伸びる2本の角を砕き折ることに成功するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィロメーラ・アステール
「いやちょっと待て、怒るのはこっちだぞ!」
そんな親子ごっこに巻き込まれた側のこと考えてみろよー!
情に篤いのは結構なことだけどなー、子供を見失ってるんじゃ愛情でも言い訳できないし……!
だいいちソレを武器にしていい立場じゃないだろ!

【願い願われし綺羅星】を使うぞ!
【第六感】により霊的チャンネルを開き、食い荒らされた森の遺志と意志を【全力魔法】として纏めあげる!
みんなのパワーでアイツらを止めるぜ! 力を貸してくれー!
森のみんなの力で行うコレは、さながら森【属性攻撃】ってところかな?

「どれだけの命を踏みにじったのか、思い知ってみなよ!」
まあ、そもそも、あたしは人間の味方だからな! 容赦してやらないぜ!



 角をへし折られ、怒りに任せて暴れまわるヒューレイオン。
 追い詰められた獣の底力は、四肢に絡みついていた光の鎖を強引に引きちぎり、自身に接近していた戦士達を悉く跳ね飛ばす。
 しかし怒りに震えるのは彼女だけではなかった。
「いやちょっと待て、怒るのはこっちだぞ!」
 妖精、フィロメーラ・アステールがヒューレイオンに向けてビシッと指を突き付ける。
 怒りからか、その小さな翅から振りまかれる光の粉の勢いも5割増しだ。
「そんな親子ごっこに巻き込まれた側のこと考えてみろよー!情に篤いのは結構なことだけどなー、結局実の子供を見失ってるんじゃ愛情でも言い訳できないし……!だいいちソレを武器にしていい立場じゃないだろ!」
 フィロメーラは痛まし気な視線を向けるのは、猟兵へと立ち向かう半透明の妖精達。子を思う母の為に死力を振り絞って戦う妖精達の姿は、ただただ健気であった。
「こんな戦いはもう終わりにしてやるぞ!みんなのパワーでアイツらを止めるぜ!力を貸してくれー!」
 光と共に中空へと飛び上がり、円を描くように旋回するフィロメーラ。
 祈りによって食い荒された森の遺志と意思を紡ぎ合わせると、次第に緑色の光球が、旋回する彼女を追うように浮遊し始めた。それはいうなれば『森』属性のエネルギー。
 対するヒューレイオンは、踏みしめた樹木の枝葉を神通力によりヒトカタとして組み上げる。
 そこに半透明の妖精が沁み込むように乗り移ったかと思うと、更にその植物人間達は絡み合うように合体していき、ついには巨大な壁となってフィロメーラの前に立ちはだかった。
「またそうやって妖精達までないがしろにして……っ!どれだけの命を踏みにじったのか、思い知ってみなよ!」
 願い願われし綺羅星―緑色の光球はフィロメーラの魔力により撃ちだされる。
 その緑の輝きは巨大な植物の壁をすり抜けるように透過し、壁の後ろに隠れたヒューレイオンの胴体のみに突き刺さった!
「あたしは人間の味方だからな!容赦してやらないぜ!」
 更に二発、三発……ついにはフィロメーラの怒りの流星は弾幕となって、獣の体を打ちのめすのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴェル・ラルフ
…母親の声なんて知らないけど、この声は、聞くにはとても…

でもオブリビオン。過去の残滓。そして今を生きるヒトに害をなすもの…
だから、その悲しみも合わせて過去に還そう。

右の角の脅威はなくなったね。
今度は左の角も破壊したいところ。
距離をとりつつ[ダッシュ]で左側に、[フェイント]をかけて注意をひこう。
危険なほどには近づかないでおくけど、[見切り]ながら[覚悟]は決めておこう。
…母親って、強いんでしょ。多少は[激痛耐性]で我慢するよ。


その隙に他の猟兵が角を狙ってくれるといいな。
僕自身も、狙える範囲なら【陽炎空転脚】を使うよ。


クラム・ライゼン
精霊って聞いて少し納得っす
悪戯好きだけど、善い存在には優しかったりもする
……それが誰かを狂わせることも…少なくはない、んすよね


・WIS
攻撃
ディア(ドラゴンランス)を使用
〈属性攻撃〉で武器に炎か光属性を付与しつつ戦う
至近ではルフェ(短剣型ロッド)に持ち替え

/ユーベルコード
『現実再編。虚構構築・収束を開始。以下省略ーー顕言。『良い夢を』』
メンバー又は自分がトドメを刺す直前に〈高速詠唱〉併用で使用
ルフェ(眠りの精霊)の力を借りて【夢】属性の【霧】を発生させる
どんな夢を見るかはヒューレイオン次第

せめて最期は、優しい夢を見れるといい。
…まぁ。これはただの、オレのワガママだけどさ。
ーーおやすみ、良い夢を。




 戦いが始まり早四半刻。
 木々の合間から点々と差し込んでいた朱の光も鳴りを潜め、樹海は夜闇に閉ざされていた。
 戦況は終盤。猟兵達の度重なる猛撃により、ヒューレイオンは最早足元がおぼつかない状態にまで追い詰められていた。
 あと一度、痛烈な一打を食らわせる事さえできれば……。
 しかし、母なる獣が滲ませる怒りは驚異的な執念となり、その身を奮い立たせていた。
―こんな所で倒れるわけには。せめて仇に一矢報いなければ―
 獣の声を介することが出来る者がいたならば、その者はヒューレイオンの壮絶な嘆声を聞いたかもしれない。

 一人の若者が幾度目かの獣の叫びを聞き、その整った眉目をしかめさせた。
「母親の声なんて知らないけど、この声は、聞くにはとても……」
 本来ならば、若者―ヴェル・ラルフにとって動物は愛すべき友である。
 そんな彼が踵を返さないのはひとえに、世界の在り方を乱す存在を見逃してはおけないという、一種の使命感によるものであった。
「でも、あの子はオブリビオン。過去の残滓。そして今を生きるヒトに害をなすもの……だから、その悲しみも合わせて過去に還そう。協力してくれるかな?」
「おっす先輩!オレ達で……終わらせるっ!」
 クラム・ライゼンはヴェルの覚悟に応えるように、刀身に炎をまとわせたグレイブを一薙ぎし、正眼の構えをとる。

 この哀しい戦いに終止符を打つために、今二人の若者が並び立った。


 ヒューレイオンは致命傷を避ける為に木々の間を駆け巡る。そして手近な獲物を見つけては片側のみになった角で串刺しにしようと、捨て身の突撃を繰り返していた。
 その形振り構わぬ特攻は先ほど戦った幼獣、否、優しき妖精達を思いださせた。
「さっきの子供達の正体、精霊って聞いて少し納得っす。悪戯好きだけど、善い存在には優しかったりもする。……それが誰かを狂わせることも…少なくはない、んすよね」
 慈悲から生まれたはずの行いが悲劇と狂気を手繰り寄せてしまった。
 ままならない想いを胸に、ラルフはヒューレイオンの真正面に相対する。
 せめてこの戦いを、この想いを、胸に刻んでおきたいから。

 対するヒューレイオンは無謀とも思える行動をとった獲物を見つけるや否や、一心不乱に突進を開始する。
 そんなヒューレイオンの視界の左隅に赤い何かが横切った!
 夜闇に身を溶かし知らぬ間に肉薄していた赤い影―ヴェルは、残った左側の角を正確に打ち抜く高さまで跳躍すると、愛用の如意棒を振りかざす。
 最後の武器まで破壊されては堪らないと獣は強引に足を止める。
 たたらを踏みつつも繰り出された角撃は、しかしヴェルの右腕に切創を刻むに過ぎなかった。

「やっぱり、母親って強いんだね。この一撃は貰っておくよ」
 なんとヴェルは、振りかざした体制から如意棒を伸ばし、先端を樹木に突き立てる事で後方へと急加速して見せたのだ。
 更に飛び退き様に別の木の幹を蹴って、再度宙を舞う。
 狙うは今度こそがら空きになった左角。
 それは一秒にも満たない刹那の攻防。
 しかし、その刹那は災魔の力を宿すクラムにとって十分すぎる隙となった。
「せめて最期は、優しい夢を見るといい」
 震脚が最後の角を砕いて脳を激しく揺さぶり、炎のグレイブが深々と獣の胸に突き刺さる。
 それと同時に、甘く香り立つ霧がヒューレイオンを包み込んだ。
 この蠱惑的な香りは、眠りを誘う『夢』属性の魔力。
 せめて苦しみなき最期を迎えられるようにという、クラムが出来る精一杯の哀憐であった。

(…まぁ。これはただの、オレのワガママだけどさ)

「おやすみ、良い夢を」
 果たしてクラムの想いは通じたのか、ヒューレイオンは悲鳴を上げることなく、静かに地へとその身を横たえるのであった。 
 彼女が最後にどんな夢を見るのか。それは誰も知る由もない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シエナ・リーレイ
森の妖精とお友達になれてご満悦のシエナ
妖精から獣の母の話を聞いたシエナは彼女とも仲良くなる為に行動を始めます
まずは彼女を宥める為の準備として森で仲良くなった妖精さんにお願い【リザレクト・オビリオン】で追加で呼んだ骨の動物達を元に新たな獣の子を作り始めます
そして、準備が整えば獣の子と共に獣の母の前に現れ彼女を止める事を試みます

ただ、途中で見つからない様に細心の注意の元に作業が行われ為に終わる頃には母親は今際の際かもしれません
その時にはスカートからカロリー執事さんを呼び出しすと獣の子に食事を振る舞ってもらい、獣の母を安心させると共に獣の母の骸を『お友達』とする許しを得ようとします

セリフは任せます




彼女を除いては……。


―早く、子供にご飯を届けないと。でも何故だろう。体が思うように動かない。
早くしないと愛する我が子は飢えと病で死んでしまう。早く、早く、ご飯を―

 有角獣ヒューレイオンは深い霧の中に横たわっていた。
 もはや意識も感覚さえも曖昧で、自分が何をしていたかさえ思い出せない。
 しかし、ただ一つの心残りが彼女の意識を今際の際で繋いでいた。

『キュゥ……キュゥウ……』

 そんな彼女の元に一匹の小さな有角獣が歩み寄る。
 その獣が口に加えているのは見たこともない不思議な食べ物。

『キュイ!キュィイ♪』

 子供はその食べ物を美味しそうに咀嚼し飲み込むと、嬉しそうに飛び跳ねて、母親の周りを駆け回って見せた。

―ああ、よかった……。あの子は元気になったのね。よかった。よかっ……た……―

 ヒューレイオンはその翡翠色の瞳を潤ませ、静かに涙を流す。
 そして『クォォン……』と一声鳴くと、幸せな夢の中でゆっくりと意識を手放すのであった。

「お母さんは安心して逝けたみたいなの。やっぱり、いい事をした後は気持ちがいいの。とシエナはとってもご満悦です♪」
 駆け回る幼獣を宥め、その背を撫でながらシエナ・リーレイは満足げに頷く。
 しかしシエナが連れているヒューレイオンの子供は、本物であって本物ではない。
 彼女がお友達になった森の妖精の力と、本物の子供の亡骸、そして仲間である妖精が活性化させた森の遺志を組み合わせて一時的に生み出した、一種の肉人形(フレッシュゴーレム)である。
 本当なら子供に説得してもらい母親を宥めようと思っていた彼女であったが、それには後一歩間に合わなかったようだ。
「もう少し準備が早ければ。と、シエナはちょっぴり残念がります。でも、この骸だけでも十分お友達になれるの!とシエナは起死回生の一手に……あら?」
 ヒューレイオンの亡骸を異空間に収納しようと近づくシエナの前に、幼獣が静かに立ち塞がった。そして彼女の瞳を見つめ、静かにかぶりを振る。
『キュイィ!』
「お母さんと一緒にここで眠りたいの?そう……でも、お友達のお願いならしょうがないかな。と、シエナは本音を飲み込みます」
 プイっとそっぽを向くと、シエナは振り返ることなく、甘い香りが漂う霧の中を後にする。
 その背後では、幼獣が母親に寄り添うようにその身を横たえ、静かにあるべき姿へと還っていった。

「おやすみなさい。生まれ変わっても親子一緒に暮らせるといいね。そしたら、またお友達になりにいくからね。とシエナはあるとも知れない来世に期待を託します♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月08日


挿絵イラスト